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YMCAの英会話 英語学習10のポイント

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YMCAの英会話 英語学習10のポイント
YMCAの英会話
英語学習10のポイント
さぁ、70億人のココロにふれよう。
奈良YMCA国際・語学センター
Copyright  Nara YMCA
1. Input インプット:
「意味のある」英語に、できるだけたくさんふれます
聞いたり読んだりして、言葉にふれることを、Input1(インプット)と言います。
赤ちゃんが母国語を話せるようになるのは、自分でしゃべりだすまでに、まわりの人
たちが話す多くの言葉(インプット)を聞いて、それを理解しようとする期間がある
からです。
(これを、silent period と云います)
外国語学習の場合にも、言葉のインプットがなければ、決して話せるようにはなりま
せん。ですから、まず、英語の「聴き取り」をできるだけ多くやることが最重要です。
しかし、インプットが難しすぎたり、易しすぎたりすると、逆効果。学習者のレベル
にあった「質の高い」インプットが、たくさん必要なのです。
また、言葉のインプットは「聴き取り」だけでは、不十分です。幼児言葉が進化して
大人のコミュニケーションができるようになるためには、
「読む」
インプットが必要な
ように、英語をたくさん読むことも必要です。(Cummins, 1979)2
2. Output アウトプット:
「自分の言葉として」英語を発話します
言葉を、自分のものとして、話したり書いたりすることを、Output3(アウトプット)
Krashen, S.D. (1982). Principles and practice in second language acquisition. Oxford:
Pergamon Press.
2
Cummins, J. (1979) Cognitive/academic language proficiency, linguistic interdependence, the
optimum age question and some other matters. Working Papers on Bilingualism, 19, 121-129. See
also Collier, V.P. (1987). Age and rate of acquisition of second language for academic purposes.
TESOL Quarterly, 21(4), 617-541. http://www.iteachilearn.com/cummins/bicscalp.html
3
Swain, M. (1985). Communicative competence: Some roles of comprehensible input and
comprehensible output in its development. In S.M.Gass, & C.G.Madden (Eds.), Input in second
language acquisition (pp. 235-253). Cambridge, MA: Newbury House.
1
と言います。
泳げるようになるには、たくさん泳がなければなりません。つまり、
「畳の上の水練」
が役に立たないように、英語で話せるようになるには、英語で発話する機会が多くあ
4
ることが大切です。また、恥ずかしがり屋の日本人には、英語でアウトプットしやす
い環境が必要です。
しかし、ただ何となく泳いでいても、進歩がないように、発話がその人にとって「目
的」を持った、
「意味のある」ものでないと、その練習の効果は半減します。
また、どういう言い方をしたらよいのか、どこがいけないのかなどを指摘してもらわ
ないと、進歩はありません。スポーツ選手が、コーチのアドバイスを受けるのに、よ
く似ていますね。
「人のふり見て、わがふり直せ」と言いますが、他の人のアウトプットを聞いて、自
分のアウトプットを修正できる環境も、学習効果を高めます。
3. Interaction インターアクション:
「コミュニケーションの手段として」英語を使います
言葉によるコミュニケーションは、一方通行ではありません。お互いに自分の言いた
いことだけを言えばいいと言うのでは、コミュニケーションは成り立ちません。同じ
場所、同じ時間に、双方向の意志疎通が起こることが、コミュニケーションなのです。
ちょうどテニスの試合のように、こちらの言ったことに相手が反応し、相手の反応に
こちらがまた反応すると言う相互作用(Interaction5 インターアクション)が、言葉
によるコミュニケーションの基本だと言えます。
『畳の上の水練』畳の上で水泳の練習をすることで、理論や方法は立派だが、実地の練習を経ていな
いので、実際の役には立たないこと。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/1373/kotowaza7/page27.html
5
Pica, T. (1987). Second-language acquisition, social interaction, and the classroom. Applied
Linguistics, 8(1), 3-21.
4
3
日本語で話すときのことを考えても分かるように、英語でスムースなコミュニケーシ
ョンを行なうためには、自分の発言に対する相手の反応を、瞬時にそして正確に理解
して、次の自分の発言の内容・形態を、ある程度自動的に処理し、アウトプットでき
ることが必要なのです。
この時、相手の反応をある程度予想することができれば、こちらの反応は早くなり、
対話に余裕が生まれますね。(i.e., schema theory6)
また、相手の言うことが理解できなかったり、思い通りの英語表現が思いつかなかっ
たりして、
コミュニケーションがうまくいかない場合に、
どう対処したらよいのかを、
瞬時に判断し実行することも、必須の能力と言えます。(i.e., strategic competence7)
4. Language System 言葉の規則性:
「話すためのルール」を身につけます
言葉は、創造的なものであると同時に、規則的なものです。規則に基づいたシステム
としての言葉が、コミュニケーションを支えているのです。従って、英語を話すため
に、文法は必要ない、と言った極論を時々耳にしますが、こうした考えは誤っている
と言う他はありません。
文法は言葉のルールですから、文法の学習なしには英語の上達はありません。また、
誰にも理解されない発音やイントネーションでは、意思の疎通は図れないことは明ら
かでしょう。
しかし、交通ルールを暗記しているだけでは、車の運転ができないように、話す時に
自動的に使える文法や発音でなければ、実際のコミュニケーションの役には立ちませ
ん。(e.g., Ellis, 19988)
Carrell, P.L., & Eisterhold, J.C. (1983). Schema theory and ESL reading pedagogy. TESOL Quarterly,
17(4), 553-573.
7
Canale, M. (1983). From communicative competence to communicative language pedagogy. In J.
Richards, & R. Schmidt. (Eds.),(1983). Language and communication. (pp. 2-25). London: Longman.
6
Ellis, R. (1998). Teaching and research: Options in grammar teaching. TESOL Quarterly, 32(1),
39-60.
8
4
中学・高校で習った英文法や発音を、実際の会話にスムースに使える「話すためのル
ール」に、バージョンアップする必要があるのです。
また、
「話すためのルール」は、文法だけではありません。コミュニケーションは相手
がいなくて成り立ちませんが、相手によって変化するものでもあります。つまり、い
くら自分が文法的に正しい(accurate)言い方をしていても、その言い方が、相手やそ
の場の状況に照らして、適切な(appropriate)なものになっていなければ、コミュニケ
ーションはうまくいきません。
“How old are you?”は、
「正しい」英語でも、聞いては失礼な相手や状況はたくさんあ
りますね。”Are you married?”も同様ですね。英語のコミュニケーションには、正し
いばかりでなく、適切な表現を学ぶことが、必要なのです。
5. Intercultural Awareness 異文化理解:
文化の違いを理解します
言葉は、文化と切り離すことはできません。文化の違いを無視して、外国語を学ぶこ
とはできません。(e.g., Hymes, 19649)
そのためには、日本の文化や社会を正しく理解し、世界の文化や社会、特に英語圏の
文化や社会と、客観的に比較することが必要なのです。
「日本の常識」は「世界の非常識」と言われているように、日本的なものの考え方を
直接英語の世界に持ち込むと、誤解のもととなりかねません。例えば、日本で知り合
いになにかプレゼントをするとき、
「つまらないものですが」と言って渡しますが、こ
れをそのまま英語に訳して、英語圏の人に言った場合、相手は「そんなつまらないも
のなら、なぜ私にくれるの?」と疑問に思うことでしょう。一般的に言って、日本文
化の「謙遜の美徳」は、英語文化では通じないと考えておく方が無難と言えます。
9
Hymes, D. (1964). Language in culture and society. New York: Harper & Row.
5
そのように英語の文化と日本文化の違いを理解することが、日本人として英語を生き
た言葉として使うことにつながります。その結果は、英語圏の文化や社会や、自国の
文化や社会とは、一線を画した「第3の文化」
、つまり、Global Culture を、自分の
中に構築することと言えるでしょう。(Kramsch, 199310)
6. Goals & Targets 目的と目標:
目的を持つ→目標をたてる→進歩が見える
「なんで英語やるの?」11 - 英語を学ぶ目的をしっかり持ち、その目的のためには
どの程度の英語力が必要なのか、どんな方法で勉強すれば良いのかを、はっきりさせ
ること大切です。
また、
目的のない学習がうまくいく可能性は低いものです。
「空を打つような拳闘はし
ない」と、聖書も言う通りですね12。
外国語の学習は、自分ではなかなか進歩が見えないものです。大きな目的がはっきり
すれば、そこへたどり着くためのステップが要ります。だから、比較的短い期間で達
成可能な目標を立て、それに向かって努力するパターンをつくることです。
TOEIC・TOEFL・英検などの英語検定試験は、こうした短期の達成目標として利用でき
るものでしょう。
ただし、試験はあくまでも試験であり、あなたの実力そのものではありません。つま
り、試験は、実力のある部分、または、その時の実力の影を、写すものにすぎないと
言うことを忘れてはなりません。また、試験のための英語学習のみでは、本末転倒で、
10
Kramsch, C. (1993).Context and culture in language teaching. Oxford: Oxford University Press.
中津燎子(1974)『なんで英語やるの?』東京:文春文庫。
「新訳聖書」コリント人への手紙 9:24-27. 1 Cor 9:24-27 (NLT) [24] Remember that in a race everyone
runs, but only one person gets the prize. You also must run in such a way that you will win.
[25] All athletes practice strict self-control. They do it to win a prize that will fade away,
but we do it for an eternal prize. [26] So I run straight to the goal with purpose in every step.
I am not like a boxer who misses his punches. [27] I discipline my body like an athlete, training
it to do what it should. Otherwise, I fear that after preaching to others I myself might be
disqualified. http://www.usethesword.com/james3.html より。
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6
効果も薄いと言わざるを得ません。(e.g., Ellis, 199413)あくまでも、試験は、あな
たの総合的な英語力の一部を測る目安にすぎません。
7. Interest 興味:
「夢中になるもの」を通して学びます
誰でも自分の興味(interest)のあることについて、聞いたり読んだり話したりすると
きには、つい夢中になるものです。英語の学習でも、その「つい夢中になった」状態
を、たくさん経験するほど効果があると言われています。
その「つい夢中になった」状態では、文法のことや単語のことは忘れて、その興味の
ある内容に引き込まれて、聞いたり読んだり話したりしているわけです。授業中、あ
る目的を達成するために、英語を使って様々な活動をすることがありますが、これも
こうした考え方に基づいています。(i.e., task-based language learning – Nunan,
199114; Skehan, 199815 )
そして、夢中になる分野をたくさん持っている人ほど、英語の上達が早いと言われて
います。それは、
「話題の引き出し」をたくさん持つことだ、とも言えるでしょう。
(e.g., Chiang & Dunkel, 199216)
自宅でも、興味のある雑誌や本などの読みもの、ビデオ、CD、インターネットを活用
して、夢中になることが、英語力を伸ばしていくことにつながります。
最近、マスコミ報道でも、
「年齢が上がるほど語学学習の素質は低下していく。大人の
強力な武器は『学ぶ意欲』だ」17と伝えられました。つまり、大切なのは、
「夢中に
Ellis, R. (1994). The study of second language acquisition. Oxford: Oxford University Press.
Nunan, D. (1991). Communicative tasks and the language curriculum. TESOL Quarterly, 25(2),
279-295.
15
Skehan, P. (1998). Task-based instruction. Annual Review of Applied Linguistics, 18, 268-286.
16
Chiang, C.S., & Dunkel, P. (1992).The effect of speech modification, prior knowledge, and
listening proficiency on EFL lecture learning.
TESOL Quarterly, 26(2), 345-374.
17
「英語学習のサイエンス」Newsweek 日本版。(May 21, 2003).
13
14
7
なるもの」と通して、
「学ぶ意欲」を向上させ、維持していくことでしょう。それが「大
人の知恵」と言うものです。
8. Learning Style 学習スタイル
自分にあった学習スタイルを見つける幅広いアプローチ
人それぞれ趣味や性格が違うように、自分に相応しい学習のしかたは違うはずです。
同じことを人から聞いた方がよく分かる人もいれば、読んだ方がすらすら理解できる
人もいます。単語のリストを作って暗記するのが得意な人もいれば、会話の中で使っ
た方がよく覚えられる人もいます。(e.g., learning style – Reid, 198718; Japanese
students – Hyland, 199419)
ライフスタイルによっても、違いがあります。朝早く起きて学習するのが、自分に合
っている人もいれば、夜にならないと、エンジンのかからない人もいます。
要は、人それぞれ、人生いろいろ。ひとりひとりの個性とライフスタイルにあった学
習方法を見つけ、それを生かすことが、効果的な英語学習生活の第一歩です。(i.e.,
learning strategy20)
また、欠点を補おうと努力するより、長所をもっと伸ばそうとする方が、楽しくて長
続きするようです。つまり、聞き取りの得意な人は、毎日電車の中や家で英語のテー
プを聴く習慣にするとか、読書の好きな人は、英語の推理小説を読んでみるとか、楽
しめて長続きする習慣を持つことがポイントです。
教室でのレッスンの場合、こうした個人の学習スタイルのバラエティに、幅広く対応
できる授業であることが望ましいことは、言うまでもありません。時間的制約の中で
も、できるだけ「総合的な」アプローチを行って、個人の多様なニーズに対応してい
Reid, J.M. (1987). The learning style preferences of ESL students. TESOL Quarterly, 21(1),
87-111.
19
Hyland, K. (1994). The learning styles of Japanese students. JALT Journal, 16 (1), 55-74.
20
Oxford, R.L. (1990). Language learning strategies: What every teacher should know. Boston:
Heinle & Heinle.
18
8
る授業を選択するべきでしょう。
9. English as the Global Language 世界に広がる英語:
世界に心と眼を開こう
世界で10億人以上の人が、英語でコミュニケーションをしています。世界中のコン
ピュータに蓄積された情報の8割は英語です。(e.g., Crystal, 199721; Naisbitt, &
Aburdene, 199022)
英語は国際語(Global Language)です。グローバル化がすすむ 21 世紀、英語でコミュ
ニケーションをする相手は、アメリカ人やイギリス人などの英語圏の国の人々に限ら
れません。中国や韓国、ネパールやカメルーンの人たちとも、英語で話し合う時代に
なりました。
つまり、英語のさまざまなバラエティーに触れ、それぞれの特徴と共通点を認識し、
国際語としての英語に慣れることが大切なわけです。(e.g., Kachru, 198523; McKay,
200024)
英語が上手に話せるようになったからと言って、アメリカ人やイギリス人になってし
まうわけではありません。
みなさんが英語でコミュニケーションできるようになれば、
その結果、
「英語も話せる日本人」
、つまり「Bilingual な日本人」になるわけです。
あるいは、このことを「Global な日本人」になると言い換えても良いでしょう。
ですから、日本人としてのアイデンティティを、しっかり持つことが大切です。そし
て、自分の考えを発信できるよう、世界の動きに心と眼をむける必要があるのです。
Crystal, D. (1997). English as a global language. Cambridge: Cambridge University Press.
Naisbitt, J., & Aburdene, P. (1990). Megatrends 2000: Ten new directions for the 1990’s. NY:
Avon Books.
23
Kachru, B.B. (1985). Standards, codification and sociolinguistic realism: The English language
in the outer circle. In R.Quirk, & H.G. Widdowson (Eds.) English in the world: Teaching and learning
the language and literature (pp.10-36). Cambridge: Cambridge University Press.
24
McKay, S.L. (2000). Teaching English as an International Language: Implications for cultural
materials in the classroom. TESOL Journal, 9(4), 7-11.
21
22
9
10. Teacher is a key. 教師は生涯学習
いい先生に習おう
英語を好きにしてくれる先生が、いい先生です。(i.e., motivation25)
もちろん学習するのはあなたですから、先生にあなたの代わりに学習してもらうこと
はできません。しかし、いい先生は英語を好きにしてくれます。いい先生は、英語の
学習意欲を高めてくれます。この「英語学習の10ポイント」を充分理解し、それを
教室で実現できる先生が、いい先生です。
教室は、みなさんの英語コミュニケーション能力を育てる「エコ・システム
(ecosystem)26」だと考えられます。教材、教え方、教室、クラスメート、個人の学習
スタイル、モティベーション、これらの全てが、教室の生態系を構成します。そして、
そこでみなさんのコミュニケーション能力が、しっかり育つよう、この環境を整える
のが、先生の仕事です。
そのために、いい先生は学習します。
「生涯学習」と言う言葉は、実は教師のためにあ
ると言われています。
よりよい教師になるために、
学習する先生を選びましょう。
(e.g.,
Bailey, Curtis, & Nunan, 200127; Freeman, 198228; Gaies, 199129; Richards, 199830)
ネイティブ・スピーカーの先生には、ネイティブ・スピーカーの利点が、日本人の先
生には、日本人の良さがあります。ネイティブ・スピーカーの利点は、英語コミュニ
ケーションのモデルになれることです。日本人の先生の良さは、同じ日本人として、
Brown, H.D. (1994). Teaching by principles: An interactive approach to language pedagogy.
Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall Regents.
26
n 【生態】 生態系.[リーダーズ+プラスV2]
27
Bailey, K.M., Curtis, A., & Nunan, D. (2001). Pursuing professional development. Singapore:
Heinle & Heinle.
28
Freeman, D. (1982). Observing teachers: Three approaches to in-service training and development.
TESOL Quarterly, 16(1), 21-28.
29
Gaies, S. (1991).English language teaching in the 1990s: How will teachers fit in? JALT Journal,
13(1), 7-21.
30
Richards, J.C. (1998). Beyond training. Cambridge: Cambridge University Press.
25
10
英語学習のお手本を示せることです。どちらも大切な役割だと言えます。(e.g.,
Medgyes, 1994.31; Roberts, 199832; Widdowson, 199233)
奈良YMCA国際・語学センター
【英会話・中国語・外国人のための日本語】
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5(0742)45-5920
[email protected]
受付時間 9:30~20:00(土曜 19:00)日曜・祝日休館
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33
Medgyes, P. (1994). The non-native teacher. London: Macmillan.
Roberts, J. (1998). Language teacher education. London: Arnold.
Widdowson, H.G. (1992). ELT and EL teachers: Matters arising. ELT Journal, 46(4), 333-339.
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