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【第2回】 外来看護最前線Vol.13 No.4 PDF

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【第2回】 外来看護最前線Vol.13 No.4 PDF
消化器内視鏡検査の安全確保と
内視鏡室の効率的運用
【第2回】
上部消化管内視鏡検査
―内視鏡技師の視点から
玉野市立玉野市民病院 内科 ◎岡山県玉野市
看護師・内視鏡技師 正木美恵 山根史江
看護助手 古山純恵
看護師 石谷真紀 原田悦子 村上光江
医師 重戸伸幸 福田智子 山原茂裕
木村文昭 深田耕史 三島康男
執筆者代表 まさき・みえ
1996年玉野市民病院勤務。2001年4月より内科外来勤
務。2005年日本消化器内視鏡学会認定内視鏡技師を取得
し,現在に至る。
内科外来・内視鏡室で,患者が検査内容を理解した上で
検査を受けられるように心掛けている。
我が国は高齢社会を迎えており,玉野
高齢患者の増加に伴って
市においては,65歳以上の老年人口割合
が26.4%(2006年10月現在)と,全国
上部消化器内視鏡(以下,GIF)は,
平均と比べ高齢化が著しい。それに伴っ
スクリーニング検査,各種治療(ポリー
て,当院でGIFを受ける患者も,年々高
プ・早期癌の切除,止血術,食道・胃静
齢化している(図)。
脈瘤硬化療法,異物除去術,各種ステン
今回は,GIF時の安全確保の工夫と効
ト留置術や胃瘻造設術など)に幅広く使
率的運用法について,内視鏡技師の視点
用されている。
から述べる。
Vol.13 No.4
057
非高齢者
(件)
1,800
1,597
1,600
1,400
1,200
1,778
高齢者
1,698
868
760
910
938
840
1,000
800
600
400
757
資料1 ● 従来の内視鏡検査時の
外来診療録用判
胃十二指腸ファイバー
セスデン 1A
グルカゴン 1A
セルシン A
ガスコンドロップ 4mℓ
キシロカインビスカス 10mℓ
キシロカインポンプスプレー 0.5g
生 検 検体
200
0
2005
2006
2007(年度)
図 ● 当院のGIF検査:全件数と高齢者・
非高齢者検査件数
内視鏡室のスタッフ
大腸ファイバー
セスデン 1A
グルカゴン 1A
セルシン mℓ
オピシタン 1A
キシロカインゼリー 30g
ポリペクトミー
生 検 検体
ジキタール
当院の内視鏡室スタッフには,内視鏡
医のほかに,内視鏡技師(看護師)1人
め,記録法およびコスト伝票は,現在と
と看護助手1人(2006年4月より)が
比べると極めて簡素なものであった。
おり,この2人が,検査準備,検査実施
また以前の検査記録は,当日の外来診
(処置・移動介助)
,患者の安全管理,検
療録に判(資料1)を押し,使用した物品
査記録,スコープなどの機器洗浄・消毒,
に○を付け,追加物品・薬品があれば手書
コスト伝票管理を行っている。午前中
きしていた。この方法では,検査中は診療
(8時45分∼12時)の検査件数は,6∼
録へ直接記入できないため,検査記録・コ
12件(内科医が行う場合は6∼8件,内
ストはメモ用紙に記入し,検査後に医師
視鏡専門医の場合は8∼12件)である。
が各種指示を外来診療録に記載した後,
看護師が外来診療録へ転記し,さらにコ
ストについては,専用の用紙へ記入する
以前の内視鏡室の体制
必要があった。したがって,記録に時間が
掛かり,次の検査が遅れることもあった。
看護助手が内視鏡室に配置される以前
そこで,この状況を改善するために,
は,上記すべての業務を基本的には看護
看護記録用紙(資料2)を作成した。メ
師1人で行っていた。また,内視鏡専門
モ用紙への記入がなくなったことで記録
医が赴任する以前は,GIFの検査件数が
時間が短縮され,外来診療録への転記漏
現在と比べ少なく,また,大部分はスク
れはなくなったが,コスト用紙へ転記す
リーニング検査のみであった。このた
る状況は依然改善できなかった。
058
Vol.13 No.4
資料2 ● 従来の内視鏡用看護記録用紙
内視鏡的治療経過記録用紙
検査日 平成 年 月 日
様 歳 M・F
GIF・CF・
内容
血管確保(無・サーフロ G) □ソリタ‐T3号 500・200 □ポタコールR500 □ □セスデン1A M
経過観察
□グルカゴン1A
(M・V)
: 開始前バイタルサイン
BP P SpO2
□セルシン10mg( mℓ)
□麻オピスタン35mg1A
□1%ディプリバン( mℓ)
: 施注後バイタルサイン
BP P SpO2
注射および処置
□トロンビンソフト1万単位
□インジゴカルミン1A
□生食20mℓ 1A
□チチナ100 1A
□トランサミン10%1A
□ルゴール液
□2%チオ硫酸ナトリウム
□コンクライトNa( mℓ)
□蒸留水( mℓ)
□ボスミン1A
□SpO2 分
□O2経鼻 ℓ 分
検査終了時バイタルサイン
BP P SpO2
処置
□生検( 臓器 個)
□色素撒布(インジゴカルミン・ルゴール)
□ウレア法ピロリ菌チェック(+・−)
□内視鏡的ポリープ切除術
□EMR
□内視鏡的止血術(クリップ 個 APC エタノール局注 HSE)
□EIS・EVL( 発)
□胃瘻造設・交換( F cm)
□食道拡張術( 分 回) □ステント(食道・胆管・膵管・大腸)
□ERBDチューブ( Fr cm)
継続される問題点など(有・無)
□バイタルサインの異常 □呼吸状態の異常 □腹部症状 □疼痛 □出血濃霧
看護師サイン( )
クリニカルパス導入の経緯
以前の検査記録の問題点としては,次
の3点が考えられた。
・従来のGIF所見用紙には,主治医
からの検査依頼目的などを記入す
る欄がなく,既往歴,服薬内容(抗
凝固剤内服の有無など)が不明で
あり,内視鏡医はその都度外来診
療録を確認する必要があった。
・看護記録基準がなく,外来診療録
に使用物品を記入すること以外で
は,記録内容(特に,検査前・検
Vol.13 No.4
059
査中・検査後の経過記録)が統一
されていなかった。
・検査時の使用物品や処置系内視鏡
(止血術・ポリープ切除術・胃瘻造
設術など)を行った場合のコスト
は,記録用紙とは別の専用伝票に
転記する必要があり,転記漏れに
よるコスト請求漏れが散見された。
2)検査説明
患者は,診察後(内科)処置室に移動
し,検査前日・当日の注意点を書いた説
明書(資料6,P.64)を見ながら,看護師
から検査の説明を受ける。最後に血圧・
SpO2を測定(検査当日・検査中の血圧・
SpO2と比較するため)し,帰宅する。
そこで,医師・看護師・医事課スタッ
3)検査当日
フで相談し,術前・術後の指示の統一,
内科外来窓口に,予約票と問診票・検
看護記録の統一と時間短縮,コスト請求
査同意書(予約時に記入・提出していな
漏れ防止の3つの目的でクリニカルパス
い場合, 資料7〈P.65〉)を提出し,鎮
(以下,パス)を作成し,約3カ月間の
静剤を希望する患者は,処置室で静脈
試験運用の後,全面的に導入した。
ルートを確保してから(鎮静剤を希望し
なお,当院のパスは,上部・下部内視
ない患者はそのまま),内視鏡室へ案内
鏡検査と比較的多い処置系内視鏡で共通
する。
のものとし,全職種で毎年検討・改訂し
ている(現在第5版を使用,資料3,4)
。
4)検査前∼検査実施
検査直前に手荷物(貴重品)
,義歯,眼
鏡などを専用のロッカー(写真1,P.66)
現在のGIF時の患者の動き
に収め,施錠の後,鍵は患者の手首に装着
(写真2,P.67)し,内視鏡室に入室する。
1)外来受診時
入室後,検査台に腰掛け,ガスコン水
腹痛や検診異常で来院した患者は,診
50mℓを服用し,鎮静剤を希望しない患
察室で主治医より,その必要性と合併症
者には,キシロカインアイスシャーベッ
を含めて,GIFについて書面(資料5,P.63)
トにて咽頭麻酔を行う。なお当院では,
を見ながら口頭による説明を受けた後,
鎮静剤使用者には,ガスコン水は服用す
検査日の予約をする。検査開始時間は,
るが咽頭麻酔は行っていない。通常,静
看護師と相談し決定する。
脈ルートは外来処置室で確保するが,混
なお,外来受診当日に絶食で来院し,
雑している場合は,内視鏡室で内視鏡室
かつ腹部症状の強い患者の場合は,外来
担当看護師がルートを確保している。
担当医の判断で直ちにGIFを施行できる
よう,緊急検査枠も用意している。
5)検査後
鎮静剤(当院ではプロポフォール)を
使用した患者は,検査後速やかに覚醒し
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Vol.13 No.4
資料3 ● クリニカルパス(No.1〈検査依頼時用〉)
上部(GIF)
・下部(CF)消化管内視鏡検査パス(No.1)
指示医 担当看護師 エンボス欄
日付(曜日)
月 日( )
検査予約日(内科外来,3・4・5病棟)
予約時バイタルサイン 血圧 / mmHg
Pulse /分
SpO2 %
指示医/看護師から施行医への連絡事項
達成目標
□検査・処置目的,方法が理解できる
□検査・処置に対する不安の表出ができる
観察
検査
施行日指定〈□予約日 □検査日(至急)〉
□CBC(分)
,GOT,GPT,LDH,
γ-GTP,T-Bil,Tp,Alb,T-Chol,BUN,Cr,Na,
K,Cl
□胸部Xp(P→A)
□胸部Xp(立位)
□CEA,CA19-9
□HBsAG,HCVAb,Wa氏 □Fe,TIBC,フェリチン □血清抗ヘリコバクターピロリIgG抗体
□尿素呼気試験(UBT)
:ユービット □
(注意)当日指示があれば,パス裏面にチェックしてください 看護師サイン【 】
□CF時前処置(通常)
前日食事 □検査前アンケート結果どおり □インテスクリア □低残渣食
治療
注射
処方
処置
検査前日:ラキソベロン1本+水200mℓ
(寝る前)
検査当日:マグコロールP100g(水1.8ℓ)(指示どおり)
午前11時便性状報告:指示にてグリ浣120mℓ
CF時血管確保(右手)ソリタ‐T3号500mℓ
鎮静剤・鎮痛剤(施行医依頼)
□前処置指示(臨時):絶食(水分可で待機)
検査当日:術前グリ浣120mℓ
(開始指示あり)
CF時血管確保(右手)ソリタ‐T3号500mℓ
鎮痛剤・鎮静剤(施行医依頼)
CF前処置時に異常あれば指示医に連絡 看護師サイン【 】
指示
GIF時血管確保(右手)
□ポタコールR500mℓ □ソリタ‐T3号200mℓ
GIF時鎮静剤 □ディプリバン □セルシン
□抗凝固剤内服については,別紙のごとく中止 □抗凝固剤を含めて内服続行(生検不可)
□糖尿病薬続行可(インスリンも含む)
看護師サイン【 】
食事
特に指示なし(GIF前日午後9時から絶食・少量の水分可)
CF時は上記指示のごとく食事制限あり
排泄
異常があれば主治医(施行医)に連絡
活動
制限なし
□主治医より説明(□本人 □家族)〔治療法,合併症〕
□同意書渡し
説明・指導
□ディプリバン使用予定者:卵・大豆アレルギーチェック
□検査用パンフレットを渡し,指導 □内服薬確認(特に抗凝固剤・糖尿病薬)
□既往症確認 看護師サイン【 】
バリアンス
□有 □無
記録
□有 □無
備考
基本的に,抗凝固剤・糖尿病薬・胃薬以外は検査当日も内服可 指示医 玉野市立玉野市民病院 内科 平成20年4月改訂 第5版
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資料4 ● クリニカルパス(No.2〈検査時用〉)
上部(GIF)
・下部(CF)消化器内視鏡検査パス(No.2)
検査担当医 内視鏡室看護師 日付(曜日)
月 日( )
検査当日(内視鏡室)
T P R SpO2 BP
△青 ●赤 × ○ ×
術前
術中( 時 分∼ 時 分)
前処置直後
39 200 40 100 200
術後
内視鏡抜去直後
38 150 30 90 150
37 100 20 80 100
36 50 10 70 50
SpO2モニタ(始↑,終↓)
O2吸入
達成目標
□身体・精神的に問題なく検査に臨むことができる □内視鏡検査・処置に必要な検査が終了している
□不安なく,安全,安楽に検査・処置が受けられる □合併症(出血,穿孔,鎮静剤の重篤な副作用)がない
腹痛
観察
嘔気/嘔吐
下血
追加処置
検査など
治療
注射
処方
処置
(コスト票)
□当日検査あり(パスNo.1)
予約時看護師サイン【 】
実施看護師サイン【 】
□検査後,尿素呼気試験(UBT)
□胃十二指腸ファイバー(60-30010)
□粘膜点墨法(60-30190)
□生検(60-30200)
□大腸ファイバー(60-30070)
□大腸ポリペク(51-40110)
(Total・ まで観察)
□内視鏡的消化管止血術(51-37012)
mℓ
□血管確保 □ポタコールR500mℓ □ソリタ‐T3号(200・500)
□チチナ100mg □10%トランサミン1A □5%TZ20mℓ+プリンペラン1A
食道,十二指腸,盲腸,上・横・下行,S状,直腸
□病理組織( 臓器 検体)
□ウレア法ピロリ菌チェック(結果: + ・ − ) □ピロリ培養 □紹介状・返書コスト
□クリップ( )個 □トロンビン1万単位 □ディプリバン( )mℓ
□セルシン( )mℓ □生食( )mℓ □オピスタン1A
□セスデン1A □グルカゴン1V □SpO2モニター ( )分 □夜間・休日加算(緊急検査・処置)
□O2( )ℓ
伝票入力者〈 〉
看護師サイン【 】
指示
□ルート指示あり(パスNo.1) 実施看護師サイン【 】
□すべて内服再開 □抗凝固剤は 月 日∼再開(以外内服可)
□次回外来予約 月 日 □入院
□終了後(抜針)帰宅・帰室可 □終了後(抜針)主治医より説明あり
□紹介医へ返事(郵送・患者渡し)
看護師サイン【 】
食事
□昼・夕から再開:元食・ 食 □指示あるまで絶食 看護師サイン【 】
排泄
異常があれば主治医(施行医)に連絡:CF時はパンフレットどおり
活動
制限なし:CF時はパンフレットどおり
説明・指導
□検査前,問診表・同意書確認 看護師サイン【 】
□検査後,指導・パンフレット手渡し 看護師サイン【 】
□主治医から結果説明
バリアンス
□有 □無
記録
□有 □無
備考
指示医
玉野市立玉野市民病院 内科 平成20年4月改訂 第5版
062
Vol.13 No.4
上部消化管内視鏡検査予定表
普段どおりの生活をしてください
内服
行動
検査終了後,主治医から説明があります
□組織検査をされた方は,検査結果を聞くた
め,7∼ 10日後に外来予約をしてください
(予約票をお渡しします)
・胃の中を見やすくするため,水薬を飲んでい
ただきます
・義歯,コルセットなどがあれば外してください
・のどの麻酔の氷飴をなめていただきます(鎮
静剤を使用する方は不要です)
・胃の動きを抑える筋肉注射をします(鎮静剤
を使用する方は静脈注射になります)
・検査前に医師がスプレー麻酔を追加すること
があります
・検査台に上がったら,左を下にして横になり
ます
・口にマウスピースを軽くかんでいただき,検
査を始めます
説明看護師サイン( )
□鎮静剤を使用された方は,反射神経が鈍って
いますので,必ず病院で30分∼1時間お休
みになってからお帰りください
薬は普段どおりにお飲みください
□組織検査をされた方は,抗凝固剤(血液をさ
らさらにする薬)を( 月 日)まで飲
まないでください
□咽喉麻酔をされた方は,指定時間になるまで
絶飲食です
□鎮静剤を使用された方は,検査終了後すぐに
食べたり飲んだりして構いません
□鎮静剤を使用された方でも,組織検査をされ
た方は指定時間になるまで絶飲食です
検査当日〈検査後〉
玉野市立玉野市民病院 内科(内視鏡室)
検査前まで特に制限はありません
□鎮静剤を希望されている方は,来院時の運転
はお控えください。家人に乗せてきてもらう
か,公共機関の乗り物をご利用ください
□朝のお薬で,血圧の薬・心臓の薬など(抗凝
固剤を除く)がある場合は飲んでください
検査終了まで絶食です
水分(水・お茶・スポーツ飲料)は7時までは
飲んでも構いません
特に制限はありません
夜9時以降は固形物を食べないようにしてくだ
さい。ただし,水分(水・お茶・スポーツ飲料)
は飲んでも構いません
□飲み薬はいつもどおり服用してください
□抗凝固剤(血液をさらさらにするお薬)は,
検査の( 日前)から中止してください
検査当日〈検査前∼検査中〉
( 月 日)
検査前日( 月 日)
検査の準備(咽頭麻酔・点滴など)のため,15分前に内科外来にお越しください
その際,内科外来に診察券・問診票・検査同意書を提出してください
検査日時 月 日( 曜日) 時 分からです
上部消化管検査を受けられる方へ
資料5 ● 患者用説明用紙
食事
検査
Vol.13 No.4
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資料6 ● GIF用検査説明書
上部消化管内視鏡検査に関する説明書
日本消化器内視鏡学会ガイドライン準拠(平成19年1月改訂)
上部消化管内視鏡検査を実施するに当たり,以下の項目をお読みになった後,説明にご納得いただ
けましたら,同意書にご署名をお願いいたします。
(検査目的)
上部消化管とは,食道・胃・十二指腸を指します。これらの場所にできる病気(炎症・潰瘍・ポリー
プ・がん・食道静脈瘤など)を見つけ,適切な治療方法を考えるために行います。
(方法)
まず,胃の中を見やすくするシロップを飲み,麻酔薬でのどを麻酔します(鎮静剤を使う場合は,
のどの麻酔が不要なこともあります)。できるだけ苦痛なく内視鏡検査をするために,ご希望によ
り,静脈注射による麻酔(鎮静剤)を使用することもできます。
内視鏡(直径9mm程度)を口から挿入し,上部消化管をまんべんなく観察します。必要であれば,
小さな組織を採取して,顕微鏡検査で良性か悪性かを判断します(病理組織検査)。特に痛みはあ
りません。鎮静剤を使用した方は,検査終了後,その効果がある程度取れるまで(約30分間),点
滴室にて休んでいただきます。
(検査前日および当日の注意事項)
前日は,午後9時までに食事を済ませて,以後は水かお茶またはスポーツ飲料のみを摂取してくだ
さい。当日は朝のコップ一杯の水以外は取らず,降圧剤,抗不整脈剤などの心臓の薬,精神科の薬
以外の薬は飲まないでください。また,内服されている薬の一覧表か現物をご持参ください。
これまでに歯科治療,局所麻酔などでアレルギー症状の出た方や現在治療中の病気のある方,また,
過去に入院・治療歴のある方,女性の患者様で妊娠中(可能性のある方),授乳中の方は,事前に
お申し出ください。
鎮静剤の効果は人によっても違いますが,半日くらい眠気やフラフラ感が続くこともありますの
で,検査当日は絶対に車,バイク,自転車の運転をしないでください。ご自分で運転して来院され
た方には,鎮静剤を使用できません。また,ご高齢の方はご家族が付き添ってくださることをお願
いします。
(検査後の注意事項)
のどの麻酔が切れたら,水分や軽食を取っても構いません。組織検査を受けられた方は,2時間く
らいあけてください。当日は飲酒や喫煙はご遠慮ください。
(偶発症について)
精密な検査ほど,偶発症の頻度が増加します。この検査では,のどの麻酔によるショック,内視鏡
操作によって起こる出血や穿孔(穴があく)などが主な偶発症ですが,日本消化器内視鏡学会が調
査した最近の全国集計(1998 ∼ 2002年の5年間)によると,その頻度は0.012%(8,300人に1人
,死亡率は0.00076%(131,600人に1人程度)でした。万一,偶発症が発生した時は,入院
程度)
治療,緊急開腹手術など外科処置を含めた最善の処置をいたします。
その他,疑問点がございましたら担当医にお尋ねください。
また,上部消化管疾患に対する治療を受ける患者様は,担当医からより詳しい説明をお受けください。
総合病院玉野市立玉野市民病院
064
Vol.13 No.4
資料7 ● 同意書
内視鏡による検査および治療同意書
説明実施日 平成 年 月 日
今回の検査(または治療)内容について,医師からの説明を十分理解し,
必要であると判断したので,総合病院玉野市立玉野市民病院での実施を
同意いたします。
玉野市立玉野市民病院長殿 平成 年 月 日
検査・治療名:□上部消化管内視鏡検査 □下部消化管内視鏡検査
□内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査 □内視鏡的ポリープ切除術
□内視鏡的粘膜切除術
( )
患者(代諾者)住所
患者(代諾者)署名または捺印
(代諾者の場合患者との続柄: )
緊急時連絡先(電話番号:自宅/ご家族の携帯)
検査時の鎮静剤使用については,以下のいずれかに必ずチェックをしてください
*鎮静剤の使用を(□希望する □希望しない)
※なお,希望された場合,当日は車,バイク,自転車の運転はできません
この鎮静剤は,まれに血管に対する刺激により,検査後1週間くらい(時に1カ月
くらい)注射の跡が硬くなったり,紫色になったりすることがありますが,必ず元
に戻りますのでご安心ください
分からない点,お尋ねになりたいことがありましたら,下記にお電話ください
総合病院玉野市立玉野市民病院
Tel ○○○○−○○−○○○○(代表)
1)
ている(約1∼2分)
。その後,看護師・
6)結果説明
看護助手が付き添い,リカバリー室まで
主治医が,内視鏡写真を見せながら検
自力歩行で移動し,点滴終了まで30分∼
査結果について説明する(必要があれば
1時間程度休憩する。鎮静剤不使用の患
各種内服治療が開始される)。組織生検
者は,待ち合い(内科外来)に移動し,
を行った場合は,後日,さらに生検結果
待機する。
の説明を受ける。
Vol.13 No.4
065
現在のGIF時のスタッフの動き
1)外来受診・検査依頼(各診察室)
主治医がパス(No.1)に指示を記入
し,診察介助の看護師が指示を確認,患
者説明用紙にチェックし,処置室の看護
師に渡す。
2)検査予約・説明(外来処置室)
診察室から回ってきたパス(No.1)
と患者説明用紙の内容をチェックする
(抗凝固剤内服の有無,既往症の有無な
ど)
。ここでは,内視鏡検査の前処置に
写真1 ● 患者用ロッカー
使用する可能性のある薬剤の禁忌チェッ
クが重要である。
【抗コリン剤の禁忌】
4)検査実施(内視鏡室)
内視鏡室の看護師または看護助手が,
緑内障(虹彩切開未処置の場合)
・前
義歯,眼鏡の確認を行い,手荷物などと
立腺肥大症・麻痺性イレウス・器質的幽
一緒にロッカーに収納し,検査台へ案内
門狭窄・重篤な心疾患・細菌性下痢・出
す る。 ま た, パ ス(No.1) を 確 認 し,
血性大腸炎の患者
再度内服薬の確認を行う(抗凝固剤の有
【グルカゴンの禁忌】
無・休薬確認など)。加えて,問診票を
褐色細胞腫・妊婦
確認し,前処置を行う。さらに,検査医
の指示に従い,鎮痙剤を筋肉注射(咽頭
以上を確認後,検査内容を患者に説明
麻酔の患者の場合)する。鎮静剤使用者は
し,最後に患者のバイタルサインを測定
医師が鎮痙剤・鎮静剤を静脈注射し,看護
する(パス〈No.1〉に,外来受診時の
師,助手は,モニタリングしたバイタルサ
。
血圧・脈拍数・SpO2を記入する)
インに注意しながら検査介助を行う。
3)検査当日(外来)
5)検査後(リカバリー室)
来院後,処置室の看護師がパス(No.1)
内視鏡検査終了後,咽頭麻酔のみの患
の指示内容を確認し,鎮静剤を希望した
者には,看護師が検査後の注意事項・食
患者には,留置針で静脈ルート(右手)
事時間などを記入した説明用紙を渡し,
を確保し,内視鏡室入口まで案内する。
読んで内容確認を促す。鎮静剤を使用し
た患者は,看護師,看護助手がリカバ
066
Vol.13 No.4
1)検査準備・機器整備
・当日朝一番にGIF件数を確認
し,件数分のマウスピース,
ガ ス コ ン 水, キ シ ロ カ イ ン
シャーベットなどを準備する。
・光 源 装 置, ス コ ー プ の セ ッ
写真2 ● ロッカー鍵装着時
ティングを行い,機器が正常
に作動しているか確認する。
リー室まで案内し,点滴が終了するまで
安静を保つ。点滴終了後に説明用紙を渡
し,咽頭麻酔の患者同様に指導する。
・スコープの送気・送水,吸引について
確認する。
・検査終了後,スコープを洗浄・消毒す
る(洗浄・消毒については第4回で詳
6)検査結果説明(外来・内視鏡室)
しく述べる)。
点滴終了・抜針後,主治医が内視鏡写
・すべての検査終了後,使用した物品を
真を用いて検査結果を説明する。組織検
洗浄・消毒し乾燥させた後,中央材料
査をした場合は,結果が出るころに診察
室(以下,中材)へ提出し,滅菌を依
予約をする。
頼する。
・中材から滅菌物を受け取り,内視鏡室
7)会計(医事課)
コスト伝票,処方箋の有無を確認した
後,外来診療録を医事課に回す。医事課
の定位置へ整理する。
・使用物品の補充を行い,処置台をアル
コール清拭する。
にてパス(No.2)内容をコード入力し
てコストを計算し,患者は会計を済ませ
2)検査中の患者介助
帰宅する。
鎮静剤を使用した患者は時に脱抑制を起
こすため,転倒・転落しないように体を支
える。また,モニター監視して,SpO2
看護助手の作業内容と効果
が低下したら酸素吸入ができるよう準備
する。
配属当初の看護助手に対しては,内視
鏡技師(看護師)の指導の下,内視鏡室
3)看護助手導入後の効果
業務のうち,機器洗浄・整備,患者案内,
従来看護師が行ってきた機器洗浄整
物品運搬などの非看護職でも可能なもの
備・物品運搬を看護助手が担当してい
を抽出し,次のように単純明瞭化した上
るため,看護師は本来の患者看護に専念
で繰り返し指導した。
できるようになった。また,検査中の患
者の姿勢維持・酸素吸入の準備や各種処
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置時の間接介助(準備・手配など)にも
は,患者の口コミもあって,検査件数は
看護助手が協力し,患者の安全管理面が
年々増加傾向にある。
ずいぶん改善された。
一方で,検査件数が増えるにつれて,よ
り効率的な検査時間の調整・機器整備な
以上の点から,現在当院において,検
ど,時間短縮が必要となっている。今まで
査を行うに当たり,内視鏡室担当看護助
は,内視鏡医をはじめ各スタッフの努力・
手は欠くことのできないスタッフになっ
工夫で改善されていた。しかし,検査件数
ている。
がさらに増加した場合は,新たな人員確
保・機器整備・検査場所の確保が必要で
あるが,現時点では対応困難である。
パス導入後の変化
以前は,検査終了後約4∼5分かかっ
おわりに
ていた検査経過記録記入・コスト用紙転
記の時間が,パス導入により短縮され,
GIFで一番重要なのは,検査を安全に
現在では,検査終了時にほぼ記入が完了
行うことである。そのためには,患者の
するまでになった。特にコスト部分につ
バイタルサインの変化に速やかに対応で
いては,比較的頻繁に行われる検査・処
きる態制づくりが重要である。当院で
置 を コ ー ド 化 し, 使 用 物 品・ 薬 剤 は
は,平常時のバイタルサインを把握し,
チェック形式にしている。そのため,看
検査中の変化に全スタッフが対応できる
護師によるコスト記入も医事課の入力も
ようにトレーニングしている。
簡素化され,結果としてコスト漏れが改
さらに,どの施設でも内視鏡に専従す
善できている。
る内視鏡技師(看護師)は少数であり,
一方で内視鏡系の新技術は年々開発され
ているため,知識のアップデートが必要
今後の課題
である。したがって,各種研究会や学会,
メーカー主催の勉強会に積極的に参加
当院に限らず,全国的に高齢化は進ん
し,新たな知識を習得し,ほかの看護師
でおり,内視鏡検査を受ける患者も年々
や看護助手を教育・指導していかなけれ
高齢化している。また,従来のGIFは苦
ばならない。
痛が強かったため,より安楽な検査を求
医師だけでなく,内視鏡技師も自らの
める声が大きくなっている。GIFにおい
知識・技術や内視鏡検査・処置の面白さ
ては,経鼻内視鏡を導入する施設も多
を,若い世代の看護師に伝授し,新たな
い。当院では,鎮静剤を併用し,より安
内視鏡技師を育成していかなければなら
全で安楽な検査を目指している。現在で
ないと考えている。
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次回は,下部消化管内視鏡検査の安全
確保と効率的運用について述べる。
引用・参考文献
1)重戸伸幸他:消化器内視鏡検査の安全確保と内視鏡室の
効率的運用―内視鏡指導医の視点から,外来看護最前線,
Vol.13,No.3,P.109 ∼117,2008.
2)北野正剛他:偶発症対策ガイドライン,日本消化器内視
鏡学会監修,日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会責任編
集:消化器内視鏡ガイドライン 第3版,P.64 ∼72,医学書
院,2006.
3)峯徹哉他:Sedationガイドライン,日本消化器内視鏡学
会監修,日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会責任編集:
消化器内視鏡ガイドライン 第3版,P.37 ∼44,医学書院,
2006.
4)峯徹哉:安全な内視鏡のためのセデーションとその管
理,消化器内視鏡,Vol.19,No.2,P.140 ∼145,2007.
5)伊東百合子:洗浄・消毒法,消化器・がん・内視鏡ケア,
Vol.12,No.6,P.31 ∼35,2008.
6)乾和郎他:循環動態モニタリングガイドライン,日本消
化器内視鏡学会監修,日本消化器内視鏡学会卒後教育委員
会責任編集:消化器内視鏡ガイドライン 第3版,P.45 ∼
52,医学書院,2006.
7)松本雄三:問診が不十分なため起こり得るトラブルの防
止,消化器・がん・内視鏡ケア,Vol.12,No.2,P.98 ∼
102,2007.
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