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書籍流通における予測法の開発と店舗送品支援システム

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書籍流通における予測法の開発と店舗送品支援システム
人工知能学会第2種研究会資料
SIG-KST-2007-04-06(2008-02-22)
書籍流通における予測法の開発と店舗送品支援システム
Book Store support system based on Sales Predicting
田中謙司 1
宮田秀明 1
Kenji Tanaka1, Hideaki Miyata1
1
1
東京大学大学院工学系研究科
School of Engineering, The University of Tokyo
Abstract: 本研究は、書籍販売予測に基づいた店舗送品支援システム開発手法を示す。
返本率 40%
に表わされる非効率な書籍流通において POS データ解析と業界経験知を組み合わせることで、
店舗販売実績を即座にフィードバックした効率的流通システムの実現を目指す。本研究は、出版
から顧客までの業界全体最適の観点からの業界新モデル構築を目指す、BBI プロジェクトの一環
として行われた。
特に図 2 に示すように、書店、卸、出版社の3者間
に信頼感が欠如し、各社間での駆引きが常態化して
いたことが効率化を阻害してきた。基本的に、書籍
国内書籍市場は書店数 1.7 万店、市場規模約 9 千
卸・出版社は返本リスクを考慮する。書店は欠品に
億円と、日本の文化形成に大きく貢献してきた。し
よる機会損失リスクを懸念する。したがって、出版
かしながら、1990 年代以降、1.1 兆円をピークに減
少傾向に歯止めがかからない構造不況に陥っている。 社は顕現化した受注が一定以上にならないと増刷を
行わない傾向が強く、逆に書店は商品を確保するた
近年では、出版社、書店の転廃業が顕著となり書籍
業界としても深刻な問題として認識され始めている。 め、例えば複数回にわたり 2 倍近い発注をかけるこ
ともある。結果として、出版社はその過剰受注量を
織込み、売上を見極めてから増刷を行うケースが目
立つ。多くの場合、増刷のタイミングは遅れ、発注
後 1 カ月近く経ちピークが過ぎ去った後に大量供給
Book Sales(millionJPY)
• Market shrinked10%in 8years
されてしまうこととなる。
1. 初めに
80.0%
12,000
¥1.1trillion
70.0%
10,000
¥0.9 trllion
60.0%
8,000
50.0%
40.0%
6,000
取次
書店
「販売委託契約なの
で返本はコスト増。
増刷・増配は慎重
にせざるを得ない」
「在庫が限られてお
り、すべての注文
には応じきれな
い。」
「売筋は、注文して
も配本されないた
め多めに注文」
「本屋には欲しい
本が欲しいときに
ない。」
「書店で売場を確保
するために新刊を
継続的に送品し続
けることが重要」
「新刊本は、時間の
制約上、予約がなく
ても書店へ配本す
る。それも書店のた
め」
「売れない新刊や、
時機を逃した過
去の注文が到着
しても返品するし
かない」
「最近は“駄作”が
多いので読書も
効率が悪い」
出版
顧客
30.0%
4,000
Return goods ratio(%)
20.0%
• Nevertheless several efforts,
the ratio remains high
10.0%
64
66
19
68
19
70
19
72
19
74
19
76
19
78
19
80
19
82
19
84
19
86
19
88
19
90
19
92
19
94
19
96
19
98
20
00
20
02
20
04
19
58
56
54
60
19
62
19
19
19
19
19
52
0
19
19
50
0.0%
2,000
図 1 国内書籍市場および返本率推移
資料:ヒアリングをベースに宮田研究室作成
書籍不況は、ネット普及や新型古書店の展開など
の外的要因が直接の誘因と考えられるが、図 1 に示
す通り、そもそも返本率 40%近くという非効率な書
籍流通システムのまま現在にいたっていることが、
その根底にある構造的な問題である。
これまでも返本率削減のため、各プレイヤによる
各所最適の善後策を講じてきたものの、成果は限定
的であった。それは、各社の善後策が各所最適とな
り全体最適を目指すものではなかったためである。
図 2 書籍プレイヤ間の駆引きの常態化
2. BBI プロジェクト
2.1. BBI プロジェクトの概要
本研究は BBI(Book Business Innovation)プロジェ
クトの一環として行われた。BBI プロジェクトとは,
東京大学、書籍卸会社、およびエンジニアリング会
*)本資料の著作権は著者に帰属します。
社との共同研究プロジェクトで、構造不況に陥って
いる書籍業界を全体最適の観点からの新ビジネスモ
デル構築で業界プレイヤすべての利益向上を目指す。
図 3 に示すように共有データベースに基づく販売予
測を各者間で共有することで、図 4 のような展示位
相差を解消し、適切な量、適切な時に、適切な場所
で展示させるように、出版社、卸、書店、顧客を同
期させる効率的な流通システムの構築を目指す。
Sales / Shipment / Order Data
Sales Prediction of Title1-26week
Publisher
Publisher
Distributor
3 players
Book Shop
Recommended
Exhibition List
(each category attribute)
Follow up Print Schedule
with Proper Volume
Refill Distribution List
Order List
(Counterpart to Shop Order)
Risk estimation of future
return goods
Return goods List
Proper Stock volume
First Edition calculated from last year result
Follow up protocol to synchronize players under the same prediction
Q-win Vision Synchronized retail system
4000 players
Wholesale Distributor
Distribution to Shop List
First Edition Print Schedule
Book Shops
Customer
17,000 shops
図 5 BBI システム全体像(第 1 段階)
…
…..
2.2. 本研究の位置づけと目的
Sales Prediction
Shared Data
図 3 BBI プロジェクト目標
Present
Q-WIN
Exhibition based on Result
Exhibition based on Prediction
Production Phase Lag
Sales
Inventory
Exhibition
Loss
Days
Synchronized Production
Sales
Inventory
Exhibition
Loss
Days
本研究では、BBI プロジェクト全体において、特
に卸と書店間の書店送品の非効率に着目し、販売予
測に基づいた書店送品支援システムを構築する。
現状では、前節でも触れた書店売上と商品供給の
位相ずれにより、書店売上げのピークが過ぎ去った
後の商品供給が目立つ。図 6 は、書店 A における 2005
年のビジネスジャンル年間ランキング 1 位のタイト
ルの在庫推移を示している。販売ピークが過ぎ去っ
た 9 月以降に大量に商品供給された結果、その後の
長期にわたる過剰展示となり最終的に返本された。
本来別の売れるべきタイトルを置けなかったことに
よる書店 A の展示スペース機会損失のみならず、こ
れらを欠品している他書店へ展示する売上機会も損
失している。
細野真宏の世界一わかりやすい株の本 No.1 Sales Business Title in 2005
60
図 4 販売と商品供給の位相差による展示ロス
200
55
180
Store Stock
50
160
45
140
40
Domestic
Sales
35
120
30
100
Surplus Exhibition
25
80
20
60
15
40
10
20
5
3/31
3/3
3/17
2/3
2/17
1/6
1/20
12/9
12/23
11/25
11/11
10/28
9/30
10/14
9/2
9/16
8/5
8/19
7/8
First Release
7/22
6/24
6/10
5/27
5/13
4/29
Proper Stock
4/1
0
4/15
BBI プロジェクトは大きく 2 つの段階に分かれる。
第1段階では、情報データ分析や経験知を活用した
流通支援システムを構築することで、全体最適の観
点から効率的な書籍流通システムの実現を目指す。
さらに第 2 段階では顧客満足度を向上する商品・サ
ービスの提供による売上向上を目指す。
第 1 段階においてプロジェクトが進めている BBI
システム全体像を図 5 に示す。本研究はこの一部と
して書店送品支援システム研究を開発する。
0
Sales Peak
図 6 A 店舗での展示在庫量推移
同時に、展示量に加え品揃えにおいても、本来展
示すべきタイトルが欠品している場合が多い。図 7
は 2005 年 9 月の書店 A のビジネス平棚の展示実績
であるが、本来は当時売上ランキング上位に来るタ
イトルを展示すべきところ、実際は下位のタイトル
を過剰に展示し、上位のタイトルが欠品している。
現状では、このようなデータが整備されておらず
書店の品揃えやその展示数は店長の手腕による部分
が大きい。同じ立地の店舗でも、店長の交代により
品揃えや業績が大きく変動することは珍しいことで
はない。本研究では、これら問題を解決するための
書店支援システムを構築する。
20
15
10
5
(5)
(10)
(15)
(20)
1
13
25
37
49
61
73
85
97
109
121
133
145
157
169
181
Proper Exhibition
図 7 書店 A のビジネス平棚実績(2006 年 9 月)
また、業績の良好な書店の店長は、独自の販売予
想を行いその上位に当たるタイトルを中心に、発注
を行っていることが分かった。主なポイントは以下
の 3 点であった。①全国売上傾向、②個店の顧客特
性、③実物を見た直観的な判断、である。
本研究では、これら知見のうち①全国販売傾向、
②個店実績、を折込んだ個店販売予測法を開発し、
予測に基づいた書店送品支援システムを構築した。
3. 販売予測法及び送品支援システム
3.1. 個店販売数予測法の開発
3.1.1. 全国販売数予測
書籍を含むコンテンツ販売予測は、既存の販売予
測手法の適用では十分な精度が得られてこなかった。
それは、昨年度実績を参考にするなどの既存の手法
は、ロングセラーの消費財には向いているものの、
販売ピークが発売後 2-4 週間後に集中する書籍で
は限界があることを示している。
本研究では、書籍の全国売上予測法として宮田ら
[1]
が提唱した 2 つの予測法を用いた。同一カテゴリ
ー内で近しい累積販売傾向を示すこと利用した NM
予測法と、直近数週間の売上推移に外挿法を用いた
インクリメンタル予測法である。前者は積分制御に
近く、後者は微分制御に近いためこのハイブリット
予測を用いることとした。
全国販売数予測は以下の式を用いる。
X (N +1) = a ⋅ Incre(N +1) + (1 − a ) NM (N +1)
(1)
NM ( M ) = v ⋅ X (N)
(2)
(3)
ここで、XN は N 週までの累積販売冊数、a はハイ
ブリットパラメータ、vは NM 係数、k,l,m は N 週
におけるインクリメンタル係数である。
Sales Ranking Title
Present Exhibition
0
Incre(N +1) = k ⋅ X (N) + l ⋅ X (N-1) + m ⋅ X (N-2)
3.1.2. 個店特性を加味した個店販売数予測
個店特性は、地域性、立地、顧客特性など数多く
の要因が存在するが、本研究ではこれら要因の結果
である対象店でのタイトル販売実績、ジャンル販売
数を用いて算出することとした。個店販売数予測は、
全国販売数予測をベースに、個店特性を表す 2 つの
指標を用いる。個店のジャンル売上比の全国比と個
店の対象タイトル累積販売実績の全国比である。個
店販売数予測式は以下の通り。
個店販売数 Title, N +1 = 個店係数 ⋅ ( X N +1 − X N )
(4)
個店係数 = t ⋅ 全国係数 + (1 − t )タイトル係数
(5)
全国係数 Store, junle =
ジャンル売上数 (対象店)
ジャンル売上数 (全国)
タイトル係数Shop,title,N +1 =
(6)
タイトル累積販売数(対象店) (7)
タイトル累積販売数(全国平均店)
ここで、個店販売数 Title,N+1 は、対象タイトルの対象
店における N+1 週次販売数、全国係数は対象店の対
象ジャンルの売上規模の全国比を表わす。タイトル
係数は, 対象タイトル累積販売数の対象店と全国の
比率を表す。tは、全国販売と個店タイトル実績の
重みづけパラメータである。
3.1.3. 個店販売数予測に基づく適正展示数
本研究では、複数書店での期待販売数と平棚数の
関係を調査し、店舗平棚の適正展示数の検討を行っ
た。一般的に 3 冊以上でなければ平棚に置かれない。
また、店舗の販売機会損失を抑えるためには余裕数
が必要である。これらのことを踏まえ、以下の式を
用いることとした。
適正展示数 Title, N +1 = 3 ⋅ 個店販売数 Title, N +1 + 2
(9)
販売予測数の約 3 週間分および 2 冊の余剰在庫を
持たせることとして適正展示数とする。
3.2. 店舗送品支援システム
個店販売数予測に基づいた店舗送品展示システム
の概要を図 8 に示す。前節で述べたとおり、週次販
売データから全国販売数予測、個店販売数予測、適
正展示数計算の順に算出する。その計算のために前
年度データから全国係数、NM 係数、インクリメン
タル係数を求める。
算出される適正展示を書店の実オペレーション上
で実現するため、店舗送品支援システムにアウトプ
ット帳票を2つ用意した。発注推奨リストと返本推
奨リストである。
INPUT
OUTPUT
① DataBase
②
National
Sales
Prediction
Weekly Data
Sales
Shipment
Return
Shop
Attribute
Stock
Function
Exhibition
List
of
Title List
Recommend
ed Inventory
Week 1
Week 2
Remove
List
of
Title List
Recommend
ed Inventory
Parameter
National Wide
・・
Annual Data
Sales
Shipment
Return
Shop Attribute
N-M
coefficient
Shop Scale
factor Index
Incremental
coefficient
Shop Sales
Result Index
4. 実証実験
4.1. 実験対象および前提条件
③
Shop Sales Prediction
リスト化し提示する。
この二つの帳票により、適正タイトル、適正数を
実際の書店展示において実現することを支援する。
WEEKLY UPDATE
図 8 書店送品支援システム
まず、発注推奨リストについて説明する。実際の
業務スケジュールでは、図 9 に示すとおり日曜日締
めの販売データが 3 日後に集計され、適正展示量を
計算する。その結果の推奨帳票を木曜日に書店に供
給する。店長はそれに基づいて金曜に発注し、2-3
日後に送品され、展示が完了する。推奨が反映され
るまでは 7-8 日間となる。
したがって、店舗送品支援システム帳票は、発注
時点の翌週、つまりデータ締め日から 8-14 日目の適
正在庫とそれを実現するための推奨発注量を推奨す
る。ここでいう推奨発注量は、7 日後時点の店舗の
在庫量を推定し、発注後商品が届いていない注文残
を考慮して算出する。
店舗送品支援システムを開発し、首都圏郊外型書
店 2 店において実証実験を行った。対象棚はビジネ
スジャンル平棚を対象にし、実験期間は 2006 年 12
月より 4 ヶ月間とした。
表 1 に対象店舗対象ジャンルの 2005 年度実績を示
す。A 店はショッピングセンター内の中型書店で全
国平均店の約 2.3 倍の規模をもつ。B 店は路面店で
全国平均的な規模である。これら書店の店長に対し、
本システムのアウトプットである 2 帳票を提供して
書店送品推奨を行う。ここで、書店 A は推奨リスト
を参考に店長の独自の判断で発注を行い、B 店は推
奨発注をそのまま実行することとした。実際、最終
的に店長がビジネスリスクを負うこととなることか
ら、システムは発注推奨という位置づけとした。ま
た、通常のオペレーションでは書店からの発注に対
し、すべて送品されるとは限らないが、今回は優先
的に対象書店へ注文数を送品する条件とした。
表 1 実証実験対象書店概要(2005 年)
A店
月
火
水
木
金
開始
書籍卸
データ
〆日
データ集計
(2日)
受注
平均店
2.3
2.3
6,212
3,205
1.2
1.2
5,320
2,714
返本数
5,349
2.2
2,531
1.0
2,438
41%
49%
93坪
0.8
118坪
坪数
返品
受付
出庫・配送
(2-3日)
予測・リスト
作成(半日)
在庫推奨
リスト
書店
日
平均比
12,082
6,260
44%
144坪
1.2
在庫有の本は
2-3日で配送
集計
データ
研究室
土
B店
送品数
販売数
返本率
日
平均比
発注
(1日)
注文
送品
入荷・展示・返品
(1-2日)
返品
完了
図 9 書店送品支援システムタイムスケジュール
次に返本推奨リストであるが、これは現場の店長
の要望により作成された。送品されたタイトルを展
示することは比較的簡単であるが、新送品分により
展示しきれなくなった棚スペースから抜取るべきタ
イトルの選定が困難であったためである。書店送品
支援システムにおいては売上期待値の低い順のタイ
トルとその移動すべき棚場所を指定した返本推奨を
4.2. 実験結果および考察
4.2.1. 書店送品支援システムの推奨帳票
本実験中の 12 月第 1 週の発注推奨リスト帳票を表
2 に示す。これは個店販売数予測の高い順に並べて
いる。これは全国予測順位とほぼ同じ傾向を見せる
が、個店順位 8 位の「日本一メルセデスベンツを売
る男」のように、個店販売実績が高いことで全国順
位よりも、上位にリストアップされているものも多
い。帳票中の個店係数とはタイトル規模係数を全国
係数で正規化した指標で、対象店の平均期待販売数
の何倍実績を上げているかを表している。このタイ
トルの個店係数は 4.0 倍であった。また個店順位 1
位の「鏡の法則」は、全国ランキングも 1 位と同じ
表 2 帳票① 適正展示発注推奨数リスト(A 店)
個店
予測
順位
全国
予測
順位
先週ラ 発注順
ンキン (在庫
グ
考慮) ISBN
1
1
1 4-89346-962-2
タイトル
鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法
出版社
総合法令出版
発売後
分類
週数
棚情報
自己啓発 30 A
2
4
4
2 4-7631-9543-3
生き方
サンマーク出版
自己啓発 3
3
2
3 4-8379-5670-X
一瞬で自分を変える法
三笠書房
自己啓発 4A
4
2
3
4 4-89346-945-2
「そうじ力」であなたが輝く! 幸運を呼び
総合法令出版
自己啓発 41 A
「人たらし」のブラック心理術-初対面で
大和書房
自己啓発 64 A
夢をかなえる「そうじ力」
総合法令出版
自己啓発 72 A
大動乱の世界と日本 2007長谷川慶太郎
徳間書店
ビジネス教養 1A
日本一メルセデス・ベンツを売る男
グラフ社
仕事の技術 15 A
1
5
7
7 6
5
5
7
6
8
25
4-479-77079-8
5 4-89346-912-6
10 4-19-862252-3
22
6 4-7662-0995-8
400POS
今週末 推奨
理想展 在庫予 発注
示数 測
数
9
9
注文
残
個店売上
b = 0.5
124 A
在庫予測
推奨発注数
注文残
発注可否
既発 既送
今週
注数 品数 注文
個店
予測 予測 現在 末予 注文残 注文残 (2
(2
残
THN在庫
2週前 先週
係数 2週前 先週 今週 来週 在庫 測
未考慮 考慮
週) 週) (2週) 状態
862
736
0.9
1
2
2.4
2.3
11
9
0
0
1
5
0 在庫
5
8
302
196
1.2
0
2
0.8
0.8
9
8
(3)
(3)
1
1
0 在庫
5
5
462
314
0.0
0
0
0.7
0.7
6
5
0
0
0
5
0 在庫
4
4
7
6
263
114
263
121
0.6
1.8
0
0
1
1
0.7
0.5
0.6
0.5
8
6
7
6
(3)
(2)
(3)
(2)
0
1
5
1
0 在庫
0 非在庫
4
8
196
152
0.9
1
2
0.5
0.5
9
8
(4)
(4)
3
3
0 在庫
4
4
110
111
3.1
0
1
0.4
0.4
4
4
0
0
0
0
0 非在庫
4
4
56
67
4.0
2
0
0.3
0.4
4
4
0
0
0
0
0 在庫
表 3 帳票② 返本推奨数リスト(A 店)
現在展示 棚/除
数(=返 外分類
品数)
タイトル
著者名
出版社
分類
490 4-8061-2517-2
天命の暗号
出口 光 著
中経出版
自己啓発
474 4-7916-0255-2
473 4-534-03112-2
455 4-8379-2182-5
労働基準法がよくわかる事典
会社で使う 契約書式文例集
33歳で資産3億円をつくった私の方法
星野 健秀 著
北河 隆之 編著
午堂 登紀雄 著
西東社
労働法
日本実業出版社 仕事の技術
三笠書房
マネープ ラン
2 F/除外
2 D
2 E
452 4-7569-0981-7
文章のルール
堀内 伸浩 著
明日香出版社
2 D
販売予測の検証 鏡の法則 B店
2,000
実績
予測値
全国
5
3
1,500
1,000
7
3
4
3
1
4
2
500
3
0
0
2
2
第13週
第11週
第9週
第10週
第8週
第7週
第6週
第5週
第4週
第3週
0
第2週
8
7
6
5
4
3
2
1
0
第1週
4.2.2. 個店販売数予測手法の検証
実証実験における個店販売数予測とその実績を検
証する。図 10 は 2006 年ビジネス書売上 No.1 のタイ
トル「鏡の法則」の書店 B における販売数予測と販
売実績の比較を示している。予測は 2 週間前時点で
仕事の技術
の算出で、第 2 週の予測 7.0 冊は、第 0 週の実績 3
冊から予測している。全体的にばらつきはあるもの
の、実績は予測値近傍で推移している。第 0 週から
第 1 週にかけて販売実績が増加したことから、通常
のオペレーションでは発注数を増やすところであっ
たが、予測により減少傾向を把握し過剰在庫を回避
することができた。また、各週における予測と実績
の誤差絶対値平均は 56%であったが、13 週全体での
誤差平均は 19%と収束している。これは、サンプル
数の少なさによるばらつきが減少するためである。
一般的に、全国予測よりも個店予測、長期間サンプ
ルよりも短期間サンプルの方が予測と実績にバラツ
キが生じやすい。
第0週
順位で、また個店係数も 0.9 倍とほぼ期待値どおり
の売上を上げていることが分かる。表 2 に示した A
店 12 月第 1 週の店順位 8 位までタイトルでは理想展
示数よりも今週末在庫予測が上回っていた。したが
って、本帳票では推奨発注数はゼロとなっているが、
不足分が発生した場合は、推奨発注量の欄に発注す
べき冊数が表記される。
本帳票では、過去の注文で未発送である注文残も
提示している。店長からの要望で、店側注文数のう
ち何冊が送品済みで、何冊が今後送品される予定に
なっているのかを把握するためである。例えば、10
冊注文しても全国で品薄になっている場合は、全書
店へ注文数の全量配送することはできず、書店には
注文の何割かしか送品されない。現状の書籍流通シ
ステムでは、書店側ではこのようなバックログが把
握できないため、過剰発注になりがちとなる。
また、表 3 に返本推奨リストの A 店の 12 月第 1
週の例を示す。平棚展示してあるタイトルのうち、
売上期待値の低い順、つまり移動優先順位の高い順
にリストアップしている。この表の順に差棚へ移動、
または返本を行う。
3 C
第12週
個店予測
ISBN
順位
図 10 書店 B における販売予測と販売実績推移
図 11 は書店 B における評価期間別の誤差平均の
推移を示す。これは 4 週間をみると誤差 30%以内と
なった。つまりある週の販売数を確実に的中させる
ことは難しいものの、4 週間で凸凹が抑えられ精度
が上がることを示す。第 2、3 週の実績が予測よりも
低いのは、全国的な品切れから欠品したためである。
180%
150%
120%
90%
60%
30%
0%
-30%
-60%
-90%
-120%
1週間
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
12
13
14
15
16
17
18
19
60%
30%
2週間(積分値)
0%
書店送品支援システムによる展示推奨により実店舗
において適正展示を反映できることが示された。店
長はデータに裏付けられた品揃えを提示されたこと
で、さらに付加価値の高い業務へと時間を有効に使
うことができる。同時にこのリストは業績の良い店
長の品揃え知見を折り込んでいるため、下位レベル
の店舗ボトムアップに大変有効であることも分かっ
た。一方、書店送品支援システムの限界としては、
出版社が増刷を控えている場合は問題を解決できな
いことも分かった。つまり業界各社が共通の情報の
もとで同期する必要がある。そのため、BBI プロジ
ェクトとして書籍卸、出版社へも同様の予測情報を
もとに意思決定支援を進めていく。
-30%
-60%
1
60%
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
4週間(積分値)
30%
5. 結論
・
販売データ解析や経験知に基づき個店販売数
を予測する手法を開発し、適正展示に有効で
あることを示した。
・
個店販売数予測手法をベースに実際のオペレ
ーション上の書店展示へ反映させる新しい仕
組みを構築し、書店実験において効果を実証
した。
・
書店のみでは改善に限界があり、効率的な流
通システム構築には全体最適の観点からの出
版から書店までの同期が重要である。
TOP100
TOP10
TOP11-40
TOP41-100
0%
-30%
-60%
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
図 11 書店 B における予測誤差平均の推移
4.2.2. 書店展示棚の適正化検証
本システム 2 帳票提供による書店展示実績推移と
実際の販売実績データから算出した適正数との比較
評価を表 4 に示す。両店ともに充足タイトル数、過
少タイトル数の改善がみられた。
推奨発注数をそのまま実行した書店 B では展示冊
数がほぼ同数のまま、充足タイトル数を 2 割近く向
上させ、かつ過剰冊数を 2 割削減している。一方で、
書店 A は帳票を参考に、店長が自由に発注できる仕
組みで行ったため、展示冊数総数は実験開始時より
も増加した。過少タイトルを半減させた一方で過剰
冊数も増加することとなった。
謝辞
本研究に用いられたデータは、共同研究先の書籍卸
社により提供されたものである。また実証実験にお
いては書籍卸社、および首都圏書店チェーンの協力
頂いた。
表 4 実験対象店の書店展示推移
A書店
B書店
2006/11/7 2006/12/3
289
400
64
77
18
19
39
23
105
167
-151
-105
2006/11/7 2006/12/3
展示冊数
320
357
充足タイトル
69
73
過剰タイトル
17
26
過少タイトル
31
26
過剰冊数
106
154
過少冊数
-100
-94
展示冊数
充足タイトル
過剰タイトル
過少タイトル
過剰冊数
過少冊数
2007/1/7
348
84
18
20
136
-97
2007/1/7
324
82
19
17
89
-56
4.3. 効率的な流通実現のための考察
本実証実験によって、個店予測手法の有効性と、
参考文献
[1] 宮田秀明:公開特許公報(A)、公開特許 2007-58848
(2007.3.8.)
[2] Zhang, G.P., Patuwo, E.P., Hu, M.Y.,. A simulation study
of artificial neural networks for nonlinear time series
forecasting. Computers & Operations Research 28,
381–396.(2001)
[3] Abraham, B., Ledolter, J.,
Statistical Methods for
Forecasting. Wiley, New York.(1983)
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