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ナレーション:1942 年 6 月 13 日、大日本帝国陸軍第 4 師団第 11 歩兵団

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ナレーション:1942 年 6 月 13 日、大日本帝国陸軍第 4 師団第 11 歩兵団
ナレーション:1942 年 6 月 13 日、大日本帝国陸軍第 4 師団第 11 歩兵団所属の銀輪部隊がポート
モレスビーに到着したのは、軍隊用語でヒトハチフタマル。一般的には現地時間午後
18 時 20 分のことでした。
その日もインドネシアの海は穏やかでした。エメラルドとサファイアを溶かしてカクテルに
したような青と緑の海に私の心のような真っ白い砂浜。
空は宇宙にまで届きそうなほど高く、大気はマイナスイオンをめっちゃ含んで、どこまで
も澄みわたっていました。
爽やかな南風が椰子の木を揺らし吹き抜けて行きます。
ブーゲンビリアの赤い花や、ラフレシアのどでかい花があちこちに咲き乱れ、色とりどり
の蝶が舞い、ヘラクレスオオカブトムシがガジュマルの樹液をすすっています。
天国に 1 番近い島とはこの島の事なのでしょうか。
やがて、ギラついた太陽は赤く、ルビーより赤く燃えながら水平線のむこうへ消えようと
ゆっくり海へ近づいてきました。
真っ白いはずの雲は鮮やかなだいだい色に染まり、やがていつしか世界は闇に支配さ
れ、海鳥たちはあわててねぐらへ帰ってゆきます。
寄せてはかえす波の音がいつまでもくりかえされ、時折ジャングルから不気味な鳥や、
獣の鳴き声や唸り声が聞こえる以外は、実に静かで、いつもどおりの熱帯の世界でした。
いつもと違う事は、遠い遠い別の島国からの来訪者たちが日の丸のついたカーキ色の
天幕を張り、居座り始めた事だけでした。
ある日島の反対側に星とシマシマのマークの軍団があらわれ、その人たちも野営を始
めました。
翌々日、二つの世界の人たちはジャングルの水飲み場でバッタリでくわし、この島の静
寂は破られました。
ズガガガガガガガガガガ!!バキューンバキューン、ズドドドドドドドドド、チュドーン!ド
ガーンドガーーーーーン、ズゴゴゴゴゴゴゴ「死ね~!鬼畜米英!」「キル!キル!ザ、ジ
ャップ!」怒号が響き、天国のような島には、およそ似つかわしくない銃声が爆音が轟き、
硝煙のニオイが立ち込め、黒煙がもうもうと天を焦がすように、青空をどんよりと曇らせな
がら、天空に吸い寄せられて行きます。
長い時間のあと、決着が着いたのでしょうか、平和を乱した野蛮人たちは引き上げてい
きました。
そして 50 年か 100 年か経った後、平和の訪れなど知らぬげに、今日も争いあう声が聞
こえてくるのです。
BGM:ハッチ大冒険(ジンギスカン)
死闘を演じる二人、激しいやりとり、銃撃から剣戟へ、そして短剣、肉弾戦へもつれこみ、
1
疲労、疲弊してゆく。終いには口げんか。「この野蛮人が!野蛮人が!!」「死ね!死な
ぬ!」
田西 :おまえの母ちゃん・・・デ・・・デ・・・(倒れこむ)
岡津 :伝書鳩・・・!勝った・・!!(同じく倒れこむ)
―静寂―
岡津 :田西よ・・・。
田西 :なんだ?
岡津 :もめよ・・・マッサージだ。
田西 :なんだと、たれがキサマなぞの小汚い体を揉みしだくことができようか?いやできない!
岡津 :反語でのお返事はいらん・・・誰が今日の勝利者だ?
田西 :クッ・・・(苦虫を噛み潰し揉みはじめる田西)
岡津 :ム・・・そうそうその調子だ・・・生かさず殺さずの力加減、ナイス塩梅!・・・やるじゃない田
西、さすが13 連敗中だけあってもみもみ揉むのも上達しちょるわ♪
田西 :キーーーーーーーーーー言わせておけばこのヨゴレンジャーが・・・!!
岡津 :あれあれえーっ?そんな口きいていいわけえ?!朝のさあ、戦いでさあ、勝利した方があ、
負け犬を奴隷にできるって決めたの田西君でしょう?
田西 :グッ・・・!!
岡津 :お返事は?
田西 :そう・・・でございます・・・グツグツグツグツ。
岡津 :聞こえるわ聞こえるわ!グツグツグツグツこれは腸の煮えくり返る音!沸騰しとるわユア
腸!!さもありなん、ここまで俺の1117勝1111敗1114分け、もうおれの優勝は見えて
きたことじゃて。一丁高笑うか!これ、台をもて!
田西 :ハハー。(台になる)
岡津 :クアカカカカカカカカ!!(田西に乗り高笑う)はあああああああっ!!!(転がり苦しむ)
田西 :なんだ?腸ねん転か?子宮筋腫か?しっかりしろ!岡津!
岡津 :目覚めてしまった・・・!!
田西 :なぬっ?!
岡津 :それもイスラム教に・・・。
田西 :この人は何を言ってるんだろう?
岡津 :ヨメだ!5 人のヨメをもらわねば、教義に反してしまうではないか!
田西 :なんかイスラム教を誤解してるっぽいぞ。
岡津 :♪片手に!コーラン!心に円月刀!唇に反米、イスラエルにテロを!あ~あ~あ~あ~
あ~あ~あああ~(ジュリーの「サムライ」)
田西 :こいつ絶対目覚めてない!っていうか目潰しされたように目塞がってる!
岡津 :アラー!わたしは伝道します!パウロ?コアーッ!ペテロ?ペッ!唾棄すべきクソッタレ
のエセ伝道師どもめ!死ねばいいってもんじゃねえだろうがよ!おれはちがうぞ!生きる。
2
生きて、生き抜いてしたたかに布教しつづけるんじゃー。アラーアクバール!!
田西 :したたか君?
岡津 :「あら」だ!日本人の味覚にあうように海苔の佃煮の会社を創めよう!そして主力商品に
我が絶対の神「アラー」と名づけるのだ!
田西 :ぬおおおおお新沢基栄先生!どこへいってしまったのですかあ!このわたしを置き捨て
て、「ボクはしたたか君」なぞを残して消えてしまうなんて!
岡津 :アラーをバカにするなー!!(殴る)
田西 :荒木飛呂彦―(殴る)
岡津 :大島弓子―ッ
田西 :ふくしま政美―ッ
岡津 :岡田あーみんっ
田西 :鴨川つばめーっ
岡津 :萩尾望都―っ
田西 :とりいかずよしーっ
岡津 :一条ゆかりーっ
田西 :手塚治虫―っ!
岡津 :つげ義春っ(やられる)ゴッパアーッまさか・・・漫画の神でくるとは・・・!!くうう、太刀打ち
できない!
田西 :ははははは、思い知ったかゴルアッ!奇面フラッシュでとどめさすど!大体おまえはこの
前も「目覚めたあっ」て言っては密教魔羅教とやらを創始して「イチモツ神輿」を作ってそり
ゃもう大騒ぎしてたじゃないか、何回目覚める気じゃヴォケッ!
岡津 :平和だ!
田西 :ハァ?
岡津 :わかったぞ、田西、おれたちに本当に必要なのは宗教でも、イデオロギーでも闘争でもな
い、平和なのだ!
田西 :世迷言をいうな、キサマとおれとの闘争は生まれる前から始まっていた。
もの心ついたときには拳で、剣でやりあってきた。
おれはキサマを殺すためにのみこの世に生を受けたのだ。
そのわれらに平和なぞあるものか!
岡津 :覚えているか、第3次ハンザキ闘争を・・・?
田西 :わすれるものか!あの血みどろの戦いをば・・・キサマはおれがペットとして可愛がってい
たハンザキ(オオサンショウウオ)を、あろうことか、3 時のおやつとして・・・!
クウウウ、そしてあの激戦でおれは右手ひとさし指つきゆびという大怪我を負って 2 日間
バナナの皮がむけず絶食を強いられたのだ!忘れんぞ、ハラが減って眠れず一晩中口を
パクパクさせていたあの真夏の夜の悪夢!
愛するハンザキのドンジュウロウを失い、ハラへって眠れなかったあの屈辱を雪ぐために
3
おれは「ウシミツ釘打ち藁人形作戦」を実行したのだ。
岡津 :そう、あれは思い出すだに、身の毛もよだつおそろしい作戦だった。
午前 2 時の東郷神社に打ち付けられた108の藁人形から一本一本釘を抜いて、呪い返
しをしていたら、イノシシに追い掛け回されドエライ目にあった。
田西 :その他おまえのバイクをおれが拝借してUターンに失敗しちゃって、こけて壊して廃車にし
た「チョイノリオシャカ事件」。
おまえに騙されてアムウェイに参加しかけた「ディストリビューター洗剤実験失敗事件」な
ど、我らの骨肉相食む抗争の数々は、枚挙に暇がない。それを平和だと?
ヲホホホホホホホ、チャンチャラおかPわ!この腑抜けが!短足が、ショートが!!
岡津 :じゃかあしいわあ!このコビトカバぐわあっ!(馬乗りになってガンガン殴りつける)
人類にとって、今がどれほど重要な時かわからんのか!いがみあい、憎みあい、殺しあう
民族ども浄化しなければならんのだよ!親を、一族を友達を恋人を殺された人間が、その
相手を許せぬのは道理だろう、だがその困難を乗り越え新たな時代の幕を開けるのが、こ
の新世紀だと、どうして気づかんのだ?!この呪われた日々をエクソダスするのだ!
シュプレヒコール!暴力反対!戦争反対!(といいつつ殴り続ける)
田西 :言ってることとやってることが違う・・・グフッ
岡津 :(高らかにうたう)♪どーんなに困難で、挫けそうでも、信じることさ、必ず最後におれは勝
つ!♪
田西 :グポーッゲポゲポゲポ・・・コトリ。
岡津 :ぬっ!(脈を取ったり、ズボンの中身見たりして、生存を確認する)やばい、不整脈、肝硬
変、メニエル、呼吸困難に陥ってる、よし、マウストゥマウスだ!(千葉のネズ公の耳つけて
みる)
BGM:「イッツァスモールワールド」
岡津 :ヅヅヅヅヅヅーーーーーーーッ、いかん間違えた、コイツの口から空気を吸ってしまった、
これじゃ意味ないって言うか逆効果だった、あ、顔色が青白くなってきた、酸素欠乏症にか
かりそうだ、よし!(思い切り、空気吸い込み吐くと・・・)
BGM:「屁」
岡津 :オーモーレツ!あ、ガス中毒追加!みるみる血の気が失せてきた。
よし、輸血だ、おれの熱い血をキサマに流し込み、腐ったおまえを浄化してやろう!
おれの赤血球はストロングだぜ!病原菌なぞイチコロさ!(輸血する)
田西 :パチリ
岡津 :おお、目覚めたか!
田西 :うーん・・・
岡津 :いや・・・まてよ・・・以下回想シーン
田西 :おれ、エホバなんだよね。
岡津 :ああ、輸血しねえってやつ?
4
田西 :そうだよ、輸血するくらいなら、ヘルへ逝くね。
岡津 :フーン・・・回想終了・・・まずいなw
田西 :キョトキョトおれ、どうしたんだ?あれ、この管なんだろう、点滴?
岡津 :うむ、安心しろこれはその、輸血じゃないぞ、輸血じゃ!
田西 :輸血なんかされたらおれ生きていけないよ。
岡津 :うむ、その、あれだ、みね打ちだ、はははははみね打ち。
田西 :キョトン?なに注入してるんだ?
岡津 :お、おまいクリームソーダ好きだったよな、シュワシュワしたあれな。
田西 :好きだ~ニセのメロン味のエメラルドグリーンの炭酸水にのっかった覚醒剤のように真っ
白いアイス・・・は~のみてえなあ。
岡津 :飲んでるぞ。
田西 :は?
岡津 :この点滴な、クリームソーダなんだ。
田西 :・・・死ぬんじゃない?そんなことしたら?
岡津 :体調は?
田西 :すこぶるいい!いやあ、クリームソーダー利くなあ、ビタミン注射なんか目じゃないわ。
岡津 :それは良かった。
田西 :なんていうか・・・さっきまでの猛り狂った闘争心が消えてさ、今春の海のように穏やかなコ
コロモチなんだ、ひねもすのたり松太郎ってかんじ?あはははははあは。
岡津 :浄化成功♪
田西 :なんか言った?
岡津 :いやこっちの話。
田西 :思い起こせば先祖の代からのいがみ合いだったからなあ。
岡津 :そうそう、宇宙世紀 0003 おれのじいさんがおまえのじいさんのモビル相撲ファイター「朝
隆々」のコクピットをビームフォークで貫いたのに、ウェイブライダーに変形して突っ込んで
きてなあ。
田西 :ビームフォークとビームやっとこが互いの急所を貫き、がっぷりよつに動けなくなったモビ
ル相撲ファイターに業を煮やしたおまえのじいさん、ビーム日本刀を振りかざしてナマ身で
突っ込んできたんだってなあ。
岡津 :それ以前も十字軍対イスラム軍としてイエルサレムで戦ったり、あるいは徳川家康軍対石
田光成軍として関が原にあいまみえて戦ってみたり。
田西 :さらに古くは細胞対ミトコンドリアとして戦っていたという・・・だが今丹波哲郎のように死の
淵を覗いて思う・・・死んだら驚いた、極楽と地獄の世界のちがいに。
岡津 :マユツバ。
田西 :やっぱな・・・極楽いきたいわな、酒はうまいし姉ちゃんはキレイだもん、1 日体験でさ、行
ったわけよ、天国と地獄へ。天国でキャバクラいったわけよ、そしたら隣にはピチピチムチ
5
ムチの井川遙似と松浦亜弥似がピターとはりついてさあ、もうメロメロ、アフターでなんとし
っぽり温泉旅行までOKしてもらっちゃってさあ。
岡津 :まじ?おれ死のうかな・・・。
田西 :所が地獄のキャバは・・・!!ま、テーブルのうえには頭蓋骨があってさ、その真ん中に穴
あいてポッキーがさしてあるんだけどね、隣についたのがこれまた、泉ピン子似と赤木春江
似と、橋田壽賀子似でさあ、なんでファミリー揃い踏みなん?、生き地獄よ、あれこそが。
岡津 :じゃ死ねないじゃんよ。
田西 :ウェイター江成でさ、なんかもう、思い出したくもない。あんな世界いやだ。
岡津 :そりゃ井川や松浦がいいべ。
田西 :それを考えたら骨髄まで染み付いてたはずのおまえへの憎悪がスーっとひいてさ。
岡津 :そうだな、おれたちも新たなステージに立つべき時だ、古い時代の形骸にしがみつくとき
ではない、例えるなら。
田西 :例えるなら?
岡津 :ライオンキングを許すな!ジャングル大帝レオで勝負しろ!!
BGM:「レオのテーマ」
岡津 :(四つんばいで)おれ、レオー!
田西 :大変じゃあレオ、森の仲間たちが悪いライオンの罠にかかって今にも食われてしまいそう
じゃ!往け!レオ、わしことマンドリルのじじいが応援しちょるぞ。
岡津 :ウオーッ(四つんばいで走る、疲れる)ムリだーこの体勢はもうもたん!
田西 :ウキーウホウホ、どうすりゃいいんじゃあ。
岡津 :ハラへったな・・・ガブリ。
田西 :ウギャーッなんやねん、なにすんねん!?
岡津 :考えたらおれ肉食だし、森の仲間助けるのムリがあるわ、第一悪いライオンっつっても生
きるために食うわけだし・・・。
田西 :でも平和のために戦わなんだら、視聴率落ちるじゃん。
岡津 :自然を守れーとか?エセエコロジストの人たちみたいに言うのか?
田西 :それがセオリーだろ?
岡津 :ファックセオリー!オレ達新たなるステージいくんだろ!
田西 :でもあんまアヴァンギャルドなことやると客ひくよ?斬新さは必要だけど、ある程度のセオ
リーがないと客は安心しないから。
岡津 :腑抜けたか兄者!!
田西 :兄者っていつから兄弟に・・・
岡津 :おれたちはチャレンジャーだ!観客の反応なにするものぞ!むしろ引かせてなんぼじゃ
あ!ひけー!!ひけーー!!
田西 :引き潮じゃ~引き潮じゃ~~~~!!
岡津 :干潟じゃあ、おれたちゃ有明海のムツゴロウのように取り残されたぞー!!
6
田西 :刺激されたどお!見よや!おれの一発芸、ネブカドネザル 2 世!!
岡津 :おお、バビロニアの王、ネブカドネザル 2 世にクリソツだ!しかし誰もそんな王様知りゃし
ないから、超ひいてるぞ!!
田西 :水を打ったようだ!深い森の中にポツネンと佇んでるが如しだ、マイナスイオンがモワモ
ワでよるわ!
岡津 :よし、とどめだ!内輪ネタを言ってやる!
田西 :よ、よせっ!いくらなんでもそれだけは止めてくれ、客途中でみんな帰ってしまうじゃない
か!(岡津の脚にすがりつき、泣いて制止する)
岡津 :やかましいっ、おれは米軍と同じだ、ココまで来たら後にはひけない!
田西 :やめてくれ~~~~!!
岡津 :林剛央、おまえの東京行きは完璧なムダ足だ、いやさ、おまえの人生そのものがムダ足
だ。おまえは生涯家畜と鬼畜とビーチクの如き最下層のやられキャラなのだ!!
BGM:林声「あんまりです・・・」
岡津 :解説しよう、林とは・・・まんどくせーので詳細は略、俺たちの下僕であった人物である。
田西 :あ~おれたちはどこまで堕ちていってしまうのだ!こんな・・・こんな・・・読者にいっちょん
人気がない「幽霊小僧がやってきた」を執筆してるゆでたまごのような気分はまっぴらだあ、
キン肉マンを描きてえよおぉ!
岡津 :(震え始める)ブルブルブルブル。
田西 :うぬ!?なんだその禁断症状的リアクションは?
岡津 :うけてえ・・・笑いとりてえわ・・・やっぱ・・・ハッ!いかん弱気は禁物だ、フロンティアスピリ
ットだ、吶喊精神だ!ファック客!おれの、おれによる、おれの為の演劇だ!マンドリルのじ
じい、喉をグルグルゆわせながら、おまえの喉笛を甘噛みしたりマジ噛みしたりしてやるう。
ひよらんぞ!
田西 :いいんだ、もういいんだよ。岡津オレ達は良く戦った、ここからは客に親切にわかりやすく
展開しようじゃないか、今ならまだ戻れるさ、お客さんも心優しく笑ってくれるさ。そうだ、トリト
ンだ、わかりやすくトリトンと敵で戦ってトリトンが平和を勝ち取る、これでゆこう!
BGM:「Go Go トリトン」ヒデ夕木
田西 :おお、ここが水平線の終わりか、ふっココに夢の世界があるのだな。
むっ、なにか得体の知れないのがいるぞ、なんだ?!おまえは。
岡津 :タコタコタコタコ。
田西 :おお、タコだ、クレクレタコラかなんかかな?
岡津 :大王イカだ~イカッイカッ!(攻撃してくる)
田西 :ああっイカレポンチだ!貴様ポセイドン族の一味だな、トリトン族を全滅させられた積年の
怨念を、今ココで晴らして見せようぞ!オリハルコーン!(短剣を刺す)
岡津 :ハアッ、鍼灸のように心地いい・・・若いの、お礼にこの玉手箱をあげよう。
田西 :やった~物品をゲットしたぞ!何かな何かな?ブホッ煙だ~~~。
7
岡津 :してやったり、トリトン敗れたり~!
田西 :おのーれ!謀ったな!この中年男性め!
岡津 :だまれジャンボ田螺めが!キサマをマイケルジャクソンにして、ED にして、その上で美少
年と同じベットで寝かしてやる!
田西 :ほわぁ~~~蛇のナマ殺しだ、生き地獄だ、いっそ隣に水森亜土でも置いてくれたほうが
諦めがつくのに~~。
岡津 :ふふふ、人はなまじ希望があるから苦しむのだ、大事なものがあるから弱点が出来るの
だ、みよ、取り出しましたるこのピカチュウ。
田西 :むっ、おれの大事なピカチュウコレクションの一品をキサマ!
岡津 :ハーイこのピカチュウに、ウンコが迫りま~す。
BGM:ガンダムピンチのテーマ
田西 :なっ!や、やめろ、やめてくれえ~~おれにウンコつけてもいいから、おれのピカチュウに
だけはそんな無体なことはやめてくれえ~~~。
岡津 :ん~~いい響きだぁ、ウンコエンドピカチュウ、合体!!(合体させる)
田西 :ホゲ~~~~~~~~!!
岡津 :は~見ろよこのピカチュウ、まるでウンコにレイプされたかのようだ。口惜しいか!口惜しけ
れば泣け!ククク、それ返してやろう。
田西 :ハー、もういいや、このピカチュウおれにとったら黄色いウンコになった、ポイッ。
岡津 :な!キサマ!
田西 :(ハナクソほじりながら)ピカチュウいらないでチュウ。
岡津 :ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・許さん、許さんぞ愛玩するだけしといて、ちょっと汚れたらポイ、キ
サマはツンドラの氷だ、砂漠の砂だ、しょっぱい海水だぁっ!
田西 :っていうか汚したのおまえじゃん。
岡津 :詭弁をたれるなあ!イカチョーップ!イカキーック!イカチョーパン!!
田西 :図に乗るなあ、この雑魚キャラがあっ!トリトンデストロイヤー!!
岡津 :ハウッ。
田西 :よーしとどめだ!トリトンブリーカー!(鯖折)
岡津 :ふごおおおおおおお・・・うっ・・・なんだ・・・この殺人技から、深い悲しみが伝わってくる・・・
トリトンの悲しみがおれの心に響く・・・なぜだ!
田西 :グリーンピース、捕鯨反対。新フクオカ空港建設反対、借金残すな海残せ。
岡津 :おおっ、あなたは海の生き物を保護する主義の人!
田西 :わかってくれましたか。
BGM:「愛の水中花」松坂慶子(ふたり踊る)
岡津 :わたしはあなたの心も知らず今まであなたを憎んで・・・そんな私をあなたはこんなにも暖
かく包んでくれるのか。
田西 :海は広い、大きい、月は昇る、日が沈む。それでいいじゃないですか。
8
岡津 :おお、包容力だ!大人物だ!師匠とよばせてください!
田西 :めざめたか、大王イカ、さあ共に手を取り合って、戦おうではないか!
岡津 :コンディションレッド、コンディションレッド!隊長!!釣り人が釣り糸を捨てて帰ってま
す!っていうか糸井重里が魚を釣っては食いもせず捨ててる!
田西 :なんだと?徳川埋蔵金探しでむやみに穴掘ってモグラの生活圏を脅かしただけではあき
たらず、我が海の生き物にまで手をかけるのか!許せぬぞ糸井、腐ったエセ文化人め!
岡津 :この際思い上がった人間どもを懲らしめるために、長年の遺恨を捨てて手を組みますか。
ポセイドン族とトリトン族が同盟を結べば、この七つの海の恒久的な平和が約束されるで
しょう。
田西 :地球に優しい提案だ、みどりの地球を救え!
岡津 :では、早速手始めに竜神リバイアサンに命じて大洪水を巻き起こし、忌むべき邪まな存在
どもを、水洗便所のようにキレイサッパリ押し流してしまいましょう。
田西 :(しゃがんで用を足し、流す)ヨーソロー、ウォッシュ!
BGM:「水洗便所の音」
岡津 :ほぼ人類滅亡しました。
田西 :うむ、地上の残存勢力は?
岡津 :はっ、ヒマラヤ山脈のイエティ、アルプス山脈のサスカッチ、アンデス山脈のビッグフットと
いった類人猿だけが生き残りました。
田西 :ヒューマン・ビーイングの終焉はあっけなかったなあ。
岡津 :アトランティス大陸よりもあえない最期でしたな。
田西 :ん?あの箱舟はなんだ?
岡津 :例の聖書に出てくるあれでは?ノアとかいう・・・
田西 :プロレスの団体か、興味ない。死ねよやあ!ベキ!ブクブクブクブク・・・
岡津 :ああ、ノアの箱舟がタイタニックのように真っ二つになって沈んで行く・・・。
田西 :人類―――――終了―――――――。
岡津 :やりましたな、とうとう地球を蝕むがん細胞どもを、我らが仇どもを絶滅させましましたぞ、
これで世界に平和が訪れ・・・ぬわあっ!!
田西 :ねがえりうったぞ~!(岡津を闇討つ)
岡津 :ふごおっ・・・たばかったな・・・トリトン・・・
田西 :共通の敵がいなくなれば我々は仇同士だ、先んずれば即ち人を制す。頂点は常にこの俺
だ、せいぜい地獄の満足シティでハッスルしてくれや。
岡津 :む、不死鳥の異名を持つ男、フェニックス岡津なにげに死すか・・・フッそれもよかろう、ガ
クっ。
田西 :ククク、ベイビーの手をひねるようじゃったわ。何が不死鳥だ、この死鳥が!思えば遠く険
しい茨の道のりだった、この手を真っ赤に血に染めて勝ち取ったこの果てしない自由の世
界!さあ、手を洗っておにぎりでも食おう、ジャブジャブ取れない・・・血がとれないよお・・・
9
まあいいや。ともあれ長き戦乱の歴史は終わった、これからは真の平和が訪れるだろう!
ピース、ピース!おい起きろ岡津、真の平和が訪れたぞ。
岡津 :おお、真の平和とな、それは目出度い!おれの必死の布教の甲斐があったというもの!
田西 :繁栄の時代だ、いくさで疲れやつれた、涸れはてへばりきった人生に潤いを与えるのだ。
岡津 :豊かな生活!例えるなら上等の焼肉屋でカルビやロースを1皿丸ごと残すような贅沢な
人生だな。
田西 :くるくるじゃない寿司屋で怯えることなく値段が時価の中トロを頼みまくるみたいなものだ。
岡津 :考えただけで尻子玉を抜かれそうだ。へい、なに握りやしょ?
田西 :ちゅ、中トロを。
岡津 :ヘイトロおまちっ!
田西 :(動揺しながら食べる、泣き始める)怖くて味がわからないよう・・・。
岡津 :この小心者め!!旅だ、旅に出よう田西、出エジプトならぬ、出小島だ、エクソダスだ。こ
んな未開のジャングルで井の中の蛙をして一生を終えたくはないだろう。
田西 :しかしここは先祖が代々命をかけて守り抜いてきた土地!それを易々と離れられるか!
岡津 :今は新世紀なのだぞ?田西キサマだって目覚めただろうに。
田西 :だが・・・ここには。
岡津 :おれは行くぞ、ここに縛られる理由も、しがみつく感傷もありはしない。
田西 :おれは・・・(沈黙)
岡津 :好きにするさ、おれは行く、決断がついたらくるがいい。行くも留まるもそれぞれの道だ。
(去る)
田西 :戦場はドコでもいいのかもな・・・待てよ、粗忽ものが、リュックくらい持っていかんか、どん
な厳しいサヴァイヴァルが待ち受けているかわからんのだぞ、さしあたってこのヘンな茸で
も、弁当にすっか、まてよお~(にこやかにスローで走り出す)
――――暗転―――――
焚き火を囲んでいる二人の声、「日本全国酒飲み音頭」歌う田西、
岡津 :いやあ、このキノコうめえ・・・はうっ!!
BGM:パリは燃えているか~ピアノヴァージョン~悲しげに
女田西:まさかの結末だった、あの岡津が毒キノコにあたって死んでしまうなんて・・・。
岡津が晩御飯のおかずにあたって死んでしまうなんて、まるでださいダジャレのようだ。
あんなに憎んで憎みぬいてきたおまえが、もはやこの世にいないだなんて。
ある時はアサルトライフルで撃ちあい、ある時は日本刀で、サーベルで、終いにはナイフ
やフォークでまでも斬りあい、意地をはりあってきた。
そうそう、寝てるときにこっそり雲古をなすりつけた事もあったっけ。
そこまでしてやりあってきた。
今、私の心のうちに喜びはなく、言いようのない孤独で虚ろな感情に支配されている。
もし、あんな不幸な事故ではなく、岡津を私自身のこの手にかけていたら或いはこんな得
10
体の知れないドス黒い感情ではなく、アフリカ大陸のサバンナの太陽のように明るく晴れ晴
れとした気持ちになれたかも知れない。
ああ、岡津岡津、今は亡きお前の分まで私は・・・。
女岡津:岡津参上!!(台車に乗って勢い良く飛び出てくる)
田西 :わっ、なんだお前!
岡津 :岡津茂平!生きてますぞ、生きてますぞ!
田西 :チッ、聞いてたのかよ、これはなあ。
岡津 :ムービーの脚本だろう?ここを脱出したらハリウッドとかいうとこでおれを主役にしたおれ
の生き様の映画を撮るんだろう?戦争の犬だと思ってたおまえにそんな大それた夢があっ
たとは。
田西 :キサマ、なぜその極秘マイドリームを?
岡津 :日記を盗み見た。
田西 :キッキサマ!ふざけるなあ!して良い事と悪いことがあるだろう?大体そのヘンな動きは
なんだあ!?
岡津 :わっはっはっはっは。分からんか田西、血のめぐりが悪いのう。台車に乗って移動してる。
んだ!
田西 :それは見れば分かるわ。だから何のためにそんな無用な動きをしているのか聞いてるん
だよ。
岡津 :自由のためだ!
田西 :はぁ?
岡津 :訓練だよ、訓練。あの日、そう 1 ヶ月前の旅立ちの日、我らが棲むこの地が、熱帯地方の
周囲20km程の小島だったと判明したじゃないか。
田西 :うむ、遥かなる旅立ちをしたつもりが半日歩いたらまた同じところに帰ってきてしまって、実
にがっかりしたな。
岡津 :メビウスだよ、メビウスの輪のような、リスの巣箱によく設置されてるくるくるくるくる回るア
レを回ったようなものだったよ。
田西 :超意気揚々と出発した出鼻をヒザカックンと挫かれてしまったな。
岡津 :しかし我らが情熱も恋愛と同じだ、障害があるほど燃えるものだ!例えるなら「よ~し、今
日こそ部活の後輩の花乳首桃子たんに告るぞ~~」
田西 :るんるん♪まあカワイイ紫陽花だこと、御自慢の黒髪に飾っちゃおうっと。
岡津 :はっ、あのキャピり、なんて可憐な乙女なんだろう、頭には小粋に紫陽花のドデカイ髪飾り、
カタツムリも這ってる、くそう、マジボレだぜ!行くぜ!やめた!誰か来た。(隠れる)
田西 :あっ、先輩の女犯坊達蔵さん、昨日は下駄箱にラブレターありがとうございました、あたし
も前から先輩のことが気になってたんですぅ、セレブなお付き合いをしていきたいですぅ。
岡津 :ガ―――――――ン!!出鼻挫かれた―――っだがメタボレだぜ、負けんぞお!!
田西 :先輩ったらぁキャピキャピいちゃいちゃ♪
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岡津 :あのおっ!!
田西 :きゃんっ!
岡津 :別れて下さい!!
田西 :えっ?
岡津 :そいつ良くないですよ、ボクの方がですね、アニメとか詳しいんですよ、東京ミュウミュウと
か!描けます!ヒロインそっくりに描けますよ!!
田西 :キモーい!
岡津 :褒め言葉ですか?きもいって褒め言葉ですか?(なんか威圧する)
田西 :ひ~~~~~~~~ガクリ(失神)
岡津 :おお、いきなりどうにでもして~ってことですね!いただきます。は~萌えた萌えた。
田西 :なんか違うだろ・・・。
岡津 :なんかさあ、おれたち性別変わってない?
田西 :えっ?
岡津 :女になってない?さっきから。
田西 :ホントだ、性別間違えた――――――――っ!!
岡津 :さっきそこで排泄してたらさあ、ないじゃん、びっくりしたよ。
田西 :ど、どうしよう?
岡津 :どうしようってなっちゃったもんは仕方ないんじゃな~い?
田西 :仕方ないっておま・・・・・・そうだね~。
岡津 :どうもあのキノコが臭いんだよね、あれ食べてから 1 週間くらい死の淵さまよったじゃん?
田西 :幻覚いっぱい見たな~、小人の歴代麻宮サキがヨーヨーとかリリアンとかで集中攻撃して
きてさあ、必死でおまえを起こそうと雲古なすりつける幻覚みたな~。
岡津 :なんかあのあと起きた時おれ異様に雲古臭かったんだけど?
田西 :じゃああれ現実だったのかな?まあ夢も現実も目を瞑れば同じよ。
岡津 :おまえは宇多田ヒカルか!おっと、女性となった今言葉遣いも改めましょう!あなたはヒッ
キーのつもりかしら?
田西 :ボクは・・・。
岡津 :ボクって言うな!女が不思議ぶってボクっていうの、虫酸が走るわ!
田西 :あたいはさあ。
岡津 :あたいもいうな!キー癇にさわるわねえ。
田西 :あんたイライラしすぎ、まあ性転換したばっかみたいなもんだからさ、女性になれてないわ
けよ、手探りで女性版のキャラ模索してるのよ。
岡津 :一理あるだわね。うちら女性になれてないから、でも性別が変わったのはしょうがないから、
女性としての幸せを探しましょう!
田西 :そうねえ、幸せねえ、あんたを殺すこと以外ででしょ?
岡津 :もちろんよ、女性に武器は似合わないでしょ?セーラー服と機関銃以外。
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田西 :快感!
岡津 :海パン!
田西 :女の幸せねぇ。
BGM:「よせばいいのに」
岡津 :幸せな結婚、そして出産。
田西 :似合わねえ。
岡津 :じゃかっしゃい、ささやかでいいのよ、幸せってものは!
田西 :じゃあキムタクと結婚すんのと(地味な有名人)と結婚すんのどっちがいい?
岡津 :キムくさ!収入や将来性が全然違うもの。
田西 :だったら工藤静香になる必要があるわよ。
岡津 :チッ。
田西 :舌打ちすんなよ、感じ悪い女だな。
岡津 :ぺッ。
田西 :唾吐くなってえの、だから共稼ぎしなくても大丈夫な旦那見つけるためには、それなりのグ
レードの女性にならなくちゃいけないってこと。
岡津 :催眠術の勉強すれば?
田西 :催眠?
岡津 :そう、キムタクに呪文をかけてあたしを工藤だと思わせるんだわさ。そしたらラクにラクが
出来る。
田西 :まあ、いいけど。じゃあはい催眠術の本。
岡津 :ん?・・・文字がいっぱいだ・・・それに分厚い・・・ふりがなもないじゃないか。
田西 :まあ小難しい事書いてあるんじゃない?
岡津 :マンガ本の頼むわ。
田西 :ないよ。
岡津 :じゃあ催眠術無理。
田西 :諦め早。
岡津 :手っ取り早く有名になるにはどうしたもんかしら?
田西 :マスメディア進出じゃない?
岡津 :時代の波にのってか。
田西 :そうだね、ナウいヤングに受けるように。
岡津 :あれかな、娘。で OK かな?面白くないギャグ連発すれば受けるかな。
田西 :かわいければ何でも受けるんじゃない?一部のあほう共には。
岡津 :あたしはカワイイかい?
田西 :・・・・・・・・・・・・そろそろ梅雨だね。
岡津 :質問に答えろ。
田西 :マジレスすべきかボケて欲しいのか分からなかったさ。
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岡津 :なんで妙に気を使ったような物腰なんだ、男だった頃のようにはっきり言えばいいじゃない
か。
田西 :なにをカワイイ基準にするかによるね。あんたの可愛さは。
岡津 :どゆこと?
田西 :ヨゴレチームなんだよ、あたしらは。
岡津 :ヨゴレ言うな。
田西 :あんたふっつ~のお嬢さんとさ、1 時間電話できる?なんかブランドの話とか恋の相談と
か延々と話せるかい?
岡津 :絶対無理。
田西 :ところが直径8cmの雲古しちゃった~って電話だったら?
岡津 :3 時間は話せる。
田西 :人にはそういう好き嫌いがあるっていうこと、お好きな人にはたまらないってコトね。
岡津 :そんなお好きな人にはたまらないうちら、ぶっちゃけマスメディア進出できると思う?
田西 :売り方次第かな、ビッグなプロデューサーバックにつけて、後は時の運じゃない。
岡津 :マーケティングね、需要を研究して時代のニーズを知ることだわ、そして需要をでっちあげ
て、あたしらが供給されていくのだわ。自らをプロデュースするのよ。
田西 :下積みから地道にコツコツやっていくの?
岡津 :もちろん裏道を行くよ。ウワサよ、ウワサを流すのよ。
田西 :75 日有効なあれ?
岡津 :イメージ戦略は重要よ、戦国時代できる武将は忍びに色んな噂を流させていたのよ。
実はお隣のノブナガさんはぎっくり腰で弱ってるらしいでござるよ、ニンニン。
田西 :へ~そうなんだあ、じゃあ楽勝じゃん。
岡津 :ヨロヨロヘコヘコ。
田西 :なんだ、あのノブナガへっぴり腰じゃん、よ~し近寄って額に米って書いてやろう。
岡津 :かかったなあ!ザクッ。
田西 :グフッ。騙し討たれたあ。
岡津 :こう、情報操作すると、有利でしょ。ただ美女が来たっていうんじゃなくて、絶海の孤島の
ジャングルから絶世の美女が来るって噂を先行させて期待が高まった頂点であたしが出て
ゆけば効果は絶大でしょ?
田西 :でもさあ、みかん汁飲もうと思って飲んだら牛乳だったらオエーってなるでしょ?どんなに
おいしい搾りたてであっても。最高級松坂牛の牛乳であっても。
岡津 :そうか、最高級のあたしでもか・・・。
田西 :料理の仕方も大事よね、300 万のマグロからとれるトロだってさ、チョコ塗りたくってコチジ
ャンからめてオーブンで焼いたらおいしさ台無しでしょ?
岡津 :キャラをいかせという例えだな。
田西 :例えばジャパンで売ろうと思ったらさ、あの国はバブルはじけてもう 30 年も不況続きでしょ、
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国民はみんなヘニャーって自信喪失してるワケよ、だからもう一回バブルをもたらすような
破天荒なヒーローが現れたら、ゾッコン惚れこむと思うんだよね。
世界的に右翼化してるしさ、京都議定書破棄で環境破壊も著しいから、ナショナリズムと
エコロを組み合わせたバブルなヒーロー編み出してさ、いっちょ勝負かけない?
岡津 :いいわねえそれ。タイトルは?
田西 :エコ課長、江古愛介の生涯。
岡津 :社長!地球環境を敵に回してはわが社は立ち行きません!とにかく東南アジアの貧しい
子供を輸入して、海の掃除、富士山の掃除を徹底させるのです!うるさい、部下の部下田
恭子、今大事な話してるんだ、あとになにい!正義怪獣セイギドンがあばれてるだとぉ?!
田西 :人身売買ハンターイ、児童虐待ハンターイ労働基準法ジュンシュー(といいつつ暴れる)
岡津 :エコチェーンジ!でやっ、ジコマンヒーロー、エコマンケンザン!俺自身の夢と栄達のため
に戦うぞ!わるい怪獣め、エコパワーを見せてやる!くらえ、風呂の水を換えずに 1 ヶ月使
ったO157入りお湯!!
田西 :グギャーーーハライタがー吐き気がー辛いドン~!
岡津 :電気自動車のバッテリーサンダー!
田西 :ビビビビビビビビビビビビ
岡津 :骨が透けてみえたぞ、骨粗しょう症気味め!とどめだ、酵素パワーのアタックアターック!
さ、このアタックを溶かした水溶液を飲んで。
田西 :ゴクゴク、あうううう、苦しいドン~まずいドン~だが、世界の子供の自由と教育と人権の
ため、セイギドンは・・・負けるわけには・・いかないドン!
岡津 :ねちっこいヤツめ、一撃必殺!リサイクルペット十文字斬り!
田西 :フギャーーーー世界の子供たちを・・・大切に・・・バタリ。
岡津 :ケッ口ほどにもないヤツめ!エコチェーンジ!エコ課長見参!社長!イニシャルコストな
んて気にしなくていいんです!とにかくいくらでもいるお年よりをサイボーグに改造して原子
力発電にかわるエコ発電自転車のペダル漕ぎ発電の漕ぎ手にするのです。定年退職者ば
かりから給料も価格破壊価格で使います。うるさい部下田恭子今大事な話してるんだ後に
なにい!デモ怪獣デモラスが暴れてるだとぉ?!
田西 :シャカイフクシー、イリョウセイドカイアクソシー、ネンキンゾーガクー!!
岡津 :エコチェンジ!ジコマンエコマン!おれのために戦うぞ!邪魔者は消えろ、英語発言!ハロ
ー、ハウアーユー。ドゥユーライクムービー?アイライクマンゾクシティベリーマッチ。
田西 :ギャー英語アレルギーが~~。
岡津 :高血圧脳梗塞心筋梗塞促進!油もの接待!ほら、ラードでギラギラのヤキブタのテンプ
ラよ~、あ~んして。
田西 :クエマセン。
岡津 :くっ、やるな。ならば肩もみ発動!どう、おばあちゃん?きく?
田西 :はぅ、いいね~孫に揉んでもらってるようだよ、ナマンダブナマンダブ。
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岡津 :フフフもみかえしで死ね!
田西 :そもそもウチの鬼嫁と来たら、気に入らないことがあるとババに暴力を振るうんだよ、流行
のドドメスティックバイオレンス?
岡津 :ドドメ色のスティック・・・?
田西 :こないだも掃除が行き届いてないことを房江さんに注意したらアツアツのタコヤキを投げ
つけてくるんだよ、だからあたしも房江の布団の中にラーメンの汁をぶちまけてやったのさ。
そしたらクドクドクドクド・・・・・・・・・。
岡津 :うわあ、長話だあ、揉むのもつかれてきたぁ。なんて手強いんだ!よし最終奥義だ!札び
ら!おばあちゃんこれで・・・。
田西 :あいよ・・・わしらが身を守るにはこれしか頼りがないからのう・・・ありがとね、にいちゃん
よぅ。
岡津 :フウ、江古愛介の行く手は茨の道、ラビアンローズだぜ!しかし重役、社長の椅子は目前。
神経かなりすり減らして過労と不規則な生活に接待で満身創痍でパンク寸前だけどがんば
るぞ~。社長!二千円札なんて今誰も使ってないんです!うるさい部下なにい!富士山が
噴火した?竜神様のお怒りか?エコチェン!現場アツッ。
田西 :どうしたらいいんでしょうエコマンさん、このままでは日本は・・・。
岡津 :おお、初登場部下田恭子くんか。思うに、これは思い上がった人間に地球がしっぺ返しを
したのだ。
田西 :それは空や海や大地を汚した人間への神の審判なのですか。ならば人間は黙って滅び
るしかないと?
岡津 :地球上にはいくつもの種が繁栄を極め、滅んできた。人間もそのさだめからは・・・
田西 :サダメ=フセイン。
岡津 :・・・逃れられないだろう。だが、私は悪あがくぞ!まけじ魂を発揮するときは今!南極に
行って氷をたくさん取ってきて火口に投げ込み噴火を中和するのだ!
田西 :まあ、なんていい考えなのでしょう。
岡津 :早速南極に飛ぶぞ!トゥっ。
BGM:嵐
岡津 :うわああああ寒い、もうダメだやっぱ帰ろう。
田西 :待って愛介さん、ここであなたが挫けたら、日本はめちゃらくちゃらになるのよ。
岡津 :これは、夢か幻か、いるはずのない部下田恭子の姿が見える!
田西 :これは演劇的な演出よ、よくあるパターンでしょ?
岡津 :あるある。絶対ある。
田西 :ともかく、日本が潰れて会社がなくなったら、貯金も今までの働きも水の泡よ。
岡津 :ふおおおおお、バブル崩壊はもういやだあ。
田西 :だったら夢と愛とお金のためにがんばりなさい。
岡津 :よし、一念発起したぞ!うまい具合に地球温暖化で程よく氷河が溶けかけているこれをこ
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れくらい持ってゆけば事足りるだろう。
田西 :マテェ?
岡津 :ぬっ、おまえは巨大皇帝ペンギン!
田西 :この南極で勝手なことは許さんぞ、人間め!
岡津 :なんだと!?あいかわらず虚ろな目をしやがって、ピングーが売れてるからっていい気に
なるなよ!
田西 :タマゴボンバー!
岡津 :いてっ、自分の卵を投げつけてくるとはなんてヤツだ!こなくそぉー!うっ、ダメだ、寒さで
カラダがうまいこと動かない・・・冬のゴキブリのように・・・ノロノロだ・・・。
田西 :エコマン敗れたり!
岡津 :かくなる上は!カミカゼコナキジジイの術!!コッチャコーイ、コッチャコーイ。
田西 :何故だろうカラダが勝手にそっちへ。
岡津 :コナキ、オン!(おんぶされる)
田西 :うわあああ重たい!
岡津 :ダイナマイト、オンファイヤー!
田西 :わーそんなことしたら朕も死ぬけど足下も死ぬぞ!
岡津 :夢と愛とお金のためなら、悔いはない!♪ひそむように輝いてる私はダイナマイト♪
BGM:大爆発
田西 :ギャーーーーーース!
岡津 :うう、半死半生の上に変身も解けてしまった。今の私はエコマンにあらず、ただのエコ課長
江古愛介だ、しかし、この氷塊を抱えて日本に帰らねば!グムウッ、なんて重いんだ、さっ
きまでは軽々だったのに・・・くそお、江古ここまでか!
田西 :しっかり江古課長、私もこっちを持つわ。
岡津 :部下田!よせ、こんな馬鹿なことに付き合う必要はない!
田西 :大丈夫よ課長、あたしだって日本の危機一髪にこれくらい、あったくさんのペンギンが!
課長!!
岡津 :万事休すか!くそおここまできて!ハッ何をするんだペンギン!?
田西 :信じられないわ、たくさんのペンギンが私たちを手伝って氷を抱えてくれてる!
岡津 :お前たちまで、馬鹿なマネはやめるんだ、お前たちのボディではもたない!
田西 :ぐちゃ、あっ、子ペンギンが潰れ死んでしまったわ。
岡津 :うおおおおおおお、これ以上犠牲者を出さないためにも富士山麓へ急ぐんだあ。
田西 :課長、日本上陸しました、ああっ青木が原樹海が行く手を塞いでいるわ。
岡津 :山焼きだ!山焼きで道を作るんだ!ゴーーーーーーッ。つきすすめえ!
田西 :さあ、火口に着いたわ。あたしたちの通ったあとには草木も生えてないわよ。
岡津 :ペンギン部隊も全滅か、よし、振り返る過去ごとこの氷を煮えたぎる地獄の入り口から沸
きあがってくるマグマの中へぶち込むんだ!せ~~~の。
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二人 :どっぽ~~~ん!!
BGM:大爆発
岡津 :あれ?おれたち死んだ?なんでさ、作戦は成功したのに。
田西 :そういえば水蒸気爆発ってなかったっけ?なんか熱したもんと水が反応すると大爆発する
とかそんなかんじの。
岡津 :ああ、きいたような聞いてないような。あった?そっかあ。
田西 :まあそんなかんじで私たち死んじゃったみたいよ。
岡津 :ドンマイドンマイ、じゃあ閻魔大王をぶっ飛ばして、おれたち。
田西 :私たちが。
岡津 :新しい死後の世界を作って行こう!真の理想郷を作り上げるのだ!
田西 :OK、みんなが早く死にたいと思うような地上の楽園を作り上げるのね。
岡津 :さあ、二人手を取って、閻魔のキャッスルまで駆け出そうじゃないか!
田西 :おほほほほほほほ、捕まえて御覧なさい。
岡津 :あははははははは、待てえ~~。
田西 :こうしてふたりは地獄で末永く幸せに暮らしたのでしたとさ。
岡津 :どっとはらーい。
二人 :どうもありがとうございましたあ。
岡津 :はい主演男優の矢追浣です。
田西 :主演女優の池須浣です。まさかこの映画がこんなにもヒットしてハリウッドで 10 兆円かけ
てリメイクされて、そこでも主演できるとは思いもよりませんでした。
岡津 :まあわしは計算していましたがのう、興行収入も全世界で 1000 兆億円突破、プロデュー
サー監督主演をこなしたわしらの儲けと来たらそりゃもう、笑いがノンストップでんがな。
田西 :おや、全長 20 メートルのリムジンが迎えに来ました。次はアフリカでの上映会の舞台挨拶
にマサイ族のトコまで行かなくちゃいけませんのでこれで失礼しますわ。
岡津 :はいはい、サインはあとでね、はははなんだ小汚い子供め、きちゃない手で触るな。
田西 :フー、忙しくなったわね。
岡津 :うむ、あの南方の小島で毎日のんきに殺し合いしてた日々が嘘の様だ。
田西 :ハンザキや得体の知れない幼虫まで食べてた頃がなんだったんだっていうような贅沢な
毎日だわ。
岡津 :もう一生働かなくてもいいくらいの巨万の富を手に入れた、いっちょカリブの島でも買って
召使や愛人をはべらせて王様、否女王様くらしでもしてみるか。
田西 :甘いこと言わないで頂戴、金持ちのくらしっていうのは後戻りは許されないのよ。私たちは
社会に大きな影響をもたらす力を手に入れてしまった。それを勝手に放り出すことは許され
ない高貴な義務を背負ってしまったのよ。
岡津 :まんどくせー。義務なんかいらんよ、権利だけくれ。
田西 :例えば私たちのデナーに使う費用が 1 日約 300 万円、これをあなたが。
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岡津 :はー今夜はマルキョウで買った 78 円のカップ麺でいいや。
田西 :すると今夜あたしたちが行くはずだった中州の屋台ペコちゃんラーメンに 300 万の収入が
入らないわけよ。
岡津 :潰れるの?ペコ。
田西 :つぶれないまでも虫の息になるでしょうね、これがあたしたちの暮らし向きなのよ。
岡津 :ヘンなアツがかかってるなあ。息苦しいくらいだ。
田西 :さあ、へこたれてないで、次の事業いくわよ。
岡津 :へえへ、しかしおまえがこんなにもやり手だったとはなあ。しかしお金使うのがこんなに億
劫だったとは、鹿の首の剥製も西洋の甲冑ももう 10 個も買っちゃってるしなあ、経済に貢献
するためとはいえ、いらないもん買いたくないなあ。
田西 :そういうどうでもいいものの売り買いも経済の一端を担ってハウッ!!
岡津 :どうした?頭かかえて?頭痛?ノーシン、ケロリン、バファリン何がお好み?
田西 :全財産はたいて日本の国債買ってたのよね。利子が異様に高かったから。
岡津 :国際・・・。
田西 :あんた今インターナショナルの国際考えたでしょ?
岡津 :なぜそれを・・・!
田西 :国の借金国債ね、日本経済が完全破綻して日本政府が徳政令だしちゃったわよ。
岡津 :徳政令って借金返しませんって政策?
田西 :えー本日を持って私たち無一文に戻りました、っていうか借金ができてます。
岡津 :じゃあ、手持ちの有り金持って逃亡?
田西 :そうなるわね。
岡津 :よし、地下の巨大バイクアマゾネスでトンズラこくわよ。さっさとカネかきあつめて!
田西 :万物は流転するか・・・リセットボタン押されちゃったな。
――――――――――暗転――――――――――
BGM:「バイクの音」、チャリで出てくる男組。
岡津 :ヒャッホー!!おれのマシンは全開バリバリだぜ~!シベリア超特急よりもつっぱしって
るぜ!
田西 :なんぴとたりとも俺たちの行く手をさえぎることはできないぜ!
岡津 :昨日までのカネに縛られてたおれらが信じられないぜ!今の俺は地球最高のフリーマン
だぜ!性別も慌てて出てきたから、また男に変わってるけど、ノープロブレムだぜ!
田西 :ヘーイ、テイクイットイージーおれたちは何にも縛られないロケンロール・ライダーだぜ!
BGM:「チャイムの音」
田西 :時間だ、仕事仕事。(制服着る)
岡津 :わー時間だ、急がなきゃ!安い賃金のために今日も身を粉にして働かねば。
田西 :よし!岡津、これだけ配ってこい!
岡津 :え、こんなにもたくさんですか?田西主任。
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田西 :今日は NTT ドコモと電気料金、ガス料金、水道料金の請求書にベネッセのガキむけ雑誌
がかかってるから郵便局はてんてこまいだゾ!誤配すんなよ!
岡津 :ひえ~低賃金労働者はやおいかんわ~。えー区分、順立て、積み込み、配達と、こんに
ちわあ、郵便で~す。速達で~す。書留で~す。フウ、やっと終わった・・・。ただいま~。
田西 :ごくろう田西、今日の成果はどうだった?
岡津 :はい、なんとか無事に配達終了しました。
田西 :で?
岡津 :で?
田西 :とぼけてもらっちゃあ困るなあ岡津くん、営業だよ営業!
岡津 :は?
田西 :ゆうパック何個売ってきたかって聞いてんだ、このナマズゲルゲが!
岡津 :えっ、配達に忙しかったんで一個も売ってきてないんですけど・・・。
田西 :一個も?
岡津 :一個も。
田西 :キエー―――――ッ!(ニッコリと笑顔の後モンゴリアンチョップ)
岡津 :グエ――――――――――ッ、なんやねん、なにすんねん!
田西 :岡津君、公社化だよ、今郵政で何が一番大事だと思ってるんだね?
岡津 :安全、正確、迅速な配達です。
田西 :キエ――――――ッ!営業だよ営業!郵便局には赤字をもたらすゆうパックを天下り先
を太らせるためにいっぱい売って来いって言ってんだよ!
岡津 :え、でも郵便局が赤字になったら・・・。
田西 :知ったことか!俺あなあ、管理職への昇進試験受けてんだよ。そこにおまえの営業成績
がゼロじゃあ、おれの管理能力がゼロだって思われて課長代理になれないじゃないか!こ
のウッスラバカが!切手は何枚売ってきたんだ!!
岡津 :ゼロです。
田西 :キエ―――――――ッ!いいか、このお先真っ暗の不景気な世の中で、天下りできなか
ったらおれはどうやって老後を暮らしていくんだよ!天下り!(言いながらチョップ)天下り!
天下り!天下り!天下りて~~~~~~~!!
岡津 :(最後かわしてパンチをおみまいする)甘えるのもたいがいにせんか、みっともない。
田西 :(泣きながらチョップ)奥さん、見栄はリ、長男、私立、長女、留学、バアさん、入院、じいさ
ん、介護費、家の、ローン!!(泣き崩れる)え~~~んえんえんえん・・・。
岡津 :田西さんっ、あんた忘れたのか?!郵便局員としての夢を。捨てたのか?郵便屋として
の誇りを!目もくらむような真夏の炎天下、ファイバー、鞄にギッチリ郵便詰め込んで、滝
のような汗もぬぐわず一軒一軒「こんちはあ、郵便です。お、さなえちゃん大きくなったねえ。
おおきゅうなったらお母さんそっくりの美女になるからお父さんヤキモキしちゃうぞ。」そして
「郵便屋さん、麦茶でも飲んで行かんね。」ともらった麦茶の味を忘れたのか?
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指もちぎれるような北風の中、粉雪積もったあばら屋のおっさんから「兄ちゃん寒かろう、
これ持っていきやい。」と差し出されたホッカイロの温もりを、あんたは忘れることが出来る
のか?
田西 :岡津、おれは。
岡津 :地域に密着し老人の孤独死に気を配り、豆腐屋の嫁さんが米屋のゴローと春吉のラブホ
から腕組んで出てくるのを目撃して、翌日角打ちで仲良さげにドブロク飲んでたゴローと豆
腐屋の旦那のノボルの世間話を聞くともなく聞いてたときのあの、えもいわれぬ感情を、あ
んたはドブに捨てられるのかって聞いてんだよ。
田西 :そうだ、ゴローは言ったぞ「ノボさん、あんたの奥さんムネのこう、ふとうしてからくさ。もう
むしゃぶりつきとうなるばい。あげなデカか乳ば毎晩もめるとか、あんたしゃあわせやのう」
するとゴローはこたえた、「いやああいつあくさ、ふとかばっかで肝心の感度がわるかとさ
い、おまけにマグロたいマグロ!」
「いやあ、そげんこたあなか。感度よかほうばい、おまけにつゆだくでからくさ、そら自分か
ら馬乗りになってロデオんごとパッカパッカ」
「おまえ見てきたごと言うなあ、ミツエとやったことあるっちゃないとや?」
「めっそうもなか、想像たい想像」
「そうやろ、あげな(岡津:ピーーーーーーーーーーーと言う)とやろうちゅう男がおったら
そらギネスもんたい、冒険野郎マクガイバーたい。ノシつけてくれちゃるばい、ガハハハ」
岡津 :しかし翌日またもや事件の現場を目撃してしまう。豆腐屋のノボルは米屋の娘ヒトエと中
学校の校舎裏でセーラー服の中に手をつっこんで以下自粛。
田西 :乱れちょる、こんな性風俗が混乱した社会でいいのか?いやよくない。
岡津 :みかねたあんたは米屋と豆腐屋を一家全員公民館に呼び寄せて説教したっけ。
田西 :おまえらはこれこれこういう具合に腐ったみかんだ!おれが金八のように指導してやるか
らありがたく思え!
岡津 :熱かったなあ、あんときのあんたは。
田西 :沸騰していたね、そりゃあもう正義感全開で米屋と豆腐屋にビッシビッシいったさ、だけど、
ルルルル・・・両方とも一家離散しちゃったね。
岡津 :おかげで豆腐と米が町で買えなくなってみんなが不便になったね。
田西 :あのときのおれは若かった、認めたくないものだな。自分自身の若さゆえのあやまちとい
うものを。
岡津 :だが隣の部屋の人の顔も知らないナウなソサイエティと違って、ロングタイムアゴーのソ
サイエティはホットだった。自分の意見をガンガン言ってたはずだ。
田西 :ああ、あのころは社会全体を思って、労働者は団結し、資本家のブタどもと毎日闘ってい
たもんだった。
だがいつか仲間はカネに転び、長いものに巻かれ、言うべきことを言わなくなって言った。
そして、このおれも・・・。
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岡津 :今からだよ!まだ遅くはない!狂い咲くんだ、渡る世間にメガトンパンチだ!カネにくらん
だみんなの目を、今こそ覚まさせてやるんだ!同士になれ!
田西 :ぬおおおお、オルグられたぞ!よっしゃ、いっちょやったるわい!出世がなんだ!家族が
なんだ!黙っておれについてこい!
岡津 :その意気やよし!音楽だ!俺たちはビートとリズムで世界を俺色に染めてみせる!これ、
ギターを持て!
田西 :(ギターとウクレレを持ってくる)はい!
岡津 :みんな最後までついてきてくれてありがとう、今宵おれは燃え尽きるぜ。こんなちっぽけな
おれだけど、月も太陽も追い越せる。この手にウクレレがあるかぎり!
田西 :1,2,3,4、
岡津 :♪本番間近のウシミツ時、セリフ覚えず舞台に上がる夢を見た♪
田西 :ハアやっしょまかしょ♪
岡津 :♪悪夢悪夢、汗だくで金縛り、狂ったおれは街へ飛び出し、妊婦のお腹にメガトンパンチ
田西 :オーヒヤヒヤ♪
岡津 :♪携帯便器にボットンと~
田西 :おい、客ひいてるぞ?
岡津 :♪白い携帯が茶色くにじむ・・・え?
田西 :客みんな帰っちゃって誰もいなくなったぞ。そんな歌誰も聴きたくないよ。
岡津 :え・・・でも・・・そうかな・・・?
田西 :やっぱ難しいよね、やりたい事して食って行くって。おれ帰るわ。
岡津 :おい、ちょっと待てよ、簡単にあきらめるなよ、帰るなよ!(といいつつ楽器片付けて岡津
が退出)待てよ~~~。
女田西:おい!
田西 :はい!
女
:メシだ。(カップ麺投げる)
田西 :え、カップ麺かよ、いくらなんでもおまえ・・・。
女
:誰の稼ぎが悪いんだ?え?来月はママさん英会話教室のみんなとイタリア旅行に行くんだ、
再来月は毛皮を買うんだ。きりつめた生活するのは当然だろ?
田西 :うん、そ、そうだね。
女
:もっと幸せそうに笑えよ。
田西 :こうかな?(笑う)
女
:キモイ
田西 :じゃあ、こんなか?
女
:もっとキモイ。まあいい、フロ入って来い、くさいんだよおまえ。
田西 :えー、たくさんワキガスプレーしたのになあ、ポリデントだってちゃんと。
女
:いいわけすんな!はよ入れ、着替えだしといてやるから。(着替え投げつけて去る)
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田西 :わかった・・・ヌギヌギ、シャワ―――――――――ふう、着替えはこれか、ん?なんだこ
のシャツ・・・(ヘンなTシャツがおいてある)おい、ちょっと待て、いくらなんでもこんな趣味悪
いの切れないぞ(といいつつ着る)おい、お湯沸かしてくれ、カップ麺を(去る)
女岡津:あなた~。(岡津に台車で運ばれてくる)
岡津 :なんだいおまえ~。
女
:ま~ま~お疲れになったでしょ~こんなにうす汚れちゃって、おフロにする?ご飯にする?
岡津 :え~とね。
女
:まんどくさいからおフロでご飯たべちゃいなさい。
岡津 :おフロでご飯って・・・じゃあ先にフロに入っとくぞ・・・(脱いで入浴)はービバノンノン。
女
:さあ用意できたわ、今夜のご飯は冷ソーメンよ、ガラガラガラおまちどう、あ、すべったジャ
ポーン!あら~ソーメンが湯船に入っちゃった、まいいか、いいわね?
岡津 :う、うん
女
:さ、ももやのソーメンツユよ、これにつけておあがりなさい。
岡津 :(お湯の中のソーメンすくっては食べる)ゾゾゾゾゾゾ――――ッ。
女
:あなた、おいしい?うまい?どっち?
岡津 :ん・・・両方かな・・・あはははは。
女
:それは良かった、ウッフンここに着替え置いとくからね。(去る)
岡津 :はーひどい目に遭った、着替え着替え(エプロン着用)・・・裸エプロン、ソニンかおれは!
田西 :ははははは、なんだおまえのその格好は!
岡津 :おまえこそなんだ、そのバカキャラは。
田西 :・・・幸せか?岡津。
岡津 :あたりまえじゃないか、貧しいがそれなりに夢を追いかけて、家族も持って。毎日ちゃんと
暮らしてるんだ。
田西 :うちも年末には家族が一人増えそうだよ、おれも子持ちになるんだ。
岡津 :そうか、よかったじゃないか田西、おめでとう。
田西 :ありがとう、おれたちはこうしてささやかな幸せに埋もれて歳をとって行くのだな。でも
な・・・。
岡津 :なんだ?
田西 :いや、なんでもないお前も早くベビーを作れや、じゃあな。
岡津 :待てよ、そんなことを言いにきたんじゃないだろう?
田西 :俺たちはエクソダスに成功したよな?
岡津 :ああ、あの怨念と戦争をミキサーにかけて泥沼ジュースにしたような、南の島からまんま
と抜け出したじゃないか。そして戦争とは無縁な新しい生活を始めたぞ。
田西 :毎日火を噴くようにおまえと戦い続けて来た日々だったな。
・・・おまえ何で戦ってたか、分かってたか?
岡津 :奇妙な事を聞くんだな、決まってる。そういう星のもとに生まれたんだ。生まれたときから
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おまえと戦えと教えられてきたんだ。それが当たり前だっただろう。
田西 :先祖の代からの古い因縁でな・・・しかしそれが仕組まれたものだったら?
岡津 :なんだと?
田西 :おれらの両親はあの島で殺し合いの末、俺の親父とお前の親父、おれのお袋とお前のお
袋が互いの身を刺し貫きあって死んでいたよな。
岡津 :あれは、地も凍るような光景だった・・・一生忘れることはないだろう。だから俺たちはいつ
果てるともなく殺りあってきたんだ。
田西 :お前を叩っ殺す事になんの躊躇もなかった。だが、ある日おれはあの島の浜辺でガラス
ビンに入ったこんな手紙を拾った。
岡津 :おお、血文字で何か書いてある!
ナレーション: 前略、騙されました。水野春雄似のあの山下奉文将軍から。
岡津悶次郎少尉が敵に通じ軍を裏切り、重要機密を盗んで逃亡せり、これを速やかに抹
殺せよとの命令を岡津の親友であった我が祖父、田西玄五郎少尉が受けました。
彼は親友の裏切りにショックを受けつつも、愛車マルイの自転車で岡津少尉をポートモ
レスビーに追い詰め、そこで二人決闘したのです。「この裏切りものめ~!」「おれは悪くな
いど~!」岡津と田西、双方実力が伯仲していたのか決着がつかず、戦争が終わっても終
わったことに気づかずひたすら争い続けて、なんということでしょう、その子供の代になって
も、またその子供の代になっても戦いは終わりません。
そんなある日、ひょんなことから遺品となっていた岡津悶次郎少尉の軍服から驚愕の事
実が書いてあるメモを見つけました、実はなんと山下将軍は、ハウッ!
岡津 :なんじゃこりゃ?
田西 :どうやらそこまで書いて何者かに消されてしまったようだ。おそらくおれのママンのが書い
たものだ。
岡津 :ピン
田西 :ピンときたか!我らの闘争の裏にある恐ろしい影に。
岡津 :ああ、我がじいさんのじいさんは盗みを働き、仲間を裏切るような人じゃない。きっと恐る
べき陰謀を知っての行動にちがいない、すぐさまその重要機密とやらを探り出そう!
田西 :大体の調べはついてる、俺たちが大金持ちだった時代と、郵便配達時代に色々探りまくっ
てたからな。
岡津 :でかしたぞ田西!早速噂の真相を報告するがいい!
田西 :だが、それを知るとお前は全てを捨てる事になるぞ。
岡津 :どういう意味だ?
田西 :それを知れば、エクソダスしてお前が得た新しい生活を捨てて、お前は過去の泥沼に舞
い戻るだろうという事だ。知らなければ、お前は幸せなまま暮らしていける。
岡津 :おれが騙されたまま黙っていられる人間だと思っているのか?
田西 :捨てるのか?がんばって築いてきた今の地位も、ヨメも。
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岡津 :いや、何かを得るために行くのだ。折角やってきたこの世界だが、いくらモノがあっても、
快楽があっても、どうもニセモノくさい雰囲気だ。なんかにゴマかされながら、血が腐ってゆ
くような気分がする。それよりも真っ向からイノチを賭けたほうが面白い。
田西 :おれも同じ気持ちだ。多分俺たちはバカなんだろうな。ついでにお前もぶっ殺せたらそれ
以上の幸福はないが。
岡津 :こけ、お前おれが死んだら泣くぞ。
田西 :大笑いするさ、お前の亡骸に腰掛けて、日本全国酒飲み音頭をフルコーラス歌う勢いで
祝杯あげるさ!
岡津 :ハハハ、筋金入りの野蛮人だな。じゃあ、行くか。バーバリアン。
田西 :うむ。
岡津 :敵は山下将軍か、水野春雄かどっちかだろ?よし、シベリア超特急を爆破して一気にカタ
をつけようぜ!
BGM:「ハッチ大冒険」戦車で島に乗り込み、銃撃、剣戟激しい立ち回り、岡津をかばう田西、だ
が油断した田西を襲う凶弾、それを庇い岡津倒れる。
岡津 :フフフ、これぞ人間の盾だな
田西 :バカヤロウ、おれのボディは超人硬度10のダイモンド並だ、庇われる必要なぞなかった
岡津 :お前のボディは超人硬度1のチリ紙じゃないか、ムッ、お迎えが来たようだ、ちょっくら極楽
の満足シティにいってくるか。
田西 :ばか!おまえくたばっても地獄の満足シティしか行けんぞ、ふみとどまれ!
岡津 :酒飲み音頭、唄えよ。ム・・・・・・オムカエデゴンス・・・(死ぬ)
田西 :岡津!キサマが死んじまったらおれは誰をぶっ殺せばいいんだ?!オカズー!!!!
カーンバーック!!!!(岡津を後ろから動かし)やあ、田西、おれ岡津、地獄から甦って
きたよ!よーし唄うか~♪酒が飲める飲めるぞ~酒が飲めるぞ~・・・あのな、おまえの血
液だけどよ、いつか輸血してくれたやつな、あれ悪くなかったぜ。ただ気になってたんだが
おれ A 型なんだけど、おまえは・・・?献血手帳だ、O 型・・・まあいいや、気にしない。あば
よ岡津せいぜいゆっくり眠ってくれや。(去る沈黙の後・・・)
岡津 :はー目覚めた。また同じような戦争か平和かの繰り返しの毎日か。
田西 :ほれ、岡津(日本刀なげつける)
岡津 :やれやれだぜ!
BGM:おじゃ魔女ドレミ
二人 :イヤーーーーッ!!(斬りあい睨みあう、ここは地獄あたりだろうか?暗転)
終了。
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