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Vol.25 2010年ロシア連邦政府危機対策ガイドライン

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Vol.25 2010年ロシア連邦政府危機対策ガイドライン
2010 年 1 月 18 日
ロシア関連メモ 025
国際公共政策研究センター
主任研究員 神野
2010 年ロシア連邦政府危機対策ガイドライン
1. 概説
(1)経緯
ロシア政府は 2009 年 12 月 30 日、「2010 年ロシア連邦政府危機対策ガイドライン("Об
антикризисных действиях Правительства Российской Федерации на 2010 год")」
(以下「ガイ
ドライン」
)を採択した。
同政府は経済危機発生後、08 年の緊急対策プログラムと 09 年 6 月の危機対策プログラム第 2
弾 1を策定・実施してきたが、それらの措置は一定の効果を上げGDP低下幅及び生産減少幅も当初
見込みより縮小した。さらに 09 年のインフレ率も前年水準を下回り、下半期からロシア経済は回
復基調に転じた。
しかし、回復は主に資源価格上昇と世界経済の回復に起因するもので、ロシア経済が抱える資
源価格への過度の依存、生産力不足、脆弱な金融システム等の問題は依然として解決しておらず、
経済の構造改革が進んでいない状況は変わっていない。
そこでロシア政府は 09 年で終了する予定であった危機対策プログラムを 2010 年も継続するこ
ととし、内容も危機の影響緩和に主眼を置いたものからロシア経済の近代化に重点を置く内容と
して採択したものである。
この「ガイドライン」に規定される措置実施のための資金として 1,950 億ルーブルが 10 年予算
に計上されており、うち 1,390 億ルーブルが支出目的が決定され 560 億ルーブルが経済情勢の変
化に対応する準備金とされている(文末資料中 図表 7 参照)
。
(2)ガイドラインの目的とその意味
「ガイドライン」目的と意味を的確に表現するものとして現代発展研究所のユフゲニー・ゴン
トマヘル理事が次のように述べている 2。
「政府は経済危機の最悪期は終了し昨年下半期から回復に転じたと発表した。だが、専門家は
成長は安定的ではなく資源輸出を基盤とする旧態依然とした経済モデルが再生産されているに過
ぎないと警告している。新しい危機対策ガイドラインで前面に打ち出されているのは長期的発展
コンセプト、すなわち新しい産業ポテンシャルとイノベーティブな経済の形成である。2010 年に
政府は危機対策をさらに進めるが、それは近代化と構造改革に結びついたものとなる。」
1
2
2009 年 6 月 23 日付ロシア関連メモ No.1「ロシア政府、危機対策プログラム第 2 弾を公表」参照。
The Voice of Russia, 2009.1.2 “Russia's 2010 anti-crisis measures to shape innovative economy.”
1
「ロシアの危機からの回復は今までとは異なる経済の出現を意味する。ロシアは依然として困
難な問題に取り組み解決していかなくてはならないが、2010 年にはさらに危機からの回復からイ
ノベーティブな経済に進むための包括的なプログラムを作らなくてはならない。これは極めて難
しい課題であり、2010 年は回復から石油・ガス価格上昇に依存しない質の高い経済成長を達成す
るための最後のチャンスとなるだろう。
」
このように「ガイドライン」は従来の経済危機の影響を緩和するためのプログラムから、構造
改革とイノベーション経済の構築目指すためのプログラムという性格を強めたものとなっている。
2. ガイドラインの内容
(1)主要優先課題
「ガイドライン」に規定される項目は図表 1 のとおり。
図表 1:2010 年ロシア連邦政府危機対策ガイドラインの項目
1. 序
2. 主要優先課題
2.1. 社会的安定の維持及び包括的社会扶助
2.1.1. 労働市場の緊張緩和
2.2. 経済回復の促進
2.2.1. 企業の資金調達拡大及び債務再構築
2.2.2. 国内需要喚起
2.2.3. 経済成長の基盤拡大:中小企業の発展
2.2.4. 企業城下町経済再構築
2.3. 近代化措置
2.3.1. 経済多様化、国内需要拡大、最先端生産システム導入
2.3.2. イノベーション促進
2.3.3. ハイテク・インフラセクター開発
2.3.4. 長期資金増加
2.3.5. 金融システム近代化
2.3.6. 人的資源開発
2.3.7. 国有部門及び予算
2.3.8. マクロ経済政策近代化
3. 2010 年の経済見通し
「ガイドライン」では①社会的安定の維持及び包括的社会扶助、②経済回復の促進、③近代化
措置の 3 つが優先課題とされており、課題ごとに取り組むべき措置が挙げられている。そのうち
①、②は主に従来のプログラムの内容を継続するもので、③が経済の構造改革・近代化に関する
内容となっている。
2
以下、各優先課題の内容を見ていく(
「ガイドライン」の全文は文末資料参照)
。
(2) 社会的安定の維持及び包括的社会扶助
年金、社会保障、雇用対策を内容とし、具体的には物価スライド方式導入による年金増額、地
方政府及び地方自治体の社会保障機関の業務再構築、
「児童支援基金」
、社会的 NPO 支援メカニズ
ム、職業訓練、就業支援、起業支援等と内容とする。予算額 363 億ルーブル。
(3)経済の回復促進
昨年下期から現れた回復の兆候を持続的なものとするため、2009 年危機対策プログラム中の措
置の一部、特に地方政府向け融資と戦略的企業向け融資保証を継続するとともに、重点策として
①企業の資金調達拡大及び債務再構築、②国内需要喚起、③経済成長の基盤拡大:中小企業の発
展、④企業城下町経済再構築の各領域において図表 2 の内容の措置を実施する。
図表 2:経済の回復促進策
①企業の資金調達拡大及び債務再構築
・ United Aircraft Corporation
3
、 Oboronprom industrial Corporation 4 、 AvtoVAZ
5
、
6
Uralvogonzavod research and production corporation 等の主要セクター大企業の財務リス
トラ支援
・ ロシア中央銀行の流動性供給手段の改善
・ 債権債務関係規正法改正
・ 破産手続法改正
②国内需要喚起
・ 自動車産業
新車買替補助金支給:予算額 110.5 億ルーブル
・ 住宅産業
ⅰ. 住宅建設協同組合設立
ⅱ. 住宅開発機関業務再編
ⅲ. 住宅設備リフォーム基金向け資金拠出:150 億ルーブル
ⅳ. 「マターナル基金(материнского капитал)
」からの資金供出:1,020 億ルーブル
ⅴ. 軍人住宅建設プログラム:444 億ルーブル
ⅵ. デベロッパー許認可システム改善
ⅶ. 建築基準法改正
ⅷ. 輸送インフラプロジェクトの迅速な遂行
③経済成長の基盤拡大:中小企業の発展
3
Объединённая авиастроительная корпорация:ロシア国有航空持ち株会社。2006 年、プーチン大統領の命
令により、ロシアの主要航空機メーカーを統合して設立された。
4
ОПК Оборонпром:ロシア連邦政府 51.01%出資の航空持ち株会社。ヘリコプター、エンジン、軍用機等を製造。
5
АвтоВАЗ:ロシア最大の自動車メーカー。乗用車”LADA”の製造メーカー。
6
Уралвагонзавод はロシアのエンジニアリング、ハイテク産業等複合投資グループ。
3
・ SME 支援プログラム増強
・ ロシア開発銀行 SME 融資プログラム(融資額 1000 億ルーブル、保証枠 8,000 億ルーブル)
・ SME 監督・管理システム改善:関税・租税管理、中小企業関連法執行機関改革
④企業城下町経済再構築
・ 企業城下町再生プログラム:対象企業城下町のリストアップ、資金拠出 100 億ルーブル、
融資額 100 億ルーブル
・ 企業城下町の SME 支援:支出額 20 億ルーブル
(4)近代化措置
構造改革の遂行及びイノベーティブな経済建設のため近代化に関する内容が増強され、①経済
多様化、国内需要拡大、最先端生産システム導入、②イノベーション促進、③ハイテク・インフ
ラセクター開発、④長期資金増加、⑤金融システム近代化、⑥人的資源開発、⑦国有部門及び予
算、⑧マクロ経済政策近代化の各項目について図表 3 の措置が挙げられている。①~③の具体的
近代化支援策のみならず④~⑧の近代化の環境整備に該当する項目も規定されている。
図表 3:近代化措置
①経済多様化、国内需要拡大、最先端生産システム導入
・ 高度先進技術製品製造企業振興のための技術規制整備、基準制定:EU・CIS 基準導入
・ 国、国有企業、国営企業の調達に関する長期的技術政策プログラム策定
・ 輸出支援プログラムの制定・施行。輸出保険機構創設と資金拠出 300 億ルーブル。輸出支
援補助金 100 億ルーブル
・ 外国企業のオフセット・ディールの管理及び財政支援メカニズム創設
・ 経済活性化、近代化、イノベーション支援のための税制改正
②イノベーション促進
・ 「ロシア経済近代化及び技術的発展委員会」の技術開発イニシアティブ実行:100 億ルー
ブル
・ イノベーション支援措置追加
ⅰ. R&D プログラム追加、補助金支出システム制定
ⅱ. 中小企業科学技術開発促進ファンドの小規模イノベーティブ企業支援増強
ⅲ. 国営企業及び国家出資企業のイノベーション開発プログラム実施
ⅳ. R&D 支出を勘案した知的財産権登録
ⅴ. 研究機関向け資金拠出
ⅵ. イノベーティブ企業法人税優遇及び固定資産税控除
ⅶ. 知的財産権の加速償却制度
ⅷ. イノベーション・ゾーン設立支援
③ハイテク・インフラセクター開発
・ 産業戦略プログラム見直し:航空産業、防衛産業、エレクトロニクス、輸送ネットワーク
開発等の戦略・プログラムを対象
4
・ 自動車産業発展プログラム策定
・ 国家主導による戦略セクターリストラ促進
・ 海外生産設備購入プログラム実行
・ エネルギー効率改善プログラム:地方政府及び地方自治体レベルの双方で実施
④長期資金増加
・ 長期資金の原資拡大
ⅰ. 生命保険の長期的発展戦略
ⅱ. 銀行預金の期間種別増加
・ 戦略セクター及び農業、製薬、住宅・インフラ建設向け投資ファンド設立
・ 民営化促進による投資誘致
・ 政府保証付インフラ・ボンド、
「プロジェクト」債等、新金融商品導入
⑤金融システム近代化
・ 証券取引所の監督強化、インサイダー取引規制法制整備、金融機関の破綻処理手続整備
・ 保険メカニズムを発展・整備:最低資本金制度、保険市場監督手続等
⑥人的資源開発
・ 高等教育機関における研究・イノベーション強化
・ 医療へのアクセスと医療の質的向上
・ スポーツ、健康的ライフスタイルの振興策実施
⑦国有部門及び予算
・ 国家セクターのリストラ促進:民営化及び公的機関の改革
・ 国営企業のコーポレートガバナンス改善プログラム実施、リストラ
・ 「連邦契約システム」創設:国家の支出計画の策定、予算配分、インフラ開発コスト管理、
投資プロジェクト実施のための予算の活用等を一貫して行う。
・ 政府契約システムを通じたイノベーションと近代化を促進するための法改正
・ 政府調達に関連機関のネットワーク再構築、予算支出の効率性測定指標導入
⑧マクロ経済政策近代化
・ マクロ経済政策の重点見直し:危機の影響の緩和、流動性供給、予算支出による景気刺激
から長期的経済発展のための安定的マクロ経済的条件構築のための危機後経済政策への段
階的移行
・ 財政政策の重点見直し:危機対策支援と社会扶助措置から将来的潜在成長力の向上とイノ
ベーション型発展モデルの基盤形成
・ 財政支出効率化:非効率な支出・重複機能削減、財政資金を投入する機関の再編プログラ
ム実施
3.2010 年経済見通し
「ガイドライン」には 2009 年の着地見込み及び 2010 年から 2012 年までの主要経済指標の予
測値が掲載されている。
5
石油価格の上昇と世界経済の回復により全体的に 2009 年中の予測値から上方修正されており、
2010 年 GDP 成長率は 3.1%とされている。経済発展省は「ガイドライン」の実施効果によっては
さらなる上方修正も見込まれ、5%~6%になる可能性もあると楽観的な見通しを示している。
図表 4:経済見通し(経済発展省予測:前年対比増加率)
2009
消費者物価上昇率
2010
8.8-9.0
単位:%
2011
6.5-7.5
2012
6.0-7.0
5.0-6.5
GDP 成長率
▲9.5
*3.1
3.4
4.2
製造業生産
▲11.5
2.8
2.9
4.3
設備投資
▲17.6
2.9
7.9
10.3
財政支出
▲4.5
2.9
3.8
3.8
0.7
3.0
3.3
3.7
実質賃金
▲4.4.
0.9
2.4
3.0
小売販売額
▲5.7
3.3
4.1
4.1
実質可処分所得
4.コメント
今回の「ガイドライン」は 2009 年の第 2 弾と比べると重点領域が絞り込まれ、近代化措置の
内容が増えている(図表 5)
図表 5:2009 年危機対策プログラムの重点課題
① 国家の社会的責任完遂
② 経済成長のための産業・技術の潜在力開発
③ ロシア製品に対する国内需要拡大
④ 経済構造改革と技術革新
⑤ 企業活動の障害除去
⑥ 金融システムの安定性確保
⑦ マクロ経済の安定化
⑧ 地方支援
しかし、図表 5 に規定される項目は章立ては変わっているものの、ほぼ総てが形を変えて「ガ
イドライン」に含まれている。政府は 08 年及び 09 年危機対策の効果が上がったことを「ガイド
ライン」の中で謳っているが、実際どの程度が従来の対策措置の効果だったのかはよくわからな
い。
また、
「ガイドライン」は構造改革とイノベーション経済への転換を目標とするとしているもの
の、これらの目標は以前からロシアの最優先課題として取り組まれてきているもので、従来のプ
ログラムにも含まれているものである。
「ガイドライン」中の近代化措置の多くは一般的な言語で記載されたいわば大まかな方針を規
定するもので、個別具体的にどのような措置が取られるのかは今後の政府の取り組みを待つのみ
6
である。
冒頭に引用した現代発展研究所ゴントマヘル理事の言葉によると「2010 年は石油・ガス価格上
昇に依存しない質の高い経済成長を達成するための最後のチャンス」ということであるが、近代
化が遅々として進まない切迫した状況を示唆しているものとも受け取ることができよう。
以上
7
【資料】
2010 年ロシア連邦政府危機対策ガイドライン
1.
序
2009 年第 3 四半期にロシア経済は危機の最悪期を脱した。2009 年下半期から回復に転じ予
備的データは第 3 四半期 GDP 成長率 1.1%、第 4 四半期 1.9%(季節的要因を含む)
。
これまでのロシア政府の危機対策は労働市場の改善と農業セクターの安定に貢献した。鉱工
業生産の減少幅も第 1 四半期マイナス 14.3%から第 4 四半期マイナス 5%と大きく低下した。
その結果 09 年通年の鉱工業生産はマイナス 11.5%となる見込み(2008 年はプラス 2.1%)で、
09 年の GDP 成長率はマイナス 8.5%を下回らない見込みである。
政府の危機対策措置によって危機の深化が回避されたのみならず早期の成長再開が可能とな
った。その他の決定的要因は炭化水素燃料及び他の主要輸出品の国際市場価格の回復と東南ア
ジアを中心とする世界経済の回復であった。
同時にインフレ率の低下という非常にポジティブな変化もあり、回復は持続的でマーケット
における新たなバブルによるものではないことが明確になった。危機対策は社会的緊張の抑制
と失業増加防止にもつながり、失業率は 3 月末 9.1%から 11 月末 8.1%に低下した。
しかしこれらのポジティブな傾向は十分に安定的なものではない。一部産業セクターの生産
は増加したものの、依然として減少が続くセクターも存在する。安定的な成長の鍵である投資
と貸出の減少が続いている。
ロシア経済には商品輸出価格への依存、弱い国内需要とロシア産業の生産不足、脆弱な金融
システム、長期資金不足といった危機の初期段階に急速な悪化の原因となった要素が残ってい
る。2008 年後半から 2009 年かけての政府の危機対策プログラム第 1 段の主な目的は危機の影
響を緩和し、ロシア産業及び技術へのダメージを最小限に抑えることであった。
国内経済の短期的リスクは完全に除去されておらず改革は遅々として進捗していない。その
理由はロシア経済が世界経済の回復に依存しており、それは政府が危機前に脱却しようとして
いた経済モデルの再生産に他ならないからである。
それは
「ロシア経済の近代化と 2020 年までのロシアの連邦社会経済長期発展コンセプト」
(以
下「コンセプト」
)及び「2012 年へのロシア政府行動ガイドライン」達成にもつながらない。
したがって政策の焦点を幅広いセクターを対象とする危機救済措置から新産業の潜在力開
発・近代化・イノベーション及び労働力の質的向上へと転換する必要がある。これによって 2
8
~3 年以内に「コンセプト」に規定された近代化スケジュールの遅れを取り戻さなくてはなら
ない。
だがそれは危機対策措置の終了を意味するものではない。危機対策は 2010 年も継続する。
経済回復を支援し安定的な回復軌道に乗せることが最優先課題となる。必要に応じて新たな措
置を採択し 1,950 億ルーブルの危機対策連邦予算を配分する。特に失業対策、社会扶助、年金、
企業城下町問題に注力する。
2.主要優先課題
2010 年の政府危機及び近代化政策の主要優先課題:
-社会的安定の維持及び包括的社会扶助
-経済回復及び出現しつつあるポジティブなトレンドの安定化
-経済の悪化のスピードと下落幅を大きくしたロシア経済の諸問題(脆弱な金融システム、多
様化されていない経済・輸出、製造業の競争力の欠如)を解決し、産業の環境改善、新たな
ガバナンスモデル(金融市場を含む)を構築し、人的資本投資を増加させる優先的措置を規
定する積極的な近代化アジェンダ設定と遂行
2.1. 社会的安定の維持及び包括的社会扶助
国民のための効果的な社会的扶助を確保することは危機対策の重点課題である。雇用支援メカ
ニズムを改善し社会的プログラムをより効果的に実行する。
2010 年 1 月 1 日から年金受給権の評価に物価スライド方式が導入され年金額が大幅に増額され
る。さらに新しい目的別社会扶助制度を導入するとともに無職・低所得者の年金をロシア連邦各
区の最低年金額まで引き上げるため年金(連邦及び地方)額を増額する。
「2010 年連邦予算及び計画期間 2011 年・2012 年」に関する連邦法に従い受給者の購買力をイ
ンフレ率以上に上げるため、2010 年の社会的支出及び準備金額を 10%増額する。
2010 年に政府は目的別扶助受給者と居住地区の社会保障機関の責任を詳細に規定する社会契
約(社会的適合契約)導入を開始する。法案起草、地方政府及び地方自治体の社会保障機関の業
務再構築、財政的安定性確保のための手続きの改善、必要なソフトウェア導入等を行う。
社会扶助をより効果的なものにする。特に「児童支援基金」を継続し、社会的 NPO のプロジェ
クト支援メカニズムを改善する。
2.1.1. 労働市場の緊張緩和
2010 年に地域プログラムを実施することにより失業者の雇用確保をより容易にし、146,200 人
を対象とする職業訓練、大学卒業者 85,300 人に対する企業内訓練、140 万の雇用創出措置(障害
者雇用 12,000 を含む)及び 169,100 人を対象とする起業支援策等により労働力人口の質的向上を
9
図る。
この目的のために 2010 年連邦予算から 363 億ルーブルを支出する。
2009 年に成功した以下のセクターを対象とする連邦管区との協調融資プログラムに連邦予算
からの補助金を支出する。
-コミュニティー業務及び失業者予備軍である期間雇用者の組織化
-失業者に対する職業訓練及び就業体験機会提供
-失業者の自営化、起業支援
-労働者の移転支援
-民生用航空の再編・近代化により解雇対象となるパイロット、飛行技師向け予防的職業訓練
-障害者就業支援
2010 年における登録失業者数は 2009 年水準(220 万人)を維持する。
政府は 2010 年も移民労働者の就業に関しロシア国民と同等の権利保障措置を継続する。
ロシア民間企業に雇用される外国人労働者についても上記措置を合法とするよう特に留意する。
外国人登録にロシア連邦管区内において合法的に生活・就業するための資格取得を可能とする条
項を追加する。
2.2. 経済回復の促進
ロシア経済の主要セクターの回復を確実なものとする追加的危機対策措置を行う。同時に措置
策定及び実施モニタリング方法を変更する。
2009 年中に行われた措置のうち最も効果があったものは継続する。2009 年の危機対策プログ
ラム長期的措置の一部を継続する。予算措置は 2,330 億ルーブル。地方政府向け融資を継続し戦
略的企業の借入に対する政府保証を拡充する。連邦政府機関による自動車購入及び免許失効旅客
機に対する補助金支給を含む政府決定に従い一定の措置を延長する。
2009 年政府危機対策措置を踏まえて新措置を策定する。2010 年の危機対策措置の目的は最小
の予算で最大の効果を上げることである。
2010 年に現しつつあるポジティブな経済トレンドを確実なものとするため政府は以下の優先
課題を遂行する。
2.2.1. 企業の資金調達拡大及び債務再構築
主要課題は銀行セクターの安定化と企業が適切な条件で融資を受けることを可能とすることで
ある。そのために以下の政策を遂行する。
10
-主要セクターの大企業と協力して発展プログラム、新製品開発、国家的重要性を持つ大規模
プロジェクトにかかる債務再構築を進める。この政策は特に United Aircraft Corporation、
Oboronprom industrial Corporation、AvtoVAZ、Uralvogonzavod research and production
corporation に適用する。パートナー銀行と詳細な業務開発プログラムに合意した企業にのみ
政府支援を行う。プログラムには短期的な財務健全性確保措置と長期的な競争力向上戦略が
含まれなくてはならない。
-ロシア中央銀行の銀行融資手法及び担保取り扱い手続き等の流動性確保措置を改善する。
-債権者・債務者関係法改正
-破産手続改正
2.2.2. 国内需要喚起
国内企業及び個人セクターにおける需要喚起は重要な短期的課題である。失業、個人所得の減
少及び企業の資金調達の困難化により状況は悪化している。需要減退は国内市場の潜在力をベー
スとした経済成長を阻害する。
政府は 2009 年に採択された政策に需要刺激・経済成長策を追加する。2009 年の危機で最も深
刻な影響を受けたセクター及び需要増加・雇用吸収の波及効果が大きいセクターに集中する。こ
れらのセクターとしては自動車産業と住宅建設産業がある。
国内自動車メーカー支援措置として新車買替・旧車スクラップする個人に補助金を支給する。
予算額 110.5 億ルーブル、各補助金額は 50,000 ルーブルを上限とする。この措置は需要増大と自
動車の改良、交通事故減少につながる。
2011 年~2012 年に国内市場におけるロシア産薬品のシェア拡大の環境整備のための国内製薬
プロジェクトを支援する。
住宅建設については、居住用住宅市場支援及び住宅建設協同組合支援関連法の適用促進のため
の追加的措置を行う。
「住宅建設連邦基金」が支援する最初の住宅建設協同組合を設立する。住宅
セクターの開発機関が住宅建設関連予算を効果的に使用するために業務を再構築する。住宅建設、
住替え及びアパート建設を増加させるため政府は住宅設備リフォーム基金に 150 億ルーブルを拠
出する。
住宅購入に「マターナルファンド(материнского капитал)」を活用することは国内需要刺激
を目的とするもう 1 つの政策であり、ファンドは 2010 年に使用可能になる。合計で 1,020 億ル
ーブルが住宅建設に支出される。軍人住宅供給プログラムを通じて国営住宅需要も同様に支援す
る。この目的のため 444 億ルーブルを支出する。
デベロッパーの各種の障害を除去するため地域の計画文書システムを 2010 年から 2011 年に完
成させる。2010 年に建築基準及び関連規制を大幅に見直し、近代的建築技術と技術的規制改革に
11
適合的なものとする。
公的調達の効果を高めるための政策を徹底的に追求する。特に輸送インフラプロジェクト関連。
政府は予算措置を早急に実施し迅速な購入契約締結のため管理を強化する。
2.2.3. 経済成長の基盤拡大:中小企業の発展
中小企業は持続的景気回復と経済成長の重要な要素である。
このセクターの迅速な発展のため政府は 2010 年に SME 支援プログラムを改正し多くの支援措
置を追加する。
SME 支援は近代化・生産の増加・イノベーションを促進する。2009 年にロシア開発銀行が開
始した SME 融資プログラムは 2010 年に完全に実行され主に中小企業融資保証が行われる。
ロシア開発銀行のパートナー銀行からの中小企業向け融資額は 1,000 億ルーブルで保証枠が
8,000 億ルーブル。この融資・保証により中小企業はエネルギー効率改善プログラムを遂行する。
SME 監督・管理システムを改善する。関税、租税管理及び中小企業関連法執行機関の改革が重
点課題。現状の SME 許認可プログラムを簡素化し設立は報告制に変更する。
地域雇用プログラムを通じた起業支援も継続する。
2.2.4. 企業城下町経済再構築
経済、財政、社会的サービス殆どを1つの企業に依存する企業城下町は経済危機により最も深
刻な影響を受けた。
この地域の経済の持続的回復には相当な努力が必要である。Togliatti 7、Nizhny Tagil 8等の多くの
町は地域経済全体及び全セクターに悪影響を及ぼす恐れがあるため迅速な経済再構築が必要であ
る。
政府は再生プログラムの対象となる企業城下町のリストを承認した。2010 年にはこの目的のた
め連邦予算から 100 億ルーブルを支出し、100 億ルーブルを融資する。プログラムは非効率的な
企業の雇用維持ではなく企業のリストラ・代替雇用創出・地方経済多様化を行う。企業城下町に
おける SME 支援プログラム、工場建設、ビジネス・インキュベーター設立等により行う。企業城
下町の再生支援に総額 20 億ルーブルを支出する。
7
8
ロシア連邦サマラ州の都市。AvtoVAS の製造拠点。
ロシア連邦のスヴェルドロフスク州にある鉱工業都市で、鉄鉱山や製鉄、戦車製造で知られる。
12
2.3. 近代化措置
2010 年及び 2011 年は、ロシアを「コンセプト」に規定されるイノベーティブな経済社会発展
軌道に乗せるための重要な年となる。経済危機はロシアのあらゆるセクターに負の影響を与え近
代化の出発点を大きく狂わせた。
「コンセプト(2009-2012)
」の第 1 段階の大部分はイノベーテ
ィブな成長の基盤形成ではなく危機以前の状況回復に充てられることになった。
2012 年後の経済成長の質と長期的経済発展目標の達成の可能性を規定するのはこの 2 年間に行
われる政策である。そのために我々は 2010 年前半にも政策の再設定と新しい経済構造形成へ向
けた金融財政政策の焦点変更等の近代化という目標のための重要な調整を行わなくてはならない。
近代化の目標を達成するためには次のことが必要である。
-経済政策を危機対策から近代化へ変更する必要条件整備:マクロ経済の安定と経済活動の拡
大を保証する経済機関の改善(法執行の適正化、官僚的障壁の除去、成長促進するための税
制改正等)
-近代化プロセス促進措置の遂行:イノベーション、インフラ(輸送、エネルギー、テレコム)
開発、ロシア製品の需要喚起、困難に直面する地域の改善、地方の「成長ハブ」の創設等
政府の近代化行動計画は以下のとおり進める。
2.3.1. 経済多様化、国内需要拡大、最先端生産システム導入
ロシア経済の資源価格依存を低下させるために、経済及び輸出多様化政策を強力に推進しなく
てはならない。主要領域は以下のとおり。
-高度先進技術製品製造企業振興のための技術規制の改正、近代的技術規制システムと国家基
準の迅速な制定;EU 及び CIS 基準導入を含む。
-国家及び国有企業、国営企業の調達に関する長期的技術政策プログラム策定:企業の新製品
開発のガイドラインとなる。
-輸出支援プログラムの制定・施行。輸出保険機構創設と資金拠出(上限 300 億ルーブル)
。輸
出支援のための財源増額(輸出支援補助金 100 億ルーブル;2010 年)
。
-VEB(Vnesheconombank) 9、ルスナノ 10、その他開発機関及び国有銀行と共同で外国企業
のオフセット・ディールの管理及び財政支援メカニズムを創設:近代的ハイテク製品・設備
生産の段階的ローカライゼーション、応用研究開発、ロシアのおけるエンジニアリングセン
ターの設立、一貫生産等を可能にし、ロシア製造業とのパートナーシップによるノウハウ・
知的財産移転を可能とする。
-経済活性化、近代化、イノベーション支援のための税制改正:将来的に税収源となる領域に
おける優遇税制パッケージの策定と適用等
9
10
Внешэкономбанк:ロシア開発対外経済銀行
Российская корпорация нанотехнологий» (РОСНАНО):ロシアの国営ナノテクノロジー企業
13
新企業創設及び新投資プロジェクト実施促進のため、地方の工業団地の設立をサポートするメ
カニズムを構築:連邦と地方が共同で資金負担する。
危機対策支援が終了後、開発機関(VEB 及びロシア連邦投資ファンド)は本来の目的である重
要プロジェクト、特に新生産オペレーション設立向け長期投資に復帰する。
投資誘致プログラムの加速:投資家との協働及び新投資プログラム認可手続き簡素化
生産設備改修、新生産・管理技術導入及びロシア産業の競争力向上の観点から移民政策を見直
す。制限的モデルから転換し、管理職、エンジニア、専門職、熟練工等、経済近代化に必要とさ
れる移民労働者の積極的導入に転換。
2.3.2. イノベーション促進
2009 年に大統領直轄「ロシア経済近代化及び技術的発展委員会」設立を始めとする多くのイノ
ベーションのための取り組みが行われた。2010 年予算では委員会のイニシアティブ実行のため
100 億ルーブルを計上した。委員会で決定された技術開発イニシアティブの実行等の最も優先順
位の高い領域で成果を上げるため、最重要イノベーション政策の順位付けを行い、そのイニシア
ティブによるプロジェクトを支援する財政的・組織的メカニズムの構築が必要である。そのメカ
ニズムには VEB、ルスナノ、中小企業科学技術開発促進ファンドが含まれる。
以下のイノベーション支援措置追加を検討する。
-R&D プログラム実施、新しいタイプのイノベーティブな製品の開発・デザイン及び海外にお
ける特許取得費用等への補助金支出システム制定
-中小企業科学技術開発促進ファンドからの小規模イノベーティブ企業支援増強
-国営企業及び国家出資企業の政府基準を満たすイノベーション開発プログラム実施
-R&D 支出を勘案した知的財産権登録
-税当局から企業の R&D プロジェクトへの資金拠出を承認された研究機関のリストアップ等
-イノベーティブ企業の一部のカテゴリーに対する法人税優遇及び固定資産税控除
-科学、技術、製造(発明、企業の裁量に基づくビジネスモデル特許等を含む)に直接用いら
れる知的財産権の加速償却
-大学、研究センター、国家出資企業等によるイノベーション・ゾーン設立に対する開発機関を
通じた支援
2.3.3. ハイテク・インフラセクター開発
経済危機から回復後はハイテク、軍事関連セクター及び経済システム改善に必要なセクターの
成長を加速させることが重要である。
そのため 2010 年には産業戦略プログラムを新たな経済状況を反映するように見直す。航空産
業、防衛産業、エレクトロニクス、輸送ネットワーク開発等の戦略・プログラムを対象とする。
14
自動車産業発展プログラムを策定しロシアの自動車産業が技術開発において直面する課題を解決
するために政府と民間のパートナーシップを幅広く活用する。
国家は戦略セクターのリストラクチャリングにより積極的に取り組み、国内における競争促進
及び国際市場での製品販売促進を行う。
企業の競争力強化と技術水準向上のため、ルスナノ、VEB 及び国家出資銀行は主要経済セクタ
ーの近代化に必要な海外生産設備購入プログラムを遂行する。
2010 年にはエネルギー効率改善プログラムを地方政府及び地方自治体レベルの両方で実施す
る。企業に現行法に従いエネルギー効率改善戦略を実施させる。
2.3.4. 長期資金増加
ロシアの銀行システムの長期的安定とロシア中央銀行のインフレ抑制政策がロシア企業への長
期貸出が可能となる条件であるが、それだけでは経済近代化の資金は不足で、金融市場の活用が
必要となる。
長期貸出の原資として最も重要なものは年金と保険である。政府は生命保険の長期的発展政策
を取りまとめ、銀行預金の期間種別を増やすことで長期貸出の原資を増やすことも検討する。
海外投資家から長期投資資金の原資を調達するために近代化に必要な戦略セクター及び農業、
製薬、住宅・インフラ建設に投資するファンドを海外投資家と共同で設立する。
国内及び海外からの投資を誘致するため、政府は経済における国有資産の割合を低下させる。
これは IPO、SPO 等、入札・競売とベースとする公開市場手続きを通じた民営化によって行う。
主要経済プロジェクトの資金調達のための新しい金融商品を導入する。例としてはロシア政府
保証付きインフラ・ボンド、
「プロジェクト」債等がある。
2.3.5. 金融システム近代化
金融サービスの信頼性及び金融仲介機能向上のためには金融市場規制システムの近代化が必要
である。ロシア金融市場を投資家、企業にとってより魅力あるものとし、ロシアにおける国際金
融センター設立の環境整備にもつながる。
そのためには証券取引所の監督強化、インサイダー取引規制法制整備、金融機関の破綻処理手
続の整備が不可欠である。
政府は新しい形態の保険を導入するための経済的インセンティブや法律を用いて保険メカニズ
ムを発展させるための努力を継続する。保険は国家認証を不要とする産業又は不可抗力に対する
15
保護を補償する産業に導入されなくてはならない。最低資本金額、保険市場監督手続き等の基準
整備も必要である。
2.3.6. 人的資源開発
政府は高等教育機関における研究・イノベーション強化に必要な措置を取る。まず初めに国立
研究機関及び連邦大学向け支援を増額する。研究・実験施設の拡充及び海外からの最先端の科学
者招聘、学術研究交換費用として 300 億ルーブルを配分する。さらに労働市場の流動性を高める
ため労働者の資格取得・基準向上のための継続教育実施措置を行う。
医療へのアクセスと医療の質向上のため政府は以下の改善措置を行う。
-医療機関の透明性と財政的独立性を高めるためのメカニズムを開始し、医療機関規制を改正
する。
-「無料医療に対する政府保証プログラム」を確定しリストを決定する。
-医療保険システム確立による一元的医療資金調達の基盤を確立する。失業者の強制保険料支
払いルール統一も含む。
-最重要薬品価格を負担可能範囲に抑えるため、価格規制メカニズムを改善する。
スポーツ、健康的ライフスタイルの振興のためスポーツ施設の拡充を図る。
2.3.7. 国有部門及び予算
近代化における最重要課題の1つは国家セクターのリストラクチャリング、民営化の推進と財
政資金で運営される機関の改革である。
国家セクター改革のためには国営企業のコーポレートガバナンス改善プログラム実施、民営化、
国営企業のリストラを加速させなくてはならない。
国有部門のコスト、予算及び財政資金を投入する投資プロジェクトの費削減につながる目標は、
国家の支出計画の策定、予算配分、インフラ開発コスト管理、投資プロジェクト実施のための予
算の活用等を一貫して行う「連邦契約システム」をつくることである。
政府契約システムを通じたイノベーションと近代化を促進するための法改正を行う。
政府調達に関連する財政資金で運営される機関のネットワーク再構築と、それら機関に対する
予算支出の効率性測定指標導入によって、予算支出の効率性を高める努力を行う。
2.3.8.マクロ経済政策の近代化
2010 年にマクロ経済政策の主要側面へのアプローチを見直す。危機の影響の緩和、流動性供給、
予算支出による景気刺激から長期的経済発展のための安定的マクロ経済的条件構築のための危機
後経済政策への段階的移行を図る。
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財政政策は開発と近代化に重点を置く。多様な経済セクターに対する危機対策支援と社会保障
措置から将来の潜在成長力の向上とイノベーション型発展モデルの基盤形成に重点を移す。
予算支出の効果を高めるためには財政コスト削減と効率性向上を先ず行わなくてはならない。
非効率な支出・重複する機能削減、財政資金を投入する機関のネットワークの最適化、さらに社
会的サービスの入札化等を含む財政資金を投入機関の再編プログラムを採択・実施する。
3.2010 年の経済見通し
2009 年後半に石油価格が予想を上回って上昇したことと世界経済の回復によって 2010 年の見
通しは改善した。
先進国経済は 2009 年第 3 四半期に底打を打った後、回復へ向かった。世界経済は 2009 年マイ
ナス 2%、2010 年+3.3%、2011 年+4.1%、2012 年+4.8%の見込みである。
世界経済の良好な環境とロシア政府の有効な危機対策によりポジティブな傾向が強まり、2010
年におけるマクロ経済指標もおおむねプラスとなる見込みである。
設備投資は 2010 年+2.9%見込み。資源価格上昇は輸出収入増加のみならずリスク低減と投資増
加にもつながる。2010 年下期には融資条件も改善する見込みである。資源セクター投資は拡大し、
さらに農業、輸送(パイプライン、道路を含む)及びコミュニケーションセクターへの投資も増
加する。
投資及び外需増加により鉱工業生産指数も上昇し、2010 年には+2.8%となる見通し。製造業生
産は+3.5%となり産業全体の成長に大きく寄与する。
インフレ率低下は継続する。2010 年上期は国内需要停滞とルーブル為替レート上昇によりイン
フレ率は年率 6%~7%に止まる。2009 年の穀物価格低下もこれに寄与する。経済が回復し需要が
増加するにつれてインフレ率は上昇し年間ベースで 6.5%~7.5%となる見込み。
2010 年~2012 年にかけてインフレ率が低下することにより経済も改善し実質所得は+6.5%と
なる。低インフレは国民の可処分所得増加にもつながり 2010 年+3%となる。特に年金受給者の
所得増加の影響が大きい。2010 年の失業者数は安定的で年間を通じて 630 万人(8.6%)に低下
(2009 年は 640 万人)
。
2010 年には社会保障給付の物価スライド制導入、年金受給者の収入増、インフレ率低下等によ
り個人消費も増加する。個人消費+3.3%。所得上昇と貸出の増加により今後数年間は増加が見込
まれる。
17
現在の世界経済の状態が継続すれば 2010 年の GDP 成長率はプラス 3.1%となる見込み。一方
有効な危機対策および近代化措置が遂行され経済の短期的な問題が解決された場合(銀行融資の
停止状態の終結、製造業の競争力回復、ルーブル為替レート上昇等)
、ロシア経済はより早く回復
し 5%から 6%成長も可能となる。
図表 6:主要経済指標予測
2009
消費者物価指数 年末比 %
2010
2011
2012
108.8-109
106.5-107.5
106-107
105-106.5
GDP 成長率 %
91.5
*103.1
103.4
104.2
製造業 %
88.5
102.8
102.9
104.3
設備投資 %
82.4
102.9
107.9
110.3
財政支出 %
95.5
102.9
103.8
103.8
100.7
103.0
103.3
103.7
実質賃金 %
96.6
100.9
102.4
103.0
小売販売額
94.3
103.3
104.1
104.1
実質可処分所得 %
*
ロシア経済発展省予測によると、危機対策及び近代化措置が実現し、世界経済の回復基調が継続すればこの
指標は 3.5%程度上昇する。
図表 7:優先的危機対策措置実施のための 2010 年連邦予算(案)
金額
(百万ルーブル)
措置
合計
195,000
1.支出対象確定分
138,965
United Industrial Corporation Oboronprom の債務返済・金利支払資金のための増資
2,477
United Aircraft Corporation 〃
10,700
ロシア国産車買い替え補助金
11.050
企業城下町プロジェクト投資資金
10,000
農産物、原材料、食料市場介入資金
5,038
連邦当局による自動車、道路建設機械購入資金
20,000
国営企業への資産追加供出:住宅施設リフォーム基金
15,000
自動車・輸送器具製造機械業向け補助金
2,500
輸出産業向け補助金
7,000
金融機関向け個人自動車ローンにかかる損失補填
1,000
Dzerzhinsky Research and Production Corporation Uralvagonzavod 増資資金
10,000
戦略的企業、軍需産業向け資金
40,000
地方労働市場の緊張緩和資金
4,200
2.準備金
56,035
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