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みずほ米国経済情報 - みずほ総合研究所
みずほ米国経済情報 2016年10月号 ◆ トピック 大統領選挙がもたらす不確実性と米金融政策 今回の選挙では大統領が強大な権限を持つ対外政策にお ける両候補の違いが不確実性を生んでいる。FOMCは選挙結 果と指標の改善を確認し、12月に利上げに踏み切ろう。 ◆ 景気判断 拡大基調が継続 7~9月期のGDP成長率は2年ぶりの高さとなった。外需 と在庫投資が押し上げ、国内最終需要の伸びは緩やかなも のにとどまった。 1.トピック:大統領選挙がもたらす不確実性と米金融政策 クリントン氏優位だが、 不安燻る 米国の大統領選は、世論調査を見る限り、クリントン氏優位で決戦の日(11 月 8 日)を迎えようとしている。有権者に対する投票の働きかけ(戸別訪問 や電話勧誘) 、いわゆる地上戦の体制が整っていることも、クリントン氏優位 の要因とみられている。 しかし、英国が国民投票によって EU 離脱を選択したという経験が、想定外 のシナリオ(トランプ氏の勝利)への不安を掻き立てて止まない。トランプ 氏が、大統領が強大な権限を持つ対外政策に関して極端・強硬なスタンスを とっているためである。 「大きな政府」で共通す る両候補の国内政策 両候補の経済政策は、国内に関しては「大きな政府」という点で共通して いる。現行法に基づけば、米国の財政赤字は今後緩やかに拡大し、債務は増 えていく。こうした、いわゆるベースラインと呼ばれる財政見通しに対し、 両候補共に是正の動きは見せていない。両候補の違いは、端的に言えば、ベ ースラインをおおむね維持するか(クリントン氏) 、ベースラインを大きく超 える財政赤字を生み出すか(トランプ氏) 、という点にある(図表 1) 。 超党派の非営利団体「責任ある連邦予算委員会」 (CRFB)によれば、クリン トン氏の経済政策が生み出す追加の財政赤字は、今後 10 年間で 0.20 兆ドル (利払い含む) と、 ベースラインに基づく 10 年後の債務残高の 1%に留まる。 その中身は、高等教育、インフラ投資、有給家族休暇支援などの支出を増や し、富裕層や企業向けの増税に財源を求める構成である。 一方、トランプ候補の経済政策は減税一色で彩られ、10 年間で 5.3 兆ドル の財政赤字を生み出す、極めて拡張的なものである。トランプ氏は「高い経 済成長による税収増と、名目 GDP の拡大によって、財政赤字は問題ではなく なる」とのスタンスを取る。同氏はまた、 「クリントン氏の 2 倍」という大規 模なインフラ投資にも言及している(詳細不明で図表では計上していない) 。 スタンスが大きく異な る対外政策 通商政策でも保護主義的という点で両候補は一致するが、その度合いは大 きく異なる。 トランプ氏は、 TPP はおろか、 既存の通商協定すら否定している。 通商に関連する大統領の権限は極めて大きいとされており、トランプ氏の勝 利は Brexit の再来リスクをはらんでいる。 両候補のスタンスは移民・外交政策でも大きく異なる。クリントン氏が移 民受け入れ推進、同盟重視であるのに対し、トランプ氏は移民排斥、責任分 担論を繰り広げてきた。 ショックがなければ FOMC は 12 月利上げへ 大統領選に対する不安が燻る中、連邦公開市場委員会(FOMC)は 11 月 1・2 日の次回会合で金融政策を据え置き、その後、大きなショックに見舞われな い限り、 12 月 13・14 日に利上げを決めるとみられる。 みずほ総合研究所では、 従来「年内利上げなし」と予想してきたが、9 月 FOMC 議事録を踏まえ修正し た。金融政策を据え置いた 9 月 FOMC において、据え置きを支持した参加者の うち数名は「ぎりぎりの判断」だったことが、議事録によって明らかになっ たためである。議事録ではまた、経済と物価見通しに対するリスク判断につ いて「均衡」とみる参加者の割合が上昇したことも示された(図表 2 と 3) 。 1 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 一度も利上げしないコ 9 月 FOMC が、先行きの政策金利見通しを引き下げながら、年内の利上げに ストは大きい こだわっている点は、 「短期タカ派、長期ハト派」と言い表すことができる。 10 月中旬に行った NY 出張での現地エコノミストらの評価によれば、FOMC が 「短期タカ派」である理由は、利上げの方針を示しながら一度も利上げが出 来ない場合、金融政策への信認と金融安定性の面で大きなコストを払うこと になるとみているためではないかと言う。 2017 年の利上げは早く 2017 年の利上げは早くて 6 月だろう。年前半はコア・インフレ率の落ち着 て6月 き、 新政権・議会の始動、 Brexit 交渉の開始等で FOMC は動けないと予想する。 ※みずほ総合研究所では、緊急リポート「米国大統領選挙の展望~予測可能なクリントン政権、予測不可能な トランプ~」(10 月 24 日)を発行しました。 図表 1 クリントン氏、トランプ氏の経済政策の財政コスト (単位:兆ドル、%) クリントン候補 医療保険制度改革 税制改革 財政支出 移民制度改革 小計 歳入 歳出 利払い(ネット) 計 2026年度の連邦政府債務残高 (GDP比) 0.25 ▲1.55 1.55 ▲0.10 0.15 ▲1.50 1.65 0.05 0.20 23.30 86 トランプ候補 0.05 4.50 0.00 0.05 4.60 5.80 ▲1.20 0.70 5.30 28.40 105 (増税) (増税) (注)プラスが連邦政府債務の増加(拡張的財政政策) 、マイナスが減少(緊縮的財政政策)を表す。 債務残高以外は 2026 年までの累計額。 (資料)CRFB(9 月 22 日)より、みずほ総合研究所作成 図表 2 実質 GDP 成長率見通しのリスク 図表 3 コアインフレ率見通しのリスク判断 (FOMC参加者に占める割合、%) (FOMC参加者に占める割合、%) 100 100 90 90 均衡 80 70 70 60 60 50 50 40 30 20 20 10 下振れ 40 下振れ 30 均衡 80 上振れ 10 上振れ 0 0 2012 2013 2014 2015 2012 2016 (年) 2013 2014 2015 2016 (年) (注)食品・エネルギーを除く個人消費支出デフレータ上昇率。 (資料)FRB より、みずほ総合研究所作成 (資料)FRB より、みずほ総合研究所作成 2 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 2.概況:拡大基調が継続 米国経済は緩やかに拡 大 7~9 月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.9%と (4~6 月期:同+1.4%) と、2 年ぶりの高い伸びとなった。外需と在庫投資が押し上げ、国内最終需要 の伸びは緩やかなものにとどまった。 7~9 月期の輸出は、 飲食料品輸出の大幅増をけん引役に、 伸びが高まった。 飲食料品輸出増加の大部分は、大豆輸出によるものである。干ばつの影響で ブラジル等南米における大豆の収穫量が減少し、同地域向けの輸出が増加し た。しかし、飲食料品を除いても、産業用資材や消費財等が増加した。 在庫投資の寄与度は、6 四半期ぶりにプラスに転じた。過去数四半期にわた り在庫調整を進めてきた製造業や卸売業の調整圧力は緩和した。7~9 月期の 在庫投資の増加は、成長率を 0.6%ポイント押し上げた。 国内最終需要では、設備投資が 2 四半期連続で増加した。機械関連投資の 低迷を、構築物投資や知的財産の投資の堅調さが相殺した。 他方、個人消費は、4~6 月期の高い伸びから減速した(4~6 月期:前期比 年率+4.3%→7~9 月期:同+2.1%) 。自動車を中心に耐久財消費が堅調な伸 びを維持したものの、非耐久財消費が小幅に減少し、ヘルスケアや住居等、 サービス消費の伸びが鈍化した。もっとも、所得面では、実質可処分所得が 前期比年率+2.2%と、労働市場の回復継続を受けて、伸びが小幅に拡大した。 個人消費は所得の増加ペースに沿って、緩やかに拡大した。 10~12 月期以降については、大豆輸出による一時的な押し上げの影響がは く落するとみられるものの、ドル高・原油安による輸出や設備投資への下押 し圧力が後退するなかで、緩やかな景気拡大が続く見通しである。労働市場 と個人消費の好循環も続くだろう。雇用者数は底堅い増加ペースを維持する と予想する。雇用・所得の着実な改善や、家計の健全なバランスシートを背 景に、個人消費は底堅い伸びを続けると見込まれる。 生産活動はまだら模様 9 月の生産活動をみると、エネルギー部門が減速する一方で、非エネルギー 部門は改善した(図表 5) 。しかし、業種別にみると、まだら模様の状態とな っている。エネルギー部門の生産指数は、石油・ガス掘削活動の持ち直しが 続いたものの、エネルギー製品等の低下が全体を押し下げた。非エネルギー 部門の生産指数は、設備機器が低下し、自動車が減速する一方、IT関連や 建設財、ビジネスサプライが上昇した。 企業業況は改善 9 月の製造業ISM指数は改善・悪化の境目である 50 を超え(図表 6) 、非 製造業ISM指数は昨年 10 月以来の水準に上昇した(図表 7) 。業種別では、 製造業 18 業種のうち、業況「改善」を報告したのは 7 業種にとどまったが、 業況「悪化」を報告した業種でも前向きなコメントが多く報告された。非製 造業では、業況「改善」を報告したのは 18 業種中 14 業種であった。卸売、 小売、運輸・倉庫といった流通関連の業種が改善に転じた。 3 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 図表 4 (前期比年率、%) 8 実質GDP成長率 図表 5 政府支出 純輸出 在庫投資 設備投資 住宅投資 個人消費 (%) (2007=100) 104.0 GDP 6 鉱工業生産と稼働率 78 5.0 4.0 2.3 4 2.0 2.6 2.0 0.9 2 77 103.5 2.9 1.4 76 0.8 103.0 75 0 102.5 ▲2 ▲4 15/9 ▲1.2 1 2 3 4 1 2 2014 3 2015 4 1 2 3 鉱工業生産(除くエネルギー) 設備稼働率(総合、右目盛) 2016 (年/四半期) (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 図表 6 60 58 (資料)連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成 製造業ISM指数 新規受注 生産 入荷遅延 図表 7 雇用 在庫 74 16/9 (年/月) 16/3 総合指数 非製造業ISM指数 64 新規受注 事業活動 62 入荷遅延 総合指数 雇用 60 56 58 54 56 52 54 50 52 48 50 48 46 15/9 15/12 16/3 16/6 15/9 16/9 15/12 16/3 16/6 (資料)ISMより、みずほ総合研究所作成 (資料)ISMより、みずほ総合研究所作成 図表 8 景気の全体感を示す主要統計 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 Q3 2016 成長率 2016/6 2016/7 2016/8 2016/9 2016/10 前期比年率、% 0.8 1.4 2.9 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 前期比年率、% 1.7 1.2 2.4 1.4 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 寄与度、%Pt ▲ 0.5 0.0 0.2 0.8 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 寄与度、%Pt ▲ 0.4 ▲ 0.4 ▲ 1.2 0.6 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 前期比、% n.a. n.a. n.a. n.a. ▲ 0.7 0.2 0.6 0.1 n.a. n.a. 製造業ISM指数 DI 48.6 49.8 51.8 51.2 51.3 53.2 52.6 49.4 51.5 n.a. 非製造業ISM指数 DI 56.9 53.8 55.0 54.7 52.9 56.5 55.5 51.4 57.1 n.a. 前期比、% ▲ 0.9 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.4 ▲ 0.2 0.5 0.5 ▲ 0.5 0.1 n.a. 前期比、% ▲ 0.1 0.0 ▲ 0.3 0.2 ▲ 0.2 0.2 0.4 ▲ 0.5 0.2 n.a. % 75.8 75.4 75.2 75.5 75.1 75.4 75.8 75.3 75.4 n.a. % 75.4 75.3 74.9 75.0 74.8 75.0 75.2 74.8 74.9 n.a. 実質GDP成長率 純輸出 在庫投資 月次実質GDP成長率 生産活動 2016/5 0.9 国内最終需要 企業業況 16/9 (年/月) (年/月) 鉱工業生産指数 非エネルギー部門 鉱工業 設備稼働率 製造業 (資料)米国商務省、マクロエコノミック・アドバイザーズ、ISM、連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成 4 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 3.家計部門:消費を巡るファンダメンタルズは良好 労働市場は堅調で、消費を巡るファンダメンタルズは良好である。住宅市 場は、低金利等が追い風となる一方、供給不足が抑制要因となっている。 雇用は堅調 9 月の非農業部門雇用者数は前月差+15.6 万人と、前月の伸び(同+16.7 万人)を下回った(図表 9) 。しかし、3 カ月移動平均値でみれば、同+19.2 万人と、堅調な増加ペースを維持している。 失業率は上昇 9 月の失業率は 5.0%と前月から 0.1%ポイント上昇した。しかし、就業率 は上昇しており、悪い内容ではない。 賃金上昇ペースは緩や かに加速 9 月の時間当たり賃金上昇率 (農業を除く民間) は前月比+0.2% (図表10) 、 前年比+2.6%となり、いずれも前月(前月比+0.1%、前年比+2.4%)から 加速した。アトランタ連銀が公表する 9 月の Wage Growth Tracker(個人の賃 金追跡調査)も前年比+3.6%と、前月(同+3.3%)から加速した。 コア小売は小幅に増加 9 月の小売売上高は 2 カ月ぶりに増加した(図表 11) 。自動車やガソリンス タンドの売上増加が全体を押し上げた。コア小売(自動車、ガソリン、建材、 飲食サービスを除く)については、3 カ月ぶりの増加に転じたものの、増加幅 は小幅にとどまった。 年末商戦の売上高は昨 全米小売業協会(NRF)は、2016 年の年末商戦の売上高(自動車、ガソ 年よりも伸びが加速す リン、外食を除く)が前年比+3.6%と、昨年の伸び(同+3.2%)や、金融 る見通し 危機以降の平均的な伸び(同+3.4%)を上回るとの予想を発表した(10/4) 。 NRFは、消費を取り巻くファンダメンタルズが良好なことを理由に挙げて いる。 消費者マインドは高水 準も、弱含み 消費者マインドは高水準にあるが、足元で弱含んでいる。10 月のカンファ レンスボード消費者信頼感指数は小幅に低下した。調査担当者によれば、現 在のビジネス環境や雇用に対する消費者の楽観的な見方が、やや後退したと のことである。 住宅投資は伸び悩み 9 月の住宅着工件数は、集合住宅の急減が全体の足を引っ張り、2015 年 3 月以来の水準に減少した(図表 12) 。他方、先行指標の建設許可件数は増加し ており、先行きの着工件数が一段と減少する可能性は低い。 住宅販売は、新築と中古で、動きがまちまちとなった。9 月の新築住宅販売 は 2 カ月ぶりに増加し、2007 年末以来の高水準となった 7 月のレベルに近づ いた。一方、住宅販売の大部分を占める 9 月の中古住宅販売件数は、2 カ月ぶ りの増加となったが、頭打ち傾向を脱するには至らなかった。先行指標とな る 9 月の中古住宅販売仮契約指数は低下した。 住宅販売に関しては、住宅ローン金利の低下や住宅ローンに対する金融機 関の貸出基準が緩和方向にあることが追い風となっている。一方で、住宅の 在庫不足が深刻化している。特に中古住宅の在庫不足が顕著だが、新築住宅 でも、建設労働者や建設用地の不足を背景に、住宅建設は伸び悩んでいる。 5 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 図表 9 (前月差、万人) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 15/9 雇用統計 図表 10 時間当たり賃金 (前月比、%) (%) 5.2 0.6 0.4 5.0 0.2 0.0 4.8 ▲ 0.2 ▲ 0.4 4.6 16/9 (年/月) 16/3 非農業部門雇用者数 15/9 16/9 (年/月) 後方3か月移動平均 失業率(右目盛) (資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成 図表 11 16/3 (資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成 小売売上高 図表 12 (前月比、%) 1.5 住宅着工件数と住宅市場指数 (年率、万件) 130 70 1.0 60 0.5 50 115 0.0 40 ▲ 0.5 30 100 ▲ 1.0 15/9 16/3 コア 20 15/10 16/9 (年/月) (資料)米国商務省、NAHB より、みずほ総合研究所作成 図表 13 家計部門の主要統計 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 Q3 2016 2016/6 2016/7 2016/8 2016/9 2016/10 240 220 151 n.a. 24 271 252 167 156 % 5.0 4.9 4.9 n.a. 4.7 4.9 4.9 4.9 5.0 n.a. 時間 34.5 34.5 34.4 n.a. 34.4 34.4 34.4 34.3 34.4 n.a. 時間当たり賃金 前期比、% 0.6 0.6 0.7 n.a. 0.2 0.1 0.4 0.1 0.2 n.a. 小売売上高 前期比、% 0.2 ▲ 0.1 1.5 n.a. 0.2 0.7 0.1 ▲ 0.2 0.6 n.a. 前期比、% 0.3 0.7 1.7 n.a. 0.4 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.1 0.1 n.a. 台数、百万台 17.9 17.4 17.2 n.a. 17.3 16.7 17.9 17.0 17.8 n.a. 1966年Q1=100 91.3 91.6 92.4 90.3 94.7 93.5 90.0 89.8 91.2 87.2 週当たり労働時間 コア小売 新車自動車販売台数 ミシガン大消費者信頼感 n.a. 1985年=100 96.0 96.0 94.8 100.7 92.4 97.4 96.7 101.8 103.5 98.6 住宅着工件数 年率、千戸 1,135 1,151 1,159 n.a. 1,128 1,195 1,218 1,150 1,047 n.a. 住宅着工許可件数 年率、千戸 1,221 1,142 1,140 n.a. 1,136 1,153 1,144 1,152 1,225 n.a. 新築住宅販売件数 年率、千戸 508 529 565 n.a. 566 558 629 575 n.a. n.a. 中古住宅販売件数 年率、千戸 5,200 5,300 5,503 n.a. 5,510 5,570 5,380 5,300 n.a. n.a. DI 62 59 59 61 58 60 58 59 65 63 カンファレンスボード消費者信頼感 住宅市場 2016/5 前期差、千人 非農業部門雇用者数 失業率 個人消費 16/10 (年/月) 住宅着工件数 住宅市場指数(右目盛) 自動車・建材・ガソリン・外食 (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 雇用環境 16/4 NAHB住宅市場指数 (資料)米国労働省、米国商務省、Autodata、ミシガン大、カンファレンスボード、NAR、NAHB よりみずほ総合研究所作成 6 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 4.企業・対外・政府部門:機械投資は軟調、輸出は一部品目が押し上げ 設備投資については、建設投資が底堅い一方、機械投資は軟調である。 建設投資は小幅に減少 8 月の建設投資(除く住宅)は、工場建設や商業施設を中心に 4 カ月ぶりに 減少したが、減少幅は小幅にとどまった(図表 14) 。 機械関連投資は軟調 機械関連の設備投資動向を示す資本財(国防・航空機を除く資本財)の 9 月の出荷額は、小幅ながら増加した(図表 15) 。コア資本財受注は、過去数カ 月間上向きの動きを示していた。しかし、9 月は減少に転じ、機械投資の軟調 さを示唆する結果となった。 慎重であった投資マイ ンドは持ち直し サーベイ調査では、慎重であった企業の投資マインドに持ち直しの動きが みられる。10 月までの地区連銀製造業調査における 6 カ月先の設備投資見通 し指数は、振れを伴いつつも、緩やかに上向いている。 輸出入ともに増加 8 月の実質輸出入は、ともに増加した(図表 16) 。実質輸入は 2016 年 3 月 を底に増加傾向が続いている。実質輸出は 2 カ月連続で力強く増加した。ウ ェイトが大きい資本財輸出は弱いままだが、7~8 月は大豆や金(非貨幣用) の輸出増加がけん引役となった。 連邦財政赤字は前年度 を上回る規模 2016 会計年度の累計赤字額(2015 年 10~2016 年 9 月)は 5,874 億ドルと、 5 年ぶりに赤字額が拡大した(図表 17) 。法人税収の減少や所得税収の伸び悩 みが、財政赤字の拡大につながった。 大統領選挙と同日に行 11 月 8 日の大統領選挙への注目は、同日に行われる議会選挙にも広がって われる議会選挙の結果 いる。議会選挙の結果は、大統領候補者が掲げる政策の実現性や債務上限、 にも注目 予算審議の行方を見通す上で重要である。 議会選挙は上院の 1/3 の議席数、下院の全議席が対象である。各種予測調 査によれば、上院では僅差で民主党が多数党、下院では共和党が多数党にな り、2014 年以来の「ねじれ議会」に戻りそうだ。 7 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 図表 14 非住宅建設投資 図表 15 資本財出荷・新規受注 (年率、億ドル) (年率、億ドル) 680 4400 660 4200 640 4000 620 600 3800 15/7 15/8 16/2 16/1 16/4 16/7 (年/月) コア資本財受注 コア資本財出荷 (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 表 16 実質財輸出・輸入 (2013年平均=100) 114 112 110 108 106 104 102 100 98 15/8 15/10 16/8 (年/月) 図表 17 累積連邦財政収支 (億ドル) 0 ▲1,000 ▲2,000 ▲3,000 ▲4,000 ▲5,000 ▲6,000 ▲7,000 10 16/2 輸出 12 2 4 6 8 (月) 16/8 (年/月) 2015年度 輸入 (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 2016年度 (資料)米国財務省より、みずほ総合研究所作成 図表 18 企業・対外・政府部門の主要統計 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 Q3 2016 企業業況 設備投資 2016/7 2016/8 2016/9 2016/10 2.2 ▲ 1.9 ▲ 9.0 6.0 0.5 ▲ 4.2 ▲ 2.0 フィラデルフィア(PHL)連銀 現状判断 ▲ 7.3 2.0 0.4 4.0 ▲ 1.8 4.7 ▲ 2.9 2.0 12.8 ▲ 6.8 9.7 n.a. ▲ 0.6 0.5 0.8 0.9 n.a. n.a. n.a. コア資本財 受注金額 前期比、% ▲ 1.9 ▲ 1.8 ▲ 1.7 コア資本財 出荷金額 前期比、% ▲ 1.7 ▲ 3.0 ▲ 0.5 n.a. ▲ 0.7 ▲ 0.4 ▲ 0.7 ▲ 0.1 n.a. 前期比、% ▲ 1.4 1.2 2.6 n.a. 1.7 0.9 1.0 ▲ 0.4 n.a. n.a. NY連銀 6か月先設備投資判断 13.7 14.6 12.1 8.6 3.1 11.2 11.0 4.1 10.7 13.2 PHL連銀 6か月先設備投資判断 14.0 8.4 14.5 14.3 23.6 7.1 15.1 19.2 8.6 21.2 貿易収支 10億ドル n.a. ▲ 42 ▲ 45 ▲ 40 ▲ 41 n.a. n.a. 輸出 10億ドル 552 539 546 n.a. 181 183 186 188 n.a. n.a. ▲ 124 ▲ 125 ▲ 125 10億ドル 676 664 671 n.a. 223 228 226 229 n.a. n.a. 実質財輸出 2013年=100 102 101 102 n.a. 101 101 104 106 n.a. n.a. 実質財輸入 2013年=100 109 109 109 n.a. 109 111 109 110 n.a. n.a. ▲ 216 ▲ 245 60 n.a. ▲ 53 6 ▲ 113 ▲ 107 33 n.a. 輸入 財政 2016/6 ▲ 9.2 ▲ 11.8 非住宅建設支出 輸出入 2016/5 ニューヨーク(NY)連銀 現状判断 財政収支 10億ドル 歳入 10億ドル 766 711 993 n.a. 225 330 210 231 357 n.a. 歳出 10億ドル 981 956 932 n.a. 277 323 323 338 323 n.a. (資料)ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、米国商務省、米国財務省よりみずほ総合研究所作成 8 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 5.物価動向:コアPCEデフレーター上昇率は低位安定 輸入物価は下落率が縮 小 9 月の輸入物価指数は前年比▲1.1%となり、前月(同▲2.2%)から下落率 が縮小した(図表 19) 。ドル高や原油安が一服していることにより、前年比ベ ースでみた輸入物価に対する低下圧力が弱まっている。最終財(自動車、消 費財、資本財)の下落率は小幅に縮小した。 国内企業部門の物価は プラス圏に転化 9 月の最終需要・生産者物価指数(PPI)は前年比+0.7%(前月同 0.0%) と、2 カ月ぶりにプラスに転化した(図表 20) 。エネルギーを含む財物価の上 昇率はゼロ近傍まで持ち直し(8 月同▲2.1%→9 月同▲0.4%) 、サービス物 価の上昇率は、輸送料・倉庫保管料の持ち直しや、前年同月に下落していた 通信サービス料の反動等を受けて、 加速した (8 月同+1.2%→9 月同+1.4%) 。 PCEデフレーターは リテール部門の物価上昇率は、低位安定が続いている。 低位安定 8 月の個人消費支出(PCE)デフレーター上昇率は前月比+0.1%(7 月 同+0.0%) 、コアPCEデフレーター(食品・エネルギーを除く)上昇率は 同+0.2%(7 月同+0.1%)と、加速した。コアに関しては、一部の財(医薬 品、娯楽用非耐久財)の価格上昇が押し上げ要因となった。前年比でも、ヘ ッドラインの上昇率が+1.0%(7 月+0.8%) 、コアが+1.7%(7 月+1.6%) と、加速した(図表 21) 。基調的な物価上昇率を示すダラス連銀の刈込平均P CEデフレーター上昇率は、2016 年初以降、1.7%の上昇率が続いている。 9 月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、ガソリン価格の上昇を主因に、 前月比+0.3%(8 月同+0.2%)と加速した。一方、コアCPI上昇率は前月 比+0.1%、 (8 月同+0.3%)と減速した。サービス物価の緩やかな上昇が続 く一方、衣料品、自動車、余暇・娯楽関連財の価格下落を受けて、コア財物 価が再びマイナスに転じた。前年比ベースでは、ヘッドラインの上昇率が前 年比+1.5%(8 月同+1.1%)と加速する一方で、コアCPI上昇率は前年比 +2.2%(8 月同+2.3%)に減速した。 サーベイ調査に基づく 市場取引ベースのインフレ期待は緩やかに持ち直し、サーベイ調査に基づ インフレ率は過去最低 くインフレ期待は低下した(図表 22) 。10 月のミシガン大調査による 5~10 水準 年先のインフレ期待は+2.4%と、過去最低水準となった。 ミシガン大調査のインフレ期待は、FRBの物価目標である 2%超の水準は 維持しているものの、 2014 年頃から低下傾向が続いている (2014 年初+2.9%) 。 この背景として、高い物価上昇率を予想する消費者が減少していることが挙 げられる。期待インフレ率の回答者数の分布をみると、2014 年初では、3%以 上の物価上昇率を予想する回答割合が 50%台半ばとなっていたが、足元は 40%台半ばに低下している。他方、1~3%未満の物価上昇率を予想する回答 者の割合が増えている。2014 年初は 30%台前半にとどまっていたが、足元は 40%台前半となっている。また、分布のばらつき度合(標準偏差、四分位範 囲:75%分位-25%分位)をみると、低下傾向が続いており、消費者のイン フレ期待は 2%を含むレンジに集約しつつあるようだ。中央値でみた消費者の インフレ期待は低下しているものの、その水準は 2%前後で安定化していると みられる。 9 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 図表 19 輸入物価 (前年比、%) 5 図表 20 (前年比、%) 0.5 (前年比、%) 0.0 2.0 ▲ 0.5 1.0 ▲ 1.0 0.0 ▲ 1.5 ▲1.0 ▲ 2.0 16/9 (年/月) ▲2.0 0 3.0 ▲5 ▲ 10 ▲ 15 15/9 16/3 輸入物価 図表 21 15/9 16/3 16/9 (年/月) 総合 うち最終財(右目盛) (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 最終需要PPI コア (資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成 PCEデフレーター 図表 22 (前年比、%) 2.0 期待インフレ率 (%) 3.2 2.8 1.5 2.4 1.0 2.0 0.5 1.6 0.0 1.2 15/9 16/3 総合 15/10 16/9 (年/月) 16/4 ミシガン大 期待インフレ率(5~10年先) (年/月) BEI(5年先5年) コア (資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成 (資料)ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 図表 23 物価の主要統計 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 Q3 2016 輸入物価 消費者物価 2016/6 2016/7 2016/8 2016/9 2016/10 ▲ 9.5 ▲ 6.4 ▲ 5.1 n.a. ▲ 5.2 ▲ 4.7 ▲ 3.7 ▲ 2.2 ▲ 1.1 前年比、% ▲ 1.6 ▲ 1.2 ▲ 1.1 n.a. ▲ 1.0 ▲ 1.1 ▲ 1.0 ▲ 1.0 ▲ 0.9 n.a. 最終需要 生産者物価指数 前年比、% ▲ 1.3 0.0 0.2 n.a. 0.0 0.3 ▲ 0.2 0.0 0.7 n.a. コア生産者物価指数 前年比、% 0.2 1.1 1.2 n.a. 1.2 1.3 0.7 1.0 1.2 n.a. 消費者物価指数 前年比、% 0.5 1.1 1.0 n.a. 1.0 1.0 0.8 1.1 1.5 n.a. コア消費者物価指数 前年比、% 2.0 2.2 2.2 n.a. 2.2 2.2 2.2 2.3 2.2 n.a. PCEデフレーター 前年比、% 0.4 0.9 1.0 n.a. 1.0 0.9 0.8 1.0 n.a. n.a. 前期比、% 0.1 0.1 0.5 n.a. 0.2 0.1 0.0 0.1 n.a. n.a. 前年比、% 1.4 1.6 1.6 n.a. 1.6 1.6 1.6 1.7 n.a. n.a. 前期比、% 0.3 0.5 0.4 n.a. 0.2 0.1 0.1 0.2 n.a. n.a. 前年比、% 1.6 1.7 1.7 n.a. 1.7 1.7 1.7 1.7 n.a. n.a. % 2.6 2.6 2.5 2.6 2.5 2.6 2.6 2.5 2.6 2.4 期末値、% 1.8 1.5 1.5 1.4 1.6 1.4 1.4 1.4 1.5 1.6 コアPCEデフレーター 刈込平均 PCEデフレーター インフレ期待 2016/5 前年比、% 輸入物価指数 最終財 生産者物価 16/10 ミシガン大 期待インフレ率 BEI(5年先5年) n.a. (資料)米国商務省、米国労働省、ダラス連銀、ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 10 みずほ米国経済情報(2016 年 10 月号) 2016年 10月 3 1日 発行 欧米調査部主席エコノミスト 小野 亮 03-3591-1219 makoto. ono@mizuh o-ri.co.j p 欧米調査部主任エコノミスト 風間 春香 03-3591-1418 haruka. kazama@mi zuho-ri.c o.jp ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではあり ません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確 性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されるこ ともあります。