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「地域探究の時間」の取組みで地域リーダーとなる人材を育成
教育研究論集 第6号(2016 年 2 月発行) 〈地域コラム〉 「地域探究の時間」の取組みで地域リーダーとなる人材を育成 横山尚登 1 取組みの概要 (1)主題設定の理由 我が国では,地方から都市部への人口流出が進み,やがて地方の多くの地域が消滅するので はないかと危惧されている。また,鳥取県関西本部の調査により,関西の大学に進学した鳥取 県出身の高校生が大学卒業時に2割から3割しか鳥取県に帰って来ないということが分かって い る 。国 は「 地 方 創 生 」を 打 ち 出 し ,全 国 で 様 々 な 取 り 組 み が 始 ま っ て い る が , 「 地 方 創 生 」を 実 り あ る も の に す る た め に は ,地 域 を 支 え る 人 材 を 育 成 す る こ と が 最 も 重 要 な 課 題 だ と 考 え る 。 そ こ で ,本 校 で は 高 校 生 が 地 域 の 魅 力 や 課 題 を 探 究 す る「 地 域 探 究 の 時 間 」 (総合的な学習の 時 間 ) に 取 組 む こ と に し た 。 平 成 26 年 8 月 に は 地 元 北 栄 町 と 「 地 域 探 究 の 時 間 推 進 に 関 す る 協 約 」を 結 び , 「コナンの町づくりに関する意見交換会」 「豊田庭園野立ての会」 「北栄町高校生 議 会 」な ど に 取 り 組 ん だ 。平 成 27 年 度 は 25 の 探 究 テ ー マ を 設 定 し ,地 域 で 活 躍 す る 各 方 面 の スペシャリストを講師に,フィールドワークを通して探究活動を行った。成果発表の場を「ク ラ ス 発 表 会 」「 校 内 発 表 会 」「 地 域 創 造 ハ イ ス ク ー ル サ ミ ッ ト 」 の 3 段 階 と し た 。 平 成 27 年 12 月 5 日 (土 )に 「 地 域 創 造 ハ イ ス ク ー ル サ ミ ッ ト 」 を 本 校 で 開 催 し , 隠 岐 島 前 高 校 (島 根 県 ),村 岡 高 校 (兵 庫 県 ),智 頭 農 林 高 校 ,岩 美 高 校 ,日 野 高 校 ,倉 吉 東 高 校 ,鳥 取 中 央 育 英 高 校 (以 上 鳥 取 県 )の 7 校 が , 地 域 創 造 を テ ー マ に 意 見 発 表 及 び デ ィ ス カ ッ シ ョ ン を 行 っ た 。 また,共同アピールを採択し,サミットの継続と全国へ仲間を求めていくことを確認した。 ( 2 )「 地 域 探 究 の 時 間 」 探 究 テ ー マ 一 覧 1鳥取和牛のブランド力向上 14 商 店 経 営 で 地 域 を 拓 く 2人気スイーツで町おこし(ボルドー) 15 名 探 偵 コ ナ ン を 活 か し た 町 づ く り 3人気スイーツで町おこし(リンツ) 16 手 話 ド ラ マ で 観 光 案 内 4 琴 浦 グルメストリートプロジェクトと 地 域 の 活 性 化 17 お 台 場 周 辺 の 魅 力 ア ッ プ と 地 域 の 活 性 化 5農業の魅力と地域発展(大栄スイカ) 18 シンガーソングライターと し て 地 域 に 生 き る 6農業の魅力と地域発展(農業経営) 19 郷 土 の 歴 史 を 活 か し た 地 域 創 造 7新聞の情報発信力と地域の発展 20 ア ー ト を 活 か し た 町 づ く り 8 SNS を 活 用 し た 情 報 発 信 21 体 育 文 化 の 力 で 地 域 貢 献 9都会から見た鳥取 22 す い か な が い も マ ラ ソ ン で 地 域 起 こ し 10 新 し い エ ネ ル ギ ー と 地 域 の 未 来 ( 太 陽 光 ) 23 医 療 現 場 の 実 態 と 今 後 の 地 域 医 療 11 新 し い エ ネ ル ギ ー と 地 域 の 未 来 ( 風 力 ) 24 郷 土 芸 能 12 鳥 取 県 の 未 来 と 若 者 の 活 躍 25 子 ど も 園 と の 交 流 13 企 業 経 営 と 地 域 貢 献 − 83 − 横山尚登:「地域探究の時間」の取組みで地域リーダーとなる人材を育成 2 実践内容 (1)年間計画 月 4 日 内 30 木 講演会① 8 金 生徒説明会 11 月 講演会② 14 木 オリエンテーション① 27 水 オリエンテーション② 5 金 地域探究① 23 火 地域探究② 7 9 8 容 時 14: 05~ 15: 45 (6・7限) 14: 05~ 15: 45 (6・7限) 14: 00~ 14: 45 (移動,感想) テーマ選択 14: 05~ 15: 45 (6・7限) 事前学習 14: 05~ 15: 45 (6・7限) (初顔合わせ・計画) 14: 05~ 15: 45 (6・7限) (フィールドワーク) 13: 10~ 15: 45 (5・6・7限) 木 地域探究②振り返り 14: 05~ 15: 45 (6・7限) 27 木 地域探究③ (フィールドワーク) 13: 10~ 15: 45 (5・6・7限) 9 木 地域探究④ (フィールドワーク) 13: 10~ 15: 45 (5・6・7限) 16 水 地域探究⑤ (まとめ) 14: 05~ 15: 45 (6・7限) 25 金 地域探究③④⑤振り返り 14: 05~ 15: 45 (6・7限) 1 木 クラス発表準備 午後 2 金 クラス発表準備 午後 22 木 地域探究クラス発表 14: 05~ 15: 45 (6・7限) 11 26 木 地域探究校内発表会 13: 10~ 15: 45 (5・6・7限) 12 5 土 地域創造ハイスクールサミット 10: 00~ 15: 30 5 6 9 10 講演会(校長) 間 講演会(平井鳥取県知事) (3)活動エリア 1 3 2 4 6 5 1:鳴 り 石 の 浜 ,スイーツ( ボルドー),琴 浦 グルメストリート 2:畜 産 試 験 場 山根農園,風力発電,太陽光発電,北栄町役場,お台場 文化会館 5:赤瓦,厚生病院 6:湯梨浜選果場 − 84 − 3:コナンロード,大 栄 選 果 場 , 4:バルコス,シルバー倉吉,体育 教育研究論集 第6号(2016 年 2 月発行) 3 まとめ この取組みは地域と学校の両者にメリットがあると考えている。先ず,高校生にとっては地 域の最前線で活躍している方と接することによって,これまで知らなかったり,関心を持たな かった地域の魅力や課題に気付くことができる。そして,そのような活動を通してふるさとの た め に 何 が 出 来 る か を 考 え ,地 域 に 貢 献 し よ う と す る 志 が 芽 生 え る の で は な い か と 考 え て い る 。 また,生徒の学ぶ心に火がつき,学力向上にもつながるのではないかと期待している。 次に,地域にとっては,何よりも地域の大人が「誇りうる地域」を高校生に見せたいと思う ようになり, 「 誇 り う る 地 域 」を 創 造 し よ う と い う 地 域 住 民 の 意 欲 が 生 ま れ て く る 。地 域 住 民 の 意識が変わることにより,地域の積極的な取組みが始まる。全国各地で,学校と地域がそのよ うにつながっていくことが地方創生につながると考えるのである。 横山尚登(鳥取県立鳥取中央育英高等学校校長) − 85 −