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わが青春 わが読書
読書の楽しみは過去 の人と対話すること 英作家コリン・ウィルソンさん死去 「アウトサイダー」2013年12月10日 コリン・ウィルソンさん(英作家)が、5日死去、82歳。 英中部レスター生まれ。労働者階級の出身で、職業を転々としながら大英博物館で執筆。56 年に出版した「アウトサイダー」がベストセラーとなり注目された。 文学、哲学、オカルトや犯罪など、広範な知識を駆使して人間の実存を洞察した評論のほか小 説など150冊以上の著作がある。代表作に「オカルト」「精神寄生体」など。多くの作品が日 本語に翻訳されている。(時事)(朝日新聞Digitalより) ここで言う大英博物館とは、あのロゼッタストーンが置いてある世界最大の博物館です。当時 は大英図書館が併設されていました。彼が読書・執筆にあけくれていたのは大英図書館の方です。 (大英図書館は今は移転しています。大英博物館には昔の大英図書館の一部を残していて、マル クスの席がどこだったか、見ながらカフェでくつろいだりできます) ウィルソンが執筆しているものが束になり山になって行くうちに、大英図書館の司書さんがそ の内容に気づいて驚愕します。そして「これ、出版したらいいよ」と出版社に紹介された処女作 が『アウトサイダー』。実に豊富な知識によって古今東西、どんな人が「アウトサイダーなのか」 ということを吟味した著作になっていて、中学校しかでていないコリン・ウィルソンに世界中が おどろきました。図書館で本を読むってムダじゃない! で、本日紹介するのは彼の『アウトサイダー』ではなく、『わが青春 わが読書』です。やはり 彼の膨大な読書量のなかから自分に影響を与えた本を選んで紹介している内容の厚い本で、全て 読むのはたいへんなのですが、みなさんにも共感できる部分があると思います。 『トム・ソーヤーの冒険』が小学生だった彼のお気に入りでした。男の子は一度に10人の女の子 を好きになれることに気づいたり、トムがいやでたまらないペンキ塗りを楽しくてしょうがない ふりをしたら、友達が頼むからやらせてくれとプレゼントをもってやってくれたことで、人生の 真実を見たり、続編とよばれている『ハックルベリー・フィン』がとてもつまらないと平然と切 り捨てたり。(『ハックリベリー・フィンをアメリカ文学の最高峰とする人は結構多いのです。 あのサンデル先生も薦めておいででした。人種差別や自己確立が描かれていて、とても教育的な んです)自分の葬式にぬけぬけと現れるトム・ソーヤをウィルソンは絶賛します。 そしてシャーロック・ホームズがどうしてあれほどまでに人気を保っているのかを分析して見せ ます。適度な現実を混ぜつつ、ロマンティックな人間像を作り上げる。コナン・ドイルの3歳上 のバーナード・ショーは天才で、問題を理詰めに最後まで展開させてしまい、彼の名声は死後傾 いてしまった。ドイルはホームズを知の超人と見せかけながらも、実は無力で挫折感に満ちた一 人の人間に作り上げ、人気が衰えない。ホームズの後継者と思われる探偵を幾人も挙げているし、 それについても考察も面白い。ショーの名声が衰えたかは、異論があるけれど、なかなかに読ま せるエッセイです。ホームズ好きにはぜひ、お勧め。 他にもジョイス、ヘミングウェイ、ニーチェ、ドストエフスキー(小学生のとき読んだって!) プラトン、サルトル、ゾラにモーパッサン。「セックスと永遠の女性」など 興味深い。この世にいなくなった彼の意見に共感する自分がいます。 この本ではないけれど、自分が死ぬまでに影響を与えた本のリストを作っ てみてはいかがでしょう。松蔭中高図書館はそのお手伝いができますよ。 (眞鍋)