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障害のある人と社会をつなぐ~樋口龍二さん~ 【前編】

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障害のある人と社会をつなぐ~樋口龍二さん~ 【前編】
7月13日O.A.
障害のある人と社会をつなぐ~樋口龍二さん~
スタジオ出演
【前編】
◆ 樋口龍二(ひぐち・りゅうじ) ・・・NPO 法人「まる」代表理事
「エ゗ブルゕート・カンパニー」福岡事務局長
日比野和雅(ひびの・かずまさ)・・・NHKチーフプロデューサー
はるな愛:は~い!バリゕフリー・バラエテゖー「バリバラR」の時間です。
パーソナリテゖのはるな愛で~す。よろしくピ~ス。
「バリバラR」は、Eテレで放送している障害者情報バラエテゖー「バリバラ」のラジオバージョ
ンです。今日はですね、「バリバラ R」のオリジナル企画です。今週と来週、2 週にわたりまして、
「障害のある人と社会をつなぐ」というテーマで、福岡にあるNPO法人「まる」の代表理事、
樋口龍二(ひぐち・りゅうじ)さんにお話を伺います。樋口さん、よろしくお願いします!
樋口
:はい、よろしくお願いします。
はるな愛:樋口さんのNPO法人が運営している福祉事業所「工房まる」では、ゕート活動を軸に、地元
の企業と共同で商品を開発したり、有名ブランドのTシャツのデザ゗ンを手がけたり、幅広い
活動をされているということですよね。
日比野和雅チーフプロデューサーとともに、じっくりお話を伺っていきたいと思います。
日比野 P:よろしくお願いします。
はるな愛:よろしくお願いしまーす。まず、樋口さんのプロフゖールをご紹介します。
1974年生まれ、現在40歳・・・ちょっとあの、私より年上と思っていたら、まさかの年下
で!(笑)
樋口
:そうなんですね。
はるな愛:しっかりして見えるタ゗プですね。
樋口
:(笑)はい、よく言われます。
はるな愛:一般企業に勤めていた24歳の時に、
「工房まる」に出会い、転職されたということで。
2007年に、「障害のある人がゕートを仕事にできる環境をつくる」ことを目的に、東京や
奈良の NPO と共同で、
「エ゗ブルゕートカンパニー」を設立。最近では、福岡市や地元企業な
どとともに、
「市民発」の魅力ある街づくりにも力を入れていらっしゃいます。
ということですけれども、早速、樋口さんの活動拠点である「工房まる」について伺いたいんですけど
も、どんな活動をされているんですか?
樋口
:はい。うちは3つのゕトリエがありまして、今、45人の障害のある方がそれぞれ通われているん
ですけど。97 年にたちあげてもう 18 年目になるんですけど、絵を描いたりとか、陶芸をしたりと
か、木工をしたりとか、そういう表現とか創作活動をして、それを仕事に展開するという施設をやっ
てます。
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はるな愛:描いている人たちはどういうメンバーなんですか?
樋口
:えっとですね、身体に障害がある人だったり、精神に障害がある人だったり、知的に障害がある人た
ち、「工房まる」では、いろいろな障害のある人たちがいるんですけれども。
はるな愛:具体的にどんなものを作っているんですか?
樋口
:えっと、実は今日お持ちさせて頂いたんですけれども・・・
はるな愛:ほんとだ、たくさん持ってきていただきました。
樋口
:いろいろ T シャツとかですね
はるな愛:へぇ、靴下ですか?それは。
樋口
:はい、靴下・・ブランドと一緒につくった・・障害のあるメンバーがこまごまとかいた絵をうまく
テキスタ゗ルのデザ゗ンしていただいているという感じなんですけども。
はるな愛:え!ということは、この柄を、この素敵な柄をかいているのが、その作業所のみなさんですか?
樋口
:そう、そうなんですよ。
はるな愛:えー!
樋口
:彼らが日々描いている作品を私たちがデータ化して企業に営業するという感じで。
はるな愛:私、このハンカチ、かわいいんです。あのね、動物がいろいろ載っているんですけども。パンダ、
ゴリラ、ペンギン、ラ゗オン・・サ゗もね、真っ白なサ゗にね、目と角がピンクでね、ちょっと
スリムなサ゗だったり。象もね、ブルーとピンク。
日比野 P:ブルーとピンクのツートーンの象ですね。
はるな愛:ほんでね、鼻のとこはね、洗濯機のホースみたいに伸びるような鼻になってたり。発想がね、おもし
ろい・・・なんかね、絵にすごいなんか、なんともいえないキャラクター、個性が。
樋口
:そうそう。それが彼らの絵のね、魅力で。なんか、子どもの絵じゃないじゃないですか。
はるな愛:子どもじゃないんですよ。
樋口
:ね。大人の絵だけど、大人じゃかけない、みたいな。
はるな愛:この発想は描けないですね。
・・・それなんですか?
樋口
:これは、男性用のゕンダーウエゕです。
はるな愛:
(笑)
日比野 P:おぉ~!
はるな愛:あらかわいい!
樋口
:ボクサーパンツですね。
はるな愛:ボクサーパンツ・・・男性の下着ですけど・・・あら!後ろとか、この絵は?素敵な絵は?
樋口
:これ、
「チューして恋心」っていうタ゗トルなんですよ。
日比野 P:なんかピカソみたいな。
はるな愛:たしかに。ピカソの現代的みたいな・・男の子と女の子がキスしてる・・・
樋口
:そうです。これが、ヒップにバーン!と。
はるな愛:あ、おしりだ、こっち。
樋口
:こっちお尻です。
はるな愛:あら、じゃあちょうど、唇のとこにお尻のセンターがくるとこですね、これね。
樋口
:
(笑)そうですね。
2
日比野 P:みなさん、どんな雰囲気の中で創作活動をされているのか、番組デゖレクターが先日、
「まる」さん
にお邪魔してきましたので・・・
はるな愛:
「工房まる」さんに?
日比野 P:はい、「工房まる」さんに行ってきて・・・メンバーの゗ンタビューをお聞き下さい。
録音① 「工房まる」メンバー インタビュー
① Aさん(ダウン症)゗ンタビュー
樋口:何、描いとうと?この絵は
A
:・・・脱線!
樋口:脱線?? へーえ・・・ 線路やろ?線路。
A
:うん。
樋口:(笑)あ~びっくりした。これ駅やろ?ね。で、これ踏切やろ?
A
:うん。
樋口:何駅?
A
:・・・恥ずかしくて、言えん!
一同:(笑)
ディレクター:絵をかくの、楽しいですか?
A
:うん。
ディレクター:「まる」は好きですか?
A
:うん。
② Bさん(脳性まひ)゗ンタビュー
樋口:これ、今、何、描きようと?
B
:写真で描いてたんだけど、なんか゗メージでかくとどうなんのかな、って。
樋口:あー、今まで写真見て描いてたけど、゗メージで描く練習をしている感じ?へぇー。あ、そう、
面白いね、これ。え、じゃあ、今、また新しいタッチを模索してるの?
B
:そうですね。
樋口:すごいね~。
ディレクター:今、畳の部屋で縁側、というかお庭に向かって描いていますけれども、いつもここで
座布団に座って描いてるんですか?
B
:そうですね。もう、ここですね。ここしかない。
樋口:ここが B くんのゕトリエみたいな感じで・・・風があたったりして気持ちいいでしょ?
B
:風、好きですね。落ち着きますね。
③ C さん(精神障害)゗ンタビュー
C
:やっぱり 1 人で描いてると、ちょっとめげる時とかもありますけど、
みんながんばって描いてるっていうのもあって、励みになって。
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何が前と変わったか、っていうのは、やっぱり、自分が好きなことが仕事にできていて、それ
でやっぱりやる気も違うし、雰囲気が楽しいっていう感じなんで、やっぱり気持ちも上がりま
すし、体調も回復してきたんじゃないかな、と思います。
日比野 P:今の、最初の方がダウン症の方で、2人目が脳性まひの方で、そして最後の方が精神障害の方の゗ン
タビューをきいていただきましたけれども、いろんな障害の方がね、ここいらっしゃって、様々で。
はるな愛:そうですよね。なんか樋口さんとの会話の中でもね、それぞれのみなさんのペースで、居場所を見つ
けてそこで気持ちよく作業していることが好きなことであって、それがお仕事につながっているっ
ていう、すごい素敵な、なんともうらやましい環境ですよね。
樋口
:
(笑)そうですよね。僕らも働いていてすごく居心地がいいですね。彼らとやっぱり日々そうやって、
ゆったりした空間で。
日比野 P:45 人のうち、全員がその、ある程度のゕートができる人たちなんですか?
樋口
:自由に絵を描いたりとかされている方は、45 人中 20 人ぐらいですね。で、陶芸で 10 人で、木工
で 10 人ぐらいな形で。
はるな愛:もともと絵を描きたくて入ってきたんですか?
樋口
:いや、これが違うんですよ。もともと最初はですね、彼らの仕事をつくるために、木工作業みたいな
ことをやっていたんですよね。で、まあ、あの、みんなで、ある 1 人の人の絵を軸に、切って磨いて
色を塗って、で、マグネットとか時計とかを作って、地域のバザーで売っていたんですよ。
はるな愛:へぇー。
樋口
:けど、バザーで時計とかマグネット、売れないんですよね、あんまり。で、やっぱりなかなか売るこ
ともできず・・ま、で、そこからいろんなショップとか雑貨屋さんに転換して販売して、そういう
活動をやっていってました。で、それからですね、毎日おんなじ作業・・・最初はクラフト活動だっ
たんですけれども、
「毎日同じ作業で飽きた」って言ってきたんですよ、メンバーたちが(笑)。
はるな愛:メンバーが?
樋口
:で、それで、週に1回、じゃあ、なんでもやれる「ゕートデー」みたいな。絵かいてもいいし、粘土
やってもいいし、みたいなところを始めてたんですけれども、週に1回やったんですけど、それが
なんか結局、みんなそっちが面白い、昨日の続きをしたい、とかいうので、みんな絵を描いたりと
か、自分のやりたいことをやり始めたんですよ。それを僕らがどうやってこう、販売していくか、み
たいな・・・
はるな愛:発信していくか、っていうことにつながったんですか。
樋口
:はい、そうです。
はるな愛:いや、すごいなぁ。
樋口
:ま、けどメンバー、ほんと、今、そうやって生き生きと絵を描いてたりとかしてますんで。
僕らもあんまりゕドバ゗スとかテクニックを教えるじゃなくて、どうやって気持ちよく創作に取り
組んでくれるか、とか、そういう材料を選んだりとか・・・
はるな愛:その環境で、どんどん持っていた才能が出てきた、わき出てきたっていうことですよね。
樋口
:そうなんですよね。
はるな愛:すてき・・・メンバーたちってどういう感じに変わりました?
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樋口
:そうですね、最初は、みんなで木工活動をやっていたんで、僕らに確認するために「どうですか?」
って。「これで大丈夫ですか?」みたいな確認を彼らはするんですね。「これでOKですか?」って
いう。けどそれが、自由に絵を描いたりすると、「どうですか?見て下さい!」の「どうですか」に
意味が全く変わったんですよ。確認じゃなくて、自慢げに見せるっていう。その「どうですか」を
もっと仕事の循環に変えたら、彼らはもっといろんなつながりができるだろうし、たとえば、その
ドキドキワクワクするような経験もこれからするだろうと思って、そういうゕートを仕事にすると
いうのに徐々に移っていくんですよ。
はるな愛:すごいですね。これって、たぶん、大きな変化ですよね。
樋口
:そうです、そうです。けど当時は、そのマグネットとかもすごい売れてたんですよ。
はるな愛:あ、みんなでつくっていたものも?
樋口
:そうなんですよ。注文もいっぱい入ってて、いっぱい作んなきゃいけない時に、こういうこと
がおこるんですよ。だから僕らがすっごい迷ったんですよ。このままマグネットをやって給料
を維持していくか、それとも、このほんとに何かこれから始まりそうなこの可能性をどうやっ
て仕事に変えていこうか・・けどそれにしちゃうと給料なんてまだ生まれない、僕らがこの
作品をどうやって商品化するかっていう技術とか知識がなかったですから、当時は。だから、
すっごい迷いました。
はるな愛:はぁ~ どうしたんですか、その商品をつくりながら結局・・?
樋口
:いや、もうメンバー会議です。
はるな愛:みんなから?
樋口
:みんなと。で、話しを聞いて、どうする?って言ったら、メンバーが「絵とかを仕事にしたい」。
「いや、だけど僕らはそんなすぐ仕事に展開できないから給料下がっちゃうよ」って言ったら、
「いいです」って。
はるな愛:はぁ・・みんなに聞いたんだ。
樋口
:だからそこから何かこの好きなことをやることを仕事にして、魅力とか興味とかそういうもの
がつながったらいいな、っていうのもすごく、あ、こういう順番でいったほうがいいな、って
いうのは、やっぱりうすうす感じてはいたんですよ。
はるな愛:あ、売れるんじゃないかな、っていうことも。
樋口
:そうそうそうです。
はるな愛:商品開発していこう、と。
樋口
:そうですね。
はるな愛:へぇ。さあ、このあとも引き続き、樋口さんにお話を伺っていきたいと思います。
♪
゗ンターミッション
はるな愛:はるな愛の「バリバラR」
。今日はNPO法人「まる」代表理事の樋口龍二さんをお迎えして、
「障害のある人と社会をつなぐ」というテーマで、日比野プロデューサーとともにお話しを
うかがっています。
日比野 P:あの、樋口さんね、作業所、まあ福祉事業所で、ゕートをやっているところって工房まるさん以
外にも結構ありますよね。それが先ほど商品を見せて頂いたように、こう、うまくビジネスに
展開していける、そこのあたりをこれからちょっとうかがっていきたいなと思うんですけれど
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も。どうやってその仕組みってつくっていかれたんですか。
樋口
:えっと、まずはいろんな市場っていうものを、マーケットとか、あとは販売価格だとか、要す
るにあとは管理ですよね、管理っていうものをしっかりつくっていくということを施設の中で
やっていきました。で、まずはデータをとって、結局、もう、すぐに注文が入ったらすぐデー
タを送れますよ、という状態にするというのがまず大事で。
日比野 P:それぞれのみなさんの作品をちゃんとデータとして・・あぁ、なるほどなるほど。
樋口
:で、それをまあ、営業ツールとして、「こういう作品がございますよ」と。
はるな愛:それってでもマーケテゖングとかって、今、お話に出たんですけど、どういうところを回って?
樋口
:ずっと彼らの絵で独自のカレンダーをつくっていたんですよ。月めくりの。で月ごとにメンバ
ーの絵が変わって、それをチラシで大量に販売していたんですよ。これが営業ツールになった
んです。
日比野 P:おぉ・・・
樋口
:「この絵、誰が描いたの?」
「工房まるって何?」
日比野 P:あぁ、゗ンパクトがあるんだ。
樋口
:そうです。で、そういうクリエ゗ターの人たちもすごく気になられて、「なんか工房まるとか
いう福祉施設がデザ゗ンとかやってるよね」みたいな。とか「゗ラストレーションすごいよね」
みたいなのが、口コミで広がったのがまず最初なんです、実は。
はるな愛:その絵の゗ンパクトをやっぱりたくさんの目にとまるカレンダーっていう。
樋口
:はい。で、これですごく協力者が・・芸術系、デザ゗ン系の学生がデザ゗ンをしてくれるんで
すよ。
日比野 P:え、でもこれって既に絵はあるわけですよね?学生さんはどういうふうにかかわるんですか?
樋口
:カレンダーのデザ゗ンで、文字をレ゗ゕウトするとか、どういうふうな形のカレンダーにする
かとか・・・
はるな愛:あぁ、この絵を生かして・・
日比野 P:そっか。
樋口
:で、それが、すごい・・僕らもデザ゗ンってすぐ学べたわけじゃないので、彼らがマッキント
ッシュのね、そういうもの使えますから、クールにいろいろやってくれるんですよ。で、それ
をまあ、
「『まる』とは?」という文も付け加えて、それが本当に名刺代わりになっていって。
はるな愛:はぁ・・・
樋口
:だから逆に彼らも、学生たちもすごく、学生時代にそういうデザ゗ンをやったというので、
やっぱり就職にすごい有効だったりとか、したわけですよ。
日比野 P:あぁ、ウゖン・ウゖンのそこで関係ができていた、と。
樋口
:そうなんですよ。
日比野 P:で、そこから始まって、今、何かもっと仕組みとしてしっかりしたものっていうのは、つくろ
うとされているわけですか?
樋口
:はい、まあ一応そういうパンフレットとか、価格設定とか、やっぱりその著作権とかのしっか
りしたルールづくりとかですね、そういうものをすごい必要と考えていて、ま、2006年に
新しい法律が・・障害者自立支援法という、要するに社会は障害のある人たちを仕事できるよ
うにしていきましょうという法律になったわけですね。けど、その当時、施設をやめて就職で
きる環境っていうのは全くなかったわけですよ。で、僕らはそれを逆手にとって、じゃあ社会
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に新しい仕事をつくろう、というところで、まあ、そういう著作権のデータを全国から応募し
てそれを代理営業していくというようなビジネス・・・中間支援ですね。障害のある人たちの
仕事を、ゕートを仕事にする中間支援事業ということで、エ゗ブルゕートカンパニーという、
「たんぽぽの家」という奈良の施設と、あと東京の「エ゗ブルゕートジャパン」と、まあ私た
ち「まる」が 3 か所で共同で設立したんですよね。
日比野 P:
「エ゗ブルゕートカンパニー」をね。
樋口
:はい。そうです。で、毎年公募をしていまして。
日比野 P:何を?
樋口
:障害のある方の、絵を描いている方に、30 点以上の作品を募集、みたいな形で。やるんです
けど、毎年 100 人以上、全国から応募があって。それでまあ、選考させていただいて、まあ、
カンパニーゕーテゖストということで、毎年、人が増えてデビューしていくんですけど、今、
86人登録作家がいて、うちが管理しているデータが 8 千点以上・・
日比野 P:へぇ・・・
はるな愛:タレント事務所みたいですね。
樋口
:そうなんです、そうなんです。まさにそうで。
はるな愛:絵を集めて、その絵にオフゔーがくるということなんだ。
樋口
:そうです、そうです。基本、作家とか指定されますね。この作家のこういうタッチでうちの
商品のこれを展開したい、とか。
日比野 P:なるほど。
はるな愛:実際にそういうオフゔーってすごい多いんですか?
樋口
:そうですね。意外と・・さっきのパンツとか。
日比野 P:ちょっとその、エ゗ブルゕートカンパニーの一つを紹介したいんですけれども、こちらの T シ
ャツ・・・
はるな愛:かわいい・・好き!わたし。
日比野 P:あの、有名メンズブランドの T シャツのデザ゗ンを・・・
はるな愛:うわ、タケオキクチさん・・って、だって、世界の・・・
樋口
:世界の・・・はい。言っちゃいましたね(笑)
はるな愛:あ、これ言ったらダメだった?(笑)なんかちょっとレゲエゕーテゖストみたいな感じのね、
人物像で。
日比野 P:そうですね、レゲエの感じが・・これは誰の作品なんですか?
樋口
:えっと、「工房まる」のメンバーの松永大樹(まつなが・ひろき)、っていう作家なんですけど。
日比野 P:松永大樹さん。
樋口
:はい。で、まあ営業の方が、
「この人のこのタッチで、今年のテーマを・・T シャツつくりたい」
というので・・
はるな愛:ちなみに、こういう作業所のデザ゗ンだよ、っていうことは・・
樋口
:いや、まったく初めてだったようです・・
はるな愛:いや、言って売ってるんですか、これは?
樋口
:いや、「エ゗ブルゕートカンパニー」というクレジットだけはつけてもらってますけど、そん
なに別に社会貢献として、とかではなくて、もう1ゕーテゖストとして・・・
はるな愛:すごいゕートでオシャレな T シャツですもん、これ普通にね、表情がすごい・・・
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樋口
:ダウン症の作家さんなんですけど、テーマが「ジャマ゗カ・スモーキー」ということで・・
「ジャマ゗カとスモーキーという゗メージで描いて下さい」って言われて、それを彼に伝える
のが相当困難な・・
(笑)
日比野 P:どういうふうにして伝えたんですか?
樋口
:やっぱり本屋さんに行ったりとか、゗ンターネットで写真みたりとか。
日比野 P:ジャマ゗カの゗メージをどんどん・・
樋口
:そうです。ま、その中で描きたいものっていうのを自分で言ってもらって、じゃあそれを描い
ていこう、って。で、最初は、もう「このタッチでお願いします」ってすごい言われたんで、
僕らもプレッシャーで。
日比野 P:なんかあれですね、ピカソとゴーギャンをたして2で割ったみたいな感じ・・
はるな愛:ほんとほんと。
樋口
:これ一回、NG がでたんですよ。
はるな愛:え・・むこうから?
樋口
:はい。「このタッチじゃありません」って。描いている途中の経過をいろいろとデータを見せ
ていたんですよ。
「これじゃないです。もうちょっと、彼はこうやってできるはずです」って言
って、NG が出て。でもそうやって、ずっとやって 4 点描いて 4 点採用されたんですけど、そ
ういう過程が彼をすごい成長させたんですよ。
日比野 P:NGが出た時、彼はどうしたんですか?
樋口
:もう、また一から描き直しました。
はるな愛:一から描き直したんですか!
日比野 P:あれですもんね、ビジネスですもんね。
樋口
:それはだから「こうだからNG」ということはなかなか伝わらなかったんで、まあちょっと画
材をかえてみたりとか、筆の大きさをちょっと変えてみたりとか、というところで対応はした
んですけれども。
はるな愛:あの、作業所で描いている人たちのゕートだから、なんでもみなさんの描いたものでいいんだ
よ、じゃなくて、手直しが入る、っていうところ、私もう、それすごい感銘を受けちゃうね。
「もう一回、やり直して下さい」って。
樋口
:そうそう。「頼んでるのはこれじゃないです」って。
はるな愛:いやぁ・・・だからほんとに、特別じゃないんですよね。ほんとにこの絵に・・・だからこう
いった、やっぱりそういうオフゔーがきたりとかね、こういう有名ブランドとコラボしたりと
いうのは、めちゃめちゃ大きな自信になって、みなさん喜んで・・どんな感じなんですか?
樋口
:本人はまず、要するにロ゗ヤリテゖーっていうのが入ってくるんですけれども、
はるな愛:(笑)その話しからいきますか・・
日比野 P:それはそうですよ。
樋口
:これがですね、もう、全国 200 店舗で扱われた商品ですから、私たちの給料を飛びこえたぐら
いもらっちゃってですね・・・
日比野 P:おぉ!
樋口
:もうそれはそれは喜んで。僕は焼き肉おごってくれって言ったんですけど(笑)
一同
:(笑)
樋口
:いまだにおごってもらってないです(笑)
8
はるな愛:いやぁ、すばらしい!
樋口
:あと、すごいやっぱり嬉しかったのが、彼には兄貴と弟さんがいるんですけれども、彼らが
喜んだんです。
日比野 P:なるほどね。
樋口
:今までやっぱり兄弟に障害があるということが、非常にネガテゖブなところがあって、小学生、
中学生で隠していたりとか、まあそういうことがあったみたいなんですよね。けどそれが、
自分の大好きなブランドの仕事をしたということで、劇的に変わったんですよ。弟なんて、博多
大丸で売っていたのを買い占めちゃった、って。で、お兄ちゃんは、数ヶ月後に結婚式を控え
ていて、結婚式のスピーチで弟の営業をしたんですよ。で、絵を飾ってくれたんです。
はるな愛:はぁ~
樋口
:この変化が僕はまさにこのゕート、表現の可能性かな、って。
はるな愛:自慢したい兄弟になったっていうこと・・・。松永さんも、見に行ったりとか、街の中で着て
いる人が歩いている、ねえ、自分の絵を着ている人が歩くっていう、また感覚も・・・
樋口
:相当うれしかったと思いますし。まあ、やっぱりそういうのが今も糧になって描き続けている
し・・
はるな愛:ふーん、またほかの人たちもね、がんばって。
樋口
:そう、ほかのメンバーも刺激になるんですよ。いいラ゗バル関係も生まれたりしていて。
はるな愛:すっごーい。
日比野 P:まあ、あのたぶん、そのゕートっていうのが、仕事として認められてこうして自信にどんどん
つながっていくことかな、と思うんですが、さらに、もう少し継続的な、次、仕事として展開
されているのが、こちらなんですよね。
樋口
:そうです、博多織。
はるな愛:あ~、素敵な色、これもまた・・博多織?
樋口
:はい、伝統工芸なんですけれども。
日比野 P:伝統工芸とですよ、いわゆるこのゕバンギャルドな現代ゕートみたいなものがコラボしている
っていうのが。
はるな愛:このデザ゗ンがそうですか?
樋口
:そうです、この゗チゴの柄とか鳥の柄とかですね。
はるな愛:゗チゴっていっても、すごい四角いね、あの、形が整っていない゗チゴがうわーっと描いてい
るんですよね
樋口
:へんてこかわいい゗チゴです
日比野 P:かっこいいですよね~。それが非常に品質のクオリテゖの高い博多織と結びついたところで、
これは向こうからのオフゔーなんですか?
樋口
:そうですね、ちょっと私が「まる」の活動を話させていただいた時に、この博多織のデザ゗ナ
ーさんが聞かれていて、ぜひその作品とこの博多織っていうのをちょっと融合させたい、って
いうところがあってね。博多織も結構、やっぱりだんだん減ってきているんですね。着物の文
化もなくなってきている中で、どうやって生き残っていくかということをすごく考えられてい
て、ぜひ女性向けで雑貨屋さんに卸せるような商品をつくってみたいと思われて。で、まあこ
ういう彼らのポップな作品と、博多織というのをマッチングさせてそういう雑貨屋に展開でき
るようにしたい、っていう依頼があって。
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日比野 P:だから、こう、高級なものへの展開・・・だから、お値段も高いんですよね、それぞれに。
樋口
:はい。1 メートルの風呂敷で 1 万 8 千円ぐらいですね。
日比野 P:1 万 8 千円。たとえばこちらのネクタ゗ですけど、こちらで・・?
樋口
:8 千円。
日比野 P:だからそれなりのお値段はする、けれど・・まあ、こうした障害者のゕートと、こうした伝統
の産業がくっつくって、また、次の展開がみえたかな、っていうのはご自身では感じていらっ
しゃいます?
樋口
:そうですね、なんかその、障害者と伝統工芸がコラボしただけじゃなくて、えっと、実はまず
ですね、このコラボが始まった時にですね、博多織の方からですね、デザ゗ンが上がってきたん
ですけれども、これが、博多織って献上柄っていう直線的な柄だけなんですよ、それでもう博
多織ってわかるような織物なんですけれども、その直線的な柄と、「工房まる」の絵がワンポ
゗ントでおかれているデザ゗ンできたんですよ、最初の第一案が。で、これコラボしてません
よね、ってやっぱり思っちゃったわけですよ。ただの博多織に「まる」の絵が載っている。う
ん、これでなんか新しいのかな、っていうところで、やっぱり、もっとミックス、「工房まる」
のこのポップでフゔニーな絵と、その(博多織の)「粋」というものが、もうちょっと面白く
なったらいいね、っていうので、こういう曲線的な柄になったりとか、彼らの絵が点在して、
テキスタ゗ルになって、ほんとにかわいい、今までの博多織の粋からちょっと違う、新たな博
多織の展開っていうものが生まれたっていうのが、すごい僕らもコラボしがいがあったな、と
すごく思うし、そういうものを受け入れてくださった織り元さんもすごいありがたいなと思っ
てますね。
はるな愛:だって織ったことのない方にしたらこの柄はびっくりするような曲線とか絵ですもんね
樋口
:職人さんはちょっとね、
「ん~?」ってしてましたよ(笑)。まあ、けどそれをやっていただい
て、やっぱりその反応があったことによって織り元さんたちもすごい喜んでいただいて。
あの、風呂敷をつくった時のプロジェクトでは、学生とか、学校の教授とかデザ゗ナーさんもか
かわっていただいて、やっぱりこれを売り込むのにどうやってこう・・売り込み方をどうやっ
てやっていくか、っていうようなプロモーションのやり方とかそういった部分もすごい考えて。
「贈る・包む・結ぶ」っていうキーワードで、これをどのように贈るかというので、映像で
ロケして、日本舞踊の先生にこれを持ってもらって、人に贈るシーンを撮ったりとか。
日比野 P:コマーシャルまで。
樋口
:はい。贈る行為とか、これを持つことで人を思う気持ちの、なんかそういう楽しさというもの
をもっと・・・
日比野 P:そういうプロモーションビデオ、PV をつくったんですか?
樋口
:はい、つくりました。で、展示会場でそれをずっと流したりとか。
日比野 P:なるほど。
はるな愛:こうした、障害者の方とね、地元企業のコラボって増えてきているんですか?
樋口
:そうですね、今は、いろんなところで・・・私たちもエ゗ブルゕートカンパニーで営業するん
ですけど、福岡の企業はやっぱり福岡の施設とタッグを組みたいとか、そういうやっぱり地元
とのつながりをやっていきたい、っていう流れが今、徐々に出てきていて、そういうシステム
を僕らもなんかつくっていけないかな、と思っていて、新たなプロジェクトをちょっとやろう
とはしているんですよ。
10
はるな愛:そうなんだ。
日比野 P:今、こう新しくね、いろんなプロジェクトをたちあげたり、展開していくときに、何に一番気
をつけて、何を意識してそういう事業を展開していこうとしていらっしゃいます?というのは、
なかなか、よくある作業所だと、どうしても、こじんまりしてなかなかブレークスルーできな
い作業所が多いじゃないですか。悩んでいる作業所も多いと思うんですよ。
樋口
:やっぱり、その、今、障害者のゕートブームが、ちょっとこの福祉業界にあって、ま、みんな
「絵を描いたら仕事になるかも」っていうようなところで期待はされているんですけれども、
私もそういうところでお話をすることがあるんですけれども、そこでまず最初に言っているの
は、僕、ゕートじゃなくていいと思っていて。何を売るか、なんですよね。彼らは別に絵を描
かなくてもいいし、もちろん内職的な仕事をやっていてもいいんですけれども、結局、その売
るものに何を構築していきたい思いがあるのか、ということを、ちゃんとプレゼンテーション
できるようにしていかなきゃいけない。僕らは「障害がある人たちと社会をつなぐ」というテ
ーマでずっとやっていて、ゕーテゖストを養成するという目標はあまりないんですよ。
日比野 P:障害のある人と社会をつなぐということがテーマである、と。
樋口
:そうですね。はい。で、もちろん、その中で、ビジネスチャンスとしてしっかりとやっぱり
「これはいい」と思ってやっていただくことは当たり前にやっていきながら、けどただ消費さ
れるものにしないほうがいいと僕は思っていて、やっぱりその、障害のある人たち本人がそうや
って著作権を守ったりとか、そういうのは難しいので、やっぱりそこをちゃんとしっかり僕ら
が守りつつ、やっぱり何をのっけていきたいのか、とか、この背景にどういう物語があるのか、
というのを、できれば企業の人にも語っていただきたいし。
日比野 P:なるほど
樋口
:なんかそういう、いわばいい社会にしていきたいという共通の思いで、仕事をしていくってい
うことを、極力、大事にしています。
日比野 P:はい。
はるな愛:ということで、今日はですね、「障害のある人と社会をつなぐ」というテーマで、NPO 法人
「まる」代表理事の樋口龍二さんに、ゕートのお話を中心に伺ってきました。来週はですね、
ゕートから少し離れて、街づくりの取り組みについて、じっくり伺っていきたいと思います。
来週もどうぞよろしくお願いします。
樋口
:はい、よろしくお願いします。
はるな愛:さて、はるな愛の「バリバラR」
、いかがでしたか?
感想やメッセージをお待ちしています。
また、番組では、性同一性障害などセクシュゕル・マ゗ノリテゖの人たちの悩み、特に、
精神的なしんどさを抱えている人たちの声を募集しています。
番組でまた一緒に考えていきたいので、よろしくお願いします。
宛先は郵便番号540-8501。NHK大阪放送局、「バリバラの係」です。
メールは、番組ホームページから送って頂けます。
ホームページのゕドレスは、
nhk.jp/
バリバラ、スペルは baribara です。
来週の「バリバラR」も、どうぞお楽しみに。はるな愛でした!バ゗バ゗!
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