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平成19年度
東北 食料・農業・農村情勢報告
東北 農 政 局
は
じ
め
に
近年の食料を巡る状況をみると、世界的な人口増加、異常気象による生産減
少、途上国におけるライフスタイルの変化、食用作物のバイオ燃料への転用な
どにより世界の食料需給は逼迫し、農産物の国際価格の高騰や国内の食料品価
格等に大きな影響を与え、かつて経験したことのない変化が起きています。ま
た、食品に対する消費者の信頼を揺るがす事件も発生しました。
このように世界の食料需給が不安定性を増す中、国内農業の振興による食料
供給力強化の必要性がかつてないほど高まっています。
東北は、北海道に次ぐ耕地面積を有し、我が国の食料供給基地として重要な
役割を担っておりますが、農業産出額のうち米の占める割合が高く、米に大き
く依存した生産構造となっており、今後、構造転換が必要となっています。
このような状況の中、東北農政局では、水田経営所得安定対策、米政策改革
推進対策、農地・水・環境保全向上対策の農政改革三対策の着実な推進を図る
とともに、食の安全と消費者の信頼確保、豊かで住みやすい農村の振興などに
取り組んでいます。
このような最近の動きを踏まえ、
「東北の食料・農業・農村情勢報告」では、
第1部で東北食料・農業・農村の動向として、東北地域の農業生産、農地、農
業経営など現状のデータに基づいて整理しました。また、第2部「特集」とし
て、東北の農山漁村活性化の現状と今後の取り組みについて取りまとめました。
本報告書が、東北地域の食料・農業・農村の現状と課題について、御理解頂
く一助となれば幸いです。
平成21年2月
東北農政局長
宮坂
亘
東北 食料・農業・農村情勢報告
<目次>
○
1
トピックス
農政改革三対策の取組…………………………………………………………………………1
(1)水田経営所得安定対策の取組 ……………………………………………………………1
(2)米政策改革推進対策の取組 ………………………………………………………………4
(3)農地・水・環境保全向上対策の取組 ………………………………………………………8
2
食品表示の適正化の取組 ……………………………………………………………………11
3
農林水産物等の輸出促進の取組 ……………………………………………………………13
第1部 東北 食料・農業・農村の動向
Ⅰ 食料自給率の向上と食料の安定供給
1
食料自給率向上に向けた取組 ………………………………………………………………15
(1)食料自給率の動向 …………………………………………………………………………15
(2)東北地域における食料自給率向上の取組 ………………………………………………20
2
望ましい食生活の実現に向けた食育の推進 …………………………………………………24
(1)食生活の動向 ………………………………………………………………………………24
(2)食育の取組 …………………………………………………………………………………28
3
米消費拡大の取組 ……………………………………………………………………………32
4
地産地消の推進 ………………………………………………………………………………35
5
食の安全と消費者の信頼の確保 ……………………………………………………………39
(1)食の安全の確保 ……………………………………………………………………………39
ア
東北におけるGAPの取組状況
イ
農薬の適正使用
ウ
食品安全性向上の取組
(2)消費者の信頼の確保 ………………………………………………………………………43
ア
リスクコミュニケーションと消費者相談への対応
イ
消費者の信頼を確保するための食品表示の適正化
ウ
トレーサビリティ・システムの運用の確保
- Ⅰ -
Ⅱ 農業・食品産業の持続的な発展
1
農業経営の動向 ………………………………………………………………………………49
(1)農家数と農業労働力 ………………………………………………………………………49
(2)農家経済を巡る動き …………………………………………………………………………51
2
担い手の育成・確保 ……………………………………………………………………………53
(1)認定農業者の育成 …………………………………………………………………………53
(2)集落営農組織の育成と法人化の推進 ……………………………………………………54
(3)新規就農者の確保 …………………………………………………………………………56
(4)農業経営への女性の参画 …………………………………………………………………58
3
農地の有効利用 ………………………………………………………………………………62
(1)農地利用の動向 ……………………………………………………………………………62
(2)農地の流動化の動向 ………………………………………………………………………64
(3)耕作放棄地の動向 …………………………………………………………………………66
(4)企業等の農業参入 …………………………………………………………………………68
4
農業生産の動向(品目別) ……………………………………………………………………69
(1)米 ……………………………………………………………………………………………69
(2)麦・大豆・そば ………………………………………………………………………………73
ア
麦
イ
大豆
ウ
そば
(3)野菜 …………………………………………………………………………………………81
(4)果樹 …………………………………………………………………………………………89
(5)畜産・飼料作物 ………………………………………………………………………………93
ア
乳用牛
イ
肉用牛
ウ
中小家畜
エ
飼料作物等
(6)花き及び地域特産農作物 …………………………………………………………………99
ア
花き
イ
たばこ
ウ
ホップ
エ
その他特産作物
- Ⅱ -
5
自然・環境機能の維持増進 …………………………………………………………………105
(1)環境に配慮した食料生産の推進 …………………………………………………………105
(2)バイオマス利活用の取組 …………………………………………………………………110
6
ア
東北のバイオマス利活用の現状
イ
関係機関の連携による推進体制
ウ
バイオマスタウン構想の策定状況
エ
廃棄物系バイオマスの利活用
オ
未利用バイオマスの利活用
カ
資源作物の利活用
農業生産基盤の整備 …………………………………………………………………………118
(1)農業農村整備事業の推進 …………………………………………………………………118
(2)国営土地改良事業地区における営農推進 ………………………………………………120
(3)土地改良区組織の現状と課題 ……………………………………………………………122
7
農業協同組合の体質強化、組織改革 ………………………………………………………123
(1)農協合併の進捗状況 ………………………………………………………………………123
(2)総合農協の事業総利益 ……………………………………………………………………124
8
農業と食品産業との連携 ……………………………………………………………………126
(1)食品産業の動向 ……………………………………………………………………………126
(2)食料産業クラスター形成に向けた取組……………………………………………………130
(3)地域資源を活用した食品産業の取組 ……………………………………………………131
(4)「地域団体商標」を活用した地域ブランド化の取組 ………………………………………133
9
新技術の開発・普及 …………………………………………………………………………134
10
農林水産物等の輸出促進の取組 …………………………………………………………138
(1)輸出の動向 …………………………………………………………………………………138
(2)東北地域の輸出促進の取組 ………………………………………………………………141
(3)産地の売り込み ……………………………………………………………………………141
- Ⅲ -
Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興
1
農村の現状 ……………………………………………………………………………………143
2
中山間地域等の振興 …………………………………………………………………………145
(1)中山間地域の現状 …………………………………………………………………………145
(2)中山間地域等直接支払交付金 ……………………………………………………………148
3
農村の生活環境の整備 ………………………………………………………………………149
(1)農道の整備 …………………………………………………………………………………149
(2)農業集落排水の整備 ………………………………………………………………………150
(3)地域用水機能に配慮した農業用水路の整備 ……………………………………………151
4
都市と農村の共生・対流 ……………………………………………………………………152
(1)共生・対流の動向 …………………………………………………………………………152
(2)グリーン・ツーリズムの推進 ………………………………………………………………152
(3)市民農園 ……………………………………………………………………………………153
5
農作物鳥獣被害対策の展開 …………………………………………………………………155
Ⅳ 農業災害の状況
…159
- Ⅳ -
第2部 東北の農山漁村活性化の現状と
これから
序章 ………………………………………………………………………………………………161
Ⅰ
東北の農山漁村の現状
1
東北地域の経済、農業の現状 ………………………………………………………………162
2
農山漁村の現状 ……………………………………………………………………………165
3
農山漁村をとりまく情勢 ……………………………………………………………………169
Ⅱ
地域資源を活用した農山漁村活性化の取組
1
地域資源の活用状況 ………………………………………………………………………172
2
多様な農林水産物を核とした活性化の取組 ………………………………………………174
3
自然環境や伝統文化などを核とした取組 …………………………………………………178
4
新たな手法による活性化の取組 ……………………………………………………………182
Ⅲ
農山漁村活性化に向けた各種支援施策の整備
1
農山漁村活性化法の制定 …………………………………………………………………184
2
地域活性化統合本部による省庁横断的、施策横断的支援策の推進 …………………187
3
農林水産省関連の省庁横断的・施策横断的取組 ………………………………………189
Ⅳ
今後の農山漁村活性化の取組方向
~省庁横断、施策横断的な取組の推進~
…195
用語等解説 ………………………………………………………………………………………200
- Ⅴ -
トピックス
-この1年の特徴的な動き-
1
農政改革三対策の取組
2
食品表示の適正化の取組
3
農林水産物等輸出促進の取組
○ トピック ス
○ トピックス
1 農政改革三対策の取組
(1)水田経営所得安定対策(品目横断的経営安定対策)の取組
新たな経営所得安定対策がスタート
我が国の土地利用型農業においては、農業従事者の減少・高齢化等により、農業の生
産構造のぜい弱化が進むなかで、その体質強化を加速化し、担い手の創意工夫の発揮と
消費者ニーズに応えた生産を促進して、食料の安定供給を図ることが最大の課題となっ
ている。
このような状況に対応するため、土地利用型農業における米、麦(小麦、二条大麦、
六条大麦、裸麦の4麦)、大豆を対象に、その担い手の経営の安定を図るための水田経営
所得安定対策(品目横断的経営安定対策)が、平成19年4月から導入された。
東北農政局では、本対策の円滑な導入と加入推進に向けた取組として、加入を働きか
けるチラシを作成・配布するとともに、関係機関との意見交換会、集落座談会や出張受
付を積極的に開催した。なお、19年産米の加入推進にあたっては、稲作所得基盤確保対
策(稲得)加入面積の5割以上を目標とした。
水田経営所得安定対策の内容
- 1 -
○ トピック ス
【稲作所得基盤確保対策の概要】
・交付対象者は、集荷円滑化対策に対し拠出を行っている生産調整実施者。
・国と生産者が、それぞれ基準価格の2.5%を拠出し、さらに国は価格補てんの固定
分として、300円/60kgを拠出。
・対策に加入した生産者(生産調整実施者)は、基準価格よりも米価が下落したと
き、その下落分の5割+固定額が補てんされる。また、米価が基準価格を上回る
場合でも、生産調整のメリットとして、基準価格+300円まで補てんされる。
19年産米の加入申請面積は14万1,286ha
管内の19年産の加入申請状況は、19,871経営体(うち認定農業者18,294経営体、集落
営農組織1,577経営体)からの申請があり、米は稲得加入面積の5割(13万3,591ha)を
超える14万1,286ha(19年産作付面積の33%)、大豆28,798ha(同76%)、4麦9,003ha(同
94%)となった。
平成19年産水田経営所得安定対策の加入申請状況
加入面積(ha)
認定農業者
集落営農組織
割合(%)
割合(%)
米
11,553
85.6
1,943
14.4
青森県
2,595
大豆
1,841
55.6
1,468
44.4
4麦
1,634
85.9
267
14.0
米
9,367
46.7
10,685
53.3
岩手県
2,178
大豆
1,122
43.3
1,469
56.7
4麦
1,372
40.0
2,058
60.0
米
11,940
49.6
12,147
50.4
宮城県
2,757
大豆
3,073
32.6
6,355
67.4
4麦
1,191
42.9
1,586
57.1
米
27,995
68.9
12,629
31.1
秋田県
5,781
大豆
4,522
66.4
2,293
33.6
4麦
280
95.6
13
4.4
米
22,850
67.7
10,902
32.3
山形県
4,913
大豆
3,435
60.1
2,277
39.9
4麦
99
78.0
28
22.0
米
8,490
91.5
785
8.5
福島県
1,647
大豆
532
56.5
410
43.5
4麦
402
84.8
72
15.2
米
92,194
65.3
49,091
34.7
東北計
19,871
大豆
14,526
50.4
14,272
49.6
4麦
4,978
55.3
4,024
44.7
米
330,538
75.7 106,331
24.3
全国計
72,431
大豆
70,353
63.9
39,721
36.1
4麦
187,293
73.8
66,567
26.2
資料:東北農政局担い手育成課調べ。
県 名
品 目
経営体数
- 2 -
計
13,496
3,309
1,902
20,052
2,591
3,430
24,087
9,429
2,777
40,624
6,815
293
33,752
5,712
127
9,275
942
474
141,286
28,798
9,003
436,869
110,073
253,860
○ トピック ス
生産現場からの様々な意見を踏まえ、対策の一部見直し
新たに導入された経営所得安定対策等については、生産現場では制度に関する普及・
浸透が十分でなかったことなどから、様々な誤解や、多くの不安、不満が出された。
このため、19年産から導入された本対策をはじめ農政改革三対策について、生産現場
からの多くの意見を踏まえ、実態に即した必要な改善等を行いつつその着実な推進を図
っていくため、「農政改革三対策の着実な推進について 」(農林水産省農政改革三対策緊
急検討本部)が19年12月に決定された。
具体的には、①面積要件の見直し(市町村特認制度の創設)、②集落営農組織に対する
法人化等の指導の弾力化、③収入減少影響緩和対策の充実、④交付金支払い時期の前倒
し、申請手続の簡素化、申請時期の集中化、⑤名称の変更等の見直しが行われた。
20年産の加入推進に向けては、関係機関及び対象者に対し、市町村特認制度の活用の
周知を図るなど、新規加入の推進を図った。
水田経営所得安定対策の見直しのポイント
○名称の変更
(旧)品目横断的経営安定対策
→
(新)水田・畑作経営所得安定対策(北海道向け)
水田経営所得安定対策(都府県向け)
○面積要件の見直し(市町村特認制度の創設)
面積要件の原則や特例に該当しない者でも、「地域水田農業ビジョン」に位置付けられて
いる地域の担い手については、市町村の判断で本対策への加入の途を開く。
○認定農業者の年齢制限の廃止・弾力化
市町村が独自の判断基準として認定農業者の要件に年齢制限を設けている場合、意欲ある
高齢農業者が排除されないよう年齢制限の廃止または弾力的な運用を指導。
○集落営農組織に対する法人化等の指導の弾力化
集落営農組織は、実態として多様な形態や段階にあるため、その法人化や主たる従事者の
所得目標等の要件にかかる現場での指導が、組織の実態等を踏まえ画一的なものや行き過ぎ
たものとならないよう要領等で明記。
○先進的な小麦等産地の振興
近年、単収向上が著しい先進的な小麦産地やてん菜産地の安定生産を支援。
○収入減少影響緩和対策の充実
19年産において10%を超える収入減少があった場合には、その10%を超える部分について、
農家の積立金拠出なしに国の負担分による補てんが行われるよう特別に措置。20年産以降は、
農家の選択 により、10%を超える収入減少に備えた積立金拠出が行える仕組みを整備。
○集落営農への支援
集落リーダーの諸活動、融資やリースを活用した機械・施設の整備等に対する支援を充実。
○農家への交付金の支払の一本化、申請手続の簡素化等
○用語の変更による誤解の解消
- 3 -
○ トピック ス
(2)米政策改革推進対策の取組
新たな需給調整システムへ移行
平成16年度からスタートした米政策改革では、22年度までに消費者重視・市場重視の
考え方のもと、需要に応じた米づくりが行われ安定供給が図られる「米づくりの本来あ
るべき姿」の実現に向けて、取組を進めているところである。
16年度から改革の第1ステージとして、消費者重視・市場重視の考え方のもとに、農
業者・農業者団体が市場をとおして需要の動向を敏感に把握し、客観的な需要予測に基
づく生産の目標数量の設定へと移行した。
第2ステージの19年度からは、水田において新たな経営所得安定対策が導入されるこ
とを踏まえ、米の生産調整支援対策について所要の見直しを図った。また、需給調整に
ついては、農業者・農業者団体の主体的なシステムへ移行し、国が定める全体の需給見
通しを踏まえ、農業者団体等が生産調整方針を定め、この方針に参加する農業者に生産
数量目標を配分するシステムとなった。
地域水田農業推進協議会(地域協議会)は、農業者・農業者団体の主体的な需給調整
が行われるよう、生産調整方針作成者(米穀の生産調整に関する方針を作成した農業者
団体等)から方針参加農業者へ生産数量目標を配分するに当っての一般ルールの設定を
することになっている。その際、需要に応じた米づくりや担い手育成に配慮した設定が
重要である。担い手育成等に配慮して一般ルールを設定した地域協議会は、県別にばら
つきがあるものの、東北としては比率が微増している。
配分の一般ルール設定状況
都道府県
青 森
岩 手
宮 城
秋 田
山 形
福 島
東北計
認定農業者、担い手等考慮した実施地域協議会の
全協議会に対する比率
平成16年産米
(参考)
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
17年産米
15.4
38.2
14.8
5.7
43.2
32.9
31.3
19年産米
28.3
51.3
8.2
7.7
55.8
42.4
33.8
注:宮城については、協議会の合併により担い手等考慮の比率が低下している。
東北農政局では、新システムに円滑に移行するために、東北農政局米政策改革推進チ
ームにおいて「米生産改革推進対策に基づく当面の取組について」を策定するとともに、
局食糧部計画課、各地方農政事務所において、各県域の実情等を踏まえた行動計画を作
成し、「平成19年産からの新たな需給調整システムについて(通称:虹のパンフ)」、局
独自パンフレット等を活用し、担い手育成・確保運動と連携を図り、推進活動に取り組
んだ。
- 4 -
○ トピック ス
主食用米の要削減面積拡大と生産調整の実効性確保
東北における作付面積目標は、主食用の需要量の減少に伴い、毎年拡大されてきた生
産調整に関係者が真剣に取り組んできたが作付面積の減少が追いつかず、19年産米では
作付目標面積が39万7千haに対し、実作付面積は約42万2千haと、約2万5千haの過剰
作付となった。また、19年産米価は東北の多くの銘柄で大幅に下落した。
20年産米の作付目標面積は約38万8千haで、20年産の需要量減少分の1万haと19年産
米の過剰作付分2万5千haを合わせ、19年産米実作付面積から約3万5千haの削減が必
要な状況となっている。
このような過剰作付の状況が改善されなければ、さらに米価が下落し、経営規模の大
きい農業者を直撃するだけでなく、小規模・高齢者を含めて多数の農業者の経営や地域
経済に大きな影響を及ぼすおそれがあることから、過剰生産の主食用米から不足してい
る麦・大豆等への転作や非主食用米等による水田の有効活用を図ることが重要である。
生産調整の実効性確保に向けて、生産調整に対する理解が国民に浸透するよう働きか
けることや生産調整非参加者が多い県に対して個別の働きかけを行うなどしている。
東北の主食用米の作付実績と平成20年産要削減面積
東 北
千 ha
45 0
作
付
面
積
42 5
実 作 付 面 積
421.7
429. 6
430 .0
42 6.8
4 22.4
過 剰 作 付 分
約 25千 ha
要 削 減 面 積
約 3 5千 ha
40 0
37 5
作 付 面 積 目 標
414.6
416. 1
415 .0
40 5.9
3 97.4
作 付 面 積 目 標
387.6
19
20
3 5 00
1 5
16
17
年 産
18
注:1) 生産目標換算面積は、生産目標数量をそれぞれの平年収量で除して面積換算した値である。
注:2) 水稲面積(実作付面積)は、統計部公表の水稲作付面積から加工用米取り組み数量を平年収
量で除して面積換算した値と、配分基準単収の設定要因による過剰分を控除したものである。
「当面の生産調整の進め方」のポイント
○
生産調整に関する行政の関与
行政(国・都道府県・市町村)も、農協系統等と適切に連携し、全都道府県・全地域で生産調整目
標を達成するよう全力をあげる。
○
生 産 調 整 実 施 者 の メ リ ッ ト 【 19 年 度 補 正 予 算
500 億 円 】
生 産 調 整 を 10 万 ha 程 度 拡 大 す る た め 、
①
麦、大豆、飼料作物等により生産調整を拡大する農業者に対し、地域協議会との5年契約を前
提に、
・ 19 年 産 の 生 産 調 整 実 施 者 に つ い て は 5 万 円 / 10a
・ 19 年 産 の 生 産 調 整 非 実 施 者 に つ い て は 3 万 円 / 10a
の「緊急一時金」を「踏切料」として支払う。
②
飼料用米、バイオエタノール用米など非主食用米の低コスト生産技術を確立使用とする農業者
に 対 し 、 地 域 協 議 会 と の 3 年 契 約 を 前 提 に 、 5 万 円 / 10a の 「 緊 急 一 時 金 」 を 「 踏 切 料 」 と し て
支払う。
○
20 年 産 の 生 産 調 整 未 達 成 の 都 道 府 県 ・ 地 域 等 へ の 対 処
未達成となった都道府県等については、補助金等について不利な取扱いを受けることがあり得る。
そ の 具 体 的 な 取 扱 い に つ い て は 、 20 年 産 の 生 産 調 整 の ス テ ー ジ ご と の 推 進 状 況 ・ 達 成 状 況 等 を 見 な が
ら、適切なタイミングで決定する。
- 5 -
○ トピック ス
地域水田農業ビジョンに基づき、「売れる米づくり」等を意識した産地づくり対策を実践
米政策改革を推進するための産地づくり対策では、地域自らの発想、戦略と地域の合
意により作物の生産、販売、担い手、水田利用の将来方向を明確化した「地域水田農業
ビジョン」を策定することとなっており、東北農政局管内では、19年3月現在、237の地
域協議会でビジョンが策定され、各地域でその実現に向けた多様な取組が行われている。
ビジョンに掲げられた主な課題は 、「担い手の育成」(36%)、「転作作物の生産拡大」
(15%)、「転作作物の低コスト化」(12%)で、「米づくり」から「転作作物」を意識し
た取組が増えてきている。なお 、「米の販売促進 」(6% )、「転作作物の高品質化」(5
%)、「転作作物の販売促進 」(4%)を最重点事項に掲げているビジョンは僅少にとど
まっている。
19年度は、引き続き、現場での意識改革を推進することにより、地域水田農業ビジョ
ンの点検・見直し、農業者・農業者団体の主体的な需給調整への円滑な移行等を通じた
需要に応じた「売れる米づくり」の体制整備等の促進を図った。
<事例>
東北における特徴的な地域水田農業ビジョンの事例
①
特徴ある米づくり、販売戦略を盛り込んだもの
―環境保全米を中心とした産地間競争力の強化―
(宮城県・登米市水田農業推進協議会)
○JAの統一栽培指針に基づき、地域全体で環境保全米(有機及び特別栽培米等)の作付
を推進
○環境保全米の面積拡大と高品質・良食味米生産に取り組み、トレーサビリティの完全実
施と消費者との交流を促進
②
特徴ある米の生産調整、米以外の作物の販売戦略を盛り込んだもの
―だだちゃ豆(枝豆)を主体とした地域特産物による産地づくり―
(山形県・鶴岡市水田農業推進協議会)
○伝統的な在来種であるだだちゃ豆の本格生産を図るため、各種検討会や研修会に取り組
むとともに商標使用権を取得
○だだちゃ豆を主体とした産地づくりをさらに進めるため交付金等による生産拡大のため
の取組を強化
③
特徴ある担い手の育成を盛り込んだもの
―農家組合を母体とした集落営農の確立―
(岩手県・花巻地方水田農業推進協議会)
○155の農家組合全てで集落水田農業ビジョンを策定し、担い手に土地利用の集積を図る体
制を確立
○担い手農業者育成のため、利用集積に対して米生産目標数量の優遇・産地づくり交付金
の重点配分
- 6 -
○ トピック ス
産地づくり交付金の担い手育成・確保に対する活用は道半ば
地域水田農業ビジョンの実現に向けた取組を支援するための産地づくり交付金の活用
状況は、東北地域全体では、「転作作物の振興」にかかる用途に52%(H17:58%)、「土
地利用の集積(農地の流動化及び作業受委託)」にかかる用途に38%(H17:11%)が配
分される計画となっている。
また、担い手であることを要件とし、「担い手の育成・確保」に配慮した取組は、全体
の37%(H17:26%)にとどまっている。県別では、岩手県は産地づくり交付金の52%
(H17:48%)が担い手の育成・確保のために供される計画となっているのに対し、福
島県では15%(H17:8%)にとどまっている。
産地づくり交付金の使途別の配分割合(平成19年度計画・金額ベース)
東 北
青 森
岩 手
宮 城
秋 田
山 形
福 島
転作作物作付け
52%
79%
70%
20%
48%
66%
33%
土地利用の集積(農
地流動化・作業受委
託)
38%
15%
17%
77%
43%
24%
44%
9%
6%
13%
3%
9%
11%
23%
37%
29%
52%
52%
31%
23%
15%
その他
上記のうち、担い手
であることを要件と
したもの
資料:東北農政局調べ。
注:その他の使途には、耕畜連携、地産地消、高品質化の取組等が含まれる。
なお、17年度と19年度の配分の状況を比較すると、それぞれの地域の創意工夫により、
転作作物の生産拡大や担い手の育成に重点的に予算を配分し、地域の産地づくりに対す
る支援が行われている。今後は、さらに進めて「転作作物の生産拡大」から「本作化」
へ向け、助言等を行う必要がある。
また、20年1月に改正された水田経営所得安定対策(旧:品目横断的経営安定対策)
においては、市町村特認制度が創設され、地域農業の担い手として「地域水田農業ビジ
ョン」に位置づけられている認定農業者や集落営農組織について、本対策への加入の道
が開かれた。このことから、今後ともビジョンに位置づけられた担い手を着実に認定農
業者等へステップアップさせるための産地づくり交付金の活用策を検討するとともに、
地域の水田農業の将来像をきちんと検討したうえで、適切な担い手をビジョンに位置づ
けるよう助言・指導を行っていく取組が必要である。
- 7 -
○ トピック ス
(3)農地・水・環境保全向上対策の取組
農地・水・環境保全向上対策が本格実施
地域において農地・水・環境の良好な保全と質的向上を図るため、地域ぐるみでの効
果の高い共同活動と、農業者ぐるみでの先進的な営農活動を、一体的かつ総合的に支援
する「農地・水・環境保全向上対策」が平成19年度より実施された。
東北農政局では、18年4月に設立した「経営安定対策等推進本部農地・水・環境保全
向上チーム」及び県域ごとに設置された「推進チーム」が指導・支援を行った。
また、19年12月に活動組織が行う事務負担を軽減するため、提出書類の大幅な簡素化
等を図ることとした。
管内231市町村の8割にあたる180市町村で取組、共同活動は3,237組織、28万haで実施
19年度は、東北管内の231市町村の8割(77.9%)にあたる180市町村で本対策に取り
組まれた。
市町村の取組状況
東北
県名
青森県
市町村数
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
40
35
36
25
35
60
231
(100%)
取り組んでいる
26
27
23
25
32
47
180
(78%)
取り組んでいない
14
8
13
-
3
13
51
(22%)
資料:東北農政局調べ
注:市町村数は、平成19年1月1日時点。
共同活動は、管内6県で3,237組織が設立され、取組面積では全国(約116万ha)の24
%に当たる約28万haで取り組まれた。そのうち営農活動は、管内6県で389組織(約1万
5千ha)で取り組まれた。
また、共同活動の取組面積は、東北における農振農用地面積(87万ha、全国の20%)
対して33%占めている。全国平均は20%であることから東北では積極的に取組が実施さ
れた。
共同活動及び営農活動の組織数、取組面積
活動組織数
取組面積(ha)
うち営農活動
うち営農活動
青森県
岩手県
380
410
17
108
33,319
41,476
577
4,040
宮城県
517
97
43,885
4,124
秋田県
山形県
709
627
32
119
63,359
64,104
2,330
3,443
福島県
594
18
35,444
452
東北計
3,237
391
282,587
14,966
資料:東北農政局調べ(平成20年3月末時点)
- 8 -
○ トピック ス
農振農用地面積に占める取組面積(共同活動)割合
区 分
農 振 農 用 地 面 積
取 組 面 積
割 合 (% )
8 7 万 h a
2 8 万 h a
3 3 %
4 0 府 県
( 東 北 除 き )
2 3 6 万 h a
6 2 万 h a
2 6 %
北 海 道
1 1 7 万 h a
2 6 万 h a
2 2 %
全 国
4 4 0 万 h a
1 1 6 万 h a
2 6 %
東 北
資料: 取組面積:東北農政局調べ
農振農用地:農林水産省統計部「平成18年農業資源調査結果」
東北における農振農用地に占める取組面積割合
%
60
5 1.1 %
50
40
30
4 2.2 %
35 .9%
2 1 .9 %
25 .5%
青森県
岩手県
32 .8%
2 2.8 %
20
10
0
資料: 取組面積:東北農政局調べ
宮城県
秋 田県
山形県
福島県
東北
農振農用地:農林水産省統計部「平成18年農業資源調査結果」
設立された共同活動組織には個人農業者が23万7千人が参加しており、これは東北の
農業就業人口(62万1千人)の4割に相当する。
対策を実施して良かったと9割が回答。7割が担い手の維持管理作業負担軽減になると回答
19年9月に活動組織の代表者(全体の約15%、476人から回答)を対象にアンケート調
査を実施した結果によれば、96%がやって良かったと回答している。また、共同活動が
担い手の維持管理作業負担軽減の手助けになると70%が回答しており、新たな経営所得
安定対策との「車の両輪」の位置付けが浸透しつつある。
また、共同活動によって醸成された集落の協調意識が集落営農や利用集積の合意形成
に必要かについては、77%が必要と回答し、本対策の目的の一つである「地域の輪(結
い)」に期待をしていると伺える(事例参照)。
活動組織代表者へのアンケート実施結果
◆対策を実施しての感想
やらない
方がよ
かった。
4%
まあまあ
やって
良かっ
た。 46%
やって
良かっ
た。
50%
◆共同活動によって醸成された
集落の協調意識が集落営農や
利用集積の合意形成に必要か
必要だと
思わな
い。
8%
分からない
15%
必要だと
思う。
77%
資料:東北農政局調べ
- 9 -
◆共同活動が担い手の維持
管理作業の負担軽減の手助
けになるか
手助けに
なると思
わない。
18% 手助けに
分からない
なると思う。
15%
33%
まあまあ手助け
になると思う。
37%
○ トピック ス
<事例>
農地・水・環境保全向上対策
【共同活動】
樽見内地域資源保全委員会(秋田県横手市)
秋田県南東部で活動するこの保全委員会は、「小さな輪(和)から大きな広がり
そして
目指すは『結い』の復活!」をスローガンに地域ぐるみで活動を実施している。
転作田だったところに「何かおもしろい事は出来ないか!農村のパワーをPRできない
か!」と考えていたところ、若手の花き農家の提案企画で大規模な景観作物植栽が実現し
た。
〔地区概要〕共同活動
対象面積
237.6ha(水田229.9ha、畑7.7ha)
営農活動
対象面積
144.2ha(水田140.7ha、枝豆 3.5ha)
【営農活動】
常盤地区11活動組織(青森県藤崎町)
藤崎町常盤地区(旧藤崎村)では、従来から低農薬米の生産販売を開始するなど、食の
安全・安心に寄せる意識が高い地域である。栽培基準を統一、有機JAS及び特別栽培米
の栽培を開始し、平成16年度に「あおもり有機の郷づくり地域」の指定を受け環境に優し
い農業の推進に取り組んできている。
水稲の化学肥料・化学合成農薬を5割以上低減する取組は、19年度には約347ha(先進的
営農支援取組対象面積)と常盤地域の水稲栽培面積(約700ha)の半分以上で実施している。
〔地区概要〕営農活動
旧常盤村の11活動組織(常盤環境保全会、若松環境保全会、榊環境保全会、
徳下地区環境を守る会、三ツ屋環境保全会、福島環境保全協議会、水木環境保
全会、福左内グリーンクラブ、久井名舘保全会、富柳保全会、福舘保全会)
対象面積
895ha うち先進的取組面積
- 10 -
水稲347ha
○ トピック ス
2 食品表示の適正化の取組
食品表示に対する関心の高まり
食の安全・安心が注目されるなか、産地の偽装をはじめ多くの不適切な表示が発覚し、
食品の表示に関する国民の不安が強まっている。
東北農政局及び管内地方農政事務所の食品表示110番(広く国民から食品の偽装表示や
不審な食品表示に関する情報などを受けるためのホットライン)窓口の受付状況は、こ
こ数年増加傾向にあったが、とりわけ、平成19年度の個別事案に関する情報提供の受付
件数が18年度の約3倍(274件)に増加するなど、食品表示に対する国民の関心がますま
す高まっている。
管内の主な不適正表示案件
平成19年8月
〃 11月
平成20年3月
生鮮食品(アサリ)の産地の虚偽表示が確認され、県知事が指
示・公表。
食肉加工品(ショルダーベーコン)のJASマーク不正使用が確
認され、東北農政局長が刑事告発。
生鮮食品の名称の虚偽表示(アブラボウズをクエと表示)が確認
され、県知事が指示・公表。
関係機関と連携した監視活動、情報共有
食品表示については、東北農政局本局及び管内地方農政事務所の表示・規格課と、各
県、公正取引委員会東北事務所、(独)農林水産消費安全技術センター仙台センター等の
関係行政機関と連携のもと、適正な表示を確保するための監視活動に取り組んでいる。
販売業者に対する表示状況調査や食品表示110番窓口等に提供された情報により、必要に
応じ立入調査等を行い食品表示の適正化を図るなど、消費者が安心して商品を選択でき
るよう取り組んでいる。
食品の表示・広告等にかかる情報については、東北ブロック関係行政機関等相互の連
携の強化と情報共有を図り、各機関の業務の円滑な運営を図ることを目的とした食品の
表示・広告等にかかる「東北地域行政機関等連絡協議会」を19年11月に設置し、関係制
度の啓発と普及を進めている。
「食品の表示・広告等に係る東北地域行政機関等連絡協議会」を設置
(事務局:東北農政局 設置:平成19年11月8日)
東北ブロック行政機関及び関係機関相互の連携強化
構成機関
東北経済
産業局
公正取引委
員会事務総局
東北事務所
活動内容
東北厚生局
連携と情報の共有化 東北農政局
(事務局)
宮城県
(独) 農林水産
(食とくらしの
安全推進課)
消費安全技術セ
ンター仙台センター
- 11 -
1.所管法令に関する各種情報提供(制度
改正の動き、所管法令等の各種研修テ
キスト等の提供)
2.主要事案に係る対応の検証
3.セミナーの共同開催、講師派遣等の相
互協力
4.合同研修会(職員向け)
5.共通パンフレットの作成
6.緊急連絡体制の整備
○ トピック ス
20年度には、不適正な食品表示に関する監視を強化するため、各県に食品表示監視協
議会、東北ブロックには東北ブロック食品表示連絡会議を設置し、情報の共有はもとよ
り不適切な食品表示への対応を強化することとしており、食品表示の適正化に向けて、
監視・指導、啓発等広範にわたる対応を行っていくこととしている。
業者間取引の表示の義務化
食品表示に対する消費者の信頼確保に向けて、加工食品の原料供給者の不正行為等の
抑止力を高めるため、20年4月から「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する
法律」(JAS法)に基づく品質表示基準の適用範囲を拡大し、すべての加工食品につい
て生鮮食品と同様、業者間の取引に対しても表示義務が課されることとなった。
このため、東北農政局では、食品の業者間取引の表示に関する説明会(管内20カ所)
を開催するとともに、食品表示フォーラム(11月・仙台市)、食品品質表示セミナー等の
開催等に協力し、事業者、消費者に対する制度の説明と普及に努めた。
食品事業者のコンプライアンスの徹底
食の安全や信頼性に対する消費者の不安が生じているなか、正しい食品表示を徹底す
るためには、まずは、食品事業者の意識改革が必要であることから、食品産業界に対し
ては、食品事故の発生を未然に防止する製造管理や事故発生時における危機管理等、適
切なリスク管理やそれらが着実に実施されるためのコンプライアンス(法令遵守。企業
がルールに従って公正・公平に業務を遂行すること。)の徹底が求められている。
農林水産省では、消費者の食に対する信頼を確実なものとするため、食品製造や外食
産業に携わる各企業において、その社会的責任を十分に踏まえた消費者重視の経営が遂
行されるように経営者の意識を高めることを目的として、19年4~6月、10~12月にか
けて全国19地区で食品産業トップセミナーを開催した(3,404名が参加)。そのうち、東
北管内においては、仙台市内で2回(5月及び11月)開催し、225名が参加した。
- 12 -
○ トピック ス
3 農林水産物等の輸出促進の取組
我が国の農林水産物等の輸出額は増加
世界的な日本食ブームの広がりやアジア諸国等における経済発展に伴う富裕層の増加
等により、我が国の農林水産物や食品の輸出は近年増加傾向で推移している。
輸出額は、平成16年以降、毎年前年比10%以上を超える伸びを示し、19年には前年よ
り16%増加する4,337億円となっている。
東北においては、りんご、ながいも、コメ、りんどう、日本酒といった多様で高品質
な農林水産物や食品を、主に東アジア諸国へ輸出する取組が行われ、新規に輸出に取り
組む生産者・食品事業者等が増えているとともに、主要品目の輸出数量が伸びている。
東北地域農林水産物等輸出促進戦略の策定
農林水産物等の輸出促進は、「食料・農業・農村基本計画」で重要な施策の一つに位置づ
けられている。17年4月に設置された「農林水産物等輸出促進全国協議会」では、輸出
拡大目標として5年間で農林水産物・食品の輸出額を6千億円に倍増させることを掲げ、
官と民が一体となった取組を推進している。18年9月には、この取組をさらに加速させ、
25年までに1兆円規模とする目標が定められた。
東北地域においても、輸出促進の盛り上がりを受け、17年9月に、県、関係団体、関
係省地方機関等45会員による「東北地域農林水産物等輸出促進協議会」を設立した。19
年6月の総会では、全国1兆円規模の目標を達成するために、東北地域の具体的な輸出
促進品目とその推進方策を取りまとめた「東北地域農林水産物等輸出促進戦略」
(以下「戦
略」という)を策定した。
東北地域農林水産物等輸出促進戦略の輸出拡大品目
〔1〕主力品目の拡大(5品目)
-量的拡大・新たな輸出先国の拡大-
品 目
りんご
ながいも
県 名
青
山
青
山
森 岩手 秋田
形 福島
森 岩手 秋田
形
輸出先国・地域
量的拡大
新規開拓
台湾
中国
香港
アメリカ
タイ
品 目
EU ロシア
台湾
県 名
輸出先国・地域
岩手
中国
青森 秋田
香港 台湾
山形
台湾
さけ
なまこ
りんどう
岩手
オランダ
米
岩手 宮城 秋田
山形 福島
アメリカ 台湾
香港
EU
中国
日本酒
秋田
アメリカ
EU
りんごジュース
東南アジア
果物ゼリー
ワイン
〔 2 〕 育 成 品 目 の 拡 大 ( 16品 目 )
-輸出数量は少ないが、積極的に輸出推進-
〔 3〕新規品目の挑戦(5品目)
-輸出数量ないが、今後推進予定-
品 目
県 名
輸出先国・地域
品 目
県 名
輸出先
もも
山形 福島
台湾 香港 タイ
牛肉
岩手
ア メリ カ
おうとう・西洋なし
山形
チーズ
岩手
中 国
家きん肉
秋田
香 港
台湾 香港
かき
福島
宮城
ハワイ
ぶどう
秋田 福島
台 湾 香 港
山形 福島
香港 台湾
マッシュルーム
山形
台 湾
宮城
タイ
干し柿
日本なし
福島
中国 香港 台湾
いちご
宮城
香港
メロン
秋田 山形
台湾 香港
秋田
台湾
秋田
韓国 中国
すいか
やまのいも
木材
※右上に続く
- 13 -
○ トピック ス
戦略では、既に相当の実績がある主力品目、輸出実績は少ないが拡大に取り組む育成
品目、今後推進予定である新規品目を決定して輸出拡大に取り組むとともに、県間、他
機関との連携による組織的取組を推進することとしている。
相談窓口設置、商談会等開催、リーフレット作成等により東北地域の輸出拡大を支援
19年6月に策定した戦略に基づき、「農林水産物等輸出相談窓口」の開設、東北産輸出
農林水産物等を海外の消費者に紹介するリーフレットの作成・配付、海外を活動拠点と
する国内外の食品バイヤーを招聘した商談会やシンポジウム等の開催による販路創出・
拡大、普及啓発活動等、輸出促進の取組を行った。
○
「農林水産物等輸出相談窓口」の開設(19年6月15日)
東北地域農林水産物等輸出促進協議会の組織的なバックアップのもと、東北農政局に
輸出相談窓口を開設して、輸出に意欲ある農林漁業者、団体等からの相談にワンストッ
プで対応できる体制の構築を図った。
○
農林水産物・食品オリエンテーションの会の開催(19年11月13日)
東北地域では、各県が活発に輸出促進の取組を行っている
が、海外で開催される国際見本市に赴き、バイヤーと直接商
談し貴重な情報を得る方は、まだ限られている状況である。
このため、海外を活動拠点とする
農林水産物・食品のバイヤーの方
々を仙台市に招いて、輸出に関す
るノウハウを提供するセミナー、
商談会の様子
パネルディスカッションを開催するとともに、生産者・食品
事業者等が輸出希望商品をバイヤーに売り込む商談会、試食
試食会の様子
○
会を開催して輸出拡大を図った。
海外消費者等向けリーフレット(英語、中国語、タイ語、アラビア語、ロシア語版)
の作成・配付(19年12月、20年3月)
東北地域農林水産物等輸出促進協議会構成員が協
力して、東北地域の輸出農林水産物等を海外の消費
者等にPRするためのリーフレットを作成した。各
県が行う海外での販売促進フェア等で配付するとと
もに、農林水産物等海外販路創出・拡大事業により、
アジア8都市で展開する日本産農林水産物・食品を
販売する常設店舗に設置して、東北産輸出農林水産
物等の知名度向上を図った。
日本語版
- 14 -
中国語版
第1部
東北
食料・農業・農村の動向
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
Ⅰ 食料自給率の向上と食料の安定供給
1 食料自給率向上に向けた取組
(1)食料自給率の動向
日本のカロリーベース食料自給率は40%、主要先進国の中では最低水準
我が国のカロリーベースの食料自給率は、昭和40年度の73%から平成10年度には40%
に低下した。その後、8年間横ばいで推移し、平成18年度には、砂糖類、いも類・でん
ぷん等の生産量の減少、米の消費量の減少等により39%と9年ぶりに低下し、19年度は
1ポイント上昇して40%になったが依然低い状況にある(図Ⅰ-1)。
19年度に1ポイント上昇した要因としては、小麦の生産量の増加(過去10年で最高、
単収:対前年+13%)、米の消費量の増加(61.0㎏→61.4㎏(1人1年当たり ))、国内
産糖の生産量の増加(てんさい、さとうきびの生産増)があげられる。
図Ⅰ-1
我が国の食料自給率の推移
100
(%)
食料自給率
(生産額ベース)
90
80
70
68
主食用穀物自給率
(重量ベース)
60
50
60
食料自給率
(カロリーベース)
40
40
30
28
穀物自給率
(飼料用を含む、重量ベース)
20
10
0
昭和40
45
50
55
60
資料:農林水産省「平成19年度食料需給表」
- 15 -
平成2
7
12
17
19
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
主な先進国の15年におけるカロリーベースの総合食料自給率を比較すると、オースト
ラリア (237%)、米国 (128%)等の穀物輸出国はもとより、フランス (122%)、英
国(70%)等のヨーロッパ諸国と比べても、我が国の食料自給率は大幅に下回っている
(図Ⅰ-2)。
図Ⅰ-2
ヨーロッパ諸国の食料自給率(カロリーベース)
%
S45
S55
H2
H15
142
131
150
122
104
93
100
60
65
53
48
50
0
40
日本
75
70
76
84
68
46
イギリス
ドイツ
フランス
資料:農林水産省「食料自給率レポート」
<コラム>
英国の食料自給率の動向
英国では、我が国とは逆に、食料自給率(カロリーベース)が40年間で27ポイント向上して
いる。
この要因としては、生産面では、①平坦地が多いことから、効率的な農業生産が可能だった
こと、②フランスやドイツといった他のEC諸国より競争力が高かったこと、③EC加盟によ
り農産物価格支持と国境措置による手厚い保護をうけることとなったこと、④我が国には冬期
間や梅雨等の生育条件上の制約があるのに対して英国ではそういう制約がなく、また、品種改
良等により主要穀物である小麦の単収が大きく向上したことなどがあげられている。
- 16 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
食料自給率低下の主な要因は、米の消費減少等の食生活の変化
食料自給率が昭和40年度の73%から40%にまで低下してきた主な要因としては、食生
活の大きな変化により、①国内で自給可能な米の消費量が減少する一方、②国内で生産
が困難な飼料穀物や油糧原料(大豆、なたね)を使用する畜産物や油脂類の消費が増加
したことがあげられる(図Ⅰ-3、図Ⅰ-4)。
図Ⅰ-3
食生活の変化と食料自給率の変化
資料:食料需給表
図Ⅰ-4
1人1日当たりの供給熱量に占める品目別の供給熱量及び自給率
供 給 熱 量 割 合 [% ]
供 給 熱 量 割 合 [% ]
供 給 熱 量 割 合 [% ]
そ の 他 1 6%
10 0
1 00
10 0
果 実 1 41 %
大 豆 72 %
その 他
その 他 68%
野 菜 10 7%
23 %
大 豆 41 %
果 実 86%
野 菜 10 0%
80
魚 介類
砂糖類
70
小麦
60
油脂類
80
11 0 %
31 %
油 脂 類 11 %
果 実 3 5%
大 豆 25 %
野 菜 7 6%
魚 介 類 5 9%
70
28 %
畜 産 物 2 6%
小麦 3%
80
自給部分
70
砂 糖 類3 2 %
60
60
小麦 13%
33 %
50
50
畜 産 物4 7 %
50
4 5%
油 脂 類 4%
40
40
30
30
米 3 5 5%
40
畜
産
物
51%
30
16 %
米 1 00 %
20
20
10
10
20
米
94%
10
0
0
0
魚 介 類 1 14 %
90
90
90
50
1 00
品 目 別 供 給 熱 量 自 給 率 [% ]
【昭 和 40年 度 (全 国 )】
(供 給 熱 量 総 合 食 料 自 給 率 7 3 % )
総 供 給 熱 量 2 459k
l/ 人 日
0
0
50
1 00
品 目 別供 給 熱 量 自 給 率 [ % ]
0
50
100
品 目 別 供 給熱 量 自 給 率 [ % ]
【平 成 18年 度 (全 国 ) 】
【平 成 18年 度 (東 北 ) 】
(供 給 熱 量 総 合 食 料 自 給 率 3 9 % ) (供 給 熱 量 総 合 食 料 自 給 率 1 0 7 % )
総 供 給 熱 量 2 5 48k
l/ 人 日
総 供 給 熱 量 2 548k
l/ 人 日
資料:農林水産省「食料自給率レポート」を基に東北農政局で試算。
- 17 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
<コラム>
主な輸入農産物の生産に必要な海外の作付面積は、我が国の耕地面積の2.7倍
主な輸入農産物の生産に必要な農地面積は1,245万haと試算され、我が国の耕地面積の2.7倍
に相当する農地を海外に依存した形になっている。
このため、不足の事態に備え、平素から農地や農業用水を確保しつつ、農業の担い手の育成
・確保、農業技術水準の向上等を図り、食料供給力を強化しておく必要がある。
主な輸入農産物の生産に必要な海外の作付面積
食料の不測時の対応
凶作や輸入の途絶等の不測の要因によ
り食料供給がひっ迫するような場合に
も、最低限度の食料供給を確保していく
必要があるため、農林水産省では「不測
時の食料安全保障マニュアル 」(2003年
3月)を策定している。このマニュアル
においては、事態の深刻度(レベル)に
応じて、情報収集・分析・提供、備蓄の
活用、価格動向の調査・監視、緊急の増
産、熱効率の高い穀類やいも類への生産の転換、農地以外の土地の利用等の対策を実施するこ
ととされている。
我が国は、食料の6割を輸入に頼っているが、仮に、輸入が完全に途絶する事態に陥ったと
き、肉類や野菜から、いも類等の熱量効率の高い作物に生産転換することで、国内生産のみで
国民1人1日当たり2,020kcalの熱量供給が可能であると試算されている。この熱量で最低限
必要な熱量は確保されるが、食事内容は、現在とかけ離れたものになる。
- 18 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
18年度の東北地域の食料自給率は100%を超えているが、米を除くと32%と低い水準
東北地域の食料自給率(カロリーベース)は107%と、全国に比べるとかなり高い水準
となっている。ただし品目別にみると、米の自給率が300%を超えている一方、果実や大
豆、魚介類等全国を大幅に上回る品目もあるが、米を除いた自給率は32%と低い水準に
ある(表Ⅰ-1)。
表Ⅰ-1
東北各県の食料自給率(品目別カロリーベース、平成18年度概算値)
(単位:%)
県別
自給率
米
米を除
いた
大豆
小麦 (食用) 野菜
自給率
果実
牛肉
豚肉
鶏肉
鶏卵
牛乳・
魚介類
乳製品
青森
118
306
61
5
61
257
558
26
21
73
32
25
266
岩手
105
319
40
7
53
98
81
32
21
186
28
78
177
宮城
秋田
79
174
239
670
30
23
4
1
76
164
40
85
8
63
16
8
7
15
15
3
16
12
28
14
242
16
山形
福島
132
83
488
294
23
19
0
1
94
24
120
93
160
76
19
18
10
7
6
11
5
17
34
24
12
73
東北
全国
107
39
355
94
32
22
3
13
72
25
107
76
141
35
20
11
12
5
45
14
19
10
33
28
144
59
資料:品目別自給率については、農林水産省「食料自給率レポート」を基に東北農政局で試算。
- 19 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
(2)東北地域における食料自給率向上の取組
食料自給率向上に向けた取組意識の醸成
東北農政局では県、市町村域において、食料自給率向上に向けた問題意識の共有と取
組意識の向上を図るため、市町村、消費者団体等に対し個別に情報提供や意見交換を行
うキャラバンを継続実施している(表Ⅰ-2)。
19年度は、学校給食への地場農産物の利用の推進とともに病院、福祉施設等による地
場農産物利用、県庁舎の食堂等のメニューへの自給率表示の働きかけを実施した。また、
「食と農を語る会」を開催し、県、市町村、JA等関係者の意識の醸成を図っている(事
例参照)。
表Ⅰ-2
食料自給率向上に向けた取組等の件数(平成20年1月末現在)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
計
病院、学校給食、大学等
県、市町村
14
38
15
26
20
71
7
26
9
26
11
76
76
263
農業者等(団体含む)
食品産業
消費者等(団体含む)
その他(農産物直売所等)
計
2
10
6
70
22
5
13
4
85
30
9
12
26
168
21
2
2
3
61
15
5
11
14
80
31
1
16
2
137
119
24
64
55
601
コラム
あなたの食事の自給率 ちょっと調べてみませんか?
農林水産省では、料理の自給率を簡単に計算できる「クッキング自給率(料理自給率計算ソ
フト)」を作成しました。本ソフトは、料理に使用されている食材とその量から容易に自給率
が計算できるもので、自給率の食事メニューへの明記だけでなく、食育、地元産食材の消費拡
大、農政に対する理解の促進等幅広くご活用頂けるも
のと考えております。
「クッキング自給率(料理自給率計算ソフト )」は、
農林水産省ホームページ内「食料自給率の部屋」から
無料で自由にダウンロードできます。
以下のURLをご覧ください。
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/jikyu/jikyu03.h
tm
- 20 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
<事例>
平成19年度「食と農を語る会」
東北農政局では、食料自給率の向上を目指し、
「食と農を語る会」を管内6会場で開催し、
延べで約900名の参加があった。
本語る会では、新たな産品づくり、地産地消、食品産業と連携した地場農産物の利用促進
に取り組んでいる地域関係者(延べ25名)に参加いただき、それぞれの取組を踏まえた意見
発表や地産地消の推進、食料自給率の向上を図る上での取組の意義や課題等について、来場
者を交え意見交換を行った。
地域関係者等からの主な意見と秋田県大仙市、福島県郡山市、宮城県大崎市の来場者を対
象に実施したアンケートの結果は以下のとおりである。
【地域関係者・来場者の方からの主な意見】
・新たな産品に消費者は敏感に反応するため、生産者も意
欲的になっている。
・地場産品の活用や地産地消の取組は多いが、消費者サイ
ドの関心が高まらないと広がらない。どのように動機づ
けていくかが課題。
・新たな産品を販売する際は、多様なルートを確保するこ
とや、売り先に対する産地のアピールが重要。
・食は命と直結するものであり、この先の世代にも食が確保
秋田県大仙市会場の様子
されることを望む。食料自給率向上は国の施策だけでは達
成できず、国民の意識の向上が不可欠である。
【
「食と農を語る会」におけるアンケート結果】
8/28
9/21
10/31
秋 田 県 福島県
宮城県
大仙市
郡山市
大崎市 (平均)
○ 参加者数
120
140
150
410
○ アンケート回答者数
66
61
66
193
○開催期日及び場所
計
1 食料自給率
①「食料自給率」の語の認知度
92.4% 100.0% 98.5%
96.9%
②「27年度食料自給率目標が45%」の認知度
47.0%
55.7% 54.5%
52.3%
③ 10年後の食料自給率を50%以上にすべき
84.8%
86.9%
86.0%
86.4%
2 食料自給率向上に向け、どのような取組を支持・実践するか(複数回答)。
【消費面】
① ご飯中心の食事を増やす
62.1%
67.2%
66.7%
65.3%
② 旬の野菜を使った食事を増やす
69.7%
65.6%
63.6%
66.3%
③ 国産大豆100%の豆腐・納豆を買う
56.1%
50.8%
54.5%
53.9%
④ 学校給食で地場産農産物を使う
83.3%
63.9%
59.1%
68.9%
⑤ スーパー、直売所で地場産農産物の取扱い
66.7%
72.1%
43.9%
60.6%
を増やす
- 21 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
【生産面】
① 地域農業の担い手育成
74.2%
65.6% 51.5%
63.7%
② 効率的な農地利用の推進
53.0%
59.0%
50.0%
53.9%
③ 加工・業務用の生産強化
42.4%
24.6%
33.3%
33.7%
④ 新たな加工品づくりなど
27.3%
32.8%
18.2%
25.9%
92.4%
86.9%
97.0%
92.2%
68.9% 66.7%
67.4%
3 学校給食における地場農産物の利用について。
① 地場農産物の使用割合を向上させる
② 給食費を1~2割程度値上げしても地場農産 66.7%
物を使用した方がよい。
4 食料自給率向上のための提案
・国内農産物の良さをもっとPR。
・消費者ニーズにあった商品開発。
・小さい頃から国内産を買う、食べる習慣が食料自給率向上の第一歩。
・遊休農地を農業体験の場に活用するなどにより農業への関心を高める。
東北地域食料自給率向上協議会の取組
東北地域においては、食料自給率向上の取組を実効あるものとするため、地方公共団
体、農業団体、食品産業事業者、消費者団体、経済団体等の35の団体が連携した「東北
地域食料自給率向上協議会」を17年6月に設立した。
19年度の東北地域自給率向上協議会の活動として、6月27日に協議会を開催し、18年
度の取組報告と19年度の取組計画について確認した。また、広く国民の自給率向上に向
けた取組意識の醸成を図るため、19年12月18日に「東北地域食料自給率向上シンポジウ
ム」を仙台市で開催した。
シンポジウムには、主婦、学生、栄養士、調理師、農業者、行政等約200名が参加し、
東北福祉大学教授の畠山英子氏による「日本型食生活のすすめ~心身の健康と伝統的食
素材~」基調講演のほか、小学校の栄養士、生協の商品開発者、消費者団体、農家レス
トランの女性起業家等をパネリストとして迎え、パネルディスカッションを行った。ま
た、東北米粉利用推進連絡協議会提供での米粉で作ったパン、カステラの試食を実施し、
米粉製品の消費拡大に向けて推進を図った。
- 22 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
各県における食料自給率目標設定状況
【青森県】
17年3月策定の「攻めの農林水産業推進基本方針」において、20年度における生産努
力目標を設定し、これを達成した場合の食料自給率は120%(カロリーベース)としてい
る。また、17年3月策定の「生活創造プラン分野別実施計画」において、地産地消の中
核をなしている産地直売所販売額の20年度における目標値を設定している。
【岩手県】
18年3月策定の「岩手県農業・農村基本計画」の目標達成に向けて22年までの5年間
に重点的に取り組む施策、22年度における県産農産物の供給力の目標、地産地消サポー
ター数の目標等を設定している。
【宮城県】
18年3月に見直した「みやぎ食と農の県民条例基本計画」において、22年度における
県産農産物の供給力の目標、地産地消の目標等を設定している。
【秋田県】
18年3月策定の「新世紀あきたの農業・農村ビジョン第3期実施計画」において、地
産地消の目標等を設定している。
【山形県】
18年3月に「夢未来やまがた食育推進本部食料自給率向上目標設定プロジェクトチー
ム」において、22年度食料自給率目標を140%(カロリーベース)と設定している。
【福島県】
17年12月改訂の「福島県新長期総合計画うつくしま21」において、19年度における県
内食料自給率目標を100%(カロリーベース)と設定している。
17年11月に見直した「福島県地産地消推進プログラム」及び18年3月改訂の「農林水
産部における「地産地消」推進のための取組方針」に基づき、目標等を設定している。
表Ⅰ-3
各県の目標策定状況
区 分
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
各種目標の策定・検討状況
生産努力目標
食料自給率目標
地産地消の目標
○
○
△(生産努力目標達成時の試算)
○
△(品目別)
○
○
△(品目別)
○
○
○
○
○
○
○
○
資料:東北農政局調べ。
注:△は品目別供給力の目標。
- 23 -
食育推進計画
○
○
○
○
○
○
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
2 望ましい食生活の実現に向けた食育の推進
(1)食生活の動向
平成19年の東北の食料消費支出額は前年から3.3%増加
東北における19年の1世帯当たり(農林漁家世帯を除く。)食料消費支出額は、87万
3,351円で、18年の84万5,768円に比べ3.3%増加した。全国の項目別では、乳卵類と外食
が減少したものの、それ以外の項目は増加している。特に果物及び飲料の増加率が大き
い。
食料消費支出額の構成を全国と比べると、東北は魚介類、果物、飲料、酒類、野菜・
海藻、菓子類のウェイトが比較的高く、外食、肉類、調理食品のウェイトが低い(図Ⅰ
-5)。
図Ⅰー5
1世帯当たりの年間消費支出額の構成割合(平成19年)
東北
全国
0%
穀類
8.3%
魚介類
11.5%
肉類
7.3%
8.8%
10.1%
8.5%
10%
20%
乳卵
類
4.7%
野菜・海藻
12.2%
4.3%
11.4%
30%
40%
油脂・
果物
菓子類
調味料
5.5% 4.6%
9.2%
4.4% 4.3%
50%
8.4%
調理食品
10.6%
11.2%
60%
飲料
5.9%
酒類
5.9%
5.3% 5.0%
70%
80%
外食
14.1%
18.3%
90%
100%
資料:総務省統計局「家計調査」(2人以上の全世帯、農林漁家世帯を除く)
食料品の物価は上昇傾向
19年の東北における消費者物価指数は、17年を100とした総合指数に対し、100.4と前
年に比べ0.1ポイント低下した。食料については、100.8となり前年に比べ0.4ポイント上
昇した(表Ⅰ-4)。
品目別にみると、野菜・海藻、飲料等が前年より低下し、果物、肉類、油脂・調味料、
調理食品等が上昇。特に果物の上昇が大きく、前年に比べ7.0ポイント上昇した。
- 24 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
表Ⅰ-4
消費者物価指数と食料品費目別指数(平成17年=100)
東 北
全 国
19年
19年
区 分
指 数
総
合
食
料
食 穀
類
魚
介
類
料
肉
類
卵
類
品 乳
野 菜 ・ 海 藻
費 果
物
油
脂
・
調
味
料
目
菓
子
類
別 調 理 食 品
飲
料
区
酒
類
食
分 外
前年比
100.4
100.8
98.4
102.7
101.6
97.9
101.6
111.3
98.8
100.8
101.7
95.9
98.5
100.7
指 数
▲ 0.1
0.4
0.1
0.3
1.2
▲ 0.4
▲ 1.5
7.0
1.2
0.6
1.0
▲ 1.6
▲ 0.4
0.4
前年比
100.3
100.8
97.8
103.1
102.7
97.5
101.7
108.8
99.2
100.4
101.1
96.9
98.0
101.2
▲
▲
▲
▲
▲
0.0
0.3
0.5
0.9
1.9
0.3
1.5
4.9
0.5
0.4
0.6
1.0
1.1
0.7
資料:総務省「消費者物価指数月報」
望ましいPFCバランスからみると油脂類は過剰摂取ぎみ
18年度の国民1人・1日当たりのPFC熱量比は、たんぱく質(P)が12.9%、脂質
(F)が29.1%、炭水化物(C)が58.0%となった。魚介類・豚肉の消費減、油脂類の
消費減の割合が総供給熱量全体の減少割合に比べ小さかったことにより、前年度に比べ
て、たんぱく質の割合が0.2ポイント減少、脂質の割合が0.2ポイント増加、炭水化物の
割合については、前年度同となっている(図Ⅰ-6)。
図Ⅰー6
PFCバランスから見た栄養バランスの推移(全国平均)
平成18年度
昭和55年度
昭和35年度
P(たんぱく質)
12.2%
12.9%
P 13.0%
(13)
(60)
C
(炭水化物)
76.4%
F
(脂質)
11.4%
C
61.5%
F
25.5%
C
58.0%
(27)
F
29.1%
資料:農林水産省「食料需給表」
注: ( )の適正比率は、「食料・農業・農村基本計画」における平成27年度の目標値(たんぱく質13%、脂質
27%、炭水化物60%)。
- 25 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
18年度の食品ロス率は3.7%
食料・農業・農村基本計画において食品ロスについて国民の意識改革を促す必要があ
るとされ、また食育推進基本計画において「家庭における食生活の実態、家庭や外食に
おける食品の廃棄状況等を把握するための調査を実施する。」とされているのを受けて、
*1
*2
農林水産省では、食品の食べ残しや廃棄の抑制などに対する取組や、「望ましい食生活の
実現」に向けた施策に資することを目的に、世帯における食品の食べ残し状況、廃棄の
*3
実態等を把握する「食品ロス統計調査」を行っている。
18年度の調査によれば、東北の食品ロス率(以下「ロス率」という。)は、世帯計でみ
ると3.7%で、そのうち、
「過剰除去」が2.0%で最も高く、次いで「食べ残し」が1.1%、
「直接廃棄」が0.6%の順となっている(図Ⅰ-7)。
図Ⅰー7
世帯員構成別にみた食品ロス率(平成18年度)
(%)
4.5
4.0
過剰除去
全国
3.7
東北
3.7
1.0
1.1
3.5
3.0
2.5
東北
3.4
0.8
0.7
0.6
2.0
0.6
直接廃棄
食べ残し
東北
3.6
東北
3.9
1.3
1.2
0.5
0.5
1.5
1.0
2.0
2.0
1.9
1.8
2人世帯
3人以上世帯
(高齢者がいない)
2.1
0.5
0.0
計
3人以上世帯
(高齢者がいる)
資料:農林水産省統計部『食品ロス統計調査報告』
主な食品類別のロス率をみると 、「果実類」が9.7%で最も高く、次いで「野菜類」が
7.7%、「魚介類」が7.4%の順となっており、過剰除去によるロス率の高いこれらの生鮮
食品で高くなっている(図Ⅰ-8)。
*1
「食べ残し」とは、世帯で食卓に出された料理・食品を食べ残して廃棄したものをいう。
*2
「廃棄」とは、世帯においては、賞味期限切れ等で廃棄したもの(直接廃棄)及び大根の皮の厚むき、食肉の可
食部分と判断される脂肪の除去等食べられる部分を基準(文部科学省「日本食品標準成分表」の廃棄率。なお、
油脂類については、「食料需給表」の廃棄率)より過剰に捨てたもの(過剰除去)をいう。
*3
農林水産省「食品ロス統計調査」の調査期間は平成18年6月、9月、12月及び19年3月の各月のうち連続した7
日間(1週間)とし、調査客体数は全国1,000(東北114)世帯である。本調査で把握した食品ロスの範囲は、
不可食部分(調理の下処理段階で生じる、野菜くず、魚の骨等)を除いた可食食料としての食品の食べ残し及び
廃棄であり重量ベースで調査した。
- 26 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
図Ⅰー8
主な食品類別にみた食品ロス率(平成18年度・東北)
(%)
10.0
9.7
過剰除去
直接廃棄
食べ残し
0.5
7.7
8.0
2.5
7.4
1.5
6.0
1.6
0.5
4.0
5.7
0.1
6.7
1.5
2.0
1.4
3.1
5.7
2.3
1.6
1.1
0.2
1.5
1.1
0.1
0.0
穀類
野菜類
果実類
肉類
魚介類
調理加工食品
資料:農林水産省統計部『食品ロス統計調査報告』
東北の世帯全体における1人1日当たりの食品ロス量を100とした時の食品類別の構成
割合をみると、「野菜類」が42.2%と最も多く、次いで「果実類」が17.1%、「調理加工
食品」が14.1%となっており、これらが全体の7割以上を占めている。全国と比べると
「穀類 」、「果実類 」、「魚介類」の割合が高く 、「野菜類 」、「調理加工食品」等の割合は
低くなっている(図Ⅰ-9)。
図Ⅰー9
食品ロス量の食品類別構成割合(世帯全体・平成18年度)
4.3
全国
その他
生鮮食品
魚介類
穀類
野菜類
果実類
43.9
14.9
牛乳及び
乳製品
その他
加工食品
調理加工食品
7.4
6.1
15.6
6.5
1.3
0.7
5.8
東北
0
17.1
42.2
20
40
8.7
60
5.9
14.1
80
5.5
100
(%)
資料:農林水産省統計部『食品ロス統計調査報告』
注:1)「その他生鮮食品」とは、「豆類」、「きのこ類」、「肉類」
、「卵類」
、「生鮮海藻類」をいう。
2)「その他加工食品」は、「でんぷん」、「砂糖類」、「油脂類」、「調味料類」、「菓子類」、「飲料類」をいう。
- 27 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
(2)食育の取組
食育推進計画の策定
食育基本法の施行(17年7月)及び食育推進基本計画の策定(18年3月)に基づき、全
国の都道府県、市町村において食育推進会議の設置、食育推進計画の策定が進められて
いる。
東北においては、管内各県が食育推進計画を策定し、市町村においては、青森県では1
0市町、岩手県では8市町村、宮城県では10市町、山形県では5市町、福島県では1町の
34市町村が食育推進計画を策定したところである(表Ⅰ-5)。
表Ⅰ-5
管内市町村の食育推進計画の策定状況(平成20年3月31日現在)
青森県
鶴田町、青森市、むつ市、階上町、深浦町、八戸市、板柳町、十和田市、
おいらせ町、つがる市
岩手県
一関市、紫波町、矢巾町、一戸町、金ヶ崎町、滝沢村、山田町、八幡平市
宮城県
仙台市、大崎市、名取市、柴田町、塩竃市、多賀城市、松島町、美里町、
気仙沼市、登米市
山形県
酒田市、山形市、真室川町、尾花沢市、河北町
福島県
只見町
「食事バランスガイド」の普及
6月の「食育月間」では、消費者展示コーナーにおいて、健全な食生活の実現、バラ
ンスの良い食生活の実践に活かしてもらうため、「食事バランスガイド」の活用方法等を
パネル、フードサンプル等を用いて紹介した。
また、日頃食べている食事のバランスを理解しバランスの良い食生活の実践に活かし
てもらうため、仙台合同庁舎内食堂のメニューに「食事バランスガイド」を活用した「サ
ービング(SV)」表示を実施した。
- 28 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
コラム
「食事バランスガイド」について
望ましい食生活をおくるために、1日に「何を 」「どれだけ」
食べたらよいかを、わかりやすくイラスト(コマ)で示している
「食事バランスガイド」をご存じでしょうか?
「食事バランスガイド」は、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、
果物の5つの料理グループから出来ており、それぞれの料理グル
ープを1日にどれだけ食べたら良いかの量は、1つ、2つと「つ
(SV)」で数えます。
SVとは、サービング(料理の単位)の略で、例えば、ご飯で
あれば、おにぎり1個が1つ(SV)となります。
SV表示のついたサンプル
仙台合同庁舎地下食堂では、6月の「食育月間」をきっかけとして、定番メニューのフード
サンプルに、「食事バランスガイド」を活用したサービング表示に取り組んでいます。
食事の際に、このサービング表示を参考に、自分が1日に食べている料理数を、1つ、2つ
と指折り数えて、バランスのよい食生活の実践に活かしていただければと思います。
食育推進協議会
東北農政局では、地域における食育を推進するため、定期的に東北地域食育推進協議
会を開催している。19年度においては、各県の食育担当部局を加えた新たな委員構成に
より、19年8月22日及び20年2月13日に開催し、食育の推進方策の協議等を行った。
また、協議会の下に設置した義務教育部会の最終報告として「地域の食材を活用した
学校給食における食育」を公表した(19年8月)。
このほか、市町村食育推進計画の策定等に向けて、管内の各地方農政事務所において
食育推進に関する懇談会等を開催した。
- 29 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
食育支援活動
【シンポジウム等の開催】
東北農政局では、消費者の「食」に対する理解を深め、食育を推進するため、19
年6月に、「食と農を語る会」を仙台市で開催し、地場産食材の利用促進について意
見交換を行った。
また、20年1月には、食生活の見直しや地産地消等についての認識を深めるため、
食と健康をテーマにした「食育フォーラム」を青森市で開催した。
そのほか、管内の各地方農政事務所においても、シンポジウム等を開催した。
【講師の派遣等】
東北農政局では、食の安全や食品表示等、食育に関するテーマについて、小・中
学校や消費者団体等の要請に応じて講師の派遣や資料の提供を行っている。また、
テーマにより、講師派遣等が可能な関係機関の紹介も行っている。
なお、講座を開催した団体等に対しては、以降の取組について主体的に行うよう
促し、食育推進の取組の拡大を図っている。
<コラム>
「食と農を語る会~地場産食材でLet's食育~」
取組テーマと出席者:
「みやぎ生協の地産地消推進と食育活動の取組」
沼倉
優子(みやぎ生活協同組合)
「田んぼや畑を子どもたちの食につなげて」
千葉
冷子(仙台市立燕沢小学校)
「大豆産地に立地する食品産業としての基本戦略」
飯塚
哲朗(株式会社北上食品工業)
「子どもたちの未来へ」
澁谷
耕太郎(宮城県農協青年連盟)
日
時:19年6月27日(水)
場
所:宮城県仙台市福祉プラザ
「食育フォーラムinあおもり」
テーマ:「食と健康~消費者へのメッセージ~」
①基調講演
三村
三千代(八戸短期大学客員教授)
②パネルディスカッション
コーディネーター
三村
パネリスト
菅原
牧子(八戸市食生活改善推進員協議会会長)
鳴海
寧子(鶴田町保健福祉課健康推進係長)
徳差
克子(青森市消費者の会会長)
山本
久子(青森県学校栄養士協議会会長)
日
時:20年1月25日(金)
場
所:青森県民福祉プラザ
三千代
県民ホール
- 30 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
平成19年度「食育」活動優良事例表彰
東北農政局では、各地域で取り組まれている食育活動に対し、その取組を一層推進す
るために表彰を行っている。
19年度からは、表彰の応募分野を従来の食生活改善、教育、食品産業、農林漁業の4
分野から、食生活向上、教育ファーム、地場産活用の3分野に改め表彰を行った。
19年度は、69団体等の応募に対し、東北農政局長賞を3団体に、東北農政局長食育奨
励賞を4団体に授与した(表Ⅰ-6)。
表Ⅰ-6
平成19年度「食育」活動優良事例表彰
食生活向上分野
山形県立置賜農業高等学校 演劇部(山形県川西町)
「”いただきます”見つけた!」子どもミュージカルで食育普及
食料自給率の低さや食の外部化の実態等、農業や食の現状について、高校生の演劇部がミュージ
カルにして意欲的に伝える活動を行っている。
また、ダンスの振り付けやキャラクターを制作し、公演の最後に参加者全員で「いただきます」
の歌を歌うなど、子どもたちの興味を引くような活動を行っている。
教育ファーム分野
高畠町立二井宿小学校(山形県高畠町)
ふるさと学習 ~いのちを育ていのちをいただく学習~
毎日の学校給食の野菜の年間使用量の5割生産、自給率の向上を目指し、全学年による栽培を行
う。調理員からの注文により、野菜や米を収穫し、給食の食材に提供している。
また、森林体験を行うなど、活動が多岐にわたり、地域との連携を図りながら学んでいる。
地場産活用分野
登米市地域婦人団体連絡協議会(宮城県登米市)
子や孫に伝えていきたいおらほの料理
地域の食文化を次世代に継承するために、昔ながらの料理法により安全でおいしい旬の食材を
使った料理教室等を行い、地域が育んだ自然の恵みと先人の知恵と工夫による郷土料理の伝承に努
めている。
また、地域の各団体等との連携により、郷土料理や地場産食材を使用した地域に伝わるおやつの
レシピ集を発行している。
東北農政局長食育奨励賞
食生活向上分野
南部町立南部中学校(青森県南部町)
三者(地域・家庭・小中学校)と連携した食の指導をとおして生活リズムを確立できる
子どもの育成
親子健康面談での保健指導や食育指導により、生活習慣や食の改善について一人一人にあったア
ドバイスをするなど、幅広い取組を実施している。
地域と連携した様々な活動をとおし、身体的健康、生活習慣等が改善され、保護者の健康管理に
対する意識向上にもつながっている。
教育ファーム分野
青森市立浪岡南小学校(青森県青森市)
栽培学習
りんご栽培学習は、学校後援会の下部組織である「りんご部会」の支援のもとに、人工授粉から
枝掘り作業まで、ほぼ全行程を年間スケジュールにより実施されており、翌年度は次学年に引き継
いでいる。
また、児童5~6人が模擬会社に所属し、生産・販売等のリーダーを務め、りんご箱作りや販売
活動を行い、人の役に立つ学習活動を意識した取組を行っている。
地場産活用分野
財団法人青森県学校給食会(青森県青森市)
学校給食における地場産物の活用と食育推進
県産品の消費拡大に向け、給食に青森県の特産物である「りんご」、「県産肉」、「ほたて」等
の加工品を中心に取り扱っている。
児童生徒に県産農林水産物を理解し郷土心を育むため、野菜、魚、貝類等のフードモデルを制作
し、学校等に学習指導教材として貸し出している。
地場産活用分野
世嬉の一酒造株式会社(岩手県一関市)
先人の食の智恵を伝え健康で元気なふるさとを
地域の郷土料理でもある「もち料理」の伝承活動や和食マナー教室等を長年にわたり開催し、和
食の素晴らしさを伝えている。
レストランの食材を農家から直接仕入れ食事を提供するとともに、様々なイベントにおいて、長
年にわたり地元食材の大切さや旬の重要性を訴えている。
- 31 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
3 米消費拡大の取組
米の消費量の推移
米の1人1年当たり消費(供給)量は、昭和37年度には118.3kgであったものが、平成
19年度には、その半分近くの61.4kgにまで減少している(図Ⅰ-10)。
図Ⅰー10
米の消費量の推移(1人1年当たり供給量)
㎏(精米)
120
110
100
90
80
118.3
105.8
93.1
86.2
77.8
73.4
70
60
69.9
67.3
63.6 61.0
61.4
50
昭和37 41 46 51 56 61 平成3 8 13 18 19
資料:農林水産省「食料需給表」
注:1) 年間の国内食料消費量用として仕向けられた数量を総人口で除した値であり、飼料用、種子用、
加工用(酒類、みそ等)の米は含まない。なお、加工用飯、もち、米菓、米穀粉は含んでいる。
2) 19年度の値は概数値である。
- 32 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
ごはん食を中心とした日本型食生活の推進
日本の気候風土に適した米を中心に水産物、畜産物、野菜等多様な副食から構成され
た食生活である日本型食生活は、栄養バランスが良く食料自給率の向上にもつながるこ
とから、各地の農業まつりや各種イベントにおいて、パネル展示、パンフレットの配付
等を行うなどして、その普及・啓発に取り組んでいる。
19年度は、特に朝ごはんの喫食向上を目的とした「めざましごはんキャンペーン」を
官民挙げて実施し、テレビCMやロゴマークを使った普及・啓発事業を行った。
イベントでのパネル展示
アンケート調査の様子
全国平均を上回る米飯学校給食の実施回数
東北地域における米飯学校給食の実施回数は、週3.2回と地元産米を給食で供給したい
という自治体や生産者団体の意向が強いことや、助成等の効果もあり、全国平均の2.9回
を上回っている(表Ⅰ-7)。
東北農政局では、今後とも米飯給食の一層の普及・定着を図る。特に週3回未満の市
町村の学校給食関係者に対して増加に向けた働きかけを行っていくこととしている。
表Ⅰ-7
米飯学校給食の実施状況(週当たり実施回数)
県 名
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東北平均
全国平均
16年度
2.9
3.3
17年度
2.9
3.3
18年度
2.8
3.3
3.1
3.1
3.4
2.9
3.3
3.1
3.5
2.9
3.3
3.1
3.5
3.1
3.1
3.2
3.2
2.9
2.9
2.9
資料:
「米飯給食実施状況調査」(文科省)
- 33 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
米粉の消費拡大
米の新たな用途としての粉体利用に関しては、東北米粉利用推進連絡協議会をはじめ
とした各県の推進ネットワークと連携し、各種イベントや料理教室でのPR及び情報発
信を通じて普及に取り組んでいる。
米粉パンを学校給食へ導入する小・中学校は年々増加しており、特に、青森県、宮城
県、秋田県では18年度から全県的な供給体制が整ったこともあり、17年度720校から18年
度1,330校へと大幅に増加した(表Ⅰ-8)。19年度も増加が見込まれているが、さらな
る導入拡大に努め、導入の少ない県においては普及に向けた取組を図っていく。
表Ⅰ-8
米粉パン給食の実施校数
県 名
16年度
17年度
実施校数
実施校数
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
2
8
69
32
4
福島県
東北計
全国計
0
115
約4,000校
18年度
実施校数
公立小・中
学校数
実施割合
138
45
272
253
462
45
502
296
551
634
686
422
83.8%
7.1%
73.2%
70.1%
4
8
8
17
479
792
1.7%
2.1%
3564
32797校
37.3%
720
約6,000校
1,330
約7,800校
資料:東北農政局消費流通課調べ(試食会等での実施も含む)
。
注:公立小・中学校数は、「学校基本調査(文科省)
」による。
事例
米粉パンの導入
農林水産省では、学校給食への米飯の普及のほ
か、米粉パンの導入や利用拡大を推進しており、
学校給食会をはじめ関係団体等の協力により年々
利用が拡大されている。
学校給食に導入された米粉パン→
- 34 -
約24%
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
コラム
米粉パン・めん用米粉の生産状況
東北の米粉の生産量
t
パン・めん・洋菓子用などの小麦粉代替
800
用途用米粉の生産量は、平成19年度には78
600
8トンと、17年度の137トンから5倍以上に
400
増えています。
788
513
137
200
0
平成17年度
平成18年度
平成19年度
注:地方農政局及び地方農政事務所による製粉業者からの聞き取り
4 地産地消の推進
地産地消は、地域の消費者ニーズに応じた農業生産や生産された農産物を地域で消費
しようとする活動を通じて生産者と消費者を結びつけ、食料自給率の向上や地域経済の
活性化が期待される取組であることから、各地の活発な取組事例の収集・把握に努め、
関係情報を発信している。
また、交付金事業等を活用した産地直売所等の施設整備支援とともに、平成17年度か
ら開始した各県を通じた地域の実践的な地産地消推進計画の策定推進及び地産地消優良
活動に対する表彰(東北農政局長賞授与)を行い、東北地域の取組を支援している。
地産地消推進計画の策定
17年度から、地方公共団体、農協、消費者団体等による地産地消推進計画の策定を推
進し、東北では、103の計画が策定された(表Ⅰ-9)。
表Ⅰ-9
地産地消推進計画の策定状況(平成19年度)
区 分
東 北
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
計画数
103
27
16
11
18
15
16
策定者別計画数(内訳)
県・市町村
協議会、農協等
77
26
1
11
13
15
11
26
1
15
0
5
0
5
(参考)
市町村数
231
40
35
36
25
35
60
資料:東北農政局調べ(20年3月31日現在)
。市町村数は総務省調べ。
注:策定者別計画数のうち「協議会、農協等」には、NPO法人等の市民活動団体を含む。
- 35 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
平成19年度地産地消優良活動表彰
東北地域の個性を活かした創造的でかつ将来性のある地産地消活動を行う6団体に東
北農政局長賞を授与し、全国段階の表彰では、経営局長賞を1団体が受賞した (表Ⅰ-
10)。
表Ⅰ- 10
平成19年度地産地消優良活動の表彰状況(東北地域受賞者)
農林水産省経営局長賞
農事組合法人いさわ産直センターあじさい
岩手県 奥州市
平 成 11年 、 基 盤 整 備 を 契 機 に 有 志 で 組 合 を 設 立 。 平 成 16年 に 産 直 セ ン タ ー を 移 転 し 、 産 直 ・ 加
工・食堂の3部門で活動。現在、学校給食への食材供給、学校給食センターと連携した地域食材の
メニューづくり等の食育活動や食事処「あがらんえ」での郷土食等の提供、加工施設での体験受入
れや大豆・ブルーベリー等の多種類の地場農産物を使用した加工活動も行うなど、幅広い取組を展
開している。
東北農政局長賞
道の駅「上品の郷」農産物等直売所「ひたかみ」農産部会
宮城県 石巻市
道の駅併設の直売所開設から2年余りで月間販売額1千万円以上を維持。エコファーマー認証取
得 者 ( 39名 ) の 専 用 ブ ー ス で 認 証 品 を 販 売 し 、 生 産 履 歴 情 報 も 公 開 す る な ど 、 環 境 保 全 型 農 業 の 実
践と合わせた直売活動が特徴。「食は命の源」を基本理念とした女性・高齢者主体の直売所運営だ
が、地域のたい肥センターのたい肥で土づくりを行うなど、生産面から安全・安心な農産物提供や
信頼確保に取り組んでいる。
JAみどりの青年部田尻支部
宮城県 大崎市
平 成 11年 、 J A 青 年 部 の 有 志 で 食 材 供 給 を 開 始 。 「 未 来 の 子 ど も た ち へ 」 を ス ロ ー ガ ン に 、 平 成
15年 の 学 校 給 食 セ ン タ ー の 完 成 に 合 わ せ た 食 材 供 給 ( 3 幼 稚 園 3 小 学 校 1 中 学 校 ) や 「 食 材 探 検 ツ
ア ー 」 に よ る 児 童 ・ 生 徒 へ の 農 業 体 験 指 導 等 地 域 に 根 ざ し た 活 動 を 展 開 。 野 菜 の 供 給 率 は 約 60% と
高水準で、高齢者福祉施設や県立循環器センターへの食材供給を実施。他地域のJA青年部にも活
動が波及している。
地産地消を進める会
秋田県 秋田市
平成8年、地産地消推進を目的に設立。民間の立場で行政と協働し、独自企画を実践(シンポジ
ウ ム 、 あ き た 産 デ ー フ ェ ア 、 料 理 教 室 、 討 論 会 、 市 場 見 学 会 、 体 験 ツ ア ー 等 ) 。 平 成 17年 に 、 秋 田
の食文化に触れる機会の提供、地産地消の必要性の普及、生産者の支援及び地産地消のネットワー
ク 形 成 を 目 標 と し た 会 の ミ ッ シ ョ ン と 戦 略 を 策 定 。 平 成 18年 度 は ト ヨ タ 財 団 の 助 成 を 受 け る な ど 、
量・質ともに活動のスケールが拡大した。
おいしい山形の食と文化を考える会
山形県 山形市
平 成 17年 度 、 山 形 県 や 平 成 17年 度 食 育 実 践 活 動 支 援 事 業 の 支 援 に よ り 県 内 の 高 校 生 対 象 の 「 食 の
甲子園やまがた大会」(郷土料理、伝統的な食文化の掘り起こし、地域農産物を活かした調理を
テーマとしたコンクール)を開催。3年目を迎えた「地域の食文化の未来への継承」の取組は、内
容 を よ り 発 展 さ せ 、 平 成 19年 度 は 、 決 勝 大 会 に 宮 城 県 ・ 福 島 県 の 各 2 校 を 招 待 す る 「 プ レ 南 東 北 大
会」として企画した。
(株)ジェイエイあぐりすかがわ岩瀬
福島県 須賀川市
平 成 15年 開 設 の 直 売 所 「 は た け ん ぼ 」 ( 出 荷 登 録 会 員 750名 、 売 上 10億 1 千 万 円 ) で 約 150種 の 農
産物・加工品を販売。顧客満足を第一に生活密着型の直売所を目指している。郷土料理教室や食育
講座の開催、新聞発行(はたけんぼ新聞、食育新聞)等、地域の食育ステーションとしての役割も
発揮。また、スタッフが野菜ソムリエ、健康管理士等の資格を積極的に取得し、JAのトレーサビ
リティ担当とともに運営をサポートしている。
百姓HOUSE
福島県 会津坂下町
平 成 16年 、 「 地 元 の 素 材 を 使 っ た 手 づ く り の 郷 土 料 理 が 楽 し め る お っ か さ ん の 店 」 を コ ン セ プ ト
に、本格的な加工・直売活動を開始。立川ごぼう等の伝統野菜や地場農産物を使った菓子、惣菜等
の製造・販売により「懐かしいふるさとの味」が消費拡大に貢献。直売所は、観光スポット「町の
駅」として地域の交流の場にもなっている。また、複数の大学の「地産地消」や「女性起業」の調
査研究対象ともなり、取組が注目を集めている。
注:全国表彰実施団体:全国地産地消推進協議会
- 36 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
事例
病院の給食で「地産地消」を推進[福島県・会津美里町]
平成18年1月に開催されたJA女性部の会議で「地域農業振
興、県産農産物の生産振興を図っているJAグループの医療機
関として各厚生病院でも地場産農産物を利用し、地産地消を進
めてほしい」と要望が出された。
会津美里町にある福島県厚生農業協同組合連合会高田厚生病
院では、JA会津みどり女性部高田支部が運営している直売所
「あやめの里」と連携し、18年9月から同病院の給食に同JA
納品される新鮮野菜
の女性部員が生産した野菜を使用している。
同病院では、毎週火曜日に同直売所に一週間分の野菜を注文し、同直売所の担当者が生産
者との調整を行い、使用する日の前日、午前9時30分(下処理をするため)までに納品する
ようにしている。
また、旬の野菜を使用できるよう献立を考え、直売所の担当者と野菜の生育状況や出荷時
期などの情報交換を行いながら地産地消を進めている。
19年9月現在、360食/日(職員含む)の給食を提供しており、患者さんからは「新鮮な野
菜が食べられる」
、「完熟で本当の野菜の味がしておいしい」と好評を得ている。
生産者の多くは高齢農業者であるが、年間を通じて同病院で利用してもらえることや仕入
れ価格が高めに設定されていることなどから生産意欲の向上につながっている。
地場産野菜の使用割合は給食全体の2~3割にとどまっていることから、直売所や農家と
の連携を強め、不揃いの野菜でも工夫して調理し患者さんに提供するなどして、徐々に使用
割合を増加させて地産地消を進め、地域農業を元気にしたいと取り組んでいる。
- 37 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
<コラム>
バーチャルウォーター
農産物を輸入するということは、輸入農産物が海外で生産される際に使用されている水資源
も一緒に輸入しているともいえます。このように間接的な形で輸入している水資源を把握する
方法として、仮想水(バーチャルウォーター)という考え方があります。これは、ある国が輸
入している品目を自国で生産すると仮定した場合に必要な水資源量です。主な輸入農産物(穀
物5品目、畜産物4品目)の生産を我が国で行った場合に必要な仮想水は627億m3 (2000年)
と試算されており、国内の農業用水使用量の552億m3 (2004年)を上回っています。品目別
には、牛肉1kgに20.6トン、豚肉1kgに5.9トン、大豆1kgに2.5トンの水が必要です。
一方、食事メニューごとにみると、例えば、牛丼(並)やカレーライスに必要な水の7割は
輸入されている計算になります。
我が国が輸入農産物の多くを依存する米国や中国等で水不足が懸念されており、世界の水資
源の問題が私たちの食生活に密接に結びついてることにもっと目を向ける必要があります。
- 38 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
5 食の安全と消費者の信頼の確保
安全な食料の安定供給や国民の健康保護には、有害化学物質・微生物等を含む食品に
よる健康被害を未然に防止するための「食品の安全」を確保する取組のほか、動植物検
疫、栄養や食事習慣に関する施策等まで含めた「食の安全」を確保する取組が重要であ
る。これに加えて、食品表示の適正化等消費者の信頼を確保するための取組を実施する
ことにより、消費者にとって安心できる食生活実現につながっていくこととなる。
(1)食の安全の確保
ア 東北におけるGAPの取組状況
平成19年12月現在、GAP導入済みの産地は83産地
GAP(農業生産工程管理)は、農産物の安全確保のみならず、環境保全、農産物の
品質の向上、労働安全の確保等に有効な手法であり、我が国の多くの産地・農業者が取
り入れ、自らの営農・生産条件や実力に応じて取り組むことが、安全な農産物の安定的
な供給、環境保全、農業経営の改善・効率化の実現につながることとなる。農林水産省
では、23年度までに全国のおおむね全ての主要な産地(2,000産地)でGAPに取り組む
ことを目標に、普及推進を図っている。
東北農政局では、管内各県、農業団体等を対象にした説明会や、水田経営所得安定対
策加入申請時等に農業者にパンフレット等を配布するなど普及推進に取り組んできた。
また、輸出を目的として外国の基準に適合するようなGAPなど高度なGAPの取組
を目指す産地・農業者を対象に「高度なGAP手法に関する意見交換会」を民間団体と
連携して開催した。
さらに、生産現場で農業者の取組に対する消費者・食品事業者の理解と支援が不可欠
であることから、
「安全な農産物を食卓へ(GAP手法に関する意見交換会)」を開催し、
GAPについて理解の浸透を図った。
19年12月現在、管内のGAP導入済みの産地は、83産地、導入を検討している産地は8
2産地となっている(表Ⅰ-11、図Ⅰ-11)。
今後、産地へのGAP導入の一層の促進を図るため、20年2月に管内各県、農業団体
等の参画を得て、「東北GAP手法導入・推進協議会」を設立し、推進体制の強化を図っ
たところである。
- 39 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
表Ⅰー11
県別の取組状況
(単位:産地数)
100
導入を検討中
82
導入済み
83
80
60
40
20
25
12
11
31
24
11
2
5
4
2
36
2
0
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東北計
資料:東北農政局農産課調べ(19年12月31日現在)。
図Ⅰー11
作物別導入状況
(単位:産地数)
50
40
30
44
8
20
10
0
野菜
果樹
17
米
11
麦
3
大豆
資料:東北農政局農産課調べ(19年12月31日現在)。
<事例>
稲作生産者2名がユーレップGAPの認証を取得[宮城県・角田市]
JAみやぎ仙南水稲部会の会員は常に「買ってもらえる米づく
り」を念頭に置き栽培に取り組んでおり、BSE(牛海綿状脳症)
や食品偽装問題等が報じられ、食の安全・安心への関心が高まっ
てきているなか、取引先からGAPを導入してほしいとの要望が
以前から出されていた。
このような状況で部会のメンバーである只野茂氏と小野良雄氏
が日本で2人目、3人目のユーレップGAPの認証を受けた。両
氏とも15年来、水稲栽培に関する作業日誌の記帳を行っており、
生産工程におけるリスク軽減に努めてきた。自分たちの生産工程
基準が世界における基準と照らし合わせた場合にどのような状況
であるのかを明確にし、このことが消費者に対して食への不審を
を払拭させ、食の安全・安心や「買ってもらえる米づくり」につ
ながっていけばと考えている。
- 40 -
ユーレップGAPの認証(英語版)
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
イ 農薬の適正使用
ポジティブリストが施行された平成18年5月29日以降、ドリフトによる基準値超過は無い
18年5月29日に「食品中に残留する農薬、飼料添加物及び動物用医薬品(農薬等)につ
いて一定の量を超えて農薬等が残留する食品の販売等を原則禁止する制度」(ポジティブ
リスト制度)が施行された。
施行後、生産現場で混乱が生じないよう、関係団体と協力し、対策について現場への
指導、説明会及び相談窓口の設置等を実施している。19年度においても、引き続き農薬
*1
のラベル記載事項の確認等農薬使用基準の遵守、使用農薬の記帳及びドリフト低減対策
等の指導を行った。管内においては、制度施行後のドリフトによる基準値超過は発生し
ていない。
また、登録のある農薬が少なく、使用可能な農薬が限定されている地域特産農作物(以
下「マイナー作物」という。)の生産にかかる農薬の農林水産大臣の承認による使用の経
過措置については、17年3月末日をもって大臣承認を取り消す一方、緊急性・必要性が
高いマイナー作物の生産にかかる農薬で、気象要因等により登録に必要なデータ作成が
できなかったものなどについては経過措置を延長する方針が示され、全国で2,963件、管
内では337件について延長されたが、18年7月末をもって経過措置を終了した。
このため経過措置終了後の対応については、生産者団体、農薬製造者、行政等による
「マイナー作物等農薬登録推進協議会」を設置し、19年度においても引き続きマイナー
作物等に対する農薬登録を推進している(20年3月末現在、全国241件、東北17件が未登
録)。
*1
ドリフト:農薬の飛散
- 41 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
ウ 食品安全性向上の取組
HACCP手法の導入促進
農林水産省では、食品の安全性の確保や品質管理の徹底に対する消費者からの要請の
*1
高まりに応え、中小食品事業所でのHACCP手法の導入を促進するために「食品の製
造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」(HACCP手法支援法)に基づき、長期低
*2
利融資と税制上の特別償却等の支援を講じている(表Ⅰ-12)。
また、中小食品事業所においてHACCP手法を導入するうえで重要な課題になって
いる、HACCP手法を推進するための人材の養成を目的とした研修事業を実施してい
る。
表Ⅰー12
HACCP手法支援法に基づく高度化計画の認定状況(平成19年12月31日現在)
食肉
製品
東北
全国
容器包
装詰
炊飯
水産
醤油
冷凍
生めん
その他
惣菜
弁当
合 計
常温流 製品 加工品 製品
食品
類
(12品目)
通食品
2
1
6
2
1
2
4
1
1
0
20
20
12
61
22
10
11
42
19
5
57
259
資料:農林水産省総合食料局食品産業企画課調べ。
<コラム>
高病原性鳥インフルエンザへの対応
平成16年1月に山口県で我が国では79年振りとなる高病原性鳥インフルエンザの発生が確認
されたことを受け、管内において発生が確認された場合に備え、東北農政局内はもとより関係
機関との連絡体制をただちに再確認するとともに、17年4月に「東北農政局高病原性鳥インフ
ルエンザ対策マニュアル」を策定した。
その後も19年1月に宮崎県及び岡山県において発生するなど、国内での発生が続いたことか
ら、19年11月21日、同マニュアルに沿った、模擬による防疫対応等の机上演習を行い管理体制
の強化を図った。
なお、管内で発生した場合の防疫作業支援要員として東北農政局派遣人員の登録の更新を行
い、19年10月1日現在1,773名が登録されている。
*1
食品の安全性を高度に保証する衛生管理の手法の一つで、食品製造にかかる全行程において、危険防止等につな
がるポイントをリアルタイムで監視・記録することを通じて、安全で高品質な製品の提供を図ろうとするシステ
ムである。1990年代に米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理手法。Hazard Analysis
(危害分析 )、Critical Control Point(重要管理点)の頭文字を取った略称で、「ハサップ」または「ハセッ
プ」と呼ばれている。
*2
食品製造業者がHACCP法による融資面、税制面の支援を受けるためには、事業者団体(指定認定機関)が作成して
いる「高度化基準」に沿った「高度化計画」の作成を行い、認定を受ける必要がある。
- 42 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
(2)消費者の信頼の確保
ア リスクコミュニケーションと消費者相談への対応
リスクコミュニケーションの効果的な実施
*1
食の安全に対する消費者の信頼確保を図るうえで、リスクコミュニケーションは大変
重要な位置付けを有するものとされている。このリスクコミュニケーションを効果的な
ものとするためには、参加者のテーマに対する理解度の向上が図られる必要があり、そ
のためには情報の適切な提供や、十分な意見交換等に努める必要がある。
内閣府食品安全委員会、厚生労働省、東北厚生局、東北農政局による3府省合同リス
クコミュニケーションや東北農政局の実施する食の安全に関する少人数での意見交換会、
消費者団体や食品産業事業者との意見交換会等、年間をとおして情報提供や意見交換等
を実施した。また、職員のリスクコミュニケーション技術を向上させるための研修を実
施するなど、効果的な実施に努めた。
今後とも、消費者が必要としている情報の把握と理解されやすいように資料を工夫す
るなど、事前の十分な準備を行うとともに、コミュニケーション能力の向上のための職
員研修等の取組を行うことなどを通じて参加者の理解度の向上に努めていくこととして
いる。
消費者相談等の取組
食品の安全性や表示等について消費者の関心が高まっているなか、東北農政局では、
食品や食生活等に関する情報の消費者への提供、啓発活動と合わせて、消費者ニーズの
的確な把握を通じた地域に密着した行政の推進に役立てるため、「消費者相談コーナー」
と「消費者展示コーナー」からなる「消費者コーナー」を設置している。
「消費者相談コーナー」では、消費者等の食品の安全性等に関する問い合わせに対し、
電話、FAX、Eメール等により常時対応しているほか、食料品消費モニター(19年度
106名の消費者をモニターとして委嘱)から寄せられた食料品等に関する意見・相談・苦
情等に対し文書等で回答を行った。19年度は、食品製造業者等による食品表示偽装事件
が多発したことから、各農政事務所での消費者相談窓口も食品の安全性や衛生面及び期
限表示に関する相談が多く寄せられた。19年度における消費者等からの相談件数は3,670
件であり、18年度の3,695件より25件の減少となったものの、17年度の3,137件の1.17倍
であった。
*1
リスクコミュニケーション:リスク分析の全過程において、リスク評価機関、リスク管理機関、消費者、生産者
事業者、流通、小売りなどの関係者がそれぞれの立場から相互に情報や意見を交換すること。
- 43 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
相談内容の内訳を見ると、表示関係では、18年度の2,540件に対し19年度は2,533件(前
年比99.7%)、制度・基準関係では、18年度の201件に対し19年度は239件(前年比119.0
%)、安全・衛生関係では、18年度の102件に対し19年度は155件(前年比152.0%)、品質
・規格関係では、18年度の29件に対し19年度は39件(前年比134.5%)となっており、食品
表示偽装事件等の影響から、表示関係の相談が依然として多く7割を占めている
(図Ⅰ-12)。
また、農政局職員が各地の勉強会に出向き、消費者や生産者等の食料品等に関する相
談に応じる活動を行っている。
図Ⅰー12
「消費者相談コーナー」の相談件数の推移(東北)
件
4,000
3,695
3,500
823
3,137
3,000
604
2,500
102
安全・衛生
表 示
65
品質・規格
制度・基準
1,629
892
40
553
74
2,533
2,540
2,129
189
0
そ の 他
155
393
1,500
500
704
127
2,343
2,000
1,000
3,670
36
平成15年度
191
16年度
65
250
17年度
27
201
18年度
資料:東北農政局調べ。
- 44 -
29
39
239
19年度
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
<事例>
「消費者相談コーナー」に寄せられた相談内容
Q)小麦粉を野菜のあく抜きに用いることは、効果があるのでしょうか?
A)野菜に含まれる、えぐ味、渋みなどの「あく」の成分は、マグネシウムやカリウムなど
の無機塩類、シュウ酸、シュウ酸塩などの有機酸及びその塩類、アルカロイド、タンニンや
クロロゲンなどのポリフェノール類などが考えられますが、ゆでたりして「あく」をとろう
とすると、「あく」だけではなく栄養成分やうま味も失われてしまいますので、短時間で手
早くすませるようにするとよいでしょう。
「あく」の強いタケノコや山菜類などは、下ゆでするときにゆで汁に米ぬかや米のとぎ汁な
どを使うほか、小麦粉などの澱粉質のものをゆで汁に加えると、澱粉粒子がゆで汁の中で分
散して沈まずに浮かんでいる状態になります。これをコロイドというのですが、優れた吸着
力があって、「あく」を吸着する効果があります。
Q)食品の期限表示である「賞味期限」と「消費期限」との違いを教えて欲しい。
また、「賞味期限」及び「消費期限」はどのような食品に表示されているのでしょうか?
A)「賞味期限」は、定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質
の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいいます。ただし、当該期限を
越えた場合であっても、これらの品質が保持されることがあるとされています。
一方、「消費期限」は、定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗、その他
品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日をい
います。
「賞味期限」は、劣化が比較的遅い食品であるスナック菓子、カップめん、レトルト食品、
缶詰、ジュース、ビーフジャーキー牛乳、バターなどに表示され、「消費期限」は、品質が急
速に劣化する食品である弁当、そうざい、生かき、生めん、調理パン(サンドイッチ)など
に表示されます。
Q)マンゴーの栄養と効果について知りたい。
A)マンゴーはウルシ科マンゴー属の常緑高木です。インド又は東南アジア原産と言われ、
熱帯及び亜熱帯地域で広く栽培されています。
マンゴーの生果は、甘くてねっとりとした食感と、適度な酸味と濃厚な香りがします。栄
養価は、ミネラルとビタミン類が多く含まれ、特に免疫機能の維持や抗酸化作用があるカロ
テンが豊富に含まれています。また、黄色のフラボノイド色素は脂質の過酸化を抑える働き
があり、ガンや老化防止、糖尿病予防の効果も期待されています。
「消費者展示コーナー」での情報提供、啓発
広く地域に密着した農林水産行政の推進のため、消費者とのコミュニケーションの強
化・消費者ニーズの的確な把握、積極的な対応の一環として、東北管内の農林水産行政
一般に関するパネル展示や市町村の地場産品を月毎に紹介し、消費者への情報提供、啓
発を行った(表Ⅰ-13)。
- 45 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
表Ⅰー13
消費者展示コーナーの展示実績(平成19年度)
19年度 「サンシャインシティ
4月
5月
いわき」
様々な農業経営が展開され、さらに古くからの漁業基地としても知ら
福島県いわき市
れているいわき市の新鮮で良質な農水産物やその加工品を紹介。
「さわやかな
四季の風吹くまち」
山形県村山市
6月
温暖な気候に恵まれた地域特性を生かして、水稲、野菜、畜産等、
6月は「食育月間」です
消費生活課
村山オリジナルワイン、焼酎、乾そば、名物昆布巻、バラのお菓子
等の特産品を展示。初夏のさくらんぼや秋の新そば、日本有数の規模
を誇る「東沢バラ公園」等の観光名所も紹介。
食育推進基本計画では毎年6月を「食育月間」と定め、重点的に運
動を推進しており、食事の望ましい組合せ等を示した「食事バランス
ガイド」や健全な食生活実現のためのヒントを紹介。
7月
「海の恵み溢れる
北の中核都市」
青森県八戸市
8月
「イーハトーブ
花巻からの贈り物」
岩手県花巻市
9月
10月
「カシスなまちを
花巻温泉郷を含む温泉郡や霊峰早池峰山等の豊かな自然に恵まれ、
宮沢賢治等の偉大な先人を育んだまちの特産品(ワイン、ヨーグルト、
ホームスパン、さき織)や神楽、鹿踊り等の郷土芸能を紹介。
カシスの生産量日本一を誇る青森市は、産学官一体となって栽培面
青森県青森市
栽培方法で丁寧に育てられた特産品カシスを中心に紹介。
「新生の大地、
「人と自然が共生する
躍動と創造の都市」
秋田県由利本荘市
1月
た八戸沖のサバ等の特産品を紹介。
積の拡大等を積極的に推進しており、農薬を極力使用せずこだわりの
秋田県大潟村
12月
を鍋に入れて食べる郷土料理)の他、水揚げ日本一のイカや脂ののっ
目指して」
農業の村」
11月
B級グルメブームで話題になった「八戸せんべい汁」
(南部せんべい
「きりり いにしえ・
我が国最大の干拓地として、オランダ情緒溢れる景観を有し、村そ
のものが観光資源となっている大潟村の広大な大地から生まれた、あ
きたこまち、地酒、パンプキンパイ等の特産品や村の魅力を紹介。
日本海沿岸から鳥海山麓に至る気象条件や標高差等の特徴を生かし
た四季折々の農畜水産物、加工品を紹介。おふくろ漬、きりたんぽ、
ゆり根うどん、秋田由利牛カレー、プラムワインゼリー等を展示。
数々の伝統の味と技が受け継がれる歴史ある会津の特産品を紹介。
今輝いて未来発信」
ゆったりとした頭の動きがなんともユーモラスでかわいらしい「赤べ
福島県会津若松市
こ」
(張子玩具)や桐製品、会津清酒、会津木綿、会津漆器等を展示。
「海・山・川の
豊かな恵みに
育まれるまち 酒田」
飛魚のつゆ、地酒、お菓子、ラーメン、玉こんにゃく、獅子頭、い
づめ子人形等、海・山・川の豊かな恵みを生かした酒田ならではの物
産を展示。雄大な自然と文化が織りなすまちの魅力を紹介。
山形県酒田市
2月
「東北地域の農山漁村
活性化に向けて」
農村計画部
農山漁村は食料の生産の場のみならず、自然環境の保全等重要な役割を有
しているが、高齢化等の進行によりその役割を十分に果たせない地域が増加
していることから、農林水産省が行っている活性化に向けた様々な取組事例
を紹介。
3月
「世界遺産 平泉・藤原文化
の前史を物語るまち」
岩手県奥州市
平泉世界文化遺産登録を目指しているまちの史跡や観光名所を紹介。奥州
藤原氏の時代から続く鋳物、特産ハトムギを100%使用したハトムギ茶や加工
品、極上の前沢牛、冷麺、羊羹等の物産品を展示。
- 46 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
イ 消費者の信頼を確保するための食品表示の適正化
適正な食品表示を確保するための監視活動
食品表示については、東北農政局本局及び管内地方農政事務所の表示・規格課と、各
県、公正取引委員会東北事務所、(独)農林水産消費安全技術センター仙台センター等の
関係行政機関と連携のもと、適正な表示を確保するための監視活動に取り組んでいる。
19年度は、①生鮮食品の表示調査(3,635店)、②指定農林物資店頭調査(291店)、③
特別調査(牛肉加工品及び農水産物3,340店、米穀432店)等の監視活動を行った(表Ⅰ
-14)。これらの調査結果及び消費者等からの情報提供により調査した結果、不適正な表
示が認められた場合は立入検査等を実施し、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に
関する法律(以下「JAS法」という。)に基づく指示等を行った。
表Ⅰー14
食品表示の調査件数(平成19年度)
(単位:件)
生鮮食品の表示調査
指定農林物資
(一般調査)
店頭調査
特別調査
牛肉
農水産物
米穀
小計
合計
青森県
601
31
253
236
61
550
1,182
岩手県
536
36
250
214
70
534
1,106
宮城県
749
63
450
346
82
878
1,690
秋田県
527
50
267
226
68
561
1,138
山形県
489
41
306
250
74
630
1,160
福島県
733
70
300
242
77
619
1,422
3,635
291
1,826
1,514
432
3,772
7,698
計
資料:東北農政局表示・規格課調べ(20年3月末現在)。
消費者等からの食品表示に関する情報の収集と指導等
14年2月から東北農政局本局、各地方農政事務所及び(独)農林水産消費技術センタ
ーに「食品表示110番」を開設(東北7か所、全国65か所)し、食品の表示制度に関する
質問や偽装表示等に関する情報を広く国民から受け付けている。
19年度は2,863件の質問、
情報が寄せられた(表Ⅰ-15)。
また、買い物等の消費者の日常活動を通じて、食品表示の継続的なモニタリングと不
適正な表示に関する情報提供等を得るため、食品表示ウォッチャー(19年度は東北地域
で、中央ウォッチャー139名、都道府県ウォッチャー365名)を依嘱している。この消費
者からの情報に基づき、食品表示の適正化に向けた調査・指導等を行っている。
- 47 -
Ⅰ
食料自給率の向上と食料の安定供給
表Ⅰー15
東北農政局、管内地方農政事務所における「食品表示110番」の受付状況
情報提供
問い合わせ
提案
苦情
その他
計
18年度
92
2,601
19
4
7
2,723
(単位:件)
19年度
274
2,547
25
5
12
2,863
生鮮食品
食肉
青果物
水産物
その他
加工食品
食肉加工品
その他
米麦
精米
その他
その他
計
全国計
資料:東北農政局表示・規格課調べ。
18年度
387
48
198
87
54
1,486
67
1,419
591
478
113
259
2,723
16,449
(単位:件)
19年度
393
87
181
99
26
1,682
107
1,575
547
413
134
241
2,863
24,727
ウ トレーサビリティの運用の確保
牛トレーサビリティ制度に基づく遵守事項の監視・指導のため立入検査を実施
13年9月牛海綿状脳症(BSE)の患畜が確認されたことから、BSEのまん延防止
及び国産牛肉の信頼回復を図るため、「牛の個体識別のための情報管理及び伝達に関する
特別措置法」が15年6月に公布され、生産段階は15年12月1日から、流通段階について
は16年12月1日から施行された。
19年度においては、巡回点検を行い牛トレーサビリティ制度の遵守事項について周知
・徹底を図るとともに、立入検査による監視・指導を行った。
また、個体識別番号が適正に伝達されているかどうかを確認するため、DNA鑑定用
のサンプル採取(採取検体数 1,460検体 )を実施した。
食品トレーサビリティの導入を促進
農林水産省では、食品の事故発生時に食品の移動を追跡・遡及できるトレーサビリテ
ィの取組を促進している。食品の入出荷の記録を保存しておくことにより、食品事故発
生時の原因究明や食品回収等がより迅速に行えるようになり、消費者への情報提供を充
実させることも可能となる。
東北農政局では、消費者、生産者、食品事業者等のトレーサビリティに対する理解及
び導入の促進を図るため、20年2月に仙台市において「食品トレーサビリティ普及啓発
東北地域セミナー」を開催した。
セミナーでは、有識者によるトレーサビリティの目的と効果についての講演のほか、
生産者、企業等を交えたパネルディスカッションを行った。
- 48 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
Ⅱ 農業・食品産業の持続的な発展
1 農業経営の動向
(1)農家数と農業労働力
平成17年2月1日の東北の販売農家数は37万800戸、主業農家は8万1,900戸
17年2月1日現在の東北の販売農家数は、37万800戸で12年に比べ12.9%減少したのに
対し、自給的農家数は9万2,700戸で13.8%増加した(表Ⅱ-1)。
表Ⅱ-1
農家数
(単位:千戸、%)
実 数
区 分
総農家数
東
北
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全
国
463.5
61.6
86.0
77.9
72.0
61.6
104.4
2,848.2
増 減 率 (平.17/12)
平成17年
平成12年
販売農家 自給的農家 総農家数
370.8
92.7
507.1
50.8
10.8
70.3
67.3
18.7
92.4
62.7
15.1
85.0
60.3
11.7
80.6
49.0
12.6
67.6
80.6
23.8
111.2
1,963.4
884.7
3,120.2
販売農家 自給的農家 総農家数 販売農家 自給的農家
425.6
81.4
▲ 8.6
▲ 12.9
13.8
60.0
10.3
▲ 12.4
▲ 15.3
4.8
75.9
16.5
▲ 6.9
▲ 11.3
13.3
71.3
13.6
▲ 8.4
▲ 12.1
11.1
70.0
10.5
▲ 10.6
▲ 13.9
11.0
56.6
10.9
▲ 8.9
▲ 13.5
14.9
91.7
19.6
▲ 6.1
▲ 12.1
21.8
2,336.9
783.3
▲ 8.7
▲ 16.0
12.9
資料:農林水産省「農林業センサス」
注:1) 「農家」とは、経営耕地面積が10a以上または経営耕地面積がこの規定に達しなくても農産物販売金額が
年間15万円以上ある世帯。
2) 「販売農家」とは、経営耕地面積が30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家。
3) 「自給的農家」とは、経営耕地面積が30a未満かつ農産物販売金額が年間50万円未満の農家。
販売農家を主副業別にみると、主業農家は8万1,900戸で12年に比べて11.1%、準主業
農家は10万8,100戸で21.0%、副業的農家は18万800戸で8.1%それぞれ減少した(表Ⅱ-
2)。
表Ⅱ-2
主副業別販売農家数
(単位:千戸、%)
区
分
販 売 農 家
主 業 農 家
65歳未満の農業
専従者がいる
準主業農家
65歳未満の農業
専従者がいる
副業的農家
東 北
全 国
構 成 比
構 成 比
実 数
実 数
増減率
増減率
平成17年 平成12年 (平.17/12) 平成17年 平成12年 平成17年 平成12年 (平.17/12) 平成17年 平成12年
370.8
425.6
▲ 12.9
100.0
100.0
1,963.4
2,336.9
▲ 16.0
100.0
100.0
81.9
92.1
▲ 11.1
22.1
21.6
429.5
500.5
▲ 14.2
21.9
21.4
67.5
108.1
76.9
136.9
▲ 12.1
▲ 21.0
18.2
29.2
18.1
32.2
370.1
443.4
438.0
599.4
▲ 15.5
▲ 26.0
18.9
22.6
18.7
25.7
33.3
180.8
43.8
196.7
▲ 24.0
▲ 8.1
9.0
48.8
10.3
46.2
139.0
1,090.6
196.4
1,237.0
▲ 29.2
▲ 11.8
7.1
55.5
8.4
52.9
資料:農林水産省「農林業センサス」
注:1) 「主業農家」とは、農業所得が主で、年間60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家。
2) 「準主業農家」とは、農外所得が主で、年間60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農
家。
3) 「副業的農家」とは、年間60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいない農家。
4) 「農業専従者」とは、過去1年間に自営農業に150日以上従事した者。
- 49 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
販売農家を経営耕地面積規模別にみると、東北は都府県に比べ規模の大きい階層の割
合が高くなっている。また、階層別の動向をみると、12年に比べて5.0ha未満では各階層
とも減少したが、5.0ha以上は9.8%増加した(図Ⅱ-1)。
図Ⅱ-1
経営耕地面積規模別農家数割合
経営耕地面積規模別農家数の増減率
(平成17年・販売農家)
(東北・販売農家、平成17年/12年)
%
15.0
1 .0ha
未満
東北
1.0~
2.0
41.1
2.0~ 3.0~ 5.0ha
3.0 5.0 以 上
30.1
9.8
10.0
5.0
13.8 9.4 5.6
0.0
△ 5.0
都府県
58.0
26.1
△ 10.0
8.34.9 2.6
△ 9.8
△ 13.6 △ 13.1
△ 15.0
0
20
40
60
80
△ 15.4
△ 20.0 1 .0ha
1.0~
100
未満
%
2.0~
3.0
2.0
3.0~
5.0
5.0ha
以上
資料:農林水産省「農林業センサス」
17年の東北の農業就業人口は12年に比べて8.9%減少
17年の農業就業人口は62万700人で、12年に比べて8.9%減少、 基幹的農業従事者数は
38万5,300人で7.0%それぞれ減少している(図Ⅱ-2)。
一方、農業就業人口、基幹的農業従事者ともに65歳以上の世帯員の占める割合は、年
々上昇しており、農業労働力は減少しつつ高齢化が進む状況が続いている。
図Ⅱ-2
農業就業構造の推移(販売農家・東北)
千人
800
65歳 以 上 の 基 幹 的 農 業 従 事 者 の 割 合
(右目盛)
57.5
65歳 以 上 の 農 業 就 業 人 口 の 割 合
(右目盛)
51.4
50
600
200
100
0
47.5
39.9
707.1
40
33.1
400
300
60
54.1
700
500
%
681.1
428.3
農
家
就
業
人
口
従
事
者
数
平 .7
30
620.7
414.2
385.3
基
幹
的
農
業
平 成 12年
対比
8 .9 % 減
20
10
同 7 .0 % 減
0
12
資料:農林水産省「農林業センサス」
注:1)「農業就業人口」とは、自営農業に主として従事した世帯員数。
2)「基幹的農業従事者」とは、農業就業人口のうち、仕事が主の世帯員。
- 50 -
17
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
(2)農家経済を巡る動き
18年の農業産出額は米産出額は減少したものの、野菜、果実部門の増加によりわずかに増加
18年の東北の農業産出額は1兆3,872億円で、前年に比べ0.3%(48億円)増加した。
部門別の農業産出額をみると、米は生産量の減少と価格の低下から前年に比べ4.3%減
少した。野菜、果実は総じて価格が上昇したことから前年に比べそれぞれ7.3%、6.8%
増加した。また、畜産部門は、肉用牛が前年に比べ2.6%、鶏が2.0%それぞれ増加した。
乳用牛は生乳生産量の減少、豚は価格の低下から3.4%、0.4%それぞれ減少した。
県別にみると、青森県、岩手県、山形県が前年に比べ3.1%、0.1%、1.3%それぞれ増
加した。これは、米は減少したものの、主に野菜、果実で生産量が増加したことや価格
が上昇したことなどによる。一方、宮城県及び秋田県は米の価格が低下したことなどか
ら3.4%、0.3%それぞれ減少した。
また、生産農業所得は5,446億円で、米の産出額が減少したものの、野菜、果実等で増
加したことから前年に比べ1.2%(66億円)増加した。(表Ⅱ-3)。
表Ⅱ-3
農業産出額及び生産農業所得の状況(平成18年、東北)
区
農
業
分
産
出
額
うち、耕 種 部 門
うち、
米
野
菜
果
実
花
き
工 芸 作 物
うち、畜 産 部 門
うち、肉
用
牛
乳
用
牛
豚
鶏
生 産 農 業 所 得
農家1戸当たり
生産農業所得(千円)
耕地10a当たり
生産農業所得(千円)
農業産出額(億円)
岩手
宮城
秋田
2,544 1,929 1,861
1,214 1,252 1,562
639
863 1,108
267
268
265
128
23
85
63
39
29
74
5
27
1,330
674
298
211
200
58
228
149
36
222
119
138
660
201
64
828
788
659
東北
13,872
9,997
5,094
2,303
1,751
295
234
3,859
794
686
896
1,451
5,446
青森
2,885
2,180
589
653
771
30
68
704
81
69
214
330
1,228
1,175
1,994
962
1,012
62
77
53
57
対前年増減率(%)
青森
岩手
宮城
秋田
3.1
0.1 ▲ 3.4 ▲ 0.3
4.5 ▲ 2.5 ▲ 4.1 ▲ 0.3
▲ 3.9 ▲ 7.1 ▲ 6.2 ▲ 2.7
10.9
4.3
3.5
7.3
6.8
0.0
9.5
11.8
0.0
8.6 ▲ 2.5
3.6
4.6
0.0 ▲ 16.7 ▲ 6.9
▲ 0.8
2.6 ▲ 2.2
0.0
0.0
5.0
3.1
0.0
▲ 5.5 ▲ 3.0 ▲ 3.9
0.0
▲ 4.0
5.2 ▲ 6.3
0.0
1.9
3.1 ▲ 2.9
0.0
3.6
0.6 ▲ 4.9 ▲ 1.6
山形
2,152
1,832
919
327
461
68
10
316
92
91
100
31
882
福島
2,500
1,958
975
523
284
66
51
537
152
113
103
165
1,061
東北
0.3
0.3
▲ 4.3
7.3
6.8
▲ 0.7
▲ 2.9
0.5
2.6
▲ 3.4
▲ 0.4
2.0
1.2
916
1,429
1,016
1.3
3.6
0.5
▲ 4.9 ▲ 1.4
3.3
4.1
43
71
70
1.6
4.1
0.0
▲ 5.0 ▲ 2.3
4.4
4.5
資料:農林水産省統計部「生産農業所得統計」
注:生産農業所得=農業総産出額×所得率(農業経営統計調査から産出)+交付金等
- 51 -
山形
福島
1.3
0.0
1.7 ▲ 0.4
▲ 3.4 ▲ 3.7
7.6
6.3
8.7
6.4
1.5 ▲ 10.8
▲ 9.1 ▲ 8.9
▲ 0.6
1.5
3.4
0.7
▲ 6.2 ▲ 0.9
3.1 ▲ 1.0
▲ 6.1
6.5
3.3
4.0
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
18年の主業農家の農業所得は367万円で、販売農家平均(131万円)の約3倍
東北における18年の販売農家1戸当たり(経営形態別経営統計(個別経営))の農業粗
収益は408万円、農業経営費は277万円で、農業所得は131万円となった。これに農業生産
関連事業所得、農外所得及び年金等の収入を加えた総所得は484万円となった。
また、主業農家の農業所得は367万円で、販売農家平均の約3倍となっている(表Ⅱ-
4)。
表Ⅱ-4
平成18年農業経営の主要指標(東北・販売農家1戸当たり)
(単位:万円)
販売農家
平 均
区 分
農
業
所
得
農 業 粗 収 益
農 業 経 営 費
農業生産関連事業所得
農
外
所
得
年 金 等 の 収 入
総
所
得
131.4
407.9
276.5
0.9
198.3
153.5
484.1
主業農家
準主業農家 副業的農家
367.0
81.5
39.4
947.3
393.1
174.0
580.3
311.6
134.6
1.2
4.1
▲ 0.2
47.4
400.1
221.6
76.8
85.6
201.9
492.4
571.3
462.7
資料:農林水産省統計部「農業経営統計調査」(経営形態別経営統計(個別経営))
18年の水田作主業農家の農業所得は水田作経営(平均)の4.6倍
東北における18年の水田作経営農家1戸当たり(経営形態別経営統計(個別経営))の
農業粗収益は247万円で、農業経営費181万円を差し引いた農業所得は66万円となった。
水田作経営農家のうち主業農家では、1戸当たりの農業粗収益は762万円で、農業経営費
460万円を差し引いた農業所得は302万円で、水田作経営(平均)の4.6倍となっている。
また、水田作作付延べ面積規模別にみると経営規模の拡大に伴い農業所得が増加し、
10ha以上の規模でみると555万円となっている(図Ⅱ-3)。
図Ⅱ-3
水田作経営の概要(平成18年・東北、1戸当たり)
( 万 円 )
1,800
1602
1,600
1,400
1274
1,200
農 業 粗 収 益
1,000
800
600
762
460
400
850
農 業 経 営 費
638
農 業 所 得
415
247
200
302
0
主 業
農 家
1046
953
213
181
66
62
水 田 作
(平 均 )
0.5ha
未 満
59
2
99
93
0.5
~ 1.0
403
276
166
6
606
48
1.0
~ 2.0
139
235
2.0
~ 3.0
3.0
~ 5.0
資料:農林水産省統計部「農業経営統計調査」
(営農類型別経営統計(個別経営))
- 52 -
348
5.0
~ 7.0
424
7.0
~ 10.0
555
10.0ha
以 上
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
2 担い手の育成・確保
(1)認定農業者の育成
認定農業者数は着実に増加
農業経営改善計画の認定者(認定農業者)数については、水田経営所得安定対策(品
目横断的経営安定対策)の推進と呼応して大幅に増加している。その数は、平成20年3
月末現在で4万7,513経営体(全国の23万9,287経営体(20年3月末)の19.9%)となっ
ており、主業農家数の58.1%を占めている(図Ⅱ-4)。
図Ⅱ-4
認定農業者の推移(東北)
12000
45,125
47,513 50,000
45,000
8000
35,809
40,000
28,264
27,084 28,044
23,854
20,332
15,900
増
加 6000
数
4000
5,768
35,000 実
数
30,000
右
25,000 目
20,000 盛
15,000
)
34,609
30,827 32,601
37,824
(
10000
10,000
2000
5,000
35
0
0
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
資料:東北農政局担い手育成課調べ(農業経営基盤強化促進法に基づく農業経営改善計画の認定状況の報告)。
注:各年3月末現在の経営改善計画数である。
19年度中の増加数は、東北全体で2,388経営体(前年度比5.3%増)となっており、水
田経営所得安定対策導入前年度の18年度中の増加には及ばないものの引き続き着実に増
加している。19年度中の県別増加数を見ると、青森県で1,005経営体(前年度比13.4%増)、
岩手県で429経営体(同5.6%増)の順となっている(表Ⅱ-5)。
表Ⅱ-5
東北における年度別の農業経営改善計画の認定状況(県別)
15年3月 16年3月
17年3月
18年3月
19年3月
20年3月
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
末現在 末現在
末現在
末現在
末現在
末現在
増加分
増加分
増加分
増加分
増加分
青森県
3,299
3,621
322
3,804
183
4,657
853
7,497 2,840
8,502 1,005
県 名
岩手県
6,196
6,576
380
6,788
212
6,906
118
7,673
宮城県
4,202
4,606
404
4,758
152
5,165
407
秋田県
7,564
7,840
276
8,010
170
8,183
173
山形県
6,216
6,657
441
7,087
430
7,300
福島県
5,124
5,309
185
5,362
53
5,613
東北計
32,601
34,609
2,008
35,809
1,200
37,824
全国計 171,746 182,345 10,599 191,633
9,288 200,842
767
8,102
429
5,933
768
6,187
254
9,651
1,468
9,895
244
213
8,230
930
8,429
199
251
6,141
528
6,398
257
2,015
45,125
7,301
47,513
2,388
9,209 228,593 27,751 239,287 10,694
資料:東北農政局担い手育成課調べ(農業経営基盤強化促進法に基づく農業経営改善計画の認定状況の報告)
。
- 53 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
19年3月末の営農類型別の認定農業者の割合は、稲作を主とする準単一複合経営が最
も高く、次いで稲作単一経営、複合経営の順となっており稲作中心の経営が全体の55.6
%を占めている(図Ⅱ-5)。
また、近年、稲作単一経営の割合は年々減少し、稲作準単一経営の割合が増加傾向に
あり、稲作以外の作目を取り入れる経営類型への転換が進みつつある。
図Ⅱ-5
営農類型別の農業経営改善計画の認定割合(東北)
単一稲作
準単 一稲作
単一酪 農
単一果樹
単 一野菜
準一 野菜
単一その他
準一 その他
複合経営
12
24.8%
36.3%
3.7%4.7%2.6%
2.2%5.6% 5.8%
14.1%
人
28,044
13
24.8%
36.3%
3.7%4.7%2.6%
2.2%5.6% 5.8%
14.1%
28,264
3.8% 5.3% 3.3%2.9% 5.9% 5.7%
14.2%
30,827
14
20.1%
15
19.4%
36.6%
3.7% 6.4% 3.3%3.3% 6.1% 6.0%
15.1%
32,601
16
18.2%
37.7%
3.6% 6.5% 3.4%3.9% 6.3% 6.6%
13.8%
34,609
17
17.4%
38.4%
3.6% 6.5% 3.6%4.3% 6.3% 6.3%
13.7%
35,809
18
16.3%
39.0%
3.6% 6.4% 3.7%4.3% 6.1% 6.2%
14.5%
37,824
19
15.3%
40.3%
3.3% 6.1% 3.9% 4.6% 6.2% 6.2%
14.0%
45,125
38.7%
0%
50%
100%
資料:東北農政局担い手育成課調べ(農業経営基盤強化促進法に基づく農業経営改善計画の認定状況の報告)
。
(2)集落営農組織の育成と法人化の推進
東北における集落営農組織は増加傾向
集落営農については、経営所得安定対策等大綱(平成17年10月27日公表)において、
特定農業団体または特定農業団体と同様の要件を満たす組織が水田経営所得安定対策(品
目横断的経営安定対策)の対象とされたことなどもあり、管内各県で設立に向けた取組
が推進されている。
集落営農実態調査によると、東北地域の20年の集落営農数は、前年に比べ655組織増加
し2,825組織と増加傾向にある(図Ⅱ-6)。
図Ⅱ-6
集落営農数(東北)
集落営農数
3,000
2,825
2,500
2,000
2,170
1,624
1,500
1,792
655増
378増
168増
1,000
500
0
平.17年
18
19
20
資料:農林水産省「集落営農実態調査結果」
(17、18年は5月1日、19、20年は2月1日)
- 54 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
20年3月末の特定農業団体数は、東北全体で643団体(全国では1,791団体)と19年3
月末の289団体から約2.2倍に増加しており、特に宮城県ではこの1年間で114団体の増加、
山形県では102団体の増加と大幅な伸びとなっている。
19年の農業生産法人の数は1,132法人となり着実に増加
19年1月1日現在の東北における農業法人のうち農地にかかる権利の設定移転を受け
られる農業生産法人は、前年より84法人増の1,132法人となり、着実に増加している(表
Ⅱ-6)。
組織形態別にみると、特例有限会社が764法人(農業生産法人に占める割合67.5%)、
農事組合法人が323法人(同28.5%)となっている。また、会社法が施行されたことに伴
い、特例有限会社を除いた株式会社が管内では昨年の14社から36社に増加しており、今
後は株式会社形態の農業生産法人が増加することが見込まれる。
また、業種別にみると、米麦作が399法人(同35.2%)と最も多く、次いで畜産が217
*1
法人(同19.2%)、そ菜が171法人(同15.1%)、果樹が126法人(同11.1%)の順となっ
ている(表Ⅱ-7)。
表Ⅱ-6
組織形態別農業生産法人数の推移(東北)
組織形態 昭和50
農事組合法人 133
有限会社
33
合資会社
1
合名会社
株式会社
合同会社
計
167
60 平成2 7
266 313 237
64 110 184
1
2
2
1
3
2
332
428
425
12
289
438
4
1
13
291
483
4
1
14
293
508
4
1
1
15
293
541
5
1
2
16
299
590
5
2
3
732
779
807
842
899
17
308
632
6
2
8
18
314
711
7
2
14
19
323
764
6
2
36
1
956 1,048 1,132
資料:東北農政局構造改善課調べ(各年1月1日現在)
。
注:19年の有限会社は特例有限会社、株式会社は特例有限会社以外の株式会社。
表Ⅱ-7
業種別農業生産法人数の割合(東北)
区 分
東 北
経
営
規
模
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
5ha未満
5~10ha
10~20ha
20ha以上
法人数
計 米麦作
果 樹
畜 産
そ 菜
工芸作物
花 き
その他
A
B 構成比
C 構成比
D 構成比
E 構成比
F 構成比
G 構成比
H 構成比
1,132 399
35.2 126
11.1 217
19.2 171
15.1
8
0.7 82
7.2 129
11.4
198
40
20.2
37
18.7
32
16.2
55
27.8
0
0.0 12
6.1
22
11.1
18.7
70
29.8
21
8.9
5
2.1 11
4.7
21
8.9
235
63
26.8
44
8.5
30
18.3
164
61
37.2
5
3.0
30
18.3
24
14.6
0
0.0 14
4
2.5
17
10.7
11
6.9
1
0.6
1
0.6
16
10.1
159 109
68.6
155
63
40.6
22
14.2
23
14.8
13
8.4
0
0.0 11
7.1
23
14.8
6.3
45
20.4
47
21.3
2
0.9 33
14.9
17
7.7
221
63
28.5
14
466 105
22.5
64
13.7
81
17.4
95
20.4
2
0.4 56
12.0
63
13.5
6.9
20
9.9
203
77
37.9
25
12.3
39
19.2
26
12.8
2
1.0 14
211 102
48.3
24
11.4
37
17.5
25
11.8
0
0.0
6
2.8
17
8.1
252 115
45.6
13
5.2
60
23.8
25
9.9
4
1.6
6
2.4
29
11.5
資料:東北農政局構造改善課調べ(19年1月1日現在)
。
*1
そ菜とは、食用の目的で手を加えて栽培した植物。葉菜、根菜、茎菜、果菜。
- 55 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
農業経営の法人化は、経営体の管理能力の向上や対外信用力が向上するなどのメリッ
トを享受でき、これにより経営規模の拡大、長期的な農業経営の担い手の確保等、農業
経営を改善・発展するうえで有効な方策である。
東北全体の特定農業法人数は、19年3月末の50法人(全国では558法人)から20年3月
末では60法人(全国では589法人)となり、着実に増加している。
(3)新規就農者の確保
新規就農はゆるやかな減少
東北の新規就農者数は近年緩やかな増加から横ばい傾向にあったものの、17年度、18年
度は緩やかな減少を示し18年度は713人となった(図Ⅱ-7)。
14年度から18年度までの推移をみると、非農家から農業に新たに参入した新規参入者
は増加傾向にあるものの、16年度をピークに新規学卒者、Uターン就農者は減少傾向に
あるが、Uターン就農者は51.3%と全体の5割以上を占めている(表Ⅱ-8)。
このような状況のなか、農業・農村に関心を抱く青年等が、農業・農村の現状や新規
就農・農業法人への就農に当たっての支援策を具体的に把握できるよう、各種イベント
の開催、ホームページの充実や相談窓口の設置等の取組を展開し、新規就農者の減少に
歯止めをかける必要がある。
図Ⅱ-7
新規就農者数の推移
新規 学卒
Uタ ーン
8
74
9
73
3 75
361
新規 参入
8
73
その 他
14
56
8
81
4 01
388
36 6
2 96
299
2 88
264
25 8
14
15
16
17
18
資料:東北農政局経営支援課調べ。
- 56 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
表Ⅱ-8
新規就農者数の推移
新規学卒
14
18
(A) (B)
東北
構成比
全国
構成比
296
258
39.3% 36.2%
Uターン
B/A
0.87
14
18
(A) (B)
375
366
新規参入
B/A
0.98
49.8% 51.3%
2,070 1,927 0.93 2,702 2,897 1.07
37.7% 33.9%
49.2% 50.9%
14
18
(A) (B)
74
81
その他
B/A
1.09
9.8% 11.4%
662
803
1.21
12.0% 14.1%
14
18
(A) (B)
8
8
1.1%
1.1%
61
65
1.1%
1.1%
計
B/A
1.00
14
18
(A) (B)
753
713
B/A
0.95
1.07 5,495 5,692 1.04
資料:東北農政局経営支援課調べ。
事例
自然の中でやりがいのある仕事を[岩手県・一戸町]
一戸町のT氏は、東京都出身で、建設会社に勤務していたが、
残業時間も多く、時間に追われる会社勤めに疑問を感じていた。
自然の中でやりがいのある仕事をしたいと考え一念発起。平成14
年に一戸町に移り住み、一戸町小鳥谷地区の「大釜野菜生産組合」
で雨よけトマト栽培の研修を受け、翌年からは一戸町内の農家か
ら畑を借受けて、10アールのトマトの施設栽培を始めた。畑を貸
した農家からは「まじめで、よく働く人ですよ。農家の手伝いも
ハウス内の様子
よくやってくれる」と評判である。
その後、現在の小鳥谷地域の「こずやトマト保育農園」に入り、今年で3年目になる。現
在、T氏を含めて3名の新規就農者で雨よけトマト栽培に取り組んでいる。栽培面積も20ア
ールに拡大した。
普及センターを始め、奥中山農協野菜生産部会トマト専門部、一戸町等の指導も熱心に受
け、栽培技術向上に意欲的に取り組んでいる。今は栽培技術の向上が先と謙遜しているが、
収穫時期や葉かきの時期には臨時雇用で繁忙期を乗り越え、管理作業の充実を図っている。
また、肥料設計や、施肥の時期を変えてみるなど研究熱心に取り組んでいる。
- 57 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
(4)農業経営への女性の参画
農業就業人口及び基幹的農業従事者に占める女性の割合は、54%、46%
女性は重要な担い手として農業・農村地域に大きく貢献しているが、農業経営への参画や地
域の方針決定の場への参画は十分でない
東北の農業就業人口、基幹的農業従事者における女性の割合はそれぞれ54.0%、45.6
%となっており、女性は、農業や地域社会の重要な担い手となっている(図Ⅱ-8)。
図Ⅱ-8
農業就業構造における女性の占める割合(平成17年・東北)
男性
46.0%
外:農業就業
人
口
女性
(620,722人)
45.6%
女性
内:基幹的
54.0%
農業従事者
(385,301人)
男性
54.4%
資料:農林水産省「農林業センサス」。
なかでも、農村女性による農産加工や直売、農家レストラン等の起業活動は増加傾向
にあり、生産現場に消費者ニーズに即した農産物の生産を促すとともに、地域に所得や
雇用をもたらすなど、農業の発展及び地域の活性化に貢献している(図Ⅱ-9)。
図Ⅱ-9
農村女性による起業数の推移
件(全国)
件(東北)
2,500
7,000
6,000
2,000
1,500
1,198
3,000
2,000
438
469
523
699
839
935
1,000
個人(東北)
個人(全国)
資料:農林水産省普及・女性課調べ。
- 58 -
19
.1
.1
18
.1
.1
0
17
.1
.1
296
1,144
15
.1
.1
16
.1
.1
199
228
14
.1
.1
11
.2
.1
0
13
.1
.1
500
1,000 952 1,022
1,070 1,143
12
.2
.1
1,000
5,000
1,264 1,270 4,000
グループ(東北)
グループ(全国)
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
しかしながら、認定農業者に占める女性の割合が低いなど、女性の農業経営における
位置付けは、必ずしも明確なものとはなっていない。家族の話合いによる家族経営協定
の締結を推進し、男女がともに共同経営者としてパートナーシップを発揮できる環境を
整備するとともに、女性農業者を認定農業者や集落営農のリーダー的人材として育成し
ていくことが重要である(図Ⅱ-10)。
図Ⅱ-10
女性認定農業者及び家族経営協定締結(文書)数の推移
人
2,000
%
(認定農業者に占める女性の割合)
3.2
1,500
4.0
3.0
2.0
1,000
500
3.0
399
509
588
10年
11年
12年
621
711
782
863
864
1,036
1,452
0.0
0
13年
女性認定農業者数
14年
15年
16年
17年
女性の割合(東北)
18年
19年
女性の割合(全国)
(家族経営協定締結数の推移)
戸
40,000
37,721
34,521
35,000
32,120
28,734
30,000
25,151
25,000
21,575
20,000
17,200
14,777
15,000
10,000
5,000
1.0
9,947
12,030
7,206
407
629
856
3,877
2,655 2,991 3,377
1,135 1,409 1,776 2,258
0
9年
10年
11年
12年
13年
14年
東北
15年
16年
17年
18年
全国
資料:農林水産省普及・女性課調べ。
注:13年までは各年8月1日現在、14年以降は3月31日現在。
- 59 -
19年
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
また、女性農業委員や農協役員の割合は増加傾向にあり、女性の地域社会への参画は
徐々に進んでいるものの、その割合はまだ低い(表Ⅱ-9)。登用目標の設定や女性の参
画意欲の向上、地域全体の意識啓発等のため、関係機関連携しての取組が必要である。
表Ⅱ-9
地域の方針決定の場における女性の割合
区分
東北計
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国 農業委員(18年)
農協個人正組合員(18年)
農協役員(18年)
うち女性(割合) 総数 うち女性(割合)
総数 うち女性(割合)
総数
5,141
230 (4.5)
701,558 107,120 (15.3)
2,876
49 (1.7)
861
15 (1.7)
77,670 10,256 (13.2)
587
5 (0.9)
807
71 (8.8)
110,891 12,497 (11.3)
431
9 (2.1)
780
24 (3.1)
134,445 28,891 (21.5)
432
6 (1.4)
679
25 (3.7)
114,026 18,307 (16.1)
408
13 (3.2)
681
29 (4.3)
111,070 15,593 (14.0)
452
5 (1.1)
1,333
66 (5.0)
153,456 21,576 (14.1)
566
11 (1.9)
39,997
1,682 (4.2)
4,931,853 812,508 (16.5)
22,035
465 (2.1)
資料:農業委員:経営局構造改善課「農業委員会及び都道府県農業会議実態調査結果」(18年10月調査)
農協個人正組合員、農協役員:経営局協同組織課「平成18事業年度総合農協統計表」
(20年5月)
事例
女性の経営参画を応援!「JAかがやき女性塾」開講[秋田県・秋田市]
JA新あきたでは、平成19年度から、女性部員向けに「JA
かがやき女性塾」を開講し、年4回程度、農業の現状と課題や
JAの事業内容についての講義、ライスセンター等JA施設の
視察等の講座を実施している。これは、近年、直売所の運営や
加工部門の取組等、JAにおける女性の果たす役割が非常に大
きくなっていることから、JAの経営内容や組織の沿革を理解
してもらい、JA運営への女性の参画を促すことを目的として
「JAかがやき女性塾」の様子
始めたものである。
同JAには1,033人(19年3月31日現在)の女性部員がいるが、同塾に参加した女性部員か
ら、「JAや農業についてもっと知りたい」という声が出るなど、JA運営への参画に対する
女性部員の意識も高まってきている。
現在のところ、同JAには、参与として3人の女性が登用されているだけで、女性役員は
いないが、今後、JAとして、JA運営への女性の参画や起業活動への支援を積極的に進め
ていくため、定款の改正等を行って女性役員枠を設置するなど、女性が理事等に就任しやす
い仕組みを検討していくこととしている。
悩み解消のために集まった女性たちが地域を元気にした[秋田県・にかほ市]
にかほ市は(株)TDK創業の地でもあり、農家でありながら他産業に従事する女性が多
く、農業に専従する女性は地域で孤独感を感じていた。一方、バブル崩壊で地域に戻って農
業をし始めた女性は、いくら働いても給料がもらえない、決まった休みがないことなど、農
業に疑問をもっていた。
平成9年、こうした女性たちが悩みを話し合い、解決の糸口を求めるための交流の場とし
- 60 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
て、15人のメンバーで「グリーンレディースにかほ」を結成し、活動を開始した。
以降、グループの活動は地域の農業の発展、地域の活性化に大きく貢献してきた。視察や
勉強会を重ねて小菊栽培から始めた活動は地域に波及し、水稲単一地帯において、小菊、秋
だしパンジー、花壇苗、トルコギキョウ等を中心とした花き産地を形成するに至った。会員
の所得も向上し、経営の安定化が図られた。
また、規模拡大による加重労働解消のため、援農による繁忙期の労力調整を目的として立
ち上げた「グリーンネットワーク」は、「グリーンレディースにかほ」の会員のほか、会員以
外の農家や非農家が多く加わっており、地域における雇用の創出に寄与している。
さらに、空洞化した市街地での直売活動や、ひまわり祭、パンジー祭等の消費者交流イベ
ントの開催のほか、会員のほ場と活動内容を紹介した「グリーンレディースにかほマップ」
を配布しての消費者を自分たちのほ場に招き入れるなどの取組は、地域に多くの人を呼び込
んでいる。
こうした会の活動が地域に認められ、会員の中には女性農業士や農業委員、JA代表を務
める会員も出てきている。
女性加工グループが地場産大豆を使用した甘納豆を販売[秋田県・横手市]
平成19年7月、横手市十文字町に農産物直売所や農産物加工
所、地場産農産物を使ったレストラン等を備えた、地域産業や
観光情報発信、住民交流の拠点となる地域振興施設「まめでら
が~」がオープンし、9月には「道の駅十文字」としてグラン
ドオープンした。
その加工所を利用し農産物の加工に取り組もうと、18年秋、
横手市十文字町の農家の女性6人が、農産物加工グループ「昔
のお姉さん」(丹尾テイ子代表)を結成した。そして、同グルー
農産加工グループメンバー
プが製造する「地場産大豆を活用した地産地消甘納豆」が、秋田県が新たな発想を持つ意欲
的な個人・団体を支援し、地域農業を活性化させる目的で行う「新よこて味農林(みのり)
のやる気チャレンジ応援事業」の「優良やる気プラン」第1位に輝き、加工所の使用料やパ
ンフレットデザイン代への資金の助成を受けることになった。
同グループは、主に横手市十文字地区の水田で栽培されている大豆をJA秋田ふるさとか
ら仕入れている。また、そのほかに量は少ないが会員が栽培する無臭大豆「すずさやか」や
地域のお年寄りなどが栽培する小豆や黒豆なども利用している。それを、活動の拠点として
いる地域振興施設「まめでらが~」の農産物加工所で甘納豆に加工し、直売所「ふれあい直
売十文字」で販売している。
県の事業で「優良やる気プラン」に選ばれニュースとして取り上げられたことから、問合
わせや予約が数多くあるなど、予想以上に反響があり製造が追いつかない状況である。
今後、JAとの契約による大豆の安定的な仕入れに取り組むなど製造を軌道に乗せ、直売
所での通年販売を目指すとともに、同グループ独自のシールを貼るなど顔の見える商品とし
て、全国へ向けて販売していきたいと考えている。
そして、現在の健康ブームに乗り、安全・安心で健康によい地場産大豆をもっと食べても
らえるよう普及させたいと考えている。
- 61 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
3 農地の有効利用
(1)農地利用の動向
平成19年の耕地面積は87万7,500haで減少傾向
19年の東北の耕地面積は87万7,500haで、前年に比べ3千ha(0.3%)減少した(図Ⅱ
-11)。
田畑別にみると、田は都市近郊を中心とした宅地や道路用地等への転用によるかい廃、
畑への転換等により前年に比べ2千ha(0.3%)、畑は宅地等への転用や労働力不足等に
よるかい廃により前年に比べ900ha(0.4%)それぞれ減少している。
10年と比べると、耕地面積は4万2,500ha(4.6%)減少し、このうち田は2万4,700ha
(3.8%)減少し、畑は耕作放棄を主とする牧草地及び樹園地の減少が主因となって1万
7,800ha(6.6%)減少した。
図Ⅱ-11
耕地面積の推移(東北)
千 ha
1,200
1,000
800
田
1019.0
56.9
94.6
162.6
1,004.0
66.2
90.2
147.1
普通畑
樹園地
牧草地
993.5
982.1
957.6
74.9
89.3
76.0
82.4
74.7
73.0
920.0
71.0
57.8
143.5
147.0
891.3
66.1
53.6
887.6
65.5
53.3
884.0
64.8
53.0
146.0
880.5
64.3
52.7
877.5
63.9
52.0
140.0
133.7
134.6
135.0
135.0
135.1
600
400
704.8
700.9
686.0
676.6
663.9
651.2
637.8
634.3
631.2
628.5
626.5
昭 .48
53
58
63
平 .5
10
15
16
17
18
19
200
0
資料:農林水産省統計部「耕地及び作付面積統計」
耕地利用率は田・畑ともにわずかに低下
18年の耕地利用率(耕地面積に対する作付(栽培)延べ面積の割合)は86.9%で、前
年に比べ0.5ポイント低下した。全国平均の耕地利用率と比べると6.1ポイント、都府県
平均と比べると3.8ポイントそれぞれ下回っている(図Ⅱ-12)。
- 62 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
図Ⅱ-12
耕地利用率の推移
120 %
田(東北)
畑(東北)
110
計(東北)
計(全国)
100
全国計
93.0%
90
東北計
86.9%
80
昭.48
52
56
60
平.元
平.5
9
17 18
13
資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」
耕地利用率を田畑別にみると、田では豆類の作付面積が増加したものの、稲、飼肥料
作物等の作付(栽培)面積が減少したことから耕地利用率は88.4%で前年を0.5ポイント
下回った。
畑では、豆類、果樹、飼肥料作物等の作付(栽培)面積が減少したことから耕地利用
率は83.4%で前年を0.4ポイント下回った(表Ⅱ-10)。
表Ⅱ-10
農作物作付(栽培)延べ面積及び耕地利用率(田畑計)
区
分
東
田 北
畑
計 都
府
県
平 .17
田
畑
耕 地
面 積
( 千 ha )
884.0
農 作 物 作 付 ( 栽 培 ) 延 べ 面 積 ( 千 ha)
計
うち、
稲
772.9
麦 類
442.9
10.3
豆 類
37.9
野 菜
73.3
果 樹
53.5
工 芸
農作物
6.5
飼肥料
作 物
127.5
耕 地
利用率
(%)
87.4
平 .18
880.5
765.5
439.9
9.6
38.9
72.6
53.1
6.4
124.0
86.9
平 .17
3,523.0
3,220.0
1,587.0
150.5
134.3
451.6
261.9
110.0
366.9
91.4
平 .18
3,506.0
3,181.0
1,573.0
149.3
134.2
446.0
258.5
108.3
355.5
90.7
東
北
平 .17
631.2
561.0
442.9
9.3
29.7
21.0
-
1.0
43.6
88.9
平 .18
628.5
555.5
439.8
8.8
31.3
20.4
-
1.0
40.5
88.4
都
府
県
平 .17
2,328.0
2,165.0
1,582.0
140.7
103.5
138.5
-
7.5
140.8
93.0
平 .18
2,316.0
2,141.0
1,569.0
139.9
105.1
136.3
-
7.1
132.0
92.4
東
北
平 .17
252.8
211.9
0.0
1.0
8.2
52.3
53.5
5.6
83.9
83.8
平 .18
251.9
210.1
0.0
0.8
7.6
52.2
53.1
5.3
83.5
83.4
都
府
県
平 .17
1,195.0
1,054.0
4.7
9.8
30.8
313.1
261.9
102.5
226.0
88.2
平 .18
1,190.0
1,041.0
4.3
9.3
29.1
309.7
258.5
101.3
223.5
87.5
資料:農林水産省「耕地及び作付面積統計」
- 63 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
(2)農地の流動化の動向
平成18年は農業経営基盤強化促進法による利用権設定が増加
農業従事者の減少や高齢化が進展するなかで、東北農業が持続的な発展を図るために
は、農業に主体的に取り組む効率的かつ安定的な農業経営が生産の相当部分を担う農業
構造を確立することが必要になっている。このためには、担い手の育成・確保を図ると
ともに、担い手への農地利用集積を推進することが重要である。
18年の規模拡大につながる農地の権利移転面積(自作地有償所有権移転面積+利用権
設定面積+賃借権設定面積)は、2万7,668haと前年比113.5%であった。
このうち、自作地有償所有権移転は1,833ha(前年比95.5%)で、農業経営基盤強化促
進法(以下「基盤法」という。)による利用権設定が2万1,982ha(同116.0%)、農地法に
よる賃借権の設定は1,475ha(同127.4%)であり、所有権の移転の割合が全体の15%、
利用権等所有権以外の権利の設定が85%となっている(図Ⅱ-13)。
図Ⅱ-13
制度別農地の権利移動面積の推移(東北)
ha
30,000
27,668
25,000
20,152
19,006
20,000
14,334
15,000
21,640
農地法による
賃借権設定
24,380
22,424
基盤法による
利用権設定
13,797
13,761
自作地
所有権移転
(基盤法)
10,000
自作地
所有権移転
(農地法)
5,000
0
昭和60平成 2
7
12
14
15
16
17
18
資料:農林水産省「農地の移動と転用」
売買による移動よりも貸借による移動が主流となっているのは、農地を購入しても対
価に見合うだけの農業収入を確保しにくいこと、農地を資産として保有する意識が高い
ことなどによるものである。また、権利設定の中では、借り手の権利が優先される農地
法による賃借よりも、不在地主でも農地を所有でき、貸付期間が終了すれば自動的に地
主に農地が返還されるなど、貸し手の権利にも配慮した基盤法の利用権設定が大宗を占
めている。
- 64 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
東北における基盤法による継続中の利用権設定面積は、19年3月末日現在で9万7,969
haであり、前年に比べ1万2,442ha増加した(図Ⅱ-14)。
図Ⅱ-14
利用権設定面積及び年間増加面積の推移(東北)
年間増加面積(左軸)
ha
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
利用権設定面積(右軸)
85,527
68,846
29,993
3,201
42,485
70,916
72,285
77,662
97,969
5,377
2,258
平成2
7
8,783
2,071
100,000
82,009
52,893
2,405
ha
12,442
80,000
60,000
4,347
40,000
3,518
1,368
20,000
0
昭和60
12
13
14
15
16
17
18
資料:東北農政局調べ。
注: 利用権設定面積は、11年度までは各年末現在、12年度以降は年度末現在である。このため、12年度
は15か月の集計期間となっている。
これは、ほ場整備事業実施地区を中心に事業の実施を契機とした利用権設定がなされ
たことや新規の農業生産法人設立に伴う構成員から法人への利用権設定がなされたこと、
高齢化・労働力不足等により経営規模を縮小する者から認定農業者や農業生産法人等へ
の利用権設定がなされ、規模拡大が進展していることなどによる。
- 65 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
(3)耕作放棄地の動向
耕作放棄地は増加
高齢化の進行による農業労働力の減少に加え、生産性の低さ、農地の受け手不足など
に起因して、耕作条件の不利な農地を中心に耕作放棄地が拡大している。
なかでも、土地持ち非農家の耕作放棄地の増加が著しく、2年以降の増加率は約300%
と総農家の増加率の3倍となっている(図Ⅱ-15)。
今後の耕作放棄地対策として、耕作放棄地の態様、地域の実情により解消方法を分類
し、それぞれの分類に応じた対応策により計画的に解消することとしている。
図Ⅱ-15
耕作放棄地面積の推移(東北)
千ha
80
土地持ち非農家の耕作放棄地面積
71
70
60
62
総農家の耕作放棄地面積
18
50
40
40
29
30
20
10
24
9
6
23
44
47
12
17
31
0
平成2
7
資料:農林水産省「農林業センサス」
- 66 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
事例
飼料用米の導入により農地の荒廃を防ぐ[秋田県・鹿角市]
鹿角市の農事組合法人「二本柳ファーム」(佐藤幸夫組合
長、構成員52人)では、平成19年から養豚向けの飼料用米
(品種めんこいな)6.2haの栽培を開始した。
これは、海外市場に依存している輸入穀物の高騰により、
国内畜産農家が煽りを受けるなか、消費者や産地、飼料業
者が一体となって飼料の自給率向上と資源循環型農業の確
立を盛り上げていこうと、首都圏の生活協同連合会と豚肉
の供給産地であるJAかづの、(有)ポークランドが協力した
二本柳ファーム事務所
取組で、耕作放棄地の解消や水田への転作作物の奨励にもつ
ながると期待されている。
同組合は、品目横断的経営安定対策に応じた集落営農組織として19年3月に設立した。同
地域では、これまでも転作作物として野菜やえだまめを作付けしていたが、連作障害等によ
り取組が進まなかったこともあり、従来の主食米と同様の栽培管理、労力で、水田を荒らさ
ずに維持できる飼料用米の導入を決め取り組んだ。
収穫した米は、養豚会社であるポークランドで飼料に配合し、与え育てた豚の肉を同生協
連合会が組合員に20年2月より販売していく予定である。
飼料用米の収量は10アール当たり約540kgで、豚2千~3千頭分の飼料を提供できた。
また、水田への転作作物として、飼料用米を作付けすることにより、畜産飼料の国内自給
率の向上が図られるほか、従来どおりの労力での維持、管理が可能となることから、休耕田
や耕作放棄地の解消につながると考えている
今後も、水田の維持、管理の観点からも飼料米等の栽培に取り組み、農家の所得向上を図
りながら、地域農業の活性化につなげていきたい。
- 67 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
(4)企業等の農業参入
建設業を中心に58法人が参入
農地の確保と有効利用を図るためには、意欲ある担い手への農地の利用集積を進める
ことが重要である。しかし、担い手不足や農家の高齢化が進むなか、担い手への農地の
利用集積が困難な地域もあり、このような地域では農業経営基盤強化促進法に基づく特
定法人貸付制度を活用した企業等からの農業参入への取組が進められている。
20年3月1日現在、東北地域では農業生産法人以外の58法人が農業参入している(全
国では281法人が参入)。
今後は、農地の有効利用や地域農業の維持・発展に寄与するため、地域の実情を踏ま
えた参入区域の設定等、他産業からの農業参入へのさらなる促進を図ることが重要であ
る。
事例
建設会社が農業生産法人を設立[福島県・金山町]
三島町の佐久間建設工業株式会社は、公共事業の削減等によ
り建設事業が大幅に縮小してきたことから、建設事業、公共事
業に頼らない、地域資源など身近にあるものを活用した異業種
への新たな事業展開を模索するなかで、低迷する地域経済、雇
用環境を活性化するため農業分野へ進出することとした。
同社では、金山町に平成19年4月、農業生産法人「株式会社
奥会津彩の里」を立ち上げ、夏秋いちごの栽培を開始した。17
夏秋いちご
年から農地の購入等具体化に向け準備を進め、金山町の遊休農地6haを購入した。また、導
入作物については、農地が高地にあり夏季冷涼な気象条件にあることとなどから、中小企業
診断士等のアドバイスを受け、市場性、将来性がある、
「夏秋いちご」を導入することとした。
同法人は、300坪の鉄骨ハウス2棟を建設し、1万6千本の夏秋いちごを植え付け8月上旬
から集出荷業者を通じて、主に業務用として出荷をするとともに、近隣の菓子製造販売会社
にも販売している。従業員は兼業農家であるものの、いちご栽培は初めてだったことから、
先進地から農家等を招いて栽培方法を学ぶなど栽培技術の習得に努めてきた。また、遊休農
地80アールを重機で復旧し、そばの栽培を行い、生産したそばを地元に販売した。
公共事業が大きく減少したため、建設会社は事業が縮小し、地域経済、雇用環境が低迷し
ているなかで、農業生産法人を設立したことにより、以前リストラした従業員を再雇用する
とともに、新たに5名のパート雇用をしたことで地域経済の活性化につながればと期待して
いる。
- 68 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
4 農業生産の動向(品目別)
(1)米
平成19年産水稲の作柄は東北平均で作況指数101
東北地域における19年産水稲の作付面積は、前年産に比べ1.4%減少し、43万3,800ha
となった(表Ⅱ-11)。
東北管内の19年産水稲の作柄は、10アール当たり収量560kg(対前年比102%)、作況指
数101となった。収穫量は243万1千トンとなり全国の収穫量に占める東北の割合は27.9
%で、ほぼ前年並になった(図Ⅱ-16)。
これは、一部地帯で、7月中旬の低温の影響による障害不稔や9月中旬の大雨に被害
により平年を下回ったものの、もみ数が平年並みで、登熟も比較的順調であったことに
よる。
図Ⅱ-16
19年産水稲の地帯別作況指数(東北)
資料:農林水産省統計部「作物統計」
- 69 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
表Ⅱ-11
水稲の作付面積及び収穫量
区 分
東 北(A)
(前年比%)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国(B)
(A)/(B)(%)
作付面積(千ha) 10a当たり収量(kg)
18年産
19年産 18年産 19年産
439.8
433.8
549
560
(99.3)
(98.6)
(97.5) (102.0)
53.3
52.2
581
573
60.0
58.5
520
529
78.3
76.7
510
532
94.1
94.1
574
584
71.5
69.8
586
601
82.6
82.6
525
539
1,684.0 1,669.0
507
522
26.1
26.0
108.3
107.3
作況指数
18年産 19年産
99
101
-
-
100
99
98
99
96
100
100
102
99
101
98
100
96
99
-
-
収穫量(千t)
18年産 19年産
2,414.0 2,431.0
(96.8) (100.7)
309.7
299.1
312.0
309.5
399.3
408.0
540.1
549.5
419.0
419.5
433.7
445.2
8,546.0 8,705.0
28.2
27.9
資料:農林水産省統計部「作物統計」
特定品種への作付集中が続く一方で、新たな品種への作付転換も行われている
19年産の水稲うるち米の品種別作付状況については、依然として「ひとめぼれ」、「あ
きたこまち」、「コシヒカリ」といった知名度の高い品種に作付が集中している。
一方、青森県では、「ゆめあかり」に代わり耐冷性・良食味の「まっしぐら」への作付
転換。宮城県では、「ひとめぼれ」への作付集中が懸念されていたことから、業務用低価
格米向けとして「まなむすめ」への作付誘導が図られるなど、各県において需要に応じ
た多様な品種の生産を推進する方針が掲げられており、新品種への作付転換や他品種へ
の作付誘導がみられる(表Ⅱ-12)。
表Ⅱ-12
水稲うるち米の品種別作付状況
(単位:%)
区 分
上位5品種計
1 位
ひとめぼれ
2 位
あきたこまち
3 位
コシヒカリ
4 位
はえぬき
18年産
88.2
19
87.4
ひとめぼれ
18年産
97.5
つがるロマン
19
98.3
つがるロマン
18年産
98.6
ひとめぼれ
19
98.5
ひとめぼれ
67.1
20.7
6.1
2.6
18年産
98.9
ひとめぼれ
ササニシキ
まなむすめ
コシヒカリ
83.0
11.1
2.8
1.8
19
98.9
ひとめぼれ
ササニシキ
まなむすめ
コシヒカリ
18年産
99.1
あきたこまち
19
99.1
あきたこまち
18年産
97.2
はえぬき
19
96.3
はえぬき
66.4
11.2
18年産
97.1
コシヒカリ
ひとめぼれ
63.6
26.1
19
97.7
コシヒカリ
ひとめぼれ
63.4
26.9
4.0
18年産
70.7
コシヒカリ
ヒノヒカリ
ひとめぼれ
37.4
10.5
10.5
19
70.5
コシヒカリ
ひとめぼれ
ヒノヒカリ
37.7
10.4
10.4
東 北
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国
32.0
32.4
55.8
53.0
65.3
82.1
87.9
86.7
67.1
25.8
あきたこまち
12.9
コシヒカリ
11.0
はえぬき
25.1
12.8
11.1
ゆめあかり
まっしぐら
むつほまれ
22.7
9.1
まっしぐら
むつほまれ
40.5
あきたこまち
24.4
あきたこまち
3.7
いわてっこ
5.4
いわてっこ
8.2
あきたこまち
0.7
かけはし
2.4
どんぴしゃり
10.7
4.1
1.9
ひとめぼれ
めんこいな
ササニシキ
7.5
2.7
ひとめぼれ
めんこいな
8.7
2.9
ひとめぼれ
コシヒカリ
10.5
9.6
ひとめぼれ
コシヒカリ
9.9
あきたこまち
4.3
あきたこまち
0.5
美山錦
0.4
あきたこまち
7.8
あきたこまち
5 位
つがるロマン
6.5
つがるロマン
6.0
あきたこまち
1.7
華吹雪
0.5
ササニシキ
1.1
かけはし
2.0
たきたて
0.2
たきたて
0.2
はえぬき
0.5
ササニシキ
0.3
ササニシキ
2.2
ササニシキ
7.2
1.7
チヨニシキ
ふくみらい
1.9
1.2
チヨニシキ
ふくみらい
2.3
あきたこまち
9.0
あきたこまち
8.6
1.0
キヌヒカリ
3.3
キヌヒカリ
3.4
資料:農林水産省総合食料局「18年産米穀の作付見込調査」、
「米穀の流通・消費等動態調査」
注:1)ラウンドの関係で計と内訳が一致しない場合がある。
2)宮城県のササニシキの面積には「ササニシキBL」の面積も含まれる。
- 70 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
品質は過去5年間で最高
19年産米の品質(1等米比率)については、充実は平年並みであった一方、心白(乳
白)粒やカメムシ類による着色粒の混入が、一部地域を除き平年より少なかったことか
ら、東北全体で90.6%(前年比0.3ポイント増)と過去5年間で最も高いものとなった(表
Ⅱ-13)。
表Ⅱ-13
米穀検査成績(平成19年産水稲うるち玄米)
(単位:t、%)
等 級 比 率
県 名
検 査 数 量
主な品種の1等比率
1等
東 北
1,411,665 (1,669,187)
2等
3等
規格外
90.6 (90.3)
8.4 (8.3)
0.7 (0.7)
0.3 (0.6)
-
-
青森県
175,187
(204,395)
83.3 (80.7)
15.5 (17.5)
0.9 (1.1)
0.4 (0.7) つがるロマン
89.6 まっしぐら
73.6
岩手県
159,964
(196,966)
91.1 (92.7)
7.8 (6.1)
0.9 (0.7)
0.2 (0.5) ひとめぼれ
92.3 あきたこまち
89.2
宮城県
222,625
(261,382)
89.1 (89.2)
10.1 (9.5)
0.6 (0.7)
0.1 (0.6) ひとめぼれ
91.5 ササニシキ
77.6
秋田県
360,052
(432,708)
92.3 (92.0)
6.6 (6.5)
0.6 (0.7)
0.5 (0.8) あきたこまち
93.1 ひとめぼれ
93.4
山形県
254,847
(316,208)
92.8 (91.9)
6.0 (7.0)
0.7 (0.6)
0.5 (0.6) はえぬき
94.3 ひとめぼれ
93.0
福島県
238,990
(257,529)
92.0 (92.8)
7.2 (6.2)
0.6 (0.7)
0.2 (0.3) コシヒカリ
93.7 ひとめぼれ
90.7
4,102,554 (4,776,481)
79.8 (78.4)
16.6 (17.2)
2.1 (2.4)
1.6 (2.0)
全 国
資料:農林水産省総合食料局「平成19年産米の検査結果(速報値)(19年12月末日現在)
」
農林水産省総合食料局「平成18年産米の検査結果(19年10月末日現在)
」
注:表中の( )書は18年産。
- 71 -
-
-
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
18、19年産米の入札結果はいずれも前年を下回る水準で推移
18年産米のコメ価格センターにおける入札価格は、17年産米を下回る水準で推移し、
19年産米についても、取引開始から前年産を大幅に下回る状況となり、10月29日に米緊
急対策を講じた結果、価格は上昇傾向にあるものの、東北の各県主要銘柄は青森県を除
き、前年産と比較して依然低い水準で推移している(図Ⅱ-17、表Ⅱ-14)。
図Ⅱ-17
平成18・19年産米入荷価格の推移
( 単位:円 /60kg)
17000
[○]16,857福島コシヒカリ
[-]15,665全銘柄平均
16000
[△]15,531宮城ひとめぼれ
[+]15,512秋田あきたこま
ち
15000
[□]15,485岩手ひとめぼれ
[*]15,397山形はえぬき
[-]16,004
[〇]15,613
[□]14,725
[◇] 14,090 青森つがるロマ
ン
[◇]14,677
[△]14,545
[+] 14,482
[*] 14,377
14000
1 8年産
13000
18年10月
11月
12月
19年産
19年3月
5月
9月
10月
11月
12月
資料:
(財)全国米穀取引・価格形成センター
表Ⅱ-14
平成18・19年産米入札価格の推移
(単位:円/60kg)
18年産米
産 地 銘 柄
18年10月
11月
12月
19年産米
19年3月
5月
9月
10月
11月
13,843
13,545
14,677
14,264
14,419
14,886
14,380
14,882
14,703
青森 つがるロマン
14,090
14,054
14,024
14,049
14,500
岩手 ひとめぼれ
15,485
15,390
15,389
15,389
15,390
宮城 ひとめぼれ
15,531
15,507
15,502
15,499
秋田 あきたこまち
15,512
15,442
15,448
15,523
山形 はえぬき
15,397
15,390
15,389
15,391
福島 コシヒカリ(会津)
16,857
16,755
16,754
16,770
全銘柄平均(全国)
15,665
15,817
15,737
15,639
15,505
14,464
19年産平
均価格
(12月末)
14,081
14,073
15,393
14,380
14,545
15,507
14,458
14,440
14,482
15,477
14,490
14,204
14,377
15,392
14,310
15,613
16,786
15,532
16,004
15,731
14,911
15,450
15,133
12月
18年産平
均価格
14,646
14,691
14,725
資料:
(財)全国米穀取引・価格形成センター
注:1)価格には包装代(紙袋)
、拠出金、消費税が含まれている。
2)全銘柄平均(全国)の価格は、落札銘柄ごとの価格を前年産検査数量ウェイトで加重平均した価格である。
3)日常的取引を除く通年取引、期別取引、定期注文取引、特定取引の合計の価格である。
- 72 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
(2)麦・大豆・そば
ア 麦
19年産麦は前年産に比べ作付面積は減少したものの、単収の向上により収穫量は増加
東北地域における19年産4麦の作付面積は9,570haで、前年産に比べ70ha(前年産比
0.7%)減少した。
麦種別にみると、小麦は宮城県を除く5県で増加したものの、前年産に比べ80haの減
少となった。一方、六条大麦は、前年並みとなった。
小麦の作柄は、は種後の平均気温が高めに経過したことなどから生育が早めに推移し
たが、幼穂形成期から出穂期の気温が低めに推移したため、東北全体の10アール当たり
平均収量対比は93(10アール当たり収量197kg) となり、収穫量は前年比110.3%の1万
6,100トンとなった(表Ⅱ-15)。
県別には、登熟期が順調に推移し、病気の発生・倒伏が少なく好条件で収穫した秋田
県は10アール当たり平均収量対比は112となったが、幼穂形成期から出穂期の気温が低め
に推移した他の県では平年を下回った。
表Ⅱ-15
平成19年産小麦の作付面積及び収穫量
区 分
東 北
(前年比%)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国
作付面積
(ha)
8,160
(99.0)
2,180
3,650
1,440
281
125
491
209,700
10a当たり収
量
(kg)
197
(111.3)
193
159
299
262
160
181
434
10a当たり
平均収量
対 比
93
-
94
88
97
112
95
96
110
収穫量
(t)
16,100
(110.3)
4,210
5,800
4,310
736
200
889
910,100
資料:農林水産省統計部「作物統計」
注: 10a当たり平均収量対比とは、10a当たり平均収量(過去7か年のうち、最高、
最低を除いた過去5か年の平均値)と当年値との対比である。
- 73 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
六条大麦は、東北全体の10アール当たり平均収量対比が89(10アール当たり収量257kg)
で、前年産の108(10アール当たり収量309kg)を下回った。作付面積はほぼ横ばいであ
ったものの、10アール当たり収量が減少したことにより、収穫量は前年比84.0%の3,630
トンとなった(表Ⅱ-16)。
表Ⅱ-16
平成19年産六条大麦の作付面積及び収穫量
作付面積
(ha)
区 分
東 北
(前 年 比 % )
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国
10a当 た り収
量
(kg)
1,410
(100.7)
1
49
1,280
15
15
47
15,700
10a当 た り
平均収量
対 比
257
(83.2)
-
224
258
320
167
309
332
収穫量
(t)
89
-
-
88
88
122
99
106
105
3,630
(84.0)
-
110
3,300
48
25
145
52,100
資料:農林水産省統計部「作物統計」
注: 10a当たり平均収量対比とは、10a当たり平均収量(過去7か年のうち、最高、
最低を除いた過去5か年の平均値)と当年値との対比である。
登熟期の好天により品質が前年を上回った
19年産小麦、大麦の品質については、登熟期が天候に恵まれたことなどから、小麦に
ついては1等比率62.7%(前年比24.8ポイント増)大麦については1等比率19.6%(前
年比14.7ポイント増)と前年を上回った(表Ⅱ-17)。
表Ⅱ-17
麦の検査成績(平成19年産)
(単位:t、%)
小 麦
県 名
六 条 大 麦
等 級 比 率
等 級 比 率
検 査 数 量
検 査 数 量
1等
東 北
15,238 (14,719)
2等
規格外
1等
62.7 (37.9)
30.0 (40.0)
7.3 (22.2)
3,523
-
(4,168)
規格外
19.6 (4.9)
63.1 (65.5)
17.3 (29.6)
-
-
-
-
-
青森県
3,810
(3,246)
86.6 (72.5)
7.4 (18.7)
6.0 (8.8)
岩手県
5,663
(4,769)
87.3 (56.3)
9.1 (36.1)
3.6 (7.6)
106
(49)
72.3 (29.7)
14.9 (70.3)
12.8
宮城県
4,193
(5,249)
21.0 (7.8)
64.6 (45.3)
14.4 (46.9)
3,215
(3,929)
17.7 (4.4)
64.9 (66.4)
17.4 (29.2)
秋田県
721
(611)
32.2
67.1 (88.4)
0.7 (11.6)
48
(5)
-
-
100.0 (50.6)
-
(49.4)
山形県
189
(200)
26.4 (29.9)
70.6 (69.0)
3.0 (1.1)
25
(11)
-
-
100.0
-
(100.0)
福島県
663
(643)
22.4 (10.2)
67.0 (76.5)
10.6 (13.3)
129
(175)
35.0 (8.2)
36.0 (49.9)
28.9 (41.9)
961,051 (870,333)
86.6 (77.4)
4.9 (15.0)
8.5 (7.6)
50,123 (40,901)
66.4 (54.6)
18.5 (28.0)
15.1 (17.3)
全 国
-
-
2等
-
資料:農林水産省総合食料局「平成19年産麦の検査結果(速報値)(19年12月末日現在)
」
農林水産省総合食料局「平成18年産麦の検査結果(最終値)」
注:表中の( )書は18年産。
- 74 -
-
-
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
各産地において生産性・品質向上対策を推進
実需者ニーズに即した良品質麦の安定生産を図るため、管内の生産者団体、実需者団
体、各県の行政及び農業試験場、独立行政法人農業・食品産業技術統合研究機構東北農
業研究センターを構成機関とする麦新品種等品質評価協議会を開催し、新品種の品質評
価と栽培技術の確立、相互の連携強化を推進した。
各産地においては、生産性・品質の向上、団地化、担い手の育成等を図るため、産地
協議会を設置しており、新技術等試験実証ほの設置、品質分析、栽培マニュアルの策定、
研修会の開催等の活動を行っているほか、担い手経営革新促進事業(19年度~)により、
新技術の導入を実践している。
さらに19年度においては、東北ブロック麦新品種等品質評価協議会において、地域の
実情に即した実現可能な目標、生産現場における課題解決のための具体策を明確化した
生産・流通分析シート(麦カルテ)の検証を行い、生産性の向上、品質改善に向けた取
組を推進した。
19年産からは、水田経営所得安定対策により、品質に基づく支払いが導入されること
となった。パン・中華めん用小麦、主食用等大麦については、品質区分Aランク比率が
前年産に比べ増加したが、日本めん用小麦については低下した(表Ⅱ-18)。
表Ⅱ-18
評価結果・ランク集計表(Aランク率)
小 麦
区分
日本 めん用
県名
青森県
平 成 1 8年
84.1
大 麦
(単位:%)
パ ン・中華 めん
平 成 19年
49.7
平 成 18年
主食 用等大 麦
平 成 1 9年
-
平 成 18年
平 成 19年
9 8.9
-
-
岩手県
4.7
4.6
41. 5
9 8.9
30.8
54. 4
宮城県
97.3
85.9
100. 0
10 0.0
74.0
93. 9
秋田県
88.0
40.5
0. 0
10 0.0
100.0
0.0
-
-
山形県
44.2
0.0
0. 0
0.0
福島県
16.4
100.0
48. 0
9 1.2
100.0
4. 2
東北計
57.3
43.5
57. 3
9 0.2
74.2
88. 4
資料:(社)全国米麦改良協会「評価結果・ランク一覧表」集計
- 75 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
産地における需要に即した良品質麦生産の推進が評価に反映
18年9月及び10月、小麦では岩手県産ナンブコムギ及び宮城県産シラネコムギ、大麦
では宮城県産シュンライ及びミノリムギについて入札が行われた。上場数量は、前年産
の3,230トンと同程度の3,210トンとなった。岩手県産ナンブコムギが320トン(21.5%)
の落札残となり、前年(20.3%)並となった。落札価格をみると、上場された全ての銘
柄が上昇に転じた入札結果となった(落札価格が当年産の指標価格となる)。特に、六条
大麦は上場数量に対し、申込数量が大幅に上回っており、基準価格の上限価格での落札
となった(表Ⅱ-19)。
産地における需要に即した良品質麦生産の取組がその評価に反映されつつある入札結
果となった。
表Ⅱ-19
民間流通麦にかかる入札結果の概要(平成19年産・東北)
(単位:円、t、%)
麦 類
小 麦
六条大麦
産地
銘 柄
基準価格
指標価格
対比
上場数量
申込数量
落札数量 落札残数量
岩手県 ナンブコムギ
37,367
37,390 100.1%
1,490
1,170
1,170
320
宮城県 シラネコムギ
31,740
32,379 102.0%
920
1,470
920
0
宮城県 シュンライ
33,299
35,587 106.9%
470
910
470
0
宮城県 ミノリムギ
33,832
36,200 107.0%
330
530
330
0
3,210
4,080
2,890
320
計
資料:
(社)全国米麦改良協会「平成19年産民間流通麦に係る入札結果」
注:基準価格、指標価格は円/1t当たりの価格で、消費税(地方消費税を含む)相当額を含めた価格である。
コラム
期待されています 東北の麦
東北における東北産小麦への製粉業者等実需者からの購入希望数量は、生産量(販売予定数
量)上回っている。
実需者は、たんぱく質割合等品質の平準化、パン用に使う高たんぱく質麦を要望しているこ
とから、実需者ニーズを踏まえ、たんぱく質含量が高い「ゆきちから」や「ねばりごし」とい
った新品種や単収・品質の向上を可能にする新技術の導入が期待されている。
平成20年産小麦の販売予定数量と購入希望数量
購入 希望数量
18,487
販売 予定数量
15,056
0
5,000
10,000
- 76 -
15,000
t
20,000
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
事例
地場産小麦「ネバリゴシ」100%のうどんが完成[青森県・つがる市]
つがる市の車力水田農業生産組合(工藤三千輝組合長、組合
員4名)では、自分たちで栽培した小麦が地元で消費されない
ことに違和感を感じていたため、栽培した小麦を地元で消費し、
そのおいしさを知ってもらうことを目的として、平成19年10月
から、同組合で栽培した小麦「ネバリゴシ」を100%使用した
うどんを製造・販売している。
同組合は地域の転作小麦栽培を目的として14年に組織され、
ねばりごし
現在は地域の転作田を借り入れ、約70haに小麦「ネバリゴシ」
を作付けしている。
収穫した小麦はこれまで全量JAに出荷していたが、自分たちで栽培した小麦を地元で消
費し、そのおいしさを知ってもらおうと、18年からうどんの試作に取りかかった。
試作品は同市役所での試食や、民間企業に依頼したモニタリング調査で好評を得たため、
商品化が決定した。商品名は品種名から「ねばりごし」とし、加工は県内に製粉業者がない
ことから岩手県の業者に依頼している。
19年度は小麦6千kgを加工し、3,600kgを製造した。
同製品は、少しでも多くの消費者に受け入れられるよう、細麺と太麺の2種類を用意した
ほか、贈答品として化粧箱入(3束入、6束入の2種類)も用意しており、同市車力地区の
村おこし拠点館「フラット」等で販売している。
地域に生産者の顔が見える安全・安心なうどんを提供できるとともに、付加価値により所
得向上が図られることから、今後は、「ねばりごし」を地域に定着させ、将来的にはつがる市
のブランドとして確立し販路を拡大していくこととしている。
- 77 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
イ 大豆
19年産大豆の作付面積は18年産と比較して増加し、16年産の不作以降、3年連続である程度
の収量を確保
19年産大豆の作付面積は、東北全体では前年産に比べ2,500ha増加し、38,100haとなっ
た(図Ⅱ-18、表Ⅱ-20)。
なお、全国の作付面積のうち東北はその28%を占めている。
図Ⅱ-18
大豆生産の推移(東北)
作付面積
70,000
t 収穫量
70,000
ha
60,000
60,000
50,000
50,000
収穫量
作付面積
40,000
30,000
40,000
30,000
畑
20,000
20,000
田
10,000
0
10,000
0
52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 年産
資料:農林水産省統計部「作物統計」
表Ⅱ-20
平成19年大豆の作付面積及び収穫量
区 分
東 北
(前年比%)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国
作付面積
(ha)
38,100
(107.0)
4,340
4,470
10,800
8,130
7,040
3,310
138,300
10a当たり収
量
(kg)
137
(98.0)
150
99
147
149
126
129
164
10a当たり
平均収量
対 比
92
-
102
76
97
91
85
98
97
収穫量
(t)
52,100
(104.8)
6,510
4,430
15,900
12,100
8,870
4,270
226,700
資料:農林水産省統計部「作物統計」
注: 10a当たり平均収量対比とは、10a当たり平均収量(過去7か年のうち、最高、
最低を除いた過去5か年の平均値)と当年値との対比である。
- 78 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
東北の19年産の作柄については10アール当たり収量で前年比98%とやや減となったが、
16年の不作以降では3年連続である程度の収量を確保した。これは、全体的に播種期か
ら天候に恵まれたことによる。収穫量は、前年に比べ2,400トン増加の52,100トンとなっ
た。
19年産の検査成績(20年3月末現在)をみると、上位等級(2等以上)の比率は東北
全体で49%となり前年と比べると2ポイント上回った(表Ⅱ-21)。
表Ⅱ-21
大豆の検査成績(平成19年産)
(単位:t、%)
県 名
等 級 比 率
普通大豆
1等
東 北
33,291 (28,209)
2等
3等
特定加工用大豆
規格外
13.3 (11.2)
35.9 (36.1)
37.4 (35.0)
0.6 (0.4)
4,871
(5,933)
青森県
4,048
(3,421)
13.4 (17.4)
33.4 (37.2)
37.7 (24.3)
0.7 (1.4)
701
(835)
岩手県
2,409
(2,628)
29.9 (42.2)
25.7 (28.3)
28.3 (19.5)
2.5 (0.5)
380
(275)
宮城県
12,567
(9,434)
19.0 (9.9)
48.2 (42.3)
24.4 (32.7)
(0.0)
1,157
(1,687)
秋田県
7,751
(7,657)
6.2 (5.0)
31.9 (37.9)
45.7 (42.0)
0.5 (0.4)
1,442
(1,316)
山形県
5,321
(4,340)
2.1 (3.0)
20.5 (25.6)
59.4 (44.0)
1.0 (0.2)
1,083
(1,617)
福島県
1,196
(730)
23.4 (12.5)
41.3 (31.9)
26.8 (33.9)
0.2 (0.1)
108
(201)
152,060 (144,682)
23.4 (16.1)
31.8 (38.9)
27.1 (28.8)
0.8 (0.5)
全 国
-
31,110 (27,080)
資料:農林水産省東北農政局食糧部消費流通課
注:表中の( )は18年産。
19年産大豆の平均落札価格は前年、前々年をやや上回る水準
東北地域の19年産大豆の平均落札価格は、前年、前々年をやや上回る6,912円/60kgと
なった。しかし、全国平均を下回る価格で推移している。
(表Ⅱ-22)
表Ⅱ-22
大豆の落札価格の推移(普通大豆・特定加工用大豆)
(単位:俵(60kg)、円/60kg)
産 地
東 北
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国
平成17年産
平成18年産
平成19年産
落札数量 落札価格 落札数量 落札価格 落札数量 落札価格
154,349
6,493
133,280
6,708
241,992
6,912
14,298
6,866
20,875
6,810
33,110
6,694
7,490
6,722
14,337
7,007
12,569
7,204
62,575
6,786
43,057
7,028
84,822
7,249
41,847
6,534
28,421
6,599
65,846
7,461
24,735
5,949
19,967
6,198
38,015
6,590
3,404
6,099
6,623
6,603
7,630
6,272
629,198
6,931
573,641
6,835
981,332
7,364
資料:
(財)日本特産農産物協会
- 79 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
品質、収量向上のための基本技術の励行がポイント
国産大豆の需要拡大を図るうえで、実需者や市場のニーズに応じた品質の向上が課題
であり、今後、①各産地における基本技術の励行をさらに徹底するとともに、②調製、
選別の徹底等による品質の向上と均質化、③需要に応じた品種への作付転換等に積極的
に取り組んでいくことが必要である。また、④産地と県内業者との連携による地場消費
や学校給食等への利用拡大等、消費拡大に向けた取組も進めていく必要がある。
東北の大豆は、総じて10アール当たりの収量・上位等級比率が低いので、排水対策、
肥培管理、適期収穫等の基本技術を励行し、収量と品質の向上・安定化を進めていく必
要がある(表Ⅱ-23)。
なお、大豆の品質・収量の向上を図るため、東北農政局では東北地域大豆振興協議会
において、①高品質大豆の生産の推進、②実需者と生産者の顔の見える結びつきを強化
するため、生産者・流通業者・加工業者リストの作成、③内部品質分析の実施、④東北
の豆だよりの発行、⑤大豆HPでの各種情報提供を行っている。
また、東北地域の大豆作では、湿害による苗立ち不良と雑草の繁茂と刈り取り時の巻
き込みによる汚損粒の発生が大きな課題となっている。そこで、湿害対策技術を中心と
した大豆300A技術等の普及・定着を推進するために、19年12月に推進大会を開催すると
ともに、技術を紹介した映像を作成し、関係機関に配布した。
さらに、雑草防除の手法を整理し、地域の普及指導員等が農業者の指導を行う際の補
助資料として使用することを想定し、雑草対策のための映像を20年6月に作成し、関係
機関に配布を行っている。
表Ⅱ-23
大豆栽培の基本技術の取組状況(平成17年・東北)
区分
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東北
10a当たり平 17年産作付面積(ha)
均収量(㎏/10
a)
うち田作
138
109
166
164
139
140
148
3,770
3,920
9,090
7,820
6,270
3,400
34,300
2,960
2,830
8,270
7,440
5,920
1,640
29,000
田作の営
農排水対
策(%)
堆きゅう
肥・稲わ
ら投入
(%)
80
78
80
59
74
51
72
62
39
14
33
6
4
20
除草実施
面積
(%)
90
91
92
87
80
32
82
中耕
(%)
77
67
83
87
63
35
74
資料:農林水産省生産局農産振興課「大豆に関する資料」、農林水産省統計部「作物統計」
- 80 -
培土
(%)
73
63
78
73
65
35
68
防除
(%)
82
71
90
88
87
25
79
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
ウ そば
19年産そばの作付面積は、前年産に比べ増加
東北地方における19年産そばの作付面積は、水稲からの転換により管内全ての県で増
加したことから、前年産に比べ500ha(4.2%)増加の1万2,300haとなり、県別には山形県
が180ha(5.5%)増加の3,430ha、宮城県が142ha(26.4%)増加の679haとなった。
一方、収穫量は、山形県では前年比16.7%増加の1,890トンとなったが、青森県、秋田
県及び福島県においては、強風による倒伏等の影響により10アール当たり収量が低下し、
収穫量は前年産に比べ減少した(表Ⅱ-24)。
表Ⅱ-24
そばの生産動向
区 分
作付面積(ha)
平成17年
東 北
(前年比%)
18
10a当たり収量(kg)
19
17年
18
収穫量(t)
19
17年
18
19
11,900
( 99.2)
11,800
( 99.2)
12,300
( 104.2)
45
( 90.0)
49
(128.2)
-
(-)
5,360
( 89.5)
5,820
(119.8)
-
(-)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
2,830
901
518
1,430
3,200
2,780
849
537
1,410
3,250
2,880
872
679
1,420
3,430
30
58
20
41
53
28
68
37
53
50
25
-
-
41
55
849
523
103
586
1,700
778
577
200
747
1,620
720
-
-
582
1,890
福島県
全 国 うち主産県
3,070
44,700
42,600
2,970
44,800
42,800
2,990
46,100
38,400
52
-
73
64
-
77
52
-
69
1,600
-
31,200
1,900
-
33,000
1,560
-
26,300
資料:農林水産省統計部「作物統計」
注:1) 17年産、18年産の全国の「10a当たり収量」及び「収穫量」は、調査を行った27道県の合計及び平均値。
2) 19年産から、調査対象が前年産の作付面積が全国の作付面積のおおむね80%を占めるまでの都道府県及び
事業(強い農業づくり交付金)実施県(主産県という)になったことから、岩手県、宮城県及び東北の集計
がされていない。
(3)野菜
東北の指定野菜14品目の作付面積は減少、収穫量、出荷量は前年並み
19年産の東北の指定野菜14品目の作付面積は、農業者の高齢化、労働力不足及び他作
物への転換等により、前年に比べ400ha減少し、3万5,600ha(前年比99%)となった(表
Ⅱ-25)。
種類別にみると、根菜類では、だいこん、ばれいしょ等全体で130ha、葉茎菜類では、
ほうれんそう、はくさい等全体で170ha、果菜類では、きゅうり、なす等全体で120ha減
少した。
収穫量、出荷量は、4月、7月に低温時期はあったが、8月からの好天により、トマ
ト、キャベツ、にんじん、ねぎ、レタス等で10アール当たり収量が増加し、収穫量は97
万トン(前年比100%)
、出荷量は64万1,700トン(同102%)となった。
19年度末における東北の野菜指定産地数は、前年に比べ2産地減の144産地(全国シェ
ア14.8%)となった。
- 81 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
表Ⅱ-25
産地指定野菜(14品目)の生産・出荷状況(平成19年・東北)
(単位:ha、t、%)
区
分
計
根 菜 類
葉茎菜類
果 菜 類
作付面積
収 穫 量
35,600
15,500
12,800
7,260
出 荷 量
970,000
436,800
271,800
261,400
641,700
269,300
167,700
204,800
前 年 比
作付面積
99
99
99
98
収 穫 量
100
99
101
102
出 荷 量
102
101
103
103
資料:農林水産省統計部「野菜生産出荷統計」
注:指定野菜14品目は、だいこん、にんじん、ばれいしょ、さといも、はくさい、キャベツ、ほうれんそう、
レタス、ねぎ、たまねぎ、きゅうり、なす、トマト、ピーマン。
コラム
東北の特定野菜の生産状況
東北では、指定野菜14品目以外にも様々な野菜が収穫されている。その中でも、かぶ、やま
のいも、ごぼう、にんにく、さやいんげん、さやえんどう、えだまめ、すいかは「指定野菜に
準ずる野菜(特定野菜)」として「野菜生産出荷安定法施行規則」によって定められており、
東北地域で大きくシェアを占めている野菜である。
特に、平成19年産のにんにくの収穫量は、青森県が13,900トンと全国の収穫量の72.4%を占
めており、全国1位の生産県となっている。
平成19年産「指定野菜に準ずる野菜」の作付面積、収穫量及び出荷量
(単位:ha、t、%)
品 目
にんにく
やまのいも
ごぼう
さやいんげん
えだまめ
すいか
かぶ
さやえんどう
県 名
全 国
青森県
全 国
青森県
全 国
青森県
全 国
福島県
全 国
山形県
全 国
山形県
全 国
青森県
全 国
福島県
全 国
作付面積
1,350
2,030
2,680
8,250
1,970
8,800
707
7,040
1,530
12,800
923
12,600
247
5,360
364
4,370
収穫量
出荷量
13,900
19,200
72,400
190,400
42,000
163,100
4,550
48,900
6,500
71,400
37,400
421,600
9,040
159,300
1,460
27,500
9,490
12,300
64,000
154,500
39,000
136,200
3,090
30,700
4,640
49,100
31,700
361,000
7,500
128,500
1,140
17,300
資料:「農林水産統計」
- 82 -
作付面積
102
104
99
97
107
101
98
98
101
99
99
97
95
99
95
98
前年比
収穫量
98
101
99
99
103
102
95
100
95
101
100
101
96
106
82
101
出荷量
101
106
102
100
105
104
93
101
95
103
100
101
97
107
81
104
収穫量
シェア
72.4
(1位)
38.0
(1位)
25.8
(1位)
9.3
(2位)
9.1
(2位)
8.9
(3位)
5.7
(3位)
5.3
(4位)
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
事例
氷温技術でねぎ・にんにくの品質向上に成功[青森県・つがる市]
とみやち
JAつがるにしきた富萢支店長ねぎ生産部会(平成19年現在
会員数37名)では、収穫したねぎを氷温庫で3日間寝かせ、「氷
温ねぎ」として7月~10月にかけて東京・名古屋市場を中心に
出荷している。19年は24ha作付けし、出荷量の2割に当たる102
トンを「氷温ねぎ」として出荷した。
*1
同部会では、ねぎの所得安定化を図る際、氷温技術を知り、
ねぎの付加価値になると判断し取り入れることを決定、旧車力村
出荷作業の様子
へ氷温庫の設置を要望した。
12年6月、同村では同支店の要望に応え、氷温庫(85㎡)を3基備えた貯蔵施設を建設し、
同支店で長ねぎに適した氷温域を探る試験を重ねた結果、鮮度保持期間を伸ばすことに成功。
13年には(社)氷温協会から「氷温ねぎ」として認定を受けた。
また、同部会では、氷温技術をにんにくに応用し「氷温にんにく」として出荷している。
にんにくは13年まで萌芽抑制剤を使用するのが一般的であったが、萌芽抑制剤は発ガン性物
質が含まれることが判明し、14年4月から販売・使用が中止となった。同支店では萌芽を抑
制するために氷温貯蔵の試験を重ね、収穫から10か月経過後も萌芽を抑制することに成功し
た。
「氷温ねぎ」は、通常冷蔵に比べ約3倍の鮮度保持が可能となるほか、うまみや甘みが増す。
関東の市場で同地域産ねぎは、夏場に食味が良い重要な産地と位置付けられ、日持ちの良さ
と合わせて評価されていることから、産地評価が高まっている。
また、「氷温にんにく」も萌芽抑制のほか「氷温ねぎ」同様、食味向上の効果が得られてい
る。
*1
食品はそれぞれ固有の「氷結点」で凍り始める。0℃から「氷結点」までの未凍結温度領域を「氷温域」といい、
この「氷温域」で食品の貯蔵や加工を行う技術を指す。
- 83 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
東北管内における指定野菜の流通量は、18年で約37万トン(前年比100%)、うち管内
産入荷量が2,776トン増加し約16万トンと、管内流通量の約44%を占めている(表Ⅱ-26)。
表Ⅱ-26
指定野菜(14品目)の流通量の推移(東北)
(単位:t、%)
区
分
13年
14年
15年
16年
17年
18年
管内産
出荷量
511,592
501,365
467,864
468,179
455,442
464,199
管 内 流 通 量
管外への
移出出荷量 管内産入荷量 管外産入荷量
計
管内産占有率
331,585
180,007
223,324
403,331
45
323,428
177,937
219,732
397,669
45
300,524
167,340
218,699
386,039
43
302,904
165,275
207,430
372,705
44
297,730
157,712
210,520
368,232
43
303,711
160,488
207,979
368,467
44
資料:農林水産省統計部「青果物産地別卸売統計」から算出。
管内産の管外への移出出荷量を品目別にみると、だいこん、きゅうり、トマト、キャ
ベツ、にんじんの順となっている。
移出出荷先は、関東地域が最も多く、管内産の全出荷量の約半数を占めている(表Ⅱ
-27、図Ⅱ-19)。
表Ⅱ-27
指定野菜(14品目)の品目別流通量(平成18年・東北)
(単位:t、%)
区
分
だいこん
きゅうり
ト マ ト
キャベツ
にんじん
そ の 他
計
管内産
出荷量
154,190
80,932
46,417
45,225
37,886
137,435
464,199
管 内 流 通 量
管内産入荷量 管外産入荷量
52,676
19,304
8,962
23,052
15,702
56,494
160,488
計
19,923
6,796
10,296
36,893
16,635
134,071
207,979
管外への
移出出荷量
管内産占有率
72,599
26,100
19,258
59,945
32,337
190,565
368,467
73
74
47
38
49
30
44
資料:農林水産省統計部「青果物産地別卸売統計」から算出。
図Ⅱ-19
指定野菜(14品目)の移出出荷先別割合(平成18年・東北)
その他
近畿 7%
東海7%
4%
東北管内
35%
東北管内産
総出荷量
464千t
管外
65%
関東
47%
資料:農林水産省統計部「青果物産地別卸売統計」から算出。
- 84 -
101,514
61,628
37,455
22,173
22,184
80,941
303,711
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
指定野菜の価格は19年は暖冬から始まり安値で推移
東北管内の中央卸売市場における指定野菜の入荷量は、野菜消費量の減少、消費人口
の減少に加え、市場外流通量(業務用・直売所等)の増加により減少傾向にある。
19年の1~3月期は、前年からの暖冬の影響で入荷量は前年比105.8%と増加し、価格
は前年比82.6%となり、安値傾向が4~6月期まで続いた。7月に入り台風4号や低温
の影響を受け、入荷量は一時減少したが、その後全般的な好天から、にんじんが大豊作
になるなど、年間の入荷量は前年比102.9%と増加し、価格は前年比93.2%、平年比でも
95.7%と安値で推移した。(表Ⅱ-28)。
表Ⅱ-28
中央卸売市場における指定野菜の入荷量及び価格動向(東北)
(単位:t、円/㎏、%)
区
入
荷
量
価
格
分
18年 19年 19/18年比
19/平年比
18年 19年 19/18年比
19/平年比
1~3月期
77,331
81,828
105.8
98.0
170
140
82.6
88.4
4~6月期
106,805
110,923
103.9
96.7
154
136
88.5
94.8
7~9月期
118,568
117,415
99.0
98.2
134
128
96.1
103.6
10~12月期
102,265
106,711
104.3
100.4
105
115
109.4
95.8
年
間
404,972
416,877
102.9
98.3
139
129
93.2
95.7
資料:東北管内8か所の中央卸売市場年報
野菜の安定生産・供給に関する事業の実施
野菜産地の生産出荷の安定と消費地域での価格の安定を図るために、実施主体、対象
作物、対象産地等により、指定野菜価格安定対策事業、特定野菜等供給産地育成価格差
補給事業、契約指定野菜安定供給事業、契約特定野菜等安定供給促進事業の4つの事業
が実施されている。
- 85 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
【対策事業の概要】
○指定野菜価格安定対策事業
指定野菜(14品目)の価格が著しく低落した場合に、生産者補給金を交付
することにより、野菜農家の経営に及ぼす影響を緩和し、次期作の確保を図る。
○特定野菜等供給産地育成価格差補給事業
指定野菜価格安定制度で扱う野菜以外の野菜で、国民生活上及び地域農業振
興上の重要性から指定野菜に準ずる野菜として位置づけられる特定野菜(33品
目)及び都府県知事が選定した対象産地で生産された指定野菜(14品目)の価
格が著しく低落した場合に価格差補給金を交付することにより、野菜農家の経
営に及ぼす影響を緩和し、次期作の確保を図る。
○契約指定野菜安定供給事業
野菜の契約取引に伴い、生産者が負うリスクを軽減するため、以下の3つの
タイプを措置。
①「数量確保タイプ」…定量定価供給契約を締結した生産者が、天候不良等に
より契約数量を確保することができない場合に、市場出荷予定のものを回す
等により契約数量を確保するのに要する経費を補填する。
②「価格低落タイプ」…市場価格に連動して契約を締結している生産者に対し、
価格の著しい低落が生じた場合に補填する。
③「出荷調整タイプ」…定量供給契約を締結した生産者が、契約数量を確保す
るため余裕のある作付を行い、価格低落時に契約以外の生産量の出荷調整を
行った場合に補填する。
○契約特定野菜等安定供給促進事業
指定野菜価格安定制度で扱う野菜以外の野菜で、国民生活上及び地域農業振
興上の重要性から指定野菜に準ずる野菜として位置づけられる特定野菜(33品
目)及び都府県知事が選定した対象産地で生産された指定野菜(14品目)の契
約取引に伴い、生産者が負うリスクを軽減するため、以下の3つのタイプを措
置。
①「数量確保タイプ」…定量定価供給契約を締結した生産者が、天候不良等に
より契約数量を確保することができない場合に、市場出荷予定のものを回す
等により契約数量を確保するのに要する経費を補填する。
②「価格低落タイプ」…市場価格に連動して契約を締結している生産者に対し、
価格の著しい低落が生じた場合に補填する。
③「出荷調整タイプ」…定量供給契約を締結した生産者が、契約数量を確保す
るため余裕のある作付を行い、価格低落時に契約以外の生産量の出荷調整を
行った場合に補填する。
- 86 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
指定野菜価格安定対策事業の加入は、19年度は前年に比べ7,105トン減少し約15万2千
トン(前年比96%)となった。
内訳を種別で見ると、秋冬だいこん、秋にんじんでは増加したが、春キャベツ、冬キ
ャベツ、夏秋きゅうり、冬春きゅうり、夏だいこんなど16種別で減少した(表Ⅱ-29)。
表Ⅱ-29
指定野菜にかかる交付予約数量の推移(東北)
(単位:t、%)
種
別
春ャベツ
夏秋キャベツ
冬キャベツ
夏秋きゅうり
冬春きゅうり
秋冬さといも
春だいこん
夏だいこん
秋冬だいこん
夏秋トマト
冬春トマト
春夏にんじん
秋にんじん
冬にんじん
夏ねぎ
秋冬ねぎ
ばれいしょ
夏秋ピーマン
ほうれんそう
春レタス
夏秋レタス
夏秋なす
合
計
平成15年
10,687
300
46,499
5,762
320
0
15,207
3,636
28,029
0
9,725
6,195
0
2,201
7,349
6,360
8,078
1,474
390
9,714
1,700
163,626
16
17
10,570
300
44,784
5,843
270
0
14,588
3,471
28,028
0
9,695
5,400
225
2,479
6,795
6,330
7,400
1,481
659
8,091
1,595
158,004
18
9,838
300
44,183
5,944
270
1,000
13,898
3,411
28,897
141
9,550
5,636
225
2,621
6,628
6,170
7,263
1,455
630
7,745
1,747
157,552
19
789
12,982
70
43,912
6,309
220
1,000
13,735
3,418
29,565
390
9,810
4,110
225
2,564
5,087
5,804
7,678
1,765
562
7,451
1,721
159,167
622
12,950
40
41,895
5,947
220
1,000
12,946
3,500
27,860
242
9,350
4,195
225
2,394
4,992
5,675
7,299
1,743
403
6,889
1,675
152,062
前年比
79
100
57
95
94
100
100
94
102
94
62
95
102
100
93
98
98
95
99
72
92
97
96
資料:東北農政局生産経営流通部調べ。
契約指定野菜安定供給事業については、事業の普及・浸透に努め、19年度は青森県の
秋にんじんが新規に加入したことから前年に比べ90トン増加し120トン(前年比400%)
となった(表Ⅱ-30)。
特定野菜関係事業は、秋田県のかぼちゃが要件不充足により同事業の対象産地から解
除となったことなどにより前年に比べ3,420トン減少し約7万6千トンとなった。
表Ⅱ-30
契約指定野菜にかかる交付予約数量の推移(東北)
(単位:t、%)
種
別
秋冬ねぎ
夏だいこん
秋にんじん
合
計
平成15年
0
0
0
0
16
17
45
0
0
0
資料:東北農政局生産経営流通部調べ。
- 87 -
18
45
0
0
0
19
0
30
0
30
0
30
90
120
前年比
100
400
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
輸入野菜はたまねぎ及びにんじんが前年より大幅減少
19年の東北管内の中央卸売市場への輸入野菜の入荷量は1万4千トン(前年比77%)
と減少している。県別にみると、宮城県が6,479トン(構成比46%)で最も多く、次いで
福島県(17%)、青森県(17%)の順であった(表Ⅱ-31)。
表Ⅱ-31
輸入野菜の県別入荷の状況(東北)
(単位:上段t、下段%)
区
分
青森県
18年
19年
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
計
2,441
1,479
9,491
1,029
604
3,157
18,201
13
8
52
6
3
17
100
2,307
1,301
6,479
1,012
558
2,424
14,081
17
9
46
7
4
17
100
資料:東北農政局統計部「青果物卸売市場調査結果」
注:1) 県別の入荷量は各県の中央卸売市場の入荷量。
2) 林産物(しいたけ等)、いも類(ばれいしょ,かんしょ)、いちご、メロン、及びすいかは含まない。
品目別にみると、前々年輸入が増加したたまねぎ、にんじんは輸入先産地の不作等に
より輸入数量は大きく減少したが、かぼちゃは増加した(図Ⅱ-20)。
図Ⅱ-20
輸入野菜主要8品目の品目別入荷量の推移(東北)
t
8,000
かぼちゃ
7,000
たまねぎ
6,000
ブロッコリー
5,000
しょうが
4,000
にんじん
3,000
アスパラガ
ス
にんにく
2,000
1,000
0
平.10
11
12
13
14
15
16
資料:東北農政局統計部「青果物卸売市場調査結果」
- 88 -
17
18
19
ピーマン
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
コラム
原油価格高騰対策として二重カーテン、循環扇設置等への助成
原油価格の高騰により経営を大きく圧迫されている野菜、花き及び果樹の施設園芸を行う農
家を支援するため、原油価格高騰対応施設園芸省エネルギー化推進緊急対策(強い農業づくり
交付金)事業が17年に引き続き取り組まれた。二重・三重のカーテンや循環扇等の設置により
加温用燃油使用量10%以上低減を目標とした事業内容で、東北管内の野菜は1県1地区、果樹
は1県3地区、花きは2県3地区の取組が行われた。
(4)果樹
栽培面積は減少傾向
栽培面積は、近年減少傾向で推移しており、19年はももが前年比1.5%増加したものの、
主要果樹7品目では、前年比1.0%減の4万5,196haとなった(図Ⅱ-21)。
図Ⅱ-21
主要果樹7品目の栽培面積の推移(東北)
ha
50,0 00
40,0 00
570
3,24 0
2,77 0
1,56 0
2,15 0
3,69 0
571
3, 280
すもも
567
3,410
2,700
1,540
2,050
3,390
566
3,470
57 9
577
2, 730
1, 550
2, 110
3, 550
567
3,320
2,690
1,550
2,080
3,500
3 ,600
3,720
3,7 60
2,720
1,530
2,050
3,340
2 ,730
1 ,550
2 ,030
3 ,330
2,730
1,530
1,990
3,290
2,7 70
1,5 00
1,9 30
3,2 60
34 ,500
34,000
33,40 0
32, 800
32,500
32,10 0
31, 800
3 1,400
12
13
14
15
16
17
18
19
57 6
30,0 00
20,0 00
10,0 00
資料:農林水産省統計部「耕地及び作付面積統計」
- 89 -
おうとう
もも
西洋なし
日本なし
ぶどう
りんご
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
19年産果樹の収穫量は僅かに増加
19年産主要果樹7品目の収穫量は、前年比1.6%増加の78万1千トンとなった(図Ⅱ-
22)。特にりんごについては、開花期の天候に恵まれ結果数がやや多かったことなどから、
前年比2.3%増の63万5千トンとなった。
図Ⅱ-22
主要果樹7品目の収穫量の推移(東北)
900千t
4
17
45
800
22
3
14
700
600
39
37
43
4
17
42
23
36
38
4
16
35
25
26
36
40
36
42
706
5
13
43
19
36
4
15
43
24
37
4
17
39
21
31
36
4
13
37
23
32
38
37
36
691
620
582
578
601
621
635
18
19
500
12
13
14
15
16
資料:農林水産省統計部「果樹生産出荷統計」
注:12~15、17~19年は主産県調査。16年は全国調査。
- 90 -
17
すもも
おうとう
もも
西洋なし
日本なし
ぶどう
りんご
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
競争力のある産地の構築
果樹農業は高齢化の進行、基盤整備や担い手の規模拡大の遅れにより、生活基盤の脆
弱化がみられる状況にある。このため、27年度を目標年度とする「果樹農業振興基本方
針」に基づき、今後、産地自らが目指すべき姿を描き、それを実現するための取組とし
て「担い手の明確化」、「担い手への園地集積の取組方法」、「園地基盤の整備」、「販売戦
略」等を定めた「果樹産地構造改革計画(以下 、「産地計画」という 。)」を策定するこ
とにより、競争力のある産地の構築に取り組んできた。
東北各県における策定状況は、20年3月末現在で64の産地計画が策定されている。品
目別の策定状況を栽培面積シェアで見ると、りんごで9割、もも及びおうとうで8割、
ぶどう、なし及び西洋なしで7割以上となっている(表Ⅱ-32)。
表Ⅱ-32
果樹産地構造改革計画の品目別策定状況(平成20年3月末)
(単位:ha、%)
産地計画策定
栽培面積
りんご
ぶどう
なし
もも
おうとう
かき
うめ
すもも
キウイフルーツ
西洋なし
29,055
2,462
1,442
2,174
3,066
468
401
198
10
1,199
東北
栽培面積
31,800
3,290
1,990
2,730
3,720
3,180
1,820
577
123
1,530
産地計画策定
シェア
91.4%
74.8%
72.5%
79.6%
82.4%
14.7%
22.0%
34.3%
8.1%
78.4%
資料: 産地計画策定栽培面積及び策定シェアは東北農政局園芸特産課、東北栽培面積は
農林水産省統計部「耕地及び作付面積統計」
注: 東北栽培面積は18年のデータ。
- 91 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
18年産りんごの価格は242円/㎏、19年産りんごの価格は253円/㎏
仙台市中央卸売市場における18年産りんごの卸売価格については、品質が良好であっ
たことに加え、果実全体の入荷量が少なく品薄感が強かったことから、8月~4月の平
均価格は242円/㎏(前年比18円高)となった。
19年産りんごの卸売価格については、台風等による被害が少なく、品質が良好であっ
たことから、8月~4月の平均価格は253円/㎏(前年比11円高)となった(図Ⅱ-23)。
図Ⅱ-23
りんごの月別卸売価格(仙台市中央卸売市場)
800
350
700
300
入 600
荷
量 500
価
250
格
200
400
150
300
100
200
50
100
0
0
8月
9月
10月
17年産 入荷量
17年産 価 格
11月
12 月
1月
18 年産入荷 量
18 年産 価 格
資料:東北農政局調べ。
- 92 -
2月
3月
4月
19年産 入荷量
19年産 価 格
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
(5)畜産・飼料作物
ア 乳用牛
飼養戸数、飼養頭数ともに減少
19年の乳用牛飼養戸数は、飼養者の高齢化等から小・中規模層での休廃業があったた
め、前年比4.2%の減少となり、飼養頭数も前年比3.4%の減少となった(表Ⅱ-33)。1
戸当たり飼養頭数は前年をわずかに上回り34.3頭となったが、全国の2分の1の規模に
とどまっている。
経産牛1頭当たり乳量は増加傾向で推移しており、19年は前年比1.4%の増加となり、
全国の96%の水準である。19年の生乳生産量は70万9千トンで、前年比2.6%の減少とな
った(表Ⅱ-34)。生乳処理量は53万トンで、前年比4.6%の減少となっている。
表Ⅱ-33
乳用牛の飼養動向
(単位:戸、千頭、頭、㎏、%)
区 分
飼養戸数
飼養頭数
1戸当たり
飼養頭数
経産牛1頭
当たり乳量
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
16年
28,800
4,660
16.2
1,690
152
9.0
58.7
32.6
55.5
7,732
7,439
96.2
17
18
19
27,700
4,450
16.1
1,655
147
8.9
59.7
32.9
55.1
7,894
7,611
96.4
26,600
4,270
16.1
1,636
145
8.8
61.5
33.8
55.0
7,867
7,553
96.0
25,400
4,090
16.1
1,592
140
8.8
62.7
34.3
54.7
7,988
7,662
95.9
対前年
増減率
▲ 4.5
▲ 4.2
▲ 2.7
▲ 2.9
2.0
1.5
1.5
1.4
資料:農林水産省統計部「畜産統計」
、
「牛乳乳製品統計」
注: 経産牛1頭当たり乳量の東北(B)については、農林水産省統計部「畜産統計」及び
「牛乳乳製品統計」より東北農政局で算出。
表Ⅱ-34
生乳生産の動向
区 分
生産量
処理量
(C)
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
牛乳等向(D)
乳製品向
その他
(D)/(C)
16年
17
8,329
754
9.1
596
420
167
9
70.5
8,285
743
9.0
592
402
182
8
67.8
資料:農林水産省統計部「牛乳乳製品統計」
注:対比は原数により算出。
- 93 -
18
8,138
728
8.9
556
375
172
8
67.5
(単位:千t、%)
対前年
19
増減率
8,007 ▲ 1.6
709 ▲ 2.6
8.9
530 ▲ 4.6
355 ▲ 5.6
168 ▲ 2.6
8 ▲ 1.9
66.9
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
イ 肉用牛
飼養戸数は減少しているが飼養頭数は増加
19年の肉用牛の飼養戸数は、飼養者の高齢化等から小・中規模層を中心に休廃業があ
ったため、前年比2.9%減少したが、飼養頭数は前年比3.8%の増加となった(表Ⅱ-35)。
1戸当たり飼養頭数は前年を上回り17.5頭となったが、全国の2分の1の規模となって
いる。
表Ⅱ-35
肉用牛の飼養動向
(単位:戸、千頭、頭、%)
区 分
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
飼養頭数 東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
1戸当たり
東北(B)
飼養頭数
(B)/(A)
飼養戸数
15年
98,100
28,300
28.8
2,805
419
14.9
28.6
14.8
51.7
16
17
18
19
93,900
27,000
28.8
2,788
410
14.7
29.7
15.2
51.2
89,600
25,500
28.5
2,747
397
14.5
30.7
15.6
50.8
85,600
24,000
28.0
2,755
393
14.3
32.2
16.4
50.9
82,300
23,300
28.3
2,806
408
14.5
34.1
17.5
51.3
対前年
増減率
▲ 3.9
▲ 2.9
1.9
3.8
5.9
6.7
資料:農林水産省統計部「畜産統計」
肉用牛の生産振興を図るため増頭の取組を推進
肉用牛の生産振興を図るため、東北各県では「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るた
めの計画」において肉用牛飼養頭数の目標を掲げており、この目標を達成するうえでは
肉用繁殖雌牛の増頭が重要な課題となっている。東北農政局では、東北地域における肉
用牛生産振興の推進母体として、19年6月に農業団体、学識経験者、行政機関等の関係
者で構成する「東北地域肉用牛増頭推進会議」を設置し、肉用牛増頭にかかる推進体制
を構築し、各種取組を推進することとした。
19年度は、同推進会議において策定した「東北地域肉用牛増頭行動計画」に基づき、
各種イベントの開催、普及・啓発資料を作成・配布等、肉用牛増頭の取組を実施した。
特に、肉用牛増頭推進検討会の一環として、若手経営者(後継者)や女性を対象とした
「青年チャレンジネットワークの集い 」、「いきいきモーモーレディースの集い」を開催
し、仲間・交流の場づくりのあり方や情報の共有化について意見交換等を行った。
- 94 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
事例
水田等放牧で肉用牛経営体の育成や産地づくりを推進[青森県・県内一円]
「安全・安心な牛肉の生産」や「食料自給率の向上」に向け
て牧草等の粗飼料の国内完全自給が求められていることから、
公共牧場と転作田、耕作放棄地を連携させた草資源の有効活用
によって競争力の強い肉用牛経営体や産地を育成する必要があ
る。
青森県農林水産部畜産課では、山(公共牧場)と里(転作田
や耕作放棄地)の連携により草資源を有効利用して、競争力の
電牧柵を設置した水田
強い肉用牛経営体の育成や産地づくりを進めるため、平成18年度から「草が育む豊かな畜産
推進事業」(実施期間:18~20年度・県単独事業)を実施し、転作田や耕作放棄地に肉用牛を
放牧する「水田等放牧」の普及を図ることになった。
同事業は、水田等放牧に関心のある畜産農家の協力を得ながら、現地における実証展示や
水田牧草用草地の造成と利用に関する試験を実施するもので、19年度は、県内3か所(今別
町大川平地区、深浦町風合瀬地区、五戸町扇田地区)で実証展示が行われている。そのうち
今別町大川平地区における取組は、牧草をは種した70.1アールの転作田(放牧地)の周囲に
ソーラーパネルを電源とした脱柵防止用の電牧柵を設置した。
19年度は4頭の黒毛和種繁殖牛が放牧されており、20年度以降は、水田等放牧における牛
の行動、採食状況調査や、牧草地の基幹草種となっている「オーチャードグラス」と湿害に
強く転作田での栽培に適している新品種「フェストロリウム」との比較検討試験などを行う
こととしている。
水田等放牧の普及により、(ア)早春や晩秋は里(水田等)に放牧し、夏期間は、山(公共
牧場)に放牧することで、飼育作業の省力化やコスト(飼料費等)を抑えることが可能。(イ)
里で放牧に慣らすことで山での放牧に早期に適応できる。(ウ)分娩前後の牛の観察や疾病牛
が休養する放牧地として活用できる。(エ)公共牧場、水田放牧地、畜舎を一体的に組み合わ
せることにより、粗飼料自給率や繁殖成績が向上し、肉用牛の増頭が可能。などの効果が期
待される。また、転作田や耕作放棄地が有効利用されることで農地の保全に寄与することが
期待される。
同課では、水田等放牧の推進に向けて、引き続き、各種試験のデータ収集・解析等を行う
とともに、実証展示牧場を公開することで地域住民の水田等放牧に対する理解の醸成や畜産
農家への周知と普及を図っていくこととしている。
ウ 中小家畜
豚は全国を上回る規模拡大が進展
19年の豚の飼養戸数は前年比5.8%減少した一方、飼養頭数は前年比2.9%増加し、1
戸当たり飼養頭数は前年比9.2%増加した(表Ⅱ-36)。東北の1戸当たり飼養頭数は、
全国の92%の水準であった12年から、15年には全国を上回り、19年には全国の111%の水
準に達しており、全国を上回る規模拡大が進展している。
- 95 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
表Ⅱ-36
豚の飼養動向
区 分
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
飼養頭数
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
1戸当たり
東北(B)
飼養頭数
(B)/(A)
飼養戸数
14年
15
10,000
1,680
16.8
9,612
1,603
16.7
961.2
954.2
99.3
16
9,430
1,560
16.5
9,725
1,641
16.9
1,031.3
1,051.9
102.0
8,880
1,450
16.3
9,724
1,668
17.2
1,095.0
1,150.3
105.1
(単位:戸、千頭、頭、%)
対前年
18
19
増減率
7,800
7,550 ▲ 3.2
1,210
1,140 ▲ 5.8
15.5
15.1
9,620
9,759
1.4
1,594
1,640
2.9
16.6
16.8
1,233.3
1,292.6
4.8
1,317.4
1,438.6
9.2
106.8
111.3
資料:農林水産省統計部「畜産統計」
注:17年は世界農林業センサス調査年のため、調査を休止している。
採卵鶏、ブロイラーともに全国を上回る規模の水準で推移
19年の採卵鶏の飼養戸数は前年比4.9%減少した一方、成鶏めす飼養羽数は前年比2.9
%増加した(表Ⅱ-37)。1戸当たり成鶏めす飼養羽数は前年比8.2%増加し、全国の1.7
倍の水準となっている。
表Ⅱ-37
採卵鶏の飼養動向
(単位:戸、千羽、%)
区 分
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
成鶏めす
東北(B)
飼養羽数
(B)/(A)
1戸当たり 全国(A)
東北(B)
成鶏めす
飼養羽数 (B)/(A)
飼養戸数
14年
15
4,530
360
7.9
137,718
18,083
13.1
30.4
50.2
165.1
4,340
344
7.9
137,299
18,521
13.5
31.6
54.5
172.5
16
4,090
316
7.7
137,216
17,813
13.0
33.5
56.4
168.4
18
3,600
285
7.9
136,894
18,808
13.7
38.0
66.0
173.7
19
3,460
271
7.8
142,765
19,346
13.6
41.3
71.4
172.9
対前年
増減率
▲ 3.9
▲ 4.9
4.3
2.9
8.7
8.2
資料:農林水産省統計部「畜産統計」
注:17年は世界農林業センサス調査年のため、調査を休止している。
19年のブロイラーの飼養戸数は前年比4.6%増加し、飼養羽数も前年比7.0%増加した
(表Ⅱ-38)。1戸当たり飼養羽数は前年比2.4%増加であり、全国の1.2倍の水準となっ
ている。
表Ⅱ-38
ブロイラーの飼養動向
区 分
全国(A)
東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
飼養羽数 東北(B)
(B)/(A)
全国(A)
1戸当たり
東北(B)
飼養羽数
(B)/(A)
飼養戸数
15年
2,839
487
17.2
103,729
22,692
21.9
36.5
46.6
127.7
16
2,778
473
17.0
104,950
24,183
23.0
37.8
51.1
135.2
17
2,652
450
17.0
102,277
21,836
21.3
38.6
48.5
125.6
資料:農林水産省統計部「畜産物流通統計」
- 96 -
18
2,590
461
17.8
103,687
22,839
22.0
40.0
49.5
123.8
(単位:戸、千羽、%)
対前年
19
増減率
2,583 ▲ 0.3
482
4.6
18.7
105,287
1.5
24,448
7.0
23.2
40.8
2.0
50.7
2.4
124.3
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
エ 飼料作物等
飼料作物作付面積はほぼ前年並み
飼料作物作付面積は減少傾向で推移していたが、19年産は下げ止まりとなり、前年比
0.2%の減少であった(表Ⅱ-39)。
19年産飼料作物の10アール当たり収量は、牧草が前年比0.6%増加し、青刈りとうもろ
こしが前年比1.1%増加した(表Ⅱ-40)。
表Ⅱ-39
飼料作物作付面積の推移
(単位:ha、%)
区 分
全 国 (A)
東 北 (B)
うち、牧草
青刈りとうもろこし
(B)/(A)
15年
929,400
121,600
105,300
13,300
13.1
16
17
914,400
116,800
101,300
12,900
12.8
18
905,800
114,700
99,500
12,700
12.7
19
898,100
113,500
98,300
12,500
12.6
897,200
113,300
97,800
12,400
12.6
対前年
増減率
▲ 0.1
▲ 0.2
▲ 0.5
▲ 0.8
資料:農林水産省統計部「作物統計」
、「耕地及び作付面積統計」
表Ⅱ-40
飼料作物10a当たり収量の推移
(単位:㎏、%)
区 分
牧草
青刈りとうもろこし
牧草
東 北
青刈りとうもろこし
全 国
15年
3,600
5,060
3,190
4,180
16
3,900
5,330
3,710
4,870
17
3,790
5,440
3,670
4,910
18
3,750
5,080
3,560
4,580
19
3,730
5,270
3,610
4,630
対前年
増減率
▲ 0.5
3.9
1.4
1.1
資料:農林水産省統計部「作物統計」
稲発酵粗飼料は、12年度から水田における重要な飼料作物として位置づけられ、米の
生産調整の有力な手法として推進されることとなったことなどを背景に、全国的に取組
が進み、東北における作付面積も12年産の29haから着実に拡大し、19年産では1,354haと
全国の2割を占めるまでになっている(表Ⅱ-41)。
稲発酵粗飼料の生産拡大のためには、耕畜連携の一層の推進とともに、単収向上に向
けた専用品種の作付けも重要である。東北に適した専用品種として16年に「夢あおば」、
17年に「べこあおば」、19年に「べこごのみ」がそれぞれ品種登録されている。
- 97 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
表Ⅱ-41
稲発酵粗飼料作付面積の推移
(単位:ha、%)
区 分
全 国 (A)
東 北 (B)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
(B)/(A)
15年
16
5,214
1,053
130
127
190
290
148
169
20.2
17
4,375
830
61
106
158
292
126
87
19.0
4,594
847
60
113
182
286
117
90
18.4
18
19
5,182
992
62
132
249
311
140
97
19.1
6,339
1,354
67
156
494
334
185
119
21.4
対前年
増減率
22.3
36.5
6.7
17.6
98.6
7.5
32.0
22.0
資料:東北農政局調べ。
公共牧場の利用率の向上が課題
東北の公共牧場数は287か所で全国の3割、草地面積は約2万3千haで全国の2割強を
占めており、重要な自給飼料生産基盤となっている(表Ⅱ-42)。
東北の公共牧場は肉用牛の夏期預託を主体に運営されており、肉用牛の増頭を図るう
えでの拠点施設として重要な役割を果たすことが期待されているが、利用率が低下傾向
にあり、また、牧場間で利用率に大きな差が生じており、公共牧場を放牧主体、採草主
体等の機能別に再編整備するなどし、効率的な利用を図ることが必要となっている。こ
のため、東北農政局では、平成19年度畜産基盤活性化整備調査を青森県むつ市において
公共牧場の再編整備に向け実施した。
表Ⅱ-42
公共牧場の概要(平成18年)
(単位:か所、ha、頭、%)
区 分
全 国 (A)
東 北 (B)
(B)/(A)
牧場数
897
287
32.0
利用頭数(夏期放牧)
計
乳用牛
肉用牛
154,520
94,837
59,683
28,293
6,870
21,423
18.3
7.2
35.9
資料:
(社)日本草地畜産種子協会「平成18年度公共牧場実態調査」
- 98 -
草地面積
97,736
22,947
23.5
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
飼料自給率の向上に向け自給飼料増産等の取組を推進
食料自給率の向上、農地の有効活用、資源循環型畜産の確立等の観点から、自給飼料
の増産が重要課題となっている。新たな食料・農業・農村基本計画で示された飼料自給
率目標の達成に向け、東北地域における自給飼料の増産に向けた取組の推進母体として、
17年6月に農業団体、試験研究機関、行政機関の関係者からなる「東北地域飼料増産行
動会議」を設置し、各種取組を推進している。
19年度は、同行動会議において策定した「東北地域における平成19年度飼料増産行動
計画」に基づき、稲発酵粗飼料の増産、国産稲わらの利用拡大、放牧の推進等を重点的
に取り組む地区の拡大の推進や稲発酵粗飼料の生産拡大に向けたシンポジウム、細断型
ロールベーラー現地検討会等を開催し、東北地域における自給飼料の増産に向けた取組
を実施した。
また、濃厚飼料の自給率向上については、食品残さの飼料化の推進が重要であり、東
北農政局では、この取組の推進母体として、17年11月に消費者団体、食品関係団体、畜
産関係団体、行政機関の関係者からなる「東北地域食品循環資源飼料化(エコフィード)
推進協議会」を設置し、各種取組を推進している。
19年度については、同行動計画に基づき、シンポジウムの開催及び関係情報の収集・
提供等を実施した。
(6)花き及び地域特産農作物
ア 花き
作付(収穫)面積は減少傾向
東北地域における平成18年産の花き作付(収穫)面積は、切り花類は前年比1.5%、鉢
もの類は2.4%減少となった(表Ⅱ-43)。
表Ⅱ-43
花き作付(収穫)面積の推移(東北)
(単位:ha、%)
区 分
14年産
15
16
17
18
切り花類
2,004
1,968
1,981
1,811
1,783
98.5
鉢もの類
135
141
140
83
80
96.4
花壇用苗もの類
157
152
137
111
119
107.2
前年比
資料:農林水産省統計部「花き生産出荷統計」
注:1) 切り花類、花壇用苗もの類は、作付面積。鉢もの類は、収穫面積。
注:2) 17年から当該品目ごとに全国出荷量の概ね80%を占めるまでの上位都道府県が調査対象に
なったため、切り花類は青森県、鉢もの類は岩手県、宮城県、秋田県、花壇用苗もの類は秋
田県(17年のみ)が調査対象外となった。
- 99 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
管内の花き主品目の作付面積
18年産の花きの主な品目の作付面積は、表Ⅱ-44のとおりである。特に、岩手県の「り
んどう」は、昭和39年から県オリジナル品種の開発を進め、これまでに14品種の普及拡
大を図り、また、ヨーロッパ等海外向けの輸出に取り組むなど、全国1位となっている。
表Ⅱ-44
花き主品目の作付面積の状況(東北)
区 分
県名(面積、全国順位)
きく
福島県(131ha、8位)、岩手県(108ha、13位)、宮城県(104ha、15位)
ばら
山形県(21ha、4位)、宮城県(11ha、14位)
りんどう
岩手県(337ha、1位)、福島県(33ha、3位)
宿根かすみそう 福島県(60ha、2位)
トルコギキョウ 山形県(29ha、5位)、福島県(27ha、6位)、秋田県(12ha、12位)
ゆり(球根切り花)
岩手県(28ha、10位)、福島県(21ha、12位)、山形県(14ha、15位)
アルストロメリア 山形県(14ha、3位)
パンジー
山形県(10ha、10位)
資料:農林水産省統計部「花き生産出荷統計」
事例
西和賀産りんどうを台湾へ輸出[岩手県・西和賀町]
JA西和賀(佐々木覓組合長)(現JAいわて花巻)では、
岩手県や中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)とタイ
アップして、同町の主力農産物である切り花のりんどうを台湾
へ輸出している。
これは、平成18年に試験的に行った輸出を、19年産について
も引き続き行っているものである。
切り花のりんどうは、日本では仏花として利用されるが、台
輸出されるリンドウ
湾ではお店の飾り花や各家庭の部屋のインテリアとして利用さ
れており、1本当たりの単価も高く、高級切り花として流通している。
輸出は同JAから大阪府の鶴見花き市場へトラックで陸送し、関西空港から空輸で台湾の
台北花市場へ出荷している。
また、りんどうの出荷規格は、同JAのA品のみで、実施期間は8月下旬から10月下旬ま
でで、一週間に1回、30~40ケース出荷している。
輸出する品種は、8月は岩手県育成品種の「いわて」
、9月は同JAオリジナル品種の「蒼
い風」、10月は同JAオリジナル品種の「こはる」等を予定している。
日本では8月の盆用と9月の秋彼岸以外は市場価格が低迷する。そのため、国内価格が低
迷する時期に、輸出用のりんどうが高値で出荷できる。また、栽培農家の意欲向上とともに、
品質の向上が図られることが期待され、収入の安定化が望める。
今後は、さらなる品質の向上と、一回当たりの出荷数を増加させていく。検疫や流通上の
課題も多くあるが、他の海外市場も開拓していくことで販路の拡大を図っていき、安定した
りんどう栽培になるよう取り組んでいく。
- 100 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
産出額は前年比0.7%減少し295億円となった
東北地域の18年の花きの産出額(花木、地被植物は除く)は、近年の経済不況等によ
る需要減少、価格低迷により300億円程度で推移しており、前年比0.7%減の295億円とな
った(図Ⅱ-24)。
図Ⅱ-24
花き産出額の推移(東北)
億円
350
312
318
307
300
302
297
295
山形県
246
250
秋田県
200
150
福島県
143
宮城県
100
岩手県
50
青森県
0
元
5
10
14
15
16
17
18
資料:農林水産省統計部「生産農業所得統計」
生産流通コストの低減、品質の向上が課題
花きの作付面積、産出額はいずれも伸び悩んでいることから、生産・調製作業等の省
力化や流通コストの低減、消費者ニーズにあった花き生産、ブランド化等に生産者・流
通業者・販売業者が一体となって取り組み、花き生産農家の所得を確保していく必要が
ある。
- 101 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
イ たばこ
希望廃作が実施され生産は減少しているものの、依然として主要な産地
たばこを取り巻く環境は、国民の健康意識の高まりや喫煙規制の強化等により、製品
たばこの総需要の減少傾向が今後も見込まれることから、一定要件の農家に対して希望
廃作の募集が17年産で実施され、全国で約2,300haが廃作された。
東北における葉たばこの18年産の収穫面積は、希望廃作の実施等により5,298haとなっ
た(図Ⅱ-25)。しかしながら、県別順位では、岩手県が全国第3位、青森県が同第5位、
福島県が同第6位と高い位置にあり、東北地域は、全国の29%を占める主要な産地であ
る。
産出額についても、岩手県が70億円(全国第3位)、青森県が66億円(同第4位)、福
島県が50億円(同第6位)となっており、東北6県で全国の32%を占めている。
収穫量は、希望廃作の実施による収穫面積の減少や風害、高温障害等の影響により、
18年産は1万2,600トンとなったが、全国の33%を占めている(図Ⅱ-26)。
葉たばこは、日本たばこ産業株式会社との契約栽培となっている。葉たばこの等級別
買入価格は、元年以降据え置かれていたが15年に1.87%、17年に1.88%引き下げられた
ことから、18年産の平均買入価格(実績)は1,764円/kgとなった。
図Ⅱ-25
図Ⅱ-26
葉たばこ収穫面積の推移(東北)
葉たばこ収穫量の推移(東北)
千ha
7
6
千t
0.2
0.3
0.7
0.2
0.3
0.7
0.2
0.2
0.7
5
1.6
1.6
4
3
宮城県
0.1
0.2
0.6
0.1
0.2
0.6
1.6
1.5
山形県
秋田県
0.4
0.7
1.6
3.9
0.4
0.4
0.7
0.6
1.5
1.7
3.9
4.5
1.5
青森県
1.7
1.7
1.5
2
1.4
4.2
1.3
4.1
16
0.3
0.5
1.5
0.3
0.5
1.4
3.6
3.7
3.2
2.8
2.0
1.9
1.8
1.7
14
15
16
17
12
8
6
4
岩手県
1
14
10
3.7
福島県
18
1.6
4.7
4.7
4.9
18
14
15
16
3.9
4.0
17
18
0
2
0
資料:日本たばこ産業株式会社調べ。
- 102 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
ウ ホップ
東北は国産ホップの98%以上を占めている
ホップの栽培は、東北(青森、岩手、秋田、山形の各県)と北海道で行われ、東北で
は19年産で211haと全国の栽培面積の98.7%を占めている(図Ⅱ-27)。シェアは岩手県
が4割でトップで、以下、秋田、山形、青森、北海道の順である。
収穫面積が減少傾向であることに加え、18年産は湿害、日照不足、病害等の影響、19
年産は風害、病害等の影響があり、収穫量は18年産が408トン、19年産が397トンとなっ
た(図Ⅱ-28)。
ホップは、各ビールメーカーとの契約栽培となっており、ホップの等級別買入価格は、
11年産以降各社ともおおむね据え置かれているものの、平均買入価格(実績)は18年産
では1,976円/kg(前年比99円、4.7%減)となった。また、ホップの自給率はここ数年
9~10%で推移している。
図Ⅱ-27
図Ⅱ-28
ホップ収穫面積の推移(東北)
ホップ収穫量の推移(東北)
300
550
25
250
60
15
58
200
ha 150
37
25
55
77
青森県
15
15
50
山形県
150
64
110
88
73
65
38
117
53
500
30
126
450
33
28
91
91
350
300
146
118
58
秋田県
100
400
t
250
130
200
150
50
121
115
104
99
89
岩手県
192
197
202
166
148
100
50
0
0
15
16
17
18
19
15
年
16
17
18
19
年
資料:全国ホップ農業協同組合連合会調べ。
エ その他特産作物
中山間地域を中心に多様な地域特産農作物が栽培されている
なたねは、東北各県で栽培されており、なかでも青森県は横浜町を中心に全国一の作
付面積を誇っている。
ほかにも、えごま、しそ、茶、ひまわり、ハトムギ、ヤーコン、紅花等が、栽培面積
は少ないものの、地域の食文化を支え、中山間地域の複合経営作物として栽培されてい
る。
- 103 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
事例
本格キムチになった天栄ヤーコン[福島県・天栄村]
平成13年より村を挙げてヤーコンの栽培を始めた天栄村では、特
産品としての知名度向上と販売先確保のための事業を展開している。
村のイベントとしてヤーコン料理コンテストなどを開催し定着させ
るとともに、ヤーコンを利用した加工食品開発のための斡旋にも力
を入れており、多くの商品を村の直売所等で販売している。
19年11月、天栄村産業振興課が白河市のキムチ製造業「高麗屋(こ
まや)」に開発を依頼し、天栄村のヤーコンを利用したキムチを商品
化し販売を開始した。
ヤーコンは、これまでは一般消費者の認知度が低く、思うように
ヤーコンキムチ
出荷が伸びなかったが、キムチの商品化を機に、キムチの生産最盛期には月間で約700kgを定
期的に出荷できることから農家の生産意欲が向上している。また、村ではヤーコンをはじめ
同村産のはくさいや長ネギ生産農家との橋渡しを行い、栽培契約を結ぶことができたことで、
村内の生産農家の収益が向上した。
ヤーコンの出荷先確保のため、様々な商品の開発を今後も続けていくとともに、これまで
開発した商品や、ヤーコン料理コンテスト入賞作品を利用し、外食産業や小売店へのメニュ
ー提案を行うことで天栄ヤーコンの認知度向上につなげている。
- 104 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
5 自然・環境機能の維持増進
(1)環境に配慮した食料生産の推進
地球環境の保全が大きな課題となっているなかで、農業生産においても環境と調和し
た持続的な農業を実践することが強く求められている。
農林水産省では、生産性との調和などに留意しつつ、化学肥料・農薬の使用等による
*1
環境負荷の軽減に配慮した農業を推進するため、エコファーマー の認定や農業環境規範
による自己点検、有機農業等を推進している。
また、地方公共団体においても、環境保全型農業に関する推進方針を策定し、推進方
針等に基づき環境保全型農業を推進している。
持続性の高い農業を実践するエコファーマーが急増
東北におけるエコファーマーは約5万4千人と、全国の32%を占める。特に近年は、
増加が顕著で、平成17年3月末から19年9月末までの2年半で2.4倍に増加し、最も多い
福島県では、1万7千件を超える認定件数となっている(表Ⅱ-45)。
この急増傾向については、食の安全・安心に対する関心の高まりや、有機農産物等の
高付加価値農産物に対する販売意識の向上、19年度から開始された農地・水・環境保全
向上対策における先進的営農活動の実施等により、環境に配慮した農業を実践するエコ
ファーマーの育成が図られてきているものと推察される。
今後も引き続き、環境保全型農業の取組の強化を図り、環境にやさしい持続的な農業
生産の実践をより促進していくことが必要である。
表Ⅱ-45
エコファーマー認定状況(全国、東北)
(単位:認定件数)
区 別
全 17年3月末
国
東 北
青 森 県
岩 手 県
宮 城 県
秋 田 県
山 形 県
福 島 県
75,699
22,451
3,405
7,225
837
306
4,322
6,356
18年3月末
98,874
30,642
4,084
7,697
1,498
471
5,302
11,590
19年3月末
127,266
44,334
4,891
9,010
7,317
1,306
6,071
15,739
20年3月末
167,995
54,148
5,707
9,515
8,714
3,720
8,577
17,915
資料:農林水産省調べ。
*1
エコファーマー:持続性の高い農業生産方式(土づくり、化学肥料、化学農薬の低減を一体的に行う生産方式)
を導入する計画を立て、道府県知事の認定を受けた農業者。
- 105 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
事例
1,094人の特別栽培米生産者がエコファーマーに[宮城県・角田市]
JAみやぎ仙南角田市ふるさと安心米生産組合協議会(高橋
健一代表、36生産組合、構成員1,150人)は、平成元年に6地
区の生産組合(構成員96人)が集まって設立され、特別栽培米
(名称:ふるさと安心米)を作付けし産直事業を行っている団
体である。
同協議会は「生産者と消費者が一緒に米づくりを行うこと」
を理念としており、栽培基準を消費者・販売先等と協力して作
協議会メンバー
成し、共同体制による土づくりやできるだけ農薬や化学肥料を削減した栽培を行う安全と環
境に配慮した栽培に取り組んでいる。
設立以来行っているみやぎ生協や首都圏のスーパー(サミットストア)との産直事業での
平成19年産契約栽培面積は1,120ha(ひとめぼれ988ha、コシヒカリ69ha、ササニシキ31ha、
まなむすめ14ha、みやこがねもち19ha)となっている(品種ごとの面積はラウンドされてい
る。)。また、生産者と消費者の交流や産地見学会を開催し、年間3千人以上の人が現地を訪
れ、お互いの信頼関係を築き合っている。
18年6月には、構成員1,094人がエコファーマーの認証を取得した。認証取得に当たっては、
既に高レベルで農薬や化学肥料を削減した栽培を実践していたため、種子消毒時に微生物を
導入するなどしてエコファーマーの認証を取得することができた。
さらに、18年に渡る同協議会の生産活動や消費者との交流活動が認められて、平成18年度
第4回「オリザ賞」(宮城県農業協同組合中央会主催、河北新報社、東北放送共催)の大賞に
選定された。
エコファーマーの認証を取得した人がこれだけ多い組織は類がなく、エコファーマーが生
産した多品種・大量の特別栽培米を多くの消費者に提供することが可能となった。
「安全」の基準は定められているが、安心の度合いは人それぞれ異なるものなので、今後
も「生産者と消費者が一緒に米づくりを行うこと」を理念に「安心」を追求していくことと
している。
- 106 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
有機農業の推進に関する施策の策定促進
化学肥料及び化学合成農薬を使用しない有機農業は、環境と調和、消費者の需要に即
した取組であり、その推進を図るため、18年12月に議員提案による「有機農業の推進に
関する法律」が制定され、19年4月には、「有機農業の推進に関する基本的な方針」(以
下「基本方針」という)が定められた。
また、都道府県は、基本方針に即して、有機農業の推進に関する施策についての計画
を23年度までに策定に努めることとされており、19年度までに、青森県、岩手県で策定
されている(表Ⅱ-46)。
表Ⅱ-46
有機農業の推進目標(目標年:平成23年)
①都道府県で有機農業に関する施策について
の計画を策定している割合
100%
②有機農業に関する推進体制を整備している市町村の割合
50%以上
③有機農業の取組内容を知る消費者の割合
50%以上
④都道府県で有機農業の普及指導体制を確立している割合
100%
⑤有機農業の技術体系の確立
コラム
有機JAS法の認定について
農産物及び農産物加工食品については、平成13年4月1日から、JA
S法における有機JAS規格に基づき生産等が行われていることを登録
認定機関から認定された生産行程管理者、製造業者、小分け業者又は輸
入業者でなければ、「有機栽培米」、「有機とうふ」等の表示をしてはな
らないこととなっている。
有機JASマーク
東北管内に所在する19年12月末現在の有機JASに係る登録認定機関は6機関、また、有機
JASの認定件数は435件となっている。
登録認定機関と認定種類(東北)
登録認定機関名
所在地
特定非営利活動法人 エイサック
岩手県
特定非営利活動法人 環境保全米ネットワーク
(社)秋田県農業公社
鶴岡市
(財)やまがた農業支援センター
福島県
宮城県
秋田県
山形県
山形県
福島県
資料:農林水産省消費・安全局調べ(19年12月末現在)
- 107 -
認定種類
有機農産物
有機農産物加工食品及び有機飼料
有機農産物
有機農産物
有機農産物
有機農産物
有機農産物
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
第13回環境保全型農業コンクールにおいて「岩手県認定農業者協議会」、「伸萠ふゆみずたん
ぼ生産組合」が大臣賞を受賞
東北地域における環境保全型農業の取組を全国に紹介するため、東北ブロック環境保
全型農業推進会議(7年度発足)は、19年度に全国環境保全型農業推進会議が主催する
「第13回全国環境保全型農業推進コンクール」に取組事例の推薦を行った。同コンクー
ルには、全国から47事例の応募があり、東北ブロックでは、岩手町認定農業者協議会と
伸萠ふゆみずたんぼ生産組合が最優秀賞の農林水産大臣賞を受賞した(表Ⅱ-47)。
表Ⅱ-47
第13回環境保全型農業推進コンクール優良事例(東北ブロック)
農 林 水 産 大 臣 賞
岩手町認定農業者協議会 (岩手県 岩手町)
1. 協議会会員の経営面積2,100haの内、エコファーマー導入面積310ha、特別栽培取組面積69haと大規模で
あり、取扱い作物も水稲・果樹・野菜と広範囲である。
平成19年度 エコファーマー 271人(実人数)、特別栽培 76人
2. 協議会が事業実施主体となり、耕種経営体への堆肥の製造工程の分担として、堆肥盤・堆肥舎(10か所)
が設置されており、地域内堆肥循環が実現されている。
3. 畜産経営者・水稲経営者間の稲わら交換の実施。会員・メーカーが連携して、堆肥製造工程で出る液状
物の再生利用に取り組む。(生物系・有機系廃棄物の再生利用)
4. 町内外の学校給食に、岩手町産の特別栽培米を供給するとともに、耕畜連携にかかる視察受入、講演活
動を通じての情報発信、食農教育現場の提供、町産品PR等幅広い活動を実施している。
5. 町内の賃借希望者をデータベース化し、低利用地・耕作放棄地等の情報を共有化し、生産者の規模拡大
を支援している。
農 林 水 産 大 臣 賞
伸萠ふゆみずたんぼ生産組合(宮城県 大崎市)
1. 収穫後の水田を渡り鳥の休息地として活用するための、不耕起栽培・化学合成農薬・化学肥料不使用を
組み合わせた水稲栽培技術の取組。環境と農業の共生の実践。
2. 冬期間耕起せずに湛水することにより、①雑草の抑草効果、②水鳥の糞による施肥効果、③温室効果ガ
ス抑制効果、④有機栽培技術の体系確立等の効果が出ている。
3. 産学官連携した環境保全型農業開発の取組。
東北大学や県農業試験場、地元NPOとの連携により,農業者参加型の各種調査事業・試験実験事業に
積極的に取り組み成果をあげる。
4. 収穫後の水田の稲わらを残し、堆肥散布後に湛水することで、わらや稲の切り株を分解させ、養分とし
て供給するほか、元肥として魚粕を主成分とする100%有機質の肥料を湛水後期に散布することで、有機
JAS米420kg/10aの収量をあげている。
5. ふゆみずたんぼ米の地域給食センターへの供給、田んぼの生き物調査等を実施している。
- 108 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
農業用使用済プラスチックの適正な処理
東北地域の農業用使用済プラスチックの年間排出量は、ピーク時の5年(2万2,600ト
ン)から減少傾向で推移している。そのうち、リサイクルに向けられる再生処理量は、
17年度で6,931トンと地域段階の積極的な取組により大幅に増加(15年度比1.3倍)して
排出量全体の39.4%に上昇したものの、さらなる地域段階での組織的な回収体制の整備
とその適正処理の推進が課題となっている(表Ⅱ-48)。
表Ⅱ-48
農業用使用済プラスチックの処理状況(平成17年度)
東 北
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
全 国
(単位:t、%)
再生処理 埋立処理 焼却処理 その他
計
リサイクル率
(5,334) (5,168) (1,640) (5,979) (18,121)
29.4%
6,931
3,841
1,539
5,280
17,591
39.4%
1,757
229
943
894
3,823
46.0%
1,320
241
35
1,582
3,178
41.5%
945
51
7
1,759
2,762
34.2%
278
808
0
844
1,930
14.4%
2,245
1,818
276
140
4,479
50.1%
386
694
278
61
1,419
27.2%
86,151
31,711
12,539 20,891 151,292
56.9%
資料:農林水産省調べ。
注:16年7月~17年6月の実績、()は、15年度の実績。
このため、東北農政局を事務局とし、県、農業用プラスチック製造・販売業者、全農、
試験研究機関等を構成員とする「東北地域農業用使用済プラスチック適正処理推進協議
会」(11年2月設立)が中心となって、定期的に先進的取組事例や最新の再生処理技術等
の情報交換、研修会の開催を行うとともに、普及啓発資料の配付等を行い、回収・処理
の適正かつ円滑な実施の推進を図っている。
地域及び市町村段階では推進協議会が設立され、使用済プラスチックの回収が推進さ
れている(表Ⅱ-49)。
表Ⅱ-49
農業用使用済プラスチックに関する市町村協議会等設立状況(東北)
区 分
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東 北
協議会が設置されている市町村数 農業振興地域が指
定されている管内(A/B)
17年1月末
19年12月末(A) 市町村数(B)
65
58
66
65
44
88
386
40
35
36
25
35
60
231
資料:東北農政局園芸特産課調べ(19年12月末現在)
。
- 109 -
40
35
36
25
35
60
231
100%
100%
100%
100%
100%
100%
100%
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
(2)バイオマス利活用の取組
14年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」は、その後のバイオマ
ス利活用の進展や「京都議定書の発効」等の情勢の変化に対応するとともに、国産のバ
イオマス輸送用燃料の利用促進や未利用バイオマスの利活用等を推進するバイオマスタ
ウン構築の加速化等を図るため、18年3月に見直しが行われた。
ア 東北のバイオマス利活用の現状
バイオマスの多様な利活用の取組が進められている
東北地域では海や山、川など豊かな自然環境に恵まれ、また、稲作を主体として、野
菜、果樹および畜産等の農業や日本有数の水揚げ高を誇る水産業などの一次産業が盛ん
であり、これらの経済活動に伴う多様なバイオマスが豊富に存在している。
バイオマスの利活用の現状は、賦存量が多い家畜排せつ物や稲わら、食品残さ等を活
用した堆肥製造等のマテリアル利用が主体となっている。しかし、近年は地球温暖化防
止、循環型社会の形成、環境保全といった意識の高まりや新しい産業創出、農林漁業・
農山漁村の活性化といった観点から、地域の創意と工夫による積極的な取組が展開され
ており、食用油として使用後に回収してバイオディーゼル燃料製造までを見越した菜の
花栽培、間伐材等を利用した発電や熱エネルギー利用等、多様な取組が始まっている。
資源循環活用に取り組む団体やNPO法人を対象としたアンケートによると、最も関
心を寄せている取組内容は、廃食用油を原料とするバイオディーゼル燃料の製造・利用
となっている。
- 110 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
イ 関係機関の連携による推進体制
バイオマス利活用の支援体制等の強化が進められている
東北におけるバイオマスの利活用を関係府省の一層の連携と機動的な対応の下で総合
的に推進するため、関係各省の地方支分局、地方公共団体、その他関係団体から構成さ
れる「東北地域バイオマス利活用推進連絡会議」を15年11月に設置し、情報の共有と連
絡調整を通じて、国民各層へのわかりやすい情報提供やバイオマス利活用の推進および
バイオマスタウンへの理解を深めるための積極的な取組を行っている。
その活動の一環として、19年2月に「バイオマス利活用に関するアンケート」を実施
し、資源循環の取組に対する現状と今後の意向や取組に対する課題等を把握した(図Ⅱ
-29)。また、同年12月には「東北バイオマスフォーラム2007」を開催し、先進的な
取組事例の発表と有識者によるパネルディスカッション、バイオディーゼル燃料で走る
バスやタクシーの市内展示走行等を行った。さらに、20年2月にはバイオマスタウン構
想策定市町村との意見交換会を開催し、バイオマスタウンの実現に向けた課題の報告・
助言等を行った。これら活動の成果を踏まえ、相談窓口対応や各種情報の提供等、引き
続き一層の支援を行うこととしている。
図Ⅱ-29
関係機関に求める支援
60.0
%
50.5
48.6
48.6
39.3
40.0
36.4
34.6
33.6
27.1
25.2
17.8
20.0
15.9
3.7
4.7
その他
無回答
稲わら等による飼・肥料化
新たな技術を活用した工業
原料や化粧品原料及び機
能性食品などの有用物質
の製造・利用
とうもろこし等を原料
とするバイオマスプラ
スチックの製造・利用
間伐材や建築廃材等
の合板等への製品化
さとうきび・とうもろこし等
を原料とするバイオエタ
ノール燃料の製造・利用
家畜排せつ物等を原料とし
たメタン発酵等によるバイ
オマス発熱・発電利用
木質ペレット等の固形
燃料の製造・利用
食品残さ等による
飼料化
木質チップ等の直接
燃焼による熱利用
家畜排せつ物や
食品残さ等による
堆肥化、肥料化
バイオマスの利活用
について地域住民
の理解を深める
廃食用油を原料とする
バイオディーゼル燃料
の製造・利用
0.0
17.8
資料:東北地域バイオマス利活用推進連絡会議「バイオマス利活用に関するアンケート」(19年3月公表)
ウ バイオマスタウン構想の策定状況
全県でマスタープランが策定された
各県においては、農林水産業等の関係者から構成される「バイオマス利活用協議会」
での検討を経て、青森県、宮城県、秋田県、山形県は16年3月に、岩手県、福島県は17
年3月に、22年度を目標とする利活用計画に関するマスタープランを策定している。な
お、宮城県は19年3月に改訂を行っている。
- 111 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
29市町村においてバイオマスタウン構想が策定、公表された
バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議事務局では、バイオマス・ニッポンの実現を
加速化するため、各市町村がそれぞれの地域の特性を活かしたバイオマスの効率的利活
用を目的に策定するバイオマスタウン構想の公表を行っている。
東北管内では、19年度に11市町村で策定され、20年3月末現在で累計29市町村のバイ
オマスタウン構想が公表されている(図Ⅱ-30)。
図Ⅱ-30
東北地域のバイオマスタウン公表地区
平成20年3月末現在
青森県中泊町(なかどまりまち)
青森県青森市(あおもりし)
青森県旧市浦村(しうらむら)
現五所川原市
青森県六ヶ所村(ろっかしょむら)
青森県鶴田町(つるたまち)
青森県十和田市(とわだし)
青森県藤崎町(ふじさきまち)
青森県八戸市(はちのへし)
秋田県能代市(のしろし)
岩手県軽米町(かるまいまち)
秋田県小坂町(こさかまち)
岩手県九戸村(くのへむら)
秋田県横手市(よこてし)
岩手県葛巻町(くずまきまち)
秋田県東成瀬村(ひがしなるせむら)
岩手県紫波町(しわちょう)
岩手県遠野市(とおのし)
山形県旧藤島町(ふじしままち)
現鶴岡市
岩手県花巻市(はなまきし)
山形県旧立川町(たちかわま ち)
現庄内町
宮城県川崎町(かわさきまち)
山形県鮭川村(さけがわむら)
山形県西川町(にしかわま ち)
福島県富岡町(とみおかまち)
山形県新庄市(しんじょうし)
福島県大玉村(おおたまむら)
山形県飯豊町(いいでまち)
福島県会津美里町
(あいづみさとまち)
山形県村山市(むらやまし)
- 112 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
<事例>
地域住民への積極的な啓発活動[岩手県・紫波町]
岩手県紫波町では、平成18年3月にバイオマスタウン構想を公表し、構想書に沿って①有
機資源循環と循環農業の確立、②森林資源循環と林業の再生、③バイオマス燃料利活用シス
テムの構築を柱として取組を進めている。
その一環として、地域のバイオマス利活用の中心的施設である「えこ3センター(堆肥・
粉炭・木質ペレット製造施設)」や「木造公共施設」など循環型まちづくりの取組を紹介する
見学会等、地域住民が実際に体験するイベント『環境新世紀第Ⅱ章・紫波100年フォーラム』
を開催している。
エ 廃棄物系バイオマスの利活用
食品リサイクル法や建築リサイクル法、家畜排せつ物処理法などの法律の制定に伴い、
東北地域に賦存量の多い家畜排せつ物を主体に廃棄物系バイオマスは利活用が進んでい
る(表Ⅱ-50)。
表Ⅱ-50
バイオマスの利活用
現状
青森県
廃棄物系 利用量(t)
未利用
岩手県
宮城県
利用量(t)
593,152
915,450 ①緑肥
利用率(%)
76.3
87.7 ①緑肥
3,823,832 4,785,864 ①家畜排せつ物
88.1 ①下水汚泥
②製材端材
③食品製造業残さ
①製材端材
①下水汚泥
②稲わら
③りんご剪定枝
①籾殻
①麦わら
②木くず
③食品廃棄物
②家畜排せつ物
③木くず
利用率(%)
85.6
利用量(t)
326,622
347,478 ①稲わら
②籾殻
利用率(%)
48.3
49.1 ①稲わら
①籾殻
4,207,594 4,556,857 ①家畜排せつ物
89.6 ①黒液
-
-
②黒液
③木くず
利用率(%)
87.2
②木くず
③建設発生木材
467,190
547,437 ①稲わら
②籾殻
③林地残材
利用率(%)
87.0
93.9 ①稲わら
②籾殻
③林地残材
廃棄物系 利用量(t)
852,479
1531349 ①家畜排せつ物
②木材工場残材
③建設発生木材
85.0 ①木材工場残材
利用率(%)
74.0
②建設発生木材
③食品製造残材
利用量(t)
605,690
614,935 ①稲わら
②籾殻
③林地残材
利用率(%)
68.0
66.0 ①稲わら
②籾殻
③林地残材
廃棄物系 利用量(t)
利用率(%)
1,180
82.6
②建設発生木材
②廃菌床
③製材所残材、③下水汚泥
③建設発生木材
③間伐材
未利用
福島県
87.6 ①りんご搾りかす
利用量(t)
未利用
山形県
79.3
廃棄物系 利用量(t)
未利用
秋田県
目標利用量、率の上位3位
利用率(%)
廃棄物系 利用量(t)
未利用
目標
1,942,730 2,399,175 ①家畜排せつ物
利用量(t)
433
544 ①稲わら
②籾殻
利用率(%)
61.1
75.9 ①稲わら
②籾殻
③間伐材
②製材工場端材
③下水汚泥
①水産加工残さ
③製材工場端材、③菌茸ほだ木等
②農作物非食部
③籾殻
②籾殻
③農作物非食部
廃棄物系 利用量(t)
未利用
1,281 ①家畜ふん尿
89.0 ①家畜ふん尿
2,045,679 2,438,616 ①家畜排せつ物
利用率(%)
79.7
利用量(t)
743,857
819,364 ①稲わら
87.1 ①下水汚泥
利用率(%)
77.6
78.9 ①稲わら
資料:あおもり・バイオマス利活用総合戦略(H16.3)、いわてバイオマス総合利活用マスタープラン(H17.3)、
みやぎバイオマス利活用マスタープラン(H16.3)、秋田県バイオマス総合利活用マスタープラン(H16.3)、
山形県バイオマス利活用推進計画(H17.3)、福島県バイオマス総合利活用計画(H17.3)
- 113 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
家畜排せつ物の利活用は堆肥利用が中心となっている
東北地域の19年度の家畜ふん尿の発生量は、家畜飼養頭羽数から推計すると、ふんが
約854万トン、尿が約401万トンとなる(表Ⅱ-51)。
これらのふん尿の利活用形態は、堆肥利用が中心であるが、鶏ふんを炭化処理して融
雪剤等に利活用している事例や浄化処理を施した尿処理水を家畜の飲用水や臭気対策噴
霧用水に利用している事例も見られる。
また、発電・熱利用については、現状では、大半が小規模でモデル的に取組んでいる
段階であるが、一部地域において、メタン発酵による本格的発電事業が行われており、
その電力は、当該施設内での利用や近隣関連施設に供給され、また、処理段階で発生す
る消化液については、農場等へ還元している事例も見られる。
表Ⅱ-51
東北管内での家畜ふん尿発生量(平成19年度推計)
発 生 量
資源の原料・素材利用
ふん中の有機
ふ ん
尿
合 計 物量(乾物量) 生ふんの 生ふんの堆肥化
(千頭羽) (千t)(千t) (千t)
(千t)
堆肥化率 仕向量(千t)
140
1,833
538
2,372
293 38.6%
708
飼養頭羽数
区 分
乳
用
牛
肉
用
牛
408
2,770
1,007
3,776
609
37.3%
1,033
1,640
1,670
2,465
4,135
468
65.8%
1,099
鶏
24,763
1,080
1,080
324
59.9%
647
ブロイラー
24,448
1,183
1,183
355
42.7%
505
-
8,536
12,546
2,049
45.8%
3,909
豚
採
合
卵
計
4,010
資料:農林水産省「畜産統計」
、「畜産物流通統計」
注:1)ふん尿の発生量は、家畜1頭(羽)当たりの標準的な排出量から推計。
2)ふん中の有機物量は、畜種ごとのふんの水分含有率から推計。
3)生ふんの堆肥化率は、家畜排せつ物の利用の促進を図る県計画(12年度)の管内各県の平均値。
食品残さを活用した多様な取組が進められている
管内各地において、食品加工場から発生する食品残さを原料に、家畜の飼料化、家畜
排せつ物と混合した肥料化、メタン発酵によるエネルギー利用等が進められている。
- 114 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
<事例>
食品廃棄物等を利用したバイオガスプラント[岩手県・雫石町]
岩手県雫石町の(株)バイオマスパワーしずくいしでは、町内の小中学校の給食加工残さや
食品製造工場から排出される食品廃棄物と家畜排泄物を混合してメタン発酵させるとともに、
副産物である消化液等から、液肥や堆肥を製造している。
発生したメタンガスは発電に利用して電力として回収しており、将来的には余剰電力を売
電する計画である。
また、液肥・堆肥は農地に還元し、家畜の飼料となる牧草等の肥料や有機野菜の栽培等有
効利用を図るなど、資源・エネルギーの循環利用により、環境保全型農業の一翼を担ってい
る。
農業集落排水施設汚泥の利活用が進められている
農業集落排水施設で発生する汚泥については、これまでそのほとんどがし尿処理場で
焼却処分されていたが、近年ではコンポスト化(堆肥化)したうえで、農地や緑地など
に還元する循環利用の取組が進められている。
14年度の汚泥の還元利用率は19%にとどまっていたが、18年度には46%まで拡大して
おり、資源の循環利用を促進する観点から、汚泥の循環利用の取組を今後一層推進する
必要がある(図Ⅱ-31)。
図Ⅱ-31
東北管内
農業集落排水施設汚泥利用状況
m3/年
還
100,000
元
泥
利 50,000
量
19%
用
0
汚
60%
46% 40%
40%
33%
29%
20%
0%
15年 16年 17年 18年
14年
農地・緑地等
還元利用汚泥量
発生汚泥量
年 度
3
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
(m /年)
101,137
112,446
130,174
127,259
142,625
還
元
利
用
率
農地・緑地等還元利用率
農地・緑地等
還元利用汚泥量
(m3/年)
18,756
32,404
43,202
51,158
64,913
注:汚泥の比重は1.0としてm3 表記。
- 115 -
農地・緑地等
還元利用率
19%
29%
33%
40%
46%
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
オ 未利用バイオマスの利活用
未利用バイオマスは、稲作が盛んな東北地域の農業特性を反映し稲わらやもみ殻が多
く、これらは主に家畜生産現場で敷き材や飼料として活用されている。また、昭和20年
代の植林活動による森林資源が豊富で、収集運搬費用の経済的負担から、木材の伐採跡
地や土場に残っている間伐材および被害木等のほとんどが未利用のままとなっている。
しかし、荒廃が懸念される森林環境の整備や保全、資源としての有効利用を図るため、
地域の実態調査、収集・運搬システムの検討や木質バイオマスの利活用を推進するため
の普及・啓発活動、さらには、木質ペレットやチップボイラー燃料の製造等、エネルギ
ーへの有効活用の取組が多くなっている。
木質バイオマスをペレット化し、燃料等への利活用が進められている
木質バイオマスは、チップ化され稲わら等とともに堆肥製造過程で水分調整剤として
利用されるほか、ボード化やガス化発電の燃料等多様な利活用が可能な資源である。
<事例>
間伐材と製材工場残材等のガス化発電[山形県・村山市]
山形県村山市の「やまがたグリーンパワー株式会社」では、間伐材や果樹剪定枝、製材工
場残材等の木質バイオマスをガス化発電プラントを導入して電気エネルギーに変換しており、
平成19年6月に稼働をはじめた。電力は農業用ビニールハウス施設の熱源、焼却灰はバーク
肥料混合用、タール等の抽出成分は製薬会社へ販売している。
発電出力:2,000kw/h、熱量:380万kcal/h
- 116 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
カ 資源作物の利活用
東北の耕作放棄地は約7万1千haで、食料等の生産基盤を確保するとともに農山漁村
の良好な景観の維持や環境保全の観点からも、その有効活用が課題となっている。
耕作放棄地の有効活用策のひとつとして、バイオ燃料やバイオマスプラスチックの原
料となる資源作物の栽培が考えられることから、現在の取組状況を19年8月時点で把握
した(図Ⅱ-32)。その結果、食用油として使用した後のBDF燃料化を考慮に入れた「な
たね」の作付けが最も多く、今後も作付面積を拡大する意向が把握された (図Ⅱ-33)。
この結果を踏まえ、関連情報の提供等、必要な支援を行うこととしている。
図Ⅱ-32
東北地域におけるバイオマス利用向け作物の種類と作付面積(平成19年8月)
a
30,000
25,000
a
20,000
800
15,000
600
810
400
200
0
93
10,000
5,000
4
てんさい
26,663
208
ひまわり
米
0
ごま
1
なたね
資料:東北農政局農村振興課調べ。
図Ⅱ-33
今後の作付面積拡大意向
拡大意向あり
拡大意向無し
未定
15%
15%
70%
資料:東北農政局農村振興課調べ。
- 117 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
6 農業生産基盤の整備
(1)農業農村整備事業の推進
農業の構造改革の加速化に資する基盤整備の推進
「新たな食料・農業・農村基本計画」においては、担い手の育成・確保の契機となる
農業生産基盤整備の推進が政策課題となっている。また、品目横断的経営安定対策の導
入により、担い手の育成・確保がさらに重要となる。このため、地域農業の担い手育成
の契機となる水田の大区画化・汎用化等の基盤整備を計画的に行う必要がある。
東北の水田整備状況は、平成18年時点では全国とほぼ同じ水準にあるが、1ha程度の
大区画整備済面積の割合は10.4%で、全国平均7.5%を上回る整備状況にある(表Ⅱ-52)。
県別の整備率は、山形県(71.7%)、福島県(66.6%)で高く、大区画整備の割合は秋
田県(18.6%)、宮城県(19.5%)で高い。整備率の低い岩手県(48.0%)、宮城県(58.
0%)については、昭和30~40年代に20アール程度の区画整備が進み、標準区画(30アー
ル)への切り替えが遅れたことが影響している(図Ⅱ-34)。
表Ⅱ-52
水田の整備状況(平成18年)
区分
全国
東北
標準区画整備済
60.5%
61.3%
うち大区画整備済
7.5%
10.4%
資料:農林水産省統計部「耕作及び作付面積統計」
、農林水産省農村振興局「農業基盤整備基礎調査」
注:1)標準区画整備済とは、おおむね30a程度に区画整理された水田をいう。
2)大区画整備済とは、おおむね1ha程度に区画整理された水田をいう。
- 118 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
図Ⅱ-34
東北の水田整備状況(平成18年)
大区画整備
10%
未整備
39%
水田面積
東北
6 2 8 . 5千 h a
整備済
3 8 5 . 0千 h a
( 61.3%)
大区画以外
整備済
51%
千ha
大区画
大区画以外
140
(131.4千ha)
120
100
80
60
未整備
(111.3千ha)
(106.9千ha)
(96.5千ha)
(97.8千ha)
水田面積
(84.6千ha)
整備済
52千ha
(整備率
61.4%)
40
65千ha
(58.0%)
46千ha
(48.0%)
20
81千 ha
( 61.5%)
70千ha
(71.7%)
71千ha
(66.6%)
0
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
資料:農林水産省統計部「耕作及び作付面積統計」
、農林水産省農村振興局「農業基盤整備基礎調査」
注:1)田の面積は「耕作及び作付面積統計」による18年7月15日時点の値。
2)整備済面積は「農業基盤整備基礎調査」による18年3月31日時点の推計値。
3)整備済面積はおおむね30a程度、大区画はおおむね1ha程度に区画整理された田をいう。
4)整備率=整備済面積÷水田面積×100
農地の利用集積については、19年度を目標年度とする地区において、ほ場整備を契機
に担い手へ事業実施前より1.6~6.1倍に増加している(図Ⅱ-35)。
図Ⅱ-35
担い手農地利用集積率
ほ場整備を契機とした担い手への農地の利用集積
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
ハード実施前
79%
目標年度
61%
61%
50%
39%
26%
17%
青森
24%
23%
10%
岩手
宮城
秋田
山形
37%
16%
福島
資料:東北農政局農地整備課調べ
注:農業農村活性化計画及び基盤整備関連経営体育成等促進計画で目標年度を平成19年度とし、ソフト事業
(担い手育成基盤整備関連流動化促進事業、経営体育成促進事業、元気な地域づくり交付金)を実施した地
区の農地利用集積率(平成20年5月23日時点の値)。
- 119 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
農業水利施設等の適切な更新・保全管理
農業水利施設が有する安定的な用水供給機能等の確保を図るとともに、農業用水が有
する多面的機能を適切に発揮するため、かんがい排水事業等によりこれまで蓄積されて
きた基幹水利施設の保全・更新整備を着実に実施しており、かんがい排水事業の18年度
の事業実施地区数は、国営事業17地区(他に施設整備2地区)、県営事業37地区(うち国
営附帯18地区)で、その受益面積は延べ15万2千haとなっている。19年度の事業実施地
区数は、国営事業16地区(他に施設整備1地区)、県営事業41地区(うち国営附帯19地区)
で、その受益面積は延べ14万8千haとなっている。
また、基幹的農業用水路の既存ストックについては、全国4万7千kmに対して東北の
割合は約18%を占めている(図Ⅱ-36)。近年、更新時期を迎える基幹的な農業水利施設
が増加してきていることから、19年度に既存施設の有効利用を図り効率的な機能保全対
策を推進するため基幹水利施設ストックマネジメント事業が創設され、19年度は39地区
で機能診断及び機能保全計画の策定、当該計画に基づく対策工事を行っている。
図Ⅱ-36
基幹的農業水路延長の割合(全国及び東北)
(基幹的農業水路:末端支配面積100ha以上)
中国 ・四国
7%
近畿
5%
九州
8%
福島県
14%
北海道
23%
東海
全 国
9%
約47千㎞
北陸
10%
関東
20%
山形 県
19%
青森 県
15%
東 北
岩手県
16%
東北
18%
秋田県
17%
約8千5百km
宮城県
19%
(単位:千ha)
資料:農林水産省農村振興局「農業基盤整備基礎調査」(18年3月時点)
(2)国営土地改良事業地区における営農推進
優良な農業生産地帯の形成に向け、各種支援を実施
東北地域の効率的・安定的な農業生産体制を確立するうえで、担い手を確保・育成し
農業生産構造を再編することが急務となっている。国営土地改良事業は、「良好な営農条
件を備えた農地及び農業用水を確保し、地域農業ビジョン等に即した担い手の確保・育
成、農地集積等を推進する上で必要な事業」として農業生産基盤の整備や農地・農業水
利施設の適切な更新・保全管理等を実施している。
- 120 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
このことから、整備された基盤を活かした営農改善等の実現を図るため、「東北農政局
国営土地改良事業地区営農推進委員会」を設置し、国営土地改良事業地区の地区営農推進
組織等に対して指導・支援を行っている。
営農推進委員会の活動として、各国営事業地区における営農推進活動状況、営農推進
上の課題等を取りまとめ(営農推進台帳等)、地区営農推進組織等に対し、営農課題等の
解決に向けた営農技術、各種対策、優良事例等の情報提供、啓発普及等の支援活動を実
施している。
また、支援活動の一環として、土地改良事業地区の営農の発展に大きく貢献している
集団等を表彰しその取組の普及を図っているところであり、19年度は6団体を東北農政
局土地改良事業地区における営農推進の優良事例として表彰した(表Ⅱ-53)。
表Ⅱ-53
平成19年度東北農政局土地改良事業地区営農推進功労者表彰
東北農政局長表彰
受 賞 者 の 名 称 Greenえだの(宮城県角田市)
事 業 地 区 名 県営経営体育成基盤整備事業[枝野地区]
表 彰 理 由 ~みんないきいき むらづくりを目指して~
地区営農推進組織の指導のもと、土地利用調整組織と連携した営農システムを先導的に構築し、ブ
ロックローテーションによる転作作物の安定生産を図っている。また、農作業支援組織設立による雇
用創出や、農産物直売所設置を通じた取組により地域の活性化にも貢献した活動を展開。
受 賞 者 の 名 称 樽見内営農組合(秋田県横手市)
事 業 地 区 名 国営かんがい排水事業[平鹿平野地区]
受 表 彰 理 由 ~目指すは「結い」の復活~
益 水稲作付農家全員がエコファーマーとして特別栽培米の生産に取り組むほか、そば、スイカ、枝
豆、アスパラガス等を計画的に導入し転作作物の定着を図っている。また、そば打ち講習会、交流農
農 園の設置等による農村交流や、地域の伝統・文化の継承・復活を目指した活動を展開。
受 賞 者 の 名 称 日田観光さくらんぼ団地組合(山形県寒河江市)
家
国営かんがい排水事業[寒河江川下流地区]
事 業 地 区 名
地産地消形成畑地化整備支援事業[日田地区]
集
表 彰 理 由 ~”水田”から、人々で賑わうさくらんぼの郷”日田”へ~
団 水田畑地化による集団転作として県内最大規模のさくらんぼ観光農園化を実現し、作業の効率化や
収穫期間の長期化による収益性の高い経営を実践するほか、バリアフリー対応、来園者の利便性向上
に配慮した園地運営等で先進的な活動を展開。
受 賞 者 の 名 称 和泉田営農改善組合(福島県南会津町)
事 業 地 区 名 県営経営体育成基盤整備事業[和泉田地区]
表 彰 理 由 ~地域が一体となった営農をめざして~
土地利用調整組織として担い手への農地集積を図るとともに、生産組織との連携により水稲直播栽
培や環境に配慮した特別栽培米の栽培を展開するほか、水稲とトマトの作業労働の競合を回避した栽
培体系の確立により、地域特産物である「南郷トマト」の高品質生産を実践。
受 賞 者 の 名 称 遊新(岩手県花巻市)
農 事 業 地 区 名 県営経営体育成基盤整備事業[西宮野目地区]
表 彰 理 由 ~集落の農地は我々が守る~
業 農地の利用集積による計画的な水稲、小麦、大豆等のブロックローテーションの土地利用や農業機
械の一元管理を図り、効率的な生産体制等を確立するとともに、エコファーマーとして特別栽培米に
生 取り組み、全域での環境保全型農業を展開。
産 受 賞 者 の 名 称 美郷サンファーム(秋田県美郷町)
事 業 地 区 名 県営経営体育成基盤整備事業[金西東部地区]
法 表 彰 理 由 ~相互扶助による農産物の通年販売への挑戦~
水稲を中心とした経営規模の拡大とトマト、メロン、アスパラガス等の高収益作物導入や餅加工・
人 販売により収益性の高い農業経営を実現するとともに、地域の女性や高齢者等の労働力活用による相
互扶助の取組や創意工夫を凝らした市場開拓を積極的に展開。
- 121 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
(3)土地改良区組織の現状と課題
小規模土地改良区を中心に合併による運営基盤強化が進展
土地改良区は、土地改良事業の実施主体であるとともに、造成された土地改良施設の
中心的な管理主体として重要な役割を担っている。特に、都市化、混住化等農村社会の
変貌のなかで、地域の要請に対応した土地改良施設の良好な管理とあわせて、地域資源
(農業用水、農地等)の維持保全を積極的に担っていくことが求められている。
しかしながら、農業従事者の高齢化、後継者の不足、農家所得の低迷、施設管理に対
する意識の欠如、さらには末端管理組織の衰退が進行し、土地改良区の事業の推進及び
管理体制に重大な支障が生じつつある。このようなことから、土地改良区の運営基盤を
強化するため、土地改良区の合併が進められている。
管内においては、各県が策定した統合整備基本計画に基づき、国庫補助事業「土地改
良区組織運営基盤強化対策」等により、水系単位又は市町村単位での合併を進めた結果、
9年度末における土地改良区数は656地区であったが、18年度末では510地区となり、一
定の成果をあげている(表Ⅱ-54)。
特に、受益面積が300ha未満の零細・小規模な土地改良区数は9年度末には261地区で
あったが、18年度末には171地区と減少しており、合併推進による運営基盤の強化が進め
られている(図Ⅱ-37)。
表Ⅱ-54
管内各県の土地改良区数の推移
9年度末
土地改良区数
(A)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東北計
全 国
18年度末
土地改良区数
(B)
17年度末
土地改良区数
増 減 数
(B)-(A)
100
69
87
178
90
132
656
85
61
64
137
67
109
523
84
61
63
130
66
106
510
▲ 16
▲ 8
▲ 24
▲ 48
▲ 24
▲ 26
▲ 146
7,414
5,853
5,632
▲ 1,782
参 考
19年度市町村数
(20年1月1日現在)
資料:農林水産省農村振興局整備部土地改良企画課及び東北農政局農村計画部土地改良管理課調べ。
- 122 -
40
35
36
25
35
60
231
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
図Ⅱ-37
面積規模別土地改良区数割合
300ha未満
9年度末
300~1,000
261
232
171
181
(35.5%)
(33.5%)
0
100
200
300
3,000ha以上
119
(18.1%)
(35.4%)
(39.8%)
18年度末
1,000~3,000
112
(22.0%)
400
44
(6.7%)
46
(9.0%)
500
600
700
資料:農林水産省農村振興局企画部土地改良企画課及び東北農政局農村計画部土地改良管理課調べ。
7 農業協同組合の体質強化、組織改革
(1)農協合併の進捗状況
合併構想実現による農協経営の体力強化
東北管内の総合農協の合併構想達成状況は、平成20年5月1日現在の合併構想数56に
対し、構想実現数は51となっている。達成率は85.7%で全国の78.5%に比べ高い状況に
ある。また、青森県及び岩手県を除く各県は、既に合併構想を実現している(表Ⅱ-55)。
一方、達成率の低い青森県では、合併の障害となっている経営の健全化・効率化を図る
ことなど構想実現のための条件整備が課題となっている。
東北管内の農協数は、広域合併構想の実現により、4年3月31日以降19年3月31日ま
でに413農協が減少し、減少率は77%と全国の減少率74.2%と比較して高い減少率になっ
ている(表Ⅱ-56)。
また、信用農業協同組合連合会と農林中央金庫との統合も進められており、宮城県、
秋田県及び山形県では既に統合済、福島県においては20年度中の統合が予定されている。
表Ⅱ-55
総合農協の合併構想の実現状況
県
名
青
森
岩
手
宮
城
秋
田
山
形
福
島
東 北 計
(参考)全国
合併構想数
①
6
6
11
11
7
15
56
391
構想未達数
20年5月1日現在
合併実現数 ②
6
2
0
0
0
0
8
0
4
12
12
8
(1)
(1)
(1)
15
51 (3)
307
②/①
(注:は除く)
0.0%
66.7%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
85.7%
78.5%
資料:JA全中「全中合併推進情報<速報>」(20年5月1日現在)
注: 合併実現数の( )書きは、一つの構想地区内に最終合併に至っていない合併農協が二つ存在し、
当面二つとも実現数として計上される地区数で、内数である。
- 123 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
表Ⅱ-56
総合農協数の推移
平成3年度
(A)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東 北
全 国
8年度
92
66
97
102
63
116
536
3,373
18年度
(B)
13年度
81
50
76
73
35
49
364
2,284
43
25
24
16
23
25
156
1,181
減少率
(H18年度/H3年度)
34
21
15
16
20
17
123
867
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
63%
68%
85%
84%
68%
85%
77%
74%
資料:農林水産省経営局「平成18年度農業協同組合数等現在数統計」
(2)総合農協の事業総利益
事業総利益は減少傾向、特に信用事業及び購買事業が顕著
全国の総合農協の事業総利益の1割を占める東北地方であるが、平成10事業年度と比
較した18事業年度の事業総利益は611億円の減少、減少率は22%となっている(図Ⅱ-38)。
また、事業別では信用事業及び購買事業の減少が大きい(図Ⅱ-39)。
農協の健全化を図るためには、①組織の見直し等による経営の効率化・合理化、②不
良債権の早期処理等による財務の健全化、③事業別収支の改善による経営の健全化、④
物流の合理化等による価格競争力の強化が必要である。
図Ⅱ-38
総合農協の事業総利益の推移
(単位:億円、%)
18事業年度
10事業年度
東北
(10%)
北海道
2,054億円
(6%)
1,256億円
事業総利益
九州
事業総利益
(12%)
全国
全国
2,490億円
東北
(12%)
北海道
2,665億円
(6%)
1,494億円
事業総利益
九州
事業総利益
(12%)
全国 全国
2,834億円
19,721億円
23,043億円
その他
(70%)
16,050億円
23,043億円
19,721億円
その他
(70%)
13,921億円
資料:農林水産省「平成18事業年度総合農協統計表」
- 124 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
図Ⅱ-39
総合農協の事業別総利益の推移
(単位:億円、%)
0
全
国
5,000
信用事業 8,356
10事業年度
宮
城
秋
田
山
形
福
島
5,415(27%)
500
1,000
719
10事業年度
販売事業
その他 ,
1,483
,
1,545
購買事業 5,856
3,924(20%)
1,500
685
2,000
2,500
798
269
194 ,
249
188
498(24%)
625(30%)
491(24%)
▲611
(12%) (9%)
▲31% ▲9% ▲38% ▲7% ▲3% ▲23%
18事業年度
100
200
300
400
500
64
66
100
49
38 ,
34
31
62(24%)
80(31 %) 50(19%)
▲58
18事業年度
(13%)
(12%)
▲47% ▲6% ▲20% 2% ▲18%▲18%
,
10事業年度
141
107
128
50
10事業年度
18事業年度
10事業年度
18事業年度
120
119
,
146
134(31%)
99(27%)
97(26%)
50
79(18%)
(456億円)
37 ,
(371億円)
20
42(10%)(5%)
37
23 ,
▲69
▲8% ▲7% ▲38% 14% ▲13% ▲14%
資料:農林水産省「平成18事業年度総合農協統計表」
- 125 -
600
(322億円)
128
159(36%)
(2,054億円)
(469億円)
44(12%)
171
(2,665億円)
(360億円)
34
▲85
(9%)
▲20% ▲7% ▲
33% ▲12%
▲8% ▲19%
,
95(26%)
3,000
(458億円)
32 ,
100
144
(19,721億円)
(458億円)
132
106
(23,043億円)
(304億円)
167
50
40
39
18事業年度
▲147
65(20%)
87(27%)
89(28%)
(12%) (12%)
, ▲46% ▲13% ▲47% ▲20% 22% ▲31%
10事業年度
億円
(259億円)
136
41 21 ,
34 20
▲98
103(29%)
120(33%)
80(22%)
18事業年度
(9%) (6%)
▲20% ▲9% ▲41% ▲17%▲5%
▲21%
,
10事業年度
25,000
(317億円)
122
38
37
41
18事業年度
▲154
64(21%)
96(32%)
64(21%)
(12%) (13%)
▲55%
▲10% ▲48%
▲3%
▲18%
▲34%
,
10事業年度
岩
手
20,000
1,335 1,597
▲3,322
(7%) (8%)
増減 率 ▲11% ▲7% ▲33% ▲ 10% 3% ▲14%
0
青
森
15,000
共済事業 5,803
7,448(38%)
18事業年度
0
東
北
10,000
(505億円)
(436億円)
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
8 農業と食品産業との連携
(1)食品産業の動向
食品産業は、国内生産額の10%を占める重要な産業
食料産業(農・漁業+食品産業等)の国内生産額(平成17年)は約102兆円で、全産業
における国内生産額(約949兆円)の約11%となっている。、このうち食品産業(食品製
造業、食品流通業及び外食産業)は約90兆円で、食料産業の約88%、全産業の約10%を
占めている(農林水産省「平成17年度農業・食料関連産業の経済計算」)。
なかでも、東北地域の食品製造業は、事業所数、従業員数、出荷額それぞれが全製造
業の2割弱を占め、水産物加工業をはじめとする豊富な地場産品を原料とする加工業が
地域の重要な産業となっており、今後は地域における農林水産業との連携を通じて食品
産業の活性化を図ることが課題となっている。
東北地域における食品製造業の出荷額は1兆9,303億円で、水産・畜産食品の割合が高い
17年の全製造業に占める食品製造業の割合を事業所数、従業員数及び出荷額で全国と
比較してみると、東北地域はいずれの項目においても全国平均を上回っている。
また、各地域の豊富な食材を活用した製品づくりを行ってきていることと相まって地
域の雇用の場として地域経済にも大きく貢献している重要な産業となっている(表Ⅱ-5
7)。
東北地域における食品製造業の出荷額1兆9,303億円を品目別にみると、水産食料品
4,676億円(構成比24.2%)、畜産食料品4,293億円(同22.2%)が特に高い状況にある(表
Ⅱ-58)。
東北地域における食品製造業の推移をみると、事業所数、従業者数は低下傾向にある
(表Ⅱ-59)。
表Ⅱ-57
食品産業の概況(平成17年)
(単位:か所、人、億円、%)
区
全
食
分
製
品
造
製
造
業
事
業
所
東北
全国
19,403 276,716
業
4,241
39,065
全製造業に占める割合
21.9
14.1
数
7.0
常 時
東北
651,154
従 業 員 数
年 間 販 売 ( 出 荷 ) 額
東北/全国
東北/全国
全国
東北
全国
8,159,364
8.0 169,927
2,958,003
5.7
10.9
119,058
1,207,302
18.3
14.8
東北/全国
9.9
27,329
323,435
16.1
10.9
8.4
食 料 品 卸 売 業
7,715
84,539
9.1
74,275
887,159
8.4
64,276
863,898
7.4
食 料 品 小 売 業
42,144
444,596
9.5
245,060
3,151,037
7.8
32,803
413,342
7.9
資料:経済産業省「工業統計表」(産業編:従業者数4人以上の事業所、17年版)、「商業統計表」(16年版)
注:1) 食品製造業は、従業者数4人以上の事業所の集計値。
2) この表において、食品製造業とは、日本標準産業分類の「食料品製造業」と「飲料・たばこ・飼料製
造業」を合わせたものをいう。
- 126 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
表Ⅱ-58
食品製造業の品目別出荷額(平成17年)
(単位:億円、%)
畜産食料品
826
1,193
751
277
754
492
東北
構成比
4,293 22.2
水産食料品
1,012
599
2,615
45
37
368
4,676 24.2
93
68
36
38
338
247
820
4.2
8,242
3.0
9.9
198
38
86
46
71
88
527
2.7
17,365
6.3
3.0
精穀・製粉
63
127
189
86
114
111
690
3.6
12,448
4.5
5.5
パン・菓子
159
307
561
155
500
329
2,011 10.4
40,096
14.6
5.0
動植物油脂
10
24
41
0
26
0
0.5
6,281
2.3
1.6
その他食料品
295
517
1,207
305
826
949
4,099 21.2
56,666
20.7
7.2
清涼飲料・茶・コー
ヒー
119
23
12
4
266
52
19,167
7.0
2.5
37,469
13.7
4.3
区 分 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県
野菜缶詰・果実缶詰・
農産保存食料品
調味料
酒類
計
東 北
101
476
2.5
8.3
53
74
848
256
139
240
1,610
2,828
2,970
6,346
1,212
3,071
2,876
19,303
全 国 東北/
構成比 全国
45,265 16.5 9.5
全 国
30,897
11.3 15.1
273,896
資料:経済産業省「工業統計表(品目編)」(従業者4人以上の事業所、17年版)
注: この表において、食品製造業とは、日本標準産業分類の「食料品製造業」と「飲料製造業」を合わせたも
のをいう。
表Ⅱ-59
食品製造業の推移(平成17年)
(単位:人、億円、%)
区
分
事
平成15年
業
所
16
東北(A)
4,500
4,234
全国(B)
41,225
38,600
A/B
10.9
11.0
参考(一事業所当たり:東北)
数
17
4,241
常
時
平成15年
業
16
120,201
者
数
17
年 間 販 売 ( 出 荷 ) 額
平成15年
16
17
119,058
27,825
28,448
27,329
39,065 1,235,438 1,213,043 1,207,302
330,677
334,289
323,435
10.9
123,071
従
10.0
9.9
9.9
8.4
8.5
8.4
27.3
28.4
28.1
6.2
6.7
6.4
資料:経済産業省「工業統計表」(産業編:従業者数4人以上の事業所、17年版)、「商業統計表」(16年版)
注:1) 食品製造業は、従業者数4人以上の事業所の集計値。
2) この表において、食品製造業とは、日本標準産業分類の「食料品製造業」と「飲料・たばこ・飼料製
造業」を合わせたものをいう。
- 127 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
容器包装リサイクル法の取組状況
「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進に関する法律」
(容器包装リサイクル法)
は、平成7年12月から段階的に施行され、この間、市町村による分別収集量はペットボ
トル、プラスチック製容器包装を中心に増加傾向にあり、一般廃棄物の最終処分量の減
量と最終処分場の残余年数に一定の改善が見られている。しかしながら、家庭ゴミの排
出抑制が不十分なこと、容器包装廃棄物の分別収集・選別保管に伴う市町村の負担が増
加していること、特定事業者が負担する再商品化委託費が増加していることなどの状況
に対応し、容器包装廃棄物のさらなる排出抑制の推進とリサイクルに要する社会全体の
コストの抑制等を目指し、18年6月に改正容器包装リサイクル法が成立し、同年12月か
ら段階的に施行されている(図Ⅱ-40)。
図Ⅱ-40
改正容器包装リサイクル法のポイント
消 費 者の 意識 向上 ・事 業者 との 連携 の促 進
容器 包装 廃棄 物の
排 出抑 制の 促進
(レ ジ袋 対策 等)
[ 平成19 年4月 施行]
質の 高い 分別 収集・
再 商品 化の 推進
容 器包装 廃棄物 排出抑 制推進員 制度の 創設
事 業者 に対す る排 出抑 制を 促進す るた めの 措置 の導入
容 器包装 多量利 用事業 者に対す る取組 状況報 告義務づ け
事 業者 が市町 村に 資金 を拠 出する 仕組 みの 創設
市 町村の 分別収 集によ る再商品 化の合 理化へ の寄与の
程 度を勘 案して 算定さ れる額を 事業者 が市町 村に拠出
[ 平成20 年4月 施行]
事業 者間 の
公 平性 の確 保
再 商品 化義務 不履 行事 業者 に対す る罰 則の 強化
い わゆる ただ乗 り事業 者に対す る罰則 の強化
[ 平成18 年12月 施行]
容器 包装 廃棄 物の
円 滑な 再商 品化
円 滑な 再商品 化に 向け た国 の方針 の明 確化
使 用済み ペット ボトル の国外流 出にか んがみ 、再商品
化 のため の円滑 な引き 渡しにつ いて基 本方針 に追加
[ 平成18 年12月 施行]
容器包装リサイクル法にかかる再商品化義務を負う特定事業者への調査指導として、
容器包装廃棄物リサイクルシステム点検指導事業を実施している。そのなかで、再商品
化義務不履行者(ただ乗り事業者)と疑われる事業者に対し報告の徴収等を実施し、再
商品化義務があると確認ができた事業者で義務を履行しない事業者について、履行に向
けた指導を行っているところであり、さらに、勧告、公表等の法的措置を順次実施する
予定としており、ただ乗り事業者の解消に向けて取組を進めている。
- 128 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
食品リサイクルの取組状況
13年5月に施行された「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイ
クル法)の一部が19年12月に改正され、食品廃棄物等多量発生事業者に対し、食品廃棄
物等の発生量及び再生利用等の状況についての定期報告義務が課せられた。
具体的には、前年度の食品廃棄物等の発生量が100トン以上の者が報告することとなっ
ており、初回は20年度分を21年6月まで農林水産大臣に報告することとなる。
このため、管内の食品関連事業者に対しては、法にかかる啓発指導を行うとともに、
食品循環資源の再生利用等の状況について確認する食品循環資源再生利用等促進事業を
地方農政事務所とともに実施し、19年度は約2千件の調査・点検を行った。
なお、食品リサイクルを受託する受け皿として、東北管内では20年1月末現在で13件
の大臣登録を受けた再生利用事業場がある(表Ⅱ-60)。
表Ⅱ-60
登録再生利用事業者一覧
県名
青森
岩手
岩手
岩手
宮城
宮城
宮城
宮城
宮城
山形
福島
福島
福島
事 業 者 名
相和物産 株式会社
有限会社 オーガニック金ヶ崎
有限会社 岩手環境事業センター
株式会社バイオマスパワーしずくいし
株式会社 新興
日本環境 株式会社
あさひな 農業協同組合
株式会社 ダスト栗原
ジャパンサイクル 株式会社
株式会社 丹野
株式会社 辰巳屋
株式会社 平和物産
株式会社 ジーセブン
登録年月日
H19.11.28
H19.3.15
H19.10.1
H18.11.8
H15.6.30
H16.12.20
H17.4.15
H17.11.28
H19.3.13
H19.3.15
H19.3.15
H18.3.30
H18.3.30
再生利用事業の内容
肥料化事業 肥料化事業 肥料化事業 メタン化事業
肥料化事業 肥料化事業 肥料化事業 メタン化事業
肥料化事業 肥料化事業 肥料化事業 肥料化事業 肥料化事業 注:1) 食品循環資源とは、食品廃棄物のうち肥料、飼料等に利用される有用なもの。
2) 食品関連事業者とは、食品製造業、食品卸売業、小売業、レストラン等飲食店業及び
政令で定める沿海旅客海運業、内陸水運業、結婚式場業、旅館業。
3) 再生利用等とは、食品廃棄物の発生の抑制及び再生利用、熱回収、減量等に取り組むこと。
- 129 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
(2)食料産業クラスター形成に向けた取組
地域の食材を活用した新製品開発による農林水産業の活性化が期待される
地域の農林水産物を活用した新製品開発は、地域の食品製造業のみならず、原材料の
供給側である農林水産業の活性化の起爆剤となる可能性を秘めており、これまで数々の
取組が行われてきている。
現在、農林水産省では、「食料産業クラスター展開事業」によりこの取組を支援してい
る。この事業は、各県や各地域において、地域の食材、人材、技術その他を効率的に結
びつけ、地域に密着した食品産業の振興を図るために、食品産業、農業、その他関連業
種等による連携、いわゆる食料産業クラスターの形成を推進するもので、これにより、
産学官や異業種の交流が図られ、地域の食品産業、農林水産業の活性化、地域経済の発
展が期待される(表Ⅱ-61)。
表Ⅱ-61
平成19年度食料産業クラスター展開事業(東北)
開発のコア企業・団体
いわて食料産業クラスター協議会
開 発 商 品
山ぶどう、
ブルーベリー使用のパウンドケーキ
(株)長根商店
きのここんにゃく(刺身用、焼き肉用)
宮城県食料産業クラスター全体協議会
気仙沼ほてい(株)
モウカ鮫の角煮(レトルト食品)
かぼちゃの無添加シフォンケーキ、
(有)花蓮堂
パンプキンパイ
はたけなか製麺(株)
松島産アカモクと国産小麦使用の白石温麺
(株)阿部長商店
秋刀魚由来の青色色素とコラーゲン等のゼリー
(株)きちみ製麺
蔵王高原産小麦使用の手延べ白石温麺
グリーンライブ(株)
塩釜産アカモク漬け
やまがた食産業クラスター協議会
①紅大豆のさくら豆乳
(株)仁藤商店
②紅大豆入りおからドーナッツ
JA鶴岡
だだちゃ豆の豆乳、豆腐、プリン、パスタ
①神代豆のパック入り発芽大豆
アヒコファインテック(株)
②神代豆の葉茎のお茶
(有)内外ファーム
庄内メロンの赤白セットワイン
さくらんぼ、ラ・フランス、
もも(恋香桃)の果実入りリキュール
山形県酒類卸(株)
お手軽チューブ入り「出羽燦々」味噌酒粕
(株)いの食品
味付け米沢牛・牛骨スープ入り揚げ玉こんにゃく
(有)新田食品
いずみた里芋の煮物用団子
(株)米沢食肉公社
米沢牛入り、米沢一番豚入り青菜漬の冷凍食品
(有)尾花沢食品
六沢大根の浅漬風いぶり大根
(株)タスクフーズ
上和田米等を使用したレトルト食品「ごちそう粥」
岩手県産(株)
- 130 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
<事例>
食料産業クラスター形成による新製品開発の取組[岩手県・矢巾町]
いわて食料産業クラスター協議会は、県内の食品企業、食品関
係団体、生産者団体等で組織されており、県内の食品産業と農林
水産業の振興のため、様々な活動を行っている。
平成17年度、会員企業の岩手県紫波郡矢巾町の特産品販売業社
が中心となり、食料産業クラスター事業により県産の牛乳とずん
だ(枝豆)を原料としたジャムの開発を実施した。
原料は西和賀農業協同組合等が供給、製品試作は岩手県西和賀
町の牛乳・乳製品製造業者が実施、試作品の市場テストは中心企
業の岩手県紫波郡矢巾町の特産品販売業社が同社のアンテナショップの来場者を対象に実施
するなど各社が連携して製品開発を行った。
製品は県産の素材にこだわったジャムとして、18年5月に発売。同社のアンテナショップ
での販売や通信販売により順調に売上を伸ばしている。
19年4月には、姉妹品として「にんじん」
「かぼちゃ」を使用したジャムが発売され、さら
に売上げを伸ばしている。
(3)地域資源を活用した食品産業の取組
東北地域で農林水産物を活用した事業計画は18件
地域間格差の拡大が懸念されるなか、地域がそれぞれの強みを活かして自立的・持続
的な成長を実現していくことが重要である。このことから、産地の技術、農林水産品、
観光資源といった地域の特徴ある産業資源(地域資源)は、域外への事業展開において
差別化の要素となり得るものであるため、地域経済の主体である中小企業の地域資源を
活用した創意ある取組を推進し、それを核として地域資源の価値向上(ブランド化等)
を図り、地域の強みを活かした産業を形成・強化していく必要がある。
しかしながら、地域中小企業にとっては、市場調査、商品企画、商品開発、販路開拓
等に必要なノウハウや人的ネットワーク、資金、人材を確保することが容易でなく、域
外市場を狙った新商品等の開発・事業化が実現されにくい状況がある。また、地域ブラ
ンドの確立など、地域全体で地域資源の価値を高めていくことは容易ではない、などの
課題が存在している。
こうしたことから、19年度から「中小企業地域資源活用プログラム」により、”売れる
商品づくり”を目的として、域外市場を狙った新商品等の開発・事業化に対する支援や
地域資源を活用した新たな取組の掘り起こしや地域資源の価値向上(ブランド化等)に
対する支援を行っている。
19年度、東北地域では31件(農林水産物を活用したもの18件、鉱工業品及びその技術
を活用したもの11件、観光資源を活用したもの2件)の事業計画が認定された (表Ⅱ-
62)。
- 131 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
表Ⅱ-62
「中小企業地域資源活用プログラム」平成19年度事業認定計画(農林水産物)
地域名
岩手県釜石市
事 業 名
法認定事業者
チョウザメを種苗・育成・採卵まで一貫生産することによ
り、最高品質のフレッシュキャビアを日本国内では初めて 釜石キャビア株式会社
の生産を行う。
岩手県釜石市
海藻脂質(フコキサンチン)による抗肥満作用を有する機
協同組合マリンテック釜石
能性食品の開発
岩手県奥州市
日本初、乳酸菌生成エキス入り、プレーンヨーグルトの製
石川食品株式会社
造販売
宮城県栗原市
安全・安心を確立した菌床栽培しいたけ100%を原材料と
農事組合法人水鳥
する加工食品の製造及び販売
宮城県気仙沼市
宮城県石巻市
秋田県湯沢市
山形県上山市
山形県鶴岡市
福島県猪苗代町
福島県郡山市
青森県弘前市
宮城県角田市
日本で初めて「魚肉100%の無添加無着色生・薫製ハム/
株式会社フジミツ岩商
ソーセージ」の開発・製造
畜肉ハンバーグと同じ食感が出せる、お魚ハンバーグ(サ
株式会社遠藤商店
バ)の開発・販売
地域野菜や果物を活用した業界注目シェフ”菅”のドレッ
あお葉フーズ
シングシリーズ確立と新シリーズの開発
県産ぶどう(デラウエア種)を使った微発砲ワインの製
造・販売
有限会社タケダワイナリー
素材の魅力をそのまま持続させた「だだちゃ豆」加工品開
鶴岡市農業協同組合
発販売事業
「磐梯山」の伏流水と「会津身不知柿」の特性を活かした
有限会社旭乳業販売
乳製品の開発・販売
福島県産米を原材料とした、無加糖ストレート甘酒(PE
Tボトルタイプ・常温流通)の製造・販売~健康指向者 株式会社宝来屋本店
層・スポーツアスリート向け”飲む点滴”の用途開発~
いつでもどこでもおしゃれ感覚で味わえるりんご加工品
有限会社ディアーナ
「りんごdeチュ」の開発と販路開拓
牛乳を使った、食べても太りにくい栄養機能性スィーツの
宮城製粉株式会社
開発とブランド確立
宮城県石巻市
鯨の特性を活かした新たな食品の開発と販路拡大
株式会社木の屋石巻水産
宮城県気仙沼市
栄養豊富なかつおを活用したナゲットの開発・販売
株式会社マルタフーズ
秋田県秋田市
世界自然遺産の白神山地から創出される白神乳酸菌《作々
楽》発酵甘酒をはじめ、しょっつる、清酒など秋田の特産
三宝食品株式会社
品を調味料とした、秋田県産水産物の加工品開発と販売を
行う。
秋田県秋田市
山形県米沢市
秋田県産米や大豆の穀類相乗効果を利用した日本で初めて
株式会社四季菜
の生理機能を持つ栄養補助食品の開発
完全管理型トレーサビリティシステムを活用した米沢牛加
株式会社米沢食肉公社
工食品の開発
- 132 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
(4)
「地域団体商標」を活用した地域ブランド化の取組
知的財産の活用により地域活性化、競争力強化を高めることが必要
農林水産分野における知的財産は、植物の新品種をはじめ、研究開発の成果、農林水
産業の技術ノウハウ、家畜の遺伝資源、農産物や地域食品の商標など多岐にわたり、そ
れらの知的財産を農林水産業・食品産業の競争力強化と地域活性化につなげていくこと
が必要であるとの認識から、農林水産省では平成19年3月に農林水産省知的財産戦略を
策定した。
管内の各産地では、輸入農産物を含めた他地域の農産物といかに差別化を図り、消費
者の購入意欲を高めるかが課題となっていることから、18年4月から導入された地域の
名称と商品(役務)からなる商標である「地域団体商標」を活用した地域ブランド化の
取組が重点的に進められている(図Ⅱ-41)。
東北農政局においては19年7月に東北経済産業局と連携のもと、知的財産相談窓口を
設置し、農林水産分野における知的財産に関する相談への対応、関係者等への知的財産
制度等の説明を行った。
図Ⅱ-41
管内の地域団体商標(農水産物)
注:平成20年3月11日現在
- 133 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
9 新技術の開発・普及
東北の農業生産をより振興していくためには、新品種・新技術の開発が不可欠である。
東北農業研究センター等各研究機関においてこれらの開発を進めてきている。
普及されている主な技術、品種
○ 猛暑により発生する米の胴割れを軽減できる栽培技術
水稲の登熟初期の高温により米にひびが入り、品質の低下の原因となる「胴割れ米」
の発生を軽減するために、ほ場内地温を下げるための水管理や登熟期間の葉色が過度に
低下しないような適切な追肥を行うなど、地球温暖化適応策に関する技術として注目さ
れている。
○ 気象予測データを利用した情報Webシステム
冬の寒さを利用する「寒締めホウレンソウ」の計画的な出荷に役立てるため、気象予
測データを利用した寒締めホウレンソウの生育予測情報をWeb上で提供するシステム
を開発した。また、17年からは気象予測データを用い、水稲の他に寒締めホウレンソウ
等の生育・警戒情報を合わせた「気象予測データを用いた農作物被害軽減状況」を同時
に東北農業研究センターのホームページで提供している。
○ 新品種の育成
東北農業研究センターでは、東北地域中北部で生産可能な飼料イネ「べこごのみ」、モ
ザイク病・倒伏に強い納豆専用の極小粒大豆「すずほのか」を育成した。
また、宮城県古川農業試験場では、山間高冷地に適した水稲「やまのしずく」及び「
ゆきむすび」を、秋田県農林水産技術センター果樹試験場では、早生のりんご「秋田紅
ほっぺ」を、福島県農業総合センターでは、10月上中旬に収穫するそば「会津のかおり」
及び中山間地での露地栽培に適したりんどう「ふくしましおん」を育成した(表Ⅱ-63)。
- 134 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
表Ⅱ-63
近年育成された新品種の概要
作物名
品種名
りんご
そば
品種の特性
べこごのみ
○早生の飼料用イネで、既存の早生多収品種より5%以上多
東北農業研究セ
収
ンター
○倒伏に強く、省力・低コストの直播栽培にも適する
やまのしずく
宮城県古川農業 ○山間高冷地に適する早生品種
試験場
○「こころまち」より耐冷性が強く、収量性や食味も優れる
ゆきむすび
○山間高冷地に適する早生品種
宮城県古川農業 ○「こころまち」より耐冷性・いもち病抵抗性が強い
試験場
○「低アミロース米」でさめても美味しく、おにぎり・加工
米飯への活用が期待できる
水稲
大豆
育成機関名
○ダイズモザイク病抵抗性を有する納豆用の極小粒品種
東北農業研究セ
○倒伏に強く、機械化適応性が高い
ンター
○栽培適地は東北全域
秋田県農林水産
○9月上旬に収穫できる早生種
秋田紅ほっぺ 技術センター果
○同時時に収穫される早生種より貯蔵性に優れる
樹試験場
すずほのか
福島県農業総合 ○秋そば向きの品種で、10月上旬~中旬に収穫
会津のかおり センター会津地 ○既存品種「信濃1号」より収穫量高く、粒揃いが良い
域研究所
○製麺時は、水の浸透性が良く、延ばし時の割れが少ない
りんどう ふくしましおん
○鮮やかな青紫色で、咲揃いが良く、姿形に優れる
福島県農業総合
○開花期は8月中旬~下旬
センター
○中山間地での露地栽培に適している
注:19年に種苗法に基づき品種登録の出願が公開された品種。
これから普及を図る主な技術
○ 小麦の冬期播種栽培技術
水稲や大豆の収穫作業との競合を回避する秋播性小麦の冬期播種栽培技術。播種量は1
0~15kg/10a、窒素施肥は8~10kg/を播種同時に側条施用する。側条施肥により収量
・品質が向上し、雑草の抑草も可能となる。加工特性は秋播慣行並を確保している。
○ 2条植えヤマノイモ移植機の開発
作畝、移植、マルチの各作業を同時に行う本機は、慣行と同等の精度で作業が可能と
なり、作業能率は2.2時間/10aで慣行と比較して60%の省力化が可能となる。
○ キュウリホモシプス根腐病防除技術
クロルピクリンくん蒸剤のマルチ畦内消毒を行う際に、畦の高さを15cm、マルチの裾
を15cm程度埋め込むことで、根のマルチ外への伸展が抑制されることにより初期感染が
遅延し、防除効果が高まる。かん水チューブによる畦内かん水または、かん水同時施肥
を行うことで、慣行の平畦栽培よりも10%程度増収。
- 135 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
今後、重点的に研究を行う開発分野
○ 自給飼料生産技術の確立
輸入飼料の高騰に対応した飼料稲、WCS(稲発酵粗飼料)、青刈りとうもろこし等の
省力・低コスト・安定多収栽培技術、及び耕作放棄地放牧システムの開発を行う。
○ 水稲の省力・低コスト栽培技術の確立
近年の米価低迷の状況下 、「グレーンドリル及びカルチパッカを汎用利用した乾田直
播」、「不耕起V溝直播」、「鉄コーティング直播」等の東北地域に適応した水稲の省力・
低コスト安定栽培技術体系を確立する。
○ 夏秋どりイチゴ生産技術の確立
寒冷・冷涼気候を利用し、夏秋季に不足する国産イチゴを安定供給するため、夏秋ど
りイチゴの生産技術を確立する。
○ 地域特産農産物の機能性を活かした食品の開発
食の安全・安心及び健康指向の高まりへの対応として、東北地域に豊富に賦存する地
域特産農産物の健康機能性の解明及び加工食品の開発を行う。
○ 有機農業の生産技術体系の構築
先行する民間技術を科学的に検証するとともに、機械除草、生物機能利用による病害
虫防除、有機質資源利用等既存技術を組み合わせて、持続可能な生産技術体系を構築す
る。
- 136 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
コラム
産学官連携による取組
東北における農林水産・食品産業の産学官連携の研究開発は、工業・情報分野に比較する
と遅れている状況にあるが、大学や公設試験研究機関等の研究シーズ、民間企業の研究ニーズ
を行政が積極的にコーディネートすることで、今後の農林水産・食品産業における産学官連携
の加速が期待される。
このため、平成19年度は、企業・大学・独法・公設試験研究機関等の新たな研究成果・研
究シーズの紹介、ビジネス提案・製品の紹介及び技術移転等に関する交流の場を提供し、技術
の普及・実用化、共同研究、販路の開拓等の推進を図ることを目的に、東北農政局及び東北地
域農林水産・食品ハイテク研究会の主催で、
「東北アグリビジネス創出産学官連携フェア2007」
を仙台市において約370名の参加のもと開催した。
本フェアでは、企業、大学、試験研究機関、支援機関等全34機関によるブース出展のほか、
産学官連携の取組に関する講演、競争的研究資金制度の説明、出展者によるショートプレゼン
テーション、産学官連携を希望する研究シーズの紹介も行われた。
「東北アグリビジネス創出産学官連携フェア2007」で発表された産学官連携事例の概要
山形大学地域共同研究センター副センター長 小野 浩幸氏
「地方行政に密着した産学官連携の展開と民間企業との共同研究の取組」
産学官連携の取組を県内全域に広げるため、山形県庁と連携し、県内3つの地域に産学官連携の拠点とな
る「サテライト」を設置。地域共同研究センターから各サテライトに担当者を派遣し、行政と連携して企業
訪問や技術相談(企業ニーズの掘り起こし)、セミナー、民間企業との共同研究等を推進している。
日東ベスト株式会社研究部次長 松田 企一氏
「企業と公設試験研究機関の連携による高付加価値食品の開発
~ラ・フランスパウダーの開発と今後の展望~」
村山総合支庁の支援を受け、地元の農産物を活かした商品の開発を目的に「むらやま食品加工推進グルー
プ」を発足。民間企業の商品企画開発・販売に対し、山形大学や山形県工業技術センターが技術的に支援し
「ラ・フランスパウダー」を用いた商品づくりに取り組み、地場食材である「ラ・フランス」の高付加価値
化を推進した。
- 137 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
10 農林水産物等の輸出促進の取組
(1)輸出の動向
東北の輸出状況は、りんご、りんどう、ながいも、米、日本酒を中心に増加傾向
農林水産物や食品の輸出については、「攻めの農業へ」と発想を転換した日本農業の
取組として、近年急速に活発化している(表Ⅱ-64)。
表Ⅱ-64
我が国における主な農林水産物の輸出実績
(単位:億円)
農林水産物
金額
農産物
伸び率
金額
林産物
伸び率
金額
水産物
伸び率
金額
伸び率
18年
3,739
13.0
1,946
9.8
90
▲ 1.6
1,703
17.7
19年
4,338
16.0
2,221
14.1
104
15.6
2,013
18.2
資料:財務省「貿易統計」(19年は速報値)
東北においても、東北の豊かな自然から生産される、りんご、ながいも、コメ、りん
どう、日本酒といった多様で高品質な農林水産物や食品を、主に東アジア諸国へ輸出す
る取組が行われており、新規に輸出に取り組む生産者・食品事業者等が増えているとと
もに、主要品目の輸出数量が伸びている(図Ⅱ-42)。
図Ⅱ-42
主要輸出品目の実績及び新規輸出取組者の推移(東北)
(単位:t、Kl、千本)
2 3,0 67
1 8,4 45
りん ご
主
要
輸
出
品
目
の
実
績
なが いも
449
422
290
りん ど う
5 03
446
米
新
規
輸
出
取
9 16
512
283
日 本 酒
組
者
数
の
推
1 0 ,7 7 0
3 49
77
12
37
47
16年 度
54
57
17年 度
18年 度
資料:県聞き取りを基に東北農政局で取りまとめたもの。(20年9月末現在)
注:りんごの対象期間は当概年9月~翌年8月、ながいもの対象期間は当概年11月~翌年10月である。
ただし、日本酒は仙台国税局取りまとめ「酒税の輸出免税対象数量」。
- 138 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
事例
いちご新品種「もういっこ」
、海外へ初輸出[宮城県・亘理地区]
いちごの生産量で東北一のJAみやぎ亘理では、特産品のい
ちごのブランド化を目指し、宮城県が仙台いちごの新品種と位
置付け平成17年に開発した「もういっこ」を香港へ輸出する取
組を開始した。同品種は、果実は比較的硬いため日持ちが良く
傷みにくいことから輸出に向く品種といわれており、県、同J
A及びJA全農宮城が三者共同で、この新品種を日本産果物の
人気が高い香港へ輸出することとした。
第一便は、19年1月20日に同JAから成田空港まで300パック
出荷した「もういっこ」
(300グラム/1パック、価格450~500円(1パック、成田渡し))が陸送され、1月22日に
検疫を受け、23日に香港へ空輸した後、百貨店「香港そごう」で販売された。
その後、より円滑に輸出するための流通体制の整備を行い、5月13日から週1回300パック
を3週に渡り出荷しており、現地では、いちごの人気が高く好調な売行きを見せている。
本格的に出荷を開始した19年産は、38人の生産者で2.4ha(同JA管内のいちごの栽培面積
に占める割合は2%程度)栽培しており、今後、20年産で10ha、21年産で30haの増加を見込
んでいる。
19年は輸送体制を整備するため第一便以降5月上旬まで輸出を休止していたが、20年は、
1月~5月まで週1回と定期的に輸出する予定である。
輸出数量については、19年は1回300パックであったが、20年は1,000~1,500パックへ拡大
する見込みである。
現在は、流通体制上、「香港そごう」の仕入会社へ成田空港渡しで販売しているが、将来的
には現地渡しで販売するなどコスト削減を目指していく。また、GAP手法(農業生産工程
管理手法)の導入を図り、安全な農産物の安定的な供給と環境保全に取り組んでいくことと
している。
- 139 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
特産の「もも」の輸出販路拡大を目指す[福島県・伊達市]
JA伊達みらい(大橋信夫組合長)では、特産のももを輸出
することで知名度のアップを図り、国内におけるブランド化を
進めることを目的に、平成17年度から台湾へももの輸出(約35
トン)を開始し、平成18年度には49トン、19年度には51トンと
海外向けの出荷量を増やしている。
同JAでは、更なる輸出販路の拡大を図るため、果実と野菜
専門の国際見本市にもも等を出展した。
出店ブースの様子
ドイツのイベント会社とイギリスの企業の共同主催で世界24
か国が参加し、果実と野菜専門の国際見本市「アジア・フルーツ・ロジスティカ」が、アジ
アでは初めて19年9月5日~7日にかけてタイのバンコクで開催された。
JA伊達みらいでは、地域特産のもも「あかつき」、「川中島白桃」、「ゆうぞら」を各20ケ
ース(1ケース5kg)と、ぶどう「巨峰」3ケース(1ケース5kg)を空輸による二日間の
輸送で出展した。
出展ブースは、富士山や浮世絵など「日本」をイメージできる縦1メートル、横2メート
ルの大型ポスターを中心に日本情緒を感じさせる雰囲気をふんだんに取り入れたディスプレ
イとするなどの工夫を行った。
また、会場では浮世絵の美人画をあしらい、ももの色が映えるよう黒を基調としたデザイ
ンで、英文でJAやももの説明を加えたチラシ1千部を用意し、来場者に配布しPRを行っ
た。
今回の出展は、ももの鮮度保持の試験も兼ねた取組でもあり、
「あかつき」、
「川中島白桃」
は収穫したものを凍る手前で冷蔵保存し、品質の劣化を防ぐ特殊技術を利用し鮮度を保った。
鮮度保持の試験も兼ねた取組であったが、開催期間中の品質には全く問題は見られず、試
食した各国の食品関連企業の関係者からの評判も良好だった。このため、新たな販路開拓に
つながることが期待されている。
同JAでは、今回の見本市出展を機に今後、輸出代理店を窓口とした輸出販路の拡大と国
内でのさらなる知名度アップ、ブランド化を進め、農家の生産意欲の向上につなげていきた
いと考えている。
- 140 -
Ⅱ
農業・ 食品産業 の持続 的な発 展
(2)東北地域の輸出促進の取組
相談窓口設置、商談会等開催、リーフレット作成等により東北地域の輸出拡大を支援
新たな「食料・農業・農村基本計画」では、重要な施策のひとつに位置づけられており、
平成17年4月27日に設置された「農林水産物等輸出促進全国協議会」の輸出拡大目標に、
5年で農林水産物・食品の輸出額を6千億円に倍増させることを掲げ、官と民が一体と
なった取組を推進している。18年9月には、この取組をさらに加速させ、25年までに1
兆円規模とする目標が定められた。
東北地域においても、17年9月6日に、県、関係団体、関係省地方機関等45会員によ
る「東北地域農林水産物等輸出促進協議会」
(以下、
「東北地域輸出促進協議会」という。)
を設立し、19年6月15日に策定した「東北地域農林水産物等輸出促進戦略」により、「農
林水産物等輸出相談窓口」の開設、東北産輸出農林水産物等を海外の消費者に紹介する
リーフレットの作成・配付、海外を活動拠点とする国内外の食品バイヤーを招聘した商
談会やシンポジウム等の開催による販路創出・拡大、普及啓発活動等、輸出促進の取組
を行った。
(3)産地の売り込み
積極的に活動範囲を拡大する産地の売り込み状況
輸出に取り組む各県、各産地においては、輸出品目の積極的な売り込みが行われた。
中国、香港、台湾、タイ、マレーシア等の東アジア及び東南アジアを中心に、それぞれ
の県が県産農産物を展示・商談・販売する活動が行われるとともに、ドイツ、アラブ首
長国連邦(ドバイ)等で開催された国際見本市への出展、ロシアにおける市場調査・テ
スト輸出など、青森県産りんごを中心に輸出先国・地域を拡大する動きが活発化してい
る(表Ⅱ-65)。
また、中国、香港、シンガポールで、各県の特徴ある産品を揃えた合同商談会が行わ
れている。(表Ⅱ-66)
- 141 -
Ⅱ
農 業・食 品産業の 持続的 な発展
表Ⅱ-65
県段階における主な輸出促進の取組
県
主な実施主体
主な対象国・地域
主な品目
主な取組内容
市場調査、テスト輸出、バイヤー招聘、商
青森県、青森県農林水産 アメリカ、中国、香港、ドイ
りんご、ながいも等
談、見本市出展、販売促進イベントの実施等
物輸出促進協議会
ツ、ロシア、ドバイ、台湾
青森
(社)青森県物産協会
香港、台湾、タイ
青森県、(社)青森県り
中国
んご輸出協会
農水産物
物産展
りんご
市場調査、展示・販売イベント
中国、台湾、マレーシア、タ
市場調査、展示・販売イベント、商談会、日
農水産物、加工食品
イ
本食レストランメニュー提案等
岩手
岩手県
宮城
宮城県、(社)宮城県国
台湾
際経済振興協会
農水産物、加工食品 見本市出展
県産材海外需要開拓推進
中国
協議会
木材製品
秋田県
農水産物・加工食品 試食・販売イベント、バイヤー招聘等
秋田
台湾
見本市出展、商談
農産物加工品、日本
秋田市、(社)秋田県貿
ロシア(ウラジオストック) 酒、ミネラル・
商談会
易促進協会
ウォーター等
山形県、山形県経済国際
台湾、香港、タイ
化推進協議会
山形
販売促進イベント
山形県、山形県農林水産
物・食品輸出促進協議
香港、台湾
会、山形県経済国際化推
進協議会
農水産物・加工食品 商談会、販売促進イベント
全国農業協同組合連合会
台湾、香港
山形県本部
福島
展示・商談、テスト輸出
福島県
中国
水産物・加工食品
ふくしま産品キャンペーン
県内企業、農業団体等
香港
農産物
ふくしま物産フェア
表Ⅱ-66
県が合同で実施した輸出促進の取組
県
実施主体
主な対象国・地域
バイヤー招聘、商談
会
青森、岩手、秋田
東北北三県、北海道シンガポール事務所
岩手、宮城
宮城県、岩手県、(社)宮城県国際経済振
中国
興協会、(社)岩手県国際経済振興協会
商談会
宮城、山形
宮城県、山形県、(社)宮城県国際経済振興
協会、 山形県農林水産物・食品輸出促進 香港
協議会、山形県経済国際化推進協議会
試食会・商談会
東北6県
「東北フェアin上海」実行委員会
試食会・商談会
- 142 -
シンガポール
主な取組内容
中国
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
Ⅲ 豊かで住みよい農村の振興
1 農村の現状
農村地域では過疎化・高齢化・混住化が進展
管内の総農家における農家人口(農家の世帯員数)は、昭和60年は319万9千人(全国
1,929万8千人)であったが、平成17年には201万人(全国1,133万9千人)となり、118
万9千人(全国795万9千人)減少した。(図Ⅲ-1)。
図Ⅲ-1
農家人口の推移(総農家)
千人
千人
40,0 00
5,084
35,0 00
4,5 52
4, 061
30,0
00
34,
411
全
30 ,083
国 25,0 00
2 6,595
20,0 00
15,0 00
10,0 00
5,0 00
0
昭和 35
40
45
6,0 00
3 ,628
3,413
23,197
21, 366
全 国
東 北
3,19 9
2, 935
19 ,298
17,296
2 ,613
5,0 00
東
4,0 00 北
2, 340
15,08 4 13,458
2 ,010
3,0 00
2,0 00
11,33 9 1,0 00
0
50
55
60
平成2
7
12
17
資料:農林水産省「農林業センサス」
販売農家における農家人口を年齢別にみると、29歳以下の世帯員が昭和60年には104万
人で全世帯員数の37%(全国561万3千人:36%)であったのに対し、20年後の平成17年
には58万7千人減少し、全世帯員数の27%にあたる45万3千人(全国220万5千人:26%)
となった。一方、65歳以上の高齢者は、昭和60年には44万人で全世帯員数の16%(全国2
64万3千人:17%)であったのに対し、平成17年では7万2千人増加し51万2千人で全
世帯員数の31%(全国264万6千人:32%)となっており、全国とほぼ同様に推移してい
る(図Ⅲ-2)。
図Ⅲ-2
年齢別世帯員数の推移(販売農家)
(東 北)
( 全国)
(15,633)
2,643
3,568
(13,878) 2,709
(12,037)
3,168
2,886
昭和60
551
2,147 2,456
平成2
491
2,727
3,808
3,397
2,904 2,487
14歳以下
3,010 1,820 1,816 7
(10,467) 2,936 2,051 2,412 1,678 1,390 千人
15, 000
10,0 00
5 ,000
0
4 89
377
370 330
12
1,305
900 17
(8,370) 2,646 1,8141,706
15~29
279 320
資料:農林水産省「農林業センサス」
注:ラウンドの関係で、計と内訳の計が一致しない場合がある。
- 143 -
50~64
71 0
6 41
655
586
59 7
489
4 63
3 84
190263 351 36 1
0
30~49
1, 000
512
54 5
44 0
471
522
65歳 以上
(2,832)
(2,580)
(2,283)
(2,016)
(1,677)
2,000
千人
3,000
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
さらに、農家人口等が減少するなか、東北の農業集落は混在化が進展し(農業集落の
総世帯数に占める農家数の割合)、17年では、半数を超える農業集落で農家率(農業集落
の総世帯数に占める農家数の割合)が50%を下回っている(図Ⅲ-3)。
図Ⅲ-3
混住化率別農業集落数割合の推移(東北)
昭和55年
(1980年)
14.8
63.5
9.0
3.9
8.8
30%未満
平成2年
(1990年)
48.0
21.1
11.6
11.4
7.9
30~50
50~70
12年
(2000年)
30.4
26.6
14.6
70~90
11.1
90%以上
17年
(2005年)
22.7
23.4
0%
資料:
17.3
17.2
21.8
14.9
50%
100%
農林水産省「世界農林業センサス(農業集落調査)」、「2005年農林業センサス(農村集落調査)」を基に
東北農政局で作成。
注: 混住化率(%)=(非農家世帯数÷農業集落内の総世帯数)×100
東北では生活環境基盤の整備が立ち遅れている
東北の生活環境施設整備の状況をみると、特に下水道の普及(普及率68.4%)、及び道
路の舗装(舗装率64.1%)が遅れている(図Ⅲ-4)。
これらの整備の遅れが過疎化や高齢化率の高さの要因の一つとなっていると思われる
ことから、引き続きこれら生活環境基盤の整備を推進する必要がある。
図Ⅲ-4
生活環境施設整備の状況(平成17年度末)
道路改良率
100.0
下水道普及率
大都市 98.0
全 国 80.7
東 北 68.4
大都市
全国の市町村
東北の市町村
大都市 69.1
全 国 55.0
東 北 58.8
道路舗装率
上水道普及率
特別区を含まない。
3) 下水道の普及率には、公共下水、コ
し尿衛生処理率
大都市 99.5
全 国 97.0
東 北 93.7
ごみ収集率
注:1) 東北の市町村には仙台市は含まない。
2) 全国の市町村には、政令指定都市、
大都市 88.9
全 国 75.9
東 北 64.1
0.0
資料:総務省「平成17年度公共施設状況調)
大都市 99.7
全 国 99.2
東 北 99.6
ミュニティ・プラント(小規模集中合
併浄化槽 )、合併浄化槽、農林漁業集
排を含む。
大都市 100.0
全 国 97.9
東 北 94.8
- 144 -
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
2 中山間地域等の振興
(1)中山間地域の現状
中山間地域は食料の安定供給のほか、多面的機能を有する重要な地域
中山間地域は、河川の上流域に位置し、傾斜地が多いなどの立地特性から、農業生産
活動による国土保全、水源かん養等の多面的機能の発揮を通じ、下流域の都市住民等の
生活基盤を守る重要な役割を果たしている。
また、中山間地域は、管内の総面積の68%、総耕地面積の45%、総農業産出額の50%
を占め、総人口の33%が居住しており、地域特性を活かして多様な農産物を供給するな
ど、管内の農業・農村の中でも重要な位置を占めている(表Ⅲ-1)。
他方、中山間地域は、過疎化、高齢化が進むなかで、自然的、経済的、社会的条件の
不利性から、平地農業地域に比べ、担い手の減少、耕作放棄地の増加等により多面的機
能の低下が懸念されている。
このため、農林水産省では、中山間地域等直接支払制度をはじめ、農山漁村活性化プ
ロジェクト支援交付金などの各種支援策を講じ、中山間地域の農業振興や活性化対策へ
の取組を推進している。
- 145 -
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
表Ⅲ-1
中山間地域の指標(平成17年)
区 分
東北
市 町 村 数 (H17)
総 面 積 (H17)
千ha
耕 地 面 積 (H17)
百ha
林 野 面 積 (H17)
千ha
総 世 帯 数 (H17)
全国は
千戸
東北は
百戸
農 家 数
総 人 口 (H17)
農 家 人 口(販売農家)
千人
農業就業人口
うち65歳以上
H12比増減率
農 業 産 出 額 (H17)
う ち 米
う ち 畜 産
億円
232
(100.0)
6,689
(100.0)
8,840
(100.0)
4,622
(100.0)
33,396
(100.0)
4,635
(100.0)
〔13.9〕
9,677
(100.0)
1,677
(100.0)
〔17.3〕
621
(100.0)
357
2.1
13,824
(100.0)
5,324
(100.0)
3,840
(100.0)
中 山 間 地 域
中間地域 山間地域
145
92
53
(62.5)
(39.7)
(22.8)
4,518
2,651
1,867
(67.5)
(39.6)
(27.9)
3,996
3,037
959
(45.2)
(34.4)
(10.9)
3,582
1,639
1,943
(77.5)
(35.5)
(42.0)
9,866
7,863
2,003
(29.5)
(23.5)
(6.0)
2,126
1,516
610
(45.9)
(32.7)
(13.2)
〔21.6〕 〔19.3〕 〔30.4〕
3,178
2,562
616
(32.8)
(26.5)
(6.4)
725
536
188
(43.2)
(32.0)
(11.2)
〔22.8〕 〔20.9〕 〔30.6〕
266
197
70
(42.9)
(31.7)
(11.2)
161
117
44
1.4
1.3
1.4
6,837
5,600
1,237
(49.5)
(40.5)
(8.9)
2,241
1,799
442
(42.1)
(33.8)
(8.3)
2,448
1,938
510
(63.8)
(50.5)
(13.3)
全 国
中山間地域
2,395
1,204
(100.0)
(50.3)
37,178
24,078
(100.0)
(64.8)
46,920
20,300
(100.0)
(43.3)
24,861
19,857
(100.0)
(79.9)
49,566
6,050
(100.0)
(12.2)
2,848
1,236
(100.0)
(43.4)
〔5.7〕
〔20.4〕
127,768
17,410
(100.0)
(13.6)
8,370
3,327
(100.0)
(39.7)
〔6.6〕
〔19.1〕
3,353
1,333
(100.0)
(39.8)
1,951
824
▲ 5.2
▲ 5.3
88,067
34,202
(100.0)
(38.8)
20,234
7,792
(100.0)
(38.5)
27,023
12,976
(100.0)
(48.0)
資料:農林水産省「2005年農林業センサス」、「耕地及び作付面積統計」
、「生産農業所得統計」、
国土地理院「全国都道府県市町村別面積調」、総務省「国勢調査」
注:1) 中山間地域とは、農業地域類型区分における中間農業地域と山間農業地域を合わせた総称。
中間農業地域とは、耕地率が20%未満で、都市的地域及び山間農業地域以外の市町村、または耕地率が
20%以上で、都市的地域及び平地農業地域以外の市町村。
山間農業地域とは、林野率が80%以上かつ耕地率10%未満の市町村。
2) 本表の農業地域類型別数値は、市町村単位(林野面積、農家数、農家人口、及び農業就業人口は旧市町
村単位)での集計数値。
3) 数値下の( )書きは農業地域類型別の構成比、〔 〕書きは総世帯数又は総人口に対する割合。
- 146 -
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
<コラム>
農業は多面的機能を有する
農業は、食料を供給する役割だけでなく、その生産活動を通じた国土の保全、水源のかん
養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等様々な役割を有しており、これらの
役割による効果は、地域住民をはじめ国民全体が享受し得るものである。
農業は、農山漁村地域のなかで林業や水産業と相互に密接なかかわりを有しており、特に、
農林水産業の重要な基盤である農地、森林、海域は、相互に密接にかかわりながら、水や大
気、物質の循環に貢献しつつ、様々な多面的機能を発揮している。
農業、森林、水産業の多面的機能
資料:日本学術会議答申を踏まえ農林水産省で作成
農業の多面的機能の貨幣評価
- 147 -
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
(2)中山間地域等直接支払交付金
全交付対象農用地面積は7万1千ha、うち75%が将来に向けた集落営農活動に取り組む
中山間地域等直接支払制度は、耕作放棄地の増加等により多面的機能の低下が特に懸
念されている中山間地域等において、農業生産の維持を図りつつ、多面的機能を確保す
るという観点から、平成12年度に創設された。
特に17年度からは新対策として、自律的かつ継続的な農業生産活動等の体制整備(機
械・農作業の共同化、認定農業者の育成、営農組織の育成、多面的機能の持続的発揮に
向けた非農家・他集落等との連携、集落営農化に向けた活動等)に向けた取組を重点的
に推進している。
19年度においては、当局管内231市町村のうち182市町村の4,709集落協定等に中山間地
域等直接支払交付金が交付され、その交付総額は89億5,881万円、交付対象農用地面積は
7万1,635haとなっている(表Ⅲ-2、表Ⅲ-3)。 また、全交付対象農用地面積の約75
%に当たる5万3,526haで体制整備に向けた取組を行っている(表Ⅲ-3)。
表Ⅲ-2
平成19年度中山間地域等直接支払交付金交付対象地域の状況
40
35
36
対象農用地を
有する市町村数
32
34
16
基本方針策定
市町村数
31
34
14
交付金交付
市町村数
31
34
14
秋田県
25
24
22
22
山形県
福島県
35
60
34
55
34
47
34
47
東北
231
195
182
182
全国
1,793
1,128
1,054
1,038
区分
管内市町村数
青森県
岩手県
宮城県
資料:平成19年度中山間地域等直接支払制度の実施状況(東北農政局調べ)
表Ⅲ-3
平成19年度中山間地域等直接支払交付金の実施状況(集落協定+個別協定)
協定数
区分
交付面積(ha)
うち体制整備 割合(%)
交付金額(円)
うち体制整備 割合(%)
うち体制整備 割合(%)
青森県
624
250
40.1
11,328
7,096
62.7
949,385
642,326
67.7
岩手県
1,232
921
74.8
22,184
19,708
88.9
3,391,203
3,090,422
91.2
宮城県
253
87
34.4
2,185
1,054
48.3
287,967
149,203
51.9
秋田県
605
321
53.1
11,286
8,578
76.1
1,158,942
916,686
79.1
山形県
547
319
58.4
8,334
6,459
77.6
1,216,957
986,710
81.1
福島県
1,448
686
47.4
16,317
10,632
65.2
1,954,364
1,357,517
69.5
東北
4,709
2,584
54.9
71,635
53,526
74.8
8,958,818
7,142,864
79.8
28,708
13,570 47.3
664,540
527,729 79.5 51,698,153 38,404,974 74.3
資料:平成19年度中山間地域等直接支払制度の実施状況(東北農政局調べ)
注: 体制整備とは、適正な農業生産活動等に加え、機械・農作業の共同化等の体制整備に取り組む
場合をいう。
全国
- 148 -
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
3 農村の生活環境の整備
(1)農道の整備
生産性や農村の住環境の向上を図るため農道の整備を推進
農道整備事業は、高生産性農業の確立や農産物流通の合理化を図るほか、近年では、
農村社会の活性化・住環境の整備に果たす役割も大きく、広域的、基幹的な農道から末
端農道に至る総合的・体系的な整備を進めている。
本事業は、昭和40年に農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業(農免農道整備事業)
が創設されて以来、東北における農道整備事業及び農免農道整備事業による整備済総延
長は平成19年度までに5,532㎞(18年度までは5,519㎞)に達している(表Ⅲ-4)。
また、19年度の実施地区数はそれぞれ96地区(農道整備事業、農免農道整備事業及び1
7年度から実施されている道整備交付金による実施地区の計)となっている。
表Ⅲ-4
農道整備事業実施済延長
事業名
広域農道
一般農道
農免農道
合 計
18年度まで
1,418
1,475
2,626
5,519
19年度(地区数)
27
34
35
96
(単位:km)
19年度まで
1,424
1,480
2,628
5,532
資料:東北農政局農地整備課調べ。
注:四捨五入の関係で合計値が合わない場合がある。
災害に強い農業・農村づくり
農地防災事業は、農地、農業用施設にかかわる自然災害の未然防止や自然的、社会的
状況の変化等に起因して低下した農地、農業用施設の機能を回復することによって、農
業生産の維持、農業経営の安定を図ることを目的として実施されており、地域住民の生
命、財産や公共施設を災害から守るなど地域の防災にも大きな役割を果たしている。
事業の種類としては、農地防災、農地保全、農村環境保全に大別され、農地・農業用
施設の受ける災害の形態に応じて必要な対策が選択できるよう各種事業制度が設けられ
ている。
東北管内では、19年度に国営総合農地防災事業1地区が完了し、補助事業として187地
区(18年度は220地区)を実施している。
- 149 -
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
(2)農業集落排水の整備
農村地域の生活排水処理施設の整備を推進
農業集落排水事業は、農業用用排水の水質保全、農村の生活環境の改善を図るととも
に、公共用水域の水質保全に資するため、農業集落におけるし尿、生活雑排水等の汚水、
汚泥又は雨水を処理する施設を整備している。
農林水産省では、土地改良長期計画(平成15年10月閣議決定)で設定された整備目標
(19年度末の農業集落排水処理人口普及率52%)を基本に農業集落排水事業の推進を図
っている。
東北管内における19年3月末現在の農業集落排水処理人口普及率は58%となっており、
全国の普及率55%を上回るとともに、土地改良長期計画の整備目標を既に上回っている。
しかし、都市部を含めた汚水処理施設全体の人口普及率は全国で82%、 東北管内でも
73%と農業集落排水処理人口普及率を大きく上回っており、都市と農村の汚水処理施設
の普及率の較差は依然解消されていないことから、遅れている農村地域の生活環境の改
善を促進するためにも、農業集落排水事業の一層の推進が求められている。
また、農業集落排水事業の近年の特徴として、老朽化対策や高度処理機能、施設監視
機能の追加などの既存施設の改善や機能強化対策への取組が増加している。
今後、未整備地域の整備促進を図るとともに、既存施設の改築、更新についても積極
的に推進する必要がある(図Ⅲ-5)。
図Ⅲ-5
農業集落排水施設の整備状況及び汚水処理施設の人口普及状況
農業集落排水施設の整備状況
(平成19年3月末時点)
汚水処 理施設の 人口普 及状況
(平 成19年3 月末時 点)
10 0%
未整備
整備済
100%
8 0%
80%
整 60%
備
率 40%
20%
未整 備
整備 済
長期計画
目標値
(52%)
55%
58%
全国
東北
整 6 0%
備
率 4 0%
82%
7 3%
全国
東北
2 0%
0%
0%
項目
人口(千人) 普及率(%)
【全国】
【全国】 農業集落排水整備対象人口
6,257
うち整備済人口
3,435
55
【東北】
【東北】 農業集落排水整備対象人口
1,042
うち整備済人口
609
58
項目
人口(千人) 普及率(%)
汚水処理整備対象人口 127,053
うち整備済人口 104,680
82
汚水処理整備対象人口
9,601
うち整備済人口
7,039
73
注:1) 汚水処理の人口普及率(%)=(汚水処理施設の処理人口/ 総人口)×100
2) 農業集落排水処理人口普及率(%)=(農業集落排水事業による処理人口/農業集落排水事業の整備対象人
口)×100
- 150 -
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
(3)地域用水機能に配慮した農業用水路の整備
景観・生態系の保全等の多面的な機能の発揮に配慮した用水路の整備を推進
農業用水は、農業生産以外に、生活用水、防火用水、消流雪用水、水質浄化用水、親
水・景観保全、生態系保全など地域用水機能を有している。
このような地域用水機能は、国民の価値観の変化や農村地域における混住化等の進展
のなかで、地域住民への憩いと安らぎの空間の提供等、その機能の一層の発揮が求めら
れてきている。
このため、地域用水を核とした農業水利
の多面的機能を発揮させるための総合支援
対策として地域用水環境整備事業を実施し
ている。
本事業では、農村地域に広範に存在する
水路、ダム、ため池等の農業水利施設の保
全管理又は整備と一体的に、地域用水の有
する多面的な機能の維持増進に資する魚巣
ブロック等の生態系保全施設、親水護岸等
あずまや
宮城県 軽辺地区
の親水施設、四阿などの利用保全施設等の
整備を行っており、平成18年度は22地区、19年度は17地区で事業を実施している。
なお、農業水利施設の維持管理は、従来どおり土地改良区・水利組合等が管理し、農
業水利施設と一体的に整備された利用保全施設等については地域住民で組織された維持
管理組合で管理し、市町村が管理費を負担する仕組みが定着しつつある。
- 151 -
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
4 都市と農村の共生・対流
(1)共生・対流の動向
都市と農山漁村が行き交うライフスタイルの拡大を支援する取組の推進
都市住民に対して、農山漁村で活動する機会や食と農への認識を深める契機を広く提
供するとともに、これを通じた農山漁村の振興を図るため、都市と農村の交流活動を促
進することが重要である。そのためには、受入側の農山漁村におけるソフト・ハード両
面での充実や、都市住民に対する都市と農山漁村の共生・対流に関する普及・啓発活動
が不可欠となる。
東北管内では、地域資源を活かしつつ都市と農山漁村との交流促進を図るため、 平成
16年10月に設置された「東北地域都市と農山漁村の共生・対流連絡協議会」での関係機
関との連携、農政局メールマガジンやホームページでの情報発信等により、地域推進体
制の整備、魅力ある農村空間の整備等を総合的に支援している。
また、19年12月に「グリーン・ツーリズムで元気に!!」をテーマに、農山漁村の活性
化に向けた、宮城県知事とみやぎグリーン・ツーリズム推進協議会長と農政局長による
鼎談、20年2月にも、青森県知事とあおもりカムカム農山漁村ネットワーク会長と農政
局長による鼎談を行っている。
20年度から、総務省、文部科学省、農林水産省の3省が一体となって連携した取組と
して、小学校における農山漁村での長期宿泊体験活動を推進する「子ども農山漁村交流
プロジェクト~120万人・自然の中での体験活動の推進~」が始まることから、25年度の
本格実施に向けて、今後、受入れを希望する農山漁村地域への支援や情報の共有化等及
び関係機関による連絡組織体の構築等により、東北管内での定着を図るための取組を行
う必要がある。
(2)グリーン・ツーリズムの推進
28市町村で整備計画を策定し、グリーン・ツーリズムを推進
都市農村交流を担う人材の育成確保、情報発信力の充実強化、農村地域の魅力向上の
ための地域ぐるみの自発的な取組を支援することにより、グリーン・ツーリズムを推進
している。
平成18年度末までに、農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律
に基づく、市町村における農村滞在型余暇活動に資するための機能の整備等に関する計
画を管内28市町村が策定し、管内の都市農村交流を目的とする公設宿泊施設における宿
泊者数は136万人(農政局農村振興課調べ:18年度)となっている。今後も、一層都市住
民に対する情報提供を図るとともに、農村側の受入体制整備の推進に努める必要がある。
- 152 -
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
(3)市民農園
市民農園は年々増加傾向
市民農園とは、サラリーマン等農業者以外の人々が、小区画の農地を利用して野菜や
花等の栽培を行う場で、レクリェーション、自家消費用の野菜・花の栽培、高齢者の生
きがいづくり、児童の教育などの多様な目的で活用されている。
都市化とともに年々増大する市民農園に対するニーズに対応して、「特定農地貸付けに
関する農地法等の特例に関する法律」により農地法の権利移動の許可の適用を除外する
措置が講じられ、一般市民に農地の貸付けが可能となった。また、
「市民農園整備促進法」
により、地方自治体が休憩施設等の施設の整った良質な市民農園の整備を促進する体制
が整えられた。
特に近年、都市住民等の自然志向や農業への関心の高まりなどから、全国的に農園利
用希望は増加の傾向にあり、それに応じて市民農園数も年々増加の傾向にある。
東北管内における法律に基づいた市民農園 *1は、平成19年3月末現在で計108か所が開
設されており、昨年と比べて11か所の増加となっている。県別には宮城県(23か所)、青
森県(21か所)及び岩手県(20か所)が多く、開設主体としては農業協同組合よりも地
方公共団体による開設が多くなっている(図Ⅲ-6、表Ⅲ-5、表Ⅲ-6)。
図Ⅲ-6
法律に基づく市民農園の推移(平成19年3月末現在・東北)
100
80
60
40
20
0
市民農園整備促進法
特定農地貸付法
17
2
17
26 30 34
5
4
3
2
86
35
6
6
59
51
48
45
8
9
56
10
65
11
85
95
68
10
11
12
13
3.8 5.3 6.3 7.3 8.3 9.3 10.3 11.3 12.3 13.3 14.3 15.3 16.3 17.3 18.3 19.3
資料:東北農政局農村振興課調べ。
表Ⅲ-5
市民農園整備促進法に基づく市民農園の開設状況(平成19年3月末現在・東北)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東北計
地方公共団体
農業協同組合
農地所有者ほか
合 計
農園数 区画数 面積(ha) 農園数 区画数 面積(ha) 農園数 区画数 面積(ha) 農園数 区画数 面積(ha)
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
40
0.5
0
0
0
0
0
0
1
40
0.5
10
717
15.6
0
0
0
0
0
0
10
717
15.6
1
30
0.2
0
0
0
0
0
0
1
30
0.2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
50
0.3
0
0
0
1
50
0.3
12
787
16.3
1
50
0.3
0
0
0
13
837
16.6
資料:東北農政局農村振興課調べ。
*1
法律に基づいた市民農園とは、市民農園整備促進法に基づくもの及び特定農地貸付法に基づくものをいう。
- 153 -
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
表Ⅲ-6
特定農地貸付法に基づく市民農園の開設状況(平成19年3月末現在・東北)
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
東北計
地方公共団体
農業協同組合
農地所有者ほか
合 計
農園数 区画数 面積(ha) 農園数 区画数 面積(ha) 農園数 区画数 面積(ha) 農園数 区画数 面積(ha)
13 1,226
12.0
0
0
0
8
404
4.0
21 1,630
16.0
8
253
4.6
8
350
2.1
3
28
3.6
19
631
10.3
9
298
3.7
3
122
1.1
1
20
0.2
13
440
5.0
10
438
4.8
0
0
0
0
0
0
10
438
4.8
14
575
5.4
2
82
0.6
3
116
0.8
19
773
6.8
10
690
13.3
1
60
0.4
2
46
0.4
13
796
14.1
64 3,480
43.8
14
614
4.2
17
614
9.0
95 4,708
57.0
資料:東北農政局農村振興課調べ
事例
スーパー農園を活用し、地域活性化を推進[秋田県・秋田市]
秋田市は、都市住民と農山村との交流を通じて、農山村地域
の活性化や市民の健康的な余暇利用等の促進を図るため、「秋
田市雄和奥椿岱地区第二市民農園」
(愛称:椿台スーパー農園)
を平成19年5月にオープンした。
秋田市には、20㎡程度の規模で無料の市民農園が市内7か所
あるが、今後のグリーン・ツーリズム事業推進を図るため、や
すらぎ空間整備事業を活用し、トイレや水道施設、器具庫、休
椿台スーパー農園
憩棟等を完備した市民農園を18年度に新たに整備したものである。
広さは2.4ha(50㎡×137区画で、農園のPRを兼ね、広く一般から愛称を募集した。農園
利用申し込みも多数あり、区画抽選を実施し利用者のほとんどが秋田市内の家族に決定した。
利用者の中には、自分たちで作った安全な野菜を食べたいという家族や、退職後の生きがい
に借りたという夫婦等もおり、ほぼ全区画が契約されている。
同農園は、秋田空港や国際教養大学等に近いことから、秋田市内にとどまらず、他の都市
住民との交流も促進し、農園を活用した地域活性化策を推進していきたいと考えている。
- 154 -
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
5 農作物鳥獣被害対策の展開
野生鳥獣による農作物被害は、全国的に、特に中山間地域を中心に発生しており、営
農意欲の減退、耕作放棄地の増加、里山の荒廃等を招き、これがさらなる被害を招く悪
循環となっており、地域農業を振興するうえで大きな阻害要因となっている。多くの被
害地域は過疎化、高齢化、狩猟者の減少等により個別の対応では被害軽減に結びつかな
いことから、地域が一体となった被害防止体制の整備が急務となっている。
東北地域における農作物鳥獣被害は20億円前後で推移
平成19年度の東北地域における野生鳥獣による農作物被害は17.4億円で、近年20億円
前後で推移している(表Ⅲ-7)。
19年度の鳥獣種別の被害金額上位3種を見ると、鳥類による被害はカラスが3.5億円で
最も多く、次いでスズメが2.4億円、ムクドリが1.1億円であった。獣類による被害はサ
ルが2.9億円で最も多く、次いでネズミが農産物価格の高いおうとう等の被害が多く見ら
れたため2.0億円、シカ(ニホンジカ及びカモシカの合算額)が1.4億円であった。例年
被害上位のイノシシによる被害額は0.9億円であった。
被害対象農作物は、鳥獣種ともに果樹の被害が12.0億円と最も多く、次いで野菜(2.1
億円)、イネ(2.0億円)の順であった(表Ⅲ-8)。
表Ⅲ-7
東北地域における農作物鳥獣被害の推移
年
度
15
16
17
18
19
被害面積(千ha)
鳥類
獣類
14.2
2.4
15.5
2.4
12.8
2.9
10.3
2.9
5.9
2.1
計
16.6
17.9
15.7
13.2
7.9
被害量(千t)
鳥類
獣類
計
4.9
7.5
12.4
4.1
8.8
12.9
3.8
6.2
9.9
3.4
9.7
13.1
2.8
7.8
10.6
資料:東北農政局農産課調べ。
- 155 -
被害金額(百万円)
鳥類
獣類
計
919.1
764.2
1683.3
1094.3
989.8
2084.1
921.8
809.1
1730.9
1006.2
1106.3
2112.5
814.4
929.8
1744.2
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
表Ⅲ-8
東北地域における野生鳥獣による農作物別被害金額(平成19年度)
(単位:万円)
鳥類
スズメ
カラス
カモ
ムクドリ
ヒヨドリ
ハト
キジ
サギ
その他鳥類
小 計
獣類
ネズミ
ウサギ
クマ
イノシシ
モグラ
サル
シカ
カモシカ
タヌキ
ハクビシン
アライグマ
ヌートリア
マングース
タイワンリス
キョン
その他獣類
小 計
合 計
イネ
2,341
4,342
4,636
5
7
98
2
178
10
11,619
イネ
357
0
309
3,927
0
835
2,446
272
25
26
0
0
0
0
0
21
8,218
19,837
ムギ類
0
2
0
0
0
11
0
0
3
16
ムギ類
0
0
0
0
0
0
4
3
0
0
0
0
0
0
0
0
6
22
マメ類
13
565
49
0
0
405
8
0
0
1,040
マメ類
144
1
1
62
0
492
150
594
22
18
0
0
0
0
0
4
1,487
2,527
雑穀
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
雑穀
0
0
9
0
0
6
4
7
2
0
0
0
0
0
0
0
27
28
果樹
飼料作物
21,792
0
23,711
341
12
0
11,382
0
4,637
0
34
0
55
0
0
0
599
0
62,221
341
果樹
飼料作物
18,797
0
2,128
0
4,607
2,041
448
852
0
0
19,991
172
483
1,638
4,500
182
0
0
6,628
101
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
57,583
4,986
119,804
5,327
野菜
13
5,550
70
2
26
52
61
0
1
5,774
野菜
136
0
2,069
1,221
0
5,531
1,972
1,819
514
1,723
0
0
0
0
0
166
15,151
20,925
資料:東北農政局農産課調べ。。
注:小数点以下を四捨五入しているため、計が一致しない場合がある。
- 156 -
いも類 工芸作物
0
0
59
75
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
59
75
いも類 工芸作物
50
40
0
0
9
0
2,923
0
0
0
1,298
650
13
5
15
5
15
0
1
5
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
0
4,326
705
4,385
780
その他
0
13
0
0
0
0
0
0
282
295
その他
0
0
123
66
0
78
52
30
80
7
0
0
0
0
0
53
489
784
合計
24,161
34,658
4,767
11,388
4,670
599
125
178
894
81,440
合計
19,523
2,129
9,170
9,498
0
29,052
6,767
7,426
657
8,509
0
0
0
0
0
247
92,978
174,418
Ⅲ
豊かで 住みよい 農村の振 興
平成19年度に鳥獣害防止対策事業を実施
被害地域では、市町村の委託による猟友会の支援を受けて有害鳥獣捕獲を実施したり、
電気柵やネット柵等の侵入防止柵を設置するなどして被害の軽減に努めている。
また、近年、電波受発信機や接近警戒システムの活用による野生鳥獣の追い払い、耕
作放棄地の刈り払いや里山の間伐、牛の放牧等による緩衝地帯の整備等の対策も各地で
実施されている。
農林水産省では、19年度に鳥獣害防止対策事業により、被害防止体制の整備や、個体
数調整、被害防除及び生息環境管理等の、地域の主体的な被害防止対策の取組に対して
支援を行った。
捕獲体制整備事業
事 業実施主体:農 業団体、協議会
○捕獲の担い手の育成・確保
○有害捕獲機材の整備
地域連携ネット ワーク事業
事業 実施主体:NPO法人、株式 会社等
○周辺地域における意識啓発
○鳥獣害に関心を有する者の募集及
び研修の実施
○被害防止活動の実施
広域連携事業
事業 実施主体:広域 協議会
○被害防止対策に係る体制の整備、知
識及び技術の向上
○地域参加型鳥獣害情報マップの作成
○総合的防除技術体系の実証及び確立
市町村を中心に、地域の関係機関が連携し一体となった被害防止体制の整備推進
全国の中山間地域を中心とする被害地域の中には、過疎化、高齢化、狩猟者の減少、
財政難等により、的確かつ効果的な対策を講じるのが困難な地域が多数存在する。
このように全国的に深刻化する被害の状況を受けて、被害対策の抜本強化を図るため
議員立法による「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する
法律(以下「特措法」という。)」が平成19年12月14日に成立した。
今後は、地域の被害実態を把握しうる市町村が中心となり、地域の農林水産業団体、
猟友会、地域住民等の関係機関と連携し一体となって総合的かつ効果的な被害防止施策
を推進することとしている。
農林水産省においても、特措法の成立に合わせ、20年度に鳥獣害防止総合対策事業を
新設し、地域における被害防止体制の整備や具体的な被害防止対策の取組を支援するこ
ととしている。
- 157 -
Ⅲ
豊か で住み よい農村 の振興
【特措法の概要】
・総合的かつ効果的な被害防止施策を推進し、農林水産業の発展と農山漁村の振興
に寄与することを目的
・国は、被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するための基本指針を作成
・市町村は基本指針に即して被害防止計画を作成
・国及び都道府県は、市町村が行う被害防止計画に基づく被害防止施策が円滑に実
施されるよう、市町村に対し財政支援等を実施
- 158 -
Ⅳ
農業災害の状況
Ⅳ 農業災害の状況
平成19年は、二つの台風、9月の前線等の影響による被害が発生
19年は、二つの台風、9月15日からの前線や台風第11号から変わった低気圧の影響に
よる被害が発生した。特に台風第9号では、山形県の果樹(西洋なし、リンゴ等)を中
心に大きな被害が発生した。また、9月15日からの前線等による大雨では岩手県、秋田
県の水稲を中心に大きな被害が発生した。
このため、東北農政局では、9月7日に「東北農政局台風9号災害対策本部」を設置
した。さらに同月18日には本対策本部を拡大し、「東北農政局台風9号及び豪雨災害対策
本部」を設置し、20日、21日には被害の大きかった秋田県内の現地調査を行った。。
農作物等の被害金額は69億円
19年の農作物等被害金額約69億円のうち台風によるものが約38億円、9月15日からの
前線等に伴う大雨によるものが約24億円とそれぞれ全体の55%、35%を占めている。
作目別にみると、果樹(樹体を含む)の被害が最も多く農作物被害の54%を占めてい
る。次いで水稲の24%となっている(表Ⅳ-1)。
表Ⅳ-1
気象災害による主な農作物等被害(平成19年・東北)
(単位:億円)
農作物等被害
区 分
計
被害金額合計 69.1
営農 農作
施設等 物等
水稲 麦類
雑穀・
工芸 飼料
その
野菜 果樹
花き
家畜等 樹体
豆類
作物 作物
他
7.9
61.1
14.9
-
2.9
5.8
27.2 0.9 1.0 1.3 0.5
0.7
6.0
23.1 0.0 0.6 0.6
0.0
5.9
0.4
0.0
台風
37.8
1.5
36.3
1.9
-
1.5
2.6
大雨
23.9
4.6
19.4
13.0
-
1.3
2.4
0.7 0.0 0.4 0.6 0.5
資料:東北農政局調べ(管内各県農業被害報告による)
。
注:営農施設等被害とは、耕種、園芸、畜産等関係施設被害である。
- 159 -
-
Ⅳ
農業災害の状況
農地・農業用施設等の被害金額は97億円
平成19年に発生した災害による農地・農業用施設等の被害額は約97億円であった(表
Ⅳ-2)。その内、9月の台風9号により約22億円、秋田を中心とした9月15日からの前
線等による大雨により約53億円の被害がもたらされた(表Ⅳ-3)。
表Ⅳ-2
豪雨等による農地・農業用施設等の被害額(平成19年)
(単位:億円)
区
東
北
分
被 害 額
割
区
合
青 森 県
7.1
7.3
岩 手 県
18.9
19.4
宮 城 県
9.0
9.2
分
被 害 額
北 海 道
全
割
合
1.4
0.3
東
北
97.3
18.3
関
東
39.4
7.4
北
陸
110.4
20.8
秋 田 県
46.9
48.2
山 形 県
2.2
2.3
東
海
3.7
0.7
福 島 県
13.2
13.6
近
畿
26.6
5.0
計
97.3
100.0
国
中 四 国
36.6
6.9
九
州
210.7
39.7
沖
縄
5.1
1.0
531.1
100.0
計
資料:東北農政局防災課調べ。
注:1) 被害額は農地、農業用施設や海岸保全施設、地すべり防止施設、直轄災害に対するものである。
注:2) 四捨五入のため表の内容と計が一致しない場合がある。
表Ⅳ-3
農地・農業用施設等における主な災害の概要(平成19年・東北)
(単位:箇所、億円)
台風9号
9月
1,785
被
害
額
うち農地 う ち 農 業 用 施 設
22.4
3.8
18.6
9月15日からの前線
等による大雨
9月
1,539
53.3
区
分
災害の発生月 災 害 件 数
資料:東北農政局防災課調べ。
- 160 -
19.3
34.0
第2部
東北の農山漁村活性化の現状と
これから
序
章
東北は、我が国の食料基地であるとともに、豊かな自然、伝統文化、人材などの地域
資源を多く有しているが、このような地域資源も実際は活用されていないものが多い。
近年、ITや交通機関の発達により、人・もの・情報等の地域間交流が容易となって
おり、それら地域資源を活用した農山漁村の活性化に向けたさらなる取組が可能となっ
ている。
また、東北を含め、全国の農山漁村は過疎化・高齢化の進行が著しく、活力の低下が
憂慮されている。このような現状を踏まえ、政府全体として、農山漁村の活性化を目指
し「立ち上がる農山漁村」の活動や、「都市と農山漁村の共生・対流」の取組を進めてき
たが、これを一層推進する観点から、農林水産省においては、農林水産副大臣を本部長
とする農山漁村活性化推進本部を設置し、農山漁村の再生と活性化の取組を推進してい
る。
東北農政局では、平成19年1月22日に、
「東北農政局農山漁村活性化推進本部」を設け、
地域からの相談にワンストップで応じるための「東北農政局農山漁村活性化支援窓口」
を開設するとともに、農山漁村活性化懇談会等の開催、農政局管内における農山漁村活
性化にかかる戦略的な情報の受発信、農山漁村活性化にかかる施策の具体化及び推進に
必要な調査・検討を行ってきた。
さらに、19年5月、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する
法律(農山漁村活性化法)が制定された。これにより農山漁村における定住や、農山漁
村と都市との地域間交流を促進させ農山漁村に新たな活力をもたらすとともに、国民全
体が農山漁村の魅力を享受することにつながり、農山漁村の活性化を図るうえで極めて
大きな意義を持つと考えている。
以上のような実態を踏まえ、19年度情勢報告では、東北の農山漁村活性化に関する現
状と管内における農山漁村活性化に向けた取組に対する支援、今後の対応方向について
示すこととする。
- 161 -
第2部
東北の 農山漁村 活性化の 現状とこ れから
Ⅰ 東北の農山漁村の現状
1 東北地域の経済、農業の現状
地域経済の現状
地域経済の動向として、地域ブロック別 *1の域内総生産*2を平成8年度と17年度を比べ
ると、近畿、北海道、東北、中国・四国が2.3%から6.5%の幅で減少、関東、中部・北
陸、九州・沖縄が 1.0%から3.8%の幅で増加している。
17年度の東北の域内総生産(名目)は33兆357億円で、8年度から1兆4,730億円、4.3
%減少した。この間、東北の総生産が全国に占める割合は、0.3ポイント低下して6.4%
となった。
県別にみると、減少率に差はあるものの全ての県で減少している(表Ⅰ-1)。
表Ⅰ-1
地域ブロック別域内総生産の推移
地域ブロック
北海道
東北
中国・四国
九州・沖縄
近畿
中部・北陸
関東
全国
東北県別
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
平成8年
総生産
構成比(%)
(兆円)
(全国 100)
20.7
4.0
34.5
6.7
44.3
8.6
47.6
9.2
86.3
16.7
87.7
17.0
194.7
37.7
17年
増減率(%)
総生産
構成比(%) (8年~17年)
(兆円)
(全国 100)
19.7
3.8
▲ 4.7
33.0
6.4
▲ 4.3
43.3
8.4
▲ 2.3
48.1
9.3
1.0
80.7
15.6
▲ 6.5
89.2
17.3
1.7
202.1
39.2
3.8
515.8
100.0
516.2
100.0
0.1
4.7
4.8
8.7
4.0
4.2
8.1
(東北 100)
13.5
14.0
25.3
11.6
12.3
23.4
4.3
4.6
8.5
3.7
4.1
7.8
(東北 100)
12.9
13.9
25.8
11.2
12.5
23.7
▲ 8.1
▲ 4.8
▲ 2.2
▲ 7.4
▲ 2.9
▲ 3.1
資料:内閣府「県民経済計算年報」
*1 地域ブロック別都道府県範囲は以下のとおり。
*2 域内総生産
県内総生産は,県内にある事業所の生産活動によって生み出された生産物の総額から中間投入額,すなわち物
的経費を控除したものであるが、推計方法の制約上、各都道府県の積み上げから域内総生産(全県計・ブロック
計)を求めることができないため、全県計・ブロック計は内閣府で求めている。しかし、内閣府のブロック区分
によれば、東北は「北海道・東北(新潟含む)」に含まれることから、当情勢報告では、*1のブロック区分に合
わせて県内総生産の積み上げによりブロック別域内総生産とした。(東北、中部・北陸、中国・四国は、東北農
政局試算値)
- 162 -
第 2部
東 北の農山 漁村活性 化の現状 とこれか ら
農業の現状
東北の総土地面積は約669万haで、全国の国土面積約3,779万haの18%を占め、森林面
積、耕地面積の割合(それぞれ19%)も北海道に次いで2番目に高い。
また、総土地面積に占める森林や耕地の割合をみると、東北は全国に比べて、森林面
積の割合が高い(東北71%、全国67%)(図Ⅰ-1)。
図Ⅰ-1
総土地面積、森林面積、耕地面積の地域別構成割合と
総土地面積に対する耕地面積、森林面積等構成割合(東北、全国)
資料:国土交通省「全国都道府県市区町村別面積調」(平成18年)、農林水産省「耕地面積統計」
・「耕地作付延べ面積統計」(平成18年)、林野庁「森林資源現況」(平成14年3月31日現在)
東北は、この広大な耕地と豊かな森林資源を活用し、水産業とともに、我が国の食料
基地として、また木材の供給地として重要な役割を果たしてきた。
図Ⅰ-2
東北の農業産出額、林業産出額、漁業・養殖業生産量(平成18年)
東北
16%
13 872億円
16%
676億円
農業産出額
(平成 18年)
全国
林業産出額
(平成 18 年)
全国
86 321億円
4 322億円
17%
100万t
漁業・養殖業
生産量(属人)
(平成 18年)
全国
5 74万t
資料:農林水産省「生産農業所得統計」、「林業産出額及び生産林業所得」、「漁業・養殖業生産統計」
- 163 -
第2部
東北の 農山漁村 活性化の 現状とこ れから
しかし、水稲生産に依存してきた東北の農業生産は、近年、米価格の低下により農業
産出額が減少傾向にあり、平成18年の農業産出額は、関東(1兆8,929億円)、九州・沖
縄(1兆7,121億円)に次ぐ、1兆3,871億円となっている。(表Ⅰ-2、図Ⅰ-3)
表Ⅰ-2
農業産出額の推移(東北)
農 業 産 出 額 (億 円 )
平 成 7年 =100
うち米
農業産出額
うち米
17 509
8 165
100.0
100.0
17 458
8 129
99.7
99.6
16 616
7 515
94.9
92.0
15 568
6 432
88.9
78.8
15 339
6 365
87.6
78.0
14 779
6 095
84.4
74.6
14 521
5 839
82.9
71.5
14 359
5 669
82.0
69.4
14 054
5 605
80.3
68.6
14 170
5 331
80.9
65.3
13 824
5 324
79.0
65.2
13 872
5 094
79.2
62.4
平 成 7年
8年
9年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
16年
17年
18年
資料:農林水産省「農業産出額・生産農業所得統計」
図Ⅰ-3
平成18年農業産出額(地域別)
10 527
12%
17 121
20%
北海道
東北
8 453
10%
全国
86,321億円
13 872
16%
関東
中部・北陸
近畿
4 717
5%
中国・四国
12 704
15%
18 929
22%
資料:農林水産省「平成18年生産農業所得統計」
- 164 -
九州・沖縄
第 2部
東 北の農山 漁村活性 化の現状 とこれか ら
2 農業集落の現状
人口の減少と高齢化の進展
我が国の人口は平成17年以降、長期の減少局面に転じ、平成58年(2046年)には1億
人を割って、昭和40年(1965年)頃と同規模になると推計されている。「
( 日本の将来推
計人口」(平成18年12月推計)国立社会保障・人口問題研究所)
一方、東北の人口は7年から既に減少に転じており、65歳以上人口割合は全国を上回
る速度で上昇している。(図Ⅰ-4)
図Ⅰ-4
東北の人口の将来推計
資料:総務省「国勢調査結果」、国立社会保障・人口問題研究所『都道府県別将来推計人口』(平成19年5月推計)
さらに、東北の農家戸数・農家人口は既に減少傾向にあり、昭和60年(1985年)から
平成17年(2005年)までの20年間で農家戸数は30%減少するとともに、65歳以上の農家
人口割合は31%と、総人口平均17.2%を大きく上回っている。(図Ⅰ-4、5)。
- 165 -
第2部
東北の 農山漁村 活性化の 現状とこ れから
図Ⅰ-5
農家戸数・農家人口の推移(東北)
万戸
100
農家人口(総農家)
農家人口(販売農家)
294
320
80
261
283
250
66
60
総
農
家
40
20
201
150
46
43
37
54(27%)
52(23%)
200
168
51
47
47(18%)
44(16%)
250
234
228
56
52
販
売
農
家
300
65歳以上農家人口
(販売農家)
202
61
57
万人
350
100
51(31%)
50
0
0
昭.60
(1985年)
平.2
(1990年)
7
(1995年)
12
(2000年)
17
(2005年)
資料:農林水産省「農林業センサス」
注:1) 「農家」とは、経営耕地面積が10a以上または経営耕地面積がこの規定に達しなくても
農産物販売金額が15万円以上ある世帯。
2) 「販売農家」とは、経営耕地面積が30a以上または農産物販売金額が50万円以上の農家。
また、農業集落の活性化の取組状況をみると、平成17年では、10年前に比べて「祭り
の開催」、「各種イベントの開催」、「伝統文化・芸能の保存」といった活性化の取組もわ
ずかながら減少しており、混住化が進むなか、農業集落の共同体機能を維持していくた
めには、非農家を含めた住民同士の相互協力が重要といえる(図Ⅰ-6)。
このように、農村地域の現状は、農業の停滞や過疎化・高齢化の進展等による活力の
低下が懸念されている。
図Ⅰ-6
活性化のための活動別農業集落数割合(東北・平成17年)
%
100
80
10年前
78.3 75.5
69.5 72.8
64.2 61.0
現在
60
35.2 32.9
40
28.6
34.6
20
5.6
6.4
0
祭りの開催
伝統文化・
芸能の保存
各種イベント
の開催
高齢者等への
福祉活動
資料:農林水産省「2005年農林業センサス(農村集落調査)」
- 166 -
景観保全・
景観形成活動 自然動植物
の保護
第 2部
東 北の農山 漁村活性 化の現状 とこれか ら
農業集落の現状
*3
他方、東北の農業集落 は、73.7%が豪雪地帯に指定されている(図Ⅰ-7)。また、
全国に比べて都市的地域に分類される農業集落数割合が低く(全国21.8%、東北11.2%)、
平地農業地域に分類される農業集落数割合が高い(全国26.5%、東北36.3%)
(図Ⅰ-8)。
東北の平地農業地域は、水田の割合が高く、稲作中心の農業経営が行われてきたが、
米価が低迷している中、農業収入が減少しており、豪雪地帯に指定されているような冬
期間の営農が難しい地理的条件を抱えている地域においては、冬期間の所得確保が重要
な課題となっている。
図Ⅰ-7
法制上の地域指定に該当している農業集落数割合
全国
東北
半島振興対策実施地域
10.5
過疎地域
32.9
32.8
特定農山村地域
39.3
40.0
豪雪地帯
豪雪地域
29.0
73.7
振興山村地域
20.7
28.4
農業振興地域
90.4
100
3.9
80
60
40
20
0
92.2
0
資料:農林水産省「2005年農林業センサス(農山村地域調査)」
図Ⅰ-8
農業地域類型別農業集落数割合
資料:農林水産省「2005年農林業センサス(農山村地域調査)」
- 167 -
20
40
60
80
100
第2部
東北の 農山漁村 活性化の 現状とこ れから
注:
都市的地域… 可住地に占めるDID面積が5%以上で、人口密度500人以上又は、DID人口2万人以
上の市町村。
可住地に占める宅地等率が60%以上で、人口密度500人以上の市町村。ただし、林野率80
%以上のものは除く。
DID… 人口集中地区。人口密度約4,000人/k㎡以上の国勢調査基本単位区がいくつか隣接し、
合わせて5,000人以上を有する地区をいう。
平地農業地域… 耕地率20%以上かつ林野率50%未満の市町村。ただし、傾斜20分の1以上の田と傾斜8度以
上の畑の合計面積が90%以上のものを除く。
耕地率20%以上かつ林野率50%以上で、傾斜20分の1以上の田と傾斜8度以上の畑の合計面
積が10%未満の市町村。
中間農業地域… 耕地率が20%未満で、「都市的地域」及び「山間農業地域」以外の市町村。
耕地率が20%以上で、「都市的地域」及び「平地農業地域」以外の市町村。
山間農業地域… 林野率80%以上かつ耕地率10%未満の市町村。
このように、農村地域の現状は、過疎化・高齢化の進展や農業生産の停滞など、地域
の活力が失われつつあり、豊かな自然、伝統文化など東北に潜在している地域資源を活
用した農山漁村の活性化が重要である。
- 168 -
第 2部
東 北の農山 漁村活性 化の現状 とこれか ら
3 農山漁村をとりまく情勢
農山漁村への関心の高まり
農山漁村において過疎化や高齢化が進む一方、「都市と農山漁村の共生・対流に関する
世論調査」によれば、都市住民、とりわけ、50代、60代を中心に農山漁村と都市との二
地域居住や、定住への強い関心を持っている(図Ⅰ-9、10)
。
図Ⅰ-9
農山漁村地域への定住の願望がある(全国、都市住民)
%
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
男性
女性
20代
30代
40代
50代
60代 70代以上
資料:内閣府「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」(平成18年2月)
注:1) 農山漁村地域に定住してみたいという願望がありますか。の問に「ある」、
「どちらかというとある」と答えたものが対象。
2) 都市住民975人が回答。
図Ⅰー10
二地域での居住をしたい(全国、都市住民)
40
35
女性
30
25
20
15
10
5
0
20代
30代
40代
50代
60代
70代以上
資料:内閣府「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」(平成18年2月)
注:1) 平日は都市部で生活し、週末は農山漁村で生活するといった二地域での居住をしてみたい
という願望はありますか。の問に「ある」、「どちらかというとある」と答えたものが対象。
2) 都市住民975人が回答。
- 169 -
第2部
東北の 農山漁村 活性化の 現状とこ れから
このような都市住民の意向を踏まえれば、定住や二地域居住に向けた条件整備を行い、
I・Uターンの促進や交流人口等の拡大を図るなど農山漁村の持つ伝統文化や豊かな自
然・景観、農産物等の地域資源をうまく活用して交流人口の拡大を図ることは、農山漁
村の経済活性化という面からも重要である。
インフラ整備の進展
東北はこれまで、新幹線や東北縦貫自動車道など首都圏とのアクセス向上に向けた高
速交通の整備が進められてたが、近年、横断道など地方都市間を短時間で結ぶ高速交通
体系の整備が進めれている。このことにより分散している地域を結ぶ域内アクセスが充
実し、生活環境が改善されると共に、広域からの観光集客性の向上などの経済的な効果
も期待されている(表Ⅰ-3)。
表Ⅰー3
道路整備に伴う効果(東北)
資料:国土交通省東北地方整備局
注:1) 「高速IC60分圏内市町村カバー率」とは、高規格幹線道路のICから60分で到達可能な市町村の割合。
2) 「主要都市90分圏内市町村カバー率」とは、市町村から最寄主要都市(人口20万人以上の9都市)まで、
自動車専用道路等を利用して90分で到達可能な市町村の割合
*「9都市」とは、青森市、八戸市、盛岡市、仙台市、秋田市、山形市、福島市、郡山市、いわき市
3) 「生活圏中心都市30分圏内市町村カバー率」とは、市町村から高度の買物ができる商店街、専門医をも
つ病院、高等学校等の施設を有する最寄の人口1万人以上の都市(53都市)まで、道路を利用して30分で
到達可能な市町村の割合
*8
また、分散する地域のネットワーク化に欠かせない高速インターネット を利用するた
めの手段として高速・大容量の光ファイバー網、ケーブルテレビ網などの情報通信網整
備が進められており、ブロードバンド・インターネット契約は東北の総世帯数の4割ま
で普及している(図Ⅰ-11)。
- 170 -
第 2部
東 北の農山 漁村活性 化の現状 とこれか ら
図Ⅰ-11
情報通信基盤の整備状況(東北)
(ブロードバンド・インターネット契約数・世帯普及率)
資料:東北総合通信局
高速道路網や情報基盤等のインフラ整備の改善や、農山漁村への都市住民の関心の高
まりなどにより「人・もの・情報」の交流機会が増大し、産地直売やグリーンツーリズ
ムなど農林水産物等地域資源を活用した農山漁村の活性化のチャンスが拡がっている。
- 171 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
Ⅱ
地域資源を活用した農山漁村活性化の取組
1
地域資源の活用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地方経済の活力低下が懸念される一方、農山漁村の豊かな地域資源を十分に活かし、
自らの創意工夫と努力により活性化を図っている地域が東北にもたくさん存在している。
地域資源の活用状況
農業集落の地域資源の活用状況として、農林業センサス結果から自然系資源や農産物
などの特産品などの地域資源*5を活用した施設の状況をみると、産地直売所や農林業の体
験施設などがある農業集落は、約2,000集落(全体に占める割合11.8%)にのぼり、産地
直売所や森林レクリエーション施設等、年間5,000万人以上が利用している(図Ⅱ-1)。
図Ⅱー1
地域資源を活用した施設及び利用者数(東北・平成17年)
1 500
1 000
500
0
1 418
0
1 000
2 000
産地直売所
248
農業・農村
研修資料館
180
森林・林業
研修資料館
万
人
67
)
)
29
884
304
農業公園
60
施
設
利
用
者
数
(
(
180
4 000
3 369
市民農園 2
201
施
設
数
3 000
体験実習林 9
森林レクリエー
ション施設
1 765
資料:農林水産省「2005年農林業センサス(農山村地域調査)」
注: 「産地直売所」とは、生産者が自ら生産した農産物(加工品を含む。)を生産者又は生産者のグループが、
定期的に地域内外の消費者と直接対面で販売するために開設した場所又は施設をいう。なお、市区町村、農協
等が開設した施設や道の駅に併設された施設を利用するもの、並びに果実等の時季に限って開設されるものは
含むが、無人施設や自動車等による移動販売は除く。
- 172 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
また、全体の28.6%に当たる5,034集落において、産地直送や農林業体験学習の受入れ
など、地域資源を活用した交流事業*6に取り組まれている(図Ⅱ-2)。
図Ⅱー2
東北地域の農業集落における地域資源を活用した交流事業の取組状況
(集落数)
3 000
2 774
2 495
2 500
いず れかの交流事業を
行っている集落
5,034
全集落17,629の28.6%
2 000
1 500
1 201
1 000
500
232
0
農山村地域資
源を活用した観
光客の受入
産地直送を介
した交流
児童、生徒の
農林業体験学
習の受入
農林業ボラン
ティア活動を
介した交流
資料:農林水産省「2005年農林業センサス(農山村地域調査)」
- 173 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
2 多様な農林水産物を核とした活性化の取組
農林水産物等地域資源を活用した産地直売、加工品の開発・生産、販売促進等の取組
<事例1>
規格外のつくねいもをスナック菓子に[青森県・五所川原市]
五所川原市に本社がある津軽鉄道株式会社では、平成20年2
月から、同市特産の「つくねいも(やまのいもの一種)」の規格
外品を使用したスナック菓子「津軽鉄道発
つくねいもチップ
ス」を発売した。
原料となる「つくねいも」は、JAごしょがわら市から規格
外品を購入している。同JAは、12年から転作作物として、収
つくねいもチップスのパッケージ
益性の高いつくねいもの栽培に取り組み、産地化・ブランド化
を目指しているが、いびつな形状をしていることから規格外品も多く、この規格外品の有効
活用を図ったもの。
製造は、弘前市の菓子製造会社「アップルアンドスナック」が、気圧を低くした装置内に
おいて油で揚げる「減圧フライ」という製法で行っている。気圧を低くすることで水の沸点
を下げ、つくねいもを焦がさずに揚げることが可能となり、サクサクとした歯ごたえととも
につくねいも独特の食感が味わえるという利点がある。
同製品は1袋50グラム入りで、パッケージには津軽鉄道の象徴でもある「ストーブ列車」
が描かれてある。20年は1万5千袋の製造を行ったが、新たな販売契約が整えば増産も予定
している。
また、販売は津軽鉄道本社の他、津軽五所川原、金木、津軽中里の3駅で行われている。
同製品によってつくねいも自体の評価が高まり、産地化・ブランド化の一層の推進が期待
されるとともに、売上増による同社の収益増も期待されている
<事例2>
山ぶどうで地域振興を[岩手県・一関市]
一関市(東磐井地方)は中山間地が多く、遊休農地の増加が問題となっていた。そのため、
山間地という立地で、しかも高齢者でも容易に栽培管理ができる「山ぶどう」栽培に着目、
耕作放棄地の解消と地域振興を図っている。
平成12年に中山間地域等直接支払制度への参加を契機に設立された「大原山ぶどうの会」
は、県オリジナル品種の涼実紫(すずみむらさき)を植栽、収穫された山ぶどうを加工し、
山ぶどう原液ジュースの商品化(「徳林」)や、菓子、アイスクリームなどの試作品作りにも
取り組んだ。
19年3月には、同ぶどうの会、同市室根町の太田川ぶどう生産組合、同市東山町の生産者
で、「一関地方山ぶどう振興協議会」を発足させて、山ぶどうによる地域の産業振興と活性化
を図っている。
山ぶどうは、高齢者でも比較的容易に栽培できることから栽培面積の増加が見込まれ、ま
た、肥培管理をしていく段階で人の手を加えることにより、農薬等の使用を抑え、より自然
- 174 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
に近い状態で収穫されることから、今後、安心・安全の面から学校給食等に利用してもらう
よう関係機関に働きかけていくこととしている。
また、ふるさとの味として贈答用に販売することを計画している。
<事例3>
地場産品の魅力満載!パンフレットを発行しPRに一役[宮城県・栗原市]
若柳金成商工会では、地域総合振興事業(※)の一環として、平成11年の資源調査事業を
始めとして、特産品の開発や販路拡大事業等に継続して取り組んできた。今回、
「食」にテー
マを定めて、特産品の魅力をさらに高め、販路の拡大を図ろうと、平成19年2月に宮城大学
食産業学部教授ら18人からなる「特産品開発事業等運営委員会」を設立して検討を重ね、19
年4月に管内の地場産品を紹介するパンフレット「うめぇがすと」
(A4版・4ページ)を発
行した。
「うめぇがすと」は「おいしいですよ」という意味の方言で、数ある地場産品のうち、り
んご、もち、しいたけをはじめとして、日本酒、みそ、漬物、ジャム等の農産加工品を含む2
0種類が紹介されているほか、生産者の連絡先と顔写真、さらに商品に対する「店主のこだわ
り」が掲載されている。発行部数は1万部で、県内各地方振興事務所、栗原市各総合支所、
県内各商工会のほか東京都の「みやぎふるさとプラザ」に設置した。
パンフレットの裏面には、管内地図の他、運営委員が創作した伊豆沼、内沼を題材にした
物語とイラストが掲載されていることもあり、きれいで見やすいと消費者からも評判になっ
ている。
今後は、パンフレットの発行を機に、今回紹介できなかった商品も含めてブランド化を視
野にいれた「こだわりの一品」の育成を目指していくほか、年末には「ふるさと宅急便(仮
称)」と銘打った米、もち、りんごやみそ等地場産品のパック商品を計画し、販路の拡大を目
指していくこととしている。さらに、イラスト入りの買物袋を作成する予定にしており、積
極的に消費者にPRしていきたいとしている。
※地域総合振興事業…地域振興の横断的・一体的な推進に資するため、宮城県地方振興事務
所が自主的に取り組む事業。
- 175 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
<事例4>
地域の活性化、第一弾「わかさぎスナック」発売[秋田県・潟上市]
潟上市は八郎潟残存湖の湖畔に位置し、古くからわかさぎ等
の佃煮製造が盛んに行われている。わかさぎはカルシウムやタ
ンパク質、マグネシウム、ナトリウム等栄養が豊富であり、同
市の昭和飯田川商工会では八郎潟産のわかさぎを県内外に売り
込み、地域の活性化につなげげたいとわかさぎを使った新商品
の開発を始めた。
黒糖と白ごまの黒糖わかさぎ
同商工会では、秋田県佃煮組合の協力を得ながら、平成18年
4月から開発を始め、地域資源∞全国展開プロジェクト(中小企業庁「小規模事業者新事業
全国展開支援事業」)より800万円の補助金を受けてケーキやパン等総計12種類の試作品を完
成させた。
19年度は秋田県の県地域活性化事業より300万円の補助金を受け、スナック感覚で食べられ
るようにわかさぎに小麦粉をまぶして揚げた「揚げわかさぎ」とわかさぎを素揚げし黒糖で
コーティングした「黒糖わかさぎ」の2種類の試作品を商品化させ、販売を開始した。
PR活動として、まず19年2月に開催された「東京ギフトショー・全国ふるさと見本市」
に参加し企業に試食用の商品を送ったり、東急電鉄の協力を得て駅の構内10か所の売店で、
秋田弁で書かれたわかさぎのPRチラシを添付し販売してもらう等商品のPRを行った。
「揚げわかさぎ」「黒糖わかさぎ」は秋田県佃煮組合で製造し販売している。また、汎用性
に優れた「わかさぎ粉末」を開発しており、20年より販売を予定している。
<事例5>
特産品化を目指し果樹の廃材を利用した器づくり[山形県・上山市]
上山市では、「元気で、住みやすく、やさしい」まちづくりを
目指して、平成13年から市民グループ「上山まちづくり塾」(鈴
木正芳代表)を発足させ、これまでも「食用ホオズキによる町
おこし」など様々なイベントや交流会などを実践している。
同塾は大分県由布院市のまちづくりメンバーとの交流の中で、
地元の材料を使った木工芸品による地場産業づくりの取組を知
り、全国でも有数の果樹産地である山形に豊富に存在する、さ
作成された器
くらんぼ、ラ・フランス、うめ、すももなど果樹のせん定枝や間伐材などの廃材を利用し、
地場産業振興と農業の活性化を図りたいと考えた。
18年8月に、鈴木代表ら同塾のメンバーやその支援者5人で工房「くだものうつわ」を立
ち上げ、湯布院市で活動する木工デザイナーの時松氏から直接指導を受けながら商品化を目
指した。19年2月の同市主催「食の祭典」での試作品展示や、11月に開催された「市総合産
業まつり」での試作品販売が好評だったことから、20年2月から本格的販売に踏み切ること
になった。
この取組は、各種イベントでの展示によりマスコミ等からも取材を受けるなど注目されて
- 176 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
おり、市内の旅館などからもすでに注文が入ってきている。また、友好都市ドイツ・ドナウ
エッシング市に学生訪問団が訪れた際には、記念品として贈呈するなど、少しずつ認知度が
高まっていく手応えを感じている。上山市では、今後、農家から廃材を買い取って製品に加
工、販売する体制を確立し、全国的にも珍しい果樹の廃材を利用した器を上山の特産品とし
て地場産業に発展させていきたいと期待している。
<事例6>
「カリカリ甘梅漬」で地域を活性化[福島県・いわき市]
JAいわき市女性部高萩支部では、「軒先から商品を生む」の
アイデアのもと、各農家にある散在の梅を使用して地域の特産
品を作り販売することで、地域農業の活性化を図っている。
これまで未収穫や少量のため商品価値がなかった梅を商品化し
ようと昭和60年頃から、JAいわき市女性部高萩支部の部員数
名が様々な方法で漬け込み地域内で販売していた。しかし、各
商品にバラツキがあり思うような普及効果が見られなかった。
「カリカリ甘梅漬」
そこで、統一した味と食感にするため、市内の小川町振興協議会や地場産品振興専門委員会
の支援を受け平成7年から加工器具の導入や製造技術の研究を行い、地域の特産品「カリカ
リ甘梅漬」を販売した。原料の梅とシソは、地元(小川地区)で収穫したものを使用してお
り、果形や粒の大きさなどの規格を栽培農家に徹底させ、規格内のものを全量購入する契約
を結んでいる。また、高齢者が収穫作業を行う際は、部員たちが手伝うなど質の高い原料の
確保に努めている。収穫した梅は、一粒づつ手作業で種を取り除き、着色料は使用せず、シ
ソと砂糖を加え、防腐剤の代わりにリキュールで漬け込むなど、独特の風味とカリカリ感を
出している。この他にも、「ソフトタイプの甘梅漬」や「塩梅漬」も販売するなど、新たな商
品開発を行いさらなる活性化に取り組んでいる。
それまで、自家用として収穫するためあまり管理されていなかった梅だが、この活動によ
って栽培農家の生産意欲が向上し栽培面積を増やすなど、地域の農業振興に寄与している。
また、当初は一部の部員で製造を行っていたが、生産量が増加したことで部員全員が製造・
販売に携わり、これまで以上に部員達の交流が増えたことや、安定した商品供給ができるこ
とで、地域の活性化につながっている。19年7月現在の生産量(約3千㎏)を維持しながら、
高品質な商品提供を行い、県内外にいわき市の特産品としてアピールし、さらなる地域の活
性化に貢献していきたい。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
3 自然環境や伝統文化などを核とした取組
グリーン・ツーリズム等都市と農山漁村の交流の取組
<事例1>
今年は田んぼに北斎の巨大絵が彩る[青森県・田舎館村]
田舎館村では、五穀豊穣の願いを込めるとともに、同村を県
内外にPRするために田んぼに水稲で絵を描く「田んぼアート」
に取り組んでいる。
田んぼアートは、同村むらおこし推進協議会が稲作体験ツア
ーの一環として実施しているもの。同ツアーは今年で15回目と
なり、19年は5月27日に田植えを行った。これまでもモナリザ
田んぼアート
や浮世絵、風神・雷神といった難しい題材を取り上げ作成してきたが、19年は、江戸後期の
浮世絵師葛飾北斎の「富嶽(ふがく)三十六景」の中から「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴(赤
富士)」に挑戦した。1万5千㎡の広大な水田をキャンバスに、古代品種の紫稲と黄稲、紅都
(べにみやこ)、県産米つがるロマンを使用し、4色の稲を精密に植え込み、北斎画を浮かび
上がらせる。
稲作体験ツアーは年々参加者が増加し、18年は700人の参加者が県内外から集まり、村のP
Rに大きく貢献している。また、「田んぼアート」の見学者も年々増加し、17年は約13万人、
18年は約20万人が見学に訪れた。
19年の稲刈りは9月30日に開催したが、県内外から多くの参加者が集まり、農作業の体験
を通じて広域交流の場として参加者に好評であった。
<事例2>
「軽トラック市」で町の中心商店街と地域農業を活性化[岩手県・雫石町]
しずくいし軽トラック市実行委員会(雫石商工会内)では、雫
石商店街よしゃれ通りで、「軽トラック市」を開催(毎年6~11
月の各月第1日曜日、平成19年7月は第2日曜日)している。
この軽トラック市はTMO(町づくり機関)構想の一環として、
中心市街地の活性化を検討する中から生まれたもので、同実行
委員会が17年から開催している。
軽トラック市は、町内外の農家やフリーマーケット参加者(参
大勢の人で賑わう軽トラ市
加料は軽トラック1台に付き千円を支払い、販売物は原則として自由。軽トラックのレンタ
ルも可能)が、新鮮な野菜や果物、加工品、雑貨、衣類などの商品を持ち寄り、そのまま軽ト
ラックの荷台に並べて販売するという市で、開催日には480メートルの通りに約50台(うちフ
リーマーケットが5割、農家2~3割)の軽トラックが集合する。参加者の中には青森県や秋
田県といった隣県からの参加や屋台(ラーメン、たいやき、たこやき、やきとり)なども出店
される。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
新鮮な地元の野菜や農産加工品などが販売されることから、地産地消や地域の経済効果に
つながっている。
また、実行委員会が企画するイベントや、県内外の特産品の販売、マスコミ各社からの取
材による宣伝効果などもあり、来場者数は開催初年の17年は1万2,800人、 2年目の18年は
1万5,300人と増加している。多い日には約4千人が中心商店街に足を運ぶことから、商店街
の活性化に大きな効果を発揮している。
雫石町では、軽トラック市が町の名物として町内外に定着し、農業や観光の振興・発展に
繋がればと期待している。
<事例3>
土作りから収穫まで、農家が教える「栽培指導型農園」が大好評[宮城県・仙台市]
仙台市では、遊休農地対策や都市住民との交流を促進する方策の一つとして市民農園開設
事業に取り組んでいる。平成19年度は、遊休農地を活用した地域活性化を模索していた同市
青葉区大倉地区を選定、農家との交流を図りながら、農業未経験の利用者への栽培指導を行
う「栽培指導型農園」を開設することとした。
市民農園の母体となる大倉若林地区の農家で組織する「大倉若林会」は、農地の区画整備
や看板設置費用等への市の助成や、企画・運営等へのサポートを受けながら、19年5月に、
同市では2例目の取組となる栽培指導型農園「大倉ふるさと農園」を開園した。
利用者は、募集人数の倍以上の応募者の中から、40~60歳代の10組を選定、1区画当たり
利用面積約50㎡で貸し出された。市民農園利用者は、12月までの8か月間に季節にあった作
物の栽培や土作り等同会員より本格的な指導を受けられ、貸し出しのみの「市民農園」と異
なり、未経験者でも安心して栽培へ取り組める。
利用料金は、1区画当たり3万円で、種苗、肥料、農薬等資材は同会が用意する。栽培指
導のための講習会は毎月2回実施し(午前10時~12時までの2時間)
、だいこん、ほうれんそ
う、しゅんぎく等約11種類の野菜の収穫を目指す。
仙台市では、市民農園開設事業により遊休農地の有効利用が図られ、市民がサポートする
農家と直接触れ合い、自然豊かな農村の魅力や地域文化に接することで、農村への関心が高
まるなど、農村との交流を通しての地域活性化が期待できるとして、農園の利用面積や募集
人数の拡大を検討している。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
<事例4>
地引き網と島式漁港を観光資源に[秋田県・由利本荘市]
由利本荘市岩城にある道の駅「岩城」島式漁港公園岩城アイ
ランドパーク(株)では、海に親しんでもらいながら地域の活
性化につなげたいと、平成18年に引き続き3回目となる大漁地
引き網体験(協賛:ウェルサンピア秋田、岩城活魚センター、
(有)天鷺ワイン)を行った。
同道の駅は、地場産農産物の直売所や活魚センター、温泉施
設などがあり、また日本海に沈む夕日を眺望できることから利
全国でも珍しい島式漁港
用者も多い。そこで地場産の魚を知ってもらいながら、地域の
活性化につなげたいと、18年6月と8月に行い好評だった地引き網体験を19年も行ったもの
で、県内全域から集まった約60人の参加者は、同漁港を利用する県漁協南部総括支所道川連
絡会が設置した地引き網を約2時間かけて引き上げた。
同漁港は、国内で2例目(外海に築港された漁港としては国内初)となる島式漁港で、19
年4月から漁港として本格的な利用が開始され、眺望テラスや遊歩道などがある漁港公園と
しても親しまれていることから、訪れる人も多く、同漁港と同道の駅は新たなレジャーエリ
アとして期待されている。また、地引き網体験では、地場産の魚を知ってもらうため、獲っ
た魚は参加者で分配するようにしている。
以前より「岩城ふれあい港まつり」も開催しており地場産の海産物や農産物などもPRし、
更なる地域の活性化につなげていきたい。
<事例5>
農家民宿開設マニュアルを作成し開業を後押し[山形県・県内全域]
自然豊かな農山漁村で、農業体験などの余暇を楽しむグリーン・ツーリズムが人気を集め
ている。山形県内の産直施設や農家レストラン、農家民宿、観光農園、体験施設などのグリ
ーン・ツーリズム関連施設の平成18年における利用状況は、720万人と年々増加している。
しかし、これまで農家民宿に関しては、旅館法や食品衛生法などさまざまな法規制があり、
手続きも複雑なため取り組む人が増えにくい状況であったが、農家民宿の開設に関する各法
律の規制緩和が15年以降全国的に進められたことから、耐火構造の間仕切り壁(建築基準法)
や誘導灯(消防法)の設置、家庭用台所とは別の営業用厨房(食品衛生法)の建設などが不
要になり初期投資が少なくなった。
この流れを受け山形県では、19年3月に開設マニュアルを作成し、農家民宿開業に向けた
支援体制作りを行うことにした。作成した「農林漁家民宿開設マニュアル」(A4版、17ペー
ジ)は、農家民宿を始めるために、開設手順等をまとめたもので、相談や指導を行う関係機
関や市町村へ配布した。また、農家民宿開業を後押しするために、山形県グリーン・ツーリ
ズム推進協議会や各市町村の協力のもと、許認可機関との連携による支援体制づくりを進め
るなど、許認可機関と推進機関がマニュアル作成を機に連携し支援体制が整った。取組の成
果として、県内でマニュアル作成前の農家民宿数22戸から32戸まで増加した。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
今後は、農家民宿の開設に加え、サービスの充実に向けた研修会を開催し、上質なグリー
ン・ツーリズムの展開を目指し、修学旅行や20年度から実施される子ども農山漁村交流プロ
ジェクトの推進による小学生の受け入れを積極的に実施していく。
なお、同マニュアルは、同推進協議会ホームページでも見ることができる。(アドレスhttp
://www.gt-yamagata.com/news/index.html)
<事例6>
二地域住居促進を目指し町内滞在ツアーを実施[福島県・塙町]
塙町では、東白川地方の特産物であった「こんにゃく」を中
心にした畑作が営まれていたが、農産物の価格低迷や農業従事
者の高齢化などで年々遊休農地が増加してきた。同町では、増
加する遊休農地を解消するため、都市住民を対象に二地域居住
や定住促進を図ることを目的に「町内滞在ツアー」を実施、農
業や観光を通した田舎暮らしのPRに取り組んだ。
ツアーは春、夏、秋の年3回実施し、町営の宿泊施設を利用
田植えをする参加者
して一泊二日の日程で農業体験をメインに、いちご狩りやソバ打ち、ダリア鑑賞会などそれ
ぞれの季節に合わせたイベントを盛り込んでいる。各催しの講師等は町民が担当し、町民と
参加者の交流を通して、「塙の人情」にも触れてもらう内容である。
対象は、同町が物産イベント等を通じて平成3年から交流のあった東京都練馬区民で、19
年3月に、塙町職員と農業者グループ「常世(とこよ)アグリネットワーク実行委員会」が同
区内でツアーの説明会を開催、その後5月19~20日に実施した春のツアーには同区民39名が
参加し、田植えやいちご狩りを体験した。その後ツアー参加者へは、夏のじゃがいも掘りや
秋の稲刈りを中心とした農業体験を通し、同町の魅力をPRすることにしている。
同町では、今後、地元の子ども達との交流やボランティア体験なども取り入れ、塙町の魅
力を更にPRし、ツアーを通して同町の住みやすさなどを実感してもらい、交流人口の増加
から定住促進へつながればと期待している。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
4 新たな手法による活性化の取組
企業連携、人材の育成・活用などの取組
<事例1>
地元食材使用の駅弁を皮切りに地域ブランドの確立を目指す[青森県・今別町]
今別町商工会(相内喜久男会長)では、東北新幹線「新青森駅」及び北海道新幹線「奥津
軽駅(仮称)」の開業にあわせ、地元でとれる新鮮な海や山の食材を使用した駅弁「奥津軽駅
(津軽海峡)弁当シリーズ」を柱に、「食」の情報発信を行い、同町において生産・採取され
る農産品、畜産品、海産物、山菜等林産物等の地域ブランド(奥津軽ブランド)確立、産業
振興、観光開発の推進を図る「今ベールを脱ぐ奥津軽弁当
奥津軽駅(津軽海峡)弁当シリ
ーズ開発プロジェクト」を実施することとなった。
平成19年度のおもな取組としては、同町の特産品でもある石もずく、もずくうどん、いの
しし、山菜などを使用した「奥津軽駅(津軽海峡)弁当シリーズ」の開発や統一的な「奥津
軽ブランド」のイメージコンセプト策定、観光振興のためのルート開発などの取組を行う。
なお、同商工会は、今回のプロジェクトを中小企業庁の補助事業である「平成19年度小規
模事業者新事業全国展開支援事業」に申請。19年度事業分として採択されたことから、関係
機関、商工業者、農林漁業者、地域住民、学識経験者等で構成する「奥津軽ブランド推進委員
会」を組織化させ、各方面と連携を図りながら、今後の展開方向・戦略を具体的に検討するこ
とにしている。
同プロジェクトは、地元特産品の付加価値向上や新たな食品加工産業の形成、観光産業の
確立、新たな雇用創出など地域活性化に寄与するとともに、商工、農林水産、観光など多岐
な分野の発展につながるものと考えられる。同商工会では、住民参加型の地域活性化事業に
位置づけており、プロジェクトの成功で、地域の活性化や人材育成につながればと期待して
いる。
<事例2>
伝統ある養蚕業復興事業に町を挙げて取り組む[宮城県・丸森町]
丸森町は、かつて養蚕が盛んであったが、現在は、養蚕農家
が4戸という現状である。
しかし、同町大張地区において平成17年度に1名が後継者と
して就農したことや、地元産繭の有効活用と、生糸を紡ぐ技法
などの伝承を目的に活動している耕野身(こうやみ)しごとの会
(椎名千恵子代表、会員3名)と養蚕農家との連携など、養蚕業
復興の兆しも見え始めた。
機織りを見学する来場者
また、同町には、養蚕業との関わりで「金山織」や「佐野地織」などの機織りが盛んで、
高齢者生産活動センター織物部会(高橋キヨ子代表、会員8名)や大内地区にある大内佐野
地織保存会(駒場とし子代表、会員7名)が、技術の習得や後継者への伝承などを目的に活
動を行っている。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
丸森町でも基幹産業としての養蚕文化の維持継承、養蚕素材を活用した付加価値の高い地
域産品の創出と、観光資源として活用を図ることを目的に、平成16年~25年度にかけて「丸
森発シルクロード計画」推進事業を実施している。
19年4月には、同事業の一環で、
「まるもりシルクフェスタin仙台」を仙台市内で開催、先
述した各グループが連携し、織物の展示や真綿かけなどの体験を通じてシルクの良さをPR
した。
<事例3>
地場産農産物を活用した「地ソース」が完成[秋田県・横手市]
横手市では、地域に密着した基幹産業である農業を、地域産
業のコアと位置づけ、農産品・加工品を中心とした地域の「食」
に関わる産業を元気にしていこうという目的でマーケティング
推進課を立ち上げ、その取組として「食のまちづくり」による
産地ブランド化を目指し、地場産の材料にこだわった「ソース」
を開発した。
複数の地場産農産物を活用した「ソース」造りは、地域資源
の有効活用と地域農業の活性化が図れるとして、ソースメーカ
ー・地元食品会社・流通業者・大学関係者・同市が連携した、
産・学・官12団体による「横手地ソース研究会」を平成18年の
秋に発足させた。
ソース造りは試行錯誤を繰り返しながら、19年2月に「ウス
『中濃ソース』 『ウスターソース』
ター」と「中濃」の2種類が完成した。「ウスター」と「中濃」とも200ml入り5千本を限定
生産した。「口に含むと秋田の農村風景が浮かんでくるような味」をコンセプトに、材料は玉
ねぎ・にんじん・セロリ・りんごジュース・ワイン等を使用しており、地場産野菜・果樹の
うまみを凝縮した製品に仕上がっている。
19年2月から市内のスーパーマーケットや観光施設、道の駅等で販売している「地ソース」
は、素材・製法に徹底的にこだわった極上ソースで、高級感のあるラベルとガラス容器を使
用している。価格も一般に市販されているものに比べ割高であるが、横手市は「焼きそばの
まち」として有名なことから、やきそばともあいまって人気を呼び、初回生産の1万本は順
調な売れ行きとなっている。生産農家はもとより、横手地ソース研究会では地域農業が活性
化し、販路拡大・生産意欲向上・所得向上に期待している。
今回の野菜産地とソースメーカーが一体となった取組は、今までに無かった取組でソース
業界からも注目されるなど、加工用野菜産地としての新ビジネス発展に期待がかかる。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
Ⅲ
農山漁村活性化に向けた各種支援施策の整
備
1 農山漁村活性化法の制定
農山漁村活性化推進本部の設置と農山漁村活性化法の制定
第Ⅱ章で紹介した取組事例のように、農山漁村がその特色を十分に活かし、自らの創
意工夫と努力により活性化している地域が存在している。こうした取組が全国の農山漁
村に広がり、地方の活性化が図られるよう国として支援していく必要があることから、
農林水産省では平成18年10月に省内に「農山漁村活性化推進本部」を設置し、これまで
取り組んできた農山漁村の活性化のための施策を省庁を挙げて一層強力に推進すること
とした。
また、農山漁村における定住や二地域居住、農山漁村と都市との地域間交流を促進す
ることにより、農山漁村の活性化を図るため、平成19年5月、農山漁村活性化法(農山
漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律)が制定された(平成1
9年8月施行)。
農山漁村活性化法においては、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金による地域間
交流拠点等様々な活性化の活動を行うために必要な施設の整備のほか、生産基盤や生活
環境整備等農山漁村の活性化のため、きめ細かな支援措置が盛り込まれた(図Ⅲ-1・2)。
図Ⅲー1
農山漁村活性化プロジェクト支援交付金制度の概要
農山漁村活性化プロジェクト支援交付金の概要
地方 公共 団体 が地 域の 自主 性と 創意 工夫に より 、定 住者 や滞 在者 の増
加 など を通 じた 農山 漁村 の活 性化 を図 る計画 を作 成し 、国 は、 その 実現
に 必要 な施 設整 備を 中心 とし た総 合的 取組を 交付 金に より 支援
支援交付金のしくみ
地 域の 課題
○支援 交付 金
活 性化 計画の 作成 (県又 は市 町村)
・農 ・林 ・水の縦 割りな く施設の
整 備等の 各種 取組を総 合的
か つ機 動的 に 支援
・地 域が 提案するメニュ ーも
支援
平成19年 度予算 額:305 億円
農林漁 業団 体
等の提 案制 度
国に 活 性化計 画の 提出
交付金 の交 付
事業 実施
事業完 了、事後評 価
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
図Ⅲー2
農山漁村活性化法の成立を踏まえた支援活動の促進
農山漁村活性化法の成立を踏まえた支援活動の促進
・ 農林水産物を核とした戦略(生産・販売、加工、輸出)や
新たな手法による戦略(イノベーション、企業連携、地域
リーダー等育成)、バイオマス戦略との総合的な地域資源の
活用対策と絡めて農山漁村の活性化を推進
・ 関係府省、管内各県及び関係機関等と連携しながら農山漁
村の活性化に取り組む
・ 管内各県や市町村が策定する活性化計画への積極的な支援
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
農山漁村活性化のための戦略の策定
農山漁村活性化推進本部(農林水産省)では、現地意見交換会等を通じて農山漁村の
生の声を直接収集するなど様々な手法により収集した活性化のための意見を踏まえ、後
述する「地方再生戦略」に反映するよう平成19年11月に、農林水産省として講じる施策
を「農山漁村活性化のための戦略」として取りまとめた
「農山漁村活性化のための戦略」では、農山漁村地域の活力が低下し、地域間の経済
状況や雇用に格差が生じている現状を打破し、農山漁村で生活されている方々が安心し
て暮らせるような環境づくりを進めるため、①地域力の発掘を行う人材の育成、②新た
な地域協働による農山漁村集落の再生、③都市と農村の共生・対流の推進による雇用の
創出、④関係府省と一体となった施策の推進を基本的な考え方とし、現場の声に真摯に
耳を傾けながら、農林水産省として講じる施策を推進していくとされた。
農山漁村活性化に向けた東北農政局の取組
農山漁村活性化法の成立を踏まえ、東北農政局では、農山漁村活性化法、農山漁村活
性化プロジェクト支援交付金及び、活性化に関連した施策等の周知・普及を目的に、管
内231全ての市町村で個別訪問等を通じた市町村キャンペーン(平成19年7月から10月の
3か月間)活動や現地意見交換会(みずほの国・防人応援隊)の開催、さらに、農山漁
村の活性化に向けた農林水産業の振興やグリーン・ツーリズム等の「交流」を基本とし
た取組を、様々な関係者等と幅広く協働して進めていくために、宮城県、青森県におい
ていだん
て、東北農政局長、知事、グリーン・ツーリズム推進団体の会長による鼎談を開催した。
(1)宮城県と東北農政局、宮城グリーン・ツーリズム推進協議会会長との鼎談概要(平
成19年12月)
「鼎談
宮城の農山漁村の活性化に向けて~グリーン・ツーリズムで元気に!!~」と
題して開催した鼎談では、宮城グリーン・ツーリズム推進協議会会長(宮城大学食産業
学部加藤徹教授)をコーディネーターに、村井宮城県知事と山根農政局長が各々の立場
から、現在の農山漁村活性化にかかる現状認識、農山漁村への定住や二地域居住、地域
間交流の促進についての見解、農山漁村活性化に向けた今後の取組について意見交換を
行った。
参加者は、県内のグリーン・ツーリズム実践(受入側)者、市町村の担当者、一般参
加者等で、平成20年度から実施する「子ども農山漁村交流プロジェクト」について、ま
た、民泊のさらなる規制緩和の要望、国や県に対するPRへの協力等について発言した。
(2)青森県と東北農政局、青森カムカム農山漁村ネットワーク会長との鼎談概要(平
成20年2月)
「鼎談
青森の農山漁村の活性化に向けて
~グリーン・ツーリズムで元気に!!~」
と題して開催した鼎談では、あおもりカムカム農山漁村ネットワーク会長(ABITANIAジ
ャージーファーム
安原栄蔵)をコーディネーターに、三村青森県知事と宮坂東北農政
局長が各々の立場から、現在の農山漁村にかかる現状認識、農山漁村への定住や二地域
居住、地域間交流の促進についての見解、農山漁村活性化に向けた今後の取組について
意見交換を行った。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
参加者は、県内のグリーン・ツーリズム実践者(受入側)、市町村の担当者、一般参加
者等で、会場からは平成20年度から実施する「子ども農山漁村交流プロジェクト」への
期待と今後のグリーン・ツーリズム推進への意気込み、また、台湾からの修学旅行生を
初めて受け入れた際の感想等の発言があった。
2
地域活性化統合本部による省庁横断的、施策横断的支
援策の推進
地域活性化統合本部の設置と「地方再生戦略」の策定・推進
地域活性化に向けて政府としては、これまでも内閣官房を中心に「都市再生」、「構造
改革特別区域」、「地域再生」及び「中心市街地活性化」の取組を進めてきたが、少子高
齢化や人口減少等、現在の我が国の経済社会構造は大きな転換期を迎えており、今後の
地域活性化には既存の人的資源、サービス、資金等の効率的・効果的な活用が求められ
ている。
そのような状況のなか、平成19年10月、政府は地方再生を総合的に推進するため、都
市再生、構造改革特区、地域再生、中心市街地活性化の地域再生関連4本部を一つに統
合し「地域活性化統合本部」を設置、農山漁村活性化等地域の再生に向けた取組を省庁
横断的、施策横断的に支援することを決定した。
具体的には、国の最重要課題である地方再生のための総合的な戦略として「地方」と
「都市」がともに支え合う「共生」の考え方を基本理念に、地域の創意工夫や発想を起
点とする取組を、省庁横断的・施策横断的な視点に立って支援するという新しい発想で、
地方再生の総合的な推進を図り、豊かで持続的に発展する地域社会の実現を目指す「地
方再生戦略」を策定した。
さらに、「地方再生戦略」を推進するため地域活性化4本部 *9の事務局を統合して「地
域活性化統合事務局」を内閣に新たに設置し、地域の再生に向けた戦略を一元的に立案、
実行する体制をつくり、あわせて、各地方ブロック単位に地域活性化統合事務局地方連
絡室を設置し、「地方の元気再生事業」等地域活性化施策の推進や地域活性化推進連絡会
議の開催、その他地域活性化に関係する相談への対応等を行うこととした(表Ⅲ-1)。
表Ⅲー1
内閣官房地域活性化統合事務局地方連絡室概要
名称
北海道地方連絡室
東北圏地方連絡室
首都圏地方連絡室
北陸圏・中部地方連絡室
近畿圏地方連絡室
中国圏地方連絡室
四国圏地方連絡室
九州圏・沖縄県地方連絡室
位置
札幌市
仙台市
さいたま市
名古屋市
大阪市
広島市
高松市
福岡市
担当都道府県
北海道
青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟
茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨
富山、石川、福井、長野、岐阜、静岡、愛知、三重
滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
鳥取、島根、岡山、広島、山口
徳島、香川、愛媛、高知
福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
注:東北圏地方連絡室(
「内閣官房地域活性化統合事務局東北圏地方連絡室」)は東北農政局内に設置。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
平成19年度においては、地域の自発的な意向に基づく取組を政府が一体となって支援
していくという施策へ転換を図る第一歩として、雇用情勢の厳しい道県を対象に支援を
緊急かつ総合的に実施する「地方再生モデルプロジェクト」*10を推進した。
さらに、20年度に向けては、地域→地方連絡室→地域活性化統合事務局という地方の
声を十分に反映させる道筋を明確化しながら、国がメニューをあらかじめ設定するので
はなく、地域の声を汲み取ることを基本に、省庁横断・施策横断の視点に立って、地域
の自由な取組に対しての包括的な支援を実施する新たな取り組みとして「地方の元気再
生事業」*11を創設した。
また、
「地方の元気再生事業」を地方再生の取組の方向性を定めていく「舳先(へさき)」
としつつ、各省庁においても、省庁横断的・施策横断的な取組を進めることとしている。
- 188 -
第2部
3
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
農林水産省関連の省庁横断的・施策横断的取組・・・・・
農商工連携の推進
平成20年度から経済産業省と協力して、農林水産業、商業、工業が連携し、新商品開
発や販路拡大等について、人材や知恵等の経営資源を結集する「農商工連携」の取組を
推進することとしている。
その一環として、19年度農林水産業者と商工業者等が連携して、それぞれの技術や特
徴等を活かし、新商品の開発や新サービスの提供などを行っている先進的な取組を「農
商工連携88選」として選定した。
東北管内から「農商工連携88選」に選定された取組事例
在来トウガラシのブランド確立[青森県・弘前市]
○生産者-行政-大学-加工業者等
(中核団体:在来津軽清水森ナンバブランド確立研究会)
・種子管理、栽培指導、土壌分析、加工食品の試作、販売まで
関係者が一体となって弘前市の在来種のトウガラシ「清水森
ナンバ」のブランド化の取組を実施。
・地域の特産物としてブランド化を目指す取組により、生産者数、生産量ともに年々増加。
・平成19年度生産量9,000kg(18年度2,354kg)
青森県産りんごの海外販売[青森県・弘前市]
○農業者-JETRO-商工会議所-電機メーカー
(中核団体:片山りんご(株))
・97年のりんご価格暴落を契機に、片山りんご(株)を中心にりん
ご生産農家が出荷組合を形成し、海外にりんご販売の活路を求
めた取組を展開。
・イギリス等の欧州には小玉の「玉林」を、中国には大玉の「陸奥」を、と相手国の嗜好
に合わせ出荷。輸出先国数は10を超える。
・輸送技術開発については、日本電気(株)、貿易実務等については、JETRO、弘前商
工会議所と連携している。
・平成18年度売上:2,900万円
- 189 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
水産資源を利用した機能性食品原料の開発・販売[岩手県・釜石市]
○漁協・水産加工業者-製品開発・販売業者-大学
(中核団体:
(協)マリンテック釜石)
・釜石近郊では、大量の水産加工廃棄物、未利用水産資源の処理
が問題となっていた。
・これらの水産加工残さから、生活習慣病の予防等に効果のあるとされる機能性成分を大
学との共同研究により抽出、製品化して販売。
・平成18年度売上:1,500万円
建設業者の農業分野への参入[宮城県・仙台市]
○農業者-建設業者-大学-販売業者
(中核団体:奥田建設(株))
・わさびは水管理など栽培管理が難しいが、大学から栽培管理技
術の指導を受け、建設業者がわさび事業に参入。
・土木工事のノウハウが活かせる「わさび栽培措置」を導入。
・栽培に当たっては地元農家とノウハウを共有。
・販売においては、老舗蒲鉾店等と連携、販路拡大に努めている。
・地元農家の意欲向上、休耕田の有効活用、建設需要(わさび田造成による)の喚起に効
果を上げている。
・平成18年度売上:1,200万円
地元産赤豚による新商品開発とブランド化[宮城県・登米市]
○農業者-食品メーカー-百貨店等
(中核団体:
(有)伊豆沼農産)
・地元の関係者の連携により、「伊達の純粋赤豚」を活用した新
商品を開発するとともにブランド化を実施。
・畜産農家は、ブランド価値を高めるため、豚の全頭検査を実施。食品メーカーやデザイ
ン会社を中心とした研究会で新商品を開発。
・大手百貨店等に出品するとともに、香港にも輸出。
・平成18年度売上:4.8億円
- 190 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
養豚事業を核とした地域活性化への取組[秋田県・小坂町]
○養豚業者-農業者-廃棄物処分業者
(中核団体:
(有)ポークランド)
・大型養豚団地の養豚業者が、「水・土・大気を汚さない」を
スローガンに、ISO14001を取得。
・廃棄物処分業者が、生き物にとってよい水・よい土を作るBMW(バクテリア、ミネラ
ル、水)技術を活用し、糞尿からたい肥等を生産し、耕種農家に提供。これにより、地
域循環型有機栽培農産物の生産を拡大。
・平成18年度売上:25.7億円
地場伝統野菜等による本格焼酎の開発・販売[山形県・米沢市]
○商工会議所-農業者-製造業者-流通業者
(中核団体:米沢商工会議所)
・商工会議所のコーディネートの下、生産・製造・流通が三位一
体となってプロジェクトを編成し、地域の重点振興作物である「メ
ルヘンかぼちゃ」、江戸時代からの地場伝統野菜「うこぎ」を使った本格焼酎を開発。
・平成18年度売上:1,000万円
減反田を活用した飼料用米の生産・豚のブランド化[山形県・酒田市]
○農業者-食肉加工業者-研究機関
(中核団体:
(株)平田牧場)
・(株)平田牧場は平成8年以降、農家と協力して飼料用米生産の
取組を開始。
・16年に遊佐町が「食料自給率向上特区」認定を取得したのを契
機に山形大学とも連携して、豚の品種開発、飼育方法、飼料の吟味を実施。
・飼料用米で飼育した豚は「こめ育ち豚」としてブランド化。
・豚肉の生産から加工、流通、販売まで一貫して実施することでトレーサビリティも確立。
・平成19年度売上:20億円
- 191 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
「川の駅」「
・ 森の駅」における地域資源の発信[山形県・最上町]
○建設業者-農業者-NPO
(中核団体:
(株)大場組)
・建設業を営む(株)大場組が、地元最上町の美しい自然と農
林水産品の振興のための共同事業を、地元産直団体やNPO
に呼びかけ。
・(株)大場組が自社技術を活かし、「川の駅」、「森の駅」を建設。
・地元産直団体やNPOが両施設を利用して農林水産物を活用したサービスを提供(農業
体験、産直販売、食事、アニマルセラピー等)。
・平成18年度売上:2億円
漬物製造、残さ供給、たい肥還元による循環型農業確立[福島県・会津若松市]
○農業者-加工業者-流通・販売業者
(中核団体:
(株)会宝)
・綿密な栽培・販売計画による契約の下、①栽培経費の軽減、②
集中出荷の回避、③流通の省力化を実現。
・この取組により、加工業者は、高品質な浅漬を安定的に製造し、広域に販売。
・加工業者は、野菜残さを畜産農家に供給し、畜産農家は、たい肥を野菜農家に還元し、
地域内循環型農業を確立。
・平成18年度売上:1.6億円
- 192 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
子ども農山漁村交流プロジェクトの推進
平成20年度より、文部科学省、総務省と農林水産省が連携して、小学生を農山漁
村に受け入れる「子ども農山漁村交流プロジェクト」を推進することとしている。
本プロジェクトは小学生の宿泊体験施設等の整備や受入体制の整備など支援を通じて、
都市と農山漁村の共生・対流を推進するものである。
子ども農山漁村交流プロジェクト概要
子ども農山漁村交流プロジェクト
- 120万人・自然の中での体験活動の推進 -
協力・支援
農林水産省
受入地域の整備
の推進に向けた
連携
子どもたち一学年単位
での受入が可能な地域
づくりを全国的に拡大
環境省
宿泊体験活動の
送り側、受入側の
連絡調整
農 山 漁 村
1週間程度の宿泊体験
小学生120万人を目標
(約2万3千校で展開)
総務省
地域の活力を創造する観
点等から、長期宿泊体験
活動の推進に向けた取組
に対して支援
小
学
連
- 193 -
校
携
文部科学省
豊かな人間性や社会性の
育成に向け、小学校等に
おける長期宿泊体験活動
の取組を推進
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
東北農政局におけるアグリビジネス振興活動の展開
東北農政局では、農山漁村の活性化関連施策と連携し東北各県が取組む「食品産業」
と「農業」の活性化に対する東北農政局の支援活動の考え方と内容を取りまとめた「東
北の食と農の活性化に向けて~東北地域アグリビジネス振興支援活動~」を平成20年2
月に公表し、野菜の端境期に対応した生産体制の整備の促進による潜在的な需要に対す
る供給の拡大や、輸出重点品目と具体的な推進方策の戦略的決定による更なる輸出促進
の取り組み、産学官連携(食料産業クラスター)による新製品開発等への支援等の一層
の推進を図ることとした。
<東北地域アグリビジネス振興支援活動例>
野菜の端境期に対応した生産体制の整備事例
- 194 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
Ⅳ章 今後の農山漁村活性化の取組方向
~省庁横断・施策横断的取組の推進~
東北は多様な農林水産物のほか、自然系の観光資源やその豊かな自然と共存する歴史
・文化に恵まれている。また、全国の2割弱を占める農地面積を有し、食料供給基地と
しての役割を果たしてきた。
しかし、高齢化の進展と人口減少が進むなか、東北の経済状態は、携帯電話・IT産
業等が牽引するサービス業を除き、農業、建設業、卸・小売り業、製造業とも停滞して
いる。特に農業産出額は平成7年に比較して、18年には8割まで減少しており、この影
響はそのまま農家所得額の減少につながっている。
一方、昨今の情勢に目を転じれば、一部の地域では生産者と加工・流通業者、研究機
関等の連携による付加価値の高い新商品の開発等の動きがみられている。また、経済成
長著しい東アジア諸国を中心に、安全で高品質な日本産農産物に対する需要が拡大して
おり、世界的な健康志向の高まりとともに日本食や和食材に対する関心も高まっている。
さらには、国民のライフスタイルの多様化や地域間交流への関心等を背景に、農山漁
村の価値が見直されるなど「潮目の変化」が訪れている。
例えば、年齢別観光旅行回数(「全国旅行動態調査」国土交通省調べ)をみると、宿泊
観光回数では、20代女性と50代、60代が多く、目的地での行動として、温泉等での休養
や自然・風景鑑賞、特産品等の買物・飲食(夏季・冬季)が上位を占めていると報告さ
れている(表Ⅳ-1)。
表Ⅳ-1
宿泊観光旅行の特性(旅行単位での分析結果)
区分
項目
旅行月
旅行日 数
目的地 での行動
(
宿
泊
観 往復の 主要交通 機関
光
旅
行
同行者 の種類
純
観
光
の 同行者 の人数
み
)
利用宿 泊施設
旅行費 用
旅行単位 での分析 結果
8月
7月
2月
1回平均
温泉な どで の休養
自然・風景 鑑賞
特産物 などの買い物・飲食
自家用 車
鉄道
貸し切りバ ス
家族関 連
友人・知人
団体関 連
2~5人
6~14人
15人以 上
ホテル ・ビジネスホテル
旅館
ユースホテル・国民 宿舎
総額/ 人・回
うち宿泊 費
うち交通 費
そ の他
18.7%
9.3%
8.7%
2.50日
52.0%
39.1%
24.2%
54.2%
19.7%
18.7%
55.5%
25.3%
8.9%
59.2%
16.0%
15.6%
38.8%
33.0%
6.8%
34,360円
14,340円
9,540円
10,480円
資料:国土交通省「第9回全国旅行動態調査結果」(平成15年3月)
注: 調査は、平成12年9月1日から平成13年8月31日までの1年間に行った
観光レクリエーションについて調査したもの。
- 195 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
また、団塊世代*10(1947~49年生まれ)を対象に、(財) 東北産業活性化センターが平
成17年に行った意識調査の結果(「団塊パワーが拓く新市場
新たな財・サービスの創出
と地域の活性化」(財)東北産業活性化センター編、101ページ)によると、現在・リタイ
ア後の余暇活動比較において、『現在の余暇活動は、男性、女性ともに「IT関連」、「T
V・ビデオ鑑賞」、「読書」、「映画鑑賞」、「国内旅行」、「グルメ・ショッピング」が上位
を占め、その次以降の回答率は性別によって相違が生じている。なお、リタイア後の余
暇活動は、男女ともに「国内旅行」、
「海外旅行」の旅行系が著しく増加することに加え、
「園芸」、
「アウトドア(登山)」といったアウトドア活動も増加している。』と報告され、
また、現在・リタイア後の希望旅行比較では、『現在の希望する旅行内容は、男性、女性
共に「自然景勝旅行」、「街並散策旅行」、「グルメ旅行」、「テーマパーク旅行」が上位に
挙げられている。リタイア後の希望する旅行内容は「街並散策旅行」、
「各国周遊型」、
「国
内周遊型 」、「リゾート滞在型」のような時間的ゆとりを要する旅行 、「高級ホテル・滞
在型旅行」、
「豪華客船・寝台車旅行」、
「グルメ旅行」のような豪華な内容の旅行、また、
知的好奇心を満たす「学習旅行」の回答率の伸びが高くなっている。』と報告されている。
(同、116ページ)
このことから、60代以上の人口割合の増加により、これら自然景勝旅行や温泉・特産
物、グリーン・ツーリズム等の体験を目当てとした観光需要の増加が見込まれ、自然系
の観光資源と農水産物の豊富な東北にとって、高齢化の進展は大きなビジネスチャンス
としてとらえることもできる。
今後の農山漁村活性化の取組方向としては、こうした状況を好機ととらえて、食料の
持続的な再生産を支える農山漁村地域の経済活性化を図るため、①農林水産物等一次産
品や豊かな観光資源を核とした新たな食料関連産業を創出する「農商工連携」の取組、
②海外のニーズに応じた農林水産物の市場を海外に戦略的に展開する「輸出促進」の取
組、③都市と農山漁村の人とものの対流を通じた農林水産業や食料への理解促進の取組
等を積極的に推進することが重要である。
- 196 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
<豊かな資源を活用した地域経済の活性化>
活性化のための主な支援策(平成20年度からの取組を含む)
(1)農商工連携による新たな産業の創出、(2)輸出促進による海外市場への進出、
(3)都
市と農山漁村の交流等地域間交流の促進など、豊かな資源を活用した地域経済の活性化のた
めの主な施策には、以下のようなメニューが用意されています。
(1)農商工連携による新たな産業の創出のための制度等
地域産品等の販売促進・新商品開発、地域資源の発掘、新市場の開拓、地域における知
的財産の「創造・保護・活用」、農業関連施設と中小企業関連施設の連携などを支援
①【農商工等連携促進法】
②【中小企業地域資源活用促進法】
③【食料産業クラスター展開事業】
(2)輸出促進による海外市場への進出支援メニュー
①【マッチング支援】
・国内外バイヤー等を招へいした商談会、セミナー等の開催など
②【海外高級スーパー等での販売、PR支援】
・アンテナショップの開設、PRイベントの開催、日本食・食材のPR等
③【組織的な輸出拡大への支援】
・明確な目標を持った組織的な輸出促進の取組支援
④【輸出関連の相談・情報提供等】
・農林水産物等輸出相談窓口の開設、輸出農林水産物リーフレットの作成・配布など
(3)都市と農山漁村の交流支援メニュー
①【農山漁村活性化プロジェクト支援交付金】
・地域の自主性と創意工夫を活かした活性化計画の実施を支援
②【子ども農山漁村交流プロジェクト(総務省、文科省、農水省が連携)】(平成20年度か
らの取組)
・小学生の農山漁村での長期宿泊体験の受け入れやサポート体制の整備等を支援
③【農村コミュニティ再生・活性化支援事業】
・都市から農山漁村への定住促進、農村地域での産業連携による農村経済活性化活動を支
援
④【農山漁村-ふるさと-地域力発掘支援モデル事業】
(平成20年度からの取組)
・地域の有形無形の地域資源を活用した地域づくりを行う人材の発掘と起業を支援
⑤【地方の元気再生事業(内閣官房)】
・地域住民・団体の発意による地域産業や農村産業振興、生活交通確保などを、包括的、
総合的に支援
- 197 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
<事例>
施設整備等による活性化の目標となる先進的な取組事例
青 森 県
① 農家蔵の保存・利活用とグリーン・ツーリズムの推進
地元の大学や学校、他のNPO法人や団体と連携して広域的なグリー
ン・ツーリズムを展開。
② 田舎体験を通じた定住促進による地域おこし
白神山地の自然の豊かさを通した環境教育を実施。
また、定住促進推進バンク協議会を立ち上げ、首都圏での相談会や
現地下見ツアー開催等の情報を発信。
③ 地域資源を活かして都市との交流を
都市住民等との交流を促進する施設として「かそせいか焼き村」を整
備し、地元の婦人を中心に「いか焼き友の会」を結成し、地域資源であ
る海産物等の加工品を販売。
農家蔵ウォッチング
(平川市)
廃小学校が提供する田舎
ぐらし体験
(鰺ヶ沢町)
いか焼き村の販売風景
(深浦町)
④ 鶴にこだわる町づくり
津軽富士見湖、道の駅などの観光施設を鶴にこだわり整備し、地元
農産物、農産加工品の販売や観光情報を提供し、都市住民等との交
流を促進。
鶴の舞橋
(鶴田町)
岩 手 県
⑤ 鱒沢地区における農村と都市との交流の取組
農・林事業で整備した施設を利用し、地元産の蕎麦を使用したそば打ち
体験、炭焼き体験等のイベントを開催し都市住民と交流促進が図られ、地
域が活性化。
⑥ 廃校を利用した農村体験宿泊施設の提供
高齢者・障害者も楽しめるユニバーサルデザイン、バリアフリーを実現し
た廃校を利用した宿泊施設を整備。
岩手県立大学社会福祉学部との連携により、福祉施設からの宿泊、グ
リーン・ツーリズム体験の受入を行うなど、全ての人が楽しめるグリーン・
ツーリズムを推進。
地ビール祭り
(遠野市)
廃小学校を利用した
農村体験宿泊施設
(八幡平市)
宮 城 県
⑦ 里山型コミュニティビジネスの展開による地域の活性化
地域活性化のための拠点施設のシンボルである古民家を活用した地
場産品料理の提供や地元音楽家・話し家等との連携によるイベントの開
催、小学校との連携による農業体験を通じた食育の提供等により地域の
活性化を促進。
小学生の農作業体験
(仙台市)
⑧ 滞在型市民農園を通じた農業資源の観光利用
町内における農業資源の観光利用を促進するため、都市住民との交
流拠点として2カ所の滞在型市民農園の整備を通じて、グリーン・ツー
リズムを推進。
クラインガルテンでの
交流イベント(丸森町)
⑨ 廃校を利用したグリーン・ツーリズムによる地域活性化
農業・林業・漁業体験、歴史、食、自然等あらゆる資源を活用した100
を超える体験メニューを用意。
地元の運営参加意欲が強く、地域連帯感の新たな醸成と地域コミュニ
ティの発展により地域が活性化。
- 198 -
廃小学校を利用した宿
泊施設(南三陸町)
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
秋 田 県
⑩ いものこオーナー制度で消費拡大と消費者との交流を図
る
地域の特産品ブランドである「山内いものこ」を活用し、いものこオー
ナー制度を創設し、生産者と消費者との交流、いものこの消費拡大を狙
い「山内いものこふれあい農園」を開設。
収穫祭のイベントを通しても交流を促進。
⑪ 鹿角の伝統に培われた食品と工芸品の都市住民とのふ
れあい
日本三大ばやしのひとつ「花輪ばやし」の屋台を一堂に展示するお祭
り展示館、しそ巻き大根等地場産の野菜を材料とする手づくり体験館等
からなる「鹿角ふるさと館」を整備し、都市住民や子供達に地域の伝統文
化体験、地場食材の提供等を実施。
いものこふれあい農園
(横手市)
きりたんぽ作り体験
(鹿角市)
山 形 県
⑫ 豊かな自然とふれあう地域づくり
ほ場整備事業を契機に団地化が図られたそば畑を活用し
た「そば花まつり」やじゅんさい沼を活用した「じゅんさい祭り」
のイベントに取り組み、地域内交流と都市住民との交流が活
性化。
⑬ 田舎暮らしや農業体験を通じた定住促進による
地域の活性化
交流型農家レストランの運営や廃校を活用農村体験プロ
グラム(年4回の都市農村交流活動「四季の学校」)と、通年
行われるそば打ち等の農村体験講習会を通じ、都市から農
村への定住促進を推進。
⑭ 総合交流施設による活性化
交流促進施設(ふらっと)、コテージ村、農産物直売所、鮮
魚直売所等の整備により、多様な分野での交流で都市住民
の受入を拡大し、都市農村交流を展開。
じゅんさい摘み体験
(村山市)
四季の学校における雪
おろし体験
(金山町)
ボランティアによる森林
整備活動
(遊佐町)
福 島 県
⑮ 花実の里(福舞里<ふぶり>プラン)
岳山果樹生産組合による遊休農地を活用したワイン醸造用のブド
ウ栽培、「しらさわワイン」の販売などを通じて地域の活性化に寄与。
遊休農地を利用したワイ
ン葡萄づくり
(本宮市)
⑯ さくら湖を中心とした三春の里の構想
三春の里田園生活館に地域農産物直売所を開設し、地場の食
材を使用した加工品の製造販売、食事の提供。
また、三春ダム・さくら湖を中心に、星を見る会、四季を通じた野
鳥・植物・昆虫等の観察会等のイベントを開催し交流人口の増大を
図る。
星座観察会
(三春町)
⑰ 地域産業との連携を通じた都市からの定住促進
地元の特産品の商品化(試作品の開発)や品評会を開催し、異
業種連携による地場産業の育成を推進。
また、都市から農村への定住等を促進するため、都市住民を対
象に土地・建物等の情報をホームページにより情報発信するととも
に、定住相談会などを開催し、地域の活性化を推進。
- 199 -
定住相談会
(飯舘村)
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
用語等解説
*1、*2は文中で説明
*3 農業集落
自然発生的な地域社会であって、家と家とが地縁的、血縁的に結びつき、各種の集
団や社会関係を形成してきた農村における基礎的な単位であり、一般に、「むら」、「郷
(ごう)」、「作(つく)り」、「地下(じげ)」、「村内(むらうち)」、「組(くみ)」などと呼ば
れている。
昭和30年臨時農業基本調査(以下「臨農」という 。)においては、「農家が農業上相
互に最も密接に共同しあっている農家集団」と定義し、1970年センサスにおいては、
臨農の考え方を踏襲しているが、農業集落の範囲を属地的にとらえ、一定の土地(地
理的な領域)と家(社会的な領域)とを成立要件とした農村の地域社会であるという
考え方をとり、これを農業集落の区域とした。以降この考え方を踏襲している。(北海
道、及び沖縄県においては、行政区の範囲をもって農業集落としている。)
*4 高速インターネット:
ブロードバンド(Broadband)は、一般的には「インターネットへの高速通信」とい
う意味で用いられており、具体的にどの通信速度からブロードバンドと呼ぶという明
確な定義はなく、ここでは、①「高速インターネットアクセス網」(音楽データ等をス
ムーズにダウンロードできるインターネット網)②「超高速インターネットアクセス
網」
(映画等の大容量映像データでもスムーズにダウンロードできるインターネット網)
のことをいう。
ブロードバンドを実現する代表的な接続方式として、「ケーブルインターネット」「A
DSL」があり、特に、超高速ブロードバンドを実現する接続方式として「光ファイバー
(FTTH)」がある。
*5 地域資源
①産地直売所:
生産者が自ら生産した農産物(加工品を含む。)を生産者又は生産者のグループが、
定期的に地域内外の消費者と直接対面で販売するために開設した場所又は施設をい
う。
なお、市区町村、農協等が開設した施設や道の駅に併設された施設を利用するもの、
並びに果実等の時季に限って開設されるものは含むが、無人施設や自動車等による移
動販売は除く。
②市民農園:
農地を第三者を経由せず、非農家への貸付又は農園利用方式により利用させて利用
料金を得ている事業をいう。
*農園利用方式
相当数の者を対象に、定期的な条件でレクリエーションなど営利以外の目的で継
- 200 -
第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
続して行われている農作業の用に供するものであり、賃借権その他の使用及び収益
を目的とする権利の設定又は移転を伴わないもので当該農作業の用に供するものに
限られるものをいう。
③農業・農村研修資料館:
農業関係の研修、農業・農村に関する資料の展示、農業・農村体験等を行っている
施設をいい、都市と農村との交流や地域活性化を図るための飲食、物販、レクリエー
ション等複合的機能を併せ持つ施設を含む。なお、国や地方自治体のほか、民間、第
3セクター等が管理・運営しているものを含む。
④農業公園:
農業振興を図る交流拠点として、生産・普及・展示機能、農業体験機能、レジャー
・レクリエーション機能等を有し、農業への理解の増進や人材の確保育成を図るため
の公園をいう。なお、国や地方自治体のほか、民間、第3セクター等が管理・運営し
ているものを含む。通常「○○農業公園」等と称される。
⑤森林・林業研修資料館:
林業関係の研修、森林・林業に関する資料の展示、森林・林業体験等を行っている
施設をいう。都市と山村との交流や地域活性化を図るための飲食、物販、レクリエー
ション等複合的機能を併せ持つ施設や市街地に所在する常設の施設を含む。なお、国
や地方自治体のほか、民間、第3セクター等が管理・運営しているものを含む。
⑥体験実習林:
植林、下刈り等林業生産活動等の体験学習を行うことを目的として提供されている
林業体験林、林業学習林等の森林をいい、国や地方自治体のほか、民間、第3セクタ
ー等が管理・運営しているものを含む。なお、大学、高等学校、小中学校等の学校林
は、広く一般に提供されている場合のみ含む。また、森林・林業研修資料館に併設さ
れ、一体的に利用されているものは除く。
⑦森林レクリエーション施設:
国民の保健・文化・教育に広く利用されることを目的とした施設であり、山林の地
形や樹木の存在を活かし、森林と施設が一体的なものとして利用されており、森林計
画の対象森林の中に存在、もしくはその森林を活用した施設をいう。森林公園、キャ
ンプ場のほか、スキー場、野鳥観察施設、木工体験施設、炭焼き体験施設、フィール
ドアスレチック場、オリエンテーリングコース、ピクニック広場等を含む。なお、国
や地方自治体のほか、民間、第3セクター等が管理・運営しているものを含む。
*6 地域資源を活用した交流事業
①農山村地域資源を活用した観光客の受入:
農山村地域にある資源がもたらす景色・景観を鑑賞することなどを目的として訪れ
る都市部等からの不特定の観光客を受け入れることをいう。なお、受入対象者が特定
され、あらかじめ一定の準備が必要な以下の項目(交流事業)とは区別される。
②産地直送を介した交流:
農協や生産組合等が行っている農林水産物の消費者等への産地直送や直送先の住民
を生産現地へ招待する等の交流をいう。なお、農山村地域の住民だけでなく、観光客
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
等も対象として、定期的に開催されている農林産物の青空市、朝市も含む。
③児童、生徒の農林業体験学習の受入:
児童、生徒が校外学習等で農山村地域において農林業に係る作業の体験等を通じ、
農林業への理解を深めるものをいう。
④農林業ボランティア活動を介した交流:
過疎化、高齢化等による農山村地域の多面的機能の低下を防止するために、都市部
の住民等がボランティアで、農林業の作業を手伝うものをいう。グリーン・ツーリズ
ムの態様の一つとして位置づけられ、具体的には、援農ボランティア、森林の下草刈
り等が該当する
*7 地域活性化4本部
以下の4つの地域再生関連本部のこと
①都市再生本部
平成13年5月内閣に設置(都市再生特別措置法)
環境、防災、国際化等の観点から都市の再生を目指す21世紀型都市再生プロジェク
トの推進や土地の有効利用等都市の再生に関する施策を総合的かつ強力に推進するこ
とを目的とする。
②構造改革特別区域推進本部
平成14年12月内閣に設置(構造改革特別区域法)
各地域の特性に応じて規制の特例措置を定めた構造改革特別区域を設定し、教育、
農業、社会福祉などの分野における構造改革を推進し、地域の活性化を図り、国民経
済を発展させることを目的とする。
③地域再生本部
平成15年10月内閣に設置
地域経済の活性化と地域雇用の創造を、地域の視点から積極的かつ総合的に推進す
ることを目的とする。
④中心市街地活性化本部
平成18年8月内閣に設置
中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進
し、地域の振興及び秩序ある整備を図り、国民生活の向上及び国民経済の健全な発展
に寄与することを目的とする。
*8 地方再生モデルプロジェクト
平成19年度において、雇用情勢の厳しい8道県を対象に、政府が策定した地方再生
戦略に沿って、地域の自由な取組を支援策として「地方再生モデルプロジェクト」を
実施。これは民間の発意を公とのパートナーシップにより後押しするなど、地域の経
済活性化に寄与するプロジェクトを発掘・構築し、関係支援施策を緊急かつ総合的に
実施するもの。
なお、東北管内の支援対象プロジェクトは以下のとおり。
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第2部
東北の農山漁村活性化の現状とこれから
*9 地方の元気再生事業
地方再生の総合的な支援の一環として、平成20年度から、「地方の元気再生事業」を
実施。この事業は、国がメニュー等を決めずに、地域の創意工夫や発想に基づく自由
な取組の立ち上げを包括的に支援するもの。各地域の提案の中から支援するプロジェ
クトを選定し、立ち上がり段階における地域づくりの専門家の派遣や社会実験の実施
などのソフト分野を中心に国が包括的かつ集中的支援を実施。
*10 団塊の世代
団塊の世代とは、第二次世界大戦直後の日本において昭和22年(1947年)から24年
(28年、または30年生まれまで含める場合もある)にかけての第一次ベビーブームで
生まれた世代の呼称。
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東北 食料・農業・農村情勢報告
平成21年 2月
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集
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画
農
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〒980-0014 仙台市青葉区本町三丁目3番1号(第一合同庁舎)
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