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議事概要(PDF:566KB)
第2回医療 分野の 研究開発 に関す る専門 調査会
議事概要
日
時:平成25 年10月 21日 (月) 9時0 0分~ 12時 00分
場
所:中央合同 庁舎4号 館1214特別会 議室
出席者:世 耕内閣 官房副長 官、丹 呉内閣 官房参 与
医療分野の研 究開発に 関する 専門調 査会
永 井委員( 座長)、大澤委 員、垣添 委員、菊 地委員 、榊委 員、笹月 委員、清 水委員 、
竹中委員、 田中委員
外部有識者
上 田教授 、門脇教 授、猿 田名誉 教授、 高橋教 授、中 尾会長、 樋口理 事長、 堀田理 事
長、松本教 授、間 野教授、 満屋教 授、宮 野教授 、山本 理事長 、渡邉所 長
健康・医療戦 略室
和泉室長、 中垣次長 、菱山 次長、 上家次 長、髙 田次長
文部科学省
川上政策評 価審議官
厚生労働省
原医政局長 、三浦技 術総括 審議官
■和泉健 康・医 療戦略室 長
お はよう ござい ます。 定刻と なりまし たので 、第2 回「医 療
分野の研究 開発に 関する専 門調査 会」を 開会い たしま す。
先生方には、お 忙しい中 、また 早朝か ら御参 集いた だきま してあり がとう ござい ます。
第1回 専門調 査会では 、委員 の先生 方を中 心に貴 重な御 意見と御 指摘を 賜りま した。 ま
た、活発な 御議論 をいただ きまし た。あ りがと うござ いまし た。
本日は 、
有 識者の 方々から の意見 を中心 に御発 表いた だくこ とになり ますが 、そ の前に 、
厚生労働 省の原 医政局長 、三浦 技術総 括審議 官、ま た、文 部科学省 の川上 政策評 価審議 官
に出席を いただ いており ますの で、研 究費の 透明性 に関わ る最近の 諸問題 に関す る検討 状
況について 御報告 をいただ きたい と思っ ており ます。
また、 国会が 始まりま して、 菅官房 長官、 そして 加藤副 長官は出 席でき ません が、世 耕
副長官は 9時半 頃に出席 し、10時過ぎ に離席 をさせ ていた だくとい うこと でござ います の
で、よろし くお願 いいたし ます。
では、早速でご ざいます が、こ こから 永井先 生に御 進行を お願いい たしま す。
■永井座長
それでは、よ ろしく お願い いたし ます。
まず、事務方か ら配付資 料の確 認をお 願いい たしま す。
(中垣健康 ・医療 戦略室次 長から 配付資 料の確 認)
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
では、 先ほど 和泉室長 から御 発言が ありま したが 、本日 は、発表 に入る 前に、 研究費 の
1
透明性につ きまし て文部科 学省、 厚生労 働省か ら報告 をいた だきたい と思い ます。
最初に 、事務 方から、 本件を 本調査 会で報 告いた だく背 景につい て御説 明をお 願いい た
します。
■中垣次 長
研 究費の透 明性の 確保に 関する 課題に つきま しては、 総合戦 略の策 定に当 た
りまして も重要 な議論の 一つに なるか と思い ます。 つきま しては、 本日、 厚生労 働省、 文
部科学省 から「 高血圧症 治療薬 の臨床 研究事 案を踏 まえた 対応及び 再発防 止策」 及び「 研
究に関する 不正へ の対応方 針」に ついて 、説明 をして いただ くことと いたし ました 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
では最 初に、 厚生労働 省、原 徳壽医 政局長 から「 高血圧 症治療薬 の臨床 研究事 案を踏 ま
えた対応及 び再発 防止策に ついて 」の御 説明を お願い いたし ます。
■原徳壽厚 生労働 省医政局 長
医政局長の原で ござい ます。 おはよう ござい ます。
高血圧 症の治 療薬ディ オバン 、ARBの一種で ありま すバル サルタン という 薬でご ざいま す
が、これ の臨床 研究につ いて、 さまざ まな問 題が出 てきま した。そ ういう ことで 検討会 を
開催した結 果等に ついて、 今日、 御報告 申し上 げます 。
資料2「厚生労 働省」と 書いて ある資 料で御 説明を いたし ます。
まず「 経緯」 ですけれ ども、 御承知 の方も 多いと 思いま すが、こ のノバ ルティ スファ ー
マ社のデ ィオバ ンを使っ た臨床 研究、 特に東 京慈恵 会医科 大学、京 都府立 医科大 学、千 葉
大学が中 心にな って行わ れたこ とにつ いて、 京都大 学の医 師から、 まず、 東京慈 恵会医 科
大学の論 文が載 った「Lancet」に 対してレ ターが 出され ました 。その 内容に つきま しては 、
血圧値に 係る数 値があま りにも 一致し ている のでは ないか という指 摘でし た。その後 、
色々
とやりと りがご ざいまし たけれ ども 、結果 といた しまし て、発表され た京都 府立医 科大学 、
東京慈恵会 医科大 学の論文 とも撤 回され る結果 となっ ており ます。
この経 過の中 で、ノバ ルティ ス社の 当時の 社員が 大阪市 立大学の 非常勤 講師の 肩書き で
かかわっ ていた という指 摘がご ざいま した。 実際、 書かれ た論文を 見ます と名前 が載っ て
おります 。この ことにつ きまし て、厚 生労働 省から ノバル ティス社 にどう いう事 情だっ た
のか聴取 し、そ こから、 当時は 社員で もあっ たけれ ども非 常勤講師 の肩書 きも持 ってい た
という中 で、こ のような 形にな ったと 報告が ありま したの で、事実 関係に 関して 明確に す
るようにと 口頭で 指導を行 ったと ころで ござい ます。
その後 、各大 学で、こ の臨床 研究に つきま して、 でき得 ればカル テまで さかの ぼって デ
ータのチ ェック をしてく ださい という ことで 、それ ぞれ自 主的に点 検をし ていた だきま し
た。その 結果、 京都府立 医科大 学と東 京慈恵 会医科 大学か らは、研 究に使 われた データ に
ついて、 どうも 操作があ ったと いう事 実が判 明した という ことが結 果とし て発表 されま し
た。
また、 ノバル ティス社 のほう も、一 応、外 部の方 を入れ てかなり の調査 をした 結果と し
ては、当 時のそ の社員に よる意 図的な データ 操作等 を行っ たことを 示す証 拠は発 見でき な
かったと いう結 果を公表 してお ります 。その 他の3 大学、 特に滋賀 医科大 学につ きまし て
2
は、報道さ れてお りますが 、まだ 正式な 発表が 出てい る段階 ではござ いませ ん。
2ペー ジ目を 御覧いた だきた いと思 います 。こ れを受 けまし て、厚 生労働 大臣の もとに 、
今年の8 月「高 血圧症治 療薬の 臨床研 究事案 に関す る検討 委員会」 を設置 いたし ました 。
メンバー 及び開 催につき まして は、次 の3ペ ージに ござい ますので 、後ほ ど御覧 いただ き
たいと思い ます。
今回の 事例に ついて、 5大学 、ノバ ルティ スファ ーマ社 から色々 と事情 を聞く などを い
たしまし て、検 討を進め ていた ところ でござ います 。また 、関係者 から、 直接の 研究責 任
者も含め まして 、ヒア リング を実施 いたし ました 。事態 の緊急 性もご ざいま すので 、まず 、
3回目で 当面の まとめと いうこ とで中 間とり まとめ 案をま とめてい ただき まして 、今後 ど
うするの か、調 査はもち ろん、 これか ら続け ていく わけで あります が、当 面の取 りまと め
というのを まとめ させてい ただき ました 。これ はまた 後ほど 御説明を いたし ます。
また、 これと 並行して 「自主 点検の 実施・ 報告」 という ことで、 臨床研 究は膨 大でご ざ
いますの で、当 面、平成21年4 月以降 開始し た臨床 研究、 特に介入 的な研 究につ いて自 主
点検をし てくだ さいとお 願いし ました 。内容 としま しては 、例えば 、外部 からの 通報が あ
って、何 かおか しい事例 がある のでは ないか という データ の捏造関 係の事 案があ ったか ど
うかにつ いて、 あった場 合にど う対応 したか とか、 あるい は倫理指 針とい うのを 定めて お
りますが 、臨床 研究に関 する倫 理指針 に違反 してい るよう なことが なかっ たかど うか、 そ
の他、利 益相反 ポリシー につい ても違 反して いるか どうか 、そうい う点に ついて 自主点 検
をお願いし たとこ ろでござ います 。
この結 果は、 簡単に申 し上げ ますと 、主な 大学病 院全部 を対象に いたし まして 、ざっ と
いきます と2万4,000件余りの研究 があっ たとい う報告 の中で 、唯一 データ 改ざん が明ら か
に認めら れたと いうのは 、実は 、既に 報道さ れてお りまし た1件だ けでご ざいま した。 そ
の他につ きまし ては、例 えば、 臨床研 究の倫 理委員 会に正 式に諮っ ている のです が、部 分
的に諮って いない 事例とか 、その 他細々 とした ことは 少しご ざいまし た。
今後は この内 容を踏ま えて進 めてい くわけ ですが 、次の 4ページ を御覧 いただ きたい と
思います。 4ペー ジに、こ の内容 につい てまと めてご ざいま す。
今回の 大きな 問題は、 利益相 反COI (Conflict of Interest)の問題と、 それか ら、研 究
そのもの のデー タの改ざ んがあ ったと、視点が 違う大 きな問 題が2つ ござい ます。COIに関
しまして は、メー カー等か らの寄 附金に よる研 究とい うもの も含めな がら、COIのあり方 に
ついて考え ていく 必要があ る。
一方で 、デー タの改ざ んがあ った場 合に、 どう防 止する のかとい う視点 でもっ ての対 応
も、今後、 検討を 進めてい く必要 がある と思い ます。
それ以 外に一 番大きな 問題は、実は、こ のバル サルタ ン自身 が年間1,000億円の 売り上 げ
を出す大 きな薬 剤でござ います ので、 薬事法 に違反 がなか ったか、 あるい は医療 保険財 政
へ影響が なかっ たのか等 々につ いても 、今 後、検討を 進めて いくとい う予定 でござ います 。
以上でございま す。
3
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続きま して「 研究に関 する不 正への 対応方 針につ いて」 、文部科 学省、 川上伸 昭政策 評
価審議官 及び厚 生労働省 、三浦 公嗣技 術総括 審議官 、お二 方からお 願いい たしま す。説 明
は、代表 して文 部科学省 、川上 政策評 価審議 官から お願い いたしま す。補 足があ りまし た
ら、三浦審 議官か らお願い をいた します 。
■川上伸 昭文部 科学省政 策評価 審議官
あり がとう ござい ます。文 部科学 省の川 上でご ざ
います。
資料3 でござ いますが 、医療 分野の 研究開 発に限 らず、 さまざま な分野 におけ る研究 の
現場にお きまし て、研究費を 預け金 などに よって 不正使 用する ケースや 、デ ータの 改ざん 、
捏造、盗 用とい うような 研究上 の不正 行為を 行うケ ースが 、長い間 続いて います 。この 問
題は我が 国の研 究に対す る信頼 を揺る がし、 科学技 術の進 歩を大き く阻害 するも のであ る
ほか、研 究活動 を支える 納税者 たる国 民の信 頼の確 保のた めにも許 されな いこと であり 、
これまで も種々 対策をと ってま いりま した。 しかし 、この 1年間を 見まし ても、 東大に お
きまして 研究費 の不正使 用で逮 捕者が 発生す る、大 量の研 究論文の 取り下 げが起 こると い
うことが 続いて おり、こ ういう 事態を 踏まえ まして 、文部 科学省と 厚生労 働省に おいて 対
応策を検討 してま いりまし た。
文部科 学省に おきまし ては、 副大臣 を座長 とする タスク フォース を設置 し、中 間取り ま
とめを出 しまし た。厚生 労働省 におき まして は、9 月27日「研究開 発機関 連携会 議」で 対
応方針の公 表をし たところ でござ います 。
内容に つきま して、次 のペー ジ、参 考資料 1をお 開きい ただきた いので すが、 この研 究
費の不正 使用、 研究の不 正行為 につき まして は、こ れまで 、どちら かとい います と、個 人
において なされ たことを 機関に おいて 調査を 行い、 処分を していく という ことで 行われ て
きました 。その 系列にお ける対 策を強 化した 結果、 例えば 、研究の 不正行 為、研 究費の 不
正使用を 行った 研究者は 、5年 間ない し10年間の競 争的資 金の申請 権利を 剥奪さ れると い
う大変厳 しい厳 罰が課さ れてお ります 。5年 間、10年間研 究費がと れない という ことは 、
研究者に おいて は研究生 命を絶 たれる に等し いこと です。 にもかか わらず 、事案 がなく な
らないと いうこ とは、い わば個 人の処 分につ いては 飽和状 態にあり 、新た な方策 を考え な
い限り、難 しいの ではない かと考 えられ るわけ でござ います 。
また、 研究現 場をのぞ いてみ ますと 、例え ば、基 本的な 研究倫理 の教育 が、ど ちらか と
いうと、 配属さ れた研究 室の中 におい て行わ れると いう実 態がある わけで ござい ます。 不
正、倫理 という 問題は、 より一 般的な 問題で すので 、初期 教育の段 階から 取り組 むこと も
考えられる わけで あります 。
以上の ような ことを踏 まえま して、 今回の タスク フォー スでは組 織の管 理責任 を明確 化
すること により 、組織全 体とし て不正 の撲滅 に取り 組んで いただく ことを 1つの 方針と し
て取りま とめさ せていた だき、 責任体 制を強 化して いただ くととも に、そ の責任 が全う さ
れないと きには 管理責任 を考え させて いただ くとい う道筋 を明確化 すると ともに 、「不 正
4
を事前に 防止す る取組」 では、 何より も不正 を事前 に防止 する取り 組みが 重要と いうこ と
で、倫理 教育プ ログラム をしっ かりつ くり上 げた上 で倫理 教育を強 化する 、その 手段と し
て、競争 的資金 制度にお ける倫 理教育 の義務 づけを 考えて いくとい う方向 性を打 ち出し ま
した。
国とし まして は、機関 に全て お任せ すると いうこ とでは なく、国 も責任 を持っ てこの 研
究費の不 正及び 研究の不 正行為 の防止 に取組 んでい くため、最後の「国 による 監視と 支援 」
になりま すが、 国として も色々 な報告 を受け 、モニ タリン グし、ま た、不 正防止 対策に 対
する支援を 一歩踏 み込んで やって いくこ とを検 討して いきた いと思い ます。
文部科 学省に おきまし ては、 従来か ら研究 費の不 正及び 研究行為 の不正 双方に ついて ガ
イドライ ンを提 示し、組 織にお いて自 主的な 体制を つくっ ていただ くこと を進め てまい り
ましたが 、この 方針に基 づき、 ガイド ライン の改定 ないし ガイドラ インに 対する 説明書 類
を作成し てまい ります。 この年 度内に それを 完成さ せたい と思いま す。ま た、関 係府省 に
対しても 働きか けをし、 政府全 体の取 組みに なるよ うに取 り組んで まいり たいと 考えて お
ります。先 生方の 御協力を よろし くお願 いいた します 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
三浦審議官から 追加はあ ります でしょ うか。
■三浦公 嗣厚生 労働省技 術総括 審議官
厚生 労働省 といた しまして は、誤 った研 究成果 に
基づいて 、人の 命・健康 が阻害 される ことが ないよ うにし なければ いけな いとい う観点 か
らも、こ の問題 について 文部科 学省と 連携し ながら しっか り対応し ていき たいと 考えて お
ります。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
それで は、た だいまの 御説明 につき まして 御質問 等あり ますでし ょうか 。いか がでし ょ
うか。
今回の 件は、倫 理問題、利 益相反、研究費 の使用 法、ある いはその 受け皿 の問題 など様 々
な面がある と思い ます。そ のあた りにつ いての 対応は 、今後 どうなの でしょ うか。
■川上政 策評価 審議官
まず、 研究費 のルー ルが制 度ごと に異なっ ている という 問題も 指
摘をいた だいて おります 。この ような 問題に ついて は、な るべく統 一化す るよう にした い
と思いま す。ま た、組織 におい て研究 費を管 理する という 体制につ きまし ては、 強化を お
願いすると いうこ とで、ガ イドラ インの 改定を 検討し ている ところで ござい ます。
■永井座長
いかがでしょ うか。 よろし いでし ょうか 。
もし御意見がな いようで したら 、議題 2に移 りたい と思い ます。
本日は 、前回 御欠席さ れまし た国立 国際医 療研究 センタ ー理事の 清水孝 雄委員 から最 初
に御意見を いただ きたいと 思いま す。
■清水委 員
前 回欠席い たしま した、 国立国 際医療 研究セ ンター、 研究所 長の清 水でご ざ
います。
今、COIという話が 出まし たが、私 は、小野 薬品工 業、島 津製作所 による 寄附講 座の教 授
5
もしており ますの で、一応 、申し 上げて おきた いと思 います 。
2ペー ジの「 議論の進 め方に 関して 」に、 当たり 前のこ とが書い てある のです が、2 番
目にあり ますよ うに、ラ イフサ イエン ス研究 開発費 の大幅 増という ものが 大前提 であり ま
して、これ なしの 組織づく りとい うのは あり得 ないだ ろうと 思います 。
3番に 、色々 な方から のヒア リング と書い てあり ますが 、これは 既に進 められ ている と
いうことで 、省略 いたしま す。
3ペー ジです が「医療分 野の研 究開発 のため に(1)」という ことで「 1.開発の 源泉 」
は基礎的 研究で あります ので、こ れを圧 迫しな いとい うのが 大切であ ります。iPSあるい は
酵母のオ ートフ ァジーや プロテ アゾー ムの研 究から 、さま ざまな神 経変性 疾患の 研究に 発
展したも のもあ りますし 、ター ゲット タンパ クの研 究から 、アロプ リノー ルをし のぐ世 界
初の高尿 酸結晶 治療薬が 帝人か ら発売 された という ことも ございま す。線 虫の研 究から 核
酸医療へ の例も あります し、こ ういっ たさま ざまな 創薬の 根本とい うのは 基礎的 研究で あ
ることを改 めて強 調したい と思い ます。
「2. 開発の 目的」は 、もち ろん日 本人の 健康寿 命の延 長という ことで ありま すが、 同
時にアジ ア、ア フリカな どとの 医療連 携とい うこと を忘れ てはいけ なくて 、これ らを通 じ
て日本の産 業力を 増加させ る結果 になる のだろ うと思 います 。
私が特 に強調 したいの は「3.開 発人材 の育成」です。こ れは時間 のかか ること ですが 、
やはり研 究開発 の基本だ と思い ます。 私が医 学部長 のころ から申し ていま すよう に、フ ィ
ジシャン ・サイ エンティ ストを いかに 育成し ていく か。ま た、医学 だけで はなく 、融合 型
の教育、 医・工 ・薬など の異分 野の交 流とい うもの がどれ だけ進ん でいく のかと いうこ と
が非常に 大切で 、それを 可能に する組 織も必 要であ ろうと 思います 。グロ ーバル 人材の 育
成、ある いはヘ テロ集団 でのマ ネジメ ント能 力向上 という のは、こ ういう 中で磨 かれる と
いうこと がある と思いま す。特 に日本 で欠け ている バイオ インフォ マティ シャン に関し て
は、この 育成を 急ぐとと もに、 海外か ら招く 必要が あるだ ろうと思 います し、5 番目に 書
いてあり ますよ うに、学 部段階 から知 財教育 とか治 験など の教育と いうも のは、 医学生 を
初め学部生 に教育 していく 必要が あるだ ろうと 思いま す。
「4. 開発の 仕組み・ 制度」 という ことで は、研 究費と 人材の絶 対的不 足が大 きな因 子
であると いうこ とは既に 申しま したが 、支援 のシス テム、 研究費の 基金化 、間接 経費の 増
額等が必 要であ ろうと思 います 。また 、現在 、審議 されか けている と思い ますが 、改正 労
働契約法 の再改 正、給与 システ ムの自 由化等 も考え ていた だきたい と思い ますし 、バイ オ
バンクの充 実、電 子カルテ ・共通IDの早 期導入 なども 進める べきであ ると思 います 。
4ペー ジに参 りまして 「4. 開発の 仕組み ・制度 」の続 きですが 、後で データ をお示 し
しますが 、TR(Translational Research)を推進する ために はベンチ ャーが 必要で す。日 本
でベンチ ャーが 育ちにく いとす るなら ば、組 織学的 な産学 連携、例 えば、 今日は 竹中会 長
がいらっ しゃい ますが、 京都大 学のAKプロジ ェクト という のは1つ の例で すし、 東京大 学
で私が行 ってい る社会連 携講座 という のも、 会社の 機器の ベータバ ージョ ンを私 どもの と
6
ころに持 ち込み 、それを 製品化 すると いうこ とを大 学の中 でやって います 。この ような 組
織的な産学 連携と いうもの が必要 であろ うと思 います 。
また、 海外で 見られる ような 、医療 開発へ 個人出 資を促 す税制の 改革と いうも のが必 要
であろう と思い ます。PMDAに関しては 、2008年のと きには このよう な数字 ですが 、最近 こ
れが700名になり、迅速 化され ている という 話を聞 きます。職員の能 力の向 上とい うもの が
一層必要だ ろうと 思います 。
さらに 「5. 開発の工 夫」と いう点 では、 ナショ ナルセ ンターや 大学、 研究機 関の中 に
先ほど申 しまし たような 産学連 携組織 を作る 。アカ デミア 、企業の 大胆な 人材交 流が必 要
であろう と思い ます。既 存薬の 適応拡 大、新 標的分 子の探 索、また 、天然 物、私 どもの 分
野でいう とアス ピリンと かタク ロリム スとかFTY720など、 これらの ものは 天然物 から見 つ
け ら れ て い る と い う こ と が あ り ま す 。 ま た 、 target-based screening よ り も phenotypic
screeningがより効 率的に創 薬に繋 がると いうこ とがご ざいま す。治験、臨 床試験 の疾患 別
拠点とオー ルジャ パン体制 、開業 医も含 めたも のが必 要であ ろうと思 います 。
最後のページ「 新独法が 持つべ き要件 」は、 ご覧い ただき たいと思 います 。
最後に 、3つ の資料、 資料1 は、融 合研究 プログ ラムが 成果を上 げてい るとい うデー タ
でありま すし、 資料2は 竹中会 長が前 回示し たデー タで、 ベンチャ ーが創 薬の中 心にな っ
ていると いう米 国の例、 それか ら、資 料3は 、Phenotypic screeningが必要であ り、こ の
ためには 企業の 中に生物 学、医 学のわ かる人 材、逆 に、ア カデミア の中に 創薬人 材が必 要
であるとい うこと でござい ます。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
議論は 後程、 行いたい と思い ますの で、こ こで外 部有識 者の先生 方にお 入りい ただき た
いと思いま す。
(外部有識 者入室 )
■永井座 長
本 日は、前 回に引 き続き まして 、委員 以外の 第一線で 活躍さ れてい らっし ゃ
る先生方か らお話 を伺いた いと思 います 。
それでは、早速 始めさせ ていた だきま す。
最初に 、医療 機器分野 で、日 本医療 機器産 業連合 会会長 、テルモ 株式会 社代表 取締役 会
長の中尾浩 治様か らお願い いたし ます。
■中尾浩 治日本 医療機器 産業連 合会会 長
テ ルモ株 式会社 代表取締 役会長
中尾 でござ い
ます。日 本医療 機器産業 連合会 の会長 を務め ており ます。 時間の関 係もあ ります ので、 早
速発表に移 らせて いただき たいと 思いま す。
全部で 4点ま とめまし た。まず 1点目 に、
「日本版NIH」ということ が言わ れてい ますが 、
この中に ぜひ医 療機器の 「イノ ベーシ ョン人 財の育 成」の プログラ ムを制 度とし て設置 し
てほしいと いう考 えを持っ ており ます。
アメリ カのNIHにつきまし ては、資 料に書 いてあ るとお り、医療機 器開発 部門が ありま せ
ん。開発 の一つ の苗床に はなっ ている と思い ますが 、日本 では「物 づくり 」とい うこと が
7
盛んに叫 ばれて おります けれど も、私 の考え ですが 、物づ くりだけ ではな かなか 事業化 に
至らないと ころが あるので はない かと思 います 。
今日の 話は医 療分野の 研究開 発とい うこと なので すが、 一つの大 きな考 え方と して、 医
薬品と若 干違う かもしれ ません が、研 究と開 発を1 回分け て考えて みたら どうか と思い ま
す。開発 を何の ためにや るのか という ことに なりま すと、 最終的に はやは り医療 現場に 届
ける、事 業化と 考えてお ります 。この 開発と 事業化 を一体 にした医 療機器 のイノ ベーシ ョ
ンを起こ したい 。そのた めの人 材教育 をした いと考 えてお ります。 このこ とが、 ちょっ と
時間はか かるも のの、医 療機器 産業成 長のた めの大 きな鍵 になると 考えて おりま すので 、
ぜひNIHでの設 置とい うことを お願い したい と思い ます。
イノベ ーショ ンという と、何 か個人 的な、 どこか に一人 頭の良い 方がい て、ア イデア を
出すとい う考え があるの ですが 、
今 は、イノベ ーショ ンを学 ぶことが できる という ことで 、
世界的な 1つの 流れとし て教育 講座が 行われ ていま す。日本で 国立三大 学と今 話して おり 、
また、海外 の大学 とも連携 してこ の人材 の開発 をひと つやる べきでは ないか と考え ます。
2点目 ですが 、研究開 発のイ ンフラ という ことで 、法律 、規制緩 和です 。現在 、臨時 国
会にこの 2つの 法律が上 がって おりま すが、 ぜひこ の早期 成立と、 いわゆ る規制 緩和、 こ
れは法律も そうな のですが 、成立 した後 の運用 面での 取り組 みが非常 に大事 と考え ます。
3 番目 に、 厚労 省 と関 係の あるPMDAです が、 ここ の 財源 とい いま すか 、運 営 費が 約270
億円弱な のです が、実 はこの85%が企 業負担 でござ います 。ちな みに、FDAでいい ますと 約
30%程度 という ことで、 規制当 局とい います か、PMDAの役割を考え た場合 、やや 行政的 に
はガバナ ンス上 問題があ るので はない かと思 います 。かつ 、我々の 業界は 中小企 業が非 常
に多い。私 の連合 会で約4,900社あります が、その 7割、8 割が中 小企業 でござ います。中
小企業の 研究開 発は、イ ンセン ティブ という 意味で は、審 査・相談 手数料 等、少 し特別 な
措置を考え てもい いのでは ないか と考え ます。
最後に 、医療 分野を成 長戦略 にしよ うとい うこと で、安 倍内閣か ら大き な方針 として 打
ち出され ていま す。ちょ っと遠 回りを するよ うです が、日 本の医療 の目指 す姿と は何か と
いうこと 、それ から、健 康医療 をどう やって 産業と して捉 えるか、 この2 つが非 常に大 事
ではない かと考 えます。 もちろ ん皆保 険とい うこと がある のですが 、これ はこれ で我々 は
維持すべ きと考 えており ます。 医薬も 入れて ですが 、現在 の延長線 では成 長戦略 を検討 す
ることの 一つ大 きなコン フリク トがあ るので はない かと考 えます。 そのた めにも 、どこ に
向かって 医療を 進めるの かとい うこと は、少 し大き な議論 になりま すが、 少子高 齢化の 社
会である 日本で は非常に 大事だ ろうと 思いま す。御 存知の ように、 今、医 療費と 寿命の 相
関関係は 非常に 難しい状 態です 。すな わち、 医療費 を10%増やした から、 では寿 命が1 割
延びるか という 状況では ありま せん。 すなわ ち、寿 命とい うことと 、もう 一つの 観点と し
て、例え ば、病 気と共に 生きる とか、 治療の 質、痛 みの緩 和等々を 入れた ものが 大事だ ろ
うと思い ます 。また 、医療 分野と いいま すとど うして も福祉 的な意味 合いが 強いの ですが 、
産業として の位置 づけで考 える必 要も一 つある のでは ないか なと思い ます。
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ちなみ に、自 動車関連 の就業 者数が 約550万人ですけ れども 、健康医 療は今 現在730万人
と言われ ていま す。そう いう意 味では 、日本 の産業 の一番 大きな中 の一つ ではな いかと 考
えておりま す。
御清聴ありがと うござい ました 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
医療機 器につ いては、 もうお 一人、 松本洋 一郎東 京大学 大学院工 学系研 究科教 授から お
願いいたし ます。
■松本洋 一郎東 京大学大 学院工 業系研 究科教 授
同 じよう な視点が かなり あると 思いま す
が、まず 「我が 国の医療 機器開 発の振 興に向 けた論 点」と いうこと で、医 薬品と 医療機 器
というのは 、ある 意味、特 性が全 く違う という ことが 重要か と思いま す。
今、薬事法 の改正 に向かっ て動い ており ますけ れども 、中 尾会長も おっし ゃいま したが 、
法令が変 わって も、どう 運用し ていく かとい うとこ ろで非 常に大き なイン パクト を持つ こ
とになりま すから 、そこを ぜひ合 理的に 考えて いただ きたい と思いま す。
それか ら、医 療機器も さまざ まなレ ベルが ござい ますの で、それ を仕分 けして 考える と
いうことが 必要だ ろうと思 います 。
日本の 国内市 場だけを 考える のでは なくて 、グロ ーバル な市場で も競争 力が発 揮でき る
ような革新 的な機 器を開発 してい くとい うこと が必要 です。
頻繁な 改良・ 改善を重 ねてい くのが 医療機 器でご ざいま すので、 それに 対して 対応で き
る審査シス テムな りを導入 する必 要があ ると考 えます 。
それか ら、国 内産業の 活性化 に向け た目標 値の設 定が重 要だとい うこと で、具 体的な 話
は、まず 次の「 医療機器 の開発 ・利用 におけ る医薬 品に無 い特性」 をよく 考える べきだ と
いうこと で、例 えば、作 用メカ ニズム を設定 した設 計、も ともと医 療機器 という のは機 械
装置です から、 設計がも とから 可能な もので ござい まして 、それを どうい う観点 でどう い
う機能を 付与す るのかと いうこ とで設 計して いくわ けです 。そのあ たりが 医薬品 とかな り
違うという ことだ ろうと思 います 。
それか ら、自 動車の例 を見る までも なく、 改良・ 改善を 積み重ね ていき 、合理 的な機 能
や良い機 能が付 与される という ことに なるわ けです から、 その観点 をよく 理解し ておく と
いうことが 重要だ と思いま す。
もう一 つは、 医師が医 療機器 を使っ て機能 を発揮 させる わけです から、 ドライ バーが き
ちんとい るとい うことも 薬とは かなり 違いま す。処 方して 飲ませる という 観点で は同じ か
もしれませ んが、 もっと密 にコン トロー ルでき るとい うこと が重要だ ろうと 思いま す。
市場規 模を考 えると、 短期間 で大量 使用や 医療費 の大幅 な増は招 きにく いとい うこと も
ございま す。そ ういった 医療機 器と全 く違う 独自の 特性を 持ってい るとい うこと が今回 の
薬事法の 改正の 前提にな ってい ると思 います が、審 査の体 系ですと か、そ の後の 運用を さ
らに議論し ていた だきたい と思っ ており ます。
もう一 つは、 医療機器 を開発 してい く上で 、研究 は研究 、開発は 開発、 臨床は 臨床、 使
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うところ は使う ところだ けとい う、何 となく リニア モデル で動いて いると ころが ござい ま
すが、実 は1つ のプラッ トフォ ームの 上に産 ・学・ 官・民 、民とい うのは 患者と いう意 味
ですが、 患者も 一緒にな って機 器を開 発して いく。 こうい うプラッ トフォ ームを 是非作 っ
ていただき たいと 思ってお ります 。
現在、 創薬支 援ネット ワーク が動い ており ますが 、それ に類する 医療機 器・治 療機器 の
開発のプ ラット フォーム が必要 だろう と思っ ており ます。 アンダー ワンル ーフの もとに 、
臨床医と 開発を する研究 者、そ れから 、企業 やベン チャー の方が一 緒にな って、 日々議 論
をしなが ら動か していく ことが 必要だ と思い ます。 その過 程の中で 審査機 関、PMDAだけで
はなくて 、FDAですとかEMA、またはHSAというの はシン ガポー ルのPMDA相当の 機関で すが 、
そういっ たとこ ろも一緒 になっ て動い ていけ るよう なシス テムが、 グロー バルに 展開し て
いく事が 必要だ ろうと思 います 。是非 そうい ったも のを創 り出して いただ きたい と思っ て
おります。
その中 で、こ ういった ものは 民間の 手によ って頻 繁な改 良・改善 が行わ れてい くとい う
ことです し、こ ういうと ころを 単に補 助金で やるの ではな くて、こ れに官 民ファ ンドが 入
ってくる 、また は民間の ファン ドが入 ってく るとい うシス テムが構 築され ている という こ
とが重要に なると 思います 。
こうい った中 で実際に 動かし ていく 人材が 育って くるわ けでござ います し、そ れから 、
この中に 学生がinvolveされてくる と、いわ ゆる医 工連携 を大学が やって おりま すが、実 質
的な医工連 携が人 材の育成 にも活 用でき るとい うこと です。
もう一 つ、今 までは薬 事の観 点でPMDAは動いてお りまし たので、 なかな か難し いとこ ろ
があると いうの はよく理 解して おりま すが、 医療現 場の医 療機器の 品目数 という のは20~
30万ござ います 。そうす ると、 年間に 市場投 入でき る製品 数を数千 、数万 の規模 へ拡大 で
きる必要 があり ます。現 状は新 医療機 器5件 になっ ており ますけれ ども、 これが もっと ず
っと増える システ ムにして いくべ きだろ うと思 ってお ります 。
以上でございま す。あり がとう ござい ました 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続いて 、ゲノ ム・遺伝 子治療 に関し て、宮 野悟東 京大学 医科学研 究所教 授から お願い い
たします。
■宮野悟 東京大 学医科学 研究所 教授
皆、年 をとり ます。60歳、65歳を過 ぎても 何とか 働
き続け、 互いを 支えてい かなけ ればな らない 日本社 会が到 来しよう として おりま す。そ う
簡単に寝 つくわ けにはい きませ ん。介 護の仕 組みは ありま すが、一 人の寝 たきり の患者 さ
んは、家 族を消 耗させ、 労働力 を奪い 、ひい ては国 力を減 じます。 超高齢 化社会 に備え 、
健康寿命を 延ばす 施策を今 仕込む ことが 必須で す。
2003年の国際 ヒトゲノ ム計画 の完了 から10年が経 ち、技 術革新に より、 誰もが 自分の ゲ
ノム情報 を利用 できる時 代が始 まろう として おりま す。100ドルで、わずか 数時間 でヒト の
ゲノム情 報を読 み取るシ ークエ ンス技 術の開 発が進 んでお ります。 そして 、ゲノ ムに蓄 積
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した変異 が原因 であるが んや、 遺伝子 が本来 の働き をして いない患 者さん の全ゲ ノム情 報
をシーク エンス し、臨床 情報と あわせ て翻訳 ・解釈 して、 患者さん に治療 や予防 として 返
すこと、す なわち 「臨床シ ークエ ンス」 が始ま ろうと してお ります。
日本人 のゲノ ムは比較 的均一 ですが 、それ でも多 様です 。そのた め、薬 の副作 用の出 方
や疾患の リスク も多様で す。今 、元気 な生活 をして いる誰 もが、介 護を受 けるよ うな状 態
にはなり たくな いですし 、病気 になり 副作用 のある 薬を処 方されて 苦しん だり、 効かな い
薬を乗り かえて いくよう な医療 は受け たくあ りませ ん。日 本人の2 分の1 が人生 のどこ か
の時点で がんに 直面しま す。慢 性腎透 析を必 要とす る患者 さんは、 現在30万人を 超えて い
ます。そ の原因 の多くは 糖尿病 性腎症 からの 移行と 考えら れていま す。遺 伝的バ ックグ ラ
ウンドに よるア ルツハイ マー病 も深刻 です。 医療を 受ける よりも、 ヘルス ケアに とどめ て
おきたいと 誰もが 考えるで しょう 。
個別化 ゲノム 医療・予 防の実 現は、 これら 一連の 課題を 解決に導 くもの です。 超高齢 化
1 番を 走 っ てい る 日 本が こ の 課 題を 解 決 すれ ば 、 こ れか ら 超 高齢 化 社 会を 迎 え る 海外 の
国々に及 ぼす影 響は大き いと考 えます 。また 、副作 用など の予測が 次第に 可能に なって き
ておりま す。日 本が個別 化ゲノ ム医療 ・予防 を先導 的に実 現すれば 、ゲノ ムとし て共通 性
のあるアジ ア人の 人々への 波及効 果があ ります 。
さらに、この実 現には新 規の治 療法・診 断法の 開発が 必須で す。これは 2兆円 の医薬 品・
医療機器 の輸入 超の解決 の切り 札とし て使え ます。 そして 、同時に 、それ を支援 する全 ゲ
ノム遺伝子 診断・ 臨床支援 に関わ る検査 、情報 、保険 などの 産業が発 展しま す。
では、 個別化 ゲノム医 療の実 際がど のよう に行わ れてい るのか。 我が国 でも準 備は始 ま
っており ますが 、米国の 事例を 3つ、 スライ ド12~14に示しており ます。 メディ アが取 り
上げてい るため に、まれ な遺伝 性疾患 になっ ており ますが 、これら は象徴 的な事 例と御 理
解くださ い。今 後、がん 、循環 器系、 脳疾患 、小児 科、血 液疾患な ど、さ まざま な疾患 の
予防と医療 に展開 していき ます。
また、米国Mayo Clinicは、5年 以内に10万人の 全ゲノ ム情報 のデー タをと り、電子カ ル
テとリン クさせ ます。専 用のコ ンピュ ーター 棟も建 設して おります 。これ までは 全ゲノ ム
シークエ ンス解 析ではあ りませ んでし たが、 がん関 連遺伝 子の変異 と治療 法及び 治療結 果
のデータ ベース 化をして おり、 それに 基づい て治療 が行わ れており ます。 フラン スでは 、
遺伝子検 査体制 を既に国 として 整備し ており ます。 病院で 遺伝子検 査をす るので はなく 、
28カ所に設 置した センター で行っ ており ます。
こうし た中、 我が国の 強みを 生かし た個別 化医療 ・予防 の方策を レジュ メにま とめさ せ
ていただい ており ます。
まず 、
研究 環境の 整備とし て、個別化 ゲノム 医療の センタ ーを数カ 所設置 するこ とです 。
これは米 国NIHヒトゲノム研 究所と 同様の やり方 でござ います 。そし て、バ イオバ ンク、コ
ホート研 究など の基礎研 究の基 盤の強 化です 。科学 的な論 文を書い て終わ りとな らない よ
うに運営す ること が肝要だ と考え ており ます。
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次に、 インフ ォマティ クスの 環境で す。ゲ ノム個 別化医 療・予防 の重要 な機能 が、情 報
の利活用 、デー タの解析 です。 バイオ インフ ォマテ ィクス でなく、 メディ カルイ ンフォ マ
ティクス センタ ーの整備 が必要 です。 また、 ナショ ナル・ メディカ ルクラ ウドを 構築す る
ことで、日 本の法 律下にあ る計算 資源を 提供で きます 。
予防の 方策は 「宝の山 」と呼 ばれて いる特 定健康 診断等 々の情報 とゲノ ム情報 の融合 で
す。この データ に個人のDNA情報を 垂らす と、DNA情報のつ いた過去 から数 十年に わたる 時
間軸の入 った、世界に 類のな いデー タが生 まれま す。こ の時間 軸の入 ったデ ータから 、個 々
人の病気 の予防 と健康に フィー ドバッ クでき る、ゲ ノム情 報に補強 された 予防の ための 情
報をデー タマイ ニングで きます 。呉市 モデル 「ヘル スケア やまと」 などと 合わせ たモデ ル
を使えば、 医療費 を大きく 削減す ること ができ ると考 えてお ります。
また、米 国オバ マ大統領 はゲノ ム個別 化法案 を提出 した方 ですが、彼 がNIH所長にフラ ン
シス・コ リンズ 博士を 指定し 、現 在、ゲ ノム個 別化医 療をア メリカで は推進 してお ります 。
来年1月 には、20カ国か ら政策 担当者 と専門 家を呼 び、個 別化ゲノ ム医療 のグロ ーバル 化
について議 論する ことにな ってお ります 。
以上でございま す。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続いて、創薬シ ーズにつ いて、 お二人 からお 話を伺 います 。
最初に、間野博 行東京大 学医学 部教授 からお 願いい たしま す。
■間野博行 東京大 学医学部 教授
おはようござ います 。間野 でござい ます。
では、早速、発 表に入ら せてい ただき ます。
例えば 、これ まで胃が んとか 肺がん という のは、 1つの 疾患単位 と考え られて おりま し
たが、遺 伝子変 異プロフ ァイル が明ら かにな るにつ れて、 単一と思 われて いたが んが実 際
には症候 群であ って、そ れぞれ 異なっ た遺伝 子変異 に基づ くサブタ イプの 集まり である こ
とが明ら かにな ってきま した。 これは 、既に 医療の 場で実 際に応用 されて おりま して、 例
えば、今 は、肺 がんです と、ま ずEGFRの変異 があれ ばイレ ッサ、EML4-ALKであれ ばザー コ
リと、発 がん原 因をまず 遺伝子 診断し て、そ れで薬 を選ぶ というこ とがも う世界 中で普 通
に行われ る時代 になって います 。つま り、こ れから ゲノム あるいは エピゲ ノムの 情報に 基
づく個別 化医療 というの は、ま ず、が んの世 界から 始まり 、やがて それは がんだ けでは な
く遺伝性 疾患、 生活習慣 病、あ るいは 変性疾 患や自 己免疫 疾患等に 広がっ ていき 、医療 の
場で主流に なるの は世界的 に間違 いあり ません 。
現在の 我が国 の医療費 の収支 バラン スを改 善する ために も、この ような 潮流に おける 医
学の臨床 上の重 要な発見 ・知財 ・製剤 を我が 国が可 能な限 り多く保 有する ことが 極めて 重
要なポイン トにな ると言え ます。
そこで、以下の 点を幾つ か私の ほうか ら提案 させて いただ きます。
まず、 1ペー ジの「1 .医療 応用を 目指し た医学 研究の 戦略的テ ーマ設 定と長 期的サ ポ
ート」を述 べさせ ていただ きます 。
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これま で我が 国のアカ デミア から医 療シー ズとし て提唱 したもの が、実 際に臨 床試験 の
第3相で 成功し たという のは、 極めて 数が限 られて おりま した。で も、こ れは別 に日本 だ
けではなく て、世 界中でも 非常に 困難な わけで す。
最後の ページ の添付資 料を御 覧いた だきた いので すが、 基礎研究 の成果 で得ら れたシ ー
ズを、研 究者側 は薬の候 補と考 えて、 それを 製薬会 社ある いはベン チャー に渡す 形にな り
ます。と ころが 、それが 実際に はなか なか医 療に役 に立た ないわけ です。 どうや ってこ の
溝を埋め るのか 、どうや って医 療上実 際に役 に立つ 知財を 、あるい は製剤 のもと を開発 で
きるのかと いうこ とが世界 中のア カデミ アのテ ーマで す。
例えば 、がん に関して 言うと 、米国 は非常 に戦略 的なテ ーマ設定 を行い ました 。がん に
ついて、 どうや って実際 に役に 立つ発 見ある いは知 財を国 が保有す るかと いうこ とに対 し
て、米国で は大規 模な400億円近い予 算を使 ったが んゲノ ム解析を 選んだ わけで す。アメ リ
カでは「The Cancer Genome Atlas(TCGA)」というNIH主導の プロジェ クトを スター トして 、
ここの右 側で書 いてあり ますよ うに、 非常に 大規模 な全エ クソン解 析を行 ってい ます。 ア
メリカが 現実的 であるの は、単 にゲノ ム解析 をする だけで はなくて 、それ を可能 にする よ
うな技術 開発も 同様にサ ポート しよう とした ことで ありま す。図の一番 右側に ある「$1000
genome grant」プロジェク トとい う形で、1,000ドルでヒト のゲノム をフル シーク エンス で
きるよう な機器 開発をサ ポート すると いう非 常にプ ラクテ ィカルな 、しか も大規 模な計 画
を行った わけで す。実際 、現在 、次世 代シー クエン サーと して使わ れるも のの多 くは、 こ
こでサポー トされ てやがて ベンチ ャーに 渡され たもの たちで す。
もとの ページ に戻って いただ いて、 したが って、 大事な ことは、 資本を 投下す るに見 合
う だけ の 大 き なテ ー マ 設 定 を国 家 戦 略 とし て 立 て るこ と だ と 考 えま す 。 今 「The Cancer
Genome Atlas」という400億円ぐ らいの 予算を 申し上げ ました が、それ だけで はなくて、例
えば、御 存じの ように、2010年度から 米国で は「BRAIN initiative」とい う非常 に大規 模
な脳プロ ジェク トをスタ ートし ました 。これ らは、 いずれ も医療福 祉・医 療産業 上の重 要
性と、実 際にそ れが実現 できる のかと いうこ とを、 バラン スを考え た上で 国家が 戦略と し
て立てた プロジ ェクトで す。こ こで得 られた 知財あ るいは 製剤化合 物は、 やがて 米国の 医
療費に返っ てくる わけです 。
これら プラン を戦略的 に立て ること がまず 何より も重要 で、それ を長期 的にサ ポート す
ることも 重要で す。米国で は、当然 のこと ながら、そうい ったプ ロジェク トでは、例えば 、
研究施設 の一部 を建設す る費用 まで普 通にカ バーで きます 。消耗品 と施設 は別の 予算枠 を
必要とす るとい うことは アメリ カでは ないわ けです 。です ので、そ のプロ ジェク トの全 体
を遂行す るため に、どの ような 形で予 算を使 ってい くのが 最適かと いうこ とをも とに、 そ
の予算のバ ジェッ ト・ファ ンディ ングが 行われ ていま す。
3番目 に、そ のような 大規模 な国家 戦略を 立てる 上で重 要な点は 、厳正 な評価 だと思 い
ます。多 分、こ こにいら っしゃ る方々 も、多 くの海 外の大 規模なプ ロジェ クトの 審査員 を
された方 もいら っしゃる と思い ますが 、諸外 国では 、当然 のことな がら、 自国外 の有識 者
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による書 面審査 が広く行 われて おりま す。例 えば、 先ほど の米国の がんのTCGAでは、最 初
の3年間 をPhaseⅠとして、 その成 果を厳 正に判 断した 上で、 最終的にPhaseⅡに行くか ど
うかが決め られま した。
ですの で、大 規模な 予算を 投下す る上で は、評 価の公 正性 、透明性 を担保 するた めにも 、
秘密保持 契約を 交わした 上で、 海外研 究者に よる厳 正な評 価を取り 入れる という のは有 効
なのではな いかと 考えてい ます。
我が 国は先 進国では ありま すが、 実は疾 患ゲノ ム解析 では、圧 倒的に 先進国 の中で は
遅れてい ます。 例えば、 単純に 次世代 シーク エンサ ーの数 を比べて も、1 位米国 、2位 中
国、4位 英国、 5位韓国 と並び ますが 、我が 国は台 湾の次 の第13位で、こ の機器 の保有 数
は、現状 では、 もうちょ っと増 えてい ますが 、諸外 国はも っと増え ていま すから 、先進 国
の中では 圧倒的 にゲノム 解析が 遅れて いる国 です。 しかも 、実際に ゲノム 解析を してみ る
と、ボト ルネッ クはコン ピュー ターの スピー ドにな ります ので、我 が国で は、そ れをサ ポ
ートする ような 生物学に 特化し たスパ コンシ ステム という のが極端 に少な い先進 国と言 え
ます。
例えば 「京」 があるで はない かと思 われる 方もい らっし ゃると思 います が、あ れは非 常
に大規模 な、宇 宙の爆 発とか を、様 々な要 素を取 り入れて 、多 くのCPUを使って大 変大き な
ジョブを 計算す るのに最 適化し たシス テムに なって いて、 超大型ス パコン から考 えると 、
ヒトのゲ ノムを 読むとい うのは すごく 小さな ジョブ になっ てしまう のです 。だか ら、例 え
ば、2,000人のゲノ ム解析を2,000個のジョブ で投げ るとい うことは 、今の 「京」 のシス テ
ムでは現 実的に は不可能 になっ ていま す。生 物学に 特化し て、かつ 、それ を実際 に生物 統
計学者、 あるい はインフ ォマテ ィシャ ンが維 持する ような スパコン システ ムとい うのが 日
本中に幾 つも必 要なはず なので すが、 それが 圧倒的 に足り なくて、 現行シ ステム の能力 は
完全に飽和 してい ます。
2ペー ジの下 の「3.臨床 試料・臨床 情報の 有効活 用」ですが、研 究が進 めば進 むほど 、
胃がんや 肺がん なども何 十種類 ものサ ブタイ プに分 かれる ことがわ かって きます 。つ まり 、
実際に患 者さん の試料を 解析し ないと 、それ ぞれの がん種 の全容は 明らか になら ないわ け
です。です ので、 それをい かに国 家戦略 として 利用し ていく かという ことが 必要で す。
重要な のは、 1つは、 例えば 「(1 )倫理 指針の サポー ト」です 。実際 に日本 全体で 大
規模なが んゲノ ム解析プ ロジェ クトを 始めま すと、各施設 のIRB、つまり、倫理審 査委員 会
の様々な 自主規 制が存在 してお り、多 数の施 設を組 み込ん だゲノム 解析プ ロジェ クトを す
るのは極 めて難 しいです 。もう 少し現 実的な 運用ガ イドラ インみた いなも のを設 定して 、
研究に使い やすい ようなシ ステム にして いただ ければ と思い ます。
最後の ページ の「(2 )疾患 検体バ ンクの 整備」 は、こ れは当然 のこと であり ますが 、
その次の 3番目 としては 「企業 へのア クセス 」です 。我が 国では、 企業が 薬剤開 発のた め
に臨床試 料にア クセスす ること が極め て難し い国に なって いますの で、そ れは日 本にと っ
ても、あ る意味 不幸なこ とであ ります から、 例えば 、臨床 試験に関 連して 集めた サンプ ル
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について は、そ のゲノム 解析を 製薬会 社が希 望すれ ばでき るという 形にし て、こ の薬を 使
ったとき に有効 な人は、 何のゲ ノム情 報を選 べば予 測する ことがで きるの かとい うこと が
臨床試験 で一緒 にわかっ てくる という ような システ ムをつ くってい くこと が、製 薬企業 に
とっても非 常に重 要なので はない かと考 えます 。
以上です。あり がとうご ざいま した。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続いて、満屋裕 明熊本大 学大学 院医学 部教授 からお 願いい たします 。
■満屋裕 明熊本 大学大学 院医学 部教授、NIH・米国国 立癌研 究所部長
資料 5-1 を御覧 く
ださい。 私は「HIV-1感染症とAIDSの治療 薬の研 究・開 発の経 験からみ たNIH」というこ と
でお話し申 し上げ ます。
レジュ メを見 ていただ きます と、1984年に私は本 格的なAIDS治療薬開発 の研究 に乗り 出
した わけ でご ざい ます 。 最初 の標 的は 、ウ イル ス の逆 転写 酵素 と決 めて ご ざい ます 。HIV
はNCIの内部 から供 与を受け ました 。
最 初は 、当然 、手 がかり 等何もご ざいま せんで したが 、
やがて同 僚の医 師がカフ ェテリ アでの 雑談で 、suraminというトリパ ノソー マ治療 薬に逆 転
写酵 素阻 害効 果が あ ると いう こと を聞 い てき まし て、 私の そ の時 の上 司は すぐ にsuramin
を入手し たわけ でござい ます。こ のあた りは、NIHが巨大な バイオメ ディカ ルコン プレッ ク
スである ことか ら、色々 な情報 や物が すぐに 手に入 るとい うNIHのNIHたるゆえん である と
思って感 心した わけでご ざいま す。このsuraminは、治療 薬とは なりませ んでし たが 、幸い 、
私はその 後、世 界で最初 の3個 のAIDSの治療 薬につ ながる 実験デー タを得 たわけ でござ い
ます。
5-2 の図を 御覧いた だきた いと思 います 。それ は、右 上に書い ており ます先 進的な 基
礎研究が トラン スレーシ ョナル ・リサ ーチと 緊密か つ意図 的に結合 された 中で、 左上に 書
いており ます十 分な研究 資金が 用意さ れてい て初め て可能 であった と思い ます。 実は、 私
の発見は、ヌクレ オチド 誘導体 に一定 の化学構 造があ れば、AIDSの病原体(HIV)に対し て
ヒトの細 胞で強 力な活性 を発揮 すると いうも のでし たが、そ の科学的 な立証 には、NIH内部
のいわばワ ールド クラスの ケミス トの絶 大な協 力が功 を奏し ました。
こ の 発 見 に つ い て の 知 財 関 連 作 業 は 、 左 に 書 い て お り ま す Office of Technology
Transfer(知財オフ ィス)が これを勧 奨しま して、ま た、動物実 験、PhaseⅠ試験など がNIH
内で行わ れまし たけれど も、そのた めの500グラムあ るいは1キ ログラム というGNPレベル の
Bulkの準備には 、破格の 追加の 研究費 が必要 でした が、そ の資金は 、左中 ほどに 書いて お
ります、NCI内に設 けられて おりま したDrug Decision Networkでのヒアリ ングで 追加予 算
が認めら れまし て、毒性 試験、 安全性 試験やPK-PDの検討が、 これもNCIの内部で 行われ ま
した。
それら のデー タは全て 集約さ れまし て、FDAに認可を申 請いたし まして、Phase Ⅰ Study
を、これもNCIの内部 で行い ます。これは、当然な がら、中段に 書いてお りますRes Nurses
や統計学 者、あ るいは臨 床薬理 学者等 の協力 が必須 でござ いました が、こ れも内 部でサ ポ
15
ートを受 けるこ とができ ます。 また、 データ の管理 や集約 は、Cancer Therapy Evaluation
Program、右上に書 いており ます「CTEP」が担当 いたし ました 。Licensingへの努 力は、 継
続的にOffice of Technology Transfer(OTT)が行 い、や がていわ ゆるメ ガファ ーマが 製
造・販売を 担当す るように なりま して、NIHに巨額の ロイヤ リティー が入る という 構図で あ
ったと存じ ます。
このよ うな私 自身の経 験から 、私は 、NCIあるいはNIHは「知的ク ラスタ ー」で あろう か
と存じます 。
2ペー ジを御 覧くださ い。こ の「知 的クラ スター 」とい う言葉は 、実は 、笹月 先生が 国
立国際医 療セン ターの総 長でい らっし ゃった ときに おっし ゃってい たもの ですが 、「知 的
クラスタ ー」と は、密度 が高く 、相互 に緊密 に連携 して集 積してい る様子 を形容 する言 葉
でございま して、 次のペー ジに書 いてお ります 。
私は、 この点 で、NCI、NIHはその核 となっ て、科 学的知 見、技術 的ノウ ハウな どの知 的
な価値が 蓄積さ れ、同時 に周辺 産業機 関が糾 合いた しまし て、相互 補完・ 強化さ れてイ ノ
ベーショ ンの連 鎖が発生 し、人材、企 業等の 求心力 が高ま り、知識・技 術の集 積が加速 化・
高度化され る。こ れがNIHの本 体では ないか と考え るわけ でござ います。
当然、国 民・納 税者への 貢献が いつもNIH周辺、あ るいは 議会で はうた われま して、高 度
の基礎研 究の知 見が求め られる 一方で 、治療 薬ある いは治 療法の開 発が目 的的、 意図的 に
進められ て、そ のための システ ムが、 既に用 意され ている というと ころで はない かと存 じ
ます。
しかし 、その 基本は、 何とい いまし てもResearcherのイニシアチ ブでご ざいま して、 研
究費はSupplies/ServicesとPersonnelの2項 目のみ で、PIの裁量が 非常に 大きい という 点
が特徴で あろう かと存じ ます。 アカデ ミアは 、ハイ リスク 、ハイイ ンプッ トのプ ロジェ ク
トを進め るのが 常でござ いまし て、当然で ござい ますが 、HIVの治療、ゲノム プロジ ェクト 、
遺伝子治 療等、 いずれも 不可能 あるい は極め て困難 と思わ れたもの がNIH発でござい ます 。
最後のページに 「NIHのFunding Policyにおける 5つの 決定基 準」がご ざいま す。
peer-reviewが重要で、 ほかの 先生方 も言わ れまし たが、 高いレベ ルの科 学研究 に関わ る
ものであ って、 そして、 新しい 知識の 創出に つなが る可能 性があっ て、疾 患の予 防・治 療
の進歩に つなが ると思わ れるも の、ま た、複 数の科 学領域 での主要 な発見 をもた らすと 思
われるも の、国民の 健康に重 要な一 定の頻 度と死 亡率を 有する 特定の疾 患に対 応する もの 、
また、研 究の進 展に寄与 する科 学的な 下部構 造を形 成・維 持するも の、こ れが5 つの決 定
基準でござ います 。
以上でございま す。あり がとう ござい ました 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
本日は 、世耕 官房副長 官にも 御出席 いただ いてお ります 。途中で 御退席 される と伺っ て
おりますの で、こ こで一言 御挨拶 をお願 いした いと思 います 。
■世耕内 閣官房 副長官
先生方 、おは ようご ざいま す。本 日、衆議 院で予 算委員 会が開 か
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れており、 遅れて きて、そ して早 く帰る という 失礼を お許し いただき たいと 思いま す。
本日は 、お忙 しいと ころ 、この 調査会に 御出席 をいた だき 、心から 御礼を 申し上 げます 。
私から 、この 専門調査 会にお いて、 高血圧 症の治 療薬の 研究事案 、いわ ゆるバ ルサル タ
ン事件に 関し説 明せよ、 と前も って指 示をし 、さき ほど報 告させて いただ いた次 第でご ざ
います。 現在、 研究現場 での不 正が頻 発をし ており ますが 、本件は 、非常 に重要 な問題 だ
と思ってお ります 。
バルサ ルタン 事件につ いては 、しっ かりと 原因を 究明し ないと 、いく ら、日 本版NIHの創
設と大き なこと を言って いても 、日本 の臨床 研究、 医療関 係の研究 そのも のが世 界に信 用
されなく なって しまうと 思いま す。ま た、各 研究分 野での 不正につ いても 、特に 私的流 用
は、絶対 にあっ てはなら ないの で、徹 底的に 追求し 、対策 を取って いきた いと思 ってお り
ます。
また、 この2 つの事案 の根底 には、 医療分 野にお ける様 々な資金 の配分 がきち んと戦 略
的かつフ ェアに 行われて いるの か、あ るいは 、現場 にとっ て使い勝 手の良 いもの になっ て
いるのか という 課題につ いても 問いか けてい る面が あると 思ってお ります 。この 2点を 単
なるスキ ャンダ ル事件と して捉 えるの ではな く、医 療研究 のあり方 の議論 の大き な実例 の
一つとし て捉え 、原因究 明をし っかり と、特 にバル サルタ ン事件は 、徹底 的にこ れから も
調査し、対 策を進 めていき たいと 思って おりま す。
さきほ ど、有 識者とし て御参 加をい ただき ました 先生方 のお話も 聞かせ ていた だきま し
たし、あ らかじ め、資料 もいた だいて おりま したの で、あ らましは 目を通 させて いただ き
ました。 現場の 声をよく 聞いて 、実際 、実務 に携わ ってい らっしゃ る、そ して、 世界で 勝
負し、成 果を上 げていら っしゃ る研究 者の皆 様方の 声を聞 いて、日 本の医 療分野 の研究 開
発のあり 方につ いて 、
委員の 先生方 にしっ かりと 検討し ていた だきたい と思っ ており ます 。
医療分 野の研 究開発に 関する 総合戦 略策定 に当た り、引 き続き委 員の先 生方、 また、 有
識者の先 生方か ら、経験 を踏ま えた貴 重な御 意見、 御提案 を賜って 、すば らしい 日本の 研
究開発戦 略を作 っていき たいと 思いま すので 、御 協力を どうぞ よろしく お願い いたし ます 。
本日はあり がとう ございま した。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
それでは、発表 を続けさ せてい ただき ます。
続いて 、創薬 シーズ及 びがん につい て、上 田龍三 愛知医 科大学教 授から お願い いたし ま
す。
■上田龍 三愛知 医科大学 医学部 教授
上田で ござい ます。 私に与え られま した2 つのテ ー
マに関して 、お話 をさせて いただ きたい と思い ます。
資料は6-1、 6-2で ござい ます。
まず、 第1の 課題「我 が国の 今後の がん研 究のあ りかた 」に関し て御説 明させ ていた だ
きます。 資料6 -2の1 枚目に ござい ますよ うに、 これま で3期に わたり 、対が ん10カ年
計画が推 進され てきてお り、こ の間、 平成18年には 「がん 対策基本 法」が 成立し 、その 基
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本計画も昨 年6月 に第2期 目が閣 議決定 をされ ており ます。
今年8 月には 「がん対 策基本 法」に 基づき 、我が 国全体 で進める がん研 究の今 後のあ る
べき方向 性と具 体的な研 究事項 につき まして 「今後 のがん 研究のあ り方に 関する 有識者 会
議」にて 検討さ れ「根治 ・予防 ・共生 ~患者 社会と 協働す るがん研 究~」 をキャ ッチフ レ
ーズとし て報告 書が提出 された ところ でござ います 。その 概要を資 料6- 2の2 枚目に ま
とめており ます。
文科省 におい ては「が ん研究 の今後 の在り 方に関 する検 討会」を もち、 本年度 8月に は
中間報告 がまと められ、 ライフ サイエ ンス委 員会に 提出し たところ でござ います 。その 概
要が資料 6-2 の3枚目 でござ います 。この 報告書 の内容 は、有識 者会議 の最終 報告に も
反映されて おりま す。
両報告 書で強 調されて いる具 体的な ポイン トとい たしま しては、 資料6 -1の 1ペー ジ
の中ほど にあり ますよう に、基 礎・基 盤研究 より世 界をリ ードする 優れた 知の創 生を継 続
すること が最も 重要であ り、エ ビデン スに基 づいた 対がん 戦略を基 本とし た新た な知の 創
出が不可欠 である というこ とです 。
また、 広範な 基礎研究 の知見 を臨床 応用研 究へ橋 渡しす る取組み を推進 し、社 会に貢 献
すること が必須 であるこ と。そ のため 、世界 の科学 やがん 研究にお ける新 しい展 開や動 向
を正しく 把握し 、政策に 反映で きる統 合的で 継続的 に検討 する組織 が必須 である ことが 挙
げられてお ります 。
すなわ ち、資 料6-2 の3枚 目右上 の図に ありま すよう に、がん 生物学 として の基礎 研
究と臨床 応用を 目指した 研究は 、まさ に車の 両輪と して連 携を強化 する長 期的視 野を持 っ
た取組み が重要 であり、 実用化 を目指 した一 貫性、 計画性 のあるト ップダ ウン型 戦略と と
もに、アカデ ミアの 自由な発 想を鼓 舞する ボトム アップ 型の研 究支援を より一 層充実 させ 、
両者が密 接に相 互作用し ながら 研究を 展開す ること が不可 欠である という ことで ござい ま
す。
同時に 、がん 研究の加 速化に は、臨 床で得 られた 知見か ら基礎研 究への フィー ドバッ ク
による本 態解明 に取り組 む「Reverse Translational Research」研究を推 進する ことが 重
要であるこ となど でありま す。
資料6 -1の 2ページ 「充実 が求め られる 具体的 な研究 開発分野 」の3 )に書 いてお り
ますよう に、「 新しく進 展して いる学 問領域 との融 合研究 分野」の 促進に 、今後 のがん の
本態解明 や、飛 躍的な診 断法・ 治療法 開発に 向けた ブレー クスルー につな がるも のと期 待
されてお ります 。この分 野の開 拓・開 発に携 わる若 手研究 者の育成 は、国 家にと って非 常
に重要な課 題であ ると思い ます。 若い英 知によ る知の 創造に 期待する もので ござい ます。
専門調 査会で は、今後 のがん 研究の あり方 を議論 する際 、第一線 のがん 研究者 により 、
総合的に議 論して まいりま した経 緯を尊 重して いただ けるこ とを期待 いたし ており ます。
続きま して「 2.我が 国の創 薬が抱 える課 題、展 望及び とるべき 方策」 に関し まして 、
私の抗体薬 開発に 携わった 経験か ら、思 うとこ ろを述 べさせ ていただ きたい と思い ます。
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創薬研 究の重 要性が叫 ばれて 久しく なりま す。そ の後の トランス レーシ ョナル ・リサ ー
チの推進 でも、 創薬の研 究は重 要な課 題で、 このと ころの 「革新的 医薬品 ・医療 機器創 出
のための 5カ年 戦略」、 これを 受けた 「医療 イノベ ーショ ン5カ年 戦略」 や「創 薬支援 ネ
ットワー ク」の 構築、そ れに、 今回の 有識者 からの 提言に も、その 重要性 や課題 はほぼ 網
羅されて おりま す。総論 や各論 として の問題 点を並 べ挙げ ることは 、もう 十分過 ぎると 思
われます。 どこか らその風 穴を本 当に開 けるか 否かが 問われ ているの が今だ と思い ます。
私ども が産官 学の共同 で開発 いたし ました 、日 本初の 抗がん 抗体薬で あるMogamulizumab
の開発経緯 を簡単 に紹介さ せてい ただき ます。 資料6 -2の 5枚目で ござい ます。
シーズ として のケモカ インは 、この 分野の 世界的 権威者 で基礎研 究者で ありま す東大 の
松島教授 から、 当時は成 功して いなか ったケ モカイ ンレセ プターに 対する 抗体作 成の必 要
性が提唱 されま した。企業が1999年に抗CCR4抗体の作成に 成功し ました 。さ らに、企業は 、
独自に抗 体の機 能を、従 来の力 価を100倍、1,000倍に亢進 する新た なポテ リジェ ント技 術
を開発し、 特許を 獲得して おりま す。
我 々を 中心 とし たア カ デミ アが この 新抗 体を 用 いて 、非 臨床 研究 を行 い 、臨 床的 にATL
の治療抗 体薬と しての位 置づけ を確固 とした ものに いたし ました。 このデ ータを もとに 企
業戦略と して、ATLという希少 疾患に もかか わらず 商品と して開拓 するこ とを決 定し、臨 床
試験を開 始しま した。患 者さん への治 療で非 臨床で の効果 が見事に 証明さ れ、日 本で初 の
がんに対す る抗体 薬として 承認さ れまし た。
資料6 -2の 6枚目に 示しま すよう に、ト ランス レーシ ョナル・ リサー チ、臨 床治験 、
加えて、 診断用 のキット の開発 におけ る役割 分担と 密接な 協力関係 が示さ れてお ります 。
その結果、 抗体薬 ・診断キ ットの 日本初 の同時 承認に 結びつ きました 。
これら の経験 をもとに 、とる べき重 要な方 策を、 私なり の取っ掛 かりを 提言し てみた い
と思います 。資料 6-1の 4ペー ジ、資 料6- 2の7 枚目を お願いい たしま す。
シーズ の発掘 ・開発に 関して は、従 来から 言われ ており ますとお り、知 財の管 理、シ ー
ズの正し い効果 ・システ ムの工 夫、全 体を通 しての 得意分 野や専門 分野を 異にす る企業 ・
アカデミ アの力 を結集す るオー プンイ ノベー ション の活性 化は 、非常に 重要で ござい ます 。
そのため には 、アカ デミアと 企業と が、また企 業同士 の継続 的なマッ チング 制度を 構築し 、
相互の継続 的なコ ミュニケ ーショ ンを持 つこと が必要 である と思いま す。
トラン スレー ショナル ・リサ ーチに 関しま しては 、臨床 プロトコ ルの評 価や支 援をす る
機 構 が 重 要 で す 。 こ れ は 先 ほ ど 満 屋 先 生 の 話 に も 出 ま し た 、 NCI に お け る CTEP (Cancer
Therapy Evaluation Program)にも相 当する もので すが、 その設置 を期待 いたし ており ま
す。
日本の 大学や 研究所を 中心に 、多く のシー ズがあ ると言 われてお ります 。しか し、そ れ
が薬剤と して開 発する価 値があ るか否 かの最 低限の 薬効と か毒性、 血中動 態、品 質コン ト
ロールなど の非臨 床試験を 安価に 試行で きる機 関・窓 口の設 置が肝要 であり ます。
臨床治 験に関 しまして は、日 本のよ うに臨 床試験 を行う ベンチャ ーや企 業が少 ない現 状
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では、医 師主導 治験を実 施する ことが 非常に 重要で ござい ます。臨 床第1 相とか 前期第 2
相を行う 医師主 導治験に 要する 費用を 極力低 価格に する。 すなわち 、アカ デミア プライ ス
を設定し 、支援 する必要 があり ます。 現実に はこの 費用が 膨大で、 一般に は医師 主導の 治
験が実行 できな いのが現 実でご ざいま す。医 師主導 治験で 有効な結 果が得 られま すと、 こ
こで晴れ て企業 が臨床の 後期第 2相、 第3相 の治験 を行う ことにな ります 。この 橋渡し を
首尾よく 運びま すと、日 本で生 まれた シーズ が臨床 に導出 できる可 能性の 確率が 非常に 上
がってくる ものと 思います 。
これか らの医 療で、宮 野先生 や間野 先生か ら御紹 介され たように 、クリ ニカル シーク エ
ンスに基 づくゲ ノム解析 結果の 臨床導 入が一 般的に なると 思われま す。現 在、全 国で臨 床
検体のバ イオバ ンクの整 備が開 始され ており ます 。この 際、バンキン グシス テムに 関して 、
目的に応 じた全 国共通の プロト コルの 作成が 急務で ござい ます。正 確な臨 床情報 を備え 、
適切にバ ンキン グされた 臨床試 料を全 国から 収集し てゲノ ム解析で きるこ とが、 日本か ら
のゲノム解 析の最 大の強み となる ことを 期待し ており ます。
また、 昨今の 創薬開発 の主体 は、そ の主役 は分子 標的薬 でござい ます。 この際 、標的 を
有してい る疾患 ・組織が 治療対 象とな ります から、 この創 薬が承認 時に、 コンパ ニオン 診
断薬が同 時に開 発される ことが 重要で ござい ます。 そのた めにも、 企業と 臨床と のより 密
接な共同 開発が 望まれる ところ でござ います 。グ ローバ ル治験 への参入 のため の医療 体制 、
治験体制の 国際化 は避けて 通れま せん。
最後に 、日本 初のすば らしい 創薬が 一刻も 早く、 また一 つでも多 く患者 さんに 届けら れ
るように 、産官 学の協力 及び支 援体制 が整備 される ことが 、現在の 創薬開 発に最 も期待 さ
れているこ とと思 っており ます。
以上、 私ども の経験を 踏まえ ての提 言では ござい ますが 、可能な ことか ら早急 に踏み 出
していただ きたい と、ここ で切に 念ずる もので ありま す。以 上でござ います 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続いて、感染症 につきま して、 渡邉治 雄国立 感染症 研究所 長からお 願いい たしま す。
■渡邉治 雄国立 感染症研 究所所 長
「 感染症 分野に おける 課題及び とるべ き方策 」とし て
の意見を述 べさせ ていただ きます 。
感染症 は、今 まであっ た課題 と少し 違って おりま す。ま ずは「グ ローバ ル化の 中での 国
際的課題 」です が、皆さ ん御存 じのよ うに、2003年に中国 ではやり ましたSARSコロナウ イ
ルスは、 数カ月 の間に29カ国に 広がり 、その 結果、 数百人 以上の死 者を出 したと いうこ と
と、30~50億ドルの経済 的なダ メージ もあっ たと言 われて おります 。その 後、御 存じの 新
型インフ ルエン ザ、また 、現在 問題と なって いるMERSコロナウイル スのよ うなも のも、 一
旦それが 発生す ると、感 染症は 社会的 、経済 的な問 題も起 こす、そ ういう 国際的 な課題 で
あります。
特にエ イズ、マラリ ア、結核に おいて は、今 現在 、WHO、国連等で これに 関して の特別 予
算が取り 上げら れており まして 、これ に対し てのワ クチン 開発等が 行われ ており ますが 、
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効くワクチ ンとい うものが なかな か簡単 には開 発され ていな いのが現 状です 。
資料の C)で すが、特 に問題 となっ ており ますの は、色 々な薬剤 を治療 に用い ている わ
けですが 、微生 物のほう も姿を 変えて 、薬剤 に対し ての耐 性菌また は耐性 ウイル スとい う
ものがど んどん 出現して おりま して、WHOは2011年を「 薬剤耐 性との 闘いの 年」と 名づけ ま
して、こ の耐性 菌問題に 世界が 力を合 わせて 立ち上 がろう というこ とを呼 びかけ ており ま
す。この ように 国際的課 題に対 して感 染症対 策を行 い、そ れに対し て研究 開発を 行うた め
には、国 際的な レベルま たは国 家間レ ベルで の共同 研究及 び連携と いうの が非常 に求め ら
れるとこ ろであ り、これ につい て我が 国がや はりリ ーダー シップを とって いく立 場であ る
と考えてお ります 。
一方、 我が国 のほうに 目を向 けてみ ますと 、現在 、死亡 原因の3 位に肺 炎が位 置づけ ら
れており ます。 特に高度 薬剤耐 性の肺 炎球菌 により 、最後 は治療に 功を奏 さず亡 くなら れ
る方が非 常に大 きな問題 となっ てきて おりま す。また 、高度 医療化ま たは高 齢化と ともに 、
慢性疾患 として の院内感 染症と いうも のも非 常に大 きな問 題となっ てきて いるの が現状 で
あります。
それら に対応 するため の人材 が、我が国 におい てはだ んだん 少なくな ってき ており ます 。
特に、例 えば、 寄生虫学 の場合 におき まして は、1980年代には寄生 虫学の 名を持 つ医学 部
において の講座 が57校ありまし たけれ ども、2008年には27まで減少 してい るとい う現状 が
あります 。また 、細菌 学会の 会員数 を見て みまし ても、平成10年には3,400人以上 いまし た
のが、平 成25年にはそ れが2,600人まで減 少して いると いう状 況があ り、今 後、こ ういう 感
染症対策 に携わ る人材を どのよ うに育 成して いくか という ことは非 常に大 きな問 題であ り
ます。
「今後 とるべ き方策」 といた しまし ては、 先ほど 申しま したよう な国際 的に広 がって し
まう感染 症とい うのが、 新興感 染症及 び再興 感染症 という 形で毎年 新しい ものが 出てき て
おります 。これ らに適切 に対応 してい くため には、 そうい う感染症 がいつ 、どこ で、ど の
程度の規 模で発 生するの か、そ れを早 期に把 握し、 そして 、それに 対する 迅速な 対応を す
る体制を 整えて いく必要 があり ます。 また、 発見さ れまし た微生物 の特性 及び薬 剤耐性 、
そういう ものを やはり迅 速に把 握し、 適切に 対応す る情報 管理シス テム及 び危機 管理シ ス
テムとい うのが 求められ ており ます。 現在はWHO及び各 国のCDC様の国の研 究機関 がそう い
うものを 担って おります けれど も、我 が国の 場合に は、手 前みそで すが、 国立感 染症研 究
所がそれ を担っ ているよ うな状 況にあ ります 。そう いうサ ーベイラ ンス的 な機能 を今後 ど
ういう形 で維持 し、そし て、そ れをよ り強固 にして いくの かという ことが 、この 感染症 対
策にとって 一つ大 きな課題 である と考え ており ます。
そのほ かに重 要なもの は、感 染症が どうい う形で 発生し 、そして 、それ が我々 の生体 防
御機構を どのよ うに逃れ ている のかと いう発 症メカ ニズム を正しく 理解す ること であり ま
す。その 成果に より、対 抗する 措置と いうも のが当 然考え られるわ けであ り、1 つは、 予
防的なワ クチン 開発です 。イン フルエ ンザだ けでは なくて 、ヒトパ ピロー マウイ ルスワ ク
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チンまた は肺炎 球菌ワク チン等 の各病 原体の 型別に 対処し なければ ならな い現状 を打破 す
るために 、それ ら各病原 体の型 別を越 えて効 く万能 的なワ クチンを 今後開 発し、 どんな 新
しい型の 菌やウ イルスが 出たと しても 、そ の万能 的なワ クチン によって 対応で きるよ うな 、
研究開発を 促進し ていくと いうこ とが必 要であ ります 。
当然、現 在、HIV・エイズ及 びマラ リア、結 核に対 しても ワクチン 開発が 世界的 に行わ れ
ておりま すが、 先ほど述 べまし たよう に、相 応の有 効率を 持つよう なワク チンは まだ開 発
されてお りませ ん。今後 、この 辺りも 、国際 的な連 携を深 めること によっ て対応 してい く
ことが必要 である と考えて おりま す。
また 、
薬剤 耐性に 関しまし ては 、新し い抗菌 薬を開 発する 力がどん どん落 ちてお ります 。
特に1990年代に は、日本 がこの 分野に おいて リーダ ーシッ プをとっ ており ました が、な か
なか新し い骨格 を持った 薬剤が 開発さ れてこ ないよ うな状 況にある という ことと 、たと え
開発され たとし ても、そ の適正 使用を 誤って しまっ たため に、すぐ に耐性 菌がで きてし ま
うという ことで 、新しい 抗菌薬 の開発 のスピ ードに 耐性問 題の対応 が追い ついて いない 状
況があり ます。 この辺を どのよ うに考 えなが らやっ ていく のか、そ して、 新しい 抗菌薬 を
開発する 、そう いうシー ズとい うもの をどの ように 求めて いくのか 、その 辺が今 後大き な
問題になっ てくる と考えて おりま す。
このよ うに、 新興・再 興感染 症を含 めて、 感染症 問題と いうのは 新薬や ワクチ ンの開 発
に向けた イノベ ーション の問題 という ばかり ではな く国家 の危機管 理の一 環とし ての問 題
でもあり ます。 それを十 分に確 保して いくた めには 、研究 分野にお ける優 秀な人 材をそ ろ
えていく という ことも、 もちろ ん重要 であり ますけ れども 、そうい う感染 症のサ ーベイ ラ
ンスを含 めた現 状把握及 びそれ に対し ての対 応を迅 速に行 っていく システ ムを恒 常的に 維
持してい くこと が、やは り一つ 大きな 重要な ポイン トと考 えており ます。 そのた めには 、
競争的研 究資金 ばかりで なく並 びに各 対策等 に貢献 するよ うな機関 におけ るin houseの予
算の確保も 重要で あると思 ってお ります 。
以上であります 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
それでは続いて 、精神疾 病疾患 につい て、お 二人か らお話 を伺いま す。
最初に、高橋良 輔京都大 学教授 から、 お願い いたし ます。
■高橋良 輔京都 大学大学 院医学 研究科 教授
京都大 学の高 橋でござ います 。資料 は8- 1
と8-2を ご覧く ださい。
まず、 現在の 脳・神経 ・筋疾 患の研 究の現 状であ ります けれども 、レジ ュメの 最初に 書
きました が、単 一遺伝性 疾患の 主要遺 伝子は 、ほぼ 同定さ れました 。遺伝 性のア ルツハ イ
マー病 、
遺伝 性のパ ーキンソ ン病の 遺伝子 はかな りわか ってま いりまし た。それと 同時に 、
孤発性の アルツ ハイマー 病、孤発性 のパー キンソ ン病に関 しても 、リ スク遺 伝子(Common、
Rare Variant)の 同定が加 速度的 に進行 してお ります 。
2番目 には、 これらの 遺伝子 をもと にした 細胞動 物モデ ルがつく られま して、 病態解 明
22
も大きく進 展して おります 。
3番目 に、そのモ デルに基 づいて 病態が わかり 、そ れに基 づくdisease modifying therapy、
再生医療 の実現 化、例え ば、パ ーキン ソン病 の細胞 移植と か、脊髄 損傷の 細胞移 植治療 と
いうもの が、現 在、実現 化に向 けて加 速度的 に進行 してい るという ことで ござい ます。 す
なわち、 病態解 明から治 療法開 発を一 気通貫 で行う 時代に 突入した という のが、 私ども の
現状認識で ありま す。
これに 対して 今後の課 題と方 策であ ります けれど も、4 つの課題 、そし て、重 点項目 を
2項目挙げ させて いただき ました 。順番 に説明 させて いただ きます。
まず「 1.共 通に必要 な研究 リソー ス、高 度技術 の拠点 形成で多 施設共 同研究 を支援 」
すること が重要 であると 思いま す。今 まで神 経・筋 疾患が わからな い、謎 である と言わ れ
た一番の 理由は 、やはり 脳にア クセス するこ とが非 常に難 しく、他 臓器と 違うと いうこ と
でありま す。理 想的には 、血液 をとっ ただけ で、手 おくれ にならな いうち にアル ツハイ マ
ー病の診 断がで きること を目指 すべき であり ます。 そうい う意味で いきま すと、 疾患の リ
ソースを きちん とまとめ て、そ して、 非常に 進んで おりま すオミッ クスの 解析技 術を用 い
て、診断 あるい はバイオ マーカ ーを同 定して いくと いうこ とが、こ れから は特に 重要で あ
ると思い ます。バイオ リソー ス、これは 組織、血液 、疾患 特異的iPS細胞等も 含みま す。ゲ
ノムもあ ります 。さらに 、患者 そのも のの画 像解析 のデー タの蓄積 も重要 であり ますが 、
こういっ た疾患 リソース の収集 ・研究 拠点、 ゲノム 解析拠 点、オミ ックス 解析拠 点、画 像
解析拠点 を整備 して、そ れぞれ をネッ トワー ク化し て集中 した解析 を行う 。ボト ムアッ プ
の研究が 何とい ってもや はりイ ノベー ション には重 要です が、それ を支援 するた めに、 こ
ういう拠 点をつ くってネ ットワ ーク化 して、 研究の 集中・ 効率・加 速化を すると いうこ と
が重要であ ります 。
2番目 であり ます。こ れも同 様に集 中・加 速化の アイデ アであり ますが 「多施 設連携 に
よる疾患 研究拠 点の形成 による 研究・効率・加速 化」をする ことが重 要であ ると思 います 。
現在、革 新的な さまざま な研究 手法が 出てき ており ます。 疾患特異 的なiPS細胞、TALEN、
CRISPRといった 革新的な 遺伝子 改変技 術、さ らに、 我が国 が世界を 先導し ており ますマ ー
モセット モデル が導入さ れてき たとい うこと でござ いまし て、これ らを駆 使すれ ば研究 は
非常に進 むと思 われます が、こ れを一 研究室 で行う という ことは不 可能で ありま して、 多
数の大学 や研究 機関が連 携し、 疾患研 究拠点 を形成 する。 幸い我が 国には 、神経 変性疾 患
に関しま しては 、厚労科 研費の 研究班 を中心 に、パ ーキン ソン病で あると か、あ るいは 筋
委縮性側 索硬化 症などと いった 疾患を 中心に 、疾患 研究拠 点が既に 形成さ れてお ります の
で、整備 方針が 決定され れば、 迅速に これを 強化す るとい うことは 対応可 能であ ると思 い
ます。
3番目 ですが 「トップ ダウン 型で基 礎から 病態解 明・治 療法開発 まで世 界を先 導する 研
究」を展 開する というこ とが重 要であ ります 。現代 神経科 学のブレ ークス ルー、 一番重 要
なことは 、神経 細胞がど のよう に神経 回路を 形成し て、ど のように 情報処 理を行 うこと に
23
よって高 次脳機 能を実現 してい るかを 理解す ること であり まして、 この理 解は疾 患研究 も
飛躍的に発 展させ ます。
先ほど 間野先 生が述べ られま したよ うに、 神経回 路解明 を目指し て、欧 米では 、特に オ
バマ大統 領は「 ブレイン ・イニ シアチ ブ(Brain Initiative)」というも のを打 ち出し 、
下等生物 の神経 回路を全 容解明 しよう と10年計画を 立てて ございま す。我 が国と しまし て
は、有望 な方向 性の一つ として 、遺伝 子操作 技術で 我が国 が世界を リード するマ ーモセ ッ
トで、革 新的計 測技術と 計算論 を駆使 して主 要な神 経回路 を解明す る。そ して、 同時に 神
経疾患モ デルも つくって 、これ らの回 路の解 明を直 ちに病 態解明・ 治療法 に生か すとい う
ことが重要 ではな いかと思 います 。
「4. アカデ ミアの体 力をつ け、企 業との 連携で サイエ ンスを創 薬に生 かす」 をご覧 く
ださい。 創薬の お話がた くさん 出てま いりま したけ れども 、色々基 礎研究 をしま すと膨 大
な数のシ ーズが 出てきま すが 、これ を創薬 研究に つなげ る仕組 みが整備 されて おりま せん 。
実用化に至 らない 創薬研究 が多く 存在い たしま す。
しかし 、最近 はオーフ ァンド ラッグ に対す る優遇 制度も 整備され 、国際 的に希 少性疾 患
に対する 企業の 関心は高 まって きてい ます。 希少性 疾患に 関しては 、アン メット ・メデ ィ
カル・ニ ーズに 対する対 応とい う意味 で重点 政策項 目に入 っている かと思 います が、単 に
政策的に 重要で あるだけ ではな くて、Rare diseaseという ものがCommon diseaseのブレ ー
クスルー を生む というこ とは、 我々神 経疾患 の研究 者は非 常によく 経験し ており ます。 遺
伝性アル ツハイ マー病の 研究が 、結局 、孤発 性アル ツハイ マー病の 病態解 明に結 びつき ま
した。同 様に、 希少性疾 患の研 究は非 常に重 要であ り、こ れはアカ デミア の得意 とする と
ころでご ざいま すので、 アカデ ミアと 企業の 連携を さらに 強化して 進めて いく必 要があ り
ます。
しかし 、御存 知のよ うに 、我々 アカデミ アは非 常に忙 しく 、国立大 学の独 立行政 法人化 、
卒後初期 臨床研 究必修化 など大 きな変 化があ りまし て、特 に臨床系 の研究 者は、 診療や 教
育の負担 が大変 多くなっ ており ます。 そうい う意味 で、こ うした点 を整備 してい ただき た
いというこ とです 。
最後に 、資料 8-2の 3枚目 、我々 、特に この先 制医療 というの が、今 後、重 点項目 と
して大事 だと考 えており ます。 これは アルツ ハイマ ー病の 例ですけ れども 、既に 現在治 療
が行われ ている 時期には もう手 遅れに なって いる。Aβタ ンパク質 がたま り始め るのは、そ
の10年か20年前である。 そこで 病気を 見つけ て治療 をする 必要があ り、こ うした ことを 今
後進めてい ただき たいと思 います 。
ありがとうござ いました 。
■永井座 長
続 いて 、樋口輝 彦国立 精神・神経 医療研 究セン ター理事 長から お願い します 。
■樋口輝 彦国立 精神・神 経医療 研究セ ンター 理事長
「精 神疾患克 服に向 けた研 究推進 」
という、お 手元の 9-1、 9-2 の資料 をもと にお話 をさせ ていただ きます 。
21世紀の健康 問題を考 える上 で、心 の病気 の克服 は最重 要課題の 1つで あると 思われ ま
24
す。
先 ほどか ら出て おります ように 、
米 国では オバマ 政権が「ブ レイン・イニ シアチ ブ(BRAIN
Initiative)」を 掲げ、こ の領域 の研究 に国を 挙げて 取組む 姿勢を見 せてお ります 。
我が国 の精神 疾患によ る社会 負担は 大きく 、最近 では長 期休職者 の3分 の2が 精神疾 患
であると の報告 があり、 うつ病 の増加 や自殺 の問題 は大変 深刻であ ります 。精神 疾患を 克
服するた めには 、その解 明が必 須であ りまし て、近 年、脳 科学研究 の急速 な進展 に伴い 、
精神疾患 の原因 ・病因解 明、そ れに基 づく診 断法、 根本的 治療法の 開発は 、到達 可能な 視
野に入っ てまい りました 。この ことは 、社会 負担の 削減、 新産業の 創出に 道を拓 くもの と
考えます 。我が 国のこの 研究領 域の強 みは、 脳科学 の進展 が著しい こと、 脳機能 画像研 究
が活発なこ と、創 薬業が基 幹産業 の一つ である といっ たこと が挙げら れると 思いま す。
さて、 精神疾 患克服に 向けた 研究推 進につ いて、 次に述 べたいと 思いま すが、 資料9 -
1の2ペ ージの 一番上に 記して ござい ます。 まれな ゲノム 変異の同 定を行 って、 これを 用
いて疾患 モデル 動物・疾 患モデ ル細胞 を作製 する。 これら の動物モ デルの 神経回 路、病 態
解明や、 モデル 細胞の病 態の解 明を通 して、 モデル を用い て創薬に つなげ るとと もに、 客
観的診断法 を確立 するとい うもの でござ います 。
これに 関しま して、資 料9- 2の1 枚目、 これが アプロ ーチの全 体をあ らわす 図でご ざ
います。 臨床研 究で得ら れたゲ ノム情 報、疫 学研究 、脳画 像研究の 結果を もとに 動物モ デ
ルを作製 して、 その動物 モデル の脳の 分子、 神経回 路病態 を解明す る。そ の結果 を人に も
う一度フ ィード バックい たしま して、 そこに 共通の 生物学 的手法を 抽出す るとい う方法 で
ございま す。そ して、こ れらを 通して 病態に 基づく 診断法 を確立、 さらに 、動物 モデル と
疾患モデル ・iPS細胞 等を用い て創薬 研究へ と展開 すると いうこ とでござ います 。
研究の 進め方 、展望に ついて は、資 料9- 1の2 ページ 目に書い てござ います が、時 間
の関係で 全てを 説明する ことは できま せん。 資料9 -2の 2枚目を 御覧い ただき たいと 思
います。
この中 でも特 に現在か ら2018年、5 年後ぐ らいま でを想 定したア クショ ンプラ ンがそ こ
に書かれて おりま す。
一番上 は、先 程申し上 げたゲ ノム研 究でご ざいま すが、 ゲノム研 究に関 しては 、やは り
全ゲノム シーク エンス・CNV解析で、頻 度は低 いけれど も効果 が大き な変異 を同定 する。あ
るいはゲ ノムワ イド関連 研究で リスク 遺伝子 を同定 し、一 方、エピ ゲノム 解析に よって 遺
伝環境相 互作用 を解明す るとい う方策 を考え ており ます。 そのため 、サン プル収 集は、 患
者3万人 の全ゲ ノム解析 を目標 にして おりま して、 現在は 統合失調 症では 1万人 のサン プ
ルを収集し ており ます。
次に脳 組織研 究につい てです が、わ が国で はブレ インバ ンクが大 変遅れ ている という こ
とでござ います し、バイ オバン クとも ども、 この辺 の整備 をしてい く必要 があろ うかと 思
っておりま す。
3つ目 のバイ オマーカ ー研究 であり ますが 、バイ オリソ ースのオ ミック ス解析 で新規 候
補分子を 捉える 。それか ら、脳 画像等 、動物 モデル と人と で共通の 生物学 的指標 の開発 を
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行ってい く。こ れは実際 に今、 進行形 でござ います 。そし て、脳病 態に基 づく診 断法を 確
立するとい うこと が重要か と思っ ており ます。
そのほ か、脳 画像の 研究 、ある いは動 物モデル・iPS細胞研究 等を用 いて、最終的 に、治
療法の開 発のと ころで申 し上げ ますが 、最近 、ニュ ーロフ ィードバ ックの 研究が かなり 進
みまして 、これ は医工連 携でで きてき たもの でござ います が、実際 心理療 法を視 覚化し て
脳の活動 と対応 させて、 みずか らが自 分の脳 の活動 を見な がら、フ ィード バック してい く
というよ うなこ とが可能 になっ てきて おりま す。こ ういっ たことを さらに 進めて いきた い
と思います 。
最後に 、以上 の研究を 推進す るため の必要 な研究 体制で ございま すが、 資料9 -1の 3
ページ目 と資料 9-2の 3枚目 でござ います 。研究 を推進 するため には、 研究者 を育成 す
る研究教 育拠点 が必要で ありま す。図 で示す ような 拠点を 全国の代 表的な 研究機 関に設 置
して、基 礎・臨 床を統合 させた 研究を 展開す る必要 があり ます。ま た、コ ホート 研究や 人
材育成には 時間を 要します ので、 長期的 な予算 措置が 必要と 考えてお ります 。
以上でございま す。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
次に、ICT及び橋渡し 研究に つきま して、山 本隆一 財団法 人医療情 報シス テム開 発セン タ
ー理事長か らお話 を伺いま す。
■山本隆 一医療 情報シス テム開 発セン ター理 事長
資料10-1と10-2で 説明を させて い
ただきます 。
橋渡し 研究とICTというこ とで、2 つのテ ーマな のです けれども、比較的 お互い に関連 す
るというこ とで、 資料は1 つにま とめて ござい ます。
シーズ を作る 段階にお きまし ては、 画期的 なアイ デアや ひらめき という のが非 常に重 要
なのです けれど も、その 先のTranslational phaseでは、相 当地味で 膨大な 探索と 確認の 繰
り返しが 必要で 、膨大な 時間並 びに経 済的コ ストが 消費さ れると言 われて おりま す。コ ス
トに投資が 均衡し ないとき に「死 の谷」 に落ち ると言 われて いると思 います 。
例えば 、日本 版NIHを作って、政策を 一元化 して重点 的に支 援を行 うこと は、コ ストに 見
合う投資 を行う ことで、 多分、 即時的 な効果 が期待 できる と考えら れます が、で は、こ れ
から先、 ずっと 医学・医 療にお いてイ ノベー ション を持続 させるた めには 、やは りコス ト
自体を下 げる努 力が必要 だと考 えてお ります 。探索 と確認 のサイク ルのコ ストを 下げる た
めには、 各段階 における バンク 並びに データ ベース 等の研 究基盤の 整備が 必須で ござい ま
す。ケミ カルバ ンクや モデル 動物バン ク、さらに はNMRや分子 イメー ジング 、分子 シミュ レ
ーション などの 共同利用 可能な 研究基 盤の整 備が必 要であ りますが 、これ らは十 分とは 言
えないか もしれ ませんが 、一定 の整備 が行わ れてお ります 。ただ、 このト ランス レーシ ョ
ンの最後 の段階、PhaseⅠから の人に 応用す るとこ ろでは、その臨床 治験を 支援す るよう な
バンクや基 盤はい まだ十分 には整 備され ていな いと考 えてお ります。
もとも と我が 国では 、臨床 治験が 画期的 には進 みがた い状況 にあると 言われ ており ます 。
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原因は、 資料1 0-1の 1~4 に主な ものを 挙げて おりま すが、1 が国民 皆保険 制度で ご
ざいまし て、し かも平均 的な医 療水準 が高い という ことで 、治験参 加者の 金銭的 な利益 と
いいます か、自 己利益が ほかの 国に比 べると やや低 いとい うことで 、そも そも参 加意欲 が
十分では ないこ と、それ から、 医療機 関が専 門化し 、しか も集約化 されて いない ために 、
一医療機 関で十 分な患者 数を得 ること が困難 で、治 験を実 施する者 、これ は医師 主導で あ
れ、製薬 会社主 導であれ 、多数 の医療 機関と 治験実 施交渉 をしなけ ればな らず、 そのた め
のコスト がかか ってしま うこと 、治験 に対す るアカ デミッ クな評価 がやや 低い傾 向にあ る
というこ と、あ るいは医 師数等 、治験 を実際 に遂行 する医 療従事者 の絶対 数が少 ないと い
うことで、 十分な リソース をそこ に割け ないと いう問 題がご ざいます 。
1番目 は我が 国の医療 制度の 利点で もあり ますか ら、こ れを治験 のため に変え るとい う
わけには いかな いですし 、2番 目も物 理的に 集約す ること は困難で すから 、医療 機関間 で
アライア ンスを 組んで事 務手続 を合理 化する ことが 必要に なります が、労 力を低 減する た
めの1つ の方法 として、 そもそ も患者 選択の ための 労力と いうのが かなり ござい ます。 自
らの診療 機関の 診療録を 改めて レビュ ーして 、最適 な患者 を選ぶと いうこ と。そ れでも 1
つの医療 機関だ けでしか 選べな い。そ ういっ たこと に対応 するため には、 全国規 模での 臨
床データベ ースの 整備を進 める必 要が必 ずある と考え ており ます。
そうい った診 療情報シ ステム とPersonal Health Record (PHR)、これは 診療機 関を超 え
て患者さ ん個人 を軸に医 療情報 を蓄積 する仕 組みで ござい ます。こ ういっ たもの を有機 的
に組み合 わせた 「EHR (Electronic Health Records)」と呼 ばれてい ますけ れども 、これ は
米国を始 めヨー ロッパの 国々で 挑戦さ れてお ります 。しか し、まだ 十分な 完成形 に至っ て
いる国はな いと考 えており ます。
我が国 の医療 の情報化 を考え ますと 、実は 情報のIT化の 比率とい うのは 諸外国 に比べ て
かなり高 いです 。恐らく 世界で 最高水 準にあ ります 。これ は経済的 理由か ら導入 された レ
セプトコ ンピュ ータ・医 事コン ピュー ター、 オーダ リング システム が世界 に先駆 けて普 及
したこと が大き く寄与し ており まして 、診療 現場で 取り扱 われる情 報の9 割以上 は、既 に
何らかの 方法で 電子化さ れてい ます。 問題は 医学・ 医療の 研究開発 にも有 用なよ うに適 切
に電子化 されて いるかと いうこ とで、 現状は 標準化 や制度 の面では 十分で はあり ません 。
しかし、 これは そもそも 電子化 されて いない 情報を 電子化 すること に比べ れば、 改善は 比
較的容易 であり ます。診 断の精 度も、 適当な インセ ンティ ブを付与 するこ とによ って飛 躍
的に改善 するで しょうし 、標 準化は 大規模 医療機 関では 既に能 力的には 十分で ありま して 、
小規模医 療機関 も難しか ったの ですけ れども 、最近 はクラ ウド技術 を活用 した標 準形式 に
変換する ような モジュー ルが数 多く出 てきて おりま すので 、膨大な コスト をかけ るわけ で
はなく実現 可能と なってお ります 。
それか ら、患 者データ ベース につい てです が、こ れは悪 性腫瘍で あると か生活 習慣病 の
場合は非 常に長 い経過を とりま すから 、1つ の医療 機関だ けで情報 を管理 してい るとい う
わけには いかな いわけで すが、 患者を 時間軸 に沿っ て管理 をするよ うなPHRは、これ は今 、
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政府で進 められ ている番 号制度 で整備 される マイポ ータル に、今の 技術水 準では 比較的 容
易に実現で きる程 度のデー タベー ス機能 をつけ れば、 簡単に 実現でき ると思 います 。
医療機 関から のデータ 出力も 、レセ プトの オンラ イン化 がかなり 進んで おりま すので 、
相当程度 ネット ワークは 整備さ れてい る。し たがっ て、大 きな障害 とは言 えない と思い ま
す。大き な障害 はないと 思うの ですが 、ただ し、こ れは、 それぞれ の医療 機関に 個々に メ
リットが あると いうもの ではな くて、 我が国 全体の 医療研 究の推進 ですと か、あ るいは 生
活習慣病 のマス としての 管理と いうこ とに有 用なも のです から、そ れぞれ の医療 機関の 努
力でこれ が大き く進むと いうの は間違 いであ りまし て、明 確で統一 された 目的意 識のも と
で、国とし てやは り整備を 進める 必要が ありま す。
地域医 療連携 は、今、 地域医 療再生 基金の 効果も あって 各地で進 められ ていま すが、 こ
れを相互 に接続 すれば実 現でき るとい うこと では決 してあ りません 。医療 ・健康 に関わ る
情報を流 通させ て、活用 するIT基盤と の間に 構築さ れるア プリケー ション という のは、 や
はり明確 に分け て考える べきで ありま して、 まずは 、正し く情報が 流通し て蓄積 される 。
その上で アプリ ケーショ ンを考 えてい く。そ のアプ リケー ションに よって データ の精度 も
上がってく るとい うことで ありま す。
例えば、米国は、ARRA(アメリカ復 興再投 資法)の 政策の 一環とし て、オバ マ政権 は「EHR
構想」と いうの を持って います 。これ は、ク リニッ ク等の 医療機関 がこの ような 二次利 用
できる情 報を出 力できる という ことを 条件に して、 これは 「Meaning Full of Usage」と定
義をしてお りますけ れども、 これに対 応したシ ステムを 導入すれ ば、最初 の5年間 は
Medicare、Medicaidでインセン ティブ を与え る。そ の次の 5年間は 、それ に対応 したシ ス
テムを導 入して いなけれ ばディ スイン センテ ィブを 与える というか なり明 確な方 針でデ ー
タを活用 できる ようにと いうこ とで推 進して います 。それ に比べる と、我 が国の 医療分 野
のIT推進は、それほ ど明確な 目的意 識が今 までは なかっ たと言 わざるを 得ない と思い ます 。
資料10-2の 図は、最 初が同 僚の大 江教授 が2006年に書 いた絵で 、こう いうも のを出 発
点にさま ざまな プロジェ クトを 進めて きまし て、詳 しい説 明は省き ますが 、4枚 目は2009
年の「i-Japan戦略2015」という戦略 ですが、三大重 点分野 の真ん 中に「日 本版EHRの実現 」
というの がござ いまして 、ここ で一応2015年までに 作ると 決まった わけで すけれ ども、 そ
の後、こ れが停 止してお ります 。医学 ・医療 の研究 開発、 イノベー ション を持続 的に進 め
るために も、こ ういった ことを 再びス タート させな ければ ならない のでは ないか と考え て
おります。
以上です。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続きま して、 生活習慣 病関係 と臨床 中核関 係につ いて、 門脇孝東 大病院 長から お願い い
たします。
■門脇孝 東京大 学医学部 附属病 院院長
初め に、資 料11-1と11-2を御 覧くだ さい。11
-2の1枚 目を見 ながら、11-1 の3つ のポイ ントを 御説明 いたしま す。
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まず「 1.生 活習慣病 は国民 の健康 に直結 する大 部分の 疾患群の 中核に 位置し ている 」
ということ であり ます。
資料11-2の真ん中辺に 「健康 」から 「未病 」、こ れは予 備群であ ります けれど も、糖 尿
病など「 生活習 慣病」、 そして 「合併 症」か ら「寝 たきり ・死亡」 の5段 階を示 してい ま
す。こ の中で生 活習慣 病は 、例え ば、糖 尿病予 備群を 入れま して 、現在 、2,200万人以上 患
者が存在 し、ま た、肥満 者は国 民の30%に達 してい るわけ でありま す。こ のよう な未病 あ
るいは生 活習慣 病が心筋 梗塞 、脳卒 中、慢 性腎不 全の主 要な原 因とな ってお り、最 近では 、
がんや認知 症も生 活習慣病 が非常 に大き なリス クにな ること がわかっ ており ます。
第2の ポイン トは、資料11-2 1枚目 の一番 下「2 .『先制 医療』は国民 の健康 長寿実 現
と医療資 源の有 効利用を 同時に かなえ る」と いうこ とであ ります。 再生医 療の位 置付け も
示してあ ります けれども 、これ は疾患 の終着 点から の回復 という見 方がで きます 。もう 一
方、健康 ・未病 の段階か らの生 活習慣 病発症 の予防 、ある いは病気 が発症 した後 も、合 併
症や寝た きり・ 死亡段階 への重 症化予 防を目 指す「 先制医 療」は、 病に至 る前か らの対 策
と言うこと ができ ます。
また、 社会の 超高齢化 が急速 に進む 我が国 では、 単なる 長寿では なくて 、生活 の質を 考
慮した質 調整生 存年(QALYs)の延伸 を伴う「健康 長寿 」が重 要な課 題となっ ていま す。そ
こで、ハ イリス ク介入や 投薬・ 医療機 器を介 した進 展抑制 など、各 段階で の適切 な介入 に
よる状態維 持こそ が生活の 質を低 下させ ない最 善の方 法です 。
また「 先制医 療」によ り、重 篤な臓 器障害 や寝た きりな ど、資源 の集中 的な投 入を伴 う
治療や介 護を要 する状態 を未然 に防ぐ ことで 、限ら れた医 療資源の より有 効な配 分が可 能
となります 。
3つ目 に、新しい イノベー ション をどの ように 効率的 に実現 していく のかと いうこ とを 、
資料11-2の1枚 目の上半 分に書 かれて いるも の、及 び資料11-1の「3.生 活習慣 病克服 を
めざす新 しい医 療実現の 基盤と なる先 進的研 究技術 開発に より、医 学の進 歩がも たらさ れ
産業の促進 につな がる」に 示して います 。
先ほど のお話 に合致し ますけ れども 、デー タベー スの構 築という ことを まず強 調した い
と思いま す。ま ず、診療 情報、 医療費 情報、 介護費 情報な どがデー タベー スとし て構築 さ
れますと、 効率的 なデータ マイニ ングか ら先制 医療の 1つの 方向が出 てまい ります 。
しかし ながら 、個 々の患者 の病態 はさま ざまで あり 、また 進展度も さまざ まであ ります 。
そこで、 遺伝要 因につい ての解 析、ま た、胎 児期、 幼少期 、青年期 、成人 期、そ れぞれ の
ライフス テージ に応じた さまざ まな環 境因子 が加わ った結 果として のエピ ゲノム の変化 が、
病気の発 症過程 であり、 また、 遺伝、 環境、 エピゲ ノムが 合わさっ た、こ の結果 として の
病態の進展 度とし てのバイ オマー カーの 開発も 非常に 重要で あります 。
このよ うな生 物学的に 多様な 階層の 情報も 含んだ データ ベースを 構築す ること により 、
新しい医 学の仮 説を提唱 し、ま た、有 望なシ ーズを 発見す ることが できま す。そ れを基 礎
研究と橋 渡し研 究のサイ クルの 中で新 しい医 薬品や 医療機 器の開発 につな げ、病 態と進 展
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度に応じ た非常 に効率の 高い先 制医療 を確立 するこ とが、 生活習慣 病など 我が国 の多く の
病気を未然 に防ぐ ことへの 有効な 対策に つなが ると考 えます 。
私のも う一つ のテーマ は「医 師主導 の治験 ・臨床 研究の 課題と対 応策」 であり ます。 こ
れにつき まして も、資料12-2の表紙を めくっ ていた だき、 全部で3 つのポ イント を御説 明
したいと思 います 。
まず、 1つ目 のポイン トは「 研究者 の育成 と研究 基盤の 整備の必 要性」 であり ます。 こ
こに基礎 研究、 臨床研究 、育薬 研究、 そして 、企業 と研究 者・医師 の流れ が書い てあり ま
す。この 線の太 さが細 ければ 細いほ ど、今 後、整備が 必要で あるとい う意味 でござ います 。
(1) では2 つのこと を述べ たいと 思いま す。現 場で感 じますの は、研 究倫理 、品質 管
理も含め た臨床 研究の方 法論、 臨床疫 学・生 物統計 学につ いての体 系的教 育が極 めて不 備
であり、 また、 この分野 の研究 者のキ ャリア パスが 不明確 でありま す。そ こで、 どうし て
もこのよ うな内 容の教育 を卒前 の教育 カリキ ュラム の中に 入れ、ま た、国 家試験 のプロ グ
ラムの中に も組み 込んでい く必要 があろ うかと 思いま す。
そのこ とによ って、卒 業時点 で既に 研究倫 理や品 質管理 という、 臨床研 究で最 も重要 な
ことにつ いての 基盤的な 知識を 得てい る必要 があり ます。 また、言 うまで もなく 、臨床 研
究者の魅力 的なキ ャリアパ スを創 成する 必要が ありま す。
2番目 に指摘 したいの は、ア カデミ アの臨 床研究 の強固 な基盤の 整備が 極めて 不十分 と
いう点で ありま す。すな わち、 臨床研 究を担 う教員 が不足 しており 、先ほ どのよ うな教 育
をする体 制がな かなか取 りにく いとい うこと があり ます。 また、科 研費や 受託研 究費の 硬
直な縛り (期間 や用途) があり 、臨床 研究推 進に重 要な安 定した人 材の雇 用や、 早期の 開
発シーズ の投資 などへの 弾力的 な運用 がしに くい状 況があ ります 。また 、科 研費が 少なく 、
品質管理 経費が 十分に組 み込め ないと いう問 題があ ります 。信頼性 確保の ために は、デ ー
タ管理や モニタ リング等 の支援 が十分 にでき るよう に、公 的研究費 に品質 管理経 費をパ ッ
ケージ化す べきで あると考 えてい ます。
資料を 1枚め くってい ただけ ればと 思いま す。「 (2) 臨床研究 の実施 上の課 題と対 応
策」であ ります 。ま ず、産 官学の 連携が 不十分 である という ことを指 摘した いと思 います 。
開発の早 い段階 から産官 学が膝 を突き 合わせ て開発 をする ことが、 我が国 で効率 的に実 用
化研究を 進める ポイント になる のでは ないか と思い ます。 また、人 事交流 を活性 化すべ き
ですが、 給与の 官民格差 や人材 の流動 性が限 られて いるこ とが阻害 要因と なって いると 思
います。
4番目 に、ト ランスレ ーショ ナル・ リサー チの制 度上の ハードル の問題 です。 先ほど も
指摘され ました けれども 、医師 主導治 験に対 するハ ードル が我が国 では極 めて高 いとい う
ことが 、最大 のネッ クになっ ている のでは ないか と思い ます 。円滑な 開発を 進める ために 、
医師主導 治験の さまざま な規制 緩和、 もちろ ん、そ れは信 頼性保証 、品質 管理に 裏づけ ら
れた規制緩 和、ま た、公的 支援の 仕組み を構築 すべき である と思いま す。
5番目 に、公 的な研究 費が不 十分で す。こ れは特 に育薬 研究、市 販後の さまざ まな効 能
30
の取得、 あるい はさまざ まな薬 の有効 性につ いての 検討に ついても 言えま す。ま ず、稀 少
疾患・難 病の治 療薬開発 は、企 業の支 援が得 られに くいた め企業と の連携 が難し いとい う
ことで、 これは 言うまで もなく 公的資 金によ る開発 支援が 必要であ ります 。また 、治験 の
結果だけ では日 本におけ るエビ デンス が不十 分であ り、併 用薬の開 発や治 療薬同 士の比 較
など、科 学的デ ザインに よる市 販後の 臨床試 験を活 性化す る必要が ありま す。そ のため に
も公的な資 金が必 要であり ます。
最後に 、企業 の体制不 備の問 題も挙 げたい と思い ます。 営業部門 から独 立した 育薬体 制
が不十分 であり 、そのよ うな部 門がな いとい うこと が、コ ンプライ アンス の問題 、ある い
は市販後臨 床研究 の推進の 企業側 の問題 点とし て挙げ られる のではな いかと 思いま す。
3ペー ジ目に 示すよう に、既に 我が国 では、橋 渡し研 究拠点、早期・探索 臨床試 験拠点 、
臨床研究 中核病 院、これ らは国 立大学 附属病 院であ ったり 、あるい はナシ ョナル センタ ー
でありま すが、 その役割 と責任 、ミッ ション を全う するこ とが重要 である と思い ます。 国
際水準の 質の高 い新規医 療の開 発、人 材育成 を確実 にそこ で行い、 さらに 、国立 大学附 属
病院42大学がネ ットワー クを作 って、 臨床研 究推進 会議を 作ってい ますの で、こ のよう な
ネットワ ークと も連携し て、確実に 臨床研 究を進 めると いうこ とが重要 である と思い ます 。
以上です。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続いて 、臨床 研究及び 中核拠 点に関 しまし て、猿 田享男 慶応義塾 大学名 誉教授 からお 願
いいたしま す。
■猿田享 男慶応 義塾大学 名誉教 授
資 料13をご覧く ださい 。今、先 生方か らお話 がござ い
ましたよ うに、 臨床研究 、治験 の遅れ は日本 におい て重要 な問題で すが、 それに 対し、 い
かなる対 策をと ったらい いかと いうの が、私 の担当 の「最 新の医療 技術を 迅速に 実用化 さ
れるための 国の対 策」でご ざいま す。
実際、 皆様方 も御存知 のとお り、基 礎研究 は、日 本では 大変優れ 高く評 価され ており ま
すが、臨 床研究 はだんだ んとそ の評価 が下が ってき ている というの が実情 でござ います 。
その1つは 、やは りアカデ ミアに おける 基礎研 究の実 用化が 遅れてい るとい うこと です。
それか ら、先 ほど山本 先生、 門脇先 生から お話が ござい ましたよ うに、 産学連 携の問 題
が不十分 である というこ と。そ れから 、特にPMDAと各研究 所との連 絡がう まくい ってい な
いというこ とでご ざいます 。
もう一 つは、 医学部に おける 教育体 制が良 くない と思い ます。今 までは 、ただ 博士論 文
をつくっ ていれ ば良いだ ろうと いう傾 向でし た。そ のよう なもので はなく 、これ からは 、
博士論文 ができ る時に、 いかに 特許を とって 、いか にそれ を経済発 展につ なげる かとい う
ことが重 要であ ります。 しかし 、それ だけの ことを 評価す るような 体制に 持って いかな け
ればいけな いと思 います。
そして 、資料 1番目に 、私が 責任者 をして おりま す、文 部科学省 と厚生 労働省 の仕事 の
流れをま とめさ せていた だいて います が、橋 渡し研 究支援 推進プロ グラム が7年 前に始 ま
31
りまして 、それ から、早 期・探 索的臨 床試験 拠点の 支援が 2年前か ら始ま って、 臨床研 究
中核拠点 は去年 と今年で10施設 を選び ました 。それ から、 国立高度 専門医 療研究 センタ ー
のほうも 、いか に推進し たら良 いかと いうこ とを議 論して まいりま した。 さらに 、これ ら
全てを国 際的水 準に持っ ていく ために は、日 本主導 グロー バル体制 に持っ ていか なけれ ば
いけない と思っ ており、 現在進 めてお ります 。全部 が治験 に行けば いいで すけれ ども、 治
験にどう しても 行かない 部分は 、高度 先進医 療制度 、これ は1984年にでき 上がり 私が今 、
委員長を やって おります けれど も、そ れを少 しでも 早く進 めようと いうこ とで、 先進医 療
制度、あ るいは 高度医療 評価、 先進医 療評価 から、 一番最 近では医 政局と 保険局 が一緒 に
なってい ただき まして、 先進医 療制度 として 先進医 療技術 会議と先 進医療 会議と して、 い
かに早くこ こから 保険へ持 ってい くかと いうこ とをや ってい るところ でござ います 。
最初に 文部科 学省の橋 渡し研 究事業 ですが 、資料 の2ペ ージ目を 見てい ただき ますと 、
第1期の プログ ラムは2007年から2011年まで の5年 間でご ざいます 。そし て、こ こに書 い
た7施設 、1つ は先進医 療振興 財団で ござい ますけ れども 、私がデ ィレク ターを させて い
ただいて 、POを古賀先生 にやっ ていた だきま した。 それで 、かなり 効果が 上がり 、2期 目
が2012年、昨年 からスタ ートし ました 。今度 は7大 学とい うことで 、やは り同じ 体制と 、
POは臨床薬 理の景 山先生と 、それ から、 製薬業 界から 稲垣先 生に入っ ていた だきま した。
では、 それで 実際どれ だけ効 果が出 てきた かとい うのは 、この下 に書い てある とおり 、
各医療機 関、特 に大学に 対して 、少な くとも 5年間 で2つ 以上の薬 事法に 基づく 治験届 を
出して欲 しいと いうこと でやり ました ところ 、これ だけの ものがで きるの です。 最初は 全
く体制が なかっ たのです けれど も、サ ポート 機関の 福島雅 典先生方 の努力 があり 、これ だ
け治験と しての 届けが出 されま したし 、ライ センス アウト もこれだ けたく さんの ものが で
きました 。さら に大切な ことは 、先進 医療に もこれ だけ新 しいもの が出て きたと いうこ と
で、やれ ばでき るのです 。です から、 いかに お金を 入れて 体制をし っかり させれ ば、こ れ
だけでき るとい うことで 、今後 の体制 として は、こ こまで 来ました から、 今わか ったこ と
は、やは りアカ デミアの 専門施 設にお ける人 員が足 りない 。特に知 財の管 理やプ ロジェ ク
トマネジ ャー、 それから 、生物 統計学 者が非 常に少 なかっ た。これ をいか に増や すかと い
うことと 、それ から、各 シーズ に対す る研究 費もま だ足り ません。 こうい ったこ とをい か
によくや ってい くかとい うこと です。 そうい ったこ とが非 常に大切 なポイ ントで ござい ま
す。例え ば、生 物統計家 がいれ ば、デ ィオバ ン問題 とか、 そんなも のは簡 単に片 づくこ と
でございま して、 そういっ たこと がなか ったと いうこ とが問 題でござ います 。
3枚目 に行っ ていただ きます と、実 際に第 2期の 橋渡し 研究が始 まりま して、 やって お
りますこ とは、や はりた くさん の人を 入れても らいた い。CRC、マネジャ ーとか、そうい っ
た方とか 、生物 統計家も 増やし てもら いたい という ことと 、一番は 連携を 組むこ とが大 切
であるとい うこと で、各大 学との 連携を 組んで やって いただ くように してお ります 。
それか ら、シ ーズ発掘 、育成 の体制 をしっ かりさ せなけ ればいけ ないと いうこ とも大 切
で、あと、 教育体 制をしっ かりし て欲し いとい うこと でござ います。
32
それか ら、厚 生労働省 のほう は、2 年前で ござい ますけ れども、 これを 受けて やはり 体
制として 早期・探索 的拠点、病気を主 体とし た、がん 拠点、脳神 経拠点、医 療機器 の拠点 、
脳心疾患 の拠点 、難病拠 点の5 拠点が 設置さ れまし た。厚 生労働省 側です から、 文科省 と
は少し違っ て疾患 単位でう まく動 き出し ている ところ です。
さらに 、こう いった文 科省、 厚労省 の両方 のシー ズを実 用化する ときに 、重要 なのは 臨
床研究中 核拠点 病院でご ざいま す。こ れは全 国的に 選ばな ければい けない という ことで 、
昨年は左 側の5 つ、北海 道、千 葉、名 古屋、 京都、 九州の 各大学で した。 今年度 は東北 、
群馬、国 立成育 医療研究 センタ ー、国 立病院 機構名 古屋医 療センタ ー、岡 山大学 と、こ れ
で大体四国 を除い て全部で10拠点 が連携 をとれ るよう にさせ ていただ きまし た。
ですか ら、文 科省と厚 労省が 全部こ のよう に連携 をとっ て物事を 進める という ことが 非
常に重要 ですが 、もう一 つ重要 なのは 、国立 高度専 門医療 研究セン ター、 ここも 非常に 重
要でござ います ので、や はりこ こにち ゃんと 国がど ういう 方向でや ってい くべき だとい う
こと、研 究はど うやるべ きだと いうこ とをし っかり 示すこ とによっ て、ナ ショナ ルセン タ
ーのほう もそれ に応じて やって くださ るとい うこと で、今 まで述べ た文科 省の仕 事、そ れ
から、早 期・探索か ら、そ ういっ たこと を全部 が連携 をとっ ていただ くとい う形で やれば 、
これからの 臨床研 究はもっ ともっ と行け るだろ うと思 ってお ります。
以上でございま す。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
続いて 、臨床 研究・治 験関係 及びが ん研究 につい て、堀 田知光国 立がん 研究セ ンター 理
事長からお 願いい たします 。
■堀田知 光国立 がん研究 センタ ー理事 長
私 に与え られま したテー マは「 臨床及 び臨床 研
究・治験 現場が 抱える課 題及び とるべ き方策 」であ り、具 体的な問 題を指 摘して 欲しい と
いうことで ござい ました。
今、猿 田先生 が御紹介 いただ きまし たよう に、こ こ数年 、日本の 臨床開 発ある いは治 験
環境は随 分改善 してきた と私は 思って います 。特に 平成23年度に始 まりま した早 期・探 索
的臨床試 験拠点 、あるい は臨床 研究中 核病院 の整備 は、今 後の鍵に なるだ ろうと 思って い
るところで ありま す。
ちなみ に、私 ども国立 がん研 究セン ターで ありま すと、 「First in human試験」と言 わ
れる治験 は、6 本動かし ており ますし 、それ から、 たくさ んのPOC (Proof of Concept)試
験、ある いはそ の他の医 師主導 治験も 十数本 動かし ている ところで ござい ます。 そうい っ
たことも、 整備事 業の中で 行える ように なって きたと いうこ とでござ います 。
一方で 、最近 話題の降 圧剤を めぐる 臨床試 験のさ まざま な問題は 、基本 的には やはり 品
質保証、 あるい は管理の あり方 とか利 益相反 につい て、き ちんとし た対応 がなさ れてい な
いという ことが 課題にな ってい ます。 そうい ったこ とを管 理できる ような 人材の 確保、 あ
るいは資 金の充 足という のが必 要なの ではな いかと いうこ とでござ います 。特に 臨床の 側
でいえば、 医師主 導治験の 労務負 担とい うのは 、いま だにか なり大き なもの であり ます。
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それか ら「と るべき方 策」と して挙 げまし たのは 、1) としまし て、基 礎研究 の具体 的
なシーズ が枯渇 するよう では困 る。疾 患の本 態にか かる基 礎研究を 重視し て、そ れを開 発
につ なげ てい くと いう 姿 勢が とて も大 事で あり ま す。 特に 最適 化研 究と か 、あ るい はGLP
基準の非 臨床試 験をきち んと行 えるよ うなサ ポート システ ムが必要 だろう という ことを 最
初に指摘し ておき たいと思 います 。
2番目 に、個 別的にな ります けれど も、承 認審査 におい てPMDAは、一般 的なが んにつ い
ては第3 相比較 試験を求 めます が、希 少がん や再発 がんの ようなも のにま でそれ を求め る
傾向がご ざいま す。実 際には 、POCがしっかり している ような 研究で あれば 、それ を少数 例
の単アー ムでも 評価・承 認でき るよう なシス テム、 あるい は仮承認 のよう な形で 条件つ き
承認、あ るいは 資料14 -2の 2、3 ページ につけ ました ような海 外での 仕組み を参照 し
て、日本で もこう いった取 り組み が必要 だろう と思い ます。
3番目 に、医 師主導治 験にお きまし ては、 保険外 併用制 度がかな りネッ クにな ってお り
ます。資 料14 -2の4 、5ペ ージを 見てい ただき ますと 、同種同 効薬は 通常で すと保 険
外になり まして 、企業治 験だと 企業が 費用負 担しま すが、 医師主導 治験に おいて もこれ を
求められて おりま す。ここ は費用 の点で とても 重いも のにな っていま す。
4番目 であり ます 。公的研 究とい うのは 単年度 会計で 、特 に厚労科 研費に つきま しては 、
単年度で 処理し なければ いけな いとい うのが 隘路に なって います。 日本学 術振興 会の基 金
のような形 で、複 数年度で 活用で きるよ うな仕 組みが 必要か と思いま す。
それか ら、ク リニカル シーク エンス に基づ きます 個別化 医療を実 現する ための コンパ ニ
オン診断 薬が重 要であり ますけ れども 、1つ の体細 胞変異 でありま すとキ ットが できま す
が、全ゲ ノム解 析のよう なもの に対応 できる ような 仕組み が保険診 療とし て必要 ではな い
かと思って います 。
機器開発につい ては、資 料14 -2の 9ペー ジに書 いてご ざいます 。
それか ら、医薬品 とか治験 以外のPETで分子 イメー ジング などをや る場合 に、今のと ころ 、
これは障 害防止 法の枠組 みの中 になっ ており まして 、医薬 品とか治 験薬と 指定さ れない 限
りは、こ れを臨 床現場に 持って いくこ とが難 しいと いう、 この辺の 整理も 必要だ ろうと 思
います。
ここか ら先は 、教育と か、あ るいは 人材育 成の話 になり ますけれ ども、 先ほど 猿田先 生
も申され ました が、特に 大学の 卒前教 育の中 にもう 少し臨 床研究の 方法と か意義 とか、 あ
るいは研 究倫理 といった ものを きちん と位置 づける 必要が あると思 います し、生 物統計 家
は日本で はとて も不足し ていま す。こ れが今 回のデ ィオバ ンの問題 にも深 く根差 してい る
わけであ ります が、今、 こうい った講 座がほ とんど の大学 では保健 学部に 位置づ けられ て
いまして 、医学 研究科あ るいは 医学部 に位置 づけら れてい るのはほ とんど ありま せん。 そ
ういう意 味でも 、生物統 計学講 座をき ちんと 医学部 ・医学 研究科に 位置づ ける必 要があ る
のではない かとい う提案で ござい ます。
それか ら、早 期・探索 的臨床 試験拠 点、あ るいは 臨床研 究中核病 院で問 題にな ってい ま
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すのは、臨床を 進める ためにCRCやデータ マネジ ャー、あるい は監査 、モニ ターの こうい っ
たスタッ フを安 定的に雇 用でき るよう なシス テムが ないと 、事業が 終わっ たらも うそれ で
おしまいと いうの はとても 困ると いう状 況でご ざいま す。
そして11番目 に、独立 行政法 人固有 の問題 であり ますけ れども、 資料1 4-2 の最後 の
12ページ につけ ておきま したが 、一般 事務の 雇用が とても 厳しくて 、総人 件費改 革の中 で
増やす状 況にあ りません 。これ も改革 しない と、研 究開発 型の事業 として は進め にくい と
いうことで ありま す。
いずれ にしま しても、 私ども は、ナ ショナ ルセン ターと してネッ トワー クの中 心を支 え
てまいりた いと思 います。
2番目の問題は 「今後の がん研 究のあ り方」 であり ます。
がんは 、1981年に日本 人の死 亡原因 のトッ プにな りまし てから、 どんど んそれ が進ん で
おります 。現在 では74万人が新 しくが んにか かり、35万人 ががんで 亡くな ってい る。こ の
差は30万以上あ りますが 、その 方たち ががん の体験 者とし て蓄積し ている 状況で ござい ま
す。人口 の高齢 化ととも に、が んの患 者数あ るいは 死亡者 数自体は 増えて まいり ます。 年
齢調整死 亡率は 下がって います けれど も、総 死亡者 数は今 後も増え ていく と予想 されて い
ます。これ は資料 15-2 の中に もつけ てござ います 。
それか らまた 、働き盛 り世代 、ある いは生 産年齢 のがん は死亡原 因の40%を占 め、労 働
損失が2 兆円近 いという ことも 推計さ れてお ります 。また 、子供に おいて も病死 の原因 の
第1位は がんで あり、全 世代を 通じて がんが 死亡の 大きな 要因にな ってい るとい うこと で
ございます 。
一方で 、
が んの体 験者もど んどん 増えて まいり ますの で、そういっ た方が 充実し た治療 、
あるいは 生活が 送れるよ うに、 あるい は治療 が済ん でから でも十分 な生活 ができ るよう な
医療体制 あるい は生活支 援が必 要であ ると思 います 。今、 全国がん 登録の 法制化 が進め ら
れており ますけ れども、 こうい ったビ ッグデ ータを どのよ うにがん 対策や その評 価に生 か
すことがで きるか といった 課題が あると 思いま す。
「とる べき対 策」とし まして は、や はり本 態解明 は根幹 でありま すから 、これ を応用 研
究との両 輪とし て融合し つつ進 めてい く必要 がある という ことを前 提にい たしま して、 が
ん患者の 減少、 要するに 、発生 してか ら対応 するの ではな くて、発 生自体 をどう やって 減
らすかと いうこ とにつき まして 、大 規模疫 学研究 や、今まで は余りや ってい ないの ですが 、
がんのリ スクの 高い方に 介入的 に予防 研究を やると いうよ うなこと も今後 必要だ ろうと 思
っています 。
あと、 重要な ことは、 革新的 な診断 法や治 療法を つくっ ていくと いうこ とはも ちろん で
あります けれど も、それ に付随 する色 々なバ イオイ ンフォ マティク スとか 、ある いはそ の
ほか薬物動 態・薬 力学、そ ういっ たこと ができ る人材 も確保 する必要 がござ います 。
5番目 として 、今まで はどち らかと いうと 、治療 法の開 発とか医 薬品開 発とい うのは 成
人を中心 にやっ てきまし たけれ ども、 小児と か高齢 者など 、代謝等 に成人 とは異 なる特 性
35
がある対 象につ きまして 、ライ フステ ージと がんの 特性に 適した最 適な治 療法や 療養体 系
が必要だろ うと思 っていま す。
それか ら、が ん体験者 がどん どん増 える中 で、充 実した 生活を進 めるた めのサ バイバ ー
シップ研究 を推進 する。
次、7 番目に なります けれど も、が ん医療 の均て ん化が されてき た今日 、予防 ・検診 デ
ータ、あ るいは がん登 録デー タ、あ るいは 拠点病 院の診療 データ 、ある いはDPCデータ等 を
統合して ビッグ データを 解析し て、こ れを対 策に資 する研 究が必要 となり ます。 その集 約
拠点として 我々ナ ショナル センタ ーは貢 献する 必要が あると 考えてい ます。
いずれ にいた しまして も、ナ ショナ ルセン ターと して今 後とも研 究体制 に求心 力を持 っ
てやってい く所存 でござい ます。
以上であります 。
■永井座長
ありがとうご ざいま した。
多くの 先生方 から多岐 にわた るお話 を伺い ました 。こ の医療 分野の研 究開発 という のは 、
理論と実 践のマ ッチング の問題 である という ことで はない かと私は 思いま す。御 指摘い た
だいた問 題も、 理論的な 研究、 あるい は実践 におけ る現場 の問題、 あるい はそれ をつな ぐ
方法の問 題、色 々絡んで いるの だと思 います 。ただ 、理論 が上流で 実践が 下流だ とか、 あ
るいは実 践が上 流で理論 は下流 だとか 、多分 そうい うこと ではなく 、これ は円環 構造に な
っていて、 うまく それを回 してい くとい うこと が大事 ではな いかと思 います 。
もう一 つ、科 学という のは、 進歩す ればす るほど 決定論 になると 思われ がちで すけれ ど
も、現実 の医療 ではむし ろ確率 論にな ってい く。人 間の体 とか病気 という のは非 常に複 雑
なもので すから 、たまに は決定 論的な 発見が あると 思いま すけれど も、多 くは確 率論に 移
行してい きます 。そうい う意味 でも、 理論と 実践を どうマ ッチング させる かとい うこと が
大事だと思 います 。
ただ、 そうは 言っても 、やは り拠点 形成や ネット ワーク 構築が必 要です 。その あたり を
今後どう 設計し ていくか 。また 、研究 の進め 方とし ても、 要素技術 とシス テムを どう連 関
させてい くか。これら を大き な課題 として 、今 、我々 は議論 しないと いけな いと思 います 。
特に 、最初に 、研 究開発 拠点の あり方 、「 日本版NIH」と いう言葉 がやや 先行し ました け
れども、外国の 事例を もっと 研究すべ きとも 言えま す。例 えば 、日本に 米国のNIHのよう な
組織を本 当につ くれるの か、日 本とし てどう すべき なのか 。例えば 、先ほ どのノ バルテ ィ
ス事件の ことも 関係する と思う のです けれど も、基 金や単 年度会計 の問題 などに ついて も
念頭に置い て、満 屋先生、 外国の 事情を 御紹介 いただ けます でしょう か。
■満屋教 授
私 は、外 国の事 情といい まして も、米国のみ の紹介 でござ いまし て、NCIに32
年おりま すけれ ども、こ の間見 てきた ことは 、先ほ ど御報 告しまし たよう に、や はり巨 大
なコンプ レック スで、そ こに知 識と技 術が集 積され ている というの が非常 に重要 ではな い
かと思う わけで す。つま り、分 散化さ れた力 では、 あのよ うな集合 的な組 織体の 中で、 そ
れぞれ統 合され た形で知 識と技 術が加 速化さ れると いうの が非常に 重要で はない かと常 日
36
頃思って いたわ けですけ れども 、私が 初めて「日 本版NIH」の構想が 考えら れてい たとき に
思いまし たのは 、どこか の施設 、ある いは複 数の施 設がそ のような コアと なって 、その 周
辺にそう いう知 識、技術 を共有 する、 あるい はそこ で集積 するよう な形を とるの が一番 い
いのではな いか。
つまり 、私の30数年 の中で 、NIHでなかった らできな かった ことと いいま すと、集積さ れ
た知識と 技術を どのよう に使う かとい うこと だと思 います 。アイデ アは誰 にでも あるわ け
ですから 、永井 座長がお っしゃ いまし たよう に上流 、下流 というこ とでは なくて 、それ を
いかに実 際に可 能である かどう かを判 定・評 価しな がら、 最初は巨 大な資 金であ る必要 は
ないと思 います が、比較 的十分 な資金 を与え ること ができ るのか。 知識や 技術の 発展と い
うのは恐 らく不 均等的に 起こる ものだ と思っ ており ますか ら、どこ かでい いシー ズが現 れ
たなら、 そこに 一定の評 価を下 した上 で発展 させる という ような形 をNIH、NCIはとって い
ると思いま す。
まとめ ますと、日本でNIH的な組織 をつく って、創 薬をも っと効率 的に進 めるこ とは可 能
だと私は思 ってお ります。
■永井座長
この点につい て、御 意見、 御発言 はござ いませ んでしょ うか。
■笹月委 員
こ ういう場 合に、 よくプ ラット フォー ムとい うことが 出てく るので すけれ ど
も、それ はバー チャルで はなく て、や はり1 カ所の 拠点に つくり、 そこに 知識、 技術を 集
積しながら やると いう考え でしょ うか。
■満屋教 授
私 自身は、NIHに長年 おりま して、 そのよ うに考 えており ます。NIHのイン ス
ティチュ ート・ センター は27ございま すが、 それは ほとん どメイン キャン パスに ござい ま
す。その ほかに 1つずつ 研究所 が4カ 所ぐら いに分 散され ておりま すが、 それは 非常に マ
イナーで ござい ます 。ですか ら、メイン キャン パスが 非常に 基礎的な 研究の 成果を 上げて 、
シーズが 見つか れば、す ぐにそ こに殺 到して 、そし て、ト キシコロ ジーか ら、デ ータの マ
ネジメン トから 、全て一 元的に そこで トラン スレー ショナ ル・リサ ーチを 行うと いうの は
非常に強 いと思 います 。です から 、笹月 先生が おっし ゃった プラット フォー ムとい うのが 、
ある一定 の地点 、あるい は複数 の地点 でも構 わない と思う のですけ れども 、それ がうま く
有機的に 結合し て、人的 な関連 あるい は労働 力の流 動化と いったも のも含 めて行 うこと が
できれば、NIH的な管 理になる のでは ないか と私自 身は思 います 。
■笹月委 員
そ のように 固定し た組織 がある ことが 、非常 に望まし いと思 います 。今回 の
ように日 本がこ れからス タート しよう とする ときに は、大きな プロジェ クトが 設定さ れて 、
そこに融 合領域 といいま すか、 医学者 も薬学 者も、 あるい は化学合 成する 人も、 構造解 析
をやる人 も病理 の人も入 った、 そうい うもの を国と して資 金的にま ずサポ ートす る。そ の
ことが当 然組織 を固める という ことに もなり ますし 、そこ に初めか ら大学 院生レ ベルの 若
い人を参 加させ れば、5 年、10年経っ たとき には若 者も育 つという ように なるの で、そ の
組織をど こに作 るかとい うのは 大きな テーマ ですか ら、今 後、議論 をして いただ きたい と
思います。
37
■永井座 長
米 国の場合、公的資 金は当 然NIH中心でしょ うけれど も、民間 の資金 もかな り
導入されて いるの ですか。
■満屋教 授
NIH内での臨床 試験は 、ほと んどがPhaseⅠとPhaseⅡAでござ いまし て、そ れ
がほぼ70%を占 めており ます 。その ほとん どがNIHのファン ディング で行わ れます 。し かし 、
当 然 な が ら 民 間 の 資 金 も 入 り ま す か ら 、 そ の た め に は 、 先 ほ ど 言 い ま し た 「 Office of
Technology Transfer」という のが共 同研究契 約とい うもの をつく りまし て、民間 からの 資
金の導入 を図り ます。し かし、 おおむ ね民間 からの 導入の 額は、今 、急に は覚え ており ま
せんが、 ごく一 部です。 私の経 験では 、ほと んどの 予算持 ち出しがNIH、NCIから行われ ま
す。
ですか ら、も しこれが 創薬に つなが るとい うこと になる と、そこ にかな り大き なお金 を
投下する ような プールが ござい まして 、それ が「Drug Decision Network」で、私 の研究 グ
ループで はでき ないよう なバル クのGMPでの合成 という ことに なります と、コント ラクト で、
恐らく当 時でい うと数千 万から5,000万円ぐらい のバル クをつ くって 、そし て、それでPhase
ⅠをNIHでやる という 、これが 非常に 加速さ せる要 因では ないか と思いま す。
ですか ら、いわば 研究組織 と製薬 企業に 行くま での橋 渡しの 全てがで きると いうの がNIH
で、しかも、それが 1つの地 点でベ セスダ に集約 されて いると いうのがNIHの大き な強み で
はないか と思い ますが、も う百数 十年前 にNIHの母体が創 設されて、最初は そのよ うな組 織
がなかっ たわけ で、いわ ば驚く ほどの 純増と いう形 での予 算が計上 されて いるわ けです か
ら、恐らくNIHに関わる ような 組織を 作るの であれ ば、その ような純 増とい う形で 大きな 資
金の投下が どうし ても必要 ではな いかと も思っ ており ます。
■猿田名 誉教授
今おっ しゃっ たこと は非常 に大切 で、特 にPhaseⅠ、それ から、その次 の
過程を国 でやっ ていくと 、やは り橋渡 しのた めのシ ステム がないと なかな かでき ないこ と
を、今回 つくづ くわかり ました 。それ から、 特に日 本の場 合も、私 は国立 病院の 評価も や
ってみて 、セン ターが 力を持 って、コント ロール してPhaseⅠなど、その他 ができ るよう に
しなければ いけな い、と思 いまし た。
ただ、私が心 配して います のは 、国立病 院機構 、特 にナシ ョナルセ ンター を考え たとき 、
日本の国 民の多 くは病院 に目が 向いて おりま す。病 院の機 能をどう いうふ うにう まく分 け
て、橋渡 し機能 を持つセ ンター と国民 がかか る専門 病院と をどうつ くって いくか が大切 と
思います。
■満屋教授
私もそう思い ます。
■中尾会 長
私 は医療機 器分野 なので 、少し そうい うバイ アスがか かって いると いうこ と
をちょっ と頭に 入れなが らお聞 きいた だきた いので すけれ ども、こ れは菅 官房長 官の会 議
でも申し 上げた のですが 、「日 本版NIH」という ことで 、もち ろんアメ リカのNIHを勉強 し
なければ いけな いのです が、予 算とか 、色々 なこと の規模 の違いが やはり あると 思うの で
す。
したが って 、ある 部分、ミニ米 国NIHにならざる を得な いので しょうけ れども 、願 わくは 、
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日本のNIHは、どう いう名 前にな るかは別 にして 、これ はすご いねと いう、ものす ごく文 学
的表現を すると 、存在感 のある といい ますか 、アメ リカと 同じもの で、そ の縮小 版では い
けないと思 います 。やはり 色々な リソー スの点 で日本 なりの 問題点が ありま す。
だった ら、どうす るのだと いうこ となの ですが 、そ れなり のユニー ク性も あるだ ろうし 、
日本の強 みを生 かし、仮 に日本 の「NIH」という 名前を つける とすると 、世界 の人た ちが 、
これはす ばらし い内容を 持った 機関だ なとい うとこ ろをひ とつお願 いした い。す なわち 、
戦略性と 言って しまうと それだ けなの ですが 、そう いう日 本の強み を生か してい る、ユ ニ
ークさが どこか にある、 世界的 に何か 貢献で きると いった 点は、組 織論と は別に 1つの ビ
ジョンとし て掲げ ることが 大事で はない かなと 思いま す。そ れが1点 です。
もう一 つ、簡 単にです が、先 ほど座 長のほ うから 理論と 実践の話 が出ま した。 もうこ れ
は皆さん 方から 同じよう に、「 連携」 だとか 「死の 谷」と かペーパ ーを書 くだけ とか色 々
あるので すけれ ども、研 究はあ る程度 そうい うとこ ろがあ ると思う のです が、開 発は医 療
の現場に 役に立 つという ことが 最終目 標であ ること は、多分 、論を待 たない と思う のです 。
そのとき に、今 までの 色々な ところで「連 携」と いうこ とが出 てきます 。「 産学官 」とか 、
このこと は非常 に大事で す。た だし、 もう一 歩進め て、連 携ではな くて、 連携の 上にぜ ひ
リーダーシ ップが 大事では ないか なと私 は考え ていま す。
すなわ ち、ア イデアを どうや って特 許やニ ーズシ ーズの 問題とか 、それ から、 どうや っ
てチーム を構成 して、そ のチー ムを働 かせて 最終的 には事 業に持っ ていく のかと いう事 業
化の観点 、事業 化、アイ デア、 チーム 編成、 こうい ったも ののリー ダーを 育てる のだと 。
単純な連 携では なかなか 難しい 。先ほ どやれ ばでき るとお っしゃい ました 、多分 その中 に
はリーダ ーがい らしたの だと思 います 。私、 イノベ ーショ ンと言っ ていま すけれ ども、 こ
れはまさ にリー ダーの育 成だと 思いま す。連 携は連 携でい いのです けれど も、連 携をも う
一歩進め たリー ダー育成 、少し この観 点をお 考えい ただき たいとい います か、私 は重要 な
点だと考え ており ます。
■榊委員
満屋 先生のさ れてい た研究 では、 そうい った方 向はある と思う のです が、例 え
ば、ゲノ ム解析 のスピー ド、テ クノロ ジーの 上昇、 あるい はその他 の色々 ないわ ゆるオ ミ
ックスデ ータの 解析等々 、それ からも う一つ は、イ ンフォ マティク ス、こ ういっ たもの が
最近急速 に充実 してきて います し、ICTなどのテ クノロ ジーが 非常に発 達して きてい ます 。
こういう 背景を 考えます と、もちろ ん拠点 という 概念は あるの ですが 、
多く の医療 機関が 、
様々なな ことを 実施し、 それら が集積 してい くとい う形を 、日本と しては 取るべ きでは な
いかと考え ます。
もちろ ん、先生 がおっし ゃるNCIなどに集 積しつ つ、そこ で展開す ること は良い と思う の
ですが、 一極集 中ではな く、日 本のた くさん の医療 機関、 これは国 立大学 の病院 、ある い
はほかの 民間病 院も含め て、そ ういっ たもの が共通 の基盤 で情報が 共有さ れ、増 殖する と
いうか、 進化す るという か、そ ういう 形をや はりつ くって いかない といけ ないの ではな い
かと思いま すので 、その辺 もぜひ 御検討 いただ きたい と思い ます。
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■清水委 員
多 少繰り返 しにな ります が、満 屋先生 が言わ れたとこ ろで非 常に重 要なこ と
は、最初にNIHがスター トした のは何 十年か 前だと 思うの ですが、や はりそ れは純 増のお 金
でスター トした というこ とでは ないか と思う のです 。日本 で進める 場合に は、拠 点のあ り
方や、違 う進め 方がある と思う のです が、現 在の予 算をシ ャッフル して、 それを 仕分け し
て単なる ハコモ ノを作る という 形のも のでは 決して あって はいけな い。多 少規模 が小さ い
ものでス タート するにし ても、 それは 新たな ライフ サイエ ンス、そ の開発 の予算 をとっ て
くるのだと いう視 点は常に 重要か と思い ます。
■垣添委 員
私 も、今、 清水先 生が言 われた ことは とても 大切だと 思いま す。先 ほど満 屋
先生が、NIHが100年ほどかけて 、純増 の予算 で今27センタ ーを抱え て大変 な成果 を上げ て
いると御 紹介い ただきま したが 、全く そのと おりだ と思い ます。けれど も、ア メリカ のNIH
が素晴ら しいか らといっ て、今 の日本 でそれ をその まま追 随するこ とはな かなか できな い
のではな いかと 思います 。しか し、予 算を増 やして いく必 要は絶対 にある と思い ます。 ま
た、榊先生 がおっ しゃっ たよう に、ICTとか、日本の 色々な 特徴を うまく 利用し て、最大 の
成果を上 げるよ うな工夫 をする 必要は どうし てもあ るので はないか なと思 いまし た。あ り
がとうござ いまし た。
■堀田理 事長
先ほど満 屋先生 が実体 験をお 話しい ただい たのです が、
NIHの中で 、例 えば 、
NCIをとって みても、ベ ッドと しては 何十ベ ッドぐ らいし か使って いない のです よね。ほ と
んどPhaseⅠのさわ りのとこ ろしか やって いない 。一 般の診 療という 形をと ってい ません ね。
■満屋教 授
■堀田理事 長
■満屋教 授
そ のとおり です 。ベッ ドの回 転率等 は全く 無視し て、大 体20~30%程度です 。
そうですね 。そこ に入る 患者さ んは全 て無料 でしょう か。
無 料で、旅費 まで出 して、小児 科に関 わる場 合はChildren's Innまでつくり 、
御両親をそ こに泊 めて子供 を治療 する等 のかな り手厚 い措置 がなされ ており ます。
また、先ほど の榊先 生の御 指摘のと おりで ござい まして 、NIH単体ではな く、そ れぞれ ハ
ーバード やスタ ンフォー ドやUCLAや、そうい う大学 と連携 して臨床 研究も 進めま すから 、
先生のおっ しゃる ことは非 常に重 要であ ります 。
ただ、NIHといい ますと、NIHはファ ンディ ング・ ボディ ーでござ いまし て、そ のよう な
大学の資 金のほ とんどを 一元的 に管理 し、し かも、 バイオ メディカ ルだけ で3兆 円とい う
巨額の金 の1割 をIntramural、つまり 、ベセ スダだ けで使 うという 状況が ござい ます。 で
すから、NIHとそれ ぞれの大 学、あ るいは その他 のセン ターが 非常に有 機的に 結合さ れて 、
NIHがその中 軸にあ るという 形では 、
何 とうま いシス テムを つくった ものだ と私は 思って い
るところで ござい ます。
■堀田理 事長
私は今、日 本にNIHの仕組み をその まま持 ってきて、その形 に組み かえる と
いうのは 現実的 ではない と思い ます。 例えば 、現実 のナシ ョナルセ ンター を見れ ば、研 究
所もあり 、病院 も持ち、 しかも 病院の ウエー トが3 分の2 以上を占 めると いう状 況の中 で
どう組み 立てて いくのか 。逆に それを 強みに 生かせ ないも のだろう か。要 するに 、研究 と
臨床の現 場が同 じところ にあっ て常に 行き来 ができ るとい う、この 強みを 生かし て挽回 で
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きないかと いうこ とをよく 考える 必要が あると 思いま す。
もう一 つは、 ナショナ ルセン ターと いうの は、持 続的に 同じ疾患 テーマ をフォ ローし て
いけるだ けの疾 患に特異 的な組 織にな ってい ますの で、こ れを十分 生かし て、ぶ れない 長
期的な視 野を持 って進め ていく ことも 可能で はない かと思 っていま す。です から、NIHは素
晴らしい のだけ れども、米 国NIHと同じこと ではな く、日本 版という のは日 本の特 性を活 か
すという意 味があ るのでは ないか と思う 次第で す。
■門脇院 長
今 の堀田先 生の意 見に賛 成です。私も米 国NIHにいたのです が、満屋 先生が 言
われたよ うに、 基礎研究 と病院 や臨床 現場が 非常に 近いと いうとこ ろが最 大のメ リット だ
と思いま した。 我が国で も国立 大学附 属病院 やナシ ョナル センター などで そうい った状 況
はあるの だろう と思いま す。先 ほど猿 田先生 が述べ られた ように、 実際に 「橋渡 し研究 支
援推進プ ログラ ム」ある いは「 橋渡し 研究加 速ネッ トワー クプログ ラム」 が推進 力とな っ
て、我が 国でも トランス レーシ ョンリ サーチ はやれ ばでき るという 形で、 そのコ ンセプ ト
はかなり明 らかに なってき たので はない かと思 います 。
現在、15の早 期・探索 的臨床 試験拠 点と臨 床研究 中核病 院で、シ ームレ スに臨 床開発 を
推進する 仕組み が立ち上 がって います 。ただ 、私が 現実に 東大病院 で非常 に困っ ている の
は、この 5年間 で自立を するよ うにと いうこ とを言 われて います。 ところ が、日 本の臨 床
研究基盤 の遅れ は、アメ リカと 5年違 いとい うこと ではな いだろう と思い ます。 そうい う
点で、ぜ ひこの 基盤整備 に引き 続き支 援をお 願いし たい。 現在の状 況は、 早期・ 探索的 臨
床試験拠 点でも 臨床研究 中核病 院でも 、15でネット ワーク をつくっ て議論 してい ますけ れ
ども、病 院収入 の中からCRCやデー タマネ ジャー を雇わ なくて はいけな いとい う状況 です 。
先ほど 堀田先 生から御 意見が ありま したよ うに、い わゆる「日本版NIH」では、トラン ス
レーショ ナル・ リサーチ の早い 部分か ら後半 の早期 ・探索 的臨床試 験拠点 、臨床 研究中 核
病院まで と一気 通貫で行 く仕組 みにな ります けれど も、実 際に研究 を進め る上で 必須の 臨
床研究の 支援職 が持続的 に雇用 される ように 、臨床 研究型 病院への インセ ンティ ブの仕 組
みや、さ まざま な公的な 研究費 のサポ ートに よって これを 育ててい くこと が、私 は最も 現
実的かつ有 効だと 思います 。
■永井座 長
猿 田先生、 たくさ んのシ ーズが 橋渡し 研究支 援推進プ ログラ ムから 生まれ ま
したけれど も、今 後期待さ れる成 果はい かがで しょう か。
■猿田名 誉教授
今、各 大学を 拝見す ると、 非常に たくさ ん良いシ ーズを 持って おられ ま
す。しか しなが ら、どう しても それを 開発し ていく お金が 足りない 部分が ござい ます。 ま
た各大学 の細か い状況を 見ます と、シ ーズに 対し、 それか ら組織に 対し、 両面で 経済的 な
サポートを してい ただきた いとい うのが 一番重 要なと ころで す。
■永井座 長
菊 地先生か らは基 礎研究 と臨床 研究の 円環構 造が重要 である こと、 門脇先 生
から、育 薬研究 が遅れて いると いうお 話しが ござい ました 。ノバル ティス の話も 実は育 薬
の話なの ですけ れども、 今後何 をすべ きかと いう点 、人材 あるいは 人事、 人件費 の問題 が
今指摘され ました が、いか がです か。
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■門脇教 授
臨 床研究の 仕組み で、こ れまで 寄附金 に依存 している 部分が ありま したが 、
それはノ バルテ ィスのよ うな問 題を生 む最大 の土壌 の一つ になると 思いま す。し たがい ま
して、プ ロトコ ル作成の 上での 研究者 側の独 立性、 それか ら、デー タ解析 やデー タの発 表
について 、研究 者の独立 性を担 保した 上での 受託研 究です ね。契約 書にそ のこと が書き こ
まれるよう な形で 臨床研究 の枠組 みがさ れる必 要があ ると思 います。
また、 アカデ ミア発の さまざ まな研 究は、 全部PMDAが管理すべき だとい う意見 もあり ま
すけれど も、必 ずしもそ うでは なくて 、大学 あるい はナシ ョナルセ ンター が研究 の臨床 的
な重大性 、ある いは利益 相反の 問題、 それか ら患者 の安全 性に関わ る問題 、これ らに応 じ
て、もち ろん必 要な標準 的な品 質管理 や、デ ータの 保存は 最低限必 ず行わ なくて はいけ な
いと思い ますけ れども、 その重 大性に よって 研究を グレー ド分けし て、そ れに応 じた管 理
レベルを 設定し て、厳し い品質 管理が 必要と される レベル のものに は、外 部の監 査も含 め
た最も厳 格な管 理をする という 、その ような 管理を アカデ ミアで自 主的、 自律的 に行う 、
かつ、ア カデミ ア同士、 あるい は大学 とナシ ョナル センタ ーがそれ を相互 にチェ ックを す
る、そう いった 品質担保 あるい は倫理 性の担 保を保 証する 仕組みを 作る必 要があ る、と 考
えていま す。こ の点は、 国立大 学附属 病院長 会議で 9月20日に提言 をプレ スリリ ースも さ
せていただ いてい ます。
■田中委 員
山 本先生に ちょっ とお伺 いした いので すが、 本質的な ところ は、ほ とんど な
るほどと いうと ころがあ るので すが、 臨床現 場から いいま すと、各 施設は 非常に 症例数 も
限られま す。そ ういう我 が国独 特の仕 組みが あると 思うの ですが、 その中 で、や はりこ れ
から個別 化医療 とか、あ るいは 介入の 試験と か、色 々進め るときに 、今の 日本の 電子カ ル
テでは医 療の本 質になか なか迫 れてい ないの ではな いか。 つまり、 同じ介 入でも 病態が 変
わってい くわけ ですから 、それ を正確 に取り 入れる 情報系 システム の構築 なくし て、な か
なか個別 化医療 とか、そ ういう ところ まで発 展的に 進まな いと思っ ており ます。 情報の 視
点から、こ の取り 組みにつ いて何 か御指 摘があ ります でしょ うか。
■山本理 事長
個々の医 療機関 で使わ れてい る情報 システ ムという のは、 基本的 には一 定
の価格で 買うこ とができ るし、 ベンダ ーさん も提供 するも のですか ら、能 力に多 少限界 が
あること は間違 いないと 思いま す。と にかく 現状を 何とか こなすと いうこ とが主 目的で 導
入されて います ので、今 はちょ うど過 渡期と いいま すか、 紙の診療 録を電 子カル テに置 き
かえるとい うこと が主目的 になっ てしま ってお ります 。
でも、 本来、 情報シス テムを 入れる という ことは 、そう ではなく 、ビジ ネスプ ロセス 全
体を変え ないと いけない 話だと 思いま す。し たがっ て、情 報をどう 融合し ていく かとい う
ことが恐 らくこ れからは 主目的 になっ てくる でしょ うし 、ごく 一部では ありま すけれ ども 、
先進的な 医療機 関はその ような 電子カ ルテシ ステム へ既に 変わりつ つあり ます。 つまり 、
それこそ 個別化 でありま すとか 、ある いは新 たな情 報融合 スタイル であり ますと か、あ る
いは情報 を多施 設で共有 するた めの標 準的な 形式で の出力 機能であ ります とか、 そうい っ
たことは一 部の医 療機関で はもう 既に取 組まれ ている のだろ うと思い ます。
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ただ、 問題は 、そうす ること によっ て起こ るメリ ットと いうのを 誰が享 受して 、その コ
ストは誰 が払う かという ことが 一番こ の話の 問題に なって おり、紙 のカル テは1 枚1円 の
紙と100円のボール ペンがあ れば書 けるわ けです が、情報シ ステムは そうは いかな いわけ で
す。一定 のコス トがかか って、 それを やって いく上 のメリ ットは一 体誰が 受けて 、どう コ
ストとし て出せ るのかと いう話 が多分 一番重 要で、 先ほど のお話で 米国の 例を挙 げまし た
が、米国 の例は 、情 報を二 次利用 できる形 の情報 システ ムを入 れてお ります 。これ は多分 、
医療機関 にとっ ては余り 大きな メリッ トはな いと思 うので すが、そ ういう ものを 入れる こ
とによっ て、保 険の方の インセ ンティ ブをつ けると いう思 い切った 政策を とって いるの だ
ろうと思い ます。
保険制 度は違 いますが 、例 えば、英国のNHSもそのよ うな誘 導をし ていま すし、我が国 も
やはり多 少そう いうドラ イビン グフォ ースを つけな いと、 情報シス テムと いうの はなか な
か変わっ てはい かないと 思いま す。今 、変わ っては きてい ますが、 スピー ドを上 げるた め
には多少の ドライ ビングフ ォース が必要 だろう と思い ます。
■永井座長
■山本理 事長
それは、米国 やイギ リスは 保険者 の負担 で行っ ていると いうこ とです か。
英国の場 合は、 保険者 という か、全 部公費 負担で、 米国の 場合は 、イン セ
ンティブ はMedicare、Medicaidだけで すから 、連邦 政府の 予算でそ れを行 ってい るとい う
ことです。
■竹中委員
情報を共有さ せてい ただく ため、 2つほ ど述べ させてい ただき ます。
先ほど 門脇先 生から育 薬の話 がござ いまし た。実 は、今 まで企業 で育薬 をして いる部 門
は営業部 門でし た。最近 、企業 は、育 薬ある いは学 会活動 を営業部 門とは 分けて メディ カ
ル・アフ ェアー ズという 部門で 行う方 向に進 んでお ります 。こうい うこと によっ て、科 学
性、透明性 の高い 育薬をや ってい きたい という のが企 業の姿 勢です。
2つ目 は、満屋 先生のお 話の中 で、アカ デミア で見つ けたシ ーズをPhaseⅠまで 持って い
く間の、毒性試 験や、化合物 を作る という 機能が 、米国NIHにはある が日本 にない という ご
指摘がご ざいま した 。実は本 年5月 に創薬 支援ネ ットワ ークが 日本版NIHよりも先 にスタ ー
トしてお ります 。まだ私 どもの 宣伝が 少なく て、御 存じな い方もい らっし ゃいま すので 、
御紹介し ます。 医薬基盤 研究所 の中に 創薬支 援戦略 室をつ くりまし て、そ こに企 業で働 い
た創薬の エキス パートの 方を約30名雇 い、ア カデミ ア創薬 の支援を 開始し ました 。アカ デ
ミアで行 いたい 、応用開 発研究 などの 御相談 に乗る という ことを行 ってお ります 。残念 な
がらまだ 予算を 持ってお りませ んので 、資金 的支援 をする ことはで きてお りませ ん。化 合
物を作っ たり、 毒性試験 を受託 する研 究機関 、コン トラク ト・リサ ーチ・ オーガ ニゼー シ
ョン(CRO)、あるい はコント ラクト ・マニ ュファ クチャ ー・オ ーガニゼ ーショ ン(CMO)が発
達し てい ます の で、 米国NIHの よう にin houseで はで きな いの で すが 、日 本で はCRO、CMO
を活用す るなど の、支援を 今進め ており ます。既 に150件ぐらい大学 からの 御相談 がある そ
うです。今後、御相談 に来ら れた中 に良い シーズ があり 、ぜひPhaseⅠに進 めたい という も
のに関し ては、 応用開発 研究に 日本版NIHより研 究資金 が出る といいな と思っ ており ます 。
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以上、情報提供 でござい ます。
■永井座長
ありがとうご ざいま す。
■松本教 授
私 、今日は 、工学 系研究 科の教 授とい う肩書 で来てお ります が、創 薬支援 ネ
ットワー クとい うものを 構想し て、実 現させ たとき の医療 イノベー ション 推進室 の室長 を
やってお りまし た。それか ら、アカ デミア の立場 として 申し上 げますと、研究担 当の理 事・
副学長で あると いうのと 、それ からも う一つ 、病院 担当の 理事・副 学長も やって おりま し
て、そうい う関係 で少しア カデミ アの立 場から 発言を させて いただき たいと 思いま す。
今、門 脇先生 をはじめ 、色々 な方か らお話 があっ たと思 いますが 、臨床 をやっ ている 先
生、研究 をやっ ている先 生方は 大変忙 しい。 例えば 、臨床 研究をや ろうと 思って 、現場 の
お医者さ んが本 当にやれ るのか 、時間 的な管 理がで きるの かという 観点で いうと 、ほと ん
ど無理だ という のが普通 の理解 だと思 います 。優 秀な先 生方は300%働くこ とに何 の躊躇 も
ないので 、やっ てしまわ れます が、本 当にそ んなこ とをや っていて 日本の 医療が 続いて い
くのかと いうこ とだと思 います し、ア カデミ アの立 場でい うと、世 界の大 学と本 当に戦 っ
ていけるの かとい うことだ ろうと 思いま す。
今や医 療もも ちろん、 そうで すが、 アカデ ミアも 完全に グローバ ルマー ケット の中で 戦
わないと いけな いという 状況に あるわ けです 。そう します と、やは り研究 者には 研究に 集
中しても らうよ うに、ユニバ ーシティ・リ サーチ・アド ミニス トレータ ー(URA)が機動的 に
働けるシ ステム がちゃん と動い ていか ないと いけま せんし 、研究者 を支え る人材 がかな り
たくさん 要ると いうこと は、ア カデミ アも病 院も同 じだと 思います 。コ・ メディ カルの 方
がたくさ んいて 、先 生方の臨 床研究 なりを 支えて いくと いう構 造が構築 されて いかな いと 、
これはも う本当 に立ち行 かない と思い ます。 ぎりぎ りのと ころまで と言い ますか 、もう 崖
っ縁を落ち 始めて いるので はない かとい う気が してお ります 。
このよ うな状 況下で、 研究費 が流れ てくる のです が、そ の研究費 に裁量 性の高 いお金 が
まざって いない というこ とが問 題です 。直接 経費だ けが来 て、研究 費がも のすご く細か く
項目分け されて いるわけ です。 こうい うこと はやっ てはい けません 、これ ならや ってい い
です、だ めです というの が、し かも、 資金配 分機関 によっ て言い方 が違っ てくる という よ
うな統一 されな い状況の 中で、 現場の 研究者 は本当 に苦労 をして、 研究管 理をし ている と
ころがご ざいま す。そ ういっ た点に ついて 、是非 、こ こから 意見を強 く出し ていた だいて 、
アカデミ アも一 緒になっ て変え ていけ るよう な、も ちろん その中に ナショ ナルセ ンター も
国立病院 機構も 全部入っ ている わけで すけれ ども、 そうい うところ に新し いシス テムを 構
築していた だけれ ばと思い ます。
もう一 つは、 組織運営 の中で 透明性 をどう 確保し ていく のかとい うのは 、今、 アカデ ミ
アのコン プライ アンスで すとか 、ガバ ナンス ですと か、色 々なこと が言わ れてお ります け
れども、 透明性 をきちん と担保 してい くシス テムと いうの を大学の 中でつ くって いくと い
うこと。 それか ら、研究 不正の 問題も 色々あ るので 、余り 私は大き い声で は今言 えない 事
情もござ います けれども 、そう いった ものを 国とし て担保 していく システ ムがど うある べ
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きかという ことも 是非、考 えてい きたい と思い ます。
もう一 つは、 人材の流 動性を どう高 めてお くかと いうと ころが、 かなり 決定的 に重要 な
話だろう と思い ます。例 えば、 国立大 学と私 立大学 と企業 を行った り来た り、ま たは海 外
に行った り来た りできる かとい うこと です。 現状で もでき ますが、 それは 個人の 不利益 の
もとに、 行われ ている事 情がご ざいま す。そ ういっ たとこ ろをやは り統一 的に変 えてい く
というこ とがな いと、色 々な施 策が全 部机上 の空論 に終わ ってしま うよう な気が いたし ま
すので、是 非、よ ろしくお 願いい たしま す。
■菊地委 員
本 日、多く の先生 から現 状の個 別の問 題点も 全て指摘 された と思う ので、 私
は多少総 論的な ことをお 話させ ていた だきた いので すが、 恐らく、 ここに おられ る先生 方
の関心は、今後作 る「日本 版NIH」がどういう 機能を 持つの か、そこ に尽き るよう な気が い
たします。
先ほど からお 話があり ますが 、ア メリカ のNIHは何十年と いう歴史 があり それだ けのお 金
をかけた もので すので 、
日本 がこれ から追 いつく にはさ らに何 十年もか かるわ けです ので 、
それと同 じもの を創ろう とする ことは 極めて 非現実 的だろ うと思い ます 。日本 型NIHをどう
創るかと いうこ とが、皆 さんも 一番関 心が高 いと思 うので すが、冒 頭にも ありま したよ う
に、日本 の場合 には、基 礎研究 者は世 界でも 戦える ものが あるとい うこと は、明 治以来 の
政府が実 践して きた、教 育も含 めて、 うまく やって きたこ とは決し て間違 いでは ないと 思
います。 これま でで何が 抜けて いたか という と、座 長がお っしゃら れたと おり、 円環構 造
をいかに 作るか 、実用化 までの 部分に 対して 有効的 な支援 策が考え られて こなか ったと い
うことに尽 きるの だろうと 思いま す。
それは なぜか というと 、これ まで各 省庁が 縦割り で実施 していた 実用化 のとこ ろは、 実
は省庁の 縦割り では絶対 にでき ない、 人の問 題、金 の問題 、場所の 問題、 色々あ るわけ で
す。ですから、新しい「日 本版NIH」では、実用化 の部分 で何を すべき か、またそ のプラ ン
を作るこ と、そ してそれ を実際 に動か すこと が必要 だと思 います。 その場 合のお 金は、 各
先生が言 ったよ うに、純 増で充 てる必 要があ ると思 います 。これま での予 算規模 でそれ ら
を流用す ること は一切し ない。 これま でのも のは、 既に基 礎研究者 を育て る、あ るいは 基
礎研究を やるこ とでも、 まだ人 もお金 も足り ないわ けです から、そ れを減 らすこ とはあ り
得ないと いうぐ らいの姿 勢でお 願いで きれば と思い ます。 特に実用 化のと ころの 全体の グ
ランドプ ラン、 本日、多 くの素 材が出 された と思い ますが 、いかに そうい う全体 を統合 化
するかと いうこ とが重要 だと思 います 。日本 とすれ ば、プ ロダクツ をいか に出す か。こ の
プロダク ツとい うのは、 医学の 場合に は、実 際の臨 床への 応用もあ るわけ ですし 、患者 さ
んを助け ること でも良い のだと 思いま す。医 療機器 の場合 には、具 体的な 機器を いかに 作
るかとい うとこ ろだろう と思い ますが 、医療 技術や 医療・ 医学に関 する出 口側の ところ に
特化した 施策を これから の「 日本版NIH」が中 心となっ て実施 すると いうこ とが、座長の 円
環構造を作 ると言 われた意 味・意 義であ ろうか と思い ます。
■永井座 長
1 つまだ議 論され ていな いのが バンキ ングの 問題です 。資料 など色 々な御 発
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言はあり ました が、それ はマテ リアル の話と 情報の 話と両 方あると 思うの ですが 、バン キ
ングにつ いて、 特にゲノ ム関係 の先生 方は御 関心が おあり だと思う のです が、御 提言が あ
ればお願い します 。
■間野教 授
手 短に申し 上げま す。こ れから のバン キング で一番大 事なこ とは、 十分な 臨
床情報が 附帯さ れた良質 なバン クであ るとい うこと です。 単に胃が んが1 万人集 まって い
るというの では、 余り役に 立たな いと思 います 。
ですか ら、例 えば、ど ういう がん種 で、ど ういう 病歴で 、どうい う治療 をした らそれ が
効いたと か、効 かないと かとい うとこ ろまで が入っ た情報 が附帯さ れたバ ンクが 、ある 程
度公正な システ ムで運用 されて 、外部 の人に も、例 えば、 対価を必 要とし てもい いと思 い
ますけれど も、公 平な形で アカデ ミアに 提供さ れると いうシ ステムが 重要だ と思い ます。
■宮野教授
宮野でござい ます。 よろし いでし ょうか 。
東大医 科研は 「バイオ バンク ・ジャ パン」 を1期 、2期 、3期、 今、3 期でや って20万
人分のDNAを集めて おります 。来年 3月ま でには 疾患ゲ ノムと して1,000のホール ゲノム シ
ークエン スをや っていき 、また 東京大 学の中 でもっ と積極 的に利用 してい くとい う形で 、
松本先生 が、東 大の中に ゲノム 医科学 拠点機 構とい う形の ものを構 想して おりま して、 推
進していく 体制で ございま す。
それぞ れの病 院の中に も色々 なコホ ートの 研究が あるか と思いま すが、 そうい ったも の
を束ねて いきな がら、こ れは私 の個人 的な考 えです が、コ ホート研 究に協 力して くださ っ
た方々が 、なる ほど、我 々もし くは我 々の将 来に返 ってき ているの だとい うこと を実感 と
して感じ られる ようなバ イオバ ンク、 コホー ト研究 の運営 をしてい ただき たいな と思っ て
おります。
■大澤委 員
先 ほどの臨 床デー タがつ いた遺 伝子情 報です が、それ は本当 に重要 と思い ま
す。ただ、先ほど も話題に 出まし たが、臨床医の 忙しさ という 観点か ら考慮 致しま すと、2
年間の臨 床研修 制度のた め各診 療科、 講座は 医師不 足にな っている という 問題や 、医学 部
卒業生が 基礎医 学教室に 入らな いとい う問題 もある と思い ます。そ の点も 総合的 に是非 、
ご配慮いた だきた いと思い ます。
■清水委 員
一 言だけ申 し上げ ますと 、臨床 データ が充実 したバイ オバン クでな いと、 そ
の活用に は限界 があると いうこ とです 。ナシ ョナル センタ ーも色々 な疾患 ごとの バンク を
つくって います 。重要な 点はさ らに2 つあっ て、時 系列に 沿ったデ ータを いかに 増やし て
いくか。 つまり 、患者さ んの病 態の変 化に応 じたサ ンプル をどうと ってい くかと いうこ と
と、外部 からの アクセス ビリテ ィーを どう上 げてい くかと いう、そ の2つ が重要 かと思 い
ます。
■榊委員
先ほ どのコホ ートス タディ ーもそ うです けれど も、国家 的には 、先ほ どの「 バ
イオバン ク・ジ ャパン」 と「東 北メデ ィカル ・メガ バンク 事業」、 それか ら、そ のほか に
京都大学 とか九 州大学等 で行わ れてい ますの で、ど こか1 カ所とい うので はなく て、そ れ
らを統合 して推 進する仕 組み、 特に情 報を共 有する システ ム、体制 作りと いうこ とが必 要
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だと思いま す。
もう一 つは、 今、最先 端の開 発とい うこと がある のです が、もう 一方で は、先 々に行 き
ますと 、
一般 的な医 療を広く 国民に 広める という 形の先 制医療 も必要で す。そうし ますと 、
医療機器 につい ても最先 端の「ダヴ ィンチ 」みた いなも のもあ ります けれど も、一 方では 、
医療現場 や日々 の生活の 中で毎 日測定 できる ような バイオ チップの ような ものを 広く普 及
させること も大切 だと思い ます。 これも 一大ビ ジネス に多分 展開する ものだ と思い ます。
そうい う意味 では、医 薬品の ほうは しっか りと形 ができ ています けれど も、日 本のも の
づくり産 業も非 常に強力 なもの を持っ ていま すので 、最先 端機器だ けでは なくて 、広く 国
民医療に 使える 機器とい うもの を開発 するよ うなシ ステム を、工学 系も含 めてし っかり と
構築して いくと いうこと も重要 です。 是非、 中尾会 長を中 心に考え ていた だけれ ばと思 い
ます。
■笹月委 員
ゲ ノムのバ ンクに ついて ですが 、厚労 省が持 っている 難病班 は世界 に誇る 研
究グルー プであ り、希少 難病、 その他 、非常 に多く の難病 があるの ですけ れども 、これ の
試料がき ちんと 整えられ ていな い、バ ンク化 されて いませ ん。特に 希少難 病の場 合には 、
本人だけ ではな くて、も ちろん 了承を 得て、 家族の 試料も 手にでき れば、 これは 世界に 冠
たるバンク になる と思いま すので 、この 件もぜ ひ検討 してい ただけれ ばと思 います 。
■永井座 長
山 本先生、「 日本版EHR」が止ま ったと いうの は、どう いうこ となの でしょ う
か。そこだ け最後 に御説明 いただ けます か。
■山本理 事長
端的に申 し上げ ると、 政権交 代で止 まった というこ とでご ざいま す。戦 略
ができて30日後に 政権交代 が起こ りまし たので 。
■永井座長
まだ御議論が 色々お ありか と思い ますけ れども 、時間に なりま した。
これをもちまし て、第2 回「医 療分野 の研究 開発に 関する 専門調査 会」を 閉会し ます。
どうもありがと うござい ました 。
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