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リスクマネジメント

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リスクマネジメント
■ リスクマネジメント
オリックスでは、ビジネスの多様化とリスクプロファイルの変
移や当初計画との乖離に関する分析、リスクキャピタル
(最大想定
化に対応し、かつ経営資源の有効活用や企業価値の増大を図る
損失)
に対する収益性評価などです。また、個別リスクのモニタリ
ために、さまざまなリスクの適切な管理が不可欠であると考え
ングも行っており、プロジェクトや投資のエグジットへ向けた戦略
ています。そのため、リスクを把握・計測・分析・評価するととも
やスケジュールの進捗状況の評価、予想と実績との比較分析、各
に適切な規則・権限を設定し、信頼できる管理・情報システムを
取組に重要な指標の時系列推移分析などが盛り込まれています。
開発することで、これらのリスクを管理あるいはヘッジできるリ
モニタリングは継続的に整備・強化を行っており、その成果を
スクマネジメント体制を構築しています。
踏まえて、リスク計測手法の精度向上、リスクマネジメント体制
リスクの計測は、各ビジネスの資産・事業特性に応じた方法
の高度化および強化を進めています。
を採用しています。計測方法については、ビジネスモデルや事
モニタリングの結果は、四半期ごとに投・融資等委員会やグ
業環境の変化とともに随時必要な変更を行っています。
ループ執行役員会を通してトップマネジメントへ報告され、事業
リスクのモニタリングは、事業ごとおよびリスクの種類ごとに
部門ごとのリスクキャピタルや経営戦略を見直す基礎データと
なっています。
行っています。モニタリングの内容は、資本の使用状況、時系列推
この会議は、事業部門ごとに原則として毎月開催され、各執行責
1.リスクマネジメントを支える体制と機能
リスクマネジメントを支える体制・機能としては、主として5つ
任者とトップマネジメントが戦略の達成状況や事業環境の変化な
のレベルがあります。
どを議論するものです。月例戦略会議で議論された重要性の高い
ものについては、投・融資等委員会で決定され、必要に応じて取
第1の機能は営業部門です。例えば、投融資案件に関して営業
部門は、第1次の審査とともにリスクモニタリングおよび未収管
締役会に報告されます。
理・督促・回収を行うなど重要な役割を有しています。
第5の機能として、取締役、執行役およびグループ執行役員により
第2の機能は、リスク管理の専門部門で主として営業部門から申
構成されるグループ執行役員会があります。この会議では、オリック
請される投融資案件の審査、営業資産やリスクキャピタルのモニタ
スの業務執行に係る重要な情報を共有しており、リスクマネジメン
リング、リスクの計量化を担当するリスク管理本部、資金調達に関わ
トに関してはモニタリング結果や問題債権について報告されます。
るリスクを担当する財務部、法的リスクを担当する法務部、コンプラ
イアンスを推進するコンプライアンス部の4つの部門があります。
2.主なリスクマネジメント
第3の機能は、
トップマネジメントで構成される投・融資等委員
(1)
ファイナンス・リース、営業貸付金のリスク管理
会です。投・融資等委員会は、CEO、COO、CFOおよび投融資担
ファイナンス・リースや営業貸付金業務の主要リスクは、お客様の
当の役員等が出席し、主として一定金額以上の投融資案件を審議
信用リスクであり、この分野のリスク管理は個別案件の与信審査、信
するために月3回開催しています。
用情報管理、問題債権への対応、ポートフォリオ管理という4つの視
第4の機能として、月例戦略会議が多岐にわたる事業をモニタ
点から構成されています。当ビジネスは、主に法人金融サービス事
リングし、コントロールするための重要な役割を担っています。
業、米州、アジア・大洋州・欧州の各セグメントにて担当しています。
リスクマネジメントを支える体制および機能
グループ執行役員会
投・
投・融資等委員会
(経営情報の共有)
CEO、
COO、
CFO ほか関係役員
(投融資案件の最終決裁・報告機関)
CEO、
COO、
CFO ほか関係役員
案件申請・
報告
リスクモニタリング
報告
決裁・
モニタリング
月次業績報告
目標達成状況報告
リスク管理部門
ALM報告
リスク管理本部
債権管理室
財務部
法務部
コンプライアンス部
案件申請・
報告
監査部
決裁・
モニタリング
業務プロセスの
モニタリング
営業部門
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月例戦略会議
(事業部門ごとの戦略会議)
CEO、
COO、
CFO ほか関係役員
事業モニタリング
業績レビュー
事業の方向性・
戦略の検討
●個別案件の与信審査
新規取組案件について、お客様に対する既与信を含めた与信残
高および企業価値貢献スプレッド(運用利回り・デフォルト確率・
保全状況・調達金利・資本コスト・経費率より算出)を基準として、
海外のポートフォリオについては、さらに地域別、カントリーリス
ク別にモニタリングしています。
リスク管理本部では、これらを定期的に投・融資等委員会やグ
ループ執行役員会に報告しています。
営業部門の責任者には職責に応じた一定限度の決裁権限が与え
られています。与信残高が営業部門の決裁権限を超える場合は、
(2)オペレーティング・リースのリスク管理
リスク管理本部の決裁が必要となります。さらにリスク管理本部
オペレーティング・リースに係る主要なリスクには、リース物件
の決裁権限を超える取引については、投・融資等委員会で審議・
の残存価値の変動リスクがあります。信用リスク管理については
決裁されます。取組案件については、お客様の財務内容、支払実
上述同様です。ここでは、不動産を除くオペレーティング・リース
績、キャッシュ・フロー、保全条件、取引条件、採算性等から総合
の特徴である残存価値のリスク管理についてご説明します。当ビ
的に信用リスクを分析し、判断したうえで決裁しています。
ジネスは、主に自動車事業、レンタル事業、アジア・大洋州・欧州
リスク管理本部では、国・地域あるいは業種レベルの評価を定
期的に行い、潜在的にリスクの高いマーケットへのエクスポー
ジャーを最小限に抑えるよう与信制限措置を講じています。
●信用情報管理
リスク管理本部は、
数社の信用情報機関から日々入手する、
倒産、
地域の各セグメントで担当しています。
●残存価値のリスク管理(RVリスクの管理)
残存価値の価格変動リスクをコントロールするために、リース
物件の在庫や市場環境・事業環境のモニタリングを行っています。
船舶や航空機などのオペレーティング・リース物件は長期性資
手形不渡り、手形割止め、業績不振などの信用情報を専用データ
産ですが、リース契約は数年単位で更新されるため、オリックス
ベースに入力し、また、業界分析レポートや注意喚起情報を適宜
はRVリスクを負っています。オリックスが船舶を所有し、オペ
営業部門に提供して、重要なお客様に対する近況把握をサポート
レーティング・リースする場合には、原則として、物件引き揚げや
しています。リスクが高まっていると考えられる業界や融資先に
再リースが容易で汎用性の高い船舶に限定しています。汎用性の
関し、追加与信ストップや与信削減措置をとることもあります。
低い大型船については、ファイナンスは行いますが、船舶を保有
●問題債権への対応
するオペレーティング・リースは行いません。航空機に関しても、
オリックスでは、破産・民事再生など法的整理申請先、銀行取
基本的に汎用性が高い機種を選んで投資してきました。これらの
引停止処分先、手形不渡り発生先、
3か月以上未収先、業況悪化先、
船舶および航空機の評価額は常にモニタリングしており、市況変
詐欺事件などの債権を問題債権と認識し管理を行っています。問
化に応じて売却を検討します。
題債権は問題発生時の債権残高に応じて、営業部門から債権管理
室あるいはトップマネジメントへ速報ベースで報告されます。問
題債権のデータは独自の専用システムに入力され、債権管理室が
(3)不動産関連ビジネスのリスク管理
オリックスが行う不動産関連ビジネスは、マンション分譲事業、
中心になって残高やスケジュールを管理し、債権残高に応じて決
商業用不動産開発・賃貸事業、ホテル・ゴルフ場・研修所などの運
裁を仰ぎながら営業部門との協働で債権回収が進められ、進捗状
営事業からなる不動産事業と、不動産事業を行う先に対する不動
況等について定期的に担当役員に報告されます。さらに、債権管
産ファイナンス事業に大別されます。これらのビジネスに関わる
理室は問題債権の全体像の推移および一定額以上の問題債権に
リスクをコントロールする目的で、グループ内に以下のような個
ついてグループ執行役員会に定期的に報告しています。一定額以
別案件を分析・評価し総合的な投融資判断をするための機能・能
上の問題債権の報告には、全件の個別状況、残高および予想回収
力、あるいはポートフォリオを分析・評価するためのモニタリング
率等が含まれます。
機能・能力を有しています。
問題債権の回収においては、初期対応が非常に重要です。問題
不動産開発・運営事業の事業実績 オリックスは、オフィスビルや
債権発生の情報を入手した場合、主管部門である債権管理室は直
商業ビルなどさまざまな不動産の開発や賃貸・運営業務を事業主
ちに営業部門と協力して保全強化、回収行動に入ります。初期督
体として行ってきた長年の実績があります。個々の不動産のハー
促から担保権実行、差押え等の強制執行に至るまで、債権管理室
ド・ソフト面の質・特徴やキャッシュ・フローを読み取る専門性を
に集約・蓄積された回収ノウハウは、営業部門への的確な指示や
有しています。
営業部門との協働により、債権回収に大きな力を発揮しています。
不動産鑑定スペシャリスト
●ポートフォリオ管理
管理本部不動産鑑定グループ(うち、鑑定士・鑑定士補、計16名)
リスク管理本部では、個々の案件・お客様に対する与信審査な
らびに取組後の与信管理に加え、さまざまなポートフォリオの信
用リスクを継続的に管理しています。例えば、国内・海外を問わず、
不動産専門の管理部門であるリスク
と、オリックス・リアルエステート(現・オリックス不動産)建築監
理部(うち、一級建築士22名)により、迅速な「不動産鑑定評価書」
「エンジニアリング・レポート」の入手が可能となっています。
取組別の大口先や業種別・保全別債権を定期的に把握し、特定の
与信審査・デューデリジェンス能力
お客様や業種への集中度の状況を残高のみならず信用VaR等に
た与信判断能力により、ゼネコンやテナント等に対する与信リス
基づいたリスクキャピタルの観点からもモニタリングしています。
クをチェックしています。また、不動産の管理やデューデリジェン
ファイナンス業務で蓄積し
59
スを専門とするグループ会社を有しています。これらの会社は、
不動産に関する各種情報を入手できるほか、専門的な観点からの
不動産の評価が可能です。
(5)有価証券投資のリスク管理
●株式・債券の価格下落リスク管理
株式や債券に関するマーケットリスクは、オリックスの各事業
法務・会計・税務およびコンプライアンス等専
部門が自ら市場動向・取引先の状況をモニタリングすると同時
門部署との連携により、スピーディーで総合的な投融資判断が可
に、リスク管理本部もモニタリングを通じて、リスクの早期把握
能な体制となっています。
や軽減を図っています。保有している上場株式の多くは日本国内
専門家間の協力
不動産関連ビジネスの案件は、上記体制のもと複数の採算性指
の取引先企業へのものであり、通常のクレジットリスク管理と同
標による評価およびレピュテーションリスクを含めたさまざまなリス
様に営業部門が投資先の市場環境、経営成績、財政状態などをモ
クを検証したレポートをもとに、投・融資等委員会で決裁されます。
ニタリングしています。加えて、リスク管理本部も信用情報機関から
不動産関連ビジネスのポートフォリオについては、主に事業戦
の信用情報や業界分析レポートなどを営業部門に提供するほか、投
略とスケジュールのモニタリングに重点を置いています。方針変
資株式の評価損益や自社開発モデルにより算出された推定倒産確
更、収益やスケジュールのブレが見込まれる場合は、事業戦略の
率などをベースに売却の検討や業況詳細調査を勧告します。
再検討を行います。
また、生命保険事業や米州での債券投資については、債券運用
具体的には、これらのモニタリングを各事業の特性に応じた方法で
部門が日々、金融政策やマクロ指標、株式市場や金融市場の動向
行うことにより、リスクのコントロールや軽減を図っています。例えば、
をモニタリングしつつ、個々の銘柄の値動き、損益状況、財政状
ノンリコース・ローン事業の場合は、金利スプレッド、
LTV
(担保掛目)
、
態などの分析を行っています。その結果、利益確定、損失処理、ポ
DSCR
(年間の元利支払額に対する事業キャッシュ・フローの割合を
ジションの解消などのガイドラインに従って適切な処理を行って
算出したもの)
、その他個別の取引条件
(他社出資状況・金利リザーブ
います。それぞれのリスク管理部門も、日々作成されるレポート
や保証など)
を精査します。マンション分譲事業においては、完成在
を債券運用部門と同様に、さまざまなガイドラインやマクロ・ミ
庫や販売期間、利益率を、そして、開発・賃貸・運営事業の場合は、ス
クロ状況と比較しつつレビューし、ガイドラインが遵守されてい
ケジュール、
NO
I利回り、保有期間、利益率などを精査します。モニタ
るかどうかを管理しています。
リングによる実績評価の結果は、リスクキャピタルの算定に際しても
考慮し活用されています。なお、このモニタリング結果については取
組形態、物件タイプ、所在地などさまざまにカテゴリー化され、定期的
に投・融資等委員会およびグループ執行役員会に報告されます。
(6)資金調達に係るリスク管理
●流動性リスク管理
オリックスでは、資金調達手段を多様化すること、金融機関か
らコミットメントラインを取得すること、市況を考慮して長短の調
(4)投資事業のリスク管理
オリックスでは、プライベートエクイティ投資、ベンチャーキャ
達バランスを調整することなどで流動性リスクを管理していま
す。さらに資産・負債管理(以下「ALM」)を通して、流動性リスク
ピタル投資、企業再生ビジネスといった投資事業を拡大していま
の把握、管理を行っています。
す。これらのビジネスは主に不動産事業、その他の事業、アジ
●金利リスク管理および為替リスク管理
ア・大洋州・欧州の各セグメントに含まれております。
オリックスは、資産・負債に関わる金利変動リスクおよび為替変
投資事業案件の入口審査においては、チェックアンドバランス
動リスクを適正に把握、管理し、これらリスクに適正に対応するた
をさらに有効に機能させるために、従来の与信審査という観点か
めに、投・融資等委員会でALMに関する方針を決定し、グループ
らのみではなく、事業性や投資のスキームなど案件に対する多面
執行役員会においてALMの方針に基づく現状、今後の対応等の
的かつ専門的な検討を加えています。そのため、会計・税務・法務
報告を行っています。また、ALMに関する規則を制定し、この規
等の専門知識を持つスペシャリストを活用し、リスク分析や資産
則に基づいてALMに関する要領を制定し、これらリスクの管理
評価等のデューデリジェンスを行っています。
方法、対応等の詳細を明記しています。ALMに関するレポートは、
投資事業においては、事業戦略とスケジュールのモニタリング
財務部において月次ベースで作成され、財務部管掌役員および
をリスク管理の重要な要素と考えています。投資戦略やバリュー
CFOに報告されます。このレポートには、主要な海外グループ会
アップイベントなどの変更、収益やスケジュールのブレが見られ
社のALMの状況も含まれています。さらにリスク管理本部は、
た場合、事業戦略の再検討を行います。なお、モニタリングによ
月次ベースのALMに関するレポートに基づいて、ALMのモニタ
る実績評価はリスクキャピタルの算定要素にも使用しています。
リングを行っています。
投資事業のポートフォリオの詳細については、定期的に投・融資
●デリバティブリスク管理
等委員会・グループ執行役員会および月例戦略会議に報告されて
オリックスは、金利変動リスクおよび為替変動リスクを適正に
います。出口戦略別、取組期間別、取組残高別、業種別、国別、出
管理するためのヘッジ手段として、デリバティブ取引を利用してい
資持分別といった切り口で資産残高とリスクキャピタルの推移や
ます。このデリバティブ取引を適正に把握、管理するために、グ
分布を把握・分析し、リスクをコントロールないしは軽減できる体
ループ会社共通のデリバティブ取引管理に関する規則を制定して
制になっています。
います。さらに、デリバティブ取引を行うグループ会社は各社にて、
60
この規則に基づいて、デリバティブ取引管理に関する要領を制定
監査部では、年間の内部監査計画に基づき重要リスクに焦点を
しています。この要領に則り、デリバティブ取引を行うための手
あて、業務の有効性・効率性ならびに法令の遵守状況、社内規則
続き、報告、ヘッジ有効性評価の方法等を明確にするとともに、
の整備・遵守状況をモニタリングするとともに、自己評価制度に
デリバティブ取引の執行担当セクション、ヘッジ有効性評価担当セ
よる自己評価実施状況のモニタリングもしています。これらのモ
クション、事務管理担当セクションを分離し内部統制制度を確立し
ニタリングを通じて、現在の内部統制の評価を行い、必要に応じ
ています。金利変動リスクのヘッジ手段として金利スワップ、金利
て改善しています。
キャップなど、また、為替変動リスクをヘッジする手段として先物
コンプライアンス機能強化については、コンプライアンス部
為替予約、通貨スワップ等のデリバティブ取引を利用しています。
がコンプライアンス・マニュアルを国内の全従業員および海外
グループ会社の上級役員に配布しています。また、オペレーショ
(7)法的リスクの管理
オリックスの事業における重要な法務リスクとして、取引におけ
ナルリスクを含めたコンプライアンスリスクについての洗い出し
と評価を行って重要リスクを選定し、当該重要リスクの低減を図
る法務リスクがあります。具体的には、個々の取引、新商品開発、
るなどの「コンプライアンス・プログラム」を毎年策定し、実践し
その他の事業活動において、契約が法的に有効か、オリックスの
ています。これらの施策により組織内でのコンプライアンス意識
権利が行使可能であるか、意図したとおりのものであるか、取引
を高めるとともに、より効果的なコンプライアンスのシステムを
等に関わる業法その他法令等に抵触することがないか、また適用
構築するよう改善しています。
される法令を遵守しているか、などが重要なテーマとなります。
災害リスクについては、
2005年12月に「災害リスクマネジメン
これらリスクについては、日本国内では、取引等の検討段階お
ト基本規則」を定め、国内で発生した災害に関しては人事・総務本
よび契約関係書類の社内承認段階において、原則として法務部が
部が統括し、また海外で発生した災害に関しては、海外事業本部
関与し、リスクの回避、予防、軽減を図ります。個々の取引等にお
が統括する体制を構築しリスクの発生に備えています。また、本
ける契約関係書類は、所定の規則に従って決裁され、決裁を得な
規則に則り、従業員が災害に遭遇した際の行動マニュアルを配布
ければ契約、使用することはできません。決裁のプロセスにも、
するとともに継続的に災害訓練を行うことにより、災害リスクに
規則に従って法務部が関与します。また、取引の大きさや重要性
対して適正に対処できる体制の維持とより効果的なマネジメント
に従い、特定分野については外部の弁護士を利用しています。訴
システムを構築するよう改善しています。
訟を提起する場合、または提起された場合にも、法務部が関与、
管理し、適切な結果・解決へ導きます。訴訟案件については、定
期的にグループ執行役員会に報告しています。
法令の改正については、改正案の検討段階から情報を収集し、
オリックスの事業環境整備の諸活動を行うとともに、改正法の施
行に適切に対応するための必要な措置を実施します。
海外については、各現地法人において社内弁護士の関与のも
と、または必要に応じて外部の弁護士を利用するなどしてリスク
の回避、予防、軽減を図ります。
また、法務部では知的財産権の侵害を防ぐためのモニターを実
(9)その他の主要事業におけるリスクマネジメント
上記のリスクマネジメントに加え特定の事業については、その
特性に応じた固有のリスク管理を行っています。
●住宅ローン
オリックス信託銀行で取り扱っている住宅ローンを大きく分け
ると、次の3種類があります。
(i)実需(自宅向け)用住宅ローン、
(i
i)投資マンション(ほとんどの場合ワンルームマンション)用住
宅ローン、
(i
i
i)アパート(賃貸用集合住宅)ローン。
オリックス信託銀行では、これらの住宅ローンを取り扱う際に、
施しており、侵害が発見された場合には直ちに対抗措置を講じて
お客様との面談を通じて固有の事情や生活実態に沿った返済能力
います。
の確認を行い、また不動産関連のマーケット情報を収集し、お客様
の返済能力だけでなく、不動産からもたらされるキャッシュ・フ
(8)オペレーショナルリスクの管理
ローや担保価値を総合的見地で判断する個別対応型の審査を実
近年、オリックスの事業が拡大してきたことに伴い、オペレー
践しています。実需
(自宅向け)
用の住宅ローンでは、お客様の調査
ショナルリスク管理の重要性が増しています。オペレーショナル
を行う際に所得安定性に着目します。すなわち、それぞれのお客様
リスクとは、内部プロセス・人・システムが不適切もしくは機能し
の事情を踏まえ総収入額ではなく可処分所得の額を重視した審査
ないこと、または、外生的事象が生起することから生じる直接的
を行っています。投資マンション用の住宅ローンのお客様は、医
または間接的損失に係るリスクです。このオペレーショナルリス
師・公務員・上場企業管理職等の比較的高額所得者層が主体です。
ク管理の一環として、内部統制およびコンプライアンスの機能強
ただし、複数の物件を所有するなど投資額が膨らんでいるお客様
化を図っています。
に対しては、投資物件の賃料収入が減少した場合でもどの程度ま
具体的には、リスク管理本部によるリスクの評価およびモニタ
で収支が成立するかなどのストレステストを行います。アパート
リング、監査部による業務プロセスのモニタリング、オリックス・
ローンにおいては、周辺家賃相場を基準に空室リスク、金利上昇リ
システムによる技術的な管理策の実施などにより、内部統制を強
スクに加え、将来発生することが予想されるコスト要因を織り込ん
化し、オペレーショナルリスクの管理や軽減を図っています。
だ賃貸収支シミュレーションを作成し返済能力を検証しています。
61
債権管理においては、高額取引を行っているお客様について所
登録代理店に対しては、代理店経営、募集人に対する管理等の観
得状況や賃貸物件の稼働状態、担保の時価などを年4回実施する
点から定期的に業務検査を行い、適正な募集が行われるよう代理
貸出資産自己査定の際に調査し、支払能力と保全状態をフォロー
店の教育・指導を行っています。
しています。また、約定弁済に延滞が生じた債権もしくは正常返
保険契約の引受けに際しては、健康状態の告知、診査結果をも
済中であっても、返済履行の継続に不安のある債権に対しては、
とに厳正な査定をするとともに、
保険募集状況等の確認とあわせ、
その原因、お客様の負債状況、収支状況等を迅速に把握し、適切
不正な契約が入り込まないような手段を講じています。これは、
な回収手段を講じています。
保険契約者間の公平性を確保するとともに、将来の保険関係収支
●カードローン
を左右する重要な業務であると認識し、十分な人員の確保、専門
オリックス・クレジットで取り扱っているカードローンは、融資
知識を持った職員の養成など体制の整備をしています。
限度枠を最大500万円とする無担保ローンです。
個別案件の新規取組については、長年にわたって蓄積してきた
お客様から預かった保険料は、将来の保険金支払等にあてるた
め、責任準備金として法律に定められた金額を積み立てており、
データベースに基づくスコアリングシステムと人的与信のノウハ
その十分性については定期的に検証しています。また、運用にあ
ウの蓄積により、独自に構築した与信モデルを活用しています。
たっては、安定した収益確保を目標としており、適宜リスクの分
与信判断に際しては、所得を中心とした属性、過去の返済状況、
散を行うとともに、信用リスク・市場リスク・流動性リスク等を定
現在の負債状況などお客様の支払能力に影響を与える様々な要
期的にモニタリングし、経営に報告する体制を構築しています。
また、保険事故が発生した場合に、お客様に対し適正に正確に
素を分析し、案件ごとに信用リスクに見合った金利と融資限度額
の条件を決定しています。
カードローン契約は、取組時のお客様の状況に応じて、加盟する数
社の信用情報機関の情報を得て、
3か月から1
2か月ごとに途上審査を
保険金および給付金をお支払いできるように、規定や体制の強化
およびシステム整備をさらに進めています。
●米国
米国では、法人向けファイナンス事業、投資銀行業務および不
実施することで、常にお客様の信用状態をモニタリングしています。
途上審査においては、お客様の属性や負債状況などの変化や自
動産関連事業を行っています。
社・他社を含めた返済履歴などの分析に加え、特に信用状態に劣
リスク管理は、法人向けファイナンス事業、不動産関連事業等の
化が見られたお客様に対しては、カウンセリング活動を通じてお客
投融資業務および米国子会社傘下の Hou
l
i
hanLokeyHoward
様の状況をヒアリングし、より詳細な状況の把握に努めています。
& Zuk
i
n社
(以下 Hou
l
i
hanLokey社)
によるM&A・事業価値評
審査の結果によっては、追加貸出の停止や融資限度額の引下げ
価等に関するアドバイザリー業務それぞれについて、次の枠組みの
など必要な処置を講じ、信用リスクの継続的なコントロールに努
もとで行われています。
めています。
●
投融資業務
なお、
お客様より融資限度額の増額の申し出があった場合には、
営業各部門には専門の審査担当者がいます。また、営業部門と
途上審査と同様に、お客様の属性や負債状況、返済状況を確認し、
は独立したリスク管理担当者がおり、ポートフォリオ管理や信用リ
融資限度額の増額の審査を実施しています。
スクのモニタリングを行っています。新規投融資取組時の決裁権
また、個別の途上与信管理に加え、カードローン債権全体のポー
トフォリオの信用リスクを定期的に管理しています。
限は、金額に応じて駐在役員を含む米国グループ会社のシニアマ
ネジメントの共同決裁を原則とし、一定金額以上の投融資案件に
具体的には、各商品別やお客様属性別、債権状態別など様々な視
ついては投・融資等委員会に委ねられます。また、取組後の個別
点から債権残高や未収状況、貸倒れの状況をモニタリングし、必要
案件、ポートフォリオのモニタリング状況もリスク管理本部に報告さ
なリスクキャピタルを算出しています。また、外部環境、例えば自己
れ、牽制機能が持たされています。個別の投融資案件の新規取組
破産者数の推移や完全失業者数の推移などについても定期的にモ
から、エグジットに至るまでの継続的なモニタリング、およびポート
ニタリングし、将来の信用リスクの変化を予期することでより適切に
フォリオのモニタリングの手段としては、社内格付を採用していま
債権全体の信用リスクをコントロールすることを心掛けています。
す。社内格付は、事業ごとの特性を考慮のうえ基準を設定していま
●生命保険
す。案件の実行後は、各事業部門が社内格付の変更に関する提言
オリックス生命保険の販売チャネルを大きく分けると、インター
を行う責任があります。不良債権に対する引当等については、四半
ネットでの資料請求や申込予約ができるダイレクトチャネルと、募
期ごとに開催されるリスクマネジメント・レビューミーティングで決
集代理店を経由する代理店チャネルがあります。
ダイレクトチャネルでは、インターネット経由で住所や生年月日
定され、その結果はCEOや海外担当の役員に報告されています。
●
アドバイザリー業務
といった個人情報を扱うため、SSL対応、入力したデータを画面
Hou
l
i
han Lokey社では、M&A等のアドバイザリー業務引受
上に残しておかない設定など、個人情報の漏洩防止策を講じてい
の際の基準や手続を定めるコミットメント委員会、事業価値評価
ます。代理店チャネルでは、新規に代理店を登録する際には、委
やアドバイザリー・オピニオンを検討するオピニオン委員会が、
託基準を設け厳正に審査を行っています。登録に際しては、保険
提出する助言や報告等の瑕疵に対して、モニタリングなどのリス
募集に関するコンプライアンスを中心に研修を実施しています。
ク管理の主要な役割を担っています。
62
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