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体重が減ること、急に食事制限することのリスク 先ほど内臓脂肪が悪いと

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体重が減ること、急に食事制限することのリスク 先ほど内臓脂肪が悪いと
■体重が減ること、急に食事制限することのリスク
先ほど内臓脂肪が悪いと、それは沖縄の例をみても確かだと言いました。そうすると内
臓脂肪減らすために、特に体重を減らすということが 1 つの目標になります。高齢者の中
で 25%ほどが肥満の方ですが、体重を減らすべきかどうかということはなかなか答えが出
ていません。ですが、考える上でのヒントがあります。外国の例ですが、死亡率が 1 番低
いのは BMI が 25 付近の人です。外国の肥満の基準は BMI30 ですが、日本では BMI が
25 あると肥満です。日本でも昔から小太りの人は長生きすると言われています。実は、日
本でも同じような研究がされており、必ずしも標準体重の人が長生きするのではない、標
準体重より少し太り気味の人が長生きするということがわかっています。もちろん、どん
どん体重が増えるにつれて死亡率は高くなります。男性は BMI がどの値でも常に女性の 2
倍、死亡率が高いです。もう 1 つ注目していただきたいのは痩せです。BMI は低くなって
も死亡率が高くなるのです。ですから、高齢者に限らず一般的に、死亡率が高くなるのは
体重が増えるだけではなく、減るということも死亡率を高くする要素があるということで
す。
もう 1 つのヒントは、体重が減っていく状況です。自分で減らそうとしているのか勝手
に減っているのかという問題があります。体重が変化しない普通の人を 1 とした場合、健
康を保つために、例えば、膝が悪いとか、少し太り過ぎてお医者さんから体重を減らすよ
う言われているので意図的に自分で体重を減らした人は、確かに死亡率が減ります。普通
何もしない人に比べて、死亡率が 0.6 に下がります。ところが、自分で減らそうとせずに、
いつのまにか体重がどんどん減ってきている人は、死亡率が高くなります。体重が減る原
因がどこかにあるのです。ですから、みなさんにお勧めしたいのは、必ず定期的に体重を
測るということです。前の体重と比べてどうなっているかということですが、見た目だけ
ではなかなかわかりませんので、体重を定期的に測られることをお勧めします。そうする
と、いつの間にか痩せてきたとか、どこかおかしいのではないかということに早く気付い
ていただけると思います。
外国の研究ですが、高齢者の方に実際に体重を減らしていただくと、体の機能にどうい
う影響があるかということを調べました。食事制限で 1 日 500~750Kcal のエネルギー
を減らすことと、良質のタンパク質、カルシウム、ビタミンをしっかり摂るということを
しました。また運動として、週3回、かなり激しい 90 分間のエアロビック運動とレジスタ
ンス運動をトレーナーがきっちりついて行いました。食事制限も栄養士がずっと管理して、
1 年間やりました。
日本人ではありませんが、
非常に信頼性の高い実験です。
そうしますと、
体重が減るのは食事制限をしたグループでした。ご飯を減らすと確実に体重は減りますが
運動だけでは痩せません。ところが、体の機能をみますと、運動をするともちろん上がり
ますが、食事制限をしても少し改善されました。体の機能が1番改善したのは、運動と食
事制限をしたグループでした。ですから、本当に痩せないといけない人は、食事制限と運
動を両方すると確実に痩せますし、運動の機能も良くなるということがたくさんの人の研
究で明らかになっています。
次に、急に食べなくなると危ないという話を少しします。私が外来で診ている患者さん
で、糖尿病で通院されている方がいます。非常に生真面目な方で定期的に来られているの
ですが、検査をしたら腎臓の機能が少し悪くなられたのでお話を聞くと、テレビでメタボ
リックシンドロームのことを見て「痩せないといけない。
」と思い食事を制限されていたこ
とがわかりました。特に高齢者の方が急に食べなくなると、腎臓が悪くなるということが
あります。元々、年齢と共に腎機能が落ちてくるのですが、特に糖尿病や高血圧の人は普
通の人と比べて多少腎臓が傷んでいるので、そういう人が急にカロリー制限すると危ない
です。と言うのも、食べるものが少ないと体がエネルギー不足になります。でも体は動か
ないといけないので、なんとかエネルギーを作ろうとします。どこからエネルギーを作る
かというと、自分の体からエネルギーを摂ってくるんですね。例えば脂肪組織もそうです
が、筋肉も分解します。ずっと絶食するとどんどん痩せるというのは、まさにそういうこ
とです。筋肉をエネルギーにしているから痩せるわけです。筋肉が分解すると、タンパク
質を過剰に摂取するのと同じような結果になります。タンパク質は腎臓に代謝を依存して
いるため、腎臓に負担をかけ腎機能が悪化したということが 1 つの理由です。もちろん、
筋肉が落ちて転倒しやすくなるということもあります。それからもう1つは、食べ物とい
うのは栄養だけではなく、実は水分も入っています。みなさん、お茶やお水を普段飲まれ
ると思うのですが、人によりますけど、大体 1L ほど飲まれます。食べ物からも 1L ほど水
分を摂っています。ということで、食べ物を減らすということは、栄養が減るだけではな
く水分も減るということです。例えば、風邪をひいてインフルエンザなどで熱が出たとき
に食べられないと、飲んでも飲んでも脱水になるというのはそういうことです。水を一生
懸命飲んでも、よっぽど頑張らないと2L も飲めません。調子の悪いときにたくさん飲んで
胃が水だらけになったら、本当苦しいです。食べ物はそれくらい水分も入っているので、
それが食べられないときは脱水を起こしやすくなるわけです。それから、もともと高齢者
の方は脱水になりやすいです。トイレの回数が増えるのでお水を飲むことを控えます。お
友達と出掛けるときに、
「あの人またトイレ行ってる。」と言われるのが嫌なので控えると
いうこともありますし、喉が乾きにくいとか、いろんな状況で脱水になりやすいです。ま
た、減塩をされている方は、喉が渇きにくいので水分の摂取が減ります。みなさんもお寿
司を食べた後やラーメンを食べた後は、すごく喉が渇きますよね。その逆です。だから減
塩治療を受けられている方は、心掛けて水分を摂らないと不足になりやすいです。先ほど
の方も、食べ物が十分摂れないということで、筋肉が分解するだけでなく脱水も影響して
腎機能が悪くなったということです。急に食事制限をすると腎臓が悪くなる危険があると
いうことは、知っておいて頂いた方がいいかもしれません。
もう一人の例ですが、その方は BMI が 29 ですから肥満の方です。肥満の方なのでカロ
リー制限をしたところ、急に発熱が起こったんですね。もともと膀胱炎を起こす危険のあ
る方だったのですが、敗血症、つまり腎盂炎を起こされました。この方も、免疫機能が低
下してしまったそうです。ですから、低栄養というのは肥満の方にも起こるということで
す。太っていたら栄養が足りていると思わないでください。どんどん食べると栄養が足り
ているので少しくらい食べなくても大丈夫ということはなく、やはり食べないと体に障害
が起こります。それから急に減らし過ぎると、このような急性の低栄養になり免疫力が落
ち、感染症などにもかかりやすくなると言われています。ですから、ゆっくりと食事制限
していくことが必要です。低栄養は筋肉が減ったり、脱水とか免疫機能が落ちたり、いろ
んな大きな病気の原因になるということです。
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