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2016年3月第4週号

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2016年3月第4週号
2016 年 3 月 第 4 週号
(原則、毎月第 2 週、4 週発行) 2015 年度 vol.24
< フォーカス> 金融政策の行き過ぎは逆に弊害
日本経済の回復のために、緩和的な金融環境が必要なことは論を待たないが、何事も過ぎたるはなお及
ばざるがごとしである。量的・質的緩和(QQE)には、効果、手段、出口という三つの大きな問題がある。まず、
効果という点では、「期待の抜本的転換」を通じた円安・株高ルートに頼る部分が大きいが、世界の金融市
場の大きな流れには所詮抗えないことが明らかになった。そもそも、為替相場に与える影響という点では、
日銀よりも FRB がどう動くかのほうがはるかに重要である。
よしんば円安が進んでも、日本経済に大きなメリットはない。ドル・円相場は、理論値からすでに 20 円前後
円安に振れた。当社の経済モデルを利用した試算では、70 円/㌦から 80 円/㌦までの円安は実質成長率を
0.2%押し上げる効果を持つが、120 円/㌦から 130 円/㌦までの押し上げ効果は 0.03%にすぎず、それ以上
は、輸入企業への打撃が上回ることで景気には逆にマイナスとなる。
二つ目は手段の問題である。マイナス金利は、マネタリーベース目標との両立が本質的に難しい。金融機
関への影響を考えると、今後、マイナス金利幅の拡大は手探りで進めざるをえず、市場にサプライズを与え
るためには、量的拡大との合わせ技で実施する必要が出てくる。ただ、このままのペースでも、18 年には日
銀の国債保有比率が 50%を超えることを考えれば、14 年 10 月の追加緩和時のような 30 兆円もの国債買
増しは不可能である。ETF の買増しも、日経平均に占めるウェートが高い一部企業では、日銀が事実上の
大株主として躍り出る事態を招いていることを考えれば、買増し余地は限定的である。
三つ目は、遠い未来の話かもしれないが、出口の問題である。今のところ物価目標の達成には全く目途
がたたないが、それでもいずれ出口はやってくる。ただ、国債市場が崩壊するリスクを考えると、出口の局
面でも国債の売りオペを行なうのは難しく、超過準備のスムースな吸収は困難をきわめる可能性が高い。
巨額の損失をだれが負担するかも問題となる。支払準備率を引き上げれば銀行、付利金利を引き上げれ
ば日銀の損失が最終的には国民負担となるが、これは日銀の一存では決められない、財政民主主義上の
問題でもある。
こうなると、処方箋が正しいのかをもう一度吟味する必要がある。日本を含め、世界の先進国の景気停滞
の背景にあるのが、サマーズ教授が述べたような自然利子率の低下であるならば(長期停滞論)、金融政
策だけで景気を安定的な回復軌道に乗せるのはきわめて難しくなる。サンフランシスコ連銀の方法を踏襲し
た当 G の試算でも、日本の自然利子率は 2000 年代半ば以降、マイナスに陥っている可能性が有力である。
自然利子率を引き上げるための需要追加策を実施しようにも、財政事情が厳しい日本の場合、追加的な財
政支出におのずから限度がある。したがって、いかに迂遠であっても、成長戦略をしっかり進める以外に道
はない。金融政策に過剰な期待や注目が集まる現状は健全とはいえない。(Kodama
目
<フォーカス>金融政策の行き過ぎは逆に弊害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
・経済情勢概況・・・・・・・‥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
・日銀はマイナス金利の適用範囲を縮小・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
・導入から1ヵ月を経たマイナス金利政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
wrote)
次
・3 月 15-16 日開催の FOMC について・・・・・・・・・・・・・・・・・15
・ECB は包括的な追加金融緩和を決定・・・・・・・・・・・・・・・・・21
・主要経済指標レビュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
・日米欧マーケットの動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
1
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
経済情勢概況 (※取り消し線は、前回から削除した箇所、下線は追加した箇所)
日
本
日本経済は、停滞局面が続いている。今後も、引き続き交易条件の改善が下支えするとみるものの、
内外需ともけん引役不在のなか、景気の回復ペースは緩慢なものにとどまると予想する。
個人消費は、弱めの動きが続いている。名目賃金に力強い伸びが期待できないなか、昨秋以降の原
油安に伴う家計の実質購買力の改善が後押しすることで、今後も均せば緩やかな回復傾向で推移する
とみる。
住宅投資の持ち直しペースは鈍い。今後も、貸家の節税需要が減衰するとみられることから、消費
増税前後を均せば停滞気味の推移が続くと予想する。
設備投資は、更新・合理化投資が下支えとなるものの、製造業の能力増強投資の低迷が続くことで、
今後も緩慢な回復にとどまるとみる。公共投資は、来年度予算がほぼ前年並みとなる見込みのなか、
一進一退の推移が続くとみている。
輸出の回復ペースは鈍い。今後も、米国向けの力強い回復が期待できないなか、中国景気の減速の
影響を受け、伸び悩みが続くと予想する。生産は、在庫調整が終盤に近づいていることで、持ち直し
傾向で推移するとみている。
消費者物価(コア CPI)は、0%付近での推移が続いている。需要面からの押し上げ圧力が弱いな
か、物価の戻りのペースも鈍いとみられ、2016 年度もコア CPI は前年比+0.5%前後にとどまるとみ
られることから、日銀が目標とする「2017 度前半頃に 2%程度」の達成は難しいとみている。
米
国
米経済は、緩慢な回復が続いている。新興国景気の減速などを背景に、当面は低めの成長率にとど
まるとみるが、雇用環境の改善が続くとみられるほか、ガソリン安によって家計の実質購買力が向上
していることなどから、春以降は緩やかな景気回復が続くと予想する。
個人消費は、実質所得が改善していることなどから、回復傾向が続くと予想する。
住宅市場は、雇用環境の改善や低金利環境などに支えられ、持ち直し傾向で推移するとみる。
設備投資は、エネルギー関連業種の業況が足かせとなり、当面停滞気味に推移するとみられる。た
だ、交易条件の改善が企業収益を下支えすることなどから、年央以降は徐々に回復に向かうと予想す
る。
輸出は、新興国景気の減速や、ドル高の影響も残ることで、軟調な推移が続くとみる。
FRB は 2015 年 12 月の FOMC で、FF レートの誘導目標レンジを 0-0.25%から、0.25-0.5%へと引
き上げた。今後も景気回復が続くとみるが、インフレ圧力が強まるまでにはしばらく時間がかかると
みており、2017 年末までの利上げペースはせいぜい年 1,2 回程度にとどまると予想する。
欧
州
ユーロ圏経済の回復の足どりは鈍い。雇用環境の改善などを背景に、個人消費は回復傾向が続くと
みるが、新興国の景気減速などを受け、輸出は引き続き伸び悩むとみられることなどから、ユーロ圏
景気の持ち直しペースは今後も緩慢なものにとどまると予想する。
個人消費は、サービス業を中心に雇用者数の増加傾向が続くと見込まれるのに加え、原油価格の下
落や銀行貸出態度の緩和などを背景に、家計の資金繰りも改善しているとみられることなどから、回
復傾向が続くとみる。
固定投資は、緩和的な金融環境などが下支えになるとみるが、生産活動の停滞や企業景況感の改善
の遅れなどから、引き続き今後の回復ペースは緩慢なもの回復にとどまると予想する。
ECB は 32015 年 12 月の理事会で、主要政策金利を 0.05%から 0%まで、中銀預金金利を▲0.30.2%
から▲0.40.3%まで引き下げたほか、毎月の資産買入れ額を 600 億ユーロから 800 億ユーロに増額す
ることや、長期資金供給オペを実施することなどを決定策の実施期間を 6 ヵ月間延長し、2017 年 3
月末までとした。今後については、ECB は包括緩和の政策効果を見極めるため、当面様子見姿勢をと
る原油価格が軟調に推移するなか、ECB は 3 月の政策理事会で金融政策のスタンスを見直す姿勢を示
しており、次回 3 月の理事会では、中銀預金金利の引き下げなどの追加金融緩和に踏み切ると予想す
る。
2
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
日銀はマイナス金利の適用範囲を縮小
マイナス金利の適用範囲を縮小
日銀は、3 月 14,15 日に開催された日銀金融政策決定会合において、大方の市場関係者の予想ど
おり、金融政策をすえ置いた。
今回の会合では、マイナス金利の適用範囲の緩和が発表された。まず、MRF については、証券取
引における決済機能を持っていることに鑑み、受託残高相当額をマクロ加算残高(ゼロ金利が適用)
に加算することで、マイナス金利の対象外とすることが決定された。ただし、資金の抜け道として
使われることを防止するため、昨年の受託残高が上限となる。また、「貸出支援基金」および「被
災地金融機関支援オペ」の残高を増加させた金融機関については、増加額の 2 倍の金額を、同じく
マクロ加算残高に加算することが決定された。黒田総裁は会合後の定例会見で、MRF について、「 関
係する業界団体等から様々な陳情、あるいはご意見がありまして~ 」と、金融機関からの要請に対
応した政策変更であることを認めている。マイナス金利政策は導入後 1 ヵ月半にして早くも一歩後
退を余儀なくされたと言えなくもない。
今後は、3 ヵ月ごとにマクロ加算残高の見直しを行なうとのことだが、黒田総裁は、政策金利残
高の部分は概ね 10~30 兆円になるよう運用するとしている。したがって、マイナス金利の銀行収
益への影響は、それだけでは致命的な規模になるわけではない。もともと日銀は、当座預金の限界
的な部分のみマイナス金利とすれば、市場金利への効果は発揮できるため、政策金利残高は少額で
構わないとの立場である。したがって、金融機関にとっても市場金利の低下に伴う利鞘の圧迫のほ
うがより深刻な問題となる。貸出金利回りおよび、国債、地方債、社債利回りがそれぞれ 0.05%ず
つ低下することを前提とした運用調査 G の試算によると、都銀の減益幅は▲11%、地銀は▲17%に
及ぶ。黒田総裁も会見で、
「 マイナス金利自体では収益への非常に大きな影響はないですが、今後、
金利水準が全体として下がっていく中で、貸出に基づく収益の圧迫要因になることは事実です 」と
述べている。
デフレマインドを煽るマイナス金利
世間一般のマイナス金利の評判は今のところ芳しくない。8 日に発表された景気ウォッチャー調
査では、「今回の日銀のマイナス金利は、地方銀行にとって最悪である。この政策が資金需要の増
加につながるとは全く思えない。これは景気に悪い影響を与えると思う(南関東=金融業)」、「マ
イナス金利の影響として、企業の立場からするといくら金利が低くても設備投資などの実需がなけ
れば借入はしないし、個人の立場からも住宅ローン金利が低くなっても、個人所得の増加傾向が期
待できない限り、将来の返済見込みが立たず、借入はしないと考える(北陸=一般機械器具製造業)」、
「マイナス金利政策による景気の先行き不安から、消費の冷え込みにつながる可能性がある(近畿
=家電量販店)」などの意見が寄せられ、数のうえでは、ネガティブなコメントがポジティブなコ
メントを大きく上回っていた。
現状では、マイナス金利が家計や企業のデフレマインドの助長につながっているようにしか見え
ないが、黒田総裁は会見で、足元の金利低下が今後物価、景気に波及していけば、「 評価もポジテ
ィブなものとして定まっていくのではないかと考えています 」と、強気の見通しを示している。し
かし、預金金利をマイナスにしない限り、すでに大きく下がっている貸出金利の低下余地は限られ
ている。多くの企業にとって、0 コンマ数ポイントの借入金利の低下よりも、投資プロジェクトの
3
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
採算性の不確実性の方がよほど大きな問題である。住宅ローンも借り換えの動きが盛んだが、消費
増税前の駆け込み需要を経験した後ということもあり、新規の借り入れ需要は盛り上がっていない。
頼みの円安も長続きしなかった。黒田総裁の思惑どおり、マイナス金利が景気、物価に順調に波及
していく展開となる可能性は低い。
景気判断は下方修正が目立つ
逆に、今回の公表文の景気判断は、下方修正のオンパレードとなった。まず、現状判断について
は、1 月の、「わが国の景気は、企業部門・家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニ
ズムが作用するもとで、緩やかな回復を続けており」から、「わが国の景気は、新興国経済の減速
の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている(下
線部筆者、以下同様)」へと下方修正された。「緩やかに回復」との基本部分は変わらないが、「基
調としては」の断り書きが入ったほか、「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さが
みられるものの」との文言が加わったことで、足元では回復のスピードが鈍っているとの認識が示
された形である。「所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで」との一節も削除
されているが、会合後の定例会見では、黒田総裁は引き続き前向きの循環メカニズムを強調してい
る。
(図表 1)金融政策決定会合後の声明文における景気の現状判断の変化
声明文の発表日
14 年 1 月 22 日
2 月 18 日
3 月 11 日
4月8日
4 月 30 日
5 月 21 日
6 月 13 日
7 月 15 日
8月8日
9月4日
10 月 7 日
10 月 31 日
11 月 20 日
12 月 19 日
15 年 1 月 21 日
2 月 18 日
3 月 17 日
4月8日
4 月 30 日
5 月 22 日
現状判断
緩やかに回復している
緩やかに回復している
緩やかに回復している
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
基調的には緩やかな回復を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復基調を続けている
緩やかな回復を続けている
6 月 19 日
7 月 15 日
8月7日
9 月 15 日
10 月 7 日
10 月 30 日
11 月 19 日
12 月 18 日
16 年 1 月 29 日
3 月 15 日
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
緩やかな回復を続けている
基調としては緩やかな回復を続けている
(出所)日銀
4
方向性
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
↑
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
備
考
消費増税にあわせた変更
小幅上方修正との解釈も可能
明白な上方修正は、一昨年の 9
月以来
小幅下方修正との解釈も可能
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
個別の判断項目を見ると、まず海外景気は、「新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩
やかな成長が続いている」から、「海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾
分減速している」へと下方修正された。一見、書き方の順序が変わっただけのように見えるが、1
月は、景気減速は新興国のみという書き方なのに対し、2 月は全体的に減速しているとの判断に変
わっている。これを踏まえ、輸出については、「一部に鈍さを残しつつも、持ち直している」から、
「足もとでは持ち直しが一服している」へと下方修正されている。
内需に目を向けると、設備投資については、「企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな
増加基調にある」から、「企業収益が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある」へと、
企業収益の部分が若干下方修正となっている。住宅投資は、「持ち直している」から「持ち直しが
一服している」へと明確に下方修正された。
個人消費については、「雇用・所得環境の着実な改善を背景に底堅く推移」との判断を維持、公
共投資の「高水準ながら緩やかな減少傾向」、鉱工業生産の「横ばい圏内の動きが続いている」と
の判断も変更はなかった。個人消費については、10-12 月期の民間最終消費支出が前期比▲0.8%
の大幅マイナスとなり、家計調査も弱めの推移が続いている現状を見ると、なぜこうした判断が可
能なのか、理解に苦しむところではある。また、予想物価上昇率については、「このところ弱めの
指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる」から、「やや
長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる」へと下方修正さ
れた。ようやくというべきか、足元では弱含んでいることを認めた形である。
追加緩和は遠くない
過去 2 回の追加緩和はいずれもインフレ期待の下振れリスクが理由にされていたことを考えると、
これだけで追加緩和の理由にされてもおかしくないが、黒田総裁は先行きの見通しは変更しておら
ず、基調は変わっていないとの趣旨の発言をしている。ブレークイーブンインフレ率(BEI)の下
振れ等を指摘する質問に対しては、インフレ期待を図る指標にはさまざまなものがあり、例えば企
業の価格決定スタンスや
生鮮食品・エネルギー除く総合(新型コア指数)は堅調であることから、
「 予想物価上昇率はやや長い目で見れば全体として上昇しているとみられるという判断に変わり
はありません 」とのことである。
ただ、これらの指標を含め、物価の基調の下振れがさらに明確になってくれば、再度追加緩和せ
ざるをえないということになるだろう。短観の物価見通しの概要を見ても、ここ半年の企業のイン
フレ期待の下振れ傾向は明らかで、同じく日銀の「生活意識に関するアンケート調査」や内閣府の
消費動向調査からは、家計のインフレ期待の下振れも確認できる。
新型コア指数が堅調とはいっても、一昨年 10 月の追加緩和時に進んだ円安に伴う、コストプッ
シュ的な上昇という側面が大きい。当社の試算では、円安の効果はすでにはく落しつつあり、今後
は「物価の基調」も徐々に変調をきたす可能性が高い。4 月の展望レポートまではなんとか乗り切
れても、7 月あたりには再び正念場を迎えるということになるのではないか。もちろん、「影の政
策変数」である為替相場が大きく動けば 4 月もありうる。為替相場は当然直接の緩和理由にはでき
ないが、今回の会合で、すでに追加緩和の大義名分は十分立つだけの下方修正はなされている。
手段が問題に
定例会見では、欧州ではドラギ総裁がさらなるマイナス金利幅の拡大を否定するなか、日銀にそ
の余地はあると考えているのかとの質問も出された。これに対し黒田総裁は、ECB(欧州中央銀行)
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経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
はマイナス 0.4%なのに対し日銀はまだ 0.1%であること、しかも 3 層構造で、直接的なマイナス
金利の影響は最小限であること、日本の金融機関の財務基盤は強く、量・質・金利の 3 つの面から
で追加緩和は十分可能としている。なお、追加緩和にあたっては、特定な手法を前もって決め打ち
で考えず、3 つの政策を適切な組み合わせで実施するとしている。
今回の公表文から、「必要な場合、さらに金利を引き下げる」との文言が落ちたことで、金利引
き下げの優先順位が下がったのではないかとの質問も出たが、黒田総裁はこの点について、「 新し
く「金利」という次元を入れたので、その点を念のために断ったわけです。私どもの考え方は全く
変わっていません 」と述べており、マイナス金利の幅拡大を政策オプションから排除したわけでは
ないことを強調している。もっとも、マイナス金利幅の拡大については今後も手探りで進めていか
ざるをえず、それだけで市場にサプライジングなインパクトを与えることはきわめて困難である。
したがって、次回の追加緩和は、量・質・金利の 3 次元すべてを強化するという手法を取ってくる
とみるのが自然である。しかし、それでも余程大きな規模でなくては、市場を驚かせるのは難しい。
日銀の事務方が知恵を絞って、再び誰も思いもつかないような新機軸を打ち出してくる可能性もあ
るが、それでも、残された手段が「いくらでもある」ようにはみえない。サプライズ重視の黒田総
裁の緩和手法は着実に限界に近づいている。(担当:小玉)
(図表 2)会合後の公表文の前回との比較
※下線部は主たる変更箇所
2016/1/29
2016/3/15
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合 1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合
において、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早
において、以下のとおり決定した。
期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金
融緩和」を導入することを決定した。今後は、「量」・ (1)「量」:金融市場調節方針(賛成 8 反対 1)
「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使して、
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、
金融緩和を進めていくこととする。
以下のとおりとする。
マネタリーベースが、年間約 80 兆円に相当するペ
(1)「金利」:マイナス金利の導入(賛成5反対4)
ースで増加するよう金融市場調節を行う。
金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%
のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さ (2)「質」:資産買入れ方針(賛成 8 反対 1)
らに金利を引き下げる。
資産の買入れについては、以下のとおりとする。
具体的には、日本銀行当座預金を 3 段階の階層構
①長期国債について、保有残高が年間約 80 兆円に相
造に分割し、それぞれの階層 に応じてプラス金利、
当するペースで増加するよう買入れを行う。ただ
ゼロ金利、マイナス金利を適用する。
し、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点か
貸出支援基金、被災地金融機関支援オペおよび共
ら、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入
通担保資金供給は、ゼロ金利 で実施する。
れの平均残存期間は 7 年~12 年程度とする。
②ETFについて、保有残高が、3 月末までは年間約
(2)「量」:金融市場調節方針(賛成8反対1)
3 兆円、4 月からは年間約 3.3 兆円に相当するペー
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針
スで増加するよう買入れを行う。J-REIT について
は、以下のとおりとする。 マネタリーベースが、
は、保有残高が、年間約 900 億円に相当するペース
年間約 80 兆円に相当するペースで増加するよう金
で増加するよう買入れを行う。
融市場調節を行う。
③CP 等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約
3.2 兆円の残高を維持する。
(3)「質」:資産買入れ方針(賛成8反対1) 資
産の買入れについては、以下のとおりとする。
(3)「金利」:政策金利(賛成 7 反対 2)
①長期国債について、保有残高が年間約 80 兆円に
日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲
相当するペースで増加するよう買入れを行う。
0.1%のマイナス金利を適用する。
ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す
観点 から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営
する。買入れの平均残存期間は 7 年~12 年程度
6
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
とする。
②ETFおよびJ-REITについて、保有残高
が、それぞれ年間約 3 兆円、年間約 900 億円に
相当するペースで増加するよう買入れを行う。
③CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、
約 3.2 兆円の残高を維持する。
(4)「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の継
続
日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目
指し、これを安定的に持続するために必要な時点ま
で、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続
する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、
「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、
「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な
金融緩和措置を講じる。
<筆者コメント>
・前回の会合では 5:4 の僅差の票決でマイナス金利を導入。今回は白井委員と石田委員が賛成に回ったため、マ
イナス金利に賛成したのは木内委員と佐藤委員の 2 名に減少
・「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる」との一文は削除。ただし黒田総裁は会見でマイナス金利の拡
大を政策オプションから外したわけではなく、前月からスタンスは変わらないと説明
2.わが国の景気は、企業部門・家計部門ともに所得か
ら支出への前向きの循環メカニズムが作用するもと
で、緩やかな回復を続けており、物価の基調は着実に
高まっている。もっとも、このところ、原油価格の一
段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国
経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世
界的に不安定な動きとなっている。このため、企業コ
ンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が
遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大して
いる。
2.わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから
輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては
緩やかな回復を続けている。海外経済は、緩やかな成
長が続いているが、新興国を中心に幾分減速している。
そうしたもとで、輸出は、足もとでは持ち直しが一服
している。国内需要の面では、設備投資は、企業収益
が高水準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。
個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、
底堅く推移している。一方、住宅投資はこのところ持
ち直しが一服しており、公共投資も高水準ながら緩や
かな減少傾向にある。以上の内外需要を反映して、鉱
工業生産は、横ばい圏内の動きが続いている。わが国
の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面
では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程
度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみ
れば全体として上昇しているとみられるが、このとこ
ろ弱含んでいる。
3.先行きのわが国経済については、当面、輸出・生産
面に鈍さが残るとみられるが、家計、企業の両部門に
おいて所得から支出への前向きの循環メカニズムが持
続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、
輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくこ
となどを背景に、緩やかに増加するとみられる。この
ため、わが国経済は、基調として緩やかに拡大してい
くと考えられる。消費者物価の前年比は、エネルギー
価格下落の影響から、当面 0%程度で推移するとみら
れるが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇
率を高めていくと考えられる。
4.リスク要因としては、中国をはじめとする新興国や
資源国に関する不透明感に加え、米国経済の動向やそ
のもとでの金融政策運営が国際金融資本市場に及ぼす
影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモ
メンタム、地政学的リスクなどが挙げられる。こうし
たもとで、金融市場は世界的に不安定な動きが続いて
おり、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマイ
7
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
ンドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリス
クには引き続き注意する必要がある。
<筆者コメント>
・現状判断については、1 月の、「わが国の景気は、企業部門・家計部門ともに所得から支出への前向きの循環
メカニズムが作用するもとで、緩やかな回復を続けており」から、「わが国の景気は、新興国経済の減速の影
響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている」へと下方修正さ
れた
・「緩やかに回復」との基本部分は変わらないが、「基調としては」との断り書きが入ったほか、「新興国経済
の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの」との文言が加わったことで、足元では回復のス
ピードが鈍っているとの認識が示された
・「所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで」との一節も削除
・個別の判断項目は、1 月展望レポートと比較するのが適当。詳細は本文のとおり
3.日本銀行は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、 5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目
2%の「物価安定の目標」 に向けたモメンタムを維持
指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、
するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。
を導入することとした。日本銀行当座預金金利をマイ
今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価
ナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、
安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・
大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により
「質」・「金利」の 3 つの次元で、追加的な金融緩和
強い下押し圧力を加えていく。また、この枠組みは、
措置を講じる。
従来の「量」と「質」に「マイナス 金利」を加えた
3つの次元で、追加的な緩和が可能なスキームであ
6.また、日本銀行は、「マイナス金利付き量的・質的
る。日本銀行は、「マイナス金利付き量的・質的金融
金融緩和」を円滑に実施する観点から、実務的な対応
緩和」のもと、2%の「物価安定の目標」の早期実現
を決定した。すなわち、①0%の金利を適用する「マ
を図る。
クロ加算残高」の見直しを原則として3か月毎に行う、
②MRFの証券取引における決済機能に鑑み、MRF
を受託する金融機関の「マクロ加算残高」に、受託残
高に相当する額(昨年の受託残高を上限とする)を加
える、③金融機関の貸出増加に向けた取り組みをより
一層支援するため、今後「貸出支援基金」および「被
災地金融機関支援オペ」の残高を増加させた金融機関
については、増加額の2倍の金額を「マクロ加算残高」
に加算することとした。
<筆者コメント>
・MRF をマイナス金利の対象から除外(ただし昨年の受託残高が上限)
・「貸出支援基金」および「被災地金融機関支援オペ」の残高を増加させた金融機関については、増加額の 2 倍
の金額を「マクロ加算残高」に加算することに決定
8
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
導入から1ヵ月を経たマイナス金利政策
日銀によるマイナス金利政策の導入
(図表1)「マイナス金利付きQQE」のスキーム
日銀は 1 月の金融政策決定会合で、従来の「量
的・質 的金融緩和( QQE)」か ら「マイナス 金利
付き QQE」へと、緩和手段を拡大することを発表、
2 月 16 日から開始した。この「マイナス金利付き
▲0.1%
<政策金利残高>
QQE」では、日銀 当座預金を① 基礎残高、② マク
ロ加算残高、③政策金利残高の 3 階層に分割した
うえで 、基礎残高に は+0.1% 、マクロ加算 残高
0%
<マクロ加算残高>
<基礎残高>
には 0%、政策金利残高には▲0.1%の金利が適用
されることとなっている(図表 1)。それぞれの
+0.1%
(出所)日本銀行資料より明治安田生命作成
階層の内訳については、①基礎残高は、QQE のもと、2015 年通年で金融機関が積み上げた平均残高
<当初は約 210 兆円(日銀発表)>、②マクロ加算残高は、所要準備額相当分と貸出支援オペ・被
災地支援オペにかかる残高、両オペ残高の今後の増加分の 2 倍相当額(*)、MRF 受託分相当額(*)、
①の基礎残高に「掛目」を掛けて算出される額<当初は約 40 兆円、3 ヵ月毎に見直し(*)>、③
当座預金残高のうち、①と②を除いた残高<当初は約 10 兆円>となっている(*付項目は 3 月に追
加で発表)。
日銀によれば、マイナス金利付き QQE の導入により、イールドカーブの起点を押し下げることで、
大規模な長期国債の買入れとあわせ、イールド全体が低下するとしている。今後は、「量」・「質」・
「金利」の 3 つの次元で緩和手段を駆使することで、2%の物価安定目標の実現をめざすとしてい
る。
マイナス金利政策に関する見解
日銀は、短期金利がゼロまで低下し、それ以上の引き下げができなくなるなか、追加的な金融緩
和効果を得るため、2013 年 4 月の QQE の導入時点で従来の無担保コール翌日物を目標とする金利政
策を放棄し、マネタリーベースの増加という量的目標を導入した経緯がある。そのため、今回のマ
イナス金利の導入で、一見すると金融政策のフロンティアが拡大し、金融政策のゼロ下限がなくな
ったかのような印象をも受ける。ただ、マイナス金利政策が実施されうる幅と、その政策効果につ
いては、学会からの懐疑的な声も少なくない。
マイナス金利が導入可能となる理由は、マイナス金利下での金利負担コストが、現金の保有コス
トを下回ることにある。そのため、政策金利の下限は、金利負担コストが現金の保有コストを上回
り、預金から現金への資産のシフトがはじまるところとなる。すなわち、マイナス金利政策は、金
融政策の「ゼロ下限」が厳密にはゼロではなく、小幅なマイナス圏にあることによって導入が可能
である政策であり、現金を廃止することなどにより、預金から現金へシフトする誘因を取り除かな
い限り、ゼロ下限を打破するものではない。ニューヨーク連銀のマカンドリュース氏の言葉を借り
れば、ゼロ下限とは、「陸地と海の境界を示す標識」のようなものであり、陸地側から海に向かっ
て歩いてゆくと、標識を超えても、海底に足がつく限り、多少なら歩き続けることができる(=0%
を超えて利下げは可能)のだが、歩くたびに水の抵抗(=緩和のコスト)は大きくなる。海が深く
なり、海底に足がつかなくなる点が、政策金利の真の下限を意味する。また、このマイナス金利政
9
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
策の下限について、元リクスバンク副総裁で現在はストックホルム商科大学で教鞭をとるスヴェン
ソン教授は、下限は可変的だが、▲0.75%を大きく超えて利下げが実施できたならば「驚嘆に値す
る」と発言している。
マイナス金利政策の効果については、米 FRB(米連邦準備制度理事会)副議長のフィッシャー氏
は「(マイナス金利導入国で)同時に実施されている他の政策の効果との識別は困難だが、長期の
資産や高リスク資産にも効果が波及したと考えられる」ほか、「金融市場への副作用は限定的なも
のにとどまった」と評価している。一方で、先述のスヴェンソン教授は、「マイナス金利政策の実
体経済への効果は『分からない』」、「銀行がマイナス金利を預金金利に転嫁しない場合、政策効
果は小さくなるのではないか」と、効果に疑問を抱いている。また、米ノートルダム大学のエリッ
ク・シムズ教授も、「マイナス金利は実体経済にプラスに働くだろうが、その効果が格段に大きい
という訳ではない」、「マイナス金利政策は万能
薬ではない」と指摘しており、マイナス金利政策
の 効 果 を 過 大 評 価 す べ き でな い と の 見 解 を 示し
(図表2)日本国債のイールドカーブの比較
%
1.8
1.6
2015年11月末
2015年12月末
2016/3/21
1.4
1.2
ている。
1.0
マイナス金利導入後の市場動向
0.8
0.6
金 利 押 し 下 げ 政 策 効 果 が 得ら れ て い る と 評 価で
きる。足元の国債のイールドカーブの形状を導入
前の昨年末と比較すると、10 年債までマイナス圏
となるなど、短期国債から長期国債まで幅広い年
0.2
0.0
-0.2
-0.4
1
2
3
4
5
7
10
た 2 月 16 日以降、主要短期金利である無担保コ
ー ル 翌 日 物 は ゼ ロ か ら マ イナ ス 圏 で 推 移 し てい
0.15
2015年12月18日 QQE の 補完 措置 を発表
週に生じた欧州金融セクターの信用不安など、他
の要因も影響しているため、政策効果の識別が難
しいところではあるが、導入発表前日の 1 月 28
日からの 4 日間(営業日ベース)の株価の推移を
見ると、金利低下の恩恵が大きいセクターと、金
利 低 下 が マ イ ナ ス に 寄 与 する セ ク タ ー で 動 きが
18
15
0.00
12
-0.05
6
3
0
16/01
15/12
コール市場残高(右軸)
無担保コールO/N物レート
GCレポレート(T+1)
-0.10
9
2016年1月29日
マイ ナス金 利
導入を 発表
(出所)日本銀行、日本証券業協会、短資協会
(図表4)マイナス金利発表前後のTOPIXの業種別株価の推移
(一部業種のみ、終値ベース)
2016年1月28日=100
117.5
112.5
その他
金融業
110.0
不動産
証券・商品
先物取引
107.5
建設
105.0
食料品
T OPIX
102.5
保険
海運
空運
100.0
97.5
95.0
92.5
→マイナス金利導入発表後
90.0
①2016/1/28
②2016/1/29
(出所)ファクトセットより明治安田生命作成
10
27
24
115.0
株価については、マイナス金利導入発表の翌々
30
21
ール市場残高はマイナス金利導入発表前の 4 分の
大きく減少している。
兆円
2016年2月16日
マイ ナス金 利適 用開始
0.05
ることが示唆される。一方、取引量を見ると、コ
1程度まで縮小しており、短期市場の取引自体が
40
0.10
15/11
回る推移が続いており、債券需給がひっ迫してい
30
(図表3)短期市場金利の推移
%
る(図表 3)。また、銘柄を指定しない債券レポ
取引である GC レポレートは、コールレートを下
20
年
限の利回りが低下している(図表 2)。
短期市場では、マイナス金利が実際に適用され
15
(出所)ファクトセット
16/03
市場では、これまでのところ、概ね期待どおりの
0.4
16/02
マイナス金利導入後の市場動向を見ると、債券
③2016/2/1
銀行
④2016/2/2
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
正反対となっている(図表 4)。不動産やノンバ
(図表5)為替相場の推移
円/ドル、円/ユーロ
135
2016年2月16日 マイ ナス金 利 適用 開始
ンク(その他金融業)では、株価が 2 日間で 10%
以上上昇した一方で、銀行では 10%近く下落した。 130
TOPIX 全体では小幅上昇と、株式市場はマイナス
125
金利の導入をある程度評価した模様である。
2015年12月18日
QQE の 補 完 措置を発 表
115
ユーロ・円
強まったことで、翌週には決定会合後の円安幅を
(出所)日本銀行
の押し下げであると考えれば、マイナス金利導入
1.5
の政策効果が弱まっていることが示唆される。
1.0
欧州ではマイナス金利が資産価格バブルに
0.5
つながった例も
0.0
マイナス金利政策は、日銀に先行して欧州諸国
で導入されていたため、次に欧州の状況を概観す
16/03
非 伝 統 的 金 融政 策 の 有 力な チ ャ ネル が 自 国 通貨
15/12
110
15/11
戻し、さらに円高が進んだ(図表 5)。そのため、
2016年1月29日
マイ ナス金 利導 入を発表
ドル・円
16/02
方向へ振れたものの、世界的にリスク回避姿勢が
120
16/01
為替については、1 月の決定会合後、一時円安
(図表6)欧州各国の政策金利の推移
%
-0.5
-1.0
ウェーデン、デンマーク、スイスの中央銀行がマ
イナス金利政策を導入している(図表 6)。マイ
16/1
15/7
15/1
14/7
14/1
13/7
13/1
12/7
12/1
-1.5
る。欧州では、ECB(欧州中央銀行)のほか、ス
ユーロ圏(中銀預金金利)
スウェーデン(中銀預金金利)
デンマーク(譲渡性預金金利)
スイス(3ヵ月LIBOR誘導目標)
(出所)欧州中央銀行、スウェーデン国立銀行、デンマーク国立銀行、スイス国立銀行
ナ ス 金 利 が 適用 さ れ る 範囲 は 各 国で 異 な る もの
(図表7) 欧州各国のマイナス金利政策の概要 マイナスとなっている主な政策金 マイナス金利の対象と マイナス金
利と、2016年2月末時点の水準 なる預金
利導入時期
の、日銀同様、中銀預金や、過剰流動性に対しマ
欧州中央銀行
中銀預金金利(▲0.3%)
預金ファシリティと超過
準備
2014年6月
スウェーデン国立銀行
レポ金利(▲0.5%)
中銀預金金利(▲1.25%)
預金ファシリティ(※1)
2014年7月
(※2)
デンマーク国立銀行
譲渡性預金金利(▲0.65%)
譲渡性預金(※3)
2014年9月
(※4)
スとしたのはデンマークである。同国中銀は、通
スイス国立銀行
3ヵ月物Libor誘導目標(▲0.75%)
貨高に対処するため、2012 年 7 月に他国に先駆け
※1 中銀証書オペなどで余剰資金を吸収する場合にも、マイナス金利が適用される
※2 政策金利のうち、レポ金利がマイナスとなったのは2015年2月から
※3 当座預金のうち、中銀の設定する上限額を上回る部分は譲渡性預金に振り替えられる
※4 2012年7月からマイナス金利政策を導入しているが、2014年4月にはいったんプラスとなった
※5 国内の銀行の上限額は、法定準備の20倍に現金保有額の変動を加味して算出
※6 2015年1月から預金へのマイナス金利(手数料の徴収)を適用している
時系列を追って見ると、マイナス金利を導入し
フレ懸念が高まっていたことや、銀行貸出残高の
7
減少傾向が続いていたことなどがある。ECB のマ
6
イナス金利導入を受け、スウェーデンとスイスで
5
も順次マイナス金利が導入されたほか、一時的に
4
政策金利をプラス圏に戻していたデンマークも、
3
再び利下げを実施した。
2
貸出金利の推移を見ると、デンマークとスイスは
概ね横ばいでの推移が続いている一方、ユーロ圏
11
(図表8)ユーロ圏の貸出金利の推移
%
マイナス金利政策
企業融資(百万ユーロ以下)
住宅ローン
(出所)ECB
15/7
1
15/1
マイナス金利の貸出への影響を把握するため、
2014年12月
(※6)
(出所)ECB、スウェーデン国立銀行、デンマーク国立銀行、スイス国立銀行
14/7
0.1%へと引き下げられた。背景には、域内のデ
当座預金のうち、上限
額を上回る部分(※5)
14/1
月 に は 、 ユ ーロ 圏 で も 中銀 預 金 金利 が 0% →▲
12/7
て譲渡性預金金利をマイナスとした。2014 年 6
12/1
ている 4 地域のうち、最も早く政策金利をマイナ
13/7
表 7)。
13/1
イナス金利が付利される仕組みとなっている(図
企業融資(百万ユーロ超)
消費者ローン等
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
と スウェー デンは、 マイナス 金利導 入以降、 緩
(図表9)預貸の金利差の推移
%
7
や かな低下 傾向が続 いている 。貸出 先別で見 て
ユーロ圏マイナス金利政策
(スウェーデンは翌月から)
6
も 、ユーロ 圏では、 消費者ロ ーン金 利、住宅 ロ
よ りも大き く引き下 げられた ことに よって、 預
ユーロ圏(企業)
スウェーデン(企業)
貸 の金利差 は縮小し ており、 貸出利 鞘も縮小 傾
(出所)ECB
15/7
1
15/1
ロ 圏とスウ ェーデン では、貸 出金利 が預金金 利
14/7
2
12/1
一方、貸出と普通預金の金利差を見ると、ユー
14/1
3
13/7
推移している(図表 8)。
13/1
4
12/7
5
ー ン金利、 企業向け 金利のい ずれも 低下基調 で
ユーロ圏(家計)
スウェーデン(家計)
※貸出金利から普通預金金利(overnight deposit)を差し引いて算出
向となっている(図表 9)。特に、対企業向けの
(図表10)ユーロ圏の貸出残高の推移
10億ユーロ
預 貸金利差 は、マイ ナス金利 導入後 に低下傾 向
6500
10億ユーロ
650
マイナス金利政策
が 強まって おり、マ イナス金 利政策 が銀行収 益
6000
に悪影響を与えていることが示唆される。
5500
550
5000
500
4500
450
次 に、銀 行貸出残 高を見 ると、 貸出金利 低下
の 効果で、 ユーロ圏 では貸出 が持ち 直しつつ あ
600
非金融企業向け融資
たが、2014 年冬にはいずれも下げ止まり、消費
表 10)。貸出金利の低下や、銀行の貸出態度の
140
緩 和などが 、貸出の 持ち直し につな がったと み
130
ら れる。ス ウェーデ ン、デン マーク 、スイス で
125
も 、貸出は 個人向け を中心に 、概ね 持ち直し て
115
2010年=100
135
15/7
15/1
14/7
14/1
(図表11)欧州各国住宅価格指数の推移
EU
ユーロ圏
ドイツ
スウェーデン
デンマーク
スイス
110
105
ま た、マ イナス金 利政策 を導入 している 各国
100
95
で は、資産 価格が上 昇してい る。な かでも、 ス
(出所)ユーロスタット、スイス国立銀行
ス金利導入後の 1 年間で、13%以上上昇した(図
表 11)。同国のコア CPI(消費者物価指数)は、
2014 年通年で前年比+0.4%、2015 年通年でも
1.2
15/9
15/3
※スイスはアパート価格、年1回発表
(図表12)デンマークのマイナス金利下での利下げに対する
各種指数のインパルス・レスポンス
ベーシスポイント
株価
1.0
+0.9%と、一般物価の上昇圧力が強まらないな
14/9
14/3
13/9
13/3
12/9
12/3
11/9
11/3
10/9
10/3
90
ウ ェーデン の住宅価 格の上昇 が著し く、マイ ナ
鉱工業生産
0.8
か で、住宅 価格が急 上昇して おり、 ストック ホ
0.6
ルム を中心に 住宅バブ ルの懸念が 高まって いる。
0.4
コアCPI
0.2
計 量分析 からも、 マイナ ス金利 政策が資 産価
0.0
→ 利下げショ ックからの経過月数(t=1でショ ックを 与える)
-0.2
1
金 利の導入 から比較 的時間が 経過し ているデ ン
消費者ローン等(右軸)
120
いる。
れ ほど大き くない可 能性が示 される 。マイナ ス
住宅ローン
(出所)ECB
者 ローン残 高につい ては増加 に転じ ている( 図
格 を引き上 げた一方 で、実体 経済へ の影響が そ
13/7
残高が 2012 年初ごろから、減少傾向となってい
13/1
300
12/7
3000
12/1
高が 2010 年夏ごろから、非金融企業向けの融資
11/7
350
11/1
3500
10/7
400
10/1
4000
る ことがわ かる。ユ ーロ圏で は消費 者ローン 残
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
政策金利(CD金利)、株価(コペンハーゲン株価指数、対数値)、鉱工業生産(季調値、対数値)、コアCPI(X12ARIMA
により当社季調、対数値)からVARモデルを構築。SICにより、1次のラグを設定。インパルス・レスポンスの導出は同順
のコレスキー分解を利用、500回のモンテカルロ・シミュレーショ ンにより標準誤差を計算。
分析期間:12年1月-15年12月
(出所)デンマーク統計局、中央銀行、コペンハーゲン証券取引所より明治安田生命作成
マ ークにつ いて、同 国でほぼ ゼロ~ マイナス 圏
12
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
での政策金利が続いた 2012 年から 2015 年の期間のデータを用いて、VAR(ベクトル自己回帰)モ
デルを構築し、マイナス金利下での利下げに対する株価、鉱工業生産、コア CPI のインパルス・レ
スポンスを導出すると、政策金利のマイナス幅の拡大に対し、株価は上昇していることが確認でき
る(図表 12)。一方、コア CPI への影響はほとんどみられず、鉱工業生産の上昇は有意ではない。
同国の例からは、マイナス金利政策は、資産価格に対しては影響が確認できたものの、実体経済や
物価への影響は薄い可能性が示唆される。
る。
1.0
みられるものの、全体として見ればさほど大きな
0.0
影響はないとみられる。一方、後者の広範な金利
低下による経営環境への影響は大きい。金融危機
以降、 日本の貸出金利は 低下傾向が続い ており、
銀行の貸出利鞘も縮小が続いている(図表 13)。
特に、経常収益に占める貸出金利息や有価証券利
息 配 当 金 収 入 の ウ ェ イ ト が 大 き い 地 方 銀 行 や第
新規貸出約定金利(都市銀行)
新規貸出約定金利(地方銀行)
新規貸出約定金利(地方銀行Ⅱ)
貸出利鞘(全国銀行)
0.5
98/03
前者については、銀行間・業態間の差はあると
(出所)日本銀行「貸出約定平均金利の推移」、全国銀行協会より明治安田生命作成
(図表14)スウェーデン・スイス・日本の国内金融機関のシェア
<日本(2015年)>
<スイス(2014年)>
<スウェーデン(2014年)>
100
その他
その他 60行
その他 7行
外資系銀行 29行
80
個人銀行家 7
行
貯蓄銀行 48行
60
ライフアイゼン
(協同組合)
40
また、国内銀行市場の構造の違いから、日本と
欧 州 で は マ イ ナ ス 金 利 政 策 の 銀 行 業 へ の 帰 結が
0
異なる可能性がある。大手 4 行の預金のシェアが
6 割超のスウェーデンや、メガ 2 行で同 50%を占
大手4行で預金シェア63%
地銀 64行
州立銀行 24行
ハンデルスバンケ
ン
スウェ ドバンク
スウェーデン
地銀Ⅱ 41行
外資系銀行
114行
ノルデア
20
信用金庫 265庫
地方銀行・
貯蓄銀行 63行
他の商業銀行 34
行
SEB
二地銀では、金利低下による減収の影響が相対的
に大きいとみる。
14/03
1.5
12/03
ほか、広範な金利の低下が収益の下押し圧力とな
10/03
2.0
08/03
「政策金利残高」にかかるマイナス金利の負担の
06/03
2.5
04/03
による銀行収益の悪化について考える。銀行では、
(図表13)業態別新規貸出約定金利の推移
%
00/03
続いて、視点を日本に戻し、マイナス金利導入
3.0
02/03
銀行収益は悪化か
都銀等 10行
メガバンク 2行
スイス
日本
大手2行で預金シェア48%
※スウェーデン、スイスは預金シェア、日本は貸出シェア
(出所)各国銀行協会、日本銀行「貸出・預金動向」より明治安田生命作成
めるスイスと比較すると、日本は、都銀等と地銀で貸し出しの 8 割程度が占められているが、行数
ベースでは 74 行となっており、預貸率も低下傾向にあるなか、過当競争を強いられている(図表
14)。90 年代後半の金融危機時のように、金融システムの不安定化が実体経済に悪影響を与える懸
念は、今後もくすぶり続けるとみられる。
マイナス幅はどこまで拡大できるか
3 月の決定会合では、金融政策がすえ置かれたものの、今後の日銀の金融政策の方向性を考える
うえでの前提となる日本経済は、今後、内外需ともに確たるけん引役が不在ななか、景気回復ペー
スが緩慢なものにとどまるとみる。加えて消費者物価も、円安による押し上げ効果のはく落もあり、
伸び悩みが続く可能性が高い。こうしたなか、足元の為替相場は円高圧力が高まっていることから、
日銀の次の一手も追加緩和とみられる。日銀の Q&A 資料では、マイナス金利は何%まで可能かとい
う問いに対し、「(日銀と)同様に階層構造を採用しているスイスでは▲0.75%、スウェーデンで
は▲1.1%、デンマークでは▲0.65%など、大きめのマイナス金利が適用されている」とも指摘し
ており、さらなるマイナス金利幅の拡大が示唆されている。
13
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
ただ、FRB のフィッシャー副議長も指摘してい
るが、深めのマイナス金利を設定している北欧諸
国は、電子決済の発達などにより、現金保有が少
(図表15)各国・地域の現金流通高/名目GDP比(2015年)
25
%
現金流通高/名目GDP
20
ないことで、中央銀行がマイナス金利の導入を円
滑に進めやすい側面があると考えられる。例えば、
政 策 金 利 の マ イ ナ ス 幅が 最 も 大 き い ス ウェ ー デ
15
10
ンでは、市中銀行の支店にも現金を置いていない
ケースがあるほか、小売店では現金による支払い
が 拒 否 さ れ る 場 合 す らあ る ほ ど に 電 子 決済 化 が
進んでおり、マイナス金利が仮に預金に転嫁され
5
0
日本
ユーロ圏
(出所)ファクトセット
米国
デンマーク
スウェーデン
※ユーロ圏のみ2014年
た場合でも、個人が銀行預金から現金保有へとシフトする要因が乏しい。実際、スウェーデンやデ
ンマークの貨幣流通高は、名目 GDP 対比で 3%に満たない(図表 15)。このように、預金から現金
へのシフトが起きにくい地合いが整っていれば、マイナス金利の下限は低いと考えられるが、一方、
日本の現金流通高/名目 GDP 比は 20%程度と高く、ユーロ圏や米国をも上回っている。これは、日
本では社会的に現金の保有のコストが相対的に低く、裏を返せば導入可能なマイナス幅が北欧諸国
よりも小さい可能性があることを示しているとも捉えられる。2 月のマネーストック統計を見ても、
現金通貨の伸びが前年比+6.7%(1 月:同+6.4%)となるなど、家計の現金シフトがじわじわと
はじまっている可能性もある。マイナス金利政策は、先例に乏しい政策であるため、未だ不確実な
部分が大きいが、現行の枠組みを維持したまま、北欧諸国同様の「大きめの」マイナス金利がスム
ーズに導入可能かについては、議論の余地がある。(担当:山口、尾家)
14
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
3 月 15-16 日開催の FOMC について
海外情勢への懸念を示す
3 月 15-16 日開催の FOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利である FF レートの誘導目標
レンジが 0.25-0.5%ですえ置かれ、金融政策に変更はなかった。声明文では、前回(1 月 26-27
日開催の FOMC)の「委員会は、世界経済と金融動向を注視し、労働市場とインフレ、見通しに対す
るリスク・バランスへの影響を評価している」が削除されたものの、「世界経済と金融情勢は、引
き続きリスクをもたらす」との一文が付け加えられ、海外情勢への懸念が残るとの見方が示された。
政策金利の見通しを下方修正
今回更新された FF レートの見通し(FOMC 参加
者の予想中央値)では、2016 年末が 1.375%から
0.875%、2017 年末が 2.375%から 1.875%、2018
年末が 3.25%から 3.00%、長期見通しが 3.5%か
ら 3.25%へと、いずれも下方修正された(図表 1)。
FRB(米連邦準備制度理事会)内で利上げのペース
がより緩やかなものになるとみる FOMC 参加者が
増えた。FRB のイエレン議長は記者会見で、「世
界経済の成長見通しがやや下振れていることや、
(図表1)FRBの政策金利見通し
%
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
2015年末
2016年末
2017年末
2014/9
2014/12
2015/3
2015/9
2015/12
2016/3
2018年末
2015/6
※政策金利見通しはFOMC参加者によるフェデラル・ファンド・レート予想の中央値
(出所)FRBより明治安田生命作成
スプレッドの拡大といった信用状況が多少引き締
まったこと」が FF レート見通し下方修正の主因と述べた。一方、「FOMC 参加者による FF レートの
予想は、中央値を含め、将来の政策の予定ではなく、政策に既定の道筋はない」とも述べ、利上げ
ペースは今後の経済指標次第との姿勢を強調した。
景気の現状判断は上方修正
一方、声明文では、景気の現状判断は、前回の「経済成長が年末に減速したにもかかわらず、労
働市場の状況はさらに改善した」から、「ここ数ヵ月の世界経済と金融情勢にもかかわらず、経済
活動が緩やかなペースで拡大してきた」へと上方修正された。需要項目別では、個人消費は「緩や
かなペースで増加」、住宅は「一段と改善」、輸出については「軟調」と、いずれも判断がすえ置
かれた。一方、設備投資は「緩やかなペースで増加」から、「軟調」へと下方修正。ただ、在庫投
資は「減速した」が削除され、上方修正された。
労働市場については、「最近の幅広い労働市場の指標は、労働資源の活用不足がさらにいくらか
縮小したことを示している」との一文が、「最近の幅広い指標は、労働市場がさらに力強さを増し
たことを示している」へと変更され、労働市場の改善が続いているとの見方が示された。
インフレについては、「ここ数ヵ月、上向いてきた」との見方が付け加えられた。ただ、「イン
フレ期待を示す市場の指標はさらに低下した」のうち、「さらに低下した」が「低いまま」へと変
更され、インフレ期待低下への警戒感が示された。一方、「調査に基づく長期的なインフレ期待の
指標はここ数ヵ月、総じてほとんど変わらなかった」との一文はすえ置かれた。
利上げペースは緩やかとの姿勢は変わらず
今後の見通しのパラグラフでは、「金融政策のスタンスを緩やかに調整することによって、経済
活動は緩やかなペースで拡大」、「労働市場の指標は引き続き力強さを増す」との見方がすえ置か
15
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
れた。今後の金融政策については、「金融政策のスタンスは引き続き緩和的」、「経済状況が FF
レートの緩やかな引き上げしか正当化しない形で進む」、「FF レートは当面、長期に達成すると見
込まれる水準を下回って推移する可能性が高い」がいずれもすえ置かれ、利上げペースは緩やかな
ものになるとの見方は変わらず。FRB が保有する債券の償還資金の再投資についても、「FF レート
の水準が十分正常化されるまで、継続すると予測している」との一文に変更なく、FRB はバランス
シートの規模を維持し、緩和的な金融環境を継続
するとの姿勢が引き続き示された。
18
年 1,2 回の利上げペースを予想
14
(図表2)失業率の推移
%
16
12
2 月雇用統計では、2 月の失業率は 4.9%と、す
10
でに FRB による失業率の長期見通しのレンジであ
8
6
る 4.7-5.0%に達している(図表 2)。一方、広
4
16/2
15/2
14/2
13/2
12/2
11/2
10/2
09/2
08/2
06/2
者などを失業者に含む)は足元で 9.7%と、2010
07/2
2
義の失業率(非自発的パートタイマーや求職断念
失業率
広義の失業率①:就職をあきらめて労働市場を退出した人を含む
広義の失業率②:広義の失業率①+非自発的パートタイマー
年 4 月の 17.1%をピークに低下傾向が続いている
ものの、現状のペースで改善が続いても、住宅バ
(出所)米労働省
ブル崩壊前の水準まで改善するのは、早くて 2016
4.5
年後半から 2017 年中ごろになる。平均時間給を
(図表3)賃金上昇率と失業率ギャップ
%
%
-1
06/2
足元の賃金インフレは抑制されている。
一方、輸入物価指数の推移を見ると、2 月は前
16/2
-8
15/2
1.0
14/2
-7
壊前 の同+3~4%台を 依然として 下回っており 、
13/2
-6
1.5
12/2
2.0
11/2
-5
び幅が拡大する兆しが出ていたが、住宅バブル崩
10/2
-4
2.5
から伸び幅が縮小した(図表 3)。昨夏以降、伸
09/2
-3
3.0
08/2
-2
3.5
見ても、2 月は前年比+2.2%と、1 月の同+2.5%
07/2
4.0
平均時間給
平均時間給(除く経営者)
年比▲6.1%と、19 ヵ月連続のマイナスとなって
失業率ギャップ(自然失業率-広義の失業率 ※ 右軸)
※求職断念者や非自発的パートタイマーを失業者に含む
いる(図表 4)。除く石油ベースでも、同▲2.9%
(出所)米労働省、CBOより明治安田生命作成
輸入物価
1,2 回程度にとどまると予想する。(担当:信本)
16/2
15/2
14/2
かかるとみており、利上げペースはせいぜい年
13/2
06/2
インフレ圧力が強まるまでにはしばらく時間が
12/2
需給の引き締まりによって、賃金上昇率が加速し、
11/2
指数は今後も低調に推移する可能性が高い。労働
10/2
のに加え、新興国景気の減速などから、輸入物価
09/2
の回復ペースが緩やかなものにとどまっている
(図表4)輸入物価指数(前年比)の推移
%
08/2
るディスインフレ圧力もかかり続けている。賃金
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
07/2
と、15 ヵ月連続のマイナスであり、輸入物価によ
除く石油
(出所)米労働省
<別紙>FOMC 声明文(下線部は前回と今回の主な相違点)
前回 2016/1/26-27
Information received since the Federal Open
Market Committee met in December suggests
that labor market conditions improved further
今回 2016/3/15-16
Information received since the Federal Open
Market Committee met in January suggests that
economic activity has been expanding at a
16
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
even as economic growth slowed late last year.
Household spending and business fixed
investment have been increasing at moderate
rates in recent months, and the housing sector
has improved further; however, net exports
have been soft and inventory investment
slowed. A range of recent labor market
indicators, including strong job gains,
points to some additional decline in
underutilization
of
labor
resources.
Inflation has continued to run below the
Committee's 2 percent longer-run objective,
partly reflecting declines in energy prices
and in prices of non-energy imports.
Market-based
measures
of
inflation
compensation declined further; survey-based
measures
of
longer-term
inflation
expectations are little changed, on balance,
in recent months.
moderate pace despite the global economic and
financial developments of recent months.
Household spending has been increasing at a
moderate rate, and the housing sector has
improved further; however, business fixed
investment and net exports have been soft. A
range of recent indicators, including strong
job gains, points to additional strengthening
of the labor market. Inflation picked up in
recent months; however, it continued to run
below the Committee's 2 percent longer-run
objective, partly reflecting declines in
energy prices and in prices of non-energy
imports. Market-based measures of inflation
compensation
remain
low;
survey-based
measures
of
longer-term
inflation
expectations are little changed, on balance,
in recent months.
12 月の FOMC 会合以降に入手した情報は、経
済成 長が年末に 減速したにも かかわらず 、労働
市場 の状況はさ らに改善した ことを示唆 してい
る。 個人消費と 設備投資はこ こ数ヵ月、 緩やか
なペースで増加し、住宅市場は一段と改善した。
しか しながら、 輸出は軟調で あり、在庫 投資は
減速 した。力強 い雇用者数の 増加を含め 、最近
の幅 広い労働市 場の指標は、 労働資源の 活用不
足 が さ ら に い く らか 縮 小 し た こと を 示 し てい
る。 インフレは 、エネルギー 価格とエネ ルギー
以外 の輸入物価 の低下を一部 反映して、 委員会
の長期的な到達点である 2%を下回り続けた。イ
ンフ レ期待を示 す市場の指標 はさらに低 下した
一方 、調査に基 づく長期的な インフレ期 待の指
標は ここ数ヵ月 、総じてほと んど変わら なかっ
た。
1 月の FOMC 会合以降に入手した情報は、ここ
数ヵ 月の世界経済 と金融情勢に もかかわら ず、
経済 活動が緩やか なペースで拡 大してきた こと
を示 唆している。 個人消費は緩 やかなペー スで
増加 し、住宅市場 は一段と改善 した。しか しな
がら 、設備投資と 輸出は軟調だ った。力強 い雇
用者 数の増加を含 め、最近の幅 広い指標は 、労
働市 場がさらに力 強さを増した ことを示し てい
る。 インフレはこ こ数ヵ月、上 向いてきた 。し
かし ながら、エネ ルギー価格と エネルギー 以外
の輸 入物価の低下 を一部反映し て、委員会 の長
期的な到達点である 2%を下回り続けた。インフ
レ 期 待 を 示 す 市 場の 指 標 は 低い ま ま で あ る一
方、 調査に基づく 長期的なイン フレ期待の 指標
はここ数ヵ月、総じてほとんど変わらなかった。
<ポイント>
・現状の景気判断は、前回の「経済成長が年末に減速したにもかかわらず、労働市場の状況はさらに改善した」か
ら、「ここ数ヵ月の世界経済と金融情勢にもかかわらず、経済活動が緩やかなペースで拡大してきた」へと上方
修正
・需要項目別では、個人消費は「緩やかなペースで増加」、住宅は「一段と改善」、輸出については「軟調」と、
いずれも判断がすえ置かれた。一方、設備投資は「緩やかなペースで増加」から、「軟調」へと下方修正。ただ、
在庫投資は「減速した」が削除され、上方修正された
・労働市場については、「最近の幅広い労働市場の指標は、労働資源の活用不足がさらにいくらか縮小したことを
示している」との一文が「最近の幅広い指標は、労働市場がさらに力強さを増したことを示している」へと変更
され、労働市場の改善が続いているとの見方が示された
・インフレについては、「ここ数ヵ月、上向いてきた」との見方が付け加えられた。ただ、「インフレ期待を示す
市場の指標はさらに低下した」のうち、「さらに低下した」が「低いまま」へと変更され、インフレ期待低下へ
の警戒感が示された。一方、「調査に基づく長期的なインフレ期待の指標はここ数ヵ月、総じてほとんど変わら
なかった」との一文はすえ置かれた
Consistent with its statutory mandate, the
Committee seeks to foster maximum employment
and price stability. The Committee currently
expects that, with gradual adjustments in the
Consistent with its statutory mandate, the
Committee seeks to foster maximum employment
and price stability. The Committee currently
expects that, with gradual adjustments in the
17
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
stance of monetary policy, economic activity
will expand at a moderate pace and labor
market
indicators
will
continue
to
strengthen. Inflation is expected to remain
low in the near term, in part because of the
further declines in energy prices, but to rise
to 2 percent over the medium term as the
transitory effects of declines in energy and
import prices dissipate and the labor market
strengthens further. The Committee is closely
monitoring global economic and financial
developments
and
is
assessing
their
implications for the labor market and
inflation, and for the balance of risks to the
outlook.
stance of monetary policy, economic activity
will expand at a moderate pace and labor
market
indicators
will
continue
to
strengthen. However, global economic and
financial developments continue to pose
risks. Inflation is expected to remain low in
the near term, in part because of earlier
declines in energy prices, but to rise to 2
percent over the medium term as the transitory
effects of declines in energy and import
prices dissipate and the labor market
strengthens further. The Committee continues
to monitor inflation developments closely.
法で 定められ た責務に基 づき、委 員会は雇 用
の最 大化と物価 安定の促進を めざしてい る。委
員会 は現在、金 融政策のスタ ンスを緩や かに調
整す ることによ って、経済活 動は緩やか なペー
スで 拡大し、労 働市場の指標 は引き続き 力強さ
を増 すと予想し ている。イン フレは、エ ネルギ
ー価 格のさらな る低下を一因 に、短期的 には低
いま まにとどま るが、中期的 に、エネル ギー価
格や 輸入物価の 低下による一 時的な要因 が解消
し、労働市場がさらに力強さを増すにつれ、2%
へ上 昇すると予 想される。委 員会は、世 界経済
と金 融情勢を注 視し、労働市 場とインフ レ、見
通し に対するリ スク・バラン スへの影響 を評価
している。
法で 定められた 責務に基 づき、委員 会は雇 用
の最 大化と物価安 定の促進をめ ざしている 。委
員会 は現在、金融 政策のスタン スを緩やか に調
整す ることによっ て、経済活動 は緩やかな ペー
スで 拡大し、労働 市場の指標は 引き続き力 強さ
を増 すと予想して いる。しかし ながら、世 界経
済と 金融情勢は、 引き続きリス クをもたら す。
イン フレは、それ までのエネル ギー価格の 低下
を一 因に、短期的 には低いまま にとどまる が、
中期 的に、エネル ギー価格や輸 入物価の低 下に
よる 一時的な要因 が解消し、労 働市場がさ らに
力強さを増すにつれ、2%へ上昇すると予想され
る。 委員会は、イ ンフレ動向を 引き続き注 視し
ている。
<ポイント>
・今後の景気見通しは、「金融政策のスタンスを緩やかに調整することによって、経済活動は緩やかなペースで拡
大し、労働市場の指標は引き続き力強さを増す」との見方がすえ置かれた
・「委員会は、世界経済と金融情勢を注視し、労働市場とインフレ、見通しに対するリスク・バランスへの影響を
評価している」との一文が削除。ただ、「世界経済と金融情勢は、引き続きリスクをもたらす」との一文が付け
加えられ、海外情勢への懸念が残るとの見方が示された
Given the economic outlook, the Committee
decided to maintain the target range for the
federal funds rate at 1/4 to 1/2 percent. The
stance
of
monetary
policy
remains
accommodative, thereby supporting further
improvement in labor market conditions and a
return to 2 percent inflation.
Against this backdrop, the Committee decided
to maintain the target range for the federal
funds rate at 1/4 to 1/2 percent. The stance
of monetary policy remains accommodative,
thereby supporting further improvement in
labor market conditions and a return to 2
percent inflation.
In determining the timing and size of future
adjustments to the target range for the
federal funds rate, the Committee will assess
realized and expected economic conditions
relative to its objectives of maximum
employment and 2 percent inflation. This
assessment will take into account a wide range
of information, including measures of labor
market conditions, indicators of inflation
In determining the timing and size of future
adjustments to the target range for the
federal funds rate, the Committee will assess
realized and expected economic conditions
relative to its objectives of maximum
employment and 2 percent inflation. This
assessment will take into account a wide range
of information, including measures of labor
market conditions, indicators of inflation
18
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
pressures and inflation expectations, and
readings on financial and international
developments. In light of the current
shortfall of inflation from 2 percent, the
Committee will carefully monitor actual and
expected progress toward its inflation goal.
The
Committee
expects
that
economic
conditions will evolve in a manner that will
warrant only gradual increases in the federal
funds rate; the federal funds rate is likely
to remain, for some time, below levels that
are expected to prevail in the longer run.
However, the actual path of the federal funds
rate will depend on the economic outlook as
informed by incoming data.
pressures and inflation expectations, and
readings on financial and international
developments. In light of the current
shortfall of inflation from 2 percent, the
Committee will carefully monitor actual and
expected progress toward its inflation goal.
The
Committee
expects
that
economic
conditions will evolve in a manner that will
warrant only gradual increases in the federal
funds rate; the federal funds rate is likely
to remain, for some time, below levels that
are expected to prevail in the longer run.
However, the actual path of the federal funds
rate will depend on the economic outlook as
informed by incoming data.
経済見通しを踏まえ、委員会は FF レートの誘
導 目標レン ジを 0.25-0.5%です え置く ことを
決定 した。金融 政策のスタン スは引き続 き緩和
的であり、労働市場のさらなる改善と、2%のイ
ンフレへの回帰を支える。
こうした状況のもと、委員会は FF レートの誘
導目 標レンジ を 0.25-0.5%です え置くこ とを
決定 した。金融政 策のスタンス は引き続き 緩和
的であり、労働市場のさらなる改善と、2%のイ
ンフレへの回帰を支える。
誘導 目標レン ジの今後の 調整時期 と幅を決 定
するにあたっては、雇用最大化と 2%のインフレ
とい う到達点に 照らして、経 済状況の実 績と見
通し を評価する 。この評価に は、労働市 場の状
況に 関するさら なる尺度、イ ンフレ圧力 および
イン フレ期待を 示す指標、金 融と国際動 向の見
通し を含む幅広 い情報を考慮 する。イン フレが
現時点で 2%に届いていないことを踏まえ、委員
会は インフレ目 標に向けた実 際の実績と 見通し
を注視する。委員会は、経済状況が FF レートの
緩や かな引き上 げしか正当化 しない形で 進むと
予測しており、FF レートは当面、長期に達成す
ると 見込まれる 水準を下回っ て推移する 可能性
が高い。しかしながら、FF レートの実際の道筋
は、 今後入手す るデータによ る経済見通 し次第
である。
誘導 目標レンジ の今後の 調整時期と 幅を決 定
するにあたっては、雇用最大化と 2%のインフレ
とい う到達点に照 らして、経済 状況の実績 と見
通し を評価する。 この評価には 、労働市場 の状
況に 関するさらな る尺度、イン フレ圧力お よび
イン フレ期待を示 す指標、金融 と国際動向 の見
通し を含む幅広い 情報を考慮す る。インフ レが
現時点で 2%に届いていないことを踏まえ、委員
会は インフレ目標 に向けた実際 の実績と見 通し
を注視する。委員会は、経済状況が FF レートの
緩や かな引き上げ しか正当化し ない形で進 むと
予測しており、FF レートは当面、長期に達成す
ると 見込まれる水 準を下回って 推移する可 能性
が高い。しかしながら、FF レートの実際の道筋
は、 今後入手する データによる 経済見通し 次第
である。
<ポイント>
・FF レートの誘導目標レンジは 0.25-0.5%ですえ置き
・「金融政策のスタンスは引き続き緩和的」、「経済状況が FF レートの緩やかな引き上げしか正当化しない形で
進む」、「FF レートは当面、長期に達成すると見込まれる水準を下回って推移する可能性が高い」がいずれも
維持され、利上げペースはゆっくりとしたものになるとの見方は変わらず
・一方、次回の利上げについては、「経済状況の実績と見通しを評価する」、「今後入手するデータによる経済見
通し次第」との一節がすえ置かれ、利上げは今後の経済指標次第との姿勢に変更なし
The Committee is maintaining its existing
policy of reinvesting principal payments from
its holdings of agency debt and agency
mortgage-backed
securities
in
agency
mortgage-backed securities and of rolling
over maturing Treasury securities at auction,
and
it
anticipates
doing
so
until
normalization of the level of the federal
The Committee is maintaining its existing
policy of reinvesting principal payments from
its holdings of agency debt and agency
mortgage-backed
securities
in
agency
mortgage-backed securities and of rolling
over maturing Treasury securities at auction,
and
it
anticipates
doing
so
until
normalization of the level of the federal
19
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
funds rate is well under way. This policy, by
keeping
the
Committee's
holdings
of
longer-term securities at sizable levels,
should help maintain accommodative financial
conditions.
funds rate is well under way. This policy, by
keeping
the
Committee's
holdings
of
longer-term securities at sizable levels,
should help maintain accommodative financial
conditions.
委員 会は保有 する政府機 関債や住 宅ローン 担
保証 券からの償 還資金を住宅 ローン担保 証券に
再投 資し、償還 を迎える国債 を入札でロ ールオ
ーバーする現在の政策を維持し、FF レートの水
準が 十分正常化 するまで、継 続すると予 測して
いる 。大規模な 長期債保有を 維持する委 員会の
政策 は、緩和的 な金融環境を 維持してい くこと
につながるだろう。
委員 会は保有す る政府機 関債や住宅 ローン 担
保証 券からの償還 資金を住宅ロ ーン担保証 券に
再投 資し、償還を 迎える国債を 入札でロー ルオ
ーバーする現在の政策を維持し、FF レートの水
準が 十分正常化す るまで、継続 すると予測 して
いる 。大規模な長 期債保有を維 持する委員 会の
政策 は、緩和的な 金融環境を維 持していく こと
につながるだろう。
<ポイント>
・保有債券の償還資金の再投資は継続
・再投資については、「FF レートの水準が十分正常化されるまで、継続すると予測している」との一文に変更な
く、FRB のバランスシートを今後も維持するとの見方がすえ置かれた
Voting for the FOMC monetary policy action
were: Janet L. Yellen, Chair; William C.
Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James
Bullard; Stanley Fischer; Esther L. George;
Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; Eric
Rosengren; and Daniel K. Tarullo.
Voting for the FOMC monetary policy action
were: Janet L. Yellen, Chair; William C.
Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James
Bullard; Stanley Fischer; Loretta J. Mester;
Jerome H. Powell; Eric Rosengren; and Daniel
K. Tarullo. Voting against the action was
Esther L. George, who preferred at this
meeting to raise the target range for the
federal funds rate to 1/2 to 3/4 percent.
この FOMC の金融政策に賛成票を投じたのは、
イエ レン議長、 ダドリー副議 長、ブレイ ナード
理事 、ブラード 総裁、フィッ シャー副議 長、ジ
ョー ジ総裁、メ スター総裁、 パウエル理 事、ロ
ーゼングレン総裁、タルーロ理事。
この FOMC の金融政策に賛成票を投じたのは、
イエ レン議長、ダ ドリー副議長 、ブレイナ ード
理事 、ブラード総 裁、フィッシ ャー副議長 、メ
スタ ー総裁、パウ エル理事、ロ ーゼングレ ン総
裁、タルーロ理事。
反対票を投じたのはジョージ総裁で、FF レー
トの 誘導目標 を 0.5-0.75%へ引 き上げる べき
とした。
<ポイント>
・ジョージ総裁が反対票を投じる
20
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
ECB は包括的な追加金融緩和を決定
市場予想を上回る追加緩和を決定
ECB(欧州中央銀行)は 3 月 10 日の政策理事会
で、中銀預金金利(▲0.3%→▲0.4%)を引き下
げたほか、主要政策金利であるリファイナンス金
利(0.05%→0.00%)と限界貸出金利(0.30%→
0.25%)も引き下げた(図表 1)。中銀預金金利
1.2
(図表1)ECBの政策金利
%
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
限界貸出金利
0.0
の引き下げは 3 ヵ月ぶり、リファイナンス金利と
限界貸出金利の引き下げは 15 ヵ月ぶりである。
主要政策金利
-0.2
中銀預金金利
-0.4
銀 預金金利 の引き 下げ幅( ▲0.1%)の方 が大 き
16/3
15/12
15/9
15/6
15/3
14/12
14/9
14/6
14/3
13/12
13/9
-0.6
限界貸出金利の引き下げ幅(▲0.05%)よりも中
(出所)ECB
(図表2)ECBスタッフ予想
かったことから、コリドーの幅(限界貸出金利-
3月予想
12月予想
中銀預金金利)は 60bp から 65bp に拡大した。一
2016
2017
2018
2016
2017
実質GDP成長率
1.4
1.7
1.8
1.7
1.9
資産買 入れ策については 、毎月の買入れ額 を
インフレ率
0.1
1.3
1.6
1.0
1.6
600 億ユーロから、800 億ユーロへと増額したほ
USD/EUR
1.11
1.12
1.12
1.09
1.09
原油(ドル/1バレル)
34.9
41.2
44.9
52.2
57.5
方、一部で導入が予想されていたマイナス金利の
階層構造については、採用が見送られた。
か、買い入れ対象資産に非金融企業の投資適格社
債を加えることも決定した。あわせて、国際機関
(出所)ECB
などが発行する機関債の銘柄および発行体ごと
の購入上限については、発行残高の 33%から、50%へと引き上げられた。
加えて、4 年物の長期資金供給オペ(TLTRO2)を実施することも決定した。オペは 2016 年 6 月か
ら、四半期ごとに 1 回、計 4 回実施する。金利は借り入れ時点のリファイナンス金利(現時点で
は 0.0%)が適用されるが、銀行の貸出状況によって引き下げられ、最大限引き下げられた場合、
中銀預金金利と同水準になる可能性があるとしている。
低インフレへの警戒感が背景
今回追加緩和に踏み切った背景には、インフレ低下への警戒感がある。3 月の ECB スタッフ予想
では、原油価格の下落などを背景に、インフレ見通し(2016 年:1.0%→0.1%、2017 年:1.6%→
1.3%、2018 年:1.6%)が大きく下方修正された(2018 年は今回初めて発表)(図表 2)。ECB の
ドラギ総裁はインフレ率について、「今後数ヵ月間はマイナス圏にとどまり、上向くのは今年の遅
い時期になるだろう」と述べ、インフレ低下への警戒感を示した。加えて、「賃金や価格の設定に
対して、低インフレの影響が定着しないように注視する」とも述べ、低インフレの二次的な影響の
定着を防ぐため、引き続きインフレの上昇に注力するとの姿勢を示した。
今回のスタッフ予想では、経済見通し(2016 年:1.7%→1.4%、2017 年:1.9%→1.7%、2018
年:1.8%)も下方修正された(2018 年は今回初めて発表)。難民の流入などを受け、政府消費が
上方修正されたものの、新興国景気の減速などを背景に、輸出が大きく下方修正された。ドラギ総
裁は「新興国景気の減速や、不安定な金融市場、多くのセクターにおけるバランスシート調整、構
造改革の遅れが、ユーロ圏の景気回復を妨げている」と指摘したほか、「ユーロ圏の成長見通しに
21
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
対するリスクは引き続き下向きである」とも述べ、景気の下振れリスクへの懸念を示した。
ECB は当面様子見姿勢をとると予想
ドラギ総裁は今回決定した金融緩和政策について、「金融環境を一段と緩和し、信用供与を促す
ことで、ユーロ圏の景気回復の勢いを強め、インフレ率が目標に向けて加速することを下支えする」
と述べ、銀行貸出の増加などを通じて、景気回復や、インフレ率の上昇などの効果が見込まれると
の見方を示した。一方、同総裁は今後の金融政策について、「現在の見通しや、今回決定した政策
が経済成長やインフレを支援することを勘案すると、一段の利下げが必要になるとはみていない」
と述べ、追加利下げは必要ないとの見方を示した。ECB は今回決定した金融緩和の政策効果を見極
めるため、当面、様子見姿勢をとると予想する。(担当:尾家)
22
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
主要経済指標レビュー(3/7~3/18)
本≫
23
115
110
105
100
95
90
7ヵ月後方移動平均
85
3ヵ月後方移動平均
80
一致CI
16/01
15/01
14/01
13/01
12/01
11/01
10/01
09/01
08/01
07/01
06/01
75
(出所)内閣府「景気動向指数」
ポイント
70
65
60
55
50
45
40
35
30
25
20
景気ウォッチャー調査 現状判断DI
現状判断DI
現状判断DI 家計
現状判断DI 企業
現状判断DI 雇用
(出所)内閣府「景気ウォッチャー調査」
%
40
%
8
企業物価指数(前年比)の推移
30
6
20
4
10
2
0
0
-8
素原材料(左軸)
最終財(右軸)
(出所)日銀「企業物価指数」
16/02
-6
-40
15/02
-4
-30
14/02
-2
-20
13/02
-10
12/02
○ 2月企業物価指数(3月10日)
2月の国内企業物価指数は前年比▲3.4%と、前月の
同▲3.2%からマイナス幅が拡大した。23種目中、8業
種が押し上げに寄与、11業種が押し下げに寄与、4業
種が前月と同じとなった。押し下げに寄与した業種で
は 、石油 ・石炭 製品( 1月:同 ▲20.0%→ 2月: 同▲
21.8% )、 電力・ 都市 ガス ・水 道( 同▲ 11.0% →▲
12.5%)などのマイナス幅拡大が目立つ。一方、はん
用機械(同+0.7%→+1.0%)のプラス幅が拡大した
ほか、生産用機械(同▲1.2%→▲0.3%)、非鉄金属
(同▲14.0%→▲12.5%)のマイナス幅の縮小などが
押し上げに寄与した。足元では、原油価格は底打ちし
つつあるものの、為替水準が円高方向に振れているほ
か、国内最終需要の弱さもあって、今後も企業物価は
低下傾向が続くと予想する。
120
11/02
○ 2月景気ウォッチャー調査(3月8日)
2月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIが前
月差▲2.0ポイントの44.6と、横ばいを示す50を7ヵ月
連続で下回った。ウォッチャーの判断理由を見ると、
年明け以降の金融市場の混乱の影響のほか、マイナス
金利の採用が、日銀の狙いとは裏腹に、家計や企業の
景 況感の 大きな 下押し 要因 となっ ている 様子が うか
がえる。株式市場の調整はようやく一巡した雰囲気だ
が、マイナス金利を巡る混乱は今後もしばらく続く可
能性が高い。また、賃金の伸び悩みを背景に今後も個
人消費の回復力は鈍いとみられるほか、新興国景気の
不振の長期化を背景に輸出も停滞する可能性が高く、
内外需ともけん引役不在のなか、景気回復ペースは引
き続き緩慢なものにとどまると予想する。
一致CIの推移
2010年=100
10/08
10/11
11/02
11/05
11/08
11/11
12/02
12/05
12/08
12/11
13/02
13/05
13/08
13/11
14/02
14/05
14/08
14/11
15/02
15/05
15/08
15/11
16/02
○ 1月景気動向指数(3月7日)
1月の景気動向指数では、一致CIが113.8(前月差+
2.9ポイント)と、3ヵ月ぶりの上昇となった。生産・
出荷関連指標の押し上げが目立つが、鉱工業生産統計
の予測調査を見ると、2月は大幅減産見込みで、1-3
月期でも前期比マイナスが有力なことから、一致指数
も安定的な上昇が見込める状況ではない。製造業の在
庫調整局面は終盤に近づいているとみられるものの、
世 界経済 は当面 力強さ に欠 く推移 が続く と見込 まれ
る ほか、 春闘の 要求水 準が 全体と して下 がるな か、
2016年度も個人消費は伸び悩むとみられることから、
在庫調整の一巡後も、景気回復ペースは緩慢なものに
とどまる可能性が高い。
10/02
≪日
中間財(右軸)
国内企業物価指数(右軸)
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
24
3ヵ月移動平均
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
16/1
15/1
14/1
13/1
12/1
11/1
10/1
09/1
08/1
07/1
06/1
0.5
(出所)内閣府「機械受注統計」
第3次産業活動指数の推移
2010年=100
106
%
6
104
4
102
2
100
0
98
-2
第3次産業活動指数(季調値)(左軸)
前年同月比(右軸)
96
94
-4
-6
(出所)経済産業省「第3次産業活動指数」
輸出金額の推移(前年比)
%
25
20
15
10
5
0
-5
-10
金額指数=数量指数×価格指数
輸出金額指数
(出所)財務省「貿易統計」
輸出数量指数
16/02
15/11
15/08
15/05
15/02
14/11
14/08
14/05
14/02
13/11
-15
13/08
○ 2月貿易統計(3月17日)
2月の貿易統計によると、輸出金額は前年比▲4.0%
と、5ヵ月連続のマイナスとなった。輸出の実勢を示
す数量指数は同+0.2%と、8ヵ月ぶりのプラスとなっ
たものの、中国向けが前年同月に大幅マイナスとなっ
た反動の影響が大きい。米国向けは前月からマイナス
幅が縮小、欧州向けもプラスに転じるなど、回復の兆
しはみられたものの、基調的な弱さは続いているとみ
ている。今後についても、中国を中心とする新興国景
気の低迷が下押し圧力となるとみられるほか、米国向
けについても、エネルギー関連業種の低迷などもあっ
て、資本財を中心に伸び悩むとみており、当面の輸出
は一進一退の推移が続くと予想する。
単月
1.1
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
○ 1月第3次産業活動指数(3月15日)
1月の第3次産業活動指数は前月比+1.5%と、3ヵ月
ぶりのプラスとなった。内訳では、広義対個人サービ
スが同+0.7%、広義対事業所サービスが同+2.2%と、
いずれも3ヵ月ぶりの上昇。業種別に見ると、11業種
中、8業種で上昇、2業種で低下、1業種で前月から横
ばいとなった。上昇した業種は、卸売、金融・保険、
事業者向け関連サービスなど。卸売では鉱物・金属材
料卸売などが、金融・保険では流通業務などが、事業
者向け関連サービスでは、土木・建築サービスなどが
押し上げに寄与した。一方、低下した業種は、生活娯
楽関連サービスと情報通信。今後については、所得環
境の回復ペースの鈍さを背景に、対個人サービス関連
の活動が一進一退で推移するとみており、第3次産業
活動指数全体でも、均せば緩やかな回復にとどまると
予想する。
機械受注(船舶・電力を除く民需)の推移
兆円
1.2
13/05
○ 1月機械受注(3月14日)
1月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比
+15.0%と、12月(同+1.0%)からプラス幅が拡大
した。比較できる2005年4月以降で、過去最大のプラ
ス幅となった。ただ、製造業では鉄鋼業に大型案件が
入ったことによる影響が大きく、特殊要因を除けば、
製造業の持ち直しペースは緩慢とみられる。企業は、
中国を中心とする新興国景気の減速などを受け、設備
投 資に慎 重姿勢 を強め てい るとみ られる ことな どか
ら、日銀短観の設備投資計画も、3月調査では下方修
正 を余儀 なくさ れると みる 。今後 の設備 投資は 、更
新・維持投資や合理化・省力化投資が下支えするとみ
るものの、世界景気の先行き不透明感に加え、国内の
中長期的な低成長予想が定着していることもあって、
回復ペースは鈍いものにとどまると予想する。
輸出価格指数
経済ウォッチ
国≫
小売売上高の伸びと寄与度(前月比)
%
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
除く自動車・ガソリンスタンド・建材
ガソリンスタンド
小売売上高
16/2
16/1
15/12
15/11
15/9
15/10
15/8
15/7
15/6
15/5
15/4
15/2
15/3
-1.5
15/1
○ 2月小売売上高(3月15日)
2 月の小売売上高は前月比▲0.1%と、2 ヵ月連続で
減少した。市場予想(同▲0.2%)を上回ったものの、
1月分が大幅下方修正された(同+0.2%→▲0.4%)。
ガソリン価格の下落を背景に、ガソリンスタンドが同
▲4.4%と 8 ヵ月連続で減少し、全体を押し下げた。
一方、GDP の算出に使用される「除く自動車・部品、
ガソリン、建材ベース」では、同+0.2%と、2 ヵ月ぶ
りに増加した。ガソリン安などを背景に、家計の実質
購買力が向上していることや、雇用環境の改善が続い
ていることなどから、個人消費は引き続き回復傾向を
維持すると予想する。
14/12
≪米
2016 年 3 月第 4 週号
自動車・部品
建材
(出所)米商務省
2007年=100
鉱工業生産と設備稼働率の推移
%
110
90
65
80
60
鉱工業生産
16/2
85
15/2
70
14/2
90
13/2
75
12/2
95
11/2
80
10/2
100
09/2
85
08/2
105
07/2
○ 2月鉱工業生産(3月16日)
2 月の鉱工業生産は前月比▲0.5%と、2 ヵ月ぶりの
マイナスとなり、市場予想(同▲0.3%)をも下回っ
た。産業別に見ると、製造業が同+0.2%と、2 ヵ月連
続でプラスとなったものの、石油掘削などの鉱業は同
▲1.4%と、6 ヵ月連続でマイナス。ガス・電気などの
公益事業は同▲4.0%と、例年より気温が高かったこ
とで、暖房需要が減少したことを背景に、2 ヵ月ぶり
のマイナスとなった。海外景気の減速が続いているこ
とや、原油安を背景にエネルギー関連業種の業況が低
調に推移していることなどから、生産は今後も停滞気
味の推移を余儀なくされるとみる。
設備稼働率(右軸)
(出所)FRB
25
6
CPIの伸び(前年比)
%
5
4
3
2
1
0
-1
-2
CPI
(出所)米労働省
コアCPI
16/2
15/2
14/2
13/2
12/2
11/2
10/2
09/2
08/2
-3
07/2
○ 2月CPI(消費者物価指数)(3月16日)
2 月の CPI は前月比▲0.2%と、2 ヵ月ぶりに低下し
た。エネルギーが同▲6.0%と 3 ヵ月連続で低下し、
全体を押し下げた。前年比では+1.0%と、1 月の同+
1.4%から伸び幅が縮小。一方、エネルギーと食料品
を除いたコア CPI は前月比+0.3%と、
1 月の同+0.3%
か ら 伸 び 幅 は 変わ ら な か った が 、 市場 予 想 ( 同 +
0.2%)を上回った。前年比でも+2.3%と、1 月の同
+2.2%から伸び幅が拡大し、市場予想(同+2.2%)
を上回った。アパレルなどの伸び幅が拡大した影響が
大きい。商品価格が軟調であるほか、ドル高などから、
今 後の物 価上昇 圧力は 抑制 的なも のにと どまる とみ
ている。
経済ウォッチ
州≫
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
16/1
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/7
14/4
14/1
-1.5
(出所)ユーロスタット
CPI
(出所)ユーロスタット
コアCPI
16/2
15/8
15/2
14/8
14/2
13/8
13/2
12/8
12/2
11/8
ユーロ圏CPI・コアCPIの推移(前年比)
%
11/2
○ 2月ユーロ圏CPI(消費者物価指数)
(3月17日)
3.5
2月のユーロ圏CPIは前年比▲0.2%と、5ヵ月ぶりの
3.0
マ イナ スとな った 。財 価格の うち 、食品 価格 が同+
2.5
0.7%→+0.4%と、4ヵ月連続でプラス幅が縮小した
2.0
ほか、エネルギー価格は同▲5.4%→▲8.1%と、5ヵ
1.5
月 ぶ り に マ イ ナ ス 幅 が拡 大 。 サ ー ビ ス価 格 も 同 +
1.0
1.2%→+0.9%と、2ヵ月ぶりにプラス幅が縮小した。 0.5
国別では、ドイツが同+0.4%→▲0.2%、フランスが
0.0
同+0.3%→▲0.1%、イタリアが同+0.4%→▲0.2%、 -0.5
スペインが同▲0.4%→▲1.0%と、いずれもマイナス -1.0
となった。昨冬以降の原油安や、景気回復ペースの鈍
さなどを背景に、ユーロ圏のCPIは今後も停滞気味の
推移が続くと予想する。
26
ユーロ圏鉱工業生産の推移(前月比)
%
2.5
10/8
○ 1月ユーロ圏鉱工業生産(3月14日)
1月のユーロ圏鉱工業生産は前月比+2.1%と、3ヵ
月ぶりのプラスとなった。財別で見ると、消費財が同
0.0%→+2.3%、中間財が同▲0.3%→+0.9%、資本
財が同▲0.6%→+3.9%と、軒並みプラス。主要国別
では、スペインが同0.0%→▲0.2%と、5ヵ月ぶりの
マ イ ナ ス と な っ た も の の 、 ド イ ツ は 同 ▲ 0.2% → +
2.9%、フランスは同▲0.6%→+1.4%、イタリアは
同▲0.6%→+1.9%と、いずれもプラスとなった。ユ
ーロ圏の個人消費は改善傾向で推移しているものの、
輸 出は新 興国向 けを中 心に伸 び悩み が続くと みられ
ることなどから、今後の鉱工業生産は停滞気味に推移
すると予想する。
10/2
≪欧
2016 年 3 月第 4 週号
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
日米欧マーケットの動向
(2016年3月22日現在)
▽各国の株価動向
(円)
(ドル)
日経平均株価
17000
16000
15000
日経平均株価
14000
13000
16/3
15/12
15/7
15/10
15/4
15/1
14/8
14/10
14/5
14/2
13/9
13/11
(出所)ファ クトセット
13/6
16/3
15/12
15/7
15/10
15/4
15/1
14/8
14/10
14/5
14/2
13/9
13/11
13/6
12000
13/3
(出所)ファ クトセット
(出所)ファ クトセット
(ポイント)
英国の株価指数(FT100)
7200
15/02
14/11
14/08
14/05
14/03
13/12
13/09
13/06
13/04
13/01
ドイツの株価指数(DAX)
12/10
12000
ダウ工業株30種平均
19000
18000
12/07
12/04
12/02
13/3
23000
21000
19000
17000
15000
(円)
13000
19000
11000
18000
17000
9000
16000
7000
15000
14000
13000
12000
11000
10000
9000
(ポイント)
8000
7000
13000
6900
11000
6600
10000
6300
9000
6000
5700
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
14/2
13/11
(出所)ファ クトセット
13/9
5400
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
14/2
13/11
13/9
13/3
6000
13/6
(出所)ファ クトセット
13/3
7000
13/6
8000
▽外為市場の動向
(ドル)
27
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
14/2
13/11
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
(出所)ファ クトセット
15/1
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
14/2
13/11
13/9
13/6
13/3
(出所)ファ クトセット
14/10
110
14/8
120
14/5
130
14/2
140
13/11
150
円/ポンド相場
13/9
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
160
90
13/9
16/3
15/12
15/10
15/7
15/1
14/10
14/8
14/5
15/4
(円)
円/ユーロ相場
100
(出所)ファ クトセット
13/6
(円)
14/2
13/11
13/9
13/6
13/3
(出所)ファ クトセット
ドル/ユーロ相場
13/6
1.45
1.40
1.35
1.30
1.25
1.20
1.15
1.10
1.05
1.00
13/3
円/ドル相場
13/3
(円)
135
130
125
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
70
20
16/3
15/12
15/10
15/7
110
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
(出所)ファ クトセット
95
80
65
50
35
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
28
16/3
15/12
15/10
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
2.4
15/7
15/1
14/10
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
14/2
13/11
(出所)ファ クトセット
15/4
(ドル)
15/1
原油先物(WTI、中心月)
14/8
(出所)ファ クトセット
14/5
(%)
14/2
政策金利(ユーロ圏、定例オペ最低入札金利)
13/11
1.0
13/9
0.1
13/9
2.0
13/6
0.2
13/6
2.5
13/3
0.3
13/3
16/3
15/12
15/10
3.0
14/10
-0.1
16/3
15/12
15/10
15/7
0.4
14/8
-0.25
15/7
15/4
(%)
3.5
14/5
0.4
15/4
15/1
14/10
政策金利(米国、FFレート)
14/2
0.00
15/1
14/10
14/8
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
14/2
13/11
13/9
13/6
13/3
16/3
15/12
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/8
14/5
(出所)ファ クトセット
(%)
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
-0.1
-0.2
13/11
0.9
14/8
14/5
14/2
0.0
13/9
0.25
14/5
14/2
0.1
13/6
1.4
14/2
13/9
13/11
日本の無担保コール(O/N)
13/3
(ドル)
13/11
(%)
0.5
13/11
13/9
13/6
13/3
-0.1
14/2
0.50
13/9
13/6
13/3
(%)
0.2
13/11
1.9
13/6
(%)
1.00
13/9
0.75
13/3
0.0
13/6
13/3
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
▽各国の金利動向
長期金利(日本、10年国債)
(出所)ファ クトセット
長期金利(米国、10年国債)
1.5
(出所)ファ クトセット
長期金利(ドイツ、10年国債)
(出所)ファ クトセット
▽商品市況の動向
金先物(COMEX)
(出所)ファ クトセット
経済ウォッチ
2016 年 3 月第 4 週号
本レポートは、明治安田生命保険 運用企画部 運用調査 G が情報提供資料として作成したものです。本
レポートは、情報提供のみを目的として作成したものであり、保険の販売その他の取引の勧誘を目的と
したものではありません。また、記載されている意見や予測は、当社の資産運用方針と直接の関係はあ
りません。当社では、本レポート中の掲載内容について細心の注意を払っていますが、これによりその
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●照会先●
明治安田生命保険相互会社
運用企画部 運用調査グループ
東京都千代田区丸の内2-1-1 TEL03-3283-1216
執筆者 :小玉祐一、謝名憲一郎、信本将巳、平野真依子、山口範大、
尾家小春、安藤卓康、玉置菜摘、開發彰徳、村上梨子
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