Comments
Description
Transcript
住宅の部屋の明るさと居間を中心とした生活行為の関係に関する調査
住宅の部屋の明るさと居間を中心とした生活行為の関係に関する調査研究 ∼居間の光環境と生活行為についての検討∼ 環境設備工学講座 久野研究室 4 年 林 寛子 住宅によって 0∼1000[lx]まで照度の差があり様々であ ったが、400[lx]未満の照度の住宅が比較的多かった。 50 45 45 40 40 35 35 30 居間でする頻度 5 ほ と 20 居間でする頻度 表1 内容 表2 対象家族 世帯数 3 人家族 11 5 人家族 3 居間での生活行為が様々なことがわかる。 夜間の居間の照度測定の結果の一部を図 2 に示し、最 大照度値による住宅の居間のグループ分けを表 4 に示す。 な い な い ん ど ほ と 照度グループ番号:3 照度グループ番号:1 1000 800 800 600 600 [lx ] 400 400 200 200 100 0 100 0 100 0 [cm] -100 100 -100 照度グループ番号:4 1000 0 -100 [cm] -100 照度グループ番号:6 [cm] 1000 800 800 600 [lx ] 400 600 400 200 100 0 100 0 -100 100 [cm] 100 0 -100 [cm] -100 [cm] 図2 表4 グループ 番号 1 2 3 4 5 6 0 -100 [cm] 為のグループ分けを表 3 に示す。生活行為の中にも居間 合にどの程度の頻度でされるかで生活行為が分類でき、 か あ 週に何日かある 1000 夜間に生活行為を家/居間でする頻度を 4 段階尺度で ですることが多いもの少ないものがあり、居間でする場 何 日 に くつろぐ 新聞を読む 家族とテレビを見る 家族と会話をする 趣味・娯楽をする うたた寝をする 本や雑誌を読む 家族と音楽を聴く 1 人でテレビを見る 家族と食事をする 勉強・仕事をする パソコンをする 1 人で食事をする 1 人で音楽を聴く 200 聞いた結果の一部を図 1 に示し、その結果による生活行 勉強・仕事をする 生活行為の種類 週に何日かある [cm] 居間の照度と生活行為を居間でする頻度との関係 る る ほとんど毎日ある [lx] 3.1 ほとんどない 休祝日にある 週に何日かある ほとんど毎日ある 毎 日 居間ですることが ほとんどない [lx] 3 夜間に居間でする生活行為の特徴 居間でする場合に 最も多い頻度 ほとんど毎日ある 6 人家族 1 3.調査結果と考察 2 6 生活行為を家/居間でする頻度 家でする場合に 居間でする頻度 居間ですることが ほとんど毎日ある or 週に何日かある or 休祝日にある が多い 調査対象者の内訳 4 人家族 10 居間でする頻度 1 家でする頻度 表3 調査概要 大学生の実家 25 住宅とその家族(94 名) 基礎調査:2001 年 11 月 1 日∼12 月 1 日 (34 部配布 25 部回収−回収率 73.5%) 家族の代表者 1 名に実施した。 本調査:2001 年 11 月 30 日∼12 月 18 日 (96 部配布 94 部回収−回収率 97.9%) 家族全員に実施し、主婦のみ調査項目を加えた。 照度実測調査:2001 年 12 月 2∼2002 年 1 月 1 日 −実施率 100% 基礎調査:家族構成、住宅特性(間取り)、居間の様式 本調査:生活行為を家でする頻度と居間でする頻度、 またその時の明るさの評価と照明の付け方(《昼間》点 灯頻度、《夜間》点灯程度)。照明に対する意識と行動。 主婦を対象として夕食時の居間・食事室・台所の 3 室 間の移動の仕方とそのときの照明のつけ方。 照度実測調査:居間の 27 地点の水平面照度(居間の 中心から各 1mの距離にある 9 地点の 0,40,80 ㎝の 3 段階の高さ)、ダイニングテーブルの中心と四隅の計 5 地点の水平面照度、流し台・調理台・コンロの計 3 地 点の水平面照度。 3 ん ど ほ と ん ど ほ と 祝 日 に 休 な い あ る る 日 か あ 何 週 に 家族と食事をする 図1 象者となった。本調査対象者の内訳を表 2 に示す。 3 0 あ る 日 あ 毎 ん ど 5 ほとんど毎日ある 家でする頻度 対象 時期 3 あ る 1 0 10 ほとんどない 休祝日にある 週に何日かある 5 7 15 3 2 2 に 8 10 1 10 休 祝 日 19 10 と 25 12 15 ほ 施し、回収した住宅すべてが本調査・照度実測調査の対 25 30 [人] 25 20 に示す。基礎調査は名古屋大学工学部の学生を中心に実 28 35 30 つの照度実測調査からなる。対象および内容などを表 1 ん ど あ 毎 日 ん ど な い あ る に ん ど ほ と 休 祝 日 40 35 調査は 2 つのアンケート調査(基礎調査と本調査)、と 1 趣味・娯楽をする 45 36 40 [人] ほとんど毎日ある 50 45 2.調査概要 1 家でする頻度 50 することにより明らかにする。 ほとんどない 休祝日にある 週に何日かある 1 1 ほ と る に 週 くつろぐ 家でする頻度 事室・台所の 3 室間の移動と照明のつけ方の関係を分析 1 1 1 0 ほとんど毎日ある る あ か あ 何 日 ん ど ほ と 生活行為をする頻度との関係、主婦の夕食時の居間・食 毎 日 握し、明るさと生活行為との関係について居間の照度と 7 2 る 1 5 あ る 0 居間でする頻度 4 13 10 ほとんどない 休祝日にある 週に何日かある 5 と生活行為の現状をアンケート調査と照度実測調査で把 15 2 に 4 1 3 休 祝 日 1 る 3 6 13 18 20 715 15 10 25 か あ 20 活行為が行われる居間を対象に一般住宅の居間の明るさ 24 30 [人] 25 に [人] 何 日 の基準が定められているが、一般の住宅では必ずしも成 り立っていない。本研究では住宅で最も多くの種類の生 51 50 週 生活行為に応じた明るさを記述したものに JIS の照度 基準(JIS9110-1979)があり空間や行為ごとに必要な照度 週 1. はじめに 高さ 80cm の居間の照度分布 照度による居間のグループ分け 高さ 80cm の 最大照度値[lx] 400 未満 400~600 600~800 800~1000 高さ 40 ㎝の 最大照度値[lx] 200 未満 200~400 400~600 600~800 高さ 40 ㎝の 照度について 200~400−1 ヵ所 200~400−2 ヵ所以上 住宅数 (人数) 5(20) 5(17) 6(20) 4(20) 3(10) 2(7) ほとんど毎日ある 週に何日かある くつろぐ 休祝日にある 1 00 % 90 % 90 % 90 % 80 % 80 % 80 % 70 % 70 % 70 % 60 % 60 % 60 % 50 % 50 % 50 % 40 % 40 % 40 % 30 % 30 % 30 % 20 % 20 % 20 % 10 % 10 % 10 % 0% 0% 1 2 3 4 5 3 4 5 6 家族と会話をする 90 % 90 % 90 % 80 % 80 % 80 % 70 % 70 % 70 % 60 % 60 % 60 % 50 % 50 % 50 % 40 % 40 % 40 % 30 % 30 % 30 % 20 % 20 % 20 % 10 % 10 % 10 % 0% 0% 0% 2 3 4 5 6 もない(図 4 の右端の列の移動の仕方)と居間・食事室・ 台所の照明が同時につくことがない傾向があった。 次に、主婦が夕食準備で台所にいる時の照明のつけ方 を DK の型※の違いで検討した結果を図 5 に示す。 1 1 00 % 1 つけることがあり、逆にその間に居間にいることが一度 0% 2 1 00 % 図3 本や雑誌を読む 1 00 % 1 6 新聞を読む 1 00 % でもあるとこの間に居間・食事室・台所の照明を同時に ほとんどない うたた寝をする 1 00 % 1 2 3 4 5 2 3 4 5 趣味・娯楽をする 25 20 15 2 3 4 5 居間にいてもいなくてもつける 3 居間にいたらつけるがいなければつけない 6 0 居間で生活行為をする頻度と照度との関係 横軸:照度グループ番号 7 5 10 5 夕食準備で主婦が台所にいる時に 居間に家族の誰かがいる場合と いない場合での 誰もいない食事室 の照明のつけ方 ↓ 10 [人] 1 6 6 居間にいてもいなくてもつけない open close 注)右に行くほど高照度の居間 有効回答数25 図 3 は照度のグループ別の生活行為を居間でする頻度 の一部である。「くつろぐ」「うたた寝をする」「本や雑 誌を読む」など、ほとんどの生活行為について居間です 図5 夕食準備時の食事室の照明のつけ方 ※DK の型 open:食事室と台所の境界がはっきりしないもの close:食事室と台所の境界がはっきりしているもの る頻度と照度には関係が見られなかったが、「新聞を読 DK の型が open の場合は家族の誰かが居間にいる場 む」「家族と会話する」は居間の照度が低くなると “ほ 合いない場合で食事室の照明のつけ方が様々なのに対し、 とんどない”と回答する人がみられ、「趣味・娯楽をする」 close の場合は家族の誰かが居間にいてもいなくても常 は居間の照度が高くなると居間でする頻度が増加する傾 に食事室の照明をつけている傾向があった。またこれと 向があった。 同じ傾向が夕食片付けで台所にいる時にもあった。しか 3.2 し、close の方は普通、台所において全般照明と局所照明 夕食時の主婦の 3 室間の移動と照明のつけ方 被調査者の中の主婦 25 名を対象に夕食時の主婦の居 の両方がついていることが多く、open は局所照明だけの 間・食事室・台所の 3 室間の移動の仕方とそれぞれの部 場合が多い。つまり、一般的には open の方が家族の誰 屋にいる場合に主婦本人以外に誰もいない場合の居間・ かが居間にいる場合でもいない場合でも常に食事室の照 食事室・台所の照明のつけ方の結果を図4に示す。 明をつけている傾向がありそうであるが、結果には逆の L K L D L K L L K L D L K L L K L D L K L ●●●●●●● ●●●●●● D ●●● K ● L ●●●● D ●●●● K ●● ●● ●● ● L ● D ● K ● ● ● L ●●●●●●● ●●●●●● D ●●●●● K L ●●●● D ●●●● K ●●●● ●● ●● ● L ● D ● K ● ● ● ● ● ●●● L ● ●● D ● K ●● L ● D ● K ● ● ● ●●● ●●● L ● D K ● ● ● ● ● L ●●●●●●● D ●●●●●●● ● K ● L ●● D ●● K ●● ●●●● ●●●● ●●●● L ●● D K ● ● ● L ●●●●●●● D ●●●●●●● K ●●●●●●● L ●● D K ● ●●●● ●● ●●●● L D K ● ● L ●●●●●●● D ●●●●●●● K ●●●●●●● L D K ●●● ●●●●● ●● ● L ●●●●●●● D ●●●●●●● K ●●●●●● L D K ● ● ●●●● ●● ● ●●● L ●●●●●●● D ●●●●●● K ●●●●●● L D K ● ● ● ●●●● ●●●● ●●● L D K ●● ● 4.まとめ 本研究では対象住宅の居間での生活行為を家でする頻 ● 度と居間でする頻度から特徴づけ、「くつろぐ」「新聞を 読む」「家族とテレビを見る」「家族と会話をする」とい ● ● ● った生活行為が居間でほとんど毎日される傾向があるこ と、さらに対象住宅の居間の照度は 0∼1000[lx]までで、 ● 400[lx]未満が比較的多いことがわかった。そして、それ ● らをもとに居間の照度と生活行為をする頻度の関係を検 ● ● 討した結果、「新聞を読む」「家族と会話をする」「趣 ●● 味・娯楽をする」といった生活行為は居間の照度が高い ● ● ● ほど居間でする頻度が高くなる傾向がみられた。 また、夕食時の主婦の居間・食事室・台所の 3 室間の 例外を除く 22 名の回答 移動の仕方と照明のつけ方、及び照明のつけ方と DK の L K L D 型の違いによる検討をした結果、夕食準備から片付けの 夕 食 片付 け 夕 食 をと る 夕食準備 ※夕食準備→夕食をとる→夕食片付けの前後に居間にいるか で移動パターンを決定。 主婦がその部屋に移動することがない場合は斜線 ※L・D・K の 3 室のうち照明がついている部屋に○印 ●:主婦がいるので照明がついているのは当たり前の部屋 ●:誰もいないのに照明がついている部屋 図4 傾向が見られたので今後検討の余地があると考えられる。 L L K 間で台所→食事室→台所を移動する際に一度でも居間に L L ● ● ● ● D ● K ● ● 居間・食事室・台所間の移動と照明のつけ方 夕食準備(K)→夕食をとる(D)→夕食片付け(K) の移動をする人のうち、この間に居間にいることが一度 いることがあると居間・食事室・台所の 3 室同時に照明 がつけられる傾向があった。 これらのことより、明るい居間の方がより多くの生活 行為ができ良いと言える。また、居間・食事室・台所の 照明は単独ではなく、移動の仕方も考えて、同時に照明 をつけた場合を想定した照明設計が必要であると言える。