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アインシュタイン方程式

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アインシュタイン方程式
アインシュタイン方程式
岡田 和樹
概 要
一般相対性理論の数学的に正確な方程式を与え、重力が弱い場合につ
いて考察する。
相対論以前の物理における空間幾何
1
相対論以前の物理では空間は R3 の多様体構造をとるものとし、空間の要
素はデカルト座標 (x1 , x2 , x3 ) で表現する。ここでデカルト座標系は回転と並
進を考えれば6自由度の取り方を考えることが出来、座標はその取り方に依
るために本質的な意味を持たない。しかし、2点 x とx̄ 間の距離の2乗
D2 = (x1 − x̄1 )2 + (x2 − x̄2 )2 + (x3 − x̄3 )2
(1)
は座標の取り方に依らないので本質的な意味を持つ。この距離から空間の計
量 hab を導くことができる。まず近傍にある2点間の距離を考えると、
(δD)2 = (δx1 )2 + (δx2 )2 + (δx3 )2
(2)
ds2 = (dx1 )2 + (dx2 )2 + (dx3 )2
(3)
となるので、計量は
となる。これはまた添字を用いて、
hab =
X
(dxµ )a (dxν )b
(4)
µ,ν
ただし、hµν = diag(1, 1, 1)
と表すことができる。ここで hab はデカルト座標系の取り方に依らずその要
素は定数であるので、
∂a hab = 0 (5)
となる。この (5) から分かることを考えよう。クリストッフェル記号は
Γρ µν =
1 X ρσ
g (∂µ gνσ + ∂ν gµσ − ∂σ gµν )
2 σ
(6)
なので、Γa bc = 0 が言え、共変微分が偏微分に置き換わることが分かる。曲
率は
∇a ∇b ωc − ∇b ∇a ωc = Rabc d ωd
1
(7)
なので 0 となる。よって hab は平坦な計量であるということが分かる。また
慣性系の測地線の方程式は
d 2 xµ
=0
(8)
dt2
となり慣性系の測地線が直線になっている。また2点間を結ぶ測地線の長さは
Z
1
l = (gab T a T b ) 2 dt
(9)
で与えられ、これが (1) に相当することが分かる。以上から空間は R3 の多様
体とそれ上で定義される平坦なリーマン計量で表現されるといえる。
2
特殊相対性理論
前節と同様の方針で特殊相対性理論を議論していく。特殊相対性理論では
時空は R4 の多様体構造をとり、空間の要素はデカルト座標 (x1 , x2 , x3 ) とそ
こでの時間 (t = x0 )1 で表現される。ここで座標系の選択はポワンカレ群の要
素に対応して10自由度を持ち、座標は本質的な意味を持たない。しかし
I = −(x0 − x̄0 )2 + (x1 − x̄1 )2 + (x2 − x̄2 )2 + (x3 − x̄3 )2
(10)
は座標系の取り方に依らないので、本質的な意味をもつ。前節と同様にして
(10) から計量 ηab を得ることが出来、
ηab =
3
X
ηµν (dxµ )a (dxν )b
(11)
µ,ν=0
ただし、ηµν = diag(−1, 1, 1, 1)
となる。また
∂a ηbc = 0
(12)
も言えるので、ηab に曲率がなく、慣性系の測地線の方程式は直線になる。即
ち、特殊相対性理論は R4 の多様体と、それ上で定義される平坦な Lorentz 計
量で表現される。
ここで特殊相対性理論における物理量の取り扱いを考える。相対論以前の
物理では、空間テンソルによって物理量を表現していた。同様に特殊相対性
理論では、時空テンソルによって物理量を表現することができる。これは1
つの修正点を考慮すれば実験的に確かめられることである。その修正点とい
うのは、時空の構造には時間の指向と空間の指向が現れるということである。
ここで時間の指向とは、時間軸の向きを“ 将来 ”と“ 過去 ”のどちらかに選
択しているということであり、空間の指向とは座標系を“ 左手系 ”と“ 右手
系 ”のどちらかに指定しているということである。即ちそれは、物理法則は
1 光速
c = 1 とする。
2
並進・回転・ブースト変換の下では不変性を示すが、時間反転・パリティ・も
しくはその合成の下では不変性を示さないということに相当する。
次に時間や4元ベクトルの性質を見ていく。特殊相対性理論において素粒
子は光の速度を超えて運動することが出来ないため、素粒子の経路曲線は常
に時間的(即ち ηab T a T b < 0) となる。よって時間的な曲線は、固有時間
Z
1
τ = (−ηab T a T b ) 2 dt
(13)
(t は任意のパラメタ、T a は曲線の接ベクトル)
をパラメタとして表せる。ここで τ は曲線に沿った系の経過時間に相当する。
4元速度 ua はこの曲線の接ベクトルであり
ua ua = −1
(14)
を満たす。また外力がない時は測地線に沿った運動をする為、
ua ∂a ub = 0 (15)
を満たす。エネルギー・運動量4元ベクトル pa は物体の静止質量を m として
pa = mua
(16)
と表される。エネルギーの定義は観測者の4元速度を v a (= (1, 0, 0, 0)) とす
ると
E = −pa v a
(17)
であるので、E = p0 となり pa の第 0 成分がエネルギーに相当する。今観測
者が物体の静止系なら、E = −pa va = −mva v a = m となり c を用いる単位
系に戻すと、よく知られた E = mc2 が導かれる。
次に応力・エネルギーテンソル Tab について考える。エネルギー密度は観
測者の4元速度を v a とすると Tab v a v b で与えられ、一般に
Tab v a v b ≥ 0 (18)
となる。また xa ⊥v a を満たす xa を考えると、xa 方向の運動量密度は −Tab v a xb
で表される。更に y a ⊥v a を満たす y a を考えると、Tab xa y b は応力テンソル
の xa , y a 成分を表す。
(y a に垂直な面を通る xa 方向の運動量の流れ) と表さ
れる。以上から Tab は応力テンソル・運動量密度・エネルギー密度を表すテ
ンソルであり、
“ 応力・エネルギー・運動量テンソル ”また単に“ 応力・エネ
ルギーテンソル ”,
“ 応力テンソル ”と呼ばれる。
次に完全流体を考える。完全流体の応力テンソルは
Tab = ρua ub + P (ηab + ua ub ) 3
(19)
で与えられる。ここで ρ は流体の静止系における質量密度、P は流体の圧力
である。外力がない時、運動方程式は
∂ a Tab = 0
(20)
であるので、(12) と (19) から
∂ a Tab = (∂ a ρ)ua ub + ρ(∂ a ua )ub + ρua (∂ a ub )
+ (∂ a P )(ηab + ua ub ) + P (∂ a ua )ub + P ua (∂ a ub ) = 0
となる。この式について ub に関して平行な部分と垂直な部分を考えると、
平行な部分 : ua ∂a ρ + (ρ + P )∂ a ua = 0
(21)
a
a
垂直な部分 : (P + ρ)ua ∂ ub + (ηab + ua ub )∂ P = 0
(22)
が得られる。この式の古典極限 (P ¿ ρ, uµ = (1, ~v ), v ∂P
∂t ¿ |∇P |) を考える。
(21) は
ua ∂a ρ →
∂ρ
∂t
(∇ρ = 0 より)
(P + ρ) ua ∂a ub → ρ∇ · ~v = ∇ · (ρ~v )
| {z }
∂u0
= 0 より)
∂t
(
≈ρ
から
∂ρ
+ ∇ · (ρ~v ) = 0
∂t
となり質量保存の法則に相当する。また (22) は
!
Ã
0
(P + ρ) ua ∂a ub →
∂
| {z }
+ ~v · ∇)~v
ρ( ∂t
≈ρ
Ã
!
ηab ∂ a P →
(23)
∂P
∂t
∇P
∂P
ub u ∂a P → (
+ (~v · ∇)P )
| {z }
∂t
Ã
a
−1
~v
=0
!
Ã
=
− ∂P
∂t
~v · ∂P
∂t
!
より
∂~v
∂P
+ (~v · ∇)~v } = −(∇P + ~v ·
) ≈ −∇P
(24)
∂t
∂t
となってオイラー方程式に相当している。ここで4元速度 v a を持つ慣性系を
考える。今、エネルギーの流れの密度は
ρ{
Ja = −Tab v b
(25)
∂ a Ja = 0
(26)
であり、(20) より
4
が言える。これを時空で積分し4次元におけるガウスの法則を適用すれば、
Z
Z
a
∂ Ja dV = 0 →
Ja na dS = 0
(27)
V
S
と書き直すことができる。ここで V は時空領域の4次元体積、S は時空領域
の3次元境界面をそれぞれ表す。
time
space
図1
図1を用いてこの式の意味を吟味する。円筒の上面と下面からの積分への寄
与は物体の質量エネルギーの時間変化に相当し、側面からの寄与は物体の質量
エネルギーの空間的な流量を時間積分したものに相当する。したがって (27)
は質量エネルギーの保存則を表す。今完全流体を考え質量エネルギー保存則
を見たが、質量エネルギーの保存則は完全流体だけでなく慣性系におけるあ
らゆる物体で成り立つはずである。よって順序を逆にたどれば、(20) は完全
流体だけでなく慣性系におけるあらゆる物体が満たすはずである。
(20) を満たすことものの例として、スカラー場と電磁場について考えよう。
まずスカラー場はクライン・ゴルドン方程式
∂ a ∂a φ − m2 φ = 0 (28)
を満たし、応力・エネルギーテンソルは
1
Tab = ∂a φ∂b φ − ηab (∂ c φ∂c φ + m2 φ)
2
(29)
で与えられる。この時、(18) 式は
Tab v a v b =
1 ∂φ 2
{( ) + (∇φ)2 + m2 φ2 } ≥ 0
2 ∂t
より満たされており、(20) は
∂ a Tab = (∂ a ∂a φ)∂b φ +(∂a φ)∂ a ∂b φ
|
{z
}
=m2 ∂b φ
1
− {ηab (∂ a ∂ c φ)∂c φ + ηab (∂ c φ)∂ a ∂c φ + 2ηab m2 φ∂ a φ} = 0
2
5
(30)
より満たされている。次に電磁場を考える。電磁場は応力エネルギーテンソ
ルが完全反対称テンソル Fab によって与えられるので、まず Fab を少し見て
いく。静止系の4元速度を v a と書くと、Fab と電場 Ea ・磁場 Ba の関係は
Ea = Fab v b
1
Ba = − ²ab cd Fcd v b
2
(
1 ((abcd) が (0123) の偶置換)
²abcd =
−1 ((abcd) が (0123) の奇置換)
(31)
(32)
となる。ここでマクスウェル方程式は
∂ a Fab = −4πjb (33)
∂[a Fbc] = 0
(34)
と書け、Fab の完全反対称性から
0 = ∂ b ∂ a Fab = −4π∂ b jb
(35)
も言える。この式は電荷の保存を表す。更に電荷 q, 質量 m の粒子の運動方
程式は
q b c
F cu
m
と書ける。なお応力エネルギーテンソルは Fab を用いて
ua ∂a ub =
(36)
1
1
{Fac Fb c − ηab Fde F de }
(37)
4π
4
で与えられる。以上のことを用いて電磁場が (18) と (20) を満たすことを確
認しよう。まず (18) は
Tab =
Tab v a v b =
1 3 ~ 2 1 ~ 2
{ |E| + |B| } ≥ 0 4π 2
2
より満たされている。次に (20) は j a = 0 とすると
∂ a Tab =
1
1
{ (∂ a Fac ) Fb c + Fac ∂ a Fb c − ηab (∂ a F de )Fde } = 0
4π | {z }
2
=−4πjc =0
となり、成立している。
電磁場の場合についてもう少し考察をすすめる。電磁場はベクトルポテン
シャル Aa によって
Fab = ∂a Ab − ∂b Aa
(38)
と表される。(33) にこれを代入すると
∂ a (∂a Ab − ∂b Aa ) = −4πjb
6
(39)
となり、Fab はゲージ変換 Aa → Aa − ∂a χ のもとで不変である。ここで
∂ a ∂a χ = −∂ b Ab
(40)
を満たすような χ をとると、ゲージ変換された Aa は Lorentz 条件
∂ b Ab = 0
(41)
∂ a ∂a Ab = −4πjb
(42)
を満たす。この時 (39) は
となる。ja = 0 の場合、この式の解が定振幅の波
Aa = Ca exp(iS) (43)
(Ca : 定ベクトル、S ∈ R : 波の位相)
によって与えられることを見てみよう。(43) を (42) に代入すると
∂ a ∂a Ab = Cb (i∂ a ∂a S − ∂a S∂ a S)exp(iS) = 0 となることより
∂ a ∂a S = 0
(虚部)
(44)
a
(実部)
(45)
∂a S∂ S = 0
が言える。また、(41) から
Ca ∂ a S = 0
(46)
も言える。今 S 一定の表面を考えると、その表面の法線ベクトルは k a = ∂ a S
で与えられる。(45) より k a は零ベクトルである。さらに (45) を微分すれば
0 = ∂b (∂a S∂ a S) = 2k a ∂a kb
(47)
を得て、k a の積分曲線が測地線になることが分かる。ここで波の振動数 ω は
ω = −v a ∂a S = −v a ka
(48)
と与えられる。解 (43) の重要な例が kµ を定数ベクトルとする平面波解
S=
3
X
µ=0
である。
7
kµ xµ
(49)
3
一般相対性理論
マクスウェル方程式が特殊相対性理論の枠組みを使って定式化できること
をみてきた。次に重力について考えてみる。クーロンの法則を拡張してマク
スウェル方程式を得たようには、ニュートンの重力方程式を拡張して、特殊
相対性理論にかなうものにする道をアインシュタインはたどらなかった。重
力理論の構築にあたり指針にしたのは等価原理とマッハの理論である。ここ
で等価原理と重力の新しい観点との関連をみるために、特殊相対論において
電磁場をどう測定したかを見直そう。まず電磁場に支配されない観測者、即
ち測地線の方程式 (15) を満たす観測者を考える。次に電荷や磁荷をもった物
体を放つ。するとこの物体の世界線は (36) を満たすので、最初の電磁場がな
い時との差を測定することで Fab を決定できる。これが特殊相対性理論にお
ける電磁場の測定法であった。
同様のことを重力においても考えてみよう。しかし重力の場合は、等価原
理から重力の影響を受けない物体や観測者をそもそも考えることが出来ない。
それ故、全ての観測者は同じ方法で運動を行うために比較が行えず、直接的
に重力場を測定することはできないのである。特殊相対性理論が正しいとす
るなら、慣性系を選択することで重力の影響を受けない観測者を設定できる
だろう。しかしこれでは等価原理は重力法則の特殊な場合のみの言い逃れと
なってしまい、これはニュートンの理論を考えることと同じである。一般相対
性理論の枠組みはむしろ逆の可能性、つまり原理的には特殊相対性理論にお
ける慣性系を決定できないというところから生じる。一般相対性理論は「時
空の計量は平坦でなく、重力場中で自由落下する物体の世界線は単に曲がっ
た計量の測地線である。」という前提によって完成されるのである。それは結
果として重力を力の場として記述する良い方法がなく、重力を時空構造の側
面としてとらえなければならないということになる。よって全体にかかる重
力は時空構造に内包されるため意味がない。しかし2つの物体が互いに及ぼ
しあう重力等の相対的な重力は一般相対性理論においても意味をもち、測定
できる。
以上から言えることは一般相対性理論は、計量 gab をもつ時空多様体 M で
定式化され、アインシュタイン方程式によって時空の幾何が物質の分布に関
係づけられるということである。アインシュタイン方程式を議論する前に議
論したいのは、一般相対論における物理法則の特徴である。一般相対性理論
は2つの原理によっている。1つは一般共変性でもうひとつは gab が平坦で
あると方程式は特殊相対性理論のそれに帰着するということである。よって
特殊相対性理論を参考に一般相対性理論を議論できるので、最小限の置き換
えとして ηab → gab , ∂a → ∇a を考えることができる。4元速度を再び ua と
すれば、自由粒子の運動は
ua ∇ a ub = 0
8
(50)
を満たし、電磁場のもとでは
u a ∇a u b =
q b c
F cu
m
(51)
を満たす。また4元運動量 pa とエネルギー E に関して
pa = mua
(52)
E = −pa v a
(va : 観測者による4元速度)
(53)
なども言える。しかし時空が曲がっているために、異なる点においてベクト
ルが平行であることを定義するのに適した表記法がなく、観測者から離れた
粒子のエネルギーは定義できない。完全流体の応力テンソル Tab は
Tab = ρua ub + P (gab + ua ub )
(54)
∇a Tab = 0
(55)
であり運動方程式は
である。(54) と (55) から
∇a Tab = (∇a ρ)ua ub + ρ(∇a ua )ub + ρua (∇a ub )
+ (∇a P )(gab + ua ub ) + P (∇a ua )ub + P ua (∇a ub ) = 0
となるので、この式について ub に平行な部分と垂直な部分を考えると、
平行な部分 : ua ∇a ρ + (ρ + P )∇a ua = 0
(56)
垂直な部分 : (P + ρ)ua ∇a ub + (gab + ua ub )∇a P = 0
(57)
となる。しかし (55) は特殊相対性理論の時と同じ意味を表さない。観測者の
集合は timelike な単位ベクトル場 v a によって表現される。このベクトルが
不変である、つまり ∇a vb = 0 や ∇(a vb) = 0 を満たすなら v b によって測定さ
れる Ja = −Tab v b は曲がった時空におけるガウスの法則を適応することで、
(55) から特殊相対性理論のときと同じく厳密にエネルギーの保存則を意味す
る。しかし曲がった時空においては一般的に ∇a vb = 0 や ∇(a vb) = 0 を満た
さない。そのため (55) は厳密なエネルギー保存則を表さない。これは重力場
が流体に力を及ぼすために局所的にエネルギーは増減するからである。しか
し曲率半径に対し十分小さな時空領域 (即ち ∇b v a ≈ 0 となる領域) では重力
が及ぼす影響が十分小さく、(55) はほぼエネルギー保存則に相当していると
言える。このことは特殊相対性理論のときと同様に完全流体に限らない。
次にスカラー場の運動方程式を曲がった時空に拡張していこう。最小限の
置き換えでは
∇a ∇a φ − m2 φ = 0
1
Tab = ∇a φ∇b φ − (∇c φ∇c φ + m2 φ2 )
2
9
(58)
(59)
となる。しかし (28) は (58) でなく定数 α を用いて
∇a ∇a φ − m2 φ − αRφ = 0
(60)
と拡張しても gab が平坦な極限でクライン・ゴルドン方程式に帰着する。等
角不変性を要請すると α =
1
6
が生じる。ここから全ての場合で最小限の置き
換えが有効でないことが分かる。
またマクスウェル方程式は
∇a Fab = −4πjb
(61)
∇[a Fbc] = 0
1
1
Tab =
(Fac Fb c − gab Fde F de )
4π
4
(62)
(63)
となる。しかし Lorentz 条件を満たすベクトルポテンシャルの満たす式は
∇a ∇a Ab − Rd b Ad = −4πjb (64)
となり (42) に最小限の置き換えを行ったものとは異なる。ここで
−4π∇b jb = ∇b ∇a ∇a Ab − ∇b Rd b Ad
= ∇b ∇a ∇a Ab − ∇b (∇d ∇b − ∇b ∇d )Ad
| {z }
=0
= ∇b ∇a ∇a Ab − ∇b ∇a ∇b Aa
= ∇b ∇a (∇a Ab − ∇b Aa )
= ∇b ∇a Fab = 0
より (64) は ∇a ja = 0 に矛盾しない。今曲率に対し電磁場の変化が十分小さ
いとすると、解はほぼ定振幅の波と考えることができ
Aa = Ca eiS
(但し Ca の微係数は十分小さい)
(65)
とおける。ここで jb = 0 としさらに、∇b ∇b Ca と − Rd b Ad は十分小さいと
すると
∇a S∇a S = 0
(66)
となる。よって結局 ka = ∇a S は null 測地線の接ベクトルになる。
一般相対性理論において、時空の構造としての重力をどう扱うかというこ
とと、この時空構造での物理法則の性質をここまでで述べてきた。あとは時空
の計量によって満たされる方程式を考えなければならない。ここでマッハの原
理が登場する。前もって時空構造を指定することはできず、時空構造は物質の
分布に影響されるのである。つまり時空の計量は物理法則を適用する場とい
うだけでなく、物質の分布によって変化するものなのである。よって時空と物
質の分布の関係を求めていこう。そのためにニュートン力学と一般相対性理
10
論を比較する。ニュートン力学では重力場のポテンシャルを φ で表現した。更
に隣り合う質点の相対的加速度は相対位置ベクトルを ~
x とすると −(~x · ∇)∇φ
と表される。一方、一般相対性理論では相対的加速度は Rcbd a v c xb v d で表現
される。よって対応関係
Rcbd a v c v d ↔ ∂b ∂ a φ
(67)
ρ ↔ Tab v a v b
(68)
が得られ、更に質量密度は
と対応する。よってポアソン方程式から上の対応関係を使って
∇2 φ = 4πρ
(69)
⇒ Rcad a v c v d = 4πTcd v c v d
→ Rcd = 4πTcd
が得られる。ここで ∇c Tcd = 0 とビアンキ恒等式 ∇c (Rcd − 12 gcd R) = 0 を
考えると ∇d R = 0 となり、T a a は定数となってしまう。これは物理的ではな
い。そこで
1
Gab ≡ Rab − Rgab = 8πTab
(70)
2
とするとビアンキ恒等式は保存則 ∇a Tab = 0 と矛盾しなくなる。よって
R = −8πT
(71)
1
Rab = 8π(Tab − gab T )
2
(72)
となり、さらに
となる。ほぼ静止した系では T ≈ −ρ = −Tab v a v b から、(72) は Rab v a v b ≈
4πTab v a v b も満たしている。
4
重力の線形近似:ニュートンの極限と重力放射
この章では重力が弱い、即ち計量がほぼ平坦な時の近似を考える。ミンコ
フスキー計量からの計量のずれを γab として
gab = ηab + γab
(73)
とおいて γab に関して線形な部分、即ち γab の1次項までを考える。よって
γab の2次項以降は無視するので、添字の上げ下げは基本的に ηab , η ab を用い
て行う。但し g ab は例外で
g ab = η ab − γ ab
11
(74)
となる。これを用いると Γc ab は
Γc ab =
1 cd
η (∂a γbd + ∂b γad − ∂d γab )
2
(75)
となり、Rab の γab に関して1次までの部分は
(1)
Rab = ∂c Γc ab − ∂a Γc cd
1
1
= ∂ c ∂(b γa)c − ∂ c ∂c γab − ∂a ∂b γ
2
2
(76)
となる。アインシュタインテンソルは
1
(1)
(1)
Gab = Rab − ηab R(1)
2
1
1
1
c
= ∂ ∂(b γa)c − ∂ c ∂c γab − ∂a ∂b γ − ηab (∂ c ∂ d γcd − ∂ c ∂c γ)
2
2
2
(77)
で、ここで
1
γ̄ab ≡ γab − ηab γ
2
とすればアインシュタイン方程式は
1
1
(1)
Gab = − ∂ c ∂c γ̄ab + ∂ c ∂(b γ̄a)c − ηab ∂ c ∂ d γ̄cd = 8πTab
2
2
(78)
(79)
と表せる。ここでゲージ自由度について考えよう。γab は γab → γab + £ξ ηab
のゲージ自由度をもつ。ここでリー導関数は
£ξ ηab = ∂a ξb + ∂b ξa
(80)
で表されるので、ゲージ自由度は
γab → γab + ∂a ξb + ∂b ξa
(81)
∂ b ∂b ξa = −∂ b γ̄ab
(82)
となる。ここで
となる ξ を考える。このとき γ̄ab → γ̄ab + ∂a ξb + ∂b ξa − ηab ∂ c ξc から
∂ b γ̄ab = ∂ b γ̄ab + ∂ b ∂b ξa +∂ b ∂a ξb − ∂ c ∂a ξc = 0 | {z }
(83)
=−∂ b γ̄ab
となる。よってアインシュタイン方程式は
∂ c ∂c γ̄ab = −16πTab と書ける。
12
(84)
ニュートンの極限
4.1
アインシュタイン方程式が自然法則を記述していることを確認するために、c
よりも速度が十分小さく質量密度 ρ より圧力が十分小さい極限を考え、ニュー
トン力学と一致していることをみよう。まず応力・エネルギーテンソルを考
えると time-space,space-time 成分は速度が小さいことから、space-space 成
分は圧力が小さいことからそれぞれ無視することが出来るので、
Tab ≈ ρta tb
(85)
∂
但し ta = ( 0 )a
∂x
と書ける。さらに Tab の時間変化が小さいことから γ̄ab の時間変化も無視す
ると、(84) 式は
∇2 γ̄µν = 0
(µ = ν = 0 は除く) ∇ γ̄00 = −16πρ
2
(86)
(87)
となる。無限遠での振舞いを考えると (86) は
γ̄µν = 0
となる。ここで重力ポテンシャル φ の満たすポアソン方程式
∇2 φ = 4πρ
(88)
と (87) を比べると
1
φ ≡ − γ̄00
4
となる。よって
γ̄ab = γ̄00 ta tb = −4ta tb φ
1
γab = γ̄ab − ηab γ̄ = −(4ta tb + 2ηab )φ
2
が言える。今測地線の方程式
dxρ dxσ
d2 xµ X µ
Γ
(
+
)(
)=0
ρσ
dτ 2
dτ
dτ
ρ,σ
2
d
は、 dτ
2 ≈
d2 dxα
dt2 , dτ
(89)
≈ (1, 0, 0, 0) より
d2 xµ
= −Γµ 00
dt2
(µ = 1, 2, 3)
(90)
と書ける。ここで (75) 式より
Γµ 00 = −
1 ∂γ00
∂φ
=
2 ∂xµ
∂xµ
13
(91)
であるので、
~a = −∇φ
(92)
となりニュートン力学と一致することが確認できる。
次に圧力は無視したままで速度の 1 次まで考慮すると、応力・エネルギー
テンソルは Jb = −Tab ta を用いて
Tab = −ta T0b −tb Ta0 − T00 ta tb
|{z}
|{z} |{z}
=−Jb
=−Ja
=ρ
= ta Jb + tb Ja − ρta tb
= 2t(a Jb) − ρta tb (93)
と書ける。よって (84) 式から
∂ a ∂a γ̄0µ = 16πJµ
(µ = 1, 2, 3)
(94)
が言える。これをマクスウェル方程式
∂ a ∂a Ab = −4πjb
(95)
と比較すると
γ̄0µ = γ̄µ0 = −4Aµ
がいえる。このとき 4Ab = −γ̄ab ta と書けるので、(93) を求めたときと同様
にすれば
γ̄ab = 4ta tb A0 + 8t(a Ab)
γ̄ab = 4A0
がわかり γab = γ̄ab − 21 γ̄ηab から
γab = (4ta tb − 2ηab )A0 + 8t(a Ab)
となる。ここで測地線の方程式は
3
X
dxρ
d2 xµ
µ
µ
=
−Γ
−2
Γ
(
)
00
ρ0
| {z }
dt2
dt
ρ=1
(µ = 1, 2, 3)
∂A
=− ∂xµ0
となり、
Γµ ρ0 =
1
(∂ρ γ0 µ + ∂0 γρ µ −∂ µ γρ0 )
|{z}
2
| {z }
|{z}
=−4Aµ
=0
= −2(∂ρ Aµ − ∂ µ Aρ )
= −2Fρ µ
14
=−4Aρ
から
3
X
d2 xµ
∂A0
dxρ
=
−
+
4
Fρ µ (
)
2
µ
dt
∂x
dt
ρ=0
~ − 4~v × B
~
→ ~a = −E
(96)
となるので、4 の因子を除いてマクスウェル方程式と一致することが分かる。
4.2
重力波
クーロンの静電気学をマクスウェルの電磁気学に拡張すると、電磁場に力
学的自由度が与えられて、電磁波が生じる。同様のことがニュートンの重力
論から一般相対性理論への拡張の際にも起こって重力波が生じ、時空の曲率
のゆらぎが伝播する。ここではそれを見ていこう。引き続き線形近似を考え、
更に源がない場合を考える。ここで (83)、(84) は
∂ a γ̄ab = 0
(97)
∂ c ∂c γ̄ab = 0
(98)
となる。γab が (97),(98) 式を満たす時
∂ b ∂b ξ a = 0
(99)
を満たす ξ a を使って γab → γab + ∂a ξb + ∂b ξa と変換しても (97),(98) は満た
される。ここでマクスウェル方程式で (99) に相当するのは
∂ a ∂a χ = 0
(100)
で、これを満たす χ で Aµ + ∂µ χ とゲージ変換しても Lorentz 条件は不変
である。t = t0 において (100) を満たし、ベクトルポテンシャルの時間成分
A0 = 0(即ち ∂χ
∂t = −A0 ) となるようなゲージをとれるか考えよう。これは
∂2χ
∂ a ∂a χ = − 2 +∇2 χ
∂t }
| {z
=
∂A0
∂t
∂2χ
= − 2 +∇2 χ
∂t }
| {z
~
=∇·A
~ + ∇2 χ = 0
=∇·A
から
~
∇2 χ = −∇ · A
15
(101)
を満たすようにゲージをとれば (100) に矛盾しない。なお Lorentz ゲージ
∂ a Aa = 0 から
∂ a Aa =
∂A0
~=0
+∇ · A
| ∂t
{z }
=0
~=0
→∇·A
も t = t0 において成り立つ。このとき
A00 ≡ A0 +
∂χ
∂t
(102)
を定義すれば、源なしから j0 = 0 の時を考えると
∂χ
∂ a ∂a A00 = ∂ a ∂a A0 + ∂ a ∂a
| {z }
| {z ∂t}
−4πj0
=0
= −4πj0 = 0
(103)
が言える。さらに t = t0 においては
A00 = 0
(104)
0
2
∂A0
∂A0
∂ χ
~ + ∇2 χ = 0
=
+
=∇·A
2
∂t
∂t
∂t
| {z } |{z}
~
=∇·A
(105)
=∇2 χ
もいえる。よってずっと源なし (即ちずっと j0 = 0)なら t0 を順次取り直す
ことでずっと A00 = 0 の状態であることが分かる。以上から t = t0 の場合と
同様に考えれば、任意の t において radiation ゲージ
(
A0 = 0
~=0
∇·A
を (100) と矛盾なくとることが可能であることが分かる。
これと同様に議論していこう。まず t = t0 を考える。(99) を満たし、γ = 0
となるようなゲージをとれるかを考えよう。γ = 0 となるためには
2∂ a ξa = 2[−
∂ξ0
~ = −γ
+ ∇ · ξ]
∂t
(106)
を満たすような ξ0 をとれば良い。これが (99) と矛盾しないためには
2∂ a ∂a ξ0 =
∂
∂ξ0
( −2
) + 2∇2 ξ0 = 0
∂t | {z∂t}
~
=−2∇·ξ−γ
より
2[
∂ 2 ξ0
∂ ξ~
∂γ
+∇·
]=−
2
∂t
∂t
∂t
16
(107)
を満たすように ξ0 をとれよい。このようにゲージをとれば γ = 0 を満たし
(99) と矛盾しないようなゲージをとることができる。つぎに (99) を満たし
γ0µ = 0 (µ = 1, 2, 3) となるようなゲージをとれるか考えよう。γ0µ = 0 (µ =
1, 2, 3) となるためには
∂0 ξµ + ∂µ ξ0 =
∂ξµ
∂ξ0
+
= −γ0µ
∂t
∂xµ
(µ = 1, 2, 3)
(108)
を満たすように ξµ (µ = 1, 2, 3) をとれば良い。これが (99) と矛盾しないた
めには
∂ a ∂a ξµ =
∂
∂ξµ
( −
) + ∇2 ξµ = 0 (µ = 1, 2, 3)
∂t | {z
∂t}
∂ξ
0 +γ
= ∂xµ
0µ
より
∂ 2 ξµ
∂ ∂ξ0
∂γ0µ
+ µ(
)=−
2
∂t
∂x ∂t
∂t
(µ = 1, 2, 3)
(109)
を満たすように ξµ (µ = 1, 2, 3) をとればよい。このようにゲージをとれば
γ0µ = 0 (µ = 1, 2, 3) を満たし (99) と矛盾しないようなゲージをとることが
0
= γ0µ + ∂0 ξµ + ∂µ ξ0 (µ = 1, 2, 3) とおく
できる。ここで γ 0 = γ + 2∂ a ξa , γ0µ
と、t = t0 において
γ0 = 0
∂γ
∂ 2 ξ0
∂ ξ~
∂γ 0
=
+ 2[ 2 + ∇ ·
]=0
∂t
∂t | ∂t {z
∂t}
=− ∂γ
∂t
γ0µ = 0 (µ = 1, 2, 3)
0
∂γ0µ
∂γ0µ
∂ 2 ξµ
∂ ∂ξ0
=
+
+ µ(
) = 0 (µ = 1, 2, 3)
2
∂t
∂t
∂t
∂x
∂t }
{z
|
=−
∂γ0µ
∂t
がいえる。よってマクスウェル方程式のときと同様にして、任意の t におい
て radiation ゲージ
(
γ0µ
γ=0
= 0 (µ = 1, 2, 3)
を (97) と矛盾なくとることが可能であると分かる。更に重力波の場合 γ = 0
から得られる γab = γ̄ab と γ0µ = 0 から (97) を
∂γ00
=0
∂t
(110)
と書き換えられる。さらに (84) を
∂ c ∂c γ00 = ∇2 γ00 = −16π T00 = 0
|{z}
=0
17
(111)
と書くことが出来る。よって γ00 = const となる。ここでゲージ変換を行え
ば任意の時刻 t において γ00 = 0 となる。
次に γab を
γab = Hab exp(i
3
X
kµ xµ )
(112)
µ=0
と平面波の形で書くことを考えると (98) は
3
X
3
X
k µ kµ =
µ=0
η µν kµ kν = 0
(113)
µ=0
となり、(97) は
3
X
k µ Hµν = 0
(114)
µ=0
となる。更に γ0µ = 0, γ = 0 は
H0ν = 0
3
X
(115)
H µµ = 0
(116)
µ=0
となる。ここで (115) は (114) の ν = 0 に相当するので、この9個の方程式の
うち独立な方程式は8個である。Hµν は 10 個の独立成分があるので、これは
2つの独立な解があることを示しており、任意の片方の解の重ね合わせが重
力波の波束を表現することになる。ここで例えば ~k = (0, 0, k) の時を考えてみ
よう。このとき (113) 式から k µ = (±k, 0, 0, k) と分かる。さらに (114),(115)
から

Hµν
0
0
0 0

 0 a c
=
 0 c b

0 0 0
0
0
0
となり (116) から a = −b なので

0 0 0

 0 1 0
Hµν = a 
 0 0 −1

0 0 0



 (但し a, b, c は任意定数)




0



0 
 + c


0 

0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0

0

0 

0 

0
と決定できる。
重力波を決めるため2つの物体を考え相対的な加速度を考える。
aa = −Rcbd a X b T c T d
18
は物体がほぼ静止している場合
d2 X µ X
≈
Rν00 µ X ν
dt2
ν=0
3
(117)
(X ν : 相対位置ベクトル)
となる。ここで
Rν00 µ =
∂ µ
∂
Γ ν0 − ν Γν 00
0
∂x
∂x |{z}
=0
∂ X 1 µρ
=
η (∂ν γ0ρ +∂0 γνρ − ∂ρ γν0 )
|{z}
∂x0 µ,ρ 2
|{z}
=0
=0
2
1 ∂
γν µ
2 ∂t2
1 ∂2
=
γµν
2 ∂t2
=
→ Rν00µ
(118)
である。この式は上で得られた平面波解が時空の曲率をもたらし、ゲージ変
換で消去できないことを示している。しかし重力波は小さいため測定は難し
く、現在も測定の努力がなされている。ところで、実際は重力波は線形近似
が適用できないような強い重力中での崩壊現象で発生する。しかしこの計算
は難解であるのでまず線形近似が適応できるとして重力波をみていこう。重
力場はスカラー場や電磁場のように遅延グリーン関数を用いて
Z
Tµν (x0 )
γ̄µν (x) = 4
dS(x0 ) (Λは点 x の past − lightcone 上)
x − x~0 |
Λ |~
Z
Tµν (t − |~x − x~0 |, x~0 ) 3 0
=4
d x
|~x − x~0 |
と表せる。γ̄µν を t に関してフーリエ変換すると
Z ∞
1
γ̄ˆ µν (ω, ~x) = p
γ̄µν eiωt dt
2π −∞
(119)
(120)
となり、よって
1
γ̄ˆ µν (ω, ~x) = 4 p
2π
Z
∞
−∞
Z
Z
Tµν (t − |~x − x~0 |, x~0 ) iωt 3 0
e d x dt
|~x − x~0 |
∞ Z
1
Tµν (t0 , x~0 ) iωt0 iω|~x−x~0 | 3 0 0
= 4p
e e
d x dt
2π −∞
|~x − x~0 |
Z ∞
~0
eiω|~x−x | 3 0
=4
T̂µν (ω, x~0 )
d x
|~x − x~0 |
−∞
Z ∞
1
(T̂µν (ω, x~0 ) = p
Tµν (t, x~0 )eiωt dt より)
2π −∞
19
(121)
ˆ0µ はゲージ条件
が言える。ここで γ̄ˆµν (µ, ν = 1, 2, 3) だけ求めればよい。γ̄
∂ ν γ̄νµ = 0(83) から
3
X
∂ γ̄ˆ
∂xµ
µ=1
−iω γ̄ˆ0ν =
(122)
と求められる。残りの成分を計算するためにソースからの距離が十分大きい
時 (R À
~0
x−x |
eiω|~
~0 |
|~
x−x
iωR
→ e R となるのでこれを積分
の外に出すことができる。よって (122) の積分の中身は µ, ν = 1, 2, 3 で
1
ω の時)
Z
T̂ µν d3 x =
を考える。このとき
Z
3
X
{
α=1
Z
∂ T̂ αν µ
x }
∂xα
Z
= −iω
iω
=−
2
∂
(T̂ αν xµ ) −
∂xα
T̂ 0ν xµ
(ガウスの法則と∂ a Tab = 0 → iω T̂ 0µ =
Z
(T̂ 0ν xµ + T̂ 0µ xν )
3
X
∂ T̂ αν µ
x から)
∂xα
α=1
(T µν の対称性より)
Z
Z
3
iω X
∂
∂ T̂ 0β µ ν
0β µ ν
{
(
T̂
x
x
)
−
x x }
β
2
∂x
∂xβ
β=1
Z
ω2
=−
T̂ 00 xµ xν d3 x
(第2式から第3式への変形と同様)
2
(123)
=−
と計算できる。四重極モーメント
Z
qµν = 3
T 00 xµ xν d3 x
(124)
を用いれば (121) は
γ̄ˆµν (ω, ~x) = −
2ω 2 eiωR
q̂µν (ω)
3 R
(µ, ν = 1.2.3)
(125)
と書ける。この結果を逆フーリエ変換して
Z
2
γ̄µν (t, ~x) =
−ω 2 e−iω(t−R) q̂µν dω
3R
|
{z
}
¯
d2 qµν ¯
=
2
2
2 d qµν
=
3R dt2
¯
¯
¯
dt
ret
ret
(ret = t − R)
(126)
が求められる。このように重力波は四重極モーメントの時間微分からくるも
R
R
のであり、ω T̂ 00 xµ d3 x = T̂ µ0 d3 x = p̂µ (運動量) = 0 (ω 6= 0) は振動しな
いため、速度の遅い物体からの重力波は電磁波より小さくなることが分かる。
次にエネルギーについて考えよう。空間の計量と重力場の力学的な量を分
離することが出来ないので、エネルギーを局所的に測定することは不可能で
ある。しかし孤立した系を考えた場合、そこから遠く離れた重力場による系
20
全体のエネルギーと運び出されるエネルギーのフラックスは定義することが
できる。線形近似におけるアインシュタイン方程式は
(1)
Gab [γcd ] = 0 (127)
である。ここで γcd の2次項を考えてみよう。リッチテンソルの2次項は
(2)
1 cd
1
γ ∂a ∂b γcd − γ cd ∂c ∂(a γb)d + (∂a γcd )∂b γ cd + (∂ d γ c b )∂[d γc]a
2
4
1
1
1
(128)
+ ∂d (γ dc ∂c γab ) − (∂ c γ)∂c γab − (∂d γ cd − ∂ c γ)∂(a γb)c
2
4
2
Rab =
となる。尚この計算は
(2)
c(2)
c(2)
c(1) d(1)
c(1)
Rab = ∂c Γab − ∂a Γcb + Γab Γcd − Γdb Γd(1)
ca
1
c(2)
Γab = − γ cd (∂a γbd + ∂b γad − ∂d γab )
2
1
c(2)
Γcb = − γ cd ( ∂c γbd +∂b γcd −∂d γcb )
| {z }
| {z }
2
cancel1
cancel1
1
c(1)
Γab = (∂a γb c + ∂b γa c − ∂ c γab )
2
1
d(1)
Γcd = (∂c γ + ∂d γc d − ∂ d γcd )
2
1
c(1)
Γdb = (∂d γb c + ∂b γd c −∂ c γdb )
| {z } | {z }
2
cancel2 cancel2
Γd(1)
ca
1
= (∂c γa d + ∂a γc d − ∂ d γca )
2
から導かれる。よってアインシュタイン方程式の2次項部分は
(1)
(2)
(2)
Gab [γcd ] + Gab [γcd ] = 0 (129)
(1)
である。Rab = 0 のとき
1
(2)
(2)
Gab = Rab − ηab R(2)
2
であることを考慮して (129) を書き直すと
(1)
(2)
Gab [γcd ] = 8πtab
1 (2)
tab = − Gab [γcd ]
8π
(130)
(131)
と書ける。ここで tab は γab が (127) を満たせば ∂ a tab = 0 を満たす。よって
tab を重力場の応力テンソルと見なすことができる。しかしこの tab は γab に
21
依るので γab → γab + 2∂(a ξb) とすると tab は変化してしまう。よってゲージ
不変性を満たさないという点で応力テンソルとは異なるが、
Z
E = t00 d3 x
(132)
Σ
(Σは図2の spacelike な領域)
Σ
図2
を考えると γab とその偏微分が r → ∞ で 0 になる条件の下で
E[γab ] = E[γab + 2∂(a ξb) ]
というゲージ不変性を満たし、これを系のエネルギーと考えることができる。
さらにフラックス −ta 0 もゲージ不変ではないが
Z
∆E = − ta0 dS a
(133)
S
(積分範囲は図3の S とΣ1 とΣ2 による領域)
Σ1
S
Σ2
図3
を考えると、この表面は r → ∞ の極限を考えるので、γab とその偏微分が 0
になりゲージ不変な系のフラックスといえる。ここで (134) を計算すると
Z
∆E = P dt
(134)
P =
3
1 X d3 Qµν ¯¯
(
¯ )2
45 µ,ν=1 dt3 ret
1
Qµν = qµν − δµν q
3
22
(135)
(136)
となる。この例として中心の振動数 Ω、質量 M 、長さ L の棒状の剛体の回転
を考えると
Prod =
2G 2 4 6
M L Ω
45c5
(c, G を表記している)
(137)
となる。ここで P が M 2 L4 Ω6 に比例することを次元解析から示そう。T 00 は
密度であるので Qµν の次元は [M L2 ] である。よって P の次元は [M L2 t−3 ]2 =
[M 2 L4 t−6 ] となるので、P が M 2 L4 Ω6 に比例することがいえる。ここで質
量・長さ・振動数をそれぞれ 1kg, 1m, 1rad/s とすれば Prod ≈ 10−47 ergs−1
となる。ここで重力波が天文単位で考えても大変小さいものであることが分
かる。しかしこの重力放射によるエネルギー損失は観測によって確認されて
いるので、重力波は実際存在すると考えられている2 。
最後に重力波に関する具体例を見てみよう。まず質量 M の2つの質点がバ
ネ定数 K のバネに取り付けられバネが振動している場合を考え、バネの振動
一周期の間に放射されるエネルギーを計算する。この二つの質点が x 軸上を
運動しているとし、2つの質点の x 座標をそれぞれ x1 , x2 とすると
(
r
x1 = A cos ωt
K
(ω =
, A は定数)
M
x2 = −A cos ωt
と書ける。いま
T 00 = ρ = M {δ(x − x1 ) + δ(x − x2 )}δ(y)δ(z)
なので
Z
q 11 = 3
T 00 d3 x
Z
= 3M {δ(x − x1 ) + δ(x − x2 )}x2 dx
= 3M (x21 + x22 )
q µν (µ = ν = 1 以外) = 0
となる。よって

Qµν
2(x21 + x22 )

=M
0
0
0
−(x21 + x22 )
0
0
0
−(x21 + x22 )
と求められ、
d3
(cos2 ωt) = 4ω 3 sin 2ωt
dt3
から
P =
3
128G 2 4 6 2
1 X d3 µν 2
M A ω sin 2ωt
( 3Q ) =
45 µ,ν=1 dt
15c5
2 ハルスとテイラーによる
PSR1913+16 の観測等
23



となる。ここで
Z
ωt=2π
sin2 2ωtdt =
0
π
ω
より一周期分で放射されるエネルギーは
∆E =
128Gπ 2 4 5
M A ω
15c5
(c, G を表記した) となる。次に質量 M の2つの星が連星系をなし、半径 R で互いに円運動を
する時を考えよう。このときの P の平均値と重力放射による周期の減少率を
求めよう。この星が円筒座標の z = 0 の平面上で運動している時を考える。
このとき
T 00 = ρ = M (δ(r − R)δ(z)
1X
δ(θ − ωt + nπ))
r n
(ω : 軌道の角速度, n : 整数)
となる。よって
Z
δ(r − R)δ(z)
q µν = 3M
1X
δ(θ − ωt + nπ)xµ xν rdrdθdz
r n
x1 = r cos θ, x2 = r sin θ
となるので

q µν
cos2 ωt

= 6M R2 
0
0
0
sin2 ωt
0

0

0 
0
となる。よって


Qµν = 6M R2 
cos2 ωt −
1
3
0
sin2 ωt −
0
0
0
0
1
3


0 
− 13
となって
P =
3
1 X d3 µν 2
128 2 4 6 2
( 3Q ) =
M R ω sin 2ωt
45 µ,ν=1 dt
5
と求められる。ここで P の平均値は
P̄ =
と求められ、ω 2 =
M
R3
64 2 4 6
M R ω
5
を用いれば P̄ は c, G をもどして
P̄ =
64G4 M 5
5c5 R5
となる。さらに周期の減少率を求めよう。全エネルギーは
E = −G
24
M2
2R
で表されることから、
dE
M 2 dR
64G4 M 5
= −G 2 ·
=
dt
2R
dt
5c5 R5
3
3
128G M
dR
=−
→
dt
5c5 R3
P̄ = −
となる。ケプラー則 T 2 ∝ R3 は 2dT /T = 3dR/R を暗示するので、周期の
減少率は
3T dR
192G3 M 3 T
dT
=
·
=−
dt
2R dT
5R4 c5
と求めることができる。
25
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