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椎 野 信`.雄

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椎 野 信`.雄
エ ス ノ メ ソ..ド
ロジ.一の .科学研 究..
.椎
On
野
信'.雄
Ethnomethodological
Studies
Nobuo
of
Science
SHIINO
Abstract
Various
in the
research
programs
in the "new" sociology
of 1970s .. British
Collins and so forth were challenging
The
latter
half
aim of the
explain
the
scientific
new sociology
"contents"
practices
social studies
that
being
ethnomethodological
language,
science
complete
of science
paper we would
ethnomethodologist
models
program
on
terminologies
the usage
and explanatory
of ordinary
language
in
appears
to advocate
a
views
and science
how ethonomethodology
agenda
is, according
descriptions
is not interested
of language
as a matter
of scientific
to Lynch,
" new"
scientific
is to examine
一23一
"actual."
to the
comprehensive
how scientific
of scientific
of "social construction"
work.
what it means
by reference
does, not try to construct
Lebenswelt
In this
by regarding
something
facts
the
studies
programs.
to reconsider
explanations.of
Its objective
specific
which
of ethonomethodological
sees the
in explaining
and institutions.
"discovery"
better understanding
and
The program
from the disciplinary-
is not to explain
perspective
ethnomethodology
We will make sense
of their production.
of activities
are produced
it seems
" radical" view of scientific knowledge,
concerning
Garfinkel's
over.
obs ervations,
social context
in their
in
have often
programs,
like to leave a port to.the.sea
of argumentation
M. Lynch's studies of science as leading light.
Ethnomethodology's
Garfinkel's
programs
of
programs
of science
"new"
and
studies
" new"
studies
social science
from these conventional
have taken
by reviewing
to produce
in a trap
and philosophy-
departure
new programs
to investigate
of these
from these
to a supposedly
use some conventional
and seem caught
science
been
Ethnomethodological
ethnomethodological
differ from , these
In spite of their commitments
social
per se.
distinguished
studies
emerged
and action.
the new sociologies
formulae,
has
by the emergence
Although
without
knowledge
knowledge
surrounded
of science.
been understood
knowledge
sociologists
such as Barnes,
Bloor, Mulkay,
the Mertonian functionalist
sociology of science.
of scientific
of scientific
were
of scientific
projects.
works
The aim
but to try to gain a
1.新
しい 科 学 社 会 学 と エ ス ノ メ ソ ドロ ジ ー 研 究
「新 しい」 科 学 知 識 社 会 学(SSK:SociologyofScientificKnowledge)に
プ ロ グ ラ ム(エ
デ ィ ソ バ ラ学 派 や バ ス学 派 …)が
おけ る さまざ まな
、1970年 代 後 半 に登 場 した 。(1)バー ソ ズ、
ブ ル ア、 マ ル ケ イ 、 コ リソ ズ な ど の イ ギ リス の社 会 学 者 が、 マ ー トソ派 の機 能主 義 科 学 社 会 学 に
異 議 を 申 し立 て て い た の だ 。 そ の後 、 この 潮 流 は 欧 米 に も拡 散 して い っ た。 こ う した 新 しい 科 学
の社 会 研 究 プ ロ グ ラ ム の 登場 と い う環 境 の 中 に 「科 学 の エ ス ノ メ ソ ドロ ジー研 究 」 も あ っ た 。(2)
「新 しい」 科 学 社 会 学 の 目的 は 、 「科 学 知 識 の 内 容 」 そ の もの を探 究/説
明 す る こと で あ った 。
エ ス ノ メ ソ ドロ ジー 研 究 も こ う した新 しい 科 学 社 会 学 の 研 究 プ ロ グ ラ ム と区 別 され ず に理 解 さ れ
る こ と が多 い が 、 こ の両 者 は、 実 の と こ ろ 「言 語 」 観 、 「科 学 」 観 、 「行 為 」 観 な ど が異 な って い
る と思 われ る。(3)
新 しい科 学 知 識 社 会 学 は、 「ラ デ ィ カ ル な 」(と 称 さ れ る)「 科 学 知 識 」 観 へ の コ ミ ッ トメ ソ ト
に もか かわ らず 、 伝 統 的 な社 会 科 学 の 語 法 や 説 明 法 の い くつ か を用 い て お り、 哲 学 や 社 会 学 の探
究 に お け る 「日常 言 語 」 の 役 割 に 関 した 「わ な 」 に か か っ て い る と思 わ れ る。 も と も とガー フ ィ
ソケ ル の エ ス ノ メ ソ ドロ ジー 研 究 は 、 こ う した 科 学 知 識 社 会 学 に お いて 引 き続 き継 承 され て い る
よ うな 伝 統 的 な 「言 語 」 観 や 「科 学 」 観 と の 断 絶 を主 張 して い る と思 わ れ る。 こ の よ うな エ ス ノ
メ ソ ドロジ ー の 科 学 研 究 と は ど うい う も の で あ るの か を、 エ ス ノ メ ソ ドロ ジー 研 究 が 「新 しい」
科 学 社 会 学 を どの よ うに 見 て い るの か を 再 検 討 す る こ と に よ って 、 理 解 して み た い と 思 う。 以 下
で は エ ス ノ メ ソ ドロ ジ ス トのM.リ
ソ チ の科 学 論(4)を リー デ ィ ソ グ ・ラ イ ト(導 燈)と
して 、 議
論 の海 へ 出 港 して ゆ きた い と思 う。
伝 統 的 な科 学 哲 学 者 の 多 くは 、新 しい 科 学 社 会 学 を 、 あ た か もそ の 研 究 全 体 が相 対 主 義 の 認 識
論 を反 映 す る もの で あ るか の よ うに 、 あ る種 の 「架 空 の 」 立 場 と して 扱 う こ と を好 む 。 他 方 で科
学 社 会 学 者 た ち は 、 紋 切 型 の 「哲 学 者 」 像 を 描 く傾 向 が あ る。 こ う した双 方 の レ トリ ック的 な 単
純 化 の結 果 と して 、 科 学 知 識 社 会 学 の 主 張 点 が両 極 端 な もの と して捉 え られ て しま うこ とに な る。
例 え ば 「新 しい」 科 学 社 会 学 は 、科 学 理 論 の 「内 容 」 が 恣 意 的 な もの 、 根 拠 の な い もの で あ り、
単 に 党 派 的 な イ デ オ ロギ ー 利 害 を 「反 映 」 す る もの に す ぎ な い と主 張 して い る よ うに外 在 的 に は
見 え て しま うの で あ る。
ま た 、 旧 来 の知 識 社 会 学 に つ い て の お な じみ の 疑 問 点 の い くつ か が 「新 しい 」 科 学 知 識 社 会 学
に も当 て は ま って い る。(5)それ ゆ え に 新 しい 科 学 社 会 学 の プ ロ グ ラ ム に つ い て の論 争 は、 見 慣 れ
た 哲 学 路 線 を た ど る こ とに な る。 例 えば 、批 判 者(6)は 合 理 主 義/実 在 論 の路 線 を 唱 え 、 擁 護 者(7)
は文 化 相 対 主 義 や 社 会=構築 主 義 の立 場 を 取 る とい っ た 具 合 で あ る。
この よ うな外 在 的 な一 般 論 の 中 で は 、 新 しい 科 学 研 究 プ ロ グ ラム は科 学 知 識 の 妥 当 性 に つ い て
懐 疑 論 を唱 え て い る と見 な され て い る。 だ が実 の と こ ろ、 この プ ロ グラ ム は 社 会 学 的 実在 論 や 科
学 主 義 へ の 強 い コ ミ ッ トメ ソ トを表 明 して い るの だ 。 こ う した 新 しい 科 学 社 会 学 者 た ち は 、 自 ら
の ア プ ロー チ と哲 学 的 な相 対 主 義 や観 念 論 を 区 別 し よ うと して い るが 、 依 然 と して 、実 在 論(合
理 主 義)/構
2.ス
築 主 義(相 対 主 義)の 二 元 論 論 争 に 巻 き込 まれ た ま ま な の で あ る。
トロ ン グ ・プ ロ グ ラ 厶 の 方 針
1970年 代 後 半 に 出 現 した 「新 しい」 科 学 知 識 社 会 学 は 、 多 様 で あ り、 次 第 に党 派 的 に もな っ て
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きた 。 そ の 中 で 、 エ デ ィ ソ バ ラ学 派 のD.ブ ル ア の 提 唱 した知 識 社 会 学 の 「ス トロ ソ グ ・プ ロ グ
ラ ム」 の指 導 原 理 の紹 介 は 、 い ま だ 解 説 の た め に は有 効 で あ る と思 わ れ る。 も っ と も、 この 指 導
原 理 が 「新 しい」 科 学 社 会 学 を実 際 に指 導 して い る原 理 か ど うか は 別 問 題 で あ る が 。
1.「 因 果 性 」。 信 念 や 知 識 状 態 を もた らす 条 件 に関 心 が あ る。 も ち ろ ん 、社 会 的 な原 因 と は別
に他 の タ イ プ の 原 因 も あ る。 これ ら が協 同 で 信 念 を も た らす の で あ る。
2.「 不 偏 性 」。 真 と偽 、 合 理 か不 合 理 、 成 功 か 失 敗 に関 して 公 平 で あ る。 これ ら の二 分 法 の 両
側 面 に説 明 が必 要 な の で あ る。
3.「 対 称 性 」。 説 明様 式 が 対 称 で あ る。 同型 の 原 因 に よ って 、 例 え ば 真 の信 念 と偽 の信 念 が 説
明 さ れ るの で あ る。
4.「 再 帰 性 」。 原 則 的 に 、 こ の説 明 パ ター ソは社 会 学 そ れ 自体 に も適 用 可 能 で な けれ ば な らな
い 。 対 称 性 の要 件 と同様 に、 これ は 一 般 的 説 明 を求 め る要 求 に 対 す る応 答 で あ る。 これ は
明 白 な原 理 要 件 で あ る、 なぜ な らば そ うで な け れ ば 社 会 学 は 、 自分 自身 の理 論 の 永 遠 の反
証 例 と な って しま うか らだ 。(8)
これ らの 方 針 ・公 準 は 、科 学 社 会 学 や 科 学 の社 会 史 の 研 究 の 多 くに 取 り入 れ られ て きた が 、 ま
た さま ざ ま な批 判 の 標 的 に もな っ た。 ブル ア の 「因果 論 」 は 、 新 しい科 学 知 識 社 会 学 の 全 て に 受
け入 れ られ た わ け で は な い が 、 「不 偏 性 」 や 「対 称 性 」 の 原 理 は 、 構 築 主 義 の科 学 研 究 の大 多 数
に お い て 支 持 さ れ て い る よ うだ 。 「再 帰 性 」 の 要 件 は 「超 越 論 」 に 対 す る警 告 と して は理 解 可 能
な もの で あ る が 、 科 学 社 会 学 研 究 へ の適 用 に は難 点 が あ る よ うに 思 わ れ る。 リソ チ に従 って 以 下
これ らの4つ
の方 針 を再 検 討 して み る。
「因 果 性 」
ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラ ム の 「因 果 性 」 概 念 は、 知 識 社 会 学 の伝 統 的 な説 明 ア プ ロー チ と根 本 的
に断 絶 して い る わ け で は な い。 む しろ これ は 、(デ ュル ケ ー ム や ヴ ェー バ ーや マ ソハ イ ム な ど の)
社 会 学 的 説 明 の さ ま ざ ま な古 典 的 様 式 を 、 因 果 性 の一 般 概 念 の下 に包 摂 す る もの で あ る。 この プ
ロ グ ラ ム の 独 創 性 は 、 こ う した伝 統 的 な説 明 様 式 を近 代 科 学 や 数 学 の 理 論 や 実 践 に適 用 した こ と
に あ る。 こ う した研 究 は 、 知 識 と社 会 構 造 の 関 係 に関 す る旧 来 の機 能 主 義 社 会 学 の 説 明 よ り も、
個 々 の科 学 者 や 科 学 共 同 体 に関 す る社 会 的 利 害 に対 す る注 目の 点 で は徹 底 して い る が、 マ ー トソ
派 機 能 主 義 社 会 学 の行 為 中 心 的 修 正 版 と矛 盾 す る もの で は な い ◎
この プ ロ グ ラム の 因果 的 な社 会学 的説 明 の 幅広 さ の故 に、 科 学 知 識 が社 会的 コソ テ クス トに よ っ
て 「決 定 」 され る と言 う こ とで 、 何 が含 意 され て い るの か は 明 らか で あ るわ け で は な い 。 さ らに、
どの よ うに社 会 学 者 は 、 あ る集 団 の 集 合 理 解 に党 派 的 で は な い 説 明 を 与 え る こ とが で き る の か 、
お よび ど の よ うに こ う した(集
合)理 解 が あ る歴 史過 程 の 一 因 に な って い るの か も不 明の ま まで
あ る。 そ もそ も、 知 識 とい う用 語 が 非 常 に広 義 に用 い られ て い るの で 、 ま さに何 が 知 識 社 会 学 に
よ って 説 明 され る こ とに な る の か を 特 定 す るの が 困 難 で あ る。 例 え ば 、 あ る集 団 の 認 識 的 コ ミ ッ
トメ ソ トを代 表 す る 「知 識 」 の一 群 を 識 別 す る こ とは 容 易 で は な い の で あ る。 方 法 論 問 題 は 、経
験 的 社 会 学 研 究 の ほ と ん ど全 て の 分 野 が直 面 す る問 題 で あ るが 、 この研 究 プ ロ グ ラム の 場 合 に は、
日常 の 「知 識 」 概 念 の 固有 の 含 意 よ って 問 題 は さ ら に複 雑 化 す る。 つ ま り(日 常 語 で は)何
かを
「知 る」 と言 う こと は 、 そ れ が 交 渉 不 能 な こ とで あ る、 あ るい は少 な くと も 「信 念 」 や 「意 見 」
の 問 題 よ り も交 渉 可 能 で は な い 、 と言 うこ とで あ る。 そ れ ゆ え に 、 あ る 集 団 の 「集 合知 識 」 を、
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「世 論(公
衆 の 意 見)」 や 「共 有 の 信 念 」 と 同様 に定 義 す る この 研 究 プ ロ グ ラム で は 、 そ の 集 団
の 構 成 員 が 日常 語 で主 張 した(知 識 と意 見 の)非 対 称 の妥 当 性 要 求 は、 軽 視 され る こ とに な る だ
ろ う。 結 果 と して 、 こ う した 知 識 の 因 果 的 説 明 は 、(独 自の 妥 当 性 要 求 を持 つ)研 究 対 象 者 に お
そ ら く反 論 され る か も しれ な い 。 こ う した知 識 社 会 学 的 説 明 に 関連 した専 門 的 な難 点 は 、 研 究 対
象 と な る科 学 者 の共 同体 と の 「概 念 」 の 食 い違 い に よ っ て 、 い っそ うひ ど くな る こ と もあ る。 科
学 知 識 社 会 学 の ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラ ム は 、 旧 来 の知 識 社 会 学 的 説 明 の引 き起 こす概 念 の 混 乱 や
葛 藤 や 矛盾 を免 れ て は い な い の で あ る。
「不 偏 性 」 と 「対 称 性 」
全 て の理 論 や 証 明 や 事 実 は 、 社 会 的 に説 明 され る べ き 「信 念 」 と して 扱 わ れ るべ き だ とい うの
が こ の 両 方 の方 針 で あ る か ら、 「不 偏 性 」 と 「対 称 性 」 は ま とめ て 扱 うこ とが で き る 。 この 両 方
針 に よ って 、 信 念 の正 しさ に つ いて の判 断 は下 さな い とい う こと に な るの だ 。 この 方 針 の要 点 は 、
「合 理 的 な 」 信 念 の 内 在 的 展 開 につ い て の ア プ リオ リな前 提 を 「ず らす 」 こ とに よ っ て 、社 会 学
的 説 明 を確 立 す る こ とで あ る。
「対 称 性 」 の 要 件 は 、例 え ば科 学 的 「発 見 」 と 「幻 想 」 に対 す る歴 史 的 結 果 を 同 様 に 説 明 せ よ
と社 会 学 者 に求 め て い る わ け で は ない 。 む し ろ こ の要 件 は 、 ど の よ うに発 見 が な され た の か 、 あ
るい は どの よ うに幻 想 が 暴 露 され た の か を説 明 す る た め の 根 拠 と して 、 偶 発 的 な歴 史 的 結 果 を扱
うよ うな 目的 論 的 な説 明 に反 対 して い る の だ。 「発 見 」 か 「幻 想 」 か の決 定 は、 交 渉 や 論 争 の も っ
と包 括 的 な場 か ら出 て くる 「歴 史 的 判 断 」 と して 扱 わ れ るべ き だ と言 うの で あ る。(9)
「対 称 性 」 と 「不 偏 性 」 の 公 準 に よ って 、 「目的 論 的 」 説 明 は結 果 と して 回避 され る か も しれ な
い が 、 そ れ を 特 定 の事 例 に適 用 す る と、 や っか い な 問 題 が 生 じ る こ と も あ る。 この 問 題 は 、 科 学
者 た ち が専 門 分 野 に お い て あ る特定 の 主 張 を提 案 した り、 そ の正 体 を暴 露 した りす る の に用 い る
内 生 的 な語 彙 や 理 性 や 正 当 化 を 利用 しな い で 、 どの よ うに社 会 学 者 は論 争 点 を記 述 す る こ とが で
き る の か とい う問 題 と関 係 して い る。 これ は 、 最 初 か ら知 識 社 会 学 につ き ま と うお な じみ の 問 題
で あ る。
この 問題 は 、 知 識 社 会 学 で 用 い られ る方 法 論 と、 研 究 対 象 で あ る フ ィー ル ドで生 起 す る 内 在 的
な 言 語 様 式 、 の 独 立 性(無
関 連 性)を 主 張 す る こ と の 困 難 さ に関 係 して い る。 この 困 難 に以 下 の
よ うな側 面 や帰 結 が あ る と リ ソチ は指i摘 して い る。
1.デ
ュエ ム ・ク ワイ ソ の決 定 不 全 の テ ー ゼ な ど の 認 識 論 テ ー ゼ を 個 々 の事 例 に適 用 す る と、
次 の よ うな混 乱 を 引 き起 こす 可 能性 が あ る。 つ ま り、 あ る理 論 が実 験 証 拠 に よ る 「明 白 な」 支 持
な しに容 認 され た と い う歴 史 的 事実 は 、 実 験 者 が 早 計 に結 果 を容 認 した な ど と い う主 旨の 批 判 と
混 同 され る か も しれ な い 。 有 限 の実 験 証 拠 に よ る理 論 の 決 定 不 全 の 不 可 避 性 に関 す る一 般 的 な哲
学 テ ー ゼ は 、 あ る特 定 の 説 明 の 中 で用 い られ る と、 あ る論 争 と い う もの が 、 厳 密 な テ ス トか らで
は な く、 判 決 を 下 す 共 同 体 か ら生 じ る さ ま ざ ま な 「社 会 的 」 圧 力 や 「既 得 権 」 か ら、 終 結 さ れ た
と い う こと を示 す よ うな 事 例 に お い て は 、 な に か 不 適 切 な こ と が生 じて い た と い う こ と を示 唆 す
る こ と もあ るの だ 。
2.さ
ま ざ ま な 競 合 理 論 や 実 験 を斟 酌 す る前 に 、 競 技 瘍 を 平 らに す るた め に 「対 称 性 」 と 厂不
偏 性 」 の テ ー ゼ を 用 い る こ と は 、勝 利 を 得 た プ ロ グ ラ ムや 既 成 の プ ロ グ ラ ム を犠 牲 に して 、 打 ち
負 か され た 理 論 や 周 辺 的 な 理 論 を奨 励 して い る よ うに 思 わ れ る か も しれ な い 。 あ る論 争 の 対 称 的
な扱 い に は 、既 に疑 わ しい 主 張 に さ らに 損 傷 を 与 え る こ と な く、 「既 成 」 の 主 張 の相 対 的地 位 を
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格 下 げ す る とい う レ トリ ッ ク的効 果 が あ る の だ 。
3.科
学 共 同 体 の構 成 員 が 、 自 らの 手 続 きや理 論 的 コ ミ ッ トメ ソ トと根 本 的 に 競 合 して い る主
張 に 「十 全 な 」 考 察 を 加 え な い とす る と、 彼 らは 恣 意 的 に 行 為 して い る よ うに 思 わ れ るか も しれ
な い 。 しか しそ の よ うな(不 偏 的 な)「 超 越 論 的 」基 準 に達 しな い こ とは 、 必 ず しも恣 意 性 を 示
す もの で は な い の だ 。
4.科 学 や 科 学 的 産 物 、 お よ び 科 学 に 関 連 した誤 りや 誤 用 な ど を 記 述 す るた め の 一 般 的 語 彙
(例 え ば 「発 見 」 「発 明 」 「証 拠 」 「解 釈 」 「人 工 物 」 「捏 造 」 の よ う な用 語)に
は 、 自然 科 学 ・社
会 科 学 にお い て お な じみ の 党 派 的 な非 対 称 的 な用 法 が あ る。 科 学 社 会 学 者 は あ る事例 を 記 述 した
り説 明 した りす る時 に没 価 値 的 な語 彙 を 使 用 し よ う と時 折 す るが 、 実 際 にそ うで き るか は 全 く明
らか で な い の だ 。
5.個
々 の実 験 や シ ミュ レー シ ョソや理 論 モ デ ル の 記 述 は 、 必 然 的 に 、 手 続 きや結 果 や 判 断 基
準 に つ い て の科 学 者 の叙 述 を用 い て い る。 こ う した 叙 述 を理 解 す る こ とは 非 常 に難 し く、 さ らに
こ う した 叙 述 を 歴 史 家 や 社 会 科 学 者 の物 語 の 中 に 吸 収 す る こ とは もっ と難 しい の で あ る。 テ ス ト
され た もの や 、 無 視 され た か も しれ な い もの 、妥 当 に解 決 され た もの に つ い て 、 局域 的 に 情 報 提
供 され た 判 断 お よび 党 派 的 用 語 に頼 らな い で 、 どの よ うに実 験 実 践 が科 学 の社 会 研 究 に お い て注
釈 で き るの か は 、 ま だ分 か ら な い こと で あ る。 社 会 学 者 は 、 記 述 され る技 法 に吹 き込 ま れ た 党 派
的 コ ミッ トメ ソ トに加 わ ら な い で 、専 門 的 に妥 当 な 記 述 を伝 え る と主 張 す る時 に は 、大 き な重 荷
を負 う こ と に な るの だ。
「再 帰性 」
ブ ル ア 版 の 「再 帰 性(reflexivity)」 は、 ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラ ム の 「科 学 的」 地 位 を確 立 す る
た め の 基 準 以 上 の も の と な って い る。 彼 は 、 適 切 な 制 度 的 条 件 が 確 立 され た 時 に科 学 的 合 理 性
(の 内在 的 発 展)が
出現 す る と い う(初 期 マ ー トソ派 の)見 解 は も は や持 て な か っ た の で 、 彼 の
「再 帰 性 」 の規 定 は 困 難 な 問 題 を提 起 す る こ と に な る。 ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラ ム の支 持 者 が 、 自
らの真/偽
、 合 理/不 合 理 、 成 功/失 敗 に つ い て不 偏 的(公 平)で
あ る ま ま に、 ど の よ うに 自 ら
の 貢 献 を 「再 帰 的 に 」 検 討 す る こと が で きた の か は 想 像 しが た い こ と で あ る。 そ して仮 に そ の よ
うな 「再 帰 的 」 超 越 性 に 到 達 した と して も、 そ の よ うな超 越 的 な 達 成 が 、通 常 に実 践 され て い る
も の と して の 「科 学 」 を例 示 す る もの で あ る か ど うか は 別 問題 で あ る 。(10)ブル ア は 、 原 理 問 題
を強 調 しな い こ とで 、 再 帰 性 の 難 問 を 回避 して い るだ け な の で あ ろ う。
こ う した ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラム と関連 した さま ざま な 「新 しい」 科 学 知識 社 会 学 の展 開 に よ っ
て 、 以 前 の マ ー トソ派 の科 学 社 会 学 と の敵 対 関 係 も、(そ もそ もそ れ ほ ど距 離 が あ った の で は な
い と い う認 識 もあ って)テ
ー マ や 発 想 の部 分 的 一 致 に よ って 、緩 和 され て きた 。 ま た最 近 、 こ う
した 新 しい 研 究 プ ロ グ ラ ムは 、 客 観 的 科 学 に つ い て の 政 治 学/批
判 論 と融 合 して き た。 科 学 批 判
の 中 に取 り入 れ られ た 科 学 研 究 も あ る。(11)
ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラム は エ デ ィソ バ ラ と い う場 所 を は る か に 超 え て行 った 。 そ の発 想 は さ ま
ざ ま な視 座 か らの 諸 研 究 に影 響 を与 え た の だ 。 この プ ロ グ ラ ム と最 も密 接 に提 携 した研 究 は 、 あ
る特 定 の歴 史 展 開 の 事 例 研 究 で あ る。 ま た 、 こ う した研 究 は、 科 学 の 社 会 研 究 に お け る 、「知 識
産 出 」 の現 場 や 人 工 物 、 技 法 、 実 験 器 具 の使 用 の記 述 に 向 か う傾 向 と一 致 して い た。 こ の 点 で ス
トロ ソ グ ・プ ロ グ ラ ム は他 の 科 学 研 究 プ ロ グ ラ ム と収 斂 して きた の で あ る。
27
3.経
験 的相 対主 義 プログ ラ厶
バ ス 学 派 と も呼 ばれ て い る経 験 的 相 対 主 義 プ ロ グ ラ ム(12)は、 ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラ ム と密 接
に 関 係 して い る。 この 構 築 主 義 プ ロ グ ラ ム は 、 現 代 の 科 学 論 争 に 焦 点 を 合 わ せ 、 通 約 不 可 能 性 や
理 論 負 荷 の 実 験 、 論 争 問 題 に関 して終 結 に 至 るた め の非 合 理 的 な 方 法 な ど につ い て 「対 称 的 な 」
記 述 を試 み て い る。 こ う した 研 究 の 多 くで は 、 実 験 科 学 に お け る反 復 実 験(追
試)あ
るい は 決 定
実 験 の 役 割 に つ い て の伝 統 的 な哲 学 概 念 を批 判 す るた め の 基 礎 と して 、 経 験 的 事例 が用 い られ て
い る。 反 復 実 験 の概 念 に は 問 題 が あ るの だ。 例 えば 、 観 察 手 続 きに つ い て の報 告 書 は 、 そ の観 察
を再 生 す るた め の 自己 完 結 的 な イ ソス トラ ク シ ョソ と して は ほ と ん ど使 え な い。 手 続 き の叙 述 は 、
科 学 的 報 告 文 体 の 固有 の 規 範 に 敬 意 を払 うた め に(外 部 者 に 向 け て)書
か れ て い るの で あ り、 科
学 者 の 実 際 の 行 為 を記 述 す るた め にで は な い。 科 学 者 が あ る実 験 を 反 復 した か ど うか の判 断 は 、
実 験 結 果 の(科 学 的)妥
当 性 に つ い て の 判 断 とは 遊 離 して い る の で あ る。(あ るい は何 が反 復 と
見 な され る の か と い う問題 は 、検 出 され る現 象 に つ い て の複 合 的 な 先 入 主 に依 存 して い るの だ。)
こ う した研 究 は 、 あ る実 験 の記 述 を再 構 成 して 、 論 争 の賛 成 反 対 の 両 側 か らの引 用 で も って こ
の 記 述 を立 証 す る もの で あ る。 そ して この 研 究 の 目的 は 、(1)何 時 あ る実 験 が あ る所 与 の理 論 に
と っ て 有 利 に な るの か あ るい は 不 利 に な る の か を 、 実 験 デ ー タ は独 自に 決 定 して は い な い こ と、
お よ び(2)論 争 の あ る現 象 を探 究 して い る研 究 者 た ち の 「コ ア(核 心)グ
ル ー プ」 間 の 交 渉 が 、
い つ 問題 が 「終 結 され た」 と見 な され る の か を決 定 す る とい うこ と 、 を 例 証 す る こ とで あ る と リ
ソ チ は 考 察 して い る。 この ア プ ロ ー チ は 、 「コ ア グ ル ー プ」 の 研 究 者 た ち の 出版 済 み や 未 出 版 の
証 言/公 言 を 用 い て 、 理 論 的 コ ミ ッ トメ ソ トや 実 験 実 践 の 相 関 配 置 を 立 証 す る と い う意 味 で 、
「経 験 的」 な の で あ る。
こ う した 研 究 は 、 論 争 の 「終 結 」 が 単 一 の 「決 定 実 験 」 に よ る も の で は な か った こ と を説 得 的
に 主 張 して お り、 コア グル ー プ の科 学 者 た ち が 長 期 間 の 、 相 対 的 に制 限 の な い 議 論 を通 じて解 決
した こ と に つ い て 、 ポ ッパ ー 派 の 反 証 主 義 は理 想 化 した 説 明 しか 与 え な:いとい うこ と を 立 証 して
い る。 しか しこ う した 研 究 が 、 科 学 の 内 容 が社 会 的 に 決 定 され た こ と を例 証 して い る の か ど うか
は 、 明 らか で あ るわ け で は な い。 例 え ば マ ソハ イ ム の 知 識 社 会 学 の 説 明 基 準 は 、 『あ る観 念 の 出
現 の 時 間 的 ・社 会 的 条 件 が そ の 内 容 や 形 式 に影 響 が な い な らば 、 そ の 観 念 の歴 史 的 ・社 会 的 起 源
(発生)は そ れ の 究 極 的 妥 当性 に と って 無 関 連 な もの に す ぎ な い だ ろ う』 とい うもの だ っ た の だ 。
バ ス 学 派 の研 究 で は 、何 が 「究 極 的 妥 当 性 」 に 関 連 しあ るい は しな い の か に 関 す る あ らゆ る判
断 が 問 題 に され て い た。 そ して 論 争 で は実 験 結 果 の 妥 当 性 は 究 極 的 な(決 定)実 験 を 受 け な か っ
た と い う こ とが 立 証 さ れ た の で あ る。 つ ま り、「観 念 の 究 極 的 妥 当 性 」 の 問 題 は 実 際 に は単 に検
討 さ れ て い な い の で あ り、 した が って 観 念 の 社 会 的 決 定 を確 定 す る上 記 の マ ソハ イ ムの 基 準 が 、
意 味 の あ る もの に は な りえ て い な い の で あ る。
4.ラ
ボ ラ ト リー 研 究
1970年 代 の 後 半 に、 何 人 か の 社 会 学 者 や 人 類 学 者 が 、 ラ ボ ラ ト リー の 民 族 誌 研 究 に 着 手 し
た 。(13)こう した 研 究 は 、 特 定 の ラ ボ ラ ト リー に お け る 日々 の ル ー チ ソ に つ い て の 継 続 的 な 観 察
に基 づ い て い た。 探 究 範 囲 に は 、特 定 の ラボ ラ トリー に お け る 日々 の シ ョ ップ トー ク(仕 事 の 話)
や 実 践 、 お よ び さ ま ざ ま な研 究 グル ー プ 間 の文 書 形 式 な ど の コ ミ ュニ ケー シ ョソ が含 ま れ て い た 。
28
これ らの 研 究 は 、 社 会 構 築 主 義 的 な科 学 活 動 観 を支 持 す る もの で あ っ た。 研 究 の 主 張 点 は 、 科 学
的 ワー クの 実 際 の 現 場(科
学 ラ ボ な ど)の 直 接 観 察 に よ って 、 科 学 の 専 門的 「内 容 」 の社 会 的 決
定 が 立 証 され る、 と い う もの で あ る。
事 例 研 究 の ア プ ロー チ と して ラ ボ ラ ト リー 民 族 誌 研 究 は 、 因 果 説 明 を 進 め る もの で は な く、
「事 実 の構 築 」 へ の 、 行 為 中心 の 記 述 主 義 的 ア プ ロー チ を表 明 して い た。 そ の 記 述 の 力 点 は 、 教
科 書 や 調 査 報 告 書 の 中 の合 理 的 に再 構 成 され た 実 験 法 と 、「乱 雑 な ⊥ 実 践 的 ・相 互 行 為 的 情 況 に
お け る実 際 の 実 践 の 遂 行 とい うもの 、 の問 の 相 違/対
照 で あ っ た。 こ う した 民 族 誌 研 究 は 、知 識
社 会 学 の ア ジ ェ ソ ダを 提 唱 して い る。 そ の第 一 項 は 、 『知 る過 程 が 、 実 際 に は 内 在 的 法 則 に従 っ
て 歴 史 的 に 展 開 す るの で は な い こ と、 そ の過 程 は 「物 事 の 本 質 」 や 「純 粋 論 理 の可 能 性 」 か らの
み 帰 結 す るわ け で は な い こ と』 を 例 証 せ よ と い うマ ソ ハ イ ム 派 の 勧 告 で あ る。 科 学 的 ワ ー ク を
「構 築 」 や 「製 造 」 と して、 そ して 科 学 的 実 在 を 「人 工 物 」 と して 記 述 す るた め に こ う した 研 究
で 用 い られ て い る語 彙 そ の もの が 、 本 来 的 な 「物 事 の 本 質 」 と、 ラ ボ ラ ト リー ・ワ ー クの 物 的 資
料 や 産 物 と い う もの の 間 の不 一 致 を 示 唆 して い る の で あ る。 ク ノー ル ・セ テ ィ ナ は以 下 の よ うに
述 べ て い る。
『構 築 主 義 の 解 釈 は 、 事 実 性 の 問 題 を、 科 学 の 産 物 と外 的 自然 の 関 係 と い う こ と に 位 置 づ け る
もの で は な く、 科 学 の産 物 を まず は(省 察 的 な)製 造 の 過 程 の結 果 と して考 察 す る もの で あ る。
した が っ て科 学 知 識 の研 究 は、 ど の よ うに事 実 が 自然 に つ いて の科 学 的 言 明 の 中 に 保 存 され るの
か の 研 究 で は な く、 どの よ うに科 学 的 対 象 が ラ ボ ラ ト リー に お い て産 出 され る の か の 探 究 に 関 与
す る もの だ と主 に 見 な され るの で あ る。』(1983.pp.118、9)
ラ トゥー ル と ウー ル ガ ー も こ う述 べ て い る。 『科 学 者 は イ ソス ク リプ シ ョ ソ(文 書)が
「そ こ
に」 独 立 して存 在 す る実 体 とい う もの の 表 象 あ る い は標 識 で あ る か も しれ な い とい う信 念 を抱 い
て い るが 、 私 た ちは そ の よ うな実 体 が こ う した イ ソ ス ク リプ シ ョ ソの使 用 に よ っ て の み 構 築 され
る の だ と論 じて き た 。』(1979.pp245.)ま
た こ うい う主 張 も して い る。 『い っ た ん 最 終 産 物 で あ る
イ ソス ク リプ シ ョソが 入 手 可 能 に な る と 、 そ の産 出 を可 能 に す る仲 介 段 階 はす べ て 忘 れ られ て し
ま うo』(p.63.)
リ ソチ に よ れ ば 以 上 の よ うな主 張 に は二 つ の 特 性 が あ る。(1)科 学 的 ワー ク は主 に文 書 的 ・解
釈 的 活 動 で あ る。(2)科 学 的 事 実 は 文 書 的 言 明 の形 で 構 築 され 、 流 布 され 、 評価 され る。 ラ トゥー
ル と ウー ル ガ ー は 「事 実 とは 、 モ ダ リテ ィ(様 相/法 性)も 著 者 の 痕 跡 もな い 言 明 の こ と にす ぎ
な い」(p.82.)と
さ え述 べ て い る。 研 究 者 共 同 体 が 限 定 語 な しで(無
条 件 で)あ
る言 明 を 使 用
し容 認 す る よ う に な る時 に 「事 実 」 が 構 築 され るの で あ る。 一 方 で 、 「人 工 物 」 は モ ダ リテ ィを
含 む 言 明 な の で あ る。 科 学 的 事 実 と は、 脱 「モ ダ リテ ィ」 化 した 言 明 の こ とに な っ た の だ 。 彼 ら
は 、 ま た 「事 実 」 の 独 立 性 そ れ 自体 を 「構 築 的 」 達 成 と して解 釈 して い た の で あ る。
ラ トゥー ル と ウー ル ガ ー は、 彼 らの 物 語 の 前 景 に 「言 明」 や 「リテ ラ リー ・イ ソ ス ク リプ シ ョ
ソ(文 書)」 を置 く こ と に よ っ て 、 秘 儀 的 な ラ ボ ラ トリー活 動 を 十 分 に著 述 的 に理 解 す る た め の
領 域 を 同定 す る こ と が で きた の だ。 彼 ら の テ ク ス ト分 析 で は 、社 会 科 学 者 が慣 れ て い る文 書 的 ・
解 釈 的 活 動 と 、 自然 科 学 研 究 と い う もの が 「自覚 的 に 」 同等 視 され た 。 さ らに 彼 らは、 自然 科 学
の特 権 と思 わ れ て い る もの が 、 発 見 とい うも の の 疑 う余 地 の な い重 要 性 か らで は な く、 自然 主 義
的 言 明 を論 破 不 能 な テ ク ス トに変 形 す る制 度 や 高 価 な設 備 か ら出 て くる の だ と主 張 す る こ とが で
きた の で あ る 。
彼 らは 、 科 学 的 「事 実 」 が 、 研 究 共 同体 に お い て 書 い た り、 読 ん だ り、 引 用 した り、 流 布 した
29
りす る 言 明 にす ぎな い こ と を 力説 す る こ とに よ っ て 、 人 文 科 学 や 社 会 科 学 に お け る テ キ ス ト的 ・
解 釈 学 的 ア プ ロー チの 方 法 を広 げ る こ と に寄 与 した 。 自然 科 学(ハ
ー ドサ イ エ ソス)そ
れ 自体 が
解 釈 的 ・文 書 的 営 為 で あ り、 そ こで は 「著 者 」 「理 論 」 「自然 」 「公 衆 」 の す べ て が テ ク ス トの 効
果 な の で あ る。
リソ チ に よれ ば奇 妙 に も、 彼 らの 反 実 証 主 義 的 ア プ ロー チ は 、 論 理 実 証 主 義 的 な科 学 哲 学 の 言
語 観 や 行 為 観 の 多 くの も の の鏡像 と な っ て い る よ うだ 。 論 理 実 証 主 義 者 と 同様 に、 彼 らは 、(1)
科 学 的 事 実 の 起 源 を再 構 築 す る 時 に 、 「外 的 実 在 」 に つ い て の 先 入 主 を用 い な い よ うに努 め た(2)
科 学 的 活 動 を言 明 の操 作 と して 扱 っ た(3)科 学 的 事 実 を 、 他 の 言 明 の 操 作 に よ っ て 発 生 した 言 明
と して 規 定 した(4)言 明形 式 と認 識 関 係 を 同等 視 した、 の で あ る。
相 違 点 もあ る。 彼 らの 記 述 す る操 作 は 、 形 式 論 理 の 体 系 に は 包 含 で きな い もので あ る。 ま た 、
事 実 の 生 成 や 容 認 は 、 広 範 で 偶 発 的 な ネ ッ トワ ー クの 交 渉(や
りと り)や 策 謀 と い う も の に よ る
こ と を経 験 的 に立 証 して い る の だ。 しか し論 理 実 証 主 義 者 と 同様 に、 彼 らは 後 期 ヴ ィ トゲ ソ シ ュ
タイ ソ の言 う文 法 的 「わ な」 に か か って い る と リ ソチ は 指 摘 す る。 そ の 「わ な」 と は 、 世 俗 的 な
先 入 主 を取 り除 い た分 析 言 語 と い う もの を構 築 す る試 み の こ と で あ る。 彼 ら は、 研 究 対 象(の
在 性)に
先
つ い て の 科 学 者 の 先 入 主 に 巻 き込 ま れ ず に科 学 者 の 活 動 を 記 述 しよ うと した の で あ る。
『科 学 者 が あ と で 明 らか にす る対 象 の 先 在 性 を 含 意 す る よ う な述 語 の 使 用 を避 け る試 み に よ っ
て我 々 は、 文 体 上 の困 難 に引 き込 ま れ た 。 これ は ま さに 、 科 学 過 程 の記 述 にお け る あ る種 の 言 説
と い う もの の 普 及 の故 で あ る。 それ ゆ え に科 学 が 「発 見 」 に つ い て の もの だ とい う、 誤 解 を招 く
お そ れ の あ る印 象 に譲 歩 しない よ うな 、 科 学 的 活 動 の記 述 と い う も の を定 式 化 す る こ とは 非 常 に
難 しい と分 か った 。 科 学 実 践 の 歴 史 的記 述 を 特 徴 づ け る定 式 化 に は 、 厄 払 い が 必 要 な の で あ る。』
(Latour&Woolgar.p.128.)
こ う した厄 払 い をす るた め に、 ラ ト ゥー ル と ウ ー ル ガ ー は 、 目に 見 え な い 科 学 的 な物 事 の秩 序
に つ い て の 科 学 者 の 信 念 に だ ま され ず に 、 ラボ で 起 き て い る こ と を 見 る架 空 の 「観 察 者 」 の 観 点
か ら、 彼 ら の民 族 誌 を呈 示 した の だ 。 この 観 察 者 は 、 自分 が ラ ボ の 中 で 理 解 可 能 だ と思 った もの
だ け を 記 述 す る。 しか し彼 らは 、 民 族 誌 学 者 が 現 地 民 の先 入 主 の全 て を(特 に そ の よ うな 「現 地
民 の先 入 主 」 に 、 専 門 の 人 類 学 者 や 社 会 学 者 の 共 有 す る科 学 的 方 法 につ い て の 規 範 的 前 提 が 含 ま
れ て い る時 に は)カ
ッ コに入 れ る こ と が で き るの か ど うか とい う問 題 を解 決 した わ け で は な い。
彼 らは 、 研 究 対 象 の場 面 か ら 「一 歩 退 く」 衝 動 とい う もの を 疑 問 視 す る こ とは な く、 現 地 民 の用
語 に訴 え る こ と な く科 学 を記 述 しよ うと し続 け て い る の で あ る。
リ ソチ に よれ ば 問題 な の は 、 この 現 地 民 の 用 語 が 、 実 の と こ ろ、 科 学 者 の用 語 で も あ る とい う
こ と で あ る。 こ う した 用 語 は 、 現場 で 科 学 者 の活 動 が 実 行 され 理 解 され る た め の 文 法 の不 可 欠 な
要 素 で あ る。 ま た こ う した 用 語 は 、 科 学 者 の 活 動 を 記 述 ・説 明 す る た め の 社 会 科 学 の 語 彙 に も埋
め 込 ま れ て い る 。 こ う した 彼 らの 不 偏 的 な 民 族 誌 的 「メ タ言 語 」 の 探 求 は 、 「生 の 」 感 覚 与 件 を
記 述 す る中 立 な観 察 言 語 を探 求 した ウ ィー ソ学 団 を 思 い起 こ させ る もの で あ る。
ラ トゥー ル と ウー ル ガ ー の架 空 の 「観 察 者 」 は 、 科 学 者 の 先 入 主 を混 乱 さ せ る こ と に つ い て は
何 と も思 わ な い 。 彼 らの 科 学 へ の懐 疑 が不 十 分 だ とか 、 彼 らの 民 族 誌 が社 会 実 在 論 へ の 不 当 な コ
ミ ッ トメ ソ トを表 して い る とか が 批 判 点 で は な い 。 彼 らの科 学 的 実 在 論 に つ い て の 「反 論 」 に は、
ま だ 、 反 転 した 制 度 の文 法 枠 組 が保 持 され て い る の だ 。 彼 らは 、 反 対 して い る科 学 ・言 語 ・表 象
の全 体 像 や 基 本 概 念 を徹 底 的 に攻 撃 して い るわ け で は な い の で あ る。
『客 体 と主 体 の 区 別 そ して 事 実 と人 工 物 の 区別 が 、 科 学 活 動 の 研 究 の 出 発 点 で あ る べ きで は な
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い 。 そ うで は な く、 実 践 的 操 作 を 通 して こ そ 、 言 明 を 客体 へ 、 そ して 事 実 を人 工 物 へ 変 形 で き る
の で あ る。 人 工 物 の構 築 を観 察 す る こ と に よ って 我 々 が示 した の は 、 実 在 とい うもの が 、 論 争 の
解 決 の 「原 因 」 で は な くむ しろ そ の 「結 果 」 で あ る と い う こ と で あ る。 …
仮 に実在が こう し
た 構 築 の 原 因 で は な く結 果 で あ るな らば 、 この こ と の意 味 は 、 科 学 者 の 活 動 が 「実 在 」 に で は な
く、 こ う した 言 明 の操 作 に向 け られ て い る と い うこ と で あ る。』(Latour&Woolgar.p.2367.)
彼 らは知 識 や 知 覚 の決 定 に お け る.「観 念 」 の第 一 次 性 に 関 す る形 而 上 学 に賛 同 して い るわ け で
は な い が 、 彼 ら の叙 述 で は 、 あ る種 の テ ク ス ト主 義 、 つ ま り記 号 と指 示 対 象 の 関 係 に つ い て の 二
元 論 的 説 明 に お け る 「言 明」 の 中 心 性 の 強 調 、 が示 唆 され て い る。 あ た か も ラ ボ ラ トリー ・ワ ー
クが 、 「言 明」 の形 成 や 再 形 成(「 言 明」 の 事 実 へ の 変 形)に
主 に 向 け られ て お り、 言 明 が行 な っ
て い る こ と は 、 言 明 の形 式 へ の 直 接 操 作 の 副 次 的 産 物 で あ るか の よ うで あ る。
こ う した反 実 在 論 的 な言 語 観 に は、 言 明 の 形 式 と 、 言 明 の使 用 の間 の根 本 的 な 分 離 が含 意 され
て い る。 彼 らは 、 科 学 者 が直 接 経 験 を持 た な いそ こ の 「実 在 」 と、 科 学 者 が 「事 実 」 を確 立 す る
た め の 直 接 観 察 可 能 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ソや イ ソ ス ク リプ シ ョソや 「言 明」 を 対 比 させ 、 あ た か
も言 明 と実 在 の 関係 が 線 的 因果 関 係 の 問 題 で あ る か の よ うに語 って い る。 つ ま り実 在 は 言 明 の 構
築 的 操 作 の 「原 因」 で あ る か 、 あ るい は実 在 はそ の よ うな 構 築 の 「結 果 」 で あ るか 、 と。r言 明 」
が 実 在/事
実 に先 行 す る、 つ ま り表 象 が 表 象 され る対 象 に 先 行 す る とい う叙 述 は 、 言 葉 と意 味 の
二 分 法 を 保 持 して い る。 彼 らの 議 論 で は 、 「表 象 」 と 「表 象 され る対 象 」 の 原 初 的 分 離 が 含 意 さ
れ て い る の で あ る。 しか し リソ チ に よれ ば 、 表 象 の 意 味 は 、 表 象 され る対 象 の本 質 な の で は な く、
表 象 や言 明 は、 そ れ らの 使 用 の状 況 の 中 に埋 め込 まれ て い る もの な の で あ る。 言 明 や表 象 は 、 そ
の 使 用 の状 況 の 中 の活 動 を秩 序 化 す るた め の資 源 と見 な され る の で あ る。
5.構
築主義の科学研究の帰結
構 築 主 義 の 科 学 研 究 で は 、 言 明 が 「事 実 」 の原 因 で あ る とか 、 構 築 的 活 動 が 実 在 を 「引 き起 こ
す 」 と主 張 され るが 、 そ の実 例 で は現 象 学 的 「構 成 」 に近 い もの が描 写 され て い る。 構 築 主 義 者
は 、 お な じみ の 説 明的 用 法 で 行 為 の記 述 を 表 現 す る こ とで 、 科 学 の 「内容 」 が社 会 的 活 動 に よ っ
て 引 き起 こ され る と か とい う主 旨 の誤 読 に 乗 じて い る。 こ う した 研 究 が社 会 科 学 者 に呈 示 され る
時 、 そ の よ うな 誤 読 が事 実 上 保 証 され る の だ 。 構 築 主 義 の科 学 研 究 は多 くの 関心 や 論 争 を煽 って
き た が 、 科 学 的 事 実 が 構 築 で あ る と い う中心 的 主 張 は 、 あ い ま い な ま ま な の で あ る。
構築 主 義 の 研 究 は 、 知 識 社 会 学 の 説 明 の基 本 形 を保 持 して い る。 だ が、 科 学 的革 新 の社 会 過 程
は 単 に観 念 の 起 源 や 発 展 を条 件 づ け る だ け だ と見 なす べ き の か(す な わ ち社 会 過 程 は 単 に発 生 上
関 連 が あ る だ け な の か)、 そ れ と も社 会 過 程 は 具 体 的 な 特 定 の 主 張 内 容 の 「パ ー ス ペ クテ ィ ヴ」
に しみ込 ん で い るの か 、 と い うマ ソハ イ ム の 問 い に 明確 に は答 え て い な い 。 構 築 的 活 動 が 客 観 的
事 実 の確 立 に先 行 す る とい う主 張 は 、 必 ず し も、 そ の よ うな活 動 が 「単 に発 生 上 関 連 が」 あ っ た
と言 う こ と と矛 盾 す るわ けで は な い 。 社 会 学 的 パ ー ス ペ ク テ ィ ヴの 痕 跡 の す べて を取 り除 い た 言
明 と して事 実 を規 定 す る こ と は 、 マ ソハ イ ム の 主 張 と 明 白 に矛 盾 す るわ け で もな い。 そ して 「構
築 の な い実 在 」 の可 能 性 を主 張 す るの で は な い な らば 、 個 々 の科 学 的 事 実 は そ の発 生 を構 築 的 活
動 に 負 うて い る と い う主 張 点 も、知 識 社 会 学 の伝 統 的 プ ロ グ ラ ム に と って 意 味 の あ る もの で は ほ
と ん ど な い 。 こ う した研 究 に お け る相 対 主 義 や構 築 主 義 の 強 調 点 は 、 方 法 論 的 方 針 の問 題 な の で
31
あ る。 「科 学 的 事 実 が構 築 され た もの で あ る」 とい う こ とは 、 最 初 に 仮 定 され て い る だ け で 、 経
験 的 に 立 証 され て い る わ け で は ない の だ。 正 確 に い え ば 、 構 築 主 義 的 語 彙 が科 学 的 活 動 の詳 細 な
記 述 を 書 くた め に 使 用 で き る とい うこ と が立 証 され て い るだ け な の で あ る。
民 族 誌 や 経 験 的 相 対 主 義 の科 学 研 究 の と りあ えず の 成 功 の 後 、 ラ ボ ラ トリー研 究 の 多 くは 、 ラ
ボ ラ トリー を超 え る派 生 的 な研 究 プ ロ グ ラ ム に 移 っ て い った 。 い くつ か の 科 学 知 識 社 会 学 は 、 科
学 社 会 学 や 構 築 主 義 研 究 か らテ ー マ を借 用 して 、 技 術 や 保 健 経 済 や社 会 問 題 の社 会 学 や 社 会 史 を
「植 民 地 化 」 した の で あ る。(14)
リ ソチ に よ れ ば ボ ラ トリー の民 族 誌 研 究 に つ い て は以 下 の よ うな議 論 が よ くな され る。 つ ま り、
初 期 の ラ ボ ラ ト リー 研 究 は 、科 学 「内 容 」 に つ い て 経 験 主 義 的 主 張 を用 い て い る が 、 この 主 張 は
「再 帰 的 な 」 吟 味 には 耐 え な い もの で あ る。 また 、 ミ ク ロ社 会 学 の ラボ ラ トリー 研 究 は 、(マ
ロ)社 会 学 の 関心 事 で あ る 「よ り広 い 」 現 象(ラ
ク
ボ ラ トリー の 外 部 の 制 度 な ど)を 無 視 して い る、
と い う議 論 で あ る。 これ らの理 由 な ど に よ っ て 、 ラ ボ ラ ト リー の 民 族 誌 研 究 は実 際 に 実 行 す るの
が 次 第 に 困 難 と な って き て い る そ うだ 。
多 くの科 学 社 会 学 者 は 、 こ う した 困 難 な、 時 間 の か か る 、 認 識 論 的 に も素 朴 な ラ ボ ラ トリー民
族 誌 研 究 を 実 行 す る よ り も、 書 斎 や 図 書 館 に 避 難 す る こ と を 選 ん だ よ うだ 。 そ こで は 、 も っ と
「ま と もな 」 学 問 探 求(公
的史 料 や二 次 資 料 を 調 べ る こ と 、 科 学 社 会 学 な どの 文 献 を 学 問 上 ま と
め る こ と、緻 密 な テ ク ス ト分 析 を遂 行 す る こ と)に 従 事 しな が ら も 「実 行 中 の 科 学 」 を 観 察 して
い る か の よ うに振 る舞 え る の だ。 テ クス ト的 ア プ ロー チ が獲 得 した名 声 の た め に、 「実 際 の 実 践
を 観 察 す る」 ワ ー クを 履 行 す る動機 が 与 え られ る こ とが な くな って きた の で あ る。 「ラ ボ ラ トリー
の 内 壁 を超 え る」 と い う合 唱 に よ っ て 、 マ ー トソ派 の プ ロ グ ラ ムの 促 進 した 総 合 的 科 学 社 会 学 が
奨 励 さ れ て い る よ うだ 。 こ う した ア プ ロー チ は 、 左 派 マ ー トン主 義 と呼 ん で も無 理 は な い で あ ろ
う と リ ソチ は指 摘 して い る。 と い うの も、 こ う した 議 論 は 、資 金 提 供 や 行 政 府 の 命 令 な どの 「広
く社 会 的 な」 ア ジ ェ ソ ダが 科 学 実践 や技 術 実 践 の局 域 的 な 現場 に 影 響 を与 え る仕 方 に関 心 が あ り、
行 為 中 心 の ア プ ロ ー チ は そ の よ うな認 識 論 を超 え た影 響 を分 析 す る場 を呈 示 して い る か らで あ る。
幾 人 か の科 学 社 会 学 者 は 、 科 学 知 識 社 会 学 の再 帰 的 な 根 拠 づ け を 立 証 す る試 み か ら離 脱 して 、
「表 象 を 通 して 客 観 的 実 在 を構 築 す る我 々 の 能 力 」 を探 究 し始 め た 。 こ う した 表 象 活 動 に は 、 証
拠 の 提 示 、 解 釈 、 関 連 性 の 決 定 、 動 機 の帰 属 、 カ テ ゴ リー 化 、説 明 、 理 解 な どの 能 力 が 含 まれ て
い る。(15)こう した テ ー マ で は 一 般 的 な認 識 活 動 が 同 定 され て い る が 、 彼 らは そ れ を 妥 当 性 の 根
拠 と して は 提 示 しな い。 こ う した 認 識 活 動 を分 析 す る た め に 、 彼 ら は科 学 実 践 を記 述 ・説 明 す る
努 力 か らは 一 歩 退 くの で あ る。 彼 らの 研 究 対 象 は 、 「客 観 的 」 叙 述 とい う もの が 産 出 され る た め
の(隠
され た)言 説 的 ・解 釈 的 実 践 と な った の で あ る。
・
こ う した ア プ ロー チ は 、 科 学 者 の す る妥 当 性 の主 張 に つ い て と同 様 に 自分 の妥 当 性 の主 張 に つ
い て も不偏 で あ れ と社 会 学 者 に求 め る ブ ル アの 不 偏 性 の 公 準 を適 応 した も の で あ ろ う。 事 実 上 、
ブ ル ア の再 帰 性 の 公 準 は 、 マ ー トソ派 の 「公 平 無 私 」 の 規 範 に従 って 行 為 せ よ とい う強 い勧 告 に
な る。 だ が 、 こ れ に よ っ て こ う した 社 会 学 者 は 客 観 的 記 述 や 説 明 の プ ロ グ ラム か ら も遠 ざ か るの
で あ る。
6.ラ
トゥー ル の 科 学 研 究
リ ソチ に よれ ばB.ラ
ト ゥー ル の 『実 行 中 の科 学 』(16)の出版 以 降 、 科 学 知 識 社 会 学 の 議 論 に は 、
32
フ レソ チ ロ調 が つ い た そ うだ。 そ の前 に 、 ア メ リカ社 会 学 に は 「脱 構 築 」 や 「デ ィス コー ス 分 析 」
の ア プ ロー チ の 影 響 が 遅 れ ば せ な が ら あ っ た が 、 ア メ リカ の 社 会 学 者 は、(ヨ ー ロ ッパ の)大
陸
哲 学 や 文 学 理 論 に つ い て は知 識 が 乏 し く、 典 型 的 に は ラ トゥー ル の ア プ ロー チ も、社 会 学 に対 す
る批 判 的 な 含 意 を外 し、 根 本 的 な もの を除 去 して 取 り入 れ ら れ た そ うだ 。 彼 の ア プ ロー チ に 強 く
結 び つ い た記 号 論 ・解 釈 学 ・実 存 哲 学 の テ ー マ は 無 視 され た の で あ る。
ラ トゥー ル は 、 民 族 誌 研 究 や 歴 史 研 究 に基 づ い て 、 ラボ ラ ト リー実 践 を、(ラ ボ ラ ト リー の 外
や 間 の)専
門 的 ・政 治 的 交 渉 とい う も っ と広 い 領 域 に 結 び つ け よ うと試 み る行 為 論 を構 築 して い
る。 例 え ば 彼 の パ ス ッ ー ル 研 究(17)で は 、 彼 の ア プ ロー チ は知 識 社 会 学 の 伝 統 と、 少 な く と も二
点 で 根 本 的 に 断 絶 して い る と告 げ られ て い る と リソ チ は指 摘 す る。 第 一 に 彼 は 、 社 会 学 の 学 問 的
コ ミ ッ トメ ソ トを拒 否 して ・ パ ス ツー ル(主 義)の 社 会 史 的 記 述 で も科 学 の基 礎 付 け に 関 す る哲
学 議 論 で もな い よ うな研 究 を呈 示 して い る6哲 学 探 究 と経 験 的 フ ィー ル ド研 究 を 「同 じ屋 根 の下
で 」 実 行 す る と主 張 す るの で あ る。
ラ トゥー ル は 、 科 学 の 「社 会 的 コ ソテ ク ス ト」 と 「内 容 」 が い まだ 分 化 して い な い領 域 を 探 究
す る と言 う。 彼 は 、 首 尾 一 貫 した説 明要 因 と して 「認 知 内 容 」 あ るい は 「社 会 的 コ ソ テ クス ト」
を用 い る こ と に よ っ て 、 科 学 的 革 新 を説 明 し よ うとす る試 み を潔 しと しな い の だ 。 社 会 的 要 因 と
専 門 的 要 因 、 コ ソ テ ク ス トと 内 容 、 科 学 と非 科 学 な ど の 区別 が 産 出 さ れ るの は、 「科 学 的 」 あ る
い は 厂専 門 的 」 革 新 を結 果 と して もた らす よ うな 交 渉 の場 に お い て な の で あ る と述 べ て い る。 と
同時 に 彼 は 、 ラ ボ ラ ト リー 研 究 で 記 述 され た ラボ ラ ト リー実 践 や 言説 現 象 よ り も も っ と広 い 領 域
の 行 為 や 行 為 主 体 に つ い て 理 解 しよ う と試 み る の で あ る(イ ノ ヴ ェー シ ョ ンの 「翻 訳 モ デ ル 」)。
ラ』
トゥー ル は 、 社 会 学 の 理 論 と 方 法 を拒 否 して 、 物 語 の 形 式 記 号 学 に注 目 して い る。 彼 は 、
「パ ス ッー ル(主
義)」 に 言 及 が あ る19世 紀 の テ クス トを研 究 して 、 「パ ス ツ ー ル 」 が テ ク ス ト的
シ ニ フ ィ ア ソ だ と叙 述 して い る。 そ して 、 首 尾 一 貫 して い るが 種 々雑 多 な ネ ッ トワー ク の実 体 や
行 為 主 体 と い う もの を編 み 合 わ せ る よ うな物 語 の 展 開 に、 この シ ニ フ ィ ア ソ(「 パ ス ツー ル 」)が
挿 入 され る仕 方 を 探 求 し よ う とす るの だ 。 こ う した 実体 や 行 為 主 体 は 、例 え ば農 場 の 日常 生 活 や 、
性 的 実 践 と個 人 の 衛 生 状 態 、 診 療 所 の建 物 と治 療 体 制 、 都 市 で の公 衆 衛 生 状 態 、 パ ス ツ ー ル の ラ
ボ ラ ト リー で 立 証 され た ミク ロな実 体 と 因果 関 係 、 の よ うな 諸 領 域 と関 連 して い るの で あ る 。
ラ ト ゥー ル は 、 記 号 学 的 「ア ク ター」(「 パ ス ッ ー ル 」)の テ クス ト分 析 を、 パ ス ッー ル の 歴 史
的 行 為 に つ い て の 実 質 的 な 物 語 に格 上 げ す る こ と も あ る。 テ ク ス ト分 析 と歴 史 記 述 の 融 合 は 、 現
代 記 号 学 理 論 と矛 盾 す る もの で は な い。 こ う した ラ トゥー ル た ち の叙 述 が 、 権 力 ・社 会 的 影 響 ・
マ キ ャ ヴ ェ リ的戦 略 と い った 伝 統 的 な社 会 的 ・歴 史 的 概 念 に よ っ て(社 会 学 的 に)理 解 さ れ るの
は た や す い こ とで あ る。 彼 の 歴 史 物 語 を 、(例 え ば どの よ う に パ ス ツ ー ル と い う人 が 、 あ る特 定
の 研 究 プ ロ グ ラム を 転 向 させ た の か に つ い て の)実 在 論 的 叙 述 と して読 解 しな い こ とは 難 しい の
で あ る。 そ して あ る程 度 、 こ う した誤 読 は 、 ラ ト ゥー ル た ち に 有 利 に働 い た。 この誤 読 に よ っ て 、
ラ トゥー ル た ち は 、 形 式 記 号 学 を支 持 して社 会 学 的 実 在 論 を拒 否 しな が ら も、 空 間 上 ・歴 史 上 に
拡 張 され た 事 象 や 活 動 の分 布 や 配 置 に つ い て の 歴 史 物 語 を呈 示 で きた の だ 。 か く して ラボ ラ トリー
活 動 の 「ミク ロ」 研 究 の よ く知 られ た限 界 を 超 え た と され るの で あ る。
社 会 学 の 伝 統 との 根 本 的 な 断 絶 の第 二 の も の は 、 科 学 的 ・技 術 的 発 展 の 人 間 の行 為 主 体 と 人 間
以 外 の行 為 主 体 の 間 の ア プ リオ リな区 別 を拒 否 す る こ とで あ る。 ラ ト ゥー ル た ち は 、 記 号 学 理 論
を 本格 的 な存 在論 に発 展 さ せ よ うと野 心 的 に 努 力 して い る。 ラ トゥー ル た ち の 「ア ク ター」 と は 、
人 間 お よ び人 間 以 外 両 方 の 実 体 や 力 の こ とで あ る。 「ア ク ター 」 は 何 で も か ま わ な い の だ 一 一 個
33
人(「 ピ ー タ ー 」)で も 集 合(「 群 集 」〉 で も 比 喩 的 な も の(擬i人 や 獣 形)で
も非具 象 的 な もの
(「運 命 」)で も。 こ う した 「ア ク タ ー」 の 集 合 の 中 に は 、 パ ス ツー ル ・農 民 ・臨 床 医 ・乳 牛 ・微
生 物 が 含 まれ て い る。 こ う した 「ア ク ター 」 の 同盟/敵
対 関 係 を 記 述 す る枠 組 が ア ク ター ・ネ ッ
トワー ク ・セ オ リー で あ る。(18)彼の 「ア ク ター 」 の 無 差 別 な 使 用 は 、社 会 学 的 行 為 論 に お け る
「行 為 者(ア
ク ター)」 に典 型 的 に割 り当 て られ る よ うな諸 述 語 に も適 応 され る。 か く して ラ トゥー
ル は 、 社 会 学 的記 述 の お な じみ の 用 語 を保 ち な が ら も、 こ う した 用 語 の 専 門的 に 「社 会 学 的 な」
含 蓄 か らは離 れ て い る の で あ る。
しか しな が ら、 彼 の 記 号 学 的 歴 史 研 究 は 、 専 門 的 な 記 号 学 的 語 彙 を 社 会 史 的 記 述 子 に 翻 訳 す る
こ と に よ って 引 き起 こ さ れ る両 義 性 と い うも の に故 意 に つ け 込 ん で い る。 そ の結 果 と して 彼 の物
語 は 、 自 らは拒 否 して い る社 会 学 的 な誤 解 や 流 用 を 招 く もの と な る。 記 号 学 的 「ア ク ター 」 が伝
統 的 な 種 類 の 社 会 学 的 「行 為 者(ア ク タ ー)」 と等 価 で あ る と 誤 解 され る の だ。 彼 の 記 号 学 的 シ
ス テ ム の 中 の 「ア ク タ ー」 に(社 会 学 的)存 在 論 的 地 位 が 付 与 され る こ と に な るの で あ る。
ラ ト ゥー ル た ち の 「ア ク ター ネ ッ トワー ク」 ア プ ロ ー チは 、 現 在 、 ポ ス ト構 築 主 義 の 科 学 知 識
社 会 学 や テ ク ノサ イ エ ソ ス研 究 の な か で も っ と も注 目 され て い る もの で あ る。 多 くの 構 築 主 義 者
た ち も テ ク ス トや デ ィ ス コー ス 分 析 の ア プ ロ ー チ に 着 手 して き た し、 テ ク ス トや視 覚 表 象 や 会 話
お よ び そ の 相 互 関 係 の 産 出 と使 用 に関 す る多 様 な 研 究 が 行 な わ れ て きた 。(19)さらに 、 構 築 主 義
ア プ ロー チ は、 科 学批 判 と結 び つ い て い る。 特 に フ ェ ミニ ズ ム社 会 学 や 認 識 論 と関 連 した 科 学 批
判 で あ る。(も っ と も、 科 学 知 識 社 会 学 が 「客 観 的 科 学 」 へ の フ ェ ミニ ズ ム批 判 を 支 持 す る も の
で あ る か ど うか は まだ 分 か らな い の だ が。)
科 学 の 内 容 に社 会学 的 説 明 を与 え る と い うス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラム な ど の 「新 しい 」 科 学 知 識
社 会 学 の課 題 は 、 そ の 中 心 用 語 の 一 つ ひ とつ に関 す る論 争 で 引 き裂 かれ て い る。 こ う した論 争 は 、
(1)「 社 会 的 」 要 因 と 「認 知 的 」 あ る い は 「専 門 的 」 要 因 を 区別 す る可 能 性 、(2)ど の よ う に社 会
的 コ ソテ ク ス トが科 学 の 発 展 に影 響 を 及 ぼ す の か に つ い て 因 果 説 明 を す る能 力 、(3)科 学 の 関 連
性 の あ る 「内 容 」 の識 別 、(4)「 科 学 」 と非 科 学 の 区 別 、(5)(1)か ら(4)の 事 項 は 、社 会 学 者 の 分
析 的 課 題 とい うよ り もむ しろ言 説 領 域 に お け る成 員 の 達 成 と して 扱 うべ き か ど うか 、 に 関 す る も
の で あ る と、 リ ソチ は指 摘 して い る。
新 しい科 学 社 会 学 の研 究 者 た ち は 、 自 らの 学 史 研 究 に お い て 次 の よ うな 物 語 を述 べ る こ とが 多
い よ うだ。 つ ま り こ う した 研 究 は 、 ラ ボ ラ トリー の奥 に入 り込 み 、詳 細 に 科 学 知 識 が 、 発 見 され
るの で は な く、 創 造 され る も の で あ る こ と を 立 証 した の だ が 、 ラ ボ ラ ト リー の 内部 で 観 察 可 能 な
もの だ け に注 目す る こ とで 限 度 が あ り、 科 学 的 構 築 が 生 起 す る 「よ り大 き な」 文 脈 を 考 慮 に 入 れ
る こ と が で きな い 。 制 度 的 権 力 や イ デ オ ロギ ー や 資 金 提 供 な どの 社 会 構 造 的 源 泉 に 言 及 す る こ と
で科 学 者 た ち の 局 地 的 な 実 践 を説 明 し よ う とす る努 力 が 必 要 な の で あ る 、 とい うよ う な物 語 で あ
る。 こ の よ うな 物 語 は、 科 学 社 会 学 者 の 多 くを 魅 了 して きた。 そ して科 学 を そ の 台 座 か ら引 き下
ろ して 人 び と に 引 き渡 す とい うほ と ん ど宗 教 的 な使 命 も吹 き込 まれ た。 と同 時 に、 この 物 語 は あ
る種 の 左 派 マ ー トソ派 機 能 主 義 の復 活 も促 進 した の で あ る。
しか しな が ら、 リソ チ に よれ ば 、 この 物 語 は 、 ラ ボ ラ トリー研 究 が余 りに も成 功 した と思 っ て
い る し、 なぜ こ う した 研 究 が まず 第 一 に 着 手 され た の か を忘 れ させ る も の な の で あ る。 そ もそ も
「新 しい 」 科 学 社 会 学 は 、規 範 的 な科 学 哲 学 や機 能 主 義 社 会 学 に 対 す る反 発 に よ っ て動 機 づ け ら
れ て い た の だ。 そ して 科 学 的方 法 の単 一 モ デ ル か ら は帰 結 しな い 「実 際 の 」 科 学 実 践 に つ い て 、
も っ と分 化 した 概 念 化 の可 能 性 も見 え て きた の だ 。 「科 学 」 そ れ 自体 を 非 難 攻 撃 す る こ とが 目的
34
な の で は な く、 こ う した 研 究 は原 則 的 に 、 科 学 の 実 態 に つ い て の ア プ リオ リな理 解 と い う もの を
留 保 す る試 み だ っ た の で あ り、 観察 や実 験 や 理 論 的 論 争 の ひ とつ ひ と つ の事 例 が検 討 され て い る。
この こ と は実 の と こ ろ 実 際 に実 行 す るの が 難 しい と い う こ とが 判 明 しつ つ あ る。 現 存 の ラ ボ ラ ト
リー 研 究 の どれ も が 、 実 在 論(合 理 主 義)/構
築 主 義(相 対 主 義)の 論 争 を解 決 す る よ うな 「記
述 」 を 提 出 して い な い。 実 証 研 究 が この論 争 を解 決 で き るは ず だ と思 う こ とは 、 この 論 争 の 性 質
を誤 解 して い る。 方 針 研 究 や 政 治 的 批 判 に 「経 験 的 」 情 報 を提 供 す る ど ころ か 、 実 質 的 に は 、 現
場 に お け る 「実 際 の 」 科 学 実 践 を観 察 ・記 述 ・説 明 しよ う とす る試 み は 、振 り出 しに戻 る の で あ
る。
7.エ
ス ノ メ ソ ドロ ジ ー の ワ ー ク研 究 と して の 科 学 研 究
現 場 に お け る 「実 際 の」 科 学 実 践 を 観 察 ・記 述 ・説 明 しよ う とす る試 み の振 り出 し、 つ ま り何
か 「実 際 の 」 こ との 観 察 ・記 述 ・説 明 を 産 出 す る と は 、 ど うい う こ とな の か を再 考 す る こ と 、 こ
れ が エ ス ノ メ ソ ドロ ジ ー の科 学 研 究 の 課 題 な の で あ る。 この 文 脈 で 、 科 学 ワ ー クの エ ス ノ メ ソ ド
ロ ジ ー研 究 と は 、 どの よ うな独 自の 科 学 研 究 で あ る の か を 、 リ ソチ に 従 って 簡 単 に見 て お こ う。
ワ ー クの エ ス ノ メ ソ ドロ ジー 研 究 プ ロ グ ラ ム(20)を提 案 した ガ ー フ ィ ソ ケル は 、職 業 研 究 に お
け る 「見 失 わ れ た実 態(themissingwhat)」
と彼 の 呼 ぶ もの を 探 究 す る こ とを 目指 して い た 。
例 え ば音 楽 の 「社 会 的 」 側 面 を研 究 す る社 会 学 者 は概 して 、 音 楽 家 た ちが どの よ うに 一緒 に音
楽 を 演 奏 す るの か に つ い て 論 じ る こ とが な か った の だ。 対 照 的 に ガー フ ィ ソケ ル は、 共 同 的 に産
出 され た 行 為 に お い て/と
して 、音 楽 家 た ち が一 緒 に音 楽 を 作 るた め の ワー ク特 有 の力 量 を 探 究
す るの で あ る。
この 研 究 プ ロ グ ラム に よ っ て 、科 学 実 践 の 「内 容 」 を探 究 す る動 機 が与 え られ た が 、 エ ス ノ メ
ソ ドロ ジ、
ス トは 、 科 学 的 事 実 を、 そ の産 出 の 「社 会 的 コ ソテ クス ト」 に関 して説 明 す る こ と に は
関 心 が な か っ た 。 ま た 、 さ ま ざ ま な分 野 の活 動 と制 度 的 条 件 に つ い て の包 括 的 モ デ ル と い う も の
を構 築 しよ う と も しな か った 。 そ うで は な く彼 らは 、 ど の よ うに 科 学 的 発 見 とい うもの が ラ ボ ラ
トリー ・プ ロ ジ ェ ク トな ど とい う各 学 問 分 野 に特 有 の 「生 活 世 界 」 か ら産 出/抽 出 され る の か を
検 討 す る こ と を 目標 に して い た ので あ る。
この研 究 プ ロ グ ラ ム は 、 「発 見 」 と い う も の を 「社 会 的 構 築 」 の 問 題 と して説 明 す る の で は な
く、 科 学 的 ワ ー クそ の もの の理 解 そ の こ と を 目指 して い る。 この理 解 は 、 科 学 者 の伝 記 を読 む こ
とや 科 学 実 験 を再 構 成 す る こ とか ら得 られ る もの と は 異 な る も の で あ る。 こ う した ラボ ラ ト リー
実 践 の エ ス ノ メ ソ ドロ ジ ー研 究 は 、 主 に偶 然 の 一 致 で 、構 築 主 義 の 「ラ ボ ラ トリー生 活 」 研 究 と
連 動 して い た 。 両 研 究 は、 トピ ックに お い て 部 分 的 に収 斂 して い た。 こ う した 収 斂 に よ って 、 次
の よ うな争 点 も特 定 で き る、 と リソチ は指i摘 して い る。
1.反
映 性/再
帰 性(reflexivity)の
述 ・説 明 す る た め の 言 語(実
「問 題 」。 この 問 題 に は 、社 会 学 者 が他 の 実 践 を 探 究 ・記
践)と
、 「成 員 た ち」 が 自分 の す べ き こ と を行 な い 、 お 互 い
の 振 舞 を 「分 析 す る」 た め の言 語 とい う もの と の関 係 の 仕 方 が含 ま れ て い る。
2.認
識 論 問 題 と方 法 論 問題 の 「融 合 」。 これ は 、 イ デ オ ロ ギ ー批 判 の説 明 と知 識 社 会 学 の 説
明 の 分 離 と い うこ との 崩 壊 に関 連 して い る。 社 会 学 的記 述 と い う もの が 、 記 述 され た 方 法
に つ い て の批 判 や 懐 疑 や 容 認 を含 む 日常 言 語 表 現 を使 用 す る時 に は い つ で も、 こ う した 崩
壊 が生起 す るのだ。
35
3.「 中 立 の 」 あ るい は 「没 価 値 的 な 」 観 察 言 語 の探 求 。 これ は 、 ス トロ ソ グ ・プ ロ グ ラ ム の
対 称 性 と不 偏 性 の方 針 に 具 現 化 され て い る もの で あ る。 「無 関 心 」 とい うエ ス ノ メ ソ ドロ
ジ ー的 方 針 は、 探 究 され る研 究 領 域 か ら一 歩 退 くと い う知 識 社 会 学 の提 案 に 対 す る代 替 案
な の で あ る。
4.社
会 的 「要 因」 と専 門 的 「要 因 」 や 、 科 学 と非 科 学 や 、 事 実 と構 築 の 区 別 の 究 極 的 に 「決
定 不 能 な」 性 質 。 科 学 社 会 学 者 は 、 こ う した 区 別 が 、 「科 学 的 」 革 新 を産 出 す る行 為 の 内
部 で 「交 渉 」 され る もの で あ る と い う立 場 を取 る が 、 「交 渉 」 と は ど うい う意 味 な の か 必
ず し も明 ら かで は な い。 実 践 的 行 為 や 言 語 使 用 の エ ス ノ メ ソ ドロ ジー研 究 に よ っ て 、 今 の
理 解 が深 ま る可 能 性 が あ るの で あ る。
リ ソ チ に よ れ ば 、 こ う した諸 論 点 が指 摘 して い る の は 、 言 語 使 用 や 実 践 的行 為 に つ い て の よ り
洗 練 され た 概 念 化 を、 新 しい科 学 知 識 社 会 学 に導 入 す る必 要 が あ る と い う こ とで あ る。 新 しい 科
学 知 識 社 会 学 は 、 い ま だ客 観 主 義 的 探 究 へ の コ ミ ッ トメ ソ トと い うお な じみ の夾 雑 物 を 保 持 して
い る。 こ う した コ ミ ッ トメ ソ トに は 、 次 の よ うな考 え方 が 含 め れ て い る。 つ ま り、 科 学 社 会 学 は
研 究 対 象 で あ る領 域 に お け る言 語 用 法 か ら一 歩 退 か な け れ ば な らな い と か 、記 述 的 「メ タ言 語 」
は記 述 され る言 説 か ら独 立 して い る べ きで あ る とか 、 イ ソデ ッ ク ス性 や 再 帰 性 は一 般 に 、 表 象 や
コ ミュ ニ ケ ー シ ョソ を促 進 す る よ りも む しろ 阻 害 す る もの で あ る とか 、 社 会 学 の安 定 した 概 念 装
置 は 、 他 の領 域 の 内 容 を説 明す ると い う課 題 に適 切 な も の で あ る と か、 とい う考 え方 で あ る。 ガ ー
フ ィ ソ ケ ル の エ ス ノ メ ソ ドロジ ー の 立 場 は 、 こ う した コ ミ ッ トメ ン トを批 判 して い る の で あ る。
科 学 社 会 学 の多 くは 「科 学 的 」 社 会 学 に お け る プ ロ グ ラ ム に依 然 と して コ ミ ッ ト して い る。 そ
して構 築 主 義 科 学 社 会 学 に お け る論 争 の 多 くは、 「社 会 の科 学 」 とい うも の に対 す る既 成 の コ ミ ッ
トメ ソ トとの 両 面 価 値 的 な闘 争 の徴 候 な の で あ る。 科 学 と結 び つ い た 美 徳 、 お よ び社 会 科 学 の 内
部 に尊 敬 され た 代 替 案 が 無 い こ と を 所 与 の もの とす る な:らば 、 科 学 知 識 の 「科 学 的 」 社 会 学 に 固
有 の 諸 矛 盾 とい う もの を 単 に棚 上 げ に して お く こ とは 困 難 で あ る。
しか し、 認 識 論 の お な じみ の テ ー マ を論 じる独 特 な 探 究 法 を 想 定 す る こ と は可 能 に な りつ つ あ
る。 こ の探 究 法 は、 ア ー ム チ ェ ア哲 学 で も、 方 法 論 に 駆 られ た 社 会 学 で も な い。 この 探 究 法 は 、
経 験 的 証 拠 を 、 仮 説 の証 明 と して と い う よ り もむ しろ 、 想 像 力 へ の刺 激 と して 検 討 す る もの で あ
る。 そ して 観 察 ・表 象 ・測 定 ・論 証 とい う実 践 そ れ 自体 を 、抽 象 的 な方 法 論 的 保 証 とい う よ り も
む しろ 、 探 究 す べ き社 会 現 象 と して 扱 うの で あ る。
リ ソ チ に よ れ ば この エ ス ノ メ ソ ドロ ジ ー の 探 究 法 の ヴ ィジ ョソ は、 社 会 学 にお け る 学 問 的 問 題
に ま だ 余 り影 響 を 与 え て い な い 。 社 会 学 の命 運 は依 然 と して 、 「科 学 」 と して の そ の 地 位 に よ っ
て 決 ま る も の で あ り、 ま た正 当 な る学 問 的 職 業 と して の 社 会 学 の 立 場 に と って 脅 威 に な る もの が
多 くあ る こ と を 考 え る と、 社 会 学 的 科 学 主 義 を 否 認 し よ うと す る試 み は背 信 行 為 で あ る よ うに 見
え る か も しれ な い。 だ がYr科 学 的 」 社 会 学 の い ま だ不 履 行 の 「進 歩 」 と い う こ と に 望 み を か け
るの で は な い な らば 、 科 学 主 義 と完 全 に 断 絶 す る こ とが 正 当 な こ とで あ るか も しれ な い の で あ る。
か く して エ ス ノ メ ソ ドロ ジー の 科 学 研 究 は 、 科 学 的 ワ ー ク を 、 「メ タ言 語 」 と して の 科 学 的 社
会 学 言 語 で 記 述 ・説 明 す る こ と を 目指 して い る の で は な い こと は理 解 で きた の で は ない だ ろ うか 。
機 能 主 義 や 科 学 主 義 や 構 築 主 義 の研 究 概 念 と は 別 の と ころ で 、 エ ス ノ メ ソ ドロ ジー 研 究 は 科 学 的
ワー ク の言 語 使 用 実 践 を 探 究 して い る の だ 。 社 会 現 象 と して の 観 察 ・記 述 ・説 明 ・測 定 ・発 見 な
ど の科 学 的 ワー ク(認 識 論 の 諸 テ ー マ)の
日常 言 語 で)再
産 出(=・ 理 解)と
は ど の よ うな こと な の か を(成 員 の
特 定 化 す る こ と、 これ が エ ス ノ メ ソ ド ロ ジー の 科 学 研 究 の 課 題 で あ る。 こ の こ と
36
は 困 難 な ご.とで は あ るが 、 今 や不 可 能 な こ と で は な い の で あ る。
註
1Barnes(1974)(1977)(1981)(1985);Barnes&Shapineds.(1979);Barnes&Edge
eds.(1982);Bloo士(1976)(1983);Mulkay(1979);Knorr-Cetina&Mulkayeds.
(1983);Latour・(1987);Woolgar(1988).;Barnes,Bloor&Henry(1996)を
2'エ
参,照 、
。
ス ノ メ ソ ド 直 ジ ー の 科 学 研 究 の 公 刊 文 献 に つ い て は 、Garfinkel,Lynch&Livingston
(1981);1Lyn・h・Living・t・n&Ga・fipk・1(1爭83);Living・t・n(1986)(1987)(1993);
Lynch(1985)(1993)』;Garfinkel(1991);Garfinkel&Wieder(1992);Bjeric(1995)を
日 本 語 論 文 で は 中 村(1998)(1999a)(1999b)(2000a)(2000b)あ
山 崎 ほ か(1995);山
3と
崎 ほ か(1998);山
るい は 葛 岡
崎(2000)を
は い っ て も 、 エ ス ノ メ ソ ド ロ ジr研
参 照 。
・水 川
・「
三 樹(1995);
参 照、
。
究 は 、 新 しい科 学
「哲 学 」 ・
の提 唱 や 、伝 統 的 な 科 学 哲
学 の 「改 善 」 を 奨 励 し て い る の で は な く 、 例 え ば 認 識 論 の 諸 テ ー マ が 現 代 の 科 学 実 践 の 経 験
'的 探 究 と し て ト ピ
ッ ク化 で き る と 提 唱 して い る ので あ る。
4Lynch(1993)特
に 第 .3章Th臼hse'6fthenewsociologyo{scientificknowledge(pp.
71-116.)お
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参 照 。
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6Laudan(1977)参
参 照 。
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7Barnes&Bloor(1982)参
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8Bloor(1976),pp.4-5.(『
邦 訳 書 』p7.)
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10Gilbert&Mulkay(1984)を
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11耳araway(1989)(1991);Keller(1983)(1985)(1992)(1995);Keller&Lloydeds.(1992);
Keller&「Longino(1996)な
ど を参 照 。
12、Collins(1985);Pinch(1986);Collinsed.(1981);Collins&Pin¢h(1993);Pickering,'
(1985)を
参 照、
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13Knorr-Cetina(1983)を
参 照 。 単 行 本 に は 以 下 の も の が あ る 。Lat6ur&Woolgar(1979)1;
Knorr-Cetina(1981);Lynch(1985);Traweek(1988);Collins&Pinch(1982);
Gooding,Trevor&Simoneds.(1989)。
14Mackenzie&Wajcmaneds.(1985);Lawed.(1986);Bijker,Hughes&Pinch
eds.(1987);Woolgar&Pawluch(1985);Ashmore,Mulkay&Pinch(1989);
Shapi血
岡 田
.&Schaffer(1985);Shapin(1994)(1996);Wallised.(1979);Rabinow(1996);
・田 村
・戸 田 山
・ 三 輪 編(1999);金
森(2000);Rossed.(1996);Soka1&Bricmont
(1998);Ashman&Borringer(2000);Button6d.(1992);Heath&Luff(2000)な
15Woolgar(1988);Woolgared.'(1988)『;』Ashmore(1989);.Mulkay(1985)(1991);戸ickerin窪'
(1995)を
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参 照 。
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一
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ed.(1992);Suchman(1987);上
20ワ
野(1999)(2000);上
野
・西 阪(2000)を
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参 照 。 ヴ ィ ッ トゲ ソ シ ュ
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