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モバイルWiMAX端末向け 小型RFモジュール
モバイルWiMAX端末向け 小型RFモジュール Novel Compact RF Module for Mobile WiMAX Terminal Equipment あらまし 次世代無線ブロードバンドとして注目を集めているモバイルWiMAX端末向けのRF(高周 波処理)モジュールには,低価格,低消費電力,そして小型であることが求められる。これ らの条件を満たすため,著者らは小型RFモジュールと90 nm CMOS技術を用いたRF CMOS LSI を 開 発 し た 。 こ の RF モ ジ ュ ー ル は , 主 要 3 周 波 数 帯 , お よ び 下 り リ ン ク MIMO (Multiple-Input Multiple-Output)技術をサポートし,RF LSI,パワーアンプ,電圧制御温 度補償型水晶発振器(VCTCXO),バンドパスフィルタ(BPF)を備えている。大きさは幅 15 mm×奥行11 mm×高さ1.7 mmである。また特長は,設計者がRFに関する知識がなくて も,本モジュールを実装するだけで容易にRF性能が得られることである。 本稿では,RF LSIとRFモジュールに採用されるRFアーキテクチャと高周波回路技術につ いて紹介する。 Abstract This paper describes a radio frequency (RF) module for Mobile WiMAX, where low cost, low power consumption, and small size are needed. To satisfy these requirements, we developed a new micro-size RF module and a new RF CMOS LSI using 90-nm CMOS technology. The RF module supports three main frequency bands and downlink multipleinput multiple-output (MIMO) technology and includes RF LSIs, a power amplifier, a voltage-controlled temperature compensated crystal oscillator (VCTCXO), and band-pass filters (BPFs). Its size is 15 mm × 11 mm × 1.7 mm. This paper presents the RF architecture and high-frequency circuit technology used for the RF LSI and RF module. The advantage of the RF module is that design engineers can easily get high-quality RF performance without special RF knowledge. 小林一彦(こばやし かずひこ) 富士通マイクロエレクトロニクス (株)モバイル事業部 所属 現在,モバイルWiMAX端末向け CMOS RF LSIの研究開発に従事。 30 齋藤伸二(さいとう しんじ) 富士通マイクロエレクトロニクス (株)モバイル事業部 所属 現在,モバイルWiMAX端末向け CMOS RF LSIの研究開発に従事。 韮塚公利(にらつか きみとし) 富士通マイクロエレクトロニクス (株)モバイル事業部 所属 現在,モバイルWiMAX端末向け CMOS RF LSIの研究開発に従事。 FUJITSU. 60, 1, p. 30-37 (01, 2009) モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール アルミニウム層から成る。搭載される標準素子は, ま え が き MIM(metal-insulator-metal)キャパシタ(最大 昨今,無線ブロードバンドアクセス技術は,無線 1fF/µm2 )やリーク電流の小さいMOSFETなどで で高速インターネットアクセスを実現する手段とし ある。トランジスタの性能として,N-MOSFET, て注目されている。また,最新無線システムの市場 P-MOSFET の 遮 断 周 波 数 ( fT ) は , そ れ ぞ れ はデータ通信に対して更なる高い速度を求めている。 120 GHz,65 GHzである。このプロセスは,追加 モバイルWiMAXは,そのような需要を満たすシス のオプションなしにバラクタダイオードを形成する テムとして高速モバイルインターネットアクセスを ことができる。バラクタダイオードは最大3.4の容 可能にする。とくに,モバイル機器によるブロード 量比を持つため,幅広い調整が可能である。5 GHz バンドインターネットアクセスの条件を満たすのが での特性として160のQ値が実現される。RF回路に モバイルWiMAXであり,ネットワーク設計におい 不可欠な素子であるスパイラルインダクタは,3層 て高い柔軟性を実現する。このシステムは,IEEE スタック構造によって抵抗を抑えた構造であり,さ 802.16e-2005規格(2005年12月策定)(1)に基づいて らに,渦電流の低減と,導電性シリコン基板を貫く いる。したがって,セルラシステムに見られる従来 電界の低減を目的に,接地シールド層がシリコン基 の携帯電話とは異なっている。その基本性能は,帯 板とスパイラルインダクタ間に挿入されている。そ 域10 MHzで,最大37 Mbpsのデータレートを実現 の特性は,1 nHのインダクタンスに対してQ値20 (2),(3) これは現行のモバイル無線システムに している。 という高い値が実現されている。 比 べ 最 速 の 性 能 で あ る 。 モ バ イ ル WiMAX で は OFDMA ( Orthogonal Frequency RFアーキテクチャ Division Multiple Access)変調方式が採用されており,こ 開発したLSIのRFアーキテクチャを図-1に示す。 れは,現在,標準化作業が進められている第4世代 このLSIは中間周波数(IF)を有することで,トリ 携帯電話システムにおいても適用が検討されている プ ル バ ン ド ( 2.3 GHz 帯 , 2.5 GHz 帯 , 3.5 GHz (4) このため,この変調方式を採用し 変調方式である。 帯)と低消費電力化を両立するとともに,WiMAX ているモバイルWiMAXは次世代無線システムの主 フォーラムの要求仕様として規定されているRCE 要技術として期待される。 モバイルWiMAXシステム向けRF LSIの設計に おいて重要な課題は,RF回路,アナログ回路にお ける低消費電力,直線性,そして広帯域特性である。 (Relative Constellation Error)特性の容易な実現 を可能としている。本RF LSIの目標仕様を表-1に 示す。 受信系は,ダブルコンバージョン方式で,第1 広帯域システムにおける低消費電力と直線性には相 ローカル(LO1)周波数と第2ローカル(LO2)周 反する面があるが,モバイル端末では両方の要件を 波数を用いることによって,高周波のWiMAX信号 満たさねばならない。 からの入力スペクトルをIFへ,そして直交復調器 富士通は,上記の要求を満たすRF LSIを搭載し たRFモジュールを開発した。 (QDEM)によってベースバンド信号へと変換する (図-1) 。さらに,ベースバンド信号はローパスフィ 本稿では,まず初めに,RF LSIに適用した90 nm ルタ(LPF)と可変ゲインアンプ(VGA)に入力 CMOSプロセス技術について説明する。つぎに, さ れ る 。 下 り リ ン ク MIMO ( Multiple-Input (5),(6) 受信,送信,シンセサイザ RFアーキテクチャ, Multiple-Output)対応のため,受信系は,2系統 の回路設計,さらに,RFモジュールの構成と性能 となる。 について論じる。また,各ブロックのプロセス変動 を校正する方法についても記述する。 90 nm CMOSプロセス技術 送信系も受信系と同様にダブルコンバージョン方 式を採用した。A/D変換器(ADC)からのWiMAX 直交信号出力はLPFおよび可変減衰器(VATT)を 通って直交変調器(QMOD)に入力され,変調さ 適用した90 nm CMOSプロセスはデジタルプロ れた送信信号はQMODによって,IFに変換された セスとの完全な互換性を持ち,7層の銅層と1層の 後,IF-VGAを通ってアップミキサで,高周波信号 FUJITSU. 60, 1, (01, 2009) 31 モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール Branch 1 LPFs1 VGAs1 3.5 GHz Band RXIOUT1 RXIOUT1X LNA1 LO1 ADCへ QDEM1 RXQOUT1 RXQOUT1X 2.3 GHz & 2.5 GHz Band LO2 Down-Mixer1 3.5 GHz Band IF-VGA Driver Amp. 2.3 GHz & 2.5 GHz Band LO1 LO2 LPFs TXIIN TXIINX QMOD TXQIN DACへ TXQINX Synthesizer Up-Mixer VATT Branch 2 LPFs2 3.5 GHz Band RXIOUT2 RXIOUT2X LNA2 QDEM2 LO1 2.3 GHz & 2.5 GHz Band ADCへ RXQOUT2 RXQOUT2X Down-Mixer2 ADC: Analog-to-Digital Converter DAC: Digital-to-Analog Converter LNA: Low Noise Amplifier LO: Local Oscillator LPF: Low Pass Filter LO2 VGAs2 QDEM: Quadrature Demodulator QMOD: Quadrature Modulator VATT: Variable Attenuator VGA: Variable Gain Amplifier 図-1 RFアーキテクチャ Fig.1-RF architecture. 表-1 RF LSI目標仕様 項目 周波数範囲 チャネル 帯域幅 チャネル間隔 受信系 利得可変範囲 最大加入力 レベル 最大入力 レベル NF 送信系 利得可変範囲 出力電力 RCE 2A/2B/2C 3A 5LA/5LB/5LC 仕様値 2.3-2.4 GHz 2.496-2.69 GHz 3.4-3.6 GHz 3.5 MHz/5 MHz/7 MHz/10 MHz/20 MHz 200 kHz/250 kHz RF LSIの回路設計 本章では,受信系,送信系,およびシンセサイザ (7) 図-1よりRFフロン の回路設計について記述する。 トエンドは,トリプルバンド対応のため,RFの入 出力は,2系統である。一方が,2.3 GHz帯,2.5 Over 90 dB,1 dB ± 0.5 dB step GHz帯,他方が3.5 GHz帯である。以下,送受それ 0 dBm ぞれ一系統について示す。 -25 dBm 最小値 RCE:-27.4 dB 以下 3.5 dB 標準 ● 受信系ブロック構成 50 dB 以上 -5 dBm 標準 -28 dB 以下 受信系の基本ブロック構成を図-2に示す。受信系 は , ロ ー ノ イ ズ ア ン プ ( LNA ), ダ ウ ン ミ キ サ (Down-MIX),QDEM,LPF,VGAで構成される。 各周波数の入力インピーダンスは,オンチップの整 合回路により50Ω整合がされており,LNAは,利 へと変換される。 シンセサイザは,フラクショナルN方式のPLL (Phase Locked Loop)を適用した。 外部表面実装部品の点数を考慮し,RF入出力 ポートにはシングルエンドを採用した。しかし, RF LSI内部の回路構成は,アイソレーションとノ イズを考慮して差動回路を適用した。電源電圧は 得可変が可能である。また,回路構成は,誘導性 ソース型ディジェネレーションで,入力ポートのリ ターンロスは,設計値として-15 dB未満,NFは, 28 dBの最大ゲインにおいて2.5 dBを,トリプルバ (8) Down-MIX ンドの各動作周波数帯域で実現した。 の基本回路トポロジーは,一般的なダブルバランス (9) 入力の前段には,シングル ミキサを採用しており, 1.2 Vと2.9 Vである。各ブロックの詳細については エンド信号を差動信号に変換するシングル-差動変 次章で記述する。 換回路が設けられている。 32 FUJITSU. 60, 1, (01, 2009) モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール チップ内 IDAC IDAC IDAC IDAC IDAC IDAC QDEM ATT LPF Down-MIX LPF IDAC LPF VGA IDAC IDAC VGA VGA IDAC BUF VGA IDAC ADC IDAC LNA ATT LPF 位相調整 回路 LO1 90度 LPF To filter VGA LPF VGA VGA VGA BUF 4 6 From BB_out … To IDAC … 6 5 + LO2 ロジック制御部 ロジック制御部 CLK TRIG フィルタfc校正回路 CLK TRIG DCオフセット校正回路 BB: Baseband BUF:Buffer 図-2 受信系ブロック構成(校正回路も含む) Fig.2-Receiver and calibration block diagram. QDEMは,IチャネルおよびQチャネルに対応し ● 送信系ブロック構成 て二つのダブルバランスミキサで構成されている。 送信系の基本ブロック構成を図-3に示す。送信系 WiMAXのサブキャリア間隔は10.9375 kHzである は,ベースバンドLPF,VATT,QMOD,位相器, ため,QDEMのフリッカノイズは,WiMAX信号の IF-VGA , ア ッ プ ミ キ サ , 帯 域 阻 止 フ ィ ル タ 受信にとって最も重要な課題の一つである。そのた (BEF),RF-VGA,ドライバアンプで構成される。 め,QDEM内のトランジスタサイズはフリッカノ アップミキサからドライバアンプまでは,トリプル イズ低減のために最適化をしている。フリッカノイ バンドに対応するため,受信系と同様に2系統であ ズのコーナ周波数は30 kHz前後である(1)。 る。IF-VGAとRF-VGAは送信のダイナミックレン ベースバンドの回路構成は,三つのLPFと四つ ジを広げるために使用される。IF-VGAは29.5 dB のVGAがあり,LPFも利得可変が可能である。各 の利得制御を0.5 dBの刻み幅で,またRF-VGAは LPFの可変利得範囲は0~6 dB,刻み幅は1 dB,ま 48 dBの利得制御を6 dBの刻み幅で行う。LPFは, た,各VGAの可変利得範囲は-2~12 dBで,刻み幅 5次のアクティブバターワースで,また,カットオ は1 dBである。 フ周波数は,受信系と同様に1.75 MHz,2.5 MHz, LPFのトポロジーはRCアクティブフィルタを採 3.5 MHz,5 MHz,および10 MHzである。fcのプ 用した。可変キャパシタは,カットオフ周波数 ロセスおよび温度による変動は校正回路によって補 (fc)のプロセスおよび温度による変動を補償する。 償 さ れ る 。 QMOD は IF 変 調 信 号 に 変 換 す る 。 可変キャパシタの校正信号は,RC時定数とクロッ QMODには二つのダブルバランスミキサが適用さ クの比較によって決定されるフィルタfc校正回路に れている。QMOD部に備わる二つの6ビットVATT よって供給される。LPFのカットオフ周波数は, と一つの6ビット位相調整器は,直交信号の振幅と 1.75 MHz,2.5 MHz,3.5 MHz,5 MHz,および 位相の誤りを訂正する。この直交信号誤り訂正に 10 MHzをサポートしている。 よって変調の精度を改善する。これはモバイル 出力DCオフセット電圧の校正には電流D/A変換 WiMAXシステムの重要課題の一つである。この 器(IDAC)が使用される。IDACの校正信号は, キャリブレーション方法により,QMODのRCE測 図-2に示すDCオフセット校正回路によって供給さ (10) 定値は-46 dB以下を達成した。 れる。 FUJITSU. 60, 1, (01, 2009) IF信号はダブルバランスアップミキサによって 33 モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール チップ内 LPF QMOD ATT LPF I LO2 I 2.5-GHz Output RF-VGA RF-MIXER 90度 BEF DAC 6 整合回路 Driver amp. 6 位相調整 回路 6 IF-VGA LO2 Q ATT 4 fc 校正 6 DAC LPF LO1 Q 6 4 fc 校正 LO2 BEF:Band Elimination Filter 図-3 送信系ブロック構成 Fig.3-Transmitter block diagram. RF信号に変換される。BEFはRFミキサのイメージ 出力を除去し,ドライブアンプの直線性を改善する。 ● シンセサイザ シンセサイザは,電圧制御発振器(VCO)は, これは,オンチップのキャパシタとインダクタで構 幅広いプロセスコーナと保証された周波数レンジに 成される。 対応するように設計されている。自己同調方式の振 ドライバアンプは入出力間のアイソレーション特 幅調整ブロックを備えたLCタンク発振器を用いる 性改善のため,カスケード構造で,これによりドラ ことによって低位相ノイズ発振器を実現している。 イバアンプの安定性が維持される。構成としては 100 kHzのオフセットにおける位相ノイズの評価値 2段構成で,通常モードとパワーセーブモードがあ は-100 dBc/Hzである。バラクタダイオードの大き る。パワーセーブモードは,バイアスの制御によっ さは,ノイズによる影響を低減するために低VCO て各出力パワーレベルにおける消費電流を低減する。 ゲインを実現し,かつプロセスコーナや温度変動・ 前段のアンプは線形特性を実現するため,動作点は, 電圧変動を見込んだマージンを持つように設計され A級アンプであり,後段のアンプは低消費電力を実 ている。採用したPLLは,フラクショナルN方式で 現するために,AB級アンプである。出力はシング ある。基準クロックは,26 MHz{基準クロック周 ルエンドになっており,バランなどの外部素子は必 波数=Fref(Hz)}である。周波数の最小設定幅は, 要としない。出力インピーダンスは,外部表面実装 デバイスを用いる整合回路によってトリプルバンド の各動作周波数範囲において50Ωに整合される。 測定結果として,通常モード動作時,ドライバアン で定義される。デルタシグマ変調アルゴリズムでは, プ の 出 力 1 dB 利 得 圧 縮 点 で の 出 力 パ ワ ー VCOと通常のデジタルデバイダの間に高速のプロ (OP1dB)は12.4 dBm,パワーゲインは18.3 dB, グラマブルデバイダが挿入される。これは,低消費 ま た , パ ワ ー セ ー ブ モ ー ド 動 作 時 , OP1dB は 電力のためにインバータロジックを用いるように設 10.8 dBm,パワーゲインは15 dBである。 計されている。直線性向上のためにEXOR型の位相 回路設計では伝送線路モデルを用いて実施した。 比較器(PFD)が使用されるほか,RC-LPFの外部 このモデルにはLSIの配線に存在する寄生抵抗,寄 ループフィルタによって基準漏れ電流が抑制されて 生容量,および寄生インダクタンスが考慮されてお いる。 り,富士通のRF CMOSに備わるRF素子の特性を 正確に与えている。 34 FUJITSU. 60, 1, (01, 2009) モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール 信号であるOFDMA信号を入力して,ベースバンド RFモジュール 出力信号の解析を行った。下りリンクの信号には, RFモジュールは,下りリンクMIMOをサポート 10 MHz 帯 域 の PUSC ( Partial Usage of したモジュール構成である。このモジュールは, SubChannels)およびQPSK,16QAM,ならびに RF LSI,アンテナスイッチ,パワーアンプ,バン 64QAMの変調方式を使用した。入力パワーに対す ドパスフィルタ,VCTCXOが4層のFR4基板上に実 る出力信号のRCE測定値を図-5に示す。低入力パ 装されている。RF入出力ポートのインピーダンス ワーにおけるRCEの値は回路の熱雑音によって決 は,トリプルバンドの動作周波数域において50Ω まり,RCEと入力信号の熱雑音との比からフィル に整合される。モジュールを小型化するため,部品, タの損失も含む受信系の全NFは4.5 dBである。高 レイアウトの最適化,および最良の回路構成を選択 入力時ではRCE値は-35 dBである。これはローカ することによって,外部部品の点数を削減した。さ ル発振器の位相ノイズに等しい。図-5の印は,レ らに,RF回路の分離を考慮して高密度実装を行った。 シーバの最低着信レベルに対して要求される最低 オフチップ回路の整合化によって信号損失が2 dBに S/N比(実装損失のための6 dBマージンを含む)を 低減されている。モジュールのサイズは15 mm× (10) 示す。 11 mm×1.7 mmである。また,目標電力クラスは この結果より,この受信器はモバイルWiMAXに (10) このモジュールの写真とブロック クラス2である。 使用するのに十分な性能を備えていると言える。受 構成を図-4に示す。 信器の消費電流はMIMOモードで220 mAである。 このRFモジュールのメリットは,RFに関する特 送信特性の測定には,10 MHz帯域のPUSCと 別な知識がなくても高品質のRF性能を容易に得ら (10) 出力 QPSKまたは16QAMの変調方式を使用した。 れることである。 電力に対するRCEの特性を図-6に示す。この図よ り,RCEの仕様値-24 dB以下を満たすダイナミッ RFモジュールの性能 クレンジは,仕様値45 dB以上を十分満足している 本章では,RFモジュールの性能として,2.5 GHz ことを確認した。また,23 dBmにおける出力スペ 帯の評価結果について記述する。 クトル特性は仕様値であるマスクを満足している( 図-7) 。パワーアンプも含む消費電流は18 dBmの出 受信特性の測定にはベクトル信号発生器とベクト 力レベルで479 mA,23 dBmで678 mAである。 ル信号アナライザを用い,モバイルWiMAXの変調 3.5 GHz SPDT RF LSI 3.5 GHz 2.3/2.5 GHz SPDT DMIX1 QDEM1 RXIOUT1 RXIOUT1X RXQOUT1 RXQOUT1X UMIX QMOD TXIIN TXIINX TXQIN TXQINX DMIX2 QDEM2 RXIOUT2 RXIOUT2X RXQOUT2 RXQOUT2X 2.3/2.5 GHz PA 3.5 GHz PA 2.3/2.5 GHz 3.5 GHz 2.3/2.5 GHz 3.5 GHz 2.3/2.5 GHz Synthesizer RFモジュール (a)RFモジュール外観 VCTCXO (b)ブロック構成 図-4 RFモジュールの外観とブロック構成 Fig.4-Overview and block diagram of RF module. FUJITSU. 60, 1, (01, 2009) 35 モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール 10 2501 MHz 5 2685 MHz 0 -5 QPSK1/2 target 0 出力電力(dBm) RCE(dB) 16QAM3/4 target -20 64QAM3/4 target -25 Spectrum (dBm) spec (dBm) 10 -10 -15 Po=+23 dBm BW=10 MHz (Fo=2501 MHz RBW=1 MHz) 20 2593 MHz -10 -20 -30 -30 -40 -35 -40 -90 -50 -85 -80 -75 -70 -65 -60 -55 -50 -45 -40 -35 -30 -25 -20 -25 -20 -15 -10 -5 Input power (dBm) 図-5 受信RCE特性(BW=10 MHz) Fig.5-RCE of receiver baseband output (BW=10 MHz) . 10 15 20 25 図-7 送信出力スペクトラム特性 Fig.7-RF output spectrum and emission mask. 0 2501 MHz 2593 MHz 2685 MHz 16QAM Class2 spec line -5 -10 RCE(dB) 0 5 周波数[MHz] -15 ダイナミックレンジ仕様値≧45 dB -20 RCE 仕様値 ≦ -24 dB -25 -30 -35 -40 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 Output power(dBm) 図-6 送信系RCE特性(BW=10 MHz) Fig.6-RCE of transmitter RF output(BW=10 MHz) . む す び 本稿では,主要3周波数帯(2.3 GHz帯,2.5 GHz 帯,3.5 GHz帯),および下りリンクMIMO技術を サポートしたモバイルWiMAX携帯端末向け,RF シングルチップトランシーバLSIについて記述した。 適用したプロセスは,90 nm CMOSプロセスであ る。このRF LSIを搭載したRFモジュールの特性は, WiMAXフォーラムで規定している仕様を満足して いることを確認した。今後,さらなる低消費電力化 に向け開発を進めていく予定である。 February 2006. (2) WiMAX Forum(2006) ,Mobile WiMAX – Part I:Competitive Analysis. (3) WiMAX Forum(2006) ,Mobile WiMAX – Part II : A Technical Overview and Performance Evaluation. (4) Recommendation ITU-R M.1645. (5) A. A. Abidi:Low-Power Radio-Frequency ICs for Portable Communications.Proceedings of the IEEE, Vol.83,No.4,p.544-569(1995) . (6) P. Stroet et al.:A zero-IF single-chip transceiver for up to 22-Mb/sQPSK 802.11b wireless LAN.in 参 考 文 献 (1) IEEE standard for local and metropolitan area networks , Part 16 : Air Interface for Fixed and Mobile Broadband Wireless Access Systems . 28 36 IEEE Int. Solid-State Circuits Conf. Dig. Tech. Papers,2001,p.204-205. (7) B. Razavi : RF Microelectronics. PRENTICE HALL PTR. FUJITSU. 60, 1, (01, 2009) モバイルWiMAX端末向け小型RFモジュール (8) T. H. Lee : The Design of CMOS RadioFrequency Integrated Circuit . second edition , Cambridge University Press. (9) H. Darabi et al.:Noise in RF-CMOS mixers:A FUJITSU. 60, 1, (01, 2009) simple physical model.IEEE J. 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