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小学校体育指導の手びき

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小学校体育指導の手びき
小学校体育指導の手びき
愛 知 県 教 育 委 員 会
は
じ
め
に
小 学 校 の 新 し い 学 習 指 導 要 領 が 平 成 10年 12月 14日 に 告 示 さ れ , 平 成 14年 度 か ら は 全 面 実
施の運びとなります。
こ の 新 学 習 指 導 要 領 は ,「 ゆ と り 」 の 中 で 「 特 色 あ る 教 育 」 を 展 開 し , 児 童 に 「 生 き る
力 」 を 育 成 す る こ と を 基 本 的 な ね ら い と し て い ま す 。「 生 き る 力 」 と し て は , 自 ら 課 題 を
見つけよりよく問題を解決する力や,他人を思いやる心などの豊かな人間性,たくましく
生 き る た め の 健 康 や 体 力 が あ げ ら れ て い ま す 。 そ の 中 で ,「 た く ま し く 生 き る た め の 健 康
や体力」は,このような資質や能力を支える基盤として欠くことのできないものでありま
す。
この点を踏まえると,心と体を一体としてとらえ,児童の健全な成長を促し,生涯にわ
たる豊かなスポーツライフの基礎を培い,健康の保持増進や体力の向上を目指して主体的
に取り組む資質や能力を育てていくことが,これからの学校体育の指導に課せられた大き
な使命であります。
本書は,新学習指導要領の改訂の趣旨を生かし,小学校における体育指導の工夫改善に
役立てていただくことを目的として作成いたしました。各学校においては,本書を十分活
用していただき,指導内容及び指導方法の一層の改善・充実に努められ,時代の要請と児
童の実態にあった体育指導の展開が図られることを切に期待するものであります。
おわりに,本書作成に当たり,ご協力いただきました関係者の皆様に対しまして,心よ
りお礼申し上げます。
平 成 14年 3 月
愛知県教育委員会教育長
渥
美
榮
朗
目
第1章
学習指導要領の基本方針(体育科)
次
1
1
改訂の趣旨
1
2
改訂の要点
2
(1) 改訂の方針
2
(2) 教科の目標
3
(3) 改訂の内容
3
(4) 運動領域
3
(5) 保健領域の内容構成
5
第2章
体育科の役割
6
1
役
割
6
2
組
織
6
3
体育主任の任務
(1) 指導に関する事項
7
(2) 管理に関する事項
8
第3章
1
2
学習指導
9
体育科の目標
9
(1) 教科の目標
9
(2) 学年の目標
10
体育科のねらい・内容
11
(1) 領域の構成
11
(2) 運動領域のねらいと内容
11
Q&A
(3)
3
7
保健領域のねらいと内容
指導計画作成上の留意点
(1) 年間指導計画
24
25
29
29
4
(2) 単元指導計画
36
(3) 「授業」において留意すべき事項
39
(4) 学習指導案
41
体育の評価
48
(1) 評価の目的
48
(2) 評価の考え方
49
(3) 評価の内容
50
(4) 指導と評価の一体化
51
(5) 評価計画と評価規準の作成
52
(6) 評価方法の工夫改善
53
Q&A
第4章
1
2
3
4
総
54
則
体
育
総則第1の第3項の内容
56
56
(1) 総則体育の意図
56
(2) スポーツライフとの関連
56
(3)「スポーツ振興基本計画」と体育・スポーツ
57
学校の経営と総則体育
57
(1) 教育課程の編成
57
(2) 授業時間の弾力的な運用
58
(3) 指導組織の確立
58
総則体育の展開
58
(1) 他教科との関連
58
(2) 道徳との関連
59
(3) 総合的な学習の時間との関連
59
(4)
特別活動との関連
60
総則体育指導の全体構造
62
Q&A
63
第5章
特別活動に含まれる体育
64
1
健康安全・体育的行事
(1) 性
2
64
格
64
(2) ねらい
64
(3) 体育的行事の具体例
65
体育的クラブ活動
(1) 性
69
格
69
(2) ねらい
70
(3) 組
70
織
(4) 指導計画・活動計画
71
(5) 運営・指導上の留意点
72
(6) 評
73
第6章
価
体育の安全指導
74
1
体育・スポーツ事故の実態
74
2
事故原因の把握と留意点
75
(1) 安全に関する基本事項
75
3
施設と器具・用具の安全管理
75
(1) 施設
75
(2) 器具・用具
76
4
事故発生の防止
77
5
事故発生の措置
80
(1) 事故発生時の救急体制
80
(2) 適切な措置
80
6
健康に配慮を必要とする児童・見学者の取扱い
81
7
事故例の考察
82
参考文献
84
作成委員
85
第1章
1
学習指導要領の基本方針(体育科)
改訂の趣旨
教育課程審議会の答申における体育科の改善の基本方針は,次のように示されている。
〇
明るく豊かで活力のある生活を営む態度の育成を目指し,生涯にわたる豊かなスポーツライ
フ及び健康の保持増進の基礎を培う観点に立って内容の改善を図る。
〇
その際,心と体をより一体としてとらえて健全な成長を促すことが重要であるという考え方
に立ち体育と保健をより一層関連させて指導できるようにする。
体育については ,「自ら運動をする意欲を培い,生涯にわたって積極的に運動に親しむ資質や
能力を育成するとともに基礎的な体力を高めることを重視する」とし,次のような点が特記され
ている。
ア
児童の発達段階に応じて,運動を一層選択して履修できるようにすることや体力の向上を
図る上で内容を重点化するなどの改善を図る。
イ
児童の体力等の現状を踏まえ,心と体をより一体としてとらえる観点から,新たに自分の
体に気付き,体の調子を整えるなどの「体ほぐし」の内容を現行の「体操」領域に示すこと
から ,「体操」領域の名称を変更する。
ウ
自然の中での遊びなどの体験が不足している現状から,各教科等との関連を図りつつ,地
域や学校の実態に応じて,戸外で身体活動を行う自然体験的活動を積極的に取り入れていく
ようにする。
次に,保健については ,「生涯を通じて自らの健康を適切に管理し,改善していく資質や能力
の基礎を培うため,健康の大切さを認識し,健康なライフスタイルを確立する観点に立って内容
の改善を図る。その際,近年の成育環境,生活行動,疾病構造等の変化にかかわって深刻化して
いる心の健康,食生活をはじめとする生活習慣の乱れ,生活習慣病,薬物乱用,性に関する問題
等について対応できるようにする。また,新たに自然災害等における安全の確保についても取り
上げるとともに,健康・安全と運動とのかかわりについて,体験的な活動などを通して実践的な
理解を深めるようにする」とし,また「児童の発育・発達の早期化や生活習慣の乱れなどに対応
するため,現在,小学校において高学年から指導している保健に関する内容を中学年から指導す
るようにする」こととしている。
〔体育科の改善の具体的事項〕
ア
低学年の運動領域(「 基本の運動」及び「ゲーム 」)及び中学年の運動領域(低学年の運
動領域に加えて「器械運動 」,「水泳」及び「表現運動 」)については現行どおりとするが現
1
在の児童の体の状況及び発達段階に応じた運動の指導に重点を置くことができるように内容
の改善を図る。また,現在,各学年ごとに指導することとしている運動をいずれかの学年で
指導することができるようにするとともに,学校や地域の実態に応じて多様な運動も指導す
ることができるようにする。
イ
高学年の運動領域(「 体操 」,「器械運動 」,「陸上運動 」,「水泳 」,「ボール運動」及び「表
現運動 」)については現行どおりとするが ,「体操」を除いた領域については,現在各学年
ごとに指導することとしている運動をいずれかの学年で指導することができるようにする。
また,学校や地域の実態に応じて多様な運動も指導することができるようにする。
ウ
「体操」領域については,主として巧みな動きを高めることに重点を置いて指導するとと
もに,自分の体の状態に気付き体の調子を整えることを重視し,内容を改善する。
エ
「保健」領域については,中学年は,健康な生活及び体の発育・発達,高学年は,けがの
防止と病気の予防及び心の健康に関する内容で構成し,食生活をはじめとする望ましい生活
習慣の形成,生活習慣病の予防及び薬物乱用防止に関する内容について取り上げる。
また,体の発育・発達や性に関する内容について,児童の発達段階を踏まえ重点化すると
ともに,健康な生活については,日光と健康とのかかわりの内容を削除する。
心の健康については,自他の心身の発育・発達の違いに気付き肯定的に受けとめること,
不安・悩みへの対処及び人とのかかわり方に重点を置く観点に立って,内容の改善を図る。
2
改訂の要点
(1) 改訂の方針
ア
生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践していくことの基礎を培う観点を重視し,児
童の発達的特性を考慮した運動に仲間と豊かにかかわりながら取り組むことによって,各種
の運動に親しみ運動が好きになるようにすること。
イ
心と体を一体としてとらえ,体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによって,自分や
仲間の体の状態に気付き,体の調子を整えることができるようにするとともに,体力の向上
の内容を重点化し,自ら進んで体力を高めることができるようにすること。
ウ
自分やチームの力に合った運動の課題をもち,その課題の解決を目指して活動を考えたり
工夫したりすることができるようにすること。
エ
個に応じた指導を充実するとともに,創意工夫を生かした特色ある授業づくりを進めるた
めに,学年や地域及び学校の実態に応じて運動を弾力的に取り上げることができるようにす
ること。
オ
保健については,生涯を通じて自らの健康を適切に管理し,改善していく資質や能力の基
礎を培うため,健康の大切さを認識し,健康なライフスタイルを確立する観点に立って,内
容の改善を図ること。
2
(2) 教科の目標
心と体を一体としてとらえることを重視し,豊かなスポーツライフの実現及び自らの健康を適切
に管理し,改善していくための資質や能力を培うことを目指し ,「運動に親しむ資質や能力の育
成 」,「健康の保持増進」及び「体力の向上」が相互に密接に関連していることを示した。
(3) 改訂の内容
ア
運動の取り上げ方の弾力化
児童がゆとりをもって自己の能力に適した課題の達成等を目指した学習を行うことができるよ
うに,運動の取り上げ方を弾力化した。
具体的には,従前各学年で指導することとしていた運動を,原則的にいずれかの学年で指導す
ることができるようにするとともに,地域や学校の実態に応じて多様な運動も指導することがで
きるようにした。
イ
運動の内容の重点化
児童の体力の向上を図る内容については,主として体の柔らかさ及び巧みな動きを高めること
に重点を置いて指導するようにした。
ウ
心と体をより一体としてとらえる観点の重視
児童の体力等の現状を踏まえ,心と体をより一体としてとらえる観点から,新たに自分や仲間
の体の状態に気付き,体の調子を整えたり,仲間と交流したりするねらいをもった「体ほぐし」
にかかわる内容を従前の「体操」領域に示した。
これに伴い ,「体操」領域の名称を ,「体つくり運動」と変更した。
エ
運動の学び方の重視
自ら学び,自ら考える力を育成するために,各学年の各運動領域における内容を,技能の内容,
態度の内容及び学び方の内容に整理統合して示すこととした。
(4) 運動領域
ア
基本の運動
「基本の運動」については,児童にとって楽しい「運動あそび」としての特性をより明確にす
るために ,「仲間との競争,いろいろな課題への取組など」を「楽しく行い」とするとともに,
第1学年・第2学年において,従前の「‥の運動」を「‥の運動遊び」に改めることとした。さ
らに,第1学年・第2学年の「模倣の運動」を「表現リズム遊び」とし,より律動的な活動を行
うことができるようにした。
したがって,第1学年・第2学年の「基本の運動」は ,「走・跳の運動遊び 」,「力試しの運動
遊び 」,「器械・器具を使っての運動遊び 」,「用具を操作する運動遊び 」,「水遊び」及び「表現
リズム遊び」で構成し,第3学年・第4学年は「走・跳の運動 」,「力試しの運動 」「器械・器具
を使っての運動 」(第3学年 ),「用具を操作する運動」及び「浮く・泳ぐ運動 」(第3学年)で
構成した。
第1学年・第2学年の「走・跳の運動遊び 」,「器械・器具を使っての運動遊び 」,「水遊び」
「表現リズム遊び」と第3学年・第4学年の「走・跳の運動」については,2学年にわたって指
導するものとすることを「内容の取扱い」に示した。
3
なお ,「歌や運動を伴う伝承遊び,自然の中での運動遊び及び簡単なフォークダンスを加えて指
導することができる」ことを「内容の取扱い」に示した。
イ
ゲーム
「ゲーム」については,第1学年・第2学年では従前の「ボール遊び」を「ボールゲーム」に改
めるとともに ,「ボールゲーム」については,2学年にわたって指導するものとすることを「内容
の取扱い」に示した。
第3学年・第4学年では,従前は「ポートボール 」,「ラインサッカー」及び「ハンドベースボ
ール」と示されていたものを,地域や学校の実態に応じて運動の取り上げ方を弾力的に行うことが
できるように ,「バスケットボール型ゲーム 」,「サッカー型ゲーム 」,及び「ベースボール型ゲー
ム」と改めた。また ,「地域や学校の実態に応じてバレーボール型ゲームなどその他の運動を加え
て指導することができる」ことを「内容の取扱い」に示した。
ウ
体つくり運動
従前の「体操」領域の名称を「体つくり運動」に改めるとともに,この「体つくり運動」を「体
ほぐしの運動」と「体力を高める運動」で構成した。また「体ほぐしの運動」と「体力を高める運
動」の中の「体の柔らかさ及び巧みな動きを高めるための運動」については,2学年にわたって指
導するものとすることを「内容の取扱い」に示した。
エ
器械運動
活動の場を工夫するなど,易しい条件の下で行うことを重視し,技ができるようにすることに加
えて ,「技に取り組んだり」することを示した。
オ
陸上運動
従前の「リレー・短距離走」については,短距離走を主とした学習が可能となるように,運動の
取り上げ方の弾力化の観点から「短距離走・リレー」と改めた。また,従前の「障害走」について
は,高学年ではハードルを使っての学習が多くなることから ,「ハードル走」と改めた。
カ
水泳
第5学年・第6学年では「学校の実態に応じて背泳ぎを加えて指導することができる」ことを
「内容の取扱い」に示した。
なお,適切な水泳場の確保が困難な場合には,従前どおり「水遊び 」,「浮く・泳ぐ運動」及び
「水泳」を欠くことができるが,これらを安全に行うための心得については,必ず取り上げること
を「各学年にわたる内容の取扱い」に示した。また,クロール及び平泳ぎの指導については,スタ
ートも取り上げることとし,その際安全に十分留意することを従前どおり「各学年にわたる内容の
取扱い」に示した。
キ
ボール運動
従前の「バスケットボール 」,「サッカー」に,新たに「ソフトボール又はソフトバレーボー
ル」を加えて構成した。
この「ソフトボール及びソフトバレーボール」については ,「地域や学校の実態によっては扱わ
ないことができる」ことを「内容の取扱い」に示した。
また ,「ハンドボールなどその他のボール運動を加えて指導することができる」ことを「内容の
4
取扱い」に示した。
ク
表現運動
第3学年・第4学年では,児童の発達的特性を考慮して ,「リズムダンス」を従前の「フォー
クダンス」に替えて示した。また ,「表現」と「リズムダンス」については2学年にわたって指
導するものとすること ,「地域や学校の実態に応じてフォークダンスを加えて指導することがで
きる」ことを「内容の取扱い」に示した。
第5学年・第6学年については,従前どおり「表現」と「フォークダンス」で構成した。また,
「地域や学校の実態に応じてリズムダンスを加えて指導することができる」ことを「内容の取扱
い」に示した。
ケ
集団行動
集団行動については,従前の「基本の運動 」,「体操(体つくり運動 )」の内容に示すことを改
め「各学年にわたる内容の取扱い」でまとめて示し ,「各学年の各領域(保健を除く)において
適切に行うこと」とした。
コ
雪遊び,氷上遊び,スキー,スケート,水辺活動などの取扱い
自然とのかかわりの深い活動については ,「各学年にわたる内容の取扱い」において従前の
「雪遊び 」,「氷上遊び 」,「スキー 」,「スケート」に「水辺活動」を加えた。また「地域や学校
の実態に応じて積極的に行うことに留意すること」を示し,従前と同様に自然とのかかわりの深
い運動の学習を重視することとした。
(5) 保健領域の内容構成
保健領域については,第3・4学年に新たに保健領域を設け ,「毎日の生活と健康」及び「育ち
ゆく体とわたし」の内容で構成した。
また,第5・6学年では新たに独立させた「心の健康 」,「けがの防止」及び「病気の予防」の
内容で構成した。
なお ,「けがの防止」については,簡単なけがの手当て ,「心の健康」については,心身の相関,
不安や悩みへの対処及び人とのかかわり方 ,「病気の予防」については,生活習慣病の予防や喫煙 ,
飲酒,薬物乱用防止に関する内容を新たに加えることとした。
5
第2章
1
役
体育科の役割
割
今日,我が国においては,自由時間の増加や生活水準の向上,少子・高齢化社会や高度情報化社
会への進展などを背景に,国民の生活様式も急激に変化し,生きがいのある生活を築いていく上で
生涯学習への期待が増大している。このような状況の中で,運動やスポーツは,単に体力の向上や
健康の保持増進のためだけでなく,人生をより豊かに充実させる「文化」の一つとして,我々の生
活に欠くことのできない重要なものであるという認識が浸透してきている。
学校教育においても,社会の変化を踏まえたこれからの時代の教育の在り方が問われ,今回の学
習指導要領の改訂に至った。今回の改訂では,子どもたちが主体的にたくましく生き抜いていくた
めの「生きる力」を育むことを学校教育の大きなねらいとしている。また,いじめや不登校・暴力
行為等の問題,さらには,ストレスの増大や人間関係の希薄化,身体活動の機会減少等に起因する
諸問題も生じていることから,新しい時代に対応し,社会を支えていくことのできる,知・徳・体
のバランスのとれた豊かな人間性とたくましい体を育む必要性を指摘している。
知・徳・体のバランスのとれた望ましい人間形成を目指す営みであるという学校教育の目標の中
にあって ,「適切な運動の実践を通して行う教育」という性格をもつ体育科は ,「身体の教育」と
してのねらいだけでなく ,「運動による人格の形成を図る教育」としてのねらいももっている。し
かし,21世紀を迎えた今日,児童の体力・運動能力の低下傾向や,活発に運動する者とそうでな
い者とに二極化している状況を考えた場合,健康や体力の向上面だけでなく様々な解決すべき問題
を抱えている。
これらの現状を踏まえると,これからの体育科の果たすべき役割は,新しい学習指導要領の目標
に示されているように,心と体を一体としてとらえることを重視し ,「運動に親しむ資質や能力の
育成 」,「健康の保持増進」及び「体力の向上」を相互に密接に関連させ,生涯にわたる豊かなス
ポーツライフの基礎を培い,明るく豊かで活力のある生活を営む態度の育成を目指すことである。
また,学校における体育・健康に関する指導は,学校の教育活動全体を通じて適切に行うことが
大切である。特に,体力の向上及び心身の健康の保持増進に関する指導については,体育の時間は
もとより,特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うように努めなくてはならな
い。
2
組
織
学校運営の円滑かつ適正化を図るため,学校管理規則(各市町村教育委員会制定)の「校務分
掌」の条項に ,「校長は,校務分掌に関する組織を定め,所属職員に分掌を命じ校務を処理しなけ
ればならない」と示されている。各学校で校長が定めた校務分掌の組織は,名称や構成等が学校に
より異なっていても,所属職員は校長の命ぜられた分掌により,校務を遂行すべきである。
ここでは,体育科の運営組織に関する校務分掌にしぼって述べてみる。
6
体育科の運営組織(参考例)
保健係(省略)
体育主任
指導係
体育係
管理係
①
指導方針の決定と指導計画の作成
②
指導内容の統一と進度の調整
③
施設・用具等の使用の調整
④
評価基準の設定やテスト問題の作成
⑤
補助教材の選択
⑥
現職教育の企画と実施
⑦
学校体育経営の評価の実施
①
施設・用具等の安全点検と管理
②
予算編成と執行
③
公文書や各種の記録の整理と管理
体育的行事係
体育的行事の企画と実施
体育的クラブ活動係
体育的行事係や体育的クラブ活動係は,性格上体育科のみで企画・運営できない場合が多い。特
に,クラブ活動や体育的行事は,クラブ活動運営委員会や指導部など,学校ごとに特色ある組織に
よって運営されるべきものである。他の分掌で扱おうとも,体育科担当教員が重要なポストにつく
場合が多く,体育科としては,その関係職員に対して専門的立場から積極的に協力していくことが
必要である。
3
体育主任の任務
体育主任は,体育科を代表して他教科との連絡調整を図り,教科はもちろんのこと,体育的諸活
動の指導の中心となり活動する。
参考例として,体育主任の具体的な任務をあげると次のようなものが考えられよう。なお,これ
らは,ごく一般的な参考例であり,分掌上の機能によりそれぞれの学校ごとに特色がある。
(1) 指導に関する事項
ア
学習指導要領に基づく教科体育の年間指導計画の作成に関すること。
イ
副読本お及びその他参考書を使用させる場合,その選定と教育委員会への届け出の義務に関
すること 。(校長を通じて)
ウ
体育的行事のうち,宿泊を要する行事及び県外で行われる行事の教育委員会への開申に関す
ること 。(校長を通じて)
エ
教科体育及び諸行事等において,児童の死亡その他の重大な事故が発生したとき,教育委員会
7
への報告に関すること 。(校長を通じて)
オ
教育課程や時間割編成上の教科の意見具申に関すること。
カ
指導内容の統一,調整及び進度に関すること。
キ
施設・用具等の使用計画に関すること。
ク
体育的行事の企画と実施に関すること。
ケ
校内現職教育の計画と実施に関すること。
コ
講習会や各種の研修会等への参加に関すること。
サ
到達目標の設定と評価規準及びテスト問題の作成に関すること。
(2) 管理に関する事項
ア
施設・用具の安全点検及び整備・充実に関すること。
イ
施設・用具等の管理(特に,安全管理)に関すること。
ウ
予算の編成と執行に関すること。
エ
公文書の受理・整理・保存に関すること。
オ
体育部会(体育委員会等)に関すること。
以上,体育主任の具体的な任務の参考例を述べたが,この他にも体育主任としての任務に属するこ
とは多くある。しかし,学校の状況によっては,これらの任務のすべてを体育主任が一人で処理せず,
体育部会(体育委員会等)を定期的に開催して,学校体育全般に関する指導について十分検討をし,
情報交換をしたり,協議したりすることが大切である。
8
第3章
1
学
習
指
導
体育科の目標
体育科の目標は,小学校教育の中で体育科が分担すべきものを示すとともに,体育科の学習指導
を方向付けるものである。
(1) 教科の目標
心と体を一体としてとらえ,適切な運動の経験と健康安全についての理解を通して,運動に親
しむ資質や能力を育てるとともに,健康の保持増進と体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営
む態度を育てる。
これは,体育科の目標である「楽しく明るい生活を営む態度を育てる」ことを目指すものであ
る。今回の改訂では,特に ,「運動に親しむ資質や能力の育成 」,「 健康の保持増進」及び「体
力の向上」の三つの具体的な目標が相互に密接な関連をもっていることを示すとともに,体育科
の重要なねらいであることを示したものである。
ア
心と体を一体としてとらえる
児童の心身ともに健全な発育・発達を促すためには心と体を一体としてとらえた指導が重要
である。心と体の発達の状態を踏まえて,運動による心と体への効果,健康,特に心の健康が
運動と密接に関連していることなどを理解することの大切さを示したものであり ,「体ほぐし
の運動」など具体的な活動を通して心と体が深くかかわっていることを体験できるように指導
することが必要である。
イ
適切な運動の経験
児童が心身の発達的特性に合った運動を実践することによって,運動の楽しさや喜びを味わ
うことである。このような経験を通して,児童の運動に対する親しみを育てるとともに,全人
的な発達を目指している。したがって,児童の運動への能力・適性,興味・関心等の状況に適
した指導が意図的,計画的に展開されることが大切であり,児童の心身の発達的特性の把握,
施設や気候条件への配慮,学習内容の選定,指導計画の作成,学習活動の展開,学習評価など
についての検討が必要である。
ウ
健康・安全についての理解
主として,第3学年・第4学年及び第5学年・第6学年の保健領域に関連したねらいを示す
ものである。具体的には,健康な生活,体の発育・発達,けがの防止,心の健康及び病気の予
防についての基礎的・基本的な内容を,簡単な作業や実習などを取り入れながら実践的に理解
することである。このことは,単に知識や記憶としてとどめるだけでなく,児童が,身近な生
9
活における課題を発見し,解決する過程を通して,健康・安全の大切さに気付くことなどを含ん
でいる。
エ
運動に親しむ資質や能力を育てる
生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践していくための基礎を培うことを重視するために
強調したものである。運動に親しむ資質や能力とは,運動への関心や自ら運動をする意欲,仲間
と仲よく運動をすること,運動の楽しさや喜びを味わえるよう自分の課題を自ら考えたり工夫し
たりする力,運動の技能などを指している。これらの資質や能力を育てるためには,児童の能力
・適性,興味・関心等に応じて,運動の楽しさや喜びを味わい,自ら考えたり工夫したりしなが
ら運動の課題を解決するなどの学習が重要である。
オ
健康の保持増進を図る
健康・安全についての実践的な理解を通して,自らの生活行動や身近な生活環境における課題
を把握し,改善することができる資質や能力の基礎を培うことを示したものである。
カ
体力の向上
各種の運動を適切に行うことによって活力ある生活を支え,たくましく生きるための体力の向
上を図るということであり,発達段階に応じて高める体力の内容を重点化し,自己の体力や体の
状態に応じた高め方を学ぶなど,実践力を身に付けることができるようにすることが必要である。
キ
楽しく明るい生活を営む態度を育てる
生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践するための資質や能力,健康で安全な生活を営む
実践力及びたくましい心身を育てることによって,現在及び将来とも楽しく明るい生活を営むた
めの基礎づくりを目指しているものである。
(2) 学年の目標
体育科の各学年の目標は,体育科の目標を踏まえて第1学年から第6学年までに達成させたいも
のを,低・中・高学年の3段階で示している。これは,体育の学習指導に弾力性をもたせることを
配慮したものである。教科の目標が体育科の目指す方向を示しているのに対して,学年の目標は,
各学年における体育の学習指導の方向をより具体的に示したものである。
学年
1
目
ア
・
2
標
基本の運動及びゲームを簡単なきまりや活動を工夫して楽しくできるようにするととも
に,体力を養う。
イ
だれとでも仲よくし,健康・安全に留意して運動をする態度を育てる。
年
10
ア
3
各種の運動の課題をもち,活動を工夫して運動を楽しくできるようにするとともに,そ
の特性に応じた技能を身に付け,体力を養う。
・
イ
4
協力,公正などの態度を育てるとともに,健康・安全に留意して最後まで努力する態度
を育てる。
年
ウ
健康な生活及び体の発育・発達について理解できるようにし,身近な生活において健康
で安全な生活を営む資質や能力を育てる。
ア
各種の運動の課題をもち,活動を工夫して計画的に行うことによって,その運動の楽し
5
さや喜びを味わうことができるようにするとともに,その特性に応じた技能を身に付け,
・
体の調子を整え,体力を高める。
6
イ
年
協力,公正などの態度を育てるとともに,健康・安全に留意し,自己の最善を尽くして
運動をする態度を育てる。
ウ
けがの防止,心の健康及び病気の予防について理解できるようにし,健康で安全な生活
を営む資質や能力を育てる。
2
体育科のねらい・内容
(1) 領域の構成
学
年
1・2年
3・4年
5・6年
体
領
器
基
本
の
運
つ
く
械
動
り
運
動
運
陸
上
動
運
動
水
域
ゲ
ー
泳
ム
表
保
ボ
現
ー
運
ル
運
動
動
健
(2) 運動領域のねらいと内容
ア
基本の運動
基本の運動は,低学年及び中学年の児童が各種の易しい運動について仲間との競争やいろい
ろな課題に取り組むことによって,運動をしたいという欲求を充足し,その楽しさや喜びを味
わい運動好きにすることができる運動(遊び)である。特に低学年は ,“運動遊び”となって
いるが,これは児童が易しい運動に出会い,伸び伸びと体を動かす楽しさや心地よさを味わう
遊びであることを強調しているものである。また,体の基本的な動きを身に付け,各種の運動
11
の基礎を培うために重要な運動( 遊び)である。
項目
内
学年
容
①走・跳の運動遊び
態度・健康・安全
〇
学
運動の順番を守ったり,
〇
び
方
仲間との競争の仕方やい
1
②力試しの運動遊び
固定施設や器械・器具の使
ろいろな運動遊びの行い方
・
③器械・器具を使って
い方のきまりや運動の仕方
を知る。
2
の運動遊び
年
のきまりを守ったりして仲
④用具を操作する運動
遊び
〇
よく運動をする。
〇
競争や運動への取組がよ
り楽しくなるための工夫を
運動をする場所の危険物
⑤水遊び
を取り除いたり,固定施設
⑥表現リズム遊び
や器械・器具の安全を確か
する。
めたりして安全に運動をす
る。
〇
水泳プールのきまりや水
遊びの心得を守って安全に
水遊びをする。
①走・跳の運動
〇
運動の順番を守ったり,
3
②力試しの運動
器械・器具の準備や後始末
・
③器械・器具を使って
についてのきまりを守った
4
の運動(3年)
年
④用具を操作する運動
りして運動をする。
〇
⑤浮く・泳ぐ運動
〇
自分の力に合った競争や
運動の仕方の課題をもつ。
〇
課題を解決したり,より
運動を楽しんだりするため
運動をする場所の危険物
の活動や場を工夫する。
を取り除くことや,運動を
(3年)
する場所の整備をする。
〇
水泳プールのきまりや浮
く・泳ぐ運動の心得を守っ
て運動する。
指
〇
導
上
の
留
意
点
1・2年「基本の運動」の「走・跳の運動遊び 」,「器械・器具を使っての運動遊び 」,「水
遊び」及び ,「表現リズム遊び」については,2学年にわたって指導するものとする。
〇
3・4年「基本の運動」の「走・跳の運動」については,2学年にわたって指導するものと
する。
〇
地域や学校の実態に応じて歌や運動を伴う伝承遊び,自然の中での運動遊び及び簡単なフォ
ークダンスを加えて指導することができる。
〇
個人差のある児童に,それぞれの運動の持つ楽しさや喜びを分からせるために,自分の能力
12
に合った具体的な課題に向かって挑戦させ,そのでき具合を自分で確かめることができるよう
にする。
〇
走・跳の運動(遊び)では,走る・跳ぶなどについて,仲間と競い合う楽しさや,調子よく
走ったり跳んだりする心地よさを味わうことができるようにする。
〇
力試しの運動(遊び)では,押す,引く,支える,運ぶなどについて自己の力を試す楽しさ
を味わうことができるようにするとともに,グループで運動の仕方や規則を工夫して相手と協
力したり,対抗したりする。
〇
器械・器具を使っての運動(遊び)では,固定施設,マット,鉄棒,平均台,跳び箱などを
使っていろいろな動きや自分の力にふさわしい課題に取り組むことができるようにし,成功し
た喜びを味わうことができるように工夫する。
〇
用具を操作する運動(遊び)では,なわ,輪,竹馬などの各種の用具を巧みに操作したり,
用具の動きに合わせて自分の体を動かしたりして,楽しむことができるようにする。また,児
童の欲求が強くなれば回数や時間など,競争の仕方を工夫して,仲間と競うこともできるよう
に配慮する。
〇
水遊び,浮く・泳ぐ運動では,水中を動き回ったり,もぐったり,浮いたりして楽しむこと
ができるようにする。特に,水に対して恐怖心をもたせないように段階的な指導を心がけると
ともに,補助具などの活用も工夫し,安全に対する心配りができるようにする。
〇
表現リズム遊びでは,身近な生活の中から変身したい題材を見つけて,そのものになりきっ
て全身の動きで表現したり,軽快なリズムの音楽に乗って弾んで踊ったりして楽しむことがで
きるようにことばかけの工夫に配慮する。また,友達といろいろな動きを見合って踊ったり,
みんなで調子を合わせて踊ったりして楽しむことができるようにする。
イ
ゲーム
ゲームは,運動をしたいという欲求から成立した「運動遊び」である。特性としては,主として
集団対集団で競い合い,仲間と力を合わせることにある。そのため,仲間と協力してゲームを楽し
くすることの工夫や,楽しいゲームを作り上げることが課題となってくる。集団で勝敗を競うゲー
ムの楽しみ方には,規則を工夫したり,作戦を工夫したりすることと,技能を身につけることがあ
る。
低学年のゲームでは,簡単な規則をみんなで決めて,それを守って楽しくゲームができるように
する。中学年では,規則や作戦を工夫することを重視しながら,簡単な技能を身につけて,ゲーム
を一層楽しくしていくことが中心となる。また,公正に行動する態度,勝敗の結果を巡って正しい
態度や行動がとれるようにすることが大切である。
13
項目
内
学年
1
①ボールゲーム
・
②鬼遊び
容
態度・健康・安全
〇
学
簡単な約束を決め,それ
〇
を守り,互いに仲よくゲー
2
ムをする。
年
び
方
みんなで規則を決め,そ
れを守ってゲームをする。
〇
ゲームの場や得点の方法
〇
勝敗を素直に認める。
など規則を工夫して楽しく
〇
健康・安全に留意して運
ゲームをする。
動をする。
3
・
①バスケットボール型
〇
ゲーム
4
②サッカー型ゲーム
年
③ベースボール型ゲーム
〇
みんなで規則をつくり,
導
上
ルールや活動の場を選ん
それを守り,互いに協力し
だり,工夫したりしてゲー
てゲームをする。
ムをする。
勝敗を素直に認めること
ができるようにする。
指
〇
の
留
〇
チームで簡単な作戦を立
てて, 楽しくゲームをす
る。
意
点
〇
「ゲーム」の「ボールゲーム」については,2学年にわたって指導するものとする。
〇
第3学年及び第4学年について,「バレーボール型ゲーム」など,その他の運動を地域や学
校の実態に応じて加えて指導することができる。
〇
ボールゲームでは,いろいろなボールで,ボールをつく,転がす,投げる,当てる,捕らえ
る,蹴る,止めるなどをして,簡単な規則から複雑な規則へとゲームの楽しさが深まるように
する。その際,規則を児童が考え,よく理解できるようにする。
〇
ボールゲームそれぞれの「〇〇型ゲーム」の特性に応じた学習が効果的に行われるようにす
るため,児童の実態に応じてより弾力的な扱いに留意する。
〇
ゲームは,特定の児童のみの活動で勝敗が決まらないように,時間を決めてポジションを交
代するなど,遊び方の工夫をする。
〇
鬼遊びでは,一定の区域を決めるとともに,運動量がなるべく均等になるように工夫する。
〇
チームの編成は,男女混合で,児童の能力を考慮してなるべく力の均衡をとるようにし,一
定の期間同一の編成で固定化することが望ましい。
〇
集合,整列,交替など約束を守って敏速に行動することは,学習効率を高めるばかりでなく
安全指導にも役立つため,ゲームの始め,終わりのあいさつと合わせて集団行動の指導を行っ
ていくことが望ましい。
ウ
体つくり運動
体つくり運動は,体の調子を整えるなどの体をほぐしたり体力を高めたりするために行われる運
14
動である。心と体をより一体としてとらえる観点から,従来の体操領域の内容である「体力を高め
るための運動」に,新たに「体ほぐしの運動」を加えたものである。
「体ほぐしの運動」は,いろいろな手軽な運動や律動的な運動を行い,体を動かす楽しさや心地
よさを味わうことによって,自分や仲間の体の状態に気付き,体の調子を整えたり,仲間と交流し
たりする運動である。また,取り上げられた背景としては,日常生活において運動遊びなどの体を
動かす体験の減少,精神的なストレスの増大等,成育環境が変化することによって,体力・運動能
力の低下傾向や活発に運動をする者とそうでない者に二極化している状況をあげることができる。
このような状況から,生涯にわたり積極的に運動に親しんでいく一つの基盤として,すべての児童
が体を動かす楽しさや心地よさを体験する機会をもつことが大切になる。そのためにも心と体をほ
ぐし,リラックスできるような運動を体験する必要がある。
項目
内
学年
容
①体ほぐしの運動
態度・健康・安全
〇
②体力を高める運動
学
互いに協力して,計測,
〇
び
方
自己の体の状態に気付き
記録などの役割を分担した
体の調子を整えるための運
り,励まし合ったりして,
動の内容や方法を決めたり
5
体ほぐしをしたり,体力を
工夫したりする。
・
高めたりする。
6
〇
年
〇
体力テストなどを活用し
自他の体の状態を確かめ
て,自己の体力の特徴を把
たり,運動する場や用具な
握し,体力に応じたねらい
どの安全に配慮したりして
を決める。
行う。
〇
ねらいに応じた体力を高
めるための運動の内容や方
法を決めたり,工夫したり
して,計画的に行う。
指
〇
導
上
の
留
意
点
「体つくり運動」の「体ほぐしの運動」及び「体力を高める運動」については,2学年に渡
って指導するものとする。
〇
「体ほぐしの運動」は,自己の体に気付き,体の調子を整えたり,仲間と交流したりするた
めのいろいろな手軽な運動や律動的な運動をすることである。
〇
「体つくり運動」の「体ほぐしの運動」と ,「心の健康」の「不安や悩みへの対処」につい
ては,相互の関連を図って指導する。
〇
「体つくり運動」は,ややもすると児童の興味・関心を欠いた単調な動きの反復に終わって
しまうことが考えられるので,一人一人の児童がねらいをもって行うことができるようにする
とともに,伴奏音楽を取り入れるなど,楽しく行うことができるように配慮する。
〇
指導書に示されている例示を参考にして,各種の運動の方法を工夫して指導する。この場合
15
運動のねらいからはずれないようにしつつ児童の創意を引き出すようにする。
〇
他の領域の準備運動や整理運動に取り入れて活用できるようにする。また,学習したことを
課外の活動など,日常生活における体力づくりに活用できるように留意する。
エ
器械運動
器械運動は,マット,鉄棒,跳び箱等の器械・器具を使った「技」に取り組んだり,それを達成
したりしたときに楽しさや喜びを味わうことのできる運動である。また,より困難な条件の下でで
きるようになったり,より雄大で美しい動きができるようになったりする楽しさや喜びがある。し
かし ,「技」の達成を目指すことが困難な初歩的な段階の児童にとっては,器具という対象に意欲
をもって取り組んだり ,「技」に関連した易しい運動遊びを経験したりすることが大切である。
自己の能力に適した技に取り組んだり,その技がある程度できるようにしたりするとともに,同
じ技を繰り返したり,技を組み合わせたり,安定した動作でできるようにすることが課題である。
加えて,それぞれの運動に集団で取り組み,一人一人ができる技を組み合わせ,調子を合わせて演
技するような活動に発展させることもできる。
項目
内
学年
容
態度・健康・安全
学
①マット運動
〈4年〉
〈4年〉
②鉄棒運動
〇
〇
互いの役割を分担し,励
〈4年〉マット上や鉄
まし合って根気強く運動を
棒で,技を繰り返した
する。
り,組み合わせたりす
・
る。
を工夫し,安全に運動をす
5
〈5・6年〉技を新た
る。
・
に加えてそれらを繰り
6
返したり,組み合わせ
年
たりする。
③跳び箱運動
〇
〇
器械・器具の使用の仕方
自己の能力に適した技を
技を身に付けるための適
切な場や補助具を活用する
〇
技の行い方の大切なポイ
ントについて考え,自分の
試技の開始前や終了後に
おいても安全な行動をとる
めあてをもつ。
〇
技の組合せを工夫する。
〈5・6年〉
〈5・6年〉
〇
〇
互いの役割を分担するな
〈4年〉支持跳び越し
ど協力し合い,励まし合っ
をする。
て根気強く運動をする。
〈5・6年〉安定した
〇
を工夫し,安全に運動をす
をする。
る。
自己の能力に適した技を
選んで取り組む。
〇
器械・器具の使用の仕方
動作での支持跳び越し
〇
方
選んで取り組む。
〇
4
び
技を身に付けるための適
切な場や練習の仕方を工夫
する。
〇
技の行い方の大切なポイ
試技の開始前や終了後に
ントや自分の課題について
おいても,安全な行動をと
考え, 自分のめあてをも
る。
つ。
〇
16
技の組合せを工夫する。
指
〇
導
上
の
留
意
点
第4学年では,基本の運動の「器械・器具を使っての運動」において習得した技能との関連
を考慮して指導する。
〇
一人一人の児童が,自己の技能の程度に応じた「技」を選んだり,課題が易しくなるような
場や補助具を活用して取り組んだりすることが大切である。
〇
一つの技を習得させるためには,始めはゆっくり正確に行わせ,次に運動形態が崩れないよ
うにしてスピードを増していくよう,段階を追った指導に心がける。
〇
跳び箱運動では,単に高さへの挑戦ではなく,自己の能力に合わせて高さを選び,安定した
動作での切り返し系の技,回転系の技ができるようにする。
〇
オ
技の系統発展性を考慮し,安全で効果的な学習ができるように,学習活動の場を工夫する。
陸上運動
陸上運動は,走る,跳ぶ等の運動で,体を巧みに操作しながら,合理的で心地よい動きを身に付
けるとともに,仲間と速さや高さ・距離を競い合ったり,自己の目指す記録を達成したりすること
の楽しさや喜びを味わうことができる運動である。合理的な運動の行い方を大切にしながら競争や
記録の達成を目指す学習活動が中心となる。
項目
内
学年
容
①短距離走・リレー
態度・健康・安全
〇
学
互いに協力し,時計,計
〇
び
方
自己の能力に適した目標
②ハードル走
測,記録などの役割を分担
となる記録や,その記録を
5
③走り幅跳び
し,走路,跳躍場を整備す
達成するための課題を決め
・
④走り高跳び
るなど安全に配慮して練習
る。
6
や競争をする。
年
〇
〇
〇
自己の課題の解決の仕方
互いの体や技能に気遣い
を選んだり,工夫したりし
ながら練習や競争をする。
て計画的に練習や競争をす
ルールを守り,最後まで
る。
自己の最善を尽くして競争
する。また,勝敗に対する
公正な態度をとる。
指
〇
導
上
の
留
意
点
記録を達成する活動では,自己の能力に適した課題をもち,適切な運動の行い方を知って,
記録を高めることができるように配慮する。また,自己の能力に応じためやすの記録を定め,
一人一人の進歩を大切にする。
〇
できるだけ多くの児童に勝つ機会が与えられるように工夫するとともに,勝敗の結果をめぐ
17
って正しい態度がとれるように指導する。
〇
短距離走・リレーでは,心地よいスピードでリズミカルに走ることを目指した短距離走を行
うことができるように工夫し,短距離走とリレーを弾力的に扱うようにする。
〇
ハードル走では,ハードルのないときのタイムと,ハードルを置いたときのタイムを比較す
るなどして,めやすのタイムを定めて練習ができるようにする。また,ハードルの位置や高さ
などは,一人一人の能力に合わせ,全力を出してリズミカルにハードル走ができるように配慮
する。
〇
走り幅跳びや走り高跳びについては,児童の学習の効果などを考慮して各学年に分けて指導
するなど,工夫して取り扱うようにする。
〇
走り高跳びでは,練習や記録会がより効果的に行われるようにピット数を多くする等,場の
設定の工夫をして行うようにする。
カ
水
泳
水泳は,いろいろな泳ぎを身に付け,心地よく泳いだり,泳ぐ距離を伸ばしたりする楽しさや喜
びを味わうことができる運動である。そのためには,水遊びなどで水に慣れ親しむことや,水に浮
く・泳ぐなどの経験を十分にしておくことが大切である。
水泳の学習では,一人一人の児童が自己の能力に応じた課題をもち,練習を工夫し,互いに協力
し計画的に学習を進めながら,水泳の楽しさを味わうことができるようにすることが大切である。
とりわけ技能面では,呼吸の仕方を身につけること,手・足・呼吸の調和のとれた泳ぎ方を身につ
けることが重要な課題となる。
項目
学年
内
容
態度・健康・安全
学
①クロール
〈4年〉
〈4年〉
②平泳ぎ
〇
〇
友達と互いに見合い,協
力し合って水泳をする。
〇
水泳プールの使用のきま
4
りや水泳の心得を守り,安
・
全に水泳をする。
5
〇
・
6
〈5・6年〉
年
〇
〇
〇
〇
泳ぎの技能のポイントを
〈5・6年〉
〇
自己の能力にあった課題
を決め,練習に取り組む。
〇
課題の解決のための練習
の仕方を選んだり,工夫し
泳の心得の必要性を理解し
18
課題の解決のための練習
理解して練習をする。
水泳プールのきまりや水
安全に水泳をする。
自己の能力に合った課題
の仕方を工夫する。
友達と互いに見合い,協
力し合って水泳をする。
方
を選び,練習に取り組む。
体の調子を確かめながら
水泳をする。
び
たりする。
〇
泳ぎの技能のポイントを
〇
体の調子を確かめながら
理解し,よい点や問題点を
水泳をする。
指
導
上
の
見つける。
留
意
点
〇
着衣のまま水に落ちた場合の対処の仕方については,各学校の実態に応じて取り扱う。
〇
学校の実態に応じて「背泳ぎ」を加えて指導することができる。
〇
水泳の楽しさを広げる観点から,集団でのリズム水泳などを指導に取り入れていくことも加
えることができる。
〇
クロール及び平泳ぎの技能を身に付け,続けて長く泳ぐことができるようにする。
〇
スタートについては ,「クロール」及び「平泳ぎ」の指導に際し,安全に十分留意して,プ
ールの底や壁を蹴るなどの泳ぎへのつなぎ方を身につけさせることを目指し指導する。なお,
泳ぎにつなげる水への安全な入り方を指導する場合には,児童の技能や学校の諸条件等に十分
配慮しつつ,段階的に行う必要がある。
〇
指導する児童数や学習内容に応じて,安全で能率的なプールの使用法を工夫して指導する。
〇
個人差に応じた指導を重視し,個人やグループごとに具体的なめあてをもたせて学習させる
ようにする。
〇
平泳ぎのかえる足のできない児童には,陸上で足首の返しを練習させたり,水中で足首の返
しを補助したりして,足の裏で水をけることの感覚を覚えさせる。
〇
水泳の心得として,健康を害しているときは絶対に泳がないことや,空腹時・満腹時及び食
事直後や激しい運動の直後には泳がないことを理解させる。
キ
ボール運動
ボール運動は,自分のチームの特徴に応じた作戦を立ててゲームを行い,得点を競い合う集団的
な運動である。
ボール運動の学習では,互いに協力し,役割を分担して,計画的に練習を行い,技能を身につけ
てゲームをしたり,ルールや学習の場を工夫したりすることが学習の中心となる。また,ルールや
マナーを守り,勝敗に対して正しい態度がとれるようにすることや仲間とゲームの楽しさや喜びを
共有することができるようにすることが大切である。
項目
学年
内
容
①バスケットボール
態度・健康・安全
〇
ルールやマナーを守り,
5
②サッカー
勝敗に対して正しい態度を
・
③ソフトボール又は
とり,仲間とともに,ゲー
6
ソフトバレーボール
年
〇
学
〇
び
方
自分のチームの特徴を生
かした作戦を立てる。
〇
人数やコートの大きさな
ムの楽しさや喜びを共有す
どのルールを工夫したり,
る。
作戦を成功させるための練
互いに協力して,活動の
19
習を選んだり工夫したりし
指
〇
導
場をつくったり,用具の準
て,計画的に練習やゲーム
備を行ったりして,安全に
を行うとともに,ゲームの
練習やゲームをする。
運営をする。
上
の
留
意
点
地域や学校の施設等の実態によっては,③「ソフトボール又はソフトバレーボール」は取り
扱わないことができることとし,ハンドボールなどその他のボール運動を加えて指導すること
ができる。
〇
ルールの工夫や簡単な作戦を立ててゲームができるという観点から,ゲームそのものに時間
をかけ,ゲームの様相に応じてルールを工夫したり,作戦を立てたりできるようにする。
〇
個人的技能や集団的技能については,ゲームの発展との関連を十分に配慮する。
〇
コートについては,各学校において適切に設定する。また,チームの人数については,全員
が活躍できるゲームにふさわしい人数になるよう工夫して取り扱う。
〇
チームの編成は,児童の能力を考慮してチーム間の総合的な能力の均衡を図るようにし,一
定期間を同一の編成で固定することが望ましい。
ク
表現運動
表現運動は,自己の心身を解き放して,リズムやイメージの世界に没入してなりきって踊ること
が楽しい運動であり,互いの違いやよさを生かし合って仲間と交流して踊る楽しさや喜びを味わう
ことができる運動である。表現運動の指導では,それぞれの踊りの楽しさを体験できるように,児
童の今もっている力やその違いを生かせるような題材や音楽を選ぶとともに,一人一人の課題の解
決に向けた創意工夫ができるような多様な活動や場を工夫していくことが大切である。
項目
内
学年
容
①表現
3
態度・健康・安全
〇
②リズムダンス
・
だれとでも気持ちを合わ
学
〇
せて,楽しく踊る。
〇
4
〇
友達のよいところを見つ
自分の関心や能力に適し
しく踊るための課題をもっ
ていろいろな表現やリズム
互いに協力して,簡単な
見せ合いや交流の場をつく
方
た題材やリズムを選び,楽
け,仲よく踊る。
年
び
ダンスに取り組む。
〇
る。
一人一人が意見を出し合
って,課題の解決のための
動きを工夫したり,活動の
仕方を工夫したりして,練
習や発表をする。
①表現
②フォークダンス
〇
だれにでも心を開き,気
持ちを合わせて,楽しく踊
20
〇
自分やグループの能力に
適した題材や踊りを選び,
5
(日本の民踊を含む)
・
る。
〇
友達の動きや活動のよい
6
ところを見つけ,認め合
年
う。
〇
指
〇
自分( たち) のもち味を生
導
上
かすような課題に取り組
む。
〇
課題の解決のための活動
グループで互いに協力し
や場を工夫したり,動きを
て自主的に練習したり,交
流や発表をする。
教え合ったりして計画的に
練習や発表をする。
の
留
意
点
身近な生活から選んだ題材で,その主な特徴や感じをとらえて即興的に表現したり,表した
い感じを誇張したひと流れの動きを工夫したりして表現できるようにする 。(3・4年)
〇
空想の世界等の想像が広がる題材で,その多様な場面をとらえて即興的に表現したり,表し
たい感じを中心にひと流れの動きを工夫したりして表現できるようにする 。(3・4年)
〇
軽快なロックやサンバなどのリズムの音楽に乗って全身で弾んで踊ったり,友達と自由にか
かわり合ったりして楽しく踊れるようにする 。(3・4年)
〇
「表現」及び「リズムダンス」については,それぞれの学年で指導するものとする。また,
「フォークダンス」を地域や学校の実態に応じて加えて指導できる 。(3・4年)
〇
身近な生活や自然現象から選んだ題材で,表したい感じを強調するように動きに変化と起伏
をつけたり,簡単な群(集団)の動きを工夫したりして表現できるようにする 。(5・6年)
〇
いろいろな題材から表したいテーマを選び,グループで簡単な作品にまとめて表現できるよ
うにする 。(5・6年)
〇
地域で親しまれている民踊や日本の代表的な民踊の中から,踊り方の特徴や感じの異なった
踊りを選んで踊る 。(5・6年)
〇
世界の代表的なフォークダンスの中から,ステップや組み方の難易度を考慮し,踊り方の特
徴や感じの異なった踊りを選んで踊る 。(5・6年)
〇
「表現運動」については,地域や学校に実態に応じて「リズムダンス」を加えて指導するこ
とができる 。(5・6年)
〇
表現の指導では,題材のいろいろな様子を取り上げ,動きを引き出すようにするとともに,
個の表現を十分に生かしながら集団(2∼5名程度)の表現ができるようにする。また ,「踊
り・つくり・みる」の活動を,1時間の中で取り扱うことが望ましい。
21
ケ 集団行動
集団行動の主な行動様式として,次のものをあげることができる。また,これらの行動様式
の学年配当及び合図は,およそ次の表のように考えられる。
合 図
行 動 様 式
備 考
予 令
①気をつけの
姿勢
姿
間
動 令
「気をつ
け」
②休めの姿勢
「休め」
1
勢
③腰をおろし
て休む姿勢
①縦隊の集合
「○列縦隊に」 1.5" 「集まれ」
②横隊の集合
「○列横隊に」 1.5" 「集まれ」
③縦隊の整とん 「前へ」
1.5" 「ならえ」
④横隊の整とん 「右(左)へ」 1.5" 「ならえ」
⑤番 号
「番号」
⑥解 散
「わかれ」
予令の合図がないので、
前動作として「気をつ
け」をさせるとよい。
○○◎◎◎◎ ◎ ◎
○○◎◎◎◎ ◎ ◎
約2秒で動令までの合図を ○○○◎◎◎ ◎ ◎
完了する。
〃
○○○◎◎◎ ◎ ◎
約2秒で動令までの合図を ○○◎◎◎◎
完了する。ただし小学校
低学年は3秒で完了しても
よい。
予令のまえに基準を示
す。
○◎◎◎
〃
○○◎◎◎◎
約2秒で動令までの合図を
完了する。
○◎◎◎
〃
○○◎◎◎◎
ふつう、「番号」とは通
し番号のことである。
◎◎◎◎◎◎
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
①2列横隊から 「4列−右向け」 2.5" 「右」
4列縦隊
約3秒で動令までの合図を ○◎◎ ◎ ◎
完了する。
ただし
(1)最初に「番号」をかけ
させる。
(2)「4列右向け−右」の
合図をかける。
②4列縦隊から 「2列−左向け」 2.5" 「左」
2列横隊
増 ③2列横隊から 「3列−右向け」 2.5" 「右」
3列縦隊
減
約3秒で動令までの合図を ○◎◎ ◎ ◎
完了する。
約3秒で動令までの合図を ○○ ◎ ◎
完了する。
(1)最初に「3の番号」を
かけさせる。
(2)「3列右向け−右」の
合図をかける。
④3列縦隊から 「2列−左向け」 2.5" 「左」
2列横隊
約3秒で動令までの合図を ○○ ◎ ◎
完了する。
列
の
4
予令の合図がないので、
前動作として「休め」を
させるとよい。
「腰をおろ 〃
して休め」
①右(左)への 「右(左)向け」 1.5" 「右(左)」
方 方向変換
向
2
変 ②後ろへの方向 「回れ」
1.5" 「右」
換 転換
集
合
・
整
と
ん
3
・
番
号
・
解
散
中 高
等
学
学
1 2 3 4 5 6 校
校
○○◎◎◎◎ ◎ ◎
小 学 校
22
合 図
行 動 様 式
予 令
間
動 令
①両手距離、間 「○○基準−両 4.5" 「開け」
隔の開列
手距離間隔に」
開
5
列 ②片手距離、間 「○○基準−片 4.5" 「開け」
隔の開列
手距離間隔に」
①歩
進
〃
○○○◎◎◎ ◎ ◎
「前へ」
1.5" 「進め」
約2秒で動令までの合図を ○○○◎◎◎ ◎ ◎
完了する。
「全体」
1.5" 「止まれ」
〃
○○○◎◎◎ ◎ ◎
③走
「駆け足」
1.5" 「進め」
④走の停止
「全体」
1.5" 「止まれ」
〃
〃
⑤歩から走
「駆け足」
1.5" 「進め」
〃
⑥走から歩
「はや足」
1.5" 「進め」
〃
○○○◎◎◎
○○○○◎◎
○○
○○
行 ②歩の停止
6
中 高
等
備 考
学
学
1 2 3 4 5 6 校
校
約5秒で動令までの合図を ○○○◎◎◎ ◎ ◎
完了する。
「○○基準」を示し、そ
の基準者の動作を確認す
る間は約2秒とし、次の予
令をかける。
小 学 校
⑦右(左)への 「先頭右(左) 2.5" 「進め」
方向変換
へ」
①足踏み
「足踏み」
②駆け足足踏み 「駆け足足踏
み」
足
7 踏 ③停止
み
「全体」
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
「先頭」の合図の間を約1 ○○○◎◎◎ ◎ ◎
秒とし、約3秒で動令まで
の合図を完了する。
1.5" 「はじめ」
約2秒で動令までの合図を ○○◎◎◎◎ ◎ ◎
完了する。
○○◎◎◎◎ ◎ ◎
〃
1.5" 「止まれ」
〃
1.5" 「はじめ」
①立礼
「礼」
②座礼
「礼」
この場合、予令と動令の
間は長くなることが多
い。
予令の合図がないので、
前動作として「気を
つけ」をさせるとよい。
8 礼
○○◎◎◎◎ ◎ ◎
○○◎◎◎◎ ◎ ◎
○○ ◎ ◎
(1) 合図の間のとり方については,集団の大きさなどにより工夫する必要がある。
(2) ○印の学年では正確にはできないが実施するのが適当である。
(3) ◎印の学年では正確に実施できるようにする。
23
=
Q1
A
Q&A
=
めあて学習をどのように進めるか?
めあて学習は,子どもの自発性や,自己決定を重視した学習活動の内容や進め方を示したも
のであり,基本的には「目標の設定 」「課題の解決 」「活動の決定」という段階的な「めあて」
を明確にするとともに,学習の過程と結果を評価・反省しながら学習活動を進める事を意味し
ている。
小学校段階では,ある個人やチームを題材として,目標から課題,活動に至る一連のめあて
の決め方をみんなの前で実際に確認したり,学習資料をできるだけ具体的に示して,子どもた
ちがそれを活用しながら決めることができるようにするなどの配慮が必要である。
〔基本的な考え方〕
ねらい
「運動の特性」から導かれる学習の目標(技や記
録への挑戦,他者やチームとの競争,表現など)
学習計画
主体的な学習の
道すじや手順
めあて
例)とび箱運動
目標の設定:自分が挑戦したい技を
見つける
評価活動
学習の過程と結果
の評価・反省(自
己評価・相互評価
を中心に)
課題の選択:それを達成するために
解決する課題を選ぶ
活動の決定:課題を解決するための
活動の仕方を決める
教師の学習指導
授業過程における
直接的な指導活動
Q2
A
学習資料
目標,課題,活動,学習の進め方,自
己評価・相互評価に関する資料
子ども相互の豊かなかかわり合いをどのようにつくり出していくか?
子どもたちの相互の豊かなかかわり合いは,互いに見合い教え合ったり評価し合ったりする
などの学習場面をつくり出すこと,かかわり合うことの楽しさや意義を実感できるような授業
を作ること,及び意識をゆさぶり,評価する教師の言葉かけから生まれることが考えられる。
かかわり合いを引き出し,学習の成果をあげていくためには,1時間または単元全体の学習計
画の中に意図的にかかわり合う場面を構成する必要がある。たとえば,指導目標・内容にかか
わる学習の山場を次のように進める。
(1)今できる力で運動を楽しむ
(2)友達や他チームのやり方を観察する。
(3)うまいやり方や練習の仕方を考え合う。
(4)チームや各自の課題を明確にする。
(5)課題を追求する。
(6)でき方を確かめたり,新しいやり方に挑戦したりする。
24
(3)
保健領域のねらいと内容
第3学年のねらいと内容
内
容
ね
毎日の生活と健康
ら
い
健康を保持増進するには,健康によい生活を毎日送ること
が大切である。児童が自ら主体的に健康によい生活を実践で
きるための基礎として,健康の大切さを認識させるとともに
家庭や学校における毎日の生活に関心をもたせ,健康によい
生活の仕方が理解できるようにする。
ア
1日の生活の仕方
○
毎日を健康に過ごすためには,食事,運動,休養及び睡
眠の調和のとれた生活を続ける必要があることを理解でき
るようにする。
イ
身のまわりの清潔や生活
○
環境
毎日を健康に過ごすためには,体の清潔を保つことや明
るさ,換気など生活環境を整えることが必要であることを
理解できるようにする。
指
○
導
上
の
留
意
点
健康を保持増進するために,個人や家庭の努力のみならず,学校でも様々な保健活動が行わ
れていることにも触れる。例えば,健康診断,学校給食などが組織的,計画的に行われている
こと,また,保健室では,けがの手当や健康についての相談活動などが行われ,保健活動の中
心的な役割を担っていることなどを取り上げ,保健活動の大切さに気付かせる。
○
健康の大切さについては,保健領域の学習全体さらには教育活動全体を通して認識させるこ
とが必要であるが,ここでの指導が系統的な保健学習の出発点であることを踏まえ,その認識
を深めていくきっかけになるようにする。
〇
食事,運動,休養及び睡眠の内容を個々に扱うことは避け,1日の生活のリズムに合わせて
適切にとることが大切であることを中心として取り扱う。
第4学年のねらいと内容
内
容
ね
育ちゆく体とわたし
ら
い
体の発育・発達については,その一般的な現象や思春期の
体の変化などについて理解できるようにする。また,体をよ
りよく発育・発達させるための生活の仕方について理解でき
るようにする。
ア
体の発育・発達と食事,
運動などの大切さ
○
体は年齢に伴って変化することを理解できるようにする。
○
体をよりよく発育・発達させるためには,調和のとれた
食事,適切な運動,休養及び睡眠が必要であることを理解
できるようにする。
イ
思春期の体の変化
○
体は,思春期になると次第に大人の体に近づき,体つき
が変わったり,初経,精通などが起こったりすることを理
25
解できるようにする。
○
思春期になると,異性への関心が芽生えることを理解で
きるようにする。
指
○
導
上
の
留
意
点
体の発育・発達には個人差があることを明確にすることが大切である。この時期,自分の体
の発育・発達が遅くて,あるいは早くて,戸惑ったり悩んだりする児童が多く見られる。自分
自身を大切にする気持ちを育てる観点から,体の発育・発達についての正しい理解を通して,
自分の体の変化や他の人との違いについて肯定的に受け止められるようにし,児童自身が安心
感をもてるように配慮する。
○
異性に対して関心が芽生えることは,だれにでも現れる思春期の現象であり,男女がお互い
認め合い,協力し合うことが大切であることにも気付かせる。
第5学年のねらいと内容
内
容
ね
けがの防止
ら
い
けがの防止には,けがの発生要因や防止の方法について理
解できるようにするとともに,けがが発生したときには,そ
の症状の悪化を防ぐために適切な手当ができるようにする。
ア
交通事故や学校生活の事
○
故などの原因とその防止
交通事故,学校生活の事故などによるけがの防止には,
周囲の危険に気付いて,的確な判断の下に安全に行動する
ことや,環境を安全に整えることが必要であることを理解
できるようにする。
イ
けがの手当
○
けがをしたときなどは,速やかに手当をする必要がある
ことを理解し,簡単な手当ができるようにする。
指
○
導
上
の
留
意
点
事故の原因とその防止については,身近な事例を通して,課題解決的な学習を工夫して主体
的に考えさせる。
〇
すり傷,鼻出血,やけどや打撲など身近なけがについて,正しい手当の仕方を実習を通して
理解させ,日常生活において実践できるようにする。
心の健康
心の健康については,心も体と同様に発達すること,及び
心と体は密接な関係があることについて理解できるようにす
る。また,心の発達などに伴い生じてくる不安や悩みに対し
て,適切な対処の仕方があることを理解できるようにする。
ア
心の発達
○
心は,いろいろな生活経験を通して,年齢とともに発達
することを理解できるようにする。
イ
心と体の密接な関係
○
心と体は密接な関係にあり,互いに影響し合うことを理
解できるようにする。
26
ウ
不安や悩みへの対処
○
不安や悩みへの対処には,大人や友達に相談する,仲間
と遊ぶ,運動をするなどいろいろな方法があることを理解
できるようにする。
指
○
導
上
の
留
意
点
心の発達においては,家族や友達あるいは地域の人々など身近な人々とのかかわりを中心に
取り扱うようにし,自分の感情をコントロールしたり,相手を理解しながら自分の気持ちを上
手に伝えるなど,よりよいコミュニケーションができるようになることの大切さに触れる。
○
心については,感情,社会性,思考力などの精神機能の総体としてとらえられることを理解
させる。
○
心と体は,お互いに深く影響し合っていることを,児童の経験をもとに理解を深める。
○
不安や悩みはだれもが経験するであろうことをアンケートの結果や話し合いなどを通して理
解させる。
〇
不安や悩みに対処する方法については,家族や友達,先生など身近な人に相談して解消した
り,友達との遊びや運動あるいは音楽などの趣味に熱中することなどで気分を転換することが
有効であることを,体験をもとに理解させる。
○
気分を変える有効な方法の一つとして,新たに体育の内容として取り入れられた「体ほぐし
の運動」と関連付けた指導が考えられる。
第6学年のねらいと内容
内
容
ね
病気の予防
ら
い
病気を予防したり,喫煙,飲酒,薬物乱用を防止するため
に病気の発生要因や予防の方法,適切な対策,健康によい生
活行動などについて理解し適切な行動ができるようにする。
ア
病気の起こり方
○
病気は,病原体,体の抵抗力,生活行動,環境がかかわ
りあって起こることを理解する。
イ
病原体がもとになって起
○
こる病気の予防
病原体が主な要因となって起こる病気の予防には,病原
体を体に入れないことや病原体に対する体の抵抗力を高め
ることが必要であることを理解する。
ウ
生活行動がかかわって起
こる病気の予防
○
生活習慣病など生活行動が主な要因となって起こる病気
の予防には,栄養の偏りのない食事や口腔の衛生など,望
ましい生活習慣を身に付けることが必要であることを理解
できるようにする。また,喫煙,飲酒,薬物乱用などの行
為は,健康を損なう原因になることを理解できるようにす
る。
指
○
導
上
の
留
意
点
日常経験している病気として「かぜ」などを取り上げ,病気は病原体,体の抵抗力,生活行
動,環境がかかわりあって起こることを理解できるようにする。
27
○
病原体がもとになって起こる病気としては,インフルエンザ,結核などを適宜取り上げ,そ
の予防には,病原体の発生源をなくしたり,その移る道筋を断ち切ったりして病原体を体の中
に入れないことが必要であることを理解できるようにする。
○
「病気の予防」では,自分の健康は自分で守るという意識を高め,健康によい生活行動を自
ら実践することが必要であることを理解できるようにする。そのため,例えば,おやつ選びに
ついて,家族や友達,広告・宣伝の影響を受けていることに気付かせるなど指導を工夫し,主
体的なおやつ選びについて考えさせるようにする。
○
喫煙と飲酒については,中学校や高等学校での学習の導入となるよう,すぐに現れる影響と
長い間続けると現れる影響など,簡潔に取り上げる。
○
薬物乱用については,有機溶剤の心身への影響を中心に取り扱うが,ほかにも覚せい剤など
の乱用についても触れるようにする。
○
好奇心から喫煙,飲酒,薬物乱用を始める場合などが多く見られることから,自分の健康は
自分で守るという意識を高める必要がある。例えば,周囲の人々からの誘いや宣伝・広告など
の影響について考えさせ,主体的に判断する必要があることに気付かせる。
〇
病気や喫煙,飲酒,薬物乱用などの具体的な害について解説するだけでなく,児童の日常生
活や興味・関心などにも注目して,自分の健康は自分で守るという意識を高め,健康によい生
活が実践できるように指導するとよい。
28
3
指導計画作成上の留意点
(1) 年間指導計画
年間計画は体育の目標を実現するための「基本計画」として極めて重要な意味をもち,具体的
には学習指導要領が示す基本的な枠組みにしたがって,発達的特性と運動の特性という観点から
運動を選択し配列することによって作成される。具体的には ,「内容(何を指導するか)」と「時
間的条件(どのくらいの時間を配当するか )」によって構成され,取り上げる運動の配列を示し
た基本計画である。
ア
作成上の留意点
体育科の目標を達成するための学習指導を意図的・計画的に進めるためには,地域や学校の実
態,児童の心身の発達段階などを考慮することが大切である。さらに,小学校6年間の見通しに
立ち,二つの学年を一つの単位として,各学年の目標や内容,各運動種目の単元構成や年間配当,
時間配当等を適切に定める必要がある。
年間指導計画の作成に当たっては次の点に留意することが大切である。
〇
児童の形態的(体格や体質など )・機能的な発達の状況や健康の状態
〇
児童の運動に関する興味・関心や経験の程度
〇
児童の体力や運動能力の状況
〇
学校の規模(児童数)や施設・設備の状況
〇
地域の実態
〇
教科の目標との関連,年間の見通し
〇
各学年の単元構成や配列(取り上げ方の弾力化)
〇
運動の特性・領域のバランス
〇
特別活動や総合的な学習などの学校全体の体育に関する計画との関連
〇
特色ある学校づくりとの関連
イ
作成に当たっての手順
〇
学年に分けて指導できる内容について,その取扱いを決定する。
〇
「基本の運動 」「ゲーム 」「体つくり運動」など,具体的な運動(種目)が示されていな
い領域については,単元の構成内容を決定する。
〇
個々の単元の時間数を決定する。
〇
発達的特性,学習の適時性,運動の特性や発展性,各運動(領域)のバランス,気候,各
学校の実態などを考慮して,2学年の中に単元を配列するとともに,規模の大きな学校では,
重複する学級数を考慮し,施設用具等の条件から無理がないか検討する。
〇
モジュール方式を採用するかしないかを決定する。
・モジュール方式………モジュール方式とは,運動や学習活動の特質に応じて45分を標準と
して,それを分割したり組み合わせたりする方法。
(1モジュールを15分として考えると,45分は3モジュールとな
り,年間270モジュールとして計画する 。)
・45分固定方式…………1単位時間を45分とし,年間35週の中に,2週間を1サイクル
と考え,その間に5コマ確保されるようにする方法。集中的に行い
たいときは,この間は毎週3コマを確保してもよい。
29
ウ
年間指導計画作成の具体例
領域別授業時間数の配当について以下の点を考慮する。
〇
学校の重点目標の具現や,学習の適時性,総合的な学習の時間の主題等との関連から自校
の重点領域を選定し,これに十分な時間をあてる。
〇
児童の「好きな運動・得意な運動・苦手とする運動などの学習の指向性や,技能の達成状
況」及び ,「運動することへの意欲の状況 」,「運動の楽しみ方・学び方の経験」等の実態に
視点を当て,これをのばしたり,補ったりすることを目指して,領域別の指導時数を配当す
る。
〇
授業時数は,各学校の特色を生かして配当するべきものであるが,生涯学習の基礎づくり
の段階にある小学校においては,様々な運動の経験を重視する立場から,一部の領域に偏ら
ないようにする。
領域別配当時数・配当率の例<第6学年>
領
域
器
械
運
動
群
時
数
配 当 率
14時
15.6%
12時
13.3%
13時
14.4%
競争を楽しむ運動
20時
22.2%
健康のための
15時
16.7%
計
前指導書配当率
15%
克服・達成を
水
泳
43.3%
10%
楽しむ運動
陸
上
ボール
体つくり
15%
22.2%
20%
15%
23.4%
保
健
表
現
運動と学習
表現を楽しむ運動
計
6時
6.7%
10%
10時
11.1%
11.1%
15%
90時
100%
100%
100%
《配当時数,配当率を決定するにあたって考慮すること》
〇
運動の特性別に運動群を構成し,群別に配当率を調整する。
〇
「陸上」と「表現」の配当率を運動会の関連で決める。
〇
「保健」の配当率は内容量との関連で5学年より低くする。
〇
児童の実態を考慮し,特に水泳の配当率を高める。
30
エ
年間指導計画の基本モデル
学期
月
週
1
4
5
1 2 3 4 5 6
1 3
6 8
A案 2 4
7 9
5
10
1 4
B案 2 5
3 6
2 モジュール 2 モジュール
C案
9 時間
9 時間
2
3
7
9
10
11
12
1
2
3
8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
86 89
途中省略
87 90
88
87 89
途中省略
88 90
6
7
2 モジュール
3 モジュール
3 モジュール
3 モジュール
3 モジュール
2 モジュール
9 時間
10 時 間
11 時 間
9 時間
12 時 間
10 時 間
2 モジュール
8 時間
3 モジュール
2 モジュール
9 時間
9 時間
は授業が行われないことを示す。
31
A案: 2週間1サイクルを基本とし、その間に5時間の授業時数を確保する方式。
7月は、水遊び、浮く・泳ぐ運動、水泳を集中的に行うために1サイクル6時間とする。
9月は、運動会との関係を考慮し、1サイクル6時間とする。
B案: A 案の変形方式。
できるだけ週ごとに時間割を変更する必要がないように、週2授業時数になる期間を集中させる方法。
週2授業時数になる期間を別の時期にすることもできる。
C案: 毎週3授業時数を確保する方法。
この場合モジュール方式をとることになり、他のいずれかの教科ないし総合的な学習の時間において
同様の方式をとることが条件になる。
この案は15分を1モジュールとすると90授業時数×3モジュール(45分)=270モジュールの構成例。
週 3 回 × 3 5 週 = 1 0 5 回 の う ち 4 5 回 を 2 モ ジ ュ ー ル ( 3 0 分 )、 6 0 回 を 3 モ ジ ュ ー ル ( 4 5 分 ) と し た 。
例 え ば 基 本 の 運 動 や 体 つ く り 運 動 は 2 モ ジ ュ ー ル ( 3 0 分 )、 そ の 他 の 単 元 は 3 モ ジ ュ ー ル ( 4 5 分 ) で 行 う 。
学年や学習活動の特性によっては4モジュール以上の単元を構成することもできる。
オ
時間割表を前期・後期・学期ごとに作る場合のモデル
月 別 時 間 配 分 表 (年間35週、1単位時間45分)例
A 案 前 期 ( 4 ∼ 1 0 月 ) 週 3 時 間 、 後 期 ( 1 1 ∼ 3 月 ) 週 2 時 間 と し た 場 合 ( 合 計 8 9 時 間 と な る の で 、 2 学 期 中 に 1 時 間 を 満 た す よ う に す る 。)
学期
1
2
3
月
4
5
6
7
9
10
11
12
1
2
3
合計
(週) (3) (3) (4) (2) (3) (4) (4) (2) (3) (4) (3) (35)
時間数
9
9
12
6
9
12
8
4
6
8
6
89
B案 前期(4∼9月)週2時間、後期(10∼3月)週3時間とした場合
学期
1
2
月
4
5
6
7
9
10
11
12
(週) (3) (3) (4) (2) (3) (4) (4) (2)
時間数
6
6
8
4
6
12
12
6
1
(3)
9
3
2
(4)
12
3
合計
(3) (35)
9
90
32
C 案 時 間 割 表 は 学 期 別 、 1 学 期 週 2 時 間 、 2 ・ 3 学 期 週 3 時 間 と し た 場 合 ( 合 計 9 3 時 間 に な っ て い る の で 、 1 ・ 2 ・ 3 月 に 1 時 間 ず つ 調 整 す る 。)
学期
1
2
3
月
4
5
6
7
9
10
11
12
1
2
3
合計
(週) (3) (3) (4) (2) (3) (4) (4) (2) (3) (4) (3) (35)
時間数
6
6
8
4
9
12
12
6
9
12
9
93
・90時間を月別に配分する場合、時間割表との関連も考えなくてはならない。
・時間割を月単位や週ごとに変えなくてもすむ方法としてこのような方法も考えられる。
カ
年間計画例
第 1 ・2 学 年 の 年 間 指 導 計 画 の 例
学期
月
4
週
1 2 3 4
固定施設
1
を使った
学
遊び、
年
鬼遊び⑦
2
学
年
マットや
跳び箱を
使った
遊び ⑦
1
2
5
6
7
9
10
11
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
幅跳び遊び
マ ッ ト や かけっこ
ボール投げ
平 均 台 を 鬼遊び
水遊び⑨ 表 現 リ ズ 鉄棒遊び ゲーム
使った遊
⑤
ム遊び⑪
⑧
⑩
び
⑧
ボール投 ゴム跳び
げゲーム 遊び
(タッチフット かけっこ
ボール)⑧
⑦
水遊び⑩
行事 (例)
ボール投げ
表 現 リ ズ 鉄棒遊び ゲーム
ム遊び⑩
⑧
(シュートゲーム)
⑩
*運動会
3
12
1
2
3
24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
マットや か け 足 ボール蹴り な わ とび
跳び箱を 竹 馬 乗 ゲーム
鬼遊び
り
使った
⑩
⑧
遊び ⑧
⑥
力試しの
運動遊び
マット
遊び ⑧
*球技大会
幅跳び
遊び
かけ足
リレー遊
なわとび び ⑤
⑦
ボールけり
ゲーム
(ゾーンサッカー)
⑩
*持久走大会
3 3
*1学年と2学年で
が 1 週 ず れ て い る の は 、 中 ・大 規 模 校 に お け る 運 動 施 設 の 効 率 的 利 用 を 勘 案 し た も の で あ る 。 学 年 ご
と で は な く 、 学 級 ご と に ず ら し て も よ い 。 小 規 模 校 で は 特 に ず ら す 必 要 は な い 。(第3・4学年、第5・6学年も同じ)
*水遊びやボールゲームを4モジュール(1モジュール=15分)で、基本の運動の一部を2モジュールで構成することも
できる。ただし、他のいずれかの教科ないし総合的な学習の時間においてもモジュール方式をとることが条件となる。
*「2学年にわたって指導するものとする」とされている以外の領域・種目は概ね2学年間のうち一方の学年で扱い、でき
る だ け 規 模 の 大 き な 単 元 を 構 成 で き る よ う に し た 。(第3・4学年、第5・6学年も同じ)
第3・4学年の年間指導計画の例
学期
1
月
4
5
6
週
1 2 3 4 5 6 7 8 9
ベースボール 幅 跳 び 用 具 を 操
3 型 ゲーム
鉄棒
作する運
学
⑤
⑥
動 ⑤
年
保
保
保
健
健
健
鉄 棒 運 動 バレーボール 力試しの運動
4 高跳び
型 ゲーム
マット運 動
学
⑦
⑦
⑤
年
保
保
健
健
行事 (例)
*健康週間
2
7
9
10
11
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
浮く・
表現運動 リレー
バスケットボール
泳ぐ運動
⑩
ハードル走 型 ゲ ー ム
⑨
⑦
⑩
3
12
1
2
3
24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
か け 足 サ ッ カ ー 型 なわとび
跳び箱や
竹馬乗 ゲ ーム
マットを
⑩
⑤
使った運動 り ⑦
⑨
※保健
④
水泳 ⑨
表現運動
⑩
かけっこ
リレー
⑧
跳び箱運動
一輪車乗り
⑦
バスケットボール型
ゲーム
(ポートボール)
⑪
マット 運 動 なわとび サ ッ カ ー 型
鉄 棒 運 動 力試しの
ゲーム
⑦
運動 ⑤ (ミニサッカー)
⑩
保 ※保健
健
④
*運動会
*サッカー大会
*保健領域は第3学年で4授業時数、第4学年で4授業時数(2学年で8授業時数)を配置し、できるだけまとめて学習で
きるようにした。
*浮く・泳ぐ運動、水泳、ゲームを4モジュールで、基本の運動の一部を2モジュールで構成することもできる。
第5・6学年の年間指導計画の例
学期
1
月
4
5
6
7
9
週
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
鉄棒運動
短距離走
体ほぐしの
マット運動
リレー ⑧
水 泳
運動
5
⑨
⑩
表現運動
学
保
(表現) ⑫
年
保健
健
③
②
体ほぐしの
表現運動
運動
ソフト
水 泳
(フォークダンス・
6 ハードル走
バレーボール
⑩
リズム)
学
⑩
⑫
⑫
年
関連 (例)*健康週間
行事
*水泳大会*運動会
2
3
10
11
12
1
2
3
18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
体力を
走り幅跳び 跳び箱運動 ⑪
バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 高める
⑩
⑭
運動
保
⑧
健
保
②
健
マット運動 走り高跳び ⑧
サッカー ⑬
体力を
跳び箱運動
高める
⑧
運動
保健
保健
⑨
④
④
*陸上大会
*球技大会
3 4
*保健領域は5学年で8授業時数、6学年で8授業時数(2学年で16授業時数)を確保し、できるだけまとめて学習でき
るようにした。
*運動領域は各単元が8授業時数以上で構成するようにした。
3 5
モジュール方式の年間指導計画の例(3・4学年)
(第3学年)
学期
月
4
5
6
7
週
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
分
かけっこ
ベースボール型 ゲーム
輪を操作する
鉄棒運動
保健
浮く・泳ぐ運動
15
リレー
( フットベースボール)
運 動 ⑤ ( 2M )
⑧ ( 2M )
④ ( 3M )
⑧ ( 4M )
30
⑥ ( 3M )
⑥ ( 3M )
45
60
学期
2
月
9
10
11
週 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70
分
表 現 運 動
ハードル走
バスケットボール型ゲーム
マット運動
幅跳び
15
⑨ ( 3M )
⑤ ( 3M )
(ミニハンドボール)
⑦ ( 2M )
⑥ ( 2M )
30
⑨ ( 3M )
45
60
学期
3
月
12
1
2
3
週 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
分
跳び箱運動
かけ足
なわとび
竹馬乗り
サッカー型ゲーム
15
⑥ ( 2M )
⑥ ( 2M )
⑦ ( 2M )
⑤ ( 2M )
(ラインサッカー)
⑧ ( 3M )
30
45
60
(第4学年)
学期
1
月
4
5
6
7
週
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35
分
跳び箱運動
走り高跳び
マット運動
バレーボール型ゲーム
水泳
15
⑦ ( 2M )
⑥ ( 2M )
⑧ ( 2M )
(プレルボール)
⑧ ( 4M )
30
⑧ ( 3M )
45
60
学期
2
月
9
10
11
週 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70
分
表現運動
かけっこ
バスケットボール型ゲーム
保健
鉄棒運動
15
⑨ ( 3M )
リレー
(セストボール)
④ ( 3M )
⑨ ( 2M )
30
⑥ ( 3M )
⑨ ( 3M )
45
60
学期
3
月
12
1
2
3
週 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
分
力試しの運動
一輪車乗り
なわとび
サッカー型ゲーム
15
⑦ ( 2M )
⑥ ( 2M )
⑨ ( 2M )
(グリッドサッカー)
30
⑨ ( 3M )
45
60
*モジュール方式により、毎週3コマ(年間105回)の授業が確保できるようにしてある。
2 M は 2 モ ジ ュ ー ル : 3 0 分 を 示 す 。( 3 M : 4 5 分 、 4 M : 6 0 分 )
*保健領域は3学年で4単位時間、4学年で4単位時間(2年間で8単位時間)を配当してある。
(2) 単元指導計画
単元計画を作成する場合,計画の様式にしたがっておもな要点をあげると,次のようである。
ア
単元(題材)の名称
領域名(例:陸上運動)をあげ ,(
)の中へは教材名(例:走り幅跳び)を記入するのが
普通であるが,詳しく書くときは,構成されている内容の特質やねらい,あるいはその重点を
まとめて,わかりやすく表すこともある。
イ
立案の立場(単元設定の理由)
指導者がどのような指導観をもって本単元(題材)を指導するかという根本方針を述べる欄
である。単元(題材)における運動の特性を基に,児童の発達段階や生活との関係,学校の実
状などを明らかにし,年間計画における位置づけを明確にすることが望ましい。普通には,下
記の観点にしたがってまとめる。
(ア) 運動の特性
単元の性格や,単元を構成する運動の特性を明確にし,運動を行う児童が,その運動の特性
をどのように受け止め,どこに楽しさや喜びを感じているのか,楽しさを味わわせるためにど
のような学習ができるかなど,児童と運動の関係から運動をとらえて記入する。
(イ) 児童観
学習する児童の運動に対する興味や関心,体格・体力,運動経験,技能,つまずき,学習
態度などの実態を記入する。
(ウ) 指導観
運動の特性,児童観を基に,この単元(題材)をどのようにおさえ,どこに重点をおいて
指導するかについて記入する。特に,個に応じた指導や課題解決的な学習によって,児童が
進んで運動の学び方を身に付けることができるような指導をどのようにしていくのかを明確
にする必要がある。
ウ
ねらい
学習が児童によって自発的・自主的に行われるためには,この単元で何をめざして学習すれ
ばよいのか,学習する児童に学習のねらいが明確にもたれていなければならないし,指導する
教師にとっても,何をねらってどのように指導するのか,指導のねらいが明確にされていなけ
ればならない。
(ア) 単元のねらいは,できるだけわかりやすく,具体的にまとめる。
(イ) 教科目標,学年目標,立案の立場(単元設定の理由)に基づいて,指導の重点がよくわか
るように書く。
(ウ) 学習活動やその指導において,どんなことが重要であるか,見極めるのに役立つものでなけ
ればならない。
教科,学年の目標をそのまま並べた形ではなく,次のように要約するとよい。
・
学年目標との関連を十分考慮する。
・
行事や日常生活などへの連携を図る。
・
児童のもつ問題の掌握と,解決の方法を明らかにする。
36
・
学習指導の重点を明示する。
(エ) 具体的には ,「関心・意欲・態度 」「思考・判断 」「技能 」「知識・理解」について書く。
エ
内容と教材
学習内容をできるだけ具体的に明確にすることが大切である。留意事項を次に示す。
(ア) 学習指導要領では,それぞれの領域の特性に応じて,一般的で,しかも基本的な内容が示され
ているだけであるので,これを基に個に応じてすべての児童が運動の楽しさや喜びを味わうこと
ができるように単元の内容を決める。
(イ) 児童の運動経験や技能の程度に応じた指導や児童自らが運動の課題の解決を目指す行動を行え
るような内容とする。
(ウ) 技能の観点だけでなく,社会的態度や健康・安全の態度,学び方についても考慮し,偏りなく,
しかも重点化された内容がわかるようにする。
オ
配当時間
一部の領域に偏ることなく全部の領域の指導がバランスよく行われるようにするとともに,領域
別の授業時数の配当は,ある程度の幅をもって考えてもよい。低・中・高学年の複数学年の中で児
童の実態に合わせて,弾力的な扱いを工夫することが大切である。
カ
学習過程
学習過程は,児童が学習のねらいを達成するための学習の道すじであり,ねらいに近づくための
学習のステップを示すものである。
児童一人一人の意欲を高め,自発性・自主性を目指すこれからの学習指導にむけて効果的である
と思われる学習過程は,二つの段階で構成される。それは ,「今もっている力で運動を楽しむ段
階」と「新しい工夫を加えて運動を楽しむ段階」の二つである。
学習過程の二つの段階は,一般的には「ねらい①,ねらい② 」, あるいは「めあて①,めあて
②」といわれているが,器械運動のような個人的な運動では ,「めあて①,めあて②」と表される
ことが多く,ボール運動のような集団的な運動では ,「ねらい①,ねらい②」と表されることが多
い。
「ねらい」は,どのような運動の楽しさや喜びを求めて学習を展開するのか,単元全体の学習活
動を方向づける目標を表す言葉である。一方 ,「めあて」は,運動の楽しさや喜びを求める活動の
中で,今自分のもっている力でどんなことができるか,あるいはどうしたいかなど,活動の内容を
表す言葉である。
学習過程の構成の仕方として,1単位時間の中を,あるいは,1時間ごとに①ー②を構成するも
のと単元全体を前半,後半に分けて①ー②を構成するものとに分けることができ,前者を「スパイ
ラル型 」,後者を「ステージ型」と呼ぶことにしている。また,この学習過程の考え方は,それぞ
れの内容の異なる各運動の楽しさや喜びを児童が体験していくプロセスと考えることができる。
37
<「めあて①」−「めあて② 」,「ねらい①」−「ねらい②」の示し方の例>
【スパイラル型の学習過程:跳び箱運動の例】
15
めあて①
今できる跳び方でいろいろな跳び箱を跳び越す。
めあて②
少し努力すればできそうな跳び方に挑戦する。
30
45
(分)
15
1
2
3
4
5
6
めあて①
めあて①
めあて①
めあて①
めあて①
めあて①
È
30
45
Ê
È
めあて②
めあて②
Ê
È
Ê
めあて②
È
めあて②
Ê
È
めあて②
Ê
(時間)
È
めあて②
(分)
【ステージ型の学習過程:サッカーの例】
15
ねらい①
簡単なルールやマナーを理解し,ゲームをする。
ねらい②
対戦チームを選んだり,ルールや作戦を工夫したりしてゲームをする。
30
45
(分)
1
2
3
4
5
6
(時間)
15
30
ねらい①
ねらい②
45
(分)
(ア) 指導段階を考慮する。
<はじめ(導入)>
○
興味・関心などの内面的条件と,学習環境(資料や施設,用具,集団)などの外面的な条件
を整えて,適切な動機づけをし,学習意欲の喚起をする。
○
学習のねらいや内容の掌握,学習計画の見通しを与え,児童自身が課題を見つけ,解決法を
知るようにする。
○
<な
運動の特性や学年の発展に応じて,どんな方法で,どんな資料を使って導入するかを考える。
か(展開)>
○
児童が自主的・自発的な学習を進められるように,教師の適切な指導を具体化しておく。
○
学習のめあてや課題とその解決方法の違い,あるいは多様な運動の楽しみ方の工夫に柔軟に
応じることができるように,一斉指導,グループ指導,個別指導を適切に使い分ける。
○
学習の場を工夫して,多様な個人差に対応でき,運動技能の高まりに効果的で,児童にとっ
て意欲をもって取り組めるように配慮する。
38
<まとめ(整理)>
○
学習の成果にまとまりをつけ,それを評価する。
○
学習の成果を,日常の健康で安全な生活に発展させるような動機づけをする。
○
学習の成果について,満足感を味わわせるとともに,新たに学習する運動に対して意欲
をもたせる。
(イ) 評価を工夫する。
目標に照らして,どれだけ到達させることができたかを記入する。評価項目は,運動が楽
しくできる,特性に応じた技能の向上,体力の向上,協力・公正・安全な態度,学び方の学
習について判断する。
(3) 「授業」において留意すべき事項
ア
準
備
(ア) 教材研究
○
児童の発達段階や学習経験,学習に対する興味や関心を事前に明らかにする。
○
指導内容の重点を明らかにする。
○
児童の理解を助けるための資料を用意し,提示の順序などを考える。
(イ) 施設・用具・資料
○
施設・用具などを事前に点検され,安全であることを確かめる。
○
学習活動を能率的に展開するための運動場の整備や用具の配置を事前に行う。
○
学習活動を能率的,効果的に行うための用具の数量を準備する。
○
説明などを効果的に行うために,黒板や掲示物などを準備する。
○
学習活動を助けるための資料を適切に準備する。
(ウ) 指導案
○
指導目標を具体的に明らかにする。
○
単元(題材)の展開計画の概要と本時の位置を明らかにする。
○
学習内容と学習活動を順序づけ(導入・展開・整理 ),おおよその配当時間を明らかに
する。
○
運動領域の学習指導では,発達段階に応じた技能と態度及び学び方について身に付ける
ことができるように計画する。
イ
○
指導上の留意点や教師が支援する内容を明らかにする。
○
学習活動に応じた学習形態や用具の配置などを明らかにする。
○
施設・用具などの準備について明らかにする。
○
雨天時の指導案を適切に準備する。
指
導
(ア) 学習指導の導入
○
本時の指導目標や指導の重点を児童によく理解させる。
○
具体的な学習活動や学習の見通しを児童によく理解させる。
○
自主的,自発的な学習ができるように指導する。
39
(イ) 学習指導の展開
○
運動技能や態度及び学び方の指導を適切に行う。
・
運動領域の特性に応じた効果的指導を行う。
・
運動技能の指導のみに陥ることなく,態度や学び方についても指導する。
・
児童の個人差に応じた指導を行う。
・
特殊な児童の指導や見学者に対する指導は,能力や状況に応じて適切に行う。
・
個々の運動技能は,その必要性を理解させ,段階的に無理なく指導する。
・
達成すべき正しい動作や技能の要点を児童に理解させる。
・
児童が主体的に学習を進められるように教師の支援の内容・方法等を工夫する。
・
技能の練習回数は,児童の能力に応じながらできるだけ多くするように考慮する。
・
健康・安全に関する態度を,運動の特性に応じて適切に指導する。
○
集団行動の指導を適切に行う。
・
集団行動の指導は,単に形式のみにとどまることなく,社会的態度につながるものとして必
要性をよく理解させて指導する。
・
集団行動の様式を児童に理解させ,習慣化するように指導する。
・
集合,整とん,開列,場所の移動等の行動を,学習活動の場に応じてスムーズに行う。
・
号令は,学習集団の大きさに応じて適切に行う。
・
「予令 」,「動令」の間合いを適切にとり,児童にわかりやすくする。
・
号令は親しみやすく,強制的,威圧的にならないように配慮する。
・
指導者の動作や姿勢は,その場に応じて適切に行う。
○
説明や発問を有効・適切に行う。
・
説明や発問は,児童の実態に応じて適切に行う。
・
必要以上に,説明や発問が多くならないようにする。
・
説明や発問は,児童が聞き取りやすい状態を作ってから行う。
・
説明や発問は,児童にとって理解しやすいように考慮して行う 。。
(ウ) 学習の整理
○
本時の学習活動に対して,目標や重点と結びつけて反省や評価を行う。
○
次の学習に対する見通しがもてるような適切な課題を与える。
40
(4) 学習指導案
学習指導案は,このような形式でなくてはならないという「型」があるわけではない。各地区で
工夫された形式で,また,用途に合わせて各学校で工夫されているのが現状である。
学習指導案は,単元計画をもとにその目標を達成するための実際の授業をどう行うかを表すもの
である。本時の目標,学習過程を中心に授業での留意事項,評価などを書き表すことで,児童にと
って一度しかない授業を効果的に行い,授業者が自分の授業を反省,評価する資料にすることがで
きる。また,研究授業などを行う際には,授業者の指導計画を他の人に知ってもらったり,後に授
業の形式を広めたりするためにも大切なものとなる。
内容の濃さによって,略案から密案と言われるものまである。用途によって使い分けることが必
要である。
参考例1
−スパイラル型の略案−
第5学年○組
体育科学習指導案
指導者
1
単
元
2
単元の目標
○
○
○
○
器械運動(マット運動)
①
自分の課題に対し進んで練習し,工夫して練習を行うことができる。
②
前転とその発展技,後転とその発展技を組み合わせて,連続技をスムーズに行うことができる。
③
補助の仕方など安全を考えて協力して練習ができる。
3
単元を通しての学習過程(略案 )・6時間完了の1∼3時(4∼6時は省略)
時間
目
1
時
学習の見通しをもつ。
標
1
10
2
20
準備運動を行う。
2
時
3
時
美しく技ができるように練習
美しく技ができるように練習
しよう。
しよう。
1
1
準備運動を行う。
準備運動を行う。
・ストレッチ
・ストレッチ
・ストレッチ
・体ほぐしの運動
・体ほぐしの運動
・体ほぐしの運動
学習計画を知る。
2
ねらい1
2
ねらい1
・できる技をより美しく
今できる技をより美しくで
今できる技をより美しくで
・新しい技に挑戦
きるよう練習する。
きるよう練習する。
・連続技
3
30
できる技を確認しよう。
3
ねらい2
3
ねらい2
・前転系
もう少しでできる技に挑戦
もう少しでできる技に挑戦
・後転系
する。
する。
*カードにチェックする。
40
4
4
本時のまとめをする。
本時のまとめと次時のね
らい1・2の技を決める。
41
4
本時のまとめと次時のね
らい1・2の技を決める。
評
価
反
省
4
評
価
①
協力して技の練習ができたか。練習を工夫できたか 。(練習・カード)
②
技のつなぎをスムーズに行い,連続技ができたか 。(練習・発表会)
③
安全に注意し,補助など協力して練習をすることができたか 。(練習)
参考例2
−ステージ型の指導案−
第2学年○組
体育科学習指導案
平成○○年○月○日
○曜日
第○時(アスレチック広場)
指導者
1
単
元
○
○
○
○
印
夢の島へ冒険しよう(基本の運動:かけっこ,平均台遊び,跳び箱)
(ゲーム:的当てゲーム)
2
単元について
(1) 楽しい運動あそび(運動特性)
1・2年生の平均台(器械・器具を使っての運動遊び)の授業を行うとき ,「平均台から落ち
ないように上手く渡れ!」と言うより,平均台の下にワニの絵を置き「落ちるとワニに食べられ
ちゃうぞ!しっかり渡れ!」という指示を与えると,児童は生き生きと真剣に取り組み出す。一
人ワニ役を決めると,もっとリアリティーが増す。こんな経験は誰にでもある。また,児童は,
ゲームやアニメが大好きである。この2つのことに着目し,単元を組み合わせてストーリー性を
もった新しい単元を作ることで,より活発な運動遊びの場ができると考えた。
この「夢の島へ冒険しよう」では,かけっこ,平均台遊び,跳び箱遊びをアスレチックを利用
し,自然の中での運動遊びとした。特に,かけっこは力いっぱい運動する楽しさを,平均台遊び
は不安定な足元がスリリングな感覚を味わえる。また,ボールゲームはチームで競う楽しさがあ
り,跳び箱遊びでは克服する喜びがある。
(2) 二極化現象の出現(児童観)
2年○組の児童は体格的に差が少なく,全体としては男女仲良く運動できる。しかし,個々を
見ると,跳び箱を怖がる者,根気のない者,考えたことがなかなか運動として現れない者など,
多様である。本単元に入る前にアンケートを取ったところ,かけっこが嫌い4人(39人中 ),
跳び箱が嫌い5人,ボール遊びが嫌い5人など,約4分の1の児童が運動嫌いを回答し,約2分
1の児童が3つとも好きと回答した。これを見ると二極化現象が少しずつ現れ始めたように思わ
れる。
また,体育・放課時の運動の様子を見ると,2年○組の児童は楽しそうに運動しているものの,
力いっぱい追いかける,思いっきり投げるといった全力の動きが少ないようである。
42
(3) 力いっぱい運動できる児童に(指導観)
「夢の島へ冒険しよう」では,4つの運動をストーリーをもたせてつなげたこと,それぞれの
運動に ,「みんなでおいかけろ! 」「ひとくいワニのすむ川をわたれ! 」「キックでたおせ!」
「山こえ,たにこえ!」などのストーリーに合った課題を設定したことにより,より意欲的に運
動に参加できると考えた。また,課題をグループでの運動遊びとしたことにより,学級全体の男
女が協力できるというよい雰囲気を生かし,苦手な児童を助け合いながら課題を達成していける
ようにした。
課題に対し協力して取り組めたグループには,毎時間最後に暗号(最後に6つの暗号を並べる
と「み・な・と・も・だ・ち」となる)を渡し,次の課題への期待感と意欲をもたせるようにし
た。
このように,運動能力や意欲に差のある者が,協力して冒険することで,お互いの気持ちを理
解し合い,苦手意識をもたずに思いっきり運動する児童を育てたい。
3
単元の目標
(1) かけっこ,平均台遊び,ボールゲーム,跳び箱遊びをみんなで楽しく,力いっぱい運動できる。
(技能の内容)
(2) 順番やきまりを守り,安全に気を付け,協力して助け合いながら運動できる 。(態度の内容)
(3) 楽しく運動できるように,運動の場・道具・規則などを工夫することができる。
(学び方の内容)
4
学習の計画(10時間完了)
第1次
オリエンテーション
第1時
探検スタート
第2次
・グループを決め,遊具を探検する。
暗号:み
冒険に出発!
第2・3時
みんなでおいかけろ!
暗号:な
・遊具のランニングコースをかけっこ探検する。
第4時
ひとくいワニのすむ川をわたれ!
第5時(本時)
・アスレチックの丸太を使い,平均台遊びをする。
第6・7時
キックでたおせ!
暗号:と
暗号:も
・ボールを蹴っての的当てゲームをする 。。
第8・9時
山こえ,たにこえ!
暗号:だ
・アスレチックのタイヤを使い,跳び箱遊びをする。
第3次
第10時
5
宝物は友との協力
みんなのたからは?
・4つの冒険遊びをして,まとめる。
本時の学習指導
(1) 目
標
43
暗号:ち
平均台でのいろいろな歩行を楽しむことができる。
(技能の内容)
順番やきまりを守り,協力して運動遊びができる。
(態度の内容)
楽しく運動遊びができるよう規則を工夫することができる。
(学び方の内容)
(2) 準備・資料
児童・・・・探検地図,チームリボン
教師・・・・暗号の手紙,おどろかしレベル表
(3) 関
連
1年
しょうがいリレー
(調子よく跳び越し,素早く引き継いで障害リレーを楽しむ)
3年
ラインサッカーゲーム
(相手やコートに合った作戦を立てて,ゲームを楽しむ)
(4) 学 習 過 程
段
学
階
1
つ
習
活
動
時
間
(分)
チームごとに,健康観察,服装調べ
指
導
上
の
留
意
事
項
キャプテン,調べ係を中心に行わせる。
準備運動は,係を前に出し,全体で行わ
をし,準備運動を行う。
せる。
か
2
本時のねらいをつかむ。
8
(1) 学習のねらいをつかむ。
む
チームの結束をもつよう色分けしたリボ
ンを腕に付ける。
ひとくいワニのすむ川をきょうりょく
前時に決めた渡り方とコースを確認しな
してわたれ!
がら,本時はワニが現れることを告げ
る。
3
平均台遊びをする。
既設アスレチックを利用する。雨天時に
(1) いろいろな歩行を楽しむ。
は体育館で平均台,フラフープ,跳び箱
などを利用して探検コースを作る。
①∼⑥の順でコースを歩かせる。
横歩き以外は,できるだけ歩き方を工夫
楽
12
させるようにする。
怖がる児童には,グループで手を引いて
し
あげる子を付けるなど工夫させ,全員が
む
コースを渡れるように協力させる。
丸太棒の上を渡れない児童には,一歩ず
つ歩けるように台を使わせる。
評
順番を守り,丸太渡りの楽しさを味
わう 。(観察)
(2) ワニ川を探検する。
コース内を観察しながら,川となる部分
44
ア
おどろかしルールをつくる。
(∼∼∼の部分)をライン引きで描く。
前時の運動遊びから,おどろかしルール
・おどろかしてもよいのは,川の部分
だけとする。
冒
を決めさせる。特に,おどろかしレベル
・相手に触れない。
については,怖がる児童,安全について
・順番を守る。
の配慮から徹底させる。
おどろかしレベル表を◎の位置に置き,
険
おどろかしレベル表
す
る
川に入る時一人一人が大きな声でレベル
①
立っているだけ。
20
②
手を動かしておどろかせる。
スタート位置に3グループ,川の外(図
③
声を出しておどろかせる。
の下の部分)に3グループと分かれて始
④
丸太をたたいておどろかせ
める。
スタート順とワニ役順をグループのキャ
る。
イ
を言う。
探検する者とワニ役をグループ毎
プテンに決めさせる。
に交代しながら,探検をする。
評
グループで協力して,探検コースを
進む。また,ルールを守ってワニ役を務
める 。(観察)
4
ま
ワニ川探検のまとめをする。
友だちのよいところを「○○さんが○○
(1) チームで協力できたことを発表す
と
したこと 。」という言い方でチーム内で
る。
め
5
(2) 第3番目の暗号と次の課題の入った
る
発表させる。
次時の課題をグループ毎に確認する。
手紙をグループ毎に受け取る。
(5) 評 価 項 目
バランスよく丸太渡りをし,探検を楽しむことができたか(観察)
順番やルールを守り,協力して探検できたか 。(観察)
6
反
省
45
参考例3
−保健の指導案−
第5学年○組
体育科学習指導案
平成○○年○月○日
指導者
○曜日
第○時
○
○
○
○
印
○
○
○
○
印
(養護教諭:以後T2)
1
単
元
2
単元の目標
保健(けがの防止)
(1) 身近な交通事故や学校生活の事故についての実態を知り,けがの防止について理解できる。
(2) けがの手当や対応について知り,簡単な手当ができる。
3
学習の計画
第1次
第1時∼第2時
学校と地域でのけがの種類と原因,防止について話し合う。
第2次
第3時∼第4時
交通事故の原因と防止について話し合う。
第3次
第5時(本時)
けがの手当の仕方について知る。
4
本時の学習指導
(1) 目
標
身近なけがの手当の仕方を話し合い,手当ができる。
(2) 準備・資料
教師・・・・手当まとめ用紙(6枚),画用紙(15枚 ),マジック(黒6本・赤6本)
身近な用具(包帯,バケツ,ふろしき,水道の模型,氷の絵)
(3) 関
連
6年
体育
保健・病気の予防(病気の発生要因や予防について理解する)
5年
道徳
生命の尊重(生命がかけがえのないものであることを知る)
(4) 学 習 過 程
段
学
階
つ
1
習
活
動
時
間
(分)
追
(2) 本時の課題を知る。
8
求
の
留
意
事
項
実際の手当の仕方と注意事項を話し合う
ことを知らせる。
(3) 事例を聞く。
2
上
第1時の授業より考えさせる。
けがの手当をしよう。
む
導
本時の内容をつかむ。
(1) けがにはどんな種類があるか。
か
指
教師の体験を話し,手順と注意事項の発
(足に釣り針がひっかかった時)
表のサンプルとする。
グループで,けがの手当の手順と注意
生活班の6グループで話し合わせる。
発表用紙,画用紙,マジックをグループ
事項を話し合う。
す
(1) 指をやけどした時
る
(2) ひざを擦りむいた時
に配布し,発表用紙でまとめさせる。
12
46
班の中でけがの経験のある者にその時の
(3) 頭をぶった時
様子を語らせ,参考にさせる。
(4) 鼻血が出た時
発表ができるように,発表者,患者など
(5) 足首をひねった時
を役割分担させる。
(6) 指を切った時
評
手当の方法,注意事項をグループで話
し合う 。(話し合い,発表用紙)
3
手当の方法を発表する。
手当の仕方について,点数をつけること
・手当の仕方
を知らせる。そして,その審査員として
・注意事項
養護教諭の○○先生:T2を迎える。
発表に対して,補足説明をT2が行う。
習
間違った処置は,けがの症状を重くする
20
熟
ことに注意させる。
ポイント
す
・や け ど:痛みがひくまで水で冷やす。流水を当てない。
・すりむき:きれいに洗う。消毒する。
る
・頭部打撲:安静。医者にかかる。こぶは冷やす。
・鼻
血:鼻の上部をつまむ。冷やす。口で息をする。
・捻
挫:安静にする。冷やす。
・切 り 傷:きれいに洗う。止血する。心臓より高くする。
評
けがに応じた適切な手当をする。
(発表,まとめ用紙)
ま
4
と
単元のまとめをする。
T2が,歯が欠けた時の手当について話
(1) 応急の手当の大切さについての話を
め
5
をする。
けがの防止と手当の大切さで単元をまと
聞く。
る
める。
(5) 評 価 項 目
適切な手当と注意事項について,グループで話し合い発表する 。(観察,発表,まとめ用紙)
5
備
考
(1) 学級の実態・・・・学校生活の中では,擦り傷・切り傷は多い。しかし,けがをしても患部を洗う
こともせずに保健室に直接行ってしまう児童がほとんどである。
(2) 指導の立場・・・・事前アンケートにより,グループの中にはそのけがの経験のある者が必ず入っ
ているように割り当て,話し合いがスムーズに行えるようにした。また,身近
な道具を使って実際に処置をすることで,体験的に学ばせるようにした。また,
養護教諭とのティームティーチングの形をとることで,児童にとって説得力の
ある授業になると考えた。
6
反
省
47
4
体育の評価
(1) 評価の目的
学習評価は,教育がその目標にてらしてどのように行われ,児童がその目標の実現に向けてど
のように変容しているかを明らかにしようとするものである。また,どのような点でつまずきそ
れを改善するためにどのように支援していけばよいかを明らかにしようとするものであり,いわ
ば,教育方法・教育の改善をすることである。
また,児童にとって評価は,自らの学習状況に気付き,自分を見つめ直すきっかけとなり,そ
の後の学習を促すという意義がある。
①
基本的なねらい
児童の自己理解や自己評価を援助する。
②
教師自身が授業を振り返り,より効果的・合理的な授業改善をするための手がかりとす
る。
③
指導要録や成績通知表への記載の資料として,また,教育の結果を保護者・地域等に知ら
せるための資料として活用する。
具体的なねらい
ア
児童の学習意欲を喚起する。
学習を通して,自己の技能や体力の向上,課題解決の達成感,集団内での存在感など,自己
理解を深めることで,より学習意欲を高めることができる。
イ
児童の進歩の程度や阻害条件を知る。
学習活動の出発時点における児童の現状を理解し,学習後にどの程度進歩したか評価する。
児童の進歩を明らかにすることは,学習活動における阻害条件やその原因解明の手がかりとも
なる。
ウ
指導計画や指導方法,教材の選択が適切であったかを検討する。
指導計画やそれに基づく指導が,有効かつ適切なものであったかどうかを,学習評価の記録
をもとに指導者として謙虚に反省し,今後の指導の改善を図ることが大切である。
エ
用具・施設などの環境条件などの適・不適を検討し,その改善を図る。
運動場面を構成する用具・施設などの適・不適やその数量などは,学習の効率化が大きな影
響を及ぼす。学校の規模・地域性を踏まえ,十分検討する必要がある。
オ
学校及び地域に対して,体育に関する理解や協力を得るための資料とする。
体育指導は,一教師のみの力によって,その万全を期することはできない。全職員の共通理
解と協力体制,さらに家庭や地域社会の理解と協力を得ることは,体育指導をより効率的に充
実させることとなる。
カ
学校外への科学的資料の提供を図る。
学校体育における成果やデータを明らかにすることは,教育への信頼を向上させていく上で
欠かすことのできないものである。
48
(2) 評価の考え方
ア
絶対評価の重視
学習指導要領においては,自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育むことを目指し,基
礎的・基本的な内容の習得を図ることを重視している。そのためには,学習指導要領に示す目標
に照らしてその実現状況を見る評価(絶対評価)を一層重視し,観点別学習状況の評価を基本と
して,児童の学習の到達度を適切に評価していくことが重要となる。
評価にあたっては,知識や技能の到達度を的確に評価することはもとより,それにとどまるこ
となく,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などの資質や能力までを含めた学習の到達度を
適切に評価していくことが大切である。
このため ,「関心・意欲・態度 」「思考・判断 」「技能・表現 」「知識・理解」の4つの観点に
よる評価を基本とすることが適当である。
イ
自己評価
児童が主体となって進められるめあて学習においては,自己評価はなくてはならないものであ
る。自己評価は,自己を見つめることから始まる。そして,自発性から導き出された一次的めあ
てや二次的めあての達成に向け学習が進められる。
自己評価項目
ウ
○
何を学習するかをはっきりつかみ,めあてをもつことができる。
○
なぜ学ぶのかがわかる。
○
自ら学習計画を立て,どんな方法で学習するのかを選び,決めることができる。
○
学んだ結果を振り返り,修正・補充しながら最後まで成し遂げる。
○
友だちと磨き合い,高め合って活動の拡大・深化を図る。
○
めあてにてらして自己の変容を把握し,達成の喜びを味わう。
相互評価
相互評価は,第三者による客観的な評価をすることによって自己評価を助け,その質を高める
ために重要である。運動領域によってその内容は異なってくるが,よい動きやフォームを追求し
たり,必要とする場合は自分だけで判断することは難しい。また,集団で行う領域においては,
チームや個人のめあてがどのように達成できたかを明らかにする必要がある。
エ
個人内評価の工夫
これからは,課題を発見する能力や自ら学び自ら考える力,よりよく問題を解決する能力など
の育成が重要である。また,児童の興味・関心,習熟度などに応じて指導方法の工夫改善をした
り,個性を生かす教育を推進することが求められる。
このような,自ら学ぶ意欲や問題解決の能力,個性の伸長などに資するよう,個人内評価を工
夫することも大切である。その際,児童を励ましたり,努力を支援したりする観点に立って,児
童の進歩を促したり,努力を伝えたりすることにも配慮し,一人一人のよい点や可能性,進歩の
状況を積極的に評価することが重要である。
49
オ
相対評価
相対評価は,集団や学級内の児童の記録や成績を基準に,それらと相対的に比べる評価法であ
る。スポーツをすれば,他と競い合う気持ちが当然生じてくる。子どもたちは,自分は何番目で
あるのかとか,どれくらいのレベルであるのかを知りたい欲求をもつ。単元や指導内容によって
は,それを資料として知らせることにより自己評価の材料の一つの要素になる場合がある。
相対評価の代表的なものとして,5段階評価やTスコアによる得点化の方法がある。大きな集
団との比較に有効であるが,可能性までは評価できないので留意したい。
Tスコアー
=
(個人の平均値−学級または母集団の平均値)×10
学級または母集団の標準偏差値
(3) 評価の内容
体育の学習では,運動の特性に触れる楽しさや喜びを深めさせることが大切であり,評価では,
「関心・意欲・態度」が中心になるが,その他にも,運動に関連した「技能」や「思考・判断」
「集団行動に関する態度 」,「健康安全についての知識・理解 」(3・4・5・6年)などを評価し
なければならない。評価はそれぞれの学習内容を児童がどれだけ習得し,目標にどれだけ到達でき
たかを明確にすることであり,評価の内容や観点は,学習のねらいと一致したもので,さらに,体
育学習の発展につながるものでなければならない。
ア
評価の観点及びその趣旨
観
点
趣
旨
運 動 や健康 ・安 全へ の関 心
進んで楽しく運動しようとする。また,身近な生活における
・意欲・態度
健康・安全に関心を持ち,進んで学習に取り組もうとする。
運 動 や健康 ・安 全に つい て
運動の課題の解決を目指して,活動の仕方を考え,工夫して
の思考・判断
いる。また,身近な生活における健康や安全について,課題
の解決を目指して考え,判断している。
運動の技能
運動の楽しさや喜びを味わうために必要な動きや技能を身に
付けている。
イ
健 康 ・安全 につ いて の知 識
身近な生活における健康・安全に関して,課題の解決に役立
・理解
つ基礎的な事項を理解し,知識を身に付けている。
学年別の評価の観点の趣旨
学年
第1学年
第2学年
第3学年
第4学年
第5学年
第6学年
だれとでも仲よ
く,健康・安全
に留意して,進
んで楽しく運動
をしようとす
る。
だれとでも仲よ
く,健康・安全
に留意して,進
んで楽しく運動
をしようとす
る。
進んで楽しく運
動をしようとす
る。また,約束
やきまりを守
り,互いに協力
し,健康・安全
に留意して運動
をしようとす
る。さらに,毎
日の生活と健康
とのかかわりに
進んで楽しく運
動をしようとす
る。また,約束
やきまりを守
り,互いに協力
し,健康・安全
に留意して運動
をしようとす
る。さらに,体
の発育・発達に
関心をもち,自
進んで運動の楽
しさや喜びを求
めるとともに,
協力,公正など
の態度を身に付
け,健康・安全
に留意して運動
をしようとす
る。また,心の
健康やけがの防
止について関心
進んで運動の楽
しさや喜びを求
めるとともに,
協力,公正など
の態度を身に付
け,健康・安全
に留意して運動
をしようとす
る。また,病気
の予防について
関心をもち,自
観点
関運
心動
・や
意健
欲康
・・
態安
度全
へ
の
50
ついて関心をも
ち,自ら健康的
な生活を送るた
め,進んで学習
に取り組もうと
する。
基本の運動やゲ 基 本 の 運 動 や ゲ 運 動 の 特 性 に 応
つ運 ームの仕方を考 ー ム の 仕 方 を 考 じ た 課 題 を も
い動 え,工夫してい え , 工 夫 し て い ち , 活 動 の 仕 方
てや る。
る。
を考え,工夫し
の健
ている。また,
思康
毎日の生活と健
考・
康とのかかわり
・安
について,課題
判全
の解決を目指し
断に
て考え,判断し
ている。
基本の運動やゲ
ームを楽しく行
うために必要な
動きを身に付け
ている。
運
動
の
技
能
ら健康的な生活
を送るため,進
んで学習に取り
組もうとする。
運動の特性に応
じた課題をも
ち,活動の仕方
を考え,工夫し
ている。また,
体の発育・発達
について,課題
の解決を目指し
て考え,判断し
ている。
基本の運動やゲ 運動の特性に応 運動の特性に応
ームを楽しく行 じた技能を身に じた技能を身に
う た め に 必 要 な 付けている。
付けている。
動きを身に付け
ている。
つ運
い動
てや
の健
知康
識・
・安
理全
解に
毎日の生活と健
康とのかかわり
について,課題
の解決に役立つ
基礎的な事項を
理解し,知識を
身に付けてい
る。
体の発育・発達
について,課題
の解決に役立つ
基礎的な事項を
理解し,知識を
身に付けてい
る。
をもち,自ら健
康で安全な生活
を実践するた
め,進んで学習
に取り組もうと
する。
運動の特性に応
じた自己の課題
の解決を目指し
て,活動の仕方
を考え,工夫し
ている。また,
心の健康やけが
の防止につい
て,課題の解決
を目指して考
え,判断してい
る。
自己の能力に応
じた課題を理解
して,運動を行
うとともに,運
動の特性に応じ
た技能を身に付
けている。
心の健康及びけ
がの原因とその
防止について,
課題の解決に役
立つ基礎的な事
項を理解し,知
識を身に付けて
いる。
ら健康的な生活
を実践するた
め,進んで学習
に取り組もうと
する。
運動の特性に応
じた自己の課題
の解決を目指し
て,活動の仕方
を考え,工夫し
ている。また,
病気の予防につ
いて,課題の解
決を目指して考
え,判断してい
る。
自己の能力に応
じた課題を理解
して,運動を行
うとともに,運
動の特性に応じ
た技能を身に付
けている。
健康の保持増進
に必要な生活行
動及び病気の起
こり方とその予
防について,課
題の解決に役立
つ基礎的な事項
を理解し,知識
を身に付けてい
る。
(4) 指導と評価の一体化
授業は,計画(plan )・実践(do)・評価(see)という一連の活動が繰り返されながら,児童一
人一人のよりよい成長を目指して行われる。すなわち,指導と評価は別物でなく,評価の結果によ
ってその後の指導を改善し,新しい指導に生かすことが重要である。
したがって,評価は学習の結果に対して行うだけでなく,学習前における実態把握としての評価,
学習指導の過程における評価の工夫を併せて進めることが,児童にとっても指導者にとっても大切
なことである。
ア
事前の評価(診断的評価)
児童の実態を把握し,診断・検査を行う側面と教材構成,指導方法等の計画・手だての改善や
修正を行う側面とに大別される。児童は,自分自身の興味の度合いや今の力を知ることができる。
イ
指導過程の評価(形成的評価)
「学習のめあて」や「学習のねらい」を理解しているか ,「運動の方法や技能 」「
・ 運動に関連
して行動の仕方や態度」がどの程度習得できたか,また,児童が「学習の問題点やつまづきの発
見」がなされたかなどを評価する活動が中心となる。どのような事柄につまづき,学習が停滞し
ているかなどを素早くとらえ,指導・学習の進度や教材の内容の適否をとらえることも重要であ
る。
51
ウ
事後の評価(総括的評価)
総合的な評価としてなされるものである。学習した事柄や内容について,よい授業であったか
評価し,児童は学習効果の確認と学習の改善を図り,教師側は指導法や教育計画の改善に役立て
る資料となる。
《参考例
跳び箱運動》
事
評
価
内
容
◎
既習の跳び箱運動の調査
◎
跳び箱運動への関心・意欲・技能の調査
前
○
楽しさや意欲
の
○
マナーの善し悪し
評
○
技の状況
評価の方法
価
質問紙法
面
接
観
察
学習カード
関心・意欲・態度の評価
め
◎
学習に対する意欲的な取組
学
あ
◎
場や友だちの安全への配慮
習
て
◎
友だちへの正しいマナー
の
①
◎
↓
の
評
め
価
あ
察
思考・判断の評価
変
容
観
めあての持ち方
○
今できる技でのめあてをもつ
○
少しがんばればできそうな技の
めあてをもつ
◎
て
学習カード
観
察
練習方法や場の選択
技能の評価
②
◎
技をより上手にできる
◎
新しい技ができる
◎
跳び箱運動の楽しさやできばえの調査
事
○
楽しさや欲求
学習カード
後
○
マナーの善し悪し
観
の
○
練習方法や場のわかりやすさと選択
評
○
学習計画の立案
質問紙法
価
○
技の習得
面
感
察
接
想
文
(5) 評価計画と評価規準の作成
学習の評価の観点に従って評価する場合,それぞれの評価目標・評価内容にあった評価規準を作
成する必要がある。評価規準は,何を評価するのかの目標規準と,どの程度に評価するかの判定基
準(到達基準)から成り立つ。指導要録の付属資料としての「観点別学習状況評価のための参考資
52
料」は,各分野領域の目標の実現が「おおむね満足できる」状況を表した評価規準の例である。各
学校はこれを参考にして ,「十分満足できる 」「
・ おおむね満足できる 」「
・ 努力を要する」状況等の
具体的な評価規準を作成する必要がある。
〈評価規準〉B規準の例(おおむね満足できると判断されるもの)
観
関
点
心
・
意
欲
・
態
度
思
めあて①の学習
○ 今できる跳び方でいろいろな跳び
箱に挑戦しようとしている。
○ 友だちと約束を守って取り組んで
いる。
○ 場の安全に気を付けて取り組んで
いる。
○ 今できる跳び方のめあてでいろい
ろな跳び箱に挑戦している。
考
・
判
断
技
能
○
今できる跳び方でいろいろな跳び
箱を跳ぶことができる。
めあて②の学習
○ 少し努力すればできそうな跳び方に
挑戦しようとしている。
○ 友だちを認め合い,高め合って活動
している。
○ 場の安全や約束に気を付けて取り組
んでいる。
○ 少し努力すればできそうな跳び方の
めあてをもって活動している。
○ 学習カードから練習の場や技のポイ
ントを選んで活動している。
○ 技の仕組みが分かり助言や補助をし
ている。
○ 新しい跳び方ができる。
(6) 評価方法の工夫改善
ア
場・機会の工夫
・
評価を学習や指導の改善に役立てる観点から,総括的な評価のみでなく,分析的な評価や記
述的な評価を工夫する。
・
学習後のみならず,学習の前や学習の過程における評価を工夫する。
・
学期末や学年末だけでなく,目的に応じ,単元ごと時間ごとなどにおける評価を工夫する。
イ
手だての工夫
・
実技のみによる評価ではなく,観察・学習カード・感想文などを用い,その選択・組み合わ
せを工夫する。
・
児童の自己評価や相互評価を生かすことや,複数の指導者による評価を導入し,多面的・多
角的な評価を工夫する。
ウ
障害をもつ児童への配慮
・
一人一人の障害の状態等を十分把握した上で,それぞれに応じた指導の目標の設定,指導内
容・方法の工夫をする。
・
児童のもてる力を発揮して,学習活動に取り組む状況などをきめ細かく評価し,指導に生か
す工夫をする。
53
=
Q3
Q&A
=
保健の学習については,小・中・高一貫してヘルスプロモーションの理念に立
ち,心身の健康の保持増進のための実践力を育成することをねらいとしています。
「ヘルスプロモーションの理念」とはどんなことですか。
A
WHOの「ヘルスプロモーションに関するオタワ憲章(1986年 )」によれば,ヘ
ルスプロモーションとは,人々が自らの健康をコントロールし,改善することができる
ようにするプロセスであるとされています 。「身体的,精神的,社会的に良好な状態に
到達するためには,個人や集団が望みを確認し,実現し,ニーズを満たし,環境を改善
し,環境に対処することができなければならない」ということです。
保健領域では,従来から健康にかかわる適切な意志決定の前提となる基礎的・基本的
な知識の理解や思考力・判断力の育成が重視されてきました。今回の改訂では,それを
一歩進めて,生涯を通じて健康で安全な生活を送るための資質や能力の基礎を培い,実
践力の育成を図ることが目指されています。
ヘルスプロモーションとは,一人一人が公平かつ公正に健康を確保できるQOLを向
※
上できることを目指し ,「人々が自らの健康をコントロールし,改善することができる
プロセス」と定義。つまり,個人の生活行動(いわゆるライフスタイル ),健康によい
ライフスタイルを確立していくこと,環境を健康によいものに改善していくということ
を大切にする考え方のことである。
※
QOLとは ,「生活者の生活評価意識(満足感,安定感,幸福感)を規定している諸
要因の質的内容」のことである。
Q4
A
体つくり運動の「体ほぐし運動」の評価はどうするのですか?
ねらいが,いろいろな手軽な運動や律動的な運
動を行い,体を動かす楽しさや心地よさを味わう
ことによって,自分や仲間の体の状態に気付き,
体の調子を整えたり,仲間と交流する運動である
ため,実施のねらいを明確にし,意欲や態度の評
価は行うが,技能は評価の対象とはしない。
54
《参考例
学習カード・自己評価》
5年生
体育(ソフトボール)学習自己評価
組
番
名前
ソフトボールの授業について、数字に○をつける。
できる
5
4
3
2
は い
かんぺき
ふつう
1
キャッチボールはうまくできるか?
10M以上投げることができる。
速いボールを投げることができる。
相手のところにきちんと投げることができる。
遠くからや速いボールを受けることができる。
正面にきたボールを受けることができる。
フライのボールを受けることができる。
2 バッティングはうまくできるか。?
① バットにボールをあてることができる。
② ゆるいボールなら打てる。
③ ヒットが打てる。
3 ゲームについて
① ルールが分かる。
② 仲間に、ルールや技術のアドバイスができる。
③ チームのリーダーができる。
④ ハンディやルールを考え、提案することができる。
4 授業の取り組みについて
① 体育の服そうがきちんとしている。
② 準備運動がしっかりできている。
③ 道具の準備や片付けがしっかりできている。
④ 楽しく練習やゲームができる。
5 学習の成果
① 好きになりましたか。
② わかったことやできるようになったことは何ですか。
できない
いいえ
ほとんどできない
1
①
②
③
④
⑤
⑥
③
感想を自由に書きなさい。
55
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
5・4・3・2・1
第4章
1
総
則
体
育
総則第1の第3項の内容
総則第1の3に示されている内容は ,「学校における体育・健康に関する指導は,学校の教育活
動全体を通じて適切に行うものとする。特に,体力の向上及び心身の健康の保持増進に関する指導
については,体育科の時間はもとより,特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行
うよう努めることとする。また,それらの指導を通して,家庭や地域社会との関連を図りながら,
日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力あ
る生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならない」である。この総則体育は次のよ
うな意図や背景をもっている。
(1) 総則体育の意図
近年の子どもたちは,積極面もある一方,ゆとりのない生活,社会性の不足や倫理観の問題,
自立の遅れ,健康・体力の問題などの問題が存在している。また,家庭や地域社会の教育が低下
の傾向にあることも問題になっている。これからの社会においても,国際化やIT革命などの発
展が急速で激しく,先行き不透明な時代である。
こうした中,児童の体格は確実に向上してきたが,体力や精神面の成長がともなわないのが現
状である。体力不足や運動能力の低下は,子どもの健康に関する社会問題として取り上げられて
いる。
そこで,総則体育では,学校教育全体を通して「明るく豊かで活力のある生活を営む態度の育
成を目指し,生涯にわたる豊かなスポーツライフ及び健康の保持増進の基礎を培う観点に立って
内容の改善を図る」という体育科の大きな基本方針を支え,さらに発展させる重要な役割を担う
ものである。
(2) スポーツライフとの関連
児童生徒に「好きな教科」を聞くと ,「体育」が上位を占める。これは,子どもたちにとって,
体を動かすことは好意的に受け止められているからであろう。
また,児童生徒がスポーツを行う動機としては ,「健康や体力の維持増進のため」と答えるこ
とが多く,健康との関連で目的意識をもって体を動かす子ども,これを勧める保護者の意識を伺
うことができる。その他「運動することが楽しい 」「仲間との交歓」といった回答も多いが,中
高生では「ストレスの解消」を挙げる点も注目される。
一方,子どもたちの健康とスポーツに関する意識を見ると,健康や体力の維持増進のために,
小中学生は「運動やスポーツをする」と答えたことが多いのに対して,高校生になると「睡眠や
休養をとる」との回答が増加している。
壮年期の体力については,過去のデータを比較してみると,年齢段階によって差異はあるが昭
和59年頃までは緩やかな向上傾向にあったが,それ以後は,ほとんどの年齢段階で停滞か下降
傾向を見る。また,壮年期の体力は,現在や過去の運動・スポーツ実施状況と大きな相関関係が
見られる。文部省の「壮年体力テスト」の結果に基づき ,「運動・スポーツの実施状況 」「学生時
56
代の運動部活動経験」を比較した結果,運動・スポーツを現在又は過去に,より長い期間行って
いる人の方が,いずれにしても,年齢段階や男女を問わず,体力的に優れている傾向がある。
さて,運動やスポーツは,体を動かすという本源的欲求にこたえ,精神的にも達成感や楽しさ
などを与えるとともに,健康の増進や体力の向上にも寄与し,また,人生をより豊かに充実させ
る「生きがい」や「文化」の一部としても,生活に欠くことができない重要なものである。特に ,
児童生徒にとっては人間形成に影響を与えるなど心身の両面にわたる健全な発達に大きく寄与す
るものである。
このような運動やスポーツの意義を踏まえるとともに,児童生徒・壮年にわたる体力・運動能
力の現状などに対応しつつ,児童生徒の健全な育成を図るために学校体育に課せられた役割は大
きい。
このため,学校体育は ,「体育」の授業や運動部活動その他の学校教育全体を通じて,運動や
スポーツの楽しさ,喜びを体験させるとともに,児童生徒の健康の保持増進や体力・運動能力の
向上に寄与しつつ,生涯にわたるスポーツライフの基礎を培うものとしてさらに充実していくこ
とが求められている。
(3)「スポーツ振興基本計画」と体育・スポーツ
今日,体育・スポーツ界が傾注しているのは,豊かなスポーツライフを目指す指導であり,そ
の振興である。昭和36年から継続されて行っている体力運動能力調査の経過から,体力の低下
傾向の懸念が抱かれている。そこで,文部科学省は,平成12年9月に発表した「スポーツ振興
基本計画」の中に,生涯にわたり豊かなスポーツライフを送れるようにすることと,たくましく
生きるための体力の向上を目指し,児童生徒が進んで運動できるようにすることを到達目標とし
た「児童生徒の運動に親しむ資質・能力や体力を培う学校体育の充実」を掲げ,さらに,2001年
1月に発表された「レインボープラン」の7つの重点戦略の中にも,文化・スポーツ活動の充実
について明記している。
したがって,学校における教科体育や特別活動の運動部活動では,その振興はもちろん,児童
が地域社会と深く結びつき,豊かなスポーツライフへと発展できる基盤をつくることが大切であ
る。そのためには,指導者が社会やスポーツ振興の環境や情勢を的確にとらえ,時代に乗り遅れ
ることなく指導へと生かすことが大切である。
2
学校の経営と総則体育
(1) 教育課程の編成
各学校は,総則第1の3の体育の意味や意図を十分に吟味し,調和と統一のある教育課程を編
成しなければならない。特に,体力の向上及び心身の健康の保持増進に関する指導については,
体育科の時間はもとより,特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努め
ることが大切である。また,それらの指導を通して,家庭や地域社会との連携を図りながら,日
常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力あ
る生活を送るための基礎が培われるように配慮しなければならない。
57
(2) 授業時間の弾力的な運用
今回改訂された学習指導要領では,各学校において創意工夫を生かして,弾力的に授業時間を
編成できるよう,授業の1単位時間を各学校が適切に定める規定が適用された。
その弾力的運用は,次のようなものが考えられる。
ア
授業時間の工夫で休憩あるいは休息の時間,あるいは放課後の時間を設定する方法
イ
毎日一定の時間を限って使用する方法
ウ
学年単位・複数学年,あるいは全校規模で一斉の時間を設定する方法
エ
学校規模によっては異学年集団を組み時間を設定する方法
オ
総合的な学習の時間を使う方法
したがって,教育課程を編成していく際には,総則の趣旨を十分理解し,弾力的時間の運用で,
児童の体力つくりとしての業前・業間・業後体育や自由な活動や個人的・集団遊びなどができる
ように計画し,児童の体力増進に総力をあげて取り組まなければならない。
(3) 指導組織の確立
総則体育は,学校教育活動全領域にわたって,組織的・計画的・意図的に運営・実施されなけ
ればよい成果は望めない。そのためには,児童の体力・運動能力・運動経験及び健康状態をふま
え,全職員や保護者と連絡を密にした指導を行ったり,地域社会における体育・スポーツとの連
携を図ったりしながら,共通理解を深めることが重要である。
ア
指導体制の確立
学校経営方針や学校教育目標には,総則体育に関連した内容を盛り込み,全職員共通理解の
もとに,指導体制の確立を図らなくてはならない。
イ
現職教育の推進
総則体育の趣旨と具体的な運営方法を理解させ,学校生活全般における指導のあり方や教科
体育の指導については,体育主任を中心に,全職員を対象とした現職教育の推進を図らなけれ
ばならない。内容については,次の点に重点を置きたい。
(ア) 心と体を一体としてとらえる観点
(イ) 運動の学び方
(ウ) 体力,運動技能を高める学習指導
(エ) 運動の取り上げ方の弾力化
(オ) 地域社会・家庭との連携
(カ) 生涯にわたるスポーツライフと健康の保持増進のための具体的な方法
3
総則体育の展開
(1) 他教科との関連
総則体育と教科体育の意味するものは ,「生活文化としてのスポーツライフ」と「運動文化と
しての体育・スポーツ」であるが,教科体育が総則体育の中核であることは教育課程編成の一般
方針の「体育の時間はもとより」という表記から明らかである。
58
どちらの体育でも,児童の身体活動を中心にすえたスポーツライフへつなげるための基礎的な教
育がなされなくては,両者は分離したものになってしまう恐れがある。児童の「体力の向上及び健
康の保持増進」ということばで結ばれ ,「生涯を通じて健康で安全な生活を送るための基礎」とい
う点で,両者は一貫性がなくてはならない。
運動の面から見ると,低学年では「遊び」から出発し,運動の楽しさを十分に味わわせ,高学年
になるにしたがって「生活文化・スポーツ文化」へと発展させていく。この発展・分化した学習が
日常生活に生かされて,児童の身体活動そのものが生涯体育・スポーツライフへとつながるのであ
る。
(2) 道徳との関連
総則体育の中で,道徳性の育成にかかわる場面は多く存在する。例えば ,「人間尊重の精神と畏
敬の念」などは,身体活動を主に行う総則体育の中で,必ず児童が経験もしくは,経過する問題で
ある。総則体育を道徳の実践力を高める場面の一つであると考えることができる。
総則体育は道徳とも有機的につながり,児童の内に根ざした心身ともに調和のとれた人間性豊か
な児童を育てなくてはならないのである。
(3) 総合的な学習の時間との関連
体育科との関連でいえば,この時間を活用することによって,横断的・総合的な学習の課題に例
示された「福祉・健康」はもとより今回の改訂の大きなポイントになった「心と体を一体ととらえ
た」活動や野外での活動などを多様に展開できる。
ア
心と体を一体としてとらえた活動
子どもが自らの生活を見直す中で,心や体に問題があると感じ,自分たちの解決すべき課題と
して取り組むこととしたとき,その解決に向かっての具体的な活動は ,「心を癒すためのやさし
い運動に親しむ活動」といった運動領域的なアプローチであったり ,「医学的な解決の方法を探
り,それを実践する活動」といった保健領域的なアプローチであったりする。さらには,心と心
のふれあいを求め地域や社会の様々な人たちとのスポーツの交流やボランテ イア活動などダイナ
ミックな活動の展開ができる。
イ
自然との関わりの深い活動
自然体験的な活動の重要性は,保健体育審議会や教育課程審議会の答申においても述べられて
おり,今後各学校の創意・工夫による充実・発展をしていく必要がある。
具体的には新たに加わった「水辺活動」という言葉を手がかりにすれば,やはり「泳ぐ」とい
う活動を挙げる。より具体的な活動としては,潜ったり波とたわむれる活動が考えられ,さらに
は,水中めがねや足ひれを用いてのスキンダイビング的な活動への発展等が考えられる。
ウ
野外活動
これまでも学校行事として実施されている「野外活動」についても再検討が求められる。それ
は ,「野外活動」を子どもの問題解決の学習として位置づけ,子ども自らの計画立案・実施とな
れば,総則体育との関わりの中で,総合的な学習の時間のねらいに十分答えることができる。
エ
福祉・健康にかかわる活動
ここでの活動を考えると ,「保健領域」の学習内容の発展や福祉など幅広い内容を含めた健康
59
問題を課題とすることができる。具体的には,エイズ,歯・口の健康,薬物乱用防止,併せて人
権などが考えられる。さらには ,「障害者スポーツ」などを福祉との関連で取り上げ,主体的に
学ぶ児童の育成を目指したい。
(4) 特別活動との関連
ア
学級活動
学級活動とは ,「学級を単位として学級や学校の生活の充実と向上を図り,健全な生活態度の
育成に資する活動を行うこと」である。さらに ,「児童による自主的・実践的な活動の助長や児
童の自発的・自治的な活動が効果的に展開されるようにする」ねらいがある。
したがって,この内容のねらいを受け,学級活動の中で取り組む活動を通して,それぞれの特
質に応じて総則体育と関連付け展開することが必要である。
(ア) 学級や学校の生活の充実と向上に関すること
児童の学校生活は,学級という集団を単位として展開される。そこでの児童は,自分たちの
学級生活を自分たちの力で向上させるために様々な活動を意欲的・自主的に行う。この活動の
中で行われる身体活動が総則体育にとって重要な意味をもつ。運動や遊びの計画・実践は,総
則体育そのものである。したがって,意図的・計画的に開催することが大切である。また,学
級・学年を越えた異学年集団活動等への発展は,大いに価値あることで,積極的に取り組むべ
き意味ある活動である。
こうした活動では,学級における好ましい人間関係のあり方や諸問題を適切に処理する行動
力が必要になる。また,自己を正しく判断し生かすことが大切である。そして,学級生活におけ
る人間関係の改善,児童の不安や劣等感の解消,学校や学級の規則に関する指導の徹底などが
共通的な指導内容として考えられる。
(イ) 日常の生活や学習への適用及び健康や安全に関すること
総則の「健康の保持増進」との結びつきから,学級における健康観察や保健指導・安全指導
は,児童が自分の健康状態を把握し管理できるように,保健学習的な立場から指導することが
大切である。身体や衣服に関する指導,病気の予防や環境の衛生に関する指導など,学級や児
童の実態に即して指導していくことに意義がある。さらに発展して,身近な日常生活における
健康の問題を自分で判断し,処理できる能力や態度を養い,心身の健全な発達を促すように展
開する必要がある。
また,給食指導では,食事の正しいあり方を体得させるとともに,食事を通して好ましい人
間関係を育成することが大切である。そこでは,衛生面の指導と食物,健康維持・増進につい
て調和を考えた指導が必要である。
イ
児童会活動
児童会活動は ,「自発的・自治的な活動」にその特質がある。その中で「体力の向上及び健康
の保持増進」に関係した内容を取り上げ,その方針を決め,自分たちの仕事とすることが大切で
ある。そうすることにより,生活内容・生活行為そのものとして,スポーツライフへとつながる
体育・スポーツへの実践的態度,意識づくりへつなげていくことが大切である。
また,異年齢集団による自発的,自治的な活動が活発に行われるようにするため,学級活動な
60
どとの関連を一層図ることが必要である。
具体例をあげると次のものが考えられる。
ウ
・
運動会・球技大会等体育に関する行事の企画・運営
・
体育施設を利用した運動や遊びの紹介・各種大会
・
体育的クラブ活動の紹介
・
運動に関する調査や発表
・
季節に応じた服装や運動・遊びの紹介
・
体育に関する器具や備品の整理
・
遊びやけがの調査・発表
・
保健・安全に関したポスターやグラフの作成と掲示
・
保健・体育・スポーツニュースの編集・発行・掲示
・
清潔検査の実施と結果の発表
・
学校環境の整備
・
給食や交通安全に関する活動
学校行事
学校行事については,ボランティア活動など奉仕活動の精神を育てる体験や幼児,高齢者,障害
のある人とのふれあい,自然体験などを充実することとした。また,各学校が取り上げる活動につ
いて学校や地域の実態に応じて重点化するとともに,行事間の関連や統合を図るなどの工夫をした
り,精選したりして実施する。
学級単位の体育の活動では,友だちと競争したり,話し合ったりするなど,決まった枠の中でし
か活動できないが,学級という枠を外し,学年・学校単位などの集会や大会などにすると,子ども
たちの視野や関わり合いが広がり,運動に対しての楽しさが高まる。したがって,体育学習の応用
としての体育的行事を考えたい。
具体的に言えば,球技の授業の終わりに,学年で学級対抗の集会を設定する。まさしく体育の学
習を生かす場でもある。同時に,ゲームや集会など運営面での向上も期待できる。
61
4
総則体育指導の全体構造
総則体育の
趣
学校の教育目標
旨
体育の今日的課題と
体育に関する本校の実態と課題
スポーツライフ
学校教育活動全般の体育的活動
教
科
道
徳
特別活動
総合的な学習の時間
部活動
体育に関する指導を支える条件
①全職員の総則体育の理解
②施設用具の充実と活用
③体育的環境整備
④体育に関する資料の整理と活用
⑤地域社会の理解・協力
⑥豊かなスポーツライフへつなげる実践
総則第1の3は,学校教育活動全般の体育的活動や指導を意図するものである。その内容は,今ま
でに述べてきたようなことであるが,あくまで「明るく豊かで活力のある生活を営む態度の育成を目
指し,生涯にわたる豊かなスポーツライフ及び健康の保持増進の基礎を培う観点に立って内容の改善
を図る」という体育科の目標を目指した教育活動を展開しなくてはならない。それには,教科・道徳
・特別活動・総合的な学習の時間・部活動等に含まれる学校教育活動全体を視野に入れることはもち
ろんである。そして,活動の基盤となる体育に関する指導を支える条件(上記,総則体育指導の全体
構造図参照)を整えながら,学校教育活動を充実していきたい。
また,総則体育は,教科体育をも包括するものであり,体育教育の方向性や指導展開の方向を意味
するものである。近視眼的に,子どもの体力や運動の技術の習得に偏った学習を意味するものではな
い。子どもにとってもっと柔軟に,あらゆる教育の場を利用して,体育・スポーツを考えることであ
る。
62
=
Q5
Q&A
=
総合的な学習の時間と体育科との関連として「自然とのかかわりの深い活動」の
具体例はどんなものがありますか。
A1
「水辺活動」と「泳ぐ」活動
ア
学校近くの自然を生かした水辺活動
・川や海の自然を生かした,筏つくりと筏遊び
・海や川のスポーツフィッシング
イ
自然を生かした泳ぐ活動
・海辺の学校では,初歩的スキンダイビングやボディーボード
A2
「体ほぐしの運動」の 発展
ア
陸の活動
・ウォーキングや登山
・クロスカントリー
・農園活動
イ
水の活動
・水中エアロビクス
・水中ウォーキング
Q6
学級単位の枠をはずした異学年・異学級の集団による具体的活動の例にはどんな
ものがありますか。
A1
学年単位での活動
ア
学年対抗スポーツ大会
イ
単元の終了時に,学級対抗集会活動
A2
異学年集団活動
ア
全校6色縦割り対抗各種スポーツ大会(運動会,駅伝大会,綱引き大会,縄跳び大会)
イ
全校縦割り遠足
ウ
全校縦割り集会活動
・新入生歓迎会
・ふるさと探訪ハイキング
・清掃活動
・卒業生を送る会
63
第5章
1
特別活動に含まれる体育
健康安全・体育的行事
(1) 性
格
健康安全・体育的行事は,特別活動の中の学校行事に含まれる教育活動で,学校が計画し実施
する活動であるから,特別活動の教育的意義を満たすものでなくてはならない。このことから次
のような性格をもっている。
ア
全校又は学年を単位として,教師の適切な指導のもとで,自主的,実践的に集団で活動する
ものである。
イ
教師と児童及び,児童と児童の人間的な接触を基盤とする教育活動である。
ウ
すべての児童のそれぞれの人格の発達を目指すものである。
エ
総則体育の趣旨にそった教育活動である。
オ
学校の創意と教育的識見を生かし,地域,学校,学年などの実態に応じた教育活動とすべき
である。
カ
児童の能力,適性などの発見と伸長,及び協力などの社会性を目指す教育である。
日常的な活動
業前運動・業間運動・業後運動
弾力的な時間の適用
運動会(春・秋)
健康安全・体育的行事
校内競技大会(水泳・球技・持久走等)
体力テスト
プ−ル開き・プ−ル納め
定期的活動
健康診断
健康・安全や給食に関する意識を高める行事
大掃除
避難訓練
交通安全指導
(2) ねらい
健康安全・体育的行事においては,次のようなねらいを明確にして実施することが大切である。
ア
集団活動を通して心身の健全な発達を図り,健康の保持増進について関心を高める。
イ
安全な行動や規律ある態度を育てる。
ウ
行事に積極的に参加させ,日常の学習成果の総合的な発展を図る。
エ
全校及び学年集団への所属感を深めさせるとともに,集団行動における望ましい態度を育て
る。
オ
児童を運動に親しませ,その楽しさを味わわせ,体育の生活化を図るとともに,体力・気力
の充実を図り,自立・共同・公正・責任等の態度を育てる。
カ
校風を理解させ,かつ,それを高める。
64
(3) 体育的行事の具体例
ア
運動会(例)
(参照
県教委「集団行動指導の手引き 」)
(ア) ねらい
・
体力,気力の充実を図る。
・
正しい競争や共同の精神を通して,公正に行動し,規則を守りお互いに協力して責任を果
たすなど社会生活に必要な能力,態度を養う。
・
計画の立案や運営に児童を積極的に参加させる。
・
児童を運動に親しませ,その楽しさを味わわせ体育の生活化を図る。
・
集団生活における望ましい態度を育てる。
(イ) 留意点
・
伝統のある種目を大切にするとともに,内容のマンネリ化を防ぐようにする。
・
練習のために他教科が犠牲になりすぎないようにする。
・
日常の体育学習の成果が発表できるように,教科体育の充実を図る。
・
種目には,学習発表的なもの,レクリエ−ション的なもの,競技的なものがある。どこに
重点をおいた会にするか十分検討する。
・
子供の運動会であることを常に重視し,種目,係活動,練習,応援等について適切に選択,
指導する。予行練習については,練習のためにするのでなくて,常に真剣な気持ちで取り組
めるようにする。
・
教師一人一人が,ねらいを確認し計画的に指導する。
・
児童会等の組織を生かして,児童の自主的活動を助長する。
・
演技の指導とともに,見る態度についての指導も十分行う。
(ウ) 当日までの日程
月
日
7.
夏休み
9.12
16
教
師
職員会議
学年会
係打合せ
プログラム編成
17
20
24
児
原案の検討
学年の演技内容検討
係の仕事を検討する
童
内
容
児童代表委員会
運動会に対する要望
児童委員会
準備活動
通学団会
リレ−選手の選出
児童委員会
準備活動
案内状発送
運動会予行
27
(1・2時限)
運動会準備(5・6時限)
28
30
1
容
特別時間割による練習開始
25
10.
内
運
動
会
当
日
代日休業日
事後指導・係の反省
児童委員会
65
反省(話し合い)
(エ) 係
係
分
担
委員会
運動会までの仕事
前日の準備
運動会当日の仕事
総務
運動会全体の総括
運動会総括,あいさつ
庶務
案内状の作成・発送,参加賞
表彰,来賓の接待,開閉会
来賓の昼食準備,会計
式の典礼
進行
児童会 プログラム編成,演技時間予定
競技
器具
表作成,応援合戦企画
体育
信号器・計時道具の準備
トラックのライン引き
タイムの測定,着順判定
飼育
係リボンの準備
リボン配布
監察,競技ラインの補修
園芸
演技図作成と配布,器具の準備
器具の準備・点検
器具の配置と撤収
集会
放送
演技進行の指示,各係との
役員
連絡,演技進行時間の記
美化男 種目責任者との打ち合わせ
記録
仕事の分担と打ち合わせ
放送
(たすき,旗,バトン等)
得点表作成,賞状・盾準備
得点表掲示
得点の記入,賞状作成,ビ
テ−プ・フィルム準備(購入)
ビデオカメラ準備
デオ撮影,掲示(後日)
放送設備・テ−プ・CDの準備
係分担
入場・退場・演技中の音楽
(購入)放送原稿の内容検討
放送テスト
演技・記録の紹介・発表
アナウンス練習
会場
広報
遊具使用禁止札
本 部・ 観覧 席・ 遊具使 用禁 校内会場の見回り
図書
駐車場札準備
止 札・ 駐車 場・ 万国旗 ・入 校舎の戸締まり
退場門の設置
救護
接待
イ
保健
救急薬品の準備,校医との連絡
美化女 接待用具の準備
体力テスト(例)
(参照
救急用具の準備
救護場所設置,応急処置
来賓休憩所の設置
来賓受付,案内接待
県教委「体力つくり推進事業堤要 」)
(ア) ねらい
児童生徒が自分の体力の現状を確かめ,その結果に基づいて,不足している体力を高めるよう
に努力するとともに,各種のスポ−ツ活動に親しみ,心身を鍛練してその健全な発達を図り,健
康に自信をもって生活できるようにするために行う。
66
(イ) 種目(8種目)
握力,上体起こし,長座体前屈,反復横とび,20mシャトルラン,立ち幅跳び,ソフトボ−
ル投げ,50m走
(ウ) 対象者
第1学年から第6学年まで全員を対象とする。
ウ
校内競技大会
(ア) 学年別水泳大会(例)
○
ねらい
・
正しい水泳能力の増強と,学級の連帯感を高める。
○
種
・
低学年
目
水中かけ足リレ−・ビ−ト板リレ−・色板拾い競争・ロ−プくぐ
り競争
・
中学年
25m競泳・100mリレ−
・
高学年
50m競泳(自由形,平泳ぎ )・25m競泳(背泳ぎ)
100mリレ−(女子 )・200mリレ−(男子)
☆各学年
泳力測定(全員)
○
参加制限
・
一人一種目,ただしリレ−は兼ねてよい。
○
表
・
学級対抗形式とし,競泳,泳力測定に得点を決めておき,総合得点により,
彰
1位,2位の学級に賞状と盾を授与する。
○
その他
・
競泳はタイムレ−スとする。
(イ) 長距離走大会(例)
○
ねらい
・
事前かけ足などの体力つくりの成果を確かめる場とし,体力・気力の向上を
図る。
・
学級集団への所属感を深めさせるとともに,集団行動における望ましい態度
を育てる。
○
○
方
表
(ウ) その他
法
・
彰
距離(ゴ−ル地点は同じ)
低学年
2∼3分程度(600m程度)
中学年
3∼4分程度(1000m程度)
高学年
5∼7分程度(1500m程度)
・
完走した児童には完走賞を与える。
・
次の表をもとに学級対抗にすることもできる。
順位
1
2
3
……
9
10
11∼12
21∼30
……
90∼
得点
19
18
17
……
11
10
8
8
……
0
○
監視割り当ては,別に定める。
○
スタ−ト場所の整理と着順判定員は各学年で係を決めておく。
○
ゴ−ル地点では,着順ですみやかに整列するように指導しておく。
67
○
途中で体調が悪くなった場合は走るのをやめ,近くの先生にその旨を知らせ指示
を受けるよう学級で指導しておく。
エ
野外活動(例)
☆
臨海学習
野外活動は,本来,遠足・集団宿泊的行事に含まれるが,体育との関連が深いのでここに示す。
(ア) ねらい
・
自然保護や環境についての正しい知識を学習する。
・
子供たちに感動を体験させる。
・
感動を通して,知的好奇心を呼び覚まさせる。
・
言葉の概念を豊かにする。
・
豊かな人間関係を学習する。
(イ) 運営分担
総
務
全般的な監督,渉外,見学場所の選定
庶
務
計画立案,日程の進行,開・閉校式,朝・夕の会の運営
会
計
経費集金,支払い,会計報告,必要物資の購入
記
録
諸記録,写真撮影,展示
指
導
(ウ) その他
生
活
起床指導,就寝指導,清掃分担と指導,持ち物管理
水
泳
水泳班の編成,指導計画,安全対策,水泳場の管理
学
習
見学場所の見学計画,海浜学習の計画と指導
レクリエ-ション
ダンス大会,花火大会,すいか割り大会の計画と運営
食
事
食事の準備とかたづけ指導,おやつの準備と配布
保
健
健康診断計画,事前保健指導,救急処置の準備
実施にあたっては ,「野外活動の指導とこれに関する事故防止について 」(昭和44
年4月25日
オ
44教体号外)を参考にする 。(※愛知県教育例規集参照)
日常的な活動
体育科の目標を達成させるためには,教科における取組だけでなく,教科外での体育的な活動を
重視しなければならない。
子供たちの学校における生活時間をみると,その大部分は通常の教科課程に基づいて費やされる
が,それ以外の自由時間も決して少なくない。このことから,すでに多くの学校では,こうした時
間を有効に活用するために,業前体育,業間体育などの時間を設け,学校体制の中で意図的に,子
どもたちの遊びを組織化するための努力がなされてきている。今後は,日常の体育的な活動の場を,
どのように展開していくのかを学校の実情に応じて工夫していくことが大切である。
(ア) 業前体育(例)
○
○
ねらい
・
自分の体や心を目覚めさせる運動をする。
・
自分のめあてをもって運動をする。
活動内容,期間
1学期
毎週火曜日の8時25分からの10分間
4月末∼7月中(毎週火曜日)ストレッチ体操,長縄跳び
68
2学期
10月(毎週火曜日)
3学期
1月中∼3月中(毎週火曜日)短縄跳び
○
11月(毎週火,水,木,金曜日)マラソン
方法
・
1学期
富士見スポ−ツタイム(毎週火曜日)
4月17日,24日,5月1日,8日,15日,22日(富士見体操
6回)
5月29日,6月5日,12日,19日,26日,7月3日,10日
(長縄跳び
○
7回)
活動の流れ
8:20
・
音楽開始
8:25
・
集合整列(朝会の隊形)
クラスごとに各学級担任が健康観察
見学者は,校舎側の鉄棒で見学をする 。(養護教諭)
8:28
・
活動(体操,長縄跳び)
8:33
・
音楽(歩く)
☆
指示
1,2年生が先に歩き出す。
3,4,5,6年生は ,「回れ右」をして,トラック半周
をめどに,すばやく歩く。
8:40
・教室に入る 。(完了)
(イ) 部活動
○
ねらい
・
主として高学年の児童に,スポ−ツを通して運動の楽しさを味わわせながら社会性の
発展と体力の向上を図る。
○
活動時間
・
毎週月曜日から金曜日(行事のある日は除く)の授業後1時間から2時間。
・
日没30分前には下校できるように配慮する。
○
その他
・
対抗競技会(指導会)については,部ごとの計画にしたがい無理のないように参加す
る。
・
学校の規模によっては,年間固定した部をいくつか設けて実施することも可能であろ
う。
2
体育的クラブ活動
(1) 性
格
クラブ活動は,学年や学級の所属を離れ,主として第4学年以上の同好の児童の組織である。
児童が所属する集団の生活を豊かなものにしようとする意図の下に,共通の興味関心を追求する
活動を自発的自治的に行うことに教育活動の本質が見いだされる。従って,体育的クラブ活動に
69
おいても,児童の興味・関心を啓発して,自発的に各種の運動に参加させ,その体験を通して個
性の伸長,自主性・社会性の育成を期待するところに教育的意義を認めることができる。言い換
えるならば,体育的クラブ活動という集団生活に参加して,集団討議・集団練習や集団思考のあ
り方を体験し,仲間と共同で自分たちのめあてを決め,活動計画を立て,身をもってその実践に
努力することによって,望ましい態度や技能を習得していくのである。また,活動を通して運動
それ自体のもつ楽しさ・喜びを体験させることで,運動との楽しい付き合いを覚え,自分の興味
・関心や目的に合わせて運動を選択する能力や,心身の健康問題への対応についての態度や能力
を養い,スポ−ツライフへの基盤づくりに目を向けていくのである。
(2) ねらい
体育的クラブ活動は,共通の運動をグル−プを主体として活動するので,民主的人間関係を経験
する機会も多く,望ましい社会態度の育成や運動技能の向上,体力の増強等,子どもたちの人間形
成上での貢献度が大である。このような観点から,次のようなねらいを上げることができる。
ア
集団活動に参加し,自発的・自治的な活動を通して,社会的協力の態度,きまりや秩序を守る
態度,リ−ダ−シップのあり方など民主的人間関係を助長する。
イ
興味・関心を増進し,興味を豊かにする。
ウ
余暇を有効に活用して,個性を伸長するとともに体育的活動の生活化を図る。
エ
運動技能を向上させ,体力を増強する。
オ
生涯にわたり明るく楽しく健康的な生活を営むために,運動との楽しい付き合い方を覚える。
(3) 組
織
学校の現状に合ったクラブ活動を実施するには,教師間の共通理解の上に立った指導組織と児童
の希望が反映された組織が必要である。
ア
基本的配慮事項
(ア) 児童の興味・関心をできるだけ生かすクラブを設置すること。
(イ) クラブの所属についても,個々の児童の希望を大切にすること。
(ウ) 教科の延長としてのクラブは設置しないこと。
(エ) 年間を通じて活動できるクラブを組織すること。
(オ) 学校の施設・設備や地域の実態に即した組織であること。
イ
クラブ編成
児童の希望を充分に尊重して組織することは当然であるが,クラブの選択に関する指導は学校
全体の計画の中で,計画的に進めなければならない。事前に,各クラブの状況を理解させる指導
を進め,積極的な参加意欲を高めるように配慮する必要がある。
70
クラブ編成の過程図(例)
クラブ希望調査
クラブ設置
加入指導
紹
調
整
・希望調査
・仮加入
発足
介
・教育的価値
ウ
加入調査
・指導者
・ねらい
・施設用具
・活動内容
・1日加入
正式加入
クラブ編成と所属の定め方
児童の希望調査,教師の希望調査をもとに,学校運営や施設・設備を考慮したクラブを設置し,
児童に対して「クラブ選択と所属の定め方」の指導を行う。
(ア) 事前指導
・
新年度当初,集会・学級指導などを通して,クラブ活動の性格・ねらい・組織・運営・活
動状況の概要を知らせて意欲を高める。
(イ) クラブ紹介
・
集会時等で,クラブ代表が各自のクラブのねらい・活動内容の実際を説明する。
・
学級新聞,掲示板,ポスタ−,校内放送などを通して知らせる。
・
一定期間,各クラブ活動の実際を見学させる。
・
学級指導でクラブ活動の選択について,適切な指導・助言をする。
(4) 指導計画・活動計画
クラブ活動は,児童の自発的な集団活動を基本とするものであるから,児童の手によって具体的
で細かな活動計画が立てられるようなものでなければならない。そのための指導計画には,児童の
活動として取り上げる具体的な内容,方法,時間,場所などについて,学校運営上や教育的意図の
上に立ち,あらかじめ基本的な枠組みを決めるなどの配慮が大切である。
ア
年間指導計画
年間指導計画は,児童が各クラブの年間活動計画を作成する際の手掛かりとなり,自主的な活
動をするための援助となるものでありたい。したがって,その計画は固定的なものにすることを
さけ,児童の要求を受け入れるものなくてはならない。
イ
活動計画の作成
クラブの構成がされ,クラブ長,副クラブ長などの組織づくりが終わると,実際の活動が開始
される。活動の展開に当たっては,各クラブでの話し合いによって自主的に計画していくところ
に意義がある。しかし,計画作成に当たっては,年間指導計画,他クラブや児童会,学校行事な
どとの関連,選定する内容などクラブ担当の指導・助言が必要である。また,各クラブの特色を
生かした計画になるよう配慮することも必要である。
ウ
クラブ活動指導案・活動案
クラブ活動を生き生きとした活動にするためには,児童自らの創意工夫によって計画を立てさ
せることが大切である。しかし,児童には,細かな点まで配慮した活動計画を立てることは難し
71
いことである。教師は,児童自身の手で計画がされ,実践計画に移すという原則に近づけるよう
配慮し,適切な助言をすることが大切である。
(ア) 活動案作成の手順
年間計画に従い,活動目標を立てる。それに基づき,クラブ長が中心となり,活動内容や方
法を検討して活動案を立てる。活動案は,事前にクラブ担任に提出し,指導助言を受ける。そ
して,準備を整え,クラブ員に連絡する。
(イ) 時間の取り方
各学校が必要と思われる授業時数を設定し,児童の興味・関心を踏まえて計画し実施できる
ようにする。総則第4の2に「年間,学期ごと,月ごとなどに適切な授業時数を充てる 。」と
示されていることの趣旨を十分に踏まえることが大切である。そのため,クラブ活動の授業時
数についてはクラブ活動が教育課程に位置付くことの意義を踏まえ,各学校の実態に応じて計
画的に実施できるよう適切に配当する工夫が必要である。
(5) 運営・指導上の留意点
ア
クラブ内の組織を作る時
クラブが活動しやすい組織を児童の話し合いによってつくるわけであるが,その際,次のよう
な助言が必要である。
(ア) 前年度の記録や役割分担の仕方などを参考にして,十分に話し合って決めさせる。
(イ) 役割が6年生だけでなく,5年生や4年生の児童にも一部を分担させる。
(ウ) 人数によっては,クラブ内にいくつかの班を構成する。その際,できるだけ4年生から6年
生までの男女が所属するようにさせる。
(エ) 班は固定しないで,必要に応じて編成替えを行うようにさせる。
イ
活動計画を作成する時
前年度の活動記録をもとに,クラブ員によって児童が活動計画を作成することになるが,その
際,次のような指導・助言が必要である。
(ア) 6年生だけが実施できるような計画だけでなく,下学年の児童のことも配慮して立案する。
また,個人差や能力差に対しても配慮する。
(イ) 学期,月程度の計画を立てて,活動を開始しながらより適切な活動計画を作成する。
(ウ) 活動場所,用具,予算などについて検討して計画を立てる。
(エ) 道具等は,可能な限り家や学校で間に合うように工夫する。
ウ
実際の活動している時
児童の自発的・自主的活動を大切にし,児童が活動に行き詰まった時に,教師がいくつかの方
法を例示して,その中から児童に選択させるようにする。
(ア) 計画からはずれていないかを留意して活動させる。
(イ) 活動計画の変更は,全員でよく話し合った上で変えさせる。
(ウ) 学年別,男女別,能力別の集団活動にならないように気をつけさせ,協力的な活動が展開で
きるように助言をする。
(エ) 活動時間を守り,予定時間を越えないように留意させる。
72
(オ) 1回の活動の終末には,活動のまとめをさせると同時に,指導・助言を与える。
エ
成果を発表する時
クラブ活動の成果や活動の様子を発表することは,児童の活動意欲を高めるばかりでなく,下
学年の児童にクラブ活動についての理解を深めさせるためにも必要である。
また,発表だけが目的ではなく,発表に至るまでの協力的な実践活動がどのように自発的に工
夫され進められたかが大切である。したがって全員が参加して発表できるように指導・助言する
ことが必要である。
(6) 評
価
評価の観点は,学校や児童の実態によって考慮される必要がある。以下評価の観点の一例を挙げ
る。
ア
指導計画の評価(教師側)
・
取り上げた行事は学校教育目標達成に有効なものであったか。
・
児童の問題解決学習を大切にし,ねらいが明確であったか。
・
教師の分担が適切で,個に対する指導助言が機能的に行われているか。
・
健康と安全について十分に配慮されたか。
イ
児童の自己評価及び相互評価
・
学習内容に対して生き生きと取り組むことができたか。
・
問題を自ら発見し,解決に向けて努力できたか。
・
問題解決のために努力した友達の活動の様子はどうであったか。
・
友達の姿から学んだことや考えさせられたことは何か。
・
集団の中の一員として協力できたか。
73
第6章
体育の安全指導
近年,体育・スポーツがさかんになるにつれて,事故も多発化の傾向にあり,学校における各種体
育的活動時に発生する事故は,決して少なくない現状である。学校では,精神的にも技術的にも未熟
な多数の児童を擁しているばかりでなく,体育的活動自体に危険な要素を含み,他の教育的活動にく
らべ事故の割合は大きい。そこで,児童が,生涯を通じて,健康で安全な生活を営むことができるた
めに,必要な知的理解を図り,かつ安全な行動のとれる態度や能力を身につけるよう努めなければな
らない。ここに安全指導の立場から留意事項をかかげておいたので,十分に活用するとともに,事故
防止のためのきめ細かな指導体制がとられ,適切な指導ができるよう配慮することが大切である。
1
体育・スポーツ事故の実態
ここでは,学校管理下の災害について,日本体育・学校健康センター愛知県支部の平成10年度
資料により体育・スポーツ事故にかかわる実態を示した。
《小学校,学校管理下における事故実態の現状(表1)》
活 動 状 況
教
科
体
事故件数
育
5,968
発生率(%)
事
18.9
故
教
要
愛知県6.61%
発生率
他
概
(全国平均5.85%)
科
1,919
6.1
全国第13位,給付額全国第35位
体育的クラブ活動
424
1.3
校舎外
①運動場
②体育遊具施設
校舎内
①体育館
②教室
場所別
体育的学校行事
372
1.2
体 育 的 部 活 動
2,862
9.1
中
14,098
44.7
児童・学級活動
3,153
10.0
休
憩
資料「学校安全」vol.38より
備
登 校 下 校 中
1,681
5.3
そ
1,069
3.4
の
合
他
計
31,546
考
※
この資料雑誌は,各校の養護教諭
の手もとに保管されている。
100
事故実態の現状(表1)からもわかるように,指導下において,18.9%の「教科体育」は,
74
6.1%の「他教科」と比較して,危険な要素を多分にふくんだ教科であることを認識しなければ
ならない。したがって日常の体育指導においては,安全に十分留意することが重要である。
2
事故原因の把握と留意点
体育活動において発生した事故については,各学校でその原因・誘因及び処置や結果についてす
みやかに分析検討を加え,今後の指導資料とすることが大切である。
身体活動時における事故の直接原因は,打撃,衝突,転倒,墜落等である。それらは,天候,気
温,施設用具の状況に影響されることが多い。また,内的条件としての不安や疲労,不注意,更に
は指導者の不手際や怠慢が事故原因になる場合も少なくない。
(1) 安全に関する基本事項
3
ア
教材研究と施設用具の安全点検や配慮計画をしておくこと。
イ
児童が学習内容を事前に理解していること。
ウ
健康観察は授業の始めと終わり,また,活動中にも顔色や動きに留意すること。
エ
準備運動・整理運動の質量が適正であること。
オ
運動種目に適した服装であること。
カ
運動のルール無視や厳正を欠くことないようにすること。
キ
技能指導は児童の実態に適応し,段階的,発展的であること。
ク
病中,病後の運動はつつしませ,日常観察や家庭からの連絡資料を把握しておくこと。
ケ
固定施設は使い方によって危険をともなうので,禁止事項を定め守らせること。
施設と器具・用具の安全管理
(1) 施設
ア
運動場
(ア) 危険物,障害物等には絶えず注意をはらい除去に努める。
(イ) 排水をよくし,水たまりをなくす。また,乾燥のつづく時の散水も必要である。
(ウ) 砂場の整備には常々留意し,排水をよくし,危険物を除き,常に砂場を柔らかくしておく。
(エ) 雨あがりの使用条件を定め,無謀な車両の進入を防止する。
(オ) 冬場には凍結防止剤を散布する。
イ
体育館
(ア) 床のすべりに留意するとともに床の損傷を防ぐ。窓ガラスや戸はネットや格子で保護する。
(イ) 通風・換気に注意し,照度の確保にも留意する。
(ウ) 活動中は必要以外の用具を整理整とんし,安全管理に留意する。
ウ
プール
(ア) プールサイドの床面の凹凸やタイル部分の破損に留意する。
(イ) 排水口の安全設備や循環ろ過装置の点検には細心の注意をはらう。
(ウ) 手すり,ロープ用フックや締め具及びコースロープワイヤーの腐食の防止に努める。
75
(2) 器具・用具
ア
体育器具・用具の設置購入年月日を記入した備品台帳を作成し,その耐用年数を確かめて,
計画的に点検・整備,補充をする。
イ
年間指導計画に応じ,使用する器具・用具の使用計画をもち,所在を明確にし,配置の適正
化を図る。
ウ
校内安全委員会(仮称)で,安全点検表(例1)を作成し,日常の授業での点検以外にも定
期的総合点検をする。また,各週,月の安全点検には,点検しやすい形式の一覧表(例2)を
工夫し,よくわかる所に掲示保管し,点検結果が生かされ,すみやかに修理なり部品の取り換
えの処置ができるように努める。
安
《安全点検表
運
動
場
・
遊
項
目
分
運
動
場
検
具
表
体
方
検
点
例1 》
区
点
全
法
区
目
打
振
負
作
視
音
動
荷
動
石等危険物の有無
○
フェンスの破れ
○
U字溝のふたの状態
○
雨水の流れた跡の状態
○
点
バスケットゴールの固定
○
検
項
目
分
目 打 振 負 作
体
床面の状態
○
内壁の状態
○
ガラスの割れ
○
鍵の状態
○
遊
具
○
基部の状態
○
錆の状態
○
各部分の取付の状態
○
ナット,ボルトのゆるみ
○
○
窓
○
育
○
○
○
窓の動きぐあい
フロアーの金具の破損
○
○
床面の滑りの状態
異常な揺れ
法
視 音 動 荷 動
○
○
館
方
床
サッカーゴールの固定
育
○
出
鍵の状態
入
戸の動きぐあい
口
出入口の障害物の有無
○
非常口の標示灯の状態
○
館
○
○
○
バスケットゴールの固定
○ ○
木部の腐りの状態
器
審判台の状態
○
木部のささくれ
具
ボールかごの状態
○
○ ○
○
目視
ゆがみ,亀裂,摩耗,腐食等については様々な角度から注視する。
打音
損傷,腐食していないかハンマーでたたいて,ぐらつきや音で確かめる。
振動
ぐらつきはないか,安定しているかなど振動を加えて確かめる。
負荷
重みに耐えられるか,ぶらさがる,押す,引く,ねじるなどの負荷を加えて確かめる。
作動
スムーズに動くか,回す,上下させるなど作動させて確かめる。
76
《安全点検表
例2 》
校
長
教
頭
校
務
保健主事
点
認
検
印
者
氏
印
点検日
施設・用具名
運
状
コ
×
くさりの摩耗
使用禁止標示
回転シーソー
△
金属音あり
注油
す
台
○
棒
○
サッカーゴール
△
ぺンキのはがれ,錆目立つ
マ
ッ
ト
×
角のほつれ
修理依頼
と
び
箱
×
布の止めクギゆるむ
止めクギを打つ
ル
△
バーの木部に亀裂あり,1台
使用禁止標示
ラ イ ン 引 き
○
フ
ー
○
ラ
場
ハ
り
鉄
ー
ド
ロ
ア
体
マ
ッ
ト
○
育
と
び
箱
○
館
登
な
○
台
△
卓
4
ン
べ
低
動
平成
結果
ブ
り
づ
球
態
折りたたみ脚不安定,ネジゆるみ
名
応急処置
年
月
処
日
置
5/13くさり取替
5/18ペンキ塗装
5/22修理,2枚
5/22修理,1台
とめネジを締め
事故発生の防止
体育的な諸活動においては,それぞれの運動で起こりやすい事故をおおよそ予想することができ
る。したがって,各運動の指導にあたっては,それぞれの運動機能の分析を行い,発展系統を知り,
学習者の能力にふさわしい段階的指導計画を用意する必要がある。事故を未然に防止するような指
導上の配慮が大切である。
以下,安全指導にかかわる基本的な事項をあげる。
・
運動場所の危険を取り除く。
・
固定施設,器具・用具の安全を確かめる。
・
使い方のきまりを守る。
・
運動後,手足を洗ったり,汗をふいたりして体を清潔にする。
77
《体育・スポーツ活動の安全指導の一例》
運動種目
サッカー
予想される事故・問題点
・
ボールばかり見ていて相手と衝突す
安全上の留意点
・
る。
ラインサッカー
・
鬼遊びなどにより衝突を未然に予知
し防ぐ能力を養う。
ボールを奪おうとするとき相手をけ
・
ったり押したりしてつまずかせる。
個人的技能のボール操作や対人動作
を味方や相手の攻防の関係がある動き
の中で系統的に指導する。
・
正しいショルダーチャージやタック
・
ルができず相手を倒したりつまずかせ
ゲーム中においてはボールや相手を
よく確かめ,乱暴なプレーはさける。
たりする。
・
ボールに密集していて強くけったボ
・
ールが顔や目に当たる。
密集している場合など,相手をかわ
したり,周囲の状況に応じた安全なプ
レーができるようにする。
・
インステップキックで足の甲にボー
・
ルが当たらず,つま先で地面をける。
・
顔より上にあるボールに足を振り上
段階的な指導を通して個人的技能の
定着をはかる。
・
げ,相手の顔をける。
足を相手の顔付近に上げるなど,危
険なプレーはルールの上からも禁止す
る。
バスケットボール
・
ポートボー ル
ドッジボール
ボールをキャッチするときの受けそ
・
こない。
・
基礎的なボール扱いの技能の積み上
げをはかる。
密集時におけるボールの奪い合いや
・
ショット時における相手との衝突。
自らがルールを厳守し,常にフェア
プレーに徹するように指導する。
・
児童の能力に応じたルールを設定し
ていく。
ソフトボール
・
バットを振る,投げることによって
・
起こるけが。
陸上運動
・
(短距離走
・リレー)
意に近よらせない。
走路の整地がされていないために起
・
こる事故。
・
危険物の除去,セパレートコースで
練習させるなどの習慣化を図る。
スタートダッシュ,疾走中の激しい
・
運動による事故。
・
バットを振っている人に注意し,不
児童の個人差を配慮した学習課題や
コースの設定をする。
バトンパス時の衝突,転倒。
・
安全な器具の工夫や段階的な指導を
する。
・
ハードル走における転倒。
・
能力に応じてハードルの高さ,間隔
を加減する。
・
長距離走(持久走)における事故。
・
事前の健康診断と健康観察,準備運
動,児童の体調及び気象条件などにつ
いて配慮する。
78
(走り幅跳び)
・
・
きる事故。
)
(走り高跳び)
砂場の整備がされていないために起
助走路,砂場の整地,各技術の分習
を十分に行う。
・
踏切がすべる。着地時の失敗。
・
未熟な着地。
・
安定度のないスタンド。
・
踏切がすべる。
・
補助器具を使用しての練習,安全性
のあるスタンドの設置をする。
・
特に走り高跳びについては安全に注
意した着地の段階的な練習を十分に行
う。
鉄棒運動
・
握り手のはずしからの落下。
・
逆さ感覚,回転感覚に慣れさせる。
・
恐怖心や筋力の不足。
・
無謀に振ったり,回転したりさせな
い。
・
手のひらのまめ,膝の裏の損傷,着
・
地時における事故。
・
補助具,補助者の活用,鉄棒の正し
い握り方を徹底させる。
上肢,下肢の損傷。
(回転,踏み越し時における)
・
準備,柔軟運動を徹底させる。
・
腕の支え,逆さ感覚,回転感覚に慣
れさせる。
マット運動
・
能力に即さない練習による事故。
・
自己の能力に応じて課題の克服にあ
たらせるとともに児童の技能の実態を
把握し,個に応じた指導に留意する。
・
規則や心得の無視から起こる事故。
・
使う器具を決め,順番をはっきりさ
せ規則正しく運動させる。
とび箱運動
・
運動中,安全確認を怠って起こる事
・
故。
マット,とび箱の調節などの役割分
担をして安全点検の習慣を身につけさ
せる。
・
規則や心得の無視から起こる事故。
・
練習する人数を少なくし,ふざけた
り調子に乗ったりしないように慎重な
態度で練習させる。
・
運動が調子よくできなかったとき起
・
こる事故。
恐怖心を起こさせない高さで慣れさ
せるとともに危険度の少ない種目で十
分力をつけさせておく。
・
徐々に高さを変えたり,手をつく位
置,体重移動に気をつけさせる。
79
5
事故発生の措置
事故が発生した場合,すみやかに適切な措置がとれるよう万全の救急体制を確立しておかねばな
らない。また,事故が発生した後には,全職員によって事故分析を行い,安全の管理と指導のあり
方を追求するとともに,事故の再発防止を心がけることが必要である。
(1) 事故発生時の救急体制
校長・教頭
市町村教委
教育事務所
学校医
事故発生
養護教諭
担
任
学年主任
県 教 委
保健主事
医療機関
保護者
(2) 適切な措置
ア
傷害の種類,大きさ,部位により,保健室までの運搬方法を考える。出血のひどいときには
応急処置をして保健室に運ぶ。負傷部位が頭部である場合は動かさないように留意し,状況に
よっては救急車の救援を待つ。
イ
学習中の場合は,他の教員に協力を求め,負傷者については,担任がすみやかに保健室で養
護教諭の手当てと指示を受けさせる。
ウ
学級担任は保護者に連絡し,事故の概要・処置方法等について説明する。
エ
重大事故が発生した場合は,前記連絡体制のように関係者に対し報告するとともに,万全な
処置対策を考える。とくに事故状況,救急処置等を克明に記録し,安全指導が適切であったか
どうかの反省資料とする。
オ
負傷者の家族に対し,誠意をもって事故処理にあたることが大切である。
カ
重大事故が発生した場合には,事故状況等を記録し市町村教育委員会に対しすみやかに報告
書を提出するとともに,日本体育・学校健康センター愛知支部に対しても必要な手続きをとる。
80
6
健康に配慮を必要とする児童・見学者の取扱い
健康に配慮を必要とする児童の授業における取扱いについては,その程度や種類に応じて,計画
的な指導が大切である。すなわち,指導にあたっては,次のような目標を立て学習させるような配
慮が必要である。
・
児童の既往症歴や定期健康診断の結果の把握と授業前・中・後の健康観察を十分に行うように
する。
・
自己の疾病の状態を認識させ,できるだけ健康の保持増進のための知識,技能,習慣を身につ
けさせる。
見学者の具体的な取扱いについては,指導者の適切な判断が大切である。次にその取扱いの一例
を述べる。
ア
患部を刺激しない程度で歩行や運動をさせる。
イ
軽い体操をさせる。
ウ
ゲームや競技の審判や記録をさせる。
エ
体育学習の記録や感想をノートにまとめ発表させる。
《例
学校生活管理指導表(小学校用)一部抜粋 》
【指導区分
:
A…在宅医療・入院が必要
体育活動
B…登校はできるが運動は不可
運動強度
用具を操作する運動遊び(運動)
C…軽い運動は可
D…中等度の運動も可
軽い運動(C.D.Eは”可”)
1・2・3・4年
5・6年
力試し運動遊び(運動)
長なわでの大波・小波・く
体の調子を整える手軽な運
体つくりの運動
ぐり抜け,二人組での輪の
動,簡単な柔軟体操(スト
体ほぐしの運動・体力を高める運動
転がし合い
レッチングを含む ),軽い
ウォーキング
運
走・跳の運動遊び(運動)
いろいろな歩き方,スキッ
陸上運動
プ,立ち幅跳び,ゴム跳び
立ち幅跳び
遊び
動
ボール型
ボールゲーム
キャッチボール
ゲーム
バスケットボール(型ゲーム)
パス,ドリブル,シュート
パス,ドリブル,シュート
投げ方,打ち方,捕り方
バッティング,捕球,送球
サッカー(型ゲーム)
種
ボール運動
ベースボール型ゲーム
ソフトボール
ソフトバレーボール
目
パス,レシーブ,サーブ
1・2・3・4年
器械・器具を使っての
固定施設
ジャングルジム
81
4・5・6年
E…強い運動も可】
中等度
7
事故例の考察
体育活動は危険性を含む要素が多く,安全面での注意を怠った指導により,児童が負傷・死亡等
に至る事故が発生したときは,以下のような論点で,国家賠償法に基づき地方公共団体を相手に訴
訟を起こされる事例が増加している。
・
指導者に事故に対する過失があったか。
・
事故を未然に防ぐ安全指導・点検がなされていたか。
・
事故発生直後の処置が適切であったか。
・
事故事実の確認と証拠の収集保存に万全が期されていたか。
教師は指導者として,施設面での安全や児童の能力を十分考慮したきめ細かな学習計画を立案す
るなど事前の準備に加え,活動中も常に児童の安全面には細心の注意を払った指導が大切である。
《小学校死亡事故例集(日本体育・学校健康センターより)》
学
年
性
別
災害発生
年 度
発生の
場 合
発生の
場 所
死
因
災
害
発
生
の
概
要
卓球クラブ活動時,本児を含む4名が,体育器具
頭蓋骨 庫から体育館に内折り式卓球台を運び,本児が一人
5
女
12年度 クラブ
体育館
(卓球)
底骨折 で広げようとした際,本児に向かって卓球台が倒れ
脳挫傷 下敷きになった。ドスンという音を聞いたクラブ担
任が,大急ぎで駆けつけ,卓球台を移動させ,本児
を助け出した。救急車で病院に搬送し治療を受ける
が,4日後に死亡した。
体育授業時にサッカーを行い,2時間目の図工授
業が始まり,しばらくすると「頭が痛い」と言っ
2
男
12年度 教
科
運動場
脳腫瘍 て,机にうつ伏せになり全身に汗をかいていた。教
(体育)
諭に抱えられながら保健室へ行き,ベッドに横にな
ろうとしたとき,嘔吐が始まった。母親に連絡し,
母親の車で病院に搬送し治療を受けたが,翌日死亡
した。
生活科授業時,プールでペットボトルで作った乗
り物を浮かべて遊んでいた。本児のグループは,深
溺
1
男
12年度 教
科
(生活)
プール
水 い方を目がけてバタ足をしていたが,ペットボトル
による の乗り物が児童達の重さで壊れそうになったため,
多臓器 浅い方に急いで戻った。しかし,本児は浅い方に戻
不
全 ることができず,プールの中でうつ伏せになってい
るのを他の児童が発見し,担当教諭に知らせた。急
82
いで本児を引き上げ,人工呼吸,心臓マッサージを
行い,救急車で病院に搬送したが,意識は回復せ
ず,24日後に死亡した。
陸上部活動時,町陸上記録会に向けて練習をして
いた。担任による健康チェックをして,準備運動
後,80メートル走を5本行い,100メートル走を開
6
男
12年度 部活動
運動場
(陸上)
急
性 始した。途中,足がもつれるように前のめりに倒
心停止 れ,自分で起きあがろうとしたが再び頭から滑り込
むように倒れた。担任が駆けつけ意識,呼吸,瞳孔
を確認し,人工呼吸,心臓マッサージを行い,直ち
に救急車で病院に搬送したが,2時間後に死亡し
た。
休み時間中,体育館で教諭の指導の下,縄跳びの
練習を始め,4∼5回跳んだところ,本児が急に頭
を抱えて床にしゃがみ込むように倒れた。側にいた
6
女
12年度 休
み
体育館
時間中
クモ膜 友達が声をかけても返事がなかったので,近くにい
下出血 た教諭に連絡し,教諭も声を掛けたが返事がなかっ
たため,保健室に運んだ。養護教諭が救急処置を行
ったが,意識がなく,呼吸も不規則だったので,す
ぐに救急車を要請し病院に搬送したが,6時間後に
死亡した。
運動会時,本児は児童席に座って見学していた。
後ろで2人の児童がふざけていたが,そのうちの一
1
男
11年度 運動会
運動場
腹部大 人が本児の背中にぶつかった。腰部打撲ということ
動脈瘤 で病院で治療を受けたが,痛みが強くなってきたの
で転医したところ,腹部大動脈瘤が判明し,保存的
な治療を行ってきたが,2か月後に死亡した。
83
参
考
文
献
小学校学習指導要領(H10.12)
文部省
小学校学習指導要領解説
総則編(H11.5)
文部省
小学校学習指導要領解説
体育科編(H11.5)
文部省
小学校体育実技指導資料
第7集
体つくり運動(H12.3)
文部省
東洋館出版社
小学校体育実技指導資料
第4集
水泳指導の手引(H5.5)
文部省
東洋館出版社
体育科教育(2001,2)
体育科の新教育課程をどうつくるか
久保
健
大修館書店
高橋健夫
大修館書店
体育科教育(2001,4)
「体ほぐしの運動」授業の確立をめざして
改訂
小学校学習指導要領の展開(体育科編)
池田延行
戸田芳雄
小学校学習指導要領の展開
体育科編
明治図書
編著
明治図書
編著
東陽館出版社
編著
ぎょうせい
編著
教育出版
池田延行
戸田芳雄
心と体の健康とスポーツ
編著
第3章(H10)
文部省
新しい教育課程と学習活動の実際「体育」
池田延行
戸田芳雄
新小学校教育課程講座「体育」
池田延行
戸田芳雄
村田芳子
小学校学習指導要領Q&A「体育編」
杉山重利
高橋健夫
野津有司
84
小学校体育指導の手びき作成委員
西 春 町 立 鴨 田 小 学 校
教
諭
石
川
孝
志
尾 西 市 立 朝 日 東 小 学 校
教
諭
江
本
弘
子
犬 山 市 立 楽 田 小 学 校
教
諭
吉
田
鋭
夫
美 浜 町 立 河 和 小 学 校
教
諭
林
津
校
教
諭
森
本
寛
幸
岡 崎 市 立 三 島 小 学 校
教
諭
太
田
信
政
三 好 町 立 緑 丘 小 学 校
教
諭
吉
野
嘉
郎
下 山 村 立 和 合 小 学 校
教
諭
中
野
隆
弘
新 城 市 立 東 郷 西 小 学 校
教
諭
林
豊 橋 市 立 富 士 見 小 学 校
教
諭
朝
倉
政
彦
尾
張
教
育
事
務
所
指導主事
湯
浅
隆
行
設
楽
教
育
事
務
所
指導主事
村
松
久
之
愛知県教育委員会体育スポーツ課
課
長
伊
神
勝
彦
〃
主
幹
猶
村
七
甫
〃
主任主査
関
屋
孝
徳
〃
主
査
天
野
博
昭
〃
指導主事
谷
島
市
立
東
小
学
徳
辰
口
孝
彦
亨
平成12年度 作成委員
三 好 町 立 緑 丘 小 学 校
教
諭
今
瀬
良
江
海
所
指導主事
武
藤
育
雄
愛知県教育委員会体育スポーツ課
体育指導監
下
向
祥
夫
〃
主
幹
天
野
孝
雄
〃
課長補佐
伊
藤
尋
思
〃
主
瀧
塚
祥
弘
部
教
育
事
務
85
査
小学校体育指導の手びき
平成14年2月
編集発行
愛知県教育委員会
学習教育部体育スポーツ課
名古屋市中区三の丸3-1-2
TEL(052)961-2111
印 刷 所
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