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(社)日本通信販売協会

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(社)日本通信販売協会
【平成20年
特定商取引法等改正案説明会
要旨】
説明開催日:平成20年4月21日
説明会主催:
(社)日本通信販売協会
説明者:経済産業省消費経済政策課
石塚
1.はじめに
今回の特定商取引法の改正案は、法制定時から維持されてきた指定制の見直しがなされる
など、かなり大がかりな改正になっています。ただし、現段階では改正案(政府案)が国会
に提出されているだけの段階です。よって、政令や省令に委任している部分について、それ
らがそもそも委任事項となるかどうかも決定されていませんので、その内容について、確定
的なことを申し上げることはできません。また個々の改正事項の解釈、運用についても、検
討段階において可能な限りの精査はしていますが、改正法案成立後さらに広くご意見を頂戴
して内容の検討を進めます。そういう意味で、今回の説明の内容は、現時点までの議論を踏
まえてものであり、国会審議などにより、今後変更・修正があり得るものであることに留意
いただきたいと思います。
2.指定商品・役務制の見直し
①限定列挙から原則適用方式へ
現行法では、訪問販売規制、通信販売規制、電話勧誘販売規制の3つについては、指定商
品・指定役務・指定権利という規制対象の客体を政令でリスト化する制度がとられています。
「訪問販売等に関する法律」が昭和 51 年に制定されたときから、この指定制という制度
には問題があるのではないかとの指摘がなされてきました。もちろんトラブルの実態等々を
踏まえるとなかなか指定制を廃止して、物品サービス全般について投網のように規制するこ
とが適当と言えるかという議論も根強くあり、20 年以上の間にわたり、この指定制は維持
されてきました。
その一方、特定商取引法はここ数年に1度のペースで法律改正をしています。その度に、
指定対象の物品やサービスを増やしてきました。最近でも法律改正の議論とは別に、喫緊の
対応として、昨年の7月に指定商品として「調味料」を、指定役務「占いの後に行われる援
助・指導」や「海外のマーケットで行われる商品取引の仲介サービス」、その一部は『「ロ
コ・ロンドン」まがい取引』などと呼ばれていますが、そういった取引仲介サービスを、特
定商取引法の対象とする政令改正をする必要に迫られました。
そもそも、悪質な事業者にとっては、取引の対象、つまり商材は何でも良いのであって、
極力規制の弱い方へと流れて行くというのは理の当然であり、我々行政処分を行っている側
の実感でもあります。今回の改正では、こうした議論や実態を踏まえ、指定商品制・指定役
務制については指定制を改め、いわば限定列挙方式から原則適用方式に変える改正を国会へ
提案しています。
なお、指定権利については、現行の指定制を変えない事としています。理由は2つあり、
1
実態論として、指定権利をめぐるトラブルがほとんど起こらなくなっていることです。もう
1点は、指定権利制という仕組みが、そもそも指定商品や指定役務とは、その趣旨が異なる
からです。本来、特定商取引法は販売業者規制法であり、指定権利についても、その権利の
行使によって提供を受けることのできるサービスの提供事業者には、特定商取引法の規制は
及んでいることとなります。一方、指定権利に対する規制は、勧誘者に対する規制として機
能しています。つまりサービスの提供事業者ではなく、権利の売買契約の締結の勧誘をする
事業者を規制対象とするという意味で、指定権利制は指定商品や指定役務のような契約の客
体としての規制対象を画するというよりは、契約の主体としての規制対象者を画していると
いう性格を持っているのです。そこで、そのような制度、つまり規制対象の範囲の考え方の
転換をするべき必要性についての検討がさらに必要であろうということで、今回の特定商取
引法改正検討の議論においても、商品と役務についての指定制の見直しを優先的に検討して
きました。
②適用除外
今回の改正法案が成立し、指定商品・指定役務制は廃止となり、原則適用方式になれば、
およそ通信販売事業者が取り扱っている商品やサービス全てについて、特定商取引法のルー
ルが適用されることになります。ただし、その商品や役務の中には、特定商取引法の規制に
服することが適当でないものもあるだろうということから、所要の適用除外措置を講じるこ
ととしています。
訪問販売、電話勧誘販売については、細かい部分的な適用除外の仕組みも用意しています
が、通信販売については、全面適用除外の仕組みを用意しています。具体的な条文で言えば、
第26条が適用除外を定めているところですが、第一項で、「前三節の規定は、次の販売、
または役務の提供で訪問販売、通信販売、または電話勧誘販売その他には適用しない」と規
定しています。この「前三節」とは、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売に関連する条項全
体のことであり、この規定により全面適用除外措置が講じられていることとなります。
現行の第26条第1項では、第1号から第5号までの定めがあり、国や地方公共団体が行
う取引や本邦の外にいる者との輸出取引、あるいは消費生活協同組合が組合員やそれに近接
的な方と行う取引などは適用を全面除外することなっています。
今回の改正では、この第5号まで後に、第6号、第7号、第8号を追加する改正がなされ
ることとなります。第6号は、学会の新聞などのいわゆる非商業紙の販売、第7号は弁護士
業務で、これらの取引には、特定商取引法の通信販売に関する規制は適用されません。
今回の原則適用方式への変更に併せて措置される全面適用除外措置の中核となるのは、次
の第8号です。第8号の中は、さらにイロハニと分かれていますが、ニにおいて「イからハ
までに掲げるもののほか、他の法律の規定によって訪問販売、通信販売、電話勧誘販売にお
ける商品若しくは指定権利の売買契約または役務提供契約について、その勧誘若しくは広告
の相手方、その申し込みをした者または購入者若しくは役務の提供を受ける者の利益を保護
することができると認められる販売または役務の提供として政令で定めるもの」は適用除外
にすると規定をしています。この二の前のイ、ロ、ハは二の例示と考えれば良いのですが、
イは金融商品、ロは宅地建物取引、ハは旅行業法上のサービスを適用除外する旨を規定して
おり、これらの商品やサービスを通信販売形態で行っている場合は、特定商取引法のルール
2
からははずれ、それぞれに係わる法律の規制を受けることになります。
いずれにせよ、通信販売については、個別の法律による消費保護の規律を受けるか、特定
商取引法の規律を受けることとなり、何ら消費者保護法の規律を受けない取引というもの
は、存在しなくなるということとなります。
3.電子メール広告規制、オプトアウトからオプトインへ
①迷惑電子メール広告問題の現状
今回の改正では、通信販売の広告に関する改正として、迷惑電子メール広告に関する規制
を大きく見直すこととなり、従前のオプトアウト規制をオプトイン規制に変えるというもの
です。現行法の規制は、一度送られてきた電子メール広告に対して、今後送らないで欲しい
と意思を表示した消費者に再度送信することを禁止するという形をとっています。同時に、
消費者の承諾をあらかじめ取らずに送る電子メール広告には「未承諾広告※」を必ず記載す
ること、受信拒否の意思を事業者に確実に伝達できるようにするため事業者側の連絡先を明
記することの義務づけも行っています。
ただ、実態を見れば、これらの規制を導入した後にも、いわゆる迷惑電子メール広告の数
は、全然減少していません。それどころか、その顕在化した数量は増えているように見受け
られます。結局、オプトアウト規制には実効性がないことが、事実によって論証されてしま
っていることになります。
特に問題なのは、この迷惑電子メール広告に関し、規制当局である我々自身が、オプトア
ウト規制を導入した後に、
「聞いたことがない人からのメールや読みたくないメールが仮に
来ても、返信しないでください」という広報活動をせざるを得なくなっている点です。なぜ
こんなことになっているのかと言えば、巧妙になる一方の近時の手口を踏まえると、このよ
うにしないと、消費者の拡大被害を防止できないからです。
悪質な手口では、まずダミーのメールを送りつけ、
「送ってくれるな」と反応してきたメ
ールアドレスをリスト化して確保し、受け手が確実に存在するメールアドレスのリストとし
て売り買いしているようなのです。というのも、送信拒否の返信を送信すると、その送信し
たアドレスに新たな未承諾メール広告が送られるというばかげた事態が起きているのです。
このような事態を防止するために、結局、返信拒否連絡先の明記義務を事業者に課しておき
ながら、消費者には「返信しないでください」とキャンペーンをしなければならなくなって
いるのです。
このような実態を踏まえれば、そもそも「送らないで欲しいと意思を示した人には送って
はいけない」というオプトアウト規制を成り立たせる大前提が、既に崩壊してしまっている
ということになります。
②未承諾電子メール広告の原則禁止
そこで、今回の改正では、電子メール広告に関してオプトイン方式を採用し、
「送ってほ
しい」と言った消費者か、事業者が何らかの手段で問い合わせをし、それを承諾した消費者
以外の消費者には電子メール広告を送信することを禁止するという規制を導入することに踏
3
み切りました。
(承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供の禁止等)
第12条の3
販売業者又は役務提供事業者は、次に掲げる場合を除き、通信販売をす
る場合の指定商品若しくは指定権利の販売条件又は指定役務の提供条件について、そ
の相手方となる者の承諾を得ないで電子メール広告(当該広告に係る通信文その他の
情報を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用
する方法であつて経済産業省令で定めるものをいう。以下同じ)により送信し、これ
を当該広告の相手方の使用に係る電子計算機の映像面に表示されるようにする方法に
より行う広告をいう。以下同じ)をしてはならない。
この条項でいう「承諾」とは何かという点、特にネット通信販売の場合の承諾の意思表示
とは何かを巡って、検討過程において様々な議論がなされました。
ネット通信販売の場合、パソコンなどの画面上に「広告を送って良いですか?」という
承諾を求める文書(テキスト)とチェックボックスを表示することによって、事業者が消
費者の承諾を求めるケースが多いことは、よく知られています。このチェックボックスの
中に、消費者が特段の操作を行わない状態、つまりデフォルト状態では、
「承諾」という意
味で、オン・マーク、チェック済みマークが、あらかじめ記入されているケースが多いの
も事実です。つまり、消費者が積極的に、これらのマークを消去する操作をしない限り、
消費者が電子メール広告の受信を承諾しているように見える状態になっているということ
です。
このような状態を、今回の電子メール広告に関するオプトイン規制上、
「承諾した」と取
り扱うかどうについては、規制見直しの議論において賛否両論ありましたが、方向性とし
ては、
「広告を送っても良いですか?」というテキスト表示自体が消費者に認識しやすよう
に明記されていることなどを条件とすれば、デフォルト・オン方式を一定の範囲で「承
諾」と認めても良いのではないかということになっています。どのようなテキスト表示で
あれば、承諾とみなすことができるのか、実際の承諾の取得方法については、様々な方法
が考えられるため、今後さらに検討していくことになります。
③例外的に未承諾の電子メール広告が許容されるケース
未承諾の電子メール広告は、原則として禁止されることとなりますが、個別の承諾がなく
とも電子メールによる広告が許容されるべきではないかと考えられるケースがあるのも事実
です。消費者からの送信請求があった場合は勿論のこと、電子メールという連絡手段が、事
業者と消費者の連絡手段として利用されることも日常茶飯事となっています。また、電子メ
ールという技術を使って情報を伝達するものにも、いろいろな形態があります。メールマガ
ジンやフリーメールを使って広告が送られてくることもしばしばありますが、この場合必ず
しも載っている広告一つ一つについて受信者が送信請求や送信承諾をしている訳ではありま
せん。しかし、こういった状況下で消費者が受信する電子メールに某かの広告が掲載されて
いることについては、消費者も一種の社会常識として了解していると考えられる部分がある
ことも否定できません。
4
そこで、こういった点を踏まえて、改正後の第12条の3第1項は、原則として、未承諾
の電子メール広告を違法としますが、同時に、電子メール広告の提供が許容されるケースと
して、次の3つのケースを規定しています。
(1) 相手方の請求に基づき電子メール広告をするとき
(2) 消費者に対し、契約の内容や契約履行に関する事項を通知する場合に、電子メール
広告をするとき
(3) 通常通信販売電子メール広告の提供を受ける者の利益を損なうおそれがないと認め
られるケース
この第2号では、事業者と消費者が既に取引関係にあって、その取引を円滑に進めるため
の連絡を電子メールで行う場合、例えば、消費者に送る受注確認メールや発送完了メールの
中に事業者の商品の宣伝が入っているようなケースを規定しています。このようなケースの
場合であっても、野放図に電子メール広告が許容される訳ではなく、経済産業省令で定める
方法・細目ルールに従ったメール広告である必要があります。
第3号では、広告が掲載されていることについて、消費者側の納得感があり、まさに消費
者の利益を損なうおそれがない方法での電子メール広告を、経済産業省令で定めることとな
ります。上述したように、この経済産業省令に規定する形態の電子メール広告としては、フ
リーメールを利用した場合やメルマガを利用した場合などが想定されています。現時点では、
技術的にこの2つの方法が、
「消費者の利益を損なうおそれのない」電子メール広告という
ことなのですが、今後の検討のプロセスにおける議論や技術の発展にともない、異なる方法
を省令で定めるという議論が出てくるかもしれません。いずれにせよ、さらに詳細な事項に
ついては、改正法案成立後の検討によることとなります。
④受信拒否者への電子メール広告の禁止
次の第12条の3第2項では、受信を拒否する消費者への電子メール広告の送信が禁止
されます。
2
前項に規定する承諾を得、又は同項第一号に規定する請求を受けた販売事業者又は
役務提供事業者は、当該通信販売電子メール広告の相手から通信販売電子メール広告
の提供を受けない旨の意思の表示を受けたときは、当該相手方に対し、通信販売電子
メール広告をしてはならない。(略)
当然のことではありますが、一度電子メール広告の請求や承諾をした消費者から、
「送っ
てくれるな」という申し出があれば、それ以降、電子メール広告を送信することは違法とな
ります。勿論、その後さらに、その消費者から送信請求があったり、受信承諾がなされた場
合には、この禁止は解除されます。なお、この受信拒否者の意思表示の伝達先の明確化のた
め、第4項において、電子メール広告を送信する事業者に対し、消費者からの拒否意思の
連絡先の明示義務を課しています。
5
4
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売電子メール広告をするときは、第1項第
2号又は第3号に掲げる場合を除き、当該通信販売電子メール広告に、第11条各号
に掲げる事項のほか、経済産業省令で定めるところにより、その相手方が通信販売電
子メール広告の提供を受けない旨の意思を表示するために必要な事項として経済産業
省令で定めるものを表示しなければならない。
⑤記録保存義務
次の第3項では、電子メール広告に関する記録保存義務を定めています。
3
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売電子メール広告をするときは、第1項第
2号又は第3号に掲げる場合を除き、当該通信販売電子メール広告をすることにつき
その相手方の承諾を得、又はその相手方から請求を受けたことの記録として経済産業
省令で定めるものを作成し、経済産業省令で定めるところによりこれを保存しなけれ
ばならない。
この記録保存義務は、迷惑電子メール広告に関する規制が、オプトイン方式に変更される
ことに伴う非常に重要な変更点ですが、基本的な発想は、消費者からの請求や承諾があった
という証拠を確保してくださいということです。
この記録保存義務を巡っては、何を「記録」として保存すれば良いのかということが議論
になりました。特に問題になったのはネットによる通信販売の場合、消費者からの最初のア
クセスがあった画面において「広告を送って良いですか?」と聞くことが非常に多いという
実態にあることは上述していますが、このような形態の場合、消費者の「承諾を得たことの
記録」とは、具体的には何を意味するのかという点です。もっと具体的に言えば、一件毎の
承諾の記録を保存させるべきか、又は、消費者から承諾を得るにあたって示した画面につ
いて記録を保存すれば必要十分ではないのか、といった議論です。この点については、迷
惑電子メール広告の規制見直しに当たり、詳細な技術的課題について検討していただいた
WGの「中間取りまとめ」では、画面表示の記録保存でも足りるのではないかという議論
になっていますが、更に詳細については、実態を踏まえた検討を行い、経済産業省令でル
ール化することとしています。
⑥関連業務を委託した場合の免責
従来の広告というビジネスにおいても、高度の分業の下で、専門的事業者によって広告
を展開する事業が担われていることを踏まえれば、電子メール広告という形態においても、
分業、つまり委託−受託関係により、複数の事業者がその実施に関与するようになること
は、理の当然ということができるでしょう。比較的よく見られるケースでは、広告主であ
る販売事業者、広告の作成や配信をアレンジする事業者、そして、実際に電子メール広告
の送信行為を行う事業者という、三層構造になっていることがあります。現行の迷惑電子
メール広告のオプトアウト規制は、広告主である通信販売事業者のみを規制対象にしてい
ますが、三層構造の下で、広告のアレンジや送信行為を完全に委託している場合に通信販
6
売事業者だけを取り締まったところであまり意味がありません。
そこで、広告主たる通信販売事業者と電子メール広告の委託先の事業者との関係を整理
し直し、規制の在り方を見直した条項が、次の第12条の3第5項と第12条の4という
ことになります。
5 前二項の規定は、販売業者又は役務提供事業者が他の者に次に掲げる業務のすべて
につき一括して委託しているときは、その委託に係る通信販売電子メール広告につい
ては、適用しない。
一
通信販売電子メール広告をすることにつきその相手方の承諾を得、又はその相手
方から請求を受ける業務
二
第三項に規定する記録を作成し、及び保存する業務
三
前項に規定する通信販売電子メール広告の提供を受けない旨の意思を表示するた
めに必要な事項を表示する業務
この第5項は、電子メール広告についての一定の業務を一括して他の事業者に委託してい
る場合、つまり、電子メール広告のアレンジ・手配を他の事業者に委託している場合には、
その通信販売事業者を一定の範囲で免責をするという点に、その趣旨があります
では、第5項で免責される条件を具体的に説明すると、
・消費者からの請求を受け付けたり、承諾を得る業務、つまり、電子メール広告の受信に
ついての同意・OK を消費者から取得する業務
・消費者からの請求や承諾があったことの記録保存の業務
・消費者からの受信拒否の連絡先等を電子メール広告に表示する業務
を一括して他の事業者に依頼している場合ということとなっています。そして、このような
業務委託をしている通信販売事業者については、免責といいますか、特定商取引法上の義
務免除として、記録保存義務及び受信拒否の連絡先の明示義務が適用されなくなります。
つまり、行政法によって、電子メール広告を行う際に課される作為義務を免責するという
ことになります。
ただし、注意が必要なのは、この通信販売事業者が免責されるのは、あくまで、上述の業
務を「一括」して委託している場合であり、これらの業務を個別に委託に出している場合に
は、結局、通信販売事業者が電子メール広告の提供において、手配・アレンジを主体的に行
っているということとなりますので、やはりそのような通信販売事業者については、これら
の作為義務の責めに任じてもらうこととしています。
⑦電子メール広告受託事業者の責任
一方、第12条の4という条項によって、広告主である通信販売事業者から、これらの業
務を一括して受託している事業者については、受託事業者側に一定の範囲で責任が移転する
ことになります。
第12条の4
販売業者又は役務提供事業者から前条第5項各号に掲げる業務のすべて
につき一括して委託を受けた者(以下この節並びに第66条第4項及び第6項におい
7
て「通信販売電子メール広告受託事業者」という。)は、次に掲げる場合を除き、当
該業務を委託した販売業者又は役務提供事業者(以下この節において「通信販売電子
メール広告委託者」という。)が通信販売をする場合の指定商品若しくは指定権利の
販売条件又は指定役務の提供条件について、その相手方となる者の承諾を得ないで通
信販売電子メール広告をしてはならない。(略)
2
前条第2項から第4項までの規定は、通信販売電子メール広告受託事業者による通
信販売電子メール広告委託者に係る通信販売電子メール広告について準用する。
( 略)
この第12条の4第1項により、電子メール広告受託事業者にも、オプトイン規制が課
せられることとなります。同時に、第2項により、受信拒否者への電子メール広告の提供
が禁止されます。さらに、第12条の3第3項による記録保存義務や第4項による連絡先
明示義務などが、委託者たる通信販売業者から、電子メール広告受託事業者に移転するこ
となります。
このように、電子メール広告の受託事業者を規制に服させることにより、通信販売業者
が、
「電子メール広告の送信先の管理は人任せにしていたので分からない」という言い逃れ
を許しませんし、逆に、受託事業者が、特定商取引法の規制の網を逃れ、迷惑電子メール
広告の送信を続けるという事態も防ぐことができるようになります。
⑧電子メール広告関係の罰則の新設
今回の改正によって、電子メール広告の規制が変更された後にも、関係条項に違反する
行為に対して、行政処分が課されることには、これまでのオプトアウト規制の場合と変わ
りありません。また、上述のような電子メール広告受託事業者に対する規制の導入に併せ
て、第14条と第15条をそれぞれ改正し、電子メール広告受託事業者に対しても、通信
販売事業者と同様に行政処分を行うことができるように措置することとなっています。
さらに、今回の改正では、迷惑メールの防止という課題の重要性、喫緊性に鑑み、行政
処分と同時に、刑事罰規定の整備も行うこととしてます。
第72条
次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一∼三(略)
四
第12条の3第1項若しくは第2項(第12条の4第2項において準用する場合
を含む。)、第12条の4第1項、第36条の3第1項若しくは第2項(第36条の
4第2項において準用する場合を含む。)、第36条の4第1項、第54条の3第1
項若しくは第2項(第54条の4第2項において準用する場合を含む。)又は第5
4条の4第1項の規定に違反した者
五∼九(略)
2 前項第4号の罪を犯した者が、その提供した電子メール広告において、第11条、
第12条の3第4項(第12条の4第2項において読み替えて準用する場合を含む。)、
第35条、第36条の3第4項(第36条の4第2項において読み替えて準用する場
合を含む。)、第53条若しくは第54条の3第4項(第54条の4第2項において読
8
み替えて準用する場合を含む。)の規定に違反して表示しなかつたとき、又は第12
条、第36条若しくは第54条の規定に違反して著しく事実に相違する表示をし、若
しくは実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるよ
うな表示をしたときは、一年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処し、又はこれを
併科する。
改正後の第72条第1項第4号において、第12条の3第1項の未承諾電子メール広告の
送信禁止若しくは第2項の受信拒否者への電子メール広告の送信禁止に違反した通信販売事
業者、そして、第12条の4第1項等に違反して、未承諾の消費者や受信拒否者に電子メー
ル広告を送信した電子メール広告受託事業者は、100万円以下の罰金を課すこととしてい
ます。
また、この第72条には第2項を新設しており、電子メール関係の違反行為の中でも特に
悪質と思われるものについては、罰金刑だけではなく、より重い懲役刑も措置することなっ
ています。より重い罰則が適用されるケースというのは、オプトイン規制に違反し、さらに
その送信した電子メール広告において、第11条や第12条の3第4項などの表示義務に違
反して表示すべき事項を表示していない場合や、第12条の虚偽・誇大広告などの禁止にそ
の電子メール広告の内容が抵触している場合です。このような場合には、その違反者に対し、
1年以下の懲役か200万円以下の罰金、あるいはその両方の処分を科すという、若干重い
ルールが新設されることとなっています。
4.返品条件表示の明確化
①通信販売における返品トラブル
通信販売を巡る消費者トラブルを分析してみると、直接間接に返品に関連するトラブルが、
やはり非常に多いというのが実感です。我々が実施したネット通販をめぐるトラブルの実態
調査でも、トラブルとして最も多いのは「品物が届かない」ですが、次にくるのが返品トラ
ブルです。このような実態を反映してか、消費者相談として受ける質問の中には、
「通信販
売にはクーリングオフはないのですか?」というものが見受けられます。勿論、現行の特定
商取引法には、通信販売に対するクーリングオフ制度は措置されていません。通信販売の場
合には、民法のルールに従って、契約が成立したのであれば、その契約は一方的に破棄する
ことはできません。
返品を巡ってトラブルになる、つまり、通信販売による売買契約を消費者が一方的に解約
したいと事業者に主張するに至るのは、現物を実見することなく契約を締結するという、
通信販売の隔地者間取引としての性質に要因があるのだと思います。よって、例えば、見
た目が違うとか、こんな大きさではなかったといった「不満」が、往々にして消費者に生
じ勝ちで、消費者が解約したいという意向を持つに至るのだと思われます。
だからといって、訪問販売と同様に、通信販売でも、無条件にクーリング・オフできるよ
うにすれば良いのかと言えば、そういうことでもないと思います。訪問販売や電話勧誘販売
のように事業者が消費者に対して、不意打ち的に積極的な働きかけをして、契約を締結させ
9
るという状況は、通信販売の場合では生じません。通信販売は、基本的に消費者が自ら事業
者にアプローチをして、契約締結に至るのですから、熟慮期間を与えて契約の再考を促すべ
く、無条件で契約を解消できるという制度を導入する必然性に乏しいと考えざるを得ません。
②返品条件表示の徹底の必要性
日本通信販売協会の倫理綱領では、基本的には返品は一定のルールで受け付けることとな
っていますし、確かに同協会の会員企業の返品の受付状況を見ると、相当の割合で返品を受
け付けているのが実態です。このような通信販売を巡る状況から、消費者の多くが「通信販
売は基本的に返品ができるものだ」と認識を持つことにも、首肯できる部分がありますし、
そもそも消費者の多くの認識がこのようなものになっているのであれば、そのこと自体の是
非を問うても仕方がない訳です。
一方で、返品を巡って消費者とトラブルになると、返品を受け付けないこととしている通
信販売事業者側は、通信販売にはクーリングオフ制度は無く、民法のルールでは「一回結ば
れた契約は破棄できない」のであり、言い方を変えれば、
「返品は受け付けることは一種の
特約であるから、その特約を提示していない限りは返品は受け付けない」という主張をされ
ます。勿論、この主張は、法的にはまっとうな議論である訳ですが、返品トラブルがなくな
らない背景には、このような消費者側と事業者側の考え方の衝突があるのではないかと思わ
れます。
この衝突を解消・回避するためには、返品を受け付けるのか受け付けないのか、若しくは
返品を受け付ける条件とは何なのかを、消費者、事業者双方が、確実に確認することに尽き
るのではないかと思います。現行法でも第11条第1項第5号で商品または権利の引渡後の
返還に関する事項ついては、広告に確実に明記するべしとしています。入念のため、返品特
約が無い場合には、返品特約がない、つまり返品を受け付けないということも、広告に明記
すべしとまで定めています。
ところが。この点が広告にキチンと書かれていない、あるいは、わかりやすく書かれてい
ないことがが多く、消費者に返品条件の有無やその内容が、確実に伝達されていないという
ことではないかと思います。消費者に「この商品は返品不可」ということが確実に認識され
ておれば、トラブルにはならないはずであり、逆の見方をすれば、
「返品不可」
「返品条件」
について、消費者にわかりやすい形で明記していれば、事業者側が返品を受け付けないとし
ても、その主張の正当性は著しく高まるでしょう。
③返品条件表示の担保措置としての解約
そこで、今回の改正では、返品条件を広告に確実に記載していない場合には、返品、すな
わち売買契約の解除を消費者が主張できるというルールを導入しようとしています。
ただ、ここは強調しておきたいのですが、今回の改正により、通信販売に導入される売買
契約の解除制度は、その条文上の表現、例えば、新設条項である第15条の2の見出しが
「通信販売における契約の解除等」となっているなどの点でクーリングオフに似てはいます
が、決してクーリング・オフ制度を導入しようとするものではありません。この点は、誤解
なきように念押しさせていただきます。
10
(通信販売における契約の解除等)
第15条の2
通信販売をする場合の商品又は指定権利の販売条件について広告をした
販売業者が当該商品若しくは当該指定権利の売買契約の申込みを受けた場合における
その申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において
単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は指定権利の移転
を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又
はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うこ
とができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表
示していた場合(当該売買契約が電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特
例に関する法律(平成十三年法律第九十五号)第二条第一項に規定する電子消費者契
約に該当する場合その他経済産業省令で定める場合にあつては、当該広告に表示し、
かつ、広告に表示する方法以外の方法であつて経済産業省令で定める方法により表示
していた場合)には、この限りでない。
2
申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は指定
権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の
負担とする。
訪問販売などに導入されているクーリングオフは片面的強行規定といって、事業者と消費
者に同意があっても、その合意が強行規定と異なるものである場合には、その合意は覆され
ます。今回導入しようとしているルールでは、返品条件を広告にきちんと書いていただけれ
ばそちらが優先されています。要すれば、事業者と消費者が真の合意に到達できるように確
実な表示をルール化するものです。瑕疵担保責任その他民法上の最低限のルールを遵守する
必要はありますが、
「返品を受けつけません」ということ自体は表示して構わないというル
ールとなります。むしろ、確実に消費者に納得・理解してもらうために、そのような条件が
積極的に表示されるべきであると考えています。
このような返品表示を適切になしていない通信販売事業者については、商品等の到着後
8日経過するまでの間は、返品送料は消費者負担ではありますが、返品を受け入れなけれ
ばならないことになります。逆に、返品条件表示を徹底する事業者は、得をするという仕
組みとなっています。
④返品条件表示の方法の特例
さて、今回の返品に関する新ルール導入の主眼が、消費者にとって分かりやすい返品条件
表示の徹底にある訳ですから、返品条件表示の方法が、次に重要な事項となります。この
点は、新設の第15条の2ではなく、第11条の経済産業省令で定めることとなります。訪
問販売における法定書面に関し、省令で記載方法について基準を設けていますが、現時点で
は、通信販売の広告について、あまり細かな基準を省令で定めてはいません。しかし、消費
者にとって分かりやすい返品条件の表示が求められている以上、実態を踏まえた、丁寧な基
準作りこそが大事な訳です。通信販売における返品条件表示の状態を媒体別にいろいろと調
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べた上で、どう表示するのが消費者にとっての分かりやすさという点で一番効果的なのか検
討し、具体的な基準を作っていきたいと思っています。
さて、この返品条件表示の方法の原則は、通信販売の広告の中にあらかじめ、一定の方法
で表示することにある訳ですが、第15条の2第1項のただし書の中で「電子消費者契約」
の場合の例外を定めています。
いわゆる電子契約法上の「電子消費者契約」とは、雑ぱくにいうと、次の3つの要素を持
っている契約ということができるでしょう。
・事業者と消費者の契約であること
・電子計算機の画面を介して行われる取引であること
・消費者からの注文を完了させるための手続きを事業者が設定していること
このような要素を具備している契約が電子消費者契約であり、コンピュータの画面に電話
番号が示され、電話で注文をするような場合は電子消費者契約にはなりません。あくまでも
パソコン等を通じて、注文完了までが画面で処理され、その画面上に進んでいく手続ステッ
プを事業者が設定している場合に、締結される契約ということになります。電子消費者契約
の典型は、やはり家庭のパソコン上で行われるネット通販ということになります。
ネット通販の場合、ウェッブサイトには、非常に多くの情報を表示することができるため、
どこに返品表示を行うのかという点で、選択肢が非常に多くあります。そのため、消費者と
のトラブル事例でも、確かに返品条件は書いてあるのですが、トップ画面から何回かクリッ
クしてやっとたどり着けるような場所に記載されているというケースがままあります。これ
では消費者が返品条件を見ていないからといって、消費者を非難するのは酷といわざるを得
ません。また、ネット通販特有の問題としては、ある商品の画面にどうやったたどり着くか
は事前の予測ができません。よって、トップ画面に返品条件が書かれていたとしても、その
表示を消費者が見る保証がないのです。
勿論、通信販売事業者にすれば、貴重なサーバー資源を使って返品条件を書いおいたのに、
それを見ない消費者が悪いと言いたくもなるでしょう。しかし、トラブルの解消・事前予防
について合目的的に検討しようとすれば、そのような考え方には、何の意味もありません。
トラブルを解消・予防しようと思えば、消費者に返品条件を見せなければ意味がないのです。
せっかくサーバー資源を費やして返品条件を表示するのであれば、消費者にとって見やすい
ところ、必ず契約締結までのプロセス上で到達するところに表示しなければ、意味がありま
せん。消費者は返品トラブルがおきた時には、必ず「返品条件を見ていない」と言います。
この消費者の主張に対して「こうすれば見えた」といったところで意味が無いのです。近時
の消費者トラブルにおいて、説明義務を事業者が説明責任を果たすことを求める傾向が強ま
っていることからすれば、表示を用意して「見られる状態になっていた」という主張には正
当性がなく、「ちゃんと見せました」ということが必要になっていると言わざるを得ません。
この点、カタログやテレビなどの通信販売では、消費者とのコミュニケーションの手段が、
まさに広告であり、その中でわかりやすく返品条件を表示することが、
「ちゃんと見せた」
という状況を確保する上で重要です。ネット通販の場合、ウェッブサイトの構造自体が非常
に多層で複雑な構造となっており、どこに返品条件を表示することが、
「ちゃんと見せた」
という点から効果的かということが、審議会でも議論になりました。最終的には、
「注文確
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認画面」に表示することが良いのではないかということになりました。電子契約法により、
「注文確認画面」を設けないと、電子消費者契約の無効を消費者から主張される可能性が高
くなるので、ネット通販事業者としても、確認画面を整備することとが必須となっています
し、この画面であれば、消費者も必ず見ることになります。ここに表示すれば、消費者、事
業者双方にとって合理的ではないかということです。ただ、この注文確認画面を「広告」と
称することはできないので、電子消費消費者契約などで行われる通信販売の場合には、
「広
告に表示する方法以外の方法」による表示を経済産業省令で定めることとしています。
⑤行政処分の追加
今回、通信販売に民事ルールが導入されることに伴い、通信販売に関する行政処分対象行
為に追加がなされることとなっており、改正後の第14条に、債務履行の不当遅延などを追
加しています。
(指示)
第14条
一
(略)
通信販売に係る売買契約若しくは役務提供契約に基づく債務又は通信販売に係る
売買契約若しくは役務提供契約の解除によつて生ずる債務の全部又は一部の履行を
拒否し、又は不当に遅延させること。
これは、訪問販売や電話勧誘販売に対する、指示対象行為として既に規定されている不当
行為です。通信販売にも、民事ルールとして、返品に関するルールが導入されることとなり
ますが、この場合に、
「返品を受け付けます」と消費者には言っておきながら、契約解除後
の通信販売事業者の代金返還債務を履行しないというのでは、この返品に関するルールを新
設した意味がなくなってしまいます。そこで、このような債務の不当遅延等を、通信販売に
関する指示対象行為に追加することとしています。
5.クレジットカード番号の保護の強化
①クレジットカード番号等の適正管理の義務
今回の法改正においては、割賦販売法もかなり大がかりな改正が行われます。この割賦販
売法の改正において、通信販売事業者にも関連の深い事項が一点あります。
昨今では、通信販売の決済もクレジットカードで行われることが多くなっていると思いま
す。また特にネット決済する場合には、クレジットカード番号と有効期限の入力で決済可能
となるケースが多いと思います。それゆえ、クレジットカード番号と有効期限という数字の
組み合わせ自体に経済的価値が発生しているということができると思います。
一方、この数字の組み合わせ自体は、現行の法制度の下で、必ずしも十分に保護されてい
るとは言えません。個人情報保護法では、現実の個人が特定できる情報であることが、保護
される個人情報の条件になっており、クレジットカード番号と有効期限では個人を特定する
ことが基本的には不可能であると考えられることから、クレジットカード番号そのものには、
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個人情報保護法による法的保護も及んでいません。そこで、今回の割賦販売法の改正におい
て、クレジットカード番号と有効期限という情報に対する独自の保護規制が導入されること
になっています。
割賦販売法
第3章の4
クレジットカード番号等の適切な管理等
第35条の16
4
クレジットカード等購入あつせん業者又は立替払取次業者は、クレジットカード番
号等保有業者(次の各号のいずれかに該当する者をいう。以下同じ)の取り扱うクレ
ジットカード番号等の適切な管理が図られるよう、経済産業省令で定める基準に従い、
クレジットカード番号等保有業者に対する必要な指導その他の措置を講じなければな
らない。
一
クレジットカード等購入あつせん業者と包括信用購入あつせん又は二月払購入あ
つせんに係る契約を締結した販売業者又は役務提供事業者
二、三(略)
改正後の割賦販売法第35条の16において、クレジットカード番号等を適切に管理する
義務が定められています。この適切管理義務の直接の規制対象は、基本的にクレジット業者
ですが、この条項の第4項において、クレジット業者にその取引先である「クレジットカー
ド番号等保有業者」を指導して、クレジットカード番号等を適切に管理させることが、クレ
ジット業者の義務となります。
条文上の文言について少し説明しますと、この割賦販売法第35条の16第4項第1号に
ある「包括信用購入あっせん」とは、クレジットカードによる分割払い・リボ払いのことで
あり、マンスリークリアの翌月一括払いは入っていません。このマンスリークリアの翌月一
括払いのことが「二月払い購入あっせん」となります。このクレジットカードによる分割な
り一括なりの支払に関して加盟店となっている販売業者は、この条項でいう「クレジットカ
ード番号等保有業者」ということになりますので、クレジット業者は、クレジット決済を採
用している通信販売業者にも、クレジットカード番号の適正管理についての指導等の措置を
講じなければならなくなります。
クレジット業者が、この義務を経済産業省令で定める基準に従って実施していない場合に
は、業務改善命令の対象となりますので、通信販売事業者としても、この面で適切な対応
が求められます。
②クレジットカード番号の不正盗用等に対する罰則
なお、クレジットカード番号の保護については、割賦販売法第49条の2において、その
不正な提供などについて刑事罰が措置されます。
第49条の2
クレジットカード等購入あつせん業者、立替払取次業者若しくはクレジットカード番
号等保有業者又はこれらの役員若しくは職員若しくはこれらの職にあつた者が、その業
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務に関して知り得たクレジットカード番号等を自己若しくは第三者の不正な利益を図る
目的で、提供し、又は盗用したときは、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処す
る。
いずれにせよ、この割賦販売法改正が施行された暁には、通信販売業者も社内のクレジッ
トカード番号の管理体制についての見直し等が求められ、これまで以上に厳正な管理が求め
られることとなります。
6.消費者団体訴訟制度の導入
①広告に対する消費者団体訴訟制度の導入
平成20年の通常国会には、ここまで説明してきた特定商取引法・割賦販売法の一部改正
とは別に、「消費者契約法等の一部を改正する法律案」も政府案として提出されています。
この消費者契約法等の一部改正法案では、消費者契約法、景品表示法そして、特定商取引
法が改正され、特定商取引法と景品表示法に、いわゆる消費者団体訴訟制度が導入すること
とされています。
消費者契約法において、不当勧誘行為や不当契約条項については、既に消費者団体訴訟制
度が導入されていましたが、この制度の下では、不当な広告表示については、適格消費者団
体は特段のアクションはとれませんでした。これは消費者契約法の中に広告に関するルール
がないためです。今回の改正によって、景品表示法と特定商取引法に団体訴訟制度が導入さ
れることにより、不当広告を行う事業者に対しても、消費者団体訴訟制度の効力が及ぶよう
になります。
②景品表示法における消費者団体訴訟制度
まず、景品表示法への消費者団体訴訟制度の導入ですが、景品表示法に第11条の2と
いう条項が追加され、この条項において、内閣総理大臣が認定した適格消費者団体の訴権
が規定されます。
不当景品類及び不当表示防止法
(適格消費者団体の差止請求)
第11条の2
消費者契約法第2条第4項に規定する適格消費者団体は、事業者が、不
特定かつ多数の一般消費者に対して次に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがある
ときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に
規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要
な措置をとることを請求することができる。
一
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と
競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると誤認される表示を
すること。
15
二
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競
争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認
される表示をすること。
この景品表示法の規定に基づき、改正法施行後は、適格消費者団体から広告表示について
の差止請求訴訟が提起される可能性が出てくることとなります。その請求の内容は、個々の
具体的なケースによって、様々なものが考えられますが、広告の場合には「広告の停止」
「訂正広告」などが想定されます。
また、消費者団体訴訟制度では、適格消費者団体は、いきなり事業者を裁判所に訴えるこ
とは許されておらず、
「あなたのやっている広告はおかしい」ということを事業者に通知し
て、事前の和解交渉を行わなければなりません。訴訟を提起するまでの間に最低でも一週間
の期間を置くということになっています。和解交渉がまとまらない場合に実際の訴訟になり
ますが、適格消費者団体が提訴する差止請求訴訟も通常の民事裁判手続に則り執り行われる
ことなりますので、等地裁、高裁、最高裁という三審制になります。この差止訴訟におい
て事業者の敗訴が確定した後にも、裁判で認容された改善措置が講じられない場合には、
間接強制金に支払いを求められることとなります。
③特定商取引法における消費者団体訴訟制度
特定商取引法に関しては、特定商取引6類型各々について、団体訴訟の対象となる不当行
為を列記するという改正が行われます。通信販売については、改正後の特定商取引法第58
条の5に、その定めが置かれることになります。
特定商取引に関する法律
(通信販売に関する差止請求権)
第58条の5
適格消費者団体は、販売業者又は役務提供事業者が、通信販売をする場
合の商品若しくは指定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするに際
し、不特定かつ多数の者に対して当該商品の性能若しくは当該権利若しくは当該役務
の内容又は当該商品若しくは当該権利の売買契約の申込みの撤回若しくは解除に関す
る事項(特定商取引に関する法律第15条の2第1項ただし書に規定する特約がある
場合には、その内容を含む。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際
のものよりも著しく優良であり、若しくは著しく有利であると誤認させるような表示
をする行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、その販売業者又は役務提供事業
者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供した物の廃棄若しくは除去
その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができ
る。
これまでは、通信販売の広告については、公正取引委員会が景品表示法に基づき、そして
経済産業省等と都道府県が特定商取引法に基づき行政的に監視するという仕組みでしたが、
消費者契約法等の一部改正法が施行されてから後は、通信販売に関する広告は、適格消費者
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団体の監視の下にも置かれるということになります。よって、適格消費者団体からの改善申
し入れには、十分な配慮をする必要が出てきます。
7.改正法の施行時期
特定商取引法・割賦販売法改正法案における通信販売関係の改正事項の施行については、
2段階施行となります。
まず第一段目は電子メール広告関係の部分であり、この部分の施行日は、改正法の公布日
から6カ月以内で政令で定める日となっています。今国会で審議いただき成立という運びに
なれば、そこから6カ月以内ですので、平成20年中には施行されることになります。
それ以外の部分である、指定制の廃止や返品表示のルールの導入、割賦販売法におけるク
レジットカード番号等の保護強化については、改正法の公布日から1年6カ月以内の政令で
定める日からの施行となっていますので、今国会で成立すれば遅くとも、平成21年中には
改正法が効力をもつことになります。
一方、
「消費者契約法等の一部を改正する法律」については、景品表示法に関する部分と
特定商取引法に関する部分とで、施行のタイミングが異なります。特定商取引法に消費者団
体訴訟制度を導入する改正は、指定制の廃止等を行う改正特定商取引法の施行と同じタイミ
ングとなっていますので、上述したように、平成21年中の施行ということになります。
ただし、景品表示法に消費者団体訴訟制度を導入する改正の施行日については、平成21
年4月1日となっていますので、来年の4月以降は適格消費者団体が、通信販売業者の不当
広告に対し、景品表示法に基づき差止請求を提起することが可能になりますので、この点に
は留意するべきかと思います。
<質疑>
Q:お客様に送っているメールの中に、承諾をとっているものと、とっていないものとが
混じっているため、「未承諾広告※」として送っているが、これからは承諾をとらない
と送れないということか?送り先は商品を購入されたお客様である。
A:改正後は、原則、承諾が必要。ただし、その電子メール広告が、改正法の第12条の
3第1項第2号に該当する場合は、例外。
Q:現在保有しているお客様のアドレスに対してメールを送る場合、改めて承諾を取らな
ければならないのか?
A:改めて承諾をとっていただくのが原則。顧客から電子メール広告について明示的に承
諾や請求があったことが証明できるのであれば、それは改正後の承諾等と同視されるの
で、その場合には、違法とはならない(附則第3条第1項)。
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Q:承諾をとった証拠(エビデンス)が必要とのことだが、弊社は、会員でありかつ承諾
を得ている方にメールを送っている。会員には必ずメルマガを送って良いかを聞いて
いる。その場合、画面のハードコピーがあれば一番良いと思うが、会員のデータでメ
ルマガが OK か OK でないか電子的には残っているが、これはエビデンスとして有
効か?
A:会員の承諾が、電磁的記録として個別に残っているのであれば、その記録自体は有効。
なお、会員制をとっているから、電子メール広告を送って良いということにはならない。
会員制であろうが、電子メール広告送信について、消費者にきちんと確認をとっている
ことを証する記録を保存する必要があり、単純に会員規約の分かりにくいところに記載
されているということでは、それは適法な記録保存や承諾取得とは言えない。こういう
ことを許容すれば、悪質業者のメールアドレス収集行為を助長することになる。
Q:商品の購入申込メールに「商品をお申し込みいただいた場合は弊社からご案内を差し
上げますので、ご同意の上お申し込みください」というように、メールを受け取ること
と購入申込を同時に了解してもらうケースについてはどうお考えか?
A:現行の改正案では、直ちにそのような承諾取得を違法にすることにはなっていないが、
決して望ましい方法とは思えない。勿論、その承諾とみなす旨の記載が、分かりにくい
ものであれば、論外であるが、その記載が明瞭なものであっても、消費者の自由選択を
阻害している面があり、本当に顧客の納得につながるのかどうか疑問。
なお、このような形で「承諾」を取得して配信する電子メール広告についても、受信拒
否の連絡をするための連絡先を記載することは義務であり、その連絡をした消費者には
電子メール広告を送ってはいけないというルールは必ず守っていただきたい。
謝辞:本資料は、平成20年4月21日、社団法人日本通信販売協会主催の特定商取引法
等改正法案説明会における説明を、説明者の責任の下で、要旨として取りまとめた
ものです。
本資料の「消費生活安心ガイド( http://www.no-trouble.jp/ )」への掲載を快く
許諾してくださった、社団法人日本通信販売協会様に感謝申し上げます。
なお、本要旨中の誤りの責任は、すべて説明者にあります。
以上
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