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ハイパー核や中性子過剰核から 中性子星がどこまでわかるのか?

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ハイパー核や中性子過剰核から 中性子星がどこまでわかるのか?
ハイパー核や中性子過剰核から
中性子星がどこまでわかるのか?
ー新学術領域「中性子星核物質」の紹介ー
東北大学理学研究科
田村 裕和
かに座超新星残骸
実験と観測で解き明かす
中性子星の核物質
領域代表
東北大学理学研究科
田村 裕和
京都大学基研 大西明、 JAXA宇宙科学研 高橋忠幸
2
中性子星核物質の謎
„ 物質の最終形態
超新星爆発で生成、 “X線パルサー”として観測
„ 宇宙の最高密度物質
質量: 1~2 M (太陽質量) 、 半径:10 km程度?
=> 中心は原子核密度の3~10倍 (10~30億トン/cm3)
= 宇宙に浮かぶ巨大原子核
„ クォークのみでできた様々な物質形態
n
Λ
n
p
Ξ
ストレンジ・ハドロン物質
ハイペロンを含む
高密度核物質
中性子物質
超流動相?
?
純クォーク物質
??
閉じ込めから開放された
クォークのスープ
3
“クォークの物質科学”
電子とクォーク(原子核)からなる物質
原子からなる物質
プラズマ
地球上の物質
恒星内部の物質
「原子・分子物理学」 「物性物理学」
「化学」
「プラズマ物理学」
電子(+原子核)と電磁気学が主役
クォークのみからなる物質
中性子星内部の物質
「原子核物理学」 → “クォークの物質科学”
クォーク(ハドロン)と強い相互作用が主役
本新学術領域: 実験・観測・理論 連携
X線天文衛星
ASTRO-H
“クォークの物質科学” 創始
中性子星全体の内部構造の解明
理論
4
日本が誇る
世界最高の2大加速器
と天文衛星
不安定原子核工場
“核物質EOS”を決定
RIBF
r
X線天文観測
⇒中性子星の半径
中性子過剰核物理
大強度陽子加速器
J-PARC
冷却原子ガス
⇒ 中性子物質の物性
ストレンジネス核物理
⇒ハイペロン粒子の間の力
5
核物質を探る鍵:状態方程式(EOS)
核物質の状態方程式(EOS)
E (エネルギー)
密度
粒子比
E = F( ρ, (nn,np,nY) )
Λ
n
p
Ξ
n
中性子物質
ストレンジ・ハドロン物質
2ρ0
ρ0
対称核物質
EOS決定
ρ (密度)
p
n
内部構造決定
地上実験と天文観測の連携の必要性
6
核物質の状態方程式(EOS) E = F( ρ, (nn,np,nY) )
一意的
(重力・圧力の釣合い)
質量・半径関係
M
Demorest et al. Nature 467 (2010) 1081
異常に重い質量
の観測例
地上実験による
核物質の情報
+
理論
+
X線天文衛星
による
半径観測
中性子星質量
EOSの
決定
EOSの
検証
EOSの確定
中性子星半径 (km)
直接観測の例なし
理論的枠組みの証明
純クォーク物質の存否
7
地上実験による核物質EOSの決定
„ コア外縁部、内殻(ρ < 2ρ0)
„ コア中心部 (ρ > 2ρ0)
どのハイペロンがどれだけ存在するのか?
E (エネルギー)
中性子過剰になるとEOSは
どう変化するのか?
中性子物質
ストレンジ・ハドロン物質
2ρ0
ρ0
中性子物質のEOS決定
B班
Λ
n
p
Ξ
n
中性子過剰核@RIBF
+
極低温フェルミ原子ガス
で実験的に調べる
ρ (密度)
粒子間相互作用を測定、EOSのinputに
ハイパー核で実験的に調べる@J-PARC
A班
研究領域と計画研究
粒子(バリオン)
密度
A01 多重ストレンジネスのバリオン間相互作用
高橋俊行 (KEK)
Λ
n
p
Ξ
ハイペロン
が存在
A02 中性子過剰核物質中のストレンジネス
田村裕和 (東北大)
B01 高密度中性子過剰核物質の
状態方程式 村上哲也 (京大)
A班
ほとんど
中性子
のみ
B班
A班
B02 中性子過剰な中低密度核
物質の物性 中村隆司 (東工大)
n, p,
Λ, Ξ,..
?
B03 冷却原子を用いた中性子
過剰低密度核物質の状態
方程式 堀越宗一 (東大)
n
n
半径 [km]
B班
C01 宇宙X線・ガンマ線観測による中性子
C班
星研究の新展開 高橋忠幸 (JAXA)
D01 中性子星と核物質の理論研究
大西明 (京大基研)
D班
Slide by Koji Miwa
Baryon-baryon interaction by Lattice QCD
• 6 independent forces in flavor SU(3) symmetry
Strong repulsive core
x =
8〇8
Σ+p (S=1, T=3/2)
Σ−p (S=0, T=1/2)
(27)
(10*)
(10)
Ξ−p (T=0)
Flavor singlet (H-Channel)
(8s)
(8a)
(1)
Lattice QCD,
T. Inoue et al.
Prog. Theor. Phys. 124 (2010) 4
Weak or attractive Core
10
Slide by Koji Miwa
Baryon Baryon interaction by Lattice QCD
• 6 independent forces in flavor SU(3) symmetry
Strong repulsive core
x =
8〇8
Σ−p (S=0, T=1/2)
Σ+p (S=1, T=3/2)
(27)
(10*)
quark Pauli effect
(10)
The same behavior was already predicted
Ξ−p (T=0) Quark
Flavor
singlet (H-Channel)
by Oka-Yazaki’s
Cluster
Model
(8s)
(8a)
(1)
Lattice QCD,
T. Inoue et al.
Prog. Theor. Phys. 124 (2010) 4
color magnetic
interaction
Weak or attractive Core
11
World of matter made of u, d, s quarks
Nu ~ Nd ~ Ns
Strangeness in neutron stars ( ρ > 3 - 4 ρ0 )
Strangeness
“Stable” Strange hadronic matter (A → ∞)
Higher
density
ΛΛ, Ξ Hypernuclei
Z
-2
Λ, Σ Hypernuclei
N
-1
=>
Baryon-baryon interactions
Unified understanding of “extended nuclear force”
0
Understanding
of short range parts
of nuclear
force
3-dimensional
nuclear
chart
Test of latticebyQCD
M. Kaneta inspired by HYP06 conference poster
High density matter in neutron stars
We need
ΞN, ΛΛ, ΣN forces,
−
KN forces,
ΛN p-wave force,
NNN and YNN force, …
The heavy n-star (M=1.97 ± 0.04 M◎)
can be supported?
Σ’s appear?
Kbar appear?
Strange hadronic matter exists?
Quark matter exists?
Nu ~ Nd ~ Ns
ρ0
ρ0
exp.
exp.
UΛ= -30 MeV
UΛ= -30 MeV
assumption
assumption
A01: 多重ストレンジネスのバリオン間相互作用
中心領域(ρ>3ρ0)のハイペロン混合(複数のストレンジネスが関与)を決定する
→ 高密度核物質のEOS
粒子(バリオン)の存在比
存在比
H ダイバリオン?
ΛΛ相関の研究 P42
(世界唯一の手法、10倍の改善)
ハイペロン崩壊検出器
?
Λ
ρ (密度)
Ξ−
n
ΞN相互作用
ΛΛ相互作用
ΞN→ΛΛ相互作用
TPCと超伝導電磁石
ΛΛ核のエマルジョン実験
Ξハイパー核分光実験
代表者・分担者
Λ
(世界唯一の手法、10倍の改善)
(世界初)
佐藤、今井
高橋俊、成木
π-
高橋俊、成木
p
6
ΛΛHe
4
He
E05
10
5
ΛHe
12 C予想スペクトル
Ξ
t
Ξ-
5
0
仲澤、住浜
高橋仁
0
5
10μm
ΛΛハイパー核 6ΛΛHe
E07
ΛΛ不変質量のピーク
A02 中性子過剰核物質中のストレンジネス
ストレンジネスが現れだすρ=2~3ρ0 領域の
ハイペロン混合を決定する
-> Σ−n (= Σ+p) 相互作用
=>
三輪、田村
p
MPPCを用いた
世界初の超高速
(~100倍) 飛跡検出器
Fiber tr
π
π
Σ
LH2 targ
Ca
E40
Σ−が中性子星に存在するか確定
Λ−Σ coherent coupling
n
(2a) Λハイパー核ガンマ線分光 E13
(世界唯一の手法, Hyperball ) 小池、田村
-> ΛN, ΛNN 相互作用の詳細
n
Forward calorimeter
Σ
n
PiID co
Λ
n
?
Σ−n 引力
p
(2b) 中性子過剰Λハイパー核分光
(世界唯一の手法) 阪口、味村、福田
Λ
p/n
Κ+
存在比
(1) Σ+p散乱実験(世界初)
代表者・分担者
散乱陽子検出器
n
E10
-> 中性子過剰環境での Λnn 相互作用
=> 中性子星中のΛ粒子の組成比を決定
Λ
Σ−n 斥力
γ
(3) K-原子核束縛状態 應田、鈴木
E15, E27
-> KbarN相互作用
=> K中間子が中性子星に
存在するかを確定
p
K-
p
ρ(密度)
B01:高密度中性子過剰核物質の状態方程式
ρ ~ 2ρ0 領域で非対称核物質の対称エネルギーの密度依存性を求める
核物質(核子系)のEOS
E (エネルギー)
? 中性子物質
132Sn+124Sn
B01
L
ρ0
105Sn+112Sn…
対称核物質
2ρ0
π±
ρ (密度)
n-rich high-density
matter
村上
川畑、磯部、家城
竹谷、溝井、栗田、馬場 RIBF: SAMURAI電磁石
対称エネルギー
新型検出器開発
TPC(時間射影型検出器)
読み出し回路
前方角度カロリメーター
シリコン多重度検出器
幅広い陽子数/中性子数比を持つ不安定核ビームを用いて、
中心衝突から発生するπ+とπ-の収量比を系統的に測定
通常核物質の約2倍程度の密度領域で非対称核物質の
対称エネルギーの密度依存性に強い制限
16
TPC
2.2
m
m
1.6
B02: 中性子過剰な中低密度核物質の物性
ρ<
~ ρ0領域で中性子過剰核物質のEOSを決定する
不安定核ビームを用いた中性子過剰核の反応
中村、下浦、近藤、寺西
核物質(核子系)のEOS
E (エネルギー)
? 中性子物質
B02
L
対称核物質
2ρ0
ρ0
① 中性子スキン核の核応答
PDR(ピグミー共鳴)
密度振動(E0mode)
n-skin
N=Z
ρ (密度)
対称エネルギー
中性子過剰核物質のEOS(圧力,非圧縮率)
γ線カロリメーター
② 希薄物質中のダイニュートロン相関
理研RIBF: SAMURAIスペクトロメータ
n‐rich
nuclear beam
γ
n
target
γ-ray calorimeter
中性子星内殻の超流動
tracking n counters
③ 中性子超過剰な核子多体系
p, d, α,
fragments
中性子過剰物質中の
核力(アイソスピン依存性)
4n
tracking中性子検出器
非対称核物質のEOS
ε ( ρ , α ) = ε ( ρ ,0) + Esymα 2 + ...
ρn − ρ p N − Z
α=
=
ρ
A
1∂ E
=
2 ∂α 2
2
Esym
非対称核物質の
圧力
非対称核物質の
非圧縮率
ΔK 0
2
(
)
= a4 + 2 (ρ − ρ 0 ) +
ρ
−
ρ
+ ...
0
2
ρ0
18 ρ 0
p0
α =0
中性子スキン核の
ピグミー共鳴
中性子過剰核の
密度振動モード
B(E1)
E1遷移強度
~20MeV
5~10MeV
n-skinCore
PDR
n p
GDR
Ex
(=Eγ)
中性子過剰核の
原子核衝突実験
希薄核物質のダイニュートロン相関
T.Nakamura PRL96,252502(2006) Æ強いE1遷
移ÆDineutron 相関
希薄核物質中で2中性子相関が
強くなる
nn
本計画研究:
◎中性子ハロー核(2nハロー, 4nハロー)
E1遷移測定Æ低密度領域でのPairingの強さ
1S Gap Energy @希薄核物質中の計算
+中性子ハロー核のDipole Strength
0
密度汎関数計算(D01 松尾)
ÆGap Energy(Δ)の密度依存性
にConstraintを与える
Æ中性子星内殻(0.001ρ0<ρ<0.5ρ0)で起こる
1S 超流動の物性
0
Æ冷却機構, Glitch
M.MatsuoPhys. Rev. C73('06)044309
理論も最近ようやく進展(Ab Initio計算 Carlson et al.(2010)etc.)
B03: 冷却原子による中性子過剰低密度核物質の状態方程式
温度パラメータτ=T/TF と相互作用パラメータξ=1/(kFa)で
与えられる普遍多体関数 h(τ,ξ) を発見
超高真空チャンバー(10‐9Pa)
堀越・向山
inner crust 領域:
密度~0.5ρ0 , 散乱長a=-18.5 fm
=> ξ=-0.04~-0.280
外部磁場による
粒子間相互作用の制御
→ 希薄中性子物質と
同じ状態を作る
リチウムオーブン
レーザー冷却
(磁気光学トラップ)
レーザー冷却された
極低温フェルミ原子
6Li
光トラップへ移行
短距離で強く相互作用している
希薄フェルミ粒子系の実験的シミュ
レーション
研究目的
EOS
超伝導Gap
BCS‐BEC crossover領域
粒子間相互作用の制御により 希薄極限でない効果
p波相互作用する粒子系
高橋
堂谷、玉川、辻本
C01: 革新的X線天体観測
9
新世代X線望遠鏡による距離によらない中性子星半径の精密決定
(1) X線バースト中の重元素吸収線の赤方偏移
(2) 表面周回ガスからの準周期的X線放射(QPO)
バーストにより
形成された
高温大気
(3) 弱磁場中性子星からの偏光X線パルス
重力赤方偏移
吸収線を伴う
X線放射
中性子星
GEMS (NASA, 2014~)
世界初のX線偏光専用機
ASTRO-H
(4) 次世代衛星用X線検出器開発
(宇宙研/JAXA, 2014~)
高計数+高エネルギー分解能+偏光観測
+
世界初のカロリメータ
→ バーストの精密測定が初めて可能
=> CMOS X線撮像器
ガンマ線カメラ(CdTe,Ge strip)
次世代偏光検出器
当グループが開発、
X線精密測定(2桁向上)
が初めて可能に
X線エネルギー
ASTRO-H の準備状況
ASTRO-Hに
搭載される
マイクロカロリメター
(50mKで動作)
D01: 中性子星と核物質の理論研究
D班
理論
RHIC・GSIデータ、 京計算機
格子QCDによるBB力・3体力、
ストレンジ物質の硬化、
大西・原田、中田、
クォーク物質のEOS
飯田、松尾、巽、小野、
土手、木村、中里
A班
J-PARC
質量、半径、準周期振動、
グリッチ、冷却、...
C班
Astro-H
)
対称エネルギー、対相関、
パスタ相、準ユニタリー気体、
量子モンテカルロ、...
静水圧平衡
中性子星質量 太(陽質量
B班
RIBF
Cold Atom
検証
中性子星半径 (km)
理論によって
ストレンジネス核物理、中性子過剰核物理、冷却原子物理、天体物理
を結びつけ、現象に裏付けられた "The EOS" を決定する。
総括班の活動内容
„ 成果発表
報告集出版、
ホームページ、
プレスリリース。
„アウトリーチ
市民向け講演会、
出前授業、
企画展示等
年数回。
„ 定例打ち合わせ: TV会議月~1回
„ 公募研究選定: 分野の拡大を促進
„ 検出器相互利用・共同開発の調整
„研究会
分野間の相互理解促進
若手発表重視。
全体会を毎年1回3日、
合同分科会も年数回。
セミナーを1~2ヶ月に1回。
„若手スクール
各分野の専門家の
講師の講義。
学生・若手育成。
„国際会議開催
本領域研究の海外への認知をはかる。2~3回。
„ 海外調査: 国際会議、研究所訪問等。海外共同研究を促進。
公募研究
想定される公募研究
研究領域の裾野を広げるため重要
A,B,C班の関連:計10件、総額2000万円/年
D班の関連:計4件、総額400万円/年
A,B班の関連研究
„ Ξ原子X線の精密測定によるΞ核子相互作用(ソウル大・原研)
„ Λハイパー核弱崩壊, 電子線によるΛハイパー核研究(阪大、東北大、ソウル大)
„ φやωを束縛した原子核(理研、ΚΕΚなど)
„ 高エネルギー原子核衝突実験でのハイペロン生成
„ 反応断面積による中性子スキン厚の測定(筑波大、埼玉大など)
„ 3体核力の実験研究
„ ニュートリノ原子核反応
A,B,C班共通の関連研究
„ 新しいタイプの検出器(次期X線衛星搭載用および加速器実験用)の開発
„ 共通するASICやFPGAを用いた信号処理系の開発
D班の関連研究
„ 極低温原子系の理論研究
„ 中性子星の冷却過程、生成過程
„ 京コンピュータを用いた格子QCDによる核力
おわりに
“クォークの物質科学” 創始
X線天文衛星
ASTRO-H
中性子星全体の内部構造の解明
日本が誇る
世界最高の2大加速器
と天文衛星
学問的価値
理論
不安定原子核工場
現実に宇宙に存在する未知の物質形態を解明して、
“核物質EOS”を決定
RIBF
人類の物質観を拡張、 「クォークの物質科学」 を構築する
r
X線天文観測
⇒中性子星の半径
特徴
異なる分野の連携により初めて解明できるテーマ
中性子過剰核物理
いずれも各分野で世界のトップを走るグループが連合
大強度陽子加速器
世界最高の3大施設が運用開始となる今こそ日本で進めるべき
J-PARC
冷却原子ガス
⇒ 中性子物質の物性
ストレンジネス核物理
⇒ハイペロン粒子の間の力
Fly UP