...

経営者が 60~64歳の企業の 6割強で後継者が未定

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経営者が 60~64歳の企業の 6割強で後継者が未定
中小企業経営の意思決定をサポートする戦略情報誌
事業承継2014
ISSN 0919-5696
─差し迫る後継ぎ問題
事業承継2014
─ 差し迫る後継ぎ問題 中小企業の出口戦略 ─
アベノミクス進展における
事業承継を含めた出口戦略
中小企業の出口戦略─
June 2014
Vol.128
6
June 2014
Vol.128
事例に学ぶ事業承継
増収増益企業350社(10〜12月決算期)
VOL.128 Jun 2014
TDB 調査報告書の読み方セミナー
連 載
データ
中小企業の
“目利き”
経済ワンポイント解説
レビュー・プレビュー
TDB 経済統計
主な企業の合併・商号変更・上場一覧
内容見本
TDB REPORT
VOL.128
事業承継2014
特集
− 差し迫る後継ぎ問題 中小企業の出口戦略 −
第1章
アベノミクス進展における
事業承継を含めた出口戦略
4
[第1節]事業承継を含めた出口戦略
[第2節]インタビュー 専門家に聞く出口戦略
10
税理士法人レガシィ 代表社員税理士 天野 隆 氏
13
辻・本郷 税理士法人 執行理事 税理士 楮原 達也 氏
資本戦略営業部長 事業承継コンサルタント 秋月 智尋 氏
16
株式会社レコフ 事業承継 M&A 相談室 部長 荻村 昇二 氏
19
みらい総合法律事務所 弁護士 谷原 誠 氏
22
【第3節】全国オーナー企業分析
26
【第4節】全国オーナー企業260社
44
【第5節】後継者不在企業分析
TDB REPORT128号
「事業承継2014 -差し迫る後継ぎ問題 出口戦略には、株価対策や税務対策を行い、親族内承継、親族外へ
中小企業の出口戦略-」
では、
企業の
「事業承継」
をテーマに取り上げる。
の第三者承継、事業売却を行うほか、場合によっては廃業といった選
アベノミクスの進展により景況感は改善しつつあり、資産インフレ
択肢がある。第1章では、税理士や M&A コンサルタントなどへのイ
や業績向上による株価上昇により、後継者への株式譲渡に頭を悩ませ
ンタビューを通じて、中小企業の経営者が選択し得る出口戦略を提示
ている経営者も存在する。また、帝国データバンクが行った「オーナー
したほか、全国オーナー企業、後継者不在企業について分析・考察し
企業分析」では、経営者が60~64歳の企業の6割強で後継者が未定で
た。第2章では、事業承継を成功させた企業、支援企業へのインタビ
あるなど、同族経営の多い中小企業を中心に、事業承継は依然として
ューを通じて、事業承継を成功させるための要諦を探った。
大きな経営問題となっている。そのため、政府は日本再興戦略や骨太
事業承継が進んでいない現状を鑑みれば、経営者にとって喫緊の問
方針において、円滑な事業承継を支援する方針を打ち出している。こ
題として認識されているとは言いがたい。本誌の購読が、事業承継と
うしたなか、今号では、資産承継や後継ぎ問題への対応方法を含む、
向き合うきっかけとなれば幸いである。
中小企業の事業承継における出口戦略について考察する。
第2章
事例に学ぶ事業承継
64
[第1節]事業承継を成功させるための要諦を探る
[第2節]インタビュー 企業に聞く事業承継成功のヒント
連載・
データ
68
株式会社四五コーポレーション 代表取締役社長 大塚 逸平 氏
71
株式会社三浦屋 代表取締役社長 内川 義雄 氏
74
サーチファーム・ジャパン株式会社 代表取締役社長 武元 康明 氏
77
マグネットミーン株式会社 代表取締役社長 奥村 聡 氏
80
増収増益企業350社(10~12月決算期)
98
TDB 調査報告書の読み方セミナー
102
中小企業の “ 目利き ”
106
経済ワンポイント解説
110
レビュー・プレビュー(2014年4~9月)
112
TDB 経済統計
114
主な企業の合併・商号変更・上場一覧(2014年4~5月)
125
TDB REPORT ONLINE のご案内/“TDB REPORT 掲載 DATA” 収録の今月号のデータ
第1章
アベノ
ミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
[第1節] 事業承継を含めた出口戦略
差し迫る後継ぎ問題と事業承継を含めた出口戦略
経営者の高齢化の進展と後継者不足により、同族経営の多い中小企業において、親族内に後継者が
いないことによる事業承継難は大きな経営課題となっている。
また、政府の日本再興戦略や骨太方針においても、円滑な事業承継を支援する方針が打ち出され、
関心は高まっている。
景況感の改善にともない、資産インフレや業績向上による株価上昇により、後継者への株式譲渡に
頭を悩ませている経営者も存在する。事業承継には、親族内承継、親族外への第三者承継、事業売却、
廃業などさまざまな出口が存在する。当節では、後継者不在の現状と課題をさぐりながら、事業承継
を含めた出口戦略のポイントについて考察する。
1
1章
第
ものの2010 年以降は低下傾向が続き、2013 年は
差し迫る後継ぎ問題
3.67%と前年比0.06 ポイント増加したものの、依
アベノミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
後継ぎ問題を考察するうえで、高齢化の進展と後
然として低水準にある。
(表1)
継者不足の深刻な状況を把握する必要がある。
高 齢 化 の 進 展 を 裏 付 け る 別 の デ ー タ も あ る。
帝国データバンクが行った
「2014 年全国社長分
2014年度版中小企業白書によると、年齢別の自営
析」
では、経営者の高齢化が進む一方で、後継者へ
業主の推移では1982 年時点で、30~40 歳代の自
のバトンタッチが進んでいない企業が増加してい
営業主が分厚く存在していた。年々、高齢者が占め
ることが浮かび上がる。
る割合が高まってきており、2012 年には、60~
社長の平均年齢の推移を見ると、一貫して上昇を
64 歳が全体に占める割合が最も高い年齢層となっ
続けており、2013 年には58.9 歳と過去最高齢を
ている。70 歳以上の年齢層が占める割合は、過去
更新するなど、社長の高齢化が進んでいる実態がわ
と比較しても最も高くなっている。
かる。また、社長交代率
(過去1 年の間に社長の交
このような状況下において、後継者の決定状況は
代があった企業の比率)
の推移を見ても、波はある
どのようになっているのだろうか?
表1 社長の平均年齢と交代率の推移
(歳)
60.0
(%)
5.0
57.5
4.5
55.0
4.0
52.5
3.5
50.0
0
平均年齢(左軸)
1990
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
0
13 (年)
年
交代率(%)
平均年齢(歳)
1990
4.58
54.0
91
4.96
54.3
92
4.89
54.5
93
4.91
54.8
94
4.06
55.1
95
3.86
55.4
96
4.16
55.6
97
3.98
55.9
98
4.23
56.1
99
4.19
56.3
2000
4.09
56.6
01
4.30
56.8
年
交代率(%)
平均年齢(歳)
2002
4.17
57.0
03
4.28
57.2
04
4.15
57.4
05
4.09
57.7
06
4.25
57.9
07
4.36
58.1
08
4.22
58.2
09
4.34
58.3
10
3.90
58.4
11
3.88
58.5
12
3.61
58.7
13
3.67
58.9
出典:帝国データバンク
「全国社長分析」
(2014年1月発表)
4
3.0
交代率(右軸)
TDB REPORT VOL.128 2014.6
(1)
第1章
アベノ
ミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
[第1節] 事業承継を含めた出口戦略
事業承継を含めた出口戦略フロー
選択肢
検討事項
・‌財産承継・税務対策に関する相談
・‌事業承継にかかわる資金調達
親族に
後継者がいる
親族内承継
・‌相続紛争防止策検討
場合
・‌事業承継の進め方相談
事業承継の検討開始
1章
第
アベノミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
・‌後継者育成セミナーへの参加
・‌社内役員や従業員への承継準備
第三者承継
・ヘッドハンティング
・‌M&Aによる外部への事業売却検討
親族に
後継者がいない
事業売却
・事業承継ファンドの活用
場合
・事業承継にかかわる資金調達
・‌事業引継ぎ相談窓口や事業引継ぎ
支援センターの活用
廃 業
・廃業相談
出所:「中小企業事業承継ハンドブック」や専門家への取材をもとに帝国データバンクにて作成
8
TDB REPORT VOL.128 2014.6
(2)
第1章
アベノ
ミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
[第3節]
全国オーナー企業分析
事業を次の経営者に承継するためには、単純に代表者変更を登記するだけでなく、さまざまな過程
を経る必要がある。なかでも、株式や不動産などの資産を承継するには、資産評価や税金対策といっ
た難しい課題が横たわっており、時に「事業承継=資産承継」
とさえ言われることがある。つまり、代
表者がより多くの資産を有しているほどに、事業承継の難易度は高まると言えよう。
本節では、こうした課題に直面する企業の実態を知るべく、TDB の保有データから、会社の経営
者(社長)と所有者(株主)が同一であるオーナー企業20万3,130社を抽出・集計し、分析する。
ここでは、2011年4月以降の信用調査報告書ファイル
「CCR」
と、2014年4月時点の企業概要ファイル「COSMOS2」
を組
み合わせ(母数:34万3,775社)、代表者名と筆頭株主名が同一であることが確認できた株式会社および有限会社をオーナー企
業として定義した。そのため、代表者以外の親族や一族の資産管理会社が筆頭株主の場合を含まない。
1
参入の容易な業種ほど
オーナー企業が多い
オーナー企業率上位の業種を見ると、比較的参入
が容易なものや、業容があまり大きくないものが目
立つ。これは、創業から年をあまり経ていない、創
オーナー企業20万3,130社を業種別に見ると、
1章
第
アベノミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
業社長企業が数字を底上げしていると考えられる。
「卸売業」
が4万6,762社(構成比23.0%)を数え最
多となった
(表1)。以下、
「建設業」の4万2,990社
(同21.2%)
「製造業」の3万4,453社と続く。
、
表1 業種別のオーナー企業
全企業に占めるオーナー企業の比率
(オーナー企
オーナー
企業数
業 種
業率)
を見ると、全体の59.1%を占め、業種別では
構成比
(%)
オーナー
企業率(%)
建設業
42,990
21.2
64.9
製造業
34,453
17.0
52.2
%、
「不動産業」
の60.0%の順となった。業種細分類
卸売業
46,762
23.0
58.7
別のオーナー企業率を見ると
(図1)
、母数が30社未
小売業
24,657
12.1
65.3
運輸・通信業
10,963
5.4
56.4
満の業種を除いて、最も高かったのは
「マッサージ等
サービス業
33,280
16.4
58.9
施術」
の85.5%となった。次いで
「織物・衣服等小売」
不動産業
7,671
3.8
60.0
その他
2,354
1.2
43.3
203,130
100.0
59.1
「小売業」
の65.3%がトップ、
次いで
「建設業」
の64.9
の82.4%、
「中古自動車小売」
の81.2%が続いた。
合計
図1 業種細分類別のオーナー企業率上位
(%)
100
※母数30社未満を除く
95
90
85
85.5
82.4
81.2
80.7
76.1
75.9
75.8
75.0
家電小売
再生資源卸
男性服小売
翻訳業
デザイン業
牛乳小売
TDB REPORT VOL.128 2014.6
二輪自動車
小売
中古自動車
小売
織物・衣服等
小売
22
マッサージ等
施術
0
(3)
74.8
74.8
74.6
娯楽用品賃貸
76.1
はつり・
解体工事
76.2
75
自動車
車体整備
76.5
居酒屋経営
76.6
かばん製造
77.3
大工工事
77.3
写真業
78.0
中古小物小売
78.5
獣医業
78.6
中古自動車卸
80
第1章
アベノ
ミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
[第4節] 全国オーナー企業260社
一般に、オーナー企業の特長として意思決定の早さが挙げられ、創業社長の決裁権はとりわけ大き
いと言えよう。ここでは、オーナー企業20万3,130社の中から、創業社長が現役かつ設立30年以
上など、独自の条件で抽出した有力企業260社を掲載する。
なお、当リストについては、TDB REPORT 関連情報ホームページ “TDB REPORT ONLINE” に
て、Excel 形式でも提供している(125~126ページ参照)
。
■主な抽出条件
・企 業 規 模:中小企業基本法に定める中小企業の定義に該当(※)
・法 人 形 態:株式会社、有限会社
・上 場 区 分:非上場
・設 立 時 期:1984年末まで
・代表者属性:創業者
・ 業 績 :最新期業績において、売上高が前期比増収かつ当期純利益が前期比増益
※卸売業…資本金1億円以下または従業員数100人以下、小売業…資本金5,000万円以下または従業員数
1章
第
アベノミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
50人以下、サービス業…資本金5,000万円以下または従業員数100人以下、製造業およびその他の業種…
資本金3億円以下または従業員数300人以下
①掲載順は対象企業の本社所在地をもとに、都道府県別、市区郡別、50音順に掲載しています。商号の頭
文字が英字の場合も、企業名の読みに従って配列しています
②業績などのデータは2014年4月末判明時点です
③業種は帝国データバンクの「TDB 産業分類」に基づき、当該企業が属する業種を表示しています
企業コード
商 号
所在地
前々期
設立年月
業 種
資本金
(千円) 従業員数
(人)
前 期
事業内容
010000000
株式会社 帝国物産
1981年5月
食料品・飲料・酒類、果物乾物小売業
TDB REPORT VOL.128 2014.6
売上高
(百万円)
最新期
北海道札幌市緑区
10,000
各種食料品、飲料、酒類に加えてドライフルーツなどの販売を手がけるほか、不動産管理業も併営している。
26
決算期
(年/月)
(4)
8
前々期
2011/07
555
前 期
2012/07
595
最新期
2013/07
656
第1章
アベノ
ミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
[第5節] 後継者不在企業分析
事業を継続するか廃業するかの選択において、後継者の存在は欠くことのできない要素であり、経
営者の見据えるべき重要な経営課題といえる。
後継者が不在の企業には一定の特徴がある。ここでは、帝国データバンクが保有する企業データ
ベースをもとに、後継者不在企業の姿を分析する。
分析の視点は以下の3点である。第一に、後継者不在企業の特徴を明示するため、後継者が決定し
ている企業との比較分析を行う。第二に、業績や代表者の年齢などにより後継者不在企業の全体像を
概観する。そして、最後に、多変量解析の手法を用いて、後継者不在企業の確率が高まる要因を明ら
かにする。
1
1章
第
して抽出した。その結果、分析対象企業数は、後継
後継者不在企業の平均的な姿
者不在企業は1万1,338社、後継者がいる企業は
アベノミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
事業承継問題を考えるうえで、後継者がいるかい
10万1,057社である。
ないかは非常に大きな論点となる。後継者の有無は
まずは、後継者不在企業の平均的な姿を概観する
事業を継続するか否かの判断に影響するうえ、逆に
(図表1)。
事業の継続を望まないがゆえに後継者を育成して
後継者不在企業の基本統計をみると、平均で、資
いないこともありうる。また、企業が設立後間もな
本金1,510万6千円、従業員数9人、売上高3億76
い場合や、経営者が若く後継者をどうするかは喫緊
百万円、代表者年齢55歳、企業年齢27歳となって
の課題として捉えていない場合もある。しかしなが
いる。他方、後継者
「あり」
の企業をみると、資本金
ら、多くの中小企業にとって、跡継ぎ
問題は避けて通れない問題であること
は論を待たないであろう。
図表1 基本統計
後継者不在企業
そこで、本節では、後継者不在企業
にどのような特徴があるかを分析す
る。また、後継者不在企業と同時に後
継者が存在する企業を比較することに
より、その傾向を明らかにする。
分析するデータは、帝国データバン
ク が 保 有 す る デ ー タ ベ ー ス か ら、
2014年4月時点の企業概要ファイル
「COSMOS2」
および信用調査報告書
「CCR」
を用いた。また、2012年1月
以降に調査を実施した企業のうち、後
継者が
「いない」
または「いる」と明確に
記載されている企業のみを分析対象と
44
TDB REPORT VOL.128 2014.6
平 均
資本金
(千円)
最頻値
15,106
従業員数
(人)
創業・設立年
最新期売上高
(百万円)
中央値
6,213
10,000
9
2
0
1988
1995
2007
376
100
30
代表者年齢
55
54
67
企業年齢
27
20
7
後継者「あり」企業
平 均
最頻値
中央値
資本金
(千円)
965,289
15,000
10,000
従業員数
(人)
92
15
2
創業・設立年
1968
1971
1973
13,222
510
200
代表者年齢
64
65
66
企業年齢
47
43
41
最新期売上高
(百万円)
(5)
第1章
アベノ
ミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
[第5節] 後継者不在企業分析
当ページ以降では前ページ迄で分析したデータを基に、その他を除く9つの業種毎に後継者がいな
い企業と後継者がいる企業を取り上げ、エリア別、代表者年齢別、年商別に、クローズアップする。
業界内における自社との比較や同業もしくは他業界へのM&A検討の際のベンチマーク資料として
活用をお勧めする。
より詳しい条件指定やデータの抽出については、弊社の ATTACK サービスにて対応することが可
能である。
集計対象
2014年4月時点の企業概要ファイル「COSMOS2]、信用調査報告書「CCR」
調査年月:2012年1月以降
後継者なし:後継者いないにマーキング、後継者あり:後継者いるにマーキング
考 察
1章
第
・‌エリア別では農・林・水産業で後継者がいない企業は、東北が最多となったが、後継者がいる企業では
アベノミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
九州が最多となった。他の業種では企業が集積している南関東が多いという結果になった。
・‌代表者年齢別では後継者がいない企業と後継者がいる企業ともに、農・林・水産、製造、卸売など3業
種で60歳代が最多となった。一方で、金融や不動産、建設、小売、運輸・倉庫、サービスでは後継者が
いない企業で40歳代が最多となるなど、業種による相違がみられた。
・‌年商別では建設、製造、卸売、運輸・倉庫で後継者がいない企業、後継者がいる企業ともに10億円未満
が最多となった。農・林・水産や金融、不動産、小売、サービスでは後継者がいない企業で1億円未満
が最多となった。
エリア区分
エリア
北海道
東北
北関東
南関東
52
県 名
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
山梨県
長野県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
TDB REPORT VOL.128 2014.6
エリア
北陸
東海
近畿
県 名
新潟県
富山県
石川県
福井県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
(6)
エリア
中国
四国
九州
県 名
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
特集
−差し迫る後継ぎ問題 中小企業の出口戦略−
事業承継2014 ●●●業
農・林・水産業
エリア別件数
後継者なし
140
後継者あり
5
北海道
165
343
12
58
3
北 陸
3
中 国
11
71
0
55
東 北
近 畿
138
九 州
10
北関東
87
0
103
6
東 海
南関東
後継者なし
代表者年齢別
1章
第
アベノミクス進展における事業承継を含めた出口戦略
四 国
114
7
後継者なし
年商別
後継者あり
後継者あり
(人)
800
1
億円
未満
30
255
637
600
582
3
100
億円
未満
400
261
239
59
0
4
20歳代
12
23
30歳代
7
40歳代
51
15
50歳代
17
60歳代
6
70歳代
342
1000 0
億円
未満
200
0
24
10
億円
未満
91
0
1000
億円
以上
4
0
80歳代
以上
0
(7)
300
(社)
600
TDB REPORT VOL.128 2014.6
53
第2章
事例に学ぶ
事業承継
[第1節] 事業承継を成功させるための要諦を探る
事業承継のかたちは、100社あれば100通りの方法があるといわれるように、多種多様である。
後継者の選定ひとつをとっても、経営者の親族だけでなく、従業員からの内部昇格や外部招聘をする
場合もある。また、これらの内部昇格、外部招聘の人材は、就業経験が未熟な経営者の子息が承継を
実現するまでの繋ぎである場合もある。このほか、遺言・種類株式の発行といった相続対策、経営承
継税制の利用、M&A 仲介機関への相談など、外部環境や企業内部の状況に応じて取るべき承継手法
も変わってくる。
本章では、企業や専門家への取材を通じて、事業承継を実現させるための要諦を探る。
「自社が採る
べき方法」、
「承継しかつ事業を拡大させるためには」
「経営者が事業承継に際してまずやるべきこ
、
と」、
「後継者を選ぶときに重視すべき要素」
「“ 二代目起業 ” という承継概念」
、
など、経営者が事業承継
に取り組む際のヒントを提示する。
1
2章
第
事例に学ぶ事業承継 64
事業承継の現状
承継は経営者自らが「想いを伝える」
ことから
第1章では、経営問題と位置づける事業承継の現
うと、必ずしもそうではない。
冒頭で述べたように、多くの中・小規模企業は、
「経営者の高齢化」
「後継者不足」の問題に直面して
状について、
「改善が進んでいない、
「
」後継ぎ問題が
いるが、経営者(社長)は、後継候補者(子息・親族、
深刻化」
している状況などを、
「2014年全国社長分
幹部職など)を含めて、周囲の者と事業承継や自身
析」
「全国オーナー企業分析」
「2014年版中小企業白
の後継問題について自ら話し合いが行えているだ
書」
などの調査・分析結果を通じてお伝えしたほか、
ろうか。
事業承継
(廃業を含む)
を進める出口戦略を示した。
「2014年中小企業白書」
では、事業承継が円滑に
これらの現状を踏まえ、政府や行政でも、事業承
進まなかった理由として3番目に、
「事業承継に関し
継の促進、中小企業の活性化、開廃業率の向上を目
て誰にも相談しなかった」
という回答があがってい
指して、
「事業引継ぎ相談窓口」
(全国47都道府県設
る
(図1)
。また、そのうちの約8割が、
「相談しても
置、原則無料)
「事業引継ぎ支援センター」
、
(全国13
解決するとは思えなかった」
と回答している
(図2)
。
ヵ 所、2014 年 4 月 現 在)
「事 業 承 継 税 制 の 拡 充
、
「2014年全国社長分析」によると、2013年には、
(2015年1月から本格施行)
「
」経営者保証に関す
社長の平均年齢が過去最高の58.9歳まで高齢化が
るガイドライン」
(2014年2月1日から適用)など
進んでいる。企業の大半を占める中・小規模企業の
の設置・適用を始めた。
経営者は、10年、20年、30年と、経営者として企
当然、民間でも支援の動きは広がっている。税理
業の生産、販売、管理、資金繰りなど、企業運営に
士、会計士、弁護士などによる支援事業はもちろん、
取り組み、従業員とその家族の生活を支えるという
金融機関や信用金庫などでもセミナーのほか、パッ
重責を背負い、企業を継続・発展させてきた方が多
ケージ支援
(勉強会、実地研修、資金・サービス支
い。その中で、時には喜びや充実感を感じながらも、
援など)
に力をいれて企業の事業承継の動きを促進
数多くの苦境、苦難を乗り越えてきた経営者は多い
している。
と考えられる。特に、資金繰りなどについては、失
では、世の中の多くの中小企業は、これらの支援
われた20年と言われる長期平成不況、リーマン・シ
を活用しなければ事業承継が進められないかとい
ョック後の世界的な経済の収縮、東日本大震災によ
TDB REPORT VOL.128 2014.6
(8)
第2章
事例に学ぶ
事業承継
[第1節] 事業承継を成功させるための要諦を探る
るという手立ても考えられる。また、一旦、別の後
経験の少なさなどから、すぐの承継が難しく、後継
継候補者に
「中継ぎ」を託し、ワンクッションを入れ
者を支える人材が必要となるケースもある。このよ
ることで、意中の後継者(例.子息)に想いを伝える
うなケースでは、メインバンクが持つ人的繋がり
ことができる場合もある。
や、プロの人材紹介サービスを活用することも事業
都内の公的機関、中・小規模企業の経営相談・支
承継を進めるためには、有効な手段となりえるだろ
援を行っている担当者の話では、ある経営者の “ 経
う。
営相談 ” を受けるなかで、
「事業承継」
を重要な経営
このほか、長年に渡り事業を継続している老舗と
問題と認識し、この担当者・支援機関の協力・仲介
呼ばれる企業のなかには、親族・同系の人材では承
を得て、自社の後継候補者に想いを伝え、事業承継
継に適切な人材が見当たらない場合には、躊躇せず
の準備に着手できたケースがあった。これは、支援
外部から優秀な人材を自社の有力な事業の承継者
を受けるなかで、経営者本人が事業承継を経営者が
として迎え入れる(例 . 婿養子縁組など)ことがあ
解決すべき問題であるとの認識を持ち承継の想い
る。当然、これは、親族・同系のなかで適切な人材
を伝えたこと、また、後継候補者自身が、承継する
が育つまでの繋ぎである場合もあるが、後継者難の
会社の魅力を認識し、承継することに向き合うよう
問題が深刻化するなか、このようなやり方も検討に
に変化したことが背景にあった。
値するのではないだろうか。
2章
以下では、事例からみた事業承継を実現させるた
第
事例に学ぶ事業承継 2
まとめ
事業承継を実現するために
めのヒントを用意した。
「事業承継に取り組んでい
る経営者」
「後継者の選定に悩む経営者」
「後継者を
高齢の経営者の中には、周囲に適切な後継候補者
見出せない経営者」、様々な立場の経営者の悩みを
がいない、例え候補者がいても、年齢の若さ、就業
解決するヒントとなれば幸いである。
事業承継成功のヒント
一、経営者は、自ら事業承継を語る
一、経営者は、事業承継をするに相応しいタイミングを探る(*)
一、経営者と後継者は、互いに認め合う
一、経営者は、
“後継者とは実践の中で育つ”という視点も持つ
一、経営者は、承継を前提に事業をリセット、良い面のみを残して後継者につなぐ
*後継者が、先代経営者へ事業承継を促す場合でも有効
後継者選定のヒント
一、本人の価値観・行動原理が、企業や組織のそれと合っている
一、評論する前に自分で手足を動かす
一、協調性はあるが、群れない
一、主体性を持ち中立的なスタンスで、何事にも忍耐強く対処できる
一、‌前向きなビジョンを常に発信し、物事をネガティブに捉えるのではなく、前向きな
言葉で語れる
66
TDB REPORT VOL.128 2014.6
(9)
増収増益企業350社(10~12月期決算)
注₁:掲載は、決算期が10~12月期の企業のうち、直近2期連続で増収増益であることが判明した企業
注2:決算期変更企業は除く
注3:すべて単体決算
地域
商 号
株式会社 あいうえお
かきくけこ 株式会社
株式会社 さしすせそ
株式会社 たちつてと
株式会社 なにぬねの
はひふへほ 株式会社
株式会社 まみむめも
株式会社 らりるれろ
北 海 道
あかさたな 株式会社
株式会社 はまやらわ
いきしちに 株式会社
株式会社 ひみいりう
株式会社 うくすつぬ
株式会社 ふむゆえけ
株式会社 えけせてね
へめれおこ 株式会社
おこそとの 株式会社
株式会社 ほもろあい
アイウエオ 株式会社
80
TDB REPORT VOL.128 2014.6
TDB 企業コード
010000002
010000999
010123456
010009876
010000654
090013216
987654123
010321654
010000035
010555666
010116543
010159357
010852147
010369852
010147852
050123654
010321654
010951357
987123654
本社所在地
北海道札幌市赤区
北海道札幌市青区
北海道札幌市黄区
北海道札幌市桃区
北海道札幌市白区
北海道メロン市
北海道札幌市白金区
北海道札幌市紫区
北海道葡萄市
北海道酪農郡
北海道森林市
北海道札幌市青緑区
北海道ばれいしょ市
北海道札幌市橙区
北海道札幌市黄緑区
北海道流氷市
北海道釧路郡
北海道札幌市オレンジ区
北海道まりも市
主 業
建設機械器具賃貸
総合リース
農業用機械器具卸
自動車
(新車)
小売
木造建築工事業
建設石材窯業製品卸
建機リース
産業機械製品卸
木材・竹材卸
水産食品製造
海岸工事業
産業機械部品付属品卸
建築土木建築工事業
出版業
海鮮品卸
ガソリンスタンド
建設石材窯業製品卸
林業
水産食料品製造
(10)
決算期
年商
(百万円) 税引後利益(千円)
2011/10
50,999
1,223,001
2012/10
53,999
2,653,123
2013/10
69,555
4,897,332
2011/12
29,843
143,091
2012/12
31,237
201,801
2013/12
31,764
312,273
2011/12
22,246
544,000
2012/12
23,608
572,000
2013/12
26,032
958,000
2011/12
15,045
76,890
2012/12
16,927
192,434
2013/12
19,197
296,647
2011/10
13,351
21,616
2012/10
13,577
142,267
2013/10
18,322
243,715
2011/12
13,316
37,031
2012/12
15,074
45,823
2013/12
17,330
216,336
2011/12
10,335
1,004,216
2012/12
10,400
1,019,455
2013/12
13,675
1,841,957
2011/12
6,768
45,688
2012/12
7,280
68,675
2013/12
7,470
78,284
2011/11
4,081
42,394
2012/11
5,057
65,581
2013/11
5,725
79,227
2011/12
5,396
45,494
2012/12
5,450
104,406
2013/12
5,689
155,305
2011/12
4,818
61,624
2012/12
5,209
79,951
2013/12
5,585
95,205
2011/12
5,001
45,190
2012/12
5,174
54,497
2013/12
5,495
88,161
2011/12
3,366
35,023
2012/12
4,504
58,543
2013/12
5,348
273,203
2011/12
3,569
633,452
2012/12
4,470
780,000
2013/12
5,000
1,000,000
2011/12
4,095
29,101
2012/12
4,278
41,061
2013/12
4,431
54,153
2011/11
3,251
6,000
2012/11
3,617
11,700
2013/11
4,049
13,148
2011/12
3,380
1,002
2012/12
3,637
6,643
2013/12
3,911
21,214
2011/12
3,087
63,360
2012/12
3,425
112,315
2013/12
3,687
140,130
2011/12
2,643
505
2012/12
3,004
1,301
2013/12
3,196
9,984
TDB 調査報告書の読み方セミナー
TDB 調査報告書の読み方セミナー
信用調査報告書(CCR:Corporate Credit Report)
の読み方を3回に分けて解説します。解説では、
「新規取引(スポット取引)」/「継続取引」のそれぞれの場面での CCR のチェックポイント、読み方を提
示します。貴社の取引拡大、与信管理体制の強化にお役立てください。
CCR の構成(* 太字は、今号で紹介します)
No.1.サマリー
No.4.代表者
No.7.取引先
No.2.登記・役員・大株主
No.5.系列・沿革
No.8.銀行取引・資金現況
No.3.従業員・設備概要
No.6.業績
No.9.現況と見通し
No.1.
「サマリー」はこう読もう
企業の概要を掴むために、CCRの各ページから基本的かつ重要な事
項を抜粋し、調査担当スタッフの最終的な評価を加えたページです。
1
ここがポイント!
〈新規〉
正
式な社名をチェックしましょう。カタカナ
かアルファベットか。“ー”
(音引き)
の有無な
どは要注意です。通称名で呼称しているケー
スも多いので確認しましょう。
2
1
3
3
4
業績推移
最新業績から過去3期の業績について売上高、
営業利益、経常利益、当期純利益までの数値並
びに、増減率を表示しています。
事業構成〔主要分〕
主要事業を概観し、事業ウエイトの把握、及び
その変遷を確認できます。
ここがポイント!
〈新規〉
主
要事業が何かを確認しましょう。
〈継続〉
事
業ウエイトの変化が業績にどのように影
響しているかに着目しましょう。
4
5
近年の評点推移
最新調査分まで最大6回分を履歴として提供
します。
ここがポイント!
〈新規/継続〉
調査時点の評点のみでなく、
過去からどのような推移
で点数が上下しているかを確認できます。
同じ点数で
も上昇局面であるのか、下降局面か、現状維持か、評
点という観点から、
その趨勢を見極めることが大切で
す。また、評点のみではなく、A~E と5段階の信用
程度
(ランク)
の移動にも注意しておきましょう。
5
TDB REPORT VOL.128 2014.6
事業内容
事業内容を文章で簡潔な内容にまとめています。
ここがポイント!
売上高と利益の増減とその推移を確認するととも
に、近年の評点推移と比較検討することで、成長性
や実態をより把握し易くなります。
一方では、安定した経営を実践できているかも重要
な観点であり、利益の安定計上という点にも着目し
ましょう。
〈新規〉
取
引先の売上高、利益を確認しましょう。
〈継続〉
取
引先の売上高、利益の増減とその推移を確
認しましょう。
2
98
商 号
商業登記簿に記載の商号です。
(11)
TDB REPORT バックナンバーのご紹介
120号 2013年 2月号 TDB 業界動向2013−Ⅱ
121号 2013年 4月号 株式上場意向企業300社
122号 2013年 6月号 いま始める事業承継
123号 2013年 8月号 TDB 業界動向2014−Ⅰ
124号 2013年10月号 年商30億円を突破する人材戦略
125号 2013年12月号 消費税増税時代、向き合うリスクと狙うべきチャンス
126号 2014年 2月号 TDB 業界動向2014−Ⅱ
127号 2014年 4月号 中小企業の資金調達2014 -融資・補助金・株式市場の動向と展望-
※ TDB REPORT はお得な定期購読(年間・半年購読)
もございます。
※バックナンバーの内容および在庫の有無については、弊社 産業調査部 情報企画課までお問い合わせください。
VOL.128 2014年6月発行
TDB
REPORT
発行人:後藤信夫 編集・制作:産業調査部 情報企画課 TEL03-5775-3163
発行所:株式会社帝国データバンク
〒107-8680 東京都港区南青山 2−5−20 TEL03-5775-3000
(大代)
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単体購読料 20,000円(本体価格:4・6・10・12月号)
、30,000円
(本体価格:2・8月号)
定期購読料 年間購読:85,000円
(本体価格)
、半年購読:48,000円
(本体価格)
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(12)
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