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LHC計画 姿を現したTGCシステム
LHC計画 記者懇談会資料 その1 姿を現したTGCシステム 2007.12.5 アトラス日本グループ 1 CERN(欧州合同原子核研究機構) CERN 研究所: CERN(Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire ) 欧州合同の加速器を用いて素粒子物理を探究する研究所。 沿革: 1954年:欧州12カ国の国際的研究機関として設立 1959年:28GeVの陽子シンクロトロン(PS)完成 1971年:陽子・陽子コライダー(ISR)の完成 1976年:450GeV大型陽子加速器(SPS)の完成 1983年:陽子・反陽子コライダーでWとZ粒子を発見 1989年:50+50GeV電子・陽電子コライダー(LEP)の完成 2008年:LHC加速器の完成、LHC実験開始(予定) 20カ国のCERN加盟国はGNOに比例してCERNの予算を出す。 運営: 年間予算: 1,065MCHF(1,050億円) GNPに比例 職員数: 約2,500人 加盟国:ドイツ, イギリス, フランス, イタリア, スペイン, オラン ダ, スイス, ベルギー, スエーデンなど欧州の20カ国(図参照) オブザーバー国:日本、米国、ロシア他2カ国など その他: ・利用者:6,000人 ・World Wide Webの誕生地 CERN研究所はジュネーブ市近くのスイスとフランスの 国境をまたぎワイン畑の中にある。背景はジュラ山脈。 2 LHC計画 Large Hadron Collider(大型ハドロン衝突型加速器) 目的 ・質量の起源のヒッグス粒子や超対称性粒子などの新粒子を 発見し、物質の究極の内部構造を探索する。 LHC加速器 ・7兆電子ボルト(7 TeV)の陽子同士を衝突させる。 ・周長27kmの地下トンネル内に設置される。 ・8.33テスラの超伝導双極電磁石1,232台などからなる。 ・総重量35,000トン, 液体He130トン, 液体N2 10,000トン。 ・総建設費は約5,000億円、建設期間は13年。 国際協力 ・CERN加盟国に日・米・露・カナダ・インドなどが協力。 ・日本は計138.5億円の加速器建設協力を行っている。 ・KEKはLHC衝突点の超伝導4極電磁石を開発製造した。 円形の赤線が27kmの地下LHC加速器トンネルを示してる。 4つの実験装置の場所が黄色丸で示してある。 実験装置 ・国際共同実験: アトラスとCMS(ヒッグス・超対称性粒子 の探索)、アリス(重イオン衝突)、LHCb(B物理)。 ・日本からは、KEK・東京大・神戸大など15機関から約60 名の研究者がアトラス実験に参加し、アリス実験には広島 大・東京大・筑波大・理研が参加している。 予定 ・2008年に完成し14 TeVの物理実験を始める。 2007年4月26日 全てのマグネット1700台が地下に設置された。 2007年11月7日 全ての加速器マグネットの接続が完了した。 3 アトラス(ATLAS)実験 シリコン検出器 超伝導ソレノイド ミューオン検出器 ・ 14兆電子ボルト(14 TeV)の重心系エネルギーで 陽子・陽子衝突現象を測定し、ヒッグス粒子の発見 や超対称性粒子の探索を目指す実験。 ・ 高さ:25m、全長:44m、重量:7000トン、総工 費:約600億円、建設期間:13年 ・ 35ヶ国約1600名の研究者(博士以上)が参加。参 加各国は、担当する検出器をそれぞれの国で製作 し、CERNへ持込み、据付・組立・試運転を行う。 ・ 日本グループは、高エネ研(KEK)・東京大・神戸大・ 首都大東京・信州大・岡山大・筑波大・大阪大・名 古屋大など15機関から約60名の研究者が参加し て、装置の建設や解析準備を行ってきている。 アトラス実験装置。高さ25m,全長44m,重量7000トンで世界最大。 ・ 日本はアトラス建設費の7%を負担し、主に ミューオン検出器:トリガーチェンバーと電子回路 シリコン検出器:センサー6千枚, モジュール980台 超伝導ソレノイド:2.6mφx5.3mL, 磁場2テスラ の建設を担当してきた。 ・ 日本のグリッド計算機センター(ティア2レベル)を東 大素粒子物理国際研究センターに設置している。 ・ 2008年夏から物理実験を開始する。 2005年11月 地下実験室で建設中のアトラス実験装置の様子 (超伝導ソレノイド+中央カロリメターを中心に移動する直前) 4 ミューオントリガーシステム (その1) 概 要 目的: ・ヒッグス粒子などから発生する高いエネルギーの オン ミュー ミューオン粒子のみを選び出す。 衝突点 方法: トロイド電磁石 ・超伝導トロイド電磁石で曲げられたミューオン の飛跡を7層のTGCチェンバーで測る。 ・飛跡の角度を計算し、曲がりの少ない飛跡のみ アトラス測定器の断面図。赤丸中のTGCシステム(紫 色)を日本・イスラエル・中国が担当した。 を選択してトリガー信号を出す。 構成: ・TGC型ワイヤーチェンバー: 3588台 ・信号数: 331,776 チャンネル ・チェンバー総面積: 2000 m2 建設分担: ・日本・イスラエル・中国の3カ国とCERNによる 共同作業 アトラス地下実験場で建設中のミューオントリ ガーシステム(ビッグホイールと呼ぶ) 5 ミューオントリガーシステム(その2) トリガーチェンバーの製造 ・ 1997年よりチェンバーの試作とビームテストを行い 製作の方法を開発した。最初は失敗の連続であった。 ・ KEKの富士実験室でチェンバーの量産を行うために、 カーボン塗布装置・接着準備室・ワイヤー自動巻き 機・純水洗浄機・チェンバー接着設備など多くの装置 を作った。 TGCチェンバーには約千本の細いワイヤーがハンダ付けされる。 ・ 2001年より2005月2月までに3種類のチェンバーで 合計1224台を完成した。 ・ 1日に2台のチェンバー生産スピードが達成された。 ・ 1.5m大のチェンバーの平面性を200ミクロン以内に 抑えるとか、閉じる前に1日以上高電圧をかけて検 査するなど、工程毎に多くの検査を入れて徹底した 品質管理が成功した。 参照:http://www.kek.jp/newskek/2005/mayjun/25ns.html KEKでは1200枚のTGCチェンバーが4年間で製作された。 6 ミューオントリガーシステム(その3) トリガーチェンバーの検査 ・ KEKで製造されたチェンバーは、全てトラックで 神戸大学に運搬された。 ・ 宇宙線検査ステーションを使って、各々のチェン バーのガスリークのチェックや効率測定などの検 査を行った。 ・ チェンバー毎に宇宙線の検出効率の地図を作り 不具合な部分がないかチェックした。 神戸大学での宇宙線検査ステーションと宇宙線イベント図 ・ 検査は4年間の間、大学院生により殆ど毎日続 いて行われた。 ・ 98%のチェンバーが性能検査に合格した。 ・ 合格したチェンバーは、空調付コンテナにパック され、神戸港よりインド洋経由でCERNに海上・ 陸上輸送された。 T7型チェンバーの効率地図。白い部分が100%の効率を示す。 7 ミューオントリガーシステム(その4) 電子回路の設計と製作 ・ トリガーチェンバーからの約33万チャンネルの信号 を処理する電子回路システムは、日本グループが 設計から製作まで担当した。 ・ 回路の基本要素は5種類の集積回路チップである。 チェンバーにつく ASD回路ボード 5種類の集積回路を設計・製造した (外注ではコストが高すぎるため)研究者と大学院 生が全てそれらのチップを設計した。最も複雑な チップには完成まで4年もかかった。 ・ TGCチェンバーに付けられるアンプ・シェーパー・デス クリ(ASD)回路ボード24,000枚は日本で作られ、 中国で検査された。 ・ 30種類の回路ボードが日本で設計・製作・検査さ れ、順次CERNに輸送された。 ・ 配線用のケーブルや据付ボックスなども日本で調達 しCERNに送られた。 写真は、CERNでのセクター組立現場で日本のアトラスグルー プ研究者が文部科学省などからの見学者に説明しているとこ ろ。茶色の板状の箱がTGCチェンバー。一列に並んだ白い箱の 中に電子回路ボードが詰まっている。 8 ミューオントリガーシステム(その5) CERN地上での組み立て作業 ・ 日本とイスラエルから輸送されたTGCチェン バーなどは、検査(および修理)を経て、鉄フ レームからなるセクターに設置された。 ・ 2005年5月~2007年8月の間に計72台の セクターが組み上げられ、 TGCチェンバーと回 CERNの地上でセクターの組立・検査作業が2年以上続いた。 路の据付や配線・配管が行われた。 ・ 完成したセクターはシステム検査がなされ、正 しく動作している確認された。 ・ 完成したセクターは順次地下実験場に運ばれ、 ビッグホイールに組み上げられた。 完成したセクターは次々と地下実験室へ運ばれた。 9 ミューオントリガーシステム(その6) アトラス実験への組込作業 ・ アトラス地下実験室に運ばれたセクターは、ビッ グホイールに組み上げられた。 ・ 2007年9月21日に全てのビッグホイールが完 成した記念祝賀会が現場で開かれた(右写真)。 ・ TGCシステムの一部の動作テストが始まり、宇 宙線も観測された。2008年春の運転開始を目 指し、現場で昼夜準備作業が進んでいる。 地上のコントロール室で試運転するアトラスメンバー。日 本の研究者がTGCシステムの運転を制御している様子。 2007年9月21日 全てのビッグホイール(8台)の組立が完成した。 10 LHC計画の目的 ・ 物質は、クォークとレプトンそれぞれ6種類の粒子 から成り立っている。 ・ 4つの力のうち、強い力・電磁力・弱い力の3つの 相互作用を扱った標準モデル(標準模型)が非常 に高い精度で自然を記述する。 ・ 標準モデルによれば、粒子の質量の起源を説明 するために、宇宙はヒッグス場の海で満たされて なければならない。ヒッグス粒子が最低1種類存 在するはずだが、まだ発見されていない。 物質の質量の起源で あるヒッグス場に伴 うヒッグス粒子のみ が未発見 ・ ヒッグス粒子はLHC加速器が到達するエネルギー 領域に存在すると予言され、LHC運転開始後2, 3年で殆ど確実に発見される。 ・ さらに、宇宙の大半を占める暗黒物質の候補で もある超対称性粒子など新しい物理が発見され る可能性が高い。 アトラス日本広報ページ http://atlas.kek.jp/public/index.html ヒッグス粒子発生のシミュレーション 11 アトラス日本グループの関連ページ ・ 12