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犯罪被害者の人権~その他の人権問題

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犯罪被害者の人権~その他の人権問題
10 犯罪被害者等の人権
(1)現状と課題
私たちは、命を大切にし、自由と幸福を追求する権利を有しており、憲法でも保障されて
います。しかし、世の中には犯罪事件の発生があり、ある人の不法な行為によって、突然幸
福に生きる権利を奪われてしまった犯罪被害者やその家族の人たちの存在があります。
また、犯罪に遭うことにより、被害者本人だけでなく被害者の家族も同様にさまざまな負担
を強いられることになります。事件の直接の被害のほかに、事件に遭ったことによる精神的
ショックや身体の不調、医療費の負担や失職・転職などによる経済的困窮、さらに、捜査や
裁判の過程における精神的・時間的負担、周囲の人々の無責任な会話やマスメディアによる
過剰な取材・報道によるストレス、不快感などの二次的被害に直面することになるのです。
国は、犯罪被害者等が直面している困難な状況を踏まえ、これを打開し、その権利や利益
の保護を図るべく、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進していくために、
2000(H12)年に「犯罪被害者保護法」
、2004(H16)年に「犯罪被害者等基本法」を制定し、
2005(H17)年には、犯罪被害者等の権利を総合的に保障するために「犯罪被害者等基本計
画」を策定しました。
この基本計画は、犯罪被害者等及びその支援に携わる人の具体的な要望によって策定され
たもので、
「損害回復・経済的支援等への取り組み」「精神的・身体的被害の回復・防止へ
の取り組み」「刑事手続への関与拡充への取り組み」、「支援等のための体制整備への取り
組み」「国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取り組み」の5つの重点課題に基づいて
取り組むこととされています。
犯罪被害者等が、心豊かに、安心して生活を送ることができるためには、制度や体制の整
備はもちろん、地域社会における周囲の理解と温かい対応が必要です。一人ひとりが苦しみ
や悩みを理解するとともに、事件の報道などに接したときにも、その被害にあった人たちの
心を思いやることができる確かな人権感覚を身につける必要があります。
(2)具体的施策の方向
ア 意識調査の結果を踏まえ、犯罪被害者やその家族の人権が守られるための教育・啓発
(広報)活動に一層努めます。
イ 人権相談窓口などの整備を図り、支援体制の充実に努めます。
(3)目標値(2014(H26)年度)
指 標 名
現 況 値
教育・啓発 犯罪被害者等の人権に
関する啓発資料
1点
(平成 21 年度)
46
前期目標値(5年後)
5点(累計)
◇ 人権に関する市民意識調査から
-犯罪被害者の人権について-
【質問】 犯罪の被害にあった人やその家族が、生活が苦しくなったり、好奇の目にさらさ
れてつらい思いをしたりすることがあります。このことについて、あなたはどう考えま
すか。あなたの考えに近いものを一つだけ選んでください。
1.好奇の目にさらされたりすることはある程度やむをえない。
2.まず、犯罪の被害に対しての補償が必要だ。
3.マスコミ報道をはじめ、社会全体や一人ひとりが、心情を思いやる配慮をすることが
大切だ。
4.そうした人がまわりにいないので、あまり考えたことがない。
5.わからない。
さらされることは
やむをえない
2.8%
わからない
4.2%
あまり考えたことが
ない
20.3%
心情を思いやる配慮
が必要
63.1%
被害に対しての
補償が必要
9.6%
<調査結果から>
約 73%の人が、犯罪被害者等への何らかの心くばりが必要と答えています。
犯罪の被害にあった人やその家族などに対して、
「補償が必要だ」と答えた人は、
9.6%で、「心情を思いやる配慮が大切だ」と答えた人は 63.1%です。合わせて
72.7%の人が、何らかのこころくばりが必要であるとの立場で考えています。
「好奇の目にさらされることはある程度やむをえない」と答えた人は、2.8%で、
「あまり考えたことがない」と答えた人は、20.3%です。
犯罪被害者やその家族に対する市民の理解を深めていくことと、支援体制の充
実が求められています。
47
11 インターネットによる人権侵害
(1)現状と課題
インターネットの普及に伴い、迅速な情報の入手と発信、世界中の人々とのコミュニケー
ションができるなど、インターネットは、私たちの生活の利便性を高め、ときに豊かなもの
にしてくれます。
しかし、その一方で、発信者の匿名性や不特定多数の人への情報発信が容易であるなど、
インターネットの特性を利用した様々な事象が発生しています。例えば、差別的な表現で他
人を誹謗・中傷をするなど、ブログやプロフと言われる媒体を通した人権侵害です。これら
の問題に、子どもたちが巻き込まれることも少なくありません。最近では、携帯電話を使っ
た「ネットいじめ」も多発しています。この中に「学校裏サイト」と言われるインターネッ
ト上に匿名で特定の人物の悪口を書き込んだり、多量の嫌がらせメールを送ったりするもの
もあります。これは、子どもたち自身が被害者になるだけでなく、加害者にもなっており、
問題が深刻化しています。
こうした悪質な人権侵害を防止するために、2002(H14)年5月、プロバイダー等の損害
賠償責任を制限し、悪質な情報の発信者に関する情報の開示請求等について定めた「特定電
気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」
(プロバイダ
ー責任制限法)が施行されました。また、2004(H16)年 10 月には、
「名誉毀損・プライバ
シー関係ガイドライン」が改訂され、悪質な情報の削除の判断を具体的に定めています。さ
らに、2008(H20)年6月、子どもたちを有害な情報から守るために、
「青少年が安全に安心
してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(有害サイト規制法)
」が成立
しました。
今日では、生活になくてはならないものとなっているインターネットや携帯電話ですが、
その利用にあたっては、プライベートな情報や人を傷つけたり差別したりする情報を流さな
いための確かな人権感覚、犯罪に巻き込まれないための正しい知識を身につける必要があり
ます。
(2)具体的施策の方向
ア 意識調査結果を踏まえ、インターネット利用者やプロバイダー等に対して、個人のプ
ライバシーや名誉を尊重し、人権侵害を防止するための広報・啓発活動を一層推進しま
す。
イ 児童・生徒・保護者に対して、パソコンや携帯電話を活用する場合における個人の責
任や正しい利用方法に関する指導、ネットいじめを防ぐための情報モラル教育をすすめ
ます。
ウ 人権侵害と判断される情報を発見した場合は、県及び地方法務局と連携しながら、削
除依頼等の対策を要請します。
(3)目標値(2014(H26)年度)
指
教育・啓発
標
名
インターネットによる人権
侵害に関する啓発資料
48
現 況 値
前期目標値(5年後)
1点
(平成 21 年度)
5点(累計)
◇ 人権に関する市民意識調査から -インターネットによる人権侵害について-
【質問】 インターネットを使って人を中傷したり、プライバシーをあばきたてたり、差別
をあおるような文書をながしたりすることが増えています。このことについて、あなた
の考えに近いものを一つだけ選んでください。
1.あまり自分にはかかわりがないので関心がない。
2.インターネットが普及した現代では、そういうことはさけられないことだ。
3.法律できちんと取り締まるべきだ。
4.一人ひとりがマナーを守り、そうしたことをしないようにするべきだ。
5.わからない。
現代では
さけなれない わからない
5.0%
3.6%
関心がない
7.3%
一人ひとりがマナー
を守るべき
42.0%
法律で
取り締まるべき
42.1%
<調査結果から>
約 84%の人が、インターネットによる人権侵害に対して何らかの対策が必要と
答えています。
インターネットによる人権侵害に対して、「一人ひとりがそうしたことをしないよ
うにするべきだ」と答えた人は、42.0%で、「法律で取り締まるべきだ」と答えた
人は 42.1%でした。合わせて 84.1%の人が、何らかの対策が必要であるとの立場
で答えています。
「そういうことは避けられない」と答えた人は、3.6%で、「関心がない」と答
えた人は、7.3%でした。
パソコンの普及にともない、
「 ネ ッ ト い じ め 」等 の 新 た な 人 権 侵 害 の 問 題 が
発生しています。教育・啓発を充実させ、市民の意識を高めるとともに、関
係機関との連携を深めて、インターネットによる人権侵害に対処する体制を
強化する必要があります。
49
12 性的少数者の人権
(1)現状と課題
性的少数者の問題とは、性同一性障がいの人、性的指向の異なる人、インターセック
スの人の問題などのことです。
性同一性障がいとは、からだとこころの性が一致しないため、社会生活上強い違和感
を持ち、支障をきたしている状態をいいます。最近では、手術をすることによって、か
らだとこころの性を一致させる人も増えてきました。性同一性障がいの人については、
2004(H16)年7月、要件を満たしてそれが裁判所に認められれば、戸籍上の性別の変更
ができる「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行されました。2008
(H20)年6月には、要件が緩和された改正案が成立しています。
また性的指向とは、性愛の対象が異性に向かう異性愛だけでなく、性愛の対象が同性
に向かう同性愛(ホモセクシャル)や男女両方に向かう両性愛(バイセクシャル)の概
念を指します。インターセックスとは、生まれつき身体の性別の区別がわかりにくいこ
とをいいます。
性的少数者といっても、その人たちが抱えている困難はさまざまにあります。少しず
つ理解が進んでいるとはいえ、社会の中では少数派とされ、さまざまなトラブルに直面
し、奇異な目でみられたり、人として認められなかったりするなど、偏見や差別を受け
ています。
私たちは、性の在り方について固定的に考えるのではなく、性的マイノリティ(マイ
ノリティ=少数者)が安心して暮せるよう正しく理解し、差別や偏見をなくしていくた
めに、啓発活動や相談できる体制づくりなどに取り組む必要があります。
(2)具体的施策の方向
ア 意識調査の結果を踏まえ、
性的少数者に対する人権侵害を防止するため、
学校教育、
社会教育、青少年教育のより一層の推進を図ります。
イ 開設している「こころの相談」や「総合健康相談窓口」において、相談しやすい環
境をつくります。
ウ NPO 法人やボランティア団体との連携を深め、教育・啓発活動、救済活動を推進し
ます。
(3)目標値(2014(H26)年度)
指 標 名
教育・啓発
現 況 値
性的少数者の人権に関する
1点
啓発資料
(平成 21 年度)
50
前期目標値(5年後)
5点(累計)
◇ 人権に関する市民意識調査から
-性同一性障がいや性的指向の異なる人など性的少数者の人権について-
【質問】
日ごろから親しくつきあっている職場の人や、近所の人が、性同一性障
がい※、もしくは、性的指向※の異なる人であるとわかったとき、あなたはど
うしますか。あなたの考えに近いものを一つだけ選んでください。
※
性同一性障がい=生物学的な性とこころの性が一致しない人
※
性的指向=異性愛・同性愛・両性愛など
1.これまでとかわらず同じようにつきあっていく。
2.つきあいはかわらないが、いろいろ気をつかってしまう。
3.表面的にはつきあうが、できるだけつきあいをさけていく。
4.こだわりを持つので、つきあいをやめてしまう。
5.わからない。
つきあいを
やめてしまう
2.5%
できるだけ
つきあいを
さけていく
7.9%
わからない
18.3%
同じように
つきあっていく
40.7%
つきあいはかわらな
いが、いろいろ気を
つかってしまう
30.6%
<調査結果から>
約 71%の人が、性同一性障がいや性的指向の異なる人など性的少数者と「つ
きあっていく」という立場で考えています。
性同一性障がいや性的指向の異なる人など性的少数者とのつきあいについて、
「これ
までと同じようにつきあっていく」と答えた人は、40.7%で、
「つきあいはかわらない
が、気をつかってしまう」と答えた人は、30.6%でした。つきあっていくとの立場で考え
ている人は、両者を合わせて 71.3%でした。
「つきあいをさけていく」と答えた人は、7.9%で、
「つきあいをやめる」と答えた
人は、2.5%でした。
テレビ等のマスコミの影響もあり、社会的に認知されて理解が深まってきました。引き
続き教育・啓発を進めることで、ともに生き合うまちづくりを進める必要があります。
51
13
その他の人権問題
社会には、少数者や社会的弱者などに対する多様な人権問題が存在します。
たとえば、ホームレスになることを余儀なくされている人びとがいます。それにもかかわ
らず、外見などで判断され嫌がらせや暴行の対象になるなどの人権侵害が起こっています。
こうした問題を解決するために、ホームレスの人たちを支援するために、2002(H14)年8月
に「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法(以下「法」という)」が 10 年間の時限立
法として施行されました。
この法は、ホームレスの自立の支援、ホームレスになることを防止するための生活上の支
援などに関し、国等の果たすべき責務を明らかにするとともに、必要な施策を講ずることに
より、ホームレスの人権等に関する問題の解決に資することを目的としています。
国は、2003(H15)年7月に「ホームレスの自立支援等に関する基本方針」を策定し、ホー
ムレスの自立支援への取り組みをすすめるともに、地域社会におけるホームレスに対する偏
見や差別を解消し、人権尊重思想の普及高揚を図るための啓発活動の実施、地方自治体に対
しては、実施計画を策定し、地域の実情に応じて計画的に施策を実施するよう明示しました。
市は、「岐阜市ホームレス自立支援実施計画(第2次)」を定め、NPO 団体など関係諸機関
と連携して、引き続き生活相談等、自立支援のための取り組みをすすめています。
しかし、制度面だけでなく、地域に暮す住民全体がホームレスの人に対して関心をもち、
正しく理解し、偏見や差別をなくしていくことも必要です。
その他、拉致問題の解決を始めとする北朝鮮当局による人権侵害問題や、性的搾取・強制
労働等を目的とした人身取引(トラフィッキング)の問題、生活困窮者への偏見、
「イエ(家)
」
を重視する社会通念が背景にある「婚外子」に対する差別、派遣社員やパートタイム労働者
などの非正規労働者に対する差別、学歴や職業に対する偏見や差別など、さまざま人権問題
が存在しています。
さまざまな状況で人権が脅かされていることを認識し、人権問題についての正しい知識と
理解を深め、偏見や差別をなくし共によりよく生き合う立場から、一人ひとりの人権が尊重
される社会の実現に向けて取り組みをすすめる必要があります。
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