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資料3 日本からのトレンド発信を巡る論点整理
資料3 日本からのトレンド発信を巡る論点整理 平成20年4月22日 産 業 構 造 課 (注)以下は2回にわたって開催した「日本発トレンド研究会」で出された論 点や有識者との議論のなかで出された論点を事務局として整理したものであ る。 問題意識:トレンド発信の構造を横断的に見る必要性 ○ 我が国には「ジャパンクール」と評価される世界の関心を引きつけるシーズ が存在。(日本料理、伝統工芸、ファッション、秋葉原(アニメ)等) ○ 「ジャパンクール」が世界の消費トレンドを発信しうる素地には、以下のよ うなものがある。 z グローバル化のなかでの消費行動変化:多様な 文化 を背景と して生み出される財・サービスを「組合せ」て消費(グローバル 富裕層、グローバル中間階級) z 伝統的な「アート→高級品→普及品」といったトレンド浸透のピ ラミッド構造がなくなり、たとえばファッションであれば、 「赤文 字系」「ストリート系」「ハイエンド系」等の複数のトレンドが併 存している。(ある意味での「フラット化」) ○ しかし実際には上記のようなシーズを有効に発信し裾野の広いビジネスに つなげる構造が構築されていないため、シーズが十分に活かされていない。 論点A:そもそも海外展開を視野に入れている企業が少ないこと 「ジャパン・クール」のシーズが広く受容されているにもかかわらず、日本 の企業とりわけ中小企業には、その動向を察知し、それを具体的なビジネスに 結びつけていくノウハウが不足している。これらに共通の課題として、以下の ものがある。 ① マインドセットの問題:海外に出ようという「発想」がそもそもなく、狭 い国内市場の取り合いになっている。 ② 人材の問題:大企業、商社等の国際分野で活躍してきた人材が「国際化」 に取り組んでいる例も散見される。 ③ 知的財産権の問題:海外に行かずとも中国では無断商標登録されている。 (ファッション) 「制作委員会」方式で関係者の利害調整に戸惑っているう ちに無料でダウンロードできる翻訳済みアニメサイトがゲリラ的に多発。 1 論点B:ビジネスモデルのイノベーションを通じた海外展開 既成のものとは異なるビジネスモデルを構築することで、我が国からのトレ ンドを浸透させ波及を広げることができる。 1.ネットの活用 ネットの活用は地方の中小企業を含めた多様なプレイヤーの海外進出・発信 の可能性を提供しつつある。 (例) ・ スタイライフ(株)は、「ジャパンファッションウィーク」でデビューした 新進デザイナーが作品を販売する機会を得るためのオンラインショッピン グサイト「nuan」を開設し、販売機会を提供。さらに中国の「Sina」に 「日本館」コーナーを開設。 ・ 「東京ガールズコレクション」のモバイル対応オンラインショッピングサイ トは、新進デザイナーがコレクション来場者に対して直接作品を販売する機 会を提供。 ・ モジ(株)は、フィギュアの海外向けオンラインショッピングサイト(Plamoya online store。英語、仏語、伊語、露語及び中国語に対応)を開設。 ・ ファッション専門用語についての日中翻訳エンジン等があれば、たとえば 「日本の素材メーカー」と「海外のアパレル企業」を結びつけることが可能 ではないか。 ・ 和紙装飾を手がける(有)N工房には日本語サイトしかないが、欧米、中国、 台湾等海外からもアクセスがある。さらに、台湾からはオーダーがあったが 断った。和紙装飾に関する翻訳エンジン等があれば、 「日本の和紙装飾職人」 と「海外のゼネコン等」を結びつけることが可能ではないか。 2.フュージョン、ローカライゼーション 既にシーズとして確立されているもの(商品、技法)を、ターゲットにする 市場の需要に応じて、再デザインすることでトレンドの裾野が拡大する可能性 がある。 (例) ・ 「ザ・ペニンシュラ東京」では、伝統工芸技法をアレンジして全体としては モダニズムを基調としたホテルのインテリア・デザインに再編集。このこと により、伝統工芸の波及の裾野が広がるのではないか。(京都の町屋でのL ED利用、木曾の風呂についても同様。) ・ 任天堂やバンダイナムコは、海外で販売するゲームやフィギュアを海外市場 の嗜好に合わせてローカライズしている。たとえば任天堂では、新商品開発 に現地外国人を参加させてリメイクし、米国市場においては、米国仕様の商 2 品を販売。 3.海外のリソースの活用 「純日本」とみえる「ジャパンクール」の発信に海外人材を活用することで むしろ裾野が広がる可能性がある。 (例) ・ 伝統工芸についても、中間財工程を支える職人が急減するなかで工程間分業 を進めることが可能ではないか。 ・ 「外国人日本料理人」の育成。 4.技法の蓄積・伝承 トレンドのシーズを着実に継承し、新たなシーズの創造につなげていくため には、シーズを標準化、標本化することが必要。 (例) ・ 日本料理の技法は統一されていないため、個々の料理人により技法がバラバ ラ。(アレンジは勿論あるが基礎的技法が標準化されていないという意味。) 一方、フランス料理では、「エスコフィエ」という教科書の確立を通じて基 礎的技法が標準化されており、グローバルに技法を伝達し、伝承することが 容易。→基礎的技法の標準化が必要ではないか。 ・ コミックマーケットに30年間にわたって出展された作品(150万作品) は、保存されているが、アクセス可能なかたちとなっていない。今後同人誌 を含めて新たに作家がコミック等の着想を得ていく上で、こうした作品群を アーカイブ化し、アクセス可能とすることが必要ではないか。 論点C:消費トレンドに関するインテリジェンス基盤の確立 日本発の消費トレンドを確立するうえでは、これらのトレンドがグローバル にどう浸透しているかについての理解を深めることが必要。IPメディアを含 めた技術進歩は、こうした「消費インテリジェンス」を確立する契機となりう る。また、こうした理解を含めることは、必ずしも狭義の「ジャパンクール」 の分野に属さない分野の海外進出・発信に当たっても有効。 第1の次元:供給を顕在的な需要に確実に結びつける 消費行動パターン等を分析することで、商品を欲している消費者に着実に商 品を届けることを可能とする。 (手法の例) ・ 上海市内の地区(ストリート)ごとに、トレンドや小売店等をまとめたマッ 3 プの作成・活用。(ストリートを外すと売れない。) ・ メゾン・エ・オブジェのフロアー毎に、出展している商品の傾向、集まるブ ローカー等をまとめたマップの作成。(コマを外すと売れない。) 第2の次元:潜在的需要を見抜く 消費行動パターンを類型化することで、潜在的な消費者の需要を察知する契 機をつくり、潜在的なビジネスを発掘する。 「ジャパンクール」のシーズとなる 分野は複数あるため、消費パターンを分析するうえでいわば複数の観測点があ るのと同様であり、より精緻な消費行動解析が可能となる。 また電子商取引の発達は、こうした消費データの集中解析を可能にする契機 となっている。 (手法の例) ・ 上海の消費者の消費行動パターンを複数分野についてマッピングすることで、 消費者をいくつかのグループに類型化する。 第3の次元:消費行動の背後にある「物語」を発信する ○ 商品の生産プロセスの背景にある、作り手の思い、価値観及び文化等を商品 とともに「物語」として消費者に届けることで、上記のグループ毎への訴求 力を更に高めることができるのではないか。(伝統、「もったいない」、エコ ロジー等) ○ 通信と放送の融合が進むなかで、コンテンツ発信を組み合わせた新たな広告 モデルを確立することは、こうした訴求力を高めることにつながるのではな いか。 以上 4