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第1回-メディアの歴史
通信の要件 メディアの発展史(1/2) メディアの変容は,表現・伝達手段の変化に留まらず,思考や記憶の様式,世 界観を根底から変えてしまう構造的な契機となる。 ●通信の本質 送り手と受け手の間に共通理解の場を形成すること メッセージの保存,伝送,変換処理のための要素で構成される ●通信の要件 確実性 ½声の文化(Oral Culture) メッセージ操作のすべて(保存,伝送,変換処理)を持ち合わせられない。 声によるコミュニケーションが人々の物の考え方,見方を制約している。 「累積的であり分析的ではない」,「保守的であり伝統主義的」,・・・ 高速性 秘匿性 共通理解の場 融通性 広域性 いつでも,どこでも,だれとでも,より早く,何でも 人類が電気作用を知ったことにより通信方式は大きく変わった。 文字の発明以前 人間の視聴覚に直接作用する光,煙,音を用いた。 絵 洞窟絵画 光 松明 トロイ戦争でのギリシア軍総大将アガメムノンが戦勝を通報(BC1200) 旗振信号 米相場を大阪堂島から全国各地に通報(江戸時代1772年より) 手旗信号 狼煙 664年 外敵の襲来に備えるために対馬,隠岐,筑紫に烽火信号設置 1555年 武田信玄 赤/黒/白の狼煙で軍況の報告を受けた(川中島の戦い) 発煙筒 音 ラッパ アレクサンダ大王がペルシャ戦争エジプト遠征で使用(BC333) ほら貝,工場のサイレン その他 伝令 BC490 アテネ軍がペルシアの大軍に勝利。伝令フェイデピデスがアテネまで 40kmを走り通し,「わが軍勝てリ」 早籠 浅野匠頭長矩の殿中刀傷事件を4日半で伝えた(元禄14年3月14日) 文字の発明以後 象形文字を紙に記し,人や動物に運ばせる。 動物 伝書鳩 • BC2400頃 古代エジプトで敏速な通信を必要とする時に用いた。 • BC1204年 エジプトのラムセス3世が古代エジプト王朝20代ファラオ即 位式に使用 駅伝制度 郵便制度の先駆 • 中央集権機構の維持に必要であるが,交通路,制度の維持に多大の 資本・費用を要する。 • ペルシャのダリウス一世が駅逓所を設けた。(BC500年ころ) 1900km • ローマ帝国ではアウグスティヌスの頃に完成し,600年間使用。 • 中大兄皇子 大化の改新で駅制の制定(646年) 飛脚,伝馬を置く。 郵便制度 近代郵便制度 国家の経営,軍隊の運用,事業の経営に通信は欠かせない ½文字の文化(Literal Culture) 9筆記性(Chirographic) 相手との直接のやり取りとしての相互作用とコミュニケーションが分化。 物質的資源の管理強化と大規模組織の発達を可能にする。 9活字性(Typographic) 1443年グーテンベルク活版印刷術の発明 義務教育や識字化を行き渡らせ,民主主義をもたらした。 黙読 文字の発明 ●楔形文字 紀元前3000年頃に古シュメールで生まれた。 粘土板をパピルスの茎を切って作ったペンでひっかいて描き,干し固めた。 象形文字であり,抽象的な概念は表現しにくい。 ●アルファベット文字 紀元前6世紀にギリシアで誕生。 17音の子音と7音の母音。 ギリシア文化が花開く。 ●漢字 紀元前1500年頃,殷時代の甲骨文字から生まれ,様々に発展。 ●文字の効用 •言葉や事柄の記録し,遠隔地の他人や後世に受け継がれる。 共時的,通時的に正確なコミュニケーション •記録を自分で見て,内容を確かめられる。より深く考えられる。 自己とのより深いコミュニケーション •他人に読まれることにより,知識が共有される。 マスコミュニケーション 活版印刷術の発明 ●グーテンベルク以前 1041年頃 中国畢昇(Pi Sheng)が膠泥で素焼きの活字を作る。 1314年頃 中国王槇(Wang Chen)が木製活字を作って「農書」を印刷。 印刷術発明への条件 •金属(貨幣)の鋳造技術 → 鉛の三元合金(Pb,Sn,Sb)による活字の製造 •煤を油で練った油性インキ → 絵の具を改良し金属になじむ •葡萄を絞るプレス機械 → 強い圧力を加える印刷機に改良 •紙の大量生産 → 製紙工場の定着 ●グーテンベルクの印刷術の発明 1450年頃,発達してきた要素技術を総合し,システムとして完成させた。 聖書など優れた印刷物を生み出したが,筆写本として販売した。 ●活字の効果 •言葉を統一して母国語を確立し,固定化した。 •知りたい情報より権力からの知らせたい情報が先行する。 •情報伝達速度が急速に増大し,宗教改革を促した。 •マス・メディアが大量に普及し,識字率の向上,人類文明の急速な発展。 Informatics01 1 メディアの発展史(2/2) モールス電信機 ½電子の文化(Electronic Culture) モノや人の迅速な輸送・移動→時空間の絶対速度の実現 9電信とアナログ 1794年 シャップ腕木通信を発明 1837年 モールス電信機を発明 1876年 ベル電話を発明 1877年 エディソン蓄音機を発明 1895年 リュミエール映画を発明 9ディジタル すべて二進数の数字に変換される。メディア共通規格 シャノンの標本化定理 1936年 万能チューリング機械 1944年 ENIAC完成 1948年 トランジスタの発明 1969年 ARPAnet開始 1975年 パソコンAltair8800を発表 1995年 Windows95の発表 送信キー 受信機 紙テープ 電信線 1837年 完成 1838年 ワシントンで公開実験し,政府出資を求めたが失敗。 1845年 米政府が3万ドルで発注し,ワシントン∼ボルチモア間に電信線完成。 1861∼1865年 南北戦争の間に連邦政府軍は24,000kmの電信線を架設。 電話機の原理 電気通信以後の通信方式-ディジタル通信への道 ディジタル的通信:符号伝送であり,ノイズの影響を受けにくい ゴム 送りたいのは,電流(エネルギ)ではなく情報 電磁石 カーボンマイクロフォン ディジタル通信の実用化には,パルス技術,広帯域伝送技術の発展が必要であった 炭素粉 音波 音波 電話線 ダイヤフラム ダイヤフラム 1876年 Bellが発明。 しかし,片方向にしか話せず,再生音も小さく何を話しているか不明瞭。 1877年 Edisonがカーボンマイクロフォンを発明し,長距離伝送を可能にする。 1878年 ベル電話交換業務開始。 1880年 ベル電話会社設立。後にAT&Tに改組。 以来,電話機の構成は基本的には不変。 ⇒ インターネット電話で大変革 PCM方式 1937年 A.H.ReevesがPulse Code Modulationを発明 光通信 1970年 光ファイバ通信元年 低損失光ファイバの開発,常温連続発信デバイスの発明 衛星通信 1968年 1997年 テレビ放送の全世界中継に成功 衛星通信サービス開始 ISDN 1988年 日本でINSネット64のサービス開始 1995-6年 インターネットブーム 1997年 B-ISDNサービス開始 携帯電話 1993年 1995年 2001年 いつでも,どこでも,誰とでも,何でも送れる通信の実現へ PCM (Pulse Coded Modulation) 標本化定理 信号の周波数スペクトルの最高値の2倍以上の周波数で標本化を行うと波 形を完全に再生できる + 信 号 電話の場合 周波数スペクトラム=0.3∼3.4kHz c=8kHz,m=8bits → 64kbps (1/8000秒) 0 + 2.2 2.8 2.5 標本化周期 1.0 標本化 0 -1.2 -1.8 -2.5 -2.8 + 3 3 3 1 量子化 0 - -2 -3 -3 CDの場合 周波数スペクトラム=0.02∼22kHz c=44.1kHz,m=16bits → 705.6kbps 携帯電話 VSELP 11.2kbps(フルレート方式) PSI-CELP 5.6kbps(ハーフレート方式) ADPCM 32kbps(PHS) AMR 12.2kbps(W-CDMA) -2 インターネット電話(VoIP) CS-ASELP 8kbps(G.729/G.729a) 符号化 011 011 011 001 110 101 101 110 ディジタル携帯電話(800MHz帯) PHS 第3世代携帯電話(固定電話並み音質,マルチメディア通信) ディジタル通信の利点 ●アナログ通信 情報の「実物」を送り,そのまま受信する。途中で壊れたり汚れたりしたとき情 報が変質することがある。 ●ディジタル通信 受取人に情報の組み立て方法を送るだけで「実物」は送らない。輸送中に壊 れたり汚れたりすることはない。 ◆利点 •経済性 装置の小型化,低価格化,保守が容易 光ファイバ,LSIなど。部品の経年変化が少ない。 •高伝送品質 量子化雑音はあるが歪のない波形再生が可能 •秘話性 通信回線上での盗聴は困難 •各種サービスの統合 マルチメディア •計算機との親和性 マルチメディアサービスの実現 ◆欠点 種々あったが,エレクトロニクスの進歩により克服されてきた。 Informatics01 2