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ピストル射撃

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ピストル射撃
ピストル射撃
八八四一四
ピストル射撃 1
これからしばらくは、ピストル射撃にテクニックについてご紹介させてもらいます。ご興味の無い方
は、3 日に 1 度はスルーして下さい。
尚、教本を元に進めていきますが、私の個人的解釈も混じえて説明させてもらいますので「そこは違
うだろ」と思われる方は、ご自身の信ずる方法で練習していただければ結構です。
安全管理について
射撃はルールを守っていれば、安全なスポーツです。
銃だけでは、事故は起こりません。
しかし銃を取り扱うのは人間です。
ですから、過ちを犯さないように注意しなければならないのです。
銃には、本物の鉛の弾が出る銃から BB 弾などのソフトガンや光線銃まで様々な銃がありますが、ス
ポーツとして競技を行うのならば、鉛の弾が出る銃を取り扱うつもりで取り扱わないと思わぬ事故を
起こす事になります。
注意事項として
1) 銃を取り出した場合、機関部(エアピストル・デジタルピストルの場合は装填ラッチ)を開放し
なければならない
2) 銃と弾は別々に保管し、常に監視出来る状態にする
3) 他人の銃に触らない
4) 銃口を跳弾(跳ね返り)の発生する方向や人に向けない
5) 射座の前に人が居る時は、銃に触れない
6) 銃口は、常に射座下方に向ける
7) 空撃ちの場合でも安全な方向に向けて行う
8) 射場長の指示・号令に従う
9) 抜弾してあるか常に確認する
10) 運搬時はケースに入れて運ぶ
などがありますので、決められた事をしっかり守り楽しい射撃をお楽しみ下さい。
基本な進行過程について
ピストル射撃は、ライフル射撃と同じく「姿勢」「呼吸」「照準」「引金」「フォロースルー」それ
から「リズム」という要素から成り立っていますが、特に重要視していただきたいのは「姿勢」と
「引金」です。
初めは、広く浅く技術を習得し、次に各項目について深く詳細に習得していきます。そして、如何な
る状態でも習得した技術が発揮できるように安定化させなければいけません。
では、次回から基本的なテクニックをご紹介して行きます。
ピストル射撃 2
正しい姿勢
射撃は、正しい姿勢で行わなければいけません。
正しい姿勢とは、
⑴ バランスがとれている
⑵ 自然体で標的に対している
⑶ 緊張していない
⑷ 強固に保持できる
⑸ 何時も同じ姿勢で弾が発射できる
ことです。
全ての人に共通する姿勢はありませんから、自分が一番安定した姿勢を取ることです。
射撃姿勢は、イン・ライン・スタンスとオープンス・タンスに大別する事が出来ます。
イン・ライン・スタンスとは、左肩から右肩の延長線上に腕が伸びているスタイルで、メリットは強
固な腕の保持ができピストル射撃において基本なスタンスといっていいです。しかし、頭部を無理に
曲げていることから長時間の射撃はあまり向いていません。
オープン・スタンスは、身体に対し腕が一直線ではなく、角度がついています。メリットは、頭を自
然な状態に保てるので長時間の試合に適していますが、逆に腕にかかる負担が大きく銃の保持がイ
ン・ライン・スタンスと比べ不安定になります。一般的には身体が標的に対し 45°ほど開いている状
態と考えていただいて結構です。
まず始めにイン・ライン・スタンスを覚えた後、必要に応じてオープン・スタンスに移行して行けば
良いと思います。
イン・ライン・スタンスで、腕を無理に伸ばそうと肩に余分な緊張を与えてる姿勢は避けてください。
できるだけ自然に構えることが大切です。特に加齢により筋肉が硬くなってくると首を回すことが困
難になってきます。この様な場合、イン・ライン・スタンスで撃つよりもオープン・スタンスで撃っ
た方がずっと得点は向上するはずです。
ピストル射撃 3
立ち位置
標的の正面に位置し、標的に対し90°左に向きます。
(※以後、左利きの方は左右逆に考えてください)
足は肩幅に平行に開き、目を閉じて両手を肩の高さまで水平にあげてください。
目を開け顔を標的側に向けた時、右腕の延長線上に標的が有りますか?
無かったならば正しい位置まで身体を移動します。
イン・ライン・スタンスはこの状態で、オープン・スタンスは、この立ち位置から右足を中心に腕を
伸ばしやすい姿勢に身体の向きを変えていきます。オープン・スタンスは足の角度は平行からハの字
型にした方が良いでしょう。
左右の足に均等に体重をかけます。
重心の位置は、土踏まずより少しつま先側にすることをお勧めします。土踏まずに重心をおくと
ニュートラル状態でフワフワしてしまうので足の指先で重心をコントロールできる様に少し前重心に
した方が良いからです。かかと方向に重心がいってしまうとつま先が上がってしまい重心のコント
ロールが取れなくなりますので、かかと重心にならないように注意して下さい。
腕を下ろし、力を抜いて楽な状態で腰から上を少し揺らしてみましょう。そして、自然に止まるのを
待ちます。きっと良いポジションを見つけることができると思います。
ピストル射撃 4
頭の位置
頭は、まっすぐな状態で標的に対し正対します。
頭を前後左右に傾けてはいけません。頭は身体の中でも重く一番上にあるので、その傾きは身体のバ
ランスに大きく影響します。特に左右に傾けると耳の奥にある三半規管のバランス感覚が崩れ、身体
が揺れる原因となります。ですから左右の目を水平に維持することで、三半規管を正常に保ちバラン
スを保持するのです。
楽に首が回り、標的に対し正対できるのであればイン・ライン・スタンスで撃ちましょう。それが出
来ないなら、頭が無理なく回る位置まで身体を回転させオープン・スタンスで撃ちます。
ピストル射撃 5
グリップ(銃把)
グリップの握り方が射撃の精度を大きく左右させます。
この為、グリップを握る際は、
1) 常に同じ握り方をすること
2) 常に同じ手首の角度であること
3) 常に同じ力で握ること
に注意を払ってください。
グリップは、エア・ピストルやデジタル・ピストルについては各社から S・M・L のサイズが販売され
ているので、自分の手に合ったサイズを選んで下さい。(APS-3 の様なソフト・エアガンの場合はない
かもしれません。)
まずは、引き金に人差し指が十分届くかどうかを確認します。
次に、中指・薬指・小指の 3 本が正しくグリップを握れるものを選びます。
どうしても自分の手にフィットしない場合は、加工する事になりますが、最低 1 ヶ月は使用してから
行わないと後悔することになります。
加工する場所は、1 度に 1 箇所にしてください。再加工する場合は十分検討してから次の加工を行ない
ます。一度に 2 箇所以上加工すると何どこが悪いのかわからなくなるのでやめて下さい。
ピストル射撃 6
グリップの調整が出来たら握ってみましょう。
何時も同じ位置、同じ感覚で握ります。
グリップ・エンドを調整し、掌との間に隙間ができないようにします。
ピストルが手首を中心に回転しないように、まずは手首を固定します。
腕を固定して手首を使って照準を合わせる人がいますが絶対してはいけません。手首を固定し腕の上
下左右の移動によって照準を行わなければいけません。勿論、ピストルを上げ下げする時も手首が動
かない様に固定します。
1)人差し指の第一関節が引き金にかかる様に握ります。
この時、人差し指はグリップや引き金以外の銃本体に触れてはいけません。指が引き金以外に接触し
ていると引き金を引く際に指自体が銃を動かしてしまうからです。
2)親指はグリップに沿って添え、リラックスした状態でおきます。
3)グリップは中指を中心に握りますが、小指は若干力を抜きます。
4)掌の中心にグリップの膨らみがくる様にします。
注意しなければいけないのは、グリップに対し握り方がまっすぐ握れていない場合が多いということ
です。指の短い人などは引き金に届かないので掌を前に巻き込むようにして握る場合があります。
掌を銃に対して真直ぐにあてがうことが大切です。
何度も握り直して、一番相性のいい位置を探しましょう。
そして、その握り方が何時でもできる様に練習して身につけなければいけません。
ピストル競技には、精密射撃と速射射撃があります。また、火薬を使って反動のある場合から光を使
う無反動の場合まで様々ですが、高得点を狙う為には、只今説明した事を守りグリップを握ることが
必要です。
ピストル射撃 7
ピストルの具体的な握り方
1)まず左手で重心んを掴み、右手の親指の付け根にグリップを押し付けます。
2)人差し指はトリガー(引き金)に入れてはいけません。真直ぐ伸ばした状態でピストルに沿う様
に伸ばします。
3)グリップ側面の出っ張りが掌の中心に当たる様にして中指・薬指・小指を自然な形でグリップを
握ります。
4)指の場所が決まったならば一度力を緩め、握る全体のバランスを整えます。
強く握りすぎると引き金をスムーズに引く事が出来ません。また握りが弱いと引き金が重く感じてし
まいます。
小指と、中指・薬指の指先に力を入れてしまうと銃口が下がり、弾の着弾点が下方に行ってしまいま
すので注意して下さい。
撃った後は、グリップを握る力を緩め掌の血流をよくします。また、グリップを握り続けていると手
の感覚が鈍化してしまうので、銃を置いて手の感覚を元に戻す事も必要です。
日本は湿気が多いので、この時タオルで手を拭くことも有効な方法です。
その他にも「手のむくみ」にも注意しましょう。水分の取り過ぎなどに注意して同じ様にグリップを
握れる様にしなければいけません。もし、むくんでしまった場合は、むくんだ状態でのベストな握り
方についても研究しておく必要があります。体調に合わせた最善の握り方が出来たなら、きっと良い
結果を期待する事が出来るでしょう。
ピストル射撃 8
全体の姿勢
立ち方は、「最も心地の良い立ち方」にする事が原則ですが、まずは基本的な姿勢を説明します。
1)足の幅は、肩幅と同じで体重は均等にかける
(ピストル射撃 3 で説明した「立ち位置」を再読して下さい。)
2)膝や肘は曲げてはいけません
3)上体は右腕を標的方向に伸ばした時、バランスを保つ為に上体を標的と反対方向に若干倒します
が、それ以外は上体を真直ぐな状態で保持します。
4)左腕は、ズボンか上着のポケットに入れるか、ズボンまたはベルトに親指を引っ掛けてリラック
スさせ肩が動かない様にします。
5)右腕は真直ぐ自然な状態で伸ばし、手首が回転しない様にシッカリと固定してピストルを把持し
ます。この時、肩や腕に余分な力を加えたり筋肉を緊張させてはいけません。
6)目を閉じて、自然な状態で右腕を標的の高さまで上げてみましょう。銃口の先に標的がなければ
正しい位置に移動しなければいけません。標的が正面にくる位置まで移動しましょう。ここて、正し
い位置にしておかないと毎回余分な負荷を腕にかけることになってしまいます。面倒でも、正しい位
置に立つことが正確な射撃をサポートすることになるので、時間を掛けても正しい位置に立つ様にし
て下さい。
7)基本姿勢が出来たなら、必要以外の筋肉はリラックスさせます。例えは、お尻や顎・肩やお腹な
ど、姿勢を保持すつ為の部位以外は力を抜きリラックスさせて下さい。そして、毎回その姿勢が取れ
る様に練習し体得することが必要です。
ピストル射撃 9
内的姿勢
射撃は、如何に動かない様にするかという静的スポーツですが、筋肉を動かさない様にすることは、
短時間でも生理学的に非常に疲労を招くそうです。ですから、射手は全ての動作を最小限で行える様
に考え、その必要な筋肉に一定の緊張感を与え続けることが出来る様にならなければいけません。そ
の為に、内的姿勢を知る必要があるのです。
内的姿勢とは「ゼロポジション」とも表現されていますが、射手が自分の身体に問いかけて筋肉の緊
張度等の体調を知ることが出来る姿勢です。
この内的姿勢は日々の練習で培われるもので、グリップの握った時の感覚やバランスが良いか悪いか
等々、自分しか分らない事を把握する力といっても良いでしょう。
ですから、何が良いのか、何が悪いのかを見極める力が必要になってきますし、見極める為には絶え
間ない練習を行わないければ、知り得ることが出来ないのです。
「筋肉の記憶」とでも表現すると解りやすいでしょうか?
ピストル射撃 10
呼吸
射撃において呼吸は 2 つに大別することが出来ます。
身体の為の呼吸と射撃の為の呼吸です。
身体の為の呼吸
人は呼吸することによって酸素を取り入れ生存していますが、身体の中で最も酸素を消費するのは脳
です。そのため呼吸が停止すると一番最初にダメージを受けるのも脳です。射撃の場合、目から得た
情報を脳で判断し指に指令を与え引き金を引くのですが、この脳に十分な酸素を送ってあげないと
「目」という情報機関から送られてきた情報を正しく判断出来ないわけです。
ですから射撃を行なう前には、腹式深呼吸を行い脳に充分な酸素を送り込む必要があるのです。
射撃の為の呼吸
射撃において呼吸の停止は 6 秒が理想です。それ以上は脳が酸欠状態になり目から得た情報を誤って
判断してしまうからです。
また過度の呼吸停止は筋肉に痙攣を起こし、突然「ピクリ!」と動く現象が発生します。この時に引
き金を引いたなら、取り返しのつかない結果になってしまいます。
呼吸法は 1 回呼吸法と 2 回呼吸法がありますが、詳しくは後日紹介する呼吸と激発をご覧ください。
ここでは一般的な方法を紹介します。
1)腹式深呼吸を行ったら、息を吸い込みながらピストルを標的の少し上まで上げます。
2)息を吐きながら腕を照準エリアまで下げていきます。
3)正しい照準に近づいて来たら、呼吸を止め正照準します。
4)呼吸を止めてから 6 秒以内で引き金を引くことが出来なかったら、ピストルを降ろして深呼吸し、
もう一度やり直します。無理に照準を続ける事は、照準を外す危険を伴います。
ピストル射撃 11
照準
マスターアイ
利き腕がある様に「利き目」があります。これを「マスターアイ」と言います。射撃を行う場合、マ
スターアイで照準する様にしましょう。
多くの人は右目がマスターアイですが、中には左の人もいます。では貴方のマスターアイを調べてみ
ましょう。
1)両目を開けて人差し指で標的の黒点を指差します。
2)左目を閉じて右目で見た時、人差し指が黒点を示していれば、貴方のマスターアイは、右目です。
3)右目を閉じ左目で見た時、人差し指が黒点を示しているのであれば、貴方のマスターアイは左に
なります。
正しい照準
正しい姿勢で正しい呼吸法に基づきピストルを真直ぐ垂直に目線まで上げたならば、照準は黒点の付
近に来ていると思います。
照星の凸と照門の凹の最上面を水平に合わせ、黒点の最下点(時計の 6 時の位置)にその面が合う様
に照準します。
手首を使って合わせてはいけません。腕の上下移動で合わせます。
左右については、照星の凸が照門の凹の中央にあり、凸の両側に均等の隙間がある事を確認して下さ
い。凸の中央が黒点の最下点(時計の 6 時の位置)に合わせます。
左右の照準も手首で合わせるのではなく、腕を左右に移動させ照準しなければいけません。
精密射撃では、最下点を狙う照準が用いられていますが、速射競技の様に正確さよりも素早さを重視
する場合は、黒点の中心を狙うセンター照準という方法もあります。
センター照準とは、黒点の最下点から黒点の中心に高さを変えるだけであり、基本的な事は何も変わ
りません。
ピストル射撃 12
なぜ腕の上下左右で照準するのか
腕の上下左右で照準した場合、ピストルは標的に対し平行移動しながら照準する事になるので、手元
のピストルの誤差と標的面での誤差は平行移動した分だけ外れます。
ところが、手首を回転させて照準すると標的に対しピストルが角度を付けて照準する事になるので、
手元のピストルはわずかな誤差でも距離が長くなれば長くなる程、標的面での誤差は大きくなるり、
予想以上に外れてしますのです。
だから、手首はシッカリと固定して、腕の上下左右で照準する事が大切なのです。
凹に焦点を合わせる
もう一つ注意をする事は、照門の凹に目の焦点を合わせることです。
初心者の方は、標的の黒点に気を取られてしまい、黒点がシッカリ見える様に焦点を合わせています
が、そうすると手元の照星・照門にピントが合わずピストルがちゃんと標的に向いているのかがわか
りません。もしかするとピストルが傾いて角度がついたなら、誤差は標的面では大きくなります。そ
こで、凹に焦点を合わせる様にして下さい。凹に焦点を合わせると凸もはっきり見えて来ますが、黒
点には焦点が合わないのでぼんやり見えてしまいます。でも心配入りません。ピストルに角度がつい
ていなければ、標的面での誤差わわずかなので、当たる確率がぐっと上がるのです。
撃ち始めから撃ち終わりまで、凸凹がシッカリ合っているのを確認出来たなら、必ず良い点が出てい
るはずです。
ピストル射撃 13
引き金
引き金の操作は、ピストル射撃において最重要課題です。
正照準の時に正しく引き金を引くことができれば、全て 10 点に当たります。
しかし全てが順調であっても、引き金が正しく引くことが出来なければ全て水の泡と消えてしまいま
す。
初心者は引き金の引き方に充分注意しなければいけませんが、ベテランは引き金に最大の注意を払わ
なければいけません。
競技用ピストルの多くは、引き金の調整が出来る様になっていますから自分の手に合うように調整す
る事が重要です。
もし、引き金の調整をしても合わない場合は、グリップを加工する必要があります。
引き金を引く位置
エア・ピストルやデジタル・ピストルなどの引き金が非常に軽い銃は、人差し指の指先、つまり第一
節の中心より先の最も感覚が敏感な部分で引き金を引きます。
1kg を超えるような重い引き金を引く場合は、人差し指の第一節と第二節の間、つまり第一関節の溝に
当てるようにします。
ピストル射撃 14
引き金の為の適切な握り
引き金に指を当てた状態で、人差し指は引き金以外のどの部分にも触っていない事を確認して下さい。
人差し指の第三節がグリップやピストル本体に触ってしまう場合があります。
指が触っていると引き金を引く度に指がピストルを押してしまい、せっかくの正照準がずれてしまい
ます。
この様な場合は、中指・薬指の第二関節が標的に面している事が多いので、中指・薬指の第三節が標
的に向く様に握り直してみましょう。
人差し指に余裕が出て人差し指がピストルに触らない様になるはずです。
ピストル射撃 15
引き金の引き方
引き金を引く時は、人差し指の先端を親指の付け根に向けて動かす様に引いて下さい。
ポイントは、第三関節を動かすことなく第二関節のみを動かして引き金を引くことです。
引き金には、必ず「遊び」があります。
カチャカチャと何度か引き金を引いて見て下さい。引き金が落ちる手前までの圧力を感じない間を
「遊び」と言います。そこからゆっくりと加圧していくと引き金が落ちます。この引き金が落ちるポ
イントを「リリース・ポイント」と言います。
ピストルを標的上部に照準を合わせ、息を吐きながらピストルを下げていきます。この時、人差し指
は引き金の「遊び」の分を引き、リリース・ポイント直前まで引き金を引いて、いつでも撃発出来る
様に待機します。
エア・ピストルやデジタル・ピストルなどは、リリース・ポイント直前まで加圧し、正照準になった
ら最小限の指の動きにより引き金を落とします。
引き金を引く時に他人から指が動くのが分らないように引いて見て下さい。
ピストル射撃 16
エリア照準
照準してから引き金を引くまでには、結構な時間がかかります。正照準に照準することは短時間なら
可能ですが、正照準に固定することは、どんなにトレーニングしても不可能といっていいでしょう。
そこで、一定の範囲を狙う「エリア照準」という方法で照準します。
初心者は黒点という範囲で始めて、ピストルが動かなくなって来たら 8 点圏内、9 点圏内、10 点圏内
へとステップアップしていきます。
目標エリア内に入るようになったら、次の目標エリアにアップすることで達成感を得て練習すること
が楽しくなります。自信も付いてくれば練習に対する意気込みも違って来ます。
自分のレベルに合わせながら、楽しく練習することが上達する秘訣です。
ピストル射撃 17
フォロー・スルー
撃発後も照準し続けることをフォロー・スルー(残心)と言います。
正照準であることを目で確認してから脳が引き金を引けと命令し、指が動いて引き金が落ち、弾が銃
口から離れるまでには0.何秒かの時間がかかります。この間に銃口が動いてしまうと、せっかくの
正照準が無駄になってしまいます。
これを防止する為に、引き金を引いた後も 1〜2 秒の間は照星・照門を正しく保持できるようにして下
さい。
引き金を引く時(直前)は、正照準かもしれませんが、引き終わった時(撃発時)も正照準であった
かを確認しましょう。
もし、引き終わった時に右上を狙っていたのであるならば、着弾地点も右上になっていなければいけ
ません。他の場所に着弾していたのであれば、サイト調節やガク引き等の原因を追及しなければなら
ないことになります。
射撃は、「引き金を引くまで」ではなく、「引き金を引き終わった後」もまだ射撃の途中なのです。
大切な事なので、忘れず習慣づけて下さい。
ピストル射撃 18
射撃動作の統合
射撃の姿勢・呼吸・照準・引き金・フォロー・スルー等について照会して来ましたが、これらをス
ムーズに行うことが出来て始めて良い射撃と言えるのです。
据銃(構える事)を完了してから、→照準に近づけ、→正照準になってから、→引き金を引き始める
事は、スムーズではありません。全ての事が完了してから次を行くのでは時間的にも長くなり、不利
です。
正照準になるように据銃し、正照準の時にはすでに引き金がいつでも引ける状態でなくてはいけませ
ん。全てがリンクした状態で行動を起こさないといけないのです。
さらに「ピストルを止める」という静的運動と「引き金を引く」という動的運動を一度に行わなけれ
ばならないのですから、大変です。
例えば「照準エリアにピストルを上げたなら、撃発イメージを頭に描きながら引き金を引く準備をす
る」といった一連の動作が「自動的」に行われるようにしなければいけません。意識しなくても無意
識に出来るようになるまで、何度も何度も同じ事を繰り返し行い身体(
潜在意識)に覚えこませるのです。
そうする事によって、静と動が調和しスムーズに行えるようになるのです。
では、無意識に行えるようにする為にはどうしたら良いのでしょうか?
それは、「意識しながら行う事」なのです。一見矛盾しているように思われるでしょうが、何をしな
ければならないのかを意識しながら練習するのです。それの繰り返しが無意識に行える事につながっ
ていきます。
日本人の多くの人は、知らない間にお箸を巧みに使ってモノを挟む事が出来ますが、小さな頃は親に
叱られながら箸の持ち方を覚えませんでしたか?毎日の繰り返しが深く考えなくても自然に豆をつま
めるくらい無意識に行える様になるのです。
何も考えなくても自然に同じ事が同じ様に出来るまで練習して見ましょう。
ピストル射撃 19
撃発に適した時間コントロール
引き金を引く時間が短いと「がく引き」(急に引いたり、力を入れすぎたりするとその勢いで銃口が
動いてしまい、大きく外れてしまう事)になりやすく、逆に長いと筋肉疲労と酸欠で正確な照準が出
来なくなるので、適切な時間コントロールが必要です。
照準に入ると最初は大きく揺れますが、徐々に揺れが収まって来ます。照準に入った段階で安全金の
中に人差し指を入れ、遊びの部分を引いて照準エリアに近づくのを待ちます。照準エリアに入ったら
リリース・ポイント手前まで加圧し、いつでも撃発出来る様に準備して指が動くのが分らない様に撃
発します。その後、フォロー・スルーを行いピストルを下ろします。
腕を上げてから射撃終了までは 10 秒以内、リリース・ポイントから撃発までは 2~4 秒以内で行える
様に練習して下さい。
この時間を超えてしまったら、ピストルを下ろして最初からやり直しましょう。
時間内で、常に射撃出来るように潜在意識に叩き込んでください。
ピストル射撃でよくある失敗は、時間内に撃てなかった時の次の射撃が「がく引き」になりやすいと
いう事です。
失敗しないように完璧な射撃をしようとして「力んでしまう」のが原因のようです。
失敗しても成功しても、同じ事が同じ様に出来るまで頑張って練習してください。
ピストル射撃 20
呼吸と撃発
呼吸法は、1 回呼吸法 と 2 回呼吸法 があります。
1 回呼吸法
据銃からフォロー・スルーまでを 1 回の呼吸で行います。
1)腹式呼吸で息を吸い込みながら胸の拡張を行い、腕を標的の高さより少し高いところまで上げま
す。
2)息を吐き出しながら胸の収縮を行い、腕をゆっくりと下げていきます。排気ともない自然と腕が
下がる感じです。
3)照準エリアに入ったら呼吸を止めますが、この時の肺の中の酸素量は 30~50%程が適量です。
4)呼吸を止めると同時に最終的な照準を行います。
5)呼吸を停止した状態で正照準を確認し、正しい引き金を引きます。
6)呼吸を停止してから 6 秒で引き金が引けるようにするのが理想です。
7)撃発後、フォロー・スルーを行ったら、呼吸を元に戻して腕を下ろします。
2 回呼吸法
据銃からフォロー・スルーまでを 2 回の呼吸で行います。
1)腹式呼吸で息を吸い込みながら胸の拡張を行い、腕を標的の高さより少し高いところまで上げま
す。
2)息を吐き出しながら胸の収縮を行い、腕をゆっくりと下げていきます。排気ともない自然と腕が
下がる感じです。
3)照準エリアに入ったら少し息の吸い込みを行います。この呼吸により、腕は少し上がりますが、
その動きはゆっくりとしたものにはるはずです。
4)少し吸った息を出しますが、吐き出すのではなく空気が漏れる程度にゆっくりと出していきます。
照準は息を抜いていくと共にゆっくりと下がっていきます。
5)正しい照準になったら呼吸を止めますが、この時の肺の中の酸素量は 30~50%程が適量です。
6)呼吸を停止した状態で正照準を確認し、正しい引き金を引きます。
7)2 回目の呼吸を停止してから 4~5 秒、照準から撃発まで 3~6 秒が理想です。
8)撃発後、フォロー・スルーを行ったら、呼吸を元に戻して腕を下ろします。
ピストル射撃 21
具体的な射撃動作の統合(内的側面)
1)正しい位置に立っているかを確認し、筋感覚を意識しながら姿勢準備をとります。
(ピストルを握り、机の上などの保持具の上に置き照準する動作の準備に備えます。)
2)呼吸を整え、最後の呼吸を吸い込むと共に銃を上げ始めます。
(ピストルは、照準エリアを真直ぐ下から上に通過し、最上位値のポイントまで進みます。ここで、
照星・照門を合わせ正照準のイメージを頭に中に描きます。)
3)正照準のイメージを保持したまま、息を吐きながら照準エリアまで銃を下げます。
(この時の意識は、姿勢の保持と照準に集中します。姿勢が完了すると姿勢と照準の意識は潜在意識
(下意識)に引き継がれ、引き金を引くことに意識を集中します。)
4)引き金を引くことに意識を集中し、遊びを引いてリリースポイント直前まで絞り込みます。
(この時の意識は、引き金をいかにスムーズに引くかに置かれます。)
5)引き金の準備が完了したならば、引き金のコントロールを潜在意識(下意識)に引き継ぎ、意識
は照準に移行します。
(意識は、正しい照準をすることに置かれます。意識が照準のコントロールする間に、潜在意識(下
意識)により引き金が引かれ撃発が起こります。)
6)激発後、フォロー・スルーに移行しますが、意識は引き続き照準に置かれたままです。その後、
ピストルを置きます。
(意識は撃発後も照準に置かれ、決して着弾点(標的)に意識(視線)を向けてはいけません。標的
に視線を向けた途端、フォロー・スルーは消滅してしまいます。)
ピストル射撃 22
射撃リズム
各諸動作が連続して一連の動きを作っていきます。
姿勢確認→据銃→照準→撃発→フォロー・スルー
この流れをスムーズに行わせるのが、リズムです。
何処か目詰まりすると、この流れが途絶えてしまい停滞することになります。
清流は、流れていて始めて「清流」と言えます。
溝にゴミなどが溜まると流れは鈍り水も淀んでしまいます。
溝に溜まったゴミを取り除くと流れはスムーズになり、濁ることなく流れていきますが、これを怠る
と溢れ出てしまいます。
あなたの技術を溝の幅だと考えてください。
幅が広ければ多少のゴミが有っても溢れ出る事はなく、サラサラと流れますが、10 点にも当たります
が 2 点にも当たってしまいます。
しかし、10 点を狙うのであれば、10 点にだけ通じる細い溝が必要です。溝が細ければ細い程、ゴミは
水を溢れ出させる原因に繋がります。ちょっとした目詰まりで、9 点にすぐに溢れ出すでしょう。
高得点を狙うのであれば、ゴミを排除する必要があるのです。
「溝」が技術習得という「練習」なら、「ゴミを排除する」のは、中断・やり直しという「習慣」に
なります。
あなたは、良い習慣を身につけ清流というリズムを確保しなければならないのです。
ピストル射撃 23
速射射撃 基本的な考え
速射射撃とは定められた短時間内に定められた弾を発射しなければならない競技ですが、基本技術は
精密射撃と同じです。
但し、一度号令がかかると、必ず時間内に射撃しなければならないので、精密射撃の様にやり直す事
が出来ません。
そこで、精密射撃を基本に速射射撃に対応する為、いくつかの変更が加えられます。
速射射撃 姿勢
1)速射の姿勢は、短時間勝負なのでイン・ライン・スタンスを推奨します。首の動きなどが辛いで
すが、精密射撃の様に長時間に渡るものではないので、腕の上げ下げが容易でピストルが動かない様
に保持できるイン・ライン・スタンスが有利だからです。
イン・ライン・スタンスが無理な方は、10~45 度の間でのオープン・スタンスでも結構です。
2)両足は並行に置き、足幅は精密射撃の時よりも広めにとります。これは、垂直に昇降する際のピ
ストルの重さに対するバランス対策です。
3)体重は両足に均等に配分し、足から胸までの関節はひねる事なくまっすぐに積み重ねます。
4)ピストルを持たない手はバランスを取る為、ポケットに入れるか、ベルトに引っ掛けて、リラッ
クスさ肩が動かない様にします。
5)頭の位置は垂直で、首を回すことで標的が真直ぐ見える様にします。首が回らず、標的に対し斜
めに向く様であれば、正しい照準が出来ません。首が正面に向く様にオープン・スタンスに変更しま
しょう。
6)肩の力を抜き、自然に下げられた状態を保ちます。
7)ピストルを持つ手は、目と照星・照門の距離が常に一定になる様に肘を伸ばして保持します。
8)全体を通して、筋肉の緊張に関しては自然体です。
強くもなく弱くもない状態を保ちましょう。
基本は精密射撃と同様に貴方に合った姿勢であること、いつも同じ姿勢でいられること、腕や手首で
ごまかすことなく足の位置や向きで理想の姿勢を作ることが大切です。
ピストル射撃 24
速射射撃 グリップの握り
グリップの握り方も基本は同じですが、連続して撃たなければならないので次の事に注意してくださ
い。
1)グリップを固く握りますが、親指は軽くグリップの上に置く程度で押し付けるような力をかけて
はいけません。
2)中指・薬指・小指をグリップに巻きつける様に握りますが、特別な圧力はかけません。これで、
グリップに対して指による横方向への特別な力の影響を防ぐ事が出来ます。
3)反動は手首の中央に伝わる様にします。
4)重要な事はグリップが常に同じ方法で握る事です。このため、筋肉の感覚を作り上げることが重
要であり、空撃ちは理想的なトレーニング方法です。
ピストル射撃 25
速射射撃 頭の位置
姿勢を作り上げる際に頭を動かすことで標的とピストルの位置関係を微妙に調整することは可能です。
しかしこの方法は、首や体のバランスを保っている筋肉の疲れと共に、体が動いてしまう原因に繋
がってしまいます。
基本的には、頭の位置を動かすことなく据銃出来る姿勢を取るべきで、どうしても頭を動かさなけれ
ばいけない状況に陥ったのなら、最小限の調整にとどめるべきでしょう。
一度正しい姿勢を決めたのなら、決して動かしてはいけません。
照準動作は、動かない頭を基準とし目の動きだけで短時間に行わなければいけないからです。
ピストル射撃 26
速射射撃 照準
精密射撃と速射射撃では、照準方法に違いが出てきます。
速射射撃では「精密」さより「素早さ」が要求されることから、標的の最下点を狙う方法から標的の
中心を狙う方法(センター照準)が用いられます。
センター照準においても一定のエリア内に留めるよに心がけ、エリア内に入ったらすぐ撃つのではな
く、しっかりと留まっているのを確認して引き金を引く様にします。
尚、速射射撃ではエリア射撃の重要性が増すのでその点を十分注意して引き金を引いてください。
ピストル射撃 27
速射射撃 引き金
引き金の引き方も基本は精密射撃と同じと考えてください。
注意するべき点は、人差し指が引き金以外に触れていないことを確認することです。人差し指が銃に
触っていると引き金を引くたびに銃が動いてしまう現象が起きてしまいます。
引き金に関しては、敏感になってください。ほんのチョットした事が、大きなミスにつながってしま
います。
練習や競技中、引き金が重いと感じた事は有りませんか?
この様な場合は、グリップを強く握りすぎていることが考えられます。指の先端を確認してください。
もし指先が白くなっていたら、それはグリップを強く握りすぎて血液の循環が阻害されているからで
す。
引き金が重たいと感じるのは、人差し指以外に余分な力が入り、他の指と協調しながら引こうとする
為に重く感じてしまうのです。
グリップが手に合っていない場合や不必要な筋肉の緊張が認められますのでグリップを調整したり、
正しく引き金が引ける様に練習してください。
ピストル射撃 28
速射射撃 腕のコントロール
照準圏の中での保持すべきピストルの最終的位置は、腕を上昇させる縦方向のスピードに深く関わっ
てくるので、標的が向き始め射撃動作がスタートしたら、毎回同じスピードで照準圏の中にピストル
を持ってこなければいけません。
もしピストルを上げる速度が毎回違っていたら、腕を上昇させたりピストルを保持したりする為の腕
の筋肉が違ったスピードで動くことになるので、毎回標的の正しい位置に照準することが出来なくな
ります。
ですから、トレーニングにおいて内的姿勢を強く意識しながら練習することが大切なのです。
一般的な速射射撃の射撃動作
(射撃時間は、種目により違いも出てくるので各種目に合わせて読み替えて下さい。)
1)射場役員の「ロード」の号令で弾込めを行なう
数回の据銃動作を行い、姿勢の確認や筋肉の緊張を解く
2)1 分後に射場役員の「アテンション」の号令でレディーポジションを取り射撃開始に備える
3)7 秒後にグリーンランプに変わると同時にレディーポジションからピストルを上げ照準し撃発を行
なう
4)撃発後、フォロースルーを行い、ピストルを下ろす
5)3 秒後にレッドランプが点灯し射撃が終了するので、射撃に備えレディーポジションを取る
6)7 秒後にグリーンランプが点灯し、2 発目の射撃が開始される。
7)合計 5 回の射撃が行われ、速射射撃が終了する
ピストル射撃 29
速射射撃 据銃動作
据銃動作でのピストルの動きは、上げ初めは早く、標的に近づくにつれて次第にゆくりとなり、流れ
る様に滑る様に行います。
レディーポジションを取る時からすでに据銃、照準動作は始まっています。
1)腕の筋肉の緊張とグリップを握る力は一定であり、手首は固定されている。
2)頭はまっすぐな状態で、顔は標的に対し正対している。
3)姿勢は大まかであるが、目・リアサイト・フロントサイトが一直線となる。
4)視線は標的とフロントサイトの中間地点(もしくは標的の下付近)におきグリーンランプの点灯
を待つ。
5)グリーンランプに変わると同時に、ピストルを持つ腕は、初めは早く、10 点圏に近づくにつれ次
第にスピードを緩め照準圏にピストルを誘導し撃発位置(範囲)で静止させる。
急激過ぎる動作は、据銃の方向を乱し、姿勢に大きな動きを生じさせる。
6)ルール上は 3 秒間の撃発時間があるが、2.4 秒以内に終了すること。
ピストル射撃 30
速射射撃 引き金操作
1)速射射撃では、撃発動作を毎回同じタイミングで始めることが重要なので、ピストルを上げると
同時に引き金を引く動作を始める。
2)引き金操作は、ピストルを上げる動作と連動し、初めは早く引き撃発エリアに近づくにしたがい
引く速度を緩め、撃発エリアに入った時にはわずかな力でスムーズに引き金が引け激発出来るように
する。
3)撃発エリアに入った時に、引き金がわずかな力で引ける方が銃への影響は小さくすることができ
るので、ギリギリまで引き金を引くことが重要だ。
4)ピストルを保持する腕と、引き金を引く指とが違和感無くスムーズに連動して動かなければいけ
ない。
ピストル射撃 31
速射射撃 照準操作
速射射撃では、限られたわずかな時間内に射撃を完了させるために据銃動作と引き金操作が行われて
いる間に、照準が容易かつ正確に行える様に照準の準備(視線の移動)を行います。
1)レディーポジションでの待機中は、グリーンランプの点灯確認のため、標的とサイトの中間地点
付近に視線を持っていく。
2)グリーンランプ点灯後、据銃が始まりピストルが腕と共に上がるので視線はサイトに移り始める
が、照準線が標的の下端に来たら焦点は完全にサイトに移っていなければいけない。
3)据銃が完了した瞬間には、正しい照準が完了していなければいけない。
4)速射射撃での照準圏は選手ごとに異なるが、射撃場の明るさや選手のコンディションにも影響さ
れるので、その時々に合った照準を行わなければいけない。
5)ベテラン選手は、いかなる状況下でも撃つことが出来るように自分の照準圏を持っており、これ
は練習によってのみ得るこっとが出来る。
ピストル射撃 32
速射射撃 リズム
速射のそれぞれの射撃は、いつも同じ動作、同じ時間で出来るようにしなければいけませんが、これ
は練習で身につけることが出来きます。
撃発のリズムは、選手の意志によって決定されますが、良いリズムは安定した成績を選手にもたらし
てくれます。
良いリズムとは、即ち正しい順番でスムーズに射撃が行われた証拠といえるので、どの順番が正しい
のかを自らが理解していなければいけません。
一般的に下から上に、つまり足の開きやバランス、体の姿勢や向き、腕の上げ下げ、グリップの握り、
引き金、照準、撃発、フォロー・スルーといった方向性や時間軸を考慮に入れたチェック機能を作る
ことが大切です。
全てのチェックが短時間で行える様に暗号化し、言葉に出す事でリズムを作り出すという方法もあり
ます。ゴルフでいう「チャー・シュー・メーン」のような秘密の合言葉です。
大会や練習で上位の選手を観察し、自分のリズムを作り出す方法を考えることも必要でしょう。
ピストル射撃 33
エラー修正
標的の中心を狙っているのに当たらないのは、原因があるからで、その原因を見つけ出し対策を講じ
れば標的の中心を撃ち抜くことはできません。
考えられる原因は、
1)弾に原因がある場合
2)ピストルに原因がある場合
3)射手に原因がある場合
です。
1)弾に原因がある場合
弾は、自分では作ることが出来ません。また、弾とピストルとの相性もありますので、何種類かの弾
を撃ち分けて見て、その中から一番良く当たる弾を使用する事がたいせつです。
また同じ製品でも、製造過程による違いも出てくるので、相性の良い弾が見つかったなら同じロッド
のものを買い貯めておくことも必要でしょう。
値段が安いからといって飛びつくと着弾率が悪く結局損をしてしまうことになるので、そういった弾
は、引き金やリズムなどの得点に関係ない練習に使い、試合や得点を取る練習には、高くても信頼性
のある弾を使用しなければ、エラーを修正することは出来ません。
2)ピストルに原因がある場合
ピストルの構造や機能について熟知しなければいけません。ネジの緩みや磨耗により、些細な振動で
試合中に突然とんでもない事になるかもしれません。使用前の点検は射手としての責任であり、安全
の確保につながりますので必ず行うようにして下さい。
定期的に点検にに出す事も信頼性を確保する一つの方法です。
3)射手に原因がある場合
標的を外れた場合の大半の原因は、射手に原因(エラー)があります。
照準が正しいのに、着弾が外れている場合は、自分が気付いていない何か大きな問題が生じている場
合があり、着弾を分析することによってエラーを見つけ出すことができます。
射手によるエラーは、
(1)照準のエラー
(2)引き金の引き方のエラー
(3)姿勢のエラー
(4)グリップのエラー
(5)集中のエラー
に分けられることが出来ます。
ピストル射撃 34
照準のエラー
射手の視力の低下や矯正が不十分な場合は、正確な照準が出来ないので、正しい照準が出来るように
することが大前提です。
1)不正確なサイトによるエラー
照星・照門での左右上下の小さなズレは、標的面では大きなズレになってしまいます。このエラーは、
不正確な照準で撃発することが原因なので、撃発するまで「正確に照準しているか」を観ることで解
決することができます。
2)照準における平行エラー
照星・照門が正しい位置関係にあっても標的から外れている場合は、平行エラーと呼ばれ、照準は正
しいので平行に移動した分だけ標的面でズレるだけなので着弾点は思ったより大きく外れる事はあり
ません。
3)ピストルの傾きによるエラー
ピストルを傾けて照準することにより発生するエラーです。毎回ピストルを傾ける角度が同じなら問
題ないのですが、照星・照門が斜めになることから照準動作の中で問題が生ずる可能性が高くなりま
す。
ピストル射撃 35
引き金のエラー
引き金での些細なエラーは、簡単に標的の中心から着弾を外してしまいます。間違った引き金の引き
方は、標的面に偏った着弾として現れます。
スナッチ・トリガー・リリース
引き金を急激に人差し指の根元に向かって引っ張るような引き方をすると、着弾は右方向に集中しま
す。他のエラーが重なると着弾は右上または右下に集中することになります。
ジャーキング・トリガー・・リリース
引き金を急激に押すような引き方をすると着弾は左方に集中します。他のエラーが重なると着弾は左
上または左下に集中することになります。
このように着弾からエラーを分析し、正しい引き金の引き方に修正して行けば良いのです。
ピストル射撃 36
引き金のエラー 引き金と指の位置
引き金にかかる指の位置が間違っていると、ピストルを左右に押すか、あるいは引くことになります。
1)引き金に対して指が浅くかかっている場合
人差し指の第一節の先端がかかっている場合は、右側に着弾する場合が多い。
2)引き金に対して指が深くかかっている場合
人差し指の第一関節に近いところで引く場合は、引き金を押すことになるので左上に着弾する場合が
多い。
3)引き金の外側に指がかかっている場合
引き金を引く力は、内側にかかるので右側に着弾する場合が多い。
しかしジャーキングな引き方をすると、力が相殺されて結果的に良い引き方となる。
4)引き金の内側に指がかかっている場合
引き金を引く力は、外側にかかるので左側に着弾する場合が多い。
ピストル射撃 37
引き金のエラー その他の原因
1)意識しすぎた引き方
射手が引き金を意識し過ぎて引いた場合は、標的の下側に着弾する場合が多い。
2)腕と肩に緊張を生じさせた場合
撃発によって腕と肩に筋肉の緊張を生じさせた場合は、高い位置に着弾する場合が多い。この場合、
フォロー・スルーの照準も高い位置で留まる場合が多いので、比較的原因が分かりやすい。
十分なフォロー・スルーを行わない場合も同様の傾向が見られる。
ピストル射撃 38
姿勢のエラー
姿勢をとった後に、目を閉じてピストルを標的に向かって上げて見て下さい。目を開けた時にピスト
ルは標的に正しく向いていますか?
向いていなかった場合、貴方は腕の筋力で正しい位置に修正したとしましょう。最初は当たるでしょ
うが、疲れてくると自然に腕は元の位置に戻ってしまい、横方向に思わぬ失点をすることになります。
このような場合は、腕の筋肉で修正するのではなく、足元から正しい位置に修正すべきです。そうす
ることによって、何度腕を上げ下げしても同じ位置に留めることが出来るようになるのです。
ピストル射撃 39
グリップのエラー
1)手とグリップが合わない場合
手とグリップが合わない、あるいはグリップに欠陥があると、ばらついた着弾として現れます。手に
合ったグリップに変更する必要があります。
2)グリップの握りが弱い場合
グリップの握りが弱いと、ピストルの重量が手の開いている方向に逃げようとします。また、正しい
照準でも撃発の反動が弱い部分に逃げようとするのでピストルが握りの弱い方に動きます。その結果、
銃身は下がり、手の空いている左方向にピストルがズレるので、左下に着弾する場合が多い。
3)グリップの握りが強い場合
グリップの握りが強い場合は、ヒールレスト(グリップの底部)を押すことになるので、右上方向に
ピストルを押し上げることになり、右上方向に着弾する場合が多い。
ピストル射撃 40
無理な姿勢によるエラー
インライン・スタンスをとろうとして無理をすると多数の良い着弾の中に左方向にズレる少数の着弾
が現れます。
原因として考えられるのは、
1)首が十分回りきれていないため、標的に正対しておらず目が斜めの状態で照準するため
2)インラインスタンスをとろうと過度に首を回すことで、目と首に負担がかかってしまうため
の二つが考えられます。
目に負担がかかると、視線は楽な方に戻ろうとします。視線が移動すれば視線の動きにつられて腕が
視線の方向に動いてしまいます。
集中力が続いている時は良いのですが、疲れやふとした事で集中が途切れると左方向にズレてしまう
のです。
身体が休息を必要としている兆候と考えられます。
ピストル射撃 41
集中でのエラー
最も多いのは、集中の途切れによるエラーです。この状態で射撃を続けても射撃動作の中で現れるエ
ラーを見過ごしてしまい、まとまりのない着弾になります。
騒音や光の変更、記録や残り時間、その他諸々の気がかりなことが精神集中を妨げます。
精神集中の欠如から生じる着弾は、特定のパターンを持たない、バラバラの着弾が特徴です。
練習であるならば、休息するという手段も良いでしょう。しかし、大会なら、休息することも出来ま
せん。このような場合は「今自分は何をしなければいけないのか」を問いただし、やるべき事をき
ちっと果たす事を考えなければいけません。
それが出来るように、日頃からメンタル面も強化しなければいけないのです。
ピストル射撃 42
エラーの分析
エラーの原因を見つけ出す為に、冷静かつ適切に結果を分析しなければいけません。
分析は、射撃動作(フォロー・スルーや撃発後に残る射撃イメージ)と、標的に残る着弾を中心に行
います。
原因を発見すれば、同じエラーを防止することが出来ます。
原因の中には、弾や銃に原因の場合があると知っていることが大切です。全てのエラーを知って追求
しなければ、間違った対応をすることになり、分析の意味を失うからです。
分析は、練習中でも大会競技中でも常に実施して、次の 1 発に活かしていかなければ意味がないから
です。
この繰り返しが、「良い撃発とは、どんなものなのか」が明らかになり、下意識にイメージとして刷
り込まれて行くのです。
正しい射撃のイメージが、下意識に一度作られると「間違った射撃」を容易に止めることが出来るよ
うになるのです。
些細なことでも、撃発準備に間違いがあったのなら、ピストルを下ろしてスタートに戻る習慣をつけ
て下さい。
常に完璧な 1 発を撃つことだけを考えてくれれば良いのです。
ピストル射撃 43
エア・ピストル 姿勢と握り
日本におけるピストル競技の多くはエア・ピストル競技と言っても良いでしょう。その他には、銃刀
法の規制を受けないデジタル・ピストルや BB 弾を使用するエアーガンなどがありますが、エア・ピス
トルと共通項目が多いので参考にしてもらえれば幸いです。
1)姿勢
競技時間が長いので、安定した姿勢を確保することが大切ですが、標的交換などの操作も行うので繰
り返し同じ姿勢が取れるようにしなければいけません。
長い試合時間中、同じ姿勢を取り続けることは難しいので撃発の後に姿勢を取り直すことも必要です。
じっとしていることで、静脈血が足に溜まり痺れを伴う場合もあるので、適度に動き血液の循環をよ
くすることも必要です。動くことでリラックス効果も得るので為して見て下さい。
2)握り
規則の範囲内で自分に合ったグリップを作成することは認められています。ヒールレスト(グリップ
エンドに付いている手を抑えるもの)は銃口の重さに対処するものですが、日々の生活や季節によっ
て生じる手のむくみによる変化に対応出来るよう調節出来るようになっていなければいけません。
握り直しても同じように握れるようにすることが大切です。特にポンプ式のピストルは、ポンピング
のたびに握りにズレが生じることがありますので、毎回同じ把持が出来るようにしなければいけませ
ん。
ピストル射撃 44
エア・ピストル 呼吸と照準
1)呼吸
射撃を行う場合は呼吸を停止しますが、例え短時間であっても数が増えれば体内の酸素量が徐々に減
少しパフォーマンスを低下させてしまいます。深呼吸をして十分な酸素を定期的に体内に取り入れリ
フレッシュすることは非常に重要なことです。室内競技で多くの選手がいる場合は二酸化炭素の量も
増えるので、室外に出れる時間があるならば新鮮な空気を得るために外に出て休息することを薦めま
す。これは、精神的にも非常に良いことです。
2)照準
フロントサイトは、黒点と同じ幅になるものを使います。リアサイトも少し幅のあるものを使用する
と過度に神経質にならないので長い時間安定した照準ができて良いでしょう。但し、ファイナル競技
のような短時間で高得点を狙う場合は、ぐっと絞り込むことも必要です。
室内競技とはいえ射撃場によって照明の色や明るさも違ってきます。そこで黄色やグレーなどの色付
きレンズや可変式の絞り込み板を使用し、日頃練習している環境に近い状態を作り出しましょう。
エア・ピストルの場合、標的とサイトの距離が 10m しかないので、サイトに焦点を持ってきてもすぐ
に標的に焦点がいってしまいます。そこで、若干弱い度数のレンズを使用することで標的を適度にボ
カしサイトをクッキリと見ることができます。これは照準する場合、非常に有効です。
ピストル射撃 45
エア・ピストル 引き金
引き金は、エア・ピストルにおいても最も重要なポイントです。
エア・ピストルでは、引き金が引かれた瞬間から弾が銃身を通り銃口から離れるまでに一定の時間が
かかってしまいます。この時間をリリース・タイムと言います。
最近のエア・ピストルは圧縮空気を使用しているので、リリース・タイムが短くなってきたと言われ
ていますが、火薬を使用した弾と比べると格段にスピードが遅く時間がかかります。
このリリース・タイムの間に銃が動くと弾は慣性の法則によって標的面に到達するまでに大きなズレ
を生じてしまうのです。
(エアーガンのリリース・タイムは更に長くなります。)
このため引き金の操作は、完璧でなければならないのです。
エア・ピストルでの引き金の初歩的なエラーは、照準している時は徐々に引いているのですが、正し
い照準になった時に弾かれたように引き金を引いてしまうことです。このエラーは、初心者にかかわ
らず慣れてきた人にも起こりうるエラーなのです。
あまりにも正しい照準や保持に集中することで、引き金を十分な力で引けない時に起こります。引け
ないことで、脳が「早く引け」と命令を出し、一気に引き金を引くことになるのですが、この時すで
に把持する力は徐々に緩み始めているので、ピストルが跳ね上がったり、逆にしたを向いてしまった
りして予想外の着弾となるのです。
ですから、引き金操作は射撃の最重要課題といっても良いのです。
ピストル射撃 46
エア・ピストル 引き金の調整
ほとんどのエア・ピストルは、二段引きになっています。
1 段目は、引き金の「あそび」と言われる部分で引き金が落ちる手前までの引圧がほとんどかからない
部分です。
2 段目が、加圧して引き金が落ちるまでの部分になります。
引き金の調整は「2 段が認識でき、かつ明確に引き落とすことが出来る引き金(2 ステージ・トリ
ガー)」か、「引き金の 2 つの段階が 1 つの絶え間がない動きとなる引き金(オールオバー・トリ
ガー)」の 2 種類がありますが、いずれのタイプであっても明確な引き落としが出来るように調整し
てください。
競技では、引き金の重さは 500g 以上となっています。一般的には、1 段目が 300g+α、2 段目が更に
200g+α という設定になっているので引き金の重さは、550~600g 程度に調整されています。
ピストル射撃 47
エア・ピストル フォロー・スルー
フォロー・スルーは、引き金同様重要な項目です。
エア・ピストルは、火薬を使用する銃と比べると理論上、撃発時の反動は皆無といっていいでしょう。
しかし、撃発後も確実に銃が動かない様に保持しなければいけません。フォロー・スルーは、照準過
程の一部であり、同時に射撃の終了を意味します。
フォロー・スルーは、着弾点を正しく誘導する役割があります。
ですから、正しい照準であっても弾が銃身通過中に照準がずれてしまうと正しい照準地点には着弾し
ません。
逆に、引き金を引いた時に正しい照準でなかったとしても、弾が銃身通過中に正しい照準に戻すこと
が出来れば、正しい照準場所に着弾させることが出来るのです。
そう考えると弾の速度が遅いエア・ピストル(もっと弾足の遅いソフトエアーガンも含む)のフォ
ロー・スルーの必要性がいかに重要なのかが分かってもらえると思います。
積極的なフォロー・スルーは、地道な練習によって会得することができます。大切なのは、エリア照
準で行なえるかどうかです。
ピストル射撃 48
トレーニング
トレーニングの目的は、射撃能力(パフォーマンス)の改善です。
改善ですから、改めて善くしようとすることです。
パフォーマンスとは、複数の技能が連携して出来上がっていますので、全ての技能を考慮して行わな
ければいけません。技術面だけよければ良いというものではありません。集中力に欠けるなどの要因
があれば、せっかくの技術も試合で生かすことはできないでしょう。
効率良く大きな成果をあげたいのなら、自分が必要としている技術を考えながら異なったトレーニン
グを組み合わせて行うべきです。
トレーニングの組み合わせは、今の貴方に必要なものを組み合わせて行うべきですが、射撃レベル・
練習時間・コーチングの有無・試合スケジュールを考慮して組み立てなければいけません。
適切なトレーニングの組み合わせは、ピストル射撃を続けようとする熱意を継続させ、トレーニング
から生じる退屈感を防いでくれるからです。
さあ、次回からトレーニング計画について勉強しましょう。
ピストル射撃 49
トレーニング計画
現在、スポーツ界においてトレーニング計画の重要性は十分認識されており、トップアスリートは全
てといって良いほどトレーニング計画を立てています。
しかし、一般選手のほとんどがその重要性を認識しておらず、行き当たりバッタリのトレーニングと
いう名の練習をしているのです。
現代のトレーニング計画とは、期間・構成・多面性・負荷・休息・基礎訓練・技術訓練・専門体力に
別れ、計画が立てられています。
トレーニングは、事前にトレーニングの重点項目と目標を定める必要があります。これが決まってい
ないと、射座に立って始めて「今日は何をしよう?」と考え、その日の気分によって練習始めるので
す。
結局、当てもなくさまよい歩き、目的地に到達することなく疲れ果ててしまうわけです。
これは、トレーニングではなく単なる気まぐれの練習なのです。
勝利を目指す選手は、トレーニング計画で体系的に作られた課題に取り組み、自分の持つ問題点を克
服して行くのです。
一般的に、トレーニングは次のようにくぶんされます。
1)数年(4 年位)にわたるトレーニング計画(オリンピック単位)
2)年間トレーニング計画
3)月間トレーニング計画
4)週間トレーニング計画
5)1日トレーニング計画
数年にわたるトレーニング計画
オリンピックを狙う選手などは、数年かけての計画を立てなければ勝てません。また学生さんなどは、
在学中の 3 年間(大学生は 4 年間)という期間を見据えて計画を立てる必要があります。
トレーニング計画では、技能を体系的かつ継続的に高めて行くように課題を設定しクリアーさせて行
くことが大切です。
課題を達成してしまった場合、燃え尽き症候群となってしまう場合もあるので、直ちに次の課題を設
定して新たなる目標に向かって進めるようにしなければいけません。
ピストル射撃 50
年間トレーニング計画
年間トレーニング計画では、1 年を準備期・試合期・移行期の 3 つの期間に分けます。
順番が少しずれますが、その年のシーズンが終わった直後に、次のシーズンの大会に合わせ計画を立
てる必要がありますが、これが移行期に当たります。
1)移行期
移行期は、試合期が終了してから準備期までの間でこの間に
(1)本年度のトレーニング評価
(2)銃、装備品の再考
(3)次年度のトレーニング計画の作成
を行わなければいけません。
この計画は、本年度のトレーニング評価を行い結論を出してから作成することが重要です。
この時に評価すべき点は次の項目です。
ア、昨年と比較して成績は上がったか?
練習の平均点、試合での成績平均はどうであったかを過去 2 年にわたり評価する。
イ、姿勢は技術的に見て正しいか?
今の姿勢で、成績向上は可能か。今の姿勢に欠点を見出したか。姿勢を変えるべきか、その 理由は何
か。
ウ、多くのシリーズ、もしくは長時間での姿勢に欠点はあったか?
エ、体の体調(コンディション)は、どうだったか?
オ、どれくらいのトレーニング日数が、病気や休暇で消失したか?
カ、いつ、最高の状態に到達したか?
キ、いつ、成績の低下が生じたか?
その原因は何か?
ク、いつ、どの位の期間休息を設けたか?
その後の成績はどうだったか?
ケ、トレーニングの負荷は、強かったか弱かったか?
コ、試合やその準備において自分に適した戦略を見出せたか?
サ、銃のグリップや引き金を変更すべきか?
シ、試合前、試合中に自分の成績に自信を持っていたか?
自信が持てなかった場合の理由は何か。
ス、目標の達成には自身の裏付けはあったか?
射手はシーズンを通して、姿勢や練習方法、銃やグリップ、引き金などに変更を加えるべきかどうか
を判断しなければいけません。そして必要であれば、これらを変更して、その効果が正しいのかどう
かを見極めなければいけないのです。
ピストル射撃 51
年間トレーニング計画
2)準備期
準備期前期は、地区大会などの練習試合が始まるまでの期間に当たります。この期間における主要課
題は、
(1)基礎体力トレーニング
ランニング・縄跳び・ハイキング等における体力トレーニング
(2)正しいし外的姿勢の習得
移行期において検討された姿勢の見直しとその習得の開始
(3)各姿勢における専門体力の養成
腕の上げ下げや姿勢の保持などの専門的体力の向上
となります。この後の準備期 後半までには、上記の 3 項目は習得しておかなければいけません。
準備期 後半は、練習試合などが開催される期間となるので、試合と並行して次の課題を解決しなけれ
ばいけません。
(1)正しい内的姿勢の養成と撃発の習得
内的姿勢の形成と撃発の習得は射撃の基本要素であり、高い集中力が必要となります。そのため準備
期前期での主要課題を習得していなければいけません。
これらの技術トレーニングは、精神的集中が必要なので、長時間の練習をするより短期間集中して回
数を多くしたほうが効果的です。
(2)基礎体力・専門体力の維持向上
射手は、技術的トレーニングと並行して基礎体力と専門体力の維持・向上に努め正しい姿勢を維持し
続けなければいけません。
準備期に自らに負荷をかけ、何度でも困難を乗り切り克服することで意識(メンタル面)を強化し最
高の集中力を習得しなければいけません。技術的トレーニングの最終目的は、個々の技術を試合当日
に生かすことにあるのです。
ピストル射撃 52
年間トレーニング計画
3)試合期
試合期の初めは、準備期後期と重なりますが試合参加の中で次のトレーニングを行います。
(1)内的姿勢および撃発の安定と改善
(2)全ての技能の自動化
(3)集中的トレーニングとメンタルの維持改善
(4)意思の改善と強化
(5)基礎体力・専門体力の維持向上
(6)戦術の訓練
以上は単に維持されるだけではなく日を追うごとに改善され自動化されなければいけません。
また、試合期のトレーニングは、技術トレーニング、採点射撃、体力トレーニングに区別して行う必
要があります。技術トレーニングと採点射撃について説明をします。
(1)技術トレーニング
射撃場での練習は点数重視ばかりの練習で技術面がおろそかになってしまいがちです。「5 点撃ってし
まったが今の引き金の引き方は良かった」とか「10 発しか撃てなかったが銃の上げ下げのリズムは完
全に自動化されていては完璧だった」等の技術面に特化した練習を行わなければいけません。点数に
とらわれてしまうと、知らないうちに成績が下がってしまい、その原因を銃やサイト、グリップに求
めてしまうことになるのです。
立ち位置、姿勢、グリップの握り、腕の上げ下げ、照準、引き金、フォロースルー、リズム、自動化
等の個々の技術について点検・習得しそれらの複合技術を確認習得することが技術トレーニングの目
的です。
ピストル射撃 53
年間トレーニング計画
3)試合期
(2)採点射撃
採点射撃とは試合形式のトレーニングで試合に近い状況で行い、成績審査と共に習得技術の再点検を
行うものです。ですから「試合会場に入って準備をし、役員の号令で試合を開始、試合会場でのプ
レッシャを感じながら射撃をする」という試合の一連の流れを思い浮かべながら行います。失敗した
からと言ってもう一度やり直すことはできません。失敗しても、諦めず最後まで撃ち通すことが必要
なのです。
チーム内で行う練習試合をこれに当てても良いでしょう。こうした練習で欠陥技術を見い出し、戦術
的経験を積み重ねることが出来るのです。
技術トレーニングと採点射撃とは明確に区分しなければいけません。技術トレーニング中に点数を気
にしたり「調子が良いから採点射撃をしてみるか」等ということは行うべきではなく、採点射撃は事
前に計画し良く準備をして行うべきものです。
採点射撃を行う際は、基準点を設定することが必要です。この基準点は、自らの全ての能力を持って
すれば出すことが可能な点数です。
さらに、ルールに基づき厳格に行うことです。本大会で成果を出すための練習なので、ここで甘くし
てもなんの意味もなく問題点を不明確にすることになり逆効果となってしまいます。
初心者は、試合期であっても技術トレーニングを優先するべきでしょう。せっかく取得した技術を試
合形式という状況で発揮することが出来ないばかりか、プレッシャーで誤った射撃をするしてしまう
ことになるからです。
ピストル射撃 54
月間・週間トレーニング計画
月間・週間トレーニングは、年間計画に基づいて作成しますが、各トレーニングには、それぞれの目
標を設定しなければいけません。目標は点数だけではなく、この期間はどんなとレーニンを行なうの
かを具体的に設定する必要があります。
トレーニング計画は練習だけとは限りません。場合によっては休息や栄養面に関しても計画を立てな
ければいけません。仕事の都合や技術習得の進展具合によっても計画を早めたり再度見直す必要も出
て来ます。
トレーニング計画は、練習内容ばかりではなく、社会生活全体を考えながら計画を立て、変更が生じ
た場合は、それを念頭において計画を見直ししていかなければいけません。
ピストル射撃 55
日トレーニング計画
1)身体トレーニング
トレーニングのウォーミングアップはこれから行おうとする課題に身体を順応させる目的を持ってい
ます。ケガの防止になりますので是非行って下さい。
気候や気候によってウォーミングアップの長さや内容は変わって来ますが、運動内容・年齢・性別・
その日のトレーニング内容によっても変わります。静的運動が多い場合はストレッチ中心に、動的運
動が多いならば筋肉を動かし温めることが必要です。
ただし、あまり強い負荷をかけることは間違った方法です。ウォーミングアップを終了してからが本
当の意味でのトレーニングとなります。
トレーニング内容は、練習が単調にならないように毎回変化をもたせることが必要です。動的運動ば
かりでなく静的運動もバランスよく取り入れましょう。
トレーニングの目的が器官強化ならば、ランニングや水泳、スキーや縄跳び等と手段や方法を変えて
行うと良いでしょう。
今回インターバルトレーニングを行ったのなら、次回は持久性トレーニングとトレーニング方法に変
化を持たせます。
基本的には、同じ部位を連続してトレーニングすると疲労が蓄積してしまいますから行わないように
しないようにして下さい。
1 日目は腕と胸筋中心、2 日目は腹筋背筋中心、3 日目は足腰中心といったように部位を 3 日ごとに変
えて行くとトレーニングした部位が 2 日間休養することができます。これによって超回復現象が起こ
り効率的にトレーニングが行えます。
トレーニングの終わりは、負荷を少なくして終了しましょう。
ピストル射撃 56
日トレーニング計画
2)技術トレーニング
技術トレーニングも身体トレーニング同様に導入部、主要部、終結部に分けて行います。
導入部では、ウォーミングアップから始めます。肉体と精神が一致するまでには時間がかかるからで
す。
主要部は、技術全体の向上と各技術(撃発、フォロースルー等)の改善、並びに採点射撃や専門体力
の維持向上を目的とします。
終結部では、静的負荷をかけられていた筋肉をほぐす為に緊張を解くような運動を行います。
そして充分な休息を積極的に取りましょう。休息は、神経機能回復と再生に役立ち、仕事やトレーニ
ングで酷使した神経の緊張を緩和させる為に絶対必要だからです。
技術トレーニングは多種多様な方法がありますが、問題点に応じて選ぶことが大切です。
ピストル射撃 57
トレーニングの休息
トレーニング過程における休息は重要な役割を持っています。
射撃において気をつけなければいけないことは、疲労のために生ずる悪い癖を如何になくすかという
ことです。悪いくせは知らず知らずに忍び込んで来て自動化されてしまうので、休息を取ることに
よって防止するのです。
また、多くの選手は技術トレーニングばかりに没頭してしまいがちですが、神経機能が低下してしま
い集中力を欠くことになり悪い結果に結びついてしまいます。
このようなことを防止するためにもトレーニングにおける休息は充分に取る必要があるのです。
消極的休息と積極的休息
消極的休息とは、座ったり横になっりして休むことです。
積極的休息とは、マッサージのように適度な負荷をかけ肉体的・精神的にを和らげる休息です。
消極的休息より積極的休息の方がはるかに回復力は良く効率的です。
日々の仕事で精神的・肉体的に負荷がかかっている場合などでも積極的休息を取ることは非常に効果
的です。
ピストル射撃 58
身体トレーニングと技術トレーニングにおける休息
身体トレーニングと技術トレーニングは一定の相互関係を持っています。
身体トレーニングは基礎体力を向上させるために準備期間に重点的に行なわれるので充分な休息を取
らなければいけませんが、集中的な技術トレーニングを行った場合も 10~20 分間は休息時間を設けて
下さい。
休息は、筋肉を弛緩させ循環系を刺激し神経系を休息させる上で必要です。身体トレーニングと張り
つめた神経系の緊張を緩和させるための短時間の積極的休息の他に 1 週間のうち 2~3 回の休息日を設
ける必要があります。
休息日は技術トレーニングを休み、軽い運動をすることを薦めます。
長期休養の必要性
試合期間中、長期の休養を取ることも効果的です。
・大きな試合の後
・長期の集中トレーニングの後
・病後
・身体的にトレーニングが出来ない、または充分なトレーニングの準備ができていない
・原因不明の成績低下
このような場合は、2~3 週間の休養を取ることも良いでしょう。
その後、2~3 間かけて次の試合の準備をすれば良いのです。
ピストル射撃 59
空撃ちトレーニング
空撃ちトレーニングは、基本的要素とそれらの調整を潜在意識にインプットするために行なうトレー
ニングで、最もおろそかにされているトレーニングですが、技術トレーニングの中で最も重要なト
レーニング方法です。
空撃ちは、弾を使用することなく射撃の順序全体をやり通す一連の動作のトレーニングが含まれてい
ます。
↓姿勢を取り、銃を上げる
↓照準を行い、引き金を引く
↓フォロースルーを行う
↓一連の動作について評価する
空撃ちトレーニングは、着弾という結果をもたらす精神的圧迫から解放され、姿勢、照準、引き金、
フォロースルーの各テクニックのみに集中することができるトレーニングです。
また、撃発に伴う反動がないため技術の欠陥を見出すのに役立ちます。
空撃ちトレーニングは、射撃の各諸動作を潜在意識に記憶させるにも最適なトレーニング方法です。
反復することによって一連の動作を正確に思い起こすことができ、精密射撃ばかりではなく速射射撃
等どんな射撃においても活用することができます。
さらに、弾代がかからず、姿勢、グリップ、スムーズな照準動作を身につけることができます。
得点に惑わされることなくテクニックの基本的を見つめ直し、自らの欠陥を洗い出すことができます。
空撃ちトレーニングは、退屈で我慢をしいられるトレーニングですが同時に集中力の向上と自己評価
を育成する良い練習方法でもあります。
引き金を引いた瞬間や正しい照準のイメージを容易に作り出すことができるようになるでしょう。
これらの利点を生かせば、実弾射撃においても良い結果を得ることは必然であり、技術的・心理的壁
を克服する最も良い練習方法なのです。
ピストル射撃 60
実弾トレーニング
多くの射手が週末シューターであり、試合=練習 といった形をとっていると思います。しかし試合か
ら欠点を認識することは難しく、テクニックの向上を目指すのなら各技術を分割し、各々の技術を徹
底的に高めていかなければトータル的な向上は望めません。
複数の欠点を同時に克服しようとしても無理が出て来るので、一つ一つ解決していかなければいけな
いのです。
実弾トレーニングのもう一つの目的は、グリップやサイトの広さ、メガネや靴、そして弾などの装備
品についての実験を行なうことです。大会会場での光や風、騒音による環境の変化に対し対応できる
様に装備品について充分なテストを行い、いかなる会場においても日頃の実力を発揮できる様に調整
しなければならないのです。
弾も違った種類の弾を打ち分けて一番相性の良いものを選ぶことも重要です。
これは、たまに限らずグリップや銃の機能、装備品に関しても同様に言えることです。
実弾練習において重要なことは、射撃後に問題解決を行うことです。解決すべき問題点を明らかにせ
ず放置することは、勝利を自ら放棄したと同じことなのです。
ピストル射撃 61
比較的取組みやすいトレーニング方法
1)技術トレーニングの最初は、常に白紙標的から始めます。
白紙標的は、黒点を意識することなく照星・照門や引き金を引くことに集中することができるので、
驚くほどの集弾を作ることができるでしょう。
2)次に黒的(全ての点数リングを消したもの)を使用して練習します。頭の中から「点数」を忘れ
させて良い集弾を得ることに集中できます。
持久力と集中力を身に付ける為に 100 発ほど撃って下さい。
集弾が悪くなったら白的トレーニングに戻って下さい。
3)満足できる集弾が出来るようになったら、目的の点数以外の線を消した標的を使用し、線内に全
て着弾するように練習します。
このトレーニングの目的はこのリング内に全てを着弾することです。
ピストル射撃 62
10 ステップ技術トレーニング(ドイツ射撃学校編)
(1)ストレッチを 10 分行います。
(2)筋肉の緊張とリラクゼーションのトレーニングを行います。
足、ふくらはぎ、上腕、尻、腹、手、肩の筋肉を緊張させた後に、今度は順番にリラックスさせて行
くトレーニング
(3)ピストルを握らず、大まかに姿勢をとります。
(4)ピストルを握って精密射撃の姿勢をとります。
(5)白標的に 10 発打ち込みます。
姿勢の確認を行い、必要に応じて修正をします。
(6)バックストップに 15 発打ち込みます。
引き金の引きに集中して行います。
(7)標的に 10 発打ち込み、グルーピングを確認します。
この時、10 発撃ってから確認します。1 発ごとに確認してはいけません。
(8)標的に 10 発打ち込みます。
1 発ごとに撃発を評価し、分析した後に着弾地点を確認します。
(9)標的に 10 発打ち込みます。
1 発ごとに着弾点を確認してはいけません。だたし、1 発ごとに着弾点を予想し、10 発の合計点数を予
測します。
(10)標的に最高の 1 発を撃ち込みます。
この 1 発を試合の最終弾と思い、発射します。
ピストル射撃 63
筋肉・神経感覚の育成方法(サーキット方式)
ここでのトレーニングは、主として空撃ちトレーニングです。休息と負荷を交互に取り入れながら行
います。筋力、持久力と神経感覚の育成を図ることができます。このトレーニングは、グループでも
個人でも実施できます。
例1
(注意:保持している間に引き金を引きますが、引き金を引いた後も、規定時間内はピストルを保持
し続けます。)
20 秒保持した後、20 秒間休むを 10 回
↓
3 分休み
↓
30 秒保持した後、30 秒休むを 10 回
↓
3 分休み
↓
45 秒保持した後、45 秒休むを 5 回
↓
3 分休み
↓
60 秒保持した後、60 秒やすむを 5 回
例2
(注意:今回は、弱い負荷から強い負荷に移行し、最後は弱い負荷に戻ります。。)
20 秒保持した後、20 秒休むを 10 回
↓
30 秒保持した後、30 秒休むを 10 回
↓
45 秒保持した後、45 秒休むを 5 回
↓
3 分休み
↓
20 秒保持した後、20 秒休むを 10 回
↓
45 秒保持した後、45 秒休むを 5 回
↓
30 秒保持した後、30 秒休むを 10 回
ピストル射撃 64
競争力養成のための方法(ステップ・アップ方法)
この方法の狙いは、
(1)技能の改善工場、
(2)専門種目に必要な体力の強化
(3)試合の雰囲気への適応
(4)戦術の訓練
(5)意思のトレーニング
です。
このトレーニングは教育的効果があり、チームや仲間と共に実施することで他の選手をカバーしたり、
メンタルの強化につながります。
トレーニングの原則は、いかなる場合でも前段階の目標が達成されなければ、次の段階へ進んではい
けないということです。
ステップ・アップを変化に富だものにしたり、困難度を高めたいのであれば上位者に賞を出すことを
予告したり、進行状況がわかるように表にして表示するのも良い方法です。
2 名ずつのグループを作り、各グループが設定目標を達成する時間を競います。
1 段目の目標が達成したら 2 段目の目標へとステップ・アップして行くわけです。
失敗したら、再度同じ段階でチャレンジします。
例1 ピストル 個人
1 段階 10 発=80 点
2 段階
5 発=43 点
3 段階 10 発=8 点以下を撃たない
4 段階
3 発=27 点
5 段階
2 発=20 点
例2 ピストル チーム
1 段階 各 10 発=合計 160 点
2 段階 各 6 発=8・9・10 点のみ
3 段階 各 9 発=10 点を合計 9 回
4 段階 各 10 発=182 点
チームの場合、二人とも目標が達成出来段階で次のステップに進みます。1 人が達成しても、その人は
次の段階には進むことができず待っていなければいけません。
実力に違う 2 名の場合はそれぞれの目標を作ります。
例3 実力に違う 2 名の場合
1 段階 A 10 発=80 点
B 10 発=白的を撃たない
2 段階 A+B 各 5 発=80 点
3 段階 A 5 発=43 点
B 3 発=18 点
4 段階 A 2 発=17 点 1 発=9 点
B 2 発=13 点 1 発=7 点
5 段階 A+B 合計 3 発=24 点
これは、例示ですので、各自の実力に合わせて目標を設定してください。
ピストル射撃 65
パーツごとのトレーニング(姿勢の固定化の練習方法)
体の感覚で姿勢を作り上げる練習です。
関節、脚と筋肉における感知器館と神経センサーを使って体の位置を印象付けることから始めると体
の固定化を図る助けとなります。
正しい姿勢の位置が体に記憶されると、意識しなくてもその姿勢を取れるようになれます。
では、姿勢を一定化する方法をご紹介しまし。
紙に小さな穴をあけ、その紙の穴から標的が見えるようにマスターアイ(利き目)の前に貼り付けま
す。眼鏡をご使用の方は利き目のレンズに貼ると良いでしょう。
まずは、穴を通して標的を確認し、照準します。
次に銃を下ろし、目を閉じた状態で再び据銃します。
目を開けた時、正しい照準になっていますか?
標的が見えないのであれば、体の向きが正しくないか頭の位置が前回と変わっていることになります。
まず正しい位置に立てるように足の位置を調整しましょう。
それでも標的が見えないのであれば、頭の位置が毎回違っているということになります。
同じことが、同じようにできるまで何回でも繰り返し体に覚えこませましょう。
ピストル射撃 66
パーツごとのトレーニング(グリップの保持)
グリップによるエラーは、繰り返し行われる空撃ちによって排除しなければいけません。
グリップ側面の出っ張りが、掌のくぼみに正しく合っていますか?
グリップ前部の指の凸凹に指がしっかりと合っていますか?
グリップエンドのヒールレストは、その日の手に合うように調整されていますか?
空撃ちを何度も行い確認しましょう。これが手の位置をチェックすべき唯一の方法です。
ピストル射撃 67
パーツごとのトレーニング(引き金)
(1)正しい引き金は、空撃ち練習によって得ることができる。
空撃ちは、引き金を引いた時の撃発の影響を受けないので、
正しい照準であったかを観察することができます。
実包を使用した練習は、白的を使用し引き金の引きのみに注意を払ってください。横方向への着弾は、
引き金操作のエラーで現れるものです。
(2)引き金は、最適な時間で引かなければいけません。
トレーニング当初は一連の動作を十分な時間をかけて練習しますが、習熟すれば瞬間的に滑らかな操
作ができるようになるはずです。
ストップウォッチを使用して時間を測ってもらい、最適な時間を身体に覚えこませましょう。その時
間以上にかかった場合は、即刻中止して、改めて構え直すことが必要です。
(3)引き金の正しい指の位置を覚えることです。
正しい指の位置は、正しい引き金の引き方につながります。
銃を左右前後に押したり、引いたりすることなくスムーズに引けるよう練習しましょう。
(4)トレーニングすることで、正確なポジションを体内センサーで関節や筋肉に記録することがで
きます。これを内的姿勢の完成といいます。
しかし、一度記憶してしまえば良いというものではなく、引き金と照準を調和させながら絶え間ない
トレーニングにより維持していかなければいけません。このトレーニングこそが、空撃ちトレーニン
グなのです。
ピストル射撃 68
パーツごとのトレーニング(フォロー・スルー)
フォロー・スルーは、適正な照準と適切な引き金操作を最大限有効にするテクニックです。その必要
性は「ピストル射撃 17」においても記したとおりです。
フォロー・スルーは、着弾点の集中率に大きく影響し、高得点を目指すならば何としても修得しなけ
ればならないテクニックです。
トレーニング方法は、毎回意識して行うこと以外にありません。
ポイントは、引き金を引き終わった後に照門がハッキリと見えていること、照星が照門のどの位置に
あったのかを確認し着弾地点を予測することです。
フォロー・スルーが習慣になるまで空撃ちトレーニングを行いましょう。
ピストル射撃 69
パーツごとのトレーニング(集中)
今まで紹介してきたトレーニングを体得したとしても、集中して実行できなければ何の意味もありま
せん。
有効に発揮できるかどうかは、あなたの集中力にかかっています。
パターンが無くまとまりの無い着弾は、集中力の欠如が原因です。このような状態に陥ったなら銃を
置き、射座を離れて気分転換することも必要です。
練習は練習、試合は試合と言った考え方は、練習でも試合でも集中することは難しいでしょう。
練習は本番の試合に望む気持ちで取り組み、試合は練習の時のようなリラックスした気持ちでその
時々に合わせて集中できるように日頃から心掛けてトレーニングしなければいけません。
ピストル射撃 70
ストレッチング
専門トレーニングを始める前と終わってからは、ストレッチングで体の筋を伸ばし、体のバランスを
元に戻しましょう。
ストレッチを行う際は下記の点に注意してください。
(1)反動をつけずに、ゆっくり行い筋肉や筋を伸ばします。
1 つの動作に 20 秒ほどかけて 2 回行います
(2)呼吸を止めることなく行います。
(3)無理に伸ばしすぎてはいけません。
特に、肩と頚椎のストレッチは、軽く行ってください。
腰痛のある方は不可に注意して行いましょう。
(4)伸ばしている場所(筋肉や筋)を意識して行います。
(5)体全体的に行ってください。
ピストル射撃 71
身体的トレーニング
射手は、第一に健康な身体を維持しなけれがいけません。
成績向上を目指すのなら、身体トレーニングも必要です。
射撃競技においては、強靭んな肉体は必要ありませんが、バランスの取れた肉体は必要です。
平衝感覚や心肺機能は長時間の射撃競技には必要不可欠なものです。
身体トレーニングは、一般的フィットネスと特定のフィットネスに別れます。
(1)一般的フィットネス
バランスの取れた筋肉と強化された心肺機能を得ることが目的です。
ジョギング、水泳、歩行、サイクリングと言ったトレーニングを年間を通じて行うことが大切です。
運動量は徐々に増やして行けば良いでしょう。
(2)特定のフィットネス
射撃姿勢を維持するための筋肉を強化します。
ウエイトトレーニングやトレーニングマシンを使用する場合もありますが、トレーニング方法等を誤
ると不必要な筋力がついてしまい、精密な筋肉のバランスを壊してしまい逆効果になる場合もあるま
すので、十分に注意をしてください。
それから、空撃ちは技術的トレーニングであり、身体トレーニングとは別のトレーニングと位置づけ
て下さい。
目的を明確にしたトレーニングの実施をじっししてください。
ピストル射撃 72
ピストルと医学(姿勢)
射撃姿勢の安定は拮抗する筋グループの相互作用により保たれています。一流選手でさえ、安定して
いるように見えますが体内では安定を保つために筋が絶え間なく等尺性の収縮性運動を行なっている
のです。
良い姿勢とは、関係している筋グループが無理することなくピストルを保持することができる姿勢で
す。この姿勢を「ナチュラルポイント(自然な姿勢)」と言います。
体は、足と腰の下半身により上半身を支えていますが、下半身は受動的にバランスを保っています。
しかし、体の重心が両足からなる支持面から外れると体のバランスは受動的ではなく意識して筋力に
より保持することになります。この場合、すぐに疲労してしまい、バランスを崩してしまうのです。
射手は、最小限の緊張で最も安定した重心を見つけなければいけません。
ピストル射撃 73
ピストルと医学(脊髄)
脊髄は、家でいうと大黒柱で、運動を行う時の運動軸・支持軸となるべきものです。跳ねたり飛んだ
りできるのは、脊髄が中心軸となって筋肉群を収縮・弛緩させ体のバランスをとっているのです。
静止直立位は、脊柱上に重心が保たれ筋活動は最小となり脊柱の靭帯により体位が保持されています。
射撃を行う場合は、さらに頭の位置関係が安定した姿勢に大きく関わってきます。
脊柱を支えるためには、背筋群 70%、腹筋群 30%と言われています。腹筋が弱い人は、不足分を背筋群
に頼ることになるので腰背筋が疲れたり痛くなったりしますので、腹筋・背筋のトレーニングを行い
効果的に身体を支持できるようにしましょう。
ピストル射撃 74
ピストルと医学(頭の保持)
射撃姿勢をとる際、体幹と頸(首)の関係は非常に大切です。
頸には、脳に大量の血液を送るために太い血管が通っているので、極端なインラインスタンスはこの
血管を圧迫したり伸長することになり、血流の阻害につながります。
精密射撃のような長時間にわたる射撃には、不向きと言えるでしょう。
次に、耳の奥には三半規管と言ってバランスを司る器官が有ります。この器官の傾きでバランスを感
知しているのでが、傾きを感知すればこれを補正しようと多くの筋群が総動員してバランスを保とう
とします。
射撃姿勢にとって、余分な筋群の動きは不必要ですから、頭を傾けることなく姿勢を保持することが
たいせつです。これにより、不必要な筋群の緊張・弛緩は起こらないので、体が揺れることもありま
せん。
また、頭の位置のわずかなずれが重心の移動につながり、バランス保持に身体中の筋群が総動員する
ことになります。頭部は安定した位置に固定し、常にその場所で照準できるようにならなければいけ
ません。
眼を閉じて据銃し、安定した段階で目を開いて見ます。同じ場所で同じ処に照準出来ていますか?毎
回同じ位置になるようにトレーニングをしましょう。
ピストル射撃 75
ピストルと医学(肩関節)
照準には、肩関節の三角筋・棘上筋・棘下筋・大胸筋上束を使用します。照準位置でピストルを保持
するには、下方に働くピストルの重量を支える静的運動が必要です。
初心者はもとより熟練者も、重量保持による筋刺激の震えが起こるので、トレーニングにより筋肉増
強を行い震えの抑制をしなければいけません。
インラインスタンとオープンスタンスでは、使用する筋群がが違うので姿勢にあったトレーニングを
行うことが必要です。
三角筋においては、ピストルを持った方向と反対方向に上体を傾ける姿勢が筋の両接点の間隔が大き
くとれるので安定します。
両肩の線と伸ばした腕の線が一致もしくは角度が小さい程安定します。(この状態はインリンスタン
スです)
精密射撃では、胴体を少し後方に倒すと疲労を軽減させることができますが、頭を正対させることが
難しくなります。
注意すべきは、極端に後に傾ける姿勢は取らないようにすることです。
ピストル射撃 76
ピストルと医学(肘関節)
肘関節は、単純な蝶番関節で二頭筋と三頭筋によってバランスが維持されています。完全に伸ばすこ
とにより強固に固定でき、また一定の距離を保つことができるので正確な照準を行うのには最適です。
ピストルと医学(手の関節)
手首の関節は複数の回転軸が存在し可動範囲が大きく自由に動かせるので、ピストルの保持には十分
注意が必要です。
右手によるピストル射撃では、右上から左下方向にかけて手首が動きやすい傾向があります。
手首をどう固定するかが最大の課題です。
ピストル射撃 77
ピストルと医学(股関節)
股関節は可動範囲が大きい割に胴体の重量が股関節を通して大腿骨に伝わっているので、非常に安定
した下半身を保持することができます。
足の位置は、両肩の線に対し 37~42 度の角度が最も安定しており、この角度から離れるにつれて安定
性が失われます。
足の幅を少し変えてみたり、目を閉じて左右前後に腰を動かして自然に身体が止まる場所を探してみ
ましょう。体の動きを体感でき安定した場所を見つけることが出来るはずです。
適切な歩幅の時は、ほとんど身体は動きませんが、幅が広いと容易に腰が動いてしまいますので試し
てみてください。
ピストル射撃 78
ピストルと医学(膝関節)
膝関節は単純な蝶番関節で、固定・解除が自由にでき固定された場合は非常に強固に固定されます。
射撃の場合は、膝を固定し屈折しないようにしなければいけません。
ピストルと医学(足首の関節)
足首は、手首と同様に多くの回転軸で構成され可動範囲が広く不安定な関節です。射撃時には靭帯と
筋肉によって固定することになりますが、安定を確保するために射撃シューズを活用し安定性を確保
することも大切です。
ピストル射撃 79
ピストルと医学(引き金)
指を動かす筋肉は、浅指屈筋・深指屈筋・長母指屈筋があります。
これらは前腕からつながっており、浅指屈筋は掌全体を曲げる働きをし、深指屈筋は親指を除く 4 本
の指につながっており、親指を除く 4 本の指を曲げる働きをします。長母指屈筋は親指だけを動かし、
他の指には影響を与えません。
引き金を引く時は、深指屈筋と浅指屈筋によりスムーズな引き金動作が行われますが、指ごとに個別
の筋肉はないので人差し指を動かすと他の指も少なからず影響をおよぼしてしまいます。トレーニン
グを行うことで屈筋の個別の指に関わる動作に強弱をつけることが可能です。
引き金を引く際に、人差し指が屈伸運動を開始すると他の指も掌方向の動こうとする運動が始まるの
で撃発の際には十分注意しましょう。
これらは、最初意識して動かないようにすることで自然に身につき、下意識で行えるようになります。
以上を持ちまして、ピストル射撃を終了いたします。
基本や技術、トレーニング計画や医学に基づいた知識は、
日本ライフル射撃協会が発行した、
競技者育成プログラム・ピストル射撃教本
オリンピック・ピストル・シューティング 改訂版
世界標準の技術に触れるために!
三野卓哉 著
定価 1800 円
を参考に、私の私見や体験を織り混ぜながら、紹介させてもらいました。
もっと詳しく正しい知識を求めたい方は、ぜひご購入ください。
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