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Untitled - 港湾空港技術研究所

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Untitled - 港湾空港技術研究所
目
要
旨
次
................................................................................
3
...............................................................................
4
.............................................................................
4
1.まえがき
2.研究の背景
2.1 インタフェイスに必要な操作性
2.2 多様化する操作方法
.........................................................
4
..................................................................
4
3.相似形インタフェイスの開発経緯
.........................................................
4
3.1 相似形インタフェイスの提案
..........................................................
4
3.2 相似形インタフェイスの試作
..........................................................
5
3.3 制御精度に関する室内実験
............................................................
6
3.4 遭遇型インタフェイスの改良
..........................................................
7
3.5 相似形インタフェイスの改良
..........................................................
8
3.6 実海域実験で使用するための改良
3.7 実海域実験で発生した問題点
......................................................
..........................................................
3.8 相似形インタフェイスの代替条件
......................................................
4.ジョイスティックを用いた新型インタフェイスの評価
4.1 操作入力方法の検討
10
10
.......................................
10
..................................................................
11
4.2 ジョイスティックの採用
..............................................................
4.3 操作効率および疲労度の評価手法
4.4 実験装置
9
12
......................................................
12
............................................................................
12
4.5 使用するインタフェイス
..............................................................
4.6 ポインティング実験の方法
............................................................
13
14
4.7 ポインティング実験についての結果
....................................................
15
4.8 ポインティング実験についての考察
....................................................
16
.....................................................
16
........................................................................
17
5.クローラ制御用インタフェイスの評価
5.1 操作入力装置
5.2 ミニショベルによる移動制御実験
......................................................
17
5.3 移動制御実験についての結果
..........................................................
18
5.4 移動制御実験についての考察
..........................................................
19
...................................................................................
21
6.結論
7.あとがき
謝辞
...............................................................................
21
......................................................................................
21
参考文献
..................................................................................
-1-
21
Evaluation of Operativeness Concerning Interface
of Remote-Controlled Backhoe
Taketsugu HIRABAYASHI*
Hiroyuki YASUTA**
Tetsuya SHIRAISHI***
Hideo KATOH****
Synopsis
Operation of the man-machine interface should be easy and intuitive for efficient works when using
a remote-controlled underwater backhoe. Moreover, operation is preferable to be unwearying. Tiredness
in the operation of the backhoe front part by the similar-figure-interface becomes a serious matter of
concern in the site experiment of an underwater backhoe. Therefore, such an interface became necessary
that the operation efficiency is equal to the similar-figure-interface and the tiredness level is smaller than
that. In addition, when checking the durability of an underwater port structure by using an underwater
backhoe, bimanual operation is necessary because two or more manipulators will be used at the same
time in that case. Therefore, the efficiency of the interface operated by foot should be examined.
The aim of this research is to evaluate the operativeness of the joystick-type-interface that is newly
proposed. The operativeness of the joystick and that of the similar-figure-interface were compared in the
pointing experiment. This research also aims to evaluate the operativeness of the foot-slider-type
interface. The operativeness of the foot-slider and that of a conventional two- lever interface were
compared in the moving experiments of the backhoe.
As for the pointing experiment, the operation efficiency was evaluated by the speed and the accuracy
of the operation of the backhoe front part, and the tiredness level was evaluated through the hearing to
the operators. As for the moving experiment, operativeness was evaluated from the configuration of the
tracks of moving and the time of moving.
As a result, concerning the new interface that uses a joystick, operation efficiency was found to be
almost equal to the similar-figure-interface and the tiredness level has been improved. However, it was
found not suitable for an operation for a long time. As for the new interface with the foot-slider, there
were problems in precision and backward moving. In this research, operativeness of the both interface
were clarified, and the problem including the tiredness level became clear.
Key Words: Remote-controlled backhoe, Interface, Operation efficiency, Crawler control
*
**
***
****
Researcher of Control Systems Division
Trainee of Control Systems Division (SAEKI KENSETSU KOGYO CO.,LTD.)
Head of Control Systems Division
Director for Special Research
3-1-1, NAGASE, YOKOSUKA, 239-0826, JAPAN
Phone: +81-46-844-5062
FAX: +81-46-844-0575
e-mail : [email protected]
-2-
遠隔操作型バックホウの入力装置に関する操作性評価
平林
安田
白石
加藤
要
丈嗣*
博之**
哲也***
英夫****
旨
遠 隔操 作 型 水 中 バッ ク ホ ウ を 使用 し て 効率的な施工を行うためには,インタフェイスの操作性
が 直感 的 か つ 容 易で あ る こ と ,そ し て 身体的疲労の少ないことが望ましい.遠隔操作型水中バッ
ク ホウ を 用 い た 実海 域 実 験 で は相 似 形 インタフェイスの操作における疲労が問題となった.その
た めバ ッ ク ホ ウ フロ ン ト 部 を 操作 す る ための相似形インタフェイスと操作効率が同等で疲労度の
小 さい イ ン タ フ ェイ ス が 必 要 と考 え ら れた.また,水中バックホウを用いて水中構造物の点検を
行 う場 合 , 点 検 用セ ン サ 等 の 操作 を 同 時に行うことが考えられ操作が複雑となる.そのためバッ
クホウクロー ラ部を 足で操 作する インタフェイスについても検討する余地があった.
本 研究 は 新 し く 提案 し た ジ ョ イス テ ィ ックインタフェイスの操作性を評価することを目的とし
て ,相 似 形 イ ン タフ ェ イ ス と の操 作 性 を比較するために,ポインティング実験を行い,有効性を
確 認す る も の で ある . ま た , 足で 操 作 するフットスライダインタフェイスの操作性を評価するこ
とを目的とし て,従 来の 2 レバー インタ フェイスと操作性を比較するため,移動制御実験を行 い
比較評価する もので ある.
ポ イン テ ィ ン グ 実験 で は ス ピ ード と 正 確性から操作効率を評価し,実験後のヒアリングにより
疲労度の評価 を行っ た.ま た,移 動制 御 実験では走行時間と走行軌跡から操作性を比較評価した.
実 験か ら フ ロ ン ト部 を 操 作 す るた め の ジョイスティックを使用した新型インタフェイスは,相
似 形イ ン タ フ ェ イス と ほ ぼ 同 等の 操 作 効率を有しており疲労度も改善されたことが明らかとなっ
た .た だ し ヒ ア リン グ で は 長 時間 の 作 業に適していないこともわかった.クローラ部を操作する
た めの フ ッ ト ス ライ ダ に お い ても 精 密 作業や後進時の操作性に課題が残る結果となった.本研究
に より イ ン タ フ ェイ ス の 操 作 性が 明 ら かになるとともに,疲労度も含めた今後の課題が明確とな
った.
キ ー ワ ー ド:遠隔操 作型バ ックホ ウ,インタフェイス,操作効率,クローラ制御
*
制御技術研究室
**
制御技術研究室
***
****
研修生(佐伯建設工業株式会社)
制御技術研究室長
特別研究官
〒 239-0826
横 須 賀 市 長 瀬 3-1-1
電 話 : 046-844-5062
独立行政法人港湾空港技術研究所
Fax: 046-844-0575
e-mail: [email protected]
-3-
1.まえがき
ある.また維持・補修を行うためには溶接用ロボットア
ームなどの操作も考えられた.このように点検・診断や
大水深岸壁,廃棄物 埋立 護 岸,海 上空 港 の整備や点
維持・補修を行うためにはバックホウのフロント部を操
検・診断,維持・補修等は,今後ますますその要請が高
作するインタフェイスと,マニピュレータ等を操作する
まるものと考えられ,これらを安全かつ効率的に実施す
ためのインタフェイスが必要となり,操作が複雑になる
ることが求められている.こうした中で港湾構造物の点
ことが予想される.このため従来の JIS 規格レバーのよ
検・診断や維持・補修は必要不可欠なものであり,その
うに 1 本のレバーで 2 自由度を操作するインタフェイス
作業の多くは潜水士の手作業に依存している.このよう
では,ブーム・アーム・バケット角の制御だけで両手操
な作業のさらなる安全性の向上や省力化を実現するため
作を行うため,点検用センサや維持補修マニピュレータ
に,当研究所では遠隔操作型水中バックホウを利用した
との同時操作が困難となる.また,相似形インタフェイ
水中作業の無人化に関して研究を行っている.安全性を
スでは長時間操作時の疲労の問題だけでなく,把持作業
優先した効率的な施工が求められるなかで,今後ますま
などに対応させることが難しい.そのため片手で 3 自由
す機械化施工の重要性は高くなると考えられる.
度以上を操作できるインタフェイス
3)
の開発が必要と考
えた.
2.研究の背景
本研究ではバックホウフロント部を操作するためのイ
ンタフェイスとして,実海域実験で使用した相似形イン
2.1 インタフェイスに必要な操作性
タフェイスと新しく提案したジョイスティック型インタ
平成 16 年度に遠隔操作型水中バックホウの実海域実
フェイスについて,今後の複雑な操作に対応しているか
1)
を行った.実験では捨石荒均しの作業効率・精度の
検討するとともに,操作効率や疲労度を比較するための
確認をするとともに,その操作性について実験後にオペ
実験を行い,操作時間と正確性から評価する.また,疲
レータからヒアリングを行った.その結果,実験で使用
労度については被験者からのヒアリングにより評価を行
した相似形インタフェイスは直感的な操作入力とバック
う.さらに従来方式である JIS 規格レバーリモコンと搭
ホウ関節角度などによる作業状況把握について良好な結
乗操作についても参考としてデータを収集する.さらに
果を得る一方,疲労により長時間の連続作業が困難であ
バックホウとセンサ類は両手を使って同時に操作するこ
るとの回答を得た.そのため遠隔操作型水中バックホウ
とが予想される.この両手を使った複雑な操作に対応す
を使用して効率的な施工を行うためにはインタフェイス
るため,バックホウクローラ部を操作するための,足を
の操作性についても検討する必要があった.つまり操作
使って操作するインタフェイスと 1 レバーインタフェイ
性は直感的かつ容易であるとともに身体的負担が少なく,
スを提案した.これについては従来方式の 2 レバーイン
長時間の作業に適したインタフェイスが望まれる.その
タフェイスと操作性を比較する実験を行い,操作時間と
ため実海域実験で使用した相似形インタフェイスと操作
走行軌跡から評価を行う.この実験でも参考として搭乗
験
効率
2)
操作によるデータ収集を行う.
が同等で,長時間の作業でも疲労の少ないインタ
フェイスが必要となった.
3.相似形インタフェイスの開発経緯
2.2 多様化する操作方法
遠隔 操作 型 水 中バ ック ホ ウ を利 用し て 港 湾施設の点
本研究で比較対象とした相似形インタフェイスは,濁
検・診断を行うために必要な要素を検討した.点検・診
水中での作業において作業時の負荷情報の提示,直感的
断を行うためには,対象物の位置の計測や CG などによ
な操作入力,機体の関節姿勢提示を実現するために平成
る対象物の表示方法のほかに,バックホウの先端にセン
13 年度から 16 年度に研究を行ったものである.本章で
サを取り付け,ブームやアームを操作することで目的位
は,相似形インタフェイスの研究過程についてまとめ,
置へ誘導する必要がある.また,計測を行うためには目
平成 16 年度の実海域実験時における操作性ヒアリング
的の場所へセンサ類を移動するための,微小な位置の調
結果と問題点の提起について行う.
整が必要となる.しかしバックホウは機械的な遊びやガ
タにより微小な動作に適していないため,目的位置付近
3.1 相似形インタフェイスの提案
までの移動をバックホウの操作により行い,最後の微小
水中バックホウを遠隔から操作して,捨石均し作業を
な位置の調整はマニピュレータ等を使用して行う必要が
行うために,インタフェイスに必要な機能や条件として,
-4-
次の 3 つが挙げられる.
ピュレータで写真-1 にシステムの全景を示す.
(1) バックホウと相似な形状
(2) バケット部分の操作
(3) 物体接触時における反力の呈示
まず,バックホウとの相似形状であるが,水中バック
ホウが海底にあり,その状態を目視によって確認できな
いため,バックホウの姿勢を何らかの方法で確認する必
要がある.従来の JIS 規格レバー方式による操作では,
形状の把握が困難で操作性の低下が予想される.そこで
インタフェイスの形状を実機と対応した相似形状とする
ことにした.インタフェイスを見れば形状を把握でき,
それを動かすことで実機の動作との 1 対 1 の対応づけが
直感的に行える.また,実際のシステムではディスプレ
イに CG による情報呈示を行うことが予想されるので,
相互に情報を補強する材料としても有用と考えられる.
さらに,万が一,視覚ディスプレイに故障等が発生した
写真-1
ワンレバーシステム
場合でも安全に作業を中断することができる.
次にバケット部分の操作であるが,実際の作業を行う
(2)
パンタグラフマニピュレータ
上で掘削や均しを行うのはバケットであり,ブームとア
パンタグラフマニピュレータは,水中バックホウの形
ームはエンドエフェクタであるバケットを目標まで移動
状を模して,平行四節リンク機構によって実現した 3 自
するために用いられている.つまり作業を行うというこ
由度マニピュレータである.
とは,バケットを目標の位置へ思い通りに動かすことで
写真-2 にシステム全景を示す.マニピュレータは,ブ
あり,インタフェイスによりそれを実現するためには,
ーム相当のリンクが「くの字」に曲がった平行四節リン
バケット部分を持って操作することが最も適していると
クである.アームに相当するリンクの先端にバケットを
言える.
回転させるモータを取り付けたものである.ユーザはバ
最後に物体接触時における反力の呈示であるが,実機
ケットのモータを指先で持ってバケット自体を移動,回
の地面や岩との接触情報をフィードバックすることで,
転させる.バケットは 180°回転するので,モータを指先
遠隔操作の操作性が向上する.なお,実機では捨石均し
で持ち,手首の回転と人差し指と親指の相対運動によっ
作業が主であるので,硬いものに触れた感覚が必要であ
てモータを回転させ,2 つの運動を組み合わせて 180°
る.硬いものに触った感覚が得られる接触力は,応答が
回転させる.
十分速ければ 9.8N(1kgf)程度あればよく,任意の方向に
パンタグラフ機構により関節を駆動するためのアクチ
9.8N(1kgf)以上出力できるアクチュエータを取付けるこ
ュエータのほとんどを根元に集めることができ,ユーザ
とで対応可能である.このように遠隔操作における特殊
は先端のバケットを回転するアクチュエータのみの重
な条件を満たしたインタフェイスとして,相似形インタ
量を支えればよい.本装置では,エンコーダとギアボッ
フェイスを提案した.
クス付きモータを 3 台用いた.モータの出力は,バケッ
ト先端に 9.8N(1kgf)以上の反力が呈示できる物として
3.2 相似形インタフェイスの試作
選定を行った.ギアボックスの仕様から先端で
水中バックホウを遠 隔操 作 するイ ンタ フ ェイスとし
19.6N(2kgf)の反力出力が可能である.簡素な機構であ
ては 3.1 で述べたように相似形のインタフェイスが適当
り,メンテナンスも容易といえる.可動範囲は半径 417
である.ここで「ワンレバーシステム」および「パンタ
mm の扇領域内部で,計測誤差は 0.18 mm である.ロー
グラフマニピュレータ」,バケット直下の地面を模擬する
タリーエンコーダを用いているため耐ノイズ性に優れ
「遭遇型インタフェイス」の 3 種類を試作し比較するこ
ている.
ととした.
(1)
ワンレバーシステム
ワンレバーシステムは 3 自由度のシリアルリンクマニ
-5-
写真-3 において下半分に写っている機構が地面呈示
部分である.これはストローク 150mm の直動アクチュ
エータ 2 本を直交させ,前後と上下移動が可能な X-Z ス
テージに,100 mm×100 mm のアルミ板を Y 軸周りに回
転させる機構を取り付けたものである.アルミ板によっ
て地面の高さと傾斜を呈示し,さらにポインティングデ
バイスが硬い地面や岩にぶつかった感覚を呈示する.
3.3 制御精度に関する室内実験
3 種類の装置を比較するために,ポインティング実験
を行った.実験では,インタフェイス座標系で約 200 mm
先の平面上の半径 12.5 mm の半球をポインティングする.
写真-2
ポインティングの際には,視覚情報として地面を表すワ
パンタグラフマニピュレータ
イヤーフレームと目標の球,そしてバックホウを CG で
(3)
表示した.CG 画面を図-1 に示す.
遭遇型インタフェイス
遭遇型インタフェイスは,他のインタフェイスが各リ
ンクにつけたアクチュエータで反力等を呈示するのと
は異なり,バケットが接触している地面の形状を X-Z ス
テージによって呈示するものである.
このシステムの全景を写真-3 に示す.システムは,
ポインティングデバイスと地面呈示部の 2 つから成る.
中央の黒いリンクはバックホウを模した 3 自由度ポイ
バケット
ンティングデバイスである.先端には直径 5 mm の棒が
左横方向に突き出ており,この棒を指先で持ってバケッ
トを移動,回転させる.バケットの 180°回転はパンタグ
ラフマニピュレータと同様に,手首の回転および人差し
指と親指の相対運動によって棒を転がす,2 つの運動を
組み合わせて実現する.関節角度の計測にはポテンショ
半
球
メータを用いる.先端位置はノイズによって平均振幅
0.70 mm のふらつきが見られた.
図-1
実験画面
条件としては,3 種類の装置に加えて従来のジョイス
ティックを用いた場合,遭遇型のポインティングデバイ
スのみを用いた場合の 5 項目について実験を行った.被
ポインティングデバイス
験者には実験前に練習をさせた.装置の性能によって,
移動可能速度が異なるため作業時間ではなく,CG 上の
バケット先端の軌跡を記録した.
図-2 から図-6 に各操作装置の軌跡を示す.地面は上
下座標 0 mm の平面としている.ジョイスティックの軌
跡を見るとスタートから目標に向かって進んではいるも
地面呈示部
のの,アームやブームを同時には動かさず,順を追って
動かしており,オーバーシュートも激しい.実際のオペ
レータほどの習熟は短期間では難しいことがわかる.
ポインティングデバイスはジョイスティックに比べ
写真-3
てオーバーシュートは少ないが,地面へのめり込み量が
遭遇型インタフェイス
-6-
最大 43 mm と非常に大きい.何らかのフィードバックが
140
ないと地面に穴を開けるだけでなく,実機を破損しかね
120
ない.
100
上下座標(mm)
ワンレバーでは,最大 9.3 mm の地面へのめり込みが
見られる.これは反力呈示のフィードバックが遅れたた
めと考えられる.
パンタグラフマニピ ュレ ー タでは スム ー ズにポイン
80
60
40
20
ティングができていることがわかる.また,モータトル
スタート
0
クが飽和したため,最大で 2.4 mm のめり込みが見られた.
0
50
100
-20
この程度であれば 20 倍しても 50mm 弱と仕様を十分満
150
200
250
300
250
300
前後座標(mm)
たすことが可能である.
図-4
ワンレバーシステム
遭遇型インタフェイ スで は 地面へ のめ り 込み量は最
大で 0.7 mm と最も少なく安定したポインティングが可
能であった.
140
以上の結果から,ジョイスティック,ポインティング
120
デバイス,ワンレバー,パンタグラフマニピュレータ,遭
100
上下座標(mm)
遇型インタフェイスの順にポインティングの精度が上
がることがわかった.
80
60
40
20
140
0
120
-20
0
50
100
150
200
前後座標(mm)
スタート
100
上下座標(mm)
スタート
図-5
80
パンタグラフマニピュレータ
60
40
140
20
120
0
50
100
-20
150
200
250
300
100
前後座標(mm)
図-2
上下座標(mm)
0
ジョイスティック
80
60
40
スタート
20
140
0
120
-20
0
50
100
150
200
250
300
前後座標(mm)
上下座標(mm)
100
図-6
80
遭遇型インタフェイス
60
3.4 遭遇型インタフェイスの改良
40
水中バックホウの遠隔操縦システムでは,視覚情報に
スタート
20
よる情報提供の他に,バケットが受ける反力に相当する
0
0
50
100
150
200
250
力覚をユーザにフィードバックすることが重要である.
300
-20
前後座標(mm)
図-3
この力覚呈示により地面の位置だけでなくその硬さなど
も直感的に理解することが出来る.
ポインティングデバイス
これまで水中バックホウと相似な形状を持ったパン
-7-
タグラフマニピュレータと,バケット直下の地面の位置
3.5 相似形インタフェイスの改良
を呈示する小型の板(エンカウンタ)を組み合わせた相似
これまで得られた知見を基に,パンタグラフマニピュ
レータおよび遭遇型力覚呈示装置を備えた新しい相似形
形インタフェイスを開発した.
エンカウンタは,地面呈示部に取り付けられた板のこ
入力機器の開発を行った.回転角センサ付きのイスにパ
とである.地面呈示部は前後上下 2 自由度の直動アクチ
ンタグラフマニピュレータ,地面や施工目標面を呈示す
ュエータの先端にピッチ方向の傾斜角を付けるアクチュ
る遭遇型インタフェイス,PC へのコマンド入力や VR 空
エータから成り,その先端にエンカウンタが取り付けら
間やカメラからの映像を映すタッチパネルディスプレイ
れている.最低限の機能を持ったバックホウ操作インタ
を取り付ける.実際に製作したシステムを写真-4 に示す.
フェイス構成としては,相似形インタフェイスのみで十
ユーザは写真-4 に示すパンタグラフマニピュレータ
分であるが,相似形インタフェイスは,岩などの非常に
のペン型の把持部を右手で把持して操作を行う.把持部
硬い地面を呈示することが難しいという欠点がある.そ
分の真下の形状呈示板が把持部の動きに追従し,硬質な
れを補うため,エンカウンタを用いる.すなわち,相似
地面との接触感を呈示する.また,ユーザの目の前には
形インタフェイスの把持部分の真下の地面を呈示するよ
タッチパネルディスプレイがあり,バックホウの様子が
う常にエンカウンタを移動させ,把持部分をエンカウン
映し出される.さらにユーザの左手側にはバックホウ本
タに接触させると固い地面が感じられる.しかし,単に
体の移動を制御するためのジョイスティックが設置され
地形情報に基づいてエンカウンタを移動させるだけだと,
ている.
地面を掘り起こす際にどんなに強い力で押してもアクチ
ュエータの出力を上回らない限りエンカウンタは動かな
いため邪魔になる.
実際のバックホウは通常,地面を掘り起こす動作は,
パンタグラフマニピュレータ
タッチパネルディスプレイ
バケットに力をかけて地面にめり込ませて行う.従って
地面を模擬しているエンカウンタ部分に加わっている力
がわかれば,ある一定の力よりも大きな力が加わったと
きに地面を変形させることでこの不具合は解決できる.
駆動ドライバ
そこでエンカウンタに力センサを取り付けることとした.
ところで,力センサを取り付けることによって地面を
掘った感覚を呈示することが可能になるが,施工におい
ては施工目標面が予め設定されている.エンカウンタは
クローラ制御ジョイスティック
この面に沿って移動させ,パンタグラフマニピュレータ
によって実際の地面からの反力をユーザに呈示する方式
地面呈示 X-Z スライダ
の方が,あとどのくらい掘ればいいのか,またエンカウ
ンタによってそれ以上掘れない様にすれば,作業精度も
向上することが予想される.
そこで,本研究ではまずエンカウンタに力センサを取
り付け,目標施工面に沿ってエンカウンタを移動させる
写真-4
システム全景
こととした.しかしながら,この方法は目標施工面が実
際の地面よりも常に低いことが前提である.実際の作業
360°回転するバックホウ機体上部の制御のために,イ
では逆になることも十分あり得る.そこで,目標施工面
スの回転検出機構を取り付けた.これは,単にジョイス
が実際の地面より高い場合にはエンカウンタは低い方,
ティック等で回転を指示する方式では,自分の体が回転
すなわち実際の地面の形状に合わせて移動することとす
しないため,現在バックホウ上部がどちらを向いている
る.エンカウンタが目標施工面と実際の地面どちらを呈
かわからなくなり作業の効率が落ちることが予想される
示しているかは,CG の触像画面を見て確認することが
からである.イスにモータを取り付け,回転の指示に応
できるので,大きな問題にはならないと予想される.
じて電動で回転させることも考えられるが,ここではユ
ーザが足を使って回転方向を指示することで,より方向
感覚を明確に出来るのではないかという仮説の基に回転
-8-
達機構を使って動力を伝達することとした.この候補と
検出機構のみ取り付けた.
しては歯車,チェーン,タイミングベルト,スチールベ
前述のイスの回転検出機構は,バックホウ機体上部の
ルトが挙げられる.
制御を目的としたもので,クローラを使った機体全体の
移動制御のための装置が必要である.従来の装置では,2
この中でもタイミングベルトは自由に可動範囲を設
本のレバーによってクローラを制御している.本システ
計できる.アイドラも小さく調整も容易である.また,
ムでは,前進,後退,左右回転の 2 自由度をジョイステ
長さや減速比を選べる等の利点を有する.
そこで,タイミングベルトを使って動力を伝達するこ
ィックによって操作できるように,ユーザの左手側にジ
ととし,手元のスペースを確保するため,根元軸より
ョイスティックを配置した.
遠隔地のバックホウ の様 子 を視覚 的に フ ィードバッ
200mm 下にモータを配置することとした.モータは同一
クするモニタ兼計算機へのコマンド入力用に,タッチパ
のものを使用するが,タイミングベルトの減速比を 2 分
ネル液晶ディスプレイをイスに取り付けた.これは,イ
の 1 にすることでモータ軸に加わるトルクを軽減,タイ
スが回転するため,ディスプレイが常にユーザの目の前
ミングベルトのプーリーはモータの軸に合わせて D カッ
に来る様に配慮したためである.ディスプレイは市販の
トの穴をあけ,イモねじでしっかり固定することとした.
(2) グリップにおける安全スイッチの押しづらさ
ディスプレイアームによってイスに固定されており,着
座,起立時にはディスプレイをドアのように横に押し開
バックホウの誤作動を防ぐために確実にグリップを
くことが出来る.ユーザが着座したときにディスプレイ
握っているときだけバックホウを動作させる必要がある.
を見た様子を写真-5 に示す.
このためグリップにタッチスイッチが取り付けられてい
たがスイッチ部分が小さいため押しにくく,またグリッ
プを動かすとスイッチから手が離れてしまうため操作が
困難であった.
そこで,グリップ部分を長軸方向に半分に分割し,間
にスイッチを取付けた.これによりグリップのどこの部
分を把持してもスイッチが入るようにした.
(3) 防水・防塵対策
実海域実験では,波しぶきや雨,埃などが装置にかか
る可能性がある.この被害が想定されるのは,実験船へ
の機材の搬入出時で,想定箇所は PC,コネクタ類,エン
コーダの結線部分である.PC についてはノートパソコン
を用いることとし,搬入出時にはケースにしまうことで
対処する.また,コネクタ類は防水コネクタを使用し,
ケーブルについてもロボット用の柔軟でノイズや耐熱耐
写真-5
油性のケーブルを用いることとした.また,ユーザの手
タッチパネルディスプレイ
元位置のスペースを広く確保するため,モータの取り付
3.6 実海域実験で使用するための改良
け位置を変更することとした.これによりエンコーダカ
相似形インタフェイスの改良により,システムの有効
バーも取り付けが可能となった.
(4) 可動範囲
性を確認することができるようになった.
現在の装置は,使用しているバックホウ(日立 Ex-30)
しかし,この装置では実海域実験等への搬送が困難で
ある.実海域実験での可搬性を考えてディスプレイや椅
の可動範囲と同一であった.しかしながらバックホウ本
子を除いた,相似形インタフェイスのみに焦点を絞って
体のリンクにおけるガタの影響や,相似形インタフェイ
調査した.その結果,下記に示す問題点が浮上した.
スと本体のリンクの角度差による PD 制御を用いている
(1) モータ軸の強度不足
ため,可動範囲の両端までバックホウのリンクを動かす
相似形インタフェイ スの モ ータ軸 とリ ン クはイモね
ことが出来なかった.そこで各リンクが実際の可動範囲
じを使って固定しているため,モータ軸の強度不足から
より若干多めに回ることができるように可動範囲を設定
軸が削れてモータが空回りすることがあった.そこで,
する.また,インタフェイスの実機に対する縮尺を 10
根元の 2 軸については軸とリンクを分離し,何らかの伝
分の 1 としていたが,実海域実験で用いる水中バックホ
-9-
ウの 10 分の 1 スケールは操作範囲が人間の動作範囲に比
った.そして最後に操作性や疲労度をヒアリングするこ
べて大きくなるため,スケールを 20 分の 1 とした.
ととした.
実験の結果,オペレータの疲労により連続作業時間が
(5) リンク強度
各リンクの強度として,使用時よりも未使用時に作業
制限されるという問題があった.この原因として考えら
員との不意の接触など,リンクの横方向からの力に対す
れるのは,相似形インタフェイスはペンを握るように操
る強度が弱い可能性があるとの指摘があった.そこで,
作する点にあると考えられる.また,アームレストを取
リンクの厚みを現在の 10mm から 15mm に変更した.
付けているものの,肘から先の部分については常に持ち
(6) 可搬性
上げた状態となり疲労蓄積の原因となった.さらにペン
現在のシステムは相 似形 イ ンタフ ェイ ス が椅子に取
構造をした把持部分には安全装置としてセーフティボタ
り付けられており,遭遇型インタフェイスやディスプレ
ンを取付けており,オペレータの意識的な操作を認識す
イ,クローラ制御用のジョイスティックも取り付けられ
るため,このボタンを常に押している必要がある.実験
ている.このため,実海域実験等での持ち運びが容易に
後のヒアリングでは腕の疲労よりも指先の疲労が大きい
できる必要がある.
との回答であった.また,操作性については実機の追従
そこで,相似形インタフェイスのみを製作し,モータ
性が悪いとの回答を得たが,これはバックホウの機械特
ドライバや電源などはボックスを用意してその中に取り
性によるものと考えられる.ここでヒアリング結果をま
付け,ボックスの上に相似形インタフェイスを搭載する
とめて下記に示す.
こととした.また,搬送時にリンクが周囲の物体と衝突
①
セーフティボタンを常に把持するため疲れる.
することを避けるために,カバーを付けることとした.
②
肘を支点に腕を持ち上げて操作するため疲れる.
地面呈示部は反力を相似形インタフェイスのモータによ
③
腕より指先の疲労が大きい.
り出力することで省略した.写真-6 に実海域実験用相似
④
機械の追従性が悪い.
形インタフェイスを示す.
3.8 相似形インタフェイスの代替条件
相似形インタフェイスは視覚情報の得られない状況
における遠隔操作でも,相似形状により実機の姿勢を直
感的に判断することができる上に,バケットの接触反力
を呈示する機構を備えているメリットがある.しかし実
海域実験で発生した疲労の問題を解決する必要があると
ともに,今後の点検・診断等の作業を行うためには,片
手で複雑な操作が可能な装置でなければならない.相似
形インタフェイスはこれまでの捨石均し作業には十分対
応しているが,今後の点検・診断作業ではグラップルを
用いた掴み作業や点検用のマニピュレータの操作などが
考えられ,相似形インタフェイスではそれらの作業への
対応は困難であると考えた.そのため下記の項目を満た
写真-6
すインタフェイスを開発する必要があった.
実海域実験用相似形インタフェイス
①
片手で複雑な操作に対応可能な装置
3.7 実海域実験で使用したインタフェイスの問題点
②
相似形インタフェイスと作業効率が同等
ここまで開発してき た相 似 形イン タフ ェ イスを用い
③
インタフェイスの疲労度の改善
て平成 16 年度に長崎港において実海域実験を行った.実
験は潜水士の搭乗操作と相似形インタフェイスを使用し
4.ジョイスティックを用いた新型インタフェイス
た遠隔操作における施工精度と能力について評価を行う
の評価
ものであった.さらに相似形インタフェイスの操作性や
疲労度についてもヒアリングし評価した.バックホウの
実海域実験の結果から長時間の実作業を考慮した場
オペレータには実験を行う前に遠隔操作の練習を十分に
合,インタフェイス操作による疲労度も重要になること
行ってもらい,搭乗操作と遠隔操作を同一の潜水士が行
がわかった.当研究所では平成 15 年に相似形インタフェ
- 10 -
イス・無線リモコン・搭乗操作によりポインティング実
トの開閉は直感的な操作を可能にするため,手首の回転
験を行い,操作効率の評価を行なっている.本章では新
に合わせて入力する方法を選択した.図-7 に座標指示入
しいインタフェイスの疲労度ならびに操作効率について,
力方法を示す.
次に,リモコン装置のように直接関節を指示する方法
ポインティング実験により比較評価を行う.
も検討した.ここでも直感的な入力が可能な方法を模索
4.1 操作入力方法の検討
し,1 本のレバーを上下させることでブームを稼働し,
操作効率を向上させ るた め には直 感的 で 操作しやす
前後させることによりアームを稼働させる方式とした.
い入力装置が必要となる.操作入力方法としては相似形
また,バケット操作は前述した手首の回転を利用した入
インタフェイスのように入力装置の姿勢が機体の姿勢と
力方法とした.図-8 に関節直接指示入力方法を示す.
相似,つまり入力装置に入力された角度(位置)により
機体の角度(位置)が決定される位置-位置制御による
ものと,JIS 規格レバーであるリモコン装置のようにレ
バケット
バーを倒した角度(位置)に応じてシリンダのバルブ開
先端座標
度(シリンダ速度)が決定される位置-速度制御がある.
+Z
自動車の運転で例えると,ハンドル角度と操舵輪の切れ
バケット開
バケット先
角との関係が位置-位置制御であり,アクセルペダルの
端座標
踏み込み量と車速との関係が位置-速度制御である.
+X
次に実海域実験で問 題と さ れた長 時間 操 作による疲
バケット
先端座標
労について考える.一般に操作による疲労度を改善する
-X
バケット閉
ためには,手を預ける場所の設置と入力量の縮小が考え
バケット
られる.位置-位置制御である相似形インタフェイスで
先端座標
は入力端を把持し大きく動かすため,アームレスト等の
-Z
設置は構造的に困難である.また,装置を小さくするこ
図-7
とで入力量が少なくなり疲労は軽減できると考えられる
座標指示入力方法(TYPE_A)
が,繊細な入力は困難となる.位置-速度制御では装置
を小さくすることで操作量を小さくすることができる.
また,アームレストの設置も容易である.よってここで
は位置-速度制御による入力方法を検討することとした.
ブーム起
捨石均し作業を対象とした場合,施工精度を判断する
基準は施工範囲内におけるZ座標の高低差によるもので
ある.そのため,Z 座標を固定した水平引込み動作
4)
バケット開
に
アーム開
より均し作業を行うことができれば,施工精度は向上す
ると考えた.また,直感的な操作方法とするため座標指
アーム閉
示による入力方法を行うことにした.
バケット閉
当研究所の陸上実験 機に は 各関節 にポ テ ンショメー
タを取付けており,リアルタイムで関節角度を計測して
ブーム伏
いる.これを利用することによりバックホウのバケット
先端座標(X,Z)を計算することができる.ここで座標
図-8
(0,0)をバックホウの旋回中心点,クローラと地面の
関節直接指示入力方法(TYPE_B)
接点に設定した.この座標系を用いてマスタ PC からス
レイブ PC へ X,Z 座標を与え,現在のバケット先端座
ここで相似形インタフェイスのメリットを考えると
標との差分から制御電圧を指令することにより水平引込
実機の姿勢を直感的に判断できることのほかに,反力を
み動作が可能となる.このときブームとアームのシリン
呈示する機構を有している.しかし提案した 2 つの入力
ダを稼働させることで目標座標へ移動し,バケットは別
装置ではこのメリットを補うことは難しい.したがって
の入力方法により単独で稼働させることとした.バケッ
その対策を検討する必要がある.相似形のメリットを補
- 11 -
う方法として,姿勢情報は CG による映像で補うことが
わち最大作業半径においても,正確にポインティングで
できると考える.また,反力も相似形と同様にモータを
きたか確認することができる程度の大きさとした.
取り付けることにより呈示することができると考える.
実験はブルーシート上に配置したマーカーをスター
旋回動作についてはフロント部の動作と同時に操作す
トからゴールまで数字の若い順序に原点に戻ることなく
る必要性は低く,また,単純な操作であるため,過年度
ポインティングする.操作はバケット先端にある 4 本の
の相似形インタフェイスと同様に別の入力装置に依存す
爪の左端 1 本がマーカーに一致した場合に次の点に進む
ることとし,本研究で提案するインタフェイスには含ま
こととし,誤動作した場合は再度同じマーカーと一致す
ないこととする.
るまでポインティングする.図-9 にポインティング順序
を示す.
疲労度については個人差があるため,それぞれの操作
4.2 ジョイスティックの採用
これまで検討した操 作入 力 方法を 可能 に するための
装置を比較して点数を付けてもらうことにした.操作性
装置として,1 本のレバーで前後左右およびグリップの
について身体的負担が少なかったもの,操作装置の操作
回転する 3 自由度の機構を装備しているものが適当であ
方法について分かり易かったものなど,理由についても
る.また,操作入力信号をパソコンへ入力する必要があ
ヒアリングにより評価することとした.
る.ここで一般に市販されているジョイスティックは操
作入力装置として非常に安価であり,操作方法を満足す
る機構を有している.また,このジョイスティックには
ボタンや切替レバーが付いており今後の複雑な操作に十
分対応できるものと考える.そこで今回はジョイスティ
ックを使用することにした.図-7,図-8 からわかるよう
に直感的な操作を行うためにジョイスティックは横置き
に配置し,今後モータを使って反力を呈示できる可能性
があることからフォースフィードバックタイプのジョイ
スティックを採用した.
4.3 操作効率および疲労度の評価手法
当研究所では平成 15 年にポインティング実験により,
相似形インタフェイスなどの操作効率について評価を行
図-9
ポインティング順序
っている.ポインティングとはバックホウが目標位置へ
バケット先端を移動し一致させる動作のことである.バ
4.4 実験装置
ックホウの操作は,バケットを目標位置へ移動し,掘削
(1) 実験用バックホウ
や埋戻しなどの所要の作業を行っている.そしてバケッ
実験では 0.09m 3 級の小型バックホウを使用した.遠
ト先端を目標位置に正確に移動する動作を連続すること
隔操作用に製作したもので,搭乗操作,リモコンによる
で,実作業と類似した動作となり,操作効率を評価でき
遠隔操作,パソコンを介した有線遠隔操作が可能である.
ると考えた.本実験では過去の経験をもとにポインティ
有線遠隔操作ではジョイスティックの入力を座標または
ングを採用することとした.
シリンダ開度に変換して送信するマスタ PC と,受信し
ポインティング実験 では ス ピード と正 確 性を必要と
た信号をもとにバルブを駆動するスレイブ PC があり,
し,作業に要した時間および目標とする位置(以後,マ
マスタ-スレイブ間は LAN ケーブルと制御機器用の
ーカーと表示する)を思い通りに指示できなかった回数,
AC100V 電源線との複合ケーブルを使用して通信および
つまり誤動作した回数をカウントした.スピードについ
電源の供給を行っている.写真-7 に実験用バックホウを
てはマーカーの指示時間が短いほど操作効率が良く,誤
示す.
動作については回数が少ないほど正確に指示できている
(2) 実験用ポイントマーカー
と評価できる.
ポインティング実験用にポイントマーカーを製作し
マーカーは直径 10cm の円形とした.これはバックホ
た.ブルーシート(5m×7m)上に 18 点のマーカーを 1m
ウの運転席からブームやアームを伸ばして届く点,すな
間隔で配置したもので,マーカーは直径 10cm の赤い円
- 12 -
で表示した.またマーカーを見やすくするため,円の外
側を 3cm 幅で白色とした.マーカーの配置を写真-8 に示
運転席TVカメラ
す.
(3) TV カメラ・モニタ
遠隔操作に必要な視覚情報として TV カメラ 2 台を使
用し,バックホウの運転席とアームに取付けた.これは
作業現場周辺を確認できる位置として運転席に 1 台と,
ポイントマーカーへのポインティングが正確にできたか
確認するため,バケット付近の映像を映す位置に 1 台設
置した.TV カメラの設置状況および TV モニタを写真-9
から写真-11 に示す.
写真-9
運転席 TV カメラ設置状況
アームTVカメラ
写真-7
実験用バックホウ全景
写真-10
アーム TV カメラ設置状況
運転席TVカメラ映像
写真-8
ポイントマーカー配置図
写真-11
アームTVカメラ映像
TV モニタ画面
4.5 使用するインタフェイス
(1) 無線リモコン
リモコン装置は比例電磁バルブを無線遠隔操作する
もので,バックホウの操作装置と同様に 2 本の JIS 規格
レバーで操作する機構となっている.無線局は特定小電
- 13 -
力無線局を使用しており,電源は DC24V の充電式電池
パックを用いた.写真-12 に示す左レバーによりアーム
と旋回を操作し,右レバーによりブームとバケットの操
右レバー
アーム開
ブーム伏
バケット開
(2) 相似形インタフェイス
バケット閉
操作入力方法を図-10 に示す.
右旋回
左旋回
作を行うものである.従来の JIS 規格レバーリモコンの
左レバー
相似形インタフェイスは 3.章で述べた実海域実験に
使用したものを用いた.ただし今回は他のインタフェイ
ブーム起
アーム閉
スと同条件とするため,地面の接触反力は呈示せずに使
用した.また旋回操作においては左手でジョイスティッ
図-10
JIS 規格レバーリモコン操作入力方法
クを左右に操作することで左旋回・右旋回を行うものと
した(写真-6 参照).
(3) ジョイスティック
ジ ョ イ ス テ ィ ッ ク は Microsoft 社 製 の SideWinder
ForceFeedback2 を使用した.写真-13 に示す 1 本のレバ
ーでバックホウフロント部(ブーム・アーム・バケット)
の操作を行い,左手は旋回のみ操作するものとした.ま
た横置きとした場合,操作に伴いジョイスティックの固
定台が動かないように,ある程度の重量が必要となる.
そのためアルミ製の枠を組み,プラスチック板を取付け,
ジョイスティックを両面テープにより固定した.またア
ルミ製の枠の下面に滑り止めのゴムを貼り付けることで
動きにくい構造とした.ジョイスティックと無線リモコ
ンの主な違いとして操作の拡張性はもちろんであるが,
制御指令方法の違いがあげられる.図-11 に各インタフ
写真-13
ジョイスティック
ェイスの指令方法を示す.
無線リモコン
左レバー
右レバー
受信機
ドライバ
スレイブ
PC
相似形インタフェイス
マスタ
PC
ジョイスティック
図-11
インタフェイス指令方法
4.6 ポインティング実験の方法
実験は搭乗操作および無線リモコン・相似形インタフ
ェイス・ジョイスティックによる遠隔操作により行った.
ただし,ジョイスティックは 4.1 で前述したとおり座標
写真-12
入力方式(以後, TYPE_A と表示する)と関節直接入力
JIS 規格レバーリモコン装置
方式(以後, TYPE_B と表示する)の 2 種類により行っ
た.以上の 5 種類の操作方法を 3 回ずつ行い,ポインテ
ィングに要した時間および誤動作した回数を計測した.
被験者は 3 人とし,車両系建設機械の資格保持者により
- 14 -
行った.また,疲労度については 1 種類の操作方法につ
4.7 ポインティング実験についての結果
き 30 分ずつ連続でポインティングしてもらい,肉体的な
被験者 3 人から得られた 3 回ずつのデータを各インタ
疲労と追従性を含む操作入力の容易さについて点数を付
フェイスごとに指示時間と誤動作回数について目標点別
けるとともに,その理由についてもヒアリングを行った.
に平均値を算出した.指示時間の平均値を表-1 に,また
写真-14 から写真-16 にインタフェイス操作状況を示す.
誤動作回数の平均値を表-2 に示す.さらにこれらの結果
をまとめて相似形インタフェイスを基準の 1 として比較
した結果を表-3 に示す.
表-1
写真-14
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
G
合計
平均
リモコン操作状況
搭乗
10.0
10.5
13.3
14.2
10.6
11.2
13.6
9.7
9.0
11.3
11.5
13.0
10.3
11.4
12.5
10.7
9.6
192.5
11.3
表-2
写真-15
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
G
合計
平均
相似形インタフェイス操作状況
搭乗
1.3
0.7
1.0
1.7
0.0
0.7
0.7
0.0
0.0
1.3
0.7
0.3
0.3
0.7
0.7
1.3
0.7
12.0
0.7
表-3
搭乗
指示時間平均値[sec]
リモコン
16.8
22.9
19.9
24.1
21.4
23.5
22.7
23.6
20.0
22.9
25.7
24.5
20.2
20.8
24.2
17.3
20.7
371.0
21.8
相似形
23.3
28.3
23.0
22.2
22.8
19.7
20.6
23.3
19.1
24.0
29.7
30.1
23.5
25.0
21.6
18.3
22.6
397.1
23.4
TYPE_A
22.9
30.2
29.6
25.8
19.9
22.7
26.8
29.0
21.9
22.0
28.6
26.6
28.0
21.5
28.3
27.1
23.3
434.0
25.5
TYPE_B
16.0
21.7
23.3
23.5
26.4
23.6
29.6
20.6
22.2
27.4
32.0
21.1
22.6
24.2
25.0
16.9
23.6
399.7
23.5
誤動作回数平均値[回]
リモコン
1.0
2.0
1.7
2.7
1.3
2.3
1.3
2.3
2.0
3.7
3.7
3.0
2.7
1.3
1.7
1.7
3.7
38.0
2.2
相似形
1.7
2.0
1.7
1.7
2.0
1.3
1.3
2.3
1.7
1.7
2.0
0.7
1.3
2.3
1.7
0.7
1.7
27.7
1.6
TYPE_A
2.3
2.0
3.0
2.0
0.3
1.3
2.7
1.0
2.3
1.0
2.0
3.0
2.3
1.0
2.3
0.7
2.3
31.7
1.9
TYPE_B
0.7
2.7
2.0
3.0
1.7
1.3
2.0
0.7
2.0
3.0
2.7
3.0
2.0
2.0
1.0
0.7
2.0
32.3
1.9
操作効率比較結果
リモコン
相似形
TYPE_A
TYPE_B
指示時間
0.48
0.93
1.00
1.09
1.01
誤動作回数
0.43
1.37
1.00
1.14
1.17
なお,搭乗操作の実験データは陸上の直視可能な状況
下のもので,実際の海域では濁水などの影響により直視
による視覚情報が得られない場合があり,安全性の面か
ら実際の工事現場では採用されていない.本実験の主旨
は遠隔操作における相似形インタフェイスとの操作性を
写真-16
比較するためのものである.したがって搭乗操作のデー
ジョイスティック操作状況
- 15 -
い順に動いてしまう現象が発生し,オペレータが意図し
タについては参考値として示した.
TYPE_A の指示時間における平均値は相似形インタフ
た軌跡をトレースできない場合があったため,各関節を
ェイスに対して若干大きいものの, TYPE_B では同等の
個別かつシリアルに操作する方式のほうが操作の追従性
結果となった.誤動作回数では相似形インタフェイスに
が高いと感じたものと考えられる.ここで誤動作回数に
対して TYPE_A が 1.14,TYPE_B が 1.17 と大きい結果と
注目すると,結果は逆転しており相似形インタフェイス,
なった.またジョイスティックの操作をリモコンと比較
ジョイスティック TYPE_A が良好な結果となっている.
すると指示時間では大きい結果となったが,誤動作回数
誤動作回数が少ないということは,バックホウ姿勢の認
は少ない結果となった.
識と操作へのフィードバックが良好ということであり,
実験後のヒアリングでは身体的な疲労度と直感的な操
オペレータの受けた感覚と異なり,インタフェイスとし
作性について表-4 に示す点数を付けてもらい,表-5 に示
ては高い性能を有していると言える.今後はバルブ制御
す合計点により評価した.遠隔操作における疲労度と操
に関するアルゴリズムを改良し,機体側の追従性を高め
作性を比較するため,ここでは搭乗操作をヒアリング対
ることで,オペレータの受ける印象もかなり改善される
象から外した.
と考えられる.
ジョイスティックは入力方法が異なる 2 つの方法で実
表-4
疲
労
度
操
作
性
験したが,ジョイスティック TYPE_A・TYPE_B ともに
疲労度と操作性の点数表
2時間以上の連続作業でも問題ない
1時間程度の連続作業なら可能
適宜インターバルがあれば半日作業は可能
適宜インターバルがあれば1時間作業は可能
15分以上は困難
意識せず直感的に操作が可能
バックホウの姿勢をイメージすれば操作が容易
バックホウの姿勢をイメージすれば操作可能
イメージしても思い通りに動かすには慣れが必要
思い通りに動かない
指示時間については相似形インタフェイスと比較してほ
(5点)
(4点)
(3点)
(2点)
(1点)
(5点)
(4点)
(3点)
(2点)
(1点)
ぼ同等の結果となった.しかし誤動作回数に関してはと
もに多い結果となった.これは相似形インタフェイスで
はバックホウの姿勢を確認できるのに対し,ジョイステ
ィックでは TV カメラの映像のみを確認しており,バッ
クホウの姿勢を確認できないためと考えられ,CG の描
画や TV カメラの設置位置を変更することで改善できる
と考える.疲労度は相似形インタフェイスより少ない結
表-5
リモコン
相似形
TYPE_A
TYPE_B
果となっており,当初の目的である疲労度の改善につい
疲労度と操作性のヒアリング結果
疲労度
被験者A 被験者B 被験者C
5
4
5
3
2
2
2
3
4
2
3
4
合計
14
7
9
9
操作性
被験者A 被験者B 被験者C
2
4
4
4
2
2
3
1
3
3
4
3
ては達成できたと考えられる.ヒアリングからはジョイ
合計
10
8
7
10
スティックを前後させる操作や下げる操作ではほとんど
疲労を感じず,上げる操作に疲労を感じたという意見が
多かった.これは肘を支点に腕を持ち上げる操作が原因
点数の主な理由として 3 人とも同じ回答を得たものが
と考えられ,インタフェイスの操作量を小さくすること
で,手首から先の操作が可能となり改善できると考える.
リモコン操作の疲労度で,
「 腕を動かさなくても良いから
楽である」ということから良好な結果となっている.ま
5.クローラ制御用インタフェイスの評価
た,ジョイスティックの操作における疲労度は「TYPE_A
と TYPE_B でほぼ同等で,レバーを上げる操作が疲れる」
との回答も得た.相似形インタフェイスの疲労度では「腕
両手によるインタフェイスの操作が複雑で困難な場
を大きく動かすので疲れる」との回答を得ており,ジョ
合,足によるインタフェイスの操作が考えられる.クロ
イスティック TYPE_A と TYPE_B では疲労度において相
ーラの制御は通常,2 本の 1 自由度レバーの傾斜角をそ
似形インタフェイスより良好な結果となった.
れぞれ左右のクローラの回転速度に対応付け,回転速度
および方向を制御し移動や旋回を実現している.バック
4.8 ポインティング実験についての考察
ホウのブーム,アーム,バケットも各関節の回転速度や
操作性に関するヒアリング結果ではリモコン,ジョイ
方向をレバーによって制御する.レバーを離すと中立位
スティック TYPE_B が良い結果となっている.この二つ
置に戻るため,回転運動が止まり,姿勢変化が起こらな
の操作方法は,バックホウの関節を個別に操作できる入
くなる.したがって,バックホウの操作とクローラの操
力方式である.これはシリンダを複数同時に制御する相
作はレバーを持ち替えればよく,両者を同時に動かすこ
似形インタフェイス,ジョイスティック TYPE_A では,
とは無いと考えて良い.しかし,相似形インタフェイス
ブーム・アームの自重の影響によりシリンダが動きやす
を使用しながら水中バックホウを遠隔で操縦する場合,
- 16 -
スライド軸
従来のレバー型クローラ操作インタフェイスでは,操作
スライドパック
350
切り替え時にモードの切り替えやインタフェイスの持ち
直しが必要となり,作業が繁雑になる.そこで,水中バ
ックホウ操作インタフェイスとともに使用することを前
提として,移動速度や方向,さらに超信地旋回(図-12
150
参照)など直感的に行えるインタフェイスを開発した.
開発した方式は,ジョイスティック 1 本を用いた方法,
足を使って,左右のクローラを独立に制御するインタフ
ェイスの 2 種類であり,その有効性について検証実験を
43
行なった.
バンパー
超信地旋回
ラックギア
図-13
信地旋回
エンコーダ
フットスライダ概要図
:左クローラ
:右クローラ
倒した方向:進行方向
(正転)
ジョイスティック
出力
100%
0°
50%
左右のクローラを逆回転させ
その場で旋回する
片側のクローラのみを回転さ
せ旋回する.超信地旋回に比
べて旋回半径が大きい
90°
270° 0
角度
50%
図-12
クローラ旋回方法
180°
100%
(逆転)
5.1 操作入力装置
図-14
0°
90° 180° 270° 360°
1 レバーインタフェイス制御方法
(1) フットスライダ
フットスライダは足全体を載せて,左右の装置を前後
にスライドさせることで操作を行う.フットスライダの
スライド量を速度に対応付け制御を行うものである.図
-13 にフットスライダ概要図を,写真-17 にフットスラ
イダを示す.
(2) 1 レバーインタフェイス方式
ジョイスティック 1 本を使用した方式で,レバーを倒
した方向を進行方向とし,レバーの鉛直方向からの傾斜
角を進行速度へ割り当てる.レバーを真横に倒した時は
超信地旋回となる.図-14 に 1 レバーインタフェイス制
御方法を示す.
(3) 2 レバーインタフェイス方式(従来方式)
バックホウに搭載されている従来のレバーと同様に,
2 本のレバーの傾斜角をそれぞれ左右のクローラの回転
写真-17
フットスライダ
速度に対応付け,移動や回転の制御を行う方式である.
5.2 ミニショベルによる移動制御実験
本制御装置に関しての操作性能を実機レベルにおい
て確認するため,3t ミニショベルを用いた移動制御実験
を行った.実験ではフットスライダ操作,1 レバーイン
タフェイス操作,2 レバーインタフェイス操作,実機搭
- 17 -
乗操作による移動軌跡で比較を行う.これらの軌跡は自
動追尾型トータルステーションで行う.自動追尾型トー
タルステーションの分解能は 10mm であり,軌跡ログは
1sec 毎のデータを利用する.さらにそれぞれの操作方式
について移動時間を計測し,比較を行う.
ミニショベルの制御には走行レバーをダイレクトに駆
動するための改造を行っており,操作装置からの電圧信
号によりレバーを駆動する.写真-18 にクローラ遠隔走
行用モータ取付け状況を示す.電圧信号は 50m のケーブ
ルを通じてミニショベルに送られる.ノイズによる影響
は見られず,安定して角度を保持することができていた.
また,自動追尾型トータルステーションによる測距を行
図-15
移動制御実験用コース図
うため,プリズムミラーを旋回中心付近にとりつけた.
本実験では進行方向により方位が変わるため全方位型プ
リズムミラーとした.自動追尾型トータルステーション
はコースゴールラインより 25.3m の場所に設置した.
図-15 にミニショベルによる移動制御実験用のコース
を示す.ミニショベルクローラ部の幅は 1.5m であり,
コース幅は左右それぞれに 1m の余裕をもたせた 3.5m と
した.左上から移動を開始し,右下のゴールラインをク
ローラ後端が通過した時点までを往路とする.復路では
後進操作を行い,右上のスタートラインをクローラが完
全に過ぎた時点で終了とした.
この実験を被験者 2 名(車両系建設機械資格保持者)
がそれぞれ 3 回行う.コース中間付近に操作装置を設置
しており,操作者は直接目視により制御を行った,写真
-19 に遠隔操作装置設置状況を示す.
写真-19
遠隔操作装置設置状況
5.3 移動制御実験についての結果
図-16 にトータルステーションで記録した搭乗操作に
よるミニショベルの軌跡を示す.中央の直線部分では±
50cm 程度の差分があるが、ほぼ直線に移動しており,こ
れはコースに中心線が無く操作者が中心位置を正確に把
握できなかったためであると考えられる.コーナー部で
は往路・復路ともなめらかに旋回しており,左右のクロ
ーラの回転数を正確に制御できている.
図-17 から図-19 に,トータルステーションで記録した
遠隔操作によるミニショベルの軌跡を示す.フットスラ
イダによる制御ではコーナー部において往路に 2 回大き
く方向修正を行っていた.1 レバーインタフェイスによ
る制御では,往路のコーナー部において信地旋回(図-13
写真-18
参照)がみられた.2 レバーインタフェイスによる制御
クローラ遠隔走行用モータ取付け状況
では,往路・復路ともコーナー部で直線を組み合わせた
ような旋回をおこなっており,遠隔制御ではすべて曲が
りたい方向のクローラを一瞬停止させて曲がっていた.
- 18 -
表-6 に各操作方式による操作時間を,図-20 に操作時
間比較のグラフを示す.被験者数は 2 名で少ないが,類
2レバーインタフェイス
似の操作傾向があり,おおむねの傾向は把握できた.最
も特徴的だったのは 1 レバーインタフェイスの操作であ
り,往路では搭乗操作と同等な時間であったが,復路で
6.50
は 4 種の操作方式のなかで最も悪い結果であった.
-2.00
14.50
-2.00
搭乗操作
図-19
2 レバーインタフェイス制御軌跡
6.50
表-6
被験者A
(sec)
搭乗
-2.00
14.50
フットスライダ
-2.00
図-16
1レバー
搭乗操作軌跡
2レバー
各操作方式による操作時間
往路
復路
往路
復路
往路
復路
往路
復路
Ⅰ
44
42
48
54
44
48
48
46
Ⅱ
44
44
49
49
46
46
45
46
被験者B
Ⅲ
44
44
47
50
45
51
47
46
Ⅰ
47
45
48
53
46
65
51
44
Ⅱ
44
45
48
47
45
50
45
47
Ⅲ
44
50
44
48
46
45
48
48
平均
偏差
44.5
45.0
47.3
50.2
45.3
50.8
47.3
46.2
1.1
2.4
1.6
2.5
0.7
6.7
2.1
1.2
操作時間比較(sec)
フットスライダ
60.0
58.0
往路
復路
56.0
6.50
54.0
52.0
50.0
48.0
-2.00
46.0
14.50
44.0
-2.00
図-17
フットスライダ制御軌跡
42.0
40.0
搭乗
フット
図-20
1レバー
2レバー
操作時間の比較
1レバーインタフェイス
5.4 移動制御実験についての考察
フットスライダのコーナー部において 2 回大きく方向
修正を行っていた軌跡から,操作者はクローラを左右交
6.50
互に動かしたと考えられ,特に 2 回目の大きな方向修正
では左クローラを後進させていたと考えられる.復路に
おいては一見なめらかに旋回しているように見えるが,
これは直線を組み合わせた形状であり,直線後進の途中
-2.00
14.50
で左クローラを一瞬だけ停止し,また直線後進を行うよ
-2.00
図-18
1 レバーインタフェイス制御軌跡
うに操作していたと考えられる.つまりクローラの回転
- 19 -
後進時の曲がる方向が逆になることの典型的なものであ
数制御は行っていない.
1 レバーインタフェイスでは,往路のコーナー部にお
り,操作性を示す重要なデータであると考える S.
いて信地旋回がみられた.これは 1 レバーインタフェイ
フットスライダによる制御では精密な作業に問題が
スにおいて,斜め 45 度に倒すと信地旋回になる性質があ
あり,ヒアリングでは中立点がわかりにくく曲がる方向
るためである.復路ではスライダと同様に直線を組み合
のクローラを一瞬だけ止めたくても困難であることが指
わせた軌跡をとっており,やはりクローラの回転数制御
摘された.さらに足の操作ということで微小操作に向い
を行ってはいない.
ていないとの指摘があった.しかし精密作業には難があ
2 レバーインタフェイスのコーナー部で直線を組み合
るものの,実験の走行時間においては 2 レバーインタフ
わせたような旋回は,実機の操作レバーの制御量とクロ
ェイス方式と大差ない結果となった.このインタフェイ
ーラ回転速度がリニアな関係に無いことに起因される.
スでは,足をスライドさせる機構のほかに,中立位置に
実機クローラの回転は油圧モータで駆動されており,供
戻す機構および入力と制御量の間に非線形な対応関係を
給する作動油の流量は一般にサーボ弁などで制御されて
取ることが重要であると考える.図-21 に動作概要図を,
はいない.つまり,バルブの開き始めの低い開度では油
図-22 に非線形制御方式を示す.ここで最小制御量はコ
の粘性により流量に多少の制限がかかるが,その後は一
ントローラを初期位置に置いた状態での微小な入力オフセッ
気にポンプで供給される最大吐出量(最大速度)に達し
トをカットする為のものであり,非線形化することで入力値 0
てしまうため,速度を制御するにはごく微小なレバー操
付近での制御量の傾きが緩やかになり,低速域での操作性が改
作だけでなく,リアルタイムに現在速度を認識する必要
善されると考えられる.
がある.搭乗操作では加速度を身体で体感するため速度
足によ る操 作 は遠隔 操作 時 に両手 がふ さ がれて いる
の加減速がリアルタイムにわかるが,遠隔制御では本体
場合に有効であり,そのメリットを考慮するとフットス
がわずかに旋回しても認識することが困難であり,目で
ライダによる制御を高度化させ,操作効率を高める価値
見えて大幅に旋回を開始するまで(曲がりたい方向のク
はあると考える.
ローラが停止するまで)レバー操作量を増加させてしま
う.そのためオン-オフ制御となりやすく,本実験では
コーナー部で直線的な軌跡が認められる.
不感帯
最大制御量
1 レバーインタフェイスの復路の操作時間が最も悪い
不感帯
最小制御量
前 進
最小制御量
中立位置
フットスライダ
中立位置
最大制御量
後 進
原因は,前進時と後進時では曲がる方向が逆となり,操
スライド
スライド
作者が戸惑ってしまったためである.クローラでは左右
の回転差によって旋回するため,レバーを右前方に倒す
図-21
動作概要図
と左クローラだけが回り,右横に倒すと左クローラが前
進,右クローラが後進する.そのまま右後方に倒してい
くと左クローラは停止し右クローラだけが後進する.つ
制御量(+)
最大制御量
まりレバーを右に倒したまま前進後進を行っても同じ軌
跡にはならない.もしここで舵輪を切って曲がる方式と
不感帯
同様に同じ方向に旋回しようとした場合,超信地旋回に
最小制御量
なった直後に急激にクローラが逆転してしまうため安全
スライド量(-)
0
上問題となる.この結果が顕著に出ているのが表-6 に示
最小制御量
す被験者 B の 1 回目で,復路で 65 秒と大きく時間を要
している.これは実験で設定したコースの幅が 3.5m で
あり,コースの境界に設置した単管バリケードに接触し
最大制御量
そうになったため,被験者が慌てて操作してしまい,操
制御量(-)
作入力に対する実機の動きをイメージできないまま操作
図-22
を行ったのが原因である.2 回目以降は他のインタフェ
イスと大きな差は見られず,標準偏差は 1 回目のデータ
の影響により大きな数値となっている.データ数が少な
いため突出した値となったが,これは前述した前進時と
- 20 -
非線形制御
スライド量(+)
6.結論
7.あとがき
本研究では操作効率や疲労度を比較するためのポイン
本研究からバックホウフロント部とクローラ部のイン
ティング実験と,クローラ移動制御実験を行った.ポイ
タフェイスの操作効率と疲労度が明らかとなった.また,
ンティング実験ではバックホウフロント部を操作するた
インタフェイスの操作性における課題も明確となった.
めに新しく提案したジョイスティックインタフェイスが,
今後は水中構造物点検用のマニピュレータを開発する
相似形インタフェイスと同等の操作効率を有しているか,
予定にしており,バックホウの操作に加えてマニピュレ
また疲労度が改善されたかを評価した.クローラ移動制
ータの操作も必要となり,操作が複雑になることが予想
御実験では,バックホウクローラ部を操作するために新
される.本研究成果を参考に,操作性を十分に検討し活
しく提案したフットスライダインタフェイスと 1 レバー
用していく次第である.
インタフェイスの操作性について,従来方式である 2 レ
バーインタフェイスと比較して評価した.その中で以下
謝辞
の結論が得られた.
①
本資料の執筆にあたり,筑波大学の岩田洋夫教授,矢
バックホウフロント部を操作するために新しく提案
野博明講師には相似形インタフェイスやフットスライダ
したジョイスティックインタフェイスは,ポインテ
の開発において,多大なご指導・ご協力をいただいた.
ィング実験において,相似形インタフェイスと同等
ここに記して感謝いたします.
の操作性を有している.
②
バックホウフロント部を操作するためのジョイステ
参考文献
ィックインタフェイスは相似形インタフェイスと比
1) 平林丈嗣,山本恭,酒井浩,加藤英夫,横井博志:
較して疲労度は改善されたが,長時間の使用では疲
バイラテラル操作系を用いた次世代水中作業機械
労を感じる結果となった.操作入力量を小さくする
システムの構築に関する研究,港湾空港技術研究所
ことやアームレストを設置する等の改良が必要であ
報告第 44 巻第 4 号,2005 年
る.
③
2) 平林丈嗣,山本恭,酒井浩,秋園純一,内海真:相
フットスライダインタフェイスは従来方式の 2 レバ
似形入力装置を用いた遠隔操作型バックホウの操
ーインタフェイスと実験の走行時間において大差な
作効率,港湾空港技術研究所資料 No.1065,2003 年
い結果となったものの,微小な操作は難しく操作性
3) 石井啓範:2 つのフロントを有する双腕作業機械の
の改善について検討する余地がある.
④
開発,建設の施工企画,No.670,pp.31-35.
1 レバーインタフェイスは前進時と後進時に曲がる
4) 吉田正:建設施工におけるロボット技術の活用,建
方向が逆向きとなるため,実験時に混乱がみられた.
左右のクローラを独立して制御する方法が望ましい.
以上から,本研究で提案したインタフェイスの操作性
が明らかとなった.バックホウフロント部を操作する操
作装置として提案したジョイスティックを活用したイン
タフェイスについては,当初の目的である疲労の軽減や
今後の複雑な作業への拡張性について満足したものであ
り,操作性についても機体側の追従性を上げることによ
って,さらに向上する可能性がある.
クローラを制御するフットスライダについては中立位
置がわかりづらい点や,微小な動作が難しいという問題
点はあったものの,2 レバーインタフェイスと走行時間
において大差ない結果となり,クローラ制御を足で行う
場合のインタフェイスとして制御を高度化させ,操作効
率を高める研究を継続する必要がある.
- 21 -
設の施工企画,No.659,pp.15-20.
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