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日本と海外、双方向のEコマース事業の プラットフォームを形成したい

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日本と海外、双方向のEコマース事業の プラットフォームを形成したい
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vol. 1585
昭和54年 4 月24日第三種郵便物認可 週 1 回月曜日発行
ウィメンズ・ウエア・デイリー・ジャパン
2010年
(平成22年) 6月21 日
(月曜日)
発行
WWD FOR JAPAN
伊藤忠商事
日本と海外、
双方向のEコマース事業の
プラットフォームを形成したい
伊藤忠商事では、岡藤正広氏の社長就任にともない、繊維カンパニーの新プレジデントに岡本均氏が就いた。ブランドマーケティング、原料・テキスタイル、
OEM の 3 つを柱に、
総合商社の中でも高い収益力を誇る、伊藤忠商事の繊維カンパニーの今後の戦略について岡本プレジデントに聞いた。生産面だけではなく、市場としての可能性から中国企業と
の提携、日中両国での E コマース事業の準備など中国戦略を加速化する同社の方向性とは?
PHOTO BY RYOICHI INOUE
WWD ジャパン(以下、WWD):商社各社 OEM に繊
場が伸びているが?
維事業を集約し、子会社化する傾向にあるが?
岡本:無店舗販売には積極的に取り組んでいく。海外
岡 本 均 プ レ ジ デ ン ト( 以 下、 岡 本 ): 伊 藤 忠 商 事 は
での販売も考えている。E コマースであれば、エリア
OEM を主に手掛ける部隊を有している。川上から川
を越えて販売できる。個人ビザが緩和され、中国から
下までを俯瞰した形でバ
どんどん観光客が日本に来て、買い物をしている。子
会社のマガシークは雑誌連動型ファッション小売りと
を考えている。
「川上から川下まで
俯瞰したバリューチェーンで
収益を極大化したい」
WWD:国内市場は依然と
岡本均/常務執行役員繊維カンパニー プレジデント
ラを集約しながら、ほかのアパレルや小売りと手を組
リューチェーンを構築して
い く こ と で、 繊 維 カ ン パ
ニー全体での収益の極大化
いうビジネスモデルで、特に F1 層がターゲットとなる。
したがってマガシーク以外の独自の E コマースのイン
フラを整えたい。現状バラバラな各ブランドのインフ
厳しいが?
みたい。中国での展開を含めて、インフラを形成し、
岡本:消費回復の兆しがあると言われるが、ブランド
コンテンツを充実させていく。日本の商品は中国で信
にしろ、素材にしろ、商社のビジネスでは実感がな
頼が厚い。日本と中国の双方向でやっていきたい。
い。国内市場は少子高齢化で縮小していく。今後は海
WWD:伊藤忠の中国戦略は?
外、特に中国が最も成長のポテンシャルがあるとみて
岡本:日本人の目で見ただけでは、中国のマーケット
いる。昨年資本参加した杉杉集団有限公司は巨大な企
は理解できない。杉杉など有名なパートナーと販売方
業グループだ。繊維だけではなく、リチウム電池やア
法を考えている。中国は代理商が強い。あまり任せす
ウトレットの開発を一緒に行なっている。伊藤忠と取
ぎると、ブランドコンセプトが曲がる。日本で築いた
り組む魅力の一つが繊維だが、繊維以外でも期待され
ブランドビジネスのインフラ作りを中国でも考えてい
ている。伊藤忠全体での取り組み、協業を行なってい
る。中国には「生産地」としての生産インフラがある。
きたい。
これからは「マーケット」として捉え、内販と日本に
来られる観光客の両方を取り込んでいきたい。杉杉は
WWD:繊維カンパニーの収益の内訳は?
岡本:ブランドビジネスが半分、残りが原料・テキス
タイル、資材ライフスタイル、OEM だが、問題はカ
PROFILE:1956 年6 月生まれ。80 年3 月早稲田大学法学部卒業、同年 4 月伊藤忠商事
入社。ファッションアパレル第一部長を経て、2008 年 4 月執行役員ファッションアパレル
部門長就任。2010 年 4 月より現職
ンパニー全体の収益を高めることだ。たとえば、オー
日本の「イオリ」をライセンス販売しているが、先日、
「エル」のライセンス展開を発表した。さらにブランド
を増やすことを考えている。
ガニックコットンやプレオーガニックコットンの原料
ムとなるわけではない。ライフサイクルが下がって収
や織物だけを取り扱うと収益に限りがあるが、原料か
斂する過程でも新しいブランドを導入する。時代に
ら製品まで一貫生産すれば、価格競争の観点からもメ
よって、対象もトレンドも変わっている。ブランドビ
WWD:生産面でのチャイナ・プラス・ワンの考え方は?
リットが出てくる。また、トレサビリティを含めた対
ジネスのインフラと補完関係にあるサブライセンシー
岡本:中国の次はボリューム的にはベトナムだが、ミャ
応も容易になる。個々の商品を取り扱うだけでなく、
を持っていることが伊藤忠のブランドビジネスの強み
ンマーやバングラデシュでも生産している。商品の適
いくつかの機能を持たせれば、ロスがなく、全体の収
であり、大きな財産となっている。
性とリードタイムからどこで生産するかを決めている。
益を高められる。
WWD:この数年でいくつかの M&A も成功させてきた
だが、やはり中国は素材など材料の供給がしっかりと
が?
している。
岡本:三景は一定の合理化効果もあり、回復傾向にあ
WWD:中国生産へのシフトが進む一方で、日本国内
カンパニー全体の連携
原料からの一貫生産を
国内産地は新しい技術で生き残る
る。ジャヴァ・グループは細川数夫・会長の下、各社
の空洞化が言われているが?
WWD:これまでは伝統的に部門ごとに競ってきたが、
の社長がおり、40 数年間赤字になったことのない優秀
岡本:誰が作っても同じ大量生産の商品は難しいだろ
新プレジデントになって方向性が変わったのか?
な企業。昨年は新型インフルエンザの影響で苦戦した
うが、小回りの利く、こだわったパターンのファッショ
岡本:これまでは部門ごとで競って力をつけてきた面
が、今年は好転するだろう。レリアンは強固な販売シ
ン商品は日本でも生産している。クルックと共同で運
はあるが、今後繊維産業全体の市場が広がるわけでは
ステムがあり、店長を中心としたネットワークができ
営しているプレオーガニックコットンを使用した生地
ない。カンパニー全体の連携が必要であり、それは時
ている。我々は繊維を看板としている。ファンドと違っ
に、インクジェットプリントした環境配慮型デニムの
代の要請でもある。たとえばいま安全・安心が求めら
て、企業を売買するつもりはない。だが我々はアパレ
ように、日本の技術を組み合わせて新しいモノを創造
れている。すべてを自社で完結できるわけではないが、
ル経営の専門家でもない。IT や物流など伊藤忠の持つ
できれば、生き残ることはできる。
過程をウォッチし、トレサビリティや CO2 の削減、フェ
機能を提供し、協力していく。ともに成長し、収益を
WWD:商社における OEM 部隊のあり方については?
アトレードなどのすべてに責任を持つ。コミュニケー
上げていきたい。我々が入ることでプラスになれば、
岡本:受身の OEM だけでは、利益率が低くなってし
ションを含め、各部門・グループ会社との連携が今ま
これからも参画していく。
まう。安いところ、安いところに生産を移さざるを得
で以上に取れていると思う。これまでの取組先、パー
トナーと機能を分担しながら、伊藤忠グループという
考え方で連携していきたい。
無店舗販売を積極化
日中両国がターゲット
なくなり、収益が剥がれてしまう。素材提案から始ま
り、ODM で、消費者に何を訴えかけ、どんな売り場に
置かれるのかという提案までしないといけない。SPA
WWD:商社としては圧倒的な 150 を超えるブランド
WWD:百貨店市場が苦戦しているが?
もモノ作りが難しくなっている。為替や労働コスト、
を持つが?
岡本:まだ厳しい状況は続くだろう。合従連衡が続い
カントリーリスクの問題がある。餅屋は餅屋。安定的
岡本:
「ミラ・ショーン」や「カステルバジャック」と
ても、経費構造が重い。急激に回復するのは難しいだ
に適正な価格で、適地生産が商社には可能だ。
いった長年手掛けてきたブランドから日々入れ替えて
ろうが、顧客のニーズを捉えた百貨店はやはり強い。
WWD:今年も投資を積極化するのか?
いくブランドもある。そうしたブランドを積み上げて
しかし、エキナカなどいろいろな商業施設ができてい
岡本:この数年考えていた投資は昨年で実行し終えた。
きた結果と言える。伊藤忠のブランドビジネスは、補
る。保有するブランドで合致する百貨店や GMS がな
今年は厳選して投資していく。しかし、中国での投資
完関係にあるサブライセンシーとともに成長してきた。
ければ、路面を含めた展開を考えたい。
は加速化したい。中国企業は意思決定が早い。乗り遅
ブランドにはライフサイクルがある。また、一気にブー
WWD:既存チャネルが苦戦する一方で、E コマース市
れず、市場としてチャレンジしていく。
vol. 1585
昭和54年 4 月24日第三種郵便物認可 週 1 回月曜日発行
ウィメンズ・ウエア・デイリー・ジャパン
2010年(平成22年) 6月21 日(月曜日)
発行
WWD FOR JAPAN
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ブランドマーケティング第一部門
「伝統と革新の追求」
ブランドビジネスの王道を歩む
ブランドマーケティング第一部門は、事業会社と 250 以上のサブライセンシー、ディストリビューターとともに欧米を中心としたファッションブランドを日本に紹介してきた。とりわけ老舗
ブランドの伝統を守りながらも新しい顧客を創造する術に長けている。その代表例といえそうなのが「ミラ・ショーン」と「ジャン・シャルル・ドゥ・カステルバジャック」である。
伊藤忠商事のブランドビジネスで最も歴史のある
推移している。イタリア、日本、アジアを結ぶグロー
夏より世界同時
バルなブランドビジネスが加速する。
発売となったセ
ブランドが、新たな動きを見せる。ブランドの DNA を
奇抜なコスチュームで話題のレディ・ガガやビヨン
カンドライン
残しながら 30 ∼ 40 代の女性への若返りを推進するの
セといったファッションアイコンが「ジャン・シャル
「JC/DC」 は 10
だ。「ミラ・ショーン」の魅力をモダンに表現したイン
ル・ドゥ・カステルバジャック」の衣装をライブや CD
代後半∼ 30 歳が
ポートラインで発信力を強め、そのシャワー効果で国
ジャケットで着用する。ロンドンでは、老舗百貨店「セ
タ ー ゲ ッ ト。 ブ
内ライセンス商品にも注目が集まることを期待する。
ルフリッジ」との共同イベントを今6 月末まで開催。カ
ランドの世界観
9 月にはミラノのコルソ・ヴェネツィアに 150 ㎡の
ステルバジャック氏によるディスプレーがウインドー
の 中 で、 上 質 か
旗艦店を開く。日本だけでなく欧米でもこれまで百貨
を飾り、店内での販売も好調だ。
つリーズナブル
店主体で展開してきたが、高感度なセレクトショップ
元々アート性の強いブランドだが、独特の世界観が
な商品を提案す
にも広げていきたい考えだ。また新市場として中国を
若い世代に新鮮に映っている。しかし、デザイナー自身
る。 特 に 日 本 で
中心としたアジア圏を開拓する。現在、中国でのディ
の根底にあるものは昔から変わっていない。その先進
はポップでカラ
ストリビューターを選定中で、今期中に決定する予定。
性にようやく時代が追いついてきたのではとブーム再
フルなウォッチ
来の理由について同社は分析する。ポップでグラフィ
が好評だ。
「ミラ・ショーン」。日本導入から 37 年が経過した老舗
「ミラ・ショーン」の持つ高級感と本物の伊ブランドで
あることが評価されている。将
ミラ・ショーン
カルなイラストやカラフルな
現在、国内の直営店はインポートとライセンスのカ
色使い、ラフで実用性の高い
ジュアルライン、スポーツラインあわせて 45 店。今後
はそれ以上のビジネスになる
シルエット。「アンチ・モード
はファーストラインの世界観をインポート、ライセン
可能性が高い。日本国内では現
の旗手」と呼ばれるデザイナー
スの両面で表現し、日本市場に対応したラインアップ
在、レディスのインポートとラ
の時代を超えたクリエイショ
を打ち出していく。また、今年4 月からインテリア雑貨
イセンス商品を展開するコロ
ンが、若い世代の共感を呼ぶ。
アイテムの独占輸入販売も開始した。ライフスタイル
ネットのほか、メンズのロン
日 本 導 入 か ら 20 年 間、 国
型インテリアショップ「タイムレスコンフォート」の
ナーなどサブライセンシーは
内での独占輸入販売権および
8 店舗で販売するほか、卸販売も検討している。一方、
約30 社で、売り上げ規模は上
マスターライセンス権を持つ
サブライセンシーはメンズ、レディスのウエアを展開
代ベースで約330 億円。ファッ
同社は、欧州での再ブームを
するライカをはじめ、バッグ、雑貨小物、靴、眼鏡の
ション誌での PR や企画の刷新
商機ととらえ、新たな客層の
メーカーなど 4 社。売り上げ規模は 2010 年度で約70
効果もあり、売り上げは好調に
開拓に力を入れている。今春
億円に達する見通しだ。
来的には日本と同規模、あるい
ジャン・シャルル・ドゥ・カステルバジャック
ブランドマーケティング第二部門
カテゴリーを越えたライフスタイル領域に挑む
欧米の高級プレタブランドやスポーツブランドのみならず、
「ディーンアンドデルーカ」など食品までを取り扱うのがブランドマーケティング第二部門である。
「衣」の世界で長年培ってきたノ
ウハウを活用し、
「食」
「住」までライフスタイル全体を提案できる、垣根を越えたビジネスモデルを追求する。その中から「ランバン」
「レスポートサック」の成功事例を紹介する。
伊藤忠商事が「ランバン」の日本における独占輸入
での「ランバンコレクション」の中心がアダルト層だっ
販売権およびマスターライセンス権を取得した 2002 年
たのに対し、「ランバンオンブルー」は対象を 25 ∼ 35
以降、同ブランドの国内販売はほぼ毎年103 ∼ 105 %
歳に下げ、小売価格もほぼ半額(スーツでいえば 6 万
の伸び率で推移している。20 社によるライセンス(メ
∼ 7 万円)に設定した。今年春からはライカのレディ
ンズウエア=ジョイックスコーポレーション、レディ
スでも出店が始まった。若い女性を対象とした伊勢丹
スウエア=ライカなど)の合計小売り売上高が 270 億
新宿本店のイセタンガールなどでも出足は好調だ。ブ
円、コロネットのインポートが 30 億円、あわせて約
ランドマーケティング第八課では「ファーストライン
ランバン
300 億円を計上しており、百貨店の主要ブランドの中
の『ランバン』でトレンドを発信し、『ランバンコレク
では五指に入る規模だ。アルベール・エスバスやルカ・
ション』で顧客をしっかり掴み、
『ランバンオンブルー』
オッセンドライバーによる仏本国のファーストライン
で身近なブランドとして新しい層を獲得する。三段構
の人気が背景にあるものの、同社主導によるマーケッ
造がうまく機能している」と手応えを感じている。「ラ
ト戦略の貢献も見逃せない。
ンバンオンブルー」については中長期的にメンズで 20
その成功事例が 03 年からジョイックスのメンズで
店(現在12 店)、レディスで 30 店(同5 店)の体制を
コラボ企画『AIR(アートインレジデンス)
』シリーズ
スタートした「ランバンオンブルー」である。それま
目指す。
を全世界で展開し、ヒットしていることも大きい」と
「レスポートサック」は年間100 種類ものプリント柄
分析する。期待の高い中国においても 07 年に香港のノ
を提案し、軽くて丈夫なカジュアルバッグとして根強
ボ・コンセプト・ホールディング社と独占販売契約を
い人気がある米国ブランドだ。2006 年には、伊藤忠が
締結し、販売を開始。現在、上海、北京を中心に 60 店
米国のパートナーとレスポートサック社を共同買収し、
舗を展開し、年内に 10 店舗を出店する。上海には前年
全世界の商標・販売権を持つ。昨年ブランド生誕35 周
比約140%で推移する好調店もあるという。
年を迎え、アジアでのビジネスも急拡大している。
ここ数年はニューヨークの開発チームと連携し、商
中でも好調なのが日本と韓国だ。両国とも今年5 月の
品企画の刷新を図ってきた。特に日本では、若い女性
売り上げが前年比120 ∼ 130 %となり、過去最高を記
やメンズ向けの商品の強化に乗り出し、これが売り上
録した。好調要因について、ブランドマーケティング
げ増に寄与した。販路は、百貨店を中心に直営店が 80
第十二課では「日本では 5 月に宝島社と共同でムック
店舗。プラザなどの雑貨店やバッグ専門店にも卸して
本を発売し、店頭での認知度が上がったことが売り上
いる。いかに新規客を取り込んでいけるかが重要に
げの伸びにつながった。また、若手アーティストとの
なっている。
レスポートサック
問い合わせ先:伊藤忠商事 繊維経営企画部 06 - 6241-2027 /企画・制作:WWD ジャパン
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