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一般廃棄物焼却残渣から製造される溶融 生成物の有効利用に関する
一般廃棄物焼却残渣から製造される溶融 生成物の有効利用に関する研究 2009 年 12 月 原 雄 一般廃棄物焼却残渣から製造される溶融生成物の有効利用に関する研究 目 第1章 次 序論 1.1 研 究 の 背 景 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1.2 一 般 廃 棄 物 の 溶 融 固 化 処 理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 1.3 溶 融 ス ラ グ の 位 置 づ け ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 第2章 ごみ焼却残渣および焼却飛灰の発生と化学性状 2.1 可 燃 ご み の 焼 却 処 理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13 2.2 焼 却 施 設 内 に 堆 積 す る 焼 却 生 成 物 の 解 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 20 2.3 ス ト ー カ ー 炉 主 灰 お よ び 飛 灰 と 流 動 床 灰 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28 2.4 性 状 の 均 質 さ と 不 均 質 さ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 34 第3章 焼却残渣の溶融スラグ化と溶融スラグの性状 3.1 研 究 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 41 3.2 試 験 お よ び 実 験 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42 3.3 溶 融 過 程 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42 3.4 溶 融 ス ラ グ の 分 類 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 54 3.5 溶 融 ス ラ グ の 粒 径 と 形 状 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 60 3.6 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 66 3.7 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 特 性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 76 第4章 溶融スラグの利用と品質管 4.1 人 工 骨 材 と し て の 有 効 利 用 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 98 4.2 単 独 で の 使 用 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 103 4.3 ア ス フ ァ ル ト 用 骨 材 と し て の 使 用 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 104 4.4 コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 と し て の 使 用 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 107 4.5 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 117 4.6 骨 材 と し て の 利 用 に 関 す る ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 119 4.7 溶 融 ス ラ グ の 品 質 管 理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 120 第5章 溶融メタルの化学組成 5.1 研 究 の 背 景 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 135 5.2 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 136 5.3 考 察 と 化 学 組 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 143 第6章 溶融飛灰の脱塩特性 6.1 研 究 の 背 景 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 147 6.2 溶 融 飛 灰 の 化 学 組 成 と 構 成 鉱 物 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 149 6.3 水 に よ る 塩 類 除 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 153 6.4 鉱 物 種 と 脱 塩 特 性 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 159 第7章 結論 7.1 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 161 7.2 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 167 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 169 謝 辞 第1章 序論 1.1 研 究 の 背 景 と 目 的 全 国 の 一 般 廃 棄 物 総 処 理 量 は , 2004 年 ま で の 10 年 間 を 通 し て 約 5,000 万 t/年 前 後 で 推 移 し て き た . こ れ に 対 す る 処 理 実 績 の 内 訳 は , 焼 却 処 理 量 が 約 4,000 万 t/年 , 直 接 資 源 化 を 含 む 中 間 処 理 量 が 約 730 万 t/年 , 中 間 処 理 後 の 埋 立 処 分 と 直 接 埋 立 処 分 を 合 わ せ た 最 終 埋 立 処 分 量 は 約 810 万 t/年 で あ り , そ の う ち 焼 却 残 渣 は 490 万 t/年 で あ る 1) . 収集と運搬・中間処理(焼却)および埋立てを基本構成要素とする一般廃棄物の処 理 は ,最 終 処 分 場 の 確 保 が あ っ て ,初 め て 成 立 す る .し た が っ て ,年 間 810 万 t と い う最終埋立処分量は,一般廃棄物処理の仕組みを維持する上で,行政にも市民にも大 きな負担となっている.行政側の業務は,供用中の最終処分場の残余量を見比べ,延 命化策と最終処分場の新設を構想していくことである.一方,従来(既設)の最終処 分場の構造や維持・管理の不十分さなどから幾多の環境汚染が引き起こされてきた事 実から,市民側にとっては新処分場の設置は合意し難い状況にある.こうした事情は 濃淡のあるものの全国的傾向であり,新たな最終処分場の確保は困難を極めている. そこで最終処分場の確保難によるごみ処理の仕組みの崩壊を回避するために,ごみ の 減 量 化・再 資 源 化 や 廃 棄 物 処 理 の 高 度 化 に よ る 埋 立 回 避 の 必 要 性 が 主 張 さ れ て き た . こ う し た 主 張 を 背 景 に 法 制 度 の 整 備 と し て ,1991 年 に「 資 源 の 有 効 な 利 用 の 促 進 に 関 す る 法 律 」, 1995 年 に 「 容 器 包 装 に 係 る 分 別 収 集 及 び 商 品 化 の 促 進 に 関 す る 法 律 」, 1998 年 に 「 特 定 家 庭 用 機 器 再 商 品 化 法 」, 2000 年 に 「 循 環 型 社 会 形 成 推 進 基 本 法 」, 「 廃 棄 物 処 理 及 び 清 掃 に 関 す る 法 律 」 の 大 改 正 ,「 食 品 循 環 資 源 の 再 生 利 用 等 の 促 進 に 関 す る 法 律 」, 「 建 設 工 事 に 係 る 資 材 の 再 資 源 化 等 に 関 す る 法 律 」お よ び 2002 年 に 「使用済自動車の再資源化等に関する法律」が成立した. 一方,施設整備の観点から廃棄物処理の高度化は以下のように考えられる.焼却施 設においては焼却熱の利用による発電などエネルギー回収技術に進展がみられたが, より重要なことは埋立に至る中間処理の最終物が焼却残渣ではなくなりつつあること で あ る .最 終 埋 立 処 分 量 の お よ そ 60% を 占 め る 焼 却 残 渣 の 減 容 化 と 再 資 源 化 を 目 指 し た溶融スラグ化およびエコセメント化の技術開発と施設整備に進展がみられた.この 進展は溶融施設およびエコセメント化施設が,単なる廃棄物処理施設から資源化施設 へと役割を変えていくことを意味している.とくに,溶融施設整備は埋立物の減容化 を目的に始まり,加えて有害性の高い ばいじん およびそれに含まれるダイオキシ ン 類 の 無 害 化 処 理 の 役 割 も 担 い つ つ 2,3) ,骨 材 資 源 化 施 設 へ と 変 っ て き た .排 出 ご み 量 の 80 % が 焼 却 処 理 さ れ て い る 現 実 か ら ,焼 却 残 渣 の 埋 立 回 避 の た め に 資 源 化 を 促 進 することが最重要課題である. 廃棄物処理の高度化という枠組みにおける溶融施設の役割は,焼却残渣を溶融処理 1 することおよび可燃物の焼却から溶融までを一連の工程で処理することである.一般 廃棄物の焼却残渣の溶融あるいは一般廃棄物の直接溶融によって生じる生成物は,被 溶 融 物 に 対 し て ,溶 融 ス ラ グ が 90 % 弱 ,溶 融 メ タ ル と 溶 融 飛 灰 が 4 % 弱 ,排 ガ ス そ の 他 が 2 % と 報 告 さ れ て い る ( こ の 実 態 は , 第 3 章 に 示 さ れ て い る ). 溶 融 生 成 物 の 90%を 占 め る 溶 融 ス ラ グ は 埋 立 物 の 減 容 化 と い う 目 的 は 達 成 し て い る が , そ れ を 資 材 として利用することが廃棄物処理の新しい方向性を示すことになる. 溶融スラグの資源化を進める上では,少量・高品質の製品化を目標とするよりも大 量消費が望める材質の開発を目指すことが重要となる.大量消費が望める製品の第一 候補は,建築資材としての人工骨材である.しかし,骨材資源化を進める上で溶融ス ラグは,廃棄物が含有する物質の中でとくに有害性の指摘されるいくつかの重金属類 を含有すること,また,骨材としての性状が必ずしも明らかではないこと等の問題点 を含んでいた.以上のことを背景として,溶融スラグの骨材資源化を達成するために 解決しなければならない課題は,以下のようにまとめられる. 1)溶 融 ス ラ グ 原 料 と し て の 焼 却 残 渣 の 性 状 を 明 ら か に す る こ と (第 2 章 ) 2)焼 却 残 渣 の 溶 融 過 程 と 冷 却 過 程 に お い て 生 じ る 事 象 を 解 明 し , 溶 融 ス ラ グ の 組 織 と 性 状 を 明 ら か に す る こ と (第 3 章 ) 3)自 然 環 境 中 に お け る 溶 融 ス ラ グ の 挙 動 を 明 ら か に す る こ と (第 3 章 ) 4)溶 融 ス ラ グ の 骨 材 と し て の 性 状 を 明 ら か に し , 骨 材 用 途 の 可 能 性 を 確 認 す る こ と (第 4 章 ) 5)溶 融 ス ラ グ の 品 質 獲 得 過 程 を 明 ら か に し ,品 質 の 管 理 と 向 上 を 目 指 す こ と (第 4 章 ) 溶融メタルの資源化状況は,磁選により分離され建設重機械のカウンターウエイト などに利用されている.しかし,溶融メタルの性状解析を通して素材化の方向を見い だ す こ と も , 廃 棄 物 の 資 源 化 と し て 重 要 で あ る (第 5 章 ). 溶融飛灰の資源化状況は以下のようである.一般廃棄物の焼却飛灰(ばいじん)が 特 別 管 理 一 般 廃 棄 物 と し て 規 定 さ れ た こ と に よ り 4,5) ,一 般 廃 棄 物 の 溶 融 飛 灰 も 直 接 埋 立が禁止された.直接埋立の禁止により,溶融飛灰中の有害重金属類の溶出抑制から 研 究 が 始 め ら れ た が ,溶 融 飛 灰 に は Znや Pbな ど 有 用 金 属 類 が 高 濃 度 で 含 有 さ れ る こ と が 明 ら か に さ れ , 研 究 の 重 点 は そ れ ら の 山 元 還 元 に よ る 回 収 方 法 に 移 っ た (第 6 章 ). ま た ,Znや Pbに 限 ら ず ,そ の 他 の 有 用 金 属 も 微 量 な が ら 含 有 す る こ と が 明 ら か に さ れ 6) , そ れ ら に も 留 意 す る こ と が 必 要 で あ る . な お ,筆 者 が 焼 却 残 渣 の 溶 融 処 理 に 取 り 組 み 始 め た 時 点( 1994 年 )で は ,溶 融 ス ラ グ利用にあたっての環境安全性,骨材性状,溶融メタルに対する見方および溶融飛灰 か ら の 重 金 属 類 の 回 収 等 に つ い て は ,ス リ ム ウ エ イ ス ト 推 進 研 究 7,8) が 一 定 の 成 果 を 公 表した段階であった.また,溶融炉プラントメーカーの研究者および技術者が,焼却 残 渣 を 効 率 よ く 溶 融 す る た め の 技 術 開 発 を 始 め た 段 階 で も あ っ た . 現 時 点 ( 2008 年 ) で は , 溶 融 ス ラ グ の 環 境 安 全 を 担 保 す る JISお よ び 溶 融 ス ラ グ を 道 路 用 細 骨 材 お よ び 2 コ ン ク リ − ト 用 細 骨 材 と し て の 利 用 に あ た っ て の JISが 制 定 さ れ て い る . 溶 融 飛 灰 か らの重金属類回収は,山元還元として実操業されている. 本論文では,焼却残渣の融け易さおよび流動性の基礎となる化学性状を記載し,焼 却残渣の溶融処理生成物としての①溶融スラグの有効利用に関しては岩石・鉱物学的 観点より性状を記載し,自然環境中での使用にあたっての安全性を考察し,人工骨材 としての利用可能性を検証した.②溶融メタルに関してはその生成と化学組成を詳述 することにより資源化に向けたデータを整理し,副産物としての③溶融飛灰に関して も山元還元の基礎工程において重要な脱塩特性を記述した. 1.2 一般廃棄物の溶融固化処理 1.2.1 処 理 の 現 状 環境省は毎年度一般廃棄物処理行政の推進に関する基礎資料をまとめることを目的 と し て , 全 国 の 市 町 村 お よ び 特 別 地 方 公 共 団 体 ( 2,544 市 区 町 村 及 び 806 一 部 事 務 組 合)に対し「一般廃棄物処理事業実態調査」を行い,その調査結果を取りまとめてい る 1) . 調 査 結 果 に は , ご み 総 排 出 量 と 総 処 理 量 , 最 終 埋 立 処 分 量 お よ び 処 理 す る た め の施設数などがまとめられている.総排出量は廃棄物処理法に基づく「廃棄物の減量 その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本方 針 」に お い て , 「 計 画 収 集 量 + 直 接 搬 入 量 + 資 源 ご み の 集 団 回 収 量 」と 定 義 さ れ た も の である.また,ごみ総処理量は市町村及び特別地方公共団体が処理したごみの量であ る .以 下 に , 1995 年 か ら 2004 年 の 10 年 間 を 通 し た ご み の 総 処 理 量 の 推 移 を 概 観 す る ( 表 1.1). 表 1.1 市 町 村 及 び 特 別 地 方 公 共 団 体 の 処 理 し た ご み の 総 処 理 量 1 ) (単 位 : 千 t) 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 直接焼却量 38,048 38,814 39,434 39,810 39,992 40,304 40,633 40,313 40,237 39,142 中間処理量 6,131 6,449 6,806 5,867 5,923 6,479 6,288 6,578 7,166 7,270 高速堆肥化 50 50 54 63 60 68 66 66 71 66 粗大ごみ処理 2,993 3.407 2,986 2,869 2,816 3,166 2,720 2,741 2,758 2,765 資源化 1,880 2,083 2,264 2,537 2,602 2,788 3,065 3,205 3,562 3,573 ごみ燃料化 109 176 210 251 379 589 692 その他 1,209 1,288 1,501 289 268 247 187 187 187 174 直接資源化量 1,610 1,833 2,224 2,294 2,328 2,272 2,327 直接最終処分量 5,721 5,180 4,334 3,820 3,444 3,084 2,746 2,227 1,863 1,774 総 処 理 量 49,900 50,443 50,573 51,107 51,191 52,090 51,961 51,445 51,538 50,513 1995 年 か ら 2004 年 の 10 年 間 を 通 し て ,ご み 総 処 理 量 は 2000 年 の 5,200 万 t/年 を ピ ー ク に ほ ぼ 5,000 万 t/年 前 後 で 推 移 し て き た . 最 終 埋 立 処 分 量 は 1995 年 の 1,360 万 t/年 か ら 2004 年 の 810 万 t/年 と い う よ う に 40% 減 少 し た . 処 理 の 内 訳 と し て 直 接 焼 却 量 は 総 処 理 量 の 80 %弱 を 占 め , 2001 年 の 4,063 万 t/年 を ピ ー ク に ほ ぼ 4,000 万 3 t/年 前 後 で 推 移 し て き た . 資 源 化 な ど を 含 む 中 間 処 理 量 は 1995 年 の 613 万 t/年 か ら 2004 年 の 727 万 t/年 と い う よ う に ,徐 々 に 増 加 の 傾 向 に あ る .と く に ,容 器 リ サ イ ク ル 法 の 施 行 に と も な っ て ,1998 年 か ら 実 績 調 査 項 目 に 加 え ら れ た 直 接 資 源 化 量 は 161 万 t/年 か ら 2004 年 に は 233 万 t/年 ま で 増 加 し た .直 接 最 終 埋 立 処 分 量 は 1995 年 の 572 万 t/年 か ら 2004 年 の 177 万 t/年 と い う よ う に 明 ら か に 減 少 し ,総 処 理 量 に し め る 割 合 は 11.5%か ら 3.5%と な っ て き た ( 図 1.1). こ の よ う な 処 理 内 容 の 推 移 は , 廃 棄 物 の 減量化と再資源化へ向けた施策整備の結果を示しているとみることができる. 90 80 70 割合(%) 60 50 40 30 20 10 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 年 直接焼却率 中間処理率 直接最終処分率 図 1.1 ご み の 総 処 理 量 に 占 め る 直 接 焼 却 ・ 中 間 処 理 ・ 直 接 埋 立 の 割 合 の 推 移 1 ) 直 接 焼 却 率 =直 接 焼 却 量 /総 処 理 量 中 間 処 理 率 = 中 間 処 理 率 /総 処 理 量 直 接 最 終 処 分 率 = 直 接 最 終 処 分 量 /総 処 理 量 最 終 埋 立 処 分 量 は 1995 年 の 1,360 万 t/年 か ら 2004 年 の 810 万 t/年 と い う よ う に 550 万 t 減 少 し た ( 表 1.2). こ う し た 傾 向 は , 溶 融 施 設 の 充 実 と エ コ セ メ ン ト 化 に よ る焼却残渣の資源化と粗大ごみ処理施設や資源化施設の整備の充実により,埋め立て 回避策を進めたことの反映である. 表 1.2 最 終 処 分 量 の 推 移 1 ) 最終処分量1 焼却残渣 処理残渣 最終処分量2 合 計 (単 位 : 千 t) 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 7,881 7,913 7,674 7,530 7,425 7,431 7,204 6,803 6,589 6,055 6,034 5,909 5,760 5,733 5,682 5,645 5,296 5,112 1,825 1,879 1,765 1,770 1,692 1,749 1,559 1,508 1,477 5,721 5,180 4,334 3,820 3,444 3,084 2,746 2,227 1,863 13,602 13,093 12,008 11,350 10,869 10,514 9,949 9,030 8,452 最 終 処 分 量 1: 中 間 処 理 後 最 終 処 分 量 処理残渣:焼却施設以外からの処理残渣 最 終 処 分 量 2: 直 接 最 終 処 分 量 4 2004 6,319 4,868 1,451 1,774 8,093 1.2.2 ご み の 焼 却 施 設 と 溶 融 固 化 施 設 ご み 総 処 理 量 の お よ そ 80 %を 処 理 す る 焼 却 施 設 に つ い て , 1998 年 か ら 2004 年 に か け て の 処 理 方 式 別 施 設 数 と 処 理 能 力 の 推 移 を 表 1.3 に 示 し た .表 1.3 に 示 し た( 直 接溶融,ガス化溶融・改質以外の)焼却施設は,ストーカー炉,流動床炉,固定バッ チ式炉を一つにまとめたものである.後に示すが,それらの焼却施設にはその「後処 理」施設として焼却残渣の溶融固化(灰溶融)施設が設置される場合が増える傾向に ある.直接溶融炉,ガス化溶融・改質炉はごみの焼却から溶融までを一体で処理する 施設である. 表 1.3 ご み 焼 却 施 設 の 処 理 方 式 別 施 設 数 と 処 理 能 力 の 推 移 1 ) 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 焼 却 施設数 処理能力 1,760 191,278 1,704 193,021 1,692 197,821 1,652 198,629 1,436 191,125 1,329 184,195 1,295 184,614 直接溶融 施設数 処理能力 6 910 7 1,050 12 2,167 13 2,242 20 3,023 21 3,102 25 3,532 焼却:直接溶融,ガス化溶融・改質を除く ガス化溶融・改質 施設数 処理能力 3 430 6 1,054 11 1,569 15 1,862 34 4,727 46 6,559 54 7,806 (単 位 : 千 t) 合 計 施設数 処理能力 1,769 192,618 1,717 195,125 1,715 201,557 1,680 202,733 1,490 198,874 1,396 193,856 1,374 195,952 処 理 能 力 : t/日 焼 却 施 設 数 は 1998 年 の 1,760 か ら 2004 年 の 1,295 へ と 減 少 し て い る が ,処 理 能 力 は 19 万 t/日 か ら 18 万 t/日 と ほ ぼ 同 じ で あ る .こ れ は ,老 朽 化 し た 施 設 の 更 新 に あ た っ て 施 設 の 統 合 と 規 模 を 拡 大 し た 結 果 で あ る .し か し ,直 接 溶 融 炉 お よ び ガ ス 化 溶 融・ 改 質 炉 も 焼 却 能 力 と し て 整 理 す る と 施 設 の 総 処 理 能 力 は 19.3 万 t/日 か ら 19.6 万 t/日 と大きな変化は生じていない. 直接溶融炉,ガス化溶融・改質炉は焼却残渣の埋め立て回避と資源化を見据えた施 設 で あ り ,前 者 は 1998 年 に お け る 6 施 設 (900 t/日 )か ら 2004 年 で は 25 施 設 (3,500 t/ 日 ), 後 者 は 1998 年 に お け る 3 施 設 (430 t/日 )か ら 2004 年 で は 54 施 設 (7,800 t/日 )と 大幅に増加している. 1.2.3 溶 融 固 化 処 理 の 技 術 開 発 と 施 設 整 備 溶融固化施設は焼却残渣を溶融固化する灰溶融施設および焼却と溶融を一体処理す る 直 接 溶 融 施 設 , ガ ス 化 溶 融 ・ 改 質 施 設 か ら な る ( エ コ ス ラ グ 利 用 普 及 セ ン タ ー 9 ) ). 灰溶融施設は灰の溶融に要するエネルギーから燃料式と電気式に分類される.燃料式 はさらに,表面溶融炉,両面溶融炉,自己燃焼溶融炉,コークスベッド炉,ロータリ ーキルン炉に細分類される.電気式はプラズマ溶融炉,交流アーク炉,電気抵抗溶融 炉に細分類される.いっぽう,ガス化溶融施設は炉の構造から,シャフト式溶融炉, 5 キ ル ン 式 溶 融 炉 ,流 動 床 式 溶 融 炉 ,ガ ス 化 改 質 溶 融 炉 に 細 分 類 さ れ る .そ れ ら の 2005 年 末 現 在 に お け る 稼 働 状 況 を 表 1.4 に 示 し た . 溶 融 処 理 能 力 は , ガ ス 化 溶 融 炉 で は 10,553t/日 ,灰 溶 融 炉 で は 3,125t/日 と な っ て い る .こ こ に 至 る 溶 融 固 化 技 術 開 発 の 経 緯 と 施 設 の 整 備 状 況 を 振 り 返 る と 以 下 と な る 10~12) . 表 1.4 溶 融 固 化 施 設 の 稼 働 状 況 9 ) ガス化溶融炉 炉数 溶融能力 灰溶融炉Ⅰ 炉数 溶融能力 灰溶融炉Ⅱ 炉数 溶融能力 シャフト炉 36 4427 表面溶融炉 28 388.35 プラズマ炉 29 1220 9 1116 キルン炉 13 2486 両面溶融炉 3 40.5 交流アーク炉 流動床炉 20 2525 自己燃焼炉 1 30 電気抵抗炉 5 188.6 ガス化改質炉 3 1115 コークスベッド炉 1 30 2524.6 2 113 10553 ロータリーキルン炉 601.85 溶 融 能 力 : 単 位 t/日 灰溶融炉Ⅰ:燃料式灰溶融炉 灰溶融炉Ⅱ:電気式溶融炉 1)開 発 ・ 試 験 導 入 期 ( 1970∼ 1981) 1970 年 頃 か ら 溶 融 炉 の 開 発 が 始 ま り , 各 地 で 試 験 導 入 の 実 証 プ ラ ン ト が 稼 働 し た . この時期に要求された性能は,生ごみや焼却灰を安全に溶融できることと簡単に溶融 炉 の 運 転 が で き る こ と で あ っ た .1979 年 に は ,ご み の 無 害 化 お よ び 最 終 埋 立 処 分 量 の 減容化を導入構想とした施設が,釜石市において実機稼働を始めた. 2)空 白 期 ( 1982∼ 1984) 試験導入されても,具体的成果はでなかった. 3)市 場 形 成 期 (1985∼ 1990) 最終処分場の不足を解消するため,溶融炉の導入が計画され始めた.溶融炉に要求 された性能は埋立物の減容と減量が主であったが,重金属の封じ込めと溶融スラグの 安定化も要求された.そのため,焼却灰中の有害重金属類を効果的に溶融スラグ中に 封 じ 込 め る か を 模 索 し た 時 期 で あ っ た .こ の 期 間 の 実 機 稼 働 施 設 は ,1 施 設 で あ っ た . 4)有 害 物 質 対 策 期 ( 1991∼ 1995) 1991 年 に 飛 灰 が 特 別 管 理 一 般 廃 棄 物 に 指 定 さ れ た こ と か ら ,溶 融 対 象 に 飛 灰 が 加 わ り,溶融炉の性能として溶融スラグの安全性や重金属対策およびダイオキシン類対策 への対応も必要な性能として加えられた.重金属類に関しては,スラグへの封じ込め という考え方からそれの分離へと方向転換された時期であった.この期間での実機稼 働 施 設 は , 10 施 設 で あ っ た . 6 5)資 源 循 環 期 ( 1996∼ ) 溶融炉の必要機能が焼却炉の補機から主機となる.これにより,溶融スラグを人工 骨材等とする資源化が始まった時期であった.そのために,有害重金属類をスラグか ら分離する技術と結果として溶融飛灰に含まれる重金属類の回収・資源化技術が模索 さ れ た . こ の 期 間 で の 実 機 稼 働 施 設 は , 1997 年 に お い て は 42 施 設 で あ っ た . 以 後 , 年 々 実 機 稼 働 施 設 は 増 加 し 続 け , 2004 年 に は 149 施 設 が 稼 働 し て い る ( 図 1.2). こ の 間 に お い て , 2001 年 か ら 2002 年 に か け て は 55 施 設 か ら 103 施 設 に 増 加 し た . 増 加 施 設 の 内 訳 を み る と ガ ス 化 溶 融 施 設 の 増 加 が 著 し く , 20 施 設 か ら 45 施 設 ま で に 増 加している. 160 140 120 施設数 100 80 60 40 20 0 1997 1998 ガス化炉 1999 2000 灰電気 2001 灰燃料 2002 民間 2003 2004 総数 図 1.2 溶 融 施 設 整 備 の 推 移 9 ) 稼 働 施 設 の 増 加 に と も な う 溶 融 ス ラ グ の 生 産 量 の 推 移 は ,1997 年 の 10.5 万 t /日 か ら 2004 年 に は 52.1 万 t /日 に ま で 増 加 し た ( 図 1.3). 灰 溶 融 と ガ ス 化 溶 融 の 生 産 量 に つ い て 見 る と , 1997 年 時 点 で は 前 者 が 8 万 t /日 , 後 者 は 2.5 万 t /日 で あ っ た が , 2004 年 で は 27.4 万 t /日 , 24.7 万 t /日 と い う よ う に , ガ ス 化 溶 融 施 設 か ら の 生 産 量 の伸びが大きくなっている. 後述するが,溶融スラグは水冷スラグと空冷ないし結晶質スラグに分類される.両 者 の 生 産 量 の 推 移 は 以 下 で あ っ た( 図 1.4).1997 年 時 点 で は ,生 産 量 10.5 万 t /年 の 99%以 上 が 水 冷 ス ラ グ で あ っ た .2004 年 時 点 で は ,生 産 量 52.1 万 t /年 の う ち 水 冷 ス ラ グ は 91%と い う よ う に , 空 冷 ス ラ グ の 生 産 量 が 徐 々 に 増 加 し て き た . 7 60 50 溶 融 ス 40 ラ グ 生 30 産 量 ごみ 灰 ( 万 20 t ) 10 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 年 図 1.3 灰 溶 融 お よ び ガ ス 化 溶 融 炉 か ら の 溶 融 ス ラ グ 生 産 量 9 ) 60 50 溶 融 ス 40 ラ グ 生 30 産 量 徐冷 水冷 ( 万 20 t ) 10 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 年 図 1.4 水 冷 お よ び (空 冷 )徐 冷 ス ラ グ 生 産 量 の 推 移 9 ) 1.3 溶 融 ス ラ グ の 位 置 づ け 1.3.1 法 制 度 か ら の 位 置 づ け 廃棄物処理過程において,溶融スラグは以下のように位置づけられる.従来,一般 廃棄物の中間処理の最終生成物は焼却残渣であり,これをもって最終埋立処分に至っ た.しかし,前述のように最終処分場の確保難に対する埋立物の減容化および無害化 に向けた溶融処理技術の進展により,溶融スラグは焼却残渣の減容化を越えて資源化 8 の意味づけができるようになった.ごみの処理過程からみると,中間処理過程に溶融 過程が加わったこと,焼却という過程を経ずに直接溶融する工程が加わったことは, 焼却残渣が中間処理生成物の最終物ではなくなったことを意味する.また,焼却残渣 の溶融処理は資源リサイクルから見ると,廃棄物中に拡散している元素の濃集過程で あり,金属元素の分離過程をも含むものである.これは,元素リサイクルの基礎部分 を占める元素レベルでの分離回収を実行していることである. しかし,溶融スラグが骨材資源の価値を持つものであったとしても,焼却残渣に含 まれる重金属類が溶融スラグに固定され,溶融スラグを自然環境中で使用した場合, それらが環境中に拡散し環境汚染を引き起こすという懸念がある.加えて,原料が廃 棄物である限り廃棄物処理法の制約下におかれる.これらの問題を解決するには,新 たな制度の創設が必要となる. とくに環境汚染を引き起こすという懸念は重要であり,仮に制度が整えられたとし ても,溶融スラグを自然環境中で使用した場合環境中に有害物質を放出するならば, 使用が許されるはずはない.自然環境中で使用するにあたっては,安全性の基準を定 める必要がある.有害物質の環境中への放出は環境水を媒体として生じ,結果として 大地と水を汚染すると想定できる.したがって,安全性の基準は含有する有害物質が 環境中に放出される機構から,溶出基準を設定することが合理的である.これには, 溶融スラグの溶出基準を新たに設定するとする考え方,すでに設定されているいくつ かの基準を整理し,その中から論理的整合性を保って既設定の基準を準用する考え方 が あ る .後 者 の 考 え 方 に 立 ち ,原 ほ か 13) は ,環 境 基 本 法 に 基 づ く「 土 壌 環 境 基 準 」 「水 質 環 境 基 準 」,水 質 汚 濁 防 止 法 に 基 づ く「 排 水 基 準 」 「 地 下 水 質 評 価 基 準 」,水 道 法 に 基 づ く「 水 質 基 準 」お よ び 廃 棄 物 処 理 法 に 基 づ く 環 境 庁 告 示 13 号 等 を 検 討 し た 結 果 , 「土 壌環境基準」を溶融スラグの溶出基準とすることを提案した. 土 壌 環 境 基 準 は 25 項 目 の 基 準 を 設 定 し て い る .そ れ ら の 項 目 は ,1)カ ド ミ ウ ム を は じ め 6 種 の 重 金 属 類 か ら な る 7 物 質 (水 銀 は 総 水 銀 と ア ル キ ル 水 銀 の 2 物 質 を 指 定 し ている) 質 2)シ ア ン ,有 機 塩 素 化 合 物 お よ び PCB と シ マ ジ ン 等 の 農 薬 と あ わ せ て 17 物 3)農 用 地 の 土 壌 に つ い て 1 物 質( 銅 )で あ る .こ こ で 溶 融 ス ラ グ は 1300℃ 以 上 の 熱 処 理 過 程 を 経 る と こ ろ か ら ,2)シ ア ン ,有 機 塩 素 化 合 物 お よ び PCB と シ マ ジ ン 等 の 農 薬 17 物 質 は , 分 解 さ れ る の で 除 外 で き る . ま た , 銅 は 農 用 地 に の み 適 用 さ れ る こ と か ら こ れ も 除 外 で き る . し た が っ て , 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 基 準 は , 1)カ ド ミ ウ ム を は じ め 6 種 の 重 金 属 類 か ら な る 7 物 質 を 適 用 す る こ と に な る .そ の う ち ,水 銀 は 総 水 銀 と ア ル キ ル 水 銀 の 2 物 質 を 分 け て 基 準 を 設 定 し て い る が ,水 銀 は 総 水 銀 で 代 表 で き る と 判 断 で き る .こ れ に よ り ,溶 融 ス ラ グ の 溶 出 基 準 は ,カ ド ミ ウ ム ,鉛 ,六 価 ク ロ ム , 総 水 銀 , セ レ ン の 6 物 質 に 限 定 で き た ( 表 1.5). 9 表 1.5 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 基 準 物質名 溶出基準 (mg/l) Cd Pb <0.01 <0.01 Cr 6+ <0.05 As T-Hg Se <0.01 <0.0005 <0.01 (後述するように)溶融スラグは化学組成および岩石鉱物学的見方から人工岩石と 見 な す こ と が で き ,溶 出 基 準 を 満 た す 溶 融 ス ラ グ は 人 工 骨 材 と し て 使 用 が 可 能 と な る . ま た ,土 壌 汚 染 対 策 法 に お い て 含 有 基 準 が 設 定 さ れ た( 環 境 庁 告 示 19 号 )こ と か ら , 溶融スラグにも含有基準を設定するとする議論もある.しかし,溶融スラグは再生資 材であること,また,人工骨材としての用途を想定した場合などでは,大地は微量な がら有害金属類を含むがそれらをほとんど溶出しないことから単純に含有基準を当て はめることには慎重であるべきと考えられる. 溶融スラグが廃棄物処理法の制約を受けなくなるためには,有価物として流通させ ること,あるいは一定の条件を付け使用者が管理可能な状況下で利用することが必要 と考えられる.これについては,次節に示した. 1.3.2 人 工 骨 材 化 へ の 過 程 人工骨材としての資源化は,溶融スラグが天然骨材と同様に流通し,使用されるこ と に よ り 達 成 さ れ る .資 源 化 の 達 成 を 最 終 目 的 と す る と ,達 成 に 至 る 段 階 が 設 定 さ れ , そ れ ぞ れ の 段 階 の 達 成 目 標 が 定 め ら れ る . こ の 過 程 の 一 例 を 表 1.6 14) に 示 す . 溶融スラグの人工骨材としての資源化過程は大きく以下の4段階に分けられ,各段 階 の 到 達 目 標 が 設 定 さ れ た . す な わ ち , 1)第 1 段 階 の 到 達 目 標 は 法 的 整 合 性 を 確 定 す ることと科学の基礎のもと溶融スラグの安全性を保証することであり,この段階は千 葉 県 に よ る 溶 融 ス ラ グ 利 用 促 進 指 針 の 策 定 等 に よ り 目 標 は 達 成 さ れ た 13,15) .千 葉 県 に 続 い て 埼 玉 県 16) , 東 京 都 17) も 有 効 利 用 マ ニ ュ ア ル を 策 定 し た . 1998 年 に は , 国 も 基 本 的 に 千 葉 県 の 溶 出 基 準 を 踏 襲 し た 有 効 利 用 に 関 す る 通 達 を 出 し た 3) . 2) 第 2 段 階 の到達目標は溶融スラグの用途確定と人工骨材としての品質を確定することであり, 幾多の実証試験例を参照し,骨材品質試験の実施と道路用細骨材およびコンクリート 用 細 骨 材 の 用 途 確 定 を し た こ と で 達 成 さ れ た 18) .3)第 3 段 階 の 到 達 目 標 は 市 場 流 通 の 現実を見極めることであり,天然骨材の地域性を加味した市場流通調査が実施され, 製 品 と し て の 溶 融 ス ラ グ の 流 通 性 の 調 査 が 実 施 さ れ た 19) . 4)第 4 段 階 の 到 達 目 標 は 単価設定を行うことであり,千葉県においてアスファルト合材として公共工事に使用 す る 場 合 の 単 価 設 定 が な さ れ た ( 千 葉 県 土 木 部 技 術 管 理 指 導 課 長 通 知 , 2000). こ う し た 調 査 ・ 試 験 の 延 長 上 に ス ラ グ 有 効 利 用 マ ニ ュ ア ル 20) , 公 共 事 業 に お け る 試 験 施 工 の た め の 他 産 業 再 生 資 材 試 験 評 価 マ ニ ュ ア ル 案 21) 等 が 刊 行 さ れ ,さ ら に 2006 年 に は ,有 害 性 物 質 の 溶 出 試 験 法 と 含 有 量 試 験 法 の JIS化 (JIS K 0058-1),道 路 用 お よ 10 び コ ン ク リ − ト 用 細 骨 材 の JIS化 (JIS A 5301, JIS A 5302)が 実 現 し た . 表 1.6 溶 融 ス ラ グ の 骨 材 資 源 化 に 関 す る 作 業 過 程 1 4 ) 平成 7 年 3 月 廃棄物新技術活用懇談会設置(一般廃棄物の埋立量の5割 を占める焼却灰の資源化を第一検討課題とした) 平成 7 年 9 月 溶融スラグ再利用専門委員会設置 *専門委員会の下部に,溶融スラグ再利用技術部会を置く 平成 8 年 3 月 千葉県溶融スラグ利用促進指針を策定(溶出基準の設定) 平成 8 年 溶融スラグ利用促進協議会(県単独事業での溶融スラグ利 用 促 進 を 図 る ( 試 験 施 工 な ど )) 平成 8 年 溶融スラグ入りアスファルト合材試験舗装モデル事業開始 平 成 10 年 溶融スラグ有効利用研究会(人工骨材としての用途確認な どの実施) 溶融スラグ市場流通調査 厚生省:一般廃棄物の溶融固化物の再生利用の実施の促進 に つ い て , 生 衛 第 508 平 成 12 年 溶融スラグ入りアスファルト合材単価の設定及び使用につ て(千葉県土木部技術管理指導課長) 平 成 13 年 溶 融 ス ラ グ 利 用 コ ン ク リ ー ト 研 究 会( コ ン ク リ ー ト 骨 材 と し ての用途確認の実施) 平 成 14 年 日 本 規 格 協 会 : TRA0016( コ ン ク リ ー ト 用 溶 融 ス ラ グ 細 骨 材 ), TRA0017( 道 路 用 溶 融 ス ラ グ 細 骨 材 ) の 公 表 平 成 15 年 平 成 16 年 溶融スラグ生産市町村等会議の設置 千 葉 県 土 木 工 事 共 通 仕 様 書;道 路 用 溶 融 ス ラ グ 骨 材 の 品 質 規 定,品質管理法の策定 合材単価設定区域の拡大 平 成 17 年 日 本 規 格 協 会 : JIS K 0058-1 ス ラ グ 類 の 化 学 物 質 試 験 法 第1部溶出量試験法 第2部含有量試験法 千葉県公共工事発注の舗装工事に溶融スラグ使用の義務付 け ( 技 233 号 ) と 適 用 基 準 の 策 定 溶融スラグ入りアスファルト合材の使用義務化 溶融スラグ入りアスファルト合材の出荷単価調整 平 成 18 年 日 本 規 格 協 会:「 JIS A 5031 一 般 廃 棄 物 、下 水 汚 泥 又 は 焼 却 灰 を 溶 融 固 化 し た 道 路 用 溶 融 ス ラ グ 」「 JIS A 5032 一 般 廃 棄物、下水汚泥又は焼却灰を溶融固化したコンクリート用 溶融スラグ骨材」の制定 11 以上のようにして溶融スラグの人工骨材としての位置づけが明確になった.また一 部であるが単価設定もなされたことよりに,有価物としての位置づけも可能となり廃 棄物処理法の制約下からはずれる方向性が確立した. 12 第2章 ごみ焼却残渣および焼却飛灰の発生と化学性状 2.1 可 燃 ご み の 焼 却 処 理 2.1.1 背 景 と 目 的 可燃ごみの焼却残渣と焼却飛灰の溶融処理にあたっては,それらの融け易さと融け た溶融体の流動性を明らかにすることが重要である.融け易さと流動性の指標は,塩 基 度 (=CaO/SiO 2 (重 量 比 ))を 用 い て 表 さ れ る .ま た ,多 成 分 混 合 物 の 溶 融 は ,純 物 質 の ように一義的に決まる融点を示さず,徐々に軟化・溶融する.この軟化・溶融の過程 は化学成分のみでは表現することができず,化学成分が形成する鉱物種の知見が必要 に な っ て く る .化 学 成 分 が 塩 化 物 を 形 成 し て い る 場 合 の 熱 的 挙 動 お よ び Pbな ど の 低 沸 点重金属類の熱的挙動は,溶融スラグにそれらの成分がどの程度固定されるかを決定 する.とくに,対象成分が酸化物であるか塩化物であるかによって,溶融炉内での熱 的 挙 動 は 全 く 異 な っ て く る 23) .こ の 場 合 も ,化 学 成 分 が 形 成 す る 鉱 物 種 の 知 見 が 重 要 となる.したがって,被溶融物としての焼却残渣や焼却飛灰の化学組成と鉱物組成の 把握が重要である. 以上のことから,可燃ごみの焼却残渣および焼却飛灰の融け易さおよびそれらの溶 融 体 の 流 動 性 を 検 討 す る に あ た っ て 必 要 と な る 1)含 有 元 素 の 由 来 お よ び 化 学 組 成 の 解 析 ,2) 含 有 元 素 に よ り 構 成 さ れ る 鉱 物 種 の 解 析 を 行 っ た .ま た ,こ の よ う な 試 み を 実行するにあたっての出発点となるサンプリングロット内およびサンプリングロット 間における化学組成の差異についても考察した. 2.1.2 化 学 性 状 分 析 法 ごみ焼却残渣と焼却飛灰および溶融スラグの性状は,化学性状と物理性状に分けら れ る . 焼 却 残 渣 を 構 成 す る 元 素 の 多 く は , 可 燃 性 廃 棄 物 が 850℃ 以 上 の 焼 却 過 程 を 経 るところから酸化物を形成している.また,焼却残渣の化学組成は焼却炉の適正運転 に 必 要 と な る ご み 質 分 析( 環 整 第 95 号 )結 果 と 照 合 す る と ,ご み 性 状 3 成 分( 水 分 ・ 可燃分・灰分)のうち灰分の化学組成を示していることになる.焼却残渣の性状はご み 質 と 焼 却 炉 形 式 に よ っ て 異 な っ て く る が ,主 に 無 機 元 素 と 一 部 の 未 燃 炭 素 (C)お よ び 水 分 か ら 構 成 さ れ る .無 機 元 素 の 主 成 分 は Ca,Si,Alと 場 合 に よ っ て は Feで あ り ,副 成 分 は Na, K, Mgと Cl, S, Pな ど で あ る . こ れ よ り 焼 却 残 渣 の 化 学 組 成 は 主 成 分 お よ び 副 成 分 を SiO 2 + Al 2 O 3 + Fe 2 O 3 + CaO + MgO + Na 2 O + K 2 O + SO 3 + P 2 O 5 + Cl=100%と し て 表 記 す る 場 合 が ほ と ん ど で あ る 24) .微 量 成 分 は Zn,Ni,Cr,Pb,Cd, Asな ど で あ る . 焼 却 飛 灰 (ば い じ ん )は 塩 類 や 有 害 重 金 属 を 濃 縮 し て い る と こ ろ か ら 成 分分析結果は主成分に関しては酸化物で,重金属類は元素濃度で表示される場合が多 い.溶融スラグの化学性状としては,有効利用の観点からそれらの含有する成分の溶 出特性に関する多数の報告例が蓄積されている. 13 以上のように,焼却残渣,焼却飛灰および溶融スラグの性状分析といえば,化学分 析によって化学組成を示すことおよび有害重金属類を主とする溶出試験が中心であっ た.しかし,焼却残渣および焼却飛灰の溶融処理や無害化処理方法の選択および溶融 ス ラ グ の 自 然 環 境 中 で の 利 用 に あ た っ て は ,そ れ ら の 構 成 鉱 物 種 の 情 報 が 重 要 と な る . いっぽう,化学組成を知る上での化学分析は湿式分析法が基本であるが,最近では 蛍 光 X 線 分 析 法 25) な ど を は じ め と し た 機 器 分 析 法 も 取 り 入 れ ら れ て い る .さ ら に 分 析 さ れ た 元 素 の 化 学 種 を 特 定 す る た め の 機 器 分 析 手 法 26,27) も 積 極 的 に 取 り 入 れ ら れ て き た .Eighmy et al. 28) は NAA(neutron activation analysis)に よ り Ag・As・Au・Ba・ Br・Ca・Cd・Ce・Cl・Co・Cr・Cs・Cu・Dy・Eu・Fe・Hf・Hg・In・K・La・Mg・ Mn・Mo・Na・Nd・Ni・Pb・Rb・Sb・Sc・Se・Si・Sm・Sn・Ta・Tb・Th・Ti・U・ V・Yb・Zn・Zrの 45 元 素 を 検 出 し , XRD(X線 回 折 法 X‐ ray powder diffractometry), SEM(走 査 型 電 子 顕 微 鏡 )/XRM(scanning electron microscopy/X‐ ray microanalysis), AES(オ ー ジ ェ 電 子 分 光 法 auger electron spectroscopy), SIMS( 2 次 イ オ ン 質 量 分 析 法 secondary ion mass spectroscopy), XPS(X線 光 電 子 分 光 法 X‐ ray photoelectron spectroscopy) を 用 い て 電 気 集 じ ん 灰 を 構 成 す る 元 素 の 化 学 種 の 決 定 を 包 括 的 に 試 み た ( 図 2.1). Total Composition SIMS SEM/XRM XRPD SPECIATION Leachability XPS AES Geochemical Modeling of Leaching Behavior 図 2.1 成 分 分 析 お よ び 化 学 種 特 定 の た め の 分 析 方 法 2 8 ) 焼却残渣・焼却飛灰・溶融スラグ・溶融メタル・溶融飛灰の分析に用いた手法を, 以下に述べる. 1. 試 料 の 前 処 理 法 焼却炉および集じん機から排出される焼却残渣と焼却飛灰は,一時的に灰ピットに 14 貯留される.そこに貯留された焼却残渣と焼却飛灰には,灰ピット内での飛散を防ぐ ために加湿あるいは調湿と呼ばれる水分添加がなされている.水分添加により,焼却 残渣と焼却飛灰は団粒状に凝結した形状を呈し,水和鉱物を形成するようになる. 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 の 無 機 元 素 の 化 学 形 態 の 解 析 に あ た っ て は ,偏 光 顕 微 鏡 ,XRD 法 お よ び SEM-EDS法 を 用 い る . XRD法 の 適 用 で は 対 象 元 素 が 相 当 量 含 有 さ れ て い な いと回折ピークが検出されないという制約がある.焼却残渣と焼却飛灰の前処理法は 精 製 水 お よ び 塩 酸 溶 液 な い し 硝 酸 溶 液 に よ る 洗 浄 処 理 が あ る 29~31) .洗 浄 処 理 は 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 に 対 し て 固 液 比 ( 50 g/ 500 ml) に よ り 6 時 間 振 と う 後 , ろ 過 に よ り 固 液 分 離 す る .固 液 分 離 後 の 固 体 部 分 は 溶 出 残 渣 で あ り ,溶 出 残 渣 に 対 し て 500 mlの 精 製 水 に よ り 逐 次 洗 浄 し た 後 , XRD法 お よ び SEM-EDS法 に よ り 分 析 す る ( 図 2.2). 図 2.2 焼 却 残 渣 /飛 灰 の 水 洗 処 理 手 順 2. 形 状 観 察 法 焼却残渣・溶融スラグの粒子形状観察は,実体顕微鏡による方法が簡便であり,有 効である.この方法では,対象試料を指頭間で緩やかにほぐしたものをスライドグラ スないしシャーレ等に適当量を載せ,鏡下におくことにより粒径および粒子の表面形 状を観察する.偏光顕微鏡による観察は,粒子の断面形状と鉱物種を同定する.走査 型 電 子 顕 微 鏡 を 用 い る 場 合 ,粒 径 お よ び 粒 子 の 表 面 形 状 の 観 察 と 同 時 に ,EDS ユ ニ ッ トにより粒子の化学分析が可能である. 3. 湿 式 分 析 法 焼却残渣,焼却飛灰および溶融スラグを構成する化学成分の定量分析法について示 15 す .対 象 と す る 分 析 項 目 は Eighmy et al. 28) ,平 岡・酒 井 4) ,中 村 32) を 参 考 と し て ,SiO 2 , TiO 2 ,Al 2 O 3 ,Fe 2 O 3 ,MnO,MgO,CaO,Na 2 O,K 2 O,P 2 O 5 ,SO 3 ,Cl,As,B, Cd,Cr,Cu,T‐ Hg,Mo,Ni,Pb,Sb,Se,Znの 24 成 分 と し た .焼 却 残 渣 の 分 析 にあたっては,陶磁器片,ガラス片,金属片などを異物として取り除いた.化学分析 に あ た っ て は ,試 料 を 105℃ ,24 時 間 乾 燥 し た 後 指 頭 に 感 じ な い ま で に め の う 乳 鉢 で 微 粉 化 し た . そ の 後 , 成 分 毎 に 表 2.1 に 示 し た 手 法 に し た が っ て 分 析 し た . 表 2.1 成 分 分 析 法 項 目 SiO2 TiO2 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O K2O P2O5 T−S Cl As B Cd Cr Cu T-Hg Mo Ni Pb Sb Se Zn 分 析 方 法 HF-HClO4分解 重量法 アルカリ溶融 N2O-Airフレーム 原子吸光光度法 アルカリ溶融 N2O-Airフレーム 原子吸光光度法 アルカリ溶融 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 アルカリ溶融 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 アルカリ溶融 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 アルカリ溶融 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 HF-HNO3-HClO4分解 C2H2-Airフレーム 炎光度法 HF-HNO3-HClO4分解 C2H2-Airフレーム 炎光度法 HNO3−HClO4分解 モリブデン青 吸光光度法 アルカリ溶解 イオンクロマト法 アルカリ溶解 イオンクロマト法 アルカリ溶解 水素化物 原子吸光光度法 アルカリ溶解 メチレン青 吸光光度法 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 HNO3−HClO4分解 アルカリ溶解 ジフェニルカルバジド吸光光度法 HF-HNO3-HClO4分解 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 HNO3-H2SO4-KMnO4分解 還元気化 原子吸光光度法 HF-HNO3-HClO4分解 N2O-Airフレーム 原子吸光光度法 HF-HNO3-HClO4分解 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 HF-HNO3-HClO4分解 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 アルカリ溶解 水素化物 原子吸光光度法 アルカリ溶解 水素化物 原子吸光光度法 アルカリ溶融 C2H2-Airフレーム 原子吸光光度法 4. 機 器 分 析 法 (1)蛍 光 X 線 分 析 法 ( XRF) 使 用 機 器 : 日 本 電 子 製 JSX3200, 管 球 : Rh, 管 電 圧 : 30 kV, 管 電 流 : 4.00 mA, コ リ メ ー タ ー:6 mmΦ又 は2 mmΦ,測 定 時 間:600秒 ,試 料 状 態:ペ レ ッ ト お よ び 研 磨 面 , 定 量 下 限 値 :0.01% この方法は焼却残渣,焼却飛灰,溶融スラグ,溶融メタルおよび溶融飛灰の分析に 適用される.焼却残渣,焼却飛灰,溶融スラグおよび溶融飛灰試料は指頭に感じない ま で め の う 乳 鉢 で 微 粉 化 し た 後 , 15 t/cm 2 で プ レ ス し ペ レ ッ ト 化 し た も の を 分 析 試 料 とした.溶融メタルは試料表面を研磨したものを分析試料とした. (2)X 線 回 折 法 (XRD) 使 用 機 器:理 学 電 機 製 RINT2000,管 球:Cu,管 球 電 圧:40 kV,管 球 電 流:30 mA, 16 走 査 ス テ ッ プ : 0.02゜ , 走 査 速 度 : 2゜ /min な い し 1゜ /min, 発 散 ス リ ッ ト : 1゜ , 散 乱 ス リ ッ ト : 1゜ , 受 光 ス リ ッ ト : 0.15 mm この方法では全試料とも指頭に感じないまでめのう乳鉢で微粉化した粉末試料とし た . 走 査 角 度 は , 2θ (5∼ 65゜ な い し 120゜ )と し , 鉱 物 同 定 の プ ロ フ ァ イ ル は 繰 り 返 し 走 査 を 3 回 行 っ た も の を 用 い , 同 定 は JCPDS デ ー タ ベ ー ス と の 照 合 に よ っ た . (3)熱 分 析 法 (TG-DTA) 使 用 機 器:理 学 電 機 製 TAS300,雰 囲 気:大 気 な い し 窒 素 基 準 物 質:α Al 2 O 3 ,昇 温 速 度 : 20 ℃ /min, 10 ℃ /minま た は 5 ℃ /min (4)走 査 型 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察 と 化 学 分 析 (SEM-EDS) 使 用 機 器:日 本 電 子 製 JOEL JSM5300LV(SEM),JOEL JED2100(EDS),加 速 電 圧: 25 kVな い し 30 kV, 取 り 出 し 角 度 : 30゚, 有 効 計 測 時 間 : 100秒 な い し 120秒 , EDS の 定 量 下 限 値 : 0.1% 観察・分析にあたっては,①金属製の試料載物台に導電性の両 面 テー プ を 貼 り付 け,試 料片 が 重 な らな い よ う に散 布 し ,ハ ク リ 紙 で 押さ え て 密 着さ せ た.② 樹脂 リ ング に ア ル ミ箔 の 底 を 作り ,試 料 を入 れ た 後 エポ キ シ 樹 脂の 注 入 に より 固 定 し,試料 片 の断 面 が 露 出す る ま で 研磨 し た 後,導 電 性 両 面テ ー プ に より 試 料 載 物台 に 装 着し た .試 料の 観 察・分 析 に あ た って は ,試 料面 を 金 蒸 着し た .EDS分 析に あ たっ て は ,関 東 化 学 製試 薬 を 基 準試 料 と し た. 2.1.3 可 燃 ご み の 焼 却 処 理 と 焼 却 炉 我が国のごみ処理は,衛生上の観点と狭い国土および市町村の自区域内処理の原則 を背景として,焼却処理をが中心として進められてきた.生活から発生する多種多様 なごみの処理にあたって,各自治体は整備されている処理施設に応じて混合および分 別収集している.混合収集は最も簡易な収集形態であり,発生するごみをまとめて収 集する.ごみを数種類に分けて収集する分別収集はごみの減量化・再資源化に応じた 形態である. 全 国 都 市 清 掃 会 議 33) に よ れ ば ,分 別 な し の 混 合 収 集 を 実 施 し て い る 市 町 村 は 全 国 で 2% だ け で あ る . 分 別 収 集 を 行 っ て い る 市 町 村 は , 2 分 別 収 集 が 24% , 3 分 別 収 集 が 34% ,4 分 別 収 集 が 20% ,5 分 別 収 集 が 11% ,6 分 別 収 集 が 9% で あ る .千 葉 県 下 80 市 町 村 の ご み 分 別 収 集 の 実 態 は 以 下 の よ う に な る 34) .全 市 町 村 が 分 別 収 集 を 実 施 し て おり,分別状況は可燃ごみ,不燃ごみ,資源ごみ,粗大ごみ及びその他の 5 種別であ る.その種別に従い,5 分別収集,4 分別収集ないし 3 分別収集である.分別・排出 の 一 例 を 表 2.2 に 示 し た . 表 2.2 に 示 し た 分 別 は 5 分 別 の 例 で あ る が , 多 く の 自 治 体 のごみ処理実態から,不燃ごみと粗大ごみは破砕処理され,そのうちの可燃物は可燃 ごみと併せて焼却処理される. 17 表 2.2 ご み の 分 け 方 ・ 出 し 方 分 類 可燃ごみ 不燃ごみ 粗大ごみ 資源ごみ プラスチッ ク資源 品 目 台所ごみ 紙くず類 細 品 目 調理くず,残飯,果物の皮,茶殻,貝殻 ちり紙,紙おむつ,感熱紙,金・銀紙,写真,ビ ニール加工紙,乾燥剤,木の枝,草 プラスチック・ ランドセル,バッグ,履き物,ぬいぐるみ,枕 皮革製品 小型木製品,鏡台,パソコン,ステレオ,掃除 小型家具類 機,ポット,スキー板,カーペット,扇風機,座 椅子 ガラス・ 陶磁 板ガラス,ガラスコップ,化粧品の瓶,ガラス水 器類 槽,鏡,茶碗,皿,植木鉢 (有害ごみ) 乾電池,水銀体温計,蛍光管,ライター等 ベッド,スプリング入りマットレス,机,ソ ファー,オルガン,エレクトーン,マッサージ椅 子,物干し台,家具類(タンス,サイドボード, 食卓テーブル,座卓,食器棚,本棚,下駄箱 等),布団,座布団 古紙類,紙パック類,古着,古布,PETボトル, 空きビン・空き缶類,金属類 容器包装材以外のプラスチック(発泡スチロー ル,ポリバケツ,衣装ケース,ポリタンク,プラ ンター,カセット・ビデオテープ等) 可燃ごみと粗大ごみの破砕処理から生じた可燃物は,機械化バッチ焼却炉、ロータ リーキルン焼却炉、ストーカー式焼却炉と流動床式焼却炉において焼却される.機械 化バッチ焼却炉は一定量を炉内に充填した後,着火焼却する炉である.ロータリーキ ルン炉は水平よりやや傾斜した円筒型の炉を回転させることにより上部から供給した ごみを下部へ移動させながら乾燥・燃焼させ,生じた灰を下部から排出する焼却炉で ある.ストーカー式焼却炉は,可燃ごみを火格子(スト−カー)上で乾燥して燃焼さ せ,次におき火燃焼させて灰にする焼却炉である.構成は火格子および駆動伝達機器 お よ び 焼 却 排 ガ ス 処 理 施 設 か ら な る . 流 動 床 式 焼 却 炉 は , 炉 内 に 充 填 し た 粒 径 0.4∼ 20mm 程 度 の 珪 砂 な ど の 不 活 性 粒 子 層( 流 動 砂 )の 下 部 か ら 加 圧 し た 空 気 を 分 散 供 給 して,流動砂を流動させ,その中でごみを燃焼させ灰にする焼却炉である.生じた灰 は流動砂よりも軽いため,熱対流により流動砂から分離し,炉内上方へ移動する.こ れを捕集し炉内から排出する集塵装置からなる. 可 燃 ご み の 焼 却 処 理 は ,HCl や SOx と 揮 発 性 の 重 金 属 類 等 を 含 む 燃 焼 ガ ス を 発 生 す る.それらのガスは有害であり,それを無害化して大気に放出することが要求されて い る . 無 害 化 の 方 式 は 燃 焼 ガ ス を 冷 却 し HCl や SOx の 酸 性 ガ ス を 中 和 す る た め の 中 和剤が吹き込まれる.この時の吹き込み方式として,中和剤を水に溶かして吹き込む 方式が湿式集塵であり,中和剤をそのまま吹き込む方式が乾式集塵である.今日の多 くの一般廃棄物の焼却施設では,後者の乾式集塵方式が採用されている. 中和・集塵過程において,ガス相のあるものは固相となりそれらは塵となる.それ らの塵を集める方式には,電気集塵方式と濾過式集塵方式がある.前者は塵をコロナ 放電により荷電し,クーロン力を利用して集塵する.後者は冷却した排ガスを,濾布 を通過させることによって集塵する.したがって,可燃ごみがストーカー炉で焼却処 18 理された場合は,焼却残渣と焼却飛灰を生成することになる.また,流動床炉で焼却 処理された場合は,流動床灰を生成することになる. 2.1.4 焼 却 残 渣 を 構 成 す る 成 分 の 由 来 1. 解 析 手 順 可燃ごみを焼却することによって生じる焼却残渣と焼却飛灰の発生量は,可燃ごみ 中の灰分量によって決まり,灰分の化学組成が焼却残渣の化学組成を決定する.灰分 量 は , 以 下 の 環 整 95 号 に し た が っ て 分 析 さ れ る . す な わ ち , 可 燃 ご み を 1)紙 ・ 布 類 2)ビ ニ ー ル・合 成 樹 脂・ゴ ム・皮 革 類 3) 木・竹・ワ ラ 類 4)厨 芥 類( 動 植 物 性 残 渣 , 卵 類 , 貝 殻 を 含 む ) 5)不 燃 物 類 ( 混 入 物 ) 6)そ の 他 ( 孔 眼 寸 法 約 5mm の ふ る い を 通 過 し た も の ) の 6 組 成 に 分 類 す る . 組 成 ご と に 適 当 量 の 試 料 を 破 砕 機 に よ り 2mm 以 下 に 粉 砕 し , そ の 一 部 を ル ツ ボ に 入 れ 恒 温 槽 内 に お い て 105℃ ±5℃ で 2 時 間 加 熱 後 , 電 気 炉 を 用 い て 800℃ で 2 時 間 強 熱 す る . そ の 強 熱 後 の 残 渣 が 灰 分 で あ る . そ の 残 渣 の化学分析により,焼却残渣を構成する元素の由来について考察できる. 一 般 的 に 灰 分 は ご み の 分 別 方 法 に よ り 異 な る が , 千 葉 県 の 2003 年 度 の 市 町 村 デ ー タ に よ れ ば 最 大 11.7%, 平 均 6.5%, 最 小 3.9%で あ っ た ( 原 ・ 伊 藤 , 未 公 表 ) が , 全 国 的 に 見 る と , 概 略 10∼ 20% の 範 囲 に あ る と さ れ て い る 10) . 可 燃 分 お よ び 灰 分 は 焼 却炉内おける物理的,熱化学的過程により焼却残渣と焼却飛灰に分離される.焼却飛 灰は,炉内において気化した低沸点物質の凝縮物と排ガス中の酸性物質を中和するた め に 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 か ら な る . 低 沸 点 物 質 は , NaCl, KClや Cd, As, Pb等 の 重 金 属 類 で あ る .ま た ,吹 き 込 ま れ る 消 石 灰 量 は ご み 中 灰 分 か ら 発 生 す る 飛 灰 の 2 倍 量 程 度 と さ れ て い る 14) .こ う し た こ と か ら ,平 岡・酒 井 4) は ,100t の ご み を ス ト ー カ ー 炉 で 焼 却 し た 場 合 , 灰 分 を 10 %, 灰 分 か ら 分 離 さ れ る 飛 灰 を 灰 分 の 10%, 吹 き 込 み 消 石 灰 を 飛 灰 の 2 倍 量 と し て 焼 却 灰 9 t, 飛 灰 3 tが 発 生 す る と し , 同 じ 条 件 下 に お い て 流 動 床 炉 で 焼 却 す る と 炉 底 灰 4∼ 5 t,ボ イ ラ ー ダ ス ト 2 t,飛 灰 5~6 tが 発 生 す る と 予想している. 2. 結 果 焼 却 残 渣 の 組 成 は 既 に 示 し た よ う に SiO 2 + Al 2 O 3 + CaO + F e 2 O 3 +MgO+Na 2 O + K 2 O+ SO 3 + P 2 O 5 +Cl= 100%と し て 示 さ れ 24) ,廃 棄 物 研 究 財 団 36) の と り ま と め に よ れ ば SiO 2 は 20 %前 後 か ら 40 %程 度 , Al 2 O 3 は 10 %前 後 か ら 20 %弱 , CaOは 15 %前 後 か ら 40 %弱 , ま た , F e 2 O 3 は 5 %前 後 ∼ 15 %前 後 ( 一 部 20%を 超 え る も の あ る ), Na 2 Oは 数 % (5 %弱 ),K 2 Oは 1∼ 2 %,そ し て MgOは ∼ 3 %で あ る .飛 灰 の 組 成 は SiO 2 が 20 %前 後 , Al 2 O 3 は 10 数 %, CaOは 20 %前 後 , Na 2 O, K 2 Oは 10 % 弱 , そ し て Clは 10 数 % で あ る .こ れ に 加 え て ,Znは 0.5∼ 1 %,Pbが 数 1000 mg/kg前 後 で あ る . 以上のような傾向をふまえて,それぞれの成分の由来をごみ質組成と関連づけた. 前 述 6 組 成 の 灰 分 の 重 量 % お よ び そ れ ら の 化 学 組 成 を 表 2.3 に 示 し た .そ れ ら の 分 析 19 結 果 に よ れ ば ,焼 却 残 渣 の 主 成 分 で あ る SiO 2 と Al 2 O 3 は 紙・布 類 に 由 来 し ,CaOは 紙 ・ 布 類 と 厨 芥 類 に 由 来 す る .K 2 Oお よ び P 2 O 5 は 木・竹・ワ ラ 類 に 由 来 す る .ま た ,中 村 11) は ,清 掃 工 場 に 搬 入 さ れ る ご み 中 の 重 金 属 類 を 分 析 し ,清 掃 工 場 に お け る 挙 動 と ば いじん中における重金属類の由来を紙類,廃プラスチックおよび繊維・皮革類である と 報 告 し て い る . 本 調 査 で も 微 量 成 分 と し て の Cr, Ni, Cu, Zn等 重 金 属 類 は ビ ニ ー ル・合成樹脂・ゴム・皮革類に由来する結果が得られた. 表 2.3 ご み 組 成 の 灰 分 と 化 学 組 成 KM BN KS CH 灰分 SiO2 12.4 22.30 0.8 16.80 9.3 9.22 41.6 − KM: 紙 ・ 布 類 TiO2 Al2O3 Fe2O3 1.62 16.60 2.53 23.50 16.60 3.30 − 1.47 1.64 − 0.08 0.22 MgO 4.06 6.63 6.69 − (単 位 : 重 量 %) CaO 47.00 20.40 44.90 96.80 Na2O 1.84 3.93 1.82 1.30 K 2O 1.10 1.64 17.9 0.68 P2 O5 0.74 3.15 6.68 0.23 Cl 0.76 1.23 3.04 0.42 BN: ビ ニ ー ル ・ 合 成 樹 脂 ・ ゴ ム ・ 皮 革 類 Cr2O3 − 0.17 − − NiO − 0.03 − − CuO 0.05 0.33 − − ZnO 0.31 0.59 0.47 − KS: 木 ・ 竹 ・ ワ ラ 類 CH: 厨 芥 類 ( 動 植 物 性 残 渣 , 卵 類 , 貝 殻 を 含 む ) 2.2 焼 却 施 設 内 に 堆 積 す る 焼 却 生 成 物 の 解 析 2.2.1 試 料 焼却施設は,焼却炉本体・熱交換機・ガス冷却塔・集じん機・誘因送風機および煙 突 か ら な る (図 2.3). そ こ に は , 焼 却 由 来 の 物 質 が , 様 々 な 粒 子 形 態 と 鉱 物 相 を 形 成 して堆積している.それら堆積物の化学組成と鉱物種を解明することを目的として, 試 料 採 取 を 行 っ た (図 2.3,表 2.4).採 取 試 料 は ,XRF法 ,XRD法 お よ び TG-DTA法( 分 析 条 件 は 2.1.2 に 示 し た ) に よ り 分 析 さ れ た 37) . 図 2.3 焼 却 施 設 内 堆 積 物 の 試 料 ( No.0 ∼ No.5) 採 取 位 置 表 2.4 焼 却 施 設 内 堆 積 物 の 試 料 採 取 場 所 20 No. 0 No. 1 No. 2 No. 3 No. 4 No. 5 施 設 A ストーカー炉焼却残渣 冷却塔内堆積物 冷却塔出口ダクト内堆積物 集じん機入口ダクト内堆積物 集じん機内堆積物(飛灰) 誘因送風機内堆積物 2.2.2 結 果 と 考 察 1. 粒 子 形 状 焼 却 残 渣 お よ び 堆 積 物 5 試 料 の 顕 微 鏡 写 真 を , 図 2.4 に 示 す . 図 2.4 焼 却 施 設 内 堆 積 物 の 顕 微 鏡 写 真 試 料 No.は 表 2.4 に 対 応 ス ケ ー ル バ ー : 0.1 mm 試 料 No.0∼ No.2 は , ほ ぼ 同 じ 形 状 を 示 し た . No.0 の 粒 子 は , 長 径 0.5 mm 以 下 の 角 礫 状 お よ び 塊 状 が ほ と ん ど で あ る . 加 え て 極 微 粒 子 が 散 見 さ れ る . No.1 の 粒 子 は , 長 径 0.2 mm 以 下 の 塊 状 お よ び 球 状 が 主 で あ る . 極 微 粒 子 も 散 見 さ れ た . No.2 の 粒 子 形 状 は No.1 の そ れ と 似 て い る が ,極 微 粒 子 の 割 合 が 多 く な っ て い る .No.3 は No.0 ∼ No.2 の 粒 子 を 細 粒 化 し た 形 状 を 示 し た . 0.02 mm 程 度 の 微 粒 子 が ほ と ん ど で あ っ た が ,少 量 の 0.05 mm 程 度 の 塊 状 粒 子 も 散 見 さ れ た .No.1 と No.2 に 認 め ら れ る 角 礫 状 お よ び 塊 状 粒 子 は No.0(焼 却 残 渣 )の 粒 子 が ス ト ー カ ー 炉 か ら の 燃 焼 排 ガ ス に よ り 巻 き 上 げ ら れ ,燃 焼 排 ガ ス と と も に 移 動 し ,各 位 置 に 堆 積 し た も の で あ る .No.3 に つ い ても同様なことが生じているが,粒子の小さい方が炉から遠くまで移動し堆積してい る. 21 試 料 No.4 の 粒 子 形 状 は ほ と ん ど が 0.01 mm 以 下 の 微 粒 子 で あ る が , ま れ に 0.05 mm ほ ど の 塊 状 粒 子 が 散 見 さ れ る . No.5 の 粒 子 形 状 は , ほ と ん ど が 0.01 mm 以 下 の 微 粒 子 が 凝 集 し た も の で あ っ た .No.4 は 燃 焼 排 ガ ス 中 の 酸 性 ガ ス を 中 和 す る た め に 吹 き込まれた消石灰と反応した粒子が捕集されたものがほとんどであり,まれに認めら れ た 塊 状 粒 子 は 燃 焼 排 ガ ス に よ っ て 運 ば れ た も の で あ る .No.5 は 集 塵 機 で は 捕 集 し き れなかった粒子である. 2. 化 学 組 成 各 試 料 を XRF法 で 分 析 し た 結 果 ,Si・Ti・V・Al・Fe・Mn・Mg・Ca・Na・K・S・ P・ Cl・ Br・ Cu・ Zn・ Pbの 17 元 素 が 検 出 さ れ た . し か し , H, Cと Oは XRF法 で は 検 出 さ れ な い の で ,後 述 す る XRD測 定 お よ び TG‐ DTA分 析 結 果 か ら H 2 Oお よ び (OH), 未 燃 Cお よ び CO 2 と し て 求 め た .そ し て , XRF分 析 か ら 検 出 さ れ た 元 素 濃 度 は ,H 2 O, OHお よ び 未 燃 C,CO 2 を 含 む も の と し て 補 正 し た .た だ し ,H 2 O分 の う ち( TG‐ DTA の 項 で 示 す が )100 ℃ 以 下 で 脱 水 す る 吸 着 水 は ,補 正 分 か ら 除 い た .こ の 作 業 を 経 て 得 ら れ た 各 試 料 の 化 学 組 成 を 酸 化 物 表 示 で 表 2.5 に 示 し た . 各 試 料 中 に お け る 含 有 成 分 の 傾 向 は 以 下 で あ っ た . SiO 2 , Al 2 O 3 , Fe 2 O 3 , P 2 O 5 は No.0 で も っ と も 高 濃 度 を 示 し ,ス ト ー カ ー 炉 か ら 離 れ る に し た が っ て 濃 度 を 減 じ て い た . CaOは 必 ず し も 明 瞭 な 傾 向 は 示 さ ず , 電 気 集 塵 機 に 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 の 影 響 に よ り No.4 で も っ と も 高 濃 度 で あ っ た .Na 2 Oと K 2 Oも 明 瞭 な 傾 向 を 示 さ な い も の の , 前 者 は No.4 で 最 も 高 濃 度 を 示 し ,後 者 は No.5 で 最 も 高 濃 度 で あ っ た .SO 3 と Clは No.0 で最も濃度が低く,炉から離れるにしたがって濃度が高まる傾向を示した.この傾向 は ,排 ガ ス の 温 度 が 焼 却 炉 か ら 離 れ る に し た が っ て 低 下 し ,揮 散 し た NaClお よ び KCl の 凝 縮 が 進 行 し た こ と に よ っ て 生 じ た た め と 考 え ら れ る . ま た , CuO, ZnO, PbOの 重 金 属 類 も 明 瞭 な 傾 向 を 示 さ な か っ た . PbOは No.1 に の み 検 出 さ れ た . ほ ぼ 5 % 以 上 を 占 め る 成 分 を 優 勢 成 分 と み な し ,そ れ に よ り 各 試 料 の 化 学 組 成 の 特 徴 を 見 る と 以 下 の よ う で あ っ た .No. 0(焼 却 残 渣 )は SiO 2 ・Al 2 O 3 ・Fe 2 O 3 ・CaO・CO 2 の 5 成 分 で あ り ,そ れ ら で 81 %を 占 め た .ま た ,化 学 組 成 は 表 2.3 に 示 し た 紙・布 類 の 灰 分 に 似 た 組 成 を 示 し た .No. 1 お よ び No. 2 は SiO 2 ・Al 2 O 3 ・Fe 2 O 3 ・CaO・SO 3 ・ Clの 6 成 分 で あ り ,そ れ ら で 80 %,85 %を 占 め た .No.1 お よ び No.2 の 成 分 を No.0(焼 却 残 渣 )と 比 較 す る と SO 3 ,Clが CO 2 と 入 れ 替 わ っ て い る .No.3 は SiO 2・Al 2 O 3・CaO・ SO 3 ・ Clの 5 成 分 で あ り , そ れ ら で 85 %を 占 め た . No.3 の 成 分 を No.1 お よ び No.2 と 比 較 す る と Fe 2 O 3 の 濃 度 が 減 少 し , Cl の 濃 度 増 加 し て い る . No.4(飛 灰 )は SiO 2 ・ CaO・Na 2 O・SO 3 ・Clの 5 成 分 で あ り ,そ れ ら で 81 %を 占 め た .No.4 の 成 分 を No.3 と 比 較 す る と Na 2 Oと Al 2 O 3 の 量 比 が 逆 転 し て い る こ と が わ か る .No.5 は CaO・K 2 O・ SO 3 ・ Clの 4 成 分 で あ り , そ れ ら で 87 %を 占 め た . 表 2.5 焼 却 施 設 内 堆 積 物 の 化 学 組 成 22 (単 位 : 重 量 %) SiO2 No. 0 No. 1 No. 2 No. 3 No. 4 No. 5 % 24.32 23.76 10.96 10.44 7.58 1.24 TiO2 1.28 V2O5 0.04 2.43 - 1.03 1.25 0.93 0.20 0.06 0.05 0.06 - 4.97 4.98 Al2O3 12.36 11.58 2.92 0.46 Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O 8.16 6.50 7.59 1.60 1.42 1.12 0.15 0.12 2.28 3.45 3.65 3.11 1.42 30.41 25.32 24.88 34.56 45.35 3.20 4.30 4.04 1.69 6.77 0.37 0.58 42.70 3.43 K 2O 1.39 1.99 1.19 3.67 5.25 SO3 1.41 8.06 31.11 26.87 6.55 19.11 P2O5 Cl Br CuO ZnO PbO H 2O Comb. CO2 4.72 1.62 0.12 0.22 0.17 1.66 0.39 6.10 3.72 5.72 0.05 0.41 0.54 1.92 tr 1.46 0.98 8.02 15.13 0.07 0.35 0.46 1.40 3.33 3.05 3.38 0.17 20.31 1.63 1.69 2.32 -: 下 限 値 以 下 2.08 1.43 4.98 0.33 0.83 2.05 - tr: DTA, DTG の 小 ピ ー ク 3. 構 成 鉱 物 の 同 定 (1)XRD 各試料において同定および推定された鉱物種および化学種は,ケイ酸塩,チタン酸 塩,酸化物,水酸化物および水和物,塩化物,炭酸塩,硫酸塩,リン酸塩であり,試 料 別 に は 以 下 の よ う で あ っ た ( 表 2.6). ま た , XRD 測 定 に よ り 得 ら れ た X 線 回 折 パ タ ー ン を 図 2.5a, 図 2.5b に 示 し た . No.0 で は , anorthite (CaAl 2 Si 2 O 8 ), gehlenite (Ca 2 Al 2 SiO 7 ), quartz( SiO 2 ), hematite (Fe 2 O 3 ),lime (CaO),hydrocalumite (Ca 4 Al 2 O 6 Cl 2・10H 2 O),halite (NaCl), calcite (CaCO 3 )が 同 定 さ れ た .ま た ,akermanite (Ca 2 MgSi 2 O 7 ),perovskite (CaTiO 3 ), limeと は 結 晶 系 の 異 な る CaO,farringtonite (Mg 3 (PO 4 ) 2 ),Mg 2 P 2 O 7 の 存 在 が 推 定 さ れ た .No.1 で は ,No.0 で 同 定 さ れ た 鉱 物 に 加 え て ,sylvite( KCl),anhydrite(CaSO 4 ) が 同 定 さ れ た .anhydriteと は 結 晶 系 の 異 な る CaSO 4 の 存 在 が 推 定 さ れ た .No.2 で は , No.1 の 鉱 物 組 み 合 わ せ か ら ,perovskite,farringtonite(Mg 3 (PO 4 ) 2 ),Mg 2 P 2 O 7 は 検 出 さ れ な か っ た .No.3 で は ,gehlenite, quartz,halite,sylvite,calcite,anhydrite が 同 定 さ れ , anorthite, akermanite, anhydriteと は 結 晶 系 の 異 な る CaSO 4 の 存 在 が 推 定 さ れ た .No.4 で は ,gehlenite,quartz,lime,halite,sylvite,calcite,anhydrite, portlandite( Ca(OH) 2 ),CaClOH,Ca(ClO) 2 4H 2 Oが 同 定 さ れ た .加 え て ,limeと は 結 晶 系 の 異 な る CaO,anhydriteと は 結 晶 系 の 異 な る CaSO 4 の 存 在 が 推 定 さ れ た .No.5 で は ,halite,sylvite,calcite,anhydriteお よ び anhydriteと は 結 晶 系 の 異 な る CaSO 4 23 が同定された. 表 2.6 焼 却 施 設 内 堆 積 物 の 鉱 物 種 の 同 定 結 果 3 7 ) 化学式 CaAl2Si2O8 鉱物種 Anorthite 記号 An No.0 ◎ No.1 ◎ No.2 ◎ No.3 ○ No.4 No.5 − − Ca2Al2SiO7 Gehlenite Ge ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ − Ca2MgSi2O7 Akermanite Ak ○ ○ ○ ○ − − TiCaO3 Perovskite Pe ○ ○ − − − − SiO2 Quartz Hematite Fe2O3 CaO Lime CaO − Ca4Al2O6Cl210H2O Hydrocalumite Q ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ − He L1 L2 Hy ◎ ◎ ○ ◎ ◎ − − − ◎ − − − − − − − − ◎ ○ − − − − − Po Cl1 Cl2 Ha Sy Ca − − − ◎ − ◎ − − − ◎ ◎ ◎ − − − ◎ ◎ − − − − ◎ ◎ − ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ − − − ◎ ◎ ◎ Ca(OH)2 CaClOH Ca(ClO)24H2O NaCl KCl CaCO3 Portlandite − − Halite Sylvite Calcite CaSO4 Anhydrite Ah1 − ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ CaSO4 − Ah2 − ○ ○ ○ ○ ◎ CaSO42H2O Gypsum Gy − ○ ○ ○ − ○ Mg2P2O7 − Mg ○ ○ − − − − Mg3(PO4)2 Farringtonite Ma ○ ○ − − − − ○存在が推定されたもの Intensity(a.u.) ◎ 存在の確認されたもの 10 30 50 CuKα2θ(゜) 図 2.5a 堆 積 物 の XRD パ タ ー ン 鉱 物 種 と 化 学 種 の 記 号 は 表 2.6 に 示 し た . 24 Intensity(a.u.) 10 30 50 CuKα2θ(゜) 図 2.5b 焼 却 施 設 内 堆 積 物 の XRD パ タ ー ン 鉱 物 種 と 化 学 種 の 記 号 は 表 2.6 に 示 し た . (2)TG-DTA TG-DTA パ タ ー ン の 1 例 を 図 2.6 に 示 し ,各 試 料 の 吸 熱 お よ び 発 熱 ピ ー ク 温 度 と 対 応 す る 重 量 変 化 を 表 2.7 示 し た . 全 試 料 に 認 め ら れ た 100 ℃ 以 下 の 吸 熱 ピ ー ク は 吸 着 水 の 脱 水 に よ る も の で あ り ,対 応 す る 重 量 減 は 各 試 料 の 吸 着 水 分 量 を 示 す .試 料 重 量 に 対 す る 吸 着 水 分 量 は ,No.0 か ら No 順 に 1.31 % , 2.62 %, 1.80 %, 7.86 %, 1.75 %お よ び 11.67 %で あ っ た . No.0 お よ び No.4 を 除 く 4 試 料 に 認 め ら れ た 125 ℃ 前 後 の 吸 熱 ピ ー ク は ,XRD測 定 で は 検 出 で き な か っ た gypsum (CaSO 4 ・2H 2 O)の 構 造 水 の 脱 水 に よ る も の と 推 定 さ れ る . 構 造 水 の 脱 水 量 は , No.1 か ら 順 に 0.54 %, 0.83 %, 1.40 %お よ び 1.63 %で あ っ た .No.0 に 認 め ら れ た 143 ℃ に お け る 1.66 % の 脱 水 は hydrocalumiteの 構 造 水 の 脱 水によるものと考えられた. No.0, No.1 お よ び N.5 認 め ら れ た 430℃ 前 後 の 発 熱 ピ ー ク は 未 燃 C の 燃 焼 に よ る も の で あ り , そ れ ぞ れ の 未 燃 C は 1.71 %, 1.92 %お よ び 1.69 %で あ っ た . No.4 に 認 め ら れ た 430 ℃ ,490 ℃ の 吸 熱 ピ ー ク は ,試 料 を 電 気 炉 内 で 450 ℃ お よ び 500 ℃ ,1 時 間 加 熱 処 理 し た も の に つ い て ,portlanditeお よ び CaClOHの XRD回 折 ピークの消失を確認したことにより,それらの熱分解によるものと判断した. portlandite の 熱 分 解 に よ る 脱 水 量 は 3.30 % (表 2.5 の H 2 Oは 吸 着 水 と 構 造 水 の 両 者 を 加 え た も の と し て 示 し た ), CaClOHの 熱 分 解 に よ る 脱 HCl量 は 0.97 %で あ っ た . No.0, No.1, No.4 お よ び No.5 に 認 め ら れ た 743 ℃ , 650 ℃ , 672 ℃ , 730 ℃ の 吸 熱 ピ ー ク は , 次 の 実 験 に よ り calciteの 熱 分 解 に よ る も の と 考 え ら れ た . す な わ ち , 25 各 試 料 を 電 気 炉 内 で 700 ℃ お よ び 750 ℃ ,1 時 間 加 熱 処 理 し た も の に つ い て ,calcite の XRDピ ー ク の み の 消 失 を 確 認 で き た .calciteの 熱 分 解 に よ る 脱 CO 2 量 は ,各 試 料 順 に 6.10 % , tr ( 痕 跡 ), 3.42 %, 2.32 %で あ っ た . な お , XRD測 定 か ら は 全 試 料 と も calciteの 回 折 ピ ー ク を 確 認 し て い る が , No.2 お よ び No.3 で は 熱 分 解 に よ る 脱 CO 2 の 吸 熱 ピ ー ク は 検 出 で き な か っ た .天 然 calciteの 熱 分 解 温 度 が 730 ℃ 前 後 で あ る こ と に 比 べ ,No.1 お よ び No.4 に 含 ま れ る calciteの そ れ が 60∼ 80 ℃ 低 い こ と の 原 因 に つ い て は 未 解 明 で あ る . ま た , 今 後 , portlandite と 酸 性 ガ ス の 反 応 生 成 物 で あ る Ca(ClO) 2 ・ 4H 2 O の 熱 的 挙 動 お よ び No.5 に み ら れ た 534.5 ℃ の 重 量 変 化 を 伴 わ な い 吸熱ピークについての解析をすすめることが必要である. 図 2.6 電 気 集 塵 機 内 堆 積 物 の TG-DTA パ タ ー ン 表 2.7 TG-DTA 分 析 結 果 ( )重 量 減 − − − − No.0 83.4゚C ↓ 143.1゚C ↓415.0゚C ↑ − − − − (1.31%) (1.66%) (1.71%) − − − − 429.5゚C ↑ No. 1 72.0゚C ↓124.6゚C ↓ − − − − (2.62%) (0.54%) (1.92%) − − − − − No. 2 55.3゚C ↓125.2゚C ↓ − − − − − (1.80%) (0.83%) − − − − − No. 3 92.3゚C ↓127.2゚C ↓ − − − − − (7.86%) (1.40%) − − − − No. 4 62.9゚C ↓ 431.7゚C ↓493.8゚C ↓ − − − − (1.75%) (3.33%) (0.97%) − − − 433.7゚C ↑ 534.5゚C ↓ No. 5 97.5゚C ↓126.5゚C ↓ − − − (11.67%) (1.63%) (1.69%) (-) ↓:吸熱 ↑:発熱 2.2.3 考 察 と ま と め 26 743.8゚C ↓ (6.10%) 650.5゚C ↓ (tr) − − − − 672.3゚C ↓ (3.38%) 730.8゚C ↓ (2.32%) 焼 却 施 設 内 た い 積 物 6 試 料 の 鉱 物 種 は ,化 学 組 成 ,XRD 測 定 お よ び TG− DTA 分 析 結 果 か ら 表 2.6 に 示 す よ う に 同 定 さ れ た . No.0(焼 却 残 渣 )は 可 燃 ご み の 燃 焼 に よ っ て 生 じ た も の で あ り , 酸 化 状 態 に あ る 焼 却 炉 内 で は Si・Al・Mg・Ca・Fe・Pは 揮 散 せ ず ,ア ル ミ ノ ケ イ 酸 塩・酸 化 物 お よ び リ ン 酸 塩 を 形 成 し た と 考 え ら れ る .Ca酸 化 物 の 一 部 は 燃 焼 ガ ス( CO 2 )と 反 応 し て 炭 酸 塩 を 形 成 す る .単 独 塩 化 物 と し て の haliteも 形 成 さ れ て い る .ま た ,hydrocalumiteは 焼 却生成物ではなく,灰ピット中において飛散防止のための加湿水分による生成物と考 えられる. No.1∼ No.3 は 炉 内 で 生 成 し た 粒 子 が 炉 か ら の 発 生 ガ ス (CO 2 , SO X , HCl, H 2 Oな ど )に 巻 き 上 げ ら れ た 後 堆 積 し た も の と 炉 内 生 成 粒 子 と 燃 焼 ガ ス の 反 応 生 成 粒 子 か ら な る . そ れ ら は , ケ イ 酸 塩 ・ 酸 化 物 ・ 炭 酸 塩 と 硫 酸 塩 で あ る . そ の う ち calcite と anhydriteは ダ ク ト 内 を 移 流 す る 過 程 で CaO粒 子 と CO 2 お よ び SO 2 と の 反 応 生 成 物 と 考 え ら れ る . haliteと sylviteは , 揮 散 し た NaClと KClが ガ ス 冷 却 に と も な い 凝 縮 し , 堆 積 し た も の で あ る 38) . No.4 は 集 塵 灰 で あ り ,そ れ ら の 粒 子 は ケ イ 酸 塩・酸 化 物・炭 酸 塩・硫 酸 塩 お よ び 塩 化水酸化物からなる.ケイ酸塩は炉内において生成した粒子であり,炭酸塩と硫酸塩 粒 子 は No.1∼ No.3 の 生 成 過 程 と 同 じ で あ る .同 定 さ れ た CaClOH,Ca(ClO) 2 ・4H 2 O は , 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 (Ca(OH) 2 )と 排 ガ ス 中 の HClと の 反 応 生 成 粒 子 で あ る . す な わ ち ,消 石 灰 (portlandite)は 酸 性 ガ ス を 中 和 す る た め に 吹 き 込 ま れ た も の で あ り ,中 和 反 応 は 以 下 の よ う に 進 行 す る と 推 定 さ れ た 37) . Ca(OH) 2 + HCl 2Ca(OH) 2 → CaClOH + H 2 O (1) + 2HCl + H 2 O + O 2 → Ca(ClO) 2 ・ 4H 2 O + CaO (2) ま た ,TG-DTA 測 定 か ら 得 ら れ る portlandite お よ び CaClOH の 熱 分 解 は ,以 下 の ように進行すると推定した. Ca(OH) 2 → CaO+H 2 O (3) CaClOH→ CaO+ HCl (4) こ の 反 応 に 際 し て , portlandite の 熱 分 解 に よ る 脱 水 量 は 3.30 %, CaClOHの 熱 分 解 に よ る 脱 HCl量 は ( 試 料 重 量 に 対 し て ) 0.97 %で あ っ た こ と か ら , 両 者 の 試 料 中 に 占 め る 割 合 (CaClOH/ Ca(OH) 2 =0.29)を 求 め る こ と が で き る . こ の 場 合 に , (1)の 反 応 で は 吹 き 込 み 量 の 1/3 以 下 し か 反 応 し て い な い と 見 る こ と が で き る . こ の よ う な 考 察 は,吹き込まれた消石灰と酸性ガスとの反応量を評価していることになり,適切な吹 き込み量を設定するためのデータになる. No.5 は 集 塵 装 置 を 通 過 し た 粒 子 の 堆 積 物 で あ り ,塩 化 物 と 硫 酸 塩 お よ び 炭 酸 塩 か ら なる. 焼却施設内にたい積するストーカー炉焼却残渣,ガス冷却塔内たい積物,冷却塔出 口 付 近 ダ ク ト 内 た い 積 物 , 電 気 集 じ ん 機 入 口 付 近 ダ ク ト 内 堆 積 物 ,( 消 石 灰 吹 き 込 み ) 電気集じん灰,誘引送風機内堆積物の性状は以下のようにまとめられる. 27 1)XRF分 析 か ら ,Si・ Ti・ V・ Al・ Fe・ Mn・ Mg・ Ca・ Na・ K・ S・ P・ Cl・ Br・ Cu・ Zn・Pbの 17 元 素 が 検 出 さ れ た .そ れ ら 成 分 に 加 え て 吸 着 水 ,構 造 水 お よ び 未 燃 C, CO 2 が 試 料 を 構 成 し て い た . 2)SiO 2 ・TiO 2 ・Al 2 O 3 ・Fe 2 O 3 お よ び P 2 O 5 は 焼 却 炉 か ら 離 れ る に し た が っ て 濃 度 を 減 じ ,Cl は 前 5 成 分 と 逆 の 傾 向 を 示 し た .SO 3 は ガ ス 冷 却 塔 出 口 お よ び 集 じ ん 機 入 口 で 高 濃 度 に な っ た .重 金 属 類 と し て は ,誘 因 送 風 機 内 堆 積 物 を 除 い て ,ZnOが 0.5 % 弱含まれていた. 3)堆 積 物 を 構 成 す る 元 素 に よ り ,以 下 の 鉱 物 が 形 成 さ れ て い た .anorthite,gehlenite, quartz,hematite,lime,portlandite,hydrocalumaite,CaClOH,Ca(ClO) 2 4H 2 O, halite, sylvite, calcite, anhydrite, gypsumが 同 定 さ れ た . ま た , akermanite, perovskite,farringtonite,Mg 2 P 2 O 7 の 存 在 も 推 定 さ れ た .さ ら に ,酸 性 排 ガ ス 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た portlanditeは HClと 反 応 し て lime, CaClOH, Ca(ClO) 2 ・ 4H 2 Oを 生 成 し て い た . 2.3 ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 お よ び 飛 灰 と 流 動 床 灰 2.3.1 炉 型 式 と 性 状 の 関 係 前節において,焼却施設内に堆積する物質の性状について示した.しかし,可燃物 の焼却によって生じる施設内堆積物の中心は焼却残渣と焼却飛灰であり,それらは, 可燃ごみのごみ質と焼却炉の型式により化学組成とそれを構成する鉱物種を異にする. 以下にストーカー式焼却炉と流動床式焼却炉を取り上げ,それらから生じる焼却残渣 と焼却飛灰および流動床灰の化学組成およびそれらを構成する鉱物種について記述す る. 対 象 灰 は ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 お よ び 焼 却 飛 灰 そ れ ぞ れ 4 試 料 ,流 動 床 灰 2 試 料 で あ る( 表 2.8).各 試 料 は 共 に 灰 ピ ッ ト か ら の 飛 散 を 防 ぐ た め に 加 湿 さ れ た 状 態 の 灰 で ある. 2.3.2 分 析 結 果 1. 化 学 組 成 各 試 料 の XRF 分 析 に よ る 分 析 結 果 を 表 2.8, 図 2.7-1, 図 2.7-2 に 示 し た . ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 に つ い て ,SiO 2 は 38∼ 34 %,Al 2 O 3 は 12∼ 16 %,CaOは 17 ∼ 27 %,Fe 2 O 3 は 7∼ 14 %で あ っ た .そ れ ら 4 成 分 を 主 成 分 と す る と ,MgO,Na 2 O, P 2 O 5 は 2~3 % で あ り ,K 2 Oは 2 %弱 , SO 3 は 1 % 前 後 ,Clは ∼ 3 %以 下 で あ っ た .重 金 属 類 の CuO, ZnOと PbOは 1 %以 下 で あ っ た . 焼 却 残 渣 成 分 の 変 動 は , そ れ ぞ れ の 焼却炉で焼却された可燃ごみの組成変動に影響された結果と考えられる. ス ト ー カ ー 炉 飛 灰 に つ い て は , SiO 2 は 14∼ 27 %で あ り , 14 % 程 度 と 20 %前 後 の も の に 分 か れ た . Al 2 O 3 も 2 % 程 度 の も の と 9 %程 度 の も の に 分 か れ た . CaOは 1 試 28 料 が 14 % 程 度 で あ り , 3 試 料 は 40 %前 後 で あ っ た . Fe 2 O 3 は 3 %以 下 , MgOは 1 % 程 度 と 3 %程 度 の も の に 分 か れ ,Na 2 Oは 3 %∼ 12 %と ば ら つ い た .K 2 Oは 1 試 料 が 9 % 程 度 で あ り , 他 の 3 試 料 は 4 %程 度 で あ っ た . SO 3 は 4∼ 10 % , Clは 1 試 料 が 10 % で あ っ た が ,他 の 3 試 料 は 30 %程 度 で あ っ た .CuO,ZnOお よ び PbOは 1 %以 下 で あ る が 焼 却 残 渣 に 比 べ て 高 濃 度 で あ っ た . ま た , 飛 灰 に お け る SiO 2 と Al 2 O 3 の 変 動 は , 炉からの燃焼排ガスに巻き上げられた焼却残渣との混合度合いの差によって生じ, CaOの 変 動 は 主 に は 燃 焼 排 ガ ス 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 量 の 差 に よ っ て 生 じ た と 考 え ら れ る .Na 2 O,K 2 O,SO 3 ,Cl成 分 お よ び CuO,ZnO,PbOが 焼 却 残 渣 に 比 べて飛灰中の含有量が高いことは焼却過程において揮散し,集塵装置で捕集された結 果である. 表 2.8 ス ト ー カ ー 炉 主 灰 と 飛 灰 お よ び 流 動 床 灰 の 化 学 組 成 ( 単 位 : 重 量 %) A施設 B施設 C施設 D施設 E施設 F施設 A残渣 A飛灰 B残渣 B飛灰 C残渣 C飛灰 D残渣 D飛灰 E流動床灰F流動床灰 27.54 14.74 38.51 22.15 36.71 4.49 34.12 17.95 34.31 4.45 1.71 1.10 1.17 1.34 1.76 0.52 1.48 1.49 1.11 0.41 SiO2 TiO2 Al2O3 15.34 Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O 9.64 14.78 2.33 12.13 9.32 2.35 17.52 8.25 14.43 0.19 2.45 18.17 3.92 0.52 <0.01 0.89 41.83 3.34 3.29 0.15 3.74 20.66 4.42 3.20 0.10 3.31 40.14 5.03 16.07 11.07 0.14 2.83 20.49 3.07 2.52 0.08 3.26 37.8 2.71 15.78 0.15 2.73 17.26 3.93 0.58 <0.01 1.11 39.46 6.89 K2O 2.61 4.11 1.65 3.97 2.26 8.66 1.99 3.22 2.88 3.17 P 2O5 3.33 2.04 3.23 0.83 4.15 2.79 2.85 0.71 2.84 2.82 9.96 31.43 <0.01 0.51 0.19 4.73 7.94 0.84 1.29 0.40 3.84 13.04 0.38 0.51 0.25 SO3 Cl CuO ZnO PbO 1.06 <0.01 0.09 0.23 <0.01 4.51 9.47 <0.01 0.24 <0.01 1.39 <0.01 0.14 0.45 <0.01 9.22 29.38 0.07 0.79 0.35 6.94 1.10 0.12 <0.01 2.83 3.00 27.29 13.69 3.99 12.14 1.35 8.38 2.39 20.62 0.18 0.07 0.52 <0.01 0.21 0.14 1.59 2.40 0.14 0.34 <0.01 45 40 35 重量(%) 30 25 20 15 10 5 0 SiO2 TiO2 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO CaO A残渣 Na2O B残渣 図 2.7-1 ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 の 化 学 組 成 29 K2O C残渣 P2O5 SO3 D残渣 Cl CuO ZnO PbO 45 40 35 重量(%) 30 25 20 15 10 5 0 SiO2 TiO2 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO CaO A飛灰 Na2O B飛灰 K2O P2O5 C飛灰 SO3 Cl CuO ZnO PbO D飛灰 図 2.7-2 ス ト ー カ ー 炉 飛 灰 の 化 学 組 成 流 動 床 灰 に つ い て は ,SiO 2 は 14∼ 27 %,Al 2 O 3 は 8∼ 17 %,CaOは 40∼ 20 %,Fe 2 O 3 は 3 %,Na 2 Oは 4∼ 5 %,K 2 Oは 2∼ 3 %,Clは 8∼ 13 %で あ っ た .流 動 床 式 焼 却 炉 は ストーカー式焼却炉と比べると,炉底灰と飛灰を同時に捕集排出する構造を持つとこ ろから,流動床灰はストーカー炉焼却残渣と飛灰の混合した化学組成を持っていると み る こ と が で き る (図 2.7-3). 45 40 35 重量(%) 30 25 20 15 10 5 0 SiO2 TiO2 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O K2O E流動床灰 P2O5 SO3 Cl CuO ZnO PbO F流動床灰 図 2.7-3 流 動 床 灰 の 化 学 組 成 2. ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 お よ び 飛 灰 の 構 成 鉱 物 そ れ ぞ れ の 対 象 灰 に つ い て ,図 2.2 に 示 し た 手 順 に し た が っ て 精 製 水 お よ び HCl 溶 液により処理した.この処理は,主要構成鉱物の回折ピークにマスキングされている 鉱 物 の 回 折 ピ ー ク を 検 出 す る こ と が 目 的 で あ る .XRD 測 定 に よ り 同 定 さ れ た 各 試 料 の 鉱 物 種 を , 表 2.9 に 示 す . 30 ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 で は ,quartz,anorthite,gehlenite,hematite,magnetite, calciteお よ び Ca(ClO) 2 が 同 定 さ れ た .水 洗 処 理 試 料 で は ,未 処 理 試 料 で 同 定 さ れ た 鉱 物 の う ち Ca(ClO) 2 が 溶 解 に よ り 消 失 し た が ,新 た な 鉱 物 の 回 折 ピ ー ク は 見 ら れ な か っ た . HCl溶 液 処 理 試 料 で は , gehlenite, magnetite, calciteお よ び Ca(ClO) 2 が 酸 分 解 により消失したが,新たな鉱物相の回折ピークは見られなかった.また,それらの分 解 に よ り ,マ ス キ ン グ さ れ て い た rutileの 回 折 ピ ー ク が 同 定 さ れ た .し か し ,rutileは 焼 却 残 渣 を 構 成 す る 基 本 粒 子 と 見 る よ り も , 表 2.6 に 示 し た よ う に perovskiteが 酸 分 解した残渣と考えることが妥当である. ス ト ー カ ー 炉 飛 灰 で は ,quartz,anorthite,gehlenite,hematite,lime,portlandite, Ca(ClO) 2 ,CaClOH,calcite,halite,sylviteお よ び anhydriteが 同 定 さ れ た .そ の う ち portlandite,Ca(ClO) 2 ,CaClOHは 前 節 に も 示 し た と お り 排 ガ ス 中 の HClと そ の 中 和処理のために吹き込まれた消石灰との反応生成物である.水洗処理試料では,未処 理 試 料 で 同 定 さ れ た 鉱 物 の う ち portlandite, Ca(ClO) 2 , CaClOH, halite, sylviteお よ び anhydriteが 溶 解 に よ り 消 失 し た が ,新 た な 鉱 物 の 回 折 ピ ー ク は 見 ら れ な か っ た . 野 坂 ほ か 29) は ス ト ー カ ー 炉 飛 灰 の 水 洗 試 料 中 に お い て gehlenite, quartz, hematite に 加 え て perovskite,rutile ,Ca 3 Al 2 O 6 を 同 定 し て い る が ,今 回 試 料 で は 同 定 で き な か っ た . HCl溶 液 処 理 試 料 で は , 未 処 理 試 料 に お い て 同 定 さ れ た 鉱 物 の う ち quartz, anorthite, hematiteを 除 い て 酸 に よ り 分 解 し , 新 た な 鉱 物 と し て rutile, gypsumが 同 定 さ れ た . rutileは 焼 却 残 渣 の 場 合 と 同 様 に し て 生 じ た も の で あ る . 野 坂 ほ か 29) は ス ト ー カ ー 炉 飛 灰 の HNO 3 処 理 残 渣 中 に( Fe,Mg,Ca)SiO 3 を 同 定 し て い る が ,本 試 料 で は 同 定 す る こ と は で き な か っ た . gypsumの 生 成 は , 含 Ca鉱 物 の 溶 解 ・ 分 解 に よ っ て 生 じ た Ca 2+ イ オ ン と SO 4 2- イ オ ン と 水 と の 再 結 晶 に よ り 生 じ た も の で あ る と 考 え ら れ , 永 井 ほ か 30) は そ の よ う な 過 程 か ら ettringiteの 生 成 も 確 認 し て い る . 表 2.9 XRD に よ り 同 定 さ れ た ス ト ー カ ー 炉 主 灰 , 飛 灰 お よ び 流 動 床 灰 の 鉱 物 種 Quartz Anorthite Gehlenite Hematite Magnetite Lime Rutile Portlandite Ca(ClO)2 CaClOH Calcite Sylvite Halite Anhydrite Gypsum Ettringite 残渣 ● ● ● ● ● 無処理 飛灰 流動床 ● ● ● ● ● ● ● ● 残渣 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 水洗処理 飛灰 流動床 ● ● ● ● ● ● ● ● 残渣 ● ● 塩酸処理 飛灰 流動床 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ま た ,( 便 宜 的 に 酸 化 物 と し て 示 し た が ) Pb, Zn等 の 低 沸 点 重 金 属 類 は 揮 散 し 排 ガ 31 スに移行し,ガス成分との反応とガス温度の低下により,先に示した鉱物粒子表面に 凝 縮 す る 38,39) .し か し ,そ れ ら 成 分 は 含 有 量 が 低 い こ と に よ り ,XRD測 定 で は 直 接 鉱 物種を決定することはできなかった. そ こ で ,焼 却 飛 灰 の 水 洗 処 理 残 渣 に つ い て ,さ ら に 500mlの 精 製 水 に よ る 逐 次 洗 浄 を 施 し た 試 料 に つ い て XRD 測 定 と SEM-EDS分 析 を 適 用 し た 31) . Znは 水 洗 処 理 に よ り 濃 縮 さ れ た こ と か ら( 表 2.9),S/Nを 高 め る た め に 7 回 の 繰 り 返 し 測 定 を 行 っ た XRD プ ロ フ ァ イ ル に よ り zinciteと 同 定 さ れ た が ,他 の 重 金 属 に つ い て は 含 有 物 質 の 回 折 ピ ー ク を 確 認 す る こ と が で き な か っ た .Pbに つ い て も 同 様 な 操 作 に よ っ た が 含 有 物 質 の 回折ピークの確認はできなかった. 表 2.10 (単 位 : 重 量 %) 飛灰および処理飛灰の化学組成 SiO2 TiO2 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O K2O P2O5 SO3 Cl CuO ZnO PbO CO2 F0 7.96 0.60 3.82 0.86 − 1.29 32.5 5.83 4.79 1.16 10.1 26.1 0.05 0.53 0.14 4.27 F1 13.3 1.81 7.16 2.20 0.11 3.55 46.3 − 2.15 1.79 3.78 − 0.15 1.59 0.32 15.10 Pbの 鉱 物 種 を 決 定 す る た め , 未 処 理 試 料 F0 お よ び 逐 次 水 洗 試 料 F1(表 2.10)中 の 個 別 粒 子 に つ い て の SEM観 察 と EDS分 析 結 果 を 表 2.11 お よ び 図 2.8 に 示 し た . 未 処 理 試 料 F0 中 に み ら れ た 粒 子 は Pb-Cl-S-Oで 80∼ 90% を 占 め , F1 中 の 粒 子 は Pb-S-O で 80∼ 90% を 占 め た . そ れ ら の 形 状 は , 試 料 F0 中 の 粒 子 形 状 は 数 ∼ 10μ mの 粒 径 を 持 つ 立 方 体 あ る い は 直 方 体 状 で あ る が ,試 料 F1 で は そ れ が 明 瞭 で は な い .こ の 観 察 結 果 は , 以 下 の こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る . Pb-Cl-S-Oで 80∼ 90% を 占 め る 組 成 を 考 慮 す る と ,試 料 F0 中 で の 高 Pb含 有 粒 子 は ,Pb塩 化 物( PbCl 2 ),Pb酸 化 物( PbO ま た は PbO 2 ), Pb硫 化 物 (PbS), Pb硫 酸 塩 ( PbSO 4 ) を 形 成 し て い る と 推 定 で き る . 試 料 F1 中 の Pb高 含 有 粒 子 は , Pb-S-Oで 80∼ 90% を 占 め る 組 成 を 考 慮 す る と 精 製 水 処 理 に よ り PbCl 2 部 分 な い し PbSO 4 部 分 が 溶 脱 し , 粒 子 形 状 の 輪 郭 が 不 明 瞭 と な っ た ものと推定できる. 表 2.11 O Al Si S Cl K Ca Cu Zn Pb Pb を 主 成 分 と す る 粒 子 の 化 学 組 成 (単 位 : 重 量 %) FLA1 FLA2 FLA3 FLA4 OW1 OW2 OW3 OW4 OW5 23.2 15.6 9.6 14.5 8.8 10.0 10.8 9.1 9.1 − − − 0.8 − 0.8 0.2 − 0.3 1.7 1.2 1.3 1.2 1.2 1.3 1.2 1.2 1.0 12.8 8.8 10.6 7.4 9.8 11.6 11.0 9.3 10.2 − − − − 15.2 11.0 7.8 10.4 − − − − − 8.5 2.3 1.0 1.9 − 9.6 6.2 2.8 9.5 2.0 0.8 1.1 2.3 1.1 1.1 2.5 2.7 2.3 3.5 5.8 4.4 9.5 4.5 1.4 2.2 1.8 1.7 2.4 4.0 3.5 6.9 2.4 25.7 50.3 62.4 50.3 72.0 66.5 68.0 61.8 71.4 FL1∼ FL4: F0 中 に お い て 観 察 さ れ た 粒 子 OW1∼ OW5: F1 中 に お い て 観 察 さ れ た 粒 子 32 図 2.8 ス ト ー カ ー 炉 飛 灰 中 の 含 Pb 粒 子 の SEM 像 FLA3: 無 処 理 試 料 中 の 高 Pb 含 有 粒 OW5: ろ 過 残 渣 を 洗 浄 後 の 試 料 中 の Pb 含 有 粒 子 3. 流 動 床 灰 の 構 成 鉱 物 流 動 床 灰 で は , 未 処 理 試 料 に お い て quartz, anorthite, gehlenite, hematite, magnetite, portlandite, CaClOH, calcite, sylvite, halite, anhydrite お よ び ettringite が 同 定 さ れ た .ettringite の 生 成 は ,灰 ピ ッ ト 中 に お い て 飛 散 防 止 の た め の 加 湿 に よ る 水 分 添 加 に よ っ て 生 成 し た と 考 え ら れ る . 水 洗 処 理 試 料 で は CaClOH, sylvite, halite が 分 解 消 失 し た が , 新 た な 鉱 物 の 回 折 ピ ー ク は 見 ら れ な か っ た . HCl 溶 液 処 理 試 料 で は quartz, anorthite, hematite, rutile お よ び gypsum が 同 定 さ れ た .HCl 処 理 試 料 に お け る 鉱 物 種 の 同 定 結 果 か ら ,ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 の状況と同じことが生じていると考えられる. 2.3.5 ま と め (1)XRF 分 析 に よ り ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 お よ び 流 動 床 灰 か ら Si・Ti・Al・ Fe・ Mn・ Mg・ Ca・ Na・ K・ P・ S・ Cl・ Cu・ Zn・ Pb の 15 元 素 が 検 出 さ れ た . (2)ス ト ー カ ー 炉 焼 却 残 渣 で は ,quartz,anorthite,gehlenite,hematite,magnetite, calciteお よ び Ca(ClO) 2 が 同 定 さ れ た .ス ト ー カ ー 炉 焼 却 飛 灰 で は quartz,anorthite, gehlenite, hematite, lime, portlandite, Ca(ClO) 2 , CaClOH, calcite, halite, sylviteお よ び anhydriteが 同 定 さ れ た . portlanditeは 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 の 未 反 応 分 で あ る . Ca(ClO) 2 , CaClOHは 前 節 に も 示 し た と お り 排 ガ ス 中 の HClと そ の 中 和 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 と の 反 応 生 成 物 で あ る . anhydriteは , 排 ガ ス 中 の SOxと そ の 中 和 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 と の 反 応 生 成 物 で あ る . (3) 流 動 床 灰 で は ,quartz,anorthite,gehlenite,hematite,magnetite, portlandite, CaClOH, calcite, sylvite, halite, anhydrite お よ び ettringite が 同 定 さ れ た . ettringite は , 灰 ピ ッ ト 中 に お い て 飛 散 防 止 の た め の 加 湿 に よ る 水 分 添 加 に よ っ て 生成したと考えられる. (4)微 量 成 分 と し て の Znは zinciteを 形 成 し て い た . Pbは Pb塩 化 物 ( PbCl 2 ), Pb酸 化 33 物( PbOま た は PbO 2 ),Pb硫 化 物 (PbS),Pb硫 酸 塩( PbSO 4 )を 形 成 し て い る と 推 定できた. 2.4 性 状 の 均 質 さ と 不 均 質 さ 2.4.1 ロ ッ ト 内 の 差 異 に つ い て 1 対象試料と試料の選別 焼却灰の性状は採取試料の分析によって決定されるが,どのように試料を採取する か,また,どの程度の量を採取するかにより異なった結果が得られることは,従来か ら知られている.以下において,1ロットあるいは1バッチと称される試料における 偏りについて考察した. 対象試料は,つぎのように処理されたものである.可燃・不燃・粗大・資源・有害 ご み の 5 区 分 に よ り 収 集 さ れ た も の の う ち ,可 燃 ご み と 破 砕 選 別 さ れ た 粗 大 ご み の 可 燃分は,準連続式ストーカー炉で焼却処理され,生じた焼却残渣と焼却飛灰は同一灰 ピット内に貯留され,冷却と飛散防止のため加湿された後,溶融炉へ供給される.試 料 は 供 給 さ れ る 1 バ ッ チ か ら , 約 600 g, 全 12 試 料 を 採 取 し た . 試 料 全 体 は 暗 灰 色 を 呈 す る 粉 末 状 の も の が 主 で あ る が ( 試 料 bulk), 以 下 の 特 異 的 色 調 を 呈 す る 団 粒 が 目 立 つ 傾 向 を 示 し た .そ れ ら は 灰 白 色( 試 料 灰 白 ),純 白 色 に 近 く 比 較 的 柔 ら か い 塊 状 の も の( 試 料 純 白 1,試 料 純 白 2),黄 白 色 を 呈 す る 比 較 的 柔 ら か い 塊 状 の も の( 試 料 黄 白 ),青 白 色 を 呈 す る 比 較 的 柔 ら か い 塊 状 の も の( 試 料 青 白 )な どであった. 溶融対象試料1バッチの化学性状の分析用試料は,以下のように調製された.試料 を 2 分 し ,そ の 一 つ を 指 頭 に よ り 団 粒 を ほ ぐ し ,さ ら に 縮 分 法 に よ り ほ ぼ 10g を 分 取 した.これに含まれる金属片と陶磁器片・ガラス片等をとり除いた.また,2 分され たもう一方の試料から特徴的な団粒をハンドピッキングにより選別した.この操作を 全 12 試 料 に つ い て 行 っ た . 次 に 各 試 料 か ら 分 取 し た 10g を 混 合 攪 拌 後 ,105 ℃ ,2 時 間 乾 燥 し た .ハ ン ド ピ ッ キ ン グ に よ り 選 別 し た も の に つ い て も , 105 ℃ , 2 時 間 乾 燥 し た . 乾 燥 後 , 試 料 は メ ノ ウ 乳 鉢 で 微 粉 化 さ れ , XRF に よ り 成 分 分 析 を , XRD に よ り 鉱 物 種 を 同 定 し た . 2. 鉱 物 種 ・ 化 学 種 の 同 定 化 学 分 析 結 果 を 表 2.12 に 示 し た .溶 融 原 料 灰 と し て の 化 学 組 成 は ,採 取 し た 12 試 料 の 等 量 混 合 物( 試 料 全 体 )の 化 学 分 析 結 果 か ら 以 下 の よ う に な っ た .す な わ ち ,SiO 2 は 26.48 %,Al 2 O 3 は 9.74 %,Fe 2 O 3 は 5.22 %,CaOは 27.28 %,Clは 9.09 %で あ り , こ の 5 成 分 で お よ そ 80 %を 占 め る .重 金 属 類 の う ち As 2 O 3 ,HgO,CdO,SeO 2 は 定 量 下 限 値 以 下 で あ っ た . Cr 2 O 3 は 0.08 % , PbO 2 は 0.27 %, CuOは 0.18 %, ZnOは 0.68 %で あ っ た .含 水 量 は 105 ℃ ,2 時 間 乾 燥 の 減 量 分 か ら ほ ぼ 10 % と 求 め ら れ た . 未 燃 Cは 5%前 後 で あ っ た . な お , 表 2.11 に 示 し た 試 料 全 体 の 化 学 組 成 は 含 水 量 , 未 34 燃 Cお よ び CO 2 分 を 補 正 し た も の で あ る . 表 2.12 対 象 灰 の 化 学 組 成 SiO2 全体 26.48 灰白 純白1 純白2 10.37 4.88 1.11 − 0.75 0.54 TiO2 1.89 Al2O3 9.47 8.29 1.68 56.10 Fe2O3 5.22 MnO 0.14 MgO 2.90 CaO 27.28 Na2O 5.66 K 2O 3.70 1.85 − − 9.81 11.04 0.71 − 12.22 50.67 − 1.89 青白 − 黄白 1.34 茶白 41.56 − 0.67 1.11 39.97 2.23 14.15 0.35 − − 4.14 6.10 0.14 0.20 0.11 − − − 7.91 31.98 − 0.48 17.64 0.13 2.14 8.73 4.71 1.09 − P2O5 3.06 1.27 27.26 4.60 − SO3 Cl Cr2O3 NiO CuO ZnO PbO 3.55 9.09 0.08 0.02 0.18 0.68 0.27 1.15 8.37 − − − 45.20 − 1.75 − − − − 0.29 − 2.60 23.19 − − 0.05 1.56 0.21 − 1.44 − 2.73 0.46 57.41 10.15 4.02 − − 0.36 0.04 33.92 0.05 5.88 0.07 − 0.09 0.84 4.17 − − − 0.80 − 1.28 試 料 灰 白 で は SiO 2 が 10.37 %,Al 2 O 3 が 8.29 %,CaOが 9.81 %,Na 2 Oが 11.04 %, Clが 8.37 %,ZnOが 45.2 %を 占 め る .ま た ,gehlenite,quartz,zincite,simonkolleite, sinjariteが 同 定 さ れ た こ と か ら ,SiO 2 ,Al 2 O 3 ,CaO,Na 2 O,Cl,ZnOが そ れ ら の 鉱 物 を 形 成 し た こ と が わ か る . 試 料 純 白 1 は CaOが 50.67%, MgOは 12.22%, P 2 O 3 が 27.26%を 占 め ,Ca(PO 4 ) 2 ・xH 2 O,Mg 3 (PO 4 ) 2 ・22H 2 O,CaMgP 2 O 7 が 同 定 さ れ た こ と よ り ,リ ン 酸 塩 を 形 成 し て い た .試 料 純 白 2 は Al 2 O 3 が 56.1%,Clは 23.19%,CaO は 4.14%, Na 2 Oは 6.1%, K 2 Oは 4.6%を 占 め , そ れ ら は Al 2 O 3 , halite, sylviteを 形 成 し て い た .試 料 青 白 は Al 2 O 3 が 39.97%,CuOは 33.92%,ZnOは 5.88%,CaOは 7.91%, Clは 10.15% を 占 め ,akdalaite,cuprite,paramelaconite,zinciteを 形 成 し て い た . 試 料 黄 白 は CaOが 31.98%,SO 3 が 57.41%を 占 め ,anhydriteを 形 成 し て い た .試 料 茶 白 は SiO 2 が 41.56%,Al 2 O 3 は 14.15%,Fe 2 O 3 は 17.64%,CaOは 8.73%を 占 め ,Fe 2 O 3 は hematiteを , SiO 2 , CaOは fukaliteを 形 成 し て い た . 3. ま と め ま た , 表 2.12 に 示 し た 17 成 分 が 形 成 す る 鉱 物 種 の XRD 測 定 に よ る 同 定 結 果 を 表 2.13 に 示 し た .21 の 鉱 物 種 が 同 定 さ れ ,そ れ ら は 酸 化 物 ,珪 酸 塩 ,炭 酸 塩 ,硫 酸 塩 , リ ン 酸 塩 お よ び 塩 化 物 で あ っ た . Zn は simonkolleite と zincite を 形 成 し , Cu は cuprite と paramelaconite を 形 成 し て い た . 35 表 2.13 対 象 試 料 の 鉱 物 組 成 全体 灰白 白1 鉱物/化学式 Quartz/ SiO2 ● ● Al2O3 白2 黄白 茶白 青白 ● Akdalaite/ (Al2O3)4・H2O ● Hydrocalumite/ Ca4Al2O6Cl・10H2O ● Hematite/ Fe2O3 Zincite/ ZnO Simonkolleite/ Zn(OH)8Cl・H2O ● ● ● ● Cuprite/ Cu2O ● Paramelaconite/ Cu4O3 CuZn Gehlenite/ Ca2Al2SiO7 ● ● ● ● Sekaninaite/ FeAl4Si5O12 Fukalite/ Ca4Si2O6(CO3)(OH) ● Calcite/ CaCO3 ● ● Anhydrite/ Ca(SO4) ● Ca(PO4)2・xH2O ● Mg3(PO4)2・22H2O ● CaMgP2O7 ● Sinjarite/ CaCl2・2H2O Halite /NaCl Sylvite/ KCl ● ● ● ● ● 2.4.2 ロ ッ ト 間 の 差 異 に つ い て 1. 対 象 施 設 と 対 象 試 料 焼却灰の性状を示す上で前述してきたように,その化学組成とそれが形成する鉱物 種 の 同 定 が 重 要 で あ る .し か し ,数 10 t/日 か ら そ れ 以 上 の ご み を 焼 却 し た 結 果 と し て の焼却灰の性状を表すためには,ある試料の分析値がどの程度代表性を持つかが重要 となる.そこでストーカー炉焼却残渣と焼却飛灰を対象として調査した. 対 象 施 設 は ,M 市 ク リ ー ン セ ン タ ー に 整 備 さ れ た 全 連 続 式 ス ト ー カ ー 炉 で あ る .本 炉 の 処 理 能 力 は 300 t/日 ( 100t /日 ×3 基 ) で あ り , 排 ガ ス 処 理 は , 乾 式 バ グ フ ィ ル ター式+湿式ガス洗浄式である.ここでは,焼却残渣と焼却飛灰の化学組成の変動を 調べることを目的として行った化学分析結果を示し,ロット間の差異について整理し た. 試料は次章で示す溶融スラグを製造するために,プラント製造メーカーの要望する 量を焼却残渣ピットおよび焼却飛灰ピットにおいて十分攪拌した後採取した.焼却残 渣および焼却飛灰ともに飛散防止のために加湿されている.これら焼却灰の原料とな る 可 燃 物 の 組 成 は ,十 分 攪 拌 さ れ た ご み ピ ッ ト か ら 採 取 し 厚 生 省 環 境 衛 生 局 通 達 第 95 号に基づきごみ質分析を行った. 対 象 焼 却 残 渣 の 総 重 量 は ,採 取 1 ロ ッ ト は 0.1∼ 6.02 t と 幅 広 く ,全 体 で 15 ロ ッ ト か ら な る お よ そ 150 t で あ っ た . 分 析 に あ た っ て の 試 料 は , 各 ロ ッ ト の 任 意 部 分 か ら 36 お よ そ 4 kg を 分 取 し ,径 50 mm 以 上 の 塊 状 物 を 目 視 除 去 し た 後 ,混 合 撹 拌 し 105 ℃ で , 24 時 間 乾 燥 し た . そ れ か ら ほ ぼ 2 kg を 再 分 取 し , 目 視 で ガ ラ ス ・ 陶 磁 器 片 お よ び金属片等を除去して分析試料とした. 対 象 焼 却 飛 灰 の 総 重 量 は , 採 取 1 ロ ッ ト は 0.03∼ 6.02t と 幅 広 く , 全 体 で 10 ロ ッ ト か ら な る お よ そ 26t で あ っ た .焼 却 飛 灰 は ピ ッ ト 内 で 十 分 攪 拌 し た 後 ,必 要 量 を 直 接 採 取 し た .分 析 に あ た っ て の 試 料 は ,各 ロ ッ ト の 任 意 部 分 か ら お よ そ 2 kg を 分 取 し , 加 湿 に よ り 固 化 し た 部 分 を 粉 砕 し た 後 , 105 ℃ で , 24 時 間 乾 燥 し た . 2 分析結果 (1)ご み 質 分 析 結 果 対 象 焼 却 残 渣 と 飛 灰 の 原 料 と し て の ご み 質 分 析 結 果 を 表 2.14 に 示 し た .だ だ し ,こ の結果は可燃ごみ質の一つの指標である. 表 2.14 可 燃 ご み の ご み 質 分 析 結 果 1 ごみの性状 項目 単位 比重 kg/m3 全水分 % 全灰分 % 可燃分 % 3 元素分析 測定値 218 58.8 7.0 34.2 区 分 炭素 水素 窒素 硫黄 塩素 酸素 2 ごみの組成 区 分 紙 類 布 類 厨 芥 類 木・竹 類 ビニール 類 合成樹脂類 ゴム 類 皮・革 類 不燃物 その他 測定値 %Dry %Wet 53.0 21.8 0.5 0.2 13.6 5.6 12.5 5.2 6.6 2.7 1.9 0.8 0 0 3.2 1.2 8.4 3.5 0.2 0.2 測定値 %Dry %Wet 46.2 19 5.73 2.36 0.86 0.35 0.05 0.02 1.49 0.61 37.1 15.3 4. 発熱量 項目 単位 低位発熱量(実測値) 低位発熱量(計算値) 総発熱量 高位発熱量 測定値 1390kcal/kg 1190 4940 1860 (2)焼 却 残 渣 の 化 学 組 成 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 の 分 析 項 目 は 主 成 分 と し て SiO 2 , TiO 2 , Al 2 O 3 , Fe 2 O 3 の 4 成 分 お よ び 副 成 分 と し て MnO, MgO, CaO, Na 2 O, K 2 O, P 2 O 5 , S(SO 3 ), Clの 8 成 分 , 微 量 成 分 と し て As, B, Cd, Cr, Cu, Hg, Mo, Ni, Pb, Sb, Se, Znの 12 成 分とした. 焼 却 残 渣 全 15 ロ ッ ト の 化 学 組 成 に つ き , 主 成 分 お よ び 副 成 分 組 成 を 表 2.15, 微 量 成 分 組 成 を 表 2.16 に 示 し た . 37 表 2.15 焼 却 残 渣 の 化 学 組 成 試料 S1 S2 S3 S4 S5 S6 S7 S8 S9 S10 S11 S12 S13 S14 S15 Av. Min. Max. 採 取 量 (t) 採取量 600℃ SiO2 TiO2 Al2O3 1.93 6.7 28.7 1.96 17.0 0.80 8.0 23.2 2.23 17.9 8.51 5.5 29.1 2.44 17.4 3.81 5.2 29.8 1.50 14.0 0.07 7.2 24.0 2.59 16.2 15.71 6.8 25.6 3.37 14.4 1.30 7.0 25.6 2.27 15.4 26.27 6.2 24.9 2.10 16.8 5.32 8.6 22.9 1.78 15.8 4.02 7.3 26.3 2.55 16.3 0.60 7.5 26.0 2.05 16.5 28.42 6.7 27.0 1.83 17.8 46.88 6.6 24.7 1.94 17.2 4.00 5.2 29.0 1.96 14.5 3.45 8.0 24.9 2.21 17.8 − 6.8 26.1 2.19 16.3 − 5.2 22.9 1.50 14.0 − 8.6 29.8 3.37 17.9 Fe2O3 6.99 5.26 6.64 6.54 7.74 6.02 7.30 11.45 5.51 5.88 5.77 6.53 4.78 12.00 5.62 6.93 4.78 12.00 MnO 0.15 0.16 0.15 0.12 0.19 0.15 0.16 0.30 0.32 0.39 0.14 0.13 0.12 0.18 0.16 0.19 0.12 0.39 MgO 3.42 3.44 3.30 3.72 3.35 3.36 3.43 3.10 3.24 3.50 3.47 3.52 3.54 2.90 3.52 3.39 2.90 3.72 CaO 25.0 29.2 26.0 25.6 28.8 30.6 28.6 25.6 26.9 27.7 28.9 26.7 30.7 23.2 28.2 27.5 23.2 30.7 表 2.16 焼 却 残 渣 の 重 金 属 類 等 含 有 量 試料 As S1 6 S2 6 S3 5 S5 5 S6 3 S7 4 S8 8 S9 6 S10 5 S11 9 S12 4 S13 5 S15 11 Av. 6 Min. 3 Max. 11 B 188 129 110 137 93 113 168 112 124 258 235 109 176 150 93 258 Cd 4.2 3.9 8.3 5.0 4.5 1.3 2.6 3.1 5.3 3.7 2.0 3.1 2.8 3.8 1.3 8.3 Cr 536 500 379 520 329 1040 493 512 473 453 415 387 429 497 329 1040 Cu 897 653 931 1490 1340 1220 2840 967 1810 2010 1050 945 1030 1322 653 2840 Na2O 4.09 4.54 4.21 5.36 3.80 3.87 3.82 3.56 3.43 4.00 3.79 3.94 3.72 2.69 3.51 3.89 2.69 5.36 分 析 値 (重 量 %) K2 O 1.77 1.69 1.73 1.60 1.82 1.78 1.78 1.69 1.63 1.83 1.84 1.83 1.94 1.78 1.74 1.76 1.60 1.94 P 2 O5 2.60 2.47 2.46 2.00 2.50 2.92 2.92 2.49 2.52 2.60 2.49 3.03 2.63 3.00 2.55 2.61 2.00 3.03 SO3 0.78 1.00 0.49 0.53 0.96 0.59 0.93 0.99 1.06 0.93 0.83 0.48 0.71 0.05 0.93 0.75 0.05 1.06 Cl 0.83 0.82 0.48 1.02 0.75 0.49 0.78 0.81 0.89 0.71 0.66 0.45 1.30 0.31 0.91 0.75 0.31 1.30 (単 位 : mg/kg) Hg 0.015 0.021 0.048 0.050 0.011 0.015 0.023 0.022 0.015 0.012 0.009 0.026 0.015 0.022 0.009 0.050 Ni 122 106 93 120 618 856 860 629 644 642 976 835 90 507 90 976 Pb 1230 694 762 916 618 856 860 629 644 642 976 835 1020 822 618 1230 Sb 59 73 35 100 37 45 37 51 40 55 75 66 115 61 35 115 Zn 3230 3570 2420 2970 3090 3260 4350 2380 3250 2620 2250 2670 2930 2999 2250 4350 600℃ 加 熱 に よ る 熱 灼 減 量 は お よ そ 7 %で あ り , そ れ は ほ ぼ 吸 着 水 分 と 未 燃 C 分 と に 相 当 す る .し か し ,2.3 節 に お い て 示 し た TG-DTA 分 析 結 果 を 考 慮 す る と ,熱 灼 減 量 7 %の 大 部 分 は ,未 燃 C で あ る と 考 え ら れ る .溶 融 に あ た っ て は ,こ の 未 燃 C は 原 料灰中の金属酸化物を還元する役割をはたす. 主 成 分 は SiO 2 ,Al 2 O 3 ,CaO,Fe 2 O 3 で あ り ,お よ そ 80 % を 占 め る .MgO,Na 2 O, P 2 O 5 な ど は , そ れ ぞ れ 3 % , 4 % , 3 % 弱 で あ る . 各 成 分 別 に つ い て み る と , SiO 2 は 22.9∼ 29.8 % ,Al 2 O 3 は 14∼ 17.9 %,CaOは 23.2∼ 32.3 % ,Fe 2 O 3 は 4.78∼ 12 % で あ っ た . Fe 2 O 3 は 6 %前 後 の ロ ッ ト が ほ と ん ど で あ る の に 対 し て , 2 つ の ロ ッ ト で 38 11.45 %お よ び 12 %の 特 異 的 に 高 い 濃 度 を 示 し た .MgOは 2.22∼ 3.45 %,Na 2 Oは 2.69 ∼ 5.36 %, K 2 Oは 2 %弱 , P 2 O 5 は 3 %弱 , SO 3 と Clは 1 %弱 で あ っ た . 主成分と副成分の個々の成分については,最高値と最低値の幅に差があるものの一 定の幅に収まっているとみなせた. 重 金 属 類 を 主 と し た 微 量 成 分 は Zn が 最 も 量 が 多 く ,つ い で Cu,Pb お よ び Cr が 多 き か っ た . 濃 度 は そ れ ぞ れ 3000 mg/kg, 1300 mg/kg, 800 mg/kg, 500 mg/kg で あ っ た .た だ し ,そ れ ら は 変 動 が 大 き く ,Zn で は 2250∼ 4350 mg/kg,Cu は 653∼ 2840 mg/kg, Pb は 618∼ 1230 mg/kg, Cr は 329∼ 1040 mg/kg で あ っ た . 4. 焼 却 飛 灰 の 化 学 組 成 焼 却 飛 灰 全 11 ロ ッ ト の 化 学 組 成 に つ き ,主 成 分 お よ び 副 成 分 組 成 を 表 2.17 に 示 す . 表 2.17 焼 却 飛 灰 の 化 学 組 成 試料 採取量 600℃ SiO2 H1 0.20 12.2 9.4 H2 0.03 12.3 9.9 H3 3.97 12.9 9.2 H4 0.50 11.8 9.2 H5 6.02 11.8 9.9 H6 0.95 12.0 9.9 H7 0.50 12.5 9.9 H8 0.10 12.1 8.8 H9 0.51 12.0 9.3 H10 11.70 11.6 7.9 H11 1.20 12.1 10.1 Av. − 12.1 9.4 Min. − 11.6 7.9 Max. − 12.9 10.1 TiO2 Al2O3 0.53 4.4 0.63 4.9 0.64 4.2 0.52 4.1 0.57 4.5 0.62 4.6 0.63 4.3 0.65 4.4 0.48 4.3 0.60 5.0 0.47 4.7 0.58 4.5 0.47 4.1 0.65 5.0 採 取 量 (t) Fe2O3 0.82 0.82 0.81 0.81 0.78 0.81 0.79 0.76 0.76 0.79 0.86 0.80 0.76 0.86 MnO MgO CaO Na2O 0.04 1.44 43.3 3.75 0.04 1.59 42.3 3.87 0.03 1.34 42.9 3.85 0.04 1.40 44.0 4.56 0.04 1.37 43.3 3.85 0.04 1.39 43.6 3.79 0.04 1.30 43.1 3.70 0.04 1.35 43.7 3.91 0.04 1.29 44.8 3.92 0.04 1.29 45.5 3.88 0.04 1.30 42.3 4.57 0.04 1.37 43.5 3.97 0.03 1.29 42.3 3.70 0.04 1.59 45.5 4.57 分 析 値 (重 量 %) K2O 4.22 4.00 4.03 4.24 4.10 3.90 3.93 3.92 4.08 4.06 4.30 4.07 3.90 4.30 P2O5 0.57 0.55 0.52 0.60 0.58 0.61 0.58 0.60 0.60 0.62 0.58 0.58 0.52 0.62 SO3 2.99 2.91 3.01 2.87 2.94 2.90 2.93 4.30 2.76 2.88 2.89 3.03 2.76 4.30 Cl 16.30 16.12 16.73 15.75 16.25 15.95 16.27 15.40 15.51 15.80 15.81 15.99 15.40 16.73 焼 却 飛 灰 の 600 ℃ 加 熱 に よ る 熱 灼 減 量 は お よ そ 12 % で あ り ,そ れ は 吸 着 水 分 と 未 燃 C 分 の 和 に 相 当 す る .溶 融 に あ た っ て は ,こ の 未 燃 炭 素 は 原 料 灰 中 の 金 属 酸 化 物 の 還元剤の役割をはたすことは,焼却残渣の場合と同じである. 主 成 分 は SiO 2 ,CaOお よ び Clで あ り ,そ れ ぞ れ 12 %,44 %,16 %で あ っ た .Al 2 O 3 , Na 2 O, K 2 Oお よ び SO 3 は 副 成 分 で あ り , そ れ ぞ れ 4.5 %, 4 %, 4 %, 3 %で あ っ た . 焼却残渣と比べると,飛灰主成分のロット間での変動幅は小さかった. 重 金 属 類 を 主 と し た 微 量 成 分 は Zn が 最 優 勢 で あ り ,つ い で Pb,Cu お よ び Cr が 優 勢 で あ っ た (表 2.18).濃 度 は そ れ ぞ れ 4300 mg/kg,1100 mg/kg,415 mg/kg,300 mg/kg で あ っ た . Sb は 160 mg/kg で あ っ た . 主 成 分 に 比 べ て 重 金 属 類 は 焼 却 過 程 に お け る 揮散の程度が,飛灰中の含有量に影響していると考えられる. 39 表 2.18 飛 灰 の 微 量 成 分 組 成 試料 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 Av. Min. Max. As 20 19 14 14 17 17 17 17 14 13 15 16 13 20 B 54 66 48 66 70 62 64 38 52 56 41 56 38 70 Cd 94.8 81.0 60.7 70.2 69.5 66.6 59.8 70.8 86.0 52.7 71.8 71.3 52.7 94.8 Cr 260 271 238 274 292 888 261 212 268 203 231 309 203 888 (mg/kg) Cu 305 343 443 436 481 406 420 468 426 367 471 415 305 481 Hg 0.436 0.416 0.705 0.408 0.238 0.395 0.507 0.467 0.475 0.215 0.460 0.429 0.215 0.705 Ni 22 23 20 24 22 23 21 22 20 19 16 21 16 24 Pb 1170 1140 941 1370 1350 1160 1070 1020 998 795 1040 1096 795 1370 Sb 206 139 171 190 170 183 116 171 139 156 155 163 116 206 Zn 5890 4300 4080 4360 4160 4330 4170 4000 4130 3390 4300 4283 3390 5890 主成分,副成分および微量成分に見られた各成分の変動は,可燃ごみ質の変動とサ ンプリング点を反映したものと考えられる.焼却炉に投入される可燃ごみ質の変動に ついては,投入の時系列に沿って刻々とその変動を把握することは困難(現場実態か ら試みられていない)である.したがって,一定期間ごとに採取した試料の成分分析 から各成分の変動幅を押さえて,それをもって組成の代表値と判断せざるを得ないと 考えられる. 40 第3章 焼却残渣の溶融スラグ化と溶融スラグの性状 3.1 研 究 目 的 焼却残渣および焼却残渣と焼却飛灰の混合灰(原料灰)あるいはごみを溶融するこ とにより生成したものの総体が溶融生成物であり,溶融生成物は溶融スラグと溶融メ タ ル お よ び 溶 融 飛 灰 と 排 ガ ス か ら な る .溶 融 ス ラ グ は ,後 述 す る よ う に SiO 2 ,Al 2 O 3 , CaOを 主 成 分 と す る . 溶 融 メ タ ル は 原 料 灰 あ る い は ご み の 溶 融 過 程 に お い て 発 生 す る 還 元 性 ガ ス と 原 料 灰 中 の 未 燃 Cな ど に よ り , 金 属 酸 化 物 が 還 元 さ れ て 生 じ た も の で あ る .そ れ ら は 球 状 な い し 長 球 状 ま た は 塊 状 を 呈 し ,後 述 す る よ う に Feと Cuを 主 成 分 と す る も の 等 お よ び そ れ ら か ら 明 ら か に 区 別 で き る Alを 主 成 分 と す る も の か ら な る( 溶 融 メ タ ル に 関 し て は , 第 5 章 に 示 さ れ る ). ま た , 溶 融 飛 灰 は , 焼 却 残 渣 お よ び 混 合 灰あるいはごみの溶融過程において,溶融炉から排出されたガス状成分を冷却させバ グフィルターや電気集塵機などの処理装置によって捕集されたものであり,原料灰中 の Pb等 の 低 沸 点 重 金 属 類 や 塩 類 が 濃 縮 さ れ て い る .( 溶 融 飛 灰 に 関 し て は , 第 6 章 に 示 さ れ る ).排 ガ ス は 溶 融 炉 か ら 発 生 し ,排 ガ ス 処 理 装 置 を 通 過 し て 施 設 系 外 へ 排 出 さ れたガスである. 焼却残渣および混合灰あるいはごみを溶融スラグ化する上では,それら対象物の溶 融 過 程 を 的 確 に 評 価 す る こ と が 基 本 と な る .第 2 章 に 示 し た よ う に 焼 却 残 渣 お よ び 焼 却飛灰は酸化物,ケイ酸塩,硫酸塩,塩化物および炭酸塩と水酸化物等からなる多成 分混合物である.それら個々の鉱物種の融点は鉱物種毎に異なり,酸化物とケイ酸塩 の 融 点 は 1200 ℃ 以 上 , 硫 酸 塩 の 融 点 は 1500℃ 前 後 , 塩 類 の そ れ は 800 ℃ 前 後 で あ る .Ca 炭 酸 塩 は 800 ℃ 以 上 で 熱 分 解 し ,水 酸 化 物 は 500 ℃ 前 後 で 脱 水 し て 酸 化 物 と なる.一般的な傾向として,多成分混合物の融点は個々の成分が単一で存在する場合 の融点よりも低下することが知られており,焼却残渣のような多成分混合物は徐々に 軟 化・溶 融 し て い く た め に ,純 物 質 の よ う に 明 確 な 融 点 を 示 さ な い こ と が 特 徴 で あ る . したがって,それらの溶融は一様には進行しない.そのため多成分混合物の溶融特性 を定義する温度は,軟化点,融点および溶流点となる.溶融炉の運転にあたっては, 炉内において対象物を溶融することは重要ではあるが,溶融体を遅滞なく炉外へ排出 することがより重要となる. 溶融スラグの人工骨材化に向けては,原料灰の溶融過程と冷却過程から導かれる溶 融スラグの組織,粒径と形状および化学組成を明らかにする必要がある.さらに,溶 融スラグの骨材利用において最重要課題である溶融スラグの有害物質の溶出特性を明 らかにする必要がある。これらの課題を解決することを目的に,つぎの実験と観察を 行った.溶融対象物の融け易さと流動性に関する実験的評価とそれから得られた結果 およびその実験試料を用いて溶融過程を可視化した.この可視化により溶融スラグの 組織に関する特徴付けの基本的な考え方を提示した.溶融スラグを人工骨材として利 41 用する場合のスラグの粒径および粒形と化学組成について記載と考察を行った.続い て,溶融スラグの利用にあたって最重要課題となる有害物質の含有およびそれらの溶 出特性に関して反復溶出試験法を提案し,実験と考察を行った. 3.2 試 験 お よ び 実 験 方 法 溶融スラグ組織の特徴付けにあたっては,以下の手法を採用した.溶融スラグの形 状と内部組織の観察は実体顕微鏡および薄片作成による偏光顕微鏡観察によった.化 学 分 析 は 湿 式 分 析 と XRF 法 に よ っ た .鉱 物 種 の 同 定 は ,先 述 の 偏 光 顕 微 鏡 観 察 と XRD 測定によった.それら機器分析による分析条件は,第 2 章に示した. 3.3 溶 融 過 程 3.3.1 溶 流 度 試 験 溶融炉において原料灰を適切に溶融するためには,それらの溶融温度および溶融体 の 流 動 性 を 調 べ て お く 必 要 が あ る .こ の 場 合 ,溶 融 炉 の 設 計 運 転 温 度 は 溶 融 点 よ り も , 溶融体の流動性の指標としての溶流点が重要な意味を持つ.そのため,原料灰の溶流 点を直接測定する必要性が生じてくる.溶融点と溶流点の試験方法は,坩堝法,ゼー ゲ ル コ ー ン 法 ,JIS K 2151 に よ る 灰 の 溶 融 性 試 験 法 と 溶 流 度 試 験 法 等 が あ る .し か し , 坩堝法とゼーゲルコーン法は,試料の溶流性を適切に表現できないといった欠点があ る.したがって,溶流性を表現できる灰の溶融性試験法と溶流度試験法について紹介 する. 灰 の 溶 融 性 試 験 法 ( JIS K 2151) は 以 下 の 通 り で あ る . 完 全 に 灰 化 し た 試 料 に 水 ま た は デ キ ス ト リ ン 10 %溶 液 を 加 え て 混 練 し た の ち ,試 験 錘 作 製 型 に 押 し 込 み 成 型 す る . 気乾後,型から抜き取り乾燥固化する.続いて所定温度まで昇温した電気炉内に試料 を 静 置 し た の ち ,5 ℃ /min.で 昇 温 す る .10 ℃ 毎 に ま た ,軟 化 点 が 近 づ い た ら 5 ℃ 毎 に試料の状態を観察する.これにより,試料の軟化点,溶融点および溶流点が得られ る .軟 化 点 ,溶 融 点 お よ び 溶 流 点 は つ ぎ の よ う に 定 義 さ れ る( 図 3.1).軟 化 点 は ,試 料の頂部が融けて丸くなり始めた温度である.溶融点は,試料が溶融し,その高さが 底 部 の 見 か け 上 の 幅 の 1/2 に 等 し く な っ た 温 度 で あ る . 溶 流 点 は , 溶 融 物 が 支 持 台 を 流 れ , 溶 融 点 の と き の 高 さ の 1/3 の 高 さ に な っ た 温 度 で あ る . 原形 軟化点 溶融点 溶流点 図 3.1 軟 化 点 ・ 溶 融 点 ・ 溶 流 点 の 関 係 ( JIS K 2151 に よ る ) 42 溶 流 度 試 験 法 は 上 述 の JIS K 2151 に 比 べ て ,表 面 溶 融 炉 の 考 察 か ら 藤 本 ほ か 40) が 提 案したものであり,原料灰の溶融特性を具体的に示す方法である.溶流度試験法にお いては,実灰および模擬灰が試料として取り上げられるが,模擬灰を取り上げる意味 は 原 料 灰 の 組 成 変 動 に 対 応 し た デ ー タ を 幅 広 く 得 る た め で あ る . 溶 流 度 (M値 )と は 所 定の温度と時間で加熱したとき,融けて流れた部分の原試料の長さに対する割合を表 すもので,これにより溶融点と溶流点を求めることができる.試験手順は,磁性ボー ト (幅 15 mm,深 さ 10 mm,長 さ 150 mm)に 長 さ 70 mmま で 試 料 を 充 填 す る( 図 3.2). 所 定 温 度 ま で 昇 温 し た 電 気 炉 内 に 試 料 が 充 填 さ れ た ボ ー ト を 水 平 か ら 5 ゚傾 け て 炉 内 に 静 置 す る . 所 定 温 度 で 15 分 保 持 し た の ち ボ ー ト を 取 り 出 し 放 冷 す る . 冷 却 後 溶 流 した試料の長さを測定して,次式により溶流度を求める. 溶 流 度 (M値 )= (( l - l 0 )/ l 0 ) ×100 ① こ こ で ,: 溶 融 点 は 溶 流 度 が 30%と な る 時 の 温 度 溶 流 点 は 溶 流 度 が 60%と な る 時 の 温 度 ( 図 3.3) 図 3.2 溶 流 度 測 定 時 の ボ ー ト の 置 き 方 と 試 料 長 さ の 関 係 1) M値 % 60 30 溶融点 溶流点 図 3.3 溶 流 度 試 験 法 に お け る 溶 融 点 と 溶 流 点 の 関 係 藤 本 ほ か 40,41) は , 操 作 温 度 ; 1150 ℃ か ら 1450 ℃ ま で の 50 ℃ 毎 ②保持時間;5 分 か ら 20 分 ま で の 5 分 毎 の 溶 流 度 試 験 を 試 み , 以 下 の 諸 点 を 指 摘 し た . 43 1)保 持 時 間 は 15 分 と す る こ と が 適 当 で あ る . 2)保 持 時 間 が 長 く な る ほ ど 溶 融 点 ( 温 度 ) お よ び 溶 流 点 ( 温 度 ) は 下 が り , 溶 融 点 と溶流点の差が大きくなる. 3)焼 却 残 渣 の 融 点 低 下 に は 塩 基 度 (CaO/SiO 2 (重 量 ))を 0.5 か ら 1.0 程 度 に す る と 調 質 効 果 が あ り , 溶 流 性 向 上 に は Fe 2 O 3 , FeO, Na 2 O, MnO, CaO, MgOの 塩 基 性 酸 化 物 の 添 加 が 効 果 的 で あ る . と く に Fe 2 O 3 含 有 量 の 増 加 は 溶 流 性 を 増 す が , Al 2 O 3 は 含有量が増加すると溶融が困難になる. 4)溶 融 温 度 は 高 い 方 が 溶 融 体 の 粘 性 を 下 げ る 効 果 を 示 す た め , 溶 融 温 度 は 高 い 方 が 溶融処理を容易にする. 島 村・濱 中 42) は ,溶 流 度 試 験 法 に よ り 都 市 ご み 焼 却 灰 を 模 擬 し た 灰 の 流 動 性 に つ い て 幅 広 く 調 べ た . そ こ で は SiO 2 -Al 2 O 3 -CaO三 成 分 の 流 動 範 囲 を 調 べ た の ち , FeO, Na 2 SO 4 , KCl, MgO成 分 を 添 加 剤 と し た 成 分 調 整 を 行 い 模 擬 灰 の 流 動 性 を 調 べ た . 得 ら れ た 結 果 は , 1)FeO, Na 2 SO 4 , MgOの 添 加 は 流 動 性 を 高 め る 効 果 を 示 し , 溶 流 温 度 を 最 大 200℃ 低 下 さ せ た . 2)FeOの 添 加 は 溶 流 温 度 の 低 下 に 対 し て 大 き い 効 果 を 示 し た . 3) SiO 2 は 30∼ 40%, CaOは 30%付 近 が 最 も 溶 流 温 度 が 低 く な っ た . Al 2 O 3 は 10∼ 20%程 度 に 押 さ え る 必 要 が あ っ た . ま た , KClの 添 加 は , 揮 散 効 果 が 現 れ 溶 流 温度の低下には効果を示さなかった.溶流温度の低下を溶流度の向上と考えると,溶 融 体 構 造 と 組 成 か ら 以 下 の よ う に 説 明 さ れ る . 溶 融 体 の 基 本 構 造 は SiO四 面 体 が 酸 素 の 共 有 に よ り 連 結 し て 構 築 さ れ た 網 目 構 造 で あ る が , FeO や ア ル カ リ 成 分 は -Si-O-Si-結 合 を 切 断 す る た め , 流 動 性 が 増 す こ と に な る . FeOや ア ル カ リ 成 分 に よ る -Si-O-Si-結 合 の 切 断 の 度 合 い は 対 象 灰 の 組 成 の う ち , 塩 基 度 (CaO/SiO 2 )を 指 標 と し て 考 察 さ れ た . 塩 基 度 0.8 程 度 が も っ と も 溶 流 温 度 が 低 く な っ た . ま た , Al 2 O 3 は 含有量が増すと溶流温度を高くした. Al 2 O 3 は ガ ラ ス の 研 究 分 野 お い て は 中 間 酸 化 物 と 呼 ば れ て お り , 組 成 と ガ ラ ス の 特 性 に お い て 種 々 の 振 る 舞 い を す る こ と が 知 ら れ て い る 43,44) .こ う し た 観 点 か ら , 吉 野 ほ か 45) は ,溶 融 温 度 を 1400 ℃ ,加 熱 時 間 を 2 時 間 に 固 定 し た 実 験 手 法 に よ り 塩 基 度 と Al 2 O 3 量 の 変 動 を 指 標 と し て 焼 却 残 渣 の 溶 融 温 度 の 関 係 を 調 べ た . 溶 融 対 象 灰 は 実 灰 の 主 成 分 よ り 6 成 分( SiO 2 -CaO-Al 2 O 3 -Fe 2 O 3 -Na 2 O-P 2 O 5 )を 設 定 し ,塩 基 度 は 0.16∼ 10.7 の 範 囲 で 化 学 試 薬 を 調 合 し た 模 擬 灰 で あ っ た .こ の よ う に し て 得 ら れ た 結 果 は , 塩 基 度 0.32∼ 1.61 の 範 囲 で は Al 2 O 3 10 mol %付 近 で 溶 融 点 は 極 小 を 示 し , 塩 基 度 1.07 の 系 で は Al 2 O 3 量 の 違 い に よ り 軟 化 点 と 溶 流 点 の 温 度 差 の ば ら つ き が 100 ℃ 程 度 な っ た .溶 融 点 の 低 下 や 溶 融 炉 の 閉 塞 現 象 の 改 善 に は ,塩 基 度 の み で な く Al 2 O 3 の 変 動 も 指 標 と す る 必 要 が あ る と 結 論 づ け ら れ た . 3.3.2 模 擬 灰 の 溶 融 過 程 に 関 す る 記 載 以 下 で は ,溶 流 度 試 験 試 料 を 用 い て 溶 融 と 溶 融 過 程 を 可 視 化 し ,溶 融 固 化 物 を 観 察・ 44 記 載 し た 46) . 1. 試 料 調 製 試験対象灰はストーカー炉焼却残渣および焼却飛灰であり,それらをめのう乳鉢を 用 い て 指 頭 に 感 じ な い ま で に 微 粉 化 し , 両 者 を 4: 1 に 混 合 し た も の を 対 象 試 料 と し た . 主 要 三 成 分 は SiO 2 が 30.7 %, Al 2 O 3 が 14.1 %, CaOが 29.9 %で あ り , 塩 基 度 は ほ ぼ 1.0 で あ っ た( 表 3.1).こ の 成 分 は ,藤 本 ほ か 40,41) ,島 村・ 濱 中 42) の 最 も 溶 流 温 度 が 低 く な る と い っ た 条 件 内 に あ っ た .構 成 鉱 物 種 は gehlenite,augite,hypersthene, quartz, hematite, magnetite, calcite, portlanditeお よ び hydrocalumiteな ど で あ っ た .こ の 実 験 で は 藤 本 ほ か 40,41) と 同 一 規 格 の 磁 性 ボ ー ト が 入 手 で き な か っ た こ と に よ り , 試 験 試 料 は , 幅 14mm, 深 さ 12mm, 長 さ 140mmの 磁 性 ボ ー ト に , 3gの 試 料 を 60mmま で 充 填 し た . 表 3.1 試 験 対 象 灰 の 化 学 組 成 単位:重量% SiO2 TiO2 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O K2O P2O5 SO3 30.7 2.28 14.1 7.2 Cl Cr2O3 CuO ZnO 0.15 3.55 29.9 2.65 2.19 3.67 1.68 1.37 0.06 0.07 0.31 2. 加 熱 装 置 お よ び 加 熱 条 件 試 験 に 用 い た 加 熱 装 置 は ,卓 上 型 高 速 昇 温 電 気 炉( MSFT-1530 山 田 電 気 (株 )製 )で あ る . 最 高 1500 ℃ ま で 加 熱 可 能 で あ り , 炉 内 寸 法 は 150×150×300 mm で あ る . 試 料 の 加 熱 条 件 は , 1200 ℃ , 1250 ℃ , 1300 ℃ , 1350 ℃ , 1400 ℃ と し た . 各 加 熱 温 度 ま で 昇 温 し ,30 分 経 過 後 試 料 を 充 填 し た 磁 性 ボ ー ト を 水 平 か ら 5゜ 傾 け て 炉 内 に 15 分 間 静 置 し た . 15 分 間 経 過 し た 後 , 炉 内 か ら 取 り 出 し , 自 然 放 冷 し た . 以 上 の操作により,溶融点と溶流点は①式によって求められた. 3. 結 果 試 験 結 果 は 表 3.2 に 示 し た .温 度 /溶 流 度 プ ロ ッ ト か ら ,溶 融 点 は 1310 ℃ ,溶 流 点 は 1326 ℃ と 読 み 取 れ た ( 図 3.4). 1200 ℃ の 加 熱 条 件 で は 溶 流 度 と し て 3.3 % と 算 出 さ れ た が , 試 料 は 焼 結 様 を 示 し て い た . 1250 ℃ 以 上 の 加 熱 条 件 で の 試 料 外 観 は , ガラス光沢を示した.この加熱条件においては,試料の目視から原料灰の融け残りは 認められなかった. 表 3.2 溶 流 度 試 験 結 果 1200゚C 1250゚C 1300゚C 1350゚C 1400゚C l (mm) 溶流度 l (mm) 溶流度 l (mm) 溶流度 l (mm) 溶流度 l (mm) 溶流度 62 3.3% 66 10.0% 69 15.0% 124 106.7% 137 128.3% 45 150 M値 (%) 120 90 60 30 0 1150 1200 1250 1300 1350 1400 温度(℃) 図 3.4 溶 融 点 と 溶 流 点 ( デ ー タ は 表 3.2 に よ る ) 4. 溶 融 固 化 物 の 偏 光 顕 微 鏡 観 察 と XRD 測 定 電気炉から取り出されて固化した試料は,その処理温度における溶融体の構造を保 存していると仮定した.これにより,溶融点と溶流点の関係および溶融過程の視覚化 を 目 的 と し , 各 処 理 温 度 に お け る 試 料 の 薄 片 観 察 と XRD 測 定 を 行 っ た . 原 料 灰 お よ び 1250 ℃ ,1300 ℃ ,1350 ℃ で 加 熱 し た 試 料 の 一 部 を 切 り 出 し ,薄 片 を 作 成 し た .試 料 の 切 り 出 し 方 は ,溶 流 し た 方 向 と 平 行 と し た .1250 ℃ お よ び 1300℃ 加熱条件下での溶融固化物中の流理組織中にスポット状に結晶化した部分が観察され た . こ の 結 晶 化 部 分 の エ リ ア 数 を 観 察 倍 率 40 倍 で ( 1 視 野 の 検 鏡 面 積 ; 18 mm 2 ), 1 視野中に観察される結晶化部分のエリア数を(大きさは無視して)計測した.結晶化 部 分 の 数 を 結 晶 化 密 度 と し た (表 3.3). 表 3.3 偏 光 顕 微 鏡 観 察 に よ る 流 理 組 織 中 の 結 晶 化 密 度 計測視野数 スポット数 スポット密度 検鏡面積 薄片総面積 1250℃ 9 70 1300℃ 11 3 0.02 198 270 1350℃ 12 0 0.00 180 277 0.43 /mm 2 162 mm 2 231mm 2 原 料 灰 の 顕 微 鏡 写 真 を 図 3.5 に 示 し た . 原 料 灰 中 で は gehlenite(融 点 1387 ℃ ), anorthite( 融 点 1550 ℃ ) , augite( 融 点 1230 ℃ ) , quartz ( 融 点 1550 ℃ ) , hematite(融 点 1565 ℃ ),magnetite(融 点 1538 ℃ ),calcite(熱 分 解 温 度 825 ℃ ),お よ び portlandite(分 解 温 度 580 ℃ )と ガ ラ ス が 共 存 し て い る .ガ ラ ス の 溶 融 点 は calcite や Na 2 CO 3 ま た は NaClが 共 存 す る 場 合 は , 800 ℃ 以 下 と な る 47) . 46 quartz gehlenite Fragment (quartz+ plagioclase) hematite OP CP calcite magnetite 1mm 図 3.5 原 料 灰 の 偏 光 顕 微 鏡 写 真 単ニコル 1250 ℃ 加 熱 試 料 に お い て は , 未 溶 融 部 分 が 残 存 し て い る も の の 明 ら か に 溶 流 し た 証 拠 と し て の 流 理 組 織 が 観 察 さ れ た ( 図 3.6.1). 原 料 灰 中 で は そ れ を 構 成 す る 鉱 物 粒 子 が 不 規 則 に 存 在 し て い る こ と に 対 し , 流 理 組 織 の 中 に ス ポ ッ ト 状 に 0.5 mm前 後 の 未 溶 融 部 分 が 残 っ て お り , そ の 周 囲 に は gehleniteな い し augite, hyperstheneが 晶 出 し て い た . 加 熱 処 理 前 の 混 合 灰 に 認 め ら れ た gehleniteお よ び augite, hyperstheneよ り も 粒 子 が 成 長 し て い る こ と が 認 め ら れ た . こ の 現 象 は gehlenite , augite お よ び hypersthene以 外 の 部 分 が 溶 融 し , そ の 間 を ぬ っ て そ れ ら が 密 着 し た 後 に 溶 融 し た , 溶流段階に移行する前に電気炉外に取り出され冷却されたことにより再結晶したと考 え ら れ る .ス ポ ッ ト 状 の 結 晶 化 部 分 は 162 mm 2 中 に 70 個 が 観 察 さ れ ,そ の 密 度 は 0.43 個 /mm 2 で あ っ た . さ ら に 溶 融 と 溶 流 が 進 行 す る と 未 溶 融 部 分 が 残 っ て い て も gehlenite, augiteお よ び hyperstheneの 晶 出 は み ら れ な く な っ た . 1300 ℃ 加 熱 処 理 試 料( 図 3.6.2)は 1250 ℃ 加 熱 処 理 試 料 に 比 べ ,溶 融 ・溶 流 が 一 段 と 進 行 し て 流 理 組 織 の 発 達 が 顕 著 と な り ,ス ポ ッ ト 状 の 結 晶 化 部 分 は 198 mm 2 中 に 3 個 が 観 察 さ れ , そ の 密 度 は 0.02 個 /mm 2 で あ っ た . 1350 ℃ 加 熱 処 理 試 料( 図 3.6.3)で は ス ポ ッ ト 状 の 結 晶 化 部 分 は 観 察 さ れ ず ,流 理 組織のみが認められ,それは微細不透明粒子によって特徴付けられていた. 47 図 3.6.1 1250 ℃ 加 熱 処 理 試 料 の 偏 光 顕 微 鏡 写 真 単 ニ コ ル ス ケ ー ル バ ー : 1mm 図 3.6.2 1300 ℃ 加 熱 処 理 試 料 の 偏 光 顕 微 鏡 写 真 単 ニ コ ル ス ケ ー ル バ ー : 1mm 図 3.6.3 1350 ℃ 加 熱 処 理 試 料 の 偏 光 顕 微 鏡 写 真 単 ニ コ ル ス ケ ー ル バ ー : 1mm いっぽう,各加熱試料では鏡下においては鉱物同定が困難な微細結晶が流理組織中 に 観 察 さ れ た こ と に よ り , XRD 測 定 を 行 っ た . 各 試 料 と も , XRD パ タ ー ン は 非 晶 質 を 示 し , 1250 ℃ , 1300 ℃ 加 熱 試 料 に お け る 偏 光 顕 微 鏡 観 察 か ら は 確 認 さ れ た gehlenite, augite お よ び hypersthene の 回 折 ピ ー ク は 認 め ら れ な か っ た ( 図 3.7). こ の こ と は , 試 料 に お い て 数 % 以 上 の 結 晶 質 物 質 が 存 在 し な い 場 合 は , 汎 用 型 XRD ではそれらからの回折ピークを検出できないと言う制約上の問題である.また,非晶 質 物 質 を 特 徴 づ け る 30゜ (2θ )を 中 心 と す る ハ ロ ー パ タ ー ン は , 処 理 温 度 が 高 い 試 料 48 の方が明瞭となってくる.この現象は,溶融・溶流の進行にともなって溶融体がより Intensity(a.u.) 均質化し,非晶質化が進行した結果と考えられる. CuKα2θ(゜) 図 3.7 原 料 灰 お よ び 溶 融 試 料 の 粉 末 X 線 回 折 パ タ ー ン No.2; 1250℃ 加 熱 No.3; 1300℃ 加 熱 No.1; 原 料 灰 No.4; 1350℃ 加 熱 3.3.3 実 機 表 面 溶 融 炉 に お け る 溶 融 過 程 の 記 載 実機において溶融過程を観察できる試料は,溶融炉が緊急停止した場合等,意図し な い 状 況 に お い て ま れ に 入 手 で き る こ と が あ る .表 面 溶 融 炉 に 限 定 し た 一 例 で あ る が , そ れ ら の 試 料 を 用 い て 実 機 溶 融 炉 に お け る 溶 融 過 程 を 記 載 し た 48,49) . 対 象 と し た 表 面 溶 融 炉 は 表 3.5( 後 出 ) に 示 し た TO 施 設 で あ る . TO 施 設 は 6∼ 7 日 間 を 1 操 業 と し て ,焼 却 残 渣 単 独 あ る い は 混 合 灰 130t を 溶 融 し て い る .こ こ で は , 運転開始から 3 日後にトラブルにより緊急停止した際の炉内残留物を観察対象とした. 観 察 対 象 試 料 は , 緊 急 停 止 し た 後 お よ そ 80 時 間 後 に 炉 内 が 冷 却 さ れ た 段 階 で , 固 結 した炉内残留物をタガネにより破砕しつつ取り出した.取り出された炉内残留物は, 10cm∼ 数 10cm 角 の も の ま で 様 々 で あ っ た( 図 3.8).そ れ ら は ,目 視 に よ り ① ガ ラ ス 光 沢 を 示 す 部 分 と 焼 結 し た 原 料 灰 が 明 瞭 に 区 別 で き る 塊( 部 分 溶 融 塊 ),② ガ ラ ス 光 沢 を示す溶融固化物(全溶融塊)等であった. 原 料 灰 お よ び ガ ラ ス 状 を 示 し た 溶 融 固 化 物 に つ い て , 薄 片 観 察 お よ び XRD 測 定 を 行 い , そ の 結 果 を 図 3.9 お よ び 図 3.10.1∼ 図 3.10.3 に 示 し た . 49 図 3.8 部 分 溶 融 塊 と 全 溶 融 塊 の 外 観 左;部分溶融塊 ス ケ ー ル バ ー : 5cm 右;全溶融塊 1. 原 料 灰 の 鉱 物 同 定 薄 片 観 察 お よ び XRD 測 定 に よ り 溶 融 処 理 前 の 原 料 灰 中 に は 以 下 の 鉱 物 が 同 定 さ れ た .同 定 さ れ た 鉱 物 は gehlenite,anorthite,augite,hypersthene,quartz,portlandite, calcite, halite, sylvite, hematite お よ び ガ ラ ス で あ っ た . そ れ ら は , い ず れ も 径 0.5mm 以 下 の 粒 径 で ほ と ん ど が 自 形 を 示 さ な か っ た . 2. 部 分 溶 融 塊 部 分 溶 融 塊 試 料 は ,明 ら か に ガ ラ ス 光 沢 を 示 し た 部 分 と 少 量 の 白 色 部 分 が み ら れ た . 白 色 部 分 に つ い て , ハ ン ド ピ ッ キ ン グ に よ り そ の 一 部 を 取 り 出 し XRD 測 定 を 行 っ た ( 図 3.10.2, 図 3.10.3). 鏡 下 に お け る 特 徴 は , 1)ほ と ん ど が 流 理 組 織 を 示 す ガ ラ ス からなり,その間に生成した不定形ないし四角柱状の微小結晶およびシダの葉状の結 晶 が 生 じ て お り ,そ れ ら は gehlenite で あ っ た .ま た ,XRD 測 定 か ら は Fe-Mg-Al-Si-O 系 の 結 晶 も 生 じ て い る と 推 定 さ れ た . 2) 茶 褐 色 ガ ラ ス 部 分 の 間 隙 を 埋 め る よ う に gehlenite の 柱 状 結 晶 が 生 じ て お り ,actinolite も 生 じ て い る と 推 定 さ れ た .3)ガ ラ ス は gehlenite と augite, hypersthene の 柱 状 お よ び 菱 形 状 結 晶 が 集 中 し て い る 部 分 の 間 隙 と 極 細 粒 の 結 晶 が 流 理 組 織 を 示 し て い る 部 分 を 充 填 し て い た . hercynite の 結 晶 も生じていると推定された. 1)∼ 3)の 特 徴 を 示 し た 部 分 に お い て 径 0.5mm な い し そ れ 以 下 の 円 形 状 の 未 溶 融 部 分 が 共 通 し て 認 め ら れ た . ま た , 部 分 溶 融 塊 に 付 随 す る 白 色 小 塊 は , XRD 測 定 よ り quartz と mullite か ら な る こ と が わ か っ た . 3. 全 溶 融 塊 全 溶 融 塊 試 料 は 流 理 組 織 を 示 す ガ ラ ス か ら な り , 一 部 に は gehlenite の み か ら な る も の と , gehlenite, augite お よ び hypersthene か ら な る 集 合 結 晶 が 生 じ て い た が , augite の 単 独 結 晶 は 認 め ら れ な か っ た .ま た ,全 容 融 部 分 に 包 含 さ れ る よ う に 白 色 塊 が 認 め ら れ ,そ れ ら は XRD 分 析 か ら gehlenite,quartz,mullite お よ び sylvite か ら なることがわかった. 50 原料灰 部分溶融ブロック 部分溶融溶融ブロック 溶融過程の偏光顕微鏡写真 Intensity(a.u.) 図 3.9 全溶融ブロック 20 40 CuKα2θ(゜) 図 3.10.1 原 料 灰 の X 線 回 折 パ タ ー ン 51 60 Intensity(a.u.) 40 20 60 CuKα2θ(゜) Intensity(a.u.) 図 3.10.2 部 分 溶 融 塊 の 黒 色 ガ ラ ス 光 沢 部 分 の X 線 回 折 パ タ ー ン 20 40 60 CuKα2θ(゜) 図 3.10.3 部 分 溶 融 塊 の 白 色 部 分 の X 線 回 折 パ タ ー ン 3.3.4 ま と め 溶 流 度 試 験 試 料 お よ び 実 機 試 料 の 薄 片 観 察 と XRD 分 析 結 果 か ら , 原 料 灰 の 溶 融 と 溶流は以下のように模式化できると考えられる. 第 1 段階:原料灰を構成するケイ酸塩,酸化物,炭酸塩,塩化物,ガラス等は昇温 と と も に 部 分 的 か つ 選 択 的 に 軟 化 を 始 め ,部 分 溶 融 に 至 る .こ の 段 階 の 温 度 は ,halite お よ び sylviteの 融 点 と Hong et al. 47) か ら 800 ℃ 前 後 ∼ 1200 ℃ 程 度 と 推 定 で き , 炭 52 酸塩・塩化物・ガラスから溶融が始まり,徐々にケイ酸塩や酸化物も溶融していく. 第 2 段 階:溶 融 部 分 の 拡 大 と と も に 未 溶 融 部 分 と の 温 度 勾 配 に 対 応 し た 小 規 模 な 流 動 が 始 ま り ,溶 融 部 分 が 全 体 に 拡 が っ て い く .こ の 段 階 の 温 度 は 1200∼ 1300 ℃ 程 度 と 推 定 で き る . ま た , 1250 ℃ 加 熱 試 料 の 固 化 時 に み ら れ た よ う に gehlenite な い し augite が 晶 出 し て い る 事 実 よ り ,流 動 が 小 規 模 な 段 階 で は 溶 融 し た 鉱 物 群 は 一 定 程 度 の規模で溶融前の化学組成を保持していると考えられ,急冷時においても晶出し易い ことが考えられる. 第 3 段 階 : こ の 段 階 の 温 度 は 1300 ℃ 以 上 と 推 定 で き る . 1350 ℃ の 加 熱 処 理 試 料 で は ,そ れ が 冷 却 固 化 し て も gehlenite な い し augite が 晶 出 し な い と い う 事 実 は ,溶 流規模が拡大し,溶融前の鉱物群は保持されなくなり,溶融体の均質化が進行するこ とを示唆している.すなわち,急冷時においても結晶化せずに過冷却のガラス状体と して固化することになる. た だ し , 溶 融 体 の 均 質 化 が 進 行 す る と し た が 黒 色 ガ ラ ス 中 に gehlenite ま た は quartz な ど か ら な る 白 色 小 塊 が 付 随 す る こ と お よ び ガ ラ ス 部 分 に 流 理 組 織 が 観 察 さ れ る こ と は ,サ ブ mm サ イ ズ で み る と 溶 融 体 の 化 学 組 成 間 に 不 混 和 な 領 域 が 存 在 し て いると考えることができる. glass(溶 融 ) anorthite quartz gehlenit gehlenite augite magnetit quartz augite calcite hematite 未溶融 Hematite Actionolit magnetit hercynite glass+halide+fine Fe-Mg-Al-Si-O 部分溶融 原料灰 glass( 溶 融 ) quartz gehlenite 不 混 和 領 域 全溶融 mullite 図 3.11 灰 溶 融 過 程 の モ デ ル 化 53 3.4 溶 融 ス ラ グ の 分 類 3.4.1 冷 却 方 式 に よ る 分 類 溶融スラグは多種多様な溶融炉から製造されるが,被溶融物(焼却残渣・焼却飛灰 お よ び 可 燃 物 ) は 溶 融 炉 内 に お い て 概 ね 1300 ℃ 以 上 の 高 温 条 件 に 加 熱 さ れ る こ と か ら ,そ れ に 含 ま れ る 有 機 物 は 燃 焼 ,熱 分 解 な い し ガ ス 化 さ れ る と 考 え ら れ る .Si,Al, Ca な ど で 構 成 さ れ た 無 機 物 質 は 溶 融 し た 後 ,冷 却 固 化 し ス ラ グ と な る .同 時 に 低 沸 点 重 金 属 類( Pb な ど )は 揮 散 し 炉 排 出 ガ ス 中 に 移 行 す る .し た が っ て ,溶 融 ス ラ グ の 化 学・物理性状は被溶融物の化学性状と溶融体の冷却方式に強く依存することになる. 溶融体の冷却方式は, 1)水 に よ る 急 冷 方 式 , 2)大 気 下 で の 放 冷 に 近 い 条 件 下 で の 空 冷 方 式 3)一 定 の 熱 処 理 を 加 え な が ら 冷 却 す る 徐 冷 方 式 がある.これより,溶融スラグを分類する第一基準は,溶融体の冷却方式である.し たがって,溶融スラグは溶融状態から冷却・固化する方法によって,水冷(水砕)ス ラ グ ,空 冷 ス ラ グ お よ び 結 晶 質 ス ラ グ に 分 類 さ れ る .以 下 に そ れ ら 溶 融 ス ラ グ の 冷 却・ 固化方式について述べる. 1. 水 冷 ス ラ グ 水 冷 ス ラ グ は 概 ね 1300 ℃ 以 上 の 溶 融 体 を 水 温 50∼ 60 ℃ の 冷 却 槽 に 直 接 落 下 さ せ る,または,溶融体に噴射水を吹きかけ,急冷固化させつつ冷却槽に落下させて製造 される.溶融体は急冷されることから,ほぼガラス質であることと急冷時の熱歪みに よる破砕により分離した細粒角礫状粒子を形成することが特徴である.ここで同時に 溶 融 メ タ ル も 分 離 さ れ る .細 粒 角 礫 状 粒 子 の 粒 径 は 4.75mm 以 下 の も の が ほ と ん ど で ある.粒子は黒色ないし灰黒色のガラス光沢を示す.溶融体の溶融炉からの出滓形式 は,溶融面上を自然流下させる形式と溶融面上をオーバーフローさせる形式がある. 2. 空 冷 ス ラ グ 空冷スラグは溶融体を鉄製の搬送コンベァあるいはモールドに受け,空気中での放 冷 に よ り 固 化 さ せ て 製 造 さ れ る .冷 却 速 度 は 概 ね 15 ℃ /min で あ る .溶 融 炉 の タ イ プ にもよるが,溶融体の冷却前に溶融メタルが分離している場合が多い.固化体は総体 的 に は ガ ラ ス 質 で あ る が 一 部 が 結 晶 化 し て い る 場 合 も あ る( 後 述 ).空 冷 ス ラ グ は モ ー ルド内で冷却固化するところから,水冷スラグのように粒形と粒径は議論の対象とな らない. 3. 結 晶 質 ス ラ グ 結晶質スラグは,溶融体を一定量モールドに受け,保温室を経由して溶融スラグの 冷却温度を制御して,十分な冷却速度をとり,結晶化を促進して製造する.冷却速度 は 概 ね 10 ℃ /min 以 下 で あ る .結 晶 質 ス ラ グ は モ ー ル ド 内 で 冷 却 固 化 す る と こ ろ か ら , 空冷スラグと同じく水冷スラグのように粒形と粒径は議論の対象とならない. 54 3.4.2 組 織 お よ び 結 晶 化 度 に よ る 分 類 1. 試 料 お よ び 方 法 本節では,溶融スラグの組織および結晶化度について,溶融スラグ分類の第二基準 としての使用可能性について調べた.実験に用いた試料は,千葉県の実施した実験時 の 保 存 試 料 で あ る 15) .こ の 保 存 試 料 は ,水 冷 ス ラ グ ,空 冷 ス ラ グ ,結 晶 質 ス ラ グ を 含 み ,粒 径 を 2mm以 下 に 調 整 し た も の で あ る .対 象 試 料 は 水 冷 ス ラ グ 14 試 料 (W1∼ W14), 空 冷 ス ラ グ 6 試 料 ( K1∼ K6), 結 晶 質 ス ラ グ 4 試 料 (C1∼ C4)で あ る . 溶融スラグの組織および結晶化度の観察は,スラグ薄片の偏光顕微鏡観察(観察倍 率:×4 倍 な い し ×10 倍 )に よ っ た .ま た ,鉱 物 同 定 は 鏡 下 で の 同 定 に 加 え て ,XRD 測定を併用した.回折条件および同定法は第 2 章に示した.水冷,空冷および結晶質 スラグの偏光顕微鏡下における特徴は,以下であった. 2. ス ラ グ の 組 織 水 冷 ス ラ グ:粒 子 形 状 は ほ と ん ど が 矩 形 状 な い し 多 角 形 状 を 示 し た( 実 体 は 角 礫 状 ). ま れ に 円 形 状 ( 実 体 は 球 状 ) を 示 し た (図 3.12a ). そ れ ら は , 総 体 的 に は 非 晶 質 ( ガ ラ ス 状 )で あ り ,水 冷 時 に 生 じ た と 見 ら れ る 割 れ 目 が 多 数 発 達 す る 粒 子 (図 3.12b)と ほ と ん ど 発 達 し て い な い 粒 子 (図 3.12c)が 観 察 さ れ た .溶 融 炉 内 お よ び 出 滓 口 か ら 水 冷 槽 にいたる過程において,溶融体が流動した結果を示す流理構造を示す粒子も多数見ら れ た (図 3.12d). ま た , 結 晶 化 部 分 を 含 む 粒 子 も 見 ら れ た ( 図 3.12e). と く に W5, W8, W10, W11 に お い て 結 晶 化 部 分 を 含 む 粒 子 が 観 察 さ れ た が , 結 晶 化 部 分 が 微 小 であり鉱物同定には至らなかった. 空 冷 ス ラ グ:ス ラ グ の 粉 砕 時 に 生 じ た と み ら れ る 割 れ 目 が 生 じ た 粒 子 (図 3.12f)と ほ と ん ど 割 れ 目 が 生 じ て い な い 粒 子 (図 3.12g)が 混 在 し た .流 理 組 織 を 示 す 粒 子 も 観 察 さ れ た (図 3.12f). そ れ ら は 総 体 的 に は 非 晶 質 で あ っ た (K1, K2, K3). K4 お よ び K5 に お い て は 検 鏡 し た 粒 子 の 半 数 程 度 が gehlenite と し て 結 晶 化 し て い た (図 3.12h). K6 は ほ と ん ど の 粒 子 が 結 晶 化 し て お り ,そ れ ら は anorthite,augite,hypersthene, で あ っ た (図 3.12i).ま た ,空 冷 ス ラ グ 全 体 を と お し て 不 透 明 鉱 物 が 顕 著 な 粒 子 と ま れ な粒子が混在した. 結 晶 質 ス ラ グ:gehlenite,anorthite,albite,augite,hypersthene お よ び 不 透 明 鉱 物 か ら な る も の で あ っ た (図 3.12j). 55 図 3.12 水冷・空冷・および結晶化スラグの偏光顕微鏡写真 スケールバー1:e 以外に対応 ス ケ ー ル バ ー 2: e に 対 応 3. 粉 末 X 線 回 折 対 象 試 料 の XRD パ タ ー ン を 図 3.13 に 示 し た . 水 冷 ス ラ グ 14 試 料 の 回 折 パ タ ー ン は , 非 晶 質 物 質 に 特 徴 的 な ハ ロ ー パ タ ー ン を 示 し た . W1,W2,W3,W4,W6,W7,W9,W12,W13,W14 は ハ ロ ー パ タ ー ン の 56 み で あ っ た .W5 は ハ ロ ー パ タ ー ン の な か に d =2.85Å ,d =2.48Å の 回 折 ピ ー ク が 認 め ら れ た . 前 者 の ピ ー ク は gehlenite の 最 強 ピ ー ク に 一 致 し た . こ れ よ り 鏡 下 で は 同 定 で き な か っ た 結 晶 化 部 分 は gehlenite で あ る と 考 え ら れ る . W8, W10, W11 に は , ハ ロ ー パ タ ー ン の な か に d =2.93Å ,d =2.49Å の 回 折 ピ ー ク が 認 め ら れ た が ,そ れ ら の ピークが帰属する鉱物種の同定には至らなかった. 空冷スラグ 5 試料の回折パターンも非晶質物質に特徴的なハローパターンを示した. K1, K2, K3 は ハ ロ ー パ タ ー ン の み で あ っ た . K4, K5 に は ハ ロ ー パ タ ー ン の な か に d=2.85Å の 回 折 ピ ー ク が 認 め ら れ ,gehlenite の 最 強 ピ ー ク に 一 致 し た .K6 で は ハ ロ ー パ タ ー ン が 弱 く な り ,17 本 の 回 折 ピ ー ク が 認 め ら れ た .そ れ ら は anorthite,augite お よ び hematite の 回 折 ピ ー ク に 一 致 し た . 結晶質スラグの回折パターンは,多数の回折ピークからなっていた.それらのピー Intensity(a.u.) ク は gehlenite, anorthite, albite, augite, hematite の 回 折 ピ ー ク に 一 致 し た . CuKα2θ(゜) 図 3.13 水 冷 , 空 冷 お よ び 結 晶 化 ス ラ グ の 粉 末 X 線 回 折 パ タ ー ン 4. 組 織 に よ る 分 類 と そ の 応 用 事 例 前項までに示した結果を用いて,溶融スラグを非晶質スラグ,部分結晶質スラグ, 結 晶 質 ス ラ グ の 3 つ に 分 類 す る こ と で き た . と く に , K6 試 料 は 製 造 工 程 に よ れ ば 空 冷スラグであるが,組織からは結晶質スラグに分類する方が妥当である. 組 織 に よ る 溶 融 ス ラ グ の 3 分 類 は ,溶 融 ス ラ グ の 骨 材 と し て の 品 質 規 定 項 目 で あ る 密 度 に 関 し て ,合 理 的 に 説 明 で き る こ と が わ か っ た 50) .前 項 に お い て 記 載 分 類 し た 試 料 に つ い て , 土 粒 子 の 密 度 試 験 法 JIS A 1202 -1990 に よ り 密 度 測 定 を 行 い , 同 時 に XRF 分 析 に よ る 化 学 分 析 を 実 施 し た ( 表 3.4). 57 表 3.4 溶 融 ス ラ グ の 密 度 , 化 学 組 成 と 組 織 の 関 係 W1 W2 W3 W4 W6 W7 W9 W12 W13 W14 K1 K2 K3 W5 K4 K5 W8 W10 W11 K6 C1 C2 C3 C4 Av. Max. Min. 炉型式 溶融温度(℃) 密度(g/cm3) アーク炉 1300 2.743 プラズマ炉 1400 2.695 プラズマ炉 1550 2.794 プラズマ炉 1550 2.855 表面溶融炉 1350 2.746 表面溶融炉 1350 2.622 電気抵抗炉 1500 2.697 コークスベッド炉 1700 2.940 コークスベッド炉 1700 2.875 コークスベッド炉 1700 2.717 プラズマ炉 1500 2.761 電気抵抗炉 1500 2.732 電気抵抗炉 1500 2.692 プラズマ炉 1200 2.738 プラズマ炉 1300 2.881 プラズマ炉 1250 2.945 表面溶融炉 1400 3.024 ロータリーキルン炉 1360 2.951 ロータリーキルン炉 1395 3.057 ロータリーキルン炉 1385 3.111 酸素バーナー炉 1500 2.903 酸素バーナー炉 1450 3.144 プラズマ炉 1500 2.919 プラズマ炉 1450 3.194 2.864 3.194 2.622 SiO2% 41.49 43.50 34.86 38.62 39.36 39.50 43.05 30.25 33.55 32.60 40.90 41.33 34.56 39.95 35.21 31.48 32.06 32.34 27.45 30.41 33.72 31.81 33.93 30.82 35.53 43.50 27.45 Al2O3% Fe2O3% CaO % 23.72 18.53 1.53 22.96 17.48 0.89 27.50 22.49 3.45 21.10 20.43 5.26 22.46 21.93 1.85 24.80 22.97 0.54 22.96 20.15 1.71 27.85 22.65 8.20 28.50 21.97 6.84 33.70 22.96 1.38 21.90 20.20 2.26 22.33 19.64 1.73 27.72 22.74 1.25 22.88 20.55 1.79 28.79 22.52 2.51 28.39 22.40 6.15 21.04 23.24 10.73 18.96 24.68 9.35 24.57 24.71 10.77 23.21 23.79 10.85 27.03 22.46 5.25 22.46 22.51 10.06 26.61 22.46 5.56 23.83 22.48 9.30 24.80 21.91 4.97 33.70 24.71 10.85 18.96 17.48 0.54 非 晶 質 : W1, W2, W3, W 4 , W6, W7, W9, W12, W13, W14, K1, K2, K3 部 分 結 晶 : W5, K4, K5, W8, W10, W11 結 晶 質 : K6, C1, C2, C3, C4 ス ラ グ 粒 子 の 密 度 を 規 制 す る 第 1 因 子 は 化 学 組 成 と 仮 定 し ,各 試 料 の 密 度 測 定 値 と 主 成 分 の SiO 2 , Al 2 O 3 , CaOお よ び 副 成 分 と し て の Fe 2 O 3 含 有 量 と の 散 布 図 を 作 成 し 1 次 相 関 を 調 べ た . そ の 結 果 , 対 象 ス ラ グ の 密 度 2.60∼ 3.19 g/cm 3 に お い て 密 度 と Fe 2 O 3 含 有 量 は 正 の 相 関 を 示 し た( r 2 =0.8707).つ い で SiO 2 含 有 量 は 負 の 相 関 を 示 し た が ( r 2 =0.6085), 相 関 係 数 は Fe 2 O 3 よ り も 低 か っ た . ま た , Al 2 O 3 ( r 2 =0.2891) と CaO( r 2 =0.0213) は 相 関 を 示 さ な か っ た . こ れ よ り , 2.60 g/cm 3 以 上 の ス ラ グ 密 度 を 支 配 す る 化 学 成 分 は Fe 2 O 3 と 考 え ら れ る .こ こ で ,密 度 ( y )と Fe 2 O 3 含 有 量 ( x )と の 関 係 は y =0.0345 x +2.661 で 表 す こ と が で き , そ の y 切 片 は Fe 2 O 3 を 含 ま な い 場 合 の ス ラグ粒子密度と考えられる. 非 晶 質 ス ラ グ , 部 分 結 晶 質 ス ラ グ お よ び 結 晶 質 ス ラ グ の 密 度 と Fe 2 O 3 含 有 量 の 関 係 を プ ロ ッ ト し た ( 図 3.14). 部 分 結 晶 質 ス ラ グ お よ び 結 晶 質 ス ラ グ の 密 度 が Fe 2 O 3 の 58 みにより規定されていれば,非晶質スラグの近似直線上にプロットされることが予想 できる.また,スラグ粒子の一部ないし全体が結晶化して晶出した鉱物の密度が非晶 質スラグの密度よりも大きければ,非晶質スラグの近似直線よりも上側にプロットさ れると予想できる.空冷スラグの非晶質スラグと部分結晶質スラグは,ほぼ水冷スラ グ の 近 似 直 線 上 に プ ロ ッ ト さ れ た .ま た ,gehleniteが 晶 出 す る 部 分 結 晶 質 ス ラ グ お よ び gehlenite,anorthite,albite,augite,hematiteが 晶 出 す る 結 晶 質 ス ラ グ は ,水 冷 ス ラ グ の 近 似 直 線 上 よ り 上 側 に プ ロ ッ ト さ れ た .gehleniteの 密 度 は 3.7g/cm 3 ,augite の 密 度 は 3.1∼ 3.57 g/cm 3 ,hematiteの 密 度 は 5.2∼ 5.37 g/cm 3 で あ る と こ ろ か ら ,そ れ ら の 晶 出 は , Fe 2 O 3 含 有 量 に よ る 規 制 さ れ る 密 度 よ り も 密 度 を 大 き く す る 効 果 を 示 していると考えられる. 密 度 (g/cm 3 ) 3.200 3.000 2.800 2.600 0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 Fe 2 O 3 ( % ) 図 3.14 溶 融 ス ラ グ 密 度 と Fe 2 O 3 含 有 量 お よ び 溶 融 ス ラ グ 密 度 の 関 係 ◆水冷非晶質スラグ □空冷非晶質スラグ △ Gehlenite 晶 出 部 分 結 晶 化 ス ラ グ ×部 分 結 晶 化 ス ラ グ ○結晶化スラグ 3.4.3 ま と め 1)冷 却 過 程 の 違 い に よ る 水 冷 ス ラ グ , 空 冷 ス ラ グ , 結 晶 質 ス ラ グ と い っ た 製 造 工 程 に よる分類に対して,前項までに示した結果を用いて,スラグ粒子の組織から非晶質 スラグ,部分結晶質スラグ,結晶質スラグの 3 つに分類することができた. 2)こ の 分 類 は ,溶 融 ス ラ グ を 骨 材 と し て 利 用 す る 場 合 の 材 料 評 価 に 役 立 つ も の で あ る . 3)溶 融 ス ラ グ の 密 度 は Fe 2 O 3 含 有 量 と 溶 融 ス ラ グ の 結 晶 化 度 に 規 定 さ れ て い る こ と が 明らかとなった. 59 3.5 溶 融 ス ラ グ の 粒 径 と 形 状 3.5.1 供 試 試 料 本節においては,もっとも製造量の多い水冷スラグの粒径と粒形について調べた結 果 を 示 す . 対 象 と し た ス ラ グ は , 3 施 設 ( TO 施 設 , YA 施 設 , YM 施 設 ) の 表 面 溶 融 炉 に お い て 製 造 さ れ た も の で あ る( 表 3.5).そ れ ぞ れ を TO ス ラ グ ,YA ス ラ グ ,YM ス ラ グ と す る .TO お よ び YA ス ラ グ は 磁 選 後 の ス ト ー カ ー 炉 の 焼 却 残 渣 を 原 料 灰 と し , YM ス ラ グ は 磁 選 後 の 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 の 混 合 灰( 混 合 比 率 は 4:1)を 原 料 と す る も の で あ っ た .TO 施 設 の 磁 選 工 程 は 3 段 階 で 実 施 さ れ ,YA 施 設 と YM 施 設 の 磁 選 工 程 は 1 段 階 で 実 施 さ れ て い る .溶 融 炉 は 原 料 灰 を 一 定 量 溜 め た 後 ,立 上 げ → 定 格 運 転 → 立 下 げ の サ イ ク ル で 運 転 さ れ る と こ ろ か ら , 試 料 は 定 格 運 転 に 達 し た 後 , ほ ぼ 10 時間程度経過した時点で採取した. 各 施 設 に お け る ス ラ グ 製 造 条 件 は ,溶 融 温 度 が 1300∼ 1350 ℃ ,出 滓 口 温 度 が 1300 ∼ 1360 ℃ ,出 滓 口 ∼ 水 冷 槽 水 面 ま で の 落 下 距 離 が 215∼ 380 cm,水 冷 槽 水 温 は 50∼ 60 ℃ で あ っ た . 表 3.5 対 象 ス ラ グ の 製 造 条 件 TO YA YM 被溶融物 主灰 主灰 主灰/飛灰混合 前処理(磁選) 3段階 1段階 1段階 26 t/d 10.68 t/d 13 t/d 溶融能力 1350 ℃ 1350 ℃ 1300 ℃ 溶融温度 1360 ℃ 1350 ℃ 1300 ℃ 出滓口温度 215 cm 300 cm 380 cm 水冷槽までの距離 50 ℃ 60 ℃ 50∼55 ℃ 水冷温度 1. ふ る い 分 け 試 験 試料のふるい分けは,溶融スラグを人工骨材として利用することを想定し,骨材の ふ る い 分 け 試 験 法( JIS A 1102)に し た が っ た .試 験 結 果 を 表 3.6 に 示 す( 0.15∼ 0.3 mm の 粒 度 階 ス ラ グ を 015,0.3∼ 0.6 mm を 030,0.6∼ 1.18 mm を 060,1.18∼ 2.36 mm を 118, 2.36∼ 4.75 mm を 236, 4.75∼ 9.5 mm を 475 と す る ). さ ら に , そ れ ら の 粒 度 構 成 を 図 3.15 に 示 し た . な お , 図 3.15 の 作 成 に あ た っ て は , 各 粒 度 階 と も に Al 粒 を 含 む 金 属 粒 は 除 い て あ る . 各 ス ラ グ の 粒 度 構 成 を み る と ,TOと YMス ラ グ の 粒 度 構 成 は 似 て お り ,YAス ラ グ と 比 べ る と 粗 粒 分 が 多 い 傾 向 で あ っ た (図 3.15).TOス ラ グ で は 060 以 上 が 96 %,YAス ラ グ で は 93 % ,YMス ラ グ で は 98 % で あ っ た .TOと YMス ラ グ と も に 236 の 粒 度 階 が 41.3 %, 40.1 %と い う よ う に 最 多 構 成 率 を 占 め た . YAス ラ グ で は 118 の 粒 度 階 が 47.4 %で 最 多 構 成 率 を 占 め た . YM施 設 の 溶 融 温 度 , 落 下 距 離 と も に YA施 設 の そ れ に 近 い が , YMス ラ グ の 粒 度 構 成 は TOス ラ グ の そ れ に 近 か っ た . こ の よ う に , 溶 融 条 件 60 や冷却条件と各溶融スラグの粒度構成との関係を説明することはできなかった.粒度 構 成 は ス ラ グ 製 造 条 件 に は 依 存 し て な い と い う 結 果 も あ り 51) ,粒 度 構 成 の 発 現 に 与 え る製造条件の寄与については今後の課題である. 単位:g 表 3.6 対 象 ス ラ グ の ふ る い 分 け 試 験 結 果 (mm) スラグ TO溶融物 金属粒 アルミ粒 スラグ YA溶融物 金属粒 アルミ粒 スラグ YM 溶融物 金属粒 アルミ粒 <0.15 0.15∼ 0.30∼ 0.60∼ 1.18∼ 2.36∼ 4.75∼ 7.2 12.6 33.0 123.3 563.8 601.0 109.9 − 0.19 0.69 2.18 5.72 17.03 21.27 0.06 0.63 3.05 2.24 − − − 7.0 13.8 47.4 159.6 445.1 245.2 18.8 − − 0.04 0.64 4.86 10.32 4.20 0.04 0.15 0.05 − − − − 0.8 1.6 16.0 92.1 286.9 337.2 100.7 − − − − − 0.02 0.02 0.06 0.05 0.16 0.40 0.70 − − 9.5< 5.1 − 1.14 1.7 − − 4.1 − − 50 40 構 成 率 ( % 30 20 ) 10 0 <0.15 0.15∼ 0.30∼ YMスラグ 0.60∼ 粒径(mm) YAスラグ 1.18∼ 2.36∼ TOスラグ 4.75∼ 9.5< 図 3.15 ふ る い 分 け 試 験 結 果 2. 粒 子 形 状 の 観 察 ふ る い 分 け 試 験 後 ,粒 度 階 毎 に 実 体 顕 微 鏡 下 に お い て 粒 子 形 状 を 観 察 し ,分 類 し た . 水 冷 ス ラ グ の 形 状 は , ほ ぼ 5 つ に 分 類 で き た ( 図 3.16). そ れ ぞ れ は , 黒 色 角 礫 状 粒 子 (BAG), 白 色 角 礫 状 粒 子 (W AG), 球 状 粒 子 (SG), 棒 な い し 針 状 粒 子 (S N), 扁 平 状 粒 子 (FG)で あ っ た . BAG は 不 規 則 な 直 方 体 な い し 立 方 体 状 を 呈 し ,表 面 は 凹 凸 が 少 な く 平 滑 の も の が ほ と ん ど で あ る .WAG の 形 状 は BAG と 同 じ で あ り , ( 目 視 で は BAG と 同 じ )黒 色 物 が 付 着 し て い た . SG は , 楕 円 体 状 お よ び 真 球 状 を 呈 し , 粒 径 が 小 さ く な る に し た が っ 61 て 真 球 状 を 呈 す る も の が 多 く な る 傾 向 を 示 し た . SN は 直 状 お よ び カ ー ル し た も の が あ っ た .長 さ は 15∼ 20 mm,10 mm 前 後 ,5 mm 前 後 ,1 mm 前 後 な ど 様 々 で あ っ た . FG は 粒 径 が 大 き い 場 合 に は タ マ ネ ギ の 皮 状 を , 粒 径 が 小 さ い 場 合 は 平 板 状 を 呈 す る 粒子が多かった. BAG は ,全 粒 度 階 を 通 し て 最 も 多 い 粒 子 で あ っ た .WAG 粒 子 は TO ス ラ グ で は 060 ∼ 475 の 粒 度 階 に 少 量 含 ま れ て い た .YA お よ び YM ス ラ グ で は 060∼ 236 の 粒 度 階 に 極 少 量 含 ま れ ,030 以 下 の 粒 度 階 に は ほ と ん ど 含 ま れ て い な か っ た .SG 粒 子 は TO ス ラ グ で は 118 以 下 の 粒 度 階 に 含 ま れ ,粒 径 が 小 さ く な る に し た が っ て 多 く 含 ま れ て い た .YA ス ラ グ で も 同 様 の 傾 向 を 示 し た が ,含 ま れ る 量 は 少 な か っ た .YM ス ラ グ に は ほ と ん ど 含 ま れ て い な か っ た .SN は TO ス ラ グ ,YA ス ラ グ で は 236 以 下 の 粒 度 階 に 含 ま れ( YM ス ラ グ で は 118 以 下 ),粒 径 が 小 さ く な る に し た が っ て 多 く 含 ま れ る 傾 向 を 示 し た . FG は 118 以 下 の 粒 度 階 に 含 ま れ , 粒 径 が 小 さ く な る に し た が っ て 多 く 含 まれる傾向を示した. 水冷スラグが以上の様な粒径と粒形を示したことについて,その発現機構は必ずし も 明 ら か で は な い .松 岡 ほ か 52) は 冷 却 水 温 が 影 響 す る と し ,粒 径 を 大 き く す る に は 冷 却 水 温 を 60∼ 85 ℃ に 保 つ こ と が 効 果 的 で あ る と し た . 今 回 対 象 と し た 施 設 か ら 製 造 された溶融スラグの粒形と粒径ともにかなりのばらつきがみられ,三施設の冷却水温 が 50∼ 65 ℃ で あ る こ と か ら , 粒 形 ・ 粒 径 の 発 現 は 冷 却 水 温 に よ っ て 説 明 で き る も の ではなかった. 図 3.16 ス ラ グ 構 成 粒 子 の 形 状 球 状 粒 子 (SG) A; 黒 色 角 礫 状 粒 子 (BAG) D ; 針 状 粒 子 (SN) B ; 白 色 角 礫 状 粒 (WAG) E; 偏 平 状 粒 子 (FG) C; ス ケ ー ル バ ー : 2.5mm 3.5.2 粒 子 形 状 別 お よ び 粒 径 別 化 学 組 成 これまでに示したように,粒径と粒形の発現機構は製造条件からは説明できないこ と が わ か っ た .こ れ に よ り 粒 径 と 粒 形 の 発 現 機 構 と 化 学 組 成 と の 関 係 を 調 べ る た め に , 各 粒 度 階 に 含 ま れ る 粒 子 形 状 毎 に 化 学 成 分 を 調 べ た . 化 学 分 析 は XRF 分 析 に よ っ た ( 分 析 条 件 は 第 2 章 に 示 し た ).化 学 分 析 用 試 料 は ,形 状 毎 に 粒 子 数 が 30 以 上 に な る よ う 手 選 別 に よ り 所 定 量 を 抽 出 し た .WAG 粒 子 を 構 成 す る 鉱 物 同 定 は XRD 測 定 に よ った. 62 TO ス ラ グ に つ い て は 表 3.7 に , YA ス ラ グ つ い て は 表 3.8 に , YM ス ラ グ に つ い て は 表 3.9 に 化 学 分 析 結 果 を 示 し た . 1. TO ス ラ グ WAGを 除 く 各 粒 形 の 組 成 は 以 下 で あ っ た .主 成 分 の SiO 2 が 37 %,Al 2 O 3 が ほ ぼ 22 %, CaOが 21 %台 で あ り 各 粒 形 間 に 含 有 量 の 差 は 認 め ら れ な か っ た . Fe 2 O 3 は 2 % 弱 で あ り , SNが 低 め の 傾 向 で あ っ た . Na 2 Oは 4 %台 で あ り , K 2 Oは 1.4 %で あ っ た が , 両 成 分 と も に SGで 低 い 傾 向 を 示 し た .重 金 属 に つ い て も 含 有 量 に 大 き な 差 は 見 い だ さ れなかった. 各 粒 形 の 粒 径 間 の 化 学 組 成 の 傾 向 は 以 下 で あ っ た .BAGで は 475 粒 子 が 他 の 粒 径 粒 子 に 比 べ て SiO 2 が 高 め で あ り , Al 2 O 3 , Fe 2 O 3 , Na 2 O, K 2 Oが 低 め の 傾 向 を 示 し た . SGで は SiO 2 ,Al 2 O 3 ,K 2 Oは 他 の 粒 径 粒 子 と ほ ぼ 同 じ で あ っ た が ,030 粒 径 粒 子 で は Fe 2 O 3 , CaO, Na 2 Oが 低 め の 傾 向 を 示 し た . SNで は 030 粒 径 粒 子 の Fe 2 O 3 が 他 の 粒 径粒子に比べて高めの傾向を示したが,他の成分はほぼ同じであった. 表 3.7 TO ス ラ グ の 形 状 別 化 学 組 成 試 料 BA475 BG236 BA118 BA060 BA030 Av. STDEV. SG236 SG118 SG060 SG030 Av. STDEV. SN118 SN060 SN030 Av. STDEV. FG118 FG060 FG030 Av. STDEV. WA475 WA236 WA118 WA060 WA030 SiO2 38.11 37.39 37.58 37.42 37.68 37.64 0.29 37.51 37.44 37.48 37.83 37.57 0.18 37.44 37.49 37.48 37.47 0.03 37.64 37.61 37.32 37.52 0.18 64.36 77.06 66.14 69.27 71.42 TiO2 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO 1.68 21.43 1.65 0.17 2.83 1.80 21.85 1.87 0.20 2.94 1.79 22.22 2.09 0.20 3.03 1.81 22.24 2.18 0.21 2.98 1.71 21.96 1.98 0.19 2.93 1.76 21.94 1.95 0.19 2.94 0.06 0.33 0.21 0.02 0.07 1.82 22.24 2.19 0.22 3.03 1.79 22.15 1.92 0.22 3.10 1.82 22.17 2.16 0.22 3.11 1.70 22.01 1.22 0.20 3.16 1.78 22.14 1.87 0.22 3.10 0.06 0.10 0.45 0.01 0.05 1.77 22.00 1.56 0.21 3.11 1.80 22.01 1.64 0.21 2.98 1.80 22.17 2.00 0.21 3.13 1.79 22.06 1.73 0.21 3.07 0.02 0.10 0.23 0.00 0.08 1.76 21.97 1.50 0.21 3.09 1.79 22.16 1.91 0.20 3.03 1.85 22.27 2.28 0.21 2.90 1.80 22.13 1.90 0.21 3.01 0.05 0.15 0.39 0.01 0.10 0.30 28.84 0.51 0.01 0.86 0.33 15.14 0.89 0.02 0.68 0.19 12.33 0.60 0.01 0.56 0.27 7.68 0.87 0.02 1.07 0.25 6.77 0.78 0.02 0.99 単位:重量% CaO Na2O K2O P2O5 SO3 20.63 3.16 0.89 2.14 0.82 21.24 4.52 1.41 2.16 0.90 21.59 4.43 1.40 2.21 0.90 21.55 4.46 1.42 2.27 0.91 20.93 4.44 1.35 2.23 0.94 21.19 4.20 1.29 2.20 0.89 0.41 0.58 0.23 0.05 0.04 21.75 4.06 1.17 2.30 0.99 21.60 4.30 1.27 2.27 0.93 21.85 4.05 1.18 2.20 0.96 20.97 3.94 1.22 2.33 0.98 21.54 4.09 1.21 2.28 0.97 0.40 0.15 0.05 0.06 0.03 21.57 4.42 1.36 2.15 0.91 21.52 4.38 1.36 2.20 0.91 21.40 4.49 1.34 2.26 0.91 21.50 4.43 1.35 2.20 0.91 0.09 0.06 0.01 0.06 0.00 21.08 4.51 1.32 2.24 0.92 21.25 4.45 1.33 2.27 0.92 21.79 4.54 1.41 2.27 0.90 21.37 4.50 1.35 2.26 0.91 0.37 0.05 0.05 0.02 0.01 0.46 1.26 2.95 0.33 0.11 1.34 1.12 2.82 0.46 0.08 7.60 0.00 0.59 9.74 2.14 8.73 1.00 1.17 9.05 0.75 9.11 0.95 0.93 8.07 0.59 Cl Cr2O3 CuO PbO ZnO 0.00 0.20 0.07 0.05 0.26 0.38 0.20 0.03 0.04 0.30 0.17 0.18 0.04 0.04 0.29 0.39 0.18 0.05 0.04 0.28 0.16 0.18 0.08 0.04 0.26 0.22 0.19 0.05 0.04 0.28 0.17 0.01 0.02 0.00 0.02 0.00 0.19 0.05 0.04 0.29 0.24 0.21 0.04 0.04 0.29 0.00 0.21 0.05 0.04 0.29 0.00 0.17 0.46 0.05 0.25 0.06 0.20 0.15 0.04 0.28 0.12 0.02 0.21 0.01 0.02 0.37 0.21 0.04 0.04 0.26 0.34 0.20 0.04 0.04 0.27 0.30 0.20 0.04 0.05 0.28 0.34 0.20 0.04 0.04 0.27 0.04 0.01 0.00 0.01 0.01 0.30 0.21 0.07 0.04 0.26 0.30 0.19 0.07 0.04 0.28 0.36 0.20 0.04 0.04 0.30 0.32 0.20 0.06 0.04 0.28 0.03 0.01 0.02 0.00 0.02 0.00 0.00 0.01 0.00 0.01 0.00 0.02 0.02 0.00 0.02 0.00 0.05 0.02 0.01 0.02 0.00 0.02 0.03 0.01 0.05 0.00 0.02 0.03 0.06 0.01 WAGは そ れ 以 外 の 粒 子 と 全 く 系 統 の 異 な る も の で あ り , 組 成 は 以 下 で あ っ た . 475 お よ び 236 粒 子 で は SiO 2 が 70 %前 後 ,Al 2 O 3 が 20 %前 後 ,CaOは 1 %以 下 で あ っ た . 118, 060 お よ び 030 粒 子 で は SiO 2 が 70 %前 後 , Al 2 O 3 が 7∼ 12 %, CaOは 8∼ 9 % 弱 , P 2 O 5 が 9 % 前 後 で あ っ た . XRD 測 定 に よ れ ば そ れ ら の 試 料 か ら は quartz , cristobalite, gehlenite, mulliteが 同 定 さ れ た (図 3.17). 63 Intensity(a.u.) CuKα2θ(゜) 図 3.17 WAG の 粉 末 X 線 回 折 パ タ ー ン 2. YA ス ラ グ WAGは 各 粒 度 階 に お い て 少 量 で あ っ た こ と か ら 対 象 外 と し た .そ の 他 の 粒 形 毎 の 組 成 は 以 下 の 通 り で あ っ た .主 成 分 の SiO 2 が 32 %,Al 2 O 3 が ほ ぼ 22 %,CaOが 18 %台 で あ り 各 粒 形 間 に 含 有 量 の 差 は 認 め ら れ な か っ た .Fe 2 O 3 は 10 %弱 で あ り , Na 2 Oは 4.5 %台 で あ り , K 2 Oは 1 %で あ っ た . そ の う ち BAGは 他 の 粒 形 粒 子 に 比 べ て SiO 2 , Al 2 O 3 が 高 め の 傾 向 を 示 し ,CaOは 低 め の 傾 向 を 示 し た .SNは 他 の 粒 形 粒 子 に 比 べ て Fe 2 O 3 は 低 め の 傾 向 を 示 し た . ま た , FGは 他 の 粒 形 粒 子 に 比 べ て Na 2 Oは 低 め の 傾 向 を示した.重金属についても含有量に大きな差は見いだされなかった. 各 粒 形 の 粒 径 間 の 傾 向 は 以 下 の 通 り で あ っ た .BAGで は 475 粒 子 が 他 の 粒 径 粒 子 に 比 べ て SiO 2 が 高 め で あ り ,Fe 2 O 3 ,CaO,Na 2 Oが 低 め の 傾 向 を 示 し た .SNで は 236 粒 径 粒 子 の SiO 2 が 低 め で あ り , CaOが 高 め の 傾 向 を 示 し た . FGで は 118 粒 子 の SiO 2 が 低 め で あ り , Na 2 Oが 高 め の 傾 向 を 示 し た . 表 3.8 YA ス ラ グ の 形 状 別 化 学 組 成 試 料 BAG475 BAG236 BAG118 BAG060 BAG030 AV. STDEV. FG118 FG060 FG030 AV. STDEV. SN236 SN118 SN060 SN030 AV. STDEV. SiO2 36.81 31.29 31.73 32.11 33.68 33.12 2.25 31.76 32.48 32.43 32.22 0.40 32.69 33.52 33.02 32.52 32.94 0.44 TiO2 1.6 1.8 2 1.9 1.8 1.84 0.13 2.1 2 2.1 2.06 0.03 2 2 2 2 1.99 0.02 Al2O3 Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O 21.8 9.57 0.23 2.46 15.8 4.21 22.2 10.1 0.26 2.74 17.5 4.76 22.2 10 0.27 2.86 18.2 4.56 22.1 9.98 0.27 2.86 18.2 4.38 21.70 9.61 0.25 3.14 17.40 4.57 22.00 9.85 0.26 2.81 17.40 4.50 0.25 0.24 0.02 0.25 0.98 0.21 22.1 9.86 0.30 2.78 18.7 4.42 22 9.72 0.29 2.87 18.50 4.36 21.9 9.68 0.29 2.90 18.7 4.03 21.98 9.75 0.29 2.85 18.64 4.27 0.12 0.09 0.01 0.06 0.12 0.21 21.9 9.50 0.28 2.94 18.6 4.53 21.7 9.15 0.27 2.95 18.5 4.54 21.8 9.50 0.29 2.97 18.2 4.53 21.8 9.60 0.30 2.91 18.4 4.56 21.78 9.44 0.29 2.94 18.41 4.54 0.10 0.20 0.01 0.03 0.18 0.01 64 単位:重量% K2 O P 2 O5 1.20 2.34 1.08 2.62 1.08 2.53 1.06 2.52 1.03 2.56 1.09 2.51 0.06 0.10 1.13 2.39 1.08 2.44 1.01 2.38 1.07 2.40 0.06 0.03 1.05 2.48 1.08 2.52 1.05 2.48 1.06 2.44 1.06 2.48 0.01 0.03 SO3 0.60 0.89 0.89 0.89 0.90 0.83 0.13 0.89 0.89 0.92 0.90 0.02 0.90 0.89 0.89 0.89 0.89 0.00 Cl Cr2O3 0.00 0.24 0.00 0.25 0.00 0.23 0.00 0.26 0.00 0.21 0.00 0.24 0.00 0.02 0.10 0.30 0.00 0.30 0.00 0.26 0.03 0.29 0.06 0.02 0.00 0.26 0.00 0.26 0.05 0.26 0.05 0.29 0.03 0.27 0.03 0.02 CuO 0.23 0.37 0.32 0.32 0.32 0.31 0.05 0.34 0.24 0.31 0.30 0.05 0.24 0.20 0.40 0.27 0.28 0.09 PbO 0.07 0.10 0.09 0.08 0.07 0.08 0.01 0.07 0.07 0.07 0.07 0.00 0.06 0.06 0.07 0.07 0.07 0.01 ZnO 0.5 0.6 0.6 0.5 0.5 0.52 0.04 0.6 0.6 0.5 0.54 0.04 0.5 0.5 0.5 0.6 0.51 0.05 3. YM ス ラ グ WAGは 各 粒 度 階 に お い て 少 量 で あ っ た こ と か ら 対 象 外 と し た .そ の 他 の 粒 形 毎 の 組 成 は 以 下 の 通 り で あ っ た .主 成 分 の SiO 2 が 37%,Al 2 O 3 が ほ ぼ 22%,CaOが 19%台 で あ り 各 粒 形 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た . Fe 2 O 3 は 4%弱 で あ り , BAGが 他 の 粒 形 に 比 べ て 高 め で あ っ た . Na 2 Oは 4%台 で あ り , K 2 Oは ほ ぼ 2%で あ り , BAGは 他 の 粒 形 に 比べて高めであった.重金属についても含有量に大きな差は見いだされなかった. 表 3.9 YM ス ラ グ の 形 状 別 化 学 組 成 試 料 SiO2 BA475 37.2 BA236 36.6 BA118 37.1 BA060 37 BA030 37.5 AV. 37.08 STDEV. 0.33 SN060 37.1 SN030 37.2 AV. 37.2 FG118 37.7 FG060 36.9 FG030 37.3 AV. 37.31 STDEV. 0.40 TiO2 1.68 1.78 1.69 1.68 1.62 1.69 0.06 1.71 1.68 1.7 1.58 1.75 1.67 1.67 0.09 Al2O3 21.86 22.09 21.92 21.89 22.03 21.96 0.10 21.86 21.86 21.86 21.61 21.95 21.86 21.81 0.18 単位:重量% Fe2O3 MnO MgO CaO Na2O K2O P2O5 SO3 Cl Cr2O3 CuO PbO ZnO 3.80 0.14 3.13 19.53 4.43 2.03 2.53 0.92 0.33 0.07 0.07 0.04 0.25 4.27 0.16 3.16 20.27 4.29 2.12 2.49 0.92 0.31 0.08 0.08 0.04 0.26 4.09 0.14 3.09 19.66 4.33 2.06 2.49 0.91 0.36 0.08 0.08 0.05 0.27 3.81 0.15 3.27 19.62 4.39 2.02 2.55 0.92 0.36 0.07 0.06 0.04 0.26 4.06 0.15 3.09 19.03 4.45 2.10 2.50 0.92 0.29 0.07 0.12 0.05 0.26 4.01 0.15 3.15 19.62 4.38 2.07 2.51 0.92 0.33 0.07 0.08 0.04 0.26 0.20 0.01 0.07 0.44 0.07 0.04 0.03 0.00 0.03 0.01 0.02 0.01 0.01 3.61 0.16 3.29 19.65 4.37 1.80 2.58 1.00 0.00 0.07 0.06 0.04 0.25 3.46 0.15 3.29 19.51 4.37 1.97 2.56 0.94 0.28 0.07 0.05 0.04 0.24 3.535 0.155 3.29 19.58 4.37 1.89 2.57 0.97 0.14 0.07 0.06 0.04 0.25 2.61 0.13 3.39 18.98 4.44 1.88 2.65 0.96 0.08 0.07 0.04 0.03 0.20 3.98 0.16 3.25 19.89 4.27 1.94 2.54 0.94 0.26 0.07 0.07 0.05 0.26 3.56 0.15 3.32 19.34 4.53 1.98 2.57 0.93 0.25 0.07 0.06 0.04 0.24 3.38 0.15 3.32 19.40 4.41 1.93 2.59 0.94 0.20 0.07 0.06 0.04 0.23 0.70 0.02 0.07 0.46 0.13 0.05 0.06 0.02 0.10 0.00 0.02 0.01 0.03 化 学 成 分 の 各 ス ラ グ 間 比 較 に お い て , SiO 2 は TO, YMス ラ グ の ほ ぼ 37 %に 対 し て YAス ラ グ は 33 %と 低 い 傾 向 を 示 し た . ま た , Fe 2 O 3 濃 度 は TOス ラ グ で は ほ ぼ 2 %, YAス ラ グ で は 10 %,YMス ラ グ で は 4 %の よ う に 濃 度 が 大 き く 異 な っ て い た .こ れ に つ い て は ,TO施 設 で は 3 段 階 磁 選 方 式 ,YA施 設 と YM施 設 で は 1 段 階 磁 選 方 式 の 違 い か ら 原 料 灰 中 の Fe 2 O 3 濃 度 が 異 な っ て く る と 考 え ら れ る . し た が っ て , 各 ス ラ グ 間 に お け る Fe 2 O 3 濃 度 の 差 は 原 料 灰 中 の Fe 2 O 3 濃 度 を 反 映 し た 結 果 と 考 え ら れ る . 田 原 ほ か 53) は 原 料 灰 の 形 状 ,化 学 組 成 の 不 均 一 に よ り 生 成 す る ス ラ グ も 均 質 で な い と し て い る が ,今 回 対 象 と し た ス ラ グ に お け る 粒 子 形 状 お よ び 粒 径 間 の 比 較 に よ れ ば , 顕 著 な 化 学 成 分 の 差 異 は 見 ら れ な か っ た . し た が っ て , mmサ イ ズ ま た は 粒 子 単 位 に おいて化学成分を見ると,均質に溶融されているとみなすことができた.スラグ製造 過程における「溶融の十分さ」あるいは「不十分さ」の一つの尺度として化学組成を 用いることができると考えられる. WAGは BAGに 付 随 し て い る 場 合 が ほ と ん ど で あ る と こ ろ か ら ,そ の 成 因 は 溶 融 炉 内 に お け る 融 体 中 に お い て mmサ イ ズ 以 下 の ス ケ ー ル で は , SiO 2 -Al 2 O 3 -CaO系 の 不 混 和な領域の存在によるか,十分な溶融・溶流状態が確保されなかったかのどちらかと 考えられる.しかし,流理組織が普遍的に観察されることから流理組織そのものもサ ブ mmサ イ ズ あ る い は そ れ 以 下 の ス ケ ー ル で 見 る と 不 混 和 領 域 の 存 在 を 示 唆 す る も の 65 で あ る こ と か ら ,WAGの 成 因 は 溶 融 体 中 に 基 本 的 に 不 混 和 領 域 が 存 在 す る こ と に よ る と考えられる. 3.5.3 ま と め 灰溶融水冷スラグの粒度構成,粒子形状の観察,粒子の化学分析を通して,以下の 知見が得られた. (1)水 冷 ス ラ グ は 黒 色 角 礫 状 粒 子 (BAG),白 色 角 礫 状 粒 子 (WAG),球 状 粒 子 (SG),針 状 粒 子 (SN)お よ び 偏 平 粒 子 (FG)か ら 構 成 さ れ て い た . そ れ ぞ れ の 粒 子 の 構 成 割 合 は , 黒色角礫状粒子が最優勢であり,偏平粒子,白色角礫状粒子,針状粒子および球状 粒 子 は 少 量 で あ っ た .TO ス ラ グ に 比 べ ,YA お よ び YM ス ラ グ で は 針 状 粒 子 が 多 く , 球状粒子は少量であった. (2)各 溶 融 ス ラ グ の 粒 度 構 成 に お い て ,TO お よ び YM ス ラ グ で は 2.36∼ 4.75 mm の 粒 子 が 最 多 を 占 め , YA ス ラ グ で は 1.18∼ 2.36 mm の 粒 子 が 最 多 を 占 め た . TO お よ び YM ス ラ グ は ほ ぼ 同 じ 傾 向 を 示 し , YA ス ラ グ に 比 べ て 粗 粒 分 が 多 か っ た . (3)化 学 組 成 に つ い て ,各 溶 融 ス ラ グ 間 比 較 で は YAス ラ グ の SiO 2 ,CaOは 濃 度 が 低 く , Fe 2 O 3 濃 度 が 高 か っ た . し か し , 各 溶 融 ス ラ グ に つ い て 白 色 角 礫 状 粒 子 を 除 く 粒 子 形 状 間 お よ び 粒 径 間 比 較 で は 主 成 分 と し て の SiO 2 , Al 2 O 3 , CaO濃 度 お よ び 副 成 分 と し て の Fe 2 O 3 , MgO, Na 2 O, P 2 O 5 濃 度 は , ほ ぼ 均 質 と 見 な せ る 結 果 で あ っ た . 重金属についても含有量に大きな差は見いだされなかった.したがって,水冷スラ グ を mmサ イ ズ で 比 較 検 討 す る と , 今 回 対 象 と し た 施 設 に お け る ス ラ グ 製 造 条 件 か らは,化学的に均質なスラグが製造されていると判断できた. (4)水 冷 ス ラ グ の 粒 径 お よ び 粒 子 形 状 を 発 現 す る 要 因 を 探 る こ と を 試 み た が ,溶 融 温 度 , 冷 却 条 件 お よ び 粒 子 の 化 学 組 成 か ら は 発 現 の 要 因 を 説 明 で き な か っ た .し た が っ て , 溶融スラグの製造過程における粒径の発現機構および白色角礫状粒子の成因および 粒径・粒形の調整法の改善は,残された課題である. 3.6 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成 3.6.1 実 在 ス ラ グ の 化 学 組 成 の 範 囲 実機において製造されたスラグの化学組成については,水冷,空冷および結晶質ス ラ グ と も に 主 成 分 は SiO 2 , Al 2 O 3 , CaOで あ る . ま た , 焼 却 残 渣 や 焼 却 飛 灰 に は 主 成 分 に 加 え て Fe 2 O 3 ,TiO 2 ,MgO,Na 2 O,K 2 O,P 2 O 5 ,Clが 含 ま れ る こ と は 第 2 章 に 示 し た .こ の よ う な 事 実 か ら ス ラ グ の 化 学 組 成 を 表 す 場 合 ,SiO 2 ,Al 2 O 3 ,CaO,Fe 2 O 3 に 加 え て TiO 2 ,MgO,Na 2 O,K 2 O,P 2 O 5 ,Cl成 分 な ど が 分 析 さ れ て い る .ま た ,重 金属類等については溶融スラグを自然環境中で使用していく場合を考慮した結果とし て Cd, Pb, Cr, As, Hg, Se成 分 等 が 分 析 さ れ て い る . 全 国 で 稼 働 し て い る 溶 融 施 設 に お い て 製 造 さ れ た 128 個 の ス ラ グ 54) に つ い て ,ま た , 66 千 葉 県 の 実 施 し た 調 査 に よ れ ば 実 証 炉 お よ び 実 機 炉 か ら の 17 個 の ス ラ グ の 分 析 値 が 示 さ れ て い る 15) .そ れ ら の ス ラ グ の 主 成 分 組 成 の 傾 向 は ,以 下 の よ う に ま と め る こ と が で き る . SiO 2 は 21∼ 53 %, Al 2 O 3 は 8.6∼ 34 %, CaOは 16.4∼ 38.5 %, Fe 2 O 3 は 0.2∼ 26 %,MgOは 0.9∼ 4.4 %,Na 2 Oは 0.2∼ 6.6 %,K 2 Oは ∼ 5.3 %,P 2 O 5 は ∼ 2.1 % 等 で あ っ た . 重 金 属 類 等 に つ い て は , Asが ∼ 460 mg/kg, Cdが 0.5∼ 7.2 mg/kg, Cr が 65∼ 7100 mg/kg,Hgが ∼ 7 mg/kg,Pbが ∼ 460 mg/kgそ し て Seが ∼ 150 mg/kgで あ った. 3.6.2 ス ラ グ 化 率 と 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 前項に示した溶融スラグの組成は,原料灰のスラグ化率とそれに含まれる各成分の スラグへの固定率から論じられる.溶融過程において主成分および副成分のうち原料 灰から除去される成分とそれを生じる反応は,以下のように整理することができる. a)吸 着 水 分 の 蒸 発 ・ 揮 散 b)未 燃 C や 有 機 物 の 燃 焼 c)構 造 水 を 持 つ 鉱 物 の 脱 水 分 解 d)炭 酸 塩 鉱 物 の 熱 分 解 e)塩 化 物 お よ び 低 沸 点 金 属 の 蒸 発 ・ 揮 散 f)金 属 酸 化 物 の 還 元 ( 溶 融 メ タ ル と し て 分 離 さ れ る ) 原 料 灰 か ら ス ラ グ に 固 定 さ れ ず 系 外 へ 排 出 さ れ る 量 は , a)∼ d)の 反 応 に よ る 部 分 と e)お よ び f)の 反 応 に よ る 部 分 と に 分 け ら れ る .a)∼ d)の 反 応 に よ る 部 分 は 原 料 灰 の 強 熱 減 量 ( 800 ℃ , 1 時 間 加 熱 ) を 用 い て 近 似 で き , そ れ ら は 前 章 で 示 し た 焼 却 灰 を 構 成 す る 鉱 物 と 未 燃 Cに よ り 特 徴 づ け ら れ る .e)お よ び f)の 反 応 は 実 際 の 現 場 に お い て 溶 融 メタルの生成量,溶融飛灰と排ガス生成量の実測により評価される.また,熱力学的 考 察 も 可 能 で あ り 55) ,原 料 灰 中 の 各 成 分 の 挙 動 に 関 し て は 蒸 気 圧 と 温 度 お よ び エ リ ン ガ ム 図 か ら の 考 察 ,そ れ ら を 多 成 分 系 に 拡 大 し た 高 温 溶 融 反 応 モ デ ル 23,56) を 用 い た 考 察がなされている.原料灰は溶融により,溶融スラグ,溶融メタル,溶融飛灰および 排ガスを生成することはすでに示したが,原料灰の組成から理論的にそれぞれの溶融 生成物の割合や溶融スラグ等の組成を決定するまでには至っていない.したがって, 現状では溶融炉毎にそれらを実測することになる. 原料灰とそれから生成する各溶融生成物との関係を②式に示した物質収支を用いて 換算し,原料灰のスラグ化率および各成分のスラグ固定率が議論される. 原 料 灰 =溶 融 ス ラ グ + 溶 融 メ タ ル + 溶 融 飛 灰 + 排 ガ ス + そ の 他 ② ス ラ グ 化 率 =(ス ラ グ (kg))/(原 料 (kg)) ③ 原 料 灰 の ス ラ グ 化 率 を 表 3.10 に 示 し た .原 料 灰 が 焼 却 残 渣 単 独 の 場 合 の ス ラ グ 化 率 は ,90∼ 95 %で あ っ た .ス ラ グ 化 率 は ,プ ラ ズ マ 炉 よ り 表 面 溶 融 炉 の 方 が 大 き く な っ て い る .飛 灰 単 独 溶 融 の 場 合 の ス ラ グ 化 率 は 72 %で あ っ た .原 料 灰 が 焼 却 残 渣 と 焼 却 67 飛 灰 の 混 合 灰 の 場 合 の ス ラ グ 化 率 は ,72.6∼ 86.4 %で あ っ た .ス ラ グ 化 率 が 77.4 %の 混合灰は焼却残渣に可燃ごみを混合したものであり,同じ炉型であっても原料灰の性 状 が 異 な る と ス ラ グ 化 率 も 異 な っ て く る こ と を 示 し て い た .ス ラ グ 化 率 86.4 %の 混 合 灰の場合は,焼却飛灰の混合率が他の場合よりも低くなっていた.原料灰が流動床灰 の 場 合 の ス ラ グ 化 率 は , 70 %と 82 %で あ っ た . し た が っ て , 飛 灰 の 混 合 は ス ラ グ 化 率を下げる効果を示したが,その原因は,焼却残渣に較べ,焼却飛灰は塩類および低 沸点重金属類を多く含むことより,それらの揮散がスラグ化率を押し下げたと考えら れる. 表 3.10 灰 溶 融 に お け る 物 質 収 支 と ス ラ グ 化 率 (%) 原料灰 スラグ メタル 溶融飛灰 排ガス 塩(吸収液) 炉型式 文献 主灰1 100 89 − 3 8 − プラズマ 1 文 献 番 号 は 表 3.11 に 示 す . 飛灰 混合灰1 混合灰2 混合灰3 混合灰4 流動床灰1 流動床灰2 主灰2 主灰3 100.0 100.0 100 100.0 100.0 100.0 100 100 100.0 89.7 94.5 72 72.6 77.4 86.4 78 70 81.9 − − − − − 3.6 11.8 12 3 3.9 2.9 24 7.1 3.0 7.8 2 5 16.1 2.8 2.6 4 8.5 19.6 5.8 9 15 2.0 − − − − − − − − 7 電気抵抗 電気抵抗 プラズマ 表面溶融 プラズマ プラズマ 表面溶融 表面溶融 アーク 2 3 1 2 3 3 4 5 6 各 成 分( 元 素 )の ス ラ グ へ の 固 定 率 は 主 成 分・副 成 分 と し て Si,Al,Ca,Mg,Fe, Na, K, P, S, Cl お よ び 重 金 属 類 の Pb, Cu, Zn, Cr, Cd, As, Hg, Sn に つ い て 報 告 が あ る ( 表 3.11). 主 成 分 お よ び 副 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 に つ い て , Si,Al,Caは 95 %以 上 で あ り ,焼 却 残 渣 単 独 灰 お よ び 混 合 灰 と も に ほ と ん ど ス ラ グ に 固 定 さ れ る .Feは 24∼ 88 % と 言 っ た よ う に ,固 定 率 は 幅 を 持 っ た 結 果 で あ っ た .Feの ス ラ グ 固 定 率 は 溶 融 炉 内 に お い て十分還元されていれば,溶融メタルとしてスラグから分離される.しかし,十分還 元 さ れ な か っ た Fe酸 化 物 は FeOと し て ス ラ グ に 固 定 さ れ る 57) か ,次 章 で 示 す よ う に 還 元されたとしても極微粒なメタルはスラグから分離されず,見かけ上スラグに固定さ れ た よ う に み え る 58) . Naと Kの ス ラ グ 固 定 率 は , 17∼ 93 %, 22∼ 80 %で あ っ た . Naの 方 が ス ラ グ に 固 定 さ れ や す い 傾 向 を 示 し て い た .Pの ス ラ グ 固 定 率 は 14∼ 76 % , Sの そ れ は 8∼ 76 % で あ り , 幅 広 い 結 果 と な っ て い る . こ れ ら の 成 分 の 固 定 率 は 範 囲 が 広 す ぎ る こ と か ら , 傾 向 を 議 論 す る 段 階 に は 至 っ て い な い . Clの 固 定 率 は 1 %な い しそれ以下であり,スラグには固定され難い成分とみなすことができる. 重 金 属 類 の ス ラ グ 固 定 率 に つ い て , Pb は 10 %以 下 と な っ て お り , 炉 内 雰 囲 気 が 酸 化 雰 囲 気 よ り も 還 元 雰 囲 気 の 方 が 固 定 率 は 小 さ く な る 傾 向 を 示 し た . Cu の そ れ は 6 ∼ 43 %と な っ て い る . Zn の そ れ は 45 %以 下 と な っ て お り , 炉 内 雰 囲 気 が 中 性 な い し 還 元 雰 囲 気 の 方 が 固 定 率 は 小 さ く な る 傾 向 を 示 し た .Cr の ス ラ グ 固 定 率 は 25 %,82 % と な っ て お り , 傾 向 を 読 み と る 程 の デ ー タ は 蓄 積 さ れ て い な い . Cd の ス ラ グ 固 定 率 68 は 9, 13 %と し て 示 さ れ て い る が , 6 例 の ス ラ グ 固 定 率 は ゼ ロ で あ る と こ ろ か ら , 溶 融 ス ラ グ に 固 定 さ れ 難 い 成 分 で あ る み な す こ と が で き る .As の そ れ は 還 元 雰 囲 気 の 場 合 は ス ラ グ に 固 定 さ れ な い 結 果 で あ っ た が , そ れ 以 外 の 測 定 結 果 で は 2∼ 43 %と な っ て い る . ま た , Hg は ス ラ グ に 固 定 さ れ 難 い 成 分 と み な す こ と が で き る . 表 3.11 原 料 灰 中 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 (%) 移行率 主灰 混合灰 混合灰 混合灰 混合灰 流動床灰 主灰 混合灰 主灰 主灰 主灰 主灰 − − − − − − − − Si 95 95∼99 95 100 − − − − − − − − Al 97 97.2< 100 100 − − − − − − − − Ca 97 97.2< 97 100 − − − − − − − − − − Mg 95.2< 100 − − − − − − − − Fe 72 36∼88 24 53 − − − − Na 88 17∼77 52 91 81 39.25 93 77 − − − − K 79 9∼49 28 80 45 16.68 22 58 P 57 36∼76 14 18 − − − − − − − − S 43 8∼76 43 43 − − − − − − − − − − − − 1 0 0.19 0 0 Cl 0 0.2∼1 <1 Pb 9 <39 4 2 5 5.83 6 6 6 8 4 0 − − − − − − − Cu 43 9∼30 11 6 9.43 Zn 36 1∼45 8 24 20 20.65 25 18 38 30 28 6 − − − − − − − − − − Cr 82 25 − − − − Cd 9 13 0 0 0 0 0 0 − − − − − As 43 2 6.65 32 25 11 0 − − − − − − − − − Hg 0 0 0 − − − − − − − − − − − Sn 22.81 アーク プラズマ 電気抵抗 コークベッド 電気抵抗 コークベッド コークベッド プラズマ プラズマ プラズマ プラズマ 炉型式 プラズマ メモ − − − − − − − − 酸化 中性 中性 還元 文献 2 7 2 4 8 9 10 10 11 11 11 11 1 ; 東 ほ か 59) 2 ; 加 藤 ほ か 60) 3 ; 柴 田 ほ か 61) 4 ; 明 石 ほ か 62) 5 ; 松 本 ほ か 63) 6 ; 金 籐 ほ か 64) 7 ; 金 籐 ほ か 65) 8 ; 長 田 ほ か 56) 9 ; 梅 田 ほ か 66) 10; 長 田 ほ か 2 3 ) 11; 神 保 ほ か 6 7 ) 3.6.3 溶 融 過 程 に お け る 成 分 の 挙 動 溶融過程における原料灰中の成分の挙動が溶融スラグの組成を決定するが,その関 係は,製造されたスラグ成分の重量割合を原料灰中成分の重量割合に対応させること に よ り 明 ら か に な る . 成 分 aに つ い て の ス ラ グ 固 定 率 ( r a ) は 以 下 で 示 さ れ る . r a = R ( N 2 a/ N 1 a) ④ た だ し , R: 原 料 灰 の ス ラ グ 化 率 N 1 a: 原 料 灰 中 に お け る 成 分 a の 重 量 (%) N 2 a: ス ラ グ 中 に お け る 成 分 a の 重 量 (%) したがって,原料灰とそれから製造された溶融スラグ各成分の重量割合の対応づけ ( N 2 a/ N 1 a) は , ス ラ グ 化 率 が 得 ら れ て い れ ば , 上 式 よ り 対 象 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 を 示すことができる.また,スラグ化率が得られていない場合は,見かけ上の固定率を 69 示すことになる. 表 3.10, 表 3.11 を 参 考 と し て , 千 葉 県 ( 1996) の 実 施 し た 実 験 結 果 11) に つ い て , ( N 2 a/ N 1 a)の 対 応 付 け を 行 っ た . こ の 溶 融 実 験 で は , ア ー ク 炉 , プ ラ ズ マ 炉 , 表 面 溶 融炉,コークスベッド炉,電気抵抗炉,ロータリーキルン炉において焼却残渣単独, 焼却残渣と焼却飛灰混合,焼却残渣と焼却飛灰混合+不燃残渣,可燃ごみの直接溶融 の 4 ケ ー ス で 実 施 さ れ た が ,成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 評 価 に は 焼 却 残 渣 単 独 ,焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 混 合 の 場 合 を 取 り 上 げ た . 対 象 溶 融 ス ラ グ の 製 造 条 件 は 表 3.12 に 示 し た . この対応付けでは,全試料ともスラグ化率は得られていないこと,溶融メタル生成 量 , 溶 融 飛 灰 生 成 量 お よ び 排 ガ ス 量 が 正 確 に 測 定 さ れ て い な い こ と か ら 表 3.13, 表 3.14 に 示 し た r は 各 成 分 の 見 か け 上 の ス ラ グ 固 定 率 を 表 し て い る . r に つ い て は ,1) r <1, 2)1≦ r の 場 合 が 想 定 で き る . 1)の 場 合 は 成 分 A の 見 か け 上 の ス ラ グ 固 定 率 を 表 し , 2)の 場 合 は ほ ぼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ る こ と を 表 し て い る . 見 か け 上 の ス ラ グ 固 定 率 が 1< r と な っ た 結 果 が あ る が ,そ の よ う な 例 は ,原 料 灰 お よ び 溶 融 ス ラ グ と もにストックパイルサンプリングによる試料のため,それぞれ試料の選択のばらつき に よ っ て 生 じ た 考 え ら れ る .し た が っ て ,本 実 験 で は 1< r の 場 合 は 全 量 が ス ラ グ に 固 定されるとみなした. 表 3.12 対 象 ス ラ グ の 製 造 条 件 スラグ分類 原料灰 No. 空冷 1.スラグ S2(75)+H1(25) 水冷 2.スラグ S3(100) 空冷 3.スラグ S7(75)+H4(25) 水冷 4.スラグ S7(98)+コークス(2) 水冷 5.スラグ S7(77)+H5(21)+コークス(2) 空冷 6.スラグ S9(100) 空冷 7.スラグ S9(71)+H6(29) 水冷 8.スラグ S13(100) 水冷 9.スラグ S13(75)+H10(25) 10-1.スラグ 結晶化 S15(85)+H11(15) 10-2.スラグ 空冷 S15(85)+H11(15) 11-1.スラグ 水冷 S10(100) 11-2.スラグ 水冷 S10(100) 空冷 12.スラグ S10(76)+H7(24) 水冷 13.スラグ S4(100) 水冷 14.スラグ S6(100) 水冷 15.スラグ S13(100) 水冷 16.スラグ S6(75)+H3(25) 水冷 17.スラグ S13(75)+H10(25) 18-1スラグ 結晶化 S15(92)+H11(8) 空冷 18-2スラグ S15(92)+H11(8) 空冷 19.スラグ S5(100) 水冷 20.スラグ S12(100) 水冷 21.スラグ S5(73)+H2(27) 水冷 22.スラグ S12(75)+H9(25) 水冷 23.スラグ S11(100) 水冷 24.スラグ S11(75)+H8(25) 空冷 25.スラグ S11(75)+H8(25) 水冷 26.スラグ S1(100) 8.スラグ, 9.スラグの 温 度 は 炉 内 雰 囲 気 温 度 炉形式 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 プラズマ炉 電気抵抗炉 電気抵抗炉 電気抵抗炉 表面溶融炉 表面溶融炉 表面溶融炉 表面溶融炉 表面溶融炉 酸素バーナ炉 酸素バーナ炉 コークスベッド炉 コークスベッド炉 コークスベッド炉 コークスベッド炉 ロータリーキルン炉 ロータリーキルン炉 ロータリーキルン炉 アーク炉 炉内雰囲気 酸化 還元 酸化 還元 還元 還元 還元 還元 還元 酸化 酸化 還元 還元 還元 還元 還元 還元 還元 還元 酸化 酸化 還元 還元 還元 還元 不明 不明 不明 酸化 溶融温度 1300 ℃ 1400∼1500 ℃ 1230 ℃ 1550 ℃ 1550 ℃ 1500 ℃ 1500 ℃ 1000 ℃ 1000 ℃ 1600 ℃ 1500 ℃ 1500 ℃ 1500 ℃ 1500 ℃ 1450 ℃ 1350 ℃ 1400 ℃ 1350 ℃ 1400 ℃ 1450 ℃ 1450 ℃ 1550 ℃ 1700∼1800 ℃ 1550 ℃ 1700∼1800 ℃ 1360 ℃ 1380 ℃ 1380 ℃ 1330∼1400 ℃ SNo., HNo.: 表 2.13∼ 表 2.16 に 示 し た , 焼 却 残 渣 お よ び 飛 灰 の No.に 対 応 70 各成分のスラグ固定率を,溶融炉型式別にみると以下の通りである. プ ラ ズ マ 炉:主 成 分 お よ び 副 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は ,SiO 2 > Al 2 O 3 ≒ MgO, CaO≒ Na 2 O≒ SO 3 > P 2 O 5 > Fe 2 O 3 ≒ K 2 O> Clの 順 で あ っ た . SiO 2 の ス ラ グ 固 定 率 は 混 合 灰 溶 融 < 焼 却 残 渣 単 独 溶 融 , CaOと Fe 2 O 3 の そ れ は 混 合 灰 溶 融 > 焼 却 残 渣 単 独 溶 融の関係であった.他の成分については焼却残渣単独溶融と混合灰溶融の間に差は認 め ら れ な か っ た . 重 金 属 類 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は , B> Cr> Cu> Zn> Pb≒ Sb≒ Niの 順 で あ っ た . As, Cdは ほ と ん ど ス ラ グ に 固 定 さ れ な い 成 分 で あ っ た . ま た , 重 金属類のスラグ固定率は,焼却残渣単独溶融と混合灰溶融の間にも差は認められなか った.炉内雰囲気および溶融温度による差も認められなかった. 電 気 抵 抗 炉:主 成 分 お よ び 副 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は ,SiO 2 > Al 2 O 3 ≒ MgO, Na 2 O> K 2 O> SO 3 > CaO> P 2 O 5 > Fe 2 O 3 > Clの 順 で あ っ た . SiO 2 と Na 2 Oお よ び Cl の ス ラ グ 固 定 率 は , 混 合 灰 溶 融 < 焼 却 残 渣 単 独 溶 融 で あ っ た . ま た , Al 2 O 3 と CaOお よ び SO 3 の そ れ は 混 合 灰 溶 融 > 焼 却 残 渣 単 独 溶 融 で あ っ た . 重 金 属 類 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は , B> Cr> Cu≒ Znの 順 で あ り , As, Cd, Ni, Sbは ス ラ グ に 固 定 さ れ な い 結果であった.また,焼却残渣単独溶融と混合灰溶融の間に差は認められなかった. 表 面 溶 融 炉:主 成 分 お よ び 副 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は ,SiO 2 ≒ Al 2 O 3 > Fe 2 O 3 > MgO≒ Na 2 O> CaO≒ P 2 O 5 ≒ SO 3 > SO 3 > Clの 順 で あ っ た . 重 金 属 類 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は ,B> Cr≒ Cu, As≒ Pb> Sb> Niで あ り ,Cdは ほ ぼ ス ラ グ に は 固 定 さ れ ていなかった.また,各成分のスラグ固定率は,焼却残渣単独と混合灰との間で差は 認められなかった. コ ー ク ス ベ ッ ド 炉 : 主 成 分 お よ び 副 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は , SiO 2 ≒ Al 2 O 3 > Fe 2 O 3 > CaO> MgO≒ SO 3 > Na 2 O> P 2 O 5 > K 2 O> Clの 順 で あ っ た . 重 金 属 類 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は ,B> Cr> Cu> Zn> Sb> Ni> Pbの 順 で あ っ た .Asと Cdは ス ラ グには固定されなかった.また,炉内雰囲気および溶融温度による差は認められなか った. ロ ー タ リ ー キ ル ン 炉:主 成 分 お よ び 副 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は ,Al 2 O 3 > SiO 2 > Fe 2 O 3 > Na 2 O≒ SO 3 > CaO≒ P 2 O 5 > Clの 順 で あ っ た . 重 金 属 類 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は , Cr> Cu> B> Zn> Sb> Ni> Pbの 順 で あ っ た . Asと Cdは ス ラ グ に は 固 定 されていなかった. ア ー ク 炉 : 主 成 分 お よ び 副 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は , SO 3 > SiO 2 > Al 2 O 3 > CaO> MgO> K 2 O> P 2 O 5 > Fe 2 O 3 ≒ Clの 順 で あ っ た .重 金 属 類 の ス ラ グ 固 定 率 の 大 き さ は ,B> Cr> Cu> Zn> Sb> Ni≒ Pbの 順 で あ っ た .Asと Cdは ス ラ グ に は 固 定 さ れ て いなかった. な お Hg は 対 象 と し た 全 試 料 か ら は 不 検 出 で あ り , ス ラ グ に は 固 定 さ れ な い 成 分 で あった. 以上について,原料灰中の各成分の見かけ上のスラグ固定率(全試料の平均値,最 71 大 値 お よ び 最 小 値 ) を プ ロ ッ ト し た ( 図 3.18). 原 料 灰 中 の 各 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 ( r )は 以 下 と な っ た . SiO 2 , Al 2 O 3 は ほ ぼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . Fe 2 O 3 は 70 %以 上 , MgOは 95 %, CaOは お よ そ 80 %以 上 , Na 2 Oは 90 %,K 2 Oは お よ そ 60 %,P 2 O 5 も お よ そ 70 %,SO 3 は 80 %以 上 ,Clは 24 % 程 度 が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . Bは ほ ぼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . Asは 溶 融 ( 条 件 ) 炉 に よ っ て は ,15 %程 度 ス ラ グ に 固 定 さ れ た .Crは ほ ぼ 全 量 が ,Cuは 70 %程 度 ,Ni, Pb, Sbは 10∼ 15 %程 度 , Znは 50 %程 度 が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . ま た , Hgと Cdは ス ラグには固定されない成分である. 主 成 分 お よ び 副 成 分 に つ い て は , SiO 2 , Al 2 O 3 , CaOの 固 定 率 の 最 大 値 と 最 小 値 の 差 は 小 さ く , そ の 他 の 成 分 の そ れ は 差 が 大 き か っ た . Fe 2 O 3 の 最 大 値 と 最 小 値 の 差 が 大 き く な っ た 要 因 は ,メ タ ル へ の 還 元 度 合 い が 強 く 影 響 し た 結 果 と 考 え ら れ る .Na 2 O お よ び K 2 Oに 関 し て は , 原 料 灰 中 に お け る 鉱 物 種 が 塩 化 物 を と る 度 合 い が 大 き い ほ ど 揮散しやすいため,原料灰中における鉱物種の差異が影響した結果と考えられる.重 金属類に関しても,原料灰中の鉱物種が揮散状況に影響した結果と考えられる. 4.0 3.5 3.0 固定率 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 Ave. 図 3.18 原 料 灰 中 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 (r) スラグ固定率の最大値 均値 Max. Zn Sb Pb N i Cu Cr Cd B As Cl 3 SO 2O P2 O 5 K N a2 O Ca O M gO Si O 2 Al 2O 3 Fe 2O 3 0.0 Min. ■ : 表 3.13 お よ び 表 3.14 に 示 し た 各 成 分 の ◆ : 表 3.13 お よ び 表 3.14 に 示 し た 各 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 平 ▲ : 表 3.13 お よ び 表 3.14 に 示 し た 各 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 の 最 小 値 3.6.4 ま と め 原料灰中の主成分および副成分のスラグ固定率は以下の通りであった.ただし,炉 型式,溶融温度および炉内雰囲気の分類からは,それらの影響ないし傾向を読みとる ことはできなかった. 72 (1)SiO 2 , Al 2 O 3 は ほ ぼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ , CaOと MgOは ほ ぼ 同 じ 挙 動 を 示 し , 80% ∼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . (2)Fe 2 O 3 は 10%∼ 全 量 ス ラ グ に 固 定 さ れ た . (3)Na 2 Oと K 2 Oは 50%∼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ た 結 果 と な っ た が , Na 2 Oの 固 定 率 の 方 が K 2 Oの そ れ よ り も 大 き い 傾 向 を 示 し た . (4)As, Cd は ほ と ん ど が ス ラ グ に 固 定 さ れ な い 傾 向 に あ っ た . (5)Ni, Pb お よ び Sb の ス ラ グ へ の 固 定 率 は 15%以 下 で あ っ た . (6)Cu は 20∼ 70%が ス ラ グ へ , Zn は 15~80%が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . (7)Cr は ほ ぼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . 原料灰の溶融スラグ化率および原料灰中の各成分のスラグ固定率は,原料灰の成分, 溶融温度,炉内雰囲気や炉内滞留時間をその要因として考えられるが,揮散等を考慮 すると原料灰を構成する各成分が形成する鉱物種も強く影響していると考えられる. したがって,原料灰の溶融スラグ化率および原料灰中の各成分のスラグ固定率の解明 は原料灰の成分とそれらが形成する鉱物種の解析,炉内温度と炉内雰囲気の測定等を 定期的に実施する必要があり,未だデータの積み重ねが必要とされる段階にあると考 えられる. 73 表 3.13 原 料 灰 中 の 主 成 分 ・ 副 成 分 の 重 量 濃 度 (%)ス ラ グ へ の 固 定 率 ( r : %) SiO2 原料灰Ave. スラグ Ave. スラグⅠAve. スラグⅡAve. スラグⅢAve. スラグⅣAve. スラグⅤAve. 1.主灰 1.スラグ 2.主灰 2.スラグ 3.主灰 3.スラグ 4.主灰 4.スラグ 5.混合灰 5.スラグ 6.混合灰 6.スラグ 7.混合灰 7.スラグ 8.混合灰 8.スラグ 9.混合灰 9.スラグ 10.混合灰 10-1.スラグ 10-2スラグ 11.主灰 11-1スラグ 11-2スラグ 12.混合灰 12スラグ 13.主灰 13.スラグ 14.主灰 14.スラグ 15.混合灰 15.スラグ 16.混合灰 16.スラグ 17.混合灰 17.スラグ 18.混合灰 18-1スラグ 18-2スラグ 19.主灰 19.スラグ 20.主灰 20.スラグ 21.主灰 21.スラグ 22.混合灰 22.スラグ 23.主灰 23.スラグ 24.混合灰 24.スラグ 25.混合灰 25.スラグ 26.主灰 26.スラグ 31.09 36.13 37.35 39.65 34.26 35.20 33.69 28.51 39.95 32.16 43.50 27.63 34.86 26.59 40.44 32.06 35.21 33.80 31.48 31.83 38.62 34.33 40.90 31.56 38.27 31.00 33.93 33.72 29.86 43.05 41.33 35.29 34.56 32.77 36.04 28.99 39.36 32.85 36.65 28.51 32.06 31.56 33.09 31.71 30.82 31.81 27.47 38.38 30.69 38.62 30.27 30.25 30.90 33.55 29.50 32.34 33.22 27.45 33.22 41.27 32.03 41.49 r − 1.16 1.20 1.28 1.10 1.13 1.08 − 1.40 − 1.35 − 1.26 − 1.52 − 1.10 − 0.93 − 1.21 − 1.19 − 1.21 − 1.09 1.09 − 1.44 1.38 − 0.98 − 1.10 − 1.36 − 1.12 − 1.12 − 1.05 − 0.97 1.00 − 1.40 − 1.26 − 1.00 − 1.09 − 1.10 − 0.83 − 1.24 − 1.30 Al2O3 19.99 21.83 21.26 20.84 22.42 22.12 23.16 19.88 20.55 19.24 17.48 18.65 22.49 18.31 20.63 20.92 22.52 21.64 22.40 21.01 20.43 19.73 20.20 23.16 22.25 21.66 22.46 22.46 18.53 20.15 19.64 19.27 22.74 15.38 22.08 16.36 21.93 21.32 22.62 19.88 23.24 23.16 22.05 22.80 22.48 22.51 18.53 22.15 20.20 21.70 19.92 22.65 23.55 21.97 18.75 24.68 21.83 24.71 21.83 20.09 19.02 18.53 r − 1.09 1.06 1.04 1.12 1.11 1.16 − 1.03 − 0.91 − 1.21 − 1.13 − 1.08 − 1.03 − 0.97 − 1.02 − 0.96 − 1.04 1.04 − 1.09 1.06 − 1.18 − 1.44 − 1.34 − 1.06 − 1.13 − 0.95 − 0.99 0.99 − 1.20 − 1.07 − 1.14 − 0.93 − 1.32 − 1.13 − 0.92 − 0.97 Fe2O3 r 6.72 − 4.98 0.74 3.41 0.51 1.56 0.23 6.72 1.00 7.13 1.06 7.25 1.08 5.52 − 1.79 0.32 7.33 − 0.89 0.12 12.71 − 3.45 0.27 6.40 − 2.71 0.42 2.31 − 2.51 1.09 1.88 − 6.15 3.27 5.34 − 5.26 0.98 7.66 − 2.26 0.29 8.07 − 1.64 0.20 9.47 − 5.56 0.59 5.25 0.55 6.68 − 1.71 0.26 1.73 0.26 5.33 − 1.25 0.23 7.19 − 6.83 0.95 6.81 − 1.85 0.27 2.36 − 0.43 0.18 5.52 − 10.73 1.94 8.07 − 7.84 0.97 10.40 − 9.30 0.89 10.06 0.97 8.86 − 4.84 0.55 7.17 − 8.65 1.21 7.33 − 8.20 1.12 8.48 − 6.84 0.81 6.54 − 9.35 1.43 2.95 − 10.77 3.66 2.95 − 1.64 0.56 7.81 − 1.53 0.20 ス ラ グ Ave.; ス ラ グ 全 体 ス ラ グ Ⅲ Ave.;表 面 溶 融 炉 MgO 3.24 3.07 3.47 3.39 2.71 2.59 2.80 4.08 3.33 3.64 3.40 3.44 3.40 3.76 4.66 3.11 2.88 2.98 2.87 3.24 3.31 2.78 4.85 2.59 3.10 2.44 3.13 3.20 3.98 3.60 3.54 3.32 3.04 2.44 2.96 3.80 3.74 3.05 2.77 4.08 1.87 2.59 2.43 2.02 2.94 2.24 3.84 3.18 2.65 2.60 3.95 2.30 2.69 2.29 3.94 2.54 2.95 2.46 2.95 3.40 3.82 3.06 r − 0.95 1.07 1.05 0.84 0.80 0.86 − 0.82 − 0.93 − 0.99 − 1.24 − 0.93 − 0.96 − 1.02 − 1.74 − 1.20 − 1.29 1.31 − 0.91 0.89 − 0.92 − 1.21 − 0.98 − 0.91 − 0.56 − 0.94 − 1.46 1.11 − 0.83 − 0.98 − 0.58 − 0.85 − 0.65 − 0.83 − 1.15 − 0.80 CaO 28.96 24.18 24.98 24.34 23.60 24.48 22.07 35.44 22.88 28.68 22.96 28.45 27.50 37.38 21.12 29.97 28.79 29.40 28.39 29.06 21.10 23.64 21.90 25.20 26.49 24.34 26.61 27.03 31.40 22.96 22.33 24.82 27.72 27.32 22.64 34.69 22.46 29.68 28.56 35.44 21.04 25.20 24.22 22.06 23.83 22.46 33.04 23.54 27.69 18.01 30.01 27.85 24.10 28.50 32.75 18.96 29.14 24.57 29.14 22.70 27.90 23.72 r − 0.83 0.86 0.84 0.81 0.85 0.76 − 0.65 − 0.80 − 0.97 − 0.56 − 0.96 − 0.97 − 0.73 − 0.93 − 1.13 − 1.09 1.11 − 0.73 0.97 − 1.12 − 0.83 − 0.65 − 0.96 − 0.92 − 0.96 − 1.08 1.02 − 0.71 − 0.65 − 0.93 − 1.18 − 1.21 − 1.04 − 0.78 − 0.85 Na2O 4.10 3.70 3.52 5.23 3.66 2.89 4.04 4.29 4.56 4.64 5.59 3.95 2.60 3.99 4.51 4.40 2.48 3.79 2.36 2.69 4.91 4.47 4.47 2.86 2.81 3.53 2.19 2.19 4.54 5.82 5.49 4.80 4.39 5.89 3.60 4.39 4.46 3.92 3.41 4.29 3.85 2.86 3.71 3.89 3.20 3.37 4.35 2.30 3.91 4.48 4.43 3.17 3.28 1.62 4.30 4.45 3.44 2.73 3.44 4.94 4.57 5.35 r − 0.90 0.86 1.28 0.89 0.70 0.99 − 1.06 − 1.20 − 0.66 − 1.13 − 0.56 − 0.62 − 1.82 − 1.00 − 0.98 − 0.62 0.62 − 1.28 1.21 − 0.91 − 0.61 − 1.02 − 0.87 − 0.90 − 1.30 − 0.82 0.86 − 0.53 − 1.15 − 0.72 − 0.49 − 1.04 − 0.79 − 1.44 − 1.17 ス ラ グ Ⅰ Ave.; プ ラ ズ マ 炉 K2 O 1.54 0.91 0.82 1.47 0.89 0.74 0.92 2.24 1.31 1.91 1.24 1.88 0.42 1.89 1.16 1.51 0.54 1.15 0.40 0.98 1.25 1.69 1.07 0.51 0.53 1.06 0.58 0.53 2.07 1.66 1.64 1.59 1.12 1.76 0.94 2.02 1.41 1.27 0.81 2.24 0.71 0.51 0.75 0.83 0.80 0.82 2.09 0.73 1.28 1.24 2.06 0.67 0.57 0.32 2.09 1.21 0.96 0.36 0.96 1.20 1.98 1.32 r − 0.59 0.53 0.95 0.58 0.48 0.60 − 0.58 − 0.65 − 0.22 − 0.61 − 0.36 − 0.35 − 1.27 − 0.63 − 1.05 − 0.55 0.50 − 0.80 0.79 − 0.70 − 0.53 − 0.70 − 0.64 − 0.32 − 1.47 − 0.97 0.98 − 0.35 − 0.97 − 0.32 − 0.57 − 0.58 − 0.37 − 1.24 − 0.67 P2 O 5 74 r − 0.69 0.67 0.49 0.79 0.64 0.79 − 0.44 − 0.44 − 0.53 − 0.50 − 0.97 − 1.31 − 0.63 − 0.57 − 0.78 − 0.80 0.83 − 0.34 0.33 − 0.93 − 0.73 − 0.43 − 0.66 − 0.57 − 1.17 − 1.42 1.49 − 0.50 − 0.69 − 0.47 − 0.80 − 0.79 − 1.20 − 0.78 − 0.39 SO3 1.25 1.04 1.03 1.25 0.94 1.08 1.04 0.82 1.05 0.55 1.24 1.10 1.10 1.23 1.03 1.61 0.91 1.31 0.90 1.07 1.01 1.17 1.04 1.05 1.21 0.98 0.94 0.95 1.06 1.09 1.04 1.14 1.63 5.86 0.95 0.67 0.96 1.43 0.94 0.82 0.98 1.05 0.92 0.99 0.92 0.93 1.10 1.05 1.11 0.97 0.54 1.18 1.02 1.13 0.94 1.03 1.21 1.01 1.21 1.08 0.88 1.19 r − 0.83 0.82 1.00 0.75 0.86 0.83 − 1.27 − 2.27 − 1.01 − 0.84 − 0.56 − 0.68 − 0.95 − 0.88 − 1.15 − 0.96 0.97 − 1.03 0.99 − 1.43 − 0.16 − 1.43 − 0.66 − 1.19 − 0.88 − 0.92 0.93 − 0.95 − 0.88 − 2.18 − 1.10 − 1.10 − 0.83 − 0.89 − 1.36 Cl 0.95 0.23 0.28 0.09 0.26 0.22 0.10 1.50 0.18 0.53 0.21 0.90 0.54 1.23 0.17 1.30 0.37 0.87 0.49 1.19 0.27 1.71 0.00 0.21 0.40 0.73 0.20 0.20 0.81 0.17 0.11 1.41 0.00 1.60 0.27 0.56 0.05 1.07 0.26 1.50 0.18 0.21 0.55 0.34 0.30 0.24 0.86 0.39 1.90 0.00 0.50 0.18 0.18 0.31 0.75 0.00 0.77 0.21 0.77 0.11 0.93 0.20 r − 0.24 0.29 0.09 0.27 0.23 0.11 − 0.12 − 0.40 − 0.60 − 0.14 − 0.28 − 0.56 − 0.23 − 0.00 − 1.89 − 0.27 0.27 − 0.21 0.13 − 0.00 − 0.17 − 0.10 − 0.24 − 0.12 − 2.57 − 0.86 0.71 − 0.45 − 0.00 − 0.37 − 1.75 − 0.00 − 0.27 − 0.14 − 0.22 ス ラ グ Ⅱ Ave.; 電 気 抵 抗 炉 ス ラ グ Ⅳ Ave.;コ ー ク ス ベ ッ ド 炉 ーキルン炉 2.39 1.65 1.59 1.18 1.90 1.52 1.89 3.03 1.34 2.72 1.19 2.76 1.47 2.92 1.46 1.78 1.72 1.61 2.11 2.28 1.44 1.74 0.99 1.81 1.42 2.68 2.15 2.23 2.95 1.01 0.97 1.68 1.57 2.20 1.60 3.31 1.41 1.76 1.16 3.03 1.72 1.81 2.13 1.81 2.57 2.69 2.86 1.42 2.19 1.51 3.40 1.61 1.91 1.53 2.83 2.23 1.74 2.09 1.74 1.35 2.90 1.12 ス ラ グ Ⅴ Ave;ロ ー タ リ 表 3.14 原 料 灰 中 の 重 金 属 類 の 重 量 濃 度 (%)と ス ラ グ へ の 固 定 率 ( r : %) 原料灰Ave. スラグ Ave. スラグⅠAve. スラグⅡAve. スラグⅢAve. スラグⅣAve. スラグⅤAve. 1.主灰 1.スラグ 2.主灰 2.スラグ 3.主灰 3.スラグ 4.主灰 4.スラグ 5.混合灰 5.スラグ 6.混合灰 6.スラグ 7.混合灰 7.スラグ 8.混合灰 8.スラグ 9.混合灰 9.スラグ 10.混合灰 10-1.スラグ 10-2スラグ 11.主灰 11-1スラグ 11-2スラグ 12.混合灰 12スラグ 13.主灰 13.スラグ 14.主灰 14.スラグ 15.混合灰 15.スラグ 16.混合灰 16.スラグ 17.混合灰 17.スラグ 18.混合灰 18-1スラグ 18-2スラグ 19.主灰 19.スラグ 20.主灰 20.スラグ 21.主灰 21.スラグ 22.混合灰 22.スラグ 23.主灰 23.スラグ 24.混合灰 24.スラグ 25.混合灰 25.スラグ 26.主灰 26.スラグ As 7 1 0 0 3 0 2 5 <2 8 <2 6 <2 5 <2 10 <2 7 <2 10 <2 9 5 7 <2 12 <2 <2 5 <2 <2 8 <2 3 5 3 <2 6 <2 5 6 7 <2 11 6 4 5 <2 9 <2 4 <2 7 <2 9 <2 11 3 11 3 6 <2 r − 0.15 0.00 0.00 0.42 0.00 0.28 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.54 − 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00 − 1.67 − 0.00 − 0.00 − 1.20 − 0.00 − 0.52 0.35 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.27 − 0.27 − 0.00 B 153 284 271 219 363 282 248 110 298 168 224 112 243 109 291 155 210 101 317 146 178 98 239 96 290 156 357 337 124 211 215 110 232 369 196 93 702 82 559 109 339 96 277 167 232 234 137 272 118 271 235 271 189 315 258 194 203 223 203 328 188 182 r − 1.85 1.77 1.43 2.37 1.84 1.62 − 2.71 − 1.33 − 2.17 − 2.67 − 1.36 − 3.13 − 1.22 − 2.45 − 3.03 − 2.29 2.29 − 1.70 1.73 − 2.12 − 0.53 − 7.55 − 6.84 − 3.11 − 2.89 − 1.39 1.40 − 1.99 − 2.30 − 1.15 − 1.66 − 0.75 − 1.10 − 1.62 − 0.97 Cd 12 0 0 0 0 0 0 8 7 3 <0.5 3 <0.5 3 <0.5 27 <0.5 19 <0.5 17 <0.5 22 <0.5 16 <0.5 13 <0.5 <0.5 5 <0.5 <0.5 18 <0.5 <0.5 <0.5 5 <0.5 19 <0.5 3 <0.5 16 1 8 <0.5 <0.5 5 <0.5 26 <0.5 2 <0.5 23 <0.5 4 <0.5 20 <0.5 20 <0.5 4 <0.5 r − 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 − 0.84 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.06 − 0.00 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 − 0.00 Cr 466 844 595 719 681 515 2867 379 501 493 1050 512 230 387 239 467 443 849 799 449 1110 621 401 341 366 399 697 706 473 527 983 422 646 721 1640 329 498 306 645 387 533 341 624 417 351 474 520 302 453 625 415 569 378 564 453 2630 393 2560 393 3410 536 340 r − 1.81 1.28 1.54 1.46 1.11 6.15 − 1.32 − 2.13 − 0.45 − 0.62 − 0.95 − 0.94 − 2.47 − 0.65 − 1.07 − 1.75 1.77 − 1.11 2.08 − 1.53 − 2.27 − 1.51 − 2.11 − 1.38 − 1.83 − 0.84 1.14 − 0.58 − 1.38 − 1.37 − 1.49 − 5.81 − 6.52 − 8.68 − 0.63 75 Cu 1287 909 456 253 1280 663 2837 931 326 2840 222 967 728 945 330 749 908 1024 668 2321 304 804 473 801 276 946 362 415 1810 98 342 1476 318 1380 851 1340 184 1116 106 945 1730 801 1290 996 2730 2070 1490 626 1180 565 1050 669 894 792 2010 1700 1625 2940 1625 3870 897 470 r − 0.71 0.35 0.20 0.99 0.52 2.20 − 0.35 − 0.08 − 0.75 − 0.35 − 1.21 − 0.65 − 0.13 − 0.59 − 0.34 − 0.38 0.44 − 0.05 0.19 − 0.22 − 0.62 − 0.14 − 0.10 − 1.83 − 1.61 − 2.74 2.08 − 0.42 − 0.48 − 0.64 − 0.89 − 0.85 − 1.81 − 2.38 − 0.52 Ni 460 48 21 0 71 9 213 93 42 860 <2 629 <2 835 5 97 39 648 74 676 <2 453 <2 631 70 79 2 <2 644 <2 <2 494 <2 86 6 618 <2 469 <2 835 137 631 39 85 158 155 120 9 94 16 976 10 737 <2 642 4 487 323 487 311 122 3 r − 0.11 0.05 0.00 0.15 0.02 0.46 − 0.45 − 0.00 − 0.00 − 0.01 − 0.40 − 0.11 − 0.00 − 0.00 − 0.11 − 0.03 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00 − 0.07 − 0.00 − 0.00 − 0.16 − 0.06 − 1.86 1.82 − 0.08 − 0.17 − 0.01 − 0.00 − 0.01 − 0.66 − 0.64 − 0.02 Pb 853 119 69 9 332 11 93 762 24 860 32 629 27 835 16 1215 133 985 290 968 8 783 39 825 175 1023 11 9 644 11 9 746 6 540 354 618 <1 699 <1 835 533 825 279 1032 654 501 916 16 976 18 976 7 982 4 642 49 737 54 737 177 1230 18 r − 0.14 0.08 0.01 0.39 0.01 0.11 − 0.03 − 0.04 − 0.04 − 0.02 − 0.11 − 0.29 − 0.01 − 0.05 − 0.21 − 0.01 0.01 − 0.02 0.01 − 0.01 − 0.66 − 0.00 − 0.00 − 0.64 − 0.34 − 0.63 0.49 − 0.02 − 0.02 − 0.01 − 0.00 − 0.08 − 0.07 − 0.24 − 0.01 Sb 73 11 5 0 20 5 27 35 <2 37 10 51 <2 66 <2 96 38 81 35 66 3 89 <2 89 <2 121 <2 <2 40 <2 <2 58 <2 37 27 37 <2 71 <2 66 32 89 15 119 26 40 100 4 111 4 75 5 91 6 55 26 84 31 84 25 59 4 r − 0.15 0.07 0.00 0.28 0.07 0.38 − 0.00 − 0.27 − 0.00 − 0.00 − 0.40 − 0.43 − 0.05 − 0.00 − 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00 0.00 − 0.00 − 0.73 − 0.00 − 0.00 − 0.48 − 0.17 − 0.22 0.34 − 0.04 − 0.04 − 0.07 − 0.07 − 0.47 − 0.37 − 0.30 − 0.07 Zn 3127 1547 962 481 2990 882 2493 2420 137 4350 800 2380 569 2670 498 3895 2230 3535 3980 4308 512 2946 741 2850 436 3136 358 325 3250 222 628 3471 593 3130 3400 3090 92 3338 51 2670 4670 2850 4250 3069 4300 4170 2970 787 3329 421 2250 1140 2720 1180 2620 2540 2965 2990 2965 1950 3230 894 r − 0.49 0.31 0.15 0.96 0.28 0.80 − 0.06 − 0.18 − 0.24 − 0.18 − 0.57 − 1.13 − 0.12 − 0.25 − 0.15 − 0.11 0.10 − 0.07 0.19 − 0.17 − 1.09 − 0.03 − 0.02 − 1.75 − 1.49 − 1.40 1.36 − 0.26 − 0.13 − 0.51 − 0.43 − 0.97 − 1.01 − 0.66 − 0.28 3.7 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 特 性 3.7.1 溶 融 ス ラ グ の 使 用 形 態 と 溶 出 試 験 溶融スラグの溶出特性を調べる主要な目的は,溶融スラグを自然環境中において使 用 し た 場 合 (図 3.19), 微 量 な が ら 含 有 す る 有 害 物 質 の 自 然 環 境 へ の 放 出 度 合 い を 評 価 す る こ と に あ る .こ の 放 出 度 合 い の 評 価 か ら ,溶 融 ス ラ グ の 有 害 性 /非 有 害 性 が 判 断 さ れる.溶融スラグを構成する成分は,天水との接触により溶融スラグの溶解と溶出に より天水中に移行(溶出)する.溶融スラグと天水との接触の一つの典型は,降水と の接触である. 一降水 は 一 定 時 間 溶 融 ス ラ グ と 接 触 し つ つ 地 中 へ 浸 透 し て い く .こ の接触により降水に移行したある成分は溶存態のまま降水の移動にしたがって移動し, また,ある成分は他の成分との反応により沈殿し,あるいは土粒子に吸着される.つ ぎの降水も同様な現象を繰り返す.このように,溶融スラグは 一降水 毎に新たな 溶媒と接触することになる.したがって,溶融スラグを自然環境中において使用した 場 合 の 有 害 性 /非 有 害 性 の 判 断 は ,常 に 新 し い 溶 媒 と 接 触 す る 毎 に ,有 害 成 分 の 溶 媒 へ の溶出量(移行量)を適切に判断できる試験法によりなされる必要がある. 図 3.19 溶 融 ス ラ グ の 環 境 に お け る 使 用 の 模 式 図 溶 融 ス ラ グ は SiO 2 -Al 2 O 3 - CaOを 主 成 分 と す る 非 晶 質 な い し 結 晶 質 ケ イ 酸 塩 で あ るところから,溶融スラグの溶出特性は,岩石鉱物の類縁物質としての見方と有害物 質を溶出するか否かと云う廃棄物の延長に位置づける見方がある. 岩石鉱物の類縁物質としての見方は,溶融スラグの風化あるいは地表近くでの溶融 スラグ中元素の移動の理解を対象とするものである.そこでは,溶融スラグの構成成 分 の 溶 出( leaching)と い う 概 念 よ り も ,溶 融 ス ラ グ の 溶 解( dissolution)と い う 概 念 が適用されることになる.岩石鉱物の風化あるいは地表近くでの元素移動を理解する 76 初期の試みは化学平衡論に基づいて,単相鉱物の水溶液中での溶解度を求め,その標 準 生 成 エ ネ ル ギ ー を 論 じ 相 ダ イ ヤ グ ラ ム を 作 る こ と 68 )か ら 始 ま っ た .そ の 延 長 上 に 溶 解 速 度 と 溶 解 機 構 を 表 面 化 学 的 に と ら え 69,70 ) ,さ ら に は 溶 解 機 構 を 解 析 す る 試 み へ と 発 展 し て き て い る . Xiao and Lasage 71) は ア ル ミ ノ ケ イ 珪 酸 塩 に つ い て (-Si-O-Si-)結 合 と (-Si-O-Al-O-) 結 合 の 水 和 に 関 す る 検 討 か ら , 両 者 の 結 合 に 対 す る 水 和 に は + (H 2 O)よ り も (H 3 O )が 主 体 的 に 作 用 す る こ と な ど を 指 摘 し た . しかし,上述の扱いは長時間にわたる風化現象として地表環境下における溶融スラ グの安定性の議論には有効であるが,目前におかれた溶融スラグの安定性および有害 性 /非 有 害 性 の 判 断 に は 有 効 で は な い と 考 え ら れ る . 溶 融 ス ラ グ の 有 害 /非 有 害 性 の 判 断は,廃棄物の延長に位置づける観点から,溶出試験により自然環境中へ放出される 有 害 物 質 の 種 類 と 量 を 評 価 す る こ と に よ っ て な さ れ て き た .溶 融 ス ラ グ の 溶 出 試 験 は , 廃 棄 物 の 埋 立 基 準 で あ る 環 境 庁 告 示 13 号 を 基 本 と し て 始 め ら れ た (表 3.15). 表 3.15 環 境 庁 告 示 13 号 を 基 本 と し た 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 試 験 結 果 報 告 例 1)橋本 紘・藤森俊彦・栗山秀児:スラグの有効利用について(性状調査),第11回全都清論文集,pp.103-105(1990) 2)阿部清一:溶融スラグの有効利用,第11回全都清論文集,pp.106-108(1990) 3)白石光彦・戸高光正:廃棄物溶融スラグの資源利用研究,第2回廃棄物学会研究発表講演論文集,pp.145-148(1991) 4) ─── ・小野 創・鍬塚峻二・朝永 隆:一般廃棄物焼却灰溶融処理技術の開発(第1報),第3回廃棄物学会研究発表講 演論文集,pp.343-346(1992) 5)河端博昭・照喜名二郎・伊藤 正:年ごみ焼却飛灰の焼成処理,第3回廃棄物学会研究発表講演論文集,pp.347-350(1992) 6)中西 亨:表面溶融炉,焼却灰・ばいじんの高度処理技術(NST),pp.41-59,(1994) 7)井上里志:内部溶融炉,焼却灰・ばいじんの高度処理技術(NST),pp.61-76(1994). 8)木下勝雄:焼却灰のプラズマ炉による溶融,焼却灰・ばいじんの高度処理技術(NST),pp.117-148(1994) 9)西垣正秀:タクマ式反射表面溶融炉.焼却灰・ばいじんの高度処理技術(NST),pp.149-170. (1994) 10)齋藤俊一:大宮市西部環境センタ−灰溶融設備の操業事例について,焼却灰・ばいじんの高度処理技術(NST), pp.197-224( 1994) 11)柴田 清・劉 大偉・西垣正秀・野上晴男:表面溶融炉によるばいじん不燃物の混合溶融,第5回廃棄物学会研究発表講演論 文集,pp.339-342( 1994) 12)東 康夫・鈴木富雄・川端博昭・清水由章・山田基夫:熱プラズマによるスト−カ灰の処理.第5回廃棄物学会研究発表講演 論文集,pp.349-351(1994) 13)金藤紘一郎・市原 忠・後藤 拡・比屋根 均:ごみ焼却残渣のア−ク溶融試験の概要.第5回廃棄物学会研究発表講演論文 集,pp.356-358(1994) 14)廃棄物研究財団:スラグの品質改善の研究.ウェイストイノベ−ション 21C プロジェクトスリムウェイスト推進研究, pp.171-188(1994) 15) ──────:スラグの有効利用研究(焼成品としての利用).ウェイストイノベ−ション21Cプロジェクトスリムウェイ スト推進研究,pp.189-216(1994) 77 そ れ ら の 報 告 例 に よ れ ば , 環 境 庁 告 示 13 号 に 指 定 さ れ た 溶 媒 の 液 性 を よ り 酸 性 側 に 調 整 し た 試 験 で は Pb あ る い は Cr イ オ ン が 基 準 を 超 え て 溶 出 す る 2, 3 の 例 が あ る ものの,ほとんどの溶融スラグからの有害重金属類の溶出は基準以下となっていた. しかしこの結果をもって,溶融スラグを自然環境下に晒しても有害性はないと判断す ることはできない. 以下に廃棄物の有害性を判定する溶出試験法について整理した. 廃棄物から自然環境中へ放出される有害物質の種類と量を評価するために,様々な 溶 出 試 験 法 が 提 案 さ れ て き た .金 子 72) は ,そ れ ら の 溶 出 試 験 法 に つ い て 溶 出 操 作 を も と に 整 理 し ( 表 3.16), そ れ ぞ れ の 試 験 法 に 対 し て 以 下 の 留 意 点 を 示 し た . 表 3.16 溶 出 試 験 法 の 分 類 7 2 ) 溶出方法による分類 バッチ式 単一型 平行型 反復型 連続式 代表例 環告13号;EPATox;TCLP; DIN38414; 得られる情報 特定条件下の溶出量 溶出量への溶出条件の 影響 MBLP Concentratio SLT-Procedure C 最大溶出量 n build-up Serial batch MEP;NFX31-210 対象成分の溶出パター extraction SBT;ENA;TVA ン 総溶出量 Sequential batch SCE 対象成分の組成別分類 extraction Flow-around ANS.16.1;DLT; 固化物からの溶出の動 extraction NVN5432;MULP 力学的挙動 Flow-through Column test 最終処分地における溶 extraction (NVN2508) 出シミュレーション 単 一 バ ッ チ 型 溶 出 試 験 は ,我 が 国 の 環 境 庁 告 示 13 号 お よ び 46 号 ,ア メ リ カ の EPATox(Extraction Procedure toxicity Test) お よ び TCLP(Toxicity Characteristic Leaching Procedure),ド イ ツ の DIN38414 な ど が あ る が ,1 回 だ け の 溶 出 操 作 で は , 実 際 の 溶 出 過 程 を 十 分 に 再 現 す る こ と に 限 界 が あ る . 平 行 バ ッ チ 型 溶 出 試 験 (MBLP: Multiple Batch Leaching Procedure)は ,条 件 を 変 え た 単 一 バ ッ チ 型 試 験 を 複 数 行 い , 溶出量を評価する.反復バッチ型試験は,溶出操作を複数回繰り返し行う試験法であ る .こ の 試 験 法 は つ ぎ の 3 つ に 分 け ら れ る .第 1 は concentration build-up(Standard LeachTest-Procedure C) で あ り , 溶 出 操 作 後 の 固 液 分 離 し た 溶 媒 に 新 た な 廃 棄 物 を 加えて溶出操作を繰り返す.この試験の目的は,溶媒中における対象物質の最大溶出 濃 度 を 知 る こ と に あ る .第 2 は serial batch extraction ( MEP:Multiple Extraction Procedure 米 国 ,NFX31-210 フ ラ ン ス , SBT:Serial Batch Test オ ラ ン ダ ,ENA: ス エ ー デ ン ,TVA:ス イ ス )で あ り ,廃 棄 物 試 料 に 対 し 同 一 組 成 の 溶 媒 を 用 い ,同 じ 条 件で溶出操作を繰り返す.この試験法の特徴は単一バッチ型溶出試験で過小評価され 78 る危険性のある対象物質の溶出量をより正確に知ることができる点にありフランス, オ ラ ン ダ ,ス イ ス の 標 準 試 験 法 に 採 用 さ れ て い る .第 3 は sequential batch extraction ( SCE: Sequential Chemical extraction カ ナ ダ ) で あ り , 各 溶 出 操 作 段 階 で 溶 出 操作を重ねる毎に溶出能力の大きい溶媒を用いて溶出操作を繰り返す. 連 続 式 の 溶 出 試 験 に は ,flow-around extraction( ANS.16.1:米 国 ,DLT: Dynamic Leaching Test カ ナ ダ , NVN5432:オ ラ ン ダ MULP:Modified Uniform Leaching Procedure ス エ ー デ ン ) と flow-through extraction( Column Test) が あ る . 溶 出 試 験 を 廃 棄 物 の 有 害 性 /非 有 害 性 の 判 断 に 用 い る 場 合 に は ,そ こ で の 溶 出 条 件 は 実環境でのもっとも過酷な条件を設定すべきであるという考え方があるが,もっとも 過 酷 な 条 件 は 一 義 的 に 決 ま る も の で は な い .廃 棄 物 の 有 害 性 /非 有 害 性 の 判 断 に 溶 出 濃 度を用いるかわりに,最大溶出量という概念を用いることが提案され,オランダの標 準 試 験 法 の 一 つ と な っ て い る Availability 試 験 法 は , こ の 考 え に 基 づ く も の で あ る . 酒 井 ほ か 73) は , 焼 却 飛 灰 を 対 象 に Availability試 験 と pH依 存 性 試 験 を 行 い , そ の 結 果 か ら 環 境 庁 告 示 13 号 法 は 溶 媒 の pHに 支 配 さ れ た 試 験 で あ る こ と を 指 摘 し た . す な わち,溶出試験の出発時の溶媒の液性は規定されているが,廃棄物自体の成分によっ て 溶 媒 の 液 性 は 変 わ り う る た め に ,廃 棄 物 の 有 害 性 /非 有 害 性 の 判 断 が 実 際 の 溶 出 ポ テ ン シ ャ ル に 基 づ い て い な い こ と に な る . 一 方 , availability試 験 は , pH4 以 下 の 範 囲 で鉛の溶出量を低く評価する可能性があるものの,自然環境中で想定される最大溶出 量 を 把 握 す る 試 験 と し て 妥 当 で あ る こ と を 示 し た .八 田 ほ か 74) は ,実 機 製 造 溶 融 ス ラ グ お よ び 合 成 溶 融 ス ラ グ と 地 層 試 料 を 取 り 上 げ availability試 験 お よ び 環 境 庁 告 示 46 号 法 に よ る 試 験 を 行 っ た . 両 試 験 に よ る 溶 出 量 の 比 較 に お い て 環 境 庁 告 示 46 号 法 の 試 験 で は 溶 出 を 確 認 で き な い 成 分 に つ い て ,availability試 験 で は 溶 出 を 確 認 し た 結 果 を示した. 3.7.2 試 験 法 の 設 定 溶融スラグが溶媒と接触した場合の成分溶出機構の要素は,①試料表面に付着する 溶 解 性 塩 の 溶 解( 表 面 洗 浄 ),② 試 料 表 面 の 溶 解 ,③ 固 体 試 料 内 部 か ら の 表 面 へ の 拡 散 浸 出( 内 部 拡 散 ),④ 溶 出 後 の 境 膜 拡 散 ,⑤ 沈 殿・試 料 表 面 へ の 再 吸 着 か ら な り 75~77) , こ れ を 模 式 的 に 図 3.20 に 示 す . 溶融スラグと溶媒の接触方法は,適当期間静置する方法と適当期間溶融スラグと溶 媒の入った容器ごと振とうする方法がある。前者は接触条件下での溶融スラグの溶解 速度を得る,または,長期間静置した後の結果から溶解度を知ることに繋がる.後者 は提案されている溶出試験法のどれを採用するかにより,得られる情報は多岐多様に わたる. 79 t=tn tn=60分 tn=240分 非平衡 t=∞ 平衡 成分;C1,C2,・・,Cn(飽和) 成分;C1,C2,・・,Cn(未飽和) 表面溶解 表面溶解 境膜拡散 境膜拡散 内部拡散 表面洗浄 表面洗浄 × 沈殿 × 沈殿 内部拡散 静置 振とう 図 3.20 溶 融 ス ラ グ か ら の 成 分 溶 出 と 溶 解 の 模 式 図 肴 倉 ・ 田 中 78) は 環 境 庁 告 示 46 号 に 準 じ た バ ッ チ 試 験 に よ り , 溶 出 成 分 , 溶 媒 の 酸 の 種 類 の 影 響 お よ び 溶 出 機 構 な ど に つ い て 考 察 し , 1)溶 融 ス ラ グ の 成 分 溶 出 機 構 は 酸 溶 出 域 と ア ル カ リ 溶 出 域 の 2 種 類 の 溶 出 機 構 が あ る , 2)酸 溶 出 域 で は 水 素 イ オ ン が 溶 融 ス ラ グ に 直 接 作 用 し( こ れ は Xiao and Lasage 71) の ,ア ル ミ ノ 珪 酸 塩 の 水 和 に は (H 3 O + )が 主 体 的 に 作 用 す る こ と に 通 じ る 現 象 ), 3)ア ル カ リ 溶 出 域 で は 溶 融 ス ラ グ 表 面 に SiO 2 残 存 層 が 形 成 さ れ 他 成 分 の 溶 出 を 抑 制 し て い る と し た .肴 倉 ほ か 77) は 一 定 間 隔 で 溶 媒 の 更 新 を 行 う 静 置 試 験 法 か ら ,拡 散 律 速 に つ い て 解 析 し ,静 置 1 日 以 降 は Na,K, Ca, Mgな ど は 拡 散 律 速 溶 出 で あ る こ と を 示 し た . 前 田 ほ か 79) は , 溶 融 ス ラ グ か ら の Si, Ca, Alの 溶 出 量 に つ い て 規 格 化 質 量 損 失 43) を 用 い て 整 理 し た . Si, Ca, Alの 規 格 化 質 量 損 失 は 溶 媒 の 液 性 と 溶 融 ス ラ グ の 塩 基 度 に 依 存 し ,溶 媒 の 液 性 が 酸 性 域( pH4 で は ∼ 1×10 - 4 kg/m 2 オ ー ダ ー ) お よ び ア ル カ リ 域 (pH12 で は ∼ 1×10 - 5 kg/m 2 オ ー ダ ー )で 大 き く ,中 性 域( pH7 で は ∼ 1×10 - 6 kg/m 2 オ ー ダ ー )で 小 さ く な っ て い た .ま た , 塩 基 度 が 大 き く な る と Si, Ca, Alと も そ の 規 格 化 質 量 損 失 が 大 き く な っ て い た . Alの 規 格 化 質 量 損 失 は ,溶 媒 の 液 性 お よ び 試 料 の 塩 基 度 に よ ら ず Si,Caよ り も 小 さ く なっていた. 溶 融 ス ラ グ に 含 有 さ れ る 金 属 類 が 可 溶 性 塩 類 を 形 成 す る 場 合 は ,固 /液 比 が 小 さ く な る と 溶 出 量 は 少 な く な り ,金 属 類 が 飽 和 濃 度 の 低 い 鉱 物 種 を 形 成 す る 場 合 は 固 /液 比 に 拘 わ ら ず 成 分 溶 出 量 は 一 定 で あ る 72) .後 者 の 関 係 よ り ,固 液 比 は 溶 出 試 験 に よ る 溶 融 ス ラ グ の 有 害 性 /非 有 害 性 の 判 断 に は 影 響 し な い と 考 え ら れ る .先 述 し た 成 分 溶 出 機 構 のうち,境膜拡散と沈着の項は具体的に識別することは困難である. また,成分溶出機構を水冷溶融スラグの構造と関連づけると,次のように考えるこ とができる.水冷スラグの構造は基本的にアルミノ珪酸塩を主体とするガラス構造で あ る .こ の 構 造 を 模 式 化 し て 図 3.21 に 示 し た .ガ ラ ス 構 造 は 網 目 状 の 骨 格 構 造 を 形 成 80 す る SiO 2 , Al 2 O 3 な ど の 主 成 分 , 網 目 状 酸 化 物 の 形 成 す る ネ ッ ト ワ ー ク 構 造 内 で は 非 晶質化が可能な修飾酸化物(希土類酸化物)と網目状酸化物と修飾酸化物との混合に よ っ て 非 晶 質 化 す る 中 間 酸 化 物( CaO,Na 2 O,MgO,P 2 O 5 な ど )か ら な る . こ の よ うなガラス構造中に重金属類および塩類が取り込まれる形式は, 1)分 子 や 化 合 物 単 位 で の 物 理 的 封 じ 込 め の 場 合 (概 念 的 に は 図 3.21 中 の 重 金 属 ま た は塩類) 2)中 間 酸 化 物 の 一 部 を 置 換 し て い る 場 合 (概 念 的 に は 図 3.21 中 の (Na + )ま た (Ca 2+ ) サイト 3)網 目 状 酸 化 物 の 一 部 を 置 換 し て い る 場 合 (概 念 的 に は 図 3.21 中 の Si, Al サ イ ト ) などが考えられる. 重金属 塩類 図 3.21 ガ ラ ス 構 造 中 へ の 重 金 属 お よ び 塩 類 の 取 り 込 ま れ 形 式 の 模 式 図 ガ ラ ス 構 造 の 基 図 は Kalk-Natron-Gla2D.png(ウ ィ キ ペ デ ィ ア )を 使 用 81 塩類および重金属類のガラス構造への取り込まれ形式と,溶出試験におけるそれら の溶出を関連させると以下のことが考えられる.溶出試験における表面洗浄による塩 類 お よ び 重 金 属 類 の 溶 出 は , 1)分 子 や 化 合 物 単 位 で の 物 理 的 封 じ 込 め の 場 合 , そ れ ら が溶融スラグ表面に露出している部分が溶出することによって生じると考えられる. こ の 場 合 の 塩 類 の 溶 出 は , Clの 溶 出 量 と 調 和 的 に な る . 溶 出 試 験 に お け る 固 体 試 料 内 部 か ら 表 面 へ の 拡 散 浸 出 ( 内 部 拡 散 ) に よ る 塩 類 お よ び 重 金 属 類 の 溶 出 は , 2)中 間 酸 化物の一部を置換している重金属や塩類が溶出することによって生じると考えられる. この場合の成分溶出は,試料内部から表面までの拡散経路が長くなることにより反復 回 数 毎 に 溶 出 量 は 減 少 す る 傾 向 を 示 す と 考 え ら れ る . 3)溶 出 試 験 に お け る 表 面 溶 解 に よる重金属類の溶出は,網目状酸化物の溶解とともに一部を置換している重金属類が 溶 出 す る こ と に よ り 生 じ る と 考 え ら れ る . こ の 場 合 の 溶 出 量 は , 置 換 量 お よ び Si, Al の 溶 出 量 と 調 和 的 に な る こ と が (-Si-O-Pb-O-)合 成 ス ラ グ に よ っ て 確 か め ら れ て い る 80) . 以 上 の 溶 出 形 式 と 溶 融 ス ラ グ の 使 用 形 態( 図 3.19)を 考 慮 す る と 設 定 さ れ る べ き 試 験 法 は , 1)溶 媒 と の 接 触 が 反 復 性 を 持 つ こ と , 2)表 面 溶 解 に よ り 放 出 さ れ る 成 分 濃 度 と内部拡散律速により放出される成分濃度が識別できること(溶融スラグの挙動とし て骨格構造の安定性および自然環境への有害物質放出特性)が盛り込まれていなけれ ばならない.自然環境中で想定される最大溶出量を把握することは必ずしも必要でな いと考えられる.溶融スラグおよび構成成分の溶出機構が解析でき,結果として有害 性 /非 有 害 性 を 短 期 間 の 試 験 で 評 価 す る こ と を 想 定 し て ,以 下 の よ う に 反 復 溶 出 試 験 法 を 設 定 し た ( 図 3.22). 1)試 料 粒 度 : 試 料 ス ラ グ を , 0.425∼ 2mm に 粒 度 調 整 す る . 2)振 と う 液 : (自 然 環 境 中 で の 使 用 か ら 酸 性 雨 を 考 慮 し )精 製 水 を pH4 に 調 整 す る . pH4の 設 定 理 由 は 千 葉 県 に よ る 酸 性 雨 観 測 結 果 に よ っ た (千 葉 県 環 境 白 書 ). pH 調 整 は ろ 液 の 分 析 項 目 に Clを 加 え た こ と よ り , HNO 3 で 行 う . 3)固 液 比 : 環 告 13号 お よ び 46号 を 参 考 と し て , 固 液 比 1/10と す る . 4)振 と う 幅 : 環 告 13号 お よ び 46号 を 参 考 と し て , 4∼ 5cmと す る . 5)振 と う 回 数 : 環 告 13号 お よ び 46号 を 参 考 と し て , 200回 /分 と す る . 6)振 と う 時 間 と 溶 出 操 作 繰 り 返 し 回 数:振 と う 時 間 は 予 備 振 と う 30分 ,1∼ 6回 目 は 60分 と す る .予 備 振 と う 30分 は ,溶 出 初 期 に 認 め ら れ る 表 面 洗 浄 効 果 の 評 価 用 と し た .1∼ 6回 目 の 振 と う 操 作 回 数 は ,溶 融 ス ラ グ か ら の 成 分 溶 出 機 構 の 解 釈 す る た め で あ る .ま た ,長 時 間 振 と う 効 果 を み る た め ,6回 目 の 振 と う 操 作 後 7回 目 の 浸 透 操 作 と し て 24時 間 振 と う を 加 え た . 7)固 液 の 分 離 は , 孔 径 1μ m の メ ン ブ ラ ン フ ィ ル タ ー に よ る 吸 引 ろ 過 と す る . 以 上 よ り ,本 試 験 法 は 表 3.16 に よ れ ば Serial batch extraction 法 に 分 類 さ れ る . 82 成分分析(23項目) スラグ試料 試料調整 ・粒度(2mm以下) ・金属粒除去 試料+振とう液(固/液=1/10) + 振とう液 振とう pH測定 予備30分 1∼6回60分 7回1440分 固液分離 スラグ 液 相 ・pH測定 ・成分分析(23項目) 図 3.22 反 復 溶 出 試 験 の 手 順 3.7.3 分 析 対 象 項 目 溶出特性理解の基本は,溶融スラグの組成とそれら成分の溶媒中への溶出量を対応 さ せ る こ と で あ る . 機 構 環 境 庁 告 示 13号 法 等 に よ る 試 験 結 果( 表 3.15)お よ び 成 分 溶 出を考慮すると,スラグおよび溶媒中の有害重金属類のみを分析対象としていては, 溶融スラグの溶出特性を理解することはできないと考えられる.したがって,組成お よび溶媒中の成分分析においては,溶融スラグの骨格成分および中間酸化物について も分析対象とする必要がある.また,有害重金属類に加えて,溶融スラグにごく普通 に含まれる銅と亜鉛および有害性が指摘される可能性のある成分についても分析する ことが望ましいと考えられる. 以 上 よ り ,溶 媒 中 の 成 分 分 析 項 目 は ,主 成 分 お よ び 副 成 分 か ら の 溶 出 成 分 と し て Si・ Ti・ Al・ Fe・ Mn・ Mg・ Ca・ Na・ K・ P・ S・ Clの 12項 目 に つ い て , 微 量 成 分 か ら 溶 出 さ れ る 成 分 と し て As・ B・ Cd・ Cr・ Cu・ Hg・ Mo・ Ni・ Pb・ Sb・ Se,Znの 12項 目 とした. 3.7.4 試 験 対 象 溶 融 ス ラ グ の 属 性 試 験 対 象 と し た 溶 融 ス ラ グ は ,水 冷 ス ラ グ 5 試 料 ,結 晶 質 ス ラ グ 1 試 料 で あ る( 表 3.17).こ こ で 結 晶 質 ス ラ グ を 対 象 試 料 に 加 え た 理 由 は 以 下 で あ る .水 冷 ス ラ グ は ガ ラ 83 ス構造を持つことから組成は均質とみなせ,溶媒との反応も一様とみなせると考えら れる.一方,結晶質スラグは構成鉱物毎に溶媒との反応は異なると考えられる.これ より結晶質スラグを,水冷スラグの溶出特性に対する対照試料とした. 対象溶融スラグの製造に用いられた溶融炉型式は,アーク溶融炉,ロータリーキル ン 溶 融 炉 ,表 面 溶 融 炉 お よ び プ ラ ズ マ 溶 融 炉 で あ っ た .そ れ ぞ れ の 炉 に よ り 異 な る が , 溶 融 炉 内 温 度 は 1200∼ 1500 ℃ で あ り ,炉 内 雰 囲 気 も 酸 化 型 お よ び 還 元 型 の 両 者 で あ っ た . ま た , 被 溶 融 物 の 炉 内 滞 留 時 間 は , 0.5∼ 2.5 時 間 で あ っ た . 偏 光 顕 微 鏡 観 察 か ら 水 冷 ス ラ グ は 非 晶 質 で あ り ,少 量 の マ イ ク ロ ラ イ ト お よ び hematite,magnetite 等 の 不 透 明 鉱 物 か ら な っ て い た . 個 々 の 水 冷 ス ラ グ は 偏 光 顕 微 鏡 観 察 お よ び XRD パ タ ー ン か ら 顕 著 な 差 異 は 認 め ら れ な か っ た .結 晶 質 ス ラ グ は gehlenite,augite,hematite, magnetite お よ び 少 量 の 非 晶 質 部 分 か ら な っ て い た . 表 3.17 試 験 対 象 溶 融 ス ラ グ の 属 性 炉型式 No スラグ分類 アーク溶融炉 S1 水冷スラグ S2 水冷スラグ ロータリキルン溶融炉 表面溶融炉 S3 水冷スラグ S4 水冷スラグ プラズマ溶融炉 S5 水冷スラグ プラズマ溶融炉 S6 結晶質スラグ プラズマ溶融炉 滞 留 時 間 (hour) 炉内温度(℃) 炉内雰囲気 滞留時間 酸化 1300∼1500 0.6 還元 1250∼ 2.5 還元 1300∼1400 0.5 酸化 1500 0.6 還元 1200∼1400 0.5 酸化 1500 2.0 3.7.5 溶 出 試 験 結 果 pH4 に お け る 重 金 属 類 の 溶 出 状 況 は 以 下 で あ っ た (表 .3.18-1).As は 0.25∼ 4 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て , 溶 出 は 認 め ら れ な か っ た . B は 29.9~340 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て ,0.01 mg/L の 溶 出 が 認 め ら れ た( 試 料 S-2 の み ).Cd は ∼ 7.2 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て , 予 備 振 と う 操 作 に お い て の み 溶 出 が 認 め ら れ た ( 試 料 S-4) . Cr は 65.1∼ 710 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て ,溶 出 は 認 め ら れ な か っ た .Cu は 26.8∼ 1148 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て , 0.01∼ 0.1 mg/L の 溶 出 が 認 め ら れ た . Hg は ∼ 7 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て 溶 出 は 認 め ら れ な か っ た .Mo は ∼ 17 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て ,予 備 振 と う お よ び 1 回 目 振 と う 操 作 に お い て の み 0.01 mg/L の 溶 出 が 認 め ら れ た (試 料 S-2). Ni は 15∼ 95.7 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て , 予 備 振 と う 操 作 に お い て の み 溶 出 が 認 め ら れ た ( 試 料 S-4).Pb は <40.0∼ 460 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て ,0.01~0.08 mg/L の 溶 出 が 認 め ら れ た . Sb は ∼ 370 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て , 0.001∼ 0.02 mg/L の 溶 出 が 認 め ら れ た . Se は ∼ 2 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て , 溶 出 は 認 め ら れ な か っ た . Zn は 149∼ 3070 mg/kg の 含 有 量 に 対 し て ,0.01∼ 0.22 mg/L の 溶 出 が 認 め ら れ た .溶 出 が 確 認 さ れ た Cu, Pb お よ び Zn の 3 成 分 に つ い て 含 有 量 と の 関 係 を み る と , 含 有 量 と 溶 出 量 の 間 に は 明 瞭 な 相 関 は 見 出 せ な か っ た .溶 融 ス ラ グ の 有 害 性 /非 有 害 性 の 判 断 に は 有 害 性が指摘される成分についてのみ分析しても,自然環境中における溶出挙動を正確に 再現できないことが明らかになった. 84 表 3.18-1 重 金 属 類 の 反 復 溶 出 試 験 結 果 S-1 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-2 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-3 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-4 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-5 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-6 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 塩基度 0.33 pH1 pH2 4.03 4.79 4.09 4.73 4.09 4.59 4.09 4.52 4.03 4.49 4.09 4.52 4.09 4.52 4.00 7.30 塩基度 0.95 pH1 pH2 4.10 5.80 4.00 5.30 4.10 5.20 4.00 5.10 4.00 5.00 4.00 5.00 4.00 5.00 4.11 6.43 塩基度 0.53 pH1 pH2 4.00 9.00 4.00 8.10 4.00 7.90 4.00 7.50 4.00 7.20 4.00 7.10 4.00 6.80 4.00 8.60 塩基度 0.81 pH1 pH2 4.0 5.5 4.0 5.1 4.0 5.0 4.0 5.0 4.0 5.0 4.0 4.9 4.0 4.9 4.0 8.6 塩基度 0.82 pH1 pH2 4.0 6.7 4.0 5.8 4.0 5.2 4.0 4.8 4.0 4.7 4.0 4.7 4.0 4.5 4.0 7.7 塩基度 0.62 pH1 pH2 4.00 7.56 4.03 6.59 4.02 5.27 3.98 5.03 4.04 5.00 3.96 4.88 4.02 5.05 4.00 8.05 As <0.5 As <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 As 4.60 As <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 As 3.91 As <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 As 0.25 As <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 As 0.40 As <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 As 1.6 As <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 B 340 B <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 B 30 B 0.00 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 B 41.1 B <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 B 206 B <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.05 B 29.9 B <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 B <0.1 B <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cd <0.5 Cd <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 Cd <10 Cd <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cd <2 Cd <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cd 0.53 Cd 0.007 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 Cd <2.0 Cd <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cd 7.2 Cd <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cr 230 Cr <0.04 <0.04 <0.04 <0.04 <0.04 <0.04 <0.04 <0.04 Cr 710 Cr <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cr 252 Cr <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cr 1000 Cr <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 <0.02 Cr 65.1 Cr <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cr 94.9 Cr <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cu 420 Cu 0.10 0.04 0.03 0.03 0.03 0.02 0.02 <0.5 Cu 460 Cu 0.67 0.70 0.34 0.25 0.28 0.24 0.23 0.04 Cu 775 Cu <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.03 Cu 1110 Cu 0.90 0.22 0.05 0.03 0.02 0.01 <0.01 0.04 Cu 26.8 Cu 0.02 0.06 0.04 0.01 0.01 <0.01 <0.01 0.04 Cu 1148 Cu <0.01 <0.01 0.10 0.07 0.05 0.04 0.03 0.07 ス ラ グ ; % 成 分 ; mg/L Hg 0 Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 Hg 7 Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 Hg <0.05 Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 Hg 0.0076 Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 Hg <0.05 Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 Hg 0.12 Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 85 Mo <1 Mo <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 Mo 73 Mo 0.01 0.01 <0.01 <0.01 0.01 <0.01 0.01 <0.01 Mo 16.2 Mo <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Mo 17 Mo <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Mo <10.0 Mo <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Mo 13.4 Mo <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Ni 15 Ni <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 Ni 51 Ni <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.01 Ni 95.7 Ni <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Ni 78 Ni 0.02 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Ni <10.0 Ni <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Ni 47.8 Ni <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Pb 200 Pb 0.05 0.04 0.02 0.02 0.01 0.01 0.01 <0.03 Pb 460 Pb 0.08 0.01 0.03 0.11 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Pb 210 Pb <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Pb 136 Pb 0.02 0.05 0.03 0.02 0.02 0.01 0.01 0.06 Pb <40.0 Pb <0.01 <0.01 0.01 <0.01 0.01 <0.01 <0.01 0.01 Pb 138.2 Pb <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 pH1; 開 始 Sb <0.5 Sb <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 Sb 370 Sb <0.01 0.02 <0.01 0.05 0.04 0.04 0.03 <0.01 Sb 41.2 Sb <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Sb 72 Sb 0.001 0.001 0.001 0.000 0.001 0.000 0.001 0.005 Sb 1.90 Sb <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Sb 3.9 Sb <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 <0.5 Se <0.1 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Se 2 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Se 1.35 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Se <0.1 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Se 2.90 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Se <0.1 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 pH2 終 了 Zn 320 Zn 0.21 0.02 0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Zn 490 Zn 0.22 0.05 0.05 0.09 0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Zn 3070 Zn 0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.01 0.01 0.05 <0.01 Zn 2780 Zn 0.57 0.11 0.07 0.07 0.07 0.06 0.06 0.06 Zn 149 Zn 0.10 0.09 0.04 0.02 0.02 0.01 0.01 0.01 Zn 1589 Zn <0.01 0.03 0.05 0.02 0.02 0.01 0.01 <0.01 Σ2 0.36 0.10 0.06 0.05 0.04 0.03 0.03 0.00 Σ2 0.98 0.80 0.43 0.51 0.35 0.29 0.28 0.06 Σ2 0.01 0.00 0.00 0.00 0.01 0.01 0.05 0.00 Σ2 1.52 0.38 0.15 0.12 0.11 0.08 0.07 0.21 Σ2 0.12 0.15 0.09 0.03 0.04 0.01 0.01 0.06 Σ2 0.00 0.03 0.15 0.09 0.07 0.05 0.04 0.00 表 3.18-2 主 成 分 /副 成 分 の 反 復 溶 出 試 験 結 果 ス ラ グ ; % 成 分 ; mg/L S-1 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-2 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-3 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-4 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-5 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-6 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 塩基度 0.33 pH1 pH2 4.03 4.79 4.09 4.73 4.09 4.59 4.09 4.52 4.03 4.49 4.09 4.52 4.09 4.52 4.00 7.30 塩基度 0.95 pH1 pH2 4.10 5.80 4.00 5.30 4.10 5.20 4.00 5.10 4.00 5.00 4.00 5.00 4.00 5.00 4.11 6.43 塩基度 0.53 pH1 pH2 4.00 9.00 4.00 8.10 4.00 7.90 4.00 7.50 4.00 7.20 4.00 7.10 4.00 6.80 4.00 8.60 塩基度 0.81 pH1 pH2 4.0 5.5 4.0 5.1 4.0 5.0 4.0 5.0 4.0 5.0 4.0 4.9 4.0 4.9 4.0 8.6 塩基度 0.82 pH1 pH2 4.0 6.7 4.0 5.8 4.0 5.2 4.0 4.8 4.0 4.7 4.0 4.7 4.0 4.5 4.0 7.7 塩基度 0.62 pH1 pH2 4.00 7.56 4.03 6.59 4.02 5.27 3.98 5.03 4.04 5.00 3.96 4.88 4.02 5.05 4.00 8.05 SiO2 48.95 Si 0.26 0.18 0.22 0.37 0.26 0.33 0.26 2.80 SiO2 27.86 Si 0.51 0.94 0.71 0.87 0.72 0.72 0.69 1.82 SiO2 39.4 Si 0.45 0.56 0.63 0.35 0.35 0.41 0.29 1.20 SiO2 38.94 Si 0.29 0.39 0.49 0.49 0.52 0.52 0.52 4.56 SiO2 38.5 Si 0.11 0.18 0.20 0.09 0.19 0.21 0.17 3.00 SiO2 36.49 Si 0.45 0.64 0.68 0.54 0.63 0.66 0.64 3.58 TiO2 0.87 Ti <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 TiO2 1.05 Ti 0.00 0.01 0.01 0.01 0.01 0.00 0.01 0.05 TiO2 1.79 Ti <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 TiO2 1.28 Ti 0.02 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.07 TiO2 1.26 Ti <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.07 TiO2 0.82 Ti <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.06 Al2O3 Fe2O3 18.78 5.49 Al Fe 0.16 0.49 0.27 0.49 0.33 0.49 0.33 0.49 0.32 0.49 0.33 0.49 0.33 0.49 0.28 0.13 Al2O3 Fe2O3 27.89 3.32 Al Fe 0.01 <0.01 0.09 0.31 0.21 0.26 0.22 0.13 0.17 0.23 0.22 0.01 0.11 0.19 1.04 <0.01 Al2O3 Fe2O3 20.8 5.09 Al Fe 2.30 <0.01 1.40 <0.01 1.10 <0.01 0.62 <0.01 0.44 0.01 0.47 0.02 0.18 0.02 4.90 0.04 Al2O3 Fe2O3 13.44 6.41 Al Fe 0.00 0.09 0.02 0.14 0.03 0.19 0.03 0.18 0.03 0.18 0.03 0.16 0.04 0.15 0.48 1.95 Al2O3 Fe2O3 21.0 0.57 Al Fe 0.03 0.02 0.01 0.05 0.02 0.08 0.01 0.02 0.08 0.06 0.05 0.05 0.02 0.06 1.30 0.19 Al2O3 Fe2O3 21.24 9.10 Al Fe 0.10 0.01 0.04 0.02 0.04 0.22 0.12 0.23 0.14 0.23 0.21 0.26 0.15 0.26 2.36 1.74 MnO 0.19 Mn 0.05 0.02 0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.04 MnO 0.27 Mn 0.02 0.03 0.02 0.01 0.01 0.01 0.01 0.02 MnO 0.18 Mn <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.01 <0.01 MnO 0.15 Mn 0.02 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.02 MnO 0.09 Mn <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 MnO 0.15 Mn 0.01 0.02 0.02 0.01 0.01 <0.01 <0.01 0.01 Mg0 2.69 Mg 0.13 0.08 0.06 0.06 0.06 0.06 0.06 0.51 Mg0 2.65 Mg 0.08 0.10 0.07 0.07 0.06 0.06 0.06 0.17 Mg0 3.83 Mg 0.21 0.15 0.10 0.07 0.06 0.06 0.05 0.29 Mg0 2.29 Mg 0.2 0.1 0.1 <0.1 0.1 <0.1 <0.1 0.4 Mg0 3.35 Mg 0.08 0.06 0.05 0.02 0.04 0.04 0.04 0.32 Mg0 4.09 Mg 0.17 0.11 0.07 0.05 0.06 0.05 0.05 0.27 86 CaO 16.26 Ca 1.30 0.74 0.54 0.51 0.52 0.53 0.56 4.30 CaO 26.57 Ca 1.71 1.93 1.13 1.36 1.07 1.08 1.14 2.29 CaO 20.8 Ca 13.00 6.00 4.50 3.30 2.90 3.00 2.10 9.40 CaO 31.44 Ca 9.5 1.6 1.0 0.9 0.9 <0.1 2.1 3.8 CaO 31.6 Ca 2.00 0.87 0.72 0.30 0.52 0.51 0.51 3.80 CaO 22.56 Ca 3.89 2.48 1.62 1.33 1.50 1.26 1.31 3.53 Na2O 5.76 Na 0.18 0.11 0.10 0.09 0.09 0.11 0.10 0.58 Na2O 1.75 Na 0.57 0.71 0.71 0.75 0.78 0.78 0.80 0.52 Na2O 1.66 Na 1.60 0.10 0.07 0.06 0.05 0.05 0.05 0.36 Na2O 2.20 Na 16.2 1.9 1.2 1.3 1.5 1.3 1.6 1.7 Na2O 0.36 Na 0.27 0.06 0.05 0.04 0.03 0.04 0.03 0.17 Na2O 3.42 Na 2.37 0.60 0.50 0.43 0.47 0.49 0.48 0.89 K2O 1.12 K 0.10 0.09 0.07 0.06 0.05 0.06 0.05 0.09 K2O 0.20 K 0.11 0.11 0.09 0.09 0.09 0.09 0.09 0.11 K2O 0.71 K 1.00 0.10 0.04 0.06 0.03 0.03 0.03 0.18 K2O 0.33 K 14.6 0.5 0.1 0.1 0.2 0.2 0.2 <0.1 K2O 0.07 K 0.19 0.06 0.03 0.02 0.03 <0.01 <0.01 0.06 K2O 1.01 K 1.47 0.30 0.25 0.22 0.24 0.23 0.21 0.27 pH1; 開 始 pH2 終 了 P2O5 0.36 P 0.01 0.01 0.02 0.03 0.03 0.03 0.02 0.02 P2O5 1.15 P 0.06 0.08 0.07 0.09 0.02 0.05 0.04 0.08 P2O5 2.47 P 0.10 0.05 0.04 0.03 0.02 <0.01 <0.01 0.04 P2O5 1.34 P 0.04 0.04 0.04 0.06 0.06 0.06 0.05 0.27 P2O5 0.38 P <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.07 P2O5 2.31 P 0.26 0.10 <0.01 0.01 0.02 0.03 0.03 0.34 Cl 0.08 Cl 3.08 3.06 3.02 3.04 2.90 2.94 2.96 3.10 Cl 0.04 Cl 0.09 0.06 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 <0.05 0.07 Cl 0.23 Cl 1.70 0.17 0.10 0.06 0.05 0.05 0.04 0.12 Cl 0.23 Cl 31.30 1.03 0.01 0.04 <0.01 <0.01 <0.01 0.10 Cl 0.44 Cl 0.57 0.09 0.10 0.05 0.03 0.03 0.02 0.13 Cl <0.01 Cl 0.92 0.17 0.11 0.09 0.11 0.09 0.09 0.06 Σ1 5.76 5.05 4.86 4.98 4.72 4.88 4.83 11.85 Σ1 3.17 4.37 3.27 3.61 3.16 3.03 3.14 6.17 Σ1 20.36 8.53 6.58 4.55 3.91 4.09 2.77 16.53 Σ1 72.26 5.73 3.16 3.10 3.49 2.27 4.66 13.35 Σ1 3.27 1.38 1.25 0.55 0.98 0.93 0.85 9.11 Σ1 9.65 4.48 3.51 3.03 3.41 3.28 3.22 13.11 表 3.18-3 中 性 溶 媒 に よ る 反 復 溶 出 試 験 結 果 ス ラ グ ; % 成 分 ; mg/L pH1; 開 始 pH2 終 了 S-2 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-3 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-5 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-2 スラグ 溶 出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-3 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 S-5 スラグ 溶出 予 備 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 塩基度 SiO2 TiO2 0.95 27.86 1.05 Ti pH1 pH2 Si 7.10 8.10 0.53 0.01 7.00 7.30 0.59 0.02 7.00 7.60 0.52 0.01 7.00 7.40 0.58 0.01 7.00 7.50 0.65 0.01 7.00 7.30 0.65 0.01 7.00 7.30 0.63 0.00 7.15 8.35 4.24 0.12 塩基度 SiO2 TiO2 0.53 39.40 1.79 Ti pH1 pH2 Si 6.00 8.40 0.38 <0.01 6.00 7.90 0.36 <0.01 6.00 7.80 0.41 <0.01 6.00 7.50 0.35 <0.01 6.00 7.30 0.33 <0.01 6.00 7.20 0.32 <0.01 6.00 7.00 0.27 <0.01 6.00 9.10 1.30 <0.01 塩基度 SiO2 TiO2 0.82 38.5 1.26 Ti pH1 pH2 Si 6.0 6.7 0.10 <0.01 6.0 6.1 0.10 <0.01 6.0 5.9 0.11 <0.01 6.0 5.7 0.18 <0.01 6.0 5.6 0.10 <0.01 6.0 5.5 0.10 <0.01 6.0 5.4 0.09 <0.01 6.0 8.2 3.70 0.10 塩基度 As B 0.95 4.6 30 B pH1 pH2 As 7.10 8.10 <0.001 0.004 7.00 6.30 <0.001 0.004 7.00 6.60 <0.001 0.006 7.00 7.40 <0.001 0.007 7.00 7.50 <0.001 0.003 7.00 7.30 <0.001 0.009 7.00 7.30 <0.001 0.011 7.15 8.35 0.001 0.017 塩基度 As B 0.53 3.91 41.1 B pH1 pH2 As 6.00 8.40 <0.001 <0.01 6.00 7.90 <0.001 <0.01 6.00 7.80 <0.001 <0.01 6.00 7.50 <0.001 <0.01 6.00 7.30 <0.001 <0.01 6.00 7.20 <0.001 <0.01 6.00 7.00 <0.001 <0.01 6.00 9.10 <0.001 <0.01 塩基度 As B 0.82 0.40 29.9 B pH1 pH2 As 6.0 6.7 <0.001 <0.01 6.0 6.1 <0.001 <0.01 6.0 5.9 <0.001 <0.01 6.0 5.7 <0.001 <0.01 6.0 5.6 <0.001 <0.01 6.0 5.5 <0.001 <0.01 6.0 5.4 <0.001 <0.01 6.0 8.2 <0.001 <0.01 Al2O3 Fe2O3 27.89 3.32 Al Fe 0.32 0.37 0.26 0.25 0.17 0.32 0.25 0.27 0.21 0.12 0.19 0.14 0.17 0.03 2.88 <0.01 Al2O3 Fe2O3 20.8 5.09 Al Fe 1.80 <0.01 1.30 <0.01 1.20 <0.01 0.67 0.01 0.50 0.02 0.43 0.02 0.32 0.02 6.70 0.03 Al2O3 Fe2O3 21.0 0.57 Al Fe 0.06 0.02 0.02 0.01 0.01 0.02 0.06 0.07 0.01 0.02 0.03 0.04 0.01 0.03 1.60 0.03 Cd Cr <10 7100 Cd Cr <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cd Cr <2 252 Cd Cr <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cd Cr <2.0 65.1 Cd Cr <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 MnO 0.27 Mn 0.01 0.01 0.01 0.01 0.00 0.01 0.00 0.02 MnO 0.18 Mn <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 MnO 0.09 Mn <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Cu 460 Cu 0.07 0.11 0.05 0.04 0.01 0.03 0.01 0.08 Cu 775 Cu <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.03 Cu 26.8 Cu <0.01 0.01 0.01 0.02 0.01 <0.01 <0.01 0.05 Mg0 CaO 2.65 26.57 Mg Ca 0.06 1.27 0.06 0.76 0.05 0.58 0.05 0.48 0.05 0.53 0.05 0.51 0.05 0.47 0.33 5.12 Mg0 CaO 3.83 20.8 Mg Ca 0.19 12.00 0.11 4.80 0.09 4.20 0.06 3.10 0.05 2.80 0.05 2.50 0.05 2.10 0.26 10.00 Mg0 CaO 3.35 31.6 Mg Ca 0.07 1.90 0.03 0.50 0.03 0.39 0.04 0.57 0.02 0.28 0.03 0.37 0.02 0.23 0.39 4.00 Hg Mo 7 73 Hg Mo 0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 0.01 Hg Mo <0.05 16.20 Hg Mo <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 Hg Mo <0.05 <10.0 Hg Mo <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.0005 <0.01 87 Na2O 1.75 Na 0.48 0.60 0.63 0.67 0.37 0.76 0.77 0.92 Na2O 1.66 Na 2.00 0.10 0.06 0.05 0.05 0.05 0.06 0.33 Na2O 0.36 Na 0.47 0.04 0.04 0.03 0.03 0.03 0.02 0.18 Ni 51 Ni <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.02 Ni 95.70 Ni <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Ni <10.0 Ni <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 K2O 0.20 K 0.10 0.07 0.06 0.08 0.06 0.06 0.06 0.20 K2O 0.71 K 1.70 0.10 0.04 0.03 0.03 0.02 0.03 0.17 K2O 0.07 K 0.19 0.04 0.02 0.02 <0.01 <0.01 <0.01 0.06 Pb 460 Pb 0.01 <0.01 <0.01 0.02 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Pb 210 Pb <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Pb <40.0 Pb <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 0.01 0.02 P2O5 Cl 1.15 0.04 P Cl 0.10 0.08 0.10 <0.05 0.07 <0.05 0.06 <0.05 0.06 <0.05 0.11 <0.05 0.06 <0.05 0.22 0.15 P2O5 Cl 2.47 0.23 P Cl 0.11 2.20 0.04 0.23 0.03 0.08 0.02 0.05 0.01 0.06 0.01 0.03 <0.01 0.04 0.07 0.17 P2O5 Cl 0.38 0.44 P Cl 0.01 0.53 0.01 0.05 0.01 0.05 <0.01 0.02 <0.01 0.02 <0.01 0.03 0.01 0.01 0.06 0.14 Sb Se 370 150 Sb Se 0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 0.03 <0.001 0.01 <0.001 <0.01 <0.001 Sb Se 41.2 1.35 Sb Se <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 <0.01 <0.001 Sb Se 1.90 2.90 Sb Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Σ1 3.34 2.72 2.42 2.45 2.07 2.49 2.25 14.21 Σ1 20.38 7.04 6.11 4.34 3.85 3.43 2.89 19.03 Σ1 3.35 0.80 0.68 0.99 0.48 0.63 0.42 10.26 Zn 490 Zn <0.01 0.02 0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Zn 3070 Zn <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 Zn 149 Zn 0.05 0.06 0.03 0.03 0.01 0.01 <0.01 0.02 Σ2 0.09 0.13 0.07 0.07 0.01 0.07 0.03 0.13 Σ2 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.03 Σ2 0.05 0.07 0.04 0.05 0.02 0.01 0.01 0.09 3.7.6 解 析 の 枠 組 み 反 復 溶 出 試 験 結 果 (表 3.18-1∼ 表 3.18-3)の 解 析 に あ た り , 以 下 の 事 項 を 定 義 し た . 1)成 分 溶 出 量 (mg/L): 1∼ 6 回 の 振 と う 操 作 に 対 応 す る 溶 出 液 中 の 成 分 毎 の 分 析 値 2)溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 (mg/L): 1∼ 6 回 の 振 と う 操 作 に 対 応 す る 成 分 溶 出 量 の 合 計 値 3)成 分 累 積 溶 出 量 (mg/L): 1∼ 6 回 の 振 と う 操 作 に お け る 成 分 溶 出 量 の 累 積 4)溶 融 ス ラ グ 累 積 溶 出 量 (mg/L):1∼ 6 回 の 振 と う 操 作 に お け る ス ラ グ 溶 出 量 の 累 積 5)成 分 溶 出 率 (mg/L)/(mg/kg)= 成 分 累 積 溶 出 量 /成 分 含 有 量 (溶 融 ス ラ グ ) 6) 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 (mg/L)/ (10 5 mg) = 溶 融 ス ラ グ 累 積 溶 出 量 / 溶 融 ス ラ グ 重 量 (10 5 mg) また,成分溶出量につては、定量下限値以下の場合は非溶出と表現した. 1. 表 面 洗 浄 効 果 解 析 の 第 1 段 階 は , 予 備 操 作 と し て 30 分 間 の 振 と う 操 作 を 施 し , こ の 段 階 の 成 分 溶出量は表面洗浄によるものと仮定した. 表面洗浄は試料表面に付着する塩類等の溶解とされているところから,予備の振と う操作による成分溶出量と1回目のそれを比較した.表面洗浄を試料別にみると以下 と な っ た . 試 料 S-1 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は (予 備 /1 回 目 =)1.19 と な り , 顕 著 な 表 面 洗 浄 は み ら れ な か っ た .成 分 別 に み る と Ca は (予 備 /1 回 目 =)1.76,Cu は (予 備 /1 回 目 =)2.5 と な り , Zn も (予 備 /1 回 目 =)3.6 と な り 表 面 洗 浄 が 生 じ て い る と 考 え ら れ る . 試 料 S-2 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は (予 備 /1 回 目 =)0.80 と な っ た が , Zn の み は (予 備 /1 回 目 =)4.4 と な り 表 面 洗 浄 が 生 じ て い る と 考 え ら れ る . 試 料 S-3 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は (予 備 /1 回 目 =)2.39 と な り ,表 面 洗 浄 が 認 め ら れ た . 成 分 別 に み る と ,Ca は (予 備 /1 回 目 =)2.17,Na は (予 備 /1 回 目 =)16.0,K は (予 備 /1 回 目 =)10.0, Cl は (予 備 /1 回 目 =)10.0 と な り , 表 面 洗 浄 は 塩 類 の 溶 解 に 由 来 す る と 考 え られる. 試 料 S-4 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は (予 備 /1 回 目 =)11.91 と な り ,顕 著 な 表 面 洗 浄 が 認 め ら れ た .成 分 別 に み る と ,Ca は (予 備 /1 回 目 =)5.93,Na は (予 備 /1 回 目 =)8.53,K は (予 備 /1 回 目 =)29.2,Cl は (予 備 /1 回 目 =)30.39 と な り ,表 面 洗 浄 は 塩 類 の 溶 解 に 由 来 す る と 考 え ら れ る .Cu は (予 備 /1 回 目 =)4.09 と な り ,Zn も (予 備 /1 回 目 =)5.18 と な っ た こ とから,重金属類にも表面洗浄が認められた. 試 料 S-5 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は (予 備 /1 回 目 =)2.22 と な り ,表 面 洗 浄 が 認 め ら れ た . 成 分 別 に み る と , Ca は (予 備 /1 回 目 =)2.29, Na は (予 備 /1 回 目 =)4.5, K は (予 備 /1 回 目 =)3.17, Cl は (予 備 /1 回 目 =)6.33 と な り , 表 面 洗 浄 は 塩 類 の 溶 解 に 由 来 す る と 考 え られる. 試 料 S-6 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は (予 備 /1 回 目 =)2.14 と な り ,洗 浄 効 果 が 認 め ら れ た . 成 分 別 に み る と Ca は (予 備 /1 回 目 =)1.57,Na は (予 備 /1 回 目 =)3.95,K は (予 備 /1 回 目 =)4.9,Cl は (予 備 /1 回 目 =)5.41 と な り ,表 面 洗 浄 は 塩 類 の 溶 解 に 由 来 す る と 考 え ら れ 88 る. 以 上 よ り , 試 料 S-2 は ほ ぼ 表 面 洗 浄 が 生 じ て い な か っ た と 考 え ら れ る . 試 料 S-1, 試 料 S-3,S-6 は 効 果 洗 浄 は 生 じ て い た が ,そ の 効 果 は 小 さ い と 考 え ら れ る .試 料 S-4, S-5 は 顕 著 な 表 面 洗 浄 が 生 じ て い た と 考 え ら れ る . 表 面 洗 浄 を 生 じ る 要 因 と し て の 成 分 は 主 と し て Ca,Na,K,Clの 4 成 分 で あ っ た こ と か ら ,そ れ ら は 溶 融 ス ラ グ 中 に お い て CaCl 2 ,NaClお よ び KClを 形 成 し て い る と 考 え ら れ ,先 に 示 し た 1)分 子 や 化 合 物 単 位 で の 物 理 的 封 じ 込 め の 場 合 (概 念 的 に は 図 3.21 中 の 金 属 ま た は 塩 類 )に 該 当 し て い る こ と を 示 し て い る .洗 浄 効 果 の 大 小 は ,Cl含 有 量 に よ り 判 定 で き る と 考 え ら れ る . Cuお よ び Znに 関 し て も 洗 浄 効 果 が 認 め ら れ た が 含 有 量 と の 関 係 は 明 ら か に で き な か った.また,表面洗浄は溶融スラグの組織(非晶質および結晶質)による差も認めら れなかった. 2. 反 復 振 と う に お け る 成 分 溶 出 挙 動 . 第 2 段 階 と し て 先 に 示 し た 溶 融 ス ラ グ か ら の 成 分 溶 出 機 構 の う ち ,溶 出 後 の 境 膜 拡 散 お よ び 試 料 表 面 へ の 沈 殿 と 再 吸 着 は , 溶 出 振 と う 時 間 を 60 分 と す る こ と に よ り , 無視できると仮定した.これにより,予備操作以後の反復振とう操作における成分溶 出量は表面溶解と内部拡散溶出によるものと仮定した.反復振とう操作における各回 の溶融スラグ溶出量および成分溶出量の挙動は,次のように分類できる. ①反復振とう操作において溶融スラグ溶出量および成分溶出量は増加する:このよ うな挙動を示す溶融スラグは,環境中での使用において安定さに欠ける. ②反復振とう操作において溶融スラグ溶出量および成分溶出量は一定である:この ような挙動を示す溶融水ラグは,溶出量の多小により安定性が異なってくる. ③反復振とう操作において溶融スラグ溶出量および成分溶出量は減少する:このよ うな挙動を示す溶融スラグは,溶出量の多小にもよるが安定に向かう性状を有す る. 3.7.7 反 復 振 と う 操 作 に お け る 成 分 溶 出 挙 動 1. 解 析 手 順 各回の振とう操作に対応する溶融スラグ溶出量および成分溶出量は前述したような 明瞭な関係を示さず, a)ほ ぼ 一 定 値 を 示 し た b)増 減 を 繰 り 返 す c)徐 々 に 少 な く な る 等 の 挙 動 を 示 し た ( 図 3.23). 89 2.00 溶出量 mg/L 1.50 Si Al Fe 1.00 Mg Ca Na K 0.50 0.00 1 2 3 4 5 6 反復回数 図 3.23 反 復 振 と う に 対 応 す る S2 の 成 分 溶 出 量 こ れ ら の 傾 向 か ら ,対 象 試 料 の 溶 出 挙 動 を 先 に 仮 定 に し た 3 つ の 挙 動 の ど れ に 当 て はまるかの判別が困難であった.したがって,反復振とう操作ごとの溶出量をプロッ ト す る よ り も , 累 積 溶 出 量 を プ ロ ッ ト す る 方 が 適 当 で あ る ( 図 3.24). こ れ に よ る 各 試料における成分毎の溶出挙動を,先述の溶出挙動分類(増加,一定,減少)に当て はめる手順は以下の通りである. (1)反 復 回 数 毎 の 成 分 溶 出 量 か ら 成 分 累 積 溶 出 量 と 溶 融 ス ラ グ 累 積 溶 出 量 を 得 る . (2)累 積 溶 出 量 に 対 し て 近 似 曲 線 の 当 て は め 計 算 を す る .こ こ で は ,近 似 曲 線 と し て 対 数 近 似 ( y = a Ln( x )+ b ), 線 形 近 似 ( y = a x+ b ), 累 乗 近 似 ( y = a ( x ) b )を 適 用 し た . (3)得 ら れ た 近 似 式 か ら 最 も 適 合 の 良 い 近 似 式 を 判 別 す る . 試 料 S-2 の Fe の 溶 出 挙 動 を 例 と す る と 以 下 と な る ( 図 3.24). 1.40 累積溶出量 (mg/L) 1.20 1.00 0.80 y = 0.4413Ln(x) + 0.2795 R2 = 0.9708 y = 0.326x0.7026 R2 = 0.9831 0.60 y = 0.206x R2 = 0.834 0.40 各回の溶出量 0.20 0.00 1 2 3 4 反復回数 図 3.24 反 復 振 と う に お け る Fe 成 分 累 積 溶 出 量 90 溶 出 量 (mg/L) 5 6 y =0.206 x R 2 =0.8340 ⑤ y =0.4413ln( x )+0.2795 R 2 =0.9708 ⑥ y =0.326( x ) 0.7026 R 2 =0.9831 ⑦ ⑤ 式 は 線 形 近 似 で あ る が ,反 復 回 数 が 少 な い 時 は 結 果 に 対 し て 少 な め に な り ,反 復 回数が多くなると結果に対して多めに評価する傾向を示した.⑥式は対数近似であり 良い近似となるが,反復回数をゼロに外挿した場合 y 切片を持つことは,溶出操作を 行わなくとも溶出が生じていることになり現象を説明していなかった.⑦式は累乗近 似 で あ り ,こ の 場 合 が 最 も 良 い 近 似 と な る . ⑦ 式 の 係 数 a (=0.326)は 第 1 回 目 の 振 と う操作の溶出規模を表しており,初期溶出規模が以後の溶出特性を規定していること を 示 し て い る .ま た ,係 数 b (=0.7026)は 反 復 振 と う 操 作 に 対 応 し て ,溶 出 量 が 増 加 す る か , 一 定 か , 減 少 す る か の 挙 動 を 示 し , 1< b の 場 合 は 溶 出 量 が 増 加 す る , 1= b の 場 合 は 直 線 近 似 と な り , b <1 の 場 合 は 溶 出 量 は 減 少 す る . し た が っ て , 試 料 S-2 の Fe 成分の溶出挙動は,反復回数が増すにしたがって溶出量は少なくなると判断できる. ④この手順を全成分について実行する. 以上により溶融スラグの溶出挙動を記述することができた. 2. 溶 融 ス ラ グ お よ び 成 分 溶 出 挙 動 各溶融スラグの累積溶出量および成分累積溶出量に対して累乗近似を当てはめた. pH4 に 調 整 し た 溶 媒 に よ る 試 験 結 果 に 対 す る 近 似 曲 線 の 係 数 a, bお よ び R 2 を 表 3.19 に 示 し た . ま た , 各 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 率 お よ び 成 分 別 溶 出 率 を 表 3.20 に 示 し た . 表 3.19 pH4 溶 媒 に お け る 試 料 別 /成 分 別 累 積 溶 出 量 の 累 乗 近 似 ( y = ax b ) 係 数 一 覧 Si Al Fe Mg Ca Na K P Cl Cu Pb Zn Σ a 0.179 0.276 0.490 0.091 0.723 0.109 0.091 0.011 3.068 0.040 0.042 0.022 5.121 S1 b 1.253 1.089 1.000 0.800 0.847 0.940 0.800 1.506 0.986 0.821 0.561 0.203 0.979 2 R 0.9962 0.9994 1.0000 0.9996 0.9984 0.9990 0.9996 0.9949 1.0000 0.9984 0.9895 0.6572 1.0000 S2 a b R2 0.922 0.903 0.9986 0.103 1.359 0.9828 0.326 0.703 0.9831 0.098 0.812 0.9989 1.873 0.779 0.9972 0.702 1.036 0.9998 0.108 0.909 0.9995 0.084 0.825 0.9827 1回目のみ溶出 0.691 0.595 0.9983 0.013 1.595 0.8767 0.057 0.820 0.8950 5.023 0.843 0.9993 S3 a b R2 0.600 0.838 0.9886 1.506 0.613 0.9762 0.010 1.478 0.9967 0.154 0.656 0.9978 6.165 0.719 0.9975 0.101 0.741 0.9997 0.098 0.609 0.9917 0.056 0.595 0.9277 0.175 0.561 0.9950 非溶出 非溶出 5∼6回のみ溶出 8.841 0.708 0.9957 S4 a b R2 0.396 1.124 0.9997 0.020 1.157 0.9990 0.147 1.098 0.9965 − − − 1.579 0.725 0.9712 1.804 0.857 0.9936 0.449 0.531 0.9213 0.039 1.172 0.9969 1∼3回のみ溶出 0.226 0.235 0.9692 0.052 0.579 0.9916 0.108 0.780 0.9988 5.791 0.743 0.9933 S2; Pb は 1∼ 3 回 ま で 溶 出 , S2; Zn は 1∼ 4 回 ま で 溶 出 a 0.181 0.009 0.054 0.060 0.885 0.062 0.062 0.102 0.067 0.009 0.093 1.564 a 0.646 0.167 0.031 0.110 2.450 0.593 0.298 0.087 0.167 0.103 0.036 4.450 S6 b R2 0.983 0.9991 0.758 0.9983 2.222 0.9441 0.703 0.9990 0.748 0.9991 0.887 0.9991 0.880 0.9997 0.348 0.7567 0.758 0.9983 0.665 0.9937 非溶出 0.834 0.9288 0.866 0.9994 S3; Zn は 5∼ 6 回 の み 溶 出 , S4; Cl は 1∼ 3 回 ま で 溶 出 , S5; Pb は 溶 出 /非 溶 出 の 繰 り 返 し 91 S5 b R2 0.959 0.9908 1.722 0.9642 0.988 0.9781 0.771 0.9898 0.742 0.9918 0.790 0.9979 0.504 0.9604 非溶出 0.692 0.9496 0.380 0.8624 0.524 0.7701 0.415 0.9861 0.768 0.9929 Σ:溶融スラグ 表 3.20 pH4 溶 媒 に お け る 溶 融 ス ラ グ お よ び そ の 成 分 別 溶 出 率 S-1 Si Al Fe Mg Ca Na K P Cl Cu Pb Zn Σ 溶出率1 3.3.E-05 1.0.E-04 5.4.E-04 1.4.E-04 2.1.E-04 1.0.E-04 3.4.E-04 1.2.E-05 2.3.E-01 4.0.E-04 5.3.E-04 9.4.E-05 3.0.E-04 溶出率2 5.7.E-05 1.5.E-05 2.4.E-05 1.9.E-04 2.6.E-04 1.0.E-04 8.0.E-05 5.6.E-05 4.0.E-02 <1.E-03 <3.E-04 <3.E-05 1.2.E-04 S-2 溶出率1 1.7.E-04 3.7.E-05 3.4.E-04 1.6.E-04 2.9.E-04 2.6.E-03 2.8.E-03 3.0.E-04 1.4.E-03 4.4.E-03 3.3.E-04 4.1.E-04 2.3.E-04 S-3 溶出率2 6.5.E-05 3.7.E-05 <3.E-06 6.5.E-05 8.6.E-05 3.0.E-04 5.5.E-04 7.0.E-05 1.6.E-03 9.E-05 <2.E-05 <2.E-05 6.1.E-05 溶 出 率 1: 累 積 溶 出 率 溶出率1 6.6.E-05 2.0.E-04 9.8.E-06 1.3.E-04 1.0.E-03 2.3.E-04 4.1.E-04 5.7.E-05 2.0.E-03 <1.E-05 <5.E-05 2.3.E-05 3.0.E-04 S-4 溶出率2 3.0.E-05 2.4.E-04 7.9.E-06 7.6.E-05 4.5.E-04 2.2.E-04 2.5.E-04 1.6.E-05 5.2.E-04 3.9.E-05 <5.E-05 3.3.E-06 1.7.E-04 溶出率1 7.5.E-05 1.2.E-05 1.6.E-04 1.3.E-04 2.1.E-04 4.0.E-03 3.9.E-03 2.3.E-04 4.7.E-03 3.0.E-04 1.0.E-03 1.6.E-04 2.3.E-04 溶出率2 1.2.E-04 3.6.E-05 3.0.E-04 1.7.E-04 1.2.E-04 7.7.E-04 <3.E-04 2.0.E-04 4.3.E-04 3.6.E-05 4.4.E-04 2.2.E-05 1.3.E-04 S-5 溶出率1 2.7.E-05 9.0.E-06 5.6.E-04 7.5.E-05 1.1.E-04 6.9.E-04 2.0.E-03 <3.E-05 7.3.E-04 4.5.E-03 <5.E-04 1.3.E-03 6.3.E-05 溶出率2 7.8.E-05 6.2.E-05 3.3.E-04 9.6.E-05 4.7.E-04 4.7.E-04 8.6.E-04 1.8.E-04 3.0.E-04 1.5.E-03 <3.E-04 6.7.E-05 9.1.E-05 S-6 溶出率1 1.0.E-04 3.3.E-05 1.3.E-04 9.5.E-05 4.2.E-04 8.7.E-04 1.4.E-03 8.2.E-05 <7.E-02 2.5.E-04 <7.E-05 8.8.E-05 2.1.E-04 溶出率2 9.8.E-05 1.1.E-04 1.9.E-04 6.6.E-05 1.6.E-04 2.6.E-04 2.7.E-04 1.5.E-04 <6.E-03 6.1.E-05 <7.E-05 <6.E-06 1.3.E-04 溶 出 率 2: 24 時 間 溶 出 率 各試料の溶出挙動は以下の通りであった. 試 料 S1:各 回 の 溶 出 操 作 に お け る 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は ほ ぼ 一 定 に 近 い 値 で あ っ た が , 累 積 溶 出 量 は わ ず か に 減 少 す る 傾 向 を み せ た .成 分 別 に み る と ,反 復 回 毎 に Siお よ び P の 溶 出 量 は わ ず か に 増 加 す る 傾 向 を 示 し ,Alお よ び Feの 溶 出 量 は ほ ぼ 定 量 で あ り ,そ の 他 の 成 分 の 溶 出 量 は 減 少 す る 傾 向 を 示 し た . Cu, Znお よ び Pbの 溶 出 量 は 反 復 毎 に 明 ら か に 減 少 し ,24 時 間 振 と う で は 非 溶 出 と な っ た .溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 3.3×10 - 4 で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 は , Si, Pお よ び は Znは 10 - 5 オ ー ダ ー , Clは 10 - 2 オ ー ダ ー ,そ の 他 の 成 分 は 10 - 4 オ ー ダ ー で あ っ た .ま た ,24 時 間 振 と う の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 1×10 - 4 と な り 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 の 2/5 に 減 少 し た .成 分 毎 の 溶 出 率 2 を み る と Si,Al,Fe,Kお よ び Pは 10 - 5 オ ー ダ ー ,Mg,Caお よ び Naは 10 - 4 オ ー ダ ー と な っ た . 成 分 別 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と , Siは 1.7 倍 , Mgは 1.3 倍 , Pは 4.8 倍 と 増 加 し て い た . Alは 1/5, Feは 1/25, Kお よ び Clは 1/5 と 減 少 し て い た . 試 料 S2:溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に 減 少 し ,累 積 溶 出 量 も 減 少 す る 傾 向 を み せ た . 成 分 別 に み る と ,Alは 増 加 傾 向 を 示 し ,他 の 成 分 は 減 少 し た .Pbは 1~3 回 ま で は 増 加 傾 向 を 示 し た が ,以 後 の 反 復 操 作 で は 非 溶 出 と な っ た .Znも 同 様 に 5 回 以 後 の 反 復 操 作 で は 非 溶 出 と な っ た . Cu, Pbお よ び Znの 溶 出 量 は , 24 時 間 振 と う で は 非 溶 出 と な っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 2.3×10 - 4 で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 は Alが 10 - 5 オ ー ダ ー , Si, Fe, Mg, Ca, P, Pbお よ び Znは 10 - 4 オ ー ダ ー , Na, K, Clお よ び Cuは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 6×10 - 5 と な り , 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 の ほ ぼ 1/3 に 減 少 し た . 成 分 毎 の 溶 出 率 2 は Si, Al, Mg, Ca, Pお よ び Cuが 10 - 5 オ ー ダ ー と な っ た .Naと Kは 10 - 4 オ ー ダ ー で あ っ た .成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と ,Alと Clは ほ ぼ 同 じ で あ り ,Mgと Caは 4/10∼ 3/10 に ,Naお よ び Kは 1/10~1/5 に , Cuは 1/50 に 減 少 し た . 試 料 S3:溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に 減 少 し ,累 積 溶 出 量 も 減 少 す る 傾 向 を み せ た . 92 成 分 別 に み る と Feを 除 い た Si∼ Cl成 分 は 反 復 回 毎 に 減 少 し た . Fe, Cuお よ び Pbは 非 溶 出 で あ っ た .Feと Znは 1∼ 3 回 目 ま で は 非 溶 出 で あ っ た .溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 3.0 ×10 - 4 で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 は Si, Fe, Pお よ び Znが 10 - 5 オ ー ダ ー , Al, Mg, Naお よ び Kが 10 - 4 オ ー ダ ー ,Clは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た .溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 1.7 ×10 - 4 と な り , ほ ぼ 半 減 し た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と , Alお よ び Naは ほ ぼ 等 し く , そ の 他 の 成 分 は 1/10∼ 1/2 に 減 少 し た . 試 料 S-4: 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に 減 少 し た が , 6 回 目 に 至 り 増 加 し た . し か し , 累 積 溶 出 量 は 減 少 傾 向 を 示 し て い た . Si, Alは 反 復 に し た が っ て 増 加 し た . 成 分 別 に み る と Siお よ び Alは わ ず か に 増 加 す る 傾 向 を 示 し た , そ の 他 の 成 分 は 明 瞭 な 関 係 を 示 さ な か っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 2.3×10 - 4 で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 は Si, Alが 10 - 5 オ ー ダ ー ,Fe,Mg,Ca,P,Cuお よ び Znは 10 - 4 オ ー ダ ー ,Na,K,Clお よ び Pbは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た .溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 1.3×10 - 4 と な り ,3/5 に 減 少 し た .成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と ,Si,Al,Fe,Mgは 1.3 倍 ∼ お よ そ 3 倍 と な っ た . 他 の 成 分 は , 1/10∼ 3/5 に 減 少 し た . 試 料 S-5: 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に 減 少 し , 累 積 溶 出 量 も 減 少 す る 傾 向 を み せ た . Si, Alは 反 復 毎 の 溶 出 量 に 明 瞭 な 関 係 は み ら れ な か っ た が そ の 他 の 成 分 は 反 復 毎 に 減 少 し た . Pbは 溶 出 /非 溶 出 を 繰 り 返 し , Cuお よ び Znは 反 復 毎 に 減 少 し た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 6.3×10 - 5 で あ っ た .成 分 毎 の 溶 出 率 1 は Si,Al,Mgが 10 - 5 オ ー ダ ー , Fe,Ca,Naお よ び Clは 10 - 4 オ ー ダ ー ,K,Cuお よ び Znは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た .溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 9×10 - 5 と な り , 1.45 倍 に 増 加 し た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と ,Siは 3 倍 ,Alは 7 倍 ,Caは 4 倍 と 増 加 し た .そ の 他 の 成 分 は ,1/20 ∼ 3/5 に 減 少 し た . 試 料 S-6: 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に 減 少 し , 累 積 溶 出 量 も 減 少 す る 傾 向 を み せ た . Si, Fe, Na, Kお よ び Clは 各 反 復 に 対 し て ほ ぼ 一 定 , Alお よ び Pは わ ず か に 増 加 し た . Cuお よ び Znは 反 復 毎 に 減 少 し た . Pbは 非 溶 出 で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 2×10 - 4 で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 は Al, Pお よ び Znが 10 - 5 オ ー ダ ー , Kは 10 - 3 オ ー ダ ー , そ の 他 の 成 分 は 10 - 4 オ ー ダ ー で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 1×10 - 4 と な り , 3/5 に 減 少 し た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と , Siは ほ ぼ お な じ と な り , Alは 3.4 倍 , Feは 1.4 倍 , Pは 1.8 倍 と な っ た . そ の 他 の 成 分 は , 1/5∼ 7/10 に減少した。 pH4 に 調 整 し た 溶 媒 に 対 す る 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 挙 動 と pH6∼ 7 に 調 整 し た 溶 媒 に 対 す る 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 挙 動 を 比 較 し た .試 験 結 果 に 対 す る 近 似 曲 線 の 係 数 a , b お よ び R 2 を 表 3.21 に 示 し た . ま た , 各 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 率 お よ び 成 分 別 溶 出 率 を 表 3.22 に示した. 図 3.21 pH6∼ 7 溶 媒 に お け る 試 料 別 /成 分 別 累 積 溶 出 量 の 累 乗 近 似 ( y = ax b ) 係 数 一 覧 93 S-2 a Si Al Fe Mg Ca Na K P Cl Cu Pb Zn Σ b S-3 R2 0.569 1.020 0.9980 0.250 0.901 0.9950 累乗近似に載らない 0.058 0.916 0.9978 0.755 0.823 0.9995 0.604 1.008 0.9963 0.069 0.972 0.9980 0.096 0.851 0.9898 非溶出 0.114 0.459 0.9849 3回目のみ溶出 1,2回目のみ溶出 2.812 0.916 0.9997 a S-5 R2 b 0.376 0.997 0.9967 1.419 0.674 0.9732 4回目から溶出 0.115 0.721 0.9946 5.001 0.780 0.9954 0.098 0.719 0.9971 0.099 0.505 0.9982 0.042 0.631 0.9770 0.230 0.421 0.9984 非溶出 非溶出 非溶出 7.367 0.760 0.9942 a b R2 0.103 1.096 0.990 0.018 1.193 0.936 累乗近似に載らない 0.031 0.982 0.994 0.505 0.885 0.992 0.042 0.870 0.996 4回目以後非溶出 3回目以後非溶出 0.054 0.701 0.976 0.010 1.203 0.986 非溶出 0.062 0.541 0.983 0.886 0.900 0.992 図 3.22 pH4 溶 媒 に お け る 溶 融 ス ラ グ お よ び そ の 成 分 別 溶 出 率 Si Al Fe Mg Ca Na K P Cl Cu Pb Zn Σ S-2 溶出率1 溶出率2 1.3.E-04 1.5.E-04 4.5.E-05 1.0.E-04 3.4.E-04 <3.E-06 1.2.E-04 1.2.E-04 1.3.E-04 1.9.E-04 2.2.E-03 5.3.E-04 2.0.E-03 1.0.E-03 4.0.E-04 1.9.E-04 <1.0.E-03 3.4.E-03 5.4.E-04 1.7.E-04 4.3.E-05 <2.E-05 6.1.E-08 <2.E-05 1.5.E-04 1.4.E-04 S-3 溶出率1 溶出率2 5.2.E-05 3.3.E-05 2.1.E-04 3.2.E-04 1.4.E-05 5.9.E-06 1.1.E-04 6.8.E-05 9.4.E-04 4.8.E-04 2.2.E-04 2.0.E-04 3.5.E-04 2.4.E-04 4.5.E-05 2.8.E-05 2.1.E-03 7.4.E-04 <1.3.E-05 3.9.E-08 <4.8.E-05 <4.8.E-05 <3.3.E-06 <3.3.E-06 2.8.E-04 1.9.E-04 溶 出 率 1: 累 積 溶 出 率 S-5 溶出率1 溶出率2 1.8.E-05 9.6.E-05 6.7.E-06 7.6.E-05 3.3.E-04 5.3.E-05 5.1.E-05 1.2.E-04 7.4.E-05 1.3.E-04 5.3.E-04 5.0.E-04 1.1.E-03 8.6.E-04 7.9.E-05 1.6.E-04 4.1.E-04 3.2.E-04 1.9.E-06 1.9.E-03 2.5.E-04 <5.0.E-04 2.7.E-02 1.3.E-04 4.2.E-05 1.0.E-04 溶 出 率 2: 24 時 間 溶 出 率 試 料 S2:溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に わ ず か 減 少 し ,累 積 溶 出 量 も 減 少 す る 傾 向 を み せ た . 成 分 別 に み る と , Siは 極 わ ず か に 増 加 傾 向 を 示 し , 他 の 成 分 は 減 少 し た . Cl は 非 溶 出 で あ っ た .Pbお よ び Znは ほ ぼ 非 溶 出 と み な せ た .溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 1.5 ×10 - 4 で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 は Alが 10 - 5 オ ー ダ ー , Si, Fe, Mg, Ca, P, は 10 - 4 オ ー ダ ー , Na, Kは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 1.4×10 - 4 と な り , 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 と ほ ぼ 同 じ で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 2 は Si, Al, Mg, Ca, Na, Pお よ び Cuは 10 - 4 オ ー ダ ー と な っ た . Kは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と ,Siと Mgは ほ ぼ 同 じ で あ り ,Alは 2 倍 ,Caは 1.5 倍 と な っ た . そ の 他 の 成 分 は 1/4∼ 1/2 と 減 少 し た . 試 料 S3:溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に 減 少 し ,累 積 溶 出 量 も 減 少 す る 傾 向 を み せ た . 成 分 別 に み る と Feは 4 回 目 か ら 溶 出 し , そ の 他 の 成 分 も 反 復 毎 に 減 少 し た . Cu, Pb お よ び Znは 非 溶 出 で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 2.8×10 - 4 で あ っ た . 成 分 毎 の 溶 94 出 率 1 は Si,Feお よ び Pが 10 - 5 オ ー ダ ー ,Clは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た .そ の 他 の 成 分 は 10 - 4 オ ー ダ ー で あ っ た .溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 1.9×10 - 4 と な り ,7/10 に 減 少 し た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と ,Alは 1.5 と な っ た が ,そ の 他 の 成 分 は 4/10 ∼ 9/10 に 減 少 し た . 試 料 S-5:溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 反 復 毎 に 減 少 し ,累 積 溶 出 も 減 少 す る 傾 向 を み せ た . Si, Al, Feお よ び Mgは 反 復 毎 の 溶 出 量 に 明 瞭 な 関 係 は み ら れ な か っ た . Caお よ び Cl は 反 復 毎 に 減 少 し た . Kは 4 回 目 以 後 , 非 溶 出 と な っ た . Pbは 非 溶 出 と み な せ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 4.2×10 - 5 で あ っ た .成 分 毎 の 溶 出 率 1 は Alが 10 - 6 オ ー ダ ー ,Si, Mg,Caお よ び Pが 10 - 5 オ ー ダ ー ,Fe,Naお よ び Clは 10 - 4 オ ー ダ ー ,Kは 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 2 は 1.0×10 - 4 と な り , 2.44 倍 に 増 加 し た . 成 分 毎 の 溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 を 比 較 す る と , Clは 0.78 倍 と 減 少 し た が , そ の 他 の 成 分 は , 1.7 ∼ 11.43 倍 に 増 加 し た . 3.7.9 ま と め pH4 お よ び pH6∼ 7 の 溶 媒 に 対 す る 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 特 性 は 以 下 の 通 り で あ っ た . 1)溶 出 機 構 の 表 面 洗 浄 に つ い て は , そ れ が 顕 著 に 現 れ た 試 料 と ほ と ん ど 認 め ら れ な い 試料に分かれた.顕著に現れた試料の試験結果から洗浄効果を生じる要因としての 成 分 は Ca,Na,Kお よ び Clで あ っ た .そ れ ら は 溶 融 ス ラ グ 中 に お い て CaCl 2 ,NaCl, KClを 形 成 し て い る と 考 え ら れ , 先 に 示 し た 1)分 子 や 化 合 物 単 位 で の 物 理 的 封 じ 込 め の 場 合 (概 念 的 に は 図 3.21 に お け る 塩 類 )に 該 当 し て い る こ と を 示 し て い た .洗 浄 効 果 の 大 小 は , Cl含 有 量 に よ り 判 定 で き る と 考 え ら れ る . ま た , Cuお よ び Znに 関 しても表面洗浄が認められたが含有量との関係は明らかではなかった.しかし,表 面 洗 浄 は ,溶 融 ス ラ グ 中 に お け る 含 有 量 に 関 係 せ ず 重 金 属 類 の 取 り 込 ま れ た 位 置 (図 3.21)に 関 係 し ,表 面 に 近 い 位 置 関 係 の 場 合 は 洗 浄 効 果 に よ り 多 く 溶 出 す る と 考 え ら れる. 2)溶 融 ス ラ グ は 反 復 を 重 ね る 毎 に 溶 出 量 が 減 少 す る こ と か ら ,累 積 溶 出 量 も 減 少 す る . こ の 挙 動 は , 累 乗 近 似 ( y = a ( x ) b )式 に よ り 表 す こ と が で き た . 累 積 溶 出 量 の 最 大 は 30.49 mg/L(試 料 S-3)で あ り , 最 小 は 6.27 mg/L(試 料 S-5)で あ っ た . 前 者 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 3.0×10 - 4 で あ っ た .後 者 の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 1 は 6.3×10 - 5 で あ っ た .ま た ,反 復 を 重 ね る 毎 に 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 量 が 減 少 す る こ と は ,(定 量 的 に 解 析 で き な か っ た が )内 部 拡 散 経 路 が 反 復 回 毎 に 長 く な る こ と の 影 響 と 考 え ら れ る . 成 分 毎 に み る と Siお よ び Alは 累 積 溶 出 量 が わ ず か に 増 加 す る 試 料 (S-1, S-4) が みられたが,その他の成分は,全試料において累積溶出量は減少した.また,全試 料 に お い て 最 大 の 溶 出 成 分 は Caで あ り , S-3 試 料 の み 溶 出 率 が 1.0×10 - 3 , そ の 他 の 試 料 で は 2.1∼ 4.2×10 - 4 で あ っ た .Ca溶 出 率 の 大 小 は ,塩 基 度 に も Ca含 有 量 に も 関 連 付 け で き ず ,結 晶 質 ス ラ グ の 場 合 が 最 大 で あ っ た .Siお よ び Alの 溶 出 率 は 10 - 5 95 ∼ 10 - 4 の オ ー ダ ー で あ っ た . 成 分 溶 出 率 は 水 冷 ス ラ グ と 結 晶 質 ス ラ グ と い う ス ラ グ 組織の違いよりも,試料間による差異の方が大きく現れた.また,7 回目の振とう 操 作 に よ り 得 ら れ た Si,Alお よ び Caの 溶 出 率 は ,定 義 に 差 は あ る が 規 格 化 質 量 損 失 43) と オ ー ダ ー 的 に 一 致 し た . 3)As, B, Cd, Cr, Hg, Mo, Ni お よ び Sb は , 反 復 溶 出 試 験 に お い て は 非 溶 出 成 分 と み な せ る 結 果 で あ っ た .Cu,Pb お よ び Zn は 溶 出 成 分 と み な せ る も の で あ り ,そ れぞれ累積溶出量は反復毎に減少傾向を示した. Cuは 最 大 溶 融 ス ラ グ 累 積 溶 出 量 を 示 し た S-3 で の み 非 溶 出 で あ っ た が ,そ の 他 の 試 料 で は 溶 出 し た . 溶 出 量 と 含 有 量 は 相 関 を 示 さ ず , 試 料 S-2 お よ び S-6 の 溶 出 量 を み る と ,塩 基 度 が 高 い 方 が 溶 出 量 が 増 す 82) ,結 晶 質 の 方 が 溶 出 量 が 増 す 53) と い っ た 傾 向 と 調 和 的 で あ っ た .Pbの 溶 出 挙 動 も Cuと 同 じ く 含 有 量 と 相 関 し て い な か っ た . 最 大 の 累 積 溶 出 量 を 示 し た S-3 お よ び 結 晶 質 ス ラ グ で あ る S-6 で は 非 溶 出 で あ っ た . ま た ,Pbは 塩 基 度 が 高 い 方 が 溶 出 量 が 増 す ,結 晶 質 の 方 が 溶 出 量 が 増 す と い っ た 傾 向 に も 従 っ て い な か っ た .Znは 溶 出 挙 動 に 違 い が あ る も の の 全 試 料 か ら 溶 出 し た が , 含有量と相関していなかった. ま た , こ こ で 扱 っ た 溶 融 ス ラ グ で は , Cu, Pb お よ び Zn の 溶 出 量 は Si の 溶 出 量 とも調和しないことから,骨格成分を置換する形で溶融スラグに取り込まれてはい ないと考えられる. 4)溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 の 比 較 か ら ,全 試 料 に お い て 溶 出 率 2 の 方 が 小 さ い 値 を 示 し た . こ の 現 象 は 以 下 の よ う に 考 え ら れ る .酸 領 域 で は H + が 直 接 溶 融 ス ラ グ に 作 用 し て 溶 融 ス ラ グ か ら の 溶 出 を 生 じ さ せ る こ と 78) か ら ,ア ル カ リ 成 分 の 溶 出 に よ り H + は 消 費 さ れ る .溶 出 率 1 で は 溶 媒 中 の H + は 6 回 補 給 さ れ る こ と に な る が ,溶 出 率 2 で は 消 費されたH+は補給されない.これより溶媒中のH+量が溶融スラグの溶出量を規制 していた. 5)溶 融 ス ラ グ の 溶 出 特 性 は 次 式 に 示 す よ う に ,溶 媒 の 液 性 の 違 い に よ り 異 な っ て い た . y =5.023( x ) 0.843 (pH4) y =2.812( x ) 0.916 (pH7) 試 料 S-2 ⑧ y =8.841( x ) 0.708 (pH4) y =7.367( x ) 0.760 (pH6) 試 料 S-3 ⑨ y =1.564( x ) 0.768 (pH4) y =0.886( x ) 0.900 (pH6) 試 料 S-5 ⑩ ⑧ ∼ ⑩ 式 は 前 項 で 示 し た よ う に ,溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 溶 媒 中 の H + が 規 定 す る こ と か ら,酸性領域の溶媒よりも中性領域における溶出量の方が少なくなることを例証し ていた. 以上より,溶融スラグをより安全に自然環境中で使用するにあたっては,有害重金 属類含有を低く抑えることはもとより,表面洗浄効果等使用前に除去しておくこと, また,エージング効果をも期待しストックヤードを確保して溶融スラグを寝かしてお くことが必要である.スラグ構成成分の溶出特性のより進んだ理解には,本論文では 96 充分に踏み込めなかったガラス構造の解析が必要になると考えられる. 第4章 人工骨材としての利用とその品質管理 97 4.1 人 工 骨 材 と し て の 利 用 4.1.1 は じ め に 溶融スラグの有効利用にあたり,多量消費の見込まれる用途は骨材としての利用で あ る . こ の 視 点 に 立 っ た 骨 材 資 源 化 に 至 る 経 過 は , 第 1 章 ( 表 1.6) に 示 し た . 本 章 においては,前章に示した溶融スラグの性状を基礎に,溶融スラグの骨材利用に関す る用途確認と用途拡大のための手順と結果を実証的に示した.水冷スラグ,空冷スラ グ お よ び 結 晶 質 ス ラ グ に 関 す る デ ー タ は , 千 葉 県 溶 融 ス ラ グ 有 効 利 用 研 究 会 報 告 18 ) お よ び 千 葉 県 廃 棄 物 情 報 技 術 セ ン タ ー 83) で の 調 査 に お い て 得 ら れ た も の で あ る .骨 材 としての利用にあたっては①溶融スラグ単体での使用,②道路用骨材(アスファルト 合 材 ),③ コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 お よ び ④ イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク 用 骨 材 の 利 用 が 想 定されてきた.このような使用方法に際して,多数の試験や実証試験がなされてきた (章末 表 4.29 参 照 ). 溶 融 ス ラ グ の 用 途 確 認 と 開 発 に あ た っ て の 試 験 項 目 ( 表 4.1) お よ び 手 順 (図 4.1 ) は 以 下 と な る . 利 用 に 値 す る 溶 融 ス ラ グ の 条 件 は , 重 金 属 類 ( As, Cd, Cr 6+ , Pb, Hg, Se) に 関 す る 溶 出 基 準 を 満 た す こ と で あ る ( 第 1 章 ; 表 1.5). 最 初 に 行 わ れ る 試 験 は JIS に も と づ い た 骨 材 試 験 で あ り ,そ の 結 果 か ら 溶 融 ス ラ グ がそれらの規格を満たすものかどうかを確認し,道路用砕石やその他の埋め戻し材等 としての使用可能性を評価する.それらの単体使用の可能性評価の後,他の骨材利用 の可能性を探ることになる. 続いて,利用可能な溶融スラグの製造における品質管理について考察した. 表 4.1 有 効 利 用 に 関 す る 試 験 項 目 調査項目 試験項目 JIS A1102 ふるいわけ試験 JIS A 1205 液性・塑性限界試験 骨材としての JIS A1104 単位容積質量試験 物理性状調査 JIS A1109 比重および吸水率(細骨材) JIS A1110 比重および吸水率(粗骨材) JIS A1121 すり減り減量試験 (舗装試験法便覧) 修正CBR試験 マーシャル性状試験 アスファルト混合物 密度・空隙率・飽和度 調 査 安定度・フロー値 ホイールトラッキング試験 スランプ値・空気量・温度 レディミクスト フレッシュコンクリート試験 コンクリート調査 硬化コンクリート圧縮強度 試験(7日・18日・91日) インターロッキング 製品のまげ強度試験 ブロック調査 (7日・14日) 道路用砕石など単体使用以外の骨材用途としては,アスファルト道路用骨材および 98 コンクリート用骨材(レディミクストコンクリート,インターロッキングブロック) 等が想定されてきた.それらの用途に適するか否かの評価は,溶融スラグにより天然 骨材を代替した製品を製造し,従来の天然骨材に対して定められた種々の規格との比 較からなされることになる. 図 4.1 溶融スラグ用途確認と開発の手順 4.1.2 試 験 対 象 溶 融 ス ラ グ と 溶 出 試 験 1. 試 験 対 象 ス ラ グ 試験対象とした溶融スラグは,アーク溶融炉・プラズマ溶融炉・表面溶融炉・コー クスベッド溶融炉・ロータリーキルン溶融炉・旋回流溶融炉において製造された水冷 ス ラ グ 17 試 料 ,プ ラ ズ マ 溶 融 炉・コ ー ク ス ベ ッ ド 溶 融 炉・ロ ー タ リ ー キ ル ン 溶 融 炉 ・ 電 気 抵 抗 溶 融 炉 に お い て 製 造 さ れ た 空 冷 ス ラ グ 6 試 料 ,酸 素 バ ー ナ ー 溶 融 炉 に お い て 製 造 さ れ た 結 晶 質 ス ラ グ 3 試 料 の 26 試 料 で あ っ た .こ れ ら の 溶 融 ス ラ グ に つ い て は , 環 告 46 号 法 に 準 じ た 溶 出 試 験 を 実 施 し た 後 , 表 4.2 に 示 し た 骨 材 試 験 , ア ス フ ァ ル 99 ト混合物試験,レディミクストコンクリート試験,インターロッキングブロック試験 を実施した. 表 4.2 No. W01 W02 W03 W04 W05 W06 W07 W08 W09 W10 W11 W12 W13 W14 W15 W16 W17 K01 K02 K03 K04 K05 K06 S01 S02 S03 試 験 対 象 ス ラ グ と 試 験 内 容 18) *1 種類(炉) 水冷(アーク溶融炉) ○ ○ 水冷(プラズマ溶融炉) 〃 〃 ○ 水冷(表面溶融炉) 水冷(プラズマ溶融炉) ○ 水冷(コークスベッド溶融炉) ○ 水冷(表面溶融炉) ○ 水冷(プラズマ溶融炉) ○ 水冷(表面溶融炉) ○ 水冷(プラズマ溶融炉) ○ 水冷(旋回流溶融炉) ○ 水冷(ロータリーキルン溶融炉) ○ 水冷(ロータリ-キルン溶融炉) ○ 水冷(コークスベド溶融炉) ○ 水冷(表面溶融炉) ○ 水冷(プラズマ溶融炉) ○ 空冷(プラズマ溶融炉) 〃 ○ 空冷(コークスベッド溶融炉) ○ 空冷(プラズマ溶融炉) 空冷(電気抵抗溶融炉) ○ 空冷(ロータリキルン溶融炉) 結晶化(酸素バーナー溶融炉) ○ 結晶化(酸素バーナー溶融炉) ○ 結晶化(酸素バーナー溶融炉) ○ *1; 骨 材 試 験 *2 *3 *4 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ *2; ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 試 験 *3; レ デ ィ ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 試 験 *4; イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク 試 験 2. 溶 出 試 験 結 果 試 験 対 象 と し た 溶 融 ス ラ グ の 環 告 46 号 に 準 じ た 溶 出 試 験 結 果 を 表 4.3 に 示 す . pH6 前 後 の 精 製 水 を 溶 媒 と し た 溶 出 試 験 の 場 合 は ,試 験 試 料 全 て が 溶 出 基 準 を 満 た し た . ま た , セ メ ン ト ペ ー ス ト は 水 と 接 触 し た 場 合 , 水 を 高 pH に 変 え る . 後 に 示 す レディミクストコンクリート用およびインターロッキングブロック用骨材としての利 用 を 考 慮 し , NaOH に よ り pH12 に 調 整 し た 溶 媒 に よ る 溶 出 試 験 も 実 施 し た . 高 pH 溶 媒 の 場 合 は ,Pb お よ び As の 溶 出 が 確 認 さ れ た .と く に Pb は 中 性 溶 媒 よ り も 高 pH 溶媒の場合において,明らかに溶出しやすいことが確認された. 表 4.3 中 性 溶 媒 お よ び ア ル カ リ 性 溶 媒 に よ る 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 試 験 結 果 1 8 ) ( 単 位 : mg/L) 100 W02 W02 W03 W03 W04 W04 W09 W09 W10 W10 W12 W12 W13 W13 W14 W14 W16 W16 W17 w17 K02 K02 K03 K03 K05 K05 K06 K06 溶媒pH 溶出液pH Cd 6.02 9.03 <0.001 12.00 11.91 <0.001 4.97 8.41 <0.001 12.00 11.84 <0.001 5.67 6.95 <0.001 12.00 12.01 <0.001 6.04 9.02 <0.001 12.03 11.92 <0.001 6.02 9.94 <0.001 12.00 12.03 <0.001 6.02 8.58 <0.001 12.00 11.96 <0.001 6.10 9.90 <0.001 12.00 12.20 <0.001 6.10 9.90 <0.001 12.00 12.20 <0.001 6.02 9.51 <0.001 12.00 11.95 <0.001 6.02 9.30 <0.001 12.00 11.97 <0.001 5.67 7.08 <0.001 12.03 11.81 <0.001 6.04 9.97 <0.001 12.03 11.90 <0.001 6.30 6.90 <0.001 11.90 11.80 <0.001 6.10 8.70 <0.001 12.00 12.30 <0.001 Pb 0.004 0.065 <0.002 0.007 <0.002 <0.001 <0.001 0.006 <0.001 0.002 <0.001 <0.001 0.001 0.003 0.002 0.005 0.001 0.032 <0.001 <0.001 <0.002 <0.002 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Cr6+ <0.01 <0.01 <0.04 <0.01 <0.04 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.04 <0.04 <0.04 <0.04 <0.01 <0.01 <0.01 <0.01 <0.04 <0.01 <0.01 <0.01 <0.04 <0.04 <0.04 <0.04 As <0.001 0.002 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.002 0.001 0.003 0.002 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 4.1.3 溶 融 ス ラ グ の 骨 材 試 験 1. 試 料 と 骨 材 試 験 溶融スラグの骨材としての性状を把握するために骨材試験を行った.骨材試験を行 っ た 溶 融 ス ラ グ は 水 冷 ス ラ グ 14 試 料 , 空 冷 ス ラ グ 4 試 料 , 砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ 2 試 料 , 砂 状 結 晶 質 ス ラ グ 1 試 料 の 21 試 料 で あ る . 試 験 の 実 施 に あ た り , 前 処 理 と し て 水冷スラグおよび砂状結晶質スラグは有姿とし,空冷スラグおよび砂利状結晶質スラ グ は 破 砕 処 理 後 , 主 に 粒 径 40 mm 以 下 の 部 分 を 試 験 試 料 と し た . 2. 試 験 結 果 各 試 料 の 骨 材 試 験 結 果 の う ち , 粒 度 試 験 結 果 に つ い て は 表 4.4 お よ び 図 4.2 に 示 し た . ふ る い 分 け 試 験 結 果 は 以 下 で あ っ た . 水 冷 ス ラ グ の 粒 度 は W08, W14, W16 を 除 く と 90 %以 上 が 4.75 mm 以 下 で あ っ た . 2.36 mm 以 下 の 割 合 は 最 高 で 99 % , 最 低 で も 47 % , 1.18 mm 以 下 の 割 合 は 最 高 で 88 % , 最 低 で も 18 % を 示 し た . そ れ ぞ れ 試 料 別 に み る と ,1.18 mm 以 上 の 粒 子 を 主 と す る と も の と ,1.18 mm 以 下 の 粒 子 を 主 と す る も の と に 分 か れ た (図 4.2).こ の よ う な 粒 度 分 布 を 持 つ 溶 融 ス ラ グ は ,後 に 示すアスファルト用骨材やレディミクストコンクリート用骨材として使用する場合の 標準粒度に合わせるため,溶融スラグ配合率に影響を与えるものである.また,空冷 ス ラ グ お よ び 結 晶 質 ス ラ グ は 40 mm 以 下 に 破 砕 す る こ と を 条 件 と し た た め , 表 4.4 101 に示した結果となった. 表 4.4 溶 融 ス ラ グ の 粒 度 1 8 ) 試料 53.0 W01 W02 W05 W07 W08 W09 W10 W11 W13 W14 W15 W16 W17 K01 K03 K04 K05 K06 S01 S02 S03 37.5 100.0 99.4 100.0 100.0 100.0 100.0 99.2 100.0 99.5 通 過 百 分 率 (ふるい目開き(mm) 19.0 9.50 4.75 2.36 1.18 0.60 0.30 0.16 粗粒率(%) 100.0 99.8 99.3 87.7 50.4 26.5 14.2 2.22 100.0 98.7 79.3 33.0 11.3 4.4 1.6 3.72 100.0 98.3 52.8 18.0 5.5 1.7 0.6 4.23 100.0 90.8 61.2 21.9 5.4 1.8 0.7 4.18 99.1 81.6 47.6 17.8 6.4 2.1 0.7 4.45 100.0 99.6 90.1 42.3 11.4 2.6 0.6 3.53 100.0 99.3 76.9 32.0 12.0 4.0 2.76 100.0 99.4 90.8 45.0 15.2 5.6 1.9 3.42 100.0 97.9 70.5 29.4 9.0 3.2 1.4 3.89 100.0 89.8 56.8 24.4 8.9 3.0 1.0 4.16 100.0 99.5 96.6 66.5 20.4 5.0 1.3 3.11 99.5 92.0 66.9 29.7 9.8 3.7 1.4 3.97 100.0 99.7 63.4 20.5 6.4 2.3 0.7 4.07 58.4 13.2 6.8 − − − − − 52.8 14.3 8.1 − − − − − 91.5 15.0 7.3 − − − − − 88.2 38.4 23.2 − − − − − 50.4 13.7 5.8 − − − − − 74.1 36.4 20.5 − − − − − 63.9 6.2 1.6 − − − − − 100.0 74.0 28.7 7.8 2.0 0.6 0.2 4.87 100 90 80 W01 70 W02 構成率 % W05 W07 60 W08 W09 50 W10 W11 W13 40 W14 W15 30 W16 W17 20 10 0 0.16 0.30 0.60 1.18 2.36 4.75 9.50 粒径 mm 図 4.2 水 冷 ス ラ グ の 粒 度 ( 通 過 百 分 率 ) デ ー タ は 表 4.4 に よ る ふ る い 分 け 試 験 以 外 の 試 験 結 果 は , 表 4.5 に 示 し た . 液 性 限 界 , 塑 性 限 界 は 全 て が NP で あ っ た . 単 位 容 積 質 量 は , 絶 乾 状 態 で 1.375∼ 2.022 kg/l で あ り , 水 冷 ス ラ グ < 空 冷 ス ラ グ <結晶質スラグの傾向を示した. 比 重 に つ い て は 表 乾 比 重 で 2.487∼ 3.155, 絶 乾 比 重 で 2.466∼ 3.130 で あ る が , 単 102 位容積質量同様,水冷スラグ<空冷スラグ<結晶化スラグの傾向を示した. 吸 水 率 は ,砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ は 0.59∼ 0.81 % ,空 冷 ス ラ グ は 0.09∼ 0.39 % で あ る が , 水 冷 ス ラ グ は 0.05∼ 1.66 % と そ の 幅 が 広 か っ た . ま た 砂 状 結 晶 質 ス ラ グ は 2.01 % と 大 き か っ た . す り 減 り 減 量 は ,水 冷 ス ラ グ で 52.2∼ 87.3 % ,空 冷 ス ラ グ で 26.1∼ 39.5 % ,砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ で 13.4∼ 18.2 % ,砂 状 結 晶 質 ス ラ グ で 45.4 % で あ っ た .水 冷 ス ラ グ と砂状結晶質スラグに比べ砂利状石材化スラグおよび空冷スラグでは小かった. 修 正 CBR は , 水 冷 ス ラ グ で 10.5∼ 21.4 % , 空 冷 ス ラ グ で 19.2∼ 60.3 % , 砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ で 29.5∼ 60.2 % , 砂 状 結 晶 化 ス ラ グ で 17.7 % で あ っ た . 水 冷 ス ラ グ , 砂状結晶質スラグに比べ砂利状結晶質スラグおよび空冷スラグでは大きかった. 表 4.5 骨 材 試 験 結 果 1 8 ) 試料 液性限界塑性限界 W01 W02 W05 W07 W08 W09 W10 W11 W12 W13 W14 W15 W16 W17 K01 K03 K04 K05 K06 S01 S02 S03 NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP NP 単位容積質量(kg/l) 表乾比重絶乾比重真比重 吸水率% すり減り減量%修正CBR% 気乾 絶乾 1.969 1.967 2.696 2.641 2.702 0.11 21.4 1.581 1.579 2.685 2.682 2.692 0.15 10.7 12.5 1.602 1.602 2.722 2.720 2.725 0.07 53.9(D) 1.488 1.488 2.657 2.641 2.685 0.62 64.4(D) 13.1 1.585 1.582 2.708 2.664 2.787 1.66 65.0(D) 12.5 1.686 1.686 2.866 2.864 2.868 0.05 61.1(D) 12.8 1.695 1.693 2.850 2.842 2.866 0.29 10.5 1.554 1.552 2.737 2.730 2.748 0.23 14.0 1.496 1.496 2.487 2.466 2.519 0.85 52.2(C) 16.5 11.7 1.615 1.613 2.838 2.834 2.845 0.13 62.1(D) 10.8 1.556 1.554 2.735 2.730 2.743 0.18 63.9(D) 1.380 1.375 2.560 2.537 2.597 0.92 87.3(D) 15.5 1.581 1.579 2.757 2.748 2.772 0.32 77.4(D) 13.0 11.9 1.559 1.559 2.737 2.730 2.748 0.24 77.2(D) 60.3 1.695 1.695 2.714 2.704 2.732 0.39 26.1(A) 1.831 1.831 2.820 2.816 2.827 0.15 39.5(A) 44.3 1.629 1.629 2.844 2.837 2.858 0.25 32.3(C) 19.2 29.9 1.821 1.821 2.656 2.652 2.663 0.16 32.9(C) 37.3 1.940 1.940 3.021 3.019 3.027 0.09 33.0(C) 2.024 1.022 3.155 3.130 3.211 0.81 18.2(C) 60.2 1.775 1.773 3.011 2.994 3.047 0.59 13.4(C) 29.5 17.7 1.822 1.822 3.014 2.955 3.142 2.01 45.4(D) 4.2 単 体 で の 使 用 溶 融 ス ラ グ を 道 路 用 砕 石 と し て 使 用 す る 場 合 は , 道 路 用 砕 石 ( JIS A 5001) の 規 定 に 適 合 す る も の で な け れ ば な ら な い .こ こ で 規 定 さ れ て い る 物 理 性 状 は ,粒 度・比 重 ・ 吸水率・すりへり減量の4項目である. こ れ ら の 基 準 を 水 冷 ス ラ グ 試 料 ( 表 4.5) に 適 用 す る と , 粒 度 項 目 で み る と , 最 も 細 粒 の 砕 石( S-5)の 規 格 で も 1.2 mm 通 過 質 量 百 分 率 は 5% 以 内 で あ る の で ,当 該 粒 度 を 8∼ 88 % 含 む 水 冷 ス ラ グ ,砂 状 結 晶 質 ス ラ グ は 道 路 用 砕 石 と し て は 不 適 で あ っ た . 粒度調整の可能な空冷スラグおよび砂利状結晶質スラグは,いずれも表乾比重の基 準 2.45 以 上 ,吸 水 率 の 基 準 3.0 % 以 下 ,す り 減 り 減 量 の 基 準 40 以 下 の 条 件 を 満 た し 103 て い る こ と か ら 粉 砕 等 に よ り ,ア ス フ ァ ル ト 舗 装 の 表 層 や 基 層 用 途 以 外 の 単 粒 度 砕 石 , クラッシャランとしての使用が可能であると判断できた. 路盤材として使用する場合は,アスファルト舗装要綱:骨材品質規格の路盤用に掲 げ る 項 目 お よ び 修 正 CBR の 基 準( 上 層 路 盤 材 と し て は 80 % 以 上 ,下 層 路 盤 材 と し て は 20 % 以 上 )を 満 足 し な け れ ば な ら な い .道 路 用 砕 石 と し て 使 用 で き る 空 冷 ス ラ グ , 砂利状結晶質スラグに上述の基準をあてはめると,上層路盤材としてはいずれも不適 であるが,下層路盤材としての使用基準を満たす結果であった. 砂 に つ い て は JIS の 規 格 が な い こ と か ら 細 粒 の 水 冷 ス ラ グ お よ び 砂 状 石 材 化 ス ラ グ は,埋め土材,盛り土材,積みブロックや擁壁等の裏込め材,暗渠排水のフィルター 材等に使用することが可能と考えられる. したがって,水冷スラグ,砂状結晶質スラグは二次製品を作ることなく,単体で埋 め土材,盛り土材,裏込め材,暗渠排水のフィルター材に使用することが可能と考え られる.粒度調整の可能な空冷スラグ,砂利状結晶質スラグは上述の用途以外に,道 路用砕石,道路用クラッシャラン,下層路盤材として使用できると考えられる. 4.3 ア ス フ ァ ル ト 用 骨 材 と し て の 使 用 4.3.1 配 合 設 計 溶融スラグの単体使用以外の用途として,アスファルト用骨材として使用する場合 を 検 討 し た . 試 験 の 手 順 は , 図 4.3 に 示 し た . そ の 他 材 料 の 性 状 把 握 溶 融 ス ラ グ の 骨 材 性 状 把 握 ス ラ グ 粒 度 調 整 (細 骨 材 <5m m ) (粗 骨 材 6号 ) (粗 骨 材 7号 ) ス ラ グ 混 入 率 の 決 定 標 準 粒 度 に あ わ せ た 配 合 割 合 の 決 定 配 合 割 合 に 基 づ く試 験 配 合 供 試 体 の マ ー シ ャ ル 性 状 試 験 密 度 ・空 隙 率 ・飽 和 度 ・ 安 定 度 ・フ ロ ー 値 最 適 ア ス フ ァ ル ト量 の 決 定 最 適 ア ス フ ァ ル ト量 に よ る 試 験 配 合 供 試 体 の 性 状 試 験 動 的 安 定 度 (ホ イ ー ル トラ ッ キ ン グ 試 験 ) 図 4.3 ア ス フ ァ ル ト 用 骨 材 と し て の 試 験 手 順 アスファルト用骨材については特別の規定がないために,天然骨材の一部を溶融ス ラグにより置換したアスファルト混合物を作成し,その性状が基準混合物の基準値に 104 合致するかを検討した.作成したアスファルト混合物は,密粒度アスファルト混合物 (13)と し た . ま た , マ ー シ ャ ル 試 験 の 交 通 量 条 件 は B 交 通 以 下 と し た . 道 路 用 砕 石 の 品 質 条 件 ( JIS A5001) を 基 準 に し , 表 4.5 の 試 験 結 果 を 参 考 に し て ア ス フ ァ ル ト 用 骨 材 試 験 を 行 っ た 溶 融 ス ラ グ は 水 冷 ス ラ グ 14 試 料 , 空 冷 ス ラ グ 4 試 料 , 砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ 2 試 料 の 20 試 料 で あ る . 試 験 に あ た り , 水 冷 ス ラ グ , 空 冷 ス ラ グ は 細 骨 材 とするため破砕・篩分けを行い,砂利状スラグは,6 号砕石,7 号砕石とするため破 砕・篩分けを行った. 配合試験およびホイールトラッキング試験に使用した混合物の天材骨材の産地およ び 骨 材 性 状 は 以 下 の 通 り で あ っ た ( 表 4.6). 表 4.6 供 試 体 に 使 用 し た 骨 材 の 産 地 と 物 理 性 状 骨材種 6号砕石 7号砕石 中目砂 細 砂 石 粉 産 地 栃木県葛生 栃木県葛生 茨城県稲敷 茨城県下都賀 埼玉県入間 見かけ比重 2.695 2.71 2.673 2.663 2.7 吸水率(%) 0.74 1.17 2.76 2.28 0.2 すり減り減量(%) − − − − 15.3 溶 融 ス ラ グ の 配 合 割 合 は 細 骨 材 と し て 使 用 す る 場 合 は 10∼ 30 %, 砕 石 と し て 使 用 す る 場 合 は 6 号 砕 石 ,7 号 砕 石 と 合 わ せ て 60 %と し た .標 準 混 合 物 の 粒 度 に 合 わ せ た 混 合 物 の 合 成 粒 度 は 表 4.7( こ こ で は 水 冷 ス ラ グ , 空 冷 ス ラ グ , 結 晶 質 ス ラ グ そ れ ぞ れの平均を示した)となった. 表 4.7 ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 合 成 粒 度 1 8 ) 表 中 水 冷 10%( n =6) の 表 記 は , 天 然 骨 材 を 水 冷 ス ラ グ に よ り 10%置 換 し , 水 冷 ス ラ グ 6 の 表 記 は 試 料 数 を 表 す . 以 下 同 じ で あ る . ふるい目開き(mm) 粒 度 範 囲(%) 粒 度 範 囲(%) 標 準 粒 度(%) 水冷 10% (n =6) 水冷 20%(n =15) 水冷 30% (n =1) 空冷 10% (n =1) 空冷 20% (n =3) 結晶化60% (n =2) 0.075 4 8 5.9 5.8 5.8 5.5 6.0 5.8 5.4 0.15 6 16 8.1 7.7 8.1 7.3 8.1 6.5 7.5 0.3 10 21 14.2 12.8 11.9 10.7 13.4 13.2 12.8 0.6 18 30 26.6 23.2 21.0 18.0 24.4 23.4 23.8 2.36 35 50 42.4 42.6 42.6 42.6 42.0 42.7 38.5 4.75 55 70 63 62.7 62.9 63.6 63.0 63.0 60.1 13.2 19.0 95 100 100 100 100 100 100 100 99.3 100 100 100 100 100 100 100 100 100 4.3.2 試 験 方 法 と 結 果 供試体の作成とホイールトラッキング試験条件はアスファルト舗装要綱,試験方法 は舗装試験法便覧によった.また,マーシャル試験基準値はアスファルト舗装要綱に よった. ア ス フ ァ ル ト 量 4.0∼ 6.5 %に お け る マ ー シ ャ ル 性 状 に つ い て 検 討 し た 結 果 ,最 適 ア 105 ス フ ァ ル ト 量 が 5.0∼ 6.0 %と 求 め ら れ ,こ れ を も と に 作 成 し た 供 試 体 に よ る 試 験 結 果 を 表 4.8 示 し た . こ の 時 の マ ー シ ャ ル 性 状 は 密 度 2.329∼ 2.548 g/cm 3 , 空 隙 率 3.7∼ 4.1 %, 飽 和 度 75.4∼ 78.6 %, 安 定 度 717∼ 873 kgf, フ ロ ー 値 24∼ 27 (l/100cm) と 設計基準をほぼ満足し,標準品と同等であった.動的安定度は細骨材として溶融スラ グ を 配 合 し た 場 合 215∼ 538 回 /mmと 標 準 品 ( 380 回 /mm) と ほ ぼ 同 等 で あ り , 設 計 条 件 が B交 通 以 下 で あ れ ば 溶 融 ス ラ グ に よ る 天 然 骨 材 の 20 %程 度 の 代 替 を 可 能 と す る 結 果 で あ っ た (図 4.4). し か し , 砕 石 と し た 場 合 は 動 的 安 定 度 が 215 (回 /mm) と 標 準 品に比べ劣っていた.この結果に関しては,破砕方法等を含めたアスファルト用骨材 としての試験とその結果に基づく溶融スラグ配合率の見直し,他の骨材の配合割合の 検討を行い,最適な溶融スラグ配合率を決定する必要があると考えられる. 表 4.8 最 適 ア ス フ ァ ル ト 量 に お け る マ ー シ ャ ル 性 状 と 動 的 安 定 度 1 8 ) スラグ混入率 アスファルト量 % % 0 標準 5.9 水冷(n=6);10% 10 5.6 水冷(n =14);20% 20 5.5 水冷(n =2);30% 30 5.6 空冷(n =1);10% 10 5.5 空冷(n =3);20% 20 5.5 結晶質(n =2);60% 60 5.9 900 800 700 600 安定度(kgf) 500 動的安定度 (回/mm) 400 300 200 100 0 密度 g/cm3 2.361 2.375 2.383 2.394 2.368 2.569 2.535 空隙率 飽和度 フロ-値 安定度 動的安定度 回/mm % % 1/100 cm kgf 3.8 78 33 855 380 3.9 76 25 873 538 3.9 77 25 788 421 4.0 77 27 754 370 4.1 75 26 856 550 3.9 77 24 779 427 4.0 78 25 717 215 標準 水冷(n=6);10% 水冷(n=14);20% 水冷(n=2);30% 空冷(n=1);10% 空冷(n=3);20% 結晶化(n=2);60% 安定度 動的安定度 図 4.4 最 適 ア ス フ ァ ル ト 量 に お け る 安 定 度 お よ び 動 的 安 定 度 安 定 度 ; kgf 動 的 安 定 度 ; 回 /mm 4.4 コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 と し て の 使 用 106 4.4.1 レ デ ィ ー ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 溶融スラグをコンクリート用砕石・砕砂として使用する場合は,コンクリート用砕 石 及 び 砕 砂 ( JIS A5005) の 規 定 に 適 合 す る も の で な け れ ば な ら な い . こ こ で 規 定 さ れている物理性状は,粒度,絶乾比重,吸水率,安定性,すり減り減量および洗い試 験で失われる量である. これらの基準を溶融スラグに対比させると,砕石としては,粒度の項目で最も細粒 の 砕 石 の 規 格 で も 2.5 mm 通 過 質 量 百 分 率 は 5 %以 内 で あ る の で , 当 該 粒 度 を 29∼ 99 %含 む 水 冷 ス ラ グ お よ び 砂 状 結 晶 質 ス ラ グ は 全 て コ ン ク リ ー ト 用 砕 石 と し て は 不 適 と な る (表 4.4).粒 度 調 整 の 可 能 な 空 冷 ス ラ グ お よ び 砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ は ,い ず れ も 絶 乾 比 重 の 基 準 2.5 以 上 , 吸 水 率 の 基 準 3.0 % 以 下 , す り 減 り 減 量 の 基 準 40 %以 下の基準を満たしているところから,コンクリート用砕石としての使用を可能とする 結 果 で あ っ た (表 4.5). 砕 砂 と し て は , 砕 砂 の 粒 度 範 囲 は 10 mm 以 下 で あ る の で , 粒 度調整を行う必要があるが,空冷スラグおよび結晶質スラグいずれも絶乾比重の基準 2.5 以 上 を ,吸 水 率 の 基 準 3.0 %以 下 を 満 た し て い る と こ ろ か ら ,コ ン ク リ ー ト 用 砕 砂 と し て の 使 用 が 可 能 で あ る (表 4.5). 以上の結果より,コンクリートレデイーミクスト用骨材としての可能性について, 図 4.5 に 示 し た 試 験 手 順 に し た が っ て 検 討 し た . 溶融スラグの骨材試験 材料の骨材試験 スラグ混入率の決定 標準粒度に配合割合の決定 配合割合に基づく試験配合 供試体の作成・フレッシュコンクリート試験 スランプ値 空気量 コンクリート温度 供試体の養生(7日/28日/91日) 硬化コンクリートの圧縮強度試験 図 4.5 レ デ イ ー ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 と し て の 試 験 手 順 4.4.2 レ デ ィ ー ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 配 合 設 計 107 レディーミクストコンクリートの原料とその産地は以下である.使用セメントは秩 父 小 野 田 (現 太 平 洋 セ メ ン ト )普 通 ポ ル ト ラ ン ド セ メ ン ト (比 重 3.16), 細 骨 材 用 の 砂 は 千 葉 県 富 津 市 産 ,そ れ を 代 替 す る 溶 融 ス ラ グ は 水 冷 ス ラ グ( 表 4.9 の W シ リ ー ズ )で あり,粗骨材用の砕石は茨城県西茨城産,それを代替する溶融スラグは空冷および結 晶 質 ス ラ グ( 表 4.9 の K お よ び S シ リ ー ズ )を 使 用 し た .ま た ,化 学 混 和 剤 は AE 減 水 剤 (ポ ゾ リ ス No.70)を 使 用 し た . レ デ ィ ー ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 試 験 を 行 っ た 溶 融 ス ラ グ は 水 冷 ス ラ グ 11 試 料 , 空 冷 ス ラ グ 3 試 料 , 砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ 2 試 料 の 16 試 料 で あ る ( 表 4.9). 試 験 にあたり,細骨材として使用した水冷スラグは有姿のまま,空冷スラグは破砕・篩分 けをした.粗骨材として使用した砂利状結晶質スラグについても空冷スラグ同様破 砕・篩分けを行った. 溶 融 ス ラ グ の 配 合 割 合 は 粒 度 試 験 等 か ら ,溶 融 ス ラ グ に よ る 天 然 骨 材 の 代 替 率 は 10 ∼ 100 %と し た . 溶 融 ス ラ グ 毎 の 配 合 設 計 は 表 4.9 に 示 し た . ま た , 供 試 体 作 成 時 の 配合条件,練り混ぜ条件および供試体の条件および試験項目と試験方法について表 4.10 に 示 し た . 表 4.9 レ デ イ ー ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト の 配 合 設 計 1 8 ) 水 使 用 スラグ 細骨材率 セメント 細骨材(kg/m3) スラグ 混入率 容積(%) Kg/m3 kg/m3 砂 スラグ 基準 0 44.0 295 162 792 0 W02 20 45.0 298 164 645 166 W02 30 46.0 295 162 578 256 W07 20 45.0 298 164 645 171 W07 30 46.0 300 165 576 260 W08 20 45.0 298 164 645 167 W08 30 46.0 300 165 576 245 W09 10 44.0 296 163 709 89 W09 30 44.5 298 164 558 267 W09 50 45.5 302 166 406 451 W10 50 45.0 295 162 406 429 W10 100 44.5 295 162 0 852 W11 20 45.0 298 164 645 173 W11 30 45.0 315 173 565 258 W12 20 45.0 298 164 645 160 W12 30 46.0 300 165 576 244 W13 20 45.0 295 162 648 176 W13 30 47.0 284 156 599 280 W13 40 48.0 282 155 527 381 W14 20 46.0 291 160 663 173 W14 30 47.0 285 157 599 266 W14 40 48.0 295 162 519 356 W16 20 45.0 296 163 645 174 W16 30 46.0 298 164 578 265 W17 20 45.0 298 164 645 173 W17 30 46.0 302 166 573 263 K01 30 44.3 285 157 807 0 K01 50 44.6 280 154 817 0 K03 20 45.0 298 164 645 168 K03 30 46.0 300 165 576 256 K06 50 41.5 273 150 766 0 S01 50 44.6 295 162 792 0 S01 100 44.6 295 162 792 0 S02 50 44.3 295 162 792 0 S02 100 44.6 295 162 792 0 粗骨材(kg/m3) 混和剤 3 砕石 スラグ Kg/m 1043 0 0.738 1019 0 0.745 1005 0 0.738 1019 0 0.745 998 0 0.750 1019 0 0.745 998 0 0.750 1040 0 0.740 1029 0 0.745 1005 0 0.755 1024 0 0.738 1032 0 0.738 1019 0 0.745 979 0 0.788 1019 0 0.750 998 0 0.745 1024 0 0.738 1000 0 0.710 984 0 0.705 1011 0 0.728 998 0 0.712 968 0 0.738 1021 0 0.740 1000 0 0.745 1019 0 0.745 995 0 0.755 734 326 0.712 524 544 0.700 1019 0 0.745 998 0 0.750 561 634 0.682 521 592 0.738 0 1184 0.738 521 608 0.738 0 1215 0.738 表 4.10 配 合 条 件 , 練 り 混 ぜ 条 件 , 供 試 体 の 条 件 , 試 験 項 目 と 試 験 方 法 108 配 合 条 件 55% 水/セメント比 スランプ値 8±1.5 cm 空 気 量 4.5±1.0 % 練 り混 ぜ 条 件 ミキサー 501型強制練り 材料投入 一括投入 練り混ぜ量 30l 練り混ぜ時間 90秒 供 試 体 の 条 件 供試体寸法 φ10×20 cm 作成方法 JIS A1132(1配合9本採取) 養生法法 標準水中養生(20 ℃±3 ℃) 試験項目と試験方法 スランプ JIS A1101 空気量 JIS A1128 コンクリート温度 棒状温度計 圧縮強度 JIS A1108 所要材齢 7日,28日,91日 4.4.3 試 験 結 果 供試体作成時のフレッシュコンクリート試験結果と硬化コンクリートの圧縮強度を 表 4.11 に 示 し た . 表 4.11 水 冷 ス ラ グ 配 合 フ レ ッ シ ュ コ ン ク リ ー ト 試 験 結 果 と 硬 化 コ ン ク リ ー ト の 圧 縮 強 度 1 8 ) 使 用 スラグ 基準 W02 W02 W07 W07 W08 W08 W09 W09 W09 W10 W10 W11 W11 W12 W12 W13 W13 W13 W14 W14 W14 W16 W16 W17 W17 フレッシュコンクリート スラグ 混入率 スランプ 空気量 温度 0 8.0 4.5 20 20 8.0 4.0 19 30 9.0 4.2 19 20 7.5 3.6 20 30 7.5 3.7 20 20 8.0 3.6 20 30 7.5 3.6 20 10 9.0 4.7 20 30 9.0 4.9 20 50 8.0 4.9 20 50 9.5 4.5 19 100 9.0 4.4 19 20 8.0 4.2 20 30 9.0 5.3 20 20 8.5 4.7 20 30 8.0 4.5 20 20 8.5 4.1 19 30 8.0 5.0 19 40 6.5 4.5 19 20 9.0 4.3 19 30 8.5 4.9 19 40 8.5 5.0 19 20 8.0 4.7 20 30 8.5 4.9 20 20 9.0 4.5 20 30 8.5 4.7 20 圧縮強度(N/mm2) 7日 28日 91日 25.0 33.7 39.1 24.4 35.6 42.2 27.0 35.4 42.0 21.6 31.4 36.5 19.6 30.8 37.1 22.0 29.3 37.5 22.0 32.7 38.7 24.2 33.2 38.6 24.4 33.3 38.3 23.1 31.9 38.2 26.5 39.4 47.2 25.4 39.0 46.1 21.1 30.9 38.0 20.6 28.9 35.0 24.3 33.5 37.6 25.2 34.4 38.2 24.9 33.1 40.4 24.2 33.9 39.2 24.3 34.9 39.7 25.8 34.5 40.1 23.5 31.8 38.0 24.6 32.7 37.7 24.3 33.0 37.8 23.2 31.4 36.3 24.8 33.3 37.9 25.6 34.2 38.3 いずれの配合においても,フレッシュコンクリートのスランプ値,空気量は,配合 109 条 件( ス ラ ン プ 値 8±1.5 cm,空 気 量 4.5±1.5 %)に 合 致 す る も の で あ っ た .91 日 材 齢 硬 化 コ ン ク リ ー ト 圧 縮 強 度 は ,粗 骨 材 を 空 冷 ス ラ グ に よ り 50 %置 換 し た 場 合 は 基 準 硬 化 体 の 83 %と や や 低 下 し た .粗 骨 材 と し て 使 用 し た 砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ の 場 合 お よ び 細 骨 材 と し て 使 用 し た 水 冷 ス ラ グ , 空 冷 ス ラ グ の 場 合 い ず れ も 基 準 硬 化 体 の 90% 以 上であり,強度的には天然骨材のみを使用したコンクリートとほぼ同等であった.粗 骨材として空冷スラグを使用する場合溶融スラグ置換率の検討が必要であるが,砂利 状 結 晶 質 ス ラ グ で は 50∼ 100 %の 置 換 が 可 能 と 考 え ら れ る . ま た , 細 骨 材 と し て 使 用 す る 場 合 は 20∼ 30 %の 置 換 を 可 能 と す る 結 果 で あ っ た . 表 4.12 空 冷 お よ び 結 晶 化 ス ラ グ を 混 入 し た フ レ ッ シ ュ コ ン ク リ ー ト 試 験 結 果 と 硬 化 コ ン ク リ ー ト の 圧 縮 強 度 18) 使 用 スラグ K01 K01 K03 K03 K06 S01 S01 S02 S02 フレッシュコンクリート スラグ 混入率(%) スランプ(cm) 空気量(%) 温度(℃) 30 8.5 4.1 19 50 7.5 4.5 19 20 8.5 4.0 20 30 7.0 3.7 20 50 8.5 3.7 20 50 8.0 4.0 20 100 8.5 4.4 20 50 7.0 3.7 20 100 7.5 3.9 20 2 圧縮強度(N/mm ) 7日 28日 91日 25.1 32.8 36.9 21.5 27.0 29.9 20.3 30.7 38.0 22.4 32.3 39.8 19.3 27.0 32.0 26.8 36.8 39.8 27.2 37.3 42.9 26.1 37.0 43.7 27.1 36.9 45.1 4.4.4 プ ラ ン ト か ら の 製 造 出 荷 の 検 討 1 検討課題と試験手順および使用材料 フレッシュコンクリート試験およびその硬化コンクリートの強度試験を通して,溶 融スラグのコンクリ−ト用天然骨材の代替可能性が示されたと考えられる.こうした 結果を基に,レディーミクストコンクリートプラントにおいて溶融スラグ入りコンク リートとして出荷を可能とできるならば,溶融スラグの用途はさらに拡大することに なる.この目的に対して溶融スラグ入りのレディーミクストコンクリートのフレッシ ュコンクリートおよび硬化コンクリートの性状再確認,レディーミクストコンクリー トの運搬性と施工性に関する課題を検討した. 課題の検討にあたり,最初の段階で対象となる溶融スラグの骨材試験を行った.検 討 課 題 は 溶 融 ス ラ グ 配 合 フ レ ッ シ ュ コ ン ク リ ー ト の 1)ワ ー カ ビ リ テ ィ ー の 確 認 , 2) 軟 ら か さ を 示 す ス ラ ン プ の 確 認 , 3)ブ リ ー デ ィ ン グ の 確 認 と し た . ま た , 溶 融 ス ラ グ 配 合 硬 化 コ ン リ ー ト に 関 し て は , 1)圧 縮 強 度 , 2)曲 げ 強 度 お よ び 引 っ 張 り 強 度 , 3)静 弾 性 係 数 の 試 験 と し た . こ の よ う に 設 定 し た 課 題 の 検 討 を 進 め る 手 順 は 図 4.6 に 示 し た .第 1 段 階 か ら 第 3 段 階 ま で の 試 験 は 室 内 試 験 で あ り ,実 機 プ ラ ン ト で の 試 し 練 り からトラックアジテーター(搬送)を介した現場での打設(ポンプ圧送)試験に耐え 110 る溶融スラグを選別した後,一連の試験を行った. 2. 骨 材 試 験 結 果 この試験にあたって使用した細骨材,粗骨材および溶融スラグの骨材試験結果は表 4.13 に 示 し た . 溶 融 ス ラ グ MZ, TGお よ び TSSは 細 骨 材 と し て , 溶 融 ス ラ グ TSGは 粗 骨 材 と し て の 天 然 骨 材( 陸 砂・砕 石 2005)置 換 用 で あ る .そ れ ぞ れ の 溶 融 ス ラ グ を 陸 砂 の 性 状 と 比 較すると,溶融スラグは,粗粒率および密度が大であり,吸水率,実績率および微粒 粉 量 は 小 で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ の 密 度 が 陸 砂 に 比 較 し て 大 で あ る こ と は , Fe 2 O 3 含 有 量 が 高 い こ と に よ る 50) .吸 水 率 が 小 さ い こ と は ,溶 融 ス ラ グ 粒 子 表 面 が 陸 砂 に 較 べ 平 滑であり,割れ目も少ないこと等によると考えられる.また,溶融スラグの実績率が 陸砂に較べて著しく低いことは,コンクリート充填時に空隙率が大きくなることを意 味しており,単位水量が増大し,ワーカビリティー悪化の要因となる可能性がある. 粗 骨 材 置 換 用 と し て の 溶 融 ス ラ グ TSG と 砕 石 と の 比 較 内 容 は , 細 骨 材 代 替 用 の 溶 融スラグと同様であった. 第1段階:骨 材 物 理 試 験 検 討 ・ 第3段階:試し練りステップ2 (水セメント比,スランプ試験) 改 室内試し練り 第2段階:試し練りステップ1 (溶融スラグ置換率試験) 善 実機プラントによる試し練り 第4段階:ミニポンプ圧送試験 模擬試験体による検討 適 応 性 の 評 価 図 4.6 実 機 プ ラ ン ト に よ る 製 造 出 荷 の 検 討 手 順 表 4.13 使 用 材 料 の 骨 材 試 験 結 果 8 3 ) 111 粗粒率(%) 表乾密度(g/cm3) 吸水率(%) 単位容積質量(kg/l) 実績率(%) 微粒粉量(%) 試験法 JIS A 1102 JIS A 1109 JIS A 1109 JIS A 1104 JIS A 1104 JIS A 1103 陸砂 2.49 2.56 2.14 1.70 67.90 1.20 3.34 2.69 0.43 1.48 55.40 0.16 スラグMZ 3.58 2.80 1.03 1.62 58.60 0.34 スラグTG 4.92 3.04 0.55 1.62 53.60 0.67 スラグTSS 砕石2005 6.28 2.66 1.20 1.62 62.00 1.20 スラグTSG 6.68 3.02 0.81 1.80 59.80 0.20 MZ,TG; 水 冷 ス ラ グ TSS; 砂 状 結 晶 化 ス ラ グ ラ グ TSG; 破 砕 し た 結 晶 化 ス ラ グ 3. 試 し 練 り ス テ ッ プ 1 試し練りステップ1におけるフレッシュコンクリートおよび硬化コンクリートの 圧 縮 強 度 試 験 結 果 は 以 下 で あ っ た ( 表 4.14). 1)溶 融 ス ラ グ MZ:天 然 骨 材 の 10 %を 置 換 し た 場 合 の フ レ ッ シ ュ コ ン ク リ ー ト 性 状 は 天 然 骨 材 の み の 普 通 コ ン ク リ ー ト と ほ ぼ 同 様 な 性 状 で あ っ た .置 換 率 を 30%ま で 上 げた場合のフレッシュコンクリ−トの性状は単位水量を増加させてもワーカビリテ ィ ー は 改 善 さ れ ず (水 と コ ン ク リ ー ト が 分 離 し た 状 態 ), ス ラ ン プ が 調 合 条 件 を 満 足 し な か っ た . こ れ に よ り , 置 換 率 50%以 降 の 試 験 は 無 用 と 判 断 し た . 圧 縮 強 度 に 関 し て は ,置 換 率 10 %の 場 合 は 普 通 コ ン ク リ ー ト と ほ ぼ 同 様 の 性 状 を 示 し た が ,置 換 率 30 %の 場 合 は ,圧 縮 強 度 が 普 通 コ ン ク リ ー ト に 比 べ て 劣 っ た 性 状 を示した. 2)溶 融 ス ラ グ TG:天 然 骨 材 の 置 換 率 50 %ま で は ,単 位 水 量 を 増 加 さ せ る こ と に よ り , ス ラ ン プ お よ び 空 気 量 と も に 調 合 条 件 を 満 足 す る こ と が で き た .し か し ,75 %の 置 換率では,単位水量の増加によりスランプおよび空気量ともに調合条件を満足する ことができなかった.また,練り混ぜから徐々に空気量が増大しコンクリートが膨 張 す る 傾 向 を 示 し た . こ の 現 象 は 試 料 に 混 入 し た ア ル ミ ニ ウ ム の 微 小 片 ( 3.5.2 参 照 )が セ メ ン ト ペ ー ス ト 中 の 水 酸 イ オ ン と 反 応 し て ,H 2 ガ ス が 発 生 し た こ と に よ る と考えられる. 圧 縮 強 度 に 関 し て は ,置 換 率 10 %の 場 合 は 普 通 コ ン ク リ ー ト と ほ ぼ 同 様 の 性 状 を 示したが,それ以上の置換率では普通コンクリートに比べて劣った性状を示した. また,アルミニウムの微少片の混入がフレッシュコンクリートおよび硬化コンクリ ートの性状に影響を与えているとみることができ,これにより溶融スラグそのもの がフレッシュコンクリートおよび硬化コンクリートの性状に及ぼす影響を見極める ことが困難であった. 3)溶 融 ス ラ グ TSS:置 換 率 10 %で も ワ ー カ ビ リ テ ィ ー が 損 な わ れ た が ,ス ラ ン プ と 空 気 量 は 調 合 条 件 を 満 足 し た .し か し ,置 換 率 30 %で は 単 位 水 量 を 増 加 さ せ て も ワ ー カビリティーは改善されず,スランプは調合条件を満足しなかった.これにより, 置 換 率 50 %以 降 の 試 験 は 無 用 と 判 断 し た . 圧 縮 強 度 は , 置 換 率 30 %の 場 合 は 普 通 112 コンクリートに比べて劣った性状を示した. 4)溶 融 ス ラ グ TSG:置 換 率 100 %ま で ,置 換 率 に か か わ ら ず 良 好 な ワ ー カ ビ リ テ ィ ー が保たれ,スランプおよび空気量も調合条件を満たした.また,単位容積質量は置 換 率 の 増 加 に と も な い 増 加 し た が , こ れ は 砕 石 と 比 較 し て TSG の 密 度 が 大 き か っ たことによると考えられる.天然砕石を全量置換した場合においても,圧縮強度は 普通コンクリートとほぼ同等の性状を示した. 表 4.14 フ レ ッ シ ュ コ ン ク リ ー ト 試 験 結 果 と 硬 化 コ ン ク リ ー ト 圧 縮 強 度 試 験 結 果 8 3 ) 種類 置換率 単位水量 細骨材率 普通コン MZ TG TSS TSG − 10 30 10 30 50 75 10 30 10 30 50 75 100 162 158 165 162 165 165 165 162 165 162 162 162 160 164 44.0 44.4 45.2 44.6 45.6 46.8 50.0 45.2 44.0 44.0 44.0 44.0 44.0 44.0 フレッシュコンクリート試験結果 硬化コンクリート 圧縮強度 スランプ 空気量 温度 容積質量 材齢7日 材齢28日 材齢91日 7.5 4.5 19.0 2.292 24.8 34.8 38.7 8.0 4.1 20.5 2.301 20.0 30.0 35.8 4.5 4.0 20.5 2.299 22.4 32.5 37.8 8.0 4.0 21.0 2.315 21.4 32.6 36.2 8.0 3.7 21.0 2.325 17.2 26.5 29.7 7.0 5.1 21.0 2.296 13.2 20.3 23.6 2.5 5.5 21.0 2.309 14.8 19.7 24.4 7.0 5.2 19.0 2.299 23.5 35.6 40.2 5.5 4.9 19.0 2.332 24.8 37.6 39.7 7.0 3.7 19.0 2.346 24.4 37.4 42.3 7.0 4.5 19.0 2.354 24.8 37.0 40.7 9.0 4.8 19.0 2.379 25.2 36.5 42.3 7.5 4.6 19.0 2.429 26.4 36.5 42.0 8.0 4.1 19.0 2.484 26.3 39.3 43.7 置 換 率 : % 単 位 水 量 : kg/m 3 細 骨 材 率 : % ス ラ ン プ : cm 空 気 量 : % 単 位 容 積 質 量 : t/m 3 圧 縮 強 度 : N/mm 2 4. 試 し 練 り ス テ ッ プ 2 試 し 練 り ス テ ッ プ 1 の 試 験 結 果 か ら ,溶 融 ス ラ グ MZ の 置 換 率 を 10 %( MZ10 コ ン ク リ ー ト ),溶 融 ス ラ グ TSG で は ,ス ラ ン プ 8 cm の 場 合 の 置 換 率 50 %( TSG50 コ ン ク リ ー ト ), 100 %( TSG100 コ ン ク リ ー ト ) と し , ス ラ ン プ 18 cm の 場 合 の 置 換 率 100 %と し た 試 験 を 行 っ た . 試 験 結 果 を 表 4.15, 図 4.7 に 示 し た . MZ10 コ ン ク リ − ト を 普 通 コ ン ク リ ー ト と 比 較 す る と , ス ラ ン プ 18 cm に お い て 単 位水量が増加する傾向を示したが,スランプおよび空気量は全ての水セメント比にお い て も 調 合 条 件 を 満 た し て い た . MZ10 コ ン ク リ − ト の 圧 縮 強 度 を 普 通 コ ン ク リ ー ト と 比 較 し た 結 果 は 以 下 で あ っ た . 材 齢 7 日 お よ び 材 齢 28 日 で は ス ラ ン プ 8 cm, ス ラ ン プ 18 cm と も に 低 下 す る 傾 向 を 示 し た . 材 齢 91 日 で は ほ ぼ 同 じ と な っ た . TSG50 コ ン ク リ ー ト を 普 通 コ ン ク リ ー ト と 比 較 す る と , ス ラ ン プ 8 cm の 置 換 率 100 %お よ び ス ラ ン プ 18 cm の 置 換 率 50 %の 場 合 で 単 位 水 量 が わ ず か に 増 加 し た .た だ し ,ス ラ ン プ ,空 気 量 と も に 調 合 条 件 を 満 足 し た .TSG コ ン ク リ ー ト の 圧 縮 強 度 を 普 通 コ ン ク リ ー ト と 比 較 し た 結 果 は 以 下 で あ っ た . ス ラ ン プ 8 cm の 場 合 , 全 て の 調 113 合条件において普通コンクリート圧縮強度よりも大きくなっていた.この現象は溶融 スラグの密度がおおきいためにコンクリートの充填性が増し,供試体の締め固めが良 好 に 進 ん だ こ と に よ る と 考 え ら れ る .ス ラ ン プ 18 cm の 場 合 は 普 通 コ ン ク リ ー ト と ほ ぼおなじ物性を示した. 普通コンクリートの場合の圧縮強度の発現傾向は,水セメント比の逆数(セメント 水比)と直線関係にあるが,溶融スラグ置換コンクリートも同様な関係を認めること が で き た ( 表 4.15). 例 え ば , ス ラ ン プ 8 cm の 材 齢 7 日 に つ い て は 以 下 と な っ た . 普通コンクリート ;σ=−16.636+22.725(C/W) r2=0.998 MZ10 コンクリート ;σ=−20.879+23.873(C/W) r2=0.998 表 4.15 フ レ ッ シ ュ コ ン ク リ ー ト 試 験 結 果 と 硬 化 コ ン ク リ ー ト 圧 縮 強 度 試 験 結 果 8 3 ) 種類 ス 普通コン クリート ラ ン プ 8 cm MZ10コ ン クリート TSG50 コン クリート TSG100 コン クリート ス 普通コン クリート ラ ン プ 18 cm MZ10コ ン クリート TSG50 コン クリート フレッシュコンクリート試験結果 硬化コンクリート 圧縮強度 水セメント 単位水量 細骨材率 比 スランプ 空気量 温度 容積質量 材齢7日 材齢28日 材齢91日 60 162 45.0 7.5 5.1 18.5 2.294 21.0 28.7 34.9 55 162 44.0 7.5 4.5 19.0 2,292 24.8 34.8 38.7 50 162 43.0 7.5 4.4 19.0 2.299 29.2 37.0 44.0 45 162 42.0 7.0 4.2 19.5 2.317 33.6 42.5 49.0 60 165 45.4 7.0 5.3 19.0 2.266 19.2 28.9 36.8 55 164 44.4 9.0 5.0 19.0 2.278 22.0 30.6 38.5 50 164 43.4 8.0 4.7 19.0 2.297 27.0 36.4 42.9 45 164 42.4 7.0 4.2 19.0 2.312 32.2 39.8 49.2 60 166 45.0 8.5 4.1 21.0 2,396 21.1 31.0 36.7 55 162 44.0 7.5 4.5 21.0 2.386 25.3 34.6 40.2 50 162 43.0 7.0 4.0 21.0 2.409 31.8 40.9 49.3 45 162 42.0 7.5 4.2 21.0 2.411 36.0 46.0 53.8 60 166 45.0 7.5 4.1 20.0 2.467 22.8 33.6 40.5 55 166 44.0 9.0 4.4 20.0 2.448 25.4 36.6 43.8 50 168 43.0 7.5 3.9 20.0 2.484 30.4 41.8 50.7 45 168 42.0 7.5 3.8 20.0 2.484 36.2 47.3 57.0 60 181 48.5 18.0 4.2 19.0 2.276 20.5 31.1 38.1 55 181 46.5 17.5 3.9 19.5 2.288 23.5 32.9 39.4 50 181 45.5 18.5 3.8 19.0 2.300 30.7 40.1 45.4 45 181 44.5 18.0 3.8 19.0 2.309 34.2 43.1 48.5 60 192 49.1 19.0 4.1 19.0 2.274 19.9 29.3 38.3 55 191 48.1 18.5 4.5 19.0 2.267 24.3 34.9 41.5 50 190 47.1 18.0 3.7 19.0 2.294 27.5 36.8 44.4 45 191 46.1 18.0 4.2 19.0 2.286 33.3 41.7 48.7 60 184 48.7 18.0 4.8 19.0 2.335 21.0 30.3 37.0 55 184 47.7 17.0 4.9 19.0 2.329 22.3 34.2 44.0 50 184 46.7 17.0 4.6 19.0 2.352 28.8 40.0 46.7 45 184 45.7 17.5 4.5 19.0 2.361 31.8 43.1 49.6 置換率:% 単 位 水 量 : kg/m 3 単 位 容 積 質 量 : t/m 3 細骨材率:% 圧 縮 強 度 : N/mm 2 114 ス ラ ン プ : cm 空気量:% 60.0 50.0 40.0 圧縮強度 (N/mm2) 30.0 20.0 材齢7日 TSSコン45 TSSコン50 TSSコン55 TSSコン60 TGコン45 材齢91日 TGコン50 TGコン55 TGコン60 MZコン45 MZコン50 MZコン55 MZコン60 普通コン45 普通コン50 普通コン55 0.0 普通コン60 10.0 図 4.7 材齢別水セメント比と圧縮強度の関係 溶融スラグ置換コンクリートのブリーディング量は,スランプ 8 cm では普通コンクリートよ りも大きめな傾向を示し,スランプ 18 cm ではほぼ同じであった(図 4.8) .ブリーディング量 に関しては,スラグ置換コンクリートと普通コンクリート間に明瞭な差は認められなかった(表 4.16). 0.35 ブリーディング (cm3/cm2) 0.30 0.25 普通コン 8cm MZ 10% 8cm 0.20 TSG 50% 8cm TSG 100% 8cm 普通コン 18cm 0.15 MZ 10% 18cm TSG 50% 18cm 0.10 0.05 0.00 10 20 30 40 50 60 90 120 経過時間(分) 図 4.8 ブ リ ー デ ィ ン グ 試 験 結 果 115 150 180 210 240 270 表 4.16 ブリーディング試験結果83) 10 経過時間(分) 0.00 普通コン 8 cm MZ 10% 8cm 0.00 TSG 50% 8cm 0.00 TSG 100% 8cm 0.01 普通コン 18 cm 0.01 MZ 10% 18 cm 0.01 TSG 50% 18 cm 0.00 20 0.01 0.01 0.01 0.02 0.02 0.02 0.01 30 0.01 0.02 0.02 0.03 0.03 0.03 0.03 40 0.03 0.03 0.03 0.05 0.05 0.05 0.04 (単位:cm3/cm2) 50 0.04 0.04 0.04 0.06 0.07 0.07 0.06 60 0.05 0.06 0.06 0.08 0.09 0.09 0.07 90 0.07 0.10 0.09 0.13 0.13 0.14 0.12 120 0.09 0.13 0.13 0.17 0.17 0.20 0.16 150 0.13 0.17 0.17 0.21 0.21 0.25 0.21 180 0.15 0.21 0.20 0.22 0.24 0.29 0.24 210 0.17 0.23 0.22 0.22 0.28 0.31 0.26 240 270 0.18 0.23 0.24 0.23 0.30 0.31 0.27 曲げ強度および引っ張り強度の試験結果と弾性係数は以下であった. 普通コンクリートおよび溶融スラグ置換コンクリートの曲げ強度および引っ張り強度は圧縮 強度と同じ傾向であった(表 4.17).一般的なコンクリートの圧縮強度に対する曲げ強度および 引っ張り強度の比とスラグコンクリートのそれは同等な範囲内にあった.これより一般コンクリ ート同様圧縮強度試験から曲げ強度および引っ張り強度を推定できると考えられる.また,静弾 性係数も普通コンクリートと同様の範囲内であった. 表 4.17 曲げ強度および引っ張り強度試験結果と弾性係数83) 曲げ強度 引張り強度 静弾性係数 普通コンクリート 4.85 2.68 29.7 スランプ MZコンクリート10 % 4.52 2.51 28.3 8 cm TSGコンクリート50 % 4.89 2.79 32.8 2.98 33.2 TSGコンクリート100 % 5.09 普通コンクリート 4.9 2.56 27.5 スランプ MZコンクリート10 % 4.85 2.79 27.1 18 cm TSGコンクリート50 % 4.78 2.59 28.9 曲げ強度および引っ張り強度;N/mm2 静弾性係数;kN/mm2 5.評価 これまでに示した試験結果より,溶融スラグのレディミクストコンクリート天然骨材代替性 に関する評価は以下となった. 1)水冷スラグをコンクリート用細骨材として用いるにあたって,天然骨材と比較すると粗粒率お よび密度が大であり,吸水率、実績率および微粉量分が小であった。粗粒率が大であること はスラグ粒子の表面積を減少させることとなり,これはスラグ粒子とセメントペーストの界 面付着力を弱めることになる.また、溶融スラグの実績率が天然骨材のそれに較べて著しく 小さいことは,コンクリート充填時に空隙率が大きくなる要因となりうることから,単位水 量の増加と施工性の悪化をもたらす可能性が生じてくる. また,アルミニウムの微小片の混入はコンクリート中の水酸イオンと反応してH2ガスを発 生させ,コンクリートの空隙を増加させることになり,圧縮強度の低下をもたらすことにな る. 以上のように溶融スラグのマイナス点を指摘したが,密度が大きいことの利点は以下であ 116 った。コンクリートの充填性を向上させ,コンクリートの締め固めが良好に進むことなる。 結晶質スラグをコンクリート用粗骨材として用いるにあたっては,天然骨材同様に扱えるこ とがわかった. 2)溶融スラグの細骨材置換率により溶融スラグ置換コンクリートの性状を判断すると,普通コン クリートと同等な性状を保つ上では,置換率 10%が目安である。いっぽう,結晶質スラグの 粗骨材置換率は(全量)100%としても普通コンクリートと同等な性状が確保できていた. 以上より実 機 プ ラ ン ト で の 試 し 練 り か ら ト ラ ッ ク ア ジ テ ー タ ー( 搬 送 )を 介 し た 現 場 での打設(ポンプ圧送)試験までを計画したが,現状での溶融スラグはコンクリート 用細骨材を代替する性状が確保できていないと判断された.したがって,実機プラン トでの試し練りからポンプ圧送試験までの一連の試験は,結晶質スラグにより粗骨材 を代替した場合のみ実施された.一連の試験の結果,スラグコンクリ−トの圧送前後 の品質はこれまでに示したと同様普通コンクリートのそれと同等であり,スランプの 管 理 が 重 要 で あ る こ と も 普 通 コ ン ク リ ー ト と 同 様 で あ っ た 84,85) . これまでに得られた結果から,以下のような溶融スラグの品質改善に関する指摘が で き る .第 1 に ア ル ミ ニ ウ ム 微 小 片 は 除 去 す る こ と が 必 要 で あ り , (直接触れなかった が )同 時 に 溶 融 メ タ ル の 混 入 は 錆 の 発 生 に 繋 が る こ と か ら 除 去 す べ き で あ る 。第 2 に 細骨材に関し,粉砕あるいは磨砕により砕骨材の標準粒度に近づけ,細粒分および微 粒 量 分 を 増 す 必 要 が あ る .第 3 は 新 た な 処 理 装 置 が 必 要 と な る が ,滑 ら か す ぎ る 水 冷 ス ラ グ の 表 面 の 改 質 で あ る .こ れ に つ い て は ,高 pH熱 水 処 理 に よ り 粒 子 表 面 に 凹 凸 を 加 え る 方 法 が 示 さ れ て い る 86,87) . 4.5 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク 4.5.1 配 合 設 計 溶融スラグのインターロッキングブロック用骨材としての使用可能性確認の試験を 行 っ た .試 験 に 使 用 し た イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク の 原 料 と そ の 産 地 を 表 4.18 に 示 し , 試 験 手 順 を 図 4 .9 に 示 し た . 表 4.18 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク の 原 料 と そ の 産 地 表層コンクリート セメント 普通ポルトランドセメント 比重:3.16 カナンサンド 中国産 混和剤 即時脱型用混和剤 エフロクリーン G-1 顔料 グラヌフィン 基層コンクリート セメント 普通ポルトランドセメント 比重:3.16 スラグ 表3,表4 石灰細砂 岩手県大船渡産 比重:2.63 砂 中国産または高炉スラグ細骨材 粗骨材6号砕石 宮城県石巻産 比重:2.58 混和剤 即時脱型用混和剤 ネオブロックスSD-G 117 材料の骨材試験 溶融スラグの骨材試験 レミコン試験結果等 スラグ混入率の決定 標準粒度に合わせた配合率の決定 配合率に基づく製品の製造 製品の養生(7日,14日) 製品の曲げ強度試験 図 4.9 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク 用 骨 材 と し て の 試 験 手 順 インターロッキングブロック用骨材試験を行った溶融スラグは水冷スラグ 5 試料, 空 冷 ス ラ グ 1 試 料 ,砂 利 状 結 晶 質 ス ラ グ 2 試 料 の 8 試 料 で あ る .試 験 に 当 た り ,細 骨 材として使用した水冷スラグは有姿のまま,粗骨材として使用した空冷スラグ,砂利 状結晶質スラグは破砕・篩分けを行った. 溶 融 ス ラ グ の 配 合 割 合 は ,粒 度 試 験 等 か ら 骨 材 の 20∼ 30% と し た .そ の 他 の 原 料 を 含 め ,ス ラ グ 毎 の 配 合 設 計 を 表 4.19 に 示 し た .供 試 体 作 成 時 の 練 り 混 ぜ 条 件 ,供 試 体 の 条 件 , 試 験 項 目 と 試 験 方 法 に つ い て 表 4.20 に 示 し た . 表 4.19 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク の 配 合 設 計 1 8 ) 使 用 スラグ 表層 基準 W07 W12 W13 W14 W15 W16 K03 S01 S02 水 スラグ セメント 混入率 Kg/m3 kg/m3 0 600 162 0 420 126 30 420 126 20 420 126 30 420 126 30 420 126 30 420 126 30 420 126 30 420 126 30 420 126 30 420 126 スラグ 0 0 562 350 589 559 538 581 0 0 0 粗骨材(kg/m3) 混和剤 顔 料 細骨材(kg/m3) 3 3 石灰細砂 川砂 カナンサンド 6号砕石 スラグ (kg/m ) (kg/m ) 0 0 1581 0 0 2.40 12.6 543 738 0 555 0 1.05 0.0 0 724 0 555 0 1.05 0.0 905 0 0 555 0 1.05 0.0 0 757 0 555 0 1.05 0.0 0 757 0 555 0 1.05 0.0 0 757 0 555 0 1.05 0.0 724 0 0 555 0 1.05 0.0 738 543 0 0 570 1.05 0.0 738 543 0 0 652 1.05 0.0 738 543 0 0 635 1.05 0.0 118 表 4.20 練 り 混 ぜ お よ び 供 試 体 の 条 件 と 試 験 項 目 練り混ぜ条件 表層コンクリート部 DM-8型 1701 ミキサー 材料投入 セメント,顔料→骨材→水(1次),混和剤→水(2次) 練り混ぜ量 135l 練り混ぜ時間 270秒 基層コンクリート部 DM-36型 6701 ミキサー 材料投入 骨材→セメント→水(1次),混和剤→水(2次) 練り混ぜ量 600l 練り混ぜ時間 300秒 供試体の条件 成型器 PS-60型成型器(0.7m2取り) 断熱自然養生 48時間 養生 ビニール養生 試験項目 曲げ強度試験 JASS7M-101 所要材齢 7日,14日 4.4.2 試 験 結 果 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク の 規 格 は 曲 げ 強 度 試 験 の み で あ り ,そ の 結 果 を 表 4.21 に 示 し た . 材 齢 14 日 供 試 体 の 曲 げ 強 度 は , 天 然 骨 材 ( 粗 骨 材 お よ び 細 骨 材 ) の 20∼ 30 % を 溶 融 ス ラ グ で 置 換 し た 場 合 , い ず れ も 標 準 品 の 86 % ∼ 97 % の 強 度 を 示 し , JASSの 基 準 値 4.9 N/mm 2 を 十 分 満 た す も の で あ っ た . こ の 試 験 結 果 は , 溶 融 ス ラ グ は 天 然 骨 材 の 20∼ 30 % を 置 換 す る と い う 条 件 を 付 け ることによって使用が可能であることを示していた. 表 4.21 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク の 曲 げ 強 度 試 験 結 果 1 8 ) N/mm 2 スラグ 混入率 基 準 W07 W12 W13 W14 W15 W16 K03 S01 S02 0 30 20 30 30 30 30 30 30 30 曲げ強度 7日 14日 5.5 6.0 5.5 5.7 5.3 5.8 5.0 5.5 5.6 6.1 5.2 5.5 5.3 5.5 5.2 5.5 5.8 6.1 5.8 6.0 4.6 骨 材 と し て の 利 用 に 関 す る ま と め 溶融スラグの人工骨材としての利用可能性についてまとめると,以下となる. 1)水 冷 ス ラ グ , 砂 状 結 晶 質 ス ラ グ は 二 次 製 品 を 作 る こ と な く , 単 体 で 埋 め 土 材 , 盛 り 119 土材,裏込め材,暗渠排水のフィルター材等に使用することが可能と考えられる. さらに,粒度調整の可能な大部分の空冷スラグ,砂利状結晶質スラグは上述の用途 以外に,道路用砕石,道路用クラッシャラン,下層路盤材として使用できる. 2)ア ス フ ァ ル ト 道 路 用 骨 材 と し て の 利 用 は , 天 然 骨 材 へ の 配 合 率 を 考 慮 す る こ と で 利 用可能性が実証された. 3)レ デ ィ ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 と し て の 利 用 に 関 し て , コ ン ク リ ー ト の 調 合 条 件や圧縮強度等を満たすことが明らかとなった.しかし,溶融スラグの骨材性状を 天然骨材と比較すると粗粒率および密度が大であり,吸水率、実績率および微粉量分が小で あった。粗粒率が大であることは溶融スラグ粒子の表面積を減少させることとなり,これは スラグ粒子とセメントペーストの界面付着力を弱めることになる.また、溶融スラグの実績 率が著しく天然骨材のそれに較べて小さいことは,コンクリート充填時に空隙率が大きくな る要因となりうることから,単位水量の増加と施工性の悪化をもたらす可能性が生じてくる ことも明らかとなった.それらは溶融スラグのマイナス点となるが,密度が大きいことはコ ンクリートの充填性を向上させ,コンクリートの締め固めが良好にすすむことになるといっ た利点でもある.このような点から,溶融スラグの細骨材置換率により溶融スラグコンクリ ートの性状を判断すると,普通コンクリートと同様な性状を保つ上では,置換率 10 %が目安 である.いっぽう,結晶質スラグの粗骨材置換率は(全量)100 %としても普通コンクリート と同等な性状が確保できた. 4)イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク 用 骨 材 と し て の 利 用 に 関 し て は , 溶 融 ス ラ グ の 天 然 骨 材 へ の 配 合 率 を 20∼ 30 %と す る 条 件 付 け に よ り 問 題 の な い 利 用 が 可 能 で あ る と 考 えられる. 4.7 溶 融 ス ラ グ の 品 質 管 理 4.7 .1 背 景 と 目 的 第 1 章 に 示 し た よ う に ,一 般 廃 棄 物 を 原 料 と す る 溶 融 ス ラ グ は ,1979 年 釜 石 市 に お い て 製 造 さ れ た も の が 最 初 と さ れ ,2004 年 で は 溶 融 ス ラ グ を 製 造 す る 実 機 施 設 は 149 施 設 に 達 し , 52.1 万 t /年 が 生 産 さ れ て い る . 有 効 利 用 の 一 方 式 と し て 天 然 骨 材 を 代 替するために,溶融スラグの骨材としての性状を把握するための化学性状分析・物理 性 状 に 関 す る 試 験 デ ー タ が 多 数 蓄 積 さ れ 18,36,88) , 道 路 用 お よ び コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 , コ ン ク リ ー ト 2 次 製 品 用 骨 材 と し て の 実 証 試 験 も 多 数 実 施 さ れ て き た ( 表 4.22). そ し て 2002 年 7 月 20 日 に , コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 標 準 情 報 ( TR A 0016), 道 路 用 骨 材 標 準 情 報 ( TR A 0017) が 公 表 さ れ た . こ の よ う な 状 況 を 踏 ま え , 溶 融 ス ラ グ 製 造 者 は 溶 融 ス ラ グ の 品 質 確 保 に 関 し て , 1)溶 融 処 理 前 の 注 意 点 と し て は a)溶 融 対 象 物 か ら の金属類の除去 b)塩 基 度 調 整 c) 溶 融 対 象 物 の 投 入 量 溶 融 処 理 中 の 注 意 点 と し て a)溶 融 温 度 d)溶 融 対 象 物 の 混 合 比 , 2) b)溶 融 炉 雰 囲 気 温 度 c)安 定 出 滓 d)冷 却 水 水 質 ・ 温 度 , 3)溶 融 処 理 後 の 注 意 点 は ス ラ グ と メ タ ル の 分 離 等 を 取 り 上 げ て き た 89) . 120 ま た ,溶 融 プ ラ ン ト メ ー カ ー も 試 験 項 目( 化 学 成 分 ,Pb含 有 量 お よ び 溶 出 量 ,金 属 鉄 含 有 量 , 全 硫 黄 , SO 3 , 塩 化 物 , 絶 間 密 度 と 吸 水 率 , 粒 度 分 布 , 安 定 性 , 微 粒 分 量 , 膨張率等)を設定して定期的に試験を行い,品質確保に努めてきた. TRの 公 表 以 後 様 々 な 努 力 が な さ れ ,溶 融 ス ラ グ の 利 用 促 進 に あ た り 2006 年 に「 JIS A 5031 一 般 廃 棄 物 、 下 水 汚 泥 又 は そ れ ら の 焼 却 灰 を 溶 融 固 化 し た コ ン ク リ ー ト 用 溶 融 ス ラ グ 骨 材 」, 「 JIS A 5032 一 般 廃 棄 物 、下 水 汚 泥 又 は そ れ ら の 焼 却 灰 を 溶 融 固 化 し た道路用溶融スラグ」が制定された.そのなかではスラグの品質規格として,外観, 有害物質の溶出,金属鉄,骨材品質(粒度・絶乾密度・吸水率・すり減り減量等)が 規 定 さ れ て い る .エ コ ス ラ グ 利 用 普 及 セ ン タ ー 90) は ,JIS A 5032 に 対 応 す る 道 路 用 溶 融スラグの利用マニュアルを作成し,品質管理にあたっての基本項目を解説した.そ こ で は 品 質 管 理 の 中 心 と な る 製 造 工 程 に お け る 管 理 の 要 点 を 表 4.23 に 示 し た よ う に まとめられている. 一方,このような経過の延長上において一般廃棄物および下水汚泥由来の溶融スラ グ 同 様 , 産 業 廃 棄 物 由 来 の 溶 融 ス ラ グ に つ い て も , JIS化 を 目 指 す 動 き が あ る 91) . 以上を背景として,溶融スラグ製造者は溶融スラグの品質保証を要求されるように なった.そこでは,有害物質を溶出させないことが品質保証の基本であり,その上で 骨材規格を満たすことになる.したがって,溶融スラグ製造者は,製造される溶融ス ラグの品質保証の基礎として,溶融スラグ品質のばらつきの幅を把握することが出発 点 と な る .以 下 に お い て ,溶 融 ス ラ グ 品 質 の ば ら つ き の 幅 の 把 握 法 と そ の 実 際 を 示 し , 望ましい品質管理手法を考察した. 4.7.2 品 質 管 理 の 考 え 方 1. 品 質 の 定 義 溶融スラグの品質として取り上げる項目は,廃棄物の再生品であるということおよ び上述の道路用骨材とコンクリート用骨材として利用する場合に要求される諸項目と し た .廃 棄 物 が 再 生 品 で あ る と す る 観 点 か ら の 品 質 は 有 害 物 質 の 溶 出 と 含 有 量 と な り , 骨 材 と し て 利 用 す る 場 合 の 品 質 は ,そ れ ぞ れ の 骨 材 規 格( JIS A 5301,JIS A 5302 参 照)となる. 2. 品 質 獲 得 工 程 品質管理の主要目的は,不良品の排除とその要因を確定して望ましい製品を製造す ることにある.溶融スラグの製造工程そのものは,一般の製品製造工程と殆ど変わら ない.しかし,一般の製品製造工程では投入される原料の性状を制御することが可能 であるが,溶融スラグの場合は人為的に制御できる範囲が狭いという特徴を持つ.例 えば,灰溶融スラグの場合は溶融炉に投入する原料灰に対しては金属類の除去や塩基 度調整などにより制御可能であるが,投入ごみを直接溶融する場合には殆ど制御でき ないという強い制約が課せられている.この制約下では,望ましい溶融スラグの製造 121 表4.22 千葉県でのモデル事業の内容(平成8年度∼平成13年度) 用途 コンクリート 細骨材 事業番号 年度 事業名 ① 8 粟又の滝遊歩道整備事業 1事業 アスファルト 合材の細骨 材 ② 総計 約13トン(30%) 自然保護課 (大多喜土木) 幅員2m 階段等工事269m 約13トン 約70トン(15%) ③ 8 臨海地区造成事業(浦安地区 第二期F地区) 約30トン(10%) ④ 9 市原埠頭線・道路修繕事業 約32トン(15%) ⑤ 11 鎌ヶ谷市道・路面復旧事業 ⑥ 8 ⑦ 8 ⑧ 9 ⑨ 9 約40トン (石 材化10∼20%) 約172トン 手賀沼親水広場施設整備事業 約4トン(40%) 園芸用プラスチックリサイクルセ 約14トン(30%) ンター建設工事 白子集団施設地区公衆便所建 約0.25トン(30%) 築工事 東金高等技術専門校敷地改修 約0.82トン(30%) 工事 道路維持課 (葛南土木) 臨海建設課 (葛南建設) 道路維持課 (市原土木) 幅員9.5m 舗装約200m 幅員12m 舗装約473m 幅員13.5m 舗装約133m 鎌ヶ谷市 幅員5∼7m 舗装約189m 水質保全課 (東葛飾土木) 四阿の床部分への敷設約90㎡ 園芸課 (営繕課) 駐車場への敷設約300㎡ 営繕課 約30㎡ 営繕課 約102㎡ 10 片貝自然公園・遊歩道整備工事 約4.3トン(30%) 自然保護課 (山武土木) 約78㎡ 10 大原日在海岸環境整備事業 約3トン(30%) 営繕課 約70㎡ 11 大原日在海岸環境整備事業 約171トン(30%) 大原土木事務所 約3,600㎡ ⑫ 11 幕張打瀬公園・遊歩道整備工事 約155トン 化100%) (千葉建設) 透水性セラミック舗装材1,780㎡ ⑬ 館山警察署九重駐在所 12 新築工事 約1.2トン(20%) 警察本部会計課 約58㎡ ⑭ 12 成田警察署赤坂交番新築工事 約1.1トン(20%) 警察本部会計課 約50㎡ ⑮ 12 約0.9トン(20%) 警察本部会計課 約40㎡ ⑯ 12 印西警察署木下交番新築工事 約1.8トン(20%) 警察本部会計課 約81㎡ ★ 13 約1.6トン(20%) 警察本部会計課 約105㎡ ★ 13 約1.9トン(20%) 警察本部会計課 約126㎡ ★ 13 約1.2トン(20%) 警察本部会計課 約78㎡ ★ 13 約1.2トン(20%) 警察本部会計課 約78㎡ ★ 13 約1.0トン(20%) 警察本部会計課 約68㎡ ★ 13 約0.8トン(20%) 警察本部会計課 約54㎡ ★ 13 約0.3トン(20%) 警察本部会計課 約21㎡ ⑪ 埋め戻し材 施工概要 船橋埠頭線・道路修繕事業 ⑩ モルタル 骨材 工事主体 8 4事業 インター ロッキング ブロック 千葉県環境生活部平成15年調べ スラグ使用量 船橋東警察署二和交番 新築工事 船橋東警察署習志野台交番 新築工事 千葉北警察署長沼交番 新築 工事 佐倉警察署(仮称)吉倉交番 新築工事 行徳警察署(仮称)妙典駅前 交番新築工事 千葉東警察署大宮交番 新築工事 習志野警察署津田沼交番 新築工事 茂原警察署長柄駐在所 新築工事 19事業 ⑰ 9 ⑱ ⑲ 1事業 いすみ環境と文化のさと 9 整備工事 いすみ環境と文化のさと 10 整備工事 ⑳ 10 河川堤防天端路盤工事 手賀沼終末処理場敷地整備 (石材 幕張新都心建設課 約365トン 約36トン(25%) 手賀沼下水道事 広場駐車場、歩道のモルタル骨材 務所 約36トン 約1.8トン(100%) 約0.3トン(100%) 約192トン(100%) 3事業 約194トン 28事業 約780トン 自然保護課 (大 原・大多喜土木) 自然保護課 (大 原・大多喜土木) 河川海岸課 (山武土木) 標識杭の基礎工事に使用 標識杭の基礎工事に使用 幅2.5m 長さ235m ※網掛け番号の事業は施工後の再工事により溶融スラグ部分は一部または全部撤去している。 実施工 アスファルト 合材の細骨 材 12 県単舗装道路修繕事業 約42トン(10%) 山武土木事務所 幅員6∼7m 舗装約280m 13 県単舗装道路修繕事業 約99トン(10%) 山武土木事務所 幅員5.8∼6.3m 舗装約777m 2事業 約141トン 122 表 4.23 製 造 工 程 に お け る 管 理 要 点 一 覧 の 例 9 0 ) に当たって可能なことは,不良溶融スラグの除去が基本となる. 一 般 廃 棄 物 を 原 料 と す る 溶 融 ス ラ グ の 製 造 工 程 は ,大 き く は つ ぎ の 6 工 程 に 分 け る こ と が で き る .灰 溶 融 の 場 合 は ,1)分 別 収 集 工 程 (ご み 質 ) 前処理工程 4)溶 融 工 程 5)冷 却 工 程 2)焼 却 工 程 3)被 溶 融 物 の 6)後 処 理 工 程 で あ る . 焼 却 工 程 を 溶 融 工 程 と 一 体 化 し た 直 接 溶 融 の 場 合 は 灰 溶 融 の 場 合 の 2),3)の 工 程 が 一 体 化 す る こ と に な る( 図 4.10).こ れ ら の 工 程 が 一 定 の 内 容 で あ る 限 り ,製 造 さ れ る 溶 融 ス ラ グ の 品 質 は あ る 幅 のなかで一定の品質を持つことになると考えられる. 1)分 別 収 集 工 程 は , 3 分 別 又 は 5 分 別 等 自 治 体 に よ っ て 若 干 の 違 い が あ る が , 多 く の場合分別内容が度々変わることはなく,一度決められたならば,数年間は変わらな い事例が殆どである. 2)焼 却 工 程 は 生 じ る 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 の 組 成 を 決 定 づ け る 過 程 で あ る . つ ま り , 焼却炉に投入されるごみ質が焼却残渣の化学性状を規定し,排ガス処理方式が焼却飛 灰 の 化 学 性 状 を 規 定 す る (第 6 章 6.2.2 参 照 ). 加 え て , 焼 却 炉 の 型 式 が 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 の 化 学 性 状 を 規 定 す る こ と は , 第 2 章 (2.3)に 示 し た . 3)前 処 理 工 程 は ,溶 融 が 円 滑 に 進 行 す る よ う に 金 属 類 や 異 物( ガ ラ ス 片・陶 磁 器 片 ) などを除去する工程である.また,被溶融物として焼却残渣に焼却飛灰を混合する場 合などもこの前処理工程に含まれる. 123 4)溶 融 工 程 は 被 溶 融 物 を 溶 融 す る 過 程 で あ り ,様 々 な 溶 融 炉 が 稼 働 し て い る( 表 1.4). この工程においては,溶融条件が溶融スラグの化学性状のうち重金属類含有量および 溶融メタルの生成量に大きく影響を与える.なお,ここでの溶融条件は,溶融温度・ 溶 融 炉 内 雰 囲 気 ( 還 元 条 件 ま た は 酸 化 条 件 )・ 炉 内 滞 留 時 間 な ど で あ る . 5)冷 却 工 程 は 水 冷 方 式 と 空 冷 方 式 が あ り , 溶 融 ス ラ グ の 状 態 ( 非 晶 質 ガ ラ ス 状 態 ・ 結晶化状態など)と形状を制御する工程である.このようなことから溶融スラグの力 学性状をも制御する工程である.水冷方式の場合は,出滓口から水冷槽までの落下距 離,水冷水の水温と水質などが管理の要点となる.空冷方式では,冷却速度が管理要 点となる.また,結晶質スラグでは熱処理温度が管理要点となる. 6)後 処 理 工 程 は , 溶 融 ス ラ グ と 同 時 製 造 さ れ た 溶 融 メ タ ル の 除 去 や 磨 砕 に よ る 溶 融 スラグの粒度調整と形状調整を行う工程である. 以上の溶融スラグの品質獲得過程は複雑に見えるが,自治体を単位としてみると単 純化される.分別収集工程は一定期間変化しない,同様に焼却設備も溶融設備も一度 整備したならば殆ど変わることは無い.若干の手直し等が加えられる工程は,前処理 工 程 と 後 処 理 工 程 の み と な る .し た が っ て ,溶 融 ス ラ グ の 品 質 に 影 響 を 与 え る 要 素 は , 分別収集によるごみ質の日および季節変動が中心となる.ごみ質分析項目のうち三成 分の結果が重要であり,とくに灰分の占める割合が溶融スラグの品質に最も影響を与 え る こ と に な る ( 表 4.24). 図 4.10 溶 融 ス ラ グ の 性 状 獲 得 過 程 124 表 4.24 季 節 変 動 を 考 慮 し た ご み 質 分 析 結 果 項 目 紙・布類 ビニール・ゴム類 ごみの種 木・竹・わら類 類組成 厨芥類 不燃物類 その他 単位容積重量 水分 三成分 灰分 可燃分 乾物発熱量 高位発熱量 低位発熱量 春期 夏期 秋期 冬期 単位 2007.04.272007.07.202007.10.122008.01.18 % 50.4 43.6 56.2 50.8 % 22.6 35.1 24 25.1 % 2.2 3.0 12.7 3.1 % 20.2 9.7 5.8 18.8 % 2.8 1.6 0.2 1.2 % 1.8 7.0 1.1 1.0 3 225 331 248 276 Kg/m % 49.6 62.3 48.5 51.2 % 6.9 3.0 5.3 7.4 % 43.5 34.7 46.2 41.4 4,294 4,657 4,567 4,650 Kcal/Kg Kcal/Kg 2,164 1,756 2,352 2,269 1,868 1,384 2,062 1,964 Kcal/Kg 3. 品 質 管 理 の 現 状 溶融スラグ製造者による品質管理の現状は,ストックパイルサンプリングまたはコ ンベアサンプリングにより試料採取し,殆どが安全性確認のための有害重金属類の溶 出 試 験 を 中 心 に 行 わ れ て き た .例 え ば ,東 金 市 外 三 市 町 清 掃 組 合 92) は 溶 出 試 験 用 試 料 は 1 操 業 1 ロ ッ ト の 考 え の も と ,2001 年 よ り 定 格 運 転 時 の 54 ロ ッ ト に つ い て 安 全 性 確 認 の た め の 溶 出 試 験 を 実 施 し て き た .溶 出 試 験 は Pbの 溶 出 が 基 準( 0.01mg/l)を 超 え る 場 合 も 散 見 さ れ た が , 2003 年 5 月 以 後 の 試 料 で は 基 準 を 超 え る 溶 出 は み ら れ な かった. ロ ッ ト の 大 き さ と イ ン ク リ メ ン ト の 必 要 個 数 は JIS K 0060(産 業 廃 棄 物 の サ ン プ リ ン グ 方 法 )の「 表 2 ロ ッ ト の 大 き さ と 1 ロ ッ ト か ら の 採 取 す る イ ン ク リ メ ン ト の 最 小 必 要個数」に定められているが,必ずしも踏襲されていない.多くは,ストックパイル サ ン プ リ ン グ ま た は コ ン ベ ア サ ン プ リ ン グ の ど ち ら か に よ り ,定 期 的 に 1 回 /月 ,ま た は 2 回 /月 の 小 口 サ ン プ リ ン グ を 行 い 2 ヶ 月 あ る い は 3 ヶ 月 分 を 混 合 し て 大 口 サ ン プ ル と し て 試 験 を 行 い , 問 題 が 生 じ た 場 合 の 対 処 と し て 数 kg の 試 料 を 数 年 間 保 存 す る 等 の 対 応 を と っ て い る 場 合 も あ る ( 2003 年 千 葉 県 環 境 セ ン タ ー 実 施 (未 公 表 ) 千 葉 県 内 溶 融 施 設 設 置 自 治 体 へ の 聞 き 取 り 調 査;東 京 都 23 区 一 部 事 務 組 合 へ の 聞 き 取 り ).ま た , 不 定 期 に JIS を 参 考 に し て 骨 材 試 験 を 実 施 し て い る 場 合 な ど も あ る . 4.7.3 品 質 管 理 1. ロ ッ ト の 決 め 方 溶融スラグの品質管理にあたっては,不良溶融スラグが検出された場合,その採取 試料の前後どの範囲の溶融スラグを不良品として扱うかを決定することが重要となる. この場合,溶融炉の操業状況に関連して,同一性状・同一成分とみなせる同一発生量 125 の溶融スラグの単位(ロット)の大きさの決め方が基本である.この大きさを合理的 に決定した上で,インクリメントが決まり,試料採取がなされる. ロットの大きさは溶融炉の操業状況を考慮すると,比較的簡単な決め方ができる. 灰溶融の場合は,被溶融物の炉内への充填→溶融炉の立上げ→定格運転→立下げの 1 操 業 か ら 製 造 さ れ た 溶 融 ス ラ グ を 1 ロ ッ ト と み な す こ と が で き る .一 方 ,焼 却 工 程 と 溶融工程が一体化した直接溶融の場合は,立上げから炉の定期修理等による停止まで の期間内に製造された溶融スラグを1ロットとみなすことになる.このようにロット の 大 き さ を 決 め た と し て も ,JIS K 0060 の「 表 2 ロ ッ ト の 大 き さ と 1 ロ ッ ト か ら の 採 取するインクリメントの最小必要個数」等を参照すると,1 ロットを小口のロットに 分割する必要が生じてくると考えられる. 1 ロットの決め方が妥当であるか否か,または,そのロットをさらに小口ロットに 分割する必要性があるか否かは,それぞれに決定したロットからインクリメントを決 定し,実際に試料を採取し分析結果から決定することになる. 灰溶融炉の操業は,被溶融物の初期充填→立上げ→定格運転→立下げのサイクルで 運 転 さ れ る (図 4.11).立 上 げ 開 始 か ら 定 格 運 転 に 至 る ま で の 時 間 ,定 格 運 転 時 間 お よ び 立 下 げ 開 始 か ら 運 転 停 止 に 至 る 時 間 は ,溶 融 炉 の 規 模 に よ り 様 々 で あ る( 表 4.25). 表 4.25 溶 融 炉 の 運 転 状 況 施設 焼却炉 溶融炉 運転状況 C 405t/日 36t/日 約3ヶ月 直接溶融 201t/日 NA 6ヶ月 または 10ヶ月 YA 100t/日 10t/日 3日ないし5日 YM 125t/日 13t/日 4∼5日 TO 210t/日 26/日 7日 NAの直接溶融炉処理能力は焼却能力を示した 1 ロ ッ ト 1 試 料 の 考 え 方 は ,図 4.11 に 示 し た 定 格 運 転 時 の 特 定 時 に 一 定 量 の 試 料 を 採取し,試験を行って品質確認をすることである.しかし,この考え方を保証する上 では,立上げ時および立下げ時の溶融スラグと定格運転時のそれに関しての品質確認 が必要である.この場合,立上げ時および立下げ時の溶融スラグの品質が定格時のそ れに較べて劣っていると判断された場合は,それらを使用ロットから外すといった判 断も必要となると考えられる.また,定格運転時の試料採取インクリメントを1イン クリメントで代表できるか否かの検証も必要となる. 126 図 4.11 溶 融 炉 の 運 転 操 業 の 模 式 図 2. ロ ッ ト 内 で の 溶 融 ス ラ グ の 安 定 性 (1) 定 格 運 転 時 の 溶 融 ス ラ グ の 化 学 成 分 1 操業 1 ロットの考え方は,投入される焼却灰,または,廃棄物が一定の幅にある 限り,定格運転時に製造される溶融スラグも一定の幅に収まることを想定しているこ とである.この想定を実証するために,定格運転時の溶融スラグを連続サンプリング し ,そ れ ら を 分 析 し た 93) .対 象 溶 融 炉 は ,日 立 造 船 ㈱ 製 バ ー ナ ー 式 表 面 溶 融 炉( 溶 融 能 力 ; 15 t/日 , 溶 融 温 度 ; 1350℃ ; 水 冷 式 ) で あ る . 試 料 は 定 格 運 転 時 に お い て 24 時 間 ,30 分 間 隔 で 溶 融 ス ラ グ ピ ッ ト へ の 排 出 口 に お い て 採 取 し た .併 せ て ,2 時 間 間 隔で被溶融物(焼却残渣と焼却飛灰の混合灰)をコンベアー上で採取した.溶融スラ グ , 混 合 灰 と も に ほ ぼ 1 kgを 採 取 し , 24 時 間 , 105 ℃ 恒 温 槽 内 で 乾 燥 後 , 金 属 類 と 異 物 を 除 去 し て , XRF分 析 に 供 し た . 粒 径 2 mm以 下 の 溶 融 ス ラ グ の XRF分 析 結 果 を 表 4.26 お よ び 図 4.12, 図 4.13 に 示 し た . 投 入 混 合 灰 の 主 成 分 の 変 動 幅 は Al 2 O 3 が 最 も 小 さ く ,溶 融 ス ラ グ の そ れ も Al 2 O 3 が 最 も 小 さ く ,SiO 2 と CaOの 変 動 幅 は ほ ぼ 同 じ で あ っ た .投 入 混 合 灰 に 対 し て 溶 融 ス ラ グ で は 主 成 分 の SiO 2 ,CaOの 変 動 幅 が 1/2 以 下 ま で 縮 小 し た .混 合 灰 中 の Clは 揮 散 に よ り ,溶 融 ス ラ グ 中 で は 1/10 以 下 に 希 釈 さ れ て い た .ま た ,混 合 灰 の Clの 変 動 幅 は Al 2 O 3 の 2 倍 程 度 で あ り ,試 料 間 の 変 動 が 著 し い .溶 融 ス ラ グ の Clの 変 動 幅 は 混 合 灰 に 比 べ て 1/5 程 度 ま で 縮 小 す る が , 試 料 間 の 変 動 が 著 し い こ と は 混 合 灰 と 同 様 で あ る . 混 合 灰 と 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成 の 関 係 は ,Cr 2 O 3 と CuOは 溶 融 ス ラ グ 中 に 濃 縮 さ れ , PbOと ZnOは 揮 散 に よ り 希 釈 さ れ て い た . 混 合 灰 の 重 金 属 類 に つ い て は , PbOの 変 動 127 幅 が 最 大 で あ り ,Cr 2 O 3 の そ れ は 最 小 で あ っ た .溶 融 ス ラ グ に お い て は ,Cr 2 O 3 と CuO が 濃 縮 さ れ た こ と を 背 景 と し て 変 動 幅 が 拡 大 し , PbOと ZnOは 希 釈 に よ り 濃 度 が 薄 く なったことを背景として変動幅は縮小していた.以上より,主成分に関しては安定し た溶融スラグが製造されていると見なすことができた. 表 4.26 連 続 サ ン プ リ ン グ 時 の 溶 融 ス ラ グ 分 析 デ ー タ 溶融スラグ STDEVP Mean. Max. Min. 混合灰 STDEVP Mean Max. Min. SiO2 0.57 40.30 41.75 39.12 SiO2 1.69 26.48 28.74 23.34 Al2O3 0.30 13.79 14.36 13.00 Al2O3 0.28 9.75 10.22 9.33 Cr2O3 CuO CaO Cl 0.56 0.09 0.02 0.08 23.39 0.68 0.13 0.32 24.53 0.76 0.18 0.52 22.17 0.29 0.08 0.17 Cr2O3 CuO CaO Cl 1.37 0.53 0.01 0.03 27.28 9.09 0.08 0.18 29.48 10.15 0.09 0.27 25.46 8.46 0.07 0.16 (単 位 : 重 量 % ) PbO 0.01 0.03 0.05 0.02 PbO 0.13 0.27 0.66 0.19 ZnO 0.02 0.32 0.38 0.28 ZnO 0.06 0.68 0.75 0.56 溶 融 ス ラ グ は 2mm 以 下 の 試 料 に つ い て の も の で あ り ,混 合 灰 は 5mm 以 下 の も の で あ る . 45.00 40.00 35.00 重量 % 30.00 25.00 20.00 15.00 10.00 5.00 0.00 0 5 10 15 20 25 30 時間 (h) SiO2 Al2O3 図 4.12 溶 融 ス ラ グ 主 成 分 の 変 動 128 CaO 35 40 45 50 0.80 0.70 0.60 重量 % 0.50 0.40 0.30 0.20 0.10 0.00 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 時間 (h) Cl Cr2O3 CuO PbO ZnO 図 4.13 溶 融 ス ラ グ の Cl お よ び 重 金 属 類 の 変 動 (2)立 ち 上 げ 時 お よ び 立 ち 下 げ 時 と 定 格 運 転 時 の 溶 融 ス ラ グ 表 4.25 に 示 し た よ う に ,1 操 業 間 隔 が 長 い 場 合 (C 施 設 お よ び NA 施 設 )は ,立 上 げ 時および立下げ時の溶融スラグの全操業時において生産される溶融スラグに占める割 合 は ,問 題 に な ら な い 量 で あ る .し か し ,YA 施 設 ,YM 施 設 お よ び TO 施 設 の よ う な 操業時間単位の場合,立上げ時および立下げ時に製造される溶融スラグの割合と品質 について把握しておく必要が生じる. そ の た め に ,TO施 設 の 場 合 に つ い て 1 操 業 に お い て 製 造 さ れ た 溶 融 ス ラ グ の う ち 立 上 げ 時 お よ び 立 下 げ 時 の 溶 融 ス ラ グ の 割 合 を 計 量 し た 94) .対 象 施 設 は 溶 融 処 理 能 力 26 t/日 , 溶 融 温 度 1350 ℃ , 炉 内 雰 囲 気 は 還 元 状 態 , 水 冷 水 温 度 50 ℃ の ( 株 ) タ ク マ 製 の 灯 油 バ ー ナ ー 式 表 面 溶 融 炉 で あ り , 施 設 の 竣 工 は 1998 年 4 月 で あ っ た . 操 業 は ほ ぼ 150t の 焼 却 灰 を 3 段 階 の 磁 選 処 理 後 貯 留 し , ほ ぼ 7 日 間 程 度 の 期 間 を も っ て 立 上 げ → 定 格 運 転 → 立 下 げ 運 転 の サ イ ク ル で 操 業 さ れ て い る . 調 査 対 象 は 2003 年 7 月 26 日 ∼ 8 月 3 日 の 操 業 に つ い て 行 っ た .立 上 げ 時 の 溶 融 ス ラ グ は 溶 融 炉 か ら 出 滓 開 始 後定格運転の溶融温度に達するまで,また,立下げ時の溶融スラグはバーナー停止後 出 滓 が 停 止 す る ま で と し た . 1 操 業 に お け る ス ラ グ 製 造 量 は 145t で あ り , 立 上 げ 時 と し て 識 別 さ れ る ス ラ グ が 5 %,同 様 に 定 格 運 転 時 の ス ラ グ は 93 %,立 下 げ 運 転 時 の ス ラ グ が 2 %で あ っ た . ま た , 立 上 げ 時 の 試 料 (TS11)は ス ラ グ 出 滓 0.5 時 間 後 , 定 格 129 運 転 時 の 試 料 は バ ー ナ ー 着 火 50 時 間 後 (TS12)お よ び 98 時 間 後 (TS13),立 下 げ 時 の 試 料 (ST14) は バ ー ナ ー 停 止 0.5 時 間 後 に 搬 出 コ ン ベ ア 上 か ら 採 取 し た . 採 取 試 料 は 100℃ , 24 時 間 乾 燥 後 , 性 状 比 較 の た め 以 下 の 分 析 を お こ な っ た . 分 析 は ,① JIS A 1102 に し た が う ふ る い 分 け 試 験 を 行 っ た .ふ る い 分 け 後 ,② 粒 度 階毎に縮分し,双眼実体鏡下において粒度階別の粒形毎に分別し,それらの構成割合 を求めた.この分析過程において同時に溶融メタルを分離した. 各試料の粒度分布特性は,立上げ時スラグが最も粗粒側にあり,定格運転時スラグ はほぼ同様な分布を示し,立下げ時スラグが最も細粒側にあった. 表 面 溶 融 炉 に お い て 定 格 運 転 時 に 製 造 さ れ る 水 冷 ス ラ グ は , 黒 色 角 礫 状 (BAG)・ 白 色 角 礫 状 (WAG)・球 状 (SG)・針 状 (SN)お よ び 扁 平 状 粒 子 (FG)か ら 構 成 さ れ ,粒 形 お よ び 粒 径 間 比 較 に お い て 化 学 成 分 は ほ と ん ど 差 が な い こ と は , 第 3 章 (3.5 節 )に 示 し た . ふ る い 分 け 後 の 各 試 料 に つ い て , 0.6 mm 以 上 の 粒 子 が , TS11, TS12 お よ び TS13 で は 90 %以 上 , TS14 で は 83 %以 上 を 占 め た こ と か ら , 0.6 mm 以 上 の 粒 度 階 の 試 料 に つ い て 粒 形 別 の 構 成 率 を 調 べ た (表 4.27). 各 粒 度 階 に お い て , BAG が 95 %以 上 を 占 め る 傾 向 は 同 じ で あ っ た . ま た , SN, FG は 粒 径 が 小 さ い 部 分 に 含 ま れ る 傾 向 も 同 じであった.立上げ時スラグ,定格運転時スラグおよび立下げ時スラグにおいて,粒 形別構成割合はほぼ同じであった. 表 4.27 粒 径 別 の 粒 径 毎 の 構 成 率 (%) 粒径(mm) 9.5< 4.75-9.5 2.36-4.75 1.18-2.36 0.6-1.18 形状 BAG BAG WAG SG SN FG BAG WAG SG SN − BAG WAG SG SN FG BAG WAG SG SN FG TS11 100.0 98.1 1.9 − − − 98.8 0.7 0.5 − − 98.9 0.2 0.8 0.1 − 96.3 0.9 0.6 1.2 1.0 TS12 − 95.1 4.9 − − − 98.1 0.8 1.1 − − 98.4 0.3 1.0 0.3 0.1 95.8 0.2 0.6 2.0 1.4 130 TS13 − 95.8 4.2 − − − 97.5 0.7 0.1 1.5 − 97.2 0.4 1.8 0.5 0.1 95.0 0.3 1.0 1.9 1.9 TS14 − − − − − − 96.1 1.4 2.5 − − 97.7 0.8 1.0 0.3 0.2 95.2 0.7 0.7 1.1 2.3 2. 異 な っ た 操 業 に お け る 安 定 性 立 上 げ → 定 格 運 転 → 立 下 げ 運 転 の サ イ ク ル で の 操 業 を 1 操 業 と し て ,そ れ ぞ れ の ス テージの溶融スラグ品質については前項で示した.以下では,定格運転時の異なった 操業時の溶融スラグ品質について示した. 対 象 試 料 は ,2003 年 11 月 9 日 ∼ 同 16 日 製 造 ス ラ グ( TS21),2003 年 12 月 23 日 ∼ 同 30 日 製 造 ス ラ グ (TS22),2004 年 1 月 11 日 ∼ 17 日 製 造 ス ラ グ (TS23)で あ る .そ れらの試料について骨材性状に関するものとしてふるい分け試験,吸水率,密度およ び 単 位 容 積 質 量 試 験 , 金 属 鉄 含 有 量 試 験 お よ び 溶 出 試 験 を 行 っ た ( 表 4.28). 骨 材 性 状 に 関 す る 試 験 は JIS に 従 っ た . 骨 材 試 験 に 必 要 な 試 料 量 は 20kg 以 上 と な る と こ ろ から,各操業時において定格運転に入った時点以後の溶融スラグについてストックヤ ードからストックパイルサンプリング法により 5 インクリメントで必要量を採取した. 必要量の採取後,混合により均質化した. 各 試 料 に 付 い て の 試 験 結 果 は 以 下 で あ っ た 94) . 溶 出 試 験 は 環 告 46 号 法 に 準 じ , Cd, Pb, Cr 6+ , total-Hg, As, Se, F, Bを 対 象 とした溶出試験も実施したところ,すべて規制基準を満たすものであった. 骨 材 試 験 の う ち ふ る い 分 け 試 験 結 果 は ,図 4.14 に 示 し た .各 試 料 の 粒 度 分 布 特 性 は , ほぼおなじであった. 100 構成率 (%) 80 60 40 20 0 ∼0.15 ∼0.30 ∼0.60 ∼1.18 粒径 mm ∼2.36 TS22 TS23 TS21 ∼4.75 ∼9.50 図 4.14 異 操 業 時 に お け る 溶 融 ス ラ グ の 粒 度 特 性 ま た ,絶 乾 密 度 お よ び 吸 水 率 は そ れ ぞ れ( 2.75 g/cm 3 ,0.66 %), ( 2.77 g/cm 3 ,0.64 %), ( 2.79 g/cm 3 ,0.42 %)と ほ ぼ お な じ 値 を 示 し た( 表 4.28).金 属 鉄 に つ い て は 2.0 %, 131 4.9 %, 1.5 %で あ っ た . TS22 の 金 属 鉄 含 有 量 が 他 の 試 料 に 比 べ て 高 い の は , 前 処 理 の磁選装置が不調であったことによる. 表 4.28 異 操 業 時 に お け る 溶 融 ス ラ グ の 骨 材 試 験 結 果 JIS A 1102 ふるい分け試験 JIS A 1109 絶乾密度(g/cm3) JIS A 1109 吸水率(%) JIS A 1104 単位容積質量(Kg/L) 目視選別 金属鉄(%) TS21 − 2.75 0.66 1.6 2.0 TS22 − 2.77 0.62 1.6 4.9 TS23 − 2.79 0.42 1.7 1.5 3. 異 な っ た 溶 融 炉 間 に お け る 定 格 運 転 時 の 溶 融 ス ラ グ 焼却残渣や混合灰の溶融にあたっては,それらの前処理としてふるい分け,磁選が 施される.また,混合灰にあっては,塩基度を考慮した調合が行われる.ここでは, 表 4.25 に 示 し た TO 施 設 , YA 施 設 お よ び YM 施 設 を 取 り 上 げ , そ れ ら の 定 格 運 転 時 に お け る 溶 融 ス ラ グ の 品 質 を 比 較 し た .各 施 設 の 溶 融 ス ラ グ 製 造 条 件 は 表 3.5 に ,溶 融 生 成 物 と し て の ス ラ グ の 粒 度 組 成 と ス ラ グ お よ び 溶 融 メ タ ル の 生 成 割 合 は 表 3.6 に , 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成 は 表 3.7( TO 施 設 ),表 3.8( YA 施 設 ),表 3.9( YM 施 設 )に 示した. 1)環 告 46 号 に 準 じ る 溶 出 試 験 結 果 は 各 試 料 と も に , 有 害 重 金 属 類 の 溶 出 は 認 め ら れ なかった. 2)粒 度 組 成 は TO 施 設 ス ラ グ と YM 施 設 ス ラ グ は ほ ぼ 同 様 で あ っ た が ,YA 施 設 ス ラ グ は前者よりも細粒側にシフトしていた. 3)溶 融 生 成 物 に し め る 溶 融 メ タ ル の 生 成 割 合 は TO 施 設 で 3.7 %, YA 施 設 で 2.2 %, YM 施 設 で 0.2 %で あ っ た . 4)化 学 組 成 の う ち Fe 2 O 3 に つ い て 示 す と TO施 設 ス ラ グ で は 2%前 後 ,YA施 設 ス ラ グ で は 10 %前 後 , YM施 設 ス ラ グ で は 3 %で あ っ た . 粒度組成の若干の相違については,品質管理にあたってはさほど重要事項に相当し な い と 考 え ら れ る . ま た , 溶 融 ス ラ グ 中 の Fe 2 O 3 含 有 量 に 関 し て は そ れ が ガ ラ ス 構 造 中 に 取 り 込 ま れ た 状 態 で あ る な ら ば ,第 3 章( 図 3.11)に 示 し た よ う に 溶 融 ス ラ グ 粒 子の密度を大きくする効果を持つのみである. た だ し , 3 施 設 か ら 製 造 さ れ た 溶 融 ス ラ グ の Fe 2 O 3 含 有 量 に 関 し て は , 考 察 が 必 要 と な る .溶 融 前 処 理 と し て の 磁 選 機 は ,TO施 設 で は 永 久 磁 石 式 ド ラ ム 型 で 磁 力 強 度 は 850 ガ ウ ス で あ る .YA施 設 で は 電 磁 石 式 の 吊 り 下 げ 型 (磁 力 強 度 は 850 ガ ウ ス )で ,原 料 灰 と の 距 離 は 35 cmに 保 た れ て い る .YM施 設 は YA施 設 同 様 吊 り 下 げ 型 (磁 力 強 度 は 560 ガ ウ ス )で ,原 料 灰 と の 距 離 は 30 cmに 保 た れ て い る .こ の よ う な 磁 選 様 式 の 差 が 132 原料灰中の金属類の除去に与える影響については,同質の原料灰を試料とした試験結 果は提供されていないが,施設毎に発生する原料灰の性状とそれに含まれる金属類の 粒径や量を基礎データとしてそれぞれが適当と思われる装置を導入しているのが現状 である.したがって,一義的にどの磁選様式が最善かは決めることはできなかった. ま た , 溶 融 ス ラ グ 中 の Fe 2 O 3 含 有 量 は , 溶 融 炉 内 で 融 け た Fe成 分 が ど の よ う な 挙 動 を 示 し た か に よ り 決 定 さ れ る .次 章 に お い て 示 す こ と に な る が ,Feを 主 成 分 と す る 溶 融 メ タ ル の 粒 径 お よ び 組 成 は 様 々 で あ り ,単 に 金 属 鉄 の み な ら ず Feを 含 む 原 料 灰 中 の 化 合 物 の 溶 融 も 溶 融 ス ラ グ 中 の Fe 2 O 3 含 有 量 に 影 響 を 与 え て い る と 考 え ら れ る . こ の よ う に , 3 施 設 か ら 製 造 さ れ た 溶 融 ス ラ グ 中 の Fe 2 O 3 含 有 量 の 差 異 は , 溶 融 炉 内 の 雰 囲 気 の 違 い か ら 生 じ て い る と 考 え る こ と が 妥 当 で あ る .TO施 設 の 溶 融 炉 内 雰 囲 気 は 空 気 比 0.8∼ 1.0 で 還 元 型 , YA施 設 と YM施 設 の 空 気 比 お よ そ 1.0+ の 酸 化 型 で あ る . し た が っ て ,TO施 設 か ら 製 造 さ れ る 溶 融 生 成 物 に 占 め る 溶 融 メ タ ル の 割 合 が 他 施 設 に 比 べ て 多 い こ と は , 溶 融 し た 鉄 分 の 還 元 状 態 の 違 い が 溶 融 ス ラ グ 中 の Fe 2 O 3 含 有 量 に 影 響 としていると考えられる. 4.7.4 ま と め 溶融スラグの品質管理を一定の条件下で運転される製造ラインからの製品は一定の 規 格 に 納 ま っ て い る こ と を 保 証 す る こ と と 考 え る と , JIS A 5301 お よ び JIS A 5302 に示される品質規格を一定製造量に対してどう保証するかが問題の核心である.1操 業1ロットを想定した試験結果から,スラグ品質管理のロットの大きさについて,以 下の様に考えられる. 1)1 操 業 に お い て 定 格 運 転 時 に 製 造 さ れ る ス ラ グ は , 一 定 の 幅 を 持 つ も の の 安 定 し た 性状を示した. 2)ご み の 分 別 ・ 収 集 が 一 定 の 方 式 を 取 る 限 り , ま た , 定 格 運 転 の 方 式 に 変 更 が な い 限 り,操業時が異なってもほぼ同じ性状を持つ溶融スラグが製造されることが明らか となった. 溶融スラグをコンクリート用細骨材,道路用細骨材として使用する場合には,一使 用 時 の 規 模 が 数 十 ∼ 数 百 t あ る い は そ れ 以 上 に な る 場 合 も あ り 様 々 で あ る( 表 4.22). こ れ ま で に な さ れ た 有 効 利 用 で は 天 然 骨 材 を 100% 代 替 す る こ と は な く , 多 く の 場 合 10∼ 20%の 配 合 率 で あ っ た . そ こ で は 天 然 骨 材 と の 配 合 に よ り 総 体 と し て の 骨 材 規 格 に合わせることができる.したがって,有効利用を確実にするための安全性を担保す る溶出試験は,各操業に対する定格運転時の試料について実施することになる.その 他 の 項 目 に つ い て は ,操 業 時 毎 に 適 量( 数 kg)を 1 イ ン ク リ メ ン ト と し て 採 取 し て お き ,3∼ 5 イ ン ク リ メ ン ト を 合 わ せ て 1 イ ン ク リ メ ン ト と し て 骨 材 試 験 に 回 す こ と で 対 応できるものと考えられる. 133 表 4.29 溶 融 ス ラ グ の 利 用 に 関 す る 文 献 阿 部 清 一 : 溶 融 ス ラ グ の 有 効 利 用 , 第 11 回 全 都 清 論 文 集 , pp.106− 108( 1990) 橋本 紘 ・ 藤 森 俊 彦 ・ 栗 山 秀 児 : ス ラ グ の 有 効 利 用 に つ い て( 性 状 調 査 ),第 11 回 全 都 清 論 文 集 , pp.103− 105( 1990) 桑山 忠・本多淳裕・山田 優・三瀬貞:電気炉還元スラグの水硬性とその利用,廃 棄 物 学 会 論 文 誌 , Vol.1, pp.19− 28(1990) 白 石 光 彦 ・ 戸 高 光 正 : 廃 棄 物 溶 融 ス ラ グ の 資 源 利 用 研 究 ,第 2 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 講 演 論 文 集 , pp.145− 148(1991) 白子定治・茨田正孝・竹内誠・高山恒一・寺門明良・福田隆:焼却灰溶融スラグの有 効 利 用 に つ い て -透 水 性 イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク の 敷 設 -, 東 京 都 清 掃 研 究 所 研 究 報 告 , Vol.22, pp.133− 139(1992) 竹内 誠・白 子 定 治・武 井 良 男:高 温 溶 融 ス ラ グ の 有 効 利 用 調 査 -消 波 ブ ロ ッ ク 材 料 と し て の 可 能 性 に つ い て , 東 京 都 清 掃 研 究 所 研 究 報 告 , Vol.22, pp.140− 148(1992) 竹内 誠:ス ラ グ の セ メ ン ト 骨 材 と し て の 有 効 利 用 調 査 -消 波 ブ ロ ッ ク へ の 混 入 率 の 向 上 法 の 検 討 -, 東 京 都 清 掃 研 究 所 研 究 報 告 , Vol.23, pp. 111− 121(1993) 茨 田 正 孝 ・ 白 子 定 治 ・ 篠 原 義 彰 : ス ラ グ 有 効 利 用 フ ィ ー ル ド 実 験 の 評 価 調 査 ,東 京 都 清 掃 研 究 所 研 究 報 告 , Vol.23, pp.122− 129(1993) 本郷輝雄・山崎敏隆・田中 衛:焼却残渣溶融スラグの建設資材への利用について, 第 5 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.207− 209(1994) 芝 野 伸 二 ・ 清 水 保 雄 ・ 西 垣 正 秀 : 溶 融 ス ラ グ の タ イ ル 原 料 へ の 利 用 ,第 7 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.482− 484(1996) 戸村秀人・菊池 亨・下山統康:溶融スラグ再利用のための製品化研究,第6回廃棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.450− 502(1996) 泊 瀬 川 孚・山 田 鉄 雄・浅 野 耕 司:都 市 ゴ ミ 焼 却 灰 溶 融 ス ラ グ の 道 路 用 路 盤 材 へ の 利 用 , 第 8 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.401− 403(1997) 磯 文夫・佐伯和彦・飯田新三郎:都市ごみ焼却灰の再資源化(4)−溶融化および 溶 融 ス ラ グ の ア ス フ ァ ル ト 骨 材 へ の 利 用 − ,第 8 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.387− 390(1997) 磯 文 夫 ・ 小 峰 新 平 ・ 名 塚 龍 己 : 都 市 ご み 焼 却 灰 の 再 資 源 化( 5 )− 溶 融 化 お び 溶 融 ス ラ グ の 道 路 用 骨 材 へ の 利 用 − ,第 8 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 ,pp.391 − 394(1997) 北 辻 政 文・ 藤 居 宏 一: 表 面 溶 融 式 ご み 焼 却 灰 ス ラ グ の コ ン ク リ ー ト 用 細 骨 材 へ の 適 用 に 関 す る 2,3 の 考 察 .第 8 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 ,pp.404− 406(1997) 134 第5章 溶融メタルの化学組成 5.1 研 究 の 背 景 と 目 的 溶 融 メ タ ル は , 原 料 灰 中 の 金 属 酸 化 物 が 原 料 灰 由 来 の 未 燃 Cや 原 料 灰 の 溶 融 過 程 に お い て 生 じ た CO, H 2 等 に よ り 還 元 さ れ た も の で あ る . 溶 融 メ タ ル の 産 状 に は 溶 融 炉 底に貯まる溶融メタルと水冷スラグの生成時に分離してくる粒状溶融メタルとが知ら れている.溶融炉底に貯まったメタルは製錬用原料としての利用が試みられている. 粒 状 溶 融 メ タ ル は Feの 酸 化 物 が 錆 と し て 発 生 す る こ と な ど が マ イ ナ ス 要 因 と な る と こ ろ か ら ,水 冷 ス ラ グ の 利 用 に あ た っ て 磁 選 に よ り 除 去 さ れ る 場 合 が 多 く な っ て き た . 磁選により分別された粒状溶融メタルは,建設重機械のカウンターウエイトとしてす で に 市 場 流 通 し て い る 95) .そ れ 以 外 の 利 用 法 に つ い て は ,魚 礁 へ の 利 用 96) ,低 級 鋳 物 材 お よ び 製 鉄 原 料 と し て の 利 用 57) ,非 鉄 精 錬 用 資 材 と し て の 利 用 97) が 検 討 さ れ て き た . 粒 状 溶 融 メ タ ル の 元 素 組 成 に つ い て は ,第 3 章 (3.6.2 節 )で 述 べ た 原 料 灰 成 分 の 溶 融 スラグへの固定と関連した議論の中で,以下の報告がある.コークスベッド溶融炉に お い て 可 燃 ご み の 溶 融 か ら 生 じ た 溶 融 メ タ ル は , 90 %程 度 の Fe, 3∼ 5 %の Cuと 2 % 前 後 の Siか ら な り , 1 %以 下 の Al, Cr, Ni, Pな ど を 含 む 元 素 組 成 を 示 し た 57,98) . ア ーク式溶融炉において焼却残渣と焼却飛灰の混合灰の溶融から生じた溶融メタルは 70 % 前 後 の Fe, 10 % 前 後 の Cuお よ び Siに 加 え て , 3 %前 後 の Pの 元 素 組 成 を 示 す 粒 子 と 特 徴 的 に ( Fe 27.14 %, Cu 40.8 %, S 25 %) の 元 素 組 成 を 示 す 粒 子 が 報 告 さ れ て い る 64,65,99,100) . プ ラ ズ マ 炉 に お い て 焼 却 残 渣 単 独 お よ び 焼 却 残 渣 と 飛 灰 の 混 合 灰 の 溶 融 か ら 生 じ る 溶 融 メ タ ル は 80 % 前 後 の Fe,7 % 前 後 の Cuお よ び 10 % 程 度 の Si に 加 え て 3% の Pか ら な る 元 素 組 成 を 示 し た 101,102) .流 動 床 灰 単 独 お よ び 焼 却 残 渣 と 焼 却 飛 灰 の 混 合 灰 を 電 気 抵 抗 炉 に お い て 溶 融 し た 場 合 に 生 じ る メ タ ル 粒 子 は (Fe 84.5 %, Cu 3 %, Si 0.59 %)お よ び (Fe 90.5 %, Cu 5.78 %, Si 1.63 %)の 元 素 組 成 を 示 し た 103,104) . ま た , プ ラ ズ マ 炉 に お い て 磁 選 後 の 焼 却 残 渣 の 溶 融 か ら 生 じ る 溶 融 メ タ ル は (Fe 58.5 % , Cu 20.2 % , Si 10.1 % ) の 化 学 組 成 を 示 し , 磁 選 な し の 焼 却 残 渣 の 溶 融 か ら 生 じ る 溶 融 メ タ ル は (Fe 88.5 % , Cu 6.71 % , Si 10.1 % ) の 元 素 組 成 を 示 し た 102) . こ の よ う に , 溶 融 メ タ ル の 化 学 組 成 は 原 料 灰 の 成 分 に 強 く 影 響 さ れ る . 溶融メタルの元素組成は,上述のように実体的な分析結果に基づく考察と熱力学的 考 察 に よ る 金 属 酸 化 物 の 還 元 度 合 い か ら 議 論 が な さ れ て い る 100,23) .し か し ,原 料 灰 が 多成分混合系であること,溶融条件も様々であること等により,溶融メタルの生成機 構や組成の決定については明確な整理に至っていないのが現状である.熱力学的考察 を別とすれば,溶融メタルの生成機構と元素組成の決定をより明快に理解する上での 基礎として,未だ生成した溶融メタルの詳細な記載が不足していると考えられる.溶 融メタルの有効利用の促進および環境中に有害物質を放出しないクリー ンな溶融ス ラ グ 105) を 製 造 し て い く た め の 金 属 成 分 の 溶 融 ス ラ グ へ の 固 定 率 の 議 論 を 進 め る 上 で , 135 溶融メタルの成因や元素組成を記載的に明らかにしていくことが重要である。 以 下 に ,実 機 稼 働 の 溶 融 炉 に お い て 生 成 し た 個 々 の 溶 融 メ タ ル を 対 象 と し て 1)産 状 , 2)粒 径 , 3)個 別 粒 子 の 元 素 組 成 と 一 部 元 素 の 状 態 を 記 載 し た . 4)そ れ ら の 記 載 デ ー タ をもとに,溶融メタルの構成元素とそれらの溶融スラグへの固定関係について考察し た. 5.2 溶 融 メ タ ル の 分 析 5.2.1 対 象 溶 融 メ タ ル と 原 料 灰 試験対象とした溶融メタルは,灯油バーナー式固定表面溶融炉(①日立造船(株) 製 : 処 理 能 力 15 t/day, ② タ ク マ ㈱ 製 : 処 理 能 力 26 t/day) に お い て , 溶 融 温 度 約 1,350 ℃ , 排 ガ ス O 2 濃 度 10 % 前 後 の 雰 囲 気 中 で 生 成 し た も の で あ る . そ れ ら は , 溶融スラグから水冷方式により分離された粒状溶融メタルである. 試験対象の溶融メタルを生じた原料灰は,焼却残渣と焼却飛灰を混合したものであ っ た . 原 料 灰 の 化 学 組 成 の 一 例 を 示 す と SiO 2 (31.7 %) , Al 2 O 3 (12.3 % ) , CaO (20.4 % ) , Fe 2 O 3 (5.74 % ) , Cl (4.55 % ) な ど で あ り , 微 量 成 分 と し て Cr (244 mg/kg),Cu (800 mg/kg),Zn (4,400 mg/kg) ,Pb( 1,370 mg/kg)な ど で あ っ た .主 成 分 の 形 成 す る 鉱 物 は quartz,gehlenite,calcite,hematite,magnetiteな ど で あ っ た . ま た , TG-DTA分 析 結 果 か ら 原 料 灰 中 に は 5 % 前 後 の 未 燃 Cが 含 ま れ て い た . 5.2.2 試 料 調 整 と 分 析 1. 試 料 調 整 と 試 料 の 形 状 試験対象の粒状溶融スラグは,次の手順にしたがって溶融スラグから分離した. 1)水 冷 ス ラ グ を ,> 4.75mm (475 サ イ ズ ),4.75∼ 2.36mm ( 236 サ イ ズ ),2.36∼ 1.18mm (118 サ イ ズ ), 1.18∼ 0.6mm (06 サ イ ズ )お よ び そ れ 以 下 に ふ る い 分 け し た . 2)各 粒 度 階 の 溶 融 ス ラ グ 中 か ら , 粒 状 溶 融 メ タ ル を 手 選 別 に よ り 分 離 し た . 分 離 さ れ た 粒 状 溶 融 メ タ ル は , 粒 径 サ イ ズ 毎 に 475 サ イ ズ , 236 サ イ ズ , 118 サ イ ズ , 06 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル と し , そ れ ら の サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル を mm サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 と した. 3)mm サ イ ズ 以 下 の 溶 融 メ タ ル は ,次 の よ う に 分 離 し た .2mm 以 下 に 分 級 さ れ た 溶 融 ス ラ グ か ら 約 100g を 分 取 し た も の を 粉 砕 し , 0.425mm フ ル イ 下 ( 約 80g) か ら 水 簸 し て 得 ら れ た 重 い 部 分 ( 約 3g) に 含 ま れ る も の で あ る . こ の サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル を サ ブ mm 溶 融 メ タ ル 粒 子 と し た . mm サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 は 球 状 を 呈 す る も の が ほ と ん ど で あ り ,球 状 の 赤 銅 色( 図 5.1;1)な い し 鉄 色( 図 5.1;2)お よ び 銀 白 色( 図 5.1;3)の 金 属 光 沢 を 示 す も の で あ る が,赤銅色ないし鉄色の金属光沢を示した粒子が卓越する.また,粒径が小さくなる にしたがって真球状に近くなることがわかった. 136 1 図 5.1 2 mm サ イ ズ 溶 融 メ タ ル の 形 状 バ ー 2.5mm 3 1 : 金 属 光 沢 粒 ; バ ー 5mm 4 2:金属光沢粒; 3 : 金 属 光 沢 粒 ; バ ー 2.5mm 4 : 焼 却 灰 中 の ア ル ミ ニ ウ ム 粒 ;バ ー 0.5mm サ ブ mmサ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 形 状 に つ い て , 反 射 電 子 像 ( BEI) に よ る 観 察 結 果 を 図 5.2 に 示 し た 58) . そ れ ら の 形 状 は , 1)球 状 な い し 直 方 体 状 の 全 体 が メ タ ル か ら な る も の ( 図 5.2; a,b,c) 2)破 砕 ス ラ グ 片 上 に 樹 枝 状 に 発 達 す る も の (図 5.2; d) 破 砕 ス ラ グ 片 に 密 着 な い し 包 含 さ れ る も の (図 4.5; e,f,g)の 3 つ に 分 け ら れ た . 図 5.2 サ ブ mmサ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 粒 子 58) 2. 化 学 分 析 と XRD 測 定 137 3) 前 項 に 示 し た 手 順 に し た が っ て , 総 計 91 粒 子 を 分 離 し , 化 学 分 析 を 行 っ た . 475 サ イ ズ お よ び 236 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 は 研 削 に よ り 粒 子 の 内 部 面 を 露 出 さ せ た 後 , XRFの フ ァ ウ ン ダ メ ン タ ル パ ラ メ タ ー( FP)法 に よ り 分 析 を 行 っ た .118 サ イ ズ 以 下 の 溶 融 メ タ ル 粒 は , SEMに よ り 形 状 と 組 成 像 を 観 察 し , 化 学 分 析 は SEMに 装 着 し た EDSユ ニ ッ ト に よ り 行 っ た .SEM観 察 お よ び EDS分 析 は ,微 粒 子 の 金 属 外 部 表 面 お よ び エ ポ キ シ 樹 脂 に 埋 め 込 ん だ 後 の 研 磨 面 の 両 者 に つ い て 行 っ た 58) . SEM-EDSに よ る 分 析 に あ た っ て は ,SEMの 視 野 内 に 認 め ら れ る サ ブ mmメ タ ル 粒 子 を 任 意 に 選 択 し た . ま た ,475 サ イ ズ ,236 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル に つ い て は ,そ の 研 削 屑 を 用 い て XRD 測 定 に よ り XRD デ ー タ ベ ー ス ( JCPDS) と の 照 合 か ら 結 晶 相 を 同 定 し た . 5.2.3 赤 銅 色 お よ び 鉄 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル の 分 析 結 果 1. 475 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 お よ び 236 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 赤 銅 色 お よ び 鉄 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 475 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 9 粒 子 お よ び 236 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 8 粒 子 の 分 析 結 果 を 表 5.1 に 示 し た .Al・Si・P・S・Ca・Cr・Fe・ Ni・ Cu・ Zn の 10 元 素 が 検 出 さ れ た . 475 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル で は 10 元 素 全 て か ら な る も の が 3 粒 子 ,Al を 除 い た 9 元 素 か ら な る も の が 4 粒 子 ,Al と Si を 除 い た 8 元 素 か ら も の が 2 粒 子 で あ っ た . 全 粒 子 と も Fe と Cu が 主 成 分 で あ り , そ れ ら 2 成 分 で 80 %以 上 を 占 め る . ま た , 3 %前 後 の P と 2 %強 の Ni が 付 随 す る . 236 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル で は 10 元 素 全 て か ら な る も の が 4 粒 子 , Al を 除 い た 9 元 素 か ら な る も の が 2 粒 子 , Cr と S を 除 い た 8 元 素 か ら な る も の が そ れ ぞ れ 1 粒 子 で あ っ た . 全 粒 子 と も Fe と Cu が 主 成 分 で あ り , そ れ ら 2 成 分 で 80 %以 上 を 占 め る . ま た , 1∼ 2 %強 の Ni が 付 随 す る . 表 5.1 鉄 色 お よ び 赤 銅 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル 粒 の 化 学 組 成 Al Si P S Ca Cr Fe Ni Cu Zn 1 6.15 5.75 2.57 0.46 4.37 0.29 74 0.56 5.24 0.62 2 0.86 2.28 3.28 0.79 6.26 0.28 70.8 2.18 12.9 0.38 3 3.42 5.56 3.60 − 2.73 0.18 68.68 1.07 14.29 0.47 4 7.41 4.35 2.94 1.58 0.66 − 65.42 1.12 16.05 0.47 5 0.63 1.72 2.39 0.81 4.59 0.16 65 2.47 21.8 0.47 6 0.73 1.79 2.40 0.83 4.57 0.21 64.85 2.30 21.58 0.75 7 1.13 1.50 4.13 0.59 1.44 0.35 56.02 2.03 31.84 0.95 8 − 0.70 3.84 0.77 2.83 0.14 84.07 1.07 5.83 0.75 No.1∼ No.9; 475 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 9 − 1.37 2.59 0.62 6.37 0.16 79.85 2.74 5.84 0.46 10 − 0.48 2.69 1.32 1.51 0.17 67.23 2.73 23.11 0.74 11 12 − − 0.56 0.47 2.70 2.81 1.17 1.30 1.50 1.17 0.21 0.23 66.71 64.87 2.66 2.39 23.74 25.56 0.72 1.17 13 − 0.49 2.91 1.29 1.17 0.25 63.11 2.34 27.29 1.14 (単 位 : 重 量 %) 14 − 0.76 2.94 1.67 2.13 0.22 60.5 2.39 28.27 1.10 15 − 0.74 2.87 1.58 2.15 0.21 60.5 2.42 28.4 1.17 16 − − 3.28 1.27 0.33 0.23 72.6 2.54 19.3 0.44 17 − − 2.59 1.56 1.08 0.20 48.10 2.13 43.1 1.22 No.10∼ No.17; ; 236 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 2. 118 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 お よ び 06 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 鉄 色 お よ び 赤 銅 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 118 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 7 粒 子 お よ び 06 サ 138 イ ズ の 溶 融 メ タ ル 9 粒 子 の 分 析 結 果 を 表 5.2 に 示 し た .O・ Al・Si・P・S・Ca・ Fe・ Cu の 8 元 素 が 検 出 さ れ た . 475 お よ び 236 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 粒 子 か ら の 検 出 元 素 と 比 較 す る と Cr, Ni お よ び Zn が 検 出 さ れ ず , O が 検 出 さ れ た . 118 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル で は 2 粒 子 か ら O が 検 出 さ れ ,そ の う ち の 1 粒 子 に は S も 検 出 さ れ た .検 出 元 素 全 て を 含 む 粒 子 は み ら れ な か っ た .全 粒 子 と も Fe と Cu が 主 成 分 で あ り , そ れ ら 2 成 分 で ほ ぼ 80 %以 上 を 占 め る . Fe に Cu の 附 随 し な い 粒 子 が 2 粒 子 み ら れ た .06 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル で は 2 粒 子 か ら O が 検 出 さ れ た .そ の う ち の 1 粒 子 に は Ca が 付 随 し た .検 出 元 素 全 て を 含 む 粒 子 は み ら れ な か っ た .全 粒 子 と も Fe と Cu が 主 成 分 で あ り ,そ れ ら 2 成 分 で ほ ぼ 80 %以 上 を 占 め る .Fe に Cu の 附 随 し な い粒子が,5 粒子みられた. 表 5.2 118 サ イ ズ お よ び 06 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 化 学 組 成 No. O Al Si P S Ca Fe Cu 1 2 4 6 3 5 7 8 9 − − − − 14.5 2.7 10.3 5.3 − − − 7.5 7.3 5.0 1.1 − 2.3 − 0.8 2.6 7.3 8.8 6.1 − 13.2 6.2 8.7 − 4.7 7.6 − 5.6 7.3 3.4 1.8 − − − − − − − − 10.4 − − − − − − − − 10.5 − 52.6 72.4 77.5 72.4 83.3 88.4 69.4 64.6 12.7 25.9 14.7 − 11.3 − 3.5 13.6 − 75.8 No.1∼ N0.7; 118 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 10 − 7.2 10 − − − 78 5.4 11 12 − − 6.2 1.6 13 5.6 − 6.2 − − − − 68 86.7 11 − (単 位 : 重 量 %) 13 14 15 16 − − − − − − − − 1.0 5.8 3.5 9.9 − 4.2 9.7 − − − − − − − 2.7 − 96 90.3 86.5 85.9 − − − 4.4 No.8∼ N0.16; 06 サ イ ズ 粒 子 3 0.425 mm 以 下 の 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 化 学 組 成 0.425 mm 以 下 の 溶 融 メ タ ル 粒 子 は , 以 下 の 粒 径 サ イ ズ に 区 分 け し た . ① 425∼ 200 μ m サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 8 粒 子 ,② 200∼ 100 μ m サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 9 粒 子 ,③ 100 ∼ 20 μ m サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 8 粒 子 ,④ 20 μ m 以 下 の サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 3 粒 子 の 化 学 分 析 結 果 を 表 5.3 に 示 し た . O・ Al・ Si・ P・ S・ Ca・ Fe・ Cu の 8 元 素 が 検 出 さ れた. ① サ イ ズ で は , 検 出 さ れ た 全 元 素 を 含 む 粒 子 は み ら れ な か っ た . 全 粒 子 と も Fe お よ び Cu を 主 成 分 と す る が , Fe に Cu が 附 随 し な い 粒 子 が み ら れ た . 3 粒 子 に お い て O が 検 出 さ れ , O が 検 出 さ れ な い 2 粒 子 に Al が 附 随 し た . Si は 全 粒 子 に お い て 検 出 された.②サイズでも,検出された全元素を含む粒子はみられなかった.全粒子とも Fe お よ び Cu を 主 成 分 と す る .5 粒 子 に お い て O が 検 出 さ れ ,そ の う ち 3 粒 子 に は S が 附 随 し た . Si は 全 粒 子 に お い て 1∼ 8 %程 度 の 範 囲 で 検 出 さ れ た . ③ サ イ ズ で も , 検 出 さ れ た 全 元 素 を 含 む 粒 子 は み ら れ な か っ た .2 粒 子 に お い て O が 検 出 さ れ た .全 粒 子 と も Fe と Cu が 主 成 分 で あ り , Fe に Cu が 附 随 し な い 粒 子 が 5 粒 子 み ら れ た . ④ 20μ m サ イ ズ 以 下 の 3 粒 子 は Fe が 主 成 分 で あ り , 2 粒 子 に O が 検 出 さ れ , 3 粒 子 に は Ca が 附 随 し た . 139 表 5.3 0.425mm 以 下 の 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 化 学 組 成 No. 1 2 粒径 200< 200< O 3.2 2.7 − − Al Si 3.0 8.8 − − P S 0.7 − Ca 1.0 − Fe 7.0 12.3 Cu 85.2 76.3 No. 15 16 粒径 100< 100< − − O Al 3.6 − Si 1.8 13.4 − P 3.1 − − S Ca 1.2 − Fe 10.3 69.8 Cu 83.2 13.7 3 200< 2.7 − 8.3 − − − 5.8 83.2 17 100< − − 3.2 − − − 4.7 87.0 4 5 6 200< 200< 200< − − − 5.0 7.3 − 6.1 8.9 5.9 6.1 − 4.1 − − − − − − 82.8 72.5 90.0 − 11.3 − 18 19 20 <100 <100 <100 7.7 3.6 − − 0.9 6.1 1.1 2.4 13.1 − 1.4 10.1 − − − − 1.1 − 87.8 79.6 68.1 − 4.3 10.7 7 200< − − 9.9 − − − 4.4 85.7 21 <100 − 1.9 1.8 6.1 − − 90.2 − 8 9 10 200< 100< 100< − 11.4 10.1 − 2.6 − 8.2 4.7 0.9 − − − 1.3 3.7 11.4 − 3.7 − 4.1 27.9 51.6 86.4 45.9 26.0 22 23 24 <100 <100 <100 − − − − 1.7 − 6.0 1.2 5.3 5.9 − 6.2 − − − − 2.7 − 86.5 96.2 88.4 − − − (単 位 : 重 量 %) 11 100< 4.3 − 7.4 − 1.5 − 51.5 34.1 25 <100 − − 9.9 − − − 3.7 86.4 12 13 100< 100< 2.6 2.3 − − 7.5 5.6 3.6 − − − − − 71.5 2.8 14.9 89.3 26 27 <20 <20 10.7 1.6 1.7 − 2.5 1.8 − − − − 1.8 0.7 82.6 95.8 − − 14 100< − 10.5 7.6 2.4 − − 64.5 15.0 28 <20 − − 2.0 11.0 − 1.0 84.8 − 200<; 425∼ 200μ m サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 100<; 200∼ 100μ m サ イ ズ 溶 融 メ タ ル <100; 100∼ 20μ m サ イ ズ 溶 融 メ タ ル <20 ; 20μ m 以 下 の 溶 融 メ タ ル 赤 銅 色 お よ び 鉄 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル は ,共 通 し て Fe お よ び Cu を 主 成 分 と す る も の で あ っ た . 一 部 の 粒 子 で は Fe に Cu が 附 随 し な い 場 合 も み ら れ た が , Fe と Cu 含 有 量 の 関 係 は 相 補 的 で あ り ,Cu が 増 加 し た も の は Fe 含 有 量 が 相 対 的 に 減 少 し た ( 図 5.3). 赤 銅 色 お よ び 鉄 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル の Fe お よ び Cu 以 外 の 含 有 元 素 の 傾 向 は 以 下 で あ っ た . 475 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル を 基 準 に 整 理 す る と , 1)粒 径 の 小 さ い 溶 融メタル粒子に O が検出された 2)Zn は 116 サ イ ズ 以 下 の 粒 子 に は 含 有 さ れ な か っ た .3) 粒 子 の 含 有 元 素 の 種 類 は ,粒 径 の 小 さ い 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 方 が 少 な く な る 等 の 傾向が認められた. 140 100 80 系列1 系列2 系列3 系列4 系列5 系列6 Fe(%) 60 40 20 0 0 20 40 60 80 100 Cu(%) 図 5.3 溶 融 メ タ ル 粒 子 に お け る Fe と Cu 含 有 量 の 関 係 系 列 2; (116+06)サ イ ズ 系 列 1 ;( 475+ 236) サ イ ズ 系 列 3; 425∼ 200μ m サ イ ズ 系 列 4 ; 200∼ 100μ m サ イ ズ 系 列 5; 100∼ 20μ m サ イ ズ 系 列 6; 20μ m 以 下 5.2.4 銀 白 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル の 分 析 結 果 銀 白 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 475 サ イ ズ の 5 溶 融 メ タ ル 粒 子 お よ び 236 サ イ ズ の 3 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 化 学 分 析 結 果 を 表 5.4 に 示 し た . 銀 白 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル 粒 子 か ら は Al・Si・S・Cl・Ca・Cr・Mn・Fe・Cu・Zn の 11 元 素 が 検 出 さ れ た . 全 粒 子 と も Al を 主 成 分 と し , No.8 を 除 く と Al が 90 %以 上 を 占 め た . 表 5.4 銀 白 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 元 素 組 成 Al Si S Cl Ca Cr Mn Fe Cu Zn 1 96.2 − 0.21 0.12 − − − 2.19 1.23 0.08 2 3 96.1 94.48 − − 0.26 0.21 0.11 0.14 − − − − 2.19 − − 3.63 0.08 1.19 − 0.16 No.1~5; 475 サ イ ズ 4 97.4 0.25 0.22 − − − 0.38 0.96 0.36 0.34 (単 位 : 重 量 %) 5 6 7 8 96.7 96.82 92.17 86.29 0.23 0.28 2.66 5.78 − 0.25 0.22 − − − − − − − 3.40 4.81 0.35 0.18 0.22 − 0.98 1.76 0.10 1.05 0.06 0.07 0.80 0.79 0.34 0.28 0.1 0.54 − − 0.13 0.07 No.6∼ 8; 236 サ イ ズ 141 5.2.4 溶 融 メ タ ル の 研 削 く ず の XRD 測 定 赤 銅 色 お よ び 鉄 色 ,銀 白 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 475 お よ び 236 サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 粒 子 の XRF 分 析 に あ た っ て , 研 削 に よ る 内 部 面 を 露 出 さ せ た こ と は 前 述 し た . 各 溶 融 メ タ ル の 研 削 く ず を 集 め ,め の う 乳 鉢 で 微 粉 化 し た .そ の 微 粉 を 用 い て ,XRD 分 析 に よ り 元 素 の 結 晶 相 を 決 定 し た ( 図 5.4). 結 晶 相 は , XRD 測 定 結 果 と JCPD デ ー タ ベースとの照合により決定した. 赤 銅 色 お よ び 鉄 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 研 削 く ず か ら は ,金 属 Feお よ び 金 属 Cuと 金 属 間 化 合 物 相 (Fe 4 Cu 3 ) の 回 折 パ タ ー ン が 得 ら れ た .銀 白 色 の 金 属 光 沢 を 示 し た 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 研 削 く ず か ら は , 金 属 Alの 回 折 パ タ ー ン の み が 得 ら れ , 他の金属間化合物相の示す回折ピークは認められなかった. 赤銅色ないし鉄色の金属光沢を示す溶融メタル粒子の生成については,以下のよう に 考 え ら れ る .還 元 さ れ た Feと Cuは ,Fe構 造 中 へ の Cuの 浸 入 ,ま た は 逆 に Cu構 造 中 へ の Feの 浸 入 が 生 じ た . こ の 場 合 , 両 者 の 浸 入 度 合 い に よ り 一 部 は ( Fe 4 Cu 3 ) 形 成 し ,他 の 部 分 は 金 属 Feま た は 金 属 Cuを 形 成 し て い た .金 属 Alを 主 と し た 溶 融 ア ル ミ ニ ウム粒子の成因は,次のように考えられる.焼却残渣について水洗処理した後,双眼 実 体 鏡 観 察 に よ り ア ル ミ ニ ウ ム 小 塊 の 存 在 が 確 認 で き た ( 図 5.1; 4). ア ル ミ ニ ウ ム の 融 点 は 660.2 ℃ で あ る と こ ろ か ら 焼 却 残 渣 中 の ア ル ミ ニ ウ ム 小 塊 が 融 け た 後 ,接 触 し mmサ イ ズ あ る い は そ れ 以 下 の 粒 子 に 成 長 し た と 考 え ら れ る .サ ブ mmサ イ ズ の 粒 子 が確認できなかったことは,溶融スラグ塊や他の溶融メタル粒子に比べ,比重が小さ Intensity(a.u.) いために水簸の過程で除去された可能性が考えられる. CuKα2θ(゜) 図 5.4 475 お よ び 236 サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 研 削 く ず の XRD回 折 パ タ ー ン 5 8 ) 142 5.2.5 特 徴 的 な 元 素 を 含 有 す る 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 元 素 組 成 Fe お よ び Cu,Al を 主 成 分 と す る 溶 融 メ タ ル 粒 子 以 外 の 溶 融 メ タ ル 粒 子 の 元 素 組 成 を 表 5.5 に 示 し た . 表 5.5 に 示 し た 14 溶 融 メ タ ル 粒 子 は No.14 の み が mm サ イ ズ で あ り , 他 は サ ブ mm サ イ ズ で あ っ た . そ れ ら の う ち No.1∼ No.3 は 低 沸 点 金 属 の Pb を 主 要 成 分 と し , そ れ ぞ れ 56.6 %, 42.4 %, 19.9 %含 ん で い た . こ れ ら の 粒 子 は , Pb-O-S-Cu 系 お よ び Pb-Si-O-Ca-Fe 系 の 化 合 物 を 形 成 し て い る と 考 え ら れ る .No.4 は 18.1 %の Sn と 8.8 %の Sb を 含 み , No.5 は 45.7 %の Sb を 含 ん で い た . こ れ ら の 粒 子 は , Sn-Sb-O-Fe-Cu 系 お よ び Sb-O-S-Fe 系 の 化 合 物 を 形 成 し て い る と 考 え ら れ る .No.6 は 13.8 %の Ni を 含 み ,Fe-Ni-Cu-S 系 の 金 属 間 化 合 物 を 形 成 し て い る と 考 え ら れ る . No.7∼ No.13 は Cr, Fe, Ni の 3 成 分 を 主 要 成 分 と す る 粒 子 で あ っ た . こ れ ら の 粒 子 は ,Cr-Fe-Ni 系 の 金 属 間 化 合 物 を 形 成 し て い る と 考 え ら れ る . No.14 は ほ ぼ 4 %の Ti と Co を 含 ん で い た . こ の 粒 子 は , Fe-Ti-Co 系 の 金 属 間 化 合 物 を 形 成していると考えられる. 表 5.5 特 徴 的 な 元 素 を 含 む 溶 融 メ タ ル の 元 素 組 成 No. 粒径 O Al Si P S Cl Ca Ti Cr Fe Ni Co Cu Sn Sb Pb 1 <20 8.2 1.2 1.3 − 12.5 5.0 − − − 1.3 − − 14.0 − − 56.6 2 3 4 5 6 7 <20 <100 100< 100< <100 <20 14.0 23.0 5.0 7.5 − 1.4 − − 3.5 3.7 − 2.6 10.2 10.4 3.7 3.2 2.2 1.7 − − − − − − − 9.4 1.4 5.6 14.7 − − − − − − − − − 14.4 9.2 − 2.0 − − − − − − − − − − − 14.2 6.1 22.8 29.1 35.2 5.8 69.5 − − − − 13.8 8.6 − − − − − − − 11.1 33.9 2.8 63.6 − − − − − − 18.1 − − − 8.8 45.7 − − − − 42.4 19.9 − <100; 100∼ 20μ m サ イ ズ 溶 融 メ タ ル 8 <20 8.5 3.9 7.6 − − 0.2 7.1 0.5 11.4 53.4 6.4 − − − − − (単 位 : 重 量 %) 9 <20 − − 1.5 1.6 − − 0.8 − 2.3 74.9 17.5 − 1.5 − − − 10 <20 − − 2.3 2.3 − − 0.6 − 2.2 74.2 14.7 − 3.6 − − − 11 <20 − − 1.0 2.4 − − 0.8 − 1.9 76.3 17.6 − − − − − 12 <20 − − 1.2 1.6 − − 0.9 − 1.9 75.5 18.1 − − − − − 13 <20 − − 1.2 2.2 0.5 − 0.8 − 1.7 73.6 19.8 − − − − − 14 118 − − 4.8 − − − − 4.2 − 87.8 − 4.0 − − − − <20 ; 20μ m 以 下 の 溶 融 メ タ ル 118: 2.36∼ 1.18 mm 5.3 考 察 と 化 学 組 成 mmサ イ ズ お よ び サ ブ mmサ イ ズ 粒 子 に お い て ,そ れ ら を 構 成 す る Feお よ び Cu に つ い て は XRD測 定 結 果 よ り , Feは 金 属 Fe, Cuは 金 属 Cuと Fe 4 Cu 3 を 形 成 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た . 単 独 粒 子 と し て 分 離 さ れ て い る 粒 子 は 金 属 Fe , 金 属 Cu お よ び Fe 4 Cu 3 な ど の 複 数 の 金 属 相 か ら 構 成 さ れ て い る と 考 え ら れ る .そ れ ぞ れ の 粒 子 に お い て 検 出 さ れ る Siお よ び Pは , 焼 却 残 渣 中 で は 酸 化 物 の 形 態 を と っ て お り , そ れ ら が 還 元 さ れ て 溶 融 メ タ ル に 含 ま れ た と 考 え ら れ る 100,106) . 143 Alは 金 属 Alを 形 成 し て い た .こ の Al粒 子 の 形 成 は ,焼 却 残 渣 中 に 含 ま れ る ア ル ミ ノ 珪 酸 塩 の 還 元 に よ る よ り も , 微 粒 Al( 図 5.1; 4) が 融 体 中 に お い て 互 い に 接 触 し mm サイズまで成長したと考える方が妥当である.スラグを骨材として使用する場合にモ ル タ ル の 膨 張 が 報 告 107) さ れ て い る が ,こ の よ う な 金 属 Al粒 が 原 因 と な っ て い る こ と を 第 4 章 に お い て 示 し た .溶 融 ア ル ミ ニ ウ ム 粒 の 溶 融 ス ラ グ 粒 子 へ の 混 入 度 合 い を 精 査 し ,そ れ を 除 去 す る こ と が 必 要 と 考 え ら れ る .ま た ,Al粒 子 中 か ら 検 出 さ れ た Ca,Fe お よ び Cuに つ い て は 、そ れ ら が 単 相 の 金 属 態 と し て 存 在 し て い る か ,何 ら か の Al合 金 態を形成しているかは今後の課題である. 次に溶融メタル微粒子とその直近部分の溶融スラグの化学組成を比較することによ って,焼却残渣中の金属がスラグとメタルのどちらに分配され易いかが考察できる. 考 察 に あ た り , 溶 融 メ タ ル 粒 子 か ら 10μ m 以 下 の 直 近 部 分 の 溶 融 ス ラ グ (図 5.2 e,f) の SEM-EDS に よ る 化 学 分 析 を 行 っ た( 表 5.6).な お ,SL4∼ SL8 は メ タ ル 粒 子 が 存 在しない部分の溶融スラグの分析結果である。 表 5.6 サ ブ mm サ イ ズ メ タ ル 粒 子 直 近 の 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成 SiO2 SL1 SL2 SL3 33.4 26.7 37.6 SL4 SL5 31.9 34.5 SL6 41.0 (単 位 : 重 量 %) SL7 SL8 33.4 40.4 TiO2 3.4 2.5 2.5 3.6 2.7 2.5 2.6 2.4 Al2O3 12 8 13.7 10.3 13.2 13.1 11.4 14.6 Fe2O3 CaO K2 O 10.8 36.2 3.6 24.9 32.3 3.5 10.7 24.3 2.4 13.6 35.1 3.9 15.6 27.4 2.6 8.6 27.6 3.3 19.9 26 2.8 7.1 28 3.1 P2O5 Cl Cr2O3 CuO NiO ZnO − − − − − 0.5 1.4 0.8 − − − − 0.3 0.8 7.3 0.2 − 0.5 − 1.0 − − − 0.8 1.2 1.0 0.6 1.3 − 0.1 1.4 1.0 0.4 0.8 − 0.3 1.6 0.8 0.2 0.5 0.1 0.8 1.9 0.9 0.4 0.6 0.2 0.6 Pbに つ い て は ア ー ク 炉 99) ,プ ラ ズ マ 炉 101) で は 90% 以 上 ,コ ー ク ス ベ ッ ド 炉 23) で は 96 % 以 上 が 溶 融 飛 灰 に 移 行 す る と い う 報 告 が あ る が , 移 行 し な か っ た Pbの 状 態 に つ い て は 以 下 の よ う に 考 え る こ と が で き る .Pbを 含 む 微 粒 子( 表 5.6 No.1)直 近 の 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成( 表 5.6;SL1)は ,溶 融 メ タ ル と 近 接 し な い 部 分 (表 5.6;SL4∼ SL8) と ほ ぼ 似 通 っ た 組 成 を 示 し て い た .こ れ よ り ,Pbは 周 囲 の 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成 に 影 響 を 及 ぼ し て い な い と み な せ ,揮 散 効 果 が 影 響 し[ -O-Si-O-Al-O-]の 網 目 構 造 に 分 配 さ れ 難 い と 考 え る こ と が で き る . ま た , Pb を 含 む 粒 子 ( 表 5.5; No.1∼ No.3) の 化 学 組 成 か ら ,Pbは 合 金 態 の 形 成 お よ び 沸 点 が 高 く な る 酸 化 物( PbO),硫 化 物 (PbS) を形成している可能性が考えられる. SL2 は ,Fe を 主 成 分 と す る 粒 子( 表 5.3;No.6)直 近 の 溶 融 ス ラ グ の 化 学 組 成 で あ 144 る . SL2 の Fe 含 有 量 は SL4∼ SL8 の Fe 含 有 量 に 比 べ て 明 ら か に 高 く , Fe を 主 成 分 と す る 粒 子 の 影 響 が 及 ん で い る と 考 え ら れ る . hematite お よ び magnetite は 十 分 に 還 元 さ れ る 雰 囲 気 が 満 た さ れ な い 場 合 は 溶 融 と と も に ,[ -O-Si-O-Al-O-] の 網 目 構 造に入り込み,それを切断することにより溶流度を高める作用をしていると考えられ る . SL3 は Cr-Fe-Ni 系 か ら な る 粒 子 ( 表 5.5; No.7∼ No13) が 密 集 す る 溶 融 ス ラ グ ( 図 4.19 f)の 中 心 部 分 の 化 学 組 成 で あ る .SL3 の Cr 含 有 量 は SL4∼ SL8 の Cr 含 有 量 に 比 べ て 明 ら か に 高 く , Cr-Fe-Ni 系 か ら な る 粒 子 の 影 響 が 及 ん で い る と 考 え ら れ る . こ の こ と は , メ タ ル 粒 子 生 成 ま で に 還 元 さ れ な か っ た Fe お よ び Cr は [ -O-Si-O-Al-O-]の 網 目 構 造 に 分 配 さ れ て ,溶 融 ス ラ グ に 固 定 さ れ 易 い 傾 向 を 持 つ ことを示していると考えられる. 以上より,溶融スラグから分離されない極微粒溶融メタルは,溶融スラグのガラス 構 造 中 に 物 理 的 封 じ 込 め (図 3.21 中 の 金 属 )に よ っ て 包 含 さ れ て い る と 考 え る こ と が で き る .ま た ,ス ラ グ の 主 成 分 を み る と SiO 2 は 31.9∼ 41 % ,Al 2 O 3 は 10.3 ∼ 14.6 % , CaO は 26∼ 35.1 % と か な り 変 動 し て い る (表 5.6). こ の 分 析 結 果 か ら 実 機 で 製 造 さ れ る ス ラ グ は , mmサ イ ズ で は 第 3 章 (表 3.7∼ 表 3.9)に 示 し た よ う に 均 質 で あ る と 見 な す こ と が で き る が , μ mオ ー ダ ー で 見 る と 必 ず し も 均 質 で な い こ と を 示 し て い た . 表面溶融炉において,磁選後のストーカー炉の焼却残渣と焼却飛灰を原料とした溶 融 ス ラ グ と 同 時 に 生 成 さ れ る mm サ イ ズ お よ び サ ブ mm サ イ ズ の 溶 融 メ タ ル の 化 学 性 状は以下のようにまとめられる. (1)溶 融 体 の 水 に よ る 急 激 な 冷 却 に よ り , 溶 融 ス ラ グ と そ れ か ら 分 離 し た mmサ イ ズ の 溶 融 メ タ ル 粒 子 が 生 じ る .そ れ ら 粒 子 は Feと Cuを 主 成 分 と す る 粒 子 が 卓 越 し ,金 属 Feと 金 属 Cu相 お よ び Fe 4 Cu 3 相 お よ び そ の 他 の 微 量 金 属 成 分 か ら 構 成 さ れ て い た . ま た , Alを 主 成 分 と す る 粒 子 も 認 め ら れ , Alは 金 属 ア ル ミ ニ ウ ム を 形 成 し て い た . (2))溶 融 ス ラ グ 中 に は 数 ∼ 300μ m サ イ ズ の 微 粒 メ タ ル 粒 子 が 包 含 さ れ る . 粒 子 径 が 100 前 後 ∼ 300μ m の メ タ ル 粒 子 は , 溶 融 ス ラ グ を 粉 砕 す る こ と に よ り 分 離 す る 傾 向 を 示 し た が ,粒 子 径 が ∼ 10μ m 前 後 の メ タ ル 粒 子 は 粉 砕 に よ っ て も ス ラ グ か ら 分 離 さ れ に く か っ た .そ れ ら 粒 子 も Fe を 主 成 分 と す る メ タ ル 粒 子 ,Cu を 主 成 分 と す る メ タ ル 粒 子 が 卓 越 す る . こ の 傾 向 は , mm サ イ ズ メ タ ル と 同 様 で あ っ た . (3)溶 融 メ タ ル 粒 子 の 粒 径 が 小 さ く な る と , 酸 素 が 検 出 さ れ る 傾 向 が み ら れ た . (4) 特 徴 的 な 組 成 を 示 し た 粒 子 は Cr-Fe-Ni 系 粒 子 , Fe-Sn-Sb-Cu-O 系 お よ び Fe-Sb-O-S 系 粒 子 , Fe-Ni-Cu-S 系 粒 子 , Cr-Fe-Ni 系 粒 子 , Pb-O-S-Cu お よ び Pb-Si-O-Ca-Fe 系 粒 子 で あ っ た . (4)以 上 の こ と か ら ,溶 融 メ タ ル 粒 子 は ,い く つ か の 金 属 相 と 金 属 間 化 合 物 相 ,酸 化 物 相および硫化物相から構成されると考えられる. 今後の溶融メタルの研究において,次に示す方向性が重要となる。 145 溶融スラグは,土木建築資材としての有効利用が現実のものとなり,環境に対して よりクリーンな溶融スラグを製造していくことが要求される.クリーンな溶融スラグ の製造にあたっては,本章に示したような溶融メタルの組成データと原料灰の組成お よ び 溶 融 条 件 (溶 融 温 度 ・ 溶 融 炉 内 雰 囲 気 ・ 溶 融 炉 内 滞 留 時 間 な ど )と 粒 子 径 が 小 さ く なるにしたがい酸素が検出される粒子が多くなる傾向が認められたことなどを関連づ け た デ ー タ の 積 み 重 ね と そ れ ら を 熱 力 学 的 考 察 に 結 び つ け る こ と が 必 要 と な る .ま た , いくつかの微粒子の化学組成から,実用合金態として製造されていない金属間化合物 からなるものが認められた.このような微粒子のさらなる解析を進めることで,廃棄 物の溶融処理とは別分野になるが,新たな材料の発見に繋がる可能性を見出すことに なると考えられる. 146 第6章 溶融飛灰の脱塩特性 6.1 研 究 の 背 景 と 目 的 6.1.1 山元還元の現状 溶融飛灰は焼却残渣の溶融処理における副生成物である.それは溶融炉内において 原料灰からの揮散物質と発生ガスが冷却塔を通過する間に凝縮したもの,酸性排ガス 処理のために吹き込まれた処理剤および炉内から物理的に飛散したものを集じん機に より捕集したものである. 1991 年 の「 廃 棄 物 の 処 理 お よ び 清 掃 に 関 す る 法 律 」の 改 正 に と も な い 溶 融 飛 灰 も 特 別管理一般廃棄物となり,溶融飛灰の直接埋立が不可となった.これにより溶融飛灰 に関する研究は溶融固化・セメント固化・薬剤処理や溶媒抽出等による有害重金属類 の 溶 出 抑 制 を 目 的 と し て 開 始 さ れ た 108,109) .一 方 ,溶 融 飛 灰 に 含 有 さ れ る Pbお よ び Zn に着目すると,その含有量は非鉄金属鉱石としての最低品位(カットオフグレード Pb;4.0 %,Zn;3.5 %)を 満 た し て お り ,特 別 管 理 一 般 廃 棄 物 と し て 処 理 す る よ り も 非 鉄 金 属 原 料 と し て と ら え る こ と の 重 要 性 が 指 摘 さ れ た 43,110) .溶 融 飛 灰 に 関 す る 研 究 の 重 点 は , Pbお よ び Znの 山 元 還 元 を 可 能 と す る 方 向 へ と 移 っ て き た 111~115) . 溶 融 飛 灰 資 源 化 研 究 会 で は , 資 源 化 の 取 り 組 み 116) , 資 源 価 値 の 評 価 117) , 社 会 的 課 題 118) ,回 収 技 術 119) ,資 源 化 コ ス ト の 考 え 方 120) と い っ た よ う に ,資 源 化 に つ い て 幅 広 く 検 討 し た . そ こ で は , 溶 融 飛 灰 中 の Pb含 有 量 を ∼ 15 %, Zn含 有 量 を ∼ 20 %, Cuは ∼ 2 %と 総 括 し , 溶 融 飛 灰 の 発 生 量 を 2008 年 で は 5 万 t/年 ∼ 13 万 t/年 , 2018 年 で は 12 万 t/年 ∼ 35 万 t/年 と 推 定 し て い る .回 収 技 術 と し て は 溶 融 飛 灰 を 天 然 鉱 石 に 対 す る 製錬工程に組み入れるための従来方式を紹介し,発生する溶融飛灰の性状を考慮しつ つ対応して行くことの重要性を整理した.また,資源化コストを考察する上では埋立 処分と山元還元を対応させた「費用効果分析」に頼らざるを得ないとした.渡辺ほか 121) は , 山 元 還 元 に よ る 資 源 化 コ ス ト の 解 析 と し て 埋 立 処 分 と 山 元 還 元 を 対 応 さ せ た 「 費 用 効 果 分 析 」手 法 に よ り ,山 元 還 元 は 埋 立 処 分 の 2 倍 の コ ス ト に な る と の 試 算 を 示した. 筆 者 が 溶 融 処 理 に 取 り 組 み 始 め た 1995 年 時 点 , ま た 溶 融 飛 灰 資 源 化 研 究 会 が 総 合 的 な 取 り 組 み の 必 要 性 を 示 し た 1998 時 点 で は , 山 元 還 元 は 方 向 性 と し て の 意 義 で あ っ た が , 現 在 で は Zn, Pbお よ び Cuの 回 収 が 実 機 操 業 上 で 実 現 し て い る (三 井 金 属 , 大 平 洋 金 属 ,中 部 リ サ イ ク ル ,光 和 精 鉱 ,三 菱 マ テ リ ア ル な ど ).そ の 事 例 を 図 6.1 に 示 し た 122) . 実 機 操 業 に よ る Pbお よ び Znの 回 収 工 程 は 脱 塩 の た め の 前 処 理 工 程 と 精 錬 工 程 か ら な る 119,123) .前 処 理 工 程 に は 湿 式 工 程 と 乾 式 工 程 が あ る .湿 式 工 程 で は Pbと Znは PbS お よ び ZnSと し て 回 収 さ れ る .乾 式 工 程 に は ,1)ウ エ ル ツ 法 (東 邦 亜 鉛;安 中 ) 鉱 炉 法 (三 井 金 属 ; 三 池 精 錬 MF炉 ) 2)半 溶 3)ロ ー タ リ ー キ ル ン 法 (光 和 精 鉱 )が あ る が , 溶 融 147 飛灰の性状により使い分けが行われることになる. 精 錬 工 程 は , 1) ISP 法 の 亜 鉛 ・ 鉛 精 錬 工 程 (三 井 金 属 他 ; 八 戸 , 住 友 金 属 ; 播 磨 ) 2)亜 鉛 精 錬 工 程 (電 熱 蒸 留 法:日 鉱;三 日 市 ) 3)鉛 精 錬 工 程 (ば い 焼 + 溶 鉱 炉 + 電 解 : 東邦亜鉛;契島,三井金属;竹原,同和;小坂,住友金属;播磨,三菱金属;細倉) などである. 図 6.1 実 機 操 業 に お け る Zn, Pbお よ び Cu資 源 回 収 の 事 例 1 2 2 ) 6.1.2 目 的 山 元 還 元 の 入 り 口 で あ る ( 図 6.1 の 破 線 で 囲 ん だ 部 分 ) 塩 類 除 去 お よ び 酸 溶 解 に よ る金属回収工程の部分に関しては,溶融飛灰の化学組成のみならず,それの構成する 鉱物種の解析から,改善の余地があると考えられる.つまり,それぞれの施設から発 生する溶融飛灰を実機操業における回収プロセスへの組み込みを設計していく段階で は , Pbと Znの 含 有 量 と 同 時 に そ れ ら の 構 成 鉱 物 種 も 重 要 な 要 素 で あ る と 考 え ら れ る . しかし,鉱物種の持つ意味についてはあまり重要視されていないようにみえ,溶融飛 灰中での回収対象金属類の鉱物種についての研究は数多くないのが現状である.溶融 飛灰中の鉱物種は,焼却に伴う排ガス中の元素とイオンの分析結果をもとに熱力学的 平 衡 論 か ら 議 論 し た 結 果 124~126) を 用 い て 推 定 す る 手 法 ,Eighmy et al. 28) に 代 表 さ れ る 種々の機器分析から化学種を同定する手法などがある.それらによれば,溶融炉内に お い て 揮 散 し た 重 金 属 類 は 排 ガ ス 中 の HClお よ び SOxと の 反 応 に よ り 塩 化 物 と 硫 酸 塩 を形成し,一部は酸化物を形成することが推定できる. 長 田 ほ か 12 7) は 熱 力 学 的 平 衡 論 を 溶 融 処 理 過 程 に お け る 低 沸 点 重 金 属 類 の 挙 動 解 析 148 に 適 用 し ,Znの 揮 散 率 が 80 %,Pbの そ れ は 95 %以 上 で あ る と し ,Pbは 高 温 側 で か つ 還 元 雰 囲 気 が 強 く な る と 揮 散 率 が 上 昇 す る と し た .た だ し ,揮 散 し た Pbや Znが 排 ガ ス の冷却とともに凝縮し,集じんされた場合の鉱物種の実態についての報告は見あたら な い .溶 融 飛 灰 の 鉱 物 種 の 実 態 に つ い て ,須 藤 ほ か 128) は 電 気 抵 抗 式 溶 融 炉 か ら 発 生 し た 溶 融 飛 灰 に つ い て Pbお よ び Znは 酸 化 物 を 形 成 す る と し ,溶 融 飛 灰 の 精 製 水 洗 浄 残 渣 は ,zinciteお よ び laurioniteを 主 と す る も の で あ り ,硫 酸 溶 液 洗 浄 で は Pbは palmierite を形成することを報告した.以上のように,溶融飛灰を構成する鉱物種の実体的記載 は数少ないのが現状である. 以 下 で は ,山 元 還 元 促 進 を 目 的 と し ,千 葉 県 に お い て 実 機 操 業 し て い る 7 溶 融 施 設 から発生する溶融飛灰の発生量,それらの化学性状および構成鉱物種,山元還元に持 ち込むための水洗浄による脱塩特性と残渣の性状について記載した. 6.2 溶 融 飛 灰 の 化 学 組 成 と 構 成 鉱 物 6.2.1 溶 融 施 設 と 飛 灰 発 生 量 溶融施設からの溶融飛灰発生量を考察する上で,溶融飛灰が溶融過程における 1) 揮 散 物 質( 重 金 属 類 と halite,sylvite等 ),2)酸 性 排 ガ ス 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た 処 理剤(消石灰,助剤)とその反応生成物 3)溶 融 炉 発 生 ガ ス の 随 伴 物 質 ( 原 料 灰 か ら の 飛 散 物 質 ) か ら 構 成 さ れ て い る こ と が 基 本 と な る . 千 葉 県 内 に お い て 現 在 ( 2006 年 )稼 働 中 の 溶 融 施 設 を 表 6.1 に 示 し た .7 施 設 と も 酸 性 排 ガ ス 処 理 方 式 は ,消 石 灰 ・ 助 剤・活 性 炭 吹 き 込 み と バ グ フ ィ ル タ ー (BF)を 組 み 合 わ せ た 乾 式 処 理 で あ る .助 剤 は , 非 晶 質 シ リ カ (70 %以 上 ), Al 2 O 3 ( 10~20 %), Na 2 O+K 2 O(10 %未 満 )の 性 状 を 持 つ も の で あ る( 例 え ば ,製 品 安 全 デ ー タ シ ー ト;三 井 金 属 鉱 業 ).消 石 灰・助 剤 お よ び 活 性 炭 の 吹 き 込 み 量 は , 排 ガ ス 中 の HClや SOxの 実 測 デ ー タ 等 を も と に , 反 応 効 率 と 排 ガ ス規制値に対する安全性を考慮しそれらに対する 2 倍等量程度が吹き込まれる. 調査対象とした溶融施設の溶融方式は以下である.C 施設はプラズマ式灰溶融方式 で あ り , 助 剤 の 吹 き 込 み と バ グ フ ィ ル タ ー (BF)に よ り 排 ガ ス 処 理 し て い る . YA お よ び YM 施 設 は 表 面 灰 溶 融 方 式 で あ り , 消 石 灰 と 活 性 炭 の 吹 き 込 み と BF に よ り 排 ガ ス 処 理 し て い る . TO 施 設 も 表 面 灰 溶 融 方 式 で あ り , 消 石 灰 吹 込 み か ら 助 剤 吹 込 み に 変 更 さ れ BF に よ り 排 ガ ス 処 理 し て い る . NA お よ び KCS 施 設 は 直 接 溶 融 方 式 で あ り , 消 石 灰 と 活 性 炭 の 吹 き 込 み と BF に よ り 排 ガ ス 処 理 し て い る .NAG 施 設 は 流 動 床 式 直 接 溶 融 方 式 で あ り , 助 剤 の 吹 き 込 み と BF に よ り 排 ガ ス 処 理 し て い る . 灰溶融方式からの溶融飛灰発生率は運転実績から 溶 融 飛 灰 発 生 率 =(集 じ ん 灰 /原 料 灰 ) ① と し て 求 め た . C 施 設 で の 発 生 率 は 5 %, YM 施 設 で の 発 生 率 は 5.4 %, TO 施 設 で の 発 生 率 は 8.5 %で あ っ た . 直接溶融方式からの溶融飛灰発生率は運転実績から 149 溶 融 飛 灰 発 生 率 =(集 じ ん 灰 /可 燃 ご み ) ② と し て 求 め た .NA 施 設 で の 発 生 率 は 2.6 %,KCS 施 設 で の 発 生 率 は 7 %,NAG 施 設 で の 飛 灰 発 生 率 2.4 %で あ っ た .YA 施 設 に つ い て は ,焼 却 飛 灰 と 溶 融 飛 灰 の 混 合 集 積 の た め 飛 灰 発 生 率 と し て 管 理 さ れ て い な い こ と か ら , 他 施 設 の 例 を 参 考 と し て 5 %と 想定した. ここで溶融飛灰を吹き込まれた消石灰・助剤および活性炭を含めた集じん灰とした 理由は,山元還元にあたって対象となるものが消石灰および助剤または活性炭を含め て集じんされたものであることによった.以上より,各施設の溶融能力をもとに総溶 融 飛 灰 発 生 量 を 推 定 す る と ,お よ そ 54 t/日 と な る .こ れ か ら 回 収 さ れ る Pb お よ び Zn の量的評価は,次の溶融飛灰の化学組成をもとになされる. 表 6.1 溶 融 施 設 と 飛 灰 発 生 量 1 2 9 ) C施設 YA施設 プラズマ式 表面 溶融方式 灰溶融 灰溶融 溶融能力 36(t/日) 10.68 (t/日) 1350 溶融温度 1300 ℃ ∼1450 ℃ BF 排ガス BF 消石灰 処理法 助剤 活性炭 飛灰発生率 5.0% − (%) vs 原料灰 TO施設 NA施設 KCS施設 NAG施設 表面 高温ガス化 高温ガス化 流動床式 灰溶融 直接溶融 直接溶融 ガス化溶融 26(t/日) 201(t/日) 200(t/日) 207(t/日) 1700 1700 1300 1250 ℃ 1350 ℃ ∼1800 ℃ ∼1800 ℃ ∼1400 ℃ BF BF BF BF BF 消石灰 消石灰 消石灰 消石灰 助剤 活性炭 助剤 活性炭 活性炭 5.4% 8.5% 2.6% 7.0% 2.4% vs 原料灰 vs 原料灰 vs 可燃ごみ vs 可燃ごみ vs可燃ごみ TO 施 設 は 消 石 灰 か ら 助 剤 に 変 更 YM施設 表面 灰溶融 13(t/日) YA 施 設 は 焼 却 飛 灰 と 溶 融 飛 灰 の 混 合 集 積 6.2.2 化 学 組 成 表 6.1 に 示 し た 7 溶 融 施 設 の う ち 5 施 設 か ら 発 生 し た 溶 融 飛 灰 の XRF 分 析 結 果 を 表 6.2 に 示 し た . 溶 融 飛 灰 を 構 成 す る 元 素 は Si・ Al・ Fe・ Ca・ Na・ K・ P・ S お よ び Cl 等 に 加 え て Zn, Pb お よ び Cu 等 で あ っ た . 分 析 対 象 と し た 試 料 は , 集 じ ん 機 か ら 排出されピット内に貯留されたものである.ピット内に貯留された溶融飛灰を分析対 象とした根拠は,金属回収を行う場合,それが生原料となるからである.なお,ピッ ト内は溶融飛灰の飛散防止のため加湿されていた. 試 料 C1~C3 は 助 剤 に よ る 排 ガ ス 処 理 方 式 と 原 料 灰 中 の CaOの ほ と ん ど が 溶 融 ス ラ グ へ 移 行 す る こ と か ら( 第 3 章 3.6),CaOは 他 の 試 料 に 比 べ て 低 濃 度 で あ っ た .Na 2 O, K 2 O,Clお よ び SO 3 成 分 で 77 %程 を 占 め る .他 の 試 料 に 較 べ て ,Cl濃 度 が 高 い 傾 向 を 示 し た .ま た ,SiO 2 は 殆 ど が 助 剤 由 来 で あ る と 考 え ら れ る .回 収 対 象 の Cuは 1 %以 下 , Pbお よ び Znは そ れ ぞ れ 2 %前 後 お よ び 10 %前 後 で あ っ た . 試 料 TO1 は 消 石 灰 吹 込 み に よ る 排 ガ ス 処 理 の 場 合 の 組 成 で あ り ,TO2 は 消 石 灰 と 助 剤 を の 混 合 使 用 に よ る 排 ガ ス 処 理 の 場 合 の 組 成 で あ り ,TO3 は 消 石 灰 か ら 助 剤 へ 変 更 150 し た 排 ガ ス 処 理 の 場 合 の 組 成 で あ る . TO1 の CaOは 40 %前 後 で あ り , TO2 の そ れ は TO1 の 1/2 程 度 で あ り ,TO3 の SiO 2 は 40 %強 を 占 め ,TO1 の CaOと ほ ぼ 等 量 と な っ て い た .TO1 で の SiO 2 は 助 剤 の 吹 込 み が な い こ と か ら ,溶 融 炉 内 か ら 巻 き 上 げ ら れ た 原 料 灰 片 由 来 と 考 え ら れ る . TO1 で は 回 収 対 象 の Cu, Pbお よ び Znは 酸 化 物 表 示 で そ れ ぞ れ 1 %以 下 ,1 %は 前 後 で あ っ た .TO2 お よ び TO3 で は PbOが 2.5 %,ZnOが 9 % 強であった. 試 料 YA1∼ YA3 は 焼 却 飛 灰 と 溶 融 飛 灰 の 混 合 集 積 の た め 溶 融 飛 灰 の み の 性 状 を 反 映 し て い な い が , Zn に 関 し て み る と 3∼ 5 %含 有 さ れ て い た . 試 料 NA1∼ NA3 お よ び KCS は 消 石 灰 と 活 性 炭 の 吹 き 込 み に よ る 排 ガ ス 処 理 に よ る た め CaO が 30 %前 後 で あ っ た . 回 収 対 象 の Cu, Pb お よ び Zn は 酸 化 物 表 示 で そ れ ぞ れ %以 下 , 1 %前 後 お よ び 5 %前 後 で あ っ た . 試 料 YM1∼ YM3 は 消 石 灰 と 活 性 炭 の 吹 き 込 み に よ り CaO が 50∼ 60 %前 後 と 高 濃 度 で あ っ た . 回 収 対 象 の Cu, Pb お よ び Zn は 酸 化 物 表 示 で そ れ ぞ れ %以 下 で あ っ た . Cu, Pb お よ び Zn の 回 収 に あ た っ て は , そ れ ら の 濃 度 は 低 す ぎ る と 考 え ら れ る . 各試料の化学組成に関してはスポット試料による結果のために,必ずしも各施設に お い て 発 生 し た 溶 融 飛 灰 の 性 状 を 代 表 し て い る ど う か の 疑 問 が 残 る . し か し , 表 6.2 に 示 し た 化 学 組 成 か ら Pb 含 有 量 を 2 %,Zn 含 有 量 を 5 %と し て 溶 融 炉 の 稼 働 日 数 300 日 , 発 生 量 54 t/日 と す る と , Pb は 324 t/年 , Zn は 810 t/年 の 資 源 価 値 を 有 し て い る と考えられる. 表 6.2 溶 融 飛 灰 の 化 学 組 成 1 2 9 ) (単 位 : 重 量 %) 試料No. C1 C2 C3 TO1 TO2 TO3 YA1 SiO2 9.86 6.64 7.60 14.40 16.10 41.70 11.50 Al2O3 0.41 0.55 0.30 8.90 3.84 14.35 6.60 Fe2O3 0.61 0.41 0.50 1.15 0.41 1.07 3.30 − MgO 0.40 − 1.41 − 0.19 2.30 − − CaO 3.10 42.35 19.77 − 29.70 Na2O 26.06 26.01 21.80 1.53 9.73 4.09 6.40 K2O 15.32 14.37 16.20 0.54 6.59 5.76 3.50 P2 O 5 1.14 2.24 0.90 0.76 1.02 1.34 2.40 SO3 8.28 8.87 7.30 6.54 10.90 6.96 17.00 Cl 27.61 26.40 32.70 19.40 19.09 12.19 9.10 CuO 0.29 0.45 0.20 0.12 0.39 0.41 0.40 PbO 1.68 2.37 1.30 0.73 2.96 2.48 0.80 ZnO 8.53 10.67 7.90 1.25 9.21 9.35 5.20 C1~C3; C 施 設 YA1~YA3; YA 施 設 TO1,TO2 1 3 0 ) ,TO3; TO施 設 YA2 YA3 NA1 NA2 NA3 KCS YM1 YM2 YM3 12.90 3.14 7.35 8.77 5.90 7.39 11.38 11.00 10.20 16.57 0.41 5.12 4.70 2.20 3.63 − 1.28 − 2.34 0.61 1.20 1.42 1.30 0.92 0.39 0.30 0.40 2.35 0.47 1.27 1.12 1.40 − 0.87 1.09 1.00 34.74 64.36 34.67 29.85 30.10 26.57 57.15 58.88 46.40 2.09 0.11 12.55 10.55 14.20 18.52 1.99 − 7.00 − − 3.35 8.37 6.40 6.55 6.03 4.02 8.20 3.31 0.41 1.09 1.22 1.00 0.78 − 0.33 − 13.51 11.78 8.06 9.60 8.30 7.77 7.33 11.30 7.10 4.83 13.38 18.15 18.01 22.80 21.61 14.02 10.81 18.30 0.40 0.36 0.29 0.31 0.30 0.40 − 0.04 0.10 0.94 1.44 0.77 0.87 0.70 1.01 0.24 0.48 0.30 5.75 3.06 5.17 4.20 4.70 4.19 0.56 0.31 0.90 NA1∼ NA3; NA 施 設 KCS; KCS 施 設 YM1~YM3; YM施 設 6.2.3 構 成 鉱 物 溶 融 飛 灰 の 化 学 組 成 は ,NaClお よ び KClを 主 と す る 塩 化 物 と 酸 性 排 ガ ス を 中 和 す る た め に 吹 き 込 ま れ た CaO成 分 を 主 と す る (表 6.2). そ れ ら に 加 え て SiO 2 お よ び SO 3 と Cu,Pbお よ び Znが 含 ま れ る .そ れ ら の 成 分 が 構 成 す る 鉱 物 種 の 同 定 は XRD測 定 ,XPS 151 法 26,27) や XAFS法 131) 等 に よ り 解 析 さ れ る . XPS法 で は 試 料 表 面 の 情 報 し か 得 ら れ ず , バ ル ク 情 報 は 得 ら れ な い と い っ た 欠 点 が あ る .ま た ,含 有 量 が 微 量 の 場 合 XRD測 定 に よ っ て は 解 析 で き ず ,そ の よ う な 試 料 に つ い て は XAFS法 が 有 効 と な る .し か し ,XRD 測定による直接解析が困難なほど微量な金属類は,資源回収の対象から外されること に な る .表 6.2 に も 示 し た と お り ,溶 融 飛 灰 中 か ら の 回 収 対 象 金 属 は Pbお よ び Znと な る と こ ろ か ら ,そ れ ら の 鉱 物 種 の 解 析 は XRD測 定 を 中 心 に 熱 分 析 法 を 補 助 と し て 行 っ た. 消 石 灰 お よ び 助 剤 吹 き 込 み 方 式 か ら 発 生 し た 溶 融 飛 灰 に つ い て ,原・山 田 130,137) は , XRD測 定 (図 6.2)お よ び 熱 分 析 法 に よ る 構 成 鉱 物 の 解 析 を 行 い ,以 下 の 鉱 物 を 同 定 し た . Intensity(a.u.) Sy Ha Sy Po Pb2 Ca2 Ha Po Pb2 Pb2 ZnO Sy KZn KZn ZnO KZn Pb3 Sy Po Pb3 KZn KZn ZnO 東金 Ha Ha ZnO 千葉 KZn Pa Pa Pa Ha Pa ZnS Sy Pa 20 Pa 40 Pa Ha Sy 我孫子 60 CuKα2θ(゜) 図 6.2 溶 融 飛 灰 の XRD パ タ ー ン Ha:halite, Sy:sylvite, Po:portlandite, Ca2:Ca(ClO) 2 , ZnO:zincite, ZnS:sphalerite,KZn:K 2 ZnCl 4 ,Pa:palmierite,Pb2:fiedlerite,Pb3:penfieldite 同 定 さ れ た 鉱 物 は ,quartz,halite,sylvite,portlandite,CaClOH,calcite,anhydrite, gypsum,zincite,simonkollerite,K 2 ZnCl 4 ,cotunnite,penfielditeお よ び feidlerite で あ っ た .gypsumは XRD測 定 で は 同 定 で き な か っ た が ,熱 分 析 に よ る 120 ℃ の 重 量 減 を 脱 水 に よ る も の と し て , 化 学 組 成 か ら 推 定 し た も の で あ る . portlandite と CaClOHは 第 2 章 (2.2.3)に 示 し た と 同 様 に , 吹 き 込 ま れ た 消 石 灰 の 未 反 応 物 と HClと の 反 応 生 成 物 で あ る . anhydriteは 消 石 灰 と SOxの 反 応 生 成 物 で あ り , gypsumは 溶 融 飛灰ピット内において飛散防止のため加湿されたたことによって生じたと考えられる. Znは 揮 散 過 程 で は 酸 化 物 (zincite)と 塩 化 物 (ZnCl 2 )を 形 成 し た と 考 え ら れ る が ,ZnCl 2 は 溶 融 飛 灰 ピ ッ ト 内 の 加 湿 に よ る 水 和 が 生 じ て , Zn 5 (OH) 8 Cl 2 ・ 152 H 2 O(Simonnkollerite) を 形 成 し た と 考 え ら れ る . ま た , Pb も Zn 同 様 に し て 塩 化 物 (PbCl 2 ) と し て 生 成 し た も の が , 溶 融 飛 灰 ピ ッ ト 内 の 加 湿 に よ り 水 和 が 生 じ , Pb 2 Cl 3 (OH)( Penfieldite), Pb 3 Cl 4 (OH) 2 ( Feidlerite) を 形 成 し た と 考 え ら れ る . 6.3 水 に よ る 塩 類 除 去 6.3.1 化 学 組 成 と 構 成 鉱 物 の 変 化 水に対する溶融飛灰中の各成分の易溶性あるいは難溶性かの判断は,無処理試料お よび水抽出後のろ過残渣の化学組成を比較することから定性的に判断できる.しかし ながら,その挙動を示した原因を明確にすることは,それら成分の鉱物種が同定され て初めて可能となる. 水 浸 漬 法 は 試 料 200 g を 1000 ml の 精 製 水 に 浸 漬 し た .攪 拌 後 ,静 置 し No.5C ろ 紙 に よ り ろ 過 し た . た だ し , ろ 過 残 渣 に 対 し て は 逐 次 水 洗 浄 ( 2.3.2 に 示 し た ) は 行 っ て い な い . ろ 過 残 渣 を 風 乾 し た 後 , XRF 法 に よ り 化 学 分 析 を , XRD 測 定 に よ り 鉱 物 同定を行った. 対 象 と し た 試 料 は ,表 6.2 を 参 考 と し て 比 較 的 Pb と Zn 濃 度 の 高 い も の と 低 い も の とした.それらの試料選択にあたっては,各施設においてスポットサンプリングを行 い ,そ れ ら の XRF 分 析 か ら 判 断 し た .結 果 と し て C 施 設 ,NA 施 設 ,TO 施 設 お よ び YM 施 設 か ら の 試 料 を 選 び ,そ れ ぞ れ 試 料 C,試 料 NA,試 料 TO お よ び 試 料 YM と し た .YA 施 設 の 試 料 は ,焼 却 飛 灰 と 溶 融 飛 灰 の 混 合 集 じ ん の た め 試 験 対 象 か ら 外 し た . XRF に よ る 分 析 結 果 を 表 6.3 に 示 し た .水 浸 漬 に よ る 各 試 料 の 溶 解 重 量 と そ れ に よ る化学組成変化は以下であった. 試 料 Cで は 133.3gが 溶 解 し た . 溶 解 し た 主 な 成 分 と 濃 度 変 化 は Na 2 O( 21.1 %→ 2.0 %), K 2 O( 14.0 %→ 4.4 %), Cl( 29.4 %→ 7.7 %) お よ び PbO( 2.7 %→ 0.5 %) であった.その他の成分は無処理試料に比べて,相対的に濃縮された結果となった. と く に ZnOは 2 倍 程 度 ま で 濃 縮 さ れ て い た .試 料 TOで は 56.4gが 溶 解 し た .溶 解 し た 主 な 成 分 と 濃 度 変 化 は Na 2 O( 8.4 %→ 2.4 %), K 2 O( 7.8 %→ 4.2 %), SO 3 ( 5.9 %→ 2.2 %), Cl( 15.8 %→ 1.9 %), ZnO(10.9 %→ 5.8 %)お よ び PbO( 2.8 %→ 0.2 %) で あ っ た . 試 料 NAで は 78.8gが 溶 解 し た . 溶 解 し た 主 な 成 分 と 濃 度 変 化 は Na 2 O( 12.6 % → 1.3 %), K 2 O( 9.6 %→ 1.8 %), Cl( 21.9 %→ 3.2 %) お よ び PbO( 0.7 %→ 0.1 %) であった.その他の成分は無処理試料に比べて,相対的に濃縮された結果となった. と く に ZnOは 2 倍 程 度 ま で 濃 縮 さ れ て い た .試 料 YMで は 28.7gが 溶 解 し た .溶 解 し た 主 な 成 分 と 濃 度 変 化 は Na 2 O( 4.8 %→ 1.2 %), K 2 O( 6.5 %→ 2.2 %), SO 3 ( 13.2 % → 10.4 %), Cl( 14.1%→ 5.0 %) お よ び PbO( 0.5 %→ Nd) で あ っ た . そ の 他 の 成 分 は 無 処 理 試 料 に 比 べ て , 相 対 的 濃 縮 さ れ た 結 果 と な っ た . と く に ZnOは 0.7 %か ら 1.4 %と 2 倍 ま で 濃 縮 さ れ て い た . 表 6.3 水 浸 漬 に よ る 溶 融 飛 灰 の 化 学 組 成 の 変 化 153 (単 位 : 重 量 %) 試料C 試料TO 試料NA 試料YM 無処理 残 渣 無処理 残 渣 無処理 残 渣 無処理 残 渣 重量(g) 200.0 66.7 200.0 143.6 200.0 121.2 200.0 171.3 SiO2 4.3 16.3 38.7 69.2 7.1 13.9 9.2 11.6 Al2O3 0.3 2.8 5.7 10.2 1.9 6.4 0.6 0.7 Fe2O3 0.3 5.0 1.1 2.8 1.6 4.1 0.3 5.4 MgO 0.3 0.8 0.1 0.1 1.2 3.2 1.2 1.7 CaO 3.1 8.7 1.1 1.6 25.9 41.6 44.8 59.4 Na2O 21.1 2.0 8.4 2.4 12.6 1.3 4.8 1.2 K2O 14.0 4.4 7.8 4.2 9.6 1.8 6.5 2.2 SO3 7.8 7.6 5.9 2.2 10.6 10.0 13.2 10.4 P2O5 Cl CuO ZnO PbO 1.7 29.4 Nd 13.5 2.7 6.9 7.7 2.2 34.6 0.5 1.2 15.8 Nd 10.9 2.8 2.6 1.9 1.0 5.8 0.2 1.1 21.9 Nd 3.6 0.7 2.8 3.2 0.7 8.7 0.1 0.0 14.1 Nd 0.7 0.5 0.1 5.0 0.3 1.4 0.0 以 上 の 結 果 か ら , 全 試 料 に お い て , Na 2 O, K 2 O, Clお よ び PbOは 水 に 易 溶 性 の 挙 動 を 示 し た . SO 3 の 一 部 は 試 料 TOと 試 料 YMに お い て , 水 に 易 溶 性 の 挙 動 を 示 し た . ZnOの 一 部 は ,試 料 TOに お い て の み 水 に 易 溶 性 の 挙 動 を 示 し た .ま た ,SiO 2 ,Al 2 O 3 , Fe 2 O 3 ,MgO,CaO,P 2 O 5 お よ び CuOは 水 に 難 溶 性 の 挙 動 を 示 し た .各 成 分 が こ の よ うな挙動を示した原因は,各成分が形成する鉱物種を明らかにすることから解明され る と 考 え ら れ る .各 試 料 の 無 処 理 お よ び 水 浸 漬 残 渣 の XRD測 定 結 果 を 表 6.4 に 示 し た . 試 料 C(無 処 理 )に お い て は , SiO 2 ,Al 2 O 3 ,Fe 2 O 3 ,MgO,CaO,P 2 O 5 お よ び CuO 等 は 以 下 の 鉱 物 を 形 成 し て い た こ と に よ り ,水 に 難 溶 性 の 挙 動 を 示 し た .SiO 2 ,Al 2 O 3 , CaOは quartzと anorthite,calciteを 形 成 し て い た .Fe 2 O 3 は hematiteを 形 成 し て い た . それらの鉱物は水への溶解度はごく小さいことが知られらており,水浸漬残渣中には そ れ ら が 残 っ て い る こ と が 確 認 さ れ た .水 に 難 溶 性 の 挙 動 を 示 し た ZnOは zinc,zincite, smithsonite, hydrozincite, shimonkolleriteお よ び ZnSO 4 を 形 成 し て い た . 高 岡 ほ か 133) は XAFS法 に よ る 解 析 ( XANESス ペ ク ト ル と の パ タ ー ン フ ィ ッ テ イ ン グ ) に よ り , 溶 融 飛 灰 中 の Znは ZnCO 3 Zn(H) 2 , ZnCl 2 , ZnOお よ び Zn(OH) 2 を 形 成 し て い る こ と を 示 し た が , C 試 料 で は ZnO と Zn(OH) 2 の み が 一 致 し た . 水 浸 漬 残 渣 中 か ら は K 2 ZnCl 4 を の み が ,溶 解 に よ り 消 失 し て い た .Al 2 O 3 ,MgO,P 2 O 5 お よ び CuOに つ い て は 形 成 鉱 物 種 を 同 定 す る こ と は で き な か っ た . 水 に 易 溶 性 の 挙 動 を 示 し た Na 2 O, K 2 O, Clお よ び PbOは 次 の 鉱 物 を 形 成 し て い た . Na 2 O, K 2 O, Clは haliteと sylvite を 形 成 し , PbOは penfieldite, fiedleriteお よ び laurioniteを 形 成 し て い た . 水 浸 漬 残 渣 中 に は 水 に 溶 解 し た こ と に よ り penfieldite, fiedleriteお よ び laurioniteは 消 失 し て い た .な お ,残 渣 中 の haliteと sylviteは 残 渣 に 吸 着 し た ろ 液 中 の 高 濃 度 成 分 で あ る Na + , K + と Cl − が 風 乾 に よ っ て 再 結 晶 化 し た も の で あ る( 残 渣 を 精 製 水 で 逐 次 洗 浄 す る こ と に よ り haliteと sylviteは 除 去 さ れ る こ と は 第 2 章 (2.3.2 節 )に 示 し た . 試 料 TOに お い て も ,各 成 分 の 水 へ の 難 溶 性 お よ び 易 溶 性 の 挙 動 は C試 料 の 場 合 と 同 154 じ で あ っ た . PbO成 分 に つ い て , C試 料 で は 鉱 物 種 と し て 同 定 さ れ な か っ た cotunnite お よ び palmieriteが 同 定 さ れ た が ,両 者 と も 水 に 溶 解 す る こ と が 確 か め ら れ た .Al 2 O 3 , MgO, P 2 O 5 お よ び CuOに つ い て は 形 成 鉱 物 種 を 同 定 す る こ と は で き な か っ た . 酸 性 排 ガ ス 処 理 に 消 石 灰 を 吹 込 ん で い る NAお よ び YM試 料 で も SiO 2 , Al 2 O 3 お よ び CaOは quartz, anorthite( 加 え て gehlenite), calcite形 成 し て い た こ と は 試 料 Cの 場 合 と 同 じ で あ っ た . CaO に つ い て は 吹 込 ま れ た portlandite と CaClOH お よ び anhydrite を 形 成 し て い る こ と が 確 認 さ れ た . CaO の 形 成 す る 鉱 物 種 の う ち portlanditeは 浸 漬 残 渣 中 に 確 認 さ れ た こ と よ り 水 に 難 溶 性 で あ っ た が ,CaClOHは 水 に 溶 解 し た .ま た ,浸 漬 残 渣 中 に gypsumが 確 認 さ れ た こ と に よ り anhydriteの 一 部 は 浸 漬 中 に gypsumに 変 換 さ れ た と 考 え ら れ る . ZnOは zinciteの み が 同 定 さ れ , PbOは laurioniteの み が 同 定 さ れ た . そ れ ぞ れ の 挙 動 は 前 2 試 料 と 同 じ で あ っ た . ZnOお よ び PbOか ら な る 他 の 鉱 物 は 存 在 し な い の で は な く ,量 が 少 な い か っ た た め に XRD回 折 ピ ー ク に 現 れ な か っ た と 考 え ら れ る .Al 2 O 3 ,MgO,P 2 O 5 お よ び CuOに つ い て は 形 成 鉱物種を同定することはできなかった. 以 上 の よ う に 溶 融 飛 灰 中 に お い て , Zn か ら な る 鉱 物 と し て は zinc , zincite , sphalerite , smithonite , hydrozincite , ZnSO 4 お よ び K 2 ZnCl 4 が 同 定 さ れ た . hydrozinciteは 集 じ ん 灰 ピ ッ ト 内 で の 加 湿 に よ る smithoniteの 水 和 か ら 生 成 し た と 考 え ら れ る . 水 浸 漬 操 作 に よ り , K 2 ZnCl 4 は 除 去 さ れ た 結 果 と な っ た が , そ れ 以 外 の 鉱 物 相 は 変 化 を 示 さ な か っ た . こ の こ と は , 溶 融 飛 灰 中 の Znか ら な る 鉱 物 は K 2 ZnCl 4 を 除 い て 水 に 難 溶 性 で あ る こ と を 示 し て い る .ま た ,溶 融 飛 灰 中 に お い て ,Pbか ら な る 鉱 物 は penfieldite, fiedlerite, laurionite, palmieriteが 同 定 さ れ た . 溶 融 炉 か ら 揮 散 す る Pb は HCl ガ ス と 反 応 し PbCl 2 を 形 成 す る と 考 え ら れ 20) , penfieldite , fiedlerite は 集 じ ん 灰 ピ ッ ト 内 で の 貯 留 中 に 加 湿 さ れ る こ と か ら , ピ ッ ト に お い て PbCl 2 の 水 和 に よ っ て 生 じ た と 考 え ら れ る . laurioniteは 生 成 し た PbCl 2 が 再 度 HClガ ス と 反 応 し て 生 成 し た と 考 え ら れ る . palmieriteは 溶 融 飛 灰 の 硫 酸 液 に よ る 溶 出 処 理 後 の 残 渣 中 に 生 成 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 23) が , 図 6.2 に 示 し た よ う に 無 処 理 の 飛 灰 中 で 生 じ て い る . し た が っ て , palmieriteは KClガ ス と PbSO 4 ガ ス と の 反 応 に よ り 生 じ ,そ れ が 凝 縮 し た も の と 考 え ら れ る .し か し ,い ず れ の Pb鉱 物 も 水 に よ る 塩 類 除 去操作において溶解することが明らかになった. 表 6.4 水 抽 出 に よ る 溶 融 飛 灰 の 構 成 鉱 物 の 変 化 155 鉱物名 化学式 C C TO TO NA NA YM YM 無処理 残 渣 無処理 残 渣 無処理 残 渣 無処理 残 渣 Quartz SiO2 Hematite Fe2O3 ● Anorthite Ca(Al2Si2O8) ● ● ● Gehlenite Halite Sylvite Portlandite Ca2Al2SiO7 NaCl KCl Ca(OH)2 ● ● ● ● ● ● ● ● Calcite ● ● ● ● ● Anhydrite Gypsum Zinc Zicite Sphalerite Zn(OH)2 CaCO3 CaClOH CaSO4 CaSO4・2H2O Zn ZnO ZnS Zn(OH)2 ● ● ● ● ● ● ● Smithsonite ZnCO3 ● ● ● Hydrozincite Zn5(CO3)2(OH)6 ● ● simonkolleite Zn5(OH)8Cl2H2O ZnSO4 ● ● K2ZnCl4 ● ● Cotunnite ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● PbCl2 Penfieldite Pb3Cl4(OH)2 ● ● Fiedlerite Pb2Cl3(OH) ● ● Laurionite PbClOH K2Pb(SO4) ● Palmierite ● ● ● ● 6.3.2 水 洗 浄 に よ る 塩 類 除 去 と そ の 残 渣 前 項 に 示 し た よ う に 溶 融 飛 灰 中 の Zn 鉱 物 お よ び Pb 鉱 物 の 鉱 物 種 が あ き ら か に な っ た.また,それら鉱物の水に対する易溶性ないし難溶性が示された.この結果をもと に塩類除去用の水量の適正化を考察した.塩類除去後の処理液から溶解金属の回収お よび放流のための水処理を主題とすると,両者は対立関係になると考えられる.つま り,溶解金属の回収においては溶液中濃度が高い方が効率は良く,放流のための水処 理にあたっては有害物質濃度が低い方が有利になると考えられる. この課題に対して,以下の実験を行った. 1)無 処 理 飛 灰 に つ い て , XRF 分 析 結 果 と XRD 測 定 に よ る 構 成 鉱 物 の 同 定 . 2)無 処 理 試 料 か ら 100g を 単 位 と し て 4 試 料 を 分 取 し , No.5C ろ 紙 上 に セ ッ ト . 各 セ ッ ト に 対 し て , 200ml の 精 製 水 に よ る 洗 浄 . 3)洗 浄 残 渣 は 風 乾 後 秤 量 , XRF 分 析 お よ び XRD 測 定 . 4)洗 浄 溶 液 は マ グ ネ ッ ト ス タ ラ ー 上 で 0.5, 1.0, 2.0, 4.0 時 間 攪 拌 . 攪 拌 開 始 時 お よ び 終 了 時 の pH 測 定 . 6) 攪 拌 終 了 後 ろ 過 ( No.5B ろ 紙 使 用 ). 7) ろ 過 残 渣 は 風 乾 後 秤 量 , XRF 分 析 , XRD 測 定 お よ び TG-DTA 分 析 . 156 実 験 手 法 は 図 6.4 に 示 し た よ う に 第 1 段 階 と し て 溶 融 飛 灰 中 の Pb 鉱 物 と Zn 鉱 物 の 一部を溶解し,ろ過によって得られる液が対象となる.第2段階はろ液に対する曝気 により沈殿物を形成させ,その再ろ過により沈殿物を回収する. 図 6.4 水 抽 出 液 か ら の Pb 回 収 実 験 手 順 図 6.4 に 示 し た 手 順 に し た が っ た 実 験 結 果 は 以 下 で あ っ た . 実 験 対 象 と し た 溶 融 飛 灰 は Zn が zincite, sphalerite を 形 成 し て い る TO 施 設 ( 表 6.4) の も の を 選 ん だ . 表 6.5 に 示 し た (水 洗 浄 に よ り 除 去 さ れ る 元 素 の 関 係 を 示 し 得 る よ う に 元 素 組 成 で 表 示 し た )化 学 組 成 を 持 つ 無 処 理 試 料 中 に は quartz, halite, sylvite, portlandite, CaClOH, calcite, anhydrite, simonkolleite, fiedlerite お よ び penfieldite が 同 定 さ れ た .精 製 水 200 ml の 洗 浄 処 理 後 の ろ 過 残 渣 中 に は ,quartz,portlandite,zincite ( 無 処 理 試 料 で は XRD 測 定 か ら は 確 認 さ れ な か っ た が , 溶 解 除 去 さ れ た 鉱 物 に マ ス キ ン グ さ れ て い た ピ ー ク が 現 れ た こ と か ら 確 認 さ れ た ),simonkolleite,fiedlerite お よ び penfieldite が 確 認 さ れ た . halite, sylvite お よ び CaClOH は 溶 解 に よ り 除 去 さ れ , anhydrite は gypsum に 変 化 し た の で , 全 量 溶 解 除 去 に は な ら な か っ た . 100 g の 溶 融 飛 灰 を 200 ml の 精 製 水 で 洗 浄 し た 場 合 に お い て も , halite お よ び sylvite,CaClOH は 全 量 が 除 去 で き る こ と が 明 ら か と な っ た .す な わ ち ,主 要 塩 類 の halite お よ び sylvite, CaClOH の 全 量 溶 解 に 対 し て は 固 /液 =1/2 で 可 能 で あ る こ と を 確 認 で き た( 前 項 に 示 し た よ う に 固 /液 =1/5 は 必 要 で な い こ と に な っ た ).こ の 洗 浄 ろ 157 過 残 渣 中 に は ,3 鉱 物 以 外 の も の が 残 留 し て い る こ と に な る .こ の 場 合 zincite お よ び simonkolleite は 酸 化 物 と 炭 酸 塩 で あ る と こ ろ か ら ,水 へ の 溶 解 度 が 小 さ い た め に 残 留 し た も の と 考 え ら れ る . 一 方 , fiedlerite お よ び penfieldite の 一 部 が 洗 浄 残 渣 中 に 残 留 す る 結 果 と な っ た が ,( 溶 解 度 が 正 確 に 求 め ら れ て は い な い が ) そ れ ら の 溶 解 度 が halite お よ び sylvite, CaClOH に 較 べ て 小 さ い こ と に 起 因 し て い る と 考 え ら れ た (こ れ は 200 g の 溶 融 飛 灰 を 1000 ml の 水 に 浸 漬 し た 実 験 で は , fiedlerite と penfieldite と も に 溶 解 し た 結 果 に よ り 裏 付 け ら れ た ).し た が っ て ,塩 類 除 去 残 渣 を 山 元 還 元 す る 場合では,許容される塩類濃度を考慮し塩類除去用の水量を最適化することが,排水 処理コストを含めて新たな考察対象となる. Pb に 着 目 す れ ば , そ れ か ら な る 鉱 物 と し て の fiedlerite と penfieldite を 残 渣 中 に 残 し て も 許 容 さ れ る 塩 類 濃 度 な の か の 確 認 が 必 要 で あ る .ま た は ,Pb か ら な る 鉱 物 が cotunnite, fiedlerite, penfieldite, lauorioite お よ び palmierite で あ る こ と を 考 慮 するとそれらは十分な水により全量溶解した事実を受けて,溶解させた後,その液か ら Pb 沈 殿 物 と し て 回 収 し て , 山 元 還 元 用 素 材 と す る . こ の 両 者 の 見 方 に 対 し て は , どちらが妥当なのかを確認することが今後の課題となる. 6.3.3 塩 類 除 去 液 の 処 理 塩類除去液からの金属回収および除去液の放流にあたっての排水処理に関する考察 を行った. 洗 浄 残 渣 お よ び ろ 過 残 渣 は ,ケ ー ス 1 で 80.503 g お よ び 0.883 g,ケ ー ス 2 で ,79.724 g お よ び 0.844 g, ケ ー ス 3 で 82.858 g お よ び 0.862 g, ケ ー ス 4 で 82.676 g お よ び 0.867 g と な っ た (表 6.5).ほ ぼ 20 g 前 後 が 水 洗 浄 に よ り 溶 解 し た .そ れ ら を 溶 解 し た 洗 浄 液 に 対 す る 曝 気 か ら ,曝 気 継 続 時 間 に 拘 わ ら ず( ケ ー ス 1 か ら ケ ー ス 4)ほ ぼ 0.8 g が ろ 過 残 渣 と し て 回 収 さ れ た .ケ ー ス 1 か ら ケ ー ス 4 の 曝 気 中 溶 液 の pH は 11 の ま ま保持されていた. Pbの 回 収 に 関 し て は , 生 試 料 中 3 g の う ち お よ そ 0.7 gが 溶 解 し , 曝 気 に よ る 沈 殿 物 中 に お よ そ 0.3 gが 回 収 さ れ た .こ の 沈 殿 物( ろ 過 残 渣 2)に 含 ま れ る Pbは Pb 2 CO 4 , Pb 3 CO 5 , laurionite, Pb(ClO 4 ) 2 お よ び CaPbO 3 の 鉱 物 を 形 成 し て い た ( 図 6.5). ま た ,沈 殿 物 に は gypsumも 附 随 し た .た だ し ,曝 気 は 攪 拌 に よ る も の と し た こ と か ら , 大 気 中 の CO 2 と 平 衡 に あ る も の と 考 え ら れ る . ま た , 回 収 の た め の 薬 剤 は 全 く 使 用 し てないことに特徴があり,曝気処理の改良は,山元還元の前処理の改善と排水の放流 に あ た っ て の 水 処 理 法 の 改 善 お よ び 大 気 中 CO 2 の 固 定 に 新 た な 方 向 性 を 示 し た こ と に なると考えられる. 表 6.5 水 洗 浄 実 験 結 果 158 Intensity(a.u.) O Si Al Fe Na K Ca P S Cl Cu Zn Pb 無処理灰 100 g 27.38 7.82 2.12 0.29 6.59 5.34 15.08 0.45 4.56 19.27 0.32 7.78 3.00 ケース1 ケース2 ケース3 ケース4 攪拌/静置 0.5hr攪拌 攪拌/静置 1.0hr攪拌 攪拌/静置 2.0hr攪拌 攪拌/静置 4.0hr攪拌 洗浄残渣 ろ過残渣 洗浄残渣 ろ過残渣 洗浄残渣 ろ過残渣 洗浄残渣 ろ過残渣 80.503 g 0.883 g 79.724 g 0.844 g 82.858 g 0.862 g 82.676 g 0.887 g 29.52 0.286 40.96 0.282 42.97 0.235 44.15 0.190 7.82 Nd 7.82 Nd 7.82 Nd 7.82 Nd 2.12 Nd 2.12 Nd 2.12 Nd 2.12 Nd 0.29 Nd 0.29 Nd 0.29 Nd 0.29 Nd Nd Nd Nd Nd Nd Nd Nd Nd 5.75 0.015 2.46 0.026 2.48 0.027 2.55 0.048 16.26 0.148 11.20 0.164 11.75 0.183 12.07 0.223 0.45 Nd 0.45 Nd 0.45 Nd 0.45 Nd 2.52 0.068 2.53 0.054 2.65 0.054 2.73 0.048 0.12 0.048 0.12 0.035 0.12 0.074 0.13 0.095 0.32 0.001 0.32 0.002 0.32 0.001 0.32 0.002 7.78 0.006 7.78 0.003 7.78 0.001 7.78 0.005 2.13 0.285 2.28 0.279 2.39 0.286 2.45 0.275 CuKα2θ(゜) 図 6.5 ケ ー ス 2 に お け る ろ 過 残 渣 2 の XRD パ タ ー ン Lau: laurionite Gyp: gypsum 6.4 鉱 物 種 と 脱 塩 特 性 千葉県内における溶融施設から発生する溶融飛灰の化学組成および鉱物組成,水に よる脱塩特性は以下のとおりであった. 1)溶 融 飛 灰 中 に は , 山 元 還 元 に 値 す る Pb お よ び Zn が 含 有 さ れ る こ と が 確 認 で き た . 159 2)溶 融 飛 灰 を 構 成 す る 主 要 鉱 物 は ケ イ 酸 塩( anorthite,gehlenite),酸 化 物( quartz, hematite), 塩 化 物 ( halite, sylvite), 炭 酸 塩 ( calcite) お よ び 排 ガ ス 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た 未 反 応 portlanditeと 反 応 生 成 物 と し て の anhydrite, Ca(ClO) 2 お よ び CaClOH等 で あ っ た . 3)溶 融 飛 灰 中 の Znお よ び Pbの 形 成 す る 鉱 物 は , 以 下 で あ っ た . Znは zinc, zincite, phalerite, smithsonite, hydrozincite, simonkollerite, Zn(OH) 2 , ZnSO 4 お よ び K 2 ZnCl 4 を 形 成 し て い た . Pbは cotunnite, fiedlerite, penfieldite, lauorioniteお よ び palmeiriteを 形 成 し て い た . 3) 水 抽 出 に よ る 塩 類 除 去 に 際 し て の Pb 鉱 物 お よ び Zn 鉱 物 は 以 下 の 挙 動 を 示 し た . Zn(OH) 2 お よ び K 2 ZnCl 4 は 水 に 対 し て 易 溶 性 鉱 物 と し て 挙 動 し , そ の 他 は 難 溶 性 鉱 物 と し て 挙 動 し た .Pb鉱 物 は す べ て 水 に 対 し て 易 溶 性 鉱 物 と し て 挙 動 し た .た だ し , fiedleriteと penfielditeは 塩 類 除 去 に 使 用 す る 水 量 に よ り 易 溶 性 お よ び 難 溶 性 と し ての挙動を示した. 4)塩 類 除 去 液 か ら の Pbの 回 収 と そ の 放 流 に あ た っ て の 水 処 理 に 関 し ,薬 剤 不 使 用 の 曝 気 処 理 の 効 果 を 確 か め た .塩 類 除 去 時 に 水 に 溶 解 し た Pbは ,溶 解 量 の 50%程 度 が 曝 気 処 理 に よ り 沈 殿 物 と し て 回 収 で き た . 沈 殿 物 中 の Pb は Pb 2 CO 4 , Pb 3 CO 5 , Laurionite, Pb(ClO 4 ) 2 お よ び CaPbO 3 を 形 成 し て い た . 第7章 結論 160 7.1 結 論 我が国の一般廃棄物処理の課題は,最終処分場の残余量不足から一般廃棄物処理の 仕組みの崩壊を防ぎ,かつ循環型社会形成を推進するために廃棄物の資源化を通した 埋 立 回 避 策 を 確 立 す る こ と で あ る . お よ そ 80 % の 一 般 廃 棄 物 が 焼 却 処 理 さ れ , そ れ に よ っ て 生 じ た 焼 却 残 渣 は 埋 立 廃 棄 物 の 60 % を 占 め る . し た が っ て , 焼 却 残 渣 の 有 効利用による埋立回避が最終処分場の残余量確保に繋がることは明らかである.焼却 残渣の有効利用による資源化を達成する上で,それの溶融処理技術が導入された.焼 却残渣の溶融処理による生成物は溶融スラグと溶融メタルおよび溶融飛灰である.そ れ ら の 有 効 利 用 に よ る 資 源 化 を 達 成 す る 上 で ,技 術 的 側 面 か ら 以 下 の 5 課 題 が 設 定 さ れた. 1.溶融スラグ原料としての焼却残渣および焼却飛灰の性状を明らかにすること 本課題に対しては,焼却残渣および焼却飛灰の化学成分の由来,溶融過程における 融け易さと流動性の指標となる化学組成および構成鉱物について解析した. 1)焼 却 残 渣 成 分 の う ち , SiO 2 と Al 2 O 3 は 紙 ・ 布 類 に 由 来 し , CaOは 紙 ・ 布 類 と 厨 芥 類 に 由 来 し , K 2 Oお よ び P 2 O 5 が 木 ・ 竹 ・ ワ ラ 類 に 由 来 す る こ と が 示 さ れ た . ま た , Cr, Ni, Cuお よ び Zn等 の 重 金 属 類 は ビ ニ ー ル ・ 合 成 樹 脂 ・ ゴ ム ・ 皮 革 類 に 由 来 す ることが示された. 2)化 学 分 析 に よ り 焼 却 残 渣 お よ び 焼 却 飛 灰 か ら は Si・Ti・V・Al・Fe・Mn・Mg・Ca・ Na・ K・ S・ P・ Cl・ As・ B・ Br・ Cd・ Cr・ Cu・ Hg・ Zn・ Pb・ Sb の 23 元 素 が 検 出された.それらの元素は,酸化物,ケイ酸塩,炭酸塩,硫酸塩,リン酸塩,水酸 化物および水和物,塩化物を形成していた. a)焼 却 残 渣 は , SiO 2 , Al 2 O 3 お よ び CaOが 主 要 3 成 分 で あ っ た . 融 け 易 さ お よ び 流 動 性 の 指 標 で あ る 塩 基 度 (CaO/SiO 2 )は ,1 前 後 で あ っ た .Fe 2 O 3 ,MgO,Na 2 O, K 2 O, SO 3 , P 2 O 5 お よ び Clな ど は 副 成 分 で あ っ た . Cu, Znお よ び Pb等 重 金 属 類 は 微 量 成 分 で あ っ た . そ れ ら 成 分 に 加 え て 吸 着 水 , 構 造 水 お よ び 未 燃 C, CO 2 も 試 料 を 構 成 し て い た . 焼 却 残 渣 を 構 成 す る 鉱 物 と し て anorthite , gehlenite , quartz , hematite , lime 等 が 同 定 さ れ た . ま た akermanite , perovskite , farrigtonite, Mg 2 P 2 O 7 の 存 在 も 推 定 さ れ た . ガ ラ ス の 含 有 も 確 認 さ れ た . b)焼 却 飛 灰 は SiO 2 , CaO, Clが 主 要 3 成 分 で あ っ た . Al 2 O 3 , Na 2 O, K 2 Oお よ び SO 3 な ど は 副 成 分 で あ っ た . Cu, Znお よ び Pb等 重 金 属 類 は 微 量 成 分 で あ っ た . 焼 却 残 渣 と 同 じ く ,吸 着 水 ,構 造 水 ,お よ び 未 燃 C,CO 2 も 試 料 を 構 成 し て い た . 焼 却 飛 灰 を 構 成 す る 鉱 物 は portlandite , hydrocalumaite , CaClOH , Ca(ClO) 2 4H 2 O, halite, sylvite, calcite, anhydrite, gypsumが 同 定 さ れ た . 燃 焼 酸 性 ガ ス 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た portlandite は HCl と 反 応 し て lime , 161 CaClOH, Ca(ClO) 2 ・ 4H 2 Oを 生 成 し て い た . ま た , SOxと 反 応 し て anhydriteも 生 成 し て い た . Znは Zinciteを 形 成 し , Pbは 塩 化 物 (PbCl 2 ), 酸 化 物 (PbOま た は PbO 2 ), 硫 化 物 (PbS), 硫 酸 塩 (PbSO 4 )を 形 成 し て い る と 推 定 さ れ た . ガ ラ ス の 含 有も確認された. 3)ロ ッ ト 内 に お け る 焼 却 残 渣 の 外 形 的 な 不 均 質 さ は , 特 徴 的 な 色 調 を 持 つ 軟 塊 状 粒 子 に よ り 特 徴 づ け ら れ た .そ れ ら は Ca 硫 酸 塩 お よ び リ ン 酸 塩 ,ま た は Fe や Zn お よ び Cu の 酸 化 物 で あ っ た . そ の よ う な 塊 状 粒 子 の 生 成 は , 可 燃 ご み を 構 成 す る 物 質 が焼却過程を経ても均質にはならないことを示している. また,焼却残渣を対象としたロット間の不均質さは主成分および副成分ともに最 高と最低の幅に差があるものの,一定の範囲に収まっているとみなされた.焼却飛 灰においては,主成分のロット間の変動幅は焼却残渣に比べて小さく,重金属類の 変動幅は大きかった.重金属類の変動幅を大きくした要因はそれらの揮散度合いが 強く影響していると考えられる. 焼却残渣を構成する主成分,副成分および重金属類に見られた各成分の変動は,主 に可燃ごみ質の変動を反映したものであると考えられている.焼却炉に投入される可 燃ごみ質の変動については,投入の時系列に沿って刻々とその変動を把握することは 困難(現場実態から試みられていない)である.したがって,一定間隔ごとに採取し た焼却残渣と焼却飛灰の成分分析から各成分の変動幅を把握し,それをもって焼却残 渣と焼却飛灰の化学性状を代表するものと判断することが妥当と考えられる. 2.焼 却 残 渣 の 溶 融 過 程 と 冷 却 過 程 に お い て 生 じ る 事 象 を 解 明 し , 溶 融 ス ラ グ の 組 織 と 性状を明らかにすること 本課題に対しては,溶融処理により製造される溶融スラグを人工骨材として使用す るために,溶融スラグの基本性状を解析した. 1)溶 流 度 試 験 試 料 お よ び 実 機 溶 融 炉 か ら 採 取 し た 試 料 の 薄 片 観 察 と XRD 測 定 結 果 か ら,原料灰の溶融と溶流は以下のように模式化できた.第 1 段階:原料灰を構成す るケイ酸塩,酸化物,炭酸塩,塩化物およびガラス等は昇温とともに部分的かつ選 択的に軟化を始め,部分溶融に至る.部分溶融の開始温度は,炭酸塩とガラスの共 存 お よ び 塩 化 物 の 融 点 等 か ら 800 ℃ 前 後 か ら 始 ま り 1200 ℃ 程 度 ま で と 推 定 で き た.そこでは塩化物・炭酸塩・ガラスから溶融が始まり,徐々にケイ酸塩や酸化物 も 溶 融 し て い く .第 2 段 階 : 溶 融 部 分 の 拡 大 と と も に 未 溶 融 部 分 と の 温 度 勾 配 に 対 応した小規模な溶流が始まり,溶融部分が全体に拡がっていく.この段階の温度は 1200 ℃ か ら 1300℃ 程 度 と 推 定 で き た .第 3 段 階:こ の 段 階 の 温 度 は 1300 ℃ 以 上 と推定でき,溶流規模が拡大し,溶融前の鉱物群は保持されなくなり,溶融体の均 質化が進行する. 2)溶 融 ス ラ グ は , 冷 却 過 程 の 違 い に よ る 水 冷 ス ラ グ , 空 冷 ス ラ グ , 結 晶 質 ス ラ グ に 分 162 類されていた.本研究においては溶融スラグの組織から,非晶質スラグ,部分結晶 質スラグおよび結晶質スラグに再分類した.骨材の材料評価の一部である溶融スラ グ 密 度 は , こ の 分 類 に よ り Fe 2 O 3 含 有 量 と 溶 融 ス ラ グ の 結 晶 化 度 に 規 制 さ れ て い る こ と を 明 ら か に し ,密 度 ( y )と Fe 2 O 3 含 有 量 ( x )と の 関 係 は y =0.0345 x +2.661 と し て 表 わすことができた.また,非晶質スラグに比較し,結晶質スラグの密度は大きくな ることを明らかにした. 3)実 機 溶 融 炉 に お い て 製 造 さ れ る 水 冷 ス ラ グ の 粒 形 は 黒 色 角 礫 状 粒 子 が 95%以 上 を 占 め ,4.75 mm以 下 の 粒 子 が 90 %以 上 を 占 め て い た .水 冷 ス ラ グ の 粒 子 形 状 間 お よ び 粒 径 間 比 較 で は 主 成 分 と し て の SiO 2 , Al 2 O 3 , CaO含 有 量 お よ び 副 成 分 と し て の Fe 2 O 3 , MgO, Na 2 O, P 2 O 5 含 有 量 は , ほ ぼ 均 質 と 見 な せ る 結 果 で あ っ た . 重 金 属 に つ い て も 含 有 量 に 大 き な 差 は 見 い だ さ れ な か っ た .し た が っ て ,水 冷 ス ラ グ を mm サイズまたは粒子単位で捉えると,実機溶融炉においては化学的に均質な溶融スラ グが製造されていることが示された. 4)実 機 溶 融 炉 に お け る 原 料 灰 中 の 主 成 分 , 副 成 分 お よ び 微 量 成 分 の ス ラ グ 固 定 率 に 関 しては炉型式,溶融温度および炉内雰囲気の影響を読みとることはできなかった. しかし,実験的に各成分のスラグ固定率は以下のとおりであることが明らかにされ た. a)SiO 2 ,Al 2 O 3 は ほ ぼ 全 量 が ス ラ グ 固 定 さ れ る .CaOと MgOは ほ ぼ 同 じ 挙 動 を 示 し , 80% 以 上 が ス ラ グ に 固 定 さ れ る . (原 料 灰 中 の Fe分 を Fe 2 O 3 と し て 代 表 さ せ る と ) Fe 2 O 3 は 10%以 上 が ス ラ グ に 固 定 さ れ る .し か し ,10%以 上 と い う 結 果 は ,Fe 2 O 3 の還元度合い,極微粒子として溶融スラグ中に包含される割合等必ずしも明らか に で き な か っ た 部 分 が あ り ,Feの ス ラ グ 固 定 率 に 関 し て 未 解 明 の 部 分 が 残 さ れ た と 考 え ら れ る . Na 2 Oと K 2 O は 50%以 上 が ス ラ グ に 固 定 さ れ る 結 果 が 得 ら れ , Na 2 Oの 固 定 率 の 方 が K 2 Oの そ れ よ り も 大 き い 傾 向 に あ っ た . こ の 傾 向 に つ い て も , 原 料 灰 中 に お け る Na 2 Oと K 2 Oが 塩 化 物 を 形 成 す る こ と に よ る 揮 散 効 果 を 考 慮 す る と , haliteお よ び sylviteの 形 成 割 合 か ら 理 解 で き る と 考 え ら れ る . b)As, Cd は ス ラ グ に 固 定 さ れ 難 い 傾 向 を 示 し た . Ni, Pb お よ び Sb の ス ラ グ 固 定 率 は 15%以 下 で あ っ た . Cu は 20∼ 70%が ス ラ グ に , Zn は 15∼ 80%が ス ラ グ に 固 定 さ れ た . Cr は ほ ぼ 全 量 が ス ラ グ に 固 定 さ れ る こ と が わ か っ た . 3.自 然 環 境 中 に お け る 溶 融 ス ラ グ の 溶 出 挙 動 を 明 ら か に す る こ と 本課題に対しては,溶融スラグを自然環境中において安全に使用するための溶出試 験法として,反復溶出試験法を提案した.反復溶出試験の結果から,溶融スラグの溶 出特性を次の様に明らかにした. 1)溶 出 機 構 の 表 面 洗 浄 を 生 じ る 要 因 と し て の 主 要 成 分 は Ca,Na,Kお よ び Clで あ っ た . そ れ ら は 溶 融 ス ラ グ 中 に お い て CaCl 2 , NaClお よ び KClを 形 成 し , ガ ラ ス 構 造 の 表 163 面ないし構造中に分子や化合物単位で物理的に封じ込められていると考えられる. こ れ よ り 表 面 洗 浄 の 大 小 は , Cl含 有 量 に よ り 判 定 で き る こ と が 明 ら か に な っ た . ま た,重金属類に関しても表面洗浄が認めら,溶融スラグ中における含有量に関係せ ず 重 金 属 類 の 取 り 込 ま れ た 位 置 (図 3.21)に 関 係 し , 溶 融 ス ラ グ 表 面 に 近 い 位 置 関 係 の場合はより多く溶出すると考えられる. 2)溶 融 ス ラ グ は 反 復 を 重 ね る 毎 に 溶 出 量 が 減 少 す る こ と か ら ,累 積 溶 出 量 も 減 少 し た . そ の 減 少 傾 向 は 累 乗 近 似 式 ( y = a ( x ) b )に よ り 表 す こ と が で き た .溶 融 ス ラ グ の 化 学 的 安 定 性 の 指 標 の 一 つ と し て の 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 (= 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 (mg/L)/溶 融 ス ラ グ 重 量 (10 5 mg))は , 10 − 5 ∼ 10 − 4 オ ー ダ ー で あ っ た . 溶 融 ス ラ グ 溶 出 率 は 非 晶 質 (水 冷 )ス ラ グ , 部 分 結 晶 質 (空 冷 )ス ラ グ お よ び 結 晶 質 ス ラ グ と い う ス ラ グ 組 織 の 違 いよりも,試料間による差異の方が大きく現れていた.反復を重ねる毎に溶融スラ グ の 溶 出 量 が 減 少 す る こ と は ,SiO 2 -Al 2 O 3 系 残 存 層 の 形 成 が 他 成 分 の 溶 出 を 抑 制 す る こ と , (定 量 的 に 解 析 で き な か っ た が )内 部 拡 散 経 路 が 反 復 回 毎 に 長 く な る こ と の 影響と考えられる. 3)成 分 別 に み る と Siお よ び Alは 累 積 溶 出 量 が わ ず か に 増 加 す る 試 料 が み ら れ た が , そ の他の成分は,全試料において累積溶出量は減少した.また,全試料において最大 の 溶 出 成 分 は Caで あ り ,溶 出 率 は 10 - 4 ∼ 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た .Ca溶 出 率 の 大 小 は , 塩 基 度 に も Ca含 有 量 に も 関 連 付 け で き ず ,結 晶 質 ス ラ グ の 場 合 が 最 大 で あ っ た .Si, Al,Mgお よ び Pの 溶 出 率 は 10 - 5 ∼ 10 - 4 の オ ー ダ ー で あ っ た .Na,Kお よ び Clの 溶 出 率 は 10 - 4 ∼ 10 - 3 オ ー ダ ー で あ っ た . 成 分 溶 出 率 も 非 晶 質 (水 冷 )ス ラ グ と 結 晶 質 ス ラ グというスラグ組織の違いよりも,試料間による差異の方が大きく現れた.7 回目 の 振 と う 操 作 に よ り 得 ら れ た Si,Alお よ び Caの 溶 出 率 は ,定 義 に 差 は あ る が 規 格 化 質量損失とオーダー的に一致した. 4)As, B, Cd, Cr, Hg, Mo, Ni お よ び Sb は , 反 復 溶 出 試 験 に お い て は 非 溶 出 成 分 と み な せ る 結 果 で あ っ た . Cu, Pb お よ び Zn は 溶 出 成 分 と み な せ る 結 果 で あ っ た . それぞれの累積溶出量は含有量と相関しなかったが,反復毎に減少傾向を示した. ま た , Cu, Pb お よ び Zn の 溶 出 量 は Si の 溶 出 量 と も 調 和 し な い こ と か ら , 骨 格 成 分を置換する形では溶融スラグに取り込まれてはいないと考えられる. 5)溶 出 率 1 と 溶 出 率 2 の 比 較 か ら ,全 試 料 に お い て 溶 出 率 2 の 方 が 小 さ く な っ て い た . こ の 現 象 は 以 下 の よ う に 考 え ら れ る .酸 領 域 で は H + が 直 接 溶 融 ス ラ グ に 作 用 し て 溶 融 ス ラ グ か ら の 成 分 溶 出 を 生 じ さ せ る こ と か ら ,ア ル カ リ 成 分 の 溶 出 に よ り H + が 消 費 さ れ る .溶 出 率 1 で は 溶 媒 中 の H + は 6 回 補 給 さ れ た が ,溶 出 率 2 で は 消 費 さ れ た H+は補給されなかった.これより溶媒中のH+量が溶融スラグの溶出量を規制して いることが示された. 6)溶 融 ス ラ グ の 溶 出 特 性 は 次 式 に 示 す よ う に , 溶 媒 の 液 性 の 違 い に よ っ て 異 な っ て い た. 164 y =5.023( x ) 0.843 (pH4) y =2.812( x ) 0.916 (pH7) 試 料 S-2 y =8.841( x ) 0.708 (pH4) y =7.367( x ) 0.760 (pH6) 試 料 S-3 y =1.564(x) 0.768 (pH4) y=0.886( x ) 0.900 (pH6) 試 料 S-5 溶 融 ス ラ グ 溶 出 量 は 溶 媒 中 の H + が 規 制 す る こ と か ら ,酸 性 領 域 の 溶 媒 よ り も 中 性 領域における溶出量の方が少なくなることを例証していた. 以上より,溶融スラグをより安全に自然環境中で使用するにあたっては,有害重 金属類の含有を低く抑えることを基本とし,表面洗浄効果を使用前に除去しておく こと,また,エージング効果をも期待し溶融スラグストックヤードを確保して寝か しておくことが必要になると考えられる.スラグ構成成分の溶出特性の試料間にみ られた差異を生じる要因の理解には,本論文では充分に踏み込めなかったガラス構 造の詳細解析が必要となると考えられる. 4.溶 融 ス ラ グ の 骨 材 と し て の 性 状 を 明 ら か に し , 骨 材 と し て の 利 用 可 能 性 を 確 認 す る こと 本 課 題 に 対 し て は ,天 然 骨 材 に 対 し て 定 め ら れ た JIS を 溶 融 ス ラ グ に 適 用 す る こ と により溶融スラグの骨材としての性状を明らかにした.同様に,天然骨材のみを使用 したアスファルト合材,レディミクストコンクリートおよびインターロッキングブロ ッ ク を 製 造 し ,同 時 に そ れ ぞ れ の 天 然 骨 材 を 溶 融 ス ラ グ が 代 替 し た ア ス フ ァ ル ト 合 材 , レディミクストコンクリートおよびインターロッキングブロックを製造し,両者の物 性を比較することにより骨材としての利用可能性を確認した. 1)溶 融 ス ラ グ を 人 工 骨 材 と し て 使 用 す る た め に 実 施 さ れ た 試 験 結 果 は , 単 体 で の 各 種 用途の骨材,道路用骨材およびコンクリート用骨材としての使用可能性を示した. ( 水 冷 ,空 冷 お よ び 結 晶 質 )溶 融 ス ラ グ は 単 体 で ,埋 め 土 材 ,盛 り 土 材 ,裏 込 め 材 , 暗渠排水のフィルター材等に使用することが可能であることが示された.さらに, 粒 度 調 整 の 可 能 な 大 部 分 の 部 分 結 晶 質 (空 冷 )ス ラ グ , 結 晶 質 ス ラ グ は 上 述 の 用 途 以 外に,道路用砕石,道路用クラッシャラン,下層路盤材として使用することが可能 であることが示された. 2)ア ス フ ァ ル ト 道 路 用 骨 材 と し て の 使 用 は ,天 然 骨 材 へ の 配 合 率 を 10∼ 20 %に 調 整 す ることにより可能であることが示された. 3)レ デ ィ ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 用 骨 材 と し て の 使 用 に 関 し て , コ ン ク リ ー ト の 調 合 条 件や圧縮強度等を満たすことが明らかになった.しかし,溶融スラグの骨材性状を レ デ ィ ミ ク ス ト コ ン ク リ ー ト 用 天然骨材と比較すると,粗粒率および密度が大きく,吸水 率,実績率および微粉量分が小さかった.粗粒率が大きくなるとスラグ粒子の表面積を減少 させることになり,スラグ粒子とセメントペーストの界面付着力を弱めることになる.また, 溶融スラグの実績率が天然骨材のそれに較べて著しく小さいことは,コンクリート充填時に 空隙率が大きくなる要因となりうることから,単位水量の増加と施工性を悪くする可能性が 165 生じてくることも明らかになった.溶融スラグの密度が大きいことはコンクリートの充填性 を向上させ,コンクリートの締め固めが良好に進むことになるといった利点も示された.溶 融スラグの細骨材置換率から溶融スラグ置換コンクリートの性状を判断すると,普通コンク リートと同様な物性を保つ上では置換率を 10 %程度とすることが必要であることがわかった. 一方,結晶質スラグを粗骨材として天然骨材を置換する場合は天然骨材の全量置換が可能で あることも示された. 4)イ ン タ ー ロ ッ キ ン グ ブ ロ ッ ク 用 骨 材 と し て の 使 用 に 関 し て は , 溶 融 ス ラ グ の 天 然 骨 材 へ の 配 合 率 を 20∼ 30 %と す る 条 件 付 け に よ り 問 題 の な い 使 用 が 可 能 で あ る こ と も示された. 5.溶 融 ス ラ グ の 品 質 獲 得 過 程 を 明 ら か に し , 品 質 の 管 理 と 向 上 を 目 指 す こ と 本課題に対しては,実機溶融炉を対象に人工骨材としての品質管理について整理し た .溶融スラグの品質保証にあたっては,定 格 運 転 時 に 製 造 さ れ る 溶 融 ス ラ グ は ,一 定 の 幅を持つものの安定した性状を保つことが示された.ごみの分別・収集方式が固定さ れ,また,定格運転方式に変更がない限り,ほぼ同じ性状を持つ溶融スラグが製造さ れることが示された. 6.溶 融 メ タ ル の 資 源 化 本 課 題 に 対 し て は ,焼 却 残 渣 の 溶 融 処 理 時 に 生 成 す る mm サ イ ズ お よ び サ ブ mm サ イズ溶融メタルの形状と化学組成を解析した. 1)水 に よ る 溶 融 体 の 急 激 な 冷 却 に よ り , 溶 融 ス ラ グ と そ れ か ら 分 離 し た mmサ イ ズ の メ タ ル 粒 子 が 生 じ る .こ れ ら の 粒 子 は Feと Cuを 主 成 分 と す る 粒 子 が 卓 越 し ,そ れ ら 粒 子 に お い て Fe,Cuは 金 属 Feと 金 属 Cuお よ び Fe 4 Cu 3 相 を 形 成 す る こ と が 示 さ れ た . ま た , 金 属 ア ル ミ ニ ウ ム か ら な る 粒 子 も 認 め ら れ た . サ ブ mmサ イ ズ の メ タ ル 粒 子 で は 構 成 元 素 の 一 部 が 酸 化 状 態 を と る も の も あ っ た が , 化 学 組 成 は mmサ イ ズ 粒 子 とほぼ同様であった. 2)特 徴 的 な 組 成 を 示 す 微 粒 子 と し て , Sn-Sb-O-Fe-Cu系 お よ び Sb-O-S-Fe系 粒 子 , Fe-Ni-Cu-S系 粒 子 ,Cr-Fe-Ni系 粒 子 ,Fe-Ti-Co系 粒 子 が 認 め ら れ た .こ れ ら 微 粒 子は合金態を形成すると考えられるが,合金態の性状を明らかにすることは残され た 課 題 と な っ た . ま た , Pb-O-S-Cu系 粒 子 お よ び Pb-Si-O-Ca-Fe系 粒 子 も 認 め ら れ た . そ れ ら の 粒 子 は , 揮 散 さ れ な か っ た Pbを 中 心 と し て 形 成 さ れ た と 考 え ら れ , PbO, PbSお よ び PbCl 2 の 化 合 物 相 の 存 在 が 推 定 さ れ る . 溶融メタルの資源化状況は,磁選により分離され建設重機械のカウンターウエイト などとして利用されているが,溶融メタルの性状解析を通して素材化の方向を見いだ すことも,廃棄物の資源化として重要であると考えられる. 7.溶 融 飛 灰 の 資 源 化 166 本課題に対しては,溶融飛灰の山元還元にあたって化学組成と構成鉱物種および水 による脱塩特性を解析した. 1)千 葉 県 内 に お い て 実 機 稼 働 中 の 7 施 設 か ら 生 成 し た 溶 融 飛 灰 の Pb お よ び Zn 含 有 量 は,非鉄金属鉱石としての最低品位を有していることが確認された. 2)溶 融 飛 灰 を 構 成 す る 元 素 は Si・ A・ Fe・ Ca・ Na・ K・ P・ S・ Cl等 に 加 え て Zn・ Pb お よ び Cu等 で あ り ,そ れ ら は 以 下 の 鉱 物 を 形 成 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た .溶 融 飛 灰 を 構 成 す る 主 要 鉱 物 は ケ イ 酸 塩 (anorthite , gehlenite) , 酸 化 物 (quartz , hematite), 塩 化 物 (halite, sylvite), 炭 酸 塩 (calcite)お よ び 排 ガ ス 処 理 の た め に 吹 き 込 ま れ た portlandite と 排 ガ ス と の 反 応 生 成 物 と し て の anhydrite , Ca(ClO) 2 , CaClOH等 で あ っ た . 3) Zn鉱 物 は zinc,zincite,sphalerite,smithsonite,hydrozincite,simonkollerite, Zn(OH) 2 , ZnSO 4 お よ び K 2 ZnCl 4 で あ っ た . そ の う ち Zn(OH) 2 , ZnSO 4 と K 2 ZnCl 4 は水に対して易溶性であり,その他は難溶性であった. 4)Pb鉱 物 は cotunnite,fiedlerite,penfieldite,lauorioniteお よ び palmeiriteあ っ た . Pb鉱 物 は す べ て 水 に 対 し て 易 溶 性 で あ っ た .た だ し ,fiedleriteと penfielditeは 洗 浄 水量により易溶性および難溶性としての挙動を示すことも明らかになった.塩類除 去 液 に 溶 解 し た Pbは 曝 気 処 理 に よ り 溶 解 量 の 50 %程 度 が 沈 殿 物 と な り , Pb 2 CO 4 , Pb 3 CO 5 , Laurionite, Pb(ClO 4 ) 2 お よ び CaPbO 3 と し て 回 収 で き る こ と を 明 ら か に した. 7.2 今 後 の 課 題 本研究において,焼却残渣の溶融生成物としての溶融スラグ,溶融メタルおよび溶 融飛灰の有効利用による資源化が実証された.しかし,諸課題が残されたことも事実 であり,以下にそれをまとめる. 水冷溶融スラグの粒形と粒径の発現機構に関しては,製造条件および化学組成から は解明できなかった.これに関しては,熱歪み論等の基礎と製造条件および化学組成 を関連づけて考察する必要があると考えられる.また,水冷溶融スラグの化学組成を mm サ イ ズ ま た は 粒 子 単 位 で み る と 均 質 と 捉 え る こ と が で き た が , 流 理 構 造 が 観 察 さ れ る こ と は ,サ ブ mm サ イ ズ で み る と 溶 融 体 の 化 学 組 成 に 不 混 和 領 域 が 存 在 し て い る と 考 え る こ と が で き る .こ れ に 関 し て も 環 境 安 全 な 溶 融 ス ラ グ を 製 造 し て い く 上 で は , 有害重金属類の封じ込め機構とガラス構造の詳細な解析とを関連させて解明されるべ き課題である. 一方,溶融スラグを自然環境中で使用していくにあたっては,有害物質を溶出させ ないことが最重要因子であるが,そのためには有害物質を含有しない溶融スラグ(ク リーンな溶融スラグ)の製造が理想である.クリーンなスラグの製造にあたっては, 以 下 の 諸 事 項 の 関 連 付 け と 解 析 が 必 要 と な る . 1)溶 融 温 度 , 溶 融 炉 内 雰 囲 気 お よ び 溶 167 融 炉 内 滞 留 時 間 等 の 溶 融 条 件 と 溶 融 メ タ ル お よ び 焼 却 残 渣 の 組 成 の 関 連 づ け , 2)溶 融 メタル粒子径が小さくなるにしたがい酸素が検出される粒子が多くなる傾向の解析が 必要となる.さらにそれらデータを熱力学的考察に結びつけることも必要となる.ま た,いくつかの微粒子の化学組成は実用合金態とは異なったものであった.廃棄物処 理とは別分野となるが,このような微粒子のさらなる解析を進めることで,新たな材 料の発見に繋がる可能性も考えられる. 山元還元の基本工程である塩類除去に関しては,回収対象金属の鉱物種を考慮する ことが従来法の改善と新たな方向性を示すことになる.薬剤を全く使用しない曝気処 理法の適用は,山元還元の前処理法の改善と排水の放流にあたっての水処理法の改善 お よ び 大 気 中 CO 2 の 固 定 に 新 た な 方 向 性 を 見 出 す こ と に な る と 期 待 で き る . 168 引用文献 第1章 1)環 境 省 : 日 本 の 廃 棄 物 処 理 , http:/www.env.go.jp/recycle/waste_tech/ippan/h16/ Index.html(2006) 2)厚 生 省 : ご み 処 理 に か か る ダ イ オ キ シ ン 類 の 削 減 対 策 に つ い て ( 平 成 9 年 1 月 28 日 衛 環 21 号 ( 1997) 3)厚 生 省 : 一 般 廃 棄 物 の 溶 融 固 化 物 の 再 生 利 用 の 実 施 の 促 進 に つ い て ( 平 成 10 年 3 月 26 日 生 衛 発 第 508 号 ( 1998) 4)平 岡 正 勝・酒 井 伸 一:ご み 焼 却 飛 灰 の 性 状 と 処 理 技 術 の 展 望 ,廃 棄 物 学 会 誌 ,Vol.5, No.1, pp.3− 17( 1994) 5)安 藤 茂・小林陽一:特別管理廃棄物であるばいじんの適正処理について,廃棄 物 学 会 誌 , Vol.5, No.1, pp.18− 31(1994) 6)鄭 昌 煥 ・ 大 迫 正 浩 : 溶 融 飛 灰 中 レ ア メ タ ル 類 の 資 源 的 価 値 , 第 18 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.621− 623(2007) 7)廃 棄 物 研 究 財 団 : ス ラ グ の 品 質 改 善 の 研 究 , ウ エ イ ス ト イ ノ ベ ー シ ョ ン 21C プ ロ ジ ェ ク ト ス リ ム ウ エ イ ス ト 推 進 研 究 , pp.171− 188(2004) 8)廃 棄 物 研 究 財 団 : ス ラ グ の 有 効 利 用 研 究 ( 焼 成 品 と し て の 利 用 ), ウ エ イ ス ト イ ノ ベ ー シ ョ ン 21C プ ロ ジ ェ ク ト ス リ ム ウ エ イ ス ト 推 進 研 究 , pp.189− 216(2004) 9) エ コ ス ラ グ 普 及 セ ン タ ー:再 生 資 源( 溶 融 固 化 物 )の 利 用 拡 大 に 関 す る 調 査 報 告 書 , p.197(2006) 10)阿 部 清 一:溶 融 処 理 技 術 の 課 題 と 対 応 .廃 棄 物 の 溶 融 処 理 技 術 と ス ラ グ の 有 効 利 用 ( エ ヌ ・ テ ィ ・ エ ス ), pp129− 157(1996). 11)山 岸 一 雄:廃 棄 物 溶 融 技 術 の 現 状 と 課 題 .都 市 と 廃 棄 物 ,Vol.30. pp.21− 35(2000). 12)山 岸 一 雄:廃 棄 物 溶 融 技 術 の 現 状 と 課 題 .都 市 と 廃 棄 物 ,Vol.31. pp.23− 39(2001). 13)原 雄・根 本 久 美 子・菊 池 康 博・神 子 伸・藍 久 光・伊 藤 貞 雄:焼 却 灰 等 溶 融 ス ラ グ の 資 源 化 に つ い て , 第 7 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 講 演 論 文 集 , pp.495 − 498(1996) 14)原 雄:焼 却 残 渣 の 埋 め 立 て 回 避 か ら 人 工 骨 材 資 源 化 へ ,環 境 浄 化 技 術 ,Vol.4, No.10, pp.24− 26(2005) 15)千 葉 県 : 千 葉 県 溶 融 ス ラ グ 利 用 促 進 指 針 , pp.23− 30(1996) 16)埼 玉 県 : 溶 融 ス ラ グ の 有 効 利 用 検 討 調 査 報 告 書 ( 平 成 9 年 ) p.136(1997) 17)東 京 都 : 焼 却 灰 溶 融 ス ラ グ の 有 効 利 用 マ ニ ュ ア ル ( 平 成 9 年 ) p.159(1997) 18)千 葉 県 環 境 部:千 葉 県 溶 融 ス ラ グ 有 効 利 用 研 究 会 報 告 − 骨 材 と し て の 溶 融 ス ラ グ − , p.46(1998) 19)千 葉 県 環 境 部 : 溶 融 ス ラ グ 市 場 流 通 調 査 報 告 書 , p.158 (1998) 20)廃 棄 物 研 究 財 団 : ス ラ グ の 有 効 利 用 マ ニ ュ ア ル , p.247 (1999) 169 21)猪 熊 明:公 共 事 業 に お け る 試 験 施 工 の た め の 他 産 業 再 生 資 材 試 験 評 価 マ ニ ュ ア ル 案 , 土 木 研 究 所 資 料 3667 号 , p.173(1999) 第2章 23)長 田 昭 一・小 野 創・小 野 創・古 角 雅 行・徳 田 昌 則:焼 却 飛 灰 の 溶 融 処 理 に 関 す る 実 証 試 験 と 熱 力 学 的 考 察 ( 第 2 報 ), 第 7 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.467-469(1996) 24)田 野 崎 隆 雄・松 本 匡 史・野 崎 賢 二・和 泉 一 志・中 村 和 史・南 部 正 光・丸 田 俊 久:日 本 の 焼 却 灰 の 性 状 , 無 機 マ テ リ ア ル 誌 , Vol.5 , n o.273, pp.149-158(1998) 25)高 岡 昌 輝・中 塚 大 輔・武 田 信 生・藤 原 健 史:ご み 焼 却 飛 灰 中 元 素 の 定 量 に 関 す る 蛍 光 X 線 分 析 法 の 適 用 性 , 廃 棄 物 学 会 論 文 誌 , Vol.11, No.6, pp.333-342(2000) 26) A. 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Waste Technol., vol.29.,pp.629-646(1995) 29)野 坂 肇・中 原 啓 介・仲 尾 強・須 藤 雅 弘:ご み 焼 却 飛 灰 の 基 礎 粒 子 と 構 成 元 素 の 溶 出 挙 動 , 第 7 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 講 演 論 文 集 , pp.846-848(1996) 30)永 井 孝 明・堤 貞 夫・原 雄:焼 却 飛 灰 の 性 状 に 関 す る 研 究 ,第 8 回 廃 棄 物 学 会 研 究 発 表 会 講 演 論 文 集 , pp.419-421( 1997) 31)原 雄 ,北 橋 伸 一 ,関 桂 子:焼 却 飛 灰 中 の 鉛 の 化 学 形 態 ,千 葉 県 廃 棄 物 情 報 技 術 セ ン タ ー , Vol.4, pp.80-86( 1997) 32)中 村 一 夫:製 品 の ラ イ フ サ イ ク ル か ら み た 飛 灰 の 性 状 ,廃 棄 物 学 会 誌 ,Vol.5,No.1, pp.60-68(1994) 33)全 国 都 市 清 掃 会 議 : 厚 生 省 監 修 平 成 8 年 度 版 平成 6 年度実績廃棄物処理事業実 態 調 査 統 計 資 料 (一 般 廃 棄 物 ), (1998) 34)千 葉 県 環 境 生 活 部 ・ 千 葉 県 環 境 衛 生 促 進 協 議 会 , 2000: 清 掃 事 業 の 現 況 と 実 績 (平 成10年度) 35)東 京 都 清 掃 技 術 研 究 会 : ご み 焼 却 施 設 建 設 の 実 務 , p.180( 1992) 36)廃 棄 物 研 究 財 団 : ス ラ グ の 有 効 利 用 マ ニ ュ ア ル , pp.41-50(1999) 37)原 雄・半 野 勝 正・依 田 彦 太 郎・根 本 久 志:焼 却 施 設 内 た い 積 物 の 鉱 物 同 定 ,廃 棄 170 物 学 会 論 文 誌 , Vol.17, No.2, pp.131-138(2004), 38)D. Verhulst A.Buekens P.J. 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