Comments
Description
Transcript
GlobalPlatformにおける標準化動向
グローバルスタンダード最前線 GlobalPlatformにおける標準化動向 に わ の えいかず ごろうまる ひ で き 庭野 栄一 /五郎丸 秀樹 NTTサービスインテグレーション基盤研究所 現在,多様な分野においてICカー 技術をベースに1999年に設立された, ション管理の業界標準となっています. ドの導入が進められており,ここ数 マルチアプリケーションICカード管理 年来,1枚のカード上に複数のIC システムに関する業界標準化組織です. ション管 理 の仕 様 策 定 作 業 が進 行 カードアプリケーションを搭載・管 現在,MasterCardを中心に設立さ しているI S O ( I n t e r n a t i o n a l (2) またI C カードのマルチアプリケー 理するための技術が注目を集めてき れたMAOSCO などとともに世界で Organization for Standardization) ました.ここでは,このようなマルチ もっとも有力なICカード標準化組織の 7816-13においても,国内行政系の業 アプリケーションICカード管理技術 1つとなっています. 界 標 準 策 定 組 織 であるN I C S S ( 3 ) の標準においてもっとも有力な標準 参 加 企 業 をみてみますとG l o b a l (Next generation IC Card System 化組織の1つであるGlobalPlatform Platformに は Visa International, Study group)のフレームワークや に関する標準化動向を紹介します. MasterCard,JCBなどのクレジット Multos仕様 (2) (前記MAOSCOが仕 会社,Gemplus,Axalto,大日本 様 規 定 . 現 在 ライセンスは 印刷などのカードベンダ,DataCard S t e p N e x u s 社 に移 管 ) とともに, などのカード発 行 機 ベンダ, そして GlobalPlatformのカード仕様が代表 ICカードは1970年代前半に日本と IBMなどのソリューション企業をはじ 的な方式としてAnnexに記載されるに フランスでほぼ同 時 期 に発 明 され, め,フランステレコム,NTTなどの通 至っています. 1990年代終わりには単機能型・単目 信事業者など,多様な業界から世界で 的利用型から多目的利用型へと技術 約50の企業・機関が会員となってい 開発が進展してきました.この多目的 ます. ICカード管理技術 利用を実現するための技術がマルチア GlobalPlatformの組織 GlobalPlatformは「マルチアプリ GlobalPlatformの組織構成を図1 プリケーションICカード管理技術です. ケーション」を標榜していることもあ に示 します. G l o b a l P l a t f o r m の意 これはアプリケーションや鍵の搭載な り,業界中立的な立場で多様な分野 志 決 定 機 関 は 理 事 会 ( Board of どのICカードの発行から,ICカード発 に対して標準書の実装・展開を推進し Directors)ですが,技術統括や戦略 行後にアプリケーションを追加するた ています.特にGlobalPlatformで規 マーケティングを統 括 するための めの仕組みを提供するものです.この 定されたカード仕様は,携帯電話に組 D i r e c t o r がアサインされているのが 技術を利用すると住民基本台帳カー み込まれている加入者認証用チップ 特徴です.理事会には,選挙で選任さ ド,Suicaなどの交通系カード,金融 SIM/UICC(Subscriber Indentity れ た Elected Directors 11名 , におけるキャッシュ・クレジットカー Module/Universal Integrated Circuit Strategic Directors3 名 , 前 述 の ド, そしてモバイル通 信 における Card)に対するアプリケーション管理 戦 略 ・ マーケティングを統 括 する FOMAカードなど多様なICカードアプ の標準として,電気通信関連の標準化 Executive Director1名,技術を統 リケーションを1枚のカード上に搭載 組織であるETSI/3GPP(European 括するTechnical Director1名が存 T elec o m m uni c a t i o n することができるようになります. GlobalPlatformとは GlobalPlatform (1) はVISAを中心 に開発されたOpen Platform(OP) 76 NTT技術ジャーナル 2006.9 St a nda r ds 在 します. 国 内 からは, E l e c t e d Institute/3rd Generation Partnership D i r e c t o r s としてN T T , 日 立 Project)に採用されており(ETSI & (Treasurer),JCBの3社,Strategic GSM 03.48, TS 23.048, ETSI& Directorsとして東芝が務めており, 3GPP SCP TS 102.225/102.226), またNTT以外の通信事業者としてフ モバイル通信系ICカードアプリケー ランステレコムが Elected Director カード委員会は2003年3月にカー となっています. また技術標準の策定組織としては ド仕様V2.1.1を策定し,本年3月終 カード委員会 わりに3年かけてカード仕様V2.2をリ カードの仕様を規定するカード委員 会 , カードアクセプタンスデバイス カード委員会はGlobalPlatformに リースしました.カード仕様V2.1.1の (カードを挿入する端末)仕様を規定 おいてもっとも影 響 力 が強 くかつ 特徴は,カードとカード外部のエン するデバイス委員会,カード発行者や 仕様の普及や実装が進んでいる委員 ティティ(サーバなど)間の共通鍵 アプリケーション提供者(サービス提 会です.本委員会が規定する範囲は, ベースセキュアチャネルプロトコル 供者)などサーバ側および全体のアー ①一般のカード管理コマンド(カード (SCP: Secure Channel Protocol), キテクチャや要件などを定義するシス 情報取得コマンドや鍵管理コマンドな J a v a C a r d を利 用 する場 合 のA P I , * SCPに基づくカードアプリケーション なお最 近 では, G l o b a l P l a t f o r m コマンド,③カードとカード以外のエ 管理コマンド,そして,ICカード発行 ユーザの声を反映し,実装や展開を ンティティ間の認証と暗号路を確立す 者 だけではなくサービス提 供 者 が 促進していくための組織として,この るためのセキュアチャネルプロトコル, ICカード発行者からの許可を得てIC 委 員 会 と理 事 会 の間 にA d v i s o r y ④ カードアプリケーション用 の カードアプリケーションをICカード上 Councilが設立されました.この組織 API( Application Programming にダウンロードするためのトークン は委員会と理事会をつなぐための役割 Interface)です. ど),②カードアプリケーション管理 テム委員会があります. (許可証)や実行結果であるレシート の形式などを規定していることです. も持っており,今後GlobalPlatform において非常に重要な位置付けをなす ものと考えられます. * カードアプリケーション管理:カード上のアプ リケーションのロード,インストールなどライ フサイクルを管理する. カード仕様V2.2はこの機能に加え,モ バ イ ル 網 お よ び PKI( Public Key Infrastructure)ベースのSCP,PKI に基づくトークン,レシート,および 理事会(Board of Directors) (Single vote per Director) Professional Services Operations Secretariat Technical Director Jil Bernabeau (Gemplus) PR Agency ・Elected Directors 現在11名 Chairman: Robert E.Beer (Data Card) Vice Chairman: Marc Kekicheff (Visa International) Treasurer: Shoji Miyamoto (Hitachi) 他にNTT(Eikazu Niwano), JCB, France Telecom, Gemplus, SERMEPA, MasterCard, G&D, STMicroelectronics そしてMultosのランタイム環境などを 追加しています.このようにカード仕 Marketing Secretariat 様 V 2 . 2 はP K I 認 証 をベースとした Executive Director Kevin Gillick (GlobalPlatform) ・Strategic Directors 現在3名 IBM, Axalto, Toshiba カードアプリケーション管理コマンド, NICSS方式さらにMultos方式を取り 込み,現状では世界でもっとも有力な 方式をカバーした仕様となっています. Advisory Council カード委員会には次の3つのワーキ ンググループ(WG)があります. Membership Public Entity Member (no voting privileges) Full Member (single vote) Participating Member (committee voting Only) Observing Member (no voting privileges) ① マルチアプリケーションカー ドに対 するカードとアプリケー ション管理に関して技術中立な Committees 標 準 の策 定 を行 っているC a r d Card Committee Klaus Gungle (IBM) Device Committee Laurent Coureau (France Telecom) System Committee Christophe Biehlmann (Datacard) Specification WG( Working Group) Card Specification WG Application Programming Interface Enhancement Profile and Scripting WG Compliance WG Device and Application Management Interface WG アンスを保証するためのガイドラ Device Compliance WG System Compliance WG インやプロセス・ツールの定義を Security WG Key Management System WG 図1 GlobalPlatform組織構成 ② カード仕様に対するコンプライ 行っているCompliance WG ③ G l o b a l P l a t f o r m カードのセ キュリティ要 件 の定 義 や Common Criteria手法に基づく NTT技術ジャーナル 2006.9 77 グローバルスタンダード最前線 Protection コンソーシアムが本デバイス委員会に Profileの開発・維持を行ってい 統合されて現在に至っています.本仕 るSecurity WG 様 の適 用 分 野 としては, E F T - P O S GlobalPlatform terminals (STIP EFT-POS Profile), デバイス委員会 デバイス委員会では,マルチアプリ ケーションカードを挿入するPOS端末 などのカードアクセプタンスデバイス上 のアプリケーション(Stipletと呼ばれ る)開発のためのオープンなアーキテ するガイドを規定しています. システム委員会には次の4つのWG があります. ① ICカードのカスタマイズのため ATM,交通系端末,自動販売機, のオープンな標準の策定(特に 携帯電話,PDA,セットトップボッ X M L とE C M A S c r i p t を使 った クス,ホームバンキング端末,カード デザインを含 む) を行 っている リーダ付PCなどが挙げられます. Profile and Scripting WG デバイス委員会には次の3つの組織 があります. ① グローバル・プラットホーム・ ② カードとカード内部のライフサ イクルを含 む全 般 的 なシステム アーキテクチャの定義を行ってい るInterface WG クチャとAPIを定義し,カードアクセ メンバのビジネス要 件 と機 能 要 プタンスデバイス上のアプリケーション 件 を満 したA P I の改 良 を行 って ③ 主として相互運用性に基づくシ 開発と配布を容易にしています. いるApplication Programming ステム・ コンプライアンス・ プ Interface(API)Enhancement ログラムの定 義 を行 っている WG Systems Compliance WG このための仕組みを実現するプラッ トフォームとして提供されているものが STIP(Small Terminal Interoperability ② デバイスとアプリケーション管 ④ 鍵 管 理 システム間 のインタ Platform) であり, これは 理 のためのフレームワークの確 フェースと鍵を共有しているシス 共 通 機 能 を 持 つ STIP Core 立 を 行 っ て い る Device and テム間の相互運用性を定義してい Framework Technologyと,ある特 Application Management WG る Key Management System 定のカードアクセプタンスデバイスに特 ③ 要求された相互運用性レベルを 有の機能を持つSTIP Profileに分け 実現するためのGLOBALPLAT- られます.STIP Core Framework FORMD仕様に準拠したガイド Technologyは,すべてのカードアク ライン, プロセス, およびツー セプタンスデバイス(POSなどのリー ルの提 供 を行 っているD e v i c e ダ機能を持つ端末)に対する共通の Compliance WG 他ICカード関連組織 との協調 GlobalPlatformはICカード業界に かかわる多くの世界中の標準化関連機 関との協調を行っています(図 2 ). APIとして,OS利用に関するアクセス 制御やカード保有者認証などを提供し WG システム委員会 例えば,行政系の連携に関してAICF ( Asia IC Card Forum, 日 ・ 韓 ・ ます.STIP Profileは,特有のカード 中・シンガポールの機関で構成)や 挿入用デバイスを利用する場合のAPI システム委員会はICカードのバック を規定する仕組みで,現在,携帯電 オフィスのインフラストラクチャに対す GCF(Global Collaboration Forum, 話,EFT-POS端末,FINREAD る機能要件や技術仕様,ガイドを作成 日・欧・米の機関で構成),NICSS, ( 欧 州 の金 融 系 R W ( R e a d e r すること,そしてコンプライアンステス NIST( Writer))端末用のProfileが規定さ トのためのフレームワークを作成するこ Standards and Technology), そ れています.現在,GlobalPlatform とにあります.そのためにマルチアプリ してモバイル系 についてはO M T P Device/STIP Specifications V2.2 ケーションICカードのインフラストラ (Open Mobile Terminal Platform) が最新版の仕様となっています. クチャにかかわるすべてのアクタ(カー やETSI,その他 Java Card Forum, ド発行者やアプリケーション提供者な Smart Card Allianceなどです. 本 委 員 会 は1 9 9 9 年 にJ a v a C a r d Smart Card どのプレイヤ)に関する役割や責任モ Accepting Devices)で共通APIと デルを規定するとともに,アクタ間の ポリシー管理を行うために設立された メッセージング・データ交換にかかわ STIPコンソーシアムの技術を基本とし る参照仕様,鍵管理に対する要件, て設立されたものでしたが,近年STIP ICカードのパーソナリゼーションに対 Forum の SCAD( 78 NTT技術ジャーナル 2006.9 National Institute of 導入事例 GlobalPlatformのスマートカード の導入は2004年末には7,000万枚に NICSSコラボレーションEG(Expert Group)の主査(現在双方とも庭野 AICF ICCR IDA KEPIA が担 当 ) としてG l o b a l P l a t f o r m と の協調を図ってきました.その結果 としてこのフレームワークはG l o b a l GCF NICSS P l a t f o r m カード仕 様 V 2 . 2 に採 用 さ れ ( 4 ) , ( 5 ) , 共 通 鍵 ベースのG l o b a l マルチアプリケーション管理 ISO マルチアプリケーション管理 マルチアプリケー ション管理 マルチアプリケー 認証・暗号チャネル ション管理 マルチアプリケーション管理 C-API Multos Platform方式(カード仕様V2.1.1), M u l t o s 方 式 とともに世 界 の主 要 方 認証・暗号路 GlobalPlatform 認証・暗号路 マルチアプリケーション管理 マルチアプ リケーション 管理 式の1つとして認知されるに至ってい eEurope/CEN NIST ます. そこで我々は,今後もこのようなIC カード標準化組織とのPKI認証に基づ くマルチアプリケーション管理による JavaCardForum ETSI/3GPP Smart Card Alliance OMTP ICCR : China National IC Cards Registration Center KEPIA : Korea Electronic Payment Industry Association IDA: Infocomm Development Authority of Singapore 図2 GlobalPlatformと他ICカード組織との関連 オープン・ダイナミックかつセキュアな ICカード管理の推進と協調を通じて, 誰もがいつでもどこでも簡単に安全な 情報通信サービスが受けられるような 電子社会を実現していきたいと考えて います.またこの実現に向けて国内の 達 し, G S M カードに至 っては6 億 業界標準の1つでもあります.このよ e-Japan(新IT改革戦略)やu-Japan 5,000万枚が発行されています.例え うにPKI認証をサポートしたことによ の構想,および世界中のICカードシス ば,シティバンクや三井住友カード, り,国民IDカード・市民カードなどの テムの相互接続・連携に対して貢献を 韓国のテレコム企業であるSKテレコ ID系や電子行政系においても今後有 図っていきたいと考えています. ム・KTコーポレーション,モスクワ 力な標準となっていくと考えられます. ■参考文献 ソーシャルカード,米国国防総省の公 最近電気通信分野において次世代通 務員カードなど金融・医療・ID(行 信 網 ( NGN : Next Generation 政)・通信など他分野にわたって世界 Network)の議論が盛んですが,同 的に導入が進んでいます. 標準化作業においてはSIM仕様の適 用が議論されていますので,将来は従 今後の動きと NTTの取り組み 来のモバイル網だけではなく固定網へ 現在GlobalPlatformはカード仕様 らにデバイス委員会で規定した仕様の V2.2に関するコンプライアンステスト 実装が開始されており,今後の展開が 仕様作成や電子行政系向けのユーザガ 期待されます. イドの作成と並行して,IDや行政系 (1) (2) (3) (4) http://www.GlobalPlatform.org/ http://www.multos.com/ http://www.nicss.or.jp/ http://www.globalplatform.org/ pressreleaseview.asp?id=357 (5) h t t p : / / w w w . g l o b a l p l a t f o r m . o r g / pressreleaseview.asp?id=380 の適用が進んでいくかもしれません.さ このような流 れの中 , N T T は 市場への展開を図ろうとしています. N I C S S においてP K I ベースのマルチ このために,Advisory Council内に アプリケーション管理フレームワーク システムインテグレータと行政のタスク の規定に中心的な貢献をし,Global フォースを設立しています.Global P l a t f o r m 設 立 当 初 よりG l o b a l Platformはすでにモバイル通信におけ Platformの 理 事 ( Board of る業界標準であり,またVOPの流れを D i r e c t o r s ), および2 0 0 2 年 からは 汲む将来的に金融系でもっとも有力な N I C S S におけるG l o b a l P l a t f o r m ‐ NTT技術ジャーナル 2006.9 79