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ギャップ結合構築に関わる新規タンパク質 CIP150 の同定とその機能解析

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ギャップ結合構築に関わる新規タンパク質 CIP150 の同定とその機能解析
博 士 論 文 番 号 : 0281001
ギャップ結合構築に関わる新規タンパク質
CIP150 の同定とその機能解析
秋山
元英
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科
(竹家
達夫
細胞増殖学講座
教授)
平 成 17 年 7 月 22 日 提 出
目次
3
序論
ギャップ結合とコネクシン
ギャップ結合の多様性
ギャップ結合が関わる生命現象と疾患
卵胞発育におけるギャップ結合
コ ネ ク シ ン 43 の ラ イ フ サ イ ク ル
コ ネ ク シ ン 43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 の 制 御 機 構
コ ネ ク シ ン 43 の 制 御 機 構
本研究の要約
材料と方法
17
結果
23
コ ネ ク シ ン 43 会 合 タ ン パ ク 質 の 探 索
新 規 タ ン パ ク 質 CIP150 の 同 定
CIP150 は 細 胞 内 に お い て Cx43 と 会 合 す る
コ ネ ク シ ン 43 の リ ン 酸 化 は CIP150 と の 会 合 に 必 須 で は な い
コ ネ ク シ ン 43 C 末 端 領 域 に お け る CIP150 結 合 領 域 の 決 定
CIP150 結 合 領 域 は コ ネ ク シ ン 43 の ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 に 重 要 で あ る
siRNA に よ る CIP150 の 発 現 抑 制 は コ ネ ク シ ン 43 の 細 胞 膜 へ の 局 在
とチャネル活性を減少する
考察
46
謝辞
54
参考文献
55
2
序論
ギャップ結合とコネクシン
哺 乳 動 物 に お い て 、隣 接 し た 細 胞 は 主 と し て 密 着 結 合 、接 着 結 合 、ギ ャ ッ
プ結合という役割の全く異なった 3 種類の様式で結合している。この中で、
ギ ャ ッ プ 結 合 は 隣 接 す る 細 胞 間 で の 物 質 の 伝 達 、交 換 を 可 能 に し 、組 織 の 形
態 形 成 や 機 能 、細 胞 の 分 化 、増 殖 な ど 様 々 な 生 命 現 象 に 関 わ る こ と が 報 告 さ
れ て い る 。ギ ャ ッ プ 結 合 発 見 の 歴 史 は 、1960 年 代 に 神 経 や 心 筋 な ど に お け る
細 胞 間 で の 電 気 信 号 の 伝 達 、色 素 な ど の 低 分 子 量 物 質 の 移 行 が 観 察 さ れ た こ
と に 始 ま る が ( Kanno and Loewenstein, 1964a, b)、 そ の 実 体 は 不 明 と さ れ て
い た 。一 方 、1967 年 に 電 子 顕 微 鏡 観 察 で 、組 織 に お い て 隣 接 す る 細 胞 の 細 胞
膜 同 士 が 約 2-4 nm 幅 と い う 狭 い 隙 間 ( ギ ャ ッ プ ) 構 造 を と っ た 細 胞 接 着 構
造 が 観 察 さ れ て い た 。そ の 後 、肝 臓 の ギ ャ ッ プ 構 造 体 を 含 む 画 分 よ り 分 子 量
28 と 21kDa の タ ン パ ク 質 が 、 次 い で 心 臓 よ り 43kDa の タ ン パ ク 質 が 精 製 さ
れ た 。そ の 後 、こ れ ら の タ ン パ ク 質 を コ ー ド す る cDNA が ク ロ ー ニ ン グ さ れ 、
そ の 発 現 依 存 的 な ギ ャ ッ プ 結 合 チ ャ ネ ル の 形 成 が 確 認 さ れ た ( Paul, 1986)。
こ の よ う に ク ロ ー ニ ン グ さ れ た cDNA が コ ー ド す る も の が 、ギ ャ ッ プ 結 合 構
成 タ ン パ ク 質 の コ ネ ク シ ン で あ る 。こ れ ま で に コ ネ ク シ ン 遺 伝 子 は 、ヒ ト で
20、 マ ウ ス で 19 種 類 が 確 認 さ れ て い る ( Willecke et al., 2002)。 コ ネ ク シ ン
の 命 名 法 に は 、 コ ネ ク シ ン 43( Cx43) の よ う に タ ン パ ク 質 の 分 子 量 を も と
に し た も の と 、ア ミ ノ 酸 配 列 の 相 同 性 に よ っ て α 、β 、γ の 3 つ の グ ル ー プ
に 分 け 、同 定 さ れ た 順 番 に 命 名 し て い く も の が あ る 。近 年 発 見 さ れ た コ ネ ク
シ ン ( Cx29、 Cx36 な ど ) が 、 α 、 β 、 γ ど の グ ル ー プ に も 当 て は ま ら な い
ことや、簡便性の面から前者が用いられることが多い。
コ ネ ク シ ン は 4 回 膜 貫 通 型 の 膜 タ ン パ ク 質 で あ り 、細 胞 内 N 末 端 お よ び C
末 端 、2 つ 細 胞 外 ル ー プ 、1 つ の 細 胞 内 ル ー プ 領 域 を 有 す る( Goodenough et al.,
1996; Yeager et al., 1998; Evans et al., 1999; 参 考 図 1 A )。 ギ ャ ッ プ 結 合 チ ャ
ネ ル は 、コ ネ ク シ ン が 細 胞 膜 へ の 輸 送 過 程 に お い て 6 量 体( コ ネ ク ソ ン )を
形 成 し 、コ ネ ク ソ ン が 数 十 か ら 数 千 集 合 し た ヘ ミ チ ャ ネ ル が 隣 接 す る 細 胞 間
で 連 結 す る こ と で 構 築 さ れ る ( Beyer et al., 1990; Unger et al., 1999; 参 考 図 1
B)。コ ネ ク ソ ン の 中 心 に 形 成 さ れ る 親 水 性 の 微 小 孔 は 、そ の 直 径 が 約 1.5 nm
で あ り 、 こ れ を 介 し て イ オ ン や cAMP、 イ ノ シ ト ー ル 3 リ ン 酸 、 糖 、 ア ミ ノ
酸 、ヌ ク レ オ チ ド な ど 分 子 量 約 1kD 以 下 の 低 分 子 物 質 が 拡 散 す る( Bruzzone
et al., 1996a, b; Kumar and Gilula, 1996)。3 番 目 の 膜 貫 通 領 域 は 、α -ヘ リ ッ ク
3
ス を 形 成 し た と き 親 水 性 と 疎 水 性 の 表 面 を 持 つ こ と が 予 想 さ れ て お り 、親 水
性 表 面 が コ ネ ク ソ ン 中 心 の 微 小 孔 内 面 を 構 成 し て い る と 考 え ら れ て い る 。ま
た 、フ ァ ミ リ ー 間 に お い て 、膜 貫 通 お よ び 細 胞 外 ル ー プ 領 域 に お い て 比 較 的
相 同 性 が 高 く 、特 に 2 つ の 細 胞 外 ル ー プ 領 域 に そ れ ぞ れ 3 個 ず つ 存 在 す る シ
ステイン残基は、ファミリー間に例外なく保存されている。ループ間では、
こ の シ ス テ イ ン 残 基 に お い て 分 子 内 ジ ス ル フ ィ ド 結 合 が 形 成 さ れ て お り 、コ
ネ ク ソ ン 間 の 連 結 に 関 与 す る と 考 え ら れ て い る ( Toyofuku et al., 1998b)。 こ
れ に 対 し 細 胞 内 ル ー プ 領 域 と C 末 端 領 域 は 、フ ァ ミ リ ー 間 で 相 同 性 が 低 く 長
さ も 異 な る こ と か ら 、そ れ ぞ れ の コ ネ ク シ ン 特 有 の 機 能 に 重 要 な 働 き を す る
と 考 え ら れ て い る ( Bruzzone et al., 1996a, b)。
ギャップ結合の多様性
コ ネ ク シ ン は 、フ ァ ミ リ ー 間 で 組 織 特 異 的 な 発 現 は 見 ら れ る も の の 、ほ と
んどの器官や臓器の細胞では、1 種類以上のコネクシンが同時に発現してお
り ( Bruzzone et al., 1996b)、 複 数 の コ ネ ク シ ン に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 が
可 能 な こ と も 知 ら れ て い る 。 例 え ば 、 Cx43 と Cx40( He et al., 1999)、 Cx43
と Cx45( Martinez et al., 2002)、Cx26 と Cx32( Falk, 2000a)な ど 異 な る コ ネ
ク シ ン が コ ネ ク ソ ン を 形 成 す る こ と 、ま た Cx43 か ら な る コ ネ ク ソ ン と Cx46
からなるコネクソンがギャップ結合を構築することなどが報告されている
( White et al., 1994)。つ ま り 、コ ネ ク ソ ン を 構 成 し て い る コ ネ ク シ ン が ホ モ
ま た は ヘ テ ロ の 場 合 、細 胞 間 で の コ ネ ク ソ ン の 連 結 が ホ モ ま た は ヘ テ ロ の 場
合 、 そ れ ぞ れ の 組 合 せ で 4 種 類 の モ デ ル が 考 え ら れ る ( Bruzzone et al.,
1996a,b; Simon and Goodenough, 1998; 参 考 図 2)。こ の よ う に 、コ ネ ク シ ン フ
ァ ミ リ ー は 多 数 存 在 す る 上 に 、様 々 な 組 み 合 わ せ に よ り ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築
する。
こ の 多 様 性 の 意 義 は 不 明 な 点 が 残 さ れ て い る が 、ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 成 す る
コネクシンの違いによる透過物質の選択性が有ることが報告されている
( Goldberg et al., 2004)。イ ノ シ ト ー ル 3 リ ン 酸 の ギ ャ ッ プ 結 合 を 介 し た 透 過
活 性 は 、Cx32 が Cx43 の 約 2.5 倍 、Cx26 の 約 3.5 倍 高 い こ と が 示 さ れ て い る
( Niessen et al., 2000)。 ま た 、 Cx43 は Cx32 よ り も ADP や ATP の 透 過 性 が
高 い が 、ア デ ノ シ ン は 逆 に Cx32 の 方 が 高 い こ と も 報 告 さ れ て い る( Goldberg
et al., 2002)。さ ら に 、Cx26 か ら な る コ ネ ク ソ ン と Cx32 か ら な る コ ネ ク ソ ン
は 細 胞 間 で 連 結 し ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 す る が 、 Cx32 同 士 に 比 べ 蛍 光 色 素 の
4
透 過 活 性 が 低 下 す る( Cao et al., 1998)。こ の よ う な コ ネ ク シ ン に よ る 機 能 の
違 い は 、 Cx43 の 遺 伝 子 座 を Cx40 ま た は Cx30 で 組 替 え た マ ウ ス で は 、 正 常
な 発 育 を せ ず そ れ ぞ れ 異 な る 表 現 型 を 示 す こ と か ら も 推 察 さ れ る ( Plum et
al., 2000)。
ギャップ結合が関る生命現象と疾患
生 体 内 に お け る ギ ャ ッ プ 結 合 の 機 能 は 、各 コ ネ ク シ ン 遺 伝 子 の ノ ッ ク ア ウ
ト マ ウ ス の 解 析 に よ り 多 く の 知 見 が も た ら さ れ て い る 。 Cx26 -/- マ ウ ス で は 、
マ ウ ス 特 有 の 胎 盤 構 造 に お い て 母 体 か ら の グ ル コ ー ス 輸 送 に 障 害 が 起 き 、胎
生 11 日 目 で 死 亡 す る こ と が 報 告 さ れ て い る ( Gabriel et al., 1998)。 ま た 、
Cx45 -/- マ ウ ス も 胎 生 10 日 目 で 致 死 と な り 、 そ の 原 因 は 心 内 膜 床 細 胞 の 分 化
抑 制 で あ る と さ れ て い る ( Kruger et al., 2000; Kumai et al., 2000)。 Cx32 -/- マ
ウ ス に お い て は 、軽 度 の 末 梢 神 経 障 害 を 起 こ す と と も に 、そ の 発 現 が 高 い 肝
臓 に お い て 細 胞 の 異 常 増 殖 が 起 き 肝 癌 が 多 発 す る( Nelles et al., 1996; Temme
et al., 1997)。Cx40 -/- マ ウ ス で は 、心 臓 の 形 態 は 正 常 で あ る が 、心 筋 伝 達 障 害
が 観 察 さ れ て い る ( Kirchhoff et al., 1998)。 Cx30 -/- マ ウ ス で は 、 蝸 牛 内 の 電
位 異 状 に よ り 難 聴 に な る こ と が 報 告 さ れ て い る( Teubner et al., 2003)。Cx46 -/( Gong et al., 1997)、お よ び Cx50 -/- マ ウ ス( White et al., 1998)で は 、と も に
白 内 障 を 起 こ す 。 Cx43 は 最 も 広 範 な 組 織 発 現 し て い る こ と が 知 ら れ て い る
が 、そ の ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス で は 胎 生 期 は 生 存 す る が 心 臓 の 形 態 異 常( 右 心
室 出 路 の 狭 窄 )の た め に 出 生 直 後 に 窒 息 死 す る( Reaume et al., 1995)。ま た 、
ヘ テ ロ 接 合 体 ( Cx43
+/-
)ではこれまでに心臓の形態に異常は認められてい
な い が 、心 臓 外 膜 の 拍 動 が 遅 く な る こ と( Guerrero et al., 1997)、虚 血 に よ り
心 室 性 不 整 脈 が 発 生 し や す く な る と い う こ と が 示 さ れ て い る ( Lo, 2000)。
ま た 、ヒ ト に お い て も コ ネ ク シ ン 遺 伝 子 の 異 常 に 起 因 す る と 考 え ら れ る 疾
患 が 報 告 さ れ て い る ( Kelsell et al., 2001; Wei et al., 2004 )。 X 型
Charcot-Marie-Tooth 病 の 原 因 遺 伝 子 の 1 つ と し て Cx32 遺 伝 子 ( Bergoffen et
al., 1993)が 同 定 さ れ て 以 降 、Cx26( Kelsell et al., 1997)、Cx30( Grifa et al.,
1999) お よ び Cx31( Xia et al., 1998; Liu et al., 2000) の 遺 伝 子 変 異 に よ る 遺
伝 性 の 非 症 候 性 難 聴 、 Cx26 変 異 に よ る 遺 伝 性 皮 膚 疾 患 で あ る palmoplantar
keratodermas( Maestrini et al., 1993; Kelsell et al., 2000) が 報 告 さ れ た 。 遺 伝
性 皮 膚 疾 患 に お い て は 、 Cx30.3 の 変 異 も 明 ら か に さ れ て い る ( Macari et al.,
2000)。 ま た 、 Cx46 ま た は Cx50 の 変 異 に よ る 先 天 性 白 内 障 ( Francis et al.,
5
1999) や 、 Cx43 の C 末 端 領 域 に お け る 点 突 然 変 異 に よ る ヒ ト の 心 臓 奇 形 の
疾 患 ( Britz-Cunningham et al., 1999) な ど も 報 告 さ れ て い る 。
こ れ ら の ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス の 表 現 型 や 、ヒ ト に お け る 疾 患 の 原 因 遺 伝 子
としてコネクシン遺伝子が同定されていることなどから推測できるように、
ギ ャ ッ プ 結 合 の 役 割 は 多 様 で 、様 々 な 組 織 で 重 要 な 機 能 を 担 っ て い る と 考 え
られる。
卵胞発育におけるギャップ結合
ギャップ結合を介した細胞間コミュニケーションが関わる生命現象とし
て 、さ ら に 、哺 乳 類 卵 巣 内 濾 胞( 卵 胞 )に お け る 卵 子 成 熟 機 構 が 挙 げ ら れ る 。
哺 乳 類 に お い て 卵 胞 は 、個 体 が 性 成 熟 を 迎 え る ま で 未 成 熟 な 初 期 卵 胞( 原 始
卵 胞 ) の 段 階 で 休 止 し て お り 、 卵 胞 刺 激 ホ ル モ ン ( FSH) の 刺 激 に よ り 卵 胞
発 育 は 再 開 さ れ る 。卵 胞 発 育 が 再 開 さ れ る 過 程 で は 、卵 母 細 胞 を 取 り 巻 く 顆
粒 膜 細 胞 が 増 殖 し 、 し だ い に 多 層 化 ( 1-3 次 卵 胞 ) し て い き 、 や が て 卵 胞 内
に 腔 を 持 つ 胞 状 卵 胞( グ ラ ー フ 卵 胞 )へ と 発 達 す る( 参 考 図 3 A)。こ の 様 な
卵 巣 内 に お け る 卵 胞 発 育 の 最 も 中 心 的 な 過 程 は 、卵 母 細 胞 の 成 長 に あ る 。原
始 卵 胞 内 に あ る 卵 母 細 胞 は 、減 数 分 裂 を 再 開 す る 能 力 も 、発 生 能 も ま だ 持 っ
て お ら ず 、卵 胞 が 発 育 す る と 伴 に 、そ の 大 き さ が 増 大 し 、発 生 能 力 を 獲 得 し
て い く 。卵 胞 内 に は 内 莢 膜 層 に し か 血 管 は 存 在 し て お ら ず 、卵 母 細 胞 は 周 り
を 囲 む 顆 粒 膜 細 胞 を 通 し 栄 養 や 、FSH な ど 外 部 か ら の シ グ ナ ル を 受 け 取 っ て
い る 。よ っ て 卵 胞 の 発 育 に は 、卵 母 細 胞 と 顆 粒 膜 細 胞 と の 細 胞 間 相 互 作 用 が
重 要 な 役 割 を 果 た し て い る と 考 え ら れ て き て お り ( Eppig, 1994)、 こ の 相 互
作 用 に 関 す る 分 子 レ ベ ル で の メ カ ニ ズ ム が 、明 ら か に な っ て き て い る 。顆 粒
膜 細 胞 か ら 分 泌 さ れ る Steel 因 子 は 、 卵 母 細 胞 表 面 に 発 現 し て い る 受 容 体
c-kit に 結 合 し 、生 存 お よ び 成 長 に 必 要 な シ グ ナ ル を 伝 え る こ と が 知 ら れ て お
り( Kissel et al., 2000)、可 溶 型 Steel 因 子 を 産 生 で き な い 変 異 型 マ ウ ス で は 、
卵 胞 発 育 は 一 次 卵 胞 で 停 止 す る( Kuroda et al., 1988; Huang et al., 1993; Bedell
et al., 1995 )。 ま た 、 卵 母 細 胞 か ら 産 生 さ れ る Growth and Differentiation
factor-9( GDF-9)は 、そ の ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス で 、卵 胞 発 育 が 初 期 の 段 階 で
停 止 す る 表 現 型 が 見 ら れ て お り ( Dong et al., 1996)、 GDF-9 が 顆 粒 膜 細 胞 に
作 用 し 、ヒ ア ル ロ ン 酸 合 成 や シ ク ロ キ ナ ー ゼ 2 の 遺 伝 子 発 現 を 誘 導 す る こ と
に よ り 、顆 粒 膜 細 胞 の 分 化 を 誘 導 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る( Elvin et al.,
1999)。
6
こ れ ら 液 性 因 子 に 加 え 、卵 胞 発 育 過 程 に お い て 卵 母 細 胞 と 顆 粒 膜 細 胞 間 の
相 互 作 用 に 、ギ ャ ッ プ 結 合 も 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る( Heller and Schultz,
1980; Brower and Schultz, 1982)。 卵 胞 内 に お い て ギ ャ ッ プ 結 合 は 、 顆 粒 膜 細
胞 間 、お よ び 卵 母 細 胞 と 顆 粒 膜 細 胞 間 に 存 在 し て お り( Anderson et al., 1976;
Gilula et al., 1978; 参 考 図 3 B)、 細 胞 間 の 代 謝 的 共 役 を も た ら し 、 卵 母 細 胞
へ の 栄 養 供 給 や 分 裂 再 開 抑 制 機 構 、あ る い は 顆 粒 膜 細 胞 の 増 殖 や 分 化 に 関 与
し て い る と 考 え ら れ て い る ( Dekel et al., 1981; Bornslaeger and Schultz, 1985;
Sherizly et al., 1988; Sandberg et al., 1992; Carabatsos et al., 2000)。卵 胞 内 で 発
現 し て い る コ ネ ク シ ン は 、 こ れ ま で に 、 Cx26、 30.3、 32、 37、 43、 45、 60
の 7 種 類 が 同 定 さ れ て お り 、 そ れ ぞ れ 特 異 的 な 局 在 を 示 す 。 Cx26、 32 は 、
胞 状 卵 胞 内 の 内 夾 膜 細 胞 に の み 発 現 が 見 ら れ 、Cx30.3 は 、胞 状 卵 胞 内 の 内 夾
膜 細 胞 、 顆 粒 膜 細 胞 、 卵 丘 細 胞 に 、 Cx60 は 胞 状 卵 胞 内 の 内 夾 膜 細 胞 、 卵 丘
細 胞 に 発 現 が 見 ら れ る ( Itahana et al., 1996, 1998)。 Cx43 は 、 卵 胞 発 育 の 初
期 か ら 顆 粒 膜 細 胞 に お い て 発 現 し て お り( Wiesen and Midgley, 1994; Juneja et
al., 1999)、 胞 状 卵 胞 内 に お い て も 、 卵 母 細 胞 を 除 き 、 広 範 に 発 現 し て い る
( Itahana et al., 1996)。 Cx37 も 卵 胞 発 育 の 初 期 か ら 発 現 し て い る が 、 そ の 発
現 は 卵 母 細 胞 に 見 ら れ る ( Simon et al., 1997)。 ま た Cx45 は 、 胞 状 卵 胞 内 の
顆 粒 膜 細 胞 に お い て Cx43 と 共 局 在 を 示 す( Okuma et al., 1996)。こ れ ら の コ
ネ ク シ ン の う ち 、Cx37 -/- マ ウ ス で は 、メ ス に お い て 卵 胞 の 成 熟 不 全 と 排 卵 障
害 に よ る 不 妊 が 確 認 さ れ て い る ( Simon et al., 1997)。 さ ら に 、 Cx43 の ノ ッ
ク ア ウ ト マ ウ ス は 前 述 し た よ う に 、心 臓 の 形 態 異 常 の た め 生 後 直 後 に 死 亡 す
る が 、卵 巣 を 摘 出 し 器 官 培 養 を 行 う と 、顆 粒 膜 細 胞 の 増 殖 が ほ と ん ど み ら れ
ず 、 原 始 も し く は 一 次 卵 胞 で 発 育 を 停 止 す る の が 認 め ら れ て い る ( Juneja et
al., 1999)。こ の こ と は 、卵 巣 を 野 生 型 マ ウ ス の 腎 皮 膜 下 へ 移 植 し た 場 合 で も 、
同 様 の こ と が 確 認 さ れ て お り ( Ackert et al., 2001)、 Cx43 が 卵 胞 発 育 の 初 期
の段階から重要な機能を担っていること示唆する。
Cx43 の ラ イ フ サ イ ク ル
コ ネ ク シ ン フ ァ ミ リ ー の 中 で 、 Cx43 は 広 範 な 組 織 や 様 々 な 細 胞 に お い て
発 現 し て お り 、早 く か ら cDNA が 単 離 さ れ た こ と か ら 他 の コ ネ ク シ ン に 比 べ
解 析 が 進 め ら れ て き た( Bruzzone et al., 1996a,b)。Cx43 は 、他 の 膜 タ ン パ ク
質 と 同 様 に 粗 面 小 胞 体 に お い て 合 成 さ れ 、そ の 後 ゴ ル ジ 体 を 通 り 、ト ラ ン ス
ゴルジネットワークを経て細胞膜へと輸送されギャップ結合を構築する
7
( Berthoud et al., 2004; 参 考 図 4)。無 細 胞 タ ン パ ク 質 合 成 系 に お い て 、Cx43
は 1 番 目 の 膜 貫 通 ド メ イ ン が シ グ ナ ル ペ プ チ ド 配 列 と 認 識 さ れ 、シ グ ナ ル ペ
プ チ ダ ー ゼ に よ り 切 断 さ れ て し ま う 傾 向 が あ る こ と か ら 、膜 へ の 組 み 込 み に
は シ ャ ペ ロ ン タ ン パ ク 質 が 必 要 に な る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る ( Falk and
Gilula, 1998)。小 胞 体 に お い て 膜 に 組 み 込 ま れ た Cx43 は 、そ の 後 ト ラ ン ス ゴ
ル ジ ネ ッ ト ワ ー ク に お い て オ リ ゴ マ ー 化 し コ ネ ク ソ ン を 形 成 す る( Musil and
Goodenough, 1993)。 一 方 、 Cx32 で は コ ネ ク ソ ン の 形 成 が 小 胞 体 に お い て 起
こ る こ と が 報 告 さ れ て お り ( DasSarma et al., 2002)、 Cx43 と 32 の キ メ ラ タ
ン パ ク 質 を 用 い た 解 析 よ り 、 Cx43 の 3 番 目 の 膜 貫 通 領 域 と 2 番 目 の 細 胞 外
ループ領域が小胞体でのコネクソンの形成を阻害する最小のモチーフであ
り 、中 で も 153 番 目 の ア ル ギ ニ ン と 173 番 目 の グ ル タ ミ ン が 重 要 で あ る こ と
が 示 さ れ て い る ( Maza et al., 2005)。
コ ネ ク ソ ン を 形 成 し た Cx43 は 、 細 胞 膜 へ と 輸 送 さ れ ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築
す る が 、コ ネ ク ソ ン は ま ず ギ ャ ッ プ 結 合 周 辺 の 細 胞 膜 に 輸 送 さ れ 、そ の 後 ギ
ャ ッ プ 結 合 内 へ と 取 り 込 ま れ る と い う こ と が 報 告 さ れ て い る ( Gaietta et al.,
2002)。こ の こ と は 、4 つ の シ ス テ イ ン 残 基 か ら な る タ グ 配 列 と 、こ れ と 反 応
す る こ と で 蛍 光 を 発 す る 2 つ の 物 質( FIAsH-EDT 2 お よ び RsAsH-EDT 2 )を 異
な る タ イ ミ ン グ で 添 加 す る と い う 手 法 に よ り 明 ら か に さ れ て お り 、ギ ャ ッ プ
結 合 の 崩 壊 は 逆 に そ の 中 心 よ り 起 こ る と い う こ と も 同 時 に 示 さ れ て い る 。ま
た 、 GFP 融 合 型 Cx43( Cx43-GFP) を 発 現 し て い る 細 胞 と 、 内 在 性 の Cx43
を 発 現 し て い る 細 胞 を 同 時 に 培 養 し た と こ ろ 、 Cx43-GFP を 発 現 し て い な い
細 胞 の 細 胞 質 に お い て も GFP の シ グ ナ ル が 観 察 さ れ る こ と か ら 、 ギ ャ ッ プ
結 合 の 崩 壊 過 程 に お い て 細 胞 間 で 連 結 し て い る コ ネ ク ソ ン は 、一 方 の 細 胞 に
取 り 込 ま れ る の で は な い か と 考 え ら れ て い る( Jordan et al., 2001)。ギ ャ ッ プ
結 合 よ り 細 胞 質 へ と 取 り 込 ま れ た Cx43 は 、 そ の 後 タ ン パ ク 質 分 解 を 受 け る
が 、こ れ に は ユ ビ キ チ ン -プ ロ テ ア ソ ー ム 系( Laing and Beyer, 1995)と リ ソ ソ
ー ム 系 ( Musil et al., 2000) の 2 つ の 経 路 が 関 与 し て い る こ と が 知 ら れ て い
るが、その詳細はまだ不明な点が残されている。これまでの報告において
Cx43 の 半 減 期 は 1-1.5 時 間 ( Laird et al., 1995) と い う も の か ら 約 4 時 間
( Yamaguchi and Ma, 2003) と い う も の ま で 様 々 で あ り 、 他 の コ ネ ク シ ン で
は 2 日 以 上 と い う 報 告 も あ る( Berthoud et al., 1999)。こ れ ら こ と か ら 、コ ネ
ク シ ン の 分 解 は 細 胞 に よ り 異 な る メ カ ニ ズ ム が 存 在 し 、こ れ に よ り 半 減 期 の
時間も異なるのではないかと予想される。
8
Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 の 制 御 機 構
前 述 し た よ う な ラ イ フ サ イ ク ル に お い て 、 Cx43 は 様 々 な 段 階 で 制 御 を 受
け て お り 、フ ァ ミ リ ー 間 で そ の 長 さ が 異 な り 相 同 性 も 低 い 細 胞 内 C 末 端 領 域
( 227 番 目 の グ ル タ ミ ン 酸 残 基 か ら 382 番 目 の イ ソ ロ イ シ ン 残 基 ; Cx43-CT)
の リ ン 酸 化 は 、 こ の 制 御 に 深 く 関 わ る ( Falk., 2000b; Cruciani and Mikalsen,
2002; Lampe and Lau, 2004; 参 考 図 5)。 細 胞 内 cAMP の 上 昇 は 、 PKA 依 存 的
な Cx43 の 細 胞 内 の 輸 送 や ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 を 促 進 し 、 こ の と き リ ン 酸 化
の 亢 進 も 見 ら れ る こ と が 報 告 さ れ て い る ( Wang and Rose, 1995; Holm et al.,
1999; Falk et al., 2000a; Paulson et al., 2000)。顆 粒 膜 細 胞 に お い て 、FSH 刺 激
は cAMP の 細 胞 内 濃 度 を 上 昇 さ せ る こ と が 知 ら れ て お り 、こ の 刺 激 依 存 的 に
Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 が 促 進 さ れ る こ と 、 Cx43-CT の 365、 368、
369 お よ び 373 番 目 の セ リ ン 残 基 に お け る リ ン 酸 化 が 亢 進 さ れ る こ と が 報 告
されている。さらにこのリン酸化部位を全てアラニンに置換した変異体
( Cx43-S4A)で は 、チ ャ ネ ル 活 性 が 著 し く 低 下 す る こ と も 明 ら か に さ れ て い
る( Yogo et al., 2002)。ま た 、カ セ イ ン キ ナ ー ゼ 1( CK1)の 酵 素 活 性 は 、細
胞 膜 へ と 輸 送 さ れ た Cx43 が ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 す る の に 重 要 で あ る こ と が
阻 害 剤 を 用 い た 実 験 か ら 示 さ れ て い る 。 な お 、 CK1 に よ る リ ン 酸 化 部 位 は 、
in vitro の リ ン 酸 化 反 応 で 、 Cx43-CT の 325、 328 ま た は 330 番 目 の セ リ ン 残
基 で あ る こ と が 示 さ れ て い る ( Cooper and Lampe, 2002)。
一 方 、Cx43-CT に お け る リ ン 酸 化 は ギ ャ ッ プ 結 合 の 負 の 制 御( ギ ャ ッ プ 結
合 の 分 解 や チ ャ ネ ル 活 性 の 阻 害 ) に も 関 わ る こ と が 報 告 さ れ て い る 。 G 2 /M
期 に お い て p34 cdc2 キ ナ ー ゼ は 、255 お よ び 262 番 目 の セ リ ン 残 基 に お る リ ン
酸 化 を 亢 進 し 、エ ン ド サ イ ト ー シ ス の 増 加 と 分 解 を 促 進 す る と 考 え ら れ て い
る( Kanemitsu et al., 1998)。ま た 、PKC は ホ ル ボ ー ル エ ス テ ル な ど の 刺 激 に
よ り Cx43 の 368 番 目 の セ リ ン 残 基 を( Lampe et al., 2000; Rivedal and Opsahl,
2001)、上 皮 増 殖 因 子 や 血 小 板 由 来 増 殖 因 子 な ど の 刺 激 に よ り MAPK は 255、
279、 282 番 目 の セ リ ン 残 基 を ( Warn-Cramer et al., 1998; Rivedal and Opsahl,
2001)、 v-Src は 247、 265 番 目 の チ ロ シ ン 残 基 を リ ン 酸 化 し チ ャ ネ ル 活 性 を
負 に 制 御 す る こ と が 報 告 さ れ て い る( Lin et al., 2001)。c-Src も 細 胞 間 コ ミ ュ
ニ ケ ー シ ョ ン の 負 の 制 御 に 関 わ り( Postma et al., 1998)、265 番 目 の チ ロ シ ン
残 基 を リ ン 酸 化 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る( Giepmans et al., 2001a)。Src に
よ る チ ロ シ ン リ ン 酸 化 を 介 し た 負 の 制 御 に 関 し て 、 Cx43-CT に receptor
protein tyrosine phosphataseμ ( RPTPμ ) が 会 合 す る こ と が 報 告 さ れ て お り 、
Src に よ る 制 御 を 阻 害 す る の で は な い か と 予 想 さ れ て い る ( Giepmans et al.,
9
2003)。
ま た 、 Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 制 御 に 関 与 す る も の と し て 、 細 胞
外 基 質 と の 結 合 を 担 う イ ン テ グ リ ン や 、接 着 結 合 分 子 で あ る カ ド ヘ リ ン が 挙
げ ら れ る( Lampe and Lau, 2000)。イ ン テ グ リ ン α 3 β 1 と そ の 基 質 で あ る ラ ミ
ニ ン 5 と の 結 合 は 、 Rho A を 介 し て Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 を 促 進 さ
せ る こ と が 報 告 さ れ て い る ( Lampe et al., 1998)。 ま た 、 接 着 結 合 、 Cx43 に
よ る ギ ャ ッ プ 結 合 を 共 に 有 し て い る 細 胞 に お い て 、カ ド ヘ リ ン の 機 能 を 阻 害
す る と 、 ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 も 阻 害 さ れ る こ と (Meyer et al., 1992; Frenzel
and Johnson, 1996)、 こ れ に 対 し Cx43 は 発 現 し て い る が ギ ャ ッ プ 結 合 を 形 成
し て い な い 細 胞 に お い て 、カ ド ヘ リ ン を 遺 伝 子 導 入 し 、接 着 結 合 を 形 成 さ せ
る と 、 ギ ャ ッ プ 結 合 が 構 築 さ れ ( Matsuzaki et al., 1990; Jongen et al., 1991)、
Cx43 の リ ン 酸 化 レ ベ ル も 上 昇 す る こ と が 報 告 さ れ て い る( Musil et al., 1990)。
こ の 詳 細 な 機 構 は 不 明 で あ る が 、神 経 冠 細 胞 に お い て 、カ ド ヘ リ ン の 細 胞 内
領 域 の β -カ テ ニ ン 結 合 領 域 と 膜 貫 通 領 域 と の 間 に 位 置 す る 膜 近 位 の 領 域 に
結 合 す る こ と が 知 ら れ て い る p120 ctn が Cx43、 N-カ ド ヘ リ ン そ れ ぞ れ と 共 局
在 し て お り 、p120 ctn を 介 し て こ の 2 つ の 細 胞 間 結 合 が 互 い に 作 用 し て い る 可
能 性 が 示 唆 さ れ て い る ( Xu et al., 2001)。 ま た 、 カ ド ヘ リ ン に よ る ギ ャ ッ プ
結 合 構 築 の 促 進 が 、 サ イ ト カ ラ シ ン D に よ り 阻 害 さ れ る こ と よ り 、 α -カ テ
ニンを介したアクチンフィラメントの形成がカドヘリンによるギャップ結
合 構 築 制 御 に 重 要 で あ る こ と も 示 さ れ て い る ( Hernandez-Blazquez et al.,
2001)。Cx43 と ア ク チ ン フ ィ ラ メ ン ト と の 関 わ り は 、細 胞 膜 へ の 輸 送 に 関 与
す る と い う 可 能 性 が 示 唆 さ れ て お り ( Murray et al., 1997)、 ア ク チ ン 結 合 タ
ン パ ク 質 で あ る ZO-1、-2、Drebrin な ど が Cx43-CT を 介 し て 会 合 す る こ と も
報 告 さ れ て い る ( Giepmans and Moolenaar, 1998; Singh and Lampe, 2003;
Butkevich et al., 2004)。ま た 、こ れ ら の 会 合 タ ン パ ク 質 は 、Cx43 の 局 在 制 御
や タ ン パ ク 質 の 安 定 性 に 関 わ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 例 え ば 、 ZO-1 は
心筋細胞において、介在板付近におけるギャップ結合構築に重要である
( Toyofuku et al., 1998b)。 一 方 、 そ の 結 合 領 域 を 欠 損 し て い る よ う な 変 異 型
の Cx43 が 野 生 型 に 比 べ チ ャ ネ ル 活 性 に 若 干 の 違 い が 見 ら れ る も の の 、 ギ ャ
ッ プ 結 合 を 構 築 す る こ と も 知 ら れ て お り( Fishman et al., 1991; Dunham et al.,
1992)、 そ の 重 要 性 は 未 だ 不 明 で あ る 。
さ ら に 、微 小 管 が コ ネ ク ソ ン 間 の 連 結 に 必 要 で あ る と い う こ と が 、そ の 重
合 阻 害 剤 で あ る nocodazole で 細 胞 を 処 理 し た 実 験 よ り 示 唆 さ れ て お り
( Thomas et al., 2001)、 Cx43-CT と α ま た は β チ ュ ー ブ リ ン が 直 接 会 合 す る
こ と も 示 さ れ て い る( Giepmans et al., 2001b, c)。し か し 、Cx43-CT に お け る
10
チ ュ ー ブ リ ン 結 合 領 域 の 欠 損 は 、ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 や チ ャ ネ ル 活 性 に 特 に
影 響 を 与 え な い こ と 、細 胞 種 に よ り ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 に 対 す る nocodazole の
作 用 が 異 な る こ と な ど か ら 、微 小 管 が Cx43 を 制 御 す る の で は な く 、Cx43 が
微小管重合時に細胞膜でのアンカーとして働くのではないかという報告も
存 在 す る ( Murray et al., 1997; Giepmans et al., 2001b)。
ア ク チ ン 結 合 タ ン パ ク 質 や チ ュ ー ブ リ ン 以 外 に 、こ れ ま で に Cx43-CT に 会
合 す る タ ン パ ク 質 と し て 、 CCN3/NOV( Cyr61/connective tissue growth factor/
nephroblastoma-overexpressed: Fu et al., 2004; Gellhaus et al., 2004) や 新 規 分
子 CIP85( Connexin43-Interacting Protein of 85-kDa: Lan et al., 2005)な ど が 知
ら れ て い る 。 CCN3/NOV は 、 Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 依 存 的 に そ の
発 現 量 が 上 昇 す る タ ン パ ク 質 で あ り 、Cx43-CT と 会 合 す る こ と で 細 胞 の 増 殖
を 抑 制 す る こ と が 示 さ れ て い が 、 Cx43 の 制 御 に 寄 与 す る か は 不 明 で あ る 。
こ れ に 対 し CIP85 は 、 Cx43 の リ ソ ソ ー ム 依 存 的 な 分 解 に 関 わ る こ と が 報 告
されている。
本研究の要約
以 上 述 べ た 様 に 、 Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 制 御 機 構 は リ ン 酸 化 や タ ン パ
ク 質 の 会 合 な ど 様 々 な 知 見 が 示 さ れ て い る が 、そ の 詳 細 な 分 子 制 御 機 構 は 未
だ 解 明 さ れ て お ら ず 、不 明 な 点 が 多 く 残 さ れ て い る 。そ こ で 本 研 究 で は 、Cx43
によるギャップ結合構築における制御機構を理解することを目的に、特に
Cx43-CT に 着 目 し 、 Cx43 が 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る 卵 巣 の cDNA ラ イ ブ ラ
リ ー を 用 い た yeast two-hybrid 法 に よ る 会 合 タ ン パ ク 質 の 探 索 を 行 っ た 。 そ
の 結 果 、新 規 分 子 Connexin43-Interacting Protein of 150-kDa( CIP150)を 会 合
タ ン パ ク 質 と し て 同 定 し た 。 さ ら に 、 CIP150 の 機 能 解 析 を 行 な う こ と に よ
り 、 Cx43 の 細 胞 内 局 在 制 御 に 関 わ る 可 能 性 を 示 唆 す る 結 果 が 得 ら れ 、 ギ ャ
ップ結合構築に関わる制御機構についての新しい知見を得ることが出来た。
11
参考図 1
コネクシンとギャップ結合の模式図
A. コ ネ ク シ ン は 4 回 膜 貫 通 型 の 膜 タ ン パ ク 質 で あ り 、 細 胞 内 N 末 端 お よ び
C 末端、2 つ細胞外ループ、1 つの細胞内ループ領域を有する。ファミリー
間において、膜貫通および細胞外ループ領域において比較的相同性が高く、
細胞外ループ領域に 3 個ずつ存在するシステイン残基は例外なく保存されて
お い る 。ル ー プ 間 で は 、こ の シ ス テ イ ン 残 基 に お い て 分 子 内 ジ ス ル フ ィ ド 結
合 が 形 成 さ れ る 。細 胞 内 ル ー プ 領 域 と C 末 端 領 域 は 、フ ァ ミ リ ー 間 で 相 同 性
が低く長さも異なる。
B. ギ ャ ッ プ 結 合 チ ャ ネ ル は 、 コ ネ ク シ ン が コ ネ ク ソ を 形 成 し 、 コ ネ ク ソ ン
が数十から数千集合したヘミチャネルが細胞間で連結する事で構築される。
コ ネ ク ソ ン の 中 心 に 形 成 さ れ る 親 水 性 の 微 小 孔 は 、 そ の 直 径 が 約 1.5 nm で
ある。
12
参考図 2
複数のコネクシンによるギャップ結合の構築
コ ネ ク ソ ン は 、複 数 の コ ネ ク シ ン よ り 形 成 さ れ 、構 成 す る コ ネ ク シ ン が 異 な
る コ ネ ク ソ ン 間 で も 連 結 す る 。つ ま り 、コ ネ ク シ ン が ホ モ ま た は ヘ テ ロ の 場
合 、細 胞 間 で の コ ネ ク ソ ン の 連 結 が ホ モ ま た は ヘ テ ロ の 場 合 、そ れ ぞ れ の 組
合せで 4 種類のモデルが考えられる。
13
参考図 3
卵胞発育におけるギャップ結合
A. 哺 乳 類 に お い て 、 個 体 が 性 成 熟 を 迎 え る と 脳 下 垂 体 よ り 卵 胞 刺 激 ホ ル モ
ン ( FSH) が 分 泌 さ れ 、 こ の 刺 激 に よ り 卵 胞 発 育 は 再 開 さ れ る 。 卵 胞 は 発 育
す る 過 程 で 、卵 母 細 胞 を 取 り 巻 く 顆 粒 膜 細 胞 が 増 殖 し 、し だ い に 多 層 化( 1-3
次 卵 胞 )し て い き 、や が て 卵 胞 内 に 腔 を 持 つ 胞 状 卵 胞( グ ラ ー フ 卵 胞 )へ と
発 達 し た 後 、 排 卵 が 起 こ る 。 B. 卵 胞 内 に お い て ギ ャ ッ プ 結 合 は 、 顆 粒 膜 細
胞 間 、お よ び 卵 母 細 胞 と 顆 粒 膜 細 胞 間 に 存 在 し て お り 、卵 母 細 胞 へ の 栄 養 供
給 や 分 裂 再 開 抑 制 機 構 、あ る い は 顆 粒 膜 細 胞 の 増 殖 や 分 化 に 関 与 し て い る と
考えられている。
14
参考図 4
Cx43 ラ イ フ サ イ ク ル の 模 式 図
細 胞 内 に お い て Cx43 は 、 他 の 膜 タ ン パ ク 質 と 同 様 に 粗 面 小 胞 体 に お い て 合
成 さ れ 、そ の 後 ゴ ル ジ 体 を 通 り 、ト ラ ン ス ゴ ル ジ ネ ッ ト ワ ー ク を 経 て 細 胞 膜
へ と 輸 送 さ れ ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 す る 。 こ の 過 程 に お い て Cx43 は 、 ト ラ ン
ス ゴ ル ジ ネ ッ ト ワ ー ク に お い て オ リ ゴ マ ー 化 し コ ネ ク ソ ン を 形 成 す る 。コ ネ
ク ソ ン を 形 成 し た Cx43 は 、 ギ ャ ッ プ 結 合 周 辺 の 細 胞 膜 に 輸 送 さ れ 、 そ の 後
コ ネ ク ソ ン が 細 胞 間 で 連 結 し 、ギ ャ ッ プ 結 合 内 へ と 取 り 込 ま れ る 。ギ ャ ッ プ
結 合 の 崩 壊 は 逆 に そ の 中 心 よ り コ ネ ク ソ ン が 連 結 し た ま ま 起 こ り 、そ の 後 ユ
ビ キ チ ン -プ ロ テ ア ソ ー ム 系 経 路 ま た は リ ソ ソ ー ム 系 経 路 に お い て タ ン パ ク
質分解を受ける。
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参考図 5
Cx43-CT に お け る リ ン 酸 化 部 位
こ れ ま で に 報 告 さ れ て い る Cx43-CT の リ ン 酸 化 部 位 を 示 し た 。配 列 の 上 に 示
してある矢印は、↑が正の制御、↓が負の制御に関わることを示している。
配列の下には関与する(直接的または間接的)酵素名を示した。
16
材料と方法
Yeast two-hybrid ス ク リ ー ニ ン グ
Yeast two-hybrid ス ク リ ー ニ ン グ は CLONTECH 社 の MATCHMAKER
two-hybrid シ ス テ ム を 用 い 行 な っ た 。GAL4 DNA 結 合 領 域 を コ ー ド す る 配 列
を 持 つ pAS2 に ラ ッ ト Cx43-CT 配 列 を 組 み 込 ん だ pAS2-Cx43-CT( bait)を 構
築 し 、 酵 母 Y190 株 に ト ラ ン ス フ ォ ー ム し た 。 Bait を 導 入 し た 酵 母 Y190 株
に 、Gal4 の 転 写 活 性 化 領 域 を コ ー ド す る 配 列 を 持 つ pGAD GH に ラ ッ ト 卵 巣
cDNA を 組 み 込 ん だ ラ イ ブ ラ リ ー ( prey) を ト ラ ン ス フ ォ ー ム し 、 ヒ ス チ ジ
ン を 欠 如 し た 培 地 で 培 養 し た 。生 育 し た コ ロ ニ ー に 対 し て フ ィ ル タ ー ア ッ セ
イ を 行 な い 、β-ガ ラ ク ト シ ダ ー ゼ 活 性 を 調 べ た 。そ し て 活 性 の あ っ た ク ロ ー
ン か ら prey を 回 収 し 、 そ の 塩 基 配 列 を 解 析 し た 。
RT-PCR と ク ロ ー ニ ン グ
First strand cDNA は 、 ISOGEN(ニ ッ ポ ン ジ ー ン )を 用 い 単 離 し た 全 RNA を
鋳 型 と し 、oligo( dT)プ ラ イ マ ー( LIFE TECHNOLOGIES)を 用 い 、逆 転 写
酵 素 SUPERSCRIT II ( LIFE TECHNOLOGIES) に よ り 合 成 し た 。
CIP150 全 長 配 列 は 、 KIAA1432 ( GenBank accession No. BC023535 ) と
DKFZp434D105( GenBank accession No. AL136875)両 塩 基 配 列 に よ り カ バ ー
さ れ る 領 域 を 3 つ の 断 片 に 分 け 、 ヒ ト 胎 盤 の cDNA を 鋳 型 と し た PCR に よ
り 増 幅 し 、こ れ ら の 断 片 を 継 ぎ 合 せ る こ と で 得 た 。そ れ ぞ れ の 断 片 を 増 幅 す
る の に 以 下 の よ う な プ ラ イ マ ー を 用 い た 。CIP150 の 開 始 コ ド ン よ り 1307 番
目
の
塩
基
ま
で
を
含
む
断
片
[5 ' -agaattcTGAATGGAGGCCAGATAGTACC-3 ' ]
1
;
forward
reverse
、
[5'-CCAAACTTGCAACCACAG-3']。1226 か ら 2734 番 目 の 塩 基 を 含 む 断 片 2;
forward
[5'-CCTATCTAGAGAGCAATTGGCC-3']
、
reverse
[5'-CAGATTCTCCAGAGCCAATGG-3']。2659 番 目 の 塩 基 か ら 終 止 コ ド ン ま で
を 含 む 断 片 3 ; forward [5'-GCACTAGAACAAGGCAAGTGG-3'] 、 reverse
[5'-atggtaccACAACGTACTGAGCTGCACG-3']。 断 片 1 の forward に は EcoRI、
断 片 3 の reverse に は KpnI の 認 識 配 列 が 付 加 し て あ り ( 小 文 字 の 配 列 )、 こ
の 配 列 と CIP150 の 1270 か ら 1275 番 目 に 存 在 す る HindIII、 2687 か ら 2692
番 目 に 存 在 す る SalI の 認 識 配 列 を 利 用 し 、 3 つ の 断 片 は pBluescript II KS + 上
17
で 継 ぎ 合 わ せ 全 長 配 列 と し た 。 ま た CIP150 全 長 配 列 は 、 ヒ ト 胎 盤 の cDNA
を 鋳 型 と し 、DKFZp434D105 の 予 想 さ れ る 開 始 コ ド ン( 下 線 部 )を 含 む プ ラ
イ マ ー [5'-TGAATGGAGGCCAGATAGTACC-3']お よ び KIAA1432 の 予 想 さ れ
る
終
止
コ
ド
ン
(
下
線
部
)
を
含
む
プ
ラ
イ
マ
ー
[5'-GATGGAACCTCACTGTTAGG-3']を 用 い た PCR に よ り 増 幅 し た 。 PCR 産
物 は ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 に よ り 分 離 、精 製 し た 後 に 、そ の 塩 基 配 列 を 決
定 し た 。 CIP150 の ラ ッ ト 顆 粒 膜 細 胞 に お け る 発 現 は 、 forward が
[5'-AGTTCAGCTGCGTTATCTGC-3']
、
reverse
が
[5'-GTCCTCTTCATCTGCTTGTG-3']と い う 配 列 の プ ラ イ マ ー を 用 い 確 認 し た 。
抗体作製
CIP150 に 対 す る 3 種 類 の 抗 体 を 以 下 の 方 法 で 作 製 し た 。 CIP150 の 中 間 領
域 を 認 識 す る ウ サ ギ ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( 抗 CIP150-M 抗 体 ) の 作 製 に は 、
His 6 を 付 加 し た ヒ ト CIP150 の ア ミ ノ 酸 配 列 783-1024 番 目 ま で の ポ リ ペ プ チ
ド を 大 腸 菌 で 発 現 、精 製 し た も の 抗 原 と し て 用 い た 。免 疫 は 、ニ ュ ー ジ ー ラ
ン ド ホ ワ イ ト 、11 週 齢 、メ ス の ウ サ ギ( オ リ エ ン タ ル バ イ オ サ ー ビ ス )に 隔
週 で 初 回 に 100μ g、 2 回 目 以 降 50μ g ず つ 計 13 回 、 背 中 に 皮 下 注 射 す る こ
と で 行 な っ た 。 採 血 に よ り 得 ら れ た 血 清 中 の 抗 体 は 、 抗 原 を CNBr-active
Sepharose に 架 橋 し た カ ラ ム を 用 い 精 製 し た 。
CIP150 の N 末 端 お よ び C 末 端 領 域 を 認 識 す る マ ウ ス ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体
( 抗 CIP150-N ま た は -C 抗 体 )は 、抗 原 と し て N 末 端 の 109 ア ミ ノ 酸 、C 末
端 の 88 ア ミ ノ 酸 の ポ リ ペ プ チ ド を そ れ ぞ れ 、GST 融 合 組 換 え タ ン パ ク 質 と
し て 大 腸 菌 で 発 現 、精 製 し た も の を 免 疫 し 作 製 し た 。9 週 令 、メ ス の BALB/cA
Jc1 マ ウ ス( 日 本 ク レ ア )に 抗 原 50μ g を 隔 週 で 計 3 回 、腹 腔 内 に 免 疫 を 行
っ た 。心 臓 採 血 に よ り 得 た 血 清 は 、大 過 剰 量 の GST と 反 応 す る こ と で 抗 GST
抗体を取除いた後、抗体として用いた。
マ ウ ス 抗 β -actin モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体( AC-74)と 抗 FLAG モ ノ ク ロ ー ナ ル
抗 体 ( M2)、 ウ サ ギ 抗 Cx43 ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 は SIGMA か ら 、 マ ウ ス 抗
GFP モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( JL-8) は Clontech Laboratories よ り 購 入 し た 。 ま
た 2 次 抗 体 と し て 用 い た 、Hoseradish peroxidase
( HRP)が 結 合 し た Protein-A、
抗 マ ウ ス 抗 体 、Texas Red が 結 合 し た 抗 ウ サ ギ Ig 抗 体 は Amersham Biosciences
から購入した。
18
発 現 プ ラ ス ミ ド と siRNA
Yeast two-hybrid ス ク リ ー ニ ン グ に よ り 得 た 陽 性 ク ロ ー ン の 遺 伝 子 配 列 は 、
N 末 端 に FLAG-tag を 付 加 す る pFLAG-CMV2( SIGMA)の EcoRI 部 位 に サ ブ
ク ロ ー ニ ン グ し た 。 CIP150 の 全 長 配 列 は pFLAG-CMV2 の EcoRI- KpnI 部 位
に サ ブ ク ロ ー ニ ン グ し た 。 ラ ッ ト 野 生 型 Cx43 お よ び Cx43-S4A 変 異 体 は 、
CMV プ ロ モ ー タ ー を 持 つ pMH の KpnI-NotI 部 位 に ク ロ ー ニ ン グ し た 。ま た 、
Cx43 お よ び Cx43-CT の 欠 損 変 異 体 は 、PCR に よ り 作 製 し た 。2 種 類 の CIP150
に 対 す る siRNA 発 現 ベ ク タ ー で あ る pSUPER-siCIP150-1 お よ び -2 は 、
OligoEngine
社 の 手 引 書 に 従 い 作 製 し た 。 な お 、 標 的 配 列 は
pSUPER-siCIP150-1
が
[5'-AACCCAGTTCAAGTGGTGGAT-3']
、
pSUPER-siKDN-2 が [5'-AAGCAGCAATATGGTCAGCCG-3']で あ る 。
細胞培養と遺伝子導入
COS7、 HEK293、 HeLa、 NRK 細 胞 は Dulbecco's modified Eagle's medium
(DMEM) 、 T47D 細 胞 は RPMI-1640 、 KGN 細 胞 は DMEM-Ham’s F12
( DMEM/F12)に 10%の 牛 胎 児 血 清 を 加 え た も の を 基 本 培 地 と し 、37℃ 、5%
CO 2 条 件 下 で 培 養 し た 。 細 胞 を Brefeldin A( BFA) で 処 理 時 は 、 基 本 培 地 に
終 濃 度 5μ g/ml と な る よ う に 添 加 し 、 さ ら に 6 時 間 培 養 後 、 解 析 に 用 い た 。
ラ ッ ト 顆 粒 膜 細 胞 の 初 代 培 養 細 胞 は 既 報 に 従 い 調 製 し た ( Yogo et al.,
2002 )。 雌 の 21 日 齢 SD ラ ッ ト ( 日 本 SLC ) に 、 ゴ マ 油 に 溶 解 し た
Diethylstilbestrol( DES) 2mg を 4 日 間 連 続 投 与 し 、最 終 投 与 か ら 48 時 間 後 、
卵 巣 を 摘 出 し た 。 摘 出 後 、 20μ g/ml Gentamycin お よ び 0.5μ g/ml Fungizone
含 有 DMEM/F12 で 洗 浄 後 、 脂 肪 組 織 や 結 合 組 織 を ハ サ ミ で 除 去 し た 。 次 に
DMEM/F12 中 で 卵 巣 を 26G 注 射 針 で 刺 す こ と に よ り 、 卵 胞 を 破 裂 さ せ 顆 粒
膜 細 胞 を 取 り 出 し 、細 胞 懸 濁 液 を セ ル ス ト レ イ ナ ー (孔 70μ m)に 通 し 、余 分
な 組 織 を 取 り 除 い た 。さ ら に 細 胞 を 0.25% Trypsin、 50μ g/ml DNaseI で 37℃ 、
1 分 間 処 理 す る こ と に よ り 分 散 さ せ 、50mg/ml Trypsin inhibitor( GIBCO BRL)
で 37℃ 、 5 分 間 処 理 し trypsin を 失 活 さ せ た 後 、 DMEM/F12 で 2 回 洗 っ た 。
そ の 後 、 基 本 培 地 で あ る 5μ g/ml Insulin( GIBCO BRL)、 5μ g/ml Transferrin
( GIBCO BRL)、 0.1% BSA、 20μ g/ml Gentamycin、 0.5μ g/ml Fungizone 含 有
DMEM/F12( DMEM/F12-ITB) に 5μ g/ml Fibronectin を 添 加 し た 培 地 に 懸 濁
し 、poly-D-lysine コ ー ト し た 培 養 皿 に 1cm 2 あ た り 5×10 5 個 の 細 胞 を 播 種 し 、
19
24 時 間 37℃ 、 5% CO 2 条 件 下 で 培 養 し た 。 24 時 間 培 養 後 、 細 胞 を PBS で 一
度 洗 い 、 基 本 培 地 に 100ng/ml FSH( Vitro Diagnostics) を 添 加 し 、 さ ら に 24
時間培養し解析に用いた。
細 胞 へ の 遺 伝 子 導 入 は 、COS7 細 胞 は リ ン 酸 カ ル シ ウ ム 法( Chen-Okayama
法 ) に よ り 、 HeLa 細 胞 は LIPOFECTAMINE PLUS Reagent package、 HEK293
細 胞 は LIPOFECTAMINE 2000( Invitrogen) を そ れ ぞ れ 用 い 行 っ た 。
ウエスタンブロットおよび免疫染色
細 胞 抽 出 液 は 、 細 胞 を 氷 冷 し た PBS で 洗 浄 後 に lysis buffer( 0.5% NP 40、
50mM Tris-HCl( pH 8.0)、120mM NaCl、1mM EDTA、1mM Na 3 VO 4 、20mM NaF、
1mM PMSF、 1mM dithiothreitol、 100KIU/ml Aprotinin) で 10 分 間 溶 解 し 、
15,000rpm 4℃ で 5 分 間 遠 心 し た 上 清 を 回 収 す る こ と で 調 製 し た 。細 胞 抽 出 液
は SDS-ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル 電 気 泳 動 法 に よ り 分 離 し 、 こ れ を PVDF メ
ン ブ レ ン に 転 写 し た 。メ ン ブ レ ン を PBS で 洗 浄 後 に 5% Skim milk を 含 む PBS
( 5% Milk/PBS)で ブ ロ ッ キ ン グ 反 応 を 室 温 で 1 時 間 行 っ た 。一 次 抗 体 は 5%
Bovine Serum Albumin( BSA) を 含 む PBS で 希 釈 し 、 室 温 で 2 時 間 反 応 さ せ
た 。 メ ン ブ レ ン を 洗 浄 後 、 5% Milk/PBS で 希 釈 し た horseradish peroxidase 結
合 2 次 抗 体 ま た は protein-A で 45 分 反 応 さ せ 、 シ グ ナ ル は ECL( Amersham
Biosciences) に て 検 出 し た 。
免 疫 染 色 は 、 以 下 の 方 法 で 行 な っ た 。 カ バ ー グ ラ ス 上 ( HEK293 細 胞 の 場
合 は poly-D-lysine で コ ー ト し た )で 培 養 し た 細 胞 を PBS で 3 回 洗 浄 し 、PBS
に 溶 か し た 2% パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ド( 2% PFA/PBS)で 30 分 間 、室 温 で 固
定 し た 。細 胞 を PBS で 洗 浄 後 、0.2% Triton X-100 を 含 む PBS で 10 分 間 処 理
し 、 5% Milk/PBS で ブ ロ ッ キ ン グ 反 応 を 室 温 で 1 時 間 行 っ た 。 5% Milk/PBS
で 希 釈 し た 1 次 抗 体 溶 液 を 室 温 で 1 時 間 反 応 さ せ 、 細 胞 を 洗 浄 後 に 5%
Milk/PBS で 希 釈 し た 2 次 抗 体 溶 液 で さ ら に 1 時 間 反 応 さ せ た 。PBS で 洗 浄 後
VECTASHIELD を 用 い ス ラ イ ド グ ラ ス 上 に マ ウ ン ト し 、 LSM410 共 焦 点 顕 微
鏡 ( ZEISS) に て 検 鏡 し た 。
1% Triton X-100 buffer に よ る 細 胞 分 画
1% Triton X-100 buffer に よ る 細 胞 分 画 は 既 報 に 準 じ て 行 な っ た( Musil and
20
Goodenough, 1991)。氷 冷 し た PBS で 細 胞 を 3 回 洗 浄 後 、Triton lysis buffer( 1%
Triton-X 100、50mM Tris-HCl( pH 7.4)、150mM NaCl、2mM EDTA、2mM Na 3 VO 4 、
20mM NaF、 2mM PMSF、 10mM N-ethylmaleimide、 100KIU/ml Aprotinin) を
加 え 氷 上 で 10 分 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 こ の 後 、 ス ク レ イ パ ー で 細 胞 を よ く
剥 ぎ 取 り エ ッ ペ ン チ ュ ー ブ に 移 し 、26G 注 射 針 に 25 回 通 し ゲ ノ ム DNA を せ
ん 断 し た 。 こ れ を 氷 上 に 30 分 間 、 10 分 毎 に ボ ル テ ッ ク ス を か け な が ら イ ン
キ ュ ベ ー ト し た 。こ の 細 胞 溶 解 液 の 半 量 を 別 の チ ュ ー ブ に 保 存 し 、こ れ を 全
細 胞 抽 出 液 と し た 。残 り の 細 胞 溶 解 液 を 100,000g、4℃ で 50 分 超 遠 心 し 、細
胞 溶 解 液 を 分 画 し た 。超 遠 心 後 、上 清 を Triton 可 溶 性 画 分 、沈 澱 物 を 同 量 の
Triton lysis buffer に 懸 濁 し た も の を Triton 不 溶 性 画 分 と し た 。
免 疫 沈 降 お よ び Pull-down ア ッ セ イ
細 胞 抽 出 液 に 抗 体 2 μ g、 BSA を 終 濃 度 0.5%で 加 え 、 4℃ で 終 夜 反 応 さ せ
た 。抗 体 に 結 合 し た タ ン パ ク 質 複 合 体 は protein-A( ウ サ ギ 抗 体 使 用 時 )ま た
は -G Sepharose( マ ウ ス 抗 体 使 用 時 )ビ ー ズ を 20μ l 加 え 4℃ で 2 時 間 撹 拌 し 、
lysis buffer で 5 回 洗 浄 す る こ と で 回 収 し た 。
Pull-down ア ッ セ イ は 、 大 腸 菌 で 発 現 、 精 製 し た GST 融 合 型 の 組 換 え タ
ン パ ク 質 10μ g を 細 胞 抽 出 液 に 加 え 、 4℃ で 2 時 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 後 に
Glutathione Sepharose 4B ビ ー ズ で 回 収 し た 。
正リン酸による細胞標識
細 胞 を リ ン 酸 不 含 培 地 で 3 回 洗 浄 し た 後 、リ ン 酸 不 含 培 地 で 1 時 間 培 養 し 、
1mCi/ml と な る よ う に 培 地 に
32
P 正 リ ン 酸 ( NEN) を 加 え 、 さ ら に 4 時 間 培
養 し 細 胞 を 標 識 し た 。細 胞 を PBS で 洗 浄 後 、RIPA buffer( 50mM Tris-HCl( pH
7.2)、150mM NaCl、1mM EDTA( pH 8.0)、1% Sodium deoxycholate、1% Triton
X-100、 0.1% SDS、 2mM PMSF、 100KUI/ml Aprotinin) で 溶 解 し 、 ス ク レ イ
パ ー で 細 胞 を 剥 ぎ 取 り 細 胞 溶 解 液 を エ ッ ペ ン チ ュ ー ブ に 移 し た 。こ れ を 、26G
注 射 針 に 20 回 通 す こ と に よ り ゲ ノ ム DNA を せ ん 断 し 、 15,000rpm 4℃ で 10
分 間 遠 心 し 上 清 を 回 収 し た 。 回 収 し た 上 清 よ り Cx43 を 免 疫 沈 降 に よ り 精 製
し 、 SDS-PAGE に よ り 分 離 し た 後 に ゲ ル を 乾 燥 さ せ 、 X 線 フ ィ ル ム に よ り
シグナルを検出した。
21
Scrape-loading 色 素 透 過 ア ッ セ イ
Cx43 発 現 細 胞 に お け る 、 ギ ャ ッ プ 結 合 を 介 し た チ ャ ネ ル 活 性 は 、 既 報 に
準 じ て Scrape-loading 色 素 透 過 ア ッ セ イ に よ り 検 定 し た ( Yogo et al., 2002)。
カ バ ー グ ラ ス 上 で コ ン フ ル エ ン ト に な る ま で 培 養 し た 細 胞 を 、PBS で 2 回 洗
浄 し た 。 PBS を 除 去 後 、 0.25% Lucifer yellow( LY; 分 子 量 476Da)、 0.75%
Rhodamine dextran( RD; 分 子 量 10kDa) /PBS 溶 液 中 で 細 胞 を 直 線 状 に 27G
の 注 射 針 で 傷 つ け て 色 素 を 取 り 込 ま せ た 。 室 温 で 10 分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し
た 後 、 PBS で 3 回 洗 浄 し 、 2% PFA/PBS で 固 定 し 、 ス ラ イ ド グ ラ ス 上 に マ ウ
ン ト し た 。 LSM410 共 焦 点 顕 微 鏡 に て 、 傷 口 か ら 取 込 ま れ た 色 素 の 細 胞 間 で
の 移 行 を 検 鏡 し た 。色 素 の 透 過 活 性 は 、共 焦 点 顕 微 鏡 に て 取 込 ん だ 画 像 上 で 、
細胞を傷つけた線から垂直方向に色素が移行した最も遠い細胞までの距離
を Scion Image Beta 4.02( Scion Corporation) で 測 定 す る こ と で 定 量 化 し た 。
3 回の独立した実験を行い、各実験区あたり 4 枚の任意の画像を取込み、そ
れ ぞ れ の 画 像 に お い て 10 ヶ 所 距 離 を 測 定 し 、 平 均 距 離 の 算 出 と 有 意 差 検 定
を行った。
22
結果
Cx43 会 合 タ ン パ ク 質 の 探 索
Cx43-C 末 端 領 域( Cx43-CT)を bait、ラ ッ ト 卵 巣 cDNA ラ イ ブ ラ リ ー を prey
と し た ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た 結 果 、30 の 陽 性 ク ロ ー ン を 得 た 。各 ク ロ ー ン
が有するインサート配列をシーケンシングにより解析した結果、7 種類の遺
伝 子 を 候 補 遺 伝 子 と し て 得 た( 表 1)。次 に こ れ ら の 候 補 が 細 胞 内 に お い て も
Cx43-CT と 会 合 す る か を 確 認 す る た め に 、各 候 補 遺 伝 子 の 断 片 配 列 の 上 流 に
FLAG タ グ を 付 加 し 、 Cx43-CT と 共 に COS7 細 胞 に お い て 過 剰 発 現 し た 。
Cx43-CT を 認 識 す る 抗 Cx43 抗 体 に よ り 免 疫 沈 降 し た 結 果 、 Eleven-nineteen
Lysine rich Leukemia( ELL)、 Triosephosphate isomerase( TPI)、 KIAA1432 の
3 つ の 候 補 ク ロ ー ン に 関 し て 細 胞 内 で の 会 合 が 確 認 さ れ た ( 図 1)。 次 に TPI
の 全 長 配 列 を ク ロ ー ニ ン グ し 、Cx43 全 長 と の 会 合 を 解 析 し た 。COS7 細 胞 に
N 末 端 に FLAG タ グ を 付 加 し た TPI と Cx43 を 過 剰 発 現 し 、 抗 Cx43 お よ び
FLAG 抗 体 そ れ ぞ れ で 免 疫 沈 降 し た 後 、ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト に よ り シ グ ナ ル
を 検 出 し た 。そ の 結 果 、こ れ ら 2 つ の 全 長 同 士 の 共 沈 は 見 ら れ な か っ た( 図
2 A )。 ま た 、 KIAA1432 は そ の 全 長 配 列 が 報 告 さ れ て い な い た め 、 Yeast
two-hybrid で 得 ら れ た 164 ア ミ ノ 酸 か ら な る KIAA1432 の C 末 端 領 域
( KIAA1432-CT)の 配 列 を 用 い 、Cx43 全 長 配 列 と の 会 合 を 確 認 し た 。HEK293
細 胞 に FLAG タ グ を 付 加 し た KIAA1432-CT( FLAG-1432-CT) お よ び Cx43
を 過 剰 発 現 し 、 抗 FLAG 抗 体 で 免 疫 沈 降 し た 結 果 、 細 胞 内 に お い て
KIAA1432-CT と Cx43 が 会 合 し て い る こ と が 確 認 さ れ た( 図 2 B)。な お 、ELL
は RNA polymerase II 伸 長 因 子 で あ り 細 胞 内 局 在 が 核 で あ る こ と 、 Cx43-CT
との会合が弱いことより解析は行なわなかった。
新 規 タ ン パ ク 質 CIP150 の 同 定
KIAA1432( GenBank accession No. AB037853)は 、か ず さ DNA 研 究 所 の ヒ
ト 完 全 長 cDNA プ ロ ジ ェ ク ト に お い て 報 告 さ れ た 配 列 で あ る が 、前 述 し た よ
う に 予 想 さ れ る 開 始 コ ド ン を 含 ん で お ら ず 、 Cx43 と の 会 合 を 解 析 す る に た
めに、その全長配列の決定を行った。まず、全長配列を決定するにあたり、
NCBI-BLAST に お い て KIAA1432 に 対 し て 相 同 性 を 有 す る 配 列 を 探 索 し た 結
果 、KIAA1432 の 5’配 列 と 高 い 相 同 性 を 示 す 配 列 DKFZp434D105 ( GenBank
23
accession No. AL136875) が 報 告 さ れ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 し か し 、
DKFZp434D105 の cDNA 配 列 は 、予 想 さ れ る 開 始 コ ド ン を 含 ん で い た が 、同
時 に KIAA1432 の ORF 配 列 の 中 央 あ た り に 終 止 コ ド ン が 存 在 し て い た( 図 3)。
そ こ で こ の 2 つ の 配 列 の 関 係 を 明 ら か に す る た め に 、DKFZp434D105 お よ び
KIAA1432 の 開 始 コ ド ン と 終 止 コ ド ン を そ れ ぞ れ 含 む プ ラ イ マ ー を 設 計 し 、
こ れ を 用 い ヒ ト 胎 盤 cDNA を 鋳 型 と し た PCR を 行 な っ た 。そ の 結 果 、約 4kbp
の PCR 産 物 が 増 幅 さ れ 、 こ の バ ン ド を 精 製 し た も の を 鋳 型 と し 、 シ ー ケ ン
シ ン グ に よ り そ の 配 列 を 確 認 し た 結 果 、 DKFZp434D105 の 5’ 領 域 、
DKFZp434D105 と KIAA1432 で 相 同 性 の あ る 領 域 、 KIAA1432 の 3’領 域 を 持
つ 配 列 が 確 認 さ れ た ( 図 3)。 こ の ORF 配 列 よ り 予 想 さ れ る タ ン パ ク 質 分 子
量 は 約 150-kD で あ り( 図 4)、こ の 新 規 分 子 を CIP150( Connexin43-Interacting
Protein of 150-kDa; GenBank accession No. AB205401) と 命 名 し た 。
次 に 、 予 想 さ れ た CIP150 の ア ミ ノ 酸 配 列 を 基 に CIP150 の N 末 端 、 中 央 、
C 末 端 を 認 識 す る 3 種 類 の 抗 体 ( 抗 CIP150-N、 抗 CIP150-M、 抗 CIP150-C
抗 体 ; 図 4)を 作 製 し 、こ れ を 用 い 哺 乳 類 の 細 胞 に お け る CIP150 の 発 現 を 確
認 し た 。 細 胞 抽 出 液 よ り 、 抗 CIP150-M 抗 体 で 免 疫 沈 降 し 、 作 製 し た こ れ ら
3 種類の抗体でブロットした結果、用いたすべての細胞において、予想され
た 150-kDa の バ ン ド が 検 出 さ れ た ( 図 5 A)。 ま た 、 こ の 150-kDa バ ン ド は 、
作 製 し た 3 種 類 の 抗 体 す べ て で 共 通 し て 検 出 さ れ た こ と か ら 、PCR に よ り 得
られた配列がコードするタンパク質が細胞内に存在することが明らかとな
っ た 。 ま た 、 Cx43 は 卵 巣 内 に お い て 主 に 顆 粒 膜 細 胞 で 発 現 し て お り 、 卵 巣
cDNA ラ イ ブ ラ リ ー よ り 単 離 、 同 定 さ れ た CIP150 が 、 同 様 に 顆 粒 膜 細 胞 に
お い て 発 現 し て い る か を RT-PCR に よ り 解 析 し た 。ラ ッ ト 顆 粒 膜 細 胞 よ り 調
製 し た cDNA を 鋳 型 と し 、Yeast two-hybrid に よ り 得 ら れ た KIAA1432-CT の
配 列 を 増 幅 し た 結 果 、 顆 粒 膜 細 胞 に お け る CIP150 の 発 現 が 確 認 さ れ た ( 図
5 B)。な お 、Cx43 は FSH の 刺 激 に よ り 、RNA レ ベ ル で 発 現 量 が 上 昇 す る こ
と が 知 ら れ て い る が ( Yogo et al., 2001)、 CIP150 の 発 現 量 に 顕 著 な 差 は 見 ら
れなかった。
CIP150 は 細 胞 内 に お い て Cx43 と 会 合 す る
次 に 、 CIP150 と Cx43 と の 会 合 を 確 認 す る た め に 、 CIP150 配 列 の N 末 端
に FLAG タ グ を 付 加 し 、Cx43 と 共 に HEK293 細 胞 に 強 制 発 現 し た 。HEK293
細胞は、内在性のコネクシン遺伝子の発現量が低いことが知られているが、
24
図 5 A で 示 し た よ う に CIP150 は 発 現 し て い る 。 抗 FLAG 抗 体 を 用 い 免 疫 沈
降 を 行 な い 、Cx43 の 共 沈 を 確 認 し た 結 果 、強 制 発 現 し た 細 胞 に お い て CIP150
と Cx43 と の 会 合 が 見 ら れ た( 図 6 A)。さ ら に 、内 在 性 の CIP150 と Cx43 が
発 現 し て お り 、ギ ャ ッ プ 結 合 を 介 し た チ ャ ネ ル 活 性 が 高 い こ と が 知 ら れ て い
る NRK 細 胞 に お い て 、 抗 CIP150-M 抗 体 を 用 い 免 疫 沈 降 し た 結 果 、 Cx43 の
共 沈 が 見 ら れ た 。こ の こ と よ り 、こ れ ら 2 つ の タ ン パ ク 質 は 内 在 性 の 発 現 レ
ベ ル で 会 合 す る こ と が 明 ら か と な っ た ( 図 6 B)。 そ の 際 、 CIP150 と 共 沈 し
て く る Cx43 は 、 全 細 胞 抽 出 液 中 の シ グ ナ ル に 対 し 、 バ ン ド が シ フ ト す る こ
と が 見 ら れ 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト に お い て Cx43 は 、 リ ン 酸 化 レ ベ ル が 高 い
も の ほ ど バ ン ド が シ フ ト す る こ と か ら 、CIP150 は リ ン 酸 化 の 高 い Cx43 と 会
合 し て い る と 考 え ら れ た 。 そ こ で 抗 CIP150-M 抗 体 で 共 沈 し て く る Cx43 を
ア ル カ リ ホ ス フ ァ タ ー ゼ で 処 理 し ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト を 行 な っ た と こ ろ 、バ
ン ド の シ フ ト が 見 ら れ な く な っ た こ と よ り 、 リ ン 酸 化 レ ベ ル が 高 い Cx43 と
CIP150 が 会 合 し て い る こ と が 確 認 さ れ た ( 図 6 C)。
Cx43 の リ ン 酸 化 は CIP150 と の 会 合 に 必 須 で は な い
こ れ ら 2 つ の タ ン パ ク 質 の 会 合 と 、 Cx43 の リ ン 酸 化 と の 関 係 を 解 析 す る
た め に 、Cx43-S4A 変 異 体 を 用 い CIP150 と の 会 合 を 確 認 し た 。こ の 変 異 体 は 、
細胞内においてギャップ結合を構築するがリン酸化による修飾をほとんど
受 け ず 、物 質 透 過 活 性 を 示 さ な い こ と が 報 告 さ れ て い る( Yogo et al., 2001)。
HEK293 細 胞 と 同 様 、 内 在 性 の コ ネ ク シ ン 遺 伝 子 の 発 現 量 は 低 い が CIP150
は 発 現 し て い る HeLa 細 胞 に 、 野 生 型 ま た は S4A 変 異 体 の Cx43 を 遺 伝 子 導
入 し 、内 在 性 の CIP150 と の 会 合 を 調 べ た 。そ の 結 果 、S4A 変 異 体 は CIP150
と 会 合 す る こ と が 示 さ れ た ( 図 7 B)。 ま た 、 32 P 正 リ ン 酸 に よ り 細 胞 を ラ ベ
ル し 、 Cx43-S4A と 野 生 型 と の リ ン 酸 化 レ ベ ル を 確 認 し た 結 果 、 S4A 変 異 体
は リ ン 酸 化 レ ベ ル が 低 い こ と( 図 7 A)、免 疫 蛍 光 染 色 に よ り 、野 生 型 お よ び
S4A 変 異 体 は 細 胞 間 に ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る こ と も 確 認 さ れ た ( 図 7
C)。こ れ ら の 結 果 よ り 、Cx43 の リ ン 酸 化 は CIP150 と の 会 合 に 必 須 で は な い
可能性が示唆された。
次 に 、ARF-GEF の 阻 害 剤 で あ り 、ゴ ル ジ 体 の 構 造 を 破 壊 す る こ と で タ ン パ
ク 質 の 輸 送 を 阻 害 す る BFA で 細 胞 を 処 理 し 、 Cx43 の 細 胞 内 局 在 が CIP150
と の 会 合 に 与 え る 影 響 を 解 析 し た 。 ま ず 、 BFA 存 在 下 で NRK 細 胞 を 6 時 間
培 養 し 、 1% Triton X-100 buffer に よ る 細 胞 分 画 を 行 い 、 Cx43 に よ る ギ ャ ッ
25
プ 結 合 構 築 が 阻 害 さ れ て い る か 確 認 し た 。こ の 手 法 は ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し
て い る Cx43 は 、 非 イ オ ン 性 の 界 面 活 性 剤 に 対 し 不 溶 性 を 示 す こ と 利 用 し た
も の で あ る ( Musil and Goodenough, 1991)。 1% Triton X-100 buffer に よ り 細
胞 を 溶 解 し 、細 胞 抽 出 液 を 超 遠 心 に よ り 分 画 し た 結 果 、BFA 処 理 を し た 細 胞
に お い て Triton 不 溶 性 画 分 の リ ン 酸 化 さ れ た Cx43 の バ ン ド が 減 少 す る こ と
が 確 認 さ れ た( 図 8 A)。ま た 、免 疫 蛍 光 染 色 に よ り 、細 胞 間 に お け る ギ ャ ッ
プ 結 合 の シ グ ナ ル が 減 少 し 、 Cx43 の 局 在 が 細 胞 質 へ と 移 行 す る こ と も 観 察
さ れ ( 図 8 B)、 BFA 処 理 に よ り 、 Cx43 の 細 胞 膜 へ の 輸 送 が 阻 害 さ れ て い る
こ と が 確 認 さ れ た 。そ こ で 、こ の 条 件 下 に お け る Cx43 と CIP150 と の 会 合 を
調 べ た 結 果 、 CIP150 と 共 沈 す る Cx43 が 減 少 し 、 Cx43 の 細 胞 膜 へ の 輸 送 は
こ の 会 合 に 重 要 で あ る こ と が 示 さ れ た ( 図 9)。
以 上 の 結 果 か ら 、CIP150 と Cx43 と の 会 合 は 、細 胞 膜 ま た は そ の 輸 送 過 程
に お い て 起 こ る こ と 、 こ の 時 、 Cx43 は 高 い リ ン 酸 化 を 受 け て い る が リ ン 酸
化 そ の も の は CIP150 と の 会 合 に 必 須 で な い こ と が 明 ら か と な っ た 。
Cx43-CT に お け る CIP150 結 合 領 域 の 決 定
次 に 、 Cx43 と CIP150 と の 会 合 を さ ら に 詳 し く 解 析 す る た め に 、 Cx43-CT
に お け る CIP150 の 結 合 部 位 の 決 定 を GST pull down 法 に よ り 行 な っ た 。GST
融 合 型 Cx43-CT お よ び 、 20 ア ミ ノ 酸 ( Δ 1 は 16 ア ミ ノ 酸 ) の 欠 損 を 有 す る
変 異 体 ( Cx43-CT Δ 1-8; 図 10 A) の 組 換 え タ ン パ ク 質 を 大 腸 菌 で 発 現 、 精
製 し た 。 ま た 、 COS7 細 胞 に FLAG-1432-CT を 過 剰 発 現 し 、 細 胞 抽 出 液 を 回
収 し た 。 こ の 細 胞 抽 出 液 中 に 精 製 し た 組 換 え タ ン パ ク 質 を 加 え 、 GST 融 合
Cx43-CT と 会 合 し て く る FLAG-1432-CT を ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト に よ り 検 出 し
た 。 そ の 結 果 、 野 生 型 お よ び Δ 1 以 外 の 変 異 型 Cx43-CT に お い て
KIAA1432-CT と の 会 合 が 確 認 さ れ( 図 10 B)、Δ 1 領 域( 227-242)が 重 要 で
あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 そ こ で 、 CIP150 結 合 領 域 を 欠 損 し た 変 異 型 Cx43
( Cx43Δ 2 27-242 ) を 作 製 し 、 細 胞 内 で CIP150 と の 会 合 を 確 認 し た 。 HEK293
細 胞 に Cx43Δ 227-242 を 遺 伝 子 導 入 し 、抗 CIP150-M 抗 体 で 免 疫 沈 降 し た 結 果 、
野 生 型 Cx43 で 見 ら れ る 会 合 が 、Cx43Δ 227-242 で は 確 認 さ れ な か っ た( 図 10 C)。
こ れ ら の 結 果 か ら 、こ の 2 つ の た ん ぱ く 質 は 、KIAA1432-CT に あ た る CIP150
の C 末 端 164 ア ミ ノ 酸 と Cx43-CT の 膜 貫 通 領 域 下 流 16 ア ミ ノ 酸 ( 227-242)
を介して会合していることが示された。
26
CIP150 結 合 領 域 は Cx43 の ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 に 重 要 で あ る
CIP150 が Cx43 の ギ ャ ッ プ 結 合 制 御 機 構 に お い て ど の 様 な 機 能 を 担 う か を
解 析 す る た め に 、 ま ず CIP150 の 結 合 領 域 を 欠 損 し て い る Cx43Δ 227-242 の 細
胞 内 で の 挙 動 を 解 析 し た 。 図 10 C に お い て 、 Cx43Δ 2 27-242 は ウ エ ス タ ン ブ
ロ ッ ト に よ り 検 出 し た 時 、バ ン ド の シ フ ト が 見 ら れ な か っ た こ と か ら 、こ の
変 異 体 は リ ン 酸 化 に よ る 修 飾 を 受 け な い こ と が 予 想 さ れ た 。そ こ で ま ず 、こ
の 変 異 体 を HeLa 細 胞 に 遺 伝 子 導 入 し 、32 P 正 リ ン 酸 ラ ベ ル に よ り そ の リ ン 酸
化 レ ベ ル を 調 べ た 。そ の 結 果 、 野 生 型 Cx43 を 発 現 し た 細 胞 で 見 ら れ る リ ン
酸 化 の シ グ ナ ル が 、Cx43Δ 22 7-242 で は ほ と ん ど 検 出 さ れ な か っ た( 図 11 A)。
ま た 、 免 疫 染 色 に よ り 細 胞 内 に お け る 局 在 を HeLa 細 胞 に お い て 解 析 し た 結
果 、 Cx43Δ 227-242 は 細 胞 内 に お い て ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 せ ず 細 胞 質 に 局 在 す
る こ と が 見 ら れ た ( 図 11 B)。 さ ら に 、 こ の 細 胞 質 に お け る 局 在 を 調 べ る た
め に 、 HeLa 細 胞 に Cx43Δ 227-242 を 遺 伝 子 導 入 し 、 小 胞 体 を 染 色 す る こ と が
知 ら れ て い る レ ク チ ン の 1 つ 、コ ン カ ナ バ リ ン A( ConA)と Cx43 と の 二 重
染 色 を 行 な っ た ( 図 12)。 そ の 結 果 、 ConA に よ り 染 色 さ れ た シ グ ナ ル は 、
核 の 周 辺 を 中 心 に 顆 粒 状 に み ら れ ( 図 12 C)、 Cx43Δ 2 27-242 が 共 局 在 す る こ
と が 観 察 さ れ た ( 図 12 D)。 し か し 、 Cx43Δ 2 27-242 は そ れ 以 外 の 場 所 に も 局
在 を 示 し て お り 、少 な く と も 小 胞 体 か ら 他 の 細 胞 器 官 に 輸 送 さ れ て い る こ と
が 予 想 さ れ た 。 次 に 、 Cx43Δ 227-242 が ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し な い こ と が 示 さ
れたが、これに伴い物質透過活性も消失するかを確認するために、
Scrape-loading 法 に よ る 色 素 透 過 活 性 の 定 量 を 行 な っ た 。HEK293 細 胞 に 野 生
型 Cx43、Cx43Δ 227-242 を そ れ ぞ れ ピ ュ ー ロ マ イ シ ン 耐 性 遺 伝 と 共 に 遺 伝 子 導
入 し 、ピ ュ ー ロ マ イ シ ン で 選 別 を 行 い 、コ ン フ ル エ ン ト に な る ま で 培 養 し た
細 胞 を 用 い 、チ ャ ネ ル 活 性 を 測 定 し た 。そ の 結 果 、野 生 型 を 発 現 し て い る 細
胞 で 観 察 さ れ た 細 胞 間 で の 色 素 の 移 行 が 、こ の 変 異 体 で は 認 め ら れ ず 、チ ャ
ネ ル 活 性 を 持 た な い こ と が 示 さ れ た ( 図 13)。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 Cx43-CT
に お け る CIP150 結 合 領 域 は 、 リ ン 酸 化 に よ る 修 飾 、 ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 お
よびチャネル活性に重要であることが示された。
siRNA に よ る CIP150 の 発 現 抑 制 は Cx43 の 細 胞 膜 へ の 局 在 と チ ャ ネ ル 活 性
を減少する
Cx43 欠 損 変 異 体 に お い て 見 ら れ た 表 現 型 が 、 CIP150 と の 会 合 が 阻 害 さ れ
た 結 果 に よ る も の か を 解 析 す る た め に 、 CIP150 に 対 す る siRNA を 作 製 し 、
27
そ の 発 現 用 抑 制 時 に お け る Cx43 細 胞 内 で の 挙 動 を 調 べ た 。ま ず CIP150 を 標
的 と し た 2 種 類 の siRNA 発 現 ベ ク タ ー ( siCIP150-1、 -2) を 作 製 し 、 そ の 発
現 抑 制 効 果 を HEK293 細 胞 に お い て 調 べ た 。ピ ュ ー ロ マ イ シ ン 耐 性 遺 伝 と 共
に siRNA 発 現 ベ ク タ ー 、GFP 発 現 ベ ク タ ー を 遺 伝 子 導 入 し 、1 日 選 別 を 行 っ
た 。 CIP150 の 発 現 量 を 免 疫 沈 降 後 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト に よ り 確 認 し た 結
果 、siCIP150-1 は 強 い 発 現 抑 制 が 見 ら れ 、シ グ ナ ル 強 度 を デ ン シ ト メ ー タ ー
で 定 量 し た 結 果 、コ ン ト ロ ー ル に 比 べ 27%ま で 発 現 量 の 低 下 が 見 ら れ た( 図
14)。ま た 、siCIP150-2 発 現 細 胞 に お い て も 発 現 が 55%ま で 抑 制 さ れ て い た 。
な お 、遺 伝 子 導 入 効 率 と タ ン パ ク 質 量 の 内 部 標 準 と し て そ れ ぞ れ 用 い た GFP
と ア ク チ ン の 差 は 認 め ら れ な か っ た 。次 に 、こ れ ら 2 つ の siRNA 発 現 ベ ク タ
ー を 用 い 、CIP150 発 現 抑 制 時 に お け る Cx43 の 細 胞 内 局 在 を 免 疫 蛍 光 染 色 に
よ り 確 認 し た 。 そ の 結 果 、 Cx43 と 共 に siRNA 発 現 ベ ク タ ー を 遺 伝 子 導 入 し
た 細 胞 に お い て 、細 胞 間 に ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築 が 認 め ら れ る も の の 、コ ン ト
ロ ー ル に 比 べ そ の シ グ ナ ル は 弱 く 、 ぼ や け て い た ( 図 15 A)。 ま た 、 コ ン ト
ロ ー ル で は 認 め ら れ な い 細 胞 内 に お け る Cx43 の シ グ ナ ル も 観 察 さ れ た 。 こ
の 細 胞 内 の シ グ ナ ル が 見 ら れ る 細 胞 の 割 合 を 、各 実 験 区 あ た り 独 立 し た 2 回
の 実 験 を 行 い 、100 個 の 細 胞 を 数 え る こ と で 定 量 し た 結 果 、CIP150 を 発 現 抑
制 し た 細 胞 で は コ ン ト ロ ー ル に 比 べ 、 明 ら か に Cx43 の 細 胞 質 に お け る 局 在
が 増 加 し て い る こ と が 確 認 さ れ た( 図 15 B)。さ ら に 、CIP150 発 現 抑 制 細 胞
に お い て 、 Cx43 が 構 築 す る ギ ャ ッ プ 結 語 を 介 し た チ ャ ネ ル 活 性 が 低 下 す る
か を 調 べ る た め に 、 Scrape-loading 法 に よ る 色 素 透 過 活 性 の 定 量 を 行 な っ た
( 図 16)。 そ の 結 果 、 Cx43 発 現 細 胞 に 比 べ CIP150 発 現 を 抑 制 し た 細 胞 は ギ
ャップ結合を介した色素透過活性は有意に低下していた。以上の結果より、
細 胞 内 に お い て CIP150 は Cx43 の 局 在 制 御 に 関 わ っ て お り 、特 に ギ ャ ッ プ 結
合の構築に重要ではないかと考えられた。
28
表 1 Yeast two-hybrid に よ り 得 ら れ た 候 補 遺 伝 子
Yeast two-hybrid に よ り 得 ら れ た 陽 性 ク ロ ー の 遺 伝 子 名 と ク ロ ー ン 数 を 表 に
ま と め た 。ス ク リ ー ニ ン グ は 、ラ ッ ト Cx43-CT を bait、ラ ッ ト 卵 巣 cDNA ラ
イ ブ ラ リ ー を prey と し 行 な っ た 。
29
図 1 候 補 遺 伝 子 産 物 と Cx43-CT と の 細 胞 内 で の 会 合
Yeast two-hybrid に よ り 得 ら れ た 各 候 補 遺 伝 子 の 断 片 配 列 の 上 流 に FLAG タ
グ を 付 加 し 、Cx43-CT と 共 に COS7 細 胞 に お い て 過 剰 発 現 し た 。Cx43-CT を
認 識 す る 抗 Cx43 抗 体 で 免 疫 沈 降 後 、 抗 FLAG ま た は Cx43 抗 体 で ウ エ ス タ
ン ブ ロ ッ ト を 行 な っ た 。 WCL: whole cell lysates 。
30
図 2 候 補 遺 伝 子 産 物 と Cx43 と の 細 胞 内 で の 会 合
A. COS7 細 胞 に N 末 端 に FLAG タ グ を 付 加 し た Triosephosphate isomerase
( TPI)と Cx43 を 過 剰 発 現 し 、抗 Cx43 お よ び FLAG 抗 体 そ れ ぞ れ で 免 疫 沈
降し、各抗体でウエスタンブロットを行なった。
B. HEK293 細 胞 に お い て N 末 端 に FLAG タ グ を 付 加 し た KIAA1432 の C 末
端 領 域( FLAG-1432-CT)と 、Cx43 全 長 配 列 と を 過 剰 発 現 し 、抗 FLAG 抗 体
で 免 疫 沈 降 し 、 抗 Cx43 お よ び FLAG 抗 体 そ れ ぞ れ で で ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト
を行なった。
31
図 3 KIAA1432 お よ び DKFZp434D105 の ORF の 比 較
KIAA1432 お よ び DKFZp434D105 の ORF を 比 較 す る と 、DKFZp434D105 の 3’
側 と KIAA1432 の 5’ 側 は 相 同 な 配 列 ( 1646-3188 ) を 有 し て い た 。
DKFZp434D105 の 開 始 コ ド ン ( Forward primer) お よ び KIAA1432 の 終 止 コ
ド ン ( Reverse primer) を そ れ ぞ れ 含 む プ ラ イ マ ー を 設 計 し 、 こ れ を 用 い た
PCR を 行 な い 、 ヒ ト 胎 盤 cDNA よ り CIP150 全 長 配 列 を 得 た 。
32
図 4 CIP150 の ア ミ ノ 酸 配 列 と 抗 原 部 位
CIP150 の ORF 配 列 よ り 予 想 さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 と 抗 体 作 製 に 用 い た 3 種 類
の抗原部位(下線)を図に示した。
33
図 5 CIP150 の 細 胞 に お け る 発 現 の 確 認
A. 図 4 で 示 し た 抗 原 部 位 を 認 識 す る 抗 体 を 用 い NRK( ラ ッ ト 腎 臓 )、HEK293
( ヒ ト 胎 児 腎 臓 )、HeLa( ヒ ト 子 宮 )、KGN( ヒ ト 顆 粒 膜 細 胞 )、T47D( ヒ ト
乳 腺 ) 細 胞 に お け る CIP150 の 発 現 を 確 認 し た 。 CIP150-N は N 末 端 、 -M は
中 央 、 -C は C 末 端 を 認 識 す る 。
B. ラ ッ ト 顆 粒 膜 細 胞 に お け る CIP150 発 現 を RT-PCR に よ り 確 認 し た 。
34
図 6 CIP150 は リ ン 酸 化 レ ベ ル の 高 い Cx43 と 会 合 す る
A. HEK293 細 胞 に お い て N 末 端 に FLAG タ グ を 付 加 し た CIP150
( FLAG-CIP150) と 、 Cx43 全 長 配 列 と を 過 剰 発 現 し 、 抗 FLAG 抗 体 で 免 疫
沈 降 後 、 抗 Cx43 お よ び CIP150-M 抗 体 そ れ ぞ れ で ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト を 行
なった。
B. NRK 細 胞 に お け る 、 内 在 性 CIP150 と Cx43 と の 会 合 。 抗 CIP150-M 抗 体
で 免 疫 沈 降 後 、 抗 Cx43 お よ び CIP150-M 抗 体 そ れ ぞ れ で ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ
ト を 行 な っ た 。免 疫 沈 降 の ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル と し て 、抗 原 を 免 疫 す る
以前に採血した血清を用いた。
C. NRK 細 胞 よ り 抗 CIP150-M 抗 体 で 免 疫 沈 降 し 、共 沈 し た Cx43 を ア ル カ リ
ホスファターゼにより脱リン酸化を行なった。
35
図 7 CIP150 と Cx43-S4A と は 会 合 す る
A. HeLa 細 胞 に 野 生 型 Cx43 お よ び Cx43-S4A を 遺 伝 子 導 入 し 、 32 P 正 リ ン 酸
により細胞をラベルすることで、そのリン酸化レベルを確認した。
B. A と 同 様 に 遺 伝 子 導 入 を 行 い 抗 CIP150-M 抗 体 で 免 疫 沈 降 し 、 抗 Cx43 お
よ び CIP150-M 抗 体 そ れ ぞ れ で で ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト を 行 な っ た 。
C. HeLa 細 胞 に 野 生 型 Cx43 お よ び Cx43-S4A を 発 現 し 、 抗 Cx43 抗 体 を 用 い
た 免 疫 蛍 光 染 色 に よ り Cx43 の 局 在 を 確 認 し た 。 a: ベ ク タ ー コ ン ト ロ ー ル 、
b: 野 生 型 Cx43、 c: Cx43-S4A。 Bar: 15μ m。
36
図 8 NRK 細 胞 に お け る BFA 処 理
A. NRK 細 胞 を BFA( 5μ g/ml)で 6 時 間 処 理 し 、ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い
る Cx43 は 、 非 イ オ ン 性 の 界 面 活 性 剤 に 対 し 不 溶 性 を 示 す こ と 利 用 し た 1%
Triton X-100 buffer に よ る 細 胞 分 画 を 行 っ た 。
B. BFA で 処 理 し た NRK 細 胞 に お い て 抗 Cx43 抗 体 で 免 疫 蛍 光 染 色 を 行 い 、
Cx43 の 局 在 を 確 認 し た 。 Bar: 15μ m。
37
図 9 BFA 処 理 は Cx43 と CIP150 と の 会 合 を 阻 害 す る
BFA 処 理 し た NRK 細 胞 内 で の CIP150 と Cx43 と の 会 合 を 、 抗 CIP150-M 抗
体 で 免 疫 沈 降 し 確 認 し た 。タ ン パ ク 質 量 の 内 部 標 準 と し て 、β ア ク チ ン に よ
るウエスタンブロットを行なった。
38
図 10 Cx43 の 227-242 番 目 の ア ミ ノ 酸 は CIP150 と の 会 合 に 重 要 で あ る
A. GST 融 合 型 Cx43-CT お よ び 、20 ア ミ ノ 酸( Δ 1 は 16 ア ミ ノ 酸 )の 欠 損 を
有 す る 変 異 体 の 模 式 図 ( Δ 1-8)。
B. FLAG-1432-CT を 過 剰 発 現 し た COS7 細 胞 の 細 胞 抽 出 液 と GST 融 合
Cx43-CT を 用 い 、 GST pull down を 行 な っ た 。 GST-Cx43-CT と 会 合 し て く る
FLAG-1432-CT を ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト に よ り 検 出 し た 。
C. HEK293 細 胞 に 野 生 型 Cx43 ま た は CIP150 結 合 領 域 を 欠 損 し た Cx43Δ
227-242
を 遺 伝 子 導 入 し 、細 胞 内 で Cx43Δ 227-242 と CIP150 と が 会 合 し な い こ と
を確認した。
39
図 11 CIP150 結 合 領 域 は Cx43 の ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 に 重 要 で あ る
A. 野 生 型 の Cx43 お よ び Cx43Δ 227-242 を HeLa 細 胞 に 遺 伝 子 導 入 し 、32 P 正 リ
ン酸ラベルによりそのリン酸化レベル確認した。
B. HeLa 細 胞 に 野 生 型 Cx43 お よ び Cx43Δ 227-242 を 発 現 し 、抗 Cx43 抗 体 を 用
い た 免 疫 蛍 光 染 色 に よ り Cx43 の 局 在 を 確 認 し た 。a: ベ ク タ ー コ ン ト ロ ー ル 、
b: 野 生 型 Cx43、 c: Cx43Δ 227-242 。 Bar: 15μ m。
40
図 12 Cx43Δ 227-242 発 現 細 胞 に お け る 小 胞 体 と Cx43 と の 2 重 染 色
HeLa 細 胞 に Cx43Δ 227-242 を 遺 伝 子 導 入 し 、コ ン カ ナ バ リ ン A( ConA)と Cx43
と の 二 重 染 色 を 行 な っ た 。A は 位 相 差 、B は 抗 Cx43 抗 体 、C は ConA に よ る
染 色 像 、 D は B と C を 重 ね た 像 。 Bar: 15μ m。
41
図 13 Cx43Δ 227-242 は 物 質 透 過 活 性 を 持 た な い
A. HEK293 細 胞 に 空 ベ ク タ ー ( a)、 野 生 型 Cx43( b)、 Cx43Δ 227-242 ( c) を
そ れ ぞ れ ピ ュ ー ロ マ イ シ ン 耐 性 遺 伝 と 共 に 遺 伝 子 導 入 し 、ピ ュ ー ロ マ イ シ ン
で 1 日 間 選 別 を 行 っ た 後 、Scrape-loading 法 に よ る 色 素 透 過 活 性 を 解 析 し た 。
0.25% Lucifer yellow( LY; 分 子 量 476Da)、 0.75% Rhodamine dextran( RD;
分 子 量 10kDa) /PBS 溶 液 中 で 細 胞 を 直 線 状 に 27G の 注 射 針 で 傷 つ け て 色 素
を 取 り 込 ま せ 、 室 温 で 10 分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 傷 口 か ら 取 込 ま れ た 色 素
の 細 胞 間 で の 移 行 を 検 鏡 し た 。RD は 、分 子 量 が 1kDa 以 上 で あ り ギ ャ ッ プ 結
合 チ ャ ネ ル を 通 過 で き な い こ と か ら 、ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル と し て 用 い て
いる。
B. A を 定 量 化 し た グ ラ フ 。
42
図 14 CIP150 に 対 す る siRNA 発 現 ベ ク タ ー の 作 製
CIP150 を 標 的 と し た 2 種 類 の siRNA 発 現 ベ ク タ ー( siCIP150-1、-2)を 作 製
し 、そ の 発 現 抑 制 効 果 を HEK293 細 胞 に お い て 調 べ た 。ピ ュ ー ロ マ イ シ ン 耐
性 遺 伝 と 共 に siRNA 発 現 ベ ク タ ー 、GFP 発 現 ベ ク タ ー を 遺 伝 子 導 入 し 、1 日
選 別 を 行 い 、 CIP150 の 発 現 量 を 免 疫 沈 降 後 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト に よ り 確
認 し た 。 上 の パ ネ ル の 下 に 示 し て あ る 数 値 は 、 CIP150 の シ グ ナ ル 強 度 を デ
ン シ ト メ ー タ ー で 定 量 し 、コ ン ト ロ ー ル に 対 す る 発 現 量 の 相 対 比 を 算 出 し た
も の で あ る 。GFP と ア ク チ ン は 、遺 伝 子 導 入 効 率 と タ ン パ ク 質 量 の 内 部 標 準
として用いた。
43
図 15 CIP150 発 現 抑 制 時 に お い て 細 胞 質 に 局 在 す る Cx43 は 増 加 す る
A. HEK293 細 胞 に お い て 、CIP150 発 現 抑 制 時 に お け る Cx43 の 細 胞 内 局 在 を
免 疫 蛍 光 染 色 に よ り 確 認 し た 。a: ベ ク タ ー コ ン ト ロ ー ル 、b: Cx43、c: Cx43 +
siCIP-150-1、 d: Cx43 + siCIP-150-2。 Bar: 15μ m。
B. 細 胞 内 の シ グ ナ ル が 見 ら れ る 細 胞 の 割 合 を 、100 個 の 細 胞 を 数 え る こ と で
定 量 し た 。各 実 験 区 あ た り 独 立 し た 2 回 の 実 験 を 行 い 、平 均 し た 数 値 を グ ラ
フ化した。
44
図 16 CIP150 発 現 抑 制 は Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 チ ャ ネ ル 活 性 を 阻 害 す る
A. HEK293 細 胞 に 空 ベ ク タ ー( a)、野 生 型 Cx43( b)、Cx43 + siCIP-150-1( c)、
Cx43 + siCIP-150-2( d) を そ れ ぞ れ ピ ュ ー ロ マ イ シ ン 耐 性 遺 伝 と 共 に 遺 伝 子
導 入 し 、 ピ ュ ー ロ マ イ シ ン で 1 日 間 選 別 を 行 っ た 後 、 図 13 A と 同 様 に
Scrape-loading 法 に よ る 色 素 透 過 活 性 を 解 析 し た 。
B. A を 定 量 化 し た グ ラ フ 。
45
考察
本 研 究 で は 、Cx43 会 合 タ ン パ ク 質 の 探 索 を Yeast two-hybrid 法 に よ り 行 い 、
新 規 タ ン パ ク 質 CIP150 を 同 定 し た 。 こ の 会 合 に は 、 CIP150 の C 末 端 の 164
ア ミ ノ 酸 と 、 Cx43-CT の 膜 貫 通 領 域 下 流 の 16 ア ミ ノ 酸 が 重 要 で あ っ た 。 細
胞 内 に お い て CIP150 は リ ン 酸 化 レ ベ ル の 高 い Cx43 と 会 合 し て い る こ と が 示
さ れ た 。し か し 、Cx43-S4A と の 会 合 が 見 ら れ た こ と よ り 、Cx43 の リ ン 酸 化
は CIP150 と の 会 合 に 必 須 で は な か っ た 。 ま た 、 BFA 処 理 に よ り 会 合 が 阻 害
さ れ た こ と よ り 、こ の 2 つ の タ ン パ ク の 会 合 は 細 胞 膜 へ の 輸 送 過 程 に お い て 、
ゴ ル ジ 体 以 降 に 起 こ る こ と が 示 さ れ た 。 さ ら に 、 Cx43Δ 227-242 の 細 胞 内 で の
挙 動 を 解 析 し た 結 果 や siRNA に よ る CIP150 の 発 現 抑 制 の 実 験 よ り 、CIP150
は Cx43 が 細 胞 膜 上 に お い て ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 す る の に 重 要 で は な い か と
考えられた。
CIP150 は 、本 研 究 で そ の 全 長 配 列 を 明 ら か に し た 新 規 遺 伝 子 で あ り 、そ の
ア ミ ノ 酸 配 列 に 対 す る 他 種 の 相 同 配 列 を NCBI-BLAST に お い て 探 索 し た と
こ ろ 、ゲ ノ ム 配 列 よ り 予 想 さ れ る ア ミ ノ 酸 配 列 を 含 め る と 、酵 母 、線 虫 、シ
ロ イ ヌ ナ ズ ナ 、ミ ド リ フ グ 、ニ ワ ト リ 、チ ン パ ン ジ ー に 至 る ま で 、多 種 に わ
た り 相 同 性 を 有 す る 配 列 が 存 在 し た 。こ の 内 、ミ ド リ フ グ で は 71%の 相 同 性
が あ っ た が 、シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ や 線 虫 で は 約 25%で あ り 、酵 母 で は そ れ 以 下 で
あ っ た 。ギ ャ ッ プ 結 合 が 存 在 し な い 植 物 や 、酵 母 で こ の よ う な 配 列 が 存 在 し
て い る こ と か ら 、CIP150 は Cx43 に よ る ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 を 制 御 す る 以 外 の
機 能 を 有 し て い る の で は な い か と 予 想 さ れ る 。一 方 、線 虫 な ど の 無 脊 椎 動 物
で は 、脊 椎 動 物 の コ ネ ク シ ン と タ ン パ ク 質 配 列 の 相 同 性 は 無 い が タ ン パ ク 質
構造が似ておりギャップ結合を構築するイネクシンが存在することが報告
さ れ て い る ( Phelan, 2005)。 無 脊 椎 動 物 に お け る CIP150 が イ ネ ク シ ン と 会
合 す る 可 能 性 も 考 え ら れ る が 、こ れ は 予 想 の 域 に 達 し な い 。な お 、哺 乳 類 や
鳥 類 ( ニ ワ ト リ ) で は ヒ ト CIP150 配 列 に 対 す る 相 同 性 は 高 く 、 ニ ワ ト リ と
比 較 し て も 85%の 相 同 性 が あ る こ と か ら 、各 動 物 種 の 細 胞 内 に お い て CIP150
と Cx43 の 相 同 配 列 は 会 合 す る の で は な い か と 予 想 さ れ る 。
CIP150 は 、 HUGE Protein Database の KIAA1432 に 関 す る デ ー タ と し て 、
そ の 発 現 量 は 低 い が ヒ ト の 様 々 な 組 織 に お い て RNA レ ベ ル で の 発 現 が 報 告
さ れ て い る( http://www.kazusa.or.jp/huge/gfpage/KIAA1432/; 参 考 図 6)。こ の
こ と は 、 本 研 究 で 用 い た 様 々 な 組 織 由 来 の 細 胞 全 て に お い て CIP150 の 発 現
46
が 見 ら れ た こ と と 一 致 し て い る 。 CIP150 は 、 卵 巣 の cDNA ラ イ ブ ラ リ ー を
用 い た ス ク リ ー ニ ン グ に よ り 単 利 、同 定 さ れ た が 、卵 巣 特 異 的 な 機 能 を 有 す
る か は 不 明 で あ る 。 Cx43 は 脳 や 心 臓 、 卵 巣 に お い て 発 現 量 が 高 い が 、 他 の
コ ネ ク シ ン に 比 べ 広 範 な 組 織 で 発 現 し て い る こ と が 知 ら れ て お り( Bruzzone
et al., 1996a,b)、 KIAA1432 の 発 現 パ タ ー ン よ り 卵 巣 以 外 の 組 織 に お い て も
Cx43 の 制 御 に 関 わ る 可 能 性 は 考 え ら れ る 。こ の こ と は 、NCBI の UniGene に
お い て 、EST 配 列 デ ー タ を 基 に 各 遺 伝 子 の 発 現 パ タ ー ン を 示 し た EST Profile
Viewer で 、 KIAA1432 と ヒ ト Cx43 と の 発 現 を 比 較 し て も 推 察 さ れ る ( 参 考
図 7)。 少 な く と も 、 本 実 験 で 用 い た 腎 臓 由 来 の NRK や HEK293 細 胞 、 子 宮
由 来 の HeLa 細 胞 で CIP150 は Cx43 と 会 合 す る こ と は 確 認 さ れ て い る 。ま た 、
卵 巣 に お け る 機 能 に 関 し て も ま だ 不 明 で あ る が 、ラ ッ ト 顆 粒 膜 細 胞 を 用 い た
RT-PCR の 結 果 よ り 、 CIP150 は 卵 巣 に お い て Cx43 が 重 要 な 役 割 を 担 っ て い
る 顆 粒 膜 細 胞 で 発 現 し て い る こ と が 確 認 さ れ て お り 、デ ー タ と し て 示 し て い
な い が 、ヒ ト 顆 粒 膜 細 胞 由 来 の 腫 瘍 細 胞 で あ る KGN 細 胞 に お い て Cx43 と 会
合するという結果も得られている。これらのことは顆粒膜細胞において
CIP150 が Cx43 の 制 御 機 構 に 関 わ る こ と を 予 想 さ せ る が 、他 の 組 織 も 含 め て
今後生体内での機能解析を行なう必要がある。
CIP150 と Cx43 と の 結 合 領 域 は 、 KIAA1432-CT お よ び GST-Cx43-CT を 用
い た pull down 法 に よ り 同 定 さ れ 、 こ の 領 域 は 細 胞 内 に お い て も 2 つ の タ ン
パ ク 質 の 会 合 に 重 要 で あ っ た こ と か ら 、KIAA1432-CT に あ た る CIP150 の C
末 端 164 ア ミ ノ 酸 と Cx43-CT の 膜 貫 通 領 域 下 流 16 ア ミ ノ 酸( 227-242)で あ
る と 考 え ら れ る 。一 方 、Cx43-CT の 228-263 番 目 の ア ミ ノ 酸 は β チ ュ ー ブ リ
ン の 結 合 に 重 要 で あ り 、特 に 234-243 番 目 の ア ミ ノ 酸 は チ ュ ー ブ リ ン 結 合 モ
チ ー フ で あ る と い う こ と が 報 告 さ れ て い る( Giepmans et al., 2001b)。こ れ ら
の こ と か ら CIP150 と Cx43 と の 会 合 に 、チ ュ ー ブ リ ン が 関 わ る 可 能 性 が 考 え
ら れ た が 、細 胞 を チ ュ ー ブ リ ン 重 合 阻 害 剤 で あ る nocodazole で 処 理 を し て も
CIP150 と Cx43 と の 会 合 に 変 化 が 無 い こ と い う 結 果 が 得 ら れ て お り( デ ー タ
省 略 )、ま た チ ュ ー ブ リ ン の 会 合 は Cx43 の 制 御 に 関 わ ら な い と い う 報 告 が あ
る こ と か ら( Giepmans et al., 2001a)、お そ ら く CIP150 と Cx43 と の 会 合 に は
作 用 し な い の で は な い か と 考 え ら れ る 。 ま た 、 CIP150 と 他 の コ ネ ク シ ン と
の 会 合 に つ い て 本 実 験 で は 解 析 し な か っ た が 、C 末 端 領 域 は フ ァ ミ リ ー 間 で
相 同 性 が 低 い こ と か ら 、お そ ら く 会 合 し な い の で は な い か と 予 想 さ れ る 。し
か し 、Cx43 は Cx40( He et al., 1999)、Cx45( Martinez et al., 2002)な ど 異 な
る コ ネ ク シ ン と コ ネ ク ソ ン を 形 成 す る こ と が 報 告 さ れ て お り 、こ の よ う な 場
47
合 に CIP150 は Cx43 と 会 合 す る か な ど さ ら に 解 析 す る 必 要 が あ る 。
CIP150 は NRK 細 胞 に お い て リ ン 酸 化 レ ベ ル の 高 い Cx43 と 会 合 し て い る
こ と が 示 さ れ 、CIP150 は リ ン 酸 化 依 存 的 に Cx43 と 会 合 し て い る 可 能 性 が 示
唆 さ れ た 。 し か し 、 こ の 結 果 を 理 解 す る 上 で 、 Cx43 の 細 胞 内 局 在 と リ ン 酸
化 レ ベ ル と の 相 互 関 係 を 考 慮 す る 必 要 が あ る 。 こ れ ま で に 、 NRK 細 胞 で は
ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る Cx43 は リ ン 酸 化 レ ベ ル が 高 い と い う こ と が 報
告 さ れ て い る( Musil and Goodenough, 1991)。本 研 究 に お い て も BFA で 細 胞
を 処 理 し た と き に 、ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る Cx43( Triton 不 溶 性 画 分 )
が 減 少 す る と 伴 に 、 Cx43 の リ ン 酸 化 依 存 的 な バ ン ド の シ フ ト も 消 失 し て い
く こ と が 確 認 さ れ て い る 。 ま た 、 Cx43 は 発 現 し て い る が ギ ャ ッ プ 結 合 を 構
築 し て い な い 細 胞 に お い て 、カ ド ヘ リ ン を 遺 伝 子 導 入 し 、接 着 結 合 を 形 成 さ
せ る と 、ギ ャ ッ プ 結 合 が 構 築 さ れ( Matsuzaki et al., 1990; Jongen et al., 1991)、
Cx43 の リ ン 酸 化 レ ベ ル も 上 昇 す る こ と が 報 告 さ れ て い る( Musil et al., 1990)。
す な わ ち 、 Cx43 が ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 す る こ と と 、 リ ン 酸 化 さ れ る こ と は
相 関 関 係 が あ る 。こ の こ と よ り 、CIP150 が リ ン 酸 化 依 存 的 に Cx43 と 会 合 す
る 可 能 性 と 、 ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る Cx43 と 会 合 し た 結 果 、 リ ン 酸 化
レ ベ ル の 高 い Cx43 が 共 沈 し て き た と い う 2 つ の 可 能 性 が 有 る の で は な い か
と 考 え ら れ る 。こ れ に 関 し て 、4 つ の セ リ ン 残 基 に お け る リ ン 酸 化 部 位 を ア
ラ ニ ン に 置 換 し た S4A 変 異 体 ( Yogo et al., 2001) は 細 胞 内 で ほ と ん ど リ ン
酸 化 を 受 け な い が 、 ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て お り 、 こ の 変 異 体 と CIP150 は
会 合 し た 結 果 が 得 ら れ て い る 。こ の こ と よ り 、CIP150 は Cx43 の リ ン 酸 化 依
存 的 に 会 合 す る の で は な く 、 ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る Cx43 と 会 合 し て
お り 、 そ の 結 果 リ ン 酸 化 レ ベ ル の 高 い Cx43 が 優 先 的 に 共 沈 す る の で は な い
かと予想された。
し か し 、こ れ ま で に Cx43 の リ ン 酸 化 は 、参 考 図 5 に 示 し た よ う に S4A の
4 つのセリン残基以外にも多く報告されており、他のリン酸化との関係も考
慮 す る 必 要 性 が あ る 。 こ れ ま で に 報 告 さ れ て い る PKC、 MAPK、 Src な ど に
よ る リ ン 酸 化 部 位 は 、細 胞 増 殖 因 子 に よ る 刺 激 な ど 、あ る 特 定 の 条 件 下 に お
い て 起 こ る こ と 、ま た そ れ ら の リ ン 酸 化 は ギ ャ ッ プ 結 合 を 負 に 制 御 す る こ と
な ど か ら 、今 回 行 な っ た 実 験 条 件 で は あ ま り 関 与 し な い の で は な い か と 予 想
さ れ る 。こ れ に 対 し 、CK1 に よ る リ ン 酸 化 は 、そ の 阻 害 剤 で あ る IC261 で 細
胞 を 処 理 す る と 、 Cx43 の 細 胞 膜 へ の 輸 送 は 起 こ る が 、 ギ ャ ッ プ 結 合 の 構 築
が 阻 害 さ れ る こ と が 示 さ れ て お り ( Cooper and Lampe, 2002)、 CK1 依 存 的 な
リ ン 酸 化 と CIP150 の Cx43 と の 会 合 の 関 係 は 、 否 定 で き な い 。 し か し 、
48
Cx43-S4A 発 現 細 胞 を
32
P 正 リ ン 酸 で ラ ベ ル し 、リ ン 酸 化 を 確 認 し た 結 果 、そ
の シ グ ナ ル が ほ と ん ど 検 出 で き な い こ と か ら 、CK1 の リ ン 酸 化 は 関 与 し な い
のではないかと推察される。
ま た 、 BFA 処 理 に よ り Cx43 細 胞 内 局 在 が 細 胞 膜 か ら 細 胞 質 へ と 変 化 す る
と 会 合 が 見 ら れ な く な る こ と が 示 さ れ た 。 す な わ ち 、 CIP150 と の 会 合 に は
Cx43 が 細 胞 膜 へ と 輸 送 さ れ る こ と が 重 要 で あ り 、こ の こ と か ら も 、Cx43 と
CIP150 と が 細 胞 膜 で 会 合 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ る 。 し か し 、 BFA は 小
胞 体 -ゴ ル ジ 間 輸 送 に 関 わ る ARF-GEF の 阻 害 剤 で あ り 、ゴ ル ジ 体 構 造 を 可 逆
的 に 破 壊 す る こ と か ら 、両 者 の 会 合 は タ ン パ ク 質 輸 送 時 の ゴ ル ジ 体 以 降 に 起
こ る 可 能 性 が あ る こ と や 、BFA が CIP150 に 及 ぼ す 影 響 は 不 明 で あ り 、CIP150
の細胞内局在を変化させた結果、会合が認められなくなった可能性もあり、
さらに解析を行なう必要がある。
CIP150 の 結 合 領 域 を 欠 損 し た Cx43Δ 227-242 は リ ン 酸 化 に よ る 修 飾 を 受 け
ず 、ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し な い こ と か ら チ ャ ネ ル 活 性 を 有 さ な い こ と が 示 さ
れ た 。 前 述 し た よ う に ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る Cx43 は リ ン 酸 化 レ ベ ル
が高いことをあわせて考えると、ギャップ結合を構築しない結果として
Cx43Δ 227-242 は リ ン 酸 化 に よ る 修 飾 を 受 け な い こ と が 推 察 さ れ る 。ま た 、Cx43
Δ 227-242 は 細 胞 質 に 局 在 す る こ と が 観 察 さ れ た こ と よ り 、 CIP150 は Cx43 の
細 胞 膜 へ の 輸 送 、細 胞 膜 で の コ ネ ク ソ ン 同 士 の 連 結 、ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し
た 後 の 安 定 化 に 関 わ る の で は な い か と 考 え ら れ た 。し か し 、こ の こ と は ア ミ
ノ酸欠損によるこの変異体特有の表現型である可能性もある。これまでに、
点 変 異 に よ り 立 体 構 造 が 異 常 と な っ た Cx32 が 、 小 胞 体 に 局 在 し 、 細 胞 質 の
プロテアソームによって分解される小胞体関連分解を受けることが報告さ
れ て い る( VanSlyke et al., 2000)。こ の 可 能 性 に 関 し て 小 胞 体 を 染 色 す る ConA
と 2 重 染 色 し た 結 果 よ り 、 Cx43Δ 227-242 は 小 胞 体 に お い て そ の 局 在 が 見 ら れ
る が 、他 の 細 胞 質 の 領 域 に も 存 在 し て い る こ と が 観 察 さ れ て お り 、立 体 構 造
の異常により小胞体関連分解を受けているのではないであろうと予想され
る。
ま た 、siRNA に よ り CIP150 を 発 現 抑 制 し た 細 胞 で は 、Cx43 の 細 胞 質 に お
け る 局 在 が 増 加 し て い る こ と が 確 認 さ れ 、ギ ャ ッ プ 結 合 チ ャ ネ ル 活 性 も 有 意
に 低 下 し た こ と か ら 、 CIP150 が ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 制 御 に 関 わ る こ と を 示 唆
し て い る と 考 え ら れ る 。 細 胞 膜 に お い て ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る Cx43
と 会 合 し て い る こ と 、結 合 の 阻 害 や CIP150 の 発 現 抑 制 が Cx43 の 局 在 を 細 胞
質 へ と 移 行 す る こ と な ど の 結 果 よ り 、CIP150 は Cx43 が ギ ャ ッ プ 結 合 を 安 定
49
的 に 構 築 す る の に 関 わ る の で は な い か と 思 わ れ る が 、本 実 験 で は そ の 詳 細 な
メカニズムを明らかにはしておらず、更なる解析が必要である。
ま た CIP150 に よ る 制 御 機 構 を 理 解 す る 上 で 、 CIP150 自 身 の 機 能 を 理 解 す
る こ と は 重 要 で あ る 。 し か し 、 CIP150 は こ れ ま で に 機 能 が 知 ら れ て い る タ
ン パ ク 質 ド メ イ ン 構 造 を 全 く 有 し て お ら ず 、唯 一 そ の C 末 端 に プ レ ニ ル 化 モ
チ ー フ( CaaX)が 存 在 す る 。プ レ ニ ル 化 の な か で も 、X が セ リ ン 残 基 で あ る
こ と か ら CIP150 は フ ァ ル ネ シ ル 化 を 受 け る と 考 え ら れ 、 こ の 修 飾 に よ り 細
胞 膜 に 局 在 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 こ の こ と か ら も 、 CIP150 は 細 胞 膜 に お
い て ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し て い る Cx43 と 会 合 し て い る の で は な い か と 考 え
ら れ る が 、 そ の 詳 細 を 解 析 す る に は CIP150 の 細 胞 内 局 在 を 明 ら か に す る 必
要がある。
本 研 究 に お い て CIP150 に 対 す る 抗 体 は 3 種 類 作 製 し て お り 、 こ れ を 用 い
た 免 疫 蛍 光 染 色 を 行 っ た が 、 CIP150 に 得 的 な 染 色 像 は 観 察 さ れ な か っ た 。
ま た 、CIP150 の N 末 端 に FLAG タ グ を 付 加 し 発 現 し た 細 胞 に お い て 、抗 FLAG
抗 体 に よ る 免 疫 蛍 光 染 色 も 行 っ た が 、そ の シ グ ナ ル を 検 出 す る こ と が で き な
か っ た 。さ ら に 、FLAG-CIP150 を 細 胞 に 過 剰 発 現 し 、そ の 細 胞 抽 出 液 か ら 抗
CIP150-M ま た は FLAG 抗 体 を 用 い て 免 疫 沈 降 し 、 ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト を 行
う と そ の バ ン ド が 検 出 で き た の に 対 し 、全 細 胞 抽 出 液 で は 全 く バ ン ド を 検 出
することができなかった。この様なことが起こる理由は不明であるが、
CIP150 の タ ン パ ク 質 と し て の 特 殊 な 性 質 が あ る の か も し れ な い 。
こ れ ま で に Cx43 の 制 御 機 構 の 解 析 は 、 Cx43-CT を 中 心 に 行 な わ れ 、 リ ン
酸 化 部 位 や 会 合 タ ン パ ク 質 の 同 定 な ど 、多 く の 知 見 が 報 告 さ れ て い る 。例 え
ば 、Cx43 の 裏 打 ち タ ン パ ク 質 と し て 考 え ら れ て い る ZO-1 は 、そ の 2 番 目 の
PDZ ド メ イ ン を 介 し て Cx43 の C 末 端 20 ア ミ ノ 酸 と 会 合 し て い る こ と が 知
ら れ て い る( Sorgen et al., 2004)。し か し 、Cx43-CT の ほ と ん ど( 241 ま た は
245 番 目 の ア ミ ノ 酸 以 降 ) が 欠 損 し た 変 異 体 は 、 野 生 型 と 同 様 に ギ ャ ッ プ 結
合 を 構 築 す る と い う こ と が 示 さ れ て お り( Fishman et al., 1991; Dunham et al.,
1992)、こ の こ と は ZO-1 や 他 の 会 合 タ ン パ ク 、リ ン 酸 化 部 位 は ギ ャ ッ プ 結 合
の 構 築 に 必 須 で は な い 可 能 性 を 示 唆 す る 。 こ れ に 対 し 、 CIP150 は 227-242
番 目 の 領 域 に 会 合 す る こ と や 、 Cx43Δ 227-242 は ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 し な い こ
と な ど は 、 上 記 の 報 告 に 一 致 し て お り 、 CIP150 の 重 要 性 を 示 唆 す る の で は
な い か と 考 え ら れ る 。 一 方 、 ZO-1 は 心 筋 細 胞 に お い て 、 介 在 板 ( 心 筋 細 胞
の 長 軸 両 端 に 見 ら れ る 構 造 )付 近 に お け る ギ ャ ッ プ 結 合 構 築 に 重 要 で あ る こ
50
と が 示 さ れ て お り ( Toyofuku et al., 1998a)、 細 胞 膜 の ギ ャ ッ プ 結 合 を 構 築 す
る領域を決定する役割を担っているのではないかと考えられる。すなわち、
Cx43 は 、ギ ャ ッ プ 結 合 を 適 切 な 細 胞 膜 領 域 に 構 築 す る の に ZO-1 と の 会 合 が 、
ギ ャ ッ プ 結 合 を 安 定 し て 構 築 す る の に CIP150 と の 会 合 が 重 要 で あ る の で は
ないかと予想される。
51
参 考 図 6 ヒ ト 組 織 に お け る KIAA1432 の 発 現 パ タ ー ン
HUGE Protein Database に お け る 報 告 で 、KIAA1432 は そ の 発 現 量 は 低 い が ヒ
ト の 様 々 な 組 織 に お い て RNA レ ベ ル で の 発 現 が 確 認 さ れ て い る 。
( http://www.kazusa.or.jp/huge/gfpage/KIAA1432/よ り 転 載 )。
52
参 考 図 7 EST 配 列 を 基 に し た KIAA1432 と Cx43 の 発 現 パ タ ー ン の 比 較
EST Profile Viewer に お い て 、 KIAA1432 と ヒ ト Cx43 の 発 現 を 比 較 す る と 、
い く つ か の 組 織 で 違 い は あ る が 、ど ち ら の 遺 伝 子 も 比 較 的 広 範 な 組 織 で 発 現
し て い る こ と が 分 か る 。( NCBI UniGene EST Profile Viewer よ り 転 載 )
53
謝辞
本 研 究 を 行 う に あ た り 、修 士 課 程 よ り 5 年 間 、大 変 お 世 話 に な り ま し た 竹
家達夫教授、研究を進めるにあたり、多くのアドバイスをいただきました、
宍 戸 知 行 助 教 授 、石 田 教 弘 、与 語 圭 一 郎 助 手 、お 互 い 励 ま し あ い 、一 緒 に 苦
楽をともにした同期の古賀慎太郎君に心から感謝します。
ま た 、本 大 学 院 に お い て 研 究 す る 機 会 を 与 え て 下 さ い ま し た 、バ イ オ サ イ
エ ン ス 研 究 科 及 び 遺 伝 子 教 育 セ ン タ ー の 教 授 を は じ め と す る 先 生 方 、RI 施 設
な ど の 実 験 施 設 を 管 理 し て 下 さ っ た 皆 様 、励 ま し の 言 葉 を 頂 い た 先 輩 、同 期 、
後輩に深く御礼申し上げます。
54
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