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第9号を発行しました - 自殺対策支援センターライフリンク
(1) 新しいつながりが 新しい解決力を生む ライフリンク通信 第 9 号 足立区と協定締結 月 日、ライフリンクは足立区(東京)と「生きる支援のネットワーク構築(自殺総合対策推進)事 業に関する協定書」を締結し、自殺対策の都市型モデル作りに乗りだした。6月には区民を対象としたシ ンポジウムを共催し、7月には自死遺族の「分かち合いの会」を合同で発足。近藤やよい区長のリーダーシッ プの下、ライフリンクの粋を集めた様々な取組みが、今後も切れ目なく、足立区で戦略的に展開されてい くことになる。 「自殺対策都市型モデル」構築へ 全国初の試み始動 26 自殺対策支援センター ライフリンク 代表 清水康之 9号 ライフリンク通信 第 2009( 平成 21) 年 9 月 5 日 編集責任者 勝木勇夫 協定書を交わす近藤足立区長と清水代表 といった推進戦略である。 月) 他 に も、 自 殺 予 防 月 間( 中に、図書館や区の庁舎、区内を 走るコミュニティーバスを活用し た 啓 発 キ ャ ン ペ ー ン を 行 っ た り、 携帯版の「生きる支援の総合検索 サイト~ライフリンク 足立区」 を立ち上げたりして、区民向けの 啓発事業(支援策の周知)を積極 的に推し進めていく計画だ。 ラ イ フ リ ン ク と し て は、「 自 殺 対策の足立モデル」を一日も早く 構築し、全国の中核市や大都市が 参考にできるような形で広く公表 していきたいと考えている。 *■活動の5本柱■ 9 発 に つ な げ て い く こ と。 自 殺 対 策 を 実 務 と 【⑤啓発活動】実務面でのあらゆる活動を啓 現場の視点で監視すること。 い る「 行 政 の 責 務 」 が 果 た さ れ て い る か、 【④行政の監視】自殺対策基本法に謳われて ばよいのか、具体的なモデルを提示すること。 て、 ど の よ う な 対 策 を ど う 立 案・ 推 進 す れ 【③自殺対策のモデル作り】自殺実態に即し ければ効果的な対策は望めない。 ) 作ること。 (自殺の実態を正しく捉えられな 効果的な対策を実施するための基礎資料を 【 ② 自 殺 の 実 態 解 明 】 対 策 の 枠 組 み の 中 で、 自殺対策に取り組むための枠組みの整備。 自 殺 総 合 対 策 大 綱 の 策 定 な ど、 社 会 全 体 で 【①自殺対策の基盤作り】自殺対策基本法や DB 7面 2~5面 啓発を車の両輪として機能させていくこと。 足立区シンポジウム関連記事 河村官房長官へ申し入れ記事 自殺対策を効果的に推進させるた 携)で、連動していく推進体制を 自治体とNPOが連携して推進 する全国初のこの試みは、近年特 め に、「 生 き る 支 援 の ネ ッ ト ワ ー 目指す。足立区内の社会資源を総 に都市部で自殺者が急増している ク構築事業」には、いくつかの特 動員して、有機的な「生きる支援」 ことを踏まえて、ライフリンクが 徴的な仕掛けを組み込んでいく必 の拡充を図るねらいである。 東 京 都 の 自 殺 対 策 モ デ ル 地 区 に 要があると考えている。 もうひとつの仕掛けは、自殺対 なっている足立区に協働を呼び掛 そのひとつが、区長とライフリ 策の推進戦略だ。足立区において け て 実 現 し た。 ( モ デ ル 作 り は、 ンク代表とが定期的に意見交換す は実務面でも啓発面でも、施策を ライフリンクの 「活動の5本柱*」 るための「自殺対策戦略会議」の 単発的に行うのではなく、それぞ のひとつでもある。) 新設だ。これにより、庁内の関係 れが連動する形で戦略的に推進し ま だ 案 の 段 階 の も の も あ る が、 部 局 で 作 る「 自 殺 対 策 庁 内 会 議 」 ていければと考えている。 とは縦軸(指揮)で、また地域の 例えば、地域の関係機関による 関係機関で作る「足立区自殺対策 連携促進のために「生きる支援の 地域ネットワーク」とは横軸(連 フローチャート」を作成し、メン タ ル ヘ ル ス や 多 重 債 務 と い っ た、 分野ごとの問題解決までの連携の 流れを明確にする。そして、様々 な分野の相談員を集めて、そのフ ローチャートを用いた合同の研修 会を開き、「顔の見えるつながり」 を作る。さらには、そうした一連 の実務的な取組みをメディアに報 道してもらうことで広く啓発にも つなげ、その上、報道してもらう ことで関係者の士気を上げていく 5 〒 102-0071 東京都千代田区富士見 2-3-1 信幸ビル 302 Tel.03-3261-4934 FAX.03-3261-4930 http://www.lifelink.or.jp 足立区 管理職を集めたトップセミナー お問い合わせ先:03-3261-4934(ライフリンク) 25 2 20 1 6 10 1 シンポジウム 2 1.3 3 大切な人を自殺で亡くした時、その痛みを抱えながら どう生きていけばいいのか。安心して痛みと向き合うこ とのできる社会を、どう築いていけばいいのか。シンポ ジウム「自殺による死別の痛みを抱えて~自死遺児たち の歩み、そして~」が 月 日、東京都足立区北千住の シアター1010で開かれた。同シンポジウムは、足立 区 と ラ イ フ リ ン ク と が 共 同 で 主 催 し、 足 立 区 民 な ど 約 300人が参加した。 「自殺対策の都市型モデル」を構 築する事業のスタートとなった。 10 いる。内訳は、年代では 代以 上 が 約 分 の を 占 め 多 い が、 自殺されており、 年で町会1つ 代の亡くなった方の 人のう がなくなったとも言えます。本当 ち 人が自殺で、若い世代の死 に生きたいという声にならない叫 亡では自殺が大きなウエイトを びを受け止められる足立区であり 占めている。原因では、病苦が たいと思い、そういう職員を育成 位、経済生活問題が 位、そ していくために、ライフリンクの の他、家庭問題、勤務問題の順 皆様方、そして他の自治体で実績 になる。まとめると、足立区は を上げていらっしゃる事例を参考 東 京 都 と 比 較 し 歳 以 上 が 多 に、この足立区でネットワーク事 く、経済生活問題が若干高い傾 業を推進してまいりますので、ご 向、などと報告した。 協力をお願いします」と決意を述 この後、ライフリンク代表の べた。 清水氏が「今なぜ自殺総合対策 次いで中田善樹衛生部長が、足 な の か 」、 自 死 遺 族 の 南 部 節 子 立区の自殺の現状について報告し 氏が「遺族からのメッセージ」、 た。区内の自殺者は平成 年度が 秋田大学医学部長の本橋豊氏が 161人と 区で 位、 年度が 「 実 践! 自 殺 対 策、 自 殺 が 減 っ 168人で同 位と、相変わらず たまち秋田県の挑戦」をテーマ 高い。人口 万人当たりの比でみ にそれぞれ講演し、研修を行っ ると、東京都と比べ 倍となって た。 7 シンポジウム「自殺による死 別の痛みを抱えて」に先立つ 月 日、「 足 立 区 こ こ ろ と い の ちの研修会(自殺対策トップセ ミ ナ ー)」 が、 足 立 区 役 所 中 央 館庁舎ホールで開かれた。同研 修会には、近藤やよい足 立区長のほか区議、区の 管理職ら約400人が参 加した。 まず、足立区とライフ リ ン ク と の 間 で、「 足 立 区生きる支援のネット ワーク構築(自殺総合対 策推進)事業に関する 協定書」の交換式が行 わ れ た。 続 い て 近 藤 区 長 が 挨 拶。「 こ の 年 で 1616人の方が区内で 19 5 23 27 6 27 シンポジウムは、第1部で自死遺児の体験談、第2部 で日本の自殺対策のきっかけを作った自死遺族の実情と 遺児たちの歩みを紹介。第3部では著書『生きる意味』 などで知られる文化人類学者の上田紀行氏、ライフリン ク 代 表 の 清 水 康 之 氏、 自 死 遺 児 で も あ る 自 死 遺 族 支 援 ネットワーク 代表の山口和浩氏の3氏が、これまで遺 族が置かれてきた実情、これからの社会に何が必要か、 何ができるのかなど、本音を縦横に話し合った。 6 Re 26 足立区こころといのちの研修会 近藤やよい 足立区長 10 19 18 月 日 の シ ン ポ ジ ウ ム「 自 殺 による死別の痛みを抱えて」で呼 び か け ら れ た、 足 立 区 分 か ち 合 い の 会 が、 月 日( 金 ) 午 後 時 半から足立区中央本町保健総合セ ンターで開かれた。 会は自殺により家族を亡くされ た 方 が つ ど い、 そ の 悲 し み を 安 心 し て 分 か ち 合 う た め の も の で、 第 1 回 目 と な る こ の 日 は、 お 人 の ご 遺 族 の 方 が 参 加 し た。 足 立 区 で は、 今 後 毎 月 第 1 金 曜 日 に 同 所 で 開催していくことにしている。 足立区で第 1 回分かち合いの会を開催 「自殺による死別の痛みを抱えて」 ~自死遺児たちの歩み、そして~ 10 庭の相談など、市民のさまざまな 悩みを抱える相談者を次につなげ 冒 頭 に 足 立 区 の 近 藤 区 長 が、 同 事 業 を 始 め た 動 機 を 語 っ た。 痛みを受け止めなければならない ていくネットワークが展開できる 「 私 自 身 長 い 間、 自 殺 は 自 ら 選 窓口を持っているわけで、複数の のではないか。足立区は平成 年 択し他人がとやかく言えないも から 年までに自殺で亡 の、という無知による思い込み くなられた方は1616 「行政だからこそ があり、恥入るばかりです。さ 人。他の自治体に比べて まざまなレクチャーを受ける 市民の痛みを受け止めなければ」 も自殺に抱える様相は根 中、亡くなる方は決して死にた が 深 い も の が あ り、 だ くて死ぬのではない、死の直前 か ら こ そ、 こ の 足 立 区 まで生きていく道はないかとも から自殺をみんなの手 がき、最後の望みを断たれてや で、 何 と か 食 い 止 め て むなく自殺に追い込まれてい いこうという動きを発 く、という事実を知りました。 」 信していきたい」と力 強く述べた。 さらに近藤区長は「行政だか らこそ、仕事、融資、健康、家 ライフリンク通信 第 9 号 新しいつながりが 新しい解決力を生む 2009 年 ( 平成 21 年 )9 月 5 日 (2) 5 17 3 60 2 50 (3) 2009 年 ( 平成 21 年 )9 月 5 日 新しいつながりが 新しい解決力を生む ライフリンク通信第 9 号 第 部 5 90 12 99 遺された子供たち」がきっかけで す。彼ら自身の手で社会の中に居 場所を作っていけるような番組に しなければと、そのことだけは固 く誓っていました。大きな反響を 呼びました。 年の 月には厚労 省が自殺防止対策有識者懇談会を 発 足 さ せ ま し た。 同 年 月 に は、 子供たちが「自殺って言えなかっ た 」 と 過 去 形 で 本 を 出 し ま し た。 この時私はぜひ番組を作りたい と、第3部でも登場する山口和浩 君に取材させてもらい、NHK「お はよう日本」の特集枠で放送され ました。 また、同懇談会は 月に提言を まとめています。内容は、自殺対 策は緊急の課題で、自殺はすべて の国民に起こりうる。包括的な対 策が必要である。精神医学的観点 のみならず多角的検討が必要。追 い込まれた末の死である。対策に おいては実態把握が必要不可欠な ど。未遂者、遺族への支援が極め て重要だということもうたってい ます。 た だ 問 題 は、 こ れ が 提 言 で 終 わってしまっていることです。こ の報告書がまとめられた翌年の 年も 年連続で自殺者数 万人を 超え、過去最大の自殺者数を記録 した。何も行われていませんでし た。自治体も「自殺対策?それ行 政がやる仕事なんですか?」自殺 予防や遺族支援を現場で支えてい る の は 遺 族 自 身 や ボ ラ ン テ ィ ア。 だったら自分が現場に入って行政 を動かしていけばいいと、遅れば 11 3 23 30 せながら気づいて 年にライフリ ンクを立ち上げました。 年 06 月に自殺対策基本法制定 04 そして、必要なのはもう提言で はない、法律だと。これを行政の 仕事にしなければ対策は動かない と考えました。国会で関心を持つ 方 を 探 し、 民 主 党 で 自 殺 問 題 の ワーキングチームを立ち上げた山 本孝史さんと意気投合。 年 月 に自殺対策の法制化を求める3万 人署名を展開しました。尾辻秀久 さんなど他の議員の方も応じてく れ、 年 月に自殺対策基本法が できました。 署名は結果的に 万1055人 分集まったのですが、 人分署名 できる用紙に 人や、ご夫婦 人 だけの署名がたくさん送られてき ました。遺族の方、未遂者の方が 自分の辛い思いを誰にも言えな い。でも法律ができるならば自分 も力になりたいと。遺児たちから 始まった、一歩踏み出してくれた その想いがきっかけとなって、そ れに共感した支持者の方たちの想 いが伝わって、血も流れ涙も流れ、 そうした痛みを伴った活動を通し てできた法律なんだと。だからこ そ、私たちはこの法律をちゃんと 使い倒さなければならない。立法 の経緯を踏まえて、足立区でも遺 族の方たちが安心して悲しめる地 域、社会に、足立区だけではない、 日本をそうしていく必要があると 思っています。 6 06 6 1 10 5 06 桂城 舞 10 2 11 部 自死遺児の体験談 殺未遂をしました。今ここにい られるのはあしなが育英会のつ ど い の お か げ で す。 本 当 は 辛 かったと打ち明けることができ たから。一緒に社会をもっと生 きやすいところに変えていきた い」などと体験を語った。 01 第 次 いで 第1 部 に 入 り、 福 岡 県内の大学に通う桂城舞さん が、父親を自死で亡くした体 験を語った。 「父は有限会社を興し、 年 後に株式会社にする、強くて 自慢の父でした。父は忙しく なり家に帰らなくなって、家 族がバラバラになった。亡く なる数日前に父から食事に誘 わ れ た が、 断 っ て し ま っ た。 亡くなったひと月後に事業不 振で多額の借金があったこと を知った。その後私自身、自 4 実はそうしたことを教えてく れ た の が、 遺 児 の 子 供 た ち で す。 『自殺って言えない』自死遺児の 大 学 生 人 が、 そ れ ぞ れ の 想 い を綴った文集が発行されたのが 2000年の 月です。日本の自 殺者は 年に 万人を超え、 年、 2000年と 万人を超え続けま した。何かおかしい。でもどうし ていいのかわからないし、悪く言 3 3 4 4 2 2 えばほとんどの人たちが見て見ぬ 自死遺族の実情と遺児たちの歩み ふりをしていた。もう子供たちが しびれをきらしたんじゃないかと を忘れて自殺対策を論じることは 思います。わずか ページほどの で き な い、 論 じ て も 意 味 は な い。 冊 子 で す が、「 今 苦 し ん で い る 人 そういうふうに思います。 へ、お父さんお母さん死なないで」 というメッセージ、そして「自死 『自殺って言えない』が 遺児のみんなへ、君は一人ぼっち じ ゃ な い よ 」 と い う メ ッ セ ー ジ。 2000年 月に発行 当時NHKのディレクターで札幌 にいたのですが、読んで頭をガツ ンと殴られたようなショックを受 けました。声にならない声を社会 に伝えていくことが、せめて自分 にできることではと、番組を作り ました。 私が自殺の問題に関わり始めた のは、 年 月 日に放送された NHKのクローズアップ現代「お 父さん、死なないで~親の自殺 4 第2部では清水康之氏が映像 とともに日本の自殺対策のきっ かけを作った自死遺族の実情と 遺児たちの歩みを紹介した。 ◇ 毎年 万人というと1日 人 から100人。遺族というのは 亡くなる方の 倍から 倍いる と推定され、ですから毎年 万 とか 万とかいう人たちが遺族 となっている。 亡くなった方も、 残された方も、それぞれに人生 があって暮らしがあって、そう した人生や暮らしが奪われて いっている。自殺の問題を考え る時には、常にそこを出発点に しなければならない。人の面影 3 1 11 98 2 15 6 02 03 ディスカッション中 そして、 私たちは “痛み” とどう向き合うか 困ったことがあっても見捨てない地域社会に の様子 部 パネルディスカッション 20 第 に、 お 前 た ち は 使 い 捨 て だ、 と 言ったことがありましたが、授業 で「日本では人間は使い捨てだと 思 う 人!」 と 手 を 上 げ さ せ た ら、 半分が「はーい」と。自分が使い 捨てだと思う人間が、自分を尊重 できないし、他の人を尊重するこ とができない。その最悪のケース が秋葉原の車で突っ込んだ事件で すね。絶対人間は尊重されるべき ものなんだというふうにならない と、もう日本社会というのはがら がらと崩れてしまう。秋葉原の彼 だって、追いつめられているから ああなっているので、本当に話を 聞いてくれる人がいたら、ああは 絶対なっていない。 悪魔払いのシステムがない日本 清水 上田さんは、スリランカの 悪魔払いの研究をされて、何か問 題を抱えた人がいた時に、悪魔が 取り付くという形で表現化させ て、それをみんなで治癒するとい う知恵だそうですが、それと今の 日本社会の違いは。 NPO法人自死遺族支援ネットワーク 代表 自分の人生の何かの力になり、そ の場所を巣立っていくことが、本 来 の 目 的 か な と 思 い ま す。 た だ、 そ の 場 所 が あ る こ と の 安 心 感 が、 きっと当事者にはあると思う。だ か ら こ そ、 参 加 者 が い な く と も、 きちんとこの場所を確保していく ことが社会の中に求められている と思います。 上田 大学院の女子学生が 歳く らいの時、夜中に家出したことが あり、歩いていたらお寺があって、 門が閉まっている。インターホン を 押 そ う と し た け ど、 頭 の 中 で 「 今 何 時 だ と 思 っ て い る。 檀 家 で もないのに」というどなり声が聞 こえちゃった。歩いていくと教会 があって、ドアが開いていた。誰 もいない礼拝堂で ~ 分、自分 の人生を考えていたら、すーっと 楽になった。ここが開いていると いうことは、もっとやばくなった ら、ここで泣き叫べば誰かが出て くると思ったら、今日は家に帰ろ うと思った。そして、二度と家出 をすることはなかった。人間落ち る所まで落ちてボロボロになって も、どこかこの社会の中で扉が開 いていて、必ずそこで救う、一緒 に何かしてくれる場があるんだと いう確信が、彼女の人生をちょっ と前向きに動かした。 山口 子供の母子共生とまさに同 じだと思います。本当に困ったら お母さんの所へ行けばいいと子供 が感じ取れるように、愛情を母親 が注ぐと言われます。普段は意識 し な く て も、 本 当 に 苦 し い な と 思った時、戻れる場所が確保され ていれば安心して挑戦できるんだ と思います。 30 受 け 取 ってく れ る 相 手 が いた か ら苦しみを開くことができた 気をくれることはない。 清水 悪循環ですよね。例えば年 末 の 派 遣 切 り が あ っ て、 路 頭 に 迷 っ て し ま っ て、 ホ ー ム レ ス に なってしまったと。メディアは取 り上げますね。そうすると、自分 ももし派遣社員になって派遣切り にあったら、ああいうふうになっ てしまうのではというイメージが 芽生えて。自分が助けてもらえな いのだから、困っている人がいて も助ける気にもならない。その悪 循 環 を 断 ち 切 っ て い く た め に は、 やはり誰かが自分の痛みと向き 合って、勇気を持って誰かに語っ てみる。山口君は、自分で痛みを 社 会 に さ ら け 出 し、 そ の 反 応 に よって想いが変わってという経験 をしているわけだけど、その最初 のきっかけというのは。 山口 1つは自分が1人じゃない ことが安心感を得られたのです が、突き動かすものとしては、や はり目の前に現れた後輩だったと 思います。同じように自殺で親を 亡くした高校生が、思っていた悩 み や 感 じ て い た こ と を 聞 く 中 で、 すべて自分と重なって見えてしま う、結果的に何も変わっていない。 自分だけが変わればいいわけじゃ ないんだと感じたことが大きかっ 山口氏 清水氏 上田氏 困っても見捨てない社会へ 絶対に人間は尊重されるべきもの 支えの場があることで安心感 清水 上田さんは第1部、第2部 をご覧になって、どのような感想 をお持ちですか。 上田 第1部を伺って、すごく大 きな力をもらった感じがするんで す。自殺の問題というと、自殺に 追い込まれる社会的弱者やかわい そうな人がいて、それを助ける側 の 人 が い る よ う に 思 う け れ ど も。 しかし、そうして悲しみに向かい 合ってくれた人の話をダイレクト に 聞 く と い う こ と が、 そ の 話 に よってどれだけ僕の人生が助けら れるか。だからどちらが助ける側 なのか。大きな力をいただいた。 清水 山口君がここまでどうして たどり着いたのか、これまでの歩 みについて話してください。 山口 あしなが育英会という団体 を通して活動してきたことが、就 職という形でいったん距離を置い て、その中で続けてきたことは自 分の体験をシンポジウムや講演会 で伝える作業をしていくのが中心 で し た。 し か し、 清 水 さ ん が よ く、受け取った大人の責任でやる んだという話をされ、じゃあ社会 人となった自分は何ができるのか を模索し、同じ 体験をした仲間 が集える場所を 提供するという 形でサポートが スタートしまし た。自分がそう やって向き合え るようになった のは、苦しみを 開く時、それをきちんと受け取っ てくれる相手がいたということだ ろうと思います。それは当事者だ けでなく、体験がない方が、理解 をしようとしてくれるその姿がも のすごく励みになりました。 穴に落ちると回復が難しい日本社会 清水 康之 氏 2 上田 体験というのは、同じ体験 を持った人しかわからない部分も ありますよね。でも、同じ体験は 持っていないけれども、その体験 はすごくわかって、人生が元気づ けられるというのもあると思いま す。つまり、自殺問題を取り扱う ことが、その問題を超えて今日本 人の多くの人に届くものを持って いると思うのです。 山口 自分が考えているのがまさ にそうだと。同じ体験をした人だ からわかり合える部分もありま す。ただ、そうではない方と話を しても、わかってくれる人、わか ろうとしてくれる人はいるわけで す。私は仕事としては虐待を受け た子供の施設で働いていました が、共通する部分があるんだろう と思います。自分の弱音の部分を 吐くことを許されていないし、吐 いたことで追い打ちをかけられる 状況が社会の中にある。 上田 小泉さんが小泉チルドレン 上田 スリランカの悪魔払いとい うのは面白くて、病院などでは治 らない、お父さんがやる気がなく て塞ぎ込んでいるとか、子供が不 登校になっているとかに、楽しい ライフリンク代表 徹夜の悪魔払いをやって、200 東京工業大学大学院准教授、文化人類学者 ~ 3 0 0 人 の 村 人 が 集 ま る 中 で 死に追い込んだ社会に怒りを 歌ったり踊ったりするんです。ど たし、それが動く原動力になりま ん な 人 に 悪 魔 が 付 く の か と い う 清水 山口君はVTRの中で、僕 した。 と、 必 ず 孤 独 な 人 に 悪 魔 が 付 く。 たちはまだ生きていかなければい そ う す る と、 悪 魔 払 い の 儀 式 を けない、だから堂々と生きてやる、 絶対人間は尊重されるべきもの やって、村人が集まり一緒に笑い と言っているわけですけれど、実 合って。なんだ俺って愛されてな 際 に 彼 は 結 婚 し て 子 供 も 生 ま れ、 いと思っていたけど、これだけ温 当たり前のことなのですが、人は か い 人 に 囲 ま れ て い る ん だ な と。 こういうふうに生きていく。その 日本は悪魔払いのシステムがな 生きる時には悩みを抱えた人が あったら話を聞くよ、助けになる い。 清水 弱音を吐くきっかけを悪魔 よ、ということを、個人個人の付 が付くことで与えられるというこ き合いでやっていきたいし、地域 社 会 に お い て は、 困 っ た こ と が とですね。 上田 そしてみんなで悪魔払いを あっても地域社会はあなたを見捨 した時にその人だけが癒されるの てないよ、この社会はまだまだ生 ではなく、それに参加している人 きるに値する社会なんだ、という たちも元気が出てくるわけです。 ことを行動でもって示していかな ければいけない。 大 事 な のは社 会 に支 えの場 が 上田 例えば、戦後我々は平和憲 確保されること 法と言われるものを持ったけれど も、 年間も 万人以上の方が自 殺 さ れ た と い う メ ッ セ ー ジ か ら、 僕たちが作り上げる憲法のような ものは何なのか。やはりその死と いうものに追い込んでいった社会 の潮流に対して、大きな怒りと憤 りを持ってしっかりとそれを止め るんだ、という決意が今僕たちに 必要だと思う。 3 山口 和浩 氏 清水 山口君が分かち合いの会を 新規に立ち上げていく時に、遺族 の方が最初は来ないかもしれな い、来なくてもいいんだと言って いますけど、どういう意味ですか。 山口 その場所に来てもらうこと が目的ではないですね。その中で それぞれの体験を語る、もしくは 他の方から話を聞くことによって 11 Re 3 清水 ずっと右肩上がりの経済成 長 を 続 け て き て、 弱 音 は 誰 し も 持っていて、それを封じ込めなけ ればならない状況の中、自ら率先 して弱音を吐いてくれることに対 して、勇気というか、自分たちも 弱音を吐いていいんだなと思わせ てくれることが、つながりという ことですか。 上田 もう1つは、日本社会とい うのは一度穴ぼこに落ちると、そ こから回復するのがすごく難しい 社会にどんどんなっていると思い ます。例えば、子供たちも一度ク ラ ス の 中 で レ ッ テ ル を 貼 ら れ て、 おまえは汚いとか言われるといじ めが始まる。 いじめが始まったら、 同じクラスのままでいる間、絶対 自分は回復しない。一度やばい穴 に入ったら、人生の回復はないん だということを、子供たちはずっ と思っている。そのまま社会人に なっていく。構造改革の中で、一 度失敗した人にもう一度チャンス をとか言うけれど、そんなことは 今の社会で誰も信じていない。そ の中で、どんなことがあっても回 復可能なんだ、ということほど勇 上田 紀行 氏 2009 年 ( 平成 21 年 )9 月 5 日 (4) ライフリンク通信 第 9 号 新しいつながりが 新しい解決力を生む (5) 2009 年 ( 平成 21 年 )9 月 5 日 新しいつながりが 新しい解決力を生む ライフリンク通信 第 9 号 被雇用者・勤め人 2000 被雇用者・勤め人 経済・生活問題 0 1500 5 20 20 �月� 3 無職 不詳 健康問題 不詳 自営業・家族従事者 経済・生活問題 ※���������20年�����数�������������21年�月�����数�����3月���������������� (他18件) ※資料:警察庁「平成 20 年中の自殺者数について ( 確定値)」「平成 21 年の月別の自殺者数について(3 月末の暫定値)」よりライフリンク作成 (内閣府「地域における自殺の基礎資料(速報値)」より抜粋) わからない」という指摘があっ た。また、警察データの一部を 内閣府がデータを分析して公表 す る 予 定 だ が、「 エ リ ア の 単 位 が 広 す ぎ、 対 策 に 活 か せ な い 」 との意見も出された。 こ れ ら の こ と か ら、 警 察 庁 の「自殺統計資料」の公表方法 に関して、個人情報保護への配 慮として「3人以下」「他3件」 等の表記上の工夫を必要に応じ て行った上で、市区町村(自殺 対策に取り組む基礎自治体)単 位での公表を原則とし、最大限 対策に活かされるような形で公 表されるよう要望することとし た。 無職 中高年男性の問題だけではなく なってきた。3つ目には生活苦や 失業、就職失敗による自殺が2割 増となっている。一方で負債関連 による自殺は減少したが、これは グレーゾーン金利の撤廃や、市町 村レベルの多重債務者支援が効い ているのではないかと分析した。 次いで、最近の統計発表に関す る 動 き と 課 題 に つ い て 討 議 し た。 今年1月から、毎月、月別かつ都 道府県別のデータが公表されるよ うになり、これも昨年 月と今年 月に急増しており、大阪で %、 愛知で %も激増した。「しかし、 こ れ で は 漠 然 と し て い て、 ど う いった年代のどういった職種の人 がどういった理由で自殺したのか 被雇用者・勤め人 自殺対策を考える議員有志の会 自殺統計資料 2 1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 ��21年 ��20年 2714 2480 2513 2431 2408 2658 2539 2652 2769 2542 2500 2854 2796 3060 3092 2939 3000 12 11 7 7 5 4 4 4 3以下 3以下 無職 20 料は個人情報の暴露に対する配慮 を万全に行った上で、市区町村単 位 で の 公 表 を 原 則 と さ れ る よ う、 野田聖子内閣府特命担当大臣へ要 望すること」で一致した。 まず、清水康之氏が「平成 年 における自殺の概要資料」の分析 結果について報告した。資料から 同氏は3つの変化が読み取れると いう。1つはリーマンショック後 の 月に自殺者数が急増してい る。 2 つ 目 は 代 が 過 去 最 多 で、 8 ��20年1月���21年3月 月����数 ��� 動機は健康問題が上位だが、職業 別を見ると千代田区では被雇用 者・勤め人の方が上位であるのに 対して、立川市では無職の方が男 女とも上位を占めていた。 ■東京都 千代田区 30 07 内閣府から市区町村別データ公表 7 3500 警察署:丸の内、神田、万世橋、麹町 原因・動機 自殺者数 性 職業 なかった特徴が明らかになった部 分もある。 例 え ば、 東 京 都 を 例 に 取 る と、 都心部と郊外では違いがあること がわかる(表)。各地域とも原因・ 被雇用者・勤め人 10 20 なお、行政区分に応じた地域特 性を比較するため、警察署管轄ご とのデータを合わせ行政区分と一 致させた地域区分(人口 万人以 上)を設定し、職業別、年代別自 殺者数、自殺の行われた場所など の集計と分析を行ったものを、 月の自殺予防週間中に公表する予 定という。 ■東京都 立川市 59 行政区によって異なる特徴も 警察署:立川、東大和 原因・動機 自殺者数 性 職業 3 今回のデータはあくまで速報値 ということで、年代に関する情報 が欠けているなど不十分なものだ が、市区町村別に分けられたこと によって、都道府県単位では見え 9 市町村単位での公表を要望 平成 年の警察庁 「自殺統計の概要」が 公表されたのを受けて 月 日、参議院議員 会館議員第1会議室 で、自殺対策を考える 議員有志の会が開かれ た。会議には超党派の 国会議員のほか、ライ フリンクの清水康之代 表、高村和雄事務局長 が 出 席。 「自殺統計資 分析結果を報告する清水代表ら 10 「議員有志の会」やライフ リ ン ク の 働 き か け で、 昨 年 月 に 自 殺 者 の 年 齢、 職 業、 原 因・ 動 機 な ど の 地 域 特 性 を 整 理 し た「 自 殺 実 態 白 書 2008」が公表されたこと を踏まえ、内閣府は「地域に おける自殺の基礎資料(速報 値) 」 を ま と め、 月 日 公 表した。資料は警察庁から提 供を受けた 年および 年の 集計データに基づき、内閣府 自殺対策推進室が都道府県お よび市区町村の自殺者につい て、性別、原因・動機、職業 の状況を整理したもの。 無職 無職 健康問題 不詳 健康問題 勤務問題 不詳 被雇用者・勤め人 女 男 男 男 男 男 男 男 男 1 2 3 3 5 6 6 6 9 9 被雇用者・勤め人 勤務問題 健康問題 家庭問題 不詳 不詳 (他4件) 被雇用者・勤め人 経済・生活問題 30 19 19 14 12 11 7 7 6 4 健康問題 健康問題 不詳 無職 無職 無職 無職 女 男 男 男 男 男 男 女 男 1 2 2 4 5 6 7 7 9 10 5 08 10 (6) ライフリンク通信 第 9 号 新しいつながりが 新しい解決力を生む 2009 年 ( 平成 21 年 )9 月 5 日 (7) 2009 年 ( 平成 21 年 )9 月 5 日 新しいつながりが 新しい解決力を生む ライフリンク通信 第 9 号 月 日の読売新 聞は「河村建夫官房 長官は 日の記者会 見で、民主党の鳩山 代表が党首討論で医 療事故や若者の自殺 問題などを取り上げ たことについて、『お 涙ちょうだいの議論 をやるゆとりはない のではないか。財源 の問題や外交・安全 保障などテーマは 6 17 多々ある』と述べた。長官は『人 の命は重要なテーマだと考えてい るが、情緒的な話をしている段階 ではない』とも語った」と報じた。 このような報道に対し、ライフ リ ン ク 代 表 の 清 水 康 之 氏 は 日、 全国自死遺族総合支援センターの 代表者、尾辻会長、柳澤事務局長 ら「自殺対策議員有志の会」のメ ンバーとともに首相官邸に河村官 房長官を訪ね、その真意を確認す るため申し入れを行った。 その席で清水氏は「先日の記者 会見での ご 発 言 は、自殺 の問題が 情緒的な 話ではな いかと言 われたと いう誤解 が広まっ ておりま す。全国 の の団 体から署 名をもら い皆の想 い も 預 かってき ておりま す の で、 ぜひ官房 長官のほうから改めて自殺実態 に対してのご認識と、自殺対策 へのご決意をお聞かせいただき たい」と述べた。 これに対し、河村官房長官は 「私の言葉がそこだけ一人歩き してしまい、残念に思うし、皆 さんにいろいろな面で申し訳な かったと思っております。これ は鳩山さんとのやり取りの中 で、具体的な対策には財源をど うするんだということで、表現 振りが「お涙ちょうだい式」と 言ったので、自殺問題のことを 言ったのではなかったのです」 と釈明した。 さらに「実際に生活苦が起き て、格差が生まれ、労働疲れで 自殺される方もあり、働く人た ちの大変な思いというのは承知 している。まさに今日の問題が 自殺の問題に集約されていると いうご指摘、私も同感でござい ま す。 今 回 の 予 算 で も 現 場 の 民間団体に使ってもらうため 1 0 0 億 の 基 金 も 作 り ま し た。 今後、今以上にこの問題に取り 組みたい」と述べた。 清水氏はこれに応えて「政府 としてもこの問題を大事に捉え ていて、対策も押し上げてやっ ていただけるということで、非 常に安心いたしました」と述べ た。 河村官房長官に申し入れをする清水代表 チボールをしながら、どうしたら お互い分かり合えるようになるの かを考えたい」と述べ、それぞれ ~ 人のグループに分かれて話 し合った。 「 各 団 体 は 行 政 と ど の よ う な 関 わ り を 持 っ て い る か 」「 自 殺 予 防 と 遺 族 支 援 の 関 係 」「 自 助 グ ル ー プと支援グループを分ける背景」 「社会資源との連携方法」「対象者 によってグループ分けするメリッ ト、 デ メ リ ッ ト 」「 ニ ー ズ に 合 っ た支援とは」など、グループごと にテーマを出し合い、そのテーマ ごとに地域の現状報告と率直な意 見交換を行った。話し合いは夕食 後から時間制限なし、グループに よっては徹夜で続けられた。 横浜から参加した渡邊里香氏 は、集会の感想について「夜中ま で話し合い、課題のヒントをいた だくことができ有意義でした。ま た、メールや電話など顔の見えな い中でのやり取りより、顔を見て 話すことの大切さも改めて気づか されました」と話す。 また、福島のれんげの会の金子 久美子氏は「自分の意見を主張し つつ、寛容の精神を大事にできる 人って素敵ですね。日頃の自分の 言動を見つめ直しつつ、気づきを 与えてくれる多くの人に恵まれた 日間でした」と話している。 全体集会をライフリンクと共催 「そもそも、 自死遺族支援 とは? 自死 遺族支援の現 状とこれから を、本音で語 ろう」をテー マに 月 、 日、全国自 死遺族総合支 援センター全 体集会が東 京・本郷の「つ たや」で開か れた。この日 は北海道、宮 崎、鹿児島な ど 全 国 か ら、 遺族支援に取 り組む団体の 代表らおよそ 人が参加した。 冒頭で同支援センター代表の 杉本脩子氏は「自殺対策基本法 ができて 年が経ち、全国でさ まざまな試みが活発になり、遺 族支援の黎明期ともいうべき時 期ですが、活発になってきたか らこそ見えてきた課題もあるの で は な い で し ょ う か。 今 日 は、 率直な意見交換をしていただけ ればと思います」と挨拶。 全国自死遺族総合支援センター 20 6 19 司会を務めた西田正弘氏も 「支援者かそうでないかの枠や 前提を取り払い、言葉のキャッ 40 「そもそも、 自死遺族支援とは?」 3 5 2 25 35 6 18 「自殺論議はお涙ちょうだい」発言に 河村官房長官へ真意確認の申し入れ 】 【9 月 27 日(日) 地域の対策強化に自殺対策基金 ①基調講演 清水康之氏 「自殺総合対策の軌跡~それは、遺児の「声」から始まった~」 ②検証報告 秋田魁新報社社会部長 「秋田魁新報社は地域の自殺対策にどう関わってきたか」 ③パネルディスカッション ④懇親会 章ではライフリンクの取り組み についても紹介。 姜 氏 は 本 著 の 中 で、「 社 会 」 と は「 絆 に よ っ て 結 び つ い た 人々の支え合いの仕組み」と定 義している。本来ならば、市場 も政府も「人々が支え合う」社 会のためにあるはずが、この仕 組みが「自由競争」そして「自 己責任」に置き換えられ、むき 出しのかたちで個人がリスクを 背負わされるようになり、その 結果としての「破綻」が今現わ れているという。 社会の「絆」が痛み、行き詰っ た時代を生きる我々が、今なす べきことは何なのか。 本書は「希望ある社会」を築 いていくための一つの道標と言 えよう。 亜 ( ) 【9 月 26 日(土) 】 5 1 16 10 ライフリンク 有効に活用されるよう求める 人を自殺へと追い詰める連鎖 の引き金ともなりうる経済危機 の再来。増え続ける自殺者。 にもかかわらず「もっとも大 切な人間の生命に対する畏敬の 念が薄れ、自分たちと同じ国民 団 体 と 半 数 に 満 た ず、「 基 金 の 使 ま で 継 続 的 に 行 わ れ て い て も、 であり仲間である人々が毎年 い道について具体的な話をしてい 行政にとっては初めて支援する 万人以上死んでも、それをほ る/していた」という 団体のう 事業で、それは「新規事業」に とんど大きな問題とせず、無関 ち、 「納得のいく結果が得られた」 当たる。むしろ基金はそうした 心に過ごしている」日本の「い と答えている団体は 団体、 団 活動を支援するために作られた ま」を本書は歴史・国際情勢を 体 は「 話 し 合 い を 続 け て い る 」、 もの。業務委託という形を取る 手掛かりに考察している。第一 残りの 団体は「結果に納得がい ことで民間団体の人件費などを かない」と答えていた。 間接的に支援できる。支援する 際に「新規事業の申請をしてく 内閣府から民間団体 活 用 の 事 務 連 絡 ださい。今やっている活動は支 こ の ア ン ケ ー ト 結 果 を も と に、 援できません」と都道府県が言 内閣府自殺対策推進室長に対して うのは、基金の趣旨からかけ離 基金が有効に活用されることを求 れたナンセンスなことだ。 めた。内閣府もこれに応えて 月 日、各都道府県の自殺対策主管 課にあて「地域自殺対策緊急強化 「理想を実現するための決断(仮)」をテーマに 事業の実施に係る民間団体の活用 姜尚中氏と清水康之氏が対談 等について」 の事務連絡を行った。 同連絡では①相談業務、人材養 成など業務委託により民間団体の 積極的な活用を図ること②設立当 初、設立準備段階にある自殺相談 等民間団体の活動支援を行うこと ③民間団体から活動を聴取するな ど支援のあり方を幅広く検討する こと、以上に留意して事業を推進 するよう指示されている。 「青春と読書」 10 月号 (9/15 発売) 集英社 (定価 90 円) 3 姜尚中氏連続対談の1回目 な 現 実 で あ っ て も、 として清水氏が登場。リー そこから目を背けず ダー、リーダーシップにつ に、社会の現実と向 いて熱く語る! き合う勇気があるこ と。もう一つは、向 ◇ 姜 今、多くの人たちが社 き 合 う だ け で な く、 会に対して閉塞感を抱いて そこからどっちの方 いる。社会の現状にきちん 向に行けばいいのか と対応し、ビジョンを示せ を見出し、自ら踏み るリーダーの出現が求めら 出す実行力があるこ れているともいえる。 と、なんだと思う。 清水 リーダーって何かな (一部抜粋) と考えると、どれだけ過酷 プログラム ( 予定) 希望のある社会のために 2009 年 9 月 26 日(土)13:00 ~ 20:00 秋田ビューホテル 27 日(日) 9:30 ~ 15:45 秋田市文化会館 4 8 清水康之代表コメント 都道府県がこれまで支援してこ なかった民間団体の活動を支援す ることは、たとえその活動がこれ 日時・会場 厳しい経済情勢を踏まえ、政 府は地域の実情に合わせた自殺 対 策 の 強 化 を 目 的 に、 「地域自 殺対策緊急強化基金」を設け る こ と に し た。 予 算 額 は 年 度から 年度までの 年間で 100億円が充てられる。都道 府県はこの基金を用いて、相談 体制の整備、人材養成など、地 方公共団体の対策や民間団体の 活動を支援し、地域における自 殺対策の充実を図ることになっ た。 28 出版元 岩波書店 (定価 480 円+税) 「~いのちを考え、いのちを守る~自殺対策全国フォーラム」 3 21 現場の実情を緊急アンケート 13 23 ところが計画策定、取りまと め の 過 程 で、 「今年度は民間団 体への助成は考えていない」「民 間団体の人件費などの活動費と しては出せない」などとする自 治体があるとの指摘が民間団体 から続出した。そこでライフリ ンクでは、自殺対策基金が本来 のねらい通りに活用されていな い地域の現場の実情を政府に伝 えるため、全国の民間団体を対 象に基金に関する緊急アンケー トを実施した。 「行政から基金の そ の 結 果、 ことで連絡があったか」との質 問 に「 あ っ た 」 と 答 え た の は、 全国の の民間団体のうち、 ①「全国自殺対策連絡会(仮称)」の案内 ②先進事例紹介+行政からの報告 ③分科会 ④総括と意見発表 新しいつながりが 新しい解決力を生む 2009 年 ( 平成 21 年 )9 月 5 日 (8) ライフリンク通信 第 9 号