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第 3 章 イギリスの職業教育訓練 1と教員・指導員の養成

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第 3 章 イギリスの職業教育訓練 1と教員・指導員の養成
第 3 章 イギリスの職業教育訓練1と教員・指導員の養成
稲川 文夫
3.1 教育訓練の仕組み
図 3.1 英国の教育制度
シックスファ
継続教
ーム・カレッ
育カレ
ッジ
アッパー
総合制中等学校
スクール
モダンスクール
グラマースクール
シックスファーム
パプリ
ック
スクー
プレパラトリ
ースクール
初等学校
下級部(学校)
ミドルスク
ール
幼稚部(学校)
ファースト
プレ・
スクール
プレパ
ラトリ
(資料出所)文部科学省『教育指標の国際比較(平成 23 年版)
』
1
イギリスにおける教育及び職業訓練政策はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド地方にそれぞ
れ権限が委譲されているため、政策、スキル目標、所管する機関等は地方ごとに異なっている。本稿では、特に断りがな
い場合はイングランド地方についての記述である。
77
イギリスの義務教育は 5 歳から 16 歳までの 11 年間である。義務教育後(16 歳以降)の
進路は、次の 4 つに大別される。
①シックスフォーム等へ進んで大学を目指すコース、②継続教育カレッジ(Further
Education College)へ進んで職業に関連した知識、技能を習得するコース、③徒弟制度等へ
進んで NVQ(National Vocational Qualification)等の資格取得を目指すコース、④就職する
者である。また義務教育後、高校、大学とストレートで高等教育へ進む者よりも社会経験
を経た後、高等教育へ進む者の方が多いという特徴がある。そして、職業経験の中で取得
した職業資格が教育資格として認定されており、大学等への入学要件の一部として認めら
れるなど、教育と職業訓練が結びついて義務教育後の継続教育に多様さと柔軟性を持たせ
ている。
教育訓練のもう一つの特徴として、全国学習目標と資格制度をあげることができる。全
国学習目標は国として教育訓練目標を定めたもので、各年齢層で達成しなければならない
具体的な目標が設定されており、それらの数値目標の達成に向けて教育訓練が実施されて
いる。なお、到達目標は資格の取得に焦点をあてたものとなっており、全国資格枠組み
(National Qualification Framework:NQF)に体系づけられた教育資格と職業資格を目安と
して国民の教育レベルと技能レベルの向上を図るという戦略がとられている。そして、社
会人を対象とした生涯学習もこの中に位置づけられている。
また、イギリスには全てを公的資金で運営する「公共職業訓練施設」はない。政府の教
育訓練政策に沿った教育訓練プログラムを提供する教育訓練プロバイダーに対して、教育
技能委員会(Learning and Skills Council:LSC)を通じて受講者数、修了者数、資格取得率
などの訓練実績に応じて公的資金が助成される仕組みになっている。代表的な教育訓練プ
ロバイダーとして継続教育カレッジ、民間の訓練プロバイダー(Independent Training
Provider)
、ラーンダイレクト・センター、ボランティア団体等があり、初期教育訓練(IVET)
や継続職業・訓練(CVET)に関するいろいろな教育訓練プログラムを提供している。
(1)教育訓練プログラム
教育訓練を構築している主な教育訓練プログラムを対象者別に見てみると、①義務教育
後(16 歳以降)の若年者や成人を対象とする継続教育、②若年者を対象とした初期教育訓
練の範疇に組み込まれている徒弟制度(Apprenticeships)、上級徒弟制度(Advanced
Apprenticeships)
、NVQ 訓練及び雇用準備訓練(Entry to Employment)
、③在職者を対象と
した Train to Gain、成人徒弟制度、④失業者・経済的弱者を対象としたニューディール(New
Deal)
、エンプロイメント・ゾーン(Employment Zone)がある(表 3.1 参照)
。
78
表 3.1 対象者別にみた主な教育訓練プログラム
対象者
プログラム
義務教育後(16 歳以
降)の者すべて
内容
開始年
個人が自己啓発、スキル向上のために受講する
継続教育
教育訓練
ー
職場での訓練と並行して教育訓練機関で資格
徒弟制度
取得(レベル 2 相当)のための学習を行うプロ
2004
グラム
職場での訓練と並行して教育訓練機関で資格
上級徒弟制度
若年者
取得(レベル 3 相当)のための学習を行うプロ
2004
グラム
NVQ 訓練
NVQ 取得のための職業訓練プログラム
基本スキル、職業能力の開発、自己啓発、社会
雇用準備訓練
成人(在職者)
失業者・
経済的弱者
性を育成するためのプログラム
イングランド地方で実施している職業訓練支
Train to Gain
援プログラム
成人徒弟制度
25 歳以上の成人を対象とした徒弟制度
ニューディー
特定の求職者グループを対象とした就業支援
ル
プログラム
エンプロイメン
特定地域において長期失業者の職業復帰を支
ト・ゾーン
援する雇用対策プログラム
2003
2003
2006
2005
1998
2000
(資料出所)
『欧米諸国における公共職業訓練制度と実態―仏・独・英・米 4 ヵ国比較調査―』労働政策研究・研修機構
(2009)
(2)初期教育訓練(IVET:Initial Vocational Education and Training)
義務教育後の 16 歳~24 歳の若年者を対象とした教育訓練プログムに徒弟制度
(Apprenticeships)
、上級徒弟制度(Advanced Apprenticeships)
、NVQ 訓練及び雇用準備訓
練がある。これらのプログラムは公的資金で賄われており、約 1,150 の訓練プロバイダー
によって提供されている。2006 年度の上記3つのプログラムへの参加者は 235,800 人で、
その内訳は、上級徒弟制度(56,900 人)
、徒弟制度(127,400 人)
、NVQ 訓練(1,100 人)
、
雇用準備訓練(50,400 人)である(表 3.2 参照)
。
表 3.2 若年者を対象とした教育訓練プログラムへの参加者数(単位:千人)
上級徒弟制度
徒弟制度
NVQ 訓練
雇用準備訓練 合計
年度
レベル2相当
2005
53.9
52.1
135.1
122.8
8.9
2.4
51.9
50.8
249.8
228.1
2006
56.9
127.4
1.1
50.4
235.8
2004
注)各年度は 8 月 1 日~7 月 31 日まで
(資料出所)Statistical First Release:ILR/SFR15, 10 April 2008
79
1)徒弟制度
当該プログラムは、16~24 歳の若年者を対象としてビジネス分野等で必要とされる職務
遂行能力を身につけるための質の高い職場訓練で、
事業主のもとで主に OJT を通して NVQ
の取得を目指す内容構成になっている。プログラムには取得を目標とする NVQ のレベル
に応じて、徒弟制度(Apprenticeships)と上級徒弟制度(Advanced Apprenticeships)がある。
徒弟制度は 16~18 歳の若年者を主たる対象者として、NVQ レベル2または同程度の資
格取得を目指したプログラムである。提供されているコース(職種)は、①農業、園芸、
動物飼育、②芸術、メディア、出版、③ビジネス、経営管理、法律、④建設、配管、建物
環境、⑤教育・訓練、⑥エンジニアリング、製造技術、⑦健康、公共サービス、介護、⑧
情報通信技術、⑨レジャー、旅行、観光、⑩小売、商工業の 10 分野にわたって 89 コース
(職種)がある。訓練期間はコース(職種)によって異なっているが平均 1 年程度である。
しかし、エンジニアリング分野のコースの場合は 18 か月を要する。
上級徒弟制度は 16~24 歳の若年者を対象として、NVQ レベル3(テクニシャン、監督
職相当レベル)または同程度の資格取得を目指すプログラムである。
提供されているコース(職種)は、徒弟制度と同様に 10 分野にわたって 90 コースがある。
訓練期間はコースによって異なり平均 3 年である。しかし、エンジニアリング分野のコー
スは 5 年を要する。
訓練生は訓練の開始時には事業主に雇用される者が多く、徒弟制度で約 8 割、上級徒弟
制度で 90%以上が雇用されている。事業主は訓練生への賃金負担(最低週 95 ポンド)は
あるが、訓練や評価に係る経費は国から助成される。訓練開始時に雇用されない訓練生に
対しては、賃金の代わりに教育継続手当(Education Maintenance Allowance)が支給される。
徒弟制度修了後の訓練生の雇用は企業に義務付けられていないし、逆に訓練生にも当該企
業に就職することを義務付けていない。
2)NVQ訓練
当該訓練は、16~17 歳を対象に徒弟制度でカバーされていないコース(職種)に係る
NVQ の取得を目指すものである。従前のその他の訓練(Other training)は、16~17 歳を対
象としてフルタイムの教育を受けていない者、あるいは失業中の者に対して NVQ レベル 2
以下の資格取得を目指したものであったが、
これを大幅に見直して 2003 年から実施されて
いるプログラムである。
3)雇用準備訓練
当該訓練は、従前の基礎技能プログラムを見直しして、2003 年 8 月から実施されている
プログラムである。16~18 歳を対象として定職に就かず、徒弟制度や継続教育といった学
習にも就かず、就職の準備が整っていない者に対して、読み・書き・計算能力、基礎的な
スキル、職業意識を付与することを目的としている。訓練修了後、徒弟制度への参加、さ
らなる教育訓練機会へのアクセス及び就職につながる訓練であり、NVQ レベル1等の資格
取得を目指している。なお、参加者には、訓練のための諸費用として週当たり最高 30 ポン
ドが支給される。
80
(3)継続教育訓練(CVET:Continuing Vocational Education and Training)
継続教育とは義務教育修了後の多様な教育を指し、16 歳以降の若年者や成人を対象にフ
ルタイムあるいはパートタイムで受講できる多種多様なプログラムが提供されている。主
なものとして①読み・書き・計算等の基礎技能の習得、②コンピュータ、資格取得などの
職業教育、③高等教育への準備教育、④工芸、外国語などの趣味・文化的なプログラムが
ある。義務教育後(16 歳以降)の継続教育を担っているものに継続教育カレッジ、産業大
学(University for Industry:UfI)が提供するe・ラーニング及び大学や公開大学(Open
University)が提供するプログラムがある。本稿では、幅広く多くの人達に利用され、社会
人の継続教育に大きな役割を果たしている継続教育カレッジとe・ラーニングについて述
べるとともに、在職者や失業者を対象とした施策についてもふれておくことにする。
1)継続教育カレッジ
継続教育カレッジは、16 歳以上の義務教育修了者を対象に職業教育を中心とする多様な
プログラムを提供しており、社会人の継続教育訓練に大きな役割を果たしている。イギリ
ス全体で 444 校が設置されている。その内訳は、イングランド地方:373 校、ウェルズ地
方:22 校、スコットランド地方:43 校、北アイルランド地方:6 校である(表 3.3 参照)
。
表 3.3 継続教育カレッジの設置数(2007 年度)
区分
イギリス全体
イングランド
ウェルズ
スコットランド
北アイルランド
継続教育カレッ
444
373
22
43
6
(95)
(95)
-
-
-
ジ
シックスフォー
ム・カレッジ
注)シックスフォーム・カレッジ数は、継続教育カレッジ数の内数である。
(資料出所)Education and Training Statistics for the U.K. 2008
継続教育カレッジが提供するプログラムは、公的資金の支援対象になるものが多く、受
講者にとっては安い費用で受講でき、利用しやすいものとなっている。提供しているプロ
グラムは、若年者(学校修了者・新卒者)向け、成人向け及び企業向けというように利用
対象者ごとに、彼等の関心のある分野や資格取得を目指した多種多様なコースで構成され
ている。
教育訓練コースは NQF の入門レベル~レベル3のものが中心であるが、レベル 4~5 の
ものもある。年間受講者数はイギリス全体で 3,640,200 人である。内訳は、フルタイム受講
者が 1,046,600 人、パートタイム受講者は 2,593,600 人で、パートタイム受講者が全受講者
の 7 割強を占めている。
学習分野別にみると「基礎技能(読み・書き・計算能力)
」が 701,600 人(フルタイムと
パートタイムの合計数)で最も多く、受講者全体の約 2 割を占めている。以下、
「健康、社
会サービス、介護」489,100 人、
「情報通信技術」417,900 人、
「芸術、メディア、出版」251,200
81
人となっている。イングランド地方についても同様の傾向を示している(表 3.4 参照)
。
表 3.4 学習分野と受講者数(学習形態別)2006 年度
(単位:千人)
イギリス全体
イングランド地域
学習分野
フルタイム
①健康、社会サービス、介護
②科学、数学
③農業、園芸、動物飼育
④エンジニアリング、製造技術
⑤建設、配管、建物環境
⑥情報通信技術
⑦小売、商工業
⑧レジャー、旅行、観光
⑨芸術、メディア、出版
⑩歴史、哲学、神学
⑪社会科学
⑫言語、文学、文化
⑬教育・訓練
⑭生活・就業準備(基礎技能)
⑮ビジネス、経営管理、法律
⑯その他
計
合計
パートタイム
フルタイム
パートタイム
115.8
61.3
24.3
54.3
54.3
57.8
71.3
63.6
119.1
14.9
19.3
30.5
4.6
171.2
64.1
120.1
373.3
47.8
39.3
110.3
79.9
360.1
101.7
87.3
132.1
19.9
9.2
170.8
90.2
530.4
159.7
281.7
104.4
57.9
22.7
46.9
43.8
53.1
67.9
57.0
111.5
14.7
18.5
27.5
4.3
170.6
58.8
68.6
298.8
32.7
29.2
78.3
55.9
289.9
84.0
55.6
107.4
19.3
7.3
127.1
74.9
526.4
128.7
72.7
1,046.6
2,593.6
3,640.2
928.2
1,988.2
2,916.4
(資料出所)
:Education and Training Statistics for the U.K. 2008
2)e・ラーニング
インターネットで教育訓練コースを配信するe・ラーニングは、好きな時間に好きな場
所で、自分のペースで学習ができるという学習機会を提供し、多くの人が教育訓練に容易
にアクセスできる状況を作り出している。
e・ラーニングは、UfI の下に組織化された 2,090(ハブセンターを含む)のラーンダイ
レクト・センター(Learn direct Center:LC)によって運営されている。
e・ラーニングの対象者は、義務教育を修了した 16 歳以降の人達で、①職場での技能を向
上させたいと思っている雇用者、②雇用能力を向上させたいと思っている者、③教育から
取り残された者、④デジタル社会(コンピュータ社会)から取り残されたと感じている者
である。
産業大学(UfI)がe・ラーニングで扱う主な分野は、基礎技能(読み・書き・計算能力)
、
ビジネス及びマネージメント、IT 技能等で、LC によって 577 コースが提供されている。
その内訳は以下の通りである。
① 家庭及びオフィスでの IT に関するコース:81 コース
82
② 数学、英語に関するコース:79 コース
③ ビジネス、マネージメントに関するコース:417 コース
いずれのコースも複数のモジュールで構成されており、提供される1回分のプログラムの
内容(分量)は、学習者が集中力を持続させて学習できる時間の長さや学習効果の観点か
ら 15~20 分で完結するようになっている。2008 年度の LC が提供するコースの受講者数
は 1 日平均 8,200 人、年間 269 万人を数えている。
3)Train to Gain
Train to Gain は、主にレベル2以上の職業資格を持たない従業員を対象に、事業主が教
育訓練を実施する際の訓練費用を政府資金によって補助する支援策である。
当該支援策では、事業主の訓練ニーズに合致した訓練コースを継続教育カレッジや民間の
訓練プロバイダーが提供することによって、事業主の要望に沿った従業員のスキル開発・
向上を狙いとしている。政府は、当該支援策の下で実施される NVQ レベル2及び「読み・
書き・計算能力」の習得のための訓練費用については全額を補助し、レベル3以上の資格
取得をめざす訓練については訓練費用の一部を補助している。補助金の対象となる Train to
Gain 参加者の条件は、①19 歳以上2、②雇用関係にある(フルタイム、パートタイムいず
れも可)
、③訓練期間中も賃金を受け取っている、④イングランド地方に居住している、⑤
現在、レベル2以上の職業資格を取得していない、といった従業員である。
表 3.5 に 2006 年度の 4 半期ごとの Train to Gain による訓練参加者数を示す。
年平均で 8.1
万人の在職者が参加しており、
その主要な訓練はレベル2の資格取得であることが分かる。
4)失業者のための施策
若年失業者及び成人の長期失業者は、一定期間の失業後、ニューディール・プログラム
(1998 年に導入された施策である)に参加することが義務づけられている。失業者が就職
に向けて取り組む活動に関しては、パーソナル・アドバイザーが支援し、失業者の状況に
応じてオプションとして教育訓練を組み入れている。
2006 年度
10 月
1月
4月
7月
年平均
表 3.5 Train to Gain による訓練参加者数
(単位:千人)
基礎技能(読み・ レベル2
レベル3 全体
書き・計算能力)
3.8
38.5
1.7
42.9
5.4
63.8
3.8
69.9
7.2
97.2
7.1
106.3
9.5
132.1
12.0
146.3
5.9
73.4
5.0
80.8
(資料出所)
:Statistical First Release:ILR/SFR14,2007
2
19~24 歳については徒弟制度が優先であり、徒弟制度で扱っていない分野でのみ Train to Gain が利用できる。
83
①若年失業者向けニューディール(New Deal for Young People)
18~24 歳で、過去 6 ヶ月失業状態にある者が対象(強制参加)である。期間に応じて以
下の取組みが行われている。
表 3.6 若年失業者向けニューディール
期間
取組み
ゲートウェイ(16 週間)
オプション(13 週間)
パーソナル・アドバイザーによる支援
・就業までの工程を話し合いを通じて検討し、アクショ
ンプランに盛り込む
・応募可能な仕事を検討する
・求人への応募書類、履歴書の作成
・キャリアに関するアドバイス
・交通費その他の補助
以下のオプションから選択する
・雇用:助成付き雇用もしくは起業訓練
・フルタイム教育訓練
・非営利部門での就業体験
・環境保護団体での就業
・ミュージシャン向けニューディール
フォロースルー(16~26 週間) アドバイザーによる求職活動支援、フルタイムの教育訓
練など
②長期失業者向けニューディール(New Deal 25 plus)
25 歳以上で、過去 21 ヶ月のうち 18 ヶ月求職者手当を申請している者が対象である(強
制参加、ただし、60 歳以上の者は集中活動期プログラムへの参加は任意である)
。期間に
応じて以下の取組みが行われている。
表 3.7 長期失業者向けニューディール
期間
取組み
ゲートウェイ(16 週間)
パーソナル・アドバイザーによる支援
(若年失業者向けと同じメニュー)
集 中 活 動 期 ( Intensive Action 以下から1つまたは複数を選択する
Period:最短 13 週間)
・基礎的エンプロイアビリティ訓練
・起業のための訓練
・教育訓練機会(資格取得のための訓練)
・就業体験
・就業を前提とした短期訓練
・動機付け、ソフトスキル補助
84
フォロースルー(6~13 週間)
・助成付き雇用
・ミュージシャン向けニューディール
アドバイザーによる求職活動支援、必要に応じて短期訓
練コースの受講
若年失業者向けニューディール・プログラムへの累計参加者数は 1,358,300 人、累計就業
者数は 848,500 人、2008 年度の予算額は 2 億 6 千万ポンドである。一方、長期失業者向け
ニューディール・プログラムへの累計参加者数は 800,900 人、累計就業者数は 349,900 人、
2008 年度の予算額は 1 億 5 千万ポンドである(表 3.8 参照)
。
表 3.8 ニューディール・プログラムへの参加者数、予算額等(千人、百万ポンド)
累計参加者数
現在の参加者数 累計就業者数
2008 年度予算額
77.8
848.5
260
若年失業者向け 1,358.3
800.9
55.3
349.9
150
長期失業者向け
注)累計参加者数は、当該プログラムが導入された 1998 年から 2008 年 11 月までのデータ、現在の参加者数は 2008 年 8
月時点のデータである。
(資料出所)
:JILPT 資料シリーズ No.57/2009 年 6 月『欧米諸国における公共職業訓練制度と実態―仏・独・英・米 4 カ
国比較調査―』
(4)資格制度
1)全国資格枠組み(NQF)の構築
イギリスでは、従来から多くの資格授与機関(Awarding Body:AB)が職業資格の審査、
認定を行っていた。1980 年代には AB が認定する資格・認定証の数は約 6,000、大小 600
の AB があるといわれていた。そのため、認証された資格に水準のばらつきや内容の重複
があり、利用者の混乱を招いていた。
そこで、このような状況を是正するために、統一基準による資格の標準化と質の確保を
主な目的として全国職業資格(National Vocational Qualification:NVQ)制度が 1986 年に導
入された。NVQ は職務遂行能力の評価に重点を置いたもので、11 の分野3に関して 5 段階
(レベル1~レベル5)レベルで体系づけられている。
その後、1997 年に職業資格と教育資格を対応づける必要から、より包括的な資格体系と
して全国資格枠組み(NQF)が構築された。NQF は当初、NVQ に対応する 5 段階と入門
レベルから成る 6 段階の体系であったが、2006 年にそれまでレベル4~5に格付けられて
いた高等レベル資格を細分化して 9 段階の体系に改定された。NVQ 以外の職業資格は、こ
れに沿ってレベル区分が変更されたが、NVQ は 5 段階のまま継続して現在に至っている。
表 3.9 に NQF と NVQ 及び高等教育資格の対応関係を示す。
3
11 の分野とは、①農林水産、②天然資源、③建設、④エンジニアリング、⑤製造、⑥運輸、⑦製品・サービス、⑧健康・
社会・保安サービス、⑨事業サービス、⑩通信、⑪知識・スキル開発をいう
85
表 3.9 全国資格枠組み(NQF)と NVQ 及び高等教育資格の対応関係(各レベルの資格の例)
資格のレベル
レベル8
レベル7
レベル6
NQF
NVQ
Specialist awards
高等教育資格
Doctorates
Diploma in Translation, BTEC advanced
レベル5
Master degrees, Postgraduate
professional awards
certificates and diplomas
National Diploma in Professional
Bachelor degree, Graduate
Production Skills
certificates and diplomas
Diploma of higher education and
レベル5
レベル4
BTEC higher national diplomas
further education, Foundation
degrees, Higher national diplomas
レベル4
Certificates of higher education,
Key Skills レベル 4
Higher national certificates
GCE- A レベル, International
レベル3
Baccalaureate, Key Skills レベル 3,
レベル3
Cambridge international awards
レベル2
レベル1
入門レベル
GCSEs grades A~C, Skills for Life,
レベル2
Key Skills レベル 2
GCSEs grades D~G, Skills for Life,
レベル1
Key Skills レベル 1
入門レベルのサーティフィケート、
入門レベルの Skills for Life
注)GCSE、GCE-A レベルは教育資格である。なお、職場での経験を問わず、継続教育カレッジ等でのコースを受講する
ことで取得できる職業資格として 1992 年導入された GNVQ(General NVQ)は、現在は GCSE に組み込まれている。Skills
for Life は、読み・書き・計算能力に関する基礎技能をいう。
(資料出所)
:Office of the Qualifications and Examinations Regulator 2009 「Explaining Qualification」
高等教育資格の博士(Doctorates)は NQF のレベル8に、修士(Master degrees)
、大学院
課程で取得するサーティフィケート(認定証)やディプロマ(修了証書)(Postgraduate
certificates and diplomas)はレベル7に、学士(Bachelor degrees)
、学部課程で取得するサー
ティフィケートやディプロマ(Graduate certificates and diplomas)はレベル6に、高等教育
ディプロマ(Diplomas of higher education)、継続教育ディプロマ(Diplomas of further
education)
、基礎学位(Foundation degrees)
、国家高等ディプロマ(Higher national diplomas)
はレベル5に、そして、高等教育サーティフィケート(Certificates of higher education)
、国
家高等サーティフィケート(Higher national certificates)はレベル4に格付けられている。
NVQ との関係でみると、NVQ レベル5は NQF のレベル7~8に、NVQ レベル4は NQF
のレベル4~6に格付けされている。
86
2)NQF から資格単位枠組み(QCF:Qualifications and Credit Framework)への改変
NQF は各種資格を相対的に比較できるなど多くのメリットをもたらしたが、認証資格に
さまざまな種類があってわかりにくく、また、資格取得に要する学習時間が判断できない
といった問題点が指摘されていた。2006 年 12 月に提出されたリーチ報告書4では、イギリ
ス労働力のスキル向上を課題として、2020 年を目標とする「世界水準のスキル開発」が提
案された。特に問題とされたのは、在職者・事業主に対する職業訓練施策が充分に成果を
上げていない点である。この問題解決のために、在職者・事業主に対する職業訓練を行う
新たな機関を設置し、その役員には民間企業から選出し、事業主・在職者のニーズに即し
た訓練プログラムを策定することが提案された。このためには、在職者が受講した学習機
会の成果が小さな単位であっても認証可能とするような柔軟な学習・資格認証の仕組みが
求められる。そこで、これらの指摘事項を踏まえて新たな包括的な資格枠組みである QCF
への改変が進められている。QCF は、イングランド地方では 2008 年 6 月に 2 年間にわた
る実験を終えて、2009 年 12 月に EQF への準拠報告が EU になされた(ウェールズでは
CQFW、スコットランドでは SCQF と呼ばれるが、同時に準拠報告がなされた)
。
図 3.2 に示すように、QCF に格付けされる資格は、難しさを示す「レベル」と学習量を
示す
「サイズ
(単位数:Credit)
」
によって決まり、
サイズに応じて
「Award:1~12 単位
(Credit)
」
、
「Certificate:13~36 単位」及び「Diploma:37 単位以上」の3つに区分されている。1 単
位(Credit)は 10 時間の学習量に相当する。したがって、資格のサイズ(単位数)で、そ
の資格を修得するのにどれ位の時間を要するのか(学習量)の見当がつけられる。
(資料出所)
:QCA, The European Qualifications Framework(EQF)(P.5)をもとに作成
3 つの資格タイプの特徴を要約すると以下の通りである。
・Award(1~12 単位)
:最小サイズの資格で、通常、1 つのユニットで構成される。初め
て資格を取得する者や職業分野への入門者に適している資格であり、また、職業訓練に
4
リーチ卿が委員長を務めた政府の諮問委員会が 2006 年 12 月に提出した最終報告書,“Prosperity for all in the global economy world class skills, Final Report”
<http://www.dcsf.gov.uk/furthereducation/uploads/documents/2006-12%20LeitchReviewl.pdf#search=’Leitch%20Report%202006)>
87
おいて、1 つのユニットだけの内容を学習させたい(あるいは、学習したい)場合など
に適している。
・Certificate(13~36 単位)
:中サイズの資格で、3ユニットくらいで構成される。職場の
仕事で中核となる複数のテーマについて学習するのに適した資格である
・Diploma(37 単位以上)
:最も大きなサイズの資格で、通常、必須ユニットと選択ユニッ
トで構成される。キャリアで必要となる多様なテーマについて総合的に学習するのに適
した資格である。
QCF に格付けされる資格は、 Award は初級 、Certificate は中級、Diploma は上級とい
う概念ではなく、レベルが同じであれば3つの資格の難易度は同じで、サイズだけが違う
ことを意味する。
国内 4 地域では、
透明性のある資格枠組みを開発するという共通理念があるものの、
QCF
への取り組み方に足並みが揃わなかったという経過もあり、そうした経過を引きずるかた
ちで地域によって呼称が異なっている。
・ イングランドと北アイルランドは「QCF」
・ ウェールズは「CQFW」(Credit and Qualifications Framework for Wales)
・ スコットランドは「SCQF」(Scottish Credit and Qualifications Framework)
QCF の導入による利点として、QCA(Qualifications and Credit Framework:資格カリキュ
ラム局)は以下の点を上げている。
①個人や事業主にとって、資格の内容や修得に必要な時間数が理解しやすくなる。
②ユニット単位での教育訓練が可能で、かつ Award の取得に結びつくので事業主にとっ
ては、従業員の能力開発に使いやすくなる。
③小さな学習単位(ユニット)で履修証明が授与されるので、学習者の負担が少ない。
④個人が修得したユニットは、学習者履修記録(Learners Achievement Record:LAR)に
登録されるので修得したユニットの蓄積と移転が容易になる。そのため、いろいろな事情
によって学習の中断を余儀なくされる人やキャリア転換を考える人にとっては大きなメリ
ットとなる。
具体的な資格とユニットの関係を生涯学習教員資格のユニット構成でみてみる。表 3.10
は、生涯学習教員資格のタイプと資格を構成するユニット及び個々のユニットの難易度を
示すレベル、学習量を示す単位数(Credit)を示している。
最小サイズの資格である PTLLS Award を取得するためには、1 つのユニット「生涯学習
指導準備」
で 6 単位を修得する必要があり、
60 時間の学習が必要であることを示している。
中サイズの資格(Certificate)である CTLLS を取得するためには、3 ユニット(
「生涯学習
指導準備:6 単位」
、
「学習の計画と実施:9 単位」及び「評価の原理と実践:3 単位」
)で
18 単位を修得しなければならず、それに必要な学習量は 180 時間となる。一方、最も大き
なサイズの資格(Diploma)である DTLLS の取得には 7 ユニット、90 単位が必要で、900
時間の学習量が必要であることがわかる(表 3.10)
。
88
表 3.10 生涯学習教員資格のユニット構成
資格のタイプ等
PTLLS
CTLLS
(Award)
(Certificate)
DTLLS
(Diploma)
ユニットのタイトル
必要なユ
単位数
必要なユ
単位数
必要なユ
単位数
レベル、単位数(Credit)
ニット
(Credit)
ニット
(Credit)
ニット
(Credit)
○
6
○
6
○
6
学習の計画と実施(レベル4、9 単位)
○
9
○
9
評価の原理と実践(レベル4、3 単位)
○
3
学習の実施と評価(レベル4、15 単位)
○
15
学習の計画・実施に関する理論と原理
○
15
○
15
○
15
○
15
7
90
生涯学習指導準備(レベル4、6単位)
(レベル4、15 単位)
継続的な自己開発と専門能力開発
(レベル5、15 単位)
包括的実践のためのカリキュラム開発
(レベル5、15 単位)
より広い専門能力の実践(レベル 5、15 単位)
合
計
1
6
3
18
注)生涯学習指導準備資格(Preparing to Teach in the Lifelong Learning Sector:PTLLS)Award
生涯学習指導サーティフィケート(Certificate in Teaching in the Lifelong Learning Sector:CTLLS)
生涯学習指導ディプロマ(Diploma in Teaching in the Lifelong Learning Sector:DTLLS)
(資料出所)LLUK August 2007『Guidance for awarding institutions on teacher roles and initial teaching qualifications』より作成
3)QCF への改変の背景としての国外要因
QCF への改変の背景となる国外要因としては、欧州資格枠組み EQF(European
Qualifications Framework for Lifelong Learning)が考えられる。EQF は、欧州各国が生涯学習
のために互いにその資格制度をリンクすることを可能にする欧州共通の基準枠組みである。
資格との関係で EQF が対象とする教育の範囲は、一般・成人教育、教育訓練、高等教育等、
義務教育修了以降の公式および非公式の教育である。
EQF の発端は、2000 年 3 月にリスボンで開催された欧州理事会(European Council)におい
て、欧州が、
「2010 年までに世界でもつとも競争力のあるダイナミックな知識基盤経済を
実現する」という 10 年間の戦略目標の合意である。この「リスボン戦略(Lisbon Strategy)
の 」 目 標 を 実 現 す る た め の 教 育 訓 練 に 関 す る 優 先 的 政 策 と し て 、 EQF お よ び
EC‐VET(European Credit system for Vocational Education and Training:欧州教育訓練単位
制度)の開発が設定された。
各国は第 1 ステージとして 2010 年までに EQF に適合する国内
の資格制度を整備し、第 2 ステージとして 2012 年までに国内の個別の資格を EQF と参照
可能にすることが求められた(ただし義務ではない)。なお、第 1 ステージは、2010 年 12
月 7 日の「ブルージュ・コミュニケ」
(欧州教育訓練担当大臣会議宣言)で、2012 年末ま
89
で延長された。
EQF では、学習経験の長さや学校のタイプであるインプットではなく、実際に知ってい
ること、できること(特別な資格をもつていること)に焦点を当てることを特徴とする。
表 3.11 EQF における各レベルの定義
このため、表 3.11 に示すとおり参照基準を資格取得に必要とされる学習成果を知識、技
能、能力の 3 つに分けて、それぞれの到達の難易度を 8 段階に区分している。このように、
EQF は国を移動したいとか仕事を変えたいとか教育機関を移りたいと願っている学習
者・労働者を助けることになる。なお、EU の他の制度との関係では、各個人の学歴・資
格等のポートフォリオといえる「ユーロパス(Europass)」は各資格の互換性について表示し
ないが、将来的にはポートフォリオに EQF を反映させるという見通しである。また、EQF
90
は高等教育分野に係るボローニャ・プロセスと互換性を持つことになる。
4)QCF と EQF との関係
EQF は、特定の国や地域に基づいてつくられた枠組みではなく国・地域を超越したメタ
枠組みであり、各国・地域の個々の資格を比較参照しやすくする言わば翻訳装置として機
能するものである。したがつて、EQF の枠組みが各国に直接に適用されるわけではない。
EQFプロセスでは各国の特性・実情に応じて、
EQFと参照可能な資格枠組みをNQF(National
Qualifications Framework)として構築することが求められている。NQF は、資格相互を関連
付けたり整列させたりすることをねらう、資格を分類するためのマトリックスである。各
国の NQF は、EQF をいわば「共通の物差し」として参照することによって各国 NQF に位
置付けられた個々の資格の相対的価値を示すことになる。つまり、各国 NQF と EQF は各
国特有資格の全欧州への「翻訳」を助ける関係にある。このような NQF と EQF との関係
は、図 3.3 に示すような概念になる。そこで、イギリスの場合には、QCF が 2004 年以降の
EQF プロセスにおける各国 NQF に相当するとみなすことができる。QCF では最
も下位の水準区分を数字ではなく「入門」と名付け、その上位の水準区分を 8 段階で設定
したことは、同じ 8 段階の区分をとる EQF を意識したものとみられる。しかしながら、2009
年 8 月に決定された QCF と EQF との参照対応関係の最終案は、図 3.4 に示すとおり、QCF
の「入門 3」が EQF のレベル 1 に、QCF のレベル 4 および 5 が EQF のレベル 5 に参照対
応する関係となり、レベルの数字が一致しないものとなった5。
図 3.3 NQF と EQF を‘翻訳機’とする各国資格
A国のNQF
資格
資格
資格
5
レベル 9
レベル 8
レベル 8
レベル 7
レベル 7
レベル 6
資格
レベル 5
資格
レベル 4
資格
資格
E Q F
レベル 6
レベル 5
B国のNQF
レベル 6
資格
レベル 5
資格
レベル 4
レベル 4
レベル 3
レベル 3
レベル 3
レベル 2
レベル 2
レベル 2
レベル 1
レベル 1
資格
資格
資格
レベル 1
リーチ卿が委員長を務めた政府の諮問委員会が 2006 年 12 月に提出した最終報告書“Prosperity for all in the
global economy –world class skills, Final Report”
〈http://www.dcsf.gov.uk/furthereducation/uploads/documents/2006-12%20LeitchReview1.pdf#search='L
eitch%20Report%202006'〉の報告書の p.35
91
図 3.4 QCF と EQF との参照対応関係
(資料出所)QCDA, Report on referencing the Qualifications and Credit Framework to the European Qualifications
Framework for Lifelong Learning(P.35)をもとに作成
3.2 教員・指導員の養成・研修制度
(1)教員・指導員の類型
義務教育後(16 歳以降)の教育訓練を担当する教員・指導員等は、①NVQ の取得をめ
ざす訓練プログラムを担当する「指導者」6と、②NVQ 以外の資格取得や能力向上(読み・
書き・計算能力を含む)をめざす継続教育・訓練プログラムを担当する教育スタッフに大
別される。
表 3.12 2つの訓練プログラム
①NVQ の取得をめざす訓練プログラム ・上級徒弟制度、徒弟制度、NVQ 訓練、雇用準
備訓練
・Train to Gain によるプログラム
・ニューディール・プログラム
②NVQ 以外の資格取得や能力向上をめ ・一般社会人(16~24 歳も含む)を対象とした
ざす継続教育訓練プログラム
プログラム
・Train to Gain によるプログラム
・ニューディール・プログラム
前者のプログラムには、上級徒弟制度、徒弟制度、NVQ 訓練、雇用準備訓練、Train to Gain
によるプログラム、ニューディール・プログラムがあり、後者のプログラムには一般社会
人(16~24 歳も含む)を対象としたプログラム、Train to Gain によるプログラム及びニュ
ーディール・プログラムがある。
①及び②のプログラムを提供する教育訓練プロバイダーは、継続教育カレッジ、民間の訓
練プロバイダー、ラーンダイレクト・センター、ボランティア団体等である。
6
指導員(trainer)
、評価者、内部監査員、及び外部監査員を合わせたもの(筆者命名)
。
92
そして、①のプログラムを担当する指導者として、指導員(trainer)
、評価者、内部部監査
員及び外部監査員がいる。なお、指導員は技能訓練のみを担当する者で、NVQ 取得訓練の
中で実施される座学(知識習得科目)に関する部分は PGCE/Cert.Ed、QTFE、QTLS 等の
有資格教員が担当する。一方、②のプログラムを担当する教育スタッフとして PGCE/
Cert.Ed、QTFE、QTLS 等の有資格教員がおり、技能訓練に関しては指導員が担当する。
また、e・ラーニングを担当する指導者としてオンライン・チューターがいる。
表 3.13 は彼等に求められる資格や主な役割及び資格の取得方法の概要を示したもので
ある。以下、その詳細について述べることとする。
表 3.13 「指導者」に求められる資格と彼等の役割
「指導者」区分 必要とされる資格
資格取得の方法
主な役割
1.NVQ取得訓練活動を
担う「指導者」
1)指導員
2)評価者
NVQ「学習と開発」レベル 3、
「訓
認定センターで有資格の指
受講者(訓練生)の技能訓練・コーチングを担
練指導と支援」レベル 3 など
導員について OJT
当する
A ユニット資格
認定センターで有資格の評
・受講者(訓練生)が達成した成果を評価する。
価者について OJT
・認定センター内の評価業務の品質保証に貢献
する。
・評価者が行った評価結果を監査する。
3)内部監査員
V1 ユニット資格
認定センターで有資格の内
・認定センター内の評価業務の品質保証を主導
部監査員について OJT
する
・評価者の評価結果及び内部監査
4)外部監査員
V2 ユニット資格
認定センターで有資格の外
員が行った監査結果を監査する。
部監査員について OJT
・認定センターの評価業務を監査し、センター間
の評価業務の品質保証を主導する。
・認定センターの業務を監査し、認可基準を満た
しているかチェックする。
2.継続教育カレッジの
教育スタッフ
1)フルタイムの講師
・
①PGCE/Cert.Ed.
①PGCE/Cert.Ed.は主に大
受講者の指導・コーチング
学で開講されるコースを受
・コース責任者の任を負う。
講(受講資格は大学卒業)
②QTFE レベル 4 継続教育教員資
②QTFE レベル4継続教育
格ステージ3
教員資格は継続教育カレッ
93
ジが提供するコースを受講
③QTLS
③QTLS は継続教育カレッ
ジが提供するコースを受講
して DTLLS を取得し、そ
の後 CPD を経て取得する
2)パートタイムの講師
①QTFE レベル4継続教育教員資
継続教育カレッジが提供す
格ステージ1またはステージ1
るコースを受講
受講者の指導・コーチング
と2
②ATLS
②ATLS は継続教育カレッ
ジが提供するコースを受講
して CTLLS を取得し、そ
の後 CPD を経て取得する
3.eラーニングの指導
者
1)オンライン・チュー
オンライン・チューター資格
UfI が提供するオンライン
・学習者への情報提供、情報へのアクセスを助
ター
(Certificate)
指導コースを受講
言
・学習者の初期評価、指導、支援
・学習の進行役
(資料出所)
:
『イギリスにおける教育訓練と指導者等の資格要件』労働政策研究・研修機構(2004)
1)NVQ 取得訓練活動を担う「指導者」
NVQ 取得訓練活動を担う指導者として指導員(trainer)、評価者、内部監査員、及び外部
監査員がおり、それぞれに保有しなければならない資格がある。
a)指導員に必要な資格
これまで NVQ の取得訓練や職場での能力開発において、訓練指導を担当する指導者(指
導員、職場指導員等)に資格の取得を義務付ける規定がないこともあって、関連する NVQ
資格等を持っている指導者が極めて少ない状況にあった。そのため、関連資格を持ってい
ない監督者やベテラン技能者が、訓練方法論や教授法に関する訓練を受けることなしに、
あるいは、訓練の仕方を経験しないままに訓練を担当することが通常化していた。政府は
このような状況を解消し、能力開発を担う指導者の指導能力を高めるために、2010 年まで
に公的資金が投入されている教育訓練を実施する教育・訓練施設・組織(訓練プロバイダ
ー)で、教育訓練を担当する指導者に対し、関連資格の取得を義務付けることとしている。
指導員、職場指導員、メンター(Mentor)と呼称されている指導者に対して取得するこ
とが推奨されている資格に NVQ 「学習と開発」レベル3、NVQ「訓練指導と支援」レベ
ル3がある。表 3.14、表 3.15 にそれぞれの NVQ を構成するユニットとエレメントを示す。
NVQ 「学習と開発」レベル3を取得するためには、7 つの必須ユニットに加えて、A グ
ループから2つ、B グループから2つのユニットを選択し、計 11 ユニットを取得すること
と規定している。
94
表 3.14 NVQ「学習と開発」レベル3の必須ユニットと選択ユニットの構成
区
ユニッ
分
ト No.
G3
L3
必
L5
ユニットタイトル
ト
L9
L16
L18
選
択
L10
ユ
ニ
L11
G3.2
自己啓発ニーズを把握する
個人の学習目標、プログラム
L3.1
学習・開発の達成度と機会を検討する
を確認する
L3.2
学習目標、プログラムを確認し、合意する
L5.1
学習者と学習プログラムを協議する
学習者と学習プログラムにつ
いて合意する
L12
・
L5.2
学習プログラムを検討し、学習者とプログラムの変更について
合意する
L6.1
訓練における様々な選択肢を把握する
L6.2
学習者に訓練を行う
L9.1
学習者と良好な関係を築く
L9.2
学習者を支援する
L9.3
差別防止の学習活動を推進する
L16.1
学習者の進捗度を検討する
L18.1
人々の学習方法を調査する
L18.2
学習・訓練方法を開発する
L18.3
提案された学習・開発方法をテストし、変更する
プレゼンテーションによる学習
L10.1
グループへプレゼンテーションをする
ができる
L10.2
フォローアップ課題を作成する
デモンストレーションと指導に
L11.1
学習者へ技能と方法を提示する
よる学習ができる
L11.2
学習者を指導する
コーチングによる個別学習が
L12.1
学習者個々人を指導する
できる
L12.2
学習を適用するために学習者個々人を手助けする
L13.1
グループ動態を管理する
L13.2
グループで一緒に学習ができる
L4.1
学習ニーズに合う選択科目を選ぶ
L4.2
学習者のための学習プログラムを設計する
学習を支援する教材の開発と
L7.1
学習教材を開発する
準備を行う
L7.2
学習を支援する教材を選択する
職場における指導で学習者を
L14.1
指導プロセスを計画する
訓練を展開する
学習を推進する環境を構築す
る
学習者の進捗度をモニターし、
検討する
学習・開発における変化に対
応する
ッ
ト
エレメントタイトル
独自の実践を評価する
ニ
ッ
ト No.
G3.1
独自の実践を行い、評価する
須
ユ L6
エレメン
A
グ
ル
L13
グループ学習ができる
L4
学習プログラムを設計する
|
プ
L7
L14
95
L14.2
指導関係を構築し、維持する
L14.3
指導への支援を行う
学習者個々人を助言・支援す
L15.1
学習計画の作成について学習者個々人を指導する
る
L15.2
自己の学習管理において学習者個々人を助言・支援する
L20.1
合意した基準に照らして職場における業績を評価する
支援する
選
択
ユ
L15
ニ
ッ
ト
L20
職場で達成された能力を支援
する
L20.2
・
B
L23
グ
ル
|
L24
A2
ックをする
職場において基礎技能をどの
L23.1
職場における基礎技能のニーズと学習機会を把握する
ように提供するか支援する
L23.2
職場において基礎技能を提供するのを支援する
職場で基礎技能を学ぶ人々を
L24.1
個人が自分の学習ニーズを把握するのを助ける
支援する
L24.2
人々が職場で基礎技能を開発するのを支援する
A1.1
訓練生の能力を評価する計画を作成する
一連の方法を用いて訓練生を
A1.2
評価決定を行うために基準に照らして証拠を判定する
評価する
A1.3
評価決定に関して訓練生へフィードバックし、支援する
A1.4
内部品質保証プロセスへ貢献する
A2.1
訓練生の成果を評価する計画を検討し、合意する
観察を通して訓練生の成果を
A2.2
合意した基準に照らして訓練生の成果を評価する
評価する
A2.3
合意した基準に照らして訓練生の知識を評価する
A2.4
評価決定を行い、フィードバックをする
プ
A1
職場においてスタッフを支援し、彼等の業績に関するフィードバ
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Learning and Development 』
NVQ「訓練指導と支援」レベル 3 を取得するためには、6 つの必須ユニットに加えて、
A グループから 2 つ、B グループから 1 つのユニットを選択するか、あるいは A グループ
から3つのユニットを選択して計 9 ユニットを取得することと規定している。
表 3.15 NVQ「訓練指導と支援」レベル3の必須ユニットと選択ユニットの構成
区
ユニット
分
No.
G3
必
須
L3
ユ
ニ
ッ
L5
ユニットタイトル
エレメントタイトル
No.
独自の実践を行い、評価す
G3.1
独自の実践を評価する
る
G3.2
自己啓発ニーズを把握する
個人の学習目標、プログラ
L3.1
学習・開発の達成度と機会を検討する
ムを確認する
L3.2
学習目標、プログラムを確認し、合意する
L5.1
学習者と学習プログラムを協議する
学習者と学習プログラムに
ついて合意する
ト
L6
エレメント
訓練を展開する
学習プログラムを検討し、学習者とプログラムの変更について合
L5.2
意する
L6.1
訓練における様々な選択肢を把握する
L6.2
学習者に訓練を行う
96
L9
L16
選
択
L10
ユ
ニ
L11
L9.1
学習者と良好な関係を築く
L9.2
学習者を支援する
L9.3
差別防止の学習活動を推進する
L16.1
学習者の進捗度を検討する
プレゼンテーションによる学
L10.1
グループへプレゼンテーションをする
習ができる
L10.2
フォローアップ課題を作成する
デモンストレーションと指導
L11.1
学習者へ技能と方法を提示する
による学習ができる
L11.2
学習者を指導する
コーチングによる個別学習
L12.1
学習者個々人を指導する
ができる
L12.2
学習を適用するために学習者個々人を手助けする
L13.1
グループ動態を管理する
L13.2
グループで一緒に学習ができる
L14.1
指導プロセスを計画する
L14.2
指導関係を構築し、維持する
L14.3
指導への支援を行う
学習者個々人を助言・支援
L15.1
学習計画の作成について学習者個々人を指導する
する
L15.2
自己の学習管理において学習者個々人を助言・支援する
L20.1
合意した基準に照らして職場における業績を評価する
学習を推進する環境を構築
する
学習者の進捗度をモニター
し、検討する
ッ
ト
L12
・
A
グ
ル
L13
グループ学習ができる
|
プ
L14
選
職場における指導で学習者
を支援する
択
ユ
L15
ニ
ッ
ト
L20
職場で達成された能力を支
援する
・
B
グ
ル
A1
クをする
A1.1
訓練生の能力を評価する計画を作成する
一連の方法を用いて訓練生
A1.2
評価決定を行うために基準に照らして証拠を判定する
を評価する
A1.3
評価決定に関して訓練生へフィードバックし、支援する
A1.4
内部品質保証プロセスへ貢献する
職場における安全衛生手法
D1
職場における安全衛生を検討するための準備をする
を検討する
D2
職場における安全衛生の実施に係る検討を行う
|
プ
D
職場においてスタッフを支援し、彼等の業績に関するフィードバッ
L20.2
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Learning and Development 』
一方、トレーニング・マネージャー、トレーニング・オフィサー、訓練開発主幹、人材
マネージャー、訓練コーディネーター等と呼称されている能力開発のマネージメント業務
に携わる人達に取得することが推奨されている資格に NVQ「学習と開発」レベル 4~5、
NVQ「学習と開発の提供に係るマネージメント」レベル 4、NVQ「学習と開発の提供に係
97
る調整」レベル4がある。表 3.16、表 3.17、表 3.18、表 3.19 にそれぞれの NVQ を構成す
るユニットとエレメントを示す。NVQ 「学習と開発」レベル 4 を取得するためには、8
つの必須ユニットに加えて、
選択ユニットから 4 つを選んで計 12 ユニットを取得すること
と規定している。
表 3.16 NVQ「学習と開発」レベル4の必須ユニットと選択ユニットの構成
区
分
エレメ
ユニ
ット
ユニットタイトル
G3
L4
L5
G2.1
組織内の学習に確実に貢献する
G2.2
組織内の学習戦略と学習プロセスに貢献する
G2.3
学習プロセスを維持するために組織を支援する
独自の実践を行い、評価す
G3.1
独自の実践を評価する
る
G3.2
自己啓発ニーズを把握する
L4.1
学習ニーズに合う選択科目を選ぶ
L4.2
学習者のための学習プログラムを設計する
L5.1
学習者と学習プログラムを協議する
組織内の学習に貢献する
学習プログラムを設計する
学習者と学習プログラムに
ついて合意する
必
須
L8
ユ
学習プロセスへの他の人々
の貢献度を管理する
ニ
ッ
ト
L9
L17
エレメントタイトル
No.
No.
G2
ント
学習を推進する環境を構築
する
学習・開発プログラムを評価
し、改善する
L5.2
学習プログラムを検討し、学習者とプログラムの変更について合
意する
L8.1
役割、資源について貢献者と合意する
L8.2
貢献者の活動を調整する
L8.3
貢献者の効果をモニターし、検討する
L9.1
学習者と良好な関係を築く
L9.2
学習者を支援する
L9.3
差別防止の学習活動を推進する
L17.1
プログラムの評価方法を選択する
L17.2
学習・開発プログラムを改善するために情報を分析する
L17.3
学習・開発プログラムを改善する
L2 または L3 を選択する
L2
L3
L7
組織の学習・開発ニーズを把
握する
L2.1
組織全体で組織の開発ニーズをどのように満たすことができるか
検討する
L2.2
組織内の学習・開発プログラムを開発する
個人の学習目標、プログラム
L3.1
学習・開発の達成度と機会を検討する
を確認する
L3.2
学習目標、プログラムを確認し、合意する
学習を支援する教材の開発
L7.1
学習教材を開発する
と準備を行う
L7.2
学習を支援する教材を選択する
98
L13
L13.1
グループ動態を管理する
L13.2
グループで一緒に学習ができる
L14.1
指導プロセスを計画する
L14.2
指導関係を構築し、維持する
L14.3
指導への支援を行う
学習者個々人を助言・支援
L15.1
学習計画の作成について学習者個々人を指導する
する
L15.2
自己の学習管理において学習者個々人を助言・支援する
L16.1
学習者の進捗度を検討する
L18.1
人々の学習方法を調査する
L18.2
学習・訓練方法を開発する
L18.3
提案された学習・開発方法をテストし、変更する
L19.1
国際的な学習・開発」に影響する事柄を把握する
国際環境の中で学習・開発を
L19.2
国際環境に合う学習・開発プログラムを設計する
提供する
L19.3
国際環境に合う学習・開発教材を作成し、支援する
L19.4
国際的に訓練を提供する
職場で基礎技能を学ぶ人々
L21.1
基礎技能が組織にとって重要であることを人々に納得させる
を支援する
L21.2
組織内の基礎技能のニーズを把握する
職場に基礎技能の訓練を導
L22.1
職場で基礎技能を提供するプログラムを導入する
入する
L22.2
基礎技能の訓練受講者への学習支援を行う
A1.1
訓練生の能力を評価する計画を作成する
一連の方法を用いて訓練生
A1.2
評価決定を行うために基準に照らして証拠を判定する
を評価する
A1.3
評価決定に関して訓練生へフィードバックし、支援する
A1.4
内部品質保証プロセスへ貢献する
A2.1
訓練生の成果を評価する計画を検討し、合意する
観察を通して訓練生の成果
A2.2
合意した基準に照らして訓練生の成果を評価する
を評価する
A2.3
合意した基準に照らして訓練生の知識を評価する
A2.4
評価決定を行い、フィードバックをする
V1.1
内部評価を実施し、品質保証システムの評価を行う
評価プロセスの内部品質保
V1.2
評価者を支援する
証を図る
V1.3
評価者の業績の品質をモニターする
V1.4
外部品質保証要件を満たす
グループ学習ができる
選
択
L14
ユ
ニ
ッ
L15
ト
L16
L18
L19
L21
L22
A1
A2
V1
職場における指導で学習者
を支援する
学習者の進捗度をモニター
し、検討する
学習・開発における変化に対
応する
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Learning and Development 』
NVQ 「学習と開発」レベル5を取得するためには、6つの必須ユニットに加えて、選
択ユニットから4つを選んで計 10 ユニットを取得することと規定している。
99
表 3.17 NVQ「学習と開発」レベル5の必須ユニットと選択ユニットの構成
区
ユニット
分
No.
G2
G3
L1
L2
必 L18
ユニットタイトル
組織内の学習に貢献する
独自の実践を行い、評価する
学習・開発の計画と戦略を作成
する
組織の学習・開発ニーズを把握
する
学習・開発における変化に対応
する
須
エレメ
ント No.
G2.1
組織内の学習に確実に貢献する
G2.2
組織内の学習戦略と学習プロセスに貢献する
G2.3
学習プロセスを維持するために組織を支援する
G3.1
独自の実践を評価する
G3.2
自己啓発ニーズを把握する
L1.1
学習・開発計画を作成する
L1.2
組織の学習・開発プログラムを制作する
L1.3
学習・開発プロセスの効果を評価する
L2.1
ッ
P8
ト
略と計画を策定する
A7
組織の作業を進める戦略を確立
(MSC)
する
か検討する
組織内の学習・開発プログラムを開発する
L18.1
人々の学習方法を調査する
L18.2
学習・訓練方法を開発する
L18.3
提案された学習・開発方法をテストし、変更する
P8.1
機会均等と多様化を促進する戦
組織全体で組織の開発ニーズをどのように満たすことができる
L2.2
ユ
ニ
エレメントタイトル
機会均等と認識している多様化を促進する戦略を検討し、開発
する
P8.2
機会均等と多様化施策・手法を支援する
P8.3
機会均等と多様化計画の実施に係る責任を負う
P8.4
機会均等と多様化戦略の効果を評価する
A7.1
組織の目的を設定するために共有するビジョンと使命を決める
A7.2
組織の作業の指針となる価値と方針を定義する
A7.3
組織を統治する目的と戦略を形成する
A7.4
組織的な戦略のための支援を得る
B3.1
支出に対する勧告を行う
B3.2
予算に対する支出を管理する
B5.1
財源の創出と配分を検討する
B5.2
経費の申請を査定する
B5.3
組織の活動財源を獲得する
L4.1
学習ニーズに合う選択科目を選ぶ
L4.2
学習者のための学習プログラムを設計する
L8.1
役割、資源について貢献者と合意する
B3 または B5 を選択する
B3
(MSC)
財源の使用を管理する
B5
組織の計画のための財源を確
(MSC)
保する
L4
学習プログラムを設計する
L8
学習プロセスへの他の人々の貢
100
選
L8.2
貢献者の活動を調整する
択
L8.3
貢献者の効果をモニターし、検討する
ユ
L17.1
プログラムの評価方法を選択する
L17.2
学習・開発プログラムを改善するために情報を分析する
L17.3
学習・開発プログラムを改善する
A8.1
組織の業績をするための基準と方法を開発する
A8.2
組織の業績を評価する
A8.3
組織的な戦略の成功と失敗の原因を説明する
P13.1
最近の組織構造を検討する
組織構造の変更に係る設計・実
P13.2
組織構造の変更のための適切な勧告をする
施・評価をする
P13.3
組織構造に係る勧告された変更を実施する
P13.4
組織構造を変更する手順を開発し、評価する
ニ
献度を管理する
L17
ッ
学習・開発プログラムを評価し、
改善する
ト
A8
(MSC)
P13
組織の業績を評価し、改善する
C11
マネージメント・チームを編成す
C11.1
マネージメント・チームの効果を評価する
(MSC)
る
C11.2
マネージメント・チームの効果を改善する
C13.1
個人とチームに作業を配分する
C13.2
個人及びチームと目標、作業計画について合意する
C13.3
個人及びチームの業績を評価する
C13.4
個人及びチームへ業績に関するフィードバックをする
C13
(MSC)
チームと個人の業績を管理する
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Learning and Development 』
NVQ 「学習と開発の提供に係るマネージメント」レベル4を取得するためには、6つ
の必須ユニットに加えて、選択ユニットから2つを選んで計8ユニットを取得することと
規定している。
表 3.18 NVQ「学習と開発の提供に係るマネージメント」レベル4の必須ユニットと選択
ユニットの構成
区
分
ユニット No.
G3
ユニットタイトル
ユ
L1
ト
L2
L17
エレメントタイトル
G3.1
独自の実践を評価する
価する
G3.2
自己啓発ニーズを把握する
L1.1
学習・開発計画を作成する
L1.2
組織の学習・開発プログラムを制作する
L1.3
学習・開発プロセスの効果を評価する
学習・開発の計画と戦略
を作成する
ニ
ッ
No.
独自の実践を行い、評
必
須
エレメント
組織の学習・開発ニーズ
を把握する
学習・開発プログラムを
L2.1
組織全体で組織の開発ニーズをどのように満たすこと
ができるか検討する
L2.2
組織内の学習・開発プログラムを開発する
L17.1
プログラムの評価方法を選択する
101
評価し、改善する
L17.2
学習・開発プログラムを改善するために情報を分析する
L17.3
学習・開発プログラムを改善する
P2.1
人的資源化に向けた戦略を検討し、作成する
P2.2
人的資源化計画を作成する
P2.3
人的資源化戦略、計画の実施に責任を負う
P2.4
人的資源化戦略の効果を評価する
C13.1
個人とチームに作業を配分する
チームと個人の業績を
C13.2
個人及びチームと目標、作業計画について合意する
管理する
C13.3
個人及びチームの業績を評価する
C13.4
個人及びチームへ業績に関するフィードバックをする
個人の学習目標、プログ
L3.1
学習・開発の達成度と機会を検討する
ラムを確認する
L3.2
学習目標、プログラムを確認し、合意する
学習プログラムを設計す
L4.1
学習ニーズに合う選択科目を選ぶ
る
L4.2
学習者のための学習プログラムを設計する
学習を支援する教材の
L7.1
学習教材を開発する
開発と準備を行う
L7.2
学習を支援する教材を選択する
学習プロセスへの他の
L8.1
役割、資源について貢献者と合意する
人々の貢献度を管理す
L8.2
貢献者の活動を調整する
る
L8.3
貢献者の効果をモニターし、検討する
V1.1
内部評価を実施し、品質保証システムの評価を行う
評価プロセスの内部品
V1.2
評価者を支援する
質保証を図る
V1.3
評価者の業績の品質をモニターする
V1.4
外部品質保証要件を満たす
B3.1
支出に対する勧告を行う
B3.2
予算に対する支出を管理する
職場における安全衛生
D1
職場における安全衛生を検討するための準備をする
手法を検討する
D2
職場における安全衛生の実施に係る検討を行う
組織の人的資源となる
P2
人々に提供する戦略、
計画を作成する
C13(MSC)
L3
L4
L7
選
択
L8
ユ
ニ
ッ
ト
V1
B3(MSC)
D
財源の使用を管理する
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Learning and Development 』
NVQ 「学習と開発の提供に係る調整」レベル4を取得するためには、6つの必須ユニ
ットに加え、
選択ユニットから1つを選んで計7ユニットを取得することと規定している。
102
表 3.19 NVQ「学習と開発の提供に係る調整」レベル4の必須ユニットと選択ユニットの
構成
区
ユニット
エレメ
ユニットタイトル
分
No.
G3
エレメントタイトル
ント No.
G3.1
独自の実践を評価する
G3.2
自己啓発ニーズを把握する
個人の学習目標、プログラムを確
L3.1
学習・開発の達成度と機会を検討する
認する
L3.2
学習目標、プログラムを確認し、合意する
L4.1
学習ニーズに合う選択科目を選ぶ
L4.2
学習者のための学習プログラムを設計する
L5.1
学習者と学習プログラムを協議する
L5.2
学習プログラムを検討し、学習者とプログラムの変更について合意する
L8.1
役割、資源について貢献者と合意する
L8.2
貢献者の活動を調整する
L8.3
貢献者の効果をモニターし、検討する
L17.1
プログラムの評価方法を選択する
L17.2
学習・開発プログラムを改善するために情報を分析する
L17.3
学習・開発プログラムを改善する
組織の学習・開発ニーズを把握
L2.1
組織全体で組織の開発ニーズをどのように満たすことができるか検討する
する
L2.2
組織内の学習・開発プログラムを開発する
学習を支援する教材の開発と準
L7.1
学習教材を開発する
備を行う
L7.2
学習を支援する教材を選択する
L9.1
学習者と良好な関係を築く
L9.2
学習者を支援する
L9.3
差別防止の学習活動を推進する
L15.1
学習計画の作成について学習者個々人を指導する
L15.2
自己の学習管理において学習者個々人を助言・支援する
L16.1
学習者の進捗度を検討する
V1.1
内部評価を実施し、品質保証システムの評価を行う
評価プロセスの内部品質保証を
V1.2
評価者を支援する
図る
V1.3
評価者の業績の品質をモニターする
V1.4
外部品質保証要件を満たす
職場における安全衛生手法を検
D1
職場における安全衛生を検討するための準備をする
討する
D2
職場における安全衛生の実施に係る検討を行う
独自の実践を行い、評価する
L3
必
L4
学習プログラムを設計する
須
ユ
学習者と学習プログラムについ
L5
ニ
て合意する
ッ
ト
学習プロセスへの他の人々の貢
L8
献度を管理する
学習・開発プログラムを評価し、
L17
改善する
L2
L7
L9
学習を推進する環境を構築する
選
択
ユ
L15
学習者個々人を助言・支援する
ニ
ッ
学習者の進捗度をモニターし、検
L16
討する
ト
V1
D
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Learning and Development 』
103
表 3.20 は、NVQ 「学習と開発」レベル 3~5、NVQ「訓練指導と支援」レベル3、NVQ
「学習と開発の提供に係るマネージメント」レベル4及び NVQ 「学習と開発の提供に係
る調整」レベル4に含まれる必須ユニットと選択ユニット並びに各 NVQ 間で共通するユ
ニットの対比を示す。
表 3.20 各 NVQ に含まれるユニットの対応表
NVQ のタイトル
学
学
習
習
と
と
訓
開
開
学
練
マ発
発
習
指
ネの
の
と
導
|提
提
開
と
ジ供
供
発
支
メに
に
援
ン係
係
トる
る
調
整
ユニット No.及びユニットタイトル
レ
レ
レ
レ
ベ
ベ
ベ
ベ
ル
ル
ル
ル
3
4
5
3
M
M
M
M
G2:組織内の学習に貢献する
M
G3:独自の実践を行い、評価する
M
レ
ベ
ル4
M
L1:学習・開発の計画と戦略を作成する
M
M
L2:組織の学習・開発ニーズを把握する
Ma M
M
L3:個人の学習目標、プログラムを確認する
M
Ma
L4:学習プログラムを設計する
Ob M
L5:学習者と学習プログラムについて合意する
M
L6:訓練を展開する
M
L7:学習を支援する教材の開発と準備を行う
Ob O
O
M
ル
4
M
O
M
O
M
M
M
O
L9:学習を推進する環境を構築する
M
L10:プレゼンテーションによる学習ができる
Oa
Oa
L11:デモンストレーションと指導による学習ができる
Oa
Oa
L12:コーチングによる個別学習ができる
Oa
Oa
L13:グループ学習ができる
Oa O
Oa
L14:職場における指導で学習者を支援する
Ob O
Ob
L15:学習者個々人を助言・支援する
Ob O
Ob
104
ベ
M
M
M
L8:学習プロセスへの他の人々の貢献度を管理する
M
レ
O
O
O
M
M
O
M
L16:学習者の進捗度をモニターし、検討する
L17:学習・開発プログラムを評価し、改善する
M
L18:学習・開発における変化に対応する
O
M
M
O
O
M
O
M
M
Ob O
O
O
L19:国際環境の中で学習・開発を提供する
Ob
L20:職場で達成された能力を支援する
Ob
L21:職場で基礎技能をどのように提供するか計画する
O
L22:職場に基礎技能の訓練を導入する
O
L23:職場において基礎技能をどのように提供するか支援する
Ob
L24:職場で基礎技能を学ぶ人々を支援する
Ob
D: 職場における安全衛生手法を検討する
A1:一連の手法を用いて訓練生を評価する
Ob O
A2:観察を通して訓練生の成果を評価する
Ob O
Ob
A7:組織の作業を進める戦略を確立する
M
A8:組織の業績を評価し、改善する
O
O
V1:評価プロセスの内部品質保証を図る
O
B3:財源の使用を管理する
Ma
B5:組織の計画のための財源を確保する
Ma
C11:マネージメント・チームを編成する
O
C13:チームと個人の業績を管理する
O
O
O
M
M
P2:組織の人的資源となる人々に提供する戦略、計画を作成する
P8:機会均等と多様化を促進する戦略と計画を策定する
M
P13:組織構造の変更に係る設計・実施・評価をする
O
注)M は必須ユニットを、O は選択ユニットを示す。
Ma は選択必須ユニットで、いずれかを選ばなければならない。
Oa は選択ユニット A グループを、Ob は選択ユニット B グループを示す。
(資料出所)
:
『イギリスにおける教育訓練と指導者等の資格要件』労働政策研究・研修機構(2004)
【認定証(Certificate)の取得に結びつくユニット資格】
フル規格の NVQ は、その内容が非常に広く多岐にわたっているために、資格を取得す
るのに多くの時間と労力を伴い途中で止めてしまう者も多い。例えば、フル規格の NVQ
「学習と開発」レベル3は 11 のユニットを、NVQ「訓練指導と支援」レベル3は9のユ
ニットを取得して資格取得となる構成になっている。そこで、NVQ「訓練指導と支援」レ
ベル3、NVQ「学習と開発」レベル3及びレベル4を構成するユニットの中から、いくつ
かのユニットを組み合わせて認定証(Certificate)として取得できる資格が追加されている
(表 3.21 参照)
。
証明書は、職務範囲を絞って3~4のユニットを達成すると取得できる構成となってお
り、職場指導員、指導員、メンター、訓練助手、評価者など能力開発に関連する職業に従
事している者、あるいは就こうとする者に取得が推奨されている資格である。
105
表 3.21 認定証(Certificate)のユニット構成
認定証(Certificate)のタイトル
職
場
職
学
習 学 場
者 習 に
の の
お
初 評 け
期 価
る
と
訓
評
価 見 練
と
直
と
支
し
提
示
援
職 職
に
職
お
場
け
に
お
職
け
場
る
学
技 習
能
る
に
場 お
お
に
け
け
お
る
る
け
基 基
る
礎 礎
習
者
の
|
練
職 に
学
コ
訓
場 場
指 技 技
導 能 能
支 開
チ
援 発
ン
ユニット No.及びユニットタイトル
グ
G3:独自の実践を行い、評価する
M
L3:個人の学習目標、プログラムを確認する
M
M
L4:学習プログラムを設計する
M
M
M
M
M
M
M
M
M
M
M
M
L5:学習者と学習プログラムについて合意する
L6:訓練を展開する
M
L9:学習を推進する環境を構築する
M
L11:デモンストレーションと指導による学習ができる
M
M
L12:コーチングによる個別学習ができる
M
L13:グループ学習ができる
L14:職場における指導で学習者を支援する
O
L15:学習者個々人を助言・支援する
O
L16:学習者の進捗度をモニターし、検討する
O
M
M
M
M
M
M
M
L20:職場で達成された能力を支援する
L21:職場で基礎技能をどのように提供するか計画する
M
L22:職場に基礎技能の訓練を導入する
M
L23:職場において基礎技能をどのように提供するか支援する
M
L24:職場で基礎技能を学ぶ人々を支援する
M
M
A1:一連の手法を用いて訓練生を評価する
注)M は必須ユニットを、O は選択ユニットを示す
(資料出所)
:
『イギリスにおける教育訓練と指導者等の資格要件』労働政策研究・研修機構(2004)
106
b)指導員の役割
職場での OJT では、監督者等が指導員として指導する場合が多い。通常の作業の中で、
NVQ を構成するユニットの内容に適合する仕事(作業)を、訓練生に仕事の教え方に沿っ
て単純なものから複雑なものへ、容易なものから難しいものへと配置することは、OJT を
効果的に進める上で、極めて重要なことである。そのため、彼等の職務の多くは、訓練生
の進捗レベルに合わせた仕事の割り当てと調整作業で占められている。そして、一連の
NVQ の取得訓練において、指導員は以下の職務を担う。
イ.訓練生が既にできるものとこれから学ばなければならないものを把握し、訓練内容に
反映させる。
ロ.職場で実施する適切な訓練に関して雇用主に説明し、合意を得る。
ハ.訓練計画に基づいて仕事(作業)の割り当てをし、指導・指示をして OJT を進める。
ニ.雇用主と訓練生の進捗度について検討する。
ホ.訓練生の進捗度について検討し、検討結果を訓練生へフィードバックする。
へ.訓練生が評価を受けるためのレベルに到達し、評価のための準備ができたと判断され
たとき、評価を受けることについて同意する。
c)指導員の養成
指導員や職場指導員として直接、訓練指導を担当する人たちの養成は、認定センターと
して AB によって認可されている継続教育カレッジ、訓練センター、企業等の現場で、OJT
によって行われる。具体的な養成方法は、彼等に取得することが奨励されている NVQ「学
習と開発」レベル3、あるいは NVQ「訓練指導と支援」レベル3を取得するために見習い
指導員(Trainee Trainer)として、当該 NVQ の取得訓練を認定センターの現場で受けると
いうやり方である。訓練方法、内容は、他の NVQ の取得訓練と同様に、ユニットに規定
されている項目を指導員等の指導・指示のもとに OJT を通して達成して行くことが求めら
れる。
OJT は、①シャドー・ワーク(指導員が実際に行っている仕事(作業)を注意深く観察
し、仕事の内容、手順、方法等を覚えて指導員の実務を学ぶこと)
、②助手として仕事を手
伝うこと
(準備作業、
訓練指導の補助等を行う)
、
③指示に基づいて仕事の一部を担当する、
④指導員の監督の下で訓練生の指導を担当する等で進められる。
一方、既に指導員として認定センターで雇用されている人たちの能力開発は、認定セン
ターの責任で行われる。認定センターは、彼等の能力開発を支援し、訓練の機会を提供す
ることが求められており、スタッフが能力開発や資格取得に関する継続教育訓練を受けら
れるような体制になっていることが認可要件の1つとなっている。例えば、エンジニアリ
ング分野の認定センターである ATG(Aylesbury Training Group)では、指導員を協力関係
にある企業へ少なくとも年1回以上派遣して、彼等に技術・技能を向上させるための訓練
機会を与えている。
107
2)評価者、内部監査員及び外部監査員
a) 評価者、内部監査員及び外部監査員に必要な資格
NVQ 制度の信頼性、公正さ、透明性を確保することは、資格を普及させていく上で極め
て重要なことである。そこで、資格・カリキュラム総局(Qualifications and Curriculum
Authority:QCA)は、NVQ の品質保証を図るために厳格なチェック機能を認定センターと
資格授与機関(Awarding Body:AB)に課すとともに、これらの業務を担当する評価者や
監査員は有資格者であることを義務付けている。評価者や監査員は、NVQ の取得訓練にお
ける評価と品質保証システムとの係わりで重要な役割を担い、一貫性のある評価と監査に
よって、提供される NVQ の品質を確保するという役割を果たしている。
評価者や監査員は、まず担当する分野の職業能力(全国職務基準の内容、レベルを満た
す知識、技能)を持っていることが前提条件となる。これに加えて、評価者の場合は、
表 3.22 に示す A ユニット資格もつことが必要とされている。同様に、内部監査員は表 3.23
に示す V1 ユニット資格を、
外部監査員は V2 ユニット資格を持つことが義務付けられてい
る。
表 3.22 A ユニットの構成
ユニット No.
A1
A2
ユニットタイトル
エレメント No.
エレメントタイトル
一連の方法を用い
A1.1
能力評価計画を訓練生と作成する
て訓練生を評価す
A1.2
評価決定を行うために基準に照らして証拠を判定する
る
A1.3
評価決定に関して訓練生へフィードバックし、支援する
A1.4
内部品質保証プロセスへ貢献する
観察を通して訓練
A2.1
訓練生の成果を評価する計画を検討し、合意する
生の成果を評価す
A2.2
合意した基準に照らして訓練生の成果を評価する
る
A2.3
合意した基準に照らして訓練生の知識を評価する
A2.4
評価決定を行い、フィードバックをする
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Assessment and Verification』
表 3.23 V ユニットの構成
ユニット No.
V1
V2
ユニットタイトル
エレメント No.
エレメントタイトル
評価プロセスの内
V1.1
内部評価を実施し、品質保証システムの評価を行う
部品質保証を図る
V1.2
評価者を支援する
V1.3
評価者の業績の質をモニターする
V1.4
外部品質保証要件を満たす
評価プロセスの外
V2.1
外部品質保証プロセスをモニターする
部品質保証を図る
V2.2
評価の品質を監査する
V2.3
内部評価プロセスに関する情報提供、助言、支援を行う
V2.4
評価プロセスの外部品質保証
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Assessment and Verification』
108
表 3.24 に A ユニット資格と V ユニット資格の取得者数(2003~2009 年)を示す。2008
年を見ると、評価者の資格である A ユニット(A1、A2)の取得者は 17,976 人、内部監査
員の資格である V1 ユニットの取得者は 4,131 人、外部監査員の資格である V2 ユニットの
取得者は 123 人となっている。
表 3.24 A ユニット、V ユニットの取得者数
年
ユニット名
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
A1
3,313
12,365
18,410
19,012
17,302
16,925
7,995
A2
578
1,473
1,610
1,196
1,010
1,051
378
V1
431
1,845
3,442
4,100
3,800
4,131
1,930
3
67
150
143
186
123
71
V12
注)2009 年の数値は年度途中の値を示す。
(資料出所)
:Ofqual Statistics
b) 評価者の役割
評価者は、NVQ 取得訓練の運営の成否を決定づける重要な役割を担っている。評価者の
役割は、訓練生が仕事を通して達成した成果が、NVQ を構成するユニット、エレメントの
内容、レベルを満たしていると認められか否かを判定することにある。そのため、評価者
には職場で訓練生が日常の仕事を通して達成した成果物(証拠)を評価するために、一連
の評価方法を用いる能力、成果物(証拠)の合格可能性について適切で一貫した判定がで
きる能力が求められる。また、評価者は訓練生の訓練評価をするだけでなく、訓練の進行
にあたって訓練生の相談にのったり、助言をしたりして訓練生が抱えている問題を解決す
るのを支援する役割も担っている。
一連の NVQ の取得訓練活動の中にあって、評価者は以下の職務を遂行する。
イ.訓練生の能力を評価するための評価計画を作成する。
ロ.訓練生が達成した成果の評価決定をするために、合意した基準に照らして証拠(成
果物)を判定する。
ハ.訓練生に評価決定に係るフィードバックを提供し、今後の取組みに向けた支援をす
る。
ニ.評価判定の記録及び訓練生の評価記録を作成する。
ホ.
認定センター内で実施される内部評価及び内部監査の品質保証プロセスに貢献する。
c) 内部監査員の役割
内部監査の主目的は、①認定センター内で評価業務を担当する評価者間の評価判定の正
確さと一貫性を確保すること、②評価者の当該 NVQ 資格授与における全国職務基準の解
釈と適用に関する一貫性を確保することにある。このことによって、訓練生と評価者の人
間関係等によって評価者の評価判定が大きく違ったり、あるいは主観的は評価による各評
価者間での評価レベルの違いといったことを防ぐことができ、内部監査員による評価者の
109
評価業務の監査が重要な意味を持っている。
内部監査員は、訓練生が到達した能力(コンピテンス)と、まだ到達していない能力を
区別する決め手となる特徴に焦点をあてて、評価者の判定について尋問できる能力、評価
者が何故そういう評価をしたのか聞き出せる能力を持つことが必要不可欠である。
また、一連の NVQ の取得訓練活動の中で、内部監査員は以下の業務を担う。
イ.センター内で全国職務基準の解釈と適用の一貫性をモニターし確保するために、
NVQ 評価全域にわたって全評価者が行った評価決定の証拠を定期的にサンプリン
グ検査する。
ロ.内部監査及びサンプリング検査活動の記録簿を常に作成し、これらが外部監査に利用
できるように整理しておく。
ハ.評価者の間で全国職務基準の解釈が共通になるための方法を確立する。
ホ.センター内における評価者の任務をモニターし、スムーズに任務が遂行できるように
支援する。
ヘ.評価者の業績や評価決定の品質をモニターする。
ト.評価者に彼等の能力開発に関する助言と指導を行い、評価者自身が能力アップを図る
ことを支援する。
チ.外部監査員に対して、評価の有効性に関するフィードバックを提供する。
d) 外部監査員の役割
資格授与機関(AB)は、NVQ の取得訓練を実施することを認可した認定センター内及
びセンター間において実施される、各 NVQ 資格について規定された全国職務基準に基づ
く評価決定の正確さと一貫性を確保するために、認定センターで実施されている内部評価
と内部監査を監査する仕組みを作っている。この監査は外部監査といわれ、AB から任命
された外部監査員が当該監査業務の実施に重要な役割を果たしている。
一連の外部監査業務を遂行するにあたって、外部監査員は以下の業務も併せて行う。
イ.認定センターが認可条件を継続して満たしていることを確認する。
ロ.認定センターを訪問して、当該 NVQ 資格授与に含まれる全国職務基準に基づく評
価の実施及びその方法の質と一貫性をモニターする。
ハ.認定センターが全国職務基準を一貫して適用しているかどうかの実績を資格授与機
関へフィードバックする。
ニ.職業的専門知識、経験及び A ユニット資格を持つ評価者によって評価が実施されて
いるか調査し、確認する。
ホ.評価者が行った評価判定が内部監査によって定期的にサンプリング検査されている
ことを確認する。
へ.評価判定のサンプリング検査を行って、評価判定が信用のおけるものであり、妥当
なものであるか、
そして全国職務基準が一貫して維持されているか否かを確認する。
ト.認定センターに対して評価プロセスの一貫性及び内部監査方式の有効性に関する明
確なフィードバックを行う。
チ.資格(証明書)の申請が妥当であるかを調査し、確認する。
110
リ.認定センターに以下のことに関する助言をする。
・全国職務基準の解釈についての助言、AB 及び QCA からの最新情報及び助言を提供
する。
・公正な評価へのアクセス及び AB の決定に対する再審要請を含めて AB から要求さ
れる要件及びその実行方法について助言する
e) 評価者及び内部監査員の養成
評価者及び内部監査員の養成は、取得が義務付けられている A ユニット及び V1 ユニッ
トの取得を目指す者を対象にして、認定センターで実施される。
評価者を目指す者は見習い評価者(Trainee Assessor)として、また内部監査員を目指す者
は見習い内部監査員(Trainee Internal Verifier)として認定センターに登録される。
見習い生は初期訓練を受けた後、それぞれベテランの評価者、あるいは内部監査員につい
て見習い訓練が開始される。
評価者を目指す場合は、評価業務に係る基本事項の訓練を受けた後、ベテランの評価者
について見習い訓練がスタートする。見習い訓練は OJT で、①評価者が行っている仕事を
シャドー・ワークで観察し把握すること、②評価者の補助、手伝い、③評価者の監督の下
で評価業務を実施する等を通して行われ、その過程の中で見習い生は、A ユニットの内容
を達成していく。A ユニットの全ての内容が達成され、認定された時、評価者の必須資格
である A ユニット資格が取得できる。
A ユニットを取得すると、正規の評価者としてベテランの評価者と組んで評価業務を担
当する。そして、一連の評価業務を1~2回経験した後、一人前の評価者として独り立ち
するという仕組みになっている。
内部監査員を目指す場合は、まず NVQ の内部監査に関する基本事項に係る初期訓練を
受け、その後ベテランの内部監査員について見習い訓練が開始される。見習い訓練は、OJT
で V1 ユニットの内容を達成して行く構成になっている。OJT は、①シャドー・ワーク、
②内部監査業務の補助・手伝い、③内部監査員の監督の下で業務を実施する等の過程で進
められる。V1 ユニットを取得した時点で、正規の内部監査員として業務を進めることにな
るが、最初はベテランの内部監査員とペアを組んで仕事の経験を積み、一連の内部監査業
務を1~2 回経験した後に独り立ちを図る仕組みが作られている。
評価者及び内部監査員の能力開発に関しては、彼等の専門能力を向上させるための訓練
機会が、認定センターによって提供されている。また、内部監査員は、評価者に対して評
価者自身の能力開発に関して具体的なアドバイスを行うとともに、指導することが求めら
れており、組織内の評価業務の向上と評価者の能力開発に重要な役割を担っている。
f) 外部監査員の養成
外部監査員は、資格授与機関(AB)から任命されて認定センターが行っている評価業務
を監査するとともに、認定センターが認可条件を満たしているかどうかをチェックする役
目も担っている。これらの業務を通して AB が授与する NVQ 資格の品質保証が確保され
ているわけで、外部監査員の役割は、AB の機能を維持していく上で極めて重要である。
111
そのため、外部監査員の養成と能力開発は、AB の重要な業務の 1 つとなっている。
外部監査員になるためには、AB に雇用されて V2 ユニットの取得を目指す見習い訓練を
受けなければならない。当該訓練は、認定センターの現場で OJT を通して V2 ユニットの
内容を達成するという方法で進められる。
AB における外部監査員の雇用と養成は、以下の流れで行われている。
イ.AB が募集する外部監査員のポストへ応募する。
外部監査員になりたいと希望する者は、パートタイムの雇用契約である外部監査員の
職へ応募する。
ロ.AB は、応募者に対して実務課題を含む面接試験(インタビュー)を課して、採用選
考を行う。
ハ.契約と初期訓練
面接試験に合格して採用された者は、AB と雇用契約を結んだ後、地域訓練7に参加し
て外部監査員のための初期訓練を受ける。併せて、職務能力の開発を行う。
ニ.ベテランの外部監査員について見習い訓練が始まる。
ホ.認定センターの割り当て
ベテランの外部監査員あるいは認定センターのアドバイザーについて、認定センター
の現場で見習い外部監査員(Trainee External Verifier)として外部監査業務を行う。
一連の外部監査業務は、①シャドー・ワーク、②外部監査員が行う監査業務の補助、
③外部監査員の監督の下で監査業務を実施する等といったプロセスを通して行われ
る。
へ.訪問の報告
認定センターのアドバイザーによってモニターされ、評価された報告書を提出する。
ト.個人指導及びグループ指導を受ける
OJT による一連の外部監査業務に関して、報告書で評価された事項及び指摘された事
項について個人指導及びグループ指導でさらに能力の向上を図る。
チ.V2 ユニット資格の取得
外部監査業務を行うために取得が義務付けられている V2 ユニット資格を取得する。
V2 ユニットを取得すると正規の外部監査員として、
ベテランの外部監査員と組んで独
り立ちに向けて仕事の経験を積んでいく。AB では、1~2回の経験を積ませた後、
外部監査員としての業務を全面的に任せるようにしている。
また、外部監査員の能力開発に関しては、外部監査員として必要な能力の向上のための
教育訓練の機会が AB によって提供されている。能力の高い外部監査員を抱えることは、
とりもなおさず AB が提供する NVQ 資格の品質保証に直結し、AB の業務能力の高さを示
すことになるので、多くの AB では外部監査員に対して能力開発の機会や教育訓練コース
の提供を通して彼等の能力向上に力を入れている。
7
地域訓練は、AB が顧客サービスの1つとして実施しているもので、認定センターのスタッフ及び AB の外部監査員、試
験官を対象に次のことを行っている。①評価、内部監査、外部監査に関する内容の訓練、②選択評価手法に関する訓練、
③AB による認定センターの視察のための準備訓練、
④監査システムに関する認定センターの指針及びNVQ 実施規約
(NVQ
Code of Practice)に関連する内部監査員の能力向上訓練、⑤外部監査に係る指導、⑥特定資格分野のネットワークづくり
112
3)見習い生の指導を担当する「指導者」の資格
評価者を目指す見習い生(見習い評価者)
、内部監査員を目指す見習い生(見習い内部監
査員)及び外部監査員を目指す見習い生(見習い外部監査員)の見習い訓練を担当する指
導者には、表 3.25 に示す資格を持つことが義務付けられている。
表 3.25 評価者及び監査員の見習い訓練を担当する指導者に要求される資格
持っていなければならない資格
評価者
内部監査員
外部監査員
見習い生が
取得を目指すユニット
A1
A2
V1
V2
A1
A1
A1+V1
A1+V2
A1+V1
A1+V1
A1+V1
A1+V1+V2
A1+V2
A1+V2
A1+V1+V2
A1+V2
(資料出所)
:Employment NTO『National Occupational Standards:Assessment and Verification』
a)見習い生の成果を評価する評価者が保持すべき資格
イ.A1 及び A2 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い評価者)を評価する評価者は、A1
ユニット資格を持っていなければならない。
ロ.V1 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い内部監査員)を評価する評価者は、A1 と
V1 のユニット資格を持っていなければならない。
ハ.V2 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い外部監査員)を評価する評価者は、A1 と
V2 のユニット資格を持っていなければならない。
b)見習い生に係る評価を監査する内部監査員が保持すべき資格
イ.A1、A2 及び V1 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い評価者及び見習い内部監査員)
を監査する内部監査員は、A1 と V1 ユニット資格を持っていなければならない。
ロ.V2 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い外部監査員)を監査する内部監査員は、
A1、V1 及び V2 のユニット資格を持っていなければならない。
c)見習い生に係る内部評価及び内部監査を監査する外部監査員が保持すべき資格
イ.A1 及び A2 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い評価者)を監査する外部監査員は、
A1 と V2 ユニット資格を持っていなければならない。
ロ.V1 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い内部監査員)を監査する外部監査員は、
A1、V1 及び V2 のユニット資格を持っていなければならない。
ハ.V2 ユニットの取得を目指す訓練生(見習い外部監査員)を監査する外部監査員は、
A1 と V2 のユニット資格を持っていなければならない。
(2)継続教育分野の教育スタッフの質を確保するための取組み
2001 年以前、継続教育分野で教育スタッフとして教育訓練を担当する者に対して、教員
113
に係る資格の取得や公式な訓練を受けることは義務づけられていなかった。そのため、担
当する科目(分野)の専門知識・技能は持っているが、教員資格や教えた経験のない者が
教育訓練を担当するという事態が起こっていた。その結果、教え方の上手い教員とそうで
ない教員では、教育訓練の進め方に大きな差があり、教育訓練の結果にばらつきが生じて
いた。
このような状況を改善するために、教育スタッフに担当する科目(分野)に係る専門知
識・技能と指導法(教授法)に関する知識・技能を身につけさせることによって、教育訓
練の質を確保することをねらいとした法律“The Further Education and Teachers’ Qualifications
(England) Regulations 2001”が制定された。この法律によって、2001 年 9 月以降、継続教育
カレッジで教えている者、または教えようとする者には、QTFE レベル4継続教育教員資
格や PGCE/Cert.Ed.等の資格が義務づけられた。
また、2007 年の法律改正“The Further Education and Teachers’ Qualifications (England)
Regulations 2007”によって、QTFE レベル4継続教育教員資格は見直しされ、生涯学習分
野に携わる教育スタッフの職務を3つに分類し、それぞれに必要な資格の取得を義務づけ
ている。この法律の施行により、2007 年 9 月 1 日以降、生涯学習分野で教育スタッフとし
て採用された者には、その職務に応じて①生涯学習分野における指導準備資格(Preparing to
Teach in the Lifelong Learning Sector award:PTLLS)
、②生涯学習指導サーティフィケート
(Certificate in Teaching in the Lifelong Learning Sector:CTLLS)及び③生涯学習指導ディプロ
マ(Diploma in Teaching in the Lifelong Learning Sector:DTLLS)の資格が必要とされている。
併せて、教育訓練に携わる全ての教育スタッフは、自分が保持している資格を学習機構
(the Institute for Learning:IFL)に登録することが義務づけられており、登録更新の
際には、
フルタイムの教員、
指導員は、
年間 30 時間以上の継続的な専門能力開発
(Continuing
8
Professional Development:CPD) を行った証拠を提示しなければならない。
IFL はこの登録に基づいて教育スタッフの履歴を管理し、基準を満たす教育スタッフに
有資格教員(Qualified Teacher Learning and Skills:QTLS)や有資格実務者(Licensed
Practitioner)のステイタスを授与する。そして、この登録システムと履歴管理によって、
教育スタッフの質が確保されているとみることができる。
(3)継続教育カレッジの教育スタッフに求められる資格
継続教育カレッジの教育スタッフに求められる資格として PGCE/Cert.Ed.、QTFE レベ
ル4継続教育教員資格、PTLLS、CTLLS、DTLLS 等がある。
①Postgraduate Certificate in Education(PGCE)/Certificate in Education
(Cert.Ed.)
PGCE/Cert.Ed.は教育以外の分野で大学卒業の資格を持ち、その専攻分野を活かして教
員を志望する者を対象とする資格である。従来、PGCE/Cert.Ed.は義務教育を担当する教
員のみに適用されていた資格(必須)であるが、2001 年 9 月以降は、継続教育カレッジで
8
規定されている CPD の時間数は、教員、指導員の就業形態(フルタイム、パートタイム)によって異なる。フルタイム
の場合は、年間 30 時間以上の CPD を実施することとされている。一方、パートタイムの場合は、1 週間に担当する授業時
間数によって CPD の時間数(6 時間以上~30 時間未満)は異なる。
114
教えている者、または教えようとする者にも適用されるようになった。
当該資格を取得するためのコースには、1 年間のフルタイムコースとインサービス(採
用後、授業を担当しながら資格取得コースに出席する方法)で受講する 2 年間のパートタ
イムコースがあり、主に大学で開講されている。パートタイムコースに関しては、継続教
育機関でもいくつか開講されている。なお、コースの受講資格は大学卒業である。
②QTFE レベル4継続教育教員資格
FENTO9認可の資格を持つ教員は、継続教育有資格教員(Qualified Teacher in Further
Education:QTFE)と呼称される。QTFE レベル4継続教育教員資格は、
“The Further Education
and Teachers’ Qualifications (England) Regulations 2001”によって 2001 年 9 月に導入された資
格で、全国資格枠組み(NQF)の中で NVQ レベル4と同じ格付けになっている。資格の
構成は3段階(ステージ1~ステージ3)に別れており、フルタイム教員はステージ3を、
パートタイム教員はその任務によってステージ1、またはステージ1と2の両方を取得す
ることが義務付けられている。PGCE/Cert.Ed.は大学等の高等教育機関で認証及び授与さ
れるのに対して、QTFE レベル4継続教育教員資格は City & Guilds、Edexcel、OCR 等の資
格授与機関(AB)で認証、授与される。表 3.26 に QTFE レベル4継続教育教員資格を構
成するキー分野とその概要を、表 3.27 に QTFE レベル4継続教育教員資格のキー分野と各
ステージで求められるスキル(抜粋)を示す。
9
FENTO (Further Education National Training Organization:継続教育 NTO)は、継続教育分野で働く人材の能力開発や職務基
準の作成等を行う機関である。しかし、その後の組織再編によって、FENTO の役割は Lifelong Learning UK(LLUK:生涯
学習 UK)に統合されている。LLUK は、2002 年、当時の教育技能省によって進められた複数の NTO を集約・再編して SSC
(Sector Skills Council:産業別技能委員会)を設立するという施策によって 2005 年に設立・認可された組織である。LLUK
は25ある SSC の1つで、地域学習、継続教育、図書館・情報サービス等の分野で働く人材の専門能力の開発、職務基準
の作成、資格戦略の策定を行っている。
115
表 3.26 QTFE レベル4継続教育教員資格を構成するキー分野とその概要
キー分野のタイトル
キー分野の概要
キー分野を構成する項目
a::学習者のニーズを
教員及び教員チームは、これから学習を始めようとする者の
a1:これから学習を始めようとする者のニ
評定する。
ニーズの確認と学習能力の評価を正確に行う。このために教
ーズを確認し、それに対応する計画を立
員自身の専門分野内において、学習者の経験と過去に達成し
てる。
た目標をコース受講に必要な条件とマッチさせる。
a2:学習開始時点での学習者のニーズを評
価する。
b:グループまたは個人
教員及び教員チームは、学習成果、プログラム、評価方法を
b1:各学習プログラムに必要とされる成果
を対象にした教育学
考案して適切な指導方法を適用するために、カリキュラムに
を認識する。
習プログラムを計画
何が要求されているのか確実に理解する必要がある。このた
b2:適切な学習指導方法を認識する。
し、実行の準備をす
めには、カリキュラムに合ったプログラムを作成し、応用の
b3:学習プログラムへのアクセスと参加を
る。
利く学習環境の中で個々の学習者を対象に明確な目標を設
高める。
定し、必要な援助を行う活動が要求される。
c:広範囲の教育学習技
教員及び教員チームは、グループワークを含む学習指導手段
c1:個人学習を援助し、推進する。
術を習得し、使用す
を幅広く適切に選ぶ必要がある。このためには、適切な計画
c2:グループ学習を促進する。
る。
を立てて授業を進めることができるように、様々な指導方法
c3:経験を通して学習できるように援助す
に対する理解を深める必要がある。教員はまた、学習者から
る。
フィードバックに基づいてコースが効果的かどうかを評定
する必要がある。
d:学習プロセスの管理
教員及び教員チームは、生産的な学習環境を効果的に確立す
d1:効果的な学習環境を確立し、維持する。
ることができ、また学習過程を構成し、それをモニターする
d2:学習活動を計画し、構成する。
ために、同僚や学習者と効果的な共同活動ができなければな
d3:学習者と効果的にコミュニケーション
らない。そのため、教員には効果的なコミュニケーション能
を行う。
力が不可欠である。教員は教育活動において学習者の興味を
d4:学習者とともに学習過程を検討する。
考慮することができると同時に、法的規制及び健康・安全・
d5:学習をサポートする教材を選択し、開
保安に関わる職場環境に関する日常業務を果たすことがで
発する。
きなければならない。教員はまた、異なる学習指導手段に必
d6:効果的な学習活動関係を築き、維持す
要な資材の入手方法を考慮し、共に働く人々と協力関係を打
る。
ち立て、結果として効果的な学習指導を行うためには協力活
d7:組織の品質保証システムに貢献する。
動が不可欠であるということを認識しなければならない。教
員はまた、学習指導評価を評定し、組織の品質保証システム
に貢献しなければならない。
e:学習者を援助する
教員及び教員チームは、学習者に対する学習のサポート、現
e1:学習者を教育訓練プロバイダーの組織
在及び今後の機会や必要条件のガイダンス、個人指導を効果
に紹介する。
的に行う必要がある。そのため、学習者が持つ権利を施行し、 e2:効果的な学習サポートを提供する。
116
学習者が受講しているコースで利用できる設備や機会への
e3:学習者がガイダンスを受ける機会へア
アクセスを十分に持てるようにする。このために、教員及び
クセスすることを保証する。
教員チームは、学習者のニーズを満たす各種のサービスにア
e4:学習者に個人的サポートを提供する。
クセスする知識が必要である。
f:学習及び学習者の目
教員及び教員チームは、学習とその成果に関する正確な情報
f1:適切な方法で学習とその成果を測定す
標達成の成果を評価
を効果的に提供するために、各種の適切な評価方法を使う必
る。
する。
要がある。そのためには、学習者が評価過程を理解しそれに
f2:評価から得た情報を適切に利用する。
参加すること、また評価の時期とモニター及び成果の記録が
適切であることが必要である。教員及び教員チームは、さら
に評価によって得た情報を様々な目的に利用することがで
きなければならない。
g:教員自身の任務結果
教員及び教員チームは、品質向上に常に貢献することが必要
g1:自分自身の活動を評価する。
を考察及び評価し、将
である。そのため、自分自身の活動を評価して自身の能力開
g2:将来の活動計画を立てる。
来計画を立てる。
発の機会を見つけ、能力開発プログラムに積極的に参加す
g3:能力開発プログラムに継続して参加す
る。教員は継続教育に影響を及ぼす内外の要素を考慮に入れ
る。
た批判的考察を行うことの重要さを認識し、それを実行する
ことが必要である。
h:職業条件の要求を満
これは、FENTO スタンダードに示されている他の全過程を
たす。
サポートし、それを説明するための基盤となる能力である。 h2:職業実施規約に従う。
h1:職業価値の基礎を外れない。
教員及び教員チームは、学習者や同僚と活動する時、指導過
程の価値及び倫理を的確に適用し、教員としての義務と責任
を効果的に果たすことが必要である。教員は、また学習者の
ニーズや向上心の多様性を認識し、包括的学習の概念を理解
した上で学習者の自主性を推進し、職業及び継続教育の精神
について省察しなければならない。
(資料出所)
:
『イギリスにおける教育訓練と指導者等の資格要件』労働政策研究・研修機構(2004)
QTFE レベル4継続教育教員資格を構成する「キー」分野は8つ(a~h)に分れてお
り、それぞれの「キー」分野は2~7つの項目で構成されている。また、各キー分野はさ
らに3つのステージ(ステージ1~ステージ3)に分けられて、それぞれのステージで教
員に要求されるスキルが示されている。ステージが上がるに従って、要求されるスキルの
数が増えていき、
求められる職務遂行能力が広く深くなっていくのが見て取れる。
例えば、
ステージ3(上級ステージ)では、当該キー分野を構成する項目ごとに8つ全てのスキル
が求められるが、ステージ1(導入ステージ)及びステージ2(中級ステージ)では、そ
の中のいくつかのスキルが求められている。
117
表 3.27 QTFE レベル4継続教育教員資格のキー分野と各ステージで求められるスキル
(抜粋)
キ ー 分野 のタ
キー分野を構成
イトル
する項目
各ステージで求められるスキル
導入ステージ(ステー
中級ステージ(ステージ2)
上級ステージ(ステージ3)
ジ1
c:広範囲の学習
c1:個人学習を援
d. 学習者が興味を持
b.利用可能な資材の範囲内
a.個人の学習ニーズ、学習におけ
教 育 技術 を習
助し、進める。
ち、その学習を強化す
で、個人のニーズや向上心を
る志望及び希望する学習スタイ
る適切な学習指導教材
サポートする学習目的と目標
ルを確立して、それを学習者と同
を認識し作成する。
について同意する。
意する。
g.学習の効果度を評定
d.学習者が興味を持ち、その
b.利用可能な資材の範囲内で、個
する。
学習を強化する適切な学習指
人のニーズや向上心をサポート
導教材を認識し作成する。
する学習目的と目標について同
e.グループのメンバーが全員
意する。
学習活動に参加することを確
c.個人の学習を促進する学習計
認する。
画を作成する。
g.学習の効果度を評定する。
d.学習者が興味を持ち、その学習
h.資材に制限がある時は、そ
を強化する適切な学習指導教材
の影響を認識し、その上で使
を認識し作成する。
用できる機会を最大に利用す
e.グループのメンバーが全員学
る。
習活動に参加することを確認す
得し、使用する
る。
f.学習者と学習契約に同意する。
g.学習の効果度を評定する。
h.資材に制限がある時は、その影
響を認識し、その上で使用できる
機会を最大に利用する。
c2:グループ学習
b.グループ学習を推進
b.グループ学習を推進するた
a.グループ活動を必要とする学
を促進する。
するために適切な学習
めに適切な学習プランを立て
習活動を計画する。
プランを立てる。
る。
b.グループ学習を推進するため
e. グループのメンバ
c.必要な場合には介入し、健
に適切な学習プランを立てる。
ーが全員学習活動に参
全なグループマネージメント
c.必要な場合には介入し、健全な
加することを確認す
によって学習を推進する。
グループマネージメントによっ
る。
d.学習者同士の共同作業を通
て学習を推進する。
f.情報学習技術を適切
して学習が発展するように援
d.学習者同士の共同作業を通し
に使って、学習をサポ
助し、学習者がお互いにサポ
て学習が発展するように援助し、
ートする教材を作成す
ートし合うことを推進する。
学習者がお互いにサポートし合
る。
e. グループのメンバーが全
うことを推進する。
g. 学習の効果を評価
員学習活動に参加することを
e. グループのメンバーが全員学
118
し、必要な場合は指導
確認する。
習活動に参加することを確認す
計画を修正する。
f.情報学習技術を適切に使っ
る。
て、学習をサポートする教材
f.情報学習技術を適切に使って、
を作成する。
学習をサポートする教材を作成
g.学習の効果を評価し、必要
する。
な場合は指導計画を修正す
g.学習の効果を評価し、必要な場
る。
合は指導計画を修正する。
h.資材に制限があることを認
h.資材に制限があることを認識
識し、利用できる機会を最大
し、利用できる機会を最大に活用
に活用する。
する。
(資料出所)
:
『イギリスにおける教育訓練と指導者等の資格要件』労働政策研究・研修機構(2004)
③Preparing to Teach in the Lifelong Learning Sector(PTLLS)Award、Certificate in Teaching in the
Lifelong Learning Sector(CTLLS) 及 び Diploma in Teaching in the Lifelong Learning
Sector(DTLLS)
生涯学習分野における指導準備資格(PTLLS)、生涯学習指導サーティフィケート
(CTLLS)及び生涯学習指導ディプロマ(DTLLS)は、LLUK(Lifelong Learning UK:生
涯学習 UK)が設定した職務基準に基づいて開発された資格で、法律“The Further Education
and Teachers’ Qualifications (England) Regulations 2007”によって 2007 年 9 月に当該資格が導
入され、2007 年 9 月 1 日以降、生涯学習分野で教育スタッフとして採用された者に取得が
義務付けられた。
生涯学習分野における指導準備資格(PTLLS)は、役職名のいかんにかかわらず、業務内
容にいくらかでも「教える」要素を含む仕事を担当する者に必要な最小限の資格で、QCF
のレベル 4 に格付けされている。生涯学習指導サーティフィケート(CTLLS)は、有資格
教員に比べて大幅に責任範囲が狭い准教員の役割を担う者に取得が義務づけられており、
教育技能准教員(Associate Teacher Learning and Skills:ATLS)へ通じる資格で、QCF のレ
ベル 4 に格付けされている。生涯学習指導ディプロマ(DTLLS)は、指導全般を担う者に
取得を義務づけており、教育技能有資格教員(Qualified Teacher Learning and Skills:QTLS)
へ通じる資格で、QCF のレベル 4 からレベル 5 に格付けされている。
④FENTO 基準による資格と LLUK(生涯学習 UK)基準による資格の違い
2001 年の法律によって導入された FENTO 基準に基づく資格(QTFE レベル4継続教育
教員資格)は、継続教育カレッジで教えている者、または教えようとする者を対象とした
ものであり、当該資格を取得すると継続教育有資格教員(QTFE)のステイタスが得られ
る。一方、2007 年に導入された LLUK 基準に基づく資格 PTLLS、CTLLS、DTLLS は、継
続教育カレッジに留まらず、キャリアガイダンス、地域学習、情報サービス、職場学習等
の分野をも含む広範囲の分野で教育スタッフとして働いている者、または働こうとする者
を対象としている。そのため、扱う資格の概念も継続教育から生涯学習へと広いものとな
っている。また、LLUK 基準による資格は、教育スタッフの職務内容によって PTLLS、
119
CTLLS 及び DTLLS の 3 つに分類されており、教育スタッフの役割・責任や将来のルート
が明確に区分されている。もう一つの違いは、CTLLS や DTLLS を取得した後、CPD を積
み上げることによって、初めて有資格教員(ATLS や QTLS)のステイタスを得ることがで
きる点で、QTFE レベル4継続教育教員資格とは大きく異なっている。
(4)e・ラーニングの「指導者」
e・ラーニングで指導者の役割を担う者をオンライン・チューターと呼称し、指導者の
質を確保するために、UfI では LC やハブセンターのスタッフ等を対象にしてオンライン指
導コースを提供してオンライン・チューターの養成に努めている。オンライン指導コース
は、オンライン学習の特徴、オンライン・チューターの役割、オンラインによる学習者の
支援、オンライン学習の進め方(教え方)等の内容で構成される 12 週間のコースである。
当該コースは、テキストに基づいた学習教材と実際の学習環境下で実施されるオンライン
支援活動で構成され、修了者には資格授与機関である City & Guilds からオンライン・チュ
ーターの資格が授与される。
オンライン・チューターとしてオンライン学習の指導・支援に関わるためには、当該資
格の取得に加えて、専門分野の知識・技能や成人教育に係る正式な資格の保持、または学
習指導・支援に関する経験年数等が必要要件となっている。
オンライン・チューターの職務と資格要件に関しては UfI で規定しており、オンライン・
チューターは、UfI が作成した学習者支援マニュアルに基づいて助言・支援活動を進める
ことが求められている。オンライン・チューターの役割は、次の通りである。
①情報の提供者であり、かつ情報へのアクセスを手助けする役割を担う。
学習者に学習教材・資材や学習のやり方・進め方等に関する情報を提供して、適切に学
習が進むように支援する。また、必要ならば指導を受けることを助言する。
②初期評価者の役割を担う。
学習者の受講に先立って、彼等の学習レディネスやコンピュータ操作能力のレベルを把
握・評価して、どの学習パッケージが適切であるかを把握する。また、学習者にハード
ウェア、ソフトウェア、システムに関する操作手順を紹介する。併せて、学習者のニー
ズや興味を把握して当事者に好ましい学習スタイルを探す。
③助言者及び指導者の役割を担う。
学習者の要望、学習の障害となっていることがら、コンピュータ操作能力レベル及び彼
等に必要な基礎技能を把握して、学習者にいつどのような支援を行うべきかといった学
習計画を準備する。そして、学習計画について学習者と協議し、合意された学習計画に
基づいて適時、助言・指導を行う。
④学習の進行役を担う。
学習者の学習を先導し、進度に合わせてモニターし、結果によっては学習計画等を見直
して、以後の学習の進め方に反映させる。
学習者が抱えている問題点や課題を把握して、学習者に解決へ向けた助言をする。
資格取得に関係する場合は、正式な評価を受けるように助言し、正確な記録をとる。
120
3.3 継続教育カレッジにおけるフルタイム職員の賃金と保有資格
教育訓練プロバイダーに勤務する IVET 教員・指導員及び CEVT 教員・指導員に係る賃
金、人数、保有資格に関して、プロバイダー全体を把握した統計データはない。ここでは、
継続教育カレッジのフルタイム職員のデータに基づいて賃金水準、人数、保有資格を概観
することとする。
表 3.28 に継続教育カレッジにおけるフルタイム職員の職種別平均年収と人数を示す。シ
ニア・マネージャー職には最高経営責任者(Chief executive)
、デレクター(Director)
、校
長(College principal)があり 654 人がその職に就いている。彼等の賃金が最も高く、平均
年収は 61,455 ポンドである。次いで、その他のマネージャー(16,884 人)が 32,906 ポンド
である。3 番に教育スタッフが続いており、賃金水準はマネージャークラスに次ぐ地位に
ある。教育スタッフには指導員と講師/チューターがあり、彼等の平均年収は 27,501 ポン
ドである。また、NVQ の取得・訓練に重要な役割を担う評価者と監査員は 3,456 人で、そ
の平均年収は 19,665 ポンドである。
表 3.28 継続教育カレッジ職員の職種別平均年収と人数(2007 年度)
職種
平均年収(ポンド)
人数
シニア・マネージャー
61,455
654
その他のマネージャー
32,906
16,884
教育スタッフ
27,501
135,606
管理・専門職スタッフ
20,515
19,553
19,665
3,456
テクニカル・スタッフ
18,112
16,397
サービス・スタッフ
16,532
40,490
事務・秘書スタッフ
15,622
26,727
ーー
3,490
評価者、監査員
(Assessors, Verifiers)
不明
合計
263,257
注)平均年収はフルタイム職員の年収を示す。
人数はフルタイム職員とパートタイム職員の合計を示す。
(資料出所):Lifelong Learning UK,「Further Education Workforce Data for England-An Analysis
of the Staff Individualised Record Data 2007-2008-」
また、教育スタッフの年収は、担当する分野(科目)によって異なっている。表 3.29 に
担当科目/分野別の教育スタッフの平均年収と人数を示す。
平均年収が一番高いのは、
「人文科学」科目/分野を担当するスタッフで 30,667 ポンド
である。以下、
「科学・数学」科目/分野を担当するスタッフで 30,644 ポンド、
「ビジネス
管理、マネージメント・専門知識」科目/分野(29,109 ポンド)
、
「英語、語学、コミュニ
ケーション」科目/分野(28,286 ポンド)と続く。教育スタッフの数(フルタイム・スタ
ッフとパートタイム・スタッフの合計人数)が一番多い担当科目/分野は、
「視聴覚・舞台
121
芸術、マスメディア」で 16,606 人である。以下、
「英語、語学、コミュニケーション」科
目/分野(13,318 人)
、
「健康、社会福祉、公共サービス」科目/分野(12,761 人)
、
「基礎
プログラム」科目/分野(12,583 人)が続いている。
表 3.29 担当科目分野別の教育スタッフの平均年収と人数(2007 年度)
主な担当科目分野
平均年収(ポンド)
人数
人文科学
30,667
7,175
科学、数学
30,644
8,114
ビジネス管理、マネージメント・専門知識
29,109
11,507
英語、語学、コミュニケーション
28,286
13,318
視聴覚・舞台芸術、マスメディア
27,844
16,606
情報通信技術
27,809
7,417
工学、技術、製造
27,134
7,079
接客、スポーツ、レジャー・旅行
26,855
9,742
建設
26,277
6,710
健康、社会福祉、公共サービス
26,268
12,761
理髪、美容
26,184
5,990
小売、顧客サービス・輸送
26,041
3,233
基礎プログラム
25,918
12,583
不動産
25,031
2,912
NQF レベル4未満の教育スタッフ
ーー
2,906
学習指導・促進スタッフでない者
ーー
2,743
不明
ーー
4,810
合計
135,606
注)平均年収はフルタイム・スタッフの年収を示す。
人数はフルタイム・スタッフとパートタイム・スタッフの合計を示す。
(資料出所):Lifelong Learning UK,「Further Education Workforce Data for England-An Analysis of the Staff
Individualised Record Data 2007-2008-」
次に、継続教育カレッジで教えている教育スタッフ 135,606 人は、どのような資格を持
っているのか見てみる。
表 3.30 に継続教育カレッジの教育スタッフが保有する資格と人数を示す。
教育スタッフが保有している資格で一番多いのは教員免状(Cert.Ed.)で 31,002 人が保
有しており、
教育スタッフ全体の 22.9%を占めている。
次いで、
PGCE が 28,982 人
(同 21.4%)
、
教育/科学/文学学士(Bed/BSc/BA)は 11,084 人(同 8.2%)
、QTFE レベル4継続教
育教員資格は 7,992 人が保有し、教育スタッフ全体の 5.8%を占めている。一方、2007 年 9
月に導入された PTLLS、CTLLS 及び DTLLS の保有者は 1,264 人と少なく、教育スタッフ
全体の 0.9%を占めているにすぎない。
122
表 3.30 継続教育カレッジの教育スタッフが保有する資格と人数
対象:イングランド地域(2007 年度)
資格の種類
人数
Preparing to Teach in the Lifelong Learning Sector (PTLLS) Award
割合
(%)
822
0.6
166
0.1
276
0.2
31,002
22.9
28,982
21.4
11,084
8.2
QTFE レベル4継続教育教員資格(ステージ3)
2,074
1.5
QTFE レベル4継続教育教員資格(ステージ2)
2,877
2.1
QTFE レベル4継続教育教員資格(ステージ1)
3,041
2.2
レベル3教員資格(例えば CG7303)
9,891
7.3
3,606
2.7
上記以外の教員資格
7,256
5.4
無資格
7,871
5.8
不明
26,658
19.7
合計
135,606
100.0
生涯学習分野における指導準備資格
Certificate in Teaching in the Lifelong Learning Sector (CTLLS)
生涯学習指導サーティフィケート
Diploma in Teaching in the Lifelong Learning Sector (DTLLS)
生涯学習指導ディプロマ
Certificate in Education(Cert.Ed.)
教員免状
Postgraduate Certificate in Education (PGCE)
Bed/BSc/BA
教育/科学/文学 学士
Learning and Development (NVQ)
NVQ 学習と開発
注)教育スタッフとは、指導員、講師/チューターをいう。
人数はフルタイム・スタッフとパートタイム・スタッフの合計を示す。
(資料出所):Lifelong Learning UK,「Further Education Workforce Data for England-An Analysis of the Staff
Individualised Record Data 2007-2008-」
3.4 継続教育・訓練分野の資格及び教育・訓練の運営に係わりのある公的機関
(1)資格・カリキュラム総局(Qualifications and Curriculum Authority:QCA)
QCA は、全国職業資格協会(NCVQ)と学校カリキュラム・評価機構(SCAA)とを統
合して、教育資格と職業資格をともに1つの枠組みの中で管理・運営することを目的に、
1997 年に設立された教育雇用省(Department for Education and Employment:DfEE)
、現在の
ビジネス・イノベーション技能省(Department for Business, Innovation and Skills :BIS)直
轄の公的機関である。
QCA が行っている事業は、
123
①全国資格枠組み(NQF)に位置づけられた学校教育及び教育訓練全体のカリキュ
ラム開発
②NQF や QCF(Qualifications and Credit Framework)などの資格体系の構築
③学力・職業能力評価
④全国資格枠組みによる公的資格の管理・運営
⑤研究・統計
⑥情報提供
⑦出版等である。
とりわけ、全国資格枠組みによる公的資格の管理・運営に関しては、①「職務基準」作
成に関するガイドラインの設定、②「NVQ 資格構造化」に関するガイドラインの設定、③
NVQ の実施に係る「NVQ 実施規約」の設定、④職務基準の認定、NVQ 資格の認定、⑤資
格授与機関(Awarding Body:AB)の認可とモニタリング、⑥SSC と AB に対する指導業
務等を行っている。
なお、2008 年に QCA の機能が開発部門と監督部門に分割され、新しく作られた資格・
試験監察局(Office of the Qualifications and Examinations Regulator:Ofqual)が監督部門を
引き継ぎ、AB の認可・監督、試験と資格の認定といった資格の品質保証に係る責任を担
っている。
(2)生涯学習 UK(Lifelong Learning UK:LLUK)
LLUK は、キャリアガイダンス、地域学習、継続教育、高等教育、図書館、情報サービ
ス、及び職場学習分野の労働者の専門能力開発に責任を担っている産業別技能委員会
(Sector Skills Council:SSC)である。2005 年、当時の教育技能省(Department for Education
and Skills:DfES)によって認可された事業主主導の団体である。
LLUK は主な事業として、
①生涯学習分野の技能ギャップと技能不足を解消し、事業サービスを向上させる
こと
②生涯学習分野の雇用主のニーズを調査し、職務基準に反映させること
③生涯学習分野の全国職務基準(National Occupational Standards:NOS)の設定
と更新
④生涯学習分野の資格戦略や資格枠組みの策定
⑤生涯学習分野の労働者の能力を高める機会を増進させること
、等を行っている。
最近の主要な活動として、生涯学習分野の新任教員/チューター/指導員の教育改革を
主導して、①生涯学習分野の教員資格枠組みの構築、②教員の役割と資格及び新任教員訓
練に関する資格授与機関向けの手引き書の作成等を行なっている。
(3)英国学習機構(Institute for Learning:IFL)
2007 年に設立された IFL は、地域学習、公共サービス、継続教育カレッジ、職場学習等
を含む生涯学習分野で働く教員、指導員、評価者等を会員とする専門職団体で、2010 年 2
124
月時点での会員数は 205,000 人を数えている。
IFL の役割は、生涯学習分野の教育スタッフが有している指導・訓練に係る優れた力量
は、正当に認知されるべきであるとの理念に立脚し、教育スタッフによって登録された資
格、継続的な専門能力開発(CPD)に基づく更新履歴を管理し、基準を満たす教育スタッ
フに有資格教員(ATLS や QTLS)や有資格実務者(学習支援、評価、マネジメント等に携
わる有資格者)のステイタスを授与することである。
そのため IFL は、①CPD の実施に関するガイドラインの設定・更新、②ATLS、QTLS
の取得に関する指針の設定を行うとともに、教員や指導員の高い専門職ステイタスが維持
できるように、また長期間にわたって CPD ができるように個々の教員、指導員の学習支援
に力を入れている。これらの一連の取組みは、教育スタッフの能力開発と質の確保、向上
に寄与している。
3.5 教育訓練分野の研究機関
現状では、UKCES(Commission for Employment and Skill, 雇用・技能委員会)が、研究
機関の監督機能を担うとともに、研究機関をつなぐ役割を負っている。また、分権化され
た大学・研究所のネットワーク組織である、英国の「教育経済センター」
(CEE)がある。
しかし、OECD は英国の研究体制は十分ではないとし、英国政府に対し、様々な OECD
諸国で、情報収集、研究、政策提言など教育訓練の国内でのセンター的役割を担う機関が
設立されているとし、英国でも、教育訓練機関の研究・分析を行なう全国組織の設立を検
討すべきだと提言している(“Learning for job – OECD Policy Review of Vocational Education
and Training Initial Report, England and Wales”, 2009.10, p34)
。それによると、政府資金による
教育訓練での全国組織の研究機関の設立は確かに一定の付加コストがかかるが、リーチ委
員会報告の目標達成に向けた巨額投資に比べれば「いい投資(good investment)と言える
だろうとしている。
(注)3.1(4)資格制度の 3)QCF への改変の背景としての国外要因、4)QCF と QCF との関係
の部分は、職業能力開発総合大学校谷口雄治準教授にご執筆いただいた。谷口先生のご好意に感謝する。
【参考文献・資料】
・日本労働研究機構『教育訓練制度の国際比較調査、研究―ドイツ、フランス、アメリカ、
イギリス、日本―』
(第 3 部イギリス) 資料シリーズ No.136/2003
・労働政策研究・研修機構『イギリスにおける教育訓練と指導者等の資格要件』労働政策
研究報告書 No.16/2004
・労働政策研究・研修機構『我が国の職業能力開発の現状と今後の方向』
(第 3 部 6.社会人
の教育訓練に関する海外事例―イギリスの事例―)労働政策研究報告書 No.53/2006
・労働政策研究・研修機構『欧米諸国における公共職業訓練制度と実態―仏・独・英・米
4 ヵ国比較調査―』
(第 3 章イギリスの公共教育訓練)JILPT 資料シリーズ No.57/2009
・CEDEFOP『UK. VET in Europe-Country Report 2010』
・Department for children, schools and families『Education and Training Statistics for the United
125
Kingdom 2008』
・Hoeckel, K., et al. (2009), Learning for Jobs. The OECD Review of Vocational Education and
Training. England and Wales, OECD, Paris.
Available at: (www.oecd.org/dataoecd/32/8/43947857.pdf)
・Learning and Skills Council『Statistical First Release: ILR/SFR15』10 April 2008
・Office of the Qualifications and Examination Regulator 2009 『Explaining Qualifications』
・Qualifications and Curriculum Authority『NVQ code of practice: Revised 2006』
・The Learning and Skills Council’s Annual Report and Accounts for 2008-09『Making Skills
Matter』
・Lifelong Learning UK, An Analysis of the Staff Individualized Record Data 2007-2008『Further
Education Workforce Data for England』
・Lifelong Learning UK『The lifelong learning workforce in England 2009』
・Ofqual Statistics『Number of certificates by year for Qualifications that are assessor and verifier』
・Employment NTO『National Occupational Standards:Learning and Development & Assessment
and Verification』
・『 Apprenticeships: Opening doors to a better future 』 http://www.apprenticeships.org.uk
(2010/01/04)
・
『Our impact』http://www.ufi.com (2010/01/04)
・
『Courses』http://www.learndirect.co.uk (2010/01/04)
・
『About LLUK』
『Overview of LLUK』等 LLUK に関する資料 http://www.lluk.org/3169.htm
・
『About IfL』等 IfL に関する資料 http://www.ifl.ac.uk
・
『About QCA』等 QCA に関する資料 http://www.qcda.gov.uk
126
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