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第17号 - JA 全中

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第17号 - JA 全中
第 17 号 2013 年 9 月 19 日
1.年内妥結を目指すことを強調したフロマン米国通商代表
8月 18~19 日にフロマン米国通商代表が来日し、菅内閣官房長官、甘利 TPP 担当
大臣らと会談し、TPP 交渉の年内妥結に向け、両国が作業を加速化することを再確認
するとともに、並行して日米の二国間協議についても加速させることを確認した。
○
○ また、日本記者クラブにて記者会見を開き、TPP 交渉において日米が協力して高い
水準の協定を達成することの重要性を指摘するとともに、両国の二国間協議において、
日本が非関税措置に対処することを改めて求めた。
<フロマン米国通商代表の発言内容(抜粋)>
➣
日本の自動車、保険市場への参入障壁などの非関税措置は、成長や技術革
新を阻害し、両国の労働者、産業、消費者に損害を与える。
➣
日本が建設的な形で協力し、米国の市場参入を阻害してきた障壁に対処す
ることを期待する。
フロマン米国通商代表
2.年内妥結に向けて交渉を加速化させることに合意したTPP閣僚会合
○ 8月 22~31 日にブルネイで開催された第 19 回TPP
交渉会合の機会を捉え、22~23 日にTPP閣僚会合が開
催され、共同声明が発表された。
TPP関係閣僚による記者会見
○ 声明では、10 月のAPEC首脳会合にあわせて、TP
P交渉参加国の首脳会合を開催することなど、年内妥結
に向けて交渉を加速化していくことが示された。
○ 会合後の記者会見で、甘利TPP担当大臣は、10 月APECでの大筋合意について、
「交渉参加国それぞれが相当な努力をすることが必要」との認識を示した上で、交渉
の年内妥結に向けて最大限努力することで一致したことを明らかにした。
<閣僚による共同声明の概要>
➣
今回のTPP閣僚会合は、交渉官に対して指示を出し、各国の首脳が合意した 2013 年中の妥結
に向けた交渉の推進を後押しするために開催した。
➣
交渉参加 12 カ国の閣僚は、まだ残っているセンシティブで困難な論点の「着地点」など、相互
に受け入れ可能な合意内容を検討した。
➣
10 月のAPEC首脳会議が妥結に向けての「重要な節目」となる。
TPP から日本の食と暮らし・いのちを守るニュースレター(第 17 号)
3.第19回TPP交渉会合の概要
第 19 回TPP交渉会合では、首席交渉官会合のほか、物品市場アクセス、知的財産、
政府調達、競争(国有企業を含む)など 10 分野の分野別会合が行われた。
○
30 日には、鶴岡首席交渉官が記者会見を開催し、10 月のAPECに向けて、市場ア
クセス分野における日本のオファーを不十分とする各国の要求に応じ、自由化率を高
めていく意向を示しており、衆参農林水産委員会および自民党の決議を遵守した交渉
が行われているのかどうかを注視していく必要がある。
○
<鶴岡首席交渉官の発言内容(抜粋)>
鶴岡首席交渉官
➣
6カ国との間で、ブルネイ会合の会期を含めてオファーの交換を行った。ま
た、チリ、ペルーを除く9カ国と物品のオファーについて二国間協議を行った。
➣
物品のオファーの質について更なる改善の余地があるという指摘を受けてい
る。常識的には、相手の要求に応え、自由化の度合いを上げていくことになる。
➣
総理が出席するAPECで、
「日本の貢献もあってよい成果が出た」と評価が
得られることを目指して、全力で努力する。
4.各分野の交渉の状況
○
ブルネイ会合におけるTPP政府対策本部の説明や、これまでの報道等によると、
各交渉分野の現状は以下のとおりである。
物品
市場
アクセス
◆
◆
◆
各国は、日本に対し、より高水準の自由化を求めている。
ブルネイでのTPP閣僚会合後、フロマン通商代表は、TPP参加国は「野心の水準を
上げながらオファーを提案していくプロセスに入ることに合意した」と発言した。
また、9月 20 日から米国・ワシントンで中間会合が行われる予定となっている。
◆
原産地
規則
知的
財産
環境
競争
(国有
企業を
含む)
*
全交渉参加国は、原材料から製品までをTPP域内で完結するのであれば域内関税を認
めるという「累積」のルールを全ての物品について認めることに合意した模様である。
◆ 米国は繊維・衣料品に関して「ヤーン・フォワード原則*」を主張。一方、中国産の原
糸等を多く使用して衣料品を製造・輸出しているベトナムは米国と対立しており、同原
則の例外とする品目リストの調整作業が行われている。
◆
米国は、著作権の保護期間を著者の生存期間プラス 70 年(日本の現行法令では 50 年)
に延長することを提案。
◆
また、米国は、バイオ医薬品の一部について、データ独占期間の長期化を打診している
模様。一方、チリ、NZ、カナダ、豪州、マレーシアは、対案を提出。
◆
ブルネイ会合では、テキストの多数のブラケット(括弧書き、議論中の部分)を外す努
力を継続。現在総則的な部分を外す努力をしている段階で、個別論点には至っていない。
◆
米国は、国内の議会対策を念頭に、「環境関連の多国間取決め」に即して国内法を整備
すること、環境の章をTPPの紛争処理手続の対象とすることを主張。
◆
一方、米国以外は、紛争処理手続のような強制力を有する環境規制ではなく、環境保護
の推進に向けた協力の枠組みを作れば十分と主張。
◆
米国などが撤廃を提案している漁業補助金については、ブルネイでのTPP閣僚会合に
おける甘利大臣の発言を受け、日本の交渉官が非公式に各国に制度説明を行った。
◆
競争の分野では、国有企業の規律が唯一未決着の事項。米国は、民間企業との競争条件
が平等でないとして、国有企業を規制しようとしているが、マレーシアやベトナム、シ
ンガポールは、政策面・経済面で国有企業が重要な存在であり、柔軟なルールを追求。
◆
国有企業の規律に関する議論は、国有企業の定義が合意されていないなど、依然として
基礎のレベルにとどまっている模様。
ヤーン・フォワード原則は、NAFTAや米韓FTAで採用されている原産地規則で、関税減免の対象となる繊維・衣料品を、原糸・綿
から全て域内で生産されたものに限定している。
TPP から日本の食と暮らし・いのちを守るニュースレター(第 17 号)
5.衆参農林水産委員会および自民党の決議を遵守しなければならない
○
TPP交渉参加国は、年内妥結を目指し、交渉を加速化させているが、政府は、拙
速に交渉に突き進むのではなく、国権の最高意思決定機関たる国会の農林水産委員会
決議や、与党自民党の決議に即した交渉方針を早急に確立することが不可欠である。
○
衆参農林水産委員会決議は国権の最高機関である国会の意思表明であり、3月13
日の自民党決議は与党としての国民との約束である。これらの内容と離反する交渉を
進めることは絶対に認められない。その上で、農林水産分野の重要5品目などの聖域
が確保できないと判断した場合には、即刻交渉から脱退しなければならない。
○
また、国民への十分な情報開示を行うとともに、速やかに国内の利害関係者との相
談・協議を行う枠組みを作り上げ、交渉戦略に反映させる必要がある。
衆参農林水産委員会
「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加に関する決議」(一部抜粋)
○ 米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目につい
て、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。・・・段階的な関
税撤廃も含め認めないこと。
○ 残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務・・・、輸入原材料の
原産地表示、BSEに係る牛肉の輸入措置等において、食の安全・安心及び食料の安
定生産を損なわないこと。
○ 濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと。
○ 交渉に当たっては・・・農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、そ
れが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。
○ 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への
十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。
○
なお、わが国がこれまで締結したEPAにおいて、農林水産分野では、重要5品目
をはじめ、834品目について関税撤廃を行っていない。
【これまでわが国が締結したEPAにおいて関税撤廃したことのない品目】
タリフライン数
品目名
品目名
コメ
58
小麦・大麦
牛肉
51
豚肉
乳製品
188
砂糖
雑豆
16
水産品
農林水産品計 834 (全タリフライン数の約9%)
タリフライン数
品目名
こんにゃく
でん粉
合板
109
49
81
その他農水産品
91
(参考)全タリフライン数
タリフライン数
3
50
34
104
9018
出典:農林水産省
TPP から日本の食と暮らし・いのちを守るニュースレター(第 17 号)
6.今後の見通し
○
10 月のAPEC閣僚・首脳会合にあわせて、TPP閣僚・首脳会合が行われる見
通しとなっており、それらの会合に向け、9月 18~21 日にかけて首席交渉官会合が
開催されているほか、分野別の交渉会合(中間会合)の開催が予定されている。
○
ブルネイ会合における閣僚および首席交渉官の共同声明では、10 月のAPEC首
脳会議を「重要な節目」とし、年内妥結に向け交渉を加速化させる強い意欲が示され
たことから、一連の会合を経て、交渉が急に進展していく可能性を警戒しなければな
らない。
○
また、
「政府は、重要5品目の中でも、例えばもちやだんごなどコメの加工品の一部
を「聖域」から外すことも視野に入れる」など、譲歩を示唆する報道もなされている
が、調製品の輸入急増が国内需給に大きな影響を及ぼすことからも、安易な妥協がな
されないよう、今後の動向を一層注視していく必要がある。
【今後のスケジュール】
TPP関連日程
主要な国際日程
9月
18~21 日
TPP首席交渉官会合
(米国・ワシントン)
9月
20 日~
分野別会合(物品市場アクセス)
(米国・ワシントン)
10 月
4~5日
TPP閣僚会合(同右)
APEC閣僚会議
(インドネシア・バリ)
10 月
7~8日
TPP首脳会議(同右)
APEC首脳会議
(インドネシア・バリ)
12 月
3~6日
平成 25 年末
WTO閣僚会合
(インドネシア・バリ)
TPP交渉妥結目標
編集・発行:TPP から日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク
Tel:03-6665-6250 E-mail:[email protected]
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