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米国環境情報

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米国環境情報
情報報告 シカゴ
●米国環境情報
○ 土地管理局、太陽光エネルギーの新規開発の申請受付を続行
米国土地管理局(BLM)は6月に、西部6州における再生可能エネルギー、とりわけ太陽光
エネルギーに対して、新規の開発申請の手続きを一時停止するという方針を示していたが、7月
2日に今後も申請受付を続行することを発表した。土地管理局には既に125件の新太陽光エネルギ
ーの開発申請が出されており、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、ネバダ、ニューメキシコ、
ユタの西部6州からの申請に対しては、同局がその環境的・経済的・社会的影響を評価できるま
での22ヶ月間、審査を停止する予定であった。今回の方針転換は、太陽光エネルギー業界などか
らの強い反発に対応したものである。
○ オースラ社、ラスベガス工場で太陽熱部品の製造を開始
太陽熱コレクター(CSP)設備を開発する大手業者オースラ社は、ラスベガスにある同社の
太陽熱コレクター部品製造工場で太陽熱レフレクター(反射鏡)の製造を開始したことを6月30
日に発表した。13万平方フィートある同工場は、米国で初めての太陽熱レフレクター製造工場と
なり、太陽熱産業の発展を鈍化させていた供給上の制約が解決されることになるという。ラスベ
ガス工場では、年間700MW以上のレフレクター、吸収体チューブ、その他CSPシステム部品を生
産する予定である。これは、50万世帯の年間電力使用量に相当し、世界の太陽熱発電量を倍増さ
せるという。
○ カリフォルニア州、温暖化ガス排出量30%削減を目指すスコーピング計画
カリフォルニア大気資源委員会(CARB)は6月26日、同州の温室効果ガス排出量を今後12
年間で30%削減することを目指す「気候変動スコーピング計画草案」を発表した。この計画は、
2006年9月にシュワルツネッガー知事が署名した地球温暖化対策法により作成された。中心とな
るキャップ&トレード制度は、州内の温暖化ガス排出量の85%を対象としており、米国内7州と
カナダ3州から成る西部気候イニシアティブと協力して開発され、地域的な炭素市場の構築を図
る。また、電力会社に対して電力の1/3を風力、太陽熱、地熱などの再生可能エネルギーから
生産することを提案するとともに、既存のエネルギー効率性プログラムの充実、建物や電化製品
への基準を拡大強化することも提案している。
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○ ハワイ州、新築一戸建て住宅に太陽熱温水器の設置を義務付け
ハワイ州のリンダ・リングル知事は6月26日、同州で最も豊富な再生可能エネルギー源である
太陽熱の利用を増やし、石油への依存度を抑える内容の法案に署名した。これによりハワイは、
新築一戸建て住宅に太陽熱温水器の設置を義務付ける全米初の州となる。2010年1月1日以降、
太陽熱温水器を設置しない新築一戸建て住宅に対しては、森林地帯などの特例を除いて、建築許
可が下りないことになる。同州は、2030年までに使用エネルギーの70%をクリーンエネルギーか
ら賄うという目標を掲げており、今回の法律はエネルギー自給に向けた長期計画の重要な一歩と
なる。
○ フロリダ州、新エネルギー法を承認
フロリダ州のチャーリー・クリスト知事は6月25日、温室効果ガスの排出量を削減しつつ、州
内のエネルギー効率と再生可能エネルギーの発展を目指す、広範囲なエネルギー法を承認した。
同法は、フロリダ公共事業委員会に対して、小売電力のうち再生可能エネルギーの占める割合を
定める再生可能ポートフォリオ基準(RPS)を確立することを求めているが、最低基準値や期
限は設定していない。また、フロリダ環境省に対してキャップ&トレード規制プログラムの設立
を求めているものの、特定プログラムの義務付けや制限付けはしていない。
○ エネルギー情報局、世界エネルギー使用量は2030年までに50%増加と予測
発展途上国の経済成長と人口の増大により、世界のエネルギー消費量は2005年から2030年まで
に50%増加するという予測が、エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された。この
2008年国際エネルギー概要では、現在の石油の記録的な高騰は考慮に入れられておらず、石油の
使用量は今後22年間で26%増加すると推計されている。また再生可能燃料は、2005年の1日50万
バレルから2030年の1日270万バレルへ増大し、水力その他の再生可能エネルギーは年間2.1%、
22年間で58%の成長が見込まれている。一方、温暖化ガス排出量に関する規制等もこれらの試算
に勘案されておらず、温暖化ガス排出量は同期間に51%の増加が予想されている。同報告では、
より現実に近い“石油が値上がり”する場合の予測もしており、この場合、同期間のエネルギー
使用量は44%増加し、そのうち石油は2%減、再生可能エネルギーは73%増、温暖化ガス排出量は
43%増加すると見込まれている。
○ エネルギー省、CCS開発プロジェクトを公募
エネルギー省(DOE)は6月24日、フューチャージェン・アプローチの下で、最先端の炭素
隔離貯留(CCS)技術を利用したガス化複合発電(IGCC)や、その他の商業規模クリーン
石炭発電の開発プロジェクトを募集する資金提供公募(FOA)を発表した。DOEは1月30日
に、フューチャージェン・プログラムへのアプローチを再検討・再構築する方針を示していた。
今回の発表では、プロジェクトの計画概要、申込み方法、初期の技術目標と性能要件、評価基準、
諸条件に加え、フューチャージェン下での官民協力における費用分担要件も示されている。第1
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回のプロジェクトの選考は2008年末までに行われ、議会の承認が得られれば、2009会計年度の総
出資予算額は2億9千万ドル、その後数年間で10億1千万ドルが追加される予定である。
○ 環境保護庁、企業向けに気候パートナーシップ・プログラムの手引きを発行
環境保護庁(EPA)は6月17日、気候変動にともなうリスクと機会に取り組もうとする企業
向けに、「米国EPA気候パートナーシップ・プログラムに対するビジネスガイド」を発行した。
この手引きには、35のパートナーシップ・プログラムの紹介と、企業がそれぞれの業界やビジネ
ス目的に最も適したプログラムを探索できる表が示されている。また、経費削減、経営効率、ビ
ジネスリスク軽減、新規・拡大市場、評価向上とブランド保護など、プログラムによって達成さ
れる環境的価値と参加企業の実例に加えて、環境性能基準、規制開発への準備といったEPAと
協力関係を結ぶ上での利点も説明している。
○ 環境保護庁、商業船舶や娯楽用ボートからの排水規制を提案
EPAは6月16日、商業船舶と娯楽用ボートからの排水を対象とした船舶一般許可(VGP)
制度を提案した。35年間にわたって水質浄化法の適用から除外されてきたこれらの船舶は、裁判
所で認められれば2008年9月30日以降は許可が必要となり、91,000艘の商業船舶と1300万艘の娯
楽用ボートが影響を受けることになる。船舶一般許可の取得が義務付けられるのは、全長79フィ
ート以上の商業船舶と大型娯楽用ボートであり、バラスト水(船体安定のため積む水)を用いる
船舶には沿岸警備隊のバラスト水管理・交換基準等も適用され、デッキ流出水や船底水などその
他排水についてはVGPで技術や水質に関する上限値が定められる。
○ 土地管理局と農務省林野部、大規模な地熱リースを検討
土地管理局(BLM)と農務省林野部は、官有地での地熱エネルギー開発を奨励するために、
アラスカを含む米国西部の大規模な地熱リースに関して、プログラム的環境影響評価書(PEI
S)案を作成した。このPFISは、地熱資源を持つほとんど全ての官有地と国有林をリースの
対象とみなし、その面積は官有地で1億1700万エーカー、国有林が7500万エーカーに及ぶ。これ
に対して代替案では、送電線近隣の地域のみを地熱発電所リース用地に限定している。このPF
ISは6月13日から90日間一般の意見を募集している。
○ エネルギー省と農務省、バイオ燃料が食糧問題に与える影響を公表
エネルギー省及び農務省両長官は6月11日、上院議員宛の書簡の中で、バイオ燃料が食糧問題
に与える影響に関する統計を公表した。万一バイオ燃料ルが無いと仮定すると2008年の米国のガ
ソリン使用量は720億ガロン増加することになり、エタノール生産によって、ガソリン価格はガロ
ン20~35セント値上げ幅が抑えられているという。また、食糧価格が米国で食料品小売コストに
与える影響は限定的であり、エタノールとバイオディーゼルに起因する米国の食料品小売価格の
上昇は過去1年半で3~5%に過ぎないとしている。
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○ 環境保護庁、メキシコ湾の低酸素水域削減へ補助金
環境保護庁(EPA)は6月10日、メキシコ湾北部の低酸素水域の回復を図るため、420万ドル
の補助金を交付する計画を発表した。メキシコ湾にオハイオ川とミシシッピ川から養分が流れ込
む水域では、水生生物が生存できないほどの低酸素水域となっており、EPAはこれらの水域の
窒素、リン等の削減を目指し、水質汚濁物質キャップ&トレード制度など排出量取引プログラム
を利用した補助申請を募集する。市場ベースのアプローチは、汚濁物質の削減目標を設定し、目
標達成のために排出源に対して排出枠を売買することを容認することで、迅速に低コストかつ容
易に水質基準を達成できると考えられている。
○ サンフランシスコ市、全米最大の太陽光インセンティブ
サンフランシスコ市議会は6月10日、住宅と商業ビルに対して太陽光エネルギーシステムの設
置を促進する10年税額控除プログラムの設立を承認した。これは昨年12月にニューサム市長から
提案されていたもので、市町村として全米最大の太陽光インセンティブ・プログラムとなる。同
プログラムでは、太陽光エネルギーシステムを設置する住宅所有者に3,000~6,000ドル、ビジネ
スや非営利団体には1万ドルまで、特に住宅プロジェクト関係の非営利団体には3万ドルまでの
税額控除を認めるというもの。同プログラムへの予算は300万ドルで1.5MWまでのシステム設置に
対応でき、そのほか、非営利団体と低所得地域を対象とした1年間のパイロット・プログラムへ
150万ドルが出資される。
○ 再生可能エネルギー生産税額控除の延長案、打ち切り
上院では6月9日、風力や太陽光など再生可能エネルギー開発に対する生産税額控除を延長す
る法案について議事進行妨害採決が可決しなかったため、審議は打ち切られた。米国風力エネル
ギー協会等の関係団体は、議会で再び延長案を成立させることができなかったことへの苛立ちと、
再生可能エネルギーに対する投資が減少する懸念を表明し、税額控除の迅速な延長に向けて他の
道を早急に探るよう議会に訴えている。
○ 環境保護庁のグリーンチル先進冷蔵パートナーシップ、温暖化ガスと経費削減に大きな成果
環境保護庁(EPA)がスーパーマーケット、先端的冷蔵システムメーカー、化学メーカーな
どと協力して昨年11月に創設した「グリーンチル先端的冷蔵パートナーシップ」は、参加企業が
3倍の28社に増え、温暖化ガス250万トンの排出の抑制に貢献したことが発表された。これは自動
車50万台の1年間の排出量に相当する。2007年には企業ごとに冷媒関係の排出量を測定するため
の基本測定値を設定し、2008年には冷蔵冷凍管理計画を開発した。参加スーパーマーケットは、
オゾン層を破壊する冷媒や温暖化ガスを削減し、同業他社と比べて既に操業コストを1300万ドル
節約している。
○ 上院、リーバーマン・ワーナー法案の審議打ち切り
上院のリーバーマン・ワーナー気候安全保障法案は、6月6日の審議続行を問う本会議で賛成
48-反対36の結果となり、審議は打ち切られた。次期大統領候補のジョン・マケインとバラク・
オバマの両氏は、温暖化ガス排出量削減のためにキャップ&トレード制度の支持を表明している。
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