羊イベント報告 - 帯広畜産大学

野外イベント“ヒツジを楽しもう”の開催
福井 豊（帯広畜産大学・教授）
本年８月２６日、帯広駅前広場で“ヒツジを楽しもう”という野外イベ
ントを北の羊会（飼い）の主催で開催した。北の羊会（飼い）は本年６月２８
日に本イベント開催のために急遽設立したものである（図１）。本事業の組
織は、北の羊会（飼い）代表・福井 豊（帯広畜産大学）、河野 博英（家
畜改良センター）、戸苅 哲郎（畜産試験場）、士別市，標茶町のほか、北
海道内の羊生産者１０名からなっており、これまでも畜産技術協会、北海
道羊生産者協議会などを通じて連携、種々の共同事業を進めてきた。ま
た、帯広市都市振興課の唯野氏にも事務局に入って頂き、帯広市内都
心部の活性化のために各種の支援を頂いた。
本イベント開催の目的は、近年、ジンギスカン（羊肉）ブームにも関
わらず、全国の羊飼養頭数は約１万頭（北海道：約５千頭）にまで激減して
いる。本事業は北海道中で一番羊飼養頭数が多い十勝の帯広駅前北側
（多目的広場）において、羊肉（ラム、マトン：ジンギスカン）料理、羊毛とそ
の製品や生きた種々の品種の羊（子羊）を展示して、有用家畜としての羊を
知ってもらうと共に、北海道の羊産の振興と地域活性化を図ることである。
野外イベントの開催による期待される効果として、羊が北国に住む北海道
民にとって身近な家畜であることが再確認される。北海道内の羊増産によ
り、国産のラム肉（ジンギスカン料理も含む）の供給だけでなく、牧草地に
放牧された羊群を観光資源（羊との触れ合い、体験型ファーム・ステイ、
農村景観など）としても利用でき、北海道・十勝・帯広の活性化にも貢献
できる。また、本事業により、消費者の国産（道産）羊肉や羊そのものへの
理解ばかりでなく羊生産者の連携、生産意欲も向上する。
イベントの一般参加者（推定参加人数：５００人）には、５品種の羊
（ボーダーレスター、マンクス・ロフタン、ハ−ドウイック、など）の展示、子羊
へのミルクやり（子供対象）、牧羊犬による羊の誘導デモンストレーションと
毛刈り（３頭）、羊肉（北海道産スライス、輸入物スライス、丸焼き）の試食と
アンケート（図３）の実施、羊毛および加工品の展示と即売、など盛り沢山
の内容であった。特に、ここでは羊肉試食のアンケート（３５９人）結果をま
とめ、今後の本事業の反省としたい。
本事業のメインイベントである羊肉の試食には、当日の朝８時から準
備に入り、１１時から３時まで３種類（北海道産羊肉スライス、輸入羊肉スラ
イス、そして４頭分の半丸焼き）を用意した。道産羊肉は５カ所の羊生産者
（全員、帯広畜産大学出身）が計９頭の羊をこの日のために交配および分
娩を計画して生産した１年以内または明け２才のラムおよびホゲットである。
輸入羊肉は一般に市場で売られている“ジンギスカン”である。試食後の
集計したアンケートは３５９名であり、男性１２８名，女性：１３５、無記：９６名
であった。年齢別では、１０代：５４名、２０代：６９名、３０代：５５名、４０代：５
６名、５０代：３９名、６０代：６３名、無記：２３名であった。アンケートの質問
は３つである（図３）。質問１（輸入羊肉の割合は？）に対して正解（９９％）
者は３５９名中４２名（１１．７％）に過ぎず、１２２（３４。０％）名は７５％、１０１
（２８．１％）名は９０％と答えた。最近のジンギスカン・ブームで国内産羊肉
もかなり出まわっているのではと思っている人が案外多いのではと思われ
た。質問２（道産羊肉と輸入羊肉はどちらが美味しかった？）では、３５９名
中２６６名（７４．１％）の方が道産羊肉の方が美味しいと答えた。道産羊肉
の方が美味しいと答えた人の共通意見は、１）柔らかい。２）臭みがない、
３）うまみ（香り、香ばしさ）がある、と言うものであった。この他、目を引いた
のは“安心な感じ”と答えた人も３名いたことである。この点は貴重な意見
であり、道産羊肉は他の食物（米、野菜、魚、牛肉など）と共に、北海道産
羊肉として認められていく可能性を示唆している。一方、４１名（１１．４％）
の人が輸入羊肉の方が美味しいと答えたが、彼らの意見では、食べ慣れ
ている羊肉、焼き方に依っては柔らかい、という。しかし、全般には道産羊
肉と比較して、１）臭いにおいがある、２）油こい、などが主流で“もう輸入肉
は食べられない”という意見もあった。
質問３（丸焼きを含めて、今日食べた中で一番美味しかったの
は？）では、３５９名中１３２名（３６．８％）の人は丸焼きが一番、二番目が
道産羊肉スライス（１０２名：２８．４％）と道産羊肉と答えた人が計２３４名（６
５．２％）となった。一方、輸入羊肉が一番美味しいと答えた人は１２名（３．
３％）であった。丸焼きが美味しかったという人の意見では、１）ジュウシー
で柔らかい、２）風味がよい、などがほとんどで、“めっちゃうまい、やみ付
きになりそう”や“今までこんな肉を食べた事がない”など丸焼きに感動す
る人も多かった。
この他、貴重なご意見を２つ付け加えると、１）この企画はビールな
ども揃えた方が集客が増すと思う、２）３才の子供は道産羊肉が美味しいと
食べましたが、輸入肉は口から出しました。ごもっともでした！！
以上のように、今回初めて北の羊飼い（生産者）が町のど真ん中
に出て来て、“羊”という動物をアピールした。参加して頂いた人数は、当
初期待していた半分（１千人分の羊肉を準備した）であったが、参加者（推
定：５００人）の内３５９名の人から羊肉試食後のアンケートを収集できた。
今後は（もし、来年も開催するのであれば？）開催場所、時期（曜日）、規
模、焼肉体制、予算、広報の方法など「北の羊会（飼い）」で検討して行き
たいと考えている。
写真１。羊イベント開催広場（帯広駅前）。後方のテントは焼肉コーナー
写真２。羊の毛刈りを見る参加者
写真３。子羊にミルクを飲ませる子供たち
図１。事業の実施組織（北の羊会：飼い）
氏
名
福井 豊
所 属 部 局 ・ 職 名
役割分担等
帯広畜産大学・教授
本事業の計画と総括
河野 博英
家畜改良センター十勝牧場・ 羊生産者への子羊生産と運搬日程の調整
戸苅 哲郎
北海道立畜産試験場・主査
消費者へのアンケート実施と集計
武藤 浩史
白糠町茶路めん羊牧場
羊出荷（１頭）と羊肉料理
安西 浩
池田町ボーヤ・ファーム
羊出荷（２頭）と牧羊犬の調教
山村 匡男
鶴居村シープ・ランチ
牧羊犬の調教
増田 愛二郎
帯広市増田牧場
羊出荷（２頭）と羊肉料理
田中 忠二
池田町スピナーズ・タナカ
羊毛と加工品の展示・直販、紡ぎ体験
石田 直久
足寄町石田牧場
羊出荷（２頭）と羊肉料理
清水 勲
士別市世界のめん羊館・館長 珍品種羊の展示
本田 万次郎
標茶町多和育成牧場・副場長 羊毛の毛刈りデモンストレーション
下田 都由
足寄町下田牧場
羊毛の毛刈りデモンストレーション
酒井 慎吾
白糠町羊まるごと研究所
羊出荷（１頭）と羊肉料理
武田 智子
浦河町浦河ファーム・場長
羊肉料理
吉村 邦夫
浦河町浦河ファーム・代表
場内整備
中島 康晴
由仁町羊ファーム・代表
羊出荷（１頭）と場内整備
唯野 勉
帯広市都市振興課
備品レンタル、各種申請等
図２．プログラム
日時：平成１８年８月２６日（土）午前１０時〜午後４時
場所：帯広駅北多目的広場
行事進行
午前６時： テント張り、ヒツジ囲柵・テーブル等の設置（８／２５日午後より）
午前８時： 焼肉台設置、焼肉準備（９頭分）：半丸・スライス焼肉準備
午前９時：展示用羊（珍品種：５頭、子羊：５頭）、羊毛製品、ムートンの展示準備、毛刈
り（６頭）準備
午前１０時：開会式
羊の毛刈り（３頭）と羊毛の説明、ドッグ・ショウ（？）
紡ぎ体験コース、羊毛製品やムートンの直販
子羊へミルク（子供対象）
午前１１時〜午後２時：焼肉（半丸焼、道内産と輸入羊肉）の配布とアンケート調査
午後２時〜午後３時：羊の毛刈り（３頭）と羊毛の説明
紡ぎ体験コース、羊毛製品やムートンの直販
子羊へミルク（子供対象）
午後４時：閉会式、清掃，整理、解散
図３。ヒツジ食べ比べ アンケート
北海道のヒツジは現在はほとんどが羊肉生産のための肉用種。
流通量が少ないので、高級なラム肉として一部のレストランの特別メニューになります。
そんな貴重な北海道のヒツジ、焼き肉と丸焼きで体験してみて下さい。
いつもの羊肉との違い、あなたにはわかりますか？
【１】食べる前のウオーミングアップ
北海道のイメージにマッチした羊の放牧風景。
ですが、北海道の郷土料理といわれるジンギスカンも実は大半が輸入羊肉。
輸入羊肉の割合はどれくらいと思いますか？
①
５０％
②
７５％
③
９０％
④
９５％
⑤
９９％
【２】焼き肉（道産羊肉と輸入羊肉）の食べ比べ
道産羊肉 と 輸入羊肉 どちらが美味しかったですか？
違いを感じた方は何がいちばん違いましたか？
①道産羊肉の方が美味しかった
違いはない
②輸入羊肉の方が美味しかった
③どちらも同じ、
いちばん違うと感じたところ
（
）
【３】丸焼きを試食しましたか？道産ラムと呼ばれる、最高級の子羊肉です。
今日食べた羊肉でいちばん美味しかったのはどれですか？
その理由もお聞かせ下さい。
①道産羊肉
②輸入羊肉
③丸焼き
いちばん美味しいと思った理由
（
）
あなたの年代と、性別に印をつけてください。
① ～１０代
０代～
②
２０代
①
②
男
女
③
３０代
④
４０代
⑤
５０代
アンケートにご協力ありがとうございました。
これからも機会のあるごとに道産羊肉をご愛用、応援ください。
記入が終わったらお近くのアンケート回収箱に入れて下さい
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