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(09)ものつくり教育 講演番号:4-225 臨床知としての特異点探索 Search of Singular Point as Clinical Knowledge ○小林 一郎※1 Ichiro KOBAYASHI 大渕 慶史※2 Yoshifumi OHBUCHI 岡田 幸子※3 Sachiko OKADA キーワード:特異点探索,臨床知,ものづくり Keywords: Search of Singular Point, Clinical Knowledge, Creative Engineering 1. はじめに 本学では大学教育への導入科目として、全新入生を 対象に必修科目「基礎セミナー」を実施している 1)。 これは、「創造的な知性 2)」の育成のために、グルー プワークを中心として、課題を調査・分析し、討論・ 発表等を少人数のゼミ形式で行う授業である。また、 2011 年度から工学部系科目の基礎セミナーは、工学部 以外の学生を対象とした「ものづくり教育」の一環と しても位置づけられている。 著者らが担当する基礎セミナー「風景の発見」(以 下、本科目)は、全 8 回で構成される工学部系科目で ある。本科目は、2002 年度に開始、2010 年度に FD 教 育の一環で 3 名の教官が数回にわたり授業見学を行っ た。本科目では、工学部以外の学生を対象に、風景の 読み解き方と構造物が最も美しく見える場所の探索方 法である「特異点探索」を学ばせる。これにより、① 非定型な課題への対応法、②表現力、といったスキル を身につけるだけでなく、③工学におけるものづくり の一端を理解させることを目的としている。 2. 特異点探索 本科目で用いる手法「特異点探索 3)」とは、本来は、 土木技術者や一般の人に土木構造物のある風景のあり 方を学ばせるものである。 特異点(singular point)とは、「構造物(視対象) が、最も美しく見える場所」と定義される。特異点探 索とは、人が普段行ける場所から特異点を探す手法で ある。 特異点には、局所的特異点(LP:Local Point、ai と bi)と全域的特異点(GP:Grobal Point、C)があ る(図 1)。局所的特異点は、その付近で最も美しく ※1 工博 熊本大学大学院 自然科学研究科 教授 ※2 博(工) 熊本大学 工学部 革新ものづくり教育センター 准教授 ※3 修(工) 熊本大学大学院 自然科学研究科 博士後期課程 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 見える点であり、無数に存在する。全域的特異点とは、 局所的特異点の中で最も美しく見える点のことである。 例えば、橋の特異点には、①細部点:橋の細部が美し く見える点、②造形点:橋の形が美しく見える点、③ 関係点:橋と他のモノのバランスが良く見える点、④ 風景点:橋のある風景が美しく見える点、⑤文脈点: 地理や歴史を知っていると見えてくる点の 5 つがある。 図1 特異点の概念図 3. 臨床の知と現場の知 中村4)5)によれば、「<臨床の知>とは、狭い意味で の医学的な臨床の知ではなく、近代科学への反省のも とに、それが見落とし排除してきた諸側面を活かした 知のあり方であり、学問の方法である。」とされてい る。また、臨床の知は、「諸感覚の協働にもとづく共 通感覚的な知」でもある。ここでの共通感覚とは、五 感を外部感覚と呼ぶとき、これに対応する内部感覚(道 徳的な善悪のみならず、芸術的な美醜をも認識する感 覚)のことを指している。この共通感覚は、「感性と 理性の交換点であり、想像力の座」であり、「(共通 感覚の)働きは身体を基礎として身体的なもの、感覚 的なもの、イメージ的なものを含みつつ、それをこと ばつまり理(ことわり)のうちに統合すること」であ る。つまり、臨床の知とは、身体を使い、内部感覚を 働かせ、その感覚を言葉によって表現することである と言える。 ― 320 ― このような臨床の知は、工学においては現場の知と 言ってよいだろう6)。現場の知とは、①個別性(時間や 空間が他と異なる:固有場)、②相互性(自分と対象 とが相互に影響し合う:身体場)、③多義性(同じこ とでも、いくつもの解釈が可能である:物語場)の3 点から成る。このような現場の知は、本来ものづくり に関する構想や設計の能力とその基盤となる空間感覚 や歴史感覚のことであり、フィールドワークでの実践 の中でしか涵養されないものである。 つまり、特異点探索とは、この世界に一つしかない 空間(固有場)において、五感を総動員し(身体場)、 事物や事象をさまざまに解釈(物語場)することと言 い換えられる。 本科目の受講生は、橋の特異点探索を行い、自ら発 見した特異点から撮影した橋の写真を用いて、橋の美 しさを説明する。これらの段階を経ることで、土木技 術者のもつ現場の知を知ることになる。 4. 現場の知を知る 図 2 に 2012 年度の授業内容を示す。ポイントは以下 3 点である。 ①専門的な見方(橋の種類、景観工学)を学ぶ(第 3 回、第 7 回) ②五感を総動員し、大学周辺に架かる橋を受講生全員 で視る(第 3 回) ③一般的なテーマ「素敵な街角」で特異点探索をし、 写真の説明をする(第 4 回)(写真 1) 第 8 回の第 2 回発表会の様子を写真 2 に示す。発表 会では、A4 自由形式でまとめた最終レポートを用いて 橋の特異点を説明する。レポートには様々な視点から 撮影された写真と説明が掲載されている。 レポートの一例を挙げると、「私は高校生時代の通 学路で毎日何気なく通っていた"明午橋"に焦点を当て、 その特異点を探索してみた。授業で学んだ事を活かし 様々な位置から写真を撮るなかで、今まで気にも留め なかった明午橋が、実に色んな表情を見せてくれた」 と感想が書かれており、橋のある風景を意識している 様子が分かる。また、これまで通っていた橋だが、「私 はこの写真を撮って初めて、明午橋がこんなにも緑に あふれているのだと知った」とも書かれており、空間 を解釈する新しい視点を獲得している。 図2 写真 1 2012 年度の授業内容 「素敵な街角」の写真講評の様子 写真 2 第 2 回発表会の様子 注および参考文献 1) 熊本大学ティーチングオンライン http://kuto.kumamoto-u.ac.jp(2013.5.2 アクセス) 2) 自分で課題を発見し、解決のために必要な調査・研究及 び実践に個人やチームで取り組み、その成果を論理的に発 表・討議する能力を持っていること。 3) 山下真樹、小林一郎、増田剛士、橋本淳也:橋梁景観の 5. おわりに 本科目では、受講生に特異点探索を実施させ、発見 した特異点から撮影した写真を用いて、空間の解釈を させた。このような実践を通して、土木的スケールで の空間感覚や時間感覚といった現場の知を受講生に実 感させることができた。 評価と設計への特異点概念の利用、構造工学論文集 Vol.45A、 pp.615-622、1999. 4) 中村雄二郎:「臨床の知とは何か」、岩波新書、1992. 5) 中村雄二郎:「共通感覚論」、岩波現代文庫、2000. 6) 小林一郎:風景を視る 眼力は鍛えられるか、土木学会誌 Vol.86、土木学会、pp.57-59、2001. ― 321 ― (09)ものつくり教育 講演番号:4-226 情報系学生とのものづくり An Inter-Departmental Core Curriculum “Problem-Based Learning“ in a Graduate school ○原紳※1 横田和隆※1※2 渡邊信一※1 Shin HARA Kazutaka YOKOTA Shinichi WATANABE 丸岡正知※1※3 Masanori MARUOKA キーワード: 工学教育, PBL 科目 Keywords: Engineering Education, Problem-Based Learning 1. はじめに 宇都宮大学工学部では,附属ものづくり創成工学セ ンターが中心となり,ものづくり感性の涵養,自主性, 創造性の育成を目的に,学部学生を対象とした創造性 教育プログラムの開発整備を実施し,様々な改善を積 み重ねてきた.学部生に対する創造性教育プログラム としては工学部一年生に対して学科横断的に実施して いる PBL 形式科目「創成工学実践」があり,学生への 工学に対する動機付け,専門課程における導入教育と いう位置付けで実施している.さらに工学的専門知識 を必要とするプロジェクトを実施して行く際に,PDCA サイクルを取り入れて実践できる能力を向上させる目 的で「創成プロジェクト実践Ⅰ,Ⅱ」が用意されてい る 1)-4).本報では「創成プロジェクト実践Ⅰ」に参加 した情報系学生との授業内容,実施方法について述べ る. 2. 学部生に対する創造性教育について 2.1 創成工学実践 本授業の特徴の1つは,受講生を学科横断的な4人 もしくは5人のグループ,つまり本学工学部では5学 科あるため同じグループに同学科の学生を含まないよ うにグループを組み,各グループには教員が考案した ものづくりに関する実践テーマを与えるという学科横 断型のグループ構成である.受講生は,事前のオリエ ンテーションで複数の希望実施テーマを選択し,希望 に沿って配属される.配属後は与えられた実践テーマ に対してグループでコミュニケーションを取りながら, 問題発見,計画,実行,評価及び改善という課題解決 に取り組み,最後に発表を行う.本授業で教員及び TAは,学生の自主的な活動を最大限に尊重し,必要最 低限の説明,もしくはアドバイスをするのみで,でき ※1 宇都宮大学工学部附属ものづくり創成工学センター ※2 宇都宮大学大学院工学研究科学際先端システム学専攻 ※3 宇都宮大学大学院工学研究科地球環境デザイン学専攻 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 図1 作品 る限り干渉しない.このようなものづくり体験学習を 通じて,学生の「自主性」,「創造性」,「独創性」を 育み,さらに,グループ活動を通じて「コミュニケー ション能力」,また成果発表を通じて「プレゼンテー ション能力」を育成することを目指している5). 2.2 創成プロジェクト実践Ⅰ,Ⅱ 「創成プロジェクト実践Ⅰ,Ⅱ」は学部生の選択共 通科目,Ⅰは3年生後期,Ⅱは4年生前期を対象とし て,平成21年度から選択科目として開講された.本授 業も,創造性教育の一環であり,専門性を必要とする プロジェクトを通して,課題を計画的に進めるためP DCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを取り入れ たマネージメントを実践するためのものである.また 本授業は,学生が自主的に実施している,ものづくり 活動(広義での創造的活動)に対して,単位化を図る ものであり,「創成工学実践」の効果をさらに伸張す る為のものとも言える.授業には,2つのスタイルが 用意されており,1つは学生が自主的にプロジェクト チームを結成し,テーマを提案するスタイル,また1 つは教員から提示されたテーマを実践するスタイルで ある. ― 322 ― 3. 実際の授業 3.1 イルミネーション作成 本節では平成24年度後期授業「創成プロジェクト 実践Ⅰ」の実践テーマとして,イルミネーションの作 成(TOKIWAファンタジア イルミネーションコンテスト への参加を含む)を希望した情報工学科3年生3名の 技術指導との立場で関与したことについて述べる.著 者の機械系エンジニアとしての長い企業経験からすれ ば,学生の論議は感性や直感的イメージが先行し,具 現化する手段の考察は等閑と感じられるものであった. 例えば図1に示すような,透明な樹脂製の四角垂の作 成で,底辺90cm高さ110cmの大きさだが, 「パ ネルソーで切って,接着すれば良いですよね」程度の 発想である.だが,実際組み立てる作業段階になり, 単に接着することができないことがわかり,四角垂を 形作る方法についてトライアンドエラーを繰り返した. このような直面した問題をひとつひとつ解決し,乗り 越える中で,確実に成長が感じられ,完成した後,梱 包しコンテストに発送する際には,自主的に再梱包マ ニュアルを作成し,主催者に返送の依頼と共に送付す るに至った. 3.2 指導者の意識 「褒めて伸ばす」,「失敗を見守る」といった教育 手法は極めて一般的に知られることである.しかしな がら,著者は企業における経済活動の場で,納期や利 益に追われる厳しい現実に,叱咤激励することはあっ ても,穏やかに見守る時間は皆無であった.また機会 を得る毎に企業人に聞き取りを続けているが,一応に, 理解はしているが実践は困難との見解である.では, このイルミネーション作成において,何故穏やかに見 守ることが出来たのであろうか.これは明らかに,指 導の場であるという意識がもたらすものである.これ らを踏まえ,企業内にOJT(On-the-Job Training) ではない教育機関を設け,新人研修や定期教育を行う 試みもある.しかしながらその数は限られ,多くの企 業では教育はOJTに頼るのみとなる.したがって, 大学における創造性教育の場での「見守り」は創造性 の萌芽の大きな機会であり,また使命と考え,今後も 努力し継続して行きたい. 4. 創造性教育の担う,もう1つの役割 現代社会におけるものづくりの多くは,作り手と使 い手がふれあう事の無い状態で行われ,作り手の思い や技が,直接評価されることは無いに等しい.企業活 動は成果主義であり,コストや原価が評価の重きを占 め,時にそれが暴走し,欠陥品を世に送り出してしま うこともある.Made in Japan が世界を席巻した理由 は,量産品にもかかわらずその品質が抜きん出ていた ためで,不必要な工程は徹底的に削減するが,必要な 工程には妥協を許さない,その努力を怠らなかったか らであると著者は考える. 今回の取り組みを通して改 めて次のようなことを感じた.この作品はコンテスト 後,学内のロビーに展示し,来客者および学内の教職 員からも好評である.このようにエンジニアとしての 初期体験として,自分の努力によって喜ぶ人がいるこ とを知ることが,エンジニアの良心を貫くバックボー ンの形成に大きく関与するものである.その意味では 彼らの今回の経験は将来のエンジニアとして,努力を 惜しまない人材となり,さらなる成長が期待できる. その教育効果は大きなものがあったと評価している. 5. おわりに 本報では,宇都宮大学工学部の共通専門科目である 「創成プロジェクト実践Ⅰ」で行ったイルミネーショ ンの作成について述べた.3年生後期授業科目である が,参加した学生から,就職活動において,面接の話 題に用い,面接官の印象も良かった,チームワーク・ 積極性・行動力・アイディアと,自己アピールするの にこの経験は不可欠でした,とのうれしい報告があっ た.また,TOKIWAファンタジア イルミネーションコン テストへの参加に関し,山口大学の皆様の様々なご支 援に感謝を申し上げます. 参考文献 1) 入江晃亘, 渡邊信一, 高木淳二, 横田和隆, 杉山 均, 宇都宮大学における企画実践型 PBL を機軸と する大学院教育プログラムの開発について, 平成 22 年 度 工 学 ・ 工 業 教 育 研 究 講 演 会 論 文 集 , pp.574-575 (2010). 2) K.Yokota, M.Maruoka, J.Takaki, S.Watanabe, PBL Based Engineering Education to Cultivate Leadership Spirit in Postgraduate Students, 2nd Asian Conference on Engineering Education(ACEE2011), pp.36. 3) 横田和隆,渡邊信一,高木淳二,丸岡正知,長谷川 光司,入江晃亘,杉山均,宇都宮大学大学院 PBL 必 修科目「創成工学プロジェクト」 ,工学教育, Vol.59, No.5, pp.109-114 (2011). 4) 渡邊信一, 高木淳二, 入江晃亘, 横田和隆, 大学 院生による PBL 科目のテーマ開発と指導および評 価,平成 23 年度工学教育研究講演会講演論文集, pp.32 (2011). 5) 渡邊信一, 高木淳二, 長谷川光司,入江晃亘,杉山 均, 横田和隆, 学科横断的 PBL 形式科目「創成工学 実践」における授業評価,工学教育, Vol.59, No.2, pp.47-51 (2011). ― 323 ― (09)ものつくり教育 講演番号:4-227 簡易化された開発環境を利用した 組込みシステム開発実習の教育効果 (GXFDWLRQDOHIIHFWRIHPEHGGHGV\VWHPVGHYHORSPHQWSUDFWLFH XVLQJLQWHJUDWHGGHYHORSPHQWHQYLURQPHQWWKDWKDVEHHQVLPSOLILHG 前田 貴信※1 7DNDQREX0$('$ キーワード:組込みシステム,統合開発環境,人材育成 .H\ZRUGV(PEHGGHGV\VWHPV,QWHJUDWHGGHYHORSPHQWHQYLURQPHQW+XPDQUHVRXUFHGHYHORSPHQW また専門用語が多く理解しにくい,電子部品などを配 はじめに 組込みシステム開発は煩雑で難易度が高く,教育現 場では教員にも実験や実習の方法,テキスト作成に工 夫が求められる.そこで,最近普及し始めた扱い易く プログラム開発も容易な開発用マイコンボードの利用 することで従来の実験実習に比べ教員および受講生に どのようなメリット・デメリットがあるかを,試験的 に実施した講義と学生の評価を基に検証し報告する. 組込みシステム教育の現状と問題点 組込みシステムは,かつてはマイコン制御などと呼 ばれ,現在ではディジタル家電や情報機器,自動車な どから産業用など身の回りの様々な機器に文字通り組 み込まれているコンピュータシステムのことをいう. しかし,これらのシステム開発に携わる技術者が不足 していると指摘されて久しい .そこで各教育機関で は,マイコンおよびその周辺回路とプログラミングを 実践的に学習する,組込みシステム開発教育に力を入 れている.佐世保高専(以下,本校)においても平成 年度以降, 本校電子制御工学科の学生の工学実験や, 地域企業技術者や高等学校教員らを対象とした人材育 成事業「組み込みシステム研修」にて開発講座を開催 している .そこでは,マイコンのプログラミングだ けではなくブレッドボードを用いたセンサやモータド ライバなどの周辺回路との接続も受講生が行い,組込 みシステムに必要なソフトウェア,ハードウェア両面 をしっかり理解できるような工夫を施している. しかし,人材育成の参加者の中にはプログラム作成 の経験や,マイコンの内部構造や電子回路の知識がな いなど,これから組込み関係の仕事を始めようという 方,趣味で電子工作をやってみようという方なども多 い.そのような方々にとっては理解が難しく個別に指 導する必要があり,指導する教員にとっても負担が大 きい.また,自宅で学習するにしても情報が少なく, ※ 線が簡単にできない,プログラム開発環境を入手して インストールするなど敷居が高いといった問題がある. 簡略化された開発環境に組込み教育 こうした状況に対し,マイコンボードを手がけるメ ーカも対策を取り始めている.また,従来マイコンを 利用していない技術者以外の人々をターゲットとした マイコンボードおよび開発環境を提供するメーカも増 えてきた.これらマイコンボードの特徴は,マイコン 初心者でも取り組みやすくインストール不要な開発環 境やサンプルを提供されている,プログラムはレジス タ,メモリ,アドレスといった概念を知らなくとも簡 単な&言語の知識だけで作製できるなど,従来の組込み システム開発よりも簡略化されている点にある.この 特徴は,ベテラン技術者にとっても,ラピッドプロト タイピング(53)に活用,問題解決用のツールとして 容易に利用できるなど,メリットも大きい.当然,教 育用途としても期待されるし,多数の書籍なども店頭 で見ることができる. しかしながら,マイコン本来の煩雑な仕組み,特に レジスタの設定やアドレスの概念などが隠れてしまう ということは,アセンブラレベルでのコードの最適化, 時間管理などを全く知らずにプログラムを作成できて しまい,本格的な組込みシステム開発の支障になるの ではという懸念がある. そこで,著者は従来の組込みシステム教育と同時に 簡略化された開発環境のマイコンボードを使用した実 験的な教育を実施,指導する教員側,受講する学生側 にとってどのような効果(メリット,デメリット両面) があるかを検証し,今後の組込みシステム教育のあり 方について指標のひとつとしたい. 結果および考察 佐世保工業高等学校電子制御工学科 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 ― 324 ― ここでは,過去年間に実施した簡略化された開発環 境のマイコンを用いた実習例を紹介し,その評価を述 べる.ここでは,「PEHG」マイコンボードを活用した 事例をあげる.以下にPEHGマイコンの特徴をあげる. ・ 統合開発環境はZHE上にあり,ZHEブラウザ上でプ ログラム作成,コンパイル,管理が行える(図) ・ コンパイルしたバイナリファイルはダウンロード し,86%メモリとして認識されているPEHGの5$0に 「ドラッグ&ドロップ」するだけでよい ・ マイコンボードはピン配置が列でブレッドボー ドに取り付けることができる(図) ・ マイコンボード上に/('搭載,ディジタル出力で簡 単に212)),3:0制御ができる ・ 電源は86%ポートから給電できる ・ プログラムは&ライクな言語で作成,各ポートの 機能はクラスを定義するだけでよい(図) 図ZHE ブラウザ上の開発環境とプログラム例 の使い方を,ZHE を参考にして学習させ,残りの 名 が作った簡単なロボットアームを動作させるシステム を作成させた.マイコンに関しては最初に概念と簡単 なディジタル出力の方法のみを教え,以降は ZHE を活 用し自学させたので,教員の負担はかなり低かった. 表 にスケジュール,図 に作成例を示す.学生の評 価は好評ではあったが,作業場所がインターネットに 接続された 3& がある場所に限られるため不自由な作 業を強いる事になった. 表 授業スケジュール 内容(週 回 時間× 回) 第 週 概要説明,分担決め 第 週 PEHG プログラム基礎講義+ロボットム作製 第 週 プログラム+ロボットアーム作製 第 週 資料作成,成果発表 図実験の様子 PEHGを用いた卒業研究の導入教育 卒業研究生を対象とした PEHG によるロボット制御 システムの開発.授業ではしっかりと理解できていな かった学生を対象に実施したが,現在進行中のため追 って別の機会に紹介する. おわりに 図PEHG マイコンと周辺回路の例 図プラグラム例 以下,実施した教育事例を挙げる. ロボコン部員を目的としたPEHG搭載ロボット作成 高専ロボコンに参加している学生向けに,機械系の 学生にもマイコンによるモータ制御の仕組みとプログ ラムの大変さを味わってもらった.しかし,準備期間 が短く十分な成果を上げることができなかった.また, &言語を十分に学習してない学科の学生にとっては& ライクな記述方法に戸惑う学生もいた. 少人数ロボット教室 高専4年生を対象とし, 名 チームで一人に PEHG 簡略化された開発環境のマイコンボードを利用する ことで教員の負担を軽くし,比較的短時間で学生自ら が組込みシステムの学習ができることを示した.今後 アンケート調査を通じて従来の教育方法と比較を実施 していく予定である. 注および参考文献 たとえば「 年度版組み込みソフトウェア産業 実態調査」など 兼田,嶋田:佐世保高専電子制御工学科における組 込みシステム技術者教育,平成 20 年度九州沖縄地区高 専工学教育研究会講演予稿集,pp.5-8(2008) 坂口,前田,兼田,川下,松尾:佐世保高専におけ る組込み技術者教育を通した地域貢献,論文集「高専 教育」第33号,pp.887-892(2010) ― 325 ― (09)ものつくり教育 講演番号:4-228 :HE サービスを利用した $QGURLG アプリケーション開発・実装体験 $QGURLGDSSOLFDWLRQGHYHORSPHQWDQGPRXQWLQJH[SHULHQFHXVLQJD:HE6HUYLFH ○吉岡 昌雄※1 谷口 勝紀※1 大村 悦彰※1山口 倫※1青木 敏弘※1仲間 祐貴※1 0DVDR<26+,2.$.DWVXQRUL7$1,*8&+,1REXDNL2+085$6DWRVKL<$0$*8&+,7RVKLKLUR$RNL<XNL1DNDPD キーワード:アンドロイド,ものづくり,教育 .H\ZRUGV$QGURLGPDQXIDFWXULQJ(GXFDWLRQ 概要 熊 本 大 学 工 学 部 技 術 部 情 報 シ ス テ ム :* で は $QGURLGアプリケーションの開発から実装までを体 験できる講習会を開催した. 講習会では$SS,QYHQWRUというタイルプログラミ ン グツー ルを用 い、アプ リケー ション を 作成し $QGURLG端末に実装して動作確認を行った. 本稿では講習会の内容を紹介し、開発環境である $SS,QYHQWRUを用いた効果について報告する. 背景 平成 年度、熊本大学工学部技術部では「工学基礎 技術の融合と創造教育の実践」と題して つのテーマ からなる講習会が企画され、情報システム :* ではこの 中の一つ「$QGURLGアプリケーション開発・実装体験」 を開催した>@.平成 年度は「技術部による体験型 実習プログラム」と題して つのテーマで講習会が企 画され、情報システム :* では、昨年度に引き続き $SS,QYHQWRU を用いたタイルプログラミングによる $QGURLG 開発から実装までを体験できる講習会「:HE ベ ースの $QGURLG アプリ開発・実装体験」を開催する事 になった>@. し参加を募った.参加希望者が多く同じ内容の講習を 日間実施した. 講習会は、参加者それぞれに開発環境をインストー ルした端末 台を準備した.また、動作確認用の実機 として $QGURLG 端末を 台(&UHDWLYH=LLR×, $FHU,&21,$7$%$×)用意した.講習会は表1のス ケジュールで実施した. $QGURLG アプリケーション開発には $SS,QYHQWRU を 用いた.$SS,QYHQWRU は $QGURLG 対応アプリケーショ ンを開発する為の :HE サービスで、プログラム未経験 でも扱いやすいようにグラフィカルなユーザインタフ ェースを実装している.$SS,QYHQWRU は、「画面を作 る」デザイナ図1と「動かし方を定義する」ブロック エディタ図 で構成されている.どちらもマウスで操 作でき直感でわかりやすい仕組みで、できている. 表 講習会スケジュール androidの紹介およびiOSとの比較について 㻝㻜㻦㻜㻜㻙㻝㻝㻦㻡㻜 図$SS,QYHQWRU デザイナ AppInventorの基本操作について タッチセンサによるアプリケーション開発 休憩 12:50-14:40 加速度センサーを使用したアプリケーション開発 お絵かきアプリケーション開発 休憩 14:50-16:50 Bluetoothを使用したアプリケーション開発 16:50-17:00 アンケートおよび閉会 講習内容 講習会案内を工学部全体の学生にメールでお知らせ ※ 熊本大学工学部技術部 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 図$SS,QYHQWRU ブロックエディタ ― 326 ― 考察 講習会希望者の内、当日都合がつかず参加できない 受講者が12名いた.希望が多かっただけに、開催時 期については考慮する必要がある. 講習会希望者が多かったことは、昨年度の実績が評 価された点、また $QGURLG というキーワードが学生の 興味を引いたことが、要因としてあげられるのではな いかと思われる. 特に、入学から間もない時期に、このような講習会 に参加する機会を得る事は、学生生活のモチベーショ ンを向上させ有益であろうと思われる. また、$SS,QYHQWRU を用いた事で構文エラーや記述 ミスがなく、プログラム未経験者でも簡単にアプリケ ーションの開発から実装までを経験することができた のは良かったと考える. プログラム経験者にとっては、$SS,QYHQWRU の基本 的な使い方を学び理解を深める事で、より高度なアプ リケーション開発が行う事も可能であり、その為のコ ンポーネントも準備されている. 次に、アンケート結果について考察する.受講者の プログラム経験を図3に示す.プログラムスキルは個 人で差があったが、図4および図5に示すように、講 習会の内容は概ね理解してもらえたと思われる. 図プログラムスキル 図 講習の理解度 これは、プロジェクタを用いて説明する主講師とは 別に補助講師を複数人配置し、受講者からの質問等に 対応することで、受講者のプログラムスキルの差を埋 めて、細やかな指導ができたからだと考えられる.ま た作成したアプリケーションが自分の所有する $QGURLG 端末で動作する事も講習会が上手くいった一 因となったと思われる. まとめ これまで、$QGURLGアプリケーションの開発から実装 までの一連の流れを体験できる「:HEベースの$QGURLG アプリ開発・実装体験」講習会について述べてきた. アンケート結果からわかるように$SS,QYHQWRUを用い たことで、幅広い受講者に対して講習内容が理解され たと考える. 今回の経験を生かし、今後もよりよい講習会を開催 できるように努めたい. 参考文献 仲間祐貴、他「タイルプログラミングを利用 した $QGURLG アプリケーション開発・実装体験」第 回工学教育研究講演 上田誠、他()「タイルプログラミングによる $QGURLGアプリケーション開発・実装体験」平成年度 愛媛大学総合技術研究会 図 講習会の進め方 ― 327 ― (09)ものつくり教育 講演番号:4-229 Arduino マイコンを用いたバーサライタ製作による ものつくり教育 Manufacturing Education through Trial Production of Versa Writer using Arduino Micro Computer ○高瀬 冬人※1 Fuyuto TAKASE 片田 喜章※1 奥野 竜平※1 Yoshiaki KATADA Ryuhei OKUNO 山本 啓三※1 Keizo YAMAMOTO 井上 雅彦※1 Masahiko INOUE キーワード:マイコン,バーサライタ,ものつくり教育,エンジニアリング・デザイン Keywords: Micro Computer, Versa Writer, Manufacturing Education, Engineering Design 1. はじめに マイコンを用いた LED 表示装置(バーサライタ)製作 を通して,3 年生向けの ものつくり教育を行う教材に ついて報告する。バーサライタは,直線上に配置した LED(発光ダイオード)を振りながら点滅させて,空間 に文字や模様を表示する装置である。まず,全受講生 共通の一次試作で,本体のハードウェアと,マイコン 上のソフトウェアの雛形を与える。グループ毎に製品 を企画し,試作品の仕様を考えさせて,二次試作に望 む。最後に発表会を行い,アイデアと試作品の完成度 を評価することで,工業製品の開発設計製作のプロセ スを体験させる。 2. 科目の位置づけと進め方 本学の電気電子工学科では,2 年生および 3 年生向 けの エンジニアリング・デザイン教育の一環として, もの作り演習を課している。2 年生向けには,風力発 電機の手作りを題材として,アイデアを出して性能を 向上させる もの作り演習を行っている 1)。 本報告の教材は,これに引き続く 3 年生向けの演習 の教材として開発した。2012 年度は,後期 15 週のう ち 9 週を当てて,本教材を試行した。 第1週 ガイダンス,一次試作ハードウェア製作 第 2~3 週 マイコンの使い方の講義 一次試作ソフトウェアのロード 第4週 製品開発の一般論を講義 2), 試作品の構想を考えさせる。 第5週 二次試作構想を確認,試作用部品配布。 第 6~8 週 二次試作のハードウェア および ソフトウェア製作 第9週 発表会 ※1 3. バーサライタ バーサライタは,目の残像を利用して文字や図形を 表示する表示装置である。直線上に並べた LED をパ ターンに従って高速で点滅させる。LED 配置と直角方 向に発光部を動かすと,発光した軌跡が,文字や図形 として見える。例として,8 個の LED を縦に並べ,横 に振り,振動幅を 20 コマに分割する場合を図 1 に示 す。黒色のとき各 LED を点灯させると,文字のドッ トが浮かび上がる。 1 5 10 15 20 LED1 ○○○○◆○○○○◇○○○○◆○○○○○ LED2 ●●●●◆●●●●◇●●●●◆●●●●○ LED3 ○○●○◇○●○○◇●○●●◆●●○●○ LED4 ○○○●◇●○○○◇○○○○◇●○○○○ LED5 ○○○○◆○○○○◇●●●●◆●●●●○ LED6 ○○○●◇●○○○◇○○○○◆○○○○○ LED7 ○○●○◇○●○○◇○○○○◆○○○○○ LED8 ○●○○◇○○●○◇○○○●◆○○○○○ 図 1. 文字のドットパターン 4. Arduino マイコン 3) Arduino マイコンは,イタリア製のマイコンボード であり,1 枚約 3000 円でボードの完成品が購入できる。 USB ケーブルでパソコンに接続することで,ソフトウ ェア開発ができる。CPU は 8bit の AVR マイコン ATmega328 で,14 本のディジタル入出力,6 本のア ナログ入力をもつ。電源は,パソコン接続中は USB ポートから,単体動作なら電源コネクタから供給する。 ソフトウェアの統合開発環境が製造元から無償配布 されており,C 言語で書いたプログラムをコンパイル して,マイコンボードへ書き込むことができる。 摂南大学 理工学部 電気電子工学科 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 ― 328 ― 9. 発表会 発表会では,1 グループ約 3 分で,二次試作の構想 を発表させ,試作品をデモさせた。一次試作品の文字 を置き換えた程度の簡単なものもあったが,回転式の バーサライタに携帯電話から Bluetooth インターフェ ース経由で文字を送るといった高度なものもあった。 図 2. Arduino マイコンボード 5. 一次試作の ハードウェア 一次試作ハードウェア は,LED8 個と電流制限抵 抗,傾斜センサを基板上に 配置し,フラットケーブル とピンヘッダを介して,マ イコンの入出力ポートに 接続するものである。全受 講生が共通に製作する。 6. 一次試作ソフトウェア 一次試作のソフトウェ アは,文字パターンを内 蔵したプログラムにな 図 3. 一次試作バーサライタ っており,傾斜センサ で検出した振動に合わせて,LEDに文字パターンを転 送する。マイコン開発環境の習熟を兼ねて,プログラ ム完成品を与えて,コンパイル・書き込みさせる。ソ フトウェアの内容を理解させるため,機能毎(LED発光 制御,傾斜センサ入力,文字パターンの出力制御)の小 プログラムを配布し,一次試作品を動作させながら講 義を進めた。 7. 製品企画と二次試作の計画 一般的な工業製品の開発プロセスを,製品企画,設 計,製造,営業販売に分けて説明する 2)。続いて,最 終製品のイメージ,作りたい二次試作品のイメージを 考えさせ,二次試作品の構想を練らせる。 10. 結果と反省点 本年度の試行の結果と反省点をまとめる。 ・受講生はもの作りに興味を示し,いろいろなアイデ アを出して,チャレンジした。ただし,実力(設計構想, 工作技量)が伴わない場合もあった。 ・バーサライタの定義と科目のルールが曖昧だったた め,静止した二次元配置の LED 表示装置など,バー サライタと言えないものを作ったグループもあった。 ・基板の使い方,ハンダ付けの仕方など,電子回路の 工作技量が不足しており,さらに二次試作品を十分に 動作検証していないため,発表会デモ中にリード線が 外れる等の動作不良が続出した。 ・設計図面を描かず,いきなり製作する。→ 二次試作 の構想,設計を発表させ,ゼミ形式で議論させる。 ・ソフトウェア作成の時,いきなり全体を作ってしま い,デバッグ不能に陥った。→ 各部を動作確認しなが ら,全体としてまとめ上げるノウハウを講義する。 ・一次試作の内容を理解せずに,二次試作に走ってい る。→ 一次試作をステップに分け,ソフトウェア各部 の解説やハンダ付けの練習などを交えて,ステップア ップしながら進めるよう指導する。 ・講義内容に,トラブルシューティングの一般技法, ステップアップ,品質管理の考え方などを交える。 11. おわりに マイコンを用いた LED 表示装置(バーサライタ)製 作を通して,ものつくり教育を行う教材を開発した。 ハードウェアとソフトウェアの雛形を与える一次試作 から始め,グループ毎に製品を企画し,試作品の仕様 を考えて二次試作に望むことで,工業製品の設計製作 プロセスを学ばせる意図である。受講生の多くは高い 関心を示し,いろいろなアイデアを出した。 参考文献 1) 山本,奥野,堀内,田口,小川:「電気系学科2年次生の ためのグループワークによる ものつくり入門教育- 摂南大 8. 二次試作 二次試作は,受講生グループ毎に異なる。ハードウ ェア用部品として大型の基板と LED を用意した他, 1000 円の予算内で追加部品の購入も可とした。 学電気電子工学科の実験科目『小型風力発電機の製作』」, 日工教 第60回 工学教育研究講演会 3-103,2012 2) 長縄一智:「商品開発の流れと設計のポイント」日本工 業出版,2009 3) nekosan:「Arduino ではじめる電子工作」工学社,2012 ― 329 ― (07)高大院連携 講演番号:4-230 ものづくりコンテストを活用した高校生向け 3%/ 体験講座 ([SHULPHQWDO&RXUVHRI3%/IRU+LJK6FKRRO6WXGHQWXVLQJ(QJLQHHULQJ&RQWHVW ○赤坂剛史※1 織田光秋※2 松本重男※2磯崎俊明※2 山岸進※3 7DNHVKL$.$6$.$0LWVXDNL2'$ 6KLJHR0$76802727RVKLDNL,62=$.,6XVXPX<$0$*,6+, キーワード:3%/高大連携ものづくり教育工学教育コミュニケーション .H\ZRUGV3%/+LJK6FKRRO&ROOHJH&ROODERUDWLRQ+DQVRQ(GXFDWLRQ(QJLQHHULQJ(GXFDWLRQ&RPPXQLFDWLRQ 1.はじめに 最近は,工業高等専門学校や大学など多くの教育機関 においてものづくりに関連した教育が種々行われている. 金沢工業大学では,隣県の高校 年生を対象にものづく りの体験実習を通してその喜びを知ってもらう教育を行 っている.本稿では実習内容と教育効果について述べる. 2.体験実習 概要 月末の夏休み 日間を利用して,富山県立大門高等学 校 年生 名を招き, 「プロジェクト活動体験講座」を 実施した. 「エコ」と「安全」の両面を考えた車体の設計 をテーマとして, 日目はものづくりを個人体験, 日目 はチーム体験で,体験をもとにグループで討議してより よい車体を設計・製作し,その性能を競うチーム活動が 体験講座の内容である表 . に車体内部に搭載した卵が割れるか否かで安全性を評価 する衝突安全試験をおこなった.バンパがないと卵は完 全につぶれるが,適切に構造設計されたバンパを取り付 けると衝撃力を吸収して卵が割れないことを全員が体験 した.その後,衝撃吸収効果の大きいバンパの設計指針 について教員が説明をおこなった. 2 日目はものづくりの体験である.1 チーム 5 人で計 8 チームに分かれ,前日の個人体験や教員の説明を基に議 論を重ねながら新たに車体とバンパを1つ作った.午後 はチーム別コンテストをおこなった. 車体の外観が格好良いものに全員が投票図 した後, エコ度と安全度のコンテスト(下り斜面試験)をおこな った. 授業の進め方 表 体験講座の内容 ガイダンス 個人で車体の製作 日目 車体の空力性能試験 日目はものづくりの個人体験である.まず「エコ空 気抵抗の小さな車体」設計をおこなった.~ 人乗り までの模型台車の中から各自が つを選び,それぞれが エコを考えた車体形状を型紙に描いた後,熱線カッタを 用いて発泡スチロール材を切り出し,車体を模型台車に 組み上げた図 .完成後,向かい風を受ける下り斜面で 車がどの程度進むかを計測してエコ度を評価する空力性 能測定をおこなった.その後,空力抵抗を減らす設計法 について教員が説明をおこなった. 次に「安全衝突時の衝撃力緩和」設計をおこなった. 車が衝突する時の衝撃を緩和するために,試行錯誤を繰 り返しながらさまざまな内部構造を検討し、紙でバンパ を製作した後,それを車体の前部に取り付け模型台車を 組み上げた。そして車が斜面を下りて壁に激突するとき 個人で規格バンパ製作 衝突安全試験 チームで車体とバンパ製作 日目 チーム別コンテスト外観,エコ度,安全度 発表コンテスト ※1 金沢工業大学工学部航空システム工学科 ※2 金沢工業大学基礎教育部基礎実技教育課程 ※3 金沢工業大学プロジェクト教育センター 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 図 車体づくりの様子 ― 330 ― 無回答 㻝㻜㻑 㻝㻞㻑 完全に分担 㻜㻑 決めなかった 㻠㻝㻑 㻟㻣㻑 曖昧 分担を決めたが, その都度助けあった 図 車体外観のコンテスト風景 成果の発表 図 チーム活動での役割分担アンケート結果 コンテストの終了後,各グループが全員の前で車体や バンパの設計思想や特徴などについてパワーポイントを 用いて発表した.新幹線や航空機のような流線型に着目 して車体形状を考えたり、実験を繰り返してバンパ構造 を考えたり,それぞれが独創的な方法で行っていた.ま たメンバ全員の試験結果を統計的に考えて車体の種類や 形状を選択したチームもあれば, 日目で衝撃が最もうま く吸収されなかった 人乗り車体で「安全」設計にチャ レンジしたチームもあり,これらの前向きな取り組み姿 勢に大変満足な結果であった. 3.アンケート結果 授業終了後に行ったアンケート調査では,以下のよう な結果が得られた. 車体設計のポイントについて エコ(空気抵抗の小さい車体形状)設計について,約 割の生徒が「内容を把握できた」または「少し解った」 と答えた.また安全(衝突時の衝撃力緩和)設計につい て,約 割が内容を把握できたと答えた. 内容は大学生向けレベルであるが,短時間にもかかわ らず目標をはっきりさせた実体験と講義を交えた本教育 の効果は大きかったと考えられる. チーム活動について チームで物事を決めるときに自分の考えや意見を主張 するか尋ねると, 「発言する」と回答したのは約 割で, 大部分は「雰囲気に合わせて」あるいは「求められたら 発言する」と回答している.チーム活動をするのに役割 分担を決めたところが半数あり,お互いに助け合う協調 性が見られる図 .アイデア出しや製作に対する自分の 貢献度について問うと,約 割の生徒が少しは貢献でき たと考えており,チーム活動の重要性を学んでいると考 えられる. チーム活動での良かった点として, 「役割分担して各自 が仕事をできた」 , 「互いに教えあった」の他に, 「考えの 違いを知ることができた」 , 「友達の意外な一面を知れた」 , 「自分の強みと弱みが分かった」とあり,チーム活動に おいて考える喜びと感動を得たものと考えられる. ものづくり体験について 大部分の生徒がものづくりを初めて経験し, 「夢中にな った」 , 「その大変さを味わった」 , 「想像力や思考力も合 わせて学べた」 , 「達成感が得られて非常に楽しかった」 , 「普段の授業では得られない経験ができた」との感想が 寄せられ,本講座の意義が得られた. なお,本講座の 2 日間のスケジュールについては約 3 割の生徒が少しきつかったと回答した. 2 日目のチーム別 コンテストの前に試作試験をする時間が十分取れず一発 勝負となったことが考えられ,本講座に集中して取り組 んでいた状況をふまえ,時間配分について再考の余地が ある. 4.おわりに 日間のものづくり体験講座を通して,生徒は「考える 喜びとその感動」を体得し,また「チーム活動の大切さ と難しさ」を学んだ. 今後は、参加した生徒たちが工学の道にさらに進みた くなるような体験講座を作っていきたい. 参考文献 年度大門高校・体験実習資料集,金沢工業大学 プロジェクト教育センター, 年 月. ― 331 ― (07)高大院連携 講演番号:4-231 エレキギターとアナログ・エフェクターを用いた高大連 携授業における音響教育 Education in Acoustics for High School-University Cooperation Class with Electric Guitar and Analog Effects Pedal ○松﨑 博季※1 真田 博文※1 Hiroki MATSUZAKI Hirofumi SANADA キーワード:ギター・エフェクター,ディストーション,アナログ電子回路,音響教育 Keywords: Effects pedal, Distortion, Analog Electronic Circuits, Education in Acoustics 1. はじめに 現在のポップミュージックで使用されるエレキギタ ー音には音を歪ませる「ディストーション」と呼ばれ るエフェクトが,必ずと言ってよいほど使用されてい る.そこで,このような音楽に馴染みのあると思われ る高校生に音響,信号処理そして電子回路に興味を持 ってもらうことを目的として,エレキギターおよびデ ィストーション・サウンドを作り出すアナログ回路(エ フェクター) を用いた授業を行なった.本稿ではこの 授業の概要と,授業を行なった結果について報告する. 2. 授業の背景 本学では札幌あすかぜ高等学校との体験型連携授業 (高大連携教育)を毎年行なっており,本授業はその 中の一環として実施された.本授業のタイトルは,少 人数で回路作成も行う事を想定した「エレキギター用 エフェクター「ディストーション」をつくろう」であ る.しかし授業時間が 90 分と短いこと,高校側から 1 講義で 20 人を対象に行なって欲しいとの要請があっ たこと,機材数の問題などから,回路作成を実施せず, 回路の一部を変更することにして対応した. 3. ディストーション・エフェクターを用いた授業 講義の受講者は 1 年生の男子生徒 22 人,女子生徒 38 人の計 60 人である.受講者を 20 人ずつに分けて同 内容の授業を 3 回実施した.実験に使用した実験セッ トを図 1 に示す.図 1 には示されていないが,入力 側にはエレキギターが接続されている.機材数の都合 上,この実験セットを 4 人一組で使用してもらった. 3.1 授業内容 授業内容は以下の通りである. ※1 図 1 実験セット 1. 音の歪の説明 エレキギターの生の音と歪ませた音を聞かせな がら,歪みの原理を説明する. 2. 歪によって生じる倍音構造の説明 信号の対称クリップと非対称クリップでは,生 じる倍音が異なることを説明する. 3. ダイオードクリップの説明 ダイオードの仕組みの簡単な説明と,ダイオー ドを使用したクリップの仕組みを説明する. 4. エフェクター回路の説明 エフェクター回路の回路図と信号の変化の様子 を示しながら各部の役割を説明する. 5. 実験方法の説明と実験実践 実験実践以外の説明にはスライドを使用した. 3.2. ディストーション・エフェクター 実験に使用するディストーション・エフェクターと して,図 2 に示す基本的な回路構成となっている文献 1)掲載の「Distortion Wolf」を用いた.ダイオードク リップ回路のダイオードを差し替え可能にして,実験 中にダイオードを変更できるようにした. 北海道工業大学創生工学部情報フロンティア工学科 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 ― 332 ― 音量調節 フィルタ回路 クリップ回路 増幅回路 エミッタフォロワ 入力 出力 5. 音を扱う講義があれば参加してみたいと思い ますか. 図 2 ディストーション・エフェクターの回路構成 3.3 実験 エレキギターを弾きながらエフェクターを調節し,ダ イオードクリップ回路のダイオードを変更したときの 出力音を確認する実験を行なった.ダイオードには, 順方向電圧(VF )が約0.6~0.7 Vのスイッチングダイオ ード1N914,VF が約0.2~0.3 Vと低いゲルマニウムダイ オード1N60とショットキーバリアダイオードBAT43,そ してVF が約2.1 VのLED(赤,緑,黄)を使用した. エレキギターをまともに演奏できる学生が一人もい なかったにも関わらず,ほとんどの学生が楽しそうに 実験を行なっていた.その主な要因は,エレキギター には強い関心があり,エレキギターを自由に扱えるこ とができたためと思われる. ダイオードクリップ回路にLED を用いたときに,自 身の演奏に合わせてLED が点滅することに多くの生徒 が感嘆していた. 3.4 実験後のアンケート 実験終了後に各生徒に行なったアンケートの結果を 以下に示す. 1. この授業を選んだ理由は次のうちどれですか. (複数選択可) 6. エフェクターを実際に作成する(回路作成(は んだ付け)とケース加工も含む)講義があり, 作成したエフェクターを持ち帰れるとしたら 参加してみたいですか. 7. この授業に満足しましたか. アンケート結果から,エフェクターに関心があ ったからではなく,ギターや音楽に関心があって この授業に参加したことが伺える.授業がわかり やすいと答えた生徒が1/4しかいなかったのは,ス ペクトルや電子回路の話など高校生には少し難し い内容があったことが原因と思われる.そのため か,信号処理や電子回路に興味を持った生徒は少 ない結果となった.一方,「音を扱う講義」に「是 非参加したい」という生徒は4割を越えており,こ の授業を通して音に対する興味を深めてもらえた のと思われる. 4. おわりに 2. 授業の内容はわかりやすいものでしたか. 3. 信号処理に興味を持ちましたか. エフェクター「ディストーション」とエレキギター を用いて音に関する授業を行なった結果について報告 した. 謝辞 本テーマを選択し,授業に参加して頂いたあす かぜ高等学校生徒の皆様ならびに関係者の皆様に感謝 いたします. 注および参考文献 4. 電子回路に興味を持ちましたか. 1) 本多, “誰でも作れるギター・エフェクター2,” リ ットーミュージック,2005. ― 333 ― (07)高大院連携 講演番号:4-232 学部学生教育補助者の積極的活用による高大連携教育・ 物理実験の試み $WWHPSW RI $GRSWLQJ 8QGHUJUDGXDWHV DV 7HDFKLQJ $VVLVWDQWV LQ 3K\VLFV /DERUDWRU\ IRU DQ (GXFDWLRQDO&RRSHUDWLRQ3URJUDPEHWZHHQ+LJK6FKRRODQG8QLYHUVLW\ ○内田尚志※1小川直久※ 7DNDVKL8&+,'$1DRKLVD2*$:$ 峰友典子※ 木村信行※増田貴宏※2 1RULNR0,1(72021REX\XNL.,085$ 7DNDKLUR0$68'$ キーワード:教育補助者,高大連携教育,物理実験 .H\ZRUGV 7HDFKLQJ$VVLVWDQWV(GXFDWLRQDO&RRSHUDWLRQEHWZHHQ+LJK6FKRRODQG8QLYHUVLW\ 3K\VLFV/DERUDWRU\ 測定機器を用いて物理量を測定し,必要に応じて表や はじめに 北海道工業大学では近隣の高等学校 校と提携を結 び連携教育を行っている.これらの連携教育は入試と は切り離した形で,純粋に高校生の知的好奇心を高め ることを目的にして行われている.この中で,札幌あ すかぜ高校とは 年生全員と 年生の理科選択者を対 象にして,実験・体験型の連携教育を行っている.本 稿では,札幌あすかぜ高校 年生の物理選択者を対象 にして行ってきた「物理の基礎実験」の実施内容につ いて紹介し,特に,学部学生の教育補助者(7$)の活 用の試みとその教育的意義について考察する. 高大連携教育・物理実験の概要 札幌あすかぜ高校は普通高校であり物理の科目では 通常は座学を中心とした授業が行われるため,生徒が 実験を体験する機会はほとんどない.この現状を踏ま え,札幌あすかぜ高校 年生の物理選択者に対する連 携教育では,高校物理で学ぶ物理法則と実際の自然現 象や自然現象を応用した技術とのつながりを高校生に 実感してもらうことを目的として,物理実験の講座「物 理の基礎実験」を実施している.この目的を念頭に置 き,実験テーマと実施内容は次の方針で構成した. ・「高校物理Ⅰ」の題材と関連のある実施テーマを選 定し,直観的に把握しやすい現象を含むように実験内 容を構成することにより,実験を通して高校生が自然 現象に関する物理的感覚を身につけることを目指す. ・様々な実験測定装置に触れる機会を作ることにより, 高校生が実験に親しみを持てるようにする. ・単に現象を観察するにとどまらず,受講生徒各自が ※ 北海道工業大学高等教育支援センター ※ 北海道工業大学創生工学部 ※ 北海道工業大学医療工学部 公益社団法人日本工学教育協会 平成 25 年度 工学教育研究講演会講演論文集 グラフを作成しながら数値処理を行い,目的とする物 理量を求める.最終的には,求めた物理量を理論値ま たは文献値と比較し,その数値の妥当性について吟味 するところまで行う.これら一連の作業を通じて,教 科書に出てくる理論式が現実の物理現象を正しく記述 していることを高校生が実感できるようになることを 目指す. 物理実験のテーマと実施内容 「物理の基礎実験」の講座用として用意している実 験テーマとその内容は次の通りである.括弧内の数字 は最大受講可能人数である. >@振り子の周期の測定実験(名) 糸の長さを変えながら振り子の周期を測定し,周期 が糸の長さの平方根に比例することを確認する.ま た,周期の理論式を用いて重力加速度を求める. >@センサの基礎実験(名) 直流回路のオームの法則について復習した後,オー ムの法則に従わない物質として,電球,半導体等が あることを学ぶ.オームの法則に従わない物質の例 として半導体を取り上げ,サーミスタの抵抗が温度 によって,硫化カドミウムの抵抗が照射された光の 強度によって変化することを確認する.その後,こ れらの素子を電子回路に組み込み,回路の抵抗変化 に反応して音楽が鳴るように構成された簡易セン サの動作を体験する. >@弦の振動に関する実験(名) 両端が固定端である弦に定常波を発生させ,その基 本的性質を調べる.エナメル線の弦に交流を流し, 定常波の腹の位置に磁石を置き弦に垂直に磁場を かけることにより,電磁力により弦を強制振動させ る.交流の周波数が磁石の位置を腹とする定常波の ― 334 ― 固有振動数と一致したときに共振の原理により定 常波が観測される.弦につなぐおもりの種類と数お よび弦の種類を変えて実験を行うことにより,弦を 伝わる波の速さが弦の張力の平方根に比例し,弦の 線密度の平方根に反比例することを確認する. >@金属の比熱の測定実験(名) 真空装置を用いて銅製試料の比熱を測定する.真空 装置を用いるのは加熱された試料から対流により 熱が散逸することを防ぐためである.この装置を用 いても,主として熱放射により,試料から周囲にか なりの熱が逃げることになる.最初に周囲に逃げる 熱を考慮しないで比熱を求め,次に周囲に逃げる熱 を考慮して比熱を求め,銅の比熱の文献値との比較 検討を行う.この実験では,真空ポンプ,真空度を 判定するための誘導コイルとガイスラー管,試料の 温度を測定するための熱電対等、数多くの実験装置 を体験することになる. >@複スリット板を用いた光の干渉実験太陽光とフラ ウンホーファー線の観察実験(名) 複スリット板に単色レーザー光を照射し,スクリー ン上に形成された干渉縞を観察し,その間隔を測定 する.干渉縞の間隔とスリット間の幅から,レーザ ー光の波長を求め,その値を真値と比較する.太陽 光の観察実験では,プリズム分光器を用いて太陽光 スペクトルとフラウンホーファー線を観察し,観察 したフラウンホーファー線の波長から原因となる 原子・分子の種類を特定する. >@凸レンズの焦点距離を求める実験太陽光とフラウ ンホーファー線の観察実験(名) 光源,幅Sの十字穴の空いた板3,凸レンズ/, スクリーン6からなる光学系において3/間の距離 Dを変えつつスクリーン上に倒立像が現れる配置を 見出し,ピントの合う配置における/6間の距離Eと 像の大きさTを測定する.測定結果から,各配置に おける倍率,およびレンズの焦点距離を求める. 物理実験の実施方法と学部学生7$の活用 平成年度の受講生徒数は名であり,全体を班に 分け,受講生徒は班毎に上記のテーマの中のテーマ を巡回的に受講した.講座担当教員は毎年~名であ るが,平成年度は日程が学内外の複数の行事・学会 と重なった関係で,名の教員で講座を担当した.各講 座の授業時間は分であり,授業時間内に教員による 実験概要説明,テーマ毎に指定された実験作業の遂行, 実験データの処理と実験結果についての考察,簡易レ ポートの作成をすべて完了しなければならない.つの テーマの実験を並列的に実施すること,分の授業時 間内に行う作業量が多いこと,受講生徒のほとんどは 実験装置の扱いと実験データの数値処理に不慣れであ ることから,各班毎に懇切丁寧な指導を行う必要があ る.また,授業では物理実験室(実験テーマ>@~>@) と光学実験室(実験テーマ>@>@)のつの実験室に 分かれて実験を行う.このため,~名の教員では指 導体制が不十分であり,毎年名程度の学生の教育補助 者(7$)を活用している.平成年度は,講座担当教 員数が名であったため,7$として名の学部学生を活 用し,各テーマにつき名ないし名の7$を配置した. 「物理の基礎実験」を担当する7$は,毎年,講座実 施日の前日に予行演習を行っている.予行演習では, 講座担当教員の指導の下,7$の学生は担当するテーマ の実験をすべて実際に行い必要なデータをとり,デー タの数値処理,実験結果の考察と簡易レポートの作成 までの一連の作業をすべて実施する.講座担当教員は 実験装置の取り扱いや数値データの処理で高校生がつ まずきそうな箇所について具体的に助言をし,必要に 応じて7$の学生は指導用メモを作成し,実験日当日の 助言指導に備える. 結果および考察 平成 年度は,教員 名の体制で テーマの実験を 並行して実施しなければならなかったが, 学部学生 7$ 名による実験補助が有効に機能し,受講した高校生は 全員授業時間内に所定の実験課題と簡易レポートを完 成させることができた.アンケート結果によると,受 講した高校生は,「物理の基礎実験」の内容をやや難 しいと感じているものの,普段接することのできない 実験装置に触れたり,教科書に掲載されている様々な 現象を実際に観察することができて有意義であったと の感想が寄せられた.また,学部学生 7$ については, 実験課題遂行時の助言が有益であった,休憩時間に大 学のことについていろいろなことを聞くことができて よかった等,好意的な反応が寄せられた.7$ を担当し た学部学生からも,自分自身にとって大変有意義な経 験であり勉強になった,7$ の機会があればまた経験し てみたい等,好意的な感想が寄せられた. おわりに 少人数の教員で高大連携教育を担当するための方策 として学部学生 7$ を積極的に活用した結果学部学生 7$ と高校生の間の有意義なコミュニケーションおよび 学部学生 7$ 自身にとっての実践的な学びの機会の創 出という副産物が得られた.今後共,この試みを継続 して行きたいと考えている. 参考文献 平成年度工学教育研究講演論文集 S ― 335 ―