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風力発電事業化研究報告書

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風力発電事業化研究報告書
北
条
町
風力発電事業化研究報告書
<天神川河口から眺めた北条海岸(設置予想図)>
平成15年3月
北条町地域エネルギー研究会
鳥 取 県 北 条 町
鳥
取
大
学
目
次
-----------------------------------------------------------------------------
1
---------------------------------------------------------------------------------
3
------------------------------------------------------------
5
---------------------------------------------------------
9
------------------------------------------------------------
13
--------------------------------------------------------
15
----------------------------------------------------------------------------------------
15
--------------------------------------------------------------------------------
16
----------------------------------------------------------------
31
--------------------------------------------------------------------------------
40
-------------------------------------------------
41
------------------------------------------------------------------------------------------
43
---------------------------------------
45
----------------------------------------------------------------
45
(2)ワーキンググループ報告会(1)の概要等
-------------------------------------
46
(3)ワーキンググループ報告会(2)の概要等
-------------------------------------
48
----------------------------------------------------------------
50
-------------------------------------
52
(6)第3回研究会の概要等
----------------------------------------------------------------
55
(7)第4回研究会の概要等
----------------------------------------------------------------
57
--------------------------------------------------------------------------------
60
------------------------------------------------------------------------------
143
--------------------------------------------------------------------------
144
----------------------------------------------------------------------
147
------------------------------------------------------------------------------
205
1
委員長あいさつ
2
町長あいさつ
3
風力発電事業化の課題と方向
4
地域エネルギー研究会設置要綱
5
町が風力発電に取り組む意義
6
地域エネルギー研究会の取り組み
(1)経緯
(2)技術的課題
(3)収支シミュレーション
(4)今後の課題
7
北条町風力発電を取り巻く最近の状況
8
まとめ
9
地域エネルギー研究会のこれまでの検討状況
(1)第1回研究会の概要
(4)第2回研究会の概要等
(5)ワーキンググループ報告会(3)の概要等
(8)研究会資料
10
風況精査報告
(1)風況観測内容
(2)観測データの解析
(3)欠測の補完
1
委員長あいさつ
北条町風力発電による地域興しに向けて
地方分権、市町村合併、地方財政制度の見直し、行政効率化への大きい流れ、環境問題
の深化等、地方経済は現在大きい曲がり角を迎えている。
国の地域振興政策も、これまでのような護送船団方式から選択的地域振興政策に大きく
転換せんとしている。即ち、これまでのように国が地域振興のメニューを用意して地方が
これに乗る形での地域振興政策、また公共事業等の財政政策が本来の目的を逸脱して地方
の経済を支えるような政策はもはや限界に達している。
これからは地域間競争の時代である。それぞれの地域が、地域が持つ有形無形の地域資
源を改めて見直し、または生み出してこれを活用して地域振興を図っていくこと、いわゆ
る内発的発展の時代に移りつつある。これまでのような全国画一的な地域振興のメニュー
で金太郎飴のような地域振興ではなく、それぞれの地域が自らの手で自らの地域振興を図
っていく時代である。そして、それぞれの地域に魅力を感じる人々が地域に集い、交流し、
競争力ある地域が創出される時代を迎えようとしている。
北条町は、これまでもワイン等の地元産品を活用した地域振興、また都市の規模に比較
すると高い技術力を有する企業が地域経済を支えてきた。しかし、ここで更にもう一度地
域の資源を見直して地域の人々が域外の人々と協力して新たな地域振興が進められよう
としている。新たな地域資源の一つとして、これまでともすればマイナスの資源と考えら
れてきた「カゼ」に着目して風力発電事業を核とした地域興しを立ち上げんとしている。
鳥取大学の工学部林研究室の高い技術力によりその可能性を綿密に調査して、風力発電を
事業化し更にはこれをテコとして地域興しを図らんとしている。
地域および地域外の人々、それもこの分野のトップクラスの専門家が集まり、委員会を
組成して技術的問題、事業化方策等について熱心に議論を行った。本報告書はその中間報
告である。
当委員会においては、北条町で風力発電事業を行うことは十分可能との結論を出してい
る。勿論、今後、機種選定、機材搬入方法、売電単価の交渉、事業化方策の具体的検討等、
事業化に向けた様々な課題は今後の検討課題として残されてはいるが、これらの課題は関
係者の努力により十分克服することができるものと考える。そして、本報告書をベースに
事業の具体化を期待するものである。
鳥取県は全国でも珍しい電力空白県である。この中で環境に配慮した風力発電を事業化
し、これをテコとして地域振興が図られ、北条町が更なる飛躍を遂げられることを期待す
るものである。また、本委員会の中で地域の人たちがともに考え、議論していただいたこ
とに謝意を表したい。と共に今後の事業化に向けたエネルギーの再結集を期待したい。
平成15年3月
鳥取大学教育地域科学部
教授
光多長温
2
町長あいさつ
北条海岸付近で平成10年から鳥取大学林研究室が行った風況調査の結果、風力発電事
業が可能なほどの強い風が吹いているということで、平成14年5月、大学教授の方々、
民間有識者の皆さん、町民の方々を中心に、「北条町地域エネルギー研究会」を設立し、北
条町での風力発電事業の実現に向けてこれまで検討をお願いしてまいりました。
今年度、合わせて4回の研究会が開催され、風車の建設規模、事業主体、輸送の関係等、
様々な問題について、この分野ではトップクラスの皆さんによる熱心な研究・議論をいた
だきました。
研究会の検討結果を受け、町では来年度の事業実施に向けて準備を行い、計画がスケジ
ュール通りに進めば平成16年度には北条砂丘地に大規模な風車が立ち並び、本町の誇り
となる施設となるよう、期待を持って取り組みを進めて参ります。
世界中で地球温暖化をはじめとする環境問題やエネルギー問題が深刻化する中、本町で
は、ISO14001 の平成15年度の取得を目指しています。
来年度からは事業推進委員会として引き続き検討を要する事項もあるようですが、研究
会の成果を十分活かしてこの風力発電事業をぜひ実現させ、「環境にやさしい町・北条町」
のシンボルとして皆さんに親しまれる施設となることを希望しています。
最後になりましたが、研究会に携わっていただきました多くの委員の皆さん、多数の貴
重なご意見、ご検討を本当にありがとうございました。
平成15年3月
北条町長
松
本
昭
夫
3
風力発電事業化の課題と方向
− 環境エネルギー先進県をめざす鳥取県 −
鳥取大学工学部教授
林
農
1.はじめに
いよいよ北条砂丘に大規模風力発電所(ウインドパーク)を出現させるところまで漕ぎ着けました。
平成10年に風況精査から始めた鳥取大学工学部林研究室の風力発電事業化研究も多くの人達
の協力を得て現実のものになる一歩手前です。鳥取県は環境先進県を標榜するとは言え、電力自
給率は僅か11%です。環境を汚染する近隣県の火力発電・原子力発電のお陰で成り立っている
鳥取県の電力事情では、環境先進県を自慢できるものではありません。環境に優しい風力発電で
せめて20%まで電力自給率を上昇させることによって、『環境エネルギー先進県』として誇れる鳥
取県にするチャンスが到来しているのです。
2.エネルギーの地産地消
北条砂丘の東端・北条町オートキャンプ場の西南隅と、北条砂丘の西端・大栄町の下水道終末
処理場の広場を借りて、鳥取大学工学部林研究室が風況精査を始めたのが平成10年6月でした。
高さ30mの風速計は確かな風の強さを示したが、高さ20mの風速計が示した弱風傾向は海岸に
並行して東西に走る砂防林の影響であることを伺わせました。そこで平成12年12月より、ハブ高さ
70mの大型風車の建設を想定して、高さ70mのポールに10m間隔に風向・風速計を取り付けて
大気境界層内の速度分布の実測を始めました。それと同時に、ミニドップラーソーダを利用した移
動式風況測定システムの開発を目的とした融合プロジェクトも大学院の博士養成研究として開始し
ました。その結果、高さ70mにおける年平均風速は2001年5.68m/s、2002年5.8m/sであり、N
EDOの基準5.0m/sを上回るものの、北海道苫前ウィンビラの6.6m/sには及ばない中程度の風
況地帯であることが分かりました。この程度の風の強さでは電源開発やトーメンなどの電力プロバイ
ダーが、現時点で先を争って進出してくる程の強風地帯ではありません。しかし、これは地元の人
達にとっては幸運で、地元の資源を使って地元で生産した電力を消費する、いわゆる『エネルギー
の地産地消』に最適な風況なのです。
3. 事業化の課題
3.1 経済性重視の計画
強くもなく弱くもなく中程度の風況の北条砂丘でウィンドファームを成功させるには精一杯のこと
を実行する以外に出来ることはないのです。一言で言えば、現時点の技術を使って最大限の努力
によって採算性を考慮して収益をあげられる風力発電を計画することなのです。技術的には、でき
るだけ多くの発生電力量を得ることであり、その結果として風のより強く吹く上空まで届く背高のっ
ぽで設備利用率が高くなるような風車の機種を選定し、計画段階からしっかりとした経済性重視の
思想を盛り込むことなのです。
3.2 設備利用率
風力発電や太陽光発電、廃棄物発電、燃料電池などのいわゆる新エネルギーはまだまだ研究
開発の途上にあり、効率や稼働率、設備利用率が定まりません。そこで本来総発電力量(kWh)で
設定すべき将来目標値を全国の総電力容量(kW)で設定しています。そこでただ単に大きな風車
を建設すればよいとする誤った見方が生じています。日本の電力を賄うのが目的ですから、一基
当たりの発電量を出来るだけ多くする必要があります。当然、ビジネスとして発電事業を実施してい
る電力会社や私企業においてはこの発電力量を高めて収益を上げる努力をしています。しかし、
風車を建てさえすればモニュメント効果があるとか、観光資源になるとか、環境教育に役立つとか、
本来の目的から離れて風力発電を建設し設備利用率を軽視する地方自治体が数多く見受けられ
ることは問題です。1997年12月に京都で開催された地球温暖化防止会議以前の、風力発電が
未発展であった時代にあっては、普及促進のためにモニュメント、観光、教育の付加価値をつけて
啓発活動の必要がありましたが、2010年までに300万kW の目標が設定され全国に1000kW の
大型風車が3000基も建つことが約束された現在では全くその必要はありません。全国に3000基
の大型風車が回り始めれば、どこからでも風車を見ることができるようになり、わざわざ観光目的で
風車だけを見にくる人もいないでしょうし、ユニークな風車でなければモニュメント効果もないでしょ
う。むしろ、誤って低い設備利用率の風力発電を建てたとしたら、反面教師の役回りを演じることに
なるのが心配です。したがって、今現在重要なことは第一の目的を発電事業とすることであり、もし
必要なら地域おこしの環境教育や観光は単に付加価値として留めるのが正しい計画と言えます。
重要なのは出来るだけ多くの発電をすること、すなわち年間発生電力量を多くするために一基当
たりの設備利用率を高めることなのです。
3.3 電力インフラ整備
日本の各地で年平均風速が7m/sを越える強風地帯はそれ程多くはありません。山陰地域でも
年平均風速6m/sを越えるのは難しく、北条砂丘では高さ70mにおいて年平均風速5.8m/sとい
ったところです。しかし、経済性を考えれば、採算はギリギリといったところですから甘い計画は許さ
れません。近くに高圧電線が走っていなければ、電力基盤の整備からはじめなければなりません。
遠くにある高圧電線に接続するための電力インフラまで発電事業者が負担しなければならないと
するとビジネスとしては成り立ちません。そこで電力インフラ整備に対しては県や地域の支援が必
要なのです。
3.4 輸送の問題
現在、風車の大型化が急速に進んでいますから、旧来の国道を輸送するのは困難になりつつあ
ります。狭い国道9号線では、荷揚げする港湾から建設現場まで輸送する道路が通行できない可
能性があります。例えば、2000kW級風車の直径5mもある大型タワーは、国道9号線にある高さ
制限4.5mの青谷−羽合高速自動車道の陸橋の下を通過できません。長さ40m以上もあるブレ
ードを輸送するには、地図上の交差点に旋回軌跡図を当ててターンできるか確認する必要があり
ます。直径4m以上のタワーや長さ40m以上のブレードを運搬するのですから、国道の通行許可と
アクセス道路の確保が必要です。北条砂丘では海から陸揚げすることも選択肢の一つです。
4. 維持管理
ひとたび故障すれば、素早く対応して修理しなければ稼働率も設備利用率も下がってしまいま
す。安定して発電し続け年間発電力量を伸ばすためには、故障したら直ぐ修理に飛んでくる風車
メーカーと契約しておくことが必要です。出来れば自前の修理設備と人員を配置しておくのが望ま
しいのです。ビジネスとして成功させるには、この自前の維持管理チームに近隣の風力発電の維
持管理を契約させ事業を拡大することも可能です。
4.1 雷対策
故障の原因として落雷があります。12月の雪の降り始めに襲来する日本海側の冬季雷は、平野
にニョキッと突き出た風車が格好の標的です。雷がブレード先端に落ちて故障の原因となれば修
復にかなりの期間を要し稼働率と設備利用率を減じてしまうので雷対策は大切です。現時点では
確実に落雷から逃れる方法はまだ見つかっていないので新しい避雷方法の開発が必要です。
4.2 寿命予測
大型風車の建設ラッシュが始まろうとしている今、風車を建てることには熱心であるが、誰も倒す
時のことなど考えていないようです。今から考えておかなければならないのは「風車の寿命」です。
現在建設中の1000∼2000kWの大型風車は、おそらく20年以上は壊れることなく回り続けられる
であろうとの予測の下に、電力会社との15 年据え置きの売電契約を結んでいます。それでは何年
保つのかについては誰も予測できていません。運転中に壊れることがあっては一大事です。倒れ
る前に人為的に廃棄してしまう必要があります。最も経済的な運転を考慮すれば、できるだけ長く
回し続けた上で壊れる直前に使命を終えさせることが最適です。そのための「寿命予測」が必要で
す。それにはAE(Acoustic Emission)システムを利用することが最適と思われますが、まだ実証試
験すらされておりません。我々自身が研究に取り組む良い課題です。
5. 周回遅れのトップランナーに
鳥取は昔から自然環境に恵まれていた土地であります。片山善博知事は鳥取県は環境先進県
であると標榜されました。まさに妥当な主張です。しかしながら、電力自給率は僅か11%です。隣
の島根県が放射性廃棄物を覚悟して原子力発電をさらに増設し、多量の二酸化炭素ガス排出を
承知で大型火力発電所を稼働しているのです。岡山県、広島県、山口県とて化石燃料を燃やし続
けています。そのお陰で鳥取県の電力が確保されているのです。残念ながら鳥取県はエネルギー
後進県と言うべきです。何もせずに環境先進県と標榜するのは歯がゆいではないですか。そこで、
原子力発電も火力発電もないことを逆手にとって、環境に優しい風力発電によって電力自給率を2
0∼30%にあげられるならば、鳥取県こそは環境エネルギー先進県であると胸を張って主張できる
のです。欠点は長所でもあります。自然環境に恵まれた鳥取県はまた自然エネルギーにも恵まれ
ているのです。冬の北西の風はきつ過ぎるくらいです。後発の有利さがあります。風力発電によっ
て周回遅れのトップランナーとして環境エネルギー先進県になることが出来るのです。
6. おわりに
わが国は石油の約99.7%を輸入に依存しており、備蓄量は平成14年3月末で僅か166日分で、
その供給基盤は極めて脆弱です。石油は2050年頃に枯渇するといわれていますが、その枯渇す
る石油すらないと言うのがわが国の実情です。イラクに戦争のきな臭い煙が漂い始めていますが、
中東諸国などが石油の輸出をストップすればたちどころに日本は困窮するのです。別の見方をす
れば、日本は僅か166日で石油が枯渇すると言えなくもないありさまなのです。風力発電によって
この危機的状況を少しでも改善して持続可能な社会を構築するのが、我々と次代を担う若者達に
科せられた使命なのです。
『子や孫達が誇れる北条町を造りましょう』
(平成 15 年 3 月 13 日)
4
地域エネルギー研究会設置要項
(設置目的)
第1条
地域エネルギーを活用した北条町のまちづくりの推進に必要な検討・研究を行
うため、北条町地域エネルギー研究会(以下「研究会」という。)を設置する。
(所掌事務)
第2条
研究会は、次の事項を検討し、北条町に対し提言等を行う。
(1)町づくりにおける地域エネルギーの位置づけ
(2)地域エネルギーの採算性
(3)地域エネルギー実現に向けての手法
(組
織)
第3条
研究会は、北条町長が委嘱した別表の委員をもって組織する。
2
委員長は、町長が委員の中から指名するものとする。
3
委員長に事故あるとき又は不在のときは、委員長があらかじめ指名する委員がその
職務を代行する。
4
研究会に、北条町長が委嘱した別表のメンバーで組織するワーキンググループを設
置し、研究会での検討に必要な資料及び情報収集などを行う。
5
委員の任期は、委嘱の日から平成15年3月31日までとする。
(会
議)
第4条
(庶
研究会の会議は、委員長が会務を総理し、会議の議長となる。
務)
第5条
(委
研究会の庶務は、北条町企画課において処理する。
任)
第6条
この要綱に定めるもののほか、研究会の運営に関し必要な事項は、北条町長が
定める。
附
則
この要綱は、平成14年5月2日から施行する。
「北条町地域エネルギー研究会」委員名簿
役 職 名
委 員 長
委
員
氏
光
多
名
長
林
温
農
備
考
WG出席
鳥取大学教育地域科学部教授
○
鳥取大学工学部教授
○
〃
大
坂
英
雄
山口大学工学部教授(工学部長)
〃
鈴
木
勝
也
(財)科学技術交流財団参事
〃
坂
梨
義
彦
電源開発(株)執行役員・事業企画部長
〃
若
良
二
鳥取大学教育地域科学部教授
〃
小
池
淳
司
鳥取大学工学部社会開発システム工学科助教授
〃
宮
内
勇
幸
鳥取県商工労働部自然エネルギー開発推進室長
〃
穐 田 誠 一 郎
鳥取県商工会連合会事務局長
〃
山
根
俊
樹
北条町商工会経営指導員
○
〃
谷
口
敬
雄
北
条
町
民
○
〃
岩
木
憲
二
北
条
町
民
○
〃
杉
田
理
加
北
条
町
民
○
〃
中
西
眞
治
北条町企画課長
○
克
博
鳥取大学・受託研究員(林研究室所属)
○
優
鳥取大学・NEDO 養成技術者(林研究室所属)
○
鳥取大学大学院博士後期課程(林研究室所属)
○
北条町企画課主事
○
WG
メンバー
〃
澤
加
〃
藤
〃
劉
岩
薇
垣
伸
○
○
WG:ワーキンググループ
北条町地域エネルギー研究会実施経過
2003.3.10
No.
1
年月日
会議等名称
開催場所
平成 14 年 北 条 町 地 域 北条町農村
5月2日
内
容
本研究会の設置要綱および町勢の概要について
エネルギー
環境改善
中西委員より説明。地域に根ざした事業計画を立
研究会
センター
てることを確認した。今後のスケジュールを打ち合
わせ、風況調査結果の概要について林委員より説
明。
2
6月6日
風力発電先進地調査結果について岩垣氏、澤氏
ワーキング
鳥取大学
グループ
地域共同研究 より報告、また、風車導入時に必要な付属設備に
報告会(1)
センター
ついて報告された。事業費のシミュレーションにつ
いて加藤氏より報告され、この時点であいまいな部
分を次回ワーキングまでに修正することを確認。建
設予定地の土地利用状況について中西委員より
説明。
3
7 月 17 日
修正した事業費のシミュレーションについて加藤氏
ワーキング
鳥取大学
グループ
地域共同研究 より報告。風力発電先進地調査(追加調査)を元に
報告会(2)
センター
地域エネルギーのまちづくりにおける位置づけの
検討を行った。
4
5
9月3日
北 条 町 地 域 鳥取大学
事業費のシミュレーションについて報告し、各委員
エネルギー
地域共同研究 と意見交換を行った。土地の問題、機種、規模の
研究会
センター
選定に方向性を持たせた。
鳥取大学
系統連系事前申込について説明、この時必要な資
グループ
地域共同研究
料を確認した。また、風車発電機の輸送について、
報告会(3)
センター
道路管理者(国土交通省)と協議中である旨の報
11 月 27 日 ワーキング
告。事業手法について、委員長よりいくつかのパタ
ーンを提示。公共の所有で民間の運営という形態
を最優先に考えることを確認した。
6
平成 15 年 北 条 町 地 域 鳥取大学
1 月 15 日
輸送の検討結果報告。事業形態についての確認
エネルギー
地域共同研究
と、町の今後のスケジュールについての確認。事業
研究会
センター
主体などは中国電力の動向が確定してから委員会
を開催して検討する。NEDO の補助金の採択を目
指し、策を講じる。
7
2 月 28 日
北 条 町 地 域 鳥取大学
北条町の風力発電計画をとりまく最近の状況説
エネルギー
地域共同研究
明、1500(2000)kW9基で平成15年4月末 NEDO
研究会
センター
申請を目指すこと、「事業推進委員会」を発足させ
ることを決定した。事業主体は調査・設計は町が委
託、建設は町が発注、運営は「新方式第三セクタ
ー」による。
5
町が風力発電に取り組む意義
1 環境問題の普及啓発のシンボル
北条町においては、町役場でISO14001の認証取得を平成15年度をめどに行う
予定であるなど、今後、環境問題を最重要課題の一つとして考え、不法投棄、一般廃棄物
の減量化などをはじめとする廃棄物問題から、地球温暖化防止などの地球規模での環境問
題への取り組み、普及啓発をすすめ、環境先進自治体としての地歩を固めることとしてい
る。環境負荷のないエネルギーである風力を利用した発電施設が町内に設置されれば、町
民の意識啓発効果は多大なものがあるとともに、環境問題に意識の高い自治体としての政
策アピール効果も期待できる。
2
町の特色の創出、地域振興
市町村合併を控え、今後、地域のアイデンティティーをいかに醸成し、後世に伝えてい
くかということが重要な課題となってくるが、町民の誇りうる施設とし、周辺地域をも含
めた地域振興を図ることによって、その核としての役割が期待できる。
3
町独自財源の充実とこれを利用した環境問題への対応
北条町は町税の割合が20%ほどで、地方交付税、国庫補助金などの依存財源で歳入を
まかなっている財政力の弱い自治体であり、独自の施策もなかなかうちだせない状況にあ
る。地域エネルギーが事業化されれば、独自財源が充実されるとともに、環境問題などの
新事業の実施に活用することが可能となる。
4
民間、他自治体の地域エネルギー導入のモデルケース
国策として新エネルギーの導入が叫ばれている中、中国地方では、特に風力は導入が遅
れている状況にある。一定の風況がある場所できちんとした事業計画をたてれば、採算が
とれることを実証することで、民間、他自治体の導入のはずみとなることが期待できる。
5
エネルギーの地産地消
風力という北条町の地域エネルギーを利用可能な電力として具現化し、それを地域で利
用することによって、他県の火力や原子力に依存している電力自給率を高め、エネルギー
の地産地消をすすめるとともに、発電量相当の二酸化炭素排出減効果が期待できる。
6
北条町地域エネルギー研究会の取り組み
鳥取大学工学部林研究室
(1)経
偉
鳥取県内の風況精査は、平成7年度に鳥取県企業局が関金(県立農業大学校農地内)
で、NEDO の助成金を受けて始めたのが最初である。その後平成 9 年 8 月から企業局
が県中部で 3 地点行い、平成 10 年から鳥取大学が鳥取砂丘、県中部で風況精査を開始
している。これらの地点は未だ風力発電の導入には至っていないが、その後も地域新エ
ネルギービジョン策定事業の一環として風況精査が行われるなど、風力発電導入の動き
が加速し、ようやく昨年泊村で県内初の大型風車が稼動したところである。
泊村
(潮風の丘600kW)
鳥取市港町
青谷町
東伯町
大栄町 泊IC
名和町高田 名和町神田
鳥取大学
北条砂丘 泊村小浜
赤崎町竹内 北条町島
大山町
中山町萩原
倉吉市寿開拓
鳥取砂丘
鳥取市越路
船岡町
江府町
:鳥取大学風況精査地点
:鳥取県企業局風況精査地点
:町村・企業等風況精査地点
図6−1
鳥取県内の風況精査地点
平成 10 年の鳥取大学の風況精査結果から、北条砂丘での風況を正しく把握するため
には、より高い高度での観測が必要と判断された。これにより平成 12 年から鳥取大学
が 70mの観測鉄塔による風況観測を北条オートキャンプ場で実施し、風力発電事業が
可能な風力が得られるという結果が出た。町では環境・観光の面や地域の活性化のため
風力発電事業を行いたいと考え、風車の設置に向け十分な調査・検討を行うため、大学
教授、町民代表、町職員らから成る研究会を設立した。この北条町地域エネルギー研究
会は、地域エネルギーの位置付け、採算性、実現手法を検討し、これまでに4回の委員
会と 3 回のワーキンググループ報告会を行った。早々に解決すべき課題が山積している
が、北条町の平成 15 年度予算に基本設計費を計上するなど、事業化へ向けて着実に前
進している。
(2)技術的課題
ⅰ.立地
国道 9 号線
風況精査地点
図6−2
集落
建設予定地周辺図
当初、北条砂丘内の海岸線と国道 9 号線の間の松林もしくは畑地に可能な限り多数
基を並べる案を検討したが、風況精査地点と天神川河口の間に集落があり、騒音が問
題になりそうであるので、この西側を建設予定地とした。その結果、北条砂丘全体で
海岸線に 1 列に 15 基(大栄町側に 6 基、北条町側に 9 基)を建設する計画とし、まず
北条町側の 9 基分を立案した。建設する土地は、基礎部分が直径 10m 前後、上空をプ
ロペラが回る範囲が直径 80m 程度となる。基礎部分は借地、プロペラの回る部分は補
償とするなど、できるだけ用地費を軽減することが望まれる。
風車の基礎部分
(借地など)
80m
10m
プロペラの回転範囲内
(補償対象)
ⅱ.送電線
北条砂丘周辺の 6,600V の高圧配電線は、東側の西新田場の集落内と、西側の集落排
水処理施設の 2 系統が配線されている。これに接続すれば新規に架設する距離が短くて
済むと共に、既存の電柱に添架できるため、工事費が安く抑えられる。しかし、風力発
電機を 6,600V の高圧配電線に接続する場合、電気容量が少ないため、1,500kW 機では
付近の 2 系統で 2 基ないし 3 基までしか接続できない。9 基と将来計画の 6 基を建設す
る場合、66kV の特別高圧線を新たに敷設する必要がある。
既存の 66kV の系統は、東側に天神川浄化センター線、西側に八橋の変電所に向かう
八橋線が存在する。特別高圧の送電線には莫大な建設費用がかかってしまうため、風車
建設サイトから近い方が良い。そこで、直線距離で 3km 程の天神川浄化センター線に
接続することとし、風車サイトの東端に変電所を設け、風車の出力を 66kV に昇圧して
送電する案を採用した。ただし、風車本体の出力は 400∼700V 程度なので、一旦 22kV
程度に昇圧して風車間を配電線でつなぎ、変電所へ送ることになる。このトランスなど
の機器の設置場所も考慮しなければならない。
ⅲ.基礎工事
風車建設予定地付近(北条オートキャンプ場)
の国道 9 号線沿いのボーリング調査資料によれば、
砂丘地であるため支持層が約 45m と相当に深い
ところにあることが分かった。このため風車の基
礎を地震に耐えうる強固なものとするために、莫
大な工事費がかかると見込まれた。そこで、土木
事業者に大まかな見積を依頼したところ、45m の
杭を打ち込むと 1 基あたり 5,000 万円程度かかる
が、これを、20 数 m 程度のもので本数を増やし
た場合、4,000 万円までで施工できるとの回答で
あった。いずれにしても実際の工事ではボーリン
グ調査から着手しなければならないので、1 基あ
たり最低 4,000 万円かかるものとして収支シミュ
レーションに反映させた。
44m
支持層
図6−4
北条オートキャンプ場付近ボーリング調査データ
および 1,500kW 級風車の基礎断面図
ⅳ.設備利用率
風車の「設備利用率」とは、1年間を通じて定格出力で運転したと仮定した場合の発電量に
対する、実際の年間発電量の割合を表す。式で表すと次のようになる。
年間の発電量(kWh)
設備利用率(%)=
×100
定格出力(kW) × 年間暦時間(8760h)
「設備利用率」は、電力の取得総量を計る上で重要な指標であり、一般的に風力発電システ
ムの設備利用率は、17%以上(NEDO)が望ましいとされている。
表6−1、図6−5に、他都道府県に於ける風力発電用風車の「設備利用率」事例を
示す。このグラフから判断される事項を以下に記述する。
1.
設備利用率は、各事業主によってかなり差があり、年間の変動も非常に大きいと
言える。
2.
年間の変動としては、全般的に風況の良い冬場∼春先(11 月∼4 月)に於いて、
設備利用率が高い傾向を示している。
3.
全般的に、電力会社および民間が事業主の設備は比較的設備利用率が高く、市町
村が事業主体の設備は設備利用率が低い傾向を示している。
電力会社および民間が事業主の設備は、事業性・採算性を重視して風況の良い立地地
点を選定し風力発電設備を建設していると考えられる。一方、市町村が事業主体の設備
利用率が低い理由としては、事業性・採算性に重点を置かずモニュメント的要素で風車
を建設している事例が多い事も一因として考えられる。
風力発電設備が全国に普及し始めた当初は、モニュメントまたは観光地目的で成り立
っていたが、全国各地に風車の建設が計画されている現状では、モニュメント・観光目
的と言った要素は薄れつつある。したがって、今後は事業性・採算性を重視する事が重
要な課題であると言える。
今後、各地で風力発電設備を普及させて行くためには、事業性・採算性は重要な指標であ
り、以下の事項を考慮した上で、建設候補地点を決定する事が重要となる。
・
風力エネルギー取得量(年間発電量)は、事業性・採算性に大きく影響する
・
年間発電量を増加させるためには、設備利用率の向上が不可欠である
・
設備利用率を向上させるためには、風況の良い場所の選定が最も重要である
・ 候補地域に於ける事前の風況精査が重要である
表6-1 風力発電用風車の月別設備利用率・稼働率事例
発電事業体
東北電力竜飛岬
風力発電設備
定格容量
275kW×1基、300kW
×1基500kW×1基
2001年
利用率(%)
稼働率(%)
16.5kW×1基
稼働率(%)
利用率(%)
四国電力室戸岬
300kW×1基
稼働率(%)
利用率(%)
九州電力甑島
250kW×1基
稼働率(%)
利用率(%)
山形県立川町
100kW×3基
稼働率(%)
利用率(%)
秋田ウインドパワー研究所
400kW×2基
稼働率(%)
利用率(%)
留萌風力発電研究所
400kW×2基
稼働率(%)
利用率(%)
高知県野市町
250kW×1基
稼働率(%)
利用率(%)
島根県出雲市
年平均
7月
利用率(%)
北陸電力三国
2002年
項 目
16.5kW×2基
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
23.0
1.2
17.1
19.1
22.8
29.6
28.2
23.1
21.7
15.6
20.7
20.5
18.3
58.5
10.5
52.6
48.8
50.5
62.3
58.5
46.8
40.9
44.1
50.0
51.5
43.0
4.3
16.3
18.3
14.3
21.4
26.4
34.6
18.4
24.2
21.0
9.8
6.9
17.6
14.7
35.5
53.5
55.5
44.4
46.4
56.6
35.5
41.5
43.3
2.2
14.0
24.2
27.9
11.4
23.3
37.5
21.4
28.1
14.9
20.0
16.3
19.9
9.4
56.9
59.9
74.5
41.1
62.8
76.6
58.8
68.5
57.4
50.7
59.0
55.5
8.1
14.5
13.3
19.6
31.3
38.9
29.6
34.2
29.3
33.4
11.9
2.6
21.6
38.9
33.6
41.0
52.6
68.2
71.2
62.2
62.9
58.0
62.0
39.5
12.1
46.9
1.8
5.8
3.4
4.6
2.7
2.6
4.8
3.7
4.2
6.8
5.7
5.2
4.1
4.0
11.2
8.9
10.2
7.7
7.3
10.0
11.1
11.9
12.0
10.0
12.8
9.4
8.5
8.9
8.2
19.5
23.6
34.4
30.1
30.7
27.6
17.9
9.9
10.8
18.5
75.5
70.0
77.8
82.7
88.2
89.4
79.1
87.5
82.9
78.6
61.7
79.8
73.1
6.0
10.1
13.8
16.5
35.5
41.3
25.8
22.2
27.2
14.9
8.6
10.1
18.8
50.9
59.0
70.5
72.9
88.5
76.1
74.1
74.5
79.1
59.5
51.3
56.5
63.5
1.0
3.9
5.7
9.4
7.3
11.9
9.2
9.2
9.6
6.7
3.0
2.3
6.5
23.7
32.7
35.6
50.7
49.0
62.1
46.5
40.2
49.1
39.0
33.1
30.7
39.1
4.6
8.7
11.8
7.4
2.2
41.2
6.9
稼働率(%)
利用率(%)
久居榊原風力発電所
750kW×4基
稼働率(%)
33.2
38.0
21.9
87.0
92.0
70.0
30.6
19.7
28.7
83.0
50
東北電力竜飛岬
風力発電用風車の設備利用率
45
年 月
7月
発電事業体
東北電力竜飛岬
23.0
40
北陸電力三国
4.3
四国電力室戸岬 上位7件の月別平均値
2.2
九州電力甑島
8.1
35
山形県立川町
1.8
秋田ウインドパワー上位7件の年間平均値
(19.8%)
研究所
8.5
30
留萌風力発電
研究所
6.0
25
高知県野市町
1.0
島根県出雲市
久居榊原
20
風力発電所
上位7件の
月別平均値
8.7
15
上位7件の
年間平均値
19.8
下位3件の
10
月別平均値
1.4
設備利用率(%)
北陸電力三国
2001年
8月
9月
2002年
10月
11月
12月
1月
2月
1.2
16.3
14.0
14.5
5.8
17.1
18.3
24.2
13.3
3.4
19.1
14.3
27.9
19.6
4.6
22.8
21.4
11.4
31.3
2.7
29.6
26.4
23.3
38.9
2.6
28.2
34.6
37.5
29.6
4.8
23.1
18.4
21.4
34.2
3.7
8.9
8.2
19.5
23.6
34.4
30.1
30.7
10.1
3.9
13.8
5.7
4.6
16.5
9.4
8.7
35.5
7.3
11.8
41.3
11.9
7.4
25.8
9.2
2.2
22.2
9.2
33.2
10.8
15.8
19.5
24.3
19.8
19.8
19.8
19.8
4.9
4.6
7.6
7.3
32.3
31.0
25.0
19.8
19.8
19.8
7.3
5.4
6.5
下位3件の月別平均値
3月
4月
13.5
6.9久居榊原
6.8
風力発電所
4.4
0
上位7件の
年間平均値
9月 10月 11月 12月
2001年
1月
2月
3月 4月
2002年
図6−5 風力発電用風車の月別設備利用率事例
5月
9.9
26.4
19.6
島根県出雲市
19.8
19.8
上位7件の
月別平均値
8月
20.7
9.8
20.0
11.9
5.7
秋田ウインドパワー
27.2研究所14.9
8.6
9.6
6.7
3.0
留萌風力発電
研究所
38.0
21.9
30.6
高知県野市町
5
7月
5月
21.7四国電力室戸岬
15.6
24.2
21.0
28.1九州電力甑島
14.9
29.3
33.4
4.2
6.8
山形県立川町
27.6
17.9
下位3件の
月別平均値
19.8
ⅴ.機種および予想発電量
この研究会が発足した段階でワーキンググループが出力曲線を入手できた 5 機種に
ついて、2001 年の風況精査結果と照らし合わせて発電量の予測を行った。ハブ高さと 6
∼8m の差があるが、高度 70m のデータを使用し、1 基分の発電量を算出した。同時に
最近の風力発電事業者の動向から、売電単価を 11 円/kWh として年間の収入を予測した。
表6−2
発電機
予想発電量・設備利用率・料金収入
出力
ローター径
予想発電量
利用率
収入
(kW)
/ハブ高さ
(kWh)
(%)
(11 円/kWh)
2,000
80/78m
3,528,141
20.1
38,809 千円
V66
1,750
66/78m
2,521,754
16.4
27,739 千円
V52
850
52/65m
1,530,067
20.5
16,830 千円
Micon2000
2,000
72/64m
3,013,063
17.2
33,143 千円
Jacobs1500
1,500
70/65m
2,817,265
21.4
30,989 千円
Vestas
V80
この結果の中で、最も設備利用率の良かったのが Jacobs 社の 1,500kW 機である。ち
ょうど研究会が発足した時期はヨーロッパで 2,000kW 級の風車が導入され始めた時期
であり、1,000∼1,500kW 機が販売の主力であったため、この機種を中心に以後の検討
が行われ、シミュレーションなどにも反映された。その後複数社・数機種の風力発電機
の諸元表を入手して発電量の計算を行っており、2001 年のデータだけでなく、2002 年
のデータも使用した結果を表6−3、図6−6、7および表6−4、5に示す。ここで
新たに発電量の計算を行った機種は全て出力 1,500kW 以上で、ローター径が大型化し
た分だけ出力も大きくなっており、設備利用率が高いものは、ブレードの大きさの割に
出力の小さな発電機を搭載した機種となっている。しかし、次節で述べるが、その大き
さのために輸送に支障があると予想される機種がほとんどである。
ⅵ.輸送
最近の風車発電機の大型化に伴い、部品の輸送に障害が起こっている。泊村で建設さ
れた風車では、600kW と比較的小型なため、特殊車両は必要であるが、対面通行が可
能であるなど、特別な通行規制の必要はなかった。北条町で検討している 1,500kW 機
または 2,000kW 機では、ブレード積載車両の長さが 40m におよび、タワーなどは車幅
3.5m を超えるため、交差点や対面通行区間で全面通行止めが想定される。そこで、国
土交通省倉吉工事事務所に依頼し、図6−8のような輸送車両の旋回軌跡図を用いて、
通行可能かどうかの検討を行った。
当初は貨物専用埠頭のある境港か鳥取港へ陸揚げし、国道 9 号線を通って北条町まで
輸送することを想定した。この場合、機種にもよるが、高さの制限があるものの、幅と
長さに関しては図面上通行可能であると分かった(表6−6参照)。しかし、物理的に通
表6−3 主要風車諸元表
NEG Micon
三菱
Enercon
Vestas
メーカ
デンマーク
デンマーク
日本
ドイツ
製造国
型番
V80/2.0MW
V66/1.75MW
V52/0.85MW
NM 2000/72
MWT−2000S
E66/18.70
2,000kW
1,750kW
850kW
2,000kW
2,000kW
1,800kW
定格出力
3枚
3枚
3枚
3枚
3枚/10.1t
3枚/4t
ブレード枚数/重量
80 m/34t
66m/23t
52m/10t
72 m
75m/63t
70m/32t
ロータ直径/重量
61t
57t
22t
136.3t
67t
ナセル重量
78,100m/170t,220t 67,78m/117t,159t
65m/71t
64m
60,70m/159t,65m/127t
ハブ高さ/重量
ピッチ
ピッチ
ピッチ
アクティブストール
ピッチ
ピッチ
出力制御方式
9-19rpm
15-19rpm
12-18rpm
8-24rpm
10-22rpm
ロータ回転数
26rpm
可変速
可変速
可変速
可変速
可変速
4 m/s
4 m/s
4 m/s
3 m/s
2.5m/s
2.5m/s
カットイン風速
15 m/s
16 m/s
16 m/s
m/s
13m/s
12.0m/s
定格風速
25 m/s
25 m/s
25 m/s
20 m/s
25 m/s
28–34 m/s
カットアウト風速
2,000kW
1,750/300kW
850kW
2,000/500kW
2,000kW
1,800kW
発電機定格
サイリスター
サイリスター
サイリスター
サイリスター
インバータ
インバータ
連系方式
誘導発電機
誘導発電機
誘導発電機
誘導発電機
永久磁石式同期発電機
同期発電機
発電機
Dewind
Sudwind
Repower
Nordex
メーカ
ドイツ
ドイツ
ドイツ
ドイツ
製造国
型番
MD 70
MM 70
D8
N80
N90
S-77
1,500kW
2,000kW
2,000kW
2,500kW
2,300kW
1,500kW
定格出力
3枚/5.5t
3枚/5.9t
3枚
3枚
3枚
3枚/6.5t
ブレード枚数/重量
70m
70m
80m
80 m/50t
90 m/52t
77m/32t
ロータ直径/重量
56t
59t
56t
ナセル重量
65,85m/100t,175t
65m/100t
80,95m
60,80m/134.7t,213.4t
80m/213.4t
61.5,85m/80t,165t
ハブ高さ/重量
ピッチ
ピッチ
ピッチ
ピッチ
ピッチ
ピッチ
出力制御方式
10.6-19rpm
10.0-20.0rpm
11.1-20.7rpm
10.9 -19rpm
9.6-16.9rpm
9.9-17.3rpm
ロータ回転数
可変速
可変速
可変速
可変速
可変速
可変速
3 .5m/s
3 .5m/s
3 m/s
4m/s
3 m/s
3 m/s
カットイン風速
13m/s
14.5
m/s
13.5
m/s
15
m/s
13
m/s
11.1
m/s
定格風速
25 m/s
25 m/s
none
25 m/s
25 m/s
20 m/s
カットアウト風速
1,500kW
2,000kW
2,000kW
2,500kW
2,300kW
1,500kW
発電機定格
IGBT
IGBT
IGBT
IGBT
IGBT
IGBT
連系方式
誘導発電機
誘導発電機
誘導発電機
誘導発電機
誘導発電機
誘導発電機
発電機
2500
Vestas V80
2000
Vestas V66
Vestas V52
Micon NM72
1500
出力(kW)
三菱 MWT-2000S
Enercon E66
1000
500
※各機種ともカットアウト風速は25m/s
0
2
4
6
8
10
風速(m/s)
図6−6 主要機種出力曲線(その1)
12
14
16
2500
Repower MD70
2000
Repower MM70
Dewind D8
Nordex N80
1500
出力(kW)
Nordex N90
SUDWIND S77
1000
500
※各機種ともカットアウト風速は25m/s
0
2
4
6
8
10
風速(m/s)
図6−7 主要機種出力曲線(その2)
12
14
16
表6−4 機種別予想年間発電量・設備利用率(2001年)
メーカー
機種 出力
V80
1月
574,984
2月
360,000
3月
420,559
4月
228,324
5月
180,828
6月
231,429
7月
158,801
8月
161,947
9月
250,729
10月
251,436
11月
318,485
12月
399,787
年間
3,537,310
料金収入 38,910,409
Vestas
2 MW
V66
1.75 MW
V52
38.6%
428,865
32.9%
247,078
26.8%
262,567
22.3%
155,331
28.3%
305,952
23.5%
181,550
15.9%
158,638
12.6%
99,623
12.2%
119,446
9.2%
79,489
16.1%
165,529
13.1%
100,306
10.7%
105,024
8.1%
69,656
10.9%
110,536
8.5%
71,321
17.4%
180,557
14.3%
108,471
16.9%
175,986
13.5%
109,620
22.1%
224,661
17.8%
138,606
26.9%
289,903
22.3%
173,072
20.2% 2,527,666
16.5% 1,534,122
27,804,323
16,875,345
メーカー
Repower
機種 出力
MD70
1.5 MW
MM70
1月
440,170
39.4%
491,616
2月
277,458
27.5%
306,228
3月
322,920
28.9%
355,600
4月
173,921
16.1%
188,673
5月
136,543
12.2%
143,081
6月
178,219
16.5%
195,324
7月
120,734
10.8%
125,527
8月
123,888
11.1%
137,029
9月
193,511
17.9%
212,491
10月
192,985
17.3%
210,888
11月
242,453
22.4%
265,416
12月
303,766
27.2%
336,943
年間
2,706,569
20.6% 2,968,817
料金収入 29,772,254
32,656,987
NEG Micon
三菱
0.85 MW
NM72
2 MW MWT-2000S 2 MW
39.1%
508,119
34.1%
506,791
34.1%
27.2%
312,590
23.3%
314,706
23.4%
28.7%
364,397
24.5%
363,969
24.5%
16.3%
190,609
13.2%
187,336
13.0%
12.6%
145,058
9.7%
138,647
9.3%
16.4%
197,795
13.7%
199,372
13.8%
11.0%
127,576
8.6%
123,645
8.3%
11.3%
133,152
8.9%
133,469
9.0%
17.7%
215,517
15.0%
218,755
15.2%
17.3%
211,172
14.2%
210,940
14.2%
22.6%
269,089
18.7%
263,596
18.3%
27.4%
345,201
23.2%
339,140
22.8%
20.6% 3,020,277
17.3% 3,000,368
17.2%
33,223,047
33,004,046
-
Dewind
2 MW
D8
2
33.0%
565,603
22.8%
353,835
23.9%
412,255
13.1%
220,348
9.6%
171,562
13.6%
226,121
8.4%
151,096
9.2%
155,595
14.8%
245,707
14.2%
244,168
18.4%
308,666
22.6%
388,688
17.0% 3,443,645
37,880,095
Nordex
MW
N90
2.3 MW
N80
2.5 MW
38.0%
703,976
41.1%
623,945
33.5%
26.3%
449,656
29.1%
386,451
23.0%
27.7%
523,574
30.6%
449,648
24.2%
15.3%
290,518
17.5%
237,024
13.2%
11.5%
232,876
13.6%
179,405
9.6%
15.7%
292,845
17.7%
245,170
13.6%
10.2%
205,016
12.0%
156,739
8.4%
10.5%
211,980
12.4%
169,161
9.1%
17.1%
316,033
19.1%
266,916
14.8%
16.4%
321,232
18.8%
264,210
14.2%
21.4%
401,329
24.2%
335,095
18.6%
26.1%
494,615
28.9%
426,076
22.9%
19.7% 4,443,651
22.1% 3,739,840
17.1%
48,880,157
41,138,243
-
(kWh)
Enercon
E66
1.8 MW
492,312
36.8%
308,458
25.5%
358,326
26.8%
191,746
14.8%
148,749
11.1%
198,881
15.3%
132,254
9.9%
138,074
10.3%
216,617
16.7%
213,003
15.9%
265,982
20.5%
337,503
25.2%
3,001,905
19.0%
33,020,951
SUDWIND
S-77
1.5 MW
478,762
42.9%
303,296
30.1%
353,538
31.7%
192,644
17.8%
155,424
13.9%
196,707
18.2%
138,223
12.4%
136,710
12.3%
212,686
19.7%
212,237
19.0%
265,788
24.6%
331,023
29.7%
2,977,039
22.7%
32,747,432
-
表6−5 機種別予想年間発電量・設備利用率(2002年)
メーカー
機種 出力
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年間
料金収入
V80
566,846
274,735
373,213
401,295
173,673
141,971
183,270
295,047
190,589
277,668
413,741
451,604
3,743,652
41,180,167
メーカー
機種 出力
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年間
料金収入
Repower
MD70
1.5 MW
MM70
434,451 38.9%
477,162
210,091 20.8%
241,563
286,353 25.7%
318,465
307,065 28.4%
338,599
133,028 11.9%
138,781
107,872 10.0%
116,038
140,346 12.6%
150,591
226,488 20.3%
240,956
146,650 13.6%
159,552
212,138 19.0%
234,957
315,711 29.2%
349,162
347,484 31.1%
396,639
2,867,676 21.8%
3,162,465
31,544,437
34,787,113
2 MW
38.1%
20.4%
25.1%
27.9%
11.7%
9.9%
12.3%
19.8%
13.2%
18.7%
28.7%
30.3%
21.4%
-
Vestas
V66
1.75 MW
417,387
32.1%
203,610
17.3%
272,579
20.9%
294,119
23.3%
115,785
8.9%
93,252
7.4%
125,986
9.7%
207,745
16.0%
131,856
10.5%
197,765
15.2%
300,291
23.8%
341,360
26.2%
2,701,735
17.6%
29,719,088
-
2 MW
32.1%
18.0%
21.4%
23.5%
9.3%
8.1%
10.1%
16.2%
11.1%
15.8%
24.2%
26.7%
18.1%
-
V52
243,652
119,081
161,256
172,906
76,030
62,824
80,010
127,666
83,278
120,807
178,937
194,171
1,620,618
17,826,797
0.85 MW
38.5%
20.8%
25.5%
28.3%
12.0%
10.3%
12.7%
20.2%
13.6%
19.1%
29.2%
30.7%
21.8%
-
Dewind
D8
2
556,602
269,044
365,689
392,909
166,657
134,853
176,982
287,045
184,686
269,495
403,743
446,382
3,654,088
40,194,966
MW
37.4%
20.0%
24.6%
27.3%
11.2%
9.4%
11.9%
19.3%
12.8%
18.1%
28.0%
30.0%
20.9%
-
(kWh)
NEG Micon
三菱
NM72
2 MW MWT-2000S 2 MW
495,995 33.3%
491,794 33.1%
241,155 17.9%
242,914 18.1%
324,261 21.8%
324,894 21.8%
349,705 24.3%
347,089 24.1%
140,458
9.4%
137,277
9.2%
113,272
7.9%
110,949
7.7%
151,789 10.2%
151,071 10.2%
249,256 16.8%
246,116 16.5%
158,609 11.0%
160,220 11.1%
236,296 15.9%
234,520 15.8%
357,646 24.8%
353,366 24.5%
403,126 27.1%
408,723 27.5%
3,221,568 18.4%
3,208,934 18.3%
35,437,247
35,298,275
-
Enercon
E66
1.8 MW
481,732 36.0%
237,428 19.6%
319,489 23.9%
342,164 26.4%
144,740 10.8%
118,497
9.1%
155,567 11.6%
248,680 18.6%
163,216 12.6%
235,625 17.6%
349,914 27.0%
392,686 29.3%
3,189,736 20.2%
35,087,101
-
Nordex
N90
2.3 MW
N80
2.5 MW
697,492 40.8%
606,124 32.6%
343,220 22.2%
302,517 18.0%
465,410 27.2%
401,490 21.6%
496,204 30.0%
428,655 23.8%
225,980 13.2%
173,495
9.3%
186,811 11.3%
143,497
8.0%
234,877 13.7%
188,676 10.1%
371,531 21.7%
304,446 16.4%
245,638 14.8%
198,913 11.1%
351,165 20.5%
294,358 15.8%
513,861 31.0%
441,745 24.5%
556,674 32.5%
499,819 26.9%
4,688,864 23.3%
3,983,736 18.2%
51,577,507
43,821,093
-
SUDWIND
S-77
1.5 MW
472,793 42.4%
224,972 22.3%
310,658 27.8%
336,944 31.2%
151,271 13.6%
121,266 11.2%
156,805 14.1%
253,787 22.7%
162,585 15.1%
233,291 20.9%
345,394 32.0%
362,527 32.5%
3,132,294 23.8%
34,455,232
-
REPOWER Systems 社 MD-70 のブレード輸送車両の直角旋回軌跡図を重ね
た図では、全長 37.6m の車両であるが、縁石などに接触せずに旋回できる。
ただし、交差点前後の国道、県道を全面通行止めとする必要がある。
図6−8
羽合町長瀬交差点平面図
行可能ではあっても、全面通行止め区間が長く、しかも車両の数が多く(風車 1 基に付
き輸送車両 8 台(ブレード 3 台、タワー3 台、ナセル、発電機に各 1 台)として、9 基で
72 台)、相当の時間がかかるため許可が難しいとの倉吉工事事務所および鳥取県警の共
通の見解であった。
そこで、代替案として泊漁港からの陸揚げを検討した。泊漁港では 80t の消波ブロッ
クを搬送した実績があり、岸壁の長さも 120m あるため荷揚げには問題ない。漁港から
北条砂丘までの区間で通行止めが必要であるが、図6−9に示すように、青谷・羽合道
路、旧国道 9 号線といった迂回路が存在するため好条件となる。ただし、泊漁港に限ら
ず山陰地方の港は冬期に荒天が多く、また、季節風によって砂が運ばれ春にかけて水深
が浅くなるため、風車の搬入は春先に浚渫を行った後の、夏期の限られた時期に行う必
要がある。また、漁協との協議も必要となる。
ちなみに風車建設サイト近くの由良、橋津にマリーナがあるが、岸壁ではないため荷
揚げはできないと判断している。
参考にした輸送する風車部品の諸元と通行規制は、表6−6の通りである。
表6−6
メーカー
風車部品諸元および交通規制
寸法(m)
機種
部品
重量(t)
MD-70
ナセル
58
10.02×3.75×3.85
全面通行止め
(1,500kW)
ブレード
5.8
34×1.9×3.2
交差点通行止め
section1
30
25.4/φ2.96/φ3.46
交差点通行止め
section2
31.3
19.25/φ3.46/φ3.84
全面通行止め
section3
38.7
16.5/φ3.84/φ4.00
全面通行止め
ナセル
18
7.5×5.5×6.1
分解すれば徐行で可能
E−66
発電機
49
φ5×2.2
全面通行止め
(1800kW)
ハブ
20
φ5.6×5.2
高さ制限で不可
ブレード
4
33×1.9×2.6
交差点通行止め
section1
30
25.59/φ2.00/φ2.83
交差点通行止め
section2
37
20.26/φ2.83/φ3.50
交差点通行止め
section3
50
17.15/φ3.50/φ4.13
全面通行止め
section4
10
2.00/φ4.13/φ4.44
全面通行止め、高さに問題
ナセル上部
3.793
9.10×3.62×4.9
全面通行止め
ナセル下部
10.12
9.10× 4.15 ×5.0
通行不可
発電機
54.3
3.15×3.85×3.8
全面通行止め
主軸
32.373
5.94×1.85×1.87
徐行
ハブ
32.788
3.5×2.55×3.4
徐行
ブレード
10.12
36.7×2.99×1.93
交差点通行止め
下部
34.8
5.44× φ4.86×φ5.0
通行不可
中間部上
51.6
12.56/φ4.5 /φ4.86
通行不可
中間部下
50.1
20.0/φ3.93 / φ4.50
通行不可
上部
22.6
19.14/φ3.93/φ3.93
全面通行止め
Repower
65m tower
(長さ×高さ×幅)
必要な規制等
Enercon
63m tower
MWT-2000S
三菱
60m タワー
以上から輸送ルートは図6−9のように想定した。
(3)収支シミュレーション
前項までのような技術的検討を行い、さらに風力発電事業の経済性を検討するために
収支シミュレーションを行った。事業手法的な条件として、第三セクター(または民間)
が事業主体である場合と、町が事業主体である場合について行った。第三セクター(ま
たは民間)方式では、税金などの面で町が事業主体である場と合比べて不利であるが、
建設の発注、工事管理、建設物のチェック体制などにおいては有効であると期待される。
風力発電機の規模、技術的要件、収入等についてはそれぞれ下記条件を設定している。
<風力発電機の規模と設置場所>
・北条砂丘における風況精査の結果によると、北条砂丘における卓越風向(最も頻度の
高い風向)は南方向であり、発電量が多く得られる風向は西、北西、南方向である。
・NEDO の「風力発電導入ガイドブック」によると、卓越風向と直角方向に風力発電機
を並べるときは、ローター直径の 3 倍以上の距離をとる必要があるとしている(卓越
風向と平行に並べるときは、ローター直径の 10 倍以上の距離が必要)。
・北条町の国道 9 号線沿い(東西方向)に、北条町の西端から約 4km の間に 1,500kW
の風力発電機 9 基を設置すると仮定する。
・風力発電機の検討には、出力 850kW から 2,000kW の複数種の風力発電機によって行
い風況精査の結果から設備利用率の最も良かった出力 1,500kW の風力発電機を設定し
た(検討にはハブ高さを全て 70m と仮定して設備利用率を算出)。
<出力 1,500kW 風力発電機の諸元>
・定格出力:1,500kW
・ローター直径:70m
・カットイン風速:3m/s
・定格風速:11.6m
・カットアウト風速:25m/s
・ハブ高さ:70m
<事業計画>
・規模:出力 1,500kW 風力発電機を 9 基設置(総出力 13,500kW)
・事業期間:16 年(内、建設期間 1 年)
・減価償却期間:17 年
・収入:発電電力の中国電力への売電料(売電単価 11 円/kWh)
<修繕計画>
・メンテナンス:1 年毎に 1,500kW 風車 1 基当たり 1 百万円。
・セミオーバーホール:5 年に 1 回、ギアオイル等必要な消耗品等の交換を行う。1,500kW
風車 1 基当たり 2 百万円。
<オーバーホール>
・一般的な風力発電機の耐用年数と考えられている約 20 年が経過すると、発電機の本体
であるナセルを交換することが必要と予想され、21 年目以降に事業を継続する場合に
は追加投資が必要である。これは、本シミュレーションにおいては計上していない。
<収入>
・収入の算定において、気象条件の変化、建設条件等による設備利用率と稼働率の変化
を想定し、下記のように二通りの条件を設定した。
・シミュレーションにおける稼働率(施設の運転可能な時間の率)は、風力発電機の調
整等のため、1 年目は全て 70%と設定している。
○シミュレーションその 1
・設備利用率:22%
・稼働率(施設の運転可能な時間の率):95%
・年間の売電収入(2 年目以降):
13,500kW(発電機の総出力)× 22%(設備利用率)× 8760 時間(1 年間)×
11 円/kWh × 95% = 272 百万円
○シミュレーションその 2
・設備利用率:20%(風況観測地点と建設位置との相違、天候等により若干利用率が
落ちたと仮定)
・稼働率(施設の運転可能な時間の率):90%(通常のメンテナンス以外に落雷等の
災害によって年 1 ヶ月程度運転停止した場合)
・年間の売電収入(2 年目以降):
13,500kW(発電機の総出力)× 20%(設備利用率)× 8760 時間(1 年間)
× 11 円/kWh × 90% = 234 百万円
ⅰ.第三セクターが事業主体となった場合の収支シミュレーション
第三セクターが事業主体となった場合の風力発電事業の経済性を検討するために、
前述の条件の他に、初期投資、資金調達、年次支出について表6−7の前提条件でシ
ミュレーションを行った。土地は北条町が事前に買収し、第三セクターへ無償提供さ
れることを仮定している。シミュレーション結果は表6−8、9に示す。
表6−7
区
分
実施設計費
金
第三セクターが主体の場合の前提条件
額
50
内
発電機
期
等
概算
風力
初
訳
(単位:百万円)
1,800
1 基 200 百万円 × 9 基(基礎工事等
含む)
66kV 埋設:70 百万円/km × 7km
建設費
2,668 送電線・
配電線
投
568
= 490 百万円、
22kV:26 百万円/km × 3km =
78 百万円
資
その他
建物取得税
建物登録
免許税
300 トランス、遮断機、遠隔制御装置
107 建設費 2,668 百万円 × 4.0% = 107 百万円
16 建設費 2,668 百万円 × 0.6% = 16 百万円
(単位:百万円)
区
分
建設期間中
初
金利
期
抵当権設定
投
登記
資
開業費
合
計
補助金
金
額
内
自己資金
調
政府系銀行
達
融資
民間長期
借入金
合
計
一般管理費
火災保険料
8 長期借入金× 0.4% = 8 百万円
29 概算
2930
NEDO
762
県
10
772
地域新エネルギー導入促進事業、補助
率:1/3 × 0.8
新エネルギー導入促進事業、
補助率:1/2、上限 10 百万円
147 資金の 5%程度
1,099
融資比率 40%、15 年返済(内据置 3 年)、金利 2.2%、
元金均等返済
912 15 年返済(内据置 1 年)、金利 4.0%、元金均等返済
2,930
10.1
4
300 千円/月・人 × 1.4 × 2 人 × 12 ヶ月 =10.1
百万円
火災・落雷等による損害を現状復旧する経費について
保証、建設費の 0.15%
建設費 2,668 百万円 × 0.15% = 0.5 百万円
年
次
等
61 省略
資
金
訳
施設管理費用
支
建物公租公課
出
法人住民税
メンテナンス
セミオーバー
ホール
合
計
3.6 300 千円/月 × 12 ヶ月 = 3.6 百万円
変動 課税標準価額の 1.4%(3 年間は 5/6 に免除)
変動 課税所得の 40.87%
9
3.6
30.3
1 百万円/年・基 × 9 基 = 9 百万円
2 百万円/5 年・基 × 9 基 = 18 百万円/5 年
= 3.6 百万円/年
建物公租公課、法人住民税を除いた合計
表6−8 第三セクター収支シミュレーション結果その1 (1,500kW × 9基、設備利用率:22%、稼働率:95%)
損益計算書(年次)
区 分
営業収益 業務施設 売電収入
合 計
人件費
修繕費
営業費用 火災保険料
建物公租公課
施設管理費
減価償却費
合 計
損益
営業利益
営業外費用
経常利益
税引前当期利益
法人税等
税引後当期純利益
利益処分 支払配当金
準備金繰入額
剰余金
同累計額
資金収支
区 分
調達
税引後利益
減価償却費
自己資本
補助金
公的借入金
民間長期借入金
民間短期借入金
合 計
支払
建物関係費
繰延資産(開業費等)
公的借入金元本返済
長期借入金元本返済
短期借入金返済
利益処分
合 計
資金余剰 当期資金余剰
累計
資金過不足
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
147
772
1,099
912
0
2,930
2,902
29
0
0
0
0
2,930
0
0
0
3
200
200
10
0
4
27
4
126
171
29
60
-31
-31
0
-31
0
0
-31
-31
2
4
272
272
10
13
4
24
4
126
181
91
58
33
33
1
32
0
0
32
1
3
-31
126
0
0
0
0
0
95
8
0
0
65
0
0
73
22
22
22
5
272
272
10
13
4
21
4
126
178
94
55
39
39
16
23
7
1
15
16
4
32
126
0
0
0
0
0
159
0
0
0
65
0
0
65
93
115
93
6
272
272
10
13
4
22
4
126
179
93
51
42
42
17
25
7
1
17
33
5
23
126
0
0
0
0
0
149
0
0
92
65
0
7
164
-15
100
-15
7
272
272
10
13
4
19
4
127
177
95
46
49
49
20
29
7
1
21
53
6
25
126
0
0
0
0
0
151
0
0
92
65
0
7
164
-13
87
-13
8
272
272
10
13
4
17
4
111
159
113
41
71
71
29
42
7
1
34
87
7
29
127
0
0
0
0
0
156
18
0
92
65
0
7
182
-26
61
-26
9
272
272
10
13
4
14
4
111
157
115
37
78
78
32
46
7
1
38
126
8
42
111
0
0
0
0
0
154
0
0
92
65
0
7
164
-10
51
-10
272
272
10
13
4
13
4
111
155
117
32
85
85
35
50
7
1
42
167
9
46
111
0
0
0
0
0
158
0
0
92
65
0
7
164
-6
44
-6
50
111
0
0
0
0
0
161
0
0
92
65
0
7
164
-3
42
-3
10
272
272
10
13
4
11
4
111
153
118
28
91
91
37
54
7
1
46
213
11
272
272
10
13
4
10
4
112
153
119
23
96
96
39
57
7
1
49
262
12
272
272
10
13
4
8
4
112
152
120
18
102
102
42
60
7
1
52
314
13
272
272
10
13
4
7
4
112
151
121
14
107
107
44
63
7
1
55
369
14
272
272
10
13
4
6
4
112
150
122
9
113
113
46
67
7
1
59
428
15
272
272
10
13
4
6
4
112
149
123
5
118
118
48
70
7
1
62
489
10
11
12
13
14
15
54
111
0
0
0
0
0
165
0
0
92
65
0
7
164
1
43
1
57
112
0
0
0
0
0
169
18
0
92
65
0
7
182
-13
30
-13
60
112
0
0
0
0
0
172
0
0
92
65
0
7
164
8
38
8
63
112
0
0
0
0
0
176
0
0
92
65
0
7
164
12
50
12
67
112
0
0
0
0
0
179
0
0
92
65
0
7
164
15
65
15
70
112
0
0
0
0
0
182
0
0
92
65
0
7
164
18
83
18
(百万円)
16
272
272
10
13
4
5
4
113
149
123
0
123
123
50
72
7
1
64
554
16
72
113
0
0
0
0
0
186
18
0
0
0
0
7
25
160
244
160
表6−9 第三セクター収支シミュレーション結果その2 (1,500kW × 9基、設備利用率:20%、稼働率:90%)
損益計算書(年次)
区 分
営業収益 業務施設 売電収入
合 計
人件費
修繕費
営業費用 火災保険料
建物公租公課
施設管理費
減価償却費
合 計
損益
営業利益
営業外費用
経常利益
税引前当期利益
法人税等
税引後当期純利益
利益処分 支払配当金
準備金繰入額
剰余金
同累計額
資金収支
区 分
調達
税引後利益
減価償却費
自己資本
補助金
公的借入金
民間長期借入金
民間短期借入金
合 計
支払
建物関係費
繰延資産(開業費等)
公的借入金元本返済
長期借入金元本返済
短期借入金返済
利益処分
合 計
資金余剰 当期資金余剰
累計
資金過不足
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
147
772
1,099
912
0
2,930
2,902
29
0
0
0
0
2,930
0
0
0
3
182
182
10
0
4
27
4
126
171
11
60
-49
-49
0
-49
0
0
-49
-49
2
4
234
234
10
13
4
24
4
126
181
53
58
-5
-5
0
-5
0
0
-5
-54
3
-49
126
0
0
0
0
0
77
8
0
0
65
0
0
73
3
3
3
5
234
234
10
13
4
21
4
126
178
56
55
1
1
0
1
0
0
1
-53
4
-5
126
0
0
0
0
0
122
0
0
0
65
0
0
65
56
60
56
6
234
234
10
13
4
22
4
126
179
55
51
5
5
0
5
0
0
5
-49
5
1
126
0
0
0
0
0
127
0
0
92
65
0
0
157
-30
30
-30
7
234
234
10
13
4
19
4
127
177
57
46
11
11
0
11
0
0
11
-38
6
5
126
0
0
0
0
0
131
0
0
92
65
0
0
157
-26
4
-26
8
234
234
10
13
4
17
4
111
159
75
41
34
34
0
34
0
0
34
-4
7
11
127
0
0
0
0
32
170
18
0
92
65
0
0
175
-4
0
-37
9
234
234
10
13
4
14
4
111
157
77
37
40
40
15
26
0
0
26
21
8
34
111
0
0
0
0
44
189
0
0
92
65
32
0
189
0
0
-44
234
234
10
13
4
13
4
111
155
79
32
47
47
19
28
7
1
20
41
9
26
111
0
0
0
0
64
201
0
0
92
65
44
0
201
0
0
-64
28
111
0
0
0
0
89
228
0
0
92
65
64
7
228
1
1
-89
10
234
234
10
13
4
11
4
111
153
81
28
53
53
22
31
7
1
23
64
11
234
234
10
13
4
10
4
112
153
81
23
58
58
24
34
7
1
26
91
12
234
234
10
13
4
8
4
112
152
82
18
64
64
26
38
7
1
30
120
13
234
234
10
13
4
7
4
112
151
83
14
70
70
28
41
7
1
33
153
14
234
234
10
13
4
6
4
112
150
84
9
75
75
31
44
7
1
36
190
15
234
234
10
13
4
6
4
112
149
85
5
81
81
33
48
7
1
40
229
10
11
12
13
14
15
31
111
0
0
0
0
110
253
0
0
92
65
89
7
253
0
1
-110
34
112
0
0
0
0
146
293
18
0
92
65
110
7
293
0
1
-146
38
112
0
0
0
0
160
310
0
0
92
65
146
7
310
0
1
-160
41
112
0
0
0
0
170
324
0
0
92
65
160
7
324
0
1
-170
44
112
0
0
0
0
177
334
0
0
92
65
170
7
334
0
1
-177
48
112
0
0
0
0
181
341
0
0
92
65
177
7
341
0
1
-181
(百万円)
16
234
234
10
13
4
5
4
113
149
85
0
85
85
35
50
7
1
42
271
16
50
113
0
0
0
0
43
207
18
0
0
0
181
7
207
0
1
-43
ⅱ.町が事業主体となった場合の収支シミュレーション
町が事業主体となった場合の風力発電事業の経済性を検討するために、前述の条件
の他に、初期投資、資金調達、年次支出について表6−10の前提条件でシミュレー
ションを行った。シミュレーション結果は表6−11、12に示す。
表6−10
区
分
実施設計費
初
期
投
資
建設費
開業費
用地関係費
合
資
計
補助金
金
額
50
合
計
一般管理費
年
火災保険料
次
支
施設管理費用
出
メンテナンス
セミオーバー
ホール
合
計
訳
等
概算
29 概算
576 80m × 80m × 9 × 10 千円/m2 = 576 百万円
3,323
NEDO
725
県
10
735
調
町債
内
(単位:百万円)
2,668 第三セクターの場合と同様
金
達
町が主体の場合の前提条件
2,558
地域新エネルギー導入促進事業、
補助率:1/3 × 0.8
新エネルギー導入促進事業、
補助率:1/2、上限 10 百万円
公営企業債、年利 2%固定、15 年元利均等償還(内据
置 2 年)
3,323
10.1
300 千円/月・人 × 1.4 × 2 人 × 12 ヶ月 =10.1
百万円
町村有建物災害共済:火災・落雷等による損害を現状
0.5 復旧する経費について保証、建設費の 0.019%
建設費 2,668 百万円 × 0.019% = 0.5 百万円
3.6 300 千円/月 × 12 ヶ月 = 3.6 百万円
9
3.6
26.8
1 百万円/年・基 × 9 基 = 9 百万円
2 百万円/5 年・基 × 9 基 = 18 百万円/5 年
= 3.6 百万円/年
表6−11 町収支シミュレーションその1(設備利用率22%、稼働率95%)
区
分
建設費等
借入金償還
収 用地購入等
修繕費、人件費等
1
2,747
2
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
52 227 227 227
227
227
227
227
227
227
227
227
227
23.5 23.5 23.5 23.5 41.5
23.5
23.5 23.5
23.5
41.5 23.5 23.5
23.5
23.5
67 76 251 251 269
200 272 272 272 272
251
272
251
272
251
272
251
272
269
272
251
272
251
272
251
272
251
272
200 272 272 272 272
134 197 22 22
4
134 330 352 373 377
272
22
398
272
22
420
272
22
441
272
22
463
272
4
466
272
22
488
272
22
509
272
22
531
272
22
552
43
3
4
5
576
入
支出合計
売電収入
支 起債
補助金
3,323
2,588
735
出
収入合計
差 単年度
引 累計
3,323
0
0
○規模:1,500kw×9基
○借入:政府資金(2年据置、13年償還、元利均等、2%固定)
○補助金:建設費×1/3×0.8(NEDO新エネルギー導入事業)+県補助金10百万円
(単位:百万円)
16
合計
2,747
227
3,046
576
41.5
407
0
0
269
6,776
272
4,008
2,588
735
0
272
7,331
4
556
556
表6−12 町収支シミュレーションその2(設備利用率20%、稼働率90%)
区
分
建設費等
借入金償還
収 用地購入等
修繕費、人件費等
1
2,747
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
43
52
227
227
227
227
227
227
227
227
227
227
227
227
23.5 23.5 23.5 23.5 41.5
23.5
23.5 23.5
23.5
41.5 23.5 23.5
23.5
23.5
67 76
182 234
251
234
251
234
251
234
269
234
251
234
251
234
576
入
支出合計
売電収入
支 起債
補助金
3,323
251
234
251
234
269
234
251
234
251
234
251
234
2,588
735
出
収入合計
差 単年度
引 累計
3,323
0
0
182 234 234 234 234 234 234 234 234 234 234 234
234
234
116 159 ▲ 17 ▲ 17 ▲ 35 ▲ 17 ▲ 17 ▲ 17 ▲ 17 ▲ 35 ▲ 17 ▲ 17 ▲ 17 ▲ 17
116 274 258 241 207 190 174 157 141 106
90
73
57
40
○規模:1,500kw×9基
○借入:政府資金(2年据置、13年償還、元利均等、2%固定)
○補助金:建設費×1/3×0.8(NEDO新エネルギー導入事業)+県補助金10百万円
(単位:百万円)
16
合計
2,747
227
3,046
576
41.5
407
0
0
269
6,776
234
3,458
2,588
735
0
234
6,781
▲ 35
6
6
ⅲ.事業主体の違いによる効果等の比較
表6−13に示すようにそれぞれのメリット・デメリットを明らかにした。
表6−13
区
分
採
算
資金調達
効果等比較表
第3セクター
町
・法人関係税、固定資産税の支払いの
・税の支払いがないため、資金繰り
ため、資金繰りが厳しい。
・町の債務保証等が必要。
が良い。
・町債として、低利・長期の調達が
可能。
・構成団体間でリスクの分散が可能。 ・町が全てリスクを負う。
リスク等
・発電機の納入者、建設会社等を構成
員とすることにより、性能、工事費
・発電能力の保証、建設費の低減に
ついて、検討が必要。
に責任を持たせることが可能。
・第3セクター設立にある程度期間
そ の 他
がかかる。
・用地取得に要する町の支出の財源
がない。
・売電収入をもって用地取得費に
あてることが可能。
(4)今後の課題
まず町民の理解を得ることが第一である。平成 14 年 10 月にはまちづくりにおいて環
境・エネルギー問題の啓発をすすめるための講演会を、平成 15 年 3 月には北条町風力
発電事業の概要についての住民説明会を開催した。新聞やニュースでも取り上げられて
おり、広く知られるようになっているが、さらに詳細な情報の提供、町民からの意見の
集約が必要である。
次に用地交渉を早期に行い、機種選定委員会、事業化推進委員会等を立ち上げ、中国
電力との系統連系申し込み及び電力購入契約の交渉を行わなければならない。また、
NEDO の補助金の申請も春先には行わなければならない。これには機種選定や中国電力
との協議が行われていることが前提となる上に、平成 14 年度の公募では 4 月 30 日が締
切であり、相当に急ぐ必要がある。
また、機種が決定次第、道路管理者(国土交通省倉吉工事事務所、泊村役場産業建設
課、鳥取県県土整備部)と県警、公安委員会、運送業者による輸送のための協議会を立
ち上げ、国道 9 号線の全面通行止めに関する協議を行わなければならない。
今、風力発電事業は急速に発展してきたため、大型風車は世界的に品不足の傾向にあ
る。風車のメーカー、機種を早急に決定し、納期の調整検討を行わなければならない。
未決事項
1. 建設場所
風車本体、送電線路、変電所、監視制御室、搬入路、作業場所、資材仮置き
2. 電力協議
売電単価、契約期間、系統連系協議
3. 機種
維持管理を含めて最適なメーカーを選定
4. 運営方法
運転状況監視、維持修繕、事故対応
7
北条町風力発電を取り巻く最近の状況
(1)電力協議について
2月中旬、中国電力と協議したところ、11 円/kWh∼11.5 円/kWh の間の単価で長期契
約をする用意があるということ。
(2)スケジュールについて
平成15年度
3/1
4/1
4/30
6月
平成16年度
9月
3月
案1
環境調査
実施設計
電力協議
用地取得
風車建設
基本設計
完成
1年程度
NEDO
申請
案2
基本設計
環境
電力協議
NEDO
工 事
用地取得
申請
発注
基本設計(実施設計レベル)
等
案1
問題点
・日程が厳しい
案2
・売電単価が下がる可能性が高い。
・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発
機構)補助金の補助率が下がる傾向にある。
・NEDO の補助金を受けるにあたって環境影
響調査の基準が厳しくなってきている。
・金融環境の変化により、低利での資金調達
が難しくなる可能性がある。
8
1
まとめ
方
針
(1)これまでの検討結果及び中国電力の動向などから、現時点で、北条町における風
力発電の事業化は可能と判断
○想定規模:1,500kW 規模の風力発電機を9基程度(今後の検討で変更もあ
り得る)
(2)今後、町で基本設計を行い、その中で更に詳細を詰め、規模、採算シミュレーシ
ョンを検討する。
(3)風力発電をとりまく諸環境から、当面、平成15年度中の事業採択をめざす。
(4)事業主体については次の案をベースに今後、決定する。
○調査・設計:町が委託
○施設建設
○運
:町が発注し、町が所有
営:北条町の風力発電プロジェクトにふさわしい、「新しい第三セク
ター」
維持管理を町が直営、もしくは委託で行うことによる効率の低下
を避け、風力発電を単なる建設事業に終わらせず、地域振興につ
なげるためには、民間活力の活用が必要。
(5)常に情報公開を行い、町民の理解をえながら事業推進を図る。
(6)今後、学識経験者、事業関係者、行政等からなる、北条町風力発電事業推進委員
会(仮称)を設立し、以上のような検討を行う。
2
事業実施への課題
(1)事業実施にあたっては、複数名からなるプロジェクトチームの設置、責任を持っ
た専任者の設置など、町の体制確立が必須。
(2)詳細をつめるために、発電機の機種等について早急に決定する必要。
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