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甜 菜 (ビート)
甜 菜 (ビート) ビート畑 ビート・さとうだいこん とも呼ばれるが、 ほうれん草 (アカザ科)の仲間 てん菜 豆類 じゃがいも 小麦 1年目 2年目 越冬 苗植え(4~5月) 収穫(10~11月) 開花(7月) てん菜は2年生草本 砂糖づくり(10~3月) 17% ショ糖 5% 食物繊維 0.2% ベタイン 0.1% ラフィノース b 結合 ガラクトオリゴ糖 ラフィノース a 結合 GAL GAL GAL メリビオース GAL G F F F ショ糖 フラクトオリゴ糖 F ベ タ イ ン (トリメチルグリシン) (グリシンベタイン) CH3 CH3-N+-CH2COOCH3 ベタインとは? COO- トリメチルグリシン CH2-CH2-CH2-N+(CH3)3 - - H-CH-N+(CH3)3 COO- γ-ブチロベタイン ・広義にはアミノ酸のN-トリアルキル誘導体の総称である。 ・狭義にはベタインはトリメチルグリシン(グリシンベタイン)をいう。 ・ベタイン Betaineの呼称は甜菜(Beta Vulgaris)に由来する。 ・ベタインは1866年C.Scheibler(シャイプラー)により甜菜から初めて 分離された。 ベタインは 動植物、微生物界に広く分布している。 動物では 頭足類(イカ・タコ等) 甲殻類(エビ・カニ等) 軟体動物(貝類等) に多く含まれます。カニ肉エキス中には150mg~700mg/100g 程度存在し、雄に多い傾向がある。 魚類では余り多くない。 グリシンベタイン結晶を直火加熱すると焼きエビの匂いがする。 ベタイン CH3 CH3-N+-CH2COOCH3 植物では アカザ科の植物に多く見られ、中でもフダンソウ属に多い なぜ塩があるような浸透圧条件でも生息で きるのか? 細胞内にベタインなどの浸透圧調節物質 (適合溶質)を生成し、高い浸透圧に耐え て生きている。 ベタインは藻類から高等植物まで存在 ほうれん草、麦、タケノコ、さつまいもにも含まれ。クコの主成分でもある。 甜菜 麦類 マングローブ など耐凍性や耐塩性があるものに多く報告されている。 ベタインの物理化学性 1.甘味 甘みとわずかな苦味がある。 甘味度は砂糖の約半分。 2.溶解度(20℃) 160g/100g 水 8.7g/100g エタノール 3.水分活性 砂糖を上回る水分活性低下効果を示す。 4.熱及びpH安定性 融点・分解温度は310℃付近であり、熱に安定である。 耐酸、耐アルカリ性も高い。 (10%水溶液を120℃15分加熱 pH1~13変化なし) 5.非褐色性 糖と反応しメイラード反応を起こさないため、褐変しない。 呈味性からのアプローチ ・甘味がある(砂糖の約半分の甘味度) ・他の旨味増強、単独でも弱い旨味がある ・塩角を取る(塩なれ効果) ・酸味の刺激を和らげる 海産物特有のフレーバがある ・若干苦み、えぐみを感じる ・味の輪郭がぼける 太田ら 調理科学 1985.(Vol.18 No.3)、道川ら 日本食品科学工学会誌 1995.12(Vol.42 No.12) クロアワビの味の構成は、グルタミン酸とアデニル酸によるうま 味にグリシンとベタインの甘みで基本構成され、グリコーゲンが 全体の味をまとめている。 かにの基本的な味はグリシン、グルタミン酸、アルギン酸、アデ ニル酸、グアニル酸、Na+、Cl-で構成され、アラニン、ベタイン、 K+、PO43- などが加わり味が修飾され、増強される。 ベタインはグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどとの相性が良い。 ベタインは魚ペーストなどの生臭い味をマスキングする。 ミートソース(トマトソース)など、具材に対して0.5%程度ベタインの添加を行い、 うま味の増強ならびに乳化を目的としたユーザーもあり。 ベタインの物質浸透に与える影響 市販大根を40mmの立方体に切る 調味液に浸漬 1.1)食塩3%溶液、2)食塩3%+ベタイン3%溶液、3)食塩3%+グリシン3%溶液 2.1)グルタミン酸ソーダ3%溶液、2)グルタミン酸ソーダ 3%+ベタイン3%溶液、 3)グルタミン酸ソーダ 3%+グリシン3%溶液 6面を5mm 厚で剥く 6面を5mm 厚で剥く 外周サンプル 中間サンプル 食塩、Glu-Na濃度測定 食塩、Glu-Na濃度測定 中心サンプル 食塩、Glu-Na濃度測定 上記各部位の浸透度合いを比較する 0.9 1.2 0.8 1.0 食塩3% +ベタイン3% +グリシン3% 食 塩 濃 0.8 度 (%) Glu | Na 濃度 (%) Glu-Na3% +ベタイン3% +グリシン3% 0.7 0.6 0.6 0.4 0.5 0.4 0.2 外周 中間 大根食塩液浸漬試験結果 中心 外周 中間 中心 大根Glu-Na液浸漬試験結果 ベタインは食塩浸透を阻害するが、グルタミン酸 Na浸透は促進し、グリシンより若干強く影響する。 保湿性からのアプローチ 化粧品などの医薬部外品用途でも使用され ・安全性が確保され、保湿力が高い ・溶解度が高く、扱いやすい ・他の成分との相性が良いこと 吸湿性・保湿性が極めて高い 水、エタノールに対する溶解性が高い ベタイン結晶の性質と水の関係 350 100 スクロース ベタイン 溶 300 解 度 250 吸 湿 率 グリシン 湿度 90% 吸湿率(%)は無水ベタイン あたりの%で表示 80 (g/H2O 100g) (%) 湿度 70% 60 200 150 40 湿度 65% 潮解 100 20 50 湿度 50% 1水和物 0 0 0 20 40 60 温度 (℃) ベタインの溶解性 80 0 4 8 12 16 日数(日) ベタインの吸湿性 ベタインは溶解性が高く、吸湿性と潮解性がある。 ベタインの保湿力 水 50 分 保 40 持 率 (%)30 100 ベタイン グリセロール ソルビトール PCAソーダ 20 水 80 分 保 持 60 率 (%)40 10 20 0 0 0 2 4 6 8 日数 10 ベタイン ヒアルロン酸Na 0 2 4 6 8 10 12 14 時間 ベタインの保湿力 ヒアルロン酸との保湿力比較(低濃度) 固形分50%の各保湿剤水溶液を、温度30℃、相対湿度35%に保 持した場合の残存水分量の変化を示す。 ベタインは約30%の水分を維持しているのに対し、他の保湿剤は 残存水分10%前後で平衡に達している。 ヒアルロン酸は溶解度が低いので、各3%水溶液にて比較。 溶液を30℃、相対湿度45%で保持した場合の水分の変化を 示す。15時間後まではヒアルロン酸Naを上回る保湿力を示し ている。 ベタインは保湿力が非常に高い。 神田健太郎 FOOD Style21 1999.4.(Vol.3No.4) リン脂質 フォスファチジル エタノールアミン NH2-CH2-CH2-OH エタノールアミン CH3 フォスファチジル メチルエタノールアミン CH3-NH2-CH2-CH2-OH メチルエタノールアミン CH3 フォスファチジル ジメチルエタノールアミン (CH3)2-NH2-CH2-CH2-OH ジメチルエタノールアミン コ リ ン 酸 化 CH3 (CH3)3-N-CH2-CH2-OH コリン フォスファチジル コリン (CH3)3-N-CH2-COOH ベタイン メチオニン ベタインとリン脂質の代謝 ベタイン、コリンは、リン脂質代謝に重要な役割を持つ。 ベタインは生体内ではコリンから代謝されて作られ、動脈 硬化の危険因子であるホモシステインの代謝に関係する。 ホモシステインは、肝臓で行われるアミノ 酸の代謝過程で、中間体として自然に作ら れる物質である。 通常であれば、ホモシステインは、様々な 代謝酵素の働きによってシステインやメチ オニンへと代謝されるが、体質や食習慣に よってはホモシステインの代謝が滞って血 液中のホモシステインが過剰となる。 ベタイン そして、慢性的にホモシステイン濃度が高 い状態が続くことは、動脈疾患、認知機能 の低下、老年性骨粗鬆症、老眼など、加齢 にともなって現れる多くの疾患の発現にも 関係していると考えられている。 ベタイン摂取量 ○心疾患や卒中の予防に: 500~1,000mg/日 ○ホモシステイン尿症: 6,000mg/日 <ホモシステインの有害な作用> 1.血管内皮細胞由来の血管拡張作用を阻害 血中のホモシステインが酸化する際に生まれる過酸化水素により、血管内皮細胞がダ メージを受け、NO産生ができなくなることから血管拡張が阻害される。 2.抗血栓機能を阻害 血栓を抑制する作用を持つ物質の働きを阻害し、血栓の形成を進行させる。 3.血管の肥厚と硬化を促進 コラーゲン繊維の過剰な合成や、LDLコレステロールと結合し、血管内腔でのアテロー ム形成を引き起こすことで血管の肥厚と硬化を促進させる。 上記のような有害な作用によって、動脈硬化、高血圧、血栓形成が進行し、高ホモシス テイン血症は、重篤な疾患の原因の1つとなるのです。 血液中のホモシステイン濃度が10mmol/l以上になると、動脈硬化が進行し、心臓発 作、脳卒中、アルツハイマー疾患のリスクが高まります。