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てんかんと脳損傷 - なやクリニック
て ん か ん と 脳 損 傷 －どうなるの？、そしてなぜ？ てんかんは、脳内の電気的機能が一時的に変化することにより起こってくる慢性の状態で、 痙攣発作を引き起こし、意識や運動、感覚に影響を及ぼします。 てんかんは脳損傷と大いに関係があります。てんかんはそれ自体でも神経系に損傷を与える 可能性があり、転落や激しい発作によって外傷性脳損傷になる危険因子でもあります。てんか んはまた脳損傷が原因で起こる場合があり、さらに複雑なことには、脳損傷者の不安定な気分 の状態（情緒不安定といいます）を安定させるのに抗てんかん剤が処方されることがあるので す。 てんかんというのは何ですか 「てんかん」というのは、一般に脳の機能の異常によって起こる痙攣を意味します。一度の 痙攣からすぐにてんかんと診断はしません。一度だけでおしまいということもありえます。ま た他の状態、つまり体温の上昇、化学物質による中毒などで痙攣を起こすことがありますが、 てんかんという診断にはならないこともあります。 原発性と二次性てんかん てんかんは原発性と二次性に分類されます。原発性てんかんでは脳の中に異常を見つけるこ とができませんので、原因が特定できません。二次性のてんかんでは、発作は脳の組織の異常 によって起こるので、ＣＴやＭＲＩによって発見できることがあります。脳損傷は二次性のて んかんを引き起こす可能性があるのです。 発作 発作（痙攣とか引きつけとも言います）は脳の機能の一時的な変化で、精神状態が変化した り、強直あるいは間代運動その他いろいろな症状を現します。発作は脳の細胞群の一時的な異 常な電気的活動によるものです。発作は、アブサンス（小発作として知られています）や強直 － 間 代 （「 大 発 作 」） な ど に 分 類 さ れ ま す 。 ア ブ サ ン ス 発 作 は 「 魔 法 に か か っ た よ う 」 に 見 え ま す。つまり、アブサンス発作の人は、無表情でぼーっとした顔をし、目的もなくそこかしこを 動くこともあります。アブサンス発作は数秒間続き、車の運転や料理のように、不注意により 危険な状態を引き起こさない限り、直ちに危険というわけではありません。対照的に、強直－ 間代発作は、よりわかりやすい「ひきつけ」です。強直というのは、筋肉の緊張のことで、全 身の筋肉が一瞬のうちに硬くなってしまいます。間代というのは、筋肉が連続して収縮したり 1 堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」 弛緩したりを繰り返すことで、強直の時期に続く痙攣を言います。 発作はまた全般と部分とに分類されます。全般発作は脳の両側から起こります。全身の痙攣 発作もしくは短い間眼を見開くような症状がしばしば起こります。部分発作は脳の一部分から 起こってきます。単純部分発作では、痙攣を引き起こすような脳の電気信号はある部分に限局 していますので、気分、感覚、動きあるいは他の症状を意識レベルが変化することなしに経験 します。急に混乱したり、何かをまさぐったり、うろうろしたり、不適切な語句を繰り返した りすることがあります。 痙攣の前にオーラ（前兆）があることが良くあります。これには幻覚、めまい、軽い頭痛、 恐怖感、あるいは既視感（デジャ・ビュ）などがあります。一方、なんらの前触れがない場合 もあります。痙攣の前の感覚を認知して、それに備えて行動することは、大きなけがを防ぐ重 要なテクニックになりえます。 側頭葉てんかん てんかんの中でも特筆すべきタイプに側頭葉てんかんがあります。側頭葉てんかんは様々で すが、強い情動、幻覚、あるいは精神状態の変化が、意識喪失することなく起こります。二十 世 紀 初 頭 の ロ シ ア の 作 曲 家 ド ミ ー ト リ ー ・ シ ョ ス タ コ ー ヴ ィ ッ チ （ 1906－ 1975） は 第 一 次 大 戦時、砲弾の破片が脳の中に刺さったことから側頭葉てんかんが起こったと言われています。 彼は、頭を一方に傾けると破片が側頭葉を押すので、メロディーが聞こえ、それを作曲につか ったようです。 てんかんと後天性脳損傷 てんかんが脳損傷を起こす 神経系の制御不可能な興奮は、痙攣発作を引き起こし、これによって長期的な構造上および 機能的な変化が神経系統と脳に起こります。とりわけ、発作は海馬と扁桃核に損傷を与えます。 これらの場所は、記憶と情緒といった機能をつかさどっています。こうした変化の原因はよく わかっていません。 頑固なしつこく繰り返す痙攣発作によって引き起こされる脳損傷は、過剰な神経への刺激の 結果、脳内に有毒な化学物質が生成されることと関係しています。こうした毒素によって起こ る損傷には、抑制系の神経の破壊も含まれるので、いっそうてんかんへと向かうのです。 てんかん発作にともなう脳損傷は、強直－間代発作の間の頭部外傷、あるいは呼吸が不十分 になり血中の酸素濃度が低下することにより低酸素性の損傷が起こりえます。 2 堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」 脳損傷によるてんかん アメリカでの研究によりますと、中程度から重度の脳損傷のうち、４分の１はてんかんが起 こるといわれています。脳内に出血をした損傷が最も危険性があります。外傷から最初の発作 が起こるまでには、通常３ヶ月あるいはそれ以上の遅れがあります。しかしこの期間の幅は広 くて、数年にわたることもあります。外傷と発作の発症の間の期間が長いほど、本当のてんか んになる可能性が高くなります。脳損傷によっててんかんが引き起こされる原因は、最近にな ってようやくわかってきました。損傷の後、脳は自ら配線をし直すようにして建て直しをする のです。神経は充分には回復しませんし、新しい神経ができることはないのですが、神経は他 の神経と新たな結合を形成することはできるのです。この過程は可塑性といわれ、脳損傷から の回復になくてはならないものです。残念ながら、可塑性は完璧ではありません。神経は間違 った場所に結合を起こすことがあるかもしれません。あるいはあまりにも敏感なところに結合 して、過剰興奮を起こすかもしれません。こうした間違いによって、てんかんを引き起こすこ とがあるのです。 抗痙攣剤は、頭部外傷の患者に予防措置として投薬されます。痙攣発作が脳圧の亢進によっ て起こるかも知れず、もし患者が重篤なケアを受けている間に起これば、大変良くない結果を 生じるのです。この投薬は、通常リハビリを受けている間に次第に減薬され、無くなるもので す。最近の研究によれば、新しい抗てんかん薬は、リハビリの過程で与えられていると、てん かんを防ぐ可能性があるといわれています。しかしこの研究はいまだ始まったばかりで、結論 は得られていません。 ゆっくりとした発症 脳損傷によるてんかんは、通常激しい強直－間代発作で始まることはありません。記憶が飛 んだり、注意がおかしくなったり、その他のわずかな症状で発作とは気づかないようなアブサ ンス発作で始まるかもしれません。 さ ら な る 情 報 （原著では英語圏のものが紹介されていましたが、わが国のウエブサイトを紹介します） 社 団 法 人 日 本 て ん か ん 協 会 http://www.jea-net.jp/ て ん か ん Ｑ ＆ Ａ （ 日 本 て ん か ん 学 会 ） http://square.umin.ac.jp/jes/QA1/epilepsyQA.html 静 岡 て ん か ん ・ 神 経 医 療 セ ン タ ー http://www.hosp.go.jp/~szec2/08/08-top.htm て ん か ん ネ ッ ト ワ ー ク http://phy.atnifty.com/jepnet/ 日 本 神 経 学 会 治 療 ガ イ ド ラ イ ン http://www.neurology-jp.org/guideline/epilepsy/index.html （ ク イ ー ン ズ ラ ン ド 脳 損 傷 協 会 フ ァ ク ト シ ー ト よ り 許 可を 得 て 翻 訳 転 載 ） 3 堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」 4 堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」