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映画産業の現状と課題について

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映画産業の現状と課題について
映画産業の現状と課題について
平成15年7月
メディアコンテンツ課
1.映画産業の現状(1)∼興行収入とスクリーン数
映画産業の現状(1)2002年
市場規模:映画興行収入1,978億円(前年比98.3%)
うち、邦画
533億円(前年比68.2%)
洋画1,435億円(前年比117.6%)
ビデオソフト4,971億円(前年比112.5%)
諸外国の市場規模
米国:9,200億円
仏国:1,465億円
韓国:320億円
自国映画と外国映画の興行
収入割合
自国映画:外国映画
日 本
3:7
フランス
3:7
韓 国
5:5
・年間興行収入は日本映画史上初めて2000億円に乗った昨年度に比べて−1.7%と微減
・鑑賞人口は1億6077万人と前年比−1.5%ながら1億6千万人台をキープ。
・シネコンの増館に伴うスクリーン数の増加(全体で2635スクリーン(前年比102%))
・各種割引サービスの実施による平均入場料金の減少(1224円(前年比99.8%))
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
和暦(平成年)
10
11
12
13
興行収入(百万円)
入場者数(千人)
映画館数
映画産業統計
映画
館数
入場
者数
興行
収入
14
出典:(社)日本映画製作者連盟資料より
2
1.映画産業の現状(2)∼封切り本数
& 興行収入ランキング
○封切り本数
640本(前年より10本増)
邦画:293本(前年より12本増)
洋画:347本(前年より2本減)
本数
封切本数
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
洋画
邦画
合計
1
2
3
4
5
6
7
8
平成(年)
9
10
11
12
13
14
出典:(社)日本映画製作者連盟資料より
○2002年
邦画
日本における興行収入ランキングTOP10
(億円) 洋画
1 猫 の 恩 返 し / ギ ブリ ーズ e pi so de Ⅱ
2 名 探 偵 コナン ベイカー街 の 亡 霊
東宝
東宝
64.6
34
東宝
27.1
東宝
東宝
東映
東映
東宝
東宝
東宝
26.7
23.1
20.8
20
16.1
15.4
14.4
ゴ ジ ラ・ モ ス ラ・ キングギ ドラ 大 怪 獣
3 総 攻 撃 / と っと こハ ム 太 郎
4
5
6
7
8
9
10
劇 場 版 ポケッ トモ ンス タ ー水 の 都 の 護
神 ラテ ィア ス と ラテ ィオス 他
ドラえ もん の び太 とロボッ ト王 国 他
千 年 の 恋 ひか る源 氏 物 語
2 0 0 2 年 春 東 映 ア ニメフェア
模倣犯
犬 夜 叉 時 代 を越 え る想 い
ナース の お仕 事 ザ ・ ム ービー
(億円)
1
2
3
4
ハ リ ー・ ポッ タ ーと 賢 者 の 石
ハ リ ー・ ポッ タ ーと 秘 密 の 部 屋
モ ンス ターズ ・ インク
ス タ ーウォーズ エヒ ゚ソード2
5
6
7
8
ロード・ オブ・ ザ ・ リ ング
ス パ イダ ーマ ン
オーシ ャンズ 1 1
メン・ イン・ ブラッ ク2
9 ア イ・ ア ム ・ サ ム
10 サ イン
WB
WB
BV
FOX
ヘラル ド/
松竹
S PE
WB
S PE
松 竹 / アス
ミ ッ クエース
BV
出典:(社)日本映画製作者連盟資料より
203
180
93.7
93.5
90.7
75
70
40
34.6
34
3
1.映画産業の現状(3)∼映画産業の構造
映画産業の構造
映画産業を構成する製作、配給、興行の各関
係者の機能は、以下のようにみることができ
る。
○製作:企画を基に「映画」という商品を作
る製造業者
○配給:「映画」という商品を小売業である
映画館に卸す卸業者
○興行:「劇場」という不動産を運営するい
わば不動産業という側面と、「映画」
という商品(サービス)を販売するサ
ービス業としての側面を持つ。
・網掛け部分は大手映画会社(東宝・東映・松竹な
ど)のカバー範囲
・チェーンマスターとは全国の主要映画館にかける
番組編成をする会社。日本では東宝及び松竹・東
急連合の二者。
4
2.映画産業の問題点∼流通事業(配給・興行)の
ボトルネック(1)
興行収入に占める製作者の純利益
○流通事業(配給・興行)のボトルネック(1)
50%劇場へ
(1)興行→配給→製作の順に利益を獲得する慣行に
なっており、製作者にリターンが回りにくい
配給会社分
P&A
配給経費
製作者分
製作費
製作・配給費
興行収入
製作・配給で分配
配給会社が経費を
トップオフ
製作者の純利益
(資料)兼山錦二「映画界に進路を取れ第3回」
日本の映画製作における一般的なスキーム(製作委員会方式)
プロダクション
○○製作委員会(著作権共有)
製作委託
出資
テレビ局
出資
配給会社
(2)流通事業者が集まって製作費を出し合い
製作者に映画の製作を委託するため、製作
者が下請化
出資
出版社
そのため・・
5
2.映画産業の問題点∼流通事業(配給・興行)の
ボトルネック(2)
○流通事業(配給・興行)のボトルネック(2)
→そのため、
・流通事業者が回収できる予想収入が製作費の上限となり魅力ある大作が作れない(米国との比較)
邦画と米国作品の配収:製作費
製作費
配給収入 配収/
(億円) (億円) 製作費
おろしや国酔夢譚
45.0
18.0
0.4
Shall we ダンス?
4.5
29
6.4
もののけ姫
20.0
113.0
5.7
ポケットモンスター・ミュウツーの逆襲
3.0
41.5
13.8
上映年 作品名
1992
1995
1997
1998
米国(世界配収)
1998 タイタニック
2000 ミッション・インポッシブル2
2000 ダイナソー
216
108
156
2200.56
815.64
417.36
10.2
7.6
2.7
・下請化した製作者は成果に応じたリターンが得られず、市場のニーズよりも監督の「趣味」に走り勝ち
6
2.映画産業の問題点∼流通事業(配給・興行)の
ボトルネック(3)
○流通事業(配給・興行)のボトルネック(3)
→以上の結果、
・市場のニーズを捉えられない日本映画は観客の足を遠のかせる悪循環に陥っていった
(日本映画の観客動員数は一時ピーク時(昭和33年)の十分の一に落ち込み)
観客動員数の推移
1,200
1,127百万人(昭和33年)
800
600
400
160百万人(平成14年)
200
13
11
9
7
5
3
1
62
60
58
56
54
52
50
48
46
44
42
40
38
36
34
32
0
30
入場者数(百万人)
1,000
和暦(昭和∼平成)年
7
3.映画産業における変化の兆し
○映画産業における変化の兆し
(1)シネマコンプレックスなど興行における新規参入
・大店立地法施行(平成12年6月)直前の駆け込みで近年シネマコン・プレックス(シネコン)が急増
第1号:平成5年4月 ワーナー・マイカル海老名 開業
平成14年12月時点、全国で174サイト、1,396スクリーン
・鑑賞料金の多様化、流通事業者の系列から自由な作品上映、映画館の情報化等により閉鎖的な興行慣行を改善
(2)アニメを中心とする興行的成功
・人気アニメ「ポケモン」の全世界的成功(世界全体の興行収入300億円以上)、宮崎アニメの成功(「もののけ姫」
に続く「千と千尋の神隠し」は「タイタニック」を抜いて日本の興行収入記録を更新。世界三大映画祭の一つベルリン映
画祭でアニメとして世界で始めて金熊賞を受賞)
・市場ニーズを踏まえた「作り込み」をした作品は興行的にも成功する証左
(3)CG、デジタルシネマをはじめとする技術革新
・コンピュータグラフィックス(CG)により映像表現の可能性が飛躍的に拡大、また、セット等を設置するコストも低
減
・デジタルシネマ(デジタルカメラで撮影した映像をコンピュータで編集し、データ形態で映画館に配信してプロジェク
ターで上映)により、編集、フィルムコピー、フィルム輸送等のコストが大幅に低減
8
4.競争力のある映画産業に向けての課題と対応
○映画の「作り手」(製作者・権利者等)が成果に応じた適切なリターンの得られる環境を整備することが必要
○これによって、「作り手」に優秀な人材を惹き付け、知的創造サイクルの好循環を生み出す
(1)不透明な商慣行を排除した公正な競争の確保
・独占禁止法の活用等による、興行保証、ブロックブッキング(配給会社による映画館の上映スケジュールの
固定)といった不透明な取引の排除
(2)配給・興行形態の多様化による流通ルート間競争の促進
・上映希望者・上映施設間のマッチングによる新たな映像上映ルートの立ち上げ(次ページ参照)
・知的財産の適切な保護を前提としたブロードバンドの立ち上げ
(3)知的財産をビジネス化する人材の育成
・知的財産をビジネス化するプロデューサーの育成
(4)製作事業者による資金調達環境の整備
・信託等を活用した製作事業者による一般投資家等からの資金調達スキームの整備
(5)その他
・地域における映像製作を支援するフィルムコミッション(FC)に対する支援
・東京国際映画祭、東京国際アニメフェア等国際的なフィルムマーケットの整備
・アジアを中心とする海賊版対策
・CG、デジタルシネマ等基盤技術開発支援 等
9
4.競争力のある映画産業に向けての課題と対応(2)
○競争力のある映画産業に向けての課題と対応(2)
経済産業省における最近の施策
○映画産業に関する商慣行改善調査研究(H12年度事業)
映画制作・配給・興行会社のメンバーで構成する商慣行調査研究会(座長・安念潤司成蹊大学教授)を設置し
、映画産業の商慣行について各関係者の現状認識を把握し、それぞれの本来担うべき責務について検討した。
その結果、日本の映画産業における旧態依然とした独自の商慣行に対し、各関係者のスタンスの相違による認
識の乖離から相互不信がみられ、このことが映画産業の変化を阻害し、停滞感を生んでいると見られることが明
らかになった。
○デジタルコンテンツ地域上映事業実証試験(H13、H14、H15年度事業)
地域におけるデジタルコンテンツ上映事業を普及させることにより、デジタルコンテンツの上映型利用の推進
及び地域における映像関連産業の活性化、公共文化施設等の利用促進、並びに地域の生活の豊かさの向上に資す
ることが可能となる。そのため、デジタルコンテンツ上映に意欲ある地域の事業主体を支援してデジタルコンテ
ンツの大規模公開の可能性を調査する。
○プロジェクトインキュベーション型コンテンツ制作支援事業(H14年度事業)
多メディアに対応し新しいビジネスモデルの可能性を秘めたプロトタイプ制作のシードマネーの提供、ビジネ
スモデル、プロモーション、資金獲得等へのアドバイスを通じて、マーケット・デビューをサポートする。
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