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はじめに
九州地域における産学官連携は、法制度を中心とした制度面、各大学に
おける体制整備が進み、また、関係諸機関の熱心な取組みもあり、共同研
究数や技術移転件数は項調に増加し、大学発ベンチャー企業の創出が相次
ぐなど、着実に進展しつつあります。
その一方で、製品化・事業化まで結びつき、「成功事例」として取り上
げられるような事例が次々と生まれているとは言い難い状況です。今後、
九州地域における産学官連携が更なる発展を遂げるためには、“新たな産
学官連携の芽”を育てていくことが必要不可欠です。
そこで、九州経済産業局は、研究者と企業の新たな接触機会を増やし、
産学官連携のきっかけ、“芽”を生みだすことを目的に、これからの九州
を担っていくであろう研究者の方々を御紹介することといたしました。
掲載者の皆様には、平成20年度に実施した産学連携関連の調査におい
て御協力いただいた大学を通じ、御寄稿を願っております。
本冊子では研究者の「夢」や、かねてより技術シーズ紹介において産業
界から要望の強かった「強み」及び「忚用分野」についても、研究者ご自
身の考えを語っていただいております。本冊子をきっかけに、ひとつでも
多くの新たな連携がスタートすることを願ってやみません。
最後になりましたが、本冊子の作成にあたり御協力いただいた各大学の
産学官連携部門の皆様、並びにご多忙にもかかわらず原稿を執筆下さった
研究者の皆様には、心から御礼申し上げますとともに、今後ますますの御
活躍をお祈り申し上げます。
平成21年9月
経済産業省 九州経済産業局
地域経済部 産学官連携推進室
九州地域注目の研究者
目次
※基本的には分野別、大学別に並べておりますが、ページ割りの都合、順番が前後する場合があります。ご了承ください
ライフサイエンス
(1)バイオ MEMS による微量生体試料の操作・刺激・計測・・・・・・・・・・・・
九州工業大学大学院 生命体工学研究科 生体機能専攻 安田 隆 准教授
3
(2)アレルギー性疾患やその他の炎症性疾患の病態形成機序の解明・・・・・・・・・ 4
佐賀大学 医学部 分子生命科学講座分子医化学分野 出原 賢治 教授
(3)臨床病理を基盤とした人体組織・細胞の研究・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
佐賀大学 医学部 臨床病態病理学分野 戸田 修二 教授
(4)機能性人工核酸の合成およびその新規バイオアッセイ法への忚用・・・・・・・・ 8
熊本大学大学院 自然科学研究科 物質生命化学講座 井原 敏博 准教授
(5)虚血性心疾患・心不全の病態解明と治療法の開発・・・・・・・・・・・・・・・10
佐賀大学 医学部 循環器内科 野出 孝一 教授
(6)消化器官の発生分化と再生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
熊本大学 発生医学研究所 幹細胞部門 多能性幹細胞分野 粂 昭苑 教授
(7)iPS 細胞を用いた細胞医薬品の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
熊本大学大学院 医学薬学研究部 免疫識別学分野 千住 覚 准教授
(8)ガン・炎症性疾患を誘発する「NF-κB 異常活性化」を抑制する方法論の開発・・13
大分大学 医学部 微生物学 伊波 英克 准教授
(9)感染制御学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
大分大学 医学部 附属病院 平松 和史 准教授
(10)エネルギー代謝を維持する分子機構の解明・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
宮崎大学 フロンティア科学実験総合センター
生理活性物質探索分野 伊達 紫 教授
(11)難治性消化器疾患の血清プロテオミクス・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科
消化器疾患・生活習慣病学研究室 宇都 浩文 講師
(12)バイオ分子ライブラリによる機能性タンパク質・ペプチドのデザイン・・・・・ 18
鹿児島大学大学院 理工学研究科 分子生物工学研究室 伊東 祐二 准教授
(13)生体内崩壊断片ペプチドの解析による病態予知診断・・・・・・・・・・・・・ 20
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科
血管代謝病態解析学 橋口 照人 准教授
(14)花色育種法の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
鹿児島大学大学院 連合農学研究科 観賞園芸学研究室 橋本 文雄 准教授
(15)サツマイモでん粉の高機能化と用途開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
鹿児島大学 農学部 忚用糖質化学研究室 北原 兹文 准教授
(16)大動脈瘤をモデルとした慢性炎症の病態解明・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
久留米大学 循環器病研究所 青木 浩樹 准教授
(17)人工細胞創製技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
久留米大学 高次脳疾患研究所 高橋 知之 准教授
(18)がんの免疫診断及び個別最適化治療に向けて・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
久留米大学 医学部 免疫・免疫治療学講座 小松 誠和 講師
(19)代謝酵素の個人差と発がん、悪性腫瘍の予防と診断・治療、
患者とともに聞いて診断する聴診器システム・・・・・・・・・・・・・・・・・28
産業医科大学 医学部 衛生学講座 小山 倫浩 准教授
(20)リハビリテーションロボットを用いた訓練時の脳賦活・・・・・・・・・・・・ 30
産業医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座 和田 太 講師
(21)生体関連化合物のデリバリーによる新規治療薬の開発・・・・・・・・・・・・ 32
福岡大学 薬学部 創剤学講座 放射薬品学分野 松永 和久 准教授
(22)安全な外科医療のための支援技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
福岡大学 工学部 機械工学科 森山 茂章 准教授
(23)ICTを活用した生活習慣改善プログラム開発・・・・・・・・・・・・・・・ 34
福岡大学 スポーツ科学部 山口 幸生 准教授
製造技術
(24)フィールドロボットの開発と知能化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
九州工業大学大学院 生命体工学研究科
運動制御機構研究室 石井 和男 准教授
(25)医療・福祉用ロボットの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
佐賀大学 理工学部 機械システム工学科 木口 量夫 教授
(26)下水管三次元形状スキャナロボットの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
宮崎大学 工学部 機械システム工学科
計測制御学研究室 川末 紀功仁 准教授
(27)大規模系の非線形振動解析システムの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
北九州市立大学 国際環境工学部
機械システム工学科 システム制御研究室 佐々木 卓実 准教授
(28)フロス制御による石炭灰の品質改善手法とそれを使用した
低炭素コンクリートの開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
北九州市立大学 国際環境工学部
建築デザイン学科 高巣研究室 高巣 幸二 准教授
(29)人の意図を予測して動くロボット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
九州産業大学 工学部 バイオロボティクス学科 榊 泰輔 教授
(30)メカトロニクス機器の動作特性改善・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
九州産業大学 工学部 バイオロボティクス学科 鶴田 和寛 教授
(31)キノコ及びキノコ廃菌床の有効利用方法の開発・・・・・・・・・・・・・・・ 48
九州産業大学 工学部 物質生命化学科 迎 勝也 教授
(32)微粒子を用いた医薬・化粧品・食品・素材の開発・・・・・・・・・・・・・・ 50
福岡大学 工学部 化学システム工学科
基礎化学工学研究室 三島 健司 准教授
環境・エネルギー
(33)宇宙機の帯電放電に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
九州工業大学 宇宙環境技術研究センター 豊田 和弘 准教授
(34)
「電気エネルギー機器の環境調和と高度化・新機能創出」・・・・・・・・・・・ 54
九州工業大学大学院 工学研究院電気電子工学研究系
電気エネルギー部門 大塚研究室 大塚 信也 准教授
(35)持続可能なバイオマス資源利活用技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・ 56
九州工業大学大学院 生命工学研究科
生物物質循環研究室 脇坂 港 准教授
(36)微量環境化学物質の現場分析を目指して・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
熊本大学大学院 自然科学研究科 環境分析化学研究室 戸田 敬 教授
(37)ナノ秒パルスプラズマによる省エネルギープロセスの開発・・・・・・・・・・ 58
熊本大学 バイオエレクトリクス研究センター
環境バイオエレクトリクス分野 浪平 隆男 准教授
(38)有害赤潮予報システムの開発を目指して・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60
鹿児島大学大学院 理工学研究科
環境システム工学講座 安達 貴浩 准教授
ナノテク・材料
(39)メソ・マクロ空間の組織制御による電気化学デバイスの高性能化・・・・・・・ 63
長崎大学大学院 生産科学研究科
機能材料化学研究室 兵頭 健生 助教
(40)光学忚用高分子の開発とデバイス研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
九州大学 先導物質化学研究所 先端素子材料部門 横山 士吉 教授
(41)ペーパー触媒の開発と忚用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66
九州大学大学院 農学研究院 生物資源化学研究室 北岡 卓也 准教授
(42)大面積フィルム製造のためのコーティング基盤技術・・・・・・・・・・・・・ 68
九州工業大学大学院
工学研究科化学プロセス工学研究室 山村 方人 准教授
(43)ミクロ組織体を利用した高性能「細胞チップ」の開発・・・・・・・・・・・・ 70
北九州市立大学 国際環境工学部
環境生命工学科 中澤研究室 中澤 浩二 准教授
(44)高分子が溶液・バルク状態で形成する多様な高次構造の
形成原理解明と分子設計に基づく制御法の確立・・・・・・・・・・・・・・・・72
北九州市立大学 国際環境工学部 エネルギー循環化学科
先進マテリアル教育研究分野 秋葉 勇 准教授
(45)材料の強度学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
福岡工業大学大学院 工学研究科 朱研究室 朱 世杰(傑) 教授
(46)無機ナノシートを利用した複合機能物質の合成・・・・・・・・・・・・・・・ 74
福岡工業大学大学院 工学研究科
生命環境科学専攻 宮元 展義 講師
情報通信
(47)オープンなユビキタスネットワークの構築・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
九州大学大学院 システム情報科学研究院
田頭 茂明 特任准教授(SSP 学術研究員)
(48)車載カメラによる安全センサシステムの研究開発・・・・・・・・・・・・・・ 80
九州工業大学大学院 情報工学研究科
知能情報工学研究系 榎田 修一 准教授
(49)
「デジタルスコアブック」に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82
大分大学 工学部 知能情報システム工学科 大城 英裕 助教
(50)高ダイナミックレンジ画像の取得及び符号化に関する研究・・・・・・・・・・ 84
北九州市立大学 国際環境工学部 情報メディア工学科
奥田研究室 奥田 正浩 准教授
(51)1.外耳伝導による会話システムに関する研究
(51)2.送電線監視に関する計測技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・86
福岡工業大学 情報工学科 谷口研究室 谷口 泰敏 講師
(52)感性情報処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88
九州工業大学大学院 情報工学研究科
ヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究室 吉田 香 准教授
フロンティア
(53)不正行為を予防するオークション方式に関する研究・・・・・・・・・・・・・ 91
九州大学大学院 システム情報科学研究院 横尾研究室 横尾 真 教授
(54)人型ロボットの力学・制御と運動知能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92
九州大学 高等研究機構
ヒューマンセンタードロボティクスプロジェクト 杉原 知道 特任准教授
自然科学一般
(55)水溶性多分岐高分子の合成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95
長崎大学 工学部 材料工学科 高次構造材料学研究室 本九町 卓 助教
(56)1.イオン液体の機能化
(56)2.地域一次産品の科学的ブランド化
(例:燃料作物、食用作物の増産剤開発、抗アレルギー食品の開発)
・・・・・・ 96
大分大学 工学部 忚用化学科 石川 雄一 准教授
(57)生物遺伝資源の収集・保存およびその育種的利用に関する研究・・・・・・・・ 98
宮崎大学 フロンティア科学実験総合センター
農学部生物環境科学科 明石 良 教授
社会基盤
(58)水循環再生に向けた雤水貯留・浸透型グラウンドの開発に関する研究・・・・・ 101
福岡大学 工学部 社会デザイン工学科
流域システム研究室 渡辺 亮一 准教授
(59)医療情報学、健康情報学、産業保健、遠隔医療、
PHR(Personal Health Record)
、セキュリティ、オントロジー・・・・・・ 102
産業医科大学 産業生態科学研究科 作業病態学教室 八幡 勝也 准教授
人文・社会科学・その他
(60)環境デザイン、生態学、都市緑化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
九州工業大学大学院 工学研究科
環境デザイン研究室 伊東 啓太郎 准教授
(61)福祉・リハビリ支援機器の開発研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106
九州工業大学大学院 生命体工学研究科 生体機能代行システム研究室
和田 親宗 准教授
(62)よりよい衣生活で健康・環境改善を図る・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108
佐賀大学 文化教育学部 地域・生活文化講座 甲斐 今日子 教授
(63)労働者の Quality of Working Life を高めるための疫学研究・・・・・・・・・・ 109
産業医科大学 産業保健学部 産業・地域看護学講座 原 善子 助教
九州地域注目の研究者
大学別目次
九州大学
<ナノテク・材料>
先導物質化学研究所 先端素子材料部門
横山 士吉
教授
光学応用高分子の開発とデバイス研究
64
大学院農学研究院 生物資源化学研究室
北岡 卓也
准教授
ペーパー触媒の開発と応用
66
田頭 茂明
特任准教授 オープンなユビキタスネットワークの構築
79
教授
91
<情報通信>
大学院システム情報科学研究院
<フロンティア>
大学院システム情報科学研究院 横尾研究室
高等研究機構
ヒューマンセンタードロボティクスプロジェクト
横尾 真
杉原 知道
不正行為を予防するオークション方式に関する研究
特任准教授 人型ロボットの力学・制御と運動知能
92
九州工業大学
<ライフサイエンス>
大学院生命体工学研究科 生体機能専攻
安田 隆
准教授
バイオMEMSによる微量生体試料の操作・刺激・計測
3
石井 和男
准教授
フィールドロボットの開発と知能化
37
大学院工学研究院電気電子工学研究系
電気エネルギー部門 大塚研究室
大塚 信也
准教授
電気エネルギー機器の環境調和と高度化・新機能創出
54
宇宙環境技術研究センター
豊田 和弘
准教授
宇宙機の帯電放電に関する研究
53
大学院生命体工学研究科
生物物質循環研究室
脇坂 港
准教授
持続可能なバイオマス資源利活用技術の開発
56
山村 方人
准教授
大面積フィルム製造のためのコーティング基盤技術
68
大学院情報工学研究科 知能情報工学研究系
榎田 修一
准教授
車載カメラによる安全センサシステムの研究開発
80
大学院情報工学研究科
ヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究室
吉田 香
准教授
感性情報処理
88
<製造技術>
大学院生命体工学研究科
運動制御機構研究室
<環境・エネルギー>
<ナノテク・材料>
大学院工学研究科 化学プロセス工学研究室
<情報通信>
<人文・社会科学・その他>
大学院工学研究科 環境デザイン研究室
大学院生命体工学研究科
生体機能代行システム研究室
伊東 啓太郎 准教授
環境デザイン、生態学、都市緑化
105
106
和田 親宗
准教授
福祉・リハビリ支援機器の開発研究
医学部 分子生命科学講座分子医化学分野
出原 賢治
教授
アレルギー性疾患やその他の炎症性疾患の病態形成機序の
解明
4
医学部 臨床病態病理学分野
戸田 修二
教授
臨床病理を基盤とした人体組織・細胞の研究
6
医学部 循環器内科
野出 孝一
教授
虚血性心疾患・心不全の病態解明と治療法の開発
10
木口 量夫
教授
医療・福祉用ロボットの開発
38
佐賀大学
<ライフサイエンス>
<製造技術>
理工学部 機械システム工学科
<人文・社会科学・その他>
文化教育学部 地域・生活文化講座
甲斐 今日子 教授
よりよい衣生活で健康・環境改善を図る
108
長崎大学
<ナノテク・材料>
大学院生産科学研究科 機能材料化学研究室
兵頭 健生
助教
メソ・マクロ空間の組織制御による電気化学デバイスの
高性能化
63
本九町 卓
助教
水溶性多分岐高分子の合成
95
<自然科学一般>
工学部 材料工学科 高次構造材料学研究室
熊本大学
<ライフサイエンス>
発生医学研究所 幹細胞部門
多能性幹細胞分野
教授
消化器官の発生分化と再生
井原 敏博
准教授
機能性人工核酸の合成およびその新規バイオアッセイ法への
応用
千住 覚
准教授
iPS細胞を用いた細胞医薬品の開発
12
戸田 敬
教授
微量環境化学物質の現場分析を目指して
57
浪平 隆男
准教授
ナノ秒パルスプラズマによる省エネルギープロセスの開発
58
医学部 微生物学
伊波 英克
准教授
ガン・炎症性疾患を誘発する「NF-κ B異常活性化」を抑制する
方法論の開発
13
医学部 附属病院
平松 和史
准教授
感染制御学
14
大城 英裕
助教
「デジタルスコアブック」に関する研究
82
石川 雄一
准教授
1.イオン液体の機能化、2.地域一次産品の科学的ブランド化
96
教授
エネルギー代謝を維持する分子機構の解明
16
下水管三次元形状スキャナロボットの開発
39
教授
生物遺伝資源の収集・保存およびその育種的利用に関する研
究
98
大学院自然科学研究科 物質生命化学講座
大学院医学薬学研究部 免疫識別学分野
粂 昭苑
11
8
<環境・エネルギー>
大学院自然科学研究科 環境分析化学研究室
バイオエレクトリクス研究センター
環境バイオエレクトリクス分野
大分大学
<ライフサイエンス>
<情報通信>
工学部 知能情報システム工学科
<自然科学一般>
工学部 応用化学科
宮崎大学
<ライフサイエンス>
フロンティア科学実験総合センター
生理活性物質探索分野
伊達 紫
<製造技術>
工学部 機械システム工学科
計測制御学研究室
川末 紀功仁 准教授
<自然科学一般>
フロンティア科学実験総合センター
農学部生物環境科学科
明石 良
鹿児島大学
<ライフサイエンス>
大学院理工学研究科 分子生物工学研究室
伊東 祐二
准教授
バイオ分子ライブラリによる機能性タンパク・ペプチドのデザイン
18
農学部 応用糖質化学研究室
北原 兼文
准教授
サツマイモでん粉の高機能化と用途開発
23
大学院医歯学総合研究科
血管代謝病態解析学
橋口 照人
准教授
生体内崩壊断片ペプチドの解析による病態予知診断
20
大学院連合農学研究科 観賞園芸学研究室
橋本 文雄
准教授
花色育種法の開発
22
大学院医歯学総合研究科
消化器疾患・生活習慣病学研究室
宇都 浩文
講師
難治性消化器疾患の血清プロテオミクス
17
安達 貴浩
准教授
有害赤潮予報システムの開発を目指して
60
大規模系の非線形振動解析システムの開発
40
42
<環境・エネルギー>
大学院理工学研究科 環境システム工学講座
北九州市立大学
<製造技術>
国際環境工学部 機械システム工学科
システム制御研究室
国際環境工学部 建築デザイン科 高巣研究室
佐々木 卓実 准教授
高巣 幸二
准教授
フロス制御による石炭灰の品質改善手法とそれを使用した低
炭素コンクリートの開発
<ナノテク・材料>
国際環境工学部 エネルギー循環化学科
先進マテリアル教育研究分野
国際環境工学部 環境生命工学科 中澤研究
室
<情報通信>
秋葉 勇
准教授
高分子が溶液・バルク状態で形成する多様な高次構造の形成原理
解明と分子設計に基づく制御法の確立
72
中澤 浩二
准教授
ミクロ組織体を利用した高性能「細胞チップ」の開発
70
国際環境工学部 情報メディア工学科
奥田研究室
奥田 正浩
准教授
高ダイナミックレンジ画像の取得及び符号化に関する研究
84
九州産業大学
<製造技術>
工学部 バイオロボティクス学科
榊 泰輔
教授
人の意図を予測して動くロボット
44
工学部 バイオロボティクス学科
鶴田 和寛
教授
メカトロニクス機器の動作特性改善
46
迎 勝也
教授
キノコ及びキノコ廃菌床の有効利用法の開発
48
工学部 物質生命化学科
久留米大学
<ライフサイエンス>
循環器病研究所
青木 浩樹
准教授
大動脈瘤をモデルとした慢性炎症の病態解明
24
高次脳疾患研究所
高橋 知之
准教授
人工細胞創製技術の開発
25
医学部 免疫・免疫治療学講座
小松 誠和
講師
がんの免疫診断及び個別最適化治療に向けて
26
小山 倫浩
准教授
代謝酵素の個人差と発がん、悪性腫瘍の予防と診断・治療、
患者とともに聞いて診断する聴診器システム
28
講師
リハビリテーションロボットを用いた訓練時の脳賦活
30
准教授
医療情報学、健康情報学、産業保健、遠隔医療、
PHR(Personal Health Record)、セキュリティ、オントロジー
102
助教
労働者のQuality of Working Life を高めるための疫学研究
109
産業医科大学
<ライフサイエンス>
医学部 衛生学講座
医学部 リハビリテーション医学講座
和田 太
<社会基盤>
産業生態科学研究科 作業病態教室
八幡 勝也
<人文・社会科学・その他>
産業保健学部 産業・地域看護学講座
原 善子
福岡大学
<ライフサイエンス>
薬学部 創剤学講座 放射薬品学分野
松永 和久
准教授
生体関連化合物のデリバリーによる新規治療薬の開発
32
工学部 機械工学科
森山 茂章
准教授
安全な外科医療のための支援技術の開発
33
スポーツ科学部
山口 幸生
准教授
ICTを活用した生活習慣改善プログラム開発
34
三島 健司
准教授
微粒子を用いた医薬・化粧品・食品・素材の開発
50
渡辺 亮一
准教授
水循環再生に向けた雤水貯留・浸透型グラウンドの開発に関
する研究
<製造技術>
工学部 化学システム工学科
基礎化学工学研究室
<社会基盤>
工学部 社会デザイン工学科
流域システム研究室
101
福岡工業大学
<ナノテク・材料>
大学院工学研究科 朱研究室
大学院工学研究科 生命環境科学専攻
朱 世杰(傑) 教授
材料の強度学
73
宮元 展義
講師
無機ナノシートを利用した複合機能物質の合成
74
谷口 泰敏
講師
1.外耳伝導による会話システムに関する研究
2.送電線監視に関する計測技術
86
<情報通信>
情報工学科 谷口研究室
ライフ
サイエンス
九州工業大学大学院
生命体工学研究科
安田
隆
生体機能専攻
准教授
研究テーマ:バイオ MEMS による微量生体試
料の操作・刺激・計測
研究の概要
応用分野・強み
MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)技術を
医療における診断・検査デバイスや創薬における
利用して、微小な流路やバルブ、電極などを数 cm
分析デバイスなどに広く応用が可能です。このような
角の基板上に形成し、その基板上で微量液体の操
分野への応用を図るには、操作性が良く低コストな
作や培養
デバイスの構築が不可欠です。本技術は、その実現
細胞の刺激計
のために、デバイスだけでなくその周辺機器をも含
測、生体分子
めた総合的なシステムの操作性向上とコスト低減を
の計測等を行い
図ることが可能な点に強みがあります。
ます。具体的に
これからの夢
は、表面張力や
静電気力を巧み
本研究に二つの夢を託しています。一つは、デバ
に利用して微量
イスの実用化により、人の生命に係わる領域で大きく
液滴を輸送・計量・混合するデバイス、1μm 以下の
貢献することです。もう一つは、本研究により創出し
微小孔を通じて培養細胞に対して局所的な薬剤刺
たデバイスを科学的な真理探究分野に応用すること
激を行うデバイス、誘電泳動を利用して微量血液か
により、世紀の大発見につながる成果を得ることで
ら血漿のみを効率的に抽出するデバイス、DNA 分
す。
解酵素やグルタミン酸などの生体分子を電気化学
的に計測するデバイスなどを手掛けています。
研究をはじめたきっかけ
MEMS との出会いは東京大学大学院工学系研究
科機械工学専攻の修士課程時代。当初は昆虫に学
んだ微小ロボットの実現を夢見て研究に没頭。外環
境の機械振動のエネルギを効率的に利用して歩行
する 1mm 程度の微小移動機械を実現して博士(工
学)を取得。その後、夢見るだけでなく人の役に立つ
研究がしたくなり、現在に至ります。異分野の研究者
と連携しやすい現在の環境が、細胞培養や生体分
子計測といった異分野技術への着手を後押ししてく
れました。
トピックス
○現在の主な外部資金:
・文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(B)
平成 19-22 年度
「神経幹細胞の分化誘導のための微量薬剤放
出制御デバイスの構築」(研究代表者)
・文部科学省 知的クラスター創成事業(第 II 期)
福岡先端システム LSI 開発拠点構想 平成
19-23 年度
「高性能バイオマーカーセンシング技術の研究
開発」(研究分担者)
○主な出願特許:
・特開 2008-132410 「微量液体分取デバイス」
・特開 2005-257569 「電気的制御可能な微量液
滴輸送デバイス」
・特開 2005-204837 「薬液放出制御用マイクロ
液体デバイスおよびその製造方法」
など 10 件程度。
安田先生の研究内容に関する問い合わせ先
研究室 電話:093-695-6047 FAX:093-695-6047
URL: http://www.life.kyutech.ac.jp/~yasuda/
九州工業大学 産学連携推進センター
電話:093-884-3485
3
佐賀大学 医学部
分子生命科学講座分子医化学分野
出原
賢治 教授
研究テーマ:アレルギー性疾患やその他
の炎症性疾患の病態形成機序の
解明
研究の概要
私たちの研究室では、現在、さまざまな炎症疾患
に関連するメデイエーターを同定し、その機能解析
を行うことを主なテーマとしています。陰イオンチャネ
ルであるペンドリンという分子と気管支喘息、COPD
についての関連(J Immunol, 180:6262-6269, 2008)、
細胞外マトリックスタンパク質であるペリオスチンとい
う分子と気管支喘息、間質性肺炎、アトピー性皮膚
炎、動脈硬化などとの関連(J Allergy Clin Immunol,
118: 98-104, 2006, Proc Natl Acad Sci USA, 104:
に取り組もうと考えました。当時、関心が持たれ始め
14765-14770, 2007)について解析を進めています。
ていた疾患感受性遺伝子の同定のテーマでもって
解析は、これらの分子がアレルギー疾患の一つであ
まずこの分野に入り、幸いにも IL-4 レセプターα鎖、
る気管支喘息の発症に重要なサイトカインであるイ
IL-13 遺伝子上の多型が気管支喘息の遺伝要因で
ンターロイキン4(IL-4)や IL-13 の誘導遺伝子であ
あることを明らかにすることができました(Nat Genet,
ることを DNA マイクロアレイにて同定したことから始
19:119-120, 1998, Hum Mol Genet, 9: 549-559,
まりました。これまでほとんどその機能については明
2000)。ちょうどその頃、モデルマウスを用いた解析
らかになっていませんでしたが、アレルギー疾患を
において、IL-13 が喘息発症の中心的役割を果たし
始めとして、さまざまな炎症性疾患において重要な
ているという画期的な論文が発表されました
役割を果たしていることが我々の研究などより判明し
( Science, 282: 2258-2261, 1998, Science, 282:
てきており、その仕組みをさらに明らかにするととも
2261-2263, 1998)。しかも、免疫細胞ではなく、構成
に、その知見をもとに新たな治療薬や診断薬の開発
細胞に対する IL-13 の作用が重要であることが示さ
を目指しています。
れたことから、この IL-13 の作用の裏ではどのような
分子的機序が動いているのか明らかにしようと考え
研究をはじめたきっかけ
ました。これもまた幸運なことに、(株)ジェノックス創
アメリカの DNAX 分子生物学研究所に留学してい
薬研究所との共同研究により、当時我が国ではまだ
た時期に IL-4 のシグナル伝達機構について研究を
利用が困難だった Affimetrix 社のマイクロアレイを用
行っていたことから、1994 年に帰国した際に IL-4 を
いて網羅的な IL-13 誘導遺伝子情報を得ることがで
含む Th2 型免疫反応が深く関与しているアレルギー
き、それをもとに同定した分子の機能解析を進めて
疾患に関心を持ち、その発症機序の解明
いくことができました。
4
(1)代謝あるいは酵素機能の異常により生じる多く
応用分野・強み
の疾患が存在しており、病気の起こり方を理解できる
免疫学の発達に伴い、それぞれの炎症反応に関
ようになる。
与している免疫担当細胞やサイトカイン、ケモカイン
(2)病気の診断には血清中酵素の測定が多く用い
といったメデイエーターについてはかなり明らかにな
られており、病気をどのように診断するのかが理解で
ってきました。しかし、実際の病態形成においては、
きるようになる。
免疫担当細胞だけでなく上皮細胞、線維芽細胞、
(3)多くの薬剤が酵素を標的としており、薬剤がどの
平滑筋といった構成細胞の関与が重要となりますが、
ようにして効果を発揮するのかが理解できるようにな
その両者の間の相互作用についてはそれほど明ら
る。
かとなっていません。例えば、異なる疾患には、それ
自分たちの研究においてもこの3つの重要頄目は
ぞれの疾患特異的な病態も存在するが、それととも
全く同じように当てはまり、自分たちの進めている研
に共通な病態も存在するという場合があり、その具
究が病気の仕組みを解き明かすことにつながり、ま
体例としては、喘息と COPD とでは粘液産生が、喘
た、その結果が、診断法の確立、あるいは創薬の開
息、間質性肺炎、アトピー性皮膚炎では線維化とい
発といった応用研究につながってくれればという想
う共通な病態が存在することが挙げられます。しかし
いを持って、日々の研究に取り組んでいます。
ながら、それぞれの疾患に関与する免疫反応を追
及していくアプローチでは、なかなかこの点を明らか
にすることは困難です。これらの点は、この分野にお
いて今後さらに重要な点となってくるにちがいないと
考えています。
これからの夢
私は、佐賀大学医学部では、学部生に対して生
化学、特に代謝、あるいは酵素に関して授業を行っ
ていますが、毎年最初の授業の際に、臨床医学に
トピックス
○平成6年度日本リウマチ財団研究助成受賞
○平成7年度旭硝子財団研究助成受賞
○平成7年度細胞科学研究財団研究助成受賞
○平成8年度アストラ研究奨励助成受賞
○平成10年度かなえ医薬振興財団研究助成
受賞
○第10回国際免疫学会にて MERIT PRIZE
受賞
○平成10年度北陸製薬・アレルギー学術奨
励賞受賞
○平成15年度日本臨床検査医学学会賞・学術
賞受賞
おける代謝、あるいは酵素の重要性として、次の3頄
目を説明しています。
出原先生の研究内容に関する問い合わせ先
佐賀大学 産学官連携推進機構
電話:0952-28-8965
FAX:0952-28-8186
URL:http://www.alis.saga-u.ac.jp
5
佐賀大学 医学部
臨床病態病理学分野
戸田 修二 教授
研究テーマ:臨床病理を基盤とした人体
組織・細胞の研究
研究の概要
私の専門は病理診断や病理解剖の
実践(臨床病理)を通して、癌などの確
定診断や疾病の治療方針の決定、予
後予測、新しい疾患概念の提唱に重
要な分野です。更に、分子細胞生物
学的手法や細胞培養、動物実験によ
って、疾病のメカニズムを解明すること
を目指す分野です(実験病理)。現在
脂肪組織片培養:成熟脂肪細胞、前脂肪細胞(矢頭)、
間葉系幹細胞(矢印)が長期に維持できる
の研究テーマは以下のとおりです。
1)肥満と脂肪細胞の臨床病理学、及び細胞生物学
を基盤にした生活習慣病、癌、老化の発症機構と
研究をはじめたきっかけ
その予防法の確立、脂肪組織と生体恒常性(当
医学部を卒業後、2年間第一線の病院で内科研
教室の前教授 杉原 甫が、世界で初めて、成熟
修医として臨床の現場を経験しました。その後、学
脂肪細胞の培養法を開発した)。
生時代からの恩師である杉原 甫教授に口説かれ
2)癌細胞および癌幹細胞の増殖・浸潤・転移機構
て、佐賀医科大学病理学教室に入局したことが研究
を始めたきっかけです。杉原教授に出会わなかった
の解明とその臨床応用
3)組織再生機構の解明(ES 細胞を含む)とその再
生医療への応用
4)放尃線被曝細胞の分子細胞生物学とその臨床
ら、町医者として人生を歩んでいたと思います(それ
も良かったかも知れませんが)。杉原教授との出会
いが、人体組織・細胞の不思議な営みを探求する出
発点です。出会いは大切なものです。
応用
(特に、被爆間質細胞の癌細胞に与える影響 :
Radiation-induced bystander effect)
応用分野・強み
組織構造を基盤にして、癌、肥満、組織再生、老
5)細胞間及び細胞-細胞外基質相互作用と疾病
のメカニズム解析
化等を研究しています。また、新しい培養システムの
開発を行っています。授業科目は、疾病の組織構造
6)脱パラフィン切片による疾患特異的固定化微小
環境の臨床病理学的研究
と病態及び発病機構の担当です(病理学)。疾病の
診断、癌、肥満、臓器再生、培養法などに関すること
7)気相―液相界面の分子細胞生物学的研究とそ
であれば、何にでも相談に応じます。 我々病理研
究者の強みは、人体の正常及び病的組織・細胞に
の臨床応用
精通していること、並びに人体組織を生命資源とし
8)何か、おもしろいこと!
て活用できることです。
6
り、生命の営みの不思議さを若い人たちと一緒に解
これからの夢
き明かして行きたいと考えています。研究は、豊かな
臨床病理を基盤にして、多くの人体組織の研究
を実践して来ました。我々が開発した培養系を用い
て、抗肥満薬、抗癌剤の探索、感受性スクリーニン
グなどへの応用を模索中です。現在の研究テーマ
は上記ですが、何か面白いことがあれば、何でもトラ
イする方針。現代はすぐに役に立つ研究がもてはや
されており、スケールの大きな問題に挑戦する基盤
人間性と視野を拡げることそのものです!
トピックス
○公的支援策等活用状況(平成19年度から現在)
臨床病理学奨学寄付金(小池病院、佐世保中央
病院、長崎労災病院、山田耳鼻咽喉科)
○論文多数あり、平成19年以降、Endocrinology,
Cancer Science, Organogenesis, Nature Medicine
など27編
が脆弱な時代です。何の役に立つか分からないが、
面白い現象に遭遇したときこそ、大発見につながる
可能性があることを明記すべきだと思います。これま
で、多くの先輩、後輩の諸先生方に助けて頂き現在
の私があるので、その恩をお返しする時であ
7
戸田先生の研究内容に関する問い合わせ先
佐賀大学 産学官連携推進機構
電話:0952-28-8965
FAX:0952-28-8186
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熊本大学大学院 自然科学研究科
物質生命化学講座
井原 敏博 准教授
研究テーマ:機能性人工核酸の合成 および
その新規バイオアッセイ法への応用
研究の概要
機能分子を導入した核酸を化学合成しています。
具体的には、蛍光性分子、金属キレーター、酸化還
元活性分子、包摂化合物、光反応性分子と DNA と
を共有結合で繋いだ分子(DNA コンジュゲート)ある
いは、表面に DNA が固定化された超微粒子
電極等の作製です。
これら DNA コンジュゲートに相補的な塩基配列を
有する遺伝子が溶液中に存在するときにだけ、その
機能部位がシグナル(蛍光、電流、凝集、光反応な
ど)を発生する仕組みを与えてやることで遺伝子の
検出を行うことができます。意図した高次構造を自
在に構築できる DNA の特長を利用すれば、柔軟で
多様な核酸検出システム設計が可能になります 。
DNA アプタマー(抗体のように、特定の分子を捕ま
える DNA)を利用すると分析対象を核酸以外の生理
活性物質、特定のイオン等に拡張することもできま
す。
特異的に結合する分子を de novo 合成できる唯一の
分子基体です。すなわち、G-C、A-T 塩基対の非
常に単純なルールに従うだけで、特異的な DNA の
ハイブリダイゼーション能を利用して、特定の遺伝子
に結合する分子を設計することができます。
現在では、DNA は “化学” の範疇に入る分子と
なっています。すなわち、DNA の化学合成、酵素合
成技術が成熟し、DNA を化学物質として、いまゲノ
研究をはじめたきっかけ
ムケミストリーを実践する舞台が整いました。
生命現象を司るほとんどの分子認識は、核酸やタ
ンパク質などの超分子を舞台とする多点認識による
ものです。超分子化学においては、様々に技巧を凝
らした巨大分子を設計して、あるいは、幾つかの小
分子を組み合わせることで特定の標的分子を認識し
ます。クラウンエーテルが知られて以来 40 年人知を
尽くした美しい分子認識システムが多数報告されて
いますが、任意の分子を特異的に捕捉するホスト分
子を一から設計することはいまだ容易ではありませ
ん。DNA は、与えられた分子(核酸類)に対して、
8
応用分野・強み
最近、分子進化工学的手法により核酸以外の生
理活性分子(種々の金属イオン、コカイン、テオフィリ
ン、サイドマイド、トロンビンなど)に結合する核酸分
子、DNA アプタマーが知られるようになりました。ま
た、様々な酵素機能を有する DNAzyme も報告され
ています。これらの、従来の遺伝情報の担い手とし
ての DNA 以外の機能を持つ核酸は機能性核酸と呼
ばれています。DNA は化学合成が可能ですので、
ある種の刺激に応答する機能分子を組み込んだ機
いと思います。細胞内局在化学種の時空間特異的
能性核酸を上手に設計すると、例えば刺激に応答し
な検出を指向した in cell chemistry を目指します。
て酵素機能を可逆的に On/Off することが可能にな
ります。また、異なる機能性核酸同士を組み合わせ
て、単独では発揮できない高度な機能を持つ複合
体を設計することも比較的容易です。すなわち、有
機合成化学、あるいは酵素化学の技術を駆使して、
異なる機能性核酸同士、あるいは人工分子と核酸と
を“組み合わせた”高機能分子複合体を自在に設計
できる点は、本研究戦略の強みとなりす。
これからの夢
これまでは、種々の機能性 DNA コンジュゲートを
合成し、細胞外で(in vitro で)その機能を、主に物
理化学的手法により解析してきました。今後は、これ
を生体から取り出してきた実サンプルに適用したり、
さらには細胞内に導入し、その機能を評価した
トピックス
○表彰・受賞歴等
井上研究奨励賞、日本分析化学会奨励
賞、生体機能関連化学部会講演賞、コニ
カ画像科学奨励賞 など
○公的支援策等活用状況
さきがけ研究(JST)(平成 16-20 年)
○その他(論文数等特記事項)
J. Am. Chem. Soc., 123, 1772 (2001);
Chem. Commun., 2152 (2002); J. Am.
Chem. Soc., 126, 8880 (2004); Nucleic
Acids Res., 32, e105 (2004); Chem.
Commun., 4523 (2005); Anal. Biochem.,
24, 173 (2006); J. Inorg. Biochem., 102,
1921 (2008); Nucleos. Nucleot. Nucleic
Acids, 27. 1084 (2008); J. Am. Chem.
Soc., 131, 1386 (2009); Org. Biomol.
Chem., 7, 1349 (2009); J. Am. Chem.
Soc., 131, 3826 (2009)
など
井原先生の研究内容に関する問い合わせ先
熊本大学イノベーション推進機構
電話:096-342-3145
FAX:096-342-3239
E-mail : [email protected]
URL : http://kico.kumamoto-u.ac.jp
9
佐賀大学 医学部
循環器内科 野出 孝一 教授
研究テーマ:虚血性心疾患・心不全
の病態解明と治療法の開発
研究の概要
ヒト時計遺伝子の測定システム開発
hBMAL1/rRNA
Relative mRNA
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾
2.50E+01
患や心不全の病態解明と治療法の開発
2.00E+01
を専門に研究しています。
1.50E+01
QuickTimeý Dz
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ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈÇ…ÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
そのひとつとして、サイトカインの心不
1.00E+01
全の発症・進展における役割に着目し、
5.00E+00
循環器疾患診断マーカーとして確立する
0.00E+00
18
22
2
6
10
14
ZT
ことについて研究しています。既に、血中
研究をはじめたきっかけ
IL-1 3 値が慢性心不全の診
断・治療効果判定・予後判定に有用であること
心筋梗塞や脳梗塞の予防につながる方法を見
を新規に発見(特許出願中)。この値は、外来診
つけたかったことです。
断においても簡便に繰り返し測定することが容
易な点で有用です。IL-13 はアレルギーやアト
応用分野・強み
ピー性皮膚炎との関りがあることは知られていま
虚血性心疾患 、心不全、動脈硬化、血管医学
すが、心臓病との関わりがあることは初めて発見
等を専門としています。
されました。これにより、慢性心不全がアレルギ
動脈硬化、心不全の治療薬や診断検査キット
ーに関係している可能性も考えられています。
他にも循環器疾患の診断マーカーとなるものと
して、血小板由来のマイクロパーティクル(PDM
P:炎症反応に関る物質)が有用であることを発見
するなど(特許出願中)、診断薬などの開発につ
ながる研究も行っています。
などの開発が可能です。
これからの夢
現場の医療に還元できる研究を一つでもしたい
と考えています。
また、各生理現象や疾患に関わると考えられて
いる生体リズムの制御にかかわる時計遺伝子に
関しても研究を行っています。
野出先生の研究内容に関する問い合わせ先
佐賀大学 産学官連携推進機構
電話:0952-28-8965
FAX:0952-28-8186
URL:http://www.alis.saga-u.ac.jp
10
トピックス
○表彰・受賞歴等
AHA YIA
ISHR YIA
ACC YIA 1 位
大阪大学 山村賞
日本循環器学会 CPIS 賞
日本心臓病学会 Clinical Research Award
○論文発表等
論文多数、平成 20 年以降 32 編
熊本大学 発生医学研究所
幹細胞部門 多能性幹細胞分野
粂
昭苑
教授
研究テーマ:消化器官の発生分化と再生
研究の概要
当研究室では、幹細胞の機能に注目し、消化器
官、特に膵臓と肝臓の発生と再生に関する基礎研
究を行っています。
その内容としては、幹細胞( ES 細胞および iPS
細胞)から消化器官(膵臓・肝臓)の分化誘導方法の
研究概要
開発、ES 細胞由来分化細胞の解析、消化器官の
ES 細胞を用いた研究では、図1に示すように、正常膵臓発生
分化の各段階を In vitro での培養系を用いて再現する条件
を検討している。ES 細胞からインシュリンを分泌する膵臓 β
細胞に特異的分化誘導することを目指す。そして、試験管内
で初期発生のプロセスを ES 細胞が辿ることで、膵臓への分
化誘導を試験管内で再現できると考えられる。
発生分化関連遺伝子の探索、そして膵臓の幹細胞
の単離・解析 の 4 つに大きく分けられます。特にモ
デル動物(ニワトリとマウス)、あるいは ES 細胞
iPS 細胞を用いて研究を進めています。
これからの夢
研究をはじめたきっかけ
膵臓の発生分化、β細胞の再生の機構を理解す
ES細胞から膵臓前駆細胞、肝細胞へ効率的な分
ることは、糖尿病の治療の観点上、大変重要です。
化誘導方法を開発できたので、今後はβ細胞を ES
本研究室は発生分化を研究しながら、ES 細胞から
細胞そして iPS 細胞から効率的に作れるように分化
の再生誘導の方法を探っています。マウス ES 細胞
誘導方法を開発し、β細胞の分化、成熟を誘導出
を in vitro 培養下では、その条件を変えることで、
来るような薬剤を発見して糖尿病の治療に役立てた
種々の分化した細胞に誘導することが可能です。胎
いと考えています。また、成熟度の高い肝細胞を試
児の幹細胞や、成人幹細胞に比べると、in vitro で
験管内で誘導できるような技術開発を行い、モデル
ドナー細胞を大量に用意できる点、遺伝子改変を比
細胞として、あるいは重篤な肝臓病の治療に役立て
較的に容易に行える点で、臓器の修復再生などに
たいと思います。
は有用性が高いと考えられます。またアクセスのしや
すさや、リアルタイムで観察できる点から、ES 細胞の
分化の系は発生分化の解析のモデル系として非常
トピックス
○再生医療実現化プロジェクトの個別事業を実施中
○NEDO のモデル細胞の事業を受託
に有用な系と考えられます。
応用分野・強み
以下の分野に応用可能と考えられます。
○消化器官の幹細胞の操作技術の開発
○糖尿病などの難治性疾患に対する新しい治療法
の開発
粂先生の研究内容に関する問い合わせ先
熊本大学 イノベーション推進機構
電話:096-342-3145
FAX:096-342-3239
E-mail:[email protected]
URL:http://kico.kumamoto-u.ac.jp/
11
熊本大学大学院
医学薬学研究部 免疫識別学分野
千住
覚
准教授
研究テーマ:iPS 細胞を用いた細胞医薬品
の開発
研究の概要
用化をサポートする
様々な技術が続々と開
本研究は、 ヒト iPS 細胞(誘導性多能性幹細胞ある
発されつつあります。
いは人工多能性幹細胞)を利用して、以下のような新た
我々の研究グループで
な医療技術の開発を行うものです。
は、これらの研究成果
1) iPS 細胞由来の樹状細胞を用いた、抗原特異的が
を生かすことにより、こ
ん免疫療法
2) iPS 細胞由来の樹状細胞を用いた、自己免疫疾患
の治療法と移植医療における免疫制御療法
れまで不可能である
と考えられてきた細胞医薬品の工業化が実現できると
考えています。
3) iPS 細胞由来のマクロファージを用いた、各種難治
性疾患の治療法
これからの夢
研究をはじめたきっかけ
医学が発達したと言われる今日にあっても、多発性
の転移巣を有するがんなど、外科手術、放尃線治療、
樹状細胞は、T リンパ球に対する抗原提示細胞であ
り、生体内における主要な免疫制御細胞です。また、マ
クロファージは、生体内における異物処理という、生命
維持に必須の機能を担う細胞です。
我々は、ヒトとマウスの ES 細胞(胚性幹細胞)から樹
状細胞を作製する技術を開発し、これを用いた抗原特
化学療法など他の治療法では効果が期待できない進
行がんの患者が多数存在しています。細胞医薬という
未開拓の技術分野を開拓して、進行がんに対して有効
な治療法を確立したいと考えています。また、がん以外
の様々な難治性疾患に対する革新的な治療技術を開
発したいと考えています。
異的な免疫制御療法の実用化を目指して研究を行っ
トピックス
○表彰・受賞歴等
・財団法人 武田科学振興財団 2006 年度
医学系研究奨励金
・日本組織適合性学会 平成 17 年度 学術奨励賞
優秀賞「ES 細胞から分化誘導した樹状細胞を用い
た MHC 拘束性 T 細胞応答制御技術の開発」
・財団法人 金原一郎記念医学医療振興財団
第 20 回 基礎医学医療研究助成金(平成 17 年度)
・平成 15 年度 熊本医学会奨励賞
・東京生化学研究会研究奨励金(平成 12 年度)
・平成 20 年度に科学技術振興機構の戦略的創造研
究推進事業(CREST)に採択
てきました。
3年前に報告された iPS 細胞作製技術の開発により
これまでの我々の研究成果を細胞医薬として実用化で
きる可能性が高まっています。
応用分野・強み
iPS 細胞由来の樹状細胞を用いることにより、細胞ワ
クチンの大量生産が可能となり、がんワクチンとしての
有用性が期待されます。また、iPS 細胞由来のマクロフ
ァージを用いることによりがん細胞を直接攻撃すること
も可能です。このように iPS 細胞由来の細胞は、がんな
どの難治性疾患の治療用の細胞医薬としての実用化
千住先生の研究内容に関する問い合わせ先
熊本大学 イノベーション推進機構
電話:096-342-3145
FAX:096-342-3239
E-mail:[email protected]
URL:http://kico.kumamoto-u.ac.jp
が期待できます。iPS 細胞関連研究は、国内外で関心
が高く、盛んに研究が行われており、癌化の危険性が
低い iPS 細胞の作成技術、低コスト化、ドナーに対する
負担の軽減など、 iPS 細胞に由来する細胞医薬の実
12
大分大学 医学部 微生物学
伊波 英克 准教授
研究テーマ:ガン・炎症性疾患を誘発する
「NF-κB 異常活性化」を抑制する
方法論の開発
応用分野・強み
HTLV-1→Tax→NF-κB→ATL と病態進展のメ
カニズムを研究する内に、ガンと免疫応答系の異常
(炎症性疾患)の発生が実は密接に関係していること
に気づき、現行の ATL 治療の代替法について様々
な角度から検討してきました。小分子量ペプチド、分
子シャペロン阻害剤、可食農水産物由来 NF-κB 阻
害成分(EFNI)など、2004年本学赴任後に論文を関
連学会の主要誌、EMBO J, Blood 等に発表し、更に
特許申請 2 件、地元企業との共同開発による清涼飲
料の開発(本年6月発売)などを手懸けてきました。
これからの夢
研究の概要
病原体の進入などストレスを伴う外部からの刺激
に対し、私たちの体は免疫系と呼ぶ防御システムを
発達させています。免疫応答反応を誘導する転写
因子 NF-κB は、通常は働きすぎないようにその活
性が厳密に制御されていまが、一部の腫瘍ウイルス
の感染や紫外線などの変異源への暴露で恒常的な
活性化が誘発され、ガンや喘息・アトピー性皮膚炎
などの炎症性疾患の原因となります。この「NF-κB
異常活性化」の原因を突き止め、個々の原因に対応
する制御方法を見出そうと研究を続けています。
研究をはじめたきっかけ
ヒトにガンを発生させる唯一のレトロウイルス、
HTLV-1 が産生するガン遺伝子産物 Tax は非常に
多面発現的であり、宿主細胞内の様々な蛋白質の
最大の目標は現在有効な治療法のない ATL に対
し、真に延命効果の期待できる治療法を提供するこ
と。これまでの基礎研究から得た知見を応用する形
で EFNI を開発してきましたが、作用機序については
まだ殆どが不明のままです。もしかしたら全く新しい
メカニズムで NF-κB 過剰活性化を抑制する化合物
を開発できるのではないかと期待しながら研究を進
めています。
トピック(受賞歴等)
○表彰・受賞歴等
NIH recognized employee award 2002, 2003.
○公的支援策等活用状況
平成19年度経済産業省地域資源活用型研究
開発事業「日田産ユズの免疫制御成分を活用
したアレルギー軽減飲料の開発:分担」
大分県新産業創出重点研究開発事業(研究開
発 R&D)「抗アレルギー能を科学的に実証した
林産物ブランド保健食品の開発:分担」
○その他(論文数等特記事項)
EMBO J (2008); Blood (2009); Leukemia (2009)
J Virol (2005, 2004); Oncogene (2003, 2001)
本来の機能をかく乱しガン化へと誘導します。中でも
Tax による NF-κB の恒常的活性化が白血病(ATL)
伊波先生の研究内容に関する問い合わせ先
大分大学イノベーション機構リエゾンオフィス
1999 年に米国国立衛生研究所で研究を始めたのが
電話:097-554-7430
きっかけです。
FAX:097-554-7740
URL:http://www.innovation.oita-u.ac.jp/index.html
発症の中心的な役割を果たす仕組みについて、
13
大分大学
平松
医学部
和史
附属病院
准教授
研究テーマ:感染制御学
またより耐性菌を出しにくい抗菌薬の選択
あるいは投与法の開発を目指しています。
研究をはじめたきっかけ
感染症は有史以来人々を苦しめてきました
が、ペニシリンの臨床忚用以降人類は多くの抗
微生物薬を開発し、あたかも感染症を克服した
かのように感じています。しかしながら医療機
関で医師として仕事を行っていく過程で、多く
の人が肺炎や敗血症といった感染症に罹患し、
研究の概要
(1)緑膿菌感染症に対する新しい予防・治療
法の開発
苦しんでいることに直面します。現在の感染症
の多くに抗菌薬が効きにくい耐性菌が関与し、
菌は耐性化という「進化」を遂げることによっ
て人類を苦しめ続けているのです。
近年、抗菌薬に対して耐性を示す緑膿菌が多
こうした状況を改善していくためには、新し
く検出され、その治療が困難になってきていま
い考え方での感染症治療や予防法の開発、さら
す。そこで緑膿菌ワクチンの開発や抗菌薬の新
には耐性菌の拡散防止策の究明が求められて
しい作用機序に基づいた緑膿菌の病原因子の
いると感じ、研究を開始しました。
抑制による緑膿菌感染症のコントロールを目
的に研究を進めています。
応用分野・強み
(2) 耐性菌の疫学研究とその蔓延阻止に向
けた対策の構築
(1)緑膿菌感染症に対する新しい予防・治療
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌などさまざま
法の開発
な薬剤に耐性を示す菌が多く検出されるよう
緑膿菌は術後や抗癌剤投与症例など易感染
になってきています。こうした耐性菌の広がり
宿主において肺炎や菌血症の起炎菌となり、致
を十分把握しておくことは、抗菌薬を適切に選
死性の高い感染症を引き起こす場合が多くな
択するうえで非常に重要です。またこれら耐性
っています。そのため、より有効な治療法や予
菌は病院や施設、学校、家庭などで拡散してい
防法の開発が望まれています。ワクチン開発や
ることが知られており、その拡散防止対策を適
新しい治療法を開発することで多くの緑膿菌
切に実施していくことが望まれています。その
による難治性感染症への対忚が可能となりま
ための感染経路の検索やその結果に基づいた
す。
有効な感染予防対策の確立を目的に研究を進
めているところです。
14
これからの夢
(2) 耐性菌の疫学研究とその蔓延阻止に向
けた対策の構築
微生物は感染症という病態を引き起こす反
耐性菌感染症の問題は社会問題のひとつと
面、腸内細菌など人間が正常に生活していく上
して考えられています。耐性菌出現と抗菌薬の
で重要な役割も果たしています。人と微生物は
使用は密接な関連があり、薬剤を使用すれば耐
良くも悪くも切っても切れない関係にあり、共
性菌が出現し、薬剤を使用しなければ感染症は
存共栄していくためにはどのような方策があ
悪化するという二 面性があります。この問題
るのかを探求していきたいと考えています。
の解決の為にはさまざまな観点から耐性菌の
出現予防、拡散防止などを行う必要があります。
これらの問題を解決することで、大幅な医療
費の削減や在院日数の低下など患者本人のみ
ならず、社会全体に与える利益は計り知れない
トピックス
○論文数等特記事項
原著
67編(和文47編,欧文20編)
総説
52編(和文52編)
著書
18編(和文18編)
ものがあると考えています。
平松先生の研究内容に関する問い合わせ先
大分大学イノベーション機構リエゾンオフィス
電話:097-554-7430
FAX:097-554-7740
URL:http://www.innovation.oita-u.ac.jp/index.html
15
宮崎大学
フロンティア科学実験総合センター
生理活性物質探索分野
伊達
紫
教授
研究テーマ:エネルギー代謝を維持する
分子機構の解明
研究の概要
生体は生命現象を維持するためエネ
ルギーの獲得と消費を絶えず繰り返して
います。そのエネルギー代謝調節を生
体制御システムとして捉え、臓器間クロス
トークを中心に研究を進めています。
研究をはじめたきっかけ
末梢で産生される唯一の摂食亢進ペ
プチド;グレリンの発見および機能解析
を通じて、消化管が単に食物を消化・吸
収するだけでなく、空腹情報を発信
これからの夢
する臓器であることに興味を持ちました。さらに、血
中に分泌されたホルモンが血行性に脳に到達する
「なんでこうなるの」といった素朴な疑問で日々を
だけでなく、神経系を介して脳に情報を提供し、生
過ごしています。「もしかしたら……かも」と試しては
命維持に必要な行動を制御しているシステムの解
失敗し、まれに成功する、謎解きの連続をこれからも
明にも成功しました。
楽しんで生きたいと思います。
これらをきっかけに、エネルギー代謝調節におけ
る臓器間の精巧な情報交換の仕組みについて研究
を開始しています。
応用分野・強み
トピックス
○平成 13 年
○平成 16 年
○平成 18 年
○平成 19 年
日本内科学会研究奨励賞
日本神経内分泌学会川上賞
日本内分泌学会研究奨励賞
日本肥満学会学術奨励賞
エネルギー代謝と臓器間クロストークの全容解明
にはかなりの時間を要すると考えています。
しかし、そのひとつひとつを解明することは、肥満
や代謝異常の治療標的分子の発見につながる可能
性があります。
伊達先生の研究内容に関する問い合わせ先
宮崎大学 産学連携センター
電話:0985-58-4017
16
鹿児島大学大学院
医歯学総合研究科
消化器疾患・生活習慣病学研究室
宇都
浩文 講師
研究テーマ:難治性消化器疾患の血清プロ
テオミクス
研究をはじめたきっかけ
研究の概要
消化器癌の画像診断法や治療法の進歩は目覚し
いものがありますが、ほとんどの消化器癌は増加して
きています。また、非アルコール性脂肪性肝疾患、
自己免疫性膵炎、炎症性腸疾患などは今後の増加
が予想される消化器疾患ですが、その病因や簡便
な診断法は確立されていません。このようなことから、
迅速かつ簡便にスクリーニングできる新しいバイオ
(診断)マーカーの開発が必要です。
新しいバイオマーカーの開発には、血液や尿中に
特異的に出現する成分を同定することが、臨床応用
を視野に入れた場合はもっとも期待できる手法です。
また、疾患の原因遺伝子から翻訳されるタンパク質
と、それに関連して変動するタンパク質群を解析し、
さらに翻訳後修飾情報を含めて詳細に解析するとい
う観点から、系統的に整理するプロテオミクスを利用
した網羅的タンパク解析が必要です。現在、プロテ
オミクスを用いたバイオマーカー探索が悪性疾患を
中心に行われていますが、プロテオミクスを用いた
消化器癌や難治性消化器疾患患者血清の解析は
尐なく、更なる研究の発展が期待されています。
私たちの研究室では、消化器癌として肝細胞癌、
膵癌、大腸癌、胃癌、癌以外の難治性消化器疾患
として C 型慢性肝炎インターフェロン治療無効例、
非アルコール性脂肪性肝疾患、自己免疫性膵炎、
炎症性腸疾患患者の血清を用いて研究を進めてい
ます。プロテオーム解析により診断や治療効果判定
に有用な新しいバイオマーカー候補となるタンパク
を同定し、臨床的意義を検討することにより、難治性
消化器疾患のバイオマーカーとして臨床応用に結
びつけたいと考えています。
宮崎県地域結集型共同研究事業「食の機能を中
心としたがん予防基盤技術創出事業」の研究の一
端を担い、中心となる研究手法のひとつであるプロ
テオミクスに興味を持ったことが、現在の研究を始め
たきっかけです。
応用分野・強み
新しい診断マーカーが同定できれば、医療分野
への応用が期待できます。また、臨床教室を中心と
した研究であり、血液などの臨床検体が得られやす
いという強みがあります。
これからの夢
臨床の現場で迅速かつ簡便に測定でき、保険適
応となる診断法を確立し、難治性疾患の診断や治
療に役立つ研究をしたいと考えています。
宇都先生の研究内容に関する問い合わせ先
鹿児島大学 産学官連携推進機構
電話:099-285-8491
FAX:099-285-8495
17
トピックス
○表彰・受賞歴等
・平成 14 年 Liver Forum in Kyoto 研究奨励賞
・平成 16 年国際科学振興財団フォーラム第 11
回浜名湖シンポジウム研究助成
・平成 18 年 Hepatology Research 賞
・平成 18 年味の素アワード
・平成 19 年国際科学振興財団フォーラム第 14
回浜名湖シンポジウム研究助成
・平成 19 年ウイルス肝炎研究財団研究奨励賞
○公的支援策等活用状況
・平成 15 年度~16 年度:若手研究(B)「肝細胞
増殖因子(HGF)の成体における機能解析」
・平成 20 年度~22 年度:基盤研究(C)「プロテ
オミクスを用いた非アルコール性脂肪肝炎の
診断マーカーの探索と検証」
・平成 20 年 JST シーズ発掘試験研究「非アル
コール性脂肪肝炎(NASH)の新しい診断マー
カー探索とその臨床応用」
○その他(論文数等特記事項)
欧文誌原著論文 37 編、特許出願 7 件
鹿児島大学大学院 理工学研究科
分子生物工学研究室
伊東 祐二 准教授
研究テーマ:バイオ分子ライブラリによる機能
性タンパク質・ペプチドのデザイン
現在、抗体医薬やセンサー素子開
発のための抗体分子、さらには阻害
剤となるような小分子ペプチドの設計
を中心に研究を行っていますが、セン
サーや生体材料に応用できる物の開
発や、新しいファージディスプレイ技
術の開発も行っています。
研究をはじめたきっかけ
我々の生命活動は、遺伝子によっ
てコードされた数万に及ぶタンパク
研究の概要
質・ペプチドの働きによって、支えら
れています。これらは、長い進化の
現在、急速な勢いで、バイオテクノロジーを使
過程で生物が試行錯誤によって作り出してきた機
って生み出されるタンパク性、ペプチド性の医薬
能性分子です。このような機能性分子を、ヒトの知
品、バイオ医薬品の開発が進んでいます。私の研
性よって作り出したいという思いをもって、学生時
究テーマは、そのバイオ医薬品などに応用可能
な機能性分子の設計、開発です。研究の特徴は、
そのような目的の機能を持ったバイオ分子、とりわ
け抗体やペプチドの設計に、ファージディスプレ
イという技術を用いることです。この技術は、数十
億の様々な配列を持つタンパク質、ペプチドの集
団(バイオ分子ライブラリ)を、バクテリアに感染す
代、研究をしていました。その頃、英国 MRC の G,
Winter 教授が発表したファージディスプレイによ
る抗体選別の論文に感銘を受け、この技術があ
れば、思い通りに目的の機能を持った分子の設
計が可能になるかもしれないと思い、鹿児島大学
に来てから、本格的に、この研究に着手しました。
るウイルスであるファージの表面に提示するファ
応用分野・強み
ージディスプレイ技術によって構築し、その中から
目的の機能を持った分子を提示するファージを
私の研究の強みは、通常は設計が困難な目的
単離することで、機能性の抗体やペプチドの設計
を可能にします。
の機能を持ったタンパク質ペプチド分子を、フ
18
ァージディスプレイ技術を使って作り出すことです。
これからの夢
この研究の中で重要なことは、1)機能性の高い
分子ライブラリを如何に効率よく構築できるか、2)
現在は、分子ライブラリからの選別によって、目
目的の分子を提示するファージの有効な選別法
的の分子の設計を行っていますが、得られた分
(パンニング法)を考案できるか、3)取り扱うタンパ
子構造と機能の相関の研究を通して、目的の機
ク質などの物性を熟知しているか、といった点が
能を持つタンパク質・ペプチドを、理論的に設計
挙げられます。この研究は、経験に基づいた戦略
できる技術を確立することが、私の研究の最終的
が必要なことから、このような方法で新規分子の
なテーマです。これが出来るようになれば、医薬
デザイン、探索を開始したいという方へ、アドバイ
品開発への大きな貢献が出来るだけでなく、セン
スや技術供与も含め協力していきたいと考えてい
サーや生体材料などへの応用も容易となります。
ます。現在までの成果としては、ヒトのイムノグロブ
このような分野に関心をもつ企業の皆さんからの
リンに結合するペプチドを設計して、新しい抗体
ご相談、提案をお待ちしています。
の検出や精製技術を確立する研究を行っていま
トピックス
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
JST 重点地域研究開発推進プログラム(育
成研究)・19-21年度
JST シーズ発掘(17、20年度)
す。また、抗体医薬の分野では、ガン細胞や体の
中の分子に結合する抗体を設計して、抗体を使
った治療薬の開発にも着手しています。現在は、
このように医薬品を志向した研究を行っています
が、新規のセンサーや材料への応用も考えてい
伊東先生の研究内容に関する問い合わせ先
鹿児島大学 産学官連携推進機構
電話:099-285-8491
FAX:099-285-8495
ます。
19
鹿児島大学大学院
医歯学総合研究科
血管代謝病態解析学
橋口
照人
准教授
研究テーマ:生体内崩壊断片ペプチド
の解析による病態予知診断
研究の概要
界中の研究者が論文を発表するにもかかわらず、
その病態の本質がつかめません。そのようなジレン
生体内には正常(全長)のタンパク質やペプチド
マの中でもがいているうちに田中耕一氏のノーベル
以外に数多くの崩壊ペプチド断片が存在することが
賞受賞と相俟って質量分析装置の開発が世界的に
知られるようになりました (peptidome)。これらは、既
発展しました。留学時代からの友人である(株)プロト
知のタンパク質の断片であり、生体内のプロテアー
セラの田中憲次氏がサンプル中のペプチドフラグメ
ゼの作用により一つの親タンパク質から複数の断片
ントを超高速かつ定量的に解析できる質量分析法
が産生される可能性があります。peptidome は血液・
の開発に成功したというニュースをくれました。そこ
体液を構成する分子グループの新規概念です。健
で、(株)プロトセラの技術を自分の研究に応用した
常人の血中においてもおびただしい崩壊ペプチド
のです。新しい技術は新しい観察を可能とし、新し
断片が観察され、またその出現パターンは個人によ
い視点と発想と概念を切り開いてくれるとつくづく思
って異なり、あたかも指紋を観るようです。この
います。
peptidome が病態に応じて特徴的な出現パターンを
応用分野・強み
示すことを応用して病態の早期予知診断に役立てる
こと目的とした研究を行なっています。つまり、ある病
体の中に病的な異変が生じているという病態情報
態が進行するときには尐なからず生体内のプロテア
-「ホメオスターシスのほころび」を超早期に捉えるこ
ーゼの活性化を伴うと思われますが、peptidome 解
とを目的とする概念であり、あらゆる病態に対して応
析は「生体内のどの分子が崩壊しているのか?」「こ
用できると考えています。「強み」を端的に言うならば、
れからどの様な病態に向かおうとしているのか?」を
実験室での分析化学技術としての質量分析法を医
知る手法です。本研究の発展が病態の早期診断と
療現場での応用に近づけました。今回用いている質
ともに、薬物治療の方向性の決定、栄養サポートの
量分析法は、生体内に存在する低分子量ペプチド
など多角的治療戦略の構築に役立つとともに、さら
フラグメントの存在をつぶさに観察できます。つまり、
には、「健康」という概念に新たな視点を与えるものと
サンプルの前処置としてアルブミンの除去、トリプシ
考えています。
ンによる消化を必要としません。さらに、病態間での
比較検討(ディファレンシャル解析)が可能で、解析
研究をはじめたきっかけ
これまで、10 年以上にわたり、予後不良の難病の
研究をしてきました。「難病」と言われる病態は世
時間が高速です。生体内にプロテアーゼで切断さ
れたと思われるペプチドフラグメントが存在すること
は、これまでの分析化学においても知られていまし
たが、世界的には癌の早期診断バイオマーカーとし
ての研究が始まったばかりです。
20
トピックス
○第 30 回日本血栓止血学会学術集会ポスター
セッション 優秀賞
演題「Degradation of homeostatic molecules
in DIC/MOF」
○ 第 55 回 日 本 臨 床 検 査 医 学 会 学 術 集 会
優秀演題賞
演題「重症病態における低分子量フラグメント
(ペプチドーム/プロテオーム)解析」
○第 7 回国際バイオフォーラム
演題「重症病態における低分子量フラグメント
(ペプチドーム/プロテオーム)解析」
鹿児島大学産学官連携推進機構の推薦によ
り発表
これからの夢
夢として大きな視点から捉えるならば、測定感度
が上がるほど、これまで見えなかったものがもっと見
えてきます。すると、健康であればあるほど豊かで複
雑さに満ちたデータの織り成しが現れ、「健康」の概
念が進化すると思います。「病気」の時はあるデータ
が強調されて「豊かな複雑さ」は影を潜めてしまいま
す。漠然とですが、このような未来の検査医学への
夢を持っています。「究極の健康値」の追求と言える
かも知れません。本研究の直近の夢は様々な病態
で出現してくる崩壊ペプチド断片に特異的な抗体を
満載したチップを作り、尐量の患者さんの血液から、
「今、どの様な病態が起きており」「どの様な病態に
向かおうとしているのか」を診断できる検査システム
橋口先生の研究内容に関する問い合わせ先
鹿児島大学 産学官連携推進機構
電話:099-285-8491
FAX:099-285-8495
を作ることです。
生体内には多くの崩壊ペプチド断片が存在する
未知あるいは
重症の病態
腫瘍細胞
免疫細胞
線維芽細胞
etc.
生体内プロテアーゼ
の活性化
MALDI-TOF/MSによる標的
タンパク質の同定
生体内標的タンパク
質の断片化
病態に特徴的なペプチドフラグメ
ントの出現
キャリアータンパク質に
結合して循環
病態情報としての活用
『どの分子が崩壊しているのか?』
『何が起ころうとしているのか?』
21
鹿児島大学大学院
連合農学研究科観賞園芸学研究室
橋本 文雄
准教授
研究テーマ:花色育種法の開発
研究の概要
新花色創成の育種技術を開発するため、基礎研
究から実践的研究を行っています。特に、花色を発
現するアントシアニン色素と花色との関係、アントシ
アニン色素の遺伝様式、アントシアニン色素の化学
構造、ポリフェノールを指標とした化学分類について
研究を行っています。近年、トルコギキョウのアントシ
アニン色素の水酸化を制御する遺伝には複対立遺
伝子が関与することを明らかにしました。この複対立
遺伝子の組み合わせによって、様々な花色を創出
することが可能となりました。
大幅な時間の短縮に成功、時代に流行する花色を
提供することが可能となりました。
これからの夢
研究をはじめたきっかけ
青年時代に山野草に興味を抱き、写真を撮って
いました。特に、スミレ科、キンポウゲ科、サクラソウ
科の花に興味がありました。当時、植物の根、葉、皮
に含まれる二次代謝物質を取り扱う製薬研究に従事
していましたが、平成 9 年から鹿児島大学へ赴任後、
現在の研究に専念、植物の花に含まれる二次代謝
物質、特に、アントシアニン色素に関わる研究を始
めました。当時、花色遺伝はメンデルの遺伝の法則
に従うとされていましたが、実際には例外的に遺伝
するケースが多くみられました。
例えば、ひとつの法則理論ではその花色遺伝を
説明することができても、他の植物の花色遺伝を説
明することができないことが多く、普遍的な理論を見
出したいと思いました。
応用分野・強み
花色が複対立遺伝の法則で遺伝するという理論
を初めて提案しました。遺伝子型が分かっているの
で、遺伝される色素と花色をその場で知ることができ
花色の複対立遺伝の法則の普遍性を追究したい
と考えています。この法則を発見してからまだ 6 年程
度しか経っていません。様々な課題があると思われ
るので、それらを一つ一つ解決しながら、「花色が複
対立遺伝の法則で遺伝する」理論が普遍的なもの
であることを証明したいと思います。また、我々の研
究グループがこれら一連の研究成果・技術を基に開
発した花卉を世に送り出して、花を愛する人たちの
心をひと時でも癒すことができればと思っています。
トピックス
○表彰・受賞歴等
平成 17 年 10 月1日 園芸学会賞年間優秀論
文賞(筆頭著者)
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
JST 育成研究・平成 18 年度~20 年度
○その他(論文数等特記事項)
発表論文・著書 69 編、特許出願 21 件
Hashimoto, F. et al. J. Jpn. Soc. Hortic. Sci., 73
(3), 235-240 (2004)
花きの花色遺伝型交配法(WO2004-103065)
ます。これまで新花色の育種は最低でも 10 年間必
要であるといわれていたものが、この技術を用いれ
ば 1 年程度で目的の花色を作出することができ、
22
橋本先生の研究内容に関する問い合わせ先
鹿児島大学 産学官連携推進機構
電話:099-285-8491
FAX:099-285-8495
鹿児島大学 農学部
応用糖質化学研究室
北原 兼文 准教授
研究テーマ:サツマイモでん粉の高機能化
と用途開発
高機能でん粉を有する多収・高
でん粉系統「九州 159 号」
卖位面積当たりのでん粉収
量はでん粉原料用品種「シロ
ユタカ」と同じレベル
10%ゲルの7日間低温放置
一般のサツマイモでん粉は白濁して脆くなる
一般のサツマイモでん粉
高機能サツマイモでん粉
研究の概要
サツマイモは台風の常襲地域である南九州の風土
に合った地域を支える糖質資源作物です。しかし、
従来のサツマイモでん粉は他の市販でん粉に比べ
てあまり特徴がなく用途が限られていました。そこで、
九州沖縄農業研究センターのサツマイモ育種研究
チームと連携して、特殊なでん粉を作るサツマイモを
育成し、そのでん粉の分子構造や利用特性を明ら
かにして、サツマイモの用途拡大を図っています。ま
た、産官学連携のもと、新しく育成したサツマイモか
ら高品質で高機能のでん粉を製造するだけでなく、
副生成物から食物繊維や有用可溶性成分も製造す
る技術を開発しています。
研究をはじめたきっかけ
サツマイモでん粉の性質の多様性について調
べたのがきっかけでした。はじめはサツマイモ栽培
品種のでん粉を調べましたが大きく変わった性質の
ものは見つかりませんでした。その後、サツマイモの
様々な用途別育種が進む中で,育成途中の系統の
でん粉まで幅広く調べることにより低アミロース性や
低温糊化性のでん粉など,特殊な変異でん粉を発
見することができました。このようなでん粉には従来
のサツマイモでん粉にはない優れた利用特性が
あることが分かり、それから高機能サツマイモでん粉
の積極的な検索と用途開発が展開しました。
応用分野・強み
現在着目している高機能でん粉は、1)低温・低エ
ネルギーで糊化する、2)糊化でん粉が老化(変質)
しにくい、3)生でん粉粒が酵素分解されやすい、と
いった利用上の優れた性質を合わせ持っています。
例えば、でん粉が老化しにくいことはゲル食品など
の品質务化の改善になります(写真)。また、生でん
粉粒が酵素分解されやすいことは糊化せずに糖化
できるので省エネルギー技術にもつながります。今
ではでん粉原料用品種と同等のでん粉収量を示す
系統「九州 159 号」が育成されているところです。
一方、でん粉製造において複数の食品素材を製
造することは全体の低コスト化にもつながります。
これからの夢
上記の特殊なサツマイモでん粉以外にも高アミロ
ース性のでん粉や、レジスタントスターチ(難消化性
でん粉)を含むでん粉も見つかりつつあり、差別化さ
れたでん粉原料用サツマイモとして用途開発を行い
たいと考えています。また、このような特殊なサツマイ
モでん粉が作られる原因を解明することにより、植物
におけるでん粉生合成機構に関する新知見を与え
てくれることを期待しています。
サツマイモは単位面積当たりの高い乾物集積能
が魅力のひとつです。現在は、積極的にゲノム情報
と遺伝子組換え技術を使ってサツマイモをさらに高
バイオマス化することならびにでん粉を高機能化す
ることを進めつつあり、将来のために重要な課題と考
えています。
トピックス
平成 16 年度日本応用糖質科学会奨励賞受賞
「サツマイモの器官別デンプンの特性に関する研究」
北原先生の研究内容に関する問い合わせ先
鹿児島大学 産学官連携推進機構 電話:099-285-8491 FAX:099-285-8495
23
久留米大学
青木 浩樹
循環器病研究所
准教授
研究テーマ:大動脈瘤をモデルとした
慢性炎症の病態解明
応用分野・強み
他の慢性炎症性疾患と同様、大動脈瘤も分子病
態解明は困難で、治癒は不可能であると信じられて
きました。しかし我々は、戦略的な病態解明により、
薬物による病態制御と治癒が原理的に可能であるこ
と を 証 明 し 、 世 界 的 な 注 目 を 集 め ま し た ( Nature
Medicine 2005)。現在、国内の10以上の研究施設と
連携して、慢性炎症の分子病態解明、分子標的治
医学研究分野で最高峰とされる Nature Medicine 誌
の表紙に掲載され、世界的に高く評価されている
療による病態制御、薬物送達システム(DDS: drug
delivery system)の開発を進めています。
研究の概要
これからの夢
慢性炎症は、心・脳血管疾患、糖尿病等の生活
習慣病や、アルツハイマー病、肺気腫、アレルギー、
基礎研究としては、大動脈瘤をモデル疾患として
自己免疫疾患、がん等、殆どの慢性病の基礎となり
慢性炎症病態の分子基盤解明を目指しています。
ます。これらの病気は、一旦発症すると治癒すること
また、これまでの研究成果を社会還元する方向とし
なく進行し、ついには致死的な結果に至ることも稀
て、病態に基づく診断法(バイオマーカー)、治療薬
ではありません。我々は慢性炎症性疾患の一つ、大
(創薬)、治療手段(DDS)の開発を進めています。
動脈瘤をモデルとして、慢性炎症病態の解明に挑
トピックス
○平成 18 年 JST シーズ発掘試験研究
「JNK阻害剤による大動脈瘤薬物療法の
開発」吉村耕一、青木浩樹
○平成 19 年 科学技術分野の文部科学大臣
表彰 科学技術賞研究部門
「JNK 抑制による大動脈瘤薬物療法の開発
に関する研究」
吉村耕一、青木浩樹、池田安宏、松﨑益德
○平成 20 年度~平成 23 年度
NEDO 若手研究グラント
「大動脈瘤低侵襲治療のための革新的ハ
イブリッドデバイスシステムの開発」
吉村耕一、青木浩樹、堤宏守、黒田俊一
んでおり、積極的な産学連携を通じた研究成果の社
会還元を目指しています。
研究をはじめたきっかけ
多くの慢性病で見られる慢性炎症は、病気や臓
器の種類を問わず驚くほど似通っており、その病態
の解明は革新的な診断・治療に結びつくと期待され
ています。しかし、しばしば10年以上に及ぶ複雑な
病態は、時間の厚い壁に阻まれており未解明です。
我々は、慢性炎症による病気の一つ大動脈瘤の研
究を進めるうち、1つの大動脈瘤の手術標本から数
年の経過が一気に解析できる「炎症のタイムカプセ
ル」と言うべき病態を見いだしました。これを応用して
青木先生の研究内容に関する問い合わせ先
久留米大学 知的財産本部管理室
電話:0942-31-7916
FAX:0942-31-7918
研究分野をさらに発展させ、時間の壁を越えて慢性
炎症の謎を解くために、大動脈瘤をモデル疾患とし
た研究グループを組織し、有機的な連携のもと研究
を推進しています。
24
久留米大学 高次脳疾患研究所
高橋 知之 准教授
研究テーマ:人工細胞創製技術の開発
後、発生生物学や幹細胞生物学に魅了され、世話
研究の概要
になった研究室で肝再生因子である HGF(肝細胞
細胞工学とは、細胞の特性や性質を人為的に変
えることによって生じる新たな機能を利用する学問で
す。我々は、幹細胞から目的とする細胞を細胞工学
増殖因子)の生物学、医薬学における重要性に感
化され、現在、再生医学研究に携わる幸運に恵まれ
ました。
的に創製して、医学、薬学などの多方面での応用を
応用分野・強み
目標としています。
具体的には、胚性幹(ES)細胞や組織由来幹細
細胞工学的に創製された心筋や神経細胞は、難
胞、誘導多能性幹(iPS)細胞に対して遺伝子治療ベ
治性の心筋梗塞や心筋症等の心疾患や、脳虚血、
クター等の遺伝子導入技術、細胞融合技術を駆使
アルツハイマー病、パーキンソン病等の脳疾患にお
し、主に心筋細胞、骨格筋細胞、更には神経細胞を
創製します。創製した目的細胞は、難治性心疾患や
脳疾患に対する移植細胞ソースや、医薬品開発の
ける移植再生医療の細胞ソースとして活用が可能で
す。細胞工学的に細胞の性質を導入・変換させる事
から、移植を目的とした創製細胞には、これまでの
単なる幹細胞による目的細胞の誘導ではある意味
効能評価や安全性試験における応用が期待されま
運任せにしていた必要な細胞特性に付いても、疾患
す。
の程度に応じて必要な細胞機能を付加する事が可
マウス iPS 細胞の誘導
能となります。
未分化 iPS 細胞の AP 染色
また、ヒト由来の創製細胞は、新薬開発における
有効性、安全性試験や、每性試験にも活用できるた
め、医学、薬学などの多方面での応用が期待できま
す。
iPS 細胞による胚様体形成
iPS 細胞由来心筋分化細胞
これからの夢
幹細胞の分化誘導にのみよらない色々な成分の
組み合わせによって、自在に生きた目的の細胞を創
製すること。その過程で、細胞が生きているということ、
ヒトが生きているということについて理解し、人の健康
で豊かな生活に役立つ医療技術開発に役立てたい
研究をはじめたきっかけ
と思います。
小さい頃から生き物に興味を持ち、物心付く頃に
は生物にかかわる仕事がしたいと思っていました。
当時では珍しかった薬学部で細胞融合やウイルスを
利用した細胞工学が学べる研究室へ所属。その
25
高橋先生の研究内容に関する問い合わせ先
久留米大学 知的財産本部管理室
電話:0942-31-7916
FAX:0942-31-7918
久留米大学
医学部 免疫・免疫治療学講座
小松
誠和
講師
研究テーマ:がんの免疫診断及び個別最適
化治療に向けて
テーラーメイドペプチドワクチンの特徴
改良が必要であり、特に治療効果判定
マーカーの開発を行いより高い臨床効
世界初!個人に適切なワクチンを選択し
投与するというコンセプトです。
ワクチン候補
個人に適切なワクチンを選択する
((テーラーメイド)
果が得られるようにすることが求められて
います。さらには、免疫療法薬剤(ペプ
チド)の探索も併せて行い、がん免疫療
選択したワクチン
法の発展に貢献したいです。
ワクチンの投与
研究をはじめたきっかけ
個別に最適なワクチンを提供する
★世界初!
テーラーメイドワクチンは、日本国内
テーラーメイドだからこそ、効率的にがん局所に
エフェクターリンパ球を誘導し、がんを倒します
および世界において久留米大学グル
ープのみが実施するがん免疫療法で
リンパ球
侵入
攻攻撃
す。それには患者さん個人の免疫力
縮小
を調べる必要があり、個人ごとに免疫
撃
力が違うのは当たり前でありながらい
つもびっくりさせられます。
研究の概要
研究においてワクチンの臨床効果や in vitro での反
がんの免疫療法における新しい治療効果判定法
応を比較すると科学的にも大変興味深いものがあり
を確立して病態の検査に寄与するとともに、治療効
ます。そういったなかで、治療効果が高い人や低い
果の高い免疫療法薬剤の探索・より効果的ながんの
人の特徴を見つけ出すこの研究は、運動場に落ち
免疫療法の確立に貢献する研究を行っています。
免疫の働きにより“異物”であるがんと正常細胞との
たコンタクトレンズを探すのと同じように大変ですが、
必ずや患者さんの役に立てるものと信じています。
特徴の違い(腫瘍拒絶抗原など)を見つけ、それを
応用分野・強み
目印としてがん細胞を傷害しようとする治療法の一
つががんの免疫療法です。これまで当研究グルー
当研究グループではこれまで延べ 500 例近いペ
プでは、多数の腫瘍拒絶抗原並びにその T 細胞認
識ペプチドを見出し、高度進行がん患者を対象とし
てテーラーメイドペプチドワクチンの臨床試験を行っ
てきました。
テーラーメイド型で投与することにより、従来型(決
プチドワクチン臨床試験を実施し、種々のワクチン候
補ペプチド並びに免疫反応性解析にかかる情報を
蓄積しています。また、非常に困難といわれている
抗原特異的 T 細胞の安定的検出についても検討し、
め打ち)のものよりも高い臨床効果が得られています
その培養・検出法について特許申請しています。さ
が、すべてがいい結果というわけではなく、まだまだ
らには抗ペプチド抗体の検出やサイトカインの検
26
出、遺伝子解析など様々な技術を用いてがん免疫
とにより、より
療法を多面的に解析しています。がんのみならず C
治療効果の
型肝炎ウイルスや SARS ウイルスに関する治療や診
高いがん免
断の研究もこれまでに実施しており、種々の病気の
疫療法が確
診断及び治療への応用可能性が期待されます。
立できると考
えています。
5 年あるいは
これからの夢
10 年後に当
21 世紀及び 22 世紀は個別化医療(テーラーメイド
医療)の時代だと考えられます。すなわち病気の診
断及び個人に最適な医療を提供するものです。テ
研究グループ
から発信した
がん治療薬並
びに診断薬が
ーラーメイドペプチドワクチンについて研究するこ
世界中の病気で苦しむ人に利用していただけるよう
研究を進めていきたいと思います。
トピックス
○公的支援策等活用状況(事業名・年度):
・科学技術振興機構プレベンチャー事業(平成 14 年度~平成 17 年度)
・経済産業省地域新生コンソーシアム事業(平成 17 年度~平成 18 年度)
○その他(論文数等特記事項):論文数:39編、学会発表等:45演題、特許1件(特許出願中 5 件)
小松先生の研究内容に関する問い合わせ先
久留米大学 医学部 免疫・免疫治療学講座
電話:0942-31-7551 FAX:0942-31-7699
URL:http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/index.html
27
産業医科大学
医学部 衛生学講座
小山 倫浩 准教授
研究テーマ:代謝酵素の個人差と発がん、悪性腫瘍の予防と診断・
治療、患者とともに聞いて診断する聴診器システム
研究の概要
■アルコール・タバコに関連した代謝酵素の個人
差と発がん:
本研究室で作製した Aldh2 遺伝子欠損マウ
スは、遺伝子影響による発癌研究や(特許公
開:2005-110601)、シックハウス症候群研究に
有用でした(特許公開:2006-162602)。また、厚
生労働科学研究を通して、通達「職場における
許出願番号:2007-44414)。このシステムは、次の
社会福祉に貢献すると考えられます。①患者サー
ビス、②患者教育による疾患の増悪や発作の予
防効果、③臓器の障害による聴診上の雑音を検
知(喘息や間質性肺炎)、④医療関連者の教育
効果、⑤遠隔医療や地域医療への貢献(僻地の
患者がネットを通じて主治医に聴診音を送るシス
テム)。
肝炎ウィルス感染に関する留意事頄」(平成 16
年 12 月 8 日基発第 1208004 号)の作成に関与
しました。さらに、タバコ煙中の発癌物質代謝
酵素の遺伝子多型は肺癌のリスク要因であり、
この発癌物質代謝酵素の発現は気管支上皮
内に喫煙で誘導されることを示しました(特許公
開:2004-279385)。
■悪性腫瘍の予防と診断・治療:
癌関連遺伝子、癌の微小転移や、癌免疫に
関する研究を行いました。また、悪性腫瘍内の
薬物代謝酵素発現プロファイルは抗癌剤選別
研究をはじめたきっかけ
に有用であり(特許公開:2005-034150)、腫瘍
臨床研修は産業医科大学第二外科学教室の
マーカーとして臨床応用可能です(特許公開:
2006-125899)。
■患者とともに聞いて診断する聴診器システム:
病院外来などで、医療サービスのひとつとし
て、患者自身が聴診音を聞くことができる機器
はまだ作成されておらず、普及もしていませ
ん。
このため、ドクターが使用している聴診器に聴
診音送信機を付けることで、聴診音がスピーカ
ーより出力されるシステムを試作しました(特
安元攻勢教授のもと胸部外科医として研鑽して、
5 つの認定医、3 つの専門医、2 つの指導医を取
得しました。
大学院院生の時に社会医学について学び、基
礎研究から社会環境・保健まで包括的に研究を
すすめることができることに強く魅力を感じました。
その後、産業医科大学衛生学教室の川本俊弘
教授の勧めもあって、研究と教育に重点をおいた
大学教員としての進路を選択して現在に至ってい
ます。
28
応用分野・強み
悪性腫瘍を中心としたサイエンス全般に精通し、
特に分子生物学レベルの癌の予防では国際的に
リーダーシップを担っています。さらに、臨床医学
的視点から労働環境や社会保健分野のニーズを
捉えて実行することが可能です。
これからの夢
「患者とともに聞いて診断する聴診器システム」
は商品化の直前であり、医療サービスのひとつと
して社会福祉に是非役立てたいと考えています。
トピックス
○受賞歴 平成 17 年 日本衛生学会奨励賞
平成 18 年 Aldh2 ノックアウトマウス学会賞
○公的支援策等活用状況
科学研究費補助金 基盤研究(B):
研究分担者 平成 18 年~21 年度
科学研究費補助金 基盤研究(C):
研究分担者 平成 20 年~24 年度
厚生労働がん研究助成金:
研究分担者 平成 21 年度
○その他(論文・国際学会など)
欧文論文 108 編(うち筆頭または 29 編)
を報告し、国際学会においても 62 回(うち筆
頭 15 回)発表を行っている。
また、欧文 1 誌の編集委員と 5 誌の査読
を行っており、平成 19 年には事務局長とし
て Aldh2 ノックアウトマウス学会の国際シン
ポジウムを開催している。
小山先生の研究内容に関する問い合わせ先
産業医科大学 産学連携・知的財産本部
電話:093-280-0532
FAX:093-602-5482
URL:http://www.uoeh-u.ac.jp/JP/university/cooperation/index.html
29
産業医科大学 医学部
リハビリテーション医学講座
和田 太 講師
研究テーマ:リハビリテーションロボット
を用いた訓練時の脳賦活
研究の概要
リハビリテーションロボット(以
下リハロボット)を用いた上肢訓
練中の運動関連野の脳賦活の
状況について多チャンネル近
赤外線光(NIRS;日立メディコ、
ETG-100)を用いて評価し、効
果的なロボット補助リハ訓練方
法を模索しています。当講座で
は上肢は、前腕の
運動を補助する“アームトレーナー”、下肢は、非懸
垂型でトレッドミル歩行訓練を実行できる“歩行支援
ロボット”を臨床に応用しています。
会をいただけたのが直接のきっかけです。
医学部大学院に在学中には、当大学第二生理学
(白木啓三 元教授、環境生理学)の教室でお世話
健常者、脳卒中片麻痺者を対象とした研究では、
になり、浸水時の口渇の研究、ヒトの腓骨神経から直
これらのリハロボットを用いて訓練をした場合に、ロ
接、交感神経活動をモニターし、循環状態との関連
ボットの動きに任せたままに行った訓練では運動関
を調べる研究、潜水と身体反応などの研究に従事し
連野の脳賦活は尐なく、ロボットの動きに合わせて
ました。特に、海洋科学技術センター(現在の海洋
能動的に動かした場合に脳賦活が増えることが明ら
開発研究機構)で長期間のドライ潜水(20m、150m)
かになっています。麻痺の回復を手助けするリハロ
の研究に参加し、工学関係の方々と長期間一緒に
ボットでは、障害のある上下肢を能動的の動かすこ
過ごした経験は、現在の学際的な研究を行うことの
とを実行できるシステムで構成されていることが重要
基礎となりました。
である様です。現在は、ロボット補助訓練時に、どの
途中、労災病院勤務医時代には、臨床業務に追
ような刺激(運動イメージ、視覚情報など)を加えれ
われて研究に尐しブランクがありましたが、大学に戻
ば、さらに効果的に脳賦活を引き出せるかについて
ってから始めた、運動時の筋内酸素動態(NIRS)の
調べています(九州工業大学大学院生命体工学研
研究や、大学院時代に学んだ生体信号の計測技術
究科 和田親宗准教授との共同研究)。
や循環動態等の医学知識が現在の研究につながっ
ています。
研究をはじめたきっかけ
以前より、神経回復に関連する研究に携わりたいと
考えていましたが、“歩行支援ロボット”の開発、臨床
評価(当講座、蜂須賀研二教授)に参加できる機
応用分野・強み
本研究は、ニューロリハビリテーション(神経の可
塑性をひきだす)の立場に立って、より効果的な訓
30
練が可能なリハロボットの開発に寄与できることを目
これからの夢
的としています。特定のリハロボットを利用した場合
リハロボットは、その目的により大きく2種類に大別
の効果の判定ではなく、様々な訓練条件の違いよる
されています。ロボット機能で必要な身体機能を補
生体側への影響を対象としているので、他のリハロ
完し、日常生活や生活の質を高めるものと麻痺の回
ボットや関連機器の設計・開発にも十分応用が可能
復を図るための効果的な訓練を提供するものです。
と考えています。
前者の研究で、良く知られているのは、最近話題の
BMI(Brain Computer Interface)です。
生体計測では、動作解析(3 次元動作解析、床反
力、表面筋電図(含筋疲労))、循環動態(心拍出量、
一方、後者の回復が目的のロボットも近年、世界的
に開発が進められています。しかし、その神経生理
筋・脳内酸素飽和度(NIRS)、心肺機能(運動、歩行
学的背景も十分明らかでないものが多く、リハロボッ
中の呼気ガス分析))、自律神経評価(心拍スペクト
トは、それらの知識が十分反映されたハード・ソフト
ル解析)等を良く行っています。
の構成には至っていません。リハロボットも訓練を実
今まで、工学の先生方と共同する研究する機会に
恵まれてきましたので、様々なリハビリテーションと関
行するための道具であるので、そのもの性能が良い
ことに加え、使用者が上手に扱えることも重要と考え
ています。リハロボットのハードとソフトの両輪がうまく
連する機器の共同研究・開発・臨床評価に携わるこ
かみ合うことに微力ながら貢献できればと考えていま
とができると幸いです。
す。
トピックス
○公的支援策等活用状況
1.NEDO の委託研究「ウエルフェアテクノハウス研究開発(新居浜)」トイレの便座高の
検証, 平成 10 年
2. NEDO の委託研究「身体機能リハビリ支援プログラム」下肢機能回復支援システム,
平成 14-16 年
3. 新産業創出プロジェクト(北九州市)「装着型上肢運動支援ロボットの研究開発」, 平成 18 年
4. 中小企業産学官連携研究開発事業(北九州市)「装着型上肢動作補助スーツの機構・動
力の検討」, 平成 19 年
5. SCOPE の委託研究「u-リハビリ空間実現のための歩容情報センシングの研究開発」 ,
平成 20-21 年
6.科研費基盤(C)「ロボット歩行訓練時における脊髄損傷者の脳賦活」, 2008-2010
○講座URL: http://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/rihabiri/intro_j.html
和田先生の研究内容に関する問い合わせ先
産業医科大学 産学連携・知的財産本部
電話:093-280-0532 FAX:093-602-5482
URL:http://www.uoeh-u.ac.jp/JP/university/cooperation/index.html
31
福岡大学 薬学部
創剤学講座 放射薬品学分野
松永 和久 准教授
研究テーマ:生体関連化合物のデリバリ
ーによる新規治療薬の開発
研究の概要
薬物療法において最も重要なことは、作用部位に
薬物、特にその活性体を効率よく送達することです。
我々の開発している化合物は、いずれも生体内に
存在する生体関連化合物をベースにしており、作用
部位に効率よく送達されると、生体関連化合物の活
性体に再変換されるという特徴を持ちます。
我々の技術は、生体関連化合物を改良し、体内
動態を変化させることで、新たな治療薬を開発する
ものです。
これからの夢
研究をはじめたきっかけ
我々の化合物を医薬品、医薬部外品、機能性化
自分が学生の頃から続く息の長いテーマです。
粧品等の分野に応用することで、広く人々の健康と
元々は、生体関連物質に既知の作用の効率的な発
美容に寄与し、豊かな人生を送るための一助となる
現を目的としていましたが、近年のバイオ関連研究
ことが、一番の希望であり夢です。
の進歩は目覚ましく、生体関連物質に、新たな作用
トピックス
○公的支援事業等の活用
久留米リサーチパーク 平成 19 年度 可能
性試験
○独立行政法人 科学技術振興機構 平成 17
年度 シーズ育成試験
○知的財産
・USP,6,599,933 Tocotrienol derivative, method
for making thereof and two-step prodrug for
γ -CEHC
・ EP1446095 Skin preparation comprising a
tocopherol derivative for external application
・特許第 4040082 号 ビタミンKヒドロキノン誘導
体を用いる癌治療剤および再発予防剤
ほか
や作用機構が次々と発見され、それはそのまま我々
の化合物の新たな用途に直結し、抗がん剤、抗酸
化剤、利尿剤、美白剤等、日々応用範囲が拡大して
います。
応用分野・強み
我々の化合物は、脂溶性ビタミン等の生体内で重
要な役割を果たしている生体関連化合物をベース
にしたもので、代謝されると生体関連化合物の活性
体とアミノ酸に分解されるため、極めて安全性が高く
なっています。この特徴のため、抗がん剤として応用
した場合、副作用が尐ないがん治療剤としてだけで
なく、がん再発防止剤として予防的に使用することも
可能です。また、水への溶解性や融点が高く、酸化
されにくい等、製剤化する上で有利な性質を持って
います。
松永先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡大学 産学官連携センター
電話:092-871-6631
(内線2831~2833)
FAX:092-866-2308
32
福岡大学 工学部 機械工学科
森山 茂章 准教授
研究テーマ:安全な外科医療のための支
援技術の開発
研究の概要
工学技術を応用して、外科医療に用いられる機
器の開発や様々な臨床上の問題の解決を試みてい
ます。
整形外科領域では、人工関節の設計と評価、歩
行解析、骨折用プレートの開発などを行っています。
胸部外科領域では、内視鏡下手術シミュレータの開
発や手術技術の定量的評価を、口腔外科領域では
顎変形症の手術における術前シミュレーションや術
開発した手法や機器を検証することができる医学部、
後評価を研究対象としています。
大学病院と密に連携をとっていることが強みです。ま
また、これら外科領域で用いられる生体材料の開
た、人工関節医療機器の開発や評価に関して企業
発や強度試験も行っています。
との共同研究の実績も有しています。
研究をはじめたきっかけ
これからの夢
生体関節の潤滑機構の解明や人工関節のシミュ
現在開発中の内視鏡手術シミュレータや人工関
レータ試験などトライボロジーから現在の研究を始め
節、術後評価方法などを広く普及させることが現在
ました。そこで、臨床の医師と研究を進めると、多く
の目標です。また、臨床における問題を解決すると
の解決しなければならない問題があることを認識し、
ともに、外科医療における教育・訓練にも興味を持
トライボロジーに限らず整形外科の研究を行うように
っています。これらの研究を通して、「安全で質の高
なりました。その後、他の外科領域の共同研究の提
い医療」を提供できることを目指しています。
案があり、胸部外科や歯科口腔外科など他の医学
領域の研究につながりました。
トピックス
○公的委員など
・イノベーション創出推進委員会委員
(財団法人九州産業技術センター)
・産学連携事業推進委員会委員
(財団法人九州産業技術センター)
応用分野・強み
病気を治療するのは医師の仕事です。しかし、現
在の医療では様々な機器が使用されるとともに、根
拠に基づいた治療が要求されているため、医学だけ
森山先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡大学 産学官連携センター
電話:092-871-6631
(内線2831~2833)
FAX:092-866-2308
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp/
では解決できない問題も多く存在します。そこで、医
工連携の必要となります。医工連携で最も重要なこ
とは、現場の医師とエンジニアのコミュニケーション
です。福岡大学の医工連携では、医療においてど
のようなニーズがあるかを十分に把握し、実際に
33
福岡大学 スポーツ科学部
山口 幸生 准教授
研究テーマ:ICT を活用した生活習
慣改善プログラム開発
指導者
研究の概要
私たちは行動科学に基づいて、ICT を活
サーバ
3
た。これは三日坊主にならないための、強力
情報の入力
な行動変容のスキルアッププログラムです。
インター
ネット
とエビデンスに基づいたシステム構造が必要
回答・返送
事前問診の郵送
用した生活習慣改善プログラムを開発しまし
ICT の活用においては、人間の行動理論
参加者
2
1
4
教材作成・郵送
実践:2ヶ月
知識編
課題編
課題の回答・返送
目標設定
セルフモニタリング
個別教材の作成
情報蓄積・分析
教材の出力
2週間毎に4回郵送
5
です。
事後問診の郵送
達成度評価など
6
回答・返送
私たちはエビデンスのある健康支援システ
ムを構築し、複数の自治体への導入実績が
ヘルスアップ宅配便システムの概要と手順
あります。このノウハウを生かすことで地域・
職域・医療現場におけるメタボリックシンドロ
これからの夢
ームの改善を目指した支援システムの構築
ができます。さらにこの発展で、環境・交通・
健康問題をひとつにとらえた ICT システムが
今後は、地域全体にリーチ可能な健康・環境・交通
可能になります。
問題の解決につながるシステム開発を目指します。
そのために、閉じられたシステムではなく、地域住民
との協働によるウィキノミクス型のオープンシステム開発
研究をはじめたきっかけ
を行います。また応用として自転車や公共交通機関利
何をやっても三日坊主で終わる人と、継続できる人
用を促す、環境問題対応型の生活習慣改善プログラム
ではどこが違うのか?この疑問が私の出発点です。以
開発も狙います。
来、自分への挑戦も含めて理論化と実践を積み上げて
トピックス
きました。しかし、探求すればするほど、人の行動がカ
○主な研究業績: 山口幸生. これからの老人
保健事業のあり方に関する総合的な調査検討
−IT を活用した健康教育(主任研究者:中村正
和).平成 15 年度厚生労働省老人保健事業推進
費等補助金(老人保健健康増進等事業分)報告
書, pp28-40, 43-49, 61-63, 2004.
Yukio Yamaguchi, Shinichiro Miura, Hidenori
Urata, Yuki Himeshima, Koji Yamatsu, Noriko
Otsuka, Satoshi Nishida, Keijiro Saku. The
effectiveness of a multicomponent program for
nutrition and physical activity change in clinical
setting: Short-term effects of PACE+Japan
International Journal of Sport and Health
Sciences, 2003, 1(2): 229-237.
オスであることを実感します。試行錯誤の繰り返しです
が、それでも特定の方法により確実に目標達成率が高
まる、というエビデンスが私の研究を後押ししています。
応用分野・強み
・生態学的な視点から人の行動変容を捉え、心理学的
理論を背景とした生活習慣改善システムの構築が可
能であること
・多様なフィールドとチャンネルに対応したシステム開
発の実績とエビデンスを保有していること
が強みです。
身体活動促進に関係するあらゆる側面に切り込むこ
とが可能です。自転車利用や公共交通機関の利用促
進プログラムへも応用できます。
山口先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡大学 産学官連携センター
電話:092-871-6631(内線2831~2833)
FAX:092-866-2308
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp/
34
製造技術
九州工業大学大学院
生命体工学研究科運動制御機構研究室
石井
和男
准教授
研究テーマ:フィールドロボットの開発と
知能化
応用分野・強み
ロボット工学は総合工学であり、機械設計からソフトウ
ェア開発まで携わります。ロボットに要求される仕様から、
ロボットのシステム設計、機構設計、電子回路設計まで
対応可能です。ロボット開発においては、機構部や制
御回路部のモジュール化を行い、できるだけケーブル
が尐なく、デバッグしやすいシステム設計を行っていま
す。進化型アルゴリズムと動力学エンジンを用いた機構
の最適化、確率的手法を用いた自己位置等の推定、
脳型情報処理技術を用いたクラスタリング等の研究も
研究の概要
進めています。
これからの夢
極限環境の一つである海洋や公共空間等において
行動することができるフィールドロボットの設計・開発と
人の活動を手助けしてくれるロボットの開発が益々重
その知能化に関して研究を進めています。(i)海洋はロ
要となっていきます。ロボットのニーズは多様なため、全
ボットの活躍が望まれている環境ですが、水中調査や
能なロボットが望まれますが、必要な機能にしぼり最適
水中作業等,自動化が進んでいません。実海域で活用
化することにより、実用的なロボットが開発できると考え
できる小型の水中ロボットの開発を目指しています。(ii)
ています。現在の夢は、ロボット開発のための統合シス
公共空間で自由に移動できるロボットの開発を目指し
テムを開発することです。ロボットの動作環境、作業内
て、受動移動機構を有する車輪型移動機構を開発して
容等の制約条件から、ロボットの三次元 CAD データ、
います。画像処理や距離データを用いた自己位置推
電子回路基板の設計、動力学シミュレーションと制御系
定や環境認識、ナビゲーション技術に関するソフトウェ
の設計まで自動的に行うロボット開発統合システムの開
ア開発を行い、実環境で行動するロボットを開発してい
発を目指しています。
ます。(iii) RoboCup 中型リーグや水中ロボット競技会へ
の参加を通じて、スケジューリング、プロジェクト管理を
含めてロボットの知能化に関する研究を行っています。
また、知的クラスタ(2期)にも参加しています。
研究をはじめたきっかけ
学部生の頃、漠然と水中ロボットで海を清掃できない
のかと考えたのがきっかけで、水中ロボットに関する研
究室に進学し、ロボットの世界に引き込まれていきまし
た。幼尐の頃見たガンダムや合体ロボットにも影響を受
けていると思います。ダイビングしながら水中で行動す
トピックス
○高度自動化技術振興財団より「高度自動化技術振
興賞」1998.3
○ 国際会議 IEEE/ICII’01 において「Outstanding
Paper Award」,2001.11
○ ロボカップジャパンオープン 2008, 2009 中型リーグ
優勝、世界大会 2007 Best4、2008 Best6
○水中ロボット競技会
水中ロボットコンベンション in 辰巳、AUV 部門優勝、
フリースタイル部門優勝、2008.12、OTO’08 Aqua
Robot Competition, AUV Group 優勝、2008.4、第二
回,第三回水中ロボットフェスティバル,AUV 部門優
勝, 2007.12、2009.5
るロボットを眺めると、ゆったりとして美しく、感動しま
す。
石井先生の研究内容に関する問い合わせ先
研究室 電話:093-695-6102 E-Mail [email protected]
URL www.brain.kyutech.ac.jp/~ishii
九州工業大学 産学連携推進センター 電話:093-884-3485
37
佐賀大学 理工学部
機械システム工学科
木口 量夫 教授
研究テーマ:医療・福祉用ロボットの開発
応用分野・強み
研究の概要
バイオロボティクス、医療・福祉ロボット、およ
び知的ロボット制御に重点を置いて研究を進めて
います。バイオロボティクスの研究では、人間が運
動をする際に各筋肉で発生する筋電信号(EMG 信号)
を利用して、ロボット使用者の意思通りにロボット
を制御する研究を進めています。また、柔軟性を有
するファジィ推論や学習・適忚能力を有する人工ニ
ューラルネットワーク等のソフトコンピューティ
ング技術を用いてロボットの知能化を図っていま
す。 具体的には、運動支援ロボット(パワーアシ
ストロボット)、肢体機能回復支援装置(リハビリ
テーション用ロボット)、人工関節、筋電義肢、人
体運動シミュレータ、排尿支援装置等の研究開発を
行っています。他分野の研究者との共同研究や民間
企業との共同研究も積極的に進めています。
研究をはじめたきっかけ
知能ロボットに興味があり研究者の道を選びま
した。知能ロボットに関して研究を進めるほど人間
の凄さを再認識させられ、人間とロボットとの融合
や人間に関連するロボットに関する研究をするよ
うになりました。
木口先生の研究内容に関する問い合わせ先
佐賀大学 産学官連携推進機構
電話:0952-28-8965
FAX:0952-28-8186
URL:http://www.alis.saga-u.ac.jp
38
「患者のリハビリテーション用ロボッ
ト」
「高齢者や筋肉の衰えた方の運動支援
ロボット」「筋電義肢」「人体運動シミュ
レータ」など、医療用、障害者・高齢者
用ロボットの開発を目指して日々研究に
取り組んでいます。
運動支援ロボットや筋電義手では、生
体信号である筋電信号を基にロボットを
制御することにより、ロボット使用者は
特にロボットを意識することなく自分の
思い通りにロボットを制御することがで
きます。これらは、重労働者等の補助シ
ステムとしても忚用可能です。
また、リハビリテーション用ロボットにおいては、
人体の特性を考慮することにより、効果的なリハビ
リテーションの実施が可能となります。
さらには、人体運動シミュレータにおいては、体
の力学的特性をも考慮した人工関節の開発、手術前
後の運動変化の予測、患者ロボット等、様々な用途
で用いることが可能となります。
これからの夢
運動支援ロボットや筋電義肢においては、あたか
もロボットが自分の体の一部のように使用者が錯
覚するようになるよう、特にロボットをロボットと
して意識することなく使えるようになるよう、人間
とロボットの更なる融合を目指したいと思います。
また、リハビリテーション用ロボットに関しては、
人間の理学療法士/作業療法士以上のリハビリテー
ションを可能とするロボットを目指します。さらに
は、人体運動シミュレータを用いることにより、新
たな人工関節等を開発し、普及させたいと考えてい
ます。
トピックス
○表彰・受賞歴等
・平成 12 年 WAC2000 にて Joseph F. Engelberger
Best Paper Award を受賞
・平成 19 年 日本機械学会ロボティクス・メカトロニク
ス部門 部門貢献表彰
・平成 20 年 IEEE ICMA2008 にて Toshio Fukuda
Award を受賞
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
科学研究費補助金・平成 16~17 年度、
平成 19~20 年度 等
○その他(論文数等特記事項)
論文数(Journal,国際会議)236 編
宮崎大学
工学部機械システム工学科
計測制御学研究室
川末
紀功仁
准教授
研究テーマ:下水管三次元形状スキャナ
ロボットの開発
研究をはじめた
きっかけ
地元企業が宮崎大学
産学連携センターに下
水管の老朽化検査につ
いて相談に来られたの
がきっかけです。相談に
来られた企業と大学とで
計測システム
のアイデアを平成17年度に共同特許出願し、早期審
研究の概要
査にて平成18年に特許登録されました。現在は、国内
国内に埋設されている下水管の検査では、一般的に
大手企業との共同研究に発展しています。
CCD カメラを備えた下水管走行車によって撮影された
画像の観察から管の状態を判断する方法がとられてい
応用分野・強み
ます。しかしながら、人の感覚的な判断による検査では
検査結果に作業者の個人差が生じるので定量的な計
測が望まれます。
下水管計測ロボットは、数年で実用機が完成する予
定。また、下水管計測に限らず、画像計測技術を用い
そこで、CCDカメラとレーザシートの投光により下水
るとカメラで撮影される対象は、ほとんどの物が定量化
管形状および管軸とロボット本体の相対的な傾きを同
されるため、工学の分野のみならず農学・医学など様々
時に計測するロボットの開発(図1)を行っています。管
な分野で利用されると思われます。
内部から管軸に対し垂直方向にレーザシートを投光し、
管内面に現れるリング状軌跡をCCDで撮影することで
管内面の断面形状を計測します。また、投光するレー
これからの夢
ザを2枚の平行なレーザシートとすると管内面には2つ
「百聞は一見にしかず」と言われる通り、目で見て得ら
のリング状軌跡が現れます。走行ロボットが管軸に対し
れる情報は相当なものです。ロボットなどの機械にカメ
て傾いていると、撮影される2つのリング状軌跡が走行
ラを取り付けることは機械に視覚をもたせることになり、
ロボット本体の傾きに応じてずれるのでそのずれ量から
機械の機能が飛躍的に向上します。ロボット技術とカメ
傾きを検出し計測結果に反映させます。ロボットの走行
ラ技術は何れも日本が世界をリードしてきた技術です
方向に断面形状を積み重ねることにより,図2のような
ので、今後更に発展するものと予想します。「下水管形
下水管の三次元形状がコンピュータ上に構築されるの
状スキャナロボット」もその一つですが、大学で生まれ
です。
た技術が、実際に社会で役立つようになると非常に嬉
トピックス
○管内面形状測定装置 特許第 3837431 号
○三次元計測装置及び三次元計測方法 特許第
3816913 号
○三次元計測装置、三次元計測方法、三次元計
測プログラムおよび記録媒体 特許第 3991040
号
○平成9年度(1997年度)日本機械学会奨励賞
しいところです。
川末先生の研究内容に関する問い合わせ先
宮崎大学 産学官連携センター
電話:092-58-4017
39
北九州市立大学 国際環境工学部
機械システム工学科 システム制御研究室
佐々木
卓実
准教授
Maximum amplitude [m]
研究テーマ:大規模系の非線形振動解析システ
ムの開発
0.01
: Saddle–node
: Hopf
: Pitchfork
解の安定性に大きな影響を及
ぼすモードを特定し、それらの
モードのみを用いて構成され
る低次元モデルを用いること
で、もとの定常周期解の安定判
別が高精度化・高速化される
研究をはじめたきっかけ
ものづくり、機械いじりに興味
があり、大学では工学部の機械工
学科へ入学しました。とくに制御
0
やロボットに興味があり、学生時
20
30
Frequency [Hz]
40
代の研究室では、柔軟構造物の運
動制御に関する研究に携わりま
した。研究を進めると、構造物に
研究の概要
発生する振動や振動の解析法、非
局所的に強い非線形性を持つ大規模自由度
線形振動などの話を
系に対して、高速かつ高精度に定常周期振動解
聞き、次第に研究の軸がそちらの方向シフトし
析をするためのシステムの開発を行っていま
て行きました。大学院在学中の後半からは、非
す。
線形振動の解析法の開発について取り組むこ
これまでの研究で、一般的な機械・構造物に
ととなりました。
多くみられる、局所的に強い非線形性が存在す
る大規模非線形系に対して、定常周期解の解析
応用分野・強み
および得られた解の安定判別を高速・高精度に
行う手法を開発しました。この手法は、次のよ
機械、構造物の設計現場での実用を目指した
うな特徴を持ちます。
振動解析法の開発を目指しています。これまで
(ⅰ) 定常周期解の解析では、部分構造合成
は、非線形支持をもつはり構造物への適用を行
法の概念と調和バランス法を融合すること
ってきましたが、その他にも、トラス構造、回
により、解の精度を損なうことなく、計算
転軸系に適用することができます。また、それ
時間が大幅に高速化される
ら以外の大規模な非線形系に対する適用につ
(ⅱ)得られた定常周期解の安定判別では、
いても検討したいと考えています。
40
これまでに提案した解析手法の特徴は、定常
これからの夢
周期解の解析においては、求めた解の精度が、
解を表すフーリエ級数の次数のみにしか依存
実際の設計・開発現場で使える解析ツールを
しないこと、また、求めた解の安定判別におい
目指して開発を続けていきたいと思います。ま
ては、大規模系の解の安定性をよく反映する低
た、解析手法の開発に止まらず、機械力学・振
次元のモード座標空間で高精度な安定判別が
動工学をベースに産業界の様々な問題にチャ
可能なことです。これにより、系の規模および
レンジしたいと考えています。
非線形性の強さを問わず、高精度かつ高速な定
常周期振動の解析が可能であり、設計・解析に
おいてのパラメータスタディにかかる作業時
間の短縮化が可能です。
トピックス
○受賞歴
・平成 15 年 日本機械学会奨励賞
○公的支援策等活用状況(研究代表のみ)
・平成 15 年~平成 16 年 科研費
「自在凝固流体(FFF)の提案とその基本性能の実験調査および免震・防振技術への応用」
・平成 18 年~平成 19 年 科研費
「振動主成分分析を応用した大規模非線形系の定常周期解の安定判別に関する実験的研究」
・平成 19 年~平成 20 年 総務省
消防防災科学技術研究推進制度「効率的な消防戦術の開発」
佐々木先生の研究内容に関する問い合わせ先
北九州市立大学 事務局管理課
電話:093-695-3311
FAX:093-695-3368
URL:http://www.kitakyu-u.ac.jp/env/index.html
41
北九州市立大学 国際環境工学部
建築デザイン学科 高巣研究室
高巣
幸二
准教授
研究テーマ:フロス制御による石炭灰の
品質改善手法とそれを使用し
た低炭素コンクリートの開発
研究の概要
本研究は火力発電所などから発生する石炭
灰をフロス制御により品質改善を行って、コン
マイクロバブル発生器
クリート用混和材として大量に使用する技術
開発です。
石炭灰をコンクリート用混和材にするには
その中に含まれる未燃カーボン量の抑制が重
要になります。未燃カーボン量が多いと AE 減
水剤等の混和剤を吸着しコンクリートの練混
ぜが不能になります。コンクリート用混和材と
しての石炭灰は、JIS:フライアッシュⅡ種の
フロス制御による石炭灰の品質改善装置
使用実績が多くなっています。Ⅱ種の強熱減量
味があり、漠然とであるが将来はものを創りた
は 5%以下ですが、実際のコンクリートに使用
いと思っていました。大学で建築学科を選んだ
されている石炭灰の強熱減量は 2%以下です。
のは、人を包み込む形ある巨大な建造物を建築
本研究では、浮遊選鉱法により石炭灰をフロ
したいと思ったからです。しかしながら、大学
ス制御して未燃カーボンを除去し、強熱減量
2 年生の終わり頃に建築学科の学生がぶち当
2%以下の石炭灰に改善し、さらに凝集している
たる壁に当たってしまい、製図板の前で建築物
石炭灰を分散させてコンクリート用混和材と
を想像する作業は潰えました。その後、私の考
して使用できるようにします。実験室実験では
えていたもの創りの原点に立ち戻り、建築材
強熱減量 12.9%の石炭灰を 1.0%まで減尐する
料・施工の分野に目を向けました。そこで、松
ことが出来ました。
藤泰典先生(当時:九州大学教授)の研究室に
本研究の推進により産業廃棄物として処理
所属し、コンクリートやライフサイクルコスト
していた石炭灰が大量にコンクリートへ使用
の研究をはじめました。それから研究開発の魅
可能となり、低炭素社会の実現に大きく寄与す
力にとりつかれ現在に至っています。松藤教授
ることができます。
とは現在も北九州市立大学において、ここで紹
研究をはじめたきっかけ
介しているプロジェクトの共同研究を行って
います。
小学生の頃からプラモデルやラジコンを作
って遊んでおり、形あるものを作ることに興
42
これからの夢
応用分野・強み
コンクリート用混和材として使用できる石
フロス制御による石炭灰の品質改善手法は、
炭灰は JIS Ⅱ種以上の灰であり、火力発電所
実験室内ですが実機サイズを見据えた装置の
から排出される灰の中ではそれほど多くなく、
開発まで実現できました。今後は、この装置を
ほとんどの石炭灰はセメント原料、路盤材等と
実機プラントモデルまでブラッシュアップし
して処理されています。本研究で提案している
てビジネス展開を図っていきたいと思ってい
フロス制御による品質改善により、多くの石炭
ます。
灰がコンクリート用混和材に適用できるよう
また、産業廃棄物として処理されているもの
になります。
をコンクリートへ有効利用し、さらに高性能化
研究者らが開発した石炭灰をコンクリート
を実現できる建築材料を開発し、引き続き低炭
に外割大量混合する調合法を用いると高い強
素社会の実現に寄与していきたいと考えてい
度発現性状を示し、これにより高強度な低炭素
ます。
コンクリートの製造が可能となります。さらに
個人研究としては、経時変化を起こすコンク
石炭灰をコンクリートに混合することに伴っ
リートの力学特性を理論的に説明できる一般
てコンクリートの組織が緻密化することによ
解を求めていければと思っています。果てしな
ると思われますが、中性化の抑制、塩化物イオ
い旅になりそうですが・・・
ンの浸透抑制、アルカリ骨材反忚の抑制等の効
果が現れ、高耐久性コンクリートが実現します。
また、石炭灰を混合したコンクリートは長期
強度の発現に寄与するので、強度低下の原因と
なっていたエコセメントや再生骨材等のリサ
イクル材料をコンクリートに混合しても高品
質化を実現できます。
トピックス
○公的支援策等活用状況
・平成 19~20 年度 文部科学省研究費補助金若手研究(B)「再生骨材コンクリートの高品質化に
関する研究」課題番号 19760395(研究代表者)
・平成 20~22 年度 文部科学省研究費補助金基盤研究(C)「フロス制御によるフライアッシュの
品質管理とこれを使用したコンクリートの特性」課題番号 20560532(研究分担者)
○論文等
・高巣幸二:石炭灰スラリーを外割大量混合したコンクリートの構造体強度特性,日本建築学会
技術報告集,No.29,pp1-4,2009.2
・高巣幸二,松藤泰典:40℃気中環境下におけるフライアッシュ外割混合コンクリートの強度性
状,コンクリート工学年次論文集(CD-ROM),Vol.30,No.2,pp.379-384,2008.7
他多数
高巣先生の研究内容に関する問い合わせ先
北九州市立大学 事務局管理課
電話:093-695-3311
FAX:093-695-3368
URL:http://www.kitakyu-u.ac.jp/env/index.html
43
九州産業大学 工学部
バイオロボティクス学科
榊 泰輔 教授
研究テーマ:人の意図を予測して動くロボット
ました。2004 年から九州産業大学に赴任し引
き続き福祉ロボットを研究しています。企業で
はやれなかった安全性などの基礎技術を確立
したいと考えています。
人の動きを介助する際の大きな課題のひと
つが操縦性です。従来、操縦するタイプのロボ
ットは操作に手間がかかる欠点がありました。
これを解決するため、操縦者の生体情報から意
図を予測する機能の開発に着手しました。
まずは食べ物の選択意図と最も関係が深い
研究の概要
と思われ、計測も容易な視線を用いてシステム
を考案しました。視線計測装置の測定データを
視線情報などの生体信号をもとに、ユーザの
視線動作解析部で受け、確率的に最も選択の可
操作意図を事前に予測し、操作実行前にロボッ
能性が高い食べ物の位置を推定し、選択決定を
トを目的位置へ予め移動させます。操作意図を
指示する直前に、ロボットアームを推定位置付
先取りして準備することで、操作の手間を減ら
近へ動かす指令を出します。実機による基礎実
し使い勝手を向上できます。生体信号の例とし
験を終了し実用性を高める段階です。
て、視線停留時間の長さをもとに関心の高い操
応用分野・強み
作対象を推定する実験をロボットで実施中で
ユーザの意図の予測技術を発展させ、使い勝
す。
なお、本件は(財)北九州学術推進機構のプ
手がよく安全で快適な機械を開発していきた
ロジェクトである脊髄損傷者等の食事介助ロ
いと思っています。
ボット開発の研究成果の一部です。
(1)医療福祉分野:
食事支援など福祉分野の他、手術ロボット、
(特許出願中((株)ASAシステムズと共同)
手術中の照明・器具移動・支持・搬送・モニ
特願 2007-060379)
タリングなど医療支援技術への忚用も考え
られます。一刻を争う条件下で的確な判断を
研究をはじめたきっかけ
くだす必要があり、迅速・正確な操作が期待
できます。
(株)安川電機在職中に脳卒中用下肢リハビ
リロボットTEMや両下肢歩行訓練ロボット
(2)産業分野:
の開発リーダを歴任しました。何も手本がなく
プラントの操作インターフェースへの忚
苦労しましたが、医療福祉など新しい分野への
用が考えられます。オペレータの意図を事前
ロボットの可能生に目覚めるきっかけとなり
に予測し次のアクションを準備、重要な情報
44
提示を見逃していないかをチェックでき、ヒ
これからの夢
ューマン・エラーの防止に役立てることがで
きます。また、建設・運搬機械の運転操作で
脳卒中や脊髄損傷などの患者・障害者に対す
は、機械の状態を理解しながら迅速かつ正確
るリハビリや介護を支援するロボットの開発
な判断と操作が期待できます。
に携わってきた経験から、これからは人とロボ
(3)その他の非産業分野:
ットとを結びつける技術が大事だと痛感して
ゲームなどのアミューズメント分野での
います。また、企業人の経験から実社会でのも
初心者向けインストラクション、各種スポー
のづくりの楽しさ・難しさも理解しているつも
ツにおける初心者からプロ向けトレーニン
りです。企業と協力し社会に役立つ技術を生み
グへの忚用が考えられます。対象者の意図と
出していきたいと思います。
運動結果との関係を事前に予測し比較する
ことで、トレーニング効果向上が期待できま
す。トレーナへの負担軽減も可能です。
トピックス
○表彰・受賞歴等
・平成 3 年 7 月 IEEE/IAS Annual Meeting Paper Award (Second Prize)を受賞
・平成 14 年 10 月 第 50 回電気科学技術奨励賞(オーム技術賞)を受賞
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
・(財)北九州学術推進機構(新産業創出プロジェクト,平成17~18年度)
・科研費(C,平成18~20年度)
・JST(シーズ発掘試験、平成19年度)
3.その他(論文数等特記事項)
登録特許23件、出願40件、意匠2件、商標2件
学術論文31件、国内学会発表82件、国際学会発表13件
榊先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州産業大学 産学連携支援室
電話:092-673-5501
FAX:092-673-5490
45
九州産業大学 工学部
バイオロボティクス学科
鶴田 和寛 教授
研究テーマ:メカトロニクス機器の
動作特性改善
0.6
研究の概要
1800
目標指令
速度応答
1500
などのテーブル移動システムにお
いて、テーブル上の負荷変動、摩擦
変化、テーブル位置等に起因した制
0.4
トルク指令
0.3
900
重りなし
600
0.1
300
0
め忚答や軌跡追従忚答が务化する
-0.1
0
-300
場合があります。特にナノメートル
time[50ms/div]
レベルの位置制御忚答を目指す場
0.6
0.4
トルク指令
0.3
600
0.1
300
利用されている PID 制御則にスライ
-0.1
0
-300
time[50ms/div]
ディングモード制御則の非線形補
これまでに、ボールねじ駆動によ
るフルクローズド位置決め実験シ
重りあり
0.2
0
ロバストな制御則を開発しました。
1200
900
重りなし
しています。具体的には、一般的に
償機能を組み合わせた負荷変動に
1500
位置誤差
velocity[m/s]
な補償機能を備えた制御則を開発
速度応答
0.5
できなくなります。
び軌跡追従忚答が务化しないよう
1800
目標指令
合、これらの特性変化の影響は無視
化した場合でも、位置決め忚答およ
重りあり
0.2
御対象の特性変化によって位置決
本研究では、制御対象の特性が変
1200
error[um],torque[%]
半導体製造・検査装置や工作機械
velocity[m/s]
位置誤差
error[um],torque[%]
0.5
1 軸スライドシステムを用いた位置決め実験結果:上段が一般的な PID 制御
則を用いた場合、下段が提案した制御則を用いた場合の応答例。両実験と
も、2 回目の目標指令が入力される直前にスライドテーブル上の重りを5kg
増やしている。上段の PID 制御では、重りが増えるとオーバーシュートを生じ
るが、下段の提案方法では安定した位置決め動作を実現している。
ステムにおいて、テーブル負荷重量
研究をはじめたきっかけ
が変化した場合でも位置決め忚答が务化しな
いことを確認(上記実験結果参照)
。また、非
大手電機メーカのエンジニアとして半導体
電磁アクチュエータ(超音波モータ)を利用
検査装置や工作機械の製造メーカにサーボ調
したナノメートル実験システムにおいて、リ
ニアスケール最小分解能のステップ動作実験
整のために出張した際、テーブル位置(モータ
を実施し、1ステップの軌跡追従忚答が実現
とテーブル間のボールねじ長さが変化)や XY
可能なことを確認しました。
テーブル負荷変化(X 軸上の Y 軸が移動)など
46
の影響で、位置決め停止時にオーバーシュート
これからの夢
や振動を生じることが多々ありました。リアル
タイムでサーボ調整を行うチューニング方法
目標指令の加速度、最高速度、移動距離およ
の研究を進めたのですが、満足のいく結果が得
びメカの負荷変動、摩擦特性などが変化した場
られず、非線形制御則(適忚制御やスライディ
合でも、最高の制御忚答特性が自動的に
ングモード制御)の研究を始めました。
得られる制御則を開発したいと思っています。
しかし、産業忚用の場面では、PID 制御則が
つまり、電源を入れればそのメカが出せる最高
主流で、PID 制御をベースとした制御則でなけ
性能を引き出すことができるような制御則お
れば現場技術者に受け入れられない場合が数
よびそのオートチューニング技術の開発です。
多くありました。そこで、PID 制御の機能はそ
また、1つの軸を複数のアクチュエータで駆
のまま残し(制御パラメータも同じ)、非線形
動するメカなどの同期制御技術にも取り組み
補償機能を加えた形で、しかも安定性を確保
たいと思います。さらに、それらの技術を用い
(リアプノフの安定論により)した制御則の開
て、ナノテクロジーに忚用可能なテーブル移動
発に取り組みました。
システムの開発および宇宙空間でも自律的に
その結果、PID 制御則がそのまま利用できて、
しかも制御対象の特性変化にロバストな制御
制御仕様を実現するサーボ技術の開発をした
いと考えています。
則が開発できました。
応用分野・強み
半導体製造・検査装置、工作機械、産業用ロ
ボットのみならず、サーボモータが利用される
あらゆるメカに忚用可能です。
例えば、医療機器である MRI で患部をスキャ
ンする際、体重が重い患者と軽い患者によって
移動機構の動作時間にばらつきを生じるため、
スキャンしたい場所にすばやく位置決めでき
ず、検査に時間がかかってしまう場合がありま
す。本方法を利用すれば、患者による動作時間
トピックス
○表彰・受賞歴等
・平成 20 年度九州地方発明表彰(福岡支部
長賞)「電動機制御装置」受賞
・平成 19 年度九州地方発明表彰(発明奨励
賞)「オンラインイナーシャ同定装置」受賞
・平成 16 年度九州地方発明表彰(発明奨励
賞)「モータ速度制御装置」受賞
・平成 15 年度電気科学技術奨励賞(オーム
技術賞)「オートチューニング技術の開発」
受賞
○公的支援策等活用状況
・科学研究費補助金(基盤研究 C)・平成 19
年度~平成 21 年度
○その他:
・直近 5 年間の査読付論文数 27 件
・直近 5 年間の特許登録件数 23 件
のばらつきが抑えられるため、検査時間を短縮
でき、患者に与えるストレスを軽減できるとい
鶴田先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州産業大学 産学連携支援室
電話:092-673-5501
FAX:092-673-5490
URL:http://www.ip.kyusan-u.ac.jp/J/
kougaku/tb/tsuruta/
う効果が期待できます。
また、本方法は非線形補償機能の効き具合を
1つのパラメータで調整可能なため、PID 制御
則を使い慣れた技術者にも受け入れられ易い
という特長があります。
47
九州産業大学 工学部
物質生命化学科
迎 勝也 教授
研究テーマ:キノコ及びキノコ廃菌床
の有効利用方法の開発
させることにより発酵段階
で悪臭を発生しない堆肥物
を製造することができます。
(3)植物発芽抑制剤及びそ
の使用方法:
ロクショウグサレキン
又はその類似菌体が産生
し、これらの菌類が寄生し
た木材から加圧熱水処理
方法により抽出できる色
素は、植物発芽抑制作用を
有しており、植物発
研究の概要
芽防止剤や植物成長抑制剤としての可能性を
持っています。
(1)キノコエキス成分の抽出分離方法:
タバコウロコタケ科(特にカバノアナタ
研究をはじめたきっかけ
ケ)キノコの加圧熱水抽出方法による可溶化
とその利用を目的としています。従来の方法
実家が農家であり、子供の頃から体が弱かっ
に比べ格段に抽出率が高く、より多くの可溶
た所為もあり、新鮮な農産物や海産物の素晴ら
性β-グルカンや高い抗酸化性を有するエ
しい味覚やそこに含まれる滋養成分には大変
キス粉末を得る事ができます。
興味を持っていました。きのこはその興味ある
農産物のひとつです。
(2)キノコ栽培廃菌床の加圧熱水処理方法お
学生時代から人の健康に貢献する職業に就
よびこれを利用した堆肥物の製造方法なら
きたいと思い、大学卒業後は医薬品会社で研究
びにこの製造方法による堆肥物:
者として働き、その後九州産業大学工学部物質
キノコ栽培は現在大規模施設で生産を行
生命化学科に勤務しています。九州産業大学で、
う菌床栽培が主流ですが、生産されるキノコ
きのこの加圧熱水処理による可溶化と、その抽
収穫後に大量の木材成分からなるおが粉と
出物の生理活性作用について研究を始めまし
菌床内に存在する菌体成分を含む廃菌床が
た。
産業廃棄物として処理されています。この廃
応用分野・強み
菌床に加圧熱水処理を施すことにより、廃菌
床中に含まれ、食品原料となる菌体成分であ
るβ-グルカンやキチン等を取り出すこと
加圧熱水法により効率的にきのこの可溶化
ができ、その加圧熱水処理後の廃菌床を発酵
が可能です。抽出条件を制御することで、き
48
のこが産生する色素も得ることができます。ま
の開拓に工学の視点を取り込み、地域社会と連
た得られたきのこエキスの粉末や、エキス中の
携し、地域おこしの為の商品開発に貢献したい
高分子成分を選択的に取り出すことも可能で
と考えています。これまで加圧熱水抽出法とい
す。また抽出残渣の木材成分も臭いのしない堆
う溶解手法を用い、主に研究対象としてキノコ
肥へ利用できます。食品産業、農業への展開が
を選び研究を行ってきましたが、今後は他の溶
可能です。
解方法についても研究し、研究対象の農産物や
海産物の種類も広げ、社会ニーズに適合した研
これからの夢
究や新しい研究手法の提案をしていきたいと
思います。
九州は農産物や海産物の宝庫です。九州にあ
る未利用の農産物や海産物の新しい利用方法
トピックス
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
・NEDO委託「アオサを原料としたメタン発酵等生物化学的変換技術による燃焼システム実証試験事
業調査」・平成 15 年度
・福岡市委託「アオサ有効利用に関する調査業務」・平成 16 年度
・(財)福岡県産業・科学振興財団「キノコ産生成分の藻類成長抑制作用を利用した海苔養殖の為の
薬剤並びにその使用方法の開発」・平成 16 年度
・キノコ色素の藻類成長抑制作用を利用した新規防藻製品の開発・平成 16-17 年度
○論文数等特記事項
・特開 2006-271325号公報 キノコエキス成分の抽出分離方法 出願人:(学)中村産業学園、
(独)産業技術総合研究所
・特開 2006-176765 号公報 キノコ栽培廃菌床の加圧熱水処理方法およびこれを利用した堆肥物の
製造方法による堆肥物 出願人:(国)長岡技術科学大学、(学)中村産業学園
・特開 2005-281187 号公報 植物発芽抑制剤及びその使用方法 出願人:(独)産業技術総合研究
所、宮内信之助、福岡県、(学)中村産業学園
迎先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州産業大学 産学連携支援室
電話:092-673-5501
FAX:092-673-5490
49
福岡大学
工学部 化学システム工学科
基礎化学工学研究室
三島
健司
准教授
研究テーマ:微粒子を用いた医薬・化粧
品・食品・素材の開発
応用分野・強み
応用分野は、生体に優しい物質を利用している
ので、医薬品・化粧品・食品・工業材料などの分野
です。強みは、実際に事業化した例が多く、多くの
特許を保有しており、国際的な技術競争に対して有
利であることです。
これからの夢
実用化された装置
我々の開発した技術で作られた物が、世界中で
利用され、人々の暮らしを豊かにしていくことです。
研究の概要
水や二酸化炭素といった身の周りの安全・安心な
物質を圧力や温度操作することで、従来にはない便
利な媒体として利用でき、この画期的な機能を持っ
た微粒子などを作り出す研究をしています。
この研究では、安全・安心な物質を使っているの
で、実用化が容易で、化粧品・食品・工業材料など
の分野で、既にいくつもの事業化がおこなわれてい
ます。
研究をはじめたきっかけ
環境に貢献できて、未来の世界で実際に利用さ
トピックス
○受賞
平成 2 年 素材物性学会第2回山崎賞・論文賞
受賞
「高分子ゲル内外のアルコール水溶液濃度」
○公的支援策等活用状況
・(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 平
成 11 年度ベンチャー企業支援型地域コンソー
シアム研究開発事業
・(独)科学技術振興機構 平成 13~16 年度研究
成果活用プラザにおける実用化のための育成
研究
・(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 平
成 13・14 年度産学連携実用化開発補助事業
・(独)科学技術振興機構 平成 19 年度シーズ発
掘試験
・文部科学省 平成 19 年度都市エリア産学官連
携促進事業(発展型)可能性試験
・(財)九州産業技術センター 平成 19 年度試験
研究
・(財)福岡県環境保全公社 平成 19 年度福岡県
リサイクル総合研究センター研究会
れる技術について考えていた時に、水や二酸化炭
素といった安全・安心な物質が、状態によって特殊
な性質を発揮することを実験で経験したことがきっか
けで、この研究を思いつきました。
50
三島先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡大学 産学官連携センター
電話:092-871-6631(内線2831~2833)
FAX:092-866-2308
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp/
環境
エネルギー
九州工業大学
宇宙環境技術研究センター
豊田 和弘 准教授
研究テーマ:宇宙機の帯電放電に関する研究
研究の概要
帯電放電試験装置
宇宙空間に浮かんでいる宇宙機は
電気的にも浮いており、宇宙環境中の
荷電粒子などにより容易に帯電し放電
太陽電池クーポン
します。また、宇宙機表面上の絶縁体
も同様に帯電し、局所的な電位差が閾
値を越えることで放電が発生します。こ
の放電は太陽電池セルの電力低下や
電磁放尃ノイズなどを引き
起こし、ひどい場合は宇宙機を運用不可能にすること
もあります。このような放電事故が軌道上で発生するこ
トピックス
○共同研究・受託研究等取組状況
・帯電放電試験を行った人工衛星:「きく8号」、
「きずな」、「ひまわり7号」、「いぶき」、
「GCOM」、「ASTRO-G」、「みどり2号」(事故
原因究明)
・フランス国立宇宙研究センター(CNES)、フラ
ンス国立航空宇宙研究所(ONERA)との共同
研究(平成 19 年度〜)
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
科学技術振興機構「シーズ発掘試験」・平成 18
年度
NEDO 技術開発機構 産業技術研究助成事業
(若手研究グラント)・平成 20 年度〜
○その他(論文数等特記事項)
査読付学術論文 26 件
特許出願4件
宇宙航空研究開発機構、衛星設計基準推進
ワーキンググループ委員
宇宙航空研究開発機構 客員
とが無いように、打ち上げ前の宇宙機に帯電放電試験
を実施しています。また国際標準を目指した帯電放電
試験方法の研究も行っています。
研究をはじめたきっかけ
宇宙に興味があり航空宇宙工学を専攻し、電機推進
やレーザー推進の研究を行いました。あるとき学会で宇
宙機が帯電し放電することを知り、それまで行ってきた
放電やプラズマなどの実験の経験を生かし、宇宙機の
帯電放電を研究するようになりました。
応用分野・強み
宇宙空間に漂うあらゆる物体について帯電放電の危
険性を研究するのはもちろん、地上実験装置内でのプ
ラズマや電子ビームによる帯電放電について応用可能
です。また、宇宙用太陽電池と同様、地上太陽電池へ
のサージ電流注入試験や半導体への放電による電流
注入試験などへも応用可能です。
これからの夢
現在は事故を防ぐ研究をしている傍ら、宇宙プラズ
マとデブリの干渉を利用したデブリ除去システムのよう
な研究も始めました。厳しい宇宙環境に耐える技術開
豊田先生の研究内容に関する問い合わせ先
宇宙環境技術研究センター
電話・FAX:093-884-3596
E-mail:[email protected]
http://laseine.ele.kyutech.ac.jp
http://laplace.ele.kyutech.ac.jp
九州工業大学 産学連携推進センター
電話:093-884-3485
発の研究はもちろんのこと、その宇宙環境を逆に活か
す研究をどんどんしていきたいと思います。
53
九州工業大学
大学院
工学研究院電気電子工学研究系
電気エネルギー部門
大塚
信也
大塚研究室
准教授
研究テーマ:「電気エネルギー機器の
研究の概要
環境調和と高度化・新機能創出」
「電気エネルギー機器の環境調和と
高度化・新機能創出」を研究室のテーマ
として、電力・電気エネルギーに関する
基盤技術から次世代の電力システム・機
器に関する先端技術に関する研究を行
っています。技術的なキーワードは、高
電圧・電気絶縁・放電現象、微弱高速放
電信号(電流・発光・電磁波)の電気光学
計測と解析、絶縁診断、電界解析、可視
化、ナノテク、および高電界応用です。
現在は、主に絶縁破壊の前駆現象であ
る部分放電 PD の時間・空間分解分光システム
を用いた放電形態や絶縁破壊メカニズムの検討
や PD に起因する放尃電磁波や弾性波、電流、
光信号検出による電力機器の異常診断技術の
開発、電磁波発生源の可視化装置の開発、電
界解析による電力機器のコンパクト化、SF6 代替
ガスに関する新しい絶縁方式に関する検討、誘
電泳動力を用いた自己回復性ヒューズ SRF の
にあると感じ、また巨大で複雑で様々な技術要素の
集合である電力システムに興味を持ち、高電圧・電
気絶縁を専門とする研究室に入ったのが現在の研
究を始める出発点です。派手ではないが高電圧・
電気絶縁技術の重要さとやりがい、非線形現象で
あり確率事象でもあるおもしろさなどから、これまで
継続してこの分野の研究を行っています。
応用分野・強み
開発やナノオプトニクス応用の検討など、基礎
研究からチャレンジングなテーマまで幅広く行っ
ています。
研究をはじめたきっかけ
もともと植物や天体、自然科学に興味があり、物
事の本質や成り立ち、どうしてそうなるのかを知るこ
とに楽しみを感じていました。大学で、地球環境と
エネルギー、社会活動(経済)というトリレンマを如
何に解決するかという工学的解が電気エネルギー
電気絶縁は、電力・エネルギー分野の様々な高
電圧機器が対象となりますが、それだけに限らず、
半導体や微小電気機械システム(MEMS)のように
使用電圧は低くても微細構造で高電界部が出現す
る電気・電子デバイスも対象となります。また、光や
電磁波の先端計測・解析技術や絶縁診断技術は、
カーエレクトロニクスの EMC 問題や、セキュリティ分
野にも応用展開が可能です。電気絶縁・放電現象
54
に関するコア技術と基礎と応用の両面の研究、研
ネルギーの電気絶縁異常や予寿命推定を非破壊・
究テーマの 多 様 性 に よ る 経 験 ・ 発 想 力 、および
非接触で診断・評価できる装置の開発など、新しい
CIGRE や学会活動を通しての国内・海外ネットワー
技術チャレンジと共に現在の研究成果や知見を展
クは本研究室の強みです。
開・発展させ、電気工学的アプローチによる安心で
これからの夢
地球環境に優しい新しい絶縁方式の提案やナノ
テクノロジーを電力分野に導入することによる電気
安全な社会実現に貢献したい。また、現在持ってい
るアイデアの芽を開花させ、オリジナリティのある、
世の中にポジティブインパクトを与える仕事をしたい
と思っています。
エネルギー機器の高機能化・新機能創出、電気エ
トピックス
○表彰・受賞歴等
電気学会 支部長賞(平成 3 年)、電子情報通信学会 支部長賞(平成 14 年)、
13th International Symposium on High Voltage Engineering (ISH) Best Paper Award 受賞(平成 15
年)
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
NEDO 若手グラント「直流システム保護用自己回復性マイクロヒューズの開発」(平成 17~19 年)
NEDO 国際共同研究先導調査事業「新しい放電電荷量評価・校正手法のための調査研究」(平成
19 年)
科学研究費若手 A「ナノ粒子混入による環境負荷の小さなガス絶縁媒体の高耐力化と新機能創
出」
(平成 18~20 年)
○その他(論文数等特記事項)
H19 年度 査読論文 5 件、国際学会発表 6 件、国内発表 32 件
H20 年度 査読論文 1 件、国際学会発表 13 件、国内発表 45 件
著書:「九工大世界トップ技術 Vol.2 (電界って何だろう?~この理解と応用が、さまざまな分野で
の安全安心に貢献~)」H20.4 出版
解説:日本工業出版社「検査技術 9 月号(部分放電検出による電力機器の絶縁診断技術)」H20.9
月号
イノベーションジャパン 2007、2008 の新技術説明会にて発表
第 12 回機械要素技術展(M-tech)出展
特許:国内 16 件出願(うち 1 件登録済)、海外 3 件出願
大塚先生の研究内容に関する問い合わせ先
研究室 http://epower.ele.kyutech.ac.jp/
大塚ネットワークオフィス http://epower.ele.kyutech.ac.jp/comm01/
九州工業大学 産学連携推進センター
電話:093-884-3485
55
九州工業大学大学院
生命体工学研究科生物物質循環研究室
脇坂
港
准教授
研究テーマ:持続可能なバイオマス資源利活
用技術の開発
研究の概要
持続可能なバイオマス資源利活用技術の開発
持続可能なバイオマスの利活
用に関する研究課題に取り組ん
でいます。北九州エコタウン内
空
の九州工業大学エコタウン実証
温暖化ガス
削減
研究センターを拠点として、食
品廃棄物や海洋バイオマスの資
源化(バイオプラスチックやバイ
オマス資源の豊富なマレーシア
における、パームオイル産業の
ゼロエミッションに向けた国際産
海
パームオイル廃液処
理バイオガスプラント
オエタノールの製造)に関する
研究を行っています。また、バイ
バイオ燃料の製造
マレーシアパームオイル産業におけ
るバイオマスとバイオガス活用実証
研究
水
土
里
九州工業大学エコタウン
実証研究センター
食品ゴミ
海藻
有機酸
セルロース
油ヤシ空房
ポリブチル
コハク酸
(PBS)
ポリ乳酸
(PLA)
バイオマスプラスチックの製造
学共同研究に参加しています。
これからの夢
研究をはじめたきっかけ
九州工業大学・白井義人教授の研究室で、「廃
韓国、タイ、中国、マレーシアからの留学生が在
棄物を有用物に転換」する発想、それを具現化す
籍する国際色豊かな研究室です。環境モデル都市
る研究開発に従事し(「氷蓄熱と廃液処理をカップリ
である北九州市の北九州学術研究都市のキャンパ
ングさせた凍結廃水処理装置の開発」により学位取
スや北九州エコタウンで学んだことを母国で活かせ
得)、実学の面白さを体感しました。その後、イタリ
るエンジニアを輩出し、アジアの低炭素社会への貢
ア・トリノ工科大学のシステムデザイン学科に短期
献を目指しています。
留学した際には、「ゼロエミッション」の提唱者である
グンター・パウリ氏の薫陶を受けました。
応用分野・強み
「システム思考」は、廃棄物処理や未利用バイオマ
スの利活用に向けた新たな解決策を導く有用なツ
ールとなります。「持続可能なバイオマスの利活用」
トピックス
○九州工業大学エコタウン実証研究センターHP
http://www.lsse.kyutech.ac.jp/~ecotown/
○マレーシアでの国際産学共同研究 HP
http://www.lsse.kyutech.ac.jp/~malaysia/
http://www.lsse.kyutech.ac.jp/~asiacore/
○九工大世界トップ技術 Vol. 2 で紹介
「生ゴミで走る世界の自動車!?」
とは、第一次産業の産物であるバイオマスの利活
用に工学的技術を活用し、さらに地域活性化に繋
げること、すなわち農工商連携による6次産業創出
を目指すものです。
脇坂先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州工業大学 産学連携推進センター
電話:093-884-3485
56
熊本大学大学院 自然科学研究科
環境分析化学研究室
戸田 敬 教授
研究テーマ:微量環境化学物質の現場分析を
目指して
1500
1473
1445
1418
1391
1364
1336
Wind
F
H2S 200 ppb
SO2 500 ppb
1309
N
1282
観光客の胸につけていれば、状況に合わせてもっと自
1255
由にかつ安全に火口への立ち入りができると思い、ま
1227
ず SO2を測定するμTAS1200
に取り組みました。よりよい特
1173
性や実用性をもとめて、逆に尐しずつ大きくなっていき
1145
1118
ましたが、マイクロ化による特性の飛躍的向上を達成し、
1091
現在のものとなりました。これをガスを測定するマイクロ
1064
1036
システムとしてμGAS と名付けました。
1009
E
P
981.8
応用分野・強み
S
10
00
m
954.5
927.3
m
00
10
研究の概要
大気や水の微量化学物質をモニタリングする手法や
装置の開発を行っています。より低濃度をより速く測定
することで、微量物質の常時モニタリングが可能となりま
す。
また、独自の装置を使い、他のグループでは真似の
できない環境解析を推進しています。阿蘇山で火山ガ
スのモバイル分析を行ったり、ロシアバイカル湖での大
気計測を行ったりして自然環境の解析をすすめている
ところです。また、ガス分析のノウハウに水中溶存物質
の気化を組み合わせると様々な溶存物質の選択的か
つ連続的な分析が極めて高感度で可能になります。実
際にヒ素や硫黄、有機化合物などの分析に応用してい
ます。また、医療診断を目指した呼気成分測定手法の
開発にも乗り出し、呼気中アンモニアや NO の分析装
置の開発も行っています。
研究をはじめたきっかけ
20 年ほど前からマイクロマシーニングやマイクロチッ
プの物理・化学センサに携わらせてもらいましたが、熊
大へ赴任するころ阿蘇山火口で火山ガスによる事故
が続きました。このとき、マイクロチップによる分析計を
900.0
私個人としては、環境中における物質循環に関わる
新たな知見を探るのに、独自の装置を用いて取り組ん
Altitude (m)
でいます。従って、チャンピオンデータが取れただけの
開発という、研究にありがちなものではなく、じっくり育て
て実用可能なものにしています。尐なくとも当ラボでは
実用中です。最近は海外からの問い合わせや依頼も
多く、シベリアのバイカル湖へも呼ばれて大気環境の
測定を行っています。
測定対象の中でも悪臭に関わる物質の連続測定で
は実社会に役立つのではないかと思います。悪臭の規
制が全国的に強化されつつあり、個々の事業所でも監
視が必要になってきます。また、呼気をはじめ人体のガ
スを測定することによって医療診断などの応用も考えら
れます。
これからの夢
大学の研究者としては論文を書くことが求められます
が、開拓してきたことが実際に世の中で役に立つことが
最大の喜びでしょう。我々の技術をどこかで使ってもら
えるような、そんな仕事につなげていきたいと思います。
また、汚染の問題は最近発展途上国で顕在化している
ものが多いですが、世界の様々な地域で役立てれば
研究者冥利につきます。
戸田先生の研究内容に関する問い合わせ先
熊本大学 イノベーション推進機構
電話:096-342-3145
FAX:096-342-3239
E-mail:[email protected]
URL:http://kico.kumamoto-u.ac.jp/
トピックス
○ ア メ リ カ 化 学 会 「 Analytical Chemistry 」 の
NEWS や表紙への掲載など多数
○「化学と工業」、「ぶんせき」でトピックスとし
て紹介
57
熊本大学
バイオエレクトリクス研究センター
環境バイオエレクトリクス分野
浪平
隆男
准教授
研究テーマ:ナノ秒パルスプラズマによる
省エネルギープロセスの開発
数十mJ
研究をはじめたきっかけ
漠然と「将来は地球のためになるこ
100kV
とがやりたいな!」と思っていた熊本
大学工学部電気情報工学科での学
生時代。卒業研究テーマとして 電気
数ns
エネルギーを地球環境の浄化へ利用
する「パルスパワーを用いた排ガス処
ナノ秒パルスプラズマ
ナノ秒パルスプラズマ
理」に出会いました。その後「電気エ
ナノ秒
パルス電源
ネルギーを積極的に制御して出力す
る」、「長時間の小さな電力をごく短時
間の超巨大電力へ変換
研究の概要
“ナノ秒オーダー”という極めて短い時間かつ
“数十ミリジュール”という極めて小さいエネルギー
で形成されるものの、非常に活性の高いユニーク
する」パルスパワー技術の魅力へ取りつかれ、そ
の環境浄化技術への応用及びその実用化を目
標としたエネルギー利用効率の向上(省エネルギ
ー化)を目指すこととなりました。
な気相化学反応場「ナノ秒パルスプラズマ」(特許
応用分野・強み
出願済み、出願番号:特願 2008-335365 発明の
名称:パルス放電発生方法及び装置)。「ナノ秒
パルスプラズマ」は、近年、オゾンの生成や有害
ガスの分解、燃料の改質など多くの新規プロセス
を確立しつつある非熱平衡プラズマ * (誘電体
バリア放電や沿面放電、コロナ放電などによる形
成でも知られる)の一種であるが達成困難とされ
「ナノ秒パルスプラズマ」は、現在、拡がりを見
せつつある非熱平衡プラズマの応用展開先すべ
てへの適用が可能で、その応用展開先において
エネルギーの高効率利用すなわち省エネルギー
化が達成できます。
(応用展開先の例)
ている“形成時の熱損失の低減”を極限まで実現
オゾンの生成や火力発電所排気ガスの浄化
したものであり、そのプロセスの大幅な省エネルギ
自動車排気ガスの浄化、工場排気ガスの浄化、
ー化をもたらすことができます。
トンネル空気の浄化、上下水道の浄化 工業
排水の浄化、畜産排水の浄化、燃料の改質
*:非熱平衡プラズマ:電離した気体であり、分子・イオン・電
子の持つエネルギー間に平衡が成り立っておらず、電子の
エネルギーのみが飛びぬけて高い状態である。この高いエ
ネルギーを持つ電子が化学活性の高いラジカル生成へ寄
与する
など
58
これからの夢
用いており、今後はメンテナンスフリーのナノ秒パ
ルス電源開発を目指します。この実現により「ナノ
「ナノ秒パルスプラズマ」プロセスの実用化には、
秒パルスプラズマ」の爆発的な実用化を後押しし
パルス電源(ナノ秒パルスプラズマ源)のメンテナ
ます。また、今後は、パルスだけではなく 直流・
ンスフリーでの24時間365日運転が必要となりま
交流へも注目し、各種形態の電気エネルギーを
す。現在、「ナノ秒パルスプラズマ」の形成には特
地球環境保全へ利用する技術を開発していきた
殊なパルス電源(応用先にもよりますが 現状、半
いと考えています。
年に一度程度のメンテナンスが必要)を
トピックス
○表彰・受賞歴等
・平成 21 年 5 月“平成 21 年度研究活動表彰”国立大学法人熊本大学
・平成 20 年 5 月“平成 20 年度研究活動表彰”国立大学法人熊本大学
・平成 20 年 3 月“平成 19 年度研究活動表彰”国立大学法人熊本大学
・平成 18 年 11 月“上級会員”社団法人 電気学会
・平成 18 年 9 月“Outstanding Young Researcher Award”, 1st Euro-Asian Pulsed Power
Conference
・平成 17 年 11 月“Senior Member”, The Institute of Electrical and Electronics Engineers
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
・文部科学省 科学研究費補助金 基礎研究 A、若手研究者 A、萌芽研究、若手研究 B(代表)4件
・科学技術振興機構 重点地域研究開発推進プログラム(育成研究)(代表)1件
・科学技術振興機構 シーズ発掘試験(代表)1件
・環境省 廃棄物処理等科学研究費補助金(代表)1件
・新エネルギー・産業技術総合開発機構 産業技術研究助成(代表)1件
○その他(論文数等特記事項):掲載論文80編、国際会議発表122件、特許11件
浪平先生の研究内容に関する問い合わせ先
熊本大学 イノベーション推進機構
電話:096-342-3145
FAX:096-342-3239
E-mail:[email protected]
URL:http://kico.kumamoto-u.ac.jp/
59
鹿児島大学大学院 理工学研究科
環境システム工学講座
安達 貴浩 准教授
研究テーマ:有害赤潮予報システムの
開発を目指して
応用分野・強み
研究の概要
研究の概要
皆さんがよくご存知の天気予報と同じように、沿岸海
域での赤潮発生を予報するシステムの開発を目指して
います(上図参照)。赤潮発生は海域で生じる現象の
中でも予測することが最も難しい現象の一つとされてい
ますが、赤潮予報システムが完成すれば、漁業被害が
軽減され、安定した漁業が確立されるため、漁村やそ
の周辺都市の地域活性化につながると考えています。
また、水産業の活性化は、食料自給率の低下を防ぐこ
とになるので、食の安全性が疑問視されている外国産
食料品への依存度も自ずと減尐することが期待されま
す。さらに、赤潮予報システムが完成するということは、
赤潮の発生メカニズムが明らかになるということなので、
本研究開発の成果は、今後、赤潮を防除するための技
術の開発や、国土利用方法の提案に繋がると考えてい
ます。
研究をはじめたきっかけ
これまで、沿岸海域の水環境を改善するために、流
れを力学的にコントロールする技術の開発を行ってい
ました。しかしながら、有明海の水環境異変に代表され
るように、生態系の歪みの原因が不明である場合には、
仮に優れた技術があったとしても、どの技術を適用す
べきか選択できません。有明海の研究に一時携
わっていた際にこのような限界に直面したこともあり、
現在は、種々の技術を有効に適用するための伏線と
して、赤潮予報システムの開発を行っています。現在、
鹿児島大学に在籍しているため、今のところ、鹿児島湾
で発生する有害赤潮 Chattonella marina を対象にシス
テムの開発を行っています。
例えば、鹿児島湾の養殖業者の場合、有害赤潮が発
生すると、養殖生簀を移動させるという対策が講じられ
ています。このような対策によって、以前に比べて漁業
被害額は大幅に減尐していますが、生簀移動に必要
な燃料費や養殖魚を移動させることによる二次的な被
害は、漁業経営にとって大きな負担となっています。本
赤潮予報システムが完成すると、有害赤潮の継続期間
が予測され、不必要な生簀の移動を行わなくて済むた
め、養殖業者の経済的負担が軽減されることが期待で
きます。
また、有害赤潮の発生という海域で生じる現象を、「陸
域」‐「河川」‐「沿岸海域」のつながりを考慮してモデル
化することが本予報システムの特徴の一つとなっていま
す。「陸域」の影響も考慮しているため、有害赤潮の発
生抑制をも視点に入れた国土利用のあり方や都市計
画を策定することが可能となります。
これからの夢
水環境問題解決のために、環境ビジネスが発展する
ことは好ましいと考えています。ただし、その実効性を
高めるためには、「学」による腰の据わった研究の実施
が不可欠であり、そのような立場から、環境ビジネスに
貢献していきたいと思っています。
トピックス
1.表彰・受賞歴等
平成10年度 土木学会技術開発賞、「河川河口部
における塩水遡上の人工的制御法の開発」
2.公的支援策等活用状況(事業名・年度)
平成 12 年~平成 14 年度、産業技術研究事業、新
エネルギー・産業技術総合開発機構、波浪エネル
ギーを逆利用した底質輸送システムの開発」~沿
岸環境の創造と国土保全のために~、研究代表者
3.その他
特許、名称「底質移動制御方法」、特願 2000-
198108、発明者
安達先生の研究内容に関する問い合わせ先
鹿児島大学 産学官連携推進機構
電話:099-285-8491
FAX:099-285-8495
60
ナノテク
材料
長崎大学大学院
生産科学研究科機能材料化学研究室
兵頭
健生
助教
研究テーマ:メソ・マクロ空間の組織制御
による電気化学デバイスの高性能化
研究の概要
化学センサ(ガスセンサ、バイオセンサ)や 2 次電池
などの電気化学デバイスの性能を劇的に高めるために
は、実際に反応物が反応する空間を最適化することが
必要です。そのためには、反応サイトの高活性化はもち
ろんのこと、反応物や生成物を速やかに物質移動させ
るためのナノ~マイクロオーダーの空間制御が必要不
可欠と考えられます。これらを具現化するために、界面
活性剤の自己集合体やポリマー球状微粒子をテンプレ
ートとして利用することで、空間制御されたメソポーラス
材料(細孔径 D:2-50 nm)やマクロポーラス材料(D:
>50 nm)を創製するともに、それらを組み合わせて「高
速物質移動」および「高活性サイト」が両立した理想的
な材料やデバイスに対しても、我々の蓄積してきた技
なメソ・マクロ空間アセンブリをデザインすることにより、
術が生かせるものと確信しています。
電気化学デバイスの高性能化を目指しています。
これからの夢
多くの電気化学デバイスは、それらの性能が大幅に
研究をはじめたきっかけ
改善されることにより、人間社会が永続的に繁栄するキ
大学に入る前に地球環境問題やエネルギー問題が
大きくクローズアップされている時期がありました。その
問題を解決していくために、自分が何か役に立つこと
ができないかと考えていたことが、化学系の学科への入
学、そして電気化学分野の研究室への配属の大きな理
由です。その後、工業電解や空気電池・燃料電池に応
用できるガス拡散型酸素電極(触媒:酸化物)を学生時
代に6年間研究したことが、化学センサや電池などの反
応場を微細構造制御する研究の大きな礎となっていま
す。
応用分野・強み
現在はガスセンサを中心に酸化物系材料のナノ~マ
イクロオーダーの構造制御を行っていますが、この技術
はバイオセンサや電池などに使われる金属系材料にも
ーテクノロジーとなると確信しています。しかも、これま
で人類が負荷ばかりかけてきた地球環境をも改善でき
る可能性も秘めています。このような電気化学デバイス
の新たなステップに、私自身が尐しでも関与していけれ
ば、と思っています。
トピックス
○表彰・受賞歴:電気化学会進歩賞・佐野賞、電気
化学会論文賞(2件)
○公的支援策等活用状況:科学研究費〔基盤 B(平
成 20-22 年)、若手 A(平成 14-16 年)など〕
NEDO 産業技術研究助成事業(平成 14-16 年)
○その他(論文数等特記事項):学術論文(査読
付):68 報,特許:16 報(平成 21 年 3 月現在)
兵頭先生の研究内容に関する問い合わせ先
長崎大学 共同研究交流センター 産学連携部門
電話:095-819-2227
FAX:095-819-2228
URL:http://www.jrc.nagasaki-u.ac.jp/index.htm
有効であることも明らかにしています。つまり、どのよう
63
九州大学 先導物質化学研究所
先端素子材料部門
横山 士吉 教授
研究テーマ:光学応用高分子の開発と
デバイス研究
ることができます。また、超高速高分子光技術
を使えば、大容量情報を遠隔操作することが可
能となり、医療現場でハイビジョン画像を使った
リアルタイム診断などにも役に立つことができま
す。
研究をはじめたきっかけ
子供の頃の夢は、大工、または科学者
でした。単に工作が好きだったことによりま
すが、今でも研究に必要な旋盤加工は自
分でやっています。大学の専攻は化学、
大学院は有機・高分子、合成実験と格闘
研究の概要
21世紀の高度情報・高齢化社会に向け、安
心安全・大容量・超高速・省エネルギーをキーワ
ードとした研究開発が活発に進められています。
する日々を過ごしていました。世にない新しい物
質・物を生み出すことに憧れをもっていたのだと
思います。
研究者としてのスタートは、大学院終了後に就
これまでは、シリコンを中心とした半導体材料で大
きな技術発展がなされてきましたが、さらに飛躍
的な発展を促す材料として、高性能能な高分子
材料の開発と応用が期待されています。
私の研究室では、高分子の優れた光特性を生
かして、IT 分野で超高速情報処理を実現する光
スイッチの材料・デバイス研究、デバイスの動作
電圧を大きく下げる省エネルギー技術、さらにこ
れらを実現するためのナノテクの研究を進めてい
ます。
職した通信総合研究所(情報通信研究機構)です。
現在の研究テーマにつながる「高分子」と「情報
通信」は、この研究スタートがきっかけであったと
いえます。当時は、高分子の IT 応用はまだまだ
「未来技術・夢」でしたが、めまぐるしく発展する IT
社会でいよいよ高分子を使うことも世界的ターゲ
ットとなりつつあります。予想していたと言いたいと
ころですが、加速的な研究競争が始まっていま
す。
平成19年に現職の九大先導研に異動しました。
このような研究目標を実現するため、高分子の
「物理的・化学的な多様性」に期待しています。高
性能高分子の研究は、人に優しい先端材料の開
発に向け大きな道が開けていると言うことができま
す。例えば、自動車や航空機などの制御信号を
プラスチック光ファイバーと高分子光スイッチで結
び高速な光情報処理ができれば、軽量化と消費
電力の低減で燃費を上げ、コストダウンにつなげ
大学に来て一番の違いは、研究に対する責任が
よりいっそうに増したことだと思います。この分野
は、圧倒的に米国が進展しており、残念ながら日
本は立ち後れた状況にあると言えます。大学院生
や研究員には、一端のはやりではなく世界的な視
野に立って研究状況を見渡し、研究室を益々盛り
上げてくれることを期待しています。
64
応用分野・強み
れてきましたが、高性能分子の設計・合成、およ
びフォトニック結晶技術によって、従来にない高
高分子を使った光デバイスを実現するために
効率化の実現、言い換えると低エネルギー動作
は、素材となる機能性分子や高分子の設計と合
による耐久性の問題解決にもつながると考えてい
成が必要となります。私の研究バックグラウンドが
ます。
有機材料の合成であったことから、光学・デバイス
これからの夢
の応用研究に加えて、化学的な発想で材料合成
ができることが研究の最大の武器です。米国と日
道のりが長いと考えてきた光学高分子の実用化
本の間で研究進展の大きな開きがあることを述べ
が、社会的ニーズの高まりもあり、近づいているよ
ましたが、九州大学で材料研究を進め、現在世界
うに思います。これまでは基礎科学的な領域で研
トップレベルの新材料を得ることに成功しています。
究を進めてきましたが、研究室から生まれた物質
一方、材料が優れているだけで満足していては、
やデバイスが産業応用へ展開されることを期待し
宝の持ち腐れとなりますが、合成した材料を使っ
ています。光エレクトロニクスの分野では、光学的
て光スイッチの研究を進めることで加速的な研究
なゲインの高い光学材料が得られると、これまで
成果の発展につながることが期待できます。現在、
理論的に提唱されていた高性能デバイスを実証
研究室ではフォトニック結晶と呼ばれる光学デバ
することができます。その代表的な例として、電気
イスを使った応用分野へと進んでいますが、フォト
的な増幅を必要としない光コンピューティングなど
ニック結晶を使うことによって 100 倍以上の性能向
の見合い技術を上げることができます。これまで
上が得られることが分かってきました。有機材料は
の研究成果を世に出すことと同時に未踏の研究
耐久性に問題があり、その実用化は困難と言わ
課題へチャレンジすることが夢です。
トピックス
○表彰・受賞歴等
平成 17 年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
JST さきがけ研究、NEDO 産業技術助成制度、科学研究費補助金「若手研究 S」など
○その他(論文数等特記事項)
J..Am.Chem.Soc.(引用回数:90), Appl.Phys.Lett.(10 報,引用回数:合計 228), Nature(引用
回数:330)) 他70報以上
横山先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州大学 先導物質研究所
URL:http://www.cm.kyushu-u.ac.jp/dv15/Yokoyama_Labo.html
65
九州大学大学院 農学研究院
生物資源化学研究室
北岡 卓也 准教授
研究テーマ:ペーパー触媒の開発と応用
研究の概要
ファイバーネットワーク構造
ペーパー触媒
「紙抄き」の技術で粉末
状触媒を紙状に成型加工
粉
した新形状の触媒材料
「ペーパー触媒」。取り扱
いにくい「粉」を「紙」にす
マイクロ空隙・超軽量・フレキシブル
高速ガス拡散・高速熱交換・高反応性
ナノ触媒の機能をその手に
扱いにくい
成型で性能低下
不均一な触媒反応
低耐久性・触媒失活
紙
Paper-Structured Catalyst
3D Fiber Network
特徴・優位性
期待される用途分野
既存の金属発泡体・ハニカム構造体と比べて 軽い
環境分野:大気・室内・水浄化用触媒材料
曲げたりなどの二次加工
既存の高圧充填成型やゾルゲル法等と比べて 簡単
エネルギー分野:水素・バイオエタノール
性が良くなるだけでなく、
ファイバーや触媒の種類による組み合わせは 無限
ファインケミカルズ分野:汎用固定化触媒
ると、切ったり・折ったり・
紙特有の多孔質ファイバ
ーネットワーク積層構造が
率化する効果を発見しました。以降、様々な触媒成
触媒反応を高効率化しま
分・繊維基材・成型/担持法・構造制御による触媒材
す。
料の機能開発に取り組むことになりました。
金属種に適した担体(マトリックス)材料を事前に
応用分野・強み
紙に抄き込んでおけば、紙の上で高活性なナノ粒
子を直接合成可能。
金属ナノ触媒の高機能を手で扱えるペーパー材
以下の点が強みです。
○どんな粉や繊維でも種類を問わず成型可能で、
組み合わせも用途も無限 (「シーケンシャルデュ
料に簡単成型できます。
アルファイバー/デュアルポリマーシステム」という
特許技術が鍵)
研究をはじめたきっかけ
○ペーパー独自の多孔質空隙構造がマイクロリアク
ありふれた生活素材の紙には、実は大量の無機
ターとして機能し、触媒反応を高効率化(材料の
粉末が配合されていることを知り、何かに応用できな
選択により高温・高圧条件でも利用可能で、適用
いかと考えていました。
範囲が極めて広い)
酸化チタンに応用したところ、もとの光触媒性能を
○マトリックス材料を抄き込んでおけば、ペーパー上
維持したままで、ペーパー成型に成功。その後、粉
で高活性な金属ナノ粒子を直接合成可能(触媒
末や繊維の配合割合を自由に選べる成型技術に発
の高性能化や貴金属使用量の削減にも寄与)
展。シックハウス物質・大気汚染物質・水系環境ホル
○既存の製紙技術を応用することで、高均質・大面
積のペーパー材料を安価に大量生産可能(研究
モン物質の浄化触媒材料を開発しました。
から実用化へのデスバレーの心配が尐ない)
学会・論文発表を通じて知り合った企業と連携し、
燃料電池用水素製造触媒や自動車排出ガス浄化
触媒に展開。紙の多孔質構造が触媒反応を高効
66
これからの夢
を試してきました。今後は以下の分野での応用展開
を夢見ています。
「紙」のようなローテク材料を最先端の「触媒」と
【環境分野】 オンサイト排出ガス浄化触媒,工場排
組み合わせるコンセプトに魅入られ、これまでに、
出二酸化炭素回収材料,VOC 除去,空
・Cu/ZnO 系ペーパー触媒による燃料電池用水素
製造(その後、Cu ナノ粒子合成や Ni 系にも展開
気清浄/浄水用フィルター
【バイオ分野】 細胞培養基材(多孔質・酵素/生体
中)
分子固定), 抗菌紙(院内感染防止),
・Pt ナノ粒子のオンファイバー合成による燃焼系排
SERS 対策バイオフィルター
出ガス浄化触媒の開発(様々な直接合成担持法
【新エネルギー分野】 電極膜(燃料電池・太陽電
を開発中)
池),水素製造改質器,バイオエタノー
・Au ナノ触媒担持ペーパー触媒による低温 CO 酸
ル製造(酸触媒,分離材料)
化除去(微小な Au ナノ粒子の効率的担持技術に
【ファインケミカルズ製造分野】 固体触媒・錯体触
応用)
媒・ 生体触媒固定化汎用合成触媒,
・Ag ナノ粒子のオンペーパー合成による高活性抗
改質触媒,環境低負荷プロセス
菌材料の開発(ナノ化により初期活性も耐久性も
向上)
トピックス
○表彰・受賞歴等
平成 19 年度文部科学大臣表彰若手科学者賞 「繊維ネットワーク積層材料の新機能創出の研究」、他4件
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)産業技術研究助成事業平成 15-20 年度
科学技術振興機構(JST)独創的シーズ展開事業 委託開発 平成 16-22 年度、他多数
○その他(論文数等特記事項)
原著論文 21 報、著書・総説 9 報、特許 11 件
Journal of Materials Chemistry (IF=4.646)の 19 巻 15 号(平成 21 年 4 月 21 日発刊)の表紙を飾りました。
北岡先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州大学 学術研究推進部学術研究推進課
電話:092-642-4310
FAX:092-642-7090
URL:http://bm.wood.agr.kyushu-u.ac.jp/
67
九州工業大学大学院
工学研究科化学プロセス工学研究室
山村
方人
准教授
研究テーマ:大面積フィルム製造のための
コーティング基盤技術
最近では粒子を添加することで
塗布限界速度を 1.5 倍にする技
術、表面凹凸形成を抑制する操
作範囲の提案、分子配向/溶媒
乾燥の光制御技術、流れを利用
した相分離構造制御技術を開発
しているところです。
研究をはじめたきっかけ
大学院を終え新しいテーマを探し
ていた頃、先輩企業技術者にウェットコーティング技
術がいかに重要であるか今の学問がどれだけ遅れ
ており現場問題に対応できないかを飲み屋で熱く語
研究の概要
られました。当時日本で唯一コーティング技術全般
ナノ/ミクロ構造を持つ大面積フィルム製造のた
を扱っていた九工大の研究室の助手となり乾燥微細
めのコーティング基盤技術。精密コーティングは日
構造に関する実験を開始。訪問研究員としてアメリ
本が世界に誇る技術の1つであり、ナノメートルオー
カの大学に滞在するうちに、コーティング技術には
ダーで表面が平滑なディスプレイ用光学フィルム、
地域、製品や業種によらない共通の研究課題がある
凹凸構造を作製してキズを目立たなくする家電用カ
ことを強く意識するようになりました。
ラー鋼板、ナノ粒子-高分子ハイブリッド層を作製し
応用分野・強み
てインク吸収性を制御した光沢印刷紙など身の回り
の製品に広く利用されています。髪の毛一本程度の
機能性フィルム部材全般。印刷、製紙、フィルム、
厚みの液体コーティング膜が乾燥・固化する過程で
鉄鋼、粘着剤、インキ、自動車、電子写真、ディプレ
は、複雑でかつダイナミックな変化が起こっています。
イなどの各産業に応用可能です。製品例として熱反
しかし工程が高速・高温ですので変化を計測するこ
尃フィルム、防湿フィルム、食品用ラベル、飲料缶印
と自体が容易でなく、製造現場の多くは経験と勘に
刷、インクジェット光沢紙、鉄道切符用感熱紙、カラ
よる操作が行われています。そこで、現場を模擬した
ーフィルタ、位相フィルム、冷蔵庫、半導体ダイシン
ラボ計測システムを開発し(i)実工程で生じる現象を
グテープ、コピー用感光ドラム、中間転写ベルト、プ
再現する、(ii)現象のメカニズムを解明する、(iii)解析
ラズマディプレイリブ層、燃料電池、プリンタブルエレ
結果に基づいて塗布欠陥の実用的防止策を提示す
クトロニクスなど。この分野を扱っている大学は非常
るための基盤技術の構築を目指しています。
に尐なく、塗布流れ・乾燥・構造形成全てをカバーし
68
た実験成果を国際塗布技術学会で発表している大
雑に絡み合った製造現場の要素を分解し普遍化す
学はアジアで九工大がオンリーワンです。韓国、台
る試みを現在は進めていますが、これからは逆に既
湾の研究者とも連携しコーティング技術の情報収
知の要素を合成して新しいコーティングシステムを
集・発信機関として機能しています。
提案することが重要となります。望ましいデバイス特
性から必要な素材やプロセスを提案できる、また素
これからの夢
材やプロセスの特性を巧みに利用して構造制御さ
素材からフィルム部材そしてデバイス開発へ繋が
れたフィルム型デバイスを作製できる基盤技術の開
るトータルソリューションの提案システムの開発。複
発を進めたいと考えています。
トピックス
○化学工学会粒子・流体プロセス部会粒子・流体
プロセス工学賞(平成 15 年
○10th APPChE Best Poster Award (平成 16 年)
○日本塗装技術協会平成 20 年度編集委員長賞
(平成 20 年)
○チャレンジング・サポート事業(CS 事業・平成 19
年度)
山村先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州工業大学大学院工学研究院
物質工学研究系応用化学部門
電話:093-884-3344
FAX:093-884-3300
URL:www.che.kyutech.ac.jp/chem22
69
北九州市立大学 国際環境工学部
環境生命工学科 中澤研究室
中澤
浩二
准教授
研究テーマ:ミクロ組織体を利用した高性
能「細胞チップ」の開発
ミクロ組織化「細胞チップ」
分散状態の細胞がミクロ組織を形成
アプリケーション
細胞アッセイへの展開
・創薬(ドラッグスクリー
ニング)
・再生医療(分化誘導
研究)
・食品(機能性食品効
果アッセイ)
・健康(メタボリックシン
ドローム研究)
・バイオセンサー開発
・様々な基礎研究
研究をはじめたきっかけ
学生時代よりバイオテクノ
ロジー分野には特に興味を持
ち、九大船津教授のもとで「ハ
イブリッド型人工肝臓」の研究
に従事しました。はじめて生の
細胞を見たときの感動は今も
忘れません。尐しの刺激や条件
の違いで細胞の状態が大きく
変化することに改めて感動す
るとともに、生命の無限の可能
性を知りました。
研究の概要
DNA チップやプロテインチップに続く次世
代のバイオチップ技術として、独自の細胞チッ
その後、現在の北九大にて細胞をコントロー
ルする技術を開発したいとの思いから、現在の
研究に取り組んでいます。
プ技術を開発しています。これまでにない新技
応用分野・強み
術として、微細加工技術と表面化学修飾技術を
駆使し、均質なミクロ組織体を大量形成させる
タイプ(マイクロスフェアチップ)やミクロ組
織体を基板上に規則的にマイクロパターニン
グするタイプ(細胞マイクロアレイ)の細胞チ
ップを開発しています。ミクロ組織体とは、数
百~数千個の細胞が集合・凝集化して形成され
る球状の三次元細胞集合体のことで、生体と同
様な三次元構造を有することから細胞の機能
発現や忚答性の向上・安定化などが達成できま
す。従来から用いられている培養ディッシュや
プレートに比べて生体模倣を達成できること
から、新しい研究開発用支援ツールとして医
療・健康分野の様々な基礎・忚用研究に展開す
ることができます。
ヒトや動物の多くの培養細胞に適用できる
汎用的「細胞チップ」技術であることをすでに
実証済みです。細胞チップの最大の利点は、個
体を用いず培養下で様々な生体の反忚を評価
できることです。このため、創薬分野における
ドラックスクリーニング、再生医療分野におけ
る幹細胞から様々な機能性細胞への分化誘導
技術、健康分野におけるメタボリックシンドロ
ームやアレルギー研究、食品分野における機能
性食品効果アッセイ、バイオセンサー開発など
に展開することが可能です。現在、私どもの研
究室では、これらの基礎・忚用研究に取り組ん
でいます。
70
これからの夢
在、この分野への展開を活発に進めています。
近年注目される「再生医療」
。今回紹介して
今後は「細胞とバイオマテリアルの融合」を
いる我々の技術は、もともと「再生医療」技術
研究のキーワードに、医療・健康分野に役立つ
への展開を目的に開発したものであり、現
技術開発を行いたいと考えています。
トピックス
○受賞歴
・日本人工臓器学会オリジナル賞 平成 13 年 11 月
「肝細胞組織体の新規形成法と血管網類似構造を有する新規人工肝臓モジュールの開発」
・化学工学会奨励賞 平成 14 年 3 月
「ポリウレタン発泡体/肝細胞スフェロイド充填層型人工肝臓に関するスケールアップ基準と細
胞大量調製法の確立」
・化学工学会技術賞 平成 16 年 4 月
「医薬品スクリーニング用肝臓シミュレータ“TESTLIVER”の実用化」
○その他
・学術論文 66 件
・解説・執筆 43 件
・特許 26 件(出願を含む)
中澤先生の研究内容に関する問い合わせ先
北九州市立大学 事務局管理課
電話:093-695-3311
FAX:093-695-3368
URL:http://www.kitakyu-u.ac.jp/env/index.html
71
北九州市立大学 国際環境工学部
エネルギー循環化学科
先進マテリアル教育研究分野
秋葉 勇 准教授
研究テーマ:高分子が溶液・バルク状態で形
成する多様な高次構造の形成原理解
明と分子設計に基づく制御法の確立
研究の概要
高分子の溶液中やバル
クで様々な集合形態をと
ります。多様な集合形態
が形成される原理を明ら
かにすること、多
様な集合形態を任意に制御することが新しい
高分子材料の創製において重要です。
そこで、最新の精密合成法による明確に分
子設計された高分子の合成と大型放射光施設
そのため、高分子の集合状態に関する研究は極
めて多様な範囲での材料設計に有益な情報を
提供することができます。
を利用した高分子の構造解析によって、構造
これからの夢
形成機構の解明、分子設計に基づいた構造制
御法の構築を目指して研究を行っています。
新しい発見は、地道な研究の積み重ねの上に
研究をはじめたきっかけ
もたらされると思って研究を行っています。こ
れからもコツコツと研究成果を積み重ねてい
原子・分子を自在に扱い、新しい物質を作り
き、その過程の中で、未来永劫にわたって有用
だすことができる化学を深く学びたいと思い
な材料、技術を創出していきたいと考えていま
大学へ進学しました。当初は漠然と「役に立つ
す。
トピックス
モノを作りたい」という程度でした。
卒業研究で配属された研究室で“高分子”と
¥○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
・文部科学省 科学研究費補助金
(平成 13 年、平成 18-19 年、平成 20 年-)
・北九州産業学術推進機構 産学連携研究開
発事業助成金(平成 19 年、平成 20 年)
他
○論文、特許等
原著論文:60 編、特許出願:10 件
出会い、その魅力に取りつかれました。ここが
スタート点となって、これまで高分子化学の研
究を続けています。
応用分野・強み
高分子材料は、プラスチック、フィルム、ゴ
ム、繊維など様々な形で使われています。同一
の分子構造を持つ化合物でも、形を変えること
によって全く異なった用途に使われます。
秋葉先生の研究内容に関する問い合わせ先
北九州市立大学 事務局管理課
電話:093-695-3311
FAX:093-695-3368
URL:http://www.kitakyu-u.ac.jp/env/index.html
72
福岡工業大学大学院
工学研究科 朱研究室
朱 世杰(傑) 教授
研究テーマ:材料の強度学
研究の概要
い、引張試験、疲労試験、クリープ試験などを行
い、材料の微視組織の観察と有限要素などの力
金属および非金属材料の力学特性、特にクリ
学解析にも取り組んでいます。
ープ疲労特性について研究し、航空エンジンある
いは発電用ガスタービンの遮熱コーティングの务
応用分野・強み
化および損傷評価と寿命予測手法の開発を目指
しています。破壊機構を解明するため、遮熱コー
自動車、航空宇宙、電力、機械などの応用分
ティングの务化と損傷に大きく影響する要因を、
野で材料強度学が非常に重要です。二十数年に
個別あるいは複合条件下の加速試験により調べ
集めた研究成果や培った経験を生かして、地方
ました。
の産業界に貢献したいと思います。
コーティングシステムの界面剥離エネルギーの
測定方法は、基材と同じ材料でコーティング層を
これからの夢
挟み、サンドウィッチ状の 4 点曲げ試験片のノッチ
の先端から界面予亀裂を導入した疲労試験片を
一つの夢は材料の強度評価により一種類の新
用い、荷重制御および変位制御で力学試験評価
しい材料を設計・開発すること。二番目の夢はガ
を行うものです。
スタービン用遮熱コーティングの界面損傷を非破
また、新しい材料の設計・開発に対して、材料
壊で評価する方法を開発すること。こういう研究道
の強度および疲労寿命を評価する研究成果によ
の中、地方の企業における材料に関する問題を
り、新しい生体材料(biomedical material)の開発
解決することに貢献したいと思っています。
指針を提供することを目的としています。
トピックス
○ドイツのフォンボルト研究奨学金や学会表
彰等あり
○研究プロジェクト(文科省、学術振興会、
NEDO などの事業)
○雑誌論文は 100 編以上、国際・国内学会発
表は多数
研究をはじめたきっかけ
自動車や航空宇宙の進歩は新しい機械材料
の開発に依存し、乗り物などの機械の安全性は
使用材料にかかわっていることを学生時代から教
えられました。したがって、大学院に進学する時、
材料の強度学という研究を希望しました。
それから、二十年以上いろんな国および研究
機関で一貫して材料の強度学に関する研究に従
事しています。自分の研究の好奇心により、金属、
セラミック、ポリマーおよびそれらの複合材料を用
73
朱先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡工業大学 総合研究機構
電話:092-606-3236
FAX:092-606-0636
福岡工業大学大学院
工学研究科 生命環境科学専攻
宮元
展義
講師
研究テーマ:無機ナノシートを利用し
た複合機能物質の合成
的な体積相転移挙動を明らかにしま
した。現在、精密重合や生合成の手
法を組み合わせることで、より精緻に
制御された構造と高度な機能を持つ
複合機能材料の開発・研究を進めて
います。
研究をはじめたきっかけ
子供の頃から理科が好きで、国立
科学博物館や筑波科学万博に連れ
て行ってもらってワクワクした記憶があ
ります。大学時代に配属された応用
化学科の研究室は、「メソポーラスシリ
研究の概要
カ」を世界で初めて合成するなど、世
界的な業績を上げつつあった活発な
近年、カーボンナノチューブ、ブロックコポリマー、
研究室で、さまざまな刺激を受けながら研究の楽し
デンドリマーなどの明確で制御されたナノ構造を有
さと厳しさを知ることができました。その後、液晶、高
する物質(ナノ部品)を合成し、そのナノ部品の自己
分子精密合成、量子ビーム科学など広い分野の研
組織化によって、さまざまな機能をもった超分子構
究に参加する機会を持つことができ、視野を広げる
造を構築する研究が注目を浴びています。本研究
ことができました。「成果」や「成績」が求められるご時
室では、無機層状結晶から得られる「無機ナノシー
世ですが、好奇心、実験の楽しさ、新発見の驚き、
ト」と呼ばれるナノ部品に注目して、研究を展開して
などの純粋な気持ちを忘れないようにしながら、学生
います。
たちと一緒に研究に励んでいます。
例えば最近「層状粘土鉱物」のような無尽蔵に存
在する天然物から「無機ナノシート液晶」を合成する
応用分野・強み
ことに成功しました。「無機ナノシート液晶」には、通
常の有機液晶とは異なり、無機物特有の電子物性
粘土鉱物などのナノシート物質は従来から、機械
や化学的熱的安定性、低每性等の利点があり、極
的強度・ガスバリア性・難燃性に優れるクレイ/ポリマ
めて優れた無機有機超分子複合構造を構築するた
ーコンポジットや、保湿・レオロジー性に優れた化粧
めのナノ部品として有望です。実際に宮元は、ナノ
品など、さまざまな分野で利用されている工業材料
シート液晶を用いて種々の複合材料を合成し、光エ
です。安価な天然物を利用したり、マイルドな条件で
ネルギー変換・貯蓄を行うための優れた特性や、小
の反応で合成できるため、その機能のみならず、
型・静音のアクチュエーターとして応用可能な異方
74
安全性や低環境負荷という点でも利点があります。
近年では、磁性、電子物性、光活性、固体酸性、液
晶性などさまざまな機能をもったナノシートが利用で
きるようになり、また本研究室で行っているようなナノ
シートを高度に組織化する技術が著しく発展してき
ています。
したがって、従来の応用分野に加えて、光デバ
イス、電子デバイス、エネルギー変換デバイス、高機
能触媒、高選択性吸着剤、センサー、アクチュエー
ター、太陽電池、構造材料、ドラッグデリバリーシス
テム、医療用材料、2 次電池、等々非常に幅広い応
用の可能が広がりつつあります。ナノシートは現在の
ところ、カーボンナノチューブなどに比べて注目度の
低いナノ材料ではありますが、反面、大きな「チャン
ス」を秘めた新材料です。
これからの夢
本研究で行っている無機ナノシートの研究では、
「刺激応答性を有するソフトマテリアル」、「異方性」、
「ナノからマクロに至る階層的に制御された複合構
造」、などを重要なキーワードと位置づけています。
実はこれらのキーワードは「生物」がもつ特徴と密接
トピックス
○表彰・受賞歴等
Award for Encouragement of Research in
Materials Science, International Union of
Materials Research Societies, International
Conference in Asia (IUMRS-ICA 2008)
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
・財団法人日本板硝子材料工学助成会
平成20年度研究助成
・独立行政法人日本原子力研究開発機構
平成20年度黎明研究課題
・平成19−20年度 科学研究費若手研究(B)
・平成17−18年度 科学研究費若手研究(B)
○その他(論文数等特記事項)
主な論文:
"Extremely Stable Photoinduced Charge
Separation in a Colloidal System
Composed of Semiconducting Niobate
and Clay Nanosheets" Miyamoto, N.;
Yamada, Y.; Koizumi, S.; Nakato,
T.,Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46,
4123-4127
"Liquid crystalline nature of K4Nb6O17
nanosheet sols and their macroscopic
alignment" Miyamoto, N.; Nakato, T.,Adv.
Mater. 2002, 14 (18), 1267-1270.
"Uni-Directional Orientation of Cyanine Dye
Aggregates on a K4Nb6O17 Single Crystal :
Toward Novel Supramolecular Assemblies
with
Three-Dimensional
Anisotropy"
Miyamoto, N.; Kuroda, K.; Ogawa, M., J.
Am. Chem. Soc. 2001, 123, 6949-6950.
に関連します。私の究極の目標の1つは、ナノシート
を利用して、光合成をしたり環境汚染物質を食べる
ような、「役に立つ生物」(のようなもの)を「合成」する
ことです。また、そのようなことが出来なくても、身近
なところで自分の開発した材料や技術が使われ、世
の中の人たちの生活向上やエネルギー問題・環境
問題に寄与できればと思っています。
75
宮元先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡工業大学 総合研究機構
電話:092-606-3236
FAX:092-606-0636
情報通信
九州大学大学院
システム情報科学研究院
田頭 茂明 特任准教授(SSP 学術研究員)
研究テーマ:オープンなユビキタスネット
ワークの構築
研究の概要
ていました。オープンな環境では、優れたものは、多
くのユーザ利用され、多くのユーザが開発に携わる
オープンなユビキタスネットワークの利用環境を整
ことになり、結果として、革新的なものに発展していく
え、意欲ある個人、団体、企業に商品開発やシステ
可能性があります。そうでないものは、ユーザ利用さ
ム開発の機会を提供し、革新的なユビキタスサービ
れなくなり開発も進まず、廃れていくことになります。
スの創出を図ることを目的に研究しています。ビジネ
このように、自然淘汰な環境が構築され、真に意味
スや研究以外にも個人の趣味に関するアプリケーシ
のある技術が創出されていくことが強みです。
ョンが構築され、そこから革新的なサービスが展開さ
れていく仕組みを構築したいと考えています。
例えば、インターネット上のアプリケーションもその
ような経緯で創出されたものが数多く存在します。私
たちは、このような仕組みをユビキタスネットワーク上
で実現する要素技術を研究開発しています。特に、
位置情報を含めたユーザの状況(コンテキスト)をコ
ンピュータが自動的に推定するコンテキストアウェア
技術の確立に注力しています。
研究をはじめたきっかけ
これからの夢
まずは、オープンなユビキタス環境を実際に構築
屋内外を問わずネットワークを利用できる環境が
整備されつつありますが、出先における携帯コンピ
ュータの利便性はそれほど向上していません。すな
し、地域に密着した研究活動を実施していくことが目
標です。これが成功した後、この活動を全国、さらに
は世界へと展開できれば考えています。
わち、その利用形態はメールや WEB を見たりと、デ
トピックス
平成 19 年 5 月以降の業績
○表彰、受賞:4 件
○論文:学術論文 5 件
○国際会議 10 件
○シンポジウム 6 件
○口頭発表 19 件
スクトップコンピュータの延長でしかありません。携帯
コンピュータ特有の新たな利用形態があると信じて、
この分野の研究を始めました。
応用分野・強み
ユビキタスネットワークのオープン性に着目してい
るところが新しい点です。今までのクローズな環境で
は、多くの場合、ある閉じた研究グループ内でしか
田頭先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州大学 大学院システム情報科学研究院
E-Mail: shigeaki@f.csce.kyushu-u.ac.jp
議論されていない要素技術やサービスが展開され
79
九州工業大学大学院
情報工学研究科知能情報工学研究系
榎田
修一
准教授
研究テーマ:車載カメラによる安全センサシ
ステムの研究開発
研究の概要
図 1:システム概要
交通事故による死者は減尐してはいます
が(平成16年:7,885名→17年:6,871名
→18年:6,352名)、死者の約半数は歩行
者、自転車乗車者であり、その割合はここ数
年で増加しています(平成16年:39%→17
年:43%→18年:45%)。(死者数はいず
れも警察庁調べ)。国の安全施策において
も歩行者の安全確保と IT の活用が重要視
図2:開閉眼推定結果
点として掲げられています(国土交通省中
上下瞼候補
上瞼候補=赤
下瞼候補=青
上下瞼候補
上瞼候補=赤
下瞼候補=青
央交通安全対策会議 第8次交通安全基本
計画)。そのような背景から、安全運転促進
や事故状況分析のための正確な記録を目
的とし、自動車への各種センサ搭載が急速
に発達しつつあります。本研究では安価に
多くの情報を獲得可能と期待される視覚セ
ンサ(CCDカメラ等)に危険認知度を付加し
図3:先行車両追跡および車間距離推定結果
→次頁参照
図4:視線眼推定結果
た安全センサシステムを開発しています。想
定しているシステムは一般の乗用車のフロン
トガラス(ルームミラー裏)に後付け可能なも
ので、現在、市場に出ているドライブレコー
出力を返します。画像から有用な情報を抽出するた
ダに付加機能を付けたものをイメージしています。
めに画像処理工学を研究し、その情報から適切な
本研究によって安価で後付け可能な安全センサシ
出力への変換に機械学習やパターン認識を適用し
ステムの開発がなされたときは、今後新たに販売さ
ました。実際にリアルタイムで動くものが面白くて自
れる自動車のみならず、既に販売されている自動
律型ロボットの研究を進め、自律型ロボットの国際競
車にも普及・搭載が予想され、「安心・安全」な車社
技である RoboCup にも参加することができました。次
会の実現に寄与することができると期待されます。
のステップとして、これらの技術をフィードバックして
私たちの生活をより良いものにしたい、私たちの身
研究をはじめたきっかけ
近なところで動いて役に立つシステムを作りたい、と
研究を始めたときは、自律的に移動するロボットを
言う願望が芽生え、そのまま自然な流れで産業界と
作成することに興味を持っていました。研究対象とし
の共同研究に取り組むようになりました。自律型ロボ
た自律型ロボットは、視覚センサを用い環境情報を
ットは移動して、環境を知覚し、適切な行動を考える
取得し、アクチュエータを用いて実世界に何らかの
ものでした。私たちの生活で動き回っている機械、
80
となるとやはり自動車が先ずはじめに思い浮かびま
搭載し、アクチュエータを司る我々運転手へ時々
した。短絡的ではあるが自身の車好きも手伝い、自
刻々と有用な情報を提供し、安全運転を支援するシ
動車に取付けられたカメラから得られた画像を処理
ステムの実現が当面の目標です。私自身が開発に
することに没頭しました。道路という限られた空間で
寄与したシステムを購入した人達、また、身近な人
も画像処理が困難であることを再認識させられたが、
達から「面白いね」「役に立ったよ」と評価してもらえ
安全運転を支援するシステムの実現を目指していま
ることが夢です。また、画像処理とパターン認識技術
す。
を応用すれば、広い範囲をセンシングし、人間にと
応用分野・強み
って有益な情報を自動判断し、提供するシステムを
安価に提供できると信じています。個人的な夢として
画像処理とパターン認識を組み合わせたシステム
は農作物の病気早期発見や収穫時期の等で農工
は、我々人間が「目」からはいる情報を「脳」で判断し
連携に貢献できることができれば、との思いもありま
て様々な場面で作業を行うシステムとほぼ等価なイ
す。
メージを与えることから、多様な分野の方々が「現在
行っている作業を計算機が肩代わりしてくれたら」、
図3:先行車両追跡および車間距離推定結果
との方向性で多くのアイディアをご提案頂けるため、
車間距離算出
応用分野は多岐にわたります。我々の研究室の強
従来手法による距離算出
みは、画像処理とパターン認識技術を組み合わせ
提案方法による距離算出
て、実世界でリアルタイム動作するシステムを数多く
開発していること。それらの経験や技術の蓄積が、
産業界のニーズに対し素早く反応できる大きな強み
となっています。実環境で動作するシステムをシンプ
車
間
距
離
[cm]
ルなアルゴリズムで実現することを念頭に開発を進
めています。
これからの夢
現在は、自動車に目(カメラ)と頭脳(計算機)を
トピックス
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
(1) 平成 20 年度 福岡県産業科学技術振興財団 実用化可能性試
験「安全管理マネージメントシステムの研究開発」
(2) 平成 19~23 年度 文部科学省 知的クラスタ創成事業(第Ⅱ期)
「車載カメラによる安全センサシステムの研究開発」
○その他(論文数等特記事項)
査読付き学術論文(国内・国外) 24 編 国内特許 2 件
81
榎田先生の研究内容に関する問
い合わせ先
九州工業大学
産学連携推進センター
電話:093-884-3485
大分大学 工学部
知能情報システム工学科
大城 英裕 助教
あ
研究テーマ:
「デジタルスコアブック」に
関する研究
研究の概要
スタジアムを取り囲むように設
置した多数のカメラの映像を使っ
て、スポーツ競技をデジタル化し、
あらゆる観点からコンテンツ化す
る映像スタジオ(デジタルスコア
ブック)の構築を目指しています。
主な課題として、(1)選手位置推定、
(2)選手特定と追跡、(3)選手姿勢
推定、(4)選手顔向き推定、(5)デ
ータアニメーティングがあります。
(1)から(4)の
映像解析では、多視点幾何学を用いて、画像処
図 1 スポーツコンテンツスタジオ
理を行い、選手の動作に深く関わる様々な情報
の取得を行います。最終的にはこれらの情報を
使ってデータマイニングを行い、選手プレーの
意図やチームの戦術を推定するところまでを行
います。(5)のデータアニメーティングとは、多
次元のデータをアニメーション化して分かりや
すく見せる新たな表示方法です。現在は、手入
力されたサッカーイベントデータと画像解析デ
ータを融合して、起承転結に基づいたアニメ-
ションを生成し、印象的な表示方法について研
究を行っています。
研究をはじめたきっかけ
図 2 データアニメーティングの結果
本学のサッカー部の監督だった頃、試合で走ら
ない選手に、「まったく走ってないね。もっとパ
選手の動作データを取得し、それを使って走って
フォーマンスを上げなければ」と告げたところ、
ないことを示すしかないと考えました。それがこ
「走っています」とき然とした表情で返答されま
の研究をスタートさせたきっかけです。
した。その選手を納得させる具体的な証拠もなく、
それまでは、一台のカメラの画像を使って物体
の姿勢推定に取り組んでいました。主にロボット
当方ができることは、画像処理技術を使って
82
の視覚システムという位置づけで研究を行ってお
プロスポーツに関心が高い地域でもあります。
り、環境知識と物体の見え方から、計算論的な多
様々なチームが、独自の観点で本デジタルスコ
数決法を用いて、物体の姿勢推定を行っていまし
アブックを活用し、チーム強化に取り入れて欲し
た。しかし、対象物体が映像中で重なり、その形
いと願っています。世界に先駆ける知見とともに
状が変化する場合には推定が行えず課題が残りま
大分の地から世界に羽ばたくチーム、選手が誕生
した。問題を解決するため、多数のカメラ映像(多
することを夢みています。
視点映像)を使い、選手が姿勢を変化させても選手
また、一般の人々にとって、スポーツとは、真
位置、姿勢が取得可能な方式の研究にシフトさせ
剣にプレーする姿を見て感動する対象であった
ました。
り、自己鍛錬の方法を模索する場であったり、健
康維持するための枠組みでもあります。このよう
応用分野・強み
なスポーツと人との関わりを映像、情報処理とい
当初、コンピュータグラフィックスに用いられ
う分野から尐しでも支援でき、地域の新たな産業
る透視変換方式を制約付きで逆変換して選手位
創出につながればと思っています。
置を求めていましたが、フィールドを測量機で測
定し、そのデータを使って、個々のカメラのパラ
トピックス
メータ(12 個)を求める必要がありました。大規
○表彰・受賞歴等
・山崎彬人、高氏秀則、金子俊一、金出武雄、大
模な会場になると数日を要し、大きな負担となっ
城英裕 : "固定観測画像群に基づく夜間監視
ていました。最近は、多視点幾何学を用いて、多
のための画質改善"、第 14 回画像センシングシ
数のカメラ映像の幾何関係をうまく使い、カメラ
ンポジウム(SSII08)、IN2-25, 2008-6-12[SSII08
のキャリブレーションやフィールドの測定を行
最優秀学術賞](横浜)、他 3 件
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
わなくても、相対的な選手位置、姿勢推定が可能
・科学研究費助成金(基盤研究(C))・平成 19 年度
となっています。
-平成 21 年度
選手位置の測定における計算負荷は、カメラ毎
・NEDO イノベーション実用化開発費助成金・平
の 3×3 の行列計算とその集計、閾値判定ですの
成 19 年度
で、通常のパーソナルコンピュータで実時間動作
○その他(論文数等特記事項)
が可能です。また、現在の対象はスポーツ競技で
・特許:「接地点推定装置、接地点推定方法、動
線表示システムおよびサーバ」、 特許第
はありますが、人の動きに関する画像特徴を使っ
4214291 号・平成 20 年度
たデータ蓄積、解析、予測、表現に関連するもの
であれば、個々の方式卖体での忚用研究も可能で、
広範な忚用が考えられます。
大城先生の研究内容に関する問い合わせ先
大分大学イノベーション機構リエゾンオフィス
電話:097-554-7430
FAX:097-554-7740
これからの夢
資源の尐ない我が国の次世代を担う大事な産
URL:http://www.innovation.oita-u.ac.jp/index.html
業政策として、日本人が持つ資質を活かしたデジ
タルコンテンツやサービス産業の発展が期待さ
れています。偶然にも大分には、サッカー、バス
ケットボール、フットサル、バレーボール、野球
等、様々なプロスポーツチームが存在しており、
83
北九州市立大学 国際環境工学部
情報メディア工学科 奥田研究室
奥田
正浩
准教授
研究テーマ:高ダイナミックレンジ画像の
取得及び符号化に関する研究
研究の概要
現行の 24 ビット画像
をはるかに超える範囲の
輝度情報を表現できる高
ダイナミックレンジ静止
画像・動画像の生成手法
及び圧縮符号化に関する
研究を行っています。人
間の視覚特性と同等の輝
度範囲を持つ動画像が生
成可能となります。高 SN
比で
かつダイナミックレンジの高い画像の生成手
法、心理物理学を忚用した高品質で高圧縮可
応用分野・強み
能な符号化手法、高速トーンマッピング手法、
市販カメラを用いた絶対輝度推定、等の研究
を行っています。
近年、CMOS センサ技術の発展により高ダイ
ナミックレンジ画像の車載カメラや監視カメ
ラ、ロボットビジョンシステムへの忚用が期待
研究をはじめたきっかけ
されており、高ダイナミックレンジセンサや高
ダイナミックレンジディスプレイシステムな
これまでの撮像機器や出力デバイスの技術
どが実用化され、研究・産業化においてこれか
進歩は高解像度、高フレームレート、広色域再
ら画像の高ダイナミックレンジ化が加速する
現といった空間領域、時間領域、色空間領域に
ことが予想されます。
おける分解能の向上をもたらしました。その次
本研究では現在研究開発されている CMOS セ
は画像の輝度領域での高精細化、つまり高ダイ
ンサをはるかに超えるダイナミックレンジを
ナミックレンジ化に関する研究が主流になる
もつ画像を生成することを目的としており、コ
のは自然な流れです。コンピュータグラフィク
ンピュータグラフィクスやエンターテインメ
スのイメージベースドライティングやディジ
ントの分野のみならず、医療画像、車載・監視
タル写真の高コントラスト現像の分野で研究
カメラ、外観検査、天体画像、電子顕微鏡画像、
されてきた高ダイナミックレンジ画像処理を
検査用ロボットのビジョンシステムなど、ダイ
車載カメラや監視カメラなどのより広い分野
ナミックレンジの高い画像が要求される分野
で忚用可能な技術にまで発展すべく基礎研究
での忚用が期待されます。
を行うこととなりました。
84
これからの夢
ックレンジの限界とキラーアプリの不足が原
高ダイナミックレンジ画像の技術開発は現
因であると考えられますが、数年の内にこれら
在黎明期であり、産業忚用例も CG や高コント
の課題は解消され、映像の高ダイナミックレン
ラスト写真現像、監視カメラ等の一部に過ぎ
ジ化が加速すると考えられます。その技術革新
ません。これは主に出力デバイスのダイナミ
の一端を担いたいと思います。
トピックス
・現在イタリアのブレシア大学の画像符号化研究チームと共同で精力的に研究を行っています。
・Takao Jinno and Masahiro Okuda, "Motion Blur Free HDR Image Acquisition using Multiple
Exposures”, International Conference on Image Processing (ICIP), Paper Code: TA.PA.2, Oct,
2008. (神納貴生、Excellent Student Award of the IEEE Fukuoka Section、ひびきの賞最優秀賞)
・Masahiro Okuda and Nicola Adami, “JPEG Compatible Raw Image Coding Based on
Polynomial Tone Mapping Model,” IEICE Trans. on Fundamentals, Vol. E91-A No.10,
pp.2928-2933, Oct. 2008.等
奥田先生の研究内容に関する問い合わせ先
北九州市立大学 事務局管理課
電話:093-695-3311
FAX:093-695-3368
URL:http://www.kitakyu-u.ac.jp/env/index.html
85
福岡工業大学
情報工学科 谷口研究室
谷口 泰敏 講師
研究テーマ:
1.外耳伝導による会話システムに関する研究
2.送電線監視に関する計測技術
1.外耳伝導による会話システムに関する研究
応用分野・強み
研究の概要
マイクとスピーカーを耳内に装着して耳で聞いて
自分自身が話した音声が自分の耳に伝わるとき、
耳で話すので、耳を密封しておけば外部からも雑音
空気を伝搬して伝わる外耳伝導、耳の耳骨を伝わる
の影響を受けずに会話することが出来ます。このマ
骨伝導、さらに人体を伝搬して伝わる伝導がありま
イクとスピーカーに微弱な電波を発信する無線機を
す。 耳内にマイクを装着して音声を集音するとき、
取り付け携帯電話と通信すれば、問題にされている
電磁波の影響も軽減することが出来ます。応用分野
骨伝導を利用する方法があります。しかし骨伝導で
として音声タイプライタ、高騒音化での会話、全盲者
は高い音が極端に伝わりにくく、外来雑音の影響が
へのナビゲータ、両手が使える消火活動や警察活
激しいために、音の復元、雑音対策などの後処理が
動、自衛隊、携帯電話子機など多くの用途が考えら
大変です。
れます。
耳を密封しても外耳道内に空気振動が生じてい
耳の構造図
ます。この外耳道内に生じる空気振動を通常のマイ
クで集音すると広い範囲の音に対応出来、外来雑
音の影響を受けないという大きな特徴があります。
この原理を用いて会話するシステムの開発が本研
究です。この方式を実現する為の原理を平成21年4
月に特許取得(特許№4290623)しました。
研究をはじめたきっかけ
専門以外の方から、素朴な質問でマイクとスピ
トピックス
○表彰・受賞歴等
第14回中小企業優秀新技術・新製品賞
優秀賞 フォーレス情報通信端末機「マイクレスフォン」
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
(独)科学技術振興機構 JST 特許支援制度 (外国出
願(4カ国)補助)
○その他
著書 1件 査読論文 2件 論文 22件
口答発表 42件
国内特許出願 10件 国際特許出願 5件
特許取得 外国特許 2件 国内特許 1件
ーカーを一緒に置けないかとの問いに、カラオケで
マイクをスピーカーに近づけると「ぎゃー」といった激
しい発振ループが生じるので不可能と答えた。
これが発端です。解決策として発振ループを遮断
すればマイクとスピーカーの共存が可能になるので
は始めたのがこの研究です。
86
2.送電線監視に関する計測技術
研究の概要
現在、送電線のメンテナンスはヘリコプ
タなどを用いて目視や赤外線カメラなどで
調査して行っています。今回の研究で進
めている監視は、送電線に計測器を取り
付け超音波やサーモセンサーを利用して
直接監視を行うものです。
計測器を動作させる電源は、電磁誘導
を利用して送電線から取得するために電
池レスです。測定結果を無線で地上局に
送ります。そのため高度な絶縁対策も不要
これからの夢
となり、一度測定器を取り付ければ、数
十年は取り外す事なく監視することが出来ます。
研究をはじめたきっかけ
今まで得てきた技術(回路技術、コンピュータ技術、
プログラミング技術など)を基に専門外からの素朴な
疑問の解決や不可能と思われる事柄にチャレンジし
送電線の落雷対策に膨大な費用がかかると聞い
ていきたいと考えています。
ていました。カラスが送電線に止まっても感電しませ
ん。電磁誘導で電気をとれば電池レス、絶縁レスで
谷口先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡工業大学 総合研究機構
電話:092-606-3236
FAX:092-606-0636
送電線の監視が出来るのではと考えていました。
偶然にも企業から送電線監視の共同研究の依頼
があり、その考えを実現したいと始めたのが最初で
す。
応用分野・強み
管轄する送電線すべての監視を一カ所で行うこと
を可能にします。台風など監視が大変なときでも連
続監視が可能です。JR などの鉄道各社、製鉄所、
化学プラントなどでの送電線を利用している企業の
応用が考えられます。
87
九州工業大学大学院
情報工学研究科 ヒューマン・
コンピュータ・インタラクション研究室
吉田 香 准教授
研究テーマ:感性情報処理
応用分野・強み
研究の概要
情報システムを利用するユーザの反応を解析し、より
感性をコンピュータで取り扱うことができるようになれ
ユーザにやさしい情報システムを開発するためのヒュー
ば、さまざまな応用アプリケーションが開発可能です。
マン・コンピュータ・インタラクション。その中でも、わたし
例えば、わたしたちの感じ方に近い検索結果を得る
たちの感性をコンピュータで理解し、新しい情報システ
ことができる情報検索、欲しいと思っていたものをタイミ
ムの仕組みをつくる感性情報処理について研究開発を
ングよく見つけることができる情報推薦、喜怒哀楽を表
行っています。
現できるロボットなど。
強みは、わたしたちの暮らしをより楽しくより豊かにす
具体的には、さまざまなメディアから感性情報処理に
必要な特徴を見出す感性情報抽出技術、ひとりひとり
るための技術であるということです。
の感性モデルのプライバシを守る感性情報管理技術、
これからの夢
ユーザ同士の相違を観察しアプリケーション設計に役
ブロードバンドネットワーク環境や IC カードの普及に
立てる感性情報利用技術があります。
より、「いつでも」「どこでも」「だれでも」が便利な情報シ
ステムを利用することができるユビキタス社会が現実に
なってきています。
その中で、ユニークな視点による感性情報の抽出、
分析、統合、管理、応用を行い、コンピュータの専門家
でない誰でもが日常生活で使える情報システムの開発
を続けていきたいと思います。
また、情報検索や情報推薦だけでなく、感性を応用
した新たな情報ネットワークの仕組みやメディアアート
にも興味があります。
トピックス
○表彰・受賞歴
優秀発表賞(感性工学会・平成 16 年度)、
Best Paper Award(国際会議 ANNES'95・平
成 7 年度)など。
○公的支援策等活用状況
感性データベースと連携したパーソナルモデ
ル構築ツール(IPA 未踏ソフトウェア創造事
業・平成 12 年度)など。
○その他
IEEE、情報処理学会、日本知能情報ファジィ
学会、バイオメディカル・ファジィ・システム学
会会員。国際ワークショップ開催、論文誌編
集委員、国際会議プログラム委員など。
研究をはじめたきっかけ
わたしたちの感性、感情,主観などをコンピュータに
与えることができたらいいなと思ったきっかけは、スター
トレック(TNG)に出てくるアンドロイド Data。
Data は、24世紀の宇宙で人間の同僚とともに働き、時
には音楽を楽しみ絵を描くこともあります。残念ながら
感性がないために仕上がりはイマイチですが、個性や
嗜好が表れていると見ることもできます。九工大では、
電気工学、情報工学などを幅広く学び、これまでにコン
ピュータで扱うことは困難とされていた感性に着目して
吉田先生の研究内容に関する問い合わせ先
教官室 電話・FAX:0948-29-7626
E-Mail :[email protected]
九州工業大学 産学官連携センター
電話:093-884-3485
研究を続けてきました。これからも、"To boldly go
where no one has gone before"をモットーに、感性に関
する研究を続けていきたいと思います。
88
フロンティア
九州大学大学院
システム情報科学研究院
横尾研究室 横尾 真 教授
研究テーマ:不正行為を予防する
オークション方式に関する研究
研究をはじめたきっかけ
研究の概要
不正行為を働いても、それを無効とする新し
オークションのルール設計は、従来はミクロ
いインターネットオークションを実現するための
経済学の一分野として研究が進められていまし
技術について研究を進めています。不正行為
たが、インターネットの発達により、経済学と計
算機科学の境界領域での研究課題が生じてい
の影響を受けないオークション方式としては、
ることに興味を持ったことがきっかけです。
1996 年にノーベル経済学賞を受賞したウィリア
応用分野・強み
ム・ビックレーによるビックレー入札が著名であ
り、近年、検索エンジンにおけるキーワード広
誰もが安心して参加・利用できる電子商取引
告で広く用いられているところです。
の実現に不可欠な技術。
本研究ではビックレー入札が、インターネット
計算機科学分野の研究者として、理論的な
で生じる新しいタイプの不正行為である架空名
性質を保証するだけではなく、現実のネットワ
義入札 (一人の入札者が複数のメールアドレス
ークとコンピュータで実現可能なルールを設計
を用いて、複数の入札を行うこと) に対して脆
しています。
弱であることを示し、架空名義入札の影響を受
これからの夢
けず、社会的に望ましい結果が得られる新しい
オークションを含む様々な社会のルールの設
オークション方式を設計しています。
計 (学校選択制、CO2 排出権取引、腎移植ネ
ットワーク等) に対して貢献したいと考えていま
商品
架空名義入札
AIR LINE
AIR LINE
AIR LINE
1人が複数の名義(ID)
から入札し,不正に利益や
落札数を増やす
す。
トピックス
○平成 18 年 日本学士院学術奨励賞 (計算機
科学分野では初の受賞)
○平成 16 年 ACM SIGART Autonomous Agents
Research Award (過去 5 年間でエージェント分
野で優れた業績を残した研究者に与えられる
賞。アメリカ、ヨーロッパ以外の地域からは初
の受賞)
横尾先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州大学 大学院システム情報科学研究院
電話:092-802-3585
FAX:092-802-3576
URL:http://lang.is.kyushu-u.ac.jp/~yokoo
91
九州大学 高等研究機構
ヒューマンセンタード
ロボティクスプロジェクト
杉原 知道 特任准教授
研究テーマ:人型ロボットの
力学・制御と運動知能
研究の概要
これは大きな強みです。また卖純作業用ロボットで
はなかなか見えてこない困難が、人型ロボットを研
究することによって明るみになることもしばしば
あります。
現在の人型ロボットたちは、活動する環境に関す
る十分な知識と動き方のお手本まで与えられてい
なければ動けません。未知の環境で頑健に振る舞う
ために、環境を含めたロボットの力学系を「変容す
る自励系」として設計する新たなパラダイムを開拓
しています。
人型ロボット開発には理論的な難しさと実装上
の難しさが渾然としており、総合的な技術が必要で
す。その全てを同時に手掛け、多角的に問題をとら
えることを心がけています。
人型ロボットが、卖なる「歩く人形」から真に役
立つパーソナルツールとなるために必要なことは
何かを、主に力学・制御の側面から研究しています。
具体的な頄目は、
1. 人型ロボットのマルチスケール力学に基づく
制御とシミュレーション
2. 高機動人型ロボットメカニズムの設計開発
3. 大 規 模 シ ス テ ム の 発 展 的 開 発 が 可 能 な 人 型
ロボット用ソフトウェアアーキテクチャ
4. 人型ロボットの運動表現・運動設計と操縦
などです。
これからの夢
華やかな印象と裏腹に、人型ロボットが実用にた
どり着くまでの技術的課題は、どれもが地味で困難
で、同時に様々なロボットの本質にかかわるもので
もあります。既成の技術に目を眩まされず、新たな
スタンダードを作っていきたいと考えています。
トピックス
研究をはじめたきっかけ
もともと人の知能、特に意志決定のメカニズムに
興味がありました。いろいろ調べていくうちに、一
見知的な人の振る舞いは身体構造や力学に強く支
配されていると考えるようになり、人型ロボットの
研究を大学での卒業論文テーマに選びました。興味
本位で始めた研究でしたが、問題の奥深さ、また未
来のパーソナルツールとしての人型ロボットの可
能性に魅せられ、研究者として携わることを決心し
ました。
応用分野・強み
専門家でない人が専門的でない作業のために使
う汎用機械として、人型という形体は潜在的に優れ
たユーザインタフェースとなります。非産業分野へ
のロボットの進出がなかなか成らない現状で、
 平成 19 年 9 月 第 21 回日本ロボット学会論文賞
 平成 18 年 10 月 RSJ/SICE Award for IROS2005 Best
Paper Nomination Finalist
 平成 18 年 9 月 第 21 回日本ロボット学会研究奨励賞
 平成 17 年 12 月 Best Paper Award in 2005 IEEE-RAS
International Conference on Humanoid Robots
 平成 17 年 3 月第 10 回ロボティクスシンポジア最優秀論
文賞
 経済産業省平成 19 年度ロボット分野アカデミック・ロード
マップ工学系融合領域 WG 執筆委員
杉原先生の研究内容に関する問い合わせ先
九州大学
電話:092-802-3853
FAX:092-802-3850
92
URL http://www.ssp.isee.kyushu-u.ac.jp/~sugihara/
E-Mail:zhidao@ieee.org
自然科学一般
長崎大学工学部
材料工学科 高次構造材料学研究室
本九町
卓
助教
研究テーマ:水溶性多分岐高分子の合成
研究の概要
コアに分岐ポリアミンであるポリエチレンイミン、
シェルに分岐ポリエーテルであるポリグリシドール
という異なる組成を持つコア-シェル型多分岐高
分子(CS-HBP)を合成しました。
CS-HBP は、水中に溶解させることで、通常用い
られる界面活性剤と同様に疎水性物質を取り込
む(可溶化する)ことを明らかにしました。また、
CS-HBP の可溶化量は、pH によって変化すること
応用分野・強み
を明らかにしました。この際に、CS-HBP の凝集は
起こらず、一分子が独立して、物質を包摂-放出
私が合成した CS-HBP は、ポリアミンが高分子
することを明らかにしました。
量の分岐ポリグリセロールに覆われています。こ
のため、分子間での凝集を起こしませんので、こ
れまでの界面活性剤のように泡立ちが起こりませ
研究をはじめたきっかけ
ん。また、濃厚溶液であっても、溶液の粘度が非
通常の界面活性剤は、分子が凝集することを
常に低く取扱いが簡便です。
利用して疎水性物質を可溶化しているため、濃度、
温度などの条件によって凝集構造が変化し、泡
これからの夢
立ちや、溶液粘度が変化するという問題がありま
す。そこで、界面活性剤が凝集した状態と同じ構
現在は、工業を意識して塗料、接着剤、潤滑オ
造を持つ分子を合成すれば、形態を保持したまま
イルの粘度調整剤、触媒調製などに用いることを
疎水性物質を可溶化することが可能になると考え
考えていますが、ポリグリセロールは、生体適合性
ました。
の高い材料ですので、医薬品、化粧品などにも利
用可能だと考えています。
トピックス
○エラストマー討論会優秀発表賞
○都市エリア事業(発展型: 20 年度)
○PCT 公開: 1 件、EPC 公開: 1 件、
国内出願特許: 9 件 学術論文多数
本九町先生の研究内容に関する問い合わせ先
長崎大学 共同研究交流センター産学連携部門
電話:095-819-2227 FAX:095-819-2228
URL:http://www.jrc.nagasaki-u.ac.jp/index.htm
95
大分大学 工学部 応用化学科
石川 雄一 准教授
研究テーマ:(1)イオン液体の機能化、(2)地域
一次産品の科学的ブランド化
(例:燃料作物、食用作物の増産剤開発、
抗アレルギー食品の開発)
カーのカメルーンで有名な中津江にあ
る(株)つえエーピーから販売されてい
ます。是非、御試飲して頂けると、きっ
と気に入って頂けると思います。良い味
です。
(tennensouko.com/index.html)
研究をはじめたきっかけ
国立大学の独立法人化前の平成 14
年までは、基礎研究こそ大学の使命で
あると考えていました。ある面、実学
を軽蔑していたところもあったかと
反省しています。平成14年に、
産廃として処理に困っている貝殻を農業用に溶
研究の概要
解させてほしいとの地場企業からの依頼に、安請
け合いしたのが、地域経済の活性化に興味を持つ
本業は、有機合成です。今は、色んな構造の室
温で液体のお塩(イオン液体)を合成しています。
契機となりました。開始しみると、有機認証の範
囲で、しかも低コストでとの条件があり、大変で
この傍ら、農作物の樹勢を高める葉面散布剤を地
した。幸運だったのは、企業側の担当者の方と信
場の企業と一緒に商品化しました。バラなどのお
頼関係を築く事ができた事です。ヒトと人の信頼
花にも良く効きます。葉のてかりなど効果が視認
が作れた事です。産学官の連携も、この信頼が大
できますので、プロの農家に方に限らず、家庭園
変に重要だと考えています。この信頼関係を得る
芸にご興味をお持ちの方も、使用して頂けるとあ
ことができたおかげで、産学連携の面白さを体感
りがたいです。詳しくは、共同開発先のファーム
し、葉面散布剤や、アレルギーマウスの IgE 抑制
テック(株)の HP をご覧下さい。私も執筆して
おります。お勧めの商品は玄人向けの「ルビスク」
能などの発見に展開できました。
と、初心者向けの「酢糖Mg」です。
応用分野・強み
(http://www.saiki.tv/~farmtec/index.html)
大分県日田地域の特産柑橘果皮のエキスは、ア
レルギーモデルマウスの異常に増えた IgE 抗体
植物の樹勢を高める散布剤は、トウモロコシな
を減らす事を大分県立看護科学大学と共同で確
ど C4 植物の実と茎の双方を増収させる事ができ
認しました。これを受けて、果皮エキスを特徴と
ます。これは、
「燃料作物の増収」を意味します。
した美味しい柑橘飲料の商品化に活用しました。
アフリカ、インド、東单アジアでジャトロファな
商品名は「柚子の力」です。こちらは、サッ
ど、食料ではない植物からバイオ燃料を得る事業
96
が動き出しています。このバイオ燃料マネー市場
これからの夢
に、植物の樹勢を高める散布剤を展開できる強み
純粋に化学と戯れる傍ら、自らが関与して世の
があります。
中に送り出した商品で、低炭素化や燃料作物栽培
柑橘果皮の利用は、マウスの抗アレルギー成分
地域の貧困問題解消などに貢献してみたいと夢
の分子構造を明確化し、花粉症などアレルギー市
見ております。また、世の経済が良い方向に回る
場で展開できる強さがあります。
ような科学的な貢献を行い、経済を意識した産学
連携を、そして、海を渡った産学連携を、経済効
果といった豊かな実をつける形を出しながら継
続していきたいと考えています。
トピックス
○最近の研究費補助金
・おおいた地域資源活性化基金助成金(大分県、平成 21 年卖年度事業)、900 万円、ユズ抽出液を活用
した「携帯型」抗アレルギー食品の試作とヒトを含めた動物実験による抗アレルギー能の科学的評価
・地域新生コンソーシアム研究開発事業(経済産業省、平成 19、20 年度)、4500 万円、日田産ユズの免
疫制御成分を活用したアレルギー軽減飲料の開発
・大分県新産業創出重点研究開発事業 (大分県、平成 19 年度、448 万円/2726 万円)、抗アレルギー能
を科学的に実証した林産物ブランド保健食品の開発
○最近の科学研究費(文部科学省)関係で活用した研究費補助金
・萌芽研究、(代表)、平成 19-20、260 万円、高圧下のイオン液体から生まれる反応基礎とグリーン特性
・基盤研究(B)、(代表)、平成 16-17、1400 万円、イオン性液体の機能化-作動する媒体「戦う媒体」へ
のパラダイムシフト
・基盤研究(B)、(代表)、平成 14-15、1500 万円、液液界面で組織化する多親媒性分子膜
石川先生の研究内容に関する問い合わせ先
大分大学イノベーション機構リエゾンオフィス
電話:097-554-7430
FAX:097-554-7740
URL:http://www.innovation.oita-u.ac.jp/index.html
97
宮崎大学
フロンティア科学実験総合センター
農学部生物環境科学科
明石 良
教授
研究テーマ:生物遺伝資源の収集・保存および
その育種的利用に関する研究
いてきました。また、南九州および沖縄で
盛んに栽培しているゴーヤ(ニガウリ)の遺
伝資源とその効能や未利用資源である種
子成分にも興味を持ち、有用遺伝資源の
探索とその利活用に関する研究も進めてき
ました。
研究の概要
応用分野・強み
ミヤコグサは、アジアの温帯地域に広く分布する多年
生の野草であり、草丈が低く、ゲノムサイズが小さく、世
これまでにミヤコグサにおける多くの生物学的知見
代時間が3ヶ月程度である等の特徴からモデルマメ科
および研究成果を蓄積しており、また、全ゲノムも解読
植物として利用されています。一方、シバはC4型の暖
されたことから、これらの情報を用いてダイズ等の他の
地型イネ科植物で、北海道南部から九州以南の沿岸
マメ科作物の育種に利用します。一方、シバでは、ここ
地域に自生しており、特に南西諸島では多様な生態型
数年間で宮崎大学において全ゲノムの解読を試み、そ
を有し環境適応性能力が高いことが知られています。
の基本情報を蓄積して環境適用性遺伝子等の探索に
私は、これらの植物種から得た生物学的および分子
努め、他のイネ科作物の育種に応用したいと考えてい
遺伝学的な基本情報により有用遺伝子を探索し、その
ます。また、単離したゴーヤ由来レクチン遺伝子を用い
機能を明らかにするとともに、遺伝子組換え技術を用い
て、植物培養細胞に導入し発現させ、安価で大量に精
た分子育種により新規な機能性作物を作出していま
製する異種タンパク質発現系の構築を目指しています。
す。
これらのレクチンは、医学生物学的ツールとしての利用
また、ゴーヤはアジア原産の蔓性植物で、ビタミンC
性が高いものとなっています。
が豊富で、夏バテや糖尿病予防に効果があります。
これからの夢
私は未利用資源であるゴーヤの種子からレクチンを
抽出して、生理学的機能の解明と、その糖特異性を利
用した血液検査試薬等の開発も行いました。
研究をはじめたきっかけ
人類は、農業の生産性の向上や食生活の豊かさに
九州は気候が温暖で、農作物を栽培しやすいことか
ら日本の食糧基地として担っていけるような基盤研究を
行うとともに、中国と韓国に地理的にも近いことから、東
アジアにおける生物資源の拠点およびリーダーになれ
るように研究・教育を進めていきたいと思います。
伴って、突然変異や自然淘汰によって創り出された地
トピックス
○平成 10 年度日本草地学会研究奨励賞
球上の多様な植物遺伝資源を利用して様々な農作物
の品種改良を行ってきました。私は学生時代から「生物
遺伝資源の多様性」に興味を持ち、日本在来のマメ科
明石先生の研究内容に関する問い合わせ先
宮崎大学 産学連携センター
電話:0985-58-4017
植物であるミヤコグサとイネ科植物であるシバに注目し
て、これらの遺伝資源を収集・保存して研究材料に用
98
社会基盤
福岡大学 工学部
社会デザイン工学科流域システム研究室
渡辺
亮一 准教授
研究テーマ:水循環再生に向けた雨水貯留・
浸透型グラウンドの開発に関する研究
研究の概要
人工芝サッカー場の表
面の平均温度 24.3℃
昨年は、ゲリラ豪雤に伴う都市型水害が全国各地
で頻発し、安全安心な生活が脅かされています。福
岡市も例外ではなく、いつ都市型水害が発生しても
おかしくない状況です。都賀川(神戸市)で発生した
アスファルト道路表面
の平均温度 32.0℃
都市型水害は、その発生原因が住宅地からの雤水
の排水であることが、土木学会の調査により確認さ
れており、都市域における健全な水循環の再生が
求められています。
私たちが行っている研究では、公共用施設のグラ
ウンドで雤水を一時的に貯留し、河川への負担を軽
減するとともに流量ピークを集中させないような技術
これからの夢
を開発することにあります。
研究をはじめたきっかけ
私の夢は、都市部で失われた水循環を市民の手
で再生していく技術を開発することにあります。これ
この研究の最初に出発点は「打ち水」にあります。
まで、どちらかと言えば行政にのみ任せていた環境
2004 年に始まった「福岡打ち水大作戦」において、
への取り組みを市民レベルで行っていける技術がこ
保水性・透水性の高い土壌材料の開発を地場のコ
れからは必要になってくると考えています。
ンサルタント企業と行っていました。その流れの中で、
福岡大学内に置いて人工芝サッカー場の路盤材と
して実際にこの土壌材料を実証実験する機会に恵
まれ、画期的な研究成果を得ることが出来ていま
す。
応用分野・強み
トピックス
○平成 20 年度「福岡水もり自慢」グランプリ
「福岡大学人工芝サッカー場」
平成 21 年度以降も引き続き、福岡市との連
携を取りながら、都市域における雤水貯留・
浸透技術の開発を行っていく。
この研究の初期の目的は、雤水の一時的な貯留
および浸透にありました。この部分は、研究を進めて
いくうちに、十二分に達成することができましたが、
副次的な効果として、グラウンド(人工芝サッカー場)
上の温度が低下することが明らかになりました。この
効果は、都市部におけるヒートアイランド対策として
渡辺先生の研究内容に関する問い合わせ先
福岡大学 産学官連携センター
電話:092-871-6631
(内線2831~2833)
FAX:092-866-2308
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp/
非常に注目され始めています。
101
産業医科大学
産業生態科学研究科 作業病態学教室
八幡
勝也 准教授
研究テーマ:医療情報学、健康情報学、産業保健、
遠隔医療、PHR(Personal Health Record)、
セキュリティ、オントロジー
研究の概要
生涯にわたる健康情報を IT 技術を用いて利活用す
る研究を行っています。
生 涯 に わ た る 健 康 情 報 (PHR:Personal Health
Record)のためには、そのための情報構造と、そのベー
に取り組んでおり、丁度 XML の黎明期で医療情報の
記述方式である MML の活動に参画しました。
その後、セマンティック WEB の進歩や各種の基礎的
な情報技術の進歩により、体系的にリスクと人体情報の
記述が可能となってきたので、現在その構造に取り組
んでいます。
応用分野・強み
スとなるオントロジー、つまりセマンティック web について
検討しなければなりません。従来の健康情報管理は、
医療情報の枠の延長で捉えられていますが、医療は保
健の一部であることと社会的個人的要素を広範囲に捉
える必要があることから、別の枠組みが必要と考えられ
これは、現在政府で検討されている、特定健診・特
定保健指導のデータベースや電子私書箱などと連携
するための基礎技術です。よって、データを元に各種
の解析を行う際に利用可能です。
ます。
また、それらの健康情報の利活用する際には、個人
情報保護、セキュリティ、PKI(Public Key Infrastructure)
などの技術運用が必要であるので、その研究を行って
また、遠隔保健指導は、保健指導における時間的、
物理的制約を下げ、市民にとって健康相談サービスが
身近なものとなります。
これからの夢
います。
さらに産業保健現場での遠隔保健指導の技術、経
済、法的検討を行っています。
健康な職業生活、社会生活を支援することで、より活
力ある社会に貢献したいと考えています。
ICT は現在技術の視点で捉えられていますが、生活
に寄り密接且つ自然な存在として利用されると考えて、
その方向を目指しています。
研究をはじめたきっかけ
産業医として企業の健康管理を行っている時に、業
務というリスク要因と身体の情報をどのように連携させて
データベースを構築するべきか検討を行っていました。
トピックス
○公的支援策等活用状況(事業名・年度)
厚生労働科学研究費(地域医療基盤開発推進研
究事業)「電子私書箱と連携した保健医療情報の
安全な利活用を促進する医療情報ネットワーク
基盤整備の技術的方策に関する研究」(平成20
~22年度)
○その他(論文数等特記事項)
東亜大学客員教授、日本医療情報学会評議員、
同編集委員、IT ヘルスケア学会理事、同編集委
員長、日本産業衛生学会代議員、「上級医療情
報技師」育成指導者、「診療情報管理士」専門コ
ース講師、「病院経営管理士」講師
その頃、電子カルテの研究と施設間情報連携の仕事
八幡先生の研究内容に関する問い合わせ先
産業医科大学 産学連携・知的財産本部
電話:093-280-0532
FAX:093-602-5482
URL:http://www.uoeh-u.ac.jp/JP/university/cooperation/index.html
102
人文・社会科学
その他
九州工業大学大学院
工学研究科環境デザイン研究室
伊東
啓太郎
准教授
研究テーマ:環境デザイン、生態学、都市
緑化
応用分野・強み
研究の概要
都市の緑には、大きなものでは、公園、街路樹、
生態系に配慮した都市環境のデザイン。
神社の森などがあります。最近では、屋上緑化によ
例えば、環境配慮型の材料開発、都市の水辺、緑
る小規模な緑や人工のビオトープ、アトリウムなどが
のあり方、屋上緑化のデザインなど。
あります。
これらの都市の緑は、ただ美しいというだけではな
く、人の心をほっと させることができたり、生き物の
すみかになったり、暑い夏の気温を下げたりと、とて
も重要な働きをもっています。
このような都市や地域の緑のデザインについて、
子どもたちや住民の人たちと共同で設計を行いなが
ら研究を進めています。
また、ノルウェーなどの北欧地域において、生態
これからの夢
快適な都市環境をいかにしてデザインしていける
かということに興味があります。
自分たちの手で創り、協働によって育てるプロセ
ス。
緑のデザインを通して、豊かな環境を創り、人をつ
ないでいくこと。
学・心理学の考えに基づいた環境デザインに関する
国際共同研究を行っています。
研究をはじめたきっかけ
学生時代から、約 40 ヵ国を旅してきて、都市や地
域の豊かさとはなにかということについて考えようと
思ったのが、現在の研究のきっかけです。
ある夏、都市緑化に役立つ素材のことを考えてい
ました。もし、日本の伝統的材料の漆喰をつかって
植木鉢をつくったら、植物にどんな影響や効果があ
るだろうか、このテーマは面白そうだなと思いました。
また、漆喰の壁に被われた建物の内部が、夏でも涼
しいことにとても興味を持っていました。
このようなことが、しっくい植木鉢(エコポ)を開発し
たり、環境のデザインを考える基礎になっていると思
います。
トピックス
○平成 17 年産業デザイン賞 大賞「手作
り漆喰植木鉢キット・エコポ」
○平成 18 年グッドデザイン賞「手作り漆
喰植木鉢キット・エコポ」
○平成 19 年キッズデザイン賞 金賞「福
岡市立壱岐单小学校ビオトープ」
伊東先生の研究内容に関する問い合わせ先
研究室
ブログ:http://d.hatena.ne.jp/tapio/
メールアドレス:[email protected]
九州工業大学 産学官連携センター
電話:093-884-3485
105
九州工業大学大学院
生命体工学研究科生体機能代行
システム研究室
和田
親宗
准教授
研究テーマ:福祉・リハビリ支援器
の開発研究
その結果をもとに遠隔からリハビリ指導を行いま
研究の概要
す。また、歩容状態をリアルタイムに見せることで
高齢者や障害者の「できない」ことを「できる」よ
リハビリ当事者もどのように歩き方を直せば良いか
うに、人の特性計測の結果をもとに工学的に支援
を知ることができます。
する装置や方法の開発研究を行っています。ここ
研究をはじめたきっかけ
では、二つの研究を紹介します。
一つ目は、視覚障害者の歩行支援に関する研
困っている人に直接役に立つ物を作りたいと
究で、障害物の存在する方向や目的地の方向を
思い、福祉工学のパイオニアである伊福部達先
直感的に知らせることで単独歩行を支援しようと
生に師事、人の特性計測をもとにした研究方法論
するものです。聴覚を邪魔しない触覚刺激を利用
を学びました。その後、縁あって九州に移り、歩行
し方向を知らせています。研究の結果、上図のよ
訓練士・視覚障害者・理学療法士やリハビリ医師
うに、頭部へ刺激を呈示することで特定の方向を
などの話を聞くうちに、本研究を始めることとなりま
惹起させられ、障害物の方向を知らせることや目
した。
的地まで 誘
導すること
が可能とな
ります。
二つ目は、
α
伝えたい
方向
頭部を上から
見た図
β
一つ目の研究結果と歩行者ナビゲーションシス
頭部への
触覚刺激
テムを組み合わせることで、視覚障害者が街中を
α =β
単独で安心して歩けるようになります。また、研究
「いつでもど
こでも歩行リ
応用分野・強み
惹起された
方向
結果は訓練を要せず誰でも使うことができるため、
評価通知
リハビリ指導
改善方法の理解
例えば煙などで視覚情報を遮られている際の避
ハビリ」を実
難誘導装置としても応用可能です。二つ目の研
現するシス
究が完成すると、現在は病院でしか行われていな
テムの計開
い歩行リハビリを自宅で行うことが可能となります。
データ解析
発研究です。
下図にある
ように、セン
日常生活でリハビリを行うことでリハビリ頻度が増
無線による
データ伝送
え効果が高まると考えられます。また、歩行距離を
靴型計測装置
正確に計ることができるため、ナビゲーションで用
サ付きの靴
いられている GPS 計測で生じる誤差を修正でき、
を履くだけで、無拘束で簡便に歩行特性を計測、
より正確な歩行者ナビゲーションシステムへの応
そのデータを病院に伝送し、医者や理学療法士
用も可能です。
が評価します。
106
これからの夢
福祉機器やリハビリ機器は、研究段階で終わっ
てしまうと意味がないため、最終的には製品化ま
で行い、成果を社会へ還元したいと考えています。
可能であれば、九工大ブランドや北九州ブランド、
九州ブランドをつけた製品・商品を作りたいと思っ
トピックス
○研究内容や発表論文等の詳細について
は、ホームページ参照
http://www.life.kyutech.ac.jp/~wada
○毎年、西日本国際福祉機器展(例年 11 月
中旬、北九州小倉にて開催)に研究成果
をデモ展示し来場者に体験してもらってい
ます。機会があれば是非体験してくださ
い。
ています。
和田先生の研究内容に関する問い合わせ先
大学院生命体工学研究科
電話:093-695-6048、093-695-6058
FAX:093-695-6048
E-mail:[email protected]
URL:http://www.life.kyutech.ac.jp/~wada
九州工業大学 産学連携推進センター 電話:093-884-3485
107
佐賀大学 文化教育学部
地域・生活文化講座
甲斐 今日子 教授
研究テーマ:よりよい衣生活で健
康・環境改善を図る
このように実生活での
事象を基礎研究で証明す
ること、逆に、基礎研究を
実生活で忚用できるよう
にすること、これが家政学
の真骨頂であると考えて
います。
研究の概要
被服衛生学を専門分野として、衣生活を中心と
した人の健康や環境問題に関わる実践的研究を
行っています。
具体的には、
(1)ペースメーカー使用者のた
めの電磁波シールド衣服の開発、(2)企業の受
託研究による洗剤不要の台所用スポンジ(旭化成
ホームプラダクツ株式会社「ズビズバ® 」の開発、
(3)おむつの研究、(4)冷房環境と女性の冷
えとの関連、(5)子供のアレルギーに関連する
シックスクール調査、(6)ファッション性の高
い衣服の生体への負担について、(7)災害弱者
の生活支援に関する研究等を行っています。
研究をはじめたきっかけ
専門分野である被服衛生学は環境衛生学に位
置付けられます。家政学部で被服衛生学を学んだ
私は、衣生活と健康に関わる研究を進める上で、
医学的な知識が必要であることを実感していま
した。そこで、1995年、文部省内地研究員研
修制度を利用して、医学部(当時は佐賀医科大学)
に研修に出ることにしました。そこで、医学部の
先生方にご指導頂きながら研究を進めていまし
た。
そんな時、皮膚科の先生から「手荒れ(接触性
皮膚炎)のひどい患者さんに、ハンドメイドのア
クリルたわし(ズビズバの原型で、当時から洗剤
を使用しなくても食器が洗えるということで環
境問題に関心の高い人の間で流行していた。)を
推奨しているが、その洗浄性についてはデータが
ない。本当に汚れは落ちているのだろうか。洗浄
力を示す実験をして欲しい。
」とのお話しをいた
だきました。はりきって実験を繰り返し、まとめ
た論文が学会誌に掲載され、企業の目に留まり、
共同研究へと発展していきました。
応用分野・強み
「おむつの研究」は約2
0年以上続けており、研究成果は「たまごクラブ」
等の生活情報誌に掲載し、広く情報を提供してい
ます。世界中のおむつを集め、機能性、着心地、
使い勝手について更なる研究を進め、また、 紙
と布おむつの違いによるおむつ離れの影響につ
いても調査を進めているところです。
電 磁波シ ールド 衣服
については、電磁波シー
ルド性試験方法の検討
や各種電磁波遮蔽布の
シールド性能の評価、洗
濯による消費性能比較、
装着シミュレーション
実験の確立等、環境基礎
講座の中村研究室と共
同で更なる研究を進め
ています。
これからの夢
今後も、人の健康と生活の安全に関わるような
研究を進めていきたいと思っています。
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甲斐先生の研究内容に関する問い合わせ先
佐賀大学 産学官連携推進機構
電話:0952-28-8965
FAX:0952-28-8186
URL:http://www.alis.saga-u.ac.jp
産業医科大学
産業保健学部 産業・地域看護学講座
原
善子
助教
研究テーマ:労働者の Quality of Working Life
を高めるための疫学研究
研究の概要
これからの夢
職業生活において強い不安やストレスを感じる
個人的にはワークラ
労働者は 6 割を超え、さらに業務による心理的負
イフバランス が保てて
荷を原因として精神障害を発症する事案が増加
いないため、公私のバ
しています。さらに、昨今の経済不況により労働
ランスを保つこと。
社会的に は労働者
者のおかれている環境は益々厳しくなっていま
が職業生活を通して、
す。
豊かで幸福な生活が
このような環境においても、職場のパフォーマ
研究グッズ
ンスを向上させ、活力ある職場を維持できる因子
送れる社会の実現に
およびこれらを測定するための質問紙の開発を行
寄与すること。さらには社会に貢献できる産業保
っています。具体的には職業性簡易ストレス調査
健師の育成を目指すことです。
票 、 職 場 活 力 調 査 票 、 Sense of
Coherence
トピックス
(SOC)、Quality of life (QOL)、Quality of working
life (QWL)などの心理・社会的尺度を用いて、疫
学研究を行っています。
研究をはじめたきっかけ
企業にて保健師として勤務し、労働者の健康
管理に従事してきた経験から、労働者が活き活き
と働ける職場環境づくりの重要性を感じています。
労働者が元気に働ける環境や組織の形成は、休
職者数や医療費を減らすだけでなく、ひいては生
産性の向上や利益の増益に繋がると考え、九州
大学大学院に進み、健康面より労働者の Quality
○論文数等特記事項
・平成 20 年研究実績 論文 6 編 (うち英文 1 編)
・学会発表 6 編(うち英文 1 編)
『メタボリックシンドロームの発現要因に関す
る疫学的研究-勤労男性を対象とした前向き
コホート研究-』
『特定保健指導のアウトソーシング先に関す
るクオリティ評価ガイド開発』
『Effect of Work Conditions and Work
Environments on the Formation
of 8-OH-dG in Nurses And Non-Nurse
Female Workers』
『嘱託精神科医による管理監督者向け個別
教育に対するニーズ』 等
of working life について研究を始め、現職に至っ
ています。
応用分野・強み
人材育成、組織形成、人事考課、健康管理、
健康支援など。
原先生の研究内容に関する問い合わせ先
産業医科大学 産学連携・知的財産本部
電話:093-280-0532
FAX:093-602-5482
URL:http://www.uoeh-u.ac.jp/JP/
university/cooperation/index.html
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