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Page 1 イプシロン 2015.Vol.57、1ー10 オイラー線から見た内心等諸心
イ プ シロ ン 2015. Vol 。 57,
1 - 10
オイラー線から見 た内心等諸心 の存 在範囲
愛知教育大学非常勤講師 石 戸 谷 公 直
0。はじ めに
三角形 にお いて, 外心,重 心,垂 心は一 直線上 にあ り, 内分比 も常 に1:2 と定 まって い る。「内
心につい ては そう単純 で はない が,一定 の制約 があ りそ う」 とい う飯 島先生 の指摘 に興 味を覚 え,BASIC
プロ グ ラミン グを利用 して調 べて みた。 その結果, 内心 は一定 の円 内にあ るこ とが わかっ
た。関 連して オイ ラー線 の由 来 につ い て調べ て みた ところ, 既 にオイ ラ ー自身, 同じ よ うな問題
意識か ら上述 の問題 を ほぼ解 決して い たこ とが わかっ た。し かし ,あ ま りスマ ートで は ないが 探
索 の過 程の紹 介 にも意 味があ る と考え る。 そこで 本稿 で は, まずBASIC
によ る描画 を観 察し 法
則 の予想 と証明*を試 みる。次い で,オイ ラー の結果 と関連 す る近 年の研 究**を紹 介し,最 後 に他
の「心」たち につい て分布図 を概 観す る。* は **で の証 明ほ どエ レガ ントで はな いが, より直感
的 (位相 幾何 的)で あ るとい う点で 意義 があ る と考 え る。
1 。内 心 の 分 布 図 の観 察
ここで は座標平 面 上で考 え る。
内心の 外心 ・重心 に対 する位 置関 係は, 相似 変換 で不変 :
△ABc∽△A'B'C'⇒△OGI∽△O'G'I' (0,G,I; 0',G',I'はそれぞれの三角形の3心)
であ るか ら,各 相似類 (互い に 相似 な三角形 の集 合) の 「代表 」 につい ての み考察 す る。
1.1. 代表 のとり 方(I) 直交座 標 で
具 体的 には,
(1) 平行 移動 によっ てA =(0,0) とし, さ らに
(2) 回転 と拡大 縮小 に よりB
= (1,0)とし,
そのときのCの座標を(x,y)(y≠O)とする。このように限定さ
れた△ABCのみについて考察する。予め角の小さい順にA,B,C
(したがってBC≦AC≦AB)としておけば、
x≧1/2, x2十y2≦1
となる。任意の三角形(ただし正三角形は除く*)が右図でD+∪D内 の 点 C に よっ て 相 似 の 意 味 で 代 表 さ れ る 。 も し , 頂 点A,B,C
の
[ 図1 ]
順に回る向き(左回り・右回り)を区別しないなら,D+とでD-の一方のみでよい。
重心G(Gx,Gy),内心I(Ix,Iy),外心O(Ox,Oy)はそれぞれ次のように表される:
得 られ た三角形*OIG
につい て も,同様 の方 法で 相似類 の代表 を定 め る。す なわ ち,相似 変換
1
石戸谷
公直
(平行移動,回転,拡大縮小)によって,0をO'(0,0)に,GをG'(1,0)にうつしたときのIの
像をI'(u,v)とする。
*△ABCが二等辺の場合は0,G,Iが一直線上に並ぶが,そのようなOGIも(退化した)三角形と見
なすことにする。ただし,△ABCが正三角形(C=M±)の場合は0,Gが一致してしまい,上の対
応が定義できなくなるので,D±からM±を除外してある。図:L参照。
座標平面を複素数平面と見なす(G=Gx+Gyi,‥等)と,
対応(x,y) → (u,v)によって,写像φ:(D+∪D-)→R2が得られる・
点C(x,y)が領域でD+を動くときの,対応する点I'(u,v)を,x,y 1/200ZとしてBASICで
計 算 し て , 右 図 を 得 た。
この領域は,中心(2,0),半径
1の半円盤か(点の個数を多くし
ても右下に隙間が残る)。もしそ
れが半円なら,D+の像とD-の
像とは,u軸に関して対称だから,
[ 図2 ]
合 わせ て一つ の 円盤を成 す。
注意. D+∪D-では不連結で
ある(J軸が含まれない)が,像φ(D+∪D-)は連結であろう。x2十y2 = 1の部分とx = 1/2
の部分が二等辺三角形を表し,その点をφでうつすと像がu軸上の点となるからである。
1 。2
.代 表の とり 方(II) 角の大 き さで
A,B,Cでの角の大きさをそれぞれα,β,γで表そう(a≦β≦γ)。外接円の半径を1として,
A=(cos 2 β,sinβ),
2 B
= (cos 2a, -sin a),
2 C
= 1,0))
ととる。O<α≦β≦γに対応する(α,β)の範囲は図4のΔ(格子の部分):
[ 図3
]
3弧BC ( A), CA ( B),AB( C)の中点をそれぞれL, M, Nとすると,△ABCの内心は
△LMN
の垂 心 とし て得 ら れるか ら,
得られた三角形OGIの相似類の代表I'(u,v)を,前小節(★)と同様に定める。複素平面上で
2
オイラー線から見 た内心等諸心の存在範囲
考 え ると,
右辺は(★ )と同様,G =O (すな わち △ABC
が正 三角形 )で ない限 り意 味を持 つか ら,写像
φ:(a,β)(u,v)
はΔXの境界(ただし,正三角形に対応する点R(π/3,π/3)を除く)の上でも意味を持つ。
2 つの 直線族 (図4 の縦線 た ち;横 線た ち)
(A) α = m/36π (m = 0,1,2,…,11) (B)β=n/36π(n=1,2,…,11)
を, 写像 φ で うつし て図5 を得 る:
[ 図4
]
[ 図5 ]
a =O はつ ぶれ た三角形 に 対応 する( 図3 参照) が, φ が連 続 なので ,つ ぶ れた ときの像 も,
つぶ れてい ない ときの 像を知 る手 がか り となり得 る。 すな わち,
点PがΔの境界上をO→[R]→S→Oと動くと,φ(P)はG'→[N']→H'→G'と動
く。ただし,Rはφの定義域外だから除外;またH' → G'の部分は下半円周に沿って移動する。
これらは,(☆)から確かめられる(2.2節参照)。φの連続性を考慮すると,φの像の領域は,中
心(2,0), 半径1 の半 円 の内部 と境 界( ただしN'(l/2, 0) を除 く) であ る と確 信で き る。
以上 の説明 は直 感的 過ぎて 証明 とは言 い がたい 。次 節で, 直 感的 な部分 を位 相幾 何的 に表 現す
るこ とに よっ て厳 密な証 明を 試 みる。
1 。3
.副産物(I)
図5でβ=8/24πの部分の像がN'を通いu軸に垂直な線分になっていることに注意しよう。
このことは,(☆)にβ=π/3を代入することにより,容易に確かめられる。したがって,∠Bが
60゜ならば, O'T' = H'T',すなわちOI=HIとなる。
系.一つの角が60゜ならば,内心は外心と垂心を結ぶ線分の垂直二等分線上にある。
2 。証 明 の 試 み
(u,v)平面上で,中心(2,1)で半径1の開円盤をD,円周を,Sで表し,D=D∪Sとおく。
2.1. φの像が開円盤をD内に含まれること
前節(☆)を利用して,計算によって│(u+vi)-2│≦1を証明することもできるが,多少煩雑
3
石戸谷
公直
であり,ここでは省略する。以下では初等幾何的な証明を試みる。
示すべきは、IがGHを直径とする円の内部にあること、すなわち ∠GIHは鈍角
一直線上にない3 点A,0,B に対し,2 つの半直線OA, OB で囲まれた開領域(劣角)を記号
∠
(AOB )で表そう。
補題。三角形ABcが二等辺でなければ,∠GIHは鈍角である。
[証明](I)二等辺でない場合:AB>AC>BCとする。下図参照。
辺BC, CA, ABの中点をそれぞれL, M, N; 角A, B, Cの二等分線をそれぞれAS, BT,CU
; 頂点A, B, C から対辺(の延長)に下ろした垂線の足をそれぞれP, Q, R とする。
Z = CR ∩ AL ; Y=CR∩ASとおく。
AC>BCだからI
がって,I 角C
∠(NCR)であり,AB>ACだから,Iは直線ALのC側にある。した
△GCZ
… ①
が鋭角 の場 合
① より,∠GlC > ∠GZC > ∠R … ②
AB >AC
だから ,P は直 線BC
上でS のC 側 にあ る。
角A
は鋭角 だか ら,H は線分AP
上 にあ る。 した がって ,H は直 線AS
角C
は鋭 角だ から,H は線分CR
上 にあ る。
し たがっ て,H は線分CY
のC 側 にあ る。
上 にあ る。
角の大きさを「BAからBCに回る向き」に測ると、
∠GlC<∠GIHく∠GIYく∠UIYく∠RYSく3/2∠R‥③
結局, ∠R<∠GIH<3/2∠R これはどちら向きに測っても同義。
し たがっ て,∠GIH は鈍角 。
角C が鈍角または直角の場合
角C が鈍角 または直角だから,C は閉線分HR
∴ ∠GIH > ∠GZH
上にある。これと ① より,I
△GHZ
> ∠R
[ 図6
]
(II)二等辺 三角形 (正三 角形 を除 く)の場合 :G, H, Iは対称軸 上 にあ る。I がG
とH
の間に
あ るこ とは, 中線 ,角 の二等 分線 ,垂 線の 位置関 係 を考察 す るこ とに より,上 の同様 ( だが より
簡 単) にわか る。
4
オイラー線から見 た内心等諸心の存在範囲
系.IはGHを直径とする開円盤上にある。すなわち, I' D内にある。
2.2.開円盤D内の点(≠N’)がφの像になっていること
第1.2節の図5の様子から,直感的には半円盤上の点はすべてφの像になっていると思わざる
を得 ない。「根 拠 は?」 と問 われ れば,(例 えば)像 が編 目状 になってい る ことを持 ち出し て はどう
だろ う。 もっ と細 かい格 子を うつ して みれ ば,像 は もっ と細か い網 目状 にな るだ ろう。極 限 を考
えれ ば … 。あ るい は,位相 幾何学 の基本 的な概 念 の一 つで あ る「巻 き数」 が役立 ち そうであ る。
平面R2に単位円盤D2 = {(x,y) R2 │ x2+y2≦1}とその境界である
単位円周S1を考える。 S1上で定義された連続写像をループという。ループl:S1→R2
とその像(閉曲線)の上にない点p R2に対して,点Sが
S1上を正の向きに1周するとき点l(s)が点pのまわりを回る回数(符号
付き整数)をlのpのまわりの巻き数といい,W(l,p)で表す。
右図でW(l,a) =1, w(l,b) = 2, W(l,c) = -1, W<(l,d)=0, w(l,e) = 2.
連続写像f:D2→R2の定義域をS1に制限することにより得られるループをflS1で表す.
ループlを点bこ触れずに連続変形してもW(l,b)が変化しないことから次が示される:
補題.写像f:D2 → R2 が連続で,点bが像f(D2)に属さないならばw(f│s1, b) = 0
(詳 細 は例え ば[2]
参照) 対 偶 とし て直 ち に次 の定 理 を得 る:
定理.写像f:D2→R2が連続で. W(f│s1, b)≠Oならば、b = f(a) (∃a D2)
これらの命題は位相的命題であり,D2はそれと同相な図形(例えば三角形の周と内部)に置き
換えても成立する。上の定理を写像φ:Δ→R2に適用して,開円盤D(
R2)の下半分内の点
がφの像になっていることを示そう。上半分についても同様である。上下の境界である直径(u
軸上 )につ いて は別 に考察 す る。
上 の定理 を適用 する には,写像 の定義 域が閉 円盤 と同 相で ある必要 があ る。そ こで や の定 義域
に,左側の辺OS = {(0,β) R2│0≦β≦π/2}と右端の頂点R(π/3,π/3)を付け加えてΔと
し,φをΔ上の連続写像に拡張しよう。φの定義式(第1.2節(☆)参照)
は分母 がO
点Rの近傍で多項式近似する:(a,β)=(π/3+t,π/3+u);t∼O,u∼Oとする。
指数関数の1次近似ez∼1+zを利用する。ω= e(π/3)iとおきω十ω=1等を用いると,
した がって,
5
石戸谷 公直
注意.ω-1, ω-1はR上で1次独立だから,(t,u)≠(0,0)=⇒(ω一1)t+(ω-1)u≠0
系.点(α,β)が(π/3,π/3)に収束するとき,点φ(α,β)は点(3/2, 0) = N'に収束する。
写像φを拡張して写像φを作る:
系.写像φはΔ上で連続である.
上の定理を適用するため境界σΔ=(辺OR)∪(辺RS)∪(辺SO)上でのφの様子を調べる。
辺OR上で(≠R):(α,β)=(t,t),0≦t<π/3
頂点R
上で :
辺RS 上で(≠R )
が円円対応であり,z=e2tiz+2
は円周上を動くから,φ(α,β)が円周上を
動 く とわか る。
以上か ら,
補題.下半円盤でD- = {(u,v)∈D│v < 0}内の任意の点bについて,W(φ│σΔ, b)=-1
−
したが って,
定理。下半円盤でD-内の任意の点bはφの像に含まれる。
同様にして,上半円盤でD+内の点は,α≧βなる点(α, β)の像になることがわかる。
DとD+の境にある直径の上の点は2辺OR, RSの像になっている。ただしφ(R) (= N':
九点円の中心)はφの像ではない。
図4 の 格子が 図5 の編目 にうつ る様 子を 見 る限りで は φ が 単射で あ るよ うに思 わ れるが。
3。内心 の軌跡
3 。1. オ イ ラ ー の 結 果
オ イ ラ ー は[1 ] "Solutio facilisproblematum
quorundam
solutions to some difficultgeometric problems)"
6
垂 心E
(intersectio ternorum
perpendiculorum,
重心F
(intersectio ternarum
rectarum,
内心G
(intersectio ternarum
rectarum,
geometricorum
difficillimorum (Easy
の 中 で , 三 角 形 の4 心 (原 典 の 記 号 を 踏 襲 ):
・ ・ ・)
・ ・ ・centrum
・ ・ ・ centrum
grauitatis trianguli)
circuli triangulo inscripti)
オ イラ ー線 か ら 見 た内 心 等 諸 心 の 存 在 範 囲
外心H
(intersectio ternarum
rectarum
・ ・ ・ centrum
circuli triangulo circumscripti)
の位置関係について考察し, E, F, Hが一
直線上にあることを示し,さらにGも含め
た4点の位置が与えられたとき三角形を決
定する方法を述べている。考察の基礎とな
るのは,これら4点の間の距離を3辺の長
さa,b,cで表すことである:
ここに、p,q,rはa,b,cの基本対称式,Aは
三 角 形 の 面 積:(AA
等 は2 乗 を 表 す)
p = a + b 十c , q= ab 十ac 十6c, r = abc;
The Euler Archive (http://eulerarchive.maa.org) か ら
次 いで, 次 のよう に問題 を設定 :
Problema.
Datis positione his quatuor punctis in quolibet triangulo assignabilibus 1°. Intersectione
perpendicularium ex singulis angulis in latera opposita ductarum E, 2°. Centro grauitatis F;
3°.Centro
circuli inscriptiG et 4 °.centro circuli circumscripti H; constituere triangulum.
(4 点・E,F,G,H の 位置が 与え られ た とき,三 角形 を「構 成」 す るこ と。)
Solutio 。の 概 略 :
とおいて ,
(1)p,q,rをP,Q,Rで表し, (2) GH2, FH2, FG2をP,Q,Rで表し. (3)それを連立方程式と見
なして解いてP,Q,Rをf,g,hで表し. (4) p, q, rをf,g,hで表す。
すると,4点E,F,G,Hが与えられたなら,求める
三角形の3辺の長さa,b,cは,3次方程式
(x - a)(x - b)(x - z) = 0 すなわち x3 - pxx + qx - r = 0
の解 として得 ら れるで あろ う。
残念 なが ら,論文 に は上の3 次方 程式 の3 つ の解か正 の実 数で あ りかつ 三角 不等 式を満 た すた
めの条件 は見 当た らない (数式 を頼 り にラテ ン語 を読 む( ?)限 りで は)。
7
石戸谷
公直
3 。2
.近年 の研 究
※ 以下で は △ABC
の外 心,重 心, 垂心, 内 心を それ ぞれO, G, H, Iで表 す。
B. Scimemi [5]によると,内心の軌跡の問題はA. P. Guinand, Euler lines, tritangent centers,
and their triangles, Amer. Math. Monthly, 91 (1984)において次のように解決された:
内心 は重心,垂 心を直径 の両端 とする円 の内部 にあ る。逆に,円 内 の任 意 の点(た
だし九 点円 の中心 は除 く) は内心 となり うる。
オイラーの結果(前節参照)によると,3辺は3次方程式の解となっているので,コンパスと
定規で作図できる保証はないが,[5]ではpaper-foldingで構成する方法が述べられている。用い
られ てい るアイ ディ アは,
(1)オイラー線を各辺に関して対称移動して得られる3直線が外接円上で交わる。
に の点 をオ イラ ー点 とい う。)
(2)相異なる3点G,0,Eに対して,それぞれを重心,外心,オイラー点とする三角形Tが存
在するための必要十分条件はEがGO-カージオイド*の外部にあることである。このとき,Tは
一 意的 であ り, G, O, E か らpaper-foldingで 構成 で きる。
*中 心0 , 半径OG
の円 の外 サ イ クロ イド とし て得 ら れ るカ ー ジ オイド で,G を 尖点 とす る もの
[6 ] に お い て は , 内 心 の 軌 跡 に 関 す る 定 理 を 複 素 数 平 面 上 で 証 明 し て い る。
4 。他 の「
4.1.「
心」
につい て
心」 の 重 心 座 標
BASlCプログラミングで「心」の座標を計算する際に,重心座標が便利である。([6]参照)
以下,点A(x,y)を数ベクトル(x,y)と同一視する。
△ABCの頂点A,B,Cにそれぞれ質量t,u,v (負も可;ただしt十u十v≠O)の質点を置いた
ときの重心をPとする。連比(t:u:v)をPの△ABCに関する重心座標という。
例1.重心Gの△ABCに関する重心座標は(1:1:1)=(1/3,1/3,1/3)= ...
補題。3点A', B', CがそれぞれBC, CA, ABをt1:t2:u1:u2,v1:v2の比に内(外)分し,3
直線AA', BB', CC'が1点Pで交わるとき(t1u1v1 = t2u2v2),Pの△ABCに関する重心座標は
:t1u2)
以 下 , △ABC
(u1v2:u1v1:u2v2) = (v2t2 : v1t2 : v1t1) = (t1u1 : t2u2
の 辺 の 長 さ をa,
b, cで 表 す 。
例2(内心)頂角の二等分線と対辺との交点をそれぞれA', B', Cとする。(t1,t2)=(c,b),(u1, u2)=
(a,c)として補題を適用し,次の重心座標を得る:(t1u1 : t2u2 : t1u2)=(ca:bc : c2) = (a:b:c)
例3.外心の重心座標は (α2(b2十c2 − a2):b2(c2十a2−b2):c2(a2十b2 - c2))
例4 . 垂心 の重 心座標 は
例5(ジェルゴンヌ点)内接円と3辺BC, CA, ABとの接点をそれぞれA', B', C'とすると,3直
線AA', BB', CCは1点で交わる。(t1,t2)=(c+a-b,a十b-c),(u1,u2) = (a+b-c,b+c-a)
として補題を適用し, (t1u1:t2u2:t1u2)に代入して次の重心座標を得る:
8
オ イ ラ ー線 か ら 見 た 内心 等 諸 心 の 存 在 範 囲
例6(ナーゲル点)頂点A, B, Cから周に沿って半周した点をそれぞれA', B', C'とすると,3直
線AA', BB', CC'は1点で交わる。(t1,t2) = (a+b-c,c+a-b),(u1,u2) = (b+c-a,a+b-c)
として補題を適用し,(t1u1:t2u2:t1u2)に代入して次の重心座標を得る:
((a+b-c)(b+c-a):(b+c-a)(a+b-c):(a+b-c)2) = (b+c-a:b+c-a:a+b-c)
例7(類似重心あるいはルモアーヌ点)3中線をそれぞれの通る頂点の角の二等分線に関して対
称移動して得られる直線(類似中線)はI点で交わる。重心座標は(a2:b2:c2)・
例8(
シ ュ ピ ー カ ー心)3
辺 に一 様 な 線 密 度 の 質 量 を 配 置 し た とき の 重 心 ; す な わ ち ,3 中 点 に 辺
の 長 さ,に 比 例 す る質 量 の 質 点 を 置 い た と き の 重 心 :
したがって,重心座標は(b+c:c+a:a+b)・
例9(フォイエルバッハ点)内接円と九点円の接点のこと([8]参照)。重心座標は
(b+c-a)(b-c)2:(c+a-b)(c-a)2:(a+b-c)(a-b)2
例10 (n乗点)重心座標(an+1:bn+1:cn+l)で表される点のこと。
4 。2
.諸 心の 分布図
上 の例5 ∼9 につい て, 第1 節 の φ と同様 の方法 (図5 参照 )で, 分布 図 を作成 して みた。
[副産物(II)] 一 つの角 が60 ゜との き,フォイ
エ ルバッ ハ点 は,外心 と垂心 を結 ぶ線分 の垂 直
二 等分線 上 にあ るよ うであ る。
ナー ゲル点 につ いて も何 かあ りそ うで ある。
9
石戸谷
公直
内心 の分布 図 と類 似 の分布図 が多 いが ,フ オイエ ルバ ッハ 点の 分布範 囲 は円盤 の補集 合 か。4
.3
.内心 と外心 を結 ぶ「心 」 の試 み
三角形の内接円,外接円の半径をそれぞれr0,r1とすると,内接円,外接円はそれぞれ「その
半径の円のうちで,周がその三角形の3辺(両端を含む)と共通点を持ち,かつ,内部とその三
角形との共通部分の面積が最大のもの」という性質を持っている。これを一般化し,r0≦r≦r1
なる各rに対して,「半径rの円のうちでその三角形との共通部分の面積Sが最大のもの」を仮
に極大円と呼ぶことにする。rを明記する必要があるが,rのままだと範囲が三角形に依存する
ので,r=r01-tr1tと表すときのtを冠してt-極大円と呼ぶことにする。(r = (1 − t)r0 十tr1と
しな かった の は, 差 より は比 の方 が適切 か も, と考 えたか らで ,特 に深 い理 由 はない。)O 一
極大
円,1-極大円の心はそれぞれ内心,外心である。
極大円の中心を求めるアルゴリズム: 点P
を中心とする半径rの円盤と,直線BCに関
してAと反対側の部分の半平面,の共通部分
の面積をEA(r,P)は,h=PB・na(naは辺
BC で の外向 きの 単位法 ベ クト ル) を用 いて ,
上記の面積夕=πr2-EA-EB-EBの極大点(grad(S)=0)として極大円の中心を求める。
0 < t < 1の範囲でt-極大円の中心がtとともに描く軌跡は△OGIの内部をIからOに向かっ
て進むようである(一例:図8)。t-極大円の幾何的な意味がt = 0,1以外についてははっきりし
ない。例えばt-極大円の面積が三角形の面積に等しいときのtの値なら幾何的にも意味がありそ
うだが,その値は三角形によって異なる。r (r0≦r≦r1)をtで表示する式に工夫が必要か。
参考文献
[1] L. Euler, Solutio facilis problematum quorundam geometricorum difficillimorum, Novi Comm.
Acad. Scie. Petropolitanae 11 (1765) (The
Subject >
[2] W.
Geometry
から
Euler Archive (http://eulerarchive.maa.org)
>1325I)
G. Chinn, N. E. Steenrod, First concept of topology,The
Mathematical
Association of
America (1966) ( 邦訳 :『初歩 のト ポロ ジー 』(野 口 広訳 )河 出書 房新 社(1969) )
[3]岩田 至康『幾何学大事典1 』槇書店(1971)
[4]安藤清・佐藤敏明『初等幾何学』森北出版(1994)
[5] Benedetto
Scimemi, Paper-foldingand Euler'stheorem revisited,
Forum
Geometricorum Vol.2
(2002) 93 - 104.
[6] Joseph
Stern, Euler's triangle determination
problem,
( 同 上)
Vol.7 (2007) 1 - 9.
[7]一松信・畔柳和生『重心座標による幾何学』現代数学社(2014)
[8] Encyclopedia
10
of triangle centers ―http://faculty.evansville.edu/ck6/encyclopedia/ETC.html
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