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在庫品の評価と在庫管理

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在庫品の評価と在庫管理
く論
説ノ
在庫品の評価と 在庫管理
確定決算主義が株主の利害にあ たえる
大
1
日
方
影響
隆
庫 品評価方法の 選択にかんする 税法の規制を 考
はじめに
察する
企業会計における 年度利益の計算は
,企業活
以下では,在庫品評価方法のうち先人先山 法
(以下,本稿ではFIFO という ) と期 別後人先
動から生じるオペレーティンバ・キャッシュ・
フローを年度間に 配分するものであ る・先入 先
田渋
世法や後人先山法などの 代替的な在庫品評価方
上げ,それぞれのキャッシュ・フロ 一の配分の
法の違いは,そのキャッシュ・フロ 一の配分の
あ りかたの違いにあ る.そうした在庫品評価 方
りかたを整理し まず,両者の違 いが 在庫 量
0 管理にどのような 影響をあ たえるかを検討す
る .在庫管理を題材として,代替的な在庫品評
仙 方法の意味を 考えてみたい.つぎに,その考
察 結果をふまえて ,上述した税法規定が,在庫
品評価方法の 選択と経営者の 在庫管理行動とを
通じて,株主の利害にどのような 影響をあ たえ
るかを分析する.
法の検討にあ
たっては,税金支払をも含めたう
えで,それぞれの方法がキャッシュ・フローを
年度間にどのように 配分するかを 考えてみる 必
要 があ ろう. なぜなら,確定決算主義をとるわ
が 国はもちろん ,米国においても,課税所得を
計算する税務会計上で 後人先山法を 採用する 場
合には公表財務諸表においても
とりわけ大規模公開
問題を生じさせる.大規模公開会
社の会計情報には ,多様な経済主体の利害が結
びついており
,それらの利害に神支出がさまざ
まな影響をあ たえるからであ る. とすれば, 会
計 情報が実際に 果たしている 役割を所与とした
ぅ えで,その税法規定がい かなる経済的影響を
もたらすかを 検討することもできるであ ろう・
そこで,本稿では,
)
を取り
後人先世法を 採
することが義務づけられているため ,財務会
計上の在庫品評価方法の 違 いが 支払税額の違 い
と 密接な関連をもっているからであ
る 1,
会社に重要な
という
あ
用
その ょう な税法規定は ,
(以下,本稿では LIFO
もっぱら株主の 利害に焦点
をあ てて,会計情報の役割という観点から , 在
Ⅱ
在庫品評価方法とキャッシュ・フロー
在庫管理にかんする 従来の議論では ,企業が
定常的に維持すべき「適正在庫水準 (Optimal
Inventory Level)」の決めかたが 論じられてき
た .そこでは,在庫保管設備の
規模を与件とし
たうえで,保有在庫量 の 増ヵ Ⅱにともなって 同様
に 増加する費用とそれと 逆に減少する 費用とを
合計した総保管費用を 最小化させる 在庫量が
「適正在庫水準」とされる
2).在庫数量に上 ヒ倒
する費用には 事務経費などの 保管費用も含まれ
るが, もっとも重要なのは ,在庫投資から生じ
る 機会費用であ る.その機会費用は,在庫品に
16 (230)
横浜経営研究
第甜巻
第 4 号 (1991)
投下した資金をほかの 投資機会に利用したなら
ば得られるであ ろう期待収益であ る・他方,在
庫数量に反比例するのはストック・アウト・コ
ストであ る.手持ちの在庫が少なければ急な需
要に応じられず ,そのことによって利益獲得 機
会を逸することになる. この品切れによって 生
じる損失がストック・アウト・コストと 呼ばれ
経営者に経営上の 意思決定権 限を委譲している
場合には, 自己の効用を 最大化するために 行動
する経営者が 株主にとって 最適な在庫管理を 行
うとはかぎらない. これまでの在庫管理の 議論
る 3).
では,そうした株主と経営者との 利害の不一致
そうした二種類の 費用によって 決定される
「適正在庫水準」は , 多くの場合,経済的発注
が見逃されてきたといってよ
量 (EOQ:Economic Order Quantity) といっ
しょに議論されてきた・「適正在庫水準」を 維
持するために ,発注から納品までのリード・タ
イムとその間の 需要量との双方を 予測し,手持
ちの在庫数量がどれくらい 減少したときに 追加
発注すべきかが検討される,そのことからもわ
行動するかどうかは 断定できない. かちん,企
業の所有者が 自分で経営している 場合には,問
題はない・
しかし企業の 所有者であ る株主が
い.
これまでの 在
庫 管理にかんする 研究成果をより 発展させるた
めにも,税金コストを考慮した株主にとっての
最適在庫最や ,経営者をコントロールすること
を通じた在庫管理のあ りかたを検討する 必要が
あ ろう.
むろん, これまでも,在庫品評価方法の選択
が株主の経済的な 利害に影響をあ たえることは ,
かる よう に,そこでは,在庫品の物的な数量だ
在庫管理とはべっの 角度から研究がなされてき
けに関心が向けられてきたといってよい.在庫
た・在庫品評価方法の 変更と株価の 変動との 関
品の購入価格が 変動しても, それは投下資金の
機会費用に影響をあ たえるだけで ,「適正在庫
水準」の決定にあ たって,どのような在庫品評
価方法を選択するかはまったく 考慮されていな
係を分析した 諸研究は,そのひとつの例であ る
そこでは,公表財務諸表における会計方法の変
更が, たんに確定したキャッシュ・フロ 一の年
度間配分を変えるだけで ,あらたにキャッシ
いのであ る.
ュ,フロ一の変化をひき起こさないならば ,
しかし選択する 在庫品評価方法に 応じて,
「適正在庫水準」は 異なったものになるはずで
あ る・なぜなら ,在庫品評価方法の違いは税金
支払額を変化させ ,保有在庫にかかる総費用が
の 変更は株価を 変化させないことがあ
異なってくるからであ る・税金というキャッ 、ン
ュ
・アウト プ ロ一によって 企業価値は減少する
のであ り,その税金の支払いは,株主の立場か
らみるかぎり ,企業成果の分配ではなくてコス
トであ る・ したがって,株主にとって望ましい
在庫量は,その 税金コストを 在庫費用に含めた
うえで決定されなければならない.税金コスト
を無視した従来の 在庫管理の議論は , 必ずしも,
されている・
そ
きらかに
その一方で,財務会計上の在庫品
評価方法の変更が税務上の在庫品評価方法の 変
更と結びついている 場合には,その 変更は税金
というキャッシュ・フロ 一に変 ィヒ をもたらし
株価を変えることもあ きらかにされた 4). 株価
研究のこうした 実証結果は,在庫品口の評価 方 Y去
の選択が株主の 富に影響をあ たえることを 示し
ているのであ る.
そうした在庫品評価方法の 選択の影響は ,そ
のほかに,利益情報の事後,情報としての役割を
記述ないし分析する 研究においても 検討されて
株主にとっての 最適在庫 量 をあ きらかにしてこ
なかったのではなかろうか.
それに加えて ,株主にとっての最適在庫量を
害の不一致があ ることを前提として ,利益情報
の役割が契約などによって 決められた場合,そ
決めることができても ,在庫管理の権 限を有し
の契約が経営者による 在庫品評価方法の 選択に
ている経営者がその 在庫水準を維持するように
どのような影響をあ たえるかが研究課題とされ
きた・
そこでは,株主と経営者とのあ いだに 利
在庫品の評価と 在庫管理伏日方
隆)
(231)
17
・米国における 研究で,利益情報を経営者の
業績指標として 利用する事例のなかでとくに 注
すべき対象は ,企業会計の外側で決められるそ
目されているのは ,経営者への報酬であ る.経
利益計算において 配分対象となる 後者のキャッ
営者報酬制度があ るか否かによって 在庫品評価
、ンュ ・フロ一の変化は ,企業の投資政策の変更
万法の選択に 違いが現れるかということに
によって生じるものであ
る
, 検
の分配ルールそのものであ
る. それにたいして ,
この場合, まず,
る・
証 Ⅰ作業の主たる 関心が向けられているわけであ
その投資政策への 影響が, そこでの局地的な 成
る㍉・
果分配ルールに 起因するものか ,あるいは会計
もっとも,そうした研究では,年度利益を計
上の利益計算ルールに 起因するものかを 峻別し
算ないし確定した 後に生じるキャッシュ・ フ
なければならない・
ロ 一に目が向けられているにすぎない.
操作によっては 対処できない 問題,すなわち会
そこで
そのうえで,分配ルールの
考えられているキャッシュ・フロ 一の変化は,
経営者報酬などの 成果分配 や ,財務制限条項に
かかわって変化する 将来の資本調達コストにか
んするものであ る・ それらは,年度利益の確定
にともなって 生じるものであ り,在庫品評価方
法の選択ないし 変更が直接変化させているわけ
ではない・
たしかに,利益情報の利用のされか
たが固定化されているかぎりでは ,在庫品評価
方法の変更がそうしたキャッシュ・フロ 一の変
化を生じさせる. しかし たとえ会計方法に 変
更がなくても ,契約の変更などによって利益情
報の利用のされかたが 変化すれば,年度利益確
計ルールに固有の , ないしは本質的な 問題を検
定後のキャッシュ・フローは
己の効用最大化のために 行動する経営者は , 名
変化するのであ る
ひとくちに,在庫品吉平価方法の 選択が企業の
キャッシュ・フローを 変化させるといっても ,
そのキャッシュ・フロ 一には,年度利益の確定
にともなって 生じるものと ,年度利益の計算の
ために配分される 計算対象としてのキャッシ
ュ・フローとがあ る.在庫品評価方法の意味を
考えるにあ たって,その二つは区別されなけれ
ばならない. なぜなら,二つの局面には,理論
討することになるのであ
る.
たとえば,利益情報の使われかたを 経営者が
知っているならば ,経営者は,在庫品評価方法
の 選択ばかりでなく ,在庫管理でもその使われ
かたを考慮するであ ろう. かりに,在庫品評価
方法の変更に 応じて報酬額の 計算式が変更され
たり,在庫品評価方法の継続性 (変更の制限 )
などが私的な 契約や制度上のルールによって 決
められているならば ,在庫品評価方法を変更し
た場合,経営者はその違反コストを 負担するこ
とになる・そのような 制約があ るときには,
自
目的な会計操作ではなく , むしろ,実態上の操
作, たとえば, 自分の裁量で 自由に決定できる
在庫数量のほうを ヰ栗ィモ するであ ろう. このよう
な在庫操作のケースでは ,成果分配ルールに か
んする問題だけではなく ,
そもそも会計ルール
が在庫操作への 誘因を提供していないかという
ことも問題になるわけであ る.
その ょう に,選択する在庫品評価方法を 前提
上, それぞれ異なった 問題が存在しているから
として,その評価方法が経営者の 在庫管理にど
であ る.
のような影響をあ たえるかを分析するためには
いずれのキャッシュ・フロ 一の変化も株主の
持分価値に影響をあ たえることにかわりはない
が,前者のキャッシュ・フローは利益情報を利
崩 している契約ないし 成果分配ルールにおおき
く依存しているのであ り,会計ルールはもっぱ
まず,在庫数量が増減する状況にそくして 在庫
品評価方法の 計算上の特質があ きらかにされな
らその分配ルールを 機能させているにすぎない
ように年度間に 配分するのかが 検討課題であ る
かりに成果分配にかんして 問題があ れば,検討
期首と期末で 在庫量が等しいときはともかく
,
ければならない.在庫品の購入というオペレー
ティンバ・キャッシュ・フロ
一に税金を含めた
キャッシュ・フローを ,在庫品評価方法がどの
,
18@ (232)
横浜経営研究
第Ⅲ巻
在庫量が増減した 場合,その配分のあ りかたは
第 4 号 (1991)
は,そのキャッシュ・フロ 一の配分のあ りかた
.期末の需要が
期首時点の見積りどおりであ
在庫 量も 「適正
ったとすれば ,当然に,期末の
在庫水準」となる・ 本稿では, この状況をべン
を見てみよう.
チマークとする. この状況で LlFo
それほどあ きらかなことではない. つぎの節で
る
と FIFO
とによってそれぞれ 在庫品を評価したならば ,
Ⅲ
1)
その期のキャッシュ・フローや
在庫主増減の 影 審
基準状況
ここでは,在庫の積み増し取り 崩しと
上ヒ駁
されるべンチマー ク (基準状況 ) を設定し
そ
のべンチマークのもとで ,財務会計上も税務会
計上も同一の 在庫品評価方法をもち い るものと
して, FIFO
と
LIFO
のそれぞれのキャッシ
期間利益は第 1
図のようになる.
まず, LIFO によって在庫品を 評価した場合
には,期首と期末の在庫量が等しければ,たと
えそれが「適正在庫水準」ではなくても ,在庫
品購入に要したキャッシュ・アウトフローがす
べてその期の 費用となる. その結果,税金支払
額を除いたネット・キャッシュ・フロー
(以下,
ュ・フロ一の 年度間配分のあ りかたを整理する
これを税引前ネット・キャッシュ・フロー
具体 りな考察にはいるまえに ,議論の焦点を 明
(IIr 二 NC), 税
別後利益と税引 後 ネット・キャッシュ・フロー
とは等しくなる (IIT* 二 NCI,*). ここでは,
h だけの実現保有利得が 年度利益から 当面は除
かれ,課税されないまま含み益として 将来に繰
り越されることになる.
他方, FIFO の場合には,過去の 期のキャッ
自
確にするため ,
この節でもちいる 二組の仮定を
示しておきたい.
ひとつは,財務会計上の期間費用および期間
収益は, すべてその期の 現金資金 ( キャッシ
ュ ) の収入,支出をともなうという 仮定であ る
ぶ)
と 税引前利益とは
と呼
等しく
在庫品の売買はもちろん ,資本設備にかんする
期間費用も, その期にキャッシュ・アウトフ
ローとして生じ ,かつ,その
額は毎期一定とす
配分され,当期のキャッシュ ,アウト プ ロ一の
ただし期末の 手持ち在庫品にかかる 変
一部は, 翌期以降の費用として 配分される. た
る 6),
、ンュ ・アウトフローから 優先古りに当期の 費用に
動的な保管費用は 在庫品の取得原価に 算入され,
その期の利益計算からは 除かれるものとする.
もうひとつは ,在庫量の増減にかんするもので
あ る・ ごく短い期間を 一会計期間とし 在庫品
の購入は期首時点で 期末の需要量を 見積もって
一括的に行うものと 仮定する・他方,在庫品の
売却は期末時点でのみ 行われるものとする. こ
のように一期間の 途中では在庫品の 売買がいっ
さい行われないと 仮定することによって ,在庫
とえ期首と期末で 同一の在庫量を 保有していて
も,在庫品購入価格の上昇の影響を ぅ けて,期
末の在庫品評価額は ,期末在庫に 生じた実現 保
有利得の分だけ 期首のそれよりも 大きくなる.
その結果, FIFO の場合の税別前利益は LIFO
に比べてその 保有利得の分だけ 大きくなる (n
L 二 nF 十 h). 同様に,税別双利益は税引前キ
ャッシュ・フローよりも 期末在庫の実現保有利
得 の 分 だけ大きいのであ る (IIF=NCF+h).
量 増減の影響は よ り明確になるはずであ る. な
課税所得の大小にかかわらず 税率 (,) が一定
お,在庫品の購入価格は継続的に 上昇している
と仮定すると ,当然,税金支払額はその
実現保
有利得にかかる 分だけ LIFO よりも大きい
(TPF 二 TP,+
h) 乃
在庫品口を FIFO で評価した場合, こうした期
間利益とキャッシュ・フローとの 関係は,税金
を支払った後にも 成立する.税別後利益は 税引
ものとする.
以上のことを 前提としたうえで ,前期から繰
り越された期首の 在庫量が「適正在庫水準」で
あ ったとしてみよう ,
この「適正在庫水準」は ,
税 負担を考慮しないで 決められているものとす
「
・
在庫品の評価と 在庫管理 (大日方
後 ネット・キャッシュ・フローよりも
実現保有
隆)
(233) 19
基準状況と同一の 数値になる・つまり ,
これら
利得の分だけ 大きい (IIF,二 NCF*+h).
税別
の数値は在庫 量 増減の影響をまったくうけない
後利益と税引 後 ネット・キャッシュ・フロ
一に
のであ
ついて LIFO
と FIFO
とを比べてみると ,
い
(IIF*=ni*+(1
NCF*=NCi,
一丁
h).
較して FIFO
は , h だけの実現保有利得を 期間
一
「
これにたいして ,
ネット・キャッシ
ュ・フローは , 積み増しの場合には 追加的な現
ずれも期末在庫の 実現保有利得に 課税される 分
だけ 違 いが生じる
る・
金支払 額 。 a) だけ減少し取り 崩しの場合に
)h,
は 現金節約 額 (m) だけ増加することになる.
と比
このことは, 税別前であ っても税別後であ って
ここでは, LIFO
も同様であ る, ここでは, FIFO
を用いた場合
利益に算入しそれに 課税される結果,税別後
には,在庫数量の増減は期間利益にまったく 反
利益を (1
映されないことを 確認しておこう.
一
「
)h だけ増加させ ,
ト・キャッシュ・フローを「
税別後ネッ
h だけ減少させる
3)
ことを確認しておけばよ い であ ろう.
2)
在庫量が増減した 場合の FIFO
ノ
ン ユ
・
に よ る在
による在庫品の 評価がキャ
まず,在庫積み増しのケースを 見てみよう.
在庫の積み増しが 行われた場合,税別双キャッ
フローや期間利益にあ たえる影響を 検
討しよう・その 際,前節の基準状況と ヒ校 する
ため,前期から繰り越された 期首の在庫 量憶
「適正在庫水準」であ ったとして議論を 進める.
、ンュ
上
一般に,在庫量が増減するケースとしては
なる代わりに ,期首の購入量 のうち過剰 分が,
積み増された 在庫品の評価額 (b) として翌期
(期
以降に繰り越される・その
首 ) の購入量がすべて 売却された後, さらに追
加的に在庫品を 購入したものとする 8,.つぎに,
在庫の取り崩しが 生じるケースについては ,期
首時点の購入量が 不足していたにもかかわらず
期末時点では「適正在庫水準」までの
わなかったと 想定する・なお ,
握されない
( その期の利益の
,
補充を行
この積み増しと
取り崩しのいずれのケースにおいても
失 であ るストック・アウト・コストは
しかし
LIFO と FlFo とでは大きく 異なる. LIFO の
場合には,追加的に 購入した 分 (a) が費用と
,
まず,在庫の積み増しが
生じるケースとして ,期末時点で, 当期
の場合とかわりはない・
その積み増しが 期間利益にあ たえる影響は ,
るが,両者についても,前節の諸仮定と 同様
に 規定しておきた い ,
・フローが追加的支出 分 (a) だけ減少す
ることは FIFO
在庫の積み増しと 取り崩しとの 二つのケースが
あ
によ る
在庫品評価
LIFO で在庫品を評価すると ,在庫の積み増
し 取り崩しがあ った場合の諸数値は 第 3, 4
図のようになる.
庫品評価
つぎに,期首の在庫 量と 期末の在庫 量 とが異
なる場合に, FIFO
在庫量が増減した 場合の LIFO
結果,税別前利益は ,
積み増された 在庫分の当期中に 生じた実現保有
利得 (a 一 b) だけ減少する・
支払税額も , そ
の 実現保有利得にかかる 分 (, (a 一 b)) だけ
減少することになる・
以上のことから ,購入価
格が上昇している 局面では,追加的購入による
在庫の積み増しは 節税効果をもっていることが
,機会損
わかる.
会計上把
しかし こうした積み 増しによる節税額は ,
同時に生じている 税引前利益の 減少額よりも 小
減少としては 現れ
ない ) ことに注意しておこう.
さい・
上述したような 在庫の積み増し 取り崩しが
あ った場合に在庫品を FIFO で評価すると ,基
それよりも ( 1
したがって,税別後利益は,基準状況の
一
「
) (a 一 b) だけ圧縮されるこ
とになる 91. これと同様に ,税別後キャッシ
準状況で検討した 諸数値は第 2 図のようになる
ュ
積み増しと取り 崩しとのいずれの 場合にも,税
果 よりも追加的な 購入支出のマイナスの 影響の
別前利益,税金支払額 ,税別後利益の三つは,
ほうが大きく ,基準状況に上 ヒ べて (l 一 T)a+
・フロ一についても ,積み増しによる節税 効
20 (234)
横浜経営研究
第 4 号 (1991)
第 Ⅲ巻
rb だけ減少するのであ る.税別後 ネット・キ
いう問題に十分に 答えることができない.
ャッシュ・フロー と 税引 後 利益との関係を 見て
では,企業の所有者が経営者であ る場合と,所
みると,当期に支出されたが 当期の費用となら
なかった部分,すなわち,在庫の積み増しとし
て次期以降に 繰り越された 額 (b) だけ,両者
の あ い だには差が生じることになる
(nl,* Ⅰ )
有者と経営者とが異なる場合とに 分けて,議論
二 NCi*(+)+b).
うに行動する.持分証券の市場での評価を 議論
つぎに,在庫の取り崩しのケースを 検討しょ
う・
このケースは ,すでに見た積み増しの ケ一
から除くとすれば ,在庫の保管から生じる正味
スと 対照的であ るので,重要なことだけをごく
簡単に述べておく.在庫品の購入価格が継続的
小 化する在庫量が ,経営者すなわち企業の所有
者にとっての 最適な在庫 量 であ る・ここでは ,
に上昇している 場合には,期首在庫が 取り崩さ
議論を簡単にするため , 税 負担を含めた 一期間
れると,税別前利益も税別後利益もともに 増加
する・それは ,取り崩された在庫 量 に生じてい
た 実現保有利得 (m 一 n) が税別前利益に 算入
の 保管費用を最小化させる 在庫水準を考え ,そ
れを「最適在庫 量 」と呼ぶことにする. ここで
されるためであ る. その結果,税金支払額は増
加するが,購入不足を 在庫の取り崩しで 補った
おけるその「最適在庫 量 」が,税金を考慮しな
いで決定される「適正在庫水準」とどのように
ため,税別後ネット・キャッシュ・フローは基
異なるのかということになる.
準 状況よりも増加することになる
二 NCT*(-)+(1
一
「
)m+Tn).
を整理してみたい ,
1)
企業の所有者が 経営者であ る場合
この場合,経営者は企業価値を最大化するよ
キャッシュ・アウト プ ロ一の現在割引価値を 最
0 間 題は ,
(NCT*(-)
この取り崩し
ここ
それぞれの在庫品評価方法のもとに
まず, FIFO
の場合には,前節の 考察から判
明するように ,「適正在庫水準」を 維持しても,
の場合にも,先の積み増しの場合と 同様に,税
あ るいは在庫の 積み増しや取り 崩しを行っても ,
別後 ネット・キャッシュ・フロー
後 利益
税金支払額はすべて 同額であ る. 税 負担の有無
とのあ いだには取り 崩された在庫品の 評価額だ
は在庫量の決定に 影響をあ たえないのであ る.
けの差が生じる
(n ,* (-) 二 NC,*
と 税引
(-) 一 n).
したがって, FIFO
を採用しているときの「最
を検討した・ここでの 検討課題は,そのキャッ
在庫を取り崩すのが 合理的な行動であ る. しか
Ⅳ
ュ ・フローをどのように 年度間に配分するのか
適在庫 量 」は,税金を考慮しない「適正在庫水
準」と等しい・ むろん,在庫に投下した資金の
機会費用を上回るだけの 保有利得が期待できる
ことが期末になって 判明した場合には ,期首よ
りも在庫を積み 増すであ ろう・ あ るいは,期末
時点で需要量の 減少が予測されるならば ,期首
在庫品評価方法が 在庫管理にあ たえる 影 T
前節では,在庫数量が 増減する状況にそくし
ながら, FIFO
と LIFO
とはそれぞれキャッ 、ン
-ンュ ・フロ一の配分のあ りかたの 違 いが在庫 管
し
それらはいずれも , 期末時点での 予測の修
理 にどのような 違いをもたらすのかということ
正にもとづく「適正在庫水準」の
であ
そうした在庫管理活動を 考慮にじれても ,
る・
第
2
節でも述べた よう に, これまでの
改訂であ る.
「適
「適正在庫水準」にかんする 議論では,税金が
正在庫水準」が「最適在庫 量 」でもあ ることに
在庫費用から 除かれていること ,および株主と
かわりはない.
経営者との利害対立が 考慮されていないために ,
他方, LIFO
「適正在庫水準」がはたして 株主にとって 最適
な在庫 量 であ るのか,あ るいは,経営者は「適
正在庫水準」を 維持するために 行動するのかと
と「最適在庫 量
の場合には, 「適正在庫水準」
」
との関係はどうなるのであ ろ
うか・そのことを 確かめるには , FIFO
での「最適在庫 量
」
(二
のもと
「適正在庫水準」
)
と
在庫品の評価と 在庫管理 (大日方
(235)@2]
隆)
LIFO を採用していれば ,購入価格が上昇を続
けているかぎり ,手持ち在庫量を増加させるこ
とによって税金支払 額 そより減少させることが
できる. その節税による 保管費用の減少の 程度
は ,実効税率,および
期末在庫の実現保有利得
を左右する在庫品購入価格の 上昇率と期末の 手
合 には,経営者が企業価値を最大化する 2 3 に
行動するという 保証はな い .経営者は自己の効
用を最大化するために 行動するのであ り,場合
によってはその 行動が企業価値の 減少をひき起
こし株主に損害をあ たえることもあ ろう・ 株
王 にとっての関心は ,経営者の行動をどのよう
にして企業価値の 最大化に向かわせるかという
持ち在庫 量 ,
ことにあ る, 株王は ,
LIFO) のもとでのそれとを 比較しでみればよい
これらの
3
つの要因に依存する
10,.購入価格の
上昇率と実効税率とを 与件と
すると, LIFO の採用による 節税額は手持ちの
在庫数量に正上ヒ 倒 することになる ,
い ま, 税 負担を考慮しない「適正在庫水準」
よりも
1
その場合, 「適正在庫水準」のときょりも 税金
上昇するものの
害とを一致させるために
,
さまざまなインセン
ティヴ・プランを 設定するであ ろう.すでに述
べたように, そのインセンティヴとしてしばし
ば注目されているのは ,経営者報酬制度であ る
単位だけ在庫を 多く保有するとしょう
を 考慮しない保管費用は
自分の利害と 経営者の利
,節税
額がその上昇分を 上回るならば , 税 負担を含め
た総保管費用は「適正在庫水準」のときよりも
減少するのであ る. LrFo のもとで保管費用を
最小化するという 前提では,税金コストを考慮
した「最適在庫 量 」は , 少なくとも「適正在庫
水準」よりも 小さくなることはない・ 単純化し
ていうと,在庫投資額の増大にともなって 累進
的に逓増する 機会費用が節税によって 補われる
ならば,「最適在庫 量 」は「適正在庫水準」よ
りも大きくなるであ ろう,実際,FIF03 を採用
している企業よりも LlFo を採用している 企
業のほうが手持ち 在庫量が大きい 傾向にあ ると
指摘する研究調査もあ る 111.
もちろん, ここで議論しているのは ,期首と
期末とで同一量を 保有する場合の 最適な在庫 量
であ る.前節であ きらかにしたよ う に, たんに
節税だけを目的として ,適正な在庫を超えて 追
本稿では,議論を単純 とするため,年度の 税
イ
引 徳利益に上 ヒ倒 した現金ボーナスが 経営者にあ
たえられるという 報酬制度を仮設して ,経営者
の短期的な行動に 焦点をあ てることにするⅨ.
そのような現金ボーナス 制度を設定しても , 経
冨 者は,株主にとっての「最適在庫量 」を維持
する積極的なインセンティヴをもっていない
,
その場合に,採用する在庫品評価方法があ らか
じめ定められているならば ,経営者はどのよう
な在庫管理を 行うのであ ろうか・ つまり, 最
適 在庫 量 」は維持されるのであ ろうか・ その在
庫管理によって ,株主の経済的な利害はどのよ
うな影響をうけるのであ ろうか・ FIFOJ と
「
LIFO について, この 2 仮を検討するのがここ
での課題であ る.
まず, FIFO
を採用している 場合には,利益
を目的として ,経営者が在庫の積み増しや
取り崩しを行うことはないであ ろう・ FIFO) の
ヰ栗ィモ
もとでは,期末の在庫数量を操作してみても
,
期首在庫を積み 増すか取り崩すかということと
税別後利益は 変化しないのであ る・ この点では,
経営者が「最適在庫 量 」を維持することを 株主
は消極的ながらも 期待できる. ただし この場
合には,株主が公表財務諸表から 在庫管理のⅡ・大
は べ つの問題であ る. ともあ れ, ここでは, 選
呪 る モニターするのには 限界があ
択 する在庫品評価方法によって「最適在庫
庫の取り崩しや 積み増しが 生,じても, FIFO)
加 的に在庫投資をすることは
, けっして企業価
値を高めない.維持すべき在庫量の大きさと ,
量
」
が異なってくることを 確認、しておこう・
2)
企業の所有者と 経営者とが異なる 場合
企業の所有者 (株主 ) と経営者とが 異なる 場
よ
る・
もしも 在
に
る在庫品評価額の 増減には在庫品数量の 変化
分 と購入価格の 変化 分 とが混在しているため ,
公表財務諸表だけでは 在庫操作の存在を 把握で
22@ (236)
横浜経営研究
きない・株主が「最適在庫 量 」の維持を積極
第 Ⅲ巻
由
り
第 4 号 (1991)
場合とでは,利益を年度配分するための 在庫操
に望むのであ れば,公表財務諸表以外の手段に
作のあ りかたも異なるであ ろう.本稿ではさし
よって在庫の 管理状況をモニターする 必要があ
あ たり前者しか
ろう.
たとおりであ る.
つぎに, LIFO
扱っていないのは ,すでに述べ
の採用があ らかじめ定められ
もうひとつは ,経営者報酬制度における報酬
ているならば ,経営者はどのような在庫管理を
の 決めかたであ る.株主が報酬額の算定を工夫
行うのであ ろうか・前節でみた よ うに,価格上
昇下で LIFO を採用した場合, 税別後利益は
することによって ,経営者の在庫管理行動をコ
在庫の積み増しによって 減少し取り崩しによっ
たような在庫品評価方法の 特質は,ただちに,
て 増加するのであ った・ その特質を利用して ,
それぞれの方法の 欠点を意味しているわけでは
経営者は,在庫操作を通じて受取報酬額を 自分
ない・制度上採用できる 評価方法があ らかじめ
の期待する額に 近づけることができる. たとえ
定められており ,
ば,当期の報酬を増やすのであ れば,在庫のす
べてを取り崩してしまえばよい. 当期と翌期の
報酬を平準化したいと 考えるのであ れば,在庫
の積み増しと 取り崩しとを ,適宜,使い
分けれ
いのであ れば,私的な報酬契約のほうを 工夫す
ることが株主にとっては 合理的な行動なのであ
ばよい・
LIFO
で在庫品を評価していると
,
そ
ントロールすることもできょ
る
ぅ
.
これまで述べ
それが短期的には 変更されな
13).
ここまでは,税別後利益に単純比例してあ た
えられる経営者報酬制度を
前提とし主として
うした在庫操作によって 利益を年度間に 配分し
直すことができるのであ る.
そのような在庫操作によって ,企業のキャッ
経営者の在庫操作へのインセンティヴを
、ンュ ・フローは変化し
報酬額を増減させることができるため
株主の経済的な 利害は
影響をうける.最適な一定在庫が維持されてい
る場合に比べて ,在庫の積み増しはネット・ キ
マッシュ・フローを 減少させ,企業価値も減少
FIFO
た・
と
LIFO
LIFO
とのそれぞれものもとにおける
検討し
の場合には,在庫操作によって 受取
,利益操
作の手段として 在庫量を操作する 可能性があ
る
ことが判明した・ 株主は,経営者が適切な在庫
管理をするようにコントロールするために ,報
させる・他方,在庫の取り崩しはその 期のネッ
ト・キャッシュ・フローを 増加させる・ しかし
その増加が株主にとって 持分価値の増加をもた
らすかどうかは 疑わしい. 「最適在庫 量 」の取
酬支払という 成果分配のルールそのものを
り崩しはストック・アウト・コストを 生じさせ,
将来に期待されるキャッシュ・フローを 減少 さ
選択された在庫品評価方法が 経営者の在庫操作
インセンティヴにあ たえる影響だけが 問題では
せるであ ろう・短期的に 税引 後 利益を増大させ
なく,そのことが株主の持分価値にどのような
るための在庫操作は ,
影響をあ たえるのかが 問題なのであ る.
かえって企業価値を 下落
,
工夫
するであ ろう. そうしたコントロールにあ たっ
て,追加的なコストが生じることなく 在庫操作
を
防止できれば ,株主の持分価値は減少しない
させかれない・ 在庫の取り崩しも ,最適な水準
を下回れば,株主の利害を害することになる.
もちろん,経営者がどの程度在庫を操作する
額の増減として 現れる・株主にとって ,
かは, つ ぎの二つぼ依存するであ ろう. ひとっ
とはモニタリンバ・コストが
は,経営者がどのような受取報酬の流列を 望む
も 削減されることを
のかという,経営者の報酬にたいする 選好であ
庫品評価額の 増減を報酬額の 算定に利用しても ,
る・黄肌報酬額の 短期 りな最大化を 目的にする
場合と, 長期的に最大化することを 目的にする
在庫操作によって 株主が負担しなければならな
いコストをゼロにできる 保証はない. 残余損失
自
LIFO で在庫品を評価しているならば ,在庫
数量の増減は 必ず公表財務諸表上の 在庫品評価
FIFO
このこ
の場合 よ
り
意味している. しかし在
在庫品の評価と 在庫管理 (大日方
(ResidualLoss)が存在するわけであ
る
14,. 他
方,公表財務諸表以外の手段によって 在庫の管
(237)@ 23
隆)
さしあ たり,準備作業としての意味をもってい
る
理状況をモニターした 場合は, そのモニタリン
グ・コストが FIFO
と同じになり ,経営者に在
庫操作へのインセンティヴを 生じさせる FIFO
のほうが,株主の持分価値を減少させる 可能性
は高 い
ここには,局地的な成果分配ルールを
・
V
税法規定と株主の 利害 (
一一方法の選択
前節までは, 税務会計で LIFO
LIFO
操作しても解決されない 問題,すなわち会計
ルールをめぐる 重要な問題が 存在している. 在
場合には財務会計においても
庫 に固定在高が 存在しない場合にも LIFO
べたように, わが国でも米国でも ,
採用を認めている 会計ルールが ,
シー
・
の
エイジェン
コストを生じさせているのであ
を選択する
を選択す
るものとして 議論を進めてきた. はじめにも 述
そうした選
択が税法によって 義務づけられているからであ
る, この節とつぎの 節では,その税法規定の影
る 15)
一般に,在庫品の購入価格が上昇している 場
合, LIFO の選択による 節税メリットを 考え
れば, FIFO よりも LIFO のほうが株主にとっ
ては好ましい. しかし経営者の 在庫操作を防
ぐためのインセンティヴの 提供は,その節税メ
響について考える.在庫品の評価について ,
い
Confor ㎞ ty Rule
(以下では, たんに一致原則という ) は株主の
わゆる確定決算主義ないし
経済的利害にどのような 影響をあ たえるのか,
それが以下での 検討課題であ る.
の場合よりも
まず, この節では,経営者は在庫量の操作を
しないものとして ,在庫品評価方法の選択だけ
る, それどころ
を考察対象とする.株主と経営者とのあ い だに
の採用によって , かえって株主の 持
利害の対立があ る場合に,経営者はどの評価方
LTFO に節税
法を選択するのであ ろうか.議論の単純化のた
リットを消失させかれない・
必ずしも, LIFO
の 採用が株主の 持分価値を FIFO
増加させるとはいえないのであ
か, LIFO
1 )
分価値は減少するかもしれない.
効果があ りながら,実際には, LTO
ない企業もあ
る・
を採用し
その評価方法の 選択は,株主
め, ここでも前節と 同様に,税別後利益にリン
ク した経営者報酬制度が 設定されているものと
にとって不合理であ るとはいいきれないであ ろ
しよう.その場合,前節で触れたように ,経営
う・経営者の 在庫操作が制限されないかぎり
者は受取報酬にたいする
株主はその節税メリットを
,
十分に享受すること
自分の選時にしたがっ
て,年度によって在庫品評価方法を 使い分ける
であ ろう. たとえば,在庫品の購入価格が上昇
ができないこともあ るからであ る.
者の在庫管理を 株主がコントロールする 方法は
しているならば ,税別後利益を増加させて報酬
を増やしたいときには FIFO) を選択すると 予測
できる.他方,株主にとっては
,税金コストを
異なってくる ,
削減するように ,税別前利益をできるだけ小さ
このように, どの在庫品評価方法を 採用する
かによって,在庫管理のあ りかた, および経営
そうした違いは ,
それぞれの 評
仙方法のキャッシュ・フロ 一の配分のあ りかた
くする FIFO の選択が望ましい. このように,
の違いとともに ,株主と経営者との利害の不一
一致原則は,在庫品評価方法の選択にかんして ,
致にも起因している.双節ではキャッシュ・フ
株主と経営者との 利害対立をいっそう 複雑なも
ロ一の配分にかんする lJIFo
のにしている.
式 的な比較を試みたが ,
と
FIFO
との形
この節では,前節の分
こうした利害対立は ,経営者報酬制度を工夫
析結果を具体 りな利害状況のなかで 捉え直した
することによって ,
わけであ る. ここでの考察は ,具体りな利害状
できる. たとえば,在庫品の購入価格が上昇し
ている局面では ,報酬額を算定する際に税引 後
自
自
況のなかで税法規定を 検討することにとって ,
あ る程度は緩和することが
24@ (238)
横浜経営研究
第 Ⅲ巻
利益に乗じる 係数を FIFO を選択した場合には
小さく LTFO を選択した場合には 大きくし
選択された評価方法に 応じて報酬額の 算定を変
タ
第 4 号 (1991)
レスト・カバレッジ・ ワ シ オ の維持などを 社
経営者に特別ボーナスを 支払ってもよいであ ろ
う・前述したように ,制度上は一致原則が 固定
債発行企業と 契約する.社債発行に 一定の制限
を課している 通情基準や債券の 格付けも, ここ
では財務制限条項と 同様に考えてよい、 8).
その ょう な財務制限条項は ,営業利益,経常
利益,税別後 利益など財務会計上の 多段階の利
化されているならば ,上ヒ較 的に柔軟な報酬契約
益にかんする 財務比率を規制することが 多 い .
のほうを操作すればよいのであ る・実際に,在
庫品評価方法の 変更に際してそのように 報酬 契
もしも報告利益の 水準が低下して 契約に定めら
れた規制に抵触することになれば,将来,企業
約 が変更されることは ,経営者報酬制度の存在
の 資金調達コストは 上昇したり,資金調達に 障
が在庫品評価方法の 選択にあ たえる影響を 調べ
た実証研究でも 報告されている ,6).
その ょう に報酬額の決めかたを 工夫すること
を 通じて,株主は ,節税メリットがゼロになら
ない限度で,節税のための在庫品評価方法を 選
択するようなインセンティヴを 経営者にあ たえ
害が生じて有利な 投資機会を逸する 可能性もあ
る・あ るいは,本業における利益水準の低下を
設備資産の売却などによって 補わなければなら
ないとすれば ,主観のれんの消失などの追加的
えればよい・
LIFO
の選択を動機づけるように
,
ようとするであ ろう.そのようなインセンティ
ヴの提供が必要であ ることは,経営者を株主の
利害に沿って 行動させるためのエイジェン
"ノー "
コストが生じることを 意味している. 経
営者報酬に影響をあ たえる財務会計上の 在庫品
評価方法と,課税所得計算におけるそれとを 独
正 に選択することができれば ,株主と経営者と
の利害対立は 緩和され,株主が負担するコスト
も減少するはずであ る・換言すれば ,そうした
在庫品評価方法の 自由な選択を 制限している 一
数原則はエイジェンシー・コストを
増大させ,
株主の持分価値をそれだけ 減少させているので
あ る.
これまで述べてきたような 経営者報酬制度の
なコストが生じることもあ
ろう・いずれにせよ ,
財務制限条項に 違反しかれない 利益水準の低下
は,企業価値を減少させるのであ る, したがっ
て,財務制限条項が設定されている 場合,株主
は ,名目上,報告利益をできるだけ
高めるよう
な在庫品評価方法の 選択を望むであ ろう.
しかしその一方で ,余分な税金コストを 削
減するためには ,課税所得を小さくする必要が
あ る・在庫品の 購入価格が上昇しているときに
は,課税所得の計算にあ たって LIFO を採用
すれば
よ
い・ ところが,その場合,一致原則に
よって財務会計上も LIFO
の採用が義務づけ
られるため,節税目的による LIFO の採用は ,
負債契約上 ア 問題となる財務会計上の 報告利益
の水準までも 低める・株主と 経営者との利害対
立をこの場合は 問わないとすれば ,株主は,
ほか,利益情報が制度的な利害の 調整に利用さ
FIFO を採用して財務制限条項違反を
れている場面では ,その制度的な仕組みを通じ
それとも LIFO
て, どの在庫品評価方法を 選択するかが株主の
受するか, どちらかを選択しなければならない
利害に影響をあ たえることがあ る.報酬制度の
株主は,契約違反のコストと 税金コストとを
駁 して, コストを最小化する 在庫品評価方法を
選択するであ ろう.
ほかに, これまでしばしば 取り上げられてきた
のは,財務制限条項である
17).たとえば,社
免れるか,
を採用して節税メリットを 享
上ヒ
債の発行に際して ,社債権者は,債務の償還リ
スクが高まるのを 避けたり債券の 市場価値が下
この点について ,財務制限条項が在庫品評価
方法の選択にあ たえる影響を 調べたりくつかの
落するのを避けるために ,配当制限を課したり
研究のなかには ,興味深い実証結果を 示してい
一定水準の年度利益の 維持 や ,負債上 卒やイン
るものがあ
ヒ
る・
それによると ,財務会計上で
在庫品の評価と 在庫管理 (大日方
LIFO
を採用している 企業は , 他の企業に比べ
(239)@25
隆)
題 なのであ
る・
この問題をつきつめれば ,租税
て相対的に業績がよかったり ,財務体質が健全
であ ると報告されている 19). 財務会計上で
LIFO を採用しないかぎり 税務上は LIFU を採
用できないから ,その実証結果は,業績が不振
政策としての 一致原則が,制度創設の建前と実
質とで異なった 意味をもっていることに 行き着
{
代替的な方法
ほんらい,租税政策上,複数の
で 財務状況が悪化している 企業は税務会計上で
のなかから,課税所得の計算に用いる 方法の選
LIFO を採用しない 傾向にあ ることを指摘して
いるのであ る,負債契約に違反したときのコス
トが非常に大きく ,財務制限条項を遵守するこ
択を企業に任せるのは ,企業自身の 自由意思を
尊重するということに 趣旨があ るといわれる.
とくに, わが国では,確定決算主義の趣旨とし
とが企業にとって 緊急の課題であ れば, たとえ
て ,株主総会で確定されることを 通じてその自
税金を多く支払っても ,年度利益を 当面増加さ
せる評価方法を 選択することは 十分に考えられ
る・一致原則があ るために,配当財源や財務比
由意思がはじめて 確認できると 解説される. 申
告納税制度によって ,徴税コストのあ る部分が
当の企業に転嫁される 代償として,会計方法の
選択権 があ たえられているともいわれている
率に余裕がないかぎり ,
節税を目的とした
LIFO の採用は制限されてしまうのであ る.
こうした一致原則による LIFO 採用の制限,
は, じつは,非常に重要な問題を 含んでいる.
22', いずれにせよ ,そこでいわれている自由
財務制限条項が存在しそれに 違反した場合の
コストが大きいとき ,好業績の企業は節税が可
在庫品評価方法の 選択に制限を 課した一致原則
が ,課税の公平性について疑問を生じさせ ,株
能であ るのにたいして 業績の悪い企業は 節税手
主にコストを 負担させている.全き
刊青軸に多様
段を利用できないことが 問題であ る・そこでは ,
な利害が結びついている 状況では,一致原則は ,
実質的に,逆進的な課税がなされることになる.
自由な, もしくは, コストを生じさせない 選択、
もし税務会計と 負債契約に利用される 財務会
を許しているわけではないのであ
は,画一的方法の強制と上 ヒ駁 したものであ る.
しかしそうした 建前とは裏 腹 に,実質的には,
討 とで異なった 在庫品評価方法を 選択すること
ができれば,企業業績の 良否にかかわらず ,等
しくすべての 企業に節税機会があ たえられるで
たとえ実効税率が 課税所得とは 無関係
に 一定に定められていても ,財務制限条項が存
在する場合には ,一致原則が不公平な課税をも
たらすわけであ る 20,.
あ ろう・
一般に,課税の公平性として ,水平的公平と
る.
むしろ,一致原則の実質的な意味は ,節税機
会の制限を通じて 税収を確保することや , 申告
納税制度の最大の 課題であ る課税所得捕捉率を
向上させること ,および財務会計のために整備,
体系化されている 取引記録を保存させて 税務調
査コストを削減することなどにあ るといってよ
い. 実際に,米国で 1939 年にこの一致原則が 立
法化された際の 記録を詳細に 調べた研究では ,
垂直的公平とが議論される.双者は ,等しい状
立法当事者は 税収確保を目的としていたとされ
況 にあ るひとびとは 等しく取り扱われるべきで
る
あ るという公平原則であ
財務会計上で 報告利益を増大させてあ
Ⅱ大呪にあ
り,後者は, 異なった
るひとびとは 異なった取り 扱いをされ
るべきであ るという公平原則であ る コ .
ここ
での公平性の 問題は,前者の水平的公平性にか
, 3). 極端な言い方をすれば ,一致原則は,
る種のメ
リットを享受したければ ,税金コストを負担す
ることを要求しているのであ
る.
もちろん, ここでの議論から , ただちに,一
かわる.逆進的課税そのものが 問題というより
致原則を廃止すべきだということにはならない
も, むしろ,在庫品評価方法の選択にかんして
税法規定の評価は ,租税政策や産業政策などの
節税機会が不均等になることのほうが 重要な問
政治 りな要素も含めた
自
ぅ
えで,総体的になされ
26@ (240)
横浜経営研究
第 4 号 (1991)
第 Ⅲ巻
なければならないからであ る. しかしそうし
っては望ましいことになる.
たト一 タか な評価は , 個々の問題の 検討結果を
経営者の在庫管理行動が議論から除かれていた・
ケース 2 のように評価方法を 選択しても,在庫
量の操作によって 株主の利害が 害されるのであ
積み重ねて得られるものであ
面でのコストとべネフィットを
り, さまざまな側
考えなければな
らない.財務会計における在庫品評価方法の
選
択という限定された 局面ではあ っても,具体 り
な利害状況, とりわけ複数主体の 利害が絡み合
自
そこでは,
しかし
れば,それは株主にとって
望ましい選択肢では
な い .すでに第4 節で見た よう に, ケース 1 で
は経営者が在庫量を 操作する危険があ り,それ
っている状況では 一致原則が意覚に 重要な問題
を防止するためのエ
を生じさせているのであ る,前述のようなメリ
主の持分価値を 減少させたのであ った. したが
ット を一致原則がもつことを 認めるとしても ,
って, ケース
それが株主の 負担するコストと 比較してもなお
尊重されるものであ るのか,あるいは,そうし
た租税政策目的の 達成手段として 一致原則は最
適 であ るのか,税法規定の評価はそうした 点ま
かが検討されなければならないのであ
税所得の計算には 同じ在庫品評価方法を 用いて
でも含めてなされなければならない.
いるため,在庫量の増減にかかわらず ,税別後
2
イ
ジェンシー・コストが 株
がそうした状況を 改善するか否
る.
まず,第 3 節で取り上げた 会計諸数値につい
て確かめてみよう. ケース
1
もケース
2
も,課
キャッシュ・フローは 等しい. それは,在庫の
2
の操
生め
株主
と庫
税
Ⅵ
積み増しによって 減少し取り崩しによって 増
加するのであ る.他方,税別前利益と
税引 後利
この節では,財務会計および税務会計で採用
する在庫品評価方法があ
らかじめ定められてい
益 にかんしては ,ケース1 とケース
2
とではお
おきく異なる. それを示したのが 第
5
図であ
第
3
節でみたように , ケース
1
る
では, 税弓 l役利
る場合,その評価方法によって 経営者の在庫管
益は在庫の積み 増しによって 減少し取り崩し
理活動がどのような 影響をうけるか ,その結果, によって増加する. これにたいして , ケース 2
株主の持分価値はどのように 変化するかを 検討
では,積み増しは税引 後 利益を増加させ ,取り
する.一致原則は,税務会計上で LIFO を採
崩しはそれを 減少させる,財務会計上は FIFO
用したときに 財務会計においても LIFO
の採
用を義務づけるものであ る. この規定の影響を
確かめるためには ,
を 採用した状況
(以下,ケース 1
という
それに違反して 税務会計上は LIFO
財務会計では FIFO
LIFO
そのとおり両方とも
を採用した状況
)
と,
を採用し
(以下,
を使っているため ,税別前利益は在庫増減の影
響をうけない ,積み増しによる税額の減少と 取
崩しによる税額の 増加だけが,税別後利益に
反映されることになる.
り
このように在庫の 増減に応じて 税引 後 利益が
変化するならば , ケース
2
では,経営者はどの
ケース 2 という ) との二つ る上ヒ致 してみれば ょ
ように在庫管理を 行 う のであ ろうか.経営者の
い ・なお,ケース 2 にかんして,本稿では税 効
短期的な行動を 考えるにあ
果会計の適用は 考えないことにする.
税別後利益に
前節での考察から ,一致原則は在庫品評価方
法の選択にかんして 追加的なエ イ ジェンシー・
者にあ たえられると
コストを生じさせること ,および,節税機会を
企業間で不公平にする 可能性があ ることが判明
した・そのかぎりでは ,上記のケース 2 のよう
に在庫品評価方法を 使い分けることが 株主にと
たって,ここでも,
単純上 ヒ倒 した現金ボーナスが
想定しよう.
経営
受 敗報酬額を
増やしたいときには ,経営者は,在庫の
積み増
しを行うであ
ろう.株主がそれに何も対処しな
ければ,積み増しによって 投下資金の機会費用
が増大し しかも株主の 利害に反する 経営者の
在庫管理にたいして 余分なボーナスを 支払うこ
在庫品の評価と 在庫管理
(大日方
隆)
(241 27
ナ
とになり,株主は二重に損失を 被ることになる
存在しているため ,会計情報にはモニタ 一機能
かちん, 税務会計における LlFU
の役割期待がおおきいのであ
の採用は,
る.
在庫品購入価格の 上昇局面では 節税メリットを
もたらす・ ところが, その LIFO の採用が,
在庫操作に よ る税引 後 利益の操作を 可能にし
場合, ほんらい,株主にとって必要な情報は ,
かえって企業価値を 減少させかれないのであ
れを生みだした 経営者の努力水準ないし 行動と
る
?Al
株主と経営者とのあ いだに利害の 対立があ る
結果としての 業績指標そのものではなくて
,
そ
環境状態とにかんする 情報であ る. ケース 1
とはいえ, たんにケース
2
でも利益操作の 危
と
ケース・ 2 のうちいずれが 株主にとって 望ましい
険性があ るというだけでは , その在庫品評価 方
のかという問題を ,
法の使い分けに 問題があ るとはいえない ,
が経営者の在庫管理行動を 適切に伝達できるの
当然,
どちらの会計情報システム
主が最終的に 負担するコストこそが 問題なので
かという問題に 置き換えてみよう. 公表される
財務諸表から 在庫の管理状況を 知ることができ
れば,株主が負担しなければならないモニタリ
あ
ング・
株主は,在庫操作の 危険が減少する
よう
に成果
分配ルールを 工夫するであ ろう. そこでは,株
る・
そ
う
すると, いずれのケースが 株主にと
コストは減少する. いずれのケースの 会
って望ましいかを 判断するためには ,在庫 や
を抑制するように 経営者をコントロールしても
なお株主が負、 担しなければならないコストを 検
討してみなければならない.株主は ,経営者の
計,情報がそのモニタリンバ・コストを 減少させ
行動をモニターするためのモニタリンバ・コス
おける在庫品評価額の 増減から在庫数量の 増減
ヰ栗ィ
ト, 適切な在庫管理をするように
経営者にあ た
える追加 りなインセンティヴのコスト ,
白
さらに,
そのインセンティヴでは 抑制できずに 在庫操作
が行われた場合の 残余損失を負担しなければな
るのか, これが問題になるわけであ
第 4 節で指摘したよ
る・
に, 財務会計上で
う
LIFO) が採用されているならば ,貸借対照表に
をあ る程度は知ることができる.米国では,
らに. LIFO
さ
を採用しているときに 期首の在庫
う. このように議論を 限定するのは ,以下のふ
水準を取り崩した 場合,それが損益にあ たえる
影響額を開示することが 義務づけられている
". 他方, FIFO が採用されている 場合には,
貸借対照表における 在庫品評価額の 増減から在
庫数量の増減を 知ることはできない. もちろん,
税金支払額を 年度上 ヒ駁 してみても, その増減 か
たつの理由による. ひとつは, インセンティヴ
ら 在庫量が増減したか
のコストと残余損失とは , もっぱら,株主と経
営者それぞれの 効用関数と, 企業会計の覚側で
であ る.現在のところ,
在庫品の数量増減そのものについての
決められる報酬契約の 内容とのふたつに 依存し
務づけられてはいない. そうした開示制度の 現
ており, それらの厳密な 検討は本稿の 範囲を超
状を前提とするかぎり ,
えているからであ る. もうひとつは ,財務会計
であ れ,税務会計であ れ,利益情報の事後情報
庫の管理状況を 把握するコストがよけ い にかか
としての役割の 原点は,年度利益が経営者ない
し企業の業績指標とされることにあ るからであ
かりに,経営者の在庫管理行動をモニターす
る手段として ,株主が公表財務諸表以外の資料
る.
や情報をもちいないならば
らない.
それらのコストのなかで ,本稿では,株主が
経営者の行動をモニターするコストに
着目しよ
本稿では,大規模公開会社にとっての 問題
否かを判断するのは 困難
わが国でも米国でも ,
開示は義
ケース 2 のほうが,在
るといってよ い ,
,
ケース 2 では,株
として,一致原則, もしくはわが 国でいう確定
決算主義を検討していることを 再確認、 しておき
主が最終的に 負担するコストはケース
たい.株主と経営者とのあ いだには情報格差が
なければ,在庫操作にぺ ナルティーを 課すこと
1 よりも
大きい. なぜなら,在庫の管理状況を把握でき
28 (242)
横浜経営研究
第Ⅲ巻
第 4 号 (1991)
は 不可能であ り,成果分配ルールの工夫によっ
の 規定は株主の 持分価値の減少を 未然に防出で
て経営者の在庫操作を 抑制するのは 実行困難だ
からであ る.経営者の在庫操作という 局面だけ
い ると評価することもできるが ,一致原則が
株
主の利害にあ たえる影響は ,前節で検討したよ
を考えると,財務会計と税務会計とで 在庫品評
うなマイナスの 面もあ れせて判断されなければ
価方法を使い 分けるケース
ならない.税法の立法段階の設定趣旨が 検討さ
2
は,株主にとって
必ずしも好ましい 選択ではないと い え よう .
そ
うした評価方法の 選択を認めない 一致原則は,
上述したように ,株主が経営者の在庫管理行動
を モニターするコストの 削減に役立って
レ
) ると
評価することができる 26).
このことは,
じつに興味深い 論点を示唆して
いる. もともと,税収の確保ないし課税所得脱
漏の防止を希求する 課税当局と,節税を望む株
主とでは利害が 対立している. 前節での議論の
焦点は,その対立関係に向けられていた. とこ
れなければならないのはもちろんのこと ,会計
実践において ,実際に特定のルールがどのよう
な機能をはたしているかを 記述 りにあ きらかに
することも重要な 作業であ る. そうした検討の
考察対象は,当然,法が
想定していない 場面に
もお ょ ぶことになる.税法規定のそうした多角
的な分析にとって ,本稿の考察は第一歩となる
白
わけであ る.
W
ろが, ここでの分析では ,経営者行動のモニタ
リングという 局面で,株主と課税当局との 利害
は一致するのであ る.一致原則が広く社会的に
受容され,株主にも合意されていると 見るので
あ れば,その合意点 はこのモニタ 一機能に認め
られよ
う
. だからこそ,前節で述べた よう に,
一致原則の実質的な 意味は課税所得脱漏の 防止
や税務調査コストの 節減にあ ると捉え直さなけ
ればならないのであ る・
おわりに
本稿では, まず,在庫品評価方法の違いは税
金までを含めたキャッシュ・フロ
一の配分のあ
りかたの違いにあ ると捉えて, FIFO における
「最適在庫 量 」と LIFO におけるそれとは 異な
っていることをあ きらかにした.評価方法によ
る キャッシュ・フロ 一の配分のあ りかたの相違
は ,株主と経営者とのあい だに利害の対立があ
もちろん,そうしたモニタ一機能は一致原則
る場合には,経営者の 在庫管理活動をコント
の法 りな目的ではなく ,法律上はあ くまでも,
ロールする方法にも 影響をあ たえる. とくに
この原則は租税立法政策の 産物でしかない.
LIFO
自
と
を採用しているときには ,
そのコント
くに, わが国では,課税所得計算の商法決算 へ
ロールが重要な 問題となり,経営者の在庫操作
の 依存関係の一環として 一致原則が定められて
によって株主の 持分価値が減少する 可能性があ
いる.法律学では, この一致原則は 商法の決算
ることを指摘した・ これらの分析は ,いずれも,
一致原則で定められた 評価方法の選択を 前提と
報告と税務申告とで 計算の二度手間を 省くため
に設けられていると 解説されることもあ るⅢ.
しかし二重の 計算コストを 負担するか否かは ,
前節でも触れたように ,
それから得られるべネ
フィットもふまえた 企業の判断に 任せられるべ
きあ る・法律上,事前に企業の意思を 画一的に
想定することはおかしなことであ
り,必ずしも ,
立法段階から 経済的なコストが 十分に考慮され
ていたとは思われない.
ともあ れ,モニタ一機能の面からみると ,
こ
したものであ った.
つぎに,一致原則そのものを考察対象として
取り上げ, この規定が具体的な 利害状況のなか
でどのような 役割をはたしているのか ,
とくに
株主の利害にあ たえる影響に 着目して検討した
財務会計と税務会計とで 異なった評価方法を 選
択することができなくなっているために ,在庫
品評価方法の 選択をめぐって 株主と経営者との
あ い だに新たな対立をひき 起こすとともに , 節
在庫品の評価と 在庫管理
(大日方
(243) 29
隆)
報酬制度そのものに 議論の本質があ るわけでは
ない.むろん,分析結果は分析でもち いた 仮定
税 機会を企業間で 不平等にすることも 指摘した
その一方で,一致原則は財務会計と税務会計と
で在庫品評価方法を 使い分けた場合に 生じるエ
イジェンシー・コストを 削減することに 役立っ
り,本稿とは異なった想定の
もとでは,ここであきらかされたのとは 異なる
に依存するのであ
結論が得られるかもしれない・
しかしそうした 限界があ っても,具体的な
ているのであ った.
以上のように ,本稿の分析は,できるだけ具
体的な利害関係のなかで 在庫品評価方法の 意味
利害状況のなかで 利益情報の意味を 問い直すこ
を捉え直そうとするものであ った・その検討に
あ たって,利益情報の使われかたは 所与とせざ
とは重要な作業であ る,そうした分析は,財務
会計における 利益計算ルールのみならず ,税法
るをえなかった.財務制限条項のようにその契
上の課税所得の 計算ルールを 検討する際にも 役
約内容が定型化されていたり 公開されているも
に立つはずであ
のはともかく ,それぞれの企業が内部で 自由に
義が存続するかぎり ,財務会計に結びつけられ
た利害が課税所得の 計算にもフィードバックし
決めることができる 経営者報酬制度については
,
分析上,仮定が必要となる・その 仮定は,あ
までも,株主と経営者とのあ いだに利害対立が
あ る場合の経営者の 行動を記述するなかで ,経
営者の主体的なインセンティヴを 明示 りに扱う
ために利用されたにすぎない・ 本稿で想定した
く
自
る.一致原則ないし確定決算主
ていくと考えられるからであ
る・現行実務で 採
用 されている在庫品評価方法の 実態的な意味も
そうした多様な 利害にあ たえる影響を 分析する
ことによって ,はじめてあ きらかになるはずで
あ る.
30 (244)
横浜経営研究
第 4 号 (1991)
第 Ⅲ巻
基
1
図C
L
S
朋党
S
額額
佃人
期当
/c
IF
I
: NO 二 C 一 I
一 売上原価以外の 費用支出 )
税別前ネット・キャッシュ・フロー
(ただし
C
二 在庫品の売却収入
税別前利益 : IIi 二 C 一 I=NC
税金支払 額 :TPi 二 , ni 二 , NC
税別後ネット・キャッシュ・フロー
税別後利益 : ILL*=(l 一 T)NC
(ただし
NQL*
, 二 実効税率
二
(1 一
,
)NC
「
)NC 一
)
FIFO)
在庫品 a/c
期首評価額
売上原価
S
当期購入額
0 二 I 一h
I
期末評価額
税別前ネット・キャッシュ・フロー
税 別 前利益 : nF 二 C 一 I+h 二 NC+h
S+h
NC=C
一I
=ni+h
税金支払 額 :TPF=
Ⅰ
(NC+h)
=Tpi+
rh
税別後ネット・キャッシュ・フロー
:NCF,
二
(1 一
二 NCL*
税 別後 利益 : nF*
二
二
1・丁
十h
在庫Ⅰの変動と FIFO による在庫品評価
在庫の積み増し
Ⅱ
在庫の取り崩し
在庫品 a/c
期首評価額
S
h
(l 一 r) (NC 十 h)
nL* 十 (I 一 r)h
二 NCF*
図2
「
一て h
在庫品 a/c
売上原価
期首評価額
0
当期購入額
当期購入額
Ⅰ
I 一h
I+a
S
売上原価
0
二I 一h
T 一m
(aⅠ追加購入 分 )
期末評価額
(m Ⅰ購入不足 分 )
S+h+a
期末評価額
S+h
一m
上記の各ケースの 諸数値は以下のようになる・なお , 0) 内の十は積み 増しのケースを ,一は
取り崩しのケースを 指し,無印は基準状況の該当数値を 指している (第 3, 4 図も同じ )
税別前ネット・キャッシュ・フロー :NC(+)=NC
一 a, NC(-)=NC+m
税別前利益 : nF(+)
二 nr(-)
税金支払 額 :,「,pF(i¥=,TpF(-¥
ヰ克司
二
nF
二 TPF
l役 ネット・キャッシュ・フロー
税目 @ 利益 : nF*(+)
Ⅰ
:NCF*(+)
IIF*(-)二 nF*
二 NCF*
一 a,NCF*(-)
二 NCF*
十m
在庫品の評価と 在庫管理 (大日方
図3
隆)
(245)@31
在庫の積み増しと LIFO による在庫品評価
在庫品 a/c
S
期首評価額
期末評価額
S+b
当期購入額
売上原価
O 二a 十(I 一 b)
I+a
/
二 1 十 (み一
b)
(ただし b は積み増された 在庫品の評価額であ り,購入価格の 上昇を仮定しているので a ノ b
であ る.)
ぬ5l 所ネット・ キ
税別前利益 n,(+)=
フロー : NC (+)
Nc 一 (a 一 b)
=IIi 一 (a 一 b)
TPL(+)=
T nL( り
二 TPL 一
(a 一 b)
税金支払 額
シ
二 NC
一a
「
不党与
げ麦ネッ
ト
・キャッシュ・フロー
NQL*(+)
(l 一 T) 。 NC 一 a) 一て b
NCi* 一 {(l 一 r a+
bl
二 (1 一
) tNC 一 (a 一 b)t
二 n,* 一 (1 一
)(a 一 b)
二
=
税 ライ菱木
l益
」
n,*(+)
Ⅰ
「
「
「
=NCi*(+)+b
図4
在庫の取り崩しと FIFO による在庫品評価
在庫品 a/c
期首評価額
期末評価額
S 一n
S
売上原価
当期購入額
0
I 一m
二 I一
m
十n
二 Ⅰ 一(m 一n Ⅰ
(ただし n 取り崩された 在庫品の評価額であ り,購入価格の上昇を仮定しているので m ノ n
であ る.)
上図からわかるように ,このケースにおける 諸数値は , 先の積み増しのケースの a を @m
に, b を ト n) に換えたものに 等しくなる・
税別前ネット・キャッシュ・フロー : NC(-)=NC+m
税別前利益 : n Ⅱ -) 二 NC+(m
一 n)
=IIi+(m
一 n)
税金支払 額 TPL(-) 二 T n,(-)
二 TPi+
T (m 一 n
税別後ネット・キヤ ツーンュ ・フロー
NC.*(-) 二 (1 一 )(NC+m)+
Tn
二 NCi, 十 l(1 一丁 )m+rnl
税別後利益 : n,*(-) 二 (1 一 ) {NC+(m
一 n)@
=IIl*+
(1 一 )(m 一 n)
= NC,* (-) 一 n
Ⅰ
り
「
「
「
32@ (246)
図5
横浜経営研究
第Ⅲ巻
(1991)
第4 号
在庁品評価方法の 組み合わせの 相違による 形 Ⅰ
ケース 1 : 財務 -LIFO,
2: 財務 -FIFO, 税務 -LIFO
ケース
112 二 C
I
(C
一㏄ N
工む
在庫の積み増し
nn
基準状況
税 別 前利益
税別後利益
税務 -LIFO
n
一 I+h
、 * 二 (1 一
「
)(C 一 I)+h
二 NC++h
;
税引前利益
税 別後 利益
n,=C
n 2(+)
一 一 (a 一 b)
Ⅰ
r) jC 一 I 一 (a 一 b)t
二 n,* 一 (1 一
)(a一 b)
nl*(+)
二 C 一 I+ h
112*( )= (1一て )(C --I)+ h +
Ⅰ (l 一
十
「
(a--b)
=IIi*+r(a-b)
Ⅰ
=Nc*(+)+b
=NC*(+)+h+a
在庫の取り崩し
税引前利益
税 別後 利益
nl(-)
ニC
n,*(-)
n2(-)=C 一 十 h
nz*(+)=(l 一 r)(C 一 I)十 h 一 r(m 一 n)
=n2* 一 r(m 一 n)
二 NC*(-) 十 h 一 m
一 I 一 (m 一 n)
Ⅰ
二 (l 一
r) @C 一 I 十 (m 一 n)t
二 nl* 十 (1 一丁 )(m 一 n)
二 NC*( ゴー n
い
7) もちろん,法人所得に 累進的に課税される 場合に
ヌ主
l) Reg. S1.472-2(e). これは,税務会計と財務会計
とで異なった 会計処理を認めている 米国税法にお
いては例外的な 規定であ り,一般に,Confo 「㎡tyRule
と呼ばれている・
2) そこに,在庫品の需要にかんする 確率 や ,複数期
間を視野にいれたうえで 割引率などを 加味しても,
「適正在庫水準」を 決定する基本的なメカニズム
にはたいした 変更はない. 「適正在庫水準」の 決
定については ,たとえば,Horngren, C.T.,Cost
Accounting (5thed.).Prenlice-Hall,
1982 および
Ho,n, J.C 。 ハれ㎝ cool, M 伽肱彩挽 ent a 何
Poaicy (7thed り , Prentice.Hall,1986 などをみよ・
Van
3) このストック
,アウト・コストには ,
品切れのた
めに客離れが 起きたり,企業の評判や名声を 落と
すという無形資産の 消失コストなども 含まれる.
4) そうした実証研究については , さしあ たり,
Watts R. L. and J. L. Z@merman,
Acco
ひnt 碗タ
T ル oW,Prentice,Hall,
を参照せよ.
5) たとえば, Abdel-khalik,R.A., "The
LIFO-Switchine and Firm Ownership
tive,s Pay," ノ 0 ひ揺 af o/ Acco ひ 竹脇ゅ
Vol. 23, No. 2, 1985.:Hunt III,H.G.,
Determanants of Corporate Inventory
ing Decisions,"ノ ouW0
Vol.23,No.2,
Positive
1986 の Ch. l2
は, FlFo
を採用したときの 税金支払 額と LIFO
を採用したときのそれとの 差は よ り大きくなる.
議論を単純にするため ,以下では,税率は
一定と
仮定する.
8) この ょう なケースを想定するのは ,期首の在庫品
の購入価格とは 異なった価格で 在庫品が購入され
ると仮定したほうが 議論が明確になるからであ る
経営者の意図的な 在庫操作を考察する 準備として
は,本文のような 想定が以後の 検討に役立つはず
であ る,
9) 実効税率Ⅰは 1 より 刀 へさいと考えてよい
10)@ Biddle , G C
and@ K
・
・
R ㏄ eorc
ん
,
"Potential
Account-
f ヴ Accountinq 化 esearr
ん
,
1985 などをみよ・
6) 企業は一定規模の 資本設備を賃借でまかない , そ
の賃借料を現金で 支払っているものと 考えれば
ょ
・
なるかがシミュレートされている・
11) たとえば, Biddle, G. C., "Accounting Methods
and Management
Effects of
on Execu-
Martin , "Inflation, Taxes ,
and Optjmal Inventory Poljcjes," よ0W 刊
of o/
Acco ひんⅠ㎎ Research, VoI. 23, No. 1, 1985 では,
税率や物価上昇率などの 変化にたいして ,「最適
在庫 量 」が在庫品評価方法によってどのように 異
Decisions: The Case of InvenCosting and Inventory Policy," JOo脚光 oa of
Acco ひれち脇
g Research, Vol. 18, Supplement,
1980.; Foss, M. F. Fromm, G., and I. Rottenberg,
M ㏄ 勿ク色 比 6 ん が B ひ 切れess Ⅰ れひ ento
れ れ es, Economjc
Research Report 3, U.S. Department
of Commerce,
1980 などをみよ.
12) 周知のように , こうした現金ボーナス 以タトにも,
ストック・オプション や ,年度利益の一定割合を
ボーナス・プールに 組み入れ, それを運用した 後
tory
ち
在庫品の評価と 在庫管理
(大日方
(247)@33
隆)
油 精製元売り企業の 会計行動」『経済学研究』,東
に経営者に支払う 据 置型報酬制度などがあ る. そ
れらの報酬制度の 採用にあ たっては,経営者をで
京大学経済学研究会,第 32 号, 1989 年をみ
よ
.
きるだけ長く 企業にとどめながら ,経営者を長期
21) 課税の公平性については , さしあ たり,以下の文
的な企業価値の 最大化に向かわせることが 考えら
献を参照のこと・
有弘光『財政理論』 有 斐閣,
1984 年,第4 争 金子 安 『租税法 (第二版 ) 』腔文
堂 , 1988 年,第一編第四章などをみ よ .
22) 確定決算主義にかんするそうした 解説については ,
れている
13) これらの点については ,大日方「報告利益と 業績
指標」田倉 計 第 135 巻,第3 号を参照されたい.
』
]4) 残余損失の意義については , Jensen, M.C. and
W.H. Meckhng, "Theory ofthe F 血Ⅱ Manageria
Beha Ⅱ or, Agency Cost and Structure," ノ 0t4% ㎡
0ダハ自㎝ c ぬ zEco れo 挽 ic$,Vol.3, N0.4, 1976 をみ
よ・
15) 詳しくは,大日方,前掲論文をみよ.
16) Abdel.khalik,A.Rr 前掲論文および Healy, P.M 。
Kang, S. and K. G. Palepu, "The Effect of
Accounting P,ocedu,e Changes on CEO,s Cash
Sala,y and Bonus Compensatio Ⅲ " JoM 朋㎡ 0ダ
Accoz4% 脇タ 0%d fco れ o 笏 ics,Ap 血 , 19 打など・
17) 詳しくは, Watts,R.L. andJ.L. Zimmerman. 前掲
書 (Ch. g) をみよ. なお, このほかにも ,利益
情報が公的な 料金規制や独占反トラスト 規制に利
用され,在庫品評価方法の 選択が企業の 政治的コ
ストに影響をあ たえることも 指摘されているが ,
本稿では取り 上げない.
18) わが国の企業が 発行する社債にかんする 制限につ
いては。 たとえば,太田昭和監査法人偏『覚債発
行 マニュアル ] ぎょうせい, 1988 年,新日本証券
調査センタ一編『証券ハンドブ ソク /第 3 版Ⅱ
東洋経済新報社, 1989 年などをみよ・
19) Hunl f 。 H.Gr 前掲論文をみよ・
20) ここでの一致原則の 問題は,負債契約ばかりでな
く, わが国での株式上場基準の 充足,安定配当や
たとえば,以下の 文献をみよ,武田隆二『法人税
法情調』森山書店, 1990 年, 第 3 章 井 村利雄
『法人税法要・ 高ぬ』税務研究会出版局, 1990 年, 第
1 章浩牟田勲『新版法人税法詳説』中央経済社,
1990 年, 第 3.
23) この点にかんしては , Morton, P., "Legislat而e
℡ story of lhe 川 lowance of LrFo for TaX Pur,
poses,
" Acco ぴ n.t れ クガぜ5to ㎡は魅ノ0 Ⅲ別 ㎡, VoI.
16, No. l, June l989 が詳しい.
24j もちろん,一致原則が 在庫操作,すなわち 投資政
策にたいして 非中立的であ るといっているのでは
ない. ここで在庫操作へのインセンティヴを 生じ
させているのは ,財務会計上の利益にリンクした
せ
経営者報酬制度にほかならない.
5)@ SECSto が AccountingBulletin
ム 0 , Topic llF.
26) 税務会計上は FlFo を採用し財務会計では LTFO
フ
を採用するケースについては ,在庫品の購入価格
が 上昇している 局面では,通常,生じないであろ
う・価格の下落局面でこのケースが 生じても,財
務会計で LIFO をもちかるかぎり ,一致原則に
したがった場合と 同じ在庫変動情報が 得られるこ
とになり, とくに本文に 追加すべき問題は 生じな
Ⅴ
|
27) この点については ,金子,双掲
書 ,および中里美
「企業課税における
課税所得算定の 法的構造
横並び配当の 維持などの場面でも 生じる. たとえ
(1)
ば,在庫品評価方法の 選択がそうした 企業の会計
巻第 1 号,第100 巻第 3 号,第100 巻第 5 号,第100 巻
第 7 号,第100 巻第 9 号をみ よ .
政策上重要な 役割をもった 例としで,大日方「石
」
一
「同ば・ 完 ) 」『法学協会雑誌』第 100
(おびなたたかし
横浜国立大学経官学部講 胴
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