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水産資源レポート 沖合漁業 ・まき網漁業 ・イカ釣り漁業 ・沖合底びき網漁業 ・べにずわいかにかご漁業 沿岸漁業 ・ヒラメ、ナガレメイタガレイ、マダイ、サワラ 水産試験場の取り組み方針 1 限りある水産資源を賢く、末永く利用する管理技術の開発と提案 水産資源は重油などの化石燃料と異なり、上手に利用すれば自然に 増えていく資源です。しかし、漁獲の仕方や、水温や海流の影響で資 源が増減します。水産資源や海洋環境の状況を常に把握し、持続的に 漁獲できるような管理方法について研究しています。 2 県産魚付加価値向上に対する取り組み 鳥取県の美味しい魚の市場価値を高めるためにブランド化を推進し ます。 3 燃油高騰に耐える漁業経営体への技術・研究支援 燃油高騰の影響を受けやすいイカ釣り漁業や旋網漁業の経営が安定 するように、漁業者と協力して漁場探索をしたり、消費電力の低い LED集魚灯の実利用試験調査を行っています。 23 まき網漁業 1 鳥取県のまき漁業の概要 鳥取県における「まき網漁業」は、境港を基地 にしています。漁船規模により「大中型まき網」 と「中型まき網」に分けられ、通常は鳥取の大中 型と島根の中小型が水揚げをしています。夏のマ グロのシーズンには、石川、長崎、東京等の船団 も加わり、より一層にぎやかとなります。 【魚種】マアジ、マサバ、イワシ類、ブリ、 クロマグロ等 【漁場】隠岐諸島周辺:アジ、サバ、イワシ類 日本海中西部:ブリ、クロマグロ 境港のまき網漁獲量 【隻数】境港に水揚げする主な船団数 大中型:4船団 中小型:9船団 ※マグロの時期は船団数も増加します。 水揚量 トン 【漁法】「まき網漁業」は長方形の大型の網を円 形状に張って行き、魚群を取り囲む漁法で、船型 の異なる複数の船が船団を組んで操業を行います。 通常、大中型まき網の場合は、網船1隻、探索船2 隻、運搬船2隻の合計5隻で1船団が構成されていま す。 20,000 15,000 10,000 5,000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月 2 平成21年の漁獲状況 05-09平均 境港におけるまき網漁業全体の水揚量は前年並 みの98,150トンで(前年98,313トン)、過去5年平 均83,846トンの約117%でした。 漁獲物の組成は、マアジ(28%)が最も多く、 次いでブリ類(21%)、マサバ(19%)の順と なっていました。 今年の特徴は、 マアジが前年の76%、マサバが 69%と減少したものの、ブリ類が同272%、カタク チイワシが同134%と増加し、全体の漁獲量は前年 と同程度(100%)となりました。 2010 漁獲物の組成 マアジ マサバ カタクチイワシ ブリ類 ウルメイワシ マイワシ その他 0 24 2009 10 20 頻度 % 30 小型魚を獲り控えて 資源を上手に使おう! 3 現状の課題と解決に向けた取り組み ここが問題 これまで、境港の漁獲を支えてきたのは まき網漁業です。しかし、マイワシの資源 が枯渇状態にあります。さらに現在の漁獲 の主体となるアジ、サバ類も全般に低調と なっています。 大衆魚を増やす! 魚種交替 今の主役はマアジです。 ここが問題 夏場(6~8月)にまき網で漁獲される クロマグロでは、「やけ肉」と呼ばれる身 の一部が白っぽくなり美味しくなくなる品 質低下が発生し、境港産クロマグロの評価 をさげるという問題がありました。 平成19~21年度に、魚艙内でのクロマグ ロの冷却速度の追跡調査などを行い、やけ 肉の発生が軽減されると考えられる方法を まとめた「クロマグロやけ肉軽減マニュア ル」を作成しました。 水産試験場ホームページに掲載 境港に水揚げされるまき網漁業関係者の http://www.pref.tottori.lg.jp/secure/ 方に是非活用していただきたいと思います。458401/manual.pdf ヤケ肉を減らす! 25 美味しいマグロを 水揚げする! これらの魚種は、環境の変化により魚種 交替が起き、卓越種(資源量が多くなると ともに分布する海域も広がるため多く漁獲 される魚)が替わります。 現在は、マアジが卓越種であり、まき網 漁業の主な漁獲はマアジやマサバの若い魚 です。水産試験場ではマアジの資源回復を 図るため、毎年マアジがどれだけ産まれて いるかを調べ、発生量に見合った漁獲の方 法を提言しています(詳しくは22ページ)。 まき網漁業が元気になる ためにも、小さな魚を保 護し、大きな魚を増やし ましょう! まあじ Trachurus japonicus 市場名 ヒ 1 生態 【分布】群れで行動することが多く、沿岸から沖合の浅いところを遊泳する。 昼は海底近くにいるが、夜になると海の表面近くまで上がってくる。 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は6歳で、40cmぐらいまで大きくなる。 【成熟と産卵】東シナ海、九州沿岸、日本海沿岸で 春先に直径約1mmの卵を10 万粒前後産む。生まれて から2~3年で成熟する。 【食性】小魚、動物プラン クトンなどを食べる。 2 漁業の特徴 【漁法】鳥取県ではまき網、一本釣り、刺し網漁業に より漁獲される。漁獲量のほとんどはまき網による。 【漁期】年中漁獲されるが、夏期の漁獲量は比較的少ない。 26 境港における年間漁獲量の推移 漁獲量と資源状況 70 資源状況 中位減少 60 漁獲量 千トン マアジの漁獲量はほとんどがまき網に よる幼魚を主体にした漁獲です。1980年 代までは低い水準でしたが、1990年以降 は増加し1998年に72,000トンを記録しまし た。しかしその後はやや少なくなってい ます。 2010年の水揚量は27,585トンで2009年を 約8,600トン下回りました。当歳魚の来遊 が遅れ、8月,9月と不漁だったものの、 10月、11月に当歳魚主体に6,000トンを超 える水揚げがありました。水揚げの主体 は当歳魚と1歳魚で、2歳魚以上の高齢魚 はほとんど水揚げされませんでした。 今後も、小型魚を獲りすぎないように することが大切です。 50 40 30 20 10 0 1960 70 90 8,000 7,000 00 10 2009 2010 平年 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 1月 4 80 境港における月別漁獲量の比較 漁獲量 トン 3 3月 5月 7月 9月 11月 資源を大切に使うための調査や取り組み 鳥取県水産試験場では、島根県や水産総合研究セン ターと共同で、日本海西部海域におけるマアジ幼魚の 来遊量調査(表層トロール)を実施しています。 表層トロールでとれたアジ 27 図1 マアジ幼魚の分布(赤丸)と 水深50m水温分布 40 35 まき網1ヶ統あたりの当歳魚漁獲尾数(十万尾) まき網1ヶ統あたりの1歳魚漁獲尾数(十万尾) 30 2.00 25 2.00 1.50 1.19 20 15 1.26 1.00 1.00 10 0.20 5 0.25 0.26 0.50 0.48 0 0.00 2003 2004 2005 2006 2007 年 2008 2009 2010 図2 マアジ幼魚の加入量の経年変化 トロール 2010年の幼魚は、適水温と考えられる水温16~18℃ (深度50m)の水温帯に分布していました(図1)。 調査結果と水温分布から当歳魚の加入量(新しく漁 獲対象となる幼魚の量)を推定しました。来遊量の多 かった2003年を1とすると、2010年は2.0となり、2003 年の調査開始以来最高の水準となりました(図2緑)。 2010年のまき網1ヶ統あたりの当歳魚漁獲尾数は 2009年を上回ったことから(図2青)、2010年級の加 入量はやや高い可能性があります。ただし、2009年か ら資源回復計画による当歳魚の獲り控えが行われてい ることから、今後は1歳魚の動向(図2赤)も含めて判 断する必要があります。 旋網(×10万尾) 第一鳥取丸の表層トロール調査 まさば Scomber japonicus 市場名 メ 1 生態 【分布】日本周辺の沿岸域 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は6歳で、40cmぐらいまで大きくなる。 【成熟】成熟年齢は1歳で半数、3歳で完全に成熟す る。春期に東シナ海から日本海の沿岸域で産卵する。 【食性】 オキアミ類、アミ類、カイアシ類などの 浮遊性甲殻類などを食べる。 2 漁業の特徴 【漁法】鳥取県ではまき網、一本釣り、刺し網漁 業により漁獲される。漁獲量のほとんどはまき網 による。 【漁期】まき網では、秋から冬に多く漁獲され、 刺し網では春に漁獲される。 28 3 境港における年間漁獲量の推移 漁獲量と資源状況 120 マサバの漁獲量は1975年から1980年ま で5万トン以上漁獲されていましたが、そ の後1992年まで減少し続けました。1993 年から1996年までは幼魚を主体に増加傾 向に転じましたが、1997年以降再び減少 傾向にあり、現在は低水準で推移してい ます。 2010年の漁獲量は18,565トンで,2009年 を約8,100トン下回りました。秋期の来遊 が1月遅れ11月となったものの、11月は約 7,000トン水揚げされました。水揚げの主 体は2歳魚以下の若齢魚であした。 今後は小型魚を獲りすぎないようにし て産卵親魚を蓄積する必要があります。 漁獲量 千トン 100 80 60 40 20 0 1960 80 90 00 10 漁獲量 トン 境港における月別漁獲量の比較 資源状況 低位横ばい 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 2009 2010 平年 1月 4 70 3月 5月 7月 9月 11月 資源を大切に使うための調査や取り組み 2010年主漁期である10月~12月に水揚げされたマサバの体長組成(下図)を見ると 30cm未満の小さなものが水揚げされていました。1970年代には40cm以上の大型個体も 多く水揚げされていたことを考えると、現在の漁獲の実態として親になる前に小型のマ サバを獲りすぎていると考えられます。 今後、資源を回復させるためには小型魚を保護する取り組みが必要です。 50 30㎝ 40 10月 30 20 10 0 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 50 40 11月 30 20 10 0 5 7 9 50 40 12月 30 20 10 0 5 7 9 2010年10月~12月に水揚げされたマサバの体長組成 29 かたくちいわし Engraulis japonicus 市場名 タレ 1 生態 【分布】日本周辺の沿岸域 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は2歳で、14cmぐらいまで大きくなる。 【成熟】1歳で完全に成熟する。春期と秋季に東シナ 海から日本海の沿岸域で産卵する。 【食性】カイアシ類などの動物プランクトン カタクチイワシのシラス 2 漁業の特徴 【漁法】鳥取県では、主にまき網により漁獲され、 稚魚や幼魚が船曳網、すくい網などにより漁獲さ れている。 【漁期】周年漁獲されるが、春と秋に多く漁獲さ れる。春に漁獲される個体のほとんどが体長の大 きな産卵親魚である。 30 船曳網の水揚げ風景 3 漁獲量と資源状況 境港における年間漁獲量の推移 50 漁獲量 千トン カタクチイワシの漁獲量は、1990年ま では低水準で推移していました。1991年 から2000年までは、年による変動はある ものの高水準となりました。2001年以降 は中位水準で推移しています。 2010年の水揚量は14,876トンと2009年を 約3,700トン上回りました。4月に4,900ト ン、5月に6,600トンの水揚げがあり、春季 の産卵群の水揚げが多く、秋季はほとん ど水揚げがありませんでした。 春期産 卵群は順調に来遊していますが、秋期産 卵群はあまり来遊しませんでした。 年変動はありますが、資源は安定して いるので、現在の漁獲量は適正です。 40 30 20 10 0 1960 80 90 00 10 漁獲量 トン 境港における月別漁獲量の比較 資源状況 中位増加 8,000 7,000 6,000 2009 2010 平年 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 1月 4 70 3月 5月 7月 9月 11月 資源を大切に使うための調査や取り組み 毎年3月から6月にプランクトンネットを使って、卵と稚 仔の分布調査を行っています。調べる種類はイワシ類・ イカ類・アカガレイ・キュウリエソ(スルメイカなどの 餌になる小さな魚)です。 サンプルを顕微鏡でのぞくと、米粒のような楕円形の 卵を4月と5月に多く見ます。この卵はカタクチイワシの 卵です。このカタクチイワシの卵や稚仔を数えて、今後 の資源動向を調べています。 顕微鏡をのぞくと、お米を ばらまいたように見えます。 160 140 卵 稚仔 120 出現数 100 80 60 40 20 0 1980 1984 1988 1992 年 1996 2000 2004 2008 カタクチイワシの卵 31 まいわし Sardinops melanostictus 市場名 ツ 1 生態 【分布】日本周辺の沿岸域。高水準期には沖合 にも分布を広げる。 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は5歳で、20cmぐらいまで大きくなる。 【成熟】1~2歳で成熟する。春期に東シナ海から日本 海の沿岸域で産卵する。 【食性】カイアシ類などの動物プランクトンや、珪藻 を食べる。 2 漁業の特徴 【漁法】鳥取県では、主にまき網により漁獲され、稚 魚や幼魚が船曳網、すくい網などにより漁獲される。 【漁期】まき網では、春と秋から冬に多く漁獲される。 32 3 漁獲量と資源状況 境港における年間漁獲量の推移 600 マイワシの漁獲量は1982年までは10万 トン以下で推移していましたが、1983年 以降徐々に増加し1985年から1994年は高 水準で推移しました。1995年から急激に 減少し、2000年以降はほとんど漁獲され ませんでした。 2010年の漁獲量は4,808トンで2009年を 約1,100トン下回り,依然低水準のままで す。ただし、全く水揚げの無かった2001 年や2002年と比べ、2003年から産卵期で ある春季にウルメイワシに混じって水揚 げされるようになりました。2010年は5月 に成熟した産卵群のまとまった漁獲が10 年ぶりにあったためが約2,000トン水揚げ を記録しました。 徐々に増加していますが、さらに資源 量を増加させるため、獲りすぎに注意し 混獲程度にとどめておくべきです。 漁獲量 千トン 500 400 300 200 100 0 1960 70 80 90 00 境港における月別漁獲量の比較 2,500 2009 2010 平年 漁獲量 トン 2,000 1,500 1,000 500 資源状況 低位増加 4 0 1月 資源を大切に使うための調査や取り組み 水産試験場では、マイワシの卵と稚魚をプランクトン ネットで採集しています。 2007年以降、マイワシの卵、稚仔がわずかながら採集 されています。2010年は2点の調査点で68個の卵が採集さ れ資源回復の兆しもみえますが、依然として資源量は低 い状態です。 資源状況を把握し、持続的な漁獲を図るために、今後 もこのような地道な調査を続けることが大切と言えます。 40 35 卵 稚仔 30 出現数 25 マイワシ卵 20 15 10 5 0 1980 1984 1988 1992 年 1996 2000 33 2004 2008 3月 5月 7月 9月 11月 10 ぶり Seriola quinqueradiata 市場名 ハマチ、ツバス、 マルゴ、メジロ、ブリ 1 生態 【分布】日本周辺の九州沿岸から北日本沿岸ま で広く分布する。 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は7歳前後で、80cmぐらいまで大きくなる。 成長するにつれて呼び方が変わる出世魚である。 【成熟】3~4歳で成熟する。冬から初夏にかけて東シナ 海から日本海の大陸棚縁辺域で産卵する。 【食性】稚魚はカイアシ類などの動物プランクトンを食 べ、3cmに成長するとカタクチイワシなどの魚類を食べ始 める。13cm以上になると完全な魚食性となる。 2 漁業の特徴 【漁法】鳥取県では、主にまき網で漁獲され、沿岸で も刺し網、定置網、一本釣りにより漁獲される。 【漁期】まき網では、夏から秋に多く漁獲される。沿 岸では周年漁獲される。 34 3 漁獲量と資源状況 境港における年間漁獲量の推移 25 漁獲量 千トン ブリの漁獲量は1990年代までは5千トン 以下で推移していましたが、2003年以降 増加傾向にあります。2010年の水揚量は 過去最高の20,352トンで2009年を約12,800 トン上回り豊漁となりました。8月から11 月までが主漁期となりましたが、漁獲の 主体はハマチやツバスと呼称される若齢 魚でした。 20 15 10 5 0 1980 資源状況 中位増加 90 00 10 境港における月別漁獲量の比較 6,000 2009 2010 平年 漁獲量 トン 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 4 0 資源を大切に使うための調査や取り組み 近年のブリの増加は、海の温暖化に よる資源量の増大や分布域の拡大が原 因と考えられています。まき網におい ては、アジ・サバ・イワシ等の小型の 浮き魚類の資源減少にともない、ブリ の漁獲が漁業経営上重要となってきて います。ブリは広範囲を回遊する魚で 本県の沿岸漁業に加え、日本海北部で は定置網漁業の重要魚種となっていま す。ブリを漁獲対象とする漁業が持続 可能であるものとするために、若齢魚 主体の漁獲のあり方について検討する 必要があります。 2010年 6月 N= 10 1月 3月 5月 7月 9月 11月 70 60 50 40 30 20 10 0 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 8月 N= 54 70 60 50 40 30 20 10 0 9月 N= 23 70 60 50 40 30 20 10 0 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 10月 N= 22 頻 度 % 70 60 50 40 30 20 10 0 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 11月 N= 21 70 60 50 40 30 20 10 0 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 2010年のブリの体長組成(尾叉長cm) 35 くろまぐろ Thunnus thynnus 地方名 マグロ、本マグロ 1 生態 【分布】日本周辺をはじめ、世界の温帯域に広 く分布する。 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は20歳以上と言われ、最大の もので体長が3m、体重400kg近くまで 成長する。 【成熟】体長1mを超える3歳頃から成熟が 始まり、日本南方~フィリピン沖では4~7 月に産卵し、日本海では6~8月に産卵する。 【食性】日本海では、スルメイカやカタクチ イワシなどの小型浮魚類を食べていることが 多い。 2 漁業の特徴 【漁法】大中型まき網で漁獲され境港に水揚 げされる。 【漁期】成魚は主に6月上旬~8月中旬に漁 獲される。 36 太平洋クロマグロの年齢と尾叉長・体重の関係 (平成22年国際漁業資源の状況 水産庁・水産 総合研究センターより) 3 漁獲量と資源状況 境港における水揚量の推移(成魚) 3,500 境港における2010年の成魚の漁獲量は 654トンで前年878トンの74%と下回りま した。 3,000 水揚量(トン) 2,500 幼魚のヨコワは42トンで前年678トンを 大きく下回る水揚げとなりました。 2,000 1,500 1,000 500 夏場の成魚の大きさは、体長120cm、体 重30kg台と体長150cm、体重60kg台の2つ の年級群モードがある組成となりました。 0 1982 1986 1990 1994 1998 2002 2006 2010 尾叉長(体長)組成(2010年成魚) 1400 また、水産庁公表のクロマグロの資源 評価では、最近の親魚資源量は中間的な レベルにあるとさています。 1200 1000 N=5,429 尾 800 しかし、現在の漁獲圧は非常に高く、 資源が安定して存続していくための限界 に近いレベルと言われています。 600 400 200 0 資源管理には未成魚の保護が特に効果 的とされており、中西部太平洋まぐろ類 委員会(WCPFC)の勧告に基づき、新たに 平成23年度から日本海で操業する生産者 が自主的に資源管理計画に取り組みます。 50 150 200 尾叉長(㎝) 250 300 体重組成(2010年成魚) 2000 1800 1600 1400 1200 尾 資源状況 中位横ばい N=5,429 1000 800 600 400 200 0 4 資源を大切に使うための調査 や取り組み 水産試験場では、市場へ水揚げされた クロマグロの体長測定や産卵を確認する ための卵巣組織採取を行うとともに、平 成22年度より、国や他県と共同で産卵場 調査(ネット曳きによる生まれて間もな い仔魚採取)を行っています。 また、より高鮮度なクロマグロを生産 するために、平成21年度に作成した「ク ロマグロやけ肉軽減マニュアル」も引き 続き説明普及を図って行きます。 100 0 50 100 150 200 体重(㎝) 250 300 350 市場での尾叉長測定 約7㎜ クロマグロの仔魚 (H22年7月 試験船第一鳥取丸 で採取) 37 イカ釣り漁業 1 鳥取県のイカ釣り漁業の概要 夜間に集魚灯でイカを集め、自動イカ釣り機に より擬餌針で釣り上げます。 沿岸で日帰り操業する10トン未満漁船と、イカ の回遊にあわせ日本海各地で操業する19トン型 漁船があります。 【魚種】スルメイカ、シロイカ(ケンサキイカ) 【漁場】鳥取県沖合 【漁期】県内船:周年 県外船:3月~12月 38 2 現状の課題と解決に向けた取り組み ここが問題 イカ釣り漁業は、大きな集魚灯を利用して操業 しているため、他の漁業より燃油を多く必要とし、 燃油価格の高騰が漁業経営を圧迫しています。 また、近年、海水温の上昇により、以前に比べ 漁場が沖合域に形成され、沿岸域に漁場が形成さ れにくくなっています。燃油価格の高騰から沖合 での操業を控える漁船も多くなっています。 漁場をいち早く見つける! 鳥取県では燃油高騰対策として、スルメイカが 山陰沖を北上する春と南下する秋に、スルメイカ の分布密度や大きさを調査することで操業の効率 化(燃油使用料の削減)を図っています。 また、既存の集魚灯よりも燃油使用量が少なく 地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が少 なくなるLED(発光ダイオード)集魚灯の導入 を調査・検討しています。 電話で情報をゲット!! 漁業者に他県の水揚げ状況を知って頂くために、 電話応答専用の「白いか(ケンサキイカ)、しま めいか(スルメイカ)漁況案内」を行っています。 白いかは、長崎県及び兵庫県の漁模様をお知らせ しています。しまめいかは、境漁港の水揚げ状況 をお知らせしています。 電話番号 0859-45-4505 39 漁に出る前に電話 してみなイカん。 するめいか Todarodes pacificus 地方名 シマメイカ 1 生態 【分布】日本周辺に広く分布しており、主に日 本海側には秋生まれ群が太平洋側には冬生まれ 群が分布している。 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は約1年で、大きいもので約30cmまで成長する。 【成熟】雄は約9カ月、雌は約11カ月で成熟する。 系群 産卵期 産卵場 秋生まれ群 10~12月 北陸沿岸~東シナ海 冬生まれ群 12~3月 主に東シナ海 【食性】動物プランクトンや、キュウリエソを食べる。 2 漁業の特徴 【漁法】主にイカ釣りにより漁獲される。 【漁期】春と秋~冬に多く漁獲される。 40 漁獲量と資源状況 境港における年間漁獲量の推移 箱 1,600 境港のスルメイカ漁獲量は1980年代は 低水準で推移していましたが、1990年以 降は大きく増加して、2002年まで高い水 揚げが続いていました。しかし、近年は 再び減少に転じており、ピーク時の1/3以 下となっています。 2010年の漁獲量は93トンで平年の29%、 前年の21%でした。漁期を通して水揚げ が著しく低調に推移していましたが、 2011年2月に900トンを超える水揚げがあ りました。2010年夏の猛暑の影響で冬生 まれ群の南下が遅れ、年末年始の寒波に より隠岐諸島に向け冷水が差し込んだこ とにより、スルメイカが沿岸に追いやら れ、隠岐海峡に漁場が形成されたものと 思われます. トン 8,000 箱数 トン数 1,200 6,000 800 4,000 400 2,000 2010 年 2008 2004 2006 2002 1998 2000 1996 1994 1990 1992 1988 1984 1986 0 1980 0 1982 3 境港における月別漁獲量の比較 400 過去5年平均 2009 漁獲量 トン 2010 資源状況 中位減少 200 0 1月 4 3月 5月 7月 9月 11月 資源を大切に使うための調査や取り組み 水産試験場では、LED(発光ダイオード)を使ったイカ釣り漁業用集魚灯の実用 化試験を行っています。LED水中灯や小型LED船上灯に対するスルメイカ及びケン サキイカ(シロイカ)の反応を調査しました。LEDは省エネで環境にやさしい装置 なので、漁業者・他県研究機関とも連携を図り、LED集魚灯の実用化を目指します。 集魚効果 遠くまで光が届かない 遠くのイカを 集魚できない 水中灯では船底に影ができない 釣獲効果 光源が水中にあるため、近距離では かなり明るい 近距離のイカを 威嚇してしまう LED(Light Emitting Diode )漁灯調査の現状 水中では光の減衰が激しいため 遠くまで光が 届かないので 集魚できない 方がない! 現状では活用 投光機型の光が強いため、集魚したシロイカが海底付近に 追いやられ、機械釣りでは釣りにくかった 投光機型LED LED船上灯 まぶしくて 近づけない LED(Light Emitting Diode )漁灯調査の現状 LED水中灯 調査の結果 LED水中灯調査の結果 LED船上灯は LED船上灯は 効果あり! 小型LED 船上灯調査の概要 調査の概要 小型LED船上灯 LED水中灯は LED水中灯は 効果なし!? 41 光がきつく ないので、 機械釣りで も釣りやす い 光が強く集魚効 果はあるものの、 海底周辺に集魚 するため機械釣 りでは釣りにくい 水中カメラで見上げたLED船上灯の光 水深30m 40m 50m 投光機型LED 30m 40m 50m 沖合底びき網漁業 1 鳥取県の沖合底びき網漁業の概要 かけまわし漁法という独特な方法で海底に住むエビ、 カニ、魚などを漁獲します。 【魚種】ハタハタ・ヒレグロ・アカガレイ・ソウハチ・ ズワイガニ等 【漁場】山陰沖 【隻数】鳥取県に水揚げする主な船団数 賀露本所:6船団 網代港支所:11船団 田後漁協:10船団 【漁法】まず標識を投入し、図のように四角形を描くよ うに船を走らせながら網を海に入れます。最後に浮標を 引き揚げ、ひき網の一端を回収し、網をひきます。1回 あたりの操業時間は約1時間半で、網を揚げた後、移動 して次の操業位置を決め、前期同様の操業を昼夜を問わ ず繰り返し、1航海4泊5日程度で帰港します。 2 2010年の漁獲状況 ○賀露 総漁獲量は1,863tで、その内訳はアカガレイ19%、ハタハタ17%、 ソウハチ17%及びズワイガニ12%で、この4魚種が漁獲の約7割を占 めています。前年に比べて漁獲量が増えた魚種は親がに(113%)、 ソウハチ(187%)、ニギス(216%)、ヒレグロ(139%)でした。 その他 16% アカガレイ 19% 1,863t 賀露 ヒレグロ 12% エビ類 1% ハタハタ 17% ソウハチ 17% ヒレグロ 2% エビ類 4% ソウハチ 3% その他 12% ズワイガニ 25% ハタハタ 14% ○網代 総漁獲量は1,623tでアカガレイが31%、ズワイガニ25%、ハ タハタが14%で、この3魚種が漁獲の約7割を占めています。前 年に比べて漁獲量が増えた魚種はアカガレイ(103%)、若松葉 (192%)、ソウハチ(143%)、ニギス(1707%)、ヒレグロ(148%)でした。 ○田後 総漁獲量は 2,805tでその内訳はズワイガニ22%ソウハチ13%、ハ タハタ17%でした。前年に比べて漁獲量が増えた魚種はアカガレイ (105%)、親がに(112%)、松葉がに(115%)、若松葉(166%)、ソウハ チ(145%)、ニギス(212%)でした。 ○合計 3地区を合計した総漁獲量は6,290t(前年比116%)、総漁獲 金額は39.9億円(前年比104%)でした。前年に比べて漁獲量 が増えた魚種はアカガレイ(101%)、親がに(104%)、若松 葉(135%)、ソウハチ(160%)、ニギス(219%)、ヒレグロ (111%)、減った魚種は松葉がに(96%)、ハタハタ(86%) 42 でした。 ズワイガニ 12% 網代 1,623t アカガレイ 31% ズワイガニ 22% その他 23% 2,805t ヒレグロ 8% エビ類 3% ソウハチ 13% その他 18% ヒレグロ 8% エビ類 3% アカガレイ 8% 田後 ハタハタ 17% ズワイガニ 19% 6,290t 合計 アカガレイ 20% ソウハチ 12% ハタハタ 17% 地区別魚種別漁獲量 3 現状の課題と解決に向けた取り組み ここが問題 本県のブランドとなっている松葉がにを漁獲し、と りわけ東部での流通・観光産業への貢献度も高くなっ ています。しかしながら、現在の船団数は平成元年の 51統と比較して27統まで激減しており、経営の厳しさ の一端が窺えます。重要な漁業であるため、これ以上 の廃業船を出さないようにしなければなりません。現 在は収入的にズワイガニの漁獲に頼っていますが、今 後数年ズワイガニは減少傾向になる見込みとなってい るため資源管理やハタハタやカレイ類の魚価向上が重 要となります。 資源管理とブランド化がカギ この漁業が長い間続いているのは、漁業者自らの資 源管理への取り組みによるものが大きいと考えられま す。これまでも水産試験場に資源調査に積極的に協力 しています。 今後も引き続き漁業者と協力し合って漁獲サイズの 制限など資源管理方策の検討、小型カレイを操業中に 水中で脱出させる資源に優しい網の改良・普及、ハタ ハタ、ソウハチ等の脂質を測定しブランド化を推進し ます。 近赤外分光器によるハタハタの脂測定 43 ずわいがに Chionoecetes opilio 地方名 雄 松葉がに・若松葉 雌 親がに 親がに 1 生態 雄で甲羅が堅いものを松葉がに 【分布】陸棚斜面の水深200~500mの海底、 韓国沖合に分布している。 雄で甲羅がやわらかいものを若松葉 と呼んでいます。 500m 200m 分布域 漁場 【成長】ふか後から稚ガニになるまでは水深 300m以浅を浮遊する。オス(最大甲幅約15㎝) はメス(最大甲幅約9㎝)より大きくなる。こ れは脱皮する回数がちがうためで、脱皮をオス は12回程度、メスは10回程度する。 松葉がにと若松葉はDNAの分析等により同一 種であることが確認され、若松葉は数回の脱皮 で松葉がにとなります。 【成熟】産卵は毎年2~3月に行われる(初産は 6~7月)。 【食性】ヒトデ、魚、イカ、貝などを食べ、時 には共食いもする。 2 漁業の特徴 【漁法】沖合底びき網漁業により漁獲される。 【漁期】雄は11月6日~3月20日(自主規制によっ て若松葉1月16日~3月15日)、雌は11月6日~1月 20日(自主規制によって11月6日~1月10日)が漁 期となる。 44 漁獲量と資源状況 漁獲量(トン) 鳥取県内のズワイガニの水揚量 ○前年に比べ、水揚量は松葉がに、親が にはともに増加し、若松葉は減少しまし た。 ○資源状況は近年は高い水準にありまし たが、今後数年は減少あるいは横ばいで 推移する見込みです。 20 15 10 5 1993 1998 2003 2008 0 年 年間漁獲量・金額の推移(漁期年) 資源状況 中位横ばい 水揚げ量(トン) 漁期年 水揚金額(百万円) 松葉 若松葉 親がに 計 2010年 825 124 727 1,676 1,161 2009年 937 168 782 1,887 99% 前年比 88% 93% 74% 89% 松葉 若松葉 親がに 計 2010年 238 172 741 1,151 2009年 214 228 718 前年比 111% 75% 103% 4 25 メス(親がに) オス(若松葉) オス(松葉) 金額 1988 鳥取県内のズワイガニの水揚金額 ○前年に比べ、松葉がには減少し、親が に、若松葉はともに減少しました。 ○合計金額は前年より約2億1千万円減少 しました。 ○平均単価は、前年を下回り、1,456円 /kgでした。 漁期年 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 資源を大切に使うための調査や取り組み 9~10年間で12回脱皮を繰り返しやっと若松葉になる 若松葉 ×12回 9~10年間 1~2年間 松葉がに その後1~2年で 漁獲金額(億円) 3 松葉がにになる。 45 資源はオスガニを中心に減少 しています。今後、ズワイガニ の資源を回復させるためには、 若松葉漁獲自主規制を見直 し、改良漁具の導入について 検討する必要があります。 あかがれい Hippoglossoides dubius 地方名 マガレイ、ホンガレイ 1 生態 【分布】能登半島から山口県沖合の水深150m~900m 500m 200m 分布域 漁場 【成長】雌の方が大型になり体長32cm、雄は22cm程度になる。 【成熟】成熟年齢は雄は2歳(15cm)、雌は5歳(25cm)。3月から4月に産卵する。 【食性】ゴカイ類、クモヒトデ、アミ類、イカ類などを食べる。 2 漁業の特徴 【漁法】沖合底びき網漁業により漁獲される。 【漁期】春に多く漁獲される。 46 3,500 3 漁獲量と資源状況 3,000 賀露 網代 1995 2000 田後 漁獲量 トン 2,500 2010年の本県のアカガレイの水揚げ 量は1,257tで前年より11t増加し、近年 では高い水揚げとなりました。2010年 は1~2月と9~12月に前年を上回りま した。 2,000 1,500 1,000 500 0 1975 体長組成を見ると、依然卓越年級群 (2001年級:雌30cm前後、雄20cm前 後)に依存しており、それに続く資源 豊度の年級群が今のところ見られない ことから、今後の漁獲動向については 注意が必要と考えられます。 1980 1985 1990 年 2005 2010 年別漁獲量 350 300 2009 漁獲量 トン 250 資源状況 中位増加 2010 200 0 5 - 0 9 平均 150 100 50 0 1月 2月 3月 4月 5月 9月 10月 11月 12月 月別漁獲量 4 資源を大切に使うための調査や 取り組み 6 0 0 ,0 0 0 2010雌 2010年雄 2009雌 2009年雄 漁獲尾数 鳥取県の漁業者は資源を保護するため、 平成14年に「日本海西部アカガレイ(ズワ イガニ)資源回復計画」を作成し努力量削 減に取り組んでいます。この計画の中で、 全長20cm未満のアカガレイを漁獲しないよ うにしています。 4 0 0 ,0 0 0 2 0 0 ,0 0 0 0 10 15 20 25 体長 c m 30 35 体長組成 20cm未満は獲らない 47 水中ロボットカメラで撮影された かに牧場内のアカガレイ 40 そうはち Hippoglossoides pinetorum 地方名 イテ、エテ 1 生態 【分布】能登半島から山口県沖合の水深160m~250m 500m 200m 分布域 漁場 【成長】雄は5歳で25cm、雌は7歳で35cmになる。 【成熟】雄は2歳、雌は3歳で成熟する。1~3月 に産卵する。 【食性】アミ類、キュウリエソ、イカ類など 2 漁業の特徴 【漁法】沖合底びき網漁業により漁獲される。 【漁期】秋に多く漁獲される。 48 3 年間漁獲量の推移 漁獲量と資源状況 1,800 1990年代前半までは賀露で主に漁獲され ていましたが、1990年に入ってから田後 の漁獲が増加しています。一方、漁獲量 は1989年以降、変動しつつも増加傾向に ありましたが、1999年の1,569tをピークに 減少傾向となり2004年は458tでピーク時 の29%まで落ち込みました。2005年から 再び増加し2008年に878トンまで増加まし たが、2009は457トンと減少しました。 2010年は731トンに増加しました。 網代 田後 賀露 1,600 1,400 漁獲量(トン) 1,200 1,000 800 600 400 200 0 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 月別漁獲量の比較 200 2009年 2010年 漁獲量 トン 150 資源状況 中位増加 平年 100 50 0 1月 4 2月 3月 4月 5月 9 月 1 0 月1 1 月1 2 月 資源を大切に使うための調査や取り組み ソウハチ幼魚の分布調査 ソウハチは数年に一度大発生することが知られています。しかしそのメカニズムに ついてはよく分かっていません。そこで、9月6日~15日に隠岐島西方の水深124~161 mの海域において、ソリネットを使用してソウハチ着底幼魚の採集を実施しました。 ソウハチ幼魚は19点中7点で合計34個体採集されました。中でも大社湾北西沖のSt.12 で18個体と多く採集されました。ソウハチ幼魚は水深132-158m、水温5.1-14.6℃の海 域で採集され、2008年及び2009年と同様の傾向が得られました。3年間の調査でソウハ チ幼魚の大量採集はないため、今のところ大発生は生じていないと考えられます。 49 はたはた Arctoscopus japonicus 地方名 白はた、はた 1 生態 【分布】日本海(日本海西部系群 山口県~石 川県沖合)の水深約150~300mに分布する。ま た秋田県周辺を産卵場とする日本海北部系群の 一部も日本海西部に来遊する。 500m 200m 分布域 漁場 【成長】寿命は5歳 【成熟】朝鮮半島北東部沿岸で産卵を行う。 【食性】ヨコエビ、アミ類などを食べる。 2 漁業の特徴 【漁法】沖合底びき網漁業により漁獲される。 【漁期】春と秋に多く漁獲される。 50 3 漁獲量と資源状況 年間漁獲量の推移 3,500 ハタハタの漁獲量は朝鮮半島からの回 遊魚ということもあり、1975年から2005 年まで大きく変動しながら推移していま す。近年では2004年に1,275トンと大きく 減少しました。その後、2005年に2,647トン、 2007年に1,209トンに減少したものの2008 年に再び2,880トンに増加しました。 2010年の漁獲量は1,043トンで2009年より 165トン減少しました。 2009年は3~4歳魚 が主体となっていましたが、 2010年は10 ~14cmの1~2歳魚が大部分を占めていま した。 田後 網代 漁獲量(トン) 3,000 賀露 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 月別漁獲量の比較 500 2009年 2010年 過去5年平均 450 400 漁獲量(トン) 350 資源状況 中位横ばい 300 250 200 150 100 50 0 1月 4 2月 資源を大切に使うための調査や取り組み 2月頃水揚げするハタハタは体長10cm前後と小さく、通 称「じんたん」と言われ、非常に安価で扱われています。 しかし、ハタハタは成長が早く、4月には体長13cm程にな り単価も高くなるので、水産試験場では2月、3月のじんた んは獲らないで、4月、5月に獲るように漁業者の方に勧め ています。そのためには、現在使用している漁網の目合い を大きくする必要がありますが、目合いを色々変化させた 網目選択試験を実施した結果、7節又は8節(約4.5~5cm) の網目が適当であると考えられました。 実操業の目合い 小 3㎝ 8節 4㎝ 目合い 換算表 目合い 10節 9節 試験した目合い 7節 5㎝ 大 51 3月 4月 5月 9月 10月 11月 12月 網目選択試験 内網;漁獲された魚 外網;網を抜けた魚 脂質測定器で脂ののりを測定 とろはたの紹介 体長別の脂ののり 大型ハタハタの脂ののり 20 14 2008年5月 2008年8月 2008年9月 2008年10月 18 16 10 脂ののり(%) 脂ののり(%) 14 12 12 10 8 8 6 4 6 4 体長 0 0 100 120 140 ズワイガニ盛漁期 2 相関係数0.53 2 160 180 体長(㎜) 200 220 9月 240 ※体長18㎝≒全長20㎝ 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 2009年漁期 ○ハタハタの脂ののりを抽出測定しました。 (2008年) ○最大18.6%、最小3.2%、平均9.8%あり、 人が美味しいと感じる10%程度ありました。 ○月別に変化は見られず、体長が大きくなる につれて脂がのる傾向が見られました。 ○大型ハタハタ(体長18㎝以上、水揚げ発泡 「特大」「①番」)の脂ののりを鳥取県産魚 PR推進協議会と一緒に脂質測定器で測定し ました。(2009年漁期) ○水揚げ期間中を通してほぼ10%ありまし た。 美味しさに自信あり! 大きいハタハタはより美味しい! 脂ののりに自信のある全長20㎝以上の鳥取県産大型ハタハタを 「とろはた」としてブランド化(平成22年10月~) 築地の市場関係者へも説明・試食・RP 専用箱とシールを貼って差別化 地元スーパーでも販売 とろはた料理 52 べにずわいかご網漁業 この漁業は知事許可漁業として操業されていたが、平成2年に施行された「べにずわい がに漁業の取締に関する省令」による大臣承認漁業を経て、平成14年、「指定漁業の 許可及び取締り等に関する省令」中に、「日本海べにずわいがに漁業」として位置づけ られ、大臣指定漁業となった。なお、資源の回復を図るため策定した「日本海沖合ベニ ズワイガニ資源回復計画」に基づき、全船で実施されていた6月(30日間)の追加休 漁に代わる措置として、平成19年9月から、日本ではじめて船舶ごとの年間漁獲量の 上限を設定(個別割当て方式)している。 53 ベニズワイ Chinoecets japonicus 地方名 べに、紅がに 1 生態 【分布】主に日本海(水深約500~2,700m) 【成長】オスは甲幅が最大約15㎝に達する。 寿命は10年以上。メスは採捕禁止。 【成熟】2~4月、隔年産卵で抱卵期間は約2 年 500m 200m 【食性】ヒトデ、魚、イカなどを食べる。 分布 漁場 2 漁業の特徴 【漁法】幹縄に約50m間隔にかにかごを 150個取り付けた漁具を数セット用いる 「かにかご漁業」により水深800m以深でベ ニズワイを漁獲する。 漁獲されたカニは船上で、コンテナに 大きさ及び質別に選別され、船倉内で氷 蔵保管される。 出港から入港までの1航海は約一週間 である。 【漁期】7~8月は禁漁となっている。 かにかご1かご当たりの漁獲量の推移 25 漁獲量と資源状況 CPUE(kg/かご) 3 日韓暫定水域(1999年~)が設定され て以来、漁獲量は1かごあたり10kg以下で、 低位な資源水準ですが、2002年以降やや 増加し、近年は10kg/かご弱で推移してい ます。 2007年(平成19年)9月から水揚げされ る総漁獲量を削減し、かにかご漁船毎に 漁獲割当量が決められたため、各船が計 画的に漁獲を行っています。そのため, 近年の漁獲量は約1万㌧で推移していま す。 20 15 10 5 0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 ※日本海区水産研究所資料 境港で水揚げされたベニズワイの漁獲量 漁獲量 万トン 4 資源状況 低位増加 3 2 1 0 1980 54. 1985 1990 1995 年 2000 2005 2010 4 資源を大切に使うための調査や取り組み ここが問題 1990年代から資源が減少し始め、1999年に日韓暫定 水域が設定され漁場が狭められたため漁獲量が減少 しました。さらに水揚げ物が小型化しているという 問題がありました。 漁業者が立ち上がった! 平成17年より日本海沖合ベニズワイガニ資源回復計 画が漁業者(島根、鳥取、兵庫、新潟県)により実 施され、漁獲努力量の削減、減船、改良漁具(リン グ(小型ガニの脱出口)付きかご)の導入が行われ ています。 リング(脱出口)付きかご 漁業者と水産試験場による共同研究調査では、リ ング付きかごを使用した場合、漁獲規制サイズであ る甲幅9cm未満の小型個体の脱出効果があり,資源 回復に良いことが確認できました。今後もこのよう な共同調査を続けていくことが大切です。 リング付き篭とリングなし篭の比較 12 尾数/篭 10 8 この部分 が保護さ れた リング付 リングなし 6 4 2 0 小さいカニはリング から逃げる!! 70 55 80 90 100 甲幅 ㎜ 110 120 沿岸漁業 鳥取県の沿岸漁業の概要 沿岸漁業の漁法別漁獲量・金額の推移 (直近10年間) 2 10,000 45 40 8,000 35 30 6,000 25 20 4,000 15 漁獲金額(億円) 鳥取県における沿岸漁業は、漁船の大きさが 20トン未満の比較的小規模な漁業経営体が大半 を占めます。 沿海漁業協同組合員数のうち沿岸漁業に従事 している者は、1,731人で全体の89%にあたり、 県内沿岸域のほぼ全域にあたる18地区(3市5町 で操業しています。 主な漁業種類と漁獲対象種は、一本釣による スルメイカ、サワラ等、刺網によるブリ類、ア ジ類、サワラ、タイ類等、小型底びき網による カレイ類、ヒラメ等、潜水によるイワガキ、サ ザエ等で、回遊魚主体に多種多様な魚貝類が漁 獲されています。 漁獲量(トン) 1 10 2,000 5 0 0 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 一本釣 刺網 小型底びき網 その他 金額 平成22年の漁獲状況 近年の漁獲量(漁獲金額)は、約7,500トン (約35億円)で推移しています。H22年の漁獲 量(漁獲金額)は、7,726トン(35億円)とほ ぼ平年並みとなりました。前年との比較では漁 獲量は348トン増加したものの、魚価の下落に より、漁獲金額は1億円減少しました。 漁法別に見ると、一本釣(イカ釣含む)によ る漁獲が全体の56%を占め、その他、刺網、小 型底びき網等の割合が高く、これらが沿岸漁業 の主な漁法となっています。 賀露地方卸売市場でのセリ模様 H22年の漁法別漁獲量・金額及びその割合 漁法 一本釣(19tイカ釣含む) 刺網 小型底びき網 潜水 小型定置網 その他 計 漁獲量 トン 割合(%) 4,331 56.1 1,464 19.0 456 5.9 314 4.1 163 2.1 997 12.9 7,726 100.0 漁獲金額 億円 割合(%) 19.6 56.2 5.7 16.4 2.1 5.9 2.2 6.4 0.8 2.4 4.4 12.7 34.8 100.0 小型定置網(御来屋)での水揚げ模様 56 イカ釣り漁業 37ページを御参照ください 刺網漁業 【魚種】ブリ類、アジ類、サワラ、タイ類等 【漁場】県内沿岸(人工魚礁、天然礁等) 【漁法】刺網は、網を漁獲しようとする魚類が通過 する場所を遮断するように張り、網目に刺させたり、 絡ませたりして漁獲する固定式刺網と、魚礁や天然 礁等で形成する魚群を巻き獲る狩刺網があります。 主に1~3人で、夜間に操業します。 小型底びき網漁業 【魚種】カレイ類、ヒラメ等 【漁場】県内沿岸(砂浜域) 【漁法】小型底びき網は、10mのケタ棒で網口を広げ、 海底で網を引っ張って底魚類を獲ります。主に1人で 夜間に操業します。 上図:小型底びき網の操業の 模式図 左図:小型底びき網(境港)の 操業模様 右図:停泊中の小型底びき網 漁船(境港) 57 ひらめ Paralichthys olivaceus 地方名 ヒラメ、オオクチガレイ 1 生態 【分布】日本周辺をはじめ、北はサハリンから南は南シナ海 までの砂底、砂礫などの沿岸域に広く分布する。 200m 分布域 漁場 【食性】稚魚から幼魚はアミ類、かいあし類、 端脚類などの小型甲殻類を主に捕食するが、 成長に伴い、カタクチイワシなどの魚類、エ ビ類、イカ類などのより大型の生物を餌にす る。 2 全長(cm) 【成熟】ふ化後2年で約半数が産卵群に加入し、 3年後には全加入する。鳥取沿岸では3~4月に 産卵する。 100 ♀:全長 ♂:全長 ♀:体重 ♂:体重 75 7.5 50 5 25 2.5 0 漁業の特徴 【漁法】小型底びき網、一本釣、刺網、定置 網、沖合底びき網等様々な漁法で漁獲される。 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年齢 ヒラメの成長(2007金丸らから引用) 【漁期】周年漁獲される。 58 体重(kg) 【成長】1年で全長25~30cm、2年で36~46cm、 3年で44~58cm、4年で47~67cm、5年で49~ 73cm程度に成長する。最大で100cmになり、 10kgを超えるような個体もいる。 100 1 50 0 0 鳥取県中部における7、8月のヒラメ稚魚 分布密度と鳥取県漁獲量の推移 100 7月 8月 漁獲量 75 100 75 50 50 25 25 0 0 H16 資源状況 低位横ばい 漁獲金額(億円) 2 150 漁獲量(トン) H23年漁期は、漁獲主体である1、2歳魚 (H22、H21年級群)の発生状況はある程 度あったものの、 3、4歳魚(H19、20年 級群)の発生状況が悪かったため、 漁獲 量は微増する可能性はありますが、全体 的に小型魚が多い見込みです。 3 200 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 鳥取県におけるヒラメの漁獲量はH7年 以降急激に減少し、H12年に34.5トンにま で減少しました。その後、緩やかな増加 傾向にありましたが、近年また減少傾向 に転じています。H22年の漁獲量・金額は、 65トン、73百万円でH20年の52トン、81百 万円から漁獲量は増加したものの、金額 は減少しました。特に魚価の低下が見ら れ、H22年の単価は1,121円/kgと下落が進 んでいます。 漁獲量 漁獲金額 250 漁獲量(トン) 漁獲量と資源状況 稚魚の採集尾数(尾/km2) 3 鳥取県におけるヒラメの漁獲量・金 額の推移 300 4 H17 H18 H19 H20 H21 H22 ネオへテロボツリウム症の感染率の 推移 100 4 資源を大切に使うための調査や取り 組み 59 75 感染率(%) 鳥取県の漁業者は自主規制として全長25cm以 下を再放流し、小型魚を保護しています。 鳥取県栽培漁業センター(H22年度まで鳥取 県水産試験場沿岸漁業部)では、小型底びき網 の試験操業により、稚魚の発生量を把握してい ます。 また、H7年以降の漁獲量の減少要因とされる ネオへテロボツリウム症(吸血虫症)の蔓延状 況を調査しています。現在も、10月以降、50% 以上のヒラメ当歳魚で感染が見られており、特 にH20年以降、高い感染指数が見られています。 さらに、美保 湾においては、 放流再開を検討 するため、試験 放流を実施して います。H19年放 流群の回収率は 16%と良好な結果 を得ています。 天神川沖(H18-21平均) 美保湾(H18-21平均) 天神川沖(H22) 美保湾(H22) 50 25 0 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 ネオへテロボツリウム症の年別感染 指数 0 感染指数(感染率×感染強度) 1 2 3 4 5 H18鳥取県中部(外海) H18美保湾 H19鳥取県中部(外海) H19美保湾 H20鳥取県中部(外海) H20美保湾 H21鳥取県中部(外海) H21美保湾 H22鳥取県中部(外海) H22美保湾 感染率=ヒラメ感染個体数÷ヒラメ採集数 感染指数=感染虫数÷ヒラメ感染個体数 ながれめいたがれい Pleuronichthys japonicus 地方名 バケメイタ 1 生態 【分布】東北地方南部から東シナ海南部の水深150m以浅の砂 泥域に分布する。特に水深70~100mに多く分布する。 200m 分布域 漁場 【成長】最大で30cmになる。 ナガレメイタガレイ稚魚 【成熟】ふ化後1年で全加入する。鳥取沿岸で は2~3月に産卵する。 【食性】多毛類や甲殻類を餌にする。 2 漁業の特徴 【漁法】小型底びき網等の漁法で漁獲される。 【漁期】周年漁獲される。 60 (採集7月、全長約6cm) 漁獲量と資源状況 鳥取県におけるナガレメイタガレイ の漁獲量・金額の推移 500 400 400 300 300 200 200 100 100 0 0 鳥取県中部における5、6月のナガレメイ タガレイ稚魚分布密度と鳥取県漁獲量 の推移 稚魚の採集尾数(万尾/km2) 100 資源状況 低位横ばい 600 漁獲金額(百万円) 漁獲量 漁獲金額 500 4 資源を大切に使うための調査や取り 組み 5月 6月 漁獲量 75 200 150 50 100 25 50 0 漁獲量(トン) H23年漁期は、漁獲主体である1歳魚に 当たるH22年の稚魚の発生状況が、H20、 21年級群に比べ良いことから、漁獲量は 若干増加する見込みです。ただし、資源 状況は引き続き低位のため、50トン程度 と予測します。 600 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 鳥取県におけるナガレメイタガレイの 漁獲量はH17年には43.0トンまで落ち込み ましたが、H19年には118.0トンまで回復 し、漁獲金額も75百万円となりました。 しかし、H19年の稚魚の発生量は非常に低 水準であったことから、H20年には過去最 低の漁獲量である27.2トンと、前年に比べ 90トン以上も減少しました。H22年につい ても、前年の稚魚の発生状況は低調で あったこともあり、38トン、34百万円と 低水準の水揚げとなりました。 漁獲量(トン) 3 0 H16 H17 H18 H19 H20 H21 資源量指数(万尾/km2) 鳥取県の漁業者は自主規制として全長14cm以 下を再放流し、小型魚を保護しています。 鳥取県中部における6月のナガレメ 鳥取県栽培漁業センターでは、鳥取県漁業協 イタガレイ稚魚分布密度と1~4月の 同組合賀露本所、泊支所の小型底びき網漁船を 平均水温の相関 傭船し、ナガレメイタガレイ稚魚の発生量調査 を実施しています。 80 また、10月に、県下7地区(田後、賀露、浜村、 H23予測 y = -34.033x + 440.72 青谷、泊、赤碕、境港)で小型底びき網漁船を 2 60 R = 0.4961 傭船し、水深30mと50mで試験操業を行い、ナガ レメイタガレイ当歳魚(その年生まれの魚)の 40 漁場への加入状況を把握しています。 20 この試験操業結果から、当歳魚の加入状況を H22 勘案し、網目拡大等の資源管理措置を提言して 0 います。 11.0 11.5 12.0 12.5 13.0 ナガレメイタガレイは、海水温と稚魚の発生 1~4月上旬の平均水温(℃) 量に一定の相関があり、海水温が低い年ほど発 生量が多い傾向があります。H23年は4月時点ま では例年より低めに推移しており、多く稚魚が 発生することを期待しています。 61 まだい Pagrus major 地方名 マダイ、タイ 1 生態 【分布】北海道以南から尖閣諸島、朝鮮半島南部、東シナ海、 南シナ海、台湾の水深30~200mの岩礁や砂礫、砂底などに広 く分布する。 200m 分布域 漁場 【成長】ふ化後の尾叉長は、半年で約9cm、1 年で約14cm、2年で約22cm、3年で約30cmに 成長する。寿命は約20年と推定される。 75 体重 2 50 5 25 2.5 体重(kg) 全長(cm) 【成熟】ふ化後3年で約半数が産卵群に加入し、 4年後には全加入する。鳥取沿岸では4~5月に 産卵する。 【食性】稚魚はかいあし類、尾虫類を当歳魚 は、ヨコエビ類やアミ類、成魚は、甲殻類や 貝類、多毛類などを主要な餌にする。 7.5 尾叉長 漁業の特徴 【漁法】刺網、一本釣、小型底びき網、定置 網等様々な漁法で漁獲される。 0 0 1 3 【漁期】周年漁獲される。 5 7 9 11 13 15 17 19 年齢 マダイの成長(2007日本海西部・東 シナ海系群の資源評価から引用) 62 漁獲量と資源状況 鳥取県におけるマダイの漁獲量・金 額の推移 350 4 漁獲量 漁獲金額 300 3 250 漁獲金額(億円) 鳥取県におけるマダイの漁獲量は、H16 年から増加傾向にあり、H20年の漁獲量は 240.8トンとなりました。H22年は、前年 の漁獲量とほぼ同水準の179トンでしたが、 漁獲金額は減少し、1億円となりました。 また、H22年の単価は、前年から大きく下 落し、563円/kgとなりました。 漁獲量(トン) 3 200 2 150 100 1 50 0 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 0 漁獲量 300 200 150 150 100 100 50 50 0 0 H16 H17 H18 H19 H20 H21 鳥取県におけるマダイの単価の 推移 1,250 1,000 750 H21 H19 H17 H15 H13 H11 H9 500 鳥取県中部の1~6月の平均水温(水深14mの12m深)と主要な底魚類の稚魚発生量 1~6月の 当歳漁資源量(単位:万尾/km2) 平均水温 ヒラメ ナガレメイタガレイ マダイ (℃) 5月 6月 7月 5月 6月 7月 6月 7月 H18 13.64 159.1 20.9 92.8 65.3 89.1 89.1 47.8 30.2 H19 15.15 4.7 3.1 23.3 2.2 2.6 2.6 8.5 3.4 H20 14.12 0.5 13.1 49.2 11.1 3.7 3.7 188.9 39.5 H21 14.95 0.4 8.0 44.7 5.6 11.8 4.5 112.2 105.8 H22 13.94 0.1 5.7 57.9 7.2 31.1 31.1 15.7 363.3 14.48 35.5 99.5 35.2 16.3 26.8 24.3 83.6 82.4 H10~22平均 H10(レジームシフト以降)の平均水温 平均の2倍以上 平均の1/2以下 平均の1/10以下 年 63 漁獲量(トン) 250 H7 鳥取県の漁業者は自主規制として尾叉長13cm 以下を再放流し、小型魚を保護しています。 鳥取県栽培漁業センターでは、小型底びき網 の試験操業により、マダイ稚魚の発生量を把握 しています。なお、近年の傾向として、1~6月 の海水温が極端に高い年、低い年は発生が悪い との結果が出ています。 また、10月に、県下7地区(田後、賀露、浜村、 青谷、泊、赤碕、境港)で小型底びき網漁船を 傭船し、水深30mと50mで試験操業を行い、マダ イ当歳魚(その年生まれの魚)の漁場への加入 状況を把握しています。 7月 200 H5 4 資源を大切に使うための調査や取り 組み 6月 250 稚魚の採集尾数(万尾/km2) 資源状況 中位横ばい 鳥取県中部における6、7月のマダイ稚 魚分布密度と鳥取県漁獲量の推移 単価(円/kg) H23年漁期は、稚魚の発生状況の良い1 ~3歳(H20~H22年級群)が加入するた め、漁獲量は増加する見込みです。ただ し、H19、20年級群が少ないことから小型 魚中心の漁獲組成となることが予想され ます。 さわら Scomberomorus niphonius 地方名 サワラ、サゴシ(未成魚) 1 生態 【分布】東シナ海から黄海、渤海、さらに北海道以南の日本 海に広く分布する。 200m 分布域 漁場 【食性】生活史を通じて魚食性が非常に強い。 2 漁業の特徴 【漁法】曳縄釣、刺網、定置網等の漁法で漁 獲される。 【漁期】周年漁獲されるが、4~6月の漁獲量 は少ない。 64 100 尾叉長 体重 6.0 5.0 80 4.0 60 3.0 40 2.0 20 1.0 0 0.0 年齢 サワラの成長(鳥取県) 体重(kg) 120 0.6 1 1.4 1.8 2.2 2.6 3 3.4 【成熟】ふ化後1年で一部が産卵群に加入し、 2年後には全加入する。日本海での産卵はほと んどなく東シナ海等に南下して産卵する。 全長(cm) 【成長】ふ化後の尾叉長は、半年で約45cm、 1年で約56cm、2年で約73cm、3年で約86cmに 成長する。寿命は6歳程度と推定される。なお、 鳥取県沖では3歳魚までしか確認されていない。 漁獲量と資源状況 鳥取県におけるサワラの漁獲量・金額の 推移 鳥取県におけるサワラの漁獲量はH11年 以降、増加傾向にあり、H19年は329トン となりました。H21年は減少したものの、 H22年は回復し、漁獲量273トン、漁獲金 額1.79億円となりました。 漁獲の主体は H20~H22年級群で、平均漁獲サイズは 1.3kg(尾叉長56.7cm)で、1歳魚(1~5 月:H20年級群、6-12月:H22年級群)が 主体の水揚げとなりました。 350 300 4 漁獲量 漁獲金額 3 漁獲量(トン) 250 200 2 150 100 漁獲金額(億円) 3 1 50 0 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 0 鳥取県におけるサワラの年級別漁獲尾数 まだ漁況予報手段が確立されていませ んが、H22年のサゴシ(未成魚)の漁獲尾 数がH21年より少ないことから、漁獲量の 減少が懸念されます。 資源状況 高位横ばい 年 総漁獲尾数 漁獲尾数 164,270 頻度 100.0% 漁獲尾数 169,638 H21年 頻度 100.0% H22年 H22 35,079 21.4% H21 85,766 52.2% 47,171 27.8% H20 34,711 21.1% 88,612 52.2% H19 8,713 5.3% 30,885 18.2% H18 2,970 1.8% H20年以降のサワラ標識放流と再補場所 4 資源を大切に使うための調査や取 り組み ☆:標識放流場所 ○:再補場所 近年急増したサワラの資源構造や回遊生態 等については、まだ不明な点が多く、沿岸漁 業者への資源管理方策の提言や効率的な漁獲 に必要な漁況予測を行うことが困難となって います。そこで、鳥取県栽培漁業センターで は、日本海におけるサワラの基礎生態の解明 ため、日本海側の関係府県(青森県~長崎 県)と連携して、標識放流による回遊等の把 握や市場調査等による漁獲物組成の把握を 行っています。 なお、標識が付いたサワラが揚がった場合 には、魚体購入させていただきたいので、下 記担当まで御連絡ください。調査への御協力 よろしくお願いします。 【連絡先】 鳥取県栽培漁業センター 電話:0858-34-3321 担当:太田 備考:標識魚を漁獲した場所も併せて 教えて下さい。 標識:ダートタグ No.001 トットリケンスイサンシケンジョウ 65 TEL:0858-34-3321 No.001 このレポートに関するお問い合わせ先 海洋環境及び沖合漁業に関すること 鳥取県水産試験場 住所 〒684-0046 鳥取県境港市竹内団地107 電話 0859-45-4500 ファクシミリ 0859-45-5222 E-mail [email protected] ホームページ http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=72009 沿岸漁業及び内水面漁業に関すること 鳥取県栽培漁業センター 住所 〒689-0602 鳥取県東伯郡湯梨浜町石脇1166 電話 0858-34-3321 ファクシミリ 0858-34-2888 E-mail [email protected] ホームページ http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=154053 平成23年5月発行 再生紙を使用しています