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流通実態 - 農林水産省
④ EU法制 EU証明を有する日本の水産会社の数は現状極めて限られており、この制約は、英国 同様、スペインでも解決すべき最初の問題となっている。 ⑤ 持続性・環境問題 持続性、捕鯨問題等はスペインにおいても意識され、日本のイメージの改善にとって の課題となる。しかし、この点に関する消費者の関心は、英国の消費者に較べれば高い ものではない。 3.流通実態 (1) 概況 他の多くの市場と同様、水産物についても国内生産(漁獲と養殖)、輸入の2つの流 れから国内流通経路に供給が行われる。国内で水揚げされた水産物は、全国 291 の地 方市場を経由して、全国 16 箇所に設置された中央卸売市場に集められる。ただし、後 記のとおり、養殖もの、缶詰、冷凍ものについては、垂直統合した大手水産加工会社の 市場支配力が非常に強い。 図2 水産物流通市場の構造 国内漁獲 輸入 小規模独立系水産会社 大手水産会社 冷凍 卸売り市場 加工 フードサービス 出典:Pro-Intal 専門小売店 輸出 大手小売チェーン Counsulting 合理化されたサプライチェーンへの集中の動きが見られ、恒常的に一定の、量、質、 価格を供給できる供給者への需要集中といった動きが生じている。 104 (2) 運賃・コスト 運送方法は生鮮の場合空輸、冷凍の場合船積みとするのが一般的である。スペインの 主要港からは、貿易業者は冷蔵設備付船舶を使用するケースが多い。インタビューした 誰もが日本から直接輸入した実績がないので、船積みコストは不明である。流通コスト には港での取扱、通関のコストが加算される。到着港の手続、関税等は、基本的にEU 内では同一である(詳細は英国リポートを参照) 。 (3) 卸売市場 地方市場を経由した水産物は、卸売市場に行き、卸売から仕入れる流通業者に渡り、 次 に 魚 店 、 ホ テ ル 、 レ ス ト ラ ン 等 に 渡 る 。 卸 売 市 場 の 代 表 格 で あ る MERCAS (MERCASA が運営)は年 500 千トンを超える水産物を取り扱う。その内訳は、生鮮 魚類 60%、冷凍魚類 20%、生鮮甲殻類、貝類 20%となっている。 マドリッド市場(MERCAMADRID)は東京に次いで、世界第二位の水産物市場で ある。スペインが消費される水産物の 60%以上は、MERCAS のネットワークを通して であり、最も人口密度の高い、これらの流通センターの近くに限れば 95%になる。 MERCASA によれば、2001 年での大規模市場は以下のとおり。マドリッドだけで全 体の 30%を占め、上位3つで54%を占める。VALENCIA と BARNA は、特に冷凍 もので、重要である。 表 12 MERCASA を通ずる水産物の販売高 生鮮魚 MERCAMADRID (トン) 冷凍貝類 冷凍魚 計 構成比% 100,300 23,097 36,665 160,062 30.8 MERCABARNA 54,587 27,483 17,405 99,475 19.1 MERCAVALENCIA 31,369 17,972 24,866 74,207 14.3 MERCABILBAO 24,040 5,624 7,675 37,339 7.2 MERCAMALAGA 29,686 4,415 2,262 36,363 7.0 MERCASEVILLA 21,460 5,750 8,263 35,473 6.8 MERCAZARAGOZA 27,098 1,402 2,722 31,222 6.0 MERCAGRANADA 9,706 2,977 2,127 14,810 2.8 MERCACORDOBA 7,050 1,314 1,264 9,628 1.9 MERCAIRUÑA 3,651 905 486 5,042 1.0 105 MERCAMURCIA 1,888 347 1,950 4,185 0.8 MERCASALAMANCA 3,394 407 119 3,920 0.8 273 0 2,890 3,163 0.6 MERCALEON 1,926 585 24 2,532 0.5 MERCABADAJOZ 1,447 273 78 1,798 0.3 412 197 154 763 0.1 318,287 92,748 108,950 519,985 100.0 MERCALASPALMAS MERCAJEREZ 計 出典:MERCASA 市場は小売(取扱量の 75%)とフードサービス(同 25%)に分かれる。フードサー ビスは、冷凍ものや燻製等の付加価値産品で、特に重要である。 表 13 チャネル別水産物流通の構成比(重量) 生 鮮 生 鮮 貝 小売 フードサービス 計 魚 79% 21% 100% 類 78% 22% 100% 冷 凍 水 産 物 35% 65% 100% 缶 詰 水 産 物 81% 19% 100% 製 45% 55% 100% 75% 25% 100% 伝統的魚店 スーパー ハイパーマーケット 燻 計 出典:CanadaGov.、USDA、MAPA (4) 小売市場 表 14 小売店における形態別水産物販売構成比 生 鮮 49% 39% 12% 冷 凍 25% 51% 24% 缶 詰 13% 58% 29% 40% 44% 16% 計 出典:CanadaGov.、USDA、MAPA 106 伝統的な魚店は、スーパーやハイパーマーケットとの厳しい競争下にあるが、スペイ ンでは依然重要であり、特に生鮮ではかなりのシェアとなっている。 スペインでの上位10小売グループの売上は以下のとおりであり、食品売上の約 70%のシェアを有する。 表 15 主要食品小売業者の売上比較 2007 年 順位 会社名 総売り上げ シェア 食品売上 シェア (百万€) (%) (百万€) (%) 1 Mercadona 13,494 13.4 13,090 20.0 2 Carrefour 16,685 16.6 12,568 19.2 3 Eroski 8,428 8.4 5,876 9.0 4 Dl Corte Inglés 20,680 20.5 5,158 7.9 5 Auchan 5,690 5.6 3,846 5.9 6 Schwarz Group 2,068 2.1 1,861 2.8 7 DinoSol 2,072 2.1 1,690 2.6 8 SPAR Española 1,803 1.8 1,559 2.4 9 Miquel 1,777 1.8 1,470 2.2 10 Unide 1,594 1.6 1,467 2.2 出典:TradeData 小売分野で最もポピュラーな水産物は以下のとおりとなっている。 ・貝類 26% ・メルルーサ 17% ・イワシ 9% ・マグロ 9% ・カレイ 3% ・サケ 3% ・マス 2% ・大西洋マダラ 2% 107 (5) 水産加工会社 スペインの水産物産業は、垂直統合された、いくつかの水産加工会社の支配力が極め て強く、国内漁獲から輸入まで、市場の 65-70%を供給している。冷凍、加工、付加 価値化のため、主要なスペインの水産加工会社は、スペインに供給チャネルを持つ海外 とのJVやパートナーとの提携により、事業を国際化して来た。 現在、スペインの漁業会社はアイルランド、スコットランド、南ア、アルゼンチン、U SA,デンマーク、ナミビア、エクアドル、ペルー、チリ等で事業を行っている。代表 格の PESCANOVA は世界中に 85 の子会社を持つ。主要な水産加工会社は以下のとお りである。 表 16 スペインの5大漁業会社 企業名 所在地 ブランド名 GRUPO PESCANOVA Vigo (PO) Pescanova GRUPO FREIREMAR Las Palmas Freiremar/ Nakar GRUPO AMASUA Barcelona/Madrid Frío Condal/ Pesca del sur GRUPO BANCHIO Las Palmas Marafri/ Royal Greenland Vigo (PO) Nos GRUPO IBERICO CONGELADOS (6) SA フードサービス 水産物市場の 23%を占め、なお拡大中のフードサービス分野は魅力的市場であるが、 極めて細分化され、極めて多数の企業、店舗がある。スペインでは企業の集中度は極め て低く、バーやカフェの分野では特にそうである。 比較的集中度の高いホテルとレストランの分野では水産物の供給先は、以下のように なっている。 ・ 流通業者 48% ・ 卸売業者 19% ・ 伝統的小売業者17% 108 図3 タイプ別フードサービス店舗の構成比 ホテル その他 レストラン バー・カフェテリア 出典:MAPA 図4 品目別水産物のフードサービスシェア(%) 冷凍甲殻類 調理済み水産物 生鮮水産物 その他冷凍魚 冷凍タラ 冷凍サケ 冷凍ヒラメ 冷凍メルルーサ 冷凍魚 その他生鮮魚 生鮮タラ 生鮮マス 生鮮マグロ 生鮮サケ 生鮮ヒラメ 生鮮イワシ 生鮮メルルーサ 生鮮魚 出典:MAPA 109 図 4 に見られるように、フードサービス分野は、特に以下の品目について重要なターゲ ットとなる。 ・ 冷凍水産物全般 ・ 甲殻類と貝類 ・ サケ ・ マグロ (7) 販売方法 前記のとおり、専門店は、スペインの水産物流通で重要なシェアを持つので、卸売市 場はスペインでは特に重要である。スペイン中で消費される水産物の 60%以上は卸売 市場経由であり、スーパーも、特に生鮮ものは、卸売市場を通じて仕入れている。 卸売市場の流通業者は、日本の仲買と違い、国内の水産物だけではなく、海外の水産 物を直接輸入する。生鮮魚市場に参入するには、これらの流通業者とのリレーションが 必要である。 統合された漁業会社(PESCANOVA、FREIREMAR 等)は冷凍ものや下拵えした水 産物市場を支配しており、冷凍サバやサケ等の冷凍ものでは、これらの会社にアプロー チする必要がある。 日本式レストラン向けのような少量の特別品では、日本食品流通業者の COMINPORT 社が高いシェアを有しており、スペインでのパートナーになり得る。地 域的には、マドリッド、バルセロナの2大都市は、他の都市向けの、輸入産品のハブ流 通基地となる。 スペインでは、リレーションが、市場での成功には最も重要である。水産物分野とバ イヤーに強いコネがある、適正な人にコンタクトする必要がある。 英国同様、輸入業者・小売業者との交渉に際しては供給業者としての能力を証明する 必要があり、また、スペイン語のドキュメントが必要となろう。 (8) 販売促進方法 スペイン農林水産省管理下の独立法人である FROM(魚・海洋文化市場法制組織基 金)は、スペインでの水産物消費促進を活発に行っている。その活動は、魚産品市場の 数量、価格、品質等の指導と金融的、技術的支援の提供等である。 110 販促例は、 ・ 冷凍魚会社と協力して冷凍魚産品レシピカレンダー作成 ・ 国内外のフェア、展示会開催のための金融的、技術的支援の提供 ・ 2005 年、魚産品に対する消費者習慣、重要なリサーチを実施と 2003 年の同プロジ ェクトの継続 私企業の水産物プロモーションは限定的であるが、前記のとおり、PESCANOVA が 健康を前面に打ち出したキャンペーンを行った事例がある。インストアやセール品提供 等が一般的であり、マスメディアの利用、ティスティングといったケースはあまり事例 がない。 日本の水産物は殆ど存在しないので、消費者向けプロモを始めるのは比較的容易であ ろう。輸入業者、卸売業者、と協議し、影響力のあるシェフを利用するといったやり方 が有効と思われる。また、スペインでは、自国産品紹介のために大使館がパーティを催 すのは一般的であり、そうした場を利用することも考えられよう。 4.今後必要な対応 (1) 水産物の輸出可能性 現在までのところ、スペインに日本から今回の対象品目が輸出された実績はない。し かし、クリアすべき課題も多いが、適切な販売促進キャンペーンと計画立案を行えば、 スペインへの日本産水産物輸出に関して参入機会はあるものと判断される。 全般的に、日本産水産物の持つスペイン市場における強みと弱みは、以下のようにま とめられる。 ・ 強み ¾ 高品質 ¾ 日本食のブームに支えられた日本や日本文化に対するポジティブなイメージ ¾ 高度な冷凍技術 ・ 弱み ¾ 価格が高い ¾ 地場産、あるいは近隣の供給国に比べて日本は遠い 111