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特集1 もう“著作権”におびえない
アンケート PHOTO:ⓒ Aaron Black/Solus-Veer/Corbis 日経 BP 社の Web サイトで、2008 年 1 月 9 ∼ 17 日 の間実施した意識調査。 法律的な正解を問うのではな く、自分がどう考えるかを答えてもらう形式で質問した。 438 人から有効回答を得た。 パッケージソフト、 他人に売却できる? 売却してもよい 33.3% 売却できない 17.1% MS Office、 2 台で使える? インストールしてもよい 51.9% イン スト ー ル し て は な ら ない 45.4% ソフトによって異なる 47.8% 分からない 分からない 1.8% 2.7% 自分が購入したパッケージソフトで、不要になった製 品があるとする。自分はもう使わないので、それを中 古ソフトとして他人に売却してよいか マイクロソフト Office のパッケージを購入し、自宅 のデスクトップパソコンに導入。同じパッケージで、 手持ちのモバイルノートにインストールできるか ソフトの貸与や譲渡 ソフトの利用制限 ☞ p.42∼ ネットで拾った画像、 年賀状に使える? ☞ p.44∼ 無伴奏で歌った歌謡曲、ネットで公開できる? 個人的な年賀状だから 使ってもよい 20.8% 元の音源は入っていないの で、著作権侵害にはならない 54.4% 画像を加工/修正すれば 使ってもよい 2.3% 著作権侵害になるので、 許可が必要 41.3% 使うには著作権者の許可が 必要 72.8% その他 その他 4.3% 4.1% インターネット上で見つけた著作権者不明の画像。著 作権者の許可なくダウンロードし、年賀状の絵柄とし て使ってもよいか 我が子が、今年のヒット曲を無伴奏で歌唱。その歌声 を Web ページで公開することは、著作権侵害に当た るか 画像の利用 音楽の利用 ☞ p.50∼ ネットで拾った画像、SNS で公開してよい? ☞ p.52∼ 運動会の動画、公開には許可が必要? 我が子のメールを読んでもよい? 限られた人しか見られない ので、著作権侵害にはなら ない 21.5% テレビの街頭インタビュー と同じようなものなので、 公開してよい 56% 未成年の我が子なので、 プライバシー侵害には ならない 60.5% 著作権侵害になるので、 許可が必要 70.3% 顔が写っている人すべてから 許可を得る必要がある 28.5% プライバシーの侵害に 当たるので、子どもの 許可が必要 34% その他・無回答 その他・無回答 その他・無回答 8.2% 15.5% 5.5% ネット上で拾った著作権者不明の画像を、SNS(登録 済みの知り合い以外はコンテンツを見られない)で公 開する行為は著作権侵害に当たるか 1000 人以上が参加した、子どもの運動会の様子を ビデオに撮影した。その動画を、参加者の許可なくネ ットで公開してよいか 我が子がネット犯罪に巻き込まれないよう、子どもが 他人とやり取りしているメールの内容をチェックする ことはプライバシー侵害になるか 私的利用 肖像権 プライバシー ☞ p.55∼ ☞ p.56∼ ☞ p.57∼ 「これ、 やっていいのかな」──。 パソコンを使う上でたびたび抱くのが、著作権 やソフトウエアの使用権などの権利に関する不安。知識がないままでは、こわごわ 綱を渡るような日々が続く。本特集を通じて、疑問を解消してほしい。(八木 玲子) 特集 1 もう“著作権”におびえない ※本特集は、西村あさひ法律事務所の山口勝之弁護士に監修をお願いしました。 知らぬ間の権 利侵害を防ぐ 40 日経パソコン 2008.2.11 日経パソコン 2008.2.11 41 特集 1 知らぬ間の権利侵害を防ぐ ソフトの貸与や譲渡 コンからアンインストールすること ソフトは売れる? 貸せる? あげられる? が必要。使わないからといって、ソ フトをパソコン内に残しておいては ならない。 1 本のソフトを複数台のパソコン 実は我々がソフトを購入しても、 にインストールできるか、他人に貸 多くの場合はソフトそのものを手に せるのか──。過去に、こんな疑問 入れられるわけではない。一定の条 を抱いた経験はないだろうか。 件下でそのソフトを使うための許諾 パソコンにまつわる権利の中で、 をメーカーから得る、つまりソフト 最も身近なのがソフトウエアの使用 を使う「権利」を購入しているのだ 権だろう。パソコン本体と異なり、 (図 1)。ソフトウエアは容易にコピ 契約書は読まれていない すべて目を通す 4.1% 重要そうな部分だけ 読む 34.2% ほとんど読まない 61.7% こうした条件は、ソフトメーカー やソフトの種類によって異なる。図 4 は、主要ソフトの使用許諾契約書 の比較だ。貸与についてはすべて禁 止で一致しているが、それ以外には 細かな違いがある。またソフトによ 図 2 ソフトウエアのインストール時に、使用 許諾契約書を読んでいるかどうかを尋ねたアン ケートの結果。6 割を超すユーザーが、 「ほとん ど読まない」と答えた っては、譲渡を禁止している場合も ある。他人にソフトを無償で譲った ソフトウエアは実体がないだけにや ーできるため、ソフトそのものの所 やこしい。本特集ではまず、このテ 有権をユーザーに与えてしまっては、 ーマについて考えてみよう。最初に ソフト会社は立ちゆかない。そこで 権侵害で罪に問われかねない。 じた場合には、いま一度使用許諾契 取り上げるのは、ソフトウエアの譲 ソフト業界は一般的に、こうした販 図 3 に、Windows Vista Ultimate 約書を確認しよう。 渡や貸与、売却ができるのか、とい 売方法を採っている。 のパッケージ版に付属する、使用許 こうしたソフトを自分が購入する う問題だ。 使用許諾契約書は、インストール 諾契約書の一部を示した。これを読 場合も要注意。例えばネットオーク 答えは使用許諾契約書に 時などに必ず表示されるのでおなじ むと、Vista Ultimate を有償または ションには中古ソフトが多数出品さ みだろう。長文で難解そうに見える 無償で他人に貸すことは明確に禁止 れているが、よくよく見ていくと怪 その答えは、各ソフトをインストー ため、ほとんど読まないユーザーも されている。一方、譲渡については、 しげなものが少なくない(図 5)。 ルする際に表示される、 「使用許諾契 多いようだ(図 2)。だがこの中には、 条件付きで認められている。Vista 例えば「正規の OEM 版です」の 約書」の画面に書いてある。使用許諾 ソフトを使う上で重要な事柄が多数 Ultimate を購入した最初のユーザ ような表現。OEM 版とはソフトメ 契約書(ライセンス条項などとも呼ば 含まれている。これを破ると、メー ーが、1 度だけ他人に譲ることは可 ーカーがパソコンメーカーなどに対 れる)とは、メーカーとユーザーの間 カーから損害賠償を請求されるなど 能だ。自分のパソコンは譲らずにソ して出荷したソフトで、特定のハー で結ばれる契約の内容を示したもの。 の可能性がある。法律面でも、著作 フトだけを譲る際には、自分のパソ ドウエアと一緒に使うことが条件と されていることが多い。その条件を 実は“権利”を買っている 購入 ソフト ソフトウエアそのもの ソフトウエアを使う権利 企業向けは事情が違う 本記事では、量販店の店頭などで 主な対象として解説している。同じソ ● 誰が使えるか フトでも、企業向けのライセンス販売 ● 何台のパソコンにインストールできるか では、利用条件が大きく異なることも ● 他人に譲れるか/貸せるか ● コピーを作成できるか ● アップグレード後にも旧版は使えるか など 珍しくないので注意しよう。例えば複 数台のパソコンでの利用に関して、個 人向けよりも厳しい制約が設けられて いる場合があったりする。疑問がある 図 1 ソフトウエアを購入しても、手に入るのはソフトウエアそのものではなく、それを使う権利で あることがほとんど。その権利の範囲がどこまでかは、使用許諾契約書に記載されている。これに同 意しなければ、ソフトウエアをインストールできないことが多い 日経パソコン 2008.2.11 満たさない状態、つまり、そのソフ トを別のパソコンで使うことは、使 用許諾契約違反になるわけだ。 販売されているパッケージ版ソフトを 42 り、中古で販売したりする必要が生 場合は、自社のシステム部門などに問 い合わせるとよいだろう。 ライセンス面で不明な点や不安な 点がある場合は、出品者に問い合わ せて確認しよう。それでも疑問が解 決しない場合は、手を出さない方が よい。 「現時点では、よく理解して いる人以外はかなりのリスクを負う。 中身を読んでみると… 8. ライセンスの適用範囲。本ソフトウェアは… (中略) … 以下の行為は一切禁止されています。 ( 中略) ・第三者が複製できるように本ソフトウェアを公開すること ・本ソフトウェアをレンタル、リース、または貸与すること (中略) 16. 第三者への譲渡。 a. Windows Anytime Upgrade 以外のソフトウェア。本ソ フトウェアの最初のユーザーは、本ソフトウェアおよび本ライセ ンス条項を 1 度だけ、直接第三者に譲渡することができます。 最初のユーザーは、デバイスと分離して譲渡する場合、譲渡 する前に本ソフトウェアをデバイスからアンインストールする必要 があります。 (後略) 貸与は禁止 譲渡は条件 付きで可能 * Windows Vista Ultimate パッケージ版のライセンス条項より抜粋 図 3 Windows Vista Ultimate のパッケージ版では、貸与は禁止、譲渡は条件付きで認められている。 このように、使用許諾契約書は難解そうに見えても、意外に表現は分かりやすいことが多い パッケージ版(通常版)における主要ソフトメーカーの方針 アドビ システムズ Acrobat 8 Professional ジャストシステム JUST Suite 2008 マイクロソフト Windows Vista Ultimate 他者への譲渡 手元にコピーを残さず、す 手元にコピーを残さず、す 最初に購入したユーザーな べての権利を譲渡すれば可 べての権利を譲渡すれば可 ら、1 度だけ譲渡可。その 際はコピーを残さず、すべ ての権利を直接譲る 他者への貸与 禁止 禁止 禁止 備考 ー 中 古 品 販 売 店 など を 介し ての中古品取引は禁止(ユ ーザー同士が直接やり取り しての取引は可) ー 図 4 個人ユーザーが、パッケージ版ソフトを購入した場合の基本的な条件。ここに上げたソフトは すべて、貸与は禁止している。これ以外に、 「対象製品のアップグレード版として新製品を購入してい る場合は不可」といった条件が加わっていることもあるので、詳細は使用許諾契約書を確認してほしい。 なお同一ソフトでも、バージョンが異なると規定も異なる場合があるので注意しよう オークションでの購入には要注意 「正規の OEM 版です」 ハードウエアと一緒に販売され、その ハードと同時に使用することが条件で あることが多い。ハードが付属しない 場合は契約違反の可能性大 「バンドル版です」 プリインストール版のこと。対象のパ ソコンでしか利用できないことが多い ため、契約違反の可能性あり 結果的にトラブルに巻き込まれるこ 「ユーザー登録できません」 ともあるので、購入時は注意した方 契約違反の可能性が高い。購入しても、 サポートが受けられないなどデメリッ トは多い がよい」 (コンピュータソフトウェア 著作権協会 広報室室長兼国際担当 の坂田俊介氏)。 図 5 オークションに出品されているソフトでは、図のような注意書きを見かけることが多い。ライ センス違反である可能性も否定できないので、不明な点は出品者によく確認しよう 日経パソコン 2008.2.11 43