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寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる 調査業務 報告書
寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる 調査業務 報告書 ◆ ◆ 目次 ◆ ◆ はじめに ...................................................................................... 1 1. 背景と目的 .................................................................................. 1 2. 実施内容 ..................................................................................... 2 第1章 寒川町観光の課題と拠点整備の必要性整理 ................................. 4 1. 2. 3. 4. 5. 6. 上位・関連計画 ............................................................................ 4 交通ネットワーク.......................................................................... 9 人口の動向 ................................................................................ 12 財政 ......................................................................................... 16 農業と商業 ................................................................................ 18 観光 ......................................................................................... 25 第2章 候補地の課題整理と拠点整備案 ............................................. 29 1. 拠点整備候補地の土地利用規制に係る課題の整理 ............................... 29 2. 拠点整備案 ................................................................................ 35 3. 拠点整備地区を核とした寒川神社周辺地域全体の発展の方向性 .............. 48 第3章 整備によって町内に生じる経済波及効果の測定 ......................... 51 1. 経済波及効果測定の枠組 ............................................................... 51 2. 経済波及効果の推計 ..................................................................... 56 第4章 観光施設の投資妥当性に係る検討 .......................................... 61 1. 拠点整備費用に係る各費目の算出根拠 .............................................. 61 2. 各拠点整備案の概算投資額の算出 ................................................... 71 3. 各拠点整備案の投資妥当性についての評価 ........................................ 73 第5章 観光施設の事業継続性に係る検討 .......................................... 78 1. 将来における来場者数推移の設定 ................................................... 78 2. 将来における収支の算出 ............................................................... 81 第6章 今後の取組に係る検討 ......................................................... 86 1. 観光拠点整備の必要性と可能性の検討 .............................................. 86 2. 観光拠点整備に取り組む上での今後の方向性 ..................................... 89 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 はじめに 1.背景と目的 寒川町は豊かな地域資源を有するが、現時点の観光入込は、知名度の高い寒川神社への 参拝客に多くを依っている。観光客のほとんどが、ほぼ寒川神社への参拝行為のみで町を 離れていると考えられているが、地域の魅力の多くに有効活用の余地があるものと認識し ている。そのため、参拝客に対して、町内を回遊する観光客とするための仕組みづくりが 重要な課題となっている。 このような状況をふまえ、寒川町商工会、寒川町観光協会からの構想、提言がなされる など、さがみ縦貫道路の全線開通をきっかけに、寒川神社を核とした新たな観光拠点の民 間による創出機運が高まっているところであり、寒川町観光事業検討協議会(寒川町、商 工会、観光協会、JA、寒川神社で構成)を設置、官民一体となって議論を深めてきた。 このような経緯を受けて、本業務は、寒川神社周辺地域において観光拠点を整備した場 合に地域が得られる効果を明確化し、整備事業の可能性、投資の妥当性を検証することを 目的に実施するものである。 (1)町内に発生する経済波及効果の検討(地域が得られる効果の明確化) 寒川神社周辺地域で観光拠点を整備した場合に、町内でどの程度の経済波及効果が生じ るかを推計する。 (2)整備主体による支出妥当性の検討(投資の妥当性の検証) 整備主体による投資額を概算し、町内で生じる経済波及効果と比較して、投資に見合っ た効果が得られる事業であるかを検証する。 (3)整備可能性および運営主体の事業継続性の検討(整備事業の可能性の検証) 整備候補地における各種規制等を確認し、観光拠点を整備する上で障壁や課題を確認、 整備可能性を検討する。 また、観光拠点が整備された場合の売上額を推定し、民間の運営主体が中長期的に事業 を継続できるか否かの客観的な材料をとりまとめ、事業継続性を検証する。 本報告では、既存統計や独自調査結果を用いて拠点整備前後の観光入込客数や観光消費 額などを推定した上で、経済波及効果や費用対効果、単年度収支等の推計を行っているが、 報告書上は四捨五入した数値で表示しているため、単純に個別項目の和をとっても、厳密 には合計と一致しない場合があることに留意が必要である。 1 2.実施内容 背景と目的をふまえ、下記の内容を実施した。 図表 1 業務の流れ 寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関する検討について 」 (H26.03.05) ~町を取り巻く環境分析(現状把握と整理)~ 寒川町商工会「寒川神社東参道街づくり構想調査事業報告書 」 (H21.02) 1.観光の課題と拠点整備の必要性 2.候補地の課題と拠点整備の設定 3.都市公園・周辺道路の整備計画 4.拠点整備に対応した町内における経済波及効果の推計 5.運営主体の事業継続可能性の検討 6.整備主体による支出妥当性の検討 7.観光拠点整備の可能性と具体化に向けた行動計画の整理 8.報告書の作成 (1)寒川町観光の課題と拠点整備の必要性整理 既存統計や資料等を整理して、寒川町の観光振興における課題を抽出・明確化し、その 解決において、寒川神社周辺での観光拠点整備の必要性について論理構成を整理した。 (2)候補地における課題の整理と、観光拠点整備にかかる設定 寒川町観光事業検討協議会で想定する拠点整備4案と、本業務で提案する1案の合計5 案を対象として、そのイメージパースを各1枚作成するとともに、整備にかかる概算事業 費等を算定した。 また、拠点整備候補地における土地利用現況と、都市計画法や農業振興地域の整備に関 する法律等による規制の状況をふまえ、5つの拠点整備案について、それぞれ実際に拠点 を整備する上での課題・問題点をとりまとめた。 2 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 (3)都市公園・周辺道路等の整備計画 拠点整備5案それぞれについて、対応するゾーニング及び整備方針、動線計画を検討し、 その整備イメージ図を各1枚作成するとともに、整備にかかる概算事業費等を算定した。 (4)拠点整備に対応して町内に生じる経済波及効果の推計 拠点整備5案それぞれについて、整備することで町内にどの程度の経済波及効果が新た に生じるかを推計する。定量的に把握不可能な部分があれば、定性的に整理した。 その上で、各案を実施した場合における、町内生産額や雇用者数の増加のほか、町民の 所得や消費の増加、町税の増加等についてそれぞれ整理、寒川町が得る効果を多面的に比 較検討した。 (5)運営主体による事業継続性の検証 拠点整備5案それぞれについて、実際に民間主体が事業運営した場合の中長期的な事業 継続性を検証した。 ただし、現段階では、運営事業者による土地・施設の所有/賃借の別、銀行からの借入 金利等を見通すことが現実的ではないため、収入額や支出額の経年変化を推定して単年度 収支の見通しを作成することで、事業可能性を検討した。 (6)整備主体による投資妥当性の検証 拠点整備5案それぞれについて、町内で生じる経済波及効果が、整備主体による概算投 資額に見合った効果になっているか比較検証した。 (7)観光拠点整備の可能性と具体化に向けた行動計画の整理 拠点整備5案それぞれについて、実際に整備する際の課題・問題点の深刻さ、地域経済 波及効果の大きさ、運営主体による事業継続性、整備主体による投資妥当性の4つの観点 から整理・評価し、事業に取り組むべきか、取り組むとすればどの場合が望ましいのかを 整理した。 また、取り組むことが望ましいとされた場合を対象に、実際に事業に取り組む上での課 題・問題点を関係主体別に整理し、今後どのような検討段階を経て実行に移すべきかを明 示した行動計画(案)を作成した。 (8)報告書の作成 上記内容をとりまとめ、本業務の報告書を作成した。 3 第1章 寒川町観光の課題と拠点整備の必要性整理 寒川町の観光振興における課題を既往資料や統計などに基づき抽出・明確化した上で、 寒川神社周辺での観光拠点整備の必要性について論理構成を整理する。 1.上位・関連計画 以下では、寒川町の観光振興に係る上位計画及び関連計画の概要を整理する。 (1)上位計画 寒川町の地域特性を生かして、魅力ある街づくりを進めるための総合的、計画的な行政 運営の指針となる町の最上位計画である「寒川町総合計画 さむかわ 2020 プラン」 (平成 14 年)に基づく後期基本計画(平成 24 年3月)において、観光拠点創出に関しては次のよ うに整理されている。 基本構想で掲げられた5つの基本目標のうち、「1 快適でにぎわいのあるまちづくり」 に関連する施策「(3)魅力ある市街地の整備を進めます」のうち、「土地利用の適正化」 に関する施策の方向として、区域区分の見直しと適正な土地利用の推進が掲げられている。 また、基本目標「5 魅力ある産業と活力のあるまちづくり」に関連する施策「(1)町 の特性を生かしたふるさとの創造を図ります」のうち、 「商業の振興」に関する施策の方向 の一つに商業活性化の推進が掲げられ、町全体への商業の発展に向けて、購買力の流出を 防ぎ、町内外からの顧客の確保を図る点や、寒川神社の参拝客等の来町者に親しめる商店 街づくりを進めることなどについて言及されている。同時に、「観光の振興」に関する施策 の方向として「観光資源の創出」と「観光推進体制・施設の整備」が位置づけられ、地域 資源を生かした魅力ある観光づくりや商業振興に結びつく観光事業の充実や、寒川神社の 参拝客を観光拠点等へ導くネットワークの整備などが言及されている。 (2)関連計画 ①新 川と文化のまちづくり計画(寒川町) 寒川町では、 「第3次寒川町総合計画」 (昭和 61 年)が定める町の将来像を実現するため の具体的な指針として、平成元年に「川と文化のまちづくり計画」を策定し、相模川沿岸 地域として、水や緑の自然資源の保全・創造や、町の骨格を形成する都市基盤整備を進め てきた。また、町を取り巻く社会的経済環境の変化へ対応しつつ、引き続き町の自然・歴 史文化資源を活用した町の骨格形成に取り組むため、「寒川町総合計画 さむかわ 2020 年 プラン」をふまえ、平成 19 年3月に「新 川と文化のまちづくり計画」を策定した。 同計画における観光拠点創出に関する位置づけは以下の通りであり、総合公園(シンボ ルパーク)に位置づけられた地区は、寒川町観光事業検討協議会で想定している観光拠点 整備候補地を含んでいる。 4 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 2 「新 川と文化のまちづくり計画」における観光拠点創出に関連する位置づけ ■総合公園(シンボルパーク)整備 総合公園は、町役場の北側に広がる区域に、スポーツ、産業、文化などの祭り、イベ ントが開催できるよう、また防災の視点から施設を整備し、町内外の人々の交流の場や 集客の区域、導線として整備を進めます。 ここは、整備された相模原茅ヶ崎線を挟み、既に完成した東ゾーンのさむかわ中央公 園(4.76ha)と一体的に整備を進めます。 ■寒川神社周辺整備 ①表参道(南参道) 寒川神社から大門踏切までを表参道、南からの参道として歴史性やおごそかな雰囲気 のある参道として整備します。 ②東参道 寒川神社から町道田端小動9号線までの町道は、東からの参道として買い物や食事な どを楽しめる門前街として整備、誘導を進めます。 ③西参道 寒川神社から宮山駅までの町道は、西からの参道として目久尻川の自然と調和を図り 整備、誘導します。 ④北参道 寒川神社北の相模原茅ヶ崎線へ至る町道は、北からの参道として神社の杜と沿道の家 並みの調和を図り整備、誘導します。 ■川と文化のシンボルロード整備 整備されたさむかわ中央公園を含む総合公園(シンボルパーク)と川とのふれあい公 園を一体的なものとするため、また相模川への接続道として、景観、緑化に配慮して町 民の憩いの場、コミュニケーションの場、祭りの場などとして活用できるよう整備しま す。 資料)寒川町「新 川と文化のまちづくり計画」 (平成 19 年) 5 図表 3 川と文化のシンボル拠点イメージ図 寒川町観光事業検討 協議会で想定している 観光拠点整備候補地 資料)寒川町「新 川と文化のまちづくり計画」 (平成 19 年) ②寒川神社東参道まちづくり構想案(寒川町商工会) 寒川町商工会に設置した「経営塾委員会」では、町内の買い物利便性の向上や商業活性化 といった課題に対し、県内外から寒川神社に訪れる年間 190 万人の参拝客の快適な参拝と 町内産業の顧客化を図るため、観光、農業、商業の連携事業について、平成 19 年度に「寒 川神社東参道まちづくり構想事業」を検討した。その後、これに基づいた課題の抽出や解決 の方向性について、平成 21 年2月に「寒川神社東参道まちづくり構想調査」を実施した。 同調査では、具体的な整備事業として、①道の駅、②地元商業の参画可能な施設事例、 ③アウトレットモール、及び④農業公園と商業施設、駐車・休憩・情報施設とのコラボレ ーションの4案について、類似施設の事例をふまえて検討を行った結果、平成 19 年度経営 塾委員会による提案である寒川神社参詣者サービス施設を中心とした案(A 案) 、A 案にシ ョッピングモールを加味した案(B 案) 、及び農業公園による自然を満喫する施設案(C 案) の3案を寒川町に提案した。 6 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 4 寒川神社参詣者サービス施設を中心とした案(A 案) 資料)寒川町商工会「寒川神社東参道まちづくり構想調査事業報告書」 (平成 21 年2月) 図表 5 ショッピングモールを主とした案(B 案) 資料)寒川町商工会「寒川神社東参道まちづくり構想調査事業報告書」 (平成 21 年2月) 7 図表 6 農業公園とのコラボレーション案(C 案) 資料)寒川町商工会「寒川神社東参道まちづくり構想調査事業報告書」 (平成 21 年2月) ③寒川町観光振興計画(案) (寒川町観光事業検討委員会) 寒川町観光事業検討委員会では、寒川神社や JA さがみファーマーズマーケットわいわい 市などへの来訪者による地域の経済波及効果の発現や、新たな観光資源の発掘などの必要 性をふまえ、寒川町の観光振興の目指すべき姿や、将来を見据えた観光振興の方向性及び 具体的・戦略的な方策を示す「寒川町観光振興計画」を検討し、平成 23 年 11 月に計画案 を取りまとめた。 計画案における具体的な施策として、「①町の魅力を誇れる人づくり」、 「②観光の拠点を ネットワーク化し、滞在型の観光づくり」、 「③町ならではの新たな観光資源を創出」 、及び 「④寒川の魅力を絶えず外部に広報周知する情報発信」を掲げている。このうち「②観光 の拠点をネットワーク化し、滞在型の観光づくり」の具体的な施策の一つとして、寒川神 社との連携の推進を位置づけ、寒川神社周辺整備や、神社の行事と連携した観光事業につ いての調査研究を進めることとしている。 8 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 2.交通ネットワーク (1)鉄道・主要道路網の整備状況 寒川町は東京都心から 50km、横浜から 30km 圏に位置している。 周辺地域と寒川町を結ぶ主要鉄道網について、JR 相模線は、JR 東海道線茅ヶ崎駅と、 JR 横浜線及び京王電鉄相模原線が乗り入れる橋本駅間を南北に結び、日中は概ね 20 分間 隔で運行され、町内には寒川駅、宮山駅、倉見駅の3駅が設置されている。このほか、神 奈川県や寒川町をはじめとする県中央部の 10 市町及び経済団体等が設立した神奈川県東海 道新幹線新駅設置促進期成同盟会では、新駅誘致地区として寒川町倉見地区への新駅誘致 に取り組んでいる。 高速道路については、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の一部を構成するさがみ縦貫 道路は、海老名 JCT~海老名 IC 間が平成 22 年2月に開通し、海老名 IC~相模原愛川 IC 間が平成 25 年3月、茅ヶ崎 JCT~寒川北 IC 間が平成 25 年4月、平成 27 年3月8日に寒 川北 IC~海老名 JCT 間が開通し、さがみ縦貫道路の全線が開通した。また、さがみ縦貫道 路の隣接区間である圏央道相模原愛川 IC~高尾山 IC 間も平成 26 年6月に開通した。 図表 7 寒川町の位置 資料)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 9 (2)さがみ縦貫道路全線開通に伴う集客力の向上 平成 26 年度中のさがみ縦貫道路の全線開通に伴い、首都圏から寒川町への交通利便性が 大きく改善することが見込まれる。 現状の道路網と全線開通後の自動車2時間圏域を比較すると、全線開通後には、圏央道 を介して中央自動車道や関越自動車道、東名自動車道とのネットワークが強化されること から、青梅市など東京都多摩地域や、川越市、東松山市など埼玉県中央部のほか、山梨県 東部や静岡県の一部地域へ圏域が拡大し、県内外からのより一層の集客が期待される。 10 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 8 さがみ縦貫道路全線開通後の2時間圏域の変化 現状 全線開通後 嵐山町 滑川町 桶川市 東松山市 川島町 坂戸市 川越市 鶴ヶ島市 狭山市 青梅市 日の出町 大月市 上野原市 清水町 注釈)実際の道路の平均運行速度を加味し、寒川町役場からの自動車到達圏域が含まれる市町村を表示。 資料)三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 11 3.人口の動向 (1)定住人口の見通し 寒川町の定住人口の見通しについて、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別 将来推計人口(平成 25 年3月推計) 」をもとに、その特徴を整理した。 総人口は、平成 22 年の 47,672 人をピークに減少傾向が続き、平成 52 年には 40,551 人 と約 15%の減少となる見通しである。 また、 年齢階層別にみると、 年少人口比率は平成 22 年の 13.7%から平成 52 年には 10.7% まで低下し、 同様に生産年齢人口についても、 平成 22 年の 66.0%から平成 52 年には 55.0% まで低下する。一方、老年人口比率は平成 22 年の 20.0%から大幅に上昇し、平成 52 年に は 34.3%に達する見通しである。 以上のように、寒川町の定住人口は、全国及び神奈川県全体と同様に、人口減少と少子 高齢化が急激に進展することが予想される。 図表 9 寒川町の人口の見通し (人) 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 平成22年 平成27年 平成32年 平成37年 平成42年 平成47年 平成52年 65歳以上 9,546 11,845 13,137 13,342 13,365 13,389 13,894 15-64歳 31,480 29,210 27,908 27,089 26,025 24,520 22,323 6,647 6,366 5,756 5,276 4,831 4,544 4,334 0-14歳 資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25(2013)年3月推計) 」に基 づく推計人口より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成。 12 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 10 年齢階層別人口比率の見通し 注釈)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25(2013)年3月推計) 」に基 づき算出。 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月) 13 図表 11 年齢階層別人口の見通し(全国、神奈川県、寒川町) 2025年 2040年 平成37年 平成52年 全国(総人口) 94.2 83.8 全国(0-14歳) 78.6 63.7 全国(15-64歳) 86.7 70.8 全国(65歳以上) 124 131.2 神奈川県(総人口) 99.6 92.2 神奈川県(0-14歳) 82.7 68.7 神奈川県(15-64歳) 92.5 76.4 神奈川県(65歳以上) 133.8 159.5 寒川町(総人口) 95.9 85.1 寒川町(0-14歳) 79.4 65.2 寒川町(15-64歳) 86.1 70.9 寒川町(65歳以上) 139.8 145.5 指数(平成22年=100) 資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25(2013)年3月推計) 」より 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成。 (2)通勤・通学流動の状況 寒川町における通勤・通学の状況は、平成 17 年と平成 22 年ではほぼ同じ構造となって おり、町内従業・通学者のうち、寒川町常住者は約半数を占めている。また、周辺都市と の関係をみると、茅ヶ崎市から寒川町への流入が 4,000 人程度、及び寒川町から茅ヶ崎市 への流出が 3,000 人程度と強い結びつきがみられるほか、藤沢市、平塚市、海老名市、横 浜市とも、1,000~2,000 人程度の流入・流出がみられる一方、寒川町から東京都特別区部 への流出も 1,000 人程度となっている。 14 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 12 通勤・通学流動の状況(平成 17 年・22 年) 通勤・通学 (平成17年) 相模原市 東京都 特別区部 305 311 厚木市 1,170 海老名市 468 1,241 497 985 371 川崎市 297 864 85 寒川町 従業・通学者数23,992人 (うち常住者11,659人) 253 伊勢原市 92 綾瀬市 1,062 194 横浜市 1,820 136 1,550 1,319 平塚市 2,160 4,024 3,176 茅ヶ崎市 1,708 273 鎌倉市 藤沢市 通勤・通学 (平成22年) 相模原市 東京都 特別区部 321 342 厚木市 1,129 海老名市 413 1,215 1,016 491 314 846 275 289 川崎市 92 寒川町 伊勢原市 62 綾瀬市 就業者数22,972人 (うち常住者10,221人) 843 194 横浜市 1,736 130 1,456 1,409 2,964 平塚市 2,095 3,900 茅ヶ崎市 1,648 247 鎌倉市 藤沢市 資料)総務省統計局「国勢調査報告」 (平成 17・22 年)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 15 4.財政 「さむかわ 2020 プラン後期基本計画」 (平成 24 年3月)の財政計画によると、歳入に ついて、町税のうち法人町民税は、平成 20 年度決算の約 13 億円に対し、平成 21 年度決 算は約5億円と約6割減となり、平成 22 年度決算では約8億円に回復したものの、いま だ先行き不透明であると指摘されている。このほか、個人町民税も法人町民税に連動し て徐々に下方に推移しているが、大きな変動は少ないと見込まれている。 歳出については、人件費、扶助費、及び公債費を合わせた義務的経費は、平成 14 年度 決算で約 59 億円であったが、平成 16 年度には公債費の償還ピークにより 68 億円まで増 加し、人件費や町債の抑制により減少傾向にあったが、平成 22 年度に創設された子ども 手当により扶助費が大幅な増額となり、平成 22 年度決算では約 67 億円となった。 図表 13 町税の推移 (千円) 5,000,000 4,500,000 4,000,000 3,500,000 3,000,000 2,500,000 2,000,000 1,500,000 1,000,000 500,000 0 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 町民税 2,903,86 2,936,82 3,249,46 3,464,14 3,594,55 4,153,72 4,236,85 3,366,16 3,323,66 固定資産税 4,604,15 4,464,91 4,456,57 4,396,94 4,311,98 4,392,72 4,494,41 4,408,59 4,342,63 軽自動車税 40,142 41,768 44,570 47,412 50,628 53,908 55,964 58,123 58,998 たばこ税 339,957 340,174 355,764 344,298 346,114 341,207 329,563 315,273 320,477 都市計画税 509,801 493,692 500,820 499,714 480,996 487,272 495,221 493,115 495,722 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 16 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 14 町民税の推移 (千円) 3,500,000 3,000,000 2,500,000 2,000,000 1,500,000 1,000,000 500,000 0 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 うち個人 2,297,54 2,110,29 2,073,36 2,128,86 2,319,72 2,848,85 2,917,77 2,838,45 2,564,66 うち法人 826,533 1,176,09 1,335,27 1,274,83 1,304,86 1,319,08 527,701 758,998 606,328 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 図表 15 一般会計における義務的経費の推移(単位:千円) 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月) 17 財政構造の弾力性を表す経常収支比率は、一般的な適正水準として 70~80%であるが、 寒川町では、平成 14 年度に 88.2%に達したものの、財政健全化に努め、平成 17 年度ま で下降に転じたが、歳出の増加や地方税収の大幅減により、平成 22 年度には 88.7%とな っている。 また、財政力指数は、高いほど財源に余裕があるとされる指標であり、1以上の自治 体には地方交付税が交付されない。寒川町の財政力指数は平成 22 年度決算でも 1.171 と 高い水準を維持している。 5.農業と商業 (1)農業 ①農業・農地を取り巻く現状 寒川町は首都圏の大消費地が近く、野菜や花き、果樹などの都市型農業に有利な立地条 件を有している。 一方、 「2010 年世界農林業センサス」では、総農家数は減少傾向にあり、平成 22 年には 315 戸と昭和 45 年から6割近くの減少となっている。耕地面積も一貫して減少が続き、平 成 22 年には田 76ha、畑 174ha となっている。 販売規模別農家数は、販売額 200 万円未満(販売なし含む)が全体の 54.3%と小規模な 農家が多い。 また、販売農家の経営者の平均年齢は 67.8 歳と、高齢化が進んでいる。 町内農用地区域面積は 1,351,282 ㎡あり、そのうち耕作放棄地は 39,555 ㎡(約3%)存 在している。 都市化の進展による農地の減少と農業就業者の高齢化や後継者不足により、後継者に継 承されない、もしくは散在する小規模農地の遊休化が進む傾向にある。 18 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 16 農業人口・農家数の推移 (戸) (人) 800 4,500 4,000 700 3,500 600 3,000 500 2,500 400 2,000 300 1,500 200 1,000 100 0 500 S45 50 55 60 H2 7 12 17 22 総農家数(戸) 738 609 555 541 409 354 349 341 315 専業農家(戸) 174 117 132 101 110 79 65 70 73 0 総農家人口(人) 4,202 3,296 2,820 2,704 2,012 1,719 1,611 1,408 資料)農林水産省「世界農林業センサス」 (平成 22 年)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 図表 17 耕地面積の推移 (ha) 700 600 500 400 300 200 100 0 S45 50 55 60 H2 7 12 17 22 畑(ha) 302 244 226 217 224 200 191 182 174 田(ha) 271 174 149 137 118 92 87 81 76 資料)農林水産省「世界農林業センサス」 (平成 22 年)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 19 図表 18 寒川町販売農家の就業構造別平均年齢 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月) 図表 19 寒川町の農産物販売金額別農家の割合 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月) 20 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 20 寒川町の農用地の動向 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月) ②近年の取り組み 平成 17 年 12 月に設置された地元農産物直売所である「わいわい市」は、平成 25 年度の 来客数が 513,827 人、売上額は約 8 億 5,609 万円となり、1 人あたりの売上額は約 1,666 円と開業以降の平均客単価(1,500~1,700 円)を維持している。 「わいわい市」への登録者数は 497 名(寒川、藤沢、茅ヶ崎、海老名)で、そのうち 176 21 名は寒川町の農業者となっている。 図表 21 「わいわい市」の来客数と売上額の推移 (万人) (百万円) 70 1,200 60 1,000 50 800 40 600 30 400 20 200 10 0 来客数(人) 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 112,971 486,326 552,405 583,476 601,931 579,554 529,370 516,156 売上額(円) 164,066,820 733,455,093 871,270,850 967,189,882 1,017,349,1 981,600,790 867,702,823 835,874,492 資料)寒川町資料より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング作成 (2)商業 寒川町の小売業事業所数は 194、宿泊業、飲食サービス業事業所数は 170 と近隣市に比 べて少なく、とりわけ旅館・ホテルは2事業所にとどまる。 平成 24 年経済センサス活動調査に基づく小売業の売場面積 1 ㎡あたりの年間販売額は、 神奈川県及び近隣市(平塚市、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、海老名市)の平均額が約 97 万 円に対し、寒川町は 95 万円とほぼ同水準となっている。 人口1人あたりの年間小売販売額では、近隣市の平均額が約 71 万円に対し、寒川町が約 46 万円と、約 35%(約 25 万円分)の購買力が町外に流出していると考えられ、年間で 118 億 6,275 万円と試算される。 神奈川県の商業力(販売額/人口)を1とした場合に寒川町と近隣市を比較すると、寒 川町では「飲食料品小売業」の値は1を超えているものの、それ以外の項目は1を下回り、 近隣市に比べて買い物利便性の低さが課題となっている。 また、 「商業の活性化の推進」の施策に関する町民アンケート調査(総合計画後期基本計 画策定時調査)による現状評価は、 「不十分」と「やや不十分」を合わせると全体の約6割 を占める。 22 0 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 22 小売業及び宿泊業、飲食業に関する集計(平成 24 年経済センサス活動調査) 地域 人口(24.2.1) 神奈川県 小売業、宿泊業、飲食業計 年間商品 従業者数 販売額 (人) (百万円) 事業所数 事業所数 小売業 年間商品 販売額 (人) (百万円) 従業者数 売場面積 宿泊業、飲食サービス業 売上(収入) 従業者数 金額 (人) (百万円) 事業所数 (㎡) 9,057,742 63,484 580,140 8,147,857 36,926 332,700 6,969,920 6,658,959 26,558 247,440 1,177,937 平塚市 260,061 2,246 17,186 225,574 1,322 10,494 199,038 195,767 924 6,692 26,536 鎌倉市 174,071 1,962 14,154 164,322 1,183 7,669 135,972 120,199 779 6,485 28,350 藤沢市 414,647 3,095 30,355 411,503 1,876 17,836 353,891 376,212 1,219 12,519 57,612 茅ヶ崎市 236,222 1,546 11,887 149,317 940 7,352 133,958 144,365 606 4,535 15,359 海老名市 128,115 867 8,549 119,637 486 4,726 105,295 129,008 381 3,823 14,342 47,451 364 2,839 26,086 194 1,541 21,872 23,007 170 1,298 4,214 寒川町 資料)寒川町資料、総務省「平成 24 年経済センサス活動調査」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティン グ作成 図表 23 人口 1 人当たりの年間販売額(単位:万円) 地域 小売業計 織物・衣 各種小売業 服・身の回 り品小売業 飲食料品 小売業 機械器具 小売業 その他の 小売業 宿泊業, 飲 食サービス 業 無店舗 小売業 神奈川県 76.9 9.3 5.5 22.7 13.6 22.6 3.3 13 平塚市 76.5 1.0 4.4 23 22.9 22.2 3 10.2 鎌倉市 78.1 - 5.1 31.9 9 - 1 16.3 藤沢市 85.3 11.6 7.6 25.6 15.2 23.2 2.1 13.9 茅ヶ崎市 56.7 7.7 3.4 17.1 9.4 17.6 1.5 6.5 海老名市 82.2 - 17.2 23.6 11 - 3.3 11.2 寒川町 46.1 - 1.2 23.3 5.2 16.1 0.3 8.9 資料)寒川町資料、総務省「平成 24 年経済センサス活動調査」より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティン グ作成 図表 24 町内購買力の流出額試算 平均購買力 (万円) 寒川の販売額 (万円) 仮定流出額 (万円) 寒川町人口 (人) 71 46 25 47,451 流出額 (万円) 1,186,275 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月) 23 図表 25 寒川町と近隣市町との商業力の比較 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月) 24 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 6.観光 (1)観光入込 平成 25 年の寒川町観光入込客数は 1,867,553 人で、全てが日帰り客である。前年比 0.2% 増となっているが、湘南地域は 11.7%増、神奈川県は 6.4%増である。月別にみると、1月 が 1,011,479 人で年間の 54%と過半数を占めている。 図表 26 寒川町における観光入込客数の月別推移 1,200,000 (人) 1,011,479 1,000,000 800,000 600,000 400,000 242,840 200,000 120,447 74,782 92,025 72,696 46,396 29,423 27,615 37,859 7月 8月 9月 58,253 53,738 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 10月 11月 12月 寒川町観光入込客数 資料)神奈川県「平成 25 年神奈川県入込観光客数調査結果」 (平成 26 年9月)より三菱 UFJ リサーチ& コンサルティング作成 寒川町の主要観光地点・施設・行事別観光客数をみると、掲載されているのは全てが観 光行事で、最も多い「彼岸花まつり」でも 16 千人であり、掲載5行事合計で 37 千人にし か達しない。寒川神社は初詣だけで約 40 万人、年間 180 万人前後の参拝があるとされ、1 月に集中していることもふまえると寒川町の観光入込客 1,868 千人のほとんどが寒川神社 参拝客と想定される。 なお、観光入込客数は経済状況などの影響も大きく、大きな変動がみられることが一般 的であるが、過去5年間の推移をみても 1,825~1,868 千人の間に収まっており、寒川町の 観光入込客数は、年単位でみるとほぼ一定で推移していることが特徴である。 25 図表 27 寒川町と神奈川県における観光入込客数の経年推移 2,000 120 (千人) 1,855 1,848 1,864 1,825 1,868 1,800 115 1,600 110 1,400 105 1,200 1,000 100 101 100 101 100 99 800 95 600 90 400 85 200 0 80 平成21年 平成22年 平成23年 寒川町観光入込客数 平成24年 平成25年 平成21年=100 200,000 120 (千人) 184,594 183,566 180,000 174,186 160,000 173,484 115 151,967 110 140,000 105 120,000 100,000 101 100 100 80,000 95 95 95 60,000 90 40,000 85 20,000 83 0 80 平成21年 平成22年 平成23年 神奈川県観光入込客数 平成24年 平成25年 平成21年=100 資料)神奈川県「平成 25 年神奈川県入込観光客数調査結果」 (平成 26 年9月)より三菱 UFJ リサーチ& コンサルティング作成 26 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 寒川町は人口に比べて観光入込客数が多く、常住人口あたりの観光入込客数をみると、 県平均の 20.3 人に対して、39.3 人と 1.9 倍になっている。 図表 28 寒川町と神奈川県における常住人口と観光入込客数 常住人口(人) 寒川町 神奈川県 観光入込客数(千人) 常住人口1人あたり入込客数(人) 47,521 1,868 39.3 9,081,742 184,594 20.3 注釈)常住人口は、平成 25 年 10 月 1 日現在の推計人口 資料)神奈川県「神奈川県人口統計調査報告(平成 25 年1月から 12 月)」 (平成 26 年2月)および「平成 25 年神奈川県入込観光客数調査結果」 (平成 26 年9月)より三菱 UFJ リサーチ&コンサルティン グ作成 (2)観光消費 神奈川県入込観光客数調査、神奈川県消費動向等調査のいずれにおいても、寒川町にお ける観光消費額は把握されていない。ただし、神奈川県消費動向等調査では、湘南地域の 調査地点3箇所のうち1箇所に寒川神社が選定されている(残る2箇所は江ノ島水族館、 丹沢・大山)こと、寒川町の観光入込客は全て日帰り客であることをふまえ、湘南地域に おける日帰り客の観光消費額を整理する。 湘南地域における日帰り客の観光消費額は1人あたり平均 6,160 円で、県平均 5,092 円 を大きく上回っている。内訳は交通費が 1,549 円、土産代が 1,406 円、飲食費が 2,635 円、 入場料が 544 円、その他が 25 円で、県平均に比べて飲食費が非常に高くなっていることが 特徴である。 交通費もやや大きいが、これは他地域の数値もみると、東京からの距離が遠いほど大き くなる傾向が明白であり、横浜市や川崎市に比べて交通費がかかっているということを意 味しているに過ぎない。また、交通費の多くは、実際には町外で消費されている可能性が 高いことにも留意が必要である。なお、調査地点に有料施設が含まれているため入場料が 発生しているが、寒川神社では入場料は不要であり、この点にも留意が必要である。町内 での消費可能性が比較的高い土産代と飲食費の合計は1人あたり 4,041 円となる。 図表 29 湘南地域と神奈川県における日帰り客の観光消費額 (単位:円) 観光消費額 うち交通費 うち土産代 うち飲食費 うち入場料 うちその他 湘南地域 6,160 1,549 1,406 2,635 544 25 神奈川県 5,092 1,227 1,282 1,784 741 57 資料)神奈川県「平成 25 年神奈川県消費動向等調査結果」 (平成 26 年7月)より三菱 UFJ リサーチ&コ ンサルティング作成 なお、平成 24 年の同調査では、湘南地域における日帰り客の観光消費額は1人あたり平 均 4,001 円であり、うち飲食費は 1,230 円と県平均 1,596 円よりも低かった。土産代と飲 食費の合計は1人あたり 2,132 円である。 27 (3)中間報告にみる問題意識 寒川町で整理された「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクト チーム中間報告書」 (平成 26 年3月)では、観光面に対する問題意識として「渋滞や駐車 場不足」 「観光対策に対して不十分と感じる住民の意向把握」「地域資源の観光化の不足と それによる経済発展の仕組みの欠落」「来訪者の意向把握」が挙げられている。 図表 30 中間報告にみられる観光面に対する問題意識 現状の来訪者の移動手段は自家用車等が中心となっており、約 105 万人の来訪がある 1 月は、寒川 神社周辺の渋滞や駐車場不足が発生している。 「観光対策の推進」の施策に関する町民アンケート調査(総合計画後期基本計画策定時調査)による 現状評価は、 「わからない」35.9%、 「不十分」31.0%、 「やや不十分」17.8%、 「やや十分」9.2%、 「十分」1.8%となっており、 「不十分」と「やや不十分」と回答した割合が約 5 割を占めており、 不十分と感じる住民の意向の把握と対応が必要。 年間約 185 万人が訪れる寒川神社など歴史的な資源があるが、これらの資源が観光資源として十分 に生かされておらず、来訪者の快適な参拝と町内産業の顧客化を図ることなど「観光」、 「商業」 、 「農 業」の分野が連携した経済発展の仕組みが求められている。(寒川町商工会経営塾委員会 平成 19 年度「寒川神社東参道まちづくり構想事業」 ) 寒川町(寒川神社)に来訪する人たちを対象とした調査等の実績がなく、顧客となる来訪者のニーズ や意向の把握が必要。 資料)寒川町「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム中間報告書」 (平成 26 年3月)より抜粋 28 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 第2章 候補地の課題整理と拠点整備案 1.拠点整備候補地の土地利用規制に係る課題の整理 (1)土地利用の現況 候補地の大部分が農地であるが、北側および北西側には住宅、業務施設(運輸業、建設 業) 、農業施設用地など農地以外の用途に用いられている土地が見られる。また、敷地南東 の端部にはJAさがみが設置している大型直売所「わいわい市寒川店」が立地している。 図表 31 候補地の現況用途の概況 現況用途 面積(概数) 大型直売所用地 約 0.3ha 農地 約 5.7ha その他 約 5.4ha 合計 約 11.4ha 29 (2)土地利用規制の状況 候補地はそのすべてが都市計画法にもとづく市街化調整区域であり、またそのすべてが 農業振興地域の整備に関する法律(以下、農振法)にもとづき神奈川県農業振興地域整備 基本方針において農業振興地域に指定されており、さらに北側および北西側の住宅用、業 務用に用いられている土地を除き、過半が同法にもとづく農用地区域に指定されている。 また、現況農地として利用されている土地については、これを他の用途に用いる場合は農 地転用許可制度にそった許可を得ることが必要となる。 これらの規定により、既に住宅用、業務用等に用いられている部分を除き、候補地を一 般的な業務用施設の用地として活用することには厳しい制限が課せられている。 図表 32 計画候補地の土地利用規制の状況 30 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ①都市計画法にもとづく制限 ■開発行為の制限の原則 市街化調整区域は、都市計画法において市街化を抑制すべき地域と位置づけられ、特定 の要件に合致する場合をのぞき原則として開発行為は禁止されている。開発行為は土地の 区画形質の変更(地目の変更や区画割りの変更、造成、整地など)を行う行為を指してい る。現状、候補地の大部分は農地であるため、これを建築物の敷地として利用することは 開発行為に該当する。また、施設整備に伴い区画を変更する場合や切盛土、整地などの造 成工事を行うことも含め、今回想定されている新たな観光拠点整備はその計画内容を問わ ず、ほとんどの場合開発行為として都市計画法の制限を受けることとなると考えられる。 具体的には、市街化調整区域において例外的に開発許可が得られる可能性があるのは図 表 33 に示されるようなケースであるが、前提として当該開発行為が地域の発展や町民の生 活を支える上で必要不可欠であるということが認められる必要がある。 ■新たな観光拠点整備が特例として開発許可を得ることができる可能性 一般的に観光資源は、自然資源をはじめとして市街化調整区域に立地していることも少 なくないことから、こうしたケースを想定して市街化調整区域において「観光資源の有効 な利用上必要な建築物等」を開発許可が得られる可能性のあるものの一つとして位置づけ られている。ただし、神奈川県においては、その具体的な基準として図表 34 に示す内容が 定められており、その観光資源が多数人が集中する等観光価値を有するものである場合に 限り、かつ当該観光資源の鑑賞のため直接必要な施設(展望台等)や観光価値を維持する ために必要な施設、宿泊又は休憩施設などに限定されている。さらに、当該土地が農地で ある時は農地転用の許可を受けられるものであることが条件とされており、農地法の制限 をクリアすることが必須条件となる。 なお、観光拠点以外にも、現状においても大型直売所が設置されている通り、農林漁業 の用に供する建築物は開発許可が得られる可能性があるものの一つとして位置づけられて おり、新たな観光拠点の機能としてこうした用途を導入することは可能と考えられる。 図表 33 市街化調整区域において開発許可が得られる可能性のある主な開発行為 *農林漁業の用に供する建築物及び農林漁業従事者の住宅のための開発行為 *公益上必要な建築物で周辺地域の適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全に支障の ないもの *観光資源の有効な利用上必要な建築物等 *農産物、林産物、水産物の処理、貯蔵、加工のための建築物等(当該地域の生産物に 関するものに限る) *沿道サービス施設 注釈)寒川町における新たな観光拠点整備が明らかに該当しないものは除外した。 上記に合致するものは開発許可申請の対象にはなるが、直ちに許可されるということではなく、許 可が得られるか否かは個別に厳しく判断される 資料)神奈川県県土整備局建築住宅部建築指導課「都市計画法に基づく開発許可関係事務の手引き」より 作成 31 図表 34 神奈川県における市街化調整区域での「観光資源の有効な利用上必要な建築物等」 に係る開発許可の基準 以下のすべてに該当することが必要 1 利用対象となる観光資源が温泉又は神社、仏閣、史跡若しくは海水浴場等で多数人が 集中する等観光価値を有するものであること。 2 申請建築物が当該観光資源の鑑賞のため直接必要な施設(展望台等)、観光価値を維 持するために必要な施設、宿泊又は休憩施設その他これらに類する施設であること。 3 申請建築物が市又は町の観光開発計画に基づき定められた「取扱基準」に適合するも のであること。 4 申請建築物が周辺の自然環境と調和するものであること。 5 当該土地が農地であるときは、農地転用の許可を受けられるものであること。 6 平成 11 年6月1日以前に定められた「取扱基準」については、当該市長が新たな「取 扱基準」を定めるまでの期間に限り、当該市長が定めた「取扱基準」として取扱うこ とができるものとする。 資料)神奈川県県土整備局建築住宅部建築指導課「都市計画法に基づく開発許可関係事務の手引き」より 抜粋 ②農振法にもとづく制限 農業振興地域は、農振法第 6 条において「国土資源の合理的な利用の見地からみて、そ の地域内にある土地の農業上の利用の高度化を図ることが相当であると認められる」と定 義されている地域であり、法にもとづく農業振興地域整備計画において農用地区域と定め られた土地においては、農業に直接寄与する用途以外の土地利用は厳しく制限されている。 具体的には、開発行為を行う際には神奈川県知事の許可が必要であるとともに、公益の 観点から特別に認められる場合を除き、農業またはこれに関連する目的以外は許可されな い。 図表 35 農振法農用地区域において開発許可が認められない行為(法 15 条の二の4) 以下に該当する開発行為は許可されない 一当該開発行為により当該開発行為に係る土地を農用地等として利用することが困難と なるため、農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあること。 二当該開発行為により当該開発行為に係る土地の周辺の農用地等において土砂の流出又 は崩壊その他の耕作又は養畜の業務に著しい支障を及ぼす災害を発生させるおそれが あること。 三当該開発行為により当該開発行為に係る土地の周辺の農用地等に係る農業用排水施設 の有する機能に著しい支障を及ぼすおそれがあること。 32 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ③農地法にもとづく農地転用に係る制限 現況農地として用いられている土地は、農地法により、農業以外の用途に転用する際に は、原則として国または都道府県知事の許可を得ることが必要である。 またその際、優良な農地の転用を厳しく制限することとされており、具体的には、候補 地の大部分が指定されている農振法における農用地区域内の農地は原則として他用途への 転用は許可されないとされている。 図表 36 農地転用の許可権者と除外規定(農地法第4条、第5条) 許可権者 4ha 許可不要の場合 都道府県知事 以下 国、都道府県が転用する場合(学校、社会福祉施設、病院、庁 舎又は宿舎の用に供するために転用する場合を除く。) 市町村が道路、河川等土地収用法対象事業の用に供するために 4ha 超 農林水産大臣(地 転用する場合(学校、社会福祉施設、病院、市役所、特別区の 域整備法に基づく 区役所又は町村役場の用に供するために転用する場合を除く。) 場合を除く) 等 図表 37 農地転用許可の方針(農地法第4条、第5条) 区分 営農条件、市街地化の状況 許可の方針 農用地区 市町村が定める農業振興地域整備計画において 原則不許可(農振法第 10 条第 域内農地 農用地区域とされた区域内の農地 3 項の農用地利用計画におい て指定された用途の場合等に 許可) 甲種農地 第 1 種農地の条件を満たす農地であって、市街 原則不許可(土地収用法第 26 化調整区域内の土地改良事業等の対象となった 条の告示に係る事業の場合等 農地(8 年以内)等特に良好な営農条件を備え に許可) ている農地 第 1 種農 10ha 以上の規模の一団の農地、土地改良事業 原則不許可(土地収用法対象事 地 等の対象となった農地等良好な営農条件を備え 業の用に供する場合等に許可) ている農地 第 2 種農 鉄道の駅が 500m 以内にある等市街地化が見 周辺の他の土地に立地するこ 地 込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 とができない場合等は許可 第 3 種農 鉄道の駅が 300m 以内にある等の市街地の区 原則許可 地 域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 33 (3)土地利用規制に係る課題と対応の方向性 ■新たな観光拠点整備における土地利用の基本的方向性 候補地の開発の基本的な方向性として、寒川神社を核とした新たな観光拠点に期待され る機能をふまえると、大規模な集客を伴う施設であり、また、寒川神社への参拝客を中心 とした地域に来訪する観光客の、町内での滞留や回遊性を向上することが期待されている ことから、情報提供だけでなく物販や飲食などの商業的な土地利用の導入が想定される。 また、こうした機能整備の一環として農業体験や直売所など地域の農業振興に寄与する観 光農園として活用することも想定される。 ■土地利用規制への対応の方向性 土地利用規制において候補地の大部分を占める農地について、他用途への転用とそのた めの開発を厳しく制限する規制が係っていることから、新たな観光拠点に必要となる商業 的な機能をどのように整備するかが検討のポイントとなる。 市街化調整区域における開発行為に対する制限に対して、新たな観光拠点としての整備 は、 「観光資源の有効な利用上必要な建築物等」としてであれば開発許可が得られる可能性 があるが、神奈川県の市街化調整区域での「観光資源の有効な利用上必要な建築物等」に 係る開発許可の基準の第5項をふまえると、候補地において現状農地である土地について は、転用許可を得ることが必要となるが、そのすべてが農振法における農用地区域に指定 されており、その転用は原則許可されないことから現状農地となっている候補地に新たに 商業的機能を導入することは原則として不可能である。 以上から、現行の土地利用規制を前提とすれば、現状既に宅地(業務用地等)として利 用されている候補地北部部分に商業的機能を集中し、他の部分については地域の農業振興 にも寄与する観光農園的な土地利用とすることが新たな観光拠点整備の前提条件となると いえる。 なお、こうした前提条件の中では、商業的機能の整備が不十分で新たな観光拠点に期待 される機能が十分に発揮されないと判断される場合、新たな観光拠点が地域の発展に必要 不可欠であり、 同時に地元農産品の PR などを通じて地域農業振興にも大きく寄与するなど、 新たな観光拠点の公益性、必要性を明確にし、現行の土地利用の見直しを関係機関に働き かけることも検討が必要と考えられる。 34 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 2.拠点整備案 (1)整備の基本的方針 これまでに整理した寒川町観光の課題と拠点整備に期待される機能をふまえ、拠点整備 の基本的方針を以下の通り設定する。 <拠点整備の基本方針> ①寒川神社の参拝客を対象とした商業・サービス機能の導入による滞留性の向上 ②都市公園の整備など魅力的な観光・交流機能の整備による観光需要の通年化の促進 ③駐車場及び道路の整備による交通面での課題の解消 ①寒川神社の参拝客を対象とした商業・サービス機能の導入による滞留性の向上 寒川神社は、寒川町の観光入込客数の大部分を占める参拝客を有する町内最大の集客拠 点である。しかし、寒川神社周辺に、この参拝客を対象とした商業・サービス機能の集積 は極めて乏しい状況にあり、このために参拝客の観光行動も、町内での滞在時間が非常に 短く、参拝客がもたらす経済効果は拡大の余地が大きい状況にあると考えられる。 こうした観点から、拠点整備にあたっては、寒川神社参拝の利便性と魅力を高め、参拝 客の一層の増大を図るとともに、町内での滞留性の向上を図ることを目指して、参拝客の ニーズに応える商業サービス機能を隣接するエリアに整備することとする。 ②都市公園の整備など魅力的な観光・交流拠点の整備による観光需要の通年化の促進 上述の通り寒川神社が寒川町の観光入り込み客数の大部分を占めるため、その集客は初 詣を筆頭に神社において来訪目的となる行事がある特定の時期に極端に偏在している。こ のことが、寒川神社周辺、ひいては寒川町全体において商業・サービス機能の十分な集積 が形成されない大きな要因となっている。このため、寒川神社を補完する、独自に通年型 の集客力を発揮することのできる新たな観光拠点の整備が強く望まれる状況にある。現在 拠点整備地区内に立地しているわいわい市は、町内では数少ない、通年型の集客力を有す る施設といえるが、その集客規模は大きいとは言い難く、こうした施設・機能を抜本的に 強化することが必要と考えられる。 こうした観点から、拠点整備にあたっては、都市公園や観光農園、伊勢神宮のおかげ横 丁や屋台村のようなテーマ性のある商業施設群など、それ自体が観光の目的地となりうる 集客力のある通年型の観光・交流機能を整備することとする。 ③駐車場及び道路の整備による交通面での課題の解消 寒川神社においては、初詣に代表される来訪のピーク需要に対して、十分な駐車場の確 保が困難な状況が指摘されている。また、こうした時期に周辺道路における渋滞の発生や 歩行者空間の安全性、快適性など道路交通環境にも課題が多いとされている。 こうした観点から、拠点整備にあたっては、団体客用の大型バスへの対応も含め、参拝 客の需要に対応した十分な駐車場の整備に留意するとともに、敷地周辺の道路において、 35 拠点整備とあわせて、渋滞緩和に寄与する右折レーンの確保や参拝客の歩行の安全性、快 適性向上に向けた歩道の整備や、拠点整備敷地内の参拝客の通路空間(参道)の整備など に留意することとする。 (2)道路整備に係る基本的な考え方 このたびの観光拠点整備においては、都市公園との併設が必須となっている。また、候 補地周辺は現状でも朝夕に渋滞が見られる上、寒川神社への参拝客が多い時期となると、 大渋滞となる地域でもある。観光拠点の整備によって、一層の来町者増が見込まれること から、あわせて候補地外周道路の拡幅、歩道整備等を行うことが求められる。 1)西側外周道路(現参道) 西側外周道路(現参道)は道幅が狭いなか、東側の県道が渋滞することもあって、大型 車が速度を上げて通過することが見られる。あわせて一部区間で歩道がなくなる、歩道内 に段差があるなど、寒川神社参拝のための歩行者にとって危険な状況にある。そのため、 候補地側に幅 2m 程度の歩道を新規に設置することで、歩行者の安全性を確保し、参拝の快 適性を高める。 2)南側外周道路 南側外周道路は寒川病院、わいわい市等、集客施設のアクセス道路として機能しており、 その出入りに伴って渋滞が発生しやすい構造にある。そのため、東行き、西行きともに渋 滞を減少させるため、東側外周道路との交差点(さむかわ中央公園) 、西側外周道路(いこ いの広場入口)との交差点のいずれにおいても、右折レーンを新設する。 また、これらの施設への出入りの際には歩道を横断することから、徒歩で寒川神社周辺 と中心市街地方面を行き来する観光客にとっては危険な状況となりやすい。そのため、候 補地側に幅 2m 程度の歩道を新規に設置することで、歩行者の安全性を確保し、参拝の快適 性を高める。 3)北側外周道路 北側外周道路は寒川神社への直接的なアクセス道路であるが、歩道の整備が不十分なこ とから、徒歩での寒川神社への訪問は危険な状況となりやすい。そのため、候補地側に幅 2m 程度の歩道を新規に設置することで、歩行者の安全性を確保し、参拝の快適性を高める。 また、東行きについては東側外周道路との交差点(健康センター前)において右折待ち の渋滞が発生することから、右折レーンを新設する。 4)東側外周道路(県道) 候補地外周道路のうち、東側は県道であり、一定程度の整備がなされていることもあっ て、ここでの拡幅等の改良においては検討の対象外とする。 36 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 (3)拠点整備案の概要 (1) 、(2)に示した基本的な方針やポイントをふまえた上で、拠点整備に求められる 機能や役割のうちどの点を重視するかによって、タイプの異なる複数の拠点整備案を提案 する。 拠点整備案の各案の基本コンセプトと、整備方針や土地利用規制などにおける主要な個 別論点への対応の考え方は以下の表の通りである。 図表 38 拠点整備案の概要 案 基本コンセプト (重視する点) 個別論点への対応 方針①②への対応 方針③への対応(駐 土地利用規制への (商業、レクリエーション 車場について) 対応 比較的大規模な駐 農地転用が必要で 車場を整備する あり実現には課題 機能について) A 駐車場確保とそこから の円滑な動線整備を優 ・商業施設は比較的小規模 にとどめる 先 A’ 観光農園を含めバラン スのとれた機能を整備 が大きい ・中規模の商業施設を整備 する 中規模の駐車場を 農地転用が必要で 整備する あり実現には課題 ・観光農園を整備する B C 伊勢神宮のおかげ横丁 ・可能な限り大規模な商業 等のような神社と親和 施設を整備し、それ自体 性のある雰囲気の商店 を観光資源として機能 街を整備 させる 現行土地利用規制の枠 内での整備 ・比較的大規模な商業施設 を整備する が大きい 比較的大規模な駐 農地転用が必要で 車場を整備する あり実現には課題 が大きい 駐車場は比較的小 農地転用が不要 規模にとどめる ・可能な限り大規模な観光 農園を整備し、商業施設 と合わせ、それ自体を観 光資源として機能させ る D 道の駅をイメージし、交 通拠点、情報発信拠点と ・比較的大規模な商業施設 を整備する。 して整備 駐車場を最大限確 農地転用が必要で 保する あり実現には課題 が大きい 37 (4)各拠点整備案の内容 ①案A:参拝者サービス施設を中心とした案 1)概要 案Aは昨年度までの検討において取り上げられている案である。参拝者向けの駐車場や 歩きやすい歩道をクランク状に広く確保し、参道沿いに商店、商店の外側に都市公園と駐 車場を配置する。 2)諸機能に必要な敷地面積 この場合の主要な機能別敷地面積は下記の通りと想定した。 図表 39 案Aの想定敷地面積 用途 面積(概数) 大型直売所 約 0.3ha 商業施設 約 0.7ha 駐車場 約 2.0ha 緑地 約 0.4ha 参道・道路 約 1.0ha 都市公園 約 1.1ha 合計 約 5.5ha 3)当該案のメリット、デメリット 本案のメリット、デメリットは下記の通りである。 a) メリット 参道が広く確保されており、参詣者は歩きやすい。 神社からみて参道正面に都市公園が整備され、参詣後の休憩等に活用されやすい。 構造がシンプルであるため、整備面積が少なく、費用面や調整面で優位である。 b) デメリット 農地の転用許可が必要であるが、現行の土地利用規制では原則として許可されないた め、実現は難しい。 店舗と駐車場の位置関係からは、自家用車利用参詣者の多くは、参道を歩かず(店舗 を利用せず)に駐車場に向かう可能性がある。 参道の起点が寒川病院前となっているため、神社参拝後、参道に沿って歩いた参詣者 はそこでどうすればよいかわからなくなる可能性がある。案内板等での誘導が必要と 考えられる。 38 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 40 案Aのイメージ図 39 ②案A’:参拝者サービス施設を中心とした案(その2) 1)概要 案A’は案Aを一部修正したものである。大型直売所の駐車場を全体の駐車場に統合す ることとし、飲食施設を併設する。また、南西側駐車場は廃して観光農園とする一方、そ れにより減少する駐車場面積については、東側駐車場を北側に拡張することで確保する。 さらに、当該駐車場拡張部分の西側、計画対象地の北西部に宿泊施設、温泉施設、屋台村 などの商業施設群を設置する。 2)諸機能に必要な敷地面積 この場合の主要な機能別敷地面積は下記の通りと想定した。 図表 41 案A’の想定敷地面積 用途 面積(概数) 大型直売所 約 0.2ha 商業施設(宿泊・温泉含む) 約 1.4ha 駐車場 約 1.6ha 緑地 約 0.4ha 観光農園 約 1.0ha 参道・道路 約 1.0ha 都市公園 約 1.1ha 合計 約 6.7ha 3)当該案のメリット、デメリット 本案のメリット、デメリットは下記の通りである。 a) メリット 参道が広く確保されており、参詣者は歩きやすい。 神社からみて参道正面に都市公園が整備され、参詣後の休憩等に活用されやすい。 構造がシンプルであるため、整備面積が少なく、費用面や調整面で優位である。 b) デメリット 農地の転用許可が必要であるが、現行の土地利用規制では原則として許可されないた め、実現は難しい。 駐車場の一部を他施設に転用するため、駐車場面積が他案に比べて狭い。 店舗と駐車場の位置関係からは、自家用車利用参詣者の多くは、参道を歩かず(店舗 を利用せず)に駐車場に向かう可能性がある。 参道の起点が寒川病院前となっているため、神社参拝後、参道に沿って歩いた参詣者 はそこでどうすればよいかわからなくなる可能性がある。案内板等での誘導が必要と 考えられる。 40 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 42 案A’のイメージ図 41 ③案B:商店街を中心とした案 1)概要 案Bは伊勢神宮のおかげ横丁等をイメージした、商店街を中心としたものである。商店 街を歩かせることが必要なため、参道は主参道だけでなく道幅の狭い副参道も整備し、歩 き回ることが可能な構造とする。また、主参道は中心市街地方面と神社前を結ぶようにす ることで、自然に中心市街地方面へ歩くことにつながるよう配慮する。そのため、わいわ い市は候補地南西端へと移転させ、主参道の起点は候補地南東角(さむかわ中央公園交差 点)とする。 2)諸機能に必要な敷地面積 この場合の主要な機能別敷地面積は下記の通りと想定した。 図表 43 案Bの想定敷地面積 用途 面積(概数) 大型直売所 約 0.3ha 商業施設 約 2.1ha 駐車場 約 1.8ha 緑地 約 0.4ha 参道・道路 約 1.5ha 都市公園 約 0.8ha 合計 約 6.9ha 3)当該案のメリット、デメリット 本案のメリット、デメリットは下記の通りである。 a) メリット 商業施設を大量に配置することが可能である。 参道の起点が中心市街地方向となっているため、そのまま中心市街地に向かう徒歩客 を誘発することが可能である。 b) デメリット 農地の転用許可が必要であるが、現行の土地利用規制では原則として許可されないた め、実現は難しい。 店舗と駐車場の位置関係からは、自家用車利用参詣者の多くは、参道を歩かず(店舗 を利用せず)に駐車場に向かう可能性がある。 わいわい市の移転を伴うため、整備費用が大きくなる。 42 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 44 案Bのイメージ図 43 ④案C:観光農園を中心とした案 1)概要 案Cは、候補地の過半が農地ということをふまえ、観光農園を中心としたものである。 参道は寒川病院前から寒川神社へとまっすぐ観光農園内を通過するかたちとし、東側およ び西側の外周道路へと途中から抜けられるようにする。農地部分をすべて観光農園とする ため、駐車場は神社側の飛び地に整備することとし、店舗は神社周辺と現参道沿いに配置 する。 2)諸機能に必要な敷地面積 この場合の主要な機能別の敷地面積は下記の通りと想定した。 図表 45 案Cの想定敷地面積 用途 面積(概数) 大型直売所 約 0.3ha 商業施設 約 1.7ha 駐車場 約 0.8ha 緑地 約 0.1ha 観光農園 約 5.3ha 参道・道路 約 1.0ha 都市公園 約 0.3ha 合計 約 9.5ha 3)当該案のメリット、デメリット 本案のメリット、デメリットは下記の通りである。 a) メリット 農地の転用許可が不要であり、現行の土地利用規制のなかでの実現性が高い。 そのものが新しい観光資源として機能する上、既存施設(わいわい市)との親和性が 高い。 b) デメリット 駐車場の位置からは、自家用車利用参詣者の多くは、観光農園には立ち寄らない可能 性が高い。 商店街は拠点とは別の位置に配置されるため、人の流れはそちらに向かう可能性が高 く、わいわい市との相乗効果が発生しにくい。 44 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 46 案Cのイメージ図 45 ⑤案D:交通・情報発信拠点を中心とした案 1)概要 案Dは道の駅をイメージし、交通拠点、情報発信拠点の整備を中心としたものである。 参拝後に最初に通過する神社出口に近い場所に情報発信拠点(観光案内所およびトイレ等) を設置し、その正面にバス、タクシーの公共交通機関のターミナルを配置する。駐車場は 南側に配置することで、わいわい市の駐車場と一体的に利用可能とする。駐車場から神社 入口にまっすぐ伸びる主参道のほか、公共交通ターミナルに沿った脇参道を整備し、参道 沿いに商店を配置する。 2)諸機能に必要な敷地面積 この場合の主要な機能別敷地面積は下記の通りと想定した。 図表 47 案Dの想定敷地面積 用途 面積(概数) 大型直売所 約 0.3ha 商業施設 約 1.7ha 駐車場 約 2.8ha 緑地 約 0.8ha 参道・道路 約 1.0ha 都市公園 約 0.6ha 合計 約 7.2ha 3)当該案のメリット、デメリット 本案のメリット、デメリットは下記の通りである。 a) メリット 商業施設を大量に配置することが可能である。 参道の起点が駐車場となっているため、自家用車利用客の商店利用を誘発することが 可能である。 わいわい市と駐車場を共用するため、繁閑へ対応しやすい。 バス等による移動で中心市街地との連携が可能である。 b) デメリット 農地の転用許可が必要であるが、現行の土地利用規制では原則として許可されないた め、実現は難しい。 交通ターミナルの整備にあたっては、交通事業者との調整が必要である。 46 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 48 案Dのイメージ図 47 3.拠点整備地区を核とした寒川神社周辺地域全体の発展の方向性 (1)拠点整備地区と寒川駅北口地区との連携の可能性の検討 拠点整備のインパクトを寒川町全体に波及させるためには、町の交通の要衝であり、商 業サービス機能の中心である寒川駅北口地区との効果的な連携を図ることが期待される。 このため、寒川駅北口地区の現状をふまえ、その特性や課題に対応した連携を図る必要が ある。その基本的考え方は以下の通りである。 ①寒川駅北口の現状と課題 寒川駅北口地区は、寒川駅北口地区土地区画整理事業による整備が進展し、整然とした 街並みが形成されている。拠点整備との連携が想定される商業・サービス機能については、 飲食、小売、生活関連サービス業及びオフィスなどが立地しているが、商業出店地域とし ては十分な商業施設出店には至っておらず、駐車場としての土地利用も散見されるなど、 質、量ともに抱負な商業サービス機能が集積しているとは言い難い状況にある。こうした 状況から、町全体の売場面積あたり販売額も低い水準にあり、町民の購買力が周辺自治体 の商業機能に流出していると考えられる。 こうした状況を改善するため、本町の交流拠点として商業出店地域としての魅力の創出 及び商業施設の立地促進を図ることが課題となっている。 ②連携の可能性 寒川駅の北側に位置する拠点整備地区において、寒川神社と一体となった、集客・交流 の拠点となる機能が整備されることで、公共交通利用による寒川神社及び拠点地区への来 訪客による寒川駅の利用拡大が期待できる。また、拠点整備地区に整備される駐車場利用 者の町内での滞留、回遊が促進されれば、寒川駅北口地区への来訪も期待できる。こうし たインパクトを捉えて、寒川駅北口地域においても、来訪客増による活性化を図ることが 可能となると考えられる。 こうした可能性を活性化に確実に結びつけるためには、既存店舗における魅力の向上や、 新たな商業施設の立地促進などによる集積度の向上など、来訪客のニーズを的確に捉えた 商業・サービス機能の魅力向上を図ることが必要である。 ③拠点整備に求められる機能 寒川駅北口との連携による拠点整備の効果の拡大を図るためには、寒川神社と一体とな って、拠点整備の効果を来訪客数の増大に確実に結びつけることが必要である。また、拠 点整備による導入施設、機能と寒川駅北口商店会など北口地区の商業者と連携した、イベ ントやキャンペーンなどに積極的に取り組み、両者一体となって来訪者の町内での滞留性、 回遊性の向上を図ることが必要である。さらに、拠点整備地区と寒川駅北口地区を結ぶ動 線を来訪者に明確に示すと共に、この歩行空間をソフト的な対応を中心に可能な限り魅力 的で快適なものとすることが求められる。 48 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 (2)拠点整備を活用した地域全体の発展の方向性 拠点整備を中心とした寒川町の地域全体の発展の方向性を検討する。 ここまでに検討、整理した拠点整備の基本方針をふまえつつ、寒川神社と地域のもう一 つの核である寒川駅との連携をふまえた、地域全体のエリア別の発展の方向性と、各拠点 間の動線など相互連携のあり方は以下の通りと考えられる。 ■拠点整備によって一体化する観光・レクリエーションゾーンの形成 既存の観光・レクリエーションゾーンである寒川神社と寒川中央公園に加えて、その両 者を繋ぐ位置にある拠点整備地区における交流拠点機能の整備を図ることで、3つの拠点 が一体化した観光・レクリエーションゾーンが形成されることとなる。このゾーンの一体 性を創出するため、相互の歩行者のアクセスルートを円滑かつ魅力的な空間とするほか、 3拠点が連携したPRやイベントなど一体性を演出する取り組みを行うことが想定される。 ■拠点地区を経由して寒川駅と寒川神社を結ぶ交流軸の形成 *交流軸として整備すべきルートの概要と意義 寒川駅と拠点整備地区は都市計画道路「寒川下寺尾線」で結ばれており、さらにここか ら拠点地区内の歩行空間を通って寒川神社に至るルートは、町内の観光振興において最も 重視すべき動線であり、交流の軸として位置づけられる。 この軸を魅力的で利便性の高いものとすることができれば、それ自体が観光資源として 観光入込客数増加や通年化、滞留性の向上による観光関連産業、商業・サービス業の集積 を促進し、更なる魅力向上を図ることにより、寒川町全体の観光振興に寄与する。また、 利便性と魅力の高いアクセスルートの形成により寒川駅を利用した公共交通による寒川神 社への来訪増が促進され、駐車場施設の不足や交通渋滞など一層の来訪増の妨げとなって いた交通面での課題の緩和にも寄与する。 *寒川駅から拠点整備地区南東(現わいわい市)までの都市計画道路「寒川下寺尾線」歩 行空間の整備 上記の軸を形成するため、拠点整備による寒川神社への歩行空間の整備とあわせて、寒 川駅北口から拠点整備地区を結ぶ都市計画道路「寒川下寺尾線」の歩行空間について、景 観面の改善や緑の創出、観光案内等利用者の利便や知的好奇心に応える情報提供機能の整 備、休憩スペースの設置など、安全、快適で魅力のある空間として整備する。このルート の距離は概ね 800m程度であり、楽しみながら歩くことのできる空間とすることができれば、 両拠点間の往来の活性化を図ることが十分可能である。 *都市計画道路「寒川下寺尾線」への商業・サービス機能の集積 上記の整備により都市計画道路「寒川下寺尾線」の歩行者の通行量が増大することで、 沿道空間の商業出店地域としての魅力が高まることが期待できる。こうしたポテンシャル の向上を捉えて、魅力的な商業・サービス機能の集積を促進することで、交流軸のさらな る機能の向上とそれによる寒川町全体の観光振興が図られ、これが沿道におけるさらなる 商業・サービス機能の集積に繋がる好循環が期待できる。 49 図表 49 拠点整備地区周辺地域の発展の方向性(案) 50 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 第3章 整備によって町内に生じる経済波及効果の測定 第2章で取り上げた拠点整備案5案それぞれについて、実際に整備することで、新たに どの程度の経済波及効果が町内に生じるかを推計する。 町内生産額や雇用者数の増加のほか、町民の所得や消費の増加、町税の増加等について それぞれ整理することで、寒川町が得る効果を多面的に比較検討する。 1.経済波及効果測定の枠組 経済波及効果の推計にあたっては、しばしば産業連関表を用いた計算が行われており、 一般にも知られているが、寒川町には独自の産業連関表がなく、本業務において最も重要 な情報である「町内に発生する経済効果」を論じることができない。そのため、まずは寒 川町に生じる経済波及効果を測定するための枠組について検討する。 (1)経済波及効果とは 観光客に対して寒川町内で提供される商品やサービスには、原価、人件費、販売管理費 等の経費がかかっており、購入金額から経費を差し引いたものが、一般に利益と考えられ る。これは「直接効果」と呼ばれ、観光客に直接相対する業種(観光産業)で発生する効 果である。 観光産業の多くは、販売している商品や素材の多くを他の企業から仕入れているため、 これらの仕入れ先に対しても間接的に経済効果が及ぶ。このような中間需要による波及効 果は「間接効果(1次波及効果)」と呼ばれる。また、観光産業の人件費は従業員の所得 向上に繋がるため、そこから新たな消費が発生すると考えられる。このような生産誘発で 生じた雇用者所得が消費に転換されることで新たな生産を誘発する波及効果は「間接効果 (2次波及効果)」と呼ばれる。「間接効果」は観光産業に限らず、ほぼ全業種で生じる 効果である。 「直接効果」「1次波及効果」「2次波及効果」の合計を「経済波及効果(総合効果)」、 経済波及効果に対する倍率を「乗数(効果倍率)」と呼ぶ。 (2)効果測定方法の検討 一般に、経済波及効果の測定に用いられている方法としては、産業連関表を用いた方法 と乗数理論に基づいた方法がある。本業務では「寒川町には既存の産業連関表がなく新し く作成するには費用と期間を要すること」「拠点整備によって町内の産業構造には変化が 生じることも見込まれること」から、乗数理論に基づいた方法を採用することとした。 乗数理論に基づいた経済波及効果の測定は、観光分野ではしばしば行われており、国土 交通省観光局「観光消費が地域経済に及ぼす影響の推計手法に関する検討調査報告書」に おいて、地方単位の経済波及効果の測定方法として紹介されているほか、神奈川県でも「神 奈川県観光産業に関する基礎調査」(平成 21 年 3 月)で用いられるなど、観光分野ではし ばしば利用されている。 51 図表 50 経済波及効果の測定方法とそのメリット・デメリット メリット 1.産業連関表 デメリット ・しばしば用いられており、 ・産業連関表が必要、作成 説明力が高い する場合は難度が高い ・業種別経済効果の算出が ・産業構造は古い時点のも 可能 2.乗数理論 代表的な実施例 ・日本観光協会「観光地の 経済効果推計マニュア ル」 ので固定 ・比較的新しい統計で算出 可能 ・業種別経済効果は不明 ・国土交通省観光局「観光 ・経済波及効果といえば産 消費が地域経済に及ぼす 業連関分析と連想する人 影響の推計手法に関する があり、説明に要工夫 検討調査」 ・産業構造の変化に対応し た微修正が可能 図表 51 乗数理論に基づく経済波及効果の測定手順 入力情報 観光客の数量と消費金額 原材料等波及 観光関連事業者の売上高の内訳 流通と雇用 所得波及(付加価値) 付加価値 (第1次所得) 直接効果 第2次波及効果 第2次原材料等による 全部効果 第2次所得・消費 第3次波及効果 第3次原材料等による 全部効果 第3次所得・消費 全部効果 全段階の原材料等 波及による全部効果 観光消費額によって 生じた全部効果 消費の全部効果 所得の全部効果 波及効果の総額 雇用効果 直接効果 全部効果 雇用者数 資料)国土交通省「観光消費が地域経済に及ぼす影響の推計手法に関する検討調査」 52 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 (3)寒川町における拠点整備による経済効果の検討 寒川町には、現時点でも多くの観光入込客が訪れていることから、既にそれに伴う経済 波及効果が生じている。そこで、今回の拠点整備に伴う効果を正確に測定するため、事業 を実施した場合(with ケース)と実施しない場合(without ケース)の測定結果の差分を 算出(with-without 分析)することとした。 また、さがみ縦貫道路寒川北IC~海老名JCT間が平成 27 年3月8日に開通し、観光 背後圏が拡大したことで、寒川町では観光入込客の増加が見込まれるが、道路開通効果は、 拠点整備効果とは切り離して整理すべきであることから、さがみ縦貫道路の開通に伴う増 加分を推計し、それを拠点整備前の観光入込客数に組み込むこととした。 図表 52 with-without 分析 (拠点整備による経済波及効果) =(拠点整備後の経済波及効果)-(拠点整備前の経済波及効果) 図表 53 拠点整備による効果範囲の概念図 1人あたり消費金額 観光拠点整備効果 道路 現在の経済効果 開通 効果 入込客数(実数) ①さがみ縦貫道路の開通に伴う観光入込客数増加効果の推計 現在の寒川町観光入込客は 100%日帰り客であり、さがみ縦貫道路寒川北IC~海老名J CT間の開通によって、寒川町の日帰り観光背後圏1が拡大する。現状の道路ネットワーク に加え、さがみ縦貫道による時間短縮効果を考慮して、寒川神社を起点とした日帰り圏を 地理情報システム(geographic information system、GIS)を用いて計測した結果、埼玉 県を中心に、東京都、山梨県、静岡県でも、一部の市町村が新しく日帰り圏に含まれるこ とが判明した。市町村域の一部でも寒川神社からの日帰り圏域に含まれた市町村を対象に 日帰り圏域住民調査を実施し、さがみ縦貫道路の開通で寒川町を訪問する可能性があると 回答した人の比率(新規入込客出現率)を各都県単位で求め、新たに日帰り圏になった市 町村の人口に乗じることで、年間の入込客増加数を算出したところ、173,548 人となった。 1 国土交通省「日常生活圏と日帰り圏域時間距離の目安」 (「第1回 21 世紀生活圏研究会参考資料」全国市 町村アンケート、平成 16 年4月)で、日帰り圏域の時間距離が 113 分~193 分となっていることから、日 帰り圏としては 120 分(2時間)圏域を目安として区切ることとした。 53 図表 54 さがみ縦貫道路の開通による観光入込客(実数)増加効果 都県名 対象地域人口(人) 参拝客出現率(%) 年間参拝客増加数(人) 埼玉県 893,254 16.0 142,921 東京都 155,989 3.3 5,200 山梨県 55,234 32.0 17,675 静岡県 32,302 24.0 7,752 合計 173,548 現在の寒川町観光入込客数は、神奈川県観光振興対策協議会「平成 25 年神奈川県入込観 光客調査」(平成 26 年9月 18 日公開)によると 1,867,553 人である。寒川神社参拝客の ほかイベント参加者等が計上されているが、掲載されているイベント参加者数の合計は数 万人規模に留まっていることから、ほぼ全数を寒川神社参拝客とみなしてよいと考え、統 計値の 1,867,553 人をそのまま推計上の実人数として用いることとした。これに増加数を積 み上げると、さがみ縦貫道路の開通後の寒川町への観光入込客(実数)は、2,041,101 人と 推計された。 ②拠点整備に伴う観光入込客数増加効果の推計 続いて、観光拠点整備に伴う観光入込客数の増加を推計した。ただし、町内に整備され る予定の観光拠点は、寒川神社参拝客に対するサービス提供を軸としており、これを観光 の目的地とした遠方からの訪問者の増大をねらったものではない。東京圏では同種の施設 が多数立地することをふまえると、遠方からの訪問を計上することはあまり現実的でない ことから、県内からの新規訪問者増加分だけを計上した。そのため、県外からも誘客が可 能なレベルの魅力的な観光拠点を整備した場合には、より大きな増加効果が生じると考え られる。 日帰り圏域住民調査では、横浜市および川崎市からの新規訪問者出現率は 5.0%、その他 の神奈川県内(ただし寒川町は除く)からの新規訪問者出現率は 1.0%となっており、これ を人口に乗じることで、年間の観光入込客増加数を算出したところ、294,578 人となった。 図表 55 拠点整備による観光入込客(実数)増加数 拠点整備により 対象地域 対象地域 新たに寒川町を 人口総数 訪問したい県内 (人) 住民の出現率 初年度最大年間 拠点訪問客増加数(人) (%) 横浜市+川崎市 その他の神奈川県 (ただし、寒川町は除く) 5,114,285 5.0 255,714 3,886,374 1.0 38,864 合計 294,578 54 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ③1人あたり観光消費額増加効果の推計 神奈川県観光振興対策協議会「平成 25 年神奈川県入込観光客調査」(平成 26 年9月 18 日公開)では、現時点の寒川町における観光消費額が不明のため、参拝客調査によって把 握された 1,548 円/人を用いることとする。内訳をみると、寒川神社への支払額が 971 円を 占め、飲食に 366 円、お土産(食品)に 128 円、お土産(雑貨)に 7 円となっている。 図表 56 現在の観光入込客1人あたり観光消費額 消費項目 1人あたり消費額(円) 交通費(タクシー) 7 飲食(カフェ、レストラン) 366 お土産用食料品(お菓子など) 128 お土産用雑貨 7 寒川神社における支払 971 その他 69 合計 1,548 同じく参拝客調査によって、観光拠点の整備に伴う1人あたり観光消費額の増加分を把 握した。算出にあたっては、カフェ、レストラン、お土産(食品)、お土産(雑貨)につ いて、町内での既存の消費額が移転してくる可能性が高いことから、回答者における現状 の観光消費額を差し引く(マイナスになる場合はゼロとした)ことで、現在、既に町内で 生じている経済効果が重複計上されないように除去する措置を行った。また、農産物直売 所については、現時点でわいわい市に立ち寄っていると回答した人については、既に計上 されているため、やはり除外して算出を行った。 その結果、観光拠点の整備に伴う観光消費額の増分は 1,673 円/人であり、フルセットの 機能を有した拠点が整備された場合、町内での1人あたり観光消費額は約2倍となること が期待される。 図表 57 拠点整備による観光入込客1人あたり観光消費額の増分 消費項目 1人あたり予定消費額(円) 飲食(カフェ、レストラン) 308 お土産用食料品(お菓子など) 341 お土産用雑貨 269 農産物直売所 547 観光農園 209 合計 1,673 拠点整備に伴って町中心部への移動が減少した場合に、交通費(タクシー)が少なくな ることも考えられるが、現状が 7 円/人と非常に少ないため影響は軽微と判断した。 55 ここまでの検討をふまえて、観光入込客数(実数)と1人あたりの観光消費額を整理す ると下記の通りとなる。 図表 58 観光入込客1人あたり支出項目別観光消費額(総括表) 消費項目 現在 道路開通後 拠点整備後 1,867,553 人 2,041,101 人 2,335,679 人 7 7 7 飲食費(カフェ、レストラン) 366 366 673 土産品購入費 135 135 1,292 0 0 209 その他 1,040 1,040 1,040 合計 1,548 1,548 3,221 観光入込客数(実数) 交通費(タクシー) 観光農園 注釈)拠点整備後の欄は、各機能が全て整備された場合の数値である。 「わいわい市」が立地していることから、現在でも農産物直売所については売上に伴う消費が発生 しているが、現状は観光客以外による利用が大半を占めると考えられることから、整備後の増加分 のみを経済波及効果の算出に用いた。 2.経済波及効果の推計 観光拠点の整備に伴う観光入込客数と観光消費額の増加によって、寒川町内に生じる経 済波及効果を推計する。本調査での具体的な推計手順は、神奈川県において実施された「神 奈川県観光産業に関する基礎調査」(平成 21 年 3 月)の手法を踏襲した。 (1)測定に必要な数値の確保 乗数理論によって経済波及効果を測定するには、下記のような数値を測定、取得する必 要がある。 図表 59 把握が必要な数値 ①支出項目別観光総消費額(飲食費、宿泊費、交通費、買物代、その他) ②支出項目別収支構造(売上原価率、営業経費率、人件費率、その他率、営業利益率) ③支出項目別域内調達率(売上原価、営業経費、人件費) ④支出項目別本社比率 ⑤限界消費性向 ⑥域内消費率 ⑦平均給与額 56 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ①支出項目別観光総消費額(飲食費、宿泊費、交通費、買物代、その他) 1)拠点整備前 支出項目別観光総消費額は、観光入込客数(実数)と1人あたり支出項目別消費額の積 で求められる。拠点整備前の観光総消費額は現状で約 28.9 億円、さがみ縦貫道路開通後で 約 31.6 億円と推計された。 図表 60 支出項目別観光総消費額(整備前) 消費項目 1人あたり消費額 観光入込客数(実数) 現在 道路開通後 1,867,553 人 2,041,101 人 7円 13,150 千円 14,372 千円 飲食費(カフェ、レストラン) 366 円 682,942 千円 746,406 千円 土産品購入費 135 円 251,948 千円 275,361 千円 0円 0円 0円 その他費用 1,040 円 1,942,476 千円 2,123,096 千円 合計 1,548 円 2,890,617 千円 3,159,236 千円 交通費(タクシー) 観光農園の施設利用料 2)拠点整備後 整備された拠点のうち、収益を産み出すのは「大型直売所」 「飲食施設・商業施設(土産 品販売) 」 「観光農園」の3種類のみなので、これらの総消費額について検討する。 「大型直売所」については、案A’のみ面積が変更になっているが、これは駐車場が他 の目的に転用されたものであって、建物自体に変更はないこと、拠点全体の駐車場を利用 できることなどから、実際には販売力に変化はないものと考えられる。そのため、大型直 売所については、全く同一の消費額を計上する。なお、ここで購入する農産物は土産品に あたると考えられることから、総消費額としては土産品購入費に算入する。 「飲食施設・商業施設(土産品販売)」「観光農園」については、各案で面積が異なるた め、もたらす消費額には差が生まれると考えられる。ここでは総消費額は面積に比例する ものと仮定して、1人あたり予定消費額は、各整備案のうち最大整備面積の場合に生じる 消費額に相当するとして設定した。なお、ここでの売上増加分は「観光農園」については その他費用に算入する。 「飲食施設・商業施設」については、1人あたり消費額が飲食:商 業=1014:1293、類似事例である大社の杜みしまの出店比が飲食:商業=8:6であるこ とを考慮して、両施設に半分ずつの面積を割り当てることとした。 57 図表 61 各案における施設別面積と対応する1人当たり観光消費額 施設分類 案A 大型直売所 飲食施設 商業施設 案A’ 案B 案C 案D 約 0.3ha 約 0.2ha 約 0.3ha 約 0.3ha 約 0.3ha 547 円 547 円 547 円 547 円 547 円 約 0.35ha 約 0.7ha 約 1.05ha 約 0.85ha 約 0.85ha 468 円 571 円 673 円 615 円 615 円 約 0.35ha 約 0.7ha 約 1.05ha 約 0.85ha 約 0.85ha 338 円 541 円 745 円 629 円 629 円 観光農園 約 1.0ha - 全体面積 39 円 約 5.5ha 約 5.3ha - 約 6.7ha 209 円 約 6.9ha 約 9.5ha - 約 7.2ha その結果、年間での観光総消費額は、案Cで 71.1 億円、案Bで 70.4 億円、案Dで 66.3 億円、案A’で 64.1 億円、案Aが 56.1 億円となった。最も少ない案Aでも、現状の 31.6 億円を大幅に上回る消費額となっている。 図表 62 整備案別の支出項目別観光総消費額 消費項目(千円) 案A 案A’ 観光入込客数(実数) 案B 案C 案D 2,335,679 人 交通費(タクシー) 16,446 16,446 16,446 16,446 16,446 飲食費(カフェ、レストラン) 1,093,620 1,333,111 1,572,601 1,435,750 1,435,750 土産品購入費 2,067,530 2,542,299 3,017,068 2,745,772 2,745,772 0 91,980 0 487,493 0 その他費用 2,429,508 2,429,508 2,429,508 2,429,508 2,429,508 合計 5,607,104 6,413,344 7,035,623 7,114,969 6,627,476 観光農園の施設利用料 ②支出項目別収支構造(売上原価率、営業経費率、人件費率、営業利益率) 総務省「平成 24 年経済センサス‐活動調査」で、消費項目に対応する業種において、寒 川町の収支構造を確認した。 図表 63 寒川町における業種別収支構造 業種 消費項目 交通・運輸業 交通費 55.0% 9.2% 33.4% 2.5% 飲食業 飲食費 19.2% 37.0% 25.2% 18.7% 土産販売業 土産品販売費 67.6% 14.9% 12.0% 5.6% 観光施設業 施設利用料 59.5% 27.1% 9.8% 3.6% その他産業 その他 47.5% 1.2% 27.1% 24.2% 75.7% 0.9% 14.8% 8.5% 全産業 売上原価率 58 営業経費率 人件費率 営業利益率 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ③支出項目別の域内調達率(売上原価、営業経費、人件費) 観光庁「平成 24 年観光地域経済調査(速報)」によれば、観光産業の域内調達率(全国 平均)は 22.3%である。一方、町内事業者に対するヒアリング結果によれば、平均調達率 は 23%であり、ほぼ同水準と考えられる。そのため、売上原価および営業経費にかかる域 内調達率は、観光地域経済調査における業種別数値をそのまま用いることとした。 人件費にかかる域内調達率は、総務省「国勢調査」における業種別従業地別就業者数に よって、寒川町での就業者のうち町民が占める比率を算出して用いることとした。 図表 64 寒川町における業種別町域内調達率 業種 売上原価・営業経費 人件費 交通・運輸業 31.7% 37.8% 飲食業 38.7% 68.1% 土産販売業 18.7% 58.5% 観光施設業 22.3% 59.6% その他産業 41.9% 48.9% 全産業 22.3% 49.7% ④支出項目別の本社比率 総務省「平成 24 年経済センサス‐活動調査」で、消費項目に対応する業種において、寒 川町の本所数と事業所総数から、本社比率を設定した。 図表 65 寒川町における業種別本社比率 業種 本社比率 業種 本社比率 交通・運輸業 23.5% 観光施設業 31.0% 飲食業 16.0% その他産業 23.9% 土産販売業 12.5% 全産業 12.0% ⑤限界消費性向 「家計調査(家計収支編) 」 (平成 26 年)の都市階級「町村」で「総世帯のうち勤労者世 帯」の実収入に対する消費支出の比率を求め、0.602 と設定した。 図表 66 町村部における限界消費性向 実収入 町村 消費支出 459,417 円 資料)総務省「家計調査(家計収支編) 」 (平成 26 年) 59 276,557 円 限界消費性向 60.2% ⑥域内消費率 「神奈川県観光産業に関する基礎調査」(平成 21 年 3 月)に従い、73.3%とした。 ⑦平均給与額(給与地域補正値) 「神奈川県観光産業に関する基礎調査」(平成 21 年 3 月)に従い、寒川町での平均給与額 は 4349 千円×113%として設定した。 (2)経済波及効果の測定 これらの設定に基づいて、経済波及効果を測定したところ、道路開通後の without ケー スでは、観光消費総額は 31.6 億円だが、そのうち直接効果として域内に留まる額は 8.9 億 円と推計される。この直接効果によって域内にもたらされる生産波及効果の総額は 9.2 億円 であり、経済波及効果の総額は 40.8 億円、乗数効果は 1.29 と測定された。 拠点整備後の with ケースでは、観光消費総額は 56.1 億円~71.1 億円となり、経済波及 効果総額は 71.5 億円~90.7 億円となる。 図表 67 経済波及効果 観光消費総額(千円) 直接効果(千円) 波及効果(千円) 経済波及効果総額(千円) 事業前 3,159,236 890,698 920,387 4,079,622 案A 5,607,104 1,506,202 1,541,571 7,148,676 案A’ 6,413,344 1,729,212 1,762,737 8,176,081 案B 7,035,623 1,905,992 1,933,605 8,969,228 案C 7,114,969 1,914,274 1,954,884 9,069,852 案D 6,627,476 1,791,766 1,821,595 8,449,070 事業前と事業後で差分をとって、拠点整備による経済波及効果だけを抽出すると、30.7 億円~49.9 億円と測定できる。最も効果の少ない案Aでも、事業前の経済波及効果に比べ て 1.75 倍となり、最も効果の大きな案Cでは 2.22 倍となる。 図表 68 拠点整備に伴う経済波及効果の増分 観光消費総額(千円) 直接効果(千円) 波及効果(千円) 経済波及効果総額(千円) 案A 2,447,868 615,504 621,185 3,069,054 案A’ 3,254,108 838,513 842,350 4,096,458 案B 3,876,387 1,015,293 1,013,218 4,889,605 案C 3,955,733 1,023,576 1,034,498 4,990,230 案D 3,468,240 901,068 901,208 4,369,448 60 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 第4章 観光施設の投資妥当性に係る検討 第2章で整理した拠点整備案5案について、各拠点整備案の整備に生じる費用を算出し、 第3章で算出した各拠点整備案それぞれの経済波及効果の推計結果を用いて、拠点整備に よる社会的便益と投資のバランスを比較検討する。 1.拠点整備費用に係る各費目の算出根拠 (1)用地取得費 拠点整備候補地は民有地であり、拠点整備を進める上では用地取得費用を見込む必要が ある。用地取得費の算出に当たっては、直近の国土交通省地価公示を用い、周辺の地価水 準に準じることとする。 拠点整備候補地に近接している標準地の中(図表 69)から、最も近接している「神奈川 寒川-1」の㎡あたり価格(125,000 円)を拠点整備候補地の用地取得単価として採用する。 図表 69 拠点整備候補地に近接する標準値における地価公示(平成 26 年 1 月 1 日時点) 資料)国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」より作成 61 図表 70 寒川町内における直近の地価公示(平成 26 年 1 月 1 日時点) 標準地 番号 所在及び 地番 住居表示 宮山36 神奈川寒川 15番1 -1 0 価格 交通施設、 地積 (円/m²) 距離 (m²) 利用 現況 125,000 宮山、 200m 141 住宅 一之宮9 神奈川寒川 丁目10 -2 4番2外 一之宮9- 19-31 137,000 寒川、 900m 150 住宅 岡田4丁 神奈川寒川 目187 -3 1番2外 岡田4-4 -3 126,000 寒川、 1,000m 218 住宅 小谷3丁 神奈川寒川 目851 -4 番4外 小谷3-1 -55 114,000 宮山、 1,300m 218 住宅 大曲1丁 神奈川寒川 目19番 -5 1 大曲1-1 9-5 133,000 香川、 750m 138 住宅 146,000 寒川、 750m 136 住宅 121,000 寒川、 1,400m 193 住宅 106,000 倉見、 1,500m 135 住宅 岡田24 神奈川寒川 01番4 -6 外 一之宮3 神奈川寒川 丁目20 -7 50番3 2 一之宮3- 37-18 倉見17 神奈川寒川 52番1 -8 2外 小谷1丁 神奈川寒川 目568 -9 番8外 小谷1-2 -9 122,000 寒川、 1,600m 165 住宅 一之宮4 神奈川寒川 丁目25 -10 63番2 外 一之宮4- 14-35 123,000 寒川、 1,100m 215 住宅 岡田10 神奈川寒川 91番1 5-1 外 (寒川駅北 口地区土地 区画整理事 業10街区 1外) 寒川、 215,000 200m 神奈川寒川 田端15 9-1 90番2 大曲3丁 神奈川寒川 目437 9-2 番 寒川、 71,000 2,300m 大曲3-2 0-1 95,000 香川、 900m 用途区分、 建ぺい率 周辺の土地の 高度地区、 (%) 利用現況 防火・準防火 容積率(%) 一般住宅のほ 一種住居地 か、農地等も 60(%) 域、 準防火 見られる住宅 200(%) 地域 地域 一般住宅のほ 一種住居地 かアパート等 60(%) 域、 準防火 も見られる住 200(%) 地域 宅地域 住宅とアパー 一種中高層 トが見られる 住居専用地 60(%) 緩傾斜地の住 域、 準防火 200(%) 宅地域 地域 一般住宅の中 に農地等が見 一種低層住 50(%) られる住宅地 居専用地域 100(%) 域 農家住宅や一 一種中高層 般住宅、共同 住居専用地 60(%) 住宅等が混在 域、 準防火 200(%) する地域 地域 中小規模の一 一種中高層 般住宅に空地 住居専用地 60(%) も見られる住 域、 準防火 200(%) 宅地域 地域 一般住宅、ア 一種住居地 パート等が見 60(%) 域、 準防火 られる住宅地 200(%) 地域 域 小規模一般住 一種住居地 宅の中に空地 60(%) 域、 準防火 も見られる住 200(%) 地域 宅地域 一般住宅、ア パート等が混 一種低層住 50(%) 在する住宅地 居専用地域 100(%) 域 中規模一般住 宅、アパート 準工業地域、60(%) が混在する住 準防火地域 200(%) 宅地域 中層の店舗兼 店舗兼 共同住宅等が 商業地域、 80(%) 352 共同住 建ち並ぶ駅前 防火地域 400(%) 宅 商業地域 3,306 工場 995 倉庫 中小規模工 場、倉庫等が 見られる工業 地域 中小規模工 場、倉庫等が 多い工業地域 資料)国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」より作成 62 都市計画 区域区分 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 市街化 区域 工業専用地 60(%) 域 200(%) 市街化 区域 準工業地域、60(%) 準防火地域 200(%) 市街化 区域 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 (2)造成費・建物除却費 ①造成費 拠点整備候補地の現況のうち、農地区域を転用して施設を整備する際には、地盤改良や 盛土などの造成工事が必要となる。用地造成に係る費用として、一般的には、図表 71 のよ うに整理されているが、ここでは、整地費、地盤改良費、土盛費、土止費を計上すること とし、その㎡あたり価格は、国税庁「平成 26 年分財産評価基準書 神奈川県 宅地造成費 の金額表」に示される単価を採用する。 なお、土盛費の算出に当たっては、各拠点整備案に共通して、土盛の高さを 50cm と設定 し、用地面積(㎡)あたりの土盛費とみなすこととする。 また、土止費の算出に当たっては、各拠点整備案に共通して、拠点整備候補地の外周(図 上計測に基づき、長さ約 800m)全体に擁壁(垂直壁・高さ1m)を設置することとし、擁 壁面積あたりの土止費は図表 71 の単価を用いることとする。 図表 71 項目別に見た造成費単価 工事費目 整地費 造成区分 金額単価 整地費 整地を必要とする面積 1m²当たり 500 円/㎡ 伐採・抜根費 伐採・抜根を必要とする面積 1m²当たり 600 円 地盤改良費 地盤改良を必要とする面積 1m²当たり 1,300 円/㎡ 土盛費 土止費 土盛りを必要とする場合の土盛り面積 1m²当たり 土止めを必要とする場合の擁壁の面積 1m²当たり 2,100 円/㎡ 46,500 円 注1) 「整地費」とは、①凹凸がある土地の地面を地ならしするための工事費又は②土盛工事を要する土地 について、土盛工事をした後の地面を地ならしするための工事費を指す。 注2) 「伐採・抜根費」とは、樹木が生育している土地について、樹木を伐採し、根等を除去するための工 事費を指す。したがって、整地工事によって樹木を除去できる場合には、造成費に本工事費を含め ない。 注3)「地盤改良費」とは、湿田など軟弱な表土で覆われた土地の宅地造成に当たり、地盤を安定させるた めの工事費を指す。 注4) 「土盛費」とは、道路よりも低い位置にある土地について、宅地として利用できる高さ(原則として 道路面)まで搬入した土砂で埋め立て、地上げする場合の工事費を指す。財産評価基準書では、土 盛り体積 1m³当たりの単価 4,200 円と設定されているが、寒川町においては、土盛の高さが 50cm までと定められているため、50cm×2 ㎡=1㎥と換算し、㎡あたりの単価を設定した。 注5) 「土止費」とは、道路よりも低い位置にある土地について、宅地として利用できる高さ(原則として 道路面)まで地上げする場合に、土盛りした土砂の流出や崩壊を防止するために構築する擁壁工事 費を指す。 資料)国税庁「平成 26 年分財産評価基準書 神奈川県 宅地造成費の金額表」より三菱 UFJ リサーチ& コンサルティング作成 63 ②建物除却費 拠点整備候補地の一部(図上計測により約1ha)には宅地が存在するため、施設整備に 当たっては建物の除却費用を計上する必要がある。除却費単価については、建物の用途・ 構造・規模により単価が異なるため、概算として㎡あたり 1.2 万円と設定する2。 (3)施設整備費 各拠点整備案に類似する施設として、道の駅(大型直売所) 、参詣客向け商業施設、都市 公園、及び農業公園の既往の代表的な事例より、各拠点整備案の整備費を検討する。 整備費の検討に当たり参考とする事例は以下のとおりである。 図表 72 整備費の概算の参考とする既往類似事例 施設名称 所在地 施設の種類 道の駅とみうら枇杷倶楽部 千葉県南房総市 ぱてぃお大門 開設時期 大型直売所(道の駅) 平成5年 4 月 長野県長野市 参詣客向け商業施設 平成 17 年 11 月 道の駅いぶすき 鹿児島県指宿市 道の駅・都市公園 平成 16 年 10 月 かなたけの里公園 福岡県福岡市西区 農業公園 平成 24 年 6 月 蔵楽庭(くらにわ) 注釈) 「道の駅いぶすき」は、施設内の都市公園を、整備費単価の算出にあたっての参考とした。 2 実際の見積事例に基づいた神奈川県における解体工事価格の相場 (http://kaitai-takumi.com/price/area/kanagawa/)では、木造住宅 3.8 万円/坪、RC 造住宅 5.8 万円/ 坪、店舗・工場 3.5 万円/坪であることから、概算として 4 万円/坪≒1.2 万円/㎡と仮定した。 64 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 73 既往の類似事例(道の駅とみうら枇杷倶楽部) 資料)道の駅とみうら枇杷倶楽部ウェブサイト 65 図表 74 既往の類似事例(ぱてぃお大門 蔵楽庭(くらにわ) ) 資料)国土交通省「土地活用モデル大賞受賞事例 フォローアップ調査」 (平成 22 年) 図表 75 既往の類似事例(道の駅いぶすき) 資料)指宿市資料 66 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 76 既往の類似事例(かなたけの里公園) 資料)かなたけの里公園ウェブサイト 67 これらの整備事例は、それぞれ敷地面積と整備費用に関する情報が公開されており、今 回検討する各拠点整備案を構成する機能のうち、大型直売所、商業施設、都市公園、観光 公園の整備費の概算に活用する。 なお、各拠点整備案の駐車場、緑地、参道・道路については、類似整備事例における各 諸元の整備費用に関する情報が得られなかったため、便宜的に都市公園の整備費単価と同 水準とみなすこととする。 また、既往の類似整備事例において、造成費は施設や公園等の整備費用と区分されてい ない上、建物の建築工事のみを指していると推察される場合もあるため、ここで用いる㎡ あたり整備費には造成費は含まれないものとし、別途項目を分けて計上するものとする。 図表 77 類似整備事例の整備費用単価 施設名称 所在地 施設の種類 道の駅とみうら 千葉県 大型直売所 枇杷倶楽部 南房総市 (道の駅) ぱてぃお大門 蔵楽庭 道の駅いぶすき 長野県長野市 鹿児島県 指宿市 かなたけの里 福岡県 公園 福岡市西区 敷地面積 (単位:㎡) 整備費 ㎡あたり (用地費除く・ 整備費 単位:万円) (単位:万円) 8,600 39,100 4.5465 3,112 49,481 15.9000 都市公園 12,000 48,360 4.0300 農業公園 127,000 69,000 0.5433 参詣客向け 商業施設 注1) 「道の駅いぶすき」については、施設内の都市公園部分を対象に、整備費単価を概算した。 注2) 「かなたけの里公園」の整備費単価は、各拠点整備案における観光農園の整備費の算出根拠として活 用する。 資料)各種公表資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 68 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 (4)維持管理費 各拠点整備案に類似する施設として、道の駅(大型直売所)、複合商業施設、都市公園、 及び農業公園の既往の代表的な事例より、各拠点整備案の年間維持管理費を検討する。 参考とする事例は以下のとおりである。 図表 78 整備費の概算の参考とする既往類似事例 施設名称 道の駅とみうら 所在地 千葉県 施設の種類 大型直売所 平成5年 4 月 枇杷倶楽部 南房総市 (道の駅) プレーゴ 石川県 複合商業施設 金沢市 神奈川県立塚山公園 神奈川県 都市公園 福岡県 平成 13 年 11 月 昭和 32 年 3 月 横須賀市 かなたけの里公園 開設時期 農業公園 平成 24 年 6 月 福岡市西区 施設管理者 ㈱とみうら ※平成 24 年 10 月から㈱ ちば南房総へ経営統合 ㈱金沢商業活性化センター 指定管理者:(公財)神奈 川県公園協会 指定管理者:チーム里の環 (九州林産㈱、㈱エスティ 環境設計研究所) 図表 79 既往の類似事例(プレーゴ) 資料)国土交通省「まちづくり会社等による収益事業の実践ヒント集」 (平成 22 年 3 月) 69 図表 80 既往の類似事例(神奈川県立塚山公園) 資料)神奈川県立塚山公園ウェブサイト これらの事例は、それぞれ敷地規模と年間維持管理費用に関する情報が公開されており、 今回検討する各拠点整備案を構成する機能のうち、大型直売所、商業施設、都市公園、観 光公園の整備費の概算に活用する。 図表 81 類似整備事例の年間維持管理費用単価 施設名称 道の駅とみうら 所在地 枇 千葉県 施設の種類 大型直売所 杷倶楽部 南房総市 (道の駅) プレーゴ 石川県 複合商業施設 金沢市 神奈川県立塚山公園 神奈川県 都市公園 横須賀市 かなたけの里公園 福岡県 農業公園 福岡市西区 敷地面積 (単位:㎡) 年間維持 管理費 (単位:万円) ㎡あたり 年間維持 管理費 (単位:万円) 8,600 22,241 2.5862 3,112 3,486 2.0554 12,000 1,390 0.0296 127,000 8,691 0.0684 注1) 「道の駅いぶすき」については、施設内の都市公園部分を対象に、整備費単価を概算した。 注2) 「かなたけの里公園」の整備費単価は、各拠点整備案における観光農園の整備費の算出根拠として活 用する。 資料)各種公表資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 70 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 (5)その他の費用 拠点整備候補地の一部には民家が含まれることから、従前居住者対策として、転居費用 や転居先の家賃などに対する支援が必要となる場合が想定されるが、施設整備や用地取得 の費用に比べて些少であり、概算投資額には含めないこととする。 2.各拠点整備案の概算投資額の算出 1.で設定した項目別の費用の原単位を用いて、第2章で整理した各拠点整備案の機能 別面積の内訳(図表 83)に基づき整備費用を概算する。 用地取得費の算出にあたり、拠点整備候補地全体を対象とする。 造成費の算出にあたっては、現況の農地区域を転用する案(案 C 以外のすべて)につい て計上する。 建物除却費については、候補地内の宅地(図上計測により約 1ha)を対象として計上する。 整備費用の概算結果は図表 84 のとおりである。 図表 82 拠点整備候補地の面積 用途 面積 大型直売所区域 0.33ha 農地区域 5.67ha その他区域 5.36ha 合計 11.4ha 図表 83 各拠点整備案の機能別面積内訳 用途 案A 案A’ 案B 案C 案D 大型直売所 約 0.3ha 約 0.2ha 約 0.3ha 約 0.3ha 約 0.3ha 商業施設 約 0.7ha 約 1.4ha 約 2.1ha 約 1.7ha 約 1.7ha 駐車場 約 2.0ha 約 1.6ha 約 1.8ha 約 0.8ha 約 2.8ha 緑地 約 0.4ha 約 0.4ha 約 0.4ha 約 0.1ha 約 0.8ha - 約 1.0ha - 約 5.3ha - 参道・道路 約 1.0ha 約 1.0ha 約 1.5ha 約 1.0ha 約 1.0ha 都市公園 約 1.1ha 約 1.1ha 約 0.8ha 約 0.3ha 約 0.6ha 合計 約 5.5ha 約 6.7ha 約 6.9ha 約 9.5ha 約 7.2ha 観光農園 資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 71 図表 84 各拠点整備案の概算施設整備費及び年間維持管理費(単位:億円) 費目 用地取得費 案A 案A’ 案B 案C 案D 68.75 83.75 86.25 118.75 90.00 1.57 1.57 1.57 1.20 1.57 整地費 0.00 0.00 0.00 ― 0.00 地盤改良費 0.00 0.00 0.00 ― 0.00 土盛費 0.00 0.00 0.00 ― 0.00 土止費 0.37 0.37 0.37 ― 0.37 建物除却費 1.20 1.20 1.20 1.20 1.20 29.27 40.24 52.89 38.78 47.99 - 0.91 1.36 - - 11.13 22.26 33.39 27.03 27.03 駐車場 8.06 6.45 7.25 3.22 11.28 緑地 1.61 1.61 1.61 0.40 3.22 - 0.54 - 2.88 - 参道・道路 4.03 4.03 6.05 4.03 4.03 都市公園 4.43 4.43 3.22 1.21 2.42 99.59 125.56 140.71 158.73 139.56 年間維持管理費 2.35 3.55 5.23 4.49 4.42 大型直売所 0.78 0.52 0.78 0.78 0.78 商業施設(宿泊・温泉含む) 1.44 2.88 4.32 3.49 3.49 駐車場 0.06 0.05 0.05 0.02 0.08 緑地 0.01 0.01 0.01 0.00 0.02 - 0.03 - 0.16 - 参道・道路 0.03 0.03 0.04 0.03 0.03 都市公園 0.03 0.03 0.02 0.01 0.02 造成費 施設整備費 大型直売所 商業施設(宿泊・温泉含む) 観光農園 初期投資費用合計 観光農園 注1)取得する用地は、各案の施設整備面積の合計を対象としている。 注2)案A、C 及びDの大型直売所については、すでに立地している「わいわい市」を対象としているた め、概算費用からは除外した。 注3)駐車場、緑地、参道・道路の整備費単価は、都市公園と同一と仮定した。 注4)観光農園の整備費の概算にあたっては、農業公園の整備費単価を適用した。 注5)案 C については、現況の農地をそのまま観光農園として活用することを想定するため、造成工事の 対象外としている。 注6)小数点第2位以下は四捨五入した値を表示しているため、合計が個別の費目の合算値と一致しない 場合がある。 資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 72 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 3.各拠点整備案の投資妥当性についての評価 (1)投資妥当性の評価指標 各拠点整備案の投資妥当性を評価するため、第3章で算出した、各拠点整備案における 施設収入(直接効果)及び経済波及効果を便益とし、2.で算出した施設整備・維持に要 する費用を用いて費用便益分析を行う。 費用便益分析結果の投資効率性を評価する指標として、①純現在価値(NPV) 、②費用便 益比(CBR:便益/費用) 、③経済的内部収益率(EIRR)の3つを用いることとする。 純現在価値(NPV)とは、施設供用期間中に発生することが見込まれる将来的な便益か ら、施設の整備・運営に要する費用を差し引いたものであり、この数値が大きいほど効率 的な事業であると評価できる。なお、費用便益分析では、将来発生しうる価値を現在の価 値として捉えなおすため、社会的割引率を考慮した費用と便益を用いることとする。 費用便益比(CBR)は、費用に対する便益の相対的な大きさを表す指標であり、1 を超え ると投資妥当性があると判断でき、その値が大きいほど望ましい。 経済的内部収益率(EIRR)は、便益と費用の現在価値が等しくなるような投資の収益率 を指し、投下した資本を計画期間内に発生しうる便益で返済すると仮定した場合、計画期 間末で収支が見合うための利率であることを意味する。EIRR が社会的割引率よりも大きけ れば、当該施設整備事業は実施する価値があり、EIRR の値が大きいほど投資効率性が高い と評価できる。 図表 85 費用便益分析の主な評価指標と特徴 注)n:評価期間、Bt:t 年次の便益、Ct:t 年次の費用、i:社会的割引率 資料)国土交通省「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針(共通編) 」 (平成 20 年 6 月) 73 (2)各拠点整備案についての費用便益分析 ①分析に当たっての条件設定 各拠点整備案についての費用便益分析を行うに当たって設定条件を以下に整理する。 1)供用年数 施設の供用年数の設定については、国土交通省「市街地再開発事業の費用便益分析マニ ュアル案―平成 19 年度改訂版―」 などの各種公共事業の費用便益分析マニュアルにおいて、 該当する施設の減価償却資産の耐用年数を採用することが一般的である。以下の分析では、 すべての拠点整備案に含まれる施設のうち、最も耐用年数の大きい「商業施設(宿泊・温 泉含む) 」の 39 年を供用年数と設定する。 2)事業期間 また、供用開始に先立つ5か年において用地取得や施設整備を行うものとし、平成 27 (2015)年度を基準年(0年次)とする。 3)割引率 割引率については、国土交通省「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針(共通 編) 」 (平成 20 年 6 月)をはじめ、国の公共事業に関する費用便益分析マニュアルにおいて、 国債等の実質利回りを参考に4%と設定しているため、本分析においても同様の設定を採 用する。 4)便益 第3章で整理した通り、各拠点整備案による経済効果には、拠点施設における収入であ る直接効果(B1)と、施設整備による地域への波及効果(B2)があり、費用便益分析を行 うに当たり、事業主体にとっての投資妥当性を評価するため、直接効果を便益と捉えるほ か、拠点施設の整備による地域活性化を公共的な視点から評価するため、直接効果と波及 効果の合計(B1+B2)と捉えることとする。 5)費用 0年次に用地取得を行い、1年次に現況の農地の造成を行うこととする(ただし、現況 の農地を活用する C 案では造成は行わない) 。さらに、1年次から4年次にかけて建物等の 施設の整備を行い、その費用は毎年均等に発生すると仮定する。5年次に施設の供用が開 始され、以降供用期間終了(平成 70(2058)年度)まで毎年一定の施設維持管理費が発生 するものとする。 74 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ②各拠点整備案の設定条件 ①をふまえて、各拠点整備案の費用便益分析に当たっての条件を以下の通り整理する。 図表 86 各拠点整備案の設定条件 ■案A 項目 値 施設供用年数 設定 事業期間 項目 割引率 便益 ①直接効果(施設収入) 項目 ②地域への経済波及効果 単位 39 年 5 年 4 備考 % 15.06 億円/年 供用期間中毎年発生 15.42 億円 用地取得費 68.75 億円 0年次に発生 費用 造成・建物除却費 項目 施設整備費 億円 1年次に発生 29.27 施設維持管理費 1.57 億円/年 2.35 億円 値 単位 事業期間中(1~4年次)に毎年均等に発生 供用期間中毎年発生 ■案A’ 項目 施設供用年数 設定 事業期間 項目 割引率 便益 ①直接効果(施設収入) 項目 ②地域への経済波及効果 39 年 5 年 4 備考 % 17.29 億円/年 供用期間中毎年発生 17.63 億円 用地取得費 83.75 億円 0年次に発生 費用 造成・建物除却費 項目 施設整備費 億円 1年次に発生 40.24 施設維持管理費 1.57 億円/年 3.55 億円 値 単位 事業期間中(1~4年次)に毎年均等に発生 供用期間中毎年発生 ■案B 項目 施設供用年数 設定 事業期間 項目 割引率 便益 ①直接効果(施設収入) 項目 ②地域への経済波及効果 用地取得費 費用 造成・建物除却費 項目 施設整備費 施設維持管理費 39 年 5 年 4 % 備考 19.06 億円/年 19.34 億円 86.25 億円 0年次に発生 1.57 億円 1年次に発生 52.89 5.23 億円/年 億円 75 供用期間中毎年発生 事業期間中(1~4年次)に毎年均等に発生 供用期間中毎年発生 ■案C 項目 値 施設供用年数 設定 事業期間 項目 割引率 便益 ①直接効果(施設収入) 項目 ②地域への経済波及効果 用地取得費 費用 造成・建物除却費 項目 施設整備費 施設維持管理費 単位 39 年 5 年 4 % 備考 19.14 億円/年 19.55 億円 118.75 億円 0年次に発生 1.20 億円 現況農地は造成しないため計上しない 38.78 億円/年 4.49 億円 値 単位 供用期間中毎年発生 事業期間中(1~4年次)に毎年均等に発生 供用期間中毎年発生 ■案D 項目 施設供用年数 設定 事業期間 項目 割引率 便益 ①直接効果(施設収入) 項目 ②地域への経済波及効果 用地取得費 費用 造成・建物除却費 項目 施設整備費 施設維持管理費 39 年 5 年 4 % 備考 17.92 億円/年 18.22 億円 90.00 億円 0年次に発生 1.57 億円 1年次に発生 47.99 4.42 億円/年 億円 供用期間中毎年発生 事業期間中(1~4年次)に毎年均等に発生 供用期間中毎年発生 ③分析結果の評価 各拠点整備案の費用分析結果は図表 87 の通りである。 直接効果(B1)のみを対象とした分析結果について、純現在価値(NPV①)はいずれの 案においても正の値であり、案 A、案A’ 、案 B、案 C、案 D の順となっている。また、費 用便益比(CBR①)はいずれも1を上回り、案 A、案A’、案 B、案 D、案 C の順となって いる。このほか、経済的内部収益率(EIRR①)は、案 A と案A’が社会的割引率(4%) を上回っている。これらの指標を勘案すると、事業実施主体からみた投資妥当性は、案 A が最も高く、案A’がこれに次いでいると評価できる。 一方、直接効果と波及効果(B1+B2)を対象とした分析結果については、純現在価値 (NPV②)はいずれの案においても正の値であり、案 B、案 C、案A’ 、案 D、案 A の順と なっている。また、費用便益比(CBR②)はいずれも1を上回り、案 A、案A’ 、案 D、案 B、案 C の順となっている。このほか、経済的内部収益率(EIRR②)は、いずれも社会的 割引率(4%)を上回り、案 A、案A’ 、案 B、案 D、案 C の順となっている。これらの指 標を勘案すると、公共的観点からみた投資妥当性については、案Aが最も高く、案A’が これに次いでいると評価できる。 76 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 87 各拠点整備案の費用便益分析結果 2015年価格 項目 単位 案A 案A' 案B 案C 案D 直接効果(施設収入) B1 億円 258.4 296.6 326.9 328.4 307.4 波及効果 B2 億円 264.4 302.4 331.7 335.3 312.5 便益計 B1+B2 億円 522.8 599.0 658.6 663.7 619.8 用地取得、造成・建物除 C1 却、施設整備費 億円 98.0 123.4 137.9 156.6 137.0 施設維持管理費 C2 億円 40.3 60.8 89.6 77.1 75.9 費用計 C=C1+C2 億円 138.3 184.2 227.5 233.7 212.9 純現在価値(NPV)① B1-C 億円 120.0 112.4 99.4 94.7 94.5 純現在価値(NPV)② B1+B2-C 億円 384.5 414.8 431.1 430.0 406.9 費用便益比(CBR)① B1/C - 1.87 1.61 1.44 1.41 1.44 費用便益比(CBR)② (B1+B2)/C - 3.78 3.25 2.89 2.84 2.91 % 5.12 4.02 3.32 2.79 3.18 % 12.39 11.17 10.73 9.49 10.26 経済的内部収益率 (EIRR)① 経済的内部収益率 (EIRR)② NPV①=0 となる収益率 NPV②=0 となる収益率 77 第5章 観光施設の事業継続性に係る検討 寒川神社周辺における観光拠点の開発による経済効果が明らかになったが、必要な資金 が収入を上回っていては、事業を実施することはできない。投資妥当性の検討においては、 一定の仮定のもとに投資額を設定したが、実際には、運営の継続にかかる前提に大きな影 響を及ぼす運営管理の仕組みや、土地・施設の購入/借入、運営主体による借入金利等を 見通すことが、現段階では現実的でなく、総合的な事業継続の可能性を検討することは難 しい。 そのため、ここでは単年度収支に着目して、実際の事業主体にとっての将来的な事業継 続性の検討を行う。 1.将来における来場者数推移の設定 拠点整備案のうち、案AおよびA‘と案Bの3つは、おかげ横丁等のテーマパーク型施 設を見習った案であり、案Cは農業公園、案Dは道の駅が下敷きとなった案である。 そのため、テーマパーク型施設、農業公園型施設、道の駅型施設のうち、寒川町と同じ く三大都市圏の郊外部(埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県、奈良県)に立地す る施設を中心に抽出し、その来場者数推移をみることで、整備される拠点への将来の来場 者数推移の変化について検討した。 (1)テーマパーク型施設における来場者推移 テーマパーク型施設としては、東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジ ャパン、ハウステンボス、東京ドイツ村、マザー牧場、新横浜ラーメン博物館、おかげ横 丁、志摩スペイン村の来場者数を経年で整理した。 圧倒的な規模と知名度を有する東京ディズニーリゾートや、アクアラインという特殊要 因があった東京ドイツ村のように継続して好調な例もあるものの、ユニバーサル・スタジ オ・ジャパンやハウステンボスですら開業時に比べて大幅に来場者が減少し、一時は半数 近くまで落ち込んだ。昭和 37(1962)年開設のマザー牧場のように、歴史があり一定の評 価が確立している施設は横ばいで留まっているが、一般には上下動が大きいことがこの型 の施設の特徴である。安全な将来見通しの上では、来場者を減少傾向として設定すること が適切と考えられ、志摩スペイン村における年間減少率 2%を参考として、来場者が減少す るように設定する。 ただし、近年の例をみると、開業2年目は減少率が非常に大きい(新横浜ラーメン博物 館 17%、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 31%)傾向がみられるため、ここでも 17% の減少率を見込むこととした。 78 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 88 テーマパーク型施設の来場者数推移 1.2 1.0 0.8 0.6 マザー牧場 志摩スペイン村 0.4 0.2 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 平成14 0.0 注釈)平成 14(2002)年の来場者数を1とした。 資料)各施設資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 (2)農業公園型施設における来場者推移 農業公園型施設で来場者数を公開している例が少ないが、長野県にあるチロルの森の推 移をみると、来場者数が激減している。テーマパーク型で取り上げたマザー牧場も比較的 近いと考えられるが、開設以来 50 年以上が経過している老舗施設であり、新設施設とは単 純な比較が難しい。そのため、チロルの森の年間減少率 6%(平成 22 年は異常値のため除 外)を参考に設定する。 図表 89 農業公園型施設の来場者数推移 1.2 1.0 0.8 0.6 チロルの森長野県信州 塩尻農業公園 0.4 0.2 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 平成14 0.0 注釈)平成 14(2002)年の来場者数を1とした。 資料)各施設資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 79 (3)道の駅型施設における来場者推移 道の駅型施設としては、千葉県において多くの来場者データが公開されている。これに よれば、減少している施設、増加している施設がさまざまであるが、ほぼ横ばいから微減 で推移する傾向にある。 ちょうど平均的な動きを示している道の駅ちくら潮風王国における9年間の平均減少率 をみると 0.2%であることから、この値を参考に設定する。 図表 90 道の駅型施設の来場者数推移 1.8 1.6 1.4 1.0 道の駅たけゆらの里大 多喜 道の駅しょうなん 0.8 道の駅多古 1.2 0.6 道の駅つどいの郷むつ ざわ 道の駅ちくら潮風王国 0.4 0.2 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 平成14 0.0 資料)各施設資料より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成 (4)各案における来場者推移の想定 寒川町への来訪者は、拠点整備によって実人数で 234 万人に達すると想定している。参 拝客調査で把握した各施設への立寄率は、大型直売所 38.3%、商業施設 84.2%、観光農園 12.6%であった。収入と同じく、最大面積の場合に最大人数が来場するとして比例配分する と、観光施設を設置した場合の、初年度来場者数(延べ人数)は下記の通り想定される。 図表 91 各整備案に対する初年度来場者数の想定 用途 案A 案 A' 案B 案C 案D 大型直売所 89 万人 89 万人 89 万人 89 万人 89 万人 飲食・商業施設 66 万人 131 万人 196 万人 159 万人 159 万人 観光農園 延べ人数 ― 155 万人 6 万人 226 万人 80 ― 286 万人 29 万人 278 万人 ― 249 万人 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 2.将来における収支の算出 ①年間収入と利益の算出 拠点施設における年間収入は、大型直売所、商業施設、観光農園による売上から発生す る。このうち、大型直売所はわいわい市であることから、ここでの計算からは除外して、 商業施設と観光農園による売上に着目し、参拝客調査で算出した観光客1人あたり単価を 観光客数に乗じて算出した。 図表 92 各整備案に対する初年度売上の想定 用途 案A 案 A' 案B 案C 案D 飲食施設 5.24 億円 10.48 億円 15.73 億円 12.73 億円 12.73 億円 商業施設 5.80 億円 11.60 億円 17.39 億円 14.08 億円 14.08 億円 観光農園 ― 0.92 億円 ― 4.88 億円 ― 合計 11.04 億円 23.00 億円 33.12 億円 31.69 億円 26.81 億円 この想定売上に対して、経済波及効果を算出する際に把握した寒川町の産業別利益率(飲 食施設 19%、商業施設 6%、観光農園 4%)を乗じて、初年度利益を算出した。 図表 93 各整備案に対する初年度利益の想定 用途 案A 案 A' 案B 案C 案D 飲食施設 0.97 億円 1.96 億円 2.94 億円 2.38 億円 2.38 億円 商業施設 0.32 億円 0.64 億円 0.97 億円 0.78 億円 0.78 億円 観光農園 ― 0.03 億円 ― 0.18 億円 ― 合計 1.30 億円 2.64 億円 3.90 億円 3.34 億円 3.16 億円 (2)各拠点施設の運営費 緑地、参道・道路、都市公園については公的機関による維持管理がなされるものとして、 拠点施設の運営主体は収入を産み出す商業施設、観光農園の2施設に加え、駐車場の維持 管理を担当するものとして設定した。 図表 94 各拠点整備案の年間維持管理費(単位:億円) 費目 案A 案 A' 案B 案C 案D 年間維持管理費 1.50 2.96 4.37 3.67 3.57 商業施設 1.44 2.88 4.32 3.49 3.49 駐車場 0.06 0.05 0.05 0.02 0.08 - 0.03 - 0.16 - 観光農園 81 (3)各拠点施設案における収支の変化 ここまでの検討結果をふまえ、当初 10 年間の収支変化を計算した。 ①初年度収支 初年度の収支は下記の通りで、いずれの案においても 20 百万円~47 百万円の赤字となる。 図表 95 各拠点整備案の初年度収支(単位:億円) 費目 案A 案 A' 案B 案C 案D 年間利益(億円) 1.30 2.64 3.90 3.34 3.16 年間維持管理費(億円) 1.50 2.96 4.37 3.67 3.57 ▲0.20 ▲0.32 ▲0.47 ▲0.33 ▲0.41 年間収支(億円) ②2年目以降の収支 初年度の利益に対して、類似事例の現況をふまえて、観光農園は-6%、商業施設は案A~ 案Cで初年度-17%、次年度以降-2%、案Dで-0.2%の減少率を設定し、将来の年間利益を 算出することとした。 その結果、10 年間でみるといずれの案においても累積赤字となっており、案Bと案Cで は 10 億円を超える累積赤字となる。最も少ない案Dでも 4.38 億円の累積赤字である。 82 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 96 各拠点整備案の 10 年間の累積収支(単位:億円) 案A 1 2 3 4 5 1.30 1.08 1.06 1.04 1.02 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 収支 -0.20 -0.42 -0.44 -0.46 -0.48 利益 2.64 2.19 2.14 2.10 2.06 維持費 2.96 2.96 2.96 2.96 2.96 収支 -0.32 -0.77 -0.82 -0.86 -0.90 利益 3.90 3.24 3.18 3.11 3.05 維持費 4.37 4.37 4.37 4.37 4.37 収支 -0.47 -1.13 -1.19 -1.26 -1.32 利益 3.34 2.77 2.71 2.66 2.61 維持費 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 収支 -0.33 -0.90 -0.96 -1.01 -1.06 利益 3.16 3.15 3.15 3.14 3.14 維持費 3.57 3.57 3.57 3.57 3.57 -0.41 -0.42 -0.42 -0.43 -0.43 6 7 8 9 10 1.00 0.98 0.96 0.94 0.92 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 収支 -0.50 -0.52 -0.54 -0.56 -0.58 利益 2.02 1.98 1.94 1.90 1.86 維持費 2.96 2.96 2.96 2.96 2.96 収支 -0.94 -0.98 -1.02 -1.06 -1.10 利益 2.99 2.93 2.87 2.81 2.76 維持費 4.37 4.37 4.37 4.37 4.37 収支 -1.38 -1.44 -1.50 -1.56 -1.61 利益 2.55 2.50 2.45 2.40 2.36 維持費 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 収支 -1.12 -1.17 -1.22 -1.27 -1.31 利益 3.13 3.12 3.12 3.11 3.10 維持費 3.57 3.57 3.57 3.57 3.57 -0.44 -0.45 -0.45 -0.46 -0.47 利益 維持費 案A’ 案B 案C 案D 収支 案A 利益 維持費 案A’ 案B 案C 案D 収支 83 10 年間累積 -4.72 -8.78 -12.86 -10.34 -4.38 図表 97 各拠点整備案の 10 年間の単年度収支(単位:億円) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 案A 案A’ -1 案B 案C 案D -1.2 -1.4 -1.6 -1.8 (億円) -2 図表 98 各拠点整備案の 10 年間の累積収支(単位:億円) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 -2 -4 -6 案A 案A’ 案B 案C 案D -8 -10 -12 (億円) -14 84 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ③黒字化するために必要な条件 10 年間の支出と収入の比をみると、最も可能性の高い案Dでは、14.0%来場者を増加さ せるか、消費単価を上げることができれば、10 年間でほぼ収支が均衡することになる。そ の他の4つの案では、いずれも4割以上の増加または消費単価の向上が求められる。 図表 99 各拠点整備案の 10 年間の単年度収支(単位:億円) 平均支出 平均収入 支出/収入 案A 1.50 1.03 1.459 案A’ 2.96 2.08 1.421 案B 4.37 3.08 1.417 案C 3.67 2.57 1.430 案D 3.57 3.13 1.140 85 第6章 今後の取組に係る検討 ここまでの検討をふまえ、寒川町における今後の観光拠点整備を考える。 1.観光拠点整備の必要性と可能性の検討 (1)寒川町における観光振興の必要性 ①財政余力のあるうちに将来に向けた投資が必要 寒川町の定住人口は、 平成 7 年頃からはほぼ横ばいで推移しているが、 平成 22 年の 47,672 人をピークに減少基調となる見通しである。また、働き手となる生産年齢人口が減少する ため、人口減少と相まって生産力、消費力ともに縮小することが見込まれる。 寒川町の財政力指数は1を超え、財政面での短期的な心配は他自治体に比べても少ない ものの、中長期的には人口減少による生産力、消費力の低下は税収入の減少に繋がり、高 齢化による従属人口比率の上昇は、社会福祉支出等の増加に繋がるものと捉えられる。 比較的財政余力がある現時点で、寒川町の将来をにらんだ投資が必要と考えられる。 ②安定した交流人口の活用が必要 寒川町の観光入込客数は年間 180 万人強で安定しており、経済状況による影響も非常に 少ない。これは、寒川神社への参拝客が多くを占めており、参拝客調査でも確認されたよ うに、多くが再訪者として毎年訪問しているためである。 寒川神社は相模国一宮として知名度も高く、初詣だけで約 40 万人の参拝者が関東地方一 円から集まるとされる。その存在により、寒川町は常住人口に対する観光入込客数が県平 均を大きく上回っていることから、町民1人あたりに分配される経済効果も大きくなるこ とが期待でき、観光消費によって大きな地域経済効果を得られるようにしていかねばなら ない。 また、観光収入は経済状況などの影響を受けやすいことが一般には指摘できるが、寒川 町の観光入込客数は非常に安定していることから、収入面での安定性も高いと考えられる。 定住人口が中長期的に減少していくなか、この安定した交流人口を活用して、地域経済 を活性化していくことが必要と考えられる。 (2)観光拠点で整備されることが望ましい機能 寒川町で観光拠点を整備において望ましい機能を整理した。 ①参拝客に対するサービス機能 寒川町の交流人口のほとんどが寒川神社参拝客である以上、その意向を確認の上、必要 な機能をサービスすることで、滞在時間を延ばし、消費を増やすことが必要と考えられる。 86 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 ②魅力的な小売機能 寒川町は対茅ヶ崎市で通勤・通学流動が流入超過となるなど、一定程度の産業拠点性を 有している。 一方で、商業面では購買力の流出が目立っている。小売業の売場面積あたりの年間販売 額がほぼ周辺市町と同額であるにもかかわらず、人口あたりの年間販売額は大幅に下回る という現状は、そもそも町内に小売機能が量的に不足していることを示している。また、 食品の購買力は流出していないことから、最寄品よりも買回品について多くの購買力が流 出していると考えられる。買回品については、単に量的に充足しても購買に繋がらないた め、質的な充足が求められる。商品的な意味での店舗間の差異は小さくなっており、場の 楽しさなどの付加価値も含めた質的な充足が必要となってきていると指摘できる。 わいわい市寒川店が、開設以来の広域的な人気を維持していることをみても、町民のみ ならず周辺市町からの利用者も期待でき、魅力的な小売機能があることが望ましい。 ③目的地となりえる観光地点 寒川町の観光入込客数はほぼ全数が寒川神社参拝客であり、それゆえに安定した入込客 数を誇っているが、参拝客調査でも明らかになったように町内で回遊する人はほんの一握 りに過ぎず、すぐに町外へ向かってしまうことが現状である。したがって、寒川神社に加 えて、町内に魅力ある観光資源を構築することで、滞在時間を増やし、ひいては観光消費 を増やしていくことが期待される。 現状、寒川神社以外の観光資源への訪問数は非常に少ないことから、既存の観光資源に よってこの役割を担うことは難度が高いと考えられ、新しい目的地となりうる観光拠点を 整備することが望ましい。 (3)観光拠点整備に向けた課題 観光拠点整備に向けて、その効果や事業可能性、投資妥当性を検討する必要があるが、 その際の課題としては下記のような点が挙げられる。 ①寒川神社参拝客の観光行動と意向に合わせた機能の提供 本業務で、寒川神社参拝客調査を行ったところ、飲食や土産品購入については、施設が 設置されることで大きな消費が発生する可能性がある。 ②さがみ縦貫道の全通に伴う変化への対応 このたび全通したさがみ縦貫道によって、埼玉県を中心に、寒川町への移動時間が大い に短縮される地域があり、参拝客の地域分布や利用交通機関等が大きく変化しつつある。 実際、日帰り圏域住民調査でも、さがみ縦貫道が整備された後には寒川町を訪問してみた いという意見も出ており、新しい市場の開拓につながる可能性がある。 87 ③観光消費の町内歩留まり状況の向上 神奈川県産業連関表でも多くの産業分類で歩留率が半分に満たないが、観光庁が実施し た観光地域経済調査によれば、観光産業における市区町村内歩留率(財やサービスを自市 区町村内で購入する比率)は平均 22.3%で、多くが市区町村外に流出している。 寒川町では常住人口に対する観光入込客数が多いため、観光消費による恩恵が通常以上 に期待できる状況にあるが、統計や町内事業者聞取調査によれば、仕入れ先が町外にある 事業者が多く、観光消費の多く、特に生産波及の源となる部分が、町外に流出している。 そのため、観光に関連する事業者、またその他の事業者も含め、可能な範囲での域内取引 の拡大を進めること、また進めやすいような環境を周囲で整えていくことで、大きな経済 波及効果を享受出来るようになる可能性がある。 ④農用地の利用について検討が必要 整備する観光拠点としてこれまでに議論されてきた5つの案だが、観光農園を中心とし た案のほかは、予定地のほとんどが農用地であることから、実現は困難である。また、観 光農園の案においても、駐車場や都市公園などの設置可能箇所が限られるなど、その機能 配置には大きな制約が生じる。 (4)観光拠点整備による効果 ①経済効果 さがみ縦貫道路が開通した現時点で、寒川町に生じている観光経済波及効果は、観光消 費総額約 31.6 億円、域内に留まる直接効果は 8.9 億円、域内にもたらされる波及効果の総 額は 9.2 億円であり、経済波及効果の総額は 40.8 億円である。 寒川町の産業構造から分析すると、観光拠点の整備によって増加した観光消費額は 1.29 倍になって町内で効果を生じる。拠点を整備することで、これまで町外に流出していた消 費が顕在化し、観光消費総額は 56.1 億円~71.1 億円となり、経済波及効果総額は 71.5 億 円~90.7 億円となることから、現在生じている経済波及効果の2倍程度まで拡大する。 ②投資価値と事業性 町内で産み出される経済効果が、初期投資や維持管理費よりも大きいため、社会的な観 点からみると、投資価値は大きな開発案件と判断される。 一方で、観光拠点の運営に取り組む事業者の立場で考える場合、毎年の収支はややマイ ナスが予想されることから、事業者単独では初期投資の回収が難しいだけでなく、年々負 債が積み上がる可能性が高い。仮にこのままの案で取り組む場合には、運営事業者には高 度な経験・ノウハウが求められると考えられる。 88 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 2.観光拠点整備に取り組む上での今後の方向性 (1)現案での実施可能性 本業務では、「寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に関するプロジェクトチーム」 において昨年度議論された内容をふまえ、5つの整備拠点案を対象として、実際に整備さ れた場合の町内に生じる経済効果、社会的な投資妥当性、事業者の事業継続性の3つの観 点から可能性を検討した。その結果、寒川町における観光拠点整備は、町内で得られる経 済効果は大きく、社会的な投資妥当性は高いものの、事業に取り組む運営者は赤字となる 可能性が高い。ただし、整備内容によって来場者数または消費単価を1割程度上振れさせ、 それを中長期にわたって維持できる力があれば実施可能であり、高度な企画力と運営力を 有する運営者であれば、事業を展開できる可能性はあると考えられる。 一方、今回の拠点整備案は、観光農園を中心とした案のほかは予定地に対する規制を全 く考慮に入れていないが、実際には農地法にかかる土地利用規制のため、業務用施設を設 置する拠点整備は、ほとんど困難なものとなっている。 したがって、現在の案の延長線上で事業を進めることを考える場合には、高度な運営能 力を有する事業者の参画が望ましいが、土地利用規制の問題をクリアするために実際の整 備は長期化も予想され、現状では、適切な事業者による参画を得られる可能性は高くない と考えられる。 (2)方針を転換する場合の方向性 現案で収支が厳しくなる原因としては、広大な面積に対して、収益性のある施設が一部 に限られていることが挙げられる。このたびの実施スキームにおいては、参拝客および観 光拠点の来訪者に十分な無料駐車場と、都市公園や道路の整備が前提となっており、都市 公園や道路等の直接的な整備や維持管理は公的機関が行うことで支援するとしても、飲 食・商業施設と駐車場については面積に応じた維持管理費が必要となってくる。 現在の候補地で観光拠点を整備するには、農地法による規制の存在が見逃せない。整備 できる可能性が非常に低く、できたとしても期間の長期化は避けられないと思われるなか、 速やかに効果を享受するためには、農用地以外での拠点整備を考えるか、農用地でも整備 可能な拠点整備を考えるかのいずれかの選択が必要と思われる。 ①農用地以外での拠点整備 飲食や土産品購入を中心に潜在的な消費需要が存在することは確認できたため、現案よ りも規模を縮小して飲食・商業機能を中心とした施設を設置することが考えられる。寒川 神社に近い、農地指定を受けていない範囲だけでも、測定したところ1ha以上の面積が あることから、飲食・商業機能を中心に絞り込めば、十分な規模の施設を開発可能と考え られる。実際、類似事例「大社の杜 みしま」の敷地面積は 0.07ha であるため、一定規模 の駐車場を併設しても面積としては足りると考えられる。また、農用地による制約を受け ないことから実現可能性も高く、有力な開発・運営事業者からみても魅力ある案件になる 可能性もある。 89 ※事例紹介「大社の杜 みしま」 伊豆国一宮である三嶋大社の門前に整備された商業施設「大社の杜 みしま」(静岡県三 島市)は 14 店舗が入居、将来的には 20 店舗までの拡張を目指している。各店舗は 3~4.5 坪程度の小規模なもので、飲食店を中心に土産品店とフリースペースで構成されている。 三嶋大社は年間 300 万人の参拝客があるとのことで、寒川神社とも規模的に類似してい る。また、路地裏的な横丁形式による商業施設であり、コンセプト的には現案の案B等に 近い。寒川町において希望されている方向性にもおおよそ合致した類似事例と考えられる。 図表 100 大社の杜みしま 所在地 静岡県三島市大社町 18-52 入居店舗 飲食店8/商業・サービス6 敷地面積 約 710 ㎡ 資料)大社の杜みしま資料および静岡県「第 7 回静岡県景観賞最優秀賞」 (写真) ②農用地でも可能な観光拠点整備 今回の調査で取り上げた観光農園や、体験農園のような形態であれば、農用地での実施 も可能と考えられる。近年では、このような農林水産業や食を主題とした観光(グリーン・ ツーリズム)の人気も高まっており、寒川町の立地や特性もふまえると、具体的に検討す る価値はあるものと思われる。 ただし、この方向性の場合は、今回の案Cのように駐車場は農用地外に用意する必要が あるなど施設配置に工夫が必要となるほか、寒川神社参拝客による利用だけでは需要が不 足する見通しのため、異なるルートによる市場開拓が求められる。 なお、グリーン・ツーリズムに取り組む場合には、農林水産省による補助として「都市 農村共生・対流総合対策交付金」 「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金」等の利用につ いて検討できる。また、 「 「農」のある暮らしづくり交付金」の活用も考えられる。 90 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 図表 101 グリーン・ツーリズムに関連する補助 対策名 内容 補助率 実施主体 都市農村共生・対 農山漁村の持つ豊かな自 ソフト事業 地域協議会、農業法人、N 流総合対策交付金 然や「食」を観光、教育、 定額(1地区当たり上限800万 健康等に活用する地域の 円) 手作り活動を総合的に支 ハード事業 援 1/2等(1地区当たり上限20 PO、社会福祉法人 等 00万円、但し福祉関連施設は上 限なし) 「農」のある暮ら 都市及びその近接地域に ソフト事業 民間団体、NPO、市町村、 しづくり交付金 おいて、「農」を楽しめ 定額(1地区当たり上限400万 社会福祉法人 等 る暮らしづくりに必要な 円) 農園等の整備に対する支 ハード事業 援 1/2以内 資料)農林水産省資料 91 <資料編> 参考資料1 寒川神社参拝客調査結果 現時点での寒川神社参拝客によって生じている経済波及効果と、寒川神社周辺地域で観 光拠点を整備した場合に参拝客が立ち寄ることによる消費増分を推計するために、寒川神 社参拝客に対するアンケート調査を実施した。 1.第1回参拝客調査 (1)調査概要 寒川神社の参拝客を対象に調査員がアンケートを直接配布・回収する方法で実施し、平 成 26(2014)年 10 月 18 日、19 日の2日間で合計 158 サンプルを回収した。そのうち、 14 サンプルは寒川町在住・在勤・在学者であった。 図表 1 調査概要 【調査対象】 ・寒川神社参拝客 【調査期間】 ・2014 年 10 月 18 日(土)~2014 年 10 月 19 日(日)の 2 日間 【調査方法】 ・寒川神社境内で来訪者に対して直接配布・回収 【調査項目】 ・回答者の基本属性(性別、年齢、居住地など) ・寒川神社への訪問状況(訪問頻度、同伴者、交通手段など) ・寒川町での消費状況(消費項目、消費金額など) ・整備施設の評価(整備後の利用意向、消費意向など) 【回収サンプル数】 ・158 サンプル(寒川町在住・在勤・在学者 14 サンプルを含む) (2)調査結果 ①回答者の基本属性 回答者の性別についてみると、男女比はほぼ半々である。年齢構成をみると、20 歳代が 少ないことが特徴である(図表 2) 。 資料編-1 神奈川県内からの参拝客が全体の約8割を占めている。また、東京都からの参拝客が 12.7%を占めていることから、寒川神社を訪れた参拝客のほとんどが神奈川県もしくは東京 都に居住している(図表 3) 。 通勤・通学地が寒川町内である回答者は 5.1%となっている(図表 4) 。 本調査は観光客を対象としたものであり、町内在住者、在勤・在学者は調査対象に含ま れないため、それらの回収票については、以後の分析においては対象外とした。 図表 2 性別・年齢構成 男性 女性 合計 19 歳以下 20~29 歳 30~39 歳 40~49 歳 50~59 歳 60~69 歳 70 歳以上 合計 1 7 35 40 39 25 11 80 0.6% 4.4% 22.2% 25.3% 24.7% 15.8% 7.0% 100.0% 0 1 19 20 20 13 7 78 0.0% 1.3% 23.7% 25.0% 25.0% 16.2% 8.7% 100.0% 1 6 16 20 19 12 4 158 1.3% 7.7% 20.5% 25.6% 24.4% 15.4% 5.1% 100.0% その他 合計 図表 3 居住地(SA) 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 2 4 20 126 1 5 158 1.3% 2.5% 12.7% 79.7% 0.6% 3.2% 100.0% 図表 4 勤務地・通学地(SA) 寒川町内 寒川町外 通勤・通学していない 合計 8 133 17 158 5.1% 84.2% 10.8% 100.0% ②寒川町への訪問状況(寒川町在住・在勤・在学者を除く) 寒川町在住・在勤・在学者を除くと、過去2年間で寒川町を訪問した回数は、 「1回」が 31.3%と最も多く、次いで、 「10 回以上」24.3%、 「2~3回」23.6%となっている(図表 5) 。 図表 5 寒川町への訪問回数(過去2年間)(SA) 1回 2~3 回 4~5 回 6~7 回 8~9 回 10 回以上 合計 45 34 24 3 3 35 144 31.3% 23.6% 16.7% 2.1% 2.1% 24.3% 100.0% 資料編-2 ③寒川神社への訪問状況(寒川町在住・在勤・在学者を除く) 回答者が過去2年間で寒川神社を訪問した回数は、 「1回」が 33.3%と最も多く、次いで、 「2~3回」29.2%、 「4~5回」18.8%となっている(図表 6) 。 また、回答者の 44.4%が 2014 年の初詣に寒川神社を訪れた(図表 7) 。 図表 6 寒川神社への訪問回数(過去2年間)(SA) 1回 2~3 回 4~5 回 6~7 回 8~9 回 10 回以上 合計 48 42 27 3 1 23 144 33.3% 29.2% 18.8% 2.1% 0.7% 16.0% 100.0% 図表 7 2014 年の初詣先(SA) 寒川神社 その他 どこにも行っていない 合計 64 59 21 144 44.4% 41.0% 14.6% 100.0% ④今回の寒川神社参拝について(寒川町在住・在勤・在学者を除く) 単独での寒川神社参拝は2割に満たず、2人との回答が4割近くを占める。(図表 8) 。 同伴者との関係について、 「家族」を挙げた者は全体の 89.7%を占めている。次いで、 「異 性の知人・友人」8.5%、 「同性の知人・友人」1.7%となっている(図表 9) 。 図表 8 参拝者数 自分だけ 2人 3人 4人 5人以上 合計 27 54 18 19 26 144 18.8% 37.5% 12.5% 13.2% 18.1% 100.0% 図表 9 同伴者との関係(SA) 家族 同性の知人・友人 異性の知人・友人 合計 105 2 10 117 89.7% 1.7% 8.5% 100.0% 資料編-3 寒川神社までの交通手段として、「自家用車(一般道路利用)」が最多の 43.1%を占めて いる。次いで、 「自家用車(高速道路利用) 」34.0%、 「電車」18.1%となっている(図表 10) 。 「自家用車(一般道路利用)」と「自家用車(高速道路利用)」を合わせると、回答者の 8割弱が自家用車で寒川神社を訪れることとなっている。 図表 10 交通手段(SA) 自家用車 自家用車 (高速道路利用) (一般道路利用) 49 62 26 4 2 1 144 34.0% 43.1% 18.1% 2.8% 1.4% 0.7% 100.0% 電車 徒歩・自転車 バイク その他 合計 電車利用者の降車駅及び乗車(予定)駅については、ほぼすべての参拝客が宮山駅を利 用していた(図表 11)。 図表 11 降車駅及び乗車(予定)駅(SA) 宮山駅 寒川駅 合計 26 0 26 100.0% 0.0% 100.0% 25 1 26 96.2% 3.8% 100.0% 降車駅 乗車(予定)駅 「寒川神社以外に既に立ち寄ったところまたはこれから立ち寄るところはありますか」 という質問に対し、過半数の回答者が「どこにも立ち寄らない」としている。また、 「町外」 (22.9%)がこれに次ぐ結果となっている(図表 12)。 図表 12 立ち寄り場所(MA) 寒川町内 寒川町内 どこにも (わいわい市) (わいわい市以外) 21 17 33 76 144 14.6% 11.8% 22.9% 52.8% 100.0% 町外 合計 立ち寄らない 資料編-4 ⑤寒川町での消費状況 寒川町での回答者の消費状況をみると、 「寒川神社における支払」が 74.3%と最も多くな っている。次いで、 「飲食」26.4%、 「お菓子などの食料品」16.7%となっている(図表 13) 。 来訪者1人当たりの消費額は平均 1,548 円である。消費項目別にみると、寒川神社にお ける支払額が平均 971 円と最も高くなっている(図表 14) 。 図表 13 寒川町での消費項目(MA) タクシー お菓子などの 飲食 食料品 寒川神社にお 雑貨 ける支払 その他 合計 1 38 24 3 107 1 144 0.7% 26.4% 16.7% 2.1% 74.3% 0.7% 100.0% 図表 14 来訪者1人当たりの消費額 消費項目 1人当たり消費額(円) タクシー 7 消費項目 1人当たり消費額(円) 雑貨 7 飲食 366 寒川神社における支払 お菓子などの食料品 128 その他 971 69 合計 1,548 ⑥施設利用意向 寒川神社の近くで利用したい施設として、 「軽く休憩できる喫茶店やカフェ」 (56.9%)を 挙げた者が最も多く、 「レストラン」 (41.0%)、 「地元の農産物などを販売する直売所」 (39.6%) がこれに次ぐ結果となっている(図表 15) 。 利用したいレストランの種類については、 「ファミリーレストラン」 (45.8%)、 「そば・う どん店」 (35.6%) 、 「日本料理店」 (35.6%)が上位3位を占めている(図表 16) 。 図表 15 利用したい施設(MA) 軽く休憩でき る喫茶店やカ レストラン フェ お土産用の食 お土産用の雑 農産物の収穫 地元の農産物 料品が買える 貨が買えるお 体験ができる などを販売す お土産店 土産店 観光農園 る直売所 合計 82 59 33 28 20 57 144 56.9% 41.0% 22.9% 19.4% 13.9% 39.6% 100.0% 資料編-5 図表 16 利用したいレストラン(MA) (n=59) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% ファミリーレストラン 45.8% そば・うどん店 35.6% 日本料理店 35.6% すし店 18.6% 大衆食堂 16.9% ラーメン店 11.9% 中華料理店 10.2% お好み焼き・焼きそば・ たこ焼き店 10.2% 焼肉店 6.8% ハンバーガー店 6.8% その他 8.5% 図表 17 来訪者1人当たりの予定消費額 施設案 1人当たり予定消費額(円) 軽く休憩できる喫茶店やカフェ 469 レストラン 762 地元の農産物などを販売する直売所 626 お土産用の食料品が買えるお土産店 542 お土産用の雑貨が買えるお土産店 355 農産物の収穫体験ができる観光農園 209 合計 2,963 資料編-6 利用したい施設の1人当たりの予定消費額は 2,963 円である。施設案別にみると、 「レス トラン」が 762 円で最も高く、次いで、 「地元の農産物などを販売する直売所」 (626 円)、 「お土産用の食料品が買えるお土産店」 (542 円)となっている(図表 17) 。一方、1人当 たりの予定消費額が最も低いのは「農産物の収穫体験ができる観光農園」の 209 円である。 図表 15 に示す施設のほかにあると良い有料施設について、最も多い意見は「特になし」 (38.2%)である。次いで、「ショッピングモール」(29.2%)、「スーパー銭湯」(16.7%) となっている(図表 18) 。 図表 18 あると良い有料施設(MA) (n=144) 0.0% 10.0% 20.0% ショッピングモール 16.7% 美術館 16.7% 博物館 12.5% フィールドアスレチック プール シネマコンプレックス BBQサイト ゲームセンター 40.0% 29.2% スーパー銭湯 遊園地 30.0% 9.0% 4.9% 4.2% 3.5% 3.5% 2.8% ホテル 2.1% その他 2.1% 特になし 38.2% 資料編-7 50.0% 2.第2回参拝客調査 (1)調査概要 第2回参拝客調査は第1回と同様の調査方法で実施し、2015 年1月 17 日の1日間で合 計 160 サンプルを回収した。そのうち、6サンプルが寒川町在住者である。 図表 19 調査概要 【調査対象】 (再掲) ・寒川神社参拝客 【調査期間】 ・2015 年 1 月 17 日(土)の1日間 【調査方法】 (再掲) ・寒川神社境内で来訪者に対して直接配布・回収 【調査項目】 (再掲) ・回答者の基本属性(性別、年齢、居住地など) ・寒川神社への訪問状況(訪問頻度、同伴者、交通手段など) ・寒川町での消費状況(消費項目、消費金額など) ・整備施設の評価(整備後の利用意向、消費意向など) 【回収サンプル数】 ・160 サンプル(寒川町在住者6サンプルを含む) (2)調査結果 ①回答者の基本属性 回答者は 30 代~60 代が多いことが特徴である(図表 20) 。また第1回の調査結果と同 様、回答者のほとんどが神奈川県もしくは東京都に居住している(図表 21)。 通勤・通学地についてみると、寒川町外が約9割を占めている(図表 22)。 第1回の調査と同様、町内在住者、在勤・在学者は調査対象に含まれないため、それら の回収票については、以後の分析においては対象外とした。 資料編-8 図表 20 性別・年齢構成 19 歳以下 20~29 歳 30~39 歳 40~49 歳 50~59 歳 60~69 歳 70 歳以上 合計 2 4 15 17 18 13 1 70 2.9% 5.7% 21.4% 24.3% 25.7% 18.6% 1.4% 100.0% 2 6 20 33 14 13 2 90 2.2% 6.7% 22.2% 36.7% 15.6% 14.4% 2.2% 100.0% 4 10 35 50 32 26 3 160 2.5% 6.3% 21.9% 31.3% 20.0% 16.2% 1.9% 100.0% 男性 女性 合計 図表 21 居住地(SA) 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 その他 合計 4 4 18 131 1 2 160 2.5% 2.5% 11.2% 81.9% 0.6% 1.3% 100.0% 図表 22 勤務地・通学地(SA) 寒川町内 寒川町外 通勤・通学していない 合計 0 145 15 160 0.0% 90.6% 9.4% 100.0% ②寒川町への訪問状況(寒川町在住・在勤・在学者を除く) 寒川町在住・在勤・在学者を除く回答者が過去2年間で寒川町を訪問した回数は、 「2~ 3回」が 51.3%と全体の過半を占めている(図表 23)。 図表 23 寒川町への訪問回数(過去2年間)(SA) 1回 2~3 回 4~5 回 6~7 回 8~9 回 10 回以上 合計 28 79 19 7 2 19 154 18.2% 51.3% 12.3% 4.5% 1.3% 12.3% 100.0% 資料編-9 ③寒川神社への訪問状況(寒川町在住・在勤・在学者を除く) 回答者が過去2年間で寒川神社を訪問した回数は、 「2~3回」が 59.1%と過半数を占め ている。 「1回」21.4%を加えると、約8割の回答者の訪問回数が3回以内である(図表 24) 。 また、回答者の6割が 2015 年の初詣に寒川神社を訪れた(図表 25) 。 図表 24 寒川神社への訪問回数(過去2年間)(SA) 1回 2~3 回 4~5 回 6~7 回 8~9 回 10 回以上 合計 33 91 13 8 2 7 154 21.4% 59.1% 8.4% 5.2% 1.3% 4.5% 100.0% 図表 25 2015 年の初詣先(SA) 寒川神社 その他 無回答 合計 93 58 3 154 60.4% 37.7% 1.9% 100.0% ④今回の寒川神社参拝について(寒川町在住・在勤・在学者を除く) 今回の寒川神社参拝について、同伴者と一緒に訪れた回答者は全体の8割強を占めてい る(図表 26) 。また同伴者との関係について、 「家族」を挙げた者は全体の 84.1%を占めて いる。これは第1回調査結果と同様の傾向を示している(図表 27) 。 図表 26 参拝者数 自分だけ 2人 3人 4人 5人以上 合計 28 76 28 13 9 154 18.2% 49.4% 18.2% 8.4% 5.8% 100.0% 図表 27 同伴者との関係(SA) 家族 同性の知人・友人 異性の知人・友人 合計 106 14 6 126 84.1% 11.1% 4.8% 100.0% 資料編-10 寒川神社までの交通手段として、「自家用車(一般道路利用)」が最多の 44.8%を占めて いる(図表 28) 。第1回調査結果に比べ、 「電車」の利用率が大幅に上昇した。これは寒川 神社周辺の道路混雑を予想した参拝客が交通手段を自家用車から電車に変更したためと推 察される。 なお、自家用車で寒川神社を訪れた回答者が依然として約6割を占めている。 図表 28 交通手段(SA) 自家用車 自家用車 (高速道路利用) (一般道路利用) 23 69 53 5 3 1 154 14.9% 44.8% 34.4% 3.2% 1.9% 0.6% 100.0% 電車 徒歩・自転車 バイク その他 合計 電車利用者の降車駅及び乗車(予定)駅については、9割の参拝客が宮山駅を利用して いた(図表 29) 。 図表 29 降車駅及び乗車(予定)駅(SA) 宮山駅 降車駅 乗車(予定)駅 寒川駅 無回答 合計 51 1 1 53 96.2% 1.9% 1.9% 100.0% 49 3 1 53 92.5% 5.7% 1.9% 100.0% 「寒川神社以外にすでに立ち寄ったところまたはこれから立ち寄るところはありますか」 という質問に対し、61.7%の回答者が「どこにも立ち寄らない」としている。また、 「町外」 (22.7%)がこれに次ぐ結果となっている(図表 30)。これは第1回調査結果と同様の傾 向を示している。 図表 30 立ち寄り場所(MA) 寒川町内 寒川町内 (わいわい市) (わいわい市以外) どこにも 町外 立ち寄らない 合計 9 16 35 95 154 5.8% 10.4% 22.7% 61.7% 100.0% 資料編-11 ⑤寒川町での消費状況 寒川町での回答者の消費状況をみると、第1回調査結果と同様に「寒川神社における支 払」が最も多くなっている。次いで、 「飲食」22.1%、 「お菓子などの食料品」12.3%となっ ている(図表 31) 。 図表 31 寒川町での消費項目(MA) お菓子など 飲食 寒川神社に 雑貨 の食料品 おける支払 合計 34 19 3 129 154 22.1% 12.3% 1.9% 83.8% 100.0% 来訪者1人当たりの消費額は平均 2,220 円と第1回調査結果 (1,548 円) を上回っている。 これは主に寒川神社における支払額が平時に比べて高くなっていることによる影響と考え られる(図表 32) 。 図表 32 来訪者1人当たりの消費額 消費項目 1人当たり消費額(円) 飲食 149 お菓子などの食料品 86 雑貨 22 寒川神社における支払 1,963 合計 2,220 ⑥施設利用意向 寒川神社の近くで利用したい施設においては、「軽く休憩できる喫茶店やカフェ」「レス トラン」 、「地元の農産物などを販売する直売所」が上位3位を占めており、第1回調査結 果と同様の傾向が見られる(図表 33) 。 利用したいレストランの種類にとして「ファミリーレストラン」「日本料理店」「そば・ うどん店」が最も人気があることは第2回の調査でも裏付けられている(図表 34) 。 資料編-12 図表 33 利用したい施設(MA) お土産用の 軽く休憩で きる喫茶店 レストラン やカフェ 食料品が買 えるお土産 店 お土産用の 雑貨が買え るお土産店 農産物の収 地元の農産 穫体験がで 物などを販 合計 きる観光農 売する直売 園 所 63 44 23 10 15 43 154 40.9% 28.6% 14.9% 6.5% 9.7% 27.9% 100.0% 図表 34 利用したいレストラン(MA) (n=44) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% ファミリーレストラン 50.0% 50.0% 日本料理店 29.5% そば・うどん店 27.3% ラーメン店 22.7% 大衆食堂 15.9% すし店 13.6% 中華料理店 6.8% 焼肉店 6.8% ハンバーガー店 6.8% お好み焼き・焼きそば・ たこ焼き店 6.8% その他 40.0% 4.5% 資料編-13 60.0% 図表 35 来訪者1人当たりの予定消費額 施設案 1人当たり予定消費額(円) 軽く休憩できる喫茶店やカフェ 368 レストラン 398 地元の農産物などを販売する直売所 239 お土産用の食料品が買えるお土産店 115 お土産用の雑貨が買えるお土産店 159 農産物の収穫体験ができる観光農園 442 合計 1,721 利用したい施設の1人当たりの予定消費額は 1,721 円と第1回調査結果(2,963 円)を下 回っている。施設案別にみると、 「農産物の収穫体験ができる観光農園」が 442 円で最も高 く、次いで、 「レストラン」 (398 円)、「軽く休憩できる喫茶店やカフェ」(368 円)となっ ている。一方、1人当たりの予定消費額が最も低いのは「お土産用の食料品が買えるお土 産店」の 115 円である(図表 35) 。 図表 33 に示す施設のほかにあると良い有料施設においては、 「特になし」 「ショッピング モール」 「スーパー銭湯」が上位3位を占め、第1回調査結果と同様の傾向がみられる(図 表 36) 。 資料編-14 図表 36 あると良い有料施設(MA) (n=154) 0.0% 10.0% 20.0% ショッピングモール 6.5% フィールドアスレチック 4.5% シネマコンプレックス ゲームセンター ホテル プール その他 60.0% 7.1% 美術館 BBQサイト 50.0% 12.3% 博物館 ボウリング場 40.0% 22.7% スーパー銭湯 遊園地 30.0% 3.9% 3.2% 1.9% 1.9% 0.6% 1.3% 0.0% 2.6% 特になし 52.6% 資料編-15 参考資料2 日帰り圏域住民調査報告 1.調査概要 寒川神社周辺地域で観光拠点を整備した場合に生じる消費増分を推計するため、日帰り 圏域住民調査を実施した。 本調査では、寒川町から2時間圏内の地域住民(寒川町民は除く)を対象に都県別に目 標回収数を設定して Web アンケートを実施した。平成 26(2014)年 12 月4日~8日の5 日間でいずれの対象地域においても目標回収数に達し、計 800 サンプルを回収した。 図表 1 調査概要 【調査対象】 ・日帰り圏域住民 【調査期間】 ・2014 年 12 月4日(木)~2014 年 12 月8日(月)の5日間 【調査方法】 ・Web アンケート 【調査項目】 ・回答者の基本属性(性別、年齢、居住地など) ・日帰り旅行の実施状況(実施頻度、同伴者、交通手段など) ・寒川町への訪問意向(訪問経験の有無、今後の訪問意向など) ・整備施設の評価(整備後の利用意向、消費意向など) 【回収数】 ・東京都 23 区 200 サンプル ・東京都多摩地域 150 サンプル ・埼玉県 100 サンプル ・千葉県 50 サンプル ・山梨県 50 サンプル ・静岡県 50 サンプル ・横浜市+川崎市 100 サンプル ・神奈川県(横浜市、川崎市、寒川町を除く) 100 サンプル 【回収サンプル数】 ・800 サンプル 資料編-16 2.調査結果 (1)回答者の基本属性 回答者の性別についてみると、男女比はほぼ半々である。年齢構成をみると、30 歳未満 と 70 歳以上が少ないことが特徴である(図表 2) 。 図表 2 性別・年齢構成 19 歳以下 20~29 歳 30~39 歳 40~49 歳 50~59 歳 60~69 歳 70 歳以上 0 26 42 127 103 84 17 399 0.0% 6.5% 10.5% 31.8% 25.8% 21.1% 4.3% 100.0% 5 39 71 135 93 46 12 401 1.2% 9.7% 17.7% 33.7% 23.2% 11.5% 3.0% 100.0% 5 65 113 262 196 130 29 800 0.6% 8.1% 14.1% 32.8% 24.5% 16.3% 3.6% 100.0% 男性 女性 合計 合計 世帯構成をみると、 「夫婦と未婚の子のみの世帯」が約4割と最も高くなっている。一方、 「ひとり暮らし」が全体の2割弱を占めている(図表 3)。 図表 3 世帯構成(SA) ひとり暮ら 夫婦のみの し 世帯 夫婦と未婚 ひとり親と の子のみの 未婚の子の 三世代世帯 世帯 みの世帯 その他の世 帯 合計 136 194 334 57 42 37 800 17.0% 24.3% 41.8% 7.1% 5.3% 4.6% 100.0% 職業についてみると、 「勤め人(会社員、公務員など)」が 41.5%と最も高くなっている。 また回答者の通勤・通学先は、いずれも寒川町外となっている(図表 4) 。 図表 4 職業(SA) 勤め人(会 社員、公務 員など) パート・ア ルバイト 自営業 学生 家事専業 無職・定年 退職 その他 合計 332 105 76 21 148 108 10 800 41.5% 13.1% 9.5% 2.6% 18.5% 13.5% 1.3% 100.0% 資料編-17 (2)日帰り旅行の実施状況 日帰り旅行の実施頻度をみると、年に1~2回日帰り旅行する人は全体の 36.9%を占め ている(図表 5) 。 図表 5 日帰り旅行の実施頻度(過去2年間)(SA) 週に 半月に 月に 3 ヶ月に 半年に 年1 回 行って 1 回程度 1 回程度 1 回程度 1 回程度 1 回程度 程度 いない 2 41 70 123 157 138 269 800 0.3% 5.1% 8.8% 15.4% 19.6% 17.3% 33.6% 100.0% 合計 日帰り旅行の際の同伴者においては「家族」が 63.5%と最も多く挙げられている(図表 6) 。 図表 6 同伴者との関係(SA) 家族 同性の知 異性の知 人・友人 人・友人 職場の同僚 ひとり その他 合計 337 80 31 7 72 4 531 63.5% 15.1% 5.8% 1.3% 13.6% 0.8% 100.0% 日帰り旅行にあたって主に利用した交通手段として、 「電車・バス」と「自家用車」が最 も多くなっている(図表 7) 。 図表 7 主な交通手段(MA) 自家用車 レンタカー 電車・バス バイク その他 313 29 324 11 7 531 58.9% 5.5% 61.0% 2.1% 1.3% 100.0% 合計 日帰り旅行の際に重視したポイントとして「名所・旧跡」「自然景色」 「グルメ」が上位 3位を占めている(図表 8) 。 図表 8 重視したポイント(MA) 名所・旧 跡 自然景色 グルメ ショッピ ング 温泉 祭り等の イベント その他 合計 272 314 219 154 202 77 21 531 51.2% 59.1% 41.2% 29.0% 38.0% 14.5% 4.0% 100.0% 資料編-18 回答者の過半数は 2014 年に初詣に行っていない。また、初詣で寒川神社を訪れた者は全 体の 4.0%にとどまっている(図表 9)。 図表 9 2014 年の初詣先(SA) 寒川神社 初詣には行って その他 合計 いない 32 309 459 800 4.0% 38.6% 57.4% 100.0% (3)寒川町への訪問意向 寒川町の名前を知っていた回答者が全体の6割強を占めているが、場所も知っていた者 は全体の3割程度にとどまっている(図表 10) 。 寒川町の名前も場所も知っていた回答者のうち、実際に訪問した経験を持つ者が 73.5% を占めている(図表 11) 。また、具体的な訪問先としては寒川神社が 84.6%で圧倒的であ り、他を大きく引き離している。訪問経験者の多くは寒川神社の参拝のみで町外に去って いると推察できる(図表 12)。 図表 10 寒川町の認知度(SA) 名前も場所も 名前は聞いた 知っていた ことがあった 合計 知らなかった 230 278 292 800 28.8% 34.8% 36.5% 100.0% 図表 11 寒川町の訪問経験(SA) ある 合計 なし 169 61 230 73.5% 26.5% 100.0% 図表 12 寒川町内の訪問先(MA) 寒川神社 わいわい市 商店街 (寒川駅周辺) その他 合計 143 18 45 12 169 84.6% 10.7% 26.6% 7.1% 100.0% 資料編-19 訪問経験者の過去2年間の訪問回数をみると、「過去2年間には訪れていない」が約4割 を占めている。次いで「1回」32.0%、「2回」10.7%の順となっている(図表 13) 。 図表 13 寒川町への訪問回数(過去2年間)(SA) 過去 2 年 1 回 2 回 3 回 4 回 5 回以上 間には訪れ 合計 ていない 54 18 9 3 16 69 169 32.0% 10.7% 5.3% 1.8% 9.5% 40.8% 100.0% 訪問経験を持たない回答者の今後の訪問意向についてみると、 「訪問してみようと思わな い」が約7割を占めている(図表 14)。その理由としては「特に興味がない」が最も多く なっているが、次いで「移動時間が長い」16.8%、 「訪問したい施設がない」14.6%の順と なっている(図表 15) 。 図表 14 寒川町への訪問意向(SA) 寒 川 北 IC ~ 海 老 名 寒 川 北 IC ~ 海 老 名 JCT 間が開通しなく JCT 間が開通したら ても訪問してみたい 訪問してみたい 訪問してみようと思 わない 合計 46 127 458 631 7.3% 20.1% 72.6% 100.0% 図表 15 訪問してみようと思わない理由(MA) 移動時間が長い 訪問したい施設 がない 特に興味がな その他 い 合計 77 67 18 322 458 16.8% 14.6% 3.9% 70.3% 100.0% (4)施設利用意向 訪問客へのおもてなし施設のうち最も利用したい施設として、 「軽く休憩できる喫茶店や カフェ」 (56.1%)を挙げた者が最も多く、 「地元の農産物などを販売する直売所」 (49.7%)、 「お土産用の食料品が買えるお土産店」 (46.5%)がこれに次ぐ結果となっている(図表 16) 。 利用したいレストランの種類については、 「そば・うどん店」 (55.8%) 、 「ファミリーレス トラン」 (51.3%) 、 「大衆食堂」 (46.1%)が上位3位を占めている(図表 17)。 資料編-20 図表 16 利用したい施設(MA) (n=342) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 軽く休憩できる 喫茶店やカフェ 56.1% 地元の農産物などを 販売する直売所 49.7% お土産用の食料品が 買えるお土産店 46.5% レストラン 45.0% お土産用の雑貨が 買えるお土産店 22.8% 農産物の収穫体験が できる観光農園 19.0% この中にはない 13.7% お土産用の 軽く休憩で きる喫茶店 レストラン やカフェ 食料品が買 えるお土産 店 お土産用の 雑貨が買え るお土産店 農産物の収 地元の農産 穫体験がで 物などを販 きる観光農 売する直売 園 合計 所 192 154 159 78 65 170 342 56.1% 45.0% 46.5% 22.8% 19.0% 49.7% 100.0% 資料編-21 図表 17 利用したいレストラン(MA) (n=154) 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% そば・うどん店 55.8% ファミリーレストラン 51.3% 大衆食堂 46.1% 日本料理店 43.5% すし店 27.3% ラーメン店 27.3% 中華料理店 21.4% お好み焼き・焼きそば・ たこ焼き店 19.5% ハンバーガー店 16.9% 焼肉店 その他 11.7% 7.1% 資料編-22 利用したい施設の1人当たりの予定消費額は 3,667 円である。施設案別にみると、 「お土 産用の食料品が買えるお土産店」が 943 円で最も高く、次いで、 「地元の農産物などを販売 する直売所」 (851 円) 、 「レストラン」 (677 円)となっている。一方、1人当たりの予定消 費額が最も低いのは「農産物の収穫体験ができる観光農園」の 318 円である(図表 18) 。 図表 18 来訪者1人当たりの予定消費額 施設案 1人当たり予定消費額(円) 軽く休憩できる喫茶店やカフェ 451 レストラン 677 地元の農産物などを販売する直売所 851 お土産用の食料品が買えるお土産店 943 お土産用の雑貨が買えるお土産店 427 農産物の収穫体験ができる観光農園 318 合計 3,667 資料編-23 図表 16 に示す施設のほかにあると良い有料施設について、 「特になし」が全体の3割強 を占めている。回答者の3人に 1 人が「ショッピングモール」 (36.3%)、4人に1人が「ス ーパー銭湯」 (26.0%)を希望しており、特に「ショッピングモール」は「特になし」 (33.0%) を上回るなど大きな需要がある。そのほかは5人に1人に満たないが、「美術館」(17.3%) 「博物館」 (15.8%)の人気が比較的高く、寒川神社参拝者には文化的嗜好性がみられるこ とが特徴となっている。 (図表 19) 。 図表 19 あると良い有料施設(MA) (n=342) 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% ショッピングモール 36.3% スーパー銭湯 26.0% 美術館 17.3% 博物館 15.8% ホテル 10.8% フィールドアスレチック 10.5% 遊園地 7.6% BBQ サイト 7.0% シネマコンプレックス 6.4% ゲームセンター 4.7% プール 4.7% ボウリング場 その他 40.0% 2.9% 0.9% 特になし 33.0% 資料編-24 参考資料3 寒川町内事業者調査 1.調査概要 観光拠点の整備で生じる経済波及効果の一部は、原材料の仕入れ等で町外に流出するこ とが知られている。本調査では、経済波及効果のうち町内にとどまる金額を推定するが、 そのためには町内事業者の域内調達率を把握する必要がある。 そこで実際に観光客の訪問を受けている、また今後も受ける可能性が高いと考えられる 寒川町内の事業者5者を対象にヒアリング調査を実施した。 図表 1 調査概要 【調査対象】 ・町内事業者5者(事業者 A~E) ・業種:小売業(事業者 A) 、飲食業(事業者 B~E) 【調査期間】 ・2014 年 12 月3日(水) 、2014 年 12 月5日(金)の 2 日間 【調査方法】 ・ヒアリング調査(所要時間:1事業者当たり 30 分~60 分程度) 【主要調査項目】 ・顧客構成 ・町内からの仕入れ状況 ・従業員、アルバイト等の状況 2.調査結果 顧客に占める観光客の割合をみると、事業者Bが最も高くなっている。 図表 2 顧客構成 事業者 顧客構成 A 顧客の 98%が町内在住者である。 B 8割程度が町外からの観光客である。 C 観光客は2割程度である。 D 観光客は顧客全体の約3割を占める。ただし、1月の場合は8割が観光 客だと思われる。 顧客の構成は4割が町内、6割が町外(うち、2割が茅ヶ崎)となって E いる。ただし、1月~2月は寒川神社を参拝してから店を訪れた人が全 体の8割程度である。 資料編-25 事業者5者の町内調達率は 10%から 30%の間であった。平均値は 23%であり、観光産 業の域内調達率(全国平均)の 22.3%1とほぼ同水準にある。 図表 3 町内からの仕入れ状況 事業者 町内調達率(%) A 30% B 15% C 10% D 30% E 30% 従業員、アルバイト等に占める町内居住者の割合をみると、39%に留まる事業者もある ものの、その他は 65%~100%となっており、町内居住者の方が多くなっている。 図表 4 従業員、アルバイト等の状況 事業者 1 従業員、アルバイト等に占める町内居住者の割合(%) A 100% B 39% C 65% D 100% E 79% 資料)観光庁「平成 24 年観光地域経済調査(速報) 」 資料編-26 平成27年3月発行 寒川神社を核とした新たな観光拠点の創出に係わる調査業務 報告書 調査受託 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社