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子宮頚部 増殖期子宮内膜 分泌期子宮内膜 卵巣と卵管

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子宮頚部 増殖期子宮内膜 分泌期子宮内膜 卵巣と卵管
2012/6/6
2012.6.14
正常組織が分かっているか?
F0A
女性生殖器の病理学
F0B
F0C
F0D
横浜市立大学医学部
分子病理学講座
古屋 充子
F0A
子宮頚部
増殖期子宮内膜
分泌期子宮内膜
卵巣と卵管
のほほん・と観るべからず.
何故そこから病気が発生するのか考えて
円柱上皮
子宮頚部
卵管
squamocolumnar
junction (SCJ)
扁平上皮
卵巣 卵管采
子宮内膜
子宮頚部
Squamo-columnar
junction (SCJ)
[頚癌の好発部位]
腟
ナボット嚢胞
(Nabothian cysts)
扁平上皮化生
(Squamous metaplasia)
I.
扁平上皮化生により既存の頚管腺開口部が塞がり管腔拡大.
II. 背景に頚管炎を有することが多い.
III. 腺細胞は扁平化し, 細胞異型はない.
円柱上皮が (良性の) 扁平上皮に置き換わること
1
2012/6/6
F0A/F8子宮頚部扁平上皮癌とその母地
F0
子宮頚部異形成から上皮内癌へ
F8
傍基底層細胞が
無秩序に増殖
F0A/F8 癌は一日にして成らず
コイロサイトーシス(koilocytosis)
=HPV(パピローマウイルス)感染
正常扁平上皮の傍基底細胞の増殖=異形成
コイロサイトーシス(koilocytosis)を伴う
子宮頚部異形成(CIN)と子宮頚癌
 ヒトパピローマウイルス (HPV)が発症に関与
 HPVには様々なタイプがあるが, その中でも type 16,
18などがハイリスク.
High risk HPV: 16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51,
52, 56, 58, 59, 68
子宮頚癌のほぼ100%でハイリスクHPV陽性
Low risk HPV: 6, 11, 42, 43, 53, 54, 57, 66
子宮頚部異形成(CIN)と子宮頚癌
子宮頚部異形成(CIN)と子宮頚癌
CIN: Cervical Intraepithelial Neoplasia
CIN: Cervical Intraepithelial Neoplasia
CIN-1
CIN-2
CIN-3
CIN-3
軽度異形成
中等度異形成
高度異形成
上皮内癌 (CIS)
CIN-1:軽度
正常
CIN-2:中等度 CIN-3:高度
異形成
上皮内癌
Low-risk HPV
High-risk HPV
一過性感染
経過良好
頚癌予備軍として
経過観察
(紙一重の差・ほぼ同レベルの疾患として扱う)
2
2012/6/6
どうやって病理標本で
異形成の程度(CIN 1-3)を決めるか?
細胞分裂像や細胞周期の染色で評価
3/3
2/3
ワクチンで予防できるHPVタイプ
 Cervarix: HPV 16, 18 (45)
 Gardasil: HPV 6, 11, 16, 18
High risk HPV: 16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51,
52, 56, 58, 59, 68
1/3
CIN-1
CIN-3
HPVワクチンの目的
若年者 (20-30代)の頚癌発症
を予防する (中年は非対象)
長期効果期間に関する情報は
まだない
予防できるHPV typeは数種類
これまで同様, 癌検診は重要
Low risk HPV: 6, 11, 42, 43, 53, 54, 57, 66
F8 子宮頚部上皮内癌
(CIS: Carcinoma in situ)
 正常上皮を置換するが基底層を超えない扁平上皮癌
 Squamo-Columnar Junction (SCJ)が好発部位
 内頚腺を置換する (Glandular involvement)
F36子宮頚部浸潤癌
(Invasive Carcinoma)
 浸潤= invasion
 浸潤= infiltration
 頚部基底膜を破り, 扁平上皮癌が浸潤
 血管やリンパ管侵襲をおこし, リンパ節転移や
血行性転移をきたす
invasion
(癌)
Infiltration
(炎症細胞)
3
2012/6/6
付)子宮頚部腺癌
(Cervical adenocarcinoma)
付)子宮頚部腺癌
(Cervical adenocarcinoma)
 子宮頚癌の10-15%
 約90%にhigh-risk HPV 感染が認められる.
内頚部腺の悪性
頚部腺癌
 しばしば腺・扁平上皮病変が共存する.
扁平上皮の悪性化
扁平上皮癌
F0B 増殖期内膜とF0C 分泌期内膜
月経―増殖前期
不妊症治療には
必須の内膜診
分泌中-後期
estrogen
月経
排卵
月経
増殖後期
―分泌初期
progesterone
ホルモンバランスの乱れは?
エストロゲンが過剰になると?
子宮内膜は月経周期で異なる顔をもつ
子宮内膜癌の背景に子宮内膜増殖症
F5 子宮内膜癌 (Endometrial carcinoma)
 エストロゲン過剰状態が関与することが多い
 閉経前後(ホルモンバランスの乱れる年齢層)
に好発
増殖
分化
progesterone
estrogen
 前癌病変として子宮内膜増殖症
 肥満、糖尿病などの合併が多い
 大部分が類内膜癌 (endometrioid type)
 漿液性腺癌 [serous type], 明細胞腺癌 [clear
cell type])は, 予後が悪いことが多い
ホルモン制御逸脱=子宮内膜増殖症
4
2012/6/6
F5 子宮内膜癌
(Endometrial carcinoma)
F5 子宮内膜癌 (Endometrial carcinoma)
類内膜腺癌の場合:Endometrioid adenocarcinoma
分化
増殖
progesterone
estrogen
初期癌
ポリープ状に内腔突出
進行癌
筋層にも浸潤
挙児希望の強い患者さんに対する
高用量黄体ホルモン療法
前癌段階
内膜癌段階
異型内膜増殖症
内膜間質介在あり
内膜間質の介在しない
異型内膜腺管が密に増殖
黄体ホルモン療法による変化
脱落膜化
分泌期化
 異型内膜増殖症は高い確率で類内膜癌に移行
 挙児希望の強い患者さんには治療選択肢として
増殖
estrogen
"高用量黄体ホルモン療法”
分化
progesterone
 慎重な定期観察が必要
治療前(異型内膜増殖症)
黄体ホルモン治療後
F6 子宮筋腫 (Myoma uteri)
 最も頻度の高い子宮腫瘍
 境界明瞭、硬い白色腫瘍を形成
 ①粘膜下:submucosal → 過多月経
 ②筋層内:intramural → 最も頻度が高い
 ③漿膜下:subserosal
→ あまり症状を呈さない
内科を受診する高度の貧血患者(成熟期女性)
を診たとき、
必ず月経について問診すること!
5
2012/6/6
筋層内筋腫
粘膜下筋腫
F7 子宮腺筋症(Adenomyosis)
 本来の子宮内膜以外の部位に子宮内膜と
内膜間質があるとき
 (異所性)子宮内膜症( endometriosis)という
名前で包括的に呼ばれる
境界明瞭な結節
核出術:子宮温存
 子宮腺筋症:子宮筋層に子宮内膜症が発生
交錯する平滑筋束
細胞異型(-)
分裂像(-)
病理診断:leiomyoma
F7 子宮腺筋症(Adenomyosis)
厚ぼったい筋層
しかし筋腫はない
子宮筋層内に子宮内膜と
内膜間質が一緒にある
 卵巣ではチョコレート嚢胞(chocolate cyst) と
もいう
 婦人科臓器以外にも起こりうる
 内科医・外科医は特に注意
F7 (付) チョコレート嚢胞
(Chocolate cyst)
月経のたび出血→骨盤に炎症を起こす
月経を止めることで軽快
(ホルモン療法・妊娠)
6
2012/6/6
(1) 成人女性の喀血・血痰:肺に異常陰影
(2) 成人女性の結腸癌手術:
原発巣と離れた場所に病変・・・転移か?
月経周期と一致する症状
肺に異所性子宮内膜
呼吸器専門医は注意!
結腸筋層に異所性子宮内膜
消化器専門医は注意!
(3) 成人女性の臍部:時おり出血し,
皮膚が黒色に膨隆したため皮膚科受診
正常の臍部皮膚
臍部皮膚真皮に
異所性子宮内膜
F10 子宮平滑筋肉種
(Leiomyosarcoma)
異所性子宮内膜が
表皮に露出
皮膚科専門医は注意!
細胞密度に注目
 悪性化した子宮平滑筋細胞由来(間葉系腫瘍)
 平滑筋腫が悪性化するのではない
 腫瘍細胞の異型性を平滑筋腫と比較してみよう
 再発傾向が高く、進行例は予後不良
平滑筋腫
(いわゆる子宮筋腫)
平滑筋肉腫
(悪性間葉系腫瘍)
周囲筋層よりも
賑やかなところ
細胞をよく見て
7
2012/6/6
細胞の形に注目
Bizarre(奇怪な)
細胞の出現
卵巣
(F0D)
(異常な)核分裂
再生医療を志す
ヒトは注目!!
一次卵胞
月経
排卵
究極の
万能細胞産生臓器
Graaf卵胞
月経
成熟期卵巣は月経周期で異なる顔をもつ
F0D Graaf卵胞
白体
嚢胞 (cyst)は卵胞 (follicule)と異なる
卵巣表層上皮が陥入
顆粒膜細胞層
黄体
Inclusion cyst
莢膜細胞層
性索間質由来腫瘍
(ホルモン症状を起こすことあり)
顆粒膜細胞腫(エストロゲン産生)
莢膜細胞腫(エストロゲン産生)
線維腫(Meigs症候群)
Sertoli-Leydig細胞腫
8
2012/6/6
卵巣腫瘍の分類
F0D 卵巣と卵管
 表層上皮由来腫瘍
卵巣表層上皮
(若年女性に多い)
奇形腫(未熟・成熟)
甲状腺腫
未分化胚細胞腫瘍
胎児性癌
絨毛癌
卵黄嚢腫瘍
漿液性腫瘍
粘液性腫瘍
類内膜腫瘍
明細胞腫瘍
Brenner腫瘍
など
 性索間質由来腫瘍
表層上皮由来腫瘍
(最も頻度が高い腫瘍群)
 胚細胞由来腫瘍
(最も頻度が高い腫瘍群)
漿液性腫瘍
粘液性腫瘍
類内膜腫瘍
明細胞腫瘍
Brenner腫瘍
 二次性(転移性)腫瘍
(ホルモン症状を起こすことあり)
顆粒膜細胞腫(エストロゲン産生)
など
(両側性のことが多い)
Kruckenberg腫瘍
莢膜細胞腫(エストロゲン産生)
(消化管とくに胃低分化腺癌)
線維腫(Meigs症候群)
Sertoli-Leydig細胞腫
(アンドロゲン産生, まれにエストロゲン産生)
漿液性腫瘍
卵巣腫瘍の分類
 表層上皮由来腫瘍:最も頻度が高い
 パターンは共通:良性ー境界ー悪性
漿液性腫瘍:嚢胞腺腫~境界悪性~腺癌
粘液性腫瘍:嚢胞腺腫~境界悪性~腺癌
類内膜腫瘍:嚢胞腺腫~境界悪性~腺癌
明細胞腫瘍:嚢胞腺腫~境界悪性~腺癌
Brenner腫瘍:良性~境界悪性~悪性
混合型腫瘍:良性~境界悪性~悪性
良性
境界悪性
嚢胞腺腫
良性
benign
~境界悪性
borderline
~腺癌
malignant
F16 漿液性嚢胞腺癌
(serous cystadenocarcinoma)
 最も頻度の高い卵巣癌(卵巣癌の20-50%).
 臨床的には血清CA125の上昇を伴う
 樹枝状・乳頭状構造
 悪性度の高いものにはp53
変異を伴うことが
多い
 悪性度の低いものや境界悪性のものでは
KRASあるいはBRAF変異を伴うことが多い
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2012/6/6
粘液性腫瘍
漿液性腺癌
樹枝状・乳頭状構造
漿液性腺腫
砂粒小体
(psammoma body)
粘液性腺腫
粘液性嚢胞腺腫 (良性)
Mucinous cystadenoma
F33 粘液性嚢胞腺腫・境界悪性
(Mucinous cystadenoma, borderline
malignancy)
基細胞質内粘液(-) 核が基底側に偏在
F33 (付1)粘液性嚢胞腺癌
(Mucinous cystadenocarcinoma)
F33 (付2)腹膜偽粘液腫
(Pseudomyxoma peritonei)
 組織学的には良性~境界悪性の粘液腺腫.
 腹腔内に粘液が広がる→粘液湖
(mucin lake)
 右側卵巣と、虫垂が一塊のことが多い.
 発生は虫垂のことが多いが、卵巣癌に準じて
治療される
嚢胞腺癌では核異型が強くなり
極性消失, 間質浸潤がみられる
 臨床的には腸閉塞を引き起こし、化学療法が
効きにくく予後不良
10
2012/6/6
漿液性癌の卵管上皮由来説
粘液性癌の半分以上は転移癌
52例中40例(77%)
は転移だった
排卵後の卵巣表面に,
卵管上皮がこぼれて,
卵巣皮質に取込まれる
癌化
明細胞腺癌の病理所見ポイント
F37 明細胞腺癌
明るい細胞質
割面黄色調 血管新生豊富な充実性腫瘍
充実性胞巣
子宮内膜症を背景とした卵巣癌
 明細胞腺癌と類内膜腺癌の多くに,
子宮
鋲釘様配列
(Hobnail pattern)
子宮内膜症を背景とした卵巣癌
充実性腫瘍
内膜症が合併
 明細胞腺癌は日本人に多い
(全卵巣癌の
20%程度)
 チョコレート嚢胞のなかに、明細胞腺癌や
充実性腫瘍
類内膜腺癌が発見されることがある
 明細胞腺癌は化学療法が効かないため,
チョコレート嚢胞の診断にて手術したが、一部に卵巣癌
他の卵巣癌とは異なる治療戦略が必要
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2012/6/6
チョコレート嚢胞
卵巣癌
F20 Brenner 腫瘍
腺上皮ではなく、移行上皮(尿路系上皮)
の腫瘍に分類される
境界部で何が起こっている?
成人型顆粒膜細胞腫
(adult granulosa cell tumor)
10年~20年後
に再発する.
保護色で馴染んでいるようにみえるが
上皮系免疫染色で明らかに
Call-Exner body
(小濾胞構造)
線維腫・莢膜細胞腫
(Fibroma・Thecoma)
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2012/6/6
黄体化莢膜細胞
(胞巣状にみられる)
Meigs 症候群
(Meigs’ Syndrome)
 原発腫瘍は卵巣の線維腫,
莢膜細胞腫など
 腹水・胸水が出現する
 卵巣腫瘍摘出により腹水・胸水が消失する
 近年では良悪性を問わず,卵巣腫瘍に胸水
腹水を合併し,腫瘍摘出により胸腹水が消失
するものをさす(広義のMeigs症候群)
Histogenesis of germ cell tumors (by Teilum)
泌尿器・脳外科でも遭遇
胚細胞腫
(Germ cell tumors)
 胎生期の始原胚細胞の遊走異常,
胚細胞
成熟異常
により発生する.
 発生部位は体幹の正中線上や性腺に多い.
Dysgerminoma
Seminoma
Germinoma
多分化細胞腫
胎芽性癌
 腫瘍細胞の分化段階に応じ多彩な像を示す.
(胎児性癌, 卵黄嚢腫瘍, 奇形腫など)
 胎児性抗原
(AFP, CEA, hCGなど)が上昇する
ことがある.
胎児以外の成分
卵黄嚢腫瘍
外胚葉・中胚葉・内胚葉
絨毛癌
奇形腫
F17 (付)成熟奇形腫
(mature teratoma)
卵巣奇形腫
 全卵巣腫瘍の15-20%,
胚細胞腫瘍の80-90%.
 2-3胚葉の成熟した組織からなる
 肉眼的に毛、歯、脂肪などが確認できる
角質
 無症候性で、偶然みつかることが多い
脂肪
 予後良好だが、茎念転や悪性転化を防ぐ目的で
歯
毛髪
手術される
 病理精査して未熟奇形腫成分がみつかることも
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2012/6/6
F17 未熟奇形腫
(immature teratoma)
 年齢10~33歳(平均
24歳).
 奇形腫における発生率は3%
 成熟奇形腫に混在して未熟成分を認める
 未熟成分の割合によってGrade
 未熟な神経管構造やembryoid
1-3に分類
body (類胎芽体)
組織をみつけよう!
F34 卵黄嚢腫瘍
(Yolk sac tumor)
割面
 腫瘍性胚細胞が卵黄嚢 (yolk sac)への分化を示す
 α-fetoprotein (AFP)を産生
 患者の多くは20歳前後.40歳以上はまれ
 他の胚細胞腫瘍と合併することが多い(奇形腫や胎児
表面
性癌などと混在し、混合型胚細胞腫瘍として発症)
 肉眼は充実性で軟らかく、10cmを超えるものが多い
 化学療法の進歩により、進行例でも予後は90%以上
になってきた
 若年発症が多いため、妊孕能を保存する治療が必要
特徴的な所見を観察 (1)
Schiller-Duval body:
血管周囲に腫瘍細胞が
放射状に配列
硝子様小球(hyaline
globule ):細胞内外
にみられる
特徴的な所見を観察 (2)
Loose reticular pattern:
扁平な細胞が網目状に配列
Polyvesucular vitellin
pattern:卵黄嚢に類似した
嚢胞が多数みられる
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2012/6/6
F35 今日のKruckenberg tumor
 消化管悪性腫瘍(多くは胃癌:印環細胞癌)による転移
印環細胞癌ってなに?
Signet ring cell carcinoma
性卵巣腫瘍の総称
 両側性で腹水を伴うことが多く、予後不良
試験で「印鑑」と書くなかれ
→胞体中に粘液が充満した癌細胞
印環細胞癌(胃・大腸など)
粘膜面
漿膜面
注意!:きわめて初期段階の病変でも転移していることがある
妊娠時の子宮内膜(初期)
F1 正常胎盤(満期)
Basal plate (maternal surface)
Chorionic plate (fetal surface)
母体血流と胎児血流 (妊娠初期)
有核赤血球
通常 1st trimesterまで
Arias-Stella reaction
アリアス-ステラ反応: 血中hCG高値 (妊娠が疑われる)
e.g. 正常妊娠, 子宮外妊娠, 流産, ホルモン治療
胎盤絨毛
Syncytiotrophoblast (外側), cytotrophoblast (内側)
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2012/6/6
F4 子宮外妊娠
F4 子宮外妊娠
(ectopic pregnancy)
 母体の生命危機にかかわる疾患である
(!!見逃したら死に至る!!)
 臨床的に初期は無症状・性器出血など
(必ずしも産婦人科を受診しない)
 卵管膨大部に起こることが最も多い
卵管妊娠—胎児
胎盤絨毛
 破裂すると急性腹症・リアルタイムに貧血進行
出産に伴う致命的合併症
 お産は病気ではない
 しかし,お産は正常(平静)な生体環境ではない
 さらにしかし,妊婦さんには疾患認識が乏しい
胎児組織
 ハイリスク(高血圧,
膠原病, 内分泌疾患)妊娠
 高齢妊娠・多胎妊娠
出産後の場合は救急(夜間当直)に来るかも
症例 (1);40歳女性
症例の肺肉眼像 正常肺肉眼像
妊娠出産歴;
5回経妊2回経産(何れも正常),3回流産
経過;
妊娠41週0日のため他院にて分娩誘発中に,
痙攣発作,血圧低下を来たし総合病院に
搬送された.
急速遂娩を行うも播種性血管内凝固症候群
(DIC)を発症し,ショック状態となり死亡.
16
2012/6/6
肺組織像
血管内に粘液が・・
肺胞血管内に注目
妊婦死亡率の高い疾患群
-羊水塞栓症急激に重篤症状(呼吸心停止・DIC等)
明らかな原因がわからない
アルシアンブルー染色
症例 (2);20代女性
妊娠出産歴;
1回経産 (前回帝王切開)
経過;
経過中, 部分前置胎盤と診断されていた.
妊娠36週6日帝王切開となる.
胎児娩出後,胎盤用手剥離するも剥離困難.
クーパー(手術用ハサミ)にて剥離を行うも
出血多量(推定5000ml)からショック状態と
なり死亡.
肺浮腫・出血・右室拡大・
組織で胎児由来成分を検出できるか
が確定の決め手
“癒着胎盤”とは何か?
-癒着浸潤の程度により3種類に分類 真性あるいは楔入(せつにゅう)癒着胎盤
(placenta accrete vera):筋層と付着するだけ
 嵌入(かんにゅう)癒着胎盤
(placenta increta):
筋層に侵入しているもの
 穿入(せんにゅう)あるいは穿通あるいは穿孔
胎盤 (placenta percreta):子宮筋層を貫通し,
漿膜に及ぶもの
17
2012/6/6
子宮内膜
腹側から開いた子宮
子宮頚管
背中側からみた子宮→胎盤が露出
F2, F3 絨毛性疾患
胎児性外胚葉成分である絨毛細胞の異常増殖
全胞状奇胎、部分胞状奇胎、侵入胞状奇胎、絨毛癌など
産道をふさぐ位置(頚管付近)に
胎盤が存在し,筋層を穿通
F2 胞状奇胎
(hydatidiform mole)
 栄養膜細胞の増殖を伴う、絨毛の水腫状腫大
(complete hydantidiform mole) と
部分胞状奇胎 (partial hydantidiform mole)に分
類される
 全胞状奇胎
 全胞状奇胎の多くは46XXで、父親由来雄核発生
69XXX
のことが多く、2組は父親由来、1組は母親由来
 部分胞状奇胎の多くは三倍体で69XXY,
胞状奇胎
(hydatidiform mole)
部分胞状奇胎
2精子受精
全胞状奇胎
3倍体
23X
(23X, 23X)
殆どの場合
69XXX
殆どの場合
23X
46XX
1精子受精(23X)→2倍体 (46XX)
69XXY
(23X, 23Y)
46XY
23X
(23Y, 23Y)
69XYY
可能性は低い
2精子受精(23XX, 23XY)
可能性は低い
18
2012/6/6
F2 胞状奇胎
(hydatidiform mole)
F2 胞状奇胎
(hydatidiform mole)
 全胞状奇胎では、大部分の絨毛が腫大し
trophoblastの異常増殖
(2mm~数cm)ブドウの房状を呈する
 全胞状奇胎に胎児成分は通常存在しない
 部分胞状奇胎では胎児成分が存在するが、
胎児側血管を欠く水腫状絨毛
正常
胎児奇形を伴うことが多い
 尿中hCGが上昇(部奇:10万IU/l以下が多い
全奇:50万IU/l以上のことも多い)
確実な鑑別はゲノム多型解析
Short tandem repeat :個人によって異なる反復配列を利用
<例:1精子受精の場合>
F3 絨毛癌
(choriocarcinoma)
母
母
父
絨毛
父
母
母
父
父
絨毛
F3 絨毛癌
(choriocarcinoma)
 妊娠に関連して生じる妊娠性絨毛癌と、非妊娠性
絨毛癌がある
 妊娠性絨毛癌の多くは子宮原発
 浸潤性、転移性高いが、化学療法感受性大
 肉眼的には軟かい暗赤色で出血、壊死が顕著
 組織学的には腫瘍性trophoblastの増殖
体部から発症
頚管妊娠が契機
F3 絨毛癌
(choriocarcinoma)
 妊娠性絨毛癌の先行妊娠は、50%が奇胎、25%が
流産、22.5%が正常妊娠、2.5%が子宮外妊娠
 本邦では奇胎の管理が徹底し、奇胎からの発生
は減少した(15%程度)
 正常妊娠や流産に続発した絨毛癌の大部分は、
胎盤内に発生し、微小病変のため発見されずに
経過したものと思われる
19
2012/6/6
F3 絨毛癌
(choriocarcinoma)
F3 (付)存続絨毛症
(persistent trophoblastic disease)
奇胎の管理中にhCG値の下降遅延や再上昇がみられることがある
trophoblastを
模倣する腫瘍細胞
子宮筋層に強い浸潤
F11 卵管炎
(salpingitis)
奇胎の子宮内潜伏、骨盤や肺への転移が疑われる
画像で部位が特定できないこともあるが、ただちに化学治療する
F11 卵管炎
(salpingitis)
 卵管炎単独で発症することはほとんどない
 大抵は骨盤腹膜炎(子宮付属器炎)として発症
 不妊症の原因となる
 原因として淋菌、クラミジア、結核などの感染症の
ほかに、虫垂炎や子宮内膜症などの炎症性疾患
から波及することもある
卵巣茎念転などでも起こる
炎症性に腫大し、割面は粘膜が浮腫状にみえることがある
20
Fly UP